衆議院

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第16号 令和元年6月12日(水曜日)

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令和元年六月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤羽 一嘉君

   理事 梶山 弘志君 理事 小林 鷹之君

   理事 國場幸之助君 理事 西村 明宏君

   理事 簗  和生君 理事 落合 貴之君

   理事 斉木 武志君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      石川 昭政君    石崎  徹君

      岩田 和親君    尾身 朝子君

      岡下 昌平君    神山 佐市君

      神田  裕君    木村 次郎君

      佐々木 紀君    冨樫 博之君

      野中  厚君    福山  守君

      穂坂  泰君    星野 剛士君

      細田 健一君    三谷 英弘君

      三原 朝彦君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      山際大志郎君    吉川  赳君

      和田 義明君    菅  直人君

      田嶋  要君    松平 浩一君

      宮川  伸君    山崎  誠君

      泉  健太君    緑川 貴士君

      太田 昌孝君    笠井  亮君

      足立 康史君    笠  浩史君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   文部科学大臣政務官    白須賀貴樹君

   経済産業大臣政務官    石川 昭政君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            更田 豊志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室内閣審議官)       森 美樹夫君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁在留管理支援部長)       丸山 秀治君

   政府参考人

   (財務省主税局国際租税総括官)          安居 孝啓君

   政府参考人

   (スポーツ庁審議官)   藤江 陽子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     土田 浩史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           田中 誠二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官)    福島  洋君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    藤木 俊光君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           米田 健三君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          石川 正樹君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            奈須野 太君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           坂根 工博君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           瀬口 芳広君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局次長)            島  雅之君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 田中  聡君

   経済産業委員会専門員   佐野圭以子君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     三谷 英弘君

  穴見 陽一君     福山  守君

  佐々木 紀君     宮路 拓馬君

  山際大志郎君     和田 義明君

  浅野  哲君     緑川 貴士君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     穴見 陽一君

  三谷 英弘君     青山 周平君

  宮路 拓馬君     木村 次郎君

  和田 義明君     山際大志郎君

  緑川 貴士君     浅野  哲君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     佐々木 紀君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 即時原発ゼロを求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第一二三五号)

 原発から撤退し、再生可能エネルギーへの転換を求めることに関する請願(日吉雄太君紹介)(第一三七一号)

六月七日

 原発からの撤退を決断しエネルギー政策の転換を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一七五八号)

 原発再稼働をやめ、エネルギー基本計画を見直し、再生可能エネルギーの比率を大幅に増加させることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一七五九号)

 国と東京電力が責任を果たすことに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一七六〇号)

同月十一日

 小規模事業者に対する社会保険料負担軽減支援策等に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一九二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

赤羽委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣情報調査室内閣審議官森美樹夫さん、出入国在留管理庁在留管理支援部長丸山秀治さん、財務省主税局国際租税総括官安居孝啓さん、スポーツ庁審議官藤江陽子さん、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官土田浩史さん、厚生労働省大臣官房審議官田中誠二さん、経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官福島洋さん、経済産業省大臣官房商務・サービス審議官藤木俊光さん、経済産業省大臣官房審議官米田健三さん、経済産業省貿易経済協力局長石川正樹さん、経済産業省製造産業局長井上宏司さん、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史さん、中小企業庁経営支援部長奈須野太さん、国土交通省大臣官房審議官坂根工博さん、国土交通省大臣官房審議官瀬口芳広さん、国土交通省自動車局次長島雅之さん及び防衛省地方協力局次長田中聡さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤羽委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。足立康史さん。

足立委員 おはようございます。日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、また内調から森内閣審議官にお越しをいただいています。何回呼ぶんだということで、大変評判悪いと思うんですが、私は、国会質疑というのは、国会審議というのは、本当に、簡単に答えの出ないテーマをしっかり議論していく場だと思っていますので、結構粘着質でありまして、答えが出るまで呼び続けるということで御理解をいただきたいと思います。

 逆に、ちょっと質問して、政府参考人の皆様から教えていただいて、ああ、わかりました、そんなものはこんな、大臣にお忙しい中座っていただいてやる必要なんかありません。ふだん議員会館で議論してやったらいいので。そういうしようもないことはもうやめますが。

 森内閣審議官、情報機関についてやりとりをしてきました。カウンターインテリジェンス・センターはあるけれどもインテリジェンスはどうなんだとかいろいろな議論をしてきたけれども、いわゆる内閣官房の設置法とか施行令とかいろいろな形で、情報を集めて分析するんだということは書いてあるんだけれども、その規定だと、野党が今審議を求めている原発ゼロ基本法案と一緒ですよ。

 原発ゼロ基本法案って、森審議官、管轄じゃないからどうでもいいと思うんですけれども、どうでもよくないが、原発ゼロ基本法案ってひどいんですよ。高レベル放射性廃棄物の最終処分、適切に処理するって書いてあるだけなんです。それで政府に審議しろって言うんですよ。あほでしょう。またそういうことを言うと、あほって言うのはよくないのか、余りレベルの高い法案ではないということでありますが、今の政府だって一緒だということを僕は言っているわけです。

 森内閣審議官はいろいろな、内調はいろいろな仕事をしていると思いますけれども、情報を集めて分析するとしか書いてないです。無責任野党たちとレベル一緒ですよ。

 それで、ぜひ森審議官にちょっと、御存じだったら教えてほしいのは、カウンターパートの組織。例えば、アメリカであれば、アメリカにもいろいろな情報機関があります。CIAだけではありません。また、イギリスのMI6、いろいろあります。そのカウンターパートは内調だと理解していますが、その諸外国のカウンターパート、英米でもいいんですが、どんな組織なのかとか、当たり前、相手ですからね、一緒に情報交換するんだから、相手の組織がどういう組織か知っていないと仕事はできないですよね。

 いや、ここで余り時間をとって開陳いただく必要はありませんが、どんな組織で、その根拠法はどういうものかというのは大体御存じですか。そういうこと、余り知らないですか。

森政府参考人 お答えいたします。

 今委員から、諸外国の私どものカウンターパートに当たるような情報機関等の仕組み、制度等についてお尋ねがございました。

 これら外国の政府の関係機関との間では、私ども、職務の範囲内で必要な情報の交換を行ってきておるところでございまして、どのような相手と話すのかということは当然理解しておりますが、他国の制度の詳細にわたりまして、これがどのような制度であるかということについてまでこの場で責任を持ってお答えできる立場にございませんので、詳細については差し控えさせていただきます。

足立委員 それはそうですね。

 ちなみに、森さん、内調というのは大体何人ぐらいの組織なんですか。大体でいいですよ。十人なのか、千人なのか、一万人なのか。

森政府参考人 お答えいたします。

 平成三十一年一月一日時点におけます内閣情報調査室の定員は、内閣情報調査室本室におきまして百九十四名、それから、内閣衛星情報センターが内調に設置されておりますけれども、こちらが二百二十一名の合計四百十五名ということになります。

足立委員 聞きましたか、皆さん。四百十五名ですよ。これをどう、皆さん、多いと思いますか、少ないと思いますか。自民党の方を向いてもしゃあないな。

 ちなみに、もちろん、内調が諸外国の情報機関の概要についてこの国会で責任ある御答弁をいただくというのは確かにちょっと変だなと思うので、国立国会図書館でありったけの公開情報を全部持ってきてもらいました。

 ただ、きょう、それも私はここで開陳する時間はありませんが、ざくっと言うと、アメリカでいうと、CIAが二万名、根拠法は国家安全保障法と中央情報局法。それから、対外的な軍事インテリジェンスを担当している国防情報局、DIA、これが一万六千五百名、合衆国諜報活動という大統領令に基づく。それから三つ目、国家安全保障局、NSA、本部だけで四万人、外国通信監視法、米国自由法等が根拠法。あと、イギリス、ドイツ、フランス、いろいろあるわけですね。

 四百人で、どうですか、十分ですか。

森政府参考人 私の立場で十分であるかどうかということは、申しわけございませんが、お答えしかねますが、日夜、定められた定員のもとで職務に邁進しておるところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりですよ。これは森さんの責任じゃないんですね。自民党の責任ですよ。自民党がほったらかしにしてきたから、四百人ですよ、四百人。アメリカ、もう一回言いましょうか。CIAが二万人。DIAが一万六千五百人、まあ二万人。NSAが四万人ですよ。三つだけで。

 日米同盟とかいって、何か野党がしようもないこと言うけれども、何でこの体制で日本は憲法九条改正だと。

 大体、自民党の皆さんは、憲法九条といって偉そうなこと言うけれども、やることやっていないんですよ。情報機関は四百名。アメリカは十万名以上いるわけですよ。何で、十万名の情報機関と四百名の情報機関で対抗できるんですか。

 それから、ほかの委員会では、ほかの委員会だったかな、ほかにもいろいろ、国立墓地の、追悼施設、靖国神社の問題とか、それから戦争被害補償法制とか、世界の中で日本が繁栄を続けていくために必要な立法活動というのはもういっぱいあるわけですけれども、何にもやっていない、自民党は。

 きょうは経済産業委員会ですので、前と同じように石川局長にもおいでをいただいています。

 もういいですね。前、御答弁いただいて、適切にやっていますという御答弁しかできないと思うんだけれども。

 貿易管理を、貿易管理ですよ、貿易管理、北朝鮮ですよ、中国ですよ、ファーウェイですよ、それをやっていくときに、十万人の情報機関を抱えているアメリカと、四百人で根拠法もなくこそこそやっている日本で、アメリカにおんぶにだっこで、アメリカに従属しないとやっていけないでしょう。

 そういう組織を、そういうものにしておきながら、森さんに全部なすりつけてやっているようでは、日本はちょっと立ち行かない。しっかりやりましょうということで、貿易管理の観点からも、いろいろやっていらっしゃると思うけれども、やはりインテリジェンスというのは、貿易管理の前提として当たり前のことであるし。

 きょう、法務省もお越しをいただいています。丸山部長、ありがとうございます。

 外国人、今、どんどん受入れ拡大しています。外国人の在留管理に係るインテリジェンス活動について、ちょっと簡単に紹介してください。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 出入国在留管理庁では、情報の収集、分析の中核組織として、出入国管理インテリジェンス・センターにおきまして、国内外の関係機関と連携を図りつつ情報収集しており、収集、分析した情報を出入国在留管理庁が保有する要注意人物リストに登載するなどして、厳格な上陸審査や在留審査に活用しているところでございます。

足立委員 要注意人物リストとかいろいろあるんですけれども、例えば、テロの容疑者とかそういう、あるいは、水面上に上がってきているテロの容疑者じゃなくて、水面下で、潜っているテロの容疑者とかそういうのも入っていますね。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的にどのような情報が入っているか、詳細は差し控えさせていただきますけれども、国内外の関係機関からいろいろ収集した情報を、テロ対策を含めて活用しているところでございます。

足立委員 法務省がそのような活動をするに当たっての法的基盤、どういう法律に基づいて、どの規定に基づいてそういう活動をしているんですか。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 出入国在留管理庁では、出入国管理及び難民認定法第一条に規定します同法の目的である、本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図るために、必要な範囲で情報収集し、保有しているものでございます。

足立委員 だから、日本政府というのは、いや、僕らも立法府にいるから責任はあるんですけれども、情報を集めます、分析しますとしか書いてないんですよ。まあいいんだけれどもね、別に。何で書かないか知っていますか。国会でしようもないことを言われたくないからですよ。しようもない質問する人もいるからね、気持ちはわかるんだけれども。しかし、規模からしても話にならない。アメリカは十万人、日本は四百人。

 だから、一連の、森内閣審議官をお呼びするのはもうこれで終わりにしますので、ようやく解放されたということで、ぜひ重要な仕事に専念していただきたいと思います。

 私は、これから国会の中で、与党の皆様とも連携しながらやはりこういう、九条改正はやったらいいですよ、九条改正はやるべきだと思うんだけれども、九条改正だけではない。それは、靖国神社に、総理大臣も行けない、天皇陛下にも、ちょっと表現はわかりませんけれども、行っていただけない。それから、北朝鮮からミサイルが飛んできたときの戦争被害補償法制も、諸外国にはあるけれども日本にはない。情報機関もない。とんでもない後進国でありまして、ぜひ、与党の皆様には、憲法九条の改正の議論と並行して。これは、今度の参院選のマニフェストにも我々は入れています。だから参院選で、自民党、四百人ですよと言いまくりますからね、街頭で。

 だから、ちゃんと参院選を目指して、あるいは参院選を経て、憲法九条改正、憲法改正を旗印にしていかれるのであれば当然やらなあかん仕事はやっていただきたい。政府・与党にそのように要請をしておきたいと思います。

 さて、後半に入りたいと思いますが、きょうは原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場の議論をしたいと思いますが、その最終処分場の議論だけを見ていてもよくわからないので、きょうは防衛省にも来ていただいています。これは何のために来ていただいているかというと、米軍基地の問題があるからです。

 それから、国土交通省にもお越しいただいています。

 これは、日本が、戦後七十年余り、大きな経済と豊かな社会を築いてくる中で、日本の都市づくりをしてきた。その過程で、例えば道路を引くときに、土地収用法というのがあります、都市計画法というのがあります。だから、いろいろ、森友学園とかで土地の問題がちょっと問題に、国有地の払下げが問題になりましたけれども、それでも、国土交通省の分野というのはまだ透明な方ですよ。だって、都市計画法があって土地収用法があって、そういう手続法のもとで手順を踏んでやってきているわけですね。

 これは、経産委の皆さんだから、国交省に、都市計画法というのがあって土地収用法があるんだよねということを簡単に、何か役人らしくちょっと紹介してもらえませんか。

瀬口政府参考人 お答えいたします。

 道路、公園等のまちづくりにとって必要な施設につきましては、一般的に、当該都市施設の存在します市町村が、都市計画の案を公告縦覧や都市計画審議会の議決等の手続を経まして都市計画に定めた上で、都市計画法に基づきます認可を受けて都市計画事業として整備を行うことができることとされております。

 この都市計画事業につきましては、都市計画法第六十九条の規定によりまして土地収用法の収用適格事業とみなされることになっておりますから、土地収用法の規定が適用され、土地等の収用が最終的には可能となっております。

足立委員 ありがとうございます。これが当たり前の民主的な手続というものですね。

 そうしたら、きょうは、防衛省、米軍基地がありますね、米軍基地も土地収用というのはありますね。駐留軍用地特措法とか駐留軍の関係の法令、用地の問題、ちょっと簡単に紹介していただけますか。

田中(聡)政府参考人 お答え申し上げます。

 日米安保条約上の義務を履行するため、我が国に駐留する米軍に施設・区域として提供する必要がある民公有地につきましては、土地所有者との合意により賃貸借契約を締結いたしまして、使用権原を取得することを基本といたしております。

 他方、土地所有者との合意が得られる見込みがない場合、この場合は、委員御指摘の駐留軍用地特措法に基づきまして、使用権原を取得することとしております。

 具体的な手続といたしましては、当該土地を施設・区域として提供することに係る土地所有者等への意見照会に始まり、本法律を適用することに係る防衛大臣の認定を受け、土地収用法に基づき各都道府県に置かれている収用委員会による土地の使用期間、補償金額等に関する裁決を得た後、土地所有者へ補償金を支払うといったものでございます。

 なお、収用委員会による裁決におきましては、土地収用法の規定を適用するということにしております。

足立委員 今御紹介あった、わかりましたかね、要すれば、土地所有者との調整は当然やりますね、当たり前です。民主主義の国、あるいは資本主義の国ですから。

 例えば、辺野古。辺野古は、もともと米軍基地、キャンプ・シュワブですから、もともと米軍基地だから、辺野古に基地をつくること自体については大きな問題はないわけですが、公有水面埋立法にひっかかるということで、公有水面埋立法をめぐって大変な司法闘争が今沖縄県と国との間で行われている、こういうふうに承知をしているわけですが、私がきょう問題にしたいのはそこじゃないんですよ。

 辺野古に米軍基地をつくるということについては、何で都市計画法のような手続をやらないんですか。要すれば、国民の皆様、沖縄県民の皆様、あるいはその周辺地域の皆様に、ここに米軍基地を持ってきますよということを、審議会で議論したり、公告したり、縦覧したり、都市計画法で道路一本つくるときにやっている手続をなぜ防衛省はやろうとしないんですか。ちょっと教えてください。

田中(聡)政府参考人 お答え申し上げます。

 日米地位協定第二条に基づく在日米軍施設・区域の提供につきましては、米側から要請がある場合には、その必要性や設置場所等につきまして、日米安保条約の目的の達成や、社会的、経済的影響等を総合的に勘案して判断するとともに、地元の理解と協力が不可欠との認識のもと、影響を受ける関係地方公共団体に対して丁寧に説明を行うなどして、地元との合意に向けた調整も行うこととしております。その上で、日米合同委員会における合意、閣議決定、政府間協定の締結、官報公告等の手続というものも行っているところでございます。

 このように、在日米軍施設・区域の提供につきましては、関係する地方公共団体に対しまして丁寧に説明を行うなどして、理解と協力を得られるよう努めているところでございます。

 防衛省といたしましては、このような地元説明や日米合同委員会における協議を含め、在日米軍施設・区域の提供に係る事務については、防衛省設置法第四条に規定する所掌事務を根拠として実施しているところでございます。

