衆議院

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第6号 令和5年3月24日(金曜日)

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令和五年三月二十四日(金曜日)

    午前九時四十分開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 井原  巧君 理事 岩田 和親君

   理事 関  芳弘君 理事 細田 健一君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      石井  拓君    石川 昭政君

      稲田 朋美君    今枝宗一郎君

      上田 英俊君    勝目  康君

      小森 卓郎君    國場幸之助君

      佐々木 紀君    鈴木 淳司君

      土田  慎君    冨樫 博之君

      長坂 康正君    深澤 陽一君

      福田 達夫君    堀井  学君

      牧島かれん君    松本  尚君

      松本 洋平君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    山口  晋君

      山下 貴司君    渡辺 孝一君

      大島  敦君    菅  直人君

      篠原  孝君    鈴木 庸介君

      田嶋  要君    中谷 一馬君

      馬場 雄基君    山岡 達丸君

      足立 康史君    遠藤 良太君

      前川 清成君    中川 宏昌君

      鈴木 義弘君    笠井  亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (GX実行推進担当)   西村 康稔君

   環境副大臣        山田 美樹君

   政府参考人

   (内閣官房GX実行推進室長)

   (経済産業省経済産業政策局長)          飯田 祐二君

   政府参考人

   (内閣官房GX実行推進室次長)

   (経済産業省産業技術環境局長)          畠山陽二郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小林  豊君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  小坂善太郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         上村 昌博君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           藤本 武士君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           恒藤  晃君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           門松  貴君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局次長)            野津 真生君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  松澤  裕君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策統括官)           上田 康治君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     勝目  康君

  上川 陽子君     深澤 陽一君

  小森 卓郎君     松本  尚君

  冨樫 博之君     渡辺 孝一君

  長坂 康正君     上田 英俊君

  山際大志郎君     山口  晋君

  大島  敦君     中谷 一馬君

  山岡 達丸君     鈴木 庸介君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     長坂 康正君

  勝目  康君     石井  拓君

  深澤 陽一君     上川 陽子君

  松本  尚君     小森 卓郎君

  山口  晋君     山際大志郎君

  渡辺 孝一君     冨樫 博之君

  鈴木 庸介君     山岡 達丸君

  中谷 一馬君     大島  敦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房GX実行推進室長兼経済産業省経済産業政策局長飯田祐二君、内閣官房GX実行推進室次長兼経済産業省産業技術環境局長畠山陽二郎君、内閣官房内閣審議官吉川徹志君、警察庁長官官房審議官小林豊君、林野庁森林整備部長小坂善太郎君、経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官上村昌博君、経済産業省大臣官房審議官藤本武士君、経済産業省大臣官房審議官恒藤晃君、経済産業省大臣官房審議官門松貴君、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君、国土交通省自動車局次長野津真生君、環境省地球環境局長松澤裕君及び環境省総合環境政策統括官上田康治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山岡達丸君。

山岡委員 山岡達丸です。

 本日も、委員長、そして理事の皆様、委員の皆様の御理解をいただきまして、質疑の時間をいただきましたことに感謝申し上げます。

 GX政策のこの法案の審議も今最終盤に向けておりますけれども、ちょっと今日は、各分野、個別の話を少し、課題、様々、私も懸念の声が聞こえているということもあって、そのことを伺ってまいりたいと思っております。

 まず、航空燃料の話について大臣に伺いたいと思いますが、航空機の燃料というのは、カーボンリサイクルの燃料のものに化石由来のものから切り替えていくということで、カーボンニュートラルに係る燃料というものを、SAFということで、持続可能な航空燃料とも訳されますけれども、そのSAFに切り替えていくという構想を持って、政府でも官民協議会などを設けてこれまでも進めてきたと思いますし、今回のGXの方針についても、航空機の脱炭素ということに向けて、SAFの積極的な利用推進ということを掲げているということであります。

 まず、経済産業省の今日は参考人の皆様に来ていただいていますので伺いますけれども、このSAF、切り替えていく、脱炭素ということで進めていくということでありますけれども、これはなかなか簡単なものじゃないという状況について、少し確認をさせていただきたいんです。

 事実関係として伺いたいんですけれども、まず、このSAFについては、現状、国産のものは存在していないということ、このことでよろしいか伺いたいと思います。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、世界の状況ですけれども、二〇二〇年時点で、世界のSAF供給量は約六・三万キロリットルございます。これは世界のジェット燃料の供給量の僅か〇・〇三%にとどまってございます。

 御指摘のとおり、国内におけるSAFの製造は、まだ現時点では行われていないというところでございます。

山岡委員 ありがとうございます。

 もう一つ御答弁をいただきたいんですけれども、仮にSAFが、国産ができたり、あるいは世界の供給量が増えてきたということであっても、少なくても、二〇三〇年前後には、航空機の全燃料の一〇%程度、残りの九〇%は化石由来の燃料が占める、そして、これは技術上の問題ですけれども、安全上の問題からも、やはりこのSAFというのは、現状においては、今後は五〇%程度が最大であって、残りは化石由来の燃料になるということが現実である、このことの事実確認もちょっと伺いたいと思いますが、いかがですか。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 SAFにつきましては、御指摘のとおり、二〇三〇年時点で、本邦エアラインによる燃料使用量の一〇%を、これをSAFに置き換えていくという目標を我が国としては掲げておりまして、今後、それに向けて順次供給量を増やしていくための様々な支援を講じているところでございます。

 しかしながら、いわゆる航空機に使用できるSAFについては、国際規格でいろいろな安全性とか品質とかエンジン等の適合性などを考えて今設定されておりまして、最大でも、今後の上限として五〇%までというところが国際ルールとして今設定されているところですので、現時点では全てをSAFにということは想定されていない状況でございます。

山岡委員 済みません、SAFという範囲は広いですから、現状の技術においては国際規格で五〇%ということが現状であるということであります。

 何を伺いたかったかといえば、航空機の脱炭素、燃料を替えていくといっても、化石由来のものに現状頼っていくということがどうしても前提になる、この状況であるということを今御説明もいただきました。もちろん、国産もしていませんから、輸入に頼っていくということもありますけれども、いずれにしても、既存の化石由来の燃料を使わざるを得ない、つまり、代替性に限界がある、工夫のしようがないというのが航空業界の状況なんだということをここで皆様と共有したいと思います。

 その上で、今回の法案の、輸入の化石燃料に係る賦課金の件でありますけれども、当然、輸入事業者から、化石に由来する燃料、あるいはSAFもそうかもしれませんが、この価格が、そこに賦課金が乗れば、航空業の中にも転嫁されて、もちろん国民負担ということもあるかもしれませんが、経営の圧迫も、ひいては、雇用であったりとか、そこの人材の処遇、確保の状況にも影響を及ぼすというような懸念の声を私も伺っているところで、大臣に伺いたいと思います。

 御存じのとおりでありますが、航空業は、コロナの中で大変厳しい環境の中でこれまでもやってこられて、そもそも現状としても人材の確保が難しい、そうした中で、これから立ち戻っていかなきゃいけないという状況にもあります。だからといって、脱炭素のこの世界的な流れを否定しているわけではありません。ですから、この燃料の切替えというのは進めていかなければならない。しかし、どれだけ工夫しようと思っても、代替性がなく、その工夫の余地がないということで、単純にこの制度に基づいて負担を乗せていくということは非常に厳しい状況になるんじゃないかということをここで提起もさせていただきたいと思います。

 今回、政府が示しているGXの方針として、代替性もなく、かつ既存の減免、還付と類似のもの等はこの賦課金の対象外とすることも含めて議論の俎上にのせていくという趣旨の考え方も提示されていますが、現状の制度でいえば、地球温暖化対策税の、国内線については、みんなで飛行機に乗って移動した方がいわゆる炭素の排出量は最終的には少なくなるということも踏まえながら、この還付の対象になっている。

 こうした考え方に基づいて、そうした制度もあるわけでありますけれども、新たなこの賦課金の制度においても、私の立場からあえて申し上げますが、航空機燃料に関するこの賦課金の負担については対象外にする、あるいは減免、還付にする、そうした考え方を進めていくべきじゃないかと思いますが、大臣、見解を伺います。

西村(康)国務大臣 御指摘のとおり、航空業界は、我が国の旅客、貨物運送の基盤の大事な一つであります。まさに不可欠な業界であるというふうに認識をしております。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの国際公約、それと、産業競争力強化、経済成長を同時に実現していくためには、航空業界も含め、幅広い業界の取組が必要でありますし、それを促進するための成長志向型カーボンプライシング構想を速やかに実現、実行していきたいと思っております。

 そして、お尋ねの化石燃料賦課金でありますけれども、化石燃料の輸入事業者などを対象とし、化石燃料に由来するCO2の量に応じて賦課金を課すものであります。

 御指摘のように、代替技術の有無とか、それから国際競争力への影響などを踏まえる必要があるため、直ちに導入するのではなく、一定期間、取り組む期間を設けた上で、当初低い負担から導入して徐々に引き上げていくことにしておりますし、さらに、この化石燃料賦課金につきましては、GX実現に向けた基本方針におきまして、既存の類似制度における整理等を踏まえ、適用除外を含め必要な措置を講ずることを検討するということとしております。

 この方針に基づきまして、航空機燃料について一部免税、還付を認めている現行の石油石炭税や、今般の成長志向型カーボンプライシング構想の趣旨を踏まえて、今後、制度の詳細設計において検討を深めていきたいというふうに考えております。

山岡委員 現状の御答弁では、これをどうする、外す外さないというところまでは踏み込めないということは理解しておりますが、大臣もおっしゃいましたけれども、航空業の意義というのは非常に、私たちの日本にとっても、私も北海道の身ですから、航空業の皆様のおかげでこの国会に来られているわけでありますけれども、まさに人の流通のお話にもつながる話なので、是非このことは強く検討していただきたいと思います。

 あわせて、ちょっと細かい話、類似の質問で大臣に恐縮なんですけれども、化石由来の燃料もそうなんですが、SAFそのものの取扱いもまだこれは決まっていないということも伺っております。

 SAFには切り替えていくというインセンティブを働かせていくということを考えていったときに、SAFもそうですが、その原料はエタノールになるのかもしれませんが、これも是非適用除外の対象にしていくべきだということを、同趣旨でありますので質問はしませんが、併せて私から申し上げさせていただきたいと思います。

 先ほど経産省の方にも答弁いただきましたが、SAFの国内生産ということも非常に重要だということで伺いたいと思うんですけれども、二〇三〇年に一〇%程度の混合ということの目標を掲げておられるということでございましたが、これは日本だけじゃなくて、いわゆるアメリカを始め国際社会の中でも同等の水準の目標を定めているということであります。となりますと、やはり生産物の争奪戦という状況が、脱炭素に向けて、こういう状況が見込まれるということであります。

 そういうことを考えたときに、じゃ、国内のものだから安くということかどうかは話は別にしても、合理的で安定した価格で安定供給の下できちんと確保できるかどうかというのは、国内生産というのは非常に重要だと思いますし、五〇%の限界を突破するということでいえば、技術開発も非常に重要だと思っております。

 日本が世界に先駆けてこの生産量を増やし、そして技術開発をしていくということが極めて重要だと私も考えるわけでありますが、大臣、お考えをいただければと思います。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、世界的にも、まさにこの航空分野における脱炭素化の流れ、SAFへの取組など加速されているところであります。

 我が国でも、二〇三〇年時点で、本邦エアラインにおける燃料使用量の一〇%、先ほど来御指摘がありましたとおり、SAFに置き換えるとの目標を掲げておりまして、国産のSAFの製造、供給体制の確立は喫緊の課題であります。

 このため、経産省といたしまして、グリーンイノベーション基金などを活用して、SAFを大規模に製造するための技術開発を支援するなど、競争力強化に向けた取組を進めているところであります。

 また、技術開発支援に加えて、国交省と共同で立ち上げましたSAF官民協議会におきまして、原料の確保を含めたサプライチェーンの構築に向けた課題解決にも取り組んでおります。

 こうした取組などを通じまして、国内の石油元売事業者を中心にSAFの製造計画が具体化されてきておりますので、二〇三〇年時点で百万キロリットル以上のSAFの供給を見込んでいるところであります。

