衆議院

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第4号 令和5年3月17日(金曜日)

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令和五年三月十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 井原  巧君 理事 岩田 和親君

   理事 関  芳弘君 理事 細田 健一君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      石井  拓君    石川 昭政君

      稲田 朋美君    今枝宗一郎君

      上川 陽子君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      杉田 水脈君    鈴木 淳司君

      土田  慎君    冨樫 博之君

      深澤 陽一君    福田 達夫君

      堀井  学君    牧島かれん君

      松本 洋平君    山際大志郎君

      山下 貴司君    大島  敦君

      菅  直人君    篠原  孝君

      田嶋  要君    馬場 雄基君

      山岡 達丸君    足立 康史君

      遠藤 良太君    前川 清成君

      中川 宏昌君    鈴木 義弘君

      笠井  亮君

    …………………………………

   参考人

   (東京大学副学長・公共政策大学院教授)      大橋  弘君

   参考人

   (京都大学大学院経済学研究科教授)        諸富  徹君

   参考人

   (ボストンコンサルティンググループマネージング・ディレクター&シニア・パートナー)        重竹 尚基君

   参考人

   (日本労働組合総連合会副事務局長)        石上 千博君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  宗清 皇一君     杉田 水脈君

  山際大志郎君     深澤 陽一君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     宗清 皇一君

  深澤 陽一君     山際大志郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学副学長・公共政策大学院教授大橋弘君、京都大学大学院経済学研究科教授諸富徹君、ボストンコンサルティンググループマネージング・ディレクター&シニア・パートナー重竹尚基君、日本労働組合総連合会副事務局長石上千博君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 なお、マスクはお取りいただいても構いません。

 それでは、まず大橋参考人にお願いいたします。

大橋参考人 先生方、おはようございます。本日はよろしくお願いいたします。

 御紹介いただきました東京大学で副学長をしております大橋弘と申します。経済学を専門としています。

 本法律案との関わりですが、経済産業省に設置された世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会や環境省のカーボンプライシングの活用に関する小委員会などで委員を務めさせていただきました。

 本日は、このような貴重な場をいただきましたので、我が国におけるグリーントランスフォーメーション、略称GXの取組とそれを支える政策の在り方について意見を述べたいと思います。

 我が国は、三つの大きな環境変化の真っただ中にいます。まず、少子化、人口減少、低成長という三つの減少トレンドがございます。二つ目の環境変化は、地政学的なリスクの高まりでございます。具体的には、二〇二一年秋に始まり、ロシアのウクライナ侵攻によって深刻化した輸入資源価格の高騰があります。三つ目は、DXと脱炭素の加速化です。

 脱炭素については、我が国は二〇五〇年に向けてカーボンニュートラル、つまり、温室効果ガスの人為的な発生による排出をネットでゼロに均衡させることを宣言しています。同時に、二〇三〇年には二〇一三年度比で四六%を超えるCO2削減を目指しており、この目標も相当に高いハードルと受け止められています。こうしたDXとGXの進展の中で新たな市場が生まれており、そうした新市場や新たなニーズに対して産業構造の転換を遅滞なく進めていかなければならないという現状に我が国はございます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて、多くの国が試行錯誤を始めています。この道のりは、各国それぞれに異なることが予想されます。産業構造や脱炭素に必要な技術開発の進展状況、また、直面するエネルギー資源の賦存状況や調達状況がそれぞれの国で異なるからです。当然のことながら、我が国も自らの事情に合わせた政策を考えていく必要があります。

 我が国を振り返りますと、まず、一次エネルギー自給率は一一%と、G7諸国の中でも極端に低い状況にあります。産業構造では、製造業で働く就労者割合が二〇%程度と高く、自動車を始め製造業のしっかりとした基盤があります。製造業においては、単なる電化による脱炭素化には限界がある分野が多くあります。これまで使ってきた化石燃料をバイオ燃料へと転換したり、原材料それ自体を変えたりするなど、抜本的な製造プロセスの改革をすることで直接排出を減らす必要がございます。

 こうした製造プロセスにおける脱炭素技術の多くはまだ研究開発の段階にあり、技術がいつ実用可能になるのか、不確実性が高い領域も多くあります。こうしたGXの取組は、デジタル化と同時に進められる部分が多くあるものの、その投資には相当の額を要する事業になるものと予想されます。

 実用化に向けての不確実性が高く、費用面でも巨額になりがちな研究開発は、企業単独で行うことはかなり困難で、企業は投資にちゅうちょすることが予想されます。ここに、脱炭素に向けて官民が共同して取り組む必要性が見えてきます。

 まず、企業の脱炭素投資を先行的に誘発するためには、国がGXに向けての強い支援の姿勢とコミットメントを示すことが有効です。企業の自主性を促しながら、産業構造の転換に踏み出せるような政策パッケージを示す必要があり、今回の法案はまさにそうした意図が込められているものと思っています。

 巨額な脱炭素技術への研究開発投資を民間の金融機関がどこまで融資できるのか、不安が残ります。民間融資を一定程度国が下支えするような仕組みも同時に必要になるものと思われます。

 先行投資を一定期間支援し、脱炭素技術が実用的な選択肢になってきた段階で投資財源を回収する仕組みが求められます。これが炭素賦課金であり、発電事業者への有償オークションであると思われます。有償オークションは発電事業者に対する追加的な負担のように映りますが、この制度は電源の脱炭素化を促す一つのスキームとして捉えるべきであり、後に述べる社会の行動変容を促す観点では、価格転嫁を外生的に行うことも必要な措置と考えます。

 脱炭素と成長を意欲的に目指す企業を政府が積極的に後押しする仕組みは、既に始まっています。昨年からGXリーグがスタートし、我が国全体の排出量のほぼ四〇%をカバーしているものと思います。企業の自主的な判断を重んじながら、企業が掲げる目標を行政や第三者が確認して、企業に更なる成長と改善を求めていくという我が国のGXの取組は、世界でも類を見ない画期的なものであります。

 この取組をプレッジ・アンド・レビューといい、パリ協定でのNDCに近いものだと思いますが、我が国では、企業のイノベーションを萎縮させずに行政目的を達成させる手法として、デジタルプラットフォーム透明化法などでも使われている手法であります。このGXリーグの理念は、我が国の企業にも広く賛同を受けているものと思います。

 こうしたGXの手法を、成長著しい近隣諸国の声をしっかり拾いながらアジアに広げていくことは、我が国がアジアの脱炭素化をリードし、G7などほかの先進諸国の取組との橋渡しをする役割を果たす上でも、我が国に期待されているものと思っています。

 なお、企業の自主性を尊重することなく、海外諸国と同様に、強い規制をまず入れるべきという声があることも承知をしています。こうした見方は理論的には分かりやすいものと思いますけれども、他方で、我が国でそのような措置を取ると、海外移転が更に深刻化することが懸念されます。我が国での省エネの促進は、実は一部リーケージが入っているとの研究も出ており、現実を見据えた制度設計が必要になるものと思います。

 GXリーグに参加する脱炭素と成長を意欲的に目指す企業が脱炭素投資を適切に回収する場として機能するのが、排出量取引制度だと思います。

 そこで、排出量取引は投資の予見性がしっかり担保されることが望まれます。価格においては、上限と下限を入れたバンドの中で取引をすることで、若干の収入を政府が得ることも可能になるものと思われます。

 排出量取引における取引価格は、これまで暗示的と批判されてきた国民の炭素負担が明示化される場の一つになるべきだと考えます。まず、既存制度を排出量取引へ収れんさせていくべきと考えます。具体的には、省エネ法や高度化法などを排出量取引の屋上屋を架すことなく排出量取引に合流させる、明示的なカーボンプライシングに衣替えすべきだと思います。

 同じことは、現行のガソリン課税やFIT、FIPなどにも当てはまります。使途は現行を維持するままで構わないと思いますが、ガソリン諸税やFIT、FIPなど、国民が脱炭素の取組として負担しているものは、温対税と同様に、明示的なカーボンプライシングとして位置づけるべきです。そうすることで、欧州が進めるCBAM、これは炭素国境措置と呼ばれるものですけれども、そうしたものに対しても、我が国の炭素負担を正しく示すことができ、国益にかなう取組だと思います。

 なお、排出量取引には、無償枠の配賦なりキャップなりがかかることになります。古い設備が多い企業は、設備を閉じれば余剰が生まれ、排出量取引において収入に代えることができます。他方で、新たな投資を積極的に行う企業は、少なくとも一時的には排出量が増えることになるので、排出量取引が行われることで、投資をためらいがちになる懸念があります。

 ある企業が新たな脱炭素投資を行い、別の企業が古い設備を閉じれば、国全体では脱炭素に一歩近づきます。さらに、海外で脱炭素投資を行うことは、国のクレジットにならなくても、世界全体でのカーボンニュートラルにはつながります。現在の個々の企業や国に排出量を割り当てるやり方は、あくまでインセンティブを確保するためであり、カーボンニュートラルを進める上での必要条件にしかすぎないことから、キャップの与え方を工夫することで制度の柔軟性を高める不断の努力が必要だと思われます。

 なお、脱炭素というと、再エネや原子力など、電気の脱炭素化に目が向きがちですが、全ての経済活動を電化することはできません。化学産業や航空産業では、合成燃料やバイオ燃料が必要です。現在、我が国企業はそうした燃料の海外調達に乗り出していますが、国内にしっかり資金を還流させる視点を国家として持つためにも、国産バイオ燃料の生産に本腰になるべきではないかと思います。

 サトウキビは現在、関税から得られる収入を使って生産補助している効果もあり、生産量が消費量を大きく上回っていますが、サトウキビを航空燃料にすることで、沖縄の地域航空の活性化に大きくつながります。また、我が国には耕作放棄地が多くありますが、油を多く実らせる燃料作物を植えることもできるはずです。あるいは、森林のセルロースからバイオ燃料が作れます。

 費用対効果の点で、すぐには石油代替にはなりませんが、海外調達の交渉力を高めるカードとして、国産バイオ燃料のロードマップを作って量と価格の将来目標を決めることは、中長期的なエネルギーの安定供給に大きく資することになります。現在、法改正を議論している食料・農業・農村基本法においてエネルギー作物の生産を位置づけることも含めて、国としてしっかりエネルギーの安定供給に努めることで国益を守っていただきたいと思っております。

 最後に、三点、述べさせていただきます。

 第一点目は、カーボンプライシングの在り方であります。

 今回提示されている炭素賦課金も有償オークションも、サプライチェーンの上流で課税をする仕組みです。しかし、カーボンニュートラルという社会変容の主役は誰かといえば、それは消費者になります。政府が課税をしやすいから上流でカーボンプライシングを課すという現在の仕組みは、多くの国でも取られていますけれども、社会変革を促すという点でいうと、あるべき姿は消費ベースでの排出量の見える化であり、消費側での行動変容を促すよう、脱炭素による付加価値が的確に下流に反映される仕組みにすることだと思います。そのために、カーボンを生産から消費まで追跡して、消費者に全体として炭素消費量を可視化する努力は続けられるべきだと思います。

 二番目は、独禁法との関係になります。

 GXへの取組は、企業単体で行うことはできません。莫大な投資を必要とする研究開発やコンビナートにおける脱炭素設備の入替え、CO2を回収してCCUS、これは二酸化炭素の分離回収、利用ということですけれども、そうしたものに使うためのサプライチェーンの形成、水素やアンモニアの調達、利用など、企業が共同で設備を廃棄、あるいは新たな設備投資を行って副生物の回収、利用をするなどといった、これまで必要とされなかった様々な協調行為を行う必要があります。

 しかし、独禁法の運用が従来どおり企業単位で競争を判断するようなことですと、こうした協調行為は独禁法違反になりかねず、コンプライアンスに敏感な企業は、GXへの取組が足踏みすることになります。最近、公正取引委員会は、グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法の考え方をまとめていますが、これまでの独禁法の考え方を踏襲したもので、私が今申し上げた懸念に回答する形にはなっていないものと思われます。今回のGX推進法にふさわしい独占禁止法の運用がなされるよう期待をしております。

 最後に、政策立案、評価の在り方について述べさせていただきます。

 長期にわたる大規模な投資に対して政府がコミットするということは、我が国の従来の政策立案、評価のやり方に大きな変革を求めるものになると思います。

 思えば、我が国の多くの政策は単年度で区切られており、やや乱暴に言うと、政策が一度走り始めたら、予算執行期間が終わるまでは手をつけず、最後に事後評価を行って終了というふうな形になっているかに見えます。しかし、このような政策立案と評価の仕方は、本法案の趣旨がしっかり生かされる形になっているとは思われません。

 政策を執行しながらエビデンスを取りつつ、政策の方向性を常に確認して、もし方向が間違っていれば遅滞なく修正する、場合によっては事業を廃止して適切な事業につくり替える、そうしたアジャイルな思考を取り入れた新たな政策立案、評価の形が本法案には求められると思います。アジャイル型政策形成、評価の枠組みをこの機会に改めて大きく打ち出し、ほかの基金などの施策の立案、評価の範とすべきと考えております。

 以上でございます。

 この度は、貴重な機会をありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 次に、諸富参考人にお願いいたします。

諸富参考人 先生方、おはようございます。京都大学の諸富でございます。

 今日は、こういう機会をいただきまして、ありがとうございます。

 お手元に資料を配付していただいていますので、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。

 本法案ですけれども、非常にすばらしいと言ってしまえばそれまでなんですが、高く評価をしております。こういう形で包括的なパッケージになってくるということで、エネルギー、環境、気候変動問題というのはまさに包括的な、経済全体を左右する問題になってきておりますので、やはり包括的に、資金調達の在り方、政策手段、エネルギーの在り方、産業の在り方を含めた法案になっているというのは非常に重要な点だと思います。

 それから、特にカーボンプライシング、CPと略しておりますが、これがついにこういう形で導入されたという点、これは画期的でございます。これは本当に、私も環境省の委員会にずっと属して議論してまいりましたが、なかなか産業界の方々の理解を得ることができず、前に進まない状態でした。それがついにこれで導入されることになって、非常に意義深いと思います。

 また、この中で、特に排出量取引と炭素賦課金、税が今、賦課金という形になっているわけですけれども、これでほぼ経済全体がカバーされます。また、カーボンプライシングはこれで、導入されたもので終わりではなく、段階的発展を三〇年代からされることになっている点、それから、排出量取引については、私も十年以上前に、福田首相の頃でしたけれども、一度盛り上がったときに議論に参画いたしましたが、結局そこは挫折いたしました。それから時間を経てこういう形で入った、これも本当に画期的ですね。