 なお、先ほど委員御指摘の普天間飛行場代替施設の移設に関しましても、住民等への説明も、過去、行ったところでございます。

足立委員 丁寧に説明するとおっしゃいました。要は、都市計画法では、道路一本つくるだけ、道路一本つくるためにさまざまな手続を踏んでいるわけです。民主主義というのは手続ですよ。手続が民主主義を支えるわけですよ。道路一本つくるときにさまざまな手続をするのに、今おっしゃった、辺野古の基地は丁寧に説明しますと。

 では、手続はどうなっているんですか。どういう手続を経ながら説明を尽くしているんですか。

田中(聡)政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる防衛施設の、在日米軍施設・区域の提供につきまして、都市計画法のような手続というものが現在法制化されていないというのは事実でございます。

 だからといって、住民の声あるいはその自治体の声というものを全く聞かずにこれを進めてまいるというのは、政策的に我々はそれは問題であろうというふうに考えておりますので、そこは法制化はされていないものの、きちんと、住民の意見、あるいは首長さん、議会の意見というものは聴取した上で、提供というものを進めていきたいというふうに考えておるところでございます。

足立委員 自民党の皆さん、聞きましたか。余り聞いていないか。まさに、防衛省の田中次長が悪いんじゃないですよ、皆さんが悪いんだよ、ほったらかしにして。

 道路一本つくるときにもやってきた丁寧な説明は、日本の法体系の中では都市計画法という手続法によって担保されてきたんです。でも、米軍基地についてはほったらかしですよ。今あったように、手続法がないんだから。でも、ちゃんとやりますと。誰がそれを理解しますか。道路一本でさえやっていることを、米軍基地については日本政府はやってこなかったんです。それは、日本政府の官僚たちが悪いんじゃないです、自民党がだらしないからですよ。ほったらかし。

 なぜきょうこういう話をするかというと、原発の最終処分場はもっとひどいからです。原発の最終処分場については、何か土地収用とかそういう、要すれば手続法はないけれども、米軍基地については土地収用ということはあり得るわけです。

 じゃ、ちょっと別の質問をしようか。

 原発についてはありますね。原発については、土地収用を見据えたハンドリングというかマネジメントをしてきていますね。それはイエスでいいですかね。

村瀬政府参考人 まず、事実関係から申し上げますと、原発について、収用といったようなことは過去実績はございません。

 それで、法令上どういうことだと思いますので、土地収用法の規定について申し上げさせていただきますと、土地収用法の第三条というのがございまして、ここで規定しているのは、土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、次の各号のいずれかに該当するものに関する事業でなければいけないという規定になってございまして、その十七号で、該当の部分だけ申し上げると、発電事業の用に供する電気工作物、こうなっているところでございます。

足立委員 だから、きょう私が、経産省、防衛省、国交省というものに、お手数でございますがお越しをいただいて、三つ並べました。

 わかったことは、手続法がしっかりあるのは道路だけです。米軍基地も原発もありません。それで、土地収用に関する規定は全部あります。当然、都市計画にもあるし、米軍基地にもあるし、原発にもあります。

 ところが、最終処分場については、高レベル放射性廃棄物の最終処分場は土地収用を見据えていますか。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十二年、二〇〇〇年に特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律というものが制定されておりまして、その中で、法律上、処分実施主体が定められておりまして、NUMOという実施主体が文献調査、概要調査及び精密調査という三段階の調査を行うということが法定されたわけでございます。その際、法律上、次の段階の調査に進む際には、地域の意見を聞き、それを十分に尊重するという規定になってございまして、それは、法律の第四条、最終処分計画というところで規定をされているところでございます。

 最終処分法に基づき、このような手続が規定されてございまして、この手続に従いまして、地域の御理解を得ながら、信頼関係をしっかりと構築し、最終処分場の選定に向けた取組を進めるという立法趣旨でこのような手続になっているわけでございます。

 こういった考え方のもとに、最終処分法が制定された際には、土地収用法の改正など、用地の強制収用に関する措置は講じられておりませず、最終処分施設については、先ほど私が申し上げた土地収用法第三条に基づく対象事業にはなっていないところでございます。

足立委員 これが私はもう大問題だと思っているわけです。やる気ないんですよ。道路一本つくるときにもやってきたことを、最終処分場はやっていないんですよ。

 確かに、文献調査、概要調査、精密調査、それはやったらいいですよ。でも、これは手挙げ方式でしょう。いや、皆さん、これ……(発言する者あり)えっ、手挙げじゃないの。ちょっと教えて、それを。大臣でもいいですよ。まあいいや。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、平成二十七年に閣議決定をいたしまして、最終処分に関する基本方針というものを新たに定めたわけでございます。その際、従来手挙げ方式であったものを、国が前面に立って対応していくという方針に国の方針を改めたところでございます。

足立委員 僕もあほですからわからないんですけれども、手挙げ方式を改めて国が前面に立つってよく聞くんだけれども、それは、何、国が前面に立ってどうするの、国は。どうするのって、済みません、ちょっと教えてください。

村瀬政府参考人 基本的に地域の、地元の御意向を尊重するというところは変わってございませんけれども、地域の御意向も尊重しながら、場合によっては国がお願いをしていくといったようなことも考えていくということになっているわけでございます。

足立委員 わかりました。だから、手挙げ方式じゃなくて、場合によっては国が積極的にあなたのところということで言っていく、それはわかったけれども、それで受ける人いますか。

 いや、だって、道路一本でも土地収用という最終手段を見据えて手続法が組まれているんですよ、道路一本でも。道路一本でも土地収用という最終手段を見通した手続法があるんですよ。ところが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、いや、国からお願いしますというんだけれども、手続法、まあ、手続法というか、これはあるけれども、いわゆる今申し上げたような意味で、最終的には、そこ、もう国のためにごめんなさいと。

 大体、都市計画法というのは、釈迦に説法だけれども、都市計画区域のために必要な施設をつくるために手続法があるわけですよ。都市計画区域のためには、みんな嫌だけれども、都市計画区域の発展のためには、必要な道路をつくるために手続法と土地収用があるわけでしょう。米軍基地だって同じですよ。高レベル放射性廃棄物の最終処分場だって同じですよ。国の繁栄のためには要るんだから。

 何で土地収用を見通した手続法をつくらないんですか。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど土地収用法上の整理については御答弁させていただいたとおりでございますけれども、最終処分法を制定いたしましたときに、この三段階の調査を行っていくというのが、まさに手続を決めたわけでございます。

 具体的に申し上げますと、まず、文献調査をやっていただける方ということを……(足立委員「もうわかっているから。その辺、飛ばして」と呼ぶ)はい。

 ということで、一つ一つの絞り込みのプロセスにおいて、御地元の意見をしっかり聞いて一歩ずつプロセスを進めるという手順の中で御理解をいただいて、御理解をいただいた地域に最終処分地として受け入れていただく、こういう手続にしたということがこのいわゆる最終処分法で、最終処分地を決めていくための手続として国として方針を決めたということでございます。制度を決めたということでございます。

足立委員 いや、だから、道路一本通すためにも土地収用という非常に強い権能を、枠組みをつくったわけでしょう。高レベル放射性廃棄物の最終処分場をつくるという、極めて難度の高い施設をどこにつくるというのを決める作業のときに、なぜ土地収用を見通さずにできるのかわからないんですよ。道路には土地収用が必要なのに、なぜ最終処分場には土地収用は必要なくて、今、村瀬さんがおっしゃったような、いやいや、いろいろ意見を聞いて、国からお願いしてやるんだと。何でそれで、できる理由がわからないんですよ。僕は、それはやる気がないからでしょうと思っているわけ。どうですか。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 立法当時の考え方は、この最終処分地を選定するということの重要性にも鑑みまして、地域の意見をしっかり聞いていくというプロセスを決めたというように理解してございます。

 先ほど私が申し上げた、例えば土地収用の規定に基づいてどういう実態があるかという点について申し上げますと、例えば発電所でございますけれども、先ほど申し上げたように、十七号の対象にはなってございますが、発電所についても実績はございません。そのような中で、やはりしっかりと事業者が地元の御理解をいただいて、そういう事業のやりとりの中で御理解をいただいて、発電所についてはこの収用の規定を適用しないで進めてきているという実態もございます。

 立法当初の手続の考え方に基づいて、地域の考えをしっかり聞いて進めていくということで、丁寧にプロセスを進めていきたいと考えてございます。

足立委員 もう時間も限られてきましたのでまとめていきたいと思いますが、きょう質問させていただいて改めてわかったことは、道路一本に取り組んできた手続法たる都市計画法と土地収用法という枠組みで来た。その土地収用だってできるだけ使わなかったわけです。

 土地収用だってできるだけ使わなかった。使わなかったときにどうしたかといったら、また、この間、不動産鑑定士の協会の人に怒られまして、僕は、森友学園のときに、あのずさんな不動産鑑定をやったのは不動産鑑定が問題なんだ、こっちの土地ではごみをこれだけ評価して、こっちの隣の土地ではごみを評価していないとか、そんな適当なことをやっているからあかんのだと言ったら、ある人が、いや、そんなものだ、日本は、土地収用はしてこなかったかわりに、お金を積んできたんだと。

 お金を積むときにどうしたかというと、不動産鑑定士にちょっとなめてもらって、それで、道路を通すときにそこにちょっと寝転がっている人がいたら、そこに建っていない建物があると仮定して、ないんですよ、建物、ないんだけれども、その建物があると仮定して、それの除却費を積むんですよ。お金を積んで、どいてもらっていたんですよ。

 だから、土地収用法というのは余り使わなかった。でも今は、そういうおかしな税金の使い方に対して、当たり前ですよ、そんなもの、できなくなってきているから、土地収用というのがふえてきているわけです。まあいいや、それは。

 だから、防衛省、もう終わりと思っていたかもしれないけれども、もう一言だけ田中次長にお願いしたいのは、きょうあったように、これは手続法はないんです。手続法がないためにこんなに混乱しているんです。そのときに、公有水面埋立法でござるとかいって司法闘争をやっていてこれは解決しますか。しっかりと、立法府、僕らの責任だと思いますよ。あなたの責任じゃない。自民党の責任ですよ。

 ちゃんと手続法をつくって、なぜ辺野古に米軍基地をつくる必要があるのか、それをちゃんと法律をつくって、そして審議会をつくり、場所を決めるんですよ。それで、公告し、縦覧する。当たり前の手続法が要ると思いますが、そういうのを政府として検討してみたいと個人的に思いませんか。

田中(聡)政府参考人 お答え申し上げます。

 個人的意見をこの場で申し述べることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今現在、私ども、駐留軍用地の提供に関して特段その手続法が必須であるというふうには考えてはおりませんけれども、未来永劫それでいいのかというのは、これは政策の不断の見直しというものは必要だと思っておりますので、勉強させていただきたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 辺野古の基地は、僕はまだ、手続法というものを議論する土壌がもうできつつあると思うんですよ、行き詰まっているから。でも、最終処分の問題は、これはもっと足元のところで、もうとにかく敬意と感謝といって、とにかくお願いベースですよ。そうだけれども、私は、責任ある国会議員たるもの、責任ある自由民主党であれば、ちゃんと最終処分についても手続法をつくって、出口まで見据えた手続法をつくるべきだということを訴えてまいりたいと思います。

 この七月の参院選では特にこういう、憲法を前面に立てるのであれば、憲法九条だけではなくて、インテリジェンスとか手続法とか、そういう当たり前の議論を日本維新の会は提起をし、それを実行できる政権を、安倍さんが四期ぐらいやってもらって、四期やっていただいたその先のポスト安倍は日本維新の会が手をかけていきたい、こうお誓い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

赤羽委員長 次に、緑川貴士さん。

緑川委員 皆様、午前の審議、大変お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。

 お時間をいただいてありがとうございます。

 飲食店、宿泊施設など、サービス業は地方においては特に人手不足が深刻でございます。私、地元秋田県ですけれども、有効求人倍率、四月を見ましたが、全職業平均で一・五三倍なんですが、職業別に見ると、サービス業の中でも飲食店の店員、仲居らを含む接客・給仕の常用パート、特にこの常用パートが七・九三倍です。つまり、アルバイトが特に足りておりません。深刻な状況です。

 例えば、アルバイトの半分がこの春の進学また就職でやめてしまったという県内のある飲食店では、調理から注文、会計までを夜の営業では一人でこなしているというところ、また、これまで週五日でランチ営業も行っていた居酒屋は、人が足りないことから今年度からランチ営業を週二日に減らしたり、ある温泉旅館では、ここ数年新卒採用がないことで、料理の説明をしますけれども、接客にかける時間を一品ずつ秒単位で削り出す、見直す、こういう状況であります。

 従業員を確保できずに、こういう営業時間、また営業日数を減らしたり、限られた人員で作業効率を高める取組が進められておりますけれども、従業員の数で対応するということは、今の数で対応するのは、今後も出てきますけれども、やはり個々のお店では限度があります。

 人口減少、高齢化が顕著な地方のサービス業の人手不足に対して、国としてはどのように取り組んでいくお考えでしょうか。

世耕国務大臣 今御指摘のように、人口減少が進んでいる地方のサービス業、飲食業も旅館業もそうですけれども、人手不足は深刻な課題になっている、これは私も重々認識をしています。やはりそこでは生産性を高める改革というのをやっていかざるを得ないのかな。

 先進的な旅行業ですと、例えば、フロントから、お皿洗いから、配膳から、部屋の掃除まで全ての業務を一人の人間がやれるようにして、空き時間をなくしてみんなでやっていくとか、あるいはIT化、これは飲食業で、完全キャッシュレスで、掃除はルンバにやらせて、注文も全部タブレットでというようなことで大幅に人手を削減しているというような例も出てきています。こういった取組を地方の中小のサービス業でもやれるようにしていかなければいけないというふうに考えています。

 経産省としては、平成二十八年度補正予算からIT導入補助金を措置していまして、今まで七万六千件の中小サービス業におけるIT導入を支援してまいりました。多様なニーズに応えるIT導入を支援するべく、ことしは上限額も大幅に、今までは五十万円だったのでちょっと使い勝手が悪かったんですが、これを四百五十万円に引き上げて、本当にシステムそのものをつくりかえることができるような投資にも使っていただけるようにいたしました。

 さらに、平成二十九年度の補正予算では、例えば、飲食業の現場におけるセルフオーダーシステム、先ほど申し上げたタブレットで注文するようなものの導入ですとか、あるいは、酒造会社において勤怠管理システムを導入する、旅館における予約管理システムの導入といった、バックオフィス業務を効率化するIT導入を支援するという実績が出てきております。こういった支援によって、より売上げにつながるフロント業務へ人材を配置するとか、人材の有効活用が実現できるのではないかというふうに思っています。

 IT化の徹底推進に向けて、飲食、宿泊を含む百以上の業界団体が参画する中小サービス等生産性戦略プラットフォームというのも立ち上げさせていただきました。こういうところで、情報発信ですとか、優良事例の学び合いですとか、マッチングの活性化といったことも後押しをしていきたいと思っています。

緑川委員 やはり、人の力以外の面がますます頼りになってくるところはあると思います。

 ただ、数年前と状況が、募集を出しても数年前は反応があったという地元の声だったんですが、もう今それすらもないと。人手不足は深刻であるというふうに言われ続けてきましたが、もう本当にここ直近ではより深刻であるということはしっかり共有させていただきたいというふうに思います。

 サービス業の中でも疲弊しているのはやはりコンビニエンスストアも同じなんですが、文字どおり、便利さという点では暮らしに当然今もなくてはならない存在ですが、やはり、この人手不足の深刻化によって二十四時間営業の見直しを訴える声が高まっている。コンビニエンスストアのビジネスモデルが立ち行かなくなってきているとも言われています。

 国からの要請を受けて、ことしの四月下旬にコンビニ大手三社が行動計画を提出していますが、いずれも、フランチャイズ店に対して柔軟な姿勢で対応していくという方針が示されたということであります。セブンイレブンでは、フランチャイズ店の営業時間の見直しについては、最後はオーナーの判断に委ねるということで柔軟さを示しています。二十四時間営業からの転換を明言されています。

 経産省では、今回の行動計画を踏まえて、新たに有識者会議を立ち上げて本格的に議論するというお話でしたけれども、今の国の取組の状況はいかがでしょうか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問の中にありましたように、行動計画の策定を要請して、各社から行動計画の提出、発表があったところでございます。

 経産省としては、こうしたものも踏まえまして、コンビニの抱える今日的課題と今後の方向性を検討するということで、有識者による検討会を近日中に立ち上げるべく準備をしているところでございます。その中で、コンビニオーナーやユーザーなど幅広い関係者の意見を聞いていきたいというふうに思っております。

 具体的な進め方等について鋭意検討して、早急に着手したいというふうに考えております。

緑川委員 フランチャイズ店の実際の現場の負担軽減を検証していくということですから、コンビニ各社の行動計画は、例えば、お客さん自身が会計をするセルフレジを導入を拡大したり、また、従業員が商品を並べやすい、こういう棚の導入ということも盛り込んで、現場の負担軽減に配慮された面はもちろんあると思いますが、柔軟に対応すると表明されている今回の行動計画すらも、現場からすれば毎年出されている方針とこれは変わらないということが聞かれます。