 あわせて、中長期的な航空機の脱炭素化の実現に向けて、電動化や水素推進などの革新的な技術開発など、次世代航空機の実現を見据えた取組も推進をしているところであります。

 引き続き、航空分野の脱炭素化に向けた取組を加速させるために、御指摘のようなSAFの製造、供給体制の早期確立、そして、あわせて、次世代航空機の実現に向けた取組、積極的に取組を進めていきたいというふうに考えております。

山岡委員 御答弁ありがとうございます。

 そういう技術開発の推進、生産量の拡大とともに、また、現状、現実に合わせた措置、状況も踏まえて対応いただきたいと思います。

 続いて、今回のGXの位置づけとしても位置づけられていますけれども、CCSについて伺いたいと思います。

 カーボンニュートラルということは、カーボンの排出を全くゼロにするという考え方ではないものと理解しております。つまり、排出されるものもありますけれども、それを、プラスもあればマイナスをするということで、トータルニュートラルということで、カーボンニュートラルという言葉になっているということを私は理解しているわけでありますけれども、このCCSは、排出されているCO2を地中に埋めるという技術であります。CCUSという、別のものに活用するという考え方もあるんですけれども、今回、CCSについて伺いたいと思います。

 私、国会でも再三取り上げてきてはいるんですけれども、世界情勢を今後見ますと、このCCS、日本がこれまで取り組んできたといっても、イギリスやノルウェーが非常に先行しているということも伝えられています。二〇二五年には、このCCS、開始していくというような話も来ています。この世界的な状況から見れば、これまで研究を進めてきた御努力はあるにしても、日本の遅れというのは非常に懸念をするところでもあります。

 炭素を地中に埋めていく、マイナスにするというのは、ある種、各産業とか様々な分野の切り札的な存在になろうかと思うわけでありますけれども、この分野を海外の事業者、企業に頼っていくということになると、やはり脱炭素の部分を、どれぐらいの価格をもって引き取ってくれるのかという問題に直結してくると思っております。だからこそ、このCCSも、国内での事業化、非常に重要だと思いますし、これは、今目標は定めているわけでありますけれども、しかし、早期に進めていただきたいと思います。

 まず大臣に伺いますけれども、GX政策におけるCCSの考え方とともに、特に、今の海外情勢を踏まえた中でどうお考えか、御答弁をいただければと思います。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けては、電化とか水素化などによる脱炭素化を最大限進めたとしても、再エネとか原子力もそうでありますが、最大限進めたとしても、排出されるCO2、これを回収し、地下に貯留するCCSの取組が不可欠であります。

 特に、このトランジション、移行する間に、LNGとか、石炭の脱炭素化も進めていくわけですが、その中でもやはりCO2は排出されますので、それを回収していく、貯留していくというのは非常に大事な取組だと思いますし、御指摘のように、特に産ガス国で、ガスを取り出したところにCO2を貯蔵するという取組が進んでいることも事実だというふうに思います。

 私どもとしても、今年二月に閣議決定しましたGX実現に向けた基本方針におきまして、脱炭素に向けて、このCCSを追求することとしております。私も、昨年五月、お地元の、苫小牧のCCS実証試験センターを視察いたしましたけれども、まさに、CCSは脱炭素化の最後のとりでである、CCSなくしてカーボンニュートラルなしと言っても過言ではないと思っております。

 先ほど申し上げましたとおり、世界各地でこの事業化に向けた激しい競争が起きているわけであります。日本の脱炭素コストを最小限にするために、国家的な課題として、戦略的、計画的にCCSに取り組む必要があるというふうに思っております。

 このため、日本では、二〇三〇年までの事業化を目指して、コスト低減や適地開発、事業化のための環境整備といった様々な課題の解決に取り組むための、我が国初の国家戦略でありますCCS長期ロードマップを本年三月に公表したところであります。

 今後、二〇三〇年までの事業開始に向けて、先進性のある三から五ぐらいのプロジェクトから集中的に支援を開始して、二〇三〇年までに年間貯留量六百から千二百万トンの確保にめどをつけることを目指すと同時に、CCS事業に関する法制度をできる限り早期に整備してまいりたいというふうに考えております。

山岡委員 ありがとうございます。

 今、御答弁もいただきましたけれども、本当にありがとうございます、私の地元にもなりますけれども、苫小牧では、CCSの実証という、世界にも注目される、冠たる技術の確立のために地域として協力してきたという経過があるわけでありますが、しかし、その実装が、世界の方が先駆けて進んでいくという現状は、私はじくじたる思いもございます。

 何というんでしょうか、本当に、国内の問題じゃなくて、世界各国でCCSの競争が激しくなっているということは委員の皆様ともまた考え方を共有したいと思いますし、石油あるいはガスのメジャーが、今まで採掘した場所に、今度は空いたところに埋めていくという考え方で、転換しやすいということもあるんだと思いますけれども、非常に国内でも進める意義が高いものだということを改めて感じます。

 しかしながら、CCS事業を進めていく上において、やはり各地域地域の理解というのが、どう広げていくかということも非常に重要です。地域の協力なしにはこれは進んでいかないということで、この点も、私も再三国会でも、この場でも取り上げさせていただきましたが、しかし、実装が二〇三〇年ということで定めていて、言うてもあと七年ぐらいということになります。簡単にすぐに何かできるということじゃない中で、一定のランニング期間も必要な中で、これまでも私も提起してきましたけれども、今、政府として、どんな形をもって地域の理解促進あるいはこの推進を進めていこうと考えているのか、大臣に伺いたいと思います。

西村(康)国務大臣 まさに、CCSを進めるに当たっては、地域の皆様の御理解、御協力をいただくこと、そして丁寧に進めていくことが重要だと思っております。

 先ほども触れましたけれども、視察をさせていただいた苫小牧のCCS実証試験センターでありますけれども、世界で初めて、市街地の近傍で大規模なCCS実証拠点となっておりまして、市の市街地中心部から二、三キロと住民の生活圏に近いところで、苫小牧の皆様の御協力をいただいていることを視察時にも実感したところであります。日本のGXに不可欠なCCSを国内で進める上で、モデルとなるような重要なプロジェクトと考えております。本事業の実施に当たりまして御協力いただいております苫小牧の皆様に感謝申し上げたいというふうに思います。

 そして、このCCS長期ロードマップの中でも、国民、特にCO2を貯留する地域の関係者の皆様の御理解が不可欠だということをお示しをしております。地元の皆様への丁寧な説明に加えて、関連する産業、雇用の創出に向けた活動を支援する仕組みについても検討していきたいというふうに考えております。

山岡委員 ありがとうございます。

 大臣から、改めて苫小牧のCCS事業の意義を御説明いただきましたけれども、市街地に近く、こういう場所でやれるということが大きなモデルになるという話でありまして、そういう評価をいただけるということは心強くもありますし、これに関連して、産業、雇用もということもおっしゃっていただきました。

 もちろん、市街地の住民や市役所始め様々な理解もあるんですが、今回、もう御存じのとおりでありますけれども、海の下に入れているということがあって、漁業者の皆様、こうした理解も非常にあったからこそ進んできています。

 今のお話で、産業、雇用ということでありますけれども、漁業者の方にどう産業、雇用と結びつけて還元していくのかというのは、これは単純には結びつかないものでありますけれども、皆、地域の発展を望みながら、あるいは自分たちの分野もそこの中で大きく発展していくことを望んでいますので、そうした今の御説明の中のイメージの中で是非進めていただきたいということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 ちょっと化学の話もさせていただきます。

 化学産業の、素材産業でありますけれども、このことについて、ちょっと今回また触れさせていただきます。

 化学産業も、従業員数百万人近くもあるという製造業の一割も占めるような、出荷額等も含めて非常に大きな、日本の物づくり産業を支えている分野であります。プラスチック製品であったりゴム製品、塗料もそうですし、接着剤とか、機能性化学品という、様々、特殊な機能を持ついろいろな物品等、そうした分野をいろいろ担っておられるということで、半導体はもちろんですけれども、自動車、電気機器、あるいは建設土木とか、裾野が非常に広いわけであります。

 また、異業種との交流の中で、協業といいますか、そうした中で、最近ではヘルスケアのこととか、医療福祉機器とか、バイオ製品とか、本当に化学分野の製品というのは裾野が広いということで、極めて重要だということも改めて申し上げさせていただきたいと思いますし、日本の物づくり産業を支えていましたし、世界の中でも戦っている、働いている皆様の並々ならぬ努力に改めて思いを寄せるところであります。

 しかし、化学分野というのも、その産業の電源を脱炭素化すればいいというものでもないということであります。ナフサからエチレン、プロピレンなど、製造過程、そうした過程そのものに多量の二酸化炭素を排出するというような、そうした製造工程でありますので、それそのものを変えていくという非常にハイレベルな技術改革が必要な分野であります。

 まだちょっと時間がありますので経産省に伺いますけれども、化学分野のこの研究開発、現状、課題等を含めて、見解を伺えますか。

恒藤政府参考人 化学産業は、年間五千万トン以上の二酸化炭素を排出しておりまして、製造業の中では鉄鋼に次ぐ多排出産業でございます。とりわけ、プラスチック、タイヤ、塗料などの原料となります石油化学製品などの基礎化学品の製造工程が化学産業の排出の過半を占めておりまして、化学産業の脱炭素化には、この分野について、CO2排出の少ない製造プロセスへの転換や、あるいは、そのプロセスで用います燃料について、CO2の排出が少ない、あるいは排出のない燃料に転換をしていくということが重要でございます。現時点では、これらのいずれにつきましても、脱炭素化を実現する決定的な技術が確立されておりませんで、革新的な技術を世界に先駆けて確立するということが重要となってございます。

 このため、経済産業省といたしましては、グリーンイノベーション基金を通じて約千三百億円を確保いたしまして、令和三年度から、製造プロセスの転換として、廃プラスチックや廃タイヤからプラスチックを製造する技術、あるいはCO2を原料として化学品を製造する技術、また、燃料転換としては、石油化学製品の製造工程であるナフサ分解炉の熱源にアンモニアを活用する技術について研究開発を進めているところでございます。

 さらに、バイオ物づくりにつきまして、GI基金において約千八百億円、それから令和四年度の補正予算におきまして三千億円を計上し、微生物を活用して、二酸化炭素あるいは廃棄される衣料などの未利用資源を活用して化学品などを製造するプロセスの確立に向けた研究開発も進めているところでございます。

山岡委員 今るる現状を伺いました。

 この化学の分野は、素材ということもありますので、脱炭素はもちろんなんですけれども、コストと機能の両立の中で、しかも幅広い産業に影響するということで、この分野が非常に革新したら非常に大きな脱炭素へのインパクトも与えることも事実で、そうした意欲を持って現場で働く皆さんも、未来に希望は持ちながらも、大変課題が多いという思いであります。

 今、現状のお話がありましたけれども、大臣から伺いますけれども、是非、更に踏み込んでスピード感を持って対応する、こうした考え方を持って臨んでいただきたいと思いますが、大臣、見解を伺います。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、化学産業は、雇用約百万人を抱えておりますし、製造業のGDPの約一割を占めるということで、日本経済を支えるまさに屋台骨ということであります。国内、川上から川下産業、自動車産業などへの素材供給を通じて、製造業全体の競争力の基盤となっているところであります。

 一方で、御指摘のようにCO2を多く排出する産業でありますので、世界に先駆けて技術革新に挑戦することで、今後創出されるグリーン市場の獲得につなげていくこと、GX実現に当たっての最大の課題の一つと考えております。

 化学産業のカーボンニュートラル化に向けて、廃プラスチックやCO2などを基礎化学品の原料に用いる製造プロセスの確立とか、エネルギー転換を進めていくことが必要だというふうに考えております。

 経産省として、もう既に、こうした製造プロセスの確立に向けて、グリーンイノベーション基金を活用して、廃プラスチックやCO2からプラスチックを製造する技術開発を実施をしておりますし、私も、地元兵庫の企業を視察をさせていただきましたけれども、微生物によってCO2からプラスチックを作るという、そうした生産技術の開発、実証を行っておりますし、今御説明ありましたけれども、補正予算で、まさにバイオ物づくりということで、三千億円を計上しているところであります。

