衆議院

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第7号 平成31年4月12日(金曜日)

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平成三十一年四月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 穴見 陽一君 理事 梶山 弘志君

   理事 小林 鷹之君 理事 國場幸之助君

   理事 西村 明宏君 理事 落合 貴之君

   理事 斉木 武志君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石川 昭政君    石崎  徹君

      上杉謙太郎君    尾身 朝子君

      岡下 昌平君    金子 俊平君

      神山 佐市君    神田 憲次君

      神田  裕君    佐々木 紀君

      冨樫 博之君    野中  厚君

      福山  守君    藤丸  敏君

      穂坂  泰君    星野 剛士君

      細田 健一君    三原 朝彦君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    山際大志郎君

      吉川  赳君    菅  直人君

      櫻井  周君    田嶋  要君

      松平 浩一君    宮川  伸君

      山崎  誠君    浅野  哲君

      泉  健太君    太田 昌孝君

      笠井  亮君    足立 康史君

      笠  浩史君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   経済産業大臣政務官    石川 昭政君

   最高裁判所事務総局行政局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室内閣審議官)       森 美樹夫君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            油布 志行君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        佐々木 浩君

   政府参考人

   (公安調査庁総務部長)  横尾 洋一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           風木  淳君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           島田 勘資君

   政府参考人

   (特許庁長官)      宗像 直子君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    米村  猛君

   政府参考人

   (特許庁審査第一部長)  澤井 智毅君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            木村  聡君

   経済産業委員会専門員   佐野圭以子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福山  守君

  石崎  徹君     金子 俊平君

  岩田 和親君     藤丸  敏君

  佐々木 紀君     神田 憲次君

  簗  和生君     上杉謙太郎君

  山際大志郎君     宮路 拓馬君

  宮川  伸君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     簗  和生君

  金子 俊平君     石崎  徹君

  神田 憲次君     佐々木 紀君

  福山  守君     青山 周平君

  藤丸  敏君     池田 佳隆君

  宮路 拓馬君     山際大志郎君

  櫻井  周君     宮川  伸君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     岩田 和親君

    ―――――――――――――

四月十一日

 原発から撤退し、再生可能エネルギーへの転換を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第八六五号)

 小規模事業者に対する社会保険料負担軽減支援策等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八六六号)

 同(笠井亮君紹介)(第八六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八七〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八七一号)

 国と東京電力が責任を果たすことに関する請願(藤野保史君紹介)(第八九七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣情報調査室内閣審議官森美樹夫さん、金融庁総合政策局審議官油布志行さん、総務省大臣官房地域力創造審議官佐々木浩さん、公安調査庁総務部長横尾洋一さん、経済産業省大臣官房審議官風木淳さん、経済産業省大臣官房審議官島田勘資さん、特許庁長官宗像直子さん、特許庁総務部長米村猛さん、特許庁審査第一部長澤井智毅さん及び中小企業庁事業環境部長木村聡さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局行政局長門田友昌さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。三原朝彦さん。

三原委員 どうも。何年ぶりで質問するかちょっと思い出せないぐらいなんですけれども、でも、我が国の特許庁の長官というのが女性で、特許庁長官に質問するというこの栄誉を得たことを心から感謝申し上げたい。僕のパーソナルヒストリーに残ると思いますけれども。

 昔から、前々から、私は七、八年前から特許とか知的財産とかに大いに興味があった。

 というのも、二〇〇〇年に入ってから、我が国の貿易収支というのが、どんどんどんどん競争力がなくなってきて厳しい状況になってくる。今、ここ数年は円が安いこともあって、貿易収支は輸出超過ですけれども、それ以外のところの国際的な関係になると、そこでやはり我が国は今から頑張っていかぬと先進国としての立場は保てないな、そういう強い気持ちがありました。特許がそのまた一つ、サービスの収支の中では特許もその一つですけれども。

 最初は、何か、調べてみたら、二〇〇三年ぐらいから我が国はもらう方が払うよりも多くなってきたらしいんです。今日に至っては、三千億から四千億ぐらい我が国は海外から特許料を得ているという、確実に伸びてきていることはこれはすばらしいことだと思います。

 一面、諸外国を見てみますと、この十年ぐらいで、中国の特許に対する力というのはすごいものですね。我が国は毎年今でも三十万ぐらい特許を出しているのかな、アメリカがその倍ぐらい、中国はその四倍ぐらい、百二十万ぐらい出していると言われていたら、あっという間に百二十万も超しちゃった。

 そういうことで、私は、そういう意味では、我が国のこれから先のイノベーションとか科学技術の発展とかに危惧もしておることでありまして、そういう中で、大企業、中小企業を含めて、これから先、どんどん更に特許、つまりイノベーション、先端的な技術を磨いていかなきゃいけないという状況の中で、いろいろな意味での特許のあつれきなんかあったときにトラブルがあったりしていることも確かなことです。

 宗像長官に前聞きましたら、ドイツやいろいろなところまで行って勉強もしてきましたよというようなことなんですけれども、我が国でもそういうことに関してもっと踏み込んで、世界にオープンになりつつ、なおかつフェアな制度というのをやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、その点に関しての国としての立場なり考え方をまずは大広に聞かせていただきたいと思います。

世耕国務大臣 全くおっしゃるとおりでありまして、特許制度というのは常にアップデートをしていかなければいけないものだというふうに思っています。特に、その中で、諸外国の状況等はよく把握をしていく必要があると思います。

 宗像長官は、総理秘書官から長官に転進してから、積極的に海外の事情も見てきてくれました。我々のイメージとしては、例えば中国なんかは、もう何か、特許制度については穴だらけだというイメージでいたわけですが、実際見てきてもらうとそうでもない。極めて洗練された特許制度に、知財の保護の仕組みがもうなっていっているという報告でありました。

 そういったことを踏まえて、今回もこの法律の改正ということに臨ませていただいているところでございます。

三原委員 それは確かに力強い方向性だと私は思いますし、確かにものづくりも我が国は大切で、今から四、五年前だったかな、茂木大臣のときに、思い出しますけれども、経産省が、グローバルニッチ産業とかいって、中小企業の中で海外での展開を頑張ってやっているところ百社というのを表彰されて、実は私の友人も表彰されて、えらい私もうれしかったんですけれども。

 そのときに、同様のような、じゃ、いつも我々が対象として見るドイツはどうだったんだと言ったら、いや、三原さん、ドイツは我が国のグローバルニッチみたいなやつは二千社ありますとか言われたので、がっくりきたことを思い出したんです。それもやはり、ちゃんとした、しっかりした特許を持っていて、まあ営業秘密もあるんでしょうけれども、ここじゃなきゃだめだというのが二千社もあるというんですね。

 だから、そういうことを考えたときに、やはり、これから先は、大企業はもちろん自分で、自分の足で対外的に、新日鉄が、今の日本製鉄がそうだったように戦って勝てるようなものになるでしょうけれども、中小企業あたりだとそうもいかない。そこのところをどうするかという、いろんなこと、施策を特許庁も考えてきてくれているとは思うんですけれども。

 その一つの中で、なかなか、弁護士さんあたりでも雇おうと思ってもお金がかかるし雇えない、手付金も要る、何だかんだというので。しかし、そういうことを頼んだときに、じゃ、中立的立場に立ったところで制度を、特許というのは調べにくいけれども、調べていって入るようなときにどうしているんだと聞いたら、ドイツあたりでは第三者が入っていってというようなことだったということを聞いて、日本も、じゃ、やるんですかと言ったら、やりたいと思うというようなことを聞かれたものですから、その点に関してわかりやすく説明してもらいたいと思います。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 今の日本の裁判制度、特許訴訟制度におきまして、例えば、製法の特許であるとか、大型の機械で簡単には市場で手に入らないものとか、プログラムの特許などは、実際に現物を、それも専門家の目で見なければ本当に侵害が起きているかどうかがわからない。こうなりますと、調査能力のある企業であればある程度のことができるかもしれませんけれども、中小、スタートアップなどにとっては非常に証明のハードルが高いというところがございます。

 そこで、先進国あるいは中国、韓国なども、そこの証拠収集をしっかりとする仕組みを備えておりまして、国によって形は違うのでそれをそのまま持ってくるということではないんですけれども、そういうものをいろいろ参考にいたしまして、日本に合う仕組みは何かということで検討した結果が、今回の導入をお願いしている制度でございます。

 査証制度という名前なんですけれども、裁判所が選定した専門家が、被告の、特許を侵害したのではないかと疑われる者の建物や敷地に立ち入って証拠の収集を行うものであります。ただ、濫用があってはいけませんので、裁判所が、この証拠は本当に侵害の立証に必要だという必要性とか、確かにその侵害したことを疑うに足りる相当な理由があるという蓋然性、そして、ほかの手段では証拠収集を行うことが困難という補充性、そして、ほかの、相手方の負担が不相当にならないという相当性という、四つの厳格な要件を満たした場合に限って発動できるようにしております。

 証拠収集を行う者というのは、裁判所が中立公正な専門家を指定をして、それについて当事者が問題だと考えれば、忌避という制度で、この方はやめてほしいということを裁判所に申し立てられるというような濫用防止の仕組みであるとか、あるいは、産業界はこの査証制度を通じて営業秘密の漏えいを懸念しておりますので、これらについても、査証を実施する際に申立人の立会いを認めないとか、あるいは、専門家に、秘密保護の観点から、罰則で担保された秘密保持義務を課すであるとか、専門家が現場に行って、結果を報告書に書いて、それを最終的には申立人に開示するわけですけれども、その前に、まず、立ち入られた側がここはうちの営業秘密だからといって黒塗りを申し立てて、裁判所が、これは確かにと、正当な理由があると認めれば、営業秘密が黒塗りされるといったような厳格な仕組みを設けておって、営業秘密の漏えいにも配慮しながら、真実解明への被疑侵害者側の協力を促すという仕組みとなっております。

三原委員 もう七、八年前ですかね、私も、例の亀山印というのが一世を風靡したときに現場を見に行ったことがありますけれども、僕らが見たって何もわからないけれども、これから先はブラックボックスですからカーテンを閉めていますなんか言われたりしてね。それでも、最終的には、あそこに出ていた会社の工場はみんなやめちゃったんでしょう。あれは液晶パネルか何かをつくっていたんだけれども、競争に負けちゃったのがあって、すごいスピードで変化が起こっているんだなと思って。

 そうこうしているうちに、今僕らが使っているスマホなんかの液晶のあれは、サムスンとか決まったところで、日本が頑張っても何かだめなようになっちゃったというらしいんですけれどもね。

 そういう意味では、現場の本当に一番、第一線で、ちょうちょうはっしの、嫌な言い方だけれども、盗んだり盗まれたりしているのかもわからないですけれども、そういうのがないようにして、アイデアを出した人がそれによって恩恵を得るようなことにならないとまずいなと。まずいって、当たり前のことですけれどもね。

 今、日本は、今までは見て学んだ方かもしれないけれども、今はもう見られる側になった、そういう自覚も持って、なおかつ、フェアに産業競争をやろうということが絶対に大切だと私は思いますので、今回の改正に関しては大いに頑張ってもらいたいと思います。

 それと、いま一つ、私が思うのは、これもよく我が党の中での知財の問題のとき議論するんですけれども、もしそういうことをやったら、何か民法の中で、損した分だけ返せということで、じゃ、悪いことをしたのに、盗んでやったのに、それに対して懲罰はないのかと。いや、それはちょっとまた別のことで、ないんですよと言われて、そういうことをよそはやっていないのと言ったら、いや、諸外国によっては三倍金を返せというようなこととか、中国なんかは何か五倍というのをやり始めるそうですよなんて言われたんですけれども、どうして日本はやらないんだろうと思って。

 悪いことをやったら、懲罰して、もうけた分の三倍返せというようなことをどうしてやらないんだろうと私は思うんですけれども、その点についての意見をちょっと聞かせてもらいたいと思います。

世耕国務大臣 今、アメリカや台湾では、実損の三倍を懲罰的賠償という形で導入をしています。また、中国、韓国でも同じような動きが進んでいます。しかし一方で、ヨーロッパでは、懲罰的賠償はだめだという対応になっているわけであります。

 今回の見直しに当たっても、悪質な特許侵害を抑止するという観点から、懲罰賠償制度の導入というものの検討も行われましたが、産業界の一部からは、これは濫用をされると困るという懸念の声も上がったわけでありまして、この懲罰賠償については賛否両論あるわけであります。

 いずれにしても、ただ、まだ日本は根っこの部分も弱いので、三倍で計算するにしても、根っこの一倍の部分が小さいと幾ら三倍にやったって抑止力が働きませんので、まずは一倍の部分をしっかりと充実をさせるということで、今回、損害賠償額の算定方法を見直すということにさせていただいたわけであります。

三原委員 確かに、まだ日本は特許の訴訟というのは少ないらしいですよね。少ないこともあるし、特許でどれだけ損したかというのは、旧新日鉄のあの鉄の問題なんかのときには大いに訴訟してもということになるんでしょうけれども、確かに大臣がおっしゃったようなこともあるけれども、やはり、正しくないことをしたときには、それに対して明確に、あなた、だめですという罰を与えることは、国民の皆さんも理解する、理にかなっているんじゃないかと私は思うんです。その点では、やはりこれからも大いに議論を続けていってもらいたいと思います。

 今回の改正に関しては、私は納得していますのでもちろん賛成ですけれども、ちょっと、他の特許、特に隣国の中国あたりのどんどん進んでいるのを見ると、何だかスローな感じもしなくもないなという。日本国内だけで何かやるときには、商道徳にのっとってそしてというようなことが、お互いにまあまあ、なあなあでやるかもしれないけれども、もっとこれが国際的になると、やはり更に厳しい現実に直面したときには、今言ったような懲罰の問題とかももっと深く議論してもらいたいという感じがします。

 それと、それこそきのうの新聞ですけれども、昔議論した職務発明のことで、昔、LEDの問題で大いにかんかんがくがくのがあったんですけれども、今回はまた、ノーベル賞をとられた本庶先生が問題提起されて、これから先どうなるのか、薬品会社との間で議論があるかもしれませんが。その一面、二年前にノーベル賞をとられた大村先生は、上手にそれを、職務発明といえども企業とうまく契約されて、それで、そのおかげで、あの先生が得られたお金でいろいろな研究施設やら病院まで建てられて、絵画まで買われて、病院の中に絵画をかけて、見に行きましたけれども、北本病院というのを。えらいものだと思いましたけれども。

 これはちょっと質問から外れますが、何とか、今言った職務発明と収益の問題に関しても、もっとわかりやすく、なおかつ、何も、学者さんがエゴになって金だけもらいたいと思っているというのは違うと思うんですよね。

 だから、そういう面でも、これから先も、特許と収益との問題についても、特許を生み出した人のインセンティブを与えられるように、そういうことをやはり配慮してもらいたいということを最後に申し上げて、もう時間が終わりましたので、私、終わらせてもらいたいと思います。

赤羽委員長 次に、富田茂之さん。

富田委員 公明党の富田です。

 大学の先輩の三原先生の後で非常に質問をやりにくいんですが、特許法の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、証拠収集手続の強化についてお尋ねをします。

 特許権の侵害訴訟では、技術的に高度な専門的知見をもとにした適切な判断が求められることや、特に製法特許や装置の特許に関する侵害行為のように、侵害行為が侵害者の工場内で行われ、外部にあらわれにくい場合等、証拠が侵害者側に偏っており、特許権者が侵害の証拠を入手しにくい場合が一般の民事訴訟に比べて多いと言えると思います。このような場合、特許権者は、自己の権利が侵害されているのではないかという疑念を抱きながらも、具体的な証拠を入手することができないため、訴訟提起を断念し、いわゆる泣き寝入りとなる場合も多いと思われます。

 また、先ほど来お話がありましたが、諸外国と比べても、ディスカバリー制度を有するアメリカ、EU・エンフォースメント指令に基づくそれぞれの証拠収集制度を有するドイツ、イギリス、フランスに比べまして、我が国の証拠収集手続の強制力は十分とは言えません。そのため、我が国の証拠収集手続を少なくとも諸外国と遜色ない程度まで充実させるべきであるというふうに指摘されてきました。

 今回、改正特許法第百五条の二等により、専門家による現地調査、査証制度を導入することとしましたが、その必要性と効果につき、どのように考えているんでしょうか。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、アメリカやヨーロッパでは、日本よりもはるかに強制力のある証拠収集制度によって権利の実効的な保護を図っております。また、近年、中国、韓国も、訴訟制度を急速に強化をして、権利保護によるイノベーションの促進を図っております。

 日本では、昨年、中小企業の特許料を一律半減する法案をお認めいただきまして、この四月から施行されたところですが、中小・ベンチャー企業にとってみれば、せっかく特許をとってもいざというときに使えなければ意味がない、特に、今御指摘のあった製法に関する特許などについては、侵害されたことを立証する証拠をなかなか集められないなどの声が寄せられております。

 そこで、専門家が強制力を持って現場で証拠収集を行う査証制度を創設することで、専門家が実際のものを調査しなければ収集が困難な証拠について十分収集できるようになるということで、特許権保護の実効性が高まると考えております。

富田委員 本改正案では、制度の濫用を防ぐため、必要性、蓋然性、補充性、相当性を査証の発令要件としています。

 産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会報告書、実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方、平成三十一年二月ですが、これによりますと、このような記載がありました。

 現行法の書類提出命令や検証物提示命令と同様、資料収集の命令の発令は、その特許権を侵害されたと主張する特許権者の申立てによるものとし、本手続の濫用を防ぐため、必要性、蓋然性、補充性、相当性を発令要件とする。そして、本手続は、その存在によって本手続によることなく当事者が任意に証拠を提出することが促されることを期待するものであり、これらの要件のもとで、結果として、いわば伝家の宝刀として運用されることが期待されるというふうに記載されておりました。

 このような認識に立った上での査証制度導入と考えていいんでしょうか。

宗像政府参考人 今先生御指摘のとおり、査証制度につきましては、四つの厳格な要件を満たした場合に限って発令されることとしておりますけれども、この伝家の宝刀という表現でございますけれども、これは、査証の命令が、これらの厳格な要件のもと、本当に必要な場合に限って発令される特別に強力な手段だということを意味しておりまして、他方で、抜かずの宝刀ということではありません。

 この制度が存在することで、そしてそれが確かに機能するということが皆さん認識しておられることによって、いずれ強制的に証拠を収集されてしまうのであれば早い段階でみずから証拠を提出しようというように、侵害を疑われた側にも真実解明に向けた協力を促すという効果が期待できると考えております。

富田委員 本改正案で導入される査証におきましては、裁判所が査証を実施する主体となる専門家を指定することとされております。専門家は、相手方の工場等に立ち入り、対象となる文書や物品を調査し、相手方の幅広い営業秘密等に接する可能性があることや、調査の結果が訴訟の帰趨に影響を与える可能性があることから、秘密保持義務を課した上で、弁護士、弁理士、研究者等を含め幅広い職種から指定することとなるというふうに聞いております。こうした専門家には高度な知識及び技能が求められることから、職務遂行能力のある人材を十分に確保できるよう、人材育成面で十分な対応が求められております。

 弁護士、弁理士といっても全てが専門家ではありませんので、こういう人材をどういうふうに確保しようとしているんでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 査証人につきましては、技術と訴訟手続の双方に精通した公平な専門家が確保されなければならないと理解しております。最高裁判所としましても、各裁判体が円滑に査証人を選任できるよう、必要な手だてを講じていかねばならないと考えております。

