衆議院

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第21号 令和6年5月29日(水曜日)

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令和六年五月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 新谷 正義君

   理事 大岡 敏孝君 理事 大串 正樹君

   理事 橋本  岳君 理事 三谷 英弘君

   理事 井坂 信彦君 理事 中島 克仁君

   理事 足立 康史君 理事 伊佐 進一君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      井原  巧君    上田 英俊君

      勝目  康君    金子 容三君

      川崎ひでと君    木村 次郎君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      田所 嘉徳君    田畑 裕明君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      中谷 真一君    仁木 博文君

      西野 太亮君    堀内 詔子君

      本田 太郎君    三ッ林裕巳君

      保岡 宏武君    柳本  顕君

      山本 左近君    吉田 真次君

      阿部 知子君    大西 健介君

      酒井なつみ君    堤 かなめ君

      西村智奈美君    山井 和則君

      柚木 道義君    吉田 統彦君

      早稲田ゆき君    一谷勇一郎君

      遠藤 良太君    岬  麻紀君

      福重 隆浩君    吉田久美子君

      宮本  徹君    田中  健君

      西岡 秀子君    吉良 州司君

      福島 伸享君

    …………………………………

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   内閣府副大臣       工藤 彰三君

   財務副大臣        矢倉 克夫君

   厚生労働副大臣      浜地 雅一君

   経済産業副大臣      岩田 和親君

   内閣府大臣政務官     平沼正二郎君

   国土交通大臣政務官    こやり隆史君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 江浪 武志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 上村  昇君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 瀧澤  謙君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    松多 秀一君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   阿部 知明君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       玉田 康人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         三田 一博君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            内山 博之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局長)         大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長)   佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         堀井奈津子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           朝川 知昭君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  間 隆一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 鹿沼  均君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 森川 善樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         南   亮君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           住友 一仁君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十九日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     木村 次郎君

  勝目  康君     保岡 宏武君

  川崎ひでと君     西野 太亮君

  塩崎 彰久君     井原  巧君

  仁木 博文君     杉田 水脈君

  堤 かなめ君     酒井なつみ君

  田中  健君     西岡 秀子君

  福島 伸享君     吉良 州司君

同日

 辞任         補欠選任

  井原  巧君     塩崎 彰久君

  木村 次郎君     秋葉 賢也君

  杉田 水脈君     仁木 博文君

  西野 太亮君     川崎ひでと君

  保岡 宏武君     勝目  康君

  酒井なつみ君     堤 かなめ君

  西岡 秀子君     田中  健君

  吉良 州司君     福島 伸享君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 国立病院の機能強化に関する請願(中島克仁君紹介)(第一五四六号)

 同(湯原俊二君紹介)(第一五四七号)

 同(笠浩史君紹介)(第一五四八号)

 同(菅直人君紹介)(第一五六五号)

 同(阿部知子君紹介)(第一六五三号)

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(柳本顕君紹介)(第一五五四号)

 同(大岡敏孝君紹介)(第一五九五号)

 福祉職員の最低賃金を千五百円以上にして、職員配置基準を引き上げることに関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第一五九八号)

 同(菅直人君紹介)(第一六九三号)

 介護保険制度の改善、介護従事者の処遇改善を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第一六四五号)

 全ての看護職員の処遇改善に関する請願(荒井優君紹介)(第一六四六号)

 同(金子恵美君紹介)(第一六四七号)

 高齢者の命・健康・人権を脅かす七十五歳以上医療費窓口負担二割の中止に関する請願(宮本徹君紹介)(第一六四八号)

 最低賃金全国一律制度への法改正を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第一六四九号)

 パーキンソン病治療研究支援及び医療制度等の改善に関する請願(阿部知子君紹介)(第一六五〇号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第一六五一号)

 高過ぎる国民健康保険料の引下げへ抜本的改善を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第一六五二号)

 全ての障害者・患者に対する医療保障制度の拡充に関する請願(宮本徹君紹介)(第一六九一号)

 障害者の社会参加を保障するヘルパー制度の実現に関する請願(宮本徹君紹介)(第一六九二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件

 ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する件

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

新谷委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、去る五月二十一日から二十二日の二日間、医療、介護、福祉等の実情調査、令和六年能登半島地震による被害・復旧状況等調査のため、石川県に委員派遣を行いましたので、派遣委員を代表いたしまして、私から調査の概要について御報告申し上げます。

 派遣委員は、自由民主党・無所属の会の大岡敏孝君、大串正樹君、橋本岳君、三谷英弘君、立憲民主党・無所属の井坂信彦君、中島克仁君、日本維新の会・教育無償化を実現する会の足立康史君、公明党の吉田久美子君、日本共産党の宮本徹君、有志の会の福島伸享君、そして私、新谷正義の十一名であります。

 報告に先立ちまして、改めて、今般の地震によりお亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に衷心よりお見舞いを申し上げます。また、被災者に対する支援や復旧復興等に従事されている関係各位の御尽力に対し、心から敬意と謝意を表させていただきます。

 それでは、調査の概要を御報告申し上げます。

 まず、輪島市にある地域生活支援ウミュードゥソラにおいて、福祉避難所となっている障害者グループホームを視察した後、同施設を運営する社会福祉法人弘和会の畝理事長より、弘和会における福祉避難所開設の経緯、福祉仮設住宅建設の必要性、DWAT、DCATの重要性等について説明を聴取するとともに、被災による職員の退職を始めとする施設の運営状況、施設の被災状況等について質疑応答を行いました。

 次に、市立輪島病院において、河崎事務部長より、震災直後の病院の状況、職員の大量離職、震災による市内の介護施設不在等をカバーするための介護医療院の開所など市内唯一の総合病院としての取組等について説明を聴取いたしました。

 次に、珠洲市立宝立小中学校に設けられている一次避難所において、金田珠洲市副市長より、珠洲市の被害状況等について説明を聴取いたしました。その後、避難所を視察するとともに、多田避難所代表及び金田副市長より避難所の現状等について説明を聴取し、感染症対策、プライバシー保護の問題などの避難所での生活環境等について質疑応答を行いました。

 次に、同校のグラウンドに設けられている仮設住宅を視察した後、集会所で被災者見守り、相談支援の実演を拝見するとともに、三上珠洲市健康増進センター所長及び酒井福井大学名誉教授より、被災者見守り、相談支援体制の概要及びその重要性について説明を聴取いたしました。その後、仮設住宅における健康状態への影響、仮設住宅の建設状況等について質疑応答を行いました。

 次に、珠洲市にある特別養護老人ホーム第三長寿園において、施設周囲の被害状況を視察した後、中村施設長より、震災直後の施設の被害状況、その後の復旧状況等について説明を聴取するとともに、職員の離職状況、施設の運営状況等について質疑応答を行いました。その後、入居者生活スペースの視察を行いました。

 次に、いしかわ総合スポーツセンターに設けられている一・五次避難所において、吉岡石川県健康福祉部長寿社会課担当課長より、避難所の概要について説明を聴取いたしました。その後、自立生活が可能な要配慮者等が居住するメインアリーナ、介助や見守りが必要な高齢者が居住するサブアリーナを視察するとともに、避難所からの退所支援を担っている医療ソーシャルネットワーク協会に対し、避難所が抱える課題等について質疑応答を行いました。

 最後に、石川県庁において、西垣石川県副知事及び柚森健康福祉部長より、被災地の医療機関、社会福祉施設の状況等について説明を聴取いたしました。その後、支援者の住まい確保、奥能登地域の公立病院の在り方、今後同様の震災が起きた際に生かすべき教訓等について、質疑応答を行いました。

 以上が調査の概要であります。

 今回の調査では、高齢化が進んでいる中で、医療施設、介護施設及び福祉施設においても甚大な被害を受け、施設の復旧や人手の確保など現場で直面している課題、障害者や高齢者といった配慮が必要な方が災害時に取り残されることなく、安心して避難生活を送ることができるようにするための支援の在り方、被災した方々の生命と健康を守り、支援を継続していくためのきめ細かな対応、避難所の環境整備、新たな住居の確保が困難な方のための支援の重要性等について認識を深めました。

 お会いした現地の方々の思いをしっかりと受け止め、国政に取り組む決意を新たにした次第であります。

 最後になりましたが、今回の調査に御協力をいただきました皆様に心から御礼を申し上げ、派遣の報告とさせていただきます。

    ―――――――――――――

新谷委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官江浪武志君、大臣官房審議官上村昇君、大臣官房審議官瀧澤謙君、経済社会総合研究所総括政策研究官松多秀一君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、デジタル庁審議官阿部知明君、総務省情報流通行政局郵政行政部長玉田康人君、外務省大臣官房参事官林誠君、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官森光敬子君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官三田一博君、大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官内山博之君、医政局長浅沼一成君、健康・生活衛生局長大坪寛子君、健康・生活衛生局感染症対策部長佐々木昌弘君、医薬局長城克文君、労働基準局長鈴木英二郎君、職業安定局長山田雅彦君、雇用環境・均等局長堀井奈津子君、社会・援護局長朝川知昭君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、老健局長間隆一郎君、保険局長伊原和人君、年金局長橋本泰宏君、政策統括官鹿沼均君、政策統括官森川善樹君、経済産業省大臣官房総括審議官南亮君、国土交通省大臣官房審議官住友一仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

新谷委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上田英俊君。

上田委員 おはようございます。自由民主党の上田英俊でございます。よろしくお願いいたします。

 厚生労働委員会での質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 今年二月、予算委員会分科会にて賃金と年金をテーマに質問いたしました。私にとりまして、若干、消化不良という思いをしておりますので、引き続き、武見厚生労働大臣を始め、政府委員に賃金、雇用、年金等について質問をいたします。

 まず、今回の質問の大前提となる賃金について質問いたします。

 二月末の答弁では、名目賃金は二十四か月連続プラスである一方、実質賃金は二十一か月連続マイナスであるという答弁がありましたが、その後、今日に至るまで名目賃金、実質賃金はどのように推移しているのか、また、上昇し続けているであろう物価と賃金の関係をどのように捉えているのか、まず確認をいたします。

森川政府参考人 お答えいたします。

 毎月勤労統計調査によりますと、名目賃金は令和四年一月から令和六年三月まで二十七か月連続のプラスとなっている一方、実質賃金は令和四年四月から令和六年三月まで二十四か月連続のマイナスとなっております。

 人手不足などを背景に、幾つかの産業で名目賃金の伸びが消費者物価上昇率を上回っているものの、全体としては名目賃金の伸びを消費者物価の伸びが上回る状況が続いているため、実質賃金がマイナスとなってございます。

上田委員 さて、六月に入りますと、地方議会の定例会が始まります。本会議等において、質問者であるとか答弁者の発言に、人口減少、少子高齢化という枕言葉がよく置かれますが、人口減少、少子高齢化は国内の労働力人口においてどのような意味を持つのか、今後、日本人の労働力人口はどのように推移するのか、そして労働力不足はどのように推移するのか、結果として社会にどのような影響を与えるのか、確認をいたします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 国立社会保障・人口問題研究所による日本の将来推計人口、令和五年の推計でございますが、によれば、日本の人口は、二〇二〇年の約一億二千三百万人が二〇四〇年には約一億七百万人となる見通しであります。

 当該推計等を基に独立行政法人労働政策研究・研修機構が本年三月に公表した二〇二三年度労働力需給の推計速報版によれば、成長が実現し、労働参加が進展した場合の日本人の労働力人口は、二〇二〇年の約六千七百万人が二〇四〇年には約六千三百万人となる見通しであります。

 経済成長を実現し、必要な社会経済活動を維持するためには、労働力の確保を行い、人手不足に対して適切に対応することが重要と考えております。

 このため、働き方改革等により、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働くことができる環境の整備を行うことで、女性、高齢者、外国人材など様々な人材の活躍を促進してまいりたいと思います。

上田委員 今ほど、六千七百万人から六千三百万人という具体的な数字が出てまいりました。一人一人の働き方が問われ、働く人々の環境をどのように整備していくかということが問われているんだろうというふうに思います。そして、その結果として、日本という国の形が決まってくるんだろうというふうに考えます。

 さて、岸田総理の肝煎りで昨年十月よりスタートしたいわゆる年収の壁・支援強化パッケージの申請状況はどうか、また、その数字をどのように評価しているのか、お伺いいたしたいと思います。

堀井政府参考人 お答えをいたします。

 年収の壁・支援強化パッケージの対応策の一つでございますキャリアアップ助成金につきましては、本年三月末時点で、事業主からの計画届の受理件数は七千六百六十九件、そして、その対象となる取組予定労働者数は令和五年度から令和七年度の合計で二十一万二千三百五十二人となっております。

 昨年十月二十日の制度創設から現時点までで二十一万人を超える労働者が活用予定ということは、このパッケージにつきまして活用は着実に進んでいると考えております。

 引き続き、多くの事業主の方々に、パッケージを活用できるよう、様々な機会を捉えて周知に努めてまいりたいと存じます。

上田委員 年収の壁・支援強化パッケージの申請件数の具体的な数字が出てまいりました。

 ここから大臣に具体的に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 いわゆる百六万の壁、百三十万の壁への対応を盛り込んだ年収の壁・支援強化パッケージについて、私は、当面の間というふうに言われておりますけれども、大変分かりにくい制度で、話をより複雑にしているのではなかろうかというふうに思います。今ほど局長から具体的な数字がありましたけれども、その数字が多いか少ないかは論評を避けたいと思いますけれども、年収の壁・支援強化パッケージは非常に分かりにくい。

 今までは、この制度というものは、百六万の壁、百三十万の壁というのは、労働者と税、保険料という登場人物であったものが、今回のこの支援パッケージというものを導入することによって事業主という登場人物が出てくる。財源は雇用保険特別会計から出ているわけでありますから、雇用保険特別会計という新たな登場人物も出てくる。登場人物が多くなることによって、結果として、より分かりにくく、大変複雑になっているんだろうというふうに思います。

 誤解を恐れずに言いますと、社会保険が適用されるということは非常に結構なことだというふうに思います。健康保険の被保険者になることで、出産手当金等が支給される。厚生年金保険の被保険者になることで、将来の老齢年金が、基礎年金だけではなくて老齢厚生年金の二階建てになる。非常にいい話だと思います。

 しかし、最初の質問で数字が出てきたように、実質賃金はマイナスが二十四か月続いている。未来の安心ということは大変大切な課題でありますけれども、その一方で、今日的な課題である、電気代が高いよね、ガソリン代も高いよね、食費も上がっているよねという問題がより切実だというふうに私は考えます。

 私は、シンプルに分かりやすく、百六万、百三十万といった壁を、まさしく当面の間、今の生活を守るための緊急避難として、期間を限定してまでも上限を上げることこそ、私は政治の判断として有効な措置と考えます。

 分科会の答弁では、今回の年収の壁・支援強化パッケージの議論の中において、一部に壁を引き上げるという議論があったという答弁をいただいておりますが、壁を引き上げることで、壁を意識した就業調整、また、最低賃金等が上がっておりますので労働時間が結果として少なくなる、そして、その結果、より労働力不足に拍車をかけている。壁の引上げが人手不足の解消に役立つというふうに思います。そして、手取り賃金が増える、物価上昇に対する即効性のある非常に分かりやすい、シンプルな対策であるというふうに考えますが、武見厚生労働大臣の所見を伺います。

武見国務大臣 既に、現状の年収の壁・支援強化パッケージで、二十一万二千三百五十二名の方が御利用いただいております。厚生労働省としては、短時間労働者について、年金等の保障を厚くする観点でこうした被用者保険の適用拡大に取り組むことが重要だということで、これまでも順次、適用の拡大を進めてきたところであります。

 御指摘の年収の壁の基準の引上げというのは、労働者の所得などの状況によっては、被用者保険に加入できなくなる者が増えるということが想定されることから、私どもは慎重な検討が必要であると考えております。

 一方で、年収の壁を意識せずに働くことができる環境づくりを後押しする観点から、今般の若い世代の所得の向上だとか人手不足の解消という両者の観点から、当面の対応策として年収の壁・支援強化パッケージを取りまとめたところでございます。

 事業主を通じて周知徹底してこれを普及させて、それによって、より積極的に継続して働いていただける方々、特に希望される方々は事業主の理解を得てこうした年収の壁を越えていかれるということを私どもは支援しようとして、既に二十一万二千三百五十二人の方々が参加してくださっているということは、かなりの手応えを感じております。

 まずは、このパッケージを着実に実行した上で被用者保険の適用拡大などの制度の見直しに取り組むこととしておりまして、次期年金制度改正に向けて議論を開始しております。したがって、今年の年末頃にこの議論を取りまとめることができるように、社会保障審議会年金部会等において、ここで丁寧に議論をしていきたい、こう考えております。

上田委員 大臣、ありがとうございました。

 しかしながら、今の答弁では相変わらず消化不良のままで退出せざるを得ないというふうになりますので、繰り返しになりますけれども、もう一度、視点を少し変えて質問したいと思います。

 今ほど言われたように、社会保険の適用対象者の拡大ということは、私は大変結構なことだというふうに思います。健康保険、厚生年金保険の被保険者となることでメリットも発生いたします。しかしながら、被保険者の年代、世代によって、受けるメリット、デメリットといったものも異なってくるというふうに思います。

 具体的に言いますと、例えば、二十代で被保険者となる、まあ、百六万という所得のまま老齢年金の受給世代まで働き続けるということは考えにくいことでありますが、二十代で被保険者となることで、老齢基礎年金、老齢厚生年金に加入する期間が数十年になる、大変長い期間になる。結果として、年金の二階建ての老齢厚生年金の額が増加し続ける、手厚く増加し続けるということだろうというふうに思います。

 一方で、仮に、パート、短時間労働者である五十代、六十代という年齢の方にとって、被保険者となる期間が限定されるという形に当然なってきます。確かに、被保険者となることで二階建ての部分は増える、大変結構なことだというふうに思います。しかしながら、今の社会経済情勢、実質賃金が二十四か月減少し続けている、物価が上昇し続けているという現状を考えた場合に、上昇し続ける物価に対して実質賃金がマイナスであり続ける中、目の前の可処分所得の上昇、使える金額が増えることがより重要と考える中高年の世代もたくさんいるというふうに思います。

 私も、政治に携わって三十年ぐらいになりますけれども、改めて、政治の判断というのは難しいものだなというふうに思っています。政治は、正しいことと間違ったことに対して判断する、軍配を上げるということはむしろ少なくて、政治の判断というのは、こちらは正しい、こちらも正しい、その中でどちらかを選ばなければならない。こちらが正しい、こちらも間違っていないよねという中で、一方に軍配を上げなければならないという大変難しい仕事が政治だというふうに思います。私は、年収の壁・支援強化パッケージと年収の壁の引上げといったものがそれに当たると思います。

 行政官ではなく、まさしく政治家としての決断が求められる課題であり、壁の引上げが有効な経済対策、労働力不足対策になり得ると考えますが、くどいようですが、改めて大臣の所見を伺いたいと思います。

武見国務大臣 まさに今の時代の大きな過渡期の中で、私としては、被用者保険の適用拡大といった制度の見直しに取り組むというのが政治課題としてかなり大きな課題だというまず基本的な認識がございます。そして、今年の年末までにその議論を取りまとめるという重要な時期にございます。

 それであるがゆえに、もう既に実際に始まったこの支援パッケージというものを、とにかく担当の者たちに着実に周知徹底せしめ、そして事業主にも協力を求め、それによって確実にこれを実行していくということが今の私の果たす最も重要な役割だろう、こう考えているところでございます。

上田委員 私は、いつも、かねがね、自分の考えていることは正しいのかどうかということを、自分に対して疑念を持っておりまして、この年収の壁の引上げについて自分の意見が正しいのかということをいろいろな方に聞いてまいりました。税理士さんにも聞きました。パート、短時間労働者を多く雇っておられる事業主さんにも聞きました。あなたの言うとおりだと言われる方ばかりでした。まあ、国会議員だから、違っていますよとなかなか言いづらいのかもしれないけれども、そうした意見が多かったということも頭に入れておいていただければというふうに思います。

 さて、在職老齢年金という制度があります。厚生労働省のホームページによると、厚生年金の適用事業所で就労し、一定以上の賃金を得ている六十歳以上の厚生年金受給者を対象に、原則として被保険者としての保険料負担を求める、そして年金支給を停止する仕組みというふうに書かれています。労働力不足の人生百年時代において、いわゆるエージレス社会において、在職老齢年金制度という形態もこれから問われていくんだろうというふうに考えます。

 そこで、まず確認させていただきたいわけでありますけれども、この制度、在職老齢年金制度が設定された目的と、今日、年金が支給停止となっている方がどれくらいおられるのか、また、その数字をどのように分析し、今後、労働力不足等の検証に生かしていくのか、厚生労働大臣に伺います。

武見国務大臣 在職老齢年金制度については、現役世代の負担が重くなる中で、所得のある方々は年金制度を支える側に回ってもらうという考え方から導入された仕組みであります。

 この仕組みによる支給停止対象となっているのは、二〇二一年度末時点で約四十九万人、それによって支給停止された国庫の金額というのは、約四千五百億円であります。

 在職老齢年金制度については、審議会などにおいてこれまで議論が行われてきた中で、まさに、高齢者の就労を促す観点から制度を見直す必要があるという御意見も確かにございました。一方で、単純な見直しでは、将来世代の給付水準を低下させて、高所得の高齢者優遇になるのではないかなどとの指摘もございました。制度の見直しには、やはり、そうした全く違うサイドからの御議論というものにもきちんと耳を傾けて、それらを慎重に拝聴しながら調整していかなければならないというふうに私は考えます。

 次期年金制度改革に向けては、在職老齢年金制度の在り方についても、社会保障審議会年金部会において議論をしていただいているところでございますので、引き続き、年末に向けて、丁寧に議論をして、取りまとめていきたいと思います。

上田委員 ありがとうございます。

 人生百年時代になってきた。健康寿命もどんどん延びてきた。働きたい、なるべく長い間働きたいと思っている方については、やはり、在職老齢年金制度というのは、ある意味でいうと、一つの壁になっているのかもしれない。ただし、様々な角度から検証して、制度を変えるかもしれないという議論が大切だというふうに思っておりますので、検証としてしっかりしていただければというふうに思います。

 さて、先日、高校の同級生から電話がありました。

 今年は、昭和三十九年に、池田勇人内閣のときの東京オリンピックの、生まれた年度の学年が六十歳、還暦を迎える年になります。東京オリンピックは三十九年だったんですけれども、私は昭和四十年一月ですので、ちょうど還暦の年度になります。

 電話の内容は、老齢基礎年金、老齢厚生年金の繰上げ受給について質問をされました。私は、繰上げ受給、繰下げ受給の減額と増額、そして、今後、六十歳だけれども、どういった働き方をしていくのかということが一つのポイントだよという私見を述べておきました。

 老齢年金の繰上げ受給者、六十歳の時点で受給をする者、また繰下げ受給者の実数について確認をいたします。そして、この数字をどう認識しているのか、お伺いいたします。

橋本政府参考人 御指摘いただきました年金の繰上げ制度と繰下げ制度、こちらについては、年金受給のタイミングを御自身の就労状況やライフプランに合わせた形でお選びいただくというものでございます。

 この利用状況につきましては、それぞれの利用率を把握するのに適した、二〇二二年度末時点で七十歳の老齢基礎年金受給権者について申し上げますと、繰上げを選択された方が八・三%、繰下げを選択された方が二・八%ということになってございます。

 高齢者就業が進展する中で、繰上げ制度の活用は減る傾向にあり、また繰下げ制度の活用は増える傾向にございますし、また今後もその傾向が続く可能性はあるというふうに思いますけれども、いずれにせよ、個々人が御自身の状況に合った受給の形を選択いただくということが何よりも重要であるというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございました。

 終わります。

新谷委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、骨太に向けた少しちょっと大きな議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 お配りさせていただいた資料一を見ていただきますと、これは、昨年、我々公明党から総理に対しての緊急提言ということで申入れをさせていただきました。そのポイントは、下に線を引っ張っているところ、下から二段落目のところにございますが、物価、賃金上昇分については歳出の目安とは異なる取扱いとするべきだという点でございます。

 これは、歳出の目安というのは、委員の皆さんはよく御案内だと思いますが、社会保障予算というのは自然に伸びていく、自然に伸びていく部分を毎年毎年、予算折衝で高齢化の伸びに抑えるといってたたいていく、たたいたその範囲内で社会保障はやってくれという話になっています。

 そうすると、当然、何かをやろうとすれば、何かを削るということになる。今回の報酬改定を見ておりましても、例えば、施設系の介護に一定の報酬評価をしようと思えば、例えば訪問介護のところが少し削られるでありますとか、こういう切った張ったをやらざるを得ない状況になっておりますので、この提言で申し上げたいのは、賃金と物価については社会保障の目安のこの議論の中で異なる扱いをすべきだという点であります。

 今年は、骨太、三年に一度の、まさしく今申し上げた目安を改定する年に当たっておりますので、診療報酬、介護報酬の議論は今年四月から始まっておりますけれども、六月、四月から始まっていますが、この目安は三年間縛られますので、その議論をやらせていただきたい。今日は財務副大臣にも来ていただいておりますので、よろしくお願いします。

 まず、GDPと医療費、社会保障給付の比較です。

 財務省の資料は、資料二です。これは、特に右の部分を見ていただくと、これだけ医療費が伸びています、GDPは横ばいです、だから抑えないと大変なことになりますよというのが、この右の資料です。

 下が内閣府の資料、資料三です。これを見ていただくと、基本的に、ここで言っているのは、社会保障給付費というのは対GDP比で安定的に推移していますという結論なんです。もちろん、最後の、コロナのときの時期にピークがぱっと立っていますけれども、ここはちょっと、すぐ収まっていますので、ここはまた違う。

 つまり、申し上げたいのは、財務省が資料二で言っていることと、内閣府が言っている資料三というのは全然違う絵姿を示しているということにあります。

 もちろん、上は医療費なので、社会保障の中で、年金は今、マクロ経済スライドで、完全にGDP、経済成長と一致するということになっています。あとは介護と医療なんですが、給付の大宗は今、医療給付ですので、医療と介護も大体同じ動きをしていますので、上は医療だけなんですが、社会保障全体と実は同じだというふうに思っております。

 こういう差が起こるのは、例えば、財務省の資料二は、ある時点を基点にして、そこを一〇〇にして比較をする。そうすると、恣意的な操作もできるわけです。つまり、どこを基点に持ってくるか。一方が一番高いところで、一方が一番低い、差が一番あるところを取れば、どんどん差が開くように見せられるわけですね。そういう意味で、私は、資料三の、単年度ごとに数字を出す方が、こっちの方が客観的だというふうに思っています。

