衆議院

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第13号 平成30年5月22日(火曜日)

会議録本文へ
平成三十年五月二十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 稲津  久君

   理事 城内  実君 理事 平  将明君

   理事 辻  清人君 理事 冨樫 博之君

   理事 松本 洋平君 理事 落合 貴之君

   理事 浅野  哲君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    石川 昭政君

      上野 宏史君    尾身 朝子君

      大見  正君    岡下 昌平君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      神田  裕君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    佐々木 紀君

      田畑  毅君    津島  淳君

      福山  守君    穂坂  泰君

      星野 剛士君    三原 朝彦君

      宮内 秀樹君    務台 俊介君

      八木 哲也君    中谷 一馬君

      松平 浩一君    宮川  伸君

      山崎  誠君    吉良 州司君

      斉木 武志君    山岡 達丸君

      田嶋  要君    笠井  亮君

      杉本 和巳君    菊田真紀子君

    …………………………………

   参考人

   (株式会社住環境計画研究所代表取締役会長)    中上 英俊君

   参考人

   (一般社団法人地域政策デザインオフィス代表理事) 田中信一郎君

   参考人

   (公益社団法人日本通信販売協会専務理事・事務局長)            万場  徹君

   参考人

   (流通経済大学流通情報学部教授)         矢野 裕児君

   参考人

   (認定特定非営利活動法人気候ネットワーク東京事務所長)          桃井 貴子君

   経済産業委員会専門員   佐野圭以子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     務台 俊介君

  佐々木 紀君     黄川田仁志君

  佐藤ゆかり君     津島  淳君

  星野 剛士君     宮内 秀樹君

  中谷 一馬君     宮川  伸君

  谷畑  孝君     杉本 和巳君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     佐々木 紀君

  津島  淳君     佐藤ゆかり君

  宮内 秀樹君     星野 剛士君

  務台 俊介君     福山  守君

  宮川  伸君     中谷 一馬君

  杉本 和巳君     谷畑  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     國場幸之助君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

稲津委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、株式会社住環境計画研究所代表取締役会長中上英俊君、一般社団法人地域政策デザインオフィス代表理事田中信一郎君、公益社団法人日本通信販売協会専務理事・事務局長万場徹君、流通経済大学流通情報学部教授矢野裕児君、認定特定非営利活動法人気候ネットワーク東京事務所長桃井貴子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず中上参考人にお願いいたします。

中上参考人 おはようございます。

 御紹介いただきました中上でございます。

 本日は、この参考人にお呼びいただきまして、お時間を頂戴しまして、ありがとうございます。

 それでは、お配りしてあります資料に基づきまして、十五分ほどお話をさせていただきたいと思います。

 まず、めくっていただきまして、これは、よく、必ず出てくる最初の図でございますけれども、我が国の最終エネルギー消費はいかに推移してきたかでございます。

 なぜか、一九七三年の第一次オイルショックから、相当昔から記載されておりまして、ここ十数年とは七三年では大分時代が違うんですけれども、オイルショックというのが一つのエポックメーキングな時代でございましたので、そこを起点にしている図でございます。

 ここにもありますように、この間、約五十年弱ぐらいでGDPは二・六倍になったけれども、実質の最終エネルギー消費は一・二倍にとどまっている。ここが、世界でも非常にエネルギー寡消費、少なくて経済成長を遂げたということで、我が国が高く評価されている一因だろうと思います。部門によって若干違うわけでございますが、近年、二〇〇〇年前後をピークにしまして、ほとんどのところで需要が横ばいないし減少に転ずる。

 その下の図を見ていただきますと、また少し書き込んであるわけでありますが、私は、これは総合エネ調の資料でつくった図でございますけれども、しからば、我々がいろいろ議論してきた、いろいろな省エネ法であるとかエコポイントであるとか、そういう施策とはどういうふうなつながりになるんだろうかというのをプロットしてみたわけであります。

 これは、二〇〇五年に長期需給見通しが出されたときの図をもとにしてありまして、二〇三〇年で、一番上にあります濃いブルーの線がありますが、これが二〇三〇年には四百二十五、すなわち四億二千五百万キロリッターまでいくだろうと。ただ、二〇二一年にはピークを打って下がり始めるけれども、それでもそのぐらいいくだろうと見通しが出ていたわけであります。

 起点は、四一三と書いてある二〇〇〇年のちょっと前の代であると四億一千三百万キロリッター。いずれにしましても、やや増加するだろうと見ていたんですが、これではなかなか厳しいので、できるだけ省エネをやって、二〇〇五年省エネ進展ケースで三七七と書いてございます、三億七千七百万キロリッター。

 おおむね五千万キロリッターぐらい省エネしようというのが目標だったわけでありますが、実際はどう推移してきたかというのがやや薄いブルーでございまして、二〇〇〇年前後から横ばいないし減少に転じることが顕著に出ております。

 ただ、最も下げているのが、これは御案内のとおり、ここに書いてありますが、リーマン・ショックなんですね。リーマン・ショックでエネルギー消費が下がったからこれがハッピーかというと、これは決してハッピーではなくて、角を矯めて牛を殺すようなものでございますから、こういうことになっちゃ困るわけでありまして、リーマン・ショックが回復したらまたもとへ戻るだろうなと思っていましたら、案の定、少し戻りかかったんですが、そこに東日本大震災がぶつかりまして、また新たに減少傾向に転じたということで、非常に下向きのカーブが急角度になっていますが、近年ないぐらいの減少傾向が続いている。

 薄い緑で示してありますが、今現在我々が持っております最新の省エネを徹底したケースの二〇三〇年の見通しでございまして、三億二千六百万キロリッターになっておりますが、この線を下回って推移しているんですけれども、このままいくかどうかというのは、これは必ずしも楽観はできない。いかにも、ここ数年極めて異常な事態が同時並行的に発生しておりますので、それに基づいていろんな形で省エネが進んだことは確かでございますが、このままいくかどうかは予断を許さないというようなことで、新たな省エネ施策についての検討が省エネ小委員会で進められてきたところでございます。

 次、めくっていただきまして、いずれにしましても、その目標を達成するためには三五%の改善をしなきゃいけない。これは、第一次、第二次オイルショックのときと同じぐらいでございまして、このときは相当なショックだったわけですね、原油価格が十倍、二十倍に高騰するという異常な事態でございましたから。そういう事態と同じようなレベルで省エネを図らなきゃいけないということは、相変わらずこれから先、我々は覚悟しておかなきゃいけない。

 五千万キロリッターという数字ですが、これは専門家でもなかなかぴんとこない数字でございますけれども、今現在、日本じゅうの家庭で使っているエネルギーとほぼ同じでございます。したがって、家庭で全部エネルギーをやめてしまえば減るわけでありますが、そんなことはできないわけでありまして、割合にすると一三%であります。一三%は非常にでかい数字でありまして、これはまた言い方をかえると、一週間に一回、全員が何もしないでじっとしている、こういう数字であります。

 そう聞くと非常に大変だということがおわかりいただけると思いますが、ただ、二〇三〇年までは若干時間がございます。時間をかけてやれば、年一%ずつ、あらゆる分野で努力していただければこの数値はクリアできるわけでありますが、一%なら現実的にできるんじゃないかなと思っていただけるのではないか。いきなり一三%削減しようというのは、これはなかなか大変でございます。しかし、毎年全ての分野で一%、これはやはり大変なことでございます。

 次に、中間的な状況でございますが、四ページ目でございますけれども、現時点では、約九百万キロリッター弱の省エネルギーが達成できておる。進捗率は、そこに書いてあります一七・四%となっておりますが、これまで、五千万キロリッターを目指しておりますと、約二割近くに届かなきゃいけないのに、若干ちょっとこれでも下回っているという状況ですから、いかに厳しい対応をこれから迫られるかということだと思います。

 赤枠で囲っておきましたが、最も効果的だったのは、やはりLEDですね。LEDがこれほど急速に普及した国は、世界じゅうで日本しかございません。明らかにこれは三・一一が大きな後押し、よくも悪くも後押しになったわけでございますけれども、果たしてこれに匹敵するような省エネ技術がこれから出てくるかどうか。つくっていかなきゃいけないということでございます。

 次に、よく言われますのは、五枚目でございますけれども、産業・業務部門の原単位の改善。すなわち、GDPを稼ぎ出すために投入するエネルギーの消費量というのは、この両分野で滞っていると言われているわけでありますけれども、ここをどう評価するか。

 産業構造も徐々に変化してきておりますし、特に、一次産業、二次産業から三次産業に大きく産業構造はシフトしているわけでありますから、三次産業を支える業務部門は、ある意味ではふえてもおかしくないんですが、逆に横ばいであれば、私はそれなりに省エネが同時的に進んでいるのではないかというふうに楽観的に解釈しておりますが、それでもこの面も下げていかなきゃいけない。

 産業部門も、核心的なコア技術についてはかなり省エネが進んだと聞いておりますが、まだまだ、精査してみますと、周辺的に、コア技術ではないもの、いわゆるサポート、支援的な技術については、もう少し深掘りをしていくと省エネがあるかもしれないというふうな調査もちらほら見えるようになってきましたので、これから先は、核心的なコア技術だけではなくてサポート技術についても、もっと深掘りをしていきたいというふうに考えております。

 次に、六ページ目でございます。

 今回、省エネ法の改正で非常に大きなポイントになっているところでございますが、後ほど、流通の御専門の先生方もお見えでございますから詳しく御説明があると思いますが、いわゆるEコマースと言われる電子商取引、これに派生しまして大量の小口輸送が発生しておりまして、ここの運輸部門での増加をいかようにしてこれまでの省エネ法の中に取り込んでいくかということが、大きな議論になったわけであります。

 真ん中の図にございますように、宅配便の取扱実績は右肩上がり、非常に急角度で伸びておりまして、これを、今までは荷主に対して規制をかけていたわけでありますが、必ずしもEコマースの場合は荷主にならないわけですね。荷主さんは、各、Eコマースに出店している業者さんが荷主になるわけであります。

 その荷主さんのスケールは、省エネ法の基準からするとみんな網から漏れるといいますか、小さい企業の方が多いわけでありますから、なかなか規制できない。しかし、それをまとめていらっしゃる業界がおありになるので、御協力願えないかということで、いろんな議論をさせていただいて、今回、そういう方々の御協力も得られることになりまして、法律の中に取り込むことができたということでございます。

 もう一点は、荷主というと、どうしても発荷主の方に目が行きがちですが、受け荷主、受ける方も、よくかんばん方式と言われて、何時に品物を届けてください、そういう方式がございますが、受け手側も正確に時間を指定しないと、余裕を持って来てしまうと、これは、そこで交通渋滞が生じたり荷待ち状態が生じたりして、やはり省エネルギーに反することになりますので、荷主だけではなくて待ち受け側も、荷を受ける側に対しても協力を願うというような形も今回議論をさせていただいたところでございます。

 次に、これはちょっと私の私見でございますけれども、物流構造が変化すると、確かに一見、流通といいますか貨物輸送は確実にふえますけれども、流通業全体で考えたらどうなるかということを、私自身、ちょっとここに書いてあるんですが。

 消費者行動は明らかに変化するわけですね。逆に、どういう意味かというと、消費者が直接お店に行かないで、いながらにして発注されるわけですから、消費者が移動するエネルギーは確実に要らなくなる。大きな荷物を買ったら、持って帰るときにまた多分何らかの手段が必要になりますから、そういう場面でのエネルギーは果たしてどう評価するんだろうか。それがどんどん進んでまいりますと、商業形態自体が変わってくる可能性がある。

 お聞き及びかもしれませんが、アメリカでは、大手のおもちゃ屋さんが店を閉鎖した、これはEコマースの影響だそうでございますし、それから大手の小売事業者がやはり店を縮小している、これもやはりEコマースの影響だと聞いております。

 アメリカの友人に、それをトータルで評価した資料はないか、日本でも参考にしたいと言ったんですが、まだそこまで調査していないと言われましたものですから。だけれども、トータルで考えると、確かに中上が言うように、これはひょっとすると、物流構造全体で考えると省エネになっているかもしれないねと。

 どうしても、場面場面のデータだけで見てしまいますと、突出して貨物輸送がふえたからそこが悪いということになりますけれども、トータルで考えると話が違うのではなかろうかということであります。

 八ページでございます。

 今後の省エネルギーを考えるに当たりまして、そういうふうな社会構造の変化とかビジネスモデルの変化というものが、非常に目まぐるしく変わりつつあります。ですから、社会の実態に合わせた省エネ政策の転換をこれからもやはり不断に続けていかないと、従来の規制だけではカバーし切れない状態が発生してくるだろうと思います。

 特に、皆様御案内のように、AIとかIoTの最新技術を使った省エネは、あらゆる分野に相当大きな影響がありそうでありまして、これは、省エネの面から考えると、恐らく相当省エネルギーになると私は期待しておりますが、これは、これからの非常に大きなテーマの一つでもあります。

 さらに、シェアリング、これもビジネスモデルの変化ですね。

 それにつきまして二つだけ事例をお示ししておきましたけれども、次のページに、お聞き及びのように、いろいろと物議を醸しているところもありますが、ウーバーなんというのがありますが、この会社は一台も車を持っていないと。しかし、世界最大のタクシー事業者だ、こう言われている。日本では、まだ確たる事業実績はないようでございますが。

 こういった場合には、大体、一般の消費者のあいている車を利用して、それで輸送業をやっているという状態になりますから、そうすると、ここで発生しているエネルギーは、家庭で使っているエネルギーなのか、事業用なのかなんというふうな仕分が出てくるんじゃないかなと思います。

 次に、これまた、昨今、違った意味で物議を醸しておりますけれども、民泊ですね。エアビーアンドビー、最大の民泊業者の一つでありますが、ここも宿泊用の不動産は一つも持っていないと。

 ここが、民泊であっせんして、個人のお宅の空き部屋を利用してお客さんを泊めたときのエネルギー消費は、これは業務用なんだろうか、家庭用なんだろうか。恐らく、メーターは家庭用しかないですから、家庭用で計量されると思いますけれども、ここは明らかに事業でございますから。このあたりまでになってくると、これは省エネ法の対応も単純にはいかないなというふうに思っております。

 いずれにしましても、社会がそれほど大きく変化してきておりますので、省エネルギーはいつまでたっても切りがないんですが、省エネに終わりなしという言葉がございますが、まさにそのとおりだなと思っております。

 省エネは、基本的には、私は、やはり規制が最もあらゆる面に効果が高いと思います。ただ、私の今までの経験からしますと、別な見方をすると、トップのディシジョンといいますか、これは非常に大きくきくわけですね。いろんな会社でも、トップがこうしろと言うとやはり全体が動くわけですけれども。

 ですから、本当は、総理大臣が夏に車を使われるときに、運転手さんに待たせて、クーラーをかけて待っているなんというのは、私はあれもよくないと思いまして、総理がおやめになったら、恐らく先生方も多分やめざるを得なくなるという。ちょっと口幅ったいですけれども。そういう意味では、トップのディシジョンというのは非常に大きいと思います。

 もう一点、最後は、消費者が動き出すと、これはやはり最も大きい、サイレントマジョリティーと言っておりますが。

 私の経験でこれは非常に大きな成功例でありますけれども、待機電力というのがございますが、もうお聞き及びだと思いますが、これを問題提起したときに、一切メーカー側は、そんな小さなことを言うなと言われて、余り反応はよくなかったわけです。役所の方も苦労して、何とかこれを削減しようとあちこち声をかけたんですが、なかなか動かなかったんですが、消費者が、うちで計測してコンセントからプラグを抜いてみたら、一カ月後に電気代が千円ぐらい下がったんですね。そうしたら物すごく大きな声になりまして、あっという間にメーカーが待機電力を軽減するという施策をとりました。

 世界、ほかの国は全部規制をかけようとした。日本だけが、規制をかけなくてもあっという間に動いた。それを、私は諸外国の友達に、そんなの簡単だから、消費者にプラグを抜いてもらえばいいんだと言ったら、そのとき彼らは何と言ったかというのは、中上、それは無理だ、欧州やアメリカでは、電気代は年に一回しか計測しないと。電気代、毎月来ているのはどうしているんだと言ったら、年間のを十二カ月にばらして払っているんだ、だから、一カ月ぐらい抜いただけで、ふえたか減ったか答えは出ないと。一年たったら何が何だかわからなくなりますから。それで、いやあ、随分日本はそういう意味じゃ違うんだなと思っていましたが、今度スマートメーターが出てきましてから状況は変わってまいりましたけれども。

 そんなエピソードがありますけれども、やはり、消費者が動くということは非常に大きいと思います。

 ちょっと時間が超過したかもしれませんが、私からの話はこれまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

稲津委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 おはようございます。一般社団法人地域政策デザインオフィス代表理事の田中信一郎です。

 本日は、衆議院経済産業委員会において意見陳述の機会を与えていただき、稲津委員長、理事そして委員の皆様に感謝申し上げます。

 地域政策デザインオフィスは、持続可能な地域づくりを支援するため、昨年六月に設立した非営利の団体です。自治体のエネルギー政策や地球温暖化対策、防災対策などを助言したり、職員研修を行ったりしています。

 私は、横浜市及び長野県において、民間採用職員としてエネルギー政策や温暖化対策の企画、執行を担ってきました。ちなみに、長野県での経験や政策については、「信州はエネルギーシフトする」として先ごろ出版したところでございます。現在は、地域政策デザインオフィス代表理事として、自治体などへの助言を行っています。

 なお、私は、これまで国や自治体の行政機関、国会、大学などさまざまなところで働き、現在も複数の仕事を兼ねております。本日は、専ら自治体でエネルギー政策を担当した経験を踏まえ、地域エネルギー政策の専門家としての視点から意見を述べます。

 まず、議案の、エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案については、賛成の立場です。

 改正案の主たる内容である企業連携による省エネの評価並びに貨物の荷主の定義見直しと準荷主の位置づけは、事業者の省エネを促進する仕組みであり、必要と考えます。

 しかし、本改正案に問題点がないわけではありません。

 最大かつ唯一の問題点は、長期エネルギー需給見通しで掲げる省エネ見通しの実現に向けて、現行法が直面する課題に対応するための所要の措置として示されているのが、これだけにとどまっているということです。