 裁判に専門家に関与していただく既存の制度としましては専門委員の制度がございますけれども、この専門委員として任命している方を査証人の候補者として活用することが考えられます。そこで、まず、知的財産権関係の専門委員の名簿を査証人の選任にも活用できるように整えてまいりたいと考えております。

 それ以外にも、候補者の給源となる弁護士会や弁理士会との間で、裁判所からの依頼に基づき各会が査証人として適切と思われる会員を推薦する仕組みを構築すべく協議を始めたところでございます。また、専門委員の任命に当たりましては、各種の学会に推薦を依頼する方法もとられておりますけれども、査証人候補者につきましても同様に推薦をしてもらえるよう依頼することも検討しております。

 査証人につきましては、これらの仕組みを通じて、質、量ともに十分な候補者を確保してまいりたいと考えております。

富田委員 細かく説明していただいてありがとうございます。

 調査室の方からいただいた資料を読んでいましたら、こんな指摘がありました。専門家に大学教授や研究者が指定された場合、当業者でもあることが想定され、秘密保持義務を課したとしても、その専門家のその後の活動に影響を及ぼすリスクを払拭することは難しいとの意見もあると。

 確かに、研究者の中で、自分が研究しているものに当たる可能性もあるわけで、そのリスクはどのように払拭していこうとされているんでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所が査証人を選任する際の具体的な運用については、今後、各裁判所で検討が進められることとなりますけれども、現在ございます鑑定人の選任などの例を参考にしますと、候補者が決まりましたら、その候補者に対しまして、査証人になることができるかについて事前に意見聴取を行うことが考えられます。このような事前の手続を行って、当該専門家からその後の活動に支障が生じる旨の意見が述べられた場合には、その点も踏まえて裁判体が適切に判断することが可能になると思われます。

 いずれにしましても、最高裁としましては、各裁判体が適切に査証人を選任できるよう、必要なサポート等をしてまいりたいと存じます。

富田委員 ありがとうございました。

 損害賠償額算定方法の見直しについて質問したいと思います。

 改正法第百二条第四項に、このように規定をされております。

 「裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、特許権者又は専用実施権者が、自己の特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権又は専用実施権の侵害があつたことを前提として当該特許権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。」というふうに規定されています。

 なかなかよく考えた法文だなと思うんですが、これは特許制度小委員会の、先ほどお示しした報告書の中にこんなふうな記載がありました。

 特許法第百二条第三項の考慮要素の明確化については、これまでの裁判例や学説によって、第三項の定める相当実施料額の算定に当たって考慮すべき訴訟当事者間の諸般の事情が示されてきている。

 具体的な考慮要素としては、過去の実施許諾例、業界相場、特許発明の内容、特許発明の寄与度、侵害品の販売価格・販売数量・販売期間、市場における当事者の地位などが挙げられる。これらの要素は、個別具体的な事案に応じて、増価、減少のいずれにも働き得る。

 これらの要素に加えて、典型的に増額に働き得ると考えられる考慮要素として以下の要素が挙げられるということで、第一は、有効な特許が侵害されたことが認定されていること。第二は、特許権者による実施許諾の判断機会の喪失である。第三は、侵害者は契約上の制約を負っていないことである。

 条文化に当たっては、想定される考慮要素を網羅的に規定するのではなく、例えば、裁判所は、相当実施料額の認定に当たり、特許権の侵害を前提として特許権者が実施の対価について侵害者との間で合意したならば得られたであろう額を考慮することができる旨などを概念的に規定し、当該文言の中で、さまざまな考慮要素を読み込めるようにするべきであるというふうに書いてありました。

 この報告書の趣旨を具現化した条文というふうに理解してよろしいでしょうか。

宗像政府参考人 今先生が御指摘なさったとおりでございます。

富田委員 ありがとうございました。

 最後に、大臣にちょっとお尋ねしたいと思いますが、中小・ベンチャー企業のイノベーション促進に向けた施策についてお尋ねします。

 中小・ベンチャー企業は、経済の新陳代謝を促し、日本のイノベーションを支える重要な主体であるというふうに思います。デジタル革命によって業種の垣根が崩れ、オープンイノベーションが進む中、中小・ベンチャー企業が生き残っていくためには、自社が開発した技術をみずから知的財産としてしっかり管理し、それを生かして収益を上げていく必要があるというふうに思います。

 今後、知的財産を通じて中小・ベンチャー企業をどのように支えていくのか、大臣の決意をお伺いしたいと思います。

世耕国務大臣 中小・ベンチャー企業の皆さんには、ぜひ、独自性のある技術、アイデアを知的財産権で守って、外部の技術や知識を活用して、新たな製品やサービスを生み出していただきたいと思っています。

 そのための支援として、まず、やはり特許料の負担というのが結構重いですから、これを一律に軽減する制度というのを、四月一日から利用可能になりました。また、特にベンチャーにとってはスピード感が極めて重要でありますので、審査期間が短くなる早期審査、更に短縮されるスーパー早期審査というのを入れていまして、二十九年度実績でいきますと、通常十四カ月かかっている審査が二・五カ月に短縮されるというような形のものも行っています。

 また、知財総合支援窓口というのを全国四十七都道府県に設置をして、三十年度は十万件の相談に応じています。

 また、ベンチャーに対しては、さらに、知財アクセラレーションプログラムというので、ベンチャーというのは、ある程度うまくいってから、さあ知財大変だとなるんですけれども、創業期にしっかり知財のことも含めた経営戦略を立ててもらえるようなサポートをするというような仕組みも入れさせていただいております。

富田委員 ありがとうございました。

 終わります。

赤羽委員長 次に、櫻井周さん。

櫻井委員 経済産業委員会で初めて質問させていただきます、立憲民主党・無所属フォーラムの櫻井周です。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、特許法等の改正について早速質問させていただきます。

 今回の法改正の意義について、デジタル革命により業種の垣根が崩れ、オープンイノベーションが進む中、中小・ベンチャー企業がすぐれた技術を生かして飛躍するチャンスが拡大している、せっかく取得した特許、大切な技術をしっかり守れるよう制度を改善していく、充実させていく、こういうことだと承知をしております。

 更にちょっと踏み込んで御説明いただけますでしょうか。といいますのも、これまで私、別な委員会、科学技術・イノベーション推進特別委員会などでは、こうした特許制度は、日本がせっかく持っている技術がしっかり守られていないのではないのか、そうした課題について問題提起をさせていただいたところでございます。そういう意味で、今回の法改正は、大きな一歩を踏み出したなということで、高く評価をさせていただきたいと思っております。

 しかしながら、一歩踏み出したとはいえ、諸外国に比べると随分とおくれている、千里の道の一歩を踏み出したにすぎないとも評価をしておりまして、こうした観点から、今回の法改正の意義についてお尋ねさせていただきます。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘いただいたように、中小・ベンチャー企業がチャンスをつかめる時代になってきた中で、中小・ベンチャー企業が、今までの取引先に権利処理を委ねずに、自分で権利を守りやすくするようにしたいと。権利保護のためには、権利保護の最終手段である訴訟制度を中小・ベンチャー企業にとっても使いやすくするということが、今回の制度改革の眼目でございます。

 その具体的な中身として、証拠収集制度、そして損害賠償制度、特に後者につきましては、売上げが小さいのでなかなか大きな賠償額が得られないという規模の小さい企業に対しても、相手方が侵害した部分をライセンス料として回収できる道を開くことで、それなりの回収ができるようにするということでございます。

櫻井委員 今の長官からの御説明、大変わかりやすくてありがとうございます。

 特に、中小企業等は、ともすれば大企業の下請という形で、いろいろ、ある種のいじめられている状況があるのではないのか、こんな意見もあるわけでございますが、そうしたものに対して、中小企業の側も、特許というような形でしっかりと守る、対抗できる手段を確保していく、こういうふうに理解させていただきました。大変すばらしいと思います。

 一方で、逆に言うと、大企業の側でございますが、日本経団連の方では、ホームページを見ますと、今回の法改正に対して非常に厳しいというか、反対の意見だ、こういうことを表明しているようでございます。

 法改正を急ぐに足る立法事実はないとか、外国制度の安易なつまみ食いは、我が国の国益を害する。国益を害するとまで言っていますね。それから、営業秘密漏えいの懸念を払拭することが、導入の大前提。これはそうなんですけれども。懲罰的賠償制度、利益吐き出し型賠償制度の、導入ありきでの検討には反対ですとか、二段階訴訟制度導入を求める意見はほとんどないと。私は、求める意見、よく聞くんですけれども、経団連は聞いていないということです。

 こうした、ある種、経団連の反対がある中で、今回の法改正、こうした反対意見を乗り越えてやってきた、その意義について改めてお聞かせいただけますでしょうか。

宗像政府参考人 今回の意義でございますけれども、知財訴訟制度は、これはイノベーションのインフラそのものでありまして、日本の制度を欧米さらには中国や韓国に遜色のないものとすることが急務だと考えました。

 ただ、それは、つまみ食いということではなくて、日本の現実に合ったものをしっかり関係者と議論をして積み上げてきたと思っております。

櫻井委員 今の御答弁にも大変納得するところでございます。

 私ども野党ですので、ともすれば、なかなか経団連は相手にしてくれないというか余り話をしてくれないんですけれども、特許庁の方ではしっかりとそういったものを乗り越えて進めてこられたということで、高く評価したいと思います。

 続きまして、具体的な話に入っていきたいと思います。

 証拠収集手続について、これを強化をしていくということです。特に、百五条の二で証拠収集手続について規定をしているわけでございますが、ただ、今回の法改正でも、こうしたいろいろな反対の声もあってということであろうかと思いますが、ちょっと要件がいろいろ厳しいのかなと。詳しいことについては、後で、後ほど同僚の松平議員からも質問があろうかと思いますが、全般的に厳しいのかな、本当にこれで使い物になるんだろうかと。

 ともすれば、今までの我が国の知的財産分野において、立証が困難で権利者が泣き寝入りをするというようなことがあったのではないのか、こういうふうにも言われるものですから、侵害した者勝ちというようなことにならないように、先ほども少し御答弁いただいておりましたけれども、これは本当にちゃんと使える権利になるのかどうなのか、要件が厳し過ぎるとこれはまた使えないということになりますので、その点でちょっと説明いただけますでしょうか。

宗像政府参考人 確かに、査証の要件を厳格にし過ぎると、裁判所にとっては運用しにくくなるという御指摘がありました。

 他方、産業界の一部に、査証制度の濫用あるいは営業秘密の漏えいを懸念する声が非常に強かったということで、相手方の施設に強制力を持って立ち入るというこの査証制度は、日本では初めて導入されるものでございますので、最初の一歩としては要件を厳格にしつつ、まずは制度を導入してみて、その運用を注視するということにしたものでございます。

櫻井委員 特許制度というのは、大体、証拠というのが侵害した側にたくさんある。侵害した者が何をやってきたかということですから、権利者の側には余り証拠とかはないわけです。しかし、フェアな裁判をやっていこうということになったときには、やはり証拠があるところからちゃんと集めないと、ちゃんとした裁判はできないと思います。

 そういった観点で、諸外国では、例えばアメリカですと、もう随分昔からディスカバリーというような強力な制度がございますし、韓国でも、侵害の立証責任を、普通は原告側、つまり、権利、特許権を持っている側が証明しなきゃいけない、あちらの被告側が侵害しているんだということを立証する責任があるんですが、その立証責任を一部転換するような、転嫁するような、そうした法制度もできて、まだ施行はされていないというふうに聞いていますけれども、できたというふうにも聞いております。中国でも、権利ある執行官がちゃんと検査をできるとか、諸外国ではもう随分前からやっている。

 そういう意味では、日本の大企業、海外でビジネスをしているのであれば既にこういうのは十分経験済みだから、何もそんなに大騒ぎしなくてもいいのになというふうにも思うんですが、欧米諸国に比べてやはり相当おくれているというだけでなく、アジア諸国に比べても相当おくれているというふうに認識をしておるんですけれども、先ほど、第一歩だ、一つ穴をあけたんだということで、これが突破口になってどんどん広がっていくことを期待するんですが、この点、諸外国との比較において、いま一度御説明いただけますでしょうか。

宗像政府参考人 御指摘のとおり、アメリカではディスカバリー、イギリスではディスクロージャーという、それぞれ裁判所の権能が強くて、その命令に反すると法廷侮辱罪になるような制度がございますし、韓国では、御指摘のように、立証責任の転換の法制、それからヨーロッパ諸国では、訴訟提起前から、裁判が起きる前から証拠収集手続をするなど、非常に強い証拠収集制度がございます。

 今般の新たな証拠収集制度は、訴訟の提起後に限りまして相手方の施設に立ち入って証拠収集を行うものでありまして、相手方が協力を拒んだ場合は、現行のほかの証拠調べと同じように、例えば文書提出命令等と同じように、それを拒んだ場合には、裁判所が、真実擬制と申しておりまして、申立人の主張を正しい、真実だとみなすことができるという形にしております。そのことによって従わなければ不利を受けるということになります。

 今般の制度は、確かに強制力において諸外国よりも劣る面もあるわけでありますけれども、相手方の施設等に立ち入る証拠収集制度の導入は日本で初めてでありますので、まずは導入から始めて、運用を注視するということでございます。

櫻井委員 ありがとうございます。

 続きまして、損害賠償の算定方法の方についても質問をさせていただきます。

 従来は、権利者の実施能力を上回る分は侵害として損害賠償の対象にならなかった。どうせ生産能力はないんだから、その先の被害も、損害も発生していないでしょう、こういう理屈だったわけですが、今回からは、ライセンス料相当額について追加して請求できるようになったということで、これも重要な一歩だというふうに思っております。

 しかしながら、一方で、諸外国と比べますと、アメリカでは三倍賠償制度が既に導入されておりますし、アジアでも、台湾で既に三倍賠償制度を導入済み、中国と韓国でも三倍賠償制度を導入する方向ということで、日本と密接な貿易というか交易関係がある国々においては、大体、三倍賠償というのがある種スタンダードになりつつあるのかなと。

 また、それ以外にも、今回の法改正に当たっては、利益吐き出し型の損害賠償制度についても検討されたというふうにも聞いております。

 やはり、侵害した側がやり得みたいなことがあってはいけない。フェアな社会を求めていくという観点からも、また、フェアな社会でこそイノベーションは起きるんだ、こういう観点からも、やはり、日本の損害賠償制度、これも重要な一歩ではあるものの、まだまだ足りていないというふうに考えるんですが、今後更に踏み込んだ改正が私は必要だというふうに考えております。

 今後の検討課題について、御説明をお願いいたします。

宗像政府参考人 御指摘のとおり、海外では、懲罰賠償、アメリカや台湾では三倍、そして中国では五倍というように聞いております。韓国でも三倍の導入の動きが進んでおります。一方で、ヨーロッパでは、執行指令というもので懲罰的賠償を否定しております。

 今回の見直しに当たっては、やはり、悪質な特許侵害を抑止する観点から、この懲罰的賠償の導入が必要という議論もありましたけれども、一方で、濫用を懸念する声も強うございました。

 このように賛否両論ある中で、まずは、三倍の議論の前に、一倍がしっかりしていないと意味がないということで、今回はその点に集中させていただいたところでございます。

 利益吐き出し型の賠償については、これも侵害抑止機能を強化する上で効果的という議論がある一方で、特許権者が侵害者の利益を得ることをどういう法的構成で正当化するかということについて引き続き整理が必要という議論もございました。

 これらの制度につきましては、法案をお認めいただいた後で速やかに議論を深めていきたいと思っております。

櫻井委員 長官の力強い御答弁、ありがとうございます。

 ほかにも、日本の訴訟手続、いろいろちょっと使い勝手が悪いとか、訴訟に係る費用について、いろいろかかってしまう。これは日本に限った話ではないですけれども、やはり代理人等にお支払いする分もあるわけですから、そうすると、いろいろお金がかかるからちょっと権利行使をためらってしまう、こういうこともあるわけでございます。

 こうした部分について、なるべく小さな会社でも訴訟できるようにしようと考えたときには、例えば、敗訴者がそういった代理人の費用、訴訟費用を負担するという敗訴者負担制度ですとかいうこともありますし、あと、特許分野の訴訟の問題として、まず、特許権利の侵害があるかどうかということを認定する、侵害があったら、今度、損害賠償額の計算に移る、こういう二段階のステップがあるわけなんですけれども、これについて、もう少し明確に切り分けて、侵害があるかどうかのところだけまず審査する、そうすると、その分、やはり訴訟としてはコンパクトになるわけなので、訴えをしやすくなるというふうにも聞いております。

 例えば、ドイツではこうした二段階訴訟制度というものもあるというふうに聞いておりますけれども、もう少し、権利侵害が行われたというときにはちゅうちょせずにしっかりと訴訟を起こせるような、こうした仕組みも重要だと考えるんですが、いかがでしょうか。

宗像政府参考人 二つの要素をいただいたと思います。

 まず最初に、敗訴者負担制度についてでございますけれども、現行制度では、訴訟に係る費用のうち、民事訴訟費用等に関する法律に定める訴訟費用については既に敗訴者負担とされておりますけれども、代理人費用等については当事者がそれぞれ負担することとされている。このため、御指摘のとおり、中小企業からは、権利を侵害されても、代理人費用等の負担が重いので、訴えの提起をためらうという声があります。

 イギリス、ドイツなどでは、この代理人費用等を敗訴者負担としておりますけれども、これによって、勝った権利者の費用対効果が改善されて、かつ、無駄な訴訟の提起が減るという効果が期待できる一方、権利者が負けてしまった場合には、相手方の代理人費用の一定部分は負担しなければならなくなりますので、権利者がかえって訴えの提起をためらうというケースも考えられます。

 この代理人費用等の負担配分のあり方につきましては、知財訴訟の特色を踏まえながら、引き続き議論を深めてまいりたいと考えております。

 二段階訴訟につきましては、特許制度小委員会では、ドイツやイギリスの制度を参考に、損害賠償義務の確認の訴えをまず認めて、それで、差止め請求訴訟とあわせて損害賠償義務の確認の訴えを提起することができるという二段階訴訟を検討してみたわけですけれども、これで早期の差止めの実現につながる、損害論に立ち入らなくて侵害論だけでできるという意見が出された一方、差止めがなされた状態で行われる、それも仮ではなくて最終的な差止めが行われた状態での当事者間の交渉というのは、差止め判決を受けてしまった当事者は、相手方の特許権者が優位な状態に立つわけですので、そういう状態での交渉を強いられることには抵抗感があるという御意見、あるいは、二度目の訴訟、要するに、当事者間で損害額についての交渉がまとまらずに二度目の訴訟が起きた場合には、これは裁判所にとっては大変煩雑だといった御意見がありました。

 このため、二月の報告書におきましては、これについて、日本の民訴法の体系に合った制度のあり方について、引き続き議論を深めていくべきこととされました。

 これ以外の論点もあわせまして、今般の法律をお認めいただいた後で、速やかに議論の進め方について検討を進めてまいりたいと思います。

櫻井委員 今回の長官からの御答弁にもありましたとおり、大きな一歩ではあるけれども、まだまだ課題は残っているというふうに承知をさせていただきました。

 せっかくですので、大臣にもお伺いしたいと思います。

 日本では損害賠償額が少な過ぎて特許をとる意味がない、こういう意見もあったりして、そういう声を聞いてしまうと、そういう声を真に受けちゃうと、中小企業、ベンチャー企業の方々の中には、もう特許をとったってしようがないんだということで、無防備なままビジネスを始めてしまう。結局、発明した技術を守れないというようなことが少なからず起きているのではないのか、こういうふうにも指摘をされているところです。

