衆議院

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第14号 令和4年5月11日(水曜日)

会議録本文へ
令和四年五月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 古屋 範子君

   理事 石川 昭政君 理事 稲田 朋美君

   理事 長坂 康正君 理事 松本 洋平君

   理事 落合 貴之君 理事 山岡 達丸君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      井原  巧君    石井  拓君

      石橋林太郎君    大串 正樹君

      金子 俊平君    上川 陽子君

      神田 潤一君    国定 勇人君

      国光あやの君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    鈴木 英敬君

      鈴木 淳司君    土田  慎君

      中川 貴元君    中野 英幸君

      西村 明宏君    長谷川淳二君

      星野 剛士君    堀井  学君

      柳本  顕君    山下 貴司君

      山本 左近君    荒井  優君

      梅谷  守君    大島  敦君

      菅  直人君    末次 精一君

      山崎  誠君    青柳 仁士君

      漆間 譲司君    藤田 文武君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      宮本  徹君

    …………………………………

   経済産業大臣       萩生田光一君

   外務副大臣        小田原 潔君

   経済産業副大臣      細田 健一君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 有馬  裕君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局教育課程総括官)    佐藤光次郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官)    太田 雄彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           門松  貴君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           苗村 公嗣君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          奈須野 太君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            藤木 俊光君

   政府参考人

   (経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局長) 佐藤 悦緒君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 山下 隆一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            茂木  正君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 白石 隆夫君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     長谷川淳二君

  國場幸之助君     金子 俊平君

  西野 太亮君     石橋林太郎君

  笠井  亮君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     鈴木 英敬君

  金子 俊平君     國場幸之助君

  長谷川淳二君     柳本  顕君

  宮本  徹君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     西野 太亮君

  柳本  顕君     神田 潤一君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     岩田 和親君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――

古屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治さん、外務省大臣官房審議官有馬裕さん、文部科学省初等中等教育局教育課程総括官佐藤光次郎さん、経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官太田雄彦さん、経済産業省大臣官房審議官蓮井智哉さん、経済産業省大臣官房審議官門松貴さん、経済産業省大臣官房審議官苗村公嗣さん、経済産業省産業技術環境局長奈須野太さん、経済産業省製造産業局長藤木俊光さん、資源エネルギー庁次長山下隆一さん、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長茂木正さん、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹さん、中小企業庁事業環境部長飯田健太さん及び環境省大臣官房審議官白石隆夫さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井原巧さん。

井原委員 おはようございます。自民党の井原巧でございます。

 今日は、発言の機会、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございました。また、萩生田大臣始め関係者の皆さん方には、誠意ある御答弁、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 高圧ガス保安法というのは、少し耳慣れない言葉というか、ふだん生活では一般の方は聞くことがないんですけれども、ライフラインとか社会インフラという意味でいうと、非常に重要な、社会の発展に大きな役割を果たしているのが高圧ガスということであります。

 ガスを高圧にして体積を小さくするということで、効率的に保管や運搬ができるということ、また、使用するときには、当然、高圧の圧力がかかっていますから、噴出するのに、ガスを供給する際に動力は要らない、そういうメリットがあるということであります。しかし、その反面、当然のことながら、物理的な圧がかかっておりますから危険性は伴っているということでありますし、それを生産、次は保管、運搬、使用、あらゆる分野でしっかり管理できてこそ、そのメリットというものが享受できるということであります。

 日々、安全性を高めていくための規制の見直しをすること、時代の変化に応じたその対応についてもしっかりと取り組んでいくことが重要であります。まずは、その安全性という観点に立ち、質問をさせていただきたいと思います。

 この度の改正の柱の一つとしては、産業保安分野においても、IoTやAI、ロボット等、テクノロジーの進展、また一方、保安人材の高齢化から見る将来の保安人材の不足ということもあります。そのことを踏まえて、今回、スマート保安の促進を打ち出しているわけでありますが、この改正案では、高圧ガス、都市ガス、電気、各分野において、認定高度保安実施事業者制度というものを創設して、認定された事業者に係る手続あるいは検査の在り方を見直すとなっておりまして、例えば、国等と事業者双方が行う検査を、今回は、事業者による検査のみにするとか、検査時期や保安人員の配置を柔軟化する、こう書いておりますが、何より安全性の担保が重要と思うわけであります。

 そこでお伺いしますが、スマート保安の促進のための新たな認定制度について、しっかりその安全性は確保されるのか、御所見をお伺いしたいと思います。

細田副大臣 ありがとうございます。

 先生今御指摘いただいた点、大変重要なポイントであると考えております。

 産業保安分野において、今お話があったとおり、安全の確保は大前提でございまして、今般の制度改正においても、この大原則については何ら変わるところはございません。

 その上で、今般の制度改正は、厳格な要件の下に、日々進化するAI、IoT、ビッグデータなどのテクノロジーを活用しながら自立的に高度な保安を確保できると国が認定した事業者に限って、一部の手続や検査方法を適正化するものでありまして、人だけに頼っていたものよりもより高い保安レベルの向上につながっていくと考えております。

 具体的には、国は認定に当たって、安全確保に向けた経営トップのコミットメントでありますとか、高度なリスク管理体制の構築といったような極めて厳しい要件を満たしているか、直接審査をするということになっております。

 また、認定後も、適時適切な立入検査によって認定要件への適合状況を確認し、仮に法令違反等を確認した場合は速やかに認定を取り消すなど、行政による厳格な監督を実施することで、継続的に認定事業者の適正性を担保し、保安レベルの向上に努めていくものとしております。

 当省といたしましては、今般の制度改正によって、保安の更なる高度化のみならず、深刻化する保安人材の不足に対応する、また、事業者のリスク管理能力に応じためり張りのある規制体系に転換することで、官民双方にとって保安レベルの向上につながると考えております。

 是非この点について御理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

井原委員 ありがとうございました。

 高い保安レベルという言葉が出ておりました。ということになると、今回のスマート保安の促進で認定制度の導入をするということでありますが、同時に、経済産業省はその取組を更に進めていく必要もあろうというふうに思っております。

 その取組について、御所見をお伺いしたいと思います。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 経済産業省としましては、保安レベルの持続的向上と、保安人材の不足への対処の観点から、これまでも様々な施策を総動員して、スマート保安の促進に取り組んできたところでございます。

 例えば、規制面でのスマート保安の阻害要因を取り除くため、高圧ガス製造施設等の検査方法について、今まで目視検査としていたところをカメラ搭載のドローン等によって検査を可能とする規制改正を実施するとともに、スマート保安の投資効果を見える化するために、プラントにおけるAI導入の成果等を具体的に提示する、プラントにおける先進的AI事例集を作成いたしました。

 また、加えまして、資金力の乏しい事業者を支援するために、保安現場にスマート保安を導入するための技術実証に係る補助事業等を実施してきたところでございます。

 さらに、令和二年六月より、官民のトップによるスマート保安官民協議会を開催をいたしまして、スマート保安の基本的な方針を明確化し、取組の方向性を官民で共有をして、高圧ガス分野、都市ガス分野及び電力分野でアクションプランを作成し、分野別の取組を進めているところでございます。

 今般の認定制度に加えて、これらの取組を一体的に推進することで、引き続きスマート保安を推進していきたいと考えてございます。

井原委員 ありがとうございます。

 各社それぞれがしっかりこのスマート保安の体制を整備されるということが重要でありますから、引き続きの経産省の支援の方をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、二つ目の柱として、新たな保安上のリスク分野への対応ということで、太陽光、風力発電設備の保安規制の見直しが挙げられております。

 さきの熱海での土砂崩れ災害と太陽光発電整備の事故もありました。実は、私の地元も小規模な太陽光発電があちこちに最近整備されておりますが、先般、強風によりパネル等が飛散して近隣の住宅を傷めたということがありました。その上、その事業者が倒産し、放置されたままになってしまって、どうしようもなくなったんですね。最終的には、一時的にもう市が入るしかないだろうということで、市が間に入って対応をしたという、そういう苦慮した事例も最近あります。

 そのような住民不安の観点からも、その保安上の対応を図ることは誠に重要であります。他方、カーボンニュートラルを進めていく上で、事業者の負担が過度になれば再エネ導入のブレーキにもなる心配もあるわけであります。

 そこでお伺いするわけですが、今回の改正案は小規模な再エネ設備を対象とするものでありますが、事業者負担をどのように考えてバランスの取れた規制になっているのか、御所見をお伺いいたします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の電気事業法改正によって小規模な再エネ発電施設に対して新たに措置をする保安規制は、昨今の再エネ発電設備の立地や設備形態の多様化を踏まえまして、事業者負担を考慮しつつ、安全確保のために必要と考える措置でございます。

 例えば、一定規模以上大きな再エネ発電設備の設置者には、これまで保安規程の届出や電気主任技術者の選任、使用前の安全確認を義務づけてまいりました。今般の改正では、小規模な再エネ事業者に対しては、これらに代えて、事業者の負担軽減も配慮いたしまして、基礎情報の届出と設備の使用前の安全確認を課すことといたしてございます。

 加えて、手続面での負担を軽減するために、届出手続はオンラインで完結できるよう、令和四年度予算においてデータベース構築のための予算を計上するなど、手続面についても十分に配慮してまいりたいと考えてございます。

井原委員 ありがとうございます。

 次に、本改正案の三つ目の柱となっておりますカーボンニュートラル実現に向けた保安規制の整備として、洋上風力を始めとする風力発電の導入促進から創設されようとする登録適合性確認機関による確認制度について伺います。

 安全性を担保しつつ、規制、審査は合理化し、迅速化を図ることは重要であります。現状、これまでどのような課題があったのか、そして、今回創設される登録適合性確認機関はいかにその課題解決に寄与できるのか、お伺いいたします。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 電気事業法では、出力五百万キロワット以上の風力発電設備につきまして、国への工事計画の届出を義務づけており、設備の立地環境等を踏まえつつ、風力発電設備の技術基準への適合性を国が確認しているところでございます。

 今後、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けまして、陸上風力に加え、二〇三〇年には約一千万キロワット、二〇四〇年には三千万から四千五百万キロワットの洋上風力の建設が予定されており、これらの洋上風力発電設備の技術基準への適合性の確認を適切に処理することが求められております。

 特に、洋上風力の安全審査におきましては、波浪等の海流による影響や海底の地形などを考慮した安全性の確認が必要であり、確認業務においては高度な技術的知見が要求されているところでございます。

 こうした発電設備の技術基準への適合性の確認を迅速かつ的確に行うため、民間の専門的知識を有する専門機関、登録適合性確認機関による事前確認制度を設け、適切に対応することで、風力発電の安全性の向上に加え、導入の拡大が期待されるものと考えております。

井原委員 ありがとうございます。

 洋上風力は、本当に、これからカーボンニュートラルを我が国が進めていく上で非常に重要なものだと考えておりますので、是非その推進方にも寄与するよう、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、ガス事業者間の災害時の連携強化について伺います。

 本改正案で、災害時におけるガス事業者間の連携計画の事前策定を義務づけられるということになります。しかし、同じライフラインであります電力分野では、既に二〇二〇年には電気事業法が改正されて、一般送配電事業者に対し、災害時連携計画を作成、届出する制度ができているわけであります。

 そこでお伺いするわけでありますが、電力分野とは業態や経緯に違いがあったのだとは思うんですが、なぜ前回の電気事業法改正時に、同じ重要なライフラインであるガス分野でも災害時連携計画の策定を義務づけなかったのか、御所見をお伺いします。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、その前にちょっと一点訂正をさせていただきたいのですけれども、先ほど私、風力発電所で工事計画の届出の対象になっている出力につきまして五百万キロワットと申し上げましたけれども、五百キロワットの間違いでございました。大変申し訳ございません。訂正をさせていただきます。

 それでは、お答えを申し上げます。

 災害時連携計画の策定に関する御質問でございますけれども、電力分野では、停電復旧対応において関係者間の連携に課題が見られた令和元年台風十五号の経験を踏まえまして、令和二年に電気事業法が改正され、一般送配電事業者に対して災害時連携計画の策定が義務づけられたところでございます。

 その後、電力分野では、災害時連携計画に基づきまして、復旧方法や設備仕様の統一化や共同訓練などの取組が進められているほか、こうした連携強化の取組が、例えば、令和二年台風第十号の際には、全国からの電源車の派遣といった迅速な対応につながるなど、制度改正の成果が実際に確認されているところでございます。

 一方、都市ガス分野におきましては、これまで災害時連携計画の策定義務は課してこなかったものの、大規模災害時の対応に関する国のガイドラインや業界の自主的な取決めに基づき、これまでも適切に被災地内外の連携を行ってきたところでございます。

 今後、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震といった更なる大規模災害の発生が懸念される中、電力分野の災害時連携計画の成果を踏まえ、都市ガス分野においても事業者間の連携体制に万全を期すため、今回の法改正によりまして、一般ガス導管事業者に対して災害時連携計画の策定を義務づけることといたしたところでございます。

井原委員 ありがとうございます。

 とにかく、日々変化あるいは高度化、複雑化するライフラインでありますから、その安全性を、日々不断の検討を図りながら進めていただくことを御要望を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、中野洋昌さん。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして、高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案につきまして早速質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 本法案の大きな柱の一つは、スマート保安の推進でございます。

 テクノロジーが進展をし、効率化とともに保安レベルの向上を認めるような、そういう取組、これは当然推進をする必要がある、これは十分に理解をするところであります。産業保安人材の現場を見ると、高齢化や人手不足、こういう課題もございますので、必要な取組をやはり進めていかないといけない、こういう政府の問題意識につきましては共有をするところであります。

 他方で、こうした取組を進めるに当たりましては、やはり安全第一、この安全文化の徹底ということが議論の大前提ではないかというふうに考えております。

 例えば、私の地元の兵庫県尼崎市では、ちょうど十七年前にJR福知山線の脱線事故がございまして、当時、交通分野の安全文化をどう確立をするのか、こういう大変大きな議論がございました。やはり、経営トップからの強い安全へのコミットメントをしっかり求めるという、交通の分野のそういう安全の制度づくりというものも、それを契機に進んでいったというふうに記憶をしております。

 もちろん、こうしたスマート保安というものを進めるに当たりましては、やはり、経営トップが安全性よりも効率化を優先させるようなことがあってはいけないというふうに思いますので、強いコミットメント、安全へのコミットメント、そしてリスク管理の体制をしっかりと取っている、こうしたことが大前提になると思いますので、これを強く求めていきたいとまず冒頭申し上げます。

 他方で、もう一つ、スマート保安を進めるに当たりましてやはりよく聞かれますのが、例えば災害が起きたときに対応しないといけないですとか、いろいろなことを考えますと、どうしても、現場の人材力というか、やはり人の力というのは最後に必要になってくるわけでありまして、保安人材の確保、育成というのは、スマート保安を進めるに当たってもやはりしっかり担保をして進めていかないといけない、こういうお声があるわけでございます。

 これについてのお考えを、大臣の答弁を求めたいというふうに思います。

萩生田国務大臣 まず、問題意識は先生と全く同じです。

 持続的な安全確保に向けて、技術的又は経済的理由からテクノロジーのみに依拠することは困難であり、安全を守るには、テクノロジーに現場の技術者の知見、経験を適切に組み合わせることが重要であることなどを踏まえれば、どれだけテクノロジーが進展しても、現場の技術者の重要性は変わることはないと思っております。

 むしろ、これからの時代は、スマート保安の導入によって、これまで三Kと表現されることもあった産業保安の現場が改善する可能性があります。

 例えば、電力分野では、鉄塔などの点検作業において、今までは高いところでずっといっ放しだったんですけれども、ドローンを活用することによって、現場の技術者による危険な高所作業が減り、一日でより多くの点検作業を行えるようになるといった効果が既に表れています。

 このように、働き方改革や労働環境の改善が促され、より付加価値の高い業務として現場の技術者の給与アップにもつながり、保安業務の魅力が向上することが期待されます。

 このため、まずは今回の法改正が、保安人材について今後不要になっていくといった認識につながることがないように、改正趣旨をしっかりと広報していきたいと思います。

 その上で、経産省としては、これまでも保安人材の確保、育成に向けては、例えば、電力分野における若者向けのPR、プロモーションや、第一種電気工事士の資格取得等に必要な実務経験年数の短縮化、高圧ガス分野におけるAI、IoTなどの新技術の導入を見据えた実践的な人材育成支援などを実施してきたところでありますが、こうした取組に加えて、保安現場の働き方改革なども含め、自治体とも連携して、官民挙げて総合的な対策に取り組んでいきたいと思っております。

中野(洋)委員 大臣から丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございます。やはり人の力、現場の力が大事だというところも共有をさせていただきました。

 もう一つ、保安の分野におきまして、例えば電力、ガスなどを想定しますと、本社のみならず、やはりこの保安を行っているのは関連の協力事業者の方々というか、いろいろな関係者が協力をしながらこうした保安を行っているということでありまして、例えば、本法案を実施した場合に、例えばいろいろな、電力とかガスのような様々な分野の高度な保安を実施をしている協力の事業者の方も含めて、こうした分野のところに悪影響があるのではないか、こういう心配の声もあるところでございます。

 これについての考え、また、こうした方々をしっかり支えていくような取組をしていくのか、こういうことも含めて、政府の答弁を求めたいというふうに思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 認定事業者に対する特例措置により法定の検査周期が柔軟化される場合でも、設備の計画外停止を防止する観点から、検査の周期が極端に延びたり、あるいは検査が全くなくなるということはないと考えてございます。

 また、日々のメンテナンスや修繕が一層重要となりますことから、認定事業者から協力事業者にお願いをする仕事の量が大きく減少することは想定されないのではないかと考えてございます。

 また、現行の定期検査におきましては、協力事業者の確保に当たって、法定周期内での実施を調整しているのに対し、予防保全を行う場合は、劣化傾向の検知によって、何か不具合が見つかったら、早期の工事計画の立案や、協力事業者に対する検査や工事の発注にもつながるというメリットも想定されると考えてございます。

 加えまして、スマート保安技術の実装には、現場の方々が技術に習熟することが重要でございます。例えば、協力事業者向けのドローンの講習会の開催、それから、モバイル端末貸与等の取組、協力事業者と協働して、スマート技術を活用したメンテナンス手法の確立、そういうことを進める事業者の皆さんもいらっしゃいます。

 したがいまして、認定事業者への特例措置により、現場の協力事業者の方々の仕事の量が大きく低減するということは余り想定されないと考えてございますけれども、協力事業者との適切な協働が図られるよう、認定事業者に対して、協力事業者とのコミュニケーションの確保や協力事業者と一体になった人材育成について配慮するよう指導してまいりたいと考えてございます。

中野(洋)委員 ありがとうございます。早期点検、あるいは早期の対応の取組ですとか、関連の事業者も含めて技術の高度化といったような取組もしっかり想定してやっていくということで御答弁をいただいたかと思います。

 今回の法改正、もう一つ、災害対策、レジリエンスの強化というところも一つの大きな柱になっております。

 二〇一八年には関西でも大きな台風で大停電がございまして、これの復旧が非常に大変だった、そういうことがございました。電力の分野におきましては、災害時連携計画ということで、関係の機関が連携をして復旧を行えるようにしようと。当時、協力をしようとしても、いろいろなものの仕様がそれぞれ異なったりとか、いろいろなこともございましたので、こういう仕組みが既にできているということで、今回、これをガスの事業に関してもしっかり対応していこうという取組を進めていくということで、非常に重要であると考えております。

 他方で、現在、大規模災害時の保安業務、どこをしっかりと中心にやっていくかということなんですけれども、現在、小売の事業者と一般ガス導管の事業者が一体として行うという形であります。電力については、一般送配電の事業者がこれを行うというふうに理解をしておりまして、そうすると、保安人材を例えば長期的に訓練をしたり確保していったり、安定的な保安をどう行っていくかということを考えると、一般ガスの導管の事業者がより主導的に対応する方が現実的なのではないかというふうな御意見もいただいたところでございます。

 これについての政府の今の見解というのを、今後の方向性も含めてお伺いしたいと思います。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、大規模災害時には、都市ガスの早期復旧や二次災害防止のため、一般ガス導管事業者とガス小売事業者が平常時の役割分担を超えて対応に当たることとなっております。例えば、保安閉開栓等の業務は、事前に教育を行うことで技能を担保することが可能と考えられるため、大規模災害時はガス小売事業者も担うことと整理をされております。

 こうした中、昨年の審議会におきまして、大規模災害時の保安業務の在り方について改めて議論が行われ、現場経験の乏しい小売事業者に業務を行わせるのではなく導管事業者に集約すべきという意見があった一方、早期復旧の観点では、導管事業者だけで全てカバーすることは現実的ではないとの意見もあったところでございます。

 そのため、昨年末の審議会報告書では、足下は現状の業務分担を変えないものの、検討を継続すると整理した上で、保安業務に日頃従事していない要員につきましては、一般ガス導管事業者等による教育訓練によって必要な技能を補完することといたしました。

 経済産業省といたしましては、今年度の委託事業の中で、事業者間の業務分担を見直した場合の影響を含めた調査、検証を実施し、検討を進めてまいりたいと考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 大規模災害時にどう対応するかという、平時からこれをしっかり対応することが重要だと思いますので、これは引き続き必要な検討を是非行っていただきたいとお願いを申し上げます。

 災害対策の強化というところで、この法改正では、小規模な太陽光発電や風力発電に対する保安や防災に関する対応ということでしていただいております。こうしたいろいろな災害ですとかあるいは大雨や台風、こういうところで太陽光の発電のところが崩れたりですとか、昨今そうした事案も増えておりまして、やはり地元からは不安の声というのは上がっております。再エネを導入をしていくということの推進をするためにはこうした声にもしっかり対応しないといけない、そのための今回の保安規制の改定である、このように理解をしております。

 他方で、これらの規制については、新設されたものにつきましては新たな規制がかかっていくということなんですけれども、今既に、既設のもので小規模な再エネ発電設備というのがかなりあるわけでありまして、これについてどうやって安全性の確保をしていくのか、こういう御心配の声もあるところでございます。

 これについて、今後どのように対応していくのか。また、今回対象となるのはどこまでの規模なのか。例えば、住宅用の太陽光発電設備、今後こういうものについてどういう対応をしていくのか等も含めて、政府の答弁を求めたいというふうに思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の電気事業法の改正案により小規模事業用の電気工作物となる十キロワット以上五十キロワット未満の太陽電池発電設備は、既に約六十万件ほど存在してございまして、こうした既設の再エネ発電設備の安全確保も重要でございます。

 その点、今般の電気事業法の改正案では、事業用電気工作物一般に課される技術基準への適合維持義務と基礎情報の届出は、既設の再エネ発電設備に対しても求めることとしたいと考えてございます。

 加えまして、土砂災害警戒区域等に立地するリスクが高い再エネ発電設備に対して優先的に電気事業法に基づく立入検査を実施することにより、既設の再エネ発電設備の保安確保に努めてまいりたいと考えてございます。

 なお、今般の改正電気事業法案におきましては、十キロワット以上の太陽電池発電設備を新たな規制措置の対象としていますけれども、一般家屋の屋根に設置されている出力数キロワット程度の太陽電池発電設備につきましては、住宅メーカー等により適切に施工していることに加え、一般消費者に対する負担等も考慮いたしまして、十キロワット未満の設備につきましては新たな規制措置の対象外としたいと考えてございます。

中野(洋)委員 最後に一問、カーボンニュートラル実現に向けた保安規制の整備というのも今回対象になっております。燃料電池自動車につきましての規制の改正がございます。

 この関係でいきますと、御要望としてよくいただくのが水素ステーション、これについても技術開発や規制緩和によって運営コストを下げていくというふうな必要がある、こういうふうに政府でも取組を進めていただいておると思いますけれども、最後に、今後の取組についてお伺いをしたいというふうに思います。

茂木政府参考人 水素ステーションのコストについては、二〇二五年までに、いわゆる整備費を二億円程度、運営費を千五百万円ぐらいまで低減させるという目標を立てております。

 現状は、大体、二〇一九年度の平均値で、一基、整備費が平均で四・五億円ぐらい、それから運営費が年間四千三百万円ぐらいということで、今後、水素ステーションの自立化に向けては、この整備費と運営費の更なるコスト削減というのが必要になってきます。

 このために、経産省では、今、水素ステーションの関連設備の技術開発、それから規制改革実施計画に基づく安全性を前提にした規制の見直しを行っておりまして、具体的には、運営費の低減に効果のあるような、例えば充填ホース、こういうものの長寿命化のための研究開発ですとか、整備費の低減ということで、水素の貯蔵タンク一本当たりの水素保有量を増やすためのタンクの圧力上限の規制の見直し等の取組を進めております。

 こうした取組を通じまして、水素ステーションのコスト低減を進めてまいりたいというふうに考えております。

中野(洋)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、山崎誠さん。

山崎(誠)委員 おはようございます。立憲民主党、山崎誠でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速、本日、高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案ということで質問させていただきますが、法案の質問の前に二点ほどちょっと御確認で質問をさせていただこうと思いますので、お許しください。

 まず、項目の五番目であります。

 東京電力福島第一原発事故からの避難者について、国連の特別報告者の受入れについてということで、四月の十三日の経済産業委員会から連続三回質問させていただきました。前回の質疑では、とにかく、早期に結論を出して公式な回答をするということでお話をお聞きをいたしました。四月の二十七日だったと思います。

 その後、早期にということでございますので、動きがあることを期待しておるんですが、今日は副大臣にお越しいただきました、現状、御説明いただけないでしょうか。

小田原副大臣 山崎委員にお答え申し上げます。

 ダマリー国内避難民特別報告者の訪日要請の受入れについては、外務省が窓口となって、同特別報告者と累次、意見交換を行うとともに、先方の考え方などを関係府省庁に伝達し、調整を行ってまいりました。

