衆議院

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第6号 令和7年4月2日(水曜日)

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令和七年四月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 藤丸  敏君

   理事 上野賢一郎君 理事 古賀  篤君

   理事 長坂 康正君 理事 井坂 信彦君

   理事 岡本 充功君 理事 早稲田ゆき君

   理事 梅村  聡君 理事 浅野  哲君

      安藤たかお君    井出 庸生君

      大西 洋平君    草間  剛君

      工藤 彰三君    国光あやの君

      後藤 茂之君    佐々木 紀君

      塩崎 彰久君    島尻安伊子君

      鈴木 隼人君    田畑 裕明君

      田村 憲久君    土田  慎君

      根本  拓君    長谷川淳二君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      福田かおる君    松本  尚君

      森下 千里君    山田 賢司君

      山本 大地君    吉田 真次君

      若山 慎司君    池田 真紀君

      大塚小百合君    大西 健介君

      篠田奈保子君    宗野  創君

      高松 智之君    堤 かなめ君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      長谷川嘉一君    松尾 明弘君

      宮川  伸君    山井 和則君

      柚木 道義君    阿部 圭史君

      池下  卓君    猪口 幸子君

      福田  徹君    森ようすけ君

      沼崎 満子君    浜地 雅一君

      八幡  愛君    田村 貴昭君

    …………………………………

   厚生労働大臣       福岡 資麿君

   厚生労働副大臣      鰐淵 洋子君

   内閣府大臣政務官     友納 理緒君

   厚生労働大臣政務官    安藤たかお君

   厚生労働大臣政務官    吉田 真次君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局次長)           植村 隆生君

   政府参考人

   (消費者庁食品衛生・技術審議官)         中山 智紀君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          竹林 悟史君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          源河真規子君

   政府参考人

   (消防庁審議官)     鳥井 陽一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房学習基盤審議官)       日向 信和君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       巽  慎一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局長)         大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長)   鷲見  学君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            岸本 武史君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            山田 雅彦君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         田中佐智子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    野村 知司君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  黒田 秀郎君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鹿沼  均君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           堀井奈津子君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大窪 雅彦君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 伯野 春彦君

   厚生労働委員会専門員   森  恭子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  安藤たかお君     松本  尚君

  草間  剛君     大西 洋平君

  田畑 裕明君     工藤 彰三君

  根本  拓君     若山 慎司君

  長谷川淳二君     土田  慎君

  福田かおる君     国光あやの君

  酒井なつみ君     篠田奈保子君

  長妻  昭君     松尾 明弘君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 洋平君     草間  剛君

  工藤 彰三君     山本 大地君

  国光あやの君     福田かおる君

  土田  慎君     長谷川淳二君

  松本  尚君     井出 庸生君

  若山 慎司君     根本  拓君

  篠田奈保子君     高松 智之君

  松尾 明弘君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     山田 賢司君

  山本 大地君     田畑 裕明君

  高松 智之君     酒井なつみ君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     島尻安伊子君

同日

 辞任         補欠選任

  島尻安伊子君     安藤たかお君

    ―――――――――――――

四月二日

 人権を保障する福祉職員の賃金と職員配置基準を引き上げることに関する請願(大河原まさこ君紹介)(第六九六号)

 同(中村はやと君紹介)(第六九七号)

 同(田中健君紹介)(第七一七号)

 同(道下大樹君紹介)(第七一八号)

 同(山崎誠君紹介)(第七一九号)

 同(円より子君紹介)(第七五七号)

 同(岡本あき子君紹介)(第七九〇号)

 同(小沢一郎君紹介)(第七九一号)

 同(山岸一生君紹介)(第七九二号)

 同(谷田川元君紹介)(第八二五号)

 同(三角創太君紹介)(第八四二号)

 パーキンソン病治療研究支援及び医療費助成制度の改善に関する請願(岡本あき子君紹介)(第六九八号)

 同(佐藤英道君紹介)(第七五八号)

 同(福森和歌子君紹介)(第七五九号)

 同(中川康洋君紹介)(第八二六号)

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(菊田真紀子君紹介)(第六九九号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第七〇〇号)

 同(根本幸典君紹介)(第七〇一号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第七〇二号)

 同(古屋圭司君紹介)(第七〇三号)

 同(山口俊一君紹介)(第七〇四号)

 同(大串博志君紹介)(第七二〇号)

 同(田中健君紹介)(第七二一号)

 同(長坂康正君紹介)(第七二二号)

 同(山岡達丸君紹介)(第七二三号)

 同(浅野哲君紹介)(第七六〇号)

 同(岡田克也君紹介)(第七六一号)

 同(林佑美君紹介)(第七六二号)

 同(牧島かれん君紹介)(第七六三号)

 同(吉川元君紹介)(第七六四号)

 同(加藤鮎子君紹介)(第七九三号)

 同(田畑裕明君紹介)(第七九四号)

 同(三反園訓君紹介)(第八二七号)

 同(緑川貴士君紹介)(第八二八号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第八四三号)

 誰もが安心できる年金制度への改善を求めることに関する請願(青山大人君紹介)(第七一二号)

 同(鎌田さゆり君紹介)(第七一三号)

 同(笠浩史君紹介)(第七一四号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第七六五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七六六号)

 同(長友慎治君紹介)(第七九五号)

 同(神谷裕君紹介)(第八四四号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(道下大樹君紹介)(第七一五号)

 同(山崎誠君紹介)(第七一六号)

 同(円より子君紹介)(第七五六号)

 同(田中健君紹介)(第八四一号)

 障害児者の暮らしの場の拡充・充実に関する請願(井坂信彦君紹介)(第七四四号)

 同(長谷川嘉一君紹介)(第七四五号)

 全ての看護職員の処遇改善に関する請願(田村貴昭君紹介)(第七四六号)

 パーキンソン病の撲滅を目指すことに関する請願(福森和歌子君紹介)(第七四七号)

 従来の健康保険証を残すことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七四八号)

 同(志位和夫君紹介)(第七四九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七五〇号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第七五一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七五二号)

 同(田村智子君紹介)(第七五三号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第七五四号)

 同(本村伸子君紹介)(第七五五号)

 軍事費二倍化ではなく社会保障の拡充を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七八二号)

 同(志位和夫君紹介)(第七八三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七八四号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第七八五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七八六号)

 同(田村智子君紹介)(第七八七号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第七八八号)

 同(本村伸子君紹介)(第七八九号)

 最低賃金全国一律制度と中小企業支援の拡充による経済好循環の実現等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八一六号)

 同(志位和夫君紹介)(第八一七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八一八号)

 同(辰巳孝太郎君紹介)(第八一九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八二〇号)

 同(田村智子君紹介)(第八二一号)

 同(堀川あきこ君紹介)(第八二二号)

 同(本村伸子君紹介)(第八二三号)

 介護保険制度の抜本改善、介護従事者の処遇改善を求めることに関する請願(屋良朝博君紹介)(第八二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

藤丸委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局給与局次長植村隆生君、消費者庁食品衛生・技術審議官中山智紀君、こども家庭庁長官官房審議官竹林悟史君、長官官房審議官源河真規子君、消防庁審議官鳥井陽一君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官日向信和君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官巽慎一君、医政局長森光敬子君、健康・生活衛生局長大坪寛子君、健康・生活衛生局感染症対策部長鷲見学君、医薬局長城克文君、労働基準局長岸本武史君、職業安定局長山田雅彦君、雇用環境・均等局長田中佐智子君、社会・援護局長日原知己君、社会・援護局障害保健福祉部長野村知司君、老健局長黒田秀郎君、保険局長鹿沼均君、人材開発統括官堀井奈津子君、国土交通省大臣官房審議官大窪雅彦君、環境省大臣官房審議官伯野春彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤丸委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤丸委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。森下千里君。

森下委員 おはようございます。自由民主党の森下千里です。

 本日は、質問の機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。地元でよく聞く声から質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 日本は、現在、人口減少をたどっていますが、その一方で、仕事が減っているかどうかというのは必ずしもイコールではないと言えると思います。全国的に求人数は減っておらず、厚生労働省のデータによると、二〇二三年の有効求人倍率は一・三一倍と比較的安定をしています。特に、高齢化に伴い、医療、福祉の分野では人材確保が必要であるなと感じておるところでございます。

 私が住んでいる宮城県でも、労働力不足と、また人口流出によって人手不足がかなり深刻でありますが、どう人材確保に取り組んでおられるか、お聞かせ願いたいと思います。

鰐淵副大臣 お答え申し上げます。

 生産年齢人口が減少する中、労働力の確保を行い、人手不足に対しては、最重要課題と捉えまして、様々な角度から取組をさせていただいております。

 具体的には、働き方改革を始めとして、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働くことができる環境の整備を通じまして、女性、高齢者、外国人材などの活躍を促進しております。また、三位一体の労働市場改革などの構造的な改革を推進し、生産性の向上や賃上げの実現に取り組んでおります。さらに、今委員からも御指摘がございました医療、福祉などの人手不足分野につきましては、全国の主要なハローワークに専門窓口を設けるなど、ハローワークの機能強化にも取り組んでおります。

 今後とも、最重要課題と捉えまして、人材確保に尽力してまいります。

森下委員 ありがとうございます。

 まさに人材確保は最重要課題ということで、大変に心強いお言葉でございますが、まさに今お話にも出ましたハローワークについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 例えばなんですけれども、マッチングするというのは大変に難しいなと思っておりますが、介護人材確保のために無料で使用できる都道府県ナースセンターがあるということを伺ったことがございます。採用率はそれほど高いとは言えないそうなんですけれども、採用後長く働いてくださっているということで好評だというふうに伺いました。

 反対に、地元の医療関係者の方からは、民間の職業紹介事業者から採用した際に、なかなか定着しないで辞められてしまうケースが多いというふうに伺いました。仕事をしていくためには、当然、時間も費やします。また、職業紹介事業所というのは手数料が高いというところがあります。辞められてしまうたびに、そのたび高い紹介料を払わなければならないということは、これは当然、会社にとって、財政的にというか経済的に負担になると思います。もちろん、実際に働いてみないと、その会社に適しているとか合うということは分からないんですけれども、繰り返しになりますと、どうしても費用負担の面で私は大変な負担になるのではないかなというふうに感じております。

 かといって、無料で利用できるハローワークでは人材が確保できないというふうに聞くところもございます。これは、医療、福祉だけではなく、他産業の企業さんからも伺う話でございます。調べたところ、ハローワークを通じた入職者の割合は、二〇二三年には一五・九%まで低下をしていました。

 その一方、民間の職業紹介事業者や求人メディアは、専門性や個別対応の面で強みを持ち、広告に力を入れているということもあるのか、また、携帯で気軽に求人ができる、探せるような工夫をされているということもあってか、入職者は増加傾向にあります。

 私は、ハローワークの機能をより高める必要があるというふうに考えています。求職者また企業のニーズに応じて、適正なサービスを選択するということを可能にしていくということが求められていると思いますが、御見解をお聞かせください。

山田政府参考人 お答えいたします。

 生産年齢人口の減少等により人手不足が深刻化している中で、求職者と求人者のマッチングに向けて、きめ細かな支援の一層の強化が必要であると認識しております。

 このため、令和二年一月以降、オンライン上で求人の提出や閲覧、更に求職の申込みが可能なハローワークインターネットサービスを運営しておりますが、その充実に今取り組んでおりまして、直近、令和五年度平均で月間約七千万件のアクセスをいただいているところであります。

 また、DX化等により業務の効率化に取り組むほか、求職者、求人者に対する支援体制の強化も図っていくこととしております。

 具体的には、求職者支援においては、担当者制等により、求職者の課題に応じてリスキリング支援とも連携した職業相談、職業紹介に取り組むとともに、職員の専門性も向上させていくこととしております。

 一方で、人を求める求人者に対する支援としては、特に今後、人手不足感が一層強まる中にあって、企業が労働者から選ばれるよう、必要な人材の確保に向けて支援することが重要であり、求職者が応募しやすいような求人票の書き方のアドバイス、事業所情報の発信、企業説明会や就職説明会の開催等を通じたマッチング機会の提供などのサービスも充実させていこうと考えております。

森下委員 ありがとうございます。

 ハローワークは、やはり何といっても無料でありますし、おっしゃるとおりで、求職者支援制度などもあります。また、求人を見ておりますと、女性の支援だったり、御高齢の方に対してのサービスというのも充実していたりしているんだなというふうにも感じているところがあります。また、企業側にとっても、雇用関係助成金等もございますし、何といっても労働保険加入等でハローワークさんにはお世話になるわけでありますから、しっかりとPRをしていただきまして、より多くの方にハローワークを活用していただきたい。職員の数も大変に多いというふうに承知しておりますので、是非とも、民間の企業だけではなく、ハローワークの充実というものが私は必要なのではないかと思いますので、更なる活用を期待しております。

 また、少し話は変わりますが、国家公務員の地域手当についてお伺いをしたいと思います。

 令和六年度人事院勧告によりますと、現在は一級地から七級地となっておりますが、改定後は一級地から五級地に変更され、あわせて、これまで市町村ごとに設定されていた支給地域について、都道府県単位が基本となると伺っております。

 これにより、これまで地域手当が設定されていなかった地域も多く対象になると思いますが、この設定はどのように決めておられるのか、人事院にお伺いしたいと思います。

植村政府参考人 お答え申し上げます。

 国家公務員の地域手当は、民間賃金の水準が高い地域の国家公務員の給与を調整するための手当として設けられたものでございます。

 委員御指摘のとおり、地域手当につきましては、これまで市町村を単位として支給地域を定めてまいりましたが、隣接する市町村との関係で不均衡が生じていることの解消に向けまして、昨年度の見直しにより、原則、都道府県を単位として広域化をいたしました。

 なお、見直し後の支給地域につきましては、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の結果に基づき算出しました賃金指数、これに基づいて一級地から五級地に設定をしております。

森下委員 ありがとうございました。

 この地域区分については、実は、地元からよくお声を頂戴しております。地域区分の考え方は、今おっしゃっていただいたとおりで、都市部では地価や人件費が高くなり、サービス運営コストが上昇することに応じて報酬を増やし、地域間格差の是正をするということが目的であると承知をしておりますが、それがあることによって、むしろ地域格差を生み出しているのではないかという懸念を聞くことがございます。

 東北では、唯一設定されたのが仙台市となっておりますが、このことで、近隣の市町村にある保育園の園長先生からは、仙台に働きに出かけるお母さんが多く、地元で預かりたくても、人件費に差をつけられてしまうと保育士さんの数が確保しにくいというお声を頂戴しています。また、一切設定のない市町からも、保育士の確保のため、地域区分を見直してほしいという要望を聞いております。

 働く女性が増えた今だからこそ、保育士さんの存在は地域にとっても大変重要なので、是非ともこういった声に応えるべく、公定価格の地域区分の見直しをしていただきたいと思いますが、こども家庭庁、いかがでしょうか。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 保育につきましては、市町村に実施義務が課されており、民間施設におきましても公立施設と同水準の保育が提供できるように、その公定価格につきましては、公務員の給与水準に準拠することとしております。

 お尋ねの地域区分につきましても、公務員の地域手当における地域区分に準拠することを基本としながら、他の社会保障制度との整合性を踏まえてこれまで改正してきております。

 先ほどお話のありました令和六年の人事院勧告を踏まえた保育分野の地域区分の対応につきましては、仮に今回の人事院勧告をそのまま当てはめた場合には、都道府県単位に広域化することで県内の隣接する市町村との不均衡の解消が図られる一方で、一部では、例えば、県外の隣接する市町村との差が現行よりも拡大する、このようなこととなります。このような課題がございますので、保育の地域区分につきましては、令和七年四月からの見直しは実施せず、引き続き、見直し方法について丁寧に議論を進めていくこととしたところでございます。

 この地域区分につきましては、これまでも、全国知事会等に参画いただいている審議会で御意見を伺っているとともに、様々な場で個別の自治体から直接御意見や御要望をお伺いしているところでございまして、引き続き、自治体を始めとする関係者の御意見を伺い、また他の社会保障分野の動向なども注視しながら、丁寧に検討を進めてまいります。

森下委員 丁寧に対応していただけるということ、大変にありがとうございます。

 確かに、都心はいろいろなものが高いなと感じますが、地方に住んでおりますと、ライフコストは抑えられますが、手間がかかる分、余計にお金がかかることもあるんです。例えば、雪が降ったときに、雪下ろしをするために時間がかかる、それを解消するためには雪解けスプレーを買わなきゃいけないとか、本当に細かなことでお金がかかるというのが現実でありますので。もちろん、決まりとしてあるというのは重々承知でございますが、不均衡をなくすという意味でも、この公定価格の地域区分の見直しについて、慎重に行っていただきたいと要望させていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問でございますが、就労支援A型事業所についてお伺いをさせていただきます。

 そもそも、福祉と企業の就労のはざまであり、大変厳しい、難しい位置に位置しているというふうに認識しております。そのため、収入も福祉事業活動収入と生産活動収入と区分しておるというふうにも承知しておりますが、実際に生産活動での収入が得られず、支援給付金を充当しているケースが山積しているとも伺っております。

 また、就労支援A型事業所での生産活動の多くは軽作業であるため、単価も安いとか価格転嫁が難しい、その一方で、付加価値を高めようとすると、やはり技術が必要になったり習熟に時間がかかるという課題もございます。まさに事業継続は厳しいという事業所から声が上がっております。

 生産性を高めていくということは必要でありますが、まず安定的な運営に資するためにどのような支援をお考えか、お聞かせ願います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 障害就労継続支援のA型でございますけれども、雇用による就労機会の提供と、それと就労に向けての能力向上のために必要な訓練などを行っていくというものでございます。

 御指摘のように、就労支援A型につきましては、障害福祉サービスとしての側面だけではなくて、生産活動によって収益を上げて、そして、そこを利用する障害者の方々の賃金を賄うといった側面もございます。そういう意味では、A型事業所の安定的な運営でございますとか、あるいはその生産性の向上に向けて、生産活動に関する経営改善などの支援を行っていくことが必要だと考えております。

 令和六年度の補正予算の中で、就労継続支援A型の支援を強化をするということで、経営改善でございますとか、あるいは業務を開拓していく、そういったことに向けてのノウハウの習得でございますとか、生産性向上に資するICT機器であるとか工作機械などの導入によって作業の効率化などを行う、こういったことを支援するような支援策を盛り込ませていただいたところでございます。

 こうした取組なども含めまして、引き続き、就労継続支援A型の経営状況なども見ながら、安定的な運営、さらには生産性の向上などを応援していけるように必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

森下委員 ありがとうございます。

 時間になりましたので終了させていただきますが、今日もありがとうございました。

藤丸委員長 次に、田畑裕明君。

田畑委員 おはようございます。自由民主党の田畑裕明でございます。

 一般質問の機会をいただきまして、理事また委員各位の皆さんに御礼を申し上げたいと思います。

 それでは早速、限られた時間ですから、お話ししたいと思います。

 まず、医療や介護、福祉の現場の経営を含めた大変逼迫した状況についての危機感を共有させていただきたいと思います。

 今、野村部長からも、障害現場の対応について、しっかり頑張るというような趣旨の答弁であったかというふうに思っています。予算も成立をし、六年の十二月補正並びに新年度予算、切れ目なく、また地域それぞれの現場にしっかり流して、動かしていかなければなりません。

 しかしながら、医療や介護、福祉の現場、去る三月の十二日だったかと思いますが、日医さん始め、病院協会さん始め、いわゆる医療の六団体の皆さん方が、大変経営状況が厳しい、賃上げについても、とても現下の物価、経済の動向とは、医療機関は公定価格で動いている中では非常に厳しい現状があるという声明を出されたところであります。大臣もお耳にされておりますし、予算委員会でも様々御意見があったというふうに思っています。

 政府の取組は、もちろんそれは有効な部分はたくさんあろうかというふうに思いますが、やはり現場にはそれがしっかり届いていない、厳しい声があるということを指摘をさせていただきたいと思います。

 去る先週でしょうか、いわゆる福祉サービス、介護の従事者の処遇の状況の調査結果も出ているところであります。加算等も柔軟化をし、それが取りやすい体制になって、実態には、それぞれ新加算の一、二、三が取られているということであり、一定の差額も、前年度からはプラスの数字が出ているところでありますが、あえて指摘したいのは、令和六年度、令和七年度と、介護も、また障害もそうでありますが、賃上げの原資として報酬に組み込まれた分につきまして、加算の全体を令和六年度分の賃金改定に充てたというのが、介護施設でも八割を超え、障害施設でも七七%ということであります。令和七年度の賃上げの原資はもう既にないということを、このデータ、アンケートは如実に表しているのではないかというふうに思っています。

 さきの三月十二日の声明におきましても、いわゆる高齢化の伸びに抑えるという財政フレームのことについても言及がありましたし、賃金・物価スライドの関係についても、抜本的に考え方を見直すべきだという団体の皆さんの御主張でありました。

 私は、それぞれ厳しいお声を聞く中で、傾聴する部分は非常に大きいのではないかというふうには個人的にも思うわけでありますし、これは自民党、与党の中でもしっかり議論をしていかなければいけないというふうにも思っているところであります。

 全般的に今申させていただいたわけでありますが、医療や介護、障害も含めてでありますが、この経営や、また、働いている方々のやる気、人材流出も進んでいるというふうにも報道がされているところでありますが、この対応について、今、新年度に入ったばかりではありますが、どのようにしっかり対応し、血の通った厚労行政として医療や介護や障害福祉の現場と寄り添っていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 今先生おっしゃられたように、いろいろな関係団体からのお話についても私どももお聞きしておりますし、様々な状況にも接しているところでございます。また、あと、今年の春闘も昨年を上回る状況だという点についても理解をしているところでございます。

 こうした中で、地域で必要な医療、介護の提供に必要な人材を確保する観点から、医療・介護分野における賃上げの実現、重要な課題だというふうに認識しております。

 厚生労働省といたしましては、令和六年度報酬改定の対応に加え、先般の補正予算で更なる賃上げに向けた支援を講じてきたところであり、まずは必要な支援が現場に行き届くよう取り組み、着実な賃上げにつなげていきたいというふうに思っております。

 その上で、これから現場に行き届く補正予算の効果、物価等の動向、経営状況など、足下の情勢変化、現場からの御意見、こういったものをしっかり把握した上で、次期報酬改定を始めとした必要な対応を検討していきたいというふうに考えております。

田畑委員 めちゃくちゃ教科書的な答弁でありまして、それはもちろん分かっているわけでありますので、それを踏まえて、やはり緊急声明を出されるということ自身は大変重いことでありますし、我々もしっかり意見を出していきたいと思います。一緒に考えていかなきゃいけないと思いますし、当然、少数与党ということでありますから、野党の皆さんともしっかり議論をしながら、医療崩壊、これはどこも全国で起こすことは絶対あってはならない、そういう決意でしっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。まずは、今日は一問ということでありますが、危機感を共有をさせていただきたいというふうに思います。

 続いて、救急救命士の活動につきまして、少しお話をお聞きをしたいというふうに思います。

 去る三月三十一日に救急救命士の試験の合格者が発表されたところであり、令和六年の試験では三千二百四十二名の方が合格をされたというふうにお聞きをしてございます。全国では、令和七年一月末で救命士の登録者は七万五千九百十五名いらっしゃるということであり、女性は一六・三%の約一万一千人余りだというふうに資料を拝見をしたところであります。

 令和三年度に法改正がなされて、病院内で勤務ができる救急救命士の方々が増加をしているところであります。それに伴って、養成施設、いわゆる養成校も実は全国では増加をしているということでありまして、若い方々が救命士を目指し、もちろん消防、救命士、また医療現場での救命士で働きたい、また、人の役に立ちたいという方々が増えていることは望ましいことだというふうに思います。

 私は今、自民党の救急救命士を支援する議員連盟の事務局長を拝命をしておりまして、これまでも現場の声を拝聴することを心がけてきたところであります。

 また、申したとおり、今、医療職で働く救命士の方々が増えている中で、業務の場所ですとか行為の範囲につきまして、様々な見地から議論がなされております。

 今日も資料を添付をさせていただきましたが、厚労省においてもワーキングチームが置かれているというふうに承知をしてございます。二問目で触れたいと思いますが、検討会は当然大事なことでありますが、検討会のアウトプットについて、ちょっと後ほどまず聞きたいと思います。

 その前でありますが、現場のタスクシフト、タスクシェア、これにつながる対応に、やはり科学的な見地、科学的な根拠ですとか医学的な見地を生かした中で議論が進められるべきだというふうに思います。

 そして、救急の現場は大変過密になり、搬送件数も非常に増えています。プレホスピタルケアの充実の観点からも、救命士さんの活動の在り方については柔軟かつ継続的に見直しが必要ではないかというふうに思います。もちろん、医療現場全体の中での議論を踏まえて対応すべきだというふうに思います。

 それでは、改めてでありますが、資料もおつけをしましたが、検討会ワーキンググループの議論、検討の進捗ですね、今、令和五年度、六年度とそれぞれ議題に基づいて協議がなされてきたところでありますが、なかなか、外から見ていても、出口というか、いろいろな検討事項がいつ着地するんだということが見えづらいと感じています。

 令和七年度、今後、この検討会も七年度に続くということがされているわけでありますが、今後どう検討して、検討事項の結論をいつ出すつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

森光政府参考人 お答え申し上げます。

 救命救急士の業務につきましては、令和三年十月から医療機関の救急外来でも救急救命処置を実施できることとしまして、処置の拡大については、令和五年八月から御指摘のようにワーキングを開催し、御議論いただいているところでございます。

 具体的な検討状況でございますが、令和六年度より、アナフィラキシーに対するアドレナリンの筋肉内投与について、安全性や必要性、教育体制等に係る検討を進めてきたところでございまして、それを踏まえまして、令和七年三月、先月でございますが、法令の整備を行った上で一部の地域で実証を開始し、令和七年度末をめどにこの実証の結果が判明する予定となっております。

 その上で、更なる処置の拡大につきましては、これまで多くの御要望をいただいておりまして、今年度からは、まずは、有効性などの観点から要望項目の優先順位の整理を行いまして、計画的に検討を進めるということで迅速に結論を得られるよう対応していきたいと考えておるところでございます。

田畑委員 ありがとうございます。

 アナフィラキシーに対するアドレナリンの筋肉内投与ということなんだというふうに理解していますが、そのほかももちろん当然計画的にやっていただきたいというふうに思いますし、先ほど申しましたが、やはりいろいろ医療現場は逼迫をしていたりですとか、また、様々な医学的な見地が積み上がっている分野においてしっかりスピード感を持って行っていただきたいということを、あえて言及させていただきたいというふうに思います。

 もう一問であります。

 先ほど言及がありました令和三年度の法改正の効果検証を、令和四年度の科学研究で厚労省の方で行われています。そのときのいろいろな意見聴取、研究の対象者は、全国の救急救命センターのセンター長や看護師長を対象に、医療現場で救命士がどのような効果を出しているかというような調査がなされて、研究がなされていると承知をしています。

 私は、そろそろ、救命士自身の方々に現場の声をしっかり意見聴取をすることが大事ではないかと思います。雇用形態も、決して常勤の無期雇用ではない雇用もあるやにお聞きをするわけでありますし、医療機関で仮に働いたとしても、キャリアアップの仕組み、ラダーも含めたものがなかなか不透明であるということ、院内研修の実態はどうなのかということ、また、地域医療構想を進めていく上で、救命士の活躍の範囲はその地域地域ではどうニーズがあるのかということについて、実際の救命士の方、医療現場で働いている救命士の方の意見をしっかり行政として吸い上げることが大切ではないかというふうに思います。

 救命士自身に対する実態調査、これを行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

森光政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年の救命救急士法改正によりまして、医療機関に勤務します救急救命士の数は増加をしております。令和五年の把握でございますと、千八百二十人が働いているという状況でございます。医療機関に勤務する救命救急士の勤務実態の把握というのは重要であると考えております。

 令和四年から令和六年にかけて、厚生労働科学研究において、法改正による、救急医療機関で働く医師及び看護師の業務負担の軽減の効果や、救急医療機関における救命救急士の雇用の状況と診療実績との関連等につきまして調査を行ってきております。