 日本の経済社会において、エネルギー効率の大幅な改善は極めて重要な優先課題です。この改正案を見る限り、政府にそうした認識と決意が欠如しているのではないかと強く疑わざるを得ません。それが、自治体や地域経済界のエネルギー効率の改善に対する認識にも強く影響し、地域経済の疲弊も助長していると思われます。

 まず、配付資料の図表一をごらんください。

 日本の労働生産性が低いことを示しています。

 二〇一六年の数字を見ると、一人当たりではギリシャよりも低く、時間当たりではイタリアやスペインよりも低い位置にあります。これは、日本企業の稼ぐ力が弱いことを意味しています。

 次に、図表二をごらんください。

 労働生産性の算出式です。

 人口増加期において、企業は、従業者数をふやしつつも、それ以上に売上高をふやすことで生産性を高めてきました。現在は、人口減少に転じ、需要も頭打ちになっています。企業はこれまで、従業者数を減らすこと、すなわちリストラで生産性を維持してきました。ところが、いよいよ多くの企業で人手不足が顕著となり、リストラも困難になりました。売上高を容易にふやせず、従業者数を減らせないとすれば、どうやって生産性を高めるのか。それには、費用総額を減らすのが確実です。

 企業活動における代表的な費用は、エネルギーと資源です。理想は、これらの投入をゼロにしつつ売上高を伸ばすことです。もちろんそれは不可能ですが、効率を徹底的に追求することは可能です。そのための指標が、資源生産性、エネルギー生産性、炭素生産性です。

 図表三をごらんください。

 主要国のエネルギー生産性を比較した環境省の資料です。

 左の名目ベースのグラフは、各国間を比較するのに有効です。これを見ると、約二十年前は世界最高レベルのエネルギー生産性だったのが、今やアメリカに次いで下から二番目です。

 右の実質ベースのグラフは、同じ国の経年変化を見るのに有効です。これを見ると、二〇一一年までエネルギー生産性がほぼ横ばいで、それ以降に改善していることがわかります。東日本大震災を契機としたエネルギー効率化の取組が効果を上げていることもわかります。

 図表三から言えるのは、日本のエネルギー生産性が一九九〇年代半ばから改善せず、東日本大震災以降に改善しつつあるも、各国に水をあけられてしまったという事実です。しかも、その間に、情報技術が大きく進歩し、日本のお家芸であるはずのエネルギー制御技術も高度に発展してきたにもかかわらず、この結果なのです。

 ただ、悲観する必要はありません。逆に見れば、日本にはまだまだエネルギー生産性を改善する余地が大幅に残っていることを意味しているからです。

 図表四をごらんください。

 企業経営におけるエネルギー効率の改善の意義を解説した関東経済産業局の資料の抜粋です。

 省エネで浮いた資金は、企業経営で純益となります。例えば、年商一億円の中小企業が省エネで年間三十万円の光熱費を減らす場合と比較しましょう。それと同じ金額の純益を売上増加で得ようとすれば、営業利益率を二%と仮定すると、千五百万円の売上増加をする必要があります。しかも、省エネで得た純益は翌年以降も継続しますが、売上増加はそうとも限らず、契約打切りのおそれもあります。

 もちろん、売上増加を不要とするわけではありません。これは、売上増加と同じぐらい省エネが重要と中小企業の経営者に喚起するため、関東経済産業局が作成した資料です。

 図表五をごらんください。

 日本の化石エネルギーの輸入額の推移を示した環境省の資料です。

 興味深いのは、二〇一五年の数字です。この年は、国際石油価格が暴落し、原油安が問題となりました。ところが、この年の輸入総額は、国際金融危機で暴落した二〇〇九年よりも多く、国際経済に大きな問題のなかった一九九六年よりもはるかに多いのです。

 化石エネルギーの相場が石油価格に左右されることは広く知られています。要するに、化石エネルギーの国際価格は、毎年の変動はあるとしても、長期的には上昇が避けられないのです。これは、今後ますますエネルギー効率の改善が日本経済において重要であることを示しています。

 日本は、海外に流出する巨額の資金を国内経済や地域経済に還流させなければなりません。電力やガス、石油などのエネルギー産業も、その技術や知見を活用し、化石エネルギー費用を国内に還流させるビジネスに転換することが求められています。

 最も有効な手法は、エネルギー効率を改善するための投資を盛んにすることです。そのために、国と自治体が連携して、大々的な省エネ投資を誘導するための仕組みを構築する必要があります。企業も個人もこぞって省エネ投資をし、省エネ型の行動や選択に切りかえるように、法律や条例で仕組みを整える必要があります。

 以上の観点に立てば、現行の省エネ法令や今回の改正案は、それに資することは否定しないものの、全く不十分であると言わざるを得ません。

 これまで自治体は、ごく一部の先進自治体を除けば、地域経済や住民生活の省エネについて、余り熱心に取り組んできませんでした。それは、第一義的に自治体の責任であるものの、自治体から見れば、国の法令や仕組みが不十分で、取り組みにくい点もありました。

 そこで、自治体でエネルギー政策に携わってきた立場から、次の省エネ政策の導入を国に求めます。これらが整備されれば、自治体においても、産業界や住民と連携して、さらなるエネルギー効率の改善に取り組めると考えます。

 図表六、最後のページをごらんください。

 第一は、詳細かつリアルタイムのエネルギー情報データベースの構築です。

 送電やガス管、その他のエネルギー生産と需要の状況をホームページで、誰もがリアルタイムで把握できるようにしたり、エネルギーに関するビッグデータを表示したり、統計情報を詳細に集めて素早く公表したりと、エネルギー情報に関して改善すべき点は多くあります。温室効果ガスの排出状況とあわせることも重要です。いわば、エネルギー版のRESASです。

 エネルギー情報で重要なことは、自治体や事業者、家庭がそれをベンチマーク、すなわち評価指標として活用し、みずからのエネルギー効率の位置を理解できるようにすることです。

 この点、経産省は、産業部門については、分母を生産量に統一しています。けれども、オフィスや商業施設などの業務部門では、分母を何にするか業界ごとに任せています。少なくとも、床面積当たりのエネルギー効率については、業務部門の全業種で統一して示させる必要があります。

 第二は、超大規模なエネルギー消費事業所をカバーする総量規制型の排出量取引制度です。

 二〇一四年度の温室効果ガス排出量で見れば、百二十九事業所で日本全体の温室効果ガス排出量の半分、約四百九十事業所で排出の六割を占めていました。これらの事業所に対し、自治体レベルで省エネを促すことは非現実的です。

 一定の規制や仕組みを導入しようとしても、これらの事業所を対象に含めないわけにはいきませんし、含めるとしても手に余るのです。ほかの地域に移転すると言われるおそれもあります。よって、国でしっかりと総量規制型の排出量取引制度を導入していただきたいのです。

 第三は、地球温暖化対策税の税率を大幅に高めることです。

 自治体で企業や住民に省エネを促すとき、大きなハードルになるのが費用対効果です。エネルギー価格が安いと省エネ投資の費用対効果も低くなるため、促しにくいのです。そこで、地球温暖化対策税の税率を大幅に高め、省エネ投資の費用対効果を高める必要があります。自治体にとっては、相対的に有利となる公共交通を再活性化する好機にもなります。

 一方、排出量取引制度や温暖化対策税の税率アップで、地域経済や住民生活に悪影響が出るのも困ります。そこで、排出量取引制度の対象事業所には、温暖化対策税を減免することが考えられます。温暖化対策税の税収の大半を企業の雇用保険の軽減財源とすることで、税収中立とすることも考えられます。税率の段階的な上昇も激変緩和に有効でしょう。国の制度があれば、自治体や地域産業、住民はそれを上手に活用し、エネルギー効率を向上させつつ、投資を拡大していきます。

 第四は、新築建物の断熱規制の確実な実行と段階的な強化です。

 二〇一三年六月に閣議決定された日本再興戦略では、「二〇二〇年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネ基準への適合を義務化する。」としています。これを確実に実行するとともに、その後も段階的に基準を引き上げていく必要があります。

 第五は、建物の新築、改修、売買、賃貸におけるエネルギー性能証明書の発行義務の導入です。

 EUは、二〇〇二年の建築物のエネルギー性能に関する指令で導入を決定していますが、日本ではまだ導入されていません。

 長野県では、このEU指令等を参考にして、全ての新築建物の施主に対して、あらかじめ光熱費等の環境エネルギー性能を検討することを条例で義務づけています。二〇一六年の調査によると、約八割の戸建て住宅が省エネ基準を上回る性能で建てられたと明らかになっています。全国平均の数字はありませんが、三割から五割程度と言われていますので、長野県の制度の効果は明らかだと考えています。

 第六は、統一省エネラベルの表示方法の見直し、並びに全ての家電とエネルギー消費設備への拡大です。

 冷蔵庫やテレビなど六種の家電に設定されている統一省エネラベルは、年間の電気代が買うときにわかるすぐれものです。問題は、六種に限られていること、表示方法がわかりにくいこと、そして、販売店での掲出が努力義務にとどまっていることです。あわせて、低効率の家電については、製造や販売を禁止する措置も必要です。

 以上のほかにも、エネルギー効率の大幅な改善に資する政策や仕組みはありますが、少なくとも以上の六点は、国において早急に取り組む必要があります。

 もちろん、自治体側においても、効果的なエネルギー政策を確立する必要があります。自動車への過度な依存を改めるまちづくり、中小零細企業の省エネの促進、公共施設におけるエネルギー性能の飛躍的向上、住宅の省エネ改修の誘導、住民への情報提供など、自治体だからこそ効果的なエネルギー政策があるからです。

 そのためにも、国が率先して強力な省エネ政策を講じる必要があります。従来の省エネ法の枠組みの延長線上にある取組だけでなく、抜本的に省エネ政策を見直し、規制や税制、表示などをフル活用した省エネ政策に再構築することが求められています。

 以上、日本のエネルギー生産性を飛躍的に向上させ、経済成長の原動力とすることを経済産業委員会の委員の皆様と政府にお願いし、私の意見とさせていただきます。(拍手)

稲津委員長 ありがとうございました。

 次に、万場参考人にお願いいたします。

万場参考人 公益社団法人日本通信販売協会の専務理事をしております万場と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、このような意見陳述の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私からは、通信販売業界における物流関係の現状、それから業界としての取組、並びに省エネ法改正に関する業界としての意見を申し述べたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、お手元に資料をお配りしておりますので、これに基づきまして御説明をしていきたいと思います。

 まず、二ページ目でございます。

 通信販売市場の規模でございますけれども、二〇一六年度、十八年連続の伸びを示しておりまして、約七兆円となっております。この数字は、いわゆる物販を中心とした、物を中心とした通信販売の売上規模ということでございます。非常にミニマムな数字ということで捉えていただければというふうに思います。

 ただ、小売業全体としますと約五%を占めておりまして、ほぼ百貨店の売上並みに来ております。あるいは、それを上回る勢いであるということが言えるかと思います。

 実は、本日ここにいらっしゃる先生方の事務所でも、恐らく文房具だとかコピー用紙とかそういうものを通販でお買いになっていただいているところもあろうかと思いますが、この場をおかりしまして、日ごろの御愛顧をありがとうございます。

 これは、ビジネスシーンでの御利用ということで、BツーBということでございますけれども、一方で、女性の社会進出でありますとか、あるいは共働き家庭の増加、あるいは高齢者の増加ということで、非常に、地方の地場産品を産直で取り寄せるとか、そういった、商品をいつでもどこでも注文ができて、しかも届けていただけるということで、通信販売が伸びてきているのではないかと思います。

 こういったBツーCの時代というのは、そのニーズに合った、非常に便利で、楽しいといいますか、役に立つ通信販売ということで伸びてきているのではないかというふうに思っております。つまり、今現在は、もう生活に欠かせない流通の一つになっているということが言えるのではないかと思います。

 グラフにつきましては、これは十八年連続と御説明しましたけれども、ちょっと場所がなくて、十五本しかグラフがありませんけれども、十八年連続で伸びてきているというところでございます。

 次のページは、通信販売協会の御紹介ということで、簡単に御紹介をしたいと思います。

 一九八三年、昭和五十八年に社団法人として設立をしております。途中、昭和六十三年ですけれども、現在は特定商取引法という法律ですが、当時は訪問販売法と言っておりました。その法律によりまして、自主規制をする団体として、法律上位置づけられた団体となっております。二〇一二年には、公益法人改革に伴いまして、公益社団法人として再スタートしているところでございます。

 現在、通信販売を行っている企業、大体約四百六十三社加盟しておりまして、そのほか、物流企業とか、いわゆる通信販売の周辺を支えていただいている賛助会員という制度がございます。こちらが百八十五社参加しておりまして、約六百五十社のメンバーを擁しているところでございます。

 主な取組ですけれども、ほぼ三つに集約できるかと思います。

 まずは、消費者保護ということで、消費者の信頼を獲得する活動ということでございます。特に契約関係のトラブルとか、そういうもので御不満があったり御質問があったりということで、消費者からの苦情、相談の受け付けをしております。それをうまく解決をしていくというふうな活動、いわゆる消費者保護の活動がまず一つでございます。

 また、業界の健全な発展ということで、自主規制団体として、倫理綱領の制定、あるいは各種ガイドラインを制定しておりまして、それらの周知活動を行っているということでございます。

 それとあわせまして、物流施設の見学であるとか、あるいは、今回のように、省エネ法の改正等、いわゆる法律の改正等がございましたら、その法律の趣旨を周知徹底するというような活動を掲げてやっております。

 以上、簡単ですが、協会の紹介は以上でございます。

 次のページは、売上高のランキング。これは、協会はランキングを発表しておりませんので、業界紙の数字ということでございます。

 一番上にありますのは皆さんよく御存じの外資系の大手の企業でございますけれども、会員も、大手にかなりランキングされております。インターネット中心の企業もございますけれども、いわゆるカタログ販売といいますか、活字媒体を中心とした、いわゆる伝統的な通信販売の企業もたくさんこの中には入っております。これらの企業におきましても、現在はもうインターネットが主流でございまして、インターネット経由による通信販売の売上高が伸びてきているというのが現状でございます。

 また、メーカーの通販というものも最近は特に多くなっておりまして、化粧品やサプリメントといったものを中心に販売をしているところも出てきているところでございます。

 ランキングについては以上でございます。

 次に、物流委員会というシートがございますけれども、協会は、さまざまな活動をやるに当たって、具体的な活動を行う委員会を構成しておりますけれども、ここでは物流委員会の活動について御紹介をしたいと思います。

 平成四年十二月に設置をしておりますけれども、協会のメンバー三十七社で構成しております。この委員会では、特に通信販売というのはお届けをしていただくというのが非常に重要な機能でございますので、物流に関して、その課題解決あるいはサービスの改善ということで情報交換をしております。

 スライドにありますように、時には学識者をお招きして勉強会を開催したり、あるいは相互に物流センターの見学会というものをやっておりまして、省エネに関する勉強もあわせて行っているところでございます。

 ただ、昨年は、皆さん御承知のとおり、物流費が一気に高騰したということで、非常に、その対応に大変苦労したところでございます。先ほども何度か申し上げているとおり、通信販売は商品を届けていただかないと成り立たない商売でございますので、消費者へのサービスを維持するために、大幅な値上げを受け入れざるを得なかったという厳しい現実がございます。中には、事業の継続が困難ではないかというような事業者も出てくるというようなこともございました。

 ただ、配送業者さんとの関係というのは極めて重要でございますので、物流費の問題はともかく、それは個別交渉ということでございますけれども、協会としましては、定期的に、物流業者さんとの情報交換も常に行ってきているところでございます。まさに、本日午後も大手の物流業者さんと、お招きしまして、最新の動向、恐らく宅配ボックスの件であるとか再配達の削減をどうするかといったような問題について情報交換をする予定となっております。

 続きましては、物流関連のデータを少し御紹介をしたいと思います。

 左上のグラフでございますけれども、商品の配送方法でございます。

 これは御存じのとおり、大手三社の宅配が断然多くて、一部、生鮮品とかそういったものは仕入れ先からの直送という形でございます。一方、下のグラフですけれども、送料無料ということが非常に強調される向きがございますけれども、無条件で送料無料としているところは、我々業界の、協会のメンバーでいきますと七%ということで、非常に少ないことになっております。一定金額以上をお買上げいただいている場合は、無料というような形で対応しているところが多くございます。

 次の資料でございます。

 特定荷主の企業の一例をここで御紹介をしております。輸送量の状況ですけれども、ごらんのように、パーセントは動きます。これはやはり会社の業績によって非常に左右されるものですので、売上げが伸びれば、当然、輸送量はふえるというような状況がここで見てとれるかと思います。落ち込んでいるところは、売上げがちょっと下がったかなというところでございます。また、輸送量の内訳ですけれども、大半はやはり、BツーBの会社もございますけれども、基本的にはBツーCということで、ECを含む消費者向けの配送が圧倒的に多くなっているという現状でございます。

 続きまして、二番目としまして、これも会社の事例でございますけれども、物流拠点を再編成することによりまして荷物の量を削減するということの例でございます。

 大物のものを利用したり、それから小さなもの、それぞれ物流センターがあったり、特殊な形状の商品というのもございます。そういったところを、幾つかの物流拠点があって、それぞれの拠点からお客様にお送りをしていたということを若干集約をしまして、右側にございますように、大ロット、小ロットみたいな、あるいは、大物家具とかそういうものと小物というのに分けて、物流拠点を集約してできるだけ荷量を削減するという成功例の一つでございます。

 続きまして、業界としての取組でございますけれども、大きく分けますと、二つあろうかと思います。一つは、再配達の削減策ということでございます。その中にも幾つかございますので、御紹介をしていきたいと思います。

 まず、お届けの手法の追加といいますか、選択肢を多くするということでございます。コンビニ等の受取、あるいは、ひょっとしたら、地方の商店街でシャッターがおりているようなところはたくさんございますので、そういうところを受取の拠点にするとか、そういう工夫が必要かなというふうに考えております。

 また、宅配ボックスの活用、それからメール便の活用とございますのは、郵便受けに直接入れる、例えば化粧品とかそういうものですと、ボトルで大きいものは入らないので、それを薄物化するとか、あるいは詰めかえ用のリフィルにする、小さくまとまった薄いものにして、郵便受けに直接入るような形にするとか、そういう細々とした努力を続けております。