 現地昨五月十日、ジュネーブの日本政府代表部から国連人権高等弁務官事務所に対し、ダマリー国内避難民特別報告者が希望する九月の最終週から十月中旬にかけての訪日を打診する旨、口上書により伝達をしたところであります。今後、より具体的な日程や訪日の内容等について、ダマリー特別報告者本人とそれから国連人権高等弁務官事務所の担当部局とも意思疎通の上で調整を進めたいというふうに考えています。

 政府としては、今後とも、被災者の方々の声に耳を傾けながら、責任を持って復興支援を行い、国際社会に対して復興の現状を適切に説明してまいります。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 公式な承認の書簡をお出しいただいたということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 今後、是非実現に向けて取組を進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

 外務副大臣、ここで退席いただいて結構です。ありがとうございます。

 それでは、もう一つ、四番のテーマでございまして、コロナ禍における中小企業等事業者の債務問題についてということで御確認をさせていただきたいと思います。

 資料の二番にありますが、我々立憲民主党は、コロナで過重債務を負っている皆さんを支援するための法案ということで、コロナ債務減免法案、これは四月の四日に衆議院に正式に提出をさせていただいております。

 今回提出した趣旨でありますが、長期化するコロナ禍の影響を受けまして、多くの事業者は、コロナの特別融資を受けてしのいできた、経営を継続してきたということであります。これはゼロゼロ融資ということで、ある意味、命綱的には大変よかったということだと思うんですが、その融資を受けて、融資の残高はコロナ禍前と比較して三十兆円以上増額をしているということであります。

 現時点ではまだ、返済猶予の期間、最長五年という設定がありますので、多くの事業者の方々の返済は今まだ本格的に始まっていないということだと思いますが、これからその返済を迎えるわけであります。そうすると、全国で、倒産だとか、あるいは廃業、従業員の解雇などが激増するのではないかというふうに予想されます。現下の円安、そして物価の高騰、様々な影響が重なって、中小企業の皆さんの経営というのは大変苦しいということがこれからも見込まれるわけであります。

 まずは、このコロナ禍の負担を少しでも軽くして、中小企業の皆さん、個人事業主の皆さん等の経営の安定を図るべきというふうに我々は思いまして、この法案を提出をした次第であります。

 今般、報道によりますと、資料の三をおつけしましたが、自民党の皆様の金融調査会も同趣旨の、債務過剰の事業者の支援についての提言をおまとめになられたということであります。記事の中に書いてあるフレーズでありますが、国の行動制限により厳しい状況に置かれた事業者に対し、債務の負担軽減に取り組むことが国の責務というお考えを示されています。まさに同感でありまして、この債務問題について、この解決については超党派で認識が一致している課題と言えるのではないかというふうに思います。

 是非、我々も法案を提出いたしました、法案の概要については以前も落合委員が説明をされておりましたが、債務の減免等、それから、これは経営責任を回避をするということ、あくまでもこれはコロナで制約を受けたということでありますので、経営責任を問うのは酷であろうということ、それから三番目は、金融機関の損失補填、一定の国からの支援で、金融機関に負担を負わせるべきでもないというのが我々のこの法案の大きな考え方であります。

 こうした考え方、是非前向きに政府としても捉えて、自民党さんの考え方、我々立憲民主党の考え方もございます、対応をお取りいただきたいと思うんですが、萩生田大臣の所感をお伺いしたいと思います。

萩生田国務大臣 自民党において、増大する中小企業の債務への対応についての提言をまとめたこと、また、御党より、コロナ債務減免法案が提出されていることは承知をしておりますが、いずれも、政府としてのコメントは差し控えたいと思います。

 一方で、増大する債務に苦しむ事業者への支援の必要性は政府としても承知しております。

 官民金融機関に対して、鈴木大臣とともに、事業者から債務条件変更の申出があった場合には最大限柔軟な対応を行うことを要請しておりまして、足下の条件変更の応諾率は約九九%と、多くの事業者の申出に応じているところです。

 また、三月に策定した中小企業活性化パッケージに盛り込んだとおり、四月に全国四十七都道府県に設置した中小企業活性化協議会による伴走支援によって、中小企業の収益改善をサポートしてまいります。

 その上で、更に厳しいケースでは、協議会による事業再生支援や、四月から運用開始された事業再生ガイドラインの活用、再生ファンドによる債権買取りなど、事業者の個々の事案に即した債務減免が可能となる取組を進めます。

 協議会やガイドラインは先月よりスタートしたところでありまして、引き続き、本パッケージに基づく支援を実行し、関係省庁とも連携しながら、中小企業の収益力改善、事業再生、再チャレンジ支援に万全を期してまいりたいと思います。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 政府としても様々な取組を進めているのは認識をしておりますが、今回のコロナ禍というのは本当に、二年を超える大変厳しい状況が続いています。この後も必ずしもV字回復の環境にはないということだと私は思います。そういった意味では、思い切った、一歩踏み込んだ対応、ここで申し上げているのは債務の減免というところまで踏み込んだ対応を是非御検討いただきたいなというふうに思っております。

 今お話がありましたが、本当に影響が出てくるのはこれからだと思うんですね。これから、債務の返済猶予が期限が終わった、そういうタイミング、そういうときにどういうふうに対応ができるかというのが本当に問われていますので、今からそうした対応策、更に踏み込んだ対応策、検討を進めていただきたいということでお願いをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、一番の項目に戻りまして、法案の中身について質問をさせていただきます。

 一問目、太陽光、風力発電設備の保安規制の見直しということでございます。

 まず、太陽光発電、風力発電設備に関わる事故の現状やあるいは事故の原因、そういったものをちょっと御開示いただきたいんですが、いかがでしょうか。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 電気事業法に基づく小規模な再エネ発電設備の事故報告制度は令和三年四月から開始されまして、令和四年二月までの十一か月間の間で、速報値で、太陽電池発電設備が百七十八件、風力発電設備が五件の合計百八十三件となっております。

 太陽電池発電設備の事故原因は、設備不全や保守不全による、逆変換装置、これは太陽電池で発電しました直流の電気を交流に変換する装置でございますけれども、この逆変換装置の破損事故が約八割を占めております。次に多いのが自然災害で、中でも、大雨による土砂流出や、支持物、架台の破損が二十三件、強風と積雪による太陽電池モジュールの破損等がそれぞれ五件となっております。

 風力発電設備につきましては、詳細原因は調査中でございますけれども、強風によると見られる支持物の破損が五件中三件と最も多くなっております。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 これは先ほども中野委員からも質問がありました。私も、今回、既存のもの、特にFITの初期の段階で、ある意味、ばあっと建てられた発電所というのは大変不安だと思うんですね。見るからにやはり設置の仕方が危ういというような発電所も散見されるのではないか。そういったものをどういうふうにこれから改善していくのかというのが一つの大きな課題だと私は思っております。

 先ほどお話があった中で、立入検査をやるんだというお話がありました。私は、これは是非やっていただきたいし、機動的に対応できるようにしなきゃいけないと思うんですが、実際、今どのぐらい実施ができているのか。

 これは、ごめんなさい、ちょっと通告で数字まで聞いていませんが、ざっくりでいいです、どのぐらい実施ができて、例えばスムーズに、これから例えば立入検査を強化していくという場合に、例えば人員だとかいろいろな体制が整っているのかどうか、お聞きしたいと思います。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 正確な数字はまた別途御説明したいと思いますけれども、私の記憶が正しければ、今、太陽光発電関係の立入りは、大体四十件ぐらい、三十件から四十件ぐらいだと思ってございます。

 それを今回、十倍の三百件ほどに増やしたい予定でございますけれども、先生の御指摘のとおり、いろいろ、体制の整備で、いろいろな監督部の業務の効率化とか、あるいは、今まで向けていたリソースを重点的に、そういう太陽光のいろいろな立入検査の対象を重点的に小規模なところに回すとかそういう工夫、それから、いろいろ、私どもの関連の団体でNITEというのがございますけれども、そういうところに立入検査を手伝ってもらうとか、あるいは外部の人材を、リソースを活用してそういう立入検査の回数を増やすとか、そういう工夫をして、御指摘のとおり、特に危ないと思われるものについては優先的に機動的な立入検査を行いたいと考えてございます。

山崎(誠)委員 今のお話で、正確な数字はまたお知らせいただきたいと思いますが、何万とあるわけですよね、設備は。先ほど六万というような話もありました。それに対して例えば実施が三百ということであれば、二桁違うわけであります。もちろん、全てを回る必要はないと思うんですが、少なくとも、やはり一割だとか二割ぐらいの設備について一定のそういう点検ができる、外部の点検ができるという体制は、これからますます増やさなきゃいけない、太陽光、風力含めてですね。そういう体制、立入りの体制というのは是非強化していただきたいと、これは要望させていただきます。

 それから、再生可能エネルギー、普及促進と、そして今回の規制というお話、これは両輪だと思っておりまして、今、再生可能エネルギー、やはり、評判が必ずしもよくないのは、いろいろな事故が起きたり、近隣住民の皆さんとのいろいろな衝突があったりということで、もっとそこはきちっと住民の皆さんの安全、安心を確保した上で進めていく、合意の上で進めていくということで、こうした安全の規制も必要だと思います。かといって、じゃ、厳しくすればいいのかといえば、それもまた違う、普及についてやはり足かせになっては困るということ。このバランスだと思うんですが、その辺り、簡潔に、どういう考え方で今後、この規制と普及、バランスを取っていくか、お聞かせいただきたいと思います。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーを最大限導入し、主力電源化することが必要不可欠であり、これは政府全体の共通目標であると認識しております。

 一方で、委員のお話にございましたように、近年の立地や設備形態の多様化に伴い、小規模な再エネ発電設備の事故が発生し、また、周辺住民から不安の声が出ているとの報告があるのも事実でございます。

 したがって、再生可能エネルギーの普及拡大に当たっては、安全性を確保し、地域と共生した開発が必要であるところ、今般の改正法案について、小規模再エネ発電設備に対して新たな保安規制を課すこととしたところでございます。

 この際、本法案において新設する小規模事業用電気工作物の基礎情報の届出につきましては、例えば、令和四年度予算を活用いたしまして、本改正の施行までに、届出手続をオンラインで完結できるようにし、手続面での負担を軽減してまいりたいというふうに考えております。

山崎(誠)委員 是非、ここは工夫をしていただきたいところでありますので、お願いをしておきます。

 そして、次、前回も質問したかったんですが、屋根置き太陽光発電の普及についてお伺いをしたいと思います。

 前回は、農地を使ったソーラーシェアリング、あるいは耕作放棄地、荒廃農地を使った発電についての可能性について、農水省の方にもお越しいただきまして、議論をさせていただきました。

 今日お話をしたいのは、屋根置き太陽光であります。屋根置きの太陽光発電というのは、言うまでもありませんが、都市部など空き地などがない地域での発電方法としては極めてやはり有望であろうと。地産地消ということを考えるのであれば、やはり都市部で、できるだけこの太陽光発電など、できるところはやっていく、そのためには屋根置きというこの考え方は非常に重要ではないかと思います。

 これは、数字はなかなか厳しいのかもしれませんが、太陽光発電全体における屋根置き太陽光発電の割合というのは大体どのくらいでしょうか。

茂木政府参考人 委員御指摘のとおり、屋根置きの太陽光というのは、やはり、太陽光発電の量を増やしていこうと思うと、非常に重要なツールだというふうに思っています。

 その上で、二〇二〇年度末時点の太陽光でございますが、全体の導入量が今六十二ギガワットです。このうち、屋根の上の太陽光発電の量はおおよそ推計で約十六ギガワット程度導入されているというふうに考えています。

山崎(誠)委員 二〇五〇年、あるいは二〇三〇年でもいいですが、どのぐらいの量を入れていこうというふうに、屋根置き、計画していますか。

茂木政府参考人 お答えいたします。

 まず、屋根置きの太陽光を増やしていく一つのツールとしては、やはり住宅、建築物への設置というのが一つ推進すべき目標かと考えています。

 政府としては、エネルギー基本計画の中でも、二〇五〇年で設置が合理的な住宅、建築物には太陽光発電が設置されていることが一般的となることを目指して、二〇三〇年の段階で新築住宅の六割に太陽光発電の設置を目指すという目標を設定しているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 二〇三〇年に新築六割ということですね。これはフローの数字だと思うので、ストックベースというか、屋根全体のどのぐらいの割合かというのはちょっと分かりませんが、一定、これは前に進めていこうということだということで認識はいたします。

 それで、私たち立憲民主党としては、化石燃料やあるいは原発の依存をできるだけ低減をして、エネルギー転換をしていこう、再生可能エネルギーを入れていこうというロードマップを示しています。

 二〇五〇年の数字ですけれども、太陽光発電の設備容量、これは三億キロワット、現状の約五倍ぐらいが必要であろうというふうに想定をしています。そのうちの約一億キロワットを屋根置き太陽光で発電できるというふうに考えています。大体三分の一です。残りはこの間も議論した農地などを活用した太陽光発電であり、いわゆるメガソーラーで乱開発に当たるようなものはもうこれで大体打ち止めで、農地と屋根置き、これをうまく組み合わせることで三億キロワットという設備容量を設置できるという見通しを持って、目標を設定いたしました。

 この一億キロワットという数字は、これはストックベースで、建物、戸建ての住宅の約六割強の建物に太陽光パネルを設置をすれば実現可能な数字なんです。六割強というと、もちろん、不適当なところとか、雪国だとか、日照が厳しい地域もあるでしょうから、そういうところを除いても、大体つけられるところにはつけ切ったぐらいのイメージだと思いますが、それで、今お話しした一億キロワット、太陽光発電の大体三分の一はこの屋根置きで実現ができるんだという、これは具体的に数字も計算をしておりますので、また皆さんにもお示しできる数字であります。こういう数字がやはり一つの目標としてきちっと定まることが私は重要であろうと。

 その上で、これをどう入れていくかという話でありまして、例えば東京都は、今、新築の建物への太陽光パネルの原則設置義務化というようなことを検討しているというふうに聞いております。

 こうした取組をやはりきちっと制度化して、この支援の仕組みを動かしていくことが必要ではないか。今後、屋根置き太陽光発電というのをどういうふうに伸ばしていくのか。先ほど、二〇三〇年、新設では六割というお話がありましたが、これを実現するに当たっても、それなりに支援策がやはり必要だと思うんですね。二〇三〇年に、じゃ、FITがどうなっているか、あるいは、様々なほかの支援策、初期の投資をどうやって軽減をしていくのか、そんなこともやはり考えていただきたいんですが、導入の支援策について、どういうふうにお考えですか。

茂木政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げた、新築住宅、二〇三〇年で約六割を目指すということなんですが、この目標をまず達成していくために、住宅を始めとする屋根への設置についての固定価格買取り制度、これは当然まだございますので、これを使いながら、加えて、住宅や建築物への自家消費型の太陽光発電の導入に関する補助金ですとか、それから、太陽光発電設備を導入した住宅への住宅ローン減税でございますが、こういった措置などを関係省庁とも連携して支援をしてまいりたいというふうに考えております。

山崎(誠)委員 是非これは前向きに御検討いただいて、早期にやはり制度化していただきたいというふうにお願いをする次第です。

 この項目、最後に大臣、屋根置き太陽光の可能性、今私、説明しましたけれども、戸建ての住宅の約六割に設置ができれば、一億キロワットアワー、かなりの発電が可能であります。これは戸建てとあと公共施設などもありますけれども、合わせて。ある意味、無理なく、きちっと手順を追って導入していけば、一億キロワット、太陽光発電の目標の約三分の一はこれで賄える、そういう見通しであります。

 こういうちょっと試算も頭に置きながら、屋根置き太陽光の可能性、そして、これからどういうふうに導入していくか、大臣の口からもちょっと御説明いただければと思います。

萩生田国務大臣 住宅や建築物等の屋根への太陽光発電の導入は、地域と共生可能な有望な選択肢と考えておりまして、野心的な目標を掲げ、導入拡大を進めることを目指していきたいと思います。

 一方、東京都の例を先生は示されましたけれども、義務化というのではなかなか、進み方も変わってしまうんじゃないかということを心配していまして、住宅の所有者に一律に負担が生じることですとか、気象条件や遮蔽物といった周辺環境などの立地条件などによって、例えば日照時間に差異が生じるなど、公平性に課題があることといった指摘がなされておりまして、その是非については慎重な対応、検討だと思っています。

 いずれにしましても、経産省としては、引き続き、関係省庁としっかり連携し、太陽光発電の導入拡大に向け、必要な環境整備に取り組んでまいりたいと思います。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 原則義務化なので、全てに義務をかけるのは、やはりそれはやり過ぎだと思っております。その辺りはうまく制度的な担保ができればなというふうに思う次第ですので、どうぞよろしくお願いします。

 それでは、もう一つ、カーボンニュートラル実現に向けた保安規制の整備という中で、水素のお話が出てまいります。

 ここで、燃料電池自動車の規制の一元化ということで、高圧ガス保安法と道路運送車両法の、これを一元化しようという取組であります。これについては私も大賛成でありまして、こうした二重な手続というか規制についてはできるだけ整理をしていくというのは、当然あるべき姿だと思います。

 ほかにも、水素の活用については様々規制がかかっています。もちろん、安全は最優先ですので、安全をないがしろにすることはできないんですが、それでも、この利用を促進する、新しいステージに入った水素の活用という意味では、見直すべき規制というのはあるのではないかと思います。この辺り、どういう考え方をお持ちなのか、確認をさせてください。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 燃料電池自動車に関連する高圧ガスの規制としては、燃料電池自動車内の容器、タンクに関する規制のほか、高圧ガスを取り扱う水素ステーション施設の位置、構造等の規制がございます。

 今回の法案では、道路運送車両法の車検制度で安全を確保できるものについては高圧ガス保安法の適用除外にする、燃料電池自動車内の容器等に関する規制を適用除外にするということといたします。

 また、規制改革実施計画を通じて、燃料電池自動車及び水素ステーションに関しまして、これまで、延べ八十四項目の見直しの要望がございます。今回の改正もその中の一つでございますが、例えば遠隔監視による水素ステーションの運転無人化等、既に七十項目の見直しを実現しているところでございますけれども、残る項目につきましても順次検討を進めていきたいと考えてございます。

 委員御指摘のとおり、安全確保が前提でございますので、安全確保を前提に、必要な規制の見直しに取り組んでまいります。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 次に、ちょっと根本的なお話で、また、これまでの議論の延長でお話をしたいんですが、水素の活用について、これまで、水素、アンモニアの活用については何度かこの委員会あるいは本会議でも取り上げさせていただきました。私は、とにかく水素というのは大事なエネルギー源でありまして、その特性に応じた活用の必要性があるんだということをお訴えをしてまいりました。

 この考え方は運輸部門でも同様でありまして、では、この水素を使った燃料電池自動車、あるいは、今、水素をそのまま燃料にするような内燃機関もあるというふうに聞いていますが、そういったものをどういうふうにこの運輸部門で使っていくのかというのが私は大きく問われていると思います。

 例えば、乗用車で使うのか、トラックやバスなどの商用車で使うのか、あるいは船舶などで活用するのか。ここを一定、それは、メーカーさんがいろいろな提案をするのはもちろん自由でもありますね、別にそれは何とも言わないんですが、国としてどういうビジョンを描いて、国の支援する策をどういう方向性に集中していくのかというのは、極めて私は大事だと思っております。

 水素の活用の在り方、姿によって、例えば水素ステーションの整備の仕方も大きく変わるんです。

 例えば、普通の乗用車を対象にして水素ステーションを考えると、当然、自宅というんですかね、あるいは、使用する会社の近くにやはり水素ステーションがなければ不便であります。そして、例えば、土日開いていなきゃ困るし、そういう意味での運用は、今のガソリンスタンドに近いようなものが一定求められる。

 例えば、商用車であれば、トラックだとかバスであれば、拠点があって、そして目的地があって、その間を走っていくということでありますから、そういう意味で、整備の在り方は拠点的な整備の仕方でいいわけであります。

 コストも違うし、考え方も違うし、その整備の主体も違うし、私は、あらゆる意味で違う形の、水素のネットワークというんですかね、水素ステーションのネットワークづくりになってくると思うんです。

 そう考えていくと、この水素の運輸部門での活用の仕方を国が支援をするのであれば、一定、方向性をきちっとやはり定めていく必要があるんだろうというふうに思います。

 資料四をおつけしました。見ていただきたいんですが、これは行政事業レビューの公開プロセスの概要ということで、経産省の水素のプレゼンテーションの中の一部であります。

 水素ステーション補助金に関する行政事業レビュー公開プロセスの概要ということで、この中で、御意見というのがあって、下に四角で囲みました。読みますと、水素ステーションの最適配置を考えるに当たっては、乗用車のユーザーの利便性最大化という指標のみならず、各地域の特性などに応じて、商用車を含めたFCV普及ポテンシャルがどの程度見込めるかなど、総合的に勘案した上で進めていくべきだと。

 それから、下の、これは河野大臣の発言ということですが、FCV普及のために水素ステーションが必要なのだから、水素ステーションの支援は自動車メーカーが行うべきではないか、このような事業に国として支援すべきか、再度検討すべきというコメントであります。

 これは、今私からお話しした文脈を取って言えば、一つは、これも担当の皆さんと話をすると、乗用車のニーズがあるんだと。先ほど言ったように、ガソリンスタンド的な水素ステーションを造らなきゃいけないと。そのために、需要が見込める地域、これは、一定、富裕層というんですかね、皆さんもそういうふうに表現されていますけれども、このFCV、水素の燃料電池自動車を買うことができる層がたくさんいそうな地域に水素ステーションを造るんだというのが一つの指針で、そういう指標だけではなくて、商用的な、今お話ししたようなネットワーク的な活用で水素ステーションの整備を考えるべきではないかというのが、これは、二つ今説明した、上の方です。

 下の方は、もっと、河野大臣らしいドラスチックな御提案ですけれども、水素を普及したいんだったら、自分たちでちゃんと整備しなさいよ、国が支援するのはどうなんだ、再検討すべきだ、そこまでおっしゃっています。

 ちょっと長くなりましたけれども、水素の活用について、特にこの運輸部門についての活用の在り方について、改めて、今私がお話しした内容を踏まえて、政府のお考えをお示しください。

茂木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、水素の活用の中で運輸部門全体をどう考えるかということですけれども、御指摘のとおり、まず、モビリティーというセクターで考えますと、自動車がまず一つ大きな需要になります。その中で、乗用車はもちろんですが、やはり商用車、大型車というのには非常に水素のメリットが活用できますので、こうした分野は今後伸びていくというふうに考えていますし、そこは重点的に取り組んでいきたいと思っています。

 それから、移動体という意味では、船舶における水素燃料の活用ですとか、あるいは将来的には、水素とCO2を合成した合成燃料の活用、あるいはSAFのような形で航空機燃料に活用していく、こうしたものがモビリティー全体での水素の活用のロードマップだと考えています。

 その上で、水素ステーションについては、これはやはり、燃料電池自動車の普及策と両輪で進めていく必要がございます。

 燃料電池自動車については、乗用車だけではなくて、やはり水素の特性としては航続距離が長くて充填時間も短いということがありますので、バスや大型トラックなどの商用車の導入も加速していくということになります。

 そして、これを進めていくために、経産省としても既に、燃料電池トラックなどの新しい水素モビリティーの普及拡大を見据えまして、大型トラックに水素を充填するための大規模な水素ステーションを、二〇二一年度の補正予算から新たに補助の対象に加えています。それから、やはり大型化すると充填時間を短くしなければいけないので、大量の水素を安全かつ高速に充填できる技術開発の支援も始めています。

 それから、行政事業レビューの御指摘がございましたけれども、もちろん、この最適配置を考えるに当たりまして、当然、こうした大型車が入ってきますと、そうした大型車のルートを踏まえながら適切な配置をしていくということが大事だというふうに考えています。

 それから、自動車メーカーへの支援、自動車メーカーが行うべきだという御指摘、当然ございましたけれども、実は、この水素ステーションの今の整備の補助も、かなり自動車メーカー自身が負担をしてやっておりまして、そこに国が支援をする形で、ある種、公共的なインフラとして水素ステーションの整備をしているということも、この場でも御説明をさせていただいている次第です。

 いずれにしましても、水素の需要に見合った供給能力を水素ステーションとして整備をしていくということで、官民一体で戦略的に整備をして進めてまいりたいと思います。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。基本的に私の御提案というか考え方は共有いただけているとは思います。

 是非ここは、やはり水素をうまく活用していくということ、極めて私は、次のカーボンニュートラルに向けては大事な課題でありますから、水素の使い方を間違ってしまうと、本当に今厳しいこの財政の中で、開発に支障が出るというふうにも思いますので、是非ここは、今お話ししたようなビジョンを国がしっかり持って対応いただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、大島敦さん。

大島委員 高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案について、質疑をさせていただきます。

 最初に、認定高度保安実施者等の制度の認定基準の考え方についてお伺いいたします。

 本改正案では、電気、都市ガス、高圧ガスの各保安分野に、それぞれ、テクノロジーを活用しつつ自立的に高度な保安を確保できる事業者として、認定高度保安実施者等の制度を創設しようとしており、その認定の要件の一つとして、保安の確保のための組織がその業務遂行能力を持続的に向上させる仕組みを有することが規定されています。

 その業務遂行能力については、コンプライアンス体制の整備等といった経営トップのコミットメントが挙げられていますが、経営トップにとどまらず、コンプライアンス等が組織全体に浸透し、安全文化が醸成されることが重要と思われますが、具体的にはどのように評価していくのか、お伺いいたします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回導入する認定高度保安実施事業者制度では、認定要件として、テクノロジーの活用やサイバーセキュリティーの対策に加えまして、経営トップのコミットメントと高度なリスク管理体制を事業者に求めることといたしております。