 令和七年度につきましても、引き続き厚生労働科学研究において調査を実施する予定でございまして、その調査項目につきましては、委員御指摘のように、救命救急士本人に対する調査……(発言する者あり)済みません、救急救命士、大変失礼いたしました。救急救命士に対する調査を含めまして、有識者の御意見を伺いながら検討を行っていきたいというふうに考えております。

 このような調査を通じまして、医療機関においても救急救命士が活躍できるよう、引き続き必要な環境の整備を行ってまいりたいと考えております。

田畑委員 ありがとうございます。

 関係者、しっかり一丸となって、その対応について取組を期待申し上げたいと思います。

 私、地元は富山でありますけれども、富山市の方でも、在宅医療と救急の現場のいろいろ負担を軽減をした業務の取組というのを、皆さんそれぞれ医療職の方々は工夫されています。富山市のまちなか総合センターにおいても、今のような観点から、例えば救急搬送時の情報提供書というのを独自に作っていらっしゃって。今日はちょっと、資料としては添付はしておりませんが。在宅の医療現場では、救急のいろいろな意味での負担軽減という取組の事例が幾つもあります。いろいろなことを吸い上げていただいて、横展開できる好事例を横展開、是非お願いをしたいというふうに思います。

 最後、消防庁の方に今日は来ていただいていますが、消防、救急の方々についてもちょっと一問お願いしたいと思います。

 一人配置というのは、救急車一台に救命士が一人配置、非常に、もう約九九%まで来ているわけでありますが、これも現場の救命士からお聞きしますと、当然、消防職員は二十四時間勤務ということに相なるわけであります。消防士の方、救命士の方、それぞれ二十四時間勤務で対応している。救急車の搬送件数が非常に増えている中で、消防、救命士の身体的な御負担も非常に多いのではないかというふうに心配をしております。

 もちろん、一定の法令の下で健康確保措置がなされて救命士の方々はお仕事をされているわけでありますが、場合によっては、そうしたことが相談しづらい、また、言う場所がないということもあるのではないかと懸念をするわけでありますが、消防、救命士の身体的な対応についてどう対応しているのか、消防庁、お願いします。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 消防庁といたしましても、救急救命士を含めた救急隊員の職務環境の整備は重要と考えております。

 このため、例えば、救急救命士の疲労度を偏差値で見える化しまして乗車調整を行う事例や、通常三人の救急隊なんですが、四、五人の隊員を配置して交代で乗務するといった事例など、救急隊員の労務負担の軽減等の取組事例を全国の消防本部に対して通知することによりまして、適正な労務管理を推進しているところでございます。また、救急業務の効率化を図るために、救急業務のDXの推進、これにも取り組んでいるところでございます。

 引き続き、救急救命士を含め、救急隊員の労務負担の軽減等に取り組んでまいります。

田畑委員 ありがとうございます。

 各県を含めた消防本部とのコミュニケーションをしっかりやっていただきたいと思います。

 それでは、引きこもりにつきまして一問質問したいと思います。ちょっと余り時間がございませんので。

 今日は、引きこもり支援のハンドブックを今手元に、私、持ってまいりました。今日は大臣答弁は結構でございますが、大臣、これを見られたんだというふうにお聞きをしています。ありがとうございます。

 全国でも百四十万人以上の方々が何らかの事情で引きこもり状態にあるということが、数字が報告されているところであります。

 これまで医療的な観点からのいわゆる支援のバイブルがあったわけでありますが、我々自民党からも、ひきこもり議連で何度も要望をさせていただいて、新たな、やはり生活や福祉的な側面から引きこもり者を支援するための何らかのバイブルや指針を出すべきだということを申し上げたところ、令和五年度、六年度、二か年かけてこのハンドブックを作るということに尽力をいただきました。「はじめに」に含めた言葉を見るだけで、私、涙が出そうでありますし、事例も含めて、これがしっかり地域でワークしてほしい、本当にすごく感じているところであります。

 副大臣にお聞きをしたいというふうに思いますが、このハンドブック、「寄り添うための羅針盤」というタイトルをつけているわけでありますが、これをどう活用していくのか、改めて決意をお聞きをしたいと思います。ごめんなさい、副大臣じゃないのね、局長ね、よろしくお願いします。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 ひきこもり支援ハンドブックについてでございますけれども、引きこもり状態にある方々やその御家族に寄り添った相談支援が行われますように、現場の実態も踏まえつつ、多様な支援事例に関する調査も行った上で、本年一月に策定したものでございます。

 委員御指摘のとおり、このハンドブックの活用を進めていくこと、大変重要だというふうに考えてございまして、本年一月には全ての自治体に周知を行いましたほか、二月には策定に関わっていただいた有識者の方による研修会を開催しておりまして、三百を超える自治体の方に御参加をいただきました。検討の経過やハンドブックの活用について説明をしていただいたということでございます。

 今後ですけれども、国が実施しますひきこもり地域支援センター等の職員を対象とした研修ですとか、都道府県による自治体向けの研修で活用するとともに、生活困窮者自立支援制度で実施する各研修などでも活用することを検討してございます。

 このハンドブックの活用を通じまして、お一人お一人の状況に応じた丁寧な支援が行われるように、引き続き取り組んでまいりたいと考えてございます。

田畑委員 ありがとうございました。

 副大臣は、ごめんなさい、技能五輪国際大会の話で質問でありました。

 もう時間がありませんが、技能五輪、今度、二〇二八年、愛知でということでありますが、その取組に向けて、今、新しい指針も出されたところであります。取組強化、決意をお聞かせをいただきたいと思います。

鰐淵副大臣 お答え申し上げます。

 今委員からも御紹介いただきました技能五輪国際大会につきまして、先日、三月三十一日に指針を公表いたしました。二〇二六年の上海大会に向けた選手強化の方向性を示しました。

 また、あわせまして、二〇二八年の技能五輪国際大会の日本・愛知大会での開催を見据えまして、メダル獲得に向けた競技力強化や、また技能尊重機運の醸成に向け、取組の強化を進めるということでしっかりとやっていきたいと思っております。

 また、議員が日頃から取り組まれております技能士の方との連携もしっかりと取り組ませていただきまして、若い方にしっかりと技能が伝承できるように、そういったことも含めてしっかりと取組を進めてまいります。

田畑委員 終わります。ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、堤かなめ君。

堤委員 おはようございます。立憲民主党の堤かなめです。

 二十五分の質疑の時間をいただき、ありがとうございます。

 まず初めに、子宮頸がん検診の受診率の向上について質問いたします。

 お手元の資料一を御覧いただきたいと思います。これは、子宮頸がん検診の受診率を国際比較したものでございます。一番左から高い順になっておりますが、一番左のオーストリア、そして二番目のスウェーデン、こちらでは八割近い受診率となっております。ところが、日本は四三・七%、およそ四割にとどまっています。先進国の中で最低レベルということになろうかと思います。

 また、資料の二を御覧いただきたいと思います。これは、北海道大学の特任講師ハンリー氏による論考でございます。

 下線部の1を読ませていただきます。子宮頸がん検診の有用性は科学的に検証されており、検診プログラムの成否を決める最も重要な要素は検診受診率である、二〇〇七年に成立したがん対策基本法では、がんの早期発見のためにがん検診受診率五〇%を掲げている、しかし、子宮頸がん検診受診率は四〇%にとどまっている。

 下線部2を読ませていただきます。自己採取HPV検査は受診者の心理的負担が少なく、在宅で実施可能であり、受診施設がない地域でも可能な感度の高い検診方法である、自己採取法が医師による採取と比較して劣らないことを示す証拠が増えてきており、自己採取法の普及には絶好のタイミングであると言えるとあります。

 そこで、お聞きしたいと思います。

 我が党の早稲田ゆき委員についても、質問主意書を提出して、この自己採取法を普及すべきだという立場でございますが、女性の健康を守るためにも、自己採取法の普及などを含め、子宮頸がんの検診率を高めるべきと考えますが、いかがでしょうか。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 子宮頸がん検診につきましては、国立がん研究センターのガイドラインでHPVの検査単独法が推奨されましたことを受けて、HPV検査の単独法を令和六年の四月から導入をさせていただいております。

 先生御指摘のHPV検査自己採取につきましては、受診率向上は期待されますものの、この国立がん研究センターのガイドラインの中では、安易な自己採取の普及は精密検査の受診につながらず、期待した効果を発揮できない可能性が高いこと、また、自己採取法の導入を検討する場合には、受診率だけではなく、精密検査の受診率をアウトカムとした普及と実装研究の結果に基づき議論すべきであるとして、現時点においては医師の採取が原則というふうにされているところであります。

 このため、現時点では自己採取法の導入は困難でありますが、厚生労働省としては、検診の受診率向上のため、市町村が実施する郵送や電話などによる個別の受診勧奨、再勧奨、また、がん検診のクーポン券の配付等への支援、また、企業向けセミナーの開催、企業が行う従業員へのがんに関する情報提供の支援、加えて、受診率向上に効果的な取組につきまして具体的な事例を紹介をした受診率向上施策ハンドブック、この公表などを行っております。

 引き続き、御指摘の子宮頸がん検診の受診率向上のため、各種取組を進めてまいりたいと考えております。

堤委員 まだ自己採取法というものがあるということを知らない方も大変多いと思います。また、二〇二四年の研究報告書では、自己採取法が検診受診率を向上させることを明らかにした我が国初の調査だということも言われております。その後の精密検査につながるかどうかというところは、手紙を出すとか電話をかけるとかで、そこはまた、自己採取法をしてからその次の段階かと思いますので、まずは自己採取法があるということ、これを含め周知していただくこと、そして、それが可能となって受診率を高めるということが大変重要だと思っています。

 二〇〇七年に受診率五〇%を掲げていたのに、それから二十年たってもまだ達成できていないというこの状況を打破するために、早期に有効な対策をお願いいたします。

 次に、保育の効果と保育の完全無償化についてでございます。

 資料三を御覧いただきたいと思います。これは、エコチル調査の結果の記事でございます。エコチル調査に参加した約四万人のデータを解析し、保育施設の利用と子供の発達について調べた結果、一歳未満から保育施設を利用していた子供は、三歳まで保育施設を利用しなかった子供に比べて、三歳時点で発達がよいということが明らかになりました。コミュニケーション、全身を使う粗大運動、細かい作業の微細運動、問題解決能力、着替えや食事、順番待ちができるなど、個人社会スキルの五分野全てで、三歳児時点では、保育施設に通う子の方が発達の遅れとされる割合が少なかったという結果となっています。

 また、資料四、こちらは東京大学大学院教授の山口慎太郎氏の論考でございます。百六ページを御覧いただけたらと思います。

 下線部の1です。PPPとABCという調査がアメリカで行われております。PPPというのはペリー幼児教育プロジェクト、ABCはカロライナ幼児教育プロジェクトでございます。この二つの結果、高校卒業率を二〇から五〇%ほど上げ、三十から四十歳時点での就業率や労働所得を上昇させた一方で、社会福祉利用率を下げ、警察に逮捕される回数を減らすなど、様々な成果を上げていることが明らかにされたとあります。

 また、下線部2、その下の方ですが、具体的には、幼児教育が外在的問題行動を減らしたことが、将来の暴力犯罪への関与や警察による逮捕を四〇%、失業を二〇%、それぞれ減らすことにつながったことが明らかにされたとあります。

 また、少しめくっていただいて、百十五ページです。先ほどの二つの研究は小規模なアメリカでの研究でございますが、公的な大規模幼児教育プログラムが子供たちに与える影響を評価した研究というのもなされておりまして、日本、スペイン、ドイツでは、子供たちの社会情緒的能力の改善や問題行動の減少が報告されている、学力に与える影響とは異なり、社会情緒的能力に与える影響は長期的に継続することを示す研究があり、幼児教育が子供の人生を変えているのは、学力ではなく社会情緒的能力を通じた影響であるということが示唆されているわけでございます。

 そこで、厚労大臣にお聞きしたいと思います。保育が厚生労働施策とどのように関連するとお考えなのか、御見解をお聞かせください。

福岡国務大臣 保育を始めといたします子育て支援施策の充実については、共働き、共育ての推進であったり、全世代型社会保障の構築など、厚生労働省が取り組む政策にも様々な関連性や効果を持つものと考えております。

 具体的には、男女共に希望に応じて仕事と育児を両立できる社会の実現に向けましては、地域における安心して子育てできる保育提供体制の整備と、厚生労働省として取り組んでございます職場における仕事と育児の両立支援制度の充実を、車の両輪として進めることが大変重要だと考えています。

 昨年七月に公表いたしました二〇二四年財政検証の結果では、前回の二〇一九年と比較して年金財政の改善が確認され、この主な要因の一つに、両立支援制度や子育て支援の充実等を背景といたしました近年の女性の労働参加の進展があるというふうに考えています。

 こうしたことも踏まえながら、引き続き、こども家庭庁と連携しながら、各種施策の推進に取り組んでまいりたいと思います。

堤委員 保育サービスは、子供たち本人だけでなく、保護者にも社会的な効果をもたらすということかと思います。保護者の就労率が上がるということは、保護者の人生の選択肢が広がるというだけではなく、税金や年金、社会保険料を支払う側になるということで、大臣がおっしゃったように社会全体に利益があるということかと思います。

 では、資料五を御覧いただきたいと思います。これは、この図を見ていただきたいんですけれども、人への投資の効果についてです。人への投資、これは立憲民主党が強く求めてきたものでございます。この図は、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン教授の著書を引用したもので、人的資本への投資はとにかく子供が小さいうちに行うべきとしています。

 そこでお聞きしたいと思いますけれども、ゼロから二歳を含む幼児教育、保育、これの更なる負担軽減、支援の拡充について三党合意が得られたというふうに思っておりますけれども、具体的な施策は示されておりません。私は、人的資本への投資はとにかく子供が小さいうちにすべきという知見があるわけでございますから、幼児教育、保育の無償化を是非進めていただきたい、具体的な施策を示すべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生に御指摘いただきました自民党、公明党、日本維新の会の三党合意では、ゼロから二歳児を含む幼児教育、保育の支援につきまして、更なる負担軽減、支援の拡充について、論点を整理した上で十分な検討を行い、その結果に基づき成案を得ること、あるいは、地方の実情等を踏まえ、令和八年度から実施することが盛り込まれているものと承知をしております。

 政府といたしましては、今後、三党とも連携しつつ、引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

堤委員 では、次に、保育の質の向上について聞きたいと思っております。

 保育の量的拡大が一段落した今、保育の質の向上が課題となっています。資料四の中でも、十分な質の確保ができていない施設に子供を預けることは、子供の発達にとってむしろマイナスになるという記述もあります。保育の質の向上には、保育園の経営の安定が大前提となります。

 ところが、保育園の経営は少しでも定員割れになると急に大幅な赤字になり、途端に経営が苦しくなります。なぜならば、国の公定価格が、固定費も含め子供一人当たりで決定するという構造的な要因があるからです。とりわけ、ゼロから三歳までの小規模保育園では、年度初めに数名の定員割れが生じただけでも、小規模ですので経営が苦しくなり、年度途中で定員が埋まれば一息つくことができますけれども、今度は年度途中で小学校入学まで預かってくれる保育園に転園することも多く、常に定員割れの危機、経営の危機の中に置かれているような状況になっているということを聞いております。そうなりますと、経営者としては、保育士の配置を手厚くしたり処遇をよくすることにもちゅうちょせざるを得なくなってしまいます。

 少子化で子供の数が減少する中、経営の安定化を図るという観点から、公定価格の在り方を根本的に見直すべきと考えますが、いかがでしょうか。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 公定価格につきましては、利用児童数に基づいて配置すべき職員数が決まることから、利用児童数に応じて支払われる仕組みとなっております。また、先生御指摘いただいたような固定費も念頭に置いてつくってきていますので、定員規模が小さいところの方が単価は高い、そのような仕組みにしております。

 保育所等の利用児童数に定員割れが生じている場合などには、適切な利用定員に見直していただくことが必要だと考えております。このため、市町村におきまして、事業者との意思疎通を図り、その意向を十分に考慮しつつ、その施設での最近の実利用人員の実績あるいは今後の見込みなどを踏まえ、適切に利用定員を設定していただく、見直していただく必要があるというふうに考えております。

 その上で、こども家庭庁といたしましては、令和七年度の予算におきまして、定員六十人以下の保育所等に係る定員区分を従来の十人単位から五人単位に細分化したところであります。これによりまして、利用定員より利用子供数が少ない場合に生じる給付費収入の減少分を軽減することとしております。さらに、今年度から施行される見える化におきまして、経営情報の分析を行いながら、今後も適切に公定価格の設定を行ってまいりたいと考えております。

 また、保育所等の多機能化を進めていくということも保育機能を維持していくための一つの方策であると考えておりまして、先進事例に関する調査研究や過疎地におけるモデル事業の実施等も進めているところです。

 このような取組によりまして、少子化が進行する中でも持続可能な保育提供体制を確保するため、保育所等の安定的な経営の確保に努めてまいります。

堤委員 また、保育士不足も大きな課題となっています。国会では、何年も前から野党の議員が入れ替わり立ち替わり待遇改善を求めてきました。それなのに、一向に保育士のなり手を増やすための有効な手段が取られていないという嘆かわしい状況でございます。

 我が党の奥村政佳参議院議員も指摘していますが、保育士は一人の採用枠に〇・三人しか来ない。応募した人全員を採用してもまだ全然足りないということになっております。超保育士不足ということかと思います。これは保育の質にも大きく影響いたします。

 保育士不足の最大の要因は、賃金の低さです。二年前、二〇二三年時点で全産業平均が三十七万、保育士が三十二万と、まだまだ、およそ五万円も低いという状況です。早期に、まずは全産業平均を上回るべきだと考えますが、いかがでしょうか。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、保育の質の確保、向上の観点からも、また保育人材の確保の観点からも、保育士の処遇改善は極めて重要であるというふうに考えております。

 保育士等の処遇改善につきましては、令和六年度補正予算では一〇・七%の大幅な改善を実施し、七年度の予算におきましても、財源を確保した上でこれを反映しているところでございます。仮に、各現場でこの水準の賃上げが行われた場合、平均賃金を用いて機械的に計算いたしますと、三万円を超える改善となります。また、こうした六年度の取組を含め、平成二十五年度以降では累計で約三四%の改善を図ってきているところでございます。

 保育士の処遇改善につきましては、こども未来戦略に位置づけるとともに、昨年十二月に公表した保育政策の新たな方向性におきまして、保育士の処遇改善に係る今後の目標といたしまして、他職種と遜色のない処遇の実現を掲げており、取り組むこととしております。

 今後も改善状況を注視しながら、引き続き、こども未来戦略に基づき、民間給与動向等を踏まえた更なる処遇改善を進めてまいります。

堤委員 どうぞよろしくお願いします。

 でも、もう既に保育士は給与が低い、待遇が悪いというイメージが広がってしまっています。これを払拭し、保育士を目指そうという若者が増えるためには、全産業平均を上回ること、これが最もインパクトがあるかと思います。一層の取組をお願いいたします。

 また、保育士の確保のため、ほとんどの都道府県で、保育士として五年勤務することで返済が免除される奨学金、保育士修学支援貸付事業を行っているということです。そこで、私の友人で、高校で長年進路指導を行っている友人に聞いたところ、そうなの、知らなかったという答えでした。また、すぐに学校の中を回覧してくれたんですけれども、やはりみんな知らなかったと、その高校の先生たち含めてですね。

 一方で、看護学生を対象とする同様の奨学金、卒業後、一定期間働くと返済が免除される制度については、その友人もよく知っていました。看護学生対象の制度は、収入状況の証明が不要で、比較的誰でも借り入れられるなど、使い勝手がよいということもあり、奨学金を利用している学生が半数近くを占めています。

 そこで、保育の養成学校に通う学生では利用率がかなり低いと聞いていますけれども、利用率はどのくらいなのか、お聞きいたします。

 その上で、経済的に厳しい環境にある高校生にとって、このような奨学金があるということを高校入学時から知ることができれば、将来に夢が持てる、大学に行くのは厳しいなと思っていた高校生の人たちが、大学に行けるという高校生も多いのではないかと思いますが、高校入学時から周知する仕組みや、もっと利用しやすい制度にするなどの取組をお願いできませんでしょうか。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 保育を支える人材の確保は喫緊の課題であり、保育士を目指す学生が、経済的な事情にかかわらず、保育士養成校で学ぶことができるような環境の整備が重要と考えております。

 このため、今先生に御指摘をいただきましたように、保育士養成校に通う学生の経済的負担軽減のため、修学資金の一部として、学費月額五万円等を貸し付け、卒業後、五年間実務に従事していただくことで返還を免除するという修学資金貸付けの仕組みを用意をしております。

 先生お尋ねの利用率につきまして、直近データの令和五年度では、全国で四千三百八十六人の学生に貸付けを行っているところです。これをこの年度の保育士養成校に入学した学生で割りますと、およそ一三%ということになります。

 先生御指摘のとおり、本貸付事業を必要とする学生が確実に支援を受けることができるようにすることは、大変重要というふうに考えております。そのために、効果的な周知方法や利用しやすくなる手続上の工夫につきまして、関係省庁とも連携し、検討してまいります。

堤委員 ありがとうございます。

 保育の効果についてなんですけれども、人生百年時代です。三歳までの投資でおよそ百年効果がある、こんな得な話はないと思います。生涯労働所得が上がり、納める税金や社会保険料が増える、犯罪が減少すれば、犯罪者を逮捕し、裁判をし、刑務所に送るなど、司法警察活動に関わる費用が削減される、さらには社会福祉の利用が減少するなどです。もちろん、保育だけではなく、初等教育、中等教育の投資も、先生方の働き方改革、給特法の廃止なども含め、早急にすべきだと考えております。

 一般に、私、社会学者の端くれでございますが、社会科学では、倫理的な問題から、社会の場において実験を行うことは困難でございますし、仮にそのような問題をクリアしたとしても、諸条件をコントロールすること自体が困難であり、社会実験や社会調査で一〇〇%の確証を得るというのは難しいわけです。そもそも社会科学は、自然科学のように客観的な証拠に基づき真実を明らかにするのではなく、説得的な論拠により、真実らしさを明らかにすることを目指すものであります。

 私は、保育が大きな効果があるというのは日本においても現時点でも十分真実に近いと考えておりますので、是非とも保育、教育への更なる投資をお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、長谷川嘉一君。

長谷川(嘉)委員 ただいま御指名をいただきました、立憲民主党の長谷川嘉一でございます。

 順次、御質問させていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 最初に、マイナ保険証についてということでございます。

 マイナ保険証の現在の登録状況とその使用状況についてお聞かせください。お願いします。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバーカードの健康保険証の利用登録件数は、令和七年二月末時点において八千二百二十五万件であります。また、令和七年二月のマイナ保険証の利用率は二六・六二%であり、利用件数は五千六百四十三万件というふうに承知いたしております。

長谷川(嘉)委員 ありがとうございました。大変直近の数字ということで、参考になりました。

 この件については、新聞記事でも、特に保団連、保険医協会等でも盛んに取り上げていただいていますけれども、私の関係するところでも、今二六・六二%の使用率とありましたけれども、三月いっぱいで二五・九%、直近で埼玉の友人のところでは約四〇%かなという、これはアバウトな数字で、高輪にいる都心の方に聞くとやはり五〇%ぐらいかなということですけれども、恐らくは五〇%、四〇%を切って、二六・六二%をちょっと上回るかもしれませんけれども、そのぐらいの数字かなと思っております。

 これについて加えて御質問させていただきますが、個人の収入は個人情報、保護情報に当たると考えますが、いかがでしょうか。

鹿沼政府参考人 ちょっとマイナ保険証との直接の関係ではないので、申し訳ございません、やや定かではないんですが、恐らく当たるものだというふうには思いますけれども、済みません、ちょっと担当の、あれなものですから、正確な答えじゃなくて申し訳ございません。

長谷川(嘉)委員 これは関連ですから、今後ということであれですけれども、ありがとうございます。

 これは極めて重要な部分でございます。個人の年収は個人情報、保護情報に当たります。個人の年収の、要配慮個人情報という部分について、本人の同意を得てするものと私は解しておりますが、紙の保険証においては本人の同意を得ることとなっておりますが、年収情報が、マイナ保険証においては、マイナンバーカードにひもづけした段階で個人の同意を得たものとして、年収レベルが五段階、アイウエオ、具体的な数字は申し上げませんけれども、分けられた情報が、医療機関の受付でそれを入れることによって、ばあっと出てまいります。

 このことをどのようにお考えであるか。このことだけは分かるのではないかと思いますけれども、御所見をお聞かせください。

鹿沼政府参考人 まず、マイナ保険証による資格確認においては、マイナンバーカードによる確実な本人確認と本人の同意の下、医療機関等が健康医療情報の閲覧を行うことができることとして整備をしており、仕組みとしては、本人の同意なく健康医療情報は閲覧できないということとしております。

 また、今いただいた年収等の情報につきましては、限度額等の確認のために必要な情報ということで入れているというものでございます。

長谷川(嘉)委員 では、改めて御質問申し上げます。

 個人情報、保護情報に当たる部分と私は認識をしておりますが、この部分がそれに当たらないということでよろしいんでしょうか。

鹿沼政府参考人 マイナ保険証には、様々な診療情報、診療情報といいますかレセプトの情報ですとか、あと健診情報とかいろいろな情報が入っていると思いますが、そうしたものと同じように、そういった年収の情報についても個人情報として取り扱う必要があるというふうに思っております。

長谷川(嘉)委員 その答弁はお伺いいたしますけれども、具体的にアイウエオで、年収一千百六十万からという部分があり、九百一万、それから七百七十万から一千百六十万、ウとしては三百七十万から七百七十万、エとしてはそれから三百七十万、オは住民非課税、様々な要件がついてまいりますけれども、まずこの部分が私は問題ではないかなと。これが、受付のパートの職員が見られる、個々の患者さんに対する情報が見られるということを御指摘を申し上げまして、まずこれについては申し上げたいと思いますが、まずこの部分をしっかり精査していただきたい。

 その上で、まずは一旦紙の保険証を存続させ、マイナ保険証の問題点を整理、改善し、国民の信頼を得ることが私は喫緊の課題だということを御指摘申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。

 通告に従って、新聞等で報道されました社会保険診療報酬支払基金の診療報酬明細書の審査業務についてでございますが、これについて不適切な行為があったことが報じられております。

 新聞によりますと、健康保険制度の適正な運用に重要な責任を負う社会保険診療報酬支払基金は、診療報酬明細書の審査業務において不適切があったとして、本年一月二十三日付で、地方組織の一部の管理職と一般職員二十五名の懲戒処分と二百六十七名に対する文書注意、合計でいくと二百九十二名に対する処分が行われたということでありますが、この不適切行為についてお知らせください。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 社会保険診療報酬支払基金におきまして、審査事務の実施時に、レセプト画面を一定時間で自動的に遷移させるツールを使用していたことが判明をいたしました。先ほど先生もおっしゃられていたように、関係職員は既に処分されておりますが、基金を指導する立場である厚労省としても遺憾であるというふうに考えております。

 基金による内部調査によりますと、自動遷移ツールを使用した職員であっても、事前のコンピューターチェックにおいて目視確認が必要とされたレセプトなど、重点的に確認が必要なレセプトについては、目視による確認は行っていたというふうに聞いております。

 本件については、基金において再発防止に向けた取組が進められているところでございますが、厚労省としても、再発防止策が確実に講じられているか、しっかりと確認していきたい、このように考えております。

長谷川(嘉)委員 これは極めて重要な部分でありますけれども、この問題については、余りうやむやにすることなく、明確に我々が理解できるような対処をして、また御報告、あるいは御質問させていただく機会がいただければと思っております。健康保険の適正な運用、これは、患者様にとっても、保険者にとっても、医療機関にとっても極めて重要な問題。曖昧にすることのないように、御指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、このレセプト画面、自動変遷システムとおっしゃっておりましたけれども、画面が一秒で変わるんです。自動的に変わっていく。画面自動変遷システムと言われているようですけれども、この使用は、常識的に考えますと、一部診療報酬明細書について目視できなかった可能性があるのではないでしょうか。いかがですか。

鹿沼政府参考人 自動遷移ツールを使用した職員の場合につきまして、通常の目視による確認の場合でも、そもそも、コンピューターチェックで余り問題がないというものについては、割と短時間でチェックして流していくというふうには聞いております。