 ここまでは、少しちょっと長いトレンドの話をさせていただきましたが、ここから、ちょっと質疑に行きたいと思います。

 直近の話ではどうなっているかということなんですが、まず、内閣府に伺いたいと思いますが、令和に入ってからこれまでの間で、名目GDPの成長率は年平均幾らでしょうか。

松多政府参考人 お答え申し上げます。

 令和元年度から令和五年度までの五年度において、名目GDPの対前年度比伸び率を平均しますと、プラス一・四%でございます。

伊佐委員 次に、厚労省に伺いますが、同じように、令和元年から、医療費はまだ令和五年分は出ていないと思いますので、その前まで、前年までで結構ですので、コロナの特例というのを除いた数字で、医療費は毎年平均どれぐらい伸びていますでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 令和四年度の概算医療費は、新型コロナの診療報酬上の特例の影響を除きますと四十五・一兆円でございまして、これは、令和元年度の医療費、四十三・六兆円と比較しますと、三・五%の伸び。一年当たりにすれば、平均一・二%の伸びとなってございます。

伊佐委員 ということで、GDPは、令和に入ってから毎年平均で一・四%伸びています。片や、医療費は一・二%伸びています。つまり、この五年間を見てみても、GDPの伸びよりも医療費給付の伸びの方が抑えられているわけですよ。だから、財務省が示すような資料二という絵姿だと、GDPを超えて大分医療費が伸びてきていると思うんですが、実はそうじゃないということです。まあ、これは、もちろん、財務省がいろいろな汗をかいて、努力があって抑えられているんだというふうに思いますが。

 じゃ、ちょっと財務省に伺いたいと思います、副大臣。社会保障給付費というのは、せめて、少なくとも経済の成長ぐらいは、同程度ぐらいは伸びを許容すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

矢倉副大臣 ありがとうございます。

 今、委員提示の資料二、三も見させていただきながら、内閣府との違いという話もありましたが、社会保障の伸び、GDPと同程度という、これを固定化するようなお話だと思いますが、今の資料二も見ていただくとおり、例えば御指摘の社会保障給付費の伸びを経済成長率と同程度まで認めるという点については、まさに、こちら、左側の方の資料にありますとおり、経済成長率というのは、景気の動向に応じて周期的に変動する、凸凹はある一方、やはり医療費というのは経済状況にかかわらず安定的に増加をしていく傾向にあるのは、右側の方にも描いてあるとおり、傾向としては見られると思います。

 あと、仮に給付費を経済成長率と同程度とする場合には、委員も先ほどおっしゃっていた、年金などは、制度的に担保されているわけです、保険料というのを一定程度以上は上げないという前提の下で給付をしている、こういう制度の担保があるわけでありますが、こういうことに留意が必要であると考えております。

 なお、先月、建議を取りまとめた財政審においては、医療、介護の保険料率について上限を定め、上限を超過する際に給付を自動調整するなどマクロの管理手法を検討すべきとの意見がございました。

 いずれにしても、医療、介護の給付の伸びが雇用者報酬の伸びを上回っているために保険料率が上昇している、これはこども未来戦略でも前提とされている事実でありますが、そういう状況であるので、政府としては、全世代型社会保障の改革工程に沿った取組を進めて、社会保障制度の持続可能性、これを高めていく必要があるものと考えております。

伊佐委員 矢倉副大臣は、日頃私はどちらかといったら積極財政の意見じゃないかというふうに思っていたんですが、ちょっと今私、納得できないところが幾つもあります。

 例えば、もちろんGDPは凸凹します。それに合わせて医療給付を安定させなきゃいけないというのはそのとおりで、別に、私が申し上げているのはトレンドなんです。今までのこの五年間のトレンドを見ても、長期のトレンドを見ても、GDPと対医療費というのは安定してきているし、むしろ直近は、GDPよりも医療費の方が抑えられていますよね。ここは認めるべきだというふうに思うんです。だから、せめてGDPぐらいは上げるべきだ。場内からは、それでも足らないという声もあるぐらいなので、せめてまずそこは認めますよねということは言いたかったし、おっしゃったのは、年金は既にマクロ経済スライドでリンクしているので、そこは問題じゃないんですよ。問題は、医療費を、また介護も含めてですが、どこまで許容できるかという大きな議論をさせていただきたい。

 さっき子供支援金の話をしましたので、ちょっとそこも私、異論があるので申し上げたいと思いますが、確かに今までの政府の考え方というのは、保険給付費が伸びる、保険料が増える、これは国民の負担増だというのが今までの考え方だったんです。ところが、子供、子育て支援の議論を機会にこれは変わりました。方向転換したんです。どう変わったかというと、子供、子育てについては、負担増じゃなくて負担率の増なんだ、率を見てくれというのがあのときの議論だったと思います。

 資料四を見ていただくと、これがそのときの資料なんですが、真ん中あたりの、分数が書いてあります。この分数を見ていただきたいというふうに思いますが、つまり、分子の社会保険負担が増える、支援金で例えば一人四百五十円とか増える、でも分母の雇用者報酬が増えるから負担率は変わりませんよね、保険料率は変わりませんよね、だからよしとしてください、こういう議論だったわけですよね、今回。だから、率で見ているわけですよ。

 そうすると、医療給付だって、経済全体の伸びの範囲で伸びてしかるべきじゃないかという議論を今させていただいています。

 ちょっと申し上げますが、じゃ、内閣府と厚労省にそれぞれ伺います。

 この分母と分子の関係なんですけれども、分母にある雇用者報酬、こことGDPの関係、割合、どうなっているかということ。あと、分子の社会保険負担は、医療給付の関係、割合、どうなっているか。それぞれ私は安定していると思っているんですけれども、いかがでしょうか。

松多政府参考人 GDPについて申し上げます。

 最近、十から二十年程度で見ますと、名目GDPに占める雇用者報酬の割合はおおむね五〇%前後で推移しております。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 国民医療費につきまして、保険料、公費、自己負担の財源別に見ますと、保険料の割合は、近年、十年から二十年で見ますと、五〇%前後でおおむね安定して推移していると考えております。

伊佐委員 つまり、この式、財務省は、政府は、保険負担率を上げないようにするのが大事なんです、社会保険料率を上げないようにするのが大事なんですということを言うがために、雇用者報酬と社会保険負担の分数の式を持ってきています。

 これは、今の答弁にもあるように、分母の雇用者報酬というのは、名目GDPの常に五〇%前後なんです。安定している。だから、ほぼ名目GDPの動きと同じ。分子の社会保険負担も、医療給付の、給付の五〇%で推移しています。給付のうちの五〇%は保険で賄っている。安定しているんですよ。

 つまり、言いたいことは、政府が説明してきた国民の負担率を上げない、社会保険の料率を上げないということは、裏を返せば、GDPと医療給付の割合が一定であれば保険料率は増えませんと言っていることなんです。だから、私、せめてGDPの伸びぐらいはちゃんと社会保障給付を伸ばしてしかるべきじゃないかと。

 財務副大臣、ここまで聞いてどう思われます。

矢倉副大臣 社会保障全体、将来不安に対する安心確保という点では、しっかり確保していくということは非常に重要であると思います。その一方で、やはり、全体の負担と給付の一体的な観点というものも政治家としてはまた考えていかなければいけないというのも、私の個人的な意見も含めて、改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、要は、かちっとルールというのがあって、そこに必ずやらなきゃいけないという形で全て決めてしまうのがどうなのか、柔軟に対応しなきゃいけないところもひょっとしたらあるのかもしれない。

 今の一定の部分の仮定でいろいろと御指摘されているところもあるかと思いますが、例えば、厚労省が名目GDPに対する雇用者報酬割合、これは一定である、また、内閣府が国民医療費に対する保険料支出の割合、これは一定である、こういう前提の下で、今、計算上、国民医療費に対してのGDPの負担が一定であれば平均的な保険料は上がらないという前提での御議論だったというふうに今理解もさせていただいたんですけれども。

 今、例えば、高齢化がやはり進んでいるので、そうするとどうしても患者負担が低い高齢者の方がこれから増えていかれる、また、高額療養費制度、高額な医療がやはり出てくる、こういうことを考えて、現行制度を前提にすると、名目GDPに対する雇用者報酬というものが一定かどうかというところも、やはりいろいろ議論としてはあり得る。

 これは、トレンドとして、傾向としてそうなるから、そこをうまく柔軟に対応しなきゃいけないという余地はやはり出てくると思うんですよね。一定であればという議論はあると思うんですけれども、この一定が将来的にどう影響するかということも、その時々で考えた上で、柔軟に考えなきゃいけない余地はどうしても、これは、ルールとして、必ず結論が駄目だということではなくて、求めるべきところ、目指すところはそういうところとして、社会保障としてもしっかり安全なものはつくらなきゃいけないとは思うんですが、かちっとそう決めてしまうと、柔軟な対応というのができなくなるというところはやはり問題かと思います。

 あと、国民医療費に対するGDPが一定であればというところも、まあ、先ほどの内閣府のだと、コロナの特例とかも抜いた上での議論で一・二という話だったと思うんですが、そこもどういうふうに対応していくのか、これは、最終的には保険料に対しての負担というところも影響する話なので。

 済みません、長くなってしまって。そういう上で、全体としては委員の思いはすごく分かるところでありますが、その上で、歳出改革と賃上げにより保険料率の上昇を最大限抑制して、全世代型社会保障の改革工程に沿った取組を進めていくことも必要であるというふうに理解もさせていただいております。

伊佐委員 副大臣、非常に苦しい答弁だったなというふうに思っております。

 持続可能性が大事だとか、誰も反対しないし、そのとおりです。私が申し上げているのは、かちっとしている話というよりも、大きなトレンドとして、やはりGDPの成長率ぐらいは許容すべきですよねというのを今ずっと申し上げているわけで、何も、かちっとした制度をこうすべきだという話じゃなくて、その考え方に同意できますかというところだけを今、今日問うているつもりなんですが、多分、これ以上はなかなか難しいと思いますので、ちょっと、厚労大臣にも、武見大臣にも伺いたいと思いますが。

 財務省と議論すると大体言われるのは、経営実態調査を見てやっているんですよ、経営でもうけているところを更にもうけさせることというのはできませんと。ここも本当は議論があると思うんです。もちろん、もうかった分は、公費なので、社会保険料負担、ちゃんと返すべきじゃないかというような議論もあれば、ある意味、効率化を高めて頑張っているところを応援することが日本の医療、介護の競争力を高めるということにもなるかもしれませんので。これはおいておいて、とにかく、この経営実態調査というものが本当に経営状況を反映しているのかどうか、ここはもう一回議論しなきゃいけないんじゃないかというふうに思っています。

 今回、訪問介護が、実調で相当高く利益率が出ておりました。これは、私、現場を回っていても、うちはもうかっています、まあ隠しているのかもしれませんよ、ただ、ほとんどのところはやはり厳しくて、集合型じゃない、本当に一生懸命地域を回っていらっしゃるようなところというのは本当に厳しいと思います。

 何か、話していると、会計上の問題もあるんじゃないかという意見もありました。つまり、幾つか事業を持っていらっしゃるところは、例えば施設系も持っている、訪問系も持っている、そうすると、年度の最初に事務費を按分するんです、光熱水道費とか。元々、予算を立てる。年度締めで、最後、どれぐらい使ったかを見るんですけれども、施設系は、当然、電気もガスも水道もいっぱい使います。訪問系は、予算は按分されて、面積按分されても、ほとんど使っていない、残るんですよ。これが実は利益としてカウントされているんじゃないですかねとか、こういうような話もありました。まあいろいろなことがあるかもしれませんが。

 そういう意味で、実調、経営実態調査は、今のままじゃ、本当に実態を把握しているかどうかというのは、私はちょっといろいろ課題があるんじゃないかと思いますので、大臣、ちょっとこの点も含めて、今までの議論を総括して、御意見をいただければというふうに思います。

武見国務大臣 御指摘の報酬改定と経営実態調査についてでありますけれども、エビデンスに基づく診療報酬改定それから介護報酬改定を実施するためには、やはり医療機関や介護事業所などの経営状況をまずは正確に把握することが重要であります。

 このため、今般の令和六年度の報酬改定を踏まえた影響を検証するとともに、次期報酬改定に向けた経営の実態調査に当たりましては、診療報酬については、医療経済実態調査を適切に実施しつつ、併せて、医療法に基づく医療法人の経営情報のデータベース、それから事業報告書などを補完的に参照するということもやっております。また、介護報酬については、介護事業経営実態調査を適切に実施しつつ、経営情報の見える化の取組を併せて進めていく、こうした対応を的確に実施してまいりたいというふうに思います。

 その上で、実際に施設サービスと一体的に会計を行っている訪問介護などの居宅サービスなどに関連してのことでありますけれども、調査対象サービス以外のサービスを含めて一体的に会計を行っている場合は、各サービスの人件費率、それから延べ利用者数比率、それから建設延べ床面積比率などを用いまして、調査対象サービス分の費用を区分、按分する処理を行う仕組みを取っております。

 経営状況について、こうした形で適切に把握するよう、現在のところ努めているということを申し上げておきたいと思います。

伊佐委員 ここは、いろいろなやり方、今大臣の方からも御説明いただきましたけれども、少しちょっと、秋の状況、恐らくこのまま、今回の診療報酬、介護報酬の結果、現場がどうなるかというのが大分数字がまた出てくる、調査もされるというふうに思いますので、これを見て是非また検討いただければというふうに思っております。

 もう時間になりますので終わりますが、今回の診療報酬はプラス〇・八八、介護報酬がプラス一・五九、内閣府の本年度の経済見通しは、GDPはプラス三・〇です、CPIもプラス二・五という中で、本当に経済に見合った社会保障になっているかどうかという点については、引き続きしっかり議論していきたい。この骨太で、また何度も申し上げますが、賃金と物価動向は、しっかりとここは異なる取扱いとすべきだと改めて申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日、本委員会で後ほど委員長から御提案になります、いわゆるハンセン病の元患者家族に対する補償金支給の期限延長の法案に関係してお尋ねをいたします。

 そもそも、ハンセン病元患者家族に対する補償金支給は、令和元年、二〇一九年十一月、議員立法で成立をしております。先立って、御家族による国賠訴訟がございまして、六月に、政府がこれを控訴せずということを決められましたことを受けて、議員立法で、御家族への長年の御苦労、差別、偏見に対しての国としての慰謝の気持ちなどを込めて、この補償金、賠償金が定められました。

 当時、患者御家族と類する、そこに累計される方がどれくらいおいでだろうということで、政府も累計をされて、約二万四千人余り、このうち、子供さん並びに配偶者などで一万八千から九千、そして御兄弟で六千弱ということで、少しずれがありますが、計二万四千人くらいを給付の対象とみなし、四百億円の予算でスタートした事業でございます。

 今日、皆様のお手元に資料一枚目、つけさせていただきましたが、果たしてこの五年間でどのくらいの請求件数及び認定件数があっただろうかと申しますと、請求件数が八千四百三十八件、認定件数は八千百八十四件、当初の見込みの半数にも達しておらない。

 延長は当然と思いますが、こうしたことに関しまして、厚生労働省として、本来受ける権利をお持ちの方にどのようにこれを伝えていくか、お考えをお聞かせください。

浜地副大臣 お答えいたします。

 まず、阿部先生御指摘の、想定よりも認定件数が少ない理由について厚生労働省としては分析をしております。

 一つは、そもそもこの補償金の制度を知らない方がまだいらっしゃるということ、そして次に、元患者の御家族であることを周囲に知られてしまうことを望まない方がいらっしゃること、また、元患者自身が、自身がハンセン病の患者であったことを家族に伝えることができずに、御家族の方自身が対象であることを知らない場合があるというふうに考えております。

 そこで、厚生労働省としましては、着実に周知広報を実施していく必要があると思っております。そこで、現在は、地方自治体のまず広報紙、ここでしっかり周知をしていただこう、また、バス等の公共交通機関の広告にもこういった制度の広告をさせていただいております。さらに、令和五年四月二十七日及び令和六年三月の八日付の事務連絡におきまして、各自治体に対して、改めてこの制度の周知に対する依頼文書を発出したところでございます。

 引き続き、対象となります御家族の方々から補償金の請求をいただけるように、しっかりと関係者の皆様方のお話を伺いながら取り組んでまいりたい、そのように決意をしております。

阿部(知)委員 副大臣が御熱心に取り組んでおられることは私も存じておるんですけれども、既にこの法律ができて五年ですから、こういう制度ができたことを知らないことはあるかもしれませんが、そのほかの、例えば差別、偏見によって言い出すことができないというふうな状況は、そもそもこの法律ができたときから分かっていたことでありますし、熊本地裁判決においても、差別の度合いは別として、そうしたことがあるという認識があっての上での御家族への賠償なんだと思います。

 続いて、二ページ目を見ていただきますと、これは熊日新聞の記事でございますが、元々、厚生労働省が実施されたハンセン病問題に関する全国意識調査、実はこれは初めてなんですね。ハンセン病について国民がどう受け止めているかという全国意識調査は初めてなされたものでありますが、二〇〇一年のいわゆる国賠訴訟の、基になった違憲判決、隔離政策が違憲であるということを知らない方は七割、そして、例えばハンセン病に関する印象は、遺伝する病気と思ったり、ややそう思うという方で、申し訳ありませんが、これが七割、八割あるんですね。さらに、ハンセン病元家族、患者への態度といたしまして、手をつなぐなど身体に触れるのは抵抗感を感じる、とてもというのと、どちらとも言えないまでを合わせますと四割以上。ホテルなどで同じ浴場を利用することに抵抗を感じる方が二割、そして、どちらとも言えないが感じないとも言えないという方も合わせますと、これも四十数%。そして、ハンセン病元患者の家族と自分の家族が結婚するとなると抵抗を感じるというのが二割以上。

 これが現実であります。長年の隔離政策の結果が、いまだにこうした影を落としているわけであります。先ほど副大臣が御答弁の、自治体の広報を通じてより緻密にということは大事と思いますが、この差別の壁、排除の壁が取れない限り、例えば、そういう通知をいただいても、なかなか言い出しかねると思うんです。

 昨日、私は担当部署に聞きましたところ、自治体から送る通知、これまでもゼロではないけれども、今回本格的にやる、申し出る先は厚労省だと。私が思うに、差別、偏見が一番醸成されているのは、今や、地域、当たり前ですが、暮らしの場となっていると思うんですね、結婚問題も、手をつなげないという問題も。そうであれば、自治体の啓蒙活動ももっと必要ですし、無らい県運動、らいを地域からなくそうという運動を担ってきたのはまさに自治体でありますから、今後、先ほどの通知を自治体に出されたということですが、自治体自身も検証していただいて、どうやって差別を解消していくかということにも、副大臣、お取組を期待をいたします。

 その上で、武見大臣にお伺いいたしますが、大臣はこの調査結果をどのように御覧になるかということと、厚生労働省のリーダーとして根深い差別や排除の問題にどのように向き合っていかれるかについて御所見を伺います。

武見国務大臣 昨年の十二月に、ハンセン病の偏見、差別などに関する全国的な意識調査を実施しましたところ、現在もハンセン病元患者や家族に対する偏見や差別があると思うと回答した者は約四割などの結果が得られております。

 厚生労働省としては、平成十五年度から、ハンセン病に対する偏見、差別の解消に向けて啓発用のパンフレットを作成して、全国の中学生にもこれを配布をしております。また、ハンセン病に係る偏見差別の解消のための施策検討会における提言も踏まえて、令和五年十月から、厚生労働省、文部科学省、法務省と統一交渉団との間で協議を行っているところでございまして、文部科学省、法務省との連携を深めて、当事者の御意見を伺いながら、今後の施策の進め方について更に検討をしていきたいと考えております。

阿部(知)委員 今大臣に御答弁いただいたとおりなんですけれども、例えば、学校でそういうパンフを見て、それによって差別、偏見が少なくなるかというと、正直、かえって増えているようなことがあるのではないかというのが今回の意識調査の結果でも表れております。

 特に、法務省がやっておられる親と子に対してのハンセン病の普及啓発シンポジウム、その後の方がいわゆる結婚についてのためらいとかが増えているということで、私は、やはり啓蒙の仕方にもう一歩も二歩も工夫が必要なんだと思うんです。

 大臣も是非この意識調査の結果をお目通しをいただいて、私は、厚労省にリーダーシップを取ってもらわないと困るので、あえて指摘させていただきますが、大臣は、御家族の国賠訴訟の後の内閣総理大臣談話で、厚労省と文科省と法務省の三者協議会というものができたことを御存じでしょうか。そして、これが大変回数が少なくしかやられていないと思うんです。先ほど私が指摘した法務省のシンポジウムなどは、その後の方が問題が根深くなっているとするならば、やはりやり方とか工夫とかどうすればいいかが出てくると思うので、大臣には、三者協の存在を御存じであるか、これは内閣総理大臣談話ですから、きっちりとなされるべきと思いますが、いかがでしょう。

武見国務大臣 先ほども申し上げたとおり、令和五年の十月から、厚生労働省と文科省、法務省と統一交渉団との間の協議が始まりました。この協議の在り方というものについての御質問であったかと思います。

 私としては、やはりこの三省での連携をしっかりと深めて、御指摘の課題についても丁寧に整理をして、今後の対応策について、統一交渉団の方々とも話合いをしながら、その対応の仕方を進めていくことが必要、こういうふうに思います。

阿部(知)委員 今大臣も御指摘いただいたように、当事者性、当事者にもお入りいただいて、子供たちの差別、偏見の、再生産されないようなことを追求をしていただく大変重要な御答弁と思いますし、三者協は、正直申しますと、先ほどの総理大臣談話以降始まって、二〇一九年の談話でありますので、そこから定期的に行うことにはなっていたと思うんですけれども、十分活性化されていなかったものと受け止めております。

 そしてあわせて、私は、いわゆる差別、偏見の根深さについて、例えばハンセン病差別を知っているかどうか。障害者差別についての認識度は約七〇%、身体障害。そして、同和、被差別部落問題は六割程度。ハンセン病になると五割を欠ける。やはり教育とか周知徹底とか、そこに問題があって、まだまだ到達しておらないし、そのやり方も重要だということを指摘をさせていただきます。

 その上で、実はこうした意識調査も、元々、ハンセン病に係る偏見差別の解消のための施策検討会、これも厚労省がやっておられまして、報告書が二〇二三年の三月に出されて、そこで全国調査がないよということで、先ほど大臣もおっしゃられました、昨年三月までのものを今年の三月に発表された。厚労省としてはやっておられるんですけれども、やはりそれが十分達成されていない、到達していないというところも課題だと思いますので、なお担当部局には頑張っていただきたいと思います。

 私が今日御提案したいのは、私は、以前からよくハンセン病施設の各地の、菊池恵楓園や長島愛生園などにもお邪魔をして、そこにある資料館の重要性というものを指摘させていただいております。と申しますのも、この資料館から分かってくることというのは極めてリアルで、なおかつ、国として検証して後世に伝えるべきだと思うのです。

 ところが、大変突き詰めて、概略して言うと、国立ハンセン病資料館、東村山にございます、そこでの検証とか検討はよく俎上に上るのですが、普通にある療養所の資料館についてはなかなか充実がされない。その理由は、療養所の資料館は医政局の担当で、そして差別、偏見等々は健康局の方で扱っている。これは縦割りの弊害と申しますか、予算がどこから出ているかだと思いますが、そういう問題も根本にはございます。

 そのことを指摘させていただいて、では、資料館から何が分かってきているかというと、せんだって、長島愛生園というところで、御自身の大おじ様の解剖録を公開請求して、それを出していただいて皆さんに展示して、その作業によって御自身の家族の再生というか、そういう大おじさんがおられたということはもう何からも消えているので、そうしたことを取り戻すという作業をされた木村さんとか、あるいは、ひ孫の方が御自身の、亡くなられた、自殺された政石コメさんという方、この方の剖検録を、たどり着いてみたところ、実はいろいろな問題がありました。

 剖検については御本人か御家族の同意が必要なのは、昭和六年のらい予防法以来そのようになっておりますが、実は、長島愛生園で丹念に山本先生という園長がお調べいただいたところ、資料の三枚目につけてございますが、遺体解剖の同意書が、亡くなられてから同意書が出されたもの、これは、解剖全体は千八百三十四人、一九三一年から五六年まで、大変多い数の解剖がなされていますが、ここで、この園長先生が、園が三二年から三三年と四五年から四八年の計百四十人の同意書の剖検願を照合したところ、三十八件が死後、だから解剖しちゃってからですよね。それから、死亡当日が二十九件、まさか亡くなる日に自分の解剖の同意は、なかなかこれはできないと思います。亡くなる前日から七日前までが五十九件、八日以前は十四件。

 これの意味するものは、そして、例えば木村さんの同意書の場合、何人か同じ筆で書かれております。やはり一言で言うと、偽造という事態が発生していたんだと思います。その背景とか理由はどこにあるのか、これもきちんと検証がされるべきですし、山本先生は、入所のときに同意書を取るのは余りにも非人道的だから、しかし、法律の要請で同意書がなければできないから、死後とか死の直前に書いたことにして、偽造せざるを得なかった背景もあろうかという御指摘であります。これが分かってくるのは、やはり現地でそれを見て、残されたものを見て検証が進むわけです。

 もう一つ、菊池恵楓園というところで、虹波というお薬を軍と一緒になって治療実験をしたというのも資料館に残っております。

 開いていただいて四枚目のページで、軍との共同研究で開発された薬、虹波、これは五百人余り、ここではまだ三百七十一人を対象にしてとなっておりますが、実は、全く効かなかった、死者も出たという治療実験なんですけれども、後々、さらに、資料館では、お調べで五百人以上が治験対象になったということで、大変人権侵害の著しいものですが、こういうものも資料館には残されております。

 大臣に二つお願いがございます。

 これまでの厚労省がやっている検証過程、そこにはなかなか、資料館の情報という、現地の資料館が出てまいりませんが、これも併せて検証もしていただきたいというのが一点。

 それから、これは大臣に是非お願いしたいですが、デジタル化して、そこにある身分帳から何から、資料をきっちりと取っていただく。今、デジタルの時代です、できます。ただ、人手とお金が要ります。これについても是非大臣に御尽力いただきたいが、いかがでしょう。

武見国務大臣 やはり、今委員御指摘のハンセン病患者の過去の歴史というものについては、今お聞きしてもすさまじい過去の歴史があったということを我々は決して忘れてはいけないんだろうと思います。

 したがって、過去の歴史を後世に伝えていくことは重要でありますから、各療養所の資料館、社会交流館では、国のハンセン病施策に係る歴史の紹介、それから入所者の方々が残した記録、この展示などを行っております。

