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第6号 平成29年4月7日(金曜日)

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平成二十九年四月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 うえの賢一郎君 理事 大見  正君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 白須賀貴樹君

   理事 吉川 貴盛君 理事 北神 圭朗君

   理事 近藤 洋介君 理事 高木美智代君

      穴見 陽一君    石川 昭政君

      小倉 將信君    尾身 朝子君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      工藤 彰三君    今野 智博君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      島田 佳和君    高木 宏壽君

      中川 俊直君    星野 剛士君

      三原 朝彦君    宮崎 政久君

      八木 哲也君    簗  和生君

      山際大志郎君    大畠 章宏君

      落合 貴之君    篠原  孝君

      鈴木 義弘君    田嶋  要君

      中根 康浩君    福島 伸享君

      中野 洋昌君    畠山 和也君

      真島 省三君    木下 智彦君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    中川 俊直君

   参考人

   (東京電力ホールディングス株式会社代表執行役社長)            廣瀬 直己君

   参考人

   (電気事業連合会会長)  勝野  哲君

   参考人

   (全国電力関連産業労働組合総連合会長)      岸本  薫君

   参考人

   (慶應義塾大学特任教授) 遠藤 典子君

   参考人

   (株式会社エネット代表取締役社長)        武田  勉君

   経済産業委員会専門員   木下 一吉君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  宮崎 政久君     今野 智博君

同日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     宮崎 政久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)


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     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京電力ホールディングス株式会社代表執行役社長廣瀬直己君、電気事業連合会会長勝野哲君、全国電力関連産業労働組合総連合会長岸本薫君、慶應義塾大学特任教授遠藤典子さん、株式会社エネット代表取締役社長武田勉君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 本日は、御多用のところ参考人の皆様には、本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず廣瀬参考人にお願いいたします。

廣瀬参考人 東京電力の廣瀬でございます。

 先生方皆様には、私どもの事業に対して日ごろよりさまざま御指導をいただいておりまして、本当にありがとうございます。この場をかりて御礼を申し上げたいと存じます。

 私どもの福島の事故から六年が経過いたしました。本当に長い間、しかも、今もなお多くの皆様に大変な御不便、御心配をおかけしておりますこと、改めましておわびを申し上げたいと思います。

 私ども東京電力は、社員一人一人全員にわたって、東京電力が破綻処理を免れ、存在を許されているのは、福島の責任をしっかり果たしていくためだということをしっかり胸に刻みまして、今、さまざま復興活動、廃炉活動を努めているところでございます。

 本日は、原子力損害賠償支援それから廃炉支援機構の改正法の審議に当たりまして、私からはまず、私どものこれまでの取り組みと、それから今後の決意ということでお話を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、これまでの廃炉に関する取り組みでございますけれども、皆様本当に御承知のとおり、事故以来、ちょうど六年前の今ごろから、大変なさまざまトラブルの連続でございました。本当に、毎日毎日トラブルの解決のために場当たり的な対応を余儀なくされていたというところでございます。御記憶と思いますが、ネズミにケーブルをかじられて冷却のポンプがとまってしまったり、あるいは、タンクの底から汚染水が漏れてしまった、あるいは海まで行ってしまったというようなこと、本当にたくさんのトラブルがございまして、そのたびに皆さんから大変な御心配、お叱りを受けてまいったところでございますが、一方、そうした中で、少しずつではありますが、六年の間で、安定化に向けて取り組みがなされてきたという面もございます。

 特にこの二年ぐらいにわたりましては、大分進んでまいりました。御記憶のとおり、四号機の使用済み燃料プールから、千五百三十五体も入っていたんですけれども、全部取り出すことができましたし、さらには、汚染水、これも皆さんに御心配をおかけしておりますけれども、多核種除去装置、いわゆるALPSというもので、とりあえずは全量の処理が完了しております。また、海側の岸壁の岸に海側遮水壁というのを完成させまして、地下水経由で汚染物質が海に流れ出ているのではないかということに対してはそうした対策をとらせていただきました。

 一方で、本当にたくさんの作業員の方々に頑張って働いていただいておりますので、皆さんに対して、少しでも労働環境をよくしていくということも取り組んできたところでございます。

 皆さんも、何度も一Fを御視察いただいておりますので御承知のことと思いますけれども、全面マスクを必要とする、あるいは、タイベックを着て作業しなければいけないというような地域は大分狭くなってきました。また、事務棟であるとか、あるいは大型の休憩所であるとか、あるいは給食センターであるとか、あるいはコンビニであるとかシャワールームであるとかといったような設備も、少しずつではありますが整備をさせていただいておりまして、御家族も含めて、福島第一で働くということについて、なるべく御心配をおかけすることなく、少しでも安心してお仕事をしていただけるような対策もこのところやってきたところでございます。

 一方で、賠償につきましても、さまざまの取り組みをこの六年間やってまいりました。

 これもまた皆さん御記憶のことと思いますが、ちょうど六年前の今ごろから仮払いというのを、とにかく、身一つで避難された方々に少しでもまず当座のお金をということで仮払いをスタートして、その年の九月、二〇一一年の九月ごろから、やっと賠償という形を整えて賠償のスタートを切ったわけですが、そのときも、これも御記憶のとおり、説明書が分厚くて、お年寄りにはこんなものはわかりっこないじゃないか、あるいは、始まったはいいけれども、なかなかなかなかお金が届かない、遅いというようなことで、大分お叱りを受けました。

 それに対してなかなかうまくはいかなかったんですが、一つ一つ改善をしまして、その後、いわゆる精神的損害であるとか営業損害であるとか就労損害であるとか、そうした一つ一つの損害の類型化をして、なるべくスピードアップをして、まずはとにかく賠償金をお届けするということをずっと続けてきたところでございます。

 これは、今後もまだまだ損害は継続しておりますので、最後のお一人までしっかり賠償を貫徹するということでやらせていただいております。また、ADRの和解につきましても、ほぼほぼ全部和解を今させていただいているところでございます。

 また、さまざま復興のための活動というのも、これも皆さん御案内のとおりと思いますけれども、しております。

 避難所であるとか、あるいは、市町村の役場が仮に事務所を設置されていらっしゃいますけれども、そこに職員を派遣して少しでもお手伝いをする、あるいは、一時立ち入りというのをずっとやってまいりましたが、そこで、皆さんが集まっていらっしゃるところでスクリーニングをやる、モニタリングをやるというようなことをやらせていただいています。

 また、東京から社員がかわるがわる、二泊三日、三泊四日ぐらいで現地に入りまして、冬であれば雪おろしをしたり、夏であれば草刈りをしたり、あるいは御自宅の片づけをするというような、汗をかくような活動をずっと続けてまいりました。

 これらは延べで三十三万人日に達しました。東電の社員は大体今は三万三千人ぐらいですので、一人当たり十日平均で来ているということになります。一回で二、三泊していきますので、平均的にも、ほとんど全員の社員が最低二回ぐらいはそうした活動に参加しているということで、今もなお、これは続けていきたいというふうに思っています。

 また、除染についても、モニタリング等々、これは、電力各社さんの御支援もいただきながらやらせていただいておりますし、また、放射性物質の取り扱いについては電力会社として多少の知見がございますので、国や、環境省さんやあるいは各自治体さんが行っていらっしゃる除染活動についても、工事監理の支援であるとか、そうしたことで少しでもお手伝いをさせていただいております。これにも二十二万人日の社員が、これは当然のことですけれども、参加をさせていただいております。

 こうしたことをやってきましたけれども、まだまだ福島の状況は、廃炉も含めましてまだ道半ばというところでございますので、これからしっかりやってまいらなければいけません。これから、デブリの取り出しであるとか、そうした本当に前人未到のところに入ってまいりますので、しっかり体制を立てて、人を教育して、全国それから全世界からの知見もいただきながら、しっかりやってまいりたいと思います。

 それに当たっては、作業安全の確保をしっかり行い、さらに、被曝線量をできるだけ抑えていくといったような対策で今後の長い道のりを進めてまいりたいというふうに思っています。

 さて、昨年の秋に、いわゆる通称東電委員会から、今後のそうした費用の全体の見積もりというのが提示されました。御存じのとおり、二十一・五兆円という数字であります。

 その役割として、東京電力は十六兆円をしっかり確保していくようにという御提言でございますけれども、これは大変大きな数字ですが、幸い、今一遍に全部のお金が必要ということでございません。これから長きにわたってやっていくための総額の資金ということで御提示をいただきました。

 例えば、十六兆円を三十で割れば一年間五千億ということで、まずは、しっかりこの年間五千億をどうやって確保していくか、そのためにどうした取り組みをしていかなければいけないかということを今懸命に検討してプランを立てているところでございます。

 当然、中心は、まずはコストダウンをしっかりしていかなければいけませんので、あらゆる部門でコストダウンを進め、効率化を進め、しっかりとした収益を出し、年間五千億という、非常に大きい金額ではございますけれども、それを確保していきたいというふうに思っています。

 また、やはり柏崎の再稼働というのも、しっかり毎年五千億を計上していくためには非常に大きな役割を果たすというふうに思っておりますので、当然、再稼働に当たっては、審査をいただき、さらには地元の皆さんの御了解をいただいた上での話ですけれども、これもしっかりやっていかなければいけないというふうに考えているところでございます。

 またさらには、今後、他社さんとの再編や統合ということでさらに強力な事業体にし、そして海外にも出ていくというようなことも、当然、今検討させていただいているところでございます。

 いずれにいたしましても、今回の御審議いただいております原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正案につきましては、巨額かつ長期にわたる廃炉費用の支出に備えて、廃炉の実施や支出に対する国や機構の適切な管理監督のもとで、毎年一定額を積み立てることによって廃炉に必要な資金をしっかり確保し、今後の廃炉の実施をより確実なものにしていくというふうに、そういう法案の改正だと理解をしております。私ども東京電力といたしましても、重要な法案の改正であるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても当社としては、事故の当事者として、しっかり今後も社員の気持ちを切らさぬように、グループ全員が一丸となって改革に取り組み、長期にわたる廃炉作業を初め、さまざまな福島の責任を果たしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 私からは以上とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

浮島委員長 ありがとうございました。

 次に、勝野参考人にお願いいたします。

勝野参考人 電気事業連合会の会長の勝野でございます。

 本日はこのような機会を賜りましたこと、そして、電気事業の運営に際しましては、先生方の皆様には日ごろより多大なる御理解と御協力をいただいていますことを、この場をおかりして、改めて厚く御礼申し上げます。

 また、福島第一原子力発電所の事故により今もなお多くの皆様方に御迷惑と御負担をおかけしていることに関しましても、同じ電気事業に携わる者として、大変申しわけなく思っているところでございます。

 我が国では、S、安全、プラス3E、安定供給、環境保全、経済性の観点から、原子力を重要なベースロード電源と位置づけ、二〇三〇年のエネルギーミックスの達成に向けて取り組んでおります。

 私ども原子力発電の担い手といたしましても、原子力の利用に当たっては、福島の復興再生に必要な福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の確実な実施と安全性向上へのたゆまぬ取り組みが前提であることをしっかり認識し、信頼回復に努めてまいる所存であります。

 その上で、安全性が確認された原子力発電所については、着実に再稼働を行っていくことで、安定した安価な電気をお届けするとともに、エネルギーミックスの達成、地球規模での温室効果ガスの削減に貢献していきたいと考えております。

 そのためにも、福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさないという強い決意のもと、徹底した安全対策に取り組み、新規制基準への的確な対応はもとより、規制の枠にとどまらない、より高い次元での安全性確保に向けて、原子力施設のリスク評価、管理を行う原子力リスク研究センターや、NRRCと呼んでおります、原子力事業者みずからが安全性向上に取り組むための自主規制組織である原子力安全推進協会、JANSIと呼んでいます、などの外部の機能も積極的に活用しながら、自主的、継続的な取り組みを全力で進めているところでございます。

 ことしの二月にも、原子力事業者、そしてNRRC、JANSIのトップが一堂に会して、原子力の自主的安全性向上に向けた取り組みにかかわる議論を行い、安全性向上に向けた取り組みに終わりはないという認識を改めて共有するとともに、それぞれ果たす役割や、リスク評価手法の充実、その評価結果や工学的判断などを適切に組み合わせた意思決定、ピアレビューを通じた安全性向上に関する議論、緊急事態支援センターや事業者間の相互協力体制を通じた緊急事態への対応能力の向上といった新たな取り組みについても、相互に確認いたしました。

 私どもといたしましては、原子力のリスクに対して常に正面から向き合い、安全性向上に向けたさらなる取り組みとして、リスク低減のために私たちが何を常になすべきか、追求していくことが重要だと考えております。

 私どもは、このたび確認した内容も含め、今後も、取り組みを着実かつ継続的に進め、原子力の安全性向上という事業者の使命をしっかり果たすことで、社会の皆様から、信頼の回復に努めてまいりたいと考えております。

 それでは、今回御審議いただいております原子力損害賠償・廃炉等支援機構法、以下、支援機構法と呼ばせていただきます、の改正法案につきまして、私どもの考えを申し上げたいと思います。

 福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策、これもまとめて廃炉と呼ばせていただきます、については、終了まで三十年から四十年、合計八兆円の規模とも言われております。廃炉の実施に当たっては、東京電力がグループの総力を挙げてその責任を果たしていくことが原則ですが、廃炉を安全にかつ着実に進めていくためには、長期にわたる巨額な廃炉の資金需要に対応できる仕組みが必要となります。

 したがって、今後の廃炉の本格化に備えて、東京電力に対して、第三者機関である原子力損害賠償・廃炉等支援機構、以下、支援機構と呼ばせていただきます、に必要な資金の積み立てを義務づけることで、将来の廃炉作業に伴う資金需要に備える廃炉等積立金制度を創設することは極めて有効であると考えております。

 支援機構が、積み立てられた資金の運用を行うほか、廃炉の工程や資金支出を適切に管理監督することで、東京電力が取り組む廃炉がより確実に実施できるものと考えております。

 また、東京電力に義務づけられる資金の積み立てについては、東京電力が、徹底した生産性向上により、主として送配電事業や原子力事業において資金を確保することとされており、事故事業者がみずから廃炉責任を果たしていく仕組みとなっている点についても、非常に評価できるものと考えております。

 本改正は、廃炉の確実な実施を確保することを目的としており、福島の復興再生を加速するためにも、重要な改正であると受けとめております。

 一方、法改正に当たりまして、私どもとして留意すべきと考えることもございますので、その点についても言及したいと思います。

 まず一点目は、廃炉等積立金の適正な管理についてであります。

 今回の法改正により、支援機構は、従来から担っている福島事故に係る損害賠償の資金の管理に加え、福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理などの業務も行うこととなります。

 したがって、支援機構においては、原子力事業者が一般負担金等により負担する損害賠償資金と東京電力のみが積み立てを行う廃炉資金とをしっかり区分し、資金管理における透明性を十分に確保していただきたいと考えております。

 二点目は、着実な廃炉の実施に当たっての支援についてでございます。

 福島第一原子力発電所の廃炉は、長期にわたり巨額の資金投入が必要な国家的事業であり、原子炉圧力容器を貫通した燃料デブリの取り出しが必要であるなど、世界でも経験のない取り組みではございます。

 今回の法改正により、資金管理等の面において、廃炉の確実な実施を確保するための仕組みが整備されることとなります。一方で、実際に、汚染水対策、使用済み燃料プールからの燃料の取り出し、そして燃料デブリの取り出しといった廃炉作業を進めていくに当たっては、広範かつ前例のない技術的課題の解決が求められます。