 あと、少し後で若干触れますが、EU―ETS、欧州の排出量取引を範に取りながら、優れた設計になっていると思います、ETSですね。

 そういう意味では、日本の気候変動政策上、この法案は量、質の両面で非常に大きな前進になることは間違いないと思いますし、また、気候変動政策が単なる環境政策ではもはやなくて、これはほとんどイコール産業政策になっている。まさにこの委員会が経済産業委員会ですけれども、この委員会で付議されているということ自体がそういう象徴であるというふうに思います。

 一方で、若干クリティカルな視点から申し上げますと、しかし、この法案を国際的な文脈に置いてみますと、先端的で世界を引っ張っていける法案かというと必ずしもそうではないかもしれないということを、若干問題提起をさせていただきたいと思います。

 本当でしたら、この法案でもって遅れを取り戻して一挙に抜き去るというところが欲しかったところですが、実は、この法案がようやく実現したところ、世界を見渡してみたら、もっと世界は先に進んでいたというのが実情ではないかと思います。

 脱炭素は、少し後で申し上げますように、実はもう二十一世紀の経済産業の競争軸の中心そのものになってきております。つまり、これまでは、脱炭素化するということはコストが増大する、産業の足を引っ張るという観念でございましたが、もうこの認識は全く覆さなきゃいけなくなってきているということですね。逆に、これに遅れれば産業として落後し、失われた十年、二十年、三十年と言われてまいりましたが、さらに、四十年、あるいは失われた半世紀になりかねないということになります。

 具体的にどのようなことを考えているかといいますと、次のスライド、五ページ目に参りますが、ニコラス・スターン、これはスターン報告で有名なLSEの教授ですけれども、彼の報告書がございまして、そのすぐ下にカラーの図を転載しております。

 これは何をイメージしているかというと、主要な、脱炭素にとって、産業にとってキーとなる技術がいつ転換点を迎えるか。ティッピングポイントというふうに英語で言いますが、要は、技術的に確立するだけではなくて、マーケットに入ってくるかということです。

 丸で印がついている点がそのティッピングポイントに到達する年です。これは大体、電力はもう既に再生可能エネルギーが既存の発電コストを下回る、二〇一八年に欧米ではもうそこに来ているということですね。その後、自動車、交通関係が二〇二五年前後にティッピングポイントが来て、そして、エネルギー集約型産業、鉄鋼を始めとする集約型産業のティッピングポイントは何と二〇三〇年頃にはもうやってくるということでございます。

 ということで、我々の想像している以上に、もう二〇年代に勝負がついてくる、勝負がついてくるといいますか、勝負はまだつかないんですけれども、技術開発のめどがついてくるということがここでのポイントでございます。

 次のスライド、七ページ目に参りますけれども、これは、世界で大規模な脱炭素投資プロジェクトが次々と行われていくというのが二〇二〇年代の動向ということになります。

 これは世界地図で、再エネの賦存量が多いところが濃いブルーになっているわけですけれども、ポイントは、丸で点が落とされている、そして、図の左、右と下、ボトムに国旗がずらっと並んでおりますが、これが脱炭素投資の巨大プロジェクト。これは網羅的なものではないというふうに文献ではエクスキューズしておりますが、こういったものがどんどん入ってくる。欧州では、水素還元製鉄のプロジェクトが次々と行われていきます。

 また、操業開始は大体二〇二四年から三〇年前後になっておりまして、これも、二〇年代後半に続々とこういうプロジェクトが立ち上がってきて始まっていく。これは大体、実証炉的な側面が強く、本当に商業的に乗ってくるのは二〇四〇年代に実はなるんですけれども、ただ、こういったものが既にもう始まっている、競争は始まっているというのがこのスターンの報告書のメッセージなんですけれども、こういうことになってきて、こういうスピード感でもう進み始めているということでございます。

 皆様よく御存じの米国インフレ抑制法案、IRAというふうに言いますけれども、これも非常に大きな、アメリカの脱炭素転換を一挙に促進する。大逆転といいますか、アメリカというのはエネルギーじゃぶじゃぶの経済だったんですけれども、これで一挙に大逆転みたいな感じでございます。

 このGX推進法案が、果たして温室効果ガスを本当にIRA並みに減らせるのかどうか。

 先ほど大橋先生から政策評価という話も出ましたが、本当は、次のページに出てくるスライドにあるような、こういったモデルによるシミュレーションが次々と出てきていまして、GX推進法案はどこまで減らせるのか、そのときにGDPに対する影響はどうなるのかということについて、もっと政策評価が、マクロ的な評価も行われるべきではないかなというふうに思います。

 ここで見ますと九枚目、十枚目にありますように、このIRAが入ってくると、今までの経路を大幅に引き下げていくことになります。

 それで、二〇三〇年の五〇から五二%減というアメリカのNDCに沿った目標は、これだけでは、単独では到達しないんですが、大幅に近づいてくるということです。ほかの政策手段も組み合わせることによってその到達も視野に入ってくるということで、この二〇年代、アメリカの経済は大幅に脱炭素経済に転換をする十年になっていく。これで大体ギャップの三分の二を埋めることができる、目標までの間ですね。

 次のスライドに参りますが、これで何が起きるかというと、圧倒的に再エネ、太陽光と風力が劇的に投資額が増加していく、巨大なインセンティブをかけています。それから電力系統投資、水素投資、これが急激に増加をしていく。それによって雇用も、再生可能エネルギーや系統を中心に、この投資が雇用を大幅にもたらすということです。

 この法案の更に恐ろしいのは、アメリカの国内投資に巨大な経済インセンティブを与えていまして、昨日かおとといの日経新聞に出ていましたが、続々と欧州勢も日本勢も工場をアメリカに建設し出しているということで、工場をアメリカに建設させる法案でもあるんですね。これは製造業を取り合う、そういう競争がもう始まっているということです。

 十三ページに参りますが、そういうことで、二十一世紀の脱炭素経済で日本は勝てるのかということですね。

 そもそも、欧州については既に知られていますので、ついにアメリカもここに乗ってきたということの中で、日本がここに乗っかっていけるかということで、二〇年代に少なくとも欧米はもう脱炭素経済へ移行する道筋をつけてきたということですね。日本は果たしてこれでそれに行けるのかということでございます。そういう意味で、政策評価の点でこれがいかなる効果を持つのかが、その評価が、ちょっと数量的な評価がないために私もいかんとも言い難いんですが、若干不安があるところでございます。

 再エネ中心になっていく、それからエネルギー集約型産業の脱炭素化も徹底的に進むということが明快になってきました。また、再エネ、系統、水素への巨大投資が二十一世紀の脱炭素経済の骨格をつくっていくことも明らかになってきていて、それが競争軸を形成していくということで、このスピードについていけるかというのが課題でございます。

 そういう意味で、カーボンプライシング、二八年に炭素賦課金、三三年頃にようやくオークションというスピードで、二〇年代はほぼ影響しないということで、もちろん産業支援は始まるわけですけれども、このスピード感にどうもついていけていないのではないかというのが不安でございます。

 また、ロードマップも拝見しておりますが、ロードマップは矢印がいろいろ年ごとに書いてあるんですが、何々化というふうに書いてあるんですが、何年までに何々を実現というふうに書いていないんですね。なので、そこの実現も不確実、不透明な印象を持っております。

 あと、供給に非常に偏重しておりまして、供給対策は十分になされているんですが、需要サイドでこれから大きなイノベーションの可能性がございます。家庭、ビル、それからEV、蓄電池といったところ、需要サイドで非常に大きなイノベーションが起きるんですが、そこが果たして十分かという点がございます。

 さて、ここから、カーボンプライシングに沿って、私のコメントをさせていただきます。十五枚目です。

 排出量取引制度、これは先ほど言いましたように、非常によく設計されています。ポジティブな思考に沿ってといいますか、先駆的企業が、自主参加、自主目標ではあるんですが、積極的にこれに到達してその情報公開を行うことを規定していまして、これは大橋先生が御尽力されたところだと思いますが、これが投資家に評価され、資金調達上の優位性を獲得できるということで、どんどんプラス思考に誘導していく。コンプライ・オア・エクスプレーン、罰則はないんだけれども、きちっと説明してねということですよね。また、NDCに沿って直線的な目標を掲げなさいということになっていまして、これはなかなか野心的だなというふうに思います。なので、排出量取引制度はなかなか、自主であるということですが、制度設計としては非常にいい感じではないかなと思っています。

 ただ、何せ参加、目標設定、遵守の全てが自主的です。やりたい人はやるけれども、やらない人はやらないという状態ですね。なので、このままでは十分、目標遵守へのインセンティブは弱いし、また、自主のままでは、やる人はやるけれども、やらない人はやらないということで、競争上の公平性が担保できないという問題があるのではと。

 そういう意味では、やはり第二フェーズでは参加を義務化すべきではないか。第一フェーズはトライアルなのでいいんですけれども、第二フェーズはきちっと目標設定、遵守については義務化をして、未達に対してはペナルティーを科すべきじゃないかと思います。

 また、賦課金が二八年に入ってまいりますが、ETSとの連携を図るべきではないかなと思います。つまり、例えばEU―ETSを念頭に置きますと、排出量取引にきちっと参加をする企業は賦課金については免じる、あるいは大幅に減免する等の組合せを行うことで、積極的に排出量取引に入ってプレーするようにというインセンティブをかけるべきじゃないかと思います。

 十七枚目に入ります。

 賦課金の方ですけれども、こちらは、ちょっと疑問に思うのは、これが財源調達手段なのか、それとも政策手段なのかということでございます。答えは両方ということになるんでしょうけれども、もし目標設定がきちっとなされているのであれば、それに十分なインセンティブとして税率ないしは料率が設定されるべきであります。

 ちょっと一枚戻って十六ページですが、GX関連の製品の価格と化石燃料由来の製品の価格には差があって、カーボンプライシングが入っていくことによって、将来的にはこの価格差は埋められるんだということになっています。ただ、これを埋めるための税率というのは相当高くなります。いろいろな試算が出ております。

 そうすると、一方で、このGX関連法案の説明によると、エネルギー関連の公的負担が下がる範囲においてカーボンプライシングを入れるんだ、つまり、トータルのエネルギーコストは上げないんだということになっているわけです。ということは、税率に上限が課されているわけで、ここが十分な税率水準になるかどうかという点が不安な点でございます。

 最後に、公正な移行ということで申し上げますが、こちらについては若干触れるだけで終わらせていただきたいと思います。

 これは、ワックスマン・マーキー法案といいまして、オバマ政権のときの排出量取引制度のプログラムの中で、排出枠を売って得た売却収入で労働者の支援、低所得者の支援を行うことが明快にプログラム化されていました。どれぐらいの枠を売って、どれぐらいの収入を得て、どういうプログラムを実施するか、詳細に定まっていました。残念ながら、GX推進法案はここが非常に弱いと思います。

 細かい内容はここに書いておりますが、大まかに、失業した人への支援、低所得者への支援、そして産業構造転換で大きな影響を受ける地域への支援、これらで構成されること。これは、本格的に産業構造転換をやるのであれば、この点も併せてきちっとGX推進法案の中に盛り込まれるべきだと考えます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 次に、重竹参考人にお願いいたします。

重竹参考人 ボストンコンサルティンググループシニア・パートナーの重竹と申します。

 このような貴重な機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 弊社は、経営コンサルティング会社として、グローバルに様々な企業や政府の戦略の立案、実行のお手伝いをしております。中でも、GX、グリーントランスフォーメーションは、これをどう実現していくか、これが大変ホットなトピックスとなっており、私自身も日本においてそのようなテーマを幾つも手がけております。

 本日は、そういった経験も踏まえまして、私の意見を本法案に賛成という立場から申し述べさせていただきます。

 今日は、三つのお話を申し上げたいと思います。一点目は、そもそもなぜGXを実行するのかというその意味と、その進め方の留意点について。二点目は、GX推進法がなぜ必要なのかについて。三点目は、GX推進法がGXの実現にどう役立つのかについてです。

 まず一点目に申し上げたいのは、そもそもGXは官民が総力を挙げて取り組むべき歴史的転換点の課題であり、その特性上、官の役割が極めて重要であるということです。

 釈迦に説法ですが、GXは百年に一度の抜本的なエネルギーインフラシステムのガラポンです。その取組の巧拙が将来の日本のエネルギー価格を左右し、日本の様々な産業の国際競争力を左右することになります。結果として、素材などの基幹産業の空洞化を招く可能性もあります。

 特に、エネルギー資源のほとんどを海外に依存している日本にとっては、エネルギーの安定供給、これを確保するとともに、いかに経済合理性高く脱炭素化を実現するか、これが大きな課題であり、産業界だけでなく、国民生活にも大きな影響を与えます。

 一方で、同時にGXは、日本が得意とする省エネ技術、新エネルギーなど、こういった技術をてこに、新たな成長を目指す機会ともなります。失われた三十年から日本を新たに再成長軌道に戻す重要な取組です。したがって、GXは、日本が、エネルギーの安全保障、経済合理性の高い脱炭素化、それから成長、この三つを同時に実現するという難しい方程式を解く、やらなければならない、かつ絶対に失敗のできない取組となります。

 また、GXの中でも、脱炭素、これは世界が一体となって取り組む必要があります。日本だけでは解決できない問題、民の取組だけでは解決できない問題もあります。例えば、CO2の排出をどうカウントするか、グリーンの基準などの標準化、これは国際ルールの設定の問題です。この動向により、日本が決定的に不利にも有利にもなります。

 このようなGXの歴史的な意味合い、難しさ、重要性を考えると、GXの取組は、民の自助努力だけではなく、官が枠組みをつくってリードしていく、こういったことが不可欠ではないかと考えております。

 二点目、本法案の必要性です。すなわち、GX推進法は、政策的てこ入れにより、GXの実現に向けた民のコミットメント、これを引き出すということ、それから同時に、タイムリーにGXの取組を進める基盤としてGXの実現への道を開くということです。

 脱炭素化の選択肢、これは、再エネ、グリーン水素、アンモニアなどなど、いろいろいろいろ種類があります。これらのクリーンエネルギーは、供給側、需要側共に、まだ技術的課題、経済性の問題があります。すなわち、供給側は、いかに安定的に、かつ安価にクリーンエネルギーを供給できるようにするか、需要側は、経済合理性が必ずしもすぐ合わない中でどうやって脱炭素手段を導入していくか、これに悩んでいます。