 肝心の時短営業についても、実際にそういう営業に切りかえた場合は本部から契約更新をもしかしたら断られるかもしれないとか、また、生活の糧を失う不安が拭えない、こういう声があります。積極的に手を挙げるオーナーは、時短営業についてはやはり多くない。

 こういう現場の声に対しては、国はどういうふうに応えていかれるんでしょうか。

世耕国務大臣 今公表されているコンビニ各社の行動計画というのは今まで毎年出ているものと余りかわりばえしないじゃないかという御指摘ですけれども、一方で、例えば時短営業の実験の実施なんというのは、これは今まで言われたこともなかったわけであります。あるいは、複数店舗を経営するオーナーに対しては、ロイヤリティーを引き下げるというようなことも検討されている。少しずつではありますけれども、やはり抜本的で新たな取組も出てきているのではないかというふうに思っています。我々は、ともかく、フランチャイズの本部とオーナーさんの共存共栄に向けた取組が重要だと思っていまして、その第一歩だというふうに評価をさせていただいています。

 ただ、重要なのは、じゃ、もうこれで終わりということでは困るわけであります。本部がオーナーと十分にコミュニケーションをとって、理解を得ながら計画を進めていくということと、その中で、当然、必要が出てくれば、行動計画を追加したり変更したりという柔軟性を持つことが必要だと思います。

 国としてどうするのか。民民の話でありますから、余り介入というのも私はちゅうちょする部分もあるわけですが、一方で、国民の生活のインフラとも言える状況にコンビニがなっているという中で、経産省としても、ぎりぎりやれることとして、実態を把握をして持続的なコンビニのあり方を検討するという観点から、先ほどお答えした、さまざまな分野の有識者による、例えば労働法とかあるいは契約の専門家とかいろんな方にも入っていただきながら検討会を今月中には何とか開催をしたいというふうに思っています。

 この検討会の中では、コンビニオーナーへのヒアリング、これもできる限り公平な形でコンビニオーナーを選びたい、何か会社が選んだとか政府が選んだというようなことにならないように、公平な形で選ばれたコンビニオーナーへのヒアリングを、しかも、地方がばらつかないように全国各地でやりたいというふうに思っていますし、当然、コンビニで働いている従業員の方々ですとか、あるいはユーザー、このユーザーも、やはり、朝来るお客さんと昼来るお客さんと夜中来るお客さんでは考え方が違う可能性がありますから、これも時間帯別にしっかり意向を把握するような調査というものを行って、各社の行動計画が十分なものなのかどうかということを、この有識者とともに考えていきたいというふうに思っております。

緑川委員 大臣おっしゃった、やはり抜本的な取組、その第一歩にどうかつなげていただきたいというふうに思いますけれども、民民の関係、経営問題であるというふうにおっしゃっています。ここについても、その契約の範囲で果たして解決できるのかというところについては、やはり慎重に対応するべき話であるというふうに思います。

 営業時間の短縮を求めているフランチャイズ店に対して、仮に一方的に本部が拒否して不利益を与えた場合には、これは独占禁止法に違反する可能性を公正取引委員会も示しているところでございますので、契約を盾にとって二十四時間営業を強いるような方法はもう通用しなくなっております。そこを念頭に置いて、契約だけでは対応できない、そういう問題に対してはやはり国がしっかり対処していくべきであるというふうに思います。

 次に行きたいと思いますが、単に物を売る店にやはりとどまらない、災害時の一大インフラとなっているコンビニの一方、今度は、物を生み出す現場の課題についても触れさせていただきたいというふうに思います。

 ことしのものづくり白書によれば、技能継承が重要というふうに感じている企業が何と九四%、最新の白書ですけれども。技能継承が円滑に進む企業は、確かに、労働生産性が高い、そして人材の定着もこれは良好であるということなんですが、いずれ、技能継承の意義は強調されている一方で、やはり最大の課題は、ものづくり現場でいかに技能継承ができるかということが果たされるかということであります。

 熟練者の技能継承については、長年の経験と勘が頼りになる、やはりたくみのわざと言われるものが多いわけで、そういう現場の強みを支えるようなノウハウ自体が人に帰属していますね、企業ではなくて。そういう中では、企業としてそのノウハウを引き継ぐ組織的な構築というものがやはりできていないというのが課題であります。

 現役を引退してもなお、テレビでよく見ますと、おじいさんになった元経営者が現場に赴いて息子の技術指導をしているような、そういう様子をドキュメンタリー番組でもよく拝見いたしますが、そういう技能継承に向けた対策、人材確保について、国の取組を伺いたいと思います。

世耕国務大臣 熟練技能者の技能承継というものは、やはりものづくり現場の大きな課題だというふうに思っています。

 二〇一九年版ものづくり白書を公表させていただいておりますけれども、国内製造業の九割以上が人材確保に課題があると認識をしています。そのうち五割以上が技能人材の確保が特に課題だと認識をしているという分析になっております。また、製造業のたくみのわざを支えてきたまさに団塊の世代が今続々と定年を迎え始めていて、二〇〇七年と比べて、技能承継に問題があると感じている企業が増加をしているという状況であります。

 技能は、いわゆる暗黙知を、実際の体験等を通じて世代を超えて人から人へと継承されていくために、習得に例えば十年ぐらいはかかるというような技能もあるわけでありますけれども、一方で、今、第四次産業革命ということが起こってきています。これまでは熟練技能が必要とされていた工程が、ロボット等によって自動化をされていくという動きも出てきています。こうしたデジタル化についても、このものづくりとITの双方を理解する専門家が中小企業に伴走して支援する取組や、設備投資に対する税制優遇等の支援を行っているところであります。

 また、熟練技能が現場に残っているうちにこれをAI化して、効率的な技能習得を可能にすることも重要だというふうに思っています。私が視察したような工場でも、熟練技能者の動きをカメラで撮って分析をして、いかに、まだ初心者に比べて無駄な動きがないかとか、ちょっとした膝の動きの違いでねじのとめ方が変わっているというようなことを、きちっと記録をしているような現場もありました。

 経産省では、製造現場が持っているノウハウや知識をAIに学ばせて、人を支援させるシステム構築を研究開発プロジェクトとして今年度から開始をしたところであります。

 今、我々はコネクテッド・インダストリーズと呼んでいます。これは、企業と企業がデータでつながる、あるいは機械と機械がデータでつながるということをメーンにしていますが、人と人が世代を超えてデータでつながっていく。だから、十年学ばなければいけなかったことを、データ化することによって、AIが支援して一年、二年で若い人が習得できていけるというようなコネクトという観点も持っていきたいというふうに思っています。

緑川委員 やはり、現場の力をどう維持していくかというのは、個々の企業によってさまざまな特性がございますので、手探りの状況が続くというふうに思いますが、大臣のおっしゃったような取組を通じて、しっかり技術の継承を生かせる国としての支援であっていただきたいというふうに思います。

 こういう局面は、過去にも、やはり経済危機であるとか、あるいは産業革命、そうした技術革新の局面でこういうマクロの環境変化にさらされる中で、多くの企業がこれまでも困難に直面しながら乗り越えてきた歴史というのは日本にもございます。

 そういう中で、老舗と言われる企業では、やはり、精神面、心の持ちよう、このよりどころとなる社訓は守りながらも、一方で、自社がこれまでに培ってきたコアな技術を次代につなぎながら、その強みを生かしながら新たな製品やサービスを開発する、こういうことで顧客に新たな価値を提供していく、老舗として生き残っている企業では、そういったところが共通点であるというふうに言われております。

 そういう新たな価値を提供する過程では、顧客ニーズや時代の変化を把握するためのビッグデータの活用、情報通信技術、ICTであるとか、また、物と物がインターネットで結ばれてネットワーク化されるようなIoT、あるいは人工知能、こうしたものの活用によって生産工程の合理化を図る、こういう傾向が強まる一方で、これらを実現していくためには、やはりデジタル技術を活用できる人材を確保していくことがこれからますます求められているというふうに思います。

 一方で、経産省のおととしの調査、少し調べさせていただきますと、いわゆるデジタル人材が不要と考えている企業がいらっしゃいます。その理由を尋ねると、費用対効果が見込めないとか、あと、自社の、自分たちの業務には付加価値をもたらすとは思えない、なかなか現実味が持てないという回答が多く占めています。地元の企業でお話を聞いても、やはり同じような声がありました。

 この現状は、要はミスマッチが起きているのではないかというふうにも感じるんですが、政府としてどのように対応されていくでしょうか。

世耕国務大臣 今委員御指摘の、二〇一七年に実施したデジタル人材の業務上の必要性に関する調査では、国内製造業の約六割がデジタル人材が業務上必要だと回答しているんですが、不要と回答された四割弱の企業の約半分から費用対効果が見込めないとか、また二割強の企業から自社の業務に付加価値をもたらすとは思えないという回答があった。これはちょっとまだまだ経営者のデジタル化、データ利活用への理解が進んでいないな、まあ、二年前のことではありますけれども、この結果からそういったことを痛感しています。

 デジタル人材が必要となるデジタル化は、やはり生産性の向上には圧倒的に効果的であります。デジタルということを超えて、データ利活用によって製品を向上したり、サービス業におけるユーザーエクスペリエンスを改善していくというのがもう今当たり前の趨勢になっているわけでありますが、こうした事実とか実際の導入方法とかがなかなか理解できないという経営者が多いのも事実だというふうに思います。

 経産省としては、優良な取組事例を多数、ものづくり白書で紹介するという取組もやっています。今まで、ものづくり白書というのは割と無味乾燥だったんですけれども、実例をともかくたくさん盛り込んで、実際に見てもらって、ああこういうことがあるのかというのを経営者に気づいてもらえるようなスタイルに、中小企業白書も含めて、今なるべく経産省の出すものというのを変えていっていますし、中小企業に対して、生産現場におけるITやロボットの導入を、ものづくりとITの双方の知見を持っている専門家が伴走型でサポートするなどの取組によって、デジタル化を通じた生産性の向上の取組というのをしっかり後押しをしていきたいというふうに思っています。

緑川委員 やはり、大臣おっしゃった、本当にデジタルを超えて、データ、リアルデータを、ものづくりの現場での宝と言われているようなそういうデータをいかにビジネスにつなげていくか。センサー、チップといったデバイス、また画像認識、こういう技術の進化によって、これらのデータを収集、活用できるようになっている。

 ただ、なかなか、横文字が並ぶと、経営者の皆さん、聞く耳がちょっと遠くなってしまうんじゃないかなというところもやはりありますので、この周知も含めて、これは政府がしっかり主導して、現場に浸透を図っていくというところが非常に鍵を握っているというふうに思います。

 一方で、こういう業務の効率化や合理化の追求という側面では、大企業と中小企業ではステップに差がやはり出ています。大企業は、設備の自動化の取組が一服して、やはり次の段階であるICT、IoTの活用による生産工程の合理化に向かっている。一方で、中小企業は、設備やロボットの導入による自動化というところをまずは目指そうとしているところですが、ここで、いわゆるものづくり補助金について伺いたいというふうに思います。

 対象となるのが、一定の期間までに機械設備の発注から納入、そして支払いまでが完了している事業者なんですが、その期限というのが、一次公募では、例えば企業間データ活用型、一般型では十二月の二十八日、そして小規模型では十一月の三十日ということですが、この条件をクリアできなければ、期限に間に合わなければ補助事業としては採択されないということになります。

 ここで問題は、例えば補助事業を採択したい企業から機械設備の注文を受けたメーカーで、その一部の部品の調達に時間がかかってしまって、その機械設備の企業への納入が大幅におくれて、結果として発注から納入まで一年以上になってしまった、こういう場合は補助事業の対象から外れるということになるんでしょうか。

奈須野政府参考人 お答えします。

 ものづくり補助金は、中小企業、小規模事業者の生産性向上を実現するため、設備投資を支援する施策でございまして、平成二十四年度から毎年の補正予算で措置して、これまで延べ六万者以上を支援してきております。

 予算事業というものは翌年の三月末までに終了する必要があるため、御指摘のとおり、平成二十九年度補正事業では、事業者の事業完了期限を企業間データ活用型と一般型は平成三十年十二月二十八日、小規模型は平成三十年十一月三十日というふうに設定して、その後に事務局が事業者の検査、確定、支払いなどを行って、平成三十一年三月末までに事業全体を終了するというようなスケジュールになっております。

 このため、委員御指摘のとおり、時間がかかる、発注から納入まで一年以上の時間がかかるような設備投資については、ものづくり補助金の対象にはなっていないということでございます。

緑川委員 わかりました。

 そうなると、例えば、中小企業庁は、一次公募の際には、その企業に対して納期確認を踏まえた事業計画を策定しろというふうに注意喚起をしているということなんですが、納期の確認をして、それを事業計画に反映をさせて、さあ、その計画策定でいよいよ補助事業として一旦採択されました、であったとしても、メーカー側の納期が、後で予見せぬことがあって、おくれて、納期がどんどん延びて、企業への納入が一年以上になってしまう、結果として補助事業の対象外になってしまう場合は、これはどういうふうに対応されていくんでしょうか。

世耕国務大臣 これはやはり、補助事業ということでありますので、財政法上の縛り、財政法というのはあくまでも予算単年度主義の原則に立っていますので、翌年の三月末までに終了させるということになっているわけであります。

 ただ一方で、第四次産業革命のもとで技術や生産プロセスが大変複雑化している中で、中小企業、小規模事業者の皆さんからは、ものづくり補助金について十分な事業期間を確保してほしいという切実な御要望もいただいているところであります。

 そこで、平成三十年度の二次補正予算におけるもの補助については、事業期間を長くとりたいという事業者の皆さんのために、公募期間を短縮して早期に採択を行える、その分、事業期間がこれまでよりも長くとれる、具体的には三カ月ぐらい延ばせるようにするなど、工夫も行っています。

 その上で、昨年度の事業においては、採択を受けました、事業をスタートしました、が、例えば、自然災害が起こって、機械を納入するメーカーの納期がおくれるとか、補助金をもらっている事業者の責任になっていないような理由によって補助事業が予定の期間内に完了することができなかった、そういった場合には、それぞれ個別にお話を伺って期限を延長するなどの、柔軟な対応を行わせていただいている。

 少なくとも、その事業者の責任じゃない、予見できなかったというようなケースに関しては、できる限りお話を伺って、柔軟に対応していくという対応をさせていただいております。

緑川委員 やはり、毎年一万件の申請があって、大変これは人気の施策ですので、このところ、補正予算を超えて、枠を超えて、当初予算の枠で五十億円が措置されている。大臣がおっしゃった措置以外にも、本当に変化が起きているところですので、これは年々充実している施策だけに、しっかり、漏れができるだけ少ないように、事業者に配慮した予算措置であってほしいというふうに思います。

 また、ものづくりの一つで、自動車産業についてもお尋ねをしたいと思います。

 電動化、EV化に向けては、やはり業界のメーカー各社で開発競争が繰り広げられております。経産省の、大臣にも、こういうエネルギー分野の観点からも、整備士についての育成、そういうところからも後ほど御所感を伺いたいというふうに思っているんですが、まず、所管である国交省から伺いたいというふうに思っています。

 燃料電池車であったり、自動車産業は新たな時代を迎えているところですが、整備士業界も、こういう技術の進展に対応していくことがやはり求められています。

 どういう技術の変化があっても、自動車が機械である以上はトラブルはつきものです。こういう新しい技術に対して、その安全性を確保できる整備士が求められているところですが、整備士の育成が、なかなかそういうノウハウが追いついていないという現状があるというふうにも聞いています。

 どのように対応されていくんでしょうか。端的に。済みません。

島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のとおり、新技術への対応は、整備業界の重要なテーマの一つだと考えてございます。

 整備工場が、燃料電池自動車、電気自動車などの新技術の整備に対応するためには、自動車メーカーが作成します整備要領書、電子的な点検整備を行うために必要なスキャンツール、それから、これらを使いこなすための自動車整備士の知識、技能の向上、この三つが必ず必要でございます。

 自動車メーカーの系列でございますディーラー系整備工場を除きまして、一般の整備工場が自社でこれらに対応することは困難でございますので、私どもとしましては、平成二十三年から自動車整備技術の高度化検討会というものを設置しまして、一般の整備工場であっても、一定の費用を支払うことによりまして、整備要領書を自由に閲覧できるようにする環境の整備、それから、複数の自動車メーカーの車種に対応しました汎用スキャンツールの開発と機能拡大の推進、さらに、自動車整備士に対しますスキャンツール研修制度の整備拡充といった取組を進めているところでございます。

 さらに、整備工場が自動運転技術を始めとします自動車技術の一層の高度化に対応するための制度的な環境の整備を図るべく、自動車メーカーに対しまして、先進技術の点検整備に必要な技術情報を整備工場等へ提供することの義務づけなどを内容とします道路運送車両法の一部を改正する法律が今国会で成立したところでございますので、私どもとしては、この法律の適切かつ円滑な運用、それから、整備技術の、先進技術の点検整備に対応する環境の整備を進めてまいりたいと考えてございます。

緑川委員 整備士の現状は、やはり、サービス業、先ほど触れましたが、地方においては、新たに就職する人以上に定年で退職をする人の方が多いという傾向は同じであります。高齢化が進む地方で顕著で、やはり大臣の御地元の和歌山県でもこういう状況ですが、後継者がなかなか育たない、事業承継の問題も含めて、およそ一割の事業者で事業運営に支障が出ているというふうに言われています。