 エネルギー転換対策としても、山口県の周南市のコンビナートの対応を視察をさせていただきましたけれども、ナフサを分解する電源にアンモニアを活用する、そのための技術開発とか、あるいは、化学産業が多く保有しております石炭火力自家発電、この設備におけるバイオマスの混焼発電の実証など、化石燃料から燃料転換に向けた取組を支援をしているところであります。

 そして、今回のGX経済移行債を活用した支援についても、その要件を満たせば化学分野も対象となり得るということでありますので、御指摘のように、スピード感を持って、産業競争力強化と排出削減両立に向けた取組、この業界の本当に真剣な取組を、研究開発のみならず社会実装も視野に入れて、政府としてしっかりと後押しをしていきたいというふうに考えております。

山岡委員 ありがとうございます。

 大臣の御地元の、CCUSに関わる話だと思いますが、二酸化炭素を利用して新たな製品もという話がありました。この業界の真剣な取組を受け止めていくというお話もありましたので、本当にこれが転換していければ非常に大きなインパクトだと思いますので、是非力を入れていただきたいと思いますし、あわせて、ナフサも、関係諸税減免等、様々な措置を行われている中で、こうした国際競争力や技術開発が遅れるような、そうした枠組みにはしていただきたくないと思いますので、そのことも改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 今日は、まだまだ各分野、伺いたいこともあるんですが、それぞれ、各個別の分野のことをまた機会を持って伺いたいと思うんですが、大臣に最後、伺いたいと思うんです。

 前回の答弁で、私は、このGXの推進は、政労使、いわゆる政府もそうですが、労働そして経営者側、この枠組みの中でしっかり進めてほしいということを、協議の場をしっかり設けてほしいと申し上げたときに、今、GX実行会議で、連合からも経団連からも話が聞けるし、政府もいるので、この枠組みをうまく使ってという趣旨の御発言もありましたが、やはり、連合はもちろん労働者の代表の皆様が集まっているわけですし、経団連はもちろん経済界の代表なわけでありますけれども、各分野のことを細々と様々協議できるということとはまたちょっと違うわけであります。大きな枠組みでの政労使も重要でありますけれども、各分野分野も、労使、専門性の高い議論もあると思います。

 そうしたことも、政府がうまくその形をつくりながら、これは、経営者側、労働者側共に、この方向に向かっていけるよう、そうした考え方で進めていただきたいと思いますが、最後、大臣に伺いたいと思います。

西村(康)国務大臣 大きな産業転換、構造は変わっていく、脱炭素化に変わっていく重要な局面でありますので、御指摘のように、私どもの、経団連会長あるいは連合の会長が入った枠組みに、まあそれはそれで進めていくとして、御指摘のように、各分野での円滑な労働移動とかリスキリングとか、非常に重要な御指摘だと思いますので、御指摘いただいた点を頭に入れながら進めていきたいというふうに考えております。

山岡委員 ありがとうございます。

 また質問をさせていただきたいと思いますが、今日はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、山崎誠君。

山崎(誠)委員 おはようございます。立憲民主党、山崎誠でございます。

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関わる法律案、いろいろな議論が出て、大事な論点、様々ございます。私も、総括する意味で、西村大臣にお聞きをしてまいりたいと思います。

 まず、私どものスタンスであります。

 気候危機とも言えるこの気候変動への対応、それから脱炭素社会の実現というのは、大変重要な課題であることは言うまでもありません。その下で、逆に言うと、脱炭素社会への移行、これを経済成長のきっかけにしていくということも大きな課題であります。そういう意味で、このグリーントランスフォーメーションの推進というのは極めて重要でありまして、そのための制度構築には私どもはもちろん賛成であります。

 また、このグリーントランスフォーメーション、GXは、大きな産業、経済、社会の構造変革だ、産業革命以来というお言葉もございました。そういう中で、本当にこれは、国がその実行の責任をやはり持って、政官民が一体となって進めることが必要だ。特に、基幹産業の構造変革には巨額の投資が必要であります。これは、やはり一企業に任せるのではなくて、国家プロジェクトとして、国を挙げて支援をして実行していくということが求められているということだと思います。

 さらに、国全体の構造変革でありますから、大企業のみならず、中小企業や地域の経済への配慮というのも不可欠であります。

 また、この変革の主役というのは働くお一人お一人の皆様でございまして、それぞれの持てる力をGXにおいて存分に発揮いただくこと、付加価値の高いグリーンでディーセントな雇用の創出、そのためのスキルアップの教育機会の充実など、雇用の公正な移行ということ、これが私はGXを成功させる大きな鍵であろうというふうに思います。

 こうした前提で御質問したいのでありますが、改めて、恐縮ですけれども、GX推進の目的について、西村大臣のお言葉でお答えをいただければと思います。

西村(康)国務大臣 まさに世界中でいろいろな災害が起こる、これは気候変動を背景にいろいろなことが起こってきている。これに取り組んでいくために、世界中がカーボンニュートラルを目指して動き出している。その中で、日本も二〇五〇年カーボンニュートラルということを実現すべく取り組んでいるところでありますが、その前段階で、二〇三〇年に温室効果ガスを四六%削減するという目標を、脱炭素化に向けて、大きく産業構造、社会の構造を含めて転換を図ろうとしているところであります。

 一方で、国民生活そして経済活動を支えるエネルギーの安定供給ということも重要でありますので、安定供給を確保しながら脱炭素化を進めていくということで、日本として、様々な選択肢、多様な選択肢をしっかりと検討しながら、この両立、経済成長にもつなげていくという、御指摘のように、これを図るために、様々な選択肢を持ちながら、それを着実に進めていくということであります。

 その上で、早く取り組んでもらおうということで、早く取り組んだ企業ほど負担が低い仕組みということで、成長志向型のカーボンプライシングということを、今回、仕組みを導入させていただこうということで、法案を提出させていただいて、今御審議いただいているところであります。

 そうした取組を加速することで、多くの企業の技術開発や社会実装を進めていくことで、この二〇三〇年四六%削減をまず実現をし、そしてカーボンニュートラルに向けて取組を進める、その全体をお示しをしているものが今回のこのグリーントランスフォーメーションを進める法案ということでございますので、是非、御理解をいただき、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 まず、脱炭素と経済成長、これを同時に進めていく。私は、そのためには、これ、二十兆円という、額が大きくなりますと少し感覚が鈍るのでありますが、大変な巨額のお金であります。大変重要なこの資源をどういうふうに使っていくのか。投資対効果という意味で、やはり重みづけを行っていく必要があるのではないか。

 限られた貴重な財源を使うに当たっては、私はやはり選択と集中というこの言葉も配慮をする重要なキーワードになるのではないかと思うのでありますけれども、西村大臣、どのようにお考えですか。

西村(康)国務大臣 私ども、専門家の皆さん、有識者の皆さんの御意見を伺いながら、また産業界のいろいろな取組、意見なども聞きながら、そして世界の動向を見ながら、今回、官民で百五十兆円の投資をし、そしてそれを引き出していくためにも二十兆円規模の政府の支出、支援策、いわゆる投資を先行的に支援をしていく、そうした仕組みが必要だということで、今回、その枠組みを示させていただいております。

 そして、百五十兆円の規模についても、そして二十兆円の大枠についても、それぞれの分野でこの程度の投資を見込んでいくということで、工程表も示させていただいております。

 そういう意味で、何でもかんでもできるという、予算が幾らでもあるというわけではありませんから、この百五十兆円規模、そして二十兆円の支援という枠組みの中で、工程表を示しながら、まさに重点を置いた支援を進めていくということでございます。

山崎(誠)委員 私は、GXの基本方針を見ると、戦略自体がかなり総花的な印象を持っていまして、こう言ってはなんですけれども、既得権益の保護的な政策にもなってしまっているのではないかなという思いがあります。

 この投資規模二十兆円、まず国の投資規模でありますけれども、これは世界と遜色がないというようなお話をされているとは思いますが、この規模についてはどのようにお感じになっているか。

 これは維新さんの質問の中でもあったんですけれども、何となく、償還のプロセスを考えたときに、二十兆ありきで、それによってこの額が決まって、それに合わせたわけではないと思うんですが、一定の、頭に入れながら作った方針に見えるのであります。それで本当に有効な施策が打てるのかどうか、その辺りが非常に疑問でございます。

 選択と集中、そして本当に、投資対効果をどういうふうに見てこの二十兆を決めたのか、この額が本当に適切なのか、それをもう一回お聞きしたいと思います。

西村(康)国務大臣 GX基本方針の資料の中でもお示しをしておりますけれども、二十兆円、百五十兆円という規模につきましては、専門家の意見も聞き、有識者の意見を聞きながら、業界の様々な取組、そして国際的な技術開発の動向とか比較もしながら、まさに民間企業だけでは真に取組が困難であるということ、そして経済成長にも資するというようなことから、私どもとして、想定しているものについて、大きな方向性を工程表の中でお示しをしているわけであります。

 もちろん、予算が幾らでもあるわけじゃありませんから、私どもとして、この規模、おっしゃったような選択と集中というか、重点的に置いていくという観点で二十兆円規模の投資を決め、そして、ある意味でやはり財政にも責任を持たなきゃいけないという観点から、先行的に支援をして、後でそれは一定の負担の範囲内で、中期的に総額として負担が増えない範囲内で、その償還も今回手当てをしようということであります。

 そして、先日来御議論ありますように、石油石炭税の減っている分とFIT賦課金の減っている分、合わせますと、想定される、単純な計算で、一定の仮定を置いての試算でありますけれども、合わせますと二十九兆円ぐらいになるんだと思いますので、二十兆円というのが私ども今の案としてはベストと思っておりますし、これで是非進めていきたいと思っておりますけれども、当然、いろいろな技術開発の動向によって変わるものもありますので、その辺は状況を見ながら適切に対応していきたいというふうに考えております。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 これはどうお感じになられているかで構わないんですけれども、例えば中国のGXに関連する投資、こういったものを日本と比較したときにどういうふうに考えるかというのは、私は非常に重要だと思うんです。

 例えば蓄電池とかEVなど、今、中国、本当に圧倒的に力をつけて市場のシェアを狙ってきているし、取ってきています。日本がこの中国にどう対応するのか、立ち向かうのかというのが、私は、このGXで成長できるかどうかの一つの大きなポイントだというふうに思うのであります。

 そう感じたときに、経産省の皆さんの資料を見ていても、例えば中国のGXに対する投資の分析、そういう情報、資料というのをほとんど見ていない。例えばドイツだのアメリカだの、そういうのは出てきますよ。だけれども、中国については、GXの投資についての見通し、考え方みたいなものは、私は見ていません。

 それで、中国の話を聞くと、公開されたデータがないようなお話を聞くのでありますけれども、例えば太陽光発電なりEVなり電池など、今、世界の売上げのシェアを見れば、日本のシェアの一桁、二桁違うわけですよね。そういうふうに売上げが違うということは、開発投資についてもそのぐらいの差があるという認識で立たなきゃいけないんじゃないかと思うんですよ。当然、売上げと開発投資というのは、やはり比例してくる部分はあると思います。

 そういう中国と例えば立ち向かっていくときに、この今のGXの二十兆円をどう配分していくのか。これはかなり戦略的に、それも敵を見ながら、敵と言ってはなんですけれども、競争相手を見ながら判断をしていかなければいけないという、極めて厳しい、そして大事なところだと私は思うんです。経産省は、その分析力があって、その分析をされているのかどうか。

西村(康)国務大臣 まず、中国の取組でありますけれども、もう御案内のとおり、足下の中国の電源構成は、六割以上を石炭に依存をしております。そうした中で、再エネ、あるいは過渡期のエネルギーとしてLNG、カタールと二十七年の契約を結んだわけでありますし、そうした取組が進められているものというふうに思います。

 ただ、ちょっと私の認識違いがあればあれですけれども、私の認識しているところによりますと、カーボンニュートラルは二〇六〇年に目指すということで承知をしておりますので、取組としては、世界が二〇五〇年カーボンニュートラル、あるいは、先般IPCCがもっと速く加速しなきゃならないという指摘をしている中で、私どもも加速して取り組まなきゃいけないというところを強く意識をしているところでありますけれども。