 また、置き場所指定というのもございます。一部の宅配業者さんでできることですけれども、あらかじめお客さんに指定していただいていて、そこに置いておくということで、再配達をできるだけ削減するというようなこともやっております。

 また、環境省さんの方でキャンペーンをやられておりますけれども、クールチョイスのキャンペーンに実は協会も参加しておりまして、できるだけ一回で受け取りましょうというキャンペーンをやったりということをしております。

 それからまた、期日時間指定の促進ということでございますけれども、これは一例ですが、期日時間指定がなかった場合の再配達は二〇%だったんですが、期日指定をしていただいて、確実にお届けした場合、この場合は再配達率が一〇%になったということでございますので、期日時間指定の有効利用ということも考えていきたいというふうに考えております。

 それから、配達回数の削減策ということでございますけれども、交換、引取りを同時にする。例えば返品をしていただく場合に、交換商品をお届けするときに返品も受けるということで、二回を一回に減らすというような努力。あるいは、まとめ送りということですね。複数商品を注文された場合、準備ができ次第、次々に送ると何個口かになってしまう、そこを何とかお客さんに御理解いただいて、おまとめして、それで一気に一回でお届けするというような、そういう細々としたサービスも有効ではないかというふうに考えておるところでございます。

 それから、出荷個数の平準化ということで、お急ぎでない方、その場合にはゆっくりと出していくということで、ピークを合わせて平準化していくということも考えているところでございます。

 終わりですけれども、最後に荷主の定義ということでございますけれども、この問題につきましては、ぜひ公平性を担保していただきたいというふうに思います。法の適用があるかないかについては、企業にとっては大変重要な問題ですので、御丁寧な説明をぜひともお願いをしたいというふうに考えております。

 それから、荷主判断基準の見直しにつきましては、企業に過大な負担にならないようにぜひともお願いしたいと思います。るる先ほど説明してまいりましたけれども、企業としてもさまざまな取組を行っていく予定でございますけれども、荷主として、やはりできることできないこと、限界がございます。ぜひ、そこらあたりも御配慮いただきたいと思います。

 また、省エネの課題といいますのは、物流業界、あるいは荷主である通販業界、それから消費者、それぞれの役割分担が重要ではないかな。その役目をそれぞれが果たしていくということが重要でありますし、通販業界としましても、輸送量だけではなくて、環境に優しい商品を優先的に取り扱うとか、あるいは各社が取り組んでいる環境保護活動といったこともございます。

 また、先ほどもございましたけれども、物流施設あるいは本社についても、ライトはLED化するとか、そういう施設面においてもいろいろ省エネの取組をしておりますので、ぜひとも、多面的、重層的な取組ということで御配慮いただきたいというふうに考えているところでございます。

 私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

稲津委員長 ありがとうございました。

 次に、矢野参考人にお願いいたします。

矢野参考人 流通経済大学の矢野でございます。

 きょうは、よろしくお願いいたします。このような機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 私の専門は、物流、それからロジスティクスということで、私の方からは、物流部門における省エネ対応ということでお話をさせていただきます。

 まず最初に、物流構造の変化ということで、簡単にお話しさせていただきます。

 日本の貨物輸送量の推移ということで図がありますが、一般的に、貨物輸送量は、重量ベースのいわゆるトンベース、それから重量掛ける輸送距離のトンキロベースで、こういう形で計算することが多くなっています。

 経年的に見ますと、トンベースで大幅に減少してきている、さらにはトンキロベースでも緩やかに減少している、こういう現実があります。これは、海外に工場が移転する、あるいは産業構造自体が、重厚長大型から軽薄型に、軽いものに対してどんどん変化している、こういうことで、今後もトンベース等の貨物輸送量は減る、こういうふうに予想されています。

 しかしながら、三ページの方なんですが、物流は大きく質的に変化しております。

 特に言われるのが、多頻度小口化です。左側の図のとおりに、一回貨物を運ぶ場合でも、そのロットというか、単位が非常に小さくなっているという傾向があります。小口化です。それから、右側の図のように、件数が非常にふえてきている。つまり、小さい単位で何個も、何回も運ぶ、こういうような傾向が非常に強まっているということになります。

 件数ということなんですが、これは、例えば、タンカー一隻動いても、ある意味では一件ですし、郵便小包一個でも一件ということなので、なかなか統計的に把握できないんですね。ですから、こういう統計が現実にはありません。ですから、現実としては、荷動き件数が非常にふえてきている、こういうことかと思います。

 そういう意味では、重量という意味では減っているが、件数ではふえているというのが日本の貨物輸送の現状ということになります。

 実際に、どういうところが物流を出しているかということをあらわしたのが四ページです。

 重量ベースで見ますと、やはり圧倒的に多いのはメーカーです。重いものをどんどんつくり、そして動かしていますので、メーカーを中心とした荷動きになっているんですが、今度は件数ベースで見ますと、実際には卸売業、小売業の比率が非常に高くなります。

 そういう意味では、非常に消費者に近いところの物流のところが件数ベースでは非常に大きな割合を示しており、ここのところをどうやって効率化していくか、こういうことが非常に重要になるということになります。

 続いて五ページですが、これは輸送機関別に見たものです。

 どの輸送機関が運んでいるか。トラックが運んでいるか、鉄道が運んでいるか、船が運んでいるかなんですが、トラックが大体五割、それから船が四五%、さらに、残った五%が鉄道という形になります。

 ただ、一九六〇年代は鉄道が非常に多かったんですね。それがどんどん減少して、今は五%。それに対してトラックがふえてきた。重量貨物については船がまだまだ多いですが、トラックが、小さい貨物については主に運んでいるということになります。本来、省エネから考えた場合には、この鉄道部分、それから船の部分をどうやってふやしていくか、ここが課題になります。

 さらに、六ページですが、長距離の場合には、ある程度、船、それから鉄道の割合が多くなっていますが、それでも、長距離あるいは中長距離においては、まだまだトラックで運んでいる部分が多いというのが現実です。そこのモーダルシフトをどうしていくかというのが重要になります。

 現在、物流においては、非常にドライバー不足が大きな問題になっていますが、この観点から見ても、中長距離の輸送をいかにシフトしていくか、ここが重要です。さらに、改善基準告示ということで、連続運転時間、運転時間、拘束時間ということが問題になっていますが、この観点からも、いかに鉄道それから船をふやしていくか、この辺が非常に重要です。その輸送ネットワークを構築していくことが重要になります。

 続いて七ページですが、運輸部門のエネルギー消費ということになります。

 よく図表などを見ますと、運輸部門となっていて、そして、下の方に旅客があり、その上に積み重ねグラフのように貨物輸送になっているので、余り、貨物輸送の動きというのが見えづらくなっています。ここでは分けて表示しておりますが、貨物輸送については一九九六年をピークに減少傾向にあります。

 実は、よく、京都議定書の場合、一九九〇年に対して二〇一〇年のときに運輸部門はちょっとふえているよ、だから問題だよ、それで物流も何となくふえているようなイメージをお持ちかもしれないんですが、実際には、乗用車、旅客部分が非常にふえたためにふえているのであって、貨物輸送部分というだけで見た場合には相当減少している、九六年をピークに減少しているということになります。そういう意味では相当努力したということもあるかなというふうに思っております。

 それから、その下は、もう少しわかりやすくしたのが八ページですね。

 このように、実際に九六年から大きく減少してきています。ただ、問題は、二〇〇九年までは大きく減少してきたんですが、そこから横ばいになっている、こういう状況があります。そこが非常に問題で、各企業に聞いても、最初は割かしいろいろな効率化策をやってどんどん省エネができた、ただ、それが相当、二〇〇九年以降、効率化策をやってもなかなか減らない、こういう状況になっています。

 特に、企業の物流部門が単独でできるところを先行してやっていたわけですが、それがある程度限界に来ている、こういう問題点を抱えて、今後減少していくためには、後で申し上げます連携ということが非常に重要になるかなというふうに思っております。

 その次に、貨物輸送のCO2排出量、輸送量、原単位の推移ですが、先ほど見ましたように、大きく減少してきたんですが、一つは輸送量が減少してきたこと、それから、同じ輸送量を運ぶために必要なCO2が減ってきた、その両面があったんですが、ただ、先ほども申し上げましたように、二〇〇九年以降はなかなか減少していない、こういう現状となっています。

 さらに、その下の表ですが、これは京都議定書のときにどういう施策をやったか。特に、船それから鉄道へのモーダルシフト、さらには貨物輸送の効率化、トラック輸送の効率化というところなんですが、いずれも目標を下回っています。ただ、船へのシフトは結構進んだんですが、鉄道へのシフトが余り進まなかった。さらにはトラック輸送の効率化が余り進まなかった、こういう現実がございます。

 続いて十一ページですが、トラック輸送の効率化が非常に重要で、そのためには、車両の大型化、これが結構進んできました。それから営業用に転換していく、こういうことも進んできました。

 ただ、積載効率が逆に悪くなっている、こういう現実がございます。ここのところは、先ほども申し上げた多頻度小口化と相当関係しているかと思います。つまり、トラックが動いているわけですが、実際に満杯状態で動いていない、非常に少ない積載率で動いている、こういう事例が非常に多いということで、大体今四割前後という、こういう状況になっています。

 さらに、十二ページですが、今度は、先ほどから話題になっています宅配便です。宅配便は個数がどんどんふえてきています。特にここ三、四年は、きっとネット通販の影響もあって急激に増加しているかと思います。

 さらに、次のページですが、再配達の発生状況ですが、国交省さんの方では二〇一三年度に再配達率の試算を行っています。大体再配達率が二〇%、さらに、昨年、二〇一七年に一五・五%という結果になっています。ただ、これは、二〇から一五・五となっていますが、ちょっと調査方法を変更しておりますので、必ずしもここで改善したというふうには言えないかと思います。

 いずれにせよ、この再配達が非常に社会経済的損失というのを与えている、こういうのが現状かと思います。

 十五ページのように、実際に再配達率を減らしていくということで、受取方法を多様化していく、宅配ボックス、宅配ロッカー等をふやしていく、あるいはコンビニ受取をふやしていく。ただ、宅配ボックスなども、あるいは宅配ロッカーなども、利用率は結構低いという現状があります。それをどうやって使ってもらうかというのも重要ですし、さらには、一回で受け取ってもらうような情報交換を利用者と業者で行っていく、こういうことも重要かと思います。さらには、消費者、利用者に対してどうやって積極的にこういうのを考えてもらうか、こういうのも重要かと思います。

 さらに、十六ページ。ちょっとこれは再配達率とは別なんですが、過疎地域においては都市部に比べて同じ一個を運ぶのに非常に配送距離が必要になるという現状があります。大体六倍ぐらい必要という試算も出ています。そういう意味では、特に過疎地域においては、こういうラストワンマイルのシステムをつくっていく、こういうことも重要かと思います。

 続いて、十七ページです。物流に関連する環境対応策というのが、輸送関連、あるいは物流センター関連、あるいはこん包材とか、いろいろな施策があります。ただ、これらの施策を講じる上において、ここの左側で赤で囲んだ部分、いかに取引条件を適正化していくか、あるいは企業が協力していくか、さらには製品開発なんかも輸送を含めて行っていくか、こういうことが非常に重要になります。

 実際に、十八ページのように、環境問題に対応していこうというときに、なかなか取引先の協力が得られないとか、あるいは企業の中でもほかの部門の協力が得られない、こういうことが大きな問題になります。そういう意味では、今まではどちらかというと物流部門が単独でできる、一企業で単独でできるところが進んできたわけですが、今後は、取引先を巻き込む、そういうような形でやっていかないと、なかなか今後の施策は進展していかないというふうに考えられます。

 続いて、十九ページですが、物流の場合は非常に関係者が複雑だという問題があります。

 発荷主と呼ばれる一般的な荷主、そこが着荷主に荷物を送る、それを実際の物流業務は物流業者に委託する、こういう形になります。その場合に、実際には着荷主が、いつまで持ってきてくれとか、あるいはこういう単位で持ってきてくれ、こういうことを決めるわけですね。そういう意味では、着荷主の要請に応じて発荷主が、じゃ、このときに持っていこう、それを物流事業者に委託する、こういう形になります。

 という意味では、着荷主が非常に全体の条件を決めているという状況があります。ここのところをどういうふうにうまく持っていくか、ここが非常に重要になるかと思います。

 ということで、二十ページですが、物流部門における省エネ管理。日本の場合、省エネ法において物流事業者だけでなくて発荷主を巻き込んだ、こういう意味では非常に画期的だったと思います。ただ、やはり今問題になっている着荷主の問題、さらには、現行の省エネ法では貨物の所有者と荷主が位置づけられている、そこでどうしても抜けが出てしまう、この辺が非常に問題かと思います。

 さらに、二十一ページですが、企業間連携ということで申し上げました。企業が連携することによって、どうやって物流条件を見直していくか、そして無駄な物流をなくしていくか、そしていろいろな施策を講じていくか、こういうことが非常に重要かと思います。

 二十二ページから幾つかの事例、実際に企業が連携して行っている事例が入ってございます。

 細かいことは時間がありませんので申し上げませんが、例えば、食品メーカー六社が共同配送を行う、あるいはビールメーカーの、まさしくライバルメーカーが一緒に鉄道輸送をやる、こういう事例もあります。さらには、着側が、毎日持ってきてもらうのはやらなくてもいいよ、一日置きでもいいよとか、あるいは、持ってくる貨物量を想定して、例えば四トン車を上回る場合には前倒しして持ってきてもらう、こういう形で車両数を制御するとか、こういうような取組もだんだん出てきています。そういう意味では、企業が連携する取組、こういうのが非常に重要だというふうに考えられます。

 最後のページに、一応、まとめということで書いてございます。一応、省エネ法のときに今後考えるポイントということで、まずは挙げさせていただきます。

 発荷主、物流事業者だけではなく、着荷主もやはり連携した取組が重要だと思います。

 そして、一企業単位だけでなく、企業連携による取組が重要だと思います。

 特に、サプライチェーン上で主導的立場にある企業が、みんなを巻き込んだ形でやっていく、こういうことも重要かと思います。

 さらには、物流条件、つまり、例えば注文の回数だとか、あるいはロットの量とか、こういうことも含めて条件を変更し、そして無駄な物流を削減していく。

 あるいは、平準化、計画化していく、こういうことも非常に重要かと思います。

 さらに、今までどちらかというと重量貨物を取り扱うメーカーが主な対象となっていましたが、今後は、軽量貨物を扱う企業等もやはり取組が重要かと思います。

 さらに、省エネを国民全体で考える、こういうことを考えた場合に、やはりネット通販についても、非常に取組自体は重要だと思います。実際に、宅配便の貨物輸送というのは貨物輸送量全体の五%ぐらいです。ただ、ここの部分というのは、国全体の省エネを考える上では非常に重要だと思います。そういう意味では、これに対してネット通販業者、それから利用者も含めて考えていくことが重要かなと思います。

 そういう中で、先ほどから幾つか申し上げましたけれども、施策として、鉄道、船舶を利用したネットワークをつくっていく、さらに、ラストワンマイルを考えていく、さらには、今、IoT、AI等が進んでいます。これらをうまく利用していくということが重要かと思います。

 いずれにせよ、今、物流においては人手不足問題が非常に重要になっています。それと省エネというのは相当両立するところがあります。そこのところをいかに行っていくか、そして、今、着荷主も含めて物流を何とかしなくちゃいけない、そういう意識が非常に強まっています。そういう中で、何とか効率化をしていく、そして省エネに結びつけていく、こういう施策が非常に重要かと思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

稲津委員長 ありがとうございました。

 次に、桃井参考人にお願いいたします。

桃井参考人 おはようございます。

 気候ネットワーク東京事務所の桃井と申します。

 このたびは、省エネ法改正案の審議において陳述する貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私が所属します気候ネットワークは、気候変動問題の解決に向けて取り組む環境団体です。近年、異常気象が全世界各地で起き、地球の平均気温は毎年世界最高値の記録を更新し、人類の生存が危ぶまれるレベルに近づいてまいりました。気温上昇を一・五度から二度未満に抑えるというパリ協定の着実な実行と、持続可能な社会の構築を目指して活動をしております。

 今回、省エネ法の改正案が上程され、気候変動政策とエネルギー政策は切り離せない重要なテーマであるということから、お配りさせていただきましたペーパーに沿って、大きく三つの点から問題提起をしていきたいと思います。

 一つはエネルギー政策に関して、二つ目は省エネ法全般について、そしてもう一つは、今回の改正案について申し上げたいと思います。

 そして、補足資料として、今回、二種類のパンフレットをお配りさせていただいております。こちらは、脱原発や気候変動問題にかかわるさまざまな市民団体で結成するeシフトのメンバーが、エネルギー基本計画改定のタイミングに合わせて、真のスリーEプラスSとは何かを提起したものです。そしてもう一つ、こちらは、原発をめぐる世の中の誤解や疑問に対して答えていくために、同メンバー共同で作成した冊子となります。私は、この中で主に省エネ、石炭問題、温暖化問題に関連するパートを執筆しましたので、今回のテーマにも関連するということで配付させていただいております。

 まず最初に、こちらのペーパーに戻りますけれども、日本のエネルギー政策のあり方について申し上げます。

 つい三日前、第五次エネルギー基本計画案のパブリックコメントが始まりました。現在、世界レベルでは、パリ協定が発効され、エネルギーシフトに向けたダイナミックな転換が起きています。原発や化石燃料依存のエネルギーシステムから、省エネを徹底し再生可能エネルギー一〇〇%を目指す方向へと大改革が起きています。そして、気候変動対策こそが経済政策の柱になっています。こうした点からも、エネルギー基本計画の見直しの機会は、日本のエネルギー政策をパリ協定に基づく政策に切りかえる大きなチャンスでした。

 しかし、今回示された案では、これまでも実現可能性が乏しいと指摘されてきた二〇三〇年の電源構成を前提に、現行のエネルギー基本計画の骨格を維持し、現状を変える要素が何もなく、また世界から取り残される道をたどるような、非常に残念な内容でした。基本政策分科会でまとめられた本案は、白紙撤回して見直すべきだと考えています。