 自動車整備人材の不足の深刻な状況について、御所感を一言伺えればというふうに思います。

世耕国務大臣 ともかく、ここも技術の世界、技術を承継していくという世界であろうというふうに思います。こういったところの人材確保にもしっかり努めていきたいと思いますし、自動車整備も大分IT化、自動化が進んできている面もありますから、そういったところもしっかり後押しをしていく必要があるんだろうと思っています。

緑川委員 御答弁ありがとうございます。

 駆け足になって大変恐縮なんですけれども、最後に、電気保安管理業についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 大型商業施設やビル、工場などに設置されている高圧受電設備というものがあります。キュービクルと言われて、鉄製の箱の中にいろいろな設備が入っているんですが、やはり寿命が定められていても、実際、中をあけてみないと保安点検というのはできません。

 そういう人材が今いますけれども、大切な保守点検、電気主任技術者という資格を持っている人が行わなければなりませんが、電気保安協会であったり、あるいはビルのメンテナンスサービス、こういう専門の業者が人材を雇用したり、経験を積んで、個人事業者として電気管理技術者と呼ばれる人として働く方も少なくありません。

 こういう有資格者の需要は大変に高いんですが、就職先がたくさんあるということも言われますが、一方で、それだけ人手不足の問題が深刻であります。

 電気保安の人材を中長期にわたって確保することを国は目指していますけれども、二〇四五年に想定されている第三種電気主任技術者の需要は、それに対して四千人が将来足りないというふうに言われています。

 第二種も含めて、この人材確保、どのように対処されていくでしょうか。

世耕国務大臣 電気設備の保安の監督を行う電気主任技術者というのは、電気保安のかなめの存在だと思っています。

 御指摘のように、主に小規模設備の保安を担う第三種電気主任技術者については、二〇四五年には、想定の需要一万八千人に対して四千人程度不足するということが見込まれています。

 こうした状況を踏まえて、経産省としては、電気主任技術者の確保が円滑に進められるよう、まず業界に働きかけて、電気保安業界の認知度向上や入職促進を目的とする業界横断的な協議会のことし夏の設立を促すということ、そして、電気主任技術者の資格取得に関するオンライン学習制度の導入の検討などに取り組んでいるところであります。

 また、先端技術を活用した保守点検の効率化にも取り組まなければいけないと思っていまして、例えば、ドローンによる電気設備の保守点検の検討などを行っているところであります。

 引き続き、保守水準の維持を大前提に、この主任技術者の確保に向けて万全を期してまいりたいと思います。

緑川委員 一方の電気工事士についても、こちらは高齢者層の退職に伴って、一種では、二〇二〇年前半に求められる人材の二十万四千人に対して、それでも二万人程度が不足するというふうに言われています。

 最後に、国として、対策、どのように取り組んでいくのか、伺います。

世耕国務大臣 電気工事士は、特に離職率が他産業に比べて高いと言われています。背景としては、建設現場で立場が弱いとか、過酷な職場環境ですとか、不規則な労働時間などがあります。

 業界の働き方改革について、各事業者に任せるのではなく、業界を挙げてルール構築ですとかマニュアルの整備を行うということになっていまして、二〇一八年三月の電力安全小委員会でその具体的な内容を示したところであります。

 加えて、業界団体と連携して、平成二十六年から電気工事士の技能大会を開催しています。すぐれた技能を有する電気工事士に対して経産大臣による表彰を行っていまして、電気工事士の魅力ですとか誇りといったことを持っていただけるように努めているところであります。

緑川委員 御答弁ありがとうございました。

 資格を取得した後の実務経験が不足していれば採用されにくいという現状もありますので、どうか多角的な御支援をお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、泉健太さん。

泉委員 国民民主党の泉健太でございます。

 国民民主党は生活者の側に立つ政党でもありますので、経済産業はさまざまな分野がありますけれども、きょうは、野球の用品の安全性ということについてちょっと取扱いをさせていただきたいと思います。

 私も地元ではいわゆる少年野球ですとかの連盟の顧問ですとかをさせていただいていまして、やはり子供たちの事故をどうやって防いでいくのかということについては、プレーのダイナミックさですとかそういったものとのバランスというものがあると思うんですが、特にやはり重大事故は防いでいかなければいけない、どのスポーツにおいてもそうだと思います。

 特に、接触が多いスポーツ、危険なわざがあるスポーツというのはどうしても事故も多くなるわけですけれども、そういうものを、時代に合わせて、技術が進歩したり、そして考え方が変わっていく中で、防げる事故はやはり防いでいこうという流れがありますので、ぜひそういったことを各スポーツの分野でも取り組んでいく、これはオリンピックに向けても多くの国民がスポーツに関心を高めているときだからこそ、悲しい事故が起こってはいけないというふうに思っておりますので、きょうは質問をさせていただきたいと思います。

 ちなみに、大臣は、野球、御経験ですとかあるいは観戦をされるとか、そういうことはございますか。

世耕国務大臣 私自身の野球の経験は、小学校のときにちょっと野球を友達とやるという程度、中学に入ってからはもうほとんど柔道一筋でしたので、余りやった経験はありません。

 観戦という意味では、私はアメリカに留学していたときに、ボストンで、レッドソックスのフェンウェイ球場のすぐそばに住んでいましたので、よくレッドソックスの試合は見に行った、これはとても留学時代のいい思い出で残っています。国会議員になってからなかなか行くチャンスがなくて、たまに東京ドームで、何年かに一回、ちょっと試合を見ることができるというような感じかなと思っています。

泉委員 ありがとうございます。

 恐らく、以前見られていた野球と、今、特にプロ野球の世界ですね、大きく変わっているのは、ヘルメットに装着をされているフェースガード、Cフラップという言い方もするようですけれども、このフェースガードをつける選手が大変ふえてきたということにあると思います。

 これはメジャーリーグでも、有名な選手が最近、この数年間つける傾向が広がって、日本のプロ野球でも、例えば巨人の原監督なんかは、ピッチャーにもし何かがあってはいけないからということで、フェースガードをつけなさいということを言ってみたりだとか、いろいろな形で広がってきております。皆さんも、最近のプロ野球を見ていると、フェースガードという、顎のあたりを覆う、新しいプレートのようなものをつけたケースを見ることがふえていると思います。

 プロの選手は、御自身の体が財産でありますから、やはりそれを守るためには、膝から下のすねのあたりのレガースだとかあるいは手を守る手袋だとか、やはりいいものは取り入れていくという考え方があると思うんですね。

 そういう中で、プロの選手が取り入れているフェースガードなんですが、実はアマチュアの世界では、これはむしろつけることができない、禁止されているという状態にあるということなんですね。

 この辺のことをきょうはちょっと取り上げさせていただきたいということで、質問させていただきます。

 不思議ですよね。プロが許されているけれども、アマチュアは、より、例えば反応のスピードだとか動体視力だとかいろんなことを考えれば、アマチュアこそ体を守るルールというのは厳しいというのが世間一般の皆さんが考えられることではないのかなと思うわけですが、そうではなく、プロがつけているものをアマチュアがつけられていない、こういう状況にあるということですね。

 どうしてかといいますと、アマチュアの野球、例えば高野連ですね、高校野球を主催している高野連ですけれども、この世界では、ヘルメットは、安全基準であるSGマーク、これはまさに経済産業省の世界ではあるわけですが、製品安全協会という、経済産業省がある種これまで所管してきた一般財団法人があるわけですが、この団体の出しているSGマークの安全基準を満たして、シールの張られたヘルメットでなければアマチュアでは使えないということになっている。

 このSGマークのついたヘルメットに附属品をつける、要はこれは改造に当たるということになりまして、SGマークのついたヘルメットに附属品がつくと別物になってしまうので、このSGマーク基準をトータルとして満たさないという判断にされてしまう。その結果、もしこのヘルメットが例えば製品の不備で割れてしまったとしてもそれは賠償の対象にならなくなるので、高野連としては、こういったSGマークのついたヘルメットに附属品をつけてはいけないというか、それは補償の対象外になるのでだめだ、こういう理屈になってしまっているわけであります。

 であるならば、そろそろいろんな形で見直しをしていくべき段階が来ているのではないかということで、私はきょう質問させていただきたいと思っております。

 まず、きょう、文科政務官もお越しいただいております。

 高校野球や大学野球を統括する日本学生野球協会、また社会人野球の日本野球連盟、主に硬式野球の方ですね、これについては、SGマークをつけたヘルメット以外の使用を規則では認めていない。これは一九七四年にさかのぼるそうですが、この経緯、経過について改めて、当時のことをおわかりになるようであれば、経産省若しくは文科省、どちらかでも構いませんので、お答えいただきたいと思います。

藤江政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の日本学生野球協会あるいは日本野球連盟といった団体につきましては、一般財団法人全日本野球協会の方から打者用ヘルメットの改造を禁止する旨の指示を受けておりまして、それに基づきまして、SGマークの認定を受けたヘルメット以外の使用を認めていない方針としているところでございます。

 この措置は、SGマーク認定品である打者用ヘルメットにフェースガード取付け等の改造を行った場合、当該製品に対するSGマークの認定が無効となり、ヘルメットの本来の安全性能への影響がある点、あるいは、製品の欠陥による人身被害の際の補償が受けられない点等を理由になされているところでございまして、試合等において、SGマーク認定を受けたヘルメットを使用することが大前提であると考えている旨、団体から聞いているところでございます。

泉委員 ここで、そうしますと、経産省にまず聞きたいと思いますが、平成の時代で構いません、過去三十年間の、SGマークをつけた野球のヘルメットによる補償の件数を教えていただきたいと思います。

福島政府参考人 お答えいたします。

 一般財団法人製品安全協会の定めているSG基準に適合していることが認証され、SGマークがつけられている製品については、その製品の欠陥により人身事故が発生し、因果関係があると認められた場合には、一般財団法人製品安全協会が賠償措置を講じる仕組みが提供されております。

 議員御指摘の、SGマークの野球ヘルメットに関する補償件数につきましては、一般財団法人の製品安全協会に確認しましたところ、具体的な数、又は被害者の示談にかかわる要素もあるため非開示情報であると聞いており、当方からはお答えできません。

 しかしながら、消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故の野球ヘルメットに関する報告に関しましては、二〇〇七年の報告制度が開始以来ゼロ件となっておるところでございます。

泉委員 文科省はこのSGマークのヘルメットの補償件数というのは恐らく把握されていないと思うんですね、こういう切り方では。

 私は、経済産業省にやはりお伝えしたいというか、製品安全協会にもお願いしたいのは、示談の中身云々ということにまで踏み込まなくても、例えば補償総額だとかあるいは補償件数、これは例えば、学校事故に関する文科省のスポーツ関連の共済があると思うんですが、ここなんかもトータルの額だとか件数というのは発表しているんですね。やはりそういうところは情報開示をしていただく必要があるんじゃないのかなというふうに思います。

 何も個別、一個一個の補償額が幾らかということを国民は知ることはできなくても、やはり、どれぐらいの補償がどれぐらいの件数で行われているのかということは可能な範囲で出していただくということが望ましいと思いますので、今後、ぜひお願いをしたいと思います。

 実は私も、ヒアリングを受けて、製品安全協会から野球ヘルメットの基準について紙をいただいております。この基準は、頭蓋骨骨折を防止することが重要な目的となっているというふうに書かれております。

 このそもそもの野球ヘルメットの目的そのものも、恐らく、フェースガードをつけるとなれば、それは頭蓋骨骨折ということだけがヘルメットの目的ではなくなるのではないのかなというふうに思うんですね。顔面の骨折を防ぐためということであったり、あるいは、頭蓋骨骨折だけではなく脳振盪ですとか脳障害ということについても踏まえる必要があるのかなと思うんです。

 現段階、私が製品安全協会からいただいている資料では、同基準は、頭蓋骨骨折を防止することが重要な目的となっているというふうに書かれておりまして、この辺の目的というのは誰がどう決めたのか、そして変えられる可能性があるのかということについて伺いたいと思います。

福島政府参考人 お答え申し上げます。

 野球用ヘルメットを含めた消費者向けの製品の安全規格であるSGマークにつきましては、製品安全協会が提供する民間の認証制度であり、その基準につきましては、使用団体や関係事業者、学識経験者などで構成される委員会において安全性に関する科学的評価を行い定められていると承知をしております。

 野球用ヘルメットにつきましては、衝撃吸収性能の項目について人頭模型を用いた安全性評価などを行っており、現行基準が定められていると承知しております。

 なお、製品安全協会からは、現行の基準策定に当たっては、最も重篤なリスクである頭蓋骨骨折を回避することを重視しているというように聞いております。

泉委員 今、製品安全協会から伺った話と言われましたけれども、改めて、これは経産省、お答えいただければと思うんですが、製造者ですとか関連団体ですとか学識経験者が集まるわけですが、これは誰でも発議できるものであるという理解でよろしいですか。

福島政府参考人 SGマークにつきましては、民間認証規格ということでございますので、製造メーカーですとか使用者団体ですとか、野球用ヘルメットにつきましては競技者団体ですとか、そういったところから御提案があれば、専門家の方に集まっていただいて検討を始めるというように聞いております。

泉委員 民間、民間とおっしゃられますが、安全協会には経産省の御出身の方もおられますし、非常に密接なかかわりがあるんじゃないですかね。

 これまでもずっとそうやってやってきたと思いますよ。こういうところだけ役所からある意味何も言わずに民間ですからと言ってしまったら、肝心な消費者の命があるいは体が守れないということになるんではないかと思います。

 私はぜひ、こういったヘルメットの、改めて、フェースガードも含めた、頭部といえば顔の部分も含めた安全性の確保について議論をしていただきたい。それをやはり経産省の方からも、きょうこういう指摘があったということはぜひ伝えていただきたいというふうに思います。

 私も調べましたら、スポーツ庁の方から、平成三十年の委託事業で、学校でのスポーツ事故を防ぐためにということで、スポーツ振興センターの方で調べていただいた資料があるんですね。

 中学生、高校生の部活動を見てみますと、野球が対象者が多い、やっている選手が多いということもあるんですが、特に目の障害と歯牙障害、ここの障害を受けた生徒の数が飛び抜けて多いということになっていまして、やはりこれはボールが当たるということが一つ要因ですね。いろいろな当たり方があると思うんですが、歯牙障害という意味では、やはり顔面にボールを受けるということがあるわけでありまして、そういった件数も非常に多いということがあります。

 そういった意味では、私は、文部科学省も、やはり部活動という観点からいえば、当然ながら、ヘルメットの形状、これまでは頭そして耳、それを守るためのヘルメットだったというところが、こうしてプロ野球の世界が変わってきている状況の中で、たくさんの親御さんたちも、こういうものを使えないんだろうか、本当は子供の顔を守りたいのにという思いを持っている方はおられるはずなんですね。

 そういった意味では、やはりこれまでのヘルメットの概念だけでこれからもいくということではなくて、改めて、顔全体のけがを防止するために形状について改善を促す、私は、文部科学省にこそそういう立場、役割があるんじゃないかと思いますが、政務官、いかがでしょうか。

白須賀大臣政務官 お答えさせていただきます。

 泉先生の御指摘、私も本当にすごく共感いたしまして、私もともと歯科医師でございますから、そしてまた、大学病院では口腔外科というところで顎の骨折とかがんとかをやっていたんですけれども。

 御存じのとおり、ぶつかって歯が折れるとかそういったこともありますが、顎というのは特殊でございまして、ぶつかっても、その場所が折れるときもありますが、介達骨折といって、力が伝達されて、ほかの顎関節のところ、一番細くなっているところが折れてしまう。そして、顎の成長というのはここの頸部のところがセンサーになっていて、幼いころに折れちゃうと顎の成長も阻害してしまうんですね。

 ですから、先生のその御指摘、本当に私はすごく共感させていただいている上で答弁をさせていただきますと、学校の教育活動として行われる運動部活動は、生徒のけがや事故を防止し、安全に行われることが重要であり、各学校におきましては、安全確保に向けた体制を構築して部活動運営を行うことが大切でございます。

 そうしたことから、昨年三月にスポーツ庁で策定した運動部活動ガイドラインにおきましては、校長及び運動部顧問は、生徒の心身の健康管理、事故防止、体罰、ハラスメントの根絶を徹底することを示しております。

 文部科学省といたしましては、各学校において、野球部等の運動部活動を行う際、安全対策を適切にとるよう今後とも要請していきたいと思っております。

泉委員 その安全対策というのが、これは文科省にぜひ御認識いただきたいんですが、陸上の世界であれば陸連もあるでしょう、今は、鉄剤注射の問題もやはり陸連に自主的に取り組んでもらうという形がある。

 スポーツに関連する不祥事云々ということについて言えば、最近は、スポーツインテグリティーでしたっけ、そういう形で、各団体の自主性ということも十分踏まえなければいけないというふうに思っています。

 一方で、高野連ですとか中学野球ですとか大学野球、これはもう特に学校の現場でも、学校の管理のもとで行われているスポーツということでもありますので、そういった意味では、やはり、今の基準、今の道具の中での安全対策を十分やってくれというのはそのとおりかもしれない。

 しかし、時代がどんどん進展して新しい器具が開発されているときに、基本的に、事故を防げる手段があるんだけれどもまだそれがルールとして使用が認められていないという状態は早く解消していただく必要があるのかなと。全員に一律課すかどうかというところはあるかもしれませんが、せめて、そういうものも使用できるという、選択肢を認めていくということは私は大事なことではないのかなというふうに思っています。