 その上で、確かに太陽光につきましては、中国のシェアが非常に高い。この間、日本はシェアを落としてきているわけでありますので、そういった投資を行ってきているんだろうと思いますし、蓄電池に関しましても非常にシェアを高めておりまして、日本はシェアを落としてきておりますので、改めて、そうした蓄電池の対策なども、我々、別途進めているところでありますが、太陽光についても、ペロブスカイトという新たな、軽量で柔軟な、壁にも張れるようなそうした開発、日本は先行して行ってきておりますので、こうしたものも更に強化をして取り組んでいきたいというふうに思っております。もちろん、この分野でも中国は開発を進めているということも承知をしております。

 全体として、なかなか、どのような支援を行っているのか、国がどう関与しているかということについては非常に不透明であります。私ども、WTOにおいても、そうした各国が行っている補助金の通報システム、これは既にルールはあるんですけれども、更に明確にそうした取組を進めるようなこともWTOでも議論を進めているところでありますので、できるだけ透明な形で支援策なども示してもらいたいというふうに思っておりますし、そうした中でも、私どもも、しっかりと技術開発の動向とか産業の動向などを分析しながら、先ほど冒頭にありましたように、日本として、競争力を持って経済成長につなげる、つながるような形での支援、しっかりと行っていきたいというふうに考えております。

山崎(誠)委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 私の問題意識は、やはり中国などの分析をした上で、例えば蓄電池のシェアを見ただけでも、中国メーカーの伸びというのはもう目をみはるものがあります。このままいきますと、太陽光パネルと同じように、日本の例えばパナソニックなんか頑張っていますけれども、駆逐されてしまうのではないかというふうにも思うんです。それで本当に日本のGXが経済成長につながるのかということをやはり考えなきゃいけない、そういうポイントはここにもあると思うんです。

 やはりこれはしっかりと分析をしていただいて、分かりにくい国ではありますけれども、戦略を練るときにはこういったものにも、情報にもきちっと配慮をするというか、こここそ配慮しなきゃいけないポイントだと私は思うのであります。

 今お話がありました、ちょっと大きな質問になりますけれども、例えば太陽光パネルは中国に取って代わられました。風力発電の設備の製造も、日本のメーカーは撤退をしてしまいました。どうしてこの世界市場から日本は、太陽光発電、風力発電、撤退せざるを得なくなったんですか。

西村(康)国務大臣 様々な理由があると思いますけれども、一つには、日本の産業全体の特徴でもあるんですけれども、多くの企業が参入をして、そしてある意味、人材も分散をしている。これは半導体でも言えることですけれども、あるいは太陽光でも同じだと思いますが、多くの企業が参入して、人材が分散する、そして、大きな投資がなかなか一社だけではできにくい。さらには、産業政策についても、アメリカとの関係を含めて、様々な経緯の中で、なかなか大きな投資を国としてしてこなかった面、支援を行ってこなかった面もあります。

 そうした官民双方の理由の中で、全体として大胆な投資が行われずに、まさに国家的に支援を行ってきたと思われる他国において、特に中国などにおいて、そうしたシェアを高めてきたものというふうに思います。

 そういう意味で、官民で連携をしながら大胆な投資を行っていくこと、また、次世代の技術開発に一国でできないものについては同志国と連携しながら行っていくということも大事でありまして、風力についてもシェアを落としてきたわけですが、日本の場合はなかなか遠浅の海がないということで、すぐ深くなりますので、今後進めていくに当たっては、浮体式の技術開発が不可欠であります。

 こうしたことについても今取組を進めているところでありますので、そういう意味で、一旦シェアを失っておりますが、日本の技術を生かして、太陽光ではペロブスカイトのような、柔軟で壁にも張れるようなそうしたもの、あるいは洋上風力の浮体式のもの、こうした新たな挑戦を今進めているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 もう一点お聞きします。

 一方で、そうやって、再生可能エネルギー、残念ながら、世界の成長産業である、成長の非常に著しい分野については、日本メーカーは撤退をせざるを得なくなりました。

 日本が一生懸命、何とか復活をさせたいと思っている原子力発電でありますけれども、日本がというよりも政府が復活をさせたいと思っている原子力発電でありますけれども、安倍総理がトップのとき、トップセールスで海外に展開をしようということで、海外輸出を目指しました。でも、受注実績はゼロです。米国では、例えば東芝、あの巨額の損失を原子力発電事業で出してしまいまして、一気に経営危機に陥っています。

 原子力発電の海外輸出はなぜ失敗したのか、何で実現できないのか、大臣、済みません、お答えいただければと思います。

西村(康)国務大臣 私も安倍総理の下で官房副長官を務めておりましたので、トルコのエルドアン大統領とこの原発の話をしたときも同席をさせていただきました。

 各国からは、日本の技術に対する期待は非常に大きなものがございました。ただ、いろいろな理由があると思いますけれども、相手国側の事情もあると思いますし、また、価格面での結果というものも、事情というものもあると思います。様々な理由の中で、残念ながら、トルコであるとか、イギリスであるとか、ヨルダンであるとか、いろいろな国々で、計画されたものがなかなか実現できなかった。イギリスの場合はコロナのパンデミックの影響も大きかったものというふうに思いますけれども、様々な理由で、残念ながら、海外で輸出は実現してこなかったということでございます。

山崎(誠)委員 様々な理由では理由にならないのでありまして、申し訳ございませんが。

 これは、私も原発輸出が失敗した理由は経産省にお聞きをしているんですけれども、このペーパー一枚しかもらえなくて、それぞれ三行ずつ、イギリスの例、トルコの例が書かれています。

 これはきちっと分析すべきだと思います。何が起きたのか、どうして受注できなかったのか、その後、そのプロジェクトはどうなったのか。ほかにも世界でいろいろ声をかけたプロジェクトはあったはずであります。それぞれ、どういう理由だったのかというのはきちっとやはり分析していただきたいです。

 価格が高くて、建設費が当初の予定よりも一兆円になる、二兆円になる、そういうプロジェクトが原発でありまして、経済性にも合理性がない、それが私は大きな理由だと思うんですよ。今後、これが海外でまた復活をしていくというためには、すごく革新的なそれこそ開発がなければ難しいのではないかというふうにも思います。

 これは印象で構いません、再生可能エネルギーの市場とそれから原発の市場、今後どちらが大きいか、大臣の印象を教えてください。

西村(康)国務大臣 エネルギーをめぐっては、各国それぞれの事情がありますし、それぞれの多様な道筋でカーボンニュートラルを目指しております。日本の場合は、再エネも最大限導入しますし、原子力も活用していくという方針であります。

 多くの国で再生可能エネルギーを導入していこうということで取り組まれているのも事実でありますし、アメリカ、イギリス、フランスを始めとして、原子力もしっかり活用していこうという国も先進国でも多いのも事実でありますので、これは、それぞれの国で、国の事情で進めていくということであります。それを日本として様々な形で支援をすることもあり、又は協力をすることもあり、しながら、世界全体でカーボンニュートラルを目指すということでございます。

山崎(誠)委員 済みません、大臣にお答えいただけなかったので、これはまたしっかりと通告をした上で、まあ、これは通告はしているつもりでありますけれども、もう一回お答えをいただこうと思います。

 例えば、太陽光の市場、これは経産省のNEDOの試算です、二〇三〇年には三十九兆円です。年間三十九兆円の投資が見込まれるんです、設備の投資が見込まれます。一年ですよ、三十九兆円。

 原発はどうかといえば、世界で、二〇二〇年の、これは原子力産業協会が出した数字でありますけれども、建設中が五十九基、計画中が八十二基です。計画中が八十二基、一基一兆円かかったとしても、八十二基であれば八十二兆円ですよ。分かりますよね。計算していただきたい。

 先ほど言いましたように、太陽光発電については一年で三十九兆円の設備投資が見込まれている。原発については今後八十二基の計画がある。これは、市場規模を見れば、太陽光あるいは風力、足せば原発の比じゃない世界の市場の規模を誇っているわけであります。

 それで、今大臣おっしゃっていて、海外はいろいろな事情があるんだと。じゃ、どこに売るんですかね、原発。日本に造るだけ、リプレースで数基造るだけで、もちろんこれはペイできませんよ。経済の成長につながる分野では私はないと思います。

 大臣、この移行債二十兆円、これには原発に関する支援も入っている、入っていない、お答えください。

西村(康)国務大臣 まず、原発の将来については、現在、計画のあるものは先ほど御指摘があったとおりですけれども、その後、いわゆる次世代革新炉について、高速炉であるとか、あるいは高温ガス炉、あるいは核融合、核融合についてはITERという国際研究が進んでおりまして、ヨーロッパ、アメリカ、これはロシア、中国も入っておりますし、韓国、インドなども含めて進めているところでありますし、高温ガス炉や高速炉についても各国共に進めている、また、協調して進めようということもあるわけでありますので、さらに、二〇三〇年代、四〇年代、五〇年代を目指しては、原発も新たな形のものが、目指して各国の取組が進んでいるということを申し上げたいと思います。

 その上で、GX移行債についての御質問でありますけれども、原子力分野を排除するものではございません。今回、法案成立後の初年度における総額で約一・六兆円規模のGX経済移行債発行を予定しておりますけれども、原子力関係の事業としては、高速炉、高温ガス炉、まさに次世代の革新炉の実証炉の研究開発に関する予算として約百二十三億円を計上しているところであります。

山崎(誠)委員 これは排除していないということでありますから、この大事な大事な二十兆円の中に原発も入っているのであります。

 資料四をつけました。これは、政府の資料をよくよく読むと、すごいことが私は書いてあると思うのであります。ちっちゃな字で書いてあるんですけれども、一番上の革新軽水炉は商業炉の線表が書かれている、小型原発あるいは高速炉あるいは高温ガス炉については実証炉の線表が引かれていて、核融合については原型炉の線表が、この同じタイムラインに乗っかっているわけであります。

 ですから、実証炉というのは、その後、商業炉を造るか造らないか決めて、造るのであればそこから造り始める話。原型炉というのは、その後、実証炉を造って商業炉を造るというプロセスがつながってくるわけでありまして、二〇五〇年の段階で、実際に発電をしてその可能性が残っているのは上の革新軽水炉しかない。ほかのものは、そこから先、また十年、二十年、三十年かかる。そういう種類の開発に今お金を、この大事な大事な二十兆円をつくろうというのが政府の考え方なのであります。私は、これは間違っていると言わざるを得ない。

 もちろん、研究開発やめろとは言わない。民間の方々がいろいろ議論をするのは構わない。でも、この二十兆、大事なGXのお金を今ここで使う分野かどうかというのは、選択と集中です、きちっと見極めていただかなきゃ困るのであります。

 いろいろお聞きしたいことはあるんですけれども、今日、環境副大臣にもお越しいただいているので、カーボンプライシングの話に移ります。

 カーボンプライシングについては、環境省が検討を進めてきております。導入のタイミング、あるいは税額のイメージなど、どのように検討してこられたか。そして、導入がなかなか環境省のレベルで進まなかった理由は何か、お答えいただけますか。

山田(美)副大臣 お答え申し上げます。

 今回の成長志向型カーボンプライシング構想は、大胆な先行投資支援、そしてカーボンプライシングによる先行投資インセンティブ、そして新たな金融手法の活用を組み合わせた、パッケージで脱炭素に向けた取組を強力に進めるものであります。

 こうした政策パッケージは、これまで環境省で検討しておりましたポリシーミックスとしてのカーボンプライシング、そして、予見可能性を高め、段階的に負担を引き上げていくことによる価格効果の発揮、そして、収入を活用した脱炭素投資の促進といった点が反映されていると受け止めております。

 このような制度設計と併せて先行投資を現時点から後押ししているところでありまして、二〇三〇年度四六%削減の確度を高め、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に貢献するものと考えております。

山崎(誠)委員 今のお答えでありますと、じゃ、今回導入されるカーボンプライシング、二つ制度がありますけれども、これは環境省が検討してきた案と乖離はなかったという認識でよろしいですか。

山田(美)副大臣 お答え申し上げます。

 環境省で検討してきたものと乖離はございません。

山崎(誠)委員 そうですか。分かりました。

 環境省、じゃ、もう一つお聞きしましょう。環境省が進めてきた議論は、このGXが出てくる前、どこまで進んでいたのか、どのぐらいのタイミングでカーボンプライシング導入をしようとしていたか。参考人でいいですよ。

上田政府参考人 お答えいたします。

 環境省におけるカーボンプライシングの検討でございますけれども、今回のGXの構想に至るまでに当たっては、それまでにも中央環境審議会また検討会の場で様々な政策提言の一環として検討をしていたというところであります。