 GXの実現には、これらの悩みながら取り組んでいる民間の動きを加速化していく必要があります。その意味で、GX推進法は、まさに民が腹をくくって動き出すためのコミットメント、これをさせるてこであり、弾み車となります。

 脱炭素を実現するには、技術開発など、まだ解決する様々な課題があります。例えばグリーン水素など、こういった新エネルギーは、これから供給も需要も同時に立ち上げて、全く新しいサプライチェーンをつくっていかなければなりません。技術を磨き上げてコスト削減を進めていく、必要十分な量の新しいインフラを構築する、こういったリードタイム、これはかなりかかります。二〇五〇年の脱炭素化の実現というとかなり先に聞こえますが、実は、それに間に合わせるためには、今、日本として誰かが大規模な先行投資をして動き始めないと間に合いません。

 一方で、GXは、省エネ技術、新エネなど、日本にとって新たな成長の機会をもたらします。ただ、こちらはグローバルな競争になりますので、早く動き始めないと間に合いません。もし日本が遅れると、日本はこの機会を逃してしまうことになります。その意味で、本法案は、企業が今すぐ動き出すことを促す、まさにタイムリーであると言えると思います。

 グローバルには既に、御案内のように、政策主導で民を動かす取組が始まっています。昨年米国で成立したインフレ抑制法、IRA、これは十年間で五十兆円。これはエネルギー関連部分だけの試算と言われていますので、全体では百兆円を超えるという試算もあります。既にグリーン水素が経済性が現時点で合うような、こういったレベルの思い切った支援を打ち出しています。欧州も今年に入って新たに、ネットゼロ・インダストリー・アクト、ネットゼロ産業法とでも訳すのでしょうか、これで追加的な支援をつい最近打ち出しました。その規模は三十五兆円レベルと言われています。

 GXのグローバル競争に勝つためにも、一刻も早く、本法案を基盤として日本も動き出すべきだと考えています。

 三点目に申し上げたいのは、GX推進法を基盤として、GXの目的の実現に向けた様々な各論の具現化が、日本ならではの、より効果的な取組として進むということです。

 これはまた釈迦に説法で恐縮ですが、脱炭素化実現の定石は、まず一丁目一番地の省エネに始まります。そして、徹底的に電化を進めて、その電力を再エネなどのクリーン電源化します。その上で、どうしても電化できないエネルギーの需要、例えば工場の高温の熱需要など、こういったものをグリーン水素、アンモニアなどで対応します。それでもどうしても残ってしまうところ、これをCCS、DACなどで回収します。

 さらに、お天気任せ、風任せというところがある再エネ電源、これを安定化させるために、蓄電池、それから調整電源、この調整電源もクリーン電源である必要があります、こういったものを導入する。さらに、増えた電力をきちんと最適に届けられるように電力系統をきちんと強化していく。こういった様々な取組を組み合わせて、日本のエネルギーシステムを抜本的に変える必要があります。

 このように、脱炭素の取組は選択肢がいろいろいろいろあります。これは相互関係があります。例えば、再エネ、グリーン水素、アンモニアのように、何かを増やせば何かが減るといった関係もありますし、再エネ、蓄電池、調整電源のように、何かが増えれば何かも増える、こういった相互関係もあり得ます。

 したがって、いろいろな選択肢を追求した結果、日本が最終的に二〇五〇年に脱炭素化を実現したとき、どの選択肢がどれくらいの量を占めているか、結果的にどういうエネルギー構成になっているかは、現時点では分かりません。それは、今から二〇五〇年までの技術開発や技術の磨き上げによって、一義的には、どの選択肢が経済合理性が優れているか、こういう観点で決まります。なぜなら、需要と供給は、お互いの経済合理性判断が合致するかどうかで決まるからです。

 一方、GXのそもそもの目的を考えると、経済合理性に加えて、別の判断軸が必要になります。具体的には、エネルギー安全保障の観点から優れているか、それから、日本の成長に貢献するかという、この二つの政策判断です。エネルギー安全保障の観点が政策的に入ること、これは余り違和感ないところだと思いますが、成長分野についても政策判断が入るのはちょっと違和感を持たれる方もいらっしゃるのではないかと思います。これは、過去何度か起きている、日本が技術で勝って事業に負けるという、この事象を繰り返さないためです。

 日本が技術的にリードしていたものがいつの間にか海外勢に逆転されてしまうということ、過去に起こっています。一つの原因は、世の中への実装が進んでスケールアップが必要なときに、そのタイミングとレベル感を見誤ったためです。これは、正しい競合を見ていないために起こります。本来の競争相手はグローバル市場をにらんだ海外企業なのに、国内の競合相手との彼我差で、これに着目して小さな打ち手で満足してしまったり、また、自社内の他の事業の比較で、公平性を担保するために十分めり張りのついた投資ができないなどの理由によります。

 国益を左右するような重要なGXの取組については、民間の個別の動きに任せるだけではなく、事業化、量産化のところでグローバルに勝てるような大きなスケール、これを実現するような支援をしていく、こういった政策的な判断が鍵になります。

 GX推進法は、これらの様々な選択肢の磨き上げ、導入、これに民がコミットするための基盤であるとともに、道中どの選択肢がより経済合理性が高くなるか、エネルギー安全保障に資するか、日本の成長に貢献するかというGXの三つの目的を実現するという難しい判断、これを政策的にかじ取りしていく基盤にもなります。この基盤を基に今後様々な各論を政策、制度的に加えていくことによって、GXの目的の実現を加速化することができます。その際、日本はグローバルの動きから学び、より効果的に取組を進めようとしているわけです。

 例えば、欧州においては、EU―ETS制度で企業のCO2排出に対して課金をすることによって、十年がかりで需要側を動かすことから始めました。さらに、近年、大胆な支援策をスタートさせています。一方、米国は、先ほど御紹介したインフレ抑制法で思い切った支援、これを供給側に提供することによってGXを加速化しようとしています。少し乱暴に単純化して申し上げると、EUは規制から入って、時間をかけてじわじわと進めてきました。一方で、米国はここに来て大胆な支援主体で一気に動かそうとしています。

 翻って、日本の取組は、カーボンプライシングと投資促進策という規制と支援、これを一体的に運用していく、そして民を動かしていくということを志向しています。この日本ならではの取組は、頑張るところが報われる、こういうメカニズムが働きます。また、政策的なてこ入れに甘えずに、民の自助努力を促すことにもつながります。GX推進法を基盤としたてこ入れ、さらに、こういった日本ならではの政策、制度的な要素を加えていくことによって、エネルギー安全保障、経済合理性の高い脱炭素化、成長、この三つの目的を全て達成しようという難しい狙い、これが欧米の取組よりも効果的に進むのではないかと考えています。

 以上、三点申し上げました。まとめて、三点とその要点を繰り返します。

 一点目。そもそもGXは官民が総力を挙げて取り組むべき歴史的転換点の課題であり、その特性上、官の役割が極めて重要である。

 すなわち、百年に一度のエネルギーのガラポン、産業競争力を左右します。エネルギー安全保障、経済合理性の高い脱炭素化、成長、この三つを同時に達成させる。難しいがやらなければならない、失敗できない極めて重要な取組です。これは民の自助努力だけでは難しく、官のリードが不可欠であるということです。

 二点目。GX推進法は、政策的てこ入れによりGXの実現に向けた民のコミットメントを引き出す、これと同時に、タイムリーにGXの取組を進める基盤としてGX実現への道を開くということです。

 すなわち、二〇五〇年の脱炭素化を目指すには、実現するには、今すぐ動き出さないと間に合いません。脱炭素化の様々な選択肢、この取組に悩んでいる民間がすぐに今動き出すこと、これをコミットさせるてこであり、弾み車になるということ。

 三点目。GX推進法を基盤として、GXの目的の実現の加速化に向けた様々な各論の具現化が、日本ならではの効果的な取組として進みます。

 すなわち、規制と支援を一体的に運用する、こういった日本ならではの政策的な措置を講じて、二〇五〇年に向けて、経済合理性のある脱炭素化、成長、エネルギー安全保障という、民間の自助努力だけでは実現が難しい三つの目的を同時に実現するという、この取組を効果的に進めていくことが可能になるのではないかということです。

 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 どうぞ、参考人の皆さん、お水の方も遠慮なく。

 次に、石上参考人にお願いいたします。

石上参考人 ただいま御指名いただきました連合の石上でございます。

 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただきまして、ありがとうございます。働く者の立場から、GX法案に関する連合の考え方について意見を述べさせていただきたいと思います。

 連合には、約七百万人の労働者が四十七の産業別労働組合組織を通じて加盟をしております。GXの推進は、産業、企業、地域経済、そして生活者の日々の生活に大きな変革をもたらすというふうに考えております。

 特に、二酸化炭素を多く排出する産業にとっては、国際競争のルール作りだけでなく、産業そのものの転換も視野に様々な取組が進められており、連合の仲間からは不安と期待の声が多く寄せられております。本日申し上げる意見は、そうした背景をベースにしておりますことを御理解いただければ幸いです。

 初めに、今回のGX推進法案に対する連合の評価を申し上げます。

 昨年開催された政府のGX実行会議には、我々連合会長の芳野が構成員として参加をし、意見反映に努めてまいりました。取りまとめられたGX実現に向けた基本方針には、連合が繰り返し求めた公正な移行の実現が政策イニシアティブの柱の一つに加えられており、そのことは評価をしておりますけれども、今回の法案には公正な移行が含まれておらず、この点については修正を求めたいと思います。

 また、今回の法案のたてつけは、二〇三〇年目標、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けた移行の枠組みづくりに重きが置かれていると理解をしておりますけれども、具体的制度設計の段階においては課題があるというふうに認識をしております。

 本日は、そうした課題の中から、大きく三点、一つ目は公正な移行の実現について、二つ目はGX移行債等の投資対象の条件について、そして最後に成長志向型カーボンプライシングについて述べたいというふうに思います。

 まず一点目は、公正な移行の実現についてです。

 ここ数年のCOPの最終合意文書には、公正な移行が重要であるということが明記されてきました。我が国においては、二〇二一年十月に閣議決定されたパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略で言及されて以降、昨年末に取りまとめられましたGX実現に向けた基本方針においても、柱の一つとして新たに盛り込まれるに至りました。

 しかし、今後十年のロードマップに盛り込まれておらず、社会対話や社会保障など、具体的な取組も示されておりません。この社会対話や社会保障の必要性は、COP27の最終合意文書、シャルムエルシェイク実施計画にも明示されております。

 本法案は、排出削減と産業競争力強化、経済成長の同時実現を達成するための炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進を目的としておりますけれども、その土台となるのは、グリーンでディーセントな雇用への公正な移行の実現だというふうに思います。各条文に記載されている目的とありますけれども、これを炭素成長型経済構造への円滑かつ公正な移行の推進と修正することを求めたいというふうに思います。

 さらに、国際公約と競争力強化、経済成長の同時実現を目指すには、失業なき労働移動はもとより、地域脱炭素、産業移転に伴う地域経済の在り方を含む分野横断的課題の深掘りが必要であり、国、地域、産業の各レベルで様々な関係者が入って、政労使が加わる中で社会対話を行うとともに、省庁横断的対応に向けた体制を構築することも必要だというふうに考えます。

 なお、失業なき労働移動を円滑に実現するためには、多様な働き方に中立な社会保障制度、学び直しに必要な社会保障など重層的なセーフティーネットの構築、中小零細企業への雇用への影響を適切に評価をしていただいて、サプライチェーンだけでなく、国、地域レベルでの目くばせと強力な支援を行うことも必要だというふうに思います。

 これらの実効性を担保するためにも、公正な移行の実現を今後十年のロードマップに盛り込み、政労使が加わる中で社会対話の設置、分野横断的課題を深掘りをする、そういう体制を是非要望をしたいというふうに思います。

 二点目は、GX経済移行債等の投資対象の条件についてです。

 GX実現に向けた基本方針では、国による投資促進策の基本原則として、その基本条件には、国内の人的、物的拡大につながるものとあります。この基本条件により、雇用の拡大はもとより、産業人材への更なる投資が一層促進されることを期待するところでありますけれども、雇用の質も重要であるというふうに考えておりまして、この基本条件に、付加価値の高い、グリーンでディーセントな雇用創出につながるものを明確化していただきたいというふうに思います。

 さらに、投資先の企業においても、人権への取組を含む企業体の評価手続が確立されるとともに、いわゆるESGの社会的責任、Sや、健全な企業統治であるGの側面において、法令遵守や情報公開の取組が行われるように求めていきたいというふうに思います。

 欧米を中心に、国際市場においてはESGの取組を公開する社会的要請が高まっており、日本においても、本年一月から、有価証券報告書及び有価証券届出書においてサステーナビリティーに関する企業の取組等の開示が求められており、国内企業もこうした取組を進めることにより、国際競争力の確保はもとより、国際市場でのプレゼンスが失われぬようにする必要があります。

 政府においても、ESGに係る円滑な情報公開など、国際的なスタンダードの確立に向けたイニシアティブを取り、国内の中小零細企業に対するこうした取組の普及拡大に向けた技術的支援拡充など、環境整備を併せて行っていただきたいと思います。

 三点目は、成長志向型カーボンプライシングについてです。

 この具体的設計に当たっては、エネルギーのSプラス三Eを原則として、産業の競争力を確保し雇用への影響を最小限にとどめるため、脱炭素化への移行コストは、特定の産業だけでなく、便益を享受する国民全体で広く負担することを基本に、丁寧な議論の上で進めるべきと考えます。

 この点、本法案では、賦課金や特定事業者負担金の制度の枠組みが定められておりますけれども、特定産業のみに負担を負わせないためにも、附則に、脱炭素への移行コストは、国民、企業、自治体など国全体で負担し、適正に転嫁できる環境を整備する、その際、負担は公平性、透明性を確保することを織り込むことを求めたいと思います。

 また、これまでも、カーボンプライシングの在り方をめぐっては、連合の構成組織から様々な声が寄せられております。具体的制度設計の在り方によっては産業競争力や雇用にも関わる課題であり、具体的には、次の五点を念頭に検討を進めることを求めたいと思います。

 一点目は、複雑な現行のエネルギー環境諸税の整理、軽減が行われないまま、賦課金や特定事業者負担金だけを増やさないこと。

 二点目は、排出量取引制度が開始された後に予想される排出枠に関するルール改正や取引価格の不安定さによって生じる負担を、特定の産業、中でもGXリーグに参加する企業のみに負わせないこと。