 また、昨年七月より、各療養所で残されている資料のリスト化を進めておりまして、関係者とその保存、管理の方法についてもまさに今協議をしているところであります。

 今後、こうした歴史的な資料など、各療養所の資料館で保存すべきとされた資料を適切に保存するとともに、偏見、差別解消に向けて、各療養所の資料館というものを十分に活用をして、そして普及啓発を進めるように努力したいと思います。

阿部(知)委員 是非、今回の延長の五年の中で実りを上げてほしいと思います。

 次に、ライドシェアについて伺います。

 この間、政府を挙げてと言っていいのか分かりませんが、道路運送法の第七十八条の二号、三号、いわゆる二号はタクシー事業者が介在するライドシェア、三号は自治体ライドシェアと言われているものですが、ここで働く、いわゆる運転をされる方の労働者性については、国土交通省政務官、どのようにお考えでしょう。

こやり大臣政務官 お答えいたします。

 委員御認識のように、国交省として労働者性の判断自体をお示しするのは困難でございますけれども、まず、日本版ライドシェアと呼ばれております自家用車活用事業のドライバーとタクシー会社との関係につきましては、現に利用者の安全、安心と適切な労働条件が確保されているタクシードライバーとタクシー会社との関係と同様というふうに考えております。これを前提に、交通政策審議会の場でお示しした自家用車活用事業のドライバーの想定される業務態様につきましては、労働基準法上の労働者に該当すると判断される蓋然性が高いという見解が厚生労働省等から表明されているところでございます。

 また、もう一つの自治体ライドシェア、あるいは公共ライドシェアと呼ばれている自家用有償旅客運送制度のドライバーにつきましては、これは、実態としては地域のボランティアの皆さんが担っておられることが多く、自発的な意思に基づき他人や社会に貢献する行為であることから、必ずしも労働者に該当するものではないというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、活用実態に合わせて適切な契約形態で運用されているものと認識をしているところでございます。

阿部(知)委員 労働者性を持つものに近いという、簡略に答弁をまとめさせていただきますが、そうだろうかという疑問があります。

 その次のページを見ていただきますと、実は、タクシーというのは、他業種よりも圧倒的に交通事故の当事者になる件数が多い、これが上のグラフです。そして、下のグラフには、いわゆる健康起因性の事故、例えば、その方が脳血管障害とか心臓疾患とか無呼吸とか、いろいろな健康上の問題を持たれて事故に結びついてしまうというのが大変多いという業種であります。

 そこで、タクシーのドライバーの皆さんには、労働安全衛生法上の定期健康診断、夜間の業務がある方は特定の年二回の健康診断、ない方でも、健康診断をやってひっかかれば二次的な健康診断。すなわち、タクシードライバーのこうした病気は、事故の元になり、相手を傷つける、御自身も傷つくというところで、他の労働者とは違うとは申しませんが、とりわけこのことを熱心にやってきたんだと思います。

 ところが、ライドシェアで働く皆さんには、そういうことが担保されるか、あるいは、いわゆるインターバル規制、前の業務から次の業務への時間のインターバルも、ここ四月から厳しくなったはずですが、それも適用されません。

 武見大臣、実態が走っていて、私は、労働安全衛生が遅れている、労働者性が守れない、健康も守れないと思いますが、いかがお考えか、また、どう対応していかれるのか、お願いいたします。

武見国務大臣 これは一般論になりますけれども、労働安全衛生法で、業務が原因で会社が雇用する労働者が疾病にかかったり疾病が悪化することを防ぐために、事業者に対しては、常時使用する労働者を対象に年一回の健康診断を実施することを、これは罰則つきで義務づけております。

 自家用車活用事業のドライバーにつきましては、雇用形態にかかわらず、健康診断が必須とされているというふうに承知をしております。

 したがって、厚生労働省としましては、国土交通省と連携をしつつ、こうした自動車運転者の健康確保がなされるように取り組んでいきたいと思います。

阿部(知)委員 健康診断を必須とするという御答弁、必ずそのようにお願いします。また、インターバル規制も同様であります。

 終わらせていただきます。

新谷委員長 次に、吉田統彦君。

吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 本日の一般質疑では、主に大臣に、まさに今そこにある危機である外科医療に関する問題、そして自由診療の今後についてお伺いいたします。よろしくお願いいたします。

 最初に、保育料についてお聞きします。

 内閣府から、私の中学、高校の大先輩であります工藤副大臣に来ていただいているので、質問いたします。全文をお渡ししてありますので、ちょっとスピーディーに読んでいきますので、副大臣、よろしくお願いします。

 政府の子供重視の施策により、完全ではないにせよ保育料金の無償化が進んでいることは、一定程度は評価できると思います。しかし、対象にならない部分もあり、全額国費で対応するということは、やはりそんなに簡単なことではありません。

 現在の制度では、幼保無償化の対象になるのは、保育施設を利用する必要性を認められた家庭の子供のうち、三歳から五歳の全ての子供、若しくはゼロ歳から二歳の住民税非課税世帯の子供とされており、時間外保育費、送迎費、給食費、行事参加費、制服代など、基本的な保育料以外は対象外であり、これらは保護者負担とされています。また、金額にも上限があり、通常の保育所と別にベビーシッターや病児保育、病後児保育などを利用すると、無償の範囲を逸脱すると考えます。

 十年ほど前から国会の質疑等でも私が提案していることですが、例えば、パワーカップルなどと言われますが、共働きで世帯収入が比較的高く安定している方や、そうでなくても、保護者がビジネス等で成功され、事業をされている方ですね、非常に高い収入を得ているような場合、これは、無理に国が無償にしなくても、前述の子育て費用を経費として計上を認めてくれる、ないしは控除の対象にしてくださればよいのだと思います。

 私は、大半の人は同様に思っているのではないかと考えていますが、逆にユーザーサイドから見れば、子供のニーズに合わせて様々な施設の中から選ぶことができるわけです。つまり、選択肢が広がるわけです。例えば、インターナショナルスクールの保育施設や、アフタースクール、いわゆる学童保育に当たる部分などを選択されると、公費で賄う部分の負担も薄まり、双方にメリットが生まれる可能性が高いのではないかと考えます。

 財務省から当然指摘をされていますが、もちろん、その分税収が減ることにはなります。公費の負担を減らすということではありませんが、少なくとも事務的なコストは確実に削減されます。そもそも、お上が一旦税として徴収したものをばらまくというのは極めて無駄でありまして、そもそも減税や控除の対象にして、そもそもその分を税として徴収しないのは、成熟した国家にとって極めて大きなコストカットになります。

 アベノマスクでもコロナ時の給付金でも、多大なコストが問題となりましたね、副大臣。私は、自公政権が進めようとして効果が全く出ていない小さな政府には同意できませんが、減らせるコストは減らした方がよいし、行政効率を求めるのは当然です。そもそも、小さな政府を目指すなら、肥大化した行政を見直すことから始めるべきでしょう。

 話は戻りますが、これは、単に国の財政ではなく、子供の成長をどう支えていくのか、子供政策の根本的な問題だと思いますので、工藤副大臣、いかがでしょうか。

工藤副大臣 お答え申し上げます。

 医療の専門の学校の、我が校の後輩の先生から御指摘をいただきました。

 今、保育料の話が出ましたので、まずもって、保育の無償化については……(吉田(統)委員「それはいいです。ここだけお願いします、時間がないので」と呼ぶ)税制ですか。はい。

 予算上の措置とは別に、委員御指摘のような税制上の支援を行うことは、利用する世帯としない世帯との間に公平性の観点があることに加え、高所得者によりメリットが大きくなる場合もあることから、慎重に議論をする必要があると考えているのと、また、税制面での優遇措置について、予算での支援と比べ執行コストが低いことについての御指摘については、具体的な制度設計にもよりますが、公的な支援の対象として適切なサービスがあるかの証明、例えば、確定申告等の場合の源泉徴収を、必要に応じてそれを取得せねばならない一定の執行コストが生じることも留意されると考えております。

 税制措置についてはこうした課題があると考えますが、財源が限られる中、行政コストに目くばせしながら政策を考える姿勢、すばらしいと思います。非常に大切であると考えております。こども家庭庁の副大臣としては、働く子育て世帯が仕事と子育てを両立して働き続けられる環境を整えることが一番大切だと考えており、今おっしゃった、そのための政策手段について、様々な観点から検討してまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 工藤副大臣、この委員会でしょっちゅう御答弁されていらっしゃるのであれですが、本当に副大臣、今おっしゃったことで結構ですので、是非ちょっとお考えいただいて、様々な方面から本当に行政コストを減らさないと。

 要は、例えば一例なんですけれども、これは医政局になるんですかね、例えば労災というのがあるじゃないですか。労災で、診療を受けた場合の、労災の振り込みがなされるかどうかというのを、毎月通知が来るんですよ。ゼロ円でも来るんです。これは、副大臣、郵便コストがかかるし、書類を作るコストだってあるわけですよ。しかも、全医療機関にやっていたとしたら、すごいロスですよね。ゼロ円なのに送るわけですよ。今月はゼロ円の振り込みになりますよということを送る。こういうことが厚生労働行政は特に多いと思うんです。やはり通知をしなければいけない、政府なので。

 だから、その一部は副大臣所管のこども家庭庁等に移っているわけでございますので、本当に今副大臣のお気持ちはよく私は分かりましたし、大先輩ですので是非応援をさせていただきたいと思いますので、是非頑張っていただいて、期待をしておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 お忙しいと思いますので、副大臣、これで結構でございます。ありがとうございました。

 それでは、厚生労働省に質問してまいります。

 外科医療についてお伺いします。

 この四月に、東大第一外科の入局者は、本学卒と言われる東京大学卒業者はゼロ、他大学からも僅か四名のみということであります。これで外科の医局が成り立つとは私は思えません。このように、現状、外科志望の学生及び研修医が非常に少なく、危機的な状況です。一般外科医療の崩壊は、救急医療の崩壊も当然引き起こします。

 外科の中でも、状況の濃淡はあるんです。大臣もよく、詳しいと思いますが、医政局長は特にお詳しいですが、例えば呼吸器外科では、オペ後はICU管理を経て、退院した後は呼吸器内科にフォローされることが結構多いですね。また、心臓外科では、オペ後はやはりICU管理を経て、循環器内科へと引き継がれますなど、比較的手術そのものに特化できる環境にある外科系の医局もあります。また、乳腺外科は、長時間にわたるオペが少ないので、女性医師に人気が大変ありますよね。しかし、消化器外科は、それらの外科と異なり、オペ後も退院後もずっと患者のフォローを一般的にします。極めて責任が重い状況が維持されるわけであります。

 申し上げますが、私が昔から見てきた外科医の生活は、七時半には病院に来て、血液ガスとかを取るんです。それでカンファレンスに臨んで、生命の危険があるなど、状態の悪い患者さんなどの重症患者、その日やその週のオペの情報を共有して、九時過ぎから手術室に入り手術をする、あるいは外来診療を行います。午後からは、総合病院であれば、皆さん、手術室で手術をなさいます。早ければ十八時、十九時に手術は終わりますが、膵がんや食道がん等、大きなオペがあると、夜中まで、あるいは夜通しオペをしているわけです。その後、自分の患者さんの回診をしてという感じで、さらに、その上、夜中に救急外来から虫垂炎のオペに呼ばれることもありますし、人は明け方にその生を終えることも多々ございます、そうすると、また当然、自分で患者さんをみとりに来られるわけであります。自己犠牲そのものであり、大臣、こんな生活はなかなかできないですよ、本当に。

 こういった生活リズムの中、若手の外科医は、毎日、夕食時間に、既に中華料理屋やラーメン屋さんしかやっていないので、こういったところで高カロリーな食事をどうしても摂取して太ってしまう。まさに健康も脅かされる。私が研修した病院の外科医は、血液検査の結果の悪さを競い合っていたぐらいです。これは本当です。いかにコレステロールが高いとか血糖が悪いかとかを外科医同士が、それは自分たちとしては一生懸命働いている結果だということなんだと思うんですけれども……(発言する者あり)そうですね、橋本先生のおっしゃるとおり。つまり、自己犠牲のあかしだと彼らも思っていたわけですよね。

 ある先生は、自分のぽってりとした腹部を私に指し示して、私は無駄に太っているわけではありません、この腹で術野から落下する鑷子などを押さえるんですと冗談をおっしゃっていました。これは本当の話です。このように、自分の体を酷使して、自分の命をすり減らし、国民の命を救っているわけです。

 このような状態を、また時代の変化、若者のワーク・ライフ・バランスを含めた就労に関する考え方の変化を反映して、消化器外科の志望者がひときわ少なくなっているのが現状です。現に、アメリカでは、消化器外科は救急と並び一番人気がなくなっていますし、したがって、救急や産婦人科と並んで、多くは移民の医師が担当しています。このままでは一般外科や消化器外科が絶滅していく可能性が高いと言っても過言ではありません。

 そこで、今すぐ、火急の対策を取らなければなりません。国家の宝である外科医をとにかく大事にしなければならないわけであります。

 私が提案するのは、例えばドクターフィーの導入や、手術の診療報酬の一部は執刀した医師たちの報酬にするルール作りのような、やはり出来高制の導入、つまり、過酷な労働環境を正当に評価するシステムの構築や、ベースの年俸を例えば三千万以上に設定するなど、現在とは大きく異なる好待遇を継続可能とするような制度として構築すべきだと考えます。

 ちなみに、三重県の尾鷲市の例では、田村先生は今いないですが、年俸五千万で産婦人科医を募集したんですが、過酷な労働環境に耐えかねて一年で退職しています。このような好待遇を受けた外科医がさらにそのまま踏みとどまっていただけるような、そして一人の外科医師に負荷がかかりにくい制度構築も同様に、同時に必要であります。

 しかし、現在、一部の急性期病院では、むしろ逆のことを実はやっています。すなわち、若い方には給料を出すけれども、四十を過ぎたら昇給しないとか、ある大きな全国にネットワークのある病院では、四十を過ぎると給料が上がらない、あえて人員を下げるようなことをやり、逆に、ある全国的なグループの急性期の病院では、部長は内科でも年俸二千二百万から二千三百万ぐらいに設定されておりまして、やはりこういった病院では開業する医師が少ない、つまり人が辞めない状況になっています。給料だけではありません。もちろん、医師は、人を救う、人の健康と命を守る、それを使命にしております。しかし、待遇は本当に大事なんですよね。

 こういった現状に関しての厚生労働省の認識と、外科医に対してどう支援しようと思っているのか、医政局長、これは本当にしっかりと御答弁いただきたいと思います。お願いします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、外科医は、過酷な勤務環境の中で、日夜、我が国の医療の現場を支えていただいておられます。改めまして感謝と敬意を表したいと思いますが、私どもといたしましては、負担の軽減を図りながら外科医を確保していくことが極めて重要な課題であると考えております。

 厚生労働省におきましては、診療報酬において、外科医等が時間外に手術した際に評価を行う加算を設け、令和六年度改定でも必要な見直しを行うとともに、医療現場の勤務環境の改善が進むよう、タスクシフト・シェアやICTの活用などに取り組む医療機関に対しまして、様々な支援を実施してきたところでございます。

 その上で、議員御指摘の点も踏まえまして、外科を始めとした診療科偏在対策を更に進めるため、現在、エビデンスに基づいた対策、これは処遇面も含めての対策のこともございます、こうした対策の検討を行っているところでございます。

吉田(統)委員 実は、中島筆頭も元外科医なんですよね。だけれども、何を目的にかは分かりませんけれども辞められて、今は市井の立派なかかりつけ医として頑張っていらっしゃるわけですけれども、本当は、でも、中島先生が今でも外科で辣腕を振るっていた方が国民が幸せかもしれない。まあ、それは分かりませんけれども。政治家としても立派な方ですから、私は尊敬していますが。

 外科医が一生外科を続けてくれる、こういった環境を本当に、医政局長、これは急務ですよ。だって、外科医を育てるのに十年ぐらいかかりますよ。私ももちろん、あしたから、僕は外科医だと言ったら、自由標榜すれば外科医になれますけれども、それは、外科、できないですからね。医政局長だって、御退官の後、俺は外科だと言ったら外科をやれますけれども、それはすぐできるわけじゃないですから、一朝一夕に。ですから、今打っても十年後にしか効果は表れないわけですから、これは本当に心していただきたい。

 ちょっとヒノトリは飛ばしますね、時間が大分押してきましたので。

 近年、痩身クリニックを始めとした美容クリニックや美容外科、アンチエイジングクリニックといった自由診療に若手の多くが経験不足の医師として進んで、日本の医療を支えるために必要とされる診療科に進まない現状があります。これは本当に深刻です。

 話によると、年間五百から六百人の医師が自由診療に移っているとも言われています。これは実に医学部五、六校分の医師数ですよね。中には、自治医大卒業の医師も義務年限を経ないうちに自由診療に行く例もあるそうで、場合によっては、返還義務を負う学費など約六千万を自由診療クリニックが肩代わりしている可能性もありますね。

 こういったクリニックの多くは都会にあるため、大臣が常に、診療科の偏在、地域の偏在に力を入れていらっしゃいますが、医師の偏在対策としても非常にまずいんです。

 先ほど述べた、外科医療を守る、保険診療を守る、そして、大臣が「日曜討論」などでおっしゃっている医師の偏在や診療科の偏在を是正する対策を進めるためにも、まず前提として、こういった状況に歯止めをかける必要が当然あるわけでありますが、医政局長の見解を求めます。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 美容外科を主たる診療科とする医師につきましては、医師法に基づく二年に一度の医師からの届出によれば、令和二年から令和四年までの二年間で、全国で約九百四十人から約千二百五十人へと約三百十人増加しており、増加の多くは若手医師であると承知しております。

 また、その他でも、形成外科あるいは皮膚科を主たる診療科とする医師の中にも、美容外科に従事するあるいは美容医療に従事する医師も含まれているものと考えられております。

 医師がどのような診療科を選択するかにつきましては医師個人の自由ではございますが、診療科偏在がある状況を踏まえますと、多くの医師が特定の診療科を偏った形で選択することで、そのほかの必要な診療科で医師不足となることがあれば、それは決して好ましい状況ではないと認識しております。

 このため、医学部定員の地域枠の設定や、都道府県別、診療科別の専攻医採用上限数の設定、シーリングなどの取組を行ってはおりますが、更なる偏在是正に向けてどのような施策が必要なのか、検討を行っているところでございます。

吉田(統)委員 そういう答弁で、前向きではあるんですけれども、なかなか抜本的な御答弁をいただけないのは残念なんですが。

 じゃ、もう一点、これも申し上げます。

 先ほど申し上げた、自由診療に若い医師が行ってしまうという問題同様に、看護師についても、若くして自由診療クリニックへ入職あるいは転職してしまう、これが大きな問題になっています。これは、給料が高いですから。総合病院より診療も楽ですよね、当直もないし、日勤で帰れますから。

 そのような若い看護師は、一般の医療機関で十分なトレーニングを積む前に自由診療クリニックに就職してしまうため、一般的に、やはり経験不足であります。不測の事態に対処できないという問題も、もちろん、美容系のクリニックでも不測の事態は起こりますからね、死亡事故は起こりますし、対応できないなどの問題も生じています。

 医政局長、中には、美容専門の看護職員育成を銘打った専門学校があることも承知しております。このような看護職員養成機関、要は看護学校という表現になるんでしょうけれども、厚生労働省は、文科省とも協力して指導、是正すべきと考えますが、厚生労働省はいかにお考えになられますか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 看護師等養成所は、看護師として必要な基本的能力を適切に身につけていただく機関であるため、厚生労働省では、その指定規則やガイドラインに必要な教育内容を記載し、養成所にこれを遵守することを求めております。

 このため、厚生労働省といたしましては、美容医療のみを前提とした看護教育の内容は、もちろん想定しておりません。

 厚生労働省といたしましては、この指定規則等を遵守した上で美容医療に関する教育が行われている場合には、そのことで直ちに指導等の対象となるものではないとは認識はしているんですけれども、引き続き、御指摘のような養成所があるという現実を踏まえまして、養成所の指定及び監督権限を持つ都道府県とよく連携して、情報を確認してまいりたいと考えております。

吉田(統)委員 局長、指導した方がいいですよ、今すぐ。すぐに指導には至らないとおっしゃいましたが、指導した方がいいですよ、本当に。これも、だから、総合病院の看護師が足りなくなっているんですよ、本当に。急性期の病院の看護師が足りなくなっているんです。

 本当に、開業医の先生なんて、もっとですよね。筆頭のところも、本当に、看護師さん、いないですよ。本当にこれも切実な問題です。どちらが国民にとって必要なのか、国家にとって必要なのか、よく是非お考えいただきたいと思います。

 時間が大分なくなってきましたので、ちょっと飛ばしますね。

 結局、美容医療のことに戻るんですが、従来は、美容外科、例えば美容整形ですね、言うなれば、になろうとすると、まずは大学の形成外科医局に所属しましたよね。まず一般外科を学んで、そしてその後も、皮膚科や泌尿器科など、横断的に必要な知識を得るためのトレーニングを積んで自己修練をなさって、本当に一流の美容ドクターの方たちというのは、患者さんにベストの技量を提供するために、最良の美容外科医を目指すべく、自分たちで道を切り開いてきた部分もあるんだと思います。

 しかし、現在では、ビジネスを重視した結果として、初期研修後すぐに美容へという流れもできてきていますね。これはドクター本人にとってもよくないんですよ、本来。また、業界にとっても必ずしも好ましい状態では当然ありませんよね。やはり美容外科など自由診療へ進む医師の歯止めをかけるべきなんです。局長、大臣も、今日はちょっと大臣にはあれですけれども、答弁は求めませんけれども、余り。

 医政局長、浅沼局長、私が考える条件、これはあくまで提案ですけれども、例えば、まず十年間、しかるべき医療機関で保険診療をちゃんと行う、つまり、総合病院などで常勤医師としてちゃんと勤めたという証明を受けた上で、自由診療の開設者や自由診療に従事することを可能にする。ほかにも、例えば、十年が長いのであれば、今の初期研修、すなわち臨床研修修了の医師は開設管理医師になれず、後期、すなわち専門研修を必須にして、その修了を条件にするとか、そういった形で、自由診療を行おうとする医師に一定期間の保険診療の経験を求めること、そうした経験を積んだ医師に限って自由診療の診療所を開設できるなどとする、あるいは診療そのものをするといったことも検討すべきだと思いますよ。

 保険診療のことをよく知らずして、やはり自由診療はできないですよ、本来は。また、例えば、それに加えて、一定の経験を積んだ医師でなければ医療法人の代表理事になれないとか、特に美容系に関して、自由診療を主たるなりわいとする医療法人に関してですけれども、クリニックの売買もできない等とすべきだと私は思います、本当に。これをやらないと、いつまでたっても、バケツの穴に、穴が空いているところに水を入れているようなものだと思いますよ、医者を幾らつくっても。

 浅沼局長、どうですか、これは。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、美容外科を主たる診療科とする医師というのが、どうも若手を中心に増加している。このドクターたちの技術的な問題も踏まえた上で、近年、利用者の健康被害なども含めて様々な相談を受けていて、いろいろな角度で問題が起こっているのではないかなというふうに思っております。

 そういう中におきまして、議員から御提案ございました、保険診療を行う医師の確保が一層重要なのであるならば、そうしたような規制をかけるべきではないかという御指摘をいただいたものというふうに理解をしております。

 厚生労働省といたしましては、診療科等の偏在の是正も含めまして、医師の偏在対策の中でいろいろな取組を行っていくことが重要であると認識した上で、議員御指摘の自由診療も含めた医師のある種の開業規制につきましては、自由開業制、これは憲法上の営業の自由との関係性の整理、また新規参入抑制による医療の質の低下への懸念、また、逆に、今度は駆け込み開設への懸念という課題があるというふうに考えております。

 慎重な検討が必要であると考えているところですが、議員の問題意識も大変理解できますので、引き続き検討に取り組んでまいります。

吉田(統)委員 だけれども、開業はともかく、局長、保険医じゃないと保険診療をできないわけじゃないですか。だから、自由診療を行うに当たって何らかの資格を設けるとか制限を設けることは、憲法とか、何も抵触しないと思いますよ。だって、そうでしょう、同じ理論なんだから。

 医政局長、本当に、今私がやったような、例えば十年という案を採用したら、一気に、現場の医師不足、解消もしますよ。保険診療にわっと来るわけですから、戻らざるを得ないわけだから。これは絶対にやった方が本当にいいですよ。

 もう一つ、最後に、じゃ、ちょっと短く行きますね。

 新設医大に関してなんですけれども、私が医師になった頃は七千六百二十五人でしたね、医学部定員。今は最大九千四百二十なので、もう既に千八百人弱、十六から十八校分の医師を増やしているわけです。そこで、無理に、二〇一六年四月に東北医科薬科大学、二〇一七年四月に国際医療福祉大学の医学部が開設されましたが、私は、こんなことをするより、自治医大の定員を拡大した方がよっぽどよかったと今でも思います。その分、自治医大に予算をつけてやればよかった。

 しかし、既に言ったように、千五百人以上の定員増があったのに、何で二百四十人も更に定員を増やす必要があったのか。これは、私は、一校三百億と言われていますので、無駄だと思います。ちょっと言い方は厳しいですけれども、森友、加計学園、アンジェス同様、お友達的な要素で新設が認められたのではないかという疑義すらあります。

 ちょっともう時間がないので申し上げますが、本当にこの新設医大というのは意味があったと思いますか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 東北医科薬科大学と国際医療福祉大学の二校の話だというふうに思っておりますが、東北医科薬科大学につきましては、二〇二二年に最初の卒業生を輩出し、卒業生の半数以上は東北六県において臨床研修を行っていると承知しております。また、同大学の入学者選抜枠には、外科も含めた上で、特に医師の確保を図るべきとされている診療科に従事することで修学資金返還の免除となる枠もあり、必要な診療科で勤務する医師の確保にも取り組まれているものと承知しています。

 一方、国際医療福祉大学につきましては、国際的な医療人材の育成のために、二〇二三年に最初の卒業生を輩出し、卒業生は現在まだ臨床研修中の年次であると承知しています。

 これらの大学を卒業した医師についてですが、今後、大学の設置の趣旨にのっとった進路を歩まれるものと期待しております。関係する府省庁とともに引き続き注視をしてまいりまして、設置の趣旨に合ったような医師の育成を期待したいと思います。

吉田(統)委員 終わります。ありがとうございました。

新谷委員長 次に、酒井なつみ君。

酒井委員 立憲民主党の酒井なつみでございます。さきの衆議院議員補欠選挙で東京十五区において初当選をさせていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私は、政治の道へ進む前は、看護師、助産師として十二年間産婦人科で働き、多くの女性、母子、そしてその御家族を含めたケアをしてまいりました。助産師は女性の人権を守る仕事であると自負をしており、現職国会議員に助産師がいないことからも、職能を発揮しながら職務を務めたいと存じます。