 ぜひ、そういった意味では、既存の、例えば野球でいえば確かにいろいろな対策が打たれていて、例えば高野連、二〇〇一年には打撃投手のヘッドギア着用を義務化した。あるいは、最近は甲子園を見ていても、女子部員がグラウンドを動き回ることも出てきました、そういうときのヘルメットの着用ですとか。あるいは、昨年三月ですけれども、高野連だとかが集まって、練習中に野手にバウンドしたボールが飛んでくるときに、それに気をつけるためのフェースガードの着用も勧めたということになっている。

 ただ、先ほど繰り返しありましたように、練習ではいろいろなものをつけられても公式戦ではこのSGマークのついたものしか使えないということになっているところもあって、結局は、このフェースガードもつけられない。練習ではつけていたとしても公式戦ではつけられないとか、こういうあたりというのもやはりこれから見直していく必要があるのではないかというふうに思います。

 それで、先ほどから一般財団法人ですからという話があるんですが、当然ながら、このSGマークの基準を変えていくという意味では、さまざまな関係、ステークホルダーが集まるわけですが、例えば、野球用品専門部会野球用ヘルメット委員名簿というのがありまして、一つ一つそういう形で、スポーツ各社、用具の各社ですとか、あるいは連盟だとか学識経験者だとかが集まるわけです。

 例えば、二〇一六年の委員名簿を見てみても、軟式野球連盟とソフトボール協会はおられるんですが、ここには硬式野球の連盟の方が入っていないとか、使用者団体というところがあるんですが、保護者とか実際に使っている方々、そういう方々の声やあるいは事故を経験した方の声だとか、私はやはりそういうものも入れていただきたいなというふうに思います。

 ぜひ経済産業省の方からはそういうことも、学識経験者、使用者、関係事業者、検査機関、官庁、官庁についても、例えば二〇一六年のヘルメット委員のところには経済産業省からは二名も入っているんですね。ですから、あちらさんがやっていることだから関係ないとは、これは言えない話なんです。

 ちなみに、二〇一六年のときには、経済産業省商務情報政策局商務流通グループ製品安全課、そして日用品室、こういうところが実際にこの委員に入っていますので、やはりこれは皆さん方から私は発議をしていただきたいと思いますが、いかがですか。

福島政府参考人 先生御指摘のとおり、野球用ヘルメット、この分科会の委員には、学識経験者、使用者団体、関係事業者、検査機関のほかに、経済産業省もオブザーバーとして参加をしております。

 したがいまして、我々の立場からも、文部科学省でありましたり、関係者の意見を聞きながら、先生の御意見につきましても伝えてまいりたいと思っております。

泉委員 実は、今まさに文部科学省から意見を聞きながらというお話がありました。学校での事故防止、学校管理下における部活動の事故防止という観点でいえば、こういう野球用ヘルメット委員の中に経産省から二人入られるのであれば、私は、文科省からも入っていただくべきではないのか、スポーツ庁でよいと思いますけれども。

 それについて、文科省、いかがですか。文科省が入りますと言えば入れるものではないと思うんですが、私はぜひ文科省にもそういう意識を持っていただきたいと思いますが、いかがですか。

白須賀大臣政務官 お答えさせていただきます。

 学校安全に関する事務を掌握する文部科学省といたしましては、当該会議の趣旨、目的を踏まえまして、必要な協力を行うなど、適切に対応していきたいと思っております。

泉委員 次回、子供の安全に大きくかかわるヘルメットについての議論が再開をされる、スタートをするということであれば、私からは、経産省が文科省の意見を聞いて、それをこの場で議論の俎上にのせるという方法もあるかもしれませんが、わかりやすい形で言えば、やはり積極的に、文科省、スポーツ庁、ぜひこういったところにも参加できるようにしていただきたいなというふうに、改善の提案をさせていただきたいと思います。

 そして、もう少し細かいことを皆さんに知っていただきたいと思うんですが、この製品安全協会からいただいた野球用ヘルメットのSG基準というもの、これを見ますと、どんな安全基準になっているかといいますと、具体的には、硬式球の場合、時速でいいますと百八キロの球が当たったときに受ける瞬間の加速度が二千五百m/s2、そういう基準になっている。百八キロの球が当たったときに受ける衝撃でヘルメットの安全基準がつくられているというんですね。これは、野球を知っておられる方だったら、恐らくぽかんと、おい、どういうことだという話になると思います。

 同じく、文書にはこう書いてあるんです。剛速球の直撃に耐える強度とはなっておらず、適切な回避動作により衝撃を緩和することが重要であると。製品安全協会からの説明で、回避してくださいということが書かれている。もろに当たったら耐える強度とはなっておらず、これ、どうですか。

 確かに、安全性に加えて使いやすさが求められており、それはまあそうでしょう。がちがちに動けないようなヘルメットをつくれとは言いません。しかし、今、高校生でも百三十キロ、百四十キロ、当たり前ですよ。岩手の方では中学生で百六十キロでしたか、そういう時代の中で、私、基準が百八キロの球が当たったときというのは、なぜこうなのかと。

 恐らく、もしかしたら答弁では、アメリカの基準でも六十マイル、九十七キロのボールを当てて云々という話が出てくるかもしれない。それはそれですよ。しかし、やはり、日本としてこの百八キロ基準というのは、恐らくこのことを国民の方々が知ったときにはおよそ納得できないということになるのではないのかなと思います。

 そういった意味で、経済産業省、ここの基準、これは根拠があるのかないのか、そして、この根拠についてはやはり変えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

福島政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに先生がおっしゃられたとおり、このヘルメットのSG基準をつくる際には、製造メーカーのほかにスポーツ関係団体ですとか学識経験者の……(泉委員「時間がない」と呼ぶ)はい。で聞いております。

 根拠でございますけれども、時速百八キロメートル、秒速ですと三十メートルということになりますけれども、の基準で前回は策定している。その際の最大衝撃力、すなわち加速度に相当しますけれども、この加速度が当たった場合には頭蓋骨骨折に伴う硬膜外血腫を防ぐことができるという、大学の医学部の先生の御知見も得ながらと聞いております。

 アメリカの例につきましては、先生がおっしゃられたとおりであります。

 ただ、今言われたように、球の速度も速くなっているということもございますので、そういったことに関しましては、アマチュア野球の関係団体から等いろいろなお話も聞きながら、基準の検討の着手をすることは可能だというようには聞いております。

泉委員 これは本当に、この野球というものを仕事にしている最も能力の高いプロ野球の方々がよけ切れないから、フェースガードをつけているわけですね。初心者も含めてたくさんの野球をする青少年がいるアマチュア野球の現場では、それがつけられない。

 しかも、今、SGマークのついているヘルメットだということで大層立派なように聞こえますが、その基準は百八キロのボールを当てたときであって、そして、剛速球と書いてありますが、別に百三十キロ、百四十キロは剛速球じゃないですよ、速球ですよ。その速球が当たったときには直撃に耐える強度とはなっておらずと、SGマークをつけている製品安全協会が認めている。

 もしかしたら、当時のヘルメットの製造技術ではそうせざるを得なかったかもしれません。そのほかにも、例えば総重量は八百グラムを超えないだとかいろいろなことがあって、制約があったかもしれない。しかし、今、いろいろな素材の開発、軽量化、そういったものが進む中で、そろそろやはりヘルメット全体の見直しというものを真剣に検討するべきではないのかというふうに思います。

 その中で、今お話をしたような、顎を守る、顔面を守るフェースガードというものも、一体的な製造の可能性も含めて、ぜひこの基準のあり方の見直し。やはりそれは、野球をやっている人たちからすれば本当に笑われますよ。百八キロのボールの強度のヘルメットなのかという話になれば、これは今しているSGマークヘルメットも安全じゃないなということになってしまうわけであります。

 ぜひここは、基準を変えるということは、きょうのこの質疑を通じて経済産業省そして文部科学省も、きょうも恐らく野球の練習、どこかであるでしょう、試合もあるかもしれません、そういう中で、今SGマークのヘルメットをしている野球少年、少女たちが安全かどうかというのがわからないという状態になっているということを文部科学省もぜひ受けとめていただきまして、最後、文部科学省に、リーダーシップをとっていただきたいということを、改めて発言をいただきたいと思います。

白須賀大臣政務官 お答えさせていただきます。

 野球部を始めとする部活動の事故防止に当たりましては、各学校において専門的な知見も踏まえた対策を図っていくことが重要であり、そのために、関係者が適切な連携を図って学校における対策の支援を進めることが望まれております。

 そうしたことから、文部科学省といたしましても、昨年三月に策定した運動部活動のガイドラインに基づく運動部活動の適切な運営に向けた取組の徹底について、学校や教育委員会等の学校の設置者に要請するとともに、日本高校野球連盟や全国高等学校体育連盟、日本スポーツ協会等の関係団体に対しても協力を要請しております。

 今後とも、文部科学省といたしましては、関係団体と連携を図り、運動部活動の事故防止に取り組んでまいります。特に、御指摘の点も踏まえまして、今後、野球関係団体と意見交換をしてまいりたいと思っております。

 ありがとうございます。

泉委員 経産大臣も今議論を聞いていただいて、経産省の役割、改めて大事だったということを御認識いただいたと思いますので、最後に一言だけ、もしあればお願いします。

世耕国務大臣 おっしゃっていること、傾聴に値しますし、常識に照らして当たり前のことだと思います。

 官民の役割ということはありますけれども、経産省としてやるべきことは迅速にやっていきたいと思います。

泉委員 終わります。ありがとうございました。

赤羽委員長 次に、斉木武志さん。

斉木委員 国民民主党の斉木武志です。

 世耕大臣、よろしくお願いいたします。

 本日は、経産省として、この十月の消費増税に備えて打ち出している目玉政策でありますキャッシュレス決済に対するポイント還元制度、この課題について大臣と質疑をまずさせていただければと思っております。

 中小企業の強靱化法の本会議の質問等でも御質問させていただきましたけれども、私もそして世耕大臣も、地方の選挙区の選出でございます。その地方の視点から見ると、このキャッシュレス決済のポイント還元って、地方の住民にとってははっきり言って損する制度じゃないかという不満の声が、私も地元に帰るたびに、今多くの有権者の方から御質問を受けております。

 要は、キャッシュレス、クレジットカードであるとかICカードであるとかEdyとかnanaco、WAONとかいろいろな電子マネーがありますけれども、こういったものはそもそも、電子マネーは特に、使えるお店が地方には、東京に比べて非常に少ないんですよと。なので、今回増税、一〇%にするけれども、経産省としては、五%キャッシュレスで還元をするから認めてくれということを今の政権側は打ち出してきたわけですが、そもそも五%ためられないじゃないか、使える場所がないんですよ、地方軽視の政策じゃないですかというこの地方の声に対して、世耕大臣は今どのようにお考えですか。

    〔委員長退席、富田委員長代理着席〕

世耕国務大臣 私も、なかなか帰れないんですけれども、たまに地元へ帰ったときは車座集会とかをやりまして、その中で、今斉木委員がおっしゃったのと同じことをおっしゃった人がいました。このキャッシュレスによるポイント還元という政策は、ある意味、地方切捨てじゃないか、あるいは高齢者にとっては非常にハードルが高いんじゃないか、あるいは所得の低い人にとっても不利なんじゃないかというようなお話をいただきました。

 ただ、その同じ場で、私がちょっと説明しようとしたら、別の方が、いや、そんなことないよと。その方は、私にちょっと意見をしてきた方よりももっと山奥の不便な集落に住んでいらっしゃる方なんですけれども、いや、そんなことはない、自分の集落でひとり暮らしの高齢者、おじいちゃん、おばあちゃんがいるんだけれども、自分は時々車で最寄りのスーパーまでそういう人たちを送っていくんだけれども、そういう人たちはみんな、そこのスーパー、中小のスーパーですけれども、そこが出している電子マネーカードをこぞって使っているよと。それはみんな、一万円チャージしただけで五十円ポイントがつくし、そのお店でやはりポイントがたまる仕掛けになっている。そういうカードも参加できるようなポイント還元制度であれば、地方でも十分使えるんじゃないかという御意見もあったわけであります。

 確かにそれは、東京に比べて使えるお店が限定的というのは、そういった面はあるかもしれませんけれども、それはやはり都市と地方の格差というまた別の問題なのではないかというふうに思っています。

 地方だから全然使えないというようなことは私はないのではないかというふうに思っているわけであります。

斉木委員 これは消費増税対策として導入する目玉政策ですので、まさに、税を取る方、そして配る再分配機能というのは、国民があまねく裨益できなければ当然不満が出るというのは政策の大前提だと思うんですね。

 今、ちょっと感覚的な話になってもしようがないので、数字でどれだけ地方と東京都市部でキャッシュレスの普及度に差があるのかというのを見てみたいなというふうに思います。

 きのうのレクで経済産業省の方にお持ちいただいた商業統計、これは最新のものなんですけれども、私の地元の福井県とそして東京都でのキャッシュレスの普及度合い、数字で見てみたいと思います。

 小売業の全ての決済に占める電子マネーそしてクレジットカードによる販売の量なんですが、まず、一番普及しておりますのはクレジットカードですね。東京の場合には、全小売業決済に占める割合が一九・八%です。そして、福井県は一〇%です。ちょうど二倍の差があります。そして、東京都、電子マネーによる販売は一・八%です。そして、福井県〇・六%です。要するに、クレジットカードは地方は二分の一しか普及していません。電子マネーに至っては三分の一しか普及していません。

 だから、私の質問はまさに正確でございまして、実際に、東京に比べるとクレジットカードは半分しか使えないし、電子マネーは三分の一しか使えないんだ、だったら当然、同じ五%還元といっても、東京の人の方がより多くキャッシュバックされてしまうじゃないかというのは率直な地方住民の声なんですが、それでも問題はないということでしょうか。

世耕国務大臣 やはり、電子マネーですとかクレジットカードなど、キャッシュレスの対応比率で都会と地方で差があるというのは、これは現実だろうというふうに思います。ですからこそ、我々は、今回、こういったキャッシュレスの導入支援を中小・小規模店舗に対して行うわけであります。

 今の差があるからやらないということになれば、今の現状は更に放置をされて拡大していくことになるわけですね。我々は、今回、地方に対しても、もう本当にきめ細かい働きかけをやっていきます。全国の商店街に対しても、今、個別に説明会を持って、今回のこの補助事業を活用してもらって、キャッシュレスを導入してくださいということを一生懸命やっているわけであります。

 あと、地方と都会で還元のチャンスの差があるかどうかということですが、ここはちょっと考え方の違いになりますが、都会でも、キャッシュレスに、今回の事業に参加しない店舗というのはたくさん出てくるわけであります。それをポスター等で我々はしっかり掲示をして、そして、それぞれの消費者が、あっ、ここのお店は五%還元か、あるいは二%還元か、あるいはやっていないのかということで、それと自分のニーズとかそういったものを勘案しながら買物をしていくことになるんだろう。

 そういう意味では、都市と地方にそんなに大きな差はないのではないか。ポイント還元を受けたいのであれば、お店を選んでそういうお店に出向くということになっていくという面では、そんなに大きな差はないのではないかなというふうに思っています。

斉木委員 お店に導入支援をするから、読み取り機をただで、要するに、国が全部負担をして導入してもらうからこれから普及するんじゃないかということなんですけれども、私はちょっとそれは的が外れているのではないかなと思います。

 そもそも、今のはお店側の目線ですね。お店側の目線から見れば、国が買ってくれるからどうですか、導入しませんかというふうに、経産省、各地の経済局でしょうけれども、各地の商店街を訪問して普及促進を図るということなんですが、お客さんの立場から見ると、そもそも電子マネーに対応しているカードというのをほとんど持っていないというのが地方の実態だと思うんですよ。

 それはなぜかといいますと、一番大きいのは、私は交通インフラの非対応だと思うんですね。なぜこれだけ東京で電子マネーに対応する店舗がふえたかといいますと、やはり一番大きいのは、電車社会、そして地下鉄社会、それで地方は車社会です、これが日本の構造の一番大きな違いです。

 関東を中心とする、東京都で、一都三県で一番広まったのは、やはり、JRに乗るとき、地下鉄に乗る、きょう皆さん通勤していらっしゃるのに、私は、JR東日本が発行しておりますSuica、これを使っております。これで地下鉄とかタクシーとかバスとかに乗車するわけです。これが、地方に行くとそもそも使えないんですよ。電子マネー、JRが対応していないんですね。

 福井県を例にとりますと、嶺北という福井県の北半分の地域で、昨年初めて、このSuicaやICOCA、JR西日本のICOCAに対応する自動改札機が導入されました。それまでは無人駅か有人改札なんです。そもそも鉄道に乗れない交通系ICなんですよ。いまだに福井県の南半分は非対応なんですね。JR小浜線というものが東から西に貫いている主要路線ですが、ここは全部非対応の駅なんですよ。

 ということは、鉄道に乗るために皆さんSuicaを持ち始めて、それを見て、東京のビジネスをしている方々はみんなSuicaを持っているから、じゃ、読み取り機を導入して、そうすればもっとお店を使ってもらえるんじゃないか。やはり、まずユーザーファーストなんですよ。