 この四つの要件を満たすことにより、御指摘のとおり、経営トップの認識だけではなく、職員一人一人にコンプライアンスの重要性が浸透し、組織全体に安全文化が醸成されることが重要だと考えてございます。

 四要件のうち、経営トップのコミットメントの要件の充足性を判断するために、まず、法人の代表者、トップが、保安の確保に関する理念、基本方針等が作成されていることなどによって社内全体に安全最優先の文化を根づかせる土台があること、また、コンプライアンス体制の整備として、例えば法令等の遵守を実効的に行うための社内規程がきちんと定められていること、それによって従業者がコンプライアンスの重要性を理解し、法令遵守を実践できる環境が整備されていること、さらに、コーポレートガバナンスの確保として、例えば、整備の検査を実施する検査組織が設置された上で、当該検査組織を監査する組織が併せて設置されることで、適正な検査が行われるための社内監査体制の整備がなされていること、こういったことを確認するということにいたしてございます。

 また、高度なリスク管理体制の要件につきましても、従業員等の教育や訓練、それから危険源の特定、評価及びその結果に基づく必要な措置の実施を行うリスクアセスメントの実践、こういった事項もチェックをしたいと考えてございます。

 以上のような認定要件を国がしっかりと審査するとともに、認定後も、適時適切な立入検査によって認定要件への適合性を確認をして、仮に法令違反等を確認した場合には速やかに認定を取り消すなど、行政による厳格な監督を実施することで、認定事業者の組織としての適正性を担保し、保安のレベルの向上に努めてまいる考えでございます。

大島委員 答弁ありがとうございました。

 私、以前、労災について調べたことがあって、日本の労災の発生率が一番少ないかなと思ったら、実は違っていて、イギリスの方が少ない。これは、ブリティッシュ・スタンダードによって事細かに決まっているから少ないんです。せっかく標準をつくるんだったら、世界に通用するような標準まで育てていただきたい。それを将来的には世界標準にしていただく、工場のメンテナンスあるいはこのコンプライアンスについて、そのことを求めたいと思います。

 このほか、新制度の認定の要件として、保安の確保の方法が高度な情報通信技術を用いたものであることも求められています。活用されるテクノロジーは事業者の保安分野によっても異なってくると思われますが、現行の高圧ガス保安法のスーパー認定事業者制度の認定要件における先進的な技術を適切に活用していることとどのように異なっているのでしょうか。また、変化の激しいテクノロジー分野において、時代状況に即して必要とされる技術標準を具体的にどのように定めていく予定なのか、お伺いします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の高圧ガス保安法のスーパー認定事業者制度のテクノロジーの要件につきましては、IoT、ビッグデータ、AI、ドローン等のテクノロジーを導入し、導入後の効果検証、改善等を実施していることなどを求めてございます。

 新たに導入する認定高度保安実施事業者制度のテクノロジーに関する要件につきましては、こうした現行のスーパー認定事業者制度における要件を基本としつつ、省令において具体的にどのように規定するか、今後、御指摘のとおり、いろいろな技術の進展の度合いとかそういうことも踏まえながら、専門家の御意見も伺った上で検討することとしてございます。

 その際、認定事業者が採用することが必要なテクノロジーの水準を一定の範囲で示しつつも、保安に係るテクノロジーのイノベーションを阻害せず、むしろその事業者の創意工夫を促すという観点から、活用するテクノロジーの種類、機器等については明示的に限定しない方がよいのではないかと考えてございます。

大島委員 認定高度保安実施者制度の創設に伴い、現行の認定事業者制度を維持できる期間として三年間の経過措置期間が設けられています。

 その内容は、施行日から三年間は現行の認定事業者制度が継続され、経過措置期限、施行後三年を経過してからは三・五年、三年半が有効期限とされています。その場合、現行認定の有効期間は五年ないし七年とされていても、経過措置期限の満了の直前に現行認定を受けた場合は、有効期限は最長でも三・五年となると考えてよいのですか。また、コスト面を考えた場合に、経過措置の期間内に現行認定を受けることのメリットはあるのか、お伺いいたします。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正により創設する認定高度保安実施者制度への移行期間として、同制度の施行後三年間は現行の認定事業者制度の認定を受けることを可能とし、さらに、その後三年半は認定の効力が存続することを規定しております。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、新制度施行後三年の期限満了直前に現行制度の認定を受けた場合は、有効期間が三年半となることになります。

 お尋ねいただきました認定制度施行後三年の間に現行の認定を取ることに対するメリットについてでございますけれども、まず、現行制度の認定を既に受けており、新認定制度施行後三年の間に更新期日が到達する事業者にとっては、新制度の認定を受ける準備が整うまでの間、認定を継続するため、この期間内に現行制度の認定更新を取ることができるメリットがございます。

 また、新制度は、コンプライアンス要件などの現行の認定要件から追加となる要件もございますけれども、現行制度と重なるものもございます。このため、現在認定を受けていない事業者であって、新制度で新たに求められる要件を直ちに満たせないものの、現行制度の要件を満たすことができる事業者にとりましては、今後新制度に移行することを念頭に、まずは現行制度の認定を取ることができるメリットがございます。

 移行期間につきましては、事業者との丁寧な議論を踏まえて決定しておりますが、制度の施行に当たりましては、改めて事業者に周知し、円滑な制度利用を図ってまいりたいと考えております。

大島委員 今回は、成立後一年半で施行日になっていて、プラス三年間の経過措置期間なので、マックス四年半ぐらい。私としては、結構要件が厳しいと思うので、この経過措置期間の三年が本当に正しいかどうかなというのは感じました。ですから、三年を五年ぐらいにすると各事業者の皆さんも余裕を持って次の新制度に移行できるかなと思うものですから、そこのところは丁寧に取り組んでください。

 次に、産業保安分野における人材確保、育成の在り方についてお伺いいたします。

 本改正案提出の背景には、産業保安分野におけるスマート保安の進展や保安人材の枯渇等があるものと思われますが、現状、保安人材が減少傾向にある原因をどのように把握しているのでしょうか。また、これまでに職業訓練等においてどのような支援を行ってきているのでしょうか。

 また、本法案によって導入しようとする認定高度保安実施者等の制度の認定要件として、保安の確保の方法が高度な情報通信技術を用いたものであることが求められています。AI化、スマート化してもなお、AI等を活用する人材やマネジメント人材や修理工事等の保安人材は不可欠です。

 人材の育成は一朝一夕にはいきません。特に理数系の人材は事業者間で取り合いになることは明らかであり、四年半後、少なくとも三年後を見据えた工業大学、高等専門学校、工業高校、そして公的職業訓練などにおける人材の育成は喫緊の課題と思います。

 そこで、保安人材の動向の見通しや、その確保、育成についてどのように考えているのか、お伺いいたします。

萩生田国務大臣 産業保安分野における人材不足は深刻な課題であると認識しております。その要因としては、保安人材の多くを占める熟練層が今後大量に退職していく一方で、職場環境の厳しさや業界認知度の低さから、若年層の入職が進まないことなどが考えられます。

 経産省としては、これまで保安人材の確保、育成に向けて、例えば、電力分野における若者向けのPR、プロモーションや、第一種電気工事士の資格取得などに必要な実務経験、五年だったんですけれどもこれを三年に短縮するなど、また、高圧ガス分野におけるAI、IoTなどの新技術の導入を見据えた実践的な人材育成支援などを実施してきたところでございます。

 また、御指摘の理数系の人材育成については、文部科学省とも連携して、デジタル分野に特化した専門人材の育成に向けて、高等専門学校や工業高校等と産業界が連携した人材育成の枠組みの構築に取り組んでいくとともに、大学や高等専門学校における数理、データサイエンス、AIを活用して課題を解決できる能力を有する人材の育成にも取り組んでまいります。

 こうした取組に加えて、保安現場の働き方改革なども含め、官民を挙げて総合的な対策に取り組むことで、引き続き、保安人材の確保、育成に注力をしてまいりたいと思っております。

大島委員 先ほど、政府参考人の答弁に当たって、認定高度保安実施者になるための、なって、かつ、その移行期間の話をさせていただきました。ですから、その各人材が足りないんじゃないのかなと思っていて、認定を取るに当たっての。ですから、そのところはよく検討をしてください。

 では、次に行きますね。あわせて、スマート保安導入のコストについてお伺いいたします。

 最新技術を投入したスマート保安は導入及び維持管理のためのコストがかかりますが、スマート保安導入の効果は目に見えにくいことから、スマート保安分野に対する企業投資が抑制されるおそれがあることが課題とされています。

 スマート保安の導入に際し、企業コスト増加の課題に国としてどのように対処していく予定なのか、お伺いします。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、スマート保安の導入に際しましては、一定の設備投資が必要であり、事業者の投資を促進するためには投資効果の見える化が有効であるというふうに考えております。

 このため、経済産業省におきましては、スマート保安先行事例集やプラントにおける先進的AI事例集などを作成、公表いたしまして、AI等のテクノロジー導入の投資効果を明確にするとともに、導入メリットの周知を行ってきているところでございます。

 また、令和三年補正予算におきまして、IoT、AI、ドローン等の新たなテクノロジーを導入してスマート保安に取り組む中小企業の技術実証に必要な費用を補助しております。

 さらに、テクノロジー導入に向けました事業者の投資意欲を喚起するような制度的措置として、今回の法改正によりまして、テクノロジーを活用しつつ自立的に高度な保安を確保できる事業者の手続、検査の在り方を見直す認定制度を創設することといたしております。

 これらの取組を一体的に推進することで、スマート保安に係る設備投資に踏み切れない事業者を後押しし、スマート保安を促進してまいりたいと考えております。

大島委員 点検によっては、点検実施時に仮設足場を造ると聞いています。その場合の仮設足場の費用は点検費用総額の六割から七割を占めることもあるそうです。その点からも、ドローンによる画像解析で正確な点検ができるのであれば、ドローンを用いた点検も積極的に行うべきと考えますが、これまで人間が目視し、かつ、たたいて音を確認してきたような検査までもが現在のドローンの技術でできるのかは疑問が残ります。

 そこで、より精度の高い点検につなげるためにも、ドローンとIoT技術の活用によって従来と同程度以上の検査が可能なのか、また、作業者に一定の資格を条件とするのか、そして、検査後、事故が発生した際の責任の所在や考え方についてお伺いします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 産業保安分野において、IoT、ドローン等のテクノロジーを活用する取組、スマート保安は、保安業務の効率化に加え、保安レベルの向上に資するものと考えてございます。

 もっとも、単にテクノロジーを導入すればいいというものではなくて、やはり、目的に応じてテクノロジーと人の力を連携、融合させて、保安のレベルを上げていくというところがポイントだと考えてございます。

 この点は踏まえつつ、経済産業省としましては、これまで、規制面でのスマート保安の阻害要因を取り除くために、例えば、高圧ガス分野におきましては、高圧ガス製造施設等の検査方法において、実証実験においてカメラを搭載したドローン等による検査でも目視と同等以上の点検が可能である、そういう実証検査を行った上で、これを踏まえまして、令和二年に、これらによる検査を可能とする規制改正を実施いたしました。この成果は、現在、事業者における大型貯蔵タンクの外観点検等に用いられているところでございます。

 御指摘の事業者の設備等の安全保安に資する責任につきましては、一義的には当該事業者が負うもの、国も負うものでございますけれども、国も事業者の認定を行う立場にございますので、例えば、本来認定要件に適合しない不適切な内容の申請に対して認定を行った場合、それが事故につながった場合等には、責任を負う可能性があると考えますので、そうならないように、しっかりと認定をやっていきたいと考えてございます。

大島委員 この分野は産業革新が起き得る分野だと考えておりまして、ドローンを使って非破壊検査ができないかとか、画像でも、紫外線から始まって赤外線まで各その電波帯があると思うので、そういうこと。ですから、研究開発費を結構投入することによって新しい保安の在り方をリードしてほしいんです。よろしくお願いします。

 続きまして、準天頂衛星システム「みちびき」は、高精度な測位を行い、センチメーター単位での測位が適用されるとされておりますが、今回のスマート保安におけるドローンの活用を考えた場合、準天頂衛星システム「みちびき」の有用性は高まると考えます。

 現在、スマホやカーナビの位置測位は、米国GPS、欧州ガリレオ、ロシアGLONASS、中国北斗、ベイドゥ、日本「みちびき」など、複数の電波を利用していますが、各国ごとに、安全保障分野では、他国の電波に依存することなく、自国の測位衛星の電波のみで自国の航空機や艦船の位置を測位していると推察します。

 したがって、今回検査に使用するドローンについては、我が国の測位衛星「みちびき」を利用することは、経済安全保障の観点からも推奨されるべきと考えます。また、そのことを、検査に使用するドローンの仕様、スペシフィケーションに入れることで、ドローンの内製化が進むと考えますが、政府の考えをお聞かせください。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 本認定制度におきまして、テクノロジーの活用を認定要件といたしますけれども、保安に係るテクノロジーのイノベーションを阻害せずに事業者の創意工夫を促すという観点が重要だと考えてございます。この点、現状、産業保安分野のドローン活用につきましては、手動の操作による飛行で点検をしている事例も多く、必ずしも測位衛星を活用した高度な自律飛行でなくても、目的を達成されるものもあると考えてございます。

 このような点を踏まえまして、テクノロジーの活用の要件につきましては、先ほども御説明しましたけれども、技術の進展の状況、それから現場の事情、そういうものをよく専門家にも意見を聞きながら、一定の技術水準は確保しつつも、活用するテクノロジーの種類、機器等については余り明示的に限定しない方がいいんじゃないかと考えてございます。

 なお、政府におきましては、御指摘の準天頂衛星「みちびき」のドローンへの活用の促進に向けて、実証事業を通じ、「みちびき」による測位の精度や有効性の検証等を進めているところでございます。

 スマート保安におきましても、準天頂衛星システムの活用も一つの選択肢として考え、いずれにしましても、スマート保安の円滑な実施のため、情報セキュリティーの重要性も踏まえつつ、適切に対応していきたいと考えてございます。

大島委員 御答弁ありがとうございます。

 センチメーター級からミリメーター級までにしてほしいという要望はさせていただいておりまして、ただ、今後のことを考えると、やはり、これまで、この場での議論の中で、EUにおいては、ISOを活用しながら、非関税障壁を活用しながら、自国の域内をしっかり守ろうとしていたりするので、やはり、今回いい機会ですから、ドローンの仕様の中に「みちびき」の電波を使えというと、やはり国内でのドローンの内製化が進むと思うの。

 やはりそういう時代だと思うので、今後、多分起業家の方とか事業者の方は、なかなかそこまでできませんよと言うかもしれないけれども、政府としては高い目標を掲げてやってほしい、そのことによってイノベーションを起こしてほしいと思うので、是非お願いいたします。

 続きまして、一つ飛ばします。ガス事業法における災害時連携計画の作成義務化についてお伺いいたします。

 大規模地震の発生時における現行の、一般社団法人日本ガス協会が、被災していないガス事業者からの応援隊を組織する等の活動は、一定の効果を上げているものと承知しています。

 これに加えて、本改正案で新たに追加されている災害時連携計画策定等について、その実際上の必要性がどこにあるのか、また、手続が事業者に対する過大な負担となることがないような計画作成手続への配慮の在り方について、政府の考え方をお伺いいたします。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお話をいただきましたように、ガス事業の分野におきましては、国のガイドラインや業界が定めた応援要綱等に基づき、被災地内外の連携が行われてきたところでございます。

 一方で、今後、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震といった更なる大規模災害の発生が懸念される中、電力分野の災害時連携計画の成果を踏まえ、事業者間の連携体制に万全を期すため、一般ガス導管事業者に対して災害時連携計画の策定、届けを義務づけることとしております。

 具体的な計画には、事業者間の連携が更に円滑になるよう、現行の応援要綱の内容に加えまして、事業者間の共同訓練等の事項について記載を求めることを想定しております。

 また、都市ガス分野における災害時連携計画につきましては、大手企業十社のみで作成する電力分野の計画と異なり、中小企業も含めた約二百社が共同して計画を作成することとなります。このため、計画策定時には、一般社団法人日本ガス協会が地方の幹事企業と連携し、意見集約を行いながら計画に反映をさせていく予定としております。

 経済産業省といたしましては、日本ガス協会と相談、連携をしつつ、災害時連携計画の必要性に関する事業者への説明等について積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。

大島委員 今回の改正においては、災害時のガス事業者間の連携強化という項目もあります。

 ガソリンや重油は長期保存すると劣化しますが、ガスは長期保存できます。今回の法案では都市ガスを対象としていますが、LPガスもその有用性は変わらず、各家庭にはガスボンベが設置されており大規模災害時においても最も早く復旧できたということが、東日本大震災のときにも証明されています。

 そこで、大規模災害に備えるという意味でのコミュニティーガスやLPガスの有用性、LPガスによるガスヒートポンプエアコンや非常用発電機等の導入状況とその検討状況をお伺いいたします。

 私は東日本大震災後に家庭用発電機を購入しました。二年前にガソリンを入れ替えたのですが、ガソリンは劣化しますので、先日起動してみると、動きません。

 ガスを燃料とする家庭用発電機は値段が高く、普及には時間がかかりそうです。LPガスなどガスの有用性をもっとPRすべきではないかとも考えます。答弁をお願いします。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、LPガスはボンベでの長期保存が可能であり、また、分散型エネルギーであることから、LPガスを導管で供給するコミュニティーガス事業者も含めて、災害時に使用するエネルギーに適していると考えてございます。

 このため、ライフラインの維持が求められる避難所や病院などにおけるLPガスを備蓄する設備やLPガスの非常用発電機、それから、御指摘のガスヒートポンプを含む空調設備などの導入を補助してきてございます。平成二十四年度から令和三年度までで計一千三百三十四件補助しておりまして、今後、令和三年度補正予算及び四年度の補正でも、前年度から約七億円増の四十・四億の予算を確保して、更に導入を後押ししていく方針です。

 引き続き、関係業界とも、災害対策としてのLPガスの利点を自治体などに周知することを含めて、災害対策のためのLPガスの普及に注力してまいりたいと考えてございます。

大島委員 よろしくお願いします。

 家庭用の発電機、非常用に買ってみたんですけれども、非常事態のために。やはり一年たつと、エンジンがかからなくなるの。やはり価格が二倍ぐらいするのでなかなか普及しづらいところがあって、多くの方がそれを買っていただけると値段が安くなって、常に発電しないものですから、是非その点の御検討をお願いいたします。

 続きまして、質問を戻ります。

 次に、産業保安分野におけるサイバーセキュリティーの在り方についてお伺いします。

 従来、電力、ガス等のインフラの制御に用いられる制御系システムは、外部ネットワークへの接続点が限定されていた環境が一般的でしたが、近年、汎用システムや標準プロトコルの採用により、インターネット等の外部ネットワークに接続されるようになっています。

 このような制御系システムの特殊性や昨今の動向を踏まえ、産業保安分野における制御系システムとITのシステムの適切な関係の在り方や、サイバーセキュリティー面における課題と対策についてお伺いいたします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 高圧ガス、都市ガス、電力の保安関係設備の制御に用いられるいわゆる制御系システムは、インフラの安定供給や大規模な事故の防止を図る観点から、特に安全で安定的な稼働が求められるところでございます。

 そのため、これまでは、サイバー攻撃に対するリスクを下げるために、制御系システムをインターネット等の外部ネットワークと切り離すことが一般的であり、例えば、電力分野では、業界団体が定める電力制御システムガイドラインにおいて、制御系システムと外部ネットワークは原則分離すること、接続する場合であっても、接続点は最小化するとともに防御措置を講じることを定めてございます。

 ただ、委員の詳しいところでございますけれども、御指摘のとおり、近年、汎用のプラットフォームや通信プロトコルの活用、ネットワークや外部メディアの利用といった環境の変化の中で、セキュリティー脅威とサイバー攻撃のリスクは増大してきてございます。

 例えば、諸外国では、サイバー攻撃による電力関係設備の停電といった社会的影響のある事象が発生している中で、制御系システムも攻撃対象となることを想定した適切なサイバーセキュリティーの対策とそれを担う人材の育成が重要になってきていると考えます。

 いわゆる制御系とIT系がDXで融合する中で、そのどちらもよく理解した上でちゃんとセキュリティー対策を担う、そういう人材の育成が重要になってきていると考えてございます。

 このため、経済産業省におきましては、情報処理推進機構に、制御システムセキュリティーの中核機関としてサイバーセキュリティセンターを設置して、電力、ガス、石油、化学分野等の企業からセキュリティー担当者が模擬プラントを用いた実践的なプログラムを受講し、サイバーセキュリティーの中核を担う約二百二十名の専門人材を輩出しているところでございます。

 そのほか、情報処理推進機構をハブとして、電力、ガス、石油、化学等の十三業界二百七十九組織の業界団体や関連組織の間で、サイバー攻撃等に関する情報を共有して高度なサイバー攻撃対策につなげる体制を構築するなど、様々な取組を進めているところでございます。

 今後も、こうした産業分野へのサイバーセキュリティーの対策をしっかりと進めてまいりたいと考えてございます。

大島委員 よろしくお願いします。

 最後に、産業保安をめぐる今後の課題について伺います。

 現在、産業保安関連法制は、電力、都市ガス、高圧ガス等の産業別の規制体系となっていますが、今後、市場拡大が想定される水素や再生可能エネルギー等の分野では、多様な主体の参入や業態の融合化も見込まれます。これに伴い、縦割りの規制体系から、産業横断的、省庁連携的な保安規制体系への移行が有意義になるものと考えられますが、今後における産業保安関連施策の実施体制の在り方について、政府の考えをお伺いします。

萩生田国務大臣 産業保安分野におきまして、安全の確保は大前提であります一方、産業横断的、省庁連携的な観点から保安規制を見直す取組も進めておりまして、今回の法改正で新たに導入する認定制度は、石油、化学、電力、ガス分野で共通して横断的に実施する取組の一つです。

 御指摘のありました水素分野におきましても、国交省と連携して、今回の法改正によって、燃料電池自動車について、高圧ガス保安法と道路運送車両法の規制を一元化することとしました。加えて、産業横断的な観点からサプライチェーン全体を見渡し、水素利用に関連する様々な既存の保安規制の見直しを含めた、今後の規制の在り方を示す水素保安戦略を、今年度中を目途に策定をいたします。

 さらに、再エネ分野に関しましても省庁間連携を進めており、経産省では、先月、農水省、国交省、環境省と共同で検討会を立ち上げ、再エネ発電設備の適正な導入、管理に関する更なる対応について議論を開始したところです。地域と共生した再エネ発電設備の導入に向けて、必要となる横串的な制度的対応やその運用の在り方などについて、夏頃までにまとめてまいりたいと思っています。

大島委員 ありがとうございました。終わります。

古屋委員長 次に、梅谷守さん。

梅谷委員 立憲民主党の梅谷守です。

 まずは、質問の機会をいただきましたこと、そして、官僚の皆さんには丁寧な御対応をいただきましたことに感謝申し上げます。

 言うまでもなく、本法案によって、認定業者には、保安に関する規制が緩和されます。そして、法律や制度で最低限の担保はあるとはいえ、自主保安に委ねられる部分が大きくなり、認定事業者は、自主保安において重い責任を負うという自覚が求められることになります。そのため、実効性が課題となりますけれども、安全性と実効性をしっかりと確保するためには、国と事業者がそれぞれどこまで責任を負うのか明確にすることが重要になると思います。

 この問題意識を基に、人材育成、確保、中小企業対策、そして災害時対応の三点について質問いたします。

 ちょっと質問、大項目を入れ替えますけれども、まず、人材の育成及び確保についてお尋ねをしたいと思います。

 本法案は、電力やガス分野などのスマート化をもって産業保安の人材不足に対応することを目的としています。そこで、まずお尋ねしますが、産業保安分野で人材不足が見込まれる理由をどのように受け止めているのか、お尋ねをします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 産業保安分野へ人材が集まらない理由の一つとして、やはり職場環境の厳しさというものがあると考えてございます。

 具体的には、例えば、風車のブレードの亀裂等がないかを確認するため、高所でロープを張って降りながら点検をする、そういう高所作業でございますとか、あるいは、設備点検など現場作業が多く、工場の稼働を止められないため、二十四時間体制でやったり、あるいは土日のシフトがあったりとか、あるいは、昼夜を問わず対応する必要があるとか、そういう状況にございまして、人材確保の観点で、産業保安の現場において働き方改革あるいは労働環境の改善を行うことが急務になっていると考えてございます。

 この点、スマート保安技術の導入によりまして、働き方改革それから労働環境の改善が促され、より付加価値の高い業務として現場の技術者の処遇の向上にもつながる、そういうことになれば、保安の業務の魅力が向上することを期待したいと考えてございます。

 例えば、電力分野におきましては、鉄塔等の点検、検査においてドローンを活用することにより、現場の事業者の高所作業を減らす、そういう効果が既に表れてきてございます。

 今後も、保安業務の魅力を高めることにより、産業分野の人材確保につなげてまいりたいと考えてございます。今回提出させていただいている法案もそういった趣旨で考えてございます。

梅谷委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺わせていただいて、厳しい労働環境が大きな原因だと。ただ、裏を返せば、そういう厳しい中にあって、しっかりと私たちの暮らし、生活を守ってくださっているんだというふうに受け止めさせていただきました。

 私、この法案を学ばせていただいて、正直言って、産業保安業界というのは余り知りませんでした。電気分野では、電気主任者という資格が必要だったり、資格が必要な職種もあるんだなという程度のことは知っていたぐらいだし、そもそも産業保安という呼び方も、恥ずかしい話ですけれども、私だけかもしれませんが、知りませんでした。