 この度質問の機会をいただきましたので、大綱二点について伺います。

 大綱一点目は、出産費用の保険適用、無償化の検討についてです。

 少子化対策の一環で、出産に関する支援の強化として、正常分娩の保険適用の導入を含めた検討が進められることとなっていますが、まだ検討会は一度も開催されていないとのことです。医療現場からは、保険点数が一律に低くなることで経営が難しくなるのではないか、産婦主体の安心、安全な分娩のできる体制を守ってほしい、検討会のメンバーにはどんな人がいるのかなどの不安の声が届いております。

 まず初めに、保険適用が検討に入った経緯は何か、また目的は何か、武見大臣へ伺います。

    〔委員長退席、大串(正)委員長代理着席〕

武見国務大臣 まず、御当選おめでとうございます。改めて、助産師としての御経験を生かして、この国会で御活躍されることを御期待申し上げております。

 妊婦の方々が安心して出産できるように、経済的な負担を軽減するために、昨年四月から出産育児一時金を四十二万円から五十万円に大幅に増額をいたしました。そして、今月から、分娩取扱施設ごとのサービス内容や出産費用の状況などを公表し、出産費用の見える化を進めることとしております。

 昨年十二月に閣議決定されましたこども未来戦略で、これらの取組の次の段階として、二〇二六年度を目途に、出産費用、これは正常分娩の保険適用の導入を含めて、出産に関する支援などの更なる強化について検討を進めるということになっております。

 こうした経緯を踏まえまして、妊婦の方々が安心して安全に出産できる環境を整備することを目的として、出産費用の保険適用を含めた支援などの在り方について、今後、厚生労働省とこども家庭庁と共同で有識者による検討会を設置をいたします。そこでしっかりと議論を進めていくということになっております。

酒井委員 励ましのお言葉もいただきまして、ありがとうございます。また、武見大臣からは、産婦さんが安心、安全に出産できる体制を整えていくということをお聞きできて、安心をいたしております。

 保険適用し、無償化するという一言で言っても、食事や部屋代をどうするのか、無痛分娩は対象にするのか、助産所の分娩は守られるのか、また、病院の種別や妊婦のリスクの有無、また、各種サービスの取扱いなどはどうするのか、そして、先進国の無償化の方法の研究など、多くの整理すべき課題や確認事項があります。様々な関係者を交えて議論しなければならないと思います。二〇二六年度からとお話がありましたけれども、拙速に事を運ぶのではなく、丁寧に検討していただきたいと思っております。

 その上で、私は、産婦主体の安心、安全な分娩を守ることをベースに議論していくことを求めますけれども、どのような理念の下、進めていくのか、武見大臣へ伺います。

武見国務大臣 妊婦の方々が安心して安全に出産できる環境を整備することが極めて重要だというふうにまず考えておりまして、この観点に立って具体的な支援策の在り方等について検討を進めていきたいと思います。

 出産費用の保険適用については、サービスの質が確保されるというメリットがある一方で、今度は、全国一律の診療報酬で評価されることで、かえって妊婦の選択の幅を狭めることになってはいけないという課題が実はございます。これらの双方の考え方を踏まえて検討していくことが必要であると思います。

 こうした点も踏まえまして、今後の検討に当たりましては、昨年度に出産育児一時金を四十二万から五十万円に大幅に引き上げた際の平均的な標準費用について妊婦の自己負担が生じないようにするという基本的な考え方を踏襲しつつ、地域の周産期医療提供体制の確保という観点にも十分留意をしながら、関係者の意見をよく伺って丁寧に検討を進めていきたいなと考えております。

酒井委員 出産を無償化している先進国では、妊婦健診や産前の教育、産後ケアについても無償化をされております。これらは無償化の検討に含まれているのか、武見大臣へ伺います。

武見国務大臣 厚生労働省とこども家庭庁が共同で設置する検討会におきましては、正常分娩の保険適用の導入を含めた出産に関する支援についてだけではなくて、妊娠期それから産前産後に関する様々な支援などの更なる強化の方向性について具体的に検討を行っていくことを目的としております。このために、同検討会における検討事項には、御指摘の妊婦健診であるとか産後ケアなどの産前産後における支援も含まれているというふうに考えます。

 産前産後における支援に関する制度所管であるこども家庭庁ともしっかりと連携をしながら、検討を進めていきたいと思います。

酒井委員 産前産後のケアも含めて更なる強化を目的にというお話がありまして、安心をいたしました。過不足なく、かつ、誰しも質の高いケアを受けられるように目指していただきたいと思います。

 特に、今答弁にはなかったんですけれども、産前教育に関しては、コロナ前と比較して医療機関では両親学級などが中止をしたり簡略化したりされていて、また、その再開のめどを立てていないような医療機関が多くなっています。そういったことが全国的にも同様にあるのではないかと推測をしています。

 自治体で行われる産前教育の重要性も、その意味ではとても増している状況です。妊娠中からの仲間づくりの場としても重要ですし、夫婦共に親になるための産前教育の機会を保障し、充実をしていただきたいと要望をさせていただきます。

 また、一部報道では、公的医療保険が適用されることで全国一律の公定価格となり、正常分娩のサービスの質も確保されるメリットがあると報道されておりますが、無償化の対象の範囲や公定価格によっては提供される医療や助産ケアの質が低下するのではないかと懸念をしております。

 そこで伺いたいのは、周産期医療及び助産ケアの質向上に向けて政府の取組状況を伺いたいと思います。あわせて、今後の取組の方針についても武見大臣へ伺います。

武見国務大臣 妊婦の方々が安心して、そして安全に出産できる環境を整えることが重要であり、厚生労働省では、都道府県と連携しながら周産期医療体制の整備を進めております。

 具体的には、今年度から開始をいたしました第八次医療計画において、都道府県に対して、周産期母子医療センターを基幹とした集約化、重点化を行うこと、それから、分娩取扱施設と妊婦健診や産前産後ケアを行う施設との役割分担であるとか連携を進めること、それから、妊産婦の分娩取扱施設へのアクセス支援を行うことなどを求めておりまして、厚生労働省といたしましても、都道府県における取組が進むように様々な財政支援も行っているところであります。

 加えて、こうした周産期医療体制を進めるに当たりましては、妊娠から出産、産後まで継続して助産師に活躍していただくことが、安心、安全なお産を確保する上で重要と考えております。助産師外来や院内助産の体制整備に対する支援、それから、助産師に対する分娩に関する研修の支援も行っているところであります。

 妊婦の方々が安心して安全な出産ができるように、引き続き、都道府県などと連携しながら、その環境整備に取り組んでいきたいと思います。

酒井委員 検討会の中で様々な関係者が議論をしていくかと思いますけれども、今お伺いした周産期医療や助産ケアの質が低下しないように、今の取組も併せてしっかりと両輪で進めていただきたいと思います。

 関連して、もう一点伺います。

 自治体では保健師の業務が増大をし、人材が不足している現状からも、自治体での助産師活躍を推進していくべきだと考えています。厚生労働省やこども家庭庁でも助産師が活躍しており、法律や制度の改善や新たな制度の創設などに取り組んでおられます。政府の認識はいかがでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 妊産婦に対しまして相談支援を始めとする母子保健サービスを実施するに当たって、委員御指摘のとおり、助産師等の専門職による支援は大変重要であるというふうに認識をしております。特に、妊娠、出産等に関する相談ですとか、あと、新生児訪問指導、授乳に関する支援などについては、助産師等の専門性が必要とされる分野でございますので、特にこども家庭センター等におきましても地域の実情に応じて助産師が配置されているものと承知をしてございます。

 また、市町村において実施をされている産前・産後サポート事業の実施要綱というのがございますけれども、こちらには支援の担当者として助産師を明記させていただいておりまして、地域において助産師を活用した事業が実施をされているものと認識をしてございます。

 また、自治体職員においても様々に活用していただきたいというお話もございましたけれども、採用自体は、言うまでもなく、地域の実情に応じて自治体において判断されるものではございますけれども、母子保健サービスを提供するこども家庭センター等において地域の実情に応じた専門職による支援が実施されるように、引き続き我々としても取組を進めてまいりたいと考えてございます。

    〔大串(正)委員長代理退席、委員長着席〕

酒井委員 今御答弁にありましたとおり、自治体では、地元の助産師会などを中心に、母子保健分野の主に委託事業で活躍がされております。ただし、政策決定の場ではなかなか活躍できていない現状があると思います。

 私の住む人口五十四万人の江東区では、コロナ禍でコロナ陽性となった妊婦さんへの相談支援を目的にようやく一名採用されたという状況でした。会計年度任用職員であり、母子保健事業の中心を担うというわけではありませんでした。

 正規職員として多くの助産師が自治体における政策決定の場で活躍できるような制度設計を進めていただきたいと思っておりますけれども、そういった意味では、正規職員としてどのくらいの助産師が自治体で活躍をされているのか、把握はされておりますでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、正規かどうかということでのデータが手元にはないのでございますけれども、例えば、令和四年度における、これは今後こども家庭センターになるわけでございますけれども、子育て世代包括支援センターというのがございますけれども、こちらにおいては、専任で助産師さんが七百九十一人、兼任で三百八十八人おられると聞いておりますけれども、このような形で御活躍をいただいている方は多くおられるわけですけれども、様々な活用の場面が広がることを期待していきたいと考えてございます。

酒井委員 助産師を何人置くかというのは自治体の裁量でもあるとは思いますけれども、政策決定の場で活躍できるような制度設計を進めていただきたく要望させていただきます。

 大綱二点目は、異次元の少子化対策のこども未来戦略のうち、小一の壁打破について伺います。

 未就学児には、仕事と子育ての両立支援のために利用ができる病児保育や休日保育について、子供が就学をした途端に子供の安全な居場所がなくなってしまい、就労ができない現状があります。病児保育は、国では対象を小学六年生までとしておりますが、多くの自治体では小学生は対象に含まれておりません。また、休日保育は保育園によって運営されている事業であり、対象が限られるため、法改正が必要になろうかと思います。

 病児保育、休日保育は小学生まで利用できるようにして、子育て世帯を切れ目なく支援し、かつ自治体の課題などを把握をしたり、その実施の支援をし、政府主導で推進するべきではないでしょうか。

 また、保育という事業名があることで未就学児というイメージがついてしまうため、病児預かりや休日預かりなどと名称を変更し、小学生にも拡大をしていく、そういったイメージも伝えていく必要があるかと思いますけれども、政府の見解を伺います。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 仕事と子育ての両立支援のためには、共働き家庭のニーズに合わせまして、小学生の子供が安心、安全に過ごせるような場の確保、これも非常に重要であるというふうに考えてございます。

 このためでございますが、今、放課後児童クラブという形で学童については対応しておりますけれども、そちらについて待機児童がかなり存在する状況でございますので、その整備を進めていくことがまず喫緊の課題であるというふうに我々は認識してございまして、受皿の整備等に向けた対策を一層強化するために、昨年十二月に、文科省と連携をして、放課後児童対策パッケージといったものを取りまとめをさせていただいて、受皿整備を進めているところでございます。

 そのベースの上にということになると思いますけれども、お尋ねの休日の対応でございますが、こちらについては、市町村が、利用する保護者のニーズを踏まえながら、事業を休日に適切に実施できるように、国といたしましては、放課後児童クラブにおいて土日を含めた開所日数に応じた加算といったものを設けることで市町村を支援しているところでございます。

 また、子供が病気の際の預かりという点についてもお尋ねがございましたが、病児保育事業において小学生の受入れも可能としておるところであるということは御紹介もあったところでございますけれども、施設の安定的な経営に資するように、人員配置に対する補助等によりまして、受皿の拡充を図ってきているところでございます。

 ただ、実施主体である市区町村の判断によって、例えば、発熱等によって体調が変わりやすい保育園児を優先的に受け入れるといったような対応をしておられるところ、あるいは、小学生については自治体の単独事業で病児への支援を別途設けているので病児保育での対応はしていないといったようなところもありまして、地域によってかなりいろいろな形がございます。

 ということでございますけれども、いずれにしましても、自治体において地域の実情を踏まえて、子供の健全育成、保護者の就労の支援、こういったことで小一の壁を打破できるように、私どもとしては、必要な支援をしっかりと行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

酒井委員 こども未来戦略の中でも小一の壁打破に向けた言及がありましたが、今御答弁のとおり、学童で待機があるのでそちらの収容対策が優先だというお話がありました。ただ、二人、三人、子供を育てていたら、例えば、小さい子は保育園、上の子が小学生となったときに、子供が熱を出したというときに、保育園だったら預けられるのに、小学生だったら預けられないということで、結局仕事ができないんですね。それは病児保育や休日保育と同様なんですけれども、やはり、小学校に上がった途端、壁を感じているのが保護者の現状です。いつまでたっても壁のままとならないように本気で打ち破るためには、私の当事者としての実感からしても、政府がより主体的に取り組むべきと考えております。是非ともよろしくお願いいたします。

 また、先ほどお話がありましたけれども、放課後児童クラブの開所時間についても伺います。

 学校休業日は原則八時間以上となっており、認可保育所の保育標準時間の十一時間と比較して三時間も短く設定をされています。通勤時間など、保護者の就労状況が考慮されておりません。保護者は、周囲の信頼できる人を頼る、別の公的、民間サービスを手配する、仕事を休んだり、遅刻、早退をしたり、若しくは働き方を変えたり、辞めたり、子供を一人で帰宅をさせ一人で待たせるなど、対応に追われるわけでございます。いずれにしても、簡単なことではありません。

 働き方が多様化している中で、学校休業日における預かりのニーズは江東区でも高まっていますけれども、国は保護者ニーズを把握しているのでしょうか。小一の壁打破のための更なる取組を求めます。この必要性の認識と今後の取組方針を伺います。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 保護者の就労状況によりまして、放課後児童クラブについて長時間の預かりがニーズがあるということは認識をしてございます。

 放課後児童クラブの開所時間につきましては、国が定める基準を参酌して、市町村が条例で定めるというふうになっております。

 その国の基準についてでございますけれども、これは、御紹介いただきましたように、原則として、平日は三時間以上、それから学校休業日は八時間以上開所するということとなってございますけれども、これは、平成二十五年度に有識者による専門委員会というのを開いてございまして、それを踏まえた上で策定をしたものでございます。これは、当時の状況を踏まえてこのような答申というかそういったものがなされて、それを踏まえたものでございます。

 この専門委員会の報告書におきましては、同時に、開所時間に関する小一の壁の解消についての指摘等もございまして、地域の実情や保護者の就労状況等を考慮して、事業を行う者が定めるものとすることが適当だといったことも言及をされているところでございます。

 これを受けまして、保護者のニーズを踏まえて、地域の実情に応じて開所時間を設定することができるように、国としては、放課後児童クラブが長時間開所した場合の加算措置といったものを設けてございまして、市町村を支援させていただいているところでございます。具体的には、平日は六時間以上、かつ十八時、夕方の六時を超えて開所した場合に加算を行うとともに、土日など休日につきましては八時間を超えて開所した場合に加算をする等々としているところでございます。

 地域の実情に応じた事業運営が可能になりますように、引き続きこうした支援に取り組んでまいりたいと考えてございます。

酒井委員 質疑時間が終了いたしました。今後も、子育て世代の当事者としての声も代弁していきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

新谷委員長 次に、中島克仁君。

中島(克)委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 私からも質問させていただきますが、委員会冒頭に委員長からも派遣報告がございましたが、先週水曜日、五月二十二日に、厚生労働委員会委員派遣、視察ということで、能登半島珠洲市、輪島市、そして金沢市の一・五次避難所、最後は西垣副知事とも意見交換をさせていただきましたので、その内容を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 その前に一点。前回、私、再生医療法、臨床研究法の際に遺伝医療に関連してゲノム医療について質問いたしましたが、ちょっと言い切りになってしまったので、再度確認をさせていただきたいと思います。

 資料の二枚目にございますように、これは前回もお渡ししましたが、通称ゲノム法案、長い名前です、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律、この言葉が、ゲノム医療を推進していく、ある意味、アクセルとブレーキと言ったら変ですが、このタイトルが全てを表しておるというふうに大臣には前回、理解を深めていただきたいとお願いをしたわけでありますが、この法律が昨年の六月に成立、そして施行され、現在、基本計画策定に向けてワーキンググループが設置され、これまで五回開催をされております。

 私は、この法律を取りまとめた超党派議連の事務局長という立場で、この五回のワーキンググループの内容、そして昨日は、通称ゲノム議連ですが、議連総会を行いまして、各省庁の基本計画に向けた取組、進捗状況、また医学界、北里大学の高田史男先生に来ていただき、三月に発表された提言、この内容と、がん患者団体連合会から患者さんの立場でヒアリングを行いました。端的に、結論からいくと、各省庁の基本計画に向けた取組と医学界また患者さん団体が求めている内容とでは随分と乖離があるな、これが印象でございます。

 前回は、差別、不利益な取扱いについての法務省の見解、基本計画ができたら様子を見てということには、大変、ちょっと、そういうことでは遅いんじゃないかということでありましたが、昨日の総会でも多くの論点があったんですが、やはり一番は、民間遺伝検査、DTC、ダイレクト・トゥー・コンシューマーに関して。

 これは資料の一枚目になりますけれども、これも前回、私、言葉で言ったんですけれども、四月に報道された、園児に遺伝子検査、子育て参考、都内の保育園推奨。これは内容を読んでいただければ分かると思うんですが、こういうことが起きている状況の中で、今日経産省から岩田副大臣に来ていただいておりますが、民間遺伝検査、DTCに関して、質の担保、精度管理、また生命倫理への適切な配慮、ゲノム情報の適切な管理体制について、これは基本計画を待っているんじゃなくて、もう既にこういう案件が起こっているわけですから、早急に管理体制を整備する必要があると考えますが、岩田副大臣に御答弁いただきたいと思います。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 委員御指摘のDTC、消費者向け遺伝子検査は、個人から採取されたゲノムの情報解析を行うことで、体質や将来的な疾患リスク等を調べる民間サービスでありまして、近年、様々な事業者が参入をしているものと承知をしております。

 一方で、検査の妥当性、また正確な情報提供等が適切になされない場合、消費者が混乱をしたり、誤った判断をする課題も存在をしておるということでありますし、今委員から御指摘あったようなそういった報道もあっているということももちろん承知をしております。

 政府といたしまして、ゲノム医療法、及び、今後取りまとめられるゲノム医療施策に関する基本的な計画に基づいて適切に対応していくものと理解をしております。

中島(克)委員 昨日も議連の総会でも同じような答弁なんですが、やはりこれは、もう既にこういう案件、そして、そもそも質の担保、根拠がないかもしれない、そして、この記事によると、一回七万円とか九万円とか、この会社は香港にある、こういうことから、国内は企業が自主規制という形でやっておりますけれども、さらには、ここで取られたいわゆる遺伝情報が一体どう管理されておるのか。これは基本方針の策定を待ってではなく、厳しい規制をしっかり明確に基本方針に盛り込んでいくということが求められておるということ、これは患者さん団体や医学界からも強い要望ですから、是非やってもらいたい。すぐにでもやってもらいたい。

 武見大臣、昨日医学界からこういう御意見がございました、遺伝情報に関して、遺伝検査に関して、これは医療も非医療もないんだと。これは当たり前ですよね。質の担保がどういう差があるか分からないにしても、これは別に、ゲノム医療情報だろうが民間のゲノム情報だろうが、これは同じなんだと。そういう意味から、海外の例も示されて、このゲノム情報、遺伝情報に関してはやはり一元的に取り組んでいかなきゃいけないと。

 そうなると、今、民間のDTC、経済産業省ということになるわけですが、一方で、医療は厚生労働省。そうではなくて、はっきり申し上げますが、ちょっと経済産業省さんには申し訳ないですが、遺伝カウンセリングも含めて、その後のフォローなんか経済産業省にはできませんよ。

 民間だろうが医療だろうが厚生労働省がしっかり規制を決めて、そして質の担保、そして情報の管理、厚生労働省が民間だろうが医療だろうが一元的にちゃんとやっていく、私はその必要があると思いますが、大臣、いかがですか。

武見国務大臣 まずは、議員立法に基づいて基本計画を策定するということ、しっかり、急ぎ、御指摘の点などについてもそれを検討していくことが重要だと思います。

 そして、ゲノム医療に関わる医療における診断と治療への貢献、これはもう改めて、しっかりとしたデジタル化とデータサイエンスに基づいて、エビデンスに基づいて発展させていくことが必要であり、かつまた、この分野は世界的に見ても加速度的に進捗しているという状況が目の前にございます。そういう中で、我が国の医療というものを世界の最先端に、引き続きその水準を維持しようということになりますと、そのための対策というものをやはり国としても策定していくことが必要であります。

 その中で、民間といかに連携しつつ、こうした新しい全体としてのシステム設計を図るかという考え方で、倫理観というものもその中できちんと組み込まれて実際に計画が取り組まれていくということが適切、こう私は考えております。

中島(克)委員 大臣のおっしゃることもよく分かります。だからこそ、海外はもうどんどんどんどん……(発言する者あり)遅れているんですよ。

 要するに、これは、先ほど高田先生、北里大学の話もしましたけれども、民間だろうが医療だろうが管理をしていく。

 最近、ヘルスケアで、この保育園の例もそうなんですけれども、パネル検査を私は初期治療段階から保険適用にしていくべきだと前回も質問しましたが、何か、遺伝、ゲノム情報を基に予防医療へインセンティブを働かそうという、少しねじ曲がった考え方をされている方がいる。将来的に、私、それもありだとは思うんですが、今の段階はまだ、質の担保も、そして、先日法務省にも確認しましたけれども、やはり、究極の個人情報である遺伝情報の管理、差別、不利益な取扱い、何の規制もできていない中で、安易にそういう広告を打って、それに乗っかってしまう、そういう危険性が非常に高いということでありますから。

 大臣には、改めてですけれども、今の経産省、民間のDTC、これを管理するのは私は難しいと思う。厚生労働省が一元的に民間だろうが医療だろうが管理をしていく、規制を強めていくことを求めたいと思いますし。

 当然、人権への配慮は法務省、消費者庁にも関わることであったり、遺伝カウンセリングの育成、人材確保は文科省、保険加入の差別取扱い防止の観点では金融庁と、各省横断的に取組を進めることが重要でありますし、もう既に立法がされておるわけでありますから、基本計画を待ってではなくて、その前に、例えば今の経済産業省と厚生労働省もワーキングをつくって、一つの一体的な管理の仕方、規制の仕方を取り組むことこそが、世界水準に近いゲノム医療環境を我が国が整備することになるということでございますので、是非大臣、先ほどの御答弁どおり、我が国が世界水準を超えるゲノム医療、遺伝医療を確立するのであればここが肝ですから、この基本計画でより具体的な内容にしなければならないと、是非、リーダーシップを、改めて決意をお願いしたいと思います。

武見国務大臣 御指摘のような遺伝子情報に関わるデジタル化、そしてデータサイエンスというものを踏まえて、どのように個人の権利をきちんと守りながらそうしたシステムと、そのためのネットワークをつくっていくのかというのは、我が国の中で最も喫緊の課題になってきているというふうに思います。

 それだけに、様々なこうした再生医療が現実には起きている中で、実際に遺伝子情報の扱いというものについて時に不適切なものも若干見られるという状況は、やはり何としてでも防いでいかなければなりません。

 そうした倫理的なルールの設定というものもしっかりと検討していきながら、経産省ともしっかりと連携をして、既に、DTCの遺伝子検査ビジネスにつきましてはその在り方に関する研究会というのがございまして、そこに厚生労働省もオブザーバーとして参加をして、そしてその連携を密にしながら検討を今現在進めております。

 厚生労働省が規制、関与する場合にはいわゆる衛生規制が必要な場合になると考えられますけれども、このような観点を含めて、基本計画や経済産業省の研究会の場で議論を迅速に進めていきたいと考えます。

中島(克)委員 経済産業省とというよりは、私は、厚生労働省が主体で、さっきも言ったように、一元的に民間だろうが何だろうがやらなきゃいけない問題だと思いますから、是非、それ以外のことは各省庁横断的なことなので、出口は医療。

 私、前回、ちょっと言葉足らずだと私の医療の先輩から怒られちゃったので改めて言いますが、私が医師になって初めて担当した患者さんは、十七歳の高校生、家族性大腸ポリポーシス。これは、FAP、遺伝子の変異によって起こる、十代が好発年齢で、私が診た患者さんは大腸全摘、小腸人工肛門。恐らく好発では三、四十代でがん化するという遺伝疾患。常染色体優性遺伝ですから、両親のお一人がその遺伝子を持っていれば、二人に一人のお子さんは大腸ポリポーシスになる。でも、その子の夢は、将来結婚して子供を持つこと。今、元気であれば四十代後半だと思いますが、そういう思いを抱えているその子の夢が、戸惑ったわけですが、でも、いずれ医療が発展してこの病気を治してくれる、その光が今差してきているわけです。

 でも、その子がもし治療を受けたとしても、そのゲノム情報を基に差別的取扱いを受けてしまったら、これは元も子もない、そういう状況なわけですから、是非、大臣にはその認識をより一層強めていただきたいということをお願いをいたします。

 岩田副大臣、これで大丈夫でございます。

 それでは、災害、被災地視察について、関連して質問をさせていただきたいと思います。

 大臣、今国会の所信表明で、能登半島地震にまず冒頭触れられておられました。被災者の方々の命と健康を守ることが重要であると述べられ、二次避難を含めた避難先等における保健医療、福祉的支援の強化、水道の復旧支援など、被災者の声に寄り添いながら、生活となりわいの再建支援に全力を尽くすと強い決意を述べられたわけですが、私、発災から六日目に現地に入り、寒冷災害、交通災害、そして感染症災害と、こういう状況にあったわけであります。

 そして、避難所においては、DMATはたくさんいましたけれども、残念ですが、高齢化率が高い地域で発災した、避難所で福祉的サービスを提供する人材が圧倒的に足りなかった。

 今日は内閣府から政務官も来ておられますが、資料の六枚目を見ていただきたいと思うんですが、六枚目、七枚目ですね。

 改めて、私、四月に馳知事の下にも行きましたが、これは石川県からの要望の第一項目にございます。高齢化率が高い地域で今回発災した災害でありますが、先日、先週も能登半島に行って、非常に福祉ニーズが高いということは分かりました。

 改めてでございますが、災害救助法四条一項に福祉サービスの提供を規定して、災害時における要配慮者への福祉支援が災害救助法の一つであることを明確にするべき、これは災害特でも私質問しておりますが、これは内閣府として明確に、今すぐにでもやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、大串(正)委員長代理着席〕