 ユーザーがどういうものを持っているかに合わせて商店主はその決済手段を選択すると思うんですが、そうではないとお考えですか。

世耕国務大臣 ユーザーも今もうどんどん変わっていると思いますね。確かに福井県は、JRが自動改札化が遅かったから、交通系IC、電子マネーが余り普及していない。というのも、電子マネーはおもしろくて、東京一・八%、福井県〇・六%なんですけれども、全国平均は二・二%。東京は全国平均よりも低いというデータになっているわけでありますから、それぞれの地域の交通事情とかいろいろなことがあるんだろうと思います。

 交通系ICカードに何もキャッシュレスは限られているわけではありません。先ほど申し上げたように、もう今、中小のスーパーであっても電子マネーカードというのは独自に発行しているところもある。あるいは、全国的な電子マネーの枠組みに参加しているところもあるわけでありますから、いろいろな蛇口がこれから、今も既にありますし、先ほど私の和歌山の山の中の集落の例も話したように、もう今、高齢者であっても過疎地に住んでいる方であっても、電子マネーを持っている方というのはたくさんいらっしゃるわけであります。

 しかも、これは私もこの間聞いてびっくりしましたけれども、和歌山で、えっ、そんなお店もというようなところもQRコード決済が入り始めています。今、各社、物すごく営業をやっていますから。そういう意味では、これからどんどん裾野は広がっていくんだろうというふうに思っています。

斉木委員 まず一点。二・二%ですか、全国平均よりも、一・八、東京が低いとおっしゃいましたけれども、多分それは年限の違いだと思いますね。この商業統計は平成二十六年の、最新の数字を持ってきてくださいと経産省には言ったんですが、平成二十六年のものが最新ですということでしたので、今申し上げました。ですので、東京が全国平均より低いというのは、多分それは数字の、母数の違いだというふうには思います。

 それともう一つ。交通系ICだけじゃなくて、QRコード決済とかそういったものも和歌山県の山奥でも対応し始めたんですよというふうな御発言でしたけれども、じゃ、どれだけ、今、日本、まさに全国で見て、電子マネーというものをどの会社が発行していて、どのようなキャッシュレスカードによって行われているかというのを見てみたいと思います。

 一番、今、日本で単体で普及をしているのが、楽天がやっておりますEdyですね。Edyが発行枚数が一億枚。これはクレジットカード等に掲載されているものを含みます。そして二番手が、JR東日本が発行しておりますSuicaが七千四百万枚ぐらい。そして次が、イオンホールディングスがやっておりますWAON、これが七千万枚ぐらい。そして、セブン&アイ・ホールディングスがやっておりますnanaco、これが六千万から七千万ぐらい。これが四大キャリアというふうに呼ばれておりまして、電子マネーの世界では、この四社がリードをしているという形になっております。

 この数字をよく見ていただきたいんですが、JR東日本、Suica単体で七千四百万枚なんですよ。これにICOCAであるとか中京圏であるとか、さまざまなJRの各会社ごとに、今、交通系ICというのは発行しておりますので、やはり交通インフラ、JRが発行しているものというのが一番先行して日本が普及をしているというのが実態です。

 私が、国民に広く、これは都市部も地方もですけれども、意見を聞いていると、要は、キャッシュレスというのは必要に迫られてやっているんだと。何で、こういったSuicaを持つのか、PASMOを持つのかといえば、要は、これを持たないと非常に不便だし、損をするからだと。要するに、ICカードでメトロに乗ったりJRに乗った方が安いし、そして券売機でわざわざ買わなくて済むし、はっきり言って、お年寄りから子供まで、これを持たないと生活できないのが東京、関東なんだと。だから、みんな持っているんですよ。

 一方で、地方に行きますと、いまだに、福井だけじゃありません、こういった全国系IC、Suicaを持っていっても使えない県というのはたくさんあるんですね。例えば東北、青森県が完全非対応です。秋田県そして徳島県、愛媛県、高知県、沖縄県、この六県はいまだに、この全国系ICを持っていっても対応しておりません。

 こういうところの、駅に行っても使えない地域の住民が、何でこんな交通系ICをわざわざ買うんですか。それは必要があるから、生活できないからこれを持たざるを得ないのが関東ですよ。でも、これを持っていっても駅で電車にも乗れないのが地方なんですよ。

 この実態を無視して、今一番引っ張っている交通系ICが使えない地方部というのは、それは置き去りになると地方の住民の方がはっきり言うのは、私は地方の住民の方の言っていることの方が正しいように思うんですが、そうではないということなんでしょうか。

世耕国務大臣 何か、斉木委員は、交通系ICカードだけが電子マネーのようなお話をなさるわけですが、今御自身がおっしゃったように、WAONも七千万枚、nanacoも六千数百万枚、Edyに至っては一億枚を超えているわけですよね。

 今、みずからおっしゃいましたけれども、Suicaを持たないと得ができない、損をするから持つんだということをおっしゃいました。まさに、スーパーの電子マネーというのは、それで払わないと損をするわけです。ポイント還元がない、あるいはチャージのときのポイントも得られないということでありますから、そういう意味では、消費者には、たとえSuicaが使えないところであっても、いろんな選択肢があるんだろうというふうに思っています。

斉木委員 これはITリテラシーにも絡んでくる話ですので。

 そもそも、先ほど高齢者の方もおっしゃいました。QRコード決済、ペイペイとか楽天ペイであるとかLINEペイであるとかさまざまなQRコード決済業者が、例えば二〇%還元とか、今囲い込みを図って登場してきましたが、果たして、どれだけそのQRコード決済というものに国民が対応できるんだろうかというものがあります。そもそも、スマホを持っていなければ、そしてグーグルプレーやアップストアにアクセスしてダウンロードできなければ、こういったQRコード決済というのは対応できないわけですね。

 俺はスマホを持っていないんだ、私はスマホを持っていませんよという高齢者、七十歳以上の方々は多くいらっしゃるんですけれども、そういった方々は特に地方部で置き去りにされているんじゃないかという声に関して、じゃ、大臣はどのように対応しろと、損しないようにどう対応しろということ、スマホを持てということなんでしょうか。

世耕国務大臣 そもそも、地方の高齢者がスマホを持っていないというのが先入観だと思いますね。

 私、地方部でいろいろ集会とかやって、みんな写真を撮ってくれと来ますけれども、九五%ぐらいはスマホですよ、すごく高齢な方であっても。私の母親も、もう八十近いですけれども、スマホでアプリをダウンロードして、使いこなしていますよ。総理も、めったにIT系を使う人じゃありませんけれども、この間、商店街で全部体験してもらいましたけれども、QRコードを使った支払いですね、全く支障なくやられまして、総理はまだ高齢者と言うには早いかもしれませんけれども。

 そういう意味で、私は、まず、スマホが高齢者は難しいというのは、これは先入観でしかないというふうに思っています。逆に言うと、QRコード決済事業者なんかは、高齢者にどう使ってもらうかという工夫をこれからやってくると思いますよ。

 その上で、先ほどから何か、一個ずつ限定で、これはだめじゃないかとおっしゃるんですけれども、多様な選択肢があるわけなんです。交通系ICカードを使えない方はスマホはやれますよ、スマホがそれでも使えないという方にとっては、これはスーパーの電子マネーカードというのがあるわけです。これなんて、ITリテラシーはほとんど要りません。カードをもらってそれに、もうそれこそレジでチャージをして使えばそれでポイントが獲得できるわけでありますから、今の御質問に対するお答えとしては、そもそも、いろいろなものが使えるようになっていて、選択肢がたくさん用意されているということに尽きるんだろうと思います。

斉木委員 ちょっと議論がかみ合わないんですけれども。手段を用意しているから問題ないんだということは私は通らないと思いますよ。

 最初の数字に戻るんですが、じゃ、なぜこういう数字になるんでしょうか。地方でクレジットカードが一〇%しか決済に占めておりません、東京は一九・八%、二倍です。地方では電子マネーは〇・六%、東京は一・八%、三倍の開きがあります。

 手段を用意しているといっても、地方の人は使っていません、使えていませんというのが実態じゃないでしょうか。じゃ、何で、手段をそんなに経産省として用意しました、用意しましたと言っているのに、なぜ地方でこんなに三分の一も使われない状況になっているんですか。

世耕国務大臣 電子マネーは、先ほど申し上げた、これは正確な数字ですから、東京は一・八、全国平均二・二です。東京よりたくさん使っているというところがある。どこかはちょっと、私も今手元にデータはありませんが、全国平均二・二、同じ平成二十六年商業統計確報であります。ということなんです。だから、これは地域においていろいろあるわけなんです。

 クレジットカードが確かに普及が遅いというのはあります。これは手数料の問題ですね。クレジットカード業者が、地方の小さな店舗まで余り入れるとコストがかかるからということで、そういった店舗の手数料を非常に高く設定をしたというところが、私は、クレジットカードが地方で普及しなかった原因の一つだというふうに思っています。

 多様な選択肢があるというのはどう問題なんですか、逆に。私は、地方の皆さんにやはり、これから第四次産業革命が進んでいく、ビッグデータを使ってユーザーエクスペリエンスの改善というのがどんどんどんどん進んでいく中で、地方を取り残しちゃいけないと思いますよ。だからこそ、我々は今回、小売店にキャッシュレスの導入支援を行って、クレジットカードで起こったようなことが起こらないように取り組んでいこうというのが我々の取組なわけであります。

 もう今、今のキャッシュレス事業者というのは、逆にクレジットカードがもう時代おくれになってきている。クレジットカードは完全に手数料ビジネスですよね。キャッシュレス事業者というのは、手数料で稼ぐというよりは、ビッグデータを使って新しいビジネスを生み出す、ビッグデータを使って例えば小売店向けコンサルサービスをやるとか、そういうところでマネタイズをしようというのがキャッシュレス事業者でありますから。

 そういう意味では、今度、QRコード事業者もそうですけれども、地方だけ何か高い手数料を設定するというようなことは出てこないんじゃないか、逆に、これから地方のキャッシュレスが一気に進んでいくきっかけになるんじゃないかと私は思っています。

斉木委員 何か、お聞きしていると、やはり今の政権の閣僚、そして霞が関、永田町の発想でつくってしまった政策なのかなという危惧を抱くんですね。

 私も、国政報告会、地元でこの前やったときに、ICOCA若しくはSuica、こういう交通系を持っていらっしゃる方はどれぐらいますか、会場、二百人ぐらいいましたけれども、持っている方、手を挙げたのは四、五人でしたよ。

 きのう、私の自室にいらっしゃった財務省や経産省の霞が関の官僚の方、そして経産の委員部の方にお聞きしたところ、皆さん、一〇〇%持っていました、Suica、PASMOは。

 要するに、霞が関の感覚からいうと、これ、みんな持っているでしょう、だから、当然、これで五%還元を乗っければ、みんなあまねくできるじゃないか。

 でも、地方の感覚からいうと、車社会の地方において、そもそも、この交通系ICというのは持つ必要もないし、駅でも使えないし、そんなものを強制されても、要は、国民にとってみれば、決済というのはお得で便利であれば何だっていいんですよ。

 だけれども、経産省は、世耕大臣は、もうキャッシュレスを、旗振り役ですから、旗を振って導入しろ、導入しろと言っているけれども、それに、例えばQRコード決済のやり方も覚えなきゃいけないし、人はやはり面倒くさがりますから、そういったものを覚えることをしない。現金を出せば決済できたのに、何でわざわざQRをインストールして口座とひもづけてと、非常にわけのわからないようなことをやらなきゃいけないんだというのが正直な国民の声だと思うし、そして地方においては、そもそも、QRじゃなければ、要は、お客が持っていなきゃ商店だって導入しないじゃないですか。交通系ICが駅に行っても使えない県が六県もあるんですから、今。

 だから、そういったところで、なぜ、人が面倒くさい、今の、現金で決済でいけるものをキャッシュレスと押しつけをして、それが、しかも地方においてはキャッシュレスにのみ五%の特典をつけますよ、十万円使ったら五千円戻ってきますよ、それは不満の声が出て当然なんじゃないですか。実態を見ていない、霞が関思考の政策だとはお思いになりませんか。

世耕国務大臣 斉木さんの国政報告会にどういう方が集まっているかはよくわからないんですけれども、恐らく、スーパーの電子マネーカードを持っていますかと聞いたらたくさん手が挙がったと思いますよ。

 あと、斉木さんはもうともかくSuicaが大好きだということはよくわかりましたけれども、Suicaだけじゃないと言っているんです、私は。お得だから使うとおっしゃっているから、お得なスーパーのカードだったら使うわけなんです。

 面倒くさいとおっしゃいました。最初のハードルを越えるのは、やはり一定の抵抗感があると思いますよ。だけれども、一回やってしまえば非常に簡単なんです、これは、一回やってしまえば。スーパーのポイントカードだってそうです、QRコード決済だってそうです、一回乗り越えてしまったら物すごく楽になります、その後。逆に、現金を出していることがいかに不便だったか、あるいは、現金を持って歩いていることがいかにリスクがあるかということがよくわかることになるんだろうというふうに思っています。

 いずれにしても、いろいろな選択肢があります。Suicaだけじゃないんです、交通系ICカードだけじゃないんです、もう何千万枚というスーパーのカードが出ています。それが、そのスーパーだけじゃなくて、ほかの店舗でも使えるようになっています。クレジットカードもあります。QRコード決済、今、物すごい勢いで伸びています。

 いろいろな選択肢の中から、それぞれの方のライフスタイルだとかお買物先に合わせて選んでいただくことによって、できるだけ幅広いポイント還元が行われることを期待したいと思いますし、特に地方の中小、小規模の小売店がしっかりそれにキャッチアップできるように、我々は、この補助事業もあわせてやることによって、そういった小売店のキャッシュレス対応もしっかりと支援をしていきたいと思います。

 はっきり言って、QRコード決済だと、お店からしたら、何もコストがかからないというようなやり方だってあるわけです。QRコードを掲示しておけばそれでいい。しかも、今のQRコード決済事業者は、もう手数料を物すごく安く、あるいは、期間限定ではあるかもしれないけれども、今、手数料無料というところもありますから、全く負担ゼロでキャッシュレス対応できるという面もあるわけであります。

 だから、お店にも消費者にもいろいろな選択肢が用意をされていて、今回、そこに国がポイント還元事業をやることによって、地方においても中小の小規模事業者においても高齢者においても、キャッシュレスになれ親しんでいただける大きなチャンスにしていきたい。そして、そのことをきっかけに、世界に比べてキャッシュレス化が大幅におくれている日本を一気にキャッチアップをさせ、そして、小売店におけるビッグデータを活用したいろいろな新しいビジネスが出てきて、また消費者に対して便利なサービスが還元されるような形をとっていきたい。

 そういうのが今回の政策の目的だということを御理解いただきたいと思います。

斉木委員 私は別にSuica愛好者ではございません。

 なぜSuicaを取り上げたかといいますと、一番数が多いからなんですよ。当然、東京で使えるのはSuicaありPASMOあり、ICOCAも使えるし、ありとあらゆる交通系のICというのは出ていますよね。Suica単体が七千四百万です。Edyが最大で一億ですね。ICOCA、PASMO等々、日本のJR各社が発行しているICカードを合わせたら、当然、一億枚は優に超えているわけです。リーディング媒体はどこですか。トップランナーは交通系ICだというのが実態なんですよ。だから、世耕大臣、そこはしっかり御認識いただかないと、日本をミスリードしてしまいますので。

 別に、Suicaだけじゃなくて、PASMO、ICOCA、全て合わせてトップを走る。私は、それは需要が引っ張ったんだと思いますよ。国民が電車に乗る、都市部においてはどこも電車社会ですから、日本は。ですので、JR各社やメトロ、そして各地下鉄会社、私鉄が発行するカードを持っていないと不便だったからこうやって普及してきた。今一番引っ張っているのが、一番発行枚数が多いのが、JR、私鉄等を合わせた交通系のICになっているわけです、日本が。

 なので、そういったバックボーンがない青森、秋田、福井を始めとして、使えない非対応の県はまだまだあるわけですから、やはりそういった需要がないところに幾らキャッシュレス、キャッシュレス、キャッシュレスって補助金をつけて旗を振ったって、それはなかなかうまくいかないんじゃないですかということです。そして、そういったところに住む、非対応の県に住む方々というのは使う機会が少ないから、当然不満が出るでしょうというふうに申し上げているんです。

 だから、やはりそういったことに目が行っていないのが、まさに霞が関、永田町思考の政策だと私は申し上げざるを得ませんね。

 別に、私がSuicaが好きだからじゃなくて、デジタルというのは、大臣もよく御認識のとおり、プラットフォームを握ったもの、一番寡占になりやすいんですよ。一番主流になっていったものが勝者総取り的になるのが、GAFAの例じゃないですか。

 だから、これだけ引っ張ってきた交通系ICが、なかなか日本のインフラとして車社会の地方にはないわけで、非対応なんですよ。じゃ、JRに補助金を出して全部対応させるんですかという、そういうベースをつくるという話にもなってしまうじゃないですか。

 やはり、そこは、しっかり……(世耕国務大臣「何回言ったら」と呼ぶ)いや、何回言ったら、実態を見てください。だから、単体、一社でですよ、一社でやって七千四百万も発行していて、発行枚数でいくと二位につけているじゃないですか。これでJR東だけですよ。JR西、北海道、そして、全て各社合わせていったら物すごい発行枚数になるし、メトロも合わせたら、PASMOも合わせたら物すごい数になるじゃないですか。だから、そういった実態をやはり見て、政策というのはつくっていただきたいと思います。