 これらの技術的課題の解決には、国内外の英知を結集した研究開発が必要となります。加えて、現場作業を担う人材の確保、育成など、廃炉作業を進めるための体制の整備も必須となってまいります。課題は多岐にわたっておると思っております。

 これらの課題を解決し、廃炉を円滑かつ安全、確実に実施していくために、私どもとしましても、業界全体で支援をしてまいりたいと考えておりますが、引き続き、産業界や研究機関、そして、政府も含めたオールジャパンでの協力体制が不可欠であると考えております。

 以上、支援機構法の改正に当たって、私どもの考えを申し上げました。

 最後になりますが、東日本大震災を契機に検討が進められてまいりました電力システム改革については、昨年の四月から小売全面自由化がスタートし、各事業者が厳しい競争環境の中、切磋琢磨をしております。経営環境が変わる中でも、電力システム改革が真にお客様の利益につながるよう、引き続き詳細検討に協力していくとともに、安全性が確認された原子力発電所の再稼働や、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた課題解決にも取り組んでまいる所存でございます。

 今後とも、皆様方におかれましては、引き続き御指導、御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

浮島委員長 ありがとうございました。

 次に、岸本参考人にお願いいたします。

岸本参考人 おはようございます。電力総連の岸本でございます。

 本日は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法改正法案の審議に際しまして、電力関連産業に働く者の立場から御意見を述べさせていただくこうした機会を賜りました。まことにありがとうございます。

 私ども電力総連は、発電から送配電、設備や部材、部品の製造、建設から保守メンテナンス、保安、お客様サービスに至るまで、電力関連産業に携わる労働者約二十一万人で組織をする労働組合でございまして、加盟組合数は約二百三十組合でございます。

 さて、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から六年が経過をいたしました。この間、電力関連産業の現場第一線におきましては、原子力安全の向上に向けました不断の努力はもとより、原子力施設の新規制基準への対応や福島第一原子力発電所の廃止措置などに向けた取り組み、フル稼働を続ける火力電源などの脱落リスクや太陽光発電などの自然変動電源の急速な拡大に伴います諸課題等々、電力需給環境下のもとでの安定供給の確保、経営基盤強化を目的としました聖域なき経営効率化への対応、そして、近年相次ぐ大規模自然災害からの早期復旧など多くの課題に対しまして、グループ会社、協力会社を含めまして、同じ電力関連産業で働く者全体が、お互いを支え合いながら、与えられた社会的な使命を全うし続けているところでございます。

 福島における廃炉、復興に向けましては、国の方針のもと、東京電力グループや協力会社、プラントメーカーなどの皆様を初めとする関係者によります昼夜を分かたぬ懸命な努力を積み重ね、安全かつ円滑な廃止措置等に向けた取り組みを続けているところでございます。

 また、福島第一原子力発電所の周辺を含む福島におきましては、住民の皆様の、帰還に向けた除染活動や復興活動も継続しているところでございます。

 福島第一原子力発電所の廃止措置等につきましては、燃料デブリの取り出しを経て、全号機の燃料デブリ取り出し終了、その後の廃止措置終了までには三十年から四十年を要するという中長期ロードマップや技術戦略のプランが示されているところであります。

 これらを達成するためには、国が主体的にかかわりつつ新しい技術開発などを行いながら、現場第一線で働く者の安全衛生の確保を第一義とした上で、着実な廃炉作業を進めていく必要がございます。

 先ほど廣瀬参考人の方からございましたように、労働環境面に関しましては、今日的には、全面マスクを着用せずに作業できる場所が徐々に拡大をしてきている状況、また、そこで働く者の意見、要望を踏まえていただきまして、発電所の近くで休憩、休息をとることができる大型休憩所の運用開始であったり、コンビニエンスストアの開設、温かい食事が提供できるようになったことに加えまして、昨年十月からは新事務本館が運用開始をしましたし、本年二月二十日からは新事務棟へ協力企業の方々が順次移転をいただきまして、これによって、協力企業と東京電力が密着した場所で執務をすることができることになったわけでございまして、発電所全体が一体となって廃炉作業に取り組める環境になってきているところでございます。

 このように、少しずつではございますが、福島第一原子力発電所で作業に従事をする方々が安心して働けるよう、労働環境の改善が進んでいる状況にございます。

 本日は、こうした現場の実情も踏まえた上で、御審議をされます原子力損害賠償・廃炉等支援機構法改正法案につきまして、働く者の立場から、二点につきまして私どもの考え方を申し上げます。

 まず一点目でございますが、今般の積立金制度の創設につきましては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の安全かつ着実な実施におきまして、東京電力が廃炉の責任を果たしていくという原則を維持し、国として、長期にわたる巨額の資金需要にも対応するための制度を整備、廃炉の実施をより確実なものとしていく必要があるということから、事故炉の廃炉を行う原子力事業者に対して積み立てることを義務づけるなどの措置を講ずるものであるというふうに承知をいたします。

 今後、原子力損害賠償・廃炉等支援機構におきましては、原子力事業者から納付をされます一般負担金と、東京電力が積み立てを行います福島第一原子力発電所の廃炉等積立金の両者を管理をしていくということになるわけでございますが、被災者の救済の原資であります一般負担金と廃炉等積立金を明確に区分をし、適切な管理がされますよう、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対するガバナンスを強化をしていくべきであるというふうに考えるところであります。

 つきましては、貫徹小委員会の中間まとめに対する意見募集の結果におきましても、福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理、確保のあり方については、国の考え方といたしまして、両者は区分整理をすることで適切に管理をしていきたいと考えているとの考え方が示されているところでございますので、この場で改めてお願いを申し上げます。

 二点目は、働く者の労働安全、労働環境の確保と、人材、技術の維持、継承についてであります。

 福島第一原子力発電所の廃止措置につきましては、前例のない挑戦の連続であります。かつ、長期にわたる取り組みに相なるわけでございますから、放射線健康管理を含む安全衛生の確保を初めといたしまして、健康で働きやすい労働環境の整備、並びに、廃止措置を支える人材の確保や技術基盤の維持発展が必要不可欠であるというふうに考えています。

 加えて、福島第一原子力発電所のみならず、全国で働く原子力関連産業におきましても、働く者の安全衛生の確保、やりがい、働きがいを保ち続けることができる労働環境の整備、人材と現場力の維持、継承が、電力の今後の安全・安定供給に何よりも不可欠であるというふうに考えますので、ぜひとも御配意をお願い申し上げる次第でございます。

 最後になりますが、申し上げるまでもなく、いついかなるときも、電力の安全・安定供給は、二十四時間、三百六十五日、現場第一線で働く、人の営みによって成り立っているところであります。

 今般の法案の審議に際しまして、現場で働く者の実情をぜひお酌み取りをいただき進めていただきますようお願いを申し上げまして、私からの陳述といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

浮島委員長 ありがとうございました。

 次に、遠藤参考人にお願いいたします。

遠藤参考人 おはようございます。慶應義塾大学の遠藤典子と申します。

 今、大学を拠点に、エネルギー政策、リスクガバナンスの研究を行っております。中でも専門は原子力損害賠償制度でございまして、現在、東京電力改革・一F問題委員会や原子力損害賠償専門部会の委員といたしまして、福島第一原子力発電所事故の費用負担の問題、また、原子力損害賠償制度の再構築につきまして議論に参加させていただいております。

 東電委員会におきましては、まず、福島第一発電所の廃炉がデブリの取り出しという新しい局面を迎えるということにおきまして、今後長期にわたり続けられる廃炉作業が安定的に遂行されるように、また、安定的な費用の捻出が必要であるということを確認いたしました。東電委員会と並行して行われました電力システム改革貫徹のための政策小委員会で提案された廃炉基金などの具体的な制度設計につきましても、東電委員会の方に御報告をいただきました次第でございます。

 次に、除染の費用につきましては、長期的な視点で企業価値を向上させることによって、株式売却益の四兆円相当を充当することが必要であり、そのためにも、送配電、燃料火力、小売などの経済事業は、他事業会社との相乗効果を目指した事業再編を中心とする抜本的な経営改革に踏み切るべきであるということを確認をいたしました。

 私が重ねて発言申し上げましたのは、完全統合に踏み切り、世界最大のLNG調達会社、火力発電会社となりますJERAだけではなくて、例えば配電事業におきましても、コージェネレーション、蓄電池、IoT、自動運転などのイノベーションを取り込んだエネルギーソリューションサービス事業に生まれ変わることができれば、需要の減少が想定される環境下におきましても十分に成長を果たすことができるということでございます。

 東京電力は新しい経営体制に移行することが発表されましたが、とりわけこうした経済事業につきましては、若手を中心に社内外の英知を結集して成長に向かって邁進することが、経済事業の企業価値の極大化、最終的には除染費用の捻出に寄与するものであると考えております。

 損害賠償専門部会におきましては、これまで想定していなかった過酷事故の可能性を踏まえて、損害賠償にかかわる費用をどう担保するかについて、国と事業会社の負担のあり方について抜本的な制度設計の議論を行っております。

 福島第一発電所事故直後に制定された原子力損害賠償支援機構法、現在の原子力損害賠償・廃炉等支援機構法になりますが、それは、明確にそれまで規定されていなかった国の支援のあり方について具現化するものでございましたが、地域独占、総括原価の喪失をもたらす電力システム改革を想定してはおりませんでした。ですので、今回の法改正は、電力システム改革と整合性を持たせるという意味で一定の効果があると考えております。

 そもそも、被害額が原子力会社の資力を超えるような過酷事故の場合の損害賠償は、実質的にということでございますが、最初は発電事業者、二番目に、発電事業者から供給を受ける電力利用者、これは受益者負担の原則になります。三番目には、発災事業者以外の原子力事業者、相互扶助の考え方に基づくものでございますが、その電力利用者、四番目には、規制、振興をつかさどる国の費用の負担の分担に帰結いたします。四の公的資金の財源は、もちろん税金ということになります。

 今回の改正によって、それまで発災事業者とその他原子力事業者の電気利用者が負担していた一般負担金を、新電力も含めた幅広い電気利用者に負担させるとするのでありましたら、それは、託送料金といえども、極めて税金に近い形での徴収という意味合いになるでしょう。

 そうであるならば、むしろ、目的税である電源開発促進税による徴収についての可能性についても今後は議論されていくべきではないかと考えております。

 もちろん電源開発促進税は託送料金の原価に含まれますので、実質的には託送料金の引き上げと同じでございますが、国民負担の規模も大きいことでございますので、省令ではなくて、国会審議のプロセスを経るというのも合理的であると考える次第でございます。

 本来的には、一般負担金は将来の事故に備えるための共済制度のようなものでございますので、電源開発の重要な要件であることも、電源開発促進税の徴収と無理なく整合性がとれるものと理解をしております。

 もっとも、誤解を受けぬようにつけ加えますが、省令改正による託送料金の引き上げのプロセスが不透明であると申し上げているのではございません。電気事業法の十八条におきましては、省令による規定の後は、電力・ガス取引監視等委員会による審議を経て、経産大臣の認可を得ることになっております。

 省令改正に委ねるのであれば、原子力発電のない沖縄からは例えば徴収せずに、原子力発電への依存度によってエリアごとに濃淡をつけるということによって、受益者負担の原則に近い制度を構築できるという利点も一方でございます。

 現在の東京電力の損害賠償におきましては、無限責任制度という枠組みの中、実質的な負担につきましては、他電力も含めた電気利用者に転嫁するという、言ってみれば、政府の裁量をもって事後的に有限責任制度を確立しているようなものでございます。

 福島第一原子力発電所事故の事例を踏まえ、事業者及び政府の予見可能性確保のための事前措置の範囲、政府の事後的な裁量の範囲につきまして、そのバランスをいずれ再検討しなければならない局面が参ると考えております。そこを放置しますと、原子力事業、もっと言えば、原子力行政への不信感を招きかねないと私の方は危惧しております。

 そもそも、エネルギー自給率が六%程度である我が国は、エネルギー安全保障上の課題に直面をしております。それは、近年の東シナ海、南シナ海の緊張度の高まりからいいますと、非常に重要な問題であると考えております。

 一方で温室効果ガス問題への責任の果たしようもございますので、原子力の果たす役割につきまして、今後とも引き続き議論が重ねられますようにお願いをする次第でございます。

 私の方からは以上になります。ありがとうございます。(拍手)

浮島委員長 ありがとうございました。

 次に、武田参考人にお願いいたします。

武田参考人 おはようございます。株式会社エネットの武田でございます。

 本日は、このような機会を賜り、まことにありがとうございます。

 まずは、意見陳述に先立ちまして、弊社の簡単な御紹介をさせていただきたいと思います。お手元の資料の一番最後のページ、六ページ目をごらんください。

 弊社は、二〇〇〇年の小売の自由化と同時に、NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスの三社により設立されました。

 事業内容としましては、全国約二百カ所の発電所からの余剰電力や日本卸電力取引所からの電力を購入し、特別高圧・高圧のお客様におかれましては全国約二万三千件、昨年四月に自由化された低圧分野におきましては全国約一万七千件のお客様に電力を供給しております。

 本日は、今回の改正法案が提出されました背景の一つであります、電力システム改革の進展を促す仕組みの具体化に向けて昨年に設置されました電力システム改革貫徹のための政策小委員会での議論に沿いまして、少し広範になりますが、意見を述べさせていただきたいと思います。

 それでは、一ページ目にお戻りいただけますでしょうか。

 初めに、電力システム改革に向けた弊社の基本的な考え方について説明いたします。

 昨年の九月に貫徹委員会が設置されました。そこでは、安定供給、電気料金の最大限の抑制、事業者の事業機会及び需要家の選択肢の拡大を目的として、さらなる競争活性化の方策と自由化のもとでの公益課題への対応策について広範な検討が行われました。

 図に示しますように、貫徹小委の下には二つのワーキングが設置され、市場整備に関する論点と財務会計に関する論点に分けて議論がされました。ことしの二月の中間取りまとめで、全体のパッケージとして取りまとめたものであります。

 その結果、新たな制度の導入についての方向性が示されましたが、今後の詳細設計に当たっては、そこに書かれておりますとおり、特に、需要家メリットを享受できる制度とする視点と、旧一般電気事業者と私ども新電力との競争を阻害しない、不公平にならない制度とする視点が重要であると考えます。

 続きまして、二ページ目をごらんください。

 まずは、財務会計関連の論点につきまして意見を述べさせていただきます。

 通常炉の廃炉費用と原子力損害賠償費用についてですが、これらの費用につきましては、新電力のお客様を含め、託送料金で回収することとしています。通常炉の廃炉費用や原子力損害賠償費用の過去分は、本来、原子力事業者が発電コストに含めてみずから最大限の努力で回収すべき費用であると思いますので、託送料金によりこれらの費用を回収するということは、電力システム改革の制度の趣旨と照らして慎重であるべきと考えます。

 また、託送料金によりこれらの費用を回収するのであれば、託送料金で回収する理由や回収する費用の計算方法、さらには回収状況等について十分に情報公開を行うなど、需要家に対して丁寧に説明していただき、需要家が負担について理解できる仕組みとすることが必要であると考えます。

 加えて、原子力につきましては、公益電源として位置づけることも長期的には検討が必要ではないかと考えます。

 次に、事故炉の廃炉費用についてですが、こちらにつきましては、事故当事者の負担とすると整理されており、基本的には賛成いたします。

 また、東京電力の送配電事業の合理化分を事故炉の廃炉費用に充当することとなっていますが、それによって、東電エリアの託送料金が高どまりし、他のエリアと比較して需要家の負担が過大となってしまうことや、設備投資の不足により送電事業の信頼性が低下したりするなどの問題が生じないよう、チェックや監視が必要であると考えます。