山崎(誠)委員 具体的に、じゃ、まだ全然練られていなかったということですか。

上田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど副大臣から御説明がありましたように、例えば、ポリシーミックスの中でカーボンプライシング、こういうものを位置づける際には、予見可能性といったものが大切であること、カーボン比例といったものが大切であること、そういった基本的な考え方を整理するとともに、例えば、こういう条件であればどういうものがいいかとか、諸外国の制度を見たらどういうものがあるか、そうしたものを詳細に検討したところでございます。

山崎(誠)委員 是非、環境省、これからこのGXの戦略を練る意味ではキーの省庁ですよ。経産省主導で何でも決められては困るんです。環境省もちゃんと意見を言っていかないと、カーボンプライシング、これは骨抜きになっちゃいますよ。

 例えば、今、化石燃料賦課金、スタートは二〇二八年です。特定事業者負担金、排出量取引、二〇三三年からのスタートですよ。二〇三〇年の目標を掲げている政府の取組に間に合わないでしょう。そして、金額の規模についても、海外と比較すると例えば十分の一だ、そういうような数字もあります。これではカーボンプライシングの残念ながら凍結に等しいんじゃないかと思うんですけれども、副大臣、どうですか。

山田(美)副大臣 今御指摘ありましたカーボンプライシングの導入時期、遅過ぎるのではないかという御質問に対してですけれども、カーボンプライシングの導入時期については、当初低い負担で導入し、徐々に引き上げていくこととした上で、その方針や時期をあらかじめ示すことによって、GX投資の前倒し、促進することとしていることに加え、カーボンプライシングを財源とする脱炭素成長型経済移行債を活用した官民協調での百五十兆円を超えるGX投資を、現時点から後押しするということとしております。

 企業に対する予見可能性を高めることで行動変容を促すとともに、脱炭素に向けた取組を現時点から前倒しで強化し、政策パッケージで一体として脱炭素社会の実現に貢献するものでありまして、カーボンプライシングの導入スケジュールが遅いとは考えておりません。

山崎(誠)委員 是非、これはお願いであります。GX基本方針、それからGXの今回議論している推進法、そしてGX電源法、それぞれの案を作るに当たって省庁間で行われた事前協議について、議事録の本委員会への提出を求めます。

 委員長、取り計らいをお願いをいたします。

竹内委員長 後刻、理事会で協議します。

山崎(誠)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

竹内委員長 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 それでは、今回のGX推進法案についての質問をさせていただきたいと思います。

 まず、方向性としては、このGX推進法案に関しては、経済成長をしていくための法案であるというところなんですけれども、その中で、我が党の小野泰輔議員の質問に対して西村大臣の方からカーボンプライシングについての御答弁があった中で、代替技術がないのに負担が課せられる可能性、排出規制の緩い国に生産移行する可能性、一定の猶予期間を置き、研究開発、技術開発を促すという御答弁があった中で、まずお尋ねしたいのは、この一定期間の猶予で本当に代替技術の開発が進むのか、むしろ、カーボンプライシングを早期に導入をする一方で、法人税などの減税を図ることで代替技術の研究開発促進ができるんじゃないかというところなんですが、この辺り、大臣、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 お答え申し上げます。

 もう御案内のとおり、今回の制度は、早期にGXに取り組む企業ほど将来のカーボンプライシングの負担が軽くなるという仕組みを入れておりますので、意欲ある企業がこのGXの様々な技術開発、社会実装に前向きに取り組んでいくということ、それを強力に支援するものであります。頑張った企業ほど、結果的には、税に例えて言えば負担が低く済みますので、後々のことを考えると減税と同じような経済効果を持つ、そういうことが可能となるような制度設計になっているものと認識をしております。

 その上で、仮に一律に法人税減税を行うとすれば、よく言われるとおり、黒字の企業のみが効果があるということでありますし、また、今回重点を置いて支援をしておりますけれども、水素、アンモニアとか、水素還元製鉄とか、次世代太陽電池とか蓄電池、こうした革新的な技術分野に集中的な投資を促すのが難しいという課題があります。

 一律ではなく、アメリカなどで行っている大胆な投資減税ということであれば、どういった分野にしていくのかということも含めてなかなか課題もあると思いますので、いずれにしても、既に措置されている投資促進税制もありますので、そうした改善も含めて、今後様々な御指摘も踏まえながら必要な検討を行っていきたいというふうに考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 是非、大臣がおっしゃられたみたいに、アメリカのような大胆な減税が必要なんじゃないかなというふうに思いますけれども、その中で、排出規制の緩い国に生産移行する可能性がある、いわゆるカーボンリーケージの問題ですね。

 二〇〇五年からEUでは排出量取引が開始された。生産移行は生じるように思えるんですけれども、実際、EUにおいては生産移行は発生したのかどうか、確認したいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 欧州委員会が二〇二一年七月に発行したレポートによれば、多くの実証研究に基づくと、欧州の排出量取引制度によるいわゆる生産移転、カーボンリーケージは深刻なレベルでは発生していないと評価されておりまして、その理由として、無償割当てや免税措置の効果が指摘されているところでございます。

 また、欧州環境庁が二〇二二年五月に発行したレポートによれば、例えば、鉄鋼、セメント、石油精製の部門では、二〇〇九年の金融危機の影響を含め、二〇〇五年から二〇一二年にかけて排出量が低減した後、二〇一三年から新型コロナの影響を受けた二〇二〇年以外では排出量が安定的に横ばいで推移していると指摘されており、こちらのレポートでもリーケージがあるということを指摘されているわけではございません。

 こうした背景といたしましては、多排出産業に対するきめ細かな制度設計が考えられます。排出量取引制度におきまして、当該産業分野において無償割当てを重点的に行うとともに、域内で炭素税を課している国においては排出量取引制度対象の企業は減免措置が講じられていると承知しておりまして、こうしたことが利いていると思います。

 このように、カーボンプライシングの国際比較におきまして、各国経済、エネルギー状況だけでなく、租税体系を含めて、政策体系が異なる点ですとか、部門ごとの実態、特性に応じた措置が講じられている点などを踏まえることが必要だ、このように認識しております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 今るる御説明いただきましたけれども、恐らくこれは生産移行が発生しているのかなというふうに思うんですけれども、その中で、一方、カーボンプライシングによって、EU内、EUの領域の中で産業競争力の低下が指摘されていると思います。この辺りはいかがでしょう。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 これも欧州委員会が二〇二一年に公表した排出量取引制度の影響力調査ということでございますけれども、欧州の排出量取引制度の導入以降、これまでのところは競争力の喪失についての証拠は限定的であるとされておりまして、投資や生産に対して炭素費用が僅かな部分を占めるにすぎないことですとか、多排出産業に有償割当てではなく無償割当てがなされていることなどの効果が指摘されているところでございます。

 他方で、エネルギーなどGX関係分野の特許出願状況を調査した我が国の特許庁の調査によりますと、欧州は、二〇一〇年代においてGX分野の国際的な特許出願で高いシェアを有するなど、グリーン産業で存在感を発揮していると認識しております。

 そうした中で、欧州委員会は、競争力強化に貢献し得るものとしてグリーンへの移行に向けた取組を加速しておりまして、二〇二〇年に公表した十年間で総額百四十兆円の投資を目指すグリーンディールの具体化を進めているところでございます。

 一方、昨年、米国におきましても大規模な投資支援が決定されるなど、GXに向けた国家間の競争が加速しているところかと思っております。

 日本としては、こうした状況も踏まえまして、今般の成長志向型カーボンプライシング構想により、新たなGX移行債を創設し、二十兆円規模の大胆な先行投資を行うとともに、規制、制度を一体型に支援を講ずることで百五十兆円を超える大規模なGX投資を実現してまいりたい、このように考えております。

遠藤(良)委員 二〇三〇年に温室効果ガス削減目標を四六%としている、五〇%の高みへのチャレンジを追求していこうということになっているんですけれども、排出量取引の有償オークションを二〇三三年度から開始していく。こういう目標であれば、間に合わないのじゃないかなというふうに思うんですけれども、この辺り、いかがでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減目標の達成に向けては、徹底した省エネや再エネの最大限の導入、安全性最優先の原子力の再稼働などを進めてまいります。

 御指摘の有償オークションを含みます成長志向型カーボンプライシング構想は、GX投資の前倒しを促進することで二〇三〇年度の削減目標の実現の確実性を高めるものでございます。

 二〇三〇年に間に合わないではないかという御指摘でございますけれども、これは、先ほど大臣からもお答えさせていただいているように、早期にGXに取り組む企業ほど将来のカーボンプライシングの負担が軽くなる仕組みということで、足下からそういうプライシングがかかるということが分かっておりますので、制度が始まる前からも効果を発揮し得るものだと思っております。

 時期としては、具体的には、発電事業者に対する有償オークションは二〇三三年度から、それから化石燃料賦課金は二〇二八年度から導入することを、先ほど申し上げましたように、あらかじめ明確にして、早期にGXに取り組むほど将来のカーボンプライシングの負担が軽くなる仕組みとして、二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うということを併せてやるということでございます。

 これによりまして、企業のGXに向けた先行的な投資や取組を足下から引き出しまして、二〇三〇年度の排出削減目標の達成や二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた取組を強力に進めていきたい、このように考えているところでございます。

遠藤(良)委員 ヨーロッパ、EUでは、制度開始から八年後に発電部門について全量有償オークションより割り当てられた。日本でも同様のペースでいいのかなというふうに、ちょっと疑問に思うんです。

 二〇一〇年から東京で、二〇一一年は埼玉で排出量取引が実施された。これはペースを速めるべきだと思うんです。その辺り、大臣、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 有償オークションの導入に当たりましては、代替技術の有無、それから国際競争力への影響なども踏まえて、経済活動を維持強化しながら、そして雇用も守りながら排出削減を進めていくという強い決意、方針で臨んでいるところであります。

 このため、企業がGXに取り組む期間を設けた上で、当初低い負担から徐々に上げていくということで、これまで何度も議論がなされているところでありますけれども、そうした方針をあらかじめ明確にすることで企業のGX投資の予見可能性を高めるという設計にしているところであります。

 御指摘のように、二六年度から排出量取引制度の本格稼働、それに向けましては、この四月、来年度から開始をするGXリーグを発展させまして、政府指針を踏まえた目標設定に対する民間の第三者評価の導入とか、あるいは目標達成に向けた規律強化なども検討して、実効性を高めた上で三三年度からの有償オークションの導入へと続けていきたいというふうに考えております。

 御案内のとおり、二八年度からは化石燃料賦課金も導入するということであります。

 これらの措置は、繰り返しになりますが、全体としては負担が増えない範囲内でやっていくということ、そして早期に取り組むほど将来の負担が軽くなるという仕組みでありますので、併せて二十兆円規模の大胆な支援を、先行投資にしっかり支援していくということで、今、足下からGX投資を引き出していくという制度設計にしております。

 いずれにしましても、排出量取引制度の段階的発展、活用の在り方については、来年度から開始しますGXリーグの進捗状況とか海外の政策動向なども踏まえて議論を深めていきたいというふうに考えているところであります。

遠藤(良)委員 EUでは、発電部門が一〇〇%有償割当てをされている、鉄鋼等の炭素の排出が多い部分についても一〇〇%の無償割当てがされている、それ以外の業種については三〇%が無償で割り当てられている、有償割当ての比率が全体の五七%を下回らないようにということを目標設定している中で、こうした目標設定については、二〇三三年においても、この目標設定についてはどうお考えでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案におきまして、有償オークションに関連する特定事業者負担金につきましては、経済産業大臣が特定事業者に対して、発電事業に係るCO2の排出量に相当する特定事業者排出枠を有償又は無償で割り当てることとしておりまして、この有償での割当てにつきましては、入札方式、いわゆる有償オークションで実施するということとされております。

 その有償での割当て量につきましては、この法律の第十五条二項に規定しておりますとおり、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく範囲内で制度を導入することですとか、GXの状況、あるいはエネルギーの需給に関する施策との整合性等を勘案して決定することとしております。