 三点目は、具体的な投資、支援の対象の設定や中長期にわたる具体的制度設計など、制度の具現化に関しては、国が責任を持ち、前面に立って国民、企業、自治体などに十分な説明を行い、国民的な合意形成を丁寧に進めること。

 四点目は、エネルギー価格は国民生活や産業に大きく影響するため、特に現時点のような価格高騰の環境下にあっては、国の責任において過度な国民負担を抑制するようにすること。

 五点目は、必要に応じて制度の見直しに機敏に対応できる体制とすること。

 これらを含め、負担の在り方や予見可能性が確保できるよう、労使を含む関係産業の意見を十分に取り入れていただき、制度の細部設計や負担水準の設定を行うことを求めたいと思います。

 最後になりますけれども、GXの実現には技術革新などイノベーションが必要ですが、イノベーションの源泉は人であり、人の意欲を引き出すためには、適正な評価と成果の公正配分に基づく継続的な賃上げが必要だと思います。

 今春季生活闘争では、今週、山場を迎えました。先行する組合が相次いで満額回答を引き出し、高い水準での賃上げの流れが生まれております。今後重要となるのは、この流れを、中小企業や非正規雇用で働く仲間など、全ての働く者に波及させていくことだと思います。そのためには、労務費を含むコストを適正に価格転嫁できる環境が不可欠となります。

 今年だけにとどまらず、継続して、全ての働く人々への人への投資を促進し、GXだけではなく、経済の自律的成長を実現する上でも、引き続き適正な取引環境の整備に御尽力をいただくことをお願いをし、私からの意見としたいと思います。

 ありがとうございます。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井原巧君。

井原委員 おはようございます。

 今日は、四名の参考人の先生方から本当に貴重な意見の御開陳、御意見を頂戴いたしまして、また改めて、先生方から、この法案というのは百年に一度の大変な変革期の中の柱となる重要な法案だ、そういうふうにお聞かせいただきまして、身の引き締まる思いもいたしております。

 それでは、十五分でありますので早速お伺いしたいと思いますが、まず、大橋先生、重竹先生にお伺いしたいと思います。

 一つには、今回の法案のロードマップということについてもお伺いしたいなというふうに思っておりますが、大橋先生の方からも、時間軸という話がありました。時間軸の感覚を持つことで、脱炭素にすぐ取り組める代替的な技術が利用可能な業界もあれば、そうでない業界もある。

 先般、私も議連の会に出たんですが、鉄鋼業界なんかは物すごい投資が要るんですけれども、炭素を使わず水素で鉄を作る水素還元という技術が知られているが、まだまだ実用化には遠い。先ほどヨーロッパの方ではもう既に始まっているという話もありましたが、非常に遠いと言われております。

 また、代替技術がない業界を追い込んでもすぐにイノベーションが起きるわけではなくて、脱炭素の技術進歩のスピードに合わせた時間軸が非常に重要なのではないかということであります。さもなくば、起業意欲の減退や産業の空洞化を招きかねないというふうにも感じるわけでございます。

 そこでお伺いしますが、この推進法でありますが、時間軸をしっかり持って、かつ国際公約達成にしっかり合致できるスピード感も併せ持っているような設計になっているのかどうか、その評価をお願いしたいのと、課題があれば、足らざる点があれば、お聞かせいただければと思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、究極的には、炭素価格、炭素税、あるいはカーボンプライシングを課すことは、投資の一つのメルクマールになるんですね。余り低い炭素税ですと、やはり脱炭素の投資をするという意欲が湧いてきませんから。

 そういう意味では、中長期的にはしっかりカーボンプライシングをつけるべきだとは思うんですが、現状、投資を行っても、それに対する果実が得られるのが相当先である、まず技術開発しなきゃいかぬという場合において、いきなりカーボンプライシングを入れても、ほぼほぼ行動変容が生まれるわけがないわけであります。そういう行動変容が生まれるところに対しては、しっかり、ある意味、排出量取引を含めて行動変容を促すことは重要だと思いますが、そういう技術がないところについては、まずやるべきは、技術開発をしっかりやっていただく。

 この技術開発の金額というのは、やはり一企業でできないケースというのが、相当大きいです。よって、それなりの資金規模が必要だということだと思います。これが民間の融資でしっかりできればいいですけれども、場合によっては、国の何らかの、いわゆる中小企業の信用保証みたいな形のものが必要なケースがあるのではないか。そういうふうなものについての何らかの手当てというものが重要じゃないか。

 そうすることによって、銀行側も、金融機関さんも含めてちゅうちょしないという形でしっかり投資を進めていくということがまずは大変重要なことで、その次にまさにカーボンプライシングの世界の議論になっていくのかなというふうな段階を私は頭に置いています。

 ありがとうございます。

重竹参考人 重竹でございます。

 井原委員がおっしゃった時間軸というポイントは、非常に重要なポイントだと思います。

 私は、この法案を拝見して、やはり百年に一度の改革をするという覚悟を秘めた法案だというふうに理解をしております。大橋先生の方のお話にもありましたが、今までの政策的なやり方とは違う、単年度から脱した、複数年度をにらんでやっていくということ、そういったことも含めて、かなりの覚悟でやっていくということを秘めているんだろう。

 したがいまして、これから先、その時間軸を踏まえてどのような運用をしていくのか、これが大変鍵になるのではないかなと思っております。

 私からは以上です。

井原委員 ありがとうございました。

 私も少し不安になることがありまして、二十兆円財源を確保する、五年後、十年後にそれを補填していく、こういう話なんですね。

 私の地元なんかは製紙産業が非常に盛んで、日本一の製紙産業の町なんですけれども、先ほど申し上げた製鉄とか化学とか製紙産業とか、非常にCO2の排出が大きいわけで、そのことについて、企業も意識はしっかりあるわけですね。変換しないと時代の潮流に遅れてしまう、それも分かっている。

 ただし、今の円安等の不況の中で、利益が出ない中で投資をしていかなきゃならない、そして、三〇年、五〇年の目標にどうやってたどり着けるか、こういうことを逆算していくと、例えば、今現在の例ですけれども、先進的省エネルギー投資支援事業補助制度というのがあるんですけれども、これは、大企業なら補助金が二分の一、中小は逆に三分の二の補助率ということですが、頭打ち上限二十億ということなんですね。それを入れていくと、やはり間に合わないということになってくることもあるわけです。

 先生にお聞きしたいのは、官民で百五十兆円、年間十七兆円、もちろん、今のFITの財源とかそういうものも入っていますから、単純には割って考えられないわけでありますが、果たして、この二十兆円を原資でスタートして、目標にしっかり間に合うのかどうか。その辺のことが、正直、私も非常に不安があります。

 その点についての御所見を、では、大橋先生と諸富先生にお聞かせいただければと思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 国のお金なり、最初のシードのお金というのは、やはりその次に民間の持続的な経済を回すということの、ある意味での呼び水みたいな形で捉えるべきなんだと思います。

 最初のお金は、今後のGXに向けての投資の金額としては足りないことは明らかだと思いますが、まずこの金額でやってみてどうなのか、あと、実際に民間が動き始めると相当のお金も、海外も含めて出てくる可能性はありますので、まずそこの辺りの様子を見ながら、次のステップとして考えていくということなのかなというふうに思っています。

 ありがとうございます。

諸富参考人 金額的に、今正確な数字を持っているわけじゃないんですけれども、アメリカのIRAが投資しようとしている金額は、日本が二十兆円で考えている金額よりも相当大きいはずです、もちろん経済規模が違うわけなんですけれども。

 それから、二十兆円ですら十分なのかという点について、先生の御懸念のとおりではないかな、もっと規模が大きくてもいいぐらいです。ただ、菅前政権のときにようやく二兆円のお金がついて、今回二十兆円ですから、十倍になったということは一つ評価はできると思うんです。

 さらに、本当に、先ほど申し上げたようなスピード感と規模で世界で動いているのに伍してやっていけるかというと、もっと投資をしてもいいのではないかというふうに思います。

 ちょっとIRAの投資金額を持ってこられたらよかったんですけれども、済みません、ぱっと言えなくて。また必要があれば申し上げたいと思います。

井原委員 ありがとうございます。

 私も二十兆円というのはすごい額だと思ったんですけれども、四名の先生方の話を聞いて、あるいはヨーロッパの先行事例を聞くと、世界をリードして、これを成長産業として日本のものにする、こうなるとやや不安を感じたな、それが率直な思いでもございました。

 次に、中堅・中小企業、私どもなんかは地方の方であります、中小企業が多くあるわけですが、残念ながら、なかなか脱炭素についての意識というのは、紙面では見るけれども、自分のことのようになかなか感じていない。

 これからの肝というのは、いかに広げていくかということだろうと思うんです。それが企業の価値として、まさに先ほど話があった付加価値として、どう捉えていくか。

 少し話はずれるんですけれども、私もこういう経験があって、よく、ISOという品質基準の話があります。私も当時市長だったんですけれども、市役所の評価を上げるために実はISOの9001というのを取ったことまでありまして、これは国際標準化機構が出している、製造業とか小売業とか幅広い業界で認証規格があるわけですね、お金もかかりますけれども。

 それが結果的にどういうことになっていったかというと、サプライチェーンの取引のときに、ISOの認証をもらっていないと取引ができなくなるような、あの当時、そんな環境ができて、結果的にはずっと下の方まで、面倒くさいなと言いながらも、しかし、みんながISOを取っていった。だから、これが一つの見える化の一部なのかなというふうなことも感じるわけです。

 先ほど大橋先生が、いかにデジタルを使って見える化していくか、これはもちろん現実のCO2の排出量の見える化も大変必要なのでありますけれども、企業が、それに取り組もうとしている企業さん、もう既にできた企業さんとか、そういうふうに色を変えなきゃならないかも分かりませんが、そういう見える化をやはりしていくことが、一番最終的な受給者の、消費者のところにまで届くことなのかなというふうにもすごく感じるわけですが、その辺の御所見をお伺いしたいと思います。

 時間の関係もありますから、もう一回大橋先生と、石上さんからお願いできればと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 中小企業の皆さんに対してGXをどう広げていくのかというのは、相当重要な問題だと思っています。

 実際には、まず省エネからやっていただきながら、設備投資のサイクルの中で、どう電化なり、あるいは別の脱炭素設備なりを入れていくのかということなのかなと思いますが、これは、見える化も含めて、個社でそれぞれやってくれというのは、相当厳しい話になると思います。

 ある程度の規模の、サイズの人たちが集まって、中小企業が一つのグループとしてどうしていくのかということを、是非、しっかり意見交換しながら皆さんが進めていけるような形が重要なのかなと。そうした中で、ある程度標準化された見える化の仕組みというものもつくっていきながら、サプライチェーン全体として脱炭素化をどう進めていくのかということをしっかり考えていただく、そういうふうな座組をつくっていくことがとても重要だなというふうに感じます。

 ありがとうございます。

石上参考人 ありがとうございます。

 中小企業の課題としては、最初のスタートは、自分の企業がどれだけ二酸化炭素を排出しているのか、定量化自体がまず問題で、その知識というか、その手だて自体が実はない。そこがなければ脱炭素のスタートを切れないということだと思います。

 その意味では、人材の育成なり、そういった大企業が行っている取組をどうやって中小に広げていくのか。そういった経済界の中での努力も実は必要だというふうに思いますし、国の支援としても、そういったノウハウを持った人たちを中小のところに、そのスタートを切るところにしっかり派遣して、そして、自分の会社にそういう人を採用しやすい仕組みというものも、手助けとしては僕はあるというふうに思います。

井原委員 最後になりますけれども、私の地元で、先般、カーボンニュートラル協議会というのをつくりました。結構先進的なんですけれども、今回、GXリーグというのもできますが、その中の枠組みとかチームとか分野とかというのはこれからの課題なんだろうとは思うんです。

 我々は四国の方ですけれども、今、石炭で発電を製紙会社はやっている。そこに樹脂から出る黒液を入れてカロリーを取っているんですけれども、いろいろ算出していくと、私も首長の立場として市のCO2を考えてみると、焼却場があるわけですね、一般家庭ごみの焼却場。そのごみの焼却場をもうやめて、改築もせず、そのごみを全部集めて、分別はしますけれども、それをトンネルコンポストで固めて、石炭の代わりに、では製紙会社の方に入れて、トータルでのCO2の削減をしようじゃないか、こんな協議を今しているわけです。

 そういう評価をするときに、個体、単体、業界という仕分の中で行っていく中で、どのようにこういうものを、官民の取組についての評価を今後していくかというのが課題になってくると思うんですが、その辺の所見を最後に大橋先生にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 本当に、いろいろ技術的には、異業種の副生成物をつなげることによって、実はいろいろなGXの取組がいろいろなところで試みられていると認識しています。

 ごみ処理場でも、出たCO2をメタネーションするだとか、あるいはそこからリンを取って肥料にするだとか、いろいろな形での、これまでなかったような利用の仕方が出てきている。こうしたものを、今、実は評価する標準的な手法というのが、恐らく、先生おっしゃるように、ないんじゃないかというふうには思っています。

 これはある程度、いろいろな小さい実験的な取組をちょっとまずは拾い上げてきて、どの程度広がりが見せられるような取組があるのかということを見ながら、そうした取組を類型化して、ではどう評価するんだというところへステップを持ってつなげていくということはとても重要だなというふうに感じました。

 ありがとうございます。

井原委員 質問を終わります。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 今日は、大橋参考人、また諸富参考人、重竹参考人、石上参考人、四人の方から大変貴重な御意見を頂戴いたしまして、本当に感謝を申し上げます。

 私も、地元が兵庫県の尼崎市というところで、元々は阪神工業地帯の製造業の地域であったんですけれども、やはり最近は大分状況も変わってきまして、工場もどんどん撤退していったりですとか、残っている産業というのも、非常に特殊な技術を持っていたりですとか、そういう技術が、かなり高度な部分だけ残ってきているなというのを私も非常に感じております。

 そういう意味では、ちょっと一問、まず重竹参考人に冒頭お伺いをしたいというのが、重竹参考人が三点挙げられていた中で、今まで日本は、技術は勝っているんだけれども、事業というところで負けてしまうというか、うまくいかないというふうなことがあるんだというのは私も非常に大事な視点だというふうに思いまして、特に製造業というところは、そういうところを間違えるとやはり一気に国際競争力がなくなってしまう。特にこのGXという分野では、そうした轍を決して踏んではいけないなということを強く感じております。

 他方で、この議論をずっとしていく中で、では、例えば自動車でいうと、EVでいうと海外の方がどんどん進んでいて、日本のメーカーは余りEVが、そんなにできていないじゃないかとか、例えば再エネでいうと、風力発電でいうと海外のメーカーばかりじゃないかですとか。