 次に、三ページ目をごらんください。市場整備関連の論点でございます。

 まず、ベースロード電源市場ですが、現在、石炭火力や大型水力、原子力などの安価なベースロード電源については、旧一般電気事業者等が大部分を保有している状態であり、我々新規参入者によるアクセスは極めて限定的であります。

 このため、ベースロード電源市場の創設が、新規参入者によるベースロード電源へのアクセスを容易にし、新規参入者の電源調達環境が改善されるとともに、電気料金の低下や需要家の選択肢拡大につながるものとして大いに期待しております。

 一方で、ベースロード電源市場が競争活性化に資する制度として実効的に機能するためには、旧一般電気事業者の、電源を所有する事業者に対して、十分な量、適切な価格での電源供出を求める仕組みが必要であると考えます。

 次に非化石価値取引市場ですが、再生可能エネルギーの環境価値を提供する手段として、非化石価値取引市場の創設に期待しております。また、エネルギー供給構造高度化法の義務履行の観点からは、原子力や大型水力を保有している旧一般電気事業者と、それらの電源を保有していない新電力とのイコールフッティングが重要であり、二〇三〇年に一律四四%の義務を課す現行の目標の考え方の見直しを含め、旧一般電気事業者の競争優位とならない制度設計が必要と考えています。

 三点目、容量メカニズムについてです。

 電源の新陳代謝が市場原理を通じて適切に行われることによって、より効率的に中長期的に必要な供給力を確保するという観点からは、高効率の新規電源建設を促す仕組みとすべきであると考えます。

 最後になります。四点目です。

 連系線の利用ルールについてですが、公正な競争環境のもとで送電線を利用するという観点から、現行の先着優先ルールを見直し、間接オークションに移行することに賛成いたします。

 最後に、四ページ目をごらんください。本日のまとめとして、三点意見を述べさせていただきます。

 まず一点目、原子力の廃炉費用や損害賠償費用の過去分についてでございます。

 今回新たに需要家に負担を求めることになったもので、国による広報活動などを通じて需要家に丁寧に説明していただき、需要家の理解を得ることが重要だと考えます。

 次に、二点目です。

 託送料金の仕組みで、既に、電源開発促進税並びに使用済み燃料再処理費用、いわゆるバックエンド費用が回収されています。今回、それらに加えて、通常炉の廃炉費用や損害賠償費用の過去分が追加されるため、今後、容易にこのような仕組みが追加されることのないよう、託送料金による回収について、今後の考え方を明確に整理する必要があると考えます。

 最後になります。

 今回の電力システム改革では、さらなる競争活性化のためとして、ベースロード市場の創設や連系線利用ルールの見直しと、公的課題への対応のためとして、容量メカニズムの導入、非化石市場の創設、さらには、自由化のもとでの財務会計に関する措置等、広範な制度の見直しが行われています。

 競争が真に活性化するためには、各制度が個々に機能するだけではなく、総合的に機能することが重要であるとともに、監視機関が制度の導入後に適切なタイミングで評価し、継続的にモニタリング等を実施する役割を果たしていただくことを期待しています。

 私からのプレゼンは以上になります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

浮島委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木宏壽君。

高木(宏)委員 おはようございます。自由民主党の高木宏壽です。

 本日は、原賠機構法の改正に関して、東電の廣瀬社長を初め参考人の皆様には、御出席いただきましてありがとうございます。

 早速、質問に入らせていただきます。

 東日本大震災、そして、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故から六年が経過をいたしました。この間、東電を主体として、国による支援の枠組みとともに、除染あるいは地域住民等に対する損害賠償、汚染水対策、廃炉作業を進めてこられました。

 一方、この間、電力システム改革も進んでおります。昨年四月からは電力の小売完全自由化が開始をされました。東電を初めとする原子力事業者の事業環境、これまでの規制料金、総括原価制度から、自由な競争環境へと大きく変化しております。さらには、二〇二〇年には小売規制料金の原則撤廃、発送電の法的分離も控えております。また、先ほど来、参考人の皆様からもお話がありましたとおり、六年を経て、一Fをめぐる状況も変わってきております。

 こうした中、政府は、昨年九月に貫徹小委員会、そして十月には東電委員会を設けて、さまざまな検討を行ってまいりました。そして、十二月に中間取りまとめ、それから、東電改革提言が取りまとめられております。そして、これらの内容を踏まえて、政府の原子力災害対策本部において原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針、これが取りまとめられて閣議決定がなされ、今回の改正案、この基本方針に基づいて立案をされております。

 当初、原発事故に伴う費用として見込んでいた総額十一兆円、これが、昨年十二月、東電委員会で、従来の約二倍の二十一・五兆円に増加するという見通しが示されました。東電は、二十一・五兆円のうち、約七割に当たる十六兆円を負担しなければならないわけで、毎年、廃炉に三千億円、そして賠償に二千億円を確保する必要がございます。

 これまで廣瀬社長は、資金を確保して事故の責任を果たすと決算発表の席などで述べておられます。そのためには、いかに東電グループ全体の収益力、これを強化していくか、稼ぐ力を高めていくかというのが課題になると思います。

 先ほどの意見陳述でも経営改革の方向性について若干述べていただきましたけれども、収益力アップに向けて具体的にどう取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 まさに先生御指摘のように、いかにしっかり収益を上げていくかというのが、それも長期にわたって安定的に上げていくのかというのが大変大きな課題だと思っております。当然のことながら、売り上げを伸ばすか、あるいはコストダウンをするかということになってくると思います。

 まず、売り上げを伸ばす方につきましては、御存じのように、自由化をされております。また一方で、少子化等々もあって、全体的には、国内の電気の需要が高度成長期のように、ほっておいても伸びていくという状況にはないと思っております。したがって、電気であれば海外に出ていくというのは一つ大きな方向でしょうし、電気以外のもので売り上げを確保していく、上げていくということも大変重要なことになると思います。

 したがいまして、先ほど遠藤先生からも少しございましたけれども、折しも、今週から始まりましたガスの小売の自由化ということで、私ども、ガスは一番多く輸入している会社でございますので、当然、ガスを安く調達をしてお客様にガスをお届けするということで、ガスの売り上げというのも大変期待しているところでございます。

 また、今、電気の使用のデータというのは膨大なデータがあって、余りサービスには直接的にはまだまだ生かされていないところもございます。折しも、ビッグデータであるとかIoTであるとかというデジタライゼーションがまさに時代の流れでございますので、そうしたものを我々の事業にも取り込んで、新しいサービスをどんどんどんどん仕掛けていく。そのために、いろいろな知見をお持ちの会社さん等々とアライアンスを組んでいくという方向で、まずは売り上げを伸ばしていくというのが一つあると思います。

 一方で、今度はコストを下げていくというのも大変重要なところがございまして、この間、この六年にわたって大分私どももコストダウンをしてやってまいりましたけれども、ただ、まだまだやりようによっては余地があるというふうに思っております。

 今まで、少しずつですが、筋肉質の体質、コストのかからない体質になってまいりましたけれども、さらにもうちょっと伸ばしていって、調達の改革から含めて、いかに安く事業をやっていくかということで改善も進めてまいりますし、そこでそれなりの金額を生み出して、売り上げの増と費用の減ということで、しっかりとした安定的な収入を得ていきたいというふうに思っているところでございます。

高木(宏)委員 今、廣瀬参考人が若干触れられたんですけれども、私も、送配電事業についての保有資産それからデータ、これを有効活用して新しい価値を生み出していくというのが収益力アップの大きな鍵になると思います。

 先般、NHKニュースで、東電とゼンリンが提携してドローン向けの空の三次元地図づくりを進めるという報道を拝見させていただきました。電線網を空中の道路のように活用するドローンハイウェイ構想ということで、私もドローン議連というのに参加をしているわけですけれども、利活用を進める上ですばらしい構想だと思います。

 もし付言することがあれば。

廣瀬参考人 もとより、ゼンリンさんと組ませていただいたのは、それを使ってさまざまな地図情報、位置情報等々をまた地図にいち早く反映していくという、そもそものわかりやすい取り組みがございますけれども、今先生御指摘いただいたドローンハイウエーというのは、これは想像にかたくないんですが、あのようなものが好き勝手に飛べば、当然ぶつかったり。一方通行、対面通行であったりというルールが間違いなく必要になってきます。

 そうしたときに、近くの小さな面的なドローンの飛行は見える範囲での話になるかもしれませんけれども、長距離でドローンを飛ばす必要があるような場合には、やはり、一定の道があって、ハイウエーがあって、そこによってまずは長距離を進み、ある一定の地点まで行き、その先には小さな面的なところでさまざまな作業を行う、そうしたシステムが必要になってくるだろうというふうに私どもは考えました。

 そうした場合には、一番わかりやすいのが、送電線という既にある設備の上をある一定程度長距離移動して、その先でまた面的な活動をするということになると思っていますので、そこは私どもの送電線を十分に使える。その送電線の鉄塔の一定のインターバルの中で、誘導をしたり管理をしたり交通の制御をしたりということが可能になると思っております。

 幸い、非常に大きくNHKさんにも取り上げていただきまして、大きな期待をしているところでございます。

高木(宏)委員 ありがとうございます。構想が実現することを期待しております。

 昨年十二月、東電委員会の見通しで、除染費用についても、従来の二・五兆円から四兆円に増加する見通しとなりました。この除染費用については、機構の保有する東電株式の売却により回収を図るということにしております。

 現在、機構が保有する株式は五四・六九%。資本を注入した一兆円を含めて約四兆円の売却益を得なければいけない。そのためには、東電の時価総額を約七・五兆円まで引き上げることが必要になってくるわけですが、東電の株価は昨日で約四百三十円ということで、七・五兆円達成には少なくとも十倍近く上昇させることが必要になってくるわけであります。

 今後、東電株式にかかわる株価の上昇を図っていくためには、先ほど廣瀬社長が述べられた経営改革の断行とともに、市場の評価を得るために、株主への配当、これを復活させることが必要になってくると思います。

 一方で、廃炉、賠償等の費用に充てるため年間五千億円の資金確保が必要であり、どのように市場からの評価を得て株価の上昇を図ろうとしているのか。配当に対する考え方を含めて、株式売却益四兆円相当の実現に向けた考え方を具体的にお伺いしたいと思います。

廣瀬参考人 先生御指摘いただいたように、今、国、原子力損害賠償支援機構ですけれども、機構が東京電力の株は三十三・三億株を持っていらっしゃいます。そのときに、三百円でお買いになって一兆円の資本注入をされたので、割り算をして三十三・三億株ということでございます。

 したがって、その元本の一兆円プラス四兆円の廃炉費用を賄うためには、合計五兆円で売却をするということになりますので、計算上は、千五百円に株価を上げますとそうした計算が成り立ちます。したがって、今四百幾つということでございますので、これはなかなか簡単なことではない。

 一方で、企業価値という計算上の価値を達成するためには、先生がおっしゃったように七・五兆円というものが出てまいりますので、それに向けてどういうふうにするかということですが、一方で、株価というのはいろいろな要素で決まりますので、投資家さんから、東京電力はなかなかおもしろそうだ、しっかりこの後成長するのではないかという、ある意味期待も含めて、そうしたものも当然大きく作用すると思っておりますので、まさにドローンハイウエーもそうですけれども、さまざま新しいことに取り組んで、従来の基盤についてはしっかり安定をして、しっかりとした収益力をもたらして、そこで毎年毎年のしっかりとした収益は出していかなければいけないと思っています。

 それだけでなくて、それに加えて、さまざま新しい取り組みをさまざま新しいパートナーの皆さんたちとやっていくということで、当然これは投資家さんの御意向なので私が勝手に絵を描くわけにはまいりませんけれども、ただ、そうしたことで、さまざまな大きな可能性や期待をいただいて、そうしたことを通じて株価を上げていくということは本当に必要だというふうに思っております。海外への進出もその一つだというふうに思っています。

高木(宏)委員 本改正案のポイントは、廃炉等積立金制度の創設であります。

 これまでは、東京電力が責任を持って廃炉を実施していくということで、二兆円に及ぶ巨額な廃炉費用を東電ホールディングスの内部留保として管理運用を行ってきたわけですが、今回、廃炉費用の見通しとして、総額八兆円と大きく金額が膨れ上がって、かつ、廃炉完了まで三、四十年かかるという中、長期間にわたる廃炉の資金需要に対応して、着実に廃炉が実施できるよう積立金制度が創設されたものと考えるわけですが、東電として、事故処理の責任を果たす上で、積立金制度創設の意義をどう考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。

廣瀬参考人 まさに、廃炉におきましては、今後まだまだ長い道のりがかかりますし、これからまさに一番難しいところに入っていくということで、なかなか総額を今ぴったり当てるというのは大変難しいというふうに思います。この八兆円という東電委員会でお示しいただいたのも、有識者の方々の、ある意味一つの試算というふうに伺っております。

 したがって、正確に今の時点で幾らかかるのだ、いつごろ幾らお金が出るのだというのをしっかり予測するというのは難しいところでございますが、だからこそ、今回の積立金のような形で、ある一定額をしっかり毎年毎年積み立てていき、事業者としては、ある意味、予見性をしっかり高めていく。したがって、事業計画等々、利益計画等々も立てやすくなるということを大きく期待しておりますので、私どもにとりまして大変重要な法律の改正であるというふうに考えておるところでございます。

高木(宏)委員 電気事業連合会の勝野会長にお伺いしたいと思います。

 今回の法改正の背景には、電力システム改革に伴って原子力事業者の事業環境が大きく変化したことがございます。

 二〇一三年四月に電力システム改革に関する改革方針というものが閣議決定された以降、広域系統運用機関の設立、小売業参入の全面自由化、さらには、二〇二〇年には発送電事業の垂直一貫体制も改められようとしております。総括原価制度といった旧来の枠組みから自由競争環境へ事業環境が大きく変化するわけで、各電力事業者においては、一層の経営合理化、効率化、コスト削減が求められていると思います。

 そこで、電力システム改革の進展に伴って、原子力事業者の事業環境はどう変化し、どう対応していかなければならないのか、御所見を伺いたいと思います。

勝野参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生から御指摘ありましたように、電力システム改革の中で、全面自由化という形で、私ども、これまで、規制料金の中で総括原価方式という形で、必要なものはコストダウンしつつ、お客様に御負担いただけるという制度でありましたけれども、そういう制度はなくなったということで、特に原子力の事業につきましては、超長期にわたる事業でありますし、巨額な資金を長期にわたって回収していく、これは廃炉も含めてでございますけれども、そういった事業をしっかりと進めていく上では、やはり、予見性を持った事業環境が整備できるというのが大事であるということを申し上げてまいりました。

 システム改革の進展とあわせて、そういった環境の御整備を議論いただくようにお願いしてきたところでありまして、結果としましては、まずは廃炉につきましては、廃炉した時点で残存資産に対する一括債務というのを、ある部分、分割して負担できるとか、そういった廃炉措置会計というのを導入していただきました。

 それからやはり、原子力の依存度が低下していく中で、今度、再処理の方の仕組みもしっかりと回っていく必要があるということで、再処理支援機構法を成立していただいて、拠出金方式ということで、再処理事業もしっかりと必要な資金をその都度出していくという制度ができ上がってきたと思っています。

 あと、もう一つお願いしているのは、やはり原子力損害賠償制度につきましてでございます。

 これは先ほど遠藤参考人からもございましたように、今まさに国の審議会で議論していただいているところでございますけれども、基本的には私どもは、まず、被災された方に当然迅速で適切な損害賠償という仕組みと、やはり原子力事業を担っていく上では、ある部分、予見性を持った事業運営をしたいということで、無限責任から有限責任ということを申し上げてきましたけれども、まだ今議論されているところでありまして、有限責任というのは非常に現時点では難しいということで、どちらかというと賠償措置額を上げていくという方向で今議論されておりますので、しっかり議論を注視していきたいと思っています。