 また、一方で、こうした知的財産権に対する意識が低いまま、日本では緩くできたかもしれないけれども、海外に行ったときに、いきなり、韓国でも中国でも、もうアメリカだけじゃなくてすごく厳しくなっているわけですから、そういったところに行って緩くやっていると、余り意識が低いままやっていると逆に返り討ちに遭ってしまうとか、こういったこともあるということで、やはり、日本国内においても知的財産権というものに対して意識を高めていく意味においても、今回の法改正は重要な一歩であったけれども、まだまだ足りていないというふうに私も思っているところです。

 そして、何より、これから世界のイノベーションというのは、より知識集約型といいますか、こうした技術とか、こういう発明、こうした分野が非常に重要になってくるわけですから、こうしたところに意識を高める、また、こうした権利をしっかり守っていくということが我が国産業の発展につながるというふうに考えるわけでございますが、そうした観点で、今回の法改正、そしてその先の法改正の検討、イノベーションにどう結びつけていくのか、大臣の御所見をお願いいたします。

世耕国務大臣 今委員、後段おっしゃったように、第四次産業革命というのは、逆に、中小・ベンチャー企業から大きなイノベーションが生まれて急成長するような、あるいは世界で戦っていけるような企業が生まれてくる可能性が非常に高いというふうに思っています。

 そういう視点から、我々、特許制度の見直しというのをずっと進めてまいりました。先ほども答弁いたしましたけれども、特許料を中小・ベンチャー企業向けに軽減する制度ですとか、あるいはスーパー早期という、二・五カ月で特許の結論が出るような仕組みなんというのもこれまで導入をしてまいりました。

 今回の法改正は、やはり、中小・ベンチャー企業から、まず一つは、特に製法に関する特許について、侵害を立証するための証拠収集が非常に難しいということと、現状の損害賠償額の算定方法では勝訴をしてもほとんど元が取れない、こういった声に応えるという形で、証拠収集の実効性を欧米並みに高めるということと、損害賠償額の算定をより適切に行えるというための改正を行ったわけであります。

 このことをぜひ中小・ベンチャー企業にはフル活用いただきたいというふうに思いますし、今後も、イノベーション促進のために、必要であれば、我々は、見直すべき点、改善すべき点は更に改善をして、この特許制度というものの質を高めていきたいというふうに考えています。

櫻井委員 大臣からも力強い答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 ちょっと順番を入れかえまして質問させていただきます。

 今、大臣からせっかく御答弁いただきました、中小企業、それからベンチャー企業にもしっかりとこうした知的財産権の意識を高めてもらって、イノベーションを促していくというようなお話もいただきました。

 ただ、現実問題、こうした小さな会社の皆さんは、目先の仕事に追われていて、なかなかその周辺の部分についてまで目が行き届かない、意識が行き届かないというようなこともあろうかと思います。

 そうした中で、やはり誰か厳しく言ってくれる方がそばにいないと難しいのかな、これは人間誰しも、なかなかそういった部分があろうかと思います。そうしたときに、中小企業、ベンチャー企業にとって厳しく言ってくれる相手は誰かと考えたときに、やはり金融機関、どうしても、お金、融資をしてくれる会社が必要なわけですし、そうした会社がなければビジネスもうまく立ち回れない。ですから、こうした機関からしっかりと言っていただくということが重要なのではないのかと思います。

 一方で、これは金融機関の側にとっても、単に無防備なままどんどんビジネスを広げていくというよりは、更にそのビジネスを確実なものにするためにも、しっかりと知的財産権でいろいろな商品なり技術なりを守っていく、そういう体制があった方が安心して融資ができる、こういうこともあろうかと思います。

 もちろん、知的財産権を担保に融資をするとかということは、理屈ではいろいろ言われておりますが、現実にはその担保価値を計算するというのは難しいので、そこまではなかなかできないとは思います。しかし、金融機関にとっても、顧客企業、融資先の企業が知的財産権を取得をするということには非常に意味があると思いますので、こうした観点を金融機関から更に中小・ベンチャー企業に広めていただくというような必要性は重要だと考えているんですが、せっかく金融庁にも本日来ていただいておりますので、その点について金融庁のお考えをお聞かせください。

油布政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、中小企業の価値向上という観点から、中小企業側にとっても金融機関側にとっても知的財産というのは非常に大きな意味を持ち得るものと考えております。

 近年、金融庁の方では、金融機関に対しまして、中小企業の事業内容や成長可能性などを適切に評価する、いわゆる事業性評価というものを行うよう働きかけを行っております。その一環といたしまして、金融機関が中小企業に対しまして、知的財産に対する気づきを与える、また、その利活用を促すというようなことは非常に重要であると考えております。

櫻井委員 今、金融庁の方から御答弁いただきましてありがとうございます。

 特許庁の方でも、こうした金融機関とのコラボレーションということについて進めておられるとは思いますので、金融庁ともしっかりと連携をしながら進めていただきたいなというふうに思います。

 続きまして、意匠法についても、今回独自の改正があったということでございますので、この点について質問をさせていただきます。

 関連意匠制度については、従来、本意匠に類似せずに関連意匠にのみ類似するものについては登録できないということだったのが、今回から、本意匠に類似していなくても関連意匠に類似していれば登録できるというように変わりました。

 私も昔、弁理士試験を受けて、試験勉強をさせていただいておったんですけれども、このときの話では、本意匠に類似しないものを認めると、関連意匠にのみ類似するものを認めていくと、関連意匠に類似するものの何か類似の類似のループが起きて、無限に広がってしまうからだめなんです、こういう考え方だったんですけれども、今回の法改正はそれとは百八十度転換するというものでございます。

 考え方がひっくり返ったわけなんですけれども、この点についてどういう経緯があったのか、御説明いただけますでしょうか。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 近年、一貫したデザインコンセプトに基づき、市場動向等を踏まえて製品等のデザインを長期的に進化させ、製品の付加価値を高める動きが加速化しております。

 このような進化していくデザインにおいては、製品等のデザインに少しずつ改良を加えていく開発手法も増加しており、数年後に開発されたデザインが、直近に開発されたデザインとは類似するものの、最初に開発されたデザインとは類似しないような場合が出ております。

 現行の意匠法では、御指摘のとおり、こうした関連意匠にのみ類似する意匠を関連意匠として登録することができず、権利のすき間が生じることとなっております。このため、今回の改正案において、関連意匠のみに類似する意匠につきましても、新たに関連意匠として登録を認めることと考えております。

櫻井委員 そうしますと、そうしたニーズが生まれてきたということについて、それはそれで理解をさせていただきました。

 特に、町中を見ていても、例えば車で、自動車で、ああ、このデザインはこのメーカーなんだな、いろいろな車種があっても、何かある種の統一感を持ったデザインというのをつくっている会社というのも日本のメーカーでも見かけるようになりましたし、ヨーロッパのメーカーなんかですと、昔からそうした会社のコンセプトみたいなものを大事にしているのかなというふうに見受けられるところもありました。

 日本の会社でこうした取組をしたのはこの十年とかそういう単位かもしれませんが、ヨーロッパの例なんかを見ますと、もうずっと長い間、二十年も三十年も四十年もそういったコンセプトを大事にしている。確かに三十年前の車の形に比べると違うけれども、でも共通する何か感じさせるものはあるよねというようなことで、こうしたこと。

 今回の法改正では、関連意匠で出せるのは本意匠の出願から十年ということで、十年というと、何かちょっと中途半端に短いんじゃないのかと。実際、しかも意匠法で守られるのは二十五年ということですから、二十五年でももしかしたら短いかもしれないというふうにも考えるんですが、この先、そういう統一的なデザインを守っていくような手法は何かないんでしょうかね。例えば立体商標制度とか、別なコンセプトで守っていくということもあろうかと思いますが、その点についてお聞かせください。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、あるデザインを長期間使用することによって、そのデザインを見れば誰のデザインであるか広く認識されるように、識別性を備えるようなものになれば、商標権によって保護が可能になると思います。

 また、今御質問の中に、なぜ十年であろうかという御質問もございました。

 例えば、マツダの「魂動」、このシリーズは、二〇一〇年にデザインされたモデルから二〇一八年までの八年間にわたり、デザインを進化させていると聞いております。こうした事例に加えまして、多くの企業ニーズを踏まえますと、この十年という期間は、一貫したデザインコンセプトの保護に資するものと考えられております。

 関連意匠制度が先願主義の例外的な措置であるということを考慮いたしましても、十年という期間は妥当ではないかというふうに考えております。

櫻井委員 そうですね、十年使って、今マツダの例を出されましたけれども、ある程度社会に認知されるということになりますと、先ほどちらっと私申し上げたんですが、立体商標制度、立体商標というのはなかなかお認めいただけない登録ではございますけれども、しかし、しっかりと社会の中で認知されているんだ、この形を見ればこのメーカーだというふうにばしっとなれば、登録いただけるものというふうに理解をしております。

 こうした観点で、既にもう先例があるのであれば教えていただきたいですし、また、そういったことで、十年なり二十五年なりというこの期間を経て社会に認知されたら別な形でちゃんと保護されますよ、こういう道筋についても何か教えていただけると、この制度はより使いやすいのかなというふうに思うんですが、御説明をお願いいたします。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 事例でございますけれども、例えばホンダのスーパーカブ、原動機付自転車として非常に人気を博したものがございます。

 これにつきましては、デザインが切れた後、今度は、委員御指摘の立体商標として保護がされております。

櫻井委員 持ち時間が終了いたしましたので、これで質問は終わらせていただきますが、今回の特許制度、先ほど来何度も申し上げたとおり、大きな一歩だというふうに評価をさせていただきます。やはり、知識集約型の産業にどんどん移行していく中、こうした特許制度は大変重要だと思っております。

 しかし、課題はまだまだたくさん残っているということで、引き続きさらなる前進をお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

赤羽委員長 次に、松平浩一さん。

松平委員 立憲民主党、松平浩一です。どうぞよろしくお願いします。

 早速ですけれども、資料一を用意しましたので、ごらんください。と言ってもまだ、配られていますかね。

 こちらは世界知的所有権機関、WIPOと呼ばれる機関なんですけれども、そちらが発表した二〇一八年の特許の国際出願の件数ですね。これを見ていただくと、出願件数、二〇一七年に日本を追い越しているんですね。追い越されちゃいました。

 これについて、日本経済新聞、何と言っているか。

 通信や人工知能関連などで中国の勢いが鮮明で首位の米国を急速に追い上げている。日本も存在感を保ってはいるものの、米中二強が技術革新の主役を担う構図が鮮明になってきたと言っています。

 また、同じ日本経済新聞の記事ですけれども、このような記事もあります。

 人工知能に関連した特許の民間企業ランキングをまとめた記事で、二〇一六年から二〇一八年の三年間で公開された特許の出願件数を調べたところ、上位五十社に入った企業は中国は十九社、米国の十二社を上回った。二〇一三年から一五年は米国の企業数が上回っていたんですけれども、逆転してしまった。ハイテク摩擦の主戦場であるAIで中国が存在感を高めている現状が浮き彫りになったと言っています。

 資料二、こちらは特許出願件数の数字なんですが、中国の二〇一八年の特許出願件数、これは三万件を超えています。これは五年前に比べたら約十倍にふえています。二〇一五年に米国を上回って中国が首位になって、今では米国の二・五倍に達している。中国のAI関連特許出願の増加の数がとてもすごいことになっています。中国は国として相当力を入れてきているのがわかる数字です。

 大学であるとか公的研究機関のAIに関する学術論文の発表件数も、上位二十機関のうち半数が中国、それで、日本は東大だけだという結果もあるようです。

 AIだけではありません。これは去年八月のブルームバーグの記事なんですが、ファーウェイとZTEは、中国の特許公開数で大きなシェアを占めていて、その約六〇%がデジタル通信に関連している。対照的に、日本企業の特許公開の対象分野の範囲はより広く、相対的に技術の裾野が広い。中国企業は選択と集中で一気に重点分野での存在感を増していると。

 このように、中国の出願数がふえている背景、分析されていたらお教えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

米村政府参考人 お答え申し上げます。

 特許に関して申し上げますと、中国は、二〇〇八年に国家知的財産戦略を策定いたしまして、国民にも発明を特許出願することを奨励しておりまして、地方政府の助成も含めまして、さまざまな形で国際特許出願に対する奨励金が支払われていると言われております。

 また、二〇一六年ですけれども、国務院が定めた知財保護計画におきまして、国際出願件数を二〇一五年の三万件から二〇二〇年に六万件にふやすとする数値目標が設定をされております。

 こうした中国の大きな取組もありまして、出願件数が増加しているのではないかと考えてございます。

松平委員 なるほど、奨励金という言葉が出ました。こういった奨励金を使って、次世代の産業で覇権を担おうと国を挙げて頑張ってきているわけですね。

 私、新素材であるとか、バイオですとか、製薬であるとか、そういった分野ではまだ日本では国際特許出願が優位な状況にあるというふうに聞いてはいるんですけれども、このままではどうなるかわからない。大変心配です。5Gの技術も、中国は囲い込みしようとしているものと聞いています。

 大臣、こういった中国の激増している特許出願に関して、日本の産業競争力、こういったものにどういった影響が出てくるか、御見解をお聞かせいただいてもいいでしょうか。

世耕国務大臣 今資料を配っていただいた、AIの特許がこれだけ伸びているというのは、私もちょっと、今初めて知って驚いています。

 AIに関しては、論文で大分差がついているというのは聞いていました。論文は読んで理解できればいいわけでありますので、そんなに焦っていなかったんですが、特許出願もそれだけふえているということは、かなりAIに関して中国と差がついてきているなというのは認識しなければいけないと思っています。

 また、今御指摘のとおり、5G、次世代通信に関しても出願件数をふやしてきている。この点も、特に先端分野の技術全般について中国が特許取得に力を入れているというのは、よく注視をしていかなければいけないと思います。

 ただ、委員おっしゃっていただいたように、一方で、素材とかバイオとか、裾野の広い特許は日本がまだ依然優位な状況にあるわけですから、その状況をやはり日本にとって有利に使っていくということも重要だ。ちゃんと、中小企業やベンチャー企業やあるいは大企業も含めて、そういった分野の権利行使をしっかりやることによって、第四次産業革命といっても、やはり素材がなければ、物が動かなければ、いろいろなサービスやビジネスは成立しないわけでありますから、そういうところは日本はしっかりと権利を行使していくという視点も重要だというふうに思っています。

 一方、今おっしゃったような、AIですとか、あるいは次世代通信の分野での特許ということに関しては、やはり主役はベンチャーであり、あるいは大学であるというふうに思っております。

 こういったすぐれた次世代技術を担う大学やベンチャーが国内外で強い知財権をしっかりと取得をできるように後押しをしていく必要があるのではないかというふうに考えております。

 ベンチャーや大学へのいろいろな支援をこれからも充実をさせていくことが、この最先端の技術分野で中国に対抗していく一番の道ではないかというふうに考えています。

松平委員 ありがとうございます。

 権利をしっかり取得できるように後押ししていくというお言葉をいただきました。

 やはり、中国にこれだけ権利をとられていて、ライセンス料を払わなければビジネスができないよ、そういうことになると、本当に日本の国力がどんどん落ちてしまっていくんじゃないかなというふうに危惧がありますので、そこの部分、お願いしたいなと。先ほど、中国は奨励金を出しているみたいな話もありましたので、そういう直接的な後押しというのも考えられるかと思いますので、ぜひいろいろな形での後押しを御検討いただければと思います。

 それで、中国の話を続けますが、中国は、日本の特許に相当するものを専利権という言葉、名称で言うらしいんですけれども、この専利権、関連する紛争事件の件数が近年非常に増加しています。

 人民法院というんですが、これは日本の裁判所に相当します。こちらに提起された訴訟の数、これを資料三としてまとめました。見てください。

 二〇一七年、日本のおよそ十倍、これはアメリカの四倍ぐらいの数がございます。実は、この専利権というのは、日本の特許だけではなくて実用新案と意匠も含まれますので正確な対比ではないということなんですが、それを考慮しても、相当な開きがあります。

 この紛争数、これは今何が懸念されているかというと、パテントトロールなんです。

 このパテントトロールは、これは明確な定義はないんですが、ある解説記事、これはわかりやすかったので紹介させていただきますと、発明を実施しておらず、実施する意図もなく、大抵の場合実施することがないような特許から、その特許を利用して多数の金銭を得ようとする者、そういう解説記事がございました。

 要は、自分で特許を実施するのではなくて、侵害しているというふうに難癖をつけて、難癖という言葉がいいのかわからないですけれども、つけて、巨額のライセンス料を取ろう、そういうビジネスですね。

 こういったパテントトロールの活動、これは米国では非常に有名でしたけれども、一例を言いますと、二〇一五年に米国で起きた特許訴訟、五千八百件あります。そのうちの六割がパテントトロールだったという話もあるくらいです。

 この問題に詳しい東京理科大学の平塚教授、これは産経新聞のインタビューで何と言っているかというと、米国をしのぐ勢いで、今、中国、パテントトロールの活動が増加する可能性が高い、そして、訴訟の中には、パテントトロールが中国の裁判所で日本を訴えるケースが出てきているというふうに話されています。

 この中国の国際特許出願数は非常にふえていると先ほどお話しさせていただきましたが、その特許権を行使して、日本においても中国企業から訴えられる特許訴訟がこれからふえてくるのではないかというふうに思っています。

 その一つの形態が、今相当ふえている中国の、今話しましたパテントトロールによる訴え提起。そしてもう一つ、これが私の今回のメーンの懸念なんですが、今回の査証、現地調査制度の導入ですね。今、相当知財戦略に力を入れている中国企業、中国企業に限らずほかの外国企業もあるとは思うんですが、そこが技術獲得目的で訴えを提起してしまう、その可能性が十分に出てきてしまう制度なのではないかな。

 これは、事前に御説明いただいた資料で、営業秘密が漏れてしまう可能性がありますと言っていましたけれども、単に、営業秘密が漏れて、ある会社が損害をこうむったというレベルの話ではなくて、日本が優位性を持っている技術を国際的にきちんと守れるかといった話にまで発展するんじゃないかと思っています。

 その点について、今回の制度、本当に大丈夫なのかという観点から、しっかり聞いていきたいなと思っています。

 というわけで、今回の制度、どのように相手方当事者に、現地調査して見たもの、得た知識の秘密を守っていくのか、まず総論として教えてください。

宗像政府参考人 今回の法改正によって創設する査証制度におきましては、まずその濫用を防がなければいけないということで、裁判所が、証拠が侵害行為の立証に必要であるという必要性、そして、特許権を侵害したことを疑うに足りる相当な理由があるという侵害の蓋然性、そして、ほかの手段では証拠の収集を行うことが困難だという、補充性と言っています、そして、相手方の負担が不相当なものにならないという相当性という、四つの厳格な要件を満たした場合に限って、申立人の申立てに基づき査証命令を発令するということになっております。

 実際に証拠収集を行う者は、裁判所が中立公正な専門家を指定をいたしまして、指定された専門家が中立性や公正性を欠くのではないかと相手方あるいは申立人が考える場合は、忌避という制度によって、これを排除するように裁判所に申し立てられることにしております。

 そして、査証を実施した結果得られた秘密の漏えいの防止につきましては、まず、そもそも査証を実施する際に、申立人側の立会いは認めません。そして、専門家には、秘密保護の観点から、罰則で担保された秘密保持義務を課します。そして、専門家が作成した報告書が申立人に開示される前に、相手方が、これはうちの営業秘密であるということで黒塗りを申し立てることができます。そして、裁判所が正当な理由があると判断すれば、その秘密が黒塗りされる、こういう仕組みを設けております。