平沼大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘の福祉の観点は、災害関連死を防止する観点からも大変重要な視点であると考えております。

 このため、現行の災害救助法の運用においても、福祉という言葉の有無にかかわらず、既に、福祉避難所の設置や避難所での福祉支援を行う災害派遣福祉、先ほど委員も御指摘いただいたDWATの派遣など、福祉的な配慮を含めて支援を行っているところでございます。

 災害対策については、個々の災害の教訓を踏まえ、不断の見直しを図ることが重要であり、今回の災害においても、令和六年能登半島地震に係る検証チームで、御指摘の福祉の観点も含めて、政府における災害応急対応の検証を行っているところでございます。

 今後、応急対策、生活支援の在り方に関する全般的な検討を行うための有識者会議の立ち上げを考えておりまして、制度面や運用面での改善にしっかりとつなげてまいりたいと考えております。

中島(克)委員 私は遅いと思いますよ、取りまとめ、振り返り。東日本大震災も熊本地震も、災害関連死、特に熊本地震は三倍から四倍近くになった。そして、私も現地に行っていて、DMATは、これを見ていただければ分かるように、災害救助法の四条一項に規定されていることを原則に、DMATが組織的、阪神大震災を契機にされているわけです。

 橋本筆頭もよくお分かりだと思いますけれども、もう振り返るとか取りまとめる段階じゃないんです。災害関連死を防いでいくために、私のイメージは、DMAT、非常に迅速に被災地に入られますよね。それと同じタイミングで、組織編成された、DCATでもDWATでもいいですが、やはり、全国各地で福祉チームを編成して、DMATと同時期に被災地に入っていく、こういう体制を今すぐにでも取らなきゃいけない。今国会中に規定してください。規定されますかね。

平沼大臣政務官 委員御指摘のように、やはり福祉的な視点は大変重要だと考えておりまして、今、まだまだ遅いというお話もありましたけれども、検証はやはり、しっかりと、まず今回の災害対応も含めていく必要がと考えておりまして、もちろん、厚生労働省とも緊密に連携しながら、しっかりと検討して進めてまいりたいと思っております。

中島(克)委員 武見大臣、これも是非、だって、大臣は、所信表明のときに、被災地の皆さんの命と健康を守ると。そのためには福祉サービス、これは欠かせないんですよ。災害関連死、今、発表された三十人ですが、申請されている人は百人を超えている。恐らくこれから、福祉ニーズが高い地域で、まだいまだに人材が足りませんから、これはすぐにでも、豊後水道で四月に地震があって、私、はっとしましたが、そんなことをやっている間にまたどこかで災害が起きて、同じことを繰り返しますよ。是非、今国会中にやっていただきたいということをお願いをいたします。

 そしてもう一点、私、視察で行ったウミュードゥソラ、私も伺ったんです。ウミュードゥソラは、福祉避難所、元々協定や指定は受けていなかったけれども、県外から集まった医療者で福祉避難所を設置した。資料を見ていただきたいんですけれども、そこで徹底的にやられていたのが口腔ケアです。これは日本医師会が出している、水がないとき、非常時の口腔管理ということですが、こういうコップも配っていたことで、ウミュードゥソラはこれまで一人も誤嚥性肺炎を出していないということ。

 そして、避難所において、最後一点だけ指摘したいんですが、やはり発災直後からインフル、コロナ、ノロ、感染症が蔓延していました。この点について、昨年、感染症危機管理統括庁が十月に発足されましたが、避難所での感染症対策に、感染症危機管理統括庁が感染症の専門組織として、今後、避難所、しっかりと感染対策に対応していくべきだと考えますが、大臣、そのようにしていく考えはないでしょうか。

武見国務大臣 まず、令和六年の能登半島地震における避難所等での感染症対策として、厚生労働省としては、本省職員に加えて、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの職員を派遣をして、感染症管理の専門家と連携して、現地で対策支援を一体となって行いました。

 二〇二三年九月に新設された内閣感染症危機管理統括庁は、パンデミック等の感染症危機に対応する役割を有しておりまして、厚生労働省と内閣感染症危機管理統括庁は、平時より情報共有などを行って、連携体制を構築をしております。

 今般の能登半島地震においては、避難所等における感染症状況であるとか、あるいは一・五次避難所におけるインフルエンザワクチン接種の体制整備などについて、統括庁との間で適時情報の共有も行ってきております。

 内閣感染症危機管理統括庁を担当する国務大臣は、私厚生労働大臣とともに、政府の非常災害対策本部の本部員となっておりまして、こうした枠組みを踏まえつつ、今般の能登半島地震の経験も踏まえて、災害時を含めた危機管理として感染症対策というものを実効的に支えられるように、今後ともその連携をしっかりして進めていきたいと思います。

    〔大串(正)委員長代理退席、委員長着席〕

中島(克)委員 感染症危機管理統括庁の役割の一つに、災害時の避難所での感染対策、これを明確にすることを改めて強く求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 本日、我々日本維新の会としましては、年金の問題について質疑をしていきたいと思います。来年の夏には大きな年金の改定があるということで、私たち日本維新の会も、厚労部会がまた一体となって、来年の夏に向かって、チームワークよく質疑をしていきたいと思います。

 まず冒頭、年収の壁について質問をさせていただきます。

 今朝の、これは朝日新聞のデジタル版なんですが、厚生年金の適用の拡大へ、非正規の低年金問題に対応、企業規模条件の撤廃ということがありました。

 この百三十万円の壁というのは、私も現場で仕事をしながら、いろいろな会社を回りながら思うんですが、やはり百三十万円を超えないように働くことを抑制してしまうという、非常に働いてもらう方が減ってしまう問題がありますし、また、年末に時間調整をしてしまうので年末に大変人手が足らないというような問題が発生していますし、私自身もそれを体験をしております。

 日本経済新聞、これは二三年五月三十一日ですが、厚生年金、パート適用拡大、企業の規模要件撤廃へ政府が議論、加入百三十万人の増加を試算されているということが書かれておりましたので、これから続いてきた中で、今日の新聞の報道だというふうに思います。

 ただ、撤廃をするといっても、サービス業の適用はどうなるのかとか農林水産業はどうなるのかということもありますし、百三十万円の壁がこのまま残れば、余り厚生年金の適用拡大に寄与していかないのではないかというふうに思うんですが、まず政府参考人の方にお伺いしたいのは、この百三十万円の壁ということについてどのように考えているか、今後どうしていきたいかということをお伺いをいたします。

橋本政府参考人 今委員が御指摘いただきました百三十万円の壁というふうに言われている問題につきましては、第三号被保険者あるいは健康保険の被扶養者というふうに呼ばれている方々が、年収が百三十万円を超えるということになりますと、被扶養というものを外れて、年金でいえば第一号被保険者になり、また医療保険でいえば国民健康保険の方の被保険者になっていく、そういったラインとして意識されている問題ということで、年金に関して言えば第三号被保険者ということでございます。

 この制度につきましては過去からずっといろいろな議論がされてきておりまして、その中では、この制度について、単に専業主婦を優遇しているというふうな捉え方をするのではなくて、第三号被保険者というのはパートやアルバイトとして働いている方々やあるいは出産や育児のために離職した方々など多様な属性を持つ方々が混在していて、そういった状況にも配慮しながらその在り方について検討する必要がある、そのように言われてきているものでございますし、また、私ども今そのように考えているところでございます。

 一方で、共働き世帯の増加などの状況を踏まえ、第三号被保険者については将来的に縮小していく方向性でございますし、また、従来から、その縮小、見直しのステップとして被用者保険の適用拡大ということを進めてきたわけでございます。

 その上で、当面の対応策である年収の壁・支援強化パッケージを着実に実行して、年収の壁を意識せずに働くことができる環境づくりを後押ししているところでございますし、また、第三号被保険者制度の在り方あるいは被用者保険の適用拡大などの制度の見直しについては、現在、社会保障審議会年金部会において検討を行っておりますので、年末頃の取りまとめに向けて議論を進めてまいりたいというふうに考えております。

一谷委員 年金部会での議論でという多分回答が多くなるかなというふうに思うんですが、今日の質疑の冒頭、自民党の上田先生もこの支援パッケージについて質問されまして、私も驚いたんですが、二十一万人の方がこの支援パッケージを利用されているということで、非常に、働きたいなと思っておられる方、また働いてほしいと思っている企業が多いんだなというふうに思います。

 実際、働いておられる方の回避行動もあるかも分からないですが、雇用者側としても、厚生年金を払うと負担になってくる、これは結構重い負担になりますので雇用しにくいということもあると思うんですが、先ほどの参考人の方の答弁でいきますと、撤廃していくような話がありました。

 日生のレポートによりますと、二三年度の年金部会では、労働者による適用回避行動が生じないよう、労働時間などの働き方に関する加入要件の撤廃や大幅な緩和を求める意見も多かったということがあります。加えて、子育て支援等も一緒にやっていかないといけないんじゃないかということなんですが、冒頭の上田先生では、時限的に、期限を考えていったらいいんじゃないかというふうな御意見だったんですが、これは党の意見ではないですが、私は、撤廃していく方がより働きやすい、また、できるだけ所得を増やしていった方がいいというふうに考えるんですが。

 今回の二百十三回の予算委員会でも鈴木亘学習院大学の教授がコメントをされているんですが、できるだけ撤廃をしていった方がいいんじゃないかという意見とともに、やはり、子育て支援を充実させていくことで働くことをしやすくした方がいいんじゃないかという意見があったんですが、この部分について政府参考人の御回答があればお願いいたします。

橋本政府参考人 今いろいろと委員から御紹介がありましたように、第三号被保険者の在り方については、様々な立場から様々な議論が行われております。

 いろいろな立場がある中で、例えば、仮に何らかの見直しを行った場合に、それに伴って影響が及ぶ方に対して何らかの配慮措置を講じるべきだ、そういった意見も様々な意見の中の一つとして見られるところでございますが、先ほど申し上げましたように、現在まさに制度に関する議論を行っていただいている真っ最中でございますので、私の方から一定の方向性を持った形でのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

一谷委員 これは私も、自ら事業所をやっている身としても、できるだけ働いていただく時間を増やしていただきたいというふうに思いますので、是非今回の改定が実りあるものになることを期待をしております。

 もう一つ、百三十万の壁もあるんですが、あと、百六万の所得税や住民税の課税対象というところもありますが、こういったことについては政府の方は一体どう考えているのかということについて、もし回答があればお願いいたします。

橋本政府参考人 年収の壁というふうに呼ばれているもの、これは所得税の課税ラインとの関係での百三万という一つのラインがあったり、あるいは社会保険の適用との関係のラインである百六万というラインがあったり、あるいは先ほどの被扶養者認定との関係での百三十万というラインがあったり、様々なラインが意識されているわけでございますけれども、私どもとしては、今回の年収の壁・支援強化パッケージ、この中で、百六万の壁の問題あるいは百三十万の壁という問題、両方とも意識する中で、それらを当面の対応策として着実に対応していくためのものとして今取り組んでいるわけでございます。

 委員今御指摘いただきました百六万の壁ということとの関係で申し上げれば、やはり、短時間労働者の被用者保険の適用拡大ということを更に進めていくということの中で、いわゆる百三十万の壁を感じながら働く三号被保険者が減少していくということが一つの解になってくると思いますし、また、百六万円というラインを超えて被用者保険の適用を受けるということが、御本人にとっても、長い目で見たときにいろいろなメリットがあるということを丁寧に周知していくということも大事でございますので、そういった取組も併せて進めていきたいというふうに考えております。

一谷委員 これを進めていくに当たって、先ほどの鈴木亘先生、子育ての支援というところをどうしていくかという話があって、今回、子育て支援金のところでいろいろ策を練られているんですが、この百六万、百三十万の壁に対して、改善をしていくときに、子育て支援について何か政策を更に考えていくというところはありますでしょうか。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 こども家庭庁の方でも、今回、加速化プランという形で非常にいろいろな施策に取り組んでいるところでございますし、私ども厚生労働省といたしましても、共働き、共育てということで、この委員会でも御議論いただきました育介法の見直しを始めとして、男性育休ですとかそういったこともいろいろ取り組んでいるところでございます。

 女性の方々、男性の方々、本当に、両者が共に働きながら共に子育てができる環境、そういったものを実現できるようにしっかりと取り組んでいきたい、このように思っております。

一谷委員 済みません。質問に急に答えていただいて、ありがとうございます。

 そうですね。男性の育休の話もありましたし、ここは一体的にやっていかなければならないというふうに思いますので。

 そうしたら、次の質問に行かせていただきます。二番目の質問を大臣にさせていただきたいと思うんですが、岸田内閣の勤労者皆保険についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 予算委員会でも、当方の藤田幹事長が質問をさせていただいております。先ほどの保険の適用の拡大とともに、フリーランスやギグワーカーの方への適用をしていって、それを企業に担わせていくというような話になるというふうに思います。

 なかなか検討が進んでいないように思うんですが、日本総研、研究所のレポートには、フリーランスやギグワーカーへの適用については新しい仕組みが必要だというふうにも書かれています。ただ、これまでの年金部会での具体的な議論はまだ進んでいないんじゃないかということなんですが、これは二〇二四年二月のレポートですのでちょっと古いのかも分からないです。今、政府の方で、岸田内閣がおっしゃった勤労者皆保険についてどこまで議論が進んでいるのかということをお伺いをしたいと思います。

武見国務大臣 御指摘のフリーランスそれからギグワーカーの方々については、現行の労働基準法上の労働者に該当する場合には、基本的には被用者保険が適用されます。

 一方で、昨年十二月に閣議決定されました改革工程では、労働者性が認められないフリーランス、ギグワーカーに関しては、新しい類型の検討も含めて、被用者保険の適用を図ることについて、フリーランス、ギグワーカーとして働く方々の実態であるとか諸外国の事例なども参考としつつ、引き続き検討を深めるということになっております。

 厚生労働省におきましては、現在、フリーランス、ギグワーカーなどの多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方も論点の一つとする、有識者や労使団体等から成る懇談会を開催しておりまして、昨日も、五月二十八日、御議論をいただいたばかりであります。

 昨日の懇談会でも様々な御意見をいただいておりまして、現段階でフリーランス、ギグワーカーの方々への適用について道筋が立っているわけではございませんが、引き続き、この懇談会であるとか社会保障審議会の年金部会で議論を重ねていきたい、こう考えております。

一谷委員 政府参考人の方にお伺いをしたいんですが、予算委員会での藤田幹事長の答弁の、いろいろやり取りでは、今の大臣のお答えと少し違ったんじゃないかなというふうに思います。どちらかというと、企業にフリーランスの方やギグワーカーの方の社会保障の負担を担っていっていただくような雰囲気の答弁だったと思うんですが、そこはちょっと変わってきたんでしょうか。

 なぜかといいますと、その答弁の中で、企業、中小企業は非常に賃上げするのも大変な状況の中でそういった方々の負担を更に背負っていくというのは、雇用にもやはり影響が出てくるのではないかというふうに思うんですが、この辺り、もし考えが少し変わってきているのであれば御答弁いただけたらと思います。

橋本政府参考人 フリーランス、ギグワーカーというふうに呼ばれる方々の中でもいろいろな方々がいらっしゃいますので、先ほど大臣が答弁しましたように、労働基準法上の労働者に該当する場合、社会保険においてもきちんとこれに適用していく、これは実務上も今既にそういった形で動かしているところでございます。そういう意味では、企業にもしっかりとした責任を負っていただくということが前提でございます。

 一方で、労働者性というものが認められないような方々、つまり、企業との間での雇用関係なりそういったものが認められないというふうに考えられる方々について、社会保険制度としてどのように向き合っていくのかということに関しては、やはり昨日の懇談会の中でも様々な意見があったところでございまして、例えば、対象者はどういうふうなところで線を引くのかとか、あるいは、保険者としての負担の在り方はどうするのかとか、あるいは、そういったフリーランスのところまで被用者保険の適用を拡大することはどういう意味から必要なのかとか、様々な観点からの御議論があったというふうに承知しておりますので、そういった意味では、なかなか、方向性という意味で収れんしているものが現段階ではございません。

一谷委員 今御答弁いただいたとおり、日本総合研究所のレポートにも、確かに、雇用か委託かという問題もあったりとか、事業主側が雇用しているのにフリーランスの委託に置き換えてしまうようなことが起こっているということもあって、なかなか実態をつかんでいくのは難しいのではないかというふうに思います。ただ、このレポートには、勤労者皆保険は日本経済を強くするというふうにも書かれています。なぜかといいますと、社会保障費の、適用によって、適用者が少なければ、価格転嫁しなくて仕事ができているということで、しっかり雇用保険、何と言うんですかね、社会保障の費用を払っている事業所とでは公平な競争環境が成り立っていないのではないかということも書かれていまして、確かにそれはそうだなというふうにも思います。

 ここは考え方の違いだと思うんですが、我々日本維新の会としては、やはり個人個人の保障の方が大事なのではないかというところで、ベーシックインカムというのを訴え、税と社会保障と労働の流動化ということを訴えています。ここは、この夏の年金の改革に向けて更なる議論を深めさせていただけたらというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、質問をさせていただきます。基礎年金の税方式というふうに質問の要旨を送らせていただきました。

 現在、マクロ経済スライドによって年金の給付は決まっていくんですが、負担は固定されているということですが、給付は下がっていってしまうというふうに聞いております。そうなってくると、なかなか、年金で暮らしておられる方の、シニアの方の生活もちょっと大変になってくるのではないかなというふうに思います。

 国民年金の、基礎年金の方ですね、これは、年金の再分配という意味もありますので、今、税金が二分の一入っているということもあるんですが、これを思い切って全て税でやっていくというふうに考えることもできると思うんですが、政府の方ではこの辺の考えはどうなっているのか、参考人の方にお伺いいたします。

橋本政府参考人 今御指摘いただきましたように、現在の年金制度の仕組みの中で、マクロ経済スライドという仕組みがございます。これについては、将来世代の給付水準を確保するため足下の給付調整を行う仕組みでございますが、デフレ経済の長期化等の影響を受けまして基礎年金の調整期間が長期化したことにより、御指摘のとおり基礎年金の将来水準の低下ということが見込まれております。こうした点も踏まえまして、次期年金制度改正に向けて、社会保障審議会年金部会において、基礎年金の給付水準に関わる論点も含めまして、関係者と十分に議論しながら今検討を進めているところでございます。

 なお、今御指摘いただきました基礎年金の税方式化ということでございますが、仮にその給付財源を全て税により賄うということにすれば新たに多額の税財源が必要になるということが一つ、それからまた、全ての高齢者に対して一定額の年金を保障するとすれば、これまで年金保険料を払ってこられた方々と払ってこられなかった方々との間の公平性をどのように確保するのか、そういった様々難しい課題があるというふうに考えております。

一谷委員 確かに公平性の問題もあると思うんですが、今、低年金、無年金の問題もありますし、今回の、生活困窮者、この厚労委員会でも議論をされた中では、四十代、五十代の方の資産が余りなくて、その人たちが全員生活保護になっていくということも考えられるわけです。二〇二一年のOECDのデータでも、日本の相対的貧困率が一五・七%ということで、六人に一人ですか。原因となるのが、高齢者世帯の増加であったり、一人親世帯の増加ということにあります。

 本当に、基礎年金の部分を年金のベーシックインカム化することによって、私は、これは間違っていたら教えていただきたいですが、労働市場の活性化にもなっていくのではないかなというふうに思います。確かに、ここを税でどういうふうに賄っていくかということも非常に重要ではあると思うんですが、先ほどの、マクロ経済スライドがあって百年安心というようなことも言われていましたが、年金制度の安心はあるかも分かりませんけれども、年金の生活の安心ではちょっとなくなっていくのではないかなというふうに危惧しておりますので、ここも来年夏に向けてしっかりと議論をしていきたいというふうに考えております。

 続きまして、年金のクローバックについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは、先ほどの、私がお話しした、基礎年金の部分を全部税財源化したらというところもありながら、今の二分の一でもできると思うんですが、やはり、所得がすごくあって豊かなシニアの方に関しては、基礎年金の部分は返していただけたらいいのではないかなというふうに考えています。

 実際、カナダの方ではこれはされているというふうにお伺いをしています。結構しっかりとした制度があって、非常にいい制度だなというふうに思うんですが、一部ちょっと御紹介させていただきますと、クローバックというのがあるそうです。政府が支給した福利厚生や税控除の一部を、特定の条件が満たされた場合に返還を求める仕組み、高所得者や特定の状況に該当する受給者から公的支援の一部を取り戻すための制度だというふうになっています。そのほか、子育て世帯への支援であったりとか、家計の一定の閾値を超える部分に関しては支給額が減少する、これは、所得が低い方に優先的に支給をするというふうな、カナダ・チャイルド・ベネフィットというのもあるそうです。

 様々こういったクローバックの制度があり、日本でも、全く一緒ではないと思うんですが、児童手当は所得制限が撤廃になる可能性がありますので違いますけれども、高額医療費制度であったり年金制度、生活保護制度、住民税の非課税の限度額の制度もこれに類似しているのではないかなというふうに思うんですが、是非、豊かなシニアの方に一階部分の基礎年金をクローバックしていただくという考えについて、政府の方の御意見をお伺いしたいと思います。

橋本政府参考人 今御指摘いただきましたいわゆるクローバックについては、二〇一二年、平成二十四年当時の民主党政権の下での政府提出の年金機能強化法案に盛り込まれた、高所得者に対する基礎年金のうち国庫負担分の一部を支給停止する、こういったものが当たるのではないかというふうに考えております。

 ただ、その導入につきましては、二〇一二年に行われました民主党、自民党、公明党のいわゆる三党協議におきまして、一つは、保険料納付インセンティブに与える悪影響があるのではないか、また、約束した給付が支払われないというのは社会保険の原則に反するのではないか、こういった懸念が示されまして、衆議院における修正で法案から削除されたというふうに承知しております。

 高所得者に対する基礎年金の支給停止については、三党協議で示された懸念のほか、所得額のみに応じて年金額を支給停止する場合、資産を勘案しないことにより不公平が生じるということや、あるいは、正確で公平な所得捕捉等の制約があるといった課題も存在しているというふうに考えております。

 なお、社会保障・税一体改革の後、平成二十五年に取りまとめられました社会保障制度改革国民会議報告書におきましては、高所得者の年金給付の見直しについて、世代内の再分配機能を強化する観点から、税制での対応や、各種社会保障制度における保険料負担の在り方等、様々な方法を検討すべきというふうにされているものと承知しております。

一谷委員 財源に限りもありますので、是非このクローバックについてもこの夏に向けて議論をしていきたいというふうに思います。

 続きまして、五番目の質問をさせていただきたいと思います。

 マイナンバーの話になるんですが、マイナンバーの導入によって歳入の一元管理がもうできているのではないかなというふうに考えております。私たちは、歳入庁、デジタル歳入庁という提案をしているんですが、マイナンバーの導入によって歳入の一元化が実現しているというふうに私たちは考えますが、政府の方ではどういった考えかをお聞きしたいと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 歳入の一元化、どういうふうな形でおっしゃられているかあれなんですけれども、あわせて、給付と負担の一元化という意味で言わせていただければ、私ども、これまでも、厚生労働省として、公平公正な負担と給付の実現というのは非常に重要な課題だと思っておりますし、また、必要な情報をしっかり把握し、適切な給付や負担の実現につなげていく、こういったことが大切だと思っております。

 そうした観点で今までも様々な取組を行っておりまして、例えば、患者等の自己負担に考慮して必要な給付を確保する観点から、制度横断的な取組として、医療とか介護の高額医療、高額介護の制度だけではなくて、それを合算するような形で負担軽減をするような仕組みを設けたりですとか、また、今般、医療・介護保険において、金融資産等の取扱いとか金融所得の勘案、こういったものについても議論するというような形で行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、そういった歳入また歳出、給付、負担、こういったものの一元的な把握をしていきながら、そういった公平公正な仕組みというものをしっかり取り組むということについては、私どもとしてもしっかり取り組んでいきたい、このように思っております。

一谷委員 今、給付の話もしていただきました。次の質問で、給付の一元管理ということをお聞きしたいというふうに思っていたんですが。

 私は、省庁の縦割りみたいなものは、マイナンバーのデータのやり取りでもうなくなっていっているのではないかなというふうに思います。給付のお話もいただいたんですが、公平性の担保というところから、給付の一元管理は内閣の中では一体どこが理解をしているのかということについて御答弁いただけたらと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 給付の一元的なといいますか、それぞれの制度の中でそれぞれの役所においてやられている部分が多かろうとは思いますが、一方で、データを例えば一元的に管理するということにつきましては、情報漏えいが起きたときのリスクをどう考えるかとか、また、各種情報を一か所でデータ管理することについて、国民の御理解、こういったものを得られるのかとか、そういったようないろいろ課題があると思っておりますし、そうした中で、私どもといたしましては、現在、マイナンバー制度におきましては、各行政機関等が保有している個人情報を法令で定められた範囲で情報連携により取得できるというような形で対応しているところでございます。

一谷委員 確かに、情報が一か所に集まって、年金の情報なんかが集まってという批判もあると思うんですが、マイナンバーというのはそもそも分散型集中管理ということで非常にリスクも少ないのではないかなというふうに思いますので、私たちとしてはマイナンバーをしっかり進めていくということをお誓いして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

新谷委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

新谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 まず冒頭、今日、政治改革特別委員会の理事懇が断続的に開かれておりまして、私、そちらに抜けなければならないものですから、足立委員、大西委員、宮本委員、西岡委員の各位に御協力いただいて順番を変えていただいたことをまず感謝申し上げます。また、理事の皆さん、ありがとうございます。

 今日は、まず最初に、ペリリュー島の遺骨収集についてお伺いしたいと思います。

 先週の金曜日でしたか、戻ってきた政府の遺骨収集団が、新たにペリリュー島で集団埋葬地、これは資料二という裏の方ですけれども、これは米国の資料なんですけれども、そこに載っている、真ん中あたりにジャップ・セメタリーという、ジャップというのはちょっとけしからぬと思うんですけれども、この辺りが、あるだろうと地図では示されていたんですけれども、実際の場所を発見してまいりました。

 私は、水戸二連隊ペリリュー島慰霊会の顧問を務めさせていただいておりまして、今日は、そのペリリュー島慰霊会の会長及び事務局長の意を受けて質問させていただきたいと思います。これまでも、昨年の二月二十日の予算委第五分科会や、十一月八日の厚生労働委員会で武見大臣にも遺骨収集のことを議論させていただいております。

