衆議院

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第12号 令和3年5月12日(水曜日)

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令和三年五月十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 富田 茂之君

   理事 鬼木  誠君 理事 佐藤ゆかり君

   理事 関  芳弘君 理事 武藤 容治君

   理事 山際大志郎君 理事 斉木 武志君

   理事 山岡 達丸君 理事 中野 洋昌君

      畦元 将吾君    穴見 陽一君

      石川 昭政君    上野 宏史君

      小倉 將信君    大岡 敏孝君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      神田  裕君    工藤 彰三君

      小林 鷹之君    佐々木 紀君

      鈴木 淳司君    武部  新君

      津島  淳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    西村 明宏君

      福山  守君    藤原  崇君

      穂坂  泰君    星野 剛士君

      宗清 皇一君    八木 哲也君

      逢坂 誠二君    落合 貴之君

      菅  直人君    松平 浩一君

      宮川  伸君    山崎  誠君

      高木美智代君    笠井  亮君

      美延 映夫君    浅野  哲君

      石崎  徹君

    …………………………………

   経済産業大臣       梶山 弘志君

   経済産業大臣政務官    宗清 皇一君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   田辺  治君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 土谷 晃浩君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           富田  望君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中原 裕彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           矢作 友良君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          新原 浩朗君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          飯田 陽一君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          平井 裕秀君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         山本 和徳君

   政府参考人

   (経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局長) 佐藤 悦緒君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    奈須野 太君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   参考人

   (株式会社日本総合研究所理事長)         翁  百合君

   参考人

   (中小企業家同友会全国協議会会長)        広浜 泰久君

   参考人

   (株式会社菊池製作所執行役員副社長)       一柳  健君

   参考人

   (早稲田リーガルコモンズ法律事務所弁護士)    川上 資人君

   経済産業委員会専門員   宮岡 宏信君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     門山 宏哲君

  武部  新君     小倉 將信君

  西村 明宏君     藤原  崇君

  三原 朝彦君     大岡 敏孝君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     津島  淳君

  大岡 敏孝君     福山  守君

  門山 宏哲君     神山 佐市君

  藤原  崇君     西村 明宏君

同日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     武部  新君

  福山  守君     三原 朝彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第二三号)


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     ――――◇―――――

富田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長田辺治君、財務省大臣官房審議官土谷晃浩君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、厚生労働省大臣官房審議官富田望君、経済産業省大臣官房審議官中原裕彦君、経済産業省大臣官房審議官矢作友良君、経済産業省経済産業政策局長新原浩朗君、経済産業省貿易経済協力局長飯田陽一君、経済産業省商務情報政策局長平井裕秀君、経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官山本和徳君、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局長佐藤悦緒君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君、中小企業庁次長奈須野太君及び中小企業庁事業環境部長飯田健太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

富田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

富田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮川伸君。

宮川委員 おはようございます。立憲民主党の宮川伸でございます。

 今日は、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案に関連して御質問をいたします。

 まず、この背景ですけれども、いただいた資料を見ますと、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、我が国経済は戦後最大の落ち込みを記録、危機に直面、他方、古い経済社会システムから脱却し、新たな日常への構造変化を図るチャンスだということだと思います。

 そういった中で、グリーン社会への転換やデジタル化への対応というようなものがありますが、私は、この中に、もう少しやはりバイオの分野に関しても入れ込むべきじゃないかというふうに思っています。

 今、このコロナ禍の中で、日本がPCR検査が世界最低レベルだとか、あるいはワクチンがOECD諸国最下位だとか、そういうことを言われているわけですが、やはりこのバイオの分野も非常に危機的なところにいるのではないかなというふうに思っています。

 そういった中で、今、日本国民も、このワクチンには多くの方が期待をしている、ワクチンで何とか乗り切れないかということがあるわけですけれども、人類の命を救っていくという意味で、このコロナワクチンの特許権を放棄すべきではないかというようなことも、バイデン大統領も含めて、こういったニュースも流れているわけであります。

 それでは、このコロナワクチンの特許権がもし放棄された場合に、日本ではそのワクチンを製造するような予定があるのか。このメッセンジャーRNAのワクチンに関して言えば、今、その製造体制がどういう状況で、開発プロセスがどういう状況になっているのか、教えていただけますでしょうか。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、ワクチンの特許の規制の緩和に関する議論が行われていることは承知をしておりますが、この特許規制の緩和、これが決まっているわけではないというふうに承知をしておりまして、現時点で、このファイザー社が開発しておりますメッセンジャーRNAのワクチン、これが国内企業に製造委託されるような調整、こういったことがなされているということは、まず今検討しておりません。

 今お尋ねがありましたメッセンジャーRNAのワクチンの国内での製造の状況についてお答え申し上げますと、御案内のとおりですが、第一三共の方で、メッセンジャーRNAのワクチン、現在、この三月にフェーズ1、2に入ったところでございます。

 製造ラインの整備がどこまで進んでいるか、また、ファイザーのワクチンと、DNAの、遺伝子の状況が、成分などの違いが、全く、同じであるかとか、そういったことにつきましては、企業の情報に当たるものですから、これは企業の公表がない限りお答えすることは差し控えたいというふうに考えております。

宮川委員 仮に特許権が放棄されなかったとしても、こういうふうに、世界的にこういう議論になっているということは、ライセンスを安く受けるとか、こういう可能性もあると思うので、是非検討していっていただければなと思います。

 これと同時に、このアストラゼネカ製のワクチンに関してですが、これはメッセンジャーRNAのタイプではない、DNAのタイプの別の種類になりますが、これも五月二十日頃にもしかしたら承認されるかもしれないというような報道がありますが、もしこれが承認された場合には、このアストラゼネカのワクチンは日本国内で製造を一部するというように聞いておりますけれども、承認が下りたらすぐに出せる、あるいは製造がすぐにフル回転できるような状況になっているのか。今、このアストラゼネカの方の国内の製造に関して教えていただけますでしょうか。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 アストラゼネカについてのお尋ねでございますが、これは九千万回以上を国内で生産するというふうに厚生労働省の方に報告を受けております。

 具体的には、JCRファーマ、これが原液を製造いたしまして、その後、第一三共、また第一三共バイオテック、KMバイオロジクス、MeijiSeikaファルマ、これが製剤化を行う、こういったことになっておりまして、もう既に、承認の前からワクチンの製造が開始をされている、こういうふうに承知をしております。

 その具体的な進捗や製造能力につきましては、累次にわたり企業とやり取りをしながら状況を伺っているところではございますが、企業情報でありますので、企業が公表したものについてのみ公表させていただきたいというふうに考えております。

宮川委員 ワクチンの関心、国民は非常に関心が高いわけでありますので、企業秘密ということもあるかもしれませんが、秘密と言いつつ、それほど大して秘密じゃないことが多いですので、しっかり、国民に出した方がいい情報は出していただければというふうに思います。

 その上で、今厚生労働省の方から回答がありましたが、まさにこういった製造システムをつくっていく、製造に関する部分は私は経済産業省も大きく関与すべき部分だというふうに思っておりますが、ちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、こういったメッセンジャーRNAタイプの医薬品の開発というものに関して今後日本はしっかり取り組んでいくというように考えていらっしゃるのか、どのように今後のことを考えていらっしゃるのか、経済産業省としてどのようなサポートをしていくのかしていかないのか、どのように考えているか、教えていただけますでしょうか。

梶山国務大臣 新型コロナウイルス感染症ワクチンとして広く用いられている、今お話のありましたメッセンジャーRNA医薬品は、極めて新しい革新的な技術であると考えております。その適用可能性は、ワクチンのみならず、がん等の治療薬としても期待をされており、世界中で新薬開発が進展をしております。

 足下では、新型コロナウイルス感染症に対するメッセンジャーRNAタイプのワクチン国内製造に対しては、厚生労働省が補助金を措置して支援しているところと承知をしております。

 その上で、現在、政府の健康・医療戦略推進本部の下に設置された会議体では、メッセンジャーRNAタイプを含めたワクチン開発を支える新たな創薬技術の国内製造拠点の形成に向けた課題と対応策について議論を行っており、経済産業省としても積極的に参画をしているところであります。

 経済産業省としては、内閣府や厚生労働省の関係府省とも連携を図りながら、メッセンジャーRNAタイプを含む革新的な医薬品の国内製造が着実に進展するように対応を検討してまいりたいと思いますし、これまでも支援の具体例もあるところであります。

宮川委員 一週間ほど前に、モデルナ社の臨床試験の報告がありました。私の理解では、先日もインドの変異株の質問をさせていただきましたが、こういう変異株に対する新しいワクチンをこのメッセンジャーRNAワクチンは簡単に対応できるものが作れるので、その臨床試験がもう既に始まっていて、そういったものの効果が見られてきているのではないかというような内容ではないかと私は理解をしているんですが、今後、変異株がどうなるのか、あるいは、このコロナウイルスも毎年違うタイプがインフルエンザのように来るかもしれないという中で、その製造をどうしていくのかということはしっかり経産省でも考えていただければと思います。

 あと、お手元に一の資料をおつけしましたが、先ほど大臣の方からもがんという話もありましたが、これは、メッセンジャーRNAタイプの医薬品は、コロナウイルスワクチンだけに開発がされているわけではなくて、例えば、ここに書いてあるように、心筋梗塞だとか骨欠損だとか、下の方では臨床試験が入っている状況ですけれども、がんの臨床試験だとかいろいろなものに対応されているわけであります。もちろん安全性の部分は非常に重要ですので、安全性のデータをしっかり取っていく必要があると思いますが、こういったことも含めて製造体制をどうしていくのか、経産省の方で御検討いただければということをお願いしたいと思います。

 続きまして、法案の中にベンチャー企業の成長支援に関するものがあります。この中に、国内ファンドによる海外投資拡大のための特例ということで、国内ファンドの海外投資、これが今まで五〇%未満に制限されているところを、これを除外する、撤廃するというような法律改正案が上がっております。

 これは、私はベンチャー投資をしていく上で賛成、やっていったらいいんじゃないかなというふうに思っていますが、その中で一つ懸念点としましては、産業革新投資機構、JICのこういったもののLPファンドがどうなるのかということを確認をしておきたいというふうに思っております。

 このJICに関しては、産業競争力強化法の中で書かれている、定義されているわけでありますけれども、御承知のとおり、三年ほど前に田中社長を含め九名の役員が辞任をされまして、長い間ベンチャーへの投資が止まってしまったということであります。経済産業省としてもしっかり反省をしていただいて、名誉挽回といいますか、新しいJICがしっかりベンチャー投資していくんだということを、今日、御説明していただければなというふうに思います。

 その上で、まず、このJICの現在の投資能力は幾らぐらいあるのか、教えていただけますでしょうか。

中原政府参考人 現在のJICの投資可能額は、民間及び政府からの出資額の約〇・四兆円、そして、政府保証付借入枠の約三・三兆円の合計額でございます約三・七兆円から、INCJの投資残高を差し引いた約二・八兆円でございます。

宮川委員 今回の法律改正では、海外投資ということなんですが、JICの海外投資についての方針はどのような方針になっているか、簡潔に教えていただけますでしょうか。

中原政府参考人 いわゆるJICは、民間だけではリスクマネーが十分に供給されない分野におきまして、オープンイノベーションを推進するための投資活動を行うことで、民間によるリスクマネー供給を補完しまして、新産業の創出等を通じて我が国の産業競争力強化を実現するために設立された、そういう組織でございます。

 そして、JICが海外の事業者に投資をするファンドに資金供給を行う場合につきましては、産業競争力強化法におきまして定められた投資基準に基づいて、その投資活動が我が国におけるオープンイノベーションの推進に資するものであって、我が国産業の競争力強化に寄与するものということをJICの資金供給の対象としているところでございます。

宮川委員 ありがとうございます。

 それでは、既に、JIC、動き始めていますけれども、現在、LP投資にどのようなファンドがあるのか、その投資額を教えていただけますでしょうか。

中原政府参考人 JICは、これまでに合計四件の民間ベンチャーファンドに対して、LP投資を決定してございます。

 具体的には、医療、ヘルスケア分野を始めまして、大学、企業の有するその優れた技術シーズを持つベンチャー企業を対象に投資を行うBeyondNextVentures二号投資事業有限責任組合に対しまして四十億円、そしてまた、国内製薬企業等の化合物について、海外のエコシステムを活用した創薬開発の促進を目的としますキャタリスパシフィックファンドLPに対し三千万米ドル、さらに、いわゆるディープテックとインターネットの技術を活用したベンチャー企業を対象に投資を行うANRI四号投資事業有限責任組合に対しまして二十九・五億円、最後に、ライフサイエンス等のディープテック分野における地方大学発ベンチャーを対象に投資を行うみやこ京大イノベーション二号投資事業有限責任組合に対し、四十一億円の投資を実施させていただいております。

宮川委員 今四つの名前が挙がりましたが、この中で今回の法律改正で適用されるかもしれないファンドというのはどれなのか。そして、そうなると、今まで海外投資は五〇%以内ということだったのが、一〇〇%海外投資もできることになりますが、これは、もっと増やしてやるのかどうかというのは、どうやって判断をJICの中でされるんでしょうか。

中原政府参考人 先ほど御説明申し上げました、これまでJICが出資した民間ベンチャーファンド四件のうち、先生御指摘の投資事業有限責任組合契約に関する法律に関する特例が適用になります投資事業有限責任組合というのは、我が国においていわゆる投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づいて設立された三件でございます。

 投資事業有限責任組合については、いわゆるLPS法の海外投資規制の特例の対象となり得ますけれども、その特例の活用というのは、一義的にはそれぞれのファンドにおいて判断をされるということになると存じます。

 その上で、ファンドが本特例の活用を決定しまして当初の投資戦略を変更する場合、JICがそのファンドとの組合契約を見直しまして、それに伴う、いわゆる産業競争力強化法に基づく経済産業大臣への変更認可の申請を頂戴するということになるのではないかというふうに存じます。

宮川委員 前回の田中社長のときもそうなんですけれども、やはり、JIC本体でどこまで投資案件に関して判断できるかというのが、まあ人材ですね、ここも非常にポイントにはなっていると思いますが、コンプライアンスの問題もありますし、そういった中で積極的にリスクマネーを投入していかなきゃいけないということもあるので、しっかりやっていっていただければなと思います。

 その上で、体制が大きく変わった中で、今このベンチャー投資に関してどういった目標を設定しているのか、例えば投資金額に対して十年後に何倍ぐらいの回収を目標としているのか、ちょっと、国民に分かりやすい目標に関して教えていただけますでしょうか。

中原政府参考人 JICのベンチャーファンドの収益目標としましては、一・五倍程度の投資回収を目指すということにしてございます。

 JICのベンチャーファンドは、バイオ、創薬、宇宙、素材等の、民間だけでは資金調達が難しく、リスクの高い分野への投資を行うこととしておりまして、政策目標と収益目標の両方を実現するためにこのような目標を設定しているところでございます。

 また、JICがLP出資を行う民間ベンチャーファンドについては、他の民間の投資家からの投資も受け入れている関係上、その収益目標については、組合契約においてそれぞれ守秘義務がかかっているわけでございますけれども、目標としては、一・五倍という投資回収の目標を目指すこととしているところでございます。

宮川委員 政府のファンドですので、出資なので、リスクマネーをどういうふうに入れていくかということでありますが、やはり目標を作っておいた方がいいというふうに私は思うので、このLPファンドに関してもう少し国民に分かるような目標を説明していただければなというふうに思います。

 資料の二をお配りをしているんですが、ちょっと組織が分かりにくくて、最初一・五倍と言っていたのは左の方にあるJICVGIの話で、先ほどから、この法律に関わるところは、LP投資というのは、右の方に関わるものであります。

 三枚目の資料をちょっと大臣御覧いただきたいんですが、これもJICの資料をそのまま持ってきているんですけれども、例えば、棒グラフの左側でありますが、VC投資の国際比較というもので、アメリカ、欧州、中国、日本とあります。右側で、ほとんどもう見えないような棒が日本なわけでありますが、アメリカと比べればもう全然違いますし、既に中国ともこれだけの差があるという状況でありますが、大臣、今回のこの法律改正で、ちょっとどういう言い方がいいか分かりませんが、こういう状況をどこまで改善しようというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

梶山国務大臣 委員の御指摘のとおり、我が国のベンチャーキャピタル投資額は国際的に比較しても少額にとどまっております。これによって、グローバルにビジネスを展開しようとするベンチャー企業が大規模な資金調達を行うことが困難であるといった課題があることは認識をしております。

 この点、本改正法案において、投資事業有限責任組合、LPSによる海外投資の特例措置を創設したところであります。これは、海外市場を獲得すると同時にオープンイノベーションに取り組んでいく旨を経済産業大臣が確認したベンチャーキャピタル等による投資については、海外投資上限を緩和する特例を設けるものであります。

 これにより、ベンチャーキャピタル等が国内外に多様な投資を行うことができるようになるため、機関投資家等にとっても魅力的な投資対象となり、国内ファンドが更に大型化、活性化をすることで大規模な投資が可能となり、ひいては我が国ベンチャー企業のグローバル展開が一層加速するものと期待をしているところであります。

 また、ベンチャー企業の大型資金調達を支援すべく、民間金融機関からの融資に対する債務保証制度についても本改正法案に盛り込んでいるところであります。

 これらに加えて、これまでも、産業革新投資機構、JICによるベンチャー投資や、オープンイノベーション促進税制による大企業からのベンチャー企業への資金提供を加速させてきたところであり、関連施策を総動員してベンチャー企業の成長に必要不可欠なリスクマネーを確保することで、ベンチャー企業が数多く生まれてくるための環境整備に取り組んでいきたいと思っております。

 委員がおっしゃるように、目標値を設定して、ベンチマーク式でしっかりと対応していくというのが多分必要だと思いますし、一足飛びに海外のベンチャーキャピタルと同等にというわけにはいきませんので、しっかりとした目標を持った形で対応してまいりたいと思っております。

宮川委員 大臣、是非よろしくお願いをいたします。

 続きまして、ちょっと話題を変えまして、グリーン社会への転換というところであります。これは、是非、菅総理の四六%削減というのもありますが、積極的に進めていければというふうに思っております。

 そういった中で、前回も議論させていただきましたが、電力システム改革、その部分も大きくやはり、こういったグリーンの、あるいは再エネを導入していく上で非常に重要なポイントになっていると思いますので、ちょっと前回の続きをやらせていただければと思います。

 最初に、十二月、一月のスポット市場の高騰の部分に関してでありますが、前回の質疑の中で、十一月、通常のときが新電力さんが五百億円ぐらいの支払いだったのが、高騰したために、五千五百九十億円近いお金を払わなきゃいけなくなったというような、十倍ぐらいのお金がかかったということであります。

 前回も少し質疑をさせていただきましたが、関西電力さんを例に挙げて議論しましたけれども、これは必ずしも関西電力さんが悪いということを私は申し上げたわけではなくて、ちょっとこの電力の部分は具体的に話をしないと、抽象的だと分かりにくくて、それで今日もちょっと例を挙げさせていただくわけですが、私のポイントは、このスポット市場の仕組みが不十分である、これは経済産業省の問題であって、もっとしっかりとこの市場の仕組みをつくっていく必要があるのではないか、こういった視点で議論がしたいというふうに思っております。

 最初に、資料の五を御覧いただきたいんですけれども、ちょっと前回、私の説明で誤りも多少あったみたいで、その後、担当の方ともう一度修正をさせていただきましたが、いずれにしましても、これは関西電力の高騰した時期、一月の時期の需要見込みと需要の実績です。このぐらい使われるんじゃないかと見込んでいたんだけれども、私が赤丸でつけたところは実際にはそこまで使われなかったということで、素人の私が見ると、これだけ電力が余ったということだと思うんですね。これは、余ったのであれば、市場に入れてあげればいいんじゃないか。

 スポット市場の高騰は、供給する電気を、入れるものがなくなってしまって、買いたいという人がたくさんいるんだけれども、市場に供給がされなかったので高騰したわけです。ですから、本当に電気が全然なくて市場に入れられなかったんだとすれば、それは仕方ないと思うんですが、よくよく見ていくと、必ずしも全然なかったわけではなくて、あるんじゃないかなというのが私の疑問点なわけであります。

 この赤丸で示したところは、元々このぐらい発電しようとしていたのに、実際にはもっと発電量が少なかったと。だから、余っているんじゃないかなというふうに思うわけでありますが、この余ったものに関しては市場に入れられたのでしょうか。御説明いただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、個別の事業者ごとがどれほど時間前市場に投入したかというのは、企業情報に当たるため開示をしておりませんので、一般論として申し上げさせていただきます。申し訳ございません。

 まず、そもそも論を申し上げますと、小売事業者は、スポット市場入札時点における需要予測、これは今委員が御指摘の数字で出しておるものでございますが、実際は入札後も数時間置きに見直しをしておりまして、最後の見直し時点での需要予測と需要実績の乖離が、これがいわゆるインバランスになるという実態がございます。

 それでまた、今申し上げました、最後に見直した時点で余裕があれば、平時でありましたらば、まさにその余った分を、時間前市場にその余剰分を入札することが一般的であると考えられます。

 ただ、しかしながら、この冬のスポット市場価格の高騰時におきましては、各大手電力会社は、御案内のとおり、LNGや石油の燃料在庫減少に伴う出力抑制が生じている中、需要予測の見直しにより余力が発生した場合におきましても、どうするかというと、発電所の出力を低下させまして、時間前市場への入札を行うのではなく、燃料を長もちさせるため燃料使用の節約を優先するという行動を取っていたと考えられます。

宮川委員 かなり大手さん、旧一電さんの方に裁量権があるといいますか、市場に出そうか出さないか決められるということだと思うんですが、今、LNG等の燃料を節約という話がありましたが、前回も少し御質問させていただきましたが、関西電力に関しては原発が四基とも動いていなかったということが前回質疑でもあったと思います。

 ちょっと全部はやれないので、一つだけ、大飯の三号機について今日はちょっと取り上げさせていただきたいんですけれども、大飯の三号機、元々の定期点検の終了予定日と実際に起動した日はいつか教えていただけますでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 関西電力は、大飯原子力発電所三号機の定期検査を二〇二〇年七月二十日に開始し、九月二十六日まで実施する旨、これをあらかじめ七月三日の時点で公表しておったところでございます。

 他方、現在においてでございますが、定期検査中に発見されました配管溶接部の亀裂の対応、この安全対応をしなきゃいけなくなったものですから、この実施をしている最中でございまして、定期検査はいまだに継続中と承知しております。

宮川委員 元々は九月の二十六日に再稼働、再稼働というか起動する予定だったわけですね。ですから、起動していれば火力発電等は要らないのでLNGも要らないわけでありますが、稼働しなくなったわけなので、じゃ、LNGをちゃんとその分調達していたのかどうかということが一つポイントになると思います。

 それでは、配管の亀裂が見つかったということでありますが、見つかった日と実際に配管を取り替えると決めた日はいつでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました関西電力大飯三号機における配管溶接部の亀裂に対する対応でございますけれども、これは、七月二十日から開始されました定期検査の過程の中において、同年八月三十一日に発見されたものというふうに承知しております。

 その後、関西電力におきましては、発見された亀裂の評価を行ってまいりまして、同年十月十九日に行われました原子力規制庁での公開会合におきまして、この定期検査の中で配管の取替えを行うことを表明した、このように承知しております。

宮川委員 それでは、こういったものが見つかって、運転計画自体の変更を公表したのは何日でしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 関西電力は、大飯三号機につきまして、先ほど申し上げました、発見された配管溶接部の亀裂の対応によって、定期検査期間が一か月以上遅延するという見込みが出てまいりました。一か月のずれが生じた場合には、その以内に報告しなければならないものですから、同年の、二〇二〇年十月二十三日に、原子炉等規制法に基づきまして、運転計画の変更の中でこの期間の延長ということについて規制委員会の方に届け出たと承知しております。

宮川委員 ですから、元々稼働は九月二十六日の予定だったんですが、実際に運転変更を、計画を出したのが十月二十三日ということなわけであります。

 この間、少し会議録等を見させていただいたんですが、元々関電の方は、このまま一年動かして、それで一年もたせる、また来年考えるというようなことを最初は取っていたわけですが、規制庁との議論の中で、これは一年もたないんじゃないか、十分もつと言えないんじゃないかということで、こういったことになったわけです。

 このやり取りだとか、あるいは判断が悪かったかどうかというのは、私は今ここで論じたいとは思わないんですけれども、こういう中で、じゃ、実際のLNGの調達計画というのはいつ変更されて、十二月や一月にちゃんとこの分のLNGは担保されていたのかどうか、教えていただけますでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 調達計画の変更という形でこの日にという形に、明確な形に変わったわけではないと承知しておりますけれども、関西電力に確認をいたしましたけれども、この大飯三号機の定期検査の遅延ということに対しては、この冬を乗り切るために何かしらの対応が必要だということは認識していた、これらに対応を行っていたと承知しております。

 十月中におきまして、三回にわたりまして合計約二十万トン、これは大飯三号機がフル稼働、一〇〇%稼働でした場合の五十日分でございますが、これについての調達を十月中に取ったというふうに聞いてございます。

宮川委員 ちょっと、すぐに今の答弁だけだと分からなくて、レクの段階ではいただけていなかったので、やはりもう少し分かるように。

 私の言いたいポイントとしましては、いろいろなことがあるわけです、やはり難しいと。私は、調達するのに一、二か月前に契約してやらなければいけないわけなので、ほかにもいろいろな要因はあったとはいえ、すぐにこの八月の三十一日に、こういう問題が起こったときにすぐ手を打っていればもう少し供給できたけれども、それが後送りになったので供給できていなかったんじゃないかという気がするんですけれども、そこができているのかできていないのかを含めて、そういうような要素があるわけですね。

 先ほど前の議論もしましたけれども、本当は出せるエネルギーがあるんだけれども、実際にはそれは市場には入れていないというようなことがあるわけです。ですから、大手、旧一電さんに関しては、まずは自分のお客、相対取引等にこういうふうに電気を出すことができる、その残り分が市場に入るというような形になっている、そういったルールになってしまっているわけであります。

 それで、資料の六枚目を見ていただきたいんですけれども、これは関西電力さんの二〇二〇年度決算説明資料なんですね。ちょっと赤線を引いたんですが、いろいろとグループで見た場合に、一番下、以上により、この冬の電力需給逼迫による影響についてはグループ全体ではおおむね影響はなかったと考えているということなんです。

 これは別に、ルールにのっとってやられていると思うので、関電のこれが問題があるとは言いませんけれども、ただ、スポット市場の方でいえば、先ほど申したように、新電力さんたちは五百億円ぐらいのが五千億円に上がっているわけですね。ですから、やはりこのスポット市場の仕組みが、経産省がつくっているこのルールにやはり問題があるんじゃないかと思いますが、大臣はどのように思われていますでしょうか。

梶山国務大臣 今政府参考人からも説明があったように、いろいろな要因が重なって今回の事案が起きたものだと思っております。

 この冬の市場価格高騰ということで、電力・ガス取引委員会において詳細に調査分析を行って、公正取引委員会もオブザーバーとして参加する審議会において有識者に御議論をいただいてきたところであります。相場を変動させることを目的とした売惜しみ等の問題となる行為は確認はされていないものと承知をしております。

 けれども、様々な点で改善点があると私どもも思っておりますので、今、私自身もやはり幾つかポイントを挙げておりますし、また、議論の中で出てきたものを、どう回避策、予防措置というものができるかというものをしっかりと提示をしていけるような結論を出してまいりたいと思っております。

 こうした観点から、今年の冬の需給逼迫、市場価格高騰について、現在、包括的な検証を行っているということであります。

 具体的に言えば、必要な電源容量の確保や燃料の適切な確保、また、供給能力確保のための対策及び大手電力によるスポット市場への売り入札の透明性の向上。市場価格高騰に備えたセーフティーネットの導入。前もって取引価格を確定できるベースロード市場や先物市場等の活性化。さらに、構造的な課題としては、安定供給の確保とカーボンニュートラルの実現を両立する電源ポートフォリオの構築や電力系統の拡充。またさらには、情報の透明化、共有ということも含めて、しっかりとした結論を出してまいりたいと考えております。

宮川委員 もう一つ政府の問題なんですが、資料の四を、もう一度戻って見ていただきたいんですけれども、インバランス料金の上限設定なんですね、これが作られていなかったと。二〇二二年の四月でしたでしょうかに導入する予定だったみたいですけれども、これがなかったわけですが、途中から、一月十七日からこれを二百円に設定して入れたので、私が赤い丸をしていますが、ここが頭打ちみたいになっているのは、この設定をしたからということであります。

 だけれども、これをもっと早く入れていれば、もうちょっと前の一月十四日とか十五日とか、こういったところも抑えられて、もっと早く回避ができていたんじゃないかと思いますが、この上限設定を入れるタイミングの問題、そして二百円というふうに設定したことに関して、どのように判断されていらっしゃいますでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 これは市場でございますので、売手と買手の双方がいる中で、電力の買手にとっては市場の高騰というのは回避したい事象である一方で、売手にとってはそこがもうかりどきであるわけでございます。市場に対してルールをどう適用するかということについては、私ども、非常に慎重に取り扱うことが必要だと考えているところでございます。

 この冬の需給の逼迫時におきまして、一月十二日から十五日まで、キロワットアワー当たり二百円を超えたという非常に高い値がついたことが継続した段階で、当初、来年度導入予定でございました一キロワットアワー当たり二百円という上限価格というものを前倒しして導入したわけでございますが、冒頭申し上げました、売手と買手の中で予測可能性を持っていかに緊急事態で対応するかという難しい判断の中では、私どもとしては、緊急的な措置として適切な対応であったというふうに考えているところでございます。

宮川委員 新たに入れるシステムで八十円ということもちょっと聞いているんですが、どういうふうになっていらっしゃいますでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今年の冬の対応についていいますと、先ほど申し上げました二百円という元々検討しておりました上限価格ということを考えておったわけでございますが、いきなり二百円という前に、もっと予防的な対応はできないかという議論は、現在のこの冬の検証作業の中でも様々御指摘をいただいたところでございます。

 この八十円という価格についていいますと、この冬の燃料制約に伴う供給力不足に対しまして、デマンドレスポンス、需要側でいかに抑えていくかということについて、発動することで対応したことがあったわけでございますが、この発動に要したコストということを算定いたしまして、様々、専門家の方々から御指摘を踏まえて、この八十円という上限価格ということについての検討を今進めているところでございます。

 この冬の中では八十円というものが示されていなかった。このことは、先ほどの御答弁で申し上げましたように、予測可能性という中でどういうルールを設定するかというところでは、二百円というものの前倒しという対策を取ったわけでございますけれども、今後の措置ということについては、より予防的な対応というのも検討の一つにはなるかということで、八十円ということも審議会の中で検討し、今、最終的なパブリックコメント等のプロセスを経ているところでございます。