 こういう重層的な仕組みによって、査証制度が悪用されるような事態は防止できると考えております。

松平委員 どうもありがとうございます。重層的な仕組みというところを伺いました。

 ただ、中で、私、重要だと思うのは、査証報告書の黒塗りというところだと思います。

 そこで、ここをちょっと突っ込んで質問させていただきたいんですが、この黒塗り、だから、営業秘密とかを黒塗りして隠した上で報告書として出せるということだと思うんですが、こちら、条文上、百五条の二の六第三項ですけれども、裁判所が正当な理由があると認めるときに黒塗りできると言っているんです。だから、正当な理由がないと黒塗りできないわけですね。じゃ、正当な理由って何でしょうか。お願いします。

宗像政府参考人 正当な理由があるかどうかということにつきましては、裁判所が、侵害を立証するための必要性というものと、そして一方で、営業秘密などを保護する必要性、この二つの必要性を比較考量して判断することになります。

松平委員 ありがとうございます。必要性、立証の必要性と保護の必要性との比較考量だということです。

 つまり、比較考量ということだとすると、大切な営業秘密があったとしても、証拠の必要性、その立証の必要性というものが上回ってしまうと、黒塗りされないで報告書に出てしまう可能性があるということなんです。これは結構つらいと思うんですね。黒塗りされないということは、技術流出してしまいますから。こういう場合ってどうするんですか。何かほかに手だてはないんですか。

宗像政府参考人 まず、今の二つの比較考量の結果、例えば、これは侵害していないではないかという、その侵害が疑われる技術と関係のないものにつきましては、これは開示はされません。

 そして、他方で、開示されるであろうという一番典型的なものは、まさに侵害をしているという証拠になるようなものを企業が営業秘密として管理をしている場合、これは、その侵害がある場合は、そのまさに侵害をしている技術そのもの、これはもともと訴えている側の技術であるわけですけれども、これを使っているということは、開示をしなければならなくなるということがあります。これが典型的な例であります。

 そして、今御指摘の、仮に、それが黒塗りされなかった企業秘密、その侵害の証拠である事実も含めて、それがどうやって対外的に保護されるのかということなんですけれども、黒塗り手続後の報告書にも営業秘密などが残る可能性がありますので、黒塗り手続後の報告書を閲覧できる者は、民事訴訟法九十二条に基づきまして、当事者そしてその代理人に限られます。そこで閲覧した者は、当事者の申立てによって秘密保持命令の対象となるということでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 実務上、書類の提出命令というのは今までありましたけれども、それが出るときというのは、大抵、最後におっしゃられた秘密保持命令、申立て、やるものと私も認識しています。やはり秘密保持命令も同時に出してもらわないと、それは秘密が外に出てしまうから、もう本当に、非常に、この秘密保持命令をセットにして考えるのは、実務上もやられていますし、私も重要なものと思っています。

 ここからがメーンなんですが、この秘密保持命令は要件として、実は、秘密保持命令、どういうときに出してもらえるかというと、情報が営業秘密に該当する場合なんです。その場合に秘密保持命令が出せることになっているんです。

 この秘密保持命令が出せる要件である営業秘密、これは不正競争防止法上の営業秘密と同じと理解していいですか。

宗像政府参考人 御指摘のとおり、特許法百五条四第一項で、秘密保持命令の対象について、不正競争防止法に規定する営業秘密としております。

松平委員 そうなんですね。今回、秘密保持命令の条文、これはほとんどいじられていません。なので、要件は今までと変わっていないわけですね、秘密保持命令を出せる要件。

 私、ちょっと複雑な話になっちゃうので、結論をまず言うと、今回、査証制度を導入しましたので、ふだん、こういった書類提出命令とかが出るに当たってセットになる秘密保持命令の要件も、これは緩和しなきゃいけなかったんじゃないかなと思っています。

 今、秘密保持命令が出せる要件となる営業秘密、これは不正競争防止法上の営業秘密と同じだと御確認いただきましたけれども、じゃ、どういった要件になるかというと、これは資料四を見ていただきたいんですが、これは営業秘密の三要件として経産省のホームページにも書いてあるものです。秘密管理性、非公知性、有用性という三要件があるんです。

 今回、現地調査の査証制度が導入されたにもかかわらず、秘密保持命令に今まで同様この三要件を必要とするのは、これはハードルが高過ぎるんじゃないかなというふうに思っています。

 この有用性、どういった要件の内容かというと、これは経産省のホームページ、こっちで見ていただくと、「当該情報自体が客観的に事業活動に利用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つものであること。」というふうにされています。

 例えば、ちょっと具体的に考えると、会社が研究開発している技術で、基礎研究の段階ですよ、まだ全く事業化、実用化の段階にない技術というのもあるわけです。そういったものは、今言ったこの有用性、「客観的に事業活動に利用されていたり、利用されることによって、」という、こっちに当てはまらない場合も出てくるんじゃないかと思うんですね。

 そうなると、秘密保持命令の要件に該当しないので、秘密保持命令、出せないわけです。そうしたら、査証されて、報告書に黒塗りされない場合があるにもかかわらず秘密保持命令も出せないということで、これは守られない、この基礎研究の結果が守られないということになっちゃう、漏れてしまうということになっちゃう可能性もある。

 ほかにも、私、去年の国会、この委員会でさんざん質疑させていただいた不正競争防止法の改正がありましたね。限定提供データ、これも営業秘密じゃないんですよ。今の三要件でいうと、秘密管理性、これを満たさないからです。さんざんやらせていただいて、これは大臣も覚えていらっしゃると思うんですが、限定提供データは不正競争として守らなきゃならないとおっしゃって改正されました。

 しかし、この限定提供データ、営業秘密の要件を満たさないので、秘密保持命令で守れないんですよね。にもかかわらず、黒塗りされないで報告書で開示されてしまう。情報がやはり、これは漏れてしまう可能性があるんじゃないかなと思うんです。そういう意味では、大変危険を感じてしまいます。(宗像政府参考人「委員長」と呼ぶ)済みません、もうちょっとあります。

 私は、この査証制度を導入した以上、秘密保持命令を緩和して、営業秘密に限ることなく、もっと守るべき情報を守らなきゃいけないと思っているんです。だから、ちょっと繰り返しですけれども、この要件、緩和して、緩和して秘密保持命令で守れることによって初めて、この査証報告書で黒塗りできなかった情報を担保することができるというふうに思っています。こちらについて、いかがでしょうか。

宗像政府参考人 まず、不正競争防止法上の営業秘密でございますけれども、先生おっしゃったとおり、秘密管理性、有用性、非公知性と。昨年の法改正の場合は、関係者に共有をするということで秘密管理性を外れてしまうというものがあり得るので手当てをしたということなわけですけれども、今例に出していただいた、まさにこれから何に使うかわからないというような研究開発、これは、技術で頑張ろうという会社、皆さんやっていらっしゃいます。それが、開発されて初めて何に使えるかというのがだんだん見えてくる、このブリッジが難しいわけですけれども。

 そこがまさに、実際にまだ用途がはっきりしていなければ有用性が否定されてしまうということであれば、それはもうほとんど意味がなくなってしまいますので、ここは、そういうことで有用性が、今実際にもう使途が見えているというようなことで有用性が縛られるものではないという理解でございます。

松平委員 その有用性の判断というのは、恐らく裁判所がすると思うんです。裁判所って、やはり自由心証主義というのがありますので、裁判所が、裁判官、独立もありますので、どんな判断をされるかというのはここでは僕は担保できないので危険だと、だからこそ秘密保持命令で守ってもらうようにしてほしいというふうに思っているわけです。

 どうしましょう。そのまま、よろしいですか。いきますか。はい。

宗像政府参考人 裁判所で、もちろん裁判官の自由心証なわけですけれども、当事者が主張立証いたします。そこで事業者が、これは我が社の重要な技術だということで秘匿管理をしておれば、その技術が営業秘密となることが想定されまして、結果として秘密保持命令の対象となりますので、秘密保持命令が機能しないことは実態上想定されないというふうに理解しております。

松平委員 なるほどですね。わかりました。

 とりあえず、ちょっと、残り五分になってしまったので、次に行かせていただきます。

 この査証報告書、誰が見られるか教えてもらってもいいでしょうか。

宗像政府参考人 査証報告書は、証拠として採用された後は原則として何人も閲覧が認められるんですけれども、報告書の中に営業秘密が残る場合には、民事訴訟法九十二条の規定に基づきまして、当事者の申立てによって閲覧できる人を当事者のみに限ることができます。

松平委員 本人、閲覧できるということで当然いいんですよね。本人ですね。はい。

 ここなんです、訴訟を起こした当事者本人が報告書を見れてしまうというところ。ここ、私、これ、訴訟を起こした本人が見れないようにすればやはり簡単だったんじゃないかなと思っています。この報告書、査証報告書、訴訟を起こした当事者本人が見れないようにするという制度設計は、僕、やろうと思えばできたんじゃないかなと思っています。

 特許訴訟というのは、当然ですけれども、そもそも相手の営業秘密を知る目的での訴訟ではないわけですね、本来的には。だから、本来は、訴訟を起こした本人としては、侵害の有無の結論、つまり、勝訴か敗訴かさえわかればいい。そうなると、本人に営業秘密が黒塗りされていない報告書を提示する必要がない、開示する必要がない。

 例えば、弁護士のみに開示すればいい。米国では、プロテクティブオーダーという制度があって、情報の必要性に応じて、弁護士限りとか、条件を通じてディスカバリーする制度があります。こういう話ができると思うんです。

 この相手方本人への報告書の開示というのは、経団連も知財協も強く反対をしているというふうに聞いています。

 この報告書、相手方への技術流出のおそれがどうしてもあるので、弁護士のみ見れるようにすべきだというこの見解について、いかがでしょうか。

宗像政府参考人 まず、査証報告書の中で最も機微な情報は、これは黒塗りをされます。そして、裁判官がこれを黒塗りにするかどうか迷って、そして、場合によっては、これを訴えた側に確認をする場合があります。そこが実はこの制度設計のときに一番大きな、最後まで残った問題でございました。

 そのときに、やはり原告の本人に開示しちゃだめでしょうということで、原告本人に開示する場合は、これはやはり本人訴訟の場合がありますのでここでアトーニーズ・アイズ・オンリーを導入するわけにはまいりませんでしたので、原告本人に開示する場合には立ち入られた側の同意を必要とするという規定を入れました。これによって、査証報告書中の最も機微な、黒塗り前のものは一切原告本人が見ることができないということが確保されて、これで大分議論の雰囲気が変わったということを申し上げたいと思います。

 その上で、先生御指摘の、黒塗り後になお残ったものの中にやはり本人に見られたくないものがあり得るんじゃないかという御議論なんですけれども、ここについては、弁護士強制、アトーニーズ・アイズ・オンリーの導入、これはセットになるわけですけれども、これが、今の現在でいきますと、日本の民事訴訟法においては本人訴訟というものが認められておりますので、これを、その関係をどう整理するかというのは、これはしっかりと議論しなければならないという課題が残っております。

 この点につきましては、今般の法案をお認めいただいた後に、速やかに議論の進め方について検討をしていきたいと思っております。

松平委員 今、本人訴訟とおっしゃいましたけれども、この制度設計に当たっては、本人訴訟をしている場合、この査証制度を利用できないですとか、これは別にできたんじゃないかなというふうにも思ったりもします、私は。それなので、今、まだ本人訴訟との絡みで課題が残っているとおっしゃったので、ぜひちょっと御検討いただければと思います。

 最後に、もう時間も間近ですので、ちょっと今の議論を聞いて、本当に日本の大切な技術流出、こちらを担保できるのかという観点について、所見を、大臣、お聞かせいただければ幸いです。

世耕国務大臣 今の質疑、非常に私も聞いていて勉強になった面があるわけでありますけれども、当然、我々は技術を守るためにこの法改正を行っているわけでありますから、その趣旨にのっとった運用になるように、これは裁判所が絡む件ではありますけれども、しっかり政府としては努めてまいりたいというふうに思います。

松平委員 済みません、どうもありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。失礼します。

赤羽委員長 次に、浅野哲さん。

浅野委員 国民民主党、浅野哲でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 早速質問に入りたいと思いますけれども、今回の特許法等の改正について、この必要性、改正するに当たっての立法事実から、まずは確認をさせていただきたいと思います。

 今回、特許庁の方から事前に説明を受けた資料によれば、デジタル革命によって業種の垣根が崩れてオープンイノベーションが進んでいく、そして、中小・ベンチャー企業がすぐれた技術を生かして飛躍するチャンスが拡大していく中で、取得した特許をしっかり守れるように訴訟制度を改善していくということが書かれています。

 まずお伺いしたいのは、今回、査証制度を導入するというのが大きなポイントになってくると思うんですけれども、この導入の必要性と、それによって期待される効果についてお伺いをさせていただきます。

宗像政府参考人 繰り返しこの中でも御議論が出ておりますけれども、アメリカやヨーロッパ諸国では、日本よりもはるかに強制力のある証拠収集制度によって権利の実効的な保護を図っております。近年では、中国や韓国も訴訟制度を急速に強化をしておりまして、権利保護によるイノベーションの促進を図っております。

 日本では、昨年、中小企業の特許料を一律半減する法案をお認めいただきまして、この四月から施行されたわけでありますけれども、中小・ベンチャー企業にとってみれば、せっかく特許をとってもいざというときに使えなければ意味がない、特に製法に関する特許については、侵害されたことを立証する証拠がなかなか集められないという声が寄せられております。

 そこで、専門家が強制力を持って現場で証拠収集を行う査証制度を創設することで、専門家が実際のものを調査しなければ証拠が集められないというようなものについて証拠を十分に収集できるようになりまして、これで特許権の保護の実効性が高まると考えております。

浅野委員 必要性については理解をさせていただきましたが、この導入に当たって見通される効果についてはいかがでしょうか。何か定量的な検証であったり、あるいは、今おっしゃっていただいたような中小企業が抱える課題を解決しますというよりも、もう少し具体的な今後の見通し等があれば、答弁をいただきたいと思います。

宗像政府参考人 日本では、そもそもなかなか裁判沙汰ということにはならないということで、この制度が直ちにどれほど使われるかはわかりません、正直わかりません。

 ただ、とことん行き着くところまで行って裁判になった場合には、中小だからといって、どうせ証拠を集められないだろうというようなことで侵害をするとか、あるいは、損害賠償の算定の方もあるわけですけれども、中小だから売上げが小さいから損害賠償額は大して取られないだろうというような、そういう計算が働きにくくなるということで、権利を尊重する環境が少し醸成されるのかなというふうに思っております。

浅野委員 ありがとうございます。

 具体的な利用率、件数の見通しというのは立たないまでも、ある程度の抑止力というんでしょうか、そういった機運を醸成するということを期待しているということなんですが。

 ちょっと質問を先に、次の質問を飛ばしてその次に行かせていただきたいんです。

 今回用意させていただいた資料の二をごらんいただきたいんですけれども、今おっしゃっていただいた姿勢は理解はできると思いますが、特許庁の方から、今後の知財紛争処理システムのあり方に関する報告書の中で、こういった記述がございます。ちょうど赤線を引いてある部分ですが、これは、証拠収集手続のことを指して「本手続は、」というふうに書いてありますけれども、「本手続は、その存在によって本手続によることなく当事者が任意に証拠を提出することが促されることを期待するものであり、これらの要件のもとで、結果として、いわば「伝家の宝刀」として運用されることが期待される。」ということが書いてあります。今長官がおっしゃっていただいたようなことを言葉にしていると思うんですが。

 あえて少し批判的な見方をさせていただきますと、もし、公平公正な紛争処理が行われること、制度の行使ではなく、侵害防止のための抑止力を求める場合には、これまで議論もありました、単純な懲罰賠償制度のようなものの方がわかりやすく、原告側の手続負担も軽いのではないかというふうに思うわけで、そういう見方もできます。

 こういった意見に対して、特許庁としてはどういうふうな考え方で今回わざわざ査証制度ということにしたのか。改めて御回答をお願いします。

宗像政府参考人 懲罰賠償制度につきましては、先ほど来議論が出ておりますけれども、やはり、三倍、五倍というような議論がありますけれども、一倍がしっかりしていないと結局は抑止力が働かないということで、まずは、日本の中で一倍というものが本当にしっかりできているんだろうかというところから始めなければ先に進まないということが出発点でございました。

 やはり、懲罰賠償制度については、非常に厳しい見方も強い反発もあります。したがって、まずやるべきことをしっかりやらなければしっかりした議論ができないというふうに考えておりまして、まずは今回は一倍の中身をしっかりするということで、その中身は二つあって、一つは、侵害があるのかどうかということを確認するときの証拠の収集。

 これは、諸外国では、例えばアメリカや韓国もそうですけれども、懲罰賠償制度をとっている国も、懲罰賠償だけに頼っているのではなくて、やはり侵害の証拠をまず確認をするというところでもしっかりした制度を持っております。そこをまず日本はしっかりしなければいけないということ。

 そして、一倍をしっかりするという意味において、今の得べかりし利益の計算の仕方が、中小企業など売上げ規模が小さいところが、自分の実施能力を超える部分は一切賠償請求できないではないかというところに、ライセンス料としてであれば損害額を更に大きく認定していただける可能性があるという道を開くことで、この抑止力を高めるということをまずは出発点としたわけでございます。

浅野委員 考え方については理解できました。

 ただ、これはもう価値観の問題になるんですけれども、特許庁の資料に書いてあるこの文言、わざわざこの委員会でこれだけの先生方を集めて議論をする制度、それで法を改正するという行為をとっているわけで、利用されない方がいい制度、法律というのもあるのかもしれないんですが、これを使われないことを期待するというような表現ではないのであれば、ぜひこの部分については、もう少しその意図がわかるような形で表現を今後していただきたいというふうに思います。

 何か一言あれば、よろしくお願いします。

宗像政府参考人 私ども、この伝家の宝刀という言葉は、軽々に発動されるものではないと。非常に抵抗感が産業界でも強うございましたので、軽々に発動されるものではないと。

 他方、抜かずの宝刀ではないということで、これはいざとなったときにはもちろん機能する、いざとなったときに機能するということをみんなが確信していないとそれは抑止力が働きませんので、そこはそういう考え方で整理をさせていただいたところでございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 では、次の質問に移ります。

 今、これまでの質疑の中で、なぜこの法律改正が必要なのか、どういう役割を期待するのかというところについて議論させていただきましたが、そこを共有させていただいた上で、今回の法律案の改正内容がどのように議論されてきたのかという部分について、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 資料の方に戻っていただきまして、資料一をごらんいただきたいんですが、これも同じ報告書の中に書いてあった特許制度小委員会の委員名簿になります。

 赤線を引いてある一番下の部分をごらんいただくと、オブザーバー、平成三十年十二月二十五日、第二十八回からと書いてございまして、経団連と日本商工会議所が二十八回目からオブザーバーとして参加をしているということであります。聞くところによれば、この経団連などの団体は、以前はこの特許制度を審議する委員会のメンバーであったということでしたが、今回はメンバーには含まれておらず、途中からオブザーバーとして参加をしたということのようでございます。

 これもあえて批判的な目で見させていただくと、これまで委員として選定されていた団体、議論すべき内容によって委員がかわることは十分に考え得ることなので、そこについて特段疑問視はしておりませんが、わざわざ途中からオブザーバーという形で入ったこの経緯について、ちょっとお聞かせをいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