 そして、パリ協定ができた今こそ、気候変動政策とエネルギー政策を統合し、原発や石炭重視の政策から、安定した気候を維持し、持続可能な社会に向けたエネルギー政策へと大きくかじを切るべきだと思います。

 さて、次に、二ページ目に示しました、日本のエネルギー政策の構造と決定プロセスの問題について指摘したいと思います。

 現在、国の根幹にかかわる重要な基本政策が、国会の正式な審議や議決を経ずに、経済産業省の官僚の裁量だけで決められているような状況です。

 先日示されたエネルギー基本計画の案がそれを示しており、その上位に位置づけられた長期需給エネルギー見通しという、法的に何ら位置づけのない、経産省主導でつくられたエネルギーミックスも、国会の議論を経ずに決定しました。本来は、国会での審議はもとより、国民全体の熟議をもって決定するべき案件ではないでしょうか。

 現状では、二〇三〇年のエネルギーミックスを達成させるために、省エネ法、再エネFIT、エネルギー供給構造高度化法などの省令や告示のレベルでかなり細かな制度設計が行われてしまっているのが実態です。肝心な部分を経産省の官僚の裁量で決めてしまう、国会軽視のエネルギー政策決定プロセスは極めて問題だと思います。

 日本の温室効果ガス削減目標ですら、IPCCの科学的論拠や二度未満という目標ではなく、経産省主導のエネルギー基本計画ありきでつくられているという実態があります。これこそが、日本の気候変動・エネルギー政策を、パリ協定を遵守するにふさわしい内容に大きく転換できない根源的な問題になっているのだと思います。

 次に、省エネ法について三点ほど指摘したいと思います。

 第一に、情報開示についてです。

 省エネ法では、エネルギー使用量が年間千五百キロリッター以上の事業者にエネルギー使用状況等の定期報告を義務づけていますが、その情報は公表されていません。省エネ対策を強化する上でも、これを公表する法改正が必要だと思います。

 同業種間で比較しても、エネルギー原単位は事業所ごとに大きく異なることがあります。情報公開することで、事業者が省エネに取り組むインセンティブとなり、省エネ水準を底上げする効果を期待できます。

 また、自治体における気候変動・エネルギー政策を強化していく上でも、国が一括して集めたデータを開示する方が無駄がありません。国が事業者のエネルギー使用量、原単位、燃料種構成などの情報を開示し、それをもとに自治体が実態把握や政策立案に使えるようにしたり、地域の企業も、同業種の実態を見て、みずからの対策に使えるようにすべきではないでしょうか。

 加えて、最近では、ESG投資を推進する上での企業の環境情報の開示を求める動きが高まっています。省エネ法で集めたデータを公開すれば、投資家などの判断にも有効に活用されることと思います。

 さらに、誰でもアクセスできる形で事業者の定期報告が公表されていれば、客観的な検証や評価が可能となり、研究者や政策立案者にとっても有益です。

 なお、気候ネットワークでは、昨年十二月に、電気事業者における省エネ法ベンチマークの定期報告の情報開示請求をしましたが、大手電力会社の情報は、大半が非開示で、黒塗りにされてきました。温暖化対策推進法で開示が前提になっているはずのCO2排出量まで黒塗りになっているケースもあります。非開示の理由は、企業の競争上の不利益をこうむる可能性があるということですが、全てのデータを開示する事業者もあり、非開示の理由として適当ではありません。あらかじめ全て公表することを法律に位置づけておくべきです。

 第二に、省エネ法のベンチマーク制度についてです。

 ベンチマーク制度は、あくまでも目指すべき指標であって、達成が義務づけられていません。二〇三〇年のエネルギーミックスでは、省エネ対策として五千三十万キロリッター程度とされていますが、その内訳は、産業千四十二万キロ、業務千二百二十六万キロ、家庭千百六十万キロ、運輸千六百七万キロとされています。これを削減率に置きかえていくと、産業が六%、業務が一九%、家庭が二四%、運輸が二一%と、産業部門の削減率が最も小さいことがわかります。

 よく、乾いた雑巾だと言われる産業部門ですが、省エネ法で業界ごとに設定されたベンチマークを達成すれば、鉄鋼、セメント、製紙など、大半の大口産業でかなりの深掘りをすることができ、決して乾いた雑巾ではないのです。省エネ法でのベンチマーク達成を義務づけ、より確実でより大きな削減を実行するべきだと思います。

 現状ではベンチマーク達成が義務づけられていないため、例えば高炉製鉄のように、達成した企業が一つもないような状況が長年続くということも起きています。

 次に、事業者の省エネはトップランナー制度が導入されていません。また、事業所単位の最高水準の省エネ実績も公表されていません。事業所単位でのトップランナー制度を導入し、省エネ対策を強化するべきです。

 その際の指標としては、原単位だけではなく、CO2排出量での評価も行われるべきです。会社単位ではなく事業所単位とするべきは、会社単位にしてしまうと、効率の悪い工場の改善のインセンティブがかかりにくくなるためです。

 さらに、ベンチマーク制度の問題として、業務用の指標がばらばらであるという点が挙げられます。対象が業務部門のさまざまな業種に拡大されているところですけれども、ベンチマーク指標は、業界団体の意向で決められ、算定方法も違い、場合によっては効果がわからないものが採用されています。

 産業部門なら生産量当たり、業務部門なら床面積当たり、運輸部門なら輸送量当たりのエネルギー使用量にするといった、シンプルな統一した指標で比較できるようにしておくことが重要です。

 第三に、省エネ法は気候変動を防ぐ目的がないため、気候変動対策から逆行する政策がとられている点について指摘しておきたいと思います。

 現在、先進国の多くが、石炭火力発電所からの脱却を目指しています。イギリスは二〇二五年、フランスは二〇二三年、カナダは二〇三〇年に既存の石炭火力発電所を廃止する方針を打ち出しました。アメリカの州や都市を含む自治体政府による脱石炭の宣言もふえており、昨年は、いわゆる脱石炭連盟も発足しています。

 一方、日本では、石炭火力発電所の新規建設計画が、二〇一二年以降、五十基にも上りました。世界からは大批判を受けています。一昨年、省エネ法のもとに、火力発電事業者のベンチマーク制度や新規火力発電の効率基準が設けられたので、一定の規制となることが期待されましたが、実態は、現状の石炭火力発電所の新規計画を容認し、既存の石炭火力発電所を温存する制度になっています。

 火力発電の発電効率では、トップランナーだと、LNGコンバインド火力で五四%の発電効率を出しているものもあるということですが、このとき定められたのは、新規計画で石炭火力四二%でした。実質的に現状の大型石炭火力発電所の計画はこれを達成する技術が採用されているため、建設を承認するシグナルになっています。

 また、ベンチマークは、発電所ごとの効率基準を定めるのではなく、複雑な計算をもとに算定した二種類の指標が採用されました。また、燃料に副生ガスやバイオマスなどをまぜれば効率を高く見せかけることができる上、さまざまな企業間の共同実施による達成も可能としているので、もはや古い石炭火力発電所の規制にもならない可能性があります。

 むしろ、石炭火力発電所に関しては、業界団体がみずから掲げている〇・三七キログラム・パー・キロワットアワーというCO2排出原単位を制度に位置づけるべきです。また、将来的には電力部門のCO2排出量はゼロを目指していくべきです。

 最後に、今回の改正案についての意見を述べたいと思います。

 これまでに指摘したとおり、現状の省エネ法は、定期報告で集められた情報の開示がなく、ベンチマーク制度の基準を遵守する拘束力もなく、トップランナー制度も導入されていない現状です。本来は、まずこうした制度強化をすることによって、省エネを更に推進するような改正が必要だと思います。

 また、今回改正案として示された企業連携についてですが、ここで言ういわゆる連鎖化については、個々の事業者の省エネのインセンティブを損ねないようにすることや、事業者単位の情報の収集、そして省エネの継続的な取組につながることを担保することが重要です。本来事業者単位ごとに報告されるべきところが、連鎖化という形で、企業単位よりも更に大きなグループ単位の情報に集約される仕組みとなり、これまで以上にわかりにくくなることが懸念されます。連鎖化が省エネの後退につながらないようにしておくことが重要です。

 また、貨物分野の強化についても、今回の法改正では努力規定にとどまります。ここは、他の業種と同様、報告義務を課すべきではないかと思います。

 以上が、今回の改正案に関する所見です。

 冒頭にも申し上げましたように、省エネルギー政策は、パリ協定を遵守する上でも極めて重要な政策ですし、日本でも、実は、産業分野を含め、活動量を減らさずとも削減ポテンシャルに満ちています。省エネ分野での新しい産業を活性化させるためにも、政策全体の強化に向かっていくことを望みます。

 私からの陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

稲津委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

稲津委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田裕君。

神田(裕)委員 おはようございます。自由民主党の神田裕でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 ただいま参考人の皆様から、省エネ法改正案に対します貴重な御意見をいただきました。早速私から質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 参考人のお話にもありましたとおり、政府は、現在の長期エネルギー需給見通しの中で、二〇三〇年度の最終エネルギーの需要を原油に換算しまして五千三十万キロリットルの削減をした上で、この削減分を徹底した省エネにより達成するとしております。これは、オイルショック後の取組に匹敵するエネルギーの消費効率の大幅な改善、省エネが必要とされるものでありまして、政府は、現在、この目標達成に向けまして、あらゆる施策を総動員して徹底した省エネ対策を進めているところでございますが、その進捗状況につきましては、先ほど中上参考人の資料にありましたとおり、政府によれば、二〇一六年度で約八百八十万キロリットル、一七・四%とされております。

 そこで、参考人の皆様にお伺いをいたします。

 政府がこのような高い省エネ目標を掲げること自体は、東日本大震災、原発事故の発生など、我が国のエネルギーを取り巻く環境の激変を踏まえました目標設定ということで、妥当なものであろうと私は思っております。ただし、進捗率が一七・四%というのは、ちょっと若干低いような、つまり取組がおくれている、そういうような感じもするわけでございますが、参考人の皆様におかれましては、この政府省エネ目標の進捗状況につきまして率直にどのように認識しておられるか、どのように評価しておられるか、参考人各員から改めまして御見解を伺いたいと思います。

稲津委員長 それでは、参考人各員にお答えをいただきたいと思います。

 それでは、こちらから御指名申し上げます。

 初めに、中上参考人、お願いします。

中上参考人 御指摘ありがとうございます。

 確かに、一七・四%ですと、若干、当初想定のスピードを下回っているように見えますけれども、これから徐々に、今回定めました法律の改定であるとか、それから新しい機器への置きかえ、きょうは申し上げませんでしたけれども、ZEB、ZEHといったような非常に思い切った建築物に対する省エネの支援も、経産省だけではなくて、国交省それから環境省挙げてやっております。この辺の数値につきましては、五千三十万のときには余り深掘りができませんでしたので、現実、大分普及が進んでおりますから、こういったものもこれから入ってくるであろう。

 あるいは、そのほかにも、建築物の規制につきましては、もちろん経産省だけではなくて国土交通省も非常に力を入れてくださっておりまして、現状、私もその審議に参加しておりますが、御関係になるような建築業界の方々、設計の方々、あるいは設備の方々、それからプレハブメーカー、総動員して、現実にこれに対応していくにはどういうふうな手順を踏めばいいかというのは非常に細かい検討を進めておられまして、確認申請でこれがクリアしないと建物ができないという非常に厳しい法律でございますから、石橋をたたくようにして対策を講じておられますけれども、極めて順調に業界から受け入れられていると聞いておりますので、このあたりも、この数値の中に明示的には、一部入っておりますけれども、明示的には余り、当時は期待できなかったこともありますので、そういったことを含めますと、これからだんだん加速するものがあると思いますので、私自身は、十分、五千三十万キロリッターは達成可能ではないかと思っております。

田中参考人 政府目標と進捗状況の評価についてのお尋ねでございました。

 私の意見としましては、政府目標は、より高い目標を設定する必要があるというふうに考えております。

 それはなぜかと申しますと、やはり、政府が高い目標を掲げることで、省エネ関係の設備投資等がより盛んになっていく、そうした経済効果が望めるということだからです。低い目標ですと、今の現状でそのまま推移すると、当然、より大きな、大規模な投資をするということを手控えてしまいます。民間の投資を引き起こすためにも、より高い目標が必要だろうと考えています。

 それから、進捗状況につきましては、これは、省エネというものは、どうしても最初はなかなか効果が出にくいという政策全般の共通事項がありますので、これはいたし方ないところがあろうかと思います。ただ、今の政策を総動員したものかどうかということについて、先ほど私が意見を述べましたように、そもそも疑念がございますので、やはり政府のそうした姿勢を政策にしっかり体現していただいて、進捗を加速させるということが重要だろうと考えております。

 いずれにしましても、省エネというのは、経済効果ということを十分に見ていく、特に、地域経済にとっては非常に重要な問題ですので、そうした観点において、国会、政府で御議論いただければ幸いでございます。

 以上です。

万場参考人 ありがとうございます。

 通信販売業界につきましては、非常に利便性が高いということで、先ほども申し上げましたように、売上げが伸びております。ですから、物量を簡単に下げるというわけにはまいらないわけですけれども、先ほど申しましたようないろいろな取組を通じて、省エネに貢献していきたいというふうに思いますし、また、物流に関するだけではなくて、施設の面においても省エネ化ということは進めていきたいというふうに思っています。

 例えば物流センターのLED化でありますとか、あるいは、通信販売はネット販売だけではありません、電話での御注文を受けるコールセンター等もございます。そういうところのLED化とか効率化ということも図っていきたいというふうに考えておるところでございます。

 以上でございます。

矢野参考人 物流部門については、現状の延長線上でやった場合には、この政府の目標値を達成するのは相当厳しいかなというふうに思っております。

 ただし、今、物流においては、発着荷主を含めた物流条件、これを大幅に見直しする、そういう動きが出てきています。これがどこまで進むかによって随分違うと思いますが、それが進むことによって、大幅に改善していくことは想定されるかと思います。

 さらには、長距離輸送ネットワーク、あるいはラストワンマイルのプラットホームをつくる、こういう支援を政府が積極的に行っていく、この辺もやっていけば、相当改善されるかなというふうには思っております。

 以上です。

桃井参考人 ありがとうございます。

 まず、御質問の省エネの目標についてですけれども、こちら、田中さんがおっしゃっていたのと私も同意見でして、もっと目標は高く設けるべきではないかというふうに考えています。

 今、さまざまな研究で、削減の可能性、削減のシナリオというのが示されていますけれども、今ある技術を積み上げても、省エネはもっと大幅に可能である。例えば、今のエネルギー消費量の半分、二〇三〇年までには半分にできるというシナリオもありますけれども、これに対して、政府が出しているシナリオというか、この目標値というのは低いというふうに思っています。

 先生が、あらゆる施策を総動員するというふうにおっしゃいましたけれども、現状、私が先ほどの冒頭陳述でも申し上げましたとおり、本当にあらゆる施策を総動員されているのかどうかというのがこの省エネ法において言えると思います。

 とりわけ、このベンチマークとして定められたものを全ての業界が達成するということを確実に実施していくような義務化をする、あるいは情報を開示して、トップランナーに合わせていくようなトップランナー制度を設ける、こうした今できることをやるだけでも、この省エネ目標に到達することは近いと思いますし、更に目標の深掘りも可能だというふうに考えています。

 ありがとうございます。

神田(裕)委員 ありがとうございました。

 次の質問に移りたいと思います。

 企業による省エネの取組は、国の政策への対応としての側面を有する一方で、経費節減や業務の効率化、生産性の向上、先ほどお話がありましたように、企業の利益に直結する面もございます。その点からすれば、多数の工場や事業所などの施設を有する大企業は、自身の経営の一環として引き続き省エネに積極的に取り組んでいくことが期待されるわけでありますが、他方で、エネルギー投資の余地の少ない中小企業等の大半は、結果として、資本や人材などの点で省エネ取組への対応がどうしてもおくれているとされております。

 その点、今回の改正法案における連携省エネの取組は、中小企業にとっても、ことしから新設されます省エネ税制をあわせて活用することで、大きな省エネ効果を生むものと考えております。

 また、荷主の定義の見直しや、準荷主による省エネの協力についても、中小のトラック事業者による物流輸送の適正化、中小企業にこういった点でよい影響を与える改正ではないかと考えております。

 中小企業による省エネ取組を促進するため、今回の改正法による対応のみならず、さまざまな施策が必要になると考えられますが、具体的には、今後いかに取組を促進していくべきだとお考えでしょうか。改めて各員にお伺いしたいと思います。

稲津委員長 質疑者に申し上げますが、時間がもう迫っておりますので、各員にお答えをいただくのは無理かと思いますので、御指名いただければと思います。

神田(裕)委員 それでは、中上参考人、よろしくお願いいたします。

中上参考人 ありがとうございます。

 中小企業の省エネは喫緊の課題でございますが、御指摘のとおり、専門の技術者とかそういう方が大体不在でございますので、なかなか自前ではできにくい。そういった意味では、中小企業に対する診断といいますか、そういう精査をして診断をしてあげるというような仕組みを強化して、それで正確な情報を与えてあげて行動に移していただく、そういった活動が一番手早い施策ではないかと思います。

稲津委員長 神田君、もしあれでしたら、質疑者はまだ時間が多少ありますので、どなたか参考人に御答弁を求めますか。

神田(裕)委員 それでは、今の質問で、万場参考人からお願いいたします。

万場参考人 私どもの協会のメンバーも、実は中小企業が非常に多うございます。ですから、中小企業に対してどのような対策を講じていくかということは、今後の我々の課題だというふうに思っております。大手企業と連携するとか物流の共同配送などということも含めて、今後検討していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

神田(裕)委員 同じ質問で、矢野参考人からもお願いいたします。

矢野参考人 物流事業者の多くは中小企業ということで、今御指摘のとおりだと思います。

 中小事業者が単に環境問題に取り組もうと思っても、ノウハウがないという問題がありますので、元請となる大手物流事業者あるいは大手荷主企業が指導的に管理していく。環境面から車両を管理していくというのは実際に行われています。これをもっと進めていくことが必要かと思います。