 周囲二、三キロのペリリュー島というのは、パラオ共和国にある小さな島なんですが、戦前は太平洋一の飛行場があって、そこを拠点にフィリピンに再上陸する拠点として取ろうとして、米軍が総力を挙げてこの島を奪いに来ました。ちょうど八十年前の九月十五日から十一月二十七日まで戦闘は続いたんですが、当初、一週間で陥落できると言っていたのを、我が地元の水戸歩兵二連隊が、死力を尽くして、玉砕をせずに、延ばしに延ばし、二か月以上戦いまして、一万一千人いたんですけれども、生存できたのは僅か三十四人です。それまで玉砕もせず、戦って戦って倒れていって、今なお数千柱の御遺骨が残されております。まだ御遺族の方は私の地元に多くおります。

 先ほど申しましたように、先週末帰ってきた遺骨収集団が集団埋葬地というのを見つけまして、米軍資料によると、一千八十七柱が埋まっているというふうに資料でありますので、かなりの御遺骨が埋まっておりまして、遺族の方は、これで自分の父親の骨が帰ってこられるかもしれないということで、非常に沸き立っているというところでございます。

 ただ、従来のように日本戦没者遺骨収集推進協会が計画を作って事務的に進めても、なかなか膨大な時間がかかると思うんですね。これまで、こうした集団埋葬地が見つかったときにどのような対応を行ってきたのか、その点についてまず政府参考人から教えてください。

朝川政府参考人 お答えいたします。

 近年、我が国が海外の大規模な集団埋葬地で遺骨収集を実施した事例といたしましては、平成二十六年度の海外資料調査により情報を入手したパラオ諸島アンガウル島の集団埋葬地が挙げられます。この事例では、パラオ政府より、考古学的な調査と同報告書の提出が求められましたことから、考古学者に同行いただいて遺骨収集を実施しています。

 収集開始当初は考古学的調査と同報告書作成などに相当の時間を要したことに加えまして、新型コロナウイルス感染症の影響による中断期間もありましたが、令和五年度から、時間を要していた考古学的調査等の一部を合理化するなど、収容作業に注力するための見直しを行って、事業の加速化を図っているところでございます。

福島委員 大臣、今言ったアンガウルはいつまでやるかというと、令和十八年までなんですよ。多分、私も生きていないかもしれません。遺族の方も生きていないかもしれない。

 パラオでの遺骨収集予算というのは、大体、平成二十九年度以降、予算額は横ばいなんですね。これは千八十七柱も埋まっております。ずっとこの遺骨収集を続けてきた影山さんという事務局長は、もう体が悪くてなかなか東京にも出てこられない状況でありますし、水戸市遺族会の会長もこの御遺族でございますけれども、なかなか動けないというところで、一日も早い御帰還を待っております。

 来年は戦後八十年。今年は、このペリリューの戦いが始まって終わってから八十年の節目の年です。ここは、私は政治判断が必要だと思うんです。

 今日、遺骨収集団が帰ってきて、あえて早く質問をまず大臣にしたいということ、これは私だけじゃなくて、我々遺族会、多くの意思なんですけれども、まず政治判断として、これはだらだらやるんじゃなくて、是非、集中的に予算を投下して、一日でも早く御遺骨を遺族の元、そして故国に戻していただきたいと思うんですけれども、その予算措置、来年度予算要求も含めて、大臣、是非政治決断していただけないでしょうか。

武見国務大臣 第二次世界大戦中のペリリュー島をめぐる激戦によって貴い命を失われた方々がたくさんいらっしゃることは、私も歴史の中でよく理解をしております。そうした方々の御遺骨というものがこのような形で大量に見つかったということは極めてやはり重く受け止めて、そして、そのために、一日も早く御遺骨を御家族にも戻す、そして祖国に戻すということのための努力は、最大限私どもとしてはしなければならないと思います。

 そのために、やはり現地国政府ともしっかりと協議をして、そして調査をしっかりと進め、そして迅速に御遺骨に関する対応ができるように、最大限の努力をしてみたいと思います。

福島委員 ありがとうございます。是非お願いします。

 私も遺骨収集に政府の収集団の一員として参加しまして、半日で大体一柱分を掘ることができるんです、一人で。持って帰ると、温かいんですよ。骨だけれども、まだ生きているような方なんですよ。私は宿舎で、地元のお酒を供えて、お帰りなさいといって。みんな待ちわびていますので、是非よろしくお願いします。

 やはり、先ほど大臣もおっしゃった、パラオというのは一筋縄でいかない国でありまして、人口二万人なんですけれども、ある意味、援助慣れしているというか、一筋縄でいかないところもありますので、先ほど参考人からも、考古学調査を要求してきたとか、いろいろあるんですね。

 でも、このパラオというところは、そもそも今緊迫化する北東アジア情勢でもキーとなる場所でありますので、そうしたパラオの外交関係の強化も含めた観点から、この遺骨収集をてことして、日本政府が全面的に協力してやるべきだと思うんですけれども、外務省としてこの事業に対してどのような思いで臨むか、是非御答弁いただければと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、厚生労働省を始めとする関係省庁及び在外公館と連携しながら、遺骨収集に関する我が国とパラオ政府の関係当局間の覚書作成に当たりまして、日・パラオ関係の重要性を含む外交的な観点から、関係当局の取組を支援するなど、遺骨収集帰還事業を実施するために必要な取組を実施してきたところでございます。また、累次の首脳会談や外相会談等の機会を活用し、パラオ政府に対しまして、遺骨収集帰還事業への協力要請を適切に行ってきているところでございます。

 外務省といたしましては、今御指摘のありましたとおり、パラオとの関係の重要性も踏まえまして、ペリリュー島での集団埋葬地での遺骨収集に関しましても、可能な限り多くの御遺骨を収容し、御遺族に早期にお返しできるよう、引き続き、関係省庁と緊密に連携しつつ、全力を尽くしてまいる所存でございます。

福島委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 次に、能登半島の話なんですけれども、資料一という写真がございます。これは、私が現地で先週の視察で撮ってきたものでありますけれども、左が珠洲市宝立小中学校の一次避難所、右の上が金沢市いしかわ総合スポーツセンターの一・五次避難所。私、行ってびっくりしたのは、五か月たって、この段ボールに、大臣、五か月住めますか。すぐ隣が段ボールのところにあって、段ボールベッドですからだんだん沈んでいって、段ボールベッドも何度も替えなきゃならないという、私、この姿を見て、果たして日本は先進国であろうかということを思いました。

 なおかつ、二月には、やはりこうした環境ですから、感染症がかなり広がっていたということでありまして、やはり五か月もプライバシーのない空間で、段ボールベッドで過ごさせるというのは、憲法第二十五条に定める健康で文化的な最低限度の生活にも反すると思うんですね。さらに、おかしいのは、一・五次避難所の金沢は、ちゃんとテントで一つ一つ別になって、段ボールベッドがこの中にある環境が整えられている。こっちは民間が運営している。市町村でこれだけ違うんですね。

 これまで厚労省のガイドラインでは、高いパーティションが望ましいとか、テントを利用する場合にはとか、ちょっと限定して書いてあるので、私は、やはり五か月たってこの状況というのは、もう日本は先進国じゃない、国民を見捨てていると言っても過言ではない状況だと思いますので、感染症防止などの観点から、厚生労働省としてももうちょっと、今回の経験を踏まえて、ガイドラインで避難所の居住環境について一定の指針を設けるべきではないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

武見国務大臣 避難所における居住環境の向上というのは、感染症対策の観点からも重要なものであると認識をしております。このため、厚生労働省におきまして、従前より、内閣府の防災担当などとの連名で、新型コロナウイルス感染症対策に配慮した避難所開設・運営訓練ガイドラインというのを発出しております。

 今回の能登半島地震においても、このガイドラインを発災当日に速やかに自治体に対して周知をしたほか、感染症の専門家とともに、避難所の限られたスペースの中での感染者の動線の管理の助言など、現地での感染対策の支援を行ってまいりました。

 厚生労働省としては、引き続き、関係省庁とも連携しながら、被災地の実情をしっかり踏まえながら、被災者の健康を守るための取組を進めたいと思います。

福島委員 引き続きだけじゃなくて、引き続いちゃ駄目なんですよ。経験を踏まえて、マニュアル等を見直すべきところは、局長もさっきおっしゃっていました、是非見直していただければというふうに思っております。恥ずかしいと思います、五か月たってこの状況では。

 石川県の西垣副知事らとの意見交換では、今、輪島市の市立輪島病院とか珠洲市の珠洲市総合病院、穴水町の公立穴水総合病院などの復旧に当たっているといいますけれども、そもそもこの地域は高齢化、人口減少が進んでいたのに加えて、地震で金沢等へ避難者が出ちゃって人口が更に減っている、交通網の遮断で生活圏が変わってしまっている、医療従事者の圧倒的な人手不足などで、もう持続可能ではない状況になっていると思います。特に、私も地元の幾つかの公立、公的な病院を見ていますけれども、百床ぐらいの病院が中途半端にぽつぽつぽつとあるのは一番経営として大変だと思うんですね。震災前から病院の統廃合等の検討は進んでいたというんですけれども、私は、単なる統廃合ではない、根本的な地域医療圏の立て直しが必要だと考えております。

 例えば、医療DXを使った最先端の技術とか、システムをつくって、場合によったら、既存の制度とか規制を、特例措置を、私、構造改革特区というのをつくりましたけれども、そうした仕組みをつくりながら、国も支援を行って、これからこうした過疎地での高齢医療の問題を抱える地域が増えると思いますので、そうした地域のモデルとなるようなものをつくるのが必要なんじゃないかと思うんですね。

 済みません、今日は総務省の方に来ていただいているんですけれども、時間がないので空振りで申し訳ないんですけれども、七尾市では昨年末に郵便局で遠隔医療の実証実験というのが行われていて、それなりの成果を上げているというふうに聞いております。郵便局を活用するというのはすごくいいアイデアだと思うんですね。

 これはまだ実証ですから、そうしたものを本格的にやるような、単に復旧をするというものや、今後の人口構成を見据えて病院を統廃合するというだけじゃなくて、能登半島全体の医療を、将来的な過疎地域、高齢者が集中的に住む地域の医療モデルをつくるというようなもので、私は、県に任せるだけではなく、国がそれを最大限支持するぞと、むしろ国が引っ張るような形で新しい地域医療構想をつくってはどうかと思うんですけれども、大臣、その考えについての御認識、いかがでしょうか。

武見国務大臣 今、石川県で、御指摘のとおり、復旧・復興本部を立ち上げて、医療機関の今後の機能、それから必要な資源の確保など、奥能登における医療の提供体制の在り方を検討しております。特に、奥能登の公立四病院につきましては、奥能登公立四病院機能強化検討会、これは仮称でございますが、これを開催をし、奥能登における将来の医療の需要を見据えた医療の復興の姿を描いていく予定であると承知をしております。そこで実際に医療の需要が、こうした高齢社会、こうした被災した後にどのような状況になるのかということは、しっかり把握していく必要がございます。

 今後、自治体や医療関係者の下で十分な議論が行われて、地域の実情をしっかり把握をし、それに応じて持続可能な医療の提供体制が再構築されるように、厚生労働省としても、石川県と緊密に連携をし、現場のニーズに応じてしっかりと対応していきたいと思います。

福島委員 東日本大震災のときは、浜通り地区で例えばエネルギーとか農業とかを最先端の産業で生まれ変わらせる、必ずしもそれが今うまくいっているとは思いませんけれども、そうした構想を立てたんですね。

 やはり、能登半島でも国が旗を振って、先進的な地域の医療体制をつくるんだ、これまでの単に再編ではないものをやるんだということは国が言わなきゃできないですから、是非、武見大臣のリーダーシップを期待いたしまして、私からの質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 今、福島委員から遺骨収集のお話がありました。

 質問しませんが、一昨日、千鳥ケ淵の戦没者墓苑で礼拝式がございまして、私も参列をさせていただきましたが、これは厚生労働省主催で、大臣も御出席をというか、主催者として御出席をいただいて、朝川局長もおいでになりましたというか、主催者としてやっていらっしゃいましたが、ちょっと気になったのは、政府はしっかりやっていただいているんですが、主要政党が全部代理なんですね。主要政党の代表が全部代理。別に、お忙しい、みんな忙しいと思うんですけれども、それはやはり、秋篠宮皇嗣同妃両殿下も御臨席をいただいて挙行しているにもかかわらず、各政党は代理ばかり、総理も含めて。

 いろいろな考え方があると思うんですけれども、私がかねがね感じているのは、やはりこれは国家追悼ではないんですね。厚生労働省主催の拝礼式だと。防衛省の自衛官の殉職者の慰霊式典も、これは防衛省主催でありまして、国家追悼ではありません。これは理由があるわけです。これは何度も国会で取り上げてきましたが、七百人以上いる国会議員、みんなほったらかしです。確かに、どうしたらいいか分からない。憲法を改正して政教一致にすればいいんですが、なかなか難しいわけです。

 難しいけれども、これでは、現職の自衛官の方、命を懸けて準備をしていただいている、訓練をしていただいている自衛官、自衛隊の皆様、それから、御遺骨を今収集いただいていますが、まだ百万柱以上の御遺骨が海外に眠っている、こういう中で私たちはなかなか戦後を終えることができない、こういう状況があるということは、厚生労働委員の一人として、おとつい、一昨日、大臣と御一緒に参列をさせていただいた委員として一言申し上げておきたいと思います。

 次に、能登半島でございます。

 能登半島については、今、これも福島委員がやっていただいたように、そして、今日冒頭、新谷委員長から、厚生労働委員会委員派遣報告ということでいただきました。それから、中島委員から、災害関係法令に、救助法、これは救助法だけじゃなくて災対法もそうだよね。

 やはり私も、中島委員がおっしゃったように、これは、ちょっと飛びますけれども、ちょっと先にそっちに行きますね。四ポツね。

 まず、内閣府防災、今日は、平沼政務官、先ほども答弁いただいた。これは平沼政務官に入っていますよね。問い四、大丈夫。

 災害対策基本法及び災害救助法における福祉の位置づけ、これは先ほども御答弁があったので、ごめんなさい、同じ御答弁は要りません。やはりそれは、医療と福祉、横並びで位置づけるべきだと思いますが、いかがですか。

平沼大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほどと違う答弁ということでございますけれども、足立委員からの方は災害対策基本法についても言及をいただいておりまして、災害対策基本法においては、平時から福祉避難所を指定して発災時の早期開設に備えるであったりとか、高齢者、障害者等の要配慮者のうち、自ら避難することが困難であり、避難の際に支援が必要な方について個別避難計画の作成を進める等々、様々な方法で要配慮者への支援等を行っているところでございます。

 先ほどと違う答弁という話がありましたけれども、やはり不断の見直しを図るというのは省内でも共通に認識をしておりますので、検証チーム、そして今後立ち上げる予定の有識者会議においても、福祉の位置づけというのはしっかりと議論して、対応してまいりたいと考えております。

足立委員 政務官、申し訳ありません、繰り返しになりますが、災害対策基本法の八十六条の六には、細かいことはいいですよ、細かいことはいいけれども、ちょっと例示として御紹介するだけですが、災害救助法の、八十六条の六、避難所における生活環境の整備等という部分に、当該避難所における食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布及び保健医療サービスの提供その他と書いてあります。それから八十六条の七にもございますし、それから、先ほどあった災害救助法の四条の四号に医療及び助産と書いてありますが、福祉と書いていない。

 だから、これはあれでしょう、何度か取り上げてきていると思うんですよ。だから、中島先生は優しいから質問で終わりますけれども、僕は、あと三十分ありますので、ちょっとここでやはりしっかり議論したいと思います。

 平沼政務官、いやいや、それは実質やっているんだというのは分かりますが、先ほど福島委員からもあったように、やはり非常に厳しいわけです、現場は。なぜこういう事態が、途上国みたいな状況が続いているのかということで、私たちは、立法府として、やはりこれは根本の法律が間違っているんじゃないかということで、そこから直したらどうかと言っているんですね。

 検討したらいいと思うんですけれども、ちょっとそこは、今日持ち帰って検討する、それぐらいは言っていただきたいんですけれども、お願いします。

平沼大臣政務官 お答え申し上げます。

 検討するというか、先ほどから申し上げておりますけれども、やはり不断の見直しというのは当然必要だと思っておりまして、今、有識者会議であったりとかそういったところでは、必ずやはり福祉の視点、ほかの委員会でも様々同じような趣旨の質問をいただいておりまして、大臣もお答えをいただいておりますし、総理の方からも、やはり福祉の観点というのをしっかり進めていかなければならないという答弁もございます。

 そういったものを踏まえて、不断の検討、見直しをしっかりと行ってまいりたいと思っております。

足立委員 これはどなたでもいいんですけれども、何で入っていないか、御存じの方はいらっしゃる。忘れていただけ。大臣もちょっと首をかしげていらっしゃるけれども、私もよく分からないんですよ。いろいろな人に聞いているけれども……(発言する者あり)ああ、阪神大震災のときに高齢化がそれほど進んでいなかったから深刻な問題ではなかったと橋本岳与党筆頭がおっしゃっているわけであります。一応、誰がしゃべっているか、ちゃんと議事録に残しておかないと。不規則発言にも、いい不規則発言もあるのでね。

 これは、だから、まさに少子高齢化の中で、私たちも伺いました、見ました、視察しました。やはり医療は大分前進をしてきた、これは関係の皆様に感謝をします。でも、福祉にもう一回光を当てなければ、災害関連死がなくならないんですよ。減らない。むしろ増えていく。

 大臣、これはちょっと相談すると。お願いします。

武見国務大臣 特に、御指摘のように、高齢化率が珠洲市は例えば五二%という極めて高い、こうした高齢化社会の中で、しかも、半島という地理的にも極めて難しい地域で起きた、そういう地震災害でございました。それによって、特に二次避難をいかに迅速に行うか、そのときに、福祉でどういう受入先を確保して、そしてそれぞれ地域のコミュニティーというものの中からできる限り孤立しないように対応させるか、様々な配慮を今回は現行法の中で最大限させていただきました。

 しかし、御指摘のように、本来であれば、そうした福祉というものが防災に関わる法律、関連法の中できちんと位置づけられているということは必要なことであったのだろうと思います。

 したがって、今回の経験を踏まえて、厚生労働省としても、防災担当の内閣府としっかりと連携を取りながら、こうした法改正の在り方についてしっかりと検討を進めていきたい、こう考えます。

足立委員 ありがとうございます。

 私も、今、議員立法の準備を始めました。だから、これは競争です。まあ、どっちでもいいんですけれどもね。だから、政府が先にやるか、国会が先にやるか。是非これは、今大臣が御答弁いただいたとおりです、やるべきです。だから、御検討をいただきたい。私たちも頑張るということであります。

 ただ、法律に書けば解決するものじゃない。それは大前提であります。

 ふだんから私、ちょっと注意、例えば今回も、現場に伺うと、炊き出しを引き続きやっていただいていました。ところが、これは誰でも結構ですが、炊き出しについては、先ほど御紹介しました災害救助法に、福祉とは書いていないんだけれども、要は、医療及び助産というのは四号に出てきます、いろいろ書いてあって、まず一号が避難所及び応急仮設住宅の供与なんです、二号が炊き出しその他による食品の給与及び飲料水の供給なんですね。僕、ちょっと、しゃべるのは得意なんですけれども、読むのは苦手なので、済みません。炊き出しについては、同じ災害救助法の十八条に、費用の支弁区分ということで、都道府県等がこれを支弁すると。一部については国が負担する、こういう規定があるわけです。

 内閣府防災、過去の地震、今回じゃないですよ、去年までの地震や豪雨災害等で炊き出しは行われています。ちゃんと公費で支弁された記録があるかどうか、教えてください。

上村政府参考人 ボランティア等が行う炊き出しに対しまして、災害救助法による国庫負担の実績があったかを、食品の給与に係ります国庫負担がある市町村の数が多かった過去の熊本地震、令和二年の七月豪雨について確認したところ、実績としてはございませんでした。

 今般の能登半島地震におけるボランティア等が行う炊き出しにつきましては、炊き出しの実施に係る食材購入費などについて災害救助費の対象経費として認められている旨、石川県から被災六市町の災害救助法担当に対して周知が行われるとともに、被災六市町でも、炊き出し支援や食材の提供を検討している方々に向けてホームページを開設し、炊き出しボランティアを募集する取組が行われてきたと承知しております。

足立委員 今、石川県から市や町に周知がなされたと。これは手前みそながら、私のところに連絡が入りまして、炊き出しをしているNGO、NPOから。とにかく自前のお金が切れる、でも、明らかにまだ続けないといけないけれども、もう公費が入らなければできないというSOSが入って、それはでも法律を読んだらできるはずだということで、いろいろなルート、私だけじゃありません、いろいろなルートで内閣府防災あるいは石川県に陳情を申し上げて、そして、周知というか、それは公費で見るんだよ、見ることになっているからねということを周知したということがあって、実際に今一部動いているわけです。

 でも、さっき御答弁があったように、去年までゼロですよ。法律に書いてあってもやっていなかったんですよ。だから、しっかりと災害対策基本法それから災害救助法にしかるべき規定を設けるとともに、しっかりと執行していく。

 今御答弁いただいたのは上村さん、これはだから、平時から準備しておかないといけないんですよ。内閣府防災から、じゃ、能登半島ではそれをやっているのね、要は周知をしてやっていただいているのねということを確認したら、市や町の要請に基づき行われた団体による炊き出しについては云々ということで、要は走り出してはいるんですよ。それはよかった、一歩前進。でも、市や町の要請に基づき行われた団体というのがポイントなんですよ。被災直後は、そもそも公務員の皆さんが被災していますから、そもそも要請できません。だから、何かいろいろな行政の手続を待っていたら、結局、法律が守られないまま、ずるずると一か月、二か月、三か月たっていく。

 だから、平時から、誰も指示しなくてもちゃんと緊急事態の対応ができるような仕組みを整えておく必要がある。平時から整えておく必要がある。ちゃんとやっていただけますか。

上村政府参考人 お答えいたします。

 今委員おっしゃいますように、災害時に適温食を確保できる体制を平時から整備することは重要であるというふうに認識しております。

 このため、内閣府では、避難所に関するガイドラインですとか取組事例集を作成して、協定の締結などの準備を事前に行っておくべきことを示すとともに、災害救助法が適用される大規模災害発生時に県の要請に基づき温かい食事を提供することを内容とする協定の事例を周知するなど、取組を促してきたところでございます。

 引き続き、自治体と連携し、平時における体制の整備を進め、発災直後から円滑に適温食、食事の提供がなされるよう取り組んでまいりたいと考えております。

足立委員 よろしくお願いします。

 今日は、通告、結構いっぱいしているんですが、ちょっと飛ばさせてください。

 例えば、そもそも防災担当大臣の権限はどうなっているんだとか、そこから掘り起こしていきたかったんですが、ちょっと今日は時間がないので。

 それからあと、今回の能登半島地震における防災担当大臣のリーダーシップというかが私には余り見えなかったので、具体的な成果はどんなところにあったのかとか、質問させていただいていますが、ちょっと割愛します。

 今、昨日も報道されていたように、倒壊家屋が問題になっています。私たちもびっくりしました。今回、五月末に伺ったんだけれども、たくさんの家屋がまだ倒壊したままでした。それについては、何か昨日も、環境省と法務省が新しい仕組みで、所有者の一部が、到達できないときにも解体できるようにするとかいう報道がありました。だから、御努力はされているんだけれども、でも、それは今回だけじゃないよなと。なぜ今回だけなのかなとか、いろいろ思うんです。

 これは誰でもいいんですが、なぜ、能登半島地震では、倒壊した家屋等の解体がこれほど遅れているんでしょうか。御紹介をいただきたいと思います。

上村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、今回の災害対応では、公費解体の進捗が思わしくないのではというお声も伺っております。その要因として、山がちな半島という地理的な制約、土砂崩壊等に伴う交通網の寸断もありまして、インフラの応急復旧や断水解消等の応急対策に一定の時間を要したこと、また、大規模な二次避難を行い、被災地を離れた方も多いことなどが考えられるところでございます。

足立委員 この話は尽きませんが、今回の視察を受けて、今日、何人かの委員と質問させていただきました。またこれは引き続き。

 それから、政府においても、検証チームの報告書が間もなく出ると。それは政府でまとめたもので、現場のヒアリングはまたこれから場をつくってやるということですから、まさに、平沼政務官、是非大臣と一緒に頑張っていただきたい、こう思います。ありがとうございます。

 もしお忙しかったら、平沼さんは引いていただいて結構です。

 残り十分しかもうなくなりましたが、ちょっと、今日、一谷委員から申し上げた年金とか少子高齢社会の話を私も取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、諮問会議の関係で、江浪審議官、ありがとうございます。木村さん、私、同期でして。よろしくお願いします。

 五月二十三日の経済財政諮問会議で、民間委員の方々から高齢者の定義を五歳延ばすことを検討すべきという提言があった、これは事実でしょうか。それから、何かそれについて御議論があったなら、御紹介をいただきたいと思います。

江浪政府参考人 お答え申し上げます。

 五月二十三日の第六回経済財政諮問会議におきましては、生涯活躍と少子化への対応と、社会保障の強靱化の二つのテーマについて議論が行われました。経済財政諮問会議では民間議員より様々な提言をいただいておりまして、そのうちの一つとして、高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を五歳延ばすことを検討すべきとの提案があったというものでございます。

 また、諮問会議における議論の状況でございますけれども、経済財政諮問会議におきましては、健康寿命が延びる中、意欲ある高齢者が活躍できる環境を整備することは重要であるという観点から議論がなされたというところでございます。

足立委員 提案がされ、余り大した議論にはなっていないようです。

 大臣に一応、大臣、時間がないのでもう飛ばしますが、同じですよね、記者会見と。閣議後の会見か何かでこの話を聞かれ、年金と介護について何か影響を受けるのかということについては、大臣から、高齢者の定義にかかわらず云々ということで御答弁をいただいて。何かつけ加えたいことはないですよね。

 ただ、この話、やはりこの超高齢社会を、どういう社会をつくっていくかにおいては、この話は実は大事なテーマを含んでいると私は思います。何か、民間委員がぱっと出して、ぱっとやるような話ではないので、これは改めてまた取り上げたいと思いますが、報道もされていましたので、そういう議論だったということを確認だけさせていただきました。

 最後に、先ほど、一谷委員の質疑にちょっと戻りたいと思います。これは、ちょっと私はやはり納得がいかないんですね。

 まず、勤労者皆保険です。大臣、勤労者皆保険です。

 岸田内閣は、総裁選、総理大臣に岸田総理がなられた、そこからずっと、最初からおっしゃっているのは勤労者皆保険ですよ。それはどういうことかといったら、被用者保険、被用者ですから、それを、先ほど一谷さんもあったように、フリーランスとかギグワーカーとか、そういう人たちをどうしていくのかということで、被用者保険に、いろいろなことを政府も書いていらっしゃるんだけれども、要は検討すると言っているわけです。