 このように、有償割当ての比率ではなく、有償での割当て量そのものを設定する設計としているところでございます。

 今回の法律案では、いわゆる有償オークション制度の対象者や導入時期を始め、制度の根幹を規定しておりますけれども、制度の実施に必要な詳細部分につきましては、来年度から開始するGXリーグの実施状況なども踏まえつつ検討を進めてまいりたい、このように考えております。

遠藤(良)委員 Jクレジット制度というのがあったと思いますけれども、二酸化炭素排出削減価値を証書化して取引をするクレジット制度ですね、森林管理等でJクレジット制度があったと思いますけれども、排出量取引の導入に伴って、このクレジットの取引というのはどういうふうになっていくのか、あと、これをどうしてこの法案に盛り込まなかったのかというところをお尋ねしたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のJクレジット制度は、中小企業や自治体、個人を含め、様々な主体による排出削減、吸収量をクレジットとして認証する制度でございます。

 本年四月より開始いたしますGXリーグの排出量取引制度におきましては、企業が自ら設定した排出削減目標の達成手段の一つとしてJクレジットを活用可能とさせていただいているところでございます。

 また、昨年九月から本年一月末まで、東京証券取引所におきまして、Jクレジットを活用して取引所での取引実証を行ったところでございまして、引き続き、今後の市場設計に向けた技術的検討、検証を行っていく考えでございます。

 我が国のCO2排出量の四割以上をカバーするGXリーグの開始によりまして、Jクレジットの潜在的な需要と創出が更に拡大いたしまして、我が国全体で排出量が着実に削減されることが期待されているところでございます。

遠藤(良)委員 少し、質問をちょっと飛ばさせていただくんですけれども、GXリーグが二〇二六年度から排出量取引制度を本格的に稼働していく、その中で、今、一月末の段階でGXリーグ参加企業が六百七十九社というところなんですけれども、これは、EUの参加と同じ、排出量の四〇%程度である、かなり大きな規模にもなってきている。まあ、まだ参加というところの表明だけだと思いますけれども。

 今後、ちょっと先の話になるんですけれども、第二フェーズとしては第三者認証や規律の強化を図っていくというところなんですけれども、二〇二六年度以降、参加企業が増加する見通しなのか、あるいは減少する見通しなのか、この辺りのところをお尋ねしたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘をいただきましたように、GXリーグ、これは、来年度から排出量取引を試行的に開始いたしまして、国、企業双方が知見やノウハウを蓄積しつつ、二〇二六年度からは排出量取引制度の本格稼働を目指しているところでございます。

 参加企業は、まさに御指摘のとおり、一月末時点で六百七十九社からの賛同を得ておりまして、EUの制度と同水準、国内排出量の約四割以上をカバーしているということになってございます。

 お尋ねの二〇二六年度におけるGXリーグの参加企業数については、これは現時点で見通すことはなかなか困難でございますけれども、排出量取引制度の本格稼働に向けて、議員御指摘のように、多くの企業に参加いただくことが重要である、このように考えておりまして、このGXリーグの状況なども踏まえつつ、更なる参加率向上に向けた方策も検討することとしたい、このように考えております。

遠藤(良)委員 先ほど山崎議員からも質問ありましたけれども、化石燃料賦課金と特定事業者負担金の、この二つの、二重の負担が生じる可能性があるんじゃないかというところを思うんですけれども、両制度の調整について、別途法律で定めるとか、その辺り、どのような調整を行っているのか確認したいです。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案では、二〇二八年度から導入する化石燃料賦課金、それから、二〇三三年度から導入する特定事業者負担金について、制度の対象者や導入時期、この根幹を規定したものでございます。

 御指摘の、化石燃料賦課金と特定事業者負担金の調整につきましては、具体的な議論はこれからでございますが、GX実現に向けた基本方針にあるとおり、同一の炭素排出に対する二重負担の防止など必要な調整措置の導入を検討していくというふうに示しておりまして、検討を進めてまいりたいと思っております。

 制度の具体的な在り方につきましては、これから制度設計を、今回の法律を踏まえまして、検討してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 続いて、次のテーマで質問したいんですけれども、自動運転についてなんですけれども、これは前回の委員会でちょっと積み残したところで、質問したいんです。

 自動運転の技術に関して、来月、四月一日からは、改正道路交通法が、自動運転レベル4の運行許可制度が出てくるというところなんですけれども、これは、グーグルの親会社のアルファベットとかが特許でいうとかなり占めてきた。報道各社の、メディアの報道を見ていても、こういう企業が、メガテックという企業がどんどんこのシェアを占めていっているというところで、日本の自動運転の技術について、現状どのようにお考えなのか、お尋ねします。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 自動運転技術の段階を示しますいわゆる自動運転レベルは、米国SAE、自動車技術者協会によりますと、走行条件やアクセル、ブレーキ及びハンドル操作の機能などに応じまして、レベル0からレベル5までの計六段階で定義されています。

 その上で、現在実現できている自動運転レベルは、走行ルートや時間帯、道路環境といった走行条件に応じて異なっております。

 走行条件の絞り込みが難しいオーナーカーにつきましては、日本が世界初のレベル3の対応車を発売しております。その後、他国もそれに続くなど、国際競争がより激化している状況と認識をしております。

 また、走行条件の絞り込みが容易なバスやタクシーといったサービスカーにつきましては、無人自動運転のレベル4につきまして、法制度や安全性に対する考え方の違いもあり、米国や中国の一部の地域ではサービスとしての実装を先行させる一方、日本やドイツは必要な制度整備を世界に先駆けて進めるなど、各国様々な形で取組を進めている状況と認識をしております。

遠藤(良)委員 私の地元、兵庫県の三田市では、令和五年二月に中型自動運転バスの実証実験をある町で行った。これは令和二年度に続いて二回目でありまして、現地の利用された方、八百六十人いまして、一日平均六十一人。八割が満足しているということで。

 ただ、これもいろいろな課題がありまして、電柱にスマートポールというセンサーを設置して、信号のない交差点では有効であったりとか、そういういろいろな技術を入れながらやっているんですけれども、一方で、利用者から、誰かが隣に、運転手とは別で、安全のために乗ってほしいという意見が三割あった。技術面のほかにも、こういう社会的な受入れも必要なんじゃないかなというふうに考えるんです。

 その中で、自動運転の実現について、これは継続的な支援が必要である、住民の理解、先ほどのこういった意見もある中で、実装までの継続支援、伴走型の支援をしていかないといけないんじゃないかなというふうに思うんです。

 一方で、雪とか、道路が凍っていたりとか、台風であったりとか、そういう気象条件が異なるときに自動運転がうまくいくのかという問題があると思います。

 これは様々な地域で自動運転の運行許可を行っていく方向がいいのかなというふうに思うんですけれども、自動運転の運行許可基準の、気象条件についての考慮が盛り込まれているのか、この辺りを確認したいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月に成立しました道路交通法の一部を改正する法律により、限定地域における遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスを念頭に特定自動運行の許可制度が創設され、本年四月一日からの施行が予定されております。

 都道府県公安委員会が特定自動運行の許可を行うに当たりましては、許可基準の一項目として、特定自動運行が自動運行装置に係る使用条件を満たすものであることが必要とされており、この基準に従って都道府県公安委員会が審査を行います。

 この使用条件には運行が可能な気象条件等が含まれておりまして、道路運送車両法に基づき、当該自動運行装置ごとに国土交通大臣がこの条件を付与するものであるため、都道府県公安委員会は、国土交通大臣等から意見を聴取して許可を行うこととされております。

 警察庁としましては、この許可制度が円滑に行われますよう、都道府県公安委員会に対して情報提供、助言等を的確に行ってまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 済みません、ちょっと時間がなくなっちゃったので、最後、テーマが一つあったんですけれども、また次回質問させていただきます。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 二週間にわたって審議をしてまいりましたこのGX推進法案も大詰めということで、先発ピッチャーがうちは遠藤良太、私が中継ぎで、急遽、クローザーとして足立康史というようなことになりました。

 ただ、私は非常に心配しておりまして、百六十キロを超える剛速球を投げるのか、あるいは大谷選手が投げたようなすごいスライダーを投げるのか、私は大暴投かなというふうに思っているんですが、是非、西村大臣には、どんな球が来てもしっかり取っていただければというふうに思っております。

 私の方は手堅く、この法案について、様々、我々の党の中でも、この法案は本当に賛成していいのか反対なのかということは非常に議論をしてきました。非常にぎりぎりのところまでやってきたわけなんですけれども。そういう中で、様々質問させていただきましたが、まだちょっと確認したい点とか、あるいは今後詰めていくところも多々あると思いますので、そういったところについて質問させていただきたいと思います。

 まず、前回、ちょっと時間の関係で質問できなかったことについてお伺いしたいと思います。

 今回の二十兆円のGX移行債を発行して得た資金というものをGX実現のために投資していくわけなんですけれども、既に、グリーンイノベーション基金、これも二兆円というお金があるわけですね。こういったものとの関わりをどういうふうに考えていくのかということと、そして、私たちはずっと主張してまいりましたが、このGX移行債の二十兆円というものも、これにとらわれずにやるべきだというふうに思いますし、今後の環境によってはもっと増額しなきゃいけないということもあり得ると思うんですが、そういったことが生じた場合の対応についてお聞かせいただきたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、グリーンイノベーション基金につきましては、これは、カーボンニュートラル実現の鍵となる革新的技術につきまして、具体的な目標へのコミットメントを示す企業等に対しまして、最長十年間、その研究開発、実証から社会実装まで継続して支援していくものでございます。

 今般の成長志向型カーボンプライシング構想は、炭素排出に値づけをし、GX関連製品、事業の付加価値を向上させるとともに、GX経済移行債を活用して、足下から二十兆円規模の大胆な先行投資支援を行うものでございます。その際、規制、制度と投資支援策とを一体的に講ずることを通じまして、脱炭素分野で新たな需要、市場を創出するなどによりまして、GXの実現に向けた投資や取組を加速化するものでございます。

 この枠組みでは、革新的技術開発により、民間の創意工夫を生かしたイノベーションを創出することが引き続き大変重要だと考えております。

 このため、グリーンイノベーション基金について、これまでの取組から得られた教訓に基づきまして、グローバルな競争の動向を捉えるとともに、それらの分析や外部有識者の御意見等も踏まえまして、必要に応じて取組内容の見直しも行いながら、革新的技術の社会実装の加速化に向けて一層効果的に取り組んでいきたい、このように考えております。

 それから、二十兆円という投資の規模についてでございます。

 これは、大臣からも御答弁申し上げているとおり、諸外国の動向、国際機関等の分析、各産業、企業との様々な議論、既存の脱炭素関連のプロジェクト等も参考にしつつ、総理を議長とするGX実行会議や関連する有識者会議での議論を踏まえまして、世界でGX投資競争が本格化する中で、日本が百五十兆円超のGX投資を実現していくために必要な規模として定めているものでございます。

 当然、排出削減を進めるとともに、経済成長を両立させていくことが大事だと思っておりまして、我々は、この二十兆円規模という政府支援だけでこのGXの取組を進めるだけではなく、先ほど申し上げた、規制、制度を含めた政策パッケージで実現するものである、こうしたことを念頭に、二十兆円規模の支援で百五十兆円超のGX投資を引き出していくということに向けてしっかりと取組を進めまして、排出削減と産業競争力強化、経済成長を共に実現してまいりたい、このように考えております。

小野委員 しっかり、今後の動向を見極めながら、既存の制度との整合性も確保した上で進めていただきたいと思います。

 二十兆円というのはすごく大きなお金ではあると思いますが、ただ、国家の浮沈が懸かっていると思うんですね。熊本で今、補助金を導入しているTSMCも、一個の工場だけで数千億入るということで、そういう意味だと、二十兆円というのが必ずしも、二十兆円と聞くとすごいんですが、でも、このGXを進めるためには、実はもっともっとお金をかけなければいけないということだってあろうかと思いますので、是非そこは、我々もかねてより主張していることですが、今後の動向に応じてしっかりと対応していただきたいと思います。

 次に、これは大臣にお伺いしたいと思います。

 今回の法案で、もう何回も何回も答弁をいただきましたが、既存の負担の総和の範囲内でこのGXの移行債を発行するんだというようなお言葉がありました。これは、やはり、防衛予算のことについても、これは足立委員からも指摘もありましたが、我々、負担の範囲内でということが果たしていいのかどうかということをもう一回大臣に確認したいと思うんですね。