 そういった形で、さまざまな予見性を持った事業環境をつくっていただくということがまず原子力事業を進めていく上で大事なことかなと考えております。

 以上でございます。

高木(宏)委員 次に、遠藤参考人にお伺いをしたいと思います。

 遠藤参考人は東電委員会の委員も務められているということで、資料も読ませていただきました。原発事故の賠償については、支援機構の枠組みは緊急的なもので、本格化する電力自由化にも留意した普遍的制度としての再構築が必要と主張をされております。

 今回の法改正の背景、今申し上げましたように、電力システム改革の進展があるわけですが、一連の電力システム改革というのは、原子力損害賠償制度にも大きな影響を及ぼすと思います。平成二十五年度から廃炉会計制度それから原子力発電施設解体引当金制度が改正されてきておりますが、原子力行政に関連した電力システム自由化に伴う対応については、電力システム改革の進展の後を追うような対応がなされているようにも感じるわけですけれども、電力システム改革に対応した原子力行政のあり方についてどう考えるのか、お聞かせいただきたいと思います。

遠藤参考人 お答え申し上げます。

 やはり原子力損害賠償の基本的な方針といいますのは、まずは被害者の保護と、もう一つは健全な原子力事業の発達というものがうたわれております。それが二つの柱になっておりますが、自由化の進展の中でシステム改革が進捗する上におきまして、その原子力の健全な発達というところがなかなか、事業の予見性が失われていくということによりまして、厳しい状況になってきているということが現実になっております。

 ですので、電力システム改革の意義自体は大変に大きなものがあるというふうには考えておりますが、それが、実際の事業運営について非常に不安や不信感といった社会の側面と、あとは、財務とか財政とか、そういったような原子力事業の運営の支障にならないような制度であらなくてはならない。

 そのためには、諸外国の制度を見ておりますと、事後的に、自由化が進展した後に、事業者に対してある種の制度整備を後追いでしていくというようなことも実際になされているところでございます。

 そのあたりはどこまで行うべきかどうか。それは非常に、先生方の議論も踏まえながら、また、社会とのコミュニケーションも図りながら、原子力事業の信頼性と安定性を高めていくということが必要になってくるのではないかなというふうに思います。

高木(宏)委員 ありがとうございました。

 次に、武田参考人にお伺いをしたいと思います。

 武田参考人は貫徹小委員会のオブザーバーも務められているということで、今回の中間取りまとめで、競争力強化の方策の一つとして、原子力発電にかかわるものとして、ベースロード電源市場の創設が提案されております。

 この点については東電改革提言においても触れられておりまして、新電力に対して一般負担金の過去分の一部について負担を求めることに鑑みて、新規参入者にも容易にアクセスできるベースロード電源市場を整備するものとされております。

 武田参考人におかれましては、ベースロード電源市場の創設には大変期待をされているということですが、ベースロード電源市場に提供された電力についての発電方式は何なのかといった課題も幾つかございます。

 そこで、このベースロード電源市場の具体的な制度設計に向けて、課題やどうあるべきなのかということについて御所見をお聞かせいただきたいと思います。

武田参考人 ベースロード電源について、新規参入者、新電力としてどのように考えているかということですが、先ほどの陳述の中でも説明させていただきましたけれども、ベースロード電源そのものは、石炭火力にしろ水力にしろ、それから原子力にしろ、これから新電力が新規に持つというのはなかなか難しい電源です。

 そういう電源を持たないことによって、ベースロード的なお客様、あるいはベースロードを踏まえて、さらにそれに新鋭の石炭火力を組み合わせてビジネスをしようというふうに考えますと大変大きな障害になるということで、今回、ベースロード電源市場というのを整備して、そういう新しい事業スキームのもとにいろいろな需要家の選択肢に貢献できるという意味で、大変期待しております。

 ただ、そこにおかれましては、やはり発表の中でも申し上げましたが、現在ベースロード電源市場を所有している事業者が非常に限られておりますので、市場を仮につくったとしても、供給する側が非常に限られているということで、供給する量、価格については今後の制度設計において一定の工夫なりが必要ではないかと考えております。

 以上です。

高木(宏)委員 岸本参考人にもお聞きしたかったんですけれども、時間が参りましたので終わりたいと思います。

 廃炉作業、本当に長期にわたる作業となりますけれども、円滑に、確実に実施されることを希望して、質問を終わります。

浮島委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、御多用の中、国会までお出ましいただきまして、心から御礼を申し上げます。

 また、先ほどは大変有意義な御意見の御開陳をいただきまして、重ねて御礼を申し上げます。

 私は、発災からちょうど一カ月後、余震の中で、党の企業再建支援チームの座長を仰せつかりましたので、福島の郡山商工会議所に行きまして、全壊状態のビルの一階で話を聞きました。

 次に余震があればここも崩れると思いますと言われながら、そのときに最初に言われましたのは、東京電力福島第一原子力発電所という、ここから福島の二文字を取ってほしいんだ、福島という名前がなくても十分東京電力とわかるではないか、まるで福島が事故を起こしたように思われている。福島の私たちが使っている電力は東北電力の電力なんです、第一原発は首都圏に電力を送るためのものなんです、そのために福島はいわば犠牲になっているようなものだという、実に率直な、しかし、怒りを込めたお話をそのとき受けとめました。

 私も、東京の比例区選出の議員でございますので、福島の復興のために、もうどんなに時間がかかっても福島の方たちと一緒に働いていこう、寄り添って恩返しをしなかったらもうこれは人間ではない、そういう思いを強く抱きまして、その後も、党の福島復興加速化会議の副議長として、当時は毎週、また二週間に一回、今は二カ月に一回ぐらいになってしまいましたが、通い続けているという状況でございます。

 したがいまして、今回の廃炉に向けてのこのような機構法の改正につきましては、当然のことながら、我が国が世界に類を見ない過酷事故に対してどのように安全にそして着実に遂行していくのか、そこが問われていると思っております。

 したがいまして、こうした原発政策については、さまざま党によってお考えは異論があるところでございますけれども、ただ、今ある第一原発をどのようにしていくのか、ここについては、やはり与野党を超えて力を合わせて、知恵を絞って進めていかなければいけない、そのように私は思っている一人でございます。

 今回のこの機構法の改正につきましては、廃炉の確実な実施を確保することを目的としておりまして、福島の復興再生を加速するためにも重要な改正であると思っております。

 やはり焦点は、まず一つは、新々総特の実現可能性はどうなのかということ。それから、消費者に対する説明をどのようにし、どのように御理解をいただくかということ。また、そうしたエネルギー政策も含めて今後どのように進めていくのか。最後の三つ目につきましては、これは、事業者、そしてまた国民、また国におきましても、どのように考えていくのかという総合的な今後の展望が問われている、このように考えております。

 ただいまも既にお話がありましたので、できるだけ重ならないようにしてまいりたいと思っておりますが、まず、東電の経営改革、これが具体的にどのように行われるのか。

 今、廣瀬参考人からはお話を承りました。まず一つ、廃炉、賠償についての年間目標五千億円規模の資金の確保、そしてまた二つ目には、中長期的に企業価値を抜本的に高めることにより、賠償機構の保有する東電株式の売却益として四兆円を確保していく、こういうことでございますが、具体的にどのように実行されるのか、これは先ほどお伺いをいたしました。

 ここは、私は、もう一つ、遠藤参考人がどのようにお考えになっていらっしゃるのか、どうすることが東電にとっていいとお考えなのか、御意見を求めたいと思います。

遠藤参考人 お答え申し上げます。

 私も、東電委員会のメンバーとして、この間、昨年の秋から議論を重ねさせていただいております。

 これから機構の運営委員会の方と東京電力の方と話し合いが重ねられて、最終的に新々総特というものができ上がるわけですけれども、私どもは、前回の東電委員会の方で、その骨子について伺いました。

 それは、私どもが東電委員会の提言としてまとめましたものと大体同じような骨子でございまして、そこまで具体的に我々の提言を踏まえて骨子の中に盛り込んでいただけたということにおきましては、廣瀬社長率いる東京電力の中で、そういう改革の方向に一緒になって向かっていこうという、会社の体制が一丸となってでき上がったというふうに理解をしておりますので、非常にポジティブに受け取らせていただいております。

 改革の実現性につきましては、東電委員会の方で議論を重ねさせていただきましたが、私は、五千億円の捻出、これには不断の東京電力の努力というものが必要になるというふうには思いますが、もう一つ、時価総額を上げていくという局面での除染費用の捻出につきましても、やはり最初に御答弁申し上げましたように、いろいろな、配電の事業であるとか、もっと言えば、今、完全統合ができましたJERAとか、そういった、まだまだ経済事業として可能性があるものが非常にあるということです。

 これを、既存の電力事業の中でのコンバイン、結合ということにとどめてしまえば、それこそ、今需要の目減りが指摘されている世の中で非常にネガティブに捉えがちなんですけれども、いろいろな会社を巻き込んでいく、いろいろな業態を巻き込んでいく、しかも市場を世界にとっていくことにおいては、まだまだ成長の余地があるというふうに思っておりますので、これは、また今後の東電の新経営体制の中で議論が進められて、具体的な計画に落ちていくものと私どもは期待をしております。

高木(美)委員 今、いろいろな業態を巻き込んで、電力産業にとどまらず幅広く、先ほどのドローンもそういう一つかと思っております。

 東電株価、昨日約四百三十円、私も拝見をいたしました。今、機構で三百円で株を所有しており、三十三・三億株ということでございますので、要するに、ダイナミックに成長しているそういういわゆるベンチャーであれば、恐らくこの株価も、最終的には千五十円ぐらいまで引き上げていかなければという、これはたしか遠藤参考人の、読ませていただいた資料の中にありましたけれども、やはりここまで引き上げるということになりますと、電力自由化という競争激化の中で、その中で企業価値を上げていくのは、もう至難のわざであると思っております。

 我が党もさまざまなそういう専門家がおりまして、率直に聞きましたところ、今の株価、約四百三十円を倍にすることだって本当に困難だという、こういう声もあります。そういう声に対して廣瀬参考人はどのようにお考えでしょうか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの御質問の少し繰り返しになってしまいますけれども、確かに、株価は今四百三十円ぐらい。それを、計算上では、先ほど申しましたが、千五百円に上げるとちょうど四兆円の売却益が生まれるということでございますので、そうしたものに向けて企業価値を上げて、投資家の皆さんからそうした評価をいただくためにいろいろなことをやっていかなければいけないというふうに思っております。

 これは繰り返しになりますけれども、株価は市場で決まってまいりますので、こうやってこうやると必ずこうなるんですというのはなかなか難しいところでありますけれども、先ほど来お話し申し上げておりますように、東京電力の株価というのは、事故前で二千数百円あって、バブルのころは本当に八千円、一万円というときがございましたので、そうしたことももちろん夢ではないとは思っておりますが、まずは電気事業をしっかりやっていくということでベースを固めていくということは、やはり、投資家の皆さんに安心材料ということで大事だと思っています。

 ただ、それだけでは、おっしゃったように、ベンチャー企業のようには伸びてまいりませんので、当然、新たなことを、さまざまな可能性を模索していく、そうした取り組みを絶えず続けていくということで御理解いただき、評価をいただくということが大事だと思っています。

 幸い、東京という極めて大きなマーケットを我々は持っております。我々は、電気を通じて各戸に伺っていろいろなお話をさせていただけるというかなり大きなメリットを持っているのも事実でございますので、そうした我々が持っている資産といいますかリソースを目いっぱい使って、それをもとにまたさまざまな、私どもだけでは考えられないさまざまなビジネスのアイデア等々を他の事業者さんからもいただいて、そうしたことでいろいろな取り組みをしていくということが本当に必要不可欠だと思っております。

 今ここで、こうやってこうやってと言うことはなかなか難しゅうございますけれども、そうした方向で絶えず、絶え間なく、伸びていくという可能性を追求し、それを投資家の皆さんに御評価いただけるよう頑張ってまいりたいと思います。

高木(美)委員 次に、情報公開についてお伺いをしたいと思います。

 今、廣瀬参考人からも、確かに努力はしていく、しかしながら、やはり株価というのは不安定なものであると。だからこそ、こうした福島第一原発の廃炉、また、東京電力の経営状況には一定の不確実性が伴うということから、やはり廃炉等積立金制度の円滑な実施に当たりましては、国も、それから支援機構も、また東京電力も、この三者がそれぞれ情報公開の透明性を高めて、適宜説明責任を果たしていくということが重要ではないかと思います。

 すなわち、廃炉費用の試算の妥当性、積立金の決定過程、具体的な金額の妥当性、積立金の納入状況、運用状況などについて、常に外部からの厳しいチェック機能が重要かと思います。

 そのためには、需要家等に対する情報公開と説明責任を果たすことが必要かと思いますが、この点につきまして、これは廣瀬参考人とそれから勝野参考人、お伺いしていいでしょうか。

廣瀬参考人 もとより、私どもの事業について情報公開をしっかりしていくということは、これまでにも変わらず、今後も引き続きしっかり続けていかなければいけないというふうに思っております。当然、機構と今後の総合特別事業計画を一緒につくり、そして経営評価をいただきというプロセスをずっとこれからも続けていくことになるんだと思います。

 一方で、先生今御指摘のように、消費者に対する、特に託送料金から幾ばくかを回収するということについての広報活動というんでしょうか、そうしたことについては、いわゆる貫徹小委でも議論されているところでございますので、今後しっかりそうしたものを踏まえてやらせていただきたいと思っていますが、私どもは、何より、皆さんの御負担に甘えることなく、しっかりまずは資金を確保して、透明性を高めて事業をやっていきたいというふうに思っています。

勝野参考人 お答えさせていただきます。

 私ども、やはり電気事業を営む上では、さまざまな設備を地域の皆様の御協力を得てつくらせていただいて、発電から送配電、販売という事業を営んでおります。そういった意味では、あらゆる事業分野において地域の皆様との信頼関係が不可欠でございまして、やはり、その大前提となるのが情報公開だと思っています。

 これまでも私ども、規制料金というか総括原価の中で、お客様に説明が足りなかったとか、それから、いわゆる需給という面でも、専門的過ぎてなかなかお客様に説明できなかったということ、やはりそういった問題が震災以降如実に出てまいりましたので、各事業者がさまざまな形でお客様に情報公開をしているところだと思っております。

 そういった常時の情報公開も非常に大事でありますけれども、やはり、何かトラブルなり災害が起こったときにも、その都度情報を共有していくということ、これができれば安全につながると思っていますので、そういった面からも、積極的に、タイミングよく情報発信していきたいと思っております。

 以上、お答えいたしました。

高木(美)委員 今、勝野参考人からお話しありましたさまざまなトラブル、それはないことはない話でございまして、やはりそこは東京電力におかれましても、これから柏崎刈羽、恐らく、それが稼働すれば大変安定的に五千億円を確保できるという話かと思いますが、いずれにしてもそれには信頼が一番必要でございますので、その点の情報公開、本当に微細なことも含めて、努力をお願いしたいと思います。

 その意味では、やはり会社の風土をもう少し見直していただいて、報告しやすい、そういうふうにもう少し、何というんでしょうか、ピラミッド形というところから転換をしていただく必要もあるのではないかということを懸念しております。よろしくお願いいたします。