 しかし、少しこうして学べば、相応のお金も稼げて、やりがいもある仕事、そして今や需要もある、何より国民の暮らしと命に直結する、非常に社会的意義のある職業だということ。

 このような産業保安業界の仕事の内容や魅力を広く国民に伝えることが、経産省として対応し得る人材育成、確保策の大きな一つと考えますが、取組状況と成果についてお伺いをします。また、SNS発信を行っているようですので、その閲覧数などの現状を併せてお尋ねをします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が御指摘のとおり、保安の現場を魅力あるものに変えていく、本法律でそういうことを目指して、保安の現場で厳しい作業をされている技術者の皆さんたちを応援していきたいと考えてございます。本法案の趣旨はそういうことでございます。

 人材不足の解消策としてPRやプロモーションが重要だという御指摘はそのとおりでございまして、例えば、今、電力保安分野におきましては、二〇一九年七月に、経済産業省の働きかけによって、電気保安に関わる団体によって構成される民間協議会を発足いたしまして、若者をメインターゲットとした「Watt Magazine」と呼ばれるポータルサイトを開設して、SNSと連携させて、情報の発信を行ってございます。

 現在、ポータルサイトの閲覧数は、これまで約七十四万回に上っており、認知度の向上や入職促進には一定の寄与をしているものと考えてございます。

 また、「Watt Magazine」に係るツイッターのフォロワー数は約六百件、フェイスブックのフォロワー数は百件となってございます。

 引き続き、保安人材の確保のため、官民が協力してPRの活動を積極的に進めてまいりたいと考えてございます。

梅谷委員 ありがとうございます。

 ホームページが七十四万件、ツイッター数が、今日現在で、私も今見てきたんですが、六百七十四件、フォロワー数。

 これは、ホームページも見ていただくと分かるとおり、いろいろな情報が、これはこれでいいと思いますよ、もちろん。いろいろな情報が載っているんですね、「身の回りにあるギモンを解決!電波時計が正確に時を刻むワケ」とか、いろいろなものが載っている中での七十四万件。もちろん、そもそも、この数字の大小に対する評価はともかくとして、PRについては、今ほどおっしゃったとおり、審議会でも度々課題として指摘をされておりますが、そして、政府として今この課題を認識されているということでも受け止めさせていただきました。

 「はたらく細胞」という漫画があるんですね。これはアニメ化や舞台化もされるほどの大人気作でして、大臣、御存じですか、「はたらく細胞」って。

萩生田国務大臣 存じ上げません。

梅谷委員 済みません、いきなり振ってしまって。

 かなりこれは大人気でして、どういう話かといいますと、多種多様な細胞たちを擬人化して、体の仕組みと細胞の働きを分かりやすく教えてくれる細胞擬人化ファンタジー。このブームのおかげで、細胞とか赤血球といった言葉も小学生の間でおなじみになったといいます。

 こういったブームを起こすのもなかなか難しいんでしょうけれども、こういう仕掛けができればいいなと個人的には私は思っています。

 また、長野県小諸市に移住した元人気ダンス・アンド・ボーカルグループの女性、武藤千春さんという方がいらっしゃるそうなんですが、この方、農業を通じて、フードロス問題であったり耕作放棄地の再利用などに取り組んでいます。魅力いっぱいの農業にぞっこんな彼女は、二〇一九年に東京から移住して、農業の魅力をSNSで全国に発信しているほか、インターネットの通販サイトを立ち上げ、農作物の販売も行っています。そして、世間に影響力があるインフルエンサーとしての発信力が買われ、この二月に、農業の魅力を広める小諸市農ライフアンバサダーに就任しました。

 産業保安においても、こうしたインフルエンサーの発掘も、検討する材料の一つなのかなと思っているところです。

 いずれにいたしましても、今後、より効果的な認知度向上に向けた取組を行うためにも、現状把握と分析が不可欠と考えますが、政府参考人さん、お答えできるでしょうか。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 やはり保安の現場に人を引きつけるということで、やはり、潜在人材に呼びかけを効果的に行って、その職場に来ていただくという努力を引き続き続けていかなきゃいけないと考えてございます。

 そのため、例えば、今、いろいろな電気技術者の資格制度というのがございますけれども、それの受験者の方にいろいろアンケートを取り、例えば、受験者の合格者の約七割は資格が必要な職種に就職していないというような情報もございます。

 そのため、経済産業省としましては、こうした潜在的な資格保持者を含めた保安人材の確保に向けて、今後とも、御指摘のようなPR活動を含めて展開をしていきたいと考えてございます。

 先ほど御説明いたしました民間協議会の活動を通じて、人材確保に向けた業界のPR、それから、御指摘のように、実態をよく把握した上で、資格を活用した業務に従事することを希望する方に積極的に御活躍いただくという観点から、電気工作物の保安業務の受託に必要な経験年数を減らしたりなんかする努力を行ってございますけれども、こうした入職に向けたPRや効果的な制度見直しを不断に行いながら、必要な保安人材を取り込み、それから、この法案によって、より保安の現場の働き方の改革を進め、保安の現場を魅力的なものにして、そういう場所で働きたいという方が出てきていただくように必要な整備を進めたいと考えてございます。

梅谷委員 ありがとうございます。いろいろな精力的な取組をされるにも、それをより効果的なものにするには、現状把握、これが大事だという御認識をいただきました。

 その上で、前段では、潜在産業保安人材とでも申しましょうか、資格を取っていても、有していても働きまで至っていない、ないしは御自身の意思なのか分かりませんけれども、そういう潜在的な方々、人材、これは、人数が分かれば教えていただけますか。出ると思うんですよね。有資格者数引く今働いている人数で数字が出ると思うんですが、お出しいただけますでしょうか。

太田政府参考人 ちょっと正確な数字は後でお伝えしますけれども、先ほどお答えしましたけれども、今、試験全体の合格者の約七割が資格が必要な職種に就職してきていないということでございますので、後で、試験の合格者の人数からちゃんと計算をして、御報告いたします。

梅谷委員 ありがとうございます。誠実に対応してくださって、感謝申し上げます。

 これはまず、文科省さんから今日お越しいただいているので、お尋ねしますけれども、工業高校の電気・ガス事業における出身者、三十年前の半分になっているんですよね。そもそも、また、電気主任技術者の年齢構成が五十歳代以上が五七%と言われて、高齢化も進んでいます。

 ほかにも、電気科の推移も約六割減。また、工業高校の電気関係に進学している方が、平成元年では十万二千九百二十九人だったのが、令和三年で三万六千六人。電子関係でも、平成元年が三万五千八百十七人が、令和三年で九千百十八人。設備工事関係が、平成元年、四千八、対する令和三年、千九百八十六。化学工業関係でも、平成元年では三万一千五百八十二人が、令和三年で九千八百七十三。最後に、化学工業関係のお仕事に就いている方が、平成元年、六千三百八十七人が、令和三年、九百八十六人。

 こういう推移なんですけれども、電子科などは平均以上に減っていますし、こういう産業基盤、技術基盤を担う産業保安分野での就職する学生の数が、減少が顕著なんです。人口減少がそもそもの理由とお答えになるかもしれませんが、その減少以上に電子科などの学生さんが減っているんです。

 なぜこのような減少が起きているのか、原因認識と対応策について文科省からお尋ねをします。

佐藤(光)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から今お話ございました産業保安分野における人材育成という観点から、高校段階、必ずしも高校段階だけではなく、大学の段階、全て含めてでございますけれども、人材の育成において、そういった業界、若しくは、就職するような子供たちのそもそも人材養成機関としての高校、大学になかなか人が集まってこないという課題、大変我々も重く受け止めてございます。

 そして、数字は先生が今おっしゃっていただいたとおりでございまして、まず、やはり少子化等で高校全体の生徒数が伸び悩んでいるというのは実態としてはございます。

 ただ、それだけでは課題解決にはなりませんので、そういった課題にどう取り組むかということを、我々も、二つのアプローチを今考えられるかなというふうに思ってございます。

 一つは、こうした課題に取り組むために、今既にお話に出ておりましたけれども、つまり、スマート保安の促進という観点から、一層の高度化や一層の専門化というのはこれは当然避けて通れない。こういったものを求める、産業界が求める人材というのをいかに高校レベルでも大学レベルでもしっかり育成していくか、この視点がやはり不可欠だと思ってございます。

 これも先生少し御言及ございましたけれども、産業保安分野の人材育成という点での教育は、工業高校の場合、電気通信の関係学科、電気関係学科や、設備工業関係学科、それから化学工業関係学科、こういったところが受皿となっております。

 こういった点で、高校のレベルで考えますときに、その教育内容というものをより一層高度化、専門化していくことで、そういった産業界のニーズにしっかり応えていく、こういう姿勢が一番重要だろうと思っておりまして、高校の学習指導要領、今年の四月から年次進行でスタートしてございます、この中に、今回のスマート保安促進という観点の意味内容も含めて、技術の高度化でありますとか、情報技術の発展に対応したソフトウェア技術についての対応、こういったものを具体に記述を入れ、そういったものを実行していくために、この四月から学年進行で入ってございます。これは、できるだけ早く現場で実践できるような対応、これが極めて重要。で、技能、技術をしっかり習得していく、高校レベルで、大学レベルでそれぞれ取り組むべきだと。

 もう一つありますのが、これは必ずしも産業保安分野に限りませんけれども、工業高校などにおいて、やはり、習得した、身につけた物づくりに関する例えば技術とか技能、こういったものをしっかり生かして活躍できる場、これをしっかり魅力あるものにしていくということが、やはり非常に子供たちの意識というものを変えていくところもありますし、それは、ですから、ディマンドサイドとサプライサイド、両面にわたって必要だろう、こういった取組のアプローチを是非やっていきたいと思っております。

 こういったもので、一部、学校段階でやっているものの御紹介でございますが、実際には専門高校の産業教育フェアというのを毎年やっておりますけれども、その中で、いわゆるロボット技術のコンテスト、ロボコンとも言われているもので、高校レベルでもこれをやってございまして、こういったものを行うことによって、そういった取組自体を、子供たちにとって、自分たちが活躍できる場とか職業観の育成、若しくは、そういった学んだことが生かせるよということをしっかり見せていく、こういうことも重要で、そういった場も有効活用してまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、産業保安分野の人材育成を担っている高校、大学など、人材が非常に集まって、そういった分野にきちんと人材が集まって、習得した知識、技能を、若しくは技術を活用して活躍できる場、これをしっかり確保していくよう、関係業界若しくは関係省庁などと連携して取り組んでまいりたいと思っております。

 よろしくお願い申し上げます。

梅谷委員 ありがとうございます。

 予想以上に大きな問題意識を抱いていただき、また対応も、それなりの焦点を当てて御対応を検討されているんだなということを受け止めさせていただきました。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、今文科省からもそういう御答弁をいただきましたけれども、やはりこの基幹インフラを担う産業保安人材を積極的に育成する責任が国にあるという認識でいいかを伺うとともに、経産省こそが積極的に課題提起をされて、文科省を始めとする、また所管の都道府県また関係団体、これらとの連携を図ることで人材発掘、育成をリードしていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

萩生田国務大臣 コロナを経験する前までは、国が、どういう人材が必要で、どういう学校にどういう人を育ててくれとか、あるいは、こういう方向にあなたは進んだ方がいいとかということは一切やらない、学問の自由というものが保障されていたんですけれども、コロナ禍を経験して、これだけの先進国でありながら、自国で解決できない課題が数多くある。サプライチェーンの問題もそうでしたし、専門人材の問題もそういうことでした。

 したがって、今、岸田内閣では、未来教育創造会議という省庁横断の会議をつくって、例えば、先日お認めいただいた半導体の工場への補助金、これは予算を認めてもらったんですけれども、同時に、横出しで、文科省と一緒に、半導体に携わる人たちを計画的に育てていかなきゃいけないという、そういった事業をスタートしました。国立大学や国立高専が連携して、そして地元の私立の学校なども提携をしていただいて、将来半導体分野で働いてもらう人たちを計画的に育てるということをスタートしました。

 まさにこれからの時代は、国が責任を持って、一歩先を読んで、どういう人材がこれから必要になるんだということを明確にして、そして同時に、子供たちにも、そういう職業の選択肢というのを早くのうちから示していくことがすごく必要だと思うんです。

 今の内閣では、スタートアップ、五年間でということを言っています。しかし、小学校の職業教育でスタートアップなんていうのは出てこないわけですよ。消防士はあるし、警察官はあるかもしれないけれども、起業家なんというワードはないんですね。だから、初等中等教育の段階でも、いろいろな職業の選択肢があるし、社会で求められているいろいろな働きというのがあるんだというのを、しっかり子供のうちから知っていただいて。

 産業保安分野、今までは、もしかすると、厳しい、きついと言われる職業だったかもしれないけれども、こういったIT、AIを使って、もう最先端の技術で、日本の皆さんのインフラの川上でしっかり安全を守るという、すごく誇りある職業なんだということをもっとアピールしていけば、希望者も増えていくと思いますし、給与も上がっていくというふうに思っていますので、今までの概念じゃなくて、そういう意味では、責任を持って、必要なところに必要な人材を育てていく。経産省の中にも未来人材会議というのをつくらせていただきましたので、その一つが今回の産業保安分野だというふうに思っております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 御丁寧な御答弁、ありがとうございました。また、熱い思い、ありがとうございました。

 次の質問です。時間が、済みません、少なくなりました。中小企業対策について。

 現在、スマート保安技術を導入している事業者は、各業界で名の知れた大企業が中心です。その中で、中小企業におけるスマート保安導入の現状についてお尋ねをします。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 中小事業者におきますスマート保安の導入状況につきましては、体系的なデータはございませんけれども、一般的に、中小事業者は大手事業者よりスマート保安技術の導入が進んでいない傾向にあるものと認識しております。

 こうした認識の下、政府といたしましては、資金力の乏しい中小事業者を支援するため、保安現場にスマート保安を導入するための技術実証に係る補助事業等を実施しているところでございまして、例えば、中小事業者であっても、AIを活用した経年劣化管理システムの構築や、ドローンとAIを活用した点検システムの構築といった取組を進めている中小事業者も存在しているところでございます。

梅谷委員 ありがとうございます。

 現状については体系的な情報はないというお話ですけれども、主にこれは、スマート保安技術導入のコストなどを考えると、資本が小さいほど導入率が低くなるのではないかなと、私、個人的には推察をしています。そもそも、スマート保安の導入にどれだけのコストがかかるのかが、事前のお話だと明確でない。

 そうなると、ただでさえ新型ウイルスだったり物価高、燃料高などで厳しい経営に直面する中小企業の方々は、導入を手控えてもおかしくはないのではないかなと思います。他方、大企業は、情報網や資金力をもって設備投資や人材確保を精力的に進めることが予想されます。大企業と中小企業との間で保安技術に差が開き過ぎる状況が生まれるのではないかと危惧をしています。

 そこでお尋ねしたいのが、中小企業を始めとする多様なプレーヤーが存在する市場を維持することが引き続き重要だという認識を経済産業省は持っていらっしゃるということでよろしいんでしょうか。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 産業保安分野におきましては、大企業のみならず、中堅・中小事業者や小規模零細事業者など多様な主体が存在しておりまして、それぞれが保安の担い手として日々の保安管理業務に的確に取り組んでいくことが重要であるというふうに認識しております。

梅谷委員 そうですよね。中小、中堅、零細事業者の方々も含めた、あらゆるプレーヤーの方々に引き続き活躍をしてもらうためのということだと思います。だから、重要との御認識だと思いますが、重要と認識されているのであればこそ、保安能力の底上げを業界全体としても図るべきだということだと思います。

 業界全体でスマート保安を進めるためには、まずは、中小企業を含む業界全体の状況調査を行うとともに、中小企業に特化した支援措置や活用促進など、対策を更に講じる必要があると考えますが、いかがでしょうか。いろいろなことをやられているというのはあらかじめ聞いていますけれども。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 地方における中堅・中小企業など、資金力や人材等に乏しい事業者がスマート保安に取り組めるよう、多角的な支援を用意することが重要であると私どもとしても考えております。

 この点、今回、スマート保安の促進のため、IoT、ビッグデータ、AI等のテクノロジーを活用しつつ自立的に高度な保安を確保できると、国が厳格な要件の下に認定する事業者につきましては、一部の手続や検査手法を適正化する認定制度を創設することといたしております。

 この制度につきましては、認定要件を満たせば、中堅・中小企業であっても、また、都市部であっても地方部であっても、認定を受けることは可能であり、そうした意味では中立的な制度になっております。

 加えて、実情の違いというのも当然ございますので、経済産業省といたしましては、資金面の支援としては、スマート保安に取り組む中小企業の技術実証の支援を行っているほか、人材や知見、ノウハウ面での支援として、プラント設備へのAI導入のためのガイドラインの作成ですとか、周知、広報、プラントにおけるAI、IoT等の技術導入を見据えた実践的な人材教育などを行っているところでございます。

 経済産業省といたしましては、引き続き、こうしたきめ細やかな取組を通じまして、地方の中堅・中小事業者も含めた業界全体がスマート保安を活用した保安力の持続的向上に取り組んでいけるようにすることが大切だと考えておりまして、しっかりと支援をしてまいりたいというふうに考えております。

梅谷委員 ありがとうございます。

 本当は、大臣からも一言、この格差是正というか中小企業対策をお答えいただきたいところですが、時間もないので、最後の、災害時の対応についてお尋ねをします。

 先進技術を保安に活用する考え方を積極的に進めるべきだというのは、もう言うまでもありません。一方で、いざ災害が起きたとき、スマート技術に頼り切ってしまったことで、対応力が脆弱化し、ひいては、一番大事な顧客の安全、安心が担保されないことにつながりかねないと危惧をしています。

 そこでお尋ねしますが、大臣にお願いしたいと思います。

 緊急時を想定した保安人材の確保はもとより、技術の継承を国として責任を持ってサポートしていくべきと考えますが、見解をお伺いします。

萩生田国務大臣 スマート保安を推進していく中でも、技術やコストがネックとなって、デジタル技術に完全に置き換えることが困難な作業が存在します。特に災害や事故の発生時は、デジタル技術が正常に機能しないことも想定されることから、速やかな復旧を実現するためには人の力が不可欠です。

 このため、災害時における現場対応力の強化に向けては、例えば電力分野において、令和元年度に発生した台風による大規模停電の反省を踏まえ、自治体と一般送配電事業者との間で災害時連携協定を締結する取組を進めているところであり、この協定に基づいて、両者が例えば倒木除去作業の訓練を実施するなど、早期の電力復旧に向けた体制の構築と技術の向上に取り組んでいます。

 また、今回の法案では、大規模災害時における都市ガス分野の事業者間連携を強化をして、災害対応に万全を期すために、一般ガス管事業者に対して災害時連携計画の策定を義務づけることとしているところであり、今後は、この計画に基づいて、事業者間の共同訓練や、消防、警察、地方公共団体との連携を促すなど、人の力を育て、これが最大限発揮されるような仕組みを構築していきたいと思います。

 何人かの先生方にお答えしていますけれども、全てが機械に代替するんじゃなくて、やはり、それを管理していただくしっかりとした保安技術を持った人も育てていくということを同時にしていきたいと思います。その中で、その人たちが、今まで危険作業をやっていたのが地上で仕事ができるようになったりすることを目指しているのであって、この人たちがいなくなって、機械で何でもできるようにしますよといったら、これは災害時のときどうするんだということになりますから、逆に、その分、いろいろな意味で余裕が出てきた分を、自治体や事業者の皆さんで更にもしものときのレベルを上げていくということも同時に考えていく、そういうことをしっかり促していきたいと思います。

梅谷委員 大臣、ありがとうございました。大臣の御答弁で、不安、懸念が一つ払拭されたと思います。

 我が国を取り巻く逆境をチャンスに変えられるような、世界の中で、日本の産業保安を切り開いて、世界に誇れる存在感を示していただくことを期待して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、末次精一さん。

末次委員 立憲民主党、末次精一でございます。

 それでは、高圧ガス保安等の一部を改正する法律案に関連して質問させていただきます。

 まず、質問一でございますけれども、カーボンニュートラル実現に向けた保安規制の整備は、我が国の最重要課題を支える重要政策でありますけれども、世界情勢の激動、今般の急速な円安等によって、輸入に依存する高圧、ガス、電力業界、とりわけ再生可能エネルギー系事業者でありますけれども、これらの事業者の収益構造が大幅に悪化しております。

 そして、今期の決算期はもとより、次期決算期において深刻な状況になることが容易に想像されますけれども、スマート保安推進の原資調達も含めた総合的な対策についてはどのように考えておられるでしょうか。

    〔委員長退席、中野(洋)委員長代理着席〕

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 スマート保安を実施する事業者に対しましては、これまでの御審議で御説明してきましたとおり、いろいろな実証試験を行う、実証事業に対する支援でございますとか、あるいは、その設備、DXを進めるための促進の税制、それから、人材を育てるための人材支援措置、それに加えまして、今回、スマート保安を、特に率先して高度な取組を行う事業者に対しまして、いろいろなインセンティブ、いろいろな規則の届出を記録保存にするとか、そういう手続の簡素化等のインセンティブを与えまして、このような取組を通じまして、企業のスマート保安の取組を押し上げていきたいと考えてございます。

末次委員 ありがとうございます。

 先ほど質問いたしましたけれども、このスマート保安推進に当たって、いわゆる業界の収益構造が大幅に悪化しているということで申し上げました。

 これについて、再生可能エネルギー系事業にまず特化して、これからお話しさせていただきますと、石油系ガス、化石系エネルギーはもとより、とりわけ再生可能エネルギーに関しましては、日本製の設備システムについては、海外製に比べて、価格競争力及びコストパフォーマンスがないに等しいという現状がございます。とりわけ再生可能エネルギーと申し上げましたのは、そのために、太陽光パネルと風力発電機はほぼ輸入で賄っているというのがまた現状でもあります。仮に設備システムを日本製に移行させるとしても、そのような準備は誰もしていないという実態がある。バイオマスの発電という例外はあるにしても、いずれにしても、再生可能エネルギーは、風や太陽光があっても、いわゆるその変換装置がなければ何の意味もないわけであります。

 なので、設備システムのこういった海外製依存は今般の円安の急速な進展下において深刻な問題であるというふうに私は認識しておりますが、同じような認識であるということであればそういう前提でまた話を進めますし、また、ほかにも違う原因とかを考えておられるということであったらお示しいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 スマート保安には、いろいろな技術、設備、それらが必要になります。そこの中で何か一つ欠けても保安のレベルが落ちるということですから、重要な保安のテクノロジー、技術、設備についてはやはりきちっと確保するということが重要だということについては、全く私たちも同じように考えてございます。(末次委員「収益構造のこと。再生可能エネルギーの収益構造のことですよ、事業者の」と呼ぶ)

 収益構造のところにつきましても、いろいろな導入のコストがやはりかかりますし、御説明のとおり、現下のいろいろな厳しい経済状況の中で企業収益も圧迫しているところですので、エネ庁の取組にもありますように、いろいろな支援策を通じまして、再生可能エネルギー施設の普及、それから、私どものところの保安のところは、やはり安全をきちっと担保するということを両輪でやりながら、促進を進めてまいりたいと考えてございます。

末次委員 スマート保安を推進するために、その前提としてですよ、事業者がどういう状況であるかということが大事でありますよね。

 それについて、先ほどおっしゃったように、厳しい環境にある中で、業績が悪化しているとおっしゃいましたけれども、じゃ、それについてどういう、具体的にデータを持ってくるとか、どういうふうな情報を持ってその前提となる事業者の状況を把握されているのかどうかということを聞いているわけですよ。そこについてお答えいただきたいと思います。

    〔中野(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 申し訳ございませんが、今、詳細なデータは手元で持ち合わせてございません。

 ただ、ほかの委員の皆さんからの御指摘もありましたとおり、実態をよく把握するということが重要でありますので、しっかり把握してまいりたいと思います。

末次委員 私が、今回の質問に当たりまして、ある大学の協力を得て、再生可能エネルギー系の事業者、また専門家から意見を集約いたしました。そういう現場の声を踏まえてすると、今般の円安の急速な進展は、先ほど申しましたように、輸入パネルの価格の急上昇をもたらすと。契約済みの案件を抱えている事業はもう、五月決算ですよ、五月決算でいえば、大量に破綻する可能性が高いという、そういうふうな現場の声が上がっているわけですよね。そういうのを把握されていないということでありましたけれども。

 だとするならば、先ほどおっしゃられた総合的な対策も、そういった今の現状を踏まえた上での対策でなければ、まさに、この統計に表れていない現状を鑑みると、こういった、余りにも急速に悪化しているわけですよ。それを、いわゆる現場の声も知らない、統計も出ていないということでありましたけれども、これは国の最大施策ですよね。国の最大施策ですよね、大臣。これを担う業界のもう総崩れも予想されているわけですよ、こういう再生可能エネルギー系の事業については。

 これについて、総合的な対策は極めて重要であるのではないかというふうに申し上げているわけですけれども、それについて旧来の方策しか取っていないということであれば、私は、五月末に決算期を迎える事業者について、その詳細なデータもいただくようになっていますけれども、それをいただく前でも想定はされているわけですけれども、今のような在り方で、国の最大施策を担う業界を守っていくことができるかどうか、これを大臣、ちょっとお答えいただきたいと思います。

萩生田国務大臣 前提の認識がちょっと私よく分からないんですけれども、先生がおっしゃっている電力の再生エネルギーの事業者というのは発電事業者のことですか。

 発電事業者であるとすれば、発電事業者の皆さんは、これは別に円安とかは全く関係なくて、初期コストを安定的に回収する採算分岐点には達していない事業者は大勢いらっしゃると思いますけれども、直ちに事業が倒産するというような状況にはないというふうに認識しております。

末次委員 分かりました。あくまで私は現場の声を聞いてお話しさせていただきました。大臣がそういうふうな認識でないというならば、それはそれで、そこは見解の相違ということで。