 今、政府・与党の、様々、新しいことをしようとすると、国民の負担を増やさないようにというようなことで防衛費なんかも考えておられるわけなんですけれども、でも、私は、政府の役割というのは、これは負担をなるべく減らしていくという方向で努力するのが当然だというふうに思います。

 そういうことをもちろん考えてはいるんでしょうけれども、ただ、今ある負担をそのまま是としてそれを進めるというスタンスでいいのかどうかというようなことは、政治家としてこれは常に頭に置いておかなければいけないことだと思うんですが、西村大臣に、これは政治家として、そうした負担の範囲内でというような考え方について、本当に政治家としてどういうふうに思っていらっしゃるのかというのを、この法案も大詰めに来ましたので、お伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 この仕組みを考えるに当たって、おっしゃるとおり、様々な議論をいたしました。できることなら技術開発にできるだけ多くのお金をかけて、国際競争力をつけて市場を取っていく、そして、その結果として収入も上がってくるでしょうし、そうしたことへの期待感もあります。

 他方、無限にお金があるわけではありませんので、もちろん刷ればいいという考え方はあるのかもしれませんが、財政にも責任を持つという観点もある意味必要だというふうに思っております。

 そうした中で、いろいろ考えてきましたけれども、石油石炭税がもう今減り始めていますし、FITもどこかでピークを迎えて賦課金も下がっていくという中で、ぎりぎりの範囲としては、その範囲であれば負担を増やさずにできるということ。できれば負担をできるだけ低くして、そして技術開発などにできるだけ投資をしてもらって、将来税収が上がってくるということも私ども期待をしたいと思っていますけれども、そうした様々な観点を含めてこの仕組みを導入させていただきました。

 その中で、特に、これはもうよくお分かりだと思いますが、頑張って先に投資をしていけば、そして、技術を開発し、社会実装し、世界のマーケットを取っていけば、これは負担が低くなるということですから、ある意味、頑張った企業は将来的には減税と同じような効果があるということでもありますので、そして、その製品が付加価値を持って国民に受け入れられ、また世界の市場を取っていくということにつながっていきますので、そういう意味では、ある意味、様々な民間の意欲なり取組を後押しする、引き出すような仕組みにもしているということで、是非御理解をいただいて。

 御指摘のように、できることなら負担はできるだけ低く済ませたいという思いももちろんございますし、一方で、一定の責任は果たしていきたい。そうした中で、今回、今国民が御負担いただいているものがやがてピークを迎えて下がっていく、その範囲内で何とか収められないかという非常に苦労した結果のこの提案でございますが、繰り返しになりますが、頑張ってやれば後で負担が低くなる、減税と同様の効果があるということも是非御理解をいただければと思います。

小野委員 大分御苦労されたということはもちろん分かってはいるんですけれども、ただ、負担が減っていくということの中で今ある負担はそのまま続けますよというのは、実はそれは負担増になっているというふうに私は思います。なので、やはり政治家は、負担はちゃんとしていただきますよ、負担は増えませんよじゃなくて、負担はしていただくけれども、先ほど大臣がおっしゃったように、でも、頑張った人は減っていきますよという説明の方が私はやはり正直だと思うんですね。

 ですから、やはり、日本が国際競争、GXという中で生き残っていくためにはこの投資は必要だ、そのための負担は国民にもある程度お願いをしますよ、しかし、それは後で成長になって跳ね返ってくるとか、そして、税収が上がりますよとか、そもそも給料が上がる、日本のGDPも成長しますよというようなことをやはり正面から大臣が、これからもこのGXについて先頭を走られるわけですから、そういうメッセージを是非発していただきたいと思います。

 次に、おとといの階委員の質問でちょっと触れられていたことで、私もちょっと質問したいというふうに思うんですね。

 まず、化石燃料賦課金の単価というのは、これはこれから制度設計されると思いますけれども、徐々に率が上がっていく、単価が上がっていくというようなことをお考えなんでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 成長志向型カーボンプライシング構想の実行を通じてよりGXの取組が進展した場合、制度上、化石燃料の輸入量が減少し、石油石炭税収が減少する一方で、化石燃料賦課金の水準は増加することがあり得ますし、それも想定しているところでございます。このため、御指摘のように、二〇五〇年に近い後年度におきましては、化石燃料を使用する者、事業者ということですけれども、の負担が大きくなることはあり得る、このように考えております。

 今般の構想は、今大臣が再三申し上げたように、早期に取り組むほど将来の負担が軽くなる仕組みであるからこそ、企業が先行してGX投資を行うインセンティブが生まれ、意欲ある企業のGXに向けた取組が促進されるものだと考えております。

 その上で、過度な負担が生じることのないよう、グローバルな動向や経済への影響、技術開発の動向などを踏まえて適切な運用をしていく必要があると考えておりまして、エネルギーに係る負担の総額で見れば、中長期的に減少させていく範囲内で導入していくこととしているところでございます。

小野委員 上がっていくというようなこともやはり考えているというようなことですけれども、そうすると、これは化石燃料賦課金の話をしましたが、同じように、もう一つのカーボンプライシングであります排出量取引の方も、だんだんとオークションで落とされる価格というのも上がっていくことも予想されると思うんですね。

 今回、大手電力会社の多くが、燃油の価格上昇とかというようなことで、電力料金の値上げ申請をしています。その中で、各事業者によって差があって、例えば原発が動いているようなところは値上げ申請をしていないとかというようなことがあります。

 今後は、脱炭素を進めている電力会社の方が電気料金がちょっと安くなっていくという傾向になっていくんじゃないのかなというふうに思うんですね。そうすると、それぞれ、例えば首都圏に住んでいる方、関西に住んでいる方、九州に住んでいる方、いろいろ、同じ電気を使っているのに負担する電気料金がかなり差が出てくるというようなこともあり得ると思うんですけれども、そういうときに、国民生活を守るためにどんな対策をしていくことを考えていくか。何かお考えがあればお伺いしたいと思います。

畠山政府参考人 カーボンプライシングは、炭素排出に値づけをすることによりまして、GX関連製品あるいは事業の付加価値を向上させる効果を持つものでありまして、したがいまして、御指摘のように、化石燃料を使用する発電事業者のコストは上がることもあり得るということだと思いますし、逆に、再エネなどの非化石電源の価値を高める、こういうことにつながるという仕組みになってございます。

 このような制度趣旨の中で、まさに電気料金がどうなるかという御質問でございますけれども、このカーボンプライシングにつきまして、一般的には適切な転嫁が行われるものと認識しておりますけれども、民間事業者の経済活動や他の事業者との競争、これは自由化もされておりますので、当然競争にもなるわけでございまして、こういう様々な個別の要因によって影響されるため、制度導入に伴う電気料金の変化を具体的に申し上げるのはなかなか難しいことだというふうに思っております。

 その上で、今般導入するこの成長志向型カーボンプライシング構想では、過度な負担が生じないよう、GXに取り組む期間を設けた上で、エネルギーに係る負担の総額を中長期的に減少させていく中で、しかも、当初低い負担から徐々に引き上げていく形で導入するなど工夫をしているということで設計をさせていただいているところでございます。

小野委員 まさにこれから議論していかなければならないことですけれども、電力市場の自由化が結構大事になってくると思います。どういう制度設計、今の自由化というのはやはり欠陥があったというふうに思います。それをどういうふうに持っていくかというのは、私も、別に今結論を自分の中で持っているわけでもありませんし、これは国民全体で考えなければいけないことだと思いますけれども、脱炭素が進むことによって、さらに、電力市場のことについても考えていかなければいけない。

 国民生活にも非常に電力料金として跳ね上がる度合いというのが増えてくるんじゃないのかなと思いますので、この辺、私も、自分でも勉強しつつ、そして国会でも議論できればいいんじゃないのかというふうに思っています。

 時間がちょっと少なくなってまいりましたけれども、あと、大臣に全部答えていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、二十兆円をどういうふうに使うかというのが非常に大事だというふうに思うんですけれども、不確実性が高い分野だと思います。どういった技術動向になるのか、あるいは各国でどのような方向でエネルギーの政策が変わっていくのかとか、様々な予測できないことがあろうかと思いますが、そういう中で、我が国のGX投資、研究開発、それから産業の育成というものを間違わないような方向にしていくために、大臣、どのようにお考えになっているのか、お聞かせください。

西村(康)国務大臣 この二十兆円規模の支援、特にGX経済移行債によるわけでありますけれども、まさに産業競争力強化とか経済成長の観点が重要であるということで、要件が定まっておりまして、民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業を対象に、国内の人的、物的投資拡大につながる、あるいは、産業競争力強化、経済成長及び排出削減、いずれの実現にも貢献する、そして、企業の投資や消費者の行動を変えていく、そうした規制、制度面の措置と一体的に講じることを基本としているところであります。

 御指摘のように、非常にスピードも速いですから、革新的技術の実現可能性とか国際状況の変化、これを十分に踏まえて柔軟に制度を運用していくことが大事だと思っております。そのため、支援の判断に際しましては、例えば、特に、非連続的な技術、革新的な技術においては、その実現可能性とか必要な期間、経済性などを見極めながら、実証、量産化、社会実装と各段階における目標も見定めながら、評価しながら進めていく必要があると思います。

 実は先日、グリーンイノベーション基金においては、データセンターの省電力化に係るプロジェクトにおきまして、海外の競合企業の方が早く技術革新を進めた、そういったことを踏まえて、研究開発の一部を中止をした、そんな例もあります。こうしたことも踏まえながら、GX経済移行債における支援においても、外部有識者の意見も踏まえて、国際状況なども見ながら、支援の是非を含めて判断していきたいというふうに思っております。

 御指摘のように、不確実性が高い分野でありますけれども、我が国が先行する形で先端的な技術開発を進めて世界をリードしていきたい、そのように考えております。

小野委員 ありがとうございます。

 二十兆円の額とかよりも、やはり一番大事なのは、ちゃんと成長するところにどう使うのかということだと思います。この法案の審議でも様々な方がおっしゃいました。今までも、エネルギー関連に関する技術でも、太陽光パネルとか蓄電池とか、様々、日本がトップシェアを誇っていたものがどんどん凋落しているというようなこともあります。

 半導体についても、これは垂直関係でビジネスをやっていたものが、いつの間にか世界は水平分業になっていたのに全然日本はモデルチェンジができなかったというようなこともあって、私はやはり柔軟性が一番大事だというふうに思います。

 いろいろな戦略をつくっていくと思いますが、その戦略自体が柔軟に変わり得ることが大事だと思いますし、あと、何より、アジャイル、この間の参考人質疑でもそういう話が出ておりましたが、これを是非留意しながら進めていただきたいと思っております。

 あと五分となりました。

 この間、大橋参考人がおっしゃっていたことで、私、非常に面白いなというふうに思ったんです。明示的CPというもの、既存税制の使い道を変えることなく、全部まとめて明らかにするということに意味があるんじゃないかと。私は、もっともっとドラスチックにやるべきだというふうに思ったんですが、大橋先生からそのようなお言葉もあって、その意義とか必要性ということについて、大臣、どのようにお考えでしょうか。

西村(康)国務大臣 まさに御指摘のように、一般論として申し上げれば、税について言えば、公平、中立、簡素で、国民の皆さんに、何のためにこの税があって、どういうふうに使われていくのか、それを明示していくことで理解を深めてもらうという方向性、私も全くそのとおりだと思います。

 揮発油税を始めとして、石油をめぐる税なども非常に複雑であります。税金に消費税がかかるようなタックス・オン・タックスというような指摘もある中でありますので、大きな方向性としては是非そうした公平、中立、そして簡素で分かりやすいものにしていくということが重要だというのは、私もそのように認識をしております。

 その上で、そうはいっても、様々な税制が、それぞれの税目、課税根拠などに応じて必要性、許容性、様々議論が行われた上、国会において審議がなされて制度が措置されておりますので、今回のこの法案のみを契機として全部整理するというのはなかなか難しいんだろうというふうに思います。

 その上で、今般のカーボンプライシングはまさに明示的に炭素価格が表れるわけでありますので、しかも、それが大きな方向性としてはだんだん上がっていくということだと思いますので、炭素への負担がかかるという明示的なカーボンプライシングでありますし、あらかじめ導入方針を明確にしている、予見可能性を高めているという意味でも明確だと思います。それによって意欲を高めるということでありますけれども。