米村政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正の内容が、団体の会員企業の中でもさまざまな意見が見られまして、団体としての意見集約が難しいことが予想されたということもございまして、このため、特許制度小委員会の委員には、団体からの代表という形ではなくて、大企業、中小企業を始め幅広い属性の主体からバランスよく選定することとして、団体代表というのを今回外しております。

 他方、団体との意見交換につきましては、昨年十一月の小委員会におきまして経団連及び日本商工会議所との意見交換は行いましたほか、小委員会の外でも、日本経済団体連合会、日本知的財産協会、電子情報技術産業協会などの会員企業と集中的に、委員会の外ですけれども、意見交換を重ねてまいりました。

 そうした小委員会外での議論と小委員会の議論との接続性を持たせるという観点から、日本経済団体連合会及び日本商工会議所にも小委員会における議論の場に加わっていただくことが適切であろうと判断をいたしまして、昨年の十二月二十五日の特許制度小委員会以降、オブザーバーとして御参加いただくこととしたものでございます。

浅野委員 大変わかりやすく御説明をいただきまして、ありがとうございます。

 ちょっと更問いになってしまいますけれども、オブザーバーとして途中から参加をした経緯については理解をさせていただきました。

 では、なぜ、委員としての追加ではなくオブザーバーという形、オブザーバーというと、通常は、委員会の中で傍聴はできるけれども発言権はないという立場だと思いますけれども、なぜオブザーバーという立場となったのか、この部分についてちょっと補足をお願いいたします。

米村政府参考人 議論を当初からやってきたメンバーとの関係もございますので、まず意見はちゃんとお伺いする、オブザーバーとしての御意見はお伺いするという条件も付しまして、御意見を聞くということでさせていただきました。当初から入っていなかったので、今回オブザーバーという形で入れたということでございます。

浅野委員 では、委員会の外で意見も聴取してそれを考慮するという意味では、実質的には委員と同質的な立場であったような受けとめをさせていただいたんですけれども、それでよろしいですか。

米村政府参考人 委員と同質といいますと、それは制度的なところがございますので、そこまでちょっと申し上げることはできませんで、繰り返しになりますけれども、今回は団体としての委員を入れないということで、当初からそういう制度設計で走っておりましたので、こういう形になったということでございます。

浅野委員 この議論はここまでにしたいと思いますけれども、言いたいことは、今回、この制度の必要性というもの、先ほど御説明をいただきましたが、定量的な検証は済んでいない段階、まあ、定量的検証も難しい問題なのかもしれませんが、非常に国内におけるニーズの定量化が難しい状態で法改正案が提出をされたという事実、そして、法案の事前審議というか、つくり込みの段階に当たっては、各関係団体の意見集約が難しい段階でこの小委員会がスタートしているということ、こうしたことを、事実を捉えると、やはり、本当に今十分に煮詰められる環境が世の中にあったのかどうか、こういった部分については多少懸念が残るものだと思っています。

 この特許の法改正、今後、懲罰的賠償制度あるいは利益吐き出し型の賠償制度を含めて、さまざまな追加の議論が行われていくと思いますけれども、ぜひそのあたり、定量的に、そして、各団体がちゃんとついてこれるようなペースで、あるいはタイミングで進めていただきたいと思いますが、長官の方、手が挙がりましたので、お願いします。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 今回の、まず、定量的という点でありますけれども、国内で一体どのぐらいの利用率があるのだろうかということを、もちろんそれは、それが可能であればやりたいところではありますけれども、今、今までの特許については、お客様はとにかく訴えないし、取引関係があれば、権利者や、どっちかというと親元の方にお任せするとか、そういう日本のビジネスの風土があります。それがこれからの国際競争の時代に合っているのかどうかというところが根本的に問われる。

 何をKPIとして目指すかというときも、やはり、既存のパラダイムの中で想定される目標とか推計とか、そういうものが意味を持たないような大きな変化に私どもは直面しているのではないか。そして、諸外国を見れば、もとからこういう制度を持っているアメリカやヨーロッパ、そして、近年急速にこういう制度をキャッチアップしている、そしてさらには抜こうとしている中国や韓国を見ておりますと、日本はじっとしていてはいけないのではないだろうか。

 団体の中でも大きな意見の違いがあります。会員の企業さんは、それはいろいろな業種の方を含みますので、お立場によって、それぞれ事業が置かれている状況によって、この問題に対する御意見が異なります。そうすると、団体としては、抵抗感がある会員を残して賛成というのはなかなか言いにくい、どうしても慎重な意見に寄り添うということをやむなくされるというところがあります。

 そこで、今回は、そこに、団体にそういう負荷をかけるというよりは、私どもが個々の企業のお話をよく聞いて、実際に個々の企業のお話を聞くときには、団体に御協力をいただいて場をつくっていただきました。先ほど部長がお答えしましたように、団体が場をつくってくださったことで、数十社の会社と一堂に会して数時間の議論を積み重ねるということを連日のように年末年始いたしました。

 この結果があって、この手続をステップ・バイ・ステップですり合わせるということもできましたので、こういう実質的な意見交換はするけれども、それは、団体という、いろいろな意見をどうして、最大公約数を表明するかというのがなかなか難しいような問題について、団体そのものをメンバーにするということになかなか難しい面があるのではないかと判断した次第でございます。

浅野委員 かなりパラダイムが変わるような大きな変化の中で、現場がまとまるのを待っていては立ちおくれかねないという危機感から、特許庁の方で今回リーダーシップを発揮していただいたのだろうというふうに今私は捉えさせていただきましたが、これを受けて、ちょっと後の質問でもう一度触れさせていただきます。

 次の質問、具体的な法案の中身に移らせていただきますが、まず、証拠収集手続の創設、誰が行うのか、その実施主体について、きょうこれまでも議論がございました。

 改めて伺わせていただきたいと思いますが、証拠収集手続、今、法案の報告書等を見ますと、弁理士や弁護士、大学の研究者等を候補としてこれから確保していくということでありますし、きょうこれまでの議論を聞いておりましても、富田先生の質疑の中で、長官の方からしっかりと、最高裁の方からですか、しっかり人員確保に努めるというような旨の回答がございました。

 ですので、ちょっと、あえてそこを更に深掘りする質問をさせていただきたいんですが、やはり私も、外形的に公正公平で、ステークホルダーではない人物が証拠収集手続を行うべきであるというふうに思います。そして、当然ながら、弁理士の方とかそういう方々が候補であることも私は異論はございませんが、今後、ただ、これから本当にさまざまな幅広い分野で訴訟が起こり得る中で、非常に、誰がステークホルダーじゃないのか、本当に中立なのかという部分の判断を見きわめるのは大変難しいと思います。

 せめて、最高裁あるいは特許庁の方でもいいんですが、どういった人物要件が求められていくべきなのか、ここについてしっかりと明確化をすべきだというふうに思うんです。もし、この点について御意見をいただけましたら、よろしくお願いしたいんですが。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 査証人につきましては、繰り返しになりますが、技術と訴訟手続の双方に精通した公平な専門家を確保しなければならないというふうに理解しております。最高裁としましても、現場の裁判体の方で円滑に査証人を選任できるように援助をする必要があるというふうに考えております。

 裁判所で専門家の方に関与していただく既存の制度としまして、先ほど御紹介しましたとおり専門委員の制度がございまして、この専門委員として任命されている方を査証人の候補者として活用することが考えられるところでございます。

 知的財産権関係の専門委員は現在二百人程度おりまして、幅広い専門分野をカバーする体制が整備されてございます。それに加えまして、専門委員に対しましては、毎年、訴訟手続に関する研修もしておりますので、専門委員は査証人の有力な候補者群になり得るものというふうに思っております。そこで、知的財産権関係の専門委員の名簿を査証人の選任でも活用できるように整えることを考えております。

 そのほか、弁護士会あるいは弁理士会等から査証人の候補者の推薦を受ける仕組みも整えるなどして、適切な人材を確保することができるよう努めてまいりたいと思っております。

浅野委員 ありがとうございました。

 そういう明確な方向性があるということなので、ぜひそれを早期に整備をしていただきますようにお願いを申し上げます。

 続いての質問に移らせていただきますが、次は、ライセンス料相当額の増額について質問をさせていただきます。

 これは特許法の第百二条第四項の条文で、今回、この内容を定義したということなんですが、きょう議論させていただきたいのは、ライセンス料相当額を、侵害をされたわけですから、多少増額する代をつくっておくというその意図は理解ができますが、その意図を条文化したときに、この条文で本当にいいのかというところを議論させていただきたいと思います。

 資料の三をちょっとごらんください。

 資料の三の上部にあります四角の中がこの条文の表現になってございますが、赤線のところですね。きょう前半でも質疑で取り上げられておりましたが、当該特許権者又は専用実施権が得ることとなるその対価を考慮することができるものとする、この表現でございます。

 意図としては、もし両者が円満にライセンス契約をして、その場合決められるライセンス料、これを考慮することができる、そんな言いかえができるのかと思いますけれども、これはいろいろな捉え方があるんじゃないかと思っていまして、ライセンス料を考慮することができるということは、ライセンス料を目標値として、それを考慮しなさいということもできますし、ライセンス料を基準として、そこから幅を持たせた考慮をすることができる、そんな捉え方もできるのではないかなというふうに思っています。

 やはり、条文というのは、ある程度、条文を行使する立場の方がちゃんと共通認識を持てるようなものでなければいけないと思うんですけれども、ちゃんと当初の意図に合った条文になっているのかどうか。私は、ちょっと今、二通りの捉え方ができるんじゃないかなというふうに感じたわけですけれども、このあたり、特許庁の方あるいは関係、答弁できる方からお願いいたします。

宗像政府参考人 御指摘の改正法案第百二条四項の趣旨は、ポイントが、先生が赤線を引いていただいた少し前の、侵害者が確かに特許権を使っている、私、使っていましたということをまずお認めいただいて、それが大前提で、使っていたのでライセンス料を合意しましょうということであります。

 実務的には、特に権利の数が多いような場合に、これはもう切れているんじゃないかとか、あるいはこの権利は踏んでいないんだけれどもと、一個一個やっていると時間がないから、まとめてというような実務もあります。この場合は、裁判で、確かにこの権利が有効で、そしてそれを踏んでしまったということをまず認めていただいた上で、そのことを前提とした交渉で合意したであろう対価を考慮するということでございます。

 条文は、確かに抽象的に書いてあるように見えるわけでありますけれども、ここは、まさに今御議論いただいているように、この実施料額の算定に当たって、確かに、事前よりはふえるであろう、ふえる方向に働くであろうと考えられる要素として、この小委員会の報告書に類型的に挙げられているわけですけれども、侵害された特許が有効であること、特許権者の判断機会が失われてしまったこと、そして、侵害者が制約なく特許権を実施したことというものが挙げられております。

 こういったふえる方向に働く要素につきましては、これは個別具体的な事案に応じて裁判所が適宜考慮しなければならない。これは事案によって当てはめができないものもありますので、そこを裁判所にしっかりと検討いただくためにこういう条文にしてありまして、要素を逐一書き込むというのではなくて、それを全体として読み込める規定としたものでございます。

 今後、この条文の趣旨をしっかり周知をしていくとともに、この条文が裁判実務でどのように運用されているか、しっかりと注視してまいりたいと存じます。

浅野委員 ありがとうございます。

 今後、そういう条文の解釈についてもし判断しかねるような場合には、きょうのこの議事録ですとか、しっかりと特許庁の方からも丁寧な説明をいただきたいと思います。

 次の質問なんですが、では、ライセンス料を幾らに決めるんだというその判断材料が果たして今あるのかという問題についてであります。

 調査室の方の資料を見ますと、今、ライセンス料金を決める際に参考となるようなデータはあるにはあるんだけれども、かなり古いものであるという課題提起がこの調査室の資料にございます。

 ですから、今、これからこういう制度を始めるわけですから、ライセンス料の算定基準、その参考となるデータを一刻も早く整備をしなければいけないんじゃないかというふうに思うわけでありますが、この状況について御説明をいただけますでしょうか。

米村政府参考人 現在、相当実施料額の算定根拠の一つとされております発明協会研究センター編「実施料率 第五版」、これは外国技術導入契約における実施料率を参照したものでありまして、かつ、そのもととなるデータも古いものでありますことから、必ずしも現在の通常のライセンス合意の実態を反映したものではないと思われます。

 各企業の実施料率は企業秘密に該当することもありまして、一般的な相当実施料額に関するデータの収集は容易ではありませんし、また、企業からデータの提出があったとしても、各データはさまざまな個別事情によって決まっておりまして、これにより相場を示すことはなかなか困難かと思っております。このため、近年の実態を踏まえた最新のデータをどのように整備するか、これは今後の検討課題だと思っております。

 なお、裁判例において用いられるライセンス料相当額に関するデータにつきましては、把握、集計することが可能でありますことから、今後、弁理士等とも連携をしまして、そうしたデータを中小企業などへ還元することも検討してまいりたいと考えております。

浅野委員 ありがとうございます。

 今の御答弁、解釈は、判例を集めて、ある程度の参考データを集めることはできる、ただ、個別個別の市場のいろいろなデータについてはなかなかオープンにならないので、これから対応を検討していきます、そういうことだと思いますが、それはしようがないという側面が理解できる一方で、とはいえ、制度が始まる以上は、一刻も早く何らかの形で参考となる情報を提供できる準備をしなければいけないと思うんですね。

 特に、今回は、中小企業、スタートアップ企業を支援するという趣旨の法改正でもありますから、彼らは、多くの場合、知財訴訟に当たる経験ですとか人的リソースに乏しい場合が多いですし、彼らをどのように支援していくのかということを考えますと、データがあればいいんですが、それがない場合は、ぜひその支援体制を特許庁あるいは経産省として整備をしていくべきじゃないかと思うんですね。

 この点について御答弁をお願いいたします。

米村政府参考人 御指摘のとおり、日本のイノベーションのためには、中小企業ですとかスタートアップ企業が持つすぐれた技術、アイデアを知的財産として保護、活用していくことが大変重要でございます。その際、もしもの際の備えとして、知財訴訟に関する支援も大変大事であると思っております。

 このため、知財の取得や活用方法のみならず、知財訴訟への備えについて身近に相談できる場所として、全国四十七都道府県に知財総合支援窓口を設置をいたしまして、弁護士、弁理士などの専門家が相談を受け付けております。

 例えば、模倣品が出回った際に受けた相談におきましては、模倣品を製造、販売している者への警告書の作成方法ですとか、和解する場合の条項についてまでアドバイスを実施したこともございます。また、大手メーカーから侵害警告書が送付された中小企業からの相談におきましては、特許請求の範囲に記載されている技術内容が何かについてしっかり法的に綿密に検討するようにアドバイスを行ったところであります。

 引き続き、知財総合窓口におきまして、積極的な権利取得や活用のみならず、知財訴訟のリスク、備えの必要性についても、しっかり情報提供や助言を実施してまいりたいと思います。

浅野委員 ありがとうございます。

 全国四十七都道府県に設置がされているということでありますが、私も、少し事前にお伺いしたところ、弁理士の方が大体週一ペースで、そして、弁護士の方が月一ペースでその窓口の方に滞在をされるというふうに伺いました。

 ぜひ、今後の運用改善、利便性向上に配慮していただきたいですし、あと、昨年の中小企業支援のさまざまな議論でも世耕大臣ともやらせていただきましたが、この中小企業支援窓口というのはいろいろな種類がありますので、ぜひ、その一元化とまでは言いませんけれども、わかりやすく、中小企業経営者の方々が飛び込めるように配慮していただきたいというふうに思います。

 では、次の質問に行きますが、次の質問は、この資料三のページの、図のすぐ上の二行の文章なんですが、「なお、」からスタートする文章で、「なお、上記一及び二の損害賠償額の算定方式の見直しは、本改正案において、実用新案法、意匠法及び商標法についても同様の改正が行われている。」ということであります。

 これから議論したいのは、商標については同じ取扱いでいいのかどうか、ここについて議論させていただきたいんですが、私の認識では、技術特許と商標というのは、知財として少し役割が異なっていると思うんですね。

 商標というのは、ブランドが持つ信頼というのを示す、あるいは伝えるための手段でありまして、消費者やユーザーの購入動機に直結をするものであります。それに対して、技術特許というのは、その製品、商品が持っている機能を強化したりすることで、消費者が購入するかどうかを判断するための一要素としてその効果を発揮することはありますが、商標は直接そのブランドのイメージ、信頼と直結をしているものであります。

 ということを考えれば、もし商標に侵害が起こった場合、損害賠償額の算定方法について、今回、特許の場合は、販売能力を超えた分のうちライセンス料相当分については賠償を認めるということなんですが、商標についてはそれで十分なのかというのが私の課題意識であります。

 要するに、他社のブランド、信頼を侵害をして自社の利益を上げるということですから、その部分についてはもう少し厳しい対応をしてもよいのではないかというふうに思うんですが、このあたり、統一の制度でならなければならない理由と、今の私の意見に対する御見解を伺えればと思います。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

宗像政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、商標はブランドを保護するものでございますので、特許とは考え方が違うのはそのとおりでございます。

 一方で、お薬の特許のように、特許が一つで、かなり製品価値の全体をあらわすようなものであるものも特許の中にもありまして、そういう意味では、裁判所は、権利の種類に応じて、また、同じ一つの法的な権利の中でもそのビジネスモデルにおける使われ方を踏まえて、その権利が全体の価値にどういう貢献をしているのかということを踏まえて賠償額を算定をいたします。

 この商標法三十八条三項に基づくライセンス料相当額の算定におきましては、まさに製品等の売上げに対するブランドとしての貢献度、これがしっかり考慮されるわけでありまして、そこは前提となる裁判実務がそれぞれの要件で異なるというふうに御理解いただければと思います。

浅野委員 今回の法改正の範囲内で十分に商標侵害に相当する損害は担保できるというふうに理解をいたしましたが、ぜひその着実な実施をお願いしたいと思います。

 私も昔、特許を書いていた経験がございますが、やはり、特許と商標、あとは実用新案ですとかというのはそれぞれ生み出し方も多少異なりますし、権利者がそれぞれの知財に対して求める役割というのは全然違うんですね。やはりダメージの大きさも全然異なりますので、ぜひそのあたりを十分に加味できるような運用をしていただきたいというふうに思います。

 では、次の質問に移ります。

 今回、きょうこれまでの議論の中でもございました懲罰的賠償制度あるいは利益吐き出し型賠償制度については、今後の検討事項であるというようなことでありますけれども、検討するに当たってちょっと考え方を伺っておきたいことがございます。

 資料三の一番下の図をごらんいただきたいんですが、これは特許庁の方で書いた絵に私が少し加筆をしたものですけれども、従来は、権利者の生産、販売能力の分しか損害が認められなかった、それに加えて、今回の法改正によって、販売能力を超えた分についてもライセンス料金相当分は賠償を認めるということでありまして、しかも、さらに、その中身によってライセンス料を割り増しするような考慮もすることができるということでありますが、ただ、これを見ていただくとわかるように、ライセンス料を増額してもなお侵害者の手元に残る利益というのは恐らく存在をするだろうということであります。

 質問したいのは、知財の侵害行為を経て生み出された侵害者の利益、この空白、真っ白の、残った部分ですが、ここは容認されるべきかどうか、ここについて特許庁の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

宗像政府参考人 御指摘の点、特許制度小委員会の議論におきましては、侵害者の手元に利益が残ることについて、これを法的に正当化することは困難ではないかという議論がありました。特に中小・ベンチャー企業からは、侵害者の利益を吐き出させる制度の導入を求める意見が多く出されました。