宮川委員 資料の七というのを御覧いただきたいんですが、もう少しこの部分も議論したいんですが、ちょっと時間もないのでこれで終わりにしますけれども、この八十円というのは、私が聞いている範囲では、この三%というものが幾つかある場合、八十円みたいな議論がされているということでありますが、この表は、高騰したときの表なんですけれども、必ずしも、今議論されているものでいうと、二百円のものは僅かで、新たなものを入れるとすると、八十円に対応するものの方が多いんじゃないかというような気が私はしているわけです。

 ですから、大臣、このときの政府のこのやり方が、まあ、いろいろ問題があったと思うので入れられなかったというのはしようがないのかもしれませんが、しっかり反省をするとともに、政府の対応は正しかったというふうに言うべきではないんじゃないかなと。本当は、このスポット市場をしっかり支えていく上で、新しい新電力を支えていく上で、もっといろいろな知恵があったはずなんだけれども、それができていなかったんじゃないかというように思っているわけであります。

 最後に、ちょっと分かりにくいんですが、この一般送配電事業者のインバランス収支の黒字分が議論されています。この黒字分が、たしか大臣だったと思いますが、答弁の中で、広く需要家に還元していくという答弁がされているんだけれども、この前、小委員会での中間取りまとめというのも出ているんですが、広く需要家に還元していくのでいいのかと。やはり市場メカニズムに問題があったんじゃないか、あるいは、今言ったように、政府のこういったメカニズムに問題があったんじゃないか、だから、やはり大きくマイナスになってしまった新電力さん等の小売の方々に返すべきではないかというような議論があるんです。

 是非、その辺りの議論をしっかりと行っていただいて、私が今質問した多くのものがこの中間取りまとめの中に入っていませんので、しっかり大臣の方から指示をして、そういった観点からも議論をし、こういった電力システム改革がしっかり進むように行っていっていただければと思います。

 もし、最後にあれば、一言お願いします。

梶山国務大臣 先般申しましたように、広く需要家に還元していくことが適当であると考えておりますけれども、そのような方向性で今議論をしているところであります。

 委員のこの質疑における御意見というものも、参考にしてまいりたいと思います。

宮川委員 ありがとうございました。

 これで私の質疑を終わりにいたします。

富田委員長 次に、松平浩一君。

松平委員 立憲民主党、松平浩一です。今日はよろしくお願いします。

 今回改正で、自社株対価MアンドA、これの譲渡益課税が繰延べ一般化されるということで、私も三年前からこの委員会で主張させていただいたので、大変ありがたい話だと思っています。

 それで、今後の、このMアンドAがより促進されることになるのかなと期待しているわけですけれども、この企業買収に関しては、やはり気になる点がございます。

 それは、海外企業の日本企業の買収という点です。それによって、海外への技術流出、情報流出がされてしまうのではないかというところで、経済安全保障の観点から問題が生じるんじゃないかというところです。

 そこで、この点についてまずお聞かせいただきたいと思うんですが、こういった海外企業による日本企業の買収について、外為法上の規制、そこについてごく簡単にまずは教えていただければと思います。

土谷政府参考人 お答え申し上げます。

 外為法上、外国投資家が、指定業種を営む上場会社に一%以上投資する場合や、指定業種を営む非上場会社に投資する場合は、原則として事前届出を求めております。それを踏まえまして、国の安全の確保等の観点から、財務大臣及び事業所管大臣が審査する、そういう体制になっているところでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 事前審査ということなんですけれども、最近、やはり海外企業、日本企業の話で気になる報道がございまして、東芝の買収のケースがございます。

 結局、これは中止となったようなんですが、イギリスの投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが東芝を買収して非上場化するという話がございました。

 やはり東芝は、原子力関連、そして半導体など軍事転用可能な汎用品の事業を営んでおられます。そこで、こういったコア事業に属する事業を営んでいる会社、こういう会社を、例えばCVCのような外国投資家が買収する場合、基本的に、これは確認なんですけれども、外為法上の事前審査の対象になるのかどうかというところをお聞かせいただければと思います。

飯田(陽)政府参考人 お答えいたします。

 まず、個別企業の案件についてはお答えを差し控えたいと思いますけれども、その上で、一般論として申し上げますと、外国の企業やファンドなどの外国法令に基づいて設立された法人その他の団体、こういった外国投資家が、今御指摘のございましたような原子力などの重要インフラ、あるいは半導体、防衛に関わる事業を実施する上場企業の株式の一%以上を取得する場合には、外為法に基づく事前届出、審査の対象となります。

 一般に、買収と申しますと一%以上の株式の取得でございますので、当然、外為法に基づく事前届出、審査の対象になるというふうに考えております。

松平委員 そうですね。そういったことで、本当に東芝が日本の安全保障にとってやはり重要な技術を保有している企業であることは疑いがないので、そういった会社が事業の切り売りの可能性にさらされているということなんです。

 この件、そもそもは、東芝のガバナンスの疑義があったことにこれは端を発しているんです。

 そこで、ちょっと御紹介したいのが、去年の七月三十一日に、東芝で第百八十一回の定時総会がございました。

 そこで、今、もうお辞めになられた車谷前社長の再任案がございまして、これは約五八%と低かったんですけれども、この定時総会の議決権行使の在り方に疑義が生じました。筆頭株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが、社外取締役就任の株主提案を行っているんです、ここで。この提案にまず同意するには、直投令の二条十一項一号が適用になって、外為法上の事前審査の対象となるということなんです。

 そこで、エフィッシモが議決権行使の事前審査の届出を行いました。ただ、これは報道によると、この事前審査の届出に対する回答が大変遅かったということです。

 これは資料一で御用意させていただいたんですけれども、これは朝日新聞の記事ですね。下線を引いた部分なんですが、七月三十日午後三時時点では回答がないと書いてあります。三十一日が株主総会ですね。また、別の記事なんですけれども、総会直前にエフィッシモに対して、七月三十日以降に議決権行使してよいと伝えたという報道もあります。

 この議決権行使、議案提案権、エフィッシモはしているわけですけれども、この議案提案権、これを行使する際には、株主総会の八週間前までに行わなければいけないということで、そのことから考えると、エフィッシモは少なくとも定時総会の八週間前には経産省に事前審査の通知を行っていると見ていいと思うんです。それが回答が来たのが総会の日の直前というのは、私は、株主権の行使を制約するものじゃないかと思います。

 そこで、まずこの審査についてお聞きしたいんですが、いつまでに回答するという基準、設けていらっしゃるんでしょうか。

飯田(陽)政府参考人 お答えをいたします。

 今御質問のございました取締役の選任議案に対して、これに同意するという議決権行使、これにつきましては、外為法上、届出を求めてございます。その場合の審査でございますけれども、これは、実際に当局が受理をしてから三十日を経過する日までの期間の間はその届出に関する行為を行ってはならない、いわゆる禁止期間ということになってございます。

 外為法の当局は、この禁止期間中に審査を行いまして、国の安全等を損なう事態を生ずる対内直接投資等に該当するか否かを判断するということになるわけでございます。その上で、該当しないと判断した場合には、この禁止期間を短縮いたしまして、日本銀行からの公示により、取引が可能となる期日を外国投資家にお知らせをしております。

松平委員 やはり、今の回答からは、これ、大丈夫なのかなと。期日三十日で、これは八週間前に届出を行っているわけなので、疑念も生じるわけなんです。

 そこで、ちょっとお聞きしたいんです。確認のために、今回、期間的に法令違反はなかったという理解でよろしいんですか。

飯田(陽)政府参考人 お答えいたします。

 今のお答えが、外為法当局が三十日の審査の期間の中でちゃんと答えたのかという御質問だということでお答えをしたいと思いますけれども、これも一般論でお答えいたしますけれども、私ども、法令で定められた期間の中で審査を行い、その上で、先ほど申し上げましたとおり、国の安全等を損なうおそれがないという形で判断をした場合には、日本銀行の公示によってそれを外国投資家にお伝えをしているということでございます。

松平委員 一般論ということで、個別事案にはなかなかお答えできないということなんでしょうけれども、ちょっと違う観点からこの件を考えてみますと、一般の株主にとっては、招集通知が来て初めて議案に賛成するかどうかが決められるわけです。

 そこで、考えると、東証上場企業の場合、法律上は二週間前ですね、東証のルールで努力義務で三週間前にという話もありますが、それでようやく提案の内容が分かるわけです。

 そこを考えると、三十日間、届出して禁止期間があって、その間にということで、三十日間クリアランスが取れなければ、やはり議決権行使ができない事態にもなりかねないと思うんです。しかも、議決権行使を行う場合というのは、消印有効じゃないので、着いたときにカウントされなきゃならないので、総会の一日前、二日前にクリアランスが来ても間に合わないわけです。

 そこで、やはり、こういった審査の回答というのは、ちゃんと総会時点で権利行使できるような形で回答期間を考慮すべきと私は考えるんですけれども、この点、考慮していただけますでしょうか。

飯田(陽)政府参考人 お答えをいたします。

 御質問のございました取締役選任議案に対して同意を行う場合の議決権行使、これは届出をしていただいているわけですけれども、この行為の事前届出の届出書におきましては、その同意を実際に行う時期を記載する欄がございまして、それが決まっている場合には、外国投資家には、議決権行使を行う日である例えば株主総会の期日を記載していただくということになっております。

 そういった期日も考慮しながら、しっかりと審査をしているということでございます。

松平委員 ありがとうございます。しっかりと考慮をお願いしたいと思います。

 そして、定時総会の話、戻りますけれども、この問題が二つありまして、議決権行使の誤集計という問題、そして、一部の大株主が何者かからの圧力を受けて議決権行使に影響が生じてしまったという問題です。

 これについて、東芝は、監査委員会の調査で更なる調査は必要ないという結論を出したんです。ただ、これに対して、エフィッシモは、第三者委員会による再調査というものを要求しまして、それで、今年の三月十八日に臨時株主総会が行われまして、エフィッシモの株主提案、これが可決されたんです。

 日本の大企業の株主総会で株主提案が可決される、これは結構異例な事態だと思います。なので、新聞でも大きく報道されました。

 コーポレートガバナンス・コードの提唱者であるニコラス・ベネシュ氏は、大企業の多くの大口投資家が、臨時株主総会で株主の提案内容がひたすら合理的であるというシンプルな理由で賛成票を投じた初めての事例だとして、日本のコーポレートガバナンスにとって画期的な出来事だと指摘されています。

 まず、議決権行使書の誤集計についてなんですけれども、これは、議決権の行使書が、定時総会で期日までに届いたにもかかわらず、一部が無効とされたということなんです。それで、こちらは、総会の運営代行をしていた三井住友銀行の責任で、東芝に非はないわけなんですけれども、このニュース、私もかなり驚きました。報道を、資料二として今配付させていただいているんですけれども、三井住友銀行によると、全体で九百七十五社、株主総会で一部の議決権行使書が、期限内に届いていたにもかかわらず、結果に反映されていなかったということなんです。みずほ信託銀行も同様に三百七十一社で未集計があったということです。

 これは、集計時間の確保のために先付処理という実務慣行があって、そういったことが原因だったということなんですけれども、やはり、株主の基本的権利である議決権行使、これを脅かす大変重大な問題であると私は思います。

 この点、これは大臣、どう受け止めていらっしゃいますでしょうか。

梶山国務大臣 株主名簿管理人として上場会社の株主に関する実務を担っている一部の信託銀行において、議決権行使書を適切に集計していなかった件につきましては、実効性のある再発防止策が必要であり、金融庁においてフォローアップが行われていると承知をしております。

 株主総会では、議決権行使はコーポレートガバナンスの基礎となるものであり、株主名簿管理人である信託銀行等が、会社法の下、議決権行使書の集計事務を適切に、的確に行うことは重要であると考えております。

 経済産業省としても、信託銀行が議決権行使の電子化の支援やオンラインによる株主総会の開催支援などの取組を一層進めていくことを期待しているところであります。

松平委員 大臣から御答弁いただきました。

 この件、東芝においてなんですが、議決権行使書、千百三十九枚が無効処理されていたということなんです。

 ただ、無効処理されたうち、会社は、会社提案に友好的な大手金融機関の議決権に対してのみ権利行使を進めて、そして締切りの二十一分前にネットから議決権行使されていたという報道があるんです、これについては。

 私、これ、報道が仮に事実であれば、非常に恣意的なやり方をしていると感じますよ。もう本当、個別の事案になっちゃうので、一般論として、これは大臣にお聞きしたいんですが、やはり会社が会社提案に賛成するという一部の株主に対してだけに議決権行使を進めるというのは、適正なガバナンスの在り方としてどうなのかというところです。

 大臣、いかが思われますでしょうか。

梶山国務大臣 委員から、一般論としてという限定でお話がありましたので、私の方も一般論として申し上げれば、会社法百九条に言う株主平等原則は、株式会社が株主を、その有する株式の数などに応じて平等に取り扱わなければならないことを定めるものでありまして、友好的な株主とその他の株主を別に扱うことがこの条文に反するかどうかの解釈は事案によって異なるために、一概には申し上げられないと思っております。

 いずれにしましても、各社において、各法令にのっとって、今後とも対応がなされることを期待するところであります。その企業のコンプライアンスや社会的責任にもつながる問題であると思っております。

松平委員 そうですね。コンプライアンス、社会的責任というところから本当に考えていただきたいと思います。無効処理されている可能性があるということが分かったら、ネットで議決権行使してくださいねと、もう株主全員に向かってアナウンスするのが、やはり公平というか適正なんじゃないかなと思います。

 それから、この定時総会、もう一つ株主権行使の問題が生じています。これはロイターの記事を資料三として配付させていただいています。

 報道によると、経済産業省の参与が、ハーバード大学の基金の運用ファンドに対して、これは議決権の四%を保有する大株主なんですけれども、会社の意にそぐわない形で議決権を行使した場合、外為法に基づく調査の対象になる可能性があるということで言ったと。そして、ハーバード大基金は、その結果、議決権行使を断念したということなんです。その後、ハーバード大学の基金運用ファンドは、独自の調査を行って、その方の説明に法的な根拠はないと認識したと言いますけれども。

 これについてなんですが、その方自身も、フィナンシャル・タイムズに対して、総会前にハーバード基金にコンタクトを取ったことは認めていらっしゃいます。

 これについて経産省の関与があったのかどうか、この点について教えていただいていいでしょうか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省は、本年一月まで経済産業省参与であられました水野氏から、コーポレートガバナンスや外為法の運用についてアドバイスをいただく関係にはございましたが、経済産業省から水野元参与に対して、報道にあるような個別投資家の議決権行使に対する働きかけを依頼したことはございません。

松平委員 ございませんと今はっきり言っていただきました。けれども、事実上どうなんだということもありますよ、やはり。実際に参与だった方が総会の直前に大株主にコンタクトを取って、その結果、議決権行使を断念しているということなんです。

 これもやはり個別事案になってしまうので、一般論としてお聞きさせていただきたいんですが、不当な圧力によって、一般論としてですよ、不当な圧力によって株主が意図した議決権行使を断念するような、こういった事態が生じることについて、ガバナンスの在り方としてどう考えるかお聞かせください。

梶山国務大臣 一般論として申し上げれば、上場会社は株主の権利が実質的に確保されるように対応を行うべきであることは、コーポレートガバナンス・コードに明記されているとおりであります。

 経済産業省としては、引き続きコーポレートガバナンス改革を推進してまいりたいと考えております。

松平委員 ちょっと進めますと、こういった経緯がございまして、東芝という伝統的な会社でさえ、株主総会の公正に疑義があるということで、異例の株主提案が認められました。これは、やはりこの疑惑ですね、多くの株主の反発を買ってしまって、やはり異例の賛同に至ったんだと思いますよ、臨時総会で。もちろん、今御否定されましたけれども、もし何か裏で仮に圧力をかけようと安易に思われたのであれば、やはりこれは逆効果になってしまったということだと思います。

 今回の問題、また、これは、ひいては会社をどういう存在と考えるかの問題に関係してくるんじゃないかなと思っています。私は、会社というものは二階建てだと思っています。一階では、会社は、会社自体が法人といって人と書くわけですから、人として会社資産を所有している。一方、二階では、やはり株主がその会社を、やはり持分がありますので、概念上持っているということです。

 それで、一階の部分を見れば、会社が人なので、やはり従業員、取引先、地域住民を巻き込んだ、いろいろなステークホルダーがあっての会社だということです。ただ、やはり二階の部分を見ると、概念上の持分というものがありますので、株主の権利というものも重要だということになると思います。

 この点、やはり、米国でさえと言うのもあれですけれども、考え方は変わってきていると思います。今まで米国では、やはり株主としての二階部分を強調してきた印象があります。株主第一主義みたいな形ですね。ただ、もう御存じのとおり、一昨年のビジネス・ラウンドテーブルで声明が発表されて、米国の経済界は、株主だけでなく、従業員や地域社会など全てのステークホルダーに経済的利益をもたらす責任がある、そういう発表がなされています。だから、つまりこれは、二階部分も今まで大事だったけれども、一階部分も大事なんだよという声明ですよね。

 この点、大臣、これは私の質疑ではないんですが、先日の五月七日の経産委員会の質疑で、会社の役割についてこう答弁されています。会社の役割というのは、私は社会のためにあるものだと思っておりまして、これは自分で作ったり売ったりするものも社会のために役立つ、そして雇用で、また雇用の受皿としての役割を果たしていく、大きな企業、小さな企業ありますけれども、雇用が少ない企業は税を納めて社会に役立つ、また大きな企業は雇用としてしっかり社会に役割を果たしていくということだと思っております。

 私もそのとおりだと思います。ただ、やはり、先ほど私申しましたように、一階の部分ですね、これは。二階の部分に対する言及がなかったということなので、ちょっとその辺をお聞きしたいと思うんですけれども、やはり私、会社の立つ位置によっても違うと思うんです。

 例えば上場会社であれば、上場している以上、株主、機関投資家、一般投資家からお金を集めて経営している以上、やはりむげにしちゃいけないと思うんですよね。株主の目を気にしたくないというのであれば、MBOをして非上場化するという選択肢もあるわけなんですから。

 来年からプライム市場というのもできます。このプライム市場のことを金融審議会とかJPX、これがどう言っているかというと、我が国を代表する投資対象として優良な企業が集まる市場、そういう言い方をしているんですよね。あわせて、今年の六月、来月です、コーポレートガバナンス・コードも改訂されます。投資家と企業の対話ガイドライン、これも改正が提案されています。

 そこで、やはりそういった背景もあるので、大臣にお聞きしたいんですけれども、今後の改訂されるコーポレートガバナンス・コードであるとか対話ガイドライン、株主との対話、本当に重要視されているんです。この株主との対話というところに関して大臣の認識、お聞かせいただいていいでしょうか。

梶山国務大臣 委員おっしゃるように、一階建ての部分も二階建ての部分も非常に重要な要素だと思っております。ただ、社会を構成する中で、法人であれ自然人であれ、それらを構成する要素でありますから、しっかりとやはり社会に対する責任、認識というものを持っていくべきだということで申し上げたということであります。

 法律上の株主の位置づけについては、株主は株式会社の構成員としての地位を有するものであり、株主により会社の業務の執行を行う取締役が選任されることから、株主の地位は大変重要なものであると思っております。

 会社が、従業員、取引先、地域社会なども含め、広くステークホルダーのための貢献をしていくことを実現するためには、株主と会社の経営陣がしっかりと対話を行いながら中長期的な企業価値の向上を実現していくことが重要であると考えております。

 今般のコーポレートガバナンス・コードの改訂に当たっても、投資家と株主の対話ガイドラインを拡充するなど、株主と企業の対話の充実を図ることとしておりまして、一方を重要視しているというよりも、まずは構成の要素として株主があって、そこは会社の中でしっかりと機能していただきたい。ただ、社会に対しては、やはり自然人であれ法人であれ、しっかりとした構成員として今度は社会への責任を果たしていただきたいという旨で申し上げたことであります。

松平委員 ハーバード大基金の圧力の話にちょっと戻りたいと思います。

 ハーバード大が議決権行使を断念した背景として、報道によると、ハーバード基金がエフィッシモに出資しているという関係性があったということのようなんです。そういった背景があるので、ハーバード大基金が株主提案に賛成すると外為法上の条項に抵触する可能性があるということだったんだと思います。

 その外為法上の条項というのが二つありまして、済みません、資料として用意していないので、今口頭で言いますと、エフィッシモと共同して議決権を行使する同意をし、その議決権の合計数が一〇%以上になるものとして外為法上の事前届出が必要となるのではないかというところ、これは直投令の二条十六項の七号に関わるものです。それともう一つが、ハーバードがエフィッシモと、今回の場合の役員の選任議案について共同して議決権を行使する合意をして、そしてプラスで、エフィッシモが提案している役員候補者が密接関係者に該当するということで外為法上の事前審査が必要になる、そういう疑義なんです。これは、今の後者の部分は直投命令の方です、二条の一項一号のトに関わるものなんです。

 先ほどちょっと申しましたように、結局、ハーバード大基金による調査で、これには該当しない、事前届出はやはり不要だというふうに分かったというんですけれども、やはり、ここが不明確だったからこそこういうふうになったと思うので、今後こういうことがないように、はっきりと、明確にしておきたいと思うんです。

 そこで、お聞きします。

 財務省ですね、これは。直投令二条十六項七号による共同して議決権行使する同意をすることの解釈、それから、直投命令二条一項一号のトの共同して議決権行使する合意、これらの解釈について教えてください。

土谷政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまで一般論としてのお答えになりますが、外為法上、いかなる場合に共同して議決権行使を行うことに同意、あるいは共同して議決権行使を行うことを合意と言えるかにつきましては、個々の事案に応じて実質的に判断されるべきものでございますが、例えば、一定の議案について同じ議決権行使をするような株主間契約を結ぶ場合などが考えられます。

 委員御指摘の出資でございますけれども、出資のみで判断されるものではなく、総合的な判断ということでございます。

松平委員 今、やはり重要なサジェスチョンがあったと思うんです。株主間契約というふうに言っていただいたんですね。そういった形での外形的にも分かる明確な合意というような理解なのかなと私は理解しました。恐らく、うんと今言えないとは思うんですけれども、一歩進んだかなと思います。ありがとうございます。

 次に、このエフィッシモの件に対して、私、これは対照的な一件だなと思ったのがあります。それが最近の楽天の一件です。

 今年三月、楽天が増資を発表しました。その引受先に中国ネット大手のテンセントの子会社が含まれていて、そのテンセントの持ち株比率、これは三・六五%だったんですけれども、これは記事として、資料四として配付しました日経新聞の記事です、下線を引いた部分なんですけれども、「外国人投資家が出資先に「役員を派遣しない」「非公開の技術情報にアクセスしない」などの条件を満たすと、事前の届け出が免除される。」ということなんですね。事前の届出が免除されるということなんです。

 この免除されるルール、事前届が免除されるというルールについて、教えていただいていいでしょうか。

土谷政府参考人 お答え申し上げます。

 こちらについても、あくまでも一般論ということになりますが、外為法上、一般投資家である外国投資家が、指定業種のうちコア業種を営む会社の株式を一%以上取得する場合には、事前届出免除制度を利用する場合、役員に就任しない、非公開の技術情報にアクセスしないなどといいました五つの免除基準がございますが、そちらを遵守していただく必要があるところでございます。

松平委員 今、免除基準を遵守する必要があるとおっしゃったんですが、では、遵守すること、これはどう担保するんでしょうか。

土谷政府参考人 お答え申し上げます。

 外国投資家は、事前届出免除制度を利用する場合、株式の取得等を行った日から四十五日以内に報告書を当局に提出する必要があり、引き続き免除基準を遵守していただく必要がございます。

 外国投資家がこの免除基準を遵守しない場合でございますけれども、当局は、外国投資家に対し遵守勧告及び命令を行い、従わない場合は株式売却を含め措置命令を行うことが可能でございまして、これらの措置を通じまして、国の安全等への影響が生じないよう対応することとされております。

松平委員 今、四十五日以内に提出ということで、事後報告なわけです。これは遅くないかという気もするんです、やはり。

 中国の場合、国家情報法というのがあって、これは、具体的に、七条なんですが、中国国民は国家の諜報活動に協力する義務があるというものなので、やはり情報が中国当局に筒抜けになってしまうおそれがある。

 これは、楽天は純投資と言っているんですが、純投資といっても、少数株主権を持てるわけなんです。株主提案権、それから、総会検査役の選任請求権、議案の要領の通知請求権、これは一%以上でできるわけです。

 今回のテンセントの件、これは三%以上なので、役員の解任の訴えができます。会計帳簿閲覧謄写請求権ができます。閲覧謄写請求権というのは、一定の範囲で、伝票とか契約書、領収書も見れてしまうんです。結構広い範囲の重要な情報、資料を見れてしまうわけです。

 これは拒絶事由とかもあるんですが、裁判上はやはり、これはなかなか認められなかったりもするので、やはり、実務の状況を考えれば、海外との関係では、やはり入口段階で一定程度の縛りをかける必要もあるんじゃないかなと思います。

 先ほどエフィッシモの件を言いましたけれども、エフィッシモの件は外為法上の規制が及んだ件です。一方で、今回の楽天の件、外為法上の規制が、事前規制は及ばない件なんです。どっちが我が国の安全保障にとって脅威かというと、私は後者ではないかと思うんです。

 これは、エフィッシモは株主提案していますけれども、結局は、アクティビストといって、株主利益のための活動ですよ。それに対して楽天は、やはり経済安全保障に関わってくる。なので、このエフィッシモのような純投資に近い件が外為法上の規制にかかって、経産省の圧力疑惑まであるわけで、だから、経済安全保障の観点からすると、これは逆じゃないかと思うんですね。

 この点、大臣、これはどう考えますか。

飯田(陽)政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございましたとおり、国の安全を損なわないようにしっかりと対応していくというのは非常に重要であるというふうに思っております。

 その上で、事前届出免除制度における遵守について、これをどう守らせるかということについての対応について、まず財務省からお答えしたとおりでございますけれども、それに加えまして、事前届出免除制度を利用した外国投資家が、それを実施した後に実際に一定の基準を遵守しているかどうかにつきましては、外為法当局といたしまして、任意の聴取あるいは報告徴求などを通じて、その遵守がしっかりと行われているかどうかということも当然確認できるわけでございまして、こういったことによりまして、事前届出免除制度が適正に運用されるようにしっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

梶山国務大臣 今政府参考人から答弁をしたとおりでありますけれども、委員のおっしゃることも理解をできますので、一般論として、しっかりとそれが漏れがないような形に考えていきたいと思っております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 諸外国の例、これはあえて申し上げませんけれども、やはり明示的なところもあれば黙示的なところもあるんですが、相手国の、どういう制度か、どういう法律を施行しているかというところまで考えて規制を導入しているわけなので、我が国も実態に即した危機管理、その規制をすべきであるということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、山岡達丸君。

山岡委員 衆議院議員の山岡達丸と申します。

 今日は、産業競争力強化法の一部を改正する法案ということで審議させていただくわけでありますが、非常に論点も多い法案でありますので、質疑時間も大変長く、これはいろいろ委員会の決定としてそうしていきたいという意思を持っておりますので、是非大臣、様々な点から御答弁賜れればと思うんですけれども。

 コロナ後の社会をにらんだ様々な施策をこの法案の中で考えていくということでありますが、一方で、目下、この新型コロナウイルスというのが大変全国的な広がりを見せているという状況であります。緊急事態宣言の延期が更になされる中で、蔓延防止の措置も取られる地域が今非常に増えている。その中で、今六都府県の緊急事態宣言、あわせて八道県の蔓延防止ということで、どうも今月いっぱいは、少なくとも今月いっぱいはそういう措置が取られるだろうという状況であります。

 私自身は北海道で基本的には活動している者でありますけれども、四日連続で四百人超えということで、人口五百万人規模でありますから非常に大きな数字が毎日推移しているという状況で、十四日からは外出自粛という、道独自の取組の中で様々やっているということで、知事の要望に基づいて蔓延防止の地域となっているわけでありますけれども、数字上は本当に緊急事態宣言でもおかしくないような、そういう状況であります。

 こういう中で、やはり地域の、北海道は新型コロナウイルスの影響というのが全国で最も早く、昨年二月、三月頃から出ていた地域でもありまして、本当に長期にわたって経済的な疲弊が続いているという状況であります。このコロナ後の社会の競争力強化も非常に重要なテーマなんですが、そうした問題意識に鑑みて、まず、現下のコロナの経済対策について、常に伺っているんですけれども、今日は今日でまた幾つか伺いたいと思います。

 コロナは、これからまた長期化の見通しを持った方がいいということを私は認識しております。昨年の今頃、まだ未知のウイルスだった頃、いろいろなことを言う人がいました。暑くなればウイルスはなくなるのではないかとか、そんな楽観的な話もあったわけでありますが、しかし、結局、国内とか世界的な情勢を見ればそうした状況にはなく、夏でも感染拡大局面を迎える可能性があるということであります。

 そうなりますと、各事業者、中小零細も含めて、長期展望の中で自分の企業を考えていく上で、一番念頭にあるのは資金繰りの問題でございます。この資金繰りの措置も、過去に様々、経産省を挙げて特例的な措置を取っていただいたのは承知しておりますが、しかし一方で、この措置がまた変わってくると最後のとりでがなくなってしまうような状況になる中で、昨年十二月の政府の説明によれば、今、政策金融公庫等が、政府系金融機関が実質無利子無担保で様々貸出しの、コロナの措置をしているという状況が、六月末までは続けるんだという見通しは出されている状況であります。

 このことを受けて、一足早く、民間の金融機関は三月ということもあったんですけれども、私の元にも、非常に、これまで借りずに頑張ってきたんだけれども、措置が切れちゃうんだったら今のうちに借りた方がいいのかとか、この期限を気にして、皆、その相談に来る方が私の元におります。

 これが、コロナがもうほとんど収束しているような状況で、それでもまだ必要だという段階であればよいのですが、長期的な、このコロナが続くという予測の中、本当に皆様が真剣に資金繰りを考えている中で、期限が来ることによって、この借入れをした方がいいのかどうかの判断が左右されるというのは、私はこれは健全な状況じゃないと思うんです。

 そのことを思ったときに、この六月末までということになっている政府系金融機関の無利子無担保、もちろん、今これを完全に打ち切るというよりも、その後は有利子等の措置はするんだとは言っているんですけれども、それは、中小零細企業にしてみれば大きな判断をしなければいけないタイミングになってしまうのかどうかという点を考えたときに、私は、今、六月末というふうに世間に公表していますけれども、これは延期すべきだということを強く思うんですが、大臣、この点についてどうお考えでしょうか。