 そこで、消費者への配慮につきまして少しお伺いしたいと思います。

 当然のことながら、託送料金、ここを値上げしていくのかどうなのか。そしてまた、負担が過大にならないように、負担水準の透明性を高めることも重要でございまして、こういうことに対して具体的にどのようにされるのか。

 一番、消費者の方たちから、家庭の負担はどのくらいになるのかという、そこの数字がまだ全く見えない。それはまだ最終的に詰まっていないので見えないということですが、ざっくりどのような数字を描いていらっしゃるのか、なかなか言いづらいとは思いますが、言える範囲で御説明いただければと思います。

浮島委員長 どちらの参考人に。

高木(美)委員 廣瀬参考人に、託送料金を上乗せしていくという、特に東京電力につきましては、廃炉資金には送配電事業の合理化分も含まれていくわけですので、他領域に比べてどうしても東京電力エリアの託送料金が高どまりするという懸念もあります。そうしたことも含めまして、御意見をお願いいたします。

廣瀬参考人 現在御検討いただいている制度の仕組みの変更の中で、そうしたお話を承っております。

 私どもとしましては、先ほど来出ております、年間五千億規模の資金をしっかり確保していくために、全社一丸となって、あらゆるところからそうした資金を生み出していくという必要がございますので、送配電部門からも、何とかコストダウンを通じて福島の廃炉のお金を出していこうということをやっていかなければいけないと思っています。

 したがって、当然、大幅なコストダウンを通じて、お客様に、託送料金等々を値上げするようなことなく、新たに負担をお願いするようなことなく、しっかりやってまいって、その分を廃炉の方に使わせていただくということと考えております。

 もちろん、もとよりその部分については託送料金の原価の中で出してまいりますので、他の電気事業者さんとの託送料金の比較もしっかり考慮しながら、しっかりとしたお金を積んで、毎年積立金の方に拠出していきたいというふうに思っています。

高木(美)委員 今後三十年、もう少し長いかもしれません。昨年夏にヨーロッパ、さまざま、廃炉等、視察を経済産業委員会でさせていただきましたが、多くの方から言われましたのは、急がないでください、急げばやはりそこで作業する方たちの安全にかかわってきます、むしろ、減衰期をよく計算しながら、そこで適切に対応すべきだということを忠告したい、むしろ、着実に、そして時間をかけてよく考えてという、このことを考えてくださいという言葉を多くいただきました。

 そうしたことを考えますと、先ほど来これは勝野参考人からも、また岸本参考人からも御指摘があったことですが、当然これから長期にわたるわけで、三基を廃炉にするという世界に類を見ない事業でもあります。汚染水対策、燃料デブリの取り出しなど広範かつ前例のない技術的課題がありまして、これらの解決には、廃炉作業を進めるための体制や環境整備、また国内外の英知を結集した研究開発、また現場作業を担う人材の確保、育成などが必要であり、国を挙げて取り組むべき重要なテーマだと考えております。

 もう少し、こうしたことにつきまして具体的な提案等ありましたら、承りたいと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 まさに、先生御指摘の点は極めて大事なところだと思っております。

 冒頭の陳述でも述べさせていただきましたけれども、やはり、これからかなり放射線の高いレベルのところでの作業がどうしても入ります。したがいまして、被曝というのは徹底して避けていかなければいけないところでありますので、そのためにも、ロボットの開発という、実際のデブリの取り出しの一歩手前の段階でのまだまだステージがございますので、そうしたところにもしっかり時間をかけてやって、とにかく作業員の方々に安全に作業していただくこと、そのためにも、しっかりとした防護体制なりロボットの開発なりをした上で、本当に万全の注意を払ってやっていきますし、そうしたことによって、むしろ急がば回れ的に、しっかりとした、着実な廃炉作業というのも進むということも考えられると思います。

 いずれ、世界の英知を結集していただいて、これからも、廃炉支援機構あるいはIRID等々のところ、また他の電力会社さん、それから世界のこうした技術に知見をお持ちのところ、本当に皆さんに助けていただきながら進めてまいりたいというふうに思っています。

高木(美)委員 では勝野参考人と岸本参考人、一言ずつお願いいたします。

勝野参考人 私からもお答えさせていただきます。

 ただいま廣瀬参考人からもございましたように、各電力の者が参加しておりますIRIDと呼ばれる国際廃炉研究機構、そちらの方の研究を通じて、やはりこれは福島の廃炉の技術開発につながるものと思っていますし、それぞれ各社も、これは通常廃炉ですけれども、廃炉の炉を持っておりますので、それに向けて各社が取り組んでいるさまざまな技術開発、これは中部電力の立場になりますけれども、ミュー粒子と言われる放射線で透視をする技術が、これも福島のデブリにも使えるんじゃないかとか、さまざま各社が取り組んでいることも、英知を集めて御協力できればと思っています。

 それからやはり、汚染水対策も含めて、これは、やる人の人材確保と教育というのも非常に大事でありますので、そういった面でもしっかりと支援してまいりたいと思っております。

 以上、お答えしました。

岸本参考人 岸本でございます。

 先ほど高木先生御指摘ございましたように、労働安全の問題は、電力総連の立場からいたしましても、人の命と健康を守るという基本的スタンス、一番重要なポイントであるというふうに思ってございますので、具体的には、個別個社労使の中で労働安全向上に向けた取り組みが進められていくものというふうに思っていますし、私ども連合会といたしましても、そうした推移を見ながら、適切に関係箇所の方に提言をしながら、仲間の安全を守ってまいりたいというふうに思います。

 以上でございます。

高木(美)委員 最後に武田参考人に申し上げます。

 ドイツのグライフスバルト、ここは、東西ドイツ統合のときに、ロシアバージョンでは安全基準に満たないということで原発は廃炉にしているわけですが、そこに変電所がありまして、そこから実はドイツ全域に電力を供給する送電網を持っております。これは福島第一原発の近くにもありました。

 ドイツは、そこから風力とかいわゆる新電力をどんどん送っている、こういう状況もありまして、恐らく今経産省の方でも、六百万キロワットぐらい使えるけれども、まずは五十万キロワットぐらいから始めたいという希望を考えているようですが、当然、周波数調整能力とかさまざまなこともあるとは思いますが、こうしたことを活用して、ぜひまた福島を、先ほどのロボット等を含むイノベーション・コースト、また、新しいエネルギーの拠点、そこまで私どもはむしろ転換して持っていきたいと思っております。

 そのことについて最後に武田参考人、一言お願いいたします。

武田参考人 武田です。御質問に対して答えさせていただきます。

 連系線といいまして、東北電力管内と例えば東京電力管内を結ぶ線について、もしそれが、当初、原子力の発電の電気を流すために設置されたんだけれども、状況が変わって、それがあいてきたと。その活用として、いろいろな意味での再生可能エネルギーをきちんと活用していこうじゃないかというのは、いいアイデアではないかと思います。

 今、連系線利用ルールをきちんと詰めておりますので、きちんと公平に、利用したい者が使えるルールを整備しつつ、事業を計画する者がそういうあいた連系線をしっかりと使える、そういう仕組みになることを期待していますし、私ども事業者としても、そういう事業性がきちんと成り立つのであれば、参加させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

高木(美)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

浮島委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民進党の衆議院議員、近藤洋介でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、貴重なお時間そして貴重な意見陳述、本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。

 福島の震災から丸六年が経過をいたしまして、とりわけ、電気事業者の皆様そして働く労働組合の皆様におかれては、電力の安定供給という電力事業の本旨にのっとって事業を進められていること、また、震災からの復興に向けて努力をされていることに、心からまずもって敬意を表したい、このように思います。

 この間、我々もかかわってきたわけでありますけれども、電力システム改革という大変大きな改革が進められたわけであります。これはこれとして、私も旧民主党政権下でこの計画を立ち上げ、また、安倍政権において進められてきた。これはこれで必要だったと思っております。

 ただ、同時に、福島の原発事故からの対処という、これまた非常に重要な課題に取り組まなければいけない。とりわけ原子力事業については、この課題にも立ち向かわなければいけない。

 考えてみますと、未曽有の大震災との対処と電力システム改革という、あえて言うと、二正面を同時にしていなければいけないという大変難しい課題に取り組まれてきたということは、これは言葉では語り尽くせない大変な御苦労があったのだろう、こう推察をいたします。

 あえて申し上げますと、私は、これは個人的な思いでありますけれども、自戒を込めて申し上げると、このシステム改革が同時進行で本当によかったのだろうかなという気が、正直申し上げて感じております。まずは原子力をめぐる対応に注力をして、そしてその後、システム改革でもよかったのではないかなという気が、正直、個人的には思うのです。

 と申しますと、ちょっと例えて言えば、火事で燃え盛る中で新しい家の設計図をつくるということ、建てるということは、これは本当に大変なことでありまして、資源エネルギー庁は両方を、両建てを進めてきたわけでありますけれども、実際の担い手である電力事業者にとってみると、これは相当困難をきわめることを強いてしまった。

 あえて言うと、福島の事故を起こしたのは東電である、東電はけしからぬ、それを起こした大電力事業者は巨大であるゆえにけしからぬ、この巨大な電力会社を解体することが二度と原発事故を起こさないことなんだという、当時そうした空気もございましたから、この電力解体というのが、あえて言うと、システム改革が、原発事故の二度と起こさない免罪符にもなったのではないか、そういう時代の空気もあったのではないかという、やや私は自戒を込めて、少し当事者としても感じているわけであります。

 そういう中で事業者として取り組まれてきた、特に廣瀬参考人、勝野参考人におかれては、また、働く労働組合のトップでもあられる岸本参考人も、大変な御苦労があったのではないか、こういうふうに思うわけであります。こうした前提も踏まえてお伺いしていきたいと思います。

 さて、今回は廃炉についてのお話でありますけれども、福島第一原発の廃炉を念頭にした廃炉等積立制度の創設による今回の機構法改正であります。この一連の措置においてまずお伺いしたいのですが、東電の廣瀬参考人と電事連の勝野参考人にお伺いしたいんですけれども、果たして国の役割というのは、責任というのは、一連の措置において十分に果たされたと考えているかということをお伺いしたいと思うのであります。

 と申しますのも、先ほど、遠藤参考人も意見陳述をされておられましたけれども、長期にわたる一Fの廃炉事業、しかも、八兆円という廃炉費用の試算が出されておりますが、少なくとも私は、この八兆円で済むとは考えておりません。いろいろなお考え方はあると思いますが、八兆円で済むとは到底考えられないわけであります。今後膨れ上がる可能性は極めて大きい。この技術的なハードルも非常に高いわけであります。

 加えて言うと、これが、少なくとも東京電力について利益を生む事業ではないわけであります。利益を生む事業であれば、これは幾らかけてもいいわけでありますが、利益を生まない事業、しかも、技術的なハードルが高い事業で、長期にわたる事業を民間会社が担うということは、これは民間事業会社の責任範囲を超えているのではないかとこう私は考えるわけでありますが、現時点でのこのスキームで私は国の役割というのは十分に果たされていると到底思えないのですが、廣瀬参考人、そして電気事業連合会の勝野参考人はどのように受けとめているか、お答えいただきたい。

廣瀬参考人 お答えいたします。

 私どもは事故を起こした事業者でございますので、もちろん、そうした役割というか、そうした責任をしっかり果たさなければいけないと思っておりますので、私どもからなかなか、もっとどうのこうのと言うことはない、お話しする立場にはないと思っていますが、それでも、国は五年前に一兆円の資本を入れて、今や絶対的な、圧倒的な筆頭株主で、その株主としての御責任も果たしながら、私どもの事業をしっかり後ろから支えていただいているというふうに理解しておりますし、今般の制度の改革、見直し等についても、先ほど来るる申し上げておりますけれども、そうした形でこれからの廃炉作業、本当にまだこれからどういうふうになっていくのかというのはなかなかしっかり把握するのは難しいところでございますけれども、そうした作業について予見性を少しでも担保しながら、続けていくというための制度等々をつくっていただいているというふうに理解しているところでございます。

勝野参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの意見陳述の中にも申し上げましたとおり、やはり福島第一原子力発電所の廃炉というのは、本当に世界に例を見ない、非常に困難な事業だと思っています。特に、技術開発というのもこれから課題山積であると思っています。

 そうした中で、八兆円で済むかどうかというのも、なかなか私どもの立場としても予見しにくいところでありますけれども、まずは今回、三、四十年にわたって八兆円という大規模な必要資金をしっかりと東電以外の第三者の機関が集めて管理するという仕組み自体ができたことというのは、非常に有効であるのではないかと考えております。

 その上で、技術開発につきましては、私どもを含めて、IRIDと呼ばれる国際廃炉研究機関とタッグを組みましてしっかりと協力してまいりたいと思っていますし、電気事業者といたしましては、まずは、先ほどの御質問と重なりますけれども、廃炉そして汚染水の処理という、そこの働く人たちをやはりしっかりと業界を挙げて支援していくということも大切だと思っていますので、そういった役割を果たしていきたい。

 その中におきましては、やはり国、政府の指導で、私ども事業者、そして各産業界、オールジャパンの体制で進めていけるよう、国としても支援を引き続きしていただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 廣瀬参考人また勝野参考人におかれては、特に廣瀬参考人におかれては、これはぎりぎりそうしか言いようがないというのはよくわかるわけでございますが、ぜひ、こちらに政府の関係者もいるから、こちらの方は見ないで、こちらの方だけ見て御答弁をいただきたい、こう思うんですけれども。

 遠藤参考人にお伺いしたいと思います。学識経験者として、良心に従ってお答えいただきたい、こう思うんです。

 まず、これは常識で考えていただきたいんです。利益を生まない事業を三十年、四十年も民間事業会社がやるということ、これはやはり予見可能性はないわけです。この時点で予見ができない事業を抱えるということが、果たして、事業会社としてもち得るのかということなんです。

 はっきり言ってこれは、株主の責任が問われる。株主は、黙っているというより、それは国が株主ですからぎりぎり黙っているわけですが、しかし、東京電力で働いている人の立場に立ってみると、東電社員の立場に立てば、とてもそれはモチベーションは維持できないと私は考える。もっと言うと、これをきちんとやり遂げるという意味においても、私は、この予見可能性は極めて疑問なわけであります。

 そういう観点からいっても、有識者として、廃炉事業をこのまま東京電力が担うということをいかが考えるかということが第一点。

 第二点。今後の廃炉ということを考えても、先ほど意見陳述をしていただきましたけれども、事前にある程度過酷事故についてのスキームを決めていくことがやはり重要であるというふうにまさにおっしゃっていただきました。これは、今回、東京電力で過酷事故が起きてしまったけれども、今後のことを考えても、やはり事故があった場合には、一定程度切り離して措置をしていくんだという枠組みをつくる必要があるのではないか、こう考えるわけであります。

 そのことを含めても、やはり今後のスキームはできていないわけであって、そのこともあわせた上で、今の状態というのは極めて中途半端であり、他の民間事業者にとってみても、極めて事業安定性を欠く状況に他の電力会社も追い込まれているのではないかと考えますが、いかがですか。

遠藤参考人 お答え申し上げます。

 まず、一点目の国の責任につきましてですが、東電委員会の方でも議論が重ねられまして、今、国が、東京電力、支援機構を通じてですけれども、株式の過半を持っております。本来であれば、この三月末にそれを見直す、どちらかといえば国は撤退していく方向性が確認されていたと思うのですが、国は引き続きその過半の株を握り続けるということで、ある意味、福島への責任を全うしようという責任の示し方を一定程度したものというふうに考えております。こちらは、二〇一九年に見直しをするということで東電委員会の方で決定をされました。