 さらに、東京都などでは環境輸送評価制度というのを実施していて、言ってみれば、星三つとか星二つとか、こういうのを与える制度がございます。これは中小企業も結構とれていますので、こういうところを荷主企業が優先的に使う、そういうインセンティブを持ちながら中小企業の取組を進めていくということも必要かと思います。

 以上でございます。

神田(裕)委員 貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

 経済成長と環境制約の両立、これは大変厳しい道ではあると思いますが、事業者が連携することはもちろん、今後、より一層、私たち国民一人一人が省エネをみずからの問題として取り組んでいかなければならないと思っております。

 時間でございますので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

稲津委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 五人の参考人の先生方、貴重な御意見、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。

 私の方からは、まず、荷主の範囲の見直しについて、各先生方の御意見を伺いたいというふうに思います。

 本改正案では、近年のネット通販市場の急拡大や、それに伴う運送事業者における運送量急増等を背景に、荷主の範囲につきまして、従来の、貨物の所有権を前提とした捉え方にかえて、貨物の所有権を問わずに、契約等により貨物の輸送方法を決定する者を荷主というふうに捉えることにしました。

 我が国のネット通販市場においては、現行法に基づく荷主の適用を受けない事業者も存在し、本改正案によって一定の適用事業者の範囲の拡大が図られることというふうに期待をしておりますが、万場参考人の資料の四ページ、売上高ランキングの資料を先ほどいただきましたが、この中で、現行法で特定荷主というふうに規定されているのは、二番、五番、八番、九番、十二番と、全社ではないんですね。

 やはり、そういう意味では、新しく対象範囲が拡大されて、省エネに資すると思うんですが、先ほども、公平な適用、また、きちんとした解釈基準を示してほしいというふうに万場参考人の方からお話がありました。そのとおりだと思いますし、ただ、今回の拡大によっても、例えばネットショッピングモール等の取引の場を提供しているだけの事業者、ここがかなり大きい、まあ、個別名は出しませんけれども、ここが対象に入ってこない、これで本当にいいんだろうか。

 先ほど矢野先生の方から、着荷主も大事なんだというお話もありました。今回のこの荷主の解釈の変更によって、不公平な事態にならないか、また、もう少しここの解釈を、今後、今回の改正を踏まえて広げていく際にどういった点が問題になるのかについて、各参考人の御意見をいただければと思います。中上先生から。

中上参考人 ありがとうございます。

 もともと、この運輸のエネルギー消費に関する、省エネに関する議論でございますが、どうしてこれは荷主になったかというのは、要は、運送事業者さんが幾ら努力をしても、結局は、その注文、発注形態によってエネルギーに過不足が生じてしまうので、主体的に管理できないということで、やはり荷主さんにそれなりの責務を負っていただこうというのがこの荷主規制が始まった経緯でございます。

 それが、だんだん、詳細に調べていきますと、発荷主だけではなくて着荷主も出てきた。それから、見かけは荷主なんだけれども、実はそれは単なるマネージをやっているだけで、本当の荷主さんは小さい方々になってくるということがございまして、まさに先ほど私が申し上げた、ビジネスモデルが変わることによって、従来の規制の枠組みでは捉え切れなくなった。

 今回は、特に着目いたしましたのは、Eコマースにかかわるところが一番重点課題であったわけでございますが、いろいろ議論もございましたけれども、そういった事業者の方も、準荷主というような形で、この法規制の中に、枠組みの中で協力していただけるというふうな手をとりましたので、これが今回の最大の私たちの成果だったのではないかなと。

 しかし、まだこれから先、いろいろなモデルの変化も考えられますので、そこは、それでまた新たな対応が必要になれば対応していくということになるのではないかと思っております。

田中参考人 富田議員の御指摘どおりだと思います。つまり、どこまで範囲を拡大していくのかというのは、なかなか政策技術的には難しいんですが、ぜひ今回の法の施行を踏まえて、また必要があれば、法改正あるいは政省令の改正等に取り組んでいただきたい。また、委員会の皆さんからも、その旨政府にぜひ御指摘をいただきたいというふうに考えております。

 それからもう一つ、やはり、荷主も重要ですが、今回、実際に配送を行う事業者さんが、大手の流通事業者もあれば、個人で軽トラックなどで運転している事業者などもあります。こうした事業者さんに環境配慮のための支援をしていくことも重要だろうと考えております。

 具体的には、こうしたルート配送等のEV、電気自動車の導入につきまして、やはり重点的な促進策、今は、EVについては乗用車を中心に行われていますけれども、乗用車というのは稼働率が低いわけでございます。一方、ルート配送の自動車は、毎日運転し、夜は必ず戻って充電できる状態になっています。

 ですので、乗用車よりもルート配送の電気自動車化を政府においてはぜひ重点的に進めていただきたい、それがこの流通部門の、末端部門の環境負荷を下げることにもつながっていくだろうと考えております。

 以上です。

万場参考人 先ほども申し上げましたけれども、できるだけ公平性を保っていただきたいということに尽きると思います。

 ただ、このランキングにありますのも、商品によって、重たいものを運んでいるところもあれば、非常に軽いものも運んでいるということで、ただ単に売上げのランキングということになっていますけれども、売上げだけでは判断できないということでございます。

 よろしくお願いいたします。

矢野参考人 今御指摘のありましたいわゆるモール型と呼ばれるところなんですが、実際には、会社によって若干違うんですが、モール型の場合は出店者がみずから物流を管理している場合が多くて、モールを管理しているところが物流には全く関与していない場合も非常に多くなっています。そういうところで、そういうところへ入れるかということになるとなかなか、実際には管理しておりませんので、対象とするのは難しいかと思います。

 ただ、いわゆるそういうモール型の事業者も、今なかなか宅配事業者の確保が難しいということで、そういう業者がプラットホームをつくる、こういう動向が出てきていますので、そういうところが出てきた場合にはそれに対してこれを対象にしていく、こういう考え方は非常に考えられるかと思います。

 以上でございます。

桃井参考人 ありがとうございます。

 少し視点は変わるかもしれませんけれども、私は、省エネ法の中にしっかり環境の視点を入れるべきだという話を先ほど申し上げました。

 例えば、荷主のところにおいても、荷主が、流通をする段階において、輸送のコストを減らすというところでの省エネの効率を上げるというだけではなくて、例えば、その運送時は再生可能エネルギーの電気自動車を使ったりする場合はCO2の排出はゼロになるというようなことがあります。こうしたところをしっかり配慮するような仕組みとして、荷主それからそれ以上の幅、範囲を拡大して捉えながら環境面でも評価していくということが必要なのではないかと思います。

富田委員 ありがとうございました。

 田中先生のEVの補助というのは、ちょっとなかなか視点がこれまでの我々の切り口とは違っていまして、大変参考になりました。ありがとうございました。

 きょう先生方においでいただくに当たって、調査室の方が各先生方のこれまでの論文とかいろいろそろえていただきまして、それを見ておりましたら、田中先生が、昨年ですかね、ガスエネルギー新聞に「人口減と地域エネ」ということで三回にわたって投稿されておりまして、大変勉強になりましたし、その中で、三回目の投稿で、分散エネで地域に収益、地域インフラホールディングに将来性という記事を大変興味深く読ませていただきました。分散型エネルギーが大事だということと、ドイツのシュタットベルケに学ぶべきではないかという御指摘がありました。

 実は、先週十六日の委員会で、立憲民主党の山崎先生はゴールデンウイーク中にシュタットベルケを見てきたという御質問をされていまして、私もいろいろ調査室に協力していただいてシュタットベルケを調べて、その上で、日本でシュタットベルケの仕組みを先行的にやっているところということで、みやまスマートエネルギーの件を質問させていただきました。

 ただ、このみやまスマートエネルギーは、地域分散型エネルギーを活用しようということで会社をつくられて、地域への貢献とか市民サービスとか市民との双方向コミュニケーションも具体的にやられていて、かなりいい形で日本へこの地域再生エネルギーの仕組みを導入したんじゃないかと思うんですが、残念ながら、一年目、一千七百万、二年目、一千八百万という形で債務超過になっていた。ただ、現実問題としては、もともとさまざまな補助金等でこのみやまでは太陽光パネルがかなりの数設置されて、相当再生可能エネルギーで動き出しているということも勉強させてもらいました。

 このスタート時点のやはり地域再生エネルギー会社というのは、資金調達も大変ですし、電源調達も大変ですよね。ここについて、先生はさまざまなところで御意見を書かれているので、今後、シュタットベルケが日本に根づくためにどういった政策が必要なのか、また、どういった点に課題があるからそこを乗り越えていくべきなのかについて、御所見をいただければと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 このシュタットベルケというもの、つまり、地域のエネルギーインフラを提供する会社について、どのように捉えるかということで実は評価は大きく変わってくるだろうと思います。つまり、新電力、地域の電気を地域の電力会社が供給するというふうにエネルギーの観点で捉えると、当然、そのエネルギーの収支だけで評価をしていくということになるんです。

 ただ一方で、これから日本は人口減少社会に向かうことは確実です。特に、多くの大都市ではないところの地方部では、もう人口減少が急速に進行して大きな課題になっています。

 そのときに問題になるのが、実は地域のインフラの維持になってきます。このインフラというのは、電気だけではなくて、ガスとか、それからプロパンもそうですし、水道、交通、さまざまなインフラがあります。これが、一人当たりのインフラの距離が長くなってくるということが今後課題になってきまして、そうするとインフラが維持できなくなってくる。そうすると、もうその地域には人が住めないという非常に大きな問題を抱えてくることになります。

 ドイツのシュタットベルケが非常にユニークな点は、複数のインフラ部門、例えば電気、熱供給、それから水道、そして交通、バスとか路面電車、こうしたさまざまなインフラ部門を共有して、ある部門の収益で上がった利益でほかの部門の赤字を補填するというやり方でやってきている。それが、時代によって、例えば、かつて一九〇〇年代ごろは、交通部門がもうかって、それを電気等のエネルギーに投入してインフラの整備を進めてきた。現在は、エネルギーがもうかって交通に投入するという形で、時代の変化を横にならしつつ、実はインフラを維持していく仕組みとして非常に有効なんだろうというふうに思います。

 そうした考えでいくと、短期的にうまくいった、いかないというよりも、それが長期的な地域のインフラを維持するための取組なのか、それとも短期的なのか、新電力をつくって、耳目を集めると言ってはちょっと言い方はよくないんですけれども、そうした取組になっているのかで大きく評価は変わってくると考えております。

 私が知っている限りにおきましては、みやまスマートエネルギーは、地域のインフラをどう維持していくのかということが視野に入っているやに聞いておりますので、そうした観点でいきますと、やはり中長期的な観点で事業を評価していくべきものだろう。そうした観点でいけば、みやまさんというのは非常に頑張っている事業者ではないかなというふうに評価をしているところでございます。

 以上です。

富田委員 田中先生にまた聞きたいんですが、長野の方のいろいろな取組とか、そういったインタビュー記事も読ませていただいたんです。やはり最初の資金調達に困るというところで大変注目したんですが、収益納付型補助金というのを考えられたということで、なかなか補助金をどう出すかというのは難しいと思うんですが、売上げが上がってきて、出てきたときに返してもらうというような制度なんだというふうに理解しているんですが、ここを地域でうまくやっていくためには、どんな観点からここを進めていったらいいんでしょうか。

田中参考人 ありがとうございます。

 長野県で私が在職中につくった、そうした、現在は正式名称は自然エネルギー地域発電推進事業と申しますが、いわば、例えば二億円とかの水力発電とかを地域の人たちがやるときに、地域の人たちが集めてくる資金だけでは足りないので、そこに補助金を出して金融機関との融資交渉をしやすくするというような補助金でございます。うまくいったら、発電収益から十五年かけて返してもらう。

 これは、やはりもともと、もっと重要なことは、地域で、発電でも小売でもそうなんですが、エネルギー事業に取り組もうという個人や中小企業さんがどんどん出てくるという下地をつくることが一番重要です。この下地をつくるということがまず第一歩にあって、それに取り組むところでやはり資金調達の課題が次で出てくる。

 そうしますと、まず、多くの地域ではまだ下地ができていないということですので、やはり自治体が旗を振って、経産省とか環境省とも協力しながらそうした事業者の育成をしていくということが重要だろうと考えております。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

稲津委員長 次に、山崎誠君。

山崎委員 こんにちは。立憲民主党の山崎誠でございます。

 参考人の皆様には、きょうは本当に貴重な御意見をありがとうございました。持ち時間を十五分いただきましたので、御質問を随時させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まず、田中参考人にお伺いをしたいと思います。

 きょういただいたお話、私どもも、今回の省エネ法の改正については、これ自体は問題はもちろんない、いい取組だと評価をさせていただいていますが、全体像ですよね、省エネを考えたときの全体像として、やはりこれでは不十分であろう。もっと大局的な省エネのプラン、マップを持って、その実績を見て評価しつつ、有効な施策に投資をしていくという段階が必要だろうということで、前回の委員会でも質問をさせていただきました。田中参考人からもそのような御指摘があったと思います。

 田中参考人からは、これは私もそうだなと思うのは、いわゆるデカップリングと言われている、生産を上げる、それからエネルギー消費を下げる、このデカップリングというようなレベルではなくて、逆に、省エネ自体が生産性を上げる、日本の産業を強くする、あるいは日本の産業の復活のきっかけになるんだというすごく前向きな御意見をいただいたと思います。この点、非常に参考にさせていただきたいと強く感じたところでございます。

 私の質問は、自治体の御経験が長くて、自治体にはやはりばらつきが大きいと思います。積極的に取り組んでいるところ、そうでもないところ。想像するに、自治体ごとにいろいろな産業が違ったり構造が違ったりするというのもあると思います。あるいは、地方の都市に行けば、農業が中心の地域もございますよね。でも、そういったところの農業における省エネというのも私は大事だと思うんですが、そういった地域のばらつきをどのように理解をしたらいいのか。そういったばらつきに対応して国の施策というのがあると思うんですが、どういうふうに、そういうばらつき、あるいは地域を、それぞれを支援していくに当たっての施策のあり方等について、御所見があればお伺いしたいと思います。

田中参考人 御質問の点については、大きく二つあると考えております。

 まず一点目は、省エネによる生産性の向上、とりわけ中小企業の生産性の向上について、これを自治体の商工政策としてしっかり位置づけることだと考えております。

 多くの自治体では、省エネというのは環境部門が所管しておりまして、中小企業の省エネというのが一番、すっぽりそこが抜けているというところになっております。ですので、しっかりこの中小企業の省エネの促進を自治体の商工政策に位置づけて、自治体が責任を持って取り組んでいくということが一点重要だろうと考えております。

 二点目です。やはりどうしても、エネルギー価格の変動、そして、時々どうしても安くなってしまうということが中小企業等に投資をためらわせる大きな要因になっています。ここを、やはり環境税等でしっかり価格を上げて、省エネ投資というものを誘発していく取組が国において重要だろう。

 ただ、その分、それが中小企業の負担になってはいけません。ですので、その税収を、例えば、先ほど申しましたように、企業さんが負担している雇用保険の軽減分に充てれば、企業さん自身としてはトータルに出す額は同じということで、中立ということになります。

 ですので、エネルギーの消費を減らしつつ、雇用の負担を減らすというようなやり方で税を上手に活用する、これが国に求められること、それによって、それをまた自治体と中小企業が活用して省エネ投資に励んでいくということが重要だろうと考えております。

 以上です。

山崎委員 ありがとうございます。目からうろこのようなお話をいただいたと思います。参考にさせていただきます。

 私がもう一つ自治体についてお聞きをしたいのは、人材の問題。やはり地域地域をリードしていく人材が大事かなと田中参考人の長野の活躍などを見ていても思うんですが、そのあたり、どうお考えでしょうか。

田中参考人 これも大きく二点あろうかと思います。

 一つは、国等が、今、実際環境省や経産省で行っておりますが、自治体での人材の底上げの取組をより強化していくということが重要だろうと考えております。

 もう一点は、地方の実は国立大学だとか試験研究機関、県とかにも試験研究機関があるんですが、ここで省エネをサポートしていくというのが非常に弱い。ですので、こうしたところでの省エネルギーの研究だとか、あるいは実際に現場に入ってサポートをしていくというような仕組みづくり、これは現在、経産省が実は地域金融機関を使ってやろうとしているんですが、なかなかちょっとうまくいっていないところもあるやに聞いておりますので、よりそのやり方をブラッシュアップして強化していく、そして、そこに大学とか自治体の試験研究機関も巻き込んで、専門家も巻き込んで、みんなで地域で学習しながらノウハウを高めていくという取組が重要だろうと考えております。

 以上です。

山崎委員 御指摘ありがとうございます。

 じゃ、もう一つ、時間が限られるので、感想は短く、御質問します。

 熱の利活用に関する省エネの可能性というのがやはり大変大きいんだろうと思っておりまして、以前、田中参考人の本などでも、例えば建物の熱、環境性能を上げることによって、それは健康増進にもつながるというような視点もいただいたところでございますが、そのあたりを何としても進めたいと思います。

 そのときに、例えば経産大臣とこの間も議論していたんですが、日本の熱の利用の仕方は、例えばドイツとは違うんですよ、インフラの構造も違う、例えば熱の導管がないとか、もう個別の暖房に依存をするんだ、そんなようなお話をされていまして、がっかりした覚えがあります。

 そのあたりの熱の利用に関するアドバイスなどがあればいただきたいんですが。

田中参考人 その点、やはり住宅、建物の断熱、気密化ということが一番重要だろうと考えております。やはり使うエネルギーの総量を減らす。

 この点、実は、私よりも中上先生が一番の専門家でございまして、詳しいことは中上先生にお聞きいただければと思うんですが、こうした住宅の熱効率を高めていく、建物の熱効率を高めるということが一番、極めて重要だろうと考えております。

山崎委員 済みません、中上先生、お聞きしてよろしいでしょうか。失礼いたしました。

中上参考人 いつも熱の話題になるんですが、私、非常に残念に思っておりますのは、先進国の中で、住宅の中に暖かいところと寒いところがあるというような住宅を持っているのは日本だけでありまして、欧米諸国は全館セントラルです。しかし、日本人は、全館セントラルはぜいたくであるというふうに来ていまして、それが今までずっと尾を引いておりまして、一例を申し上げますと、ドイツ、フランスと日本の暖房エネルギー消費の差は、五倍ぐらい差があるんです。ですから、彼らにとっては、熱をいかに省エネするかというのは一番大きな目的なわけです。