梶山国務大臣 山岡委員おっしゃるように、資金繰りというのは中小企業にとって極めて重要でありまして、緊急事態宣言の発令や影響の長期化を踏まえて、これまで、実質無利子の融資の限度額引上げや政府系、民間金融機関に対する累次の配慮要請等を行ってきたところであります。

 委員からも御指摘ありましたように、昨年十二月の総合経済対策に基づいて、感染状況や資金繰りの状況を踏まえて、今年の前半まで継続することとしております。まずは、引き続き足下の資金需要にしっかりと対応していくことが重要でありまして、その上で、感染状況や資金繰りの状況を踏まえて柔軟に対応してまいりたいと思っております。

 大変、コロナの感染状況、今の状況だとなかなかまだ収束するような状況にはないという認識で景況というものを見ておりますので、しっかりとその辺は見極めてまいりたいと思っております。

山岡委員 今大臣から、収束している状況ではないという認識、そして、柔軟に対応していくということも含めてお話がありました。

 もう五月の半ばでありますので、六月下旬までということであれば、私は、決めていただくなら早く決めていただいて、これは発表いただきたいという思いであります。本当に様々施策が各省庁並んでいるんですけれども、例えば雇用調整助成金とか、ぎりぎりに延期が決まるものですから、これはかなり、いろいろな中小零細事業者にとって厳しい判断を迫られる局面が多くありまして、経済産業省に関しては、やはり、この状況であるならば、是非柔軟な対応を早めに決定いただきたいということを強くお願いをさせていただきたいと思います。

 あわせて、このコロナ対策の経済対策の一つで、この度、経産省がまた始めていただいている月次支援金、四月、五月に、月ごとに見て売上げ五〇%減というのが、緊急事態宣言あるいは蔓延防止ということで影響を受けていれば一定の金額を措置するということで、今、対応いただくことまでは決定いただいているんですが。

 これは経産省の方に確認させていただきたいんですけれども、例えば北海道でいえば、四月は緊急事態宣言でもなければ蔓延防止でもなかったです、いや、広がっている、厳しい状況ではあったんですが、月でいえばそういう月であります。五月は蔓延防止になった。そうすると、四月と五月で状況が違うんです。この月次支援金というのは、一月から三月までの一時支援金を基本的には同じ枠組みで踏襲していますから、そうすると、四月と五月というのは、事業者が申請するときに保管すべき資料というのが違うということになるんでしょうか。その辺、お答えをいただけますでしょうか。

奈須野政府参考人 お答え申し上げます。

 月次支援金の保存書類ということでございますけれども、現在検討中でございますが、一時支援金と同様のスキームを検討しております。

 この月次支援金申請に当たっては、給付要件を確認するために、証拠書類として、原則として、顧客台帳あるいは宿帳など、緊急事態宣言又は蔓延防止等重点措置の対象地域の顧客との継続した取引があることを示す書類の保存を求めております。

 他方、緊急事態宣言又は蔓延防止等重点措置の対象地域に所在する事業者については、個別に、今申し上げたような、全ての関係書類の保存をすることは求めず、保存書類の簡素化を可能とするということを検討しております。

 また、北海道の御事情をお話しいただきました。五月から北海道は蔓延防止等重点措置地域の対象となるわけでございますけれども、仮に四月を対象月として月次支援金の給付を受けた事業者の方は、その保存書類と同種のものを保存するということで差し支えないということでございます。

 引き続き、今後、制度の具体化、検討を進めていく中で、皆様の御意見も踏まえつつ、事業者の方々にとって使いやすい制度となるような工夫をしてまいりたいと思っております。

山岡委員 済みません、ちょっともう一回確認したいんですけれども、今、四月のものと同種のものを五月に保存するから認めるんだというお話をされましたが、その前段で、五月の方が保管書類の必要な量は少なくなるというお話があったわけで、それは、つまり五月にも四月と同じものを求めるということで、何か配慮いただいているような話としては聞こえなかったんですが。お話しいただくのであれば、例えば、五月がそこに関わっているのであれば、四月も一定の資料、証拠書類の資料は五月と同水準でいいよということであれば今のお話は分かるんですが、ちょっとその辺りの御説明、もう一回お願いできますか。

奈須野政府参考人 今申し上げたところでございますが、四月を対象月として申請しなかった方が五月に蔓延防止等重点措置地域の対象地域として月次給付金の申請をした場合には、今申し上げたような簡素化になるということでございます。

 一方で、両方の月について申請する方については、四月で一旦申請をするわけでございますから、その申請のために用意した保存書類と同種のものを保存するということで、どっちかでいいということでございます。

山岡委員 ごめんなさい、四月、五月だったら、五月の、そっちの方のやり方でもいいということですか。

奈須野政府参考人 いえ、そうではなくて、月次支援金は月ごとに判断してまいりますので、四月を対象月とした方は四月の保存書類が必要である。一方で、五月の場合はまた更に緩和されたものとなるので、四月でより詳細なものを御用意いただいている以上、五月ではそこまでは必要にならない、こういう関係でございます。

山岡委員 私はこのことをなぜ問いたいかというと、やはりこの月次支援金とか一時支援金というのは、極めて事業者の方の関心があるので、恐らく、いらっしゃる委員の先生方もそうですが、私の事務所にも問合せが相当多くあります。そのときに、どういう証拠書類を残せばいいのかということで、四月が影響を受けた月なのか、五月が影響を受けた月なのかによって違いますとか、そういう状況を説明すればするほど、申請者、コロナで実際に被害を受けた事業者の方々が心理的なハードルが高くなって、非常にその申請に、これは阻害要因になるということを強い問題意識として持っております。

 今、何か、さも五月は四月のままでいいという話をされましたけれども、五月の方が緩和しているわけですから、その答弁は私はちょっと不誠実だと思うんですよ。

 大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、これは六月以降の、またこれからスキームをつくって開始すると思うんですけれども、まだ時間はありますので、ここまで全国で、どのタイミングで蔓延防止とか緊急事態宣言が出るかどうかも分からない、六月以降もどうなるか分からない、恐らく、六月以降あれば、同じスキームを継続するわけでありますけれども、全国のどこか一か所で出れば、ほかの地域も影響を受けていれば申請できるという、その範囲を広げていただいているのはありがたい話なんですが、その分、その月々によって書類が違うとか、そのことが大きな阻害要因になるのであれば、私はこの際、この月次支援金の申請のスキームの、売上要件は残すにしても、保管書類については相当シンプルなものにしていただくことを、統一したものにしていただくことを検討いただきたいんですが、いかがでしょうか。

梶山国務大臣 まず、緊急事態宣言の一時支援金がありました。そのときも、登録機関によって事前確認が必要だということがありました。月次支援金も登録機関の確認が必要なんですけれども、一回目の登録確認をしていただければ、登録確認はもう必要なくなります。

 さらにまた、二回目以降に関しましては対象月の売上台帳だけで可とするような形で対応してまいりたいと思っております。

 ただ、一か月ごとに対象の地域も変わりますので、その地域と別なところで御商売されている方がそこの企業と取引があるという証憑は別な形で必要になるかと思いますけれども、極力書類というものは少なくなると思います。

山岡委員 大臣、私、申し上げたいのは、確かに、事前にもう既に申請した方は、そのスキームを、申請をそのまま引っ張ればよいということで、していただけるんだと思うんですが、ただ、本当に、全国津々浦々、それぞれの事業所の状況は違って、五月に影響を受けるとか、四月に初めて影響を受けるとか、様々なケースがあると思うんです。

 皆様、本当に、そういう問いがあるときに、その場合はどうなんです、この場合はどうなんですということを言うのが非常に、もう既に申請している人だったら、それはそのとおりかもしれないんですけれども、これから、新規に来る人たちが大きな混乱を呼ぶような話に私はなってはいけないと思いますので、そのことを是非、まだ、これから申請開始するまで時間がありますので、是非これは強く、検討いただきたいと思いますので、お願いいたします、大臣。

梶山国務大臣 周知をする資料も極力簡単に、簡素に、分かりやすいようにしたいと思っております。

山岡委員 是非よろしくお願いいたします。

 あわせて、一月から三月まで、これは一時支援金という名前の中で、この三か月のうちのどれか一か月が売上げ大幅減少で、緊急事態宣言等の影響を受けていれば申請できるスキームですが、これが五月三十一日までの締切りとなっています。

 今、四月、五月の追加的に行う中で、恐らく同様のシステムでやるんだとしたときに、過去の持続化給付金とかのことを考えたら、やはり、申請間際、超えた後に、自分が本当に申請できるというふうに気づいたというケースは、これは本当に多くあります。どこかでラインを切らなきゃいけないのは分かるんですけれども、しかし、私は、五月三十一日で切るということには、そこで切ってしまう必要はないんじゃないかと思っております。

 一月から三月までの売上げが減少しているという状況が、事業者の方で四月、五月以降に変化するわけじゃないことを考えたときに、この一時支援金についても、申請締切り、これは延期すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

梶山国務大臣 まずは、現在の申請期限以内に申請をしていただけるように、周知の資料など広報に努めてまいりたいと思っております。

 ただ、委員おっしゃるように、持続化給付金も数次にわたって延長いたしました。そのときの手法も含めて検討はしなくちゃいけないと思っておりますけれども、現時点では、まずは五月三十一日の期限をお守りいただきたい。それに関しまして、また状況によって考えてまいりたいと思っております。

山岡委員 現時点ではですね。まあ、五月三十一日なのですぐなんですけれども。ただ、締切日が一回設定されておりますので、そのことは大事にしていただかなきゃいけないと思うんですが、恐らく予測される、ここにいらっしゃる委員の皆様もそうですが、この五月三十一日後に、自分も申請できたということが大きく予想されますので、そのことを十分念頭に置かれて是非御対応いただければということをお願いさせていただきます。

 法案のことについて少し入らせていただきますが、今回の産業競争力強化法案の一部改正の中身についてでありますけれども、今回、この中身、様々、いろいろな措置が複合的になっているわけでありますが、その中で、カーボンニュートラル投資促進税制のことを少し、私の立場からも伺いたいと思います。

 これは、税制、二段階だということなんですけれども、いわゆる、三年間、例えば工場とかで炭素生産性、七%向上する、脱炭素に貢献する場合は税額控除五%、そして、それが一〇%向上する場合は税額控除が一〇%になるということで、いわゆる脱炭素に伴う様々な投資をしたところに対して、七%、一〇%の、向上した場合の二段階に応じて措置するという中身になっているわけであります。

 この法案を作成したのは昨年からずっと審議してきて決めているんだと思うんですけれども、このいわゆる七%と一〇%の数字の根拠といいますか、なぜこういう数字にしたのかということについて、これはCO2の様々な指標とかから逆算しているという話は昨日も経産省の皆様から伺ったんですけれども、ただ、これは、二〇一三年比の二六%削減という、先日政府が発表した四六%、これよりも前の段階のCO2削減の目標をベースにこの数字が計算されているということで、それは当然、法案を作る過程の上で、検討段階はそういう状況だと思うんです。

 しかしながら、先日、菅総理が気候変動サミットでいわゆる四六%削減ということを打ち出したときに、この法案というのは、カーボンニュートラルの目標と、これは前倒しも含めて何か強い措置を行わなきゃならないという立場に立つのではないでしょうか。これは政府に伺います。

矢作政府参考人 お答えいたします。

 今委員からお尋ねのありました七%、一〇%という数字についてまず御説明いたしますけれども、三年以内に七%以上という数値は、二〇五〇年八〇%削減という従来の高い目標を実現するに当たりまして、マクロの経済成長の見通しに照らした試算から設定したものでございます。これを上回る、三年以内に一〇%以上という数字につきましては、今般の二〇五〇年カーボンニュートラル目標、あるいはマクロの経済成長の見通し、こうしたものに照らして設定したものでございます。

 そして、二〇三〇年度二〇一三年比四六%削減という目標との関係でございますけれども、この目標につきましては、二〇五〇年のカーボンニュートラルに整合させるよう、野心的な目標として表明されたものでございます。

 今回の税制につきましては、この四六%削減という目標と自動的に連動するものではございませんけれども、先ほども申し上げましたとおり、二〇五〇年のカーボンニュートラル目標を踏まえた制度となっておりまして、この七%以上あるいは一〇%以上という要件、それからその措置内容というのは非常に高い水準というふうに考えてございます。

山岡委員 今の御説明によれば、一〇%の部分については、二〇五〇年の目標に向かっているもので、その二〇三〇年四六%というのもその目標は同一なものであるから、検討段階ではそれは連動はしていなくても、この一〇%という数字は結果的に二〇三〇年四六%とも整合し得るというような趣旨で、この法案についてはお話しいただいたものだと思っております。

 私、先日大臣に質疑させていただいたCCS、CCUSという新しい技術の話をちょっとここで改めてお話をしたい、伺いたいと思うんですけれども、大臣にも非常に前向きに、私の地元の地域が苫小牧という場所なんですけれども、話に触れていただいて、いわゆるCCS、CCUSの拠点のエリアであるというような趣旨も、経産省からの方の話もありました。

 CCSもCCUSも、計画によれば、これから私たちのこの地域も二年間にかけて、様々、地域連携の可能性等の調査もあるんですが、その先の商用化というのは、二〇三〇年目標ということになっております。

 二〇三〇年目標というのが、経産省に昨日伺ったんですけれども、これが二〇三〇年四六%の部分にどう影響するのかといえば、まさにこれこそ四六%とかの議論が出る前に定めている目標でありますから、二〇三〇年商用化というのは、当たり前の話でありますけれども、四六%の内数として貢献できる量は僅かな部分であります。

 しかし、今先ほど、この法案については、カーボンニュートラルを目指して一〇%という高い目標ということで今の政府方針に整合するんだということであれば、私は、このCCSとかCCUSの今目標も、政府が新たに発表した二〇三〇年四六%削減に資するように前倒しをするべきだということを強く思うわけであります。これはまず、経産省にちょっとこの見解を伺います。

矢作政府参考人 お答えいたします。

 このCCUSでございますけれども、二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するためのキーテクノロジーの一つというふうに認識してございまして、パリ協定の長期成長戦略においても、とりわけ石炭火力発電については、商用化を前提に、二〇三〇年までにCCUSを導入することを検討することとしている、そういった位置づけもしてございます。

 一方で、CCSを商用化し導入していくためには、コスト低減、それからCO2の輸送、あるいは関連制度の整備、あるいは貯留適地の確保等々、様々な課題が存在することもまた事実でございます。

 経済産業省といたしましては、苫小牧での研究開発等を通じた更なるコストの低減とか、あるいは、二〇二四年に、世界に先駆けた液体CO2船舶輸送の技術確立を目指すための実証試験等々の取組を行ってまいっているところでございます。

 今般の新たな削減目標も踏まえれば、CCUS、カーボンリサイクルなどのこうしたテクノロジーの重要性というのはより一層高まっているというふうに認識しておりまして、社会実装に向けまして迅速に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

山岡委員 今、済みません、経産省の方に最後の部分は余り答えていただかなかったので、大臣に少し伺いますが。

 意欲だけでもいいんです。要は、今、二〇二四年までの様々なことはお話ありましたが、二〇三〇年商用化、課題もおっしゃられました、コストが合うのかどうかとか。しかし、新たに、ここ最近になって四六%削減ということを設けた以上、やはり可能な限り早めていくということが重要だと思うんです。二〇三〇年、このCCUS、CCSの商用化、早めますと断言していただかなくても結構なんですが、しかし、やれることはやって早めていくということも考えていくという趣旨のことを大臣からお話しいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

梶山国務大臣 答弁を限定して求められているような気もするんですけれども。

 確かに、今、技術開発していくべき事項というのは十四分野で想定をしておりますけれども、その中でも、進み具合、進捗具合というのは様々であります。特に、CCUS、CCSの関連で、その手前の段階でのCO2の分離、回収という技術に関しましては日本がトップを行っていると思っておりますし、アメリカ、中東、またヨーロッパからも引き合いが現実に来ているということでありますから、適地を探すことと、あと、さらに、カーボンリサイクルという技術も含めて、できる限り前倒しをして、日本のCO2削減に貢献をしてまいりたいと思っております。

山岡委員 大臣、私は、やりますと言ってくださるのであれば、限定せず、そう言っていただければありがたいとは思っておるんですが。

 是非、今お話もいただきましたけれども、理論上、やはり新しい目標が意欲的であるのであれば、これまでの計画も更に意欲的になってしかるべきだと思いますので、大臣、お話を今いただきましたけれども、是非、できる限り早くやっていくということを進めていただきたいと思います。

 その上で伺いたいんですが、本当に、私たちの地域も協力を大いに上げてこの研究をやっていきたいという中で、もちろん、経済産業省、NEDOを通じて様々な予算もつけていただいて、そして事業者が手を挙げていただいて進んでいるところでありますが、前倒しということを、理論上あり得る中で、カーボンニュートラルについては、二兆円に及ぶカーボンニュートラル基金というのもあります。この活用も是非、前倒しになったいろいろな様々な目標について、例えば苫小牧の様々な実証実験等も含めて、活用して進めていただきたいという思いなんです。

 伺いますけれども、CCUS、CCSの様々な、これから社会実装に当たって、新しいパイプラインを入れるんだとか何とかを入れるんだとか、様々、課題も出てくるとは思うんですけれども、カーボンニュートラル基金も活用した取組は行われる可能性があるんだということ、その部分はどうなのかということを経産省に伺いたいんですが、いかがでしょうか。

矢作政府参考人 お答えいたします。

 苫小牧につきましては、三十万トンのCO2の圧入完了後も、市長のリーダーシップの下に、苫小牧CCUS・カーボンリサイクル促進協議会を新たに立ち上げるなど、地元産業が一体となって新たな技術に挑戦する、こうした機運があるというふうに認識してございます。

 また、苫小牧につきましては、ガス油田とか製油所、火力発電所、製造業、こういったものの立地がございまして、そのCO2の排出、回収、利用に関する主要なバリューチェーンが集約された地域でございます。このため、苫小牧市というのは、CCUS等、あるいはカーボンリサイクル、こういったものを核として、世界に伍する脱炭素技術の実証拠点となる可能性が十分にある、こういうふうに認識してございます。

 経産省といたしましても、こうした挑戦を行っている苫小牧市、これにおきまして、CCSの実証で得た資産や知見を活用いたしまして、カーボンリサイクルによるメタノール製造の実証調査、あるいは、産業間で連携したカーボンリサイクルの実現可能性調査を実施しているところでございます。

 今、基金に関するプロジェクトについて御質問ございましたけれども、基金で実施するプロジェクトにつきましては、審議会での議論などを経て内容が決定され、公募などの所定のプロセスを経て実施主体が選定されていくというふうに考えてございます。カーボンリサイクル分野というのは日本の競争力がある分野でありまして、更なるコスト低減や社会実装を進めていくためにも、グリーンイノベーション基金の活用等も検討して、積極的に取組を進めていきたいというふうに考えてございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、苫小牧をCCUS、カーボンリサイクル実証拠点と位置づけまして、段階的に実証を進めてまいりたい、このように考えてございます。

山岡委員 今御答弁いただいたんですが、基金については、審議会を通じて様々決定していくんだというお話でありました。

 是非大臣にお伺いしたいんですけれども、手続上の話は経産省から今お話を伺いました。しかし、本当に地域の中で、ある種、CCUSというのは地中にCO2を埋める、地中、海中に埋めるという中で、漁業者の理解とか、本当に様々な理解の中でこの北海道の苫小牧というエリアがそのことに協力をしているのは、本当にこの分野をもって世界に様々貢献しながら、自分たちの地域の、これから先、先が見えない中で、大きな存在の意義を見出していきたいということもあります。

 そこで、まず一つ、さっき答弁の中で触れていただかなかったんですけれども、やはりこの基金の活用ということで、こういう地域等に還元される可能性があるということは、大臣の立場からどのように考えますでしょうか、伺います。

梶山国務大臣 中長期にわたる研究開発のための資金ということでありますから、当然、その地域での活用ということにもつながってくると思っております。

 そして、その研究開発に必要なインフラも含めて、先ほど政府参考人からありましたけれども、苫小牧はそろっているということでありますし、CO2の削減で、CCUSというのはやはり世界中で二割減らす効果があるということをIEAの報告にも出されておりますので、非常に重要なまた分野であると思っておりますので、いち早くこのリサイクルというものをどう技術確立をしていくかということも含めて、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

 先ほども申しましたけれども、CO2の分離回収技術という点では日本が世界にも先駆けているわけでありますけれども、グリーン成長戦略の中では、二〇五〇年に年間十兆円の世界の分離回収市場のうちの三割のシェアを取りたい、そういったもののベースになるのが今行われている研究開発だということで御理解をいただきたいと思います。

山岡委員 大臣から、そうした基金の活用もあり得るというお話と、さらには、今お話しいただいたんですけれども、非常に大きな、十兆円の三割のシェアを取るんだという話もいただきました。

 金額ベースのお話をいただいたので、せっかくなのでこれも一つ大臣にお伺いしたいというか、私の強い要望としてもお伝えしたいことなんですけれども、もちろん、商業ベースで、この脱炭素というのがまた様々取組をしていく中で事業者が参画して、日本がそこにリードしていくという視点は大事だと思うんですが、一方で、この産業界は、CO2四六%削減等でかなり厳しい思いもしながらいっている。ですので、金額的なシェアの部分はもちろんそうなんですけれども、こうした技術をもって、日本のCO2削減量のみならず、世界のCO2にどれだけよい影響をもたらすかという、その視点を是非日本なりに研究をして、目標を立てていただきたいと思うんです。

 例えばその二〇一三年比の数字でいえば、日本は三・八%に対して、中国やアメリカはもう二桁以上の数字のCO2排出をしている中での削減なわけでありますから、こういう技術をもって世界でその技術が貢献できれば、CO2削減量についても世界的に見れば大きな貢献をするということになるわけでありまして、そこの部分の数字的な指標というのがもしあったり、あるいは目標とかがあったりすれば、またなお一層、この技術研究についての意義が深まると思っておりますので、そこを並行して研究して、そして何かビジョンを持って発表していく、そういう視点を持っていただきたいんですが、大臣、いかがでしょうか。

梶山国務大臣 途上国であるとか新興国のCO2の削減ということは大きな課題であると思っておりますし、今、新興国、EUと米国を中心に削減の話をしていますけれども、これはルール決めがまずあると思います。ルール決めにしっかりと入っていくということと、自国のみならず、自地域のみならず、やはり新興国や途上国をどう、この二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けて方向性というものを持たせていくかというのは非常に重要なことでありますので、委員がおっしゃったような視点を持った上で、世界にアピールをしていければと思っております。

山岡委員 今大臣のお話ありましたが、ASEANとか、様々、本当にどういうふうに取り組んでいくのかというときに、この日本の技術の貢献というのも相当あるんでしょうし、是非そのことをお願いもしたいですし、また折に触れて、このことの進捗も含めて伺えればと思います。大臣から、様々、今意欲的なお話をいただいたことを心強く思います。

 今日は、この法案に絡んで、事業再構築部分も伺おうかと思っておったんですが、ちょっと質問が、時間が予定どおり進まなかったものですから、またこのことは次回に質問させていただきたいと思います。

 今日は様々な議論をありがとうございました。

富田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 前回、五月七日の質問で、今回の法案の基は、菅首相肝煎りの成長戦略会議がまとめた昨年十二月の実行計画ということが明らかになりました。その三本柱、グリーン成長戦略、産業の新陳代謝、そして中小企業支援の強化のうち、今日は二本目の、事業再編、事業再構築を通じた産業の新陳代謝の促進ということに関わって、産競法と、その前身の産業活力再生特別措置法、産活法による、二十二年間にも及ぶ構造改革と規制緩和が何をもたらしたかについてただしていきたいと思います。

 まず、一九九九年の産活法は、大企業が、人、物、金、この三つの過剰をそぎ落として競争力を強化すれば日本経済全体がよくなるということで、株主資本利益率、ROEの向上を目指す事業再編、リストラを税金で応援するものでありました。

 そこで、梶山大臣に伺います。

 大企業は不採算部門や雇用を切り離して筋肉質になったかもしれないんですが、労働者の所得は奪われて、雇用は不安定になりました。取引先中小企業にはコストダウンが押しつけられた。結局のところ、日本経済全体がよくなるどころか、格差と貧困がもたらされたんじゃないかと思うんですが、この点どうお考えですか。

梶山国務大臣 競争環境や需要構造などの変化に伴って、企業の事業に栄枯盛衰が生じること自体は避けられないものだと思っております。それは産業も、全体でも同じだと思っております。

 こうした場合に、企業としては、経営不振の事業から撤退をし、成長の期待できる事業分野に資金や人材といった経営資源を振り向けていくことが必要となってまいります。国全体で見ても、経営不振の事業に資金や人材が張りついたまま企業が倒産することになれば、資金や人材の価値が大きく毀損することになり、経済全体に悪影響を及ぼすものと考えます。

 産活法を含めて、これまでの産業構造の調整を支援する立法措置や、成長の期待できる分野に資金や人材が円滑に移動することを支援し、国全体で産業構造や就業構造の転換を円滑化してきたものであります。この法案を通じて、日本企業の競争力強化、ひいては国内における質の高い雇用の創出に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

笠井委員 大臣は、合成の誤謬という問題を十分御存じのはずだと思います。私も参議院議員時代の九九年当時に、リストラの嵐のさなかに予算委員会で、当時の小渕総理や、あるいは与謝野当時は通産大臣にただしました。個々の企業にとっては、人員削減によって一時的に財務状況がよくなるかもしれないが、全ての企業が一斉にやれば、働く場所が失われて、所得が奪われて、消費を冷え込ませる、日本経済全体に甚大な影響をもたらすことになると。

 大企業のリストラ支援の産活法、産競法というのは、そうした合成の誤謬の旗を振ってきたんじゃないかと思うんですが、どういう認識をお持ちでしょうか。

梶山国務大臣 笠井議員御指摘の合成の誤謬とは、個々の企業にとって合理的な経営判断だとしても、国全体としては、それらを合成して見ると、経済や雇用に悪影響を及ぼしたのではないかとの主張であると推察をいたします。

 繰り返しになりますが、個々の企業が必要な事業構造改革を先送りし、経営不振の事業を放置し続ければ、そうした事業に張りついている資金や人材といった経営資源の価値が大きく毀損をします。経済全体としても質の高い雇用確保が困難になるものであり、合成の誤謬との批判は当たらないものと考えております。

 産活法や産競法は、企業ができるだけ早期に、成長を期待できる事業分野に経営資源を振り向けていくことを支援することで、日本企業の競争力強化、ひいては国内における質の高い雇用の創出に取り組んできました。

 加えて、産競法では、事業再編計画などの認定に当たって、従業員の地位を不当に害するものではないことを要件としており、企業の成長とともに、産業構造改革を踏まえた雇用の安定を最大限確保していくこととしております。

 企業が産業構造改革を行う過程において、個別の状況によって、失業の発生などの痛みが全く生じないとは言えませんけれども、このため、政府全体として、失業保険や職業訓練の実施など、必要なセーフティーネットの確保にも引き続き万全を期してまいりたいと思いますし、職業訓練、特にまたリカレント教育等々も含めた形でのセーフティーネットをしっかりと整備をしてまいりたいと思っております。

笠井委員 今るる述べられたんですけれども、結局、全ての企業が一斉にリストラをしていても同じことが言えるかということにもなってきます。

 九九年に当時の与謝野通産大臣は、リストラというのはその一つの企業にとってはバランスシートをきれいにするという意味では大変いいわけですが、全部の会社がリストラをやるということは全部の会社で不況運動をやっているのとほとんど同じだと答弁されました。リストラで大企業が競争力をつけたことが労働者の賃金上昇につながったかというと、そうなっていないじゃないかという問題だと思います。

 そこで、配付資料を御覧いただきたいんですが、労働政策研究・研修機構、JILPTは、毎年、データブック国際労働比較を公表しております。資料にありますが、各国の製造業の時間当たり賃金の推移を、二〇〇〇年を一〇〇として指数化し、折れ線グラフにしたものであります。

 二〇一七年に、ドイツが一四六・五、フランスが一五五・五、イギリスが一五七・八、アメリカが一六二・四と、どの国も賃金が一・四から一・六倍に伸びております。ところが、日本は、御覧いただきますように、二〇一七年に一〇四・一ということですが、この折れ線を御覧いただいて、十七年間の賃金はほぼ横ばい状態にとどまっていると。

 梶山大臣、日本だけ賃金が増えていない、大企業が産活法や産競法の支援を受けて競争力を高めても、それが賃金の上昇に結びつかなかったのはなぜだというふうにお考えでしょうか。

梶山国務大臣 政府としては、企業が収益を上げて、それが賃金の形で分配をされ、国民の所得や消費が増えることで成長が進むという分配することによる成長と、企業が成長することで賃金支払いのパイが増えるという成長からの分配が循環することで、成長と分配の好循環が実現するという考え方を取っています。

 特に、賃上げは、成長と分配の好循環を実現するための鍵であり、政府として積極的に取り組んでまいりました。これにより、連合の調査によれば、二〇一二年の政権交代後、コロナ禍の前までは六年連続で、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現をしております。雇用の大幅な増加と相まって、総雇用者所得は名目でも実質でも増加が続くなど、雇用・所得環境は着実に改善をしてきているというのが現実であります。

 また、最低賃金は、政権交代前の十年間で、全国加重平均で八十六円の引上げにとどまっていましたけれども、政権交代後の七年間で百五十二円の引上げを実現しています。さらに、同一労働同一賃金などの導入も進めてきたところであります。

 今後も、経済産業省としては、労働生産性を上げ、賃金を引き上げられる環境整備をし、成長と分配の好循環を実現していくことに全力を傾けてまいりたいと考えております。

笠井委員 好循環ということを言われました、そして二〇一二年の政権交代後ということで言われましたけれども、企業が一番活躍しやすい国を目指した第二次安倍政権発足後、労働者の実質賃金は十八万円も減少しているわけですよね。これが現実じゃないんですか。

梶山国務大臣 総雇用者所得が名目でも実質でも増加が続くということは、雇用環境が大きく変わってきたということであります。その上での数字だと思っております。

笠井委員 実質賃金が下がったことは間違いないことであります。

 この間、大企業は、競争力をつけて世界的な多国籍企業に成長して、史上空前の利益を上げてまいりました。この状態は、多国籍企業の利益と国民の利益が一致しない、これは私が言っているんじゃなくて、一九九二年の通商白書がそう言っていたわけですが、その指摘がまさにそのとおりになっているんじゃないかと思うんですか、どうでしょうか。

新原政府参考人 委員のJILPTのこの資料でございますけれども、先ほど拝見をいたしまして、二つぐらい論点があるかなと思っております。

 一つは、委員自身が言われましたように、これは実は名目の賃金でございまして、これはいいことではないんですが、日本の場合はデフレだったものですから、実質賃金にするとこの差はしぼんでまいります。