 他方で、どういう法的構成でこの利益吐き出し型賠償を理論づけるのかということについては、いろいろな議論がございます。また、今の民法の大原則である実損填補を超えないという、この原則と異なる対応をとることは適切でないという意見もありました。

 そこで、利益吐き出し型の賠償につきましては引き続き議論を深めることとして、今般の改正では、まずは実損填補の範囲内でできることをするということでございます。

浅野委員 ということは、小委員会の議論の中でも、この残された利益をどう扱うべきかというのは、今、現時点では結論が出ていないということでしょうかね。はい、ありがとうございます。

 であれば、やはりそこを整理しない限り、懲罰的賠償制度であったり利益を吐き出す賠償制度の議論というのはスタートできないと思いますし、するべきではないと思いますので、しっかり今後も小委員会での議論は重ねられると思うんですが、私もこの委員会の中等でその確認はさせていただきたいと思いますが、この部分については、少し価値観の問題とも絡みますので、ぜひ今後も議論をしていただいて、適宜、私も質問させていただければと思います。

 では、そろそろ時間も残り少なくなってきましたので、資料の五をごらんいただきたいんですが、こちらは、証拠収集に関する経験を弁理士の方々にアンケート調査した結果の部分的抜粋でございます。

 これを見ますと、上の方に書いてあるグラフは、証拠収集の経験があるのか、そしてその成果はどうだったかということを選択式でアンケート調査したものでありますが、本日見ていただきたいのは、下の赤線が引いてある部分です。

 これは実際の弁理士の方からの声でありますが、欧米の証拠収集制度を活用して国内の訴訟の証拠に使う、過去は米国だけであったが、最近は欧州(オランダ、ドイツ、フランス)も使える、海外でとった証拠は、これまで全て日本で使えた、米国は日本特許だけでもオーケー、欧州は日本特許だけではNG、対応特許が必要であるという意見がございましたり、あるいは、日本の証拠収集制度は全然だめだ、こんな意見もございました。

 ちょっと注目したのは、一つ目の声でございます。海外で取得した証拠というのは日本国内でも使えるものであるのであれば、今後、国内での証拠収集手続の法整備を進めるのはいいとして、海外で証拠を取得して国内で協議に生かす、こういったアプローチも十分に考えられる、そんな時代になるのかなというふうにも思いますが、海外の証拠収集制度の利活用、海外の証拠収集制度を支援するような取組も特許庁として必要ではないかと思うんですけれども、そのあたりの今の現状についてお伺いをいたします。

米村政府参考人 海外における知財権侵害は、日本の企業の稼ぐ力をそぐ重大な問題でございます。

 特許庁では、日本企業の知財権侵害への対応を支援するため、ジェトロなどの海外事務所に特許庁の審査官などの知的財産の専門家を配置いたしまして、知財専門家による個別の相談、具体的な対策に向けた現地の法律事務所などの紹介、現地知財制度や判例、侵害事例と対策などに関するマニュアルの提供やセミナーの開催などに取り組んでおります。

 さらには、中小企業が海外で知財紛争に巻き込まれた場合には、模倣品の製造販売事業者に警告状を送るための調査費用、悪意の第三者が先に出願した商標権を取り消すための審判請求などの費用、海外知財訴訟に係る弁護士費用を賄う保険の加入に要する費用の一部を補助しているところであります。

 引き続き、こうした支援策を実施してまいりたいと思っております。

浅野委員 どうもありがとうございました。

 本日の質疑はこれで終わります。ありがとうございます。

赤羽委員長 次に、笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 四月十八日は発明の日。現在の特許法の前身である専売特許条例の公布を記念して制定されたものと承知しております。特許、意匠、そして商標などの知的財産制度は、産業の発達とそれから国民生活の向上に資するものであることが何よりも重要であります。

 この立場から、特許法等の改正案について質疑をいたします。

 まず、特許法について。

 全世界での特許出願件数というのは、最近十年間を見ますと一・七倍化している。そして国別に見ますと、著しく増加しているのが中国の約五倍、そして全世界の出願総件数の四割を占めている。

 そこで、宗像特許庁長官に伺いますけれども、五大特許庁と呼ばれる日本、米国それから欧州、中国、韓国の二〇〇八年と二〇一七年の出願数と増減率というのはそれぞれどうなっているでしょうか。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 まず日本ですが、二〇〇八年の出願件数が三十九・一万件、二〇一七年の出願件数が三十一・八万件で、一九%減少いたしました。

 アメリカでありますが、二〇〇八年の出願件数が四十五・六万件、二〇一七年の出願件数が六十・七万件で、三三%増加しました。

 欧州ですが、二〇〇八年の出願件数は十四・六万件、二〇一七年の出願件数が十六・七万件で、一四%増加しました。

 中国ですが、二〇〇八年の出願件数が二十九万件、二〇一七年の出願件数が百三十八・二万件で、四・八倍に増加しました。

 韓国ですが、二〇〇八年の出願件数が十七・一万件、二〇一七年の出願件数が二十・五万件であり、二〇%増加しました。

笠井委員 今挙げていただいたんですが、日本だけが減少している。

 最新の二〇一八年の出願数について、日本については三十一・四万件というふうに更に微減しているということで見ているわけですけれども、世耕大臣、日本はこれまで高いものづくりの技術を世界に誇ってまいりました。これは本当に大事な技術。そしてそれが誇れるものだということであります。

 ところが、発明を特許権化して企業の強みにしていく、そういう意欲が低下してしまっているのではないかと危惧されるようなことも出ておりますけれども、この特許出願数の減少について、大臣はどのように見ていらっしゃるでしょうか。

世耕国務大臣 御指摘の日本の特許庁に対する出願件数の減少の理由には、一つは人口減少に伴う市場としての魅力が低下していること、そういったことのほかに、諸外国と比べて必ずしも十分に特許権が保護されていると見られていないという要因があるのではないかと考えています。

 そこで、今回、この権利の実効性を高めるために、専門家が現場で幅広い情報を収集することができる査証制度を創設するとともに、適切な損害賠償額が算定されるよう、損害賠償額の算定方法の見直しを行うこととしたわけであります。

 こうしたことに加えて、ことし四月一日から実施をされる特許料の減免措置などによって、より実効的な知財の保護を図ることによって、権利者にとって魅力ある事業環境となるように努めて、特許出願件数の増加につなげていきたいと考えています。

笠井委員 企業の側でいうと、出願を精査している、だからというふうなことも言われたりもするんですけれども、特許を始めとして、知的財産の活用というのは、やはりものづくりの裾野の維持にもつながってくる。世界的には出願数がふえる流れなんですから、背景も含めてよく分析する必要があるというふうに思います。

 ものづくり技術の発展、そして、次世代への継承という点から見ても、中小企業がみずからの技術をきちんと権利化できることがやはり大事になってまいります。日本のものづくり技術の強みの源泉というのは、中小企業のすぐれた技術にある。

 そこで、宗像長官に伺いますが、特許出願件数に占める中小企業の割合というのはどれぐらいでしょうか、実際は。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 中小企業の定義は国によって違うので、厳密な比較ではないんですけれども、日本とアメリカとヨーロッパの特許出願件数に占める中小企業による出願件数の割合として、それぞれの知財庁から公表されている直近のデータでありますけれども、日本が約一五%、アメリカが約二六%、ヨーロッパが約二〇%となっております。

笠井委員 中小企業が労力やコストをかけて特許を取得しても、その権利が侵害された場合に訴訟を提起するのは大変困難だという実情にある。

 日本商工会議所など中小企業団体からは、現行の知財紛争処理システムのもとでは、中小企業は、特許等の知財侵害を受けた場合にビジネスをしっかり守ることができていない、せっかく技術を開発しても、知財権を取得、活用する意欲が大きくそがれているという声が上がっております。

 悪質な侵害例が言われたりして、ちょっと紹介したいんですけれども、特許侵害と認識しながら意図的に侵害製品を販売し、その事実が発覚した後ライセンス交渉をすればよいと開き直られた。それから、侵害判明後、さまざまな理由をつけてライセンス交渉を引き延ばし、特許を侵害したまま逃げ切ろうとされた。さらには、資金や人材など、中小企業の経営資源の乏しさを見越して裁判の長期化を図り、訴えを取り下げさせようとしたというものまであるということであります。

 世耕大臣、これらは、今幾つか紹介をさせていただいたんですが、氷山の一角にすぎない。こんなひどい事例がまかり通るような状況は放置できないというふうに思うんですけれども、大臣も同じ認識でいらっしゃるでしょうか。

世耕国務大臣 同じ認識でありまして、日本商工会議所からは、悪質な侵害の事例が中小企業から多数報告されていることを踏まえて、損害賠償額の適切な水準への引上げ、そして、証拠収集手続のさらなる強化など、早急な訴訟制度の見直しを求める声が上げられているわけであります。

 具体的には、証拠収集による時間やコストの負担にちゅうちょする中小企業の弱みやライセンス料の算定額が低いことにつけ込んだ特許侵害が報告をされているというふうに認識をしています。

 こうした悪質な事例に対応するために、今回の制度改正では、特許侵害訴訟における証拠収集の実効性を高め、中小企業に使いやすくするとともに、ライセンス料相当の額を損害賠償額として適切に算定できるようにしていきたいと考えています。

笠井委員 特許権というのは公開されていますから、ある意味で侵害が容易だ、そういうことになると。侵害の証拠を持っているのは侵害者側であるために、裁判に訴えたとしても、原告による立証というのはなかなか困難だ。侵害に対する刑事罰規定があるものの、これまで刑事事件として起訴された例がなくて、侵害を抑止しにくいという特殊性もある。侵害行為をやめるように話し合っても、解決しなければ裁判に訴えざるを得なくなるということになるわけです。

 そこで、宗像長官に伺いますが、実際の知財訴訟において、中小企業と大企業の勝訴率はそれぞれどうなっているでしょうか。

宗像政府参考人 お答え申し上げます。

 知的財産戦略本部の検証・評価・企画委員会知財紛争処理タスクフォースの資料によりますと、平成二十一年から二十五年までに地裁判決があった特許権及び実用新案権の侵害訴訟についてでありますけれども、大企業の勝訴率が約三二%であるのに対しまして、中小企業の勝訴率は約一九%であります。

 特に、被告が大企業の場合、中小企業の勝訴率は約七%にとどまっております。

笠井委員 この調査は、今挙げていただきましたが、二〇〇九年の一月から二〇一三年十二月に地裁判決があった特許権、実用新案権の侵害訴訟二百二十五件を対象にしたものでありまして、訴訟の六割は中小企業が提起しておりますけれども、原告の勝訴率というのは、答弁にあったように一九%にとどまると。さらに、中小企業が大企業を訴えた五十五件について見ると、今お話ありました、中小企業の勝訴率はわずか七%と、四件にすぎないということになっているということであります。

 中小企業と大企業で訴訟の結果がなぜこんなにも差が開くのか。二〇一五年の五月の知財紛争処理タスクフォースの報告書では、大企業に比べて中小企業が適切な訴訟代理人の選定、依頼をしにくいことが考えられると。知財専門家に関する情報、費用、期間などの紛争処理に関する情報を蓄積し、中小企業に紹介する等の支援を行う基盤を整備すべきというふうに提案をされていたわけであります。

 そこで、宗像長官に改めて確認したいんですが、その後、中小企業への専門家の派遣とか、あるいは交渉力の格差を埋めるための支援措置などについて、具体的な対策、どういうふうにとって、それがどのように進捗しているのか報告をいただきたいと思います。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 全国四十七都道府県五十九カ所に設置しております知財総合支援窓口では、権利化に詳しい弁理士あるいは企業間の契約に詳しい弁護士などの知財専門家約千百名と提携いたしておりまして、さまざまなニーズに応じた専門家を無料で紹介して、中小企業の侵害に関する相談四千件を受けております。御要望に応じて、企業への訪問相談も実施しております。

 先ほど、弁理士週一回、弁護士月一回というお話もありましたけれども、必ずそのタイミングでは行くんだけれども、それ以外もニーズがあって、アポイントをとっていただければ、随時ということが可能になっております。

 そして、特許出願の相談の際にも、それらの専門家から、特許明細書等の記載方法などの指導あるいは予想される訴訟への対応も含めた、戦略的な権利取得までのアドバイスを行っております。

 中小企業の皆様には、積極的に知財総合支援窓口、これは、中小企業支援のよろず支援拠点とそれぞれ各都道府県ごとに連携をしておりまして、ぜひここを御活用いただいて、知財を生かしたビジネスに取り組んでいただきたいと思います。

笠井委員 本改正案は、特許侵害訴訟で侵害の有無を審理するための証拠収集手続として査証制度を創設するとしているわけであります。

 この制度導入に至る経過の問題なんですけれども、中小企業からは、みずからが有する特許が生産現場で侵害されているという事実を立証するための証拠収集は難しいという声が上がっておりました。そこで、産業構造審議会の知的財産分科会特許制度小委員会で、証拠収集手続の強化策として、査証制度の導入について審議が行われてきたわけであります。

 そこで、宗像長官に伺いますが、その中で、強制力のある査察制度の導入は、営業秘密保護の重要性に鑑み、提訴後であっても避けるべきとの強い意見が出されて、その点では、二〇一七年の三月の報告書では、この点は引き続き慎重に検討することとなったと。それはそういう経過でよろしいですね。

宗像政府参考人 御指摘のとおりでございます。

笠井委員 二年前に引き続き慎重に検討することとされた証拠収集手続の強化について、昨年十月に再開された第二十五回の小委員会で改めて議論されることになったわけですが、この回から委員が随分入れかわりました。

 先ほどもこの点では浅野委員からも指摘があった点でありますが、産構審は経産省設置法の第七条で規定された経産大臣の諮問機関でありますが、その委員構成については、小委員会も含めて、審議会委員の選定ルールに基づいて決められることになっているはずであります。

 委員の変更に際しては、事前に、その小委員会の上位の知財分科会に諮って了承を受けているということになっているんでしょうか。

宗像政府参考人 今般の特許制度小委員会の委員の選任は、産業構造審議会運営規程上、小委員会の委員の選定は親部会である分科会の長の指名によるものとされておりまして、これに従いまして、特許制度小委員会の親部会に当たる知的財産分科会の長である五神真東京大学総長の指名によって行っております。

笠井委員 世耕大臣、委員の選任ルールということについて言うと、これはやはり本当にはっきりされなかったというために、産業界からは、知財制度についての産業界の意見を取りまとめる立場の団体からの委員への参加が認められなかった点は極めて遺憾という声、そして意見ですね、そういう異例のコメント。さらには、知財紛争に豊富な実務知見を有するユーザー団体を委員に含めずに進めたことにより多面的な議論が不足したのではと懸念されるという、また別の団体からも異例のコメントが出されているということであります。

 審議会や分科会、小委員会の委員の選任については、やはり民主的かつ公正なルールに基づいて、多面的で慎重な議論が担保されること、それから、選任の経緯や理由など、国民に対して説明責任を果たすこと、これらの原則の徹底というのが非常に大事だと思うんですけれども、これをこの機会に改めて求めたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 おっしゃっていることは当然のことだと思っていまして、これは、平成十一年に定められました審議会等の整理合理化に関する基本計画というところで審議会の運営指針というのが定められておりまして、委員の任命については、その趣旨、目的に照らして、委員により代表される意見、学識、経験などが公平かつ均衡のとれた構成になるよう留意をする、審議事項に利害関係を有する者を委員に任命するときは、原則として、一方の利害を代表する委員の定数が総委員の定数の半ばを超えないものとする、こういう考え方にのっとって、今回の特許制度小委員会の委員の選任も行われているというふうに考えております。

笠井委員 そうした中で、有力な経済団体からも異例のコメントが出るということでありますから、その点は本当にしっかりと原則を徹底するということが大事だと思います。

 では、査証制度がどのような場合に適用されるかという問題です。

 査証制度は、裁判所が選定した専門家が、侵害が疑われる者の施設へ立ち入り、実際に機械を動かすなど現地調査ができるようにするものでありますけれども、とりわけ、ものづくりについての特許侵害の有無が争われている場合、また、物の特許であっても、企業間でしか取引されない製品や材料、中間品等で、最終製品から被疑侵害品の構成を分析することが難しいという場合には、証拠収集の見通しが立ちにくいために、ある意味泣き寝入りをせざるを得なかったという声が上がっております。

 そこで、宗像長官に伺いますが、査証制度の適用に関して、本改正案の第百五条の二が定める要件、改めて確認をしたいと思います。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 査証制度の発令要件としましては、証拠が侵害行為の立証に必要であるという必要性、特許権を侵害したことを疑うに足りる相当な理由があるという侵害の蓋然性、他の手段では証拠の収集を行うことが困難という補充性、そして、相手方の負担が不相当なものとならないという相当性、この四つの要件を規定しております。

笠井委員 中小企業やベンチャー企業が特許権侵害で訴えられた場合、大企業とは違って防御能力が不十分なために、査証を受けることによってノウハウが奪われてしまうおそれはないのかという問題があります。大企業側が取引上の力関係を逆手にとって濫用することがあってはならない。その歯どめというのはどう講じられているのでしょうか。

宗像政府参考人 査証制度におきましては、その濫用を防ぐために、裁判所が、今お答え申し上げた四つの厳格な要件を満たした場合に限って査証命令を発令することとしているわけでありますけれども、加えまして、特に、相当性の要件によって、相手方の負担が不相当なものとなる場合は査証命令が発令されませんので、中小企業が査証を受けたことによって、その経営に大きな悪影響をこうむるような事態は避けられるものと考えております。

 また、証拠収集を行う者は、裁判所が中立公正な専門家を指定することとしておりまして、指定された専門家について中立性、公正性を欠くと当事者が考えるときには、忌避の制度により、これを排除するように裁判所に申し立てられることとしております。

 これらの仕組みによって、査証制度の濫用を防止できるものと考えております。

笠井委員 次に、査証報告書の営業秘密保護規定について伺います。

 これは大企業の側から最も懸念が表明されてきたものであります。特許小委員会報告書へのパブコメで、日本経団連は、産業界の懸念を解消すべく、さらなる検討を続けることを求めると。日本知的財産協会は反対という意見書を出しておりますが、改正案では、条文上、査証制度と営業秘密保護の両立がどのように担保されているというふうに理解したらいいんでしょうか。

宗像政府参考人 まず、これは査証人が立ち入った後に報告書をまとめるわけですけれども、それが申立人に開示をされる前に、まず、その立入りを受けた当事者側に開示をされます。

 査証を受けた当事者は、報告書の全部又は一部の黒塗りを申し立てることができまして、裁判所がこれを、侵害を立証するための必要性と営業秘密などを保護する必要性、この両者を比較考量いたしまして、正当な理由があると判断すれば、これを黒塗りする、そういう仕組みを設けております。

 そして、裁判所は、正当な理由の判断に当たっては、必要に応じて、申立人側の意見を非公開の手続で聞くことができるわけでありますけれども、その申立人本人に開示するということに対して非常に抵抗感が強うございまして、本人に意見を聞くときには、査証を受けた当事者の同意を得なければならないということにしまして、本人訴訟の原則に、本人訴訟が認められているということに配慮しつつ、実質上、原告本人には開示されないということを担保いたしました。

 このような仕組みによって、査証報告書に含まれる営業秘密の保護を図っております。

笠井委員 確認したいんですが、査証を受けた側が、全て営業秘密だから全面黒塗りと申し立てた場合に、査証制度を活用しても、結局、特許権侵害の有無が明らかにならなかったということになりはしませんか。