 ただ、私はこういったデータもお示しできます。データもお示しできますから、私はこういった緊急の課題に対して、これまでどおりの重要な対策以外に、例えば、政策金融の発動とかESG投資の呼びかけが必要ではないかということを申し上げておきます。

 次に、質問二に入ります。

 保安規制の実効力を高めるための人材の確保、育成及び技術の投資については、どのような施策を講じることを考えられていますでしょうか。あわせて、業界内連携にとどまらず、様々なステークホルダーとの連携については、具体的にどのように考えておられますでしょうか。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 産業保安分野におけます人材の確保は重要な課題であると認識しております。人材不足が進んでいる背景といたしましては、保安人材の多くを占める熟練層が今後大量に退職していく一方で、若年層の入職が進みにくい状況にあることが考えられます。

 若年層の入職が進みにくい要因といたしましては、保安関連の業務が他の業務と比べて、高所作業などの危険を伴うものがあること、交代制、シフト制の割合が高く、休日や夜間に業務が入ることなど、厳しい職場環境や、業界認知度の低さが挙げられると考えております。

 経済産業省といたしましては、これまで、保安人材の確保、育成に向けまして、例えば、電力分野におきまして、電気保安に関わる業界団体等に働きかけ、保安人材の確保に向けた民間協議会を立ち上げていただき、電気保安、電気工事業界等が連携する形で若者向けのPRやプロモーション等を進めていただいているところでございます。

 また、施工方法の技術進歩等を踏まえ、第一種電気工事士の資格取得や電気工作物の保安業務を受託するために必要な実務経験年数の短縮化を図ったところでございます。

 加えまして、高圧ガス分野におきましても、経済産業省がAI、IoT等の技術の基礎知識やプラントでの事例活用等を紹介する人材育成カリキュラムを作成し、プラントでの新技術の導入を見据えた実践的な人材育成を支援しているところでございます。

 こうした取組に加えまして、保安現場の働き方改革などを含めた取組を官民挙げて進めることで、保安人材の確保、育成に注力していく所存でございます。

 それから、お尋ねをいただきましたステークホルダーとの様々な連携ということにつきましては、私どもといたしましても、産業保安分野における安全性を確保するためには、企業単独や同一業界内での取組に加えまして、他分野からの知見の共有ですとか業界外のステークホルダーとの連携が重要であるというふうに思っております。

 業界横断的な取組といたしましては、令和二年六月から、石油、化学、電力、都市ガス、エンジニアリング、メンテナンスなど様々な産業保安に関わる分野と経済産業省から構成されるスマート保安官民協議会を開催し、スマート保安の基本的な方針と各業界での取組を共有しているところでございます。

 業界外のステークホルダーとの連携の観点では、例えば、電力分野におきまして、令和元年度に発生した台風による大規模停電を踏まえまして、一般送配電事業者が自治体との間で災害時連携協定を締結し、平時の事前伐採や災害時の倒木処理、道路啓開の迅速化を促進することで、官民連携の下、早期の電力復旧に向けた体制を整えているところでございます。

 こうした業界内外の連携を積極的に進めることで、産業保安分野全体の保安力を継続的に高めていきたいというふうに考えております。

末次委員 ありがとうございます。

 まず、人材確保、育成について、ちょっと改めて質問させていただきますけれども、総じて、平たく言えば、業界内で人材の確保、育成をされていくということでございましたよね。それに関して、業界外ということで、業界外のステークホルダーということも後からおっしゃいましたけれども、私はそれで本当に大丈夫かなというふうに心配しております。

 と申しますのは、業界内、まず業界内をおっしゃっていましたので、業界内ということで、これまでどおり、何か中央の専門家や事業者と議論をして、何かそれをもって全体的な意見とするような、そういうふうなやり方では、同じ失敗を繰り返されるんじゃないかというふうな危惧をしております。

 何でかというと、例えば、報道によると、デジタル庁の人材確保、育成も課題が多いと言われているわけですね。ましてや、本法案に関連する業界においては、先ほどから申しているように、厳しい環境にさらされているわけで、そういった中で、先ほど文部省との連携の話もありましたけれども、どうやってデジタル人材を確保していくのか、デジタル庁の二の舞にならないかと容易に想像ができるわけであります。

 ですので、私も、業界内と業界外の産業分野ということではなくて、やはり、もっと地域に関連する人たち、再生可能エネルギーに関して言えば、その地域のいわゆるステークホルダーも含めた方々と、よく話を聞きながら、連携を図っていくことが必要であると思いますけれども、その辺のお考え方はいかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの議論の中でもありましたけれども、再生可能エネルギーの普及に当たっては、やはりそこの、立地をする地域のステークホルダーの方に対する理解というのが非常に重要になってきていると思います。

 私どもも、安全の観点から、そうした安全の対策をしっかり取るというところで、そういう再生可能エネルギーが地域と共生していくような仕組みを保安面から支えていきたいと思ってございますけれども、事業者の皆さんも、そういう再生可能エネルギー設備が地域と共存して、受け入れられるような形で、ちゃんと地域の方とコミュニケーションが取られるということが重要だと考えてございます。

末次委員 分かりました。

 地域との連携を重要視していただくということでありましたので。

 そうしたら、私、長崎ですけれども、長崎におきましても再生可能エネルギーのポテンシャルというのは高いと認識していますし、データでも出ているわけでございます。そういうことで、地域の声を聞いていただくということであれば、是非そういった機会を地元で持っていただきたいと思いますけれども、それについてはいかがでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 私の出身も長崎でございますけれども、再生可能の有望な地域ということでいろいろな選定が行われると思いますけれども、地元の方の熱意それから御要望、それから、先ほど申し上げましたようにやはり安全に対するいろいろな声、心配の声とかもございますので、そこら辺は地域の方々とよくコミュニケーションを取りながら進めていくべきものだと考えてございます。

末次委員 ありがとうございます。セッティングさせていただきますので、是非お願いいたします。

 ちょっと先ほどに戻りますけれども、今の質問で、技術への投資についてはどのような施策を講ずることを考えているかということで質問しましたけれども、その辺りを再生可能エネルギーに関連して再度御答弁いただければと思います。

古屋委員長 末次精一さん、もう一度御質問をお願いいたします。

末次委員 先ほどの質問で、保安規制の実効力を高めるために、技術への投資についてはどのような施策を講ずることを考えているかということを質問を申しましたが、再生可能エネルギーに関しましてどのような施策を講ずることを考えておられるのかということをお示しいただければと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 再生可能エネルギーを含めました技術の導入に関しましては、実証試験に対する補助というのがございます。それから、そういう再生可能エネルギーを含めた設備を導入することに対するいろいろな、再生可能エネルギー関係の補助金もございます、設備関係の補助金もございます。そうした税制、補助金、それから、その導入に当たって、いろいろな事業者の方にガイドラインを提示する、あるいはベストプラクティス集を提示する、そういう作業もございます。

 そういった支援を通じまして、スマート保安の促進に努めてまいりたいと考えてございます。

末次委員 今お示しされたということでありますけれども、先ほど申しましたように、再生可能エネルギーに関しては、設備システムについては非常に海外製に依存しているということが一点。それと、価格競争力及びコストパフォーマンスがないということを指摘いたしました。

 その一方で、設備システムを日本製に移行させるというような準備というものが非常に乏しいという現状もあるということで認識しております。

 今申し上げましたのは、スマート保安推進の前提となるこういった状況に対して、事業そのものがいわゆる、何度も言いますけれども、成り立っていない、総崩れの状況にある、その一方で、その原因となっている技術の問題についてどのような施策を考えておられるかということで質問したわけではありますけれども、先ほどおっしゃった施策というものが、今後の、今の課題を解決する大きな対策になっているというふうに考えておられるという認識でよろしいんでしょうか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 スマート保安のそういう技術の、テクノロジーの導入に当たって、私どもとしては、必要な実証を支援し、設備に対する税制の、それから人材に対する支援というものを行ってまいります。

 いろいろな企業の置かれている状況あるいは技術の状況というのは刻々と変わりますので、その状況をやはりちゃんと把握しながら適切な対応を努めてまいりたいと思っております。

末次委員 スマート保安の推進の実施に当たってということでありますけれども、その実施に当たる前提のことを何度も話しているわけですね。

 もう一度ちょっと、そこをきちんと分けた上で、現状のこの技術的な問題を今後どうやって解決していくかということについては御答弁いただけるでしょうか。

太田政府参考人 お答えを申します。

 私の担当は保安の分野でございますけれども、いろいろな再生可能エネルギー、そういう、カーボンニュートラルを含めまして、日本が持つべき重要な技術の育成それから支援については、別途の部署でちゃんと検討がなされているものと考えてございます。

末次委員 分かりました。

 大臣に先ほど現状認識についてお答えいただきましたけれども、ちょっとここは、時間もありますが、大事なところでありますので。

 大臣が先ほど、平たく言うと、そういう危機的状況とは捉えていないということに考えられたその根拠、それについて、現場の声で聞かれた、どういったところで聞かれたとか、統計を大臣が持っておられるんだったら、どういうところを持っておられるのかということを詳しくお伺いできればと思います。

萩生田国務大臣 先生の仮説が、仮説といいますか御提案が、再生可能エネルギー、なかんずく太陽光や風力発電のことを御指摘なんだと思います。

 これらは設置段階からFIT法の対象になりますので、買取り価格が安定的に支給されるという仕組みです。初期投資にお金がかかるのは事実でありますけれども、しかし、事業計画を立ててしっかり運営していけば、でき上がったものは逆に、一定の管理以外は収入しかなくなるわけですから、そういう意味で、その業界、すなわち再生エネルギーをやっている、太陽光発電や風力発電の会社が、円安などの影響によって、あるいは部品が国内品がないことによって倒産の危機に至っているんだという認識は私は持っていないということを申し上げたところでございます。

末次委員 認識ということでおっしゃったということですね。

 大臣が先ほど、私が仮説に基づいてと言われましたけれども、私は別に仮説に基づいて言っているわけではありません。これまでずっと申し上げてきたことは、現場の声を聞いているということですね。

 何回も言いますけれども、今回の質問に当たっては、事業者や専門家から、ある大学の協力を得て、そういう現場の声を聞いているということであります。しかも、いわゆるこの再生可能エネルギーの事業に関しては、ここ数年、やはり赤字が多いわけですよね。赤字が多い。その上で、こういった余りにも急速な現状の悪化の中で、本当に、五月決算期の会社でいえば、いわゆる倒産の危機すらあるというところが多い、そういう声がある、データも示せるというふうに言っているわけです。

 そういうことを踏まえて、仮説でということではないということをまず改めて申し上げておきますことと、まず、やはり、認識ということで今のこの急激な環境変化を私は乗り越えられるというふうには、そこは思いません。なぜかというと、それは、現状認識、現状の把握があってからの、それからいわゆる、よくPDCAと言いますけれども、アクションがあるわけで、そこを、先ほども申しましたように、ESG投資の呼びかけというものが今急務ではないかということで提案している次第でございます。

 そこを改めて強調申し上げまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

古屋委員長 次に、青柳仁士さん。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 高圧ガス保安法等の改正案についてまずはお伺いしたいと思います。

 今回、新たに位置づけられる小規模事業用電気工作物について、省令で一定規模の太陽光、風力発電設備が指定される予定ということですけれども、その設置者として想定されるのは中小企業、小規模事業者、個人事業主ということになっています。

 技術の基準への適合性の維持義務、使用前の自己確認、基礎情報の届出が義務づけられることになるわけですけれども、こういったことに対応するのはなかなか中小企業というのは余裕もなくて大変だと思うんですけれども、こうした負担の軽減措置について考える必要があるのではないかと思っております。

 そこで、二つ。一つは、新たな制度に関して分かりやすく周知徹底すること、また二つ目として、新たな義務づけに関して支援制度や相談窓口の設置等の負担軽減策が必要と考えておりますが、政府の方針及び対応はいかがなものでしょうか。

萩生田国務大臣 太陽光や小型風力発電など再エネ発電設備については、事故の発生や場所の多様化を踏まえて、安全確保に万全を期す観点から、今回の法改正で、これらの発電設備の設置者に対して、設置場所等の基礎的な情報届出や、技術基準への適合性の事前の確認義務を課すこととしております。

 他方、こうした発電設備を設置する者の中には先生御指摘のように中小企業や個人事業主が多く含まれていることから、その負担軽減にも配慮するとともに、今回の制度改正をしっかりと周知することが重要だと思っています。

 このため、負担軽減策として、例えば、技術基準の適合性の事前確認を行う際は、保守管理を行う他の事業者に委託することを可能とするなどの措置を講じております。また、基礎情報の届出につきましては、令和四年度予算を活用して、全ての手続をオンラインで完結することができるシステムの構築を行うとともに、御提案のあったとおり、コールセンターを設置をさせていただいて手厚いサポートを実施する予定でいます。

 さらに、法案成立後は、速やかに詳細な制度設計を行った上で、その内容をホームページなどで公表するほか、再エネ関連団体や地方自治体などの様々なルートを通じて広く周知をし、制度改正が中小企業や個人事業主など様々な関係者に御理解いただけるように、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

青柳(仁)委員 今、いろいろな施策について御説明がありましたけれども、日本の中小企業はどこも人数が少なくて対応が大変だということだと思いますので、是非政府からのサポートをしっかりやっていただければ、このように思っております。

 今日は、前回の質疑のときにちょっと聞き切れなかった質問について、残りの時間を使って質問させていただきたいと思います。

 やや繰り返しになりますが、今、ESG投資という資金が世界で三十五兆ドルになっております。これは四千五百兆円に相当する金額で、世界全体のGDPの総合計というのはおよそ八十八兆ドルということですから、それの半分に迫る勢いにまで大きく伸びてきているということなんですね。

 これだけ大きな資金が世界全体で一つの目的を持って回り始めているというのは、これまで、歴史上を見ても極めて特異な状況じゃないかと思っております。

 そして、さらに、この状況が非常に重要な局面に来ているのは、この大きなお金の使い方を、動き方を誰もよく分かっていないということなんです。脱炭素、カーボンニュートラルと言われるような様々な取組の中にこうした資金が回っていることは周知の事実でありますけれども、しかしながら、これがどうやってどこへ流れ込むのかという仕組みが誰にも分からないというのが現状だと思います。

 しかしながら、様々な要素で動いていることは間違いがないことで、そのうちの重要な要素の一つとしてあるのが、サステーナビリティーあるいはESG評価基準の統一という話があります。これが全てではありませんが、これがこの大きなお金を動かしている一つの極めて重要なルールであるということは間違いがない、このように私も考えておりますし、様々な有識者も同様の認識であると思っております。

 こうした中、このESG、サステーナビリティーの基準、あるいはESGの評価を決める基準というものに関しては、昨年時点までは、およそ世界に四百から五百余りの様々な基準がありました。これが今、三つに統合されようとしております。まあ、一つに最終的には統合しようとしているんですけれども。

 現状、最も有力なものとして、IFRS財団の今取りまとめているもの、それからアメリカのSECが取りまとめているもの、それからEUのCSRD、この三つが、それぞれ違ったルールなんですけれども、四百よりはましと、三つぐらいに統合されていきそうだという話があります。

 このうち、SECは、アメリカ政府が完全にコントロールしますから、はっきり言って、日本がここに口を挟む余地はほとんどないと言っていいと思います。また、CSRDは、EUのルールですから、これもなかなか、EUのやっていることに日本が口を挟むのは難しいだろうと思います。

 一方で、IFRS財団のやっていることというのは、これは民間の団体ですから、もちろん、この背景には各国がいるわけですが、一定程度、日本も影響力を発揮することができると考えておりまして、ですから、この基準が最終的にこうした大きなお金を動かすためのサステーナビリティーの基準となっていくことが日本にとっては望ましいと思いますし、また、そこに意見を述べていくことが必要であろう、このように考えております。

 という基本認識を基に、今日ちょっとお伺いしたいのは、マテリアリティーということになります。

 これは、何をもって、一言で言えば、このESG投資というのは、従来みたいな、いわゆる利益であるとか売上げであるといった経済価値に加えて、環境ですね、気候変動だとか、あるいは社会、人権といった、そういった、企業が生み出している価値というのは経済面だけではなくて社会面のものもあるだろう、こういう考え方でやっているわけなんですが、この社会面の価値をどう測るかというところが今は基準がないわけです。このポイントとこのポイントが社会面を測る価値だというところをマテリアリティーというわけですけれども、このマテリアリティーがどう設定されるかが、結果的に、日本企業がどう評価されるか、あるいは、これから先この資金がどう動いていくかというところに極めて重要だと思っております。

 そうした中で、IFRS財団と日本政府、経産省はこれまでも議論を続けてきているわけですが、この中で、このマテリアリティーというのを従来のような財務価値、経済価値に閉じ込めようとする動き、これはシングルマテリアリティーと言われていますが、というものと、もう一つは、ダブルマテリアリティーといって、これまでの社会価値というものを広く取った形での基準を作るべきだという、この動きがあります。

 この中で、二〇二一年のIFRS財団によるサステーナビリティー基準審議会の設置に関するパブリックコンサルテーションで、経済産業省の経済産業局企業会計室は、シングルマテリアリティーにすべきだという提言をしています。正確に言うと、サステーナビリティー報告における主要な報告対象者は、投資家を中心とする資本市場の参加者、財務情報その他の利用者とすべき、その上で、重要性の範囲はシングルマテリアリティーを基本に考えるべきだというふうに言っています。

 ちょっと長くなりましたが、私はこれが間違いだというふうに思っております。

 なぜかと申し上げますと、このシングルマテリアリティーということにこだわって開示項目を設定するのであれば、これは、そもそもESGが生まれた、国連のPRIというプログラムから生まれていったそもそもの趣旨は、このまま企業が自分のもうけだけを考えて企業活動をやっていったら世界は持続可能ではない、こういう問題意識があったわけです。ですから、競争ルールそのものを変えていく必要があると。そういった中においてシングルマテリアリティーを採用したら、これは、今までどおり企業がもうかることにフォーカスをするということになりますということになります。

 それからもう一つは、これは新しい資本主義等の中でも議論が行われていますが、今、世界には、株主資本主義というのを強化していくべきだという流れと、それから、企業が価値を与える相手は、株主以外の、消費者や投資家やその従業員その他、様々なステークホルダーであるべきだ、これは経団連も経済同友会も後者のステークホルダー資本主義ということを言っているわけですが、こういった流れの中でシングルマテリアリティーを採用すれば、これは当然、株主資本主義を強化するだけで、株主だけがもうかる資本主義ということがこれからもつながっていく。これは、先日、岸田総理がおっしゃっていた新しい資本主義の理念とも反するものではないかと思っているわけです。

 また、もう一つ、シングルマテリアリティーを採用した場合には、日本企業の競争力向上にもつながらないと私は思っております。

 なぜかというと、シングルマテリアリティーの場合、決められた財務価値をそのまま受け入れることになりますから、日本企業が本来持っている、本来評価されるべき社会価値みたいなものが新たに指標となる可能性というのをほぼゼロにしてしまう動きだと思っております。

 また、そうしたものを検討する上で、日本企業の特異なビジネスモデルというものをきちんと把握しながら新しい指標が作られていくという、この動きにも逆行するものだと考えております。

 非常にちょっと長くなってしまったんですが、そうした観点の下で、これからのIFRS財団とのやり取りの中においては、経済産業省及び日本政府は、ダブルマテリアリティーあるいはダイナミックマテリアリティーと言われる、これから更に社会価値を広く取っていくような考え方で申入れをしていくべきではないかと考えているんですけれども、それに関して、経済産業省の見解についてお伺いします。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点でございますけれども、御指摘のとおり、IFRS財団は、ISSB基準に基づく財務報告の主たる利用者、プライマリーユーザーでございますけれども、これを現在及び潜在的な投資者、融資者及び他の債権者としておりまして、資本市場のニーズを満たすためのサステーナブル開示の要求事項に関するグローバルベースライン、これの開発を目的としております。

 他方、今般のISSBの公開草案におきましては、マテリアリティー、重要性の考え方につきまして、いわゆるダイナミックマテリアリティーの考え方をお示しされているところでございます。

 このダイナミックマテリアリティーでございますけれども、企業を取り巻く状況の変化や経済、社会、環境の変化に伴って、サステーナビリティーの関連する財務情報における重要性の捉え方、これが変化するという考え方でございます。

 例えば、気候変動などのサステーナビリティーに関する項目も、時間の経過とともに企業価値に影響を与え、財務情報にも取り込まれていくという考え方だと認識をしてございます。

 こうした考え方を踏まえてISSBの公開草案が作成されているということは、この草案が、企業価値の評価と長期的な社会、環境の持続可能性、この確保の両立につながる重要な方向性を目指しているというふうに認識をしてございます。

 この点、経済産業省が提唱しているサステーナビリティートランスフォーメーションというのがあるんですけれども、これは、企業活動のサステーナビリティーの向上、すなわち持続的なイノベーションの創出やビジネスモデルのアップデートなどと社会のサステーナビリティーの向上をいわば同期化させる、そういったことの重要性を指摘しておりまして、まさにダイナミックマテリアリティーの考え方とも軌を一にしているというふうに認識をしてございます。

 こうした背景を踏まえまして、基礎的見解におきましても、サステーナビリティートランスフォーメーション、つまり企業活動のサステーナビリティー向上と社会のサステーナビリティー向上、それを同期化するということの重要性につきまして指摘しているところでございまして、こうした考え方を内外の市場の関係者などとも共有することを通じまして、企業価値に影響を与えるようなサステーナビリティー関連財務情報の開示というのをしっかりと推進してまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 ダイナミックマテリアリティーの方を、シングルマテリアリティーではなくて、採用すべきという提言をするのは非常にいいことだと思っております。

 ただ、一方で、前回、EUのタクソノミーの議論の中で、最終的に日本のハイブリッド車がグリーンではなくブラウンと分類されたのを見ても分かるとおり、最終的な本当に細かい戦術のところで非常に重要なことが決まるというのがこういった議論の、常にそういう状況だと思いますので、今回も、今の点を申し上げると、公開草案、私も拝見しましたけれども、今、確かにダイナミックマテリアリティーという議論が五つの団体から提言されていて、IFRS財団もそれを受け入れる方向で話をしているというのは聞いています。

 ただ、IFRS財団が公開した資料を見れば、彼らは、あくまでシングルマテリアリティーのところまでをISSBと書いてあって、そして、その外のものに関してはビルディングブロックの三段目というような位置づけにしていますから、今のあの段階で、あのIFRS財団の言い方ではどっちにも読めるんです。ダイナミックマテリアリティーを採用するとまではあの言い方では読めないですね。最終的にシングルマテリアリティーになる可能性も極めて高いと私は思っておりますので、そういったところをしっかりと申入れをしていっていただきたいなと思っております。

 ちょっとこの点については、また引き続き、大臣の御意見等も別の機会にお伺いしたいと思っておりますが、今日はもう一点ありまして、こうした動きが日本の中小企業に与える影響ということを非常に注視しております。

 これらの基準というのは、当然のことながら、大企業が対象になってまいりますが、そしてまた、これが中小企業に適用されることは、ここ何十年かはないだろうというふうに思いますが、一方で、大企業は、サプライチェーンあるいはバリューチェーンでもって社会価値を測られるということが、ほとんど、今、世界のスタンダードになりつつある。これをスタンダードにしているのは、気候変動の中でのTCFDがそういったルールを採用したからだというふうに私は認識しておりますが、そういった中で、これは極めて中小企業にとってはビジネスチャンスでもあり、またリスクでもある。

 つまり、大企業はこれから、自らのこういったESG投資資金を呼び込むため、あるいは様々なステークホルダーからの評価を高めるために、気候変動対策を始めとした様々な社会価値に対する取組、それに、社会価値を生み出すような製品、サービスを生み出していくということに注力していくはずです、間違いなく。ですから、その際に、どういった取引先と取引することによってそれが達成されるのかというのは、彼らにとっての、大企業にとっての極めて大きな関心事になりますし、現在もなっておりますけれども、更にその方向性が強まっていくと思います。

 ということを逆のサイドから考えると、中小企業にとっては、そうした社会価値を生み出すような、あるいはこういったIFRS財団で議論されているような、サプライチェーンの中で評価されるような取組というものにたけた中小企業は、大企業と取引がしやすくなるということなんです。ですから、たくさんの発注が舞い込む。

 これは単に日本国内だけの話ではなくて、これは世界全体でやっている話ですから、日本の中小企業に世界のお金を呼び込む、世界からお客さんを呼び込むためにも、先ほども申し上げましたが、これは四千兆円とかという話ですからね。ですから、非常に大きなお金を呼び込むということにおいては、本当に日本の経済成長の戦略の中核的な要素でもありますし、また、地方創生といったことを考えた場合にも、地場企業を含む中小企業にとっては非常に大きなチャンスになっていく。

 このルールができ上がるのは今年内ということですから、ですから来年には本格的に動き出すわけですが、こういった中において、どういったルールが成立されるかということについて非常に重要だと思っています。

 そういった認識に基づいて、バリューチェーン、サプライチェーンの評価に関する中小企業に対する経済産業省のこれまでの対応、それから現状認識、問題認識、今後に関する計画、対応方針について教えていただければと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 三月三十一日にISSBが公表しました公開草案のベースでの最新の記載では、バリューチェーンの定義といたしまして、報告企業のビジネスモデル及び企業がオペレーションを行う外部環境に関連する活動、資源及び関係の全範囲などと示されております。また、その例示といたしまして、サプライチェーン、従業員やオペレーション、マーケティング、流通チャネルなどが示されております。