 それとあと、もう一つ、すごく大きいことは、先ほど大臣から答弁させていただいたものとの関係でありますが、これは製造業で取っておるわけでございますけれども、米国とかがこの製造業において賃金が上がってきている大きな理由は、製造業の雇用に占める割合が減少してきているということであります。その意味は、空洞化してきているということでございまして、米国の場合だと一二%から八%、それから英国の場合だと一三%から八%、我々の場合には、日本の場合にはまだ十五・四%という形で、いろいろな、先ほど大臣から答弁させていただいたことも含めて維持をしてきているわけでございます。

 そういうこともちょっと総合的に御検討いただければというふうに思います。

笠井委員 私の言ったことに何一つ答えていないんですよ。通商白書の指摘がどうだったかと言っているのに違うことをまた言っている。こんなじゃ話にならないですよ。

 このグラフが示すこと、そして、実質賃金が第二次安倍政権以降、十八万円も減っているというのは現実で、この間、製造業の海外生産比率は増加の一途で他方なっています。海外従業員は二十年間で二倍ということで、反面、国内産業は空洞化をして雇用が失われました。多国籍企業の競争力強化が国民の暮らしの豊かさに結びつかなくなっている。まさにそういう矛盾がどんどん広がっているという事態は明らかだと思います。

 競争力をつけた大企業は、その利益を、ではどう使っているか。先ほどグラフでも、賃金は上がるどころか抑制されていると。取引先や下請中小企業には単価引下げが押しつけられている。他方で、大企業への優遇税制も相まって増えたのが内部留保であります。

 法人企業統計年報によれば、資本金十億円以上の大企業の内部留保は、二〇〇八年度の二百八十一兆円から一九年度の四百五十九兆円へと、十年間で一・六倍。内部留保が積み上がっただけではないかというふうに思います。

 具体的には、トヨタ自動車の内部留保の問題をリーマン・ショック直後の二〇〇八年に、十二月の予算委員会で私、取り上げて、当時の麻生総理に大企業の内部留保を活用して雇用の確保に努めるように求めました。その当時のトヨタの内部留保は十三兆円ですが、二〇二〇年三月期時点では二十六・八兆円に増えております。電機産業で見ても、ソニーは四・四兆円、日立は三・七兆円、パナソニックと三菱電機はそれぞれ二・五兆円もの内部留保がある。

 大臣に伺いますけれども、コロナ禍の今こそ、大企業の巨額な内部留保を従業員や取引先、下請中小企業など社会に還元することは、まさに大企業の社会的責任ではないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

梶山国務大臣 企業がいざというときに備えてある程度の現預金を保有することは必要であると考えております。コロナ禍といえども、その事情は変わらないことから、内部留保の取崩しが社会的責任とまでは言い切れないと思っております。

 他方、日本企業が付加価値の高い製品やサービスを生み出し、労働生産性を向上させていくためには、コロナ禍の中でも経済を牽引しているデジタルやグリーンといった成長の潜在可能性のある分野において、積極的に未来への投資を進めることが必要であり、これを後押しする政策も必要であると思っております。

 このため、今般の法案では、グリーン、デジタルなどへの集中投資を進めるための投資促進税制や金融支援を措置しているところであります。

 今回の法案だけでなく、予算、税制による措置を総動員することによって、グリーン社会への転換、そしてデジタル化への対応、将来の競争力を確保するために必要な中長期的な投資を促してまいりたいと思っておりますし、また、大企業と中小企業との取引の関係でいえば、そういったものを改善するべくしっかりと対応をしているところであります。

笠井委員 内部留保について、いざというときに使うもので、ためているんだという話でしたが、まさに今、コロナで、いざというときなのに使っていないという現実があるわけで、そういう点では、政府は社会的責任を果たさせなきゃいけないときに、させるどころか逆をやっているというのが今の現実ではないかと思います。

 そこで、ソニーの子会社の退職強要の問題を具体的に取り上げたいと思います。

 ソニーは、巣ごもり需要もあって、グループ全体で、二〇二〇年度の売上高八兆九千九百九十四億円、営業利益九千七百十九億円と、過去最高をこの時期に更新をしております。二〇一四年には、産競法で、国内のパソコン事業と関連資産の一部を日本産業パートナーズが管理運営するファンドが出資するVJホールディングスに譲渡をして、事業再編計画の認定を受けております。

 経産省に伺いますが、これに伴って譲渡先はどんな支援措置を受けたんですか。

新原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ソニーのパソコン事業の譲渡については、二〇一四年にVJホールディングス、現在のVAIO株式会社でございます、から産業競争力強化法に基づく事業再編計画が申請され、二〇一四年六月に認定を行っております。

 当該計画認定によりまして、VJホールディングスが、事業の譲受けに伴う出資による資本金の増加がございます、これが四億九千九百九十七万円でございますが、それに係る登録免許税の軽減措置を受けております。軽減額が百七十四万九千九百円となっております。

笠井委員 その中に、中小機構の債務保証も受けているはずです。

 この事業再編計画の開始時と終了時の、では、従業員数は実績ベースでそれぞれ何人でしょうか。

新原政府参考人 ソニーのパソコン事業の譲渡に関する従業員数に関してでございますが、事業譲渡されたソニーとその子会社のパソコン事業部門において、事業再編開始時の二〇一四年五月には千二十四名が在籍しております。このうち、約二百五十名が新規設立された現VAIO株式会社に転籍をして、計画終了時である二〇一七年五月末時点では二百四十七名が在籍しておりました。

笠井委員 当初計画では、今答弁あったように、終了時二百五十一名となっておりましたが、更に人員減の二百四十七名が実績と。

 大臣、ということは、この事業譲渡によって従業員が七百七十七名も減っているわけですね。こんなリストラを、減税で支援したということになりますね。

梶山国務大臣 やはり、企業においては、最新の必要なものというものを産業として扱っていくことは非常に重要なことであります。その途中で失業なき雇用移動というものが必要になるわけでありますから、そういったものをしっかり政府が後押しをしていくということになると思います。

 ただ、全てが全て、どの企業も、雇用が円滑に移動するとは限りませんし、そうなった場合のセーフティーネットの充実ということも、しっかりと他省庁との連携で考えております。

笠井委員 先ほどあった登録免許税の減税措置なんかをやってリストラを応援しながら、結局のところ、これだけ減っている。ソニーは、この九年間で五万七千人もリストラしているわけですよ、全体でいうと。

 今、ソニーの一〇〇%子会社であるソニーエンジニアリングの退職強要が大問題になっています。週刊ダイヤモンドの最近号でも、とてもドライな黒字リストラという、項目のトップに取り上げられたほどであります。

 昨年十月以降、従業員五百五十人のうち、四十五歳以上の二百二十名に対して、希望退職募集と称した退職強要が繰り返されております。ある男性技術者は、面談の際に、今ある仕事にベストを尽くしたい、辞めるつもりはないと答えたにもかかわらず、管理職から、このまま成果が出なければ給料がダウンする、これからも二週間に一回の面談を行うと迫られて、精神的苦痛を感じたということであります。

 厚労省に伺いますが、一般論として、労働局に対して労働者から紛争解決の援助の申出があった場合にどのように対応していますか。

富田政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県労働局等におきましては、総合労働相談コーナーというのを設けておりまして、そちらで労働問題に関する相談をワンストップで受け付けております。

 その中で、例えば早期退職等に関する個別労働紛争の紛争解決援助の申出があった場合におきましては、個別労働紛争解決促進法に基づきまして、都道府県労働局長は助言、指導を実施することとしております。

 厚生労働省としましては、このような制度を活用しまして、紛争当事者に対して問題点を指摘し、解決の方向性を示すことなどにより、自主的な解決を促してまいりたいと考えております。

笠井委員 個別紛争解決促進法に基づいて指導助言を行うということであります。

 このソニーエンジニアリングのケースでいいますと、昨年の十二月の二日の日に、東京労働局が小川功一社長に対して、文書で三点の助言を行っております。

 一つは、法律で、紛争当事者は、早期に、かつ、誠意を持って、自主的な解決を図るように努めなければならないと定められているということを言っている。二つ目に、最高裁の判例があって、被勧奨者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は違法な権利侵害に当たるとされる場合があるというふうに言っている。三つ目に、再度精査の上、改めて労働者と話し合われることを助言する。ソニーエンジニアリングの社長に対して、この紛争問題について、そうやって助言を行っているというのが東京労働局であります。

 大臣に伺いますけれども、コロナ禍でも過去最高益を上げて、しかも五兆円もの内部留保を蓄えているソニーでも苛烈な退職強要が行われている。こんなときに産競法で大企業のリストラ支援の優遇策を講じることは、リストラするなら今がチャンスとばかりに、人減らしを一層加速させることになるんじゃないかと思うんですが、この点、どうお考えですか。

梶山国務大臣 今の時代、世界は目まぐるしく変わっているわけでありまして、事業の再編というものも、その都度していかなければ、企業が成り立たなくなるのもあっという間であります。

 そういった中で、事業の再編というものをしっかりと支援をしていくということ、そして、失業なき労働移動と言いましたけれども、円滑な労働移動ができるように、できる限りの努力はしていこうと、さらにまた、セーフティーネットというものを充実させていくことが必要であると思っております。

笠井委員 事業再編の名で、結局、こうやって現場では退職強要という形が行われている。労働局だって助言するということになっているという状況なんですよね。そのときに、今、こういう法制でどんどんそういうことを突き進めるようなことでやっていいのか、リストラを進めていいのかということが問われていると思うんです。

 東京商工リサーチの調査によれば、二〇二〇年に上場企業九十三社が早期退職、希望退職を募集しております。このうち三割が黒字リストラであります。これはリーマン・ショック直後の二〇〇九年に次ぐ数で、募集人数は、判明している八十社だけで一万八千人を超えております。ソニーのように早期退職者募集を公表していない企業を加えますと、すさまじい規模でのリストラ計画が今進められているというのが、この日本の現実があるわけです。

 大臣、そうした中で、巨額の内部留保を活用して雇用を守れと、むしろ経産省から産業界にはこれはきちんと言わなきゃいけないと思うんですよ。いざというときに蓄えているんだったら、今じゃないですかと、そっちをちゃんとやって雇用を守れと、これが必要じゃないでしょうか。

梶山国務大臣 法律に違反するもの、そして、労使間の協定、また取決めに違反するものに関してはしっかりと監視をしていかなければならないと思いますし、ただ一方で、先ほど申しましたように、事業再編というのは待ってくれませんから、待ったなしでありますから、そういった中で、どう企業を構築していくか、そして従業員構成を構築していくかということは、企業は常に考えているわけでありまして、そういったものを後押ししていきたい、そして、できる限りの雇用の維持を図っていただきたいと考えております。

笠井委員 私が先ほど紹介した、リーマンのときの麻生内閣に対する質問の中では、麻生内閣では経営者団体に対して内部留保の活用や労働分配率の引上げを要請したということがあったんですが、菅内閣ではそうした対応はもうやらないということですか。

梶山国務大臣 コロナ禍において、雇用の維持、そして内部留保の活用ということもお話をさせていただいております。

 それぞれの企業による事情があると思いますけれども、企業の中でそういった声を受けた上での対応だと思っております。

笠井委員 内部留保の活用については、どんなふうな話を、どこで、誰に対してやっていらっしゃるということになりますか。

梶山国務大臣 昨年の春のコロナ禍以降、やはり、雇用の維持という点において、内部留保の活用というものも一つの手段であるということをお話をさせていただいております。

 それは経済団体を通じてお話をさせていただいているということでありまして、そういった中で、事業の再編計画ということも含めて、今の状況を見ながら企業それぞれが考えていることであると思っております。

笠井委員 そうやって要請しているにもかかわらず、内部留保は増え続けて、一方ではリストラが進められているという形で、雇用が失われている、あるいは賃金が減っているという事態については、大臣はどう思っていらっしゃいますか。

梶山国務大臣 今のコロナ禍において、やはり、そういうものが重なると、大変、労働者側というのは大変だと思っております。

 そういったことに対して、雇用のセーフティーネットというものをしっかり充実させるということも必要ですし、労働保険の中で今行われているわけでありますけれども、できる限りの我々も支援をしてまいりたいと思っております。

笠井委員 経団連は、二〇〇八年に、内部留保は景気の低迷や不測の事態を従業員などに負担を強いることなく乗り切っていくためにも必要不可欠だとため込みを正当化したわけですが、ところが、いざリーマン・ショックの際には、大量の派遣、非正規切りを強行した。

 コロナ禍の下で、今、リストラというのが、一年以上も痛めつけられている労働者、国民の暮らしや、中小企業、地域経済を切り捨てるものになっている。いわば、惨事便乗型と言われますが、そうしたリストラはやめようと政治が役割を果たすべきときだと思うので、これはもうしっかりやらなきゃいけないときだと、このことを厳しく指摘をしまして、今日の質問は終わります。

富田委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延でございます。先週に引き続き、質問をさせていただきます。

 まずは、中小企業の基本的な考え方について質疑を申し上げます。

 今般のコロナ禍における大企業が減資をして中小企業になる事例が続出をしております。中小企業基本法における中小企業要件を満たす水準まで資本金を減らすことにより、実態的には大企業であるにもかかわらず、税制優遇に加え、補助金、助成金、制度融資等、中小企業向けの様々な支援策が利用できるようになります。

 政策資源には、当たり前のことですけれども、限りがあります。こうした企業が増えれば、本来支援を必要とする企業に対して支援が行き届かなくなるのではないでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

飯田(健)政府参考人 お答えいたします。

 最近になりまして、委員御指摘のとおり、大企業が減資をしているという事例が複数あることは承知をしております。

 税制措置については、それによって本来支援を必要としている中小企業に対する支援が行き届かなくなるわけではないわけですけれども、ただ、御指摘の大企業による減資につきましては、平成二十九年度の税制改正におきまして、所得が過去三年平均で十五億円を超えるような大企業並みの所得を得ている企業には中小企業向けの租税特別措置を適用しないという、このような税制改正も行ってきております。

 加えて、予算措置につきましても、資本金のみによらず、それぞれの政策目的に応じて対象を定めて支援するということとしておりまして、例えばものづくり補助金などでは、中小企業でありましても、直近三年分の各課税所得の年平均額が十五億円というものを超える者を対象から除外をしております。

 企業実態が変わって中小企業並みとなって減資する場合もございます。企業が減資を行う事情や目的は様々であると承知をしておりますけれども、税制を始めといたしました支援策が本来の目的に沿って適用されているかどうかも含めて、引き続き、状況をしっかり注視してまいりたいというふうに考えております。

美延委員 そこはしっかりチェックしてくださいね。

 本改正案では、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群に支援対象を拡大するとされていますが、そのために、小規模企業の支援が犠牲になるのではないかと不安を感じております。中小企業支援自体に係る資源配分の在り方について、梶山経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。

梶山国務大臣 中小・小規模事業者は多種多様であり、業種、地域ごとに役割も在り方も違うために、それぞれの役割に応じて支援を行っていくことが重要であると考えております。

 本法案では、規模拡大に資する支援措置に限って、資本金によらず、中小企業の定義よりも従業員基準を引き上げた新たな支援類型を創設することなどを通じて、中堅企業への成長を後押ししていくことにしております。

 一方、地域経済や雇用を支える中小・小規模事業者の持続的な発展を支援することは、引き続き重要な政策課題であります。

 このような観点から、小規模事業者の販路拡大を支援する持続化補助金やものづくり補助金を含む中小企業生産性革命推進事業については、令和元年度補正から令和二年度の三次にわたる補正予算で、総額七千六百億円の支援を行ってきているところであります。また、当初予算でも、平成二十八年度から令和三年度の五年間で小規模事業者に特化した予算を一〇%以上増やしており、小規模事業者に支援が届かなくなるということは考えておりません。

 引き続き、中小企業のそれぞれの役割に応じてきめ細かく支援を行ってまいりたいと思っておりますし、中堅企業を伸ばしていくことによって雇用が増えるということもありますし、またさらに、日本の産業というものの発展という可能性もありますので、そういった面も是非また考慮に入れて、しっかりと対応してまいりたいと思います。

美延委員 是非よろしくお願いいたします。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う三回目の緊急事態宣言の発令、そして延長が決定いたしました。企業の経済活動は再び大きな制約を受けることになります。休業要請等を含むこれまでの蔓延防止等重点措置より強い措置を伴う緊急事態宣言は、飲食店に限らず、あらゆる産業への影響は避けられません。

 とりわけ中小企業はここまで何とか踏ん張っているという状態ですが、今回の緊急事態宣言の再々発出で追い打ちをかけられ、ますます疲弊することになります。休業要請や時短要請に対して、補償がなければ休業要請や時短要請を受け入れ難いというのが事業者の本音であると思います。こうした事業者の声に応える支援が絶対不可欠だと思います。

 二回目にわたる本年一月の緊急事態宣言では、一時支援金や各種支援策の期限延長等を処置しました。三回目にわたる今回の緊急事態宣言も長期化し、これまで既に多大な影響を受けている企業は更に苦境に立たされることとなります。このことからも、二回目の支援策以上の強力な支援策を今回の緊急事態宣言に対応して講じる必要があるのではないかと考えております。

 そこで、大臣に伺います。今後、早期の感染収束が見込めない中、これまで以上にきめ細やかな支援を検討する必要性について教えていただけますでしょうか。

梶山国務大臣 感染症の影響によりまして、中小企業を取り巻く状況は極めて厳しいものと認識をしております。中小企業は日本の経済を支える屋台骨であり、まずは事業継続に全力を尽くすことが重要と考えております。このため、実質無利子無担保融資や、持続化給付金を始めとする使途の限定のない現金の給付を行ってきたところであります。

 また、ポストコロナ、アフターコロナ時代に対応するための新分野展開や業態転換に取り組もうとする事業者もいることから、事業再構築補助金などによって中小企業の前向きな取組を支援しているところであります。

 その上で、地域の事情に応じた支援を行う視点も重要であり、地方創生臨時交付金により、地方の上乗せ支援に対応するなど、地域の事業者の置かれた状況に応じて多層的な対策を講じてきております。

 全国知事会からも要請がありました。その都度対応して、こういった交付金を手当てしているところでありまして、先般四月にも、そのやり取りの文書も来ているところでありまして、対応もさせていただきました。

 これまでの経験も踏まえつつ、対策の内容に応じて、このような様々な制度を適切に組み合わせることで、事業者の実態に応じたきめ細かな支援を行ってまいりたいと思っております。

 政府の措置にまた上乗せして地方自治体においても様々な措置をできることになっておりまして、その措置に応じた対策ということで、しっかり根拠を持った形でその予算を手当てしてまいりたいと思っております。

美延委員 今おっしゃりましたように、やはり各都道府県を一番分かられているのは当然その都道府県の知事さんですので、大臣、その知事さんとも連携していただくということを今答弁されましたので、是非よろしくお願いいたします。

 それから、事業者への影響の程度は、これはやはり、今も言いましたように、規模や業種、それから地域によってもばらつきがあるのではないかと思うんですけれども、政府は現状をどのように把握しておられるのでしょうか。実態に即した適切な支援を講じる必要性があるのではないかと考えますけれども、政府の見解を教えていただけますでしょうか。

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、マクロの数字でございますけれども、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、中小企業の業況判断DIというものがございますけれども、二〇二〇年の四―六のマイナスは六四・一でございました。これが、二〇二一年の一―三月期ですとマイナス二九・五まで持ち直してはおります。大幅に持ち直しておりますけれども、まだ依然非常に厳しい状況ということでございます。

 一方で、ミクロで、個別の業種ごとによって見てまいりますと、まず、宿泊業や飲食業を中心に、冠婚葬祭関連あるいはアパレル関連の業種、依然として非常に厳しい状況が続いているということでございます。

 他方で、民間調査などによりますと、景況感が改善している業種もございます。例えば半導体関連でございますと、こういったものはテレワークの推進など企業のデジタル化を追い風として、また、家庭向けの飲食料品関連では、巣ごもり消費に下支えされて好調だということでございます。また、別の調査ですけれども、約三割の中小企業はコロナ禍前の二〇一九年と比べても売上高が増加しているという状況でございます。

 このように、新型コロナウイルス感染症の影響は事業者によって様々だと思っております。

 支援策でございますけれども、まず、業況が悪化しているという事業者に対しましては、実質無利子無担保融資に加えまして、雇用調整助成金の特例の延長でございますとか、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の影響を受けた事業者への支援金、こういったものを実施しております。あるいは、新分野への展開を支援ということでございますと、事業再構築補助金でございますとか、あるいは事業承継・引継ぎ補助金といったようなもの、あるいは、ビジネスモデルの転換等に御活用いただける持続化補助金、こういったものを用意してございます。

 事業者の置かれた状況に合わせた支援などを行ってまいりたいと考えております。

美延委員 今、少しましになっているというような御答弁をいただきましたけれども、三月期でマイナス二九・五%、前年度が六四・一だから、それに比べたらそれは確かに半減しているんでしょうけれども、例えば、それじゃなくて二九・一だけが出たら、これはもう大変な数字なので、そこはしっかり経産省、やはり把握してもらわないと、いや、ましになっていますよという答弁は私はちょっとこれは違うと思いますので、そこはしっかり把握していただけるよう、よろしくお願いいたします。

 政府が実施してきた企業向けの支援策のうち、持続化給付金や家賃支援給付金など、既に終了した事業が幾つかあります。

 持続化給付金については、様々な問題が指摘されたものの、非常に広く活用されて、中小企業から感謝の声も多く上がっています。一方で、家賃支援給付金は手続の面の問題が多かったとの声も上がっています。

 長引くコロナの影響を受けて、今後も新たな支援策を切れ目なく措置していくことに当たり、国民からもより効果の高い精緻な制度設計に改めていくことが求められているのではないでしょうか。

 そのためには、これまでに講じた過去の支援策に対する評価を行うことが有益であると考えます。給付のスピード、審査体制、手続の簡素化、サポート体制等について検証して、これまでの知見を生かして実施していくべきではないかと思います。

 そこで、伺います。

 これまでのコロナ対策の支援措置の政府における検証の有無と、検証を実施しているのであれば、その状況について教えていただけますでしょうか。

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 持続化給付金あるいは家賃支援給付金事業を通じまして様々な知見も得ておりまして、こういったことを活用していかなければいけないという点については委員の御指摘のとおりだと思っております。

 持続化給付金でございますけれども、約四百四十一万件の申請の受付で、四百二十四万件、約五・五兆円お届けしたということでございます。家賃支援給付金につきましては、約百八万件の申請を受け付けまして、約百四万件、約九千億円をお届けしたわけでございます。経済産業省としては、事業継続の下支えに一定の効果があったというふうには考えております。

 得られた知見ということでございますけれども、事業の実施の方法という観点から、例えば、電子化の重要性でございますとか、あるいは不正防止といった点で今後の支援に生かせる知見が得られたと考えてございます。

 具体的には、これほど大規模の事業になりますと、やはり電子申請は不可欠だということでございまして、官民双方のデジタル化が重要であるということを痛感したところでございます。こうした事情も背景に、中小企業庁の関係の行政手続を二〇二三年度までに原則全て電子申請とする方針で進めてまいりたいと思っております。

 また、電子申請と申しましても、やはりその利便性を高めていくということが重要でございまして、政府全体として、一つのIDとパスワードで様々な行政手続の認証に活用できるGビズIDでございますとか、汎用的な補助金申請システムであるJグランツ、こういったものの普及を現在進めているところでございます。

 また、不正受給の防止という観点では、第三者の関与が有効であるということが実際の執行を通じた教訓として得られておりまして、今年創設しました一時支援金などでは、第三者による申請時の事前確認を必要としているということでございまして、今後とも様々なこうした得られた知見を中小企業施策の実施や改善に役立ててまいりたいと考えております。

美延委員 政府がこれまでに実施してきた企業向けの支援策の中には、支援を受けるための要件が厳しいものがありました。

 例えば、持続化給付金は、売上げが五〇%以上減少していることが必要であり、四九%では受給できない。そのために、売上げを計上する時期を無理に調整したりする企業が見受けられるなど、制度のゆがみとも言える点も出てきているのではないかなと思います。

 もちろん、不正受給というのは絶対許されるものではありませんが、必要なところにちゅうちょなく支援をする必要があることから、支援を受けるためのハードルは極力下げて、ある程度柔軟な運用を行うべきであると考えます。

 また、細かな部分はどうしても複雑化することから、サポート体制も十分に手厚くしなければならないと思います。

 そこで、伺います。

 事業者目線に立った支援の在り方について、政府はどのような見解を持っているのでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

飯田(健)政府参考人 お答えいたします。

 給付金でございますけれども、これは、とりわけ厳しい経営状況にあるという事業者の方々に、使途に制限のない、確定なども行わずに、そういった現金を支給するということでございまして、従来の補助金を超えた対応ということでございますので、単月の売上高については五〇%減を要件としたところでございます。

 ただ、五〇%以上いかない方でございますけれども、売上高の減少率に応じていろいろな支援策を用意してございます。

 例えば、売上高三〇%以上減少という方々に対しましては、事業再構築補助金の特別枠というものを創設しております。事業規模に応じた補助上限も設定した上で、補助率も引き上げております。

 また、売上高が五%減、一五%減、又は二〇%減という方々を対象に利子補給を行うことで、実質無利子無担保の融資を実施するといったようなことも行っているところでございます。

 また、政府だけでなく、自治体によっていろいろな工夫もされております。売上げが五〇%以上減少していない事業者向けの支援を含めて、地域の実情に応じた独自の支援策を講じているといったところもあるというふうに承知をしております。

 経済産業省としても、関係省庁と連携しながら、引き続き事業者への支援をしてまいりたいと思っております。

美延委員 どうぞよろしくお願いします。

 次に、ベンチャー企業の支援の在り方について質疑していきたいと思います。

 経済産業政策の課題の一つとして、ベンチャー支援が挙げられると思います。我が国では、ベンチャー企業育成のために支援策をこれまでも多く行ってきているとの認識はありますが、ベンチャー企業の数は依然として期待値以上に増えてきていないのではないか、大きく成長した成功事例も少ないのではないかと見ております。

 私が大阪市会議員の時代に、ベンチャー企業育成のために、大阪市が、市の所有地であった水道局の跡地活用でベンチャー企業に対して破格の賃料で貸与するということがありました。その際に、ベンチャー企業の創業者の方々と意見交換をする場があったのですが、私のそのときの感想として、専門的な分野で非常に優秀な方ばかりで、こんな優秀な方が起業するのであれば事業は成功するのかなと実際思いました。しかし、残念ながら、それ以降、その方々とお会いすることもなく、その企業が上場を果たしたというような話も実際聞いておりません。少ない人数でベンチャーで起業すること、いわゆる人材の面、そして資金面に関してネックになったのではないかなと想像しております。

 そこで、伺います。

 まず、ベンチャー企業が我が国において果たすべき役割及び意義についてどのようにお考えか、経済産業大臣の御所見を伺います。

梶山国務大臣 ベンチャー企業は、我が国経済におけるイノベーションを生み出す主体として極めて重要な存在と認識をしております。特に、ウィズコロナ、ポストコロナの世界においてグリーンやデジタルといった成長戦略を進めるためにも、未開拓の分野に進出し、成長の担い手となるベンチャー企業を創出することが不可欠であると考えております。

 一方、我が国では、ベンチャー企業の数は近年増加しているものの、企業年齢ゼロから二年の企業が企業全体に占める割合は一三・九%にとどまり、米国の二〇・五%、英国の二二・四%などに比べて低いままであります。また、日本の上場企業はソニーやホンダなど終戦直後の十年間に設立された企業が百十九社と最多である一方、米国の上場企業はアマゾンやフェイスブックなど一九九五年から二〇〇四年までに設立された企業が百二十四社と最多となっております。

 このような状況を踏まえて、今夏の成長戦略では、ベンチャー企業を生み出し、かつ、その規模を拡大する環境の整備を重要課題として検討する必要があると考えておりまして、経済産業省としてもしっかりと協力をしてまいりたいと思っておりますし、今委員がおっしゃったような人材の教育、そして、さらにまた資金調達の方法等も多様化をしていく必要があると思っております。

美延委員 時間が来たから終わります。

 またベンチャー企業については、この先質疑をさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

富田委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。本日もよろしくお願いいたします。

 本日は、下請取引をテーマに質疑をさせていただきたいと思います。

 今回の法改正においては、下請中小企業振興法の改正が予定をされております。本日は、質疑の順番を少し入れ替えさせていただきますが、まず発注書面の交付について、今回、条文上の取扱いを一部見直す、追記するというような改正が含まれております。これについて質問させていただきたいと思います。

 そもそも、下請企業に対して発注に関する書面を交付すること、これは、本来あるべき取引の習慣としては望ましい姿であると思いますが、一方で、これが交付されずに困っている方々がいるのもまた事実であります。

 まずは、立法事実から確認させていただきたいと思いますが、発注書面の交付がされないことによってどのような問題が生じているのか、また、その規模等についても分かる範囲で教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、中野委員長代理着席〕

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 発注書面の交付でございますけれども、やはり、下請事業者が親事業者と締結する契約につきましては、発注の内容、納期、価格、支払い手段、支払い期日、こういった契約条件について、しっかり書面を受け取って明文化しておくことが重要であるわけでございますけれども、他方で、中小企業庁が全国四十八か所に設置している下請取引に関する相談窓口であります下請かけこみ寺、ここに対しまして年間五百件以上、書面が交付されていないということによる相談が寄せられております。

 具体例を幾つか御紹介させていただきますが、例えば、契約書を交わしていないことなどを理由に対価を支払ってくれないですとか、あるいは、契約書がなく心配していたところ、相手方の上司から社内の事情を理由に減額されたですとか、あるいは、発注書をもらえない状態が続いていて、途中で中止を伝えられることもあり困っている、こういったような相談が寄せられております。

 こうした事案に対しましては、下請代金法に抵触する場合には、公正取引委員会とともに改善指導などに取り組んでいるところでございますけれども、さらに、今回、今御指摘ありましたように、国会における審議のプロセスを経た法律である下請振興法の振興基準に定める事項の一つとして、発注書面の交付と、これを法文上明記するということで、事業者への周知の強化でございますとか、あるいは下請Gメンの活動強化などを図ってまいりたいというふうに思っております。

浅野委員 ありがとうございました。

 今御紹介いただきましたように、本来、発注に関する書面は交付するのが当たり前だと私は思いますけれども、交付されないどころか、それを一種の悪用しているというような例も散見されております。これは直ちにやはり対処すべき問題だというふうに私は考えておりまして、今回、下請中小企業振興法の条文上にこのことが明記されること自体は評価をしているところであります。しかし、本日、議論したいのはその実効性の部分でありまして、じゃ、それをどう守らせるのかという部分であります。