 その上で、コンピューターチェック等で目視確認が必要とされたものについてはしっかりと見ていくということが通常の運用であり、また、今回の自動遷移ツールについては、確かに、先生がおっしゃったように、一秒という中で、問題がないか、問題がないかというのは、いわゆる重点的な確認が必要なものを、エラーとかそういったものがないかどうかの確認だけをし、それで自動的に流れていくという形だったということでございますが、先ほども申し上げましたとおり、事前のコンピューターチェックにおいて目視確認が必要とされたレセプトについては、重点的に確認が必要なレセプトということで、目視による確認を行っていたというふうに聞いております。

長谷川(嘉)委員 これについてでありますけれども、一月二十七日に開催された社会保険診療支払基金理事会において、質問に対する説明で、一部診療報酬明細書について目視していなかった可能性を否定できないとの発言があったと聞き及んでおりますけれども、これについて、約二年ほど前より使用されていて、そのことを社会保険診療報酬支払基金本部において把握できていなかったんでしょうか。いかがでしょうか。

鹿沼政府参考人 御指摘のとおり、そういったことが否定はできないというふうには思っておりますし、また、本部においての把握が不十分だったというふうにも思っております。

 いずれにしましても、先ほど、冒頭先生がおっしゃったように、審査事務自体はしっかり適切に行っていくということが重要だと思っておりますので、私どもとしては、こういった事案が発生しないように、再発防止を徹底していただきたいというふうに思っているところであります。

長谷川(嘉)委員 私の御指摘に対する明快な答弁と思えなかったので、再度申し上げたいと思います。

 二年もの間、本部においてそれが把握できていなかった、このことこそ問題ではないですか。いかがでしょうか。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるように、本部の方でそういったことが把握できていなかったということ自体は遺憾だというふうに思っていまして、こういったこと自体が起こったこともそうですし、それが以前から行われていたということを把握できていなかったということも、私どもとしては遺憾だというふうに思っております。

 したがいまして、本部においてしっかりとそういった再発防止対策を講じていただくということが重要なのではないかというふうに思っているところでございます。

長谷川(嘉)委員 まず、監督責任の所在がちょっとよく見えなかったわけでありますけれども、これだけ多くの地方組織の処分者が出ているにもかかわらず、ツール使用者にも懲戒処分まではいっていないということだと思います、今回は。このことを理由にして、社会保険診療報酬支払基金の本部、管理職、診療報酬支払基金の監督責任はどのようになっているのか、もう一度お聞かせください。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 今回のような事案が発生した原因の確認、事案の再発防止を徹底することがまず重要だというふうに考えております。

 本年一月に開催されました支払基金の理事会において再発防止策が御報告されたところであり、現在は再発防止に向けた各種取組が進められておりますが、このような再発防止策が真に実効性のあるものになっているか、同様の事案が再度発生することがないかなどといった検証が現在監事により行われているところだというふうに承知しております。

 厚生労働省としては、支払基金による再発防止に向けた取組が確実に講じられているかを定期的に確認しつつ、監事による検証状況についてもしっかりと注視していきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、支払基金本部が責任を持って再発防止策に向けた取組を講じることが何よりも重要なのかなというふうに思っております。

長谷川(嘉)委員 私、聞き漏らしたかもしれませんけれども、支払基金においてやる責任があるということでありますけれども、診療報酬支払基金の監督責任はどこにありますか。お聞かせください。

鹿沼政府参考人 まず、支払基金として既に関係職員の処分を行っているところでございますが、支払基金の理事会において、先ほど言ったような再発防止策に向けた各種取組を進めていくということとされており、支払基金において責任を持って再発防止策に向けた取組を講じていただくこと、これが本部としての責任ではないかなというふうに思っているところであります。

長谷川(嘉)委員 十分な御答弁とは思えませんでした。

 本件の再発防止は当然でありますが、本件の本部責任をうやむやにすることのないように、厚生労働大臣の指導力、私は、発揮していただきますようお願いをしたいと思います。

 そこで、社会保険診療報酬支払基金の歴代の理事長のうち、厚生労働省退職後に就任した方の割合について教えてください。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 社会保険診療報酬支払基金が民間法人化され、特別の法律により設置される民間法人となった平成十五年十月以降におきましては、五名の理事長のうち、現在の理事長を含む三名が厚生労働省退官後に就任したものと承知しております。

 また、公募制度が始まったのが平成二十二年以降でございますが、それ以降については、三名の理事長のうち現在の理事長のみが、厚生労働省退官後、別の職を経た上で、公募手続により選任されたものと承知しております。

長谷川(嘉)委員 厚労省の重要な立場にある方がそこに行って、それを統括していた。私は、厚労省と無関係であるという認識は甘いと思います。このことを申し添えさせていただきます。

 身内意識が働いている。本部を守ろうということじゃなくて、身内を守って、二年間も分からなかったはずはないんです。適切な指導監督ができていなかったのではないかということも改めて御指摘を申し上げますと同時に、国民の重要な財産であります健康保険制度の信用と健全な運用は、患者様のみならず、保険者にとりましても、医療機関にとりましても非常に重要な問題でありますので、よろしくお願い申し上げます。

 ここで、大臣、これについての御感想なり御所見をいただけますでしょうか。

福岡国務大臣 御指摘がありましたように、社会保険診療報酬支払基金におきまして、レセプト画面の自動遷移ツールを作成又は使用していた事案について、関係者の方々は既に処分されているわけでございますが、支払基金を監督する立場でございます厚生労働省としても大変遺憾に感じているところでございます。

 本件については、支払基金において再発防止に向けた取組が進められているところでございますが、厚生労働省としても、同様の事案が二度と発生しないよう、再発防止策が確実に講じられているか、しっかり注視してまいりたいと思います。

長谷川(嘉)委員 大変貴重な御発言と受け止めさせていただきました。

 時間の関係で、次の質問に移ります。

 三番目として、岡山県吉備中央町にある、水道水のフッ素化合物、PFASの一種であるPFOA、ペルフルオロオクタン酸という学名でありますけれども、この汚染についてお尋ねいたします。

 二〇〇八年から二〇二三年の十五年間に、地元企業、満栄工業に運び込まれた容量一トンの袋で約五百八十袋分のPFOA含有活性炭を水源近くの町営地に保管しており、その活性炭から漏れ出たPFOAが土壌から川、川からダム、ダムから水道水の経路で水道を汚染させたと言われております。

 このような人体に有毒な物質を含む企業からの廃棄物に対する管理の不備について、国民の健康を所管する厚生労働省としてどのように考えておられるか、お聞かせください。

伯野政府参考人 お答えいたします。

 岡山県吉備中央町の水道水源となっていたダムにおいて暫定目標値を超える濃度のPFOA等が検出されましたが、検出の原因については、吉備中央町に設置された原因究明委員会におきまして、ダム上流に位置する資材置場に長期間置かれていた使用済活性炭が原因と考えることが妥当と令和六年九月に結論づけられたと承知しております。

 環境省としては、この事案を受けまして、活性炭の取扱いの実態について調査を行い、その調査結果も踏まえまして、先月二十六日でございますが、PFOA等の除去に利用した使用済活性炭の適正な保管、分解処理及び再生に関する通知を自治体に発出したところでございます。

 同通知でございますが、例えば、PFOA等の除去に利用した使用済活性炭を長期間保管する場合は、屋内で保管する又は雨水等が当たらないように保管するなど、汚染を生じさせないよう注意喚起をしております。

 環境省としては、今回の通知によりPFOA等の汚染拡大防止が一層取り組まれるよう、地方自治体等に必要な助言を行い、再発防止を図ってまいりたいと考えております。

長谷川(嘉)委員 資源であることを理由に大量の廃棄物が長期間野ざらし状態になって保管されている、地元でも時たま目にいたします。大変難しい状況の方たちがそこに関係しているということで、地元自治体も県も及び腰になっているのではないかというふうな事案も多数見られますので、これに対する国としての監督責任はしっかり果たしていただきますよう御要望申し上げます。

 加えて、都道府県や地元自治体との連携はどのように現在図られているか、このことを含めて、こういった関連についてお聞かせいただければと思います。

伯野政府参考人 お答えいたします。

 自治体との関係でございますが、先生御指摘のとおり、こういった事案については地元自治体との連携が必須というふうに思っておりますので、先ほどの通知等を通じまして、しっかり自治体と連携しながら取り組んでまいりたいというふうに考えております。

長谷川(嘉)委員 このことは、あえて御要望をさせていただきたいと思います。

 質問が半分ほど残ってしまいましたけれども、時間の関係で、項目だけちょっとお知らせ。

 食用タール色素の一部である赤色三号、アメリカのFDAでは、食品については二〇二七年一月十五日までに、また、飲料水や経口薬品については二〇二八年一月十八日までに、使用を禁止しております。また、三十年前より発がん性が指摘されておりまして、EUでは一九九三年に、カリフォルニアでは二〇二三年十月に、その使用を禁止しております。しかし、我が国では、禁止されるどころか、まだそれが放置をされている。仄聞したところでいくと、私たちに報告できる何の検証もされていないというふうに聞き及んでおりますけれども、このことのないように御指摘を申し上げます。

 次に、レプリコンワクチン。コロナに対するレプリコンワクチンの世界における現在の使用状況についてお聞かせいただきたいんですが、余りにも治験の期間が短過ぎる。人体に取り込まれて長期間遺伝子に作用する製薬、これが使われている、この重要性をしっかりと認識して、今後ともこの推移を検証して検討していただくことを御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、大塚小百合君。

大塚委員 立憲民主党の大塚小百合です。

 厚生労働委員会では初めての質問になります。私は、福祉、医療の現場で二十年間勤めてまいりました。現場の声や課題をリアルに伝えてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、まず、ケアマネジャーのシャドーワークについてお尋ねをいたします。

 介護支援専門員、ケアマネジャーは、介護保険法において、要介護者等の依頼を受けて、その心身の状況、その置かれている環境、要介護者及びその家族の希望等を勘案し、居宅サービス計画、通称ケアプランを作成できる唯一の職種であり、介護保険サービスを利用する上でなくてはならない存在です。

 しかし、現在、ケアマネジャーの従事者数は、二〇一八年度の十八万九千七百五十四人をピークに減少傾向に転じ、二〇二二年度には十八万三千二百七十八人にまで減少いたしました。この数字だけを見ても、四年間で約六千五百人もの専門人材が失われており、介護職員のみならず、ケアマネジャーの人材不足も深刻な状況にあることは、以前の予算委員会の質問でも指摘をさせていただきました。

 ケアマネジャーの人材不足の要因の一つになっているのがシャドーワークの存在です。一般社団法人日本介護支援専門員協会は、ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会において、シャドーワークについて、介護支援専門員によるケアマネジメント業務を超えた支援業務が発生している要因の一つに、多様化するニーズに応えるための社会資源不足がある、現在、その一部をやむを得ず担っているのが介護支援専門員であるが、今後はより多くの時間や労力をケアマネジメントに投入できる環境を整えなければ、増加する多様なニーズを抱えた高齢者の支援が困難になると予想されると言及しております。

 ケアマネジャーのシャドーワークは、利用者の代理で行う行政手続、救急搬送時の同乗、身元引受けやごみ出しなど多岐にわたりますが、現状の御認識と今後の対応についてお聞かせください。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘くださいましたように、ケアマネジャーは在宅介護の要の存在でございます。

 複合的な課題を抱える高齢者の増加等に伴いまして、利用者や家族からの法定業務以外の幅広い相談や依頼に対応せざるを得ない現状があるということを認識してございます。議員御指摘のとおり、こうした業務負担の大きさが人材不足の要因の一つになっていると考えております。このため、ケアマネジャーの方々がその専門性を生かして個々の利用者に対するケアマネジメント業務に注力することができるように、負担軽減等を図ることが重要でございます。

 昨年末に取りまとめられました検討会の中間整理におきましても、ケアマネジャーがやむを得ず対応している法定業務以外の業務は、基本的には市町村が主体となり、関係者を含めて地域課題として協議すべきであること、法定業務も、事務的な業務を含めて、ICTの活用等による業務効率化を進めることなどが盛り込まれたところでございます。

 こうした内容を踏まえまして、関係者の御意見を伺いながら、関係審議会等で議論を深めてまいります。

大塚委員 ありがとうございます。

 ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会では、地域課題として地域全体で対応を協議すべきとの方向性を示しておられましたが、地域によっては、シャドーワークの業務内容を代替できる社会資源がないケースや、頼れる家族がいないというケースも多くございます。例えば、まずは国から保険者に対し、社会資源の醸成を後押しする働きかけや、代替できないシャドーワークに関しても報酬化を検討の視野に入れていただきたいと思います。

 では、次の質問に移らせていただきます。二〇四〇年に向けた介護職員の確保についてお尋ねいたします。

 介護業界が深刻な人手不足に見舞われているのは周知の事実です。この原因の一つに、我が国の超少子高齢社会という現状がございます。

 総務省、令和六年高齢社会白書によると、六十五歳以上人口と十五歳から六十四歳人口の比率は、昭和二十五年には、六十五歳以上の者一人に対して、現役世代、十五歳から六十四歳の者十二・一人がいたのに対して、令和五年には、六十五歳以上の者一人に対して現役世代は二・〇人でございます。今後、ますます高齢化率は上昇、一方で現役世代の割合は低下し、令和五十二年には、六十五歳以上の者一人に対して現役世代一・三人という比率になると見込まれています。どの産業においても、働き手不足はもはや深刻な問題となっております。

 資料一を御覧ください。

 厚生労働省の第九期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき都道府県が推計した介護職員の必要数を集計すると、二〇二六年度には約二百四十万人、約二十五万人の不足、二〇四〇年度には約二百七十二万人、約五十七万人の不足となっております。

 全産業がますますの人材不足に陥っている中、介護分野における今後の人材確保に関する対応をお聞かせください。

福岡国務大臣 委員も長らく介護の現場に身を置かれていて、大変この分野を熟知されていらっしゃると思います。

 人材確保、大変厳しい状況にあるというのは御指摘のとおりでございます。そして、今後ますます高齢者の増加と生産年齢人口の減少が進む中で、担い手を確保することは本当に喫緊の課題だというふうに認識をしております。

 このため、必要な介護人材の確保に向けまして、累次にわたる処遇改善を行ってきたことを始め、ICTのテクノロジーを活用した生産性向上の推進による現場の負担の軽減であったり、職場環境の改善、また、外国人介護人材の受入れ環境整備など、総合的な対策に取り組んでいるところでございます。また、令和六年度補正予算に計上いたしました賃上げに向けた支援なども、これからまさに現場に行くというような状況でございまして、引き続き様々な対策を推進してまいりたいというふうに思います。

 さらに、今おっしゃった将来に向けてということでいいますと、二〇四〇年に向けて、人口減少によるサービス需要の変化に地域差がありますことから、介護サービス提供体制であったり人材確保の在り方などにつきまして、本年一月から、有識者等で構成されます検討会を設け、議論を行ってございまして、こうした議論の内容も、関係審議会における次期制度改正の議論に生かしていきたいと考えています。

大塚委員 ありがとうございます。いろいろな取組をされていること、存じております。

 先ほどの質問に関連してお伺いをいたします。

 資料二を御覧ください。

 厚労省作成の第九期介護保険事業計画に基づく総合的な介護人材確保対策の取組内容を示したものです。先ほど福岡大臣の御説明にもこちらの内容があったかと思います。これらの取組は以前より介護業界において既に行われてはいるものの、抜本的な人材確保にはつながっていない印象です。

 以前から介護福祉士修学資金貸付制度などもありましたが、日本介護福祉士養成施設協会の調査によると、令和二年度から六年度にかけて、介護福祉士の養成施設、養成課程は年々減り続けております。

 また、今やいなくては現場が成り立たない外国人介護士も、円安が続く中で、もはや日本は技能実習、特定技能実習修得の選択肢として魅力がなく、選ばれない国になってきております。私が施設長を務めていました特別養護老人ホームでも、介護職員の約一割は外国人介護士に頼らざるを得ない状況でした。しかしながら、外国人の中でも一番多かったベトナム人介護士は、円安を機に親への仕送りをやめ、母国でも十分お金が稼げると、ほとんどが帰国をしてしまいました。

 介護業界の人材確保にはまだまだ既存の対策では不十分だと考えますけれども、大臣の見解をお聞かせください。

福岡国務大臣 今おっしゃいましたように、人材確保は大変重要な問題でございます。まずは、今おっしゃいましたように処遇を上げていくということ、先ほども申し上げましたように累次の取組をしておりますし、今回、補正予算等で対応しております。そこで、本当にそれが今後の経営であったり処遇にどれだけ結びつくか、実態をよく見極めながら、今後の対応も検討していく必要があるというふうに思っています。

 あわせて、やはり、若い方とか外国人の方も含めて、介護分野で働いていただこうということを思っていただくためには、処遇改善と併せて、介護の大切さであったり、やりがいであったり、そういったことをお伝えをしていく、そういったことも併せて必要だというふうに思っております。

 本当に危機感を持っておりますので、あらゆる施策を総動員していきたいと思っています。

大塚委員 ありがとうございます。

 大臣のお話にもありましたように、やはり人材確保において一番ネックとなっているのが介護士の給料だと思っています。

 資料三を御覧ください。

 厚労省が先月の三月十八日に公表した介護職員の給与水準の動向を明らかにする調査、処遇状況等調査によると、処遇改善加算を取っている事業所で常勤、月給で働く介護職員の給与は、昨年九月で平均三十三万八千二百円、昨年度改定で加算拡充の効果もあり、前年度比で一万三千九百六十円、四・三%上昇しておりました。処遇改善加算によるベースアップの積み上げにて、介護士の賃金は確実に上がっております。

 一方で、厚労省が提示した賃金構造基本統計調査のデータによると、昨年の全産業平均と介護職員の給与の格差は月八・三万円。他産業で賃上げが進展したことにより、前年の月六・九万円から大幅に拡大をしております。このままでは、今年の春闘で更に給与格差が広がってしまうとの不安の声も現場ではございます。

 人件費を自由にサービス価格に乗せられない介護保険事業であり、事業者単独での対応には限界がございます。この介護従事者の賃金格差の対策について、大臣の見解をお伺いいたします。

福岡国務大臣 御紹介いただきましたように、令和六年度処遇状況調査におきましては、介護職員の賞与などを含めた平均給与額が前年と比較し四・三%増と、当初、報酬改定で想定してございました令和六年度は二・五%でございましたから、それを上回って増加しておりまして、各種取組の効果は反映されているものと考えております。

 一方で、おっしゃいましたように、他産業との人材と引き合いとなっている中で、他産業も相当賃上げが大きく進んでいる状況に対して、そこに追いついていないのではないかという指摘は、これまでも様々おっしゃっていただいてまいりました。

 処遇改善加算、これを、より加算のいい方を取れるように、そのためには、今まで、特に小さい事業所等においては、事務手続が煩雑であったりということもあってなかなか進んでいなかった、そういったことにつきまして、要件の弾力化を行うということでありましたり、また、先般の補正予算において、賃上げに向けた支援、これがこれからまさに現場に行き届くところでございまして、こういったことを着実に実施をしていきたいというふうに思います。

 その上で、この状況をしっかり把握しながら、財源と併せて必要な対応を行ってまいりたいと思います。

大塚委員 ありがとうございます。

 確かに、処遇改善加算の手続、以前より大分やりやすくなったというふうな現場の声を受けております。引き続き、このような対応を続けていただければというふうに思います。

 続きまして、次の質問に参りたいと思います。介護などを担うエッセンシャルワーカーの人材確保に向けた特定最低賃金の導入についてお伺いをいたします。

 先日、三月十七日の参議院予算委員会で、野党から介護分野などにおける特定最低賃金の導入についての質問があり、石破茂首相が政治主導で判断する考えを示す場面がございました。また、福岡大臣も、三月二十一日の閣議後の会見で、介護分野などにおける特定最低賃金の導入について検討する考えを示されました。

 しかしながら、さきの質問でも言及しましたように、介護従事者の賃金格差は、最低賃金のみにとどまらず、継続的なキャリアアップに伴う昇給も視野に入れて考えていかなくてはなりません。

 立憲民主党では、日本維新の会、国民民主党の三党で、介護や障害福祉の現場で働く人たちの処遇改善法案を共同提出いたしました。法案は、賃金の改善を図る介護、障害福祉事業者に対し助成金を支給するように、都道府県知事に求める内容となっております。

 従業員一人当たりの賃金をまずは月一万円上げることを想定し、いずれは全産業平均に追いつく処遇改善を実施していく。最低賃金のみならず、これから来る超高齢社会の担い手を確保していくためには、介護職として安定して働き続けられる全体への処遇改善が必要だと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

福岡国務大臣 まず、御党提出の法案につきましては国会で御議論いただくべき話でございますが、処遇改善が大変重要だという認識については共有をさせていただいております。

 その上で、特定最賃については、労使のイニシアティブの下で行われているものでありますから、これをどうするかということにつきましては様々な検討が必要だというふうに承知をしておりますが、そもそも論として、御指摘いただきましたように、公定価格で成り立っている介護分野におきましては、処遇改善をどう公定価格の中で図っていくかということについては極めて大きな課題だというふうに考えております。

 これまでも賃上げに向けた支援を行ってきておりますが、先ほどの補正も含めまして、現場に行き届く、その状況をしっかり把握した上で、必要な対応については、その財源の確保も含めて検討してまいりたいと思います。

大塚委員 是非、前向きな御検討をよろしくお願いいたします。

 続きまして、物価、賃金上昇に対応した診療報酬、介護報酬の在り方について御質問させていただきます。

 全日本病院協会等の調査によると、二〇二四年の診療報酬改定後の病床利用率は上昇傾向にあるものの、医業利益率、経常利益率は悪化傾向が認められています。医業利益の赤字病院割合は六九%まで増加、経常利益の赤字病院割合は六一%まで増加しており、二〇二三年度福祉医療機構のデータの債務償還年数の分析では、半数の病院が破綻懸念先と判断される三十年を超えている状況です。

 病床利用率が上がっているのに利益が減っているということは、支出が利益を上回っているからです。同じく、特別養護老人ホームなどの介護施設も、人気の高い相部屋の従来型施設の四割超が赤字経営という状況です。

 診療報酬や介護報酬は公定価格ですが、物価や賃金の上昇に対応し切れておらず、県の物価高騰支援金などを受給しても、支出額に追いつきません。物価や賃金など、費用の増加に対して国の支援が足りていないと思うのですが、大臣の御見解をお聞かせください。

福岡国務大臣 これまでも、今日の委員会でもございましたが、大変、医療であったり介護の現場の経営の厳しさについては、これまで累次にわたって御指摘をいただいてきたところでございますし、私どもとしても、その厳しい状況については認識をしてございます。

 政府といたしましては、令和六年度報酬改定で一定の措置を講じた上で、昨年末の補正予算において、医療分野では経営状況の急変に対応する緊急的な支援として約一千三百億円、介護分野は処遇改善及び生産性向上等のために全体で約一千百億円、さらに、重点支援地方交付金の積み増し等を行っているところでございます。こうした措置をまず着実に現場に届けてまいりたいと思います。

 その上で、それで十分かどうかというところについても様々な御議論をいただいてまいりました。今後の物価等の動向であったり、経営状況であったり、足下の情勢変化であったり、また、様々な団体様からも声を上げていただいています。そういった御意見もしっかりと把握した上で、必要な対応を検討してまいりたいと思います。

大塚委員 ありがとうございます。

 令和六年度補正予算額を用いて、人口減少や医療機関の経営状況急変に対する緊急的な支援パッケージが創出されたということは、先ほどの大臣のお話からも聞いております。しかし、医療、福祉分野共に、人材の確保は年々厳しくなっており、今後ますます現役世代が減っていく中で、病院や介護施設に対し、補正予算での場当たり的な支援ではなく、普通に運営をしていれば適正に経営が成り立つような報酬の在り方が望まれております。

 補正予算ではなく、基本報酬に物価や人件費の上昇分を盛り込むべきだと考えますけれども、大臣の見解をお聞かせください。

福岡国務大臣 医療・介護分野において、経済であったり物価動向への適切な配慮を行うことの重要性は認識してございまして、政府といたしましては、報酬改定であったり補正予算などで物価高騰や賃上げに対応する対策を講じてきたところでございます。

 まず、必要な支援が現場に行き届くように取り組むとともに、今、委員の問題意識も示されました。これらの効果であったり、物価等の動向、経営状況など、しっかり情勢を見極めた上で、次期報酬改定を始めとした必要な対応を検討してまいりたいと思います。

大塚委員 ありがとうございます。

 次の質問に参りたいと思います。保育士の一歳児配置改善加算取得要件についてお尋ねいたします。

 資料四を御覧ください。

 こども未来戦略におきまして、令和七年度予算案として、一歳児の職員配置の改善を進めるため、公定価格上の加算措置として、新たに一歳児配置改善加算の措置が予定されております。

 この加算を取得する要件の一つに、施設、事業所の職員の平均勤務年数が十年以上というものがありますが、この要件を入れた背景を教えてください。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 一歳児の配置改善につきましては、先生御指摘のとおり、加速化プランにおきまして、二〇二五年度以降、一歳児について、保育人材の確保等の関連する施策との関係も踏まえつつ、加速化プラン期間中の早期に六対一から五対一への改善を進めるとされていることを踏まえまして、できるだけ早期に改善を進めるため、令和七年度予算案におきまして計上したところでございます。

 この一歳児の配置改善におきましては、これまで実施してきた三歳児あるいは四、五歳児よりも、より多くの保育人材が必要となりますので、保育人材の確保が課題とされている中で、まずは基準の見直しではなく加算措置により対応を進めることとし、あわせて、保育の質の向上の観点や、人材不足の中で持続可能な改善を図るため、職員の処遇改善や職場環境改善を進めている施設を対象として措置することとしたものでございます。

 先生御指摘の平均経験年数十年以上の要件につきましても、この観点から設定しているものでございますけれども、保育事業所の平均経験年数がおおむね十一年であることを踏まえまして、それよりも低く設定したものでございます。

大塚委員 ありがとうございます。

 この要件があるために、対象となる事業所が激減すると現場の保育施設から聞いております。

 保育士の経験年数は八年未満の保育士が約半分という統計調査が出ており、比較的若い保育士が多いのが現状です。地元の保育園団体からは、この加算要件があるがゆえに、せっかく充実した保育を行おうと一歳児に対し五対一の人員配置を行っても、約四割の施設が加算を取得できないと嘆いております。また、経験年数の長い年配の職員が一人でも辞めてしまうと、平均経験年数が大きく下がり、加算が取れなくなる可能性がある施設も出てきております。

 経験年数が長ければ保育の質がそれに伴って上がるのか、それを示すエビデンスはございますでしょうか。また、一歳児保育のために持ち出しで人員配置を増やしている施設に報いることができるよう、この加算要件は廃止若しくは緩和すべきではないかと思うのですが、国の見解をお聞かせください。

竹林政府参考人 お答え申し上げます。

 エビデンスのお話をいただきましたので、その部分について回答させていただきます。

 この点、様々な研究がございまして、OECDの報告書の中で、余り経験年数と関係しないというようなものもございますし、同じ報告書の中でも、三歳未満を対象とする施設では、職務経験と質の高さの関連を示す研究で否定的な報告をされていないというふうな報告もございます。

 また、国内の複数の研究でも、経験の多さが子供への一層の理解や幅広い視点から子供を捉えることにつながっているというふうに示されているものもございまして、この点につきましては、学者によってというか研究によって様々な結論がございますけれども、私どもの承知しているものの中では、平均経験年数の多さが保育の質の向上につながっているということを示すものもあるところでございます。

大塚委員 ありがとうございます。

 持ち時間が終了いたしましたので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、早稲田ゆき君。

早稲田委員 立憲民主党、早稲田ゆきです。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。大臣、よろしくお願いいたします。

 まず、高額療養費制度の見直しについてであります。

 このことにつきましては、参議院に移ってから高額療養費制度の見直しの全面凍結をされたということで、衆議院の方に予算案がまた戻って、回付をされた、憲政史上初ということでありますけれども、私は、予算委員会に出ていた立場から、なぜこういうふうになってしまったのかと。