 あと、もう一つ申し上げたいのが、キャッシュレスの普及が、十月にポイント還元が行われるということで、今、日本の企業の産業政策にゆがみが生じてきているなと私は感じております。その一つが、駆け込み減資の問題ですね。

 四月だったでしょうか、北海道で百貨店の藤丸さんが、四月十六日ですけれども、資本金を九千万円から五千万円に減資をしました。なぜかといいますと、要は、十月一日から施行されるポイント還元制度の対象企業は資本金が五千万円以下です、それに該当するために、五%ポイント還元を受けないと、ほかの店舗、中小の企業に対抗できないから、わざわざ、九千万あった資本金を減資をしたんですよ。

 こういった例が、日本の中堅の百貨店やスーパーで五十社超、今報告をされております。これは例年のペースを五〇%から一〇〇%上回るペースで、今、駆け込み減資というのが相次いできております。

 こういった、五千万円という、要するに、五%ポイント還元を受けるために、わざわざ企業イメージを損ねかねない減資というものまで踏み切って、日本の企業に、これは私は産業政策をゆがめているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

世耕国務大臣 まず、電子マネーの枚数をもう一回。Suicaで七千万、ほかの交通系を足したら一億を超えてくるじゃないかとおっしゃっているんですが、じゃ、スーパーの電子マネーカード、WAON一社で七千四百万枚ですよ、nanacoを足したら一億四千万枚ですよ。さらに、全部の大手スーパー、中堅スーパー、地方の中小スーパー、全部足したらもう何億枚となると思いますよ。

 だから、Suicaだけじゃなくて、交通系だけではなくて、いろいろな選択肢があるということを申し上げているのを御理解いただきたいと思います。

 今、減資のお話ですけれども、今お話しの会社は、日経新聞のインタビューに、なぜ減資をしたかという理由をそこの経営者はお答えになっているわけであります。それによりますと、売上げ規模は年々縮小しており、身の丈に合った経営にすべく減資に踏み切った、生き残り策としてさまざまなことを検討したいというふうに回答をされています。

 そういう、資本政策で減資というのは十分あり得ることだというふうに思っています。

斉木委員 ということは、これはポイント還元目当ての減資であるとは判断していないということでしょうか。

世耕国務大臣 私も新聞記事を読むしかないわけでありますけれども、身の丈に合った経営にすべく減資ということでありますから、この記事を読む限りは、ポイント還元目当ての減資ではないんではないでしょうか。

斉木委員 減資というのは、はっきり言って、企業イメージにとってみれば物すごくマイナスです。

 なぜ減資を発表するのかというのは、例えば、赤字の繰越金が、累積赤字があったとします、決算発表のときに、減資をすれば、例えば九千万から五千万に減資をすれば、累積赤字四千万、決算書上は減らして発表できる。見せかけの、赤字を少なく見せるための手法として、これは株式投資の世界では、はっきり言ってマイナス要因ですよ、企業評価で見れば。

 こういったものが、別に藤丸さんだけではなくて、ことしはもう五十社超がこの十月に向けて計画を発表されていて、昨年をこれは確実に五割以上上回るペースなんですけれども、なぜこんなに減資がこの時期に相次いでいるとお考えですか。

    〔富田委員長代理退席、委員長着席〕

世耕国務大臣 それはそれぞれの会社の事情を調べてみないとわからないと思いますね。少なくとも、今おっしゃっている北海道の会社については、身の丈の合った経営。

 減資が必ずしも私はマイナス要因だとは思いませんよ。やはりきちっと会社をダイエットして、いろいろな、当然、資本金が多いと配当を始めコスト負担も結構あるわけですから、そういう意味では減資というのも経営戦略の一つだというふうに思っています。

 今御指摘の、ことしに入ってから減資をしている企業が一体どういう理由でやっているかというのは、これは私は、個社の事情でありますので、コメントする立場にはありません。

 いずれにしても、キャッシュレスによるポイント還元というのは、スタートする時点において適格な、要件を満たしている企業に対して、対象として行うということになるわけであります。

斉木委員 これは、消費者から見ると、地方ではそもそも二分の一から三分の一しかキャッシュレスが使える店舗がない。そして、企業の側から見ると、ポイント還元に該当するために、禁じ手の減資までどんどん行うようになってきている。私は、これははっきり言って効果的な政策ではないというふうに考えざるを得ないなというふうに思います。

 秋の臨時国会等で、直前になるでしょうから、また議論させていただければと思います。

 どうもありがとうございました。

赤羽委員長 次に、笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、原発問題ですが、原子力規制委員会は、二〇一九年、ことし五月二十九日、高浜、大飯、美浜の三原発七基が新規制基準に不適合として、関西電力に対して、基本設計あるいは基本的設計方針を変更することを命じる方針を決定いたしました。

 そこで、まず更田原子力規制委員長に伺います。

 これらの原発の基本設計あるいは基本的設計方針の変更が必要になった理由というのは何でしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会は、大山生竹テフラ、DNPと略して呼ぶことが多いですが、このDNPの噴出規模が十一立方キロメートル程度と見込まれ、その噴出規模のDNPは関西電力の原子力発電所の火山影響評価において想定すべき自然現象であるというふうに認定をいたしました。

 この噴出規模を想定した場合には、関西電力からの報告も踏まえて検討しますと、敷地における降下火砕物の最大層厚、いわゆる火山灰の層厚ですが、これが、発電所によって異なりますけれども、二十センチ前後の値になり得るというふうに判断をいたしました。

 したがいまして、現在の火山影響評価に係る基本設計ないし基本的設計方針において、その運用期間中に安全機能に影響を及ぼし得る火山事象として最大層厚十センチの降下火砕物、火山灰の厚み十センチを想定していることは、想定される自然現象の設定として不十分であり、設置許可基準規則第六条第一項への適合性を判断するには十分ではないと考えられることから、設置変更許可の申請を求める必要があると判断したものであります。

笠井委員 今、最後に委員長言われましたけれども、設置許可基準規則の第六条一項というのは、台風や竜巻、火山噴火などの自然現象が発生した場合でも安全機能を損なわないことを求めているわけで、これに適合しないということでそういう判断をしたということでよろしいんですね。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 御質問の中にもありましたように、同項は、原子力発電所が備えておくべき自然現象、自然の脅威に対して十分な想定をして、それに対する十分な設計がなされていることを要求するものであります。その前提が変わったわけですので、そこで改めて、基本設計並びに基本設計方針について改めて設置変更許可の場で議論をする、検討する必要があると判断したものであります。

笠井委員 この新規制基準では、再稼働に必要な審査を終えた原発でも新たな知見を安全対策に反映させるように義務づけております。

 これまでに、規制委員会がこのバックフィットの制度を適用して、電力事業者に再審査の申請を命じた例というのはあるんでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 バックフィットに係る前例としては、例えば、高エネルギーアーク火災であるとか、あるいは火災検知器であるとか、こういったものに関して強化が必要であると規制委員会が判断をして、その変更を求めた例がございます。

 しかしながら、今回のケースはそれらのものと少し事情といいますか、異なるのは、そもそもこのDNPに係るものというのは、原子力規制委員会が行った安全研究の中で新たな知見が得られて、その知見を踏まえると再検討が必要ではないかということで関西電力に層厚の検討を求め、その結果を受けて設置変更許可を求めているものであります。

 幾つも例はありますけれども、先ほど挙げた例のほかにも、被覆管の地震影響であるとかそういったものについて、規制委員会が強化ないし改善が必要であると考えたものについては、設置変更許可を求めた例が幾つもございます。

笠井委員 今回のようなケースについてはないということであるということだと思います。

 この間の経過を見ますと、規制委員会は、鳥取県の大山火山に由来する火山灰が噴出する規模や灰が降り積もる厚さがこれまでの関電による評価を大きく上回るという新知見を認めて、昨年十二月の十二日に、関電に対して、三原発の敷地の火山灰の最大層厚を再評価するように罰則つきの報告徴収命令を出している。

 これを受けて、関西電力がことし三月二十九日、規制委員会に提出した報告書では、降灰量が従来の十センチを大きく超えて、高浜で二十一・九センチ、大飯で十九・三センチ、美浜で十三・五センチもの火山灰が想定される結果になっているということだと思います。

 だから、規制委員長、これまで規制委員会は、美浜三号機、大飯三、四号機、高浜一―四号機の七つの原発に設置変更許可を出してきたけれども、この七基全てが新規制基準に不適合だ、こういうふうに認めたわけですね、結果から見て。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 少し正確に申し上げますと、火山灰に係る想定が、前提が変わった以上、その部分に関して、もともと現在の許可を受けるに当たったときの議論の前提が変わったわけですので、改めて、それぞれの炉について設置変更許可申請を受けて、審査上の議論をする必要があるというふうに判断したものであります。

笠井委員 原子炉等規制法、炉規法の第四十三条の三の六は、原発の設置許可あるいは設置変更許可の基準について、原子力規制委員会は、その電力会社からの申請が原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであることというふうに定めております。つまり、新規制基準に適合しないものには許可を出せないというのが炉規法の基本的な、原則的なルールだということは間違いないですね。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 御質問の中にもありましたけれども、原子力規制委員会は、設置変更許可申請がなされた場合には、当該申請が同法第四十三条の三の六の許可の基準、いわゆる新規制基準などに適合していると認めるときに限り許可処分を行うことになります。

 関西電力の大飯発電所、高浜発電所、美浜発電所の審査上の取扱いにつきましては、まず、一部は、本日予定をしております規制委員会での議論の予定であります。

 今後、原子力規制委員会としては、個々の取扱いについて議論、検討を進めていく所存であります。

笠井委員 基準不適合を認めながら、設置変更許可は取り消さないのかという問題になってくると思うんですね。

 それで、関電は、四月五日の規制委員会の会合で、先ほど冒頭おっしゃっていたDNP規模の噴火の可能性について、十分低いから原子炉設置変更許可申請を出す必要はないと主張をしておりました。これに対して、規制委員会は、大山は活火山ではなく、噴火が差し迫っていないから、原子炉の停止は求めないことにしたというのが規制委員会の議論だったと思うんですね。

 そうすると、規制する側と規制される事業者が、いわば同じ理屈で原子炉の停止をさせないことでは一致しているということになりますと、これこそ東京電力福島第一原発事故で厳しく批判された、いわゆる規制のとりこそのものではないか、こういうことになってくると思うんですけれども、この点はいかがですか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 DNPの取扱いについては、関西電力は、これは異なる火山灰ですけれども、噴火ですけれども、DKPという噴火と同列に扱えるということで、DNPについては考慮する必要がないという主張をもとに、設置変更許可申請の必要はないという主張をしております。

 一方、原子力規制委員会は、DNPとDKPとは別物であって、DNPは審査に当たって考慮すべき火山活動であるという見解をもとに、今回、設置変更許可申請を求めるという判断をしたところであります。

 しかしながら、発電所の運転については、同火山が活火山ではないこと、さらに、想定される火山灰の変化が、十センチが十メーターになるわけではなくて、十センチが二十センチといったような変化であることから、差し迫った危険ではないというふうに考えて、同発電所の運転を許容するという考え方をとったものであります。

 ちなみに、バックフィットの考え方において、一つの想定について変更なり検討の必要が生じたということで、全体にわたって、例えば運転所の停止を命じるであるとか、全体の、その他の部分の改善を許さないという考え方をとると、決してバックフィット制度というものはうまく運用することができないというふうに考えております。

笠井委員 新規制基準に適合していないことを規制委員会みずからが認めたんですから、これは直ちに使用停止を命じるべきではないかと思うんです。

 炉規法のバックフィットの規定の問題、今委員長も言われましたけれども、四十三条の三の二十三の施設の使用の停止等という表題がありますけれども、そのものにあるように、基準に適合しないと認めれば原子炉施設の停止を命じることができるものでありまして、いわば、こういう形で適用するのは初めての例ということになると、規制委員会の対応が問われているわけであります。

 不適合なのに停止させないで、じゃ、事故が起こったらどうするのか。

 十センチが十メートルになるわけじゃないとかそういう話を言われましたけれども、しかし、事故が起こったらどうするかということが一番問題になって、福島事故でも大変そこがまた教訓になってきたわけですから、噴火が差し迫った状況にあるわけでないからとめなくても大丈夫というふうになってしまうと、これは新たな安全神話そのものではないか。また、そういう意味では、福島事故のような住民の苦しみを繰り返していいのか、こういう問題になってくる。

 そういう御認識はありませんか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 一つの点における不適合であるとか検討の見直しが必要であるということをもって、全体にわたる、例えば、一つのものについてまだ結論が出ていないので他の変更や改善、強化に対しての審査や許可をとめてしまう、ないしは、一部の不適合がイコール停止につながるというような運用というのは、繰り返しますけれども、決して、原子力発電所の安全性を向上させる、改善を速やかに進めていくことにとって決して得になりません。

 そういった意味で、私たちの対応は、まさしく東京電力福島第一原子力発電所の教訓を踏まえたものだというふうに考えております。

笠井委員 規制基準に適合しているかということで、それを受けて事業者は運転するということですけれども、適合しているそのものについては適合していないと規制委員会が判断したら、運転をするということになるとこれはおかしな話になるわけですよね。

 新たな知見を規制委員会が認めても、差し迫っていなければ事業者が新たな対策をとるまで原発をそのまま動かし続けていいのか、そういうことが問われてくる。国民的には本当に疑問になってきます。福島事故の痛苦の教訓はどこに行ったのか。

 関西電力は、弁明書の提出を求めたのに対して、昨日、弁明しないと回答して、ことし年末までに設置変更許可申請をするということを言っておりますけれども、そういうことであるならば、規制委員会はまず新基準に不適合の原発をとめて、その上で事業者の申請を受けて再審査をする。これで適合していますよとなったらその先ですよということになるわけで、少なくとも、その結論が出るまで原発をとめておくというのが当然の措置ではないんですか。

 部分的にここが適合していないからということではなくて、全体を見て、この審査基準に照らして全体として適合していると言ったからそれを受けて事業者は運転しているとなっているわけで、そういう形になっているのに、それが適合していないとなったわけですから、少なくとも、事業者の方から、その指摘を受けて、そして命令を受けて、新たにどうするかということについて申請するんですということで、それを再審査するんですというふうに規制委員会も言われているわけですから、その間はとめておいたらいいじゃないですか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 一部での不適合、ないしは差し迫った危険とは判断されない不適合は放っておいていいというのは規制当局として正しくない態度だと思います。想定に変化があらわれたら、あるいは脅威と考えるものが変化したら、それに向けて、小さなことであっても改善を要求していく、これは規制当局として当然の立場であろうと思いますから、現在、DNPに係るものに関して変更を要求をしています。

 一方で、部分的な一部の検討の見直し、改善の必要が、イコール全て、原子力発電所の即時の停止というような考え方をとったら、これは決して、バックフィットといった、改善に向けた、継続的な改善の営みというのは死に絶えてしまうと思っています。

 まさに、原子力規制委員会はその点で継続的改善に向けた方針が問われていると考えておりますし、先ほど御答弁申し上げたように、今原子力規制委員会がとっている方針は、まさしく東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を受けたものであるというふうに考えております。

笠井委員 放っておいてよくないというんだったら、とめるのが一番なわけですよ。部分的、一部というのは、じゃ、これはほんのわずかだとか、ほんの少しとかということになってくると、どこまでかという問題が出てきます。

 そういう点では、これだけ問題になってきて、規制委員会も、それはまずい、新知見が出たんだからといって言ったんだから、まずとめるのが当然だと思うんですね。

 では伺いますけれども、規制不適合の関西電力の原発のうち大飯三号は、四月十一日から定期点検中でとまっております。関電は、六月下旬にも定期検査を終えて原子炉を起動予定というふうにしていると思うんですけれども、そもそも、新規制基準に、この大飯三号も不適合という中の一つなんですから、定期検査が終わったとしても、少なくとも規制委員会の再審査が終わるまでは再起動できない、これは当然そういうことになるんじゃないですか。

 一部を捉えて、動いているのをとめるのはおかしいという話になると言われたけれども、もうここは今とまっているわけですから、とめておく。申請が出て審査する、その先でしょうということに当然なりますよね、これ。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 まず、DNPに係る設置変更許可について、今後、申請を受けて審査を行っていく。これと並行して、幾つか、その他の各発電所の改善や強化に係る設置変更許可申請が出てまいります。また、後段の規制として、工事計画認可や保安規定の改定、それから、先生おっしゃったような検査に係るものがあります。こういった後段の判断について、これも、具体的対応については、今後、原子力規制委員会としての議論、判断を経て結論を出していく必要があるというふうに考えております。

 また、運転中の原子炉に停止を求めないという判断は、停止中の原子炉の起動に関しても同様の、同じ方針での対応がふさわしいものというふうに考えております。

笠井委員 とまっているものを動かすのはまた別の話になってきます。

 関西電力、弁明書で、いろいろなほかのことについても並行してやってねということも要請しているのも承知しておりますけれども、関西電力から基本設計あるいは基本的設計方針を変更する申請書がまだ出ていないわけですから、じゃ、どうやって、出しますというから大丈夫なんだという確認をするかというと、まだこれからの話です。