 次の質問に移りたいと思いますが、そもそも、今御紹介いただいた、中小企業の取引慣行を定める、あるべき姿を定める振興基準、私の手元には今その文書があります。約二十ページにわたる文書で詳細に、取引はこうあるべきだというものが書かれているんですが、この振興基準の意義というものを確認させていただきたい。及び、本改正案による法的効力をいかに発揮するのか、どういう効力が発揮されるのか、ここについて答弁をいただきたいと思います。

    〔中野委員長代理退席、委員長着席〕

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 振興基準でございますけれども、御指摘のとおり、下請中小企業の振興を図るために、下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準でございます。下請振興法第四条に基づきまして主務大臣が行う指導助言の指針としての機能も有しております。

 御指摘のとおり、今回、下請振興法の振興基準に定める事項の一つとして、発注書面の交付を法文上明記させていただきたいということでございます。

 その効果でございますけれども、一つは、具体的には、国会におけるこうした御審議のプロセスを経た法律にしっかり明記するということで、親事業者、下請事業者双方にとって、より分かりやすい、よるべき基準として位置づけることで、そのこと自身によりまして更なる周知効果が期待できるわけでございますけれども、政府としても、これを機に一層の周知に努めてまいりたい。これは一つ目でございます。

 その上で、実態的なその実効性を高めるということでございますけれども、政府といたしましては、書面交付などを含めたこの振興基準を踏まえた取引がしっかりと行われるように、現在、全国百二十名、下請Gメンという方々によって取引実態の把握を行って、問題事例につきましては、業所管省庁に対して改善への指導助言を要請して、業所管官庁による一層の取組も促してまいる所存でございます。

浅野委員 ありがとうございます。条文に明記すること、そして、全国百二十名に及ぶ下請Gメンによる管理監督体制というのは分かりました。

 ただ、もう一つ、更に言えば、本日の資料二を御覧いただきたいんですが、今御答弁いただきました、この下請振興法の条文上に発注書面の交付という言葉を明記するということ、それによって周知効果を期待するということなんですが、どういうふうに記載されるのかといえば、ここに記載のように、第二項になりますか、「発注書面の交付その他の方法による」というところを追記するということなんです。

 確かに、条文上に明記されることによって周知効果はあるかもしれない。だけれども、私が今そもそも問題視しているのは、政府が、大臣が策定し公表することになっているこの振興基準という文章の中には、この発注書面の交付をするようにということがもう既に明記をされております。その上で、今現に、先ほど御紹介いただいたような様々な事例が発生しているということであります。

 今回条文に追記するのはいいとして、でも、元々この振興基準の文章の中にはそのことが書いてあったにもかかわらず、実際の市場取引においては問題が解決していないという現状が現にありますので、条文に追記するだけで本当にいいのか、そして、下請Gメンという制度もこれまでありましたし、それをただ何も変えなくてよいのかというのが私の今日の問題意識であります。

 この点について、本気でこの発注書面の未交付に関わる不正な取引を撲滅しようとするのであれば、更に打てる手はないのかというふうに思うわけですけれども、ここに関して政府の御見解をいただきたいと思います。

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、振興基準でございます、下請振興法における規定でございますので、法律上私どもとしては指導助言といったようなところに限られておるわけでございますけれども、一方で、悪質な事案などにつきまして、公正取引委員会としっかり連携しながら取締りを行うといったようなこと、それから、いわゆる下請関係でございますので、事業との関係が非常にありますので、業所管大臣との連携を、この際、国会審議をいただいているわけですから、更にしっかり連携してまいりまして、取締りの効果を上げていきたい、このように考えてございます。

浅野委員 是非、そちらの対策はよろしくお願いします。

 その上で、今日は一つ私の方から提案をさせていただきたいと思うんですが、資料の三を御覧いただきたいと思います。こちらは、発注書面の交付の義務づけに関する対象範囲を分かりやすく整理したものになります。

 今、下請代金法という法律がありまして、この代金法の中においては、限定はかかっているんですが、発注書面の交付が義務づけされている事業者、取引類型というのが存在しています。

 右側の絵を見ていただきますと、親事業者の資本金規模を三段階に分けておりまして、縦の方向に見ると、下請事業者の資本金規模を三段階に分けております。三億円以上の資本金の親事業者から三億円以下の下請事業者に発注をする場合、この場合には発注書面の交付というのがこの代金法によって義務づけられている。もう一つ、三億円以下一千万円超の発注者が一千万円以下の下請企業に発注する場合も、これは義務づけられています。

 ただ、この制度で義務づけから逃れている例が幾つかありまして、このグレーに染まっている部分、三億円以上の事業者同士で取引をする場合は義務づけの対象とはならない、そして、同じように、一千超、三億円以下の資本金規模の事業者同士で行う場合も対象外、そして、一千万円以下の事業者については発注書面の交付の義務づけはなしというような部分なんです。

 先ほど御紹介いただいたような様々な事例が既に確認されていることを踏まえれば、この代金法を改正することによって書面交付の義務づけ範囲をこれらの者にも拡大すべきではないか、そのように思うわけですけれども、この代金法の改正による対策というのは取れないものなのか、これについて政府の見解をいただきたいと思います。

田辺政府参考人 お答えいたします。

 下請代金支払遅延等防止法は、独占禁止法で規制されております優越的地位の濫用行為に対して、簡易迅速に対処するための法律として制定されたものでありまして、規制の対象となる事業者等の範囲について、独占禁止法の規制における優越的地位が認められやすいケース、これを明確に定めることによりまして、迅速かつ効果的に下請取引の公正化や下請事業者の利益の保護を図るものでございます。

 こうした目的を確保するために、下請代金支払遅延等防止法は、下請事業者と取引を行う親事業者に対しまして、発注の際に書面を交付する義務を課すとともに、それを刑事罰により担保するなど、親事業者の事業活動を規制するものでございまして、下請中小企業の振興を図ることを目的とする下請中小企業振興法とは、その法目的や趣旨を異にするものでございます。

 こうした法の目的や趣旨を踏まえまして、下請代金支払遅延等防止法の規制の対象範囲を拡大するという場合には、中小企業を含め、新たに規制されることとなる事業者等の状況を勘案するなどの慎重な検討を要するものと考えてございます。

浅野委員 慎重な検討を要するということですけれども、やはり、本来やるべきことをやらずに、しかも、それを悪用していることによって、不利益を被っている下請事業者がいるのもまた事実であります。

 確かに、この新たな規制の対象となり得る事業者にとっては、これは、手間暇が増える、負担が増えるものであるかもしれませんが、このあるべき取引慣行を実現するために、国民全体、国全体でどんなルールを作成すべきなのか、そういう観点に立てば、是非、この下請代金法の改正による取引の是正というアプローチも今後御検討いただきたい、これをお願いさせていただきます。

 続いて、次の質問に移りたいと思いますが、今回の法改正によって、親事業者と下請事業者の間を仲介する新たな事業者類型を、認定制度を設けるという改正が含まれております。少し名前が長いんですが、下請中小企業取引機会創出事業者という事業者を認定する制度、これを創設することとなっております。

 この本制度をなぜ創設する必要があるのか、その趣旨について改めて説明をいただきたいと思います。

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 下請中小企業取引機会創出事業者認定制度を新たに設けることとしたわけでございますけれども、一般に、下請中小企業でございますけれども、下請分業構造の中で単工程に特化して技術力や生産性を高める、こういった取組を行っていることが多いわけですけれども、一方で、そうした事業者は、受注先も限定的あるいは固定的になりがちということでございまして、独自で新規の営業、受注獲得交渉を行うことは非常に難しいということでございます。親事業者との関係でも弱い立場に置かれて、価格なども含めた契約条件をめぐっても対等な交渉がしづらいというようなことの例も多く聞いております。

 こうした中で、近年、親事業者と下請中小企業群との間に入って、こうした下請中小企業の弱い立場を補って、本来これらの下請中小企業の持っている強みをより一層生かせる新たなビジネスを行う事業者が出てきております。

 具体的には、提携するたくさんの中小企業者の強みをデジタル技術を活用して分析、把握をする、その上で、自分が発注を受ける大企業などから一括して委託を受けて、提携する中小企業の中から、どの技術を持っている事業者、どういった価格でできるかといったことを、最適な企業群を選定して再委託をする。これによって、従来の取引関係に依存をしないで、中小企業者の技術力などを生かした新たな取引機会をつくったり、あるいは適正な価格形成といったものの取引の透明化を実現しているということでございます。

 こうした事業者は、複数の中小企業に発注するというようなビジネスの性質上、やはり発注者と、それから再委託した中小企業者との間での代金受領と支払いとのタイムラグが生じたりする、こういったことでございまして、金融機関の信用が足りなくて当該資金需要に見合う調達が困難な場合が見られて、実際に公的な金融支援を希望するという声も寄せられております。

 認定制度でございまして、こういった取組を行う事業者の中から、取引対価の決定に当たって十分に協議を行う、支払い方法の改善に努める、それから、中小企業者の強みを生かした適切な再委託を行う、こういった振興基準に定める事項を踏まえて事業を遂行すると認められる場合に経済産業大臣が認定をいたしまして、この認定を満たす事業者につきましては、幾つかの金融支援を措置するという形で、また、認定によりまして優良な事業者を明確化して中小企業者が安心して取引を行える、そういった趣旨で制度をつくったわけでございます。

浅野委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていたような既存の中小企業の多くは、取引先が限定的、固定的、そして、それを補うために、この仲介する新たな事業形態を創設するという、この必要性については理解ができますが、私が今懸念しているのは、この新たな仲介事業者が本当にプラスの効果だけをもたらすのかどうか、ここについては非常に、一種の懸念を持っております。

 先日の本会議でも大臣に対して質問させていただきましたが、私が持っている懸念は、この仲介事業者が間に介在することによって、これまでの取引ネットワークの形が大きく変えられて、そして、取引機会を創出してもらえる事業者がいる一方で、失ってしまう事業者も出てきやしないか、そして、取引先の選定基準が透明性、公平公正性が担保されなければ、いつも同じような事業者に仕事が回り、全然回ってこない事業者が出てきてしまうんじゃないか、この部分を非常に懸念をしております。

 ここの取引の公平性や透明性をどう対策をしていくのか、まずは政府の見解を伺いたいと思います。

飯田(健)政府参考人 お答えいたします。

 今回の認定制度でございますけれども、その認定に当たりましては、やはり相当数の中小企業と提携をしているということが必要である。現に、実際、ある事業者も数百社と提携しているということでございます。

 再委託される中小企業自身が一定の強みを有しているということも必要になってくるわけでございますけれども、やはり何か認定に当たってそういった制限をかけるということはなかなか難しくて、認定事業者の目利き力や創意工夫などにも期待しているわけでございますけれども、一方で、認定を受けた事業者というのは、その効果として、金融支援などの政策支援を受けられることになります。

 したがって、この下請中小企業の振興を図るという本法の法目的、これをしっかり果たしていただかないといけないというふうに考えております。

 したがって、例えば認定事業者によりまして、中小企業の選定に例えば極端な偏りが見られたりするですとか、本法の目的に照らして不適切な場合には当該事業者の認定は当然行うべきでないと考えてございますし、事業の認定後も、先ほど申し上げた認定基準に従ってしっかりと事業を遂行していただくということを求めておりまして、これを担保するために、経済産業大臣による報告徴収や指導助言、さらに、基準に適合しなくなった場合の認定の取消しの規定、さらには、認定も二年ごとの更新制といったような形にしておりまして、認定事業者による事業実施の公正、透明性を確保していくように、しっかり監督してまいりたいと思っております。

浅野委員 今のような認定の取消しや二年ごとの更新制を導入するということは、本会議の答弁でもいただきました。

 私がもう少し踏み込んで質問、最後の質問になるかと思いますが、確認したいのは、資料二、もう一度見ていただくと、今回、振興基準の八番の項に、「下請取引の機会の創出の促進」という部分が新たに追記されます。これによって、この法的効力を発揮しようというところを担保しようとしているというふうに伺ったんですが、先ほどちょっと紹介した、今既にある振興基準の文章の中では、まだこの部分については記載がされていないんです。だから、この取引機会の創出の促進ということだけ書かれてしまうと、とにかく機会をつくればいいのか、そこに公平性や透明性というのが置き去りにされないかどうかが心配なわけですけれども、この振興基準の中では、どのような考え方でこの部分を担保しようとしているのか、最後に簡潔に御答弁いただければと思いますが。

飯田(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 これから、法律を通していただきましたら、振興基準を改定する作業に入ります。その中でしっかりと担保してまいりたいというふうに考えてございます。

浅野委員 ちょっと答えになっていない答えだと思いますので、またこれは是非今後も議論させていただきたいと思います。

 本日は終わります。ありがとうございました。

富田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

富田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、株式会社日本総合研究所理事長翁百合君、中小企業家同友会全国協議会会長広浜泰久君、株式会社菊池製作所執行役員副社長一柳健君、早稲田リーガルコモンズ法律事務所弁護士川上資人君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず翁参考人にお願いいたします。

翁参考人 日本総合研究所の翁と申します。

 参考人として本法律案について意見を述べさせていただく機会をいただき、大変光栄に思います。

 二〇二〇年から感染が拡大しました新型コロナウイルス感染症により、日本でも、人々の生活、そして経済活動にも様々な深刻な影響が出ております。この深刻な影響を克服して、日本は再び豊かな経済社会に戻り、復活していけるよう、様々な支援を政府は行っていく必要があるというように思っております。

 まず、コロナ禍に伴う大きな社会の変化についての認識を述べたいと思います。

 昨年三月以降、新型コロナ感染症が拡大し、緊急事態宣言により、テレワークやオンライン教育が始まるなど、人々の生活が大きく変わりました。こうした事態を受けて、内閣府で、昨年五月末から六月初にかけて、一万人に対するアンケート調査を実施しております。そこでは、人々の価値観が大きく変化していることが確認できます。

 特に、多くの方がデジタル化の必要性を感じております。行政のデジタル化の必要性だけでなく、リモートワークを経験し、その結果、自宅滞在時間も増えた方も少なくなく、その働き方とか家族との時間とか、こういった柔軟な働き方を志向し、それを可能にする手段としてのデジタル化の重要性につきましても認識が高まるなど、多くの意識変化が生まれています。

 加えて、環境への人々の意識が高まっております。まず、地方移住への関心も高まっておりまして、東京圏の二十代の方たちの地方移住希望は約三割ということで、その傾向は次第に高まっております。また、人々が企業を見る目も、環境対応をしているかどうかということに注目して消費をしたり、投資の際の選別もするようになっております。そこに底流しているのは、気候変動、生物多様性など、環境の重要性への認識の高まり、SDGs、持続可能な社会への達成目標の重要性をコロナ禍で改めて認識したということではないかと思います。

 また、コロナ禍で深刻な影響を受けている企業が増加しております。それらの企業を支援しつつ、こうした企業の経営悪化で影響を受けている方々が次のステップに進んでいけるよう、しっかりと包摂的な支援を強化しながら、格差が拡大しないように、人への支援もしていく必要があると思っております。

 人々の意識が大きく変わりつつある今、この新型ウイルス感染症による危機を長年なかなか変われなかった社会を変革する契機と捉え、日本社会を前進させる必要があると思っております。その意味で、今後の日本社会に必要なのは、グリーン化、デジタル化、そして、コロナで影響を受けているが新たな社会に対応するためにステップアップしようと努力している企業への支援が極めて重要であると考えます。

 以下、四点に分けて意見を述べさせていただきます。

 第一に、グリーン社会への転換、これは待ったなしと考えております。

 欧州では、昨年六月頃から、グリーンリカバリーという言葉が多く議論されるようになりました。グリーンリカバリーとは、文字どおり、コロナ危機で停滞した社会を、気候変動を抑制し生物多様性を保護して立て直すという考え方であり、コロナからの復興を環境保全と結びつけていくことです。私は、これは重要な考え方であると思っております。

 そして、欧州などでは、以前からカーボンニュートラルへの動きはございましたが、ドイツなどは、もう去年の夏の早い段階で官民挙げてグリーンリカバリーへの取組を開始しており、欧州の多くの国がそうした動きとなっております。我が国も、グリーンリカバリーを実現していくことにより、持続可能な社会を目指して経済社会を立て直していく必要があると思います。米国では、バイデン新大統領になり、カーボンニュートラルへの動きは国際的に一層加速していきます。まさに国際的に見ても不可逆的な動きとなっておりますので、政策を総動員しながら、時間軸に沿って、実現に向けて民間の動きを後押ししていく必要があると思っております。

 国際的に共通の動きとなってまいりますと、脱炭素を実現していない企業は、金融市場から厳しい評価を受け、一層資金調達も難しくなりますし、アフターコロナ時代には、サプライチェーンから外されてしまうリスクもございます。ですからこそ、現時点からグリーン社会への転換を図ろうとする企業を支援することは、とても重要な政策だと思っております。

 その意味で、期間を区切り、大きな脱炭素効果を持つ製品の生産設備導入や、生産工程等の脱炭素化、付加価値向上を両立する設備導入に関して、設備投資促進減税などを行っていくことは意義があると考えます。また、そのトランジションを可能にすべく民間及び公的な金融でサポートすることも、企業の取組を後押しする政策として有効と考えます。その間、政府は、カーボンニュートラルへの確かな取組が行われているか確認をしていく必要があると思います。

 第二に、デジタル化への対応も日本にとって不可欠と考えます。

 日本は、経済の底力を表す潜在成長力が低い状態が続いております。その要因を分析しますと、やはり全要素生産性が、ここ十年ぐらいですか、横ばいから低下しているという状況が分かります。この横ばい状況の原因は、デジタル化の遅れのほか、人的資本への投資の不足など、様々なことが指摘されています。付加価値を高めて生産性を向上させていくことは、人々の暮らしを豊かにして日本の未来を明るくしていくための前提として重要なことだと考えております。そして、一つの重要な鍵となるのはデジタル化だと思います。

 デジタル化につきましては、二〇二〇年の行政からの給付金の支給が遅れたということもありまして、国民の多くが認識したところでございます。もちろん行政のデジタル化も待ったなしと考えますが、行政だけでなく企業にとっても、デジタルトランスフォーメーション、すなわちデジタル技術を活用したビジネスモデル自体の変革の必要性が認識されたところです。日本は、先進国と比較しましても、まさにここ数年で取り組むべき最大の課題と言えるかと思います。

 デジタル投資なども含む無形資産のGDP比率を見ますと、先進国の中では日本は必ずしも高くない状況でございます。今後、物づくりに加えて、デジタル技術を活用したビジネスモデルが一層重要になりますので、無形資産投資を支援することは極めて重要と考えております。

 また、IT化について、政府は今までも促進するため政策支援を行ってきておりますが、必ずしもそれが付加価値の向上、生産性の上昇に結びついておりません。日本のIT化投資は多くても、それが、維持のための投資が中心で、ビジネスモデル改革の投資に結びついていないという調査結果もございます。

 今回の法律案では、デジタルトランスフォーメーションを進める企業について設備投資を支援しようという政策が提案されております。そのことは重要だと思いますが、その計画の認定を事業者の負担が大きくならないようにスピーディーに行うことや、計画の進捗の適切な確認などが効果を上げる鍵になると考えます。

 これらのグリーン化やDX、そして事業再構築支援に前向きに取り組む企業は、現在赤字であっても支援の必要がございます。現在、一時的にコロナの影響で赤字に陥っている企業は多うございます。こうした、今苦境にある企業であってもアフターコロナ時代を生き抜こうと努力をする企業に配慮することは極めて大事だと考えます。

 第三に、中小企業の支援についてでございます。

 中小企業支援は、足下のコロナ対策に全力を尽くし、支えるとともに、コロナ後を見据えたビジネスモデルの再構築の努力についても支援していく、その両面の支援が極めて重要だと考えます。

 今回のコロナのようなリスクだけでなく、国際情勢の変化や天災なども含め、今後様々な環境変化が起こるリスクがございまして、不確実性の高い時代に入っていると思っております。また、国内人口が縮小する中、海外展開が欠かせなくなっている企業も多くございます。したがって、中小企業は、経営基盤を強化するということは欠かせないと思います。

 また、今後は、デジタル化、自動化、オンライン化などは重要になってまいります。製造業、サービス業、様々な業種によって様々なビジネスモデルがございますが、今後もデジタル化などの技術変化は加速いたしますので、これに対応するというのは中小企業でも大変重要なことだと思います。ただ、それはシステム投資が必要で、固定費が高くなることを意味いたしますので、ある程度の規模の経済、すなわち規模が大きくなるとメリットが出てくる企業も多いと思います。

 したがって、経営基盤強化に向けてチャレンジする中小企業を支援する意義は大きいと思います。MアンドAで新たなビジネスモデルに変化し、確かな発展が実現している中小企業も多くございますので、それがスムーズに実現するように支援することや、大企業と中小企業の取引適正化の環境を整備することも極めて重要な課題であるというふうに認識しております。

 成長戦略としては、付加価値生産性を高めていくこと、そして成長と分配の好循環を実現できるように対応していくことが重要であるというように考えております。

 第四に、新たな日常に向けた事業環境の整備について申し上げます。本法案では様々な施策が記載されておりますが、幾つかについて意見を申し上げたいと思います。

 まず規制改革の推進でございますけれども、バーチャルオンリー株主総会の選択肢ができることはメリットが大きいと考えております。この選択肢ができれば、現状のようなコロナ感染期でありましても、より多くの株主の方に企業経営者の経営の方針を説明できる機会となり、企業経営者にとっても株主にとってもメリットがございますので、様々な検討を進めて、実現に向けて御議論を進めていただきたいというように思っております。

 規制のサンドボックス制度の恒久化も進めていただきたいと思っております。新しいビジネスモデルを実現したいと思いましても、規制があって、そのために長い間いろいろな取組が遅れてしまうことは、大変もったいないことだと思っております。しっかりとその内容を検討し、期間限定、体験する人限定でまずスタートしてみて、それで検証しながら、いかにデメリットを克服するかということに配慮して進めていく、こういった取組は、イノベーションを起こしていく上で大事であるというように考えております。

 多くの国ではフィンテックを中心にこれが進められておりますが、日本ではヘルスケアなども含めて多くの業種に開かれている特徴がございまして、利用実績も増えております。その中には、ブロックチェーンを活用した将来を見据えたビジネスモデルを展開しようというようなものとか、国際的なコンテストで高く評価されたものなどもありまして、今後とも、事業者の多くの取組が期待されるところでございますので、是非大事に育てていただきたいというように思っております。

 そのほかにも、ベンチャー企業の成長支援、事業再生の円滑化も、いずれも重要であり、それらを推進する妨げとなっている課題を解決する必要があるというように考えております。

 最後になりますが、これらの政策を推進するに当たってお願いしたいことは、政策効果が実現しているかどうかを十分に検証していただくということです。もし効果に乏しいようでしたら、それがなぜ起こっているかを分析し、よりよい政策につなげていただきたいということでございます。エビデンスベースドな政策を進めていくことが大事だということ、これは随分いろいろと言われるようになってきておりますが、まさにこれからはデータの時代でございますので、政策も、しっかりデータなどで検証しながら、効果を確認して推進していただきたいというように思っております。

 私の意見はこれで終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、広浜参考人にお願いいたします。

広浜参考人 皆様、こんにちは。中小企業家同友会全国協議会の会長をしています広浜と申します。今回、こういった形で意見を述べさせていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、簡単に自己紹介からさせていただきます。

 中小企業家同友会についての説明が、お手元の資料、用意させていただいた資料の五ページ目から載っております。ちょっと開いていただきますと、いろいろ載っておりますので後で御覧になっていただければと思うんですが、何をやっている会かといいますと、基本的に経営の勉強会を中心にやっています。あくまでも自主的にやっていこうという会で、四十七都道府県にありまして、それぞれの地区、支部が全国では五百ぐらいあります。毎月、例会、勉強会をやっていまして、それが年間を通してみると五千五百回ぐらいというような形で、経営の勉強会中心の会であります。

 三つ目的がございまして、一つがよい会社をつくろう、二つ目によい経営者になろう、三つ目によい経営環境をつくろうということで、よい経営環境というのは、どんなに努力しても報われない部分というのは結構あるよねというふうなところで、そういった報われない部分に対しては、例えばいろいろな政策提言をさせていただいたりとか、あるいは国会議員の先生方といろいろ懇談させていただいたりとかということで、アピールをさせていただいているというような内容でございます。

 私本人は、株式会社ヒロハマという会社の会長をしておりまして、やっている仕事といいますと、いつもこれ、製品を持ち歩いているんですけれども、一斗缶とよく呼ばれている、正式には十八リットル缶というんですけれども、そこに、こうして押すと、ぱちんと開くキャップがついていると思うんです。こういうキャップとか、口金とか、持つところとか、そういう缶の部品だけを専門に扱う仕事をやっておりまして、従業員でいうと百四十名ぐらいの中小企業でやらせていただいております。

 本日のこの改正案の法律案についての意見、本題の方に入っていきたいと思います。

 私ども、中小企業家ということですので、主に中小企業の足腰の強化というところについて、重点的に意見を述べさせていただければと思います。

 大きく三つの切り口でお話をさせていただきます。

 まず一番目が、全体としてのことなんですけれども、まず全体としての印象ですね。端的に申し上げまして、今回の法律案は主として中小企業から中堅企業に光が当たっているな、力点があるなということは感じています。でも、それはそれで、必要なことでもありますし、更に内容を拝見しますと、やはり自助努力でいろいろな新たな取組に取り組む、そのことに対して支援をしていくというようなことになっております。我々の団体そのものも、自助努力を大切にしようという形で活動もしておりますし、そういった形で法案が作られるということは大変いいことだな、大いに進めていただきたいというふうに考えております。

 ただ一方で、これからどうなるか分からないんですけれども、予算配分上で中小、中堅の方に力が入ることによって、ローカル、小規模向けの支援が減額されるということがあると困るなというようなことは懸念しているところですので、そういったことがないように御配慮いただければというふうに考えております。

 それから、これはもう先生方は百も御承知のことと思うんですけれども、単に規模拡大を通じた生産性向上だけが取るべき対応策の全てじゃないということにつきましては、皆さんとともに再確認をしておきたいというふうに思っております。

 そういった意味で、今日用意していただいた一ページ目に、中小企業再編論に対する見解ということで、私の方で談話も出させていただいていますし、実は、その内容というのは二ページ以降に、いろいろな研究者の先生方からその再編論に対する論点を整理したものをまとめたものとして、資料を用意しております。

 簡単に、どんな論点なのかということだけ、触りだけお話ししますと、まず二ページ目のところに、中小企業は多過ぎるのかという論点ですね。次の、三ページの方に行きまして、なぜ中小企業は生産性が低いのかという論点。三番目に、中小企業の社会的存在、そういう意味での認識のことについての見解。それから四番目には、こういった再編の動きというのは過去にもあったということで、過去にもあった政府の再編の動きということの論点。それから最後に、政府の皆様の中小企業政策スタンスについての問題点というところで論点整理をさせていただいていて、それをまとめたものとして、会長談話ということで出させていただいています。

 これは、自分たちの思いも結構強く入っておりまして、この後書きのところの上から三行目の途中からですけれども、やはり中小企業というのは、その地域とか、それから業界を支えていく使命がある、それから、社員やその家族の生活あるいは生涯設計を保障する使命があるんだということを常々思っておりまして、そういった使命感を持って今後とも企業を運営していきたいというふうに考えておりますので、その辺も御理解賜ればというふうに感じております。

 あと、大きな二番目の論点、切り口でのお話は、MアンドA、MアンドA税制についてのお話です。

 このMアンドAということに対しての中小企業家としてのいわゆる嫌悪感とか抵抗感というものは、昔は相当強かったなという感じはあったんですけれども、最近は大分薄らいできたという、自分の周りを見ていてもそういう感じはしております。

 実は、当方も五年ほど前にMアンドAで事業を継承しておりまして、一斗缶の蓋ではないんですけれども、やはり缶の部品で、丸い缶の、中身としては保存用のパンが入るような丸い缶ですね、上がぱかっと上がる、開く蓋がついていると思うんですけれども、ああいう蓋を扱う仕事なんですけれども、そういった形で、MアンドAで事業を承継させていただいて、実は大成功させていただいているというようなこともあって、もう少なくともMアンドAそのものに対する抵抗感は余りないなというふうに思っています。

 ただ、抵抗感がなくなってきたという、その背景というのは、目的が、やはり、御存じのとおり後継者がいなくなっている。その後継者がいなくなった状態で会社をやめちゃうというのは、社員の生活はどうなるのかとか、あるいは、お客さんが困るじゃないのというようなこととか、そういったことがあって、だったらMアンドAで、そういった形で事業を継続してもらう方がいいよねというようなことでのお話なんですね。実は、私どもが承継させてもらったところも、前の会社の社長さんがもう八十過ぎの御高齢で後継者もいないということで引継ぎさせていただいたということなので、そういった意味での、あくまでも後継者難というのが前面にあるなということは感じています。

 だから、決して、いわゆる規模拡大を目的とするとか、あるいは弱肉強食の世界、それが望ましいとかいう形で考えているわけでもないということもまた御理解いただければというふうに思います。

 今お話しさせていただいた後継者難ということにつきましては、実は、中小企業では非常に大きな問題になっていまして、後継者がいないので廃業するという会社もたくさんあります。そのことにちょっと触れておきたいと思うんですけれども、もちろん、中小企業自身の、いわゆる次を担う人材が育成できていない、そういう問題もなくはないんですけれども、承継する場合に大きく三つのパターンがあるんですね。

 一つは、自分の子供とかいわゆる親族に継いでいくという場合ですね。このパターンについては、我々本当に恩恵を受けているなと思っているんですけれども、先生方の御尽力によりまして、今、特別承継税制というのが動いています。それは、私ももう計画を出して、もうすぐやるんですけれども、これは百八十度変わったなというところで非常にありがたく思っていて、子供に継ぐ場合はほぼ問題ないというふうに思っています。

 二番目にあるのが、社員に対して承継していくというパターンなんですね。これは結構問題がありまして、何が一番問題になっているかというと、経営者保証の問題なんですね。銀行から借りるときに、やはり経営者保証というのはまだ残っているというようなことで、それが障害になっている。それはもう経営者保証だけの問題ではなくて、公私の区別の関係、金融機関も企業側もそれぞれに問題はあるので、なかなか根は深いぞということはありますけれども、そういった問題があります。

 三つ目の選択肢として出てくるのがMアンドAというようなところかなと思っていますね。そんな位置づけであるということを御理解いただければなというふうに思っております。

 以上が二番目のことです。

 最後の三番目の切り口ですけれども、大企業と中小企業の取引の適正化についてという点ですね。

 これについては、国による調査の規定というものを創設していただくというようなところが織り込まれているようです。これについては、私自身も大変評価して期待しているところではあります。というのは、既に下請Gメンの方々とかいろいろ活躍していただいてはいるんですけれども、とはいいながら、全ての状況をカバーできているわけではないというのは確かだと思うんですね。