 大臣もずっとおられましたけれども、予算委員会でもこのことを審議をし、そのプロセスが非常に拙速であった、そしてまた患者団体さんの意見も聞かず、こういうことで、一番生命に関わる、リスクの高い制度をぽんと短期間の審議会で変えてしまうのは絶対によくないから、再考を求めて、何回も何回も私たちも質問しましたよね。

 大臣も、それに対してのお答えは、多数回該当というところはやめましたけれども、そうではなくて、全面的な話というのは、一切大臣もこれを変えるおつもりはなかったということで。参議院に行った途端に、与党の先生から、これでは参議院選挙を戦えないじゃないかみたいな、そんなところでこの予算が変わるのかと、私は非常に今でも、もちろん患者団体の皆様もそうでしょうけれども、憤りを覚えております。

 しかしながら、こうして全面凍結に一旦はなったことは多といたしますけれども、やはり所管の大臣である福岡大臣の責任は大変重いと思います。猛省を私は求めたいと思います。

 そのことについてお答えは結構でございますが、その上で、昨日も大西健介議員が代表で質問されておりましたけれども、総理におかれては、秋までにこれを決定する、そして、患者団体さんの意見もきちんと今度は聞いていくというようなことは答弁されましたけれども、その中身について、方向性については一切、厚生労働省で議論するからということで、何も御答弁をされていないと思います。

 その上でですけれども、なぜ、今から秋までというと約半年、そのような状況で決める必要があるのでしょうか。そしてまた、そのところには、大西議員もおっしゃっていましたように、きちんと患者団体の皆様の意見を聞くだけではなくて、審議会の委員として入れていただきたい、そのことはまず重要なポイントだと思いますけれども、大臣のお考え。秋までに決める必要はないと思います。せめて一年間、これをきちんと審議会で議論をするというのが筋ではないでしょうか。

福岡国務大臣 まず、秋までに方針を検討して決定することとさせていただいておりますが、これは総理も何度も申されているように、高額療養費が医療費全体の倍のスピードで増加する中で、保険料負担の抑制を図りつつ、将来にわたって持続可能な制度としていくために、いつまでも検討を先送りにするのではなく、しかるべき段階で結論を出していく必要があると考え、政府として判断をしたものでございます。

 そして、具体的な運びにつきましては今後検討することとしておりますが、議論の場といたしましては社会保障審議会を想定しております。この議論の際には、患者団体様を始めとした関係者の皆さんから御意見を丁寧に伺うこととさせていただきたいと考えておりますが、どのような形で御意見を伺っていくか、よく検討していきたいと思います。

早稲田委員 審議会の委員として正式に患者団体を入れていただくということも検討の一つに入っていらっしゃるという理解でよろしいですね。

福岡国務大臣 医療保険部会については、従前から申し上げていますように、マイナ保険証であったり、出産の保険適用であったり、国保制度の在り方であったり、被用者保険の適用拡大であったり、様々なテーマを御議論いただいています。その委員に加わっていただくことが、本当に、その時々で御意見を聞くべき相手が変わることから、委員に入っていただくことがいいかどうかということについては、当然様々な御意見がありますが、ヒアリングだけではなく、様々な御意見をしっかり受け止める形としてどういう形がいいのか、しっかり検証してまいりたいと思います。

早稲田委員 二度の失敗は許されないと思います。その上で、審議会でないのなら、きちんとこれに特化した検討会を設けて、そこに患者団体に入っていただくということも十分考えられると思います。そのことも含めて、是非早く、早い段階でそうしたことも含めて決めていただきたい。

 それから、秋というのはあくまでも非常に小手先の議論になる可能性がございます。せめて一年ということを目標にしてやっていただく。これでも短期だと思うんですよね。医療の、社会保障全体を考えていく大きな柱の一つでありますから、そこについてはやはり中長期的なことも考えなければならないと思います。

 一つ、皆様のお手元に資料を配らせていただきました。私は、この鎌江伊三夫東京大学特任教授がおっしゃっていらっしゃる、財源論だけでずっとこの議論をしてきた、そしてまた、そこには医療の価値という、その評価の視点が全く入っていなかったということは大変問題だというふうに書かれておりまして、私もそのとおりだと思います。

 その中で、ここに書かれておりますとおり、高額医療費の意味合いを含めて、その医療の価値を、受ける患者さんがどのように医療の価値を受けているかという評価をやはりすべきではないでしょうか。その指標として、QALYというのを鎌江先生が出しておられますけれども、病状が改善することによる生存年数、それから、生活や生命の質がそれによってよくなるというようなことも評価指標に入れてやるべきではないかと。

 そして、これはもう既に厚生労働省でガイドラインも作って、医薬品それからまた医療の機器などに用いていらっしゃるということでありますけれども、是非、これをベースとした制度についても考えを、この医療の価値の評価ということも入れていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解を伺います。

福岡国務大臣 御指摘のありましたQALYにつきましては、生存年数と生活の質を併せて評価する指標でございます。厚生労働省においては、例えば医薬品などの費用対効果に着目した価格調整を行う際の指標として、一定のQALYの増加に必要な費用の額を用いているところでございます。

 高額療養費制度につきましては、医療保険における追加的な給付の仕組みでございまして、個別の医療行為であったり医薬品等の費用対効果を評価するQALYの考え方と親和性があるのかどうかも含めて慎重に検討していく必要があると思いますが、一方で、これまでの国会の議論におきましても、データの重要性ということについてはいろいろなところから御指摘をいただいているところでございまして、今後の検討においては、例えば、ある所得の方を想定した上で、その方がどの程度の負担になるのか、そういったデータもお示しできるように検討してまいりたいと思います。

早稲田委員 モデルケースを定めてやっていくというのも一つの手法だとは思います。でも、それは短期的にはよろしいかもしれませんけれども、社会保障費が膨らむ中で、これをどうしていくかということが高額療養費にまずターゲットを当てたということなんだろうと思いますから、そうであるならば、やはり中長期的にも考えなければならない。

 そのためには、医療の価値ということを是非取り入れていただくこと、QALYが今すぐ、やっていなくても、これは単発で医薬品とかやっていらっしゃるんでしょうけれども、絶対そこから、そこをベースとした考え方でこういう制度改善についてもできるはずですから、そこは御検討を、厚労省、どうぞよろしくお願いいたします。

 それからもう一つ、自己負担をどれだけ減らすかということも大切な指標でありまして、これは大阪医科薬科大学の伊藤ゆり先生が、今回の厚生労働省が出した高額療養費制度の当初の見直し案、これでいくと、WHOも提案をしている破滅的支出にほとんどの階層がなると。今でも低所得の方はなっているんですけれども、さらに、ほかの層でも全部なってしまうということが大変問題だと。

 これについては、私はやはり、収入から生活費を引いた額のその残りの四〇%以上が医療費ということは、これはかなり厳しい話でありまして、今回、また、財源という意味ではこの指標も大切ですから、そこを超えないように、是非大臣には御検討いただきたいと思います。

 破滅的支出についての御見解、超えないように考えていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

福岡国務大臣 伊藤先生のものにつきましては、ちょっとその前提の置き方とかが十分把握できないためにコメントは差し控えさせていただきますが、御指摘がありましたように、この見直しに当たりましては、患者さんの経済的な負担が過度なものとならないようにするということは大変重要なことだというふうに考えております。

 その上で、先ほど申しましたように、モデルケースを想定した上で、いろいろな所得の方々がどの程度の負担となるのかといったデータをお示しできるよう、よく検討してまいりたいと思います。

早稲田委員 伊藤ゆり先生がおっしゃっているほかの指標もありますけれども、今私が申し上げているのは、破滅的支出という、WHOが言っているその指標でございます。これは絶対にやるべきだと私は思いますし、その中でどれを前提としているかとおっしゃいますけれども、私、厚生労働省の方にもデータもお示しをさせていただいておりますので、是非御検討いただいて、重要なことだと思います、四〇%を超えないようにしていただきたい。それを、今回、全面凍結ということが、ここで立ち止まったわけですから、是非そこをやっていただかないと、本当に命を守るための治療ができなくなりますので、是非、大臣、そこのところはもう一度御検討いただきたいと私は強く要望させていただきます。

 その上で、やはりこの療養費の見直し、医療費全体で考えるということが重要だと思いますし、それがユニバーサル・ヘルス・カバレッジということにもつながっていくんだろうと思います。その中でいえば、どれだけのサービスを対象としていくか、それからまた、どれだけの方を対象としていくかという三つの指標があるというのは大臣もよくお分かりでしょうけれども、その中で、やはり全てを保険適用でやっていくこと自体も考えなければならない。

 その中で、自民党、公明党さん、それから維新さんの三党協議でやっていらっしゃるOTC類似薬の、特に湿布薬等々、そういうことの検討も必要なのではないかと私は考えますが、そのことについての大臣の御見解を伺います。

福岡国務大臣 政府といたしましては、年齢にかかわらず、適切に支え合うことを目指す全世代型社会保障の理念にのっとり、一昨年末に取りまとめられました改革工程に沿って改革を今進めているところで、その中に、御指摘のありましたOTC等についても項目として含まれているところでございます。患者さんにとって必要な医療へのアクセスに配慮しながら、OTC医薬品との負担のバランスの観点から大事な課題の一つであると認識しておりまして、今、自民党、公明党、日本維新の会の三党合意も踏まえ、検討がなされているというふうに承知をしています。

 いずれにしましても、高額療養費の見直しか、ほかの制度改革かという二者択一の議論ではなくて、社会保険料の負担軽減を図り、医療保険制度の持続可能性を高めるために、それぞれの項目の必要性に応じて検討を進めてまいりたいと思います。

早稲田委員 もちろん、二者択一ではないことは分かっております。しかしながら、リスクの高いものを優先順位を上げるのではなく、リスクの低いものから、そうしたことから費用対効果を考えるべきではないかという意味で私は申し上げました。大臣は、是非、そこのところはお分かりでしょうから、そこのところも含めて、こうした保険適用の範囲、きちんと考えていただきたい、それも含めて御検討いただきたいと思います。

 次の質問に行きます。厚生労働省が三月三十一日に公表をされました訪問介護の調査結果についてであります。

 これにつきましては、もう詳細が出ておりますけれども、朝日新聞の方には、訪問介護事業所の六割近くが減収したという調査結果。そして、これは、私たちは、基本報酬の引下げが前年度にあったわけですから、これが影響しているということをずっと申し上げているわけですけれども、厚生労働省は、訪問介護事業所の減収の要因について、訪問回数の減少と分析をされたということでありますけれども、それでは、訪問回数が減少したということはどういうことなのか、基本報酬の引下げはこの六割近くが減収したことには全く影響しなかったのか、大臣はどのようにお考えでしょうか。

福岡国務大臣 今回の調査におきまして、報酬改定前の収入を比べますと、事業所の訪問一回当たりの収入は微増しておりますが、委員が御指摘いただきましたように、例えば地方の中山間地域などでは、サービス利用のピークアウト、すなわち、そこにお住まいの御高齢者が地方においては減少傾向にありますから、そういうピークアウトに伴う訪問回数の減少といったことが見られる。また、都市部においては、逆に、サービス利用者の方々が増加する中で、事業所間の競争等に伴う訪問回数の減少により、小規模な事業所を中心に収入減となっている。そういうことが改めて確認をされたというふうに感じております。

 厚生労働省としましては、訪問介護の経営状況が、地域の特性や事業規模、事業形態等に応じて様々なことであることを踏まえまして、これまでも、処遇改善加算に加えて、今、小規模事業者等が大変厳しい状況にありますから、本年二月の申請受付分から取得要件を弾力化させていただいているほか、物価高騰や賃上げに対する支援、また補正予算等によります訪問介護事業所向けの各種支援、こういったことの対策に取り組んできたところでございまして、今後も、小規模事業所も念頭に置いた支援策を着実に現場にお届けすることに全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

早稲田委員 今、訪問回数が減ったこと、どうですかと申し上げたら、二点おっしゃいました。中山間地域と、それから都市部。その答弁は、何か私、逃げているように思うんですね。

 申し訳ないですけれども、人手不足から、依頼があっても行かれないんですよ。そういうところが増えているんです。だから、二〇二五年には、全国で約四十三万人、それから東京圏では十三万人の介護難民が出るという統計も出ているじゃないですか。ということは、もう既にそれが始まっておりまして、依頼が来てもそこに対応できない、だから訪問回数が減るんです。そのことをきちんと押さえていただかないと、いかにも、中山間地域ではもう介護の需要が少なくなったんだみたいな、そういうことだけがどんどん理由として走り出しますので。そうではないんです、本当に。

 そこのところ、これだけの詳細な調査をしていただきながら、厚生労働省として、訪問回数が減ったということが要因というのは、私は大変違うと思います。

 そうではなくて、なぜ訪問回数が減ったのか、それは、依頼が来ても人手不足で行かれない、じゃ、なぜ人手不足なのか、そこのところが、先ほど大塚小百合議員もお話をされていましたように、処遇改善が全然追いついていないんです。今回の厚生労働省の審議会、部会の方でも、八・三万円、全産業平均より低いわけですよね。そうしたら、当然流出します。インバウンド需要で大変サービス産業や何かは人が欲しいわけですから、そういうところと比べても全然低い。だから、そこを改善していただかないとどうにもならないということを私は申し上げたいし、訪問回数が減っているということは、介護難民がもう既に出ています。そこを改善するには処遇改善しかありません。そして、経営者の支援もしていただかないといけません。

 先ほど特定最賃のお話が大塚議員よりありましたけれども、私はこれは次回以降に聞きたいと思っていますが、これだけではもちろんどうしようもないのは分かっていらっしゃると思いますけれども、そこにはセットで基本報酬の引上げ、これが何としても必要です。それをやらないで、特定最賃と、何か降って湧いたように総理がおっしゃいましたけれども、他党の議員もそれをずっとやっていらっしゃいましたから、でも、そうではないということを、私たちは緊急の訪問介護の支援法案も出していますし、それから処遇改善法案も出しています。これはもちろん与党の皆さんにも是非審議をしていただきたいと私からも強くお願いをいたします。

 そして、その上でですけれども、せっかくの詳細な調査をされたんですから、もっと事業者の意見、これも、聞いていただいたんですけれども、集約をしていただいたら、もっと訪問介護の事業者から現場の生の声が出てくる。なぜ人手不足なのかということも、それももう少し重視していただきたいと思います。

 次に移ります。女性自立支援施設通所型モデル事業についてであります。

 私、昨年三月十三日にこの厚労委でも質問をいたしました。DV、性被害などを受けた女性が複雑性のPTSDとなり、そのトラウマ治療に関しては何年もカウンセリングを受けなければならない、そしてその費用負担が非常に重いということでございます。

 昨年の診療報酬改定で、心理支援加算という形で一部が保険適用となりましたことは大変画期的でありまして、私も非常に評価をさせていただいております。その上で、しかしながら、非常にまだ不十分だということも言わせていただきたいと思います。

 一方で、都道府県の女性自立支援施設、旧婦人保護施設には、入所者に対しカウンセリングを行うことができる心理職の専門職員さんがいらっしゃいます。しかしながら、困難を抱える女性の三割がここには入所できておりません。ですから、その職員さんがせっかくいらっしゃるわけですから、カウンセリングを、在宅のままで、あるいは通所で無料で受けられるようにするのがモデル事業で、これが昨年の目玉だったと思いますけれども、今年度も予算計上をしているけれども、現状がどうなっているのか、このことについて伺います。

福岡国務大臣 御指摘がございました、令和六年度に創設いたしました女性自立支援施設通所型支援モデル事業につきましては、日常生活等を営むに当たり困難を抱えている女性でありまして、女性自立支援施設への入所による支援が望ましいものの、様々な事情により入所に至っていない女性の方々を対象としてございます。

 本事業では、女性自立支援施設へ通所しながら、自立した生活を送るための生活習慣の定着支援、同じ境遇にある女性同士の情報交換等のピアサポート、心理的な援助などを行うものでございまして、御指摘がございましたDVであったり性被害を受けた女性につきましても、支援の対象となり得るものと考えております。

 令和七年度におきましては、複数の自治体から、この事業の年度内の実施に向けて準備を進めているというふうに聞いております。本事業を通じ、様々な困難を抱える女性が心身の状況等に応じた適切な支援を受け、安心して自立した生活を送ることができるよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

早稲田委員 ありがとうございます。

 複数の都道府県から問合せもあり、できそうだというお話でございました。私も地元の神奈川県の担当と議論をいたしましたけれども、所在地を隠すためにサテライトなどを設ける必要とか、いろいろ工夫が必要だということでございましたけれども、是非早期に、複数の都道府県でまずはやっていただいて、そして、そうしたことを望んでいらっしゃる方も大勢いらっしゃいます、でも、知らない、そこにたどり着けないという方が多かろうと思いますので、周知をしていただけますように、都道府県とよく連携をしていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問ですが、保育士の退職手当共済についてです。

 社会福祉法人が運営する保育所に勤める保育士さんの退職手当への公費助成の継続の取扱いについて、これは社会保障審議会の福祉部会で令和六年度中に結論を得るとしていたはずですけれども、まだ結論が出ておりません。現状で二十八万人の保育士さんが社会福祉施設職員退職手当共済制度に加入をしておりまして、どうなるのだろうか、もう継続されないのかと、非常に心配の声が私の地元でも上がっております。

 制度を共管しているこども家庭庁では継続の方針を示していますけれども、主管である厚生労働省がまだでございますので、是非そのお考え、継続の方針を大臣からお願いしたいと思います。

福岡国務大臣 退職手当共済制度における保育所等の公費助成につきましては、先月開催されましたこども家庭庁の審議会におきまして、こども・子育て支援加速化プランを着実に推進するためには保育人材確保は大変重要な課題であること、このため、保育所等に対する公費助成を一旦継続しながら、他の経営主体とのイコールフッティングの観点及び保育人材確保の状況等を踏まえて、更に検討を加え、令和八年度までに改めて結論を得ることとする方針が示されておりまして、先日成立いたしました令和七年度予算におきましても、こども家庭庁において、この公費助成に必要な予算を盛り込んでいるというふうに承知をしています。

 厚生労働省としましても、退職手当共済制度を所管する立場から、公費助成を一旦継続としながら、令和八年度までに公費助成に関して改めて結論を得るべく、こども家庭庁とも密接に連携してまいりたいと思います。

早稲田委員 ありがとうございます。

 取りあえず継続をしていただくということですけれども、取りあえずでは困るんです。今おっしゃいました、イコールフッティングとおっしゃいますけれども、その考え方は私は間違いだと思います。なぜなら、社会福祉法人は営利企業とは違うわけです。例えば障害児も受け入れておりますし、そうした非常に努力をされている、社会的責任の重い保育施設でございますので、私は、これを継続していただくだけでなく、公費助成の恒久化、これを検討していただきたい、すべきであるということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、猪口幸子君。

猪口委員 日本維新の会の猪口幸子でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 今国会で高額療養費制度見直し凍結となりましたが、高額療養費制度は医療費の自己負担が過重にならないよう制度化したものであり、命をつなぐ制度です。しかし、急増する高額療養費を国民の命を削ることなく維持していかなければなりません。そのためには、その制度が適切に運用されているか、無駄がないか、常に検証する必要があります。また、高額療養費制度を利用する必要がないよう、国が国民の健康を維持していく責務があると考えます。

 令和五年三月から令和六年二月診療分の国民健康保険における総医療費は八兆九千二百六十八億円で、そのうち外国人は千二百四十億円、一・三九%。高額療養費は九千八百三億円で、そのうち百十八億円が外国人に支給されました。

 国民健康保険における高額療養費の支給を受けた外国人の国籍、在留期間、在留目的をお示しいただきたいと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 高額療養費の支給を受けた外国人につきましては、大変申し訳ございませんが、国籍、在留期間、在留目的ごとのデータは把握しておりません。

 健康保険における外国人に対する高額療養費の支給額は、今先生おっしゃったように百十八億円となっており、先生の資料にもございますが、これは日本人も含めた全体の高額療養費支給額の一・二一%でありまして、外国人の被保険者数が全体の四%であることと比べても、マクロの数字だけ見れば、外国人が高額療養費制度を多く利用しているとの状況にはないというふうに認識をしております。

猪口委員 特段、外国人が高額療養費制度を過剰に使っている、そういうデータではないということでございますが、二〇一二年以前は、国民健康保険は、外国人向けには一年以上の滞在が加入対象でしたが、二〇一二年、法改正によって三か月以上と短くなりました。

 本来、医療目的で来日する場合は国保適用外ですが、留学や就労、会社設立を表向きの目的として、実質は治療目的としての滞在である事例が増加しているとメディアで報道されていますが、このような高額療養費や海外療養費を不正受給したケースはあるのですか。その場合、医療費としては幾らぐらいか、国籍、在留期間、在留目的は何か、お示しいただけたら。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、マクロの数字では多く利用している状況にはないという話をしましたが、やはり個別のケースでいろいろな問題があるのであれば、そこはしっかり対応していかなきゃいけない、このように思っているところでございます。

 日本の医療保険を利用する目的を隠して在留資格を取得し、高額療養費や海外療養費を受給しているケース、これも大変申し訳ございません、実態の把握が難しく、国として具体的な件数等のデータは持ち合わせてございません。

 一方で、例えば外国人の被保険者については、平成三十年一月から、厚生労働省と法務省が連携し、国民健康保険の加入から一年以内に高額療養費や海外療養費の支給申請を行った場合などにおいて、例えば、在留資格が留学であるにもかかわらず通学している様子がない場合ですとか、在留資格の本来活動を行っていない可能性があると判断される場合に、保険者である市町村から出入国在留管理局に通知する取組、こういったことを実施しております。

 当該通知が行われたケースについては、平成三十年一月から令和五年五月まで三十一件というふうに承知をしております。

猪口委員 これは、川下だけ見つけているということで、川上でしっかり確認しないといけない。

 たまたま川下で見つけたという状況だと思いますけれども、実際、不正受給の具体的な対策というのは、今、出入国管理局のその確認のみに頼っているということですか。市町村での確認ということはより一層必要かと思うんですが、いかがでしょうか。

 それと、今年の二月に河野太郎議員がネットで、二〇一九年から三十四件不正があったということですけれども、ちょっと件数が違うようなんですけれども、これは、真偽がどうなのかというのが不明で、それもありまして御質問したわけなんですけれども、いかがでしょうか。

鹿沼政府参考人 まず、件数については、大変申し訳ございません、三十四件が正しい数字で、私が今思い込んで三十一と言ってしまったのはあれですけれども、三十四件が正しい数字でございます。申し訳ございません。

 あわせまして、不正受給に対しての対策、これは非常に大事だというふうに思っております。高額療養費や海外療養費は、医療保険に加入している方であれば国籍を問わず利用可能でありますが、例えば、入国目的を偽って在留資格を取得して日本の医療保険制度に加入するということは、やはり、被保険者の支え合いで成り立つ医療保険制度の信頼を損なうものであるというふうに思っております。医療保険における適正な資格管理が重要だというふうに考えています。

 そのような観点から、一つは、先ほど申し上げたように、厚生労働省と法務省が連携しながら、保険者である市町村、こちらの方で、様々な問題がある事例が発生したときに出入国在留管理局に通知する取組を実施しております。また、海外療養費の支給に当たりましては、渡航事実や海外の医療機関で出産したことを証する書類の提出を求めるなど、不正請求対策を行っているところでございます。

 いずれにしましても、先ほど言ったように、やはり医療保険制度の信頼を損なう行為はあってはならないというふうに思っておりますので、引き続き、利用の実態把握に努めながら、こうした制度の適正な取組に向けていろいろ取り組んでいきたいというふうに考えております。

猪口委員 分かりました。

 市町村も非常に難しいと思うんですけれども、医療機関で高額療養費制度を使うという場合、国籍を分けてはいけないとは思いますが、外国人がこの制度を使う場合、医療機関が非常に大変だとは思うんですけれども、在留資格とか、そういった面もそろえての高額療養費制度の利用ということをできるような形にしたらいいんじゃないかなと思うんですけれども、元のところでしっかり確認する。たまたま後になって分かるというケースが三十四件あったということですけれども、見逃している可能性もかなりあると思いますので、この点、改善できるところは改善していただきたいと思います。

 続きまして、外国人の国民健康保険の保険料の滞納は現在どのような状況になっているか、お教えください。

鹿沼政府参考人 度々で大変恐縮でございます。国民健康保険の保険料について、外国人に限った滞納状況というのは現時点では把握しておらないところでございます。

 被保険者の支え合いで成り立っている医療保険制度において、外国人の方にも当然ながら適切に保険料を納付していただくことが重要だということは、我々もそのように思っております。

 そのため、保険者において、外国語によるリーフレット作成などによる制度の周知ですとか、外国人を含め、保険料の滞納者への納付の勧奨や相談等の取組を行っておりますけれども、引き続き、保険料を適切に納付いただけるよう、関係省庁とも連携しながら取り組むとともに、御指摘のような外国人の滞納状況の把握、こういったものも進めていきたいというふうに思っております。

猪口委員 日本人の国民健康保険の納入率は、市町村によって違いますけれども、八〇%のところから今九四%ぐらいになっていると言われています。真偽は分かりませんけれども、外国人の納入は、三割ぐらいは納入していない、そういったことがネットに書かれていて、この真偽も定かではないというところで、これはやはり、国民のための国民健康保険に対して、この納付ということも、もう少し国がきっちりと確認していただきたいと思います。

 続きまして、外国人労働者や留学生は増加しており、建設関係を始め多くの分野での人材の確保のためには重要な存在であり、その方々の健康の維持や医療を適切になさなければならないと考えますが、外国人医療に対しては、現在の国民のための医療制度ではなく、特別な制度が必要と考えますが、政府の御見解はいかがですか。国民健康保険は本来、国民のための保険制度ではないでしょうか。

福岡国務大臣 我が国の医療保険制度は、適正な在留資格を有し、日本国内に住所を有している外国人については、原則として加入し、保険料を納めていただきながら、疾病等の場合には保険給付を受けることができる制度となっております。

 これは、社会連帯と相互扶助の理念等に基づき、国籍のいかんを問わず、ひとしく保障を及ぼすべきであるという我が国の社会保険制度の基本的な考え方にのっとったものでございますし、また、私どもが承知している限りにおきましては、委員が御指摘いただいたような制度、つまり、他の先進国において、外国人の医療保険加入を別にしているとか医療保険に加入を認めていないというような国はないと承知していることを鑑みますと、外国人のみの医療保険制度を設けるといったことについては、慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

 他方、外国人が入国目的を偽って在留資格を取得し日本の医療保険制度に加入するような場合につきましては、被保険者の支え合いで成り立っている医療保険制度の信頼を損なうものでございますから、医療保険利用の実態についての把握に努めながら、適正な利用に向けて取り組んでまいりたいと思います。

猪口委員 そうですね。国際的に見ても、やはり外国人別建てということは非常に難しい可能性が高いとは思いますけれども、予算的にも、外国人向けの医療制度をつくったら、また財源がどうかということになってしまうことを考えれば、逆に負担が多くなるので、それであれば、現状の制度、やはり、しっかりと制度を遂行できているかどうかということ、保険料の納入がしっかりできているかどうか、そういった面と不正受給がないかどうかをきっちりと管理していただきたいと思います。

 続きまして、これが無駄をなくすための、高額療養費を、無駄がないかどうかという対策だと思いますけれども、いかに高額療養費を抑えるかということが今後の課題だと思います。それは命を削ることなくということで、そのことについて、この後、質問させていただきます。

 令和五年度の高額療養費の健康保険組合の高額レセプト上位百位の内訳は、七四%は悪性腫瘍が占めており、今後も、抗がん剤等の高額化に伴い、更に増加すると思われます。この悪性腫瘍、すなわちがんを減らす取組が高額療養費の伸びを鈍化させることにつながりますので、がんの予防と早期発見に懸かっています。

 早期発見は定期的な検診によるところが大きく、その拡充が重要です。そしてまた、検診については国が進めているところと思いますので、これはきっちり進めていくこと、これが高額療養費を抑えるために大変重要ですが、がんの予防については、ヒトパピローマウイルス、肝炎ウイルスやヘリコバクター・ピロリ感染などの対策及び禁煙が重要です。

 この中で、まず、最も、いち早くがんの予防として効果があるのはヒトパピローマウイルスですが、これは、子宮頸がん、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんなどの発生に関わり、子宮頸がんの九〇%以上からヒトパピローマウイルスが検出されます。また、このワクチンの効果が非常に高く、五年で、ワクチン接種後、円錐切除術以上のがんの治療、これは九〇%減少するとの論文があります。