 個人的な意見としましては、もちろん東電委員会の方でも発言をさせていただきましたが、廃炉の期間というものは非常に長くかかるものですから、それにある程度国が資本を入れるという形で継続をして見ていき続けるということは、私は大事だというふうに思っておりますが、一応制度上は、二〇一九年にそれも含めて全体として見直そうということでございますので、そのときの議論でまた検討をしなくてはならないというふうに思っております。

 二点目の、今後のスキーム、国の責任のあり方についてのスキームでございますが、原子力損害賠償制度の専門部会でも、現在のこの福島の事故のケースと今後のケースをある程度分けようということで議論をしています。そうではないと、今起こっている時点では、もう被害者があって、そこに賠償していかなくてはならないという状況にあります。廃炉もしていかなくちゃならないという状況です。でも、事故が今後また不幸にも、起こってはならないんですが、起こるかもしれないという前提で制度を整えていかなくてはならないという問題はまた別にあると思います。

 これについては私は、事前に事業者の役割と国の役割というものをきちんと事故の前に明確にしておく必要があるということで、今、専門部会の方で議論を重ねているところでございます。

 これはいろいろな意見がございまして、私と違う意見の先生方もたくさんいらっしゃるということもお伝えしておきます。

 以上でございます。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 これは大変大事な問題なので、委員会の質疑でもやはり詰めていかなきゃいかぬと思うわけであります。

 少なくとも、三・一一以降の民主党政権下でとにかく緊急避難的にこの制度をつくったわけですけれども、やはり原賠制度をしっかりつくるということの宿題を、この政権下でちゃんと宿題を返していないわけです。ですから、このことなくして電力システム改革を進めるということについて、私は極めて疑問を感ずるということだけは申し上げなきゃいかぬと思うわけであります。

 さて、岸本会長にお伺いしたいわけでありますが、先ほどからも質問が出ておりますけれども、長期にわたる廃炉措置について、やはり現場のモチベーションが極めて重要なわけであります。一Fの廃炉に当たり、労働組合の役割をどのように考えていらっしゃるのか。

 あともう一つ。これは原子力全体なわけでありますけれども、震災後六年が経過して、運転を再開したプラントが数基にとどまっている現状の中で、原子力にかかわる、現場にかかわる方々が、人材確保も厳しい状況が続いていると考えるわけでありますが、人材の育成、また、その継承等の課題について労働組合の立場としてどのようにお考えなのか、お答えいただけますでしょうか。

岸本参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生からお話しございました一点目の、今後のモチベーションを含めた、一Fの今後の運用に対します労働組合の役割ということでございますが、汚染水の対応を含めまして、今後とも長期にわたる廃止措置の取り組みを行っていくということでございますので、我々としましては、冒頭申し上げましたが、放射線管理を含む安全衛生の確保はもとより、人材、技術の継承、発展などに向けた対応が必要であるというふうに思っています。

 働く者といたしましては、一歩ずつ前に向かって着実に実感といいますか、達成感が得られるようなものでなければならないというふうに思っていますし、今後長期にわたって現場で歯を食いしばって頑張っていく働く仲間に対しまして、温かく見守っていただける、そうした社会的な機運をおつくりいただくことも、御指摘ございましたモチベーションづくりには必要であるというふうに思いますので、あえてこの点、この場でお触れをさせていただきたいと思います。

 それから二点目の件でございますが、原子力事業は、建設から、営業運転を行って、運転終了の廃止措置を完遂をするまでが事業の一環であるわけでございまして、そのことは、事故前も事故後も変わるものではございません。

 その意味におきましては、F一の廃炉を着実に進めていくための人材確保、技術の維持向上は、私どもにとっても極めて重要であるというふうに考えます。

 今後三十年から四十年と言われている廃炉に向けましては、いわば、新入社員が入社をし退職をするまでの長期にわたる取り組みとなるわけでございますので、通常炉におきましても相当程度の時間を要する事業でございます。

 一方、現状におきましては、将来の原子力事業へのビジョンが見えないことから、原子力を志す、そうした学生が減少をいたしているわけでありまして、将来の原子力事業を支える人材が枯渇していくのではないかという懸念をしてございます。衰退産業には人は集積をしないということでございますので、ぜひ当該産業に光を当て、動きを見せていくことが、今後の技術を高度化させていく上でも重要であるというふうに思ってございます。

 さらに、原子力発電所での運転、保守経験がない若年者が増加をいたしているわけでございまして、運転、保守にかかわる実務経験の積み重ねがなければ、今後の現場力の維持、継承は困難であるというふうに考えてございます。

 そうした点も含めまして、ぜひ政治の場で御配意を賜れればというふうに思います。

 以上です。

近藤(洋)委員 ありがとうございます。

 もう一点、今度、いわゆる過去分の不足分、託送料金の仕組みを利用して回収する点について、これは時間の関係もあるので、電事連の会長にぜひお伺いしたいと思うのですが、先ほど遠藤参考人の意見陳述にもありましたが、私も遠藤参考人の意見とほぼ同意見なのでありますけれども、やはりここは私は税の方がよかった、こう思うんです。その趣旨は、ほぼ遠藤参考人と同趣旨でございます。

 やはり、託送料金とすることは、私は、煎じ詰めれば、それは行政の責任の放棄ではないか、このように思うんです。そこは説明責任を電気事業者に押しつけているのではないかとすら感ずるわけです。託送料にすることによって、消費者の方に対する説明責任を電力事業者に押しつけている。また、かつ言えば、国民の立場から見ると不透明でもある。こういうことであります。

 その点について電力事業者としてどのように受けとめているのか、お答えいただけますでしょうか。(発言する者あり)

勝野参考人 お答えいたします。難しい質問です。

 まず、一般負担金の過去分という性格については、やはり何度も触れられておりましたように、本来、ただいまある損害賠償支援機構法というのが震災前にあれば、ある程度、額というのが積み上がっていたのではないかと思われるものを過去分と称して託送回収させていただく。そういった面では、私どもとしても、福島第一のような大きな事故リスクというのをやはり真正面から捉えずに、認識が不足していたなと反省はしております。

 したがいまして、そういった面も込めてこれから説明をしていかなきゃいけないと思っていますけれども、まず、本来備えておくべき賠償の不足分については、過去の形というと、やはり、いかにこれからの将来のお客様に公平に負担していただくかということがまず大きな課題だったと思っています。それが審議会では、託送料金ということで全ての需要家さんに、お客様に負担していただくということになったというふうに認識しております。

 結果として全てのお客様に負担していただくんですけれども、過去の原子力、ある時期、安価で安定した電源を享受した、受益と負担の兼ね合いからすると、エリアごとにその原子力の濃淡というのがありましたから、やはりそれを踏まえた形で回収していこうという考え方が公平であるとすると、エリアの託送料金というものが採用されたのではないかというふうに認識しております。

 したがいまして、そういったことを踏まえながら、まずはしっかりと、御負担いただくということを説明しなきゃいけませんし、やはりその中身というのもしっかりとお知らせできるような形で、当然国の方でも説明いただくと思いますけれども、私どもも説明を一緒にしていきたいと考えております。

近藤(洋)委員 託送料でやられるのであれば、やはり国会としても、きっちりそのことを説明を求めていくということが必要なんだろう、こう考えるわけであります。

 最後になります、時間ですので。東電の廣瀬参考人、そして勝野電事連会長にお伺いしたいんですが、先ほどから、廃炉の中核を担うIRIDの話が勝野参考人からございましたが、原発メーカーとして中核企業である東芝が、海外の原発事業の失敗から、債務超過、経営危機に陥っております。先行きは現時点で見通せない状況でありますけれども、福島第一原発の廃炉事業にとって、世耕大臣は先日の経済産業委員会で、なくてはならない重要な存在だと答弁をされました。東京電力としても同様の認識ですか。そして、東芝の経営危機をどのように受けとめていらっしゃいますか。

 また、既存の原発のメンテナンスも含めて、東芝の今後は日本の原子力発電にも大きな影響があると考えますが、電事連の勝野会長は今回の東芝の経営危機をどのように受けとめておられるか、最後にお答えいただけますでしょうか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 まさに今先生御指摘のように、東芝さんは、東京電力のみならずですけれども、電力会社とともに、これまでは、原子力だけでなく、送電線、あるいは配電線、あるいはスマートメーターに至るまで、本当に重要なパートナーとして事業活動を支えていただきましたし、たくさんのお仕事を私どもはお願いしてまいりました。

 今回の東芝さんの問題については私も大変憂慮しておりますけれども、今、東芝さんからお聞きしているところでは、アメリカでの原子力事業については撤退をするということだと聞いておりますが、国内の事業については、特に私どもと関係のある部分につきましては、しっかり今後とも継続して事業を営んでいかれるというふうにお聞きしておりますので、ぜひ私どもも引き続き、大変重要なパートナーとして、原子力以外、あらゆる部門での事業の遂行をお願いしたいですし、私どもも、今後もいろいろな仕事をお願いしていかなければいけないという大変重要なパートナーだと思っております。

勝野参考人 お答えさせていただきます。

 今、廣瀬参考人からございましたように、東芝さんという重電メーカーさんは、原子力に限らず、やはり、日本の電気事業を支えてきた中核のメーカーだというふうに認識しております。

 したがいまして、海外の原子力事業を見直していくということは私どもも伺っておりますし、そのような中で経営危機を乗り切って、再稼働というものと、それからメンテナンス、福島の廃炉も含めて、しっかりと社会的責任は果たしていただけるものというふうに感じております。

 引き続き、私どもはしっかりと重要なベースロード電源である原子力を支えていく以上、やはり原子力産業というのは、東芝のようなプラントメーカーを初め、材料メーカー、そして地場のさまざまな産業、企業が集まった形で、建設から運転、保守という事業を営んでおります。したがいまして、やはりそういった観点からも、中核であります東芝さん、プラントメーカーには、重なりますけれども、しっかりと役割を引き続き果たしていっていただきたいというふうに思っております。

 以上、お答えしました。

近藤(洋)委員 時間ですので終わります。

浮島委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 参考人の皆様、きょうはありがとうございます。

 我が党は、賠償や廃炉の費用を託送料金に上乗せするということは、汚染者負担の原則からいって正しくない、発送電分離や消費者の選択権を保証しようという電力システム改革の目的に反するものだというふうに思っております。

 過去分の託送料金のつけかえ、今回が初めてではなくて、二〇〇〇年の最終処分法、二〇〇五年の使用済み核燃料再処理積立金法に続いてのものになります。使用済み核燃料再処理コストの未回収分を送電料の利用料を通じて新電力も払う仕組みを検討した二〇〇四年当時、新電力の方々は、過去にさかのぼって費用を回収するのはこれで最後にしてほしいとその当時も訴えておられました。

 まず武田参考人にお聞きしたいんですが、その前にちょっと二つ紹介したいことがあります。

 一つは、四月三日の東京新聞に、共同通信社の新電力四十四社に対するアンケートの結果が出ておりました。それによりますと、福島の事故の賠償費の一部を新電力も負担する政府方針に、経営に悪影響となる、自由化の芽を摘むことになる、国民への説明が足りないなどと懸念や反発を六割の事業者が示し、影響なしと答えたの一社だけだった。四十四社中十八社が賠償費の負担はおかしいと答えたとあります。

 もう一つ紹介したいのは、一月二十七日の日本経済新聞、「新電力に創業前の請求書」「みなし未払い金「苦しい理屈」」という記事があります。昨年末にかけて制度を話し合った貫徹小委員会も満場一致ではなかったとして日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の大石美奈子さんが最後まで反対したことや、容認した委員も、異例な形で二・四兆円もの上乗せをする自覚があるのか、国民にどう理解してもらうのかと指摘していたことを紹介しています。座長の山内一橋大学教授は日経新聞のインタビューに答えて、率直に言ってかなり苦しい理屈だと述べておられます。

 そこで武田参考人にお聞きします。

 新電力の皆さんは、今回の政府の方針についてどのような受けとめをされているか。お聞きになっていることがあれば御紹介いただきたい。もう一つは、今回、残念ながら消費者団体の方をお招きできなかったんですけれども、ぜひ、消費者の皆さんの声、お聞きになっていることがありましたら御紹介ください。

武田参考人 お答えします。

 最初の方にも述べさせていただきましたけれども、おっしゃるとおり、原子力というか発電のコストを託送料金で回収するということなので、やはり慎重にやるべきだと考えておりますが、委員会の中では、税の仕組みとかいろいろな仕組みを考えた中でやむなしということで、今回、そういう手段で進めようかという結論に至っていると認識しています。

 したがって、需要家に対して、やはり内容も含めまして、そういう手段をとったことに対しましても、きちんと今後も丁寧に説明する必要があるだろうと考えております。

 お客さんはどう考えているんだということですけれども、私ども、新聞紙上等で見たり、それから、先日パブリックコメントの内容が出てきましたので、その内容も拝見させていただきますけれども、やはりなかなか理解しにくいと考えているお客さんが多いようで、そういうお客さんに対して、やはり、先ほど述べましたように、きちんと丁寧に説明していくことが大事かと思っています。

 以上です。

真島委員 次に、武田参考人と廣瀬参考人と勝野参考人にお聞きしたいと思います。

 この新しい方針も、皆さん共通して、丁寧な説明が必要だ、需要家の理解が必要だということを強調されているわけなんですが、そもそも現在の電気料金も、例えば電源開発促進税、特定放射性廃棄物処分費過去分、使用済み核燃料再処理費過去分、原子力発電施設解体費、原賠機構一般負担金、こういうものが上乗せされていますけれども、多くの国民は、何のためにこれが取られて、どう使われているのか、また、取られていることさえ知らない方もたくさんいらっしゃると思うんです。

 例えばドイツのエーオンは、A4サイズで六ページの明細書で、電源構成以外に、補助金や原発の使用済み核燃料の発生量まで、二十項目の電気料金の明細書、もしくはその同封書類と消費者への広告物、そしてウエブサイトにも掲載している。

 日本でも、電力システム改革の大事な目的である消費者の選択の自由を保証していくためには、電力事業者自身が、ドイツのような電気料金の見える化、明細書公表のために努力する必要があると思うんですが、この点はいかがでしょうか。

武田参考人 お答えさせていただきます。

 委員会の中でまず私もそう思いますけれども、やはりきちんと電気料金の、しかも託送スキームを使って回収する費用に対して、それが今の電気料金の中にどのように含まれて、どのぐらい含まれているのか、それがなぜ含まれているのかということに対しては、きちんとその説明を果たすべきだと思います。

 単に領収書の中に書くという手段もありますし、昨今ですと、いろいろな技術を使ってウエブで公開するなどいろいろな手段がありますので、そういう手段を用いてきちんとお客様に納得していただくということが大事じゃないかと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 まさに御指摘のとおり、どうやってしっかり御説明をしていくかということだと思います。

 検針票というのも一つ方法がございますが、御存じのように紙面も限られておりますし、今、武田社長がお話しになったように、今どきですので、ウエブ等々も使って、適切な媒体を使って、コストアップにはならないようにしなければいけませんので、考えていきたいというふうに思います。

勝野参考人 お答え申し上げます。

 前二人の参考人と重なりますけれども、やはり、料金をお知らせするのにはあの検針票ですが、今はウエブで料金表をお知らせする形もとっておりますので、そして、しっかりホームページというものが各社ございますので、いろいろな形でお客様にやはりしっかりと御説明できるもの、それから、限られた紙面であれば限られた紙面の中でもわかりやすく、各社これから創意工夫して対応してまいることといたしたいと思っております。