 なぜ確かだと言えるかというと、実は、私どもの業界は、昨年、ブリキという原材料が値上がりしまして、それを価格転嫁しなきゃいけないんです。我々、缶の部品もブリキを使っていますけれども、缶メーカーもブリキを使っているんですね。同じように価格転嫁しなきゃいけない。

 私どもも、やはり半年ぐらいかけてようやく上げることができたんですけれども、中に、どうしても上げられないというところがあるんです。何でかというと、缶メーカーのその先のユーザー、一部の業界ですけれども、一切価格転嫁を認めないというところがあるんですね。だから、材料が上がったのに上げてくれないというのはどういうことなんだと思いつつ、だけれども、そういう状況なので、缶が上げられないんだからパーツも上げられないよねという話で、ほんの一部ですけれども、そういったところもまだあったというようなところで、そういったのをやはりカバーするという点でも、いろいろな取組が必要なんだろうなというふうに感じています。

 そんな原材料の部分も上げられるか上げられないかという、そんな状況もまだ残っているということなので、最近言われている、ちゃんと給料が上がった分も価格に転嫁するべきだよねという御意見もいただくんですけれども、どっちかというと、我々のヒロハマという会社は価格転嫁がちゃんとできている方ではあるとは思うんですけれども、少なくともまだ、給料のアップ分を価格転嫁として値上げの項目に乗せるというところまでは、そういう雰囲気では全くないんですね。という状況だということだけ頭に置いておいていただければというふうに思います。

 中小企業の足腰の強化という点には主にそういった形でお話しさせていただきまして、あと、全体的なところで一点だけなんですが、いろいろな取組を法律でしていただいて、最終的には中小企業、特に地域における中小企業のために、地域経済循環につながるかどうか、つなげていただくように期待しているんですね。例えば、グリーン社会の転換ということにつきましても、いろいろな取組をしていくことになると思いますが、そういったことが、エネルギーシフトとかそういったことも含めて、地域循環につながると本当にうれしいなというふうなことを感じているところであります。

 ということで、広浜の方からの意見は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、一柳参考人にお願いいたします。

一柳参考人 ただいま御紹介にあずかりました菊池製作所の副社長の一柳と申します。

 私は、今日のお話は、どういうお話をしたらいいかと考えたんですけれども、簡単な自己紹介から始まりまして、私どもの菊池製作所というのは、最初は中小企業から、中堅企業といいますか大企業へ変貌したわけでございますが、どういうふうにして変貌していったか、私は実はそういう経過についてお話ししまして、その過程でどういう問題点があって、どんなふうに我々は克服しようとしたかということをお話ししたいと思います。

 私どもの会社の内容につきましては、お手元に配っております菊池製作所のパンフレットを御覧いただければ幸いでございます。

 私は、最初は日立製作所に入りまして、機械システムの開発ということをやりまして、次いで日立建機という建設機械の会社へ入りまして、建設機械の電子化というようなことの研究開発をやってまいりました。そして退職後、今を去る大体二十五年前になるんですけれども、十年間にわたりまして、八王子にあります大学で、工業大学でございますが、工科大学で機械制御、ロボット工学を教えまして、そして学生といろいろやってきたということでございます。

 この過程で、企業を経験したものですから、そこでも企業の人的又は資金的な支援を得まして、実物に近いもので学生を教育するということをやりまして、簡単なものは自分でつくる、大きいもの、難しいものはできないから企業さんにお願いしてつくるというようなことで、実践的な物づくり教育をいたしました。また、その過程で、企業のOBの方に先生になっていただきまして、実学、実際の学問を教えていただきました。そうしますと、今まで何もできないというような学生さんが目の色を変えまして、自信を獲得して、本当に難しい勉強もし出すという経験もいたしております。

 やはり手足を使った物づくりということをやっていかないと駄目で、これはやはり学生さんから教育しないといけないというふうに思っておりますけれども、そういう経験をしたものですから、その経験を生かすべく、菊池製作所に実は十五年前にまた再就職したわけでございます。

 それで、今、それから十五年たったわけでございますけれども、その時期を五年、五年、五年と三期に分けて、どんなふうになっていたかというのを説明させていただきたいと思います。

 最初の第一期は、私にとっては大学延長時代というものでございまして、メカトロ研究所というものを菊池製作所につくりました。そして、多くの大学と共同研究を始めました。

 当時、菊池製作所は、お手元、御覧になっていただきますと分かりますが、従業員三百五十人の典型的な物づくり中小企業でございまして、当時は情報家電メーカー、また、携帯の量産とか、時計、カメラの全盛時代でございまして工場は繁忙を極めておったというときに私めが入ったわけでございますが、私は、そこで初めて研究所というのをつくりまして、大学の装置を持ち込みまして、これからやってやるぞ、学生さんをもう一回、そこでいた者を企業に就職させて、やってやるぞという気持ちで入りまして、いろいろなロボットを作って、やったわけでございます。

 そこで、例えば、後からちょっと出しますが、東京消防庁のレスキューロボット、そういうものとか、新しいカメラの筐体を作るプレスとかというようなものもそこでやりまして、そういうおかげかどうか分かりませんが、この中小企業に、メカトロ研究所という全く新しい人間集団を受け入れていただきました。

 多分、その当時でも、研究所は役に立たないという陰口があちこちで言われた時代でございますが、何とか十五年間潰れずに、むしろ研究所はぐっと成長してやってきたという、ちょっと手前みそになりますが、希有な実例ができたのではないだろうかと思っております。

 次いで、第二期でございます。二〇一一年からの五年でございますが、それを私は産学連携時代と。産業界と一緒に、学校と一緒にやるという産学連携時代でございますが、その年に我々の企業はジャスダックに上場いたしました。

 そして、我々は、後から御説明いたしますが、南相馬といって福島の浜通りですけれども、そこにロボット工場というのを造りまして、同時に、生産設備も、いろいろ御支援いただきまして、最新鋭のものを入れました。

 そしてまた、そこにございますが、自律研、ドローンをやっている自律研、千葉大学から始めました、これが上場に入った。それから、続きまして、イノフィスという会社がございまして、マッスルスーツ、これはしょっちゅう宣伝しておるんですけれども、そういう約十社のベンチャーをつくっていただきました。

 ジャスダック上場で会社も一段飛躍という感じで、従業員も頑張って、私どもは、幸いにして、うちの社長はロボット革命委員会、安倍総理のときでございますが、その委員にしていただきまして、ベンチャー企業が南相馬工場に来ていただいて、いろいろな試作とか加工というのをやりました。そして、いろいろな、マッスルスーツの量産とかドローンの組立てをそこでやったということでございます。

 その次が、過ぎまして、今を去る五年前になるんですけれども、二〇一六年は、私から名前を言いますと、スタートアップ支援時代と。いわゆるベンチャー企業でございますが、そういう名前になるんじゃないかと思いますが、やはり従来の大企業からの部品発注、それから物づくりの成長が全然もう停止しまして、むしろ下降ぎみに現在なっておるんですね。コロナがあって余計そうでございますが。そして、それでは駄目だ、企業が潰れちゃうということで、我々はロボットファンドの設立をしていただきました。約三十億のロボットファンドでございます。そして、メカトロ研究所が稼ぐ時代に転換していこうということで、そういうことが実績として出てまいりました。

 我々、中小企業時代の延長でいきますと、従来の試作、物づくり事業は、日本の経営者が安さばかり求めまして、そして全部海外に行ってしまったということで、日本では、つくるものがだんだん減ってきちゃっているんですね、現状もそうだと思います。そういうことなので、もう雇用が維持できないということで危機になってまいったのですが、私どもは、それを、スタートアップを支援しつつそれを事業化するということでカバーいたしまして、現状、従業員のキープもちゃんと、きちっとしておるという状態になっております。

 スタートアップの支援だけでそんなことができるかということになるんですが、IPOをしてもらえば一番話が早いんですけれども、要するに、我々は、スタートアップを支援することによりまして新しい技術を会社に持ってこられる。それから、スタートアップは新しいものをつくりたいわけです。いろいろなものをつくるんですね。例えば、水中深く潜る水中ロボットを作りたいとか、そういうことをやりますので、その試作をうちの製造部門が請け負うわけです。これによって循環ができるんですね。

 スタートアップを支援することで循環ができるということで、相乗効果が、やっとこの五年後、今現在になりまして、徐々にいい循環に入ってきまして、ある程度の収益を上げられるようになってまいりました。やはり、ただ研究所が潤うんじゃなくて、研究部門が頑張ると製造部門も一緒に潤うという循環ですね。そういう形になってきたんじゃないかと思います。

 それで、我々も、このアクティブなスタートアップ支援と同時に、もちろん、社内の固有な技術もやはりきちっとやっていかないといかぬという、二つの両輪でやってまいっております。

 その過程で、私は三つぐらいちょっと感じたことがございますので、ここで述べさせていただきたいと思います。

 まず最初は、大学との交流でございます。

 私どもの資料にございますように、私たちと大学は、四十七大学、六十一研究室と交流していると書いてあります。事実、そのとおりでございまして、全国津々浦々から、ずっと九州から北海道まで、私どもはいろいろな大学とつき合っております。

 それで、大学さんは、技術、人材に乏しい我々にとりましてはまさに金鉱山、ダイヤモンド鉱山であると認識しております。

 私は、何でそんな経験を特にしたかというと、かつて人命救助用の新しいロボットの開発を東京消防庁さんから言われたことがあるんですが、倒れた人をどうやって救うんだと。それで、どうしても人を傷つけない方策が見つからなかった、私の頭の中では。そして、諏訪の知人に相談しましたら、そんなのを見たことがあるよと。どこですかと言ったら、それが神戸大学の当時の大須賀教授のところにあるよと、見たことあるよと言うんですね。えっ、そんなものは聞いたことがないと言ったんですが、即日そこへ私が訪ねていきましたら、まさに我々が求めているものがそこにございました。私は本当に目が覚めまして、自分の浅はかさを反省した次第でございますが、その先生の御指導で、我々は、世界に誇れるロボットができました。

 だから私は、本当に探れば、日本の大学には金やダイヤモンドが埋まっておるよ、掘らないだけですよという感じでございます。そういう経験をしまして、今でも大学巡りを暇があったらしているということでございます。

 それから二番目は、産学連携についてでございますけれども、産学連携にはどうしても過渡期、いわゆる、今の世の中で言っております、要するに死の谷、デッドバレーがあるということも、まさに私どもは経験いたしました。

 というのは、前期、大学との研究をしますときは、大学は企業の軍資金を待っているんですね、資金を。だから、最初は蜜月時代です。ハネムーンでございます。いいよいいよと、こうなっていくんですね。そういたしますと、研究が進んでいきますと、大学から企業への主導権の移動が起こります。後期になったら、企業は、ああこれはいいな、市場に出したいなということを思いますので、市場開発と販売が主体となってまいります。大学はバックアップになりますね。そうすると、先生は、俺の研究は金のために使うのかとか、そういうような気持ちになられまして、必ずそこで、大きな大きな、口で言うのは簡単ですが、本当に、大学人が大きな大きな反発をされることになるんですね。

 そういうことでございますので、ということは、大学人と企業は全く違う時間軸で進む、大学というのはゆっくりテンポがいって、我々は毎日毎日、あくせくあくせくやっておる、全然時間軸が違うものですから、当然、あるときにぶつかるということになるのでございますが、このデッドバレーを、普通の中小企業とか、あるいは中堅企業の方はなかなか乗り切れない。ギブアップしちゃう。大学というのはどうも駄目なところだなということになっちゃって、そこで止まっちゃうんです、全て。

 幸いにして、私どもは何回もそのパターンを学習いたしまして、何とか乗り切ってやってきましたので、そういう知恵を私どもは提供していけるのかなというように感じております。

 その次でございますけれども、サポイン、公的資金の問題でございます。

 私たち、工業研究、製品開発にはお金がかかります。まさに研究費の大小が企業成長の鍵を握ります。研究費の捻出ができて初めて、産学連携もできるし、新製品、新技術も開発できるということになります。

 ということで、私どもは最初から、中小企業庁にも大変お世話になって、いろいろな研究をやらせていただいたのでございますけれども、私どもはちょうど、第一期の終わりに、大型のアルミの鋳造機械を開発しようということで着手したんですね。たまたまサポインに受かった。当時でいくと大きなお金で、約八千万ぐらいのお金だったんですけれども、ああ、やっと来たかというので、うれしくなって、みんな始めたんですね。

 そうしたら、ちょうど我々が中堅企業、大企業ですね、当時で、になっちゃった。ジャスダックに上場した途端に、もうストップ、もうまかりならぬと。中小企業のサポートのためにサポインはあるんだ、おまえらは一切関係ないよということで、私どももびっくりして、ある程度分かっておったんですけれども、関東経済局に何回も、何とかなりませんかと言ったんですけれども、これはならぬ、法律は法律であるということを言われまして終わりました。

 非常に残念でございましたし、たまたまそのとき、我々は、うちには川内工場というのがあるんですけれども、そこに、経済産業省と村が資金を出していただいて、大きなそういう工場を造って、操業して、これからやろうという時期でございましたので、ちょっとその開発がダメージを受けたという経験がございますので、その辺の今回の施策は特に、これはいいなというふうに私は感じた次第でございます。

 最後のトピックスとして、私どものベンチャー企業さんで、東工大でおやりになっている、そこにもございますが、ちょっと難しい名前の、ウォークメイトラボラトリーというのがあるんですね。これは、パーキンソンの患者に対して、リズムを与えて歩行できるようにしようという画期的なデバイスをやっておられる先生なのでございますが、それに対して、ドイツのウェストファーレン州は福島の方にも緊密な関係を持っておりまして、ドイツのエッセン大学ですね、ウェストファーレン州の、それが共同研究の提案を申し込まれました。

 それで、我々もうれしいなということで、実際の装置をそっちに持ち込んで、いろいろなテストをしてまいりました。しかし、ドイツにおきましても治験はやはり相当に費用がかかるということで、途中で、まあ断念ということはないんですけれども、順調には進まなくなってしまったということがございまして、他にもそういう例を多々、私ども経験しております。

 だから、我々程度の企業では、やはり海外進出、海外の人たちとどうやって組んでいくかというノウハウも乏しい、その資金力も乏しいということになっておりますので、今回、もしこういう機会が、新しいのができたら非常にうれしいなと思っております。

 最後でございますが、我々菊池製作所は、本社は八王子でございますけれども、主力生産工場は、物づくりは福島の浜通りでやっております。そこに、飯舘村にある福島工場というのと、南相馬にあります先ほど説明したロボット工場、それからもう一人、川内工場というのが三つ展開しておるわけでございます。

 特に、南相馬工場というのは、ロボットテストフィールドというのは経産省が百五十億の資金を出してお造りになられまして、それに近いということもございまして、多くのベンチャーが集まっておりますが、私どもの方にも十を超すベンチャーの方が集まっていただきまして、ドローンであるとかモーターであるとかロボット、そういうものをそこで開発して一生懸命やっているという状態でございます。

 我々は、将来は更にいろいろな新製品をそこでもっと展開したいというふうに考えてございます。だけれども、まだ、考えてみますと、浜通りには、これから本格的に人が戻り復興すべき地域、相双地域が残っております。双葉、大熊、浪江、あの辺でございます。

 我々も、かつて、うちの飯舘工場も物すごくダメージを受けて疲弊して、人も大分かなり離散したんですけれども、それでも操業は続けたのでございますが、そのときに、陛下を始め多くの政府関係者、それから経済産業省を含め、その方々からの温かい御支援を賜りまして何とか残りまして、今も操業を続けるようになっております。

 今度は、私どもが、双葉地域に非常に近い、南相馬から双葉まで十分か十五、六分で行きますので、非常に近い距離にありますので、我々は今度、微力ながらそちらの復興にも寄与できればというふうに念じている次第でございます。

 以上、私は、簡単でございますが話をさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 次に、川上参考人にお願いいたします。

川上参考人 早稲田リーガルコモンズ法律事務所の弁護士の川上と申します。

 今日はお招きいただいて、どうもありがとうございます。

 私は、弁護士として、働き手の方たち、最近はフリーランスの方たちの支援活動、法律的なアドバイスだったりを結構多くやらせてもらっています。

 そもそもの、そういったフリーランスの労働問題に関わるようになって、一生懸命やってきているこのきっかけというのは、ウーバーイーツの配達員の方が増えてきているというところが最初にあったものがありまして、二〇一九年の五月ぐらいだったと思うんですけれども、ツイッターで、五キロ配達して例えば幾らというふうなはずなのにもかかわらず、あなたの配達距離は三・何キロしかなかった、距離を低く見積もられて安い報酬が払われているという状態についてつぶやいているツイートが結構多かったんですね。

 そのときに、もし会社にそういった苦情を言って全然改善されないようだったら、みんなで労働組合をつくって団体交渉すれば少しは改善ということに進むかもしれないということをツイッターで言って、そこから労働組合の設立に動いていったということがありまして、同年、二〇一九年の十月に、ウーバーイーツの労働組合、ウーバーイーツユニオンが発足して、今もユニオンのみんなは活発に発言したり活動しております。

 そういうところから、楽天の問題が発生して、楽天ユニオンの支援に関わり、それから現在は、お配りしているレジュメの二枚目にあるとおり、ヨギーというヨガの教室を経営している会社のインストラクター、この方たちは、かなり使用従属性がある働き方をしているにもかかわらず、業務委託契約、つまりフリーランスとして働いているわけですが、この方たちの労働組合の支援、それからヤマハの音楽講師の方たちの労働組合の支援をしております。

 この方たちは全員、法律的には現在はフリーランス、つまり自営業者、個人事業主として扱われておりますが、仮にもし裁判になった場合には労基法上の労働者であるというふうに判断される可能性もなくはないというところです。ただし、日本の今の法制度においては、取りあえず、契約書において業務委託というふうにされれば、まずは自営業者、フリーランスとして扱っていくということで、例えば労災事故に遭って労基署に行っても、いや、あなたは個人事業主だから労災は出ませんと軽くあしらわれてしまうという状況があります。

 こういった状況に対して、諸外国では、取りあえずは、まずはみんな労働者と認めて労働法の保護を及ぼそうという方向に動いております。スペインでそういった立法があり、それからイタリアでも、それからイギリスでは最近、最高裁でウーバードライバーを労働者と認める判決が出ました。それから、四月二十九日には、アメリカの労働省の長官が、ウーバーやリフト、そういったプラットフォームワーカーたちは労働者であるというふうに考えているという公式見解を記者会見で述べました。これからアメリカの法制度もかなり大きく動いていくんじゃないかというふうに見ております。

 そういった諸外国の状況、こういったプラットフォームで働くフリーランスだったり、又は、契約書上は業務委託とされて一切労働法の保護を受けられない状態でフリーランスとして働いている人たち、この方たちをどういうふうに保護していくかという議論について、日本ではなかなか議論が進んでいるとは言えない状況だと思います。

 その中で、今回、この産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案の審議となったわけですけれども、本日の私のレジュメを見ていただければと思いますが、この法案の中に下請中小企業振興法の改正が含まれております。この改正法案の中で、フリーランスを同法の対象として、契約書の交付を新たに基準に加えるといった改正案が示されております。

 その背景については、この要点及び問題点の八十一ページに、改正案提出の背景と経緯として、中小企業の足腰強化、大企業と中小企業の共存共栄、下請取引の適正化が挙げられております。こうした事情、背景に、フリーランス等について契約条件を明示した書面が交付されておらず、コロナ禍においてその取引の不安定性が顕在化したと指摘されており、これが下請中小企業振興法改正案の背景とされております。

 しかし、このコロナ禍において顕在化したとされる取引の不安定性は、契約書面の交付によって改善されるものではありません。したがって、その問題の所在の認識と解決策の提案がずれているということは言えると思います。

 二番なんですけれども、フリーランスの取引の不安定性の原因、その原因は、フリーランスが常に契約の一方的終了の危険にさらされているという点にあります。そのため、フリーランスは、契約終了を恐れて、他の不当な行為に対しても声を上げられないという状況に置かれています。したがって、フリーランスの取引の不安定性を除去して下請取引の適正化を図るためには、一方的な契約終了を抑止する一定の規制が必要であると言えます。

 その点について、三月二十六日に確定されたフリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインに対してこのユニオンで意見書を発表しているんですけれども、このガイドラインに一切、一方的な契約終了場面についての考え方、一定のルールというものが全く示されていない。これでは安心して働ける環境はフリーランスにはやってこないと言えます。

 しかし、実務では、継続的取引の終了についてはやむを得ない事由が必要であるというのが、これがもう裁判実務上の定まった見解です。しかし、裁判実務上定まった見解であったとしても、それは、一方的な契約終了をちらつかせる企業側、大企業にとっては、別に法律に書いていなければこういったルールは周知されていないんですね。裁判になって初めて、ああ、そういう判例が形成されてきているのか、じゃ、このやむを得ない事由があるということを主張しないといけないなと、後づけで考えるような状況が現場では起きております。

 こういうふうに、裁判上でこのようなルールがもう存在するのであれば、やはり、法律の予見可能性を高めて、より安定して潤滑な取引社会を築いていくためには、法律なりガイドラインで一定程度の見解を示した方がいいんじゃないかと思います。

 私のレジュメに戻って、三番目としては、今回の改正法案の背景として、大企業と中小企業の共存共栄、下請取引の適正化ということがうたわれております。この共存共栄を実現するためには、公正な取引関係の構築が不可欠。公正な取引関係というのは、交渉力格差を是正した対等な取引関係の実現によって生まれるものである。対等な取引関係の基礎には、一方的で合理性のない契約の終了は認められないんだというルールが必要で、フリーランスは、一方的な契約終了を恐れて、不公正な取引に応じざるを得ないような立場に今置かれています。したがって、交渉力格差を是正して下請取引の適正化を実現するためには、契約終了場面に関する一定のルールが必要であるというふうに考えます。

 以上が、下請中小企業振興法の改正案に関する私の意見になるんですけれども、本改正案には、規制のサンドボックスの制度を恒久化するという法案も含まれております。この法案について一つ私の意見を述べさせていただくと、平成三十年にこの法案が三年の時限立法で成立した際には、参議院の方で附帯決議がつけられていると思います。その附帯決議というのは、この規制のサンドボックス制度が、諸外国の制度と異なって、一切限定を設けないでやるものであるというところにやはり懸念を示した附帯決議で、その際には、附帯決議で、実証を実施する事業者に対し、関係者の安全性を確保させるとともに、特にライドシェア事業のような安全や雇用に問題が指摘される事業の実証については、規制法令に違反するものが認定されることのないよう厳に対応することという附帯決議がつけられておりました。

 このような附帯決議は、令和二年の現在においても全くその必要性については変わりはないですし、冒頭述べさせていただいたように、諸外国では、このプラットフォームワークにおける労働問題、それから社会的コストの発生、外部不経済の問題、大きく社会問題化しておりまして、それの解決としてはやはり労働法を及ぼすしかないという認識が主流になってきておりますので、この附帯決議も今回つける必要がやはりあるんじゃないかというふうに考えております。

 それから、昨年は、デジタルプラットフォーム透明化法の審議の際にもお呼びいただいて、プラットフォームワークの問題点、それからプラットフォーム透明化法の問題点についてもお話しさせていただきましたが、やはり、プラットフォーム透明化法において労務提供型プラットフォームが全く対象外とされている問題、楽天やアマゾン、そうした商品の取引しかこの法律が対象にしていないというのは、やはり現場のプラットフォームの問題を的確に捉えていないんじゃないかというふうに思いますので、このデジタルプラットフォーム透明化法を労務提供型プラットフォームに及ぼすことは、規則を適切に定めることで可能ですので、法律上の条文上は、労務提供型プラットフォームを除外しているような条文にはなっていないので、是非、その規則の定め方で、今社会問題化している労務提供型プラットフォームについてもこのプラットフォーム透明化法が適用されるような方向で検討していただければと思います。

 以上になります。どうもありがとうございます。(拍手)

富田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

富田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。星野剛士君。

星野委員 自由民主党の星野剛士でございます。

 本日は、参考人に対する質問の時間をいただき、誠にありがとうございます。委員長以下、感謝をいたします。また、参考人の皆さん、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 順次質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今現在、コロナ禍にあるわけでありますけれども、このコロナの出口戦略について翁参考人に御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本改正案は、新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の変化をチャンスと捉え、古い経済社会システムから脱却し、新たな日常への構造転換を図ろうとするものであります。ポストコロナに向けて産業競争力強化は重要な課題でありますが、企業の現状を見ますと、コロナ関連破綻が足下で増加するなど、厳しい経営環境が続いております。

 今般のコロナ禍では、各種の給付金や資金繰り支援が功を奏し、これまでのところ、企業の倒産件数は比較的抑えられてきたと感じております。ただ、しかし、最近の調査では、中小企業の三社に一社が債務超過と感じているとの結果もありまして、今後の対応いかんでは破綻の連鎖に陥ることが懸念をされております。

 一九九〇年代のバブル崩壊後の我が国では、多くの企業が債務超過に陥りました。そして、その後、長期の停滞をもたらしました。同じ轍を踏まないために、また、ポストコロナに向けた産業競争力強化につなげるためにも、コロナの出口戦略について、今後どのような対策が必要であると考えるのか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 コロナの出口戦略でございますけれども、現状でも、まだ今コロナの感染症が続いている状況でございますので、厳しい状態に陥っている中小企業を始め、大企業も含めて、特に業種が今回、好調なところもある一方で、宿泊、飲食、観光、それから陸運、それから空運とか、そういったところは非常に厳しい状況になっているというふうに思っております。そのためにも、やはりこういったところが持続可能になるように支援を続けることは大変重要なことだと思っております。

 一方で、それを同時に、アフターコロナでどういうふうにビジネスモデルを変えていくのかということを考えながら支援していくということが非常に重要かと思っています。それは今回の法案でも入っておりますけれども、デジタル化とかグリーン化というのは、本当に今不可逆的な波になっておりますので、そういった新しいビジネスモデルを見据えながら支援をしていくということが極めて重要かと思っています。

 先ほど委員がおっしゃったように、九〇年代のときには債務超過に陥るところがすごく多うございました。今、やはり融資をたくさんしているということで、その融資が、とにかく持続可能になるようにしていくということは大事なんですが、非常に大きな過剰債務になってしまうと、またそれが企業を苦しめることにもなってしまうということですので、しっかりと、アフターコロナについてのビジネスモデルを、コミュニケーションを取りながら金融機関なども支援し、そしてまた、国としての支援の在り方というのもしっかりとアフターコロナを見据えたものにしていただくということが大事かなというように思っております。

星野委員 ありがとうございます。

 続きまして、広浜参考人と一柳参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 本改正案では、新たな日常の構造変化を図るべく、DX投資促進税制など、デジタル化への対応を推進するための措置を講じております。よく聞く問題ではありますが、DXという言葉自体は最近耳にするようになってきたものの、現実的には、中小企業でDXを既に実現できているというところは余り多く聞かれておりません。中小企業としては、何かモデルケースになるような事例が多くあれば参考にしやすいのではないのかなというふうに思っております。

 先日私が訪問をさせていただいた企業では、部品の不具合を発見するカメラやシステムを全て社内で内製化したというすばらしい事例が、報告がございました。

 そこで、参考人のそれぞれの立場から、例えば、こういったDXの好事例を聞いたことがあるとか、このような内容であれば中小企業でもDXに取り組みやすいのではないかといったことについて何か御示唆があれば、全国でも参考にしていきたいというふうに思いますので、御示唆を願えれば大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

広浜参考人 御質問ありがとうございます。

 卑近な自分のところの周りの事例でしかお話しできないんですけれども、自社の例で言いますと、製造ラインで、従来は、必ず後ろの方にコンベヤーがついていて、人間の目で全部検査していたんですね。それがこの十年の間に、ほぼ全部、それはなくなりました。画像処理の検査装置を全てつけまして、これは安くないんですけれどもたくさんつけまして、それで肩代わりするようにしたというのが一番大きな変化であります。

 あと、本体だけでなくて関連会社もあって、下請的な仕事もしているんですけれども、そこだと生産ロットが物すごく少ないんですね。なかなかそういったもの、近代的なものを入れにくいんですけれども、生産ロットが少ないだけに、これから、じゃ、それをもっと研究しなさいというふうに今指示を出していることがありまして、それは協働型ロボットと言われる、比較的安価で細かい作業ができるというもの、簡単な作業だったらそれでできるんじゃないの、ロットが少ないものほどその方がいいよねという話をして、今それにチャレンジしているところであります。

 以上です。ありがとうございました。

一柳参考人 一柳でございます。

 今の御質問でございますけれども、私どもの会社では、実際に電子ロボット、いわゆる本当の意味で、元々機械メーカーなんでございますけれども、それだけでやっていけないということで、若干の、機械メーカーという立場であるんですが、余り電子の専門家というのは採れないんですね。例えば、ソフトウェア、電子の専門家というのはなかなか来ていただけないということであるんですけれども、我々はそれを逆手に取りまして、うちのスタートアップの方々を、例えばロボット、監視ロボットとかいろいろなロボットメーカーさんに、我々はロボットファンドで投資をしております。それは、本当に先端的なロボットの監視システムとか、そういうことをやっております。そのメーカーさん、ソフトウェアを専門にやっているところもあるし、いろいろなことをやっています、そのメーカーさんを、スタートアップの方々と手を組んで、我々が新しく受注してくる先端的なロボットも電子化の方にやれるということで、私どもの企業はどっちかというと、トータル的に、自分の社内だけでデジタルカメラをつけるとかそういうことではなくて、お客様の注文を、デジタル時代にマッチした注文もどんどん取れるというスタイルを実は取っているわけですね。

 ですから、何といいますか、自分の自社工場自体は試作なので、しょっちゅう内容が変わるんですね。量産でざあっと流すわけじゃございませんので、そこをいわゆるFAをするということは必ずしも十分できないということで、何とか、まずお客さんの注文に対するものがどんどんDX化しておりますので、それをうちのスタートアップの方々と連動してこなしていくという形をまず第一に取っております。

 同時に、私どもも電子部品で、あと搬送ロボットとか、もう電子の塊みたいなロボットをどんどんやっておりますので、急にDX化ということを考えているわけじゃないのでございます。

 ですが、一番、私ども、これからやらないといかぬと思っておりますのは、新しい形態で、今、SIerという、システムエンジニアですね、SIerが中心となって、新しいものを受注して、いろいろな方々を集積して、機械のCAD・CAM屋とか、プリント板をやる人とかそういうのを全部集積して、全部丸ごと、先端的な電子装置を、世界から注文を取ってやっていこうという動きが出ておるんですね。ですから、そういう動きが本当の私はDX化じゃないかと思いますが、そういう方面にこれから我々も考えないといけないということで、やはり、マーケットを世界に持っていかないと、本当の意味で勝てる電子化は成らぬというふうに私は考えております。