 このヒトパピローマウイルスに対する予防接種が重要ですが、日本においては海外に比較して接種率は遅れていると言われていますが、現状をお聞かせいただきたいと思います。

鷲見政府参考人 お答え申し上げます。

 本年一月の審議会に報告されました累計の初回接種率の推計によりますと、新型コロナウイルス感染症が発生した令和元年、二〇一九年と、令和六年、二〇二四年の上半期を比較いたしますと、令和元年当時、定期接種世代であった者の接種率は〇・二%から一・二%であったところ、令和六年には三八・四%から四七・六%になっており、これは、令和四年度から積極的勧奨の再開、そしてキャッチアップ接種が開始したことを踏まえて、接種が一定程度進んだものと承知しております。

 引き続き、一人でも多くの対象者が正しい情報に基づいてHPVワクチン接種等について検討、判断が行えるよう情報提供を行い、接種率の更なる向上に向けて取り組んでまいります。

猪口委員 ありがとうございます。

 でも、五〇%に満たない状況で、これは、MR、はしか、風疹なんかの予防注射と同様に、もっとパーセントを増やすことで、がんの発生を確実に、五年ではっきりと効果が出てくると思いますので、これを確実に進めていただきたいと思います。

 コロナの感染前は非常に怖がる方が多かったんですけれども、コロナの後、非常に接種を希望する方が多くなってきた。それは恐らく、新型コロナのワクチンで筋注、筋肉注射が非常に普及しまして、それを難なくクリアできるという状況があって非常に増えたんじゃないかと思います。これが一層進むことが高額療養費の抑え込みに重要かと思います。

 若年での発症の危険がある子宮頸がんに対するヒトパピローマウイルス予防接種の拡充がより一層求められますが、接種を逃した年齢に対するキャッチアップ措置と男性への接種はどのようにお考えか、お聞かせください。

鷲見政府参考人 お答え申し上げます。

 HPVワクチンのキャッチアップ接種の期間につきましては、審議会における議論の中で、過度に長く設置した場合、早期に接種を行う必要がないという誤ったメッセージにつながる可能性があること、また、特に年齢が高い世代においては、接種のタイミングが遅れることによりワクチンの有効性がより低くなる可能性があること等の指摘もあり、令和四年度からの三年間とし、昨年度で終了したところでございます。

 その上で、昨年度夏以降の大幅な需要の増加等の状況を踏まえまして、接種を希望される方が接種回数を完了できるよう、キャッチアップ接種期間中に少なくとも一回以上接種した人につきましては、今年度に残りの接種回数分の費用を公費負担で接種できるように経過措置を設けたところでございます。

 また、男性に対するHPVワクチン接種の検討状況につきましては、審議会で御議論いただき、専門家からは、有効性や安全性は認められるものの、費用対効果に課題があり、今後の薬事承認の状況を踏まえた引き続きの議論が必要との意見をいただいたところでございます。

 今後、審議会の意見も踏まえまして、海外での導入状況や我が国のワクチンの薬事承認の状況等も注視しつつ、費用対効果を含めた評価を再度行う等、引き続き、定期接種化に向けた必要な議論を進めてまいります。

猪口委員 費用対効果ということを考えると思い出しますのが、風疹のワクチンですよね。当初は女性だけに接種していたんですけれども、後になって公衆衛生上の観点から全員に接種ということになったことを考えますと、これは常に男性への接種も検討を続けていただきたいと思います。

 続きまして、がん予防で重要な点の一つとしては、感染症の抑え込み以外に、やはり禁煙です。がんの発生も循環器疾患の発生も、これが非常に問題となっておりますが、中高生の喫煙も見られる状況からすると、小中学生からの禁煙教育が非常に重要かと思います。

 政府の第四期がん対策推進基本計画に、がん教育及びがんに関する知識の普及啓発とありますが、まさに、がん予防としての禁煙教育が今必要と考えますが、この点の進捗状況をお聞かせください。

日向政府参考人 お答えいたします。

 学校においては、学習指導要領に基づき、体育科及び保健体育科を中心に、喫煙は、心身に様々な影響を与え、健康を損なう原因となることや、生活習慣病の原因になることなどを取り上げ、指導が行われているところです。

 文部科学省では、児童生徒向けに喫煙の健康への影響等を総合的に解説する啓発教材を作成し、教育委員会等の担当者が集まる場において、学校において資料が活用されるよう周知しているところです。

 また、外部講師を活用したがん教育に関する各学校の取組を支援しているところであり、その中で、喫煙とがんの発症などを取り上げている学校もあると承知しているところです。

 文部科学省としては、今後とも、このような外部講師の活用も含め、健康教育の充実に努めてまいります。

猪口委員 ありがとうございます。

 子供に禁煙の教育をすることは、その保護者への教育にもつながるので、より一層強固に進めていただきたいと思います。

 この三月にカナダで、フィリップ・モリスと、あと、JT、日本たばこ産業とブリティッシュ・アメリカン・タバコが、三兆五千億円の健康被害に対する訴訟がありまして、和解となったところでありますが、JTが四千億円、和解金を出すという状況、これを考えますと、世界はもう禁煙に向かっています。

 私、国会に、議事堂に来て驚いたのが、喫煙室が置いてあること、それに非常に驚きました。禁煙を進めていくことで、高額療養費はもう急増していますよね、一剤当たり三千万円とか、そんな状況の薬がこれからどんどん出てくるんです、これを少しでも防いでいくことが高額療養費を維持していくために必要で、たばこを売って国民の命を縮めていく、それはもう自爆的なことでございまして、この点は是非考えていかなければいけないと思います。たばこ税が入るからなんて、そんな生ぬるい状況では、この医療制度を維持していけないと思います。

 時間となりましたので、幾つか質問が残ってしまいましたが、次回とさせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

藤丸委員長 次に、阿部圭史君。

阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史でございます。

 大臣、まずは、昨日発足した国立健康危機管理研究機構についてお伺いをいたします。

 二〇二〇年頃にこの機関を当初構想した際には、健康危機管理庁というものでございましたね。健康危機管理庁、厚労省の感染症対策部の事態対処を技術的に補佐する機関として、病院での臨床、疫学といった公衆衛生上の対応、微生物学的な研究、事態対処のオペレーション、この四つの機能を総合するということを意図しておりました。

 そのような観点で、二〇二三年に設置法が制定されて、国立国際医療研究センターと国立感染症研究所を合併した上で、特殊法人として昨日誕生いたしました。

 元々、私も厚労省で勤務していた際にも、国立感染症研究所は研究ばかりを重視していて、政府の事態対処に奉仕する存在となっていないのではないかという問題意識が政府内で度々上げられておりまして、議論の的になっておりました。そのようなこともありまして、昨日、無事統合を果たして、新組織として、真に政府の事態対処への奉仕を通じて国民の役に立つ機関として羽ばたくということは非常に望ましいことだと私は思っております。

 しかしながら、私は、依然として、この組織の能力や有効性に疑問符がつくのではないかなというふうに思っております。

 まずは、その名称についてですけれども、当初発案した名称は健康危機管理機構ということで、あくまで事態対処をリードする中央省庁の技術的補佐機関として、国民を守り、国益を守ることが目的でございまして、研究というものは本分ではございません。政府から出てきた当時の名称では、最終的には研究という文字が入っておりまして、合併前の機関である国立国際医療研究センターや国立感染症研究所、この中に所属する研究者の方々が結構こだわったというふうに仄聞をしております。

 新組織の本分は研究ではなくて危機管理であることをやはりしっかりと理解した上で国民のためになる組織となっていくのか、しっかり注視したいと思います。

 そこで、資料一を御覧ください。これは国立健康危機管理研究機構の組織図ですけれども、注目すべきは理事会体制と事業部門の体制です。理事長、副理事長に続きまして、五名の理事と外部理事が四名いらっしゃいます。

 これを見た上で、資料二を御覧いただきたいと思います。これは、この機構の理事の経歴一覧です。この役員、理事の方々の中で、実際に政府において国家の危機管理に実務家として従事したことのある方は圧倒的少数です。理事の武井さんだけではないかと思います。

 国家の危機管理という分野において、この経験のない方々に国の危機管理という営みがそもそも理解できるのかどうか、国の危機管理のための技術的補佐機関としての使命を全うできる体制を構築できるのか、現時点では一抹の不安が残ります。

 私、職業人生のファーストキャリアでは、元々、合併前の片方の機関である国際医療センターの研修医をしておりました。働いていた当時から、この国際医療センターというのは、東大系の医者の関連病院だったわけですね。この経歴を見ますと、理事の経歴ですね、いまだに東大系の関連病院という状況から脱し切れていないんじゃないか、そのように見ております。もしそうであれば、国家の危機管理に役に立つというミッションとは全く関係のない、かけ離れた人事ではないかと思います。実際、厚労省など、感染症危機管理に関係する方々からも、そのような状況を憂慮する声が聞かれております。

 そこで、お伺いいたします。

 この機構の役員の大半は、政府における国家の危機管理、事態対処の経験がない方々です。そのような組織では国家国民を脅威から守ることができないのではないかと思いますけれども、大臣の見解を伺います。

福岡国務大臣 昨日、国立健康危機管理研究機構、JIHSが設立をされたところでございます。

 ここの国土理事長につきましては、特に、新型コロナ対応初期から、国立国際医療研究センターの理事長として、武漢からの退避邦人の受入れ、国際的に知見がない中での重症患者の治療、情報発信等を指揮するといった経験に加えまして、国内外の専門機関との幅広いネットワークを有されておりまして、JIHSの具体的な組織設計の検討当初から関わっていただいておりまして、理事長として選任したものでございます。

 副理事長及び理事につきましては、国土氏が、JIHSに求められる感染症有事における危機管理対応、研究開発力の強化、臨床機能の強化、人材育成の推進のため、各位の経験や専門性を踏まえ選任し、私が認可をしたものでございます。

 こうした役員体制の下で、感染症危機に備えた体制整備をしっかり進めてまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 研究をやってきました、臨床をやってきましたというのと国の危機管理というのは全然違う分野なわけですね。

 実は、この組織の中の中堅にも、危機管理経験豊富な方々がたくさんいらっしゃいます。年功序列とか東大閥とか、そういった不毛な、不純な動機といいますか、そういったことは、もしあるのであれば排していただいて、真に国民のためになる体制にしていただきたいなと切に願うばかりでございます。

 そこで、危機管理は、平時と危機時の対応や体制を峻別して運用することが非常に重要なんですけれども、この機構の平時の運用体制について大臣にお伺いいたします。いかがでしょうか。

福岡国務大臣 昨日、国立健康危機管理研究機構法に基づきまして、中期目標を定め、JIHSに対して指示をさせていただいたところでございます。

 御質問の平時につきましては、中期目標におきまして、感染症有事に際して迅速に対処を行うため、感染症の情報収集、分析、リスク評価のハブとなり、診療から調査分析、リスク評価までを一体的に行えるよう必要な準備を進めること、また、国内外の共同治験等のネットワーク構築を推進することなどを指示をしたところでございます。

阿部(圭)委員 資料にはつけておりませんけれども、第一期中期目標というのがありまして、今大臣もおっしゃっていただいたとおり、感染症インテリジェンスのハブとなるというふうに記載がございます。

 JIHSは、インテリジェンスプロバイダーになるということだと思います。その受け手であるインテリジェンスカスタマーというのは政府のことですね。インテリジェンスプロバイダーであるJIHSは、インテリジェンスカスタマーからの基本的には情報要求、インテリジェンスリクワイアメントと言ったりしますけれども、それに従って仕事をしなければならないというふうに思っております。是非とも、そのようなインテリジェンスサイクルについても理解していただいた上で運用していただきたいなと思っております。

 国家的な危機管理という営みを経験していない方々も理事の方々にはいらっしゃると思いますが、そういった方々に対して抱く不安はほかにもございます。

 先ほどから平時、危機時という話をしておりますが、危機時の事態対処をリードするのは、政府、中央省庁でございます。この国立健康危機管理研究機構は、政府の技術的補佐機関という立場であることにしっかりと留意をして、同機構の職員も、その組織全体も、危機時には政府の事態対処に奉仕する、政府の指揮統制にしっかりと服するんだということを徹底するような意識づけ、教育訓練が必要だと思っております。

 要するに、上官である大臣とか、今日は感染症対策部長に来ていただいていますけれども、大臣や感染症対策部長にイエス・サーと言って仕事ができるのかということだと思っております。COVID―19パンデミックでも起こりましたのが、政府がリードする事態対処に対して、専門家と自称する方々がオーバーライドするような事案がございました。やはり、そういったことは絶対に避けねばならないというふうに思っております。

 こういった観点を踏まえて、健康危機管理研究機構の危機時の運用について、いかがお考えでしょうか。また、この組織及び職員が政府の指揮統制に服することをどのように担保していらっしゃるんでしょうか。大臣、お願いいたします。

福岡国務大臣 感染症の有事におきましては、感染症危機管理統括庁の指揮の下、新型インフルエンザ等対策政府行動計画に基づき策定されます基本的対処方針に基づき必要な対応を講ずることとされておりまして、委員御指摘のとおり、JIHSは、政府に対して科学的知見を提供する専門家組織として対応していただくことになります。こうした対応に万全を期する必要がございますので、平時における準備や訓練が重要でございまして、中期目標においても、有事を想定した具体的な作業フローの指示の整理等をしているところでございます。

 まず、平時から有事の対応の共通認識を図ることが重要であると考えておりましたが、機構法におきまして、JIHSの役職員の服務は感染症危機時に迅速的確に対応すること等と定められておりまして、あわせて、それについて誓約をさせることによる担保措置も設けているところでございます。

阿部(圭)委員 自衛隊で服務の宣誓というのがありますけれども、そういった形で、服務に関して誓約書を義務づけるというのは非常に重要なことだと思います。

 まさに、大臣、こういった方々に対する上官でありますけれども、もしよろしければ、上官として、今日は鷲見感染症対策部長が来ていらっしゃいますので、しっかり統制していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鷲見政府参考人 今委員が御指摘のとおり、先ほど大臣からもお答え申し上げましたが、平時から有事の対応の共通認識を図ることが重要と考えております。また、機構法におきまして、JIHSの役職員の服務は感染症危機時に迅速的確に対応すること等と定めておりまして、あわせて、それについて誓約させることによる担保措置を設けております。

 そうした形で、私ども、政府とJIHSの職員が一体となってしっかりと対処してまいりたいというふうに考えております。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 しっかりと平時から危機時に至るまで統制をしていただいて、一体的に運用していただきたいというふうに思っております。なかなか、臨床や研究のみをやってこられた方は政府の事態対処や指揮統制という概念について理解が乏しいという方も多いと思います。新組織となったのですから、是非とも、そのような意識づけをやっていただきたいというふうに思います。

 もう一度、資料一を御覧ください。事業部門の箇所を御覧いただきますと、統合したにもかかわらず、いまだに国立感染症研究所や国立国際医療センターというものがそのまま存在をしています。

 かねてより、この感染研や国際医療センターには重複した研究領域が存在をしています。そのような整理統合は実際どうなっているのでしょうかというような疑問があります。これでは、統合した意味がそもそもないのではないか。法案が成立したのは二〇二三年五月三十一日ですから、準備期間は約二年もあったのに一体何をしていたのかという批判があっても仕方がないと思います。実際、厚労省の内部からも、このままというわけにはいかないという声も聞かれております。

 事業部門の統合が全く進んでいない状況に鑑みて、いわゆる民間企業だと、合併すると、ポスト・マージャー・インテグレーションということで、PMIというのがありますけれども、合併後のPMIに関する計画又は工程表はあるのでしょうか。ないのであれば、しっかりと工程表を作成する必要があると思いますが、大臣、見解をお伺いいたします。

福岡国務大臣 計画又は工程表があるわけではございませんが、JIHSの組織は、二つの組織を束ねる役割を担う統括部門を創設するとともに、統括部門の担当局の長を常勤役員が兼ねることによりまして、組織ガバナンスの強化を図ることとしたものでございます。これによりまして、JIHSの設立趣旨であります感染症危機対応の強化を図っていくこととしております。

 例えば研究部門につきましては、国立感染症研究所における基礎研究と国立国際医療研究センターにおける臨床機能の強みを生かしながら、統合によるシナジー効果により、感染症有事における研究開発力の強化を目指しております。そのため、中期目標においても、基礎研究から臨床研究、公衆衛生研究まで一気通貫で進めていくことを指示をしているところでございます。

 こうした中期目標により指示したJIHSが発揮すべき機能、役割を十分発揮できているかという観点から、評価、検証をしていくこととなると考えております。

阿部(圭)委員 これは統合したわけですから、機能が重複していたりリダンダントになっているというのは余り意味がないというふうに思いますので、しっかりと両組織が一体的に運用できるようにお願いをしたいと思います。

 この機関は、感染症危機管理に従事する方々にとっては待ち望まれた統合だと思います。それが骨抜きにならないように、確実に国家国民の役に立つ、実効性のある組織となるように、大臣からも厳しい継続的な御指導をお願いしたいと思います。

 次に、医療改革の観点から、バイオシミラーについて伺います。

 資料三を御覧ください。この資料三、後発医薬品、すなわちジェネリック医薬品について、先発医薬品との差額について、患者自らが先発品を希望する場合には、選定療養として差額の四分の一を自己負担していただくという制度についての説明です。これが昨年十月から始まりました。そのおかげで、後発品の使用割合が九割程度まで上昇したというふうに聞いておりまして、大変有効な制度だと考えております。

 そこで、同様の考え方をバイオシミラーに対しても適用してはどうかと考えております。後発品とバイオシミラーの違いについては、皆様、資料四を御覧ください。その上で、この違いを理解した上で資料五を御覧いただきまして、質問したいと思います。

 後発医薬品、すなわち低分子医薬品に関する後発品、これとバイオシミラーとの比較を念頭に、先発バイオ医薬品とバイオシミラーとの差額が生じている部分の自己負担について、政府の新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画二〇二四年改訂版、この資料ですね、これでは、バイオシミラー等代替の医薬品が存在し、保険診療が選択可能な医薬品等についても、国民皆保険を堅持しつつ、患者の希望に応じて利用できるよう、検討を行うとの記載があります。

 国民皆保険を堅持しつつ、患者の希望に応じて利用できるようにというのは、何らかの政策的含意があると思うんですけれども、この差額についての現在の政府見解と検討状況についてお伺いいたしたいと思います。

福岡国務大臣 委員御紹介がありましたように、先発バイオ医薬品の保険給付の在り方につきましては、昨年六月に閣議決定いたしました新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画におきまして、バイオシミラー等代替の医薬品が存在し、保険診療で選択可能な医薬品等についても、国民皆保険を堅持しつつ、患者の希望に応じて利用できるよう、検討を行うとされたところでございます。

 この点につきましては、例えば、先発バイオ医薬品を選定療養の対象とするといった方策もその一つとして考えられますが、これによりまして、バイオシミラーへの切替えが促進され、医療費適正化効果が期待されることについては承知してございます。

 ただ、一般的にバイオ医薬品については価格が高いことから、先発バイオ医薬品を選定療養の対象とすることに伴い、患者さんにとって過度な負担増とならないような配慮も必要となるため、まず、昨年十月に開始された長期収載品の選定療養の患者さんへの影響等も確認した上で検討する必要があるというふうに考えております。

 患者さんにとって必要な医療へのアクセスに配慮しながら、医療保険制度の持続可能性を確保するため、先発バイオ医薬品の保険給付の在り方について、引き続き検討を行ってまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりだと思います。バイオ医薬品は非常に高いので、一概に後発医薬品のものと同様の制度というわけにはいかないんだろうなというふうに思っております。ここの文章にあります患者の希望に応じてというのは、まさに後発医薬品の選定療養と同様の考え方を含意しているというふうに思いますので、是非とも御一考をいただきたいというふうに思っております。

 今大臣からございましたように、後発医薬品の選定療養は四分の一といういわゆる定率ですけれども、申し上げたように、バイオ医薬品は高額ですので、定率だとかなり厳しいというふうに思うんですね。ですので、定額とするとか、いろんな考え方があると思います。

 この差額が生じている部分の自己負担については、例えば、今申し上げたような定率ですとか定額、あとは、そもそも薬剤ごと個別に審査する、そういったやり方、今三つ申し上げましたけれども、幾つか選択肢があると思うんですが、このような論点の整理は政府内でされているんでしょうか。

鹿沼政府参考人 政府内での検討ということで、参考人の方から答弁させていただきます。

 先発バイオ医薬品の保険給付の在り方を議論するに当たっては、患者にとって必要な医療へのアクセスを配慮しつつ検討を行うことが重要だと考えております。

 具体的には、先ほど大臣からも答弁いたしましたように、患者にとって過度な負担増とならないような配慮をする必要があること、また、先発バイオ医薬品はバイオシミラーと薬事上の効果、効能が異なる場合があること、またさらに、バイオ医薬品の製造工程が複雑なため、バイオシミラーを新たに製造、販売しようとする場合に製造体制の確保に課題が生じ得ること、こういった点についても検討を行う必要がございます。

 現時点で先生御指摘のような選択肢を具体的に検討しているわけではございませんが、先発バイオ医薬品を使用した場合の患者負担の在り方といった観点も含め、必要な医療へのアクセスへの配慮、そして医療保険制度の持続可能性の確保、こういったものを考えながら、どのような方策が考えられるか、引き続き検討してまいりたいと思っております。

阿部(圭)委員 ありがとうございます。

 是非とも、そこを前向きに御検討いただいて、進めていただければというふうに思います。

 次に、出産の保険適用について伺います。

 資料六を御覧ください。これは出産費用の年次推移ですけれども、金額がどんどん上昇しているのが分かると思います。政府は、令和五年から出産育児一時金の金額を引き上げて五十万円としましたけれども、やはり、それを上回る出産費用の値上げが続いておりまして、イタチごっこの状況です。

 価格を固定しようとすれば、やはり保険適用の上で公定価格とすることが適切なのではないかと私自身は考えております。政府も、二〇二六年度を目途に出産費用の保険適用の導入を進める方向で検討会を進めているというふうに聞いております。

 大臣、出産の保険適用について、政府の検討状況についてお聞かせいただけますでしょうか。

福岡国務大臣 妊婦の方々の経済的な負担を軽減し、安心して出産していただける環境を整備するために、令和五年四月から出産育児一時金を四十二万円から五十万円に大幅に増額するとともに、出産費用の見える化を進めてきたところです。

 一方で、御指摘ありましたように、出産費用については年々上昇傾向にございまして、一時金増額後の令和六年度上半期には、全国平均で約五十二万円となってございます。

 こうした状況を踏まえまして、現在、有識者検討会におきまして、平均的な標準費用について妊婦に自己負担が生じないようにするとの基本的な考え方に基づきまして、出産費用の保険適用の導入を含め、妊婦の出産時の経済的負担の軽減策を今検討していただいているところでございます。この検討会では、医療関係者や医療保険者等に加え、妊産婦の当事者の方々にも御参加いただき、関係する様々な立場の方から今ヒアリングを行っているところでございます。

 妊婦の経済的負担の軽減と地域の周産期医療提供体制の確保の双方の観点に十分留意しながら、引き続き、関係者の方々の御意見を承りながら検討を進めてまいりたいと思います。

阿部(圭)委員 出産というのは健康保険上入っておりますけれども、現金給付ということで療養の給付にはなっていないわけですが、やはり出産を保険適用する場合は、健康保険法の療養の給付に関する哲学、考え方をアップデートしていく必要があるんだなと思います。妊娠、出産は一体、密接不可分のものでございますので、是非とも、出産を保険適用するのであれば、妊婦健診も入るように御検討いただければというふうに思っております。

 何のために保険を使うのかという議論をゼロベースでやっていただくのがいいんじゃないかなというふうに思いまして、それを踏まえて、次に、RSウイルス感染症に対する抗体製剤について伺います。

 資料七を御覧ください。RSウイルス感染症は、特に乳児にとって危ない感染症でして、生後一年以内に感染、入院すると、重篤な肺炎が悪化し、一割程度が人工呼吸器となるものです。資料の下線部を御覧いただけますでしょうか。予防薬として、Fたんぱくに対するモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブが保険適用されているとあります。この資料は、予防接種基本方針部会の、厚労省が提出した公式見解、公式文書という位置づけです。

 これまで、健康保険法における療養の給付、すなわち保険適用は疾病や負傷に対してのみ行われており、予防に対しては保険は適用しないという理解だったと思いますが、厚労省は予防にも保険適用することにしたんでしょうか。大臣、お伺いいたします。

福岡国務大臣 御指摘のパリビズマブにつきましては、新生児、乳児及び幼児におけるRSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制の効能を有する薬剤でございますが、この薬剤については、重症化リスクが高い早産児などではRSウイルス感染が呼吸困難など重篤となる蓋然性が高く、有効な治療薬がないことから、保険適用としたものでございます。

阿部(圭)委員 今大臣おっしゃっていただきましたけれども、この薬の添付文書を見ると、新生児、乳児及び幼児におけるRSウイルス感染症による重篤な下気道疾患の発症抑制となっているんですね。

 ここで聞きたいんですけれども、発症抑制と予防は違いがあるんでしょうか。

福岡国務大臣 RSウイルス感染症に対する抗体製剤では、一般的に、早産等で重症化リスクが高い新生児などの重篤な感染による入院を防止する目的で使用する場合には発症抑制という表現を使い、重症化リスクの低い新生児などに対して使用する場合には予防という表現を用いてございます。

阿部(圭)委員 資料八を御覧いただきますと、実は、発症抑制とか予防とかに対して保険給付が既に行われておりまして、これが薬剤の一覧で、厚生労働省から出していただいた資料でございます。これはごく一部ということで、ほかにもたくさんあるというふうに伺っております。

 大臣にお伺いするんですけれども、発症抑制、予防、基本的に、健康保険法上は、予防ではなくて、既に発症した後の疾病に対して保険を給付するということが今まで行われてきたわけですけれども、実態を見ると、予防とか発症抑制、発症前のもの、すなわち、これは予防だと思うんですけれども、に保険給付されているわけですね。この発症抑制、予防など、いわゆる予防的なものに対しての保険適用の基準というものがあるんでしょうか。

福岡国務大臣 我が国の公的医療保険は、発生が偶発的で予測できない疾病や負傷といったリスクに対しまして、被保険者相互の支え合いによって備えることを基本的な考え方としてございまして、外傷後や母子感染など、発症の蓋然性が高く、かつ有効な治療薬がなく、発症すると重篤化すると考えられるもの等を除き、現に疾病や負傷が生じていない状態における疾病予防は保険給付の対象としてはいないところでございます。

 このため、いわゆる予防という観点から保険適用するか否かを判断しているものではございません。疾病予防を広く保険給付の対象とすることにつきましては、こうした我が国の医療保険制度の考え方に加えまして、がん検診や予防接種等、幅広い疾病予防の取組をどのように整理するのか、医療保険財政が厳しい中で保険者の理解が得られるかなどの課題がございまして、そういったことも踏まえた検討が必要だと考えております。

阿部(圭)委員 今、発症の蓋然性が高いものについてというお話がございました。先ほど出産の保険適用についても質問しましたけれども、やはり、健康保険法の制定当時とは異なりまして、社会情勢、医薬品の発展に伴って、いろいろ状況が変わってきていると思うんですね。なので、そこの予防と治療の境目がなくなってきているという状況に鑑みて、今後、どのように保険給付を行っていくとかいう哲学について、また引き続き、大臣そして委員の皆様とも議論させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

藤丸委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

藤丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。森ようすけ君。

森(よ)委員 国民民主党の森ようすけでございます。

 本日は、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、ねんきん定期便の事業主負担の記載について、そして交通運輸産業の担い手の確保について、この二点についてお伺いさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、ねんきん定期便の事業主負担についてでございます。

 ねんきん定期便は、日本年金機構が発行しているもので、これまでの年金保険料の納付額、そして加入期間、将来受け取れる年金見込額をお知らせするものでございます。このねんきん定期便をめぐっては、事業主負担の保険料が記載されていないこと、実際の負担額よりも負担が小さく見えることについて、様々国民から声が出ていると承知をしております。