 そういう意味では、このGXの分野で本当に日本の国際競争力というのが発揮をしていけるのかというのが、非常に、大変大事な、今しっかりやらないといけないというタイミングだというふうにも思っておりまして、そういう意味では、この法律というのを今回しっかりやらせていただかないといけないというふうに思っております。

 そういう意味では、重竹参考人に、このGXの分野の今までの日本の取組がどうだったのかという現状の御認識と、あと、今後、しっかりこの分野で、技術開発をこれからやっていかないといけない分野もあると思うんです。ある意味、この法律がそうしたことを進めていく基盤であるというふうには思っておるんですけれども、産業、また事業という点でも、しっかりこれから日本が勝っていくためにどういう点がやはり重要なのかということについて、改めて御所見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

重竹参考人 重竹です。

 中野委員がおっしゃった技術の点はとても重要なことだと思います。

 日本が今どうかということもそうなんですが、やはり、EUの例をちょっと御紹介しておきたいなと思います。

 EUは、EUタクソノミーという新しいアイデアをやって、あれはビジネス的に見ると、自国の中の産業、自国の技術として有利なもの、こういったものを守ったり育てたりするということが明らかに後ろにある中で、どういうものをGXという冠の中で育てていくかという、非常にうまいやり方をしているなというふうに思います。

 したがって、日本も実は、新しい技術、過去にある技術でも非常に優れた技術もあります。それをではどういうふうに伸ばしていくのかということもそうですが、今やっている技術のどれを更に推して伸ばしていくのかということ、これはGX全体のバランス、どの選択肢をどう考えていくかということの中でやはりこれから考えていく、決めていくことなのかなというふうに私は考えております。

 以上です。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 少し法律の中身の御質問もさせていただければと思っております。

 今回、成長志向型カーボンプライシングということを導入させていただくような形の法案であります。

 大橋参考人と諸富参考人にお伺いをしたいというふうに思っておるんですけれども、成長志向型のカーボンプライシング、排出量取引の制度と化石燃料の賦課金という二つの制度導入を今回やるということで、このカーボンプライシング、いよいよ導入できたという、非常に大事なことだと思っておるんですけれども、先ほど、御意見を伺っていくと、諸富参考人の方では、諸外国の例と比べても必ずしも、もう少し取組を進めてもいいんじゃないかというふうな、そういう御意見もあったかというふうに思います。

 私、特に排出量取引の制度を今後どのように広げていくのかというのは非常に大事だと思っておりまして、今回、電気のところで有償オークションという形で導入が先行していくという形なんですけれども、ほかの分野についてもどういうふうに広げていくのか。

 この排出量取引の分野、今回まずは導入をするということだと思うんですけれども、これについて、一旦、導入の規模としては十分なのかどうかというところ、あるいは、今後これを更に拡大していくためにどういうところを力を入れていけばいいのかという、この二点について、大橋参考人、諸富参考人にお伺いできればと思います。

大橋参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、成長志向型ということには、これは多義的な言葉だと思いますが、私が捉えているのは、やはり企業が自発的、自ら率先して投資をしながらこれに参加をしていくという意味での成長志向型だというふうに見ています。

 そうした中において、排出量取引というのを、ともすれば、足りない部分をお金で買ってくることで何とか済ませているというふうな捉え方をする方も結構いると思うんですけれども、実のところ、やはり投資をしっかりして、そのしっかり投資したものに対して、対価を余剰枠という形で取ってくる。それが排出量取引の、ある意味、思想なのかなというふうに思っています。

 これについては、やはり成長志向型という限りにおいては、しっかり投資が促されるような形での枠づけ、あるいは無償枠の配賦というものをしっかり考えていく必要があって、単に機械的な枠づけの在り方だけで本当に投資が進むのかどうかということはしっかり見ていく必要があると思います。

 他方で、炭素賦課金及び有償オークションについては、これは国民負担ということも勘案しながら、国民負担を増やさない枠で徐々に広げていくということなのかなと認識していまして、これについては、やはり今の国民負担、これだけ様々な物価が上がっていく中において、考え方の哲学としては正しいのかなというふうに思っています。

 ある意味、しっかりカーボンプライシングに持っていくためには、FITも含めて、しっかり低減をさせていくというふうな取組も併せてやっていく必要があるというふうなことと思っています。

 以上です。

諸富参考人 中野先生、ありがとうございます。

 先生の御質問にまずお答えするとすると、取りあえず排出量取引制度、炭素賦課金という形で制度をつくって、スタートさせたのはよかったと思います。

 ただ、その規模が十分なものなのかということで、今後はどうなっていくのかという点ですけれども、例えばEU―ETS、ヨーロッパのものでいきますと、産業のセクターでどれだけ減らすべきかという国家の目標がありまして、何年頃までにどれだけ減らすのか、そして、それを排出量取引制度で実現するという、目的と手段の関係がはっきりしていまして、それに十分な量まで減らすということで、キャップと呼んでいますけれども、排出総量、産業セクターの排出総量も決めちゃうわけですよね。それを総量として、それを鉄鋼、造船、何とかというふうに割っていきまして事業所レベルまで下りていくということで、そうすると、各事業所レベルからの排出量を足し合わせると、ちょうど産業の全体目標が達成される。こういう、すごく全体と個別の、個のレベルの関係がはっきりしているんですね。

 今回GX―ETSを始めるんですが、それでもって総量をどうしたいのかというのは定められていないわけなんですね。ただ、個々の参加する企業にとっては、あなたが余剰排出枠というのを獲得して人に売りたいならば、目標としては、NDCに沿った直線的なラインを引いた上で、それを下回る削減をしなさいと。これは結構野心的なものでして、意欲的な人が意欲的にやっていこうというには、それなりに野心的な設計になっていると思います。

 日本の考え方としては、まずそれを設定した上で参加をしてもらって、結果的に排出削減の実が取れて、結果的に全体としてもそれなりにいったなというような、ボトムアップ的な発想のような気がします。

 問題は、設計はいいんですけれども、全員参加型になっていないということですね。ですから、欧州の、あるいはアメリカの排出量取引制度の通常の考え方は、一定以上の規模の排出をする企業ならば強制的に全員入りなさいというふうになるはずなので、読めるわけですね。この制度で一体どれだけ減るかというのが読めるんですけれども、日本の場合はボトムアップ型になっているために、この制度を入れたのはいいけれども、それでどれだけ、日本が減らさなきゃいけない量のうちこれで実現できるのかが分からないんですね。

 それがちょっと問題で、最初のトライアルと言われる三年間、今年から三年間はいいと思います。ただ、第二フェーズに入るときはきちっと義務化して、この制度で産業セクターからの排出をコントロールできるような、つまり、全員参加型にすべきじゃないかというふうに思います。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 もう少し制度の話で、ちょっと大橋参考人に御質問させていただきたいんですけれども、エネルギーに関するいろいろな仕組みがあって、非常に複雑になってきているというふうな御指摘はあったかと思います。確かに、法律を作るときにいろいろな方からお話を伺う中で、かなり重複的なものがあったり、いろいろな税があったり賦課金がかかったりという形で、制度の狙い、あれもちょっとよく分からないんじゃないかという御指摘もあったり。

 ある意味、今回は国民負担を増やさないということで、炭素の賦課金が下がってくる中でカーボンプライシングを導入するとか、FITが下がっていく中で導入するということで、確かに全体的な負担は増えないようにはなっているのかなというふうには思うんですけれども、私も、いろいろな制度を少し整理をしていかないと全体として分かりにくいんじゃないかという問題意識は非常に持っているんですけれども、ちょっとこの点について、今後、具体的にどういうところが進めていけるのかというところも含めて、少し大橋参考人に御意見を頂戴できればと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 そもそも、我が国における国民負担、炭素に対する国民負担は幾らなのかということについて統一的な見解がないというところが一つ大きな問題かなと思っています。

 人によっては、温対税である、これは、炭素と比例的に税がかけられているものを明示的なカーボンプライシングと呼んで、それのみが国民負担だ、二百八十九円であるというふうに言う方がいます。

 他方で、本当にそれだけなのかと言われると、必ずしも明示的に炭素比例ではないにしても、炭素に対する国民負担というのは、これは省エネ法だとすごくしっかりやって、人も張って規制しているわけですよね。省エネ法もあります。温対法の中で非化石証書の取引というのもやっていて、これについては、FIT、FIP、あるいはそのほかのノンFITも含めて、環境価値というのを取引しているわけです。

 こうしたものも含めて、実はいろいろなところで、あるいは自治体での、東京あるいは埼玉での自主的な排出量取引も、排出権取引もやっているわけです。そうしたいろいろなところでいろいろな取組をやっているわけですが、それを総体としてしっかり見るものがないんですよね、今。

 そういう意味でいうと、今度、GX推進法の中で、排出量取引というものを中心にして、しっかり国民負担を明示化するという取組をやるわけですから、そこに様々な諸税の話、あるいはこれまでの省エネ法を含めた取組の話、そうしたものをしっかり収れんさせて、そこで明示化させる必要があるのではないかというふうに思っています。

 物によっては、ガソリン等の税も含めて、これは必ずしも、一般財源でやっているから、今回、炭素の負担ではないというふうな整理にすることについて私は問題はないと思いますけれども、ただ、炭素の負担をしているわけですから、その負担をしているというところの見せ方の中にはしっかり入れてもらうことで、今後、国際交渉の中で、日本は一体一トン当たり幾ら負担しているんですかという中にはしっかり、負担しているものを明示的に明らかにしてもらいたい。そういう意味での整理は必要だというふうに思います。

中野(洋)委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間の関係で、石上参考人に御質問できなくて、申し訳ございません。

 時間が来ましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 本日は、大変有意義なお話を、参考人の皆様、ありがとうございます。

 まず、石上参考人に伺わせていただきます。

 GXは重要であって、日本の産業を強化していく上でも不可欠なものだというふうに思います。ただ、問題は、試算によっては、雇用のミスマッチというのが物すごく起きるということは確かなことなんだというふうに思います。

 北欧などでも、産業の強化のためにいろいろやるけれども、個人へのセーフティーネットはしっかりやりますというようなことで政策を打っているわけですけれども、石上参考人の陳述からも、公正な移行というのが重要だということと、重層的セーフティーネットの構築ということも言及がありました。

 これは、その前に学び直しですとかというような具体例もありましたけれども、もう少し詳しく、この重層的セーフティーネットの構築とは何をやるべきかというようなことについて、御意見を伺えればと思います。

石上参考人 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたとおり、カーボンニュートラル実現には、産業構造の転換、そして雇用、地域経済を含めた様々な大きな影響が出るというふうに我々は考えております。そのマイナスの影響を最小限に抑えていくということでいけば、雇用対策と経済対策を同時に推進していくということがまずは基本的に重要だというふうに思っております。

 具体的なといえば、多くのことがあるんですけれども、少し言わせていただければ、労働者に関しては、やはり教育や訓練というものの実施や、住宅や生活の支援、そして、ディーセントでグリーンで持続可能な雇用をつくり出していくということ。結局、再就職をしていく、労働移動していく先の労働ということだと思いますが、そこをしっかりつくっていくということが必要だというふうに思います。

 連合としては、失業なき労働移動ということだけではなくて、公正な移行の中にも地域経済というものが非常に重要だ、ここの移行も大きな論点だというふうに考えておりまして、ここに対する議論も是非お願いをしたいというふうに思います。

落合委員 今、地域経済ということにも言及がありましたが、諸富先生の資料の一番最後のところの二〇〇九年のオバマ政権下での法案については、大変示唆に富む内容だというふうに思います。ここにも、失業と低所得者への逆進性に排出枠の売却収入を充てるというような仕組みも紹介がありました。

 ここの一番最後に、地域経済への影響を緩和するための措置というものも書いてあるんですが、ここをもう少し詳しく、参考になる部分があれば教えていただければと思います。

諸富参考人 この部分については、実は、オバマ政権のワックスマン・マーキー法案の内容ではなくて、法案の内容は一と二なんですね。実は、下はちょっと私の方でつけ加えたんですね。

 これは非常に、確かに大事だと思っています。実際に、日鉄さんが呉の製鉄所の高炉を止めましたけれども、それがやはり甚大な影響を呉周辺に及ぼしているんですよね。なかなか次が見えてこないということですね。やはり脱炭素化というのが進展していくと、単に、日本全体では雇用が増えたとしても、地域地域によっては非常に大きな影響が出てくる。

 例えば、これは具体的な話でいうと、ドイツは、脱炭素で、石炭を完全に閉鎖するスケジュール、法案を出したんですけれども、やはり産炭地を持っているんですね、今も。そこに対して相当な投資を行いまして、雇用対策、それから産業構造転換の支援金を出す措置とセットで鉱山を閉鎖するという法案が通っています。

 それから、ハンブルク等の港湾等についても産業構造のところで影響が出るんですが、ここは造船業から例えば風力産業の拠点に転換をするといったように、必ず、次の新しい産業でどういった雇用をつくり出すかということとセットで、同時に、労働者の支援でオバマ政権が提示した一、二のような支援を併せ持って、総合的な公正な移行への対策としているという点がやはり見られます。

 日本は、ここの一、二も、それから特に三が全く論点として欠けているという点は問題提起をさせていただきたいと思って、書かせていただきました。

 以上でございます。

落合委員 ありがとうございます。

 地域や雇用への影響、これをいい形に転換していけるように施策を政府が打っていくということは、これは民間だけでは限界がありますので、政治の役割としては重要なことであると思います。そもそも、移行していく移行先が成功しなければ、この施策自体は失敗に終わってしまうわけです。

 そこで、重竹参考人に伺います。

 陳述の中に、社会実装ぐらいまでは成功してもスケールのところで負けてしまう、技術は持っているのにそれが生かせないで終わってしまうことが最近続いているというような言及がありました。

 確かに、太陽光パネルも、日本が先行していたはずなのにいつの間にかこういう状況ですし、蓄電池も、ハイブリッド車などで最初に高性能なものを作ったのは我が国であるにもかかわらず、今、電気自動車ではかなり厳しい状況になっているという状況です。

 ここも、スケールを一気にぼんとやる上で、政府の役割ということが今回求められているわけですけれども、では具体的に政府は何をやるべきかというところについて、もう少し詳しく伺えればなと思います。