真島委員 次に、廣瀬参考人に二つお伺いします。

 福島県商工会連合会の避難区域外の商工事業者へのアンケート調査、これによりますと、四割弱で今も売り上げ、営業利益が減り、七割で震災前の営業利益が回復していません。そして、五割で売り上げが減っているのに、賠償を未請求。その理由の多くが、自分の事業に賠償は出ないと思っているからだという答えを出しています。

 廣瀬参考人は繰り返し、損害がある限り賠償していくんだという決意を語られておりますが、賠償されるべき被害は、今認定されている以外にもまだまだ残されているんだという認識はおありでしょうか。

 もう一つ、先日、今村復興大臣が記者会見で激高したことを謝罪いたしましたが、その際の自主避難者は自己責任という発言については撤回しませんでした。私、許しがたい発言だと思って、本当に涙が出るほど悔しいんですが、廣瀬参考人はまさか、避難指示が解除されても帰れないのは自己責任だ、自主避難者は自己責任だと思っていないと思うんですが、この点を、認識をお聞かせください。

廣瀬参考人 まず一つ目の商工会の御意見については、私どもも、轡田会長を初め、皆さんからお聞きしておるところでございます。国会でも同じ質問を共産党の先生から承っておりますけれども、当然のことながら、そうした未請求の方々というのがもしいらっしゃるのであれば、さまざまな形を通じて働きかけをするということだと思っておりますし、実際、商工会の皆様にもそうした場をおかりするとか、商工会の皆さんもみずからおやりになっていただいて大変ありがたいことだと思っておりますが、そうしたことを通じて未請求者を、ちょっと言葉が正しくないかもしれませんけれども、見つけていくという作業は今後ともやらせていただきたいと思います。

 それで、それ以外にまだ我々が認知していない損害があるのかということ、これは当然我々にはわからないわけですけれども、そうしたことも踏まえて、今申し上げたような、請求をされていらっしゃらないという方がおるのであれば、そうした方々も含めて個々の事情をよくお聞きし、私どもの事故と相当因果関係のある損害があるのかどうかということについては、しっかり把握していきたいと思います。

 また、自主的避難の方々については、私どもも中間指針にのっとってしっかりとした賠償を、私どもの責任を認め、賠償をさせていただいているところでございますので、引き続き、そうした御指摘にのっとって必要な措置はしていかなければいけないと思っています。

真島委員 勝野参考人に一つお伺いします。

 事故の賠償や廃炉の費用を託送料金で回収するという仕組みをつくろうという政府の方針なんですが、こういう仕組みをつくらなければ、東京電力だけではなくて、電力自由化のもとで原発事業者は生き残れない、そういうふうな認識なのでしょうか。そこの捉え方はどうでしょうか。

勝野参考人 お答え申し上げます。

 電力システム改革が進行し、自由化のもとでやはり原子力事業を進めていく上で必要になるのは、先ほども申し上げましたけれども、民間事業が長期にわたる事業を担っているけれども、さまざまな原子力事業環境整備というものを、これは事業の予見性を持って運営できるような形で進めていただきたいという認識は持っております。

 その中で、今回の福島の事故につきましては、やはり、昨年末に十一・五兆円から二十二兆円と大きく拡大した中で、損害賠償に対しては、私ども、非発災事業者も含めた一般負担金と東電さんの特別負担金で資金を賄っていく中で、過去分という性格のものをお客様の公平性のもとで負担いただけるような形で、託送料金という形に制度が設計されたものと思っています。

 そして、中間貯蔵場、除染については、東電さんの企業価値を高めて株を売却していくということ、廃炉については、今回の機構法改正に基づいてしっかりと長期にわたる巨額な資金を管理、そして積み立てできるような仕組みになっていくという形で、これも、福島の責任に充てる費用が倍増したことを受けて、しっかり国としても制度措置をとりながら、東京電力がグループの総力を挙げてその責任を全うしていくという制度、あるいは政策のあらわれだというふうに感じておりますので、長期にわたった対応になりますけれども、しっかりと東京電力には責任を全うしていただきたいと感じております。

 以上でございます。

真島委員 次に、岸本参考人にお伺いします。

 原発を最前線で制御している労働者の皆さんが過労状態で作業しているようでは、事故を引き起こす大きなリスクになると思います。

 厚労省が二〇一三年十一月の労働基準局通達で原発再稼働業務も残業規制の適用除外に加えたことで、現場に異常な長時間労働が蔓延しているという問題を、日本共産党は昨年来、衆議院、参議院で追及してまいりました。今国会で塩崎厚労大臣がこの通達を三月末で廃止すると答弁をいたしまして、実行をされております。

 厚労省の過労死等の労災補償状況を見ますと、適用除外の対象業務で申請が非常に多い。厚労省も、過労状態による作業は注意力の低下に伴うヒューマンエラーを惹起しやすくなると言われ、良好な睡眠と休養を確保することが安全作業の必須条件だというふうに言っております。

 関西電力で高浜原発一、二号機の運転延長申請にかかわっていた四十歳の男性課長が、この安全対策の審査が合格になった当日に都内のホテルで自殺するという痛ましいことがありました。昨年六月の関電の労働組合の大会で、若狭・高浜支部の代議員が、震災以降、原子力部門では時間外労働が高どまりしていると発言しているのが、同労組の機関紙に載っているのを私も拝見したんですけれども、その後、関電が労基署から適正な労働時間の管理をするように是正勧告を受けまして、昨年の十二月までの二年間の勤務実態を調べた。

 そうしたら、何と、全従業員の半数以上に当たる一万二千人に合計で約十七億円の時間外賃金を払っていなかったということが明らかになったということで、これを受けて関電は、今回の調査を受けとめて、働き方改革、健全な経営に取り組みたいとしているんですけれども、この長時間労働の問題、現場でどうなっているのか。そして、働き方改革、皆さん方労働組合は頑張っていると思うんですけれども、どのように改善されていっているか、簡単に御紹介ください。

岸本参考人 お答え申し上げます。

 真島先生、御質問ありがとうございます。

 御指摘がございました。原子力を初めといたします電力職場の労働環境の状況という御質問だというふうに思います。

 まず、原子力職場につきましては、震災以降、先生御承知のとおり、安全規制なども変わった関係もございまして、新たな規制に向けた諸作業、諸準備、一部プラントも今は三基程度の稼働になってございますが、稼働に向けた諸準備等々もございまして、かなり原子力職場においては大変な状況の中で、時間外対応を含めて対応をいただいた、そして御苦労をいただいている状況にあったというふうに認識をいたしていますし、この御質問の前からいろいろなお話が出てございますが、電力自由化を初めといたしまして、さまざまな大きな変革期の中で我が産業で働く仲間、これはグループの仲間も含めてでございますが、頑張ってくれているわけでございます。

 今後、今先生御指摘ございましたように、国の方でも、働き方実現会議の中で一定の長時間労働是正に向けた方向性も指し示されたということも承知をいたしてございますので、電力職場、おのおの個々の労使の間で現状を改めて認識をしながら、長時間労働是正に向けた機運を高めるとともに、長時間労働が減少するような形での対応をもう既に個別労使の間でとっているというふうに私は認識をいたしているところでございます。

 先生の中で具体的にございました十七億とか、関電のお話もいただいたところでございますが、詳細は私は承知はいたしてございませんが、いずれにいたしましても、サービス残業等が発生しないような形で、我々は労働組合でございますので、組合の活動において個々の個別の組合員とともにそういう運動を働きかけてまいりましたし、これからも継続をしてまいりたいというふうに思ってございますし、さらに、個別労使の間で、長時間労働、さらには賃金未払いとか、そういうことがないように改めて徹底をし、対応してまいりたいというふうに思っています。

 以上でございます。

真島委員 最後に遠藤参考人にお聞きします。

 遠藤参考人は二〇一六年三月二十二日のエコノミスト誌で、「原発支援策が、電力自由化に逆行するかたちで、電力会社の保護政策となってしまえば、これまでどおり、電力自由化は新規参入者を呼び込む競争を生み出さず、本来の目的が骨抜きにされてしまう。」と述べられています。また、「原発は今後、公共性の色合いを強めていかざるを得ない。」さもなくば、「政府が目指す日本の原発維持はできない。」とも、最後の方のくくりのところで述べられているんですけれども、この点について、これは言いかえれば、電力自由化のもとで原発は競争電源としてはそのままでは生き残れない、政府の負担なしにはリプレースもできないし、事故の賠償も自力ではできないというふうな意味なんでしょうか。

遠藤参考人 お答え申し上げます。

 まず、原子力につきまして国のかかわり方ということになると思うんですが、原子力事業というのは、民間の事業として今ずっと継続をしてまいったわけでございますが、私としましては、だんだんと原子力事業そのものは公益性を高めていかなくてはならないというふうに思っています。

 それは、今制度として整えられようとしているベースロード電源市場、そういった中に公益電源としてその原子力が投入されて、そこから、市場から購入するという、いわゆる、原子力事業者がそれだけで事業を全うするというようなシステムとは少しずつその体制を変えようとしている中にあるというふうに思います。

 現実論としましては、全くの自由化の競争の中で原子力が今後生き続けていけるかどうかということについては私は疑問がございまして、それは、国のきちんとした手当てが、制度的な措置がとられるべきだというふうには思っております。

 それは別に日本だけの話ではなく、諸外国、原子力を保有している国の中で、自由化を断行しておきながらそういう制度措置をとっている国というのはあまた事例があるというふうに考えます。

 賠償につきましては、少し国が責任をというふうなことでございましたが、それは今回の東電の問題とまた別に、今後の措置としましては、やはり、国の責任の明確化というものはある程度しなくてはならない。それを逆に言えば、事業者側の責任の限度というものはあってしかるべきだという論を専門部会の方で私はずっと主張をしている立場にございます。

 でも、過酷事故の場合に限りでございますので、そこは一般事故との境というものが必要になると思いますが、事業者の資力を超えたものの賠償が発生した場合は、ある種の国の支援というものが必要になる。それは今の間接金融方式ではなく、もう少し踏み込んだ形でのやり方があるのかどうか、そういったような検討も今専門部会の方でしているところでございます。

真島委員 もう一つ、遠藤参考人にお聞きします。

 日本共産党は、原発再稼働そのものが民意に反しているからやめるべきだと思っているんですけれども、東電改革・一F問題委員会の提言では、東電改革の第二段階で、柏崎刈羽原発の再稼働が収益拡大の柱と位置づけられております。

 ところが、その東電改革委員会のずっと行われている最中、昨年の十月十六日に、同原発の再稼働に反対する米山知事が当選しました。

 議事録が公開されていないから、このことが委員会の中でどういう議論に、つまり、第二段階の収益確保の柱が揺らいだわけですよ。揺らぐ事態が起きた。このことについて委員会の中でどういう議論になったんでしょうか。

遠藤参考人 お答え申し上げます。

 東電改革の提言書にも記載をされておりますとおり、柏崎原発の再稼働というのは、東京電力の廃炉費用の大きな原資になっていくということで議論は集約されております。

 そのときに、もちろん再稼働というプロセスにつきましては、今の新規制基準のもとで原子力規制委員会の方が評価をするということになっております。規制委員会の方が新規制基準に適用しているというふうに満たされた場合は、地方公共団体との審議にまた入っていくわけですけれども、その審議の方は、別に東京電力の方が、積極的にそれは認めるべきであるとか、そういったようなことに踏み込んだわけではございません。ただ、そのような正当なプロセスの中で、柏崎原発が再稼働されていくことがいわゆる費用の捻出のところに大きく寄与する、そこの確認をした次第でございます。

 以上です。

真島委員 ちょっと時間がありますので、廣瀬参考人にもう一つお聞きします。

 事故の収束、廃炉作業で、危険手当をめぐって、いわゆる下請業者による中抜きの横行というのがこの間問題になってきました。

 三月三十日の日本経済新聞で、原発労働に詳しい縄田東大大学院教授が、東電が危険手当の金額を明示していないことは大問題で、事故後六年間もそうした状態が続いていることに驚く。東電は手当をつけていないのではないかと疑われても仕方がない。元請側にとっても好き勝手に手当を決めることができ、利益を得やすい都合のいい仕組みと言える。国費が投入されている東電には金額の開示義務がある。

 この記事でもそういう指摘がされているんですけれども、この点についてどう改善されますか。

廣瀬参考人 割り増しの手当につきましては、何度か私も国会で質問を受け、お答えしておりますけれども、私の理解では、私ども東京電力が、少なくとも契約相手である元請さんにこうした割り増し、それぞれ幾つもございますけれども、をお支払いするということははっきり明示をしております。

 また、それがしかるべき、渡るべき作業員の皆さんにちゃんと渡っているかどうかということもアンケートを通じてしっかりとした確認をして、もし、それに対して受けていないというようなお答えがあった場合には、そこをまたしっかり調査して、どこの会社のどういう作業をされている方なんだということを何度も何度も、この間三年ぐらいかかっていますでしょうか、やってきておりますので、今後ともしっかりそうしたフォローをして、私どもとしては、まさに渡るべきお金でありますので、先生がおっしゃるようにもし中抜きというようなことがあれば、全く本意でございませんので、しっかりそうしたことは、届くべき方々のところに届くよう努力してまいりたいと思います。

真島委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 本日は、お時間をいただきまして本当にありがとうございます。あともう少しなので、おつき合いください。

 といいながら、きょう、既に四人の委員の方から質問をさせていただきまして、もうほとんど、私が聞きたいなと思ったことを全て答えていただいたかなというふうに思っております。ですから、同じような話はなるべくしないようにしたいとは思っているんですけれども、重なるようなことがあれば御容赦いただければなと思います。

 そうはいいながら、今回のこの法案のポイントになるところは何かなと。きょう話を聞いていて思ったのは、やはり、東電さんがいかに企業価値を向上させながらこの計画を履行していくかということ、それに尽きるかなと思っているんです。その中にさまざまな要素がある。当然、託送料金に乗せて安定的にやっていこうというふうな話であったりとか、それの是非をどうするかという話もあります。それからもう一つは、電力自由化、これと相反する部分がないかどうか、本当にこれは現実性が高いかどうか。こういったところかなというふうに思って私は聞いていたんです。

 そこで、まずこれは武田参考人にお聞かせいただきたいんですけれども、そういう前提の中で、新電力として、やはり競争環境の中でシェアをとっていくということが、新電力側としても企業価値を高めていかなければいけないわけです。そういうふうにして考えたときに、もろもろの条件の中で、エネットの社長としてですけれども、発電それから販売電力のシェアを将来的に、例えば十年後、二十年後、三十年後でも結構です、どれぐらいのシェアを今までの東京電力管内でとっていこう、そういう目標というのは何かしらございますでしょうか。

武田参考人 お答えします。

 数値的な目標はまだ持っていません。

 今おっしゃったように、今回の制度改革の中で、新電力として一番、シェアを広げるというか、価格の面で寄与できる制度の中では、ベースロード市場の設計かと思いますけれども、いずれにしましても、今回、発表の中でも述べましたけれども、かなり広範な、ベースロード市場以外に、非化石の話とか連系線ルールとか、それから、ただいまいろいろ議論されています原子力の問題とかありまして、最終的にはそういうおのおののいろいろな課題がセットでお客様にきいてくるんだろうと思っています。

 そういう、個々には、新電力として、おっしゃるとおり、売り上げを拡大するためにいろいろな施策を期待していますけれども、それもやはりお客さんに選ばれるということが大前提になりますので、そういう意味で、今パッケージでいろいろ議論されている政策の一つ一つをきちんと実りあるものにしていくと同時に、全体的に、本当に、お客様の選択肢であるとか、あるいは料金の低減とか、そういうことに寄与する制度になるかどうか、しっかり今後とも見ていきたいと思っています。