 特に、気候変動分野では、取引先における温室効果ガスの排出などを含む、いわゆるスコープ3の排出量の開示の議論が進んでおりまして、報告企業と取引のある中小企業にとっては、取引先から情報開示を求められる場合の負担が大きいというような課題もございます。一方、御指摘のとおり、潜在的には、環境負荷の観点から、むしろ強みをアピールすることができる企業、こういった企業もあるものと考えているところでございます。

 こうした観点から、中小企業が環境負荷への対応力をビジネスチャンスとして生かせるように、グリーンなど新たな分野での成長投資を行うことを促すということが重要だというふうに考えてございまして、例えば、いわゆるものづくり補助金のグリーン枠などで、生産工程などの脱炭素化などの労働生産性の向上と炭素生産性の向上の両立、こういったものに取り組む事業者の設備投資などを積極的に支援しているところでございます。

 また、SDGs経営を実践する際に有用な視点を整理したSDGsの経営ガイドといったものを国内外に広く発信をすることにより、SDGsを企業経営に取り込み、ESG投資を呼び込んでいこうとする企業に対する指針を示しておりまして、さらに、中小企業のためのSDGsの活用ガイドブック、こういったものもお示ししているところでございます。

 こうした支援策などを通じまして、中小企業のグリーンなどへの成長投資、こういったものを後押しすることを通じて、サプライチェーン全体における環境負荷の低減につなげてまいりたいと考えております。

青柳(仁)委員 今のいろいろな取組、御紹介いただきましたけれども、例えばSDGs経営ガイドみたいなものを出されているというのは私も拝見しましたが、今はまだあれは、国連が定めた、世界百九十三か国で定めた方針に基づいて企業がどう行動すべきかという、従来のCSRみたいな、企業の社会的責任としてどうかみたいな議論に非常に近いようなところでやっていると思うんですが、これからは、まさにIFRS財団の話が終われば大きくフェーズが変わります。

 今度からは、市場競争力というものと非常に密接に、これはもう完全にフェーズが変わってきますから、ですから、そのときに、こういう企業の責任としてやりましょうとかではなくて、こういうことをやれば確実に投資の資金が舞い込む、あるいは競争力を増すことができるという本当に実務的なそういうガイドあるいはガイダンスというものを、是非、経済産業省の方から考えていっていただきたいと思います。

 また、今までのガイドは、やはり、こうしたサステーナビリティー基準あるいはESG評価の対象となる大企業に向けたものが多かったと思うんですけれども、それは、今まではサプライチェーン、バリューチェーンの議論が余り成熟していなかったからだと思うんですが、今はもう違いますので、これからは是非、これは中小企業の成長チャンス、日本を成長させるための非常に大きな機会だと捉えていただいて、是非全省を挙げて取り組んでいただければと思っております。

 本日、私からの質疑は以上です。どうもありがとうございました。

古屋委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局長佐藤悦緒さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 質疑を続行いたします。漆間譲司さん。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 法案質疑に入らせていただく前に一点、ちょっと地元から御要望がありまして、ウクライナの難民受入れに関して質問させていただきます。

 ウクライナ避難民の方々の受入れに関わる生活支援措置につきましては、日本に身寄りのない方は国が支援し、身寄りのある方は、現状、受け入れる地方自治体が自主的に、自主財源で支援をしている状況ですが、そもそも、身寄りがあるかないかにかかわらず、地方自治体でなく日本政府が支援するべきだと思いますが、いかがでしょうか。また、現状若しくは今後、予算措置をする地方自治体に対する国の支援などはあるのでしょうか、お伺いいたします。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として、避難民の受入れに際し、日本に親族や知人がいらっしゃる場合には、これらの方々が身元保証人となり、避難民の生活等に一定程度支援がなされることを想定しております。また、これらの避難民の方々に対する地方自治体による支援は様々でございますが、これらは各自治体の判断において行われるものと承知しております。

 ただいま御指摘ありました国から地方自治体に対する財政的な支援としましては、一つ目は、出入国在留管理庁が所管している外国人受入環境整備交付金につきましては、在留する外国人の数に応じて交付限度額が定められておりますが、既に交付限度額に達している地方自治体においても、ウクライナからの避難民に対する特別な対応として、相談対応を行うために必要なウクライナ語の通訳を確保するなどのための経費については、特例として、交付限度額を超えて交付決定を行う措置を実施し、必要経費の二分の一の交付を行うこととしているところです。

 また、地方自治体においては、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金について、新型コロナウイルスの感染拡大の防止及び感染拡大の影響を受けている地方経済や住民生活の支援を図るためという趣旨に沿って、コロナ禍におけるウクライナからの避難民の生活支援等にも活用することが可能とされているところでございます。

 そのほか、財政面とは別ですけれども、各自治体における円滑な受入れ支援をサポートするため、入管庁では、各地方官署に、地方自治体や避難民の方々からの相談等に対応するウクライナ避難民受入支援担当を配置してきたところでございます。

 引き続き、ウクライナ避難民の方々を受け入れていらっしゃる地方自治体の声をしっかりと受け止め、国と地方が連携して、避難民の方々にしっかりと寄り添う支援を行ってまいりたいと存じます。

漆間委員 また、地方自治体の方にそういった支援があることもしっかり周知いただきたいと思いますし、それで本当に十分なのかどうかというところもしっかり精査していきたいと思います。

 また引き続き、いろいろと調べさせて、お伺いさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、法案質疑に入らせていただきます。

 今般の燃料電池自動車、FCVに関わる規制の見直しにつきまして、これまでの経緯を見ましたところ、二〇一三年、安倍元総理大臣による成長戦略第二弾スピーチで、燃料電池自動車には、経済産業省と国交省の規制がかかるなどがんじがらめの規制の山で、これを一挙に見直すと述べられており、そこから十年という結構長い期間がかかったと思っておるんですけれども、その理由はどこにあるんでしょうか。

 あわせて、今般の燃料電池自動車に関わる規制改革がどのようなプロセスで進められたのかについても、お伺いさせていただきます。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 現行制度におきまして、燃料電池自動車等には、高圧ガス保安法と道路運送車両法の二法令が適用されております。このことによりまして、自動車メーカーには、二法令それぞれで定める検査手続や不具合時の報告等が求められるほか、ユーザーにとりましては、高圧ガス保安法上の容器再検査と道路運送車両法上の車検を受ける必要があるなど、自動車メーカーとユーザーの双方に手続上の負担が生じていることから、産業界から、燃料電池自動車の規制の一元化に関する要望が寄せられていたところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、他の事項も併せてでございますけれども、平成二十九年度の規制改革実施計画におきまして、燃料電池自動車に関する事務手続の合理化の検討を開始するということが定められたわけでございます。

 これを受けまして、事業者及び関係省庁が参加する検討会等におきまして、安全性を確保しつつ、手続を最大限合理化すべく、両法の検査制度の違いを踏まえた検査制度の在り方ですとか具体的な実施体制等について検討を行ってきたところでございます。

 その結果といたしまして、燃料電池自動車等の保安規制について、今般、道路運送車両法の車検制度等において安全を確保できるということが確認できたということを踏まえまして、今回、高圧ガス保安法の改正を行うという方針に至ったものでございます。

漆間委員 安全確保等を含めて必要な手続をしていたということでありますが、現状、目標として、二〇二五年に二十万台の普及を目指すと言っている中で、去年の三月時点でFCVが五千三百台。それを見ますと、もう少しスピードを上げられなかったのかな、そういう感想でございます。

 世界的なEVシフトの潮流の中、FCV、今後どういった割合で、今回のこの規制改革も含めて政府が目指していくのかというところをちょっとお伺いしたいと思います。

 二〇三五年の電動車一〇〇%目標を掲げておりますけれども、今後、FCVの割合をどの程度想定しているのか、EVやハイブリッド車の割合想定も含めてお答えいただきたいと思います。

 あわせて、日本の目標ではハイブリッド車を残すということになっておりますが、世界的には、ハイブリッド車を残すのか、それともEV中心の政策になっているのか、日本と世界各国の目標の違いについても併せてお伺いしたいと思います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 世界的な脱炭素化という大きな環境変化の中で、欧米、中国など諸外国において電気自動車の普及が進んでいる、こういう状況にございます。

 我が国は、今委員御指摘のように、二〇三五年までに乗用車新車発売で電動車一〇〇%という目標を掲げておりまして、この電動車というものの中には、電気自動車に加えましてハイブリッド自動車、それからFCV、燃料電池自動車、こういったようなものも含まれているというところでございます。

 我が国としては、この電気自動車、電池の技術はもちろんでありますけれども、水素の技術、それから燃料の脱炭素化の技術、こういったようなものに多様な技術の選択肢を追求していくという考えに基づいて、こうした目標を立てているというところでございます。

 一方、諸外国においては、EVを中心にという国もございますし、例えば中国ですとハイブリッドも残るというようなことになってございます。これは、それぞれ国の置かれた環境に応じて、今目標が立てられているのではないかというふうに考えております。

 また、我が国におきましては、二〇三〇年時点、乗用車でハイブリッドが三〇から四〇%、電気自動車、プラグインハイブリッドで二〇から三〇%、燃料電池自動車で三%というような導入の目標を立てているところでありますが、あわせまして、燃料電池自動車については、航続距離が長くて充填時間が短いという特徴がございますので、乗用車だけでなくて、バスとか大型トラックといった商用車にも導入のメリットが大きいというふうに考えておりまして、こうしたところにも併せて取り組んでまいりたいと考えております。

 今回、規制緩和によって、メーカー、ユーザーの負担が軽減されるわけでありますが、あわせて、購入の補助、水素ステーションの整備支援といったようなことで、包括的な普及策を推進してまいりたいと考えております。

漆間委員 FCVについても今後もしっかり活用していくということで確認させていただきましたが、先ほど、我が党の青柳委員からも申し上げましたように、ハイブリッド車がグリーンじゃなくブラウンになっているということもありますので、是非、ESGやサステーナビリティーにおける基準設定の動き、こういったところについてもしっかり、FCVについても日本が関わっていけるように、よろしくお願いいたします。

 続きまして、ここまで、今回の法改正に関する燃料電池の規制見直しと絡めて、世界的な自動車のEVシフトについて質問をしてまいりましたが、印象としましては、ここ二、三年でEVシフトの流れが大きくなってきたと感じますが、これはカーボンニュートラル推進の世界的な動きの中でということだと理解しておりまして、このカーボンニュートラル推進の経緯について改めて確認をさせていただきたいと思います。

 こうしたカーボンニュートラルの推進の動き、ここ二、三年の動きについては、気候変動に関する具体的な災害等の危機が現実に増えているからなのでしょうか。また、気候変動予測に関する科学的な新たな知見が示されたからなのでしょうか。若しくは、そうした科学的な事実による要因はそんなに大きくなく、実は政治的、外交的な動きの要因が大きいのか。いずれの要因が大きいのかにつきまして、政府の認識をお伺いいたします。

白石政府参考人 お答え申し上げます。

 カーボンニュートラルに向けた取組が進んだ理由ということでございますが、まず、科学的な知見という面におきましては、一九九〇年代からそのような知見はあるわけですが、昨年の八月に公表されましたIPCCの報告書におきまして、地球温暖化については、人間が原因であるということは疑う余地がないというふうにされてございます。これに代表されますように、これまで様々な科学的知見がまず蓄積されております。

 それから、災害という観点でいいますと、世界的規模、それから我が国におきましても、近年、非常に激甚な災害が増えてございます。我が国におきましても、例えばという例示でございますけれども、日本損害保険協会から公表されている資料によりますれば、災害による支払い保険金額の大きな風水害、上位十件のうち半数は二〇一八年以降に発生してございまして、最も金額の大きいものでございますが、平成三十年台風二十一号では、支払い保険金が一兆六百七十八億円に及んでいるというデータもございます。

 こうした科学的な知見でありますとか、災害に関する事実に即しまして、国際的にも、パリ協定等の下で、各国がカーボンニュートラル等に向けて取組を加速しているというふうに認識してございまして、我が国も、二〇五〇年のカーボンニュートラル、それからその目標と整合的で野心的な二〇三〇年度の目標を掲げまして、その実現に向けて全力を挙げているというところでございます。

漆間委員 御答弁の中で、明らかにやはり最近、気象災害が多発しているという御答弁をいただきました。

 私、これまでの、前回の委員会、この委員会でも言わせていただいておりますけれども、気候変動対策につきましては、カーボンニュートラルの取組と同様に、既に発生している災害等への対応、気候変動適応策ですね、この取組が重要であり、両輪で取り組まなければならないと私は考えておりますし、そのように政府も今進めていると思うんですけれども、こういった気象災害だとかがたくさん起こっているにもかかわらず、カーボンニュートラルに比べて、適応策の方には余り投資が集まっていない、お金が集まっていないと言われておりますし、実際、政府の動きも、前の質問でもちょっとさせていただきましたけれども、今後、十七兆円投資が毎年必要になってくる、そういった試算も出しておって、それに向けて政府も頑張っていこうみたいなことがあることに比べると、適応策に関しては、余り政府の動きもないように感じているんです。

 まずは、投資額がしっかりと気候変動適応策に、現状でいっぱい集まっていると思っているのか、思っていないのかという政府の認識と、集まっていないのであれば、どうしてここにそんなにお金が集まらないのか。カーボンニュートラルに関しても、当初は、CO2というのは目に見えないのでなかなかお金を集めにくいと言われておりましたが、これだけたくさん、世界的に見れば、お金が集まっている状況であります。それを踏まえますと、気候変動適応策に関しては、もう実際、災害が起こっていて、目に見えるものであるにもかかわらず、余りお金が集まっていないということであれば、その理由は何なのかについて、是非政府の認識をお伺いしたいと思います。

奈須野政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動適応策ですが、国連環境計画が、途上国の適応に係る世界全体の潜在的な市場規模を、二〇五〇年の時点で年間最大五十兆円に達するという推定をしております。こういった規模と比較いたしますと、現在の適応資金というのははるかに少ないというような認識でおります。

 その理由なんですけれども、適応分野というのは、リスクとリターンを定量的に評価することが非常に難しい。適応しない場合どのぐらいの損害が生じて、適応すると誰にどのぐらいの利益が生じるのか、費用対効果を測定する手法が確立しておりません。こういったことが、やはり、費用対効果を重視する民間資金が集まりにくい原因の一つなんじゃないかというふうに思っております。

 そこで、民間資金を呼び込むには、今申し上げた適応の貢献度を評価する指標をきちんと整備するとか、あるいは、適応をビジネスとして推進するための情報共有、こういったことを行うことが重要であると考えております。

 そこで、私ども経済産業省としては、日本企業による途上国の適応への貢献度を可視化するための手順などを定めたガイドラインを策定すること、それから、適応ビジネスの優良事例、先般もお尋ねがございました、こういったことを国内外に発信していくこと、それから途上国との間での官民対話の実施、こういったことを通じて、日本企業による適応ビジネスを推進してまいりたいというふうに考えております。

漆間委員 そこで、大臣にもお伺いしたいんですけれども、カーボンニュートラル同様、この気候変動適応についても是非たくさん投資が集まるように、目標も定めて、経産省としてもしっかり取り組んでいただきたいと思うんですけれども、その意気込みについてお伺いさせていただきます。

萩生田国務大臣 気象関連災害の損害額は年々増加しており、気候変動が深刻なグローバルリスクにつながることへの懸念も高まっていることから、気候変動の緩和策だけではなく、気候変動の影響への適応策のニーズが、日本企業にビジネスチャンスを創出していると思います。

 こうした気象災害リスクの対応を、単なる管理のコストとして見るのではなくて、例えば、豪雨災害の被害軽減に貢献する気象レーダーや台風でも発電可能な風力発電機といった、新たな物、サービス、事業の創出につながると考えております。

 経産省としては、これまで、日本企業の適応分野における三十九件の事例を取りまとめました優良事例集を作成し、国内外に発信することで、適応ビジネスの海外展開を後押ししてまいりました。今後、優良事例の数を更に拡充しつつ、途上国との対話を通じて、適応分野におけるビジネス環境の整備を行い、民間資金を呼び込んでまいりたいと思います。

 適応ビジネスの目標金額を定めることについては、各国が災害によるリスクをどのように見積もるか、備えるかに左右される面があると認識しておりますが、委員御指摘の点も踏まえて、適応ビジネスを推進するための方策について、今後、関係省庁とも協力して、引き続き検討を進めてまいりたいと思います。

漆間委員 この適応ビジネスにおいても、しっかり、先ほど青柳委員が申し上げたような国際基準を、日本が本当に主導権を取って作っていくような形で、是非ともお願いしたいと思います。

 最後に、ちょっと通告にないんですけれども、御要望ということで一点、これは地元からもありまして、させていただきたいと思います。

 最後に、先日、私の地元大阪でありました道路照明などの電力料金過払いについて、これは全国どこの自治体でも発生した、又は現在も発生している問題であると思われますので、最後に一言申し上げさせていただきます。

 内容は、簡単に申し上げますと、大阪府の道路照明を廃止した際に、その旨を関西電力に連絡することになっておりますが、そのやり取りが口頭で行うルールになっており、大阪府は連絡した、関西電力は聞いていない、で、三千万円以上が過払いになっていたというものです。

 私は、大阪府、関西電力双方に問題があると思っておりますが、一番不利益を被っておりますのが、電気料金、税金を払っている国民であることを肝に銘じて、改善策を講じてもらいたいと思っておりますし、そもそも、ICTやAIの時代に、このような口頭方式であることが大きな問題であると考えております。

 是非、経済産業省におかれましては、国民の視点に立って、先進管理システムの導入などを電力会社に促していただくことをお願いしたいと思いますが、最後に大臣、何かこれ、一言よろしいでしょうか。

萩生田国務大臣 私も、さっき報道を見て、ちょっとびっくりしたんですけれども。

 先生おっしゃるとおり、私、どっちもどっちだなと思いますよ。今どき口頭で、府が管理する道路の街路灯、あそこ三本廃止しましたと関電に言って、はい、分かりました、来月から三百二十円引きますみたいなことをもしやっていたんだとすれば、これはシステムそのものが大きな問題だと思いますので、双方しっかり襟を正してやってもらいたいと思いますし、先生、府議会に三期もいたんだから、こういうのをチェック・アンド・バランスで、ちゃんと指摘して改善しなきゃ駄目ですよ。

漆間委員 府のそういったICTだとかAIもしっかりつくっていくというところも、しっかりこれから府とも連携して進めていかなければならないですし、私も過去にそうしなかったことも反省しながら、質問を終わりたいと思います。また進捗の経過報告も、併せてよろしくお願いしたいと思いますので、お願いいたします。

 それでは、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、小野泰輔さん。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 今日一日で、この高圧ガス保安法、質疑をして採決というようなスケジュールになっていますけれども、スマート保安というようなことで、私も、規制緩和する、あるいは行政の仕事のやり方を変えていくという意味では、非常にこれは高く評価をしております。

 もちろん、今まで御質問をいただいた委員の皆様からは、そうはいっても、やはり安全性の確保をどうするんだというようなことを、これはやはりトレードオフの関係にもなり得るものですので、そこへの配慮というのは忘れてはいけないんだというふうに思いますけれども、ただ、技術の発展ですとか、あるいは、今、目下抱えている保安人材の枯渇というようなものを解決するには、やはりこの政策は大事なことだろうというふうに思っております。

 そういったスマート保安というものが一つのこの法案のテーマになっているわけでございますけれども、最初に質問させていただく太陽光パネルの小規模なものについての規制というのは、これはスマートというよりも、逆に、事業者の皆様への負担を増やす、あるいは検査をする側の管理コストが上がるというような意味でもございますので、まずこの点について御質問させていただきたいと思います。

 今回、小規模の事業用電気工作物というものについて基礎情報を届出をするというようなことなどが定められるわけなんですけれども、まず最初に、基本的な情報の確認をさせていただきたいというふうに思います。

 今回、基礎情報の届出の対象となる小規模事業用電気工作物の見込み数、及び、従来の、今まで対象として届出をしていた事業用電気工作物の件数について答弁いただきたいと思います。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の電気事業法の改正法案により、小規模事業用電気工作物として位置づけられ、基礎情報を届け出ることとなる新設の再エネ発電設備につきましては、過去三年のFIT法における申請件数をベースとして考えますと、平均で毎年約四万程度が導入をされると見込まれるところでございます。

 これに対しまして、従来の事業用電気工作物に当たります再エネ発電設備は、毎年約千件程度の届出がなされているというところでございます。

小野委員 数字をお答えいただきました。

 毎年四万件ということで、これを、届出をお願いをして、そして経産省側でも把握するというのは、結構な、大変な作業だというふうに思います。今までが、ある一定規模以上のものは届出をするというようなことが義務づけられていましたが、それが一千程度ということで、大分差があるわけですね。ですから、やはり進め方について工夫をしていかなければいけないということだと思います。

 既に様々、御質問も出されておりますし、大臣の方からもお答えがございました。今回の、これから補正予算で措置をして、そしてデジタル化を図っていくというようなことをやっていくんだというような御答弁もありましたけれども、それでは、これまで届出などが求められていた物件について、どのようなやり方をしていたのか、これから進めていくようなデジタル化みたいなものがちゃんとやられていたのかどうか、そしてこれからどうしていくのかということについてお答えいただきたいと思います。

苗村政府参考人 お答え申し上げます。

 官民双方における手続業務の合理化のためには、規制の合理化と併せて、行政手続の電子化が重要だというふうに考えております。

 このため、経済産業省では、二〇一八年に、保安ネットと呼ばれる産業保安法令等に関する行政手続の電子化のためのシステムの開発に着手をいたしました。二〇二〇年一月から段階的に運用を開始しております。

 現在、産業保安法令に基づく申請のうち、電子化対応済みの申請手続につきましては、オンライン申請率が八〇%を超えている状況にございます。

 今般新設いたします小規模事業用電気工作物の基礎情報の届出につきましても、手続面での負担を軽減すべく、令和四年度予算を活用し、本改正法の施行までに届出手続をオンラインで完結できるようにしたいと考えております。

小野委員 今までもオンライン手続の率が八〇%という御答弁でしたけれども、これは件数が、先ほどもありましたように、もう桁が違うということでありますので、完全デジタル化というところを是非目指していただきたいというふうに思います。

 これはもちろん、省庁側、官庁側からしても、やはりそうしないと回っていかないだろうということもあると思いますので、是非そこは、この点に関してDXをしっかりやっていく。まさに、ここに関しては、先ほど申し上げたように新たに規制を設けるわけでありますので、やり方についてはスマート保安ということで徹底をしていただきたいというふうに思っております。

 そして、大臣に、この件について最後にお伺いしたいというふうに思います。

 これはほかの委員の皆様からも御質問があったことではありますけれども、今回のこの小規模の太陽光パネルの届出義務などが課されているんですけれども、三つのことを要求をしているということで、技術基準適合維持義務、そして基礎情報の届出、そして使用前自己確認という三点を求めているわけなんですけれども、やはり自己確認というものが中心になっているということでありますので、この三点で安全性の実効性が上がるというふうに考えられている根拠と、そういった御認識についてお伺いしたいと思います。

萩生田国務大臣 今般の小規模事業用電気工作物への新たな保安規制は、昨今の斜面での太陽電池発電や小型風力などの事故の発生ですとか、これらの場所、設備形態の多様化といった環境変化を踏まえて、発電施設内外の安全確保に万全を期すために行うものです。

 本改正により、これまで事前規制の対象外とされていた小規模な太陽電池発電設備及び風力発電設備についても、その設置者は、使用前自己確認制度の導入によって、電気設備としての安全確認に加え、支持物の構造ですとか地盤の安定性についても運転開始前に確認し、かつ、運転開始後も当該設備の安全性を継続的に確認することが求められることとなるため、安全性の向上につながっていくものと考えております。

 また、その実効性をより高めていく観点から、設置者が届け出た使用前自己確認の結果や設計図などのエビデンスを基に、再エネ特措法の情報等も効果的に活用して、例えば土砂災害警戒区域などの比較的リスクが高い再エネ発電設備についても、優先的かつ機動的に立入検査を行っていく予定です。

 この太陽光が始まって一定の時間がたって、最初は急斜面にそれを造るとかという発想はなかったんですけれども、実際にそういうことが起こり出しました。あるいは、わざわざ、斜面を利用するんじゃなくて、谷を利用して、そこに残土を入れて、そして造成してまで太陽光発電を行うということも出てきました。

 こういうことを踏まえますと、性善説に立っているんじゃなくて、もうやる前から、どういう形態なのか、どういう場所なのか、どういうふうにつけたのかということをちゃんと報告してもらうことで、危ないと思われるものについては、今申し上げたように、立入りも行っていきたいと思います。

 今般の法改正に基づくこうした適切な制度の執行を通じて、小規模な再エネ発電設備も含めて実効性の高い保安確保を実現していきたいと思いますので、十分効果が上がっていくと期待しています。

小野委員 ありがとうございます。

 先ほど、大臣の御答弁で、例えば急傾斜地とか土砂災害の危険区域とか、そういうところに造っているものに関しては、例えば、思いついたんですけれども、データベースを整備しますので、それで、ある条件、ある条件で検索していくと、リスクがデータベースの状態からでもかなり推測できるということもあると思うんですね。

 そういうことで、是非、全部を職員さんが見に行くというのはなかなか難しいと思うんですけれども、それをやはりデータで管理するからこそ管理がうまくいくというようなこともあると思いますので、是非この点、スマートに進めていただきたいというふうに思います。

 そして、先ほどの、登録についての工夫ということであれば、既にFITで登録をして、そのデータもあるというふうに思いますので、そちらのデータとの突合をして、よりユーザーの側も入力が少なくて済むとか、あるいは、どこの発電施設が登録ができていないのかというのを逆に調べ上げるとか、様々なことができると思いますので、是非効率を上げるような努力、工夫をしていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、ガス事業法などについての改正案についての御質問に進ませていただきます。