 それがあるものですから、なかなか建物の断熱化が進まないんですが、先ほども先生からのお話がありましたように、住宅の断熱性能を義務化するということで進んでおりますので、これからは新しく建つうちがそうしないと建てられないということになりますので、これからは時代が変わってくると思います。

 本当に、そういう意味では、我々の責任でもあるんですけれども、もう少し、より早く住宅の性能を上げておけば、今はとり代が逆にあって、十分いろいろな政策が打てたと思うんですが、今、悔やんでも悔やみ切れない状態であります。ちょっとお答えになりませんけれども。

山崎委員 ありがとうございます。

 続きまして、桃井参考人にお尋ねをしたいと思います。

 御指摘がありました、国民的議論が足りていないのではないかというお話をいただいたと思います。

 省エネに関しては、特に国民全体の協力があって、特に家計部門とか、今ある配送などもまさにそうだと思うんですが、協力が必要だと思います。

 そういった意味で、桃井参考人は、いろいろな消費者団体の皆様のところで講演をなさったり、国民の皆様あるいは主婦の皆様とか、接点もおありだと思うんですが、そういった感覚でやはり国民的議論が足りていないというお話をひとつお聞きしたいのと、あと、国の中でも、経産省が今エネルギー基本計画をやり、外務省が再エネについての有識者会合の提言などをまとめたりしていますよね。環境省も同じだと思います。そういった、国でもいろいろな意見が出ているという状況に関して、御所見があればお伺いをしたいんですが。

桃井参考人 どうもありがとうございます。

 国民的議論が足りていないという御指摘なんですけれども、足りていないというのは、政府の場としてしっかりとした国民の意見を聞いて政策に反映するプロセスが、もう決定的に欠けているというふうに考えています。

 例えば、震災以降に、民主党政権時代にエネルギー革新的戦略というのがつくられるに当たっては、国民的な議論を踏まえた上でということで、さまざまな手法がとられました。そのときには、選択肢を示して、原発の割合、どれぐらいがいいのか、それを国民に問いながら、これからのエネルギー政策を決定していくというようなプロセスを踏んでいたと思います。

 これが最善だったかというと、そうではないかもしれませんけれども、もっとやり方がさまざまあったかもしれませんけれども、少なくとも、そうしたいろいろな人の意見を聞こうということがあり、そして、当初は十万人近くに及ぶような人たちが意見を政府に対してパブコメでも出しているということだったと思います。

 こうした意見をしっかりと踏まえた形でのエネルギー政策を決定していくということが必要だと思っていますし、省エネにおいても、今、先ほど私申し上げたように、なぜか家庭部門に対しては非常に高い目標を課せられているというようなことがあります。

 産業部門はわずかな削減率だということなんですけれども、むしろ、家庭部門で一生懸命一人一人頑張りなさいというだけでは対応できないことがあって、それを求めていくというようなやり方を、もうちょっと議論を活発にさせるためには、今の状況を、しっかりと情報を共有し、それをもとに議論をしていくということが必要だと思いますし、省エネにおいても、もっと産業部門でも、乾いた雑巾議論ばかりが出てくるんじゃなくて、こんなところで深掘りができるんだというような、そうしたさまざまなシナリオを提示した上で議論するということが必要なのではないかと思います。

 それから、もう一つは、国の中でもいろいろな意見が出ているということだったと思いますけれども、やはりエネルギー政策に関しては、先ほども申し上げたように、大きなところ、大事なところ、核になるところというのが、今、経済産業省の省レベルで全て決まってしまっているということがあって、それこそさまざまな意見が出たりしても、全て縦割りの行政の中で、そういう今回の外務省の中での有識者の提言がどこまでそこに反映されるのかというようなところが全く担保されていないというのが問題ではないかというふうに思っています。

山崎委員 時間の関係で、残念ながら最後だと思うんですが、引き続き桃井参考人にぜひお聞きをしたいんですが、お話の中で、省エネにかかわる情報公開、情報開示について、非常に不十分だったというお話がございました。

 私は、本当にこの省エネに対する取組みたいなものは、ESG投資の話もありましたけれども、もっと積極的に公開されて、そういう社会的評価を上げていくということに非常に役に立つと思うので、もちろん開示の方法はいろいろあるにしても、もっと積極的にデータを開示すべきだと思います。

 ちょっと突然の御質問なのであれなんですが、例えば海外の事例などで、日本と海外と比較して、開示の仕方が違うとか、日本のやはりおくれている部分がおありだったので指摘されたんだと思うんですが、その辺の御所見、御知見があればお伺いしたいと思います。

桃井参考人 御質問ありがとうございます。

 海外の事例ということなんですが、ちょっと省エネ全体というよりは、今、私が、特に石炭の問題なので、やっていることが多いということもあって、例えば、石炭火力発電所のレベルでのさまざまな情報開示について、アメリカでどのようにやっているかといいますと、アメリカでは、工場単位で、ほぼリアルタイムに近い状態で、CO2の排出量、それからSOxの排出量、NOxの排出量、こうしたものが全て公開されている、ネットで誰でも見れるというような状況になっています。

 こうしたことと比較すると、今の日本のこの省エネ法のもとに集めているデータが余りにも出されていなさ過ぎて、比べ物にならないくらいひどい状況だというふうに思っています。

 ありがとうございます。

山崎委員 ありがとうございました。

 時間ですので、終わります。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

稲津委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、五名の参考人の皆様、お忙しい中お時間を割いていただきまして、ありがとうございます。先ほどお話をいただいた中身を聞いておりましても、大変示唆に富んだ、またデータベースの情報を提供していただきまして、感謝を申し上げます。

 これから限られた時間ですので、早速質問に入りたいと思いますけれども、まず初めに、矢野参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど提示していただいたデータの中に、トラック輸送の効率化が重要な課題であるという御意見をいただきました。実際のデータといたしましては、一九八八年度は、トラックの積載効率、五七・九%であったのが、二〇一五年度は四〇・五%まで低下をしてしまっているということでありまして、空っぽの状態で走るトラックは少なくなったけれども、一台当たりに載っている量が少ないんだというところについて、課題意識を共有させていただきました。

 非常に、こういうデータを示していただくと、今後の輸送部門での省エネ化を進めるに当たっては、いわゆる連携を通じた合理化というのが重要だというのが認識できるわけですけれども、そもそも、このように、昔積載効率が約五八%だったものが今四〇%まで落ち込んでしまった、その原因というのがどういったところにあったのか、御所見を伺いたいと思います。

矢野参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、若干、この数字で、途中で調査方法が変わったということがあって、単純に、ここまで落ち込んだかというのはちょっと比較できないところがあります。

 ただ、いずれにせよ、積載効率が悪くなっていることは間違いありません。これは、いろいろ背景があります。実際に、この十年間あるいは二十年間の間に、非常に多頻度小口の動き、そして、その背景には、リードタイムを短く、つまり、注文してすぐ持ってこいとか、あるいは商品の種類が非常に多くなったとか、いろいろな背景があります。

 これは、言ってみれば、消費者にとっては結構便利な生活なんですが、これが物流に非常に負荷をかけているというのは現実です。非常に短い時間で持ってこい、すぐ持ってこい、時間どおりに持ってこい、少量で持ってこい、こういうことが輸送効率に非常に大きな影響をもたらし、それに、要求があるので、それを全部のんできたというのが今の物流の状況かと思います。

 そういう意味では、これはドライバー不足でもそうなんですが、こういう状況が非常に物流に全部、今まで負荷を与えて、それが効率性を悪くしてきた、こういうのが現実だと思います。

 これは省エネの方もそうですし、ドライバー不足ということも含めて、今までの物流のやり方がもう限界に来ている。それに対して、もうちょっとやり方を変える。これは、もしかすると消費者の消費のあり方も少し影響してくるとは思うんですが、やはり全体で効率をよくする、こういうことをやはりみんなで考えなければいけないというふうに私は思っております。

 ありがとうございます。

浅野委員 ありがとうございます。

 もう一問だけ、矢野参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思いますが、同じく先ほどの資料の中で、過疎地におけるトラックの走行状況と都市部における状況の差を御説明いただきました。

 やはり、これから、地方においては特に高齢化が進む世の中になってまいりますと、いわゆる通信販売等を活用した購買というのがもっとふえていくのではないかというふうに見通されておりますけれども、やはり、国の省エネの施策を考えるに当たっては、空間的な状況、違いというのも意識しなければいけないというふうに思っております。

 そこで、お伺いしたいのが、もし御存じであればでいいんですけれども、今、輸送分野でエネルギーが消費されている、その内訳を見たときに、都市部での消費が多いのか、地方のこういう過疎地での消費が多いのか、感覚的でも、もし御存じの範囲でお答えいただければと思います。

矢野参考人 今の御質問は、すぐにちょっと答えられないのですが、量的にはやはり都市部での物の動きが多いので、トータルでは都市部の方が圧倒的に多いかと思います。ただ、先ほど申し上げたように、一個当たりということになると、あるいは荷動き一件当たりということになると、地方部の方が圧倒的にエネルギー消費は大きいかなというふうに思います。

 ちょっと御質問に関連するんですが、こういう過疎地において、この宅配という動きだけではなくて、例えばバスと一緒に動かす客貨混載とか、あるいは見守りサービスと一緒にやる、こういういろいろなラストワンマイルサービスをくっつけて、全体として効率的にやっていく。これは、サービスをよくするということにもなりますし、省エネということでも非常に効果があると思います。その辺の施策が、今後非常に過疎地域においては重要かと思っております。

 以上です。

浅野委員 ありがとうございます。

 それでは、続きまして、万場参考人と田中参考人の方に御質問させていただきたいと思います。

 今回の法案の中身は、輸送部門と産業部門と、二つの部門についての見直しがされる予定でして、産業部門では、特にバリューチェーン全体を通じた複数の事業者間での連携した省エネの取組というのに対しても評価をしていこうというように見直しがされていく予定であります。

 ただ、そこでちょっと難しさを感じておりますのは、これまで一つ一つの会社が単独で申請をして評価を受ければよかったものが、連携をするということになりますと、全く資本が別の会社さんと一緒にこういう作業をしなければいけなくなるということで、この連携そのものに対して難しさがどこかで発生するんじゃないかというふうに見通しが持てます。

 そこで、お伺いしたいのは、万場参考人に関しては、複数の業者で連携をする実際の難しさというのがあるとすればどういったところにあるのか。また、田中参考人に対しては、こうした取組を地域レベルでやろうとしたときの難しさ、こういったところの課題を御提起いただければと思います。

万場参考人 省エネに関する具体的な連携ということでしょうか。

 まず、連携につきましては、大中小さまざまな企業が協会の中にもありまして、大きさによる違いというものもありますし、また、取り扱っている商品によっても違いがあります。いろいろな通販の形態もございますので、そういった意味で、なかなか連携が進まないということもあろうかと思います。

 ただ、共同配送の試みとか、その辺については、先ほど申し上げました物流委員会等についても課題の一つとしていろいろと情報交換してまいっておりますので、具体的な取組は、まだ実際にこことここが共同配送していますというところまではいっておりませんけれども、できるだけそういった形の共同の取組を検討していきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

田中参考人 地域での難しさについてのお尋ねでした。

 地域におきましては、大都市よりもやりやすい面が一つあるというのと、もう一つ逆に、大都市より難しい面があるということについて御指摘をさせていただきます。

 一つは、大都市よりも有利な点は、もともと地域、例えば地方都市とかの事業者さんというのは、皆さん、横で、違う業種でも顔の見える関係を構築しています。ですので、今までも、例えば運送会社と荷主さんとかでも、日ごろから結構密接にコミュニケーションをとっている例が非常に多くございます。特に商工会議所とか商工会、そうした場が、本当に実のあるといいますか中身のあるつながりをつくっていて、これは有利に働くというかやりやすさに働くんだろうと思います。

 もう一方、やりにくい点、難しい点というのは、先ほど矢野参考人への御質問にもありましたが、やはり空間的な難しさ。つまり、広いところにまばらにさまざまな施設とか供給すべき先があるというのが難しいところはございます。こうしたところは、やはり、例えば、先ほど富田委員からの御質問にあったシュタットベルケのような、インフラを地域で保持していく仕組みの中に物流インフラというものも一つ入れていくということも考慮されてしかるべきだろうと考えております。

 特に、農山村の町や村におきましては、そこの物流インフラというのは非常に、恐らく実際、現在でも、民間事業者においてもコストが高い部分だろうと思います。そうしたところは、例えば、そうした地域のインフラ会社が一手に引き受けて、複数会社のものを同時に供給していく、そういうようなやり方もこれからは考えられてしかるべきで、この法案がそうしたことを後押しする一つの力になればいいのではないかと考えております。

 以上です。

浅野委員 ありがとうございます。

 それでは、続きまして、中上参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 中上参考人は、これまで、経産省資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会の省エネルギー小委員会の委員長もされておりまして、これまで、政府の中のさまざまな議論を見てこられたというふうに認識をしております。

 昨年の七月にこの省エネルギー小委員会で示された省エネルギーに対する意見書の柱は、三つあったというふうに記憶をしてございます。一つ目が省エネ投資の促進、二つ目が運輸部門の取組の強化、そして三つ目が電気需要の平準化対策というふうになっております。

 この一つ目の省エネ投資の促進というところについてちょっとお伺いをしたいんですが、中上参考人は、これまでも、委員会の中などの発言をちょっと議事録を見せていただきますと、ビッグデータですとかIoT投資、データの利活用による省エネの取組の重要性について、幾度となく触れられておりました。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、この省エネの取組の中におけるビッグデータ、データの利活用の位置づけというものについての御所見をお伺いできればと思います。

中上参考人 ありがとうございます。

 非常に的確な御指摘でございまして、これからは、AI、IoTが間違いなくあらゆる場面で普及してくると思いますけれども、省エネで一番難しいのは、今どうやってどのぐらいエネルギーが使われているかという、この実態をきちっと把握しておかないと、省エネの計算ができないんです。新エネルギーはつくった分だけ足し算でいいんですけれども、省エネは引き算ですから、どこから引いているか。すなわち、現状がきちっと精査できなきゃならない。

 ところが、その現状のデータをとろうとすると、膨大な人と物と金がかかります、今の手法では。ところが、AIとかIoTというものが普及してくれば、これは恐らく相当、簡便にと言ってはなんですけれども、ビッグデータの収集が可能になります。

 そこで、そういったものに期待したいというコメントを幾つかしてきたわけでございますが、ただ、最近、その問題につき合っておりますと、一番難しいのは、今度はプライバシーにかかわるデータの秘守性といいますか、こことの問題が絡んできますので、これを同時並行的に先にきちっと詰めておかないと、せっかくデータがあっても、今度は利活用するときにストップがかかってしまう。

 先ほど桃井参考人の方からもデータの開示のお話がありましたが、必ず通らなきゃいけない壁なものですから、この辺につきまして、ぜひ先生方に御支援を賜りたいと思います。

 先ほどの田中参考人のことにちょっと私が補足しますと、そういう連携をする場合には、コーディネーターといいますか、やはりそういう立場の方がいらっしゃらないと、企業だけではなかなかいかないと思います。恐らく大量のエネルギーを何らかの形で使うような場面になると思いますから、そうすると、電力会社であったり、ガス事業者であったり、石油事業者であったり、そういうプロが入って、それでコーディネートしながら進めていくという形でないと、企業対企業だけでは、あるいは役所だけじゃなかなか難しいんではないかと私個人は思っております。

浅野委員 ありがとうございます。

 次が最後の質問になりますが、引き続き中上参考人の方にお伺いをできればと思っております。

 省エネルギー化というのは今回で終わりではなくて、今後もずっと続く取組だと思っております。やはり、今回のこの連携を中心とした施策もどこかで限界がやってくると思います。そうなってきたときに、次のステップというのを常に見越しておかなければいけないと思うんですけれども、そこで鍵になるのが消費者行動になっていくと思います。

 この省エネ関連法案のこの先も不断の見直しをしていくという前提でお伺いをしたいと思うんですが、消費者行動による省エネの取組について、中上参考人は行動経済学の視点からさまざまな御発言をされておりますけれども、そこの部分について、省エネの取組の今後に向けた御見解を最後にお伺いして、終わりにしたいと思います。

中上参考人 ありがとうございます。

 消費者行動が最後の決め手だと私も常々思っておりまして、ただ、日本もそうではないかと懸念するわけでございますが、海外に行ってお話を聞きましても、一般の消費者の方々の約八割はほとんどエネルギーには興味がない、関心がない。幾ら積極的に働きかけても、二割の方は非常にきめ細かな対応があるけれども、あとの八割の方はほとんど反応がなくて苦労しているとおっしゃいましたけれども、日本でもそうではないかと思います。むしろ、そういう形が、一般の方々がほとんどエネルギーに関心がなくても社会が動いていく方が本当はいい社会だと私は思いますので、それもあり得るかなと思っております。

 そういう意味では、消費者にどうやってきっかけを与えてエネルギーのことをもう少し考えていただくか、興味を持っていただいて、省エネ、省CO2に努めていただくかということで、その行動経済学というのは、ある意味で一つの突破口になるんじゃないか。それで扉が少しでも開けば、そこから進んで、より細かい情報、丁寧な情報をアクセスしていけば、きっと消費者行動は大きく変わってくれると思いますので、まさに、今まで余り手がつけられてきませんでしたけれども、消費者行動とエネルギーに関しては、やはりもう少し深掘りしてみたいと思っています。

 私ども、経産省と一緒に北陸電力の管内でやってみましたけれども、わずか二カ月ぐらい、情報をちょっと、請求書とともに、おたくと同じような御家庭と比べると、おたくはちょっとエネルギー消費が多いですねというのを出しますと、翌月からすぐ一%、二%下がってくるんですね。もちろんほとんど行動で変わっているわけですから、それをもう少し深掘りしていくと、かなりな可能性があるなと思っておりますので、ぜひ、先生方にも後でバックアップしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