 世耕大臣に伺います。

 大臣は繰り返し、新規制基準に適合すると認めた原発のみ、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針と答弁されてきました。今、新規制基準に適合していない関西電力の三原発七基ですけれども、これは、大臣がおっしゃったことからすると、適合すると認めた原発のみ動かすという話になっているので、当然のことながら動かせないということになるわけですね。

世耕国務大臣 原子力規制委員会やあるいは関西電力等の事業者による技術的な見解そのものの適切性、そして規制委員会が進めようとしている手続のあり方について、これは私の立場からコメントは控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、事業者には、規制委員会の御指導のもと、安全確保に万全を期してもらいたいと思います。

笠井委員 規制委員会自身が新規制基準に適合していないと、不適合と言っているんですから、大臣が言われた、この間言われてきたことからしたら再稼働させられないだろう、こういうことになります。

 まさに、新しい知見が認められて、新規制基準に適合していない原発の稼働を認めるなんという前例をつくってはならない。原発ありき、再稼働ありきを根本から改めて、今こそ原発ゼロを決断して再エネに転換する道に踏み出すべきだ。野党四党が提出した原発ゼロ基本法案の審議入りを重ねて強く求めておきたいと思います。更にこの問題、徹底して議論していきたいと思います。

 原発問題は以上ですので、更田委員長、ここまでで御退席いただいて結構です。お疲れさまでした。

赤羽委員長 では、更田委員長、御退室お願いいたします。お疲れさまでございました。

笠井委員 さて、最賃の問題です、最低賃金。

 格差と貧困の広がりが深刻な今、最低賃金の引上げは切実な課題であって、そのためにも中小企業支援は不可欠だと言わなければいけません。

 まず、厚生労働省に伺います。

 この二十一年間、日本の賃金水準はどのように推移したか。OECDは民間部門の時給、残業代を含めた、の変動率を発表しておりますけれども、韓国、英国、米国、フランス、ドイツ、日本について、一九九七年と二〇一八年を比較すると、それぞれ何%、どの国は増、どの国は減となっているでしょうか。

土田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のOECDのデータベース上のアワーリー・アーニングズ、いわゆる時給でございますけれども、労働者の名目賃金、一九九七年から二〇一八年の二十一年間の変動率でございますが、韓国で一六七%の増加、イギリスで九三%の増加、フランスで六九%の増加、ドイツで五九%の増加、日本では八%の減少となっているところでございます。

 なお、日本につきましては、毎月勤労統計調査における三十人以上規模の事業所の一人当たりの現金給与総額の月額の年平均を用いているものというふうに考えられますが、これを仮に総実労働時間当たりの現金給与総額、要するに時給換算した場合では、この二十一年間の変動率は約二・三%の減少ということになるというふうに試算できるところでございます。

笠井委員 米国は。

土田政府参考人 失礼いたしました。

 アメリカは八二%の増加でございます。

笠井委員 いずれにしても、主要国の中で日本だけが減少している。

 安倍総理は、年頭から、五年連続で今世紀最高水準の賃上げを実現したと喧伝をされてきましたけれども、実際の賃金水準は主要国と逆方向です。日本の低過ぎる最低賃金の現状の打開というのは喫緊の課題だと言わなければなりません。

 そこで、世耕大臣、日本の最低賃金は、二〇一八年十月の全国加重平均額で時給八百七十四円でありますけれども、一方で、生活に必要な生計費はどうか。全労連、全国労働組合総連合が月百五十時間労働の二十五歳単身者をモデルにした調査結果を発表しておりますけれども、札幌市で千五百円、青森市で千四百四十一円、名古屋市で千五百十三円、山口市で千六百十二円、鹿児島市でも千五百八十四円の時給が必要だというわけでありまして、全国どこでも千五百円前後なのに、最賃の方はその半分を超える程度にすぎないということになっております。

 根本厚生労働大臣は、この問題を問われて、三月十五日の参議院予算委員会で、最賃が生計費を満たしているかどうかという話でいえば、ちょっと厳しいと、私はちょっとどころじゃないと思うんですけれども、答弁していますけれども、世耕大臣、この点では同じ厳しいという認識はお持ちでしょうか。

世耕国務大臣 最低賃金の制度については、厚生労働省の所管ではありますけれども、最低賃金法第九条を踏まえて、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定めなければならないとされているわけでありまして、その規定の趣旨を踏まえて、厚労省において最低賃金の金額が定められているものと認識をしています。

 その最低賃金がどうなのかということについては、これは厚労大臣がそう答弁されているならそういうことだろうと思いますが、我々としては、今の最賃のレベルで十分とは決して思っておらず、きのう、経済財政諮問会議において、「最低賃金については、この三年、年率三%程度を目途として引き上げられてきたことを踏まえ、景気や物価動向を見つつ、これらの取組とあいまって、より早期に全国加重平均が千円になることを目指す。」ということが明記されたわけでございます。

笠井委員 厚生労働大臣が生計費が足りないと認めるほど最賃水準は低い、まあ厚労大臣が言うんだからそういうことだろうと今言われましたけれども、最も高い東京都でも時給九百八十五円で、年間二千時間働いても年収二百万円に届かないというワーキングプア状態です。少なくとも、生計費を満たす普通の暮らしというなら、時給千五百円を目指すというのが当然ではないか。早急に千円というのが経済財政諮問会議の骨太の案だという話を今自慢されたけれども、実際は、実態からいうと大変なことになっている。

 しかも、地域間格差があります。全国で最も低い鹿児島県は時給七百六十一円で、最も高い東京都とは時給で二百二十四円、年収で四十五万円もの格差があります。

 では暮らしの方はどうかというと、鹿児島県労連の調査によれば、鹿児島県で普通に生活するには、男性で時給千五百八十四円、女性で千五百九十三円が必要だと。一Kのマンション、アパートに住んで、家賃三万四千円、駐車場代三千円などを積み上げて、月百五十時間で時給を算出したというものであります。

 この県労連の福丸裕子議長はこう言われています。交通網が整った大都市と違って、鹿児島では自動車が必需品、物価にも大差はなく、生活費は東京と変わりない、こう指摘している。

 世耕大臣に伺いますが、こうした最賃の地域格差拡大というのが地方からの労働力の流出など地方経済の疲弊を加速している、このようには思われませんか。

世耕国務大臣 最低賃金については、最低賃金法に基づいて、地域における労働者の生計費等を考慮した上で地域ごとに定めることとされているわけであります。具体的には、各地域の実態等を踏まえて、二〇一八年においては、今御指摘のとおり、最高額は東京都の九百八十五円、最低額は鹿児島県の七百六十一円であると承知をしているところであります。

 賃金に差があると、労働、東京一極集中になるんじゃないかというような話もあります。そういった中で、全国一律の最賃も考えてはどうかという議論も出ているわけでありますけれども、やはり地域のいろんな経済事情があるわけでありまして、全国一律化を無理に行いますと、中小企業を中心に労働コストが増加をすることで中小企業、小規模事業者の経営が圧迫されて、かえって雇用が失われる面もあるなど、地域の経済情勢などを考慮すると非常に難しいのではないかと思っています。

 そういう取組よりも、経産省としては、やはり中小・小規模事業者の生産性向上の支援や下請取引の適正化なども通じて、きちっとアベノミクスのメリットが地方も含めて回るようにして賃上げの動きを浸透させていって、結果として全国の差がなくなっていくということを実現することが重要だと思っております。

笠井委員 一律化の話が今そういう形で言われましたが、やはり最低賃金引上げで恩恵が大きいのは、女性や若者が多くて、非正規の労働者です。地方経済の活性化や労働者全体の賃上げに波及する効果もあります。だから、地方格差をなくすために、やはり直ちに全国一律に時給千円に引き上げて、さらに普通の生活を賄える時給千五百円を目指す、これは当然じゃないか。

 肝心なのはと今大臣言われましたけれども、じゃ、引き上げるためにということで、やはり地方の雇用の圧倒的な部分を担う中小企業への有効な支援策だということになってくるということだと思うんです。

 では伺いますけれども、今、生産性向上をしっかりやることで高い給料が払える環境をつくるという形で言われましたけれども、そういうやり方で、じゃ、一体どれぐらい中小企業の賃上げがこの間進んだんですか。

世耕国務大臣 三%程度、大企業よりも中小企業の方が賃上げが行われている、より高い率で賃上げが行われているというのが実態だというふうに思っています。

笠井委員 それでも生計費に足りないというのが現状であります。

 最賃と生産性との連関性が強いのは当然です。しかし、方向が全く逆で、大臣が言われるような、生産性を上げることで最賃引上げがついてくるというんじゃなくて、最賃を引き上げてこそ生産性を上げられるということになるんだということだと思います。

 今必死にやっていらっしゃるということを言われましたけれども、じゃ、政府は中小企業のためにどんな支援策をやっているか。厚生労働省に伺います。

 最賃引上げの支援策として、事業場内の最も低い時間給を計画的に引き上げる中小企業に対して、就業規則の作成とか労働能率の増進につながる設備等の導入と研修の実施に要する経費を補助するということで、業務改善等助成金というのをつくって支給していると思います。

 伺いますが、この助成金の二〇一四年度当初、補正の合計額、二〇一八年度当初、補正の合計額、二〇一九年度の当初予算の額について、及び、一四年から今年度までの六年間の予算の累計額、幾らになっていますか。

田中(誠)政府参考人 御指摘のとおり、業務改善助成金は、中小企業、小規模事業者が生産性を向上させることで最低賃金の引上げに対応することができるよう、設備投資やコンサルティングの費用を助成するものでございます。

 お尋ねの業務改善助成金の予算額ですが、平成二十六年度、二〇一四年度の当初及び補正予算額の合計額は二十八・九億円、平成三十年度、二〇一八年度の当初及び補正予算額の合計額は十三・三億円、平成三十一年度、二〇一九年度の当初予算額は十一・一億円でございます。

 また、平成二十六年度、二〇一四年度から三十年度、二〇一八年度までの当初及び補正予算に、三十一年度、二〇一九年度当初予算額を加えた累積額は百一・五億円となっております。

笠井委員 今言われたのは予算現額ですね。いわゆる当初掲げた、あるいは補正に対してやりますけれども、契約して実際に申請して、支払い年度はまたいでいくので、そういう点ではタイムラグがあるけれども、予算現額として、今言われた額だと思うんですよ。

 予算として計上して、予算として成立した二〇一四年の当初と補正の合計額、これは厚労省から別で資料をもらっていますけれども、三十五・九億円となっています。それから、三十一年度の当初予算、今年度の当初予算額というのは、それ自体六・九億円。それで間違いないですね、そこは。

田中(誠)政府参考人 御指摘のとおりでございます。

笠井委員 安倍政権は、中小企業の賃上げ支援策の予算ということでいうと、二〇一四年度で三十五・九億円計上していた。それから、二〇一九年当初でいうと六・九億円計上したということでいうと、比べてみると、随分減らしているんですね、予算計上。

 では、この助成金の交付件数はどうか。二〇一四年度と一八年度でそれぞれ何件交付しているでしょうか。件数をお願いします。

田中(誠)政府参考人 お答えいたします。

 業務改善助成金の交付決定件数は、平成二十六年度、二〇一四年度は二千七百六十七件、平成三十年度、二〇一八年度は現在集計中でございます。

 御参考として、平成二十九年度、二〇一七年度の数字を申し上げますと、七百九十八件となっております。

笠井委員 予算が減少している上に使い勝手も悪い制度だということが、数字、示していると思うんです。

 日本商工会議所がことし五月二十八日に出した最低賃金に関する緊急要望では、二〇一八年度の地域別最低賃金の引上げ額が二十三円から二十七円である中で、本助成金は事業場内最低賃金を三十円以上引き上げた事業者が対象になっていることや、事業場規模が三十人以下の事業場に限られたコースがあること、さらには新規の設備投資等が要件となっていることから、使いたくても使えない、使い勝手がよくないといった多くの生の声が当所、つまり商工会議所に寄せられているというふうに指摘されております。

 世耕大臣、それでも中小企業の最賃引上げ支援を的確に行っていると胸張っておっしゃることはできますか。

世耕国務大臣 ちょっとお答えする前に、さっき中小企業全体の賃上げが三%というようなことを申し上げました。これは約二%です。最賃が中小企業で三%ということで、訂正させていただきたいと思います。

 中小企業は、最低賃金をしっかり引き上げていくことは極めて重要だというふうに思っていますが、やはり、いたずらに最低賃金を引き上げればいいということではなくて、支払い能力も考慮した上で、春闘での民間の賃上げ率、名目GDP成長率、消費者物価の動向をしっかり踏まえて検討していくことが重要だと思います。

 経産省としても、中小企業が賃上げをしやすい、特に最賃を上げやすい環境整備にいろいろな取組をやってきています。

 例えば、所得拡大促進税制によって賃上げに積極的な中小企業の支援、そして中小企業生産性革命推進事業や、あるいは固定資産税をゼロにできる制度の導入などによって設備投資、IT導入の後押しですとか、あるいは、これも非常に重要な取組ですが、下請法の運用強化、そして産業界への自主行動計画の策定と着実な取組の実施、下請Gメンによる取引実態の把握などを通じて下請取引の改善を行って取引環境をよくしていく、こういう取組によって、中小企業の賃上げや、その前提となる生産性向上、取引改善のための支援策を実行してきたところであります。

 これで十分と言うつもりはありません。引き続き、粘り強く、中小企業にしっかりと利益が回るように、生産性が上がるように、結果として最賃の上げにつながるような政策を地道に取り組んでまいりたいと思っています。

笠井委員 これについて十分と思っていませんというふうに、いろいろ挙げた上でおっしゃったところがなかなか妙味があるなと私はうかがったんですが、結局、いろいろやられているとおっしゃっても、目に見えて最低賃金は上がっていない、そこがポイントになってきていると思うんですよね。

 諸外国はどうかというと、アメリカでもフランスでも、やはり中小企業の賃上げに直接結びつくような支援策が講じられております。フランスなんかでいうと、社会保険料の軽減を実施したということでぐっと上がったということであって、雇用の担い手である中小企業が大企業に比べて体力が弱くて個社任せにできないからこそ国が施策をとっている、結果として上がっているということになっていると思うんですね。

 世耕大臣、私、去る五月二十日に、全国商工団体連合会、全商連青年部協議会の若手経営者たちと懇談した際に、こう言われました。給与を上げても、社会保険料負担も上がるために手取りでは上がらない。頑張っている社員からすれば、何で利益が出ても給与が上がらないのかと思うだろう。周りの経営者も、社会保険料が軽減されたら社員の給料を上げたいとみんな言っている。こういう切実な声でありました。

 社会保険料の事業主負担分を軽減して、賃上げ実績に応じて、やはりその分でこの負担分を減免をするということで中小企業の賃上げを支援する、そのための予算を抜本的に拡充する、こうした支援策こそとるべきではないかと思うんですけれども、この点いかがですか。

世耕国務大臣 社会保険料の支払いについては、中小企業、小規模事業者の各商工会議所ですとか商工会連合会等の団体からも、赤字でも支払い続けなければならず、雇用を守る上で重荷であると、負担感についての声もいただいています。

 経産省としては、最低賃金の引上げいかんにかかわらず、中小・小規模事業者が社会保険料の支払い負担に対応できるように対策を講じていかなければいけないということは強く認識をしておりまして、先ほど申し上げたような、中小企業にしっかりお金が回るような政策を実行していっているわけであります。

 一方で、社会保険料制度については、これは厚労省で検討されることだと思いますけれども、一般に、社会保険制度の存在によって利益を得ている事業主が負うべき負担を広く公費で肩がわりをするということは適当ではないのではないか、また、その際には財源をどうするのかという問題も生じてくるわけであります。

 経産省としては、社会保険制度をいじるというよりは、まずは生産性の向上によって付加価値を生み出して、そして取引先との取引条件改善などで付加価値がしっかり中小・小規模事業者に残る環境を整備をしていって、この社会保険料をしっかり負担できる状況にするということが重要だと考えておりまして、その方向で全力で取り組みたいと思っております。

笠井委員 公費で負担するのは適当でないと言われましたけれども、二〇一五年二月二十日の衆議院予算委員会で、我が党の志位委員長が、この社会保険料負担軽減を提案しました。

 安倍総理は、当時、最低賃金引上げ等々、中小・小規模企業がしっかり雇用確保をし、経営を安定化させることができるとの観点からは、志位委員長の提案は一つの考え方と。一つの考え方というふうに言ったんですよ。今大臣は、そんなのとんでもないと言われたけれども、違うんですね。

 同時に、総理が言われたのは、財源確保の課題もあるねというふうに言われたので、そういう点では、毎年多くなる社会保険料負担、もうこれ以上我慢せよというのは通用しないわけで、賃上げすれば、ふえる社会保険料の負担をどう軽減するか。

 財源については、消費税に頼らずに、とにかく大企業の優遇税制を是正をして、中小企業並みに負担を求める、そして、富裕層に対する優遇税制を正す中でちゃんと出してくればいい。私たちが計算しますと、七千億円、これを確保すればいいとなっていますので、そういう道にこそ踏み出すべきだ、本気度が問われている、このことを強く申し上げて、質問を終わります。

赤羽委員長 次回は、来る十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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