宗像政府参考人 御質問は、査証制度が厳格であって、結局、査証制度を使っても……(笠井委員「全部黒になると申立てがあったときに、活用しても侵害の有無が明らかにならなかったということにならないかということ」と呼ぶ)活用しても明らかにならないということがないかということですね。

 これは、実際に査証に立ち入る際に、事前に、裁判所と申立人とそれから立ち入られる側と、この三者でしっかりと協議をしまして、一体どこに何を見に行くのかということをしっかり確認することによって、できるだけ、あらかじめ専門家が状況を理解してミッションを果たせるようにするということで、それが空振りに終わるようなことがないようにしっかりやっていくということだと理解しております。

笠井委員 百五条の二の六の第四項のただし書きのところで、当事者等、補佐人又は専門委員に開示するときは、査証を受けた当事者の同意ということがありますけれども、訴訟代理人というのはそこに含まれずに、守秘義務を負った弁護士には裁判所が開示できるようになっているというふうなことではないんですか、これは。

宗像政府参考人 御指摘のとおり、立ち入られた側の同意によって見ることができないのは、原告本人に限られております。

笠井委員 では次に、裁判で特許権侵害が明らかになった場合の損害賠償の算定についてでありますが、知財紛争処理タスクフォースの二〇一五年の調査で、大企業と中小企業の損害賠償額の認定率というのはそれぞれ幾らになっているでしょうか。

宗像政府参考人 お答えいたします。

 先ほど引用させていただいた知財本部の検証・評価・企画委員会のタスクフォースの資料によりますと、平成二十一年から二十五年までに地裁判決があった特許権及び実用新案権の侵害訴訟について見ますと、大企業の損害賠償額認定率は三〇%でありまして、これに対し、中小企業の損害賠償額認定率は八%であると承知しております。

笠井委員 損害賠償額でも、大企業と中小企業では大きな差があると。

 日本商工会議所によれば、損害容認額というのは平均二千三百万円で、一千万円以下が三九%、うち五百万円以下が二六%で、中小企業の多くが、低額の損害賠償額にとどまって、弁護士費用も払えないという声もあるということでありますが、現行法の百二条一項では、権利者の生産、販売能力に応じて賠償額を算定することになっております。そのため、大企業なら大きく認定されても、中小企業やベンチャー企業は低く抑えられたというふうに聞くんですけれども。

 宗像長官に伺います。

 法改正によってライセンス料相当額を認めることで、損害賠償額の算定というのはどう変わりますか。

宗像政府参考人 特許法第百二条第一項について、現行法では、侵害者が販売した侵害品のうち、権利者の製造能力あるいは販売能力を超える部分については、近時の裁判例、判例は損害賠償を否定する判断で固まっております。

 他方、ビジネスの実態では、権利者の製造、販売能力を超える部分については、他者にライセンスをして利益を得るということが行われておりますので、今般の法改正によりまして、権利者の製造、販売能力を超えて侵害品が売られた場合に、侵害者がライセンスしたとみなして損害賠償額に加えるということができることになります。

笠井委員 最後に、知的財産を守って発展させるためには、特許法等の改正とともに何が求められているかについて、端的にただしたいと思います。

 二〇〇〇年ごろに、下請中小企業の金型図面が無断で海外に流出したことが社会問題となりました。そして、部品を大量生産する際に必要となる金型の製作というのは、創作性と高い技術、技能が求められる。金型技術というのは、下請の技術とノウハウが詰まった知的財産でありますが、ところが、金型は使っていくうちに摩耗するので、親企業が、メンテナンスのために図面が必要だと言って、下請中小企業から金型の図面や設計データを出させる、その図面を複写をして、海外で安くつくらせて、下請は知的財産も仕事も奪われるひどい実態が金型工業会の調査で明らかになって、二〇〇三年に下請代金法が改正をされて、適用対象に金型の製造委託が追加されたわけであります。

 そこで、中小企業庁に伺いますが、昨年十二月から、経産省と公正取引委員会が共同で、三万社を対象に金型取引の実態調査を実施したと思うんですけれども、その結果はまとまったか。さらに、あわせて聞きますが、金型取引の適正化のために、この間とってきた対策と進捗状況、今後の取組の強化点については何を考えているか。その大きく二点について、まとめて答えてください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、調査についてでございます。

 中小企業庁は、公正取引委員会と連携をいたしまして、昨年末から本年一月にかけまして、自動車産業、電機・情報通信機器産業、素形材産業など約三万社を対象に、金型を使用する取引に係る実態調査を実施したところでございます。

 この実態調査では、金型代金の支払い方法、金型の廃棄、返却の実態、保管費用の負担状況、書面による契約、覚書などの締結状況などについて質問をさせていただきまして、これまでに約一万社から回答をいただいているところでございます。

 現在、調査データの分析を行っているところでございまして、今後は、金型取引の課題等を洗い出した上で、調査結果を公表してまいりたい、このように考えてございます。

 続きまして、型の管理に関する適正化の取組についてお答え申し上げます。

 型に関する取引適正化につきましては、二〇一六年九月に公表させていただきました「未来志向型の取引慣行に向けて」、通称世耕プランでございますけれども、この重点三課題の一つとして位置づけました。これに基づきまして、下請取引の関係法令の運用強化を行いますとともに、産業界に対しましては、自主行動計画の策定を要請させていただいたところでございます。現在までに、十二業種三十三団体が策定をし、このうち、六業種二十二団体では、型取引の適正化に向けた取組を進めていただいているところでございます。

 また、二〇一七年七月には、型管理に関するアクションプランを策定いたしました。これに沿って、産業界で型管理の適正化が着実に実施されますよう、業界団体などへの働きかけや、セミナーやシンポジウムの開催、型管理に関する契約書や型管理台帳のひな形の作成、周知などの取組を進めてきたところでございます。

 さらに、昨年十二月に公表させていただきました、経済産業省所管の八業種二十六団体が実施いたしました自主行動計画のフォローアップ調査などの結果では、世耕プランの重点課題三課題のうち、不合理な原価低減要請や支払い条件、これは改善をしております一方で、型管理の適正化は改善の動きが鈍く、適正化への取組はいまだ道半ばの状況であるということが明らかになったところでございます。

 さらに、昨年十二月末でございますけれども、型代金の支払いを改善いたしますために、下請中小企業振興法の振興基準を改正いたしまして、例えばでございますけれども、下請事業者が代金の一括払いを希望された場合には、親事業者は速やかに支払うよう努めることなどを新たに規定させていただいたところでございます。現在は、この新しい振興基準を踏まえ、自主行動計画の改正や着実な実施の働きかけを進めさせていただいております。

 今後は、現在精査中の、先ほど申し上げました実態調査の結果も踏まえまして、追加的な対策を検討し、型の取引の適正化に向けて一層粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

笠井委員 時間が来ましたので、大臣がお答えになりたかったことを大体言われたのかと思いますので、私、一言述べて終わりますが、ものづくりの集積地の東京都大田区を訪問して町工場で話を聞きましたが、バブル崩壊、リーマン・ショックを経て、深刻な状況が続いております。東日本大震災後には、下請企業の絞り込みと工場の海外移転が一層進んで、海外に金型、図面、職人が持っていかれたと。その結果、町工場は、最盛期の三分の一、三千五百社を割ったと。そんな中でも、技術力の高さとネットワークの力で、ものづくり産業を支える公共財としての役割を今もしっかり果たしております。

 知的財産を守り、発展させるには、特許法などの個別法での対応にとどまらず、ものづくり産業全体の維持発展、大企業と中小企業の重層的な力関係是正にもしっかり目を向けるべきだ、このことを強く求めて、質問を終わりたいと思います。

赤羽委員長 次に、足立康史さん。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは特許法ということで質問させていただきますが、私は長官を信頼し、尊敬をいたしておりますので、もう細かいことは、こういう法案は大変検討に検討を重ねてこられているので、細かいことはもう聞きません。

 ただ、一つだけ、この法案を拝見したときに大事だなというふうに思うのが、今回の査察じゃなくて査証制度ですね、証拠収集。この制度自体は、私はやはり必要な制度だと思うし、いろいろ対応策も講じられているということを承知していますが、いわゆる産業スパイ、こういう、産業スパイですから、悪意を持ってこの制度を利用するというようなことが当然に考えられるわけでありまして、この点、簡単で結構ですが、大臣から、どういうお考えか伺えればと思います。

世耕国務大臣 今回の法改正で創設するいわゆる査証制度については、やはり濫用は防がなければいけないという観点から、四つの厳格な要件を満たした場合に限って、申立人の申立てに基づいて査証命令を発令することになっています。

 そして、営業秘密の漏えい防止の観点からは、まず、この査証を実施する際には申立人側の立会いは認めないですとか、専門家には秘密保護の観点から罰則で担保された秘密保持義務を課す、そして、専門家が作成した報告書が申立人に開示される前に相手側は営業秘密の黒塗りを申し立てることができ、裁判所は正当な理由があると判断すれば当該営業秘密は黒塗りとされるなどの仕組みを設けております。

 こういった仕組みによって、今回の制度がスパイ行為に悪用される事態は防止できるのではないかと考えています。

足立委員 一般的には、今大臣から御答弁いただいた内容で、私も、さまざまな観点をバランスをとりながら設計すると、今の時点ではもうこれ以上のものはないのかなというふうに思いますので、この特許法の制度自体は私も賛同するし、当然法案にも賛成をしてまいりたい、こう思います。

 きょうは、この特許法の議論はこの点に尽きるわけでありますが、今後また経済産業委員会も使わせていただいて議論したいテーマは、まさにこのスパイの議論ですね。

 きょう、これは経産省、経産大臣あるいは長官にももう御質問はしませんが、結局、きょうも例えば国民民主党の浅野先生が、何か外形的に中立性を見分けられないのかとかいう議論もありました。中立公正性というものを外形的に見ていくということは、絶対行政は必要だと思います。

 ただ、外形的に見分けられないことも世の中にはあるわけですね。特に、いわゆるスパイ。スパイというのはもう意図的にやってくるわけです。紛れ込むわけですね。紛れ込むんだから、それはわからないわけです。それをどういうふうに、例えば裁判所なりが、この制度上、査証人というんですか、裁判所がその第三者たる中立の専門家を指定してくる。そのときに、例えば日本に情報機関がしっかりとあれば、当該情報機関にそれを照会していく、これ大丈夫だよねということを照会するということは、私は当たり前に国家として持つべき機能だと思うんですが、今日本にはそういう機能はありません。ないかあるか、ちょっと改めてまた別の機会に質問しますが、私が承知している限りないんですね。

 この点で、大臣もぜひ御認識だけ、改めて御認識をいただいておきたいのは、例えば貿易管理。

 私、ヨーロッパに駐在をしていたときに、日本の貿易管理と例えばドイツの貿易管理というのを比較したことがあります。もう明らかに遅いんですね、日本が、手続が。なぜ日本の貿易管理の手続が遅いかといえば、情報機関がないからですよ。ドイツが言っていました、ドイツの担当者が、いや、うちは情報機関がありますから、だから、その会社が北朝鮮の関係の会社かどうかというのはすぐわかるんだと。もう全部それは国家がそれを見ているわけですね。

 そういうようないわゆる情報活動というものが国家というものにはなければ、経済活動でさえ、例えば、今回御提案の特許法が今回つくっている制度でさえ、あるいはこれまでもるる運用されてきている貿易管理の制度でさえ、それは仮にそれを適正に運用しようとするとむちゃくちゃ時間がかかる。だって調べないといけないんだから。

 ふだんなかなか追えていないいわゆる情報活動、諜報活動というものがないと、それは私はなかなか難しいんじゃないかということを、また別の機会に、貿易管理部分も含めて、今、組織が変わっているかもしれませんが、情報機関の必要性ということについては改めて議論をしてまいりたいと思います。

 その関係で、きょうは経産大臣もせっかくいらっしゃるところなので、内閣官房、きょう来ていただいています。

 いわゆる経産省が気にせないかぬのは産業スパイなわけですけれども、しかし、例えば経済活動と安全保障をめぐる活動って別に分かれているわけではありませんから、だから、いわゆるスパイ、いわゆるスパイ活動についてしっかりと経産省も認識を、経産大臣におかれても、当然、釈迦に説法でありますが、認識を深めておいていただく必要がある、こう思うわけでありますが、日本の国内で当然スパイ活動は行われているということでいいですね。

森政府参考人 諸外国等によりまして各種の情報収集の活動が行われているおそれがあるということ、この点に関しましては当然政府としても念頭に置きまして、外国情報機関等の情報収集活動に対抗すべく、政府の重要な情報を保護する活動、これをカウンターインテリジェンスというふうに称しておりますけれども、このための取組を強化しておるところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 当然だと思いますね。当然だと思います。当然だと思いますが、なかなか、スパイがその辺を歩いているんだ、自分の隣にスパイがいるかもしれないということにコンシャスであること、要は意識的であることというのは私はとても大事なことだと思うし、特にこの経済産業委員会に属する我々同僚の皆様、国会議員はみんなコンシャスでないといけない、こう思っているわけであります。

 極端な話、この中にもスパイがいるかもしれませんよ、この中にもスパイ。だって、誰もチェックしていないんだから。誰もチェックしていませんよ。

 諸外国であれば、政党というものがしっかりしていて、その政党というもののスクリーニングを経てそういうものが排除されていくということもあるだろうし、先ほど申し上げたように、国家自体が諜報機関、情報機関を持っていますから、ちゃんとそれを追っかけることができるということです。

 私の、毎度のことで恐縮ですが、共産党について一言だけちょっとやっておきたいわけでありますが。

 何で共産党をやるかというと、私は別に何か、うそを言ったり、誹謗中傷したりするつもりは毛頭ありません。事実を事実としてみんなが認識すべきだということを言っているだけなんです。それを私が、だから、この委員会でもそうだったかな、本会議、経済産業委員会、それから総務委員会で、それぞれいろいろな、例えば、不競法との関係において経済産業委員会、マイナンバーとの関係において総務委員会、いろいろな場でこの共産党の問題は取り上げてまいりましたが。

 共産党の小池晃さんという、最近はユーチューバーとして頑張っておられるようでありますが、小池晃書記局長が、私が本会議でその話をしたときに、これは事実ですよ、事実だから懲罰動議はもう出せません、だって事実を言っているだけなんだから。それを本会議で言ったら、即日、その私が発言したことが報道されている、私の写真をツイッターに引用しながら、デマだと書くわけですね、デマだと。書記局長ですよ、公党の。どこがデマなんですか。

 それだけではありません。三月二十三日の赤旗には、二十三、二十四、二日間にわたって、社説並みの扱いで、私の名前を名指しをして、それから公安調査庁の横尾部長の名前も名指しをして、「歴史の事実を歪曲した悪質なデマ」である、こう赤旗は書いている。

 それから、最近ユーチューバーとして頑張っておられる小池書記局長は、ユーチューブで、改めて足立議員がそういうことを取り上げていることについてどうかと質問者から問われたのに対して、ひどい、そのとき何と言ったかな、要は否定、事実じゃないと言った上で、公安調査庁のことをストーカーだと。ストーカーは、される方とする方とどっちが悪いんだ、する方だ、こう言い放っているわけですよね。

 ひどい政党じゃないですか。いや、政党はいいや、それは選挙で選ばれているんだから。共産党のやっていること、共産党の機関紙である赤旗に書いてあること、それからその大幹部である、次委員長ですよ、多分、私の情報収集活動によると、次の、志位さんの後は、誰だっけ、小池晃書記局長が共産党の委員長になられるそう。そのころにはもう看板は隠しているかもしれませんけれども、共産党の。今、大阪十二区の補選で共産党は看板を隠していますから。ねえ、大臣。まあ、関係ありませんが。

 だから、私は、事実が事実じゃないということを、この委員会にも共産党の先生いらっしゃいますが、その公党の書記局長が、ツイッター、赤旗、ユーチューブでそれはデマだと言っています。

 公安調査庁、共産党が破防法に基づく調査対象団体である、デマですか。

横尾政府参考人 日本共産党は、破壊活動防止法に基づく調査の対象となっている団体でございます。

足立委員 私が国会でマイクを握るたびに公安調査庁には来ていただいて、この同じ答弁を何百回となくこの議事録に載せていきたい、こう思っています。

 さて、この特許法に係る議論は、私は、繰り返しになりますが、経産省を信頼していますので、もう質問することがありません。でも、せっかく質問時間を与えていただいているので、ちょっと関連で、この経産委のことで、消費税の話がちょっと尻切れトンボになっています。まことに恐縮でございますが、この法案審議の時間でございますが、若干の時間、そちらに使わせていただきたいと思います。

 消費税、大臣、私、やはりわからないんですよ。わからないというのは、なぜ、ことしの九月から来年の六月までの短期間、大変な負担、大変な対策を講じながら、新しいキャッシュレスの事業をやる、ポスターもつくらなあかん。

 そんなことじゃなくて、来年度からやる総務省の自治体ポイントとかなんとかというマイナンバーを活用したポイント還元の制度、最初からこれに一元化したらいいんじゃないですかというのが普通の疑問なんですけれども、いかがですか。

世耕国務大臣 まず、我々がやるポイント還元事業、十月から九カ月間ということになります。

 これは、やはり、消費の平準化を図るということと、世界に比べて圧倒的におくれていると言わざるを得ない日本のキャッシュレス環境を、キャッシュレスの普及率を一気にキャッチアップをしていくという観点であります。

 消費税が十月から上がるというのは、これはもう法律で決まっていることですから、それに間に合わせた対応にしていかなければなりません。そういう意味で、既存のキャッシュレス事業者のインフラを最大限活用して、そしてポイント還元をさせていただくという考え方になっているわけであります。

 当然、マイナンバーの活用というのも私は一案だと思いますけれども、そのためには、やはりそれなりに時間がかかるというふうに思っています。将来的には、私は、マイナンバーを活用したポイント、もう既に自治体ポイントなどもありますので、そういったものを活用して消費の後押しということもあり得ると思います。

 それはある程度準備がかかるということを前提に、二〇二〇年度以降の実施に向けて、ポイント還元制度で登録した決済事業者に対して自治体ポイント制度に関する情報を提供するなど、総務省ともしっかり連携をしていきたいと思っています。

足立委員 ありがとうございます。

 私は、そもそも、キャッシュレスを進めるための取組、これが、もっと早くからやっていれば、だって、消費税を上げるときにやらなくても本当はいいわけです。だから、ふだんからやっていればいいのになと普通に思っているわけです。しかし、大臣おっしゃったように、消費税は上げると法律で決まっちゃったわけだから、それは国会議員全員が、特に与党、ああ、野党は反対だ、我々も反対だ、でも、与党は消費税を上げると決めちゃっているわけだから、その対策をとる。それは理解ができないわけではありません。

 でも、先ほど大臣から御紹介があったように、将来的にはマイナンバーカードを使ったシステムに寄せていくということが普通に考えれば考えられるわけだけれども、その準備がまだ間に合っていないから、既にその準備が、準備というか、準備する必要もない、既に制度インフラが整っている既存のそういうキャッシュレスの決済事業者、そういったものを使おうと。私は、経産省の御判断としてはそれはありだ、こう思うわけですが。

 そこで出てくるのは、与党の先生方、ぜひ重く、ちょっとちゃんと聞いてほしいんですけれども、じゃ、何でそんな急ぐのということですよ、消費増税。別に、国債を発行してもいいじゃない、急場のしのぎは。だって、そういうものでしょう、マクロ経済というのは。財政政策ってそういうものですよ。

 だから、私は、今大臣から御紹介があったようなことがあるのであれば、すなわち、将来的にはマイナンバーでもいいんだけれども、まだマイナンバーの準備が整っていないから、ちょっとせっかくだから聞いて、ああ、時間がないな。本当は、総務省も来ていただいているので、マイナンバーの状況というのを聞いてもいいんだけれども、ちょっと割愛します。