重竹参考人 ありがとうございます。

 企業がどうしてそのタイミングで大きな動きをしないのかということを私の陳述の中で申し上げましたが、もう一つ、最も根源的なことは、そのこと自身が事業機会として魅力的に見えない。魅力的に見えれば、当然、私企業ですから、自らリスクを取って大きなお金を張りに行きます。通常、それはいろいろなニーズが自然に起きてきて、市場が大きいというのが分かります、市場が成長していると。そうすると、当然そこは魅力的なので、企業はそちらの方向に向かって走り出します。

 GXの場合は、先ほど申し上げたように、幾つかいろいろな選択肢があります。その選択肢がある中で、どの選択肢が本当に主流になるのかというのは、今の段階ではまだ技術的なことが解決していないので見えないという中で、本当に大きく動き出すというのはとても難しいというのが今の状況だと思います。

 したがって、やはり政府がやっていくことというのは、ある一定の魅力度をちゃんと見せること、すなわち、これはこのくらいの需要になるんですという、例えば明確な目標を、ある一定の時間軸で示すこと、若しくは、少なくともそこまでの区切りの間ではこうであるということをちゃんと企業が予見できるようにしてやることというのがとても重要だなと思っています。

 普通のビジネスの場合はその予見可能性まで含めて企業が判断すべきなのですが、今回のGXの話は、余りに不確実性が高い、それからあと、余りにかかるお金が大きいというところから、やはりそこは政府が、ある一定程度の目指す姿みたいなものを示すというのが重要だと思います。

 私からは以上です。

落合委員 相当有能な方が経産省にいっぱいいないとこれは難しい問題で、官庁の組織もこういう時代に合わせて変わっていかなきゃいけないのかなということも感じました。

 大橋参考人に伺いたいことは、電力もGXとかなりリンクしているわけですけれども、電力政策にもお詳しいということで、伺いたいのが、電力自由化に向けて、電力システム改革第三弾まで、数年前に法改正が行われました。

 今の状況は、まず、小売の新規参入した企業がかなり苦境に陥っているということですとか、あと、ここ数か月、大手の電力会社も、不正の問題等も起きています。これは、電力システム改革がまだ不完全なのかなというようなことも感じるわけであります。

 それにプラスして、またGXに電力システムも対応していかなきゃいけないということで、更にシステム改革を今後行っていくということになりますと、何を具体的にやるべきだというふうにお考えでしょうか。

大橋参考人 ありがとうございます。

 電力システム改革、二〇二〇年で一旦の終了を見た電力システム改革の大きな目玉は、やはり経済性をしっかり発揮させるということだったんだろうと思います。市場の価格をシグナルにして、そのシグナルを中心にして電力システムの末端まで、ある意味そのシグナルが働くようにするということがこれまでやってきたことなんだと思います。

 ただ、電力は、スリーEというように、経済性だけではなくて、やはり安定供給と、あと脱炭素、環境適合性といいますけれども、その二つの部分がバランスよく、正三角形で立ち上がって初めて国益にかなう電力事業になるんだと思います。

 仮に第二弾の電力システム改革と呼び得るのであれば、その第二弾については、経済性、これは比較的短期的な視点での経済性の議論だったわけですけれども、そうしたものはしっかり踏まえながら、今後、安定供給と脱炭素という、ある意味中長期的に達成しなきゃいけない目的というものをしっかりどう達成するのか。そして、短期的な経済性の中には、しっかり行政の組織が市場の動向を監視するということを、いま一度、もう一回その監視の体制を振り返るということが恐らく重要なのかな、そうして初めてスリーEというものがバランスよく立ち上がるのかなという感じがしております。

 ありがとうございます。

落合委員 ありがとうございます。

 あと二分ですので、石上参考人に二問目を伺えればと思います。

 最後の方に価格転嫁のお話がありました。お給料が、賃金が上がっていくような経済をつくっていくためには、健全に価格転嫁が、中小企業も含めてなされる必要は確かにあるというふうに思います。しかも、これから環境にもコストがかかってくるとなると、それもしっかり上乗せできるような環境をつくるべきだということで、時代の転換点には、価格転嫁の問題というのは結構重要な問題であることは確かだと思います。

 今、価格転嫁はしっかり行われている状況になっていると思うかということと、もし不十分なところがあるには、これを政府がやるべきだという御意見がありましたら、伺えればと思います。

石上参考人 ありがとうございます。

 一般的な価格転嫁の問題というのでいけば、現在でもまだ不十分だというふうに思っておりますが、カーボンニュートラルに関わる問題としては、移行に関わるコスト、これを国民全体で負担するということが重要だというふうに思っておりまして、それがある意味価格転嫁だというふうに思います。

 これは、やはり国民全体で、カーボンニュートラルというのがどういったものを目指しているのか、どういう社会を目指しているのか、カーボンニュートラルを実現することによってどういう社会を実現しようとしているのかということを理解、共有するということ。その上で、その目的のためなら、ある意味、消費者価格が高くてもその製品を買うというような国民の行動というものにつなげていくということが、実はこのカーボンニュートラル実現のためには重要な一つの要素だというふうに思っております。

落合委員 ありがとうございます。終わります。

竹内委員長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔と申します。

 今日は、参考人の皆様方、お忙しい中にお越しいただき、また、貴重なお話も賜りまして、誠にありがとうございました。

 まず最初に、私ども日本維新の会の本法案に対するスタンスを申し上げますと、もちろん脱炭素を進めなければいけないということで、このGXは非常に大事だというふうに思っておりますが、私どもはもっともっとこれを加速化させなきゃいけないんじゃないかと。スピードの面でも、規模の面でも、そして対象範囲という意味でも、もっと力を入れていかないと国際競争にも負けてしまう。地球環境問題にしっかり取り組むことも大事なんですが、重竹参考人がさっきおっしゃっておりましたが、まさに百年の計の中で、遅れてしまったら、我々としても、子孫に対しても取り返しがつかないことになる、そういう重要な法案だというふうに思っております。

 そういう中で、今日は興味深く様々なお話を伺いましたが、特に、最初に重竹参考人がおっしゃったことが非常に興味深いなというふうに思ったんですけれども、アメリカは大胆な投資から入る、EUはじわじわと規制を進めていく、そして、日本はその間だというような形で私は受け取ったわけなんです。

 日本は、やはり自主的な行動を促すというのは非常に得意ではあるんですが、ただ、今週からですか、マスクをもう着けなくていいよというふうになったわけですけれども、なかなか、町中を見てみても変わらないということがあります。皆様からのお話をお伺いしていて、GXを進めるために、ある程度の参加を促すようなことを、強制的なものを、これは諸富先生もおっしゃっていましたが、そういったことをやはりやらないと間に合わないんじゃないのかなというふうにも思っております。私は、おとといの質問でも、やはり枠組みには早く入れる必要があるんじゃないかというふうに申し上げました。西村大臣、まだそこまで踏み込んだ発言はされなかったんですけれども。

 ただ、やはり、ペナルティーを三年後からもう科すべきだというふうに諸富先生もおっしゃいましたが、そこまでいかなくても、少なくとも、できるだけ早い段階でこの排出権取引の枠には一定程度のCO2を排出している企業に対しては入ってもらうというようなことも必要だというふうに思いますが、仮にペナルティーを科さなくても意味があることなのかどうかということについて、諸富先生にまずお伺いしたいと思います。

諸富参考人 ペナルティーを科すのが一番ベストだと思いますが、科さなくても、それはまさにフェーズツーの中で、経済産業省がいろいろ示している資料で、フェーズツーで制度を、規律を強化しますみたいなことがだっと書いてあったと思うんですよね。

 ですので、基本的に十年前と違っているのは、投資家もSDGsを非常に重視をしていて、積極的に排出量取引に入って削減に取り組んでいる企業を評価するようになってきていると思うんですよね。

 ですので、その実を上げている企業をできる限り情報公開を通じて押し出していってあげる、そうすると、そういった企業が好循環に乗っていくので、仮にペナルティーがないとしても積極的に遵守をしていく、削減していくインセンティブが働くんじゃないかという、割と楽観的というか、積極的な評価に乗ればそうだと思います。

 ただ、一方で、全員がそういった形で乗っかってこれるかなというところが、私にとってはちょっと若干不安なところではございます。

小野委員 ありがとうございます。

 ペナルティーを科すかどうかは別にしても、枠組みの中に入れる、見える化をしてちゃんと説明義務を課すというところは、これはある程度の規模の企業であれば、ある意味これもESGの投資ということから見ても、早く取り組むことがメリットもあると思いますし、また、経済的な損失を課さない、負荷を課さないという意味でも、これは許容できるものかなというふうに思いますので、私たちは、政府に対して、そういったことも早くやるべきだというようなことも法案の修正案としても示していきたいなということを今考えております。

 次に、大橋先生にお伺いをいたします。

 私もこれはまさに質問をしていたことなんですけれども、今の様々な化石燃料関係のところに暗示的なカーボンプライシングというものが課されているようなことがあろうかと思います。例えばガソリン税なんかもそうなんですけれども、これを私たちも、やはりGX社会を目指すに際して、しっかり統合して、そして、炭素比例でちゃんと負担をしていくような社会にしていく。そのために、経産省だけじゃなくて、財務省も巻き込んだ上で再編を果たすべきなんじゃないのかというようなことを申し上げたんですが、なかなか財務大臣も塩対応ということで、税の創設の経緯が違うとか、使い道が違うとかというようなことをおっしゃるわけなんですね。

 先ほど私が新鮮に感じたのは、大橋先生が、使途を現行に維持したままでもやるべきだというようなことをおっしゃいました。その一つは、先ほど中野委員とのやり取りの中でお答えがあったと思いますけれども、国際的に見て、対外的に明示的なカーボンプライシングを我が国としてどれだけできているのかという意味があるということだというふうに理解はしたんですけれども、国民の側、消費者の側に対して、そうした、使途をいろいろ変えないというところは現実的な政治としてあるのかもしれませんが、化石燃料諸税を明示的にしていくことの意味というのは、我が国内的にはどういう意味があるのかということをお伺いしたいと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 まさに先ほどガソリン諸税のこともお話しさせていただきましたが、ちょっと私は歴史的経緯はよく分かりませんけれども、今回のGX推進法の中での一つの多分特徴なのは、財源がグリーン投資のところとひもづいているというところなのかなと思いまして、海外だと一般財源の中でやっていく国もあるのかなと思っています。そこの中が若干、我が国の今回のたてつけが違うところで、そういう意味では、しっかりグリーンに投資をする財源をひもづけて明確化しているという意味では、ある意味での分かりやすさというのはあるのかなと思います。

 そうしたたてつけの中で、国民として、出発点の根っこの下にどれだけの負担があるのかということを見せるのは、これだけGXの話を産業構造の転換も含めて議論している中で、やはりそれというのは必要なことなのじゃないかなと思います。

 どっちかというと、根っこは議論しないで、根っこの新たにつけ加わったところばかり議論するところがあって、そういう意味でのある意味での整理というのはすごく重要だなと思いますし、また、我が国は一般財源もしっかり確保しなきゃいけないという観点でいえば、少なくとも見せ方は、要するに、どれだけ負担しているのかということぐらいは見せていただいて、そうした中で、あとグリーンの財源はどう確保していくのかというのは、それはそれでまた別途、しっかりその時点その時点で議論していただければいいのかなというふうに思っています。

小野委員 ありがとうございます。

 財務省にもちょっと聞いていただきたいお話だったなというふうに思います。先生もお優しいので、まずは財務省にそういうところから入ってですね。

 ただ、一時議論されていて、財務省も否定していたと思いますけれども、これから電気自動車にどんどん替わっていく、あるいは燃費のいい自動車に替わっていくので走行距離課税をしましょうなんという話が、これはそういう事実はありませんというように否定はされていましたが、報道で出たりもしていたわけなんですね。

 ただ、そういうことをやるよりも、どんどんどんどん減っていく例えばガソリン課税の方を炭素比例にしていく、あるいは、後になればなるほど、これは西村大臣がおっしゃっているように、GX社会をより加速化させるために、そちらの税を上げていくということの方が本当はGX社会に向けて近道なのかもしれませんし、国民の納得も得られることなのかもしれません。

 せっかく環境のために電気自動車を入れたのに、税が上がってしまったというようなことが果たしていいのかどうか。もちろん、一般財源としてそれを確保することは大事なことなんですけれども、ただ、やはり、そういうことを経産省の中だけで考えるのではなくて、国全体として、そして、国民も納得感があるような形で制度設計していくのが極めて大事かなというふうには思っております。ありがとうございます。

 次に、大橋先生、一番最後に本当に重要なことをおっしゃったというふうに思います。アジャイル型の政策を遂行していく、こういった体制を取るべきだというふうにおっしゃいました。私たちも、今回の法案がやはり十分じゃない、もっともっと加速化させて、より強力に進めていくべきだと。ただし、もちろんそれは国際情勢も考えなきゃいけませんし、大橋先生もおっしゃったように、技術がついてこれていないときにやっても、これは非常に国民に重い負担を課すだけになってしまいますので、そういったこともちゃんと視野に入れながら進めていく必要があると思っています。

 ただ、その中でやはり重要なのが、適時適切にアジャイル型で制度設計を最適化していくことだというふうに思いますけれども、このアジャイルについて、この法案に関してどういうふうに進めていくべきだというようなお考えがもうちょっと具体的にありましたら、御披露いただければと思います。

大橋参考人 ありがとうございます。

 これは、研究開発のフェーズであるとか、あるいは実際に実装した後どうしていくのかとか、こういう幾つかのフェーズで多分やり方がいろいろ異なってくるのかなという感じはいたします。

 やはり、ある意味、執行期間は一切見ないという形の執行の仕方ですと、なかなか当初の入口から政策の方向性を変えることができないというふうな問題点があるのかなと思います。最初の時点でしっかりデータを取りながら政策の執行をしていくということを、大体、やるのは政策の執行が終わってからデータを取り始めるということがあって、そうすると、実は必要なデータがありませんという話で常に終わっているケースが相当あるかなと思っています。

 実際に政策を始めるときに、どう評価をするのかということを念頭に置いてデータを取り始める。そのデータを取り始めれば、ある種、そのデータを逐次モニターすることによって、例えば四半期ごとにどうなんだという形の中で、国際情勢の中で適宜的確にその政策の方向性を議論していく場というのはつくれるのかなという感じがします。このフリークエンシーの在り方というのはそれぞれの技術とか政策によって違うと思いますけれども、基本的に、最初にしっかりどう評価するのかということを握っておくということは、私はすごく重要なのかなというふうに思っています。