浅野委員 ありがとうございました。終わります。

稲津委員長 次に、田嶋要君。

田嶋委員 無所属の会の田嶋要でございます。

 きょうは、五人の委員の先生方、ありがとうございます。大変示唆に富んだ、いろんなヒントをいただいたというふうに思います。

 経済産業省の審議する法案というのは、ほかの委員会と若干性格が違うようでございまして、よく、かつて誰かが言われたそうでございますが、パイを分配することを考える役所が多いのに比べて、パイをふやすことを考える唯一の役所だというような話も聞いたことがありますが、違う言い方をすれば、経産省の法案というのは、意外と反対はしにくいんですね。ただ、反対はしにくいけれども、どの程度評価できるかが微妙だという、田中さんも先ほどそんなようなことをおっしゃったわけでございます。

 そこで、きょう、もういろいろ質問を出されておりますが、改めて、もし、こういう法律をつくってほしい、今欠けている、今回の提案もペケではないけれども余り評価できないかもしれない、自分だったらこの法律を最初につくりたい、こういう御提案があったら、それぞれ、先生方から一言、御提言をいただきたいというふうに思います。

中上参考人 大変難しい御質問で、もう少し、一通りして答えられればいいなと思ったわけでございますけれども。

 実は、何度も繰り返しになりますけれども、現状の状況がよくわからない中で、わかった情報の中だけでと言った方がいいかもしれません、そこでいろんな施策を今講じているという限界があるわけでございますね。それを、より裾野を広げるという意味においては、あらゆる知恵を総動員して、現状どう使われているかということをきちっと押さえた上で、そこからスタートが本当にあるんだろうと思います。

 省エネルギーというのは、時々誤解されるんですが、節約、我慢というふうに後ろ向きに捉えられるんですけれども、最近の若い方がポジティブにとられていると聞いておりますけれども、我が国の省エネ法は、省エネ法というのは正式名称じゃなくて、エネルギーの合理的利用に関する法律と言っているわけですから、エネルギーを合理的に使うというのは、常に真なわけですね。合理的に使われているかどうかをチェックしよう、すなわち、現状がどうなっているか。それを、これは膨大な統計が必要になったりするわけですね。統計調査というのは物すごくお金がかかりますので、この辺が法律となじむかどうかは別にしまして、ぜひそういうふうなデータ整備に関する御支援を賜れば、よりもっと深掘りした、よりきめの細かい御提案が幾つもできるんじゃないかと私自身は思っておりますから、ぜひよろしくお願いいたします。

田中参考人 私の場合は、税です。

 一番省エネで大事なこと、それは、省エネを投資で行って、経済の活性化に結びつけるということです。としますと、やはり価格を変える。つまり、エネルギーを使うこと、化石燃料を使うことによって、それが多くのコストがかかる、だから、それを下げるために投資をしようというようなことが働く。こうした税。今でいきますと、温暖化対策税の税を大幅に上昇させるということが重要だろうと思っております。これは、公共政策では経済的手法と呼ばれます。この経済的手法が今の日本には必要だと考えております。

 以上です。

万場参考人 余り大それたことは申し上げられませんけれども、国民という名称を法律の頭につけるとか、プレーヤーはそれぞれ、私も国民の一人ですけれども、一人一人がいかに省エネを図っていくかという自覚を持ってやっていかなければいけないと思っています。

 業界ももちろん取り組みますけれども、一人一人の生活においても取り組むという意味では、国民という名称をつけていただいて、そういう法律になったらいいのではないかというふうに、ちょっと済みません、大それた申し上げ方でございます。

 ありがとうございます。

矢野参考人 物流については、これだけ効率化がおくれている、その背景は、やはり情報化がきちんとされていないというところだと思います。非常に物流については情報がデータ化されていない、そういうような非常にアナログ的な情報で動いている場合が多いです。そこをいかにデジタル化していくか、そして企業間で情報を共有化する、それによってさまざまな形で平準化や計画化が進んでいくと思います。それらのデータを蓄積し、さらにそれを、AI等を使うことによって相当の効果が出るのではないかと思います。

 そういう意味では、取引情報というのは秘密なんですが、物流情報は共有化していく、そういう形で進むことが重要かと思っています。

桃井参考人 ありがとうございます。

 今、イギリスでは気候変動法という法律ができております。この法律に基づいて、カーボンバジェット、つまり炭素予算、これから排出してもいい、一・五度から二度未満という、気候を保護するために必要な排出枠を、国の中でもカーボンバジェットという形で定め、排出量を決めて、将来的に段階的に減らしていくということをまず決め、その上で、排出量取引制度とか炭素税とか、こうしたさまざまな実効ある仕組みを導入していくというような法律ができています。

 実は、気候ネットワークの代表は弁護士でして、この法律を全部日本語に訳しまして、二〇〇九年に気候保護法という形で、我々NGOとして提案していたことがあります。これが、民主党政権になったときに温暖化対策基本法として上程されたという経緯があったんですけれども、残念ながら、その法案は廃案となってしまいました。今、改めて、こうした気候変動を一番上位に置いたような法律の仕組みというのが必要ではないかというふうに思っています。

 それで、先ほどイギリスの例を挙げたように、カーボンバジェット、これから排出していいCO2の量を決め、段階的に削減していくということを徹底させるために、エネルギーの転換を進め、そして省エネの徹底化を進め、それからそれに必要な施策を導入する。その中には、炭素税をかけたりして、税制をもとに対策を更に強化するというようなことが必要なのではないかと思っていますし、そのためには、徹底したリスク評価、情報開示、こうしたことも必要なのではないかと思っています。

 ありがとうございます。

田嶋委員 ありがとうございます。

 法案等をこれから考えるときの参考にぜひさせていただきたいと思います。

 それでは、中上委員にお尋ねをしますけれども、先ほど非常に印象的というのは、正直に、これまでを振り返って若干残念だったみたいな御印象の御発言をされました。

 政府の中でも影響力のあるお立場であろうと拝察するわけでございますが、私も同じような思いを共有しておりまして、三年前に建築物省エネ法という特別法ができましたね。そのときも大臣に質問もさせていただきましたが、何と日本はおくれてしまったのかということに愕然としながら、いろんな提案をしましたが、ほとんど聞き入れられずに、そして三年がまた過ぎて、二〇二〇年はあとすぐそこまで来ているという、そんな感じでございますが。

 あえてお尋ねしますけれども、なぜそういう後悔をしなきゃいけないことになってしまったのか。三年前、五年前の中上先生が、今だったらこういうことを更にやるべきだったというふうな、もし述懐があれば、シェアをしていただければと思います。

中上参考人 建築物省エネ法で、省エネ法とは離れて今度は新しい法体系を組んでいただいているわけでありますが、建築基準法に準ずる法律に相当するわけでございますから、担当の省庁としては、その法律の意味が、建築基準法というのは人命にかかわることで全部法律が成り立っておりまして、省エネルギーというのは直接的に人命に影響がないじゃないかと。私は、地球がだめになったら全部だめになる、もっと大きいんじゃないかという話をしたことがあるんですけれども、そういう意味で、法律の位置づけが非常に難しかったということが一つあると思うんです。

 もう一つは、先ほど来申し上げていますように、省エネ基準を規制にすることによってどの程度省エネが実効性が上がるかというと、暖房の水準が非常にお粗末なものですから、当初計算したような成果はなかなか得られないので、だから、社会的に説得するのが非常に難しかったということであります。

 私は、議論の中で、それはそういう流れがあるかもしれないけれども、海外の例を見ておりますと、今、イギリス等で何が起きているかというと、弱者、いわゆる経済的に非常に苦しい方々が、この時代になって、暖房ができないために、逆に、日本の熱中症のような形で死者が出るということで、貧困者対策として、非常に、今、既存の住宅の省エネ改築をやっておられるわけですね。

 ですから、日本もそのまま放置しておきますと、住宅の寿命は長いですから、二十年、三十年後に全く同じような悔いを残すことになるので、むしろ、そういう弱者対策のためにも最初から省エネを担保したような住宅にすべきじゃないかということで、これは国交省の方々とも意見が非常に合いまして、今おっしゃるように、二〇二〇年に向けて、鋭意現場で調整中だそうでございまして、幸いにして、新しい法律に移行した場合にも、建築基準法に準ずる建築の書面審査が、さほど時間をとらなくてもできるような方向でいけそうだということが見えてまいりましたので、恐らく、近いうちに公表されて、そのスケジュールが実行されていくんだろうと思って私も期待しておりますので、ぜひお待ちください。

田嶋委員 もう一点だけお尋ねしますけれども、当時、一番反対しているのは、現場の工務店さんたちが、新しいものに挑戦するのが、したい人もいるけれども、すごく抵抗が強いという話を聞いて、ちょっと、工務店さんの商売が何倍にも大きくなるんじゃないかと私なんかは期待して、ドイツなんかがそういう結果を出していますから、新築よりむしろリフォームだということでやったんですが、その辺というのは、この三年間で大分変わってきましたですかね。二〇二〇年、何か先送りされるんじゃないか、あしたもそれを取り上げようと思っているんですけれども、そんなようなうわさもちょっと聞くものですから、中からごらんになっていて、大分この三年間で改善されていますか、大丈夫ですか。

中上参考人 その検討委員会の委員として参加しておりますけれども、いわゆる現場の大工さん、工務店の方々も、従前とは随分意識が変わってこられたようでして、そちらからの大きな反対といいますか、アゲンストの風はなかったように、私、実感しておりますので、どうぞ御期待ください。

田嶋委員 安心しました。

 運輸の方で、お二方、万場委員と矢野委員にお尋ねしたいと思います。

 確かに、ITとかが足りない、先ほどの情報化。それでどんどんこれから頑張って高度化していただければいいとは思うんですが、ただ、行き着くところ、私は、どこまで便利さを求めるのかという側面もあって、最近、実は、経産委員のメンバーの中でも、二十四時間のビジネスなんて、もうやめていく方向にした方がいいんじゃないかというような意見も出るぐらい、経産委員の中ですよ、厚労委員じゃないですよ、経産委員の中で、そういう時代になってきた。

 スローフードやミニマリストや、いろんな言葉が出てきておりますし、当然、レジでレジ袋は要りませんよというようなことは普通なことになってきているとなると、究極的には、私は、先ほどから御指摘されている、再送というんですか、再送はゼロにするように持っていくようにしなきゃいけない。届けに行くときに、当然いつごろということを聞いて届けるのが、一発で届くのがいいですが、その人が何らか急用が入るようなことはもちろん多々あるし、そもそも、いないのをわかっていてそういう時間の指定をする場合だってあるわけなので、もうそれは、二回目以降はなくする社会に私は将来すべき。行って、いなかったら、どこかにためておく。あとは自分でとりに行く。そのぐらいで十分じゃないかという感じがするんですが、いかがですか。

万場参考人 通信販売業界がいろんなサービスをつくるに当たりましては、当然、消費者からの御要望とかニーズがあって、そういう対応をしてきたという経緯があろうかと思いますけれども、ここに来て、やはり、余りにも過剰なサービスをやっているのではないかとかそういう御批判、あるいは自己反省みたいなものもありますので、調整の段階に入ってきているのかなというふうに思います。

 特に、お届けの時間についても、もう早く、早くということで、お届けの配送日を競争するみたいな、そういうことも過去にございましたけれども、でも、ゆっくり届いてもいいという方もいらっしゃいますので、お客様のそういうニーズ、いろんな選択肢を用意して対応していければというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

矢野参考人 御指摘のとおり、再配達について、例えば有料化しようとか、そういう議論などもあります。今までのサービスのやり方というのが、無料で、そして、ある意味では非常に、利用者が要請すれば何でも受ける、こういう形で動いてきたんですが、御指摘のとおり、やはり、今まで以上に、サービスを受ける以上は有料化、あるいは、そのサービスと、それに対する、どれだけ負荷がかかったか、そこをきちんと明確にする、いわゆるメニュープライシング的なものが今後必要かなというふうに思っております。

 以上です。

田嶋委員 最後に、桃井参考人それから田中参考人に手短にお尋ねしたいんですが、消費者にどう訴えるかというときに、先ほど桃井さんからは、産業界の方が甘いんじゃないかということをおっしゃっておりますけれども、私は、消費者に対してのアプローチとしていろいろあるのかなと。

 キロワットアワーイコール円みたいな、ドイツにお住まいの方の御著書なんかも拝読しますと、あるいはイギリスの報告なんかを同僚委員から聞いたときに、二つありました。

 一つは、例えば、エアコンなんというのは、リモートの電力会社が五分とめちゃっても使っている人はほとんど気づかない、気づく人はほとんどいない。だから、そうやってもう勝手に供給側で需要側をコントロールすればいいんだと。大変、やはり目からうろこみたいな感じがしましたし、多分そうでしょうね、今エアコンがとまっているか動いているかなんて誰も意識しませんからね。だから、人間の鈍感なところをうまく利用した、そういうこともこれから考えるべきではないか。

 それからもう一つは、この町で一番古い冷蔵庫を探せプロジェクトというのがあるそうですね、これはキロワットアワーイコール円に書いていましたけれども。そうすると、みんなが、何か賞金つきで、自分の冷蔵庫は何年物かを調べる。一番古かった人には賞金が与えられるとか、最新の冷蔵庫が無料でもらえる。そういうゲーム感覚で大衆を動かしていくようなアプローチがおもしろいんじゃないか、これは自治体とかでやるべきなのかもしれませんが。

 こういった、さまざま考え得ると思うんですが、その辺に関して、もし御意見、御提言があれば、お二方からいただきたいと思います。

稲津委員長 それでは、順次伺いますが、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

桃井参考人 ありがとうございます。

 先ほど中上先生のお話の中に、大体二割の人は一生懸命やるけれども、八割の人は何か仕組みの中に乗っかっているというような形が自然なのではないかというような話がありました。

 一般の人たちに大きく広げていくためには、やはり価格で誘導するとかといったような施策が必要だと思いますし、そのために税の導入、これが一番かなめになるのではないかと思います。

 以上です。

田中参考人 私は、今の桃井参考人の意見の上で、リアルタイムのエネルギー市場をしっかりつくるという経済的な取組、市場の取組をつくることが重要だと考えております。すなわち、電気が高いときには電気を使わない、電気が安いときに電気を使う、そういったような市場をしっかりこれから日本で整備していくことが重要だろうと考えております。

 以上です。

田嶋委員 どうもありがとうございました。

 以上です。

稲津委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、中上参考人、田中参考人、万場参考人、矢野参考人、そして桃井参考人、お忙しいところ、貴重な御意見をありがとうございました。

 早速伺いますが、まず桃井参考人に伺いたいと思います。

 この問題でも、EUなどでいいますと、やはりある意味、日本よりも高い経済成長をしながらCO2の削減をし、そして低炭素、省エネ社会へと進んでいるというふうに思うんですけれども、どういう観点でEUではやっているのかなと。

 気候ネットワーク、京都議定書が採択された一九九七年の翌年から、もう二十年間にわたって活動されていて、市民の視点と、そして、私もCOPの会議でも御一緒させていただく機会がありましたけれども、特に二十年間活動されている気候ネットとして、EUなどでの取組で経済成長とのかかわり、どんな観点というのが大事だなと感じていらっしゃるか、ございましたら、お答えいただきたいと思います。

桃井参考人 ありがとうございます。

 ちょうどきょうお配りさせていただきましたこちらのパンフレットの方に、ドイツと日本のGDPの伸びと温室効果ガスの推移というのを示したものがあります。

 EUの中でも、とりわけCO2の削減でかなり成果を上げているというような国の一つがドイツだと思います。

 やはり、高い目標を掲げて、そしてそれに向かって大幅な削減を目指していくというようなところがまず第一にあると思いますけれども、これをしっかりと産業の中に組み込んでいく、あるいは、地域経済の中に組み込んでいくような仕組みを取り入れているというところが、ドイツの中でも先ほどシュタットベルケの話などもありましたけれども、きちんと地域の中にお金が落ちていくような仕組み、こうしたものを取り入れることによって、経済成長そしてCO2の削減というのを両立させているのではないかと思いますし、日本は、むしろ削減は目標が低く、そして経済成長も若干は伸びているもののドイツほどではないというような状況で、それが逆転しないことを望むばかりです。

笠井委員 ありがとうございました。

 更に伺いたいと思うんですけれども、冒頭に桃井参考人が、現在パブコメ中のエネルギー基本計画について述べられました。

 この見直しとの関係なんですけれども、世界は今、パリ協定のもとで脱炭素社会の早期実現に向けて、原発そして化石燃料から、省エネ、再エネということでダイナミックにシフトしている状況があると思います。ところが、日本ではそれに逆行してということで、脱炭素という名目で原発の再稼働あるいは高効率の石炭火力を進めるという方向が強まっているということでありますが、やはりこの点では、原発ゼロという問題そして省エネ、再エネへと抜本的転換が必要だと考えております。

 そこで伺いたいんですが、エネルギー基本計画では、原発については四年前と同様にベースロード電源に位置づけられて、二〇三〇年の電源比率でいうと二〇%から二二%という目標が変わらないままになっている。そういう中で、いまだにCO2削減のためにもベストミックスとして原発が必要という議論がございます。それに対して、いろいろな議論がありますが、原自連、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟の吉原会長などは、事故が起きれば国土消滅の危険があって、とてつもなく危険な発電装置であり、コストも極めて高い原発はベストミックスに入れるべきではないという見解も言われていますが、桃井参考人、この点での御意見、いかがでしょうか。

桃井参考人 御質問ありがとうございます。

 これも、先ほど配らせていただいた原発とエネルギー問題を考える十二の疑問という中の一番目の質問のところで、気候変動対策として原発が必要なのではないんでしょうかということに対しての回答を含め、書いているんですけれども。

 先生おっしゃりますように、原発の問題というのは、エネルギーの問題とは別にさまざまなリスクがあって、福島であれだけの大きな事故を起こし、人々にとって極めて危険だということが明らかになって、核のごみなども排出し続ける、その処理すらまだ何も決まっていないという状況の中で、使うべきではないと思っています。

 そもそも気候変動対策になるのかという点で見たときに、原発を今までどんどんどんどんふやしてくるという状況の中で、あわせてつくられてきたのが石炭火力発電所だったと思います。原発に一たび何か事故があれば、それを補うために同じような規模の石炭火力発電所をバックアップ電源として動かさなければならないというようなことがあって、結果的にはCO2の排出量が増加するというような方向に動いてきていたと思います。