木下委員 非常に優しく答えていただいたのかなと思うんです。普通であれば、投資家の顔を見ながら、それなりの、シェアはどれぐらいという目標を当然持たれていると私は思っております。

 そうはいいながら、電力に関してはやはりさまざまな問題があります。エネルギー基本計画にのっとった形で、どういう形でやっていくか。それから、当然、お客様にどれぐらい選ばれるかということで変わってくることは変わってくるでしょう。しかし、やはりそれなりのシェアというのは目標として恐らく当然持たれているだろうなと。

 これは、電事連会長の勝野会長からも同じような視点でちょっと聞かせていただきたいんです。

 それはなぜかといったら、やはり、電力自由化、これから先、これが本当に健全に発展していくというふうになったとき、電事連として、まずは電事連としてですけれども、どういうシェア割、これは特に東京電力さんの管内、もともと管内だったわけですけれども、そこをどういう配分でシェアが割られていったときに初めて電力の自由化というのが健全に発展したと言えるのか。

 これは、もう既に、この管内に、それこそ中部電力さんもそうですし、関西電力さんも発電設備を設けて電気を流していこうとされているわけですから、大体、そういう健全なものというのがどういうふうなものを指標にしているかというところについてお話しいただけますでしょうか。

勝野参考人 非常に難しい御質問にお答えさせていただきます。

 今回の電力のシステム改革の目的は、やはり、一つは安定供給、そしてもう一つが電気料金の最大限の抑制、そして三つ目が、お客様の選択肢あるいは事業者の事業機会の拡大という、この三つが柱になっております。

 したがいまして、それぞれ自由化の中で各事業者が切磋琢磨しながら、価格、品質、そしてサービスという形で、総合力でお客様に選んでいただくという努力をしていくことになっていると思います。その中で、例えば、東京電力さんのエリアの需要がどれぐらい変わればというようなシェアというのは、なかなか具体的なものは申しにくいと思っています。

 というのは、例えば、東京電力さんの新しいメニューを選択されたということも、やはりお客様がしっかりと選択肢を行使しているということになりますので、そういったものから見ていくと、どこにどれだけ供給者がかわったかというものも一つは大事な指標になるかと思いますけれども、それとあわせた形で、お客様がどうお選びになっているかという指標がやはり大事かなというふうに思っているのが一つ。

 それから、システム改革といたしましては、もう一つは、送配電部門については、それぞれのエリアの中の安定供給をしっかりやっていかなきゃいけないということでございますので、そこは各電力、ある部分、協調しながら、その中で運用面における合理性が発揮できるような形態をとりながら、したがって、送配電事業では協調しながら、発電、小売ではしっかりと競争して、お客様に選んでいただくという活動をしっかり続けていくのが電気事業者としての立場だと思っています。

 以上、お答え申し上げました。

木下委員 ありがとうございます。

 なかなかお答えしづらいところかな、立場的にも大変だなと思うんです。

 ここで廣瀬社長にも同じようなことを聞きたいんです。

 今はそれなりのシェアを持っていらっしゃいます。これから先、実際にどれぐらいは最低限、例えば十年後、二十年後、三十年後、発電、販売電力としてどれぐらいのシェアを確保していかなければ自分たちの企業価値は守れないと思っていらっしゃるか。

 それから、ちゃんとこの計画にのっとった形で、自分たちの企業を維持しながらこの計画を履行していくためには、どれぐらいのシェアをしっかりと確保していかなければならないと。それはどう考えられているか。

廣瀬参考人 今、勝野電事連会長がお答えになったように、なかなか、結果でどうこうということではないと思います。一旦自由化された以上、シェアというのは絶えず動いていくものでありますので、どこかの段階で思いどおりになっていらっしゃらない会社さんはなお頑張ってこられるでしょうから、なかなかそこで、クルージングになるというか、一定の安定した状態になるのかどうかすらも怪しいところであります。

 一方で、私どもは、先ほど来ずっとお話が出ておりますように、福島に係るさまざまなお金をしっかりと工面して確保していかなければいけない、そういうことも、加えて、単なる株式会社ということ以上にありますので、そこについてはもっとしっかり頑張らなければいけません。

 したがって、もちろん、シェアは高ければ高いほど恐らくいいんだと思います。割引して赤字で売っているということもあり得ますので、単なるシェアで全てが決まるとは思いませんけれども、最大限の利益を確保していく必要があります。

 ただ、一方で、先ほど来申し上げておりますように、今、私ども、電気だけで、ではこれからのすごい、何兆円というお金を稼いでいけるのかということで、電気だけの一本足打法でもいかぬかなというふうに考えております。

 折しも、ガスも自由化になりましたし、さまざま先ほど来出ている分野にも進出していかなければいけませんし、海外にも出ていかなければいけないと思っていますので、そういう意味では、必ずしも電気のシェアだけで全てが決まるということではないのではないかなというふうな気がしております。

木下委員 ありがとうございます。

 恐らくこういうお答えが皆さんから返ってくるだろうなというふうに思っていたんです。

 なぜこれを聞いたかというと、皆さん方が悪いんじゃないと思っているんです。ただ、政府が描いた電力システム改革は、今のお答えを聞いていたら、まだまだうまく機能しないということをあらわしているとしか思えないと思うんですよ。電力自由化をちゃんとやっていこう、システム改革をやっていこうと言いながら、これは電力だからこういう話になっている。でも、普通の市場であれば、ちゃんと株主に対しても、どれぐらいのシェアを目標としているか、これを言っていくのが普通の市場原理です。ただ、この領域は違うんだということがよくわかったと思うんです。

 政府が描いている電力システム改革、これはまだまだ、相当難しいんだなというふうに判断せざるを得ないんじゃないかなというふうに私は今率直に感じたんですけれども、今、遠藤参考人が聞いていらっしゃって、非常に厳しい感じで見ていらっしゃったので、ちょっとその辺も含めて御感想をいただきたいと思うんですけれども、お願いいたします。

遠藤参考人 電力システム改革の完成形がどのような形になるのかという、その数字的なものというのは私の方も持ち合わせていないのですが、一つ自由化の中で気をつけなくてはならないなというふうに思っている点は、完全に自由化をされた市場の中では、電力会社というのは、例えば、ピーク時の電源のマックスのところに合わせて設備投資をしなくなるということがございます。ですので、アメリカの事例なんかを見ても、急に停電が起きてしまうというようなことも起きてくるというのが自由化の負の側面であります。

 ですので、電力の場合、設備投資も長期的な時間を要するものですから、完全な自由化の市場が全て消費者にとってよい市場なのかというところについても疑問がある。

 ですので、その設備投資のあり方も含めて、自由化の成果というものを検証していかなくてはならないのかなというふうには思っております。

 以上です。

木下委員 ありがとうございます。

 発電自体がどういうふうなシェアでやられるか、安定的な電力をどう流していくかというところについては、ある程度エネルギー計画の中ではあると思っているんですね。

 ただ、今の話を総合的に聞いていても、そうなれば、逆に言うと、ここはすごく難しいです、政府として、ここまで言うと自由化ではないんですけれども、例えば、どの企業がどういう局面においてどれぐらいのシェアを持って、それで、最終的にはこれぐらいまでできたら自由化が成功したというふうな、そういうことまでデザインしていかなきゃいけないんじゃないかなというような感じにもちょっと聞こえてしまうんです。

 では、そうしたら、電力自由化はもともとどうかというと、当然そういう計画は全くないわけですよ。

 それを考えると、今回の法案は何を言っているかというと、実際にその計画自体がうまく履行できるかどうか。もともとこの六兆円というふうな数字自体も妥当なものなのかどうかという側面もあります。しかしながら、ある程度指標となる数字の中でこれを履行していかなきゃいけない、こういう状態にある中で、本当にこれが両立できるのかというところは、計画の妥当性を見る上では非常に難しい判断をしなければならない。今の話を聞いていると、その要素というのは、なかなか判断できるだけの要素になっていないのではないかなというふうに、ちょっとやはり感じてしまうんです。

 だからといって、前に進まないわけにはいかないわけです。だから、だからだと私は思っているんですけれども、非常に廣瀬社長には申しわけないことだと思うんですけれども、やはり、これは言葉で言うと、足かせというふうに言うとよくないのかもしれません、一つの義務として、ある程度の荷物をしょった形で、その上で企業価値を上げていかなければならない。

 ただ、これが、客観的に見ていても、きょうの話を聞いていても、実際に、今の東電さんの株価についても、逆に割高だというふうに評価されている投資家の方が非常に多い。これは将来にわたっても、こういう計画を出してきたとしても、その評価は変わることがないんです。

 先ほど廣瀬社長が言われていました。当然のことながら、電力というふうな事業エリアだけではなくて、ほかにも手を出していかなければならない。それから、海外にも伸ばしていかなければならない。実際にこれができる、そういうふうな状態にあるのかどうかというのも、これは判断のポイントだと私は思っております。

 ここも、非常に言葉苦しいところはあるんですけれども、今までのやり方、それから今までの体質、それから、きょうもお話を聞いていて、やはりそれぞれがシェアを明確に示せない、こういう状態の中で、特にそれを引っ張ってきた東電さん、そういうイノベーティブな感覚がこれから先、実際にちゃんと出てくるかどうか、企業としてそれだけの価値が出てくるかどうかというところがもう一つの判断ポイントなのかなというふうに私は思っております。ここは、もう聞く必要はないというふうに思っているんです。

 あともう一つ、ここは、一義的に、原発事故に対しては、事業者たる東電さんに責任がある。これは繰り返しになりますけれども、そのためにかかる費用については東電さんに負担をしてもらう、一義的には。

 ただ、これはもう一つ、言葉は悪いですけれども、ちょっと不謹慎かもしれませんけれども、生かさず殺さず、そして、そうはいいながら、企業はしっかりと発展してもらって、そして、ちゃんとした賠償をしてもらう、これを国が選択したんだというふうに私は思っております。ですから、今回の積み立てという計画が出てきている。

 逆に、そうはいいながら、そうじゃないところもあるので、これは廣瀬社長にちょっと端的な話を聞かせていただきたいんですけれども、今、別の委員会で一つ法案が出てきているんです。

 これは何かというと、福島復興再生特別措置法の一部改正。今、復興大臣がいろいろちょっと問題発言をしたかのように報道されていますけれども、今そこで審議されているところでは、帰還困難区域、この帰還困難区域の中に特定の地域を設けて、そこからもう一度復興の拠点にしていこうと。そこの部分については、普通であれば、一般の除染をするところの費用は東電さんが負担されるけれども、この特定区域については負担は国がするというふうな感じで書かれているんです。その審議を今しています。これは、今回のこっち側でやっている法案とはまたちょっと違った形になっている。

 さまざまな形で、そういう形で費用の負担を、責任を分けて考えていこうと。そうじゃなければ、全額、全部やっていくと、恐らく、私は、今の状態でも苦しいのに、東電さんがこれから先経営を成り立たせていくわけにはいかないと思っているから、それはそれで、こちらはそういう総合的な判断で、実際に国が負担していくのが妥当なのかどうなのかという判断をしていかなきゃいけない。

 ここで聞きたいんですけれども、この特定地域の除染を国が負担するということ、これは非常に東電さんとしては喜ばしいことだというふうには思うんですけれども、喜ばしいと言うとちょっと失礼なところかもしれませんけれども、これは妥当な判断だというふうに思っていらっしゃるか、本来であればそういったところも含めて、本来であればですよ、東電さんが負担するべきものだと思っていらっしゃるか。この辺を率直に聞かせていただきたいんです。

廣瀬参考人 そうした法案が今御審議いただいているというのは存じ上げておりますけれども、私どもは事業者でございますので、その法律のよしあしについて申し上げる立場にはございません。

 また、それ以外にも、厳密に言えば、交付国債というものを発行していただいて、ある意味、金利を免れてやっておりますので、今までも、そしてこれからも、皆さんに、国民に負担を全くさせていない、東京電力が全てを負っていると言うつもりもございませんので、そうした制度に甘えることなく、我々としては、我々ができることを懸命にやって、極力皆さんに御負担をかけないように、我々の責任でできる限りしっかりやっていきたいというふうに思っておるところでございます。

木下委員 ありがとうございます。そういうことだと思うんですよ。そういうことだというのは難しいんですけれども。

 ここで、実際、この国会で審議されるべきことというのは何かというと、私が思うに、どこまでの責任をどこが持ち、どこまでの責任をどこが持つのかということを明確化していく、今の状況の中でそれをどう判断していくか、これは是か、これが非かということだと思っているので、それについての是非をちゃんと論議していくべきだと思っております。

 そして、ちょっとそこで思うんですけれども、やはりそういう意味では、東電さんに、言っちゃいけないですけれども、死んでもらっちゃ困るんですよ。これから先、発展してもらわなければならない。だから、それなりの国としての最低限のサポートをしながら、これから先、発展していっていただかなければならない。

 これは、ともすれば、議論の中であるのは、東電さん、そんなところまでしないで、全部負担してもらえばいいじゃないかと言う人もいます。でも、そんなことをやったら実際に誰が被害をこうむるかというと、復興を待ち望んでいる被災者の人たちであったり全国民になるんだろうということをちょっとここで言わせていただきたかったので、そういう話をさせていただきました。

 最後、岸本参考人が一番いいかなと思うので質問させていただきたいんですけれども、今、そういう意味で、責任の分岐ということをいろいろしているんですけれども、いろいろな形で国から復興にかかわる補助金が出ています。今、例えば、福島第一で、遮水壁、凍土壁と言われているものであったり、多核種除去装置であったり、こういったものというのは全て補助金で賄われているんですね。ちょっと違う部分もありますけれども。

 そうやって考えたときに、私は、これは補助金という形ではなくて、これこそは国の資産でやるべきだというふうに思っているんです。なぜならば、これは国の資産でやらなければ、先ほど廣瀬社長も言われていましたけれども、やはり、海外に出ていくといったときに、廃炉というもの自体が、これは事業として成り立つかと私は思っているんです。これから先、衰退していくのは目に見えておりますから、世界で。

 そうなったときに、国の資産でやるということは、イコール、もう一つは、ただ単に資産としてやるのではなくて、チームもそういう形で編成していくべきだと思っているんです。いざ海外で何か問題が起こったときに、これもあえてもう聞きませんが、東電さんが今資産として持たれているからといって、東電さんがそのノウハウを持って海外に行って何かの助けをできるか、サポートができるかといったら、これはなかなか難しいと思うんです。

 だからこそ、まず資産を国有資産として、そしてチームもそういう形にしていく。そうすると、先ほど岸本参考人がおっしゃられていましたけれども、こういうエリア、事業に対して、勉強して、これから先、就職していこうというような人たち、こういう人たちを、ちゃんとそういう受け皿をやはりつくっていくべきだ、それが次の新たな産業になってくるんだというふうに私は思っているんですけれども、そういう観点で聞いていただいて、実際にそういうことを考えていくべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸本参考人 御質問ありがとうございます。

 若手育成をいかにしていくか、いろいろな手法がある、その点につきましては、先生御指摘をいただいた、幅広の視点で原子力にかかわる産業の発展、技術の向上につなげていかなければならない、その点では同感であります。

 その上で、資金繰り、補助金なのか国の資産なのか、さまざまないわゆる視点があろうというふうに思っていますが、いずれにいたしましても、我々働く者といたしましては、福島の復興、廃炉に向けて事業が前進をしていく、それに一番望ましい資金繰りと手法をお願いしたいということでございます。

 以上です。

木下委員 時間いっぱい使ってしまいました。申しわけございません。

 ありがとうございました。

浮島委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 本日は、参考人の皆様方には貴重な御意見をお述べいただき、心から、委員会を代表いたしまして感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


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