 認定高度保安実施者制度というものが今回定められて、認定をされると自主検査ができる、そして、高度な技術を使いながらやってくださいよというようなことになるわけなんですけれども、この進め方というのを、これは省令などでこれから細かく決めていくということになっていくということなんですけれども、それで、現状、この制度の前身に当たる、今回この制度が新しくつくられると廃止になるものでありますけれども、認定事業者制度というのが既にあります。

 そこで、参考までに、この現行の制度についての運用の仕方についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 この認定事業者制度について、まず、申請をするときの申請の仕方、そしてそのチェックの仕方、そして、申請が下りた場合の、後の運用の仕方について、経産省としてどういうふうにチェックしているのかということ、二つをお伺いしたいというふうに思います。

 まず、この認定事業者制度、これを申請する際には、今、PDCAサイクルなどの保安管理体制の継続的な改善とか教育訓練の実施などの認定基準への適合性というものがあるのかどうかということを見ていくというようなことがあります。

 これを、じゃ、実際に、外形的に、そういったPDCAサイクルなどが備わっているかとか、組織がちゃんとできているかというものを示せばそれで済むのかどうか、内容まで、どういうふうにやっていくのかというところまでちゃんと見ているのかどうかというところを、現行制度、お伺いしたいと思います。

 そして、認定された後のことなんですけれども、自主的に検査をしたときに、その検査の結果の内容まで踏み込んでちゃんと見ていくのか、チェックしていくのかというところについて、今までどのようにやっていたのか、それについてお伺いしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の認定事業者制度における認定事業者は、事業者自らが設定した方法で保安検査を実施することができます。

 検査後、認定事業者は検査記録を都道府県知事に提出する必要があり、都道府県知事が提出された検査記録を確認してございます。

 また、PDCAサイクルなど保安管理体制の継続的改善あるいは教育訓練の実施等、認定基準への適合性につきましては、中身についても現行の制度では評価してございます。

 具体的には、認定の申請に当たり、高圧ガス保安協会が現地審査を行い、PDCAの、訓練の方法、実施結果等を確認するなど、事業所の認定基準への適合性を確認して評価をしてございます。

小野委員 御答弁いただきました。

 現行制度ということでありますけれども、今御答弁いただいたやり方というのは、是非次の新しい制度でも踏襲していただきたいというふうに思います。やはり、自己確認を、自主検査をしていいですよというような規制緩和で安全性が下がるということでは本末転倒だというふうに思いますので、しっかりと仕組みが回っているのか、そしてその検査した結果自体が適正であるのかというところを、これは省略することなくしっかりやっていく必要があるというふうに思いますので、ここについては徹底していただきたい。

 なぜこんなことを申し上げているかと申しますと、この間の知床の観光船の事故がありましたけれども、いろいろとやはり見ていると、結局、国交省の方でいろいろと、観光船を運営する、運航する事業者に対して、いろいろとちゃんとやりなさいというような報告があるんですけれども、それを結局やっていなかったんですよね。ですから、やはりそういったところを本当に事業者任せにしていてはいけないんだと。

 特に、やはり、観光船も人命に関わることではありますけれども、このガスとか電気とかというところもやはり同じように多くの人々の生命や財産に関わることでもあると思いますので、是非、緩和するところは緩和する、しかし、緩めてはいけないところは緩めてはいけないんだということで進めていただきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 そして、今日は参議院の本会議で経済安保法案が可決をしたということになりましたが、この経済安保法案との関連で一つ質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回のこの高圧ガス保安法の改正案において、認定高度保安実施者の要件の一つとして、サイバーセキュリティーなど関連リスクへの対応が求められているということなんですけれども、先般成立した経済安全保障法における、基幹インフラの役務を安定的に提供するというような項目が入っておりますけれども、ここでは何が要求されているかというと、事前届出とか審査というものをしなさい、重要設備の導入、維持管理等の委託に関する計画書というものを出しなさいということが定められています。

 そこで、御質問をさせていただきたいんですけれども、今般成立した経済安全保障法案と今回のこの高圧ガス法等の改正案で、やはりセキュリティーに関する留意事項というのが重なる部分もあるのではないかというふうに思いますが、この二つの法令の関係、そしてそれに対する事業者の対応というものをどういうふうに見ていらっしゃるか、それを大臣にお伺いしたいと思います。

萩生田国務大臣 今般の法改正で創設する認定高度保安実施事業者制度においては、事業者が、保安の確保に向けたデジタル技術の活用に当たり、適切にサイバーセキュリティー対策を講ずることを認定要件の一つとして求めることとしております。

 その具体的内容については、今後、省令において規定していくことになりますが、例えば、政府のサイバーセキュリティ戦略本部が策定している重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針などで求められる取組を具体的な要件として設定するなど、国が認定高度保安実施事業者として認定する上で適切な要件とする予定でいます。

 その上で、委員御指摘の経済安保との関連でありますが、電気やガス事業を、基幹インフラに係る制度の対象となり得る事業として規定しています。

 こちらの制度では、制度の対象となる事業者が使用する重要設備について、サイバー攻撃を含めた、我が国の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されるおそれがないか審査することとしていると承知しております。

 産業インフラについてサイバーセキュリティーを確保することは重要でありまして、今般の新たな認定制度に加え、経済安全保障推進法案による、我が国の外部から行われる妨害行為の防止など、関係省庁と連携の下で、複層的にサイバーセキュリティーを確保すべく、適切な制度の運用を行ってまいる必要があると認識しています。

 午前中、ちょうど他の委員から、衛星は何を使うんだ、例えばドローンが万が一サイバー攻撃を受けて、そして落下させるようなことがあると、発電所が止まってしまうとか、こういう新たなこともありますので、省令の中で、せっかく作った二つの法律の接点で、今まで想定していなかった新たなサイバー攻撃も考えていかなきゃいけないと思いますので、その辺は幅広にしっかり制度をつくっていきたいと思っています。

小野委員 大臣、ありがとうございます。

 この二つの法律というのは目的が違っていて、経済安全保障法案の方は、やはりサプライチェーン始め国の安全を守るという観点から、インフラをしっかり適切に、リスクを排除していこうというような発想で、そして、今回の今審議している法案というのは、これは、ガスとか電気とか、そういったインフラをどのように安全性を保つかということで、目的は違うんですけれども、でも、やることが結局重なってくるということがあろうかと思います。

 そういうときに、やっている内容がばらばらであったり、そして、やはり同じことを求められるとかというようなことであれば効果も薄まってしまいますし、そして、やはり事業者の皆さん、そして規制する官庁の側の労力も増えてしまうということですので、今大臣が御答弁いただいたような観点で進めていただければというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。まさにそれをやらないと経済安保法案が成立した意味がないというふうに思いますので、よろしくお願いいたしたいというふうに思います。

 それでは、ちょっと時間がなくなって、最後まで行けるか分かりませんが、次に、新たなテクノロジーというものをこれからこの法案が成立した後もどんどんどんどん入れて、そして最新の技術を使ってよりスマートに保安をしていく必要があろうかというふうに思うんですけれども、そのような、どんどん保安の仕組み自体を進化させていくような仕組みづくり、そういったものをどのように考えているか、これをお伺いしたいと思います。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 テクノロジーを活用した保安、まずはやはり安全の確保ということが大前提でございますので、そういった新しいテクノロジーが実用に、実装に堪えられるか、安全がおろそかになっていないか、そういう実証実験をきちっとやる、それに対しては我々も支援をするということは引き続きやっていくということでございます。

 それから、スマート保安の例えばAIの導入におきまして、成果を具体的に提示するような先進的なAI事例集とか、そういうベストプラクティスの提示でありますとか、ガイドラインの提示というのも行ってまいりたいと思います。

 加えまして、資金力の乏しい事業者を支援するために、保安の現場にスマート保安を導入するためのいろいろな設備に対する税制上の支援も行っていきたいと考えてございます。

 また、今日の御審議でもありましたけれども、いろいろな事業者の皆さん、あるいはいろいろな異分野の方からいろいろなナレッジを共有して、新しいやり方を導入をしていくという取組が必要かと思ってございます。

 例えば、我々、令和二年六月からスマート保安官民協議会ということを開催いたしまして、スマート保安の基本的な考え方とかいろいろな取組をいろいろシェアして、それを水平展開するというような取組をやってございます。

 また、今回新たに導入する認定制度におきましてもテクノロジーの活用ということを求めてまいりますけれども、委員御指摘のとおり、技術の進歩というのもございますし、なかなか、かえって技術を列挙して挙げるよりも、やはり事業者の皆さんが創意工夫を発揮できるように、あるいは新しい技術がどんどん取り入れられやすいように、余り明示的に技術を限定するというような形にはしないというふうに考えてございます。

小野委員 是非、保安のレベルを上げるということもそうなんですけれども、やはり新しい技術をどんどんもたらしていく、使えるようにするということで、この保安の分野にどんどん目を輝かせて挑戦したいというふうに思う若者が増えると思うんですね。私もそういう、ドローン協議会を、昔行政をやっていたときにつくったときに、やはりそういうところにどんどん挑戦していきたいんだというような人が増えてきたので、是非それを進めていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

古屋委員長 次に、鈴木義弘さん。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 早速質問に入りたいと思いますが、今回の法律の改正で、本当は考え直してもらいたいなと思うのは、認可を出すとか許可を出すとか、届出受理をするということを、法律を作ってそれを義務づけていくんですけれども、実際それを受理した、また、認可なり許可をした国若しくは自治体が、結局何の責任も問われないというところが一番問題なんだと思うんですね。

 これは、過去に経産省の職員の方がペーパーを出しているやつを一つ引用して、お話をしたいんです。

 過去に、事業者が保安に関わる法令や自主的なルールなどを逸脱したコンプライアンス問題などが頻繁に報道されてきました。先般も、大手の石油会社さんがガソリンの何か検査を怠っていたとか、鉄板の検査を三十年間放置していたとかというのが過去にも報道されていたと思うんですけれども。この職員の方は、根本的な原因が、単に事故のあった設備自体、あるいは事故や問題に直接関与した者だけではなく、事業者や企業など組織全体の体質にあると見られるケースが多いということですね。検査をしなくちゃいけないとか、事故が起きたことで、その物とかその人だけじゃなくて、組織体質に問題があるんじゃないかというふうに指摘しているんです。で、事業の組織に対して、安全文化を醸成し、それを高めていくことが不可欠であるというふうに指摘しているんです。

 三点、この中で、一つ目が、保安管理に関わる取組の内容に応じた保安体制の強化、二つ目、事後チェック及び事故などの調査の充実による事業者の取組の確認、三つ目、事業者の保安確保に関わる取組を支える技術的基盤の強化の支援。

 これは、十五年前に指摘しているんですよね。経産省の職員さんの論文ですよ。

 じゃ、この法律の改正前に、既にこの十五年前に指摘していたことが目的達成できているのかどうか、まず大臣の認識をお尋ねしたいと思います。

萩生田国務大臣 先生御指摘のとおり、産業保安分野において、事業者が法令を着実に遵守し、持続的に保安レベルを向上させていくために、安全文化の醸成、向上は極めて重要であります。

 我が国の産業保安分野では、これまで、保安技術の向上、安全マネジメントシステムの普及などによるリスク管理体制の整備、保安人材の育成など、官民で努力することを通じて安全文化の醸成、向上を図ってまいりました。

 今御披露いただいた論文、私は直接読んだことはないんですけれども、その頃から同じことを言っているんだねというのは、今改めて、先生の御指摘を受けて感じました。もちろん、企業体質も含めて、改善をされ向上してきた分野もあるでしょうし、残念ながらこの間に、先ほど御指摘いただいたような、言うならば不正が明らかになった企業もあるのも事実でありますので、そういう意味では、変化があったのか、向上してきたのかと言われると、反省をしなきゃならない点があると思います。

鈴木(義)委員 例えば、数年前に、ステンレスの検査をずっとしてこなかった事案が新聞等で報道されたんですけれども、現場で、製造業、ステンレスの板を使って加工している会社の社長と話をして、これ、何とか収まりますかと言ったら、いや、鈴木さん、無理だと思うよと。鉄板の片隅のところに刻印が押してあっても、それを裁断してしまったらもう刻印がない、だから、メーカーの出してきた検査票しか信用するものがないんだということなんですね。でも、そのメーカーさんが三十年間もそれをずっと放置してしまっているということに関して、誰が、じゃ、チェックするのと。一番大事なのは、やはり日本の安全神話を自分たちで崩しているんじゃないかということなんですね。

 今回、高圧ガスとか都市ガス、電力等の産業別の規制体制となっているものが、昨年の第六次エネルギー基本計画によって、この前の法案でも質疑しました水素とかアンモニア、再生可能エネルギー等の分野で、異業種からの参入だとか、業態を変えて入ってくる、業態を変える変化が見込まれる。で、相変わらずみんな縦割りなんですね。ガスはガス、電気は電気、水素は水素。そういう形の中で、産業保安体制が縦割りのままで対応できるのかどうかということなんです。

 大臣のお考えがあったらお示しいただきたいと思います。

萩生田国務大臣 その前に、先ほどの、だからこそ、今回法改正をして、デジタル化をして、データをしっかり蓄積をしていきたいと思っています。紙での自己申告とかだけじゃなくて、きちんと記録を残して、その収集したデータを保安に活用することで、自立的に高度な保安体制を構築していくように促していきたいと思っています。

 水素、アンモニアでございますが、化石燃料を使用しないゼロエミッション火力への転換の鍵だと思っておりまして、第六次エネルギー基本計画においても、「水素は、発電・産業・運輸など幅広く活用されるカーボンニュートラルのキーテクノロジーである。」と位置づけています。

 そのため、水素社会実現に向けては、御指摘のとおり、省庁連携、産業横断的な観点から保安規制面の見直しをしていくことが重要です。

 今回の法改正において、これまで国交省と経産省で実施していた燃料電池自動車の規制を一元化することとするほか、発電分野では、今年度上期を目途に、水素、アンモニア発電の実現に必要な技術基準を整備します。

 加えて、産業横断的な観点からサプライチェーンの全体を見渡し、水素利用に関連する様々な既存の保安規制の見直しを含めた、今後の規制の在り方を示す水素保安戦略を、今年度中を目途に策定します。

 水素、アンモニアの利用促進に向けて、不要な縦割りを解消すべく、保安規制の在り方をしっかり検討してまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 今御答弁いただいた水素なんかも一つの事例だと思うんですけれども、わざわざ無味無臭なものに臭いをつけて危険を察知させるとか、ガソリンも元々色がついているわけじゃないんだけれども、ガソリンの中に着色剤を入れるとか、灯油の中に着色剤を入れて物を判別させるというふうに、人間の目で確認をさせる、臭いで判別をするということもやってきたんだと思うんですね。そういった、テクノロジーだけじゃなくて、本当の意味での人間が危険を察知できるかどうかというところもきちっと醸成していかないと。

 それは、記憶力の一番いいのは、私は最後はパソコンだと思っていますから、人間よりも。忘れることはないですよ、壊れることはあっても。でも、それが正しい答えを出すかどうかは、私は何とも言えない。入ってくるデータが間違っていれば正しい判断は出ない。そこのところをやはり考えてやっていかなくちゃいけないんじゃないかというふうに思います。

 次に、先般も、文科の政務官にお越しいただいて、一般質疑のときに御議論をさせてもらったんですけれども、今回もまたまたお出ましいただいて恐縮なんですけれども、先日、新聞で、とうとうここまで来てしまったかなという記事が目に止まったんです。

 事実上、全入状態の大学では、AO試験や推薦入試、受験科目縮減などの入試の軽量化が進み、進学実績を上げたい高校が迎合した、大学では高校レベルの学力がない学生が増え、補習授業が常態化した、ベネッセコーポレーションの二〇一六年調査では大学の三五%が補習を経験しているという記事なんです。日本の義務教育は、三月末に学年が終わると、子供の理解度に関係なく進級させる履修主義を取っている、留年はかわいそうとの配慮からだというふうに言っているんですね。

 もう一つ、えっと思ったのは、七五三の実現なんだと。その結果、高校生の七割、中学生の五割、小学生の三割が授業についていけないとやゆされる状況が生まれたというんです。

 行き過ぎた履修主義の浸透は、小学校から大学まで卒業に甘い文化を生んだんじゃないか、一見、子供に優しいようだが、必要な能力が身につかないまま社会に放り出す側面を持つ、教育成果は問われないから学校には都合がいい、学び直しの広がりは、そうした学校文化への異議申立てであるというものなんです。私も同感する一人なんですけれども。

 なぜこんなことを聞くかというと、人材難だとか人材の育成を、経産委員会で、今回の法律でもうたうんです。でも、そもそも、学校の初等中等教育で、今申し上げた七五三の理解度しかない人たちが社会に出ていって、人材育成をするんだとか保安係員を増やすんだといって、そもそももうできないだろうという考えなんです。

 そこについて、今の御認識を政務官から御答弁いただきたいと思います。

鰐淵大臣政務官 お答え申し上げます。

 社会が大きく変化する中で、子供たちを誰一人取り残さず、次代を生き抜くために必要な資質、能力を身につけさせていくことは重要でございます。

 一方で、今委員御指摘のとおり、子供たちの間で学習の状況に違いが生じているのも実態でございます。

 このため、文部科学省では、個に応じた指導の充実を図ることを求めておりまして、例えば、教師が、学習の遅れの見られる児童生徒に、より重点的な指導を行うことや、児童生徒の学習の状況に応じて、学び直しにより基礎の定着を図ったりすることなど、工夫についても示しておるところでございます。

 また、卒業の認定につきましては、校長が児童生徒の平素の成績を評価して定めるものとなっております。各学校においては、発達の段階なども踏まえながら、子供の成長を考慮しつつ、卒業の認定が適切に行われているものと承知をしております。なお、特に高等学校におきましては、必要に応じて原級留置などもなされているところでございます。

 その上で、これからの教育におきましては、萩生田前文科大臣の下でGIGAスクール構想により整備されたICT端末等を活用しまして、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実する中で、履修主義と修得主義の考え方を適切に組み合わせながら、一人一人の子供たちの学習進度に応じた指導方法の工夫等を行っていくことが重要であると考えております。

 引き続き、全ての子供たちの可能性を引き出す令和の日本型学校教育の実現に取り組んでまいります。

鈴木(義)委員 過去に文部大臣に質問したときに、一級先輩はエベレストほど高く、一年後輩はマリアナ海溝ぐらい深い、同期は横並び。でも、そういう日本人の意識が強いがために、学び直しをするというのを極力嫌うんですよね。だから、一学年下がってでも必要な学習を経てからまた元に戻るとか、そういったことができづらい状況になっている。それが今示した七五三ということに出てくるんだと思うんです。

 誰一人取り残さないような学習をしていくんだと言いながらも、一年生が二年生になれば黙って二年生になるし、二年生になって三年生になれば中学は卒業ですよ。高校も三年で、よっぽどじゃない限りは留年しないで卒業させていく。

 そういう今までの、七十五年間やってきたやり方が時代に合っていないんじゃないかということを言っているわけです。それで社会に、まあ大学を出てもそうですね、三五%の人はもう一回補講をし直して卒業していって、社会人として働くようになった。

 高圧ガスです、水素です、アンモニアです、いろいろな科学技術が、早く、どんどん入ってきます。それに向けた人材育成をするんだといっても、元の義務教育なり、中等、高等教育を受けた人が社会に出てきたときに、きちっとした学習がされていない者を出されても受け切れないだろうという考え方なんです。

 そのところを、大臣も文科大臣をされていたので、よくそこら辺は御案内だと思うんですけれども、私は、産業政策と教育というのは裏腹の関係にあると思っています。だから、産業で欲しい人材を教育の方でやればいいのに、教育は教育、産業は産業、全然交わらない。ずっとそれでやってきた。慌てて鍛え直すんだといったって、企業の方はそれだけの余裕がない。それが今の現状で、法律の改正をして頑張りましょうといっても、元のところを直していかない限り、保安体制の強化とか拡充といっても、これから先がもっと厳しくなっていくんじゃないかと思うんです。

 その点について大臣の御所見を伺いたいと思います。

萩生田国務大臣 そこまで深い議論になっちゃうと、この委員会でとどまる話じゃなくなっちゃうかもしれないんですけれども。

 例えば、初等中等教育、義務教育期間に至っては、習熟度別授業を行っている自治体も増えてきました。自分は五年生なんだけれども四年生の算数が分からないと思ったら、四年生に戻って学ぶこともできます。じゃ、その結果として留年があるかというと、まあ、なかなかないですね。義務教育の段階ではやはり中学三年生で卒業を、基本、してしまいますので、そういう意味では足らざるところはきっとあるんだと思います。

 政務官からGIGAスクールの御紹介をいただきましたけれども、これは、個別最適な進捗状況を確認しようというためにICTを入れました。

 すなわち、今までは平準的なまさにラインをずっと歩いていって六年間あるいは三年間で終わるものを、実は、その授業の中で分かっていない子もいるわけですよね。その子たちはやはり後ろへ戻ることができる。もっと言えば、分かっている子たちにとって、後ろ足をそろえる授業というのは物すごくつまらないわけです。吹きこぼれといいますけれども、逆にやる気がなくなっちゃうので、同じ四十五分、同じ五十分の授業の中で、前に行ける人は行ってもらう。それを、黒板じゃなくて、一つのタブレットの中で授業の中身を変えていこうというのが今回のGIGAスクールでございますので、始まったばかりなので成果が出るのはちょっと時間がかかるかもしれませんが、是非見守っていただきたいというふうに思っています。

 その上で、先生の御指摘のとおりで、教育界は教育界で、指導要領から始まる教育のプログラムの中で人を育てていく。産業界は産業界で、出た人たちを採っていく。だけれども、じゃ、この三十年、五十年、産業界から教育界に、今はこういう人が必要なんだ、将来はこういう人が必要なんだと一度でも要請したことがあるのかということを、私は経産大臣になって一番最初に経済界に言いました。大卒が使えないとかと切り捨てるんじゃなくて、おたくの会社はどういう人が欲しいんだ、今の大学生がどういう勉強をしたらおたくの会社は採ってくれるんだと。何のことはない、採用だって、能力じゃなくて卒業大学の枠で毎年決まっちゃっているじゃないかと。どこの大学が何人で、先輩の会社訪問をした人たちが採用される。

 これじゃ全然世の中は変わらないので、産業界からも言ってくれということを踏まえて、今、省庁横断で、まさに未来創造会議というのを官邸で主催をさせていただいています。ここでしっかり、必要な人材ってどういう人なのか、この分野も足りないよね、この分野も育てていこうねというのの一つがまさにこの保安の業界も入るんだと思っていまして、将来を見据えて、必要な人をしっかりつくっていく国家戦略というのを、岸田内閣としては一歩前に出て頑張っていきたいと思っています。

鈴木(義)委員 ありがたい答弁をいただいて、おっしゃるとおりだと思うんですね。企業側でやはり大学院を、ドクターを出た人を採るという体制がなければ、日本の中に知財は積み上がっていかないと思うんです。是非、大臣の御奮闘を御期待申し上げ、終わりにしたいと思います。

古屋委員長 次に、宮本徹さん。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 今日は、法案のうち、二十六年ぶりの改正となる高圧ガス保安法の認定高度保安実施者の導入に絞って質問をさせていただきます。

 この間、産業保安の分野では、国や都道府県が行ってきた保安検査を事業者の自主検査に委ねる自主保安へと規制緩和が進められてきました。

 最初に、大臣に、法案の前提に関わって確認をいたします。

 自主保安制度は、高度な保安能力を有していると認定を受けた事業者が、法令に適合した検査を自らがきちんと実施し、設備が技術基準を満たしていることを確認する、これが制度の大前提だと思いますが、大臣も同様の認識ですよね。

萩生田国務大臣 そのとおりです。

宮本(徹)委員 そのとおりでございまして、自主保安制度は、事業者が法令に適合した検査を自ら実施して、設備の健全性を確認するものであります。その上で、検査結果を都道府県に届け出ることで、監督する側も自主保安の適切性が確認できる、こういう制度になっているわけですね。

 高圧ガス保安法に自主保安が導入されたのは、一九九六年の高圧ガス取締法改正案のときからであります。このときに、法律の名称が高圧ガス保安法に改められ、事業者を取り締まる規制法から自主保安へ、法律の性格が大きく変更され、同時に認定事業者制度が導入されることになりました。

 当時、我が党は、法案に対して、第一に、保安を事業者に委ねれば、短期的なコストを追求することになり、保安がおろそかになる、第二に、自主保安の促進により重大事故がもたらされれば、労働者や地域住民に危険を及ぼしかねない、こう言って反対してきたわけでございます。

 そこで、今回の法案を見ますと、この自主保安促進の認定事業者制度を今度は認定高度保安実施者制度へ、更に事業者の裁量を拡大する、こういうものになっております。まず、この間の認定事業者制度が石油コンビナートなどの保安の向上に結びつくものとなったかどうかを検証したいと思います。

 一九九七年度の制度導入から僅か六年後の二〇〇三年度に、認定事業者で、法令に定められた検査が適切に行われていなかった事例が相次ぎました。このとき、当時の原子力安全・保安院が認定取消処分を行った企業数と事業所数をそれぞれ示していただけますか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇三年六月から二〇〇四年一月にかけて経済産業省において認定取消処分を行った企業数は六社、十一事業所でございます。

宮本(徹)委員 六社、十一事業所の、配付資料の一ページ目につけております。ここにあるとおりですけれども、この中を見ますと、新日本石油精製、今のENEOSですね、旭化成ケミカルズ、三井化学など、業界トップ企業が含まれているわけでございます。

 配付資料、次を見ていただきたいんですけれども、当時、二〇〇四年一月二十三日、原子力安全・保安院長は、認定保安検査実施者の認定の取消しについてという異例の談話を発表しております。この談話では、自らを律するべき認定事業者の法令違反は見逃せない問題であり、厳正に対処した、こうも述べているわけでございます。