 ですので、もう今や再生可能エネルギーのコストがどんどん下がっている中で、再生可能エネルギーの方にシフトしていくことこそが真の気候変動対策だというふうに言えるのではないかというふうに思っております。

 以上です。

笠井委員 省エネをもう一点なんですけれども、情報開示の必要性、各参考人からもありました。桃井参考人もそのことを繰り返し強調されていると思うんですが、やはり、工場の熱配管の保温材の劣化だけでもエネルギーの一〇%を損失するという試算もあります。そして、老朽設備の更新だけでも大きな省エネが期待できる。使用が効率的でない例もあるということなんですけれども、しかし、省エネ法の報告内容というのは、国民に公開されない。それを公開という点では、業種内の情報、対策、目安が不明ということでいうと、やはりエネルギー消費量の情報というのは、会社単位それから工場単位、プラントごとに出せるというふうになると、より省エネを進めることができるんじゃないかと思うんです。

 そういうことを含めてなんですが、経産省は、産業界でいうと、最大限の努力をしているので省エネ対応というのの深掘りというのはなかなか大変だ、困難だというふうに言っているわけですけれども、この点について、桃井参考人、いかがでしょうか。

桃井参考人 ありがとうございます。

 実は、ここの、きょう配らせていただいたペーパーの中に、五ページ目、図六、高炉製鉄の事業所ごとの生産量当たりの燃料消費量、企業別に色分けということで示させていただきました。これは、現在は省エネ法で情報公開されていないので、この情報はわからなくなってしまったんですけれども、二〇〇六年のときまでは、石炭年鑑というところにデータが開示されていました。事業所ごとの生産量当たりの燃料使用量、これは同じ色のところが同じ会社に当たりますけれども、同じ会社であっても、事業所によって単位当たりのエネルギー消費量が違っているということがわかります。

 ですので、トップランナーを目指していくという形をとる上では、しっかり事業所ごとに情報を開示していき、みずからの位置を、まずは立ち位置を知るということと、この高い水準を目指すことを法的にきちんと位置づけるということが必要なのではないかと思います。

笠井委員 次に、矢野参考人に伺います。

 物流の問題ということでお話がありました。一点伺いたいと思ったのは、もともと物流業界は、多重の下請構造のもとで、トラックドライバーの方の長時間の拘束や、あるいは過密労働が問題になってきたと思います。

 省エネ法の改正案では、荷主規制の強化、それから準荷主への努力義務というのが盛り込まれているわけでありますが、物流を支えている、あるいは支える労働者の方々の労働環境の改善というのはあわせて不可欠になってくるのではないかと思うんですが、物流問題の専門家として、この問題についてはどういうふうに見ていらっしゃるでしょうか。

矢野参考人 今、ドライバー不足問題というのは非常に深刻になっています。これは需要と供給のバランスの問題なわけですが、いずれにせよ、若い人がドライバーになりたがらないということで非常に高齢化し、そして、その背景としては、今御指摘のあったように、非常にきつい労働とか労働時間が長い、あるいは作業内容が非常に厳しい、こういう背景があるかと思います。ここの部分を解決しないとなかなかドライバーを確保できない、こういうことですので、これから物流業界ではこういう問題を解決しない限りは本当に物が運べない、こういう状態になっていると思っております。

 そういう意味で、今さまざまな形で、効率化という面もありますし、それから、今の労働環境をよくする、こういうことで、非常に、各企業、今まで余り考えなかったところがいろいろな施策をやろうとしている、そこに期待するところですが、そこはもっと政府なども後押しする。

 そして、このこと自体は、非常に省エネと結びつくところが結構あると思います。今まで無駄なことをやっていた、これは当然省エネと逆行するわけですが、それらを総合的に考えていく、これが物流面では非常に重要だと思います。そういう意味では、物流面のあり方自体を今根本的に問われている、それを改革していく必要があるというふうに考えております。

 ありがとうございます。

笠井委員 中上参考人に伺いたいと思います。

 先ほどのお話の中で、社会の変化と省エネルギー政策という視点でお話がされました。

 例えば、この資料をいただいておるところの九ページで、例のシェアリングエコノミーサービスの問題で、ウーバーが提供するプラットホームを利用した配車サービスの問題もあるわけですけれども、これによって発生したCO2の排出というのは、事業部門なのか、あるいは自家用車を使うから家庭部門なのか、こういう問題提起をされているんだと思うんですけれども。

 やはりこれまでも、それも含めて、業界単位を中心とした規制の枠組みというのがあったけれども、それには入らない新たなサービスに対して、省エネ規制の網かけといいますか義務づけるという点では、じゃ、どのような対応が必要になってくるのか。これから議論がいろいろ出てくると思いますし、ウーバーも、先ほどおっしゃったみたいに、まだ日本では本格的でないということで、これは我々も大いに問題があるというふうにこの委員会でもやったんですが、従来の業界単位を中心とした規制の枠組みに入らないような、そうした新たなサービスに対する規制なり義務づけということでは、どんなような対応を考えていく必要があるのか。いかがでしょうか。

中上参考人 ありがとうございます。

 私に明快な答えがあるわけじゃないんですけれども、これは省エネ法の観点から考えると、社会の枠組みが変われば、それに対応した位置づけなり役割をやはりもう一度、再度審議し直すということを、後追いのような形に見えますけれども、常にやはりリバイスしていく、より現実に合った形にしていくというのが、省エネ法に限らず、法律の役目だろうと私は思っております。

 例えば、ここには、きょうは申し上げませんでしたが、ビルなんかも、不動産を分配して持つような、所有者は、昔は不動産会社が皆持っていたんでしょうが、それを証券として売っちゃって、実はビルのオーナーがいっぱいいるなんというのも出てくるわけですね。そうすると、今後、ビルのオーナーに対して規制をかけようとすると、何か不特定多数みたいな形になってきちゃって、幸いにしてまだその問題は出ておりませんけれども、そういったふうに社会が変わってくる。

 それから、企業も、ホールディングカンパニーになって、昔はA社ならA社、どおんと一カ所でできたものが、ホールディングカンパニーという、ホールディングカンパニー自体はエネルギーをほとんど使わない。ただし、持っている事業所、子会社をいっぱい持っている。そういったところもあって、事業者間の連携というのはそういういきさつもあって出てきた経緯もあるわけですね。ほかの理由もありますけれども。

 したがいまして、やはり省エネ法というのはその場その場でタイムリーに検討して組みかえていくべきだろうと私は思っております。

笠井委員 ちょっと時間がもう迫っていまして、田中参考人にもお話を伺いたいと思ったんですが、先ほど伺っても、省エネ、再エネ発展の鍵というのは、やはり各地域でそれぞれの条件に合わせて実践していくということが本当に大事になっているなということを痛感しましたし、長野県の話も本当に大事だなと思いました。

 万場参考人には、通販の業界ということでお話もありまして、ある意味、我々もお世話になっているわけでありますけれども、そういう点では御意見も受けとめながら、この課題についても取り組んでいく、そして考えて議論もしていきたいと考えております。

 きょうは本当にありがとうございました。

稲津委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 日本維新の会の杉本和巳であります。

 最後の質問者ですので、おつき合いをお願いします。

 原子力問題特別委員会というのが先週開かれまして、平先生は筆頭理事をされておられて、私の話を聞いているので二度聞くことになるかもしれないんですが、実は、この部屋は、二〇一一年の三月十一日に震災が起きましたけれども、その一年前に全電源喪失についての質疑が行われました。共産党の吉井英勝先生、引退されましたけれども、吉井先生が、当時私もおりました民主党政権の経産大臣に対して、全電源喪失は起きないのかというのを最後に質問されましたけれども、その前に原子力安全・保安院に対してかなり質疑をされて、ということで、タイムマシンがあったらそのときに戻りたいという話を私は実は申し上げたんです。

 そんな意味で、震災の後、何らかの形の勉強会で、一級建築士の方がドイツに長くおられて、それで、いわゆる日差しがどんどんどんどん温暖化で強くなっていく中で、遮光というんですかね、日よけのようなものをすることによってドイツはかなり進んでいますという話をいただいて、そして、そういった形での省エネというのが進むんだろうなというふうな意識があったんですけれども、残念ながら、この遮光ということについては余り進んでいないというのが私の感触でございます。

 それと、再生可能エネルギーも、太陽光発電の各電力の買電価格が下がるというようなことの中で、太陽光発電の事業者が撤退せざるを得なくなるというのが最近の御時世かとも思っているんです。

 各参考人に、全て、お伺いしたいんですけれども、いわゆる太陽光発電の買電価格の下げとか不確実性といったものと、省エネとの関係みたいなところで御所見があれば、委員長の差配でお願いしますけれども、全参考人に御意見を賜れればと思います。

中上参考人 今回のエネルギー基本計画で、再生可能エネルギーが主要電源であると位置づけられたわけですから、今までは宙ぶらりんの状態だったんですが、間違いなく重要電源として位置づけられたわけでありますから、本格的にこの普及に向けてあらゆる場面で活動すべきだと思います。

 最大の課題は、やはり、今おっしゃいましたコストだと思うんですね。だから、コストをいかにして下げるかということにまずもって注力して下げていただく。誰が考えても、お日様と風でエネルギーが賄えればこんないいことはないわけですから、唯一最大の難点はコストが高いということですね。ここをいち早く、あらゆるノウハウを結集してやっていただきたいというのが私の切なる願いであります。それさえあれば、事はスムーズにいくと思います。それがいかないときにどうするかというので、私は、ある意味では保険を掛けているからああいう曖昧な表現になっているんだと思いますけれども。

 二〇三〇年って、あと十二年しかありませんから、大体、エネルギーのインフラをかえるというのは、今までの経験でいくと、二十年から三十年かかっています。だから、二〇五〇年に対しては確実に見えてくるでしょう。二〇三〇年はまだまだ不確定要素が多いわけでございます。まずもってコスト低減をやるべきだというのが私の意見でございます。

田中参考人 私がこの関係について気になっているのは、省エネルギーといいますか、正確にいきますと、建物でも、その躯体の断熱、機密性をしっかり上げていく。

 そもそも、エネルギーを使わないで快適性とかを享受できるような政策というのは常に最優先にあるべきだろうと思っております。ところが、現在議論されているとき、どうしても、今使われているエネルギーを何に代替するのかということがどうしても主になって、エネルギーを賢く使う、先ほどもありました合理的に使うということがどうしてもおろそかにされているのではないか、若しくは議論が不十分ではないか、ここを大変懸念しております。建物を建てるときでも、まずはパッシブにエネルギーを使わない建物をどうつくるかということが最優先になって検討されるべきだろう。

 そうした観点でいきますと、やはり、まず、エネルギーをできるだけ使わずに社会のさまざまな便益というものを確保することに多くの力を注ぐべきだろうというふうに考えておりますし、それを最優先にするという原則を政治の力で確立するということが重要だろうと考えております。

 以上です。

万場参考人 政策ということでは、ちょっと私も知見を持っておりませんけれども、通販業界におきましても、物流施設とか、あるいは製造販売している事業者もありますので、そういうところの製造工場につきましては、太陽光発電を導入したりということで省エネを図っているというふうに聞いております。

 以上でございます。

矢野参考人 私の方も、専門ではないので余りお答えできないんですが、物流施設というのは、非常に大規模空間を持っています。そういう意味では、東日本大震災以降、太陽光発電を導入した企業が相当多くなっています。それらの企業においても、よりインセンティブを与えることによって、もっと大規模空間をうまく利用していく、こういうことが進んでいけばいいというふうに考えております。

 以上です。

桃井参考人 ありがとうございます。

 遮光が進んでいないというようなお話がありました。

 私、一昨年韓国に行ったときに、日の光の当たり方を利用して建物を建設している、それはモデルだったんですけれども、非常に、こんなやり方があるんだというのを見て感動したということがありまして、日本にももしかしたらあるのかもしれませんけれども、なかなか見かけないものなので、そうだなというふうにお話を聞いていて思いました。

 太陽光発電の事業がどんどん撤退していくような今状況にあるのではないかというお話がありましたけれども、今、太陽光でも、特に地域共同発電のような形でやっている人たちにとっては、非常に厳しい状況になってきていると思います。とりわけ、原発を全部稼働したことを想定して、接続できないような状況が、九州ですとか東北地方ですとか、そういうところに生まれているということがあって、それが太陽光が今伸び悩んでいるというようなところにもつながっているのではないかというふうに思います。

 もう一つ、省エネとの関係ということでいいますと、太陽光を利用するというときに、発電に利用するという方法と同時に、例えば太陽熱で、家庭の屋根に載っけるというような方法があると思うんですけれども、この部分がなかなか日本はやはり進んでいないというふうに思います。むしろ、今は太陽光パネルを載っけるという方に動いているということで、もっともっと効率よく熱利用での太陽熱の利用が進んでいけば、家庭の中での熱効率を上げたり、無駄な燃費を使わなくて済んだりというような形で動いていくのではないかと思いますし、そうした政策的な配慮というのが今後もっと重要になるのではないかなというふうに思います。

 以上です。

杉本委員 ありがとうございます。

 御専門でないんですけれども、あえて全員の参考人の方から伺った方が私は何となく全体観が見えるのかなということで、もう一問、全参考人に伺いたいんですけれども、麻生副総理が総理だったときに行われた、土日の高速道路の定額制ということがありました。

 実は、私はよく提起するんですが、平均の高速道路の料金は千円いっていなくて、九百円ぐらいの支払いなんですね。それとあと、平均の走行距離が、走り出しから、高速道路を通ってまた一般道へ戻って、目的地までの距離が大体四十キロというふうに言われていて、意外と走っていない、高速道路を使っていないという話がございまして、一種、高速道路をもうちょっと効率的に使って生産性を上げる。あるいは道路が、私の地元なんかですと、一宮ジャンクションというのは渋滞しちゃって事故の原因にもなったりしているんですけれども。

 そういった渋滞問題とかも絡むんですけれども、物流コストを下げるという意味とか、全体、物流の専門家の先生はすごく詳しくおっしゃっていただければと思うし、俺は専門じゃないぞという方は一般のお立場でも結構なんですけれども、いわゆる高速道路をもっと活用して物流コストを下げるとか、あるいは、もし踏み込んでいただければ、定額制だとかということについて、今、現政権、麻生財務大臣・副総理にお話ししてもなかなか乗ってこない話題になってしまっているんですけれども、皆様方の御知見では、そういった点は、どういう効果が省エネだとか生産性向上につながるとお考えになっておられるかを教えていただければと思います。

稲津委員長 それでは、順次お伺いしますが、時間が来ておりますので簡潔にお願いします。

中上参考人 全く専門外ですので、ノーアイデアでございます。申しわけございません。

田中参考人 高速道路の定額制につきましては、むしろ、定額制ではなくて、距離に応じた金額をかけていく、それから、時間帯で、多い時間に多くかけて、少ない時間にかけるというようなことが必要だろうと考えております。

 もし定額制が必要だというのであれば、地域、一定の広域単位で、公共交通、電車、バス、地下鉄等の、例えば一年とか三年とかの定額パスを設けて、乗用車から公共交通に誘導して道路を使わせていくということが非常に有効だろうと考えております。

 以上です。

万場参考人 希望でございますけれども、仮に高速道路の定額制が物流コストの削減につながるのであれば、大賛成でございます。

 ありがとうございました。

矢野参考人 高速道路料金の問題点は非常に難しくて、以前、高速道路料金を下げたことによってフェリーに壊滅的な影響を与えた、こういう状況もあります。そういう意味では、単純に高速道路料金だけの問題ではなくて、鉄道あるいは船舶等の、それとバランスをとった形でやるということが非常に重要だと思います。

 ただ、高速道路料金が高いから利用しないというのも現実であります。そこのところは、うまく今の資源を有効利用するという見方はとても重要な意味を持っていると思っています。

 以上です。

桃井参考人 済みません。麻生政権時代というよりは、私たちは、民主党政権時代に高速道路無料化の話があって、それに対しては強く反対した経緯がありました。

 これをやることによって、本来必要である省エネ対策ですとか、もっと必要であるCO2削減に必要なモーダルシフト、こういうものを促すというよりは、むしろ、排出をどんどん物流の部門でふやしてしまうというような懸念があって反対したという経緯があります。

 高速道路を利用するということでの、例えば、そこにもCO2の評価というのをしっかり入れて、燃費がよいもの、あるいはCO2を排出しない車、こうしたものは安く通れるとか、あるいは距離に応じて取るというようなところで政策を打つということは、気候変動対策にとってもよいのではないかなというふうに思いました。

 ありがとうございます。

杉本委員 まだ若干時間がありますので、もう質問はしませんけれども、参考になる御意見を本当にありがとうございます。

 電気自動車になればCO2は出ないんじゃないかなという期待を私は持っています。

 それと、今お話ありましたけれども、ちょっと参考までに、変動価格ということで、フェリーで、エストニアと、北の国ですね、フィンランド、この間の船に乗ったことがあるんですけれども、価格が乗るまでわからなくて、日にちによって、やはり需給で決まるという価格があるんですけれども、残念ながら、日本にそういう設定というのは確かにないような気がしますので、そういった意味での価格の変動制みたいなのは日本も本当に考える必要があるときょうの御意見の中で拝聴しました。

 それと、ある業界を守ろうとして国際競争で負けてしまうという日本の立ち位置というのがよくあるような気がいたします。今、地銀さんの経営が大変厳しくなって、合併を公取さんが規制していいかどうかという議論を財金でしているんですけれども、国内産業を保護するために全体が国際競争で負けてしまうという選択を日本はしてはならないのではないかなということで、全体が食えなくなってしまっては元も子もないということなので、今ちょっとフェリーのお話があったので、その産業についてはそれなりに考えなきゃいけないと思いますけれども、一方で、国際競争で我々が食っていかなきゃいけないということも皆さんに共有していただきたいというお願いをしまして、若干時間を残しているかもしれないんですが、全体の時間は超過したと思いますので、これで終了したいと思います。よろしいでしょうか。

 ありがとうございました。

稲津委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十三日水曜日午前八時二十分理事会、午前八時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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