 そこで、まずお伺いいたしますが、今月からねんきん定期便の記載内容に変更がございましたが、具体的にどういった見直しを行ったのでしょうか。また、どのような理由から変更を行ったのか、お伺いいたします。お願いいたします。

巽政府参考人 お答えいたします。

 厚生年金保険料は、被保険者と事業主が折半して負担することとされておりまして、事業主も被保険者と同額を負担しております。

 以前より、ねんきん定期便では、御本人の保険料納付実績として被保険者負担分の保険料納付額を記載しておりまして、これは、お手持ちの給与明細等に記載されている保険料額で確認が容易にできるようにするためのものでございます。

 これに加えまして、国民の皆様からの要望を踏まえ、事業主が被保険者と同額の保険料を負担していることを被保険者の方々にも知っていただけるよう、今月、四月から発送されるねんきん定期便におきましては、厚生年金保険料は被保険者と事業主が折半して負担することとされており、事業主も同額を負担している旨の説明を追記したところでございます。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 社会保険料、厚生年金というのは事業主と従業員が折半しているわけですから、これを分かりやすく記載したという方向性については、ああ、いい取組だなというふうに思うんですけれども、具体的な変更内容を見ると、いかがなものかなというふうに感じているところでございます。

 本日、資料も配付させていただいておりますので、是非皆さん、御覧をいただければと思います。ねんきん定期便の裏面を今日お配りしているんですけれども、まず皆さんはどこに目が行くでしょうか。恐らく、右側の金額のところにまず目が行く方は多いと思います。それで、今回の見直しがどこの部分で記載されているかというと、左側のお知らせの欄に小さい字で記載されているんですね。これほど小さい字で書かれていては、なかなか多くの方が気づかず、読まれない記載なのかなというふうに個人的には思っているところでございます。

 福岡大臣にお伺いいたします。

 国民からの声を受けて、せっかく見直しを行ったにもかかわらず、字が小さくて読めなかったら効果が小さいのではないかというふうに感じるんですけれども、御見解はいかがでしょうか。

福岡国務大臣 先ほどから御説明させていただいたとおり、今月から発送されますねんきん定期便においては、厚生年金保険料は被保険者と事業主が折半して負担することとされており、事業主も同額を負担している旨の説明を追記したところでございますが、はがきという限られた紙面スペースの中で分かりやすくお知らせするためにどのようなことができるのか、引き続き工夫してまいりたいと思います。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、はがきというのは限られたスペースだというのは分かるんですけれども、何かいじろうと思えば、まだいじれる部分は結構あるかなというふうに思っています。

 やはり、厚生労働省の皆さんは年金について詳しいので、こうしたはがきでもしっかり読み込まれるかもしれないんですけれども、一般の方々は隅々まで読む時間は正直ないと思います。伝えたいことは、見やすく、大きく、分かりやすく書く、これは当たり前のことなのではないでしょうか。今回のような見直し内容であれば、事業主の負担額は国民に見られたくない、できるだけ目立たないように隠していると受け取られても仕方のないことではないんでしょうか。

 見直しを行うのであれば、ねんきん定期便の右側の保険料納付額の部分に事業主負担の金額を明記すべきだと考えます。例えば、この一ポツの、これまでの保険料納付額というところがありますが、この表の右側に事業主の負担額も併せてつくる、そうすれば、一目で事業主も折半しているんだなと国民の皆様は十分分かると思います。やはりこの金額を堂々と書くべきだ、国民の皆様に折半しているということを認知してもらうためには、堂々と真っ正面からやっていくということが非常に大事だろうと思います。

 そこで、まず基本的なことをちょっとお伺いさせていただきたいんですけれども、事業主の負担、保険料の納付額の累計額を記載することは技術的に可能なんでしょうか。お願いいたします。

巽政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの厚生年金保険料の事業主負担の累計額の記載につきましては、ねんきん定期便の紙面のスペースの制約、あるいはシステム改修が必要になりますので、そういったことなど技術的な課題があると認識しております。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 スペースの制約、はがきが小さいということもあるんですけれども、優秀なデザイナーというのはいっぱいいると思うので、そういったデザイナーの方にお願いすれば、スペースが小さくてもしっかり伝わるものはできると思います。

 私があと質問したかったのは、技術的というのは、事業主の負担額、このデータがしっかりそろっているかというような観点で質問したんですけれども、その点はいかがでしょうか。

巽政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、厚生年金保険料につきましては、事業主負担と被保険者の保険料につきましては同額でございますので、それを印字したらいいということになります。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 技術的には入れることはできるというふうに御答弁いただけました。

 やはりこれは福岡大臣にお伺いしたいんですけれども、今回の見直しの考えというのは非常にいいことだと思いますので、せっかくやるんだったら、何か逃げているように国民から見られるのではなくて、しっかりと事業主の負担額を明記していく。デザインのことは優秀なデザイナーにお願いしたら多分済む話でございますので、是非事業主の負担額についても明記していただきたいと思いますが、御見解はいかがでしょうか。

福岡国務大臣 事業主も同額を負担していると記載することで具体的な金額は分かるようになってございますが、ねんきん定期便は、御指摘ありましたように、被保険者の保険料納付の実績であったり、将来の給付に関する情報を分かりやすくお知らせすることを目的としているということでございますから、そういった趣旨に沿ってどうすることができるか。当然、システムを改修するに当たってどれぐらいのコストがかかるのか、そういった部分も出てこようかと思いますので、そういったいろいろな御指摘を踏まえて検討を進めてまいりたいと思います。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 もちろん、もう今年度はこれで印刷をかけて発行しているものだと思うので、すぐさまに変えろというわけではないので、来年度も踏まえて、しっかり、より国民の皆様に、事業主負担があるんだよと、金額含めて見えるようにしていくというのがあるべき年金の方向性だと思いますので、是非とも御検討をお願いできればと思います。

 次に、交通運輸産業の担い手の確保についてお伺いいたします。

 トラック、バス、タクシーなどの交通運輸産業は、国民生活や経済を支える極めて重要なインフラでございます。その一方で、慢性的な運転手不足、人手不足に直面しているのが現状です。加えて、業界で働く方々の高齢化、こちらも深刻です。

 全産業平均の年齢が四十三・四歳であるのに対して、大型トラックは四十九・九歳、バスは五十三歳、タクシーは六十・七歳と、平均年齢が非常に高い業種になっております。さらに、年間の休日、全産業平均は百十五日休日があるのに対して、トラックは百七日、バスは九十三日、タクシーは八十七日と、休日が非常に少ない働き方になっているわけです。また、給与水準も高いとは言えないですから、人手不足の大きな要因になっていると考えております。

 担い手の確保に向けては、若い世代や女性の確保が重要な取組です。働きやすい環境づくりに加えて、事業用運転免許の取得に際しての助成措置の新設、拡充、こうしたことも重要だと考えております。

 現行の制度においても、教育訓練給付制度というのがございます。これは、事業者ではなく個人に対して能力開発やキャリア形成を支援するもので、教育訓練を修了した際に費用の一部を補助するという制度でございます。

 この制度は、対象講座や給付率によって三つの区分がございまして、給付率が最大八〇%の専門実践教育訓練、五〇%の特定一般教育訓練、二〇%の一般教育訓練、この三つの区分に分かれております。自動車の一種免許、二種免許は真ん中の特定一般教育訓練に分類されており、最も給付率が高い専門実践教育訓練には看護師、保育士、調理師、こうした資格が含まれているところでございます。

 そこで、まず御質問ですけれども、この三つの区分のうち、専門実践教育訓練に該当するための要件は何でしょうか。また、特定一般教育訓練との要件の違いはどういった点でございますでしょうか。お願いいたします。

堀井政府参考人 お答えいたします。

 公的職業資格取得を目指す講座のうち、専門実践教育訓練と特定一般教育訓練に関しまして、その講座の指定基準の主な違いといたしましては、まず専門実践教育訓練は、特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練として、原則、専門性、実践性が高く、修了に一年以上の期間を要する教育訓練講座を指定対象としております。

 一方で、特定一般教育訓練は、特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練として、原則一年以内の期間を要する教育訓練講座を指定対象としているところでございます。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 大きな違いは、受講期間の違いというところを挙げていただいたと思います。受講期間が一年未満のものについては特定一般教育訓練で、一年以上のものについては専門実践教育訓練、こちらの対象になるということだと思います。大型、中型の免許は、多分、取得期間が一年に満たないので、特定一般教育訓練に該当するというような整理だというふうに理解させていただきました。

 もう少し細かく教えていただきたいんですけれども、専門実践教育訓練の中にデジタル関係の講座というのも含まれております。デジタル関係の講座というのは、多分、一年以上の受講期間ではないというふうに認識しております。そこで、専門実践教育訓練の要件として、必ずしも受講期間が一年以上である必要はなくて、一年未満でも対象になっているものがあるというふうに認識しているんですけれども、一年未満の場合においても専門実践に含まれるというところは、どういった基準でなされるんでしょうか。お願いいたします。

堀井政府参考人 先ほど御指摘のあった質問に関しまして、特に一年以上、一年未満というところを中心的に申し上げました。しかしながら、一方で、それぞれの教育訓練講座、教育訓練の給付の対象となる講座につきましては、先ほど申し上げましたように、中長期的なキャリア形成に資するもの、あるいは、どちらかというとすぐ再就職等に資するものというふうな性格の違いというものもございます。

 そして、細かい部分については、ちょっと今、手元に資料がないんですが、森委員御指摘の、専門実践教育訓練給付金の対象となる指定講座の中で幾つかの類型がございまして、その中では、業務独占資格又は名称独占資格等に係る養成施設の課程など以外にも、委員から御指摘のあったような、例えば、IT関係でいいますと第四次産業革命スキル習得講座等の課程でございますとか、それ以外の、大学等の職業実践能力育成プログラムでございますとか、幾つか、その趣旨に従った形で、中身を見て指定をしているということがございます。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 中長期的なキャリア形成につながることというような御要素をいただきましたが、そういった観点でいうと、例えばトラック、バスの免許というのも、中長期的なキャリア形成に十分寄与するものなので、専門実践教育訓練に該当し得るものではないかなというふうに、今答弁を聞いて感じたところでございます。

 やはり交通運輸分野というのは、国民生活や経済にとって欠かせない、社会の基盤を支える重要な仕事でございます。こうしたロジスティクスの分野というのは、ふだんなかなか、ありがたみを意識する機会というのは少ないんですけれども、一度崩壊してしまうと取り返しのつかない事態になるわけです。深刻な事態に陥る前に、対応をしっかりして、人手の確保を進めていくことが重要であると考えております。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、人手不足の解消のために、準中型以上の運転免許教習そして受験資格特例教習について、専門実践教育訓練の対象にすべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。

福岡国務大臣 御指摘の準中型以上の運転免許及び受験資格特例教習に係る講習は、一般的に一か月から九か月の期間を要するものでございまして、先ほど答弁したとおり、一年以上の要件を満たさないため、この対象とすることは困難でございますが、委員は別の問題意識で今御提言いただいたというふうに思います。

 労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する資格取得を支援する特定一般教育訓練や一般教育訓練、こちらの講座指定の対象となっているものも当然これらについてはあるわけでございますから、本年四月において、準中型以上の運転免許や受験資格特例教習を含む運転免許関係では、一般で約六千七百、特定一般で約四百の講座が指定を受けているところでございまして、厚生労働省としては、まずこれらの講座がより受講しやすくなるよう、教育訓練給付制度の更なる周知に取り組みたいと思っています。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 もちろん周知も大事なんですけれども、一年未満においても中長期的なキャリア形成に寄与するものであれば対象になるという事例もございますから、交通運輸分野の人手の確保というのは大変重要な課題でございますので、そうしたことも鑑みながら検討を是非お願いできればと思います。

 続いて、交通運輸分野における賃上げについてお伺いいたします。

 政府は最低賃金の千五百円以上への引上げを掲げておりますが、特定の業種ごとに設定される特定最低賃金の設定も、賃上げを後押しするために重要であると考えます。

 この特定最低賃金について、交通運輸産業において設定されているのは全国でどの程度ございますでしょうか。お願いいたします。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 現在、交通運輸産業を対象といたします特定最低賃金は、高知県の一般貨物自動車運送業において一件設定されております。

 ただし、この特定最低賃金は、令和六年度には高知県の地域別最低賃金が五十五円引き上げられましたことに伴い、地域別最低賃金を下回ることになりまして、高知県の一般貨物自動車運送業におきましても、より額の高い高知県地域別最低賃金が現状適用されております。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 全国でも一件のみで、しかも、その設定されているものについても、地域別の最賃よりも下回っていると。形骸化しているのが現状だというふうに思っております。特定最賃というのはいい仕組みだと思うんですけれども、まだなかなか業界においては使われていない、これを進めていくべきだというふうに考えているところでございます。

 特定最賃は関係労使の申出に基づいて提案されるわけですが、労働者の二分の一以上が適用を受けないといけない、この要件のハードルが非常に高いものだというふうに考えております。特に、交通運輸業界は中小企業が多くて、労働組合の組織率も低いわけですから、なかなかこの二分の一の要件を満たすのが難しい業界だというふうに感じております。

 特定最賃については、あくまで関係労使が主体になって動くものというのは承知しているんですけれども、社会インフラを担う交通運輸産業の人手不足を改善するためにも、政府として導入を促していくべきだというふうに考えておりますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。

福岡国務大臣 委員御指摘ありましたように、特定最賃は、最低賃金法、地域別最賃とは別でございまして、労使の申出により、最低賃金審議会の議論を経て、特定の産業において任意に設定するものでございまして、これについては、労使のイニシアティブをまずは尊重すべきものだというふうに考えております。

 厚生労働省としては、特定最低賃金について、労使のお申出があれば、法令や労使の合意により、定められた手続に基づいて適切に対応してまいりたいというふうに考えておりますし、この間、国会でも様々御議論をいただいていて、どうしたら御理解が進むか、そういったことについては大きな課題だと認識しております。

森(よ)委員 御答弁ありがとうございます。

 おっしゃるとおりなんですけれども、政府として千五百円という最賃の目標を掲げているわけですから、労使に任せるのではなくて、政労使でしっかりと後押ししていくという姿勢を是非お願いできればと思います。

 最後に、運転者の健康状態に起因する事故の防止についてお伺いいたします。

 トラック、バス、タクシーの運転者においては、一年間で健康に起因する事故、三百十三件発生しているところでございます。そして、そのうち、心臓疾患、脳疾患が三一%を占めているところでございます。

 こうした事故を未然に、事前に防ぐためには、健康診断であったり事前のスクリーニング検査、こうしたものを進めていくことも重要なことだというふうに考えております。事業者団体において、受診料の補助制度というのも独自に設けられているケースもございますが、国として、健康状態に起因する事故の防止対策について取り組んでいることについて、お伺いできますでしょうか。

大窪政府参考人 お答えを申し上げます。

 自動車運送事業における運転者の健康状態に起因する事故を防止するためには、定期健康診断の確実な実施と、疾患の疑いのある運転者を早期に発見することを目的とするスクリーニング検査の受診等を促進することが重要であると考えております。

 このため、国土交通省では、脳血管疾患や心臓疾患、睡眠時無呼吸症候群などの対策ガイドラインを始めとした健康管理に係るマニュアルを作成しており、事業者団体への周知、各種セミナーの開催などにより、ガイドライン等の活用促進や事業者による自主的なスクリーニング検査の導入拡大に取り組んでいるところでございます。

 また、令和七年度予算におきましては、健康起因事故防止を推進するための取組に対する支援として、各種スクリーニング検査の受診費用の補助を行うことといたしました。

 国土交通省としましては、業界を取り巻く社会情勢などを適切に見極めました上で、引き続き必要な措置を検討してまいります。

森(よ)委員 御答弁いただき、ありがとうございます。

 今年度から新しい補助事業をつくられたということで、非常に喜ばしいことだと思います。

 最後、大臣に簡潔にお伺いしたいんですけれども、国土交通省としてこうして動いていますけれども、厚労省は、働く人の健康を守ること、これも大事な仕事だと思いますので、国交省と連携して、しっかり厚労省としても健康に関する問題に取り組んでいただきたいと思うんですけれども、最後、手短にお願いいたします。

福岡国務大臣 運転者の健康管理は大変重要でありますことから、厚生労働省としても、国土交通省と連携し、このような新たな取組について、健診機関や労働災害防止団体等の関係団体に周知するなど、協力してまいりたいと思います。

森(よ)委員 ありがとうございます。是非協力して進めていただければと思います。

 ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。よろしくお願いいたします。

 今日、私は、まず最初に、我々国民民主党がこの国会でも再三取り上げてきました年収の壁に関連して、特定親族特別控除というものが、今回、予算案、そして税法改正されまして、新設をされました。それに関連する質問をさせていただきたいと思います。

 まず、従来からある特定扶養控除、これは、十九歳から二十二歳の扶養家族の収入が百三万円以下なら、親には六十三万円の所得控除が設けられるというものであります。今回、制度の見直しによりまして、まず、特定扶養控除の基準が百三万円から百二十三万円まで引き上げられることになりました。

 そしてさらに、特定親族特別控除が新設をされて、百二十三万円から百五十万円の間も、親の控除が六十三万円のまま据え置かれる。さらには、その上の収入になっても、百八十八万円まではこの控除額が段階的に減額をされていく。今日、皆様のお手元に資料一、配付をしておりますが、この資料に描かれているような絵のとおり、控除額が段階的に減少していく、こんな制度になったわけであります。

 ただ、子供の立場で見てみると、親の扶養、親の控除額が据え置かれるようにはなったんだけれども、自分自身が百三十万円を超えた時点で、子供自身が社会保険に加入しなければならなくなりますので、これが壁になるということ。これは、立憲民主党さんや、維新の会さんや、ほかの党の皆さんも指摘をしてきました。

 これを解決するために、厚生労働省では、二〇二三年十月から年収の壁・支援強化パッケージというものをスタートさせております。これを適用しますと、お子さんの勤め先からの証明がもらえれば、原則二年まで連続して親の扶養に入り続けることができるということですね。こういう制度になっております。

 ただ、これ、まずは二〇二三年十月から始まって一年半が経過をいたしましたが、去年の夏頃の調査によれば、マイナビという会社が調査をしたところによると、この年収の壁・支援強化パッケージの内容を少しでも知っていると答えた企業の割合が四五・七%、さらに、利用していると答えた企業の割合は一一%というふうに、かなり少ないなという印象なんですね。

 ですので、まずは、元々、従来制度からあったものではあるんですが、今回、年収の壁が引き上がり、さらに特定親族特別控除制度というものが新たにつくられた中で、百三十万円の壁を突破する方たちが増えていくのは明らかでありますので、この制度の周知をしなければいけないと思うんですが、現状、どの程度周知されているのか、政府の方から、今後の周知に向けた答弁、見解をいただければと思います。

鹿沼政府参考人 周知についてのお尋ねでございます。

 御指摘の百三十万円の壁への対策である、被扶養者認定の円滑化を含めた年収の壁・支援強化パッケージにつきましては、これまでも、厚生労働省のホームページやSNSの活用、さらには業界団体を通じた周知など、様々なチャンネルを通じて周知広報を行い、活用の促進に取り組んできたところでございます。

 事業主証明による被扶養者認定の円滑化については、一部の健康保険組合にお聞きしたところでは、年収百三十万円を超えた被扶養者のうち、三割以上の方から事業主証明の提出があったというふうにも聞いております。

 まずは、御指摘のとおり、特に学生がいわゆる百三十万円の壁を意識して就業調整を行うことのないよう、本パッケージを活用していただくことが重要だというふうに考えておりますので、引き続き周知徹底に努めていきたいというふうに思っております。

浅野委員 是非よろしくお願いします。

 周知しなければいけないことが結構今回増えまして、まず、そもそも十九歳から二十二歳という年代の方々に対しては特定扶養控除という制度があって、これが百三万円から百二十三万円まで引き上がったということも周知しなければいけない。さらに、特定親族特別控除というものができて、親御さんも子供の収入が百八十八万円までは何らかの控除が受けられるんだということも周知しなければならず、さらに、このパッケージについても周知しなければいけないということで、ただ、本当にたくさんありますので、工夫を是非していただきたいと思います。

 続いて、この支援パッケージについてなんですけれども、厚生労働省の資料を拝見しますと、まず、支援パッケージと一言で言っても、今私が取り上げた百三十万円の壁への対応と、あとは百六万円の壁への対応と、そして企業に対する配偶者手当の見直しの働きかけという、この三点セットがこのパッケージの全体像なんですね。

 全体の施策は、当面の対応ということで厚生労働省はこの施策をスタートさせました。当面の対応ということなので、いつまでなんだというところが気になるわけですが、百六万円の壁の対応については、キャリアアップ助成金という名称で今助成が行われていますけれども、これは令和七年度末までに労働者に被用者保険の適用を行った事業主が対象となるというふうに明記をされておりまして、つまりは、令和七年度末でこの百六万円対策というのが終了する見込みだということなんですね。

 ただ、百三十万円の壁への対応については、つい先日、特定親族特別控除が新設され、十九歳から二十二歳ということは、少なくとも、十九、二十、二十一、二十二と、四年間、この期間にいる若者がいるわけです。ですから、令和七年度末でこのパッケージが終わってしまうと、先ほど言った百三十万円の壁を越えようと思っても、越えるのをやめてしまう人もたくさん出てくるやもしれないということで、ここはちょっと、制度の適用期間についてはもう一回整理が必要なんじゃないかと思うんですね。

 この点について伺いたいんですけれども、まず、今、当面の対応策とされているものについて、これは延長しなければならないのではないか、そういう状況になったのではないかというふうに考えますので、今後の対応について確認をさせていただきたいということ。そして、特定親族特別控除の対象となる場合には支援強化パッケージを常に適用されますよと、恒久的な制度としてもいいのではないか、そのように考えるんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

福岡国務大臣 百三十万円の壁への対応策でございます。

 被扶養者認定の円滑化の延長につきましては、被用者保険の適用拡大に向けて今議論を進めている中で、この取扱いについても検討してございます。

 また、御指摘がございました特定扶養控除の見直しに伴います社会保険の被扶養認定基準の取扱いにつきましても、今お話がありましたように、令和七年度の税制改正における取扱いとの整合性を図る観点から、学生を始めとした十九歳から二十二歳の年収基準を百五十万円に引き上げる方向で検討をしております。

 現在、被用者保険の適用拡大を含む年金制度改正法案の提出に向けた議論を進めさせていただいておりまして、その中で、この二点についても検討を進めていきたいというふうに考えます。

 いずれにいたしましても、特定扶養控除の見直しに伴い、特に学生さんが百三十万円の壁により就業調整を行うことのないよう、このパッケージの周知徹底に努めてまいりたいと思います。

浅野委員 ちょっと重要なところなので、確認だけさせてください。

 今回、特定親族特別控除が新設されたことを受けて、これに該当する対象者については百三十万円を百五十万円に見直す検討を今行っているというふうに答弁を今されたという認識でよろしい、よろしいということで、ありがとうございます。是非、それは制度の整合性を取るためにも重要だと思いますので、早期に結論を得られるようによろしくお願いいたしたいと思います。

 続いて、テーマを変えまして、重度訪問介護サービスについて伺いたいと思います。

 コロナ禍以降、外出が困難な障害者が、以前もこの委員会で取り上げたことがありますが、分身ロボットなどを通じて、在宅のまま職場で就労するといった新しい働き方の事例が近年増えております。

 ただ、例えば寝たきりの方が分身ロボットなどを通じて遠隔で職場で仕事をする場合に、そうはいっても介助が必要です。就業時間中の介助というのは、現状、重度訪問介護サービスの対象となりませんので、現在政府が行っている重度障害者等就労支援特別事業というものを使って負担を軽くしながら、介助を受けて就労している、こういったことのようであります。

 この重度障害者等就労支援特別事業というものが今どのくらい活用されているのかについて、まずは政府にお伺いしたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の重度障害者等就労支援特別事業でございますけれども、御指摘のように、重度障害者の方々の就労中の介助などを行う企業などに対して市町村から補助事業を行うものでありまして、これは令和二年度からスタートをしております。

 その初年度である令和二年度は利用された方の数は八名でございましたけれども、令和五年度が百八十三人、令和六年度、これはちょっと済みません、年度が終わったばかりでございますので年度の途中時点の数字ではございますけれども、令和六年度の七月末時点で二百二十六人という形で、人数的には増加をしている傾向にあるということでございます。

浅野委員 済みません、今の答弁なんですが、私の手元にある資料ですと令和六年度が二百二十六名ということでよかったですね。ありがとうございます。

 御答弁いただきましたけれども、そうはいっても、令和二年から始まって、令和六年度が終わった時点で二百二十六名までしか増えていないんですよ。全国で二百二十六名です。これはやはり、本来、もっともっとたくさんの方々がこの事業を使って就労をしてもおかしくないと思うんですね。

 私も都道府県別の利用状況をちょっと確認させていただいたんですが、やはり自治体が、登録している自治体だけで百二自治体、うち六十一自治体が実績があるということ、この六十一自治体で二百二十六名ということなんですが、よくよく見て、これは単純計算なんですけれども、一自治体三人から四人しか使っていないということになるんです、単純計算ですね。これは余りにも少ないんじゃないか。これも先ほどと同じで、周知あるいは利用条件等について改善の余地があるんじゃないかと思いますので、この辺りは是非政府の方でもよく精査をしていただきたいと思うんです。

 ちょっと更問いになってしまいますが、利用数が伸びない原因や今後の対策について、今、政府側で御答弁いただけることがあればお願いいたします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、この事業をめぐっては、事業を始めた当初から、企業の側あるいは活用を考えておられる自治体の側から、なかなか手続が複雑だとか、いろいろな御指摘をいただいたところでございまして、これまでも申請書類の簡素化を図るとかということをやってまいりました。さらに、昨年度、つまり六年度でございますけれども、実施をしている自治体における好取組事例の御紹介であるとか、あるいは未実施の自治体に向けての行政説明会などを行ったところでございます。

 さらに、もうちょっと事業の展開というか普及というかを図っていきたいということで、令和七年度予算では、この事業を実施をする自治体において企業向けの説明会を行ったり、周知をされたりとか、あるいは広報されたりといったような場合の経費といったものも補助事業の対象として拡充をするといったことをしておりまして、こうした取組などを通じまして、引き続き、自治体におけるこの事業の活用というのを広げていきたいというふうに考えております。

浅野委員 手続の部分での改善も必要だと思いますが、私が聞くところによると、やはり自治体の持ち出しも一部あるということで、自治体が制度を使うという判断をするというところが一つハードルだというような声も聞こえてきておりますので、そこも含めて是非、今後検討していただきたいと思います。

 続いての質問です。

 この重度障害者等就労支援特別事業というのは、元々、重度訪問介護サービスでは就労中の介助を受けられない、ここから課題意識が発展してできたものなんじゃないかというふうに推察をしておるわけですが、当事者の方々からすると、やはり今のやり取りでありましたように、手続が煩雑だったりとか、あるいは、そもそも自治体がこの事業を使うという判断をなかなかしてくれない、こういったハードルがあって、利用者の方々がなかなか利用できないという状況があるようです。

 ですので、重度訪問介護サービスに、あるいは特別事業の方でもいいんですけれども、これらの二つの制度を一本化することができないのか、そのように考えるんですが、両者の政策的な意味合い、その違いも含めて、政府の考えを伺えればと思います。

福岡国務大臣 重度訪問介護が通勤であったり就労時の介助の支援を対象としていないのは、障害者雇用促進法に基づきまして、事業主に対して障害者に対しての合理的配慮が求められていること、また、個人の経済活動に関する支援を公費で負担すべきかといった課題があるところでございます。

 そうした中で、御指摘の両者の違いにつきましては、重度訪問介護は、公費を財源とする福祉サービスとして提供されるものであります一方、重度障害者等就労支援特別事業は、事業主による合理的配慮も勘案しながら、雇用施策と福祉施策が連携して支援を行う観点から、障害者雇用納付金制度に基づく助成金と組み合わせて展開しているという点にございます。こうした仕組みによりまして、重度障害者の就労支援に意欲的な自治体や企業を支援し、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な事業形態による取組を進めているところでございます。