 そうであれば、マイナンバーカードの準備が整うまで消費税を上げるのは待ったらいいじゃないかというのが私の素直な疑問なんですね。

 そこで、きょうは、伊佐政務官、ありがとう。鈴木副大臣は何度か来ていただいたんですけれども、ちゃんと答えてくれないので首にしました。格下ですけれども、副大臣からすればですよ、副大臣からすれば格下ですけれども、よく存じ上げている伊佐政務官にお越しいただきました。

 伊佐さん、鈴木副大臣みたいな答弁は要らないですよ。同じ答弁だったらまた首にしますよ。そうじゃなくて、だって、短期的な破綻懸念なんてないんだから、日本は。ちゃんと消費税を上げるときに、今回の消費増税というのは、消費増税と、その上に、伊佐政務官始め公明党の皆様が、委員長もそうですが、富田先生もそうですが、公明党の皆様が一生懸命やっていらっしゃる軽減税率というのがあるわけです。その上に更にポイント還元のいろいろな平準化策というのが、三階建てというか、三本乗っているわけです。私は三つともやめたらいいと思っているんです、まだ。まだですよ。

 そんなに何で急ぐの。ちょっと、ちゃんとやってくださいよ。

伊佐大臣政務官 お答えいたします。

 消費税率の引上げで、もう委員御案内のとおりで、社会保障の安定財源の一部を確保して財政の持続可能性というものを維持するということでございます。

 もし今回、引上げをおくらせるということになれば、当然、赤字国債で現在賄っている社会保障の財源の安定的な確保、今回目的にしているところでございますが、ここがおくれるということとあわせまして、また、予定どおり消費税率を引き上げる場合と比べて財政の負担が増加する、いわゆる国債の利払いというところもございます。

 こういう観点も含めて、もしおくらせるということになれば、財政の持続可能性に対して、諸外国も含めて懸念を抱かれるということがあります。そういうことのないように、法律で定めていただいたとおり、本年十月に消費税率を引き上げる。

 なお、今回の消費税率の引上げによりまして、維新の会の皆様も重視していらっしゃいます幼児教育の無償化というものも含めて、社会保障の充実について、今回は消費税率の引上げを前提として実施するということにしております。

足立委員 そこで幼児教育の話を出すところがせこいですよね。だって、幼児教育というのは、我々は、大阪では、維新の会は、行財政改革でやったんですよ。御存じでしょう、大阪だもんね。大阪じゃないや、どこだっけ。(伊佐大臣政務官「大阪です」と呼ぶ)大阪ですよね。いや、兵庫だったかなと思って、一瞬ちょっと、一瞬混乱をしたわけでありますが。

 大体、あんなものは地方行政の行財政改革でやればいい。だって、できているところがあるんだから。それをわざわざ増税してやるというところが自公政権の悪いところです。

 それはおいておいて、今の話、わかっていますよ、それぐらい。でも、そんなもの、だって安倍政権は、自公政権は二回延期してきたんでしょう。二回延期したことで、一回延期したことで世界は懸念を深めたんですか、財政破綻の。二回やったことで懸念を深めたんですか。今度、三回目。三回目延期したら、今まで一回目、二回目にはなかった懸念が急に三回目で出てくるんですか。どうですか。

伊佐大臣政務官 委員の御指摘のとおり、今まで既に二回延期をしております。その上で、更に三回目延期をするということになれば、ますます諸外国から財政の持続可能性に対して懸念を抱かれる、よりその懸念が高まるのではないかというふうに思っておりますので、予定どおり、一〇%、上げさせていただきたいというふうに思っております。

足立委員 与党の先生方どうですか、この答弁。こんな答弁で、いや、だってわかるでしょう。だって、二回大丈夫だから三回大丈夫に決まっているし。えっ、決まっていない。ねえ、吉川先生。名前は呼ばない方がいいか。絶対大丈夫ですから。

 私は、これは予算委員会でもやりました。麻生大臣にもあるのかと言ったら、もうばかなことを言うなと。維新の会にも藤巻さんというわけのわからぬことを言っている人がいるが、そんなものじゃないんだ、日本の財政は大丈夫だと大臣も言っていたよ。伊佐さん、だからだめだよ、それ。

 だから、私は、今の答弁を聞けば、絶対に、要は軽減税率なんてやめた方がいいですよ。これも予算委員会でやりましたが、給付つき税額控除がいいに決まっているんですよ。財務省の役人、百人聞いたら百人の人が給付つき税額控除の方がいいと言います。厚生労働省の職員もそうです。わかっている人、ちゃんと勉強している人は、百人に聞けば百人の人が軽減税率を入れるよりも給付つき税額控除がいいと言っているんです。(発言する者あり)ありがとうございます。

 だから、こんなものをやったら、もう公明党は潰れるよ。あっ、失礼しました。発言を撤回し、謝罪をし、撤回をしますが、あと議事録で削除してでも結構ですが。

 本当に私たちは、日本のそういう税制のあり方を考えたときに、絶対にここで踏み込んだらあかんと言っているんです。だから、ことしの十月はもうやめて、早々に。早く、準備もちょっとストップして。ポイント還元ももう結構ですよ、普通の経済対策をやりましょうよ、普通の経済対策を。

 世界経済も不安定になってきている中で、そんなややこしいことをせずに、だから、自治体ポイントもやめて、キャッシュレスの足元のやつもやめて、軽減税率もやめて、消費増税もやめる。まずやるべきことは、マイナンバーの普及ですよ、義務化ですよ。外国人からでもいい、義務化をする。そういうことを通じて、それからキャッシュレス、キャッシュレスやりましょうよ。韓国とか中国に負けている場合じゃありません。

 そういうことをやった上で税制のあり方を考えるというのが当たり前だと思いますが、大臣、どうですか。大臣に振っちゃいけませんか。一応、通告していないかな。

 要すれば、マイナンバーカードの普及を先にやるべきじゃないか、税制はその後でいい。

世耕国務大臣 税制の時期はもう法律で決まっていることでありまして、他の法律について言及をすると、たかが一大臣が言ってはいけないとお叱りを受けるケースもありますので、我々としては、この十月に、法律で決まっているとおり、上がるということを前提に施策を集中する、そのことに尽きると思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 本当に、たかが一大臣ですから、やめておいた方がいいと思いますね。

 しかし、だから、きょうは国会ですから、これは。経済産業省の大臣室で議論しているんだったらここで終わりです。しかし、私は、やはり与党の先生方に申し上げたいのは、これはちゃんと考えた方がいいですよ、これは禍根を残しますよ、ポスト安倍は大変なことになりますよ、こんなことをしていたら。もうポスト安倍、政権、ひっくり返りますよ。辻元さんが政権に入っていいんですか。

 だから、やはり私は、これは真面目に与党も、自民党と公明党の基盤が崩れかねないこんなおかしなことを急ぐことは、全く今、大国日本は必要がないということを申し上げておきたいと思います。

 以上で終わりますが、大臣、さきの質問では大変失礼なことも申し上げました。

 ただ、一言だけ申し上げておくと、我が党は、日本維新の会というのは、綱領に「法の支配」ということを入れています。だから、まさに経済産業大臣、万博担当大臣、マイナンバー担当大臣、総務大臣、それぞれの所管があり、その中で、地方自治法のもと、新しい地方自治法のもと、地方公共団体が懸命にこれは、地域における権力闘争を勝ち抜きながら、民意をいただきながら、懸命に大阪の成長のために、大阪維新の会の松井市長も吉村知事も、そしてたくさん当選をまたさせていただいた大阪維新の会の地方議員の皆さんも、もう必死でやっているわけです。

 大臣も必死でやっている。また、万博の誘致はやっていただいた。だからこそ、これからも、その大阪府市の取組については最大限の尊重を持って、万博担当大臣として、また経済産業大臣として、引き続き御指導を賜りますよう心からお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

赤羽委員長 次に、笠浩史さん。

笠委員 よろしくお願いします。未来日本の笠でございます。

 きょう、この特許法等の改正案ということで、私の方は、意匠法のことについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これまで意匠制度の保護対象ではなかった、物品に記録あるいは表示されていない画像であったり、あるいは建築物、不動産等々を、今回新たに意匠法の保護対象と、これからしていこうということですけれども、私自身も、保護対象がこうして拡大というものが実現をされ、そして関連意匠制度が拡充される、長期にわたるということで、こういうことは、そういったデザインをやはり重視をしていくたくさんの企業の取組にとっては、非常にこれを推進していく後押しになっていくと期待をしているわけでございます。

 ただ、やはり、かなりこれは対象が広がりましたので、まず大臣に、いろいろな、ちょっと後でまた事務方に具体的なことを伺いますけれども、審査の基準であったり、これからどういうふうに手続をしていくのかとか、まずはどういうことが対象になっていくのかというようなことをやはりしっかりと周知をしていくということをやらなければ、また混乱も起こり得る可能性もあると思いますけれども、その点について、まず大臣のお考えをお聞かせください。

世耕国務大臣 私も、今回の法案、説明を受けたときに、例えば物品に記録、表示されていない画像というのは一体どういうことなのか、これはなかなか理解を、大分具体例を写真で見せてもらってようやく理解ができた。あるいは内装デザインで意匠法に当たるのはどういうことなんだろうというのも、これも具体的に実際の店舗の写真を見せてもらって、ああ、なるほど、自分も行ったことのある店でしたけれども、これならわかるなという感じでありました。

 やはり、理解をしていただくというのは非常に重要だと思っていまして、ユーザー目線のウエブページを立ち上げて、特に、意匠ということですから、画像で幾つも例をお示ししながら、ああ、なるほど、こういうことかというのをわかっていただけるようにしたいと思っています。

 また、法案成立後、施行までの間に、全国の主要都市で説明会を行って、特許庁の職員から、企業や個人といったユーザーの方、弁理士、支援機関といった皆さんにも、制度の趣旨と、想定されるような活用事例をわかりやすくお伝えをしていきたいというふうに思っています。

 特に、今回は、インターネット上の画像デザインですとか建物の外観・内装デザインを新たに意匠法の保護対象といたしましたので、例えば、インターネット上でビジネスをやっている方々とか、あるいは建設業界といった、新たな制度ユーザーとなり得る方々をしっかりと掘り起こして、改正法の内容について周知をして、この新たな意匠制度が十分に活用できるよう、活用されるよう、促していきたいというふうに思っています。

笠委員 本当に、今大臣がおっしゃったように、私もいろいろ見ていてわからないんですよ。本当に難しいんですよね、これ。もちろん、ほとんどの方が自社のいろいろなデザイン等々についてのプロの方々なので、私なんかの理解とはまた全然違うとは思うんですけれども。

 やはり、本当にそういう意味では、今大臣がおっしゃったように、混乱がないように、そしてまたわかりやすく、ぜひとも説明ができるようにしていただきたいと思います。

 特許庁の方にお伺いをしたいんですけれども、いわゆるクリアランス、自社製品が他社の保有の特許権等を侵害していないかどうかを製品販売前までなどに確認をするということに対する負担が増大をしていくんじゃないかという不安があるわけですけれども、その負担軽減のための具体的な対策をどのように講じていくのか、お答えください。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 現在、独立行政法人工業所有権情報・研修館が、文字情報によって登録意匠を検索することのできますJ―PlatPatを提供しております。また、これにあわせて、画像デザインを入力すると関連する登録意匠が表示される画像意匠公報検索支援ツールをあわせて提供しております。

 今回の保護対象の拡大に伴いまして、意匠分類をふやしまして、更にそれをより精緻にすることに考えております。

 この新たな分類を既にある二つの検索ツールで利用することによりまして、一層の効率的な検索ができるものと考えております。こうしたことにより、クリアランス負担の軽減に努められればと思っております。

笠委員 今、J―PlatPat、特許情報プラットフォームの照会機能、この改善を図るということで、これもちょっと伺ったら年間一億三千八百ぐらい検索がされるということで、かなりまた検索回数というのもこれから非常にふえていく可能性もあると思いますし、これも、今おっしゃったけれども、誰もがやはりある程度きちんとわかりやすく使える、難しいものじゃなくて、今度、本当に空間とかということになると、どういうような形で検索をしていくことができるのか、あるいは、将来的にはAIなんかも活用しながら、もっと使い方が簡単な形で事前の検索ができるというふうになっていくとは思うんですけれども、ぜひそのことはしっかりと進めていただきたいと思います。

 それで、意匠登録の出願件数というのが大体年間三万前後ぐらいでずっとこれまで推移をしてきておると承知をしておりますけれども、今回、これだけ対象がふえたことによって、どれくらいこの出願の件数というものがふえていくというように予測をされているのか。まず、どれぐらい予測をされているのかということを、もちろん数字ではなかなか難しいとは思うんですけれども、今どういうふうに見ておられるかをお答えください。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正案は、ユーザーニーズに応える内容でございます。したがって、保護対象の拡充後は出願件数をふやすというユーザーの声をよく聞きます。したがって、出願件数は増加するものと考えております。

 他方、具体的な件数になりますと、これは各企業におけます知的財産に関する予算に関連するものでございまして、特許に振り分ける、あるいは意匠、商標、あるいは海外、国内、そうした知財戦略あるいはマーケティング戦略、デザイン戦略に依存するというふうに聞いております。こうした予算に関連するデータにつきましては、企業の皆様は対外的に公表することを避けている印象もございまして、具体的な数字までは私ども把握できていないところでございます。

 いずれにいたしましても、特許庁として、この出願件数の増加というものについて、しっかりと注視していこうと思っております。

笠委員 恐らく、かなり増加傾向になっていくと思うんですけれども、そのときに、やはり体制もしっかりととっていかないと、意匠審査官の定員というのが定められていて、今、例えば登録出願件数が年間で、二〇一八年だとさっき言ったように三万九百四十六件ぐらい。これ、ずっとこのところ四十八人でこれをやっているんですよね。だから、これはやはり、ふえていくと、当然ながら、そういったことの改善も含めて体制をきちっと整えていかないと、結果として審査に時間がかかる、あるいは一人一人の審査官の方々の働き方にも非常に影響が出てくるということなので、その点、これは長官なのかな、どういうふうな形で臨んでいくのか、どういうふうに考えておられるのか、お答えください。

宗像政府参考人 今般の改正案は、まさにユーザーニーズに応える内容ということで、出願件数が増加することが見込まれるわけでありまして、このため、件数の動向を注視しながら、先行意匠の情報収集を外注するとか、あるいはデザインの専門性を持つ外部人材を採用するなど、あるいは先行意匠調査の下調査を行うとか、いろいろな形で意匠審査の効率化をまず進めまして、その上で、必要な審査官の体制を確保してまいりたいと存じます。

笠委員 多分、今までの、今おられる審査官というのがもちろん中心になってやられると思うけれども、かなり、本当に、建築、不動産、空間、あらゆるものが対象になっていくということになると、やはりそういった専門性を持った方々を一部補充をしていくということもやっていかなければなかなかこの体制というものがとれないんじゃないかというふうに思っておりますので、その点はしっかりとやっていただきたいと思います。

 それで、昨年の十一月ですか、産業構造審議会の知的財産分科会の意匠制度小委員会に、ここに、いろんな分野での、賛成意見とか反対意見とか、それまで寄せられているものが資料として提示をされたというふうに、私も拝見をしたんですけれども、これを見ても、やはり比較的、建築物、不動産、これを新たに意匠の保護対象としたことについて、やや疑問や否定的な意見が、ほかのものよりも、むしろ画像とかよりも多いのかなという気がいたしました。

 これについては、やはり意匠調査等に関する負担が増加していくんじゃないかとか、あるいは工期の長期化、価格の高騰等々への懸念が示されておりますけれども、その点をどういうふうに払拭をしていくのかということをぜひちょっとお答えいただきたいと思います。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 法案を成立させていただいた際は、弁護士、弁理士、学者などの有識者やユーザーを集めた委員会を開催し、施行までに建築物に関する審査基準の案を作成させていただきます。

 新たな保護対象となります建築物などにつきましては、意匠の主な登録要件であります、過去にない新しいデザインであるのかどうか、容易に創作できたデザインではないのか、そうした二つの要件を満たしているかどうか審査をすることとなります。

 新たな保護対象の審査基準は、ユーザーの意見を聞きながら具体的な事例も示しつつ、わかりやすいものをつくる予定にしております。そして、ありふれたデザインが登録されることのないように、しっかりと審査に努めていく思いではあります。

笠委員 これ、もちろん法案が成立をした後でということですけれども、大体一年以内ということですけれども、これは今はもう多分いろんなことをかなり進めておられると思うんですけれども、どれぐらいをめどに、今おっしゃったようなそういった基準、これは省令になるんですかね、それを定めていくようなお考えなのかをお聞かせください。

澤井政府参考人 お答えいたします。

 ただいま申し上げました審査基準に関する委員会につきましては、この法案が成立した後、直ちに開き、数回の審議を経て策定する予定でおります。

 通常、半年程度の期間がかかるのではないかと考えております。

笠委員 ぜひ、半年程度ということで、きちんと議論をしていただいて、それをやはり、本当に、繰り返しになりますけれども、しっかり周知をわかりやすくしていただくことが最も大事なことだと思いますので、その点をぜひお願い申し上げたいと思います。

 時間がそろそろ参りますので、最後に、大臣に伺いたいと思いますけれども。

 個別のことではございません。冒頭伺ったように、まずはしっかり周知をするということと、あと、恐らく、今度、出願権とか、権利保有者等々関係者が話し合って決めていくということになると思いますけれども、設計士など実際にデザインをした人であったり、あるいは不動産等々も対象になるということになると、事業主などがこういった出願権を持つというようなことにもなる可能性もあるわけですよね。ですから、そういった調整なんかも、いろんな問題もこれから出てくるかもしれません。

 ですから、そういったことを、新しい問題点をしっかりと踏まえながら、きちんとわかりやすい形で、やはり、どんどん広がっていくようにお取組をしていただきたいと思いますけれども、最後に、その点の決意をお聞かせください。

世耕国務大臣 今回これで法改正していただいて終わりというわけではなくて、執行体制を迅速に整備をすること、そして周知をしっかり行うことに努めてまいりたいと思います。

笠委員 終わります。どうもありがとうございました。

赤羽委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、西村明宏さん外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属フォーラム、国民民主党・無所属クラブ、公明党、日本維新の会及び未来日本の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山崎誠さん。

山崎委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  高齢化社会・人口減少社会などの社会問題に対処し、経済産業の活性化を図るため、イノベーションの促進・強化と日本社会への実装化が極めて重要である。この問題意識に基づき、政府は本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 特許法等の知的財産制度を有効に機能させ、かつ、その社会的役割が十分に発揮されるよう、制度の不断の見直しを行うとともに、制度運用の実効性を注視していくこと。

 二 いわゆる「懲罰的賠償制度」及び「二段階訴訟制度」の導入については、諸外国の動向も注視しつつ、引き続き検討すること。

 三 厳しい国際競争環境の下、懲罰的賠償制度の導入や証拠収集制度の見直し等、諸外国における知的財産制度改革が急激に進展する状況において、諸外国で活動する日本国民が不利になることのないよう注視し、状況の変化に応じてスピード感のある制度改革が実現できるよう、諸外国における関連情報の収集・分析を強化すること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び文案によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

赤羽委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤羽委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、世耕経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。世耕経済産業大臣。

世耕国務大臣 ただいま御決議のありました本法案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤羽委員長 次回は、来る十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十五分散会


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