 しかし、先ほどの御答弁で聞くと、これは方向性が決まっていないんだとさっき御答弁されていましたね。何年たっているんですか、岸田内閣。岸田内閣の目玉商品ですよ、この勤労者皆保険は。方向性が決まっていないというのは、それは空手形であったというふうに判断せざるを得ないですが、いかがですか。

橋本政府参考人 私の方から、先ほどの一谷委員への回答の中で、いろいろとフリーランスやギグワーカーに対する被用者保険の適用拡大をめぐる議論の状況についてお話しさせていただいたかと思います。

 大臣から答弁しましたように、昨日、五月二十八日もこの適用拡大などをめぐる懇談会を開催しておりまして、その中で様々な御議論をいただいたわけでございますけれども、様々な意見が昨日もございました。皆保険、皆年金の下でフリーランスにどのような保障が必要なのかという御意見があったり、あるいは、労働者性が高いフリーランス、ギグワーカーへの被用者保険の適用を求めるような御意見があったり、あるいは、対象者の線引きですとか、あるいは何に対して保険料を賦課したらいいのかというふうなこと、あるいはフリーランスへの拡大の必要性等の課題を指摘する意見、様々な御意見がございました。

 そういった御意見、様々いただいているところでございまして、現段階でフリーランスやギグワーカーの方々への適用について道筋が立っているわけではございませんが、引き続きこの懇談会あるいは社会保障審議会の年金部会で議論を重ねてまいりたい、これが現在の私どもの考え方でございます。

足立委員 局長、申し訳ありません、道筋が立っていないのは仕方ないにしても、方向ぐらいはないと。それは、でも、皆さんの責任じゃないですよ。内閣が方向を示さないと。岸田総理あるいは厚労大臣が、まあ、厚労大臣に余り関係ないと思いますが、勝手に言わはったということだと思いますけれども、私は、やはりどこかで手形を落とさないといけない。それは、空であったなら空手形であったということをはっきりさせなければ、それは、岸田内閣、この二年、何をやっていたんだということになると思いますが、大臣、何かありますか。

武見国務大臣 決してこれは空手形ではございません。

 まず、基本的には被用者保険等に関わる適用拡大というのをやる。そして、その適用拡大も、実際に一気にやり過ぎると中小企業など事業者に関わる負担が大きくなる、したがって段階的に丁寧にやるという形で、三段階に分けて適用拡大をやり、そしてさらに、その中で、こうしたギグワーカーとかフリーランスの方々について、まず、労働者性というものがしっかりと確認されれば、これは被用者保険の適用対象とするというところまで来ているわけであります。

 残りは、その対象外となってくるフリーランスやギグワーカーの人たちをどう扱うかという、その課題に絞られてきたわけであります。したがって、その点については、実態を把握した上で、どのような対処の仕方が必要かということを最終的に確定をするということになってくるわけでありまして、これらは、年末までにその取りまとめをしようという考え方になっているわけであります。

足立委員 是非お願いします。

 私たちも議論したいと思っているんですね。先ほど大臣から教えていただいた、昨日議論したということですね。昨日の懇談会で、私、昼休みに、そうか、昨日やっていたのかということで、五月二十八日付の第六回働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会ということで、大部の資料が出ています。

 ただ、本当にこれは難しいと思うんです。だから私たちは、そっちへ行っても答えはないよ、こっちじゃないですかということで、例えば税財源とか、いろいろな議論を維新の会の委員としているわけでありまして、これは政府・与党と私たち維新の会とのガチンコ勝負ですよ。総理が言ったことと私たちが言っていることと、どっちが現実的で、どっちが実現できるのかということを最後まで問い続けていきたいと思いますので、腰を据えて議論いただきたいと思います。

 最後、ちょっと時間が、デジタル庁から阿部審議官、お越しをいただいていますが、ごめんなさい、ちょっと割愛。

 ただ、デジタル庁とやりたかった議論は、さっき一谷さんも言っていたように、マイナンバーができたんだから、もう歳入庁もへったくれもないだろうと。だって、マイナンバーでひもづけて、必要な情報をひもづけて取ればいいんだから。それを分散型集中管理でやるんだから、もう国税庁と年金機構とどうという議論を超えた次の議論に行かなあかんよなという議論をしたかったということで、また是非御指導ください。

 最後に、内閣府の江浪さん、来ていただいていますね。江浪さん、先ほど、ありがとうございます。給付の一元管理です。ああ、これは江浪さんは、そうか、つらいのか。ちょっと関係ないんだな。鹿沼さん、給付の一元管理、僕の問題意識も分かっていただいていると思います。給付の一元管理ができなければ、結局、公正な給付と負担というのは実現しないと私は思いますが、鹿沼さんも賛成ですよね。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 もちろん、給付の話も負担の話も含めての話だと思いますけれども、そういったものの管理をしっかり適切にやっていくということが、いわゆる公平公正な負担と給付の実現ということで、大切だということは思っております。

 ただ、午前の質疑でもちょっとお話をさせていただきましたが、例えば、一元管理ということになってまいりますと、いわゆる情報漏えいの問題をどう考えるのかとか、あと、国民の御理解がいただけるのかとか、そういったような課題はあろうかと思っております。

 私ども、いろいろそういった中で、給付につきまして、例えば、午前中もこれもお話をさせていただきましたが、高額医療とか高額介護ということで、それぞれ月で上限を設けているわけですが、それをまた合算するような仕組みも設けているところでございます。また、今回、金融資産とか金融所得の取扱い、勘案についても議論させていただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、公平公正な制度に向けてしっかり議論していきたいと思っております。

足立委員 時間が来ましたので終わりますが、これは別に個人情報の問題じゃありません。要は、給付の全体、管理というのは、全部、情報を管理するんじゃなくて、要は、マイナンバーでひもづけて、そしてどれぐらいの所得層にどれだけの給付がなされているかということを政府全体で分かっているんですかということですよ。分かっていないんです、今。それが分からなければ、何が公正か判断できないでしょうという議論をまた改めてさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

新谷委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党の大西健介です。

 一般質疑でお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 月曜日、二十七日ですけれども、消費者庁の機能性表示食品を巡る検討会報告書が出てきました。きっかけになった小林製薬の紅こうじサプリの健康被害の原因物質の方ですけれども、二十八日ですから昨日ですけれども、厚労省が、これについては原料の培養段階で青カビが混入したと推定されるという発表をされていますけれども、依然として、プベルル酸を含む計三種類の物質と言っていますけれども、二つの化合物については、未知の物質の可能性がある、現時点では断定できない等々というふうに公表されています。

 この紅こうじの事件があって、今回、検討会をやって、報告書が出た、でも、いまだ原因物質については完全な結論が出ていないということについて、この状況を大臣はどう思われるか。また、これは、原因物質が結局不明というまま究明というのが終わりということになる、そういうこともあり得るんでしょうか。いかがでしょうか。

武見国務大臣 委員御存じと思いますけれども、今回の事案の原因究明、国立医薬品食品衛生研究所と連携しながら取り組みました。これまでも新たな事実が分かり次第公表を行ってきたところなんですけれども、昨日二十八日には、これまでに得られた結論として、健康被害が多く報告されている製品の原料ロットからプベルル酸のほか二つの化合物が検出されたこと、それから、プベルル酸については、工場内の青カビが培養段階で混入し、米培地を栄養源として産生したと推定されることについて公表をいたしました。

 そして、加えて、二つの化合物に関しましては、青カビが紅こうじ菌との共培養によりモナコリンKを修飾して生成されたと推定されること、それから、プベルル酸については、腎障害を引き起こすことが動物実験から既に確認されたことが分かりました。それから、二つの化合物についても今後更に動物実験を行い、そしてこれらの寄与度を確認する予定であるということなどについて公表をしたところであります。

 今後、厚生労働省といたしましては、健康被害の原因究明を引き続きしっかり継続をさせて、そして、科学的な必要性がある場合には、今回の事案や同一の事案の発生を防止するための食品衛生法上の対応を検討してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 普通は、何か事故が起こったら原因を究明して、そして原因が分かったら再発防止ということなんですけれども、いまだ原因が分からない、なのに先に報告書が出てきたということですから、もちろん、今回の報告書についてはある部分に絞った結論ということでありますが、ちゃんとやはり、今、原因究明を引き続きやるという話でしたので、お願いをしたいというふうに思います。

 この検討会の報告書を見ますと、提言の最後の部分にこう書かれています。サプリメントに関する規制の在り方についても今後検討課題とすべき。これは我々が既に提出した法律案の検討条項と同じ考え方、つまり、錠剤、カプセルは、機能性表示食品に限らず、風味がなく、そして濃縮した成分を毎日飲むという点で、一般の食品と切り離した特別な規制が必要だというふうに私たちも考えています。

 そうなると、これはもう消費者庁というよりは厚労省に関わる問題だと思いますけれども、この提言を受けて、厚労大臣として、この問題、今後検討すべき課題だと言われているんですけれども、じゃ、どこで検討したらいいとお思いになるのか、どういうスケジュール感で検討すべきだとお思いになるか、お答えいただきたいと思います。

武見国務大臣 消費者庁で行われた検討会の中で、サプリメント形状の加工食品に関する規制の在り方についても今後の検討課題とすべきだ、こういう意見があったことを承知しております。

 この検討会、消費者庁で行われたものでありまして、御指摘の点、詳細は是非、消費者庁の方にお尋ねいただきたいと思います。

 この報告書にありますサプリメント形状の加工食品に関する規制の在り方については、今度はその定義も必要となりますし、これらを含めて消費者庁で検討されるものと承知をしているところでございます。

大西(健)委員 今私が言ったのは、さっきも言いましたけれども、これは風味がなくて、そして濃縮をしているわけですから、これが一般食品と同じ規制でいいのかという話なんですよ。それはもう消費者庁の所管を超えた話であって、厚労省だけでもないかもしれませんけれども、一体、じゃ、政府のどこで。検討すべきだと提言を受けてそれで終わりだったら、私はいけないと思うんですね。やはり、喉元過ぎれば熱さ忘れるじゃないですけれども、今まだこの事件の、皆さん、社会の関心が高まっている間にこの検討を是非始めていただくべきだというふうに思っていますので、是非、厚労省も積極的に関与していただきたいと思います。

 次に、パンデミック条約についてお聞きしたいと思うんですけれども、二年以上にわたって交渉が行われてきましたけれども、今開かれているWHOの総会では正式承認に向けた条文案を合意できていないということですけれども、このことの大臣の受け止めと今後の見通し、これについて伺いたいと思います。

武見国務大臣 いわゆるパンデミック条約につきましては、現在ジュネーブにて開催されている第七十七回世界保健総会に向けて交渉が継続されてきましたけれども、パンデミック関連医療製品の製造に関する技術移転であるとか、それから病原体へのアクセス及び利益配分、それから資金調達といったようなこと、各国間で意見の隔たりがあり、そして論点が非常にたくさんまだ残されております。

 総会前に交渉妥結には至らず、今現在、開会中でありますけれども、実際にその交渉が最終的にどうなるかという点についてはまだ予断を持って判断し難い状態というふうに現状を認識しているものでございます。

大西(健)委員 今、論点が多岐にわたるという話もありましたが、皆さんからも非常にいろいろな、懸念も含めて示されているところでありますから、これは是非慎重に議論を続けていただきたいというふうに思います。

 次に、愛知県の小牧市にある愛知中央美容専門学校が五月末で閉校を決めました。授業料などの大半が返還されない見通しになったということでありますけれども、保護者からは子供の夢を何だと思っているんだとの怒りの声が上がる一方で、生徒の受入れを表明する専門学校も出てきていますし、また、愛知県の大村知事も支援に乗り出すというふうに言っています。

 最も大切なことは、美容師になる夢を抱いていた学生たちが勉強を続けられるようにすることだと思いますけれども、この点、厚労省としてどのような支援を考えているのか、大臣に伺います。

武見国務大臣 愛知県の美容師養成施設である愛知中央美容専門学校が出資企業の経営破綻により今年五月末をもって閉校することになったことを受けまして、厚生労働省としては、美容師養成施設の指定権限を有する愛知県、それから文部科学省などとも連携しながら、今、情報収集に努めております。

 現在、愛知県と愛知県専修学校各種学校連合会と美容師養成施設との間で、在学生の受入れや授業料の一部免除などの支援について調整が行われているものと承知をしております。

 厚生労働省としては、こうした学生が円滑に転入することが重要と考えておりまして、在学生の受入れ等に関わる調整状況を注視をし、その状況に応じて必要な対策を検討してまいりたいと思っています。

大西(健)委員 必要な対策をちゃんと検討するというお話がありましたけれども、これは厚労省も関係ないとは言えないはずで、この美容専門学校というのは、厚労大臣認可の美容師養成施設指定校であって、ここを卒業すれば美容師免許が取得できるという学校です。ですから、大臣認可なわけでありますから、しっかり責任があると思うんです。

 この専門学校では、今大臣の答弁にもありましたけれども、昨年の九月までに学校に出資していた企業二社が相次いで経営破綻していたにもかかわらず、普通に新入生の募集をやっていた。このことは、私、認可を与えている立場として看過できないんじゃないかというふうに思います。

 また、一旦認可を与えた専門学校であっても、教科課程や資産の状況など、認可の条件が途中で満たされないという状況になった場合には、認可の取消し等も場合によっては行う必要があるんじゃないかと思いますけれども、この点について、大臣、いかがでしょうか。

武見国務大臣 美容師養成施設を開設するときには、美容師養成施設指定規則に基づいて、設立者の資産状況であるとか美容師養成施設の経営方法などを記載した申請書を提出の上、都道府県知事の指定を受けるという必要がございます。また、美容師養成施設は、毎年七月三十一日までに、前年度の収支決算及び当年度の収支予算を都道府県知事に届け出なければならないということになっております。

 委員御指摘の点について、美容師養成施設の指定にあっては、在学生や新入生が安心して学ぶ上でも、その経営方法等について適切かつ確実なものとする必要があると考えております。

 いずれにせよ、美容師養成施設の経営方法が適切でないと認められる場合には、都道府県知事は指定を取り消すことができることとされております。今回の事案についても、愛知県において適切に対応が行われるべきものであると考えており、注視をしてまいりたいと思います。

大西(健)委員 明確な御答弁があったと思いますので、これはやはり、そうしないと、よく分かりませんが、もう九月時点でオーナー企業が経営破綻しているわけですから、なのに四月に向けて普通に募集していたというと、場合によっては詐欺みたいな話ですから、これは本当にゆゆしき問題だと思います。

 次に、障害者グループホーム運営大手の恵が障害福祉サービス等報酬を不正請求していた問題ですけれども、障害者総合支援法の規定では、指定取消しの理由となった不正に法人の組織的な関与が認められた場合は、いわゆる連座制が適用されて、全国にあるほかのグループホームも六年ごとの指定更新が認められなくなって、運営が事実上できなくなる、こういう規定があります。

 そこで、まず、確認ですけれども、これまでに連座制が適用された主な事例について教えてください。

辺見政府参考人 連座制の適用に係ります組織的な関与の有無につきましては、障害者総合支援法に基づき、業務管理体制の監督権者が確認することとされておりますが、この監督権者は、事業所の所在する自治体の数などに応じて、厚生労働省、国などと区分されております。

 このうち複数都道府県にまたがる場合は厚生労働省が監督権者となるわけですが、厚生労働省において組織的関与を認定した事例としては、令和五年度の一年間に二件ございまして、児童発達支援等を行う事業所が一件、就労継続支援A型を行う事業所が一件、いずれも日中の通所サービスを行う事業所に関するものでございます。

大西(健)委員 ごめんなさい。今のやつなのかどうなのか分からないですけれども、私の理解では、二〇〇七年、訪問介護大手のコムスン、全国規模の事業者として初めてこういう連座制を受けていると思うんですけれども、厚労省、このときは、約千六百か所の指定更新、新規指定を認めないというふうに都道府県に通知をしたと聞いていますけれども、千六百か所というとすごい数ですけれども、このときこの利用者の転居調整等はどのようにして行われたのかを教えていただきたいと思います。

間政府参考人 お答えいたします。

 株式会社コムスンの事案ですけれども、この件は、今委員もお話しになりましたように、同社が雇用実態のない訪問介護員を指定申請書に記載するなど、不正な手段により介護保険の事業者の指定を受けていたことを踏まえまして、二〇〇七年六月に、同社の事業所について、介護保険法の規定に基づき、新規指定あるいは指定の更新をしないよう、厚生労働省から都道府県等に通知をいたしました。

 その際に、今度は、厚生労働省からコムスン社に対して、現在のサービス利用者が他の事業者のサービスへ円滑に移行できるよう、各事業所の利用者のサービス利用継続のための具体的措置の内容等を記載した事業移行計画を作成するよう指示を行いました。

 そして、その後、同年七月に同社が作成しました事業移行計画では、利用者のサービスが途切れることなく継続されるように、利用者に対して十分な説明を行う、サービス確保に関し自治体と十分な連携を図る、各事業移行が完了するまでは同社がサービスを継続するといった点に留意して事業移行を行うこととされました。

 そして、同年の十二月までの間に、この移行計画に基づき、同社が運営していたグループホームなどの居住系サービス、これが二百十三、そして訪問介護などの在宅サービスの事業所、これが更に多いんですが、全体として、当時存続をしておりました千三百弱の事業所全てにつきまして別の法人に事業承継が行われたものと承知しております。

 その意味では、転居調整等は事業ごとに譲渡した、こういうことでございます。

大西(健)委員 済みません、先ほどの話は、障害者総合支援法では令和五年は二件ということですけれども、今の話は介護保険法の話でありますけれども、コムスンの例というのは私は参考になると思うんですね。事業移行計画を作るように指導して利用者の移行をちゃんとやったということですけれども、今回の恵については、愛知県は既に指定取消しの方針を固めていますけれども、法人の組織的関与、これは明らかだというふうに思います。私は連座制を適用すべきだというふうに思いますけれども。

 恵は、十二都県で約百のグループホームを運営していて、定員は計約二千三百人に上ると聞いております。連座制が適用された場合には、全国にあるホーム利用者に影響が出るということになります。名古屋市や愛知県も既に厚労省に対して利用者の転居調整などを恵に指導するように求めていますけれども、今のこのコムスンの事業移行計画と同じような形で、厚労省としてもしっかりやる必要があると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

武見国務大臣 お尋ねの株式会社恵の事案については、現在、障害者総合支援法に基づいて、関係自治体との連携の下で、厚生労働省において株式会社恵の法人としての管理体制に係る検査を進めるとともに、関係自治体において個別の指定事業所に対して指定権者としての検査を進めております。

 現在の検査状況についてはまだ具体的には申し上げられませんけれども、自治体との連携の下で、引き続き、こうした障害者総合支援法に基づき、粛々とまず検査を進めます。

 また、検査の結果についても、連座制の適用を含めて、予断を持ってお答えすることはまだ控えなければなりませんけれども、一般論として申し上げるとすれば、障害福祉サービス事業者の運営基準において、グループホーム事業者は、利用者の退去に際し、退去後の生活環境や援助の継続性に配慮をして、必要な援助を行わなければならないこととされております。

 いずれにしても、指定権者である都道府県らとともに、連携の上、必要に応じて、国として必要な対応を行ってまいります。

大西(健)委員 連座制を適用するかどうかは今は予断を持って言えないけれども、一般論としては、もしやるときにはちゃんとそういうことも、利用者への配慮というのもやるということだったというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 次に、先日、自民党のプロジェクトチームがカスハラ対策の強化の提言をまとめて、従業員保護策を企業に義務づける法整備、これに言及しました。厚労省は、これを受けて、骨太の方針に反映した上で、この夏をめどに労働施策総合推進法にカスハラ対策を盛り込むことを検討しているというふうに聞いていますけれども、まず、厚労省のカスハラ対策の今後の方針、大臣にお聞きしたいと思います。

武見国務大臣 自民党におきまして、五月十四日に、カスタマーハラスメントの総合的対策強化に向けた提言を取りまとめて、岸田総理大臣に申入れを行っていると承知しております。

 厚生労働省におきましては、本年二月から、雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会におきまして、カスタマーハラスメント対策の在り方について、論点の一つとして検討を進めております。

 検討会の取りまとめは今年の夏頃を予定しておりまして、専門家の方々に御議論をいただいて、その結果を踏まえて、カスタマーハラスメント対策を一層強化するという観点から、法制面も含めて必要な対応について検討を進めてまいります。

大西(健)委員 法制面も含めてと今答弁がありましたけれども、皆さんのお手元に資料をお配りしました。これは、実は、二〇一八年の四月ですけれども、当時の民進党と希望の党が共同で、通称パワハラ規制法案、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を共同で参議院に提出しました。私も少し関わっていたんですけれども、この法案というのは、消費者対応業務に係るハラスメントにより労働者の職場環境が害されることのないよう、必要な措置を講ずることを事業者に義務づける内容となっています。

 つまり、我々は、この自民党の提言を六年前に先取りして、法案まで提出したんです。しかし、この法案は、同年の六月二十九日の参議院本会議で、自民、公明、日本維新の会の反対で否決されています。

 コロナ禍を経てカスハラは当時よりも深刻化していますけれども、六年前にこの法律案が成立していれば今頃もっと対策が進んだんじゃないかというふうに思います。大臣、これはどう思われますか。

武見国務大臣 二〇一八年に議員立法で、消費者対応業務に関するハラスメント対策を内容とする、労働安全衛生法等の一部を改正する法律案が提出されたということは承知をしております。議員立法の成否については国会の御判断であることから、政府としてのコメントは差し控えます。

 一方で、二〇一九年の労働施策総合推進法の一部改正により、パワーハラスメントについての事業主の雇用管理上の措置義務が法制化されましたが、いわゆるカスタマーハラスメントについては、社外の相手との関係で起きる問題であり、どこからが迷惑行為に該当するかといった判断が難しいなどといったところから、法律上の措置ではなく、指針における望ましい取組として、事業主にその対策を求めました。

 当時提案されていた議員立法が成立していたらという仮定の御質問にはお答えし難いのでありますが、厚生労働省としても、その後、二〇二二年にカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを作成をし、業界団体や企業による取組を促進してまいりました。一定の取組は進んでいると認識をしております。

 一方で、カスタマーハラスメント対策に取り組む自治体や企業の動きなど、この課題に対する機運は最近一層高まっておりまして、このようなことから、議員御指摘のような自民党提案がまとめられたものと承知をしております。

大西(健)委員 是非一緒にやっていきたいと思います。

 次に、先日、我が党の長妻政調会長の質問に対して、警察庁が、自宅で亡くなった独り暮らしの六十五歳以上の高齢者が年間六万八千人に上ると推定される、こういう答弁を引き出しました。厚労省は、身寄りがなく引取り手がない遺体の自治体での扱いについて、実態調査をして、結果を今年度中に取りまとめて公表するとしています。墓地埋葬法では、遺体を埋葬、火葬する人がいない場合には自治体が実施すると定めていますけれども、ルールがないことによってトラブルが起きています。自治体は困っています。厚労省は、この調査の結果、何か事例集をまとめると言っているんですけれども、自治体が国に望んでいるのはそんなことじゃなくて、指針を作ってくれということなんです。

 孤独死年間六万八千人、こういう状況に対して、事例集をまとめますというのは私はいささか危機感が欠けているというふうに思いますけれども、大臣、指針を早くまとめる、こういう御決断を是非していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 御遺体の引取り手がない場合については、市町村などにおいて御遺体の身元や親族などの有無について確認が行われているものと承知をしております。

 厚生労働省としては、火葬などの前後におけるこうした確認の実施、その間における御遺体の取扱いについて実態を把握するために、令和六年度、関係法令に基づく火葬等関連事務を行った場合等の御遺体の取扱いの実態、それから課題に関する調査研究事業を実施することとしております。

 引取り手がない御遺体が安らかに弔われるような環境づくりが行われることが重要でありますから、今年度実施する実態調査の結果を踏まえて、その対応策を検討していきたいと思います。

大西(健)委員 対応策のところでちゃんと指針を作っていただきたいと思います。

 最後にですけれども、時間がないので言いますけれども、我が国で土葬は認められるのか、私は、調べたら、墓地埋葬法は土葬を別に排除していない、条例等で禁じていなければ土葬は可能だというふうに思います。

 現在では何か火葬が当たり前と思い込んでいますが、一九五五年当時で見ると、火葬率というのは五七・四%にすぎませんでした。最近では、日本に住むイスラム教徒の方が増えてきているんですが、イスラム教では火葬が禁じられているために、土葬可能な墓地がなかなか見つからないという問題があります。二〇二一年の六月に、別府ムスリム協会が厚労省に、土葬可能な公営墓地を全国に整備するよう求める陳情を行いましたけれども、厚労省はそのとき、よく分かりました、検討しますと回答しています。

 厚労省、その後どんな検討をしたのか、伺いたいと思います。

武見国務大臣 委員御指摘のとおり、二〇二一年の六月に、別府ムスリム協会から厚生労働省に対して、土葬ができる公営墓地を各都道府県に設置することを求める要請をいただきました。

 厚生労働省としては、外国人の方々も尊厳を持って弔われるような環境づくりが重要であると考えております。御指摘の土葬ができる公営墓地の整備については、各地方自治体において、地域の風習や住民が信仰している宗教の状況、それから墓地の候補地やその周辺環境の状況など地域の実情を踏まえつつ、特に外国人の方々のための墓地の場合には、多文化共生という観点からも丁寧に検討、調整をしていただく必要性があると考えております。

 厚生労働省としては、必要に応じて、関係する自治体に対して必要な助言は行っていく考えであります。

大西(健)委員 時間になりました。終わります。

新谷委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、今日はハンセン病療養所の職員体制について、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

 私の地元にも多磨全生園があります。職員が減る中、女性入所者の着替えや入浴の介助を男性が行う事態が生じている、こういうことを大臣、御存じでしょうか。夫が亡くなった後も夫との思い出の場所で暮らしたいと思っている入所者に対して、センター棟への転居が強いられている、こういう状況があることも大臣、御存じでしょうか。

 基本法を改正した際に、医療、介護体制の充実というのを加えましたけれども、私はこれに反する事態が生まれていると思います。来年度以降の職員管理において、ハンセン病療養所の職員については定数削減の対象から除外をして、入所者に寄り添って、入所者が尊厳を持って暮らせるよう、しっかり職員を確保して、医療、介護の体制の充実を図るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、大串(正)委員長代理着席〕

武見国務大臣 ハンセン病療養所の療養環境を整備することについては、入所者の御意向を第一に考えて対応することが大切だと考えます。転居や異性による介助をお願いする場合には、入所者に丁寧な説明を行いながら実施する必要があると考えております。