 御指摘がありましたように、なかなか取組の周知が図られていないというところについては、しっかり取組を進めてまいりたいと思います。

浅野委員 では、重度障害者等就労支援特別事業については最後の質問になりますが、恒久的な重度訪問介護サービスと異なり、特別事業は事業ですので、恒久的かどうかというところについては、いつ事業が終了、予算次第では終了してしまうかもしれない、そんな不安の声も聞かれています。

 障害者の就労に寄り添った政府の対応、つまりは、恒久化も含めた事業の位置づけの明確化というようなものが必要だと思いますが、こちらについて、大臣のお考えを伺います。

福岡国務大臣 重度障害者等就労支援特別事業につきましては、令和二年度の開始以降、毎年度予算を計上して事業を継続しておりますが、厚生労働省としては、本事業は重度障害者の就労支援に必要な事業でありますため、引き続き、必要な予算についてはしっかり確保していきたいというふうに考えているところでございます。

 重度障害者を含め、障害者の方々が本人の希望や能力に沿った就労を実現することができるよう、まずはその周知をしっかり図っていくということ、そして、就労支援全般を推進してまいりたいと思います。

浅野委員 それでは、時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、沼崎満子君。

沼崎委員 公明党の沼崎満子です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 最初に、福祉用具サービスに関する御質問をさせていただきます。

 福祉用具の貸与は、利用者が二百七十一万人に達しておりまして、居宅サービス利用者全体の六二%を占めております。給付費では居宅サービス全体の七・三%と、少ない費用で多くの方が御利用いただいている、介護保険の非常に重要なサービスの一つと言えると思います。このサービスに関しまして御質問をさせていただきます。

 介護保険制度における福祉用具は、要介護者の自立支援や介護負担の軽減を目的として、基本的に今まで貸与が原則とされてきましたが、令和六年度より、一部の福祉用具において貸与と販売の選択制が導入されています。

 私自身も両親の介護をしておりましたけれども、本当に介護の状況というのは月単位でどんどん変わっていくということを経験しておりまして、介護の利用者も刻々と身体状況が変化していき、その時々に合わせた福祉用具が必要となります。貸与の制度は、利用者の身体状況や介護の状況に合わせて柔軟に対応できるというメリットがあります。貸与対象が縮小されることによって、こういった対応が難しくなるのではないかということが懸念されます。

 福祉用具の販売の選択制が令和六年度から導入された理由と、対象となる福祉用具の選定はどのように行っているのか、お尋ねいたします。

福岡国務大臣 福祉用具は、利用者の状況等に応じ適時適切に提供できる貸与が原則とされておりますが、令和六年度介護報酬改定で、長期間の貸与による利用者の過度な費用負担を軽減しつつ、介護保険制度の持続可能性の確保を図る観点から、一部の福祉用具について、利用者の選択により販売を選べる仕組みを導入したところでございます。具体的には、要介護度に関係のない福祉用具のうち、比較的廉価で、過去の給付データなどから購入した方が利用者の費用負担が抑えられると考えられた、固定用スロープを始めとする四種目を販売の対象としたところでございます。

 この貸与と販売の選択制の検討段階で、一部の事業者などから、利用者の状況の変化に応じて用具を変更しやすい貸与の継続を求める声が寄せられていることは承知してございます。令和六年度改定の審議報告でも、選択制の導入やその見直しの効果、課題などについて引き続き調査、検証を行い、その結果を踏まえ、必要な対応を検討していくべきとされているところであり、今年度、必要な調査を実施し、社会保障審議会介護給付費分科会で次期介護報酬改定に向け必要な検討を進めたいと思います。

沼崎委員 どんどん対象を広げていって、選択制、販売でないと難しいというような状況というのは、是非そこは考慮をいただきたいというふうに思います。

 先ほど、販売にすると費用負担というところの軽減が見込まれるというようなお話もありましたけれども、福祉用具の貸与というのは上限価格が設定されておりまして、今、三年ごとにこの上限の見直しが行われています。令和六年度の見直しでは、全体の九割近くの福祉用具の上限価格が引き下げられている状況です。物価や人件費が上昇する中、ほかの介護サービスに関しては物価高騰を考慮した公定価格の見直しがされているにもかかわらず、このような福祉用具においての引下げは、事業者の経営環境にとっては非常に厳しいものとなっています。

 現状の上限価格の見直し、どのように行っているのかというところと、また、今後の方針についてお聞かせください。

福岡国務大臣 介護保険の福祉用具の貸与価格の上限設定につきましては、平成三十年度改定で、事業者が貸与価格を決定できるため、平均価格より著しく高額な価格設定が行われる例があったことを踏まえ導入され、三年ごとに見直しているところでございます。

 これまでの上限価格の見直しによりまして、著しく価格の高かった商品の価格が是正されるといった効果が確認された一方で、価格改定に伴う事業者の事務負担といった課題もあったものと認識をしてございます。

 また、物価が高騰する局面の中で、上限価格が貸与価格の引上げの妨げになっているとの御指摘もございまして、令和六年度改定の審議報告で、貸与価格の上昇等に関する実態を引き続き半年に一度程度把握すべきとされたところでございます。

 これを踏まえまして、国で実態調査を行っているところでございまして、今後の上限設定の在り方につきましては、こうした調査結果を踏まえ、介護給付費分科会で検討を進めてまいります。

沼崎委員 引下げありきの見直しではなくて、是非、実態に見合った見直しというのをお願いしたいと思います。

 要支援、要介護者へ適切な福祉用具を選択、使用するためには、福祉用具専門相談員の助言というのが非常に重要です。

 厚生労働省の調査によると、福祉用具の事故は二〇二一年の二月から二〇二四年の九月までで四百四十六件発生しておりまして、死亡事故も三十一件の報告がされているということで、福祉用具によっても非常に重大な事故が起こるということが分かっております。

 このような状況を受けて、福祉用具専門相談員の指定講習の見直しなどの方策を示したというふうに認識しております。しかし、一番最初に受ける講習時間の見直しというのが行われていますけれども、継続的な研修の確保が十分とは言えない状況となっております。

 福祉専門相談員のスキル向上やサービスの質の均一化に対して今行っている取組、また、今後の方針についてお聞かせください。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 利用者の身体状況等に応じて、適時適切な形で福祉用具の選定、提案を行う福祉用具専門相談員の質の向上を図り、サービスの充実を図ることは大変重要な課題でございます。

 こうしたことを踏まえまして、令和五年十一月の福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会の取りまとめを踏まえまして、福祉用具専門相談員が修了すべき指定講習のカリキュラムについて、昨年度、福祉用具の安全な利用やPDCAサイクルを踏まえたサービス提供の実施、それらを効果的に行うための多職種連携を盛り込むなど、内容の充実を図っております。

 また、あわせまして、今年度は、福祉用具専門相談員のOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの標準的な研修ツールの作成に取り組むこととしております。

 こうした取組を通じまして、関係団体と協力をしながら、福祉用具専門相談員の質の向上に向けて取り組んでまいります。

沼崎委員 しっかり制度化して、できれば継続的な研修ができるような、そういった仕組みづくりというところも御考慮いただければと思います。

 福祉用具を介護保険の対象とするかについては、自治体間に差がありまして、対応がばらばらであるとの御意見をいただいています。公明党でも、地元市議からのこのような声を受けて、厚生労働省に実態をお伝えして、改善の要望をお届けしたということもございます。

 全国の自治体でこのような事例が生じており、自治体間での格差や、サービスの公平性が損なわれることに危惧を感じております。選定がどのような手順で行われており、こういった解釈の違いが起こらないような取組がございましたら、お聞かせください。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 介護保険の福祉用具につきましては、利用者の身体状況、住環境等に応じて、保険者である自治体が介護保険給付の判断を行っているところでございます。こうした中で、自治体から国に対しまして、個別具体のケースについて、給付が可能かどうか、相談を受けることがございます。例えば、最近では、車椅子、スロープ等について複数の相談がございました。

 こうしたことも踏まえまして、昨年八月に、福祉用具の適正な利用に関する標準的な目安を自治体にお示しをした介護保険における福祉用具の選定の判断基準を見直しまして、内容の充実を図ったところでございます。こうしたことを通じて、議員御指摘がありました自治体間の解釈の幅が縮まるということに取り組んでまいります。

 引き続き、適正な制度運用が行われるよう、自治体と連携して必要な対応に取り組んでまいります。

沼崎委員 解釈の違いによってケアマネジャーさんがケアプランの見直し等も要望されているというような、そういう実態もございますので、丁寧な、自治体間での格差の是正というのをお願いしたいと思います。

 少しまた違った角度での御質問をさせていただきます。

 今、急速に高齢化が進んでおりまして、様々な問題が生じておりますけれども、その解決の一つとしては、健康寿命を延ばしていくということが非常に重要であると思っています。健康寿命の延伸は、個々の生活の質を向上させるだけではなく、医療費の抑制や社会全体の持続性にも寄与します。その中で、予防接種は病気の予防において非常に重要な役割を果たします。

 平成二十六年に制定された予防接種基本計画の中に、予防接種、ワクチンで防げる疾病は予防することが基本理念となっています。この計画は国民の健康を守るための重要な指針であり、特に高齢者や子供たちの感染症の予防に大きな意義を持っています。制定の当初、最大の課題はワクチンギャップを埋めることというふうに認識しておりますけれども、本年、この予防接種基本計画が改定されております。

 そこでお伺いしますが、まず、今回、予防接種基本法が改定に至った理由についてお聞かせください。

鷲見政府参考人 お答え申し上げます。

 予防接種基本計画は、予防接種法の規定に基づき、予防接種施策の中期的なビジョンを定めているものであり、コロナ禍での特例臨時接種の経験や、予防接種データベースの整備などデジタル化を進める等の方針を踏まえ、今年度、新たな計画に改定したところでございます。

 主な改正点といたしましては、予防接種のデジタル化の取組を進め、接種事務の効率化や接種率の迅速な把握、また予防接種データベースの構築を進めること、そして、平時から、NDBと連結した予防接種データベースを活用し、有効性、安全性評価で詳細な分析を行うこと、また、今年度発足いたしました国立健康危機管理研究機構、JIHSは同データベースの活用を含めて科学的知見の分析、評価を充実すること、予防接種救済制度について、申請者増の際には体制強化を図り、迅速な救済に取り組むことなど、今後の予防接種施策の更なる推進を図るため、見直しを行ったところでございます。

 また、改定後の予防接種基本計画におきましては、開発優先度の高いワクチンについて、その考え方、選定目的について見直しを行い、現に我が国に存在する疾患を対象とし、公衆衛生上必要性の高い、定期接種化を目指すワクチン開発を推進することとしております。

 引き続き、先生御指摘の予防接種、ワクチンで防げる疾病は予防することという我が国の予防接種施策の基本理念を踏まえて、適切に予防接種施策を推進してまいります。

沼崎委員 今御説明の中にありました、予防接種基本計画の中で規定されている開発優先度の高いワクチンというのが、定期接種化を目指す、そういった御説明がありました。今、開発優先度の高いワクチン、当初規定されていたワクチンの種類の開発状況、また、今回の改定で、開発優先度の高いワクチン、変更がございましたら、そちらに関してお尋ねいたします。

鷲見政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年の予防接種基本計画の策定時は、WHOにおいて推奨されているにもかかわらず我が国で定期接種化されていないワクチンの問題、先生御指摘のいわゆるワクチンギャップの解消と、国内外の感染症対策に必要なワクチンを開発優先度の高いワクチンと位置づけ、開発することを目指し、医療ニーズ及び疾病負荷等を踏まえて選定を行いました。当時選定された六種類のワクチンのうち五種類は薬事承認が行われるなど、一定の成果が行われたところでございます。

 その上で、今般の予防接種基本計画の改定に当たりましては、令和三年六月に閣議決定されたワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、パンデミックなどの脅威となり得る重点感染症に対するワクチンの開発支援が行われていることを踏まえ、開発優先度の高いワクチンについては、公衆衛生上必要性の高い、定期接種化を目指すワクチンの開発を目的として、現に我が国に存在し、疾病負荷が高い感染症を対象とすることと定めました。

 具体的なワクチンにつきましては、ワクチンメーカーにおける開発の状況、関係学会から構成される予防接種推進専門協議会における評価などを踏まえまして、本年三月十三日に開催した審議会におきまして、四種類のワクチンを選定したところでございます。

沼崎委員 新たな疾病が対象となっているというふうに今理解しました。

 また、特に開発優先度の高いワクチンは定期接種化するんだ、そういうふうな明言をされたというのが私は非常に重要だと思っておりまして、というのも、定期接種化に当たっての課題として、薬事承認前に定期接種を検討するプロセスというのが今まではなかったということで、薬事承認が終わってから定期接種に至るまでの期間、時間が非常にかかるという問題がございました。あらかじめ、開発優先度が高いワクチンに関しては定期接種化を目指すということになったことで、薬事承認を得る前から、ある程度、定期接種化に向けたプロセスというのを踏むことが可能になるのではないかというふうに思っております。

 対象の疾患によって、元々どの程度までプロセスが踏まれていたかということによっても、かなり定期接種化までの時間というのがばらつきがあるという問題もございましたので、こういった点も、明示されることによって短縮が可能ではないかというふうに思っております。

 このような課題解決に関する何か取組というのは、現状でございますでしょうか。

福岡国務大臣 ワクチンの定期接種化につきましては、薬事承認されたワクチンが存在することを前提として、審議会において、疾病負荷、ワクチンの有効性、安全性、費用対効果等を議論した上で検討を進めているところでございます。

 議員が御指摘いただきましたように、定期接種化に関する検討プロセスの迅速化は大変重要であるというふうに私どもも認識しておりまして、先日改定いたしました予防接種に関する基本的な計画におきまして、定期接種化を目指した公衆衛生上必要の高いワクチンを開発優先度の高いワクチンとして選定した上で、当該ワクチンにつきまして、JIHSなどの専門家と連携し、薬事承認の前段階から必要な情報の収集や整理を開始し、不足する知見を速やかに把握することとしたところでございまして、引き続き、こうした取組を通じまして、迅速化に向けて進めてまいりたいと思います。

沼崎委員 薬事承認前からある程度データが取れるというのは、非常に大きな進歩だと感じております。

 また、今度、次の質問に移りますが、定期接種化後のフォローアップに関してですけれども、ワクチンの接種状況の把握や効果の判定といったことも予防接種にとっては大変重要なことです。全ての予防接種、少なくとも定期接種化を前提とした開発優先度の高いワクチンについては、網羅的にサーベイランスが行えるような仕組みが必要と考えております。

 今回の改定で、JIHSの発足も決まっておりますけれども、こういった機関を利用して、このようなサーベイランスがしっかりできるような、そういった仕組みが必要と考えますが、ワクチン接種状況把握の現状と、今後、新しくデータベースを作るというふうに理解しておりますが、その利用についての方針についてお聞かせください。

福岡国務大臣 定期接種は各自治体が実施していただいていることもございまして、国においてリアルタイムで接種状況は把握しておりませんで、ワクチンの有効性、安全性に関する調査が効率的に実施できていないという課題があるというふうに認識をしております。

 このため、令和四年の法改正によりまして、自治体から国への報告義務を課すとともに、報告された情報を集約化して匿名化したデータベースを構築することといたしておりまして、現在、令和八年度からの稼働に向けて、必要な取組を進めているところでございます。

 こうしたデータベースも活用しながら、定期接種の実施状況の把握であったり、有効性、安全性に係る調査研究を充実させていきたいと考えています。

沼崎委員 是非、このデータベース化をきっかけに、全ての予防接種に関してはデータを集約化して、有効利用できるようなデータベースにしていただきたいと思います。

 最後の質問にさせていただきます。

 医療の発達によりまして、重度の先天性の疾患のお子さんや超低出生体重児のお子さんも命を長らえることができるようになってきました。その一方で、医療的ケアが必要なお子さんの数も非常に増えてきております。

 先日、医療的ケア児を持つ御家族の方から御要望をいただきまして、子供の看護を抱えて大変な御苦労をされています。受入れ可能な保育所等も、今、様々施策が進みまして整ってきているところではありますけれども、御家族様から、育休制度を取得する際に、健常児と同じように、保育所の保留通知がなければ育休の延長ができず、ここの緩和ができないかというような制度の改善の御要望をいただきました。

 医療的ケア児の特性を理解して、御家族の生活を支えるための支援について、現状、どのような取組が行われているか、お聞かせください。

田中政府参考人 お答えいたします。

 育児休業ですが、取得期間は原則子供が一歳までとされておりますが、保育所に入れないなどの特別の事情がある場合には最大二歳まで延長可能でありまして、その期間、育児休業給付が支給されることになります。

 この際の手続につきましては、原則、入所保留通知書等の提出を求めておりますが、お子さんが病気や障害により特別な配慮が必要であって、保育体制が整備されていないなどの理由で市区町村が入所申込みを受付できない場合には、当該通知書などは要さず、医師の診断書などによって判断することとしておりまして、引き続き、こうした取扱いの周知に努めてまいりたいと考えております。

 また、厚生労働省としましては、医療的なケア児を育てる方々も含めまして、子供さんや家庭の様々な事情に対応できるように、昨年五月の改正育児・介護休業法、公布をいたしました。労働者からの仕事と育児の両立に関する個別の意向の確認とその意向への配慮を事業主に義務づけることといたしまして、事業主が個別の意向に配慮するに当たりまして、更に望ましい対応として、子供が医療的ケアを必要とする場合などであって希望するときには、短時間勤務制度や子供の看護休暇制度等の利用可能期間を延長することなどを指針でお示しをしております。本年十月の施行に向けまして、周知徹底に取り組んでまいります。

沼崎委員 今、受入れができる保育所が増えているということで、なかなか、実は受入れ先があるので、障害をお持ちのお子さんが別の健常のお子さんと接する機会を設けるという、そこをちょっと強要されてしまうというような、そういった事例も生じているようですので、できれば親御さんの御希望であるとか選択の自由といった点も考慮して対応を望みたいというふうに思っております。

 今御説明がありましたように、こういったケア児を抱えている方が継続してお仕事に就けるような、そういった新たな仕組みもできているということですので、更にこの面は拡充をしていただいて、両立ができるような御支援を引き続きお願いしたいと思います。

 少し早めではありますが、質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

藤丸委員長 次に、八幡愛君。

八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。

 質問に入る前に、高額療養費制度引上げについて言及させてください。

 今週三月三十一日に、衆院に予算が戻ってきました。凍結や見合せではなく、白紙撤回一択しかないと申した上で、れいわ新選組も予算には賛成をいたしました。

 高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟も立ち上がりまして、私もその議連のメンバーに入れていただいたんですけれども、その会長が武見敬三前厚労大臣なんですね。御就任の挨拶のときに、高額療養費制度は世界に誇れる制度なんだとおっしゃっていたんですが、だからこそ、その制度を守るために引き上げるんやみたいなことを言い出しかねないかなとちょっと正直思ってしまったんです。なので、この議連自体が、せっかくできたんだから、その落としどころをみんなで探り合うとかじゃなくて、私は、れいわ新選組として、厳しい目でちょっと注視をしていこうかなと思っております。

 そして、何度でも申し上げますが、令和七年度の防衛費予算、八兆七千五億円ですからね。トマホークとか買い集めて米国に上納するよりも、本当に国民の命を守る予算は何か、今日も質問してまいります。大臣、よろしくお願いいたします。

 昨日一日の本会議で、災害対策基本法等改正案についての質問が各党からなされました。改正の一つに福祉サービスの提供が明記された点について、坂井防災担当大臣が、厚生労働省と連携して必要な取組を講じてまいりますとおっしゃっておられました。

 私、昨年の臨時国会でも、災害関連死を防ぐために福祉の視点を入れた災害対応が早急に必要だ、考えるべきだと訴えさせていただいたんですが、具体的に、今回の法改正も踏まえて、厚生労働省として何をどうしていくのか、教えてください。お願いします。

日原政府参考人 お答えを申し上げます。

 災害時に福祉的支援を円滑に行うためには、平時からの体制整備は重要であるというふうに考えてございます。

 このため、厚生労働省では、災害福祉支援ネットワーク中央センターにおきまして、DWATで中心的な役割を担う方向けの研修を実施しておりますほか、都道府県における関係者間のネットワークづくりですとかDWATの訓練などの実施について支援を行ってまいりました。

 今般の災害救助法の改正によりまして、在宅や車中で避難生活を送る方を含めてDWATによる支援の対象となるということを踏まえまして、先日成立いたしました令和七年度予算におきましては、さらに、在宅避難者の方などへの支援を想定しました研修教材の作成やプログラムの開発、それから災害福祉支援コーディネーターの配置の推進など、支援の充実を図るための予算を盛り込んでいるところでございます。

八幡委員 おっしゃったこと、今言ったことを全部やっていただきたいですね。災害派遣福祉チーム、DWAT、これの拡充というのは私も本当に必要だと思います。是非、たくさんメンバーを増やして、研修して、整えていっていただきたいと思うんですが、今日は、災害時にもう一つ活躍をするチーム、DMATの話がしたいんです。

 災害医療チーム、DMAT、これは、災害発生直後の被災地に赴いて負傷者の治療などに当たる災害派遣医療チームなんですが、その運用を厚生労働省が国立病院機構に委託しているんですが、ここで働かれている方たちから悲鳴が上がっているんですよ。

 医療従事者の賃金や環境をめぐる処遇改善というのは、当然、全国の病院において考えていくべきだと私も考えるんですが、先ほども申しました、この国立病院は、日本全体の災害医療の拠点として、全国のネットワークを生かして災害派遣医療チーム、DMATを派遣するなどの対応を行っているほか、災害時だけではなくて、結核、重症心身障害、筋ジストロフィーなど、ほかの設置主体では体制整備が困難な分野を全国で支えて、国民の命を守るセーフティーネットの役割を果たしております。

 日常的にも、がんや救急医療、周産期医療、精神医療、僻地医療など、地域医療で果たしている役割というのがすごく大きいはずなのに、国立病院機構の運営費交付金というのは、二〇一二年度から診療事業の補助がゼロになって、二〇二一年度には全廃されています。その結果、赤字の病院も多くなってきて、そのしわ寄せが従業員に回る、お医者さんの先生たちにも回っていく、賃金が上がらないので人手不足に陥って、全国で看護職員などの配置人員が定員割れを今現在も起こしていると報告を受けております。

 そんな中、コロナ禍がやってきまして、そのとき、職員さんたち、みんな一生懸命対応に当たってくださったんですね。ようやくそのコロナの山を乗り越えてきたんですが、コロナ禍の補助金などで積み上がった資金のうち四百二十二億円を、政府は、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法に基づいて、二〇二三年に返納させているんです。

 コロナで何を学んだのかなと私自身は理解に苦しみます。国立病院は、災害や新型コロナのときのような新しい感染症の発生のときに、緊急事態のときに、国の要請に応じて必要な医療を提供することが法律に定められているんですから、コロナが終わったから資金を返納させるというのではなくて、むしろ、そのお金を使って人員をそろえて体制を整えて、次の災害に備えるということの方がよっぽど防衛力の強化だと私は考えます。

 有事に備えるためにも、国立病院の人手不足と低賃金の解消に向けてもっと支援すべきだと思うんですが、どう考えておられますか。お願いします。

森光政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、独立行政法人国立病院機構におきましては、これまでも、先生御指摘のとおり、通常の診療に加えまして、セーフティーネット分野の医療や、災害、新興・再興感染症の対応など、地域医療に幅広く貢献する中、人材確保に向けて、適切な勤務環境の確保や処遇改善の取組を進めてきたものというふうに承知しております。

 具体的には、賃金に関しまして、令和六年四月より、物価高騰等により経営状況が厳しい中であっても、全職種の常勤職員について、平均改定率二・九、これは定昇を除いておりますけれども、二・九%のベースアップが行われております。その水準については令和七年度も継続するとともに、通勤手当や単身赴任手当等の引上げを実施する予定というふうに聞いておるところでございます。

 また、職員の採用につきましてでございます。令和七年四月の国立病院機構の常勤の看護職員の採用数の見込みは三千四百七十四名となっておりまして、昨年四月に比べ、百十三名の増加の見込みと承知しております。

 その上で、厚生労働省としては、昨年末に成立しました補正予算において、現場の更なる賃上げやICT機器の導入による業務効率化を支援することとしておりまして、必要な支援が行き届くよう、着実に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。

八幡委員 百十三人で何かどや顔みたいにされたら、ちょっとびっくりしますよ。全国の先生は怒りますよ、それ。だって、それで足りているわけないじゃないですか。だから、やはりお金をつけていかないといけない、予算をつけないといけないです。やはり命を守るための予算ということを考えていく。

 そして、私、いつも思うんですけれども、何か、どこどこ病院はこの政党の支持母体だとかなんとか言っている場合ではもうないと思うんです。何が起きるか分からない災害大国に住んでいるんですから、党派を超えて支援を本気で考えていく必要があると思います。防災の観点からも、国立病院への支援は絶対必要だと思っております。

 続いて、四月になったということで、新年度、新学期を迎えて、新しい仕事に就いたり、新しくバイトを始める方も多いと思います。現在注目されておりますスポットワークについてお伺いいたします。

 いわゆる隙間バイト、スマホアプリなどを介して、自分の空いた時間を使って単発でバイトができるということで、新しい働き方として、これは認知をされています。

 このスポットワークで働く潜在人口、一千四百三十一万人とも言われているんですね。先月、スポットワークの仲介アプリを運営する大手の会社が活用実態に関する調査結果を発表しました。物流や飲食、小売の事業者六百人のうち、四五・三%が人手不足対策として隙間バイトサービスを利用している。隙間バイトサービス、これがないとお店や業務が回らないという回答が三一・二%にも上ったということなんです。

 時代の変化とともに働き方や雇用の在り方というのは変わってくるとはいえ、まず、大臣に是非お伺いしたいんですが、こういった社会の変化や、それこそスポットワーク自体について、どう受け止めておられますか。お願いします。

福岡国務大臣 いわゆるスポットワークのように、数時間であったり、また一日単位で働くものも含めまして、様々な形で働く方が増えてきたことの背景には、まず、個人にとっては、自分が好きな時間であったり場所で働きたいという労働者側のニーズであったり、また、企業側からすると、繁忙期であったり欠員の発生時だけ雇いたいといったニーズの双方があるというふうに考えております。

 厚生労働省としては、どのような働き方であっても、適正な労働条件の下で働ける環境を確保し、労働者の方々が安心して希望に応じた働き方を実現できるようにすることが大変重要だと考えています。

 その上で、いわゆるスポットワークで働く労働者につきましては、賃金であったり安全衛生などの取扱いにつきまして、通常の雇用と異なるところは全くございませんで、また、スポットワークの紹介事業者には、求職者への労働条件明示や苦情処理に関する体制の整備等が課されておりまして、その遵守に努めてまいりたいと思います。

八幡委員 おっしゃるとおり、面接もないから気が楽やという意見があったりとか、当然、利用者側のメリットもあります。人手不足を一時的にでも解消できるというお店側のメリットも当然あります。当然、私が学生時代だったら絶対やっていると思うんですよ。

 様々な理由で働いている人がいると思うんですが、本業があって、その収入では食べられないから副業として隙間バイトをしているという声もやはり聞きます。これは今の日本経済の全体の状況を表しているとも言えます。

 いろいろな働き方を応援するとおっしゃったんですけれども、やはり忘れてはいけないのが、正規雇用されたい人はしっかりと雇用されて、お給料をもらえるようにしなければいけないということ、これは社会は絶対忘れてはいけないと思うんです。何か、都合のいいときだけ人を呼べばいいわというような雇用者側の感覚、私、これもちょっと危ういんじゃないかなと個人的には思っています。

 とはいえ、このような単発バイト、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、短期間やパートなど、直接雇用での短期間勤務というのは、派遣法にも抵触していないし、禁止されていないんですよね。禁止されていないんですが、まだまだ法整備とか、あと理解が追いついていないというのが現状です。といいますのも、スポットワークを経験した人を対象とした調査では、勤務先でトラブルに遭ったという人が五一・四%に上ったという結果も出ています。

 これは半数以上の人がトラブルがあったんだと言うんだけれども、じゃ、その具体的なトラブルの内容は、募集条件と異なる危険な仕事に従事させられた、一方的な契約解除や不利益変更といった法令違反が常態化している、早上がりや残業など労働時間や賃金が募集と異なる場合がある、けがをしたのに企業側が労災保険の手続を進めないなど。企業側への指導は当然必要だとは思うんですけれども、やはりトラブルに巻き込まれないように利用者への注意喚起も必要になってくると思うんですが、利用者がどんどんどんどん増えていく中で、もう自己責任だけでは済まされないと思うんです。厚生労働省としての取組や対策を教えてください。お願いします。