 ちょっと的外れなお答えになったかもしれませんが、以上でございます。

星野委員 誠にありがとうございました。しっかりと受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思いますが、広浜参考人と一柳参考人にお伺いをしたいというふうに思います。グリーン社会への転換について、お話をお伺いしたいというふうに思います。

 御承知のとおり、菅内閣では、長期的視点に立ち、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする二〇五〇年カーボンニュートラルという政策を掲げ、様々な政策を総動員し、脱炭素化社会の実現を目指しております。もっとも、政府の取組だけでは目標を実現できるわけではありません。民間企業の研究開発によるイノベーションや積極的な設備投資が不可欠でありまして、様々な主体が協力をして一致団結して進めていくことが重要であるというふうに考えております。

 私が地元企業の方々とお話をする中で、脱炭素化、グリーン化を進める方針は理解できるが、実際に、自分の工場で、又は事務所で、何がどの程度実現可能なのか分からないといった声を聞くことがよくあります。

 このような事業者の不安に寄り添うためにも、一つの方策として、中間チェックポイントやマイルストーンのような実現可能な目標を設定して、目標実現に向けた筋道を分かりやすく示すことによって、事業者の皆様により身近な問題として捉えていただくことが大切なのではないかというふうに考えております。脱炭素化社会といっても、直ちに何かを変えるのではなくて、現実的に目標設定に基づいた事業者の協力の下、徐々に脱炭素化の方向に移行していく、トランジションの在り方を考える必要があるというふうに思います。

 そこで、企業側の視点として、脱炭素化に向けた現状や課題、官民の連携の在り方、政府に期待することなどについて、参考人の率直な御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

広浜参考人 御質問ありがとうございます。

 実は、中小企業家同友会、我々の方では、エネルギーシフトということの研究をずっとやっていまして、ヨーロッパ等にも毎年のように見学に行ったりしています。

 私も行かせてもらったんですけれども、一番感じたのは、カーボンニュートラル、そのまず大前提としては、熱を逃がさないというのが物すごいこだわりがあるなということを感じています。一緒に行った岩手の事務局長が、世界の中で岩手の家が一番寒いと言われて大変ショックを受けていたんですけれども、そうかもしれないなというふうに感じたところです。

 まず、できるところからいうと、自分たちの、自分の家も本当に寒かったんですけれども、取りあえず、よくいる場所だけは寒くないようにしようというふうに改善したというのが一つありました。

 それから、エネルギーシフトというところでポイントとして挙げておきたいのは、やはり、エネルギーに関してのお金がどんどんどんどん外国に出ていくということはゆゆしき問題だし、また、地域にとっても、それだけお金が流出するということはとても大きな問題だと。

 だから、できる限り、こういった取組と、地域のエネルギーは地域でゲットするという形に是非持っていきたい。そのためには、やはり、地域の中小企業がもっともっと自分たちでエネルギーをつくり出せるような、そういった仕事づくりも必要だよねということで、今、一生懸命取り組もうというふうにしているところです。

 以上でございます。ありがとうございました。

一柳参考人 ただいまの質問でございますけれども、菊池製作所は、先ほどの説明では何か物づくりばかりやっておるというふうに思われたかもしれませんが、実は、内部では環境事業への転換を図っております。すなわち、私どもの会社は、環境関係の会社にスタートアップを、三つぐらい、もう既に支援しております。

 一個は、今、ごみからバッテリーを作る、電池を作るという会社、実はブルーフォースという会社なんですけれども、鹿児島の会社がございまして、そこは、例えば焼酎かす、酒かすとか、いろいろなかす、そういうものから、それを活性炭にして、それを電極にして電池を作るという事業を実はやっております。ですが、実際はなかなか、投資家の方々もそんなに簡単にいくんかいなということで、四苦八苦して今やっているというのが一つでございます。

 もう一つは、大規模なごみを、それもごみですね、プラスチックごみとかそういうごみから水素エネルギーを出して発電するという事業を一つやっています。この会社はマイクロエナジー・マニュファクチャリングという会社をやっておりまして、元々、マイクロ・エナジーという会社は、経産省の支援を受けまして、十年来、そういうごみ発電ということをやっているんですね、大規模な。その会社と私どもが資本参加をいたしまして、現在、車載型、大きなトラックにそういうシステムを載っけるのを今やっておりまして、今、最終的なことになっております。それが二回目でございます。

 もう一つは、我々の方も手をこまねいているわけではなくて、EVとか、いわゆるエンジンから電動の方へ今移ろうとしていますが、EVモーターの開発というのも、我々も小さい企業ながらやっております。と言いますと、何と、あなたたちはトヨタや日産じゃないのにそんなことができるのと言われるんですが、これは私ども産学連携で実はやっていまして、闘志を燃やしてやっておるということで、実際、三つやっております。

 さらに、ごみについては、薫焼炉というのもございまして、一切公害を出さなくて、ごみを薫焼させてやるという企業さんとも手を組んでやっているということ。

 さらに、我々は、将来的には、双葉地区とかあっちの地区において提案しているのは、早生ギリ、早く成長するキリ、五年から七年で一気に成長するキリがあるらしいんですけれども、それを使ったバイオ事業を実は提案をしておるんですけれども、向こうの、今、なかなかペイしないと言うんですね、そういうバイオ事業というのは。だから、ペイをしないだけで手を組まないとは、いかがなものかと。ドイツなんかは相当そういうこともやっておると聞いていますので。

 日本はただ金勘定で、そろばんが合うか合わないかだけで判断して、駄目だ駄目だと言っておるようなので、そうじゃないぞということで、是非ともその辺を支援していただければ本当の大きな事業になっていくんじゃないかと思っておりますので、よろしく御指導のほどお願い申します。

星野委員 時間が参りました。終了します。ありがとうございました。

富田委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 ありがとうございます。公明党の中野洋昌でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様に大変貴重な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

 私からも少し質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど翁参考人の方から、これから、例えば中小企業の支援ということで、今、現行、コロナ禍でありますので、そういう当面の対策と、しかし、コロナ後の新しいビジネスモデルを見据えた両面での取組が非常に大事であるというふうな御指摘もいただきました。

 そこで、中小企業を経営されている広浜参考人と一柳参考人にまず冒頭お伺いをしたいんですけれども、昨年はどうしても、コロナ禍ということで、本当に、持続化給付金であるとか、いろいろな資金繰りの対策であるとか、雇用調整助成金ですとか、とにかく今の当面の対策というのをしっかりやっていこうということで、当然それは続いて、いろいろな業種によっては影響が大きいですのでまたやっていくんですけれども、やはり、その上で、ポストコロナを見据えた中小企業の支援というのもしっかりやっていかないといけない、これからはそれをもっと力を入れていかないとというふうに思っております。

 そういう意味では、これから、事業再構築の補助金でありますとか、そうした、ビジネスモデルをいろいろな形で転換をしたりですとか、あるいは、この法案でもまさに審議をしておるようなグリーン化やデジタル化というものを、中小企業の皆様も含めていろいろな形で取り組んでいこうというふうな、大きな方向性としてはそういう方向性でございます。

 こうしたポストコロナを見据えた中小企業の支援の在り方として、もっとこういうところに力を入れていくべきではないかとか、今の支援策の使い勝手が、もう少し変えていった方がいいであるとか、いろいろな御意見があるかと思いますけれども、今後のポストコロナを見据えた中小企業の支援の在り方ということで、どのようなことを感じておられるか、どういう必要があるかということで、まず二人の参考人から御意見を頂戴できればと思います。

広浜参考人 御質問ありがとうございます。

 今先生からお話があったように、去年は、当面、取りあえず資金だけは確保しようということで我々も呼びかけしていまして、結構、中小企業はみんな資金を多めに用意して、それで何とかなっているというのが現状です。

 ただ、いずれにしても、今後は返さなきゃいけない時期も来るしということで、じゃ、まず初めに何をやらなきゃいけないかというと、まず取りあえず、毎月の営業キャッシュフローをプラスにするぞと。それがマイナスだということはずっと出血している状態なので、とにかくそれをプラスにするということを考えましょうと。業種、業態によってはなかなかプラスにならないというところもあったりするんですね。そういうところについては、何としても何らかの形で事業再構築をしていかなきゃいけない。一遍にお金をなかなかかけられないと思うから、いろいろな試行錯誤というものも、今からいろいろなことをやって取り組んでいくということをやりましょうねということを話し合っている状況です。

 そういった意味で、事業再構築のいろいろな形でのものができてきているということはとてもありがたいことではあるんですけれども、じゃ、どんとお金をかけられるかどうかというと、ちょっと難しいかもしれないというのがあるので、もっと気軽にぽんぽん出す、ぽんぽんもらえるという形になるとうれしいなという感じが一つあります。

 あと、もう一つは資金の方の関係ですね。資金の方の関係も、コロナの関係での資金調達をさせてもらっているんですけれども、じゃ、今後の在り方としてどんな形がいいのかなということで、今、金融庁の方でも伴走型の支援というものを力を入れてもらっていると思うんですけれども、それはやはり、私どももそうなんですけれども、多くなった借入金の中で、この部分は運転資金として枠だけ用意しておいて、当座の方で貸越しで持っている、基本返さなくてもいい形というものをやっておいて、設備投資なんかの部分については長期にわたって返していく、基本的に、返すお金と営業キャッシュフローのプラスの部分とが見合っている、そういう形を金融機関の方と我々とで話し合いながら、そういう形でやりましょうというものが一緒になってつくっていけると、本当に安心して日々の企業活動に従事できるなというふうに感じております。

 大体その二点かなというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

一柳参考人 私の回答は本当に的を得ているかちょっと分からないところがあるんですけれども、私は、先ほど申しましたように、全国の大学をちょっと回っておるんですね。そういうところを見てみますと、全国の、特に地方大学ですね、そういうところには、本当に真面目な、優秀な先生方、だけれども、いろいろな工夫をしているんですね。典型的な例は後でお話ししますけれども、そういう先生方は、何とか自分の研究が世の中の役に立ちたいと思っておられるんですね。

 特に私が思いますのは、これから中小企業の場合はたくさんのものを量産するというようなことはできないんですね。やはり個々の、ケース・バイ・ケースに対応していくということでございますので、例えば、お年寄りの介護機器、ああいうものは全部、年齢によっても違いまして、個々ばらばら、全部各人各様みたいなことがあるんですね。そういうことをこれから我々も支援していかないといけないということでやっておるんですが、全国の大学の真面目な先生方はいろいろなことをやっていまして、例えばの話は、一つの例をお話ししますと、徳島大学のある先生は、お年寄りが歩きますとつまずく、つまずかないように靴底に、あるところに来たらきゅっきゅっと上げるようなデバイスを作っておられる。

 そういうデバイス、だから、それを我々のところに持ってこられてもなかなか対応できないんですけれども、個々の需要はたくさんあるんですね、お年寄りの健康管理のためのものは。そういうものを拾っていきますれば、いろいろな中小企業の本当の小さい企業の方々も腕が発揮できるところはたくさんあるんですよ。

 その先生方は何をおっしゃいますかというと、全部、学生さんと一緒に試作をされているんですけれども、もうちょっと企業の方が見てもいいようなものにしないといけないと。そのためには、やはり先生方は、五十万とか百万とか、そういう共同研究を我々にしょっちゅう言ってこられるんですね。今のところは、そういうことで、拾ってあげるシステムがない。

 私は、ずっと回っていましても、みんなおっしゃるのは、地方の大学さんがおっしゃるのは、五十万とか百万の軍資金が欲しい。そうしたら、学生と一緒にそういう新しいデバイスを作って、その地方の病院とかのところへ持っていって使ってみてもらいたいということを言っておられるんですね。

 そういうことを見ますと、ポストコロナで、各いろいろな中小企業さん、疲弊しているんですね、我々もそうなんですが。そういうのは、一番のいいところは、ヘルス事業、ウェルフェア、要するに、介護とかそういう福祉機器が、いろいろなことが皆求められているんですね、お年寄りは求めています。

 そういうことをやはりトータル的にやったらどうなのか。日本の大学は山ほどありますから。特に、高専もそういうことをやっている先生は物すごく多いです。だから、是非ともそういう研究を拾ってあげて、中小企業さんがそれを拾えば、それなりの事業はできます。

 だから、何でも先端的なものばかりじゃなくて、そういう機械加工でできる装置は山ほどありますので、そういう手でも私はいいんじゃないかというふうにつくづく思っております。

 以上でございます。

中野委員 ありがとうございます。

 お二人から大変参考になる意見をいただきました。

 私、この後、実は一柳参考人に、産学連携をやられているので、そのお話について聞こうと思っておったんですが、先ほど全国の事例も含めてかなりお話をしていただきまして、ありがとうございます。

 私、以前、復興の担当の政務官もやっておりまして、一柳参考人の菊池製作所様には福島の復興ということで大変に御協力をいただき、ありがとうございます。

 済みません、もう一問、一柳参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の法律の大きな改正点の一つとして、中小企業を支援していく中で、大きくなっていくと途中で支援が切れてしまうところを連続的にやっていこうというふうな仕組みを導入させていただいております。

 菊池製作所様も、恐らくそういう大きくなっていく過程で、何というか、支援の切れ目みたいなところも御経験をされたやに先ほどお伺いをいたしましたけれども、そういう意味から、今回の法律の改正の御評価と、あと、更なる展開として、今後、中堅企業への更なる支援の課題ということで、少しだけ資料の最後のところで御紹介いただきましたけれども、もう少し詳しく、今後こういう支援が更に充実をしていった方がいいのではないかというところも含めてお伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

一柳参考人 確かに、私どもの企業は、中小から中堅とか大企業に上がるときに、いろいろな経験をさせていただきました。

 今回の法改正で、人数は絞られているようですけれども、上の方に、資本金に関係なく成長を支援するようなことも可能であると書いてありまして、いささかびっくりしたのでございますけれども、特に私どものような企業にとりましては、これは非常にありがたいと思います。

 なるほど、先ほど申しましたように、我々もファンドというのもやっておりますけれども、ファンドの場合は、やはり派手な、大きな研究を取り上げて事業化するということをやっているんですね。

 ですが、実際にやってみますと、我々の方に参るのは、先ほど申しましたように、地方の大学さんとか高専さんとかいう先生方が、私はこういうことをやっている、何とかこれを世の中に出したいというような、いわゆる、大規模じゃないけれども、先生一人が学生さんを数人使ってやっている研究が山ほどあるんですね。それを共同研究できないかと言ってこられるんですね。先日も来られました。

 だから、そういうことになりますと、我々がそのお金を一々、百万オーダーかもしれませんが、十件もあったら一千万になっちゃう、それをなかなか実際支援できないということで、もう本当に涙をのんで、お断りははっきりしないんですけれども、そういう局面がたくさんございます。何とかそれを救ってあげられないかと思うんですね。

 ですから、もし今回のようなシームレスの支援ができましたならば、その方もやはりスタートアップみたいなものなんですよ。ですが、一気にスタートアップはできないんですね、その先生方は毎日教えていますから。だから、社長と、スタートアップ、社長になっちゃったらとか役員になったら、学生に対する時間が割けなくなっちゃう、どうするんだと言われちゃうんですね。そういうこともございますので、余裕のあるところとは違うと。

 そういう方々は、やはり共同研究費を出してあげて支援していかないといけないんですね。一気にスタートアップまで行かないんですね。ですが、先生は自分のアウトプットを事業化したいと間違いなく思っておられる。ですから、そういうスキームを何とか、今回の話ができましたら、スタートアップの層を厚くしたいなと。

 今は、確かに我々もスタートアップを支援させていただいていますが、大体物すごく世間体がいい、誰が見ても、ファンドを出しましょうというところなんですよ。ですが、そこに至らない、底辺みたいなところは山ほどあるんですね。そこからざあっと火が噴いてくるんですけれども、それをみんな殺しちゃっている、途中で、お金がないということで。それは余りにも残念であるということで、そういう、私は一つの幅を広げたらどうかというふうに一つ思います。

 それからもう一つは、そういうシームレスの支援ができましたら、やはり海外に出ていかないと、日本の中だけでは駄目だと言われておりますので。我々も何回も何回も出ようとしているというんですけれども、やはりうまくいかない、お金がかかり過ぎるということなので。

 やはり海外の大学もいろいろなことをやっておるんですね。東南アジアは特にそうだと思いますが、そういう大学のスタートアップさんも皆困っておると思います。もっと、日本よりも困っていると思います。そういうところを支援して、そういう国の人と一緒に手を組んでやっていけるような方にそういうお金が使えればいいなというふうに私は思っております。一つの考え方でございますけれども。

 だから、目に見えないというか、表面に出てこない、やはりいろいろな下積みの研究が将来我々の生活を変えていきますので、是非ともそういう方に、できれば考えたいと思っております。

 以上でございます。

中野委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わります。

 大変貴重な御意見、感謝申し上げます。ありがとうございました。

富田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 本日は、産業競争力強化法等の改正案の審議の中で、有識者の皆様を迎えての参考人質疑ということで、お忙しい中、ありがとうございます。

 まず一問目は、翁さん始め皆様に伺えればと思うんですけれども。

 今回の法改正は、アフターコロナを見据えて、事業者がどうやって成長していったり業態変換をしていくか、それを後押ししますというような形のものが多く含まれているわけですけれども、それぞれのお立場で、目下の、今のコロナで、政府が、特に、出歩かないでくださいとかアナウンスメントしていることで、経済にはブレーキが、いろいろな業界で起こっているわけです。

 それに対する目下の経済支援、政府がやってきていることは十分なのかということと、足りないのであれば、これがあればいいんだけれどもというものがありましたら、教えていただければと思います。

翁参考人 お答えいたします。

 やはり飲食や宿泊などを始めとして、まだまだ厳しい状況が続いております、今も緊急事態宣言でございますので。そういった今影響を受けているところには引き続きの支援が必要だと思っております。

 また、特にこれから政府にやっていただきたいことは、やはりワクチン接種を早く実現していただくということを希望しております。これによって初めて安心していろいろな活動ができるようになってまいりますので、それの実現をお願いしたいというふうに思っております。

広浜参考人 今まで受けていた支援の中で非常に大きかったと思っているのが雇用調整助成金です。これは、やはり我々も社員を大切にしていきたいという思いの中で、基本、解雇はしないという中でいきますと、雇用調整助成金が一〇〇%出るということで大変助かったというところが物すごく多かったと思います。

 それから、私どもの中でアンケートを取って、結構皆さん使ったなというふうに思ったのが持続化給付金なんですね。あれは五割売上げがへこまないといけないから、そんなに使う人はいないだろうと思ったら、ところがアンケートを見ると、結構、五割近くの方がそれを使っているので、結構みんなひどかったんだなというところを感じているところです。

 これからのことでいいますと、先ほどからお話が出ています事業再構築のことですね。これがいかに使いやすいものとして実施していただけるかというところが一番大きいかなというふうに考えているところです。

 ありがとうございます。

一柳参考人 私どもの関係も、スタートアップがそういう関係の費用をたくさん使わせていただいて何とかやっておるという状態でございます。ですから、非常に、今のものは大変ありがたいと思います。

 次の問題は、やはりこの状態が続いていきますと、活力を失って、つくるものがなくなっちゃう、する仕事がなくなっちゃうということ。物づくりがだんだんだんだんなくなっちゃって、やる仕事がなくなっちゃうんじゃないかというのを恐れるんですけれども、我々の方は、周囲にスタートアップが取り囲んでは、わいわいわいわい、新しいことをやりたいと言っていますので、何とか持ちこたえています。

 そういう点で、やはり新しい若者中心のスタートアップがないとアイデアが出ませんね。古い従来どおりの考えでやっていたら、本当に、あした何をやったらいいの、コロナが終わったって仕事がないなら休みましょうということになっちゃうんですね。それでは駄目で、やはりそういうスタートアップを助けて、新しい血を入れていかないといけないんじゃないかというふうに思います。

 以上です。

川上参考人 フリーランスに関して言うと、まず、労働者性が否定されているので、失業保険とかの対象にそもそもなっていない。そうすると、持続化給付金ということになるんですけれども、百万円、一回あったので、それについては、受け取ることができた人たちはよかったんだとは思います。ただし、それから結構時間もたっていますし、今後どういう支援をしていくのかというのは、考えないといけないところに来ているんじゃないかなと思いますね。

 アメリカなんかだと、今、毎週六百ドル、週六百ドル、六万円、六万六千円ずつぐらい自動的に振り込まれているそうで、それによって、今ワクチンが行き渡りつつある中で、労働市場に戻ろうというふうに思っている人たちが、今も六万円、六万六千円毎週受け取っているので、それと比較して、なかなか戻らないという状況が発生していて、逆に労働市場の方で賃金が上がっているというふうになっています。

 結局、賃金が上がらなければ、消費も回復しないですしGDPも回復しないですから、結局、日本としても賃金を上げていかなくちゃいけない中で、アメリカで今起きていることというのは結構参考になるのかなと思います。

落合委員 ありがとうございます。

 それでは、今回、中小企業等の法律も改正なんですが、この数年間、毎回大きなトピックになっているのが事業承継についてでして、広浜参考人に伺えればと思うんですが、お仲間にもたくさん中小事業者がいらっしゃって、先ほども事業承継について言及がありましたが、これは、実際経営者の立場から、やはり、何がネックで進まないのか、それからまた、この部分をもうちょっと法改正してもらいたいんだというようなこともありましたら、伺えればと思います。

広浜参考人 ありがとうございます。

 先ほどちらっとだけお話しさせてもらったんですけれども、事業承継で三つのパターンがあるというその中で、自分の身内に引き継げない場合に、一般的に考えるのが社員に継いでもらおうというふうに思うんですね。

 僕、本当によく聞く話なんですけれども、社員に話をします、一緒になってやってきた社員だから、やはり自分としてはうれしいわけですね、是非やりたいなという気持ちがある、それで家にその話を持ち帰って、家族、奥さんとかに話をします。そうすると、そのときに経営者保証の話が出ると、それってどのくらい保証しなきゃいけないのと。その保証の金額というのは、個人が払えるものとちょっと桁が違うんですよね。それが一般的なんです。なので、何を考えているのという話になって、結局、家族からオーケーはもらえずに、申し訳ありませんけれどもという形で断られるというケースをもう何回も聞いているんですね。

 では、その経営者保証というのは外せないのかということで、そういう経営者保証を外すガイドラインなんかもできてきているんですけれども。日本公庫さんなんかはそういった形で随分やってもらっているんですけれども、よく聞いてみると、中小事業の方は大体そういう形になってきたけれども、国民生活事業の方はまだまだそこまでいっていないという話。何でかと聞くと、公私の区別が明確に取れていないということなんですね。この公私の区別をしっかりと取るというのも、両方の課題はあるなというふうには思っています。

 例えば、前に、ある信用金庫さんの偉い方とお話をしていて話を聞いたんですけれども、当時の信用金庫さんで取引している会社の平均の自己資本比率はどのくらいかと聞いたら、三%だと言うんですよ。むちゃくちゃ低いね、三%で大丈夫なんですかとお伺いしたら、大丈夫です、なぜかというと、社長さんの家屋敷みんな担保に入っていますからと。そういうことかというんですね。

 だから、我々、真っ当に努力するとなったら、自己資本比率を上げるために自分の配当を少なくしてでもやっていこうという形でやっていたとしても、金融機関の方は、そうはいいながら、担保が足りませんから家屋敷を担保に出してくださいという話になったりすると、ちょっと、その辺の関係は相当なそごがあるなというところがあります。

 そんなことで、経営者保証の問題については両方の方からしっかりと改善していかなきゃいけないんですけれども、何らかの形で法改正なりというものができれば本当にうれしいなということを感じているところであります。よろしくお願いいたします。

落合委員 いろいろな場面で金融というのは重要なわけですが、翁参考人と、また広浜参考人に伺えればと思うんですが、今、中小企業政策においても、地域金融機関の再編ということも、この委員会とは別の所管ですけれども、されているわけです。

 これは重要だと思いまして、最初、この議論が始まったときは、地銀と言われていて、六十四行がもう何十年もずっと続いているので、それをもうちょっと大きい地銀にする話なのかなと思っていたら、最近は地域金融機関という言葉が使われていて、あれっ、もうちょっと小さい地域の金融機関まで少なくするという話なのかなと。

 実際に、この三十年間で地銀よりか小さい金融機関は半分ぐらいに既に減っていると思います。これからもっと減らすと、要は伴走してきた地域の金融機関がなくなっていくということで、企業と金融機関の距離というのが、そこら辺の小さい金融機関が減ることで距離ができてしまう問題が起きてくると思いますが、専門家としてと、それから当事者として、それぞれ御意見を伺えればと思います。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 地方銀行やコミュニティーバンクの役割というのは、地域の活性化それから地域の維持のために本当に大事だと思っております。やはり、伴走型で、どうやって企業やそこに住んでいらっしゃる方に金融面でサポートしていくかということをやることによって、初めて地域というのは潤って、また活性化していくものだと思っております。その意味で、今、地方銀行だけでなく、コミュニティーバンクも含めて、銀行が今まで非常に厳しい業務範囲規制だったんですけれども、少しそこを緩めて、地域のためにできることを、少し業務範囲規制を緩めていこうという動きにもなっております。

 それからまた、統合もできるようにはしておりますけれども、その統合自体は、もちろんそういう選択肢を選ぶ金融機関があってもいいと思うんですが、しっかりと地元とコミュニケーションを取り、サポートができるという前提に立った上での統合であってほしいというふうに思っておりますし、また、統合だけが一つの答えではないというように思っております。

 しっかりと、ニッチでも、コミュニティーバンクとして根差してやっていくという可能性もありますし、それぞれの金融機関がどうやったら地域に貢献できるかということをしっかり考えて、それこそ、それぞれのコミュニティーバンクや地方銀行のビジネスモデルをアフターコロナに向けてどう考えるかということを、金融機関も考えていただきたいなというふうに思っております。

広浜参考人 ありがとうございます。

 私どももいろいろな金融機関と取引させてもらっていまして、政府系と、都銀と、それから地銀と、あと信用組合さん、四つのパターンでやっています。四つの金融機関さんはやはりそれぞれに特徴が違います。それぞれの特徴に合わせた形で私どもの会社と取引していただければいいという形で、それなりの特色を持って皆さんやってくださっているという感じもあります。

 信用組合さんですけれども、過去、私どもの会社も、いいときもあれば悪いときもあった。悪いときであっても一切態度を変えたことがないのは信用組合さんです。それはやはり大切にしたいなという思いはあります。

 今、都銀さんの方では、あるいは提携も含めて、私どもに対してシンジケートローンを組んでくれて、一番あるべき形の融資の形態というものをシフトしてくれています。それはそれで、そういう形じゃないと、都銀さんとかが中心にならないとできないことということで、これもこれでありがたいなというふうに思っていまして、それぞれの金融機関の特色をいかに生かしていただくというところがやはりポイントなのかなということを自分たちの経験から感じているところであります。

 以上です。ありがとうございます。

落合委員 時間になりましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

富田委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、四人の参考人の方々、お忙しい中、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 早速伺ってまいります。

 まず、広浜参考人と一柳参考人に、コロナ感染拡大の影響と支援策ということについて、今もやり取りがありましたが、一言ずつ更に伺いたいと思います。

 まず、広浜参考人には、中小企業家同友会の第五次会員企業影響調査というのが三月二十二日に発表されたのを拝見いたしました。経営にマイナスの影響が出ている企業が全体で五五%というふうになっているけれども、製造業では六六%と、他の業種に比べて影響も大きく受けているということで、改めて認識を深めたんですが、これに対して、先ほど雇用調整助成金あるいは持続化給付金が役立ったというお話がありました。役立っているものを更に役立つものになるようにするために、今のその二つについて、改善点とか、あるいは再支給の要望があるかとか、その点についていかがかということ。

 一柳参考人には、菊池製作所の有価証券報告書を拝見いたしましたが、情報通信機器や自動車などの業界の縮小傾向に加えて、やはりコロナ禍の下での消費の大幅な減少の影響を受けているということが記されておりました。そのときに、国の支援として、更にこのことはもっとやってほしいなという点があれば、端的に一言でもいただければと思うんですが、それぞれ、いかがでしょうか。

広浜参考人 今のお話の中の、まず雇用調整助成金なんですけれども、昨年、一〇〇%出していただいたということで、大変助かりました。

 今、トーンとしては、だんだんそれを緩めていくというか逆に厳しくなっていくというか、そういった形での論議がされているようなんですけれども、これは、もらえる資格というか、一定量悪くなっているところしかもらえる要件はないので、そういうところに対して一〇〇%もらえなくなりますよねというのは、ちょっと違うんじゃないかなというふうに感じておりまして、それは是非継続していただければというふうに思っているところです。

 それから、持続化給付金のところですね。

 これは大変助かった会社がたくさんあるんですけれども、支給の方法で若干疑問があるというのは、規模によってある程度変化があるべきだなと思うところが一定という形になっている、いろいろな意味で不公平があるぞというところで、私どもが考えているのは、その会社が必要としている毎月の固定費をベースとして計算してもらうと一番公平なんだけれどもなという、そんな感じを持っているところではあります。

 是非、予算の関係もあるかと思うんですけれども、必要なタイミングで支給ができてくれるとうれしいというふうなところでございます。

 以上です。

一柳参考人 お答えします。

 私どもの企業においても、大きなダメージは、特に受けておるのは、やはり、情報家電、情報ですね、情報機器産業が、相当、コロナの影響で、余り調子が元々よくなかったのがますます悪くなっちゃっているというようなことですね。

 それで、うちの営業が営業を取りに行こうと思っても、まあ、ちょっと、そんな偉い人は来ないでくださいということで、実際の現場的な営業の方は行けるんですけれども、トップの営業なんかはなかなか、シャットされちゃうというような状態になっていまして、元々向こうが扉を開いていない、やっていないんですね、大手が。そういうことなので、物すごく大きな影響を受けているなと私は思いました。

 だから、そうなると、従来のもので、要するに従来の延長の物づくりはもはや成立しないな、こうなったら。急に、少しぐらいのものでは駄目だということになりますので、私はやはり、どうしたらいいかといいますと、今、現在、私たちは、福島では復興補助金というのが出ておるんですね、経産省が出されたやつが。それでもって、いろいろな大きな研究テーマをいただいてやっておって、物をつくったりしておるんですけれども、そういう意味で、新しい産業をつくるためのものを、こういうものを新しくつくっていこうよというような前向きなテーマを、国と我々が一緒に協議してやっていって、次の柱となるような産業を養成するために投資しないと、小手先のことで済むとは、ちょっと私、その方面はやっていないんですけれども、そんな感じがしております。