 そして、この認定取消処分後、審議会での議論を経て、認定基準が見直されました。その内容を端的に御紹介いただけますか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の平成十六年一月二十三日付原子力安全・保安院長談話においては、認定事業者制度の位置づけについて、次のように述べてございます。(宮本(徹)委員「いや、違う、そんなことは聞いていないですよ。審議会で」と呼ぶ)

古屋委員長 答弁を続けてください。

太田政府参考人 はい。

 認定事業者制度の位置づけについて……(宮本(徹)委員「いや、だから、認定事業者の位置づけを聞いたんじゃなくて、審議会での、認定基準が」と呼ぶ)

宮本(徹)委員 いいですか。

 認定取消処分の後に、審議会での議論を経て認定基準が見直されましたが、その内容について端的に紹介してくださいと言っているわけです。

太田政府参考人 大変失礼いたしました。

 二〇〇四年の認定基準見直しの内容についてでございますけれども、二〇〇四年度に認定保安検査実施事業者等の認定基準に係る制度の見直しを行い、高圧ガス保安法の関連省令の一部を改正をいたしました。

 具体的には、認定完成検査実施者及び認定保安検査実施者、すなわち現行の認定事業者制度の認定基準について、まず、本社による認定事業所及び検査管理組織に対する監査の実施、並びに本社における法令遵守窓口の設置、それから、検査管理組織の第三者性の強化のための措置、認定事業所内部で保安管理についてPDCAサイクルが実施されるシステムの構築、それから、法人の代表者のコミットメントの確保を新たに義務づけ、これら四つを追加したところでございます。

宮本(徹)委員 四つ、認定基準を見直したわけですけれども、問題は、この認定基準を見直した後も事故や法令違反はなくならなかったわけでございます。

 二〇〇四年から二〇〇七年にかけて、高圧ガス事故の件数が急増しております。二〇〇七年には、三菱化学鹿島事業所の火災で作業員四人が死亡するなど、二〇〇〇年の三倍、過去最大の二百八十三件もの事故が起こっております。

 そこで、配付資料の三を見ていただきたいんですけれども、二〇〇九年二月の高圧ガス部会で配付された産業事故分析・対策検討ワーキンググループの分析によりますと、事故の多くが製造プラントからのガス漏えいに伴うものだったということであります。

 事故を起こしたプラントは、当時、もう設置後三十年以上というものが半数。高度経済成長期に運転を開始し老朽化したコンビナートの保安が自主保安制度の下でおろそかにされてしまった、こういうことなのではないかと思います。

 そこで、大臣、配付資料の四ページですけれども、このワーキンググループの報告書では、その年の六月のものですけれども、高圧ガス事業所での事故多発の背景として、グローバル化の進展がコストダウンへの圧力となり、これが結果として設備面では経年設備の更新投資にネガティブな影響を与えている可能性や、保安担当能力や保安意識の十分に醸成されていない人員を作業に従事させる事態を生んでいる可能性は否定できない、こう指摘しているわけですね。

 結局、事業者任せだと、事業者が、短期的なコストを追求する、これを優先して保安を後回しにしていた、こういうことなんじゃないですか。

萩生田国務大臣 委員御指摘の報告書において、当時の高圧ガス分野等の事故原因を分析した上で、一部の経営者に、保安を最優先する意識が低下し、又は財務制約から、保安のための設備投資や保安教育などが十分になされていない兆候が見え始めているとの指摘がされているところです。

 その上で、同報告書では、人材投資も含め、事業者において、経年劣化対策など計画的に保安投資を実行するとともに、規制当局においても、保安投資の促進に向けた適切な指導や環境整備を含む側面支援をすることとされております。

 これを受けまして、経産省としては、これまで産業界に対して、継続して、適切な設備投資を積極的に働きかけてまいりました。

 資金面では、平成二十六年から令和二年まで、耐震補助金を設置して、高圧ガス設備の耐震化措置を支援するとともに、保安分野におけるデジタルの投資を後押しするDX投資促進税制の設置、また、この結果、十年間でプラントの設備維持、更新に関する投資額は産業界で三倍に増加しており、着実に成果が表れているものと承知をしているところです。

宮本(徹)委員 実際、その当時どうなっていたのかということですけれども、配付資料五を見ていただきたいと思うんですけれども、二〇〇六年八月に石油連盟が厚労省の研究会に提出した資料によれば、保安防災関連費用は、自主保安制度が導入された一九九七年度の一千十三億円から、二〇〇五年度には七百三十四億円へと、三割も減っているわけであります。

 本当だったら、設備が老朽化していけば、その中で保安レベルを保とうとしたら、保安関係の投資は積み上がるのが普通だと思うんですよ。ところが、そうではなくて、コスト抑制に走って、業界団体の調査でも、事業者が保安コストを抑制している、このことがはっきり示されている。やはり、事業者任せでは、どんどんやはりコスト抑制に走るということなんじゃないですか、大臣。

萩生田国務大臣 そういう問題意識は我々も持っております。

 したがって、今までのような自主管理のみならず、データをもって、言うならば、外からしっかり透明化をさせて、どういう取組をしているのかということをチェックする、そういう仕組みに今回法改正をお願いしているところです。

宮本(徹)委員 しかし、後で議論しますけれども、実際は、この法案の中身は、更に事業者任せを広げるものがたくさん入っているわけであります。

 その後、二〇一一年から二〇一二年にかけてもコンビナートで重大事故が相次いでおります。発生日、事業所名、人的被害、それぞれどうなっているか、教えていただけますか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 一件目は、二〇一一年十一月十三日に発生いたしました三井化学株式会社岩国大竹工場における爆発事故でございます。人的被害は、死亡者一名、重傷者二名、周辺住民を含む負傷者二十三名でございます。

 二件目は、二〇一二年四月二十二日に発生した東ソー株式会社南陽事業所における爆発事故でございます。人的被害は死亡者一名。

 三件目は、二〇一二年九月二十九日に日本触媒株式会社姫路製造所における爆発事故でございます。人的被害は、死亡者一名、重傷者五名でございます。

宮本(徹)委員 今紹介いただきましたけれども、三井化学岩国大竹工場の爆発火災事故では、工場周辺の住宅九百九十九軒にも被害を及ぼしているということになるわけですね。

 じゃ、この三件の重大事故のうち、認定を受けていた事業所は幾つだったのかといいますと、二件なんですよ。多数は大臣認定を受けた事業所でこうした事故を起こしていたということであります。

 ですから、やはり過去の事例を見ていてもはっきりしていると思うんですね。法令違反や重大な事故の発生を受けて再発防止策を取っても、また事故が起きる、更に再発防止策をまた取っていく、この繰り返しということだと思います。

 私は、事業者任せの自主保安では安全性は確保されないということがこの歴史ではっきり証明されていると思いますよ。そこをしっかり見ていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

萩生田国務大臣 高圧ガス保安法の下では、高圧ガスの製造等に関する規制と、事業者による自主保安の取組の両輪で安全の確保を図っていくこととしています。保安を高度化し、安全の確保につなげていくためには、単に規制措置だけではなく、保安に関する事業者の自主的な活動を促進することも重要です。

 実際、保安に関する技術の進展、過去の経験も踏まえた事業者のリスク管理体制の整備、強化などの取組を通じて、高圧ガス分野における重大事故は大幅に減少し、二〇一〇年代における死亡事故件数は一九七〇年代の三〇%にまで減少しています。

 今般の法改正で創設する認定高度保安実施事業者制度の下では、テクノロジーを活用しつつ自立的に高度な保安を確保できるとの厳しい要件の下で、国が認定する事業者に限って、その保安力に応じて、保安規制に関する手続、検査の在り方を見直すこととしておりますが、認定後の適時適切な立入検査も含め、行政による厳格な監督の下で、事業者による自主保安の取組も活用しながら、産業全体での保安レベルの向上につなげていきたいと思います。

宮本(徹)委員 ただ、行政の立入りもあるからということを言いますけれども、その前提の部分が今回更に規制緩和されるわけであります。

 配付資料の六ページ目を見ていただきたいと思います。

 これは二〇一三年三月の保安分科会の報告書であります。ここで、認定事業者の確認手続の強化が提言をされております。これを受けて、認定事業者としての適性を確認するための高圧ガス保安協会の事前調査の実施体制の強化や、認定期間中の経産省の立入検査の実施など、事前事後の監督強化策を盛り込みましたよね。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一三年三月の産業構造審議会保安分科会の報告書は、当時の産業事故の発生状況を踏まえまして、認定制度の改善を提言いたしてございます。

 これを踏まえまして、事前の監督強化策として、認定要件を見直し、リスクアセスメントの強化や危険予知能力を養成、向上するための教育訓練の実施等を認定要件に追加をいたしました。

 それから、今御指摘ございました、高圧ガス保安協会が実施する事前調査の調査体制について、企業において保安活動や設備の管理を経験した専門家を追加をいたしました。

 また、調査方法につきまして、非定常時の、実際に設備を動かしたり止めたりするときのリスクアセスメントの実施状況、保安の管理に必要な設備や人材に対する資源配分の状況や、会社の中長期計画等でどう位置づけているか、教育訓練の実施状況などにつきましても重点的に確認をすることといたしました。

 また、事後の監督強化策として、五年の認定期間の途中の任意の時点で、経済産業省による立入検査を実施することにいたしました。

宮本(徹)委員 今紹介のあったような監督強化策を盛り込んだわけでありますが、ところが、経産省は、これらの対策の効果を見極めることもなく、制度全体を規制緩和の方向へ大転換させることになったわけです。それが二〇一七年度のスーパー認定事業者制度であります。

 これは、高度な保安対策を実施している事業者に更にインセンティブを与えることが自主保安の取組の裾野を広げることになる、こういって導入されたものであります。

 大臣、現行の認定事業者制度ですら自主保安がおろそかになってきた、これはもう先ほど来議論してきたとおりであります。にもかかわらず、更に事業者の裁量を広げる規制緩和をすることが、どうして自主保安の高度化になるんですか。

萩生田国務大臣 二〇一七年度に導入されたスーパー認定事業者制度は、通常の認定事業者と比較して厳しい認定要件の下で、高度な自主保安が認められる事業者に限って自主的な保安活動を認める制度であって、御指摘のような、事業者の裁量を拡大することで自主保安を高度化していくものではありません。

 具体的には、自主的に高度な保安管理を行うことが可能と認定するために必要な要件として、高度なリスクアセスメントの実施や、設備の運転期間、検査手法の適切な評価体制の整備等を満たす事業者に限って、その保安レベルに応じて、長期の調査周期や自主的な検査方法の設定など、事業者による自主的な保安活動を認めることとしております。

 その上で、本制度の下で自主保安の高度化を進めるに当たっても、国は、認定後も、適時適切な立入検査を行うとともに、法令違反や認定要件への不適合が確認された場合には速やかに認定を取り消すなど、厳格な監督を行っており、安全確保には万全を期しています。

宮本(徹)委員 ですから、違反があってから取り消すというのは、事故が起きてから取り消すということになりかねないわけですよね。私は、そういう重大な事故を起こさないためにどうするのかということを考えなきゃいけないのではないかというふうに思います。

 この自主保安制度が創設されて以降、これまで、二十事業所が認定を取り消されております。直近の十年間を見ても、認定事業所での重大事故は六件、法令違反は二十四件もあります。

 配付資料の七ページ目を見ていただきたいと思います。

 これは経産省の委託調査ですよ。この中で、こう言われているんですね。認定事業者の方が非認定事業所よりも高圧ガス事故の発生頻度が高い。もう一回言いますよ。認定事業所の方が非認定事業所よりも高圧ガス事故の発生頻度が高い。これは経産省の委託調査でこう分析されているわけです。

 これはもう、経産省の委託調査から見ても、事業者の自主保安任せでは駄目だということがはっきりしているんじゃないですか。

萩生田国務大臣 先生御指摘の、二〇一八年委託調査で分析結果が記載されていることは承知しております。

 一方で、本委託調査は、高圧ガス保安法の対象となる全事業所ではなくて、一部の石油精製、石油化学プラントや一般化学プラントを対象に分析した結果でありまして、この点、高圧ガス保安法の対象となる全事業所に関する分析について申し上げれば、産業構造審議会の中でお示ししているとおり、高圧ガス保安法における重大事故は、過去十年間で、全体で四十四件発生しているところ、このうち、認定事業所については六件、非認定事業所は三十八件となっており、認定事業所の方が非認定事業所と比べて事故発生頻度が少ないものと承知しております。

宮本(徹)委員 一部というふうにおっしゃいますけれども、石油化学プラントでの事故というのは重大なことが起きるからこそ、経産省自身も委託してこういう調査をやってもらったんじゃないんですか。それはそういうことですよね。ですから、しっかりとここで言われている指摘は受け止めなきゃいけないと思いますが、そこは受け止められないんですか、こういう、石油化学プラントで非認定事業者よりも認定事業者の方が発生頻度が高いと。これは真剣に受け止めなきゃいけない点だと思いますよ。

萩生田国務大臣 たまたま、今、先生、資料の説明の中でファクトを私申し上げただけで、だから問題ないんだなんて開き直るつもりは全くなくて、重く受け止めて、おっしゃるとおりですよ、それは事故が起きてからでは遅いわけですから。そのためにも、この認定制度と検査制度、そして国や都道府県の関わりというものをしっかりつくり上げていくこと。

 そして、先ほど申し上げたように、一番のメリットは、やはりデータを蓄積できるということだと思います。口頭や紙で一時的な報告じゃなくて、写真や映像を残しながら、安全管理を外からもしっかりやっていくということに心がけていきたいと思います。

宮本(徹)委員 いや、じゃ、データの蓄積をすれば更なる規制緩和をしていいのかといったら、私はそれは違うということを申し上げているわけです。

 さらに、昨年の十月二十五日の高圧ガス小委員会で、高圧ガス保安協会の近藤会長はこう言っているんですね。協会が把握しているだけで、この十年間に三割弱が法令違反行為を行っている、こう指摘しているわけです。

 私、三割弱が法令違反行為をやっているという中で、更なる規制緩和というのは進められる状況は全くないと思いますが、大臣、いかがですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御説明がありました産業の事故の歴史を踏まえまして、私どもの新しい法律も、決して保安のレベルを下げるというものではなくて、テクノロジーを活用して保安のレベルを上げていこうということをお願いしてやってございます。

 認定事業者についてはより厳格な認定条件を課しますし、事後の取締り、立入検査も機動的に行って、もちろん、これまでの制度より保安のレベルが下がらないということを狙っての法改正でありますので、そういうふうに保安のレベルを少しでも上げるという取組を続けていきたいと考えてございます。

宮本(徹)委員 いや、大臣、本当に三割弱のところで法令違反が行われているという状況ですよ。こういう中で更に規制緩和を進めていくというのは、私は大変不安な状況だと思いますが、それはみじんもないというのが大臣の認識なんですか。

萩生田国務大臣 その近藤さんのコメントというのは、私ちょっと事実関係が分かりませんので、これは控えさせていただきたいと思いますが、先生のように大変心配していただける御指摘、これは重く受け止めて、制度をスタートするに当たって、私はしっかりおそれを持って対応していきたいと思っています。

 先ほどの他の委員の質問からも、例えば、IT化をする、AIを使うことによって何か人をどんどん減らしていくことになるんじゃないかという危惧がありましたけれども、逆でありまして、この業務に携わる人たちのレベルを上げて、安全性をしっかり確保していくということを心がけていきたいと思いますので、御指摘は重く受け止めたいと思います。

宮本(徹)委員 指摘を重く受け止めるんだったら、私は、立ち止まるべきだということを申し上げたいと思うんですね。

 というのも、この法案では、高度保安実施者に認定されれば、少なくとも一年に一回以上実施が義務づけられている定期自主検査すら不要になる。これは法律三十九条二十七の第二項でこうなっているわけですよね。

 定期自主検査の義務づけもなくして、保安検査も自主検査でよいとなれば、技術基準への適合性が全く担保されない、こういうことになるんじゃないでしょうか。これでどうやって労働者の命や地域住民の安全を守れるんでしょうか。

萩生田国務大臣 産業保安分野において安全の確保は大前提であり、今般の法改正においては大原則については何ら変わることはありません。

 今般新たに導入する認定高度保安実施事業者制度は、現行の認定制度と比較して強化されるコンプライアンスの要件や、新たに追加されるコーポレートガバナンス要件など安全確保に向けた会社全体の健全性や、高度なリスク管理体制の構築などの厳しい要件を満たしていると国が直接認定する、自立的に高度な安全を確保できる事業者に限り、規制の特例措置を講ずるものでありまして、その上で、御指摘の保安検査については、現行制度において、既に認定要件を満たす高度な保安体制を有する事業者に限っては、自治体等が実施している保安検査を事業者自ら行うことが認められており、今般の法改正による変更はございません。

 また、定期自主検査については、自立的に高度な保安を確保できる認定高度保安実施事業者に限って、保安検査を通じて、定期自主検査で確認していた技術基準への適合性確認等を行うことを前提に、今般の法改正で、その義務を課さないこととしたものであります。

 これは、厳格な要件を満たした事業者にのみ認められる特例措置でありまして、労働者や地域住民の安全に重大な危険をもたらすとの指摘は当たらないと考えています。

 なお、スマート保安の取組が進む中、高圧ガスを始めとする産業保安分野において、事業者と地域住民の方々の間でのリスクコミュニケーションは一層重要となります。

 経産省としては、事業者が今後、労働者や地域住民の方々の安全上の理解を得て、安全が引き続き確保されるよう取り組むよう指導してまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 いや、要件を満たしたところだけ定期自主検査の義務づけはなくすんだというふうに大臣はおっしゃいますけれども、じゃ、ちゃんと要件を満たしてしっかりとやっているのかということを国がチェックできているのか。

 今日、先ほど維新の議員から、国交省の所管ですけれども、知床の遊覧船の話もありましたけれども、いろいろな問題で、じゃ、行政がちゃんといろいろなものをチェックし抜けているのかといったら、そうじゃないことがいっぱい繰り返されてきているわけですよ。本当に命と安全に関わる分野なんですよね。

 例えば、今年三月三十一日に認定を取り消された太陽石油四国事業所では、二〇一一年四月から十年以上も法令違反を続けてきた。故意の法令違反や組織的な関与があったにもかかわらず、経産省は全く見抜けなかったじゃないですか。こうした事実をどう考えているんですか。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、太陽石油の認定取消しを行ったわけですけれども、私ども、その件を踏まえまして、やはり、我々がきちっと、認定をした後にも、ちゃんと、きちっと機動的に事後の検査をしていなかったことが問題ではないかと考えてございますので、機動的な立入検査を含めて、事後報告の徴収を含めてきちっと対応して、新しい制度では、入口の認定をより厳しくして、安全のレベルを下げないようにしたいと考えてございます。

宮本(徹)委員 何か自信なさげな答弁ですけれどもね。

 結局、一回認定しちゃったら、その後、なかなかなかなかちゃんとチェックし切れていないというのがこの間の現状なんですよね。私、根拠なく不安だ不安だと言っているんじゃなくて、実際に監督ができていないから、私は、そういう下でこうした規制緩和を更に進めるのは問題ではないのかということを申し上げているわけでございます。

 更にもう一つ重大なのは、高度保安実施事業者に認定されると、自ら行った完成検査、保安検査の記録の都道府県への提出が不要になります。事業者が保存してさえいればいいということになるわけです。これでは都道府県が法令の適合状況のチェックができない。

 大臣、これは監督機能が大きく後退することになるんじゃないですか。

萩生田国務大臣 現行の認定制度の下では、事業者自ら完成検査、保安検査を行った後、検査記録を都道府県に提出することとされています。

 一方で、今般導入する認定高度保安実施事業者制度の下では、厳しい要件を満たしていると国が認定する、自立的に高度な保安を確保できる事業者に限っては、規制の特例措置を講ずることとし、自ら行う完成検査、保安検査の記録について、都道府県への提出を要しないこととしたものであります。

 しかしながら、産業保安に万全を期す観点から、今般の法改正に当たっても、事業者には、完成検査、保安検査の実施と検査記録の保存を義務づけるとともに、引き続き、都道府県は機動的に立入検査などを実施して完成検査、保安検査の状況を確認することも可能としていることから、行政による監督機能は十分に果たされていると考えています。

 今般の法改正によって、自立的に高度な保安を確保できる事業者については、保安レベルに見合った、合理的な、めり張りある規制体系に移行することで、都道府県としても限りある行政リソースをよりリスクの高い分野に展開することが可能となることから、我が国の保安レベルの全体的な底上げに結びつくものと期待しています。

宮本(徹)委員 私は、逆のことが起きることを大変懸念をしております。法案は、認定の申請を行った事業者に対する高圧ガス保安協会の事前調査もなくす、こうなっているわけですよね。

 国、自治体、専門機関のチェックが一切働かない、全くのブラックボックスになるのではないのかということを厳しく指摘して、質疑時間終了の紙が来ましたので、質問を終わらせていただきます。

古屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹さん。

宮本(徹)委員 私は、日本共産党を代表して、高圧ガス保安法等改正案に反対討論を行います。

 本法案には、頻発、激甚化する災害への対応策として、小規模な太陽光、風力発電事業者への基礎情報の届出等の義務づけや、一般導管ガス事業者への災害時連携計画の策定など、賛成できる措置も盛り込まれております。

 しかし、電気、都市ガス、高圧ガスの産業保安分野に事業者の裁量を一層拡大する規制緩和を促進することは、とりわけ、稼働から五十年以上経過し、老朽化した石油コンビナートでの事故をもたらしかねません。労働者の命や地域住民の安全に重大な危険を及ぼしかねず、看過できません。

 反対理由の第一は、事業者任せの自主保安制度を導入した後も法令違反や重大事故が相次いだこれまでの経緯を直視せず、更に産業保安を事業者に丸投げしようとするものだからであります。

 高圧ガス保安法への認定事業者制度導入から二十六年。高度な保安能力を有すると大臣認定を受けたものの、取り消された事業所は二十にも及んでおります。直近十年間だけで二十四件もの法令違反が発覚している事実は、保安レベルの低下を如実に表しております。

 今やるべきは、質疑の中でも示した、認定事業者の方が事故の発生頻度が高いとの経産省委託調査の分析を正面から受け止め、事業者任せの産業保安の在り方そのものを根本から見直すことであります。

 第二は、認定高度保安実施事業者に対する自主検査義務の除外、都道府県への検査記録の届出を不要にする規制緩和が、事故を未然に防ぐ機会を失うのみならず、第三者の監視、監督権限を大きく後退させることになるからであります。

 事業者は、この間、保安人員の育成や修繕、改修に関わる投資を抑制してきました。産業保安の土台をおざなりにしたままでは、いかに最新のテクノロジーを活用しようとも、保安の高度化、自律化は絵に描いた餅だと言わざるを得ません。

 以上を指摘し、反対討論といたします。

古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の皆さんの起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

古屋委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、石川昭政さん外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。落合貴之さん。

落合委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 一 本改正が産業保安分野におけるこれまでの事前規制を中心とする規制体系から新たな規制体系への転換を図るものであることを踏まえ、改正事項の運用に当たっては、公衆及び保安作業者に対する安全の確保を大前提とし、我が国の産業保安水準の更なる高度化と持続的な向上を図るために必要な措置について不断に検討を行うこと。

 二 高圧ガス、都市ガス及び電気事業の各分野における「認定高度保安実施事業者」の認定及び安全管理検査の特例等の運用に際しては、中小事業者であっても電気・ガス等の安定供給に必要な保安の実施、大規模災害等に対する迅速な設備復旧並びに公衆及び保安作業者の安全確保を可能とするための人材・技術基盤を確立することができるよう、保安分野におけるテクノロジーの活用方法及び自律的な検査の実施方法等の周知徹底、技術開発への支援等を通して、我が国全体の産業保安の水準が確保されるために必要な実効性ある措置を講ずること。

 三 スマート保安の推進に当たっては、テクノロジーの活用と人が担うべき保安とを相互に連携・融合させつつ、より高度で強靱な保安管理体制を目指すものとし、デジタルトランスフォーメーションも見据えた専門人材の活用、熟練した技術者による中央・地方の事業者に対する技術伝達の促進、若年層にとって魅力ある職場環境の形成に向けた支援等の取組を進め、保安人材の持続的な育成・確保に万全を期すこと。

 四 ガスに係る災害発生時の事業者の連携体制に関して見直しを行い、災害時対応に参画するガス小売事業者についてはその適格性を確認し、技術向上への支援とともに、連携の在り方や役割分担等について検討するなど、より適切な保安体制で災害時対応を実施することができるよう引き続き検討を行うこと。

 五 太陽光発電及び風力発電に係る小出力発電設備に対する規制の見直しにより、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて有意義な小出力発電設備の導入が必要以上に抑制されることのないよう、再生可能エネルギーの導入と規制の実施とのバランスの取れた運用の在り方について引き続き検討を行うこと。

   また、基礎情報等の届出手続については、設置者の負担を軽減するとともに、事務処理の効率化を図るため、可能な限りのデジタル技術の活用に努めること。

   さらに、再生可能エネルギー発電設備の設置状況及び保安の適正化が図られているかについて立入検査等を通して十分に監視し、その是正・改善に努めること。併せて、いわゆる「分割案件」のような規制逃れの抑止、安全規制や立地規制等の法令遵守の徹底等に努めるとともに、改正事項の趣旨・内容について、再生可能エネルギー発電事業者及び地域住民・地方自治体等に対し、十分に周知徹底及び情報提供等を行うこと。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の皆さんの起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古屋委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、萩生田経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。萩生田経済産業大臣。

萩生田国務大臣 ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

古屋委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十二分散会


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