小野委員 ありがとうございます。

 今お聞きしながら、我々国会の議論もそういうふうにしていかなきゃいけないのかなと思いました。予算を審議するときにはそういうことをやるんですけれども、その後の途中途中で審議しているのかというと、非常にこれは行政任せ、執行の側に任せちゃっているところがありますので、その辺は私も、いろいろこれからやり方も考えていきたいと思います。

 時間がなくなってまいりました。

 最後に、諸富先生にお伺いをしたいと思います。

 プレゼンの資料には入っていたんですけれども、余りお話がなかったので伺いたいんですが、需要サイドから大きなイノベーションの可能性があるので、そこを中心に考えてGXを伸ばすべきだというお話がありました。これは、例えば我々も、なかなか、ハイブリッドというものが日本は強いので、そこに需要があるというふうに思っているわけなんですが、実は、それは供給サイドからだったということもあると思います。

 そういう中では、やはり我々が、需要サイドという意味だと、グローバルな需要で考えなきゃいけないというふうに思っているんですが、この大きなイノベーションの可能性が需要側にあるという中身について、最後に御説明いただければと思います。

諸富参考人 これは、電力の需要側に着目するといろいろなイノベーションの可能性がある、そういう意味で書かせていただきました。

 先年はちょうど電力の供給危機という形で、特に東京エリアにおいては停電の危機もあったわけですけれども、三月、六月と電力供給不足になりました。それから、ウクライナ危機もございます。こういったところから、どうやって電力供給を安定化させるかということで、問題の関心がぐっとそこへ行き、電力供給の確保の問題、原発再稼働や新増設、あるいは火力発電所の場合によっては増設といったように、供給力確保というのがすごく前面に出てきたんですが、一方で、人口はこれからどんどん減少していくということで、電力需要が減っていくという側面もあります。

 その中で、やはり需要側を柔軟に、ピークとそれからオフピークの間で需要側が柔軟に上がったり下がったりする、供給に対して需要側をうまくマッチングしていくような、ここにやはりDXの方ですね、GXじゃなくてDXがかぶさってくる、融合していくことで、電力需要をモニタリングしながら、電力供給不足のときは需要を下げて、また、そうでないときは上げていくというような形で、そこに電力市場、価格シグナルをかませるわけですけれども、こういったディマンドサイドのマネジメントを全面的に入れていくこと。

 それは恐らく、今後、家庭の方で太陽光発電が、東京都は義務化しました、この間、川崎市も可決しましたけれども、こういう形で電源が入ってきて、しかも、EVが入っていく、蓄電池もだんだん価格がパリティーに達して安くなっていく形で、そういったビルや家庭などの需要サイドが非常に電源にもなり、同時にディマンドコントロールもできる対象になるので、こちらが融合していって新たな産業になっていくんじゃないか。

 単にハードだけじゃなくて、ソフトウェアの面でもいろいろな仕組みが入ってきて、一大ビジネスになっていく。フォルクスワーゲンの社長なんかは、自動車会社としてそこにビジネスで入っていきますということを宣言されています。ここに一つやはり産業革新の芽があるなということをちょっと強調させていただいた次第です。

 以上でございます。

小野委員 まさに大きく変わっていくんだなというふうに思いました。

 ありがとうございました。終わります。

竹内委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 本日は、お忙しいところ、御出席、御参加いただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 議論を聞いておりまして、私は余り頭がよくないものですからイメージが全然湧いてこないんですけれども、例えば、今、十一億トンのCO2が排出されているというのが、環境省の方でその数字を出すんですね。その内訳として、電力、電気を作るときに四〇%ぐらい、あとは流通系で二〇%だ、あとは細かいところが幾つか出てくるんですけれども、じゃ、私たちがふだん生活している中で、一軒当たり、四人家族でもいいし、五人でもいいんですけれども、一人当たりどのぐらい今の生活をしていると出しているのかというのが、全然見えてこない。自分のところの会社で、じゃ、どのぐらいCO2を出しているんだろうか、それも計算もできない。この中で努力をしろとかイノベーションをしろと言っても、なかなかこれ、実感は湧かないと思うんですね。それが一点なんです。

 それともう一つ、消費者である国民は、何か新しい技術が出たときに、メリットがなければそれを買おうとしないですよ。

 車でいえば、ガソリン車だったんですね。五十年前、六十年前のトラックもみんなガソリン車でした。それが今度、ディーゼルエンジンができて、そっちの方が燃料が安価だし、ハンドリングもいいからということで、結局、メンテナンスだ何だということも踏まえて、ガソリン車からディーゼル車になっただけなんです。ハイブリッドが出て、リッター十キロしか走らない車が二十キロ走るようになれば、燃料代が高いんだったら燃費のいい車に乗り換えた方がいいんじゃないのというので、そこにインセンティブが働いて、これは需要側、供給側も、いろいろな経営戦略の中でそれをやってきたと思うんですけれども。

 そういう、個人も含めて、企業側に変えなくちゃというインセンティブを与えられるのかどうかというのが一番のキーになっていくと思うんですが、大橋参考人と諸富参考人に御意見を頂戴できればと思うんですが。

大橋参考人 ありがとうございます。

 紀元前からCO2というのが世界でどう出てきたのかということの実はデータがありまして、それを見ると、まさに産業革命時から急速にCO2が増えているということが分かります。産業革命で内燃機関ができて、木材を切ったり石炭を掘ったときに、多分、CO2に影響があるなんということは全く思っていなかったと思います。そういう意味では、やはり計測ができるようになった。当時、まさに、地球規模のCO2がどうなっていたかということは計測できなかったわけで、ある意味、氷の中から取るような技術ができたわけですよね。そうした中で、ある意味、計測ができて初めて我々は分かってきたということなんだと思います。

 地球規模はおおよそ正確に分かるようになってきた。今度、だんだんミクロに、セミマクロに、ミクロにという形で技術がちょっとずつ進展をしていって、最後、やはり、中小企業も含め、あるいは御家庭も含め、CO2がしっかり見えるような技術が出てくるということなんだと思います。まだ、そういう意味でいうと、今のところ、そこまで技術が至っていない。そういうところは、トラッキングを含めてしっかりやっていく必要があるんだと思います。

 他方で、我が国は、大手、CO2をたくさん出す企業さんについてはSHKという算定の報告制度がありますので、そういう意味では、しっかりある意味報告をしているところがあります。それをリアルタイムでどこまでフォローしているのかというのは企業さんによって違ってくると思いますけれども。

 そういう意味で、測定は、やはりどれだけのニーズがあるかによってだんだんだんだん進展はしていくと思いますので、今回のGX推進法によって、更に測定技術が国民の行動変容を促すところまでしっかり進んでいって、これは日本だけでやってもしようがなくて、世界全体でしっかりそれを進めていくような方向に持っていくべきなんだというふうに思います。

 それが、しっかりそうした投資を国民の負担でやっていただけるのかというのは、それは実は、私は、消費者がどれだけGXあるいは二〇五〇年カーボンニュートラルに対して思いがあるのかということに懸かっているんだと思います。

 将来世代についてしっかり思いがあって、そのためにお金を払ってでもやはりCO2は減らさなきゃいけないよねという国民の数が増えていかない限りにおいては、なかなか、企業さんだけで全て負担してください、ただし価格転嫁はできませんというふうな形では、恐らく進まないと思います。

 国民に、しっかり将来世代も含めて地球を残していくんだよ、そうしたことをお分かりいただくために、場合によると、価格転嫁のところについても、しっかりそうしたものを、政府が企業を補完していくということで、国民にある意味、将来世代の重要性を分かっていただくというふうな取組も重要なのかなと思っています。

 ある意味、見える化と、あと、国民に、我々が享受してきた地球を残していくんだという思いと、そういうもの二つが今回GX法の中でしっかり根づいていくことを期待しています。

諸富参考人 どうやって経済的インセンティブをという話がございましたが、やはりそこが、私たちとしては価格をつけるということになるんだと考えてきました。つまり、炭素の価格ということで、カーボンプライシングというのは、脱炭素製品を生み出せば税はかからないけれども、そうでない限り負担がかかってくる。

 そうすると、やはり、競争していく限り、企業にとっては、コスト的にメリットがある脱炭素製品の方を開発してそれを出すことによってライバルに対して競争優位を持てるというような形に、どういうふうにまず市場を持っていけるかということを発想してきていて、その中で今回、カーボンプライシングの議論があったというふうに考えています。

 一旦そういう形で、企業の中で、競争条件の中に環境を守るということをカーボンプライシングという形で入れて、しかし、これまでは環境に対してコストを負担せずに競争してきたけれども、今後は負担をして競争する、それがフェアな競争だというふうに市場概念を切り替えていくということだと思います。

 問題は、そうやって一旦企業の方が負担したコストが、製品を通じて消費者に転嫁をされていくことになります。

 消費者の方々が、先ほど大橋先生が言われましたように、どうやってその負担を受け入れてくれるかというところで、消費者の思いということを御指摘になったわけですけれども、一方で、低所得者の方々は、どうしても、そうはいっても、様々な製品価格の上昇を受け入れてしまうと、あるいはエネルギー価格の上昇を受け入れると、生活困難がやはり起きてくるということがありますので、そこに対して、どう法案の中でそこの負担の緩和をセットで入れていくか。

 そこのところがしっかり入ることによって、私は、消費者の理解、つまり、温暖化対策が大事だと言いながら、しかし、その経済的負担について、低所得者についてはちゃんと負担緩和があるということが理解していただく上での前提条件になるのかなというふうに考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 COP12、京都議定書のときに、私は県会議員にいたんですけれども、お世話になったんですけれども、そのときに、国も挙げて、各都道府県が二〇%のCO2削減という目標を掲げて、いろいろな政策を取る。

 私は埼玉県の出身だったものですから、埼玉県は何をやったかといったら、いろいろな製品のところに、この品物はCO2を二〇%削減するために、例えば省エネのいいものを買ってくださいみたいな、それもパンフレットを作るのにお金がないから、ホームページにチラシになるものを作って、それを使って商品のところに掲示してくれという形を取って、そのときにどのぐらい下げられたか分かりませんけれども。

 結局、国が約束をして、二〇%削減するということを国民だとか事業者にお願いをするんですけれども、そこに、例えばこのプラスチックの容器だとCO2が十グラムなら十グラム出ていますよ、ガラスの容器だったら五グラムしか出ていませんよというのを表示して義務づけるぐらいなことをやらない限り、消費者は選択しないんじゃないかという考え方なんですね。

 それともう一つ。利便性をどうしても追求するし、それに応えようとして、メーカー側も、例えばこのペットボトルも、昔は缶とか瓶しか容器はなかったのに、PETという素材を作って、軽く、持ち運びもできる、それがお客様のニーズで、国民に御愛顧いただいて、ペットボトルがどんどんどんどん普及したんだと思うんです。

 でも、結局、やっていることは、バブルがはじけた後も、大量生産、大量消費、大量廃棄、いまだにずっとその価値観というんですかね、経済活動を向上させるんだということで、そこには全然インセンティブを与えようということをしないで、今度、カーボンプライシングだ、GXだというふうにやったときに、今までの生活の利便性をそのまま享受させながら、新しい選択肢をつくるわけでもないんだけれども、それは自分たち、企業さん、個人も考えてくださいというふうに、またその上に上乗せした制度をつくってうまくいくのかと私は疑問に思うんですね。

 その辺を、社会の価値観みたいなものを転換させていくのにこのGX推進法が、役割ができるのかどうか、そうお考えになっているかどうか、四人の参考人の方から御意見を頂戴できればなと思うんですが。

大橋参考人 ありがとうございます。

 二〇五〇年のカーボンニュートラルを達成しようと思ったときには、多分、今の我々の生活の延長線上では恐らく達成できないんだろうなという感じがします。相当の非連続なある種ジャンプを遂げなきゃいけなくて、そこのジャンプには、利便性への影響ということも恐らく考え得るんじゃないかというふうに思っています。

 こうした行動変容を、それぞれ一つ一つの、個人個人あるいは業界業界でお話をしながら進めていくというのは相当のコストがかかります、その対話も含めてですね。対話は当然重要なんですが、具体的にどこまで何をしていくのかということについて個々にアプローチしていくというのは相当大変だと思います。

 そういう意味で、ある種、中長期的にCP、カーボンプライシングを入れていくというのは、その一つの標準のレベルをつくるということでもあるんですよね。このレベルはそれぞれ皆さん共通の公平なものですから達成をしてくださいと。そうした中で、個々の業界なり個人がどういうふうな取組をするかということを引き出していく。

 ある意味、これまで、先ほど先生から御説明があったような、個々の都道府県でいろいろな取組を工夫してやっていく、ただ、全体で見ると四十七の取組がありましたというふうな形では、なかなか企業さん、それぞれの県で発売するのに取組を変えなきゃいけないのかという形もありますし、相当大変なことになると思います。

 これまでの努力あるいは自律性の引き出し方が多分間違っていて、一定の標準の基盤をつくった上で、その中で、ある種、利便性も含めて御理解をいただく。御理解をいただくのは、やはりある種のカーボンプライシングというもののシグナルであるという形に、多分、社会の価値観を変えていくということが重要なんだと思います。

 すぐには変わりませんので、ある意味、時間をかけてカーボンプライシングを入れていくというのが今回の法案なのかなというふうに理解をしています。

 ありがとうございます。

諸富参考人 先生がおっしゃった、製品ごとのCO2の排出の透明化というかそういう点は、昔はそれこそ紙で製品にぴたっと貼り付けるとか何かしない限り難しかったと思いますが、あるいは値札表示で特にやらないと駄目だと思うんですが、今、もうデジタル化の世界ですので、バーコードにといいますか、QRコードで、スマホで読み取ることでできるんじゃないか。

 今後、スコープ3まで含めて、CO2の排出を、各段階、原材料からサプライチェーンの各段階で幾らCO2をそれぞれ出しているのかという情報を作り出していく試みが進展していくと思いますので、インボイス制度を電子化しているように、同じように、CO2排出量の情報をそれに一緒に載っけてずっと上流から下流まで流していくような、そういう世界になりますので、最終消費のところでピッとスマホをかざせば幾らというふうになるというふうなシステムをやはりつくるべきじゃないかと思いました。それが一点です。

 もう一つは、先生のお話を伺っていて、やはりCO2の世界の話だけしても駄目なんじゃないかと。もっとボトムで、ヨーロッパでいうとサーキュラーエコノミーという考え方があって、資源の利用をやはり少なくする、使った場合は回していくというような、大量社会、大量消費、大量廃棄社会から転換しつつ、CO2も同時に減らしていくというふうな形で、かなり経済産業の根本を変えていくという発想はやはり大事なんだなと、ちょっと先生の御発言を伺って思いました。