 それから、現在の定員合理化計画においては、ハンセン病療養所の定員も対象となっております。今後も一定の合理化を求められていくものと考えられますが、ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の趣旨を踏まえつつ、入所者の療養環境の充実のために必要な人員の確保には取り組んでまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 何か合理化が当たり前であるかのような答弁なんですけれども、法律でわざわざ前回改正して、医療、介護の体制を充実させるということを全会一致で確認しているわけですから、そのためにはやはり職員が必要なんですよ。

 先ほど、入所者の御意向が第一だというお話がありました。その御意向に応えられない状況が、職員がどんどんどんどん減る中で生まれてしまっているわけです。国の誤った隔離政策によって重大な人権侵害を引き起こしたというのが問題なわけですから、国には入所者が最後の一人まで尊厳を持って生活を送れるようにする責任がありますので、その点は重々自覚して取り組んでいただきたいと申し上げておきたいと思います。

 二つ目の問題に行きます。

 資料を配付しておりますけれども、先週、首都圏青年ユニオンの座ってちゃダメですかプロジェクトが立ち仕事の労働環境の改善を求めて厚労省に要請を行い、私も同席いたしました。このプロジェクトは、二〇二二年の暮れから、レジなどの立ち仕事に対して椅子の設置を求めて活動をしております。これに呼応する形で、事業者の側でも今度は、座ってイイッスPROJECTというのができまして、今年四月から一部のスーパーなどでレジに椅子を設置する動きも報じられております。

 資料の三ページ目から六ページ目まで、首都圏青年ユニオンが今月集めたアンケートの一部を載せておきました。レジだとか、商品販売だとか、ホールスタッフだとか、警備員などが、長時間の立ち仕事で膝が痛む、かかとが痛む、足首が痛む、腰が痛む、ふくらはぎがぱんぱんで、ほぐすのが大変だ、就寝中に足がつる、むくむ、疲れが取れない、整体に行っている、こういう声がたくさん寄せられております。

 事業者側の座ってイイッスPROJECTの調査でも、アルバイトの三二%が、接客中に座れないことで業務に影響が出ている、こう回答されております。また、雇用主の一九%が、接客中の立ち仕事からくる肉体的な要因によるアルバイトの退職を経験している、こう答えております。

 大臣の認識をお伺いしたいと思いますけれども、やはり、経営者に、接客業など立ちっ放しで座れない仕事というのは労働者の健康に大きな影響を与えるものだという認識を持ってもらう、これは大変重要なことだと思いますが、大臣御自身は、この立ちっ放し、座れない、長時間の立ち仕事の過酷さについてどういう認識をお持ちでしょうか。

武見国務大臣 アンケートも見させていただいて、立ちっ放しで座ることができない仕事に従事している労働者の方が大変な思いをされているということを再認識しております。そのような方々が適切に休養を取ることができることは、職場における労働者の安全と健康の確保の観点から重要であり、実態を踏まえて事業者に安全衛生対策に取り組んでいただくことが必要であると考えております。

 必ずしも座って作業することを求めている規定ではございませんけれども、労働安全衛生規則の中で、就業中にしばしば座ることができる機会があるときには座ることができる椅子を備えるよう事業者に義務づけもしているところでございます。こうしたことを周知をさせていただきたいと思います。

宮本(徹)委員 アンケートも読んでいただいたということで、本当に大変な過酷な仕事だという認識はやはり社会全体で共有していかなきゃいけないと思います。

 先ほど、労働安全衛生規則第六百十五条への言及も大臣からありましたけれども、海外では、スーパーのレジは椅子に座ってやるのが当たり前という国も結構あるんですよね。そういう点でいえば、日本は、スーパーのレジ打ちだとか接客業というのは座ってやるのはお客に失礼、こういう固定観念があるわけですけれども、こういう固定観念を社会全体でも改めていかなければならないというふうに思います。

 そういう点でいえば、労働者側の座ってちゃダメですかプロジェクトと、それに応える形で、事業者側の座ってイイッスPROJECTというのが始まっていまして、社会の中での機運の高まりというのもあります。これに応える形で、是非、厚労省として、労働者の健康を守り、職場環境の改善のためには、立ち仕事の職場での椅子の設置や、椅子に座ってできる仕事については椅子の積極的な活用が進むよう、特出しで周知徹底をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 委員御指摘のプロジェクト、職場環境改善の観点から、立ち作業の多い職場において座って仕事ができる環境を整えるためのものだと理解はしております。

 以前より、厚生労働省では、職場における腰痛予防対策指針におきまして、立ち作業が長時間継続する場合には、椅子を配置し、作業の途中で腰かけて小休止、休息が取れるようにすることなどを示しているところでございまして、腰痛予防の観点からも事業者に働きかけをしてまいったところであります。

 一方で、座って仕事ができるかどうかについては個々の事業場の環境や作業内容によるものと承知をしているところでございまして、一律に立ち仕事を改めさせるということは難しいものの、座って作業ができることを含めて、適切に休養が取れる環境が整えられることが重要だと考えております。その旨、都道府県労働局、それから労働基準監督署による指導等の機会を通じて、事業者に周知徹底をしてまいりたいと考えます。

    〔大串(正)委員長代理退席、委員長着席〕

宮本(徹)委員 是非、特出しで、やはり政府もそういう環境づくりを進めていくんだということでやっていっていただきたいと思うんですね。

 首都圏青年ユニオンの座ってちゃダメですかプロジェクトの皆さんは、労働安全衛生規則第六百十五条について、厚労省として具体的な事例集を作成して、あなたの職場のことですよと分かるように周知徹底してほしい、こういう要請をしているんですね。

 先ほど、レジだとか、商品販売だとか、ホールスタッフ、こういうお話をしましたけれども、様々な立ち仕事、アパレルの皆さんなんて本当にずっと立っていなきゃいけない状況で、しかもヒールを履いていなきゃいけないということでもっと過酷な場合も多いわけですけれども、こうした様々な立ち仕事について、是非、当事者からもヒアリングを行って、事例集を作っていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 労働安全衛生規則第六百十五条、持続的な立ち作業を行う方について、就業中にしばしば座ることができる機会のあるときに座ることができる椅子を備えるよう事業者に義務づけをしているものでありまして、必ずしも座って作業することを求めている規定ではございません。

 一方で、職場環境の改善のため、座って作業することも含めて、長時間の立ち作業を改善していくことは重要だと認識しております。このため、まずは、立ち作業が多いと考えられる小売業について、長時間の立ち作業解消のため、どのような取組が業界で行われているかということについて伺いたいと考えております。業界の取組状況を伺った上で、他の事業者が取り入れやすい内容の取組事例が得られるようであれば、事例集の作成や情報の横展開が可能か検討を進めてまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 業界からヒアリングをされるということなんですけれども、事業者側と同時に、実際に立ち作業を様々な分野でやられている困っている労働者の方々の側からもヒアリングも是非していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

武見国務大臣 長時間の立ち作業解消のために積極的な取組を進めている事業場があれば、労使でどのようにして協力して取組を進めたのかということもしっかり伺い、その中で労働者の声も把握をしていきたいと考えます。

宮本(徹)委員 なかなか進んでいない側の方も、どういう困難があって、本来だったらこういうことができるんじゃないのかというのも是非把握をしていただきたい。大臣はうなずいていらっしゃいますので、お願いしたいというふうに思います。

 労働安全衛生規則第六百十五条は、大臣がおっしゃるように、座って仕事をできるようにしなさいというものではなくて、就業中しばしば座ることができる機会があるときは椅子を備えなければならないという中身になっているわけですけれども、これまでの日本社会の固定観念を見直したら、労働安全衛生規則第六百十五条が当てはまる職場というのは相当多いんじゃないかというふうに思います。ですので、しっかりした取組を求めて、次の質問に行きます。

 先ほど、大西議員とのやり取りの中で少し言及がありましたけれども、今、厚労省で、カスハラや就活生のハラスメントを含めたハラスメント対策の検討会が行われております。二〇一九年の法改正で、職場におけるパワハラ防止措置義務は企業に課せられました。しかし、果たしてこれが実効性がどの程度あるのかというのが問われていると思います。

 昨日、ハラスメントに遭い、自社の企業の相談窓口に相談した三人の方のお話をお伺いしました。お話しします。

 Aさん。部長から、どなる、机をたたく、あるいはタブレットを取り上げ、床にたたきつけられるなどのパワハラが繰り返され、PTSDになった。パワハラ相談窓口に相談したが、調査で部長が否定し、ハラスメントがないことにされた。労基署に相談したら、会社に相談窓口があれば会社に相談してと言われた。Aさんは警察に相談し、今、警察が動いているということです。

 Bさん。上司から、同僚の前で、女は扱いが面倒、部下に要らないと言われたり、ばかと叱責されたりし、休職して、うつ病の診断を受けた。内部通報したけれども、報告書では、ハラスメントの事実を認められず、Bさんに問題があったかのように書かれた。Bさんは今、裁判に訴えておられます。

 Cさん。パワハラと安全配慮がないことについて親会社のコンプライアンス窓口に相談したが、すぐに子会社に連絡が行き、同じ部署の社員もCさんを遠ざけるようになり、精神的苦痛で身体症状が発生、今、精神障害者手帳二級、こう診断されている、こういう話なんですね。

 企業の内部調査はブラックボックスだ、企業の相談窓口に相談したのが失敗だった、こういう声まで聞きました。

 大臣に認識をお伺いしたいんですけれども、やはり、企業任せのハラスメント防止対策では被害者の救済は図られず、逆に被害者が不利益を被る事態も生まれております。厚労省の調査でも、パワハラを知った後の勤務先の対応で、何もしなかったというのが五三・二%に上ります。そして、今の法制では、労働局に相談しても、企業に相談窓口はあるかだとか、こういう観点での企業に助言、指導するだけで、直接の被害者の救済では動けないわけですね。

 是非、大臣の認識をお伺いしたいんですけれども、ハラスメントを根絶していく上で、五年前の法改正の事業主に対して防止措置義務を課すだけで十分だった、こういう認識があるでしょうか。

武見国務大臣 御指摘の二〇一九年の法改正で、パワーハラスメントについて、事業主に対して相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講ずる義務を新設をいたしました。

 その後、厚生労働省が二〇二三年に実施した職場のハラスメントに関する実態調査によりますと、過去三年間にセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを受けたと答えた労働者の割合は、二〇二〇年と比べて減少しているということがあります。対策に積極的に取り組んでいると労働者が評価した勤務先では、ハラスメントを経験したと答えた労働者の割合が相対的に低くなっていることなども明らかになってきているところであります。

 こうした点について、令和五年厚生労働省委託事業で、職場のハラスメントに関する実態調査といったようなことを労働者を対象に行ってきているわけでございまして、こうしたことからも、事業主の雇用管理上の措置義務は意義あるものと考えております。そしてまた、労働者の意見というものもこうした形で調査もしているわけでありまして、引き続き、この方針、遵守されるべく、徹底的に取り組んでまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 意義がなかったとは私も言いませんよ。それは意義はあったと思います。実際、労働者の中でのハラスメントを受けた人の割合というのは減っていますけれども、ただ一方で、労働局へのハラスメントに関する相談件数、資料もつけておりますけれども、それは一向に減っていないわけであります。そして、実際に、企業の相談窓口に相談したけれども、解決されないどころか、逆に、相談した当人が苦しむという事態が生まれているわけですね。私は、事業主に対するハラスメント防止措置義務だけでは極めて不十分だと思います。

 ILOのハラスメント禁止条約では、企業にハラスメントの防止対策をさせるだけではなくて、法律でハラスメントを禁止して、被害者の救済、支援を確保しなければならない、こうしております。適用範囲も、労働者だけでなく、フリーランスや就活生も入っている。ハラスメントの定義も大変広いわけですね。

 ILOの条約が言うように法律でハラスメントを禁止すれば、個人も違法行為として認識しますので、当然ハラスメントの抑止力になります。行政も企業に対して被害の是正、救済の指導を行っていく法的根拠にもなってきます。司法の場でも被害者救済に資することになってまいります。

 資料をつけていますけれども、ハラスメント禁止条約を批准する国も増え続けておりまして、今現在三十九か国。G7で批准していないのはアメリカと日本だけということになっております。

 五年前の衆参の附帯決議にもあるわけですけれども、大臣、ハラスメント禁止条約の批准、そして包括的なハラスメントを禁止する法整備に進んでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 委員御指摘のハラスメント行為そのものを禁止する規制の法制化については、これは民法など他の法令との関係で整理が必要となります。

 また、ILOの第百九十号条約について、その趣旨はおおむね妥当だと考えておりますけれども、条約において仕事の世界におけるハラスメントなどを禁止するための法令の制定が求められていること、それから条約の保護の対象にボランティアなど雇用関係のない者まで含まれていることなどについて、国内の法制との整合性が更なる検討課題であるというふうに思います。

 検討会におきましては、ハラスメントの現状と対応の方向性などについて議論を行っているところでもあります。

 御指摘の附帯決議における検討事項も踏まえつつ、引き続き、専門家の知見を踏まえて、こうした検討を進めてまいります。

宮本(徹)委員 民法その他の法令との関係の整理というお話もありましたけれども、そこはしっかり、ハラスメントは、確かに、雇用の現場よりも更に広いところのハラスメントも含めて禁止していこうというのがILOの立場ですし、世界的に見ても労働法制だけでやっていないケースもあるということは私も知っていますので、これも厚生労働省だけの仕事だと私は申しませんけれども。

 しかし、やはり、現実に、企業の相談窓口に相談してもなかなか、企業の側がもみ消そうというふうになった場合は被害者が救われない、行政に相談しても行政は被害者救済に乗り出せないというのが今の法律なんですよね。これでは本当に救われないと思いますので、そこは本当に、今の検討会の中では、今、カスハラ対策とか就活生の問題は検討の俎上には上っているというのはよく分かるんですけれども、肝腎要の衆参の附帯決議で求めてきたハラスメント禁止の法整備、ここを本当に中心に置いて、是非しっかり検討を進めていっていただきたいと思います。

 最後、一言だけですけれども、是非、今のハラスメント対策の状況をどう改善したらいいのかという点でも、被害者の当事者の皆さんの意見を聞く場も検討会で設けていただけないかと思うんですけれども、その点だけ大臣にお願いしたいと思います。

新谷委員長 武見厚生労働大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

武見国務大臣 はい。

 厚生労働省におきまして、本年二月から、雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会を開催をし、ハラスメントの現状や対応の方向性の検討に当たり、これまで、業界団体、企業、労働組合などからヒアリングを実施いたしました。

 ハラスメントに関しましては、流通、サービス業分野や鉄道業界の産業別労働組合から、被害者である労働者への心身の影響等についてお話しをいただくとともに、企業からも、対策を講じる端緒となった労働者のハラスメント被害等に関するお話も伺うなど、被害者の状況把握にも努めております。

 こうしたこと、引き続き、実態を踏まえて、専門家による検討を行ってまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 引き続き、被害者の声もしっかり踏まえていただきたいと思います。

 終わります。

新谷委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、田中健委員の時間をいただきまして、初めて厚生労働委員会で質問させていただきます。委員長始め委員の皆様に感謝をしながら、質問に入らせていただきます。

 本日は、私の地元長崎で大変大きな私たちにとっての課題であります被爆体験者の救済について、質問させていただきます。

 被爆から七十九年目を経過した現在におきましても、確かに原爆に遭いながらも、国が指定した被爆者と認められる被爆地域が当時の旧長崎市の行政区域を基本につくられたために被爆者と認められていない、いわゆる被爆体験者と言われる方々が高齢化する中で、苦しみの中で、被爆者として認定をしてほしいという切なる訴えを続けておられます。

 今年二月に、衆議院予算委員会第五分科会におきまして、武見大臣に質問させていただき、是非、被爆体験者の方々に直接お会いをいただいて切実な声をお聞きいただきたいという質問をしたところ、大臣から、検討するという御答弁をいただきました。その後、早速、長崎市との協議に入っていただきました。

 これまで長年、面会を要望しながらかなわない状況が続いておりました。武見大臣の御英断に心から敬意を表し、感謝を申し上げたいというふうに思っております。一方で、なぜこれまでこれだけの長い年月が面会までかかったのかという思いもございます。

 例年、八月九日の長崎原爆平和祈念式典の後に、被爆者四団体から岸田総理、武見大臣に要望を申し入れる面会の場がございます。これまで、被爆者として認められていない被爆体験者は出席することもかなわない状況でございました。この度初めて、同席し発言することについて被爆者四団体も了承した旨を先般、長崎市が厚生労働省にお伝えをしたと聞いております。

 今後、総理、厚生労働大臣が御出席の下で確実に面会の場が設定され、被爆体験者の方々からの発言の機会も確保していただけるのかどうか、このことを、御英断をいただいた武見大臣にお尋ねをさせていただきます。

武見国務大臣 八月九日の長崎原爆平和祈念式典後に、長崎市の主催で被爆者の方々から御要望をいただく会が開催されており、厚生労働大臣も参加をしているというふうに伺っております。私も参加する方向で調整をさせていただければと思います。

 そして、前回予算委員会の第五分科会における質疑も踏まえつつ、この被爆体験者の方々からも御出席いただけるよう、この会の主催者である長崎市に被爆者団体との調整を依頼しているものでございまして、引き続き、長崎市の調整状況を注視してまいりたいと思います。

西岡委員 大臣から今、注視していきたいという御答弁がございましたけれども、長崎市の方でその環境が整いましたならば、この場に被爆体験者も出席をして発言の機会をいただけるということでよろしいでしょうか。御答弁をいただければというふうに思います。

武見国務大臣 その点については、是非、長崎市に今調整を委託しておりますので、長崎市にその状況をお聞きいただければと思います。

西岡委員 長崎市につきましても発言をしていただける方向で今考えていただいているというふうに私は理解をいたしておりますので、岸田総理、そして武見大臣との面会が整い、その場で被爆体験者の発言をいただく機会を是非つくっていただけますように、改めて武見大臣にお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 初めてこの面会の機会が設定をされましたならば、被爆者として認め、救済してほしいという被爆体験者の皆様の切なる、この面会に対する大きな期待というものがございます。この面会へ向けて、岸田総理と武見大臣の間で、被爆体験者救済へ向けての意見交換等、そういう場があったのでしょうか。そのことについてお伺いをさせていただきます。

武見国務大臣 今年二月の衆議院予算委員会第五分科会における質疑を受けまして、八月九日の長崎原爆平和祈念式典後の被爆者団体からの要望を聞く会に被爆体験者の方々にも同席していただけるよう、会の主催者である長崎市に調整を依頼したものでございます。

 会の主催者はあくまでも長崎市なものでございますから、長崎市による団体との調整を厚生労働大臣としては注視をしている状況であります。

 したがいまして、この件について、私が直接岸田総理とこうした内容について意見交換を行っているという事実はございません。

西岡委員 それでは、様々な環境が整い、面会をすることが決定をいたしましたならば、是非、切実な被爆体験者の思いをお酌み取りいただきまして、岸田総理と武見大臣の間で救済に向けたしっかりした話合いを含めて、是非お進めをいただきますようにお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 二〇二一年に、黒い雨訴訟、広島高裁の判決が出まして、この判決は、それまでの判決とは大きく異なる、大変内容的に踏み込んだ内容の判決を出していただいております。

 この高裁の判決のポイントは、黒い雨のみならず、空気中に滞留する放射性粒子や地上に到達した放射性微粒子が混入した飲食物を摂取して放射性微粒子を体内に取り込んだ、いわゆる体内被曝の健康被害を認める内容となっております。また、原爆の放射線により健康被害を生じることを否定できない者も被爆者であると認められるとした点が大きなポイントでございます。

 また、被爆者援護法第一条三号に記載されている、原子爆弾が投下された際又はその後において身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情にあった者に該当すると認められるには、原爆の放射線により健康被害を生じることを否定することができない者であったことを立証することで足りるとされた点が大きなポイントだと認識をいたしております。それによって健康被害を否定できない者については、国が線引きした援護区域の妥当性が否定され、救済の道を開くものであることが、この判決の大きなポイントでございます。

 この判決を上告断念された、時の菅総理の談話によりますと、被爆者援護法の理念に立ち返って、その救済を図るべきと考えるに至ったということを述べられております。

 被爆者援護法の下で、この判決が長崎の被爆体験者に適用されないのはなぜでしょうか。広島に新しい認定基準が運用される中で、長崎に適用されず、被爆者認定の基準が広島と長崎で大きく違う基準となっていることに私は大変大きな問題があると考えております。

 被爆地を分断するものであり、法の下の平等に反すると考えますけれども、このことについて、改めて武見大臣の御見解をお伺いをいたします。

武見国務大臣 広島に適用されている認定基準というのは、令和三年七月に、広島で黒い雨に遭った方々が原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとして、被爆者健康手帳の交付を認める判決が出たことを踏まえて設定されたものであります。具体的には、広島地裁、広島高裁判決での事実認定と、これらの判決を受けた総理談話に基づきまして、この裁判の原告八十四人と同じような事情の者を認定するための要件として設定をしたものでございます。

 一方、長崎につきましては、過去の最高裁まで争われ、被爆地域として指定されていない地域においては、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったというふうには言えず、原子爆弾投下後も、間もなく雨が降ったとする客観的な記録がございません。こうした判決が確定をしております。

 このように広島と長崎では状況が異なるということがあるために、それぞれの判決を踏まえて対応するものであります。これは、憲法における法の下の平等に反するとは考えておりません。

西岡委員 広島におきましては、爆心地から三十キロ離れたところで黒い雨に遭った方々を被爆者と認めております。一方で、長崎では、爆心地から十二キロ以内で原爆に遭った被爆体験者は被爆者として認められていないという事実もございます。

 今、武見大臣から、過去の最高裁での判決についての御言及があったわけでございますけれども、ちょっと質問の順番を変えさせていただいて、七問目の質問を今の関連でお尋ねをさせていただきたいと思います。

 政府がこれまで被爆体験者を被爆者として認めない理由について、過去の被爆者訴訟との整合性、また、被爆地域以外での黒い雨、降雨があったという客観的な事実がないことを挙げておられます。このことに対する反論とも言える専門家会議における報告書を二〇二二年に長崎県、市において提出をさせていただいております。

 この報告書、武見大臣にはお目通しをいただいておりますでしょうか。この報告書に対する見解も改めてお伺いをいたします。

武見国務大臣 御指摘の長崎からの専門家会議報告書の内容については、私も事務方から説明を受けております。

 県、市の報告書についての厚生労働省の考え方としては、長崎については、過去の裁判例との整合性に課題があり、そのため、黒い雨が降った地域の存在を示す客観的な資料の有無等を整理する必要があると考えておりまして、その旨を既に長崎県及び長崎市に回答したところでございます。

 引き続き、長崎県、長崎市との対話を続けながら、必要な対応を行っていきたいと考えます。

西岡委員 今、新しい知見を求めまして、救済に結びつけるために、長崎県、長崎市の要望によりまして、国が、長崎原爆死没者追悼祈念館所蔵の被爆体験記の中から、雨や灰、燃えかす等の降下物についての記述を抽出する作業が昨年七月からスタートをして、体験記三千七百四十四件を読み込み、現在分析しているとの御答弁が厚労省からあっております。

 現状の分析状況について、また、どのような基準で、誰が、長崎におきましても降雨や降灰があったという事実認定を行うのかということを明確にすべきであるというふうに考えておりますけれども、どのような事実認定手続となったのかどうか、また、これが事実と認められれば広島同様に被爆者として認定をされるという理解でよいのかどうか、厚生労働省にお伺いをいたします。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の国立原爆死没者追悼平和祈念館が所蔵しております三千七百四十四件の体験記でございますけれども、これは、長崎県、市からの要望を受けまして、過去の裁判例を覆すに足る新しい事実、知見、こういったものの収集を目指して、現在整理を行っているところでございます。

 降雨等に関する記載についてまだなお今現在精査をしているところでありまして、その精査内容、中途でございますので今申し上げることは困難でありますことと、また、この検証結果を踏まえた後の取扱い、これにつきましても、結果を得てから判断をさせていただきたいと思っております。

西岡委員 結果を得てからということでございましたけれども、この事実認定の手続につきましては、被爆体験者の皆様にもしっかり御説明をいただく中で進めていただくことを心からお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 来年には被爆八十周年の節目を迎えます。被爆体験者も高齢化し、一刻の猶予もありません。被爆地出身の岸田総理の政治決断を強く求めるものですけれども、八月九日の面会の機会に是非、解決へ向けた方向性を明確に示していただくことを強く要望して、また、この面会にかじを切っていただいた武見厚労大臣の英断に感謝をして、武見厚労大臣の御見解を最後にお伺いして、私の質問を終わります。

武見国務大臣 繰り返しになりますけれども、長崎については、過去に最高裁まで争われて、被爆地域として指定されていない地域におきましては身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとは言えず、原子爆弾投下後間もなく雨が降ったとする客観的な記録がございません。こうした判決が確定をしております。

 長崎については、過去の裁判例との整合性に課題があり、広島と状況が異なるため、黒い雨が降った地域の存在を示す客観的な資料の有無等を整理する必要性があると考えております。

 引き続き、この点、長崎県、長崎市との対話を続けながら、必要な対応を行っていきたいと思います。

西岡委員 面会につきましては、しっかり被爆体験者の切なる思いを受け止めていただきますことを心からお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

新谷委員長 次に、ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律に基づく補償金の支給の請求の状況に鑑み、補償金の支給の請求期限を五年延長しようとするものであります。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

新谷委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。武見厚生労働大臣。

武見国務大臣 衆議院厚生労働委員長提出のハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、政府としては異議はありません。

新谷委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております草案をハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

新谷委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

新谷委員長 次に、ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する件について決議をいたしたいと存じます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において案文を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明に代えたいと存じます。

    ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する件(案)

 一 ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律に基づく補償金の請求を行うに至っていないハンセン病元患者家族が多数おられることを踏まえ、補償金の支給についてより効果的な広報を行うこと。また、広報の実施に際しては、偏見差別をおそれて同法に基づく補償金の請求を躊躇する当事者が多いことも踏まえ、よりきめ細やかな対応を行うこと。

 二 国の隔離政策により、元患者のみならず元患者家族等も、偏見と差別の中で、長年多大の苦痛と苦難を強いられてきたことを改めて深くおわびするとともに、偏見差別解消策、偏見差別予防策及び差別被害救済策の一層の充実に向けた努力を引き続き行う決意を新たにすること。

  右決議する。

以上であります。

 お諮りいたします。

 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

新谷委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。

 この際、武見厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。武見厚生労働大臣。

武見国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいります。

新谷委員長 なお、本決議の議長に対する報告及び関係方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

新谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十四分散会


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