福岡国務大臣 職業紹介事業者を通じまして、数時間であったり、また一日単位での働き先を紹介されて働く、いわゆるスポットワークにおきまして、御指摘がありましたように、トラブルが発生しているということについては認識をしております。

 先ほどもお答えしましたように、使用者には労働基準法、職業紹介事業者には職業安定法など、厳格な法令が適用されておりまして、これらがしっかり遵守されるように、都道府県労働局であったり労働基準監督署において、労働者の方々からの相談であったり、また情報提供などを端緒に監督指導を行っているところでございまして、引き続き、実態を適切に踏まえ、厳正に対処をしていきたいというふうに考えております。

 また、アルバイトをされる学生の方々が労働法令のルールを知らないケースも大変多いというふうに考えられますことから、高校生に対しまして、例えば動画であったり漫画による労働法令の教材の提供であったり、労働局職員による授業の実施を行っておりますほか、高校生や大学生等を対象にしました、クイズを通して労働法を自ら学習することができるスマートフォンアプリを提供するなど、労働法教育を推進しておりまして、引き続き、こうした取組も進めてまいりたいと思います。

八幡委員 しっかりと取り組んでいただきたいです。

 そして、一部聞くところによると、何か、アンケート調査といって人を集めておいて、個人情報を抜いて、それを本人が意図していない形で流用されてしまったりとかというのに巻き込まれてしまうというトラブルもあるんですね。やはり、それこそ闇バイトの入口だったりとか、私たちの想像をはるかに超えて斜めの角度からこういうのをやってくると思いますので、しっかりと注視をしていって、最新の情報を厚生労働省もつかんでいただきたいなと思っております。

 続いて、私、農林水産委員会にも所属しておるんですが、先週、農業と福祉がウィン・ウィンになると言われる農福連携を取り上げました。取組としては私も賛成で、障害を持たれる方がそれぞれの特性を生かして様々な働き方が選べるということはどんどん進めたいと思うんですが、その多くが、就労継続支援A型、B型の事業所から障害者の方が派遣されるという形を取るんです。

 農水省は、農福連携することで所得の向上にもつながるんだといって打ち出しているんですけれども、ちゃんと賃金の補助がないままの派遣先の事業所に賃金上乗せ分を任せているんですね。国として賃金の補助をしていかないことには、事業所が本当にちゃんと上乗せしてくれるかも分からないですし、やはり障害者を安い労働力として利用できるといった間違ったメッセージになってしまうんじゃないかということを質問をさせていただいたんです。

 というか、そもそも、A型とB型の賃金や工賃が低過ぎることが問題だと私は思います。これまでに報酬の改定や工賃の算定方式の見直しもあったとはいえ、就労継続支援事業所のA型、平均月八万六千七百五十二円、B型、平均月二万三千五十三円です。経済的な自立ができる金額ではないということは誰しもが想像できることだと思います。

 れいわ新選組は、障害者雇用における最低賃金を特例として撤廃している、更に安い金額で働かせてもオーケーみたいなことの、これ自体の制度をなくしていく、障害者も健常者と同様に最低賃金が保障されて、しかも、経営的に厳しい、そういった中小企業などに対しては、国が賃金補償を、補填の措置を取っていくということを政策に入れています。

 農福連携とか、あと工福連携、工業と、伝統工業とか何かそういうのとコラボをして、売るもの自体の価値を上げていこうみたいなことで様々なコラボレーションが注目されている中、今こそ、就労継続支援事業所のA型、B型の賃金や工賃の引上げをもう一回検討すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。お願いします。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の就労継続支援事業所、A型、B型がございますけれども、それで働かれる障害のある方々の賃金向上を図っていくこと、これは、障害基礎年金と相まって、障害のある方々の経済的な基盤を強化をしていくという意味でも非常に重要な課題というふうに認識をしております。

 そうした中で、平均賃金ないしは平均工賃額、こちらが傾向としては着実に増加をしておりまして、令和五年度の額は、先ほど先生から御紹介のあったとおりの額というふうな水準にはなっております。そうした中で、厚労省といたしましては、報酬の設計であるとか関連する予算事業などで、工賃あるいは賃金の向上に向けての取組を支援していくことをやっております。

 A型について申し上げれば、生産活動の収支が賃金総額を上回るといったような形で活動収支状況が良好な場合には、基本報酬算定上のポイントの評価を高めていくということであるとか、あるいはB型につきましては、平均工賃月額に応じて基本報酬を、高い、低いといった八段階で設定をしたりといったことで、こうした賃金、工賃上昇に向けて、事業者の取組というのを応援しているところでございます。

 さらに、こういった報酬とは別に、賃金向上を図っていくために工賃向上計画支援事業というのをやっていまして、何かというと、これは、経営力の強化に取り組まれたりとか、あるいは販路であるとか業務といった開拓をしていくといったこと、こういったことへの取組を支援するような都道府県に対する補助事業でございますとか、あと、御指摘の農福連携の各種の取組、こういったものなどを推進をしているところでございます。

 こうした報酬上の設計でございますとか、あるいは予算事業の取組、こうしたものを通じて、更に賃金、工賃を引き上げていけるように頑張っていきたいと考えております。

八幡委員 ありがとうございます。

 やはり再度確認しておきたいのが、農福連携のときも私は言ったんですけれども、じゃ、国として、障害者の人たちを雇用していくために、どういう取組、どこに予算をつけているんですかと言ったら、いやいや、トイレを近くにつくってとか、あと、バリアフリーにしてとか、ちょっとわあっと混乱したときに落ち着く部屋をつくってということをすごい言ってくるんですけれども、それは、して当たり前ですからね。だって、障害があるから、私たちと、障害と健常者と分けるのは余り好きじゃないけれども、同じスタート位置に立とうと思って、そのインフラを最低限整えるというのは当たり前の話ですから、その上に賃金を乗せていかないと何も解決しないということを改めてお伝えするので、是非検討をいただきたいです。

 私が前回、A型、B型の賃金について取り上げたところ、当事者の方たちから様々な反応があったんです。障害があってもなくても、やはり、みんな一人の労働者としてちゃんとした給料を受け取って、経済的に自立したいとみんなが望んでいるんですよ。

 やはり、今の日本のこういった法律とかルールとかを見ていると、本気で障害者の人を一緒に働こうとかと思わせたいと思っていますかということを感じます。賃金を見てもそうだし、どこかでちょっと上から目線というか、働かせてあげているとか社会に参加させてあげているみたいな、ちょっと上から目線のメッセージがすごいあるななんて思うときに、やはり、それこそ、最近、そういう農福連携、工福連携。それこそ、最近は、就労継続支援のB型の事業所がアニメや漫画の作画を受注したということが話題になったんですよ。私も大好きなちいかわですよ。ちいかわを、みんなで、こだわりを持っている人たちが描くとか、何かすごいそういうコラボも生まれていて、取組としてはいいのに、そこにやはり賃金が乗ってこないと、私は、よくない方向にしか進まないなと思っていて、やった感だけ出しているだけかなと思うので、是非、いま一度、A型、B型の賃金アップ、工賃アップについて考えていただきたいです。

 それで、大臣、当事者の方も今この中継を見ていると思うんですけれども、何かメッセージをいただけませんでしょうか。

福岡国務大臣 障害者の方々が、地域で生活していただき、その中で就労であったり社会参画をしていただき、それによって正当な収入を得ていただく、このことは本当に重要なことだというふうに思っております。上から目線ということは決してなく、私たちは、障害を持った方々が地域において働いていただける環境をしっかり整備していきたい、そういう率直な思いを持っているところです。

 その上で、御指摘がありましたように、障害者の方々が安い労働力として取り扱われるようなことがあってはいけませんから、私たちとしては、就労継続支援事業等を通じまして、障害者の方々の知識であったり能力向上のための訓練を行っていただき、経済的自立を促すように支援していくことが重要であるというふうに考えています。

 厚生労働省といたしましては、報酬上の仕組みであったり、生産活動に対する支援を実施するなど、障害者の方々の賃金、工賃向上に取り組んできているところでございまして、まだまだなところはございますが、着実にそれは増加はしてきているところでございます。

 また、就労移行支援であったり、今年十月からスタートいたします就労選択支援などを活用しながら、一般就労に向けた支援も強化していきたいというふうに考えています。引き続き、障害者の方々の賃金、工賃の向上には全力を挙げていきたいと思います。

八幡委員 是非お願いいたします。

 世の中お金が全てではないと言いますけれども、やはりお金は大事だと思うんですね。やはり自分が働いてこれだけ稼いだんだというとき、それこそ、私、初めてバイトしたときの初任給というのは、めちゃくちゃ感動して今でも覚えています。

 そういう働くことに対しての対価、お給料ということに関して、かなり今すごくどんどんどんどん賃金が下がっていることで、自己肯定感なんかも下がってしまっているし、自信も出ないし、何か諦めちゃってという、世の中全体がよくない方向に行っているので、やはり、れいわ新選組としては、経済的な政策で底上げしていくということは言うんですけれども、いろいろな分野で、多岐にわたって賃金向上というものは、厚生労働省、しんどい声を、私も陳情にいっぱいいらっしゃるので、少しずつ改善していただけたらなと思っております。

 今日は、様々な働き方を御紹介させていただきました。どんな環境でも、障害があってもなくても、働きたいという気持ち、社会に参加したいという人を全力で応援する厚生労働省であっていただきたいですし、あと、なかなか出てこない年金法案、これもちゃんとしっかりしていきたいです。仕事を終えた後でも安心して暮らせる制度というのを、みんなで一緒に年金を考えていく。そして、でも現役世代に負担をかけないとかというのを、やはり、働く人たち、働き終わった人たち、その人たちの生活を厚生労働省が先頭を切って守っていくということを大臣と一緒に今国会でも引き続きやっていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

藤丸委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、生活扶助費削減に対する違憲判決が相次いでいることについて質問します。

 政府が行った生活保護費の減額を違法とする判決が相次いでいます。資料一を御覧ください。東京新聞の報道です。高裁判決では、名古屋、福岡、京都、札幌、東京、埼玉、このうちの四つは、地裁判決を覆す原告逆転勝訴となっています。生活保護受給者にとってみれば、憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活ができていない重大な状況にあるわけです。

 福岡大臣、この司直の判断、この判決をどのように受け止めておられますか。

福岡国務大臣 平成二十五年から三年かけて実施いたしました生活保護基準の改定につきましては、これまで高等裁判所で十の判決があったものと承知しております。内容については、今資料でお配りいただいたとおりでございますが、いずれの事案につきましても判決は確定しておらず、訴訟係属中となってございます。

 平成二十五年の生活保護基準改定は、生活保護基準部会の検証結果を踏まえ、年齢、世帯人数、地域差のゆがみを直すとともに、デフレ傾向が続く中、当時の基準額が据え置かれていたことに鑑み、生活扶助基準の必要な適正化を図ったものでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも自治体との連携を図りながら、生活保護行政の適正な実施に努めたいと考えています。

田村(貴)委員 そのときの判断が間違いだったという判決なんですね。

 二〇二三年の名古屋高裁の判決後、当時の武見厚生労働大臣は、会見でこのように述べています。関係省庁や被告自治体と協議した上で今後適切に対応したいというふうに述べています。この裁判に対する厚生労働省とか大臣の見解がほとんど述べられていないんですけれども、この武見大臣当時のときから一年四か月たっています。

 厚労省にお伺いします。

 厚労省が自治体と何を協議して、どんな適切な対応をこれまでされてきたというのでしょうか。

日原政府参考人 お答えを申し上げます。

 今いただきました武見大臣の会見での御説明でございますけれども、それにつきましては、当時に出ました判決のその後の対応について述べられたものというふうに考えてございます。

 いずれにつきましても、判決をいただきました後は、関係省庁あるいは自治体と協議をしながら適切に対応させていただいているというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 だから、何を対応してきたんですかと聞いているんですよ。結局、何にもやっていないんでしょう。五回の高裁判決があり、いずれも受給者原告が勝訴しているわけですよ。判決の重みを受け止めるべきではないですか。

 扶助費を減らされた受給者の生活実態、これはどうなっているか。福岡大臣、また紹介したいと思います。私が暮らしている北九州市の保護世帯です。Aさん、お風呂は週一回、毛布を重ね着して寒さを防いできた、おかずはみそ汁と瓶入りのノリのみが多い、体重がこの間減ってきた。Bさん、お風呂は、この方もそうです、週一回、おかずは夕方の安売りになったときに二日分購入することにしている。熊本市の保護世帯、保護費が一万四千円引き下げられて、毎月九万四千円、ここから家賃、水光熱費等を支払うと生活費は月二万五千円しかなくなり、今物価高騰で一層苦しい、昨年はクーラーを節約したので二度も熱中症になったと。

 大臣、この国の憲法二十五条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と書かれていますね。今、困窮者の方が保護受給費をこれだけ減らされて、物価高騰で本当に苦しんでいる。健康的で文化的な生活を送ることができているとお考えですか。いかがですか。

福岡国務大臣 現在の物価高騰の局面におきまして、生活保護受給世帯以外の方々についても、物価高騰のあおりで大変生活が厳しい状況に置かれているということは御指摘のとおりであります。

 私どもとしましては、令和七年十月からの生活扶助基準の見直しにおいて、前回、令和四年末の臨時的な特例的な対応の措置時から一定期間が経過し、その間も物価、賃金などが上昇基調にあることを背景として消費が緩やかに増加していることなども踏まえまして、社会経済情勢等を総合的に勘案し、特例加算を令和七年から八年度の二年間、千五百円に拡充し、継続することなどとしたものでございます。

 また、足下の物価上昇に対しましては、令和六年度補正予算による経済対策におきまして、住民税非課税世帯への三万円の給付金が措置されてございまして、この給付金は、保護費とは別に生活費に充てることができる取扱いとなってございます。

田村(貴)委員 生活扶助費を引き下げたということ自体が大問題なんですよね。

 二〇一三年から二〇一五年、安倍政権は、生活扶助費の基準額を平均六・五%引き下げました。六百七十億円削減しました。自民党が選挙の公約で生活保護費を一〇%削減する、ここから始まった話なんですよ。根拠とした物価下落率を四・七八%と過大に設定しました。この数字は、通常と異なる計算方式を混在させた物価指数でありました。

 福岡高等裁判所の裁判長は、判決で厚生労働省の計算方式について、一般世帯と受給世帯とでは消費行動が異なると指摘し、受給者の生活実態が十分に反映されておらず不合理と批判しました。そして、別の調査を用いれば物価下落率は約一・八%にとどまったことがうかがえ、受給者は食費や光熱水費も抑えた生活を余儀なくされたと断じて、生活保護法の趣旨に反し、厚生労働大臣の裁量権の逸脱が認められると結論づけたんです。大臣、御存じですね。東京高裁判決では、統計との合理的関連性を欠き、専門的知見との整合性がないと指弾されたんです。

 当時の大臣の裁量権の逸脱によって、受給者が塗炭の苦しみにあるわけです。この過ちを認めて、六百七十億円を支給し直すべきだと考えますが、検討しませんか、大臣。

福岡国務大臣 平成二十五年の生活保護費の改定におけるデフレ調整につきましては、当時、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落するなど、我が国の一般国民の生活水準が大きく低下していた中で、従前見直しの際の指標としておりました消費を基礎とすると減額幅が大きくなることが予想されたため、生活保護受給世帯の生活への影響に配慮する観点から、消費の構成要素の一つである物価を勘案し、基準の見直しを行ったところでございます。

 二十五年から三年かけて実施いたしました生活保護基準の改定につきましては、これまで高等裁判所で十の判決があったものと承知してございますが、いずれの事案も判決は確定しておらず、訴訟の係属中でございます。

 いずれにいたしましても、基準の改定についての判断は、厚生労働大臣の合目的的な裁量に委ねられているというふうに承知をしております。

田村(貴)委員 近く最高裁判決が言い渡されて、統一判断が示されるというふうに見込まれています。そのときまで何もしないんですか。もう過ちを認めたらどうですか。

 生活保護基準引下げ訴訟、命のとりで裁判は、全国二十九地裁で行われて、三月二十八日現在、原告側が高裁で六勝四敗、地裁は十九勝十一敗、二三年度以降では原告二十一勝六敗ですね。もう原告勝訴というのは動かし難いものというふうにも言われています。

 引き下げられた現行の保護基準では、やはりこれは憲法違反の状況となっていきます。直ちに裁判所の判決を受け入れて、生活保護利用者への真摯な謝罪を行うこと、そして基準を引下げ前の二〇一二年当時に戻すことを強く要求したいと思っております。

 それでは、次の質問に移ります。訪問介護について質問します。

 昨年十二月の大臣所信質疑で、訪問介護事業所が自治体においてゼロになっている問題を取り上げました。資料二を御覧いただきたいと思います。

 今年になって厚労省が事業所の一覧データを更新しましたので、それを受けて、しんぶん赤旗が一月十日現在の状況を伝えました。昨年六月末からの状況から、半年で更に悪化しています。総事業所数は五百七十九か所減少しました。事業所ゼロの自治体は、十増えて百七町村になりました。一つしかないところは二百七十二市町村で、ゼロないし一つしかない市町村は、合計三百七十四から三百七十九自治体に増加しました。

 訪問介護の空白地域が加速しています。なぜこんなことになったんでしょうか。それは、訪問介護報酬を政府が引き下げたからであります。

 福岡大臣は、昨年、サービスを必要とされている方がサービスを受けられないようなことはあってはならないというふうに答弁されましたよね。あってはならない事態が更に広がっているんです。大臣、どうしますか。

福岡国務大臣 介護分野は大変厳しい状況にある中で、訪問介護は大変厳しい状況であるということは、累次の御指摘があってきたところでございます。

 その上で、地域の訪問介護の提供状況につきましては、厚生労働省のオープンデータによりますと、訪問介護事業所のない自治体は全国に約百町村程度存在するところでございますが、このうち、この半年間で事業所が確認できなくなった十町村につきましては、その全てで、訪問介護やそれに相当するサービスの利用が継続していることを確認させていただいております。

 また、厚生労働省で今般実施いたしました自治体調査においては、昨年六月から八月までの訪問介護事業所の休廃止は前年同月比でおおむね一割弱の増加となっている一方で、新規開業や再開も同程度ございまして、事業所の総数としては増加しているといったこと、また、廃止の主たる要因は人員の不足となってございまして、人材確保に大きな課題を抱えているものというふうに認識をしております。

 訪問介護の運営が安定的に行われること、これは非常に重要であることでございまして、今後も、事業所が確認できなくなった市町村について、個別に状況を確認するなど、丁寧な把握に努めてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 いや、把握では駄目ですよ、大臣。

 近隣の自治体の努力もあって、苦労もあってサービスが引き継がれているというんだけれども、これは本当に大変なことなんですよ。基礎自治体に事業所ゼロという、これはあってはならないことです。この危機感が厚生労働省にありますか。危機感を持ってもらいたいと思います。

 空白になった自治体で何が起こっているのか。そういう町の一つである長野県の高山村の例を紹介したいと思います。

 昨年十月、高山村の最後の訪問介護事業所が休止に追い込まれました。四十六人の利用者がおられたんですけれども、この方の受入れを探すことになり、別の自治体の事業所が引き受けました。八人を引き受けた須坂市のNPO法人は、当初四人から五人を、最終的に八人を受け入れました。四人から五人だったんだけれども、八人、最終的に受け入れた。高山村でも特に山間部は大変で、ガソリン使用量や移動時間も増えていく、事業所が一つ減ったせいで新規の利用者が増えて、そろそろ受入れの限界というふうに話しています。

 大臣がおっしゃるように、周辺自治体の事業所で受け入れることができたとしても、周辺自治体の新規利用者受入れが困難になるんです、同時に。保険あって介護なしの事態は変わらない、そして広がっているんです。

 困難な自治体に訪問介護事業所を、大臣、増やさないといけないじゃありませんか。介護サービスが受けられないではありませんか。今年中にこの空白をなくすために政府として努力をする、そのぐらいの手だては取ってしかるべきだと思いますが、どうされますか。

福岡国務大臣 引用していただいていますように、従来から、やはり保険料を払っていただいた方々がその地域において適切な介護を受けられないことがあってはいけないという思いについては、私は一貫してございます。

 そのような中で、そういった空白地帯がなるべく生じないようにする努力というのは当然必要だというふうに考えておりまして、これまでも様々な予算措置であったり、また、今回も処遇改善を取りやすくする環境整備であったり、補正予算であったり、様々な措置を講じてきたところでございます。

 しっかりそういったものが行き渡るよう、そして、そういった状況を見ながら、必要な対応については考えてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 必要な対応は是非考えてください。そして、大臣が言われた処遇改善では経営難は解決できないんです。そのことを今から申し上げます。

 この高山村での事業所閉鎖の直接の原因は、職員五人の方が短期間に辞めたということなんです。サービス提供責任者は、このように語っています。国が報酬を下げたので、減収を補うために訪問回数を増やしました、国は報酬引下げの代わりに処遇改善加算を増やしたからそれを取れということでしたけれども大変でした、研修に時間を割き、何度も書類を出し直して昨年七月に取れました、加算は賃上げに使うもので事業所経営は改善しない、取得の労力は無報酬でした、何でこんなに疲れさせるのかと。

 厚労省の皆さん、聞いてくださいね。現場で事業所はみんな、こういう苦労をしているんです。そして、処遇改善加算は増やしても経営は改善されなかったとしています。処遇改善加算は当然必要です。もっと増やさなくちゃいけない。でも、経営改善ができていない。

 結果として言えるのは、昨年の介護の報酬改定が中山間地で頑張る事業者を追い込むことになっているんです。報酬を元に戻すべきではないでしょうか。いかがですか。

福岡国務大臣 まず、処遇改善加算、事務負担等が大変煩雑だという御指摘もいただきました。今回、今年の二月から要件を大幅に緩和いたしまして、そういった負担を軽減させていただく、そういう措置を講じさせていただいておりますし、また、先ほど言いました処遇の改善とは別に、様々な生産性向上、事務の効率化等を図る、そういったところについての予算等についても、私たち、配慮をさせていただいている中で、何とか事業経営をしていただけるような環境整備に努めていきたいというふうに考えてございます。

 中山間地等についての御指摘がございました。ここについては、今日、早稲田委員との中にも御議論がありましたが、様々な今回の調査の分析をさせていただくと、報酬改定の前後の収入を比較すると、訪問一回当たりの単価は増加しているのに対しまして、中山間、離島等の地域を中心に、サービス利用のピークアウトなどに伴い訪問回数が減少し、これによりまして、小規模事業所を中心に収入減となっているケースが確認されたというふうに考えています。(発言する者あり)

田村(貴)委員 違う、違うの声がいっぱい出ています。

 厚労省の最近の資料に基づいて私も質問させていただきたいと思います。地域の実情や事業所規模等を踏まえた持続的なサービス提供の在り方に関する、厚労省介護給付費分科会での調査研究事業の結果です。

 資料三を御覧ください。介護職員が利用者の元に移動する時間はどうなのか、右端の数字が示されています。同一建物減算算定のなしのところでは、中山間地、離島、都市部、その他の地域、どの地域を見ても約二十六分前後です。一方、同一建物減算算定があるところでは、中山間地、離島では十分前後、都市部では八分、その他では十二分と、二倍以上の開きがあります。

 資料四を御覧ください。訪問介護事業所の介護保険収入の現状です。同一建物減算算定ありの都市部、その他の地域では、平均で一〇〇%を超える収益率となっています。算定ありなしで比較すると、都市部で七・三%、その他の地域では六・一%の開きがあります。

 同じ訪問介護の事業所なのに、収益構造が相当違います。これをどう見るんですか。同一建物減算算定というのは一体何なんですか。説明していただけますか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の同一建物減算につきましては、訪問介護等のサービスにおいて、同一建物等に居住をする利用者へのサービス提供の割合が多くなるにつれて訪問回数が増加をし、移動時間や移動距離が短くなることなど、効率的にサービス提供を行うことが可能になることを踏まえ、その評価を適正化する観点から、平成二十四年度介護報酬改定において新設されたものでございます。

 具体的には、事業所と同一の建物、事業所の所在する建物と同一又は隣接する敷地内の建物に居住をする一定数以上の利用者に対してサービスを提供する場合に、当該建物に居住をする利用者の人数や割合に応じて基本報酬の減算を行う仕組みとなってございます。

田村(貴)委員 この厚労省の調査は、まだ続くんですけれども、減算算定ありの事業者は、中山間地を除いて、増収、減収の数に差はないんです。一方、減算算定なしの事業者は、減収した事業所の割合が多いんですよ。この両者をちゃんと区別することなく、厚労省は昨年四月に訪問介護の基本報酬を引き下げたんですよね。

 今度の調査結果から言えることは、これは結果として、同一建物減算算定の事業所以外、つまり、地域の利用者を一軒一軒、介護従事者が訪問している、そういう介護サービスを提供してきた事業所の経営を圧迫した、大きな打撃を与えたのではないかとこの数字から読み取れるんですけれども、いかがですか。

福岡国務大臣 今回の調査におきまして、地域別に報酬改定前後の収入を比較いたしますと、都市部などでは同一建物減算の算定なしの方が収入減の事業所の割合が高くなっておりまして、こうした地域では、サービス利用者が増加する中で、事業者間の競争に伴う訪問回数の減少によりまして、小規模な事業者を中心に収入減となっていることが確認されたものでございます。

 今回の調査で、改めて、やはり地域の特性であったり事業規模、事業形態に応じた支援の必要性が確認されたことから、引き続き、先ほども申し上げましたように、取得要件の弾力化であったり、また物価高騰や賃上げに対する支援、そして訪問介護事業者向けの各種支援などの措置を確実に現場に届けていきたいと思います。

田村(貴)委員 地域の介護事業所が一軒一軒、要介護者、要支援者の方を訪ねて、そして介護サービスを提供している、この努力が報われていないんですよ。事業所は閉鎖せざるを得ないんですよ。そして、数字が表れているように、同一建物減算算定、これがなしの地域で本当にひどいことになっている。ここにやはりフォーカスして対策を練らないと駄目ですよ。地域から介護がなくなるんですよ。そして、基礎自治体に事業所がないなんてことを本当に放置していくんですか、今からも。これは思い切った対策を打ってください。緊急を要します。

 最後に、地方だけの問題でないことも指摘しておきたいと思います。

 東京都世田谷区です。これは本当に大都市部ですね。でも、一年近くで七つの事業所が減少しました。昨年の介護報酬改定でとどめを刺された、こういう大都市の事業所も多いんじゃないでしょうか。世田谷区は、独自の事業として訪問介護事業者に対する支援を行ったんですよ。国もやったらどうですか。事業者の事業改善をする、事業者の経営状況を改善するための支援、そして緊急の介護報酬改定、これをやはり迫られています。緊急の介護報酬改定、これを全国一斉に緊急に行わないと、介護の危機はより一層ひどくなると思います。

 対策しますか。検討しますか。そのことを最後、求めたいと思います。いかがですか。

福岡国務大臣 厚生労働省といたしましては、訪問介護を始め、介護の経営状況が地域の特性であったり事業規模、事業形態等に応じて様々であることを踏まえまして、これまでも処遇改善加算を行ってきましたし、また、さらに、取りやすくするための要件の緩和等も行ってまいりました。

 また、まさに昨年末成立いたしました補正予算等によります、そういった支援の額がまさにこれから現場に行き届く、そういった状況もしっかり見極めながら、必要な支援については考えてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 地方だけではなくて都市部でも、住み慣れた地域で住み続けながら訪問介護サービスを受けることが困難になっている。そして、厚労省の資料においても、そのことが如実に表れてきました。これは本当に緊急を要する事態になっています。

 せっかく介護保険料を払って、そして必要なサービスを期待しているんだけれども、事業所がない、よその自治体までは遠過ぎる、そして必要な介護を諦めざるを得ない、これが進んでいるんです。もう転換させないといけないんじゃないですか。

 そのことを強く対策を求めて、質問を終わります。

藤丸委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十一分散会


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