 以上でございます。

重竹参考人 ありがとうございます。

 御質問にストレートに答えると、まず、イエスだと思います。

 GXの三つの目標のお話を申し上げました。エネルギー安全保障、それから経済合理性の高い脱炭素化、それから成長、こういったことを実現していくのがGXであり、この法律はそれの基盤であるということを申し上げました。

 じゃ、これが達成されたときの受益者は誰かというと、やはりこれは最終的に国民なのではないかというふうに考えています。したがいまして、これはやはり基盤になっていく。

 ただ、これは委員がおっしゃったように、重要なことは、じゃ、国民が、本当に自分にとってのこれがいいことなのか、うれしいことなのかということをちゃんと分かってもらうことが大事で、そこをどういうふうに高めていくか、説明していくか、理解してもらうか。

 そこの点に関しましては、先ほど、これも委員がおっしゃった点が非常に重要だと思っていまして、例えば、カーボンフットプリントみたいなやつを見える化して、それに対してプレミアムを払ってもらう。これは、グローバルに見ると、日本は消費者の意識が必ずしも高くないと言われていますけれども、やはり七割ぐらいの人は意識はあって、少なくとも二、三割の人は何かやってもいいと言っている。これは、二、三割が多いか少ないかという問題はありますが、少なくとも二、三割は動くと言っています。だから、こういった人にどんどん動いてもらうことによって、だんだんだんだん世の中が変わっていくというのもあるのではないかなというふうに思っております。

 私からは以上です。

石上参考人 もう今、三人の先生方がしゃべられていたので、ほぼほぼそういうことだというふうに思いますし、気候変動、気温上昇を抑えることで、やはり、雨量が増えることを抑えることが、公共事業で今までやらなくてもよかったことを今やらなきゃいけない、新たに税をかけて結局手当てをしなきゃいけないことをどう抑えるかという面も実はあって、国民生活にこれは災害も含めてつながっていることなんだということも、政治的にはメッセージとして出していただきたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 どうもありがとうございました。終わります。

竹内委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、貴重な御意見をありがとうございました。

 早速、伺います。

 まず、大橋参考人、重竹参考人、石上参考人ですが、ロシアによるウクライナ侵略の後、世界では再生可能エネルギーの導入が急拡大している。IEA、国際エネルギー機関によれば、二〇二二年の再生可能エネルギーの導入量は、二一年の一・四倍になったということであります。再エネは、脱炭素に資する、コスト面で優位性があるという利点に加えて、燃料を輸入に頼らず自給できる強みに改めて脚光が当たった形だと言えると思います。

 そこで伺いたいのは、海外から輸入する化石燃料の価格高騰で電気代とかガス代が急騰して悲鳴が上がっているわけでありますが、海外の化石燃料依存のエネルギーから、国際的なエネルギー情勢にある意味影響されず、純国産で燃料費ゼロ、円安にもびくともせず、貿易収支の改善にもなり、新たな雇用創出にもなる、そういう再エネ中心に転換するというまさにチャンスではないかと思いますが、我が国が気候危機打開のための国際的な責任を果たす上でもこのことが大事ではないかと思うんですけれども、端的に、お三方、どのような見解をお持ちでしょうか。

大橋参考人 ありがとうございます。

 再生可能エネルギーが我が国に普及をすることで我が国のエネルギー自給率が高まる、そういう意味でのエネルギー安全保障の一端を担えるんだという点は、まさにおっしゃるとおりだと思います。そういう意味で、再エネの大量導入あるいは自立電源化、そういうものをしっかりやっていくというのは重要だというふうに思います。

 他方で、幾つか注意しなきゃいけない点もあろうかと思います。

 一つは、太陽光あるいは風力を造るときの設備ですね、その設備というのは必ずしも国産のものでなくなってきちゃっているということがありますので、必ずしもお金が国内に還流するのかというところについては、若干の疑義を持って見る必要があるというのが一点です。

 二点目は、実は、我が国は、太陽光だけで見ると、平地で住めるところで見てみると、太陽光の密度は世界一の密度になっていると言われています。ドイツが二番目ですが、ドイツの一・五倍の密度で既に入っている。そうすると、太陽光を今後広げていくところの適地というのは相当限られてきた。

 風力は、確かに洋上あるいは陸上もありますけれども、そういうところというのは、大体においてエネルギーの大消費地から相当離れている。そうすると、相当の電源を、木を切るとかいろいろな形で、あるいは海に沈めるとかでやっていかなきゃいかぬ。それだけの需要をそこに移せるのかということをまず考える必要があると思いますけれども、そういう意味での、再エネの即時導入というのは極めて難しいだろうというところもありますし、それなりの国民負担がかかるということも、やはり我々、念頭に置かなきゃいけないのかなというふうには思います。

 以上です。

重竹参考人 ありがとうございます。

 笠井委員のおっしゃったこと、私は基本的には全く賛成です。

 再エネを徹底的に増やす、これはまず、当然取り組むべきことであるというふうに考えております。ただ、それがほかの選択肢と比べてどのくらい安く実現できるのかとか、どのくらい早くできるのかですとか、それをやっても足りないところはどうするのかですとか、そういったところで他の選択肢も考えておく必要があるのかなというふうに思います。

 そういった観点では、今、大橋委員の方から御説明があったような、そういった観点を考えて再エネを増やす、一方でほかの選択肢もしっかり考えるということが重要であるというふうに思っております。

 私からは以上です。

石上参考人 ありがとうございます。

 再エネの拡大、主力電源化ということについては、基本的にその方向性については進めていくべきだと思いますけれども、既存の環境、そして発送電設備への影響、安定供給の問題など、経済性も含めて、日本における経済性もどうなのか、そういった検討も含めて必要なことだというふうに思います。

笠井委員 この問題は国会でも様々議論しておりまして、適地の問題とか、あるいは、これまでどこまでやってきたのかということのツケがあるということも含めてやっていることなので、しっかりとこの問題、再エネを本当にどうやって進めるかは、また国会でも議論を深めたいと思います。

 その上で、諸富参考人に何点か伺いたいんですが、参考人は、環境省のカーボンプライシングの活用に関する小委員会の委員も務めておられます。そこで、その場での御発言で私も印象的であったのが、産業界からもカーボンプライシングの導入を求める声が強まってきている、そういうことを指摘されてきたことであります。

 先日の当委員会で私質問しまして、その中で、世界中で広がるRE一〇〇の取組を見ても、日本が原発に固執をして再エネの普及を妨げることで、結果的に日本企業が世界のサプライチェーンからはじき出されているのではないか、そして、はじき出されるのではないかというふうに指摘もしたんですけれども、経産省は、それに対して、産業界に厳しい負担を課すと海外に逃げてしまう、その一点張りになっているわけなんですね。

 そこで、諸富参考人に伺いたいのは、小委員会の場で、これまで日本にカーボンプライシングがないことによって、強みである脱炭素技術を生かせない、逆に日本の産業競争力の強化を妨げているのではないか、こうその趣旨を指摘されてきたと思うんですけれども、その点、もう少し詳しくお聞かせいただけるでしょうか。

諸富参考人 CP小委と呼んでいましたが、環境CP小委の中で、そういう、産業の全てがもはやCP反対ではなくなっていました。

 CPの導入を求めるグループの代表の方々からは、やはり今委員御指摘になった、脱炭素製品を出しても、結局、競争上、つまり、カーボンプライシングが入っている下では自分たちのやっていることはコスト的に優位になるけれども、カーボンプライシングがないと、必ずしも優位とは言えないどころか、脱炭素製品を作るのに開発したコストがオンされているので、むしろ競争上不利になる、この状態を是非是正してほしいというような積極的な声がやはり出ていたんですね。

 RE一〇〇もそうで、産業立地を決定する要因に、もはや再生可能エネルギーができれば一〇〇%供給されるということが必要になってきていて、北欧のノースボルトという車載電池メーカーは、まさにスウェーデンで工場を立地する場合に、再生可能エネルギーが一〇〇%供給されるからそこに工場を建てたという事例が出てきましたし、最近では、日本では、ラピダスという半導体メーカーが北海道に立地するという、ちょっと意外な感じを受けましたが、あれはいろいろな理由がインフラ等出ていますが、一つの要因として、やはり再エネ一〇〇%供給を将来期待できるということを社長が挙げていらっしゃったんですね。

 ということで、もはや、通常、再エネと直接は関係なかったはずの製造業ですらもうRE一〇〇を考え出しているということで、むしろ国益にかなう、産業立地国としてこれからも日本が生き残っていくには、やはりCPそれからRE一〇〇の方向性というのは非常に大事だと思っております。

 以上でございます。

笠井委員 更に伺います。

 先ほど諸富参考人が意見陳述でも述べられましたGX移行債の償還財源となる化石燃料の賦課金についてなんですけれども、法案には、二〇二八年度から化石燃料の輸入事業者から賦課金を徴収する仕組みが盛り込まれているわけです。

 しかし、そもそも炭素税ではなくて賦課金であって、ある意味、経産省のさじ加減に任されている。徴収する金額も、再エネ賦課金と石油石炭税の減少額の範囲内にとどめている。エネルギーに係る負担の総額を増加させない範囲にするということで、ある意味、制約をかけているということになっていると思うので、財源調達型で排出削減を目的としないような制度設計では、私は、排出削減効果がどこまで期待できるのか、むしろ期待できないのではないかというふうに思うんですけれども、この点について御見解はいかがでしょうか。

諸富参考人 おっしゃるとおりだと思います。財源調達と結びつけられ過ぎているがゆえに、料率が十分上がらないんじゃないかと思っております。

 ある程度、税にすると全部法律改正でやらないといけなくなるので大変だというのは分かるんですけれども、賦課金にしたことによって、確かに料率の例えば上げ下げなどは柔軟にできるかもしれません。

 ただ、考え方で、私、ちょっと二十兆円分を単純に割り戻していった場合に、トンカーボン当たり大体千円台の前半ぐらいになる。今の二百八十九円よりは相当上がりますので、三倍ぐらいになるので、上がるんですが、今、千円というのは、海外のカーボンプライシングの水準と比較して、むしろ低い方ですね。ですので、今いろいろな脱炭素技術が入っていくためには、大体百ドルはないとなかなか効果が出ないというふうに言われています。その中で千円程度というのは、かなり低いのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、委員が今おっしゃった御指摘、つまり十分な水準にならないんじゃないかという御懸念は私も共有をしているところでございます。

笠井委員 排出量取引制度についてなんですけれども、諸富参考人に伺いたいと思いますが、西村経済産業大臣は、今年四月から試行的に開始した排出量取引制度、GXリーグですね、これはEUの排出量取引制度、EU―ETSと同水準だというふうに説明をされております。果たして同水準なのかということなんです。中身の問題なんですけれども。

 企業が自主的に参加をして、削減目標も自主的に設定をする、そして罰則もない、そういうGXリーグと、一方で、参加が義務づけられて、排出枠の上限を定めて削減を求めて、達成できなければ企業名の公表とそして罰則が科せられるEUの制度と同水準と言われると、私、どこが同水準なのかなというふうに思ってしまって疑問なんですけれども。

 そういう意味では、自主性任せのGXリーグの実効性について、これについてはどのように見ていらっしゃるか、少し詳しくお話しいただければと思います。

諸富参考人 そうですね、実効性があることを期待はしております。

 先ほどちょっと申し上げたとおりですが、投資家の行動というのはやはり変わってきましたので、企業がやはり資金調達上有利になるためには、ある程度、実績、CO2削減の実をしっかり取って、それを情報公開をしていくというサイクルを回していくことが必要になってきていますので、そういう意味で、ある程度、ペナルティーがなかったり義務がなくても前向きになる企業が出てくるんだろうなと。それがそれなりの量になることを期待はしていますが、しかし、委員が全く御指摘のとおりで、全員参加型ではないがゆえに、結局、日本の産業界全体をコントロールする手段にはなっていないわけなんですよね。

 個々の制度のパーツを見ていくと、EU―ETSをモデルにしながら、ある程度それを取り入れていて、その点では、EU―ETSに比肩する制度なんだと大臣が自負されるのは分からないでもないです。

 ただ、全く同じ制度かと言われれば、委員の御指摘のとおり、様々な点で問題があり、そこをこれからフェーズツー以降で修正していくべきだというのが私の考えでございます。

笠井委員 カーボンプライシングの問題では、その活用に関する小委員会ということで、先ほどもちょっと伺ったところですけれども、これはかなり重みのある場で、二〇一八年の七月以降、これまで二十二回にわたって、新たな経済成長につなげていく原動力としてのカーボンプライシングの可能性についてということで調査審議が行われてきたと思うんですけれども、今回、日本版のカーボンプライシングを盛り込んだこのGX推進法というのは、環境省の審議会での議論の積み重ねと、それから、私なんかが受け止めているのは、ある意味、別の場所というか、GX実行推進会議で極めて短期間の間に、一気呵成に、そういう意味では取りまとめられたのではないかと思ったりもするんです。

 しかも、制度を運営するのは、環境省ではなくて今度は経産省ということになるので、冒頭の陳述の中ではその辺の関係もおっしゃってはいたんですけれども、果たしてこの小委員会での議論が十分反映されたものになるのかどうか。この点、端的にどうでしょうか。

諸富参考人 それを私からお答えするのもなかなか難しい、その場にいなかったものですから。でも、ちょっと環境省の委員としてはびっくりしたというか、環境省の所掌ではなく、むしろ、どっちかといえば、当初はCPに反対されていた経産省の場で、急転直下、制度の仕組みが入ってきて、成案になっちゃいましたので、おおっという感じですよね。

 だけれども、やはりさすがと思ったのは、環境省のところだけで幾ら議論しても、なかなか産業界との対立は解けなかったですよ。それが、経産省がやる気になった途端に急にいくわけですから、ここは何か、経産省さすがだなと思う部分がやはりあります。

 あと、先に補助をして、支援してから後で回収という、これもなかなか、なるほどと思いました。環境省的に真面目にいけば、最初からカーボンプライシング、いくぞという感じで、産業界も警戒するわけですよね。だから、そこは先に支援しますから準備してください、後から来ます、さっきは批判していましたけれども、決してその負担は重くなりませんと、非常に上手に産業界を丸め込んだという気がします。

笠井委員 丸め込んだ部分があるかというあれですけれども、先ほどの問題点をどうするかということがやはり課題としてあるんだろうと思います。

 終わります。

竹内委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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