 ですから、もう本当に根底から変えていかないといけないということで、つくづく思っている次第でございます。

笠井委員 ありがとうございました。

 次に、広浜参考人にもう一問伺いたいんですが、三月三十一日の会長談話ということで御紹介がありました。中小企業再編論に対する談話ということですが、この中でこうあります。「このコロナ危機にあっても、全力でそれを乗り越え、さらなる発展につなげていくべく、日々奮闘しています。地域や業界を支えていく使命、社員やその家族の生活や生涯設計を保障する使命が私たちにはあるからです。」と。

 まさに会長が先ほど述べられた、使命感とおっしゃいましたが、中小企業家の矜持に立ったコメントというか談話で、本当に我々も背筋が伸びる思いで伺ったんですけれども、この矜持にやはり政治が向き合って、そして、今日もお配りいただきましたが、この中小企業憲章の立場でやはり政治がしっかり応えるべきだと改めて強く感じたんですが、この会長談話に対して、中小企業家同友会の会員の方を始めとして中小企業家の方々からどのような受け止めがあるか、あるいは感想、御意見があるかについて、御紹介いただけないでしょうか。

広浜参考人 ありがとうございます。

 この会長談話の中で、見解を三つに分けて出させてもらったんですね。最後、まとめは、今、笠井委員がおっしゃっていただいたとおりなんですけれども、その三つの項目それぞれについて、みんなが言うのは、本当にそうだよね、納得ももちろんするし、誇りを持てるということをおっしゃってもらっています。だから、いろいろなところでこの談話は今使われているというふうに思うんですね。

 ちょっと触れさせてもらいますと、まず、生産性の見解のところですね。

 生産性の見解なんですけれども、先生方がいろいろと調べていただいて、日本の中小企業の実質的な労働生産性、いわゆる物的な労働生産性は世界でもトップクラスだ、だけれども、大企業等からのしわ寄せもあってやはり値段が取れていない、だから、あるべき取引条件にしなきゃいけないよねということをここで言っている。ああ、そうだよねということを皆さんおっしゃっています。

 だけれども、本当に業界によっては厳しい業界もあるし、厳しい地域もあるし、そういったところでも、もうからないけれども頑張っている、そういう会社もあるわけなので、そういうところに対する支援というのはやはり一定程度必要だろうということを述べさせていただいています。

 あと、二つ目の社会的側面のところですね。

 これはもちろん、それぞれの地域で持続可能な地域社会を支えているという、ここにも書いてありますけれども、お祭りから始まってコミュニティーの維持、存続、それぞれ不可欠な存在となっているというのは間違いないということだけじゃなくて、サプライチェーンにおいても、ああ、この会社がないと物が上がってこないよね、そういう会社というのはすごくたくさんあるんですね。

 そういったことも頭に置いておいて、さらに、いろいろな方がやはり働いています。いろいろな方が働いているので、その社員と家族を支えていくという使命があるし、中小企業だから雇用の質が高くなくていいということはないんですね。我々だって、質の高い雇用をしていくという、主体的につくっていかなきゃいけない、そういう存在だということ。

 そんなことをひっくるめて考えますと、生産性だけに着目しての再編というのは避けたいなということでございます。

 それから、三つ目に中小企業の数についての見解なんです。

 これは、大学の先生方がいろいろ調べてくれて、ああそうかというふうに分かったんですけれども、ほかの先進国と比較しても、人口比では決して多くない、それから、中小企業が多い少ないということと一国経済の生産性の高い低いには因果関係がない、それから、歴史的に見ても、中小企業が増えているときには生産性向上、生産性は上がっているという、いわゆる正の関係にあるんだということを大学の先生方が指摘していただいていまして、我々としてもやはり本当に勇気をいただいたなという形をしています。

 だから、小さいからこそ柔軟な形でいろいろなニーズや需要の変化に対応していける、そういう、社会に貢献できている会社もたくさんあるよね、そうだよねということで、今、確認をしているところでございます。

 ということで、先生おっしゃっていただいたように、中小企業家としての矜持を持って、これからも頑張っていきたいというふうに思っているところです。

 ありがとうございました。

笠井委員 ありがとうございました。

 川上参考人に伺います。

 フリーランスやギグワーカーの権利保障の問題についてでありますけれども、私も昨年二月の予算委員会で、ウーバーイーツ配達員には労災保険がなくて最低賃金も適用されない、労働組合、ウーバーイーツユニオンをつくって団体交渉を申し入れても、ウーバー側が拒否をしている問題を取り上げました。

 当時、安倍総理が、こういう形が広がっていくことは決していいことだとは思っていないと答弁をして、その後、内閣官房がフリーランスの実態調査を行い、今年三月二十六日には、御紹介ありましたガイドラインが策定されました。

 しかし、このガイドラインは、一方的な契約終了の抑止力としては不十分というか、これではできない、抑止にならないということで、厳しい御意見が参考人から意見陳述であったのと、その中で、優越的地位の濫用に当たり得ると明記するということが必要だし、あるいは、一定のルール、規制のルールが必要だということも言われたと思うんですが、この一方的な契約終了の実例というのが、何か具体的に一つ、あれば伺いたいんですが、いかがでしょうか。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 まず、このガイドライン、共同で出した、ウーバーイーツユニオン、ヨギーユニオン、ヤマハのユニオンで、実例でいえば、ウーバーイーツの配達員の人たちは、全く理由も告げられず、突然、働こうと思ってスマホ、アプリをつけたら、アカウントが停止されていますということで、一切働けない、突然働けないということがよく起きています。それには理由の説明もないし、一方的な契約の停止で、そのまま永久停止になれば、まあ、終了ということで、何も働き手は言えないし、弁明の機会もなく、そういった状況が今起きています。

 ヨギーインストラクターユニオン、この労働組合は、今、東京都労働委員会で不当労働行為係争中ですけれども、ここで行われたというのはどういうことかというと、この講師の人たちはもう十年とかベテランで、自分で毎年、例えばインドに行ってヨガの師匠にまた教わったりとかして、自己研さんをしてきているような、非常に質の高い講師なんですが、会社の方が、有料で講習を受けて、お金を払って認定資格を取らないと、二〇二〇年、二〇二一年からはクラスを持たせない、そういう有料資格認定制度を導入した。

 それについて、今まで何の問題もなく一定のクオリティーの授業を展開してきたわけだから、ここに来てお金を払ってその免許をもらわないといけないというのはおかしいということで、その意見を述べたところ、契約を切られたというかクラスを全てゼロにされたと。今、この労働組合の役員の人たちだけ、クラスを一切全て外されている状況になっています。

 ということで、フリーランスの人たちは、本当にいつ契約を切られるか分からないという状況で、まだ幾らでも実例を紹介することはできるんですけれども、そういった非常に不公正で働きづらい危険な立場に置かれています。

笠井委員 ありがとうございました。

 もう一問ですが、昨年、当委員会でのプラットフォーマー等取引透明化法の審議のときに参考人として来ていただいて、お話も先ほどもありました。プラットフォーマーと個人の圧倒的な力関係の問題を指摘されて、先ほど、規則ということでも書けるんじゃないかというお話もあったんですが、当時、日本共産党として、ギグワーカーに対する不当行為を防止するための措置について速やかに検討して、必要な対応を取ることを求める修正案を出しました。

 今、その具体的な検討の必要性はますます高まっているんじゃないかと思っているんですけれども、それのことについてはどうでしょうか。

川上参考人 本当におっしゃるとおり、必要性は非常に高まっていると思います。

 省令で、規則で定めれば、特定プラットフォームというふうに対象にできるはずなので、それで仮に対象にされたとしても、ほとんど、例えば、ウーバーだったり、くらしのマーケットだったり、そういう労務提供型プラットフォームにかかる法的義務というのは、はっきり言ってそんなに重いものではなくて、経産大臣に対する報告義務であったり、苦情の申立て制度を設けることであったり、その年間の苦情の件数と内容がどういうものであったのか報告書をまとめるであったり、そういった内容ですので、仮に特定プラットフォームというふうに指定されたとしても、それほど企業側にとって何か大きな義務が発生するものではないですし、本当に公正性と透明性の第一歩ですので、ここに今、労務提供型プラットフォームを対象外としているということは、法律の趣旨にそもそも反しているんじゃないかというふうに思います。

笠井委員 時間が来てしまったので、翁参考人には、コロナの下で、女性や非正規労働者とかフリーランスなど、平時から弱い立場の方にしわ寄せと矛盾が集中しているんじゃないかということを伺おうと思ったんですが、委員長、一言だけ、よろしいでしょうか。済みません。

富田委員長 どうぞ。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりで、現在大きな影響を受けておられるのは、非正規の、特に女性の方々です。特にやはり宿泊、観光とか、こういったところで働いていらっしゃる方は多いので、是非、そういった方たちをサポートしていただく、そういった政策を実現していただきたいというふうに思っております。

笠井委員 ありがとうございました。終わります。

富田委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延映夫でございます。

 本日は、四人の参考人の皆さん、お越しいただきまして、貴重かつ大変示唆に富む意見の陳述をいただきまして、ありがとうございます。

 私からは、主にポストコロナに向けた経済政策や、現在経済産業委員会でも議論にされている産業競争力強化について伺いたいと思います。皆様全員に御質問できないかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、翁参考人に伺いたいと思います。

 翁参考人は、内閣府の選択する未来二・〇の懇談会の座長を始め、複数の公職でその知見を生かされて、日本のために御尽力いただいているところと承知しており、心から感謝申し上げます。

 まずお聞きしたいのですが、国が様々な審議会や懇談会、委員会を主催しております。専門家の皆様から御意見を伺い、その審議会等の御意見を踏まえて国のかじ取りや政策に生かしていくものだという認識なのですが、率直に、今のコロナ禍の情勢において、機動的かつ柔軟にその機能が十分に果たされているとお感じでしょうか。このような国難の時期だからこそ、皆様の英知を結集して、迅速にかじ取りや政策につなげていくことが非常に重要だと思うのですが、参考人の御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 コロナの今の現状でも、様々な専門家が集まりまして、分科会など設けられて、かなり頻繁にも議論されていると思います。

 専門家の知見は生かされているものと思いますが、専門家の中にもいろいろな御意見もございますので、最終的には、我が国の場合は、総合的に政策を政府が決定するという形になっているというふうに理解をしております。

 ですので、専門家はあくまでもその専門分野で、その知見を日本の現在、将来のためにと思って申し上げさせていただいておりますが、その全てが政策に反映されるというわけではないと思いますし、一定の限界はあるものと思っております。ただ、それでも、そういう立場に選ばれている場合には、私も含めまして、それぞれの専門性に基づいて、できるだけ貢献していきたいというようなことで考えております。

 お答えになっておりますか。よろしくお願いいたします。

美延委員 ありがとうございます。

 このコロナ禍、今、国難、有事とも考えますが、昨年十二月にオンラインで開催された選択する未来二・〇の講師にお見えになられた松岡所長の講義を議事要旨で拝見させていただきました。一つの手法に向かって議論されるわけではなく、言い換えれば一つの価値観だけで国を動かすのではなく、今の日本にとって最善だという方策を既存価値観と違ったとしても取り入れるデュアルスタンダードで、この国難、有事を乗り越えていかなければというような考えでということでおりますので、これからも是非よろしくお願いしたいと思うんです。

 このコロナ禍における国民経済とアフターコロナを見据えた経済産業について引き続き参考人にお伺いしたいんですけれども、二〇二〇年の日本のGDP成長率は、国民へ多大な影響を及ぼしている新型コロナによるものが大きな要因で、マイナス四・九%となりました。これは、リーマン・ショックの悪影響を受けた二〇〇九年のマイナス五・四%に比べて、また、二〇二〇年六月での世界銀行の予測で、全世界平均マイナス五・二%、日本に関してはマイナス六・一%と予測していたことを考えれば、まだ何とか踏ん張っているんじゃないかという見方もできるのですが、マイナス成長であるものの、何とか踏ん張れているという要因はどこにあるとお考えでしょうか。

 また、まだ予測するのには早いかもしれませんが、二〇二一年の同指標がどの程度になるか予想されておりますでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 二〇二〇年の経済の落ち込みですが、例えば、欧州の国々やアメリカなどと比べますと、やはり少し経済の落ち込みは低いということは確かなんですけれども、私が分析してみますと、自宅滞在時間とかなり相関をしておりまして、やはりロックダウンをしたかとか、日本の場合は完全なロックダウンをしていなかったということもありまして、自宅滞在時間が比較的短かったということもございまして、消費の落ち込みというのが海外と比べると若干小さかったというところがあるかなというふうに思っております。

 二〇二一年につきましては大体三・五%程度の上昇と今のところ見ておりますけれども、またさらに、今、活動制約が起こってきておりますので、また個人消費がもう少し落ちる可能性もあるかと思っております。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはりワクチン接種などが広がってまいりますと、景気の持ち直しというのが少し明確になってくるのかなというふうに見ております。

美延委員 ありがとうございます。

 今、参考人がいみじくもおっしゃられましたように、私も、ワクチン接種が少しでも全国民に行き渡って、やはりこれがゲームチェンジャーになってくれることを一番期待しているんですけれども、それと併せて、私はやはり、ほかの委員会でも申し上げたんですけれども、アビガンであるとかイベルメクチンなどのいわゆるコロナの治療薬を一日も早く承認していただいて、万が一罹患しても重症化しない、いわゆる普通のインフルエンザと同等の感染症に新型コロナウイルスが落ち着いてくれることが最重要でないかなと考えております。

 国民経済活動が少しでも早く通常時に戻る、これがもう一番の浮揚策だと思うんですけれども、その上でもう一問お答えいただきたいのは、アフターコロナを見据えて国がどのような政策を重点に行っていけばよいとお考えになっているか、御所見を伺えますでしょうか。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり不確実性が非常に高い時代でございますけれども、アフターコロナの方向というのはある程度見えてきていると思っています。やはり、グリーン化であり、デジタル化でどうやって新しいビジネスモデルを築いていくかということかと思っています。

 そうしますと、政策として望まれるものは、やはりグリーン社会への転換については、社会システムの全体をどういうふうにグリーン化の方に持っていくかというような明確な全体像を、時間軸も含めてしっかりと示し、適切な支援をしていくということが大事だと思っています。

 それから、デジタル化につきましては、もちろん政府部門の行政オンライン化も大事なんですけれども、社会全体がどういうふうにデジタルトランスフォーメーションをしていけるかというような、そういった絵姿を示して、そして社会全体のデジタル化をサポートしていくということが大事ではないかというふうに思っております。

美延委員 ありがとうございます。

 経済産業省は、グリーン社会とか、今おっしゃられましたように、デジタル化への対応、新たな日常に向けて、事業再構築などを促すために、産業競争力強化法の一部改正を行うところであります。今この場で審議させていただいているところなんですけれども、例えば、事業再構築補助金制度で、中小企業には三分の二を補助して、企業に新事業への進出、転換を支援していきます。

 これは私の意見なんですけれども、この厳しい経済環境の中、果たして中小企業が、三分の二を補助してもらえるからといって、じゃ、その残りの三分の一を自己負担で新事業に参入していくのか、これは少し疑問であると思うんです。

 もちろん経済環境が好転している中においては、先行きが見通せる中での投資となるので、これはちゅうちょはないと思うんですが、コロナの収束が見えず、先行き不透明感が漂う中、果たして企業が投資を行えるものなのか。いわゆる世界の不確実性も、コロナウイルス発生時期より随分低下してきておりますが、いまだに高い水準で推移しているようです。

 そこで、最後にもう一問、参考人にお伺いしますが、企業の投資マインドを促すという観点から、どのような政策が望まれ、実行していくべきとお考えか、御所見をお伺いできますでしょうか。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり不確実性が高いというのは本当にそのとおりで、特に影響を大きく受けている企業にとっては、投資をしようと思ってもなかなかできないというのは、おっしゃるとおりかと思っております。ですので、やはり業種によってかなり影響を受けているところとそうでないところがございますので、支援の仕方というのも、やはり持続化給付金のような、そういった支援の仕方もございます。

 一方で、かなり好調で、アフターコロナが見えてきているようなところ、そういったところについては、まさにそういう方向を支援していくというような、きめ細かい支援をできるようなメニューをそろえていくということが大事だと思いますのと、やはり、できるだけ不確実性を減らしていくということを、このコロナの対応にしましても、またそれから将来のグリーン化やデジタル化の見取図にしましても、明確に表していただくということを、政府の部門でできることでしっかりやっていただきたいなというふうに思っております。

美延委員 翁参考人、ありがとうございました。

 次に、一柳参考人にお伺いしたいんですけれども、副社長を務められている御社、菊池製作所様におかれましては、株式上場されるに当たり、リーマン・ショックを挟んで、大変御苦労の下、会社を成長させてこられたと承知しておりますが、企業が成長していく中で、社内、社外という二面から、それぞれどのようなことに力を入れられて会社運営をされてこられたのでしょうか。日本の製造業に携わっている企業の道筋として、是非、生の声をお聞かせいただければと思います。

一柳参考人 御質問ありがとうございます。

 私どもの企業は、先ほども御説明しましたように、幾変遷をたどっておるのでございますけれども、一番の新しい企業形態といたしましては、まず、研究所を造りまして、今まではただ物づくりをしておったところが、新しい血ということで、当時、中小企業で研究所を造るということは大体なかったと思うんですけれども、研究所というものを造りまして、そこに新しい血を入れまして。それで、最初はまあ余り会社も期待していなかったと思うんですね、本業が元々よかったですから。その中で、わいわいわいわいやっておる間に、大学とのコネもできて、いろいろできまして、その影響で、今では、十五年たちますと、やはり造ってよかったなということになったわけでございます。

 それで、我々の仕掛けとしましては、その研究所でいろいろやりまして、スタートアップをやりましたことに対して、やはり出口がないと駄目だと。やはり、六次化産業ということがよく言われているんですけれども、出口ということで、我々は、開発、営業とか、実際のできたものを展示する展示室、それを八王子のところに、東京オフィスといって造っておりまして、そういう展示をまずしておりまして、出口もつくった、一緒に。だから、ただやるだけじゃなくて、出口もつくった。

 そういうことと同時に、外に対しましては、その循環をよくするように、スタートアップを二十ぐらいつくりまして、なおかつ、それから百ぐらい、サポートロボットというような、そういう企業群団をつくって、トータル的にサポートロボットは任せてくださいというようなスキームをつくりまして、それによって会社全体が大きな変貌を遂げたというふうな理解でございます。

美延委員 ありがとうございます。

 もう一問、今回のこの法律案で、成長する企業に対して、資本金によらない新たな支援対象類型を創設して、規模拡大パスに位置する企業群を含めるなど、切れ目のない支援を実施していくことが盛り込まれておりますが、このことで、御社は、この新しい類型に該当し、支援を受けることになるのではないかと拝察しておりますが、会社として、実際、この支援が得られることでどのように経営のかじ取りを進めていかれるのか、具体的なイメージがありましたら是非お聞かせください。

一柳参考人 御質問ありがとうございます。

 二つ考えられると思いますけれども、切れ目のない支援ということで、これから我々のような中堅、まあ中小企業のちょっと上の、資源の乏しいというか、人的な資源が乏しい企業においてもスタートアップを今の倍ぐらいできる、例えばの話ですね。そうすると、層が物すごく厚くなりまして、いろいろな企業をもっと支援して大きな事業になっていくんじゃないかということと、先ほど申しましたように、スタートアップの恵まれない層もありますので、要するにその下も支援していけるということで、最終的には企業力が相当ついてくるなということで、要するに、その資金を有効に活用していけるなということと同時に、海外、やはり我々の企業だけでは、もちろん海外に、韓国、中国に我々は工場は持っておりますが、本当の開発センター的なものはまだ持ち得ないということになっておりますので、そういうような分野に、是非とも、そういう縁でもありますれば展開していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

美延委員 ありがとうございました。終わります。

富田委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、参考人の皆様には、大変貴重なお話を伺うことができました。心より感謝を申し上げます。

 これからの時間を使わせていただいて、皆様に、今回法改正が議論されている産業競争力強化法等の改正案の中身について少しばかり御意見をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まずは、広浜参考人と一柳参考人のお二人にお伺いをさせていただきたいと思っておりますが、今回我々が議論をしているこの産業競争力強化法の改正案の中身には、これまで、親事業者と下請事業者の間に介在してその取引をコーディネートするような役割を担う、いわゆる仲介事業者の認定制度の創設というものが検討されております。

 発注側がある程度の仕様をその仲介事業者に示したら、この仲介事業者がその仕様に従って得意な下請企業を選定して、そこに再発注をかける、そんな仕組みになっているんですけれども、私がこれまでのこの委員会の中で少し懸念を表明してきましたのは、この仲介事業者の存在によって取引の透明性や公平性というものが少し変化してしまうおそれはないのか、これまであった取引機会が、仲介事業者が入ることによって取引機会を喪失するようなことにつながらないのか、こういった懸念をこの委員会の中で議論してまいりました。

 中小企業を経営されているお立場から、この仲介事業者という存在に対してどのような御認識を持っているか、もし懸念点などあれば是非教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

広浜参考人 ありがとうございます。

 仲介業者のことについては、私どもの組織ではまだ深く議論したことはないので、自分の感覚でしかお答えできないんですけれども。

 一般に、親会社、子会社という形というか、初めから取引があるところはいいんですけれども、そうじゃない場合は何が問題かというと、仕事を提供する側とすると、自分たちは何ができますよということを広く世の中に知ってもらう、そういう手だてがないんですね。だから、なかなかよさというものが生かされないということがあります。逆に、発注する側は、どういうところでそういういいものがつくれるのかということが分からないので、だから、マッチングがなかなかできないというところが懸念材料だった。

 そういう中で、仲介業者というのが適切な形でやってもらえると、確かに、それぞれのよさが生きるという形になっていいのかなというふうに思うんですね。

 ただ、その仲介業者が、簡単に言うと、質のいいところだったらいいんですけれども、質の悪いところだと何をされるか分からないぞというのは確かにあるなということをすごく感じています。

 私のところの場合でいうと、仲介業者が入っているわけではないんですけれども、やはり実際に販売しているのは缶メーカーが多いんですね。その先のユーザーとの取引というのはほとんどない、一部にあるだけ。だから、我々がどういうことができますよということは、缶メーカーを通じて、その先のユーザーというか、おしょうゆメーカーとか灯油メーカーとかそういったところにお話が行く。

 だけれども、それは、いい形でうまく話が伝わっていくととてもいい、缶メーカーにとってもいい、ユーザーにとってもいい、我々にとってもいいという形ができるんですね。それが、情報がシャットダウンされていますと、我々として改善したくても何もできないというところが過去にもあったということがあるので、適切な形での仲介業者がいてくれたらこんなやはりうれしいことはないんだろうなということを感じているところです。

 以上です。ありがとうございました。

一柳参考人 私の感じとしては、仲介業者と言われるのは、多分、私の理解としては、商社に近いのかなというような感触を持っておりますけれども、優秀な商社、例えば世界を股にかけておるような優秀な商社ならば、我々の実際の、我が社だけの営業力では国内とちょっと海外程度しか営業力はないんですけれども、それが、世界を股にかけて仲介業者さんが新しいことを持ってきていただければ、これはもう十分ウェルカムということでございますけれども、そういう立場になるということを期待しております。

 以上です。

浅野委員 どうもありがとうございます。

 もう一問、広浜参考人にお伺いしたいと思います。

 参考人は、今日、参考資料の、お持ちいただいた資料の中で、ローカル型経済への転換といいましょうか、地域経済、循環型経済というものの重要性にも触れておられました。私も、それは大変重要ですし、コロナ禍を乗り越えた後で、各地方の地域の経済が循環的に回っていくことも重要だと思います。そしてまた、これまでのこの委員会の質疑の中で、地銀やコミュニティーバンクについても議論がございました。

 私自身、今お話に上りました仲介事業というのは、是非、地銀やコミュニティーバンクがこれから担いながら、地域の中小企業の強みを地域の中で把握しているこの地銀、コミュニティーバンクこそ適当ではないかというような考えを持っておりますが、地域循環型経済を実現するに当たって、この地銀、コミュニティーバンクにこういった仲介事業をさせること、これについてどのようにお考えか、御意見をいただけますでしょうか。

広浜参考人 ありがとうございます。

 今御指摘になったように、地域の金融機関がその役割をするというのは私自身も理想的な形だなというふうには思います。

 というのは、先ほど、いろいろな金融機関、それぞれ特色があるよねというお話をさせてもらったんですけれども、やはり、地域に根差している金融機関はそこを特色にしなきゃいけないということは感じていまして、まさにそこにこそ特化すべきじゃないかなということを感じているんですね。

 地域循環ということでいいますと、やはり、銀行もそうなんですけれども、地域にある全ての事業所、会社は本当にやはり重要で、一社潰れると、その分、地域が消滅するというぐらいの意識でいなきゃいけないだろうというふうに思っているので、できる限り地域で経済が循環していくという仕組みにしないと、なかなか、そういった形で、落ちこぼれているところが出てきてもおかしくないというところがあります。ということで、ローカル、あるいは地域循環というのをとても大切にしている。だから、我々も、一社も潰さないという形で運動しているのは、一社潰れたら、その分、地域が疲弊するよというところが明らかなので、そんな思いを持ちながらやっているところです。

 そういう意味で、地域金融機関さんがそういった役割を担っていただけるというのは本当にうれしい話だなというふうなことを感じております。

 以上です。

浅野委員 どうもありがとうございます。

 次の質問は川上参考人にお伺いしたいと思います。

 仲介事業者というのは、いい面もある一方で、やはり、私も懸念しているように、透明性、公平性が担保されない場合には極めて大きな懸念も出てくるわけでありますが、プラットフォームワークについてのいろいろな課題意識をお持ちだと思います。今回、いわゆる仲介事業者、今現存している該当している事業者というのは、いわゆるインターネットでのプラットフォームを通じて労働者をマッチングさせるようなサービスをしている事業者が主に想定されているんですが、こういう、フリーランスの方がそういったプラットフォームを使って仕事を手にしている例もたくさんあります。

 一方で、やはりいろいろな問題が起こっていると思いますが、この仲介事業者の認定制度を設けるに当たって、参考人が御存じの範囲で、どういう懸念が想定されるのか、特にフリーランスの方々に対して、お感じになっている部分があれば、是非教えていただきたいと思います。

川上参考人 どうもありがとうございます。

 済みません、仲介事業者の認定制度というのはどの法律においてという、前提は。(浅野委員「下請振興法ですね」と呼ぶ)ああ、そうなんですか。

 労働の分野における仲介事業者の問題というのは、やはり、仲介にすぎないという立場を法的には用いることで一切責任を負わないというふうな、今、立てつけを仲介事業者側が主張しているので、そうすると、働き手としては何の補償も受けられない、誰に対して責任を求めればいいのかというジレンマに置かれていて、例えば、ウーバーで言うと、その配達員と契約をしているのはあくまで飲食店ですというのが、ウーバー、ウーバーイーツの立場なんですね。ウーバーイーツは、配達員に業務委託さえしていないんですね、という立場なんですよ。

 でも、社会的実態として見れば、ウーバーイーツというフードデリバリー事業者が配達員の人にこの配達をお願いしますと、業務委託関係、最低でもそこが認められるのは明らかなんですけれども、企業側としては、業務委託関係さえない、業務委託をしているのはレストランなんですというのが会社の立場なんですね。そうすると、もし事故があった、契約に問題があった、いろいろな問題があったら、全部レストランと料金交渉してくださいとか。それがウーバーイーツという会社、仲介事業者の公式の立場として彼らは言っているんですね。

 だから、仲介というものになったときに、そういった法的な言い分が可能になってしまっている今の法制度が問題だと思うので、デジタルプラットフォーム透明化法とかは、仲介事業者とされている人に、少なくはありますけれども、一定の法的義務を課すという第一歩ではあったと思うんですね。なので、仲介事業者の特殊性というのはそういったいろいろなところに出てくるので、仲介事業者だから一切責任を負わない、追及できないという今の法制度を何とか考えて、社会実態として社会的責任を負わせるというふうな法制度を早く整備していただきたいなと思います。

浅野委員 どうもありがとうございました。

 仲介といっても、単なる紹介なのか、委託なのかで大きなやはり責任の持ち方の違いがあるというところは、我々もよく肝に銘じながら今後議論をさせていただきたいと思います。

 続きまして、翁参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 大きく二つ質問させていただきたいと思いますが、一つ目は、今の質問の延長線上で、地方経済の活性化というものを考えたときに、地銀とコミュニティーバンク、先ほど広浜参考人にも質問させていただきましたが、この地銀、コミュニティーバンクが事業者と事業者を結びつける仲介役を担うということについての見解が一つ。

 もう一つは、ちょっとテーマが変わりますが、今回、カーボンニュートラル投資促進税制と、あと、DX投資促進税制という二つの税制の創設も検討されております。こちらについては、税額控除の上限が一〇%というふうに定められておるんですが、諸外国の例を見ますと、例えばアメリカでは三〇%という税額控除を適用しています。日本もこれからグリーン化、デジタル化を加速させていかなければいけないという中で、この一〇%という水準についてどうお感じになられているか。経産省の言い分としては、十分だというふうに主張しているんです。だけれども、産業現場から見るとどうなのか。

 この二つについて御意見をいただきたいと思います。

翁参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、一問目でございますけれども、マッチングをコミュニティーバンクと地銀がやるということについては、情報が地銀には集まっておりますので、顧客基盤もその地域にはたくさんございますし、そういう意味で、地域での循環というのは先ほどお話ございましたけれども、地方経済の活性化に地銀が果たす役割として、そういったマッチング機能というのは非常に期待できるところではないかと私も思います。

 また、地方銀行は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今後いろいろなことができるようになってまいりますので、業務範囲も緩やかになってまいりますし、そういった地方のためにできることについて、いろいろ、手足を縛られずにできるようになっていくといいなというふうに希望しております。

 それから、カーボンニュートラル税制、DX税制については、もちろん、もっと税額控除が大きい方が、それはインパクトがあるんだろうなというふうには思います。この一〇%というのがどういうふうなところからきているのかは分かりませんが、それでも、今非常に、どこに集中的にやっていくのかということと、あと、そのほかにもいろいろ、基金とかをつくったりということで、例えばカーボンニュートラルについても研究開発を進めたりということであると思いますので、予算全体の中でどういう配分をしているのかなということで、こういう数字が出てきたのかなと思いますけれども、やはり、もちろん、規模が大きければ、それだけインセンティブは湧くかなというふうに思ってはおります。

 是非、現場の方々の御意見なども御参考にしていただければなというふうに思っております。

 以上でございます。

浅野委員 終わります。どうもありがとうございました。

富田委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る十四日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十七分散会


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