 その上で、御指摘の既存税制も含む日本の制度が排出削減にどのように寄与しているかという点も含めて、国際的な場での評価、そして、大きな方向性として簡素で分かりやすいものにしていくというのは当然の方向だと思いますので、今後も是非、国際的な議論も含め、また国内でもそうした議論を継続して対応していきたいというふうに考えております。

小野委員 途中、聞いていると、すごく何か後ろ向きだなというふうに思ったんですが、最後の方で、何かまだ望みがありそうだなと思いましたので。

 かなり大橋先生は優しいことをおっしゃっていたと思うんですね。私も再三質問しましたが、なかなか使い道までGXでちゃんとまとめるというわけにもいかないというのは、それなりの経緯もあって難しいんだと思いますけれども、ただ、日本企業が世界でちゃんと戦っていくためには、明示的CPというのをちゃんと示してあげることというのはすごく大事だと思いますし、また、国民に対しても、脱炭素を進めるという意識を高める意味でも、できるだけ、ほかのいろいろな税があると思いますが、明示的なCPとして取りまとめると、こんな感じで我々は負担しているんですよということを内にも外にもちゃんと言えるような努力を、これは是非GX担当大臣として、今後も、財務省から多少怒られながらでもやっていただきたいというふうに思います。

 それでは最後に、これも重要な点ですが、余りこの法案の審議で触れられなかったことでもあります。

 法案にも書いてありますけれども、GXを進めるに際して、我々日本が脱炭素を進めていくことに対して、国際社会に向けてどういうふうにイニシアティブを取るのかということが大変大事だろうというふうに思います。アジアに対してもゼロエミッションを進めていくというようなこともうたわれておりますが、ここについてどのような戦略を立てておられるかということについて、大臣にお伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 我が国のみならず世界全体が、かつてないエネルギー危機とも言えるような状況の中で、エネルギーの安定供給と、そして脱炭素化をどう両立をさせていくかという難しい課題を抱えているんだろうと思います。

 他方で、エネルギーをめぐる事情は各国多様でありますので、現実的な、そして多様なやり方でエネルギートランジションを進めていくということは重要だと思っております。そのために、日本がリードしながら、クリーンエネルギーの市場形成あるいはイノベーション協力をしていきたいと思っております。

 そうした考えの下で、先般、アジア・ゼロエミッション共同体という協力枠組み、ASEANの国々と取組を進めることにしておりますし、インド太平洋経済枠組み、IPEFにおいては、アメリカやインドも入った形で、クリーンエネルギーに関する協力、ルールの整備などの議論を進めているところであります。

 こうした枠組みも活用しながら、標準作りとか政策協調、そして技術の開発、実証、実装、できればインド太平洋で水素やアンモニアのサプライチェーンもつくっていくということも含めて、是非日本として、世界をリードする、アジアをリードしながら、そうした取組を進めていきたいと思っておりますので、まずは日本の国内での技術開発などもしっかりと進めていきたいというふうに考えております。

小野委員 ありがとうございます。

 このエネルギー政策、脱炭素について、我々が、後追い後追いじゃなくて、おっしゃったように、アジアを中心として、脱炭素に向けたリーダーシップをしっかり取っていくんだということを是非進めていただきたいというように思います。そして、あと、二年間で様々なGXに関する制度設計をしていくということでございますので、まさに今がもうスタートだということで、その速度をどんどん速めていただくということを留意しながら進めていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 いよいよ、この法案審議も最終盤ということで、私も、この経産委で、大臣所信に対する質疑も含めて四回目のGX推進法案に係る質問をさせていただきます。

 四回目ということで、若干、私自身としては、自分の生産性がちょっと低かったなと。やはり大変難しい法律ですので、ちょっと甘く見ていたというか、勉強不足なところからスタートして、四回かかってしまいまして、役所にも大変お手数をおかけしましたが、いろいろ御指導を賜りまして、ありがとうございました。

 他方、そういう中で、いい議論ができたと思っています。特に、今回はGX移行債の発行と償還ということに重心があるわけでありますが、二年以内に作る次なる法案、これがまさに排出権取引市場の具体的な姿をつくっていくわけでありまして、私は、これからの二年間、二〇二五年の通常国会までかな、もし二六年からスタート、本格稼働させるのであれば、二〇二五年の通常国会には出していただけるのかなと勝手に推測をしているわけでありますが、これから二年間、まさに政府・与党とまた日本維新の会は小野理事を筆頭に議論を続けさせていただきたいと思います。

 今回はこれで、今日で終わりかどうか分かりませんが、今日で終わりたいと思いますが、最後に、EUとの比較で幾つか御質問しておきたいと思います。

 何といっても、カーボン戦略はEUが先進国であります。地球温暖化、外部不経済、外部費用の内部化ということで、私は再三申し上げているけれども、外部費用を内部化するその規模、これを最初からこれだけだというこの有償オークションの枠組みは、やはり課題があるということで、何度も同じことを繰り返し御質問してきました。

 その中で、前回も、財務省にもお越しをいただいて、私は、もし、大臣が再三おっしゃっている、電気料金が上がり過ぎると大変じゃないかというそこの議論があるのであれば、別途、補助金とか減税で手当てをしてあげたらいいじゃないか、そういう小さな議論じゃなくて大きな議論、小さなロジックじゃなくて大きなロジックでこの議論をこれから二年間やっていきたいということで質問してきました。

 さて、じゃ、その先進地域であるEUのEU―ETSにおいては、私が提案したような支援措置、要は、有償オークションに起因する電気料金の上昇から炭素リーケージリスクの高い業種を保護する等の観点、すなわち電気料金の上昇分を補償する、そんな制度が導入されていると承知していますが、それは事実ですね。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 各国の制度はそれぞれ経済、エネルギー事情等を踏まえて設計されるものでございまして、御指摘の点につきましては、EU加盟国は、排出量取引におけるオークション収入を用いまして、貿易依存度の高い多排出産業の対象設備に対して、この制度による電気料金の上昇の一部補償を実施しているものと承知しております。

 ただ、それによりまして、例えばドイツなどでは、産業用電気料金の優遇によりまして、価格上昇が続く家庭用電気料金との価格差が、他国に比較して開いているというようなこともまたあるというふうに認識しております。

足立委員 ありがとうございます。

 まず、そうだと。その上で、今おっしゃった、産業界には手当てしているけれども、一般電力消費者には手当てできていないから電気料金に格差が開いているんだったら、まさに今、政府が、岸田内閣がやっているように、一般のところにもお金を入れてあげたらいいわけで、それは別に、そこに枠を、小さな枠をはめる必要はないというのが私の指摘なわけです。

 では、もう一つ。同じ議論でありますが、EU―ETS、EUの排出権取引制度においては、今回この法案が導入しているような制限を設ける仕組み、すなわち、今回の法案でいうと、十七条に基づいて、特定事業者負担金単価の額の範囲、上限とか下限だと思いますが、そういうものを定めて入札をしていただくわけですね。そのときに、各年度の特定事業者負担金の総額、今回それが法律でたががはまっているわけでありまして、この各年度の特定事業者負担金の総額の観点、そうした観点から制限を設ける十六条の三項、こういう仕組み、これはすごく私は、やはり日本に特有のもの、ほかにも探せばあるかもしれませんが、少なくともEU―ETSにはそうした観点からの制限はないと承知していますが、そうですね。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案におきましては、カーボンプライシングの導入に当たりまして、様々な観点、これは、カーボンニュートラルは排出削減と経済成長の両立なくして実現し得ないという観点ですとか、あるいは国民への負担が過度にならないようにするという観点から、御指摘の仕組みを取らせていただいているわけでございます。

 まさに、排出量取引などの制度はそれぞれの国によって違うものでありまして、一概に比較を行うことは適当とは思っておりませんけれども、御指摘のEUにおきましては、特定事業者負担金、いわゆる有償オークションの総額を規定する制度は設けていないものというふうに認識をしております。

 他方、EUにおきましても、実態においては、制度による負担を過度なものとしない観点も踏まえ、様々な制度設計が行われております。具体的には、カーボンリーケージを防止する観点から、貿易依存度の高い多排出産業においては無償枠を十分に配賦する、実績の一・五倍とか、そういう十分な無償枠を配賦する、あるいは、排出権の市場価格が急騰した際には政府が追加で排出枠を供給する規定を設けるなど、EUの事情に応じた工夫をしているところだと思っております。

 我が国におきましても、この制度設計について、排出削減と産業競争力強化の両立を目指して適切なものになっていると思いますけれども、更に検討をしていきたい、このように考えております。

足立委員 ありがとうございました。よく分かりました。私もそういう認識であります。

 大臣、そういうふうに様々な工夫、これからも考えていかなあかん。これをまさに二年以内の法的措置で、日本の排出権取引市場制度、ETSをしっかりとつくり込んでいく、私たちも協力していきたいと思いますが、まさにその際には様々な工夫をしていくべきだ。

 だから、現時点では今回の法案がベストだというのは何度も伺っていますが、タブーを設けることなく、まさに国益のために、日本の経済成長のために、二年後に向けて、小さく固まるんじゃなくて、大きな議論をしていく。御決意をいただいて、今日は質問を終わりたいと思います。

西村(康)国務大臣 EUの仕組みも含めて、足立議員におかれては、研究、検討されて、様々な御指摘をいただいております。

 特にこの枠組みに縛られることなく取り組むべきじゃないかという御指摘だと思いますが、まさに、二〇三〇年まず四六%削減、そして五〇年ニュートラルに向けて、技術の開発動向とか国際動向、先ほど申し上げましたけれども、GI基金で進めていたものも、止めたものもあります、世の中が速く進み過ぎたというのもありますので。そういう意味では、柔軟性を持って対応していきたいと思いますし、現時点ではこれがベストだということで私ども提案させていただいておりますが、二年間の検討期間もありますし、さらに、その後の検討もありますので、特に二〇五〇年のカーボンニュートラル実現に向けては、まだまだ分からないことが多いですから、そういう意味では、状況を見ながら、必要に応じて適切な見直しは進めていきたいというふうに考えております。

足立委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。ありがとうございます。

竹内委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 先日の参考人のときにもお尋ねしたんですけれども、GX推進法を推進することによって、結局、二〇五〇年にカーボンニュートラルに向けてやっていきましょうといって、二〇三〇年に四六%のCO2を削減していく。もう七年しかないんですね、その四六%を達成しようとするだけで。

 それで、どのぐらい今CO2が出ているんですかと環境省の方から資料をもらうと、十一億五千万トンぐらいCO2が年間出ているんだそうです。それを、四六%を単純に掛けていくと、七億トン以上を削減しなくちゃいけない、この七年間で。

 お尋ねしたのは、結局、大量生産、大量消費、大量廃棄の社会の構造を変えていかないと達成できないんじゃないかという考え方なんです。大学の先生にお二人、お尋ねしたんですけれども。

 やはり、例えば、今、現場で、私のところも運送業をやっていますけれども、トラックを注文するのに一年先なんです、物によっては二年先です。製造業者が製造を増やさない。だから、注文を出したときに、一年先、二年先となってくる。これが今の社会です。それで、国は、法律を作って、七年後には四六%カットしていくんですと。

 ディーゼルエンジンが主体のトラックが、自分でディーゼルエンジンの代替になるものが作れるわけじゃないじゃないですか。燃料は、経産省がお墨つきをつけた、五〇ppm、サルファー分の少ない、上限にして、それを軽油として使ってほしい、ガソリンも、こういうオクタン価がありますよということで、レギュラーとハイオクの違いがあるんですけれども、そういうのも全部、国が縛っているんです。

 自由に参加してもらって、目標を設定して、それに向けて頑張ってくれというのは分かるんですけれども、抽象的過ぎて、じゃ、例えばトラックで運送をなりわいにしている人は何をどうすればいいんだと。具体的な話ですよ、それを早く国が示さなくちゃいけないと思うんですけれども、その辺の。

 大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会。この間、あるお店に行って、確かにストローだけはプラスチックのストローから紙のストローに換わりました。でも、コップの上にこぼれないようにパッケージでやっているものはプラスチックなんだね。それはやはりGXにつながっていかないと思うんですけれども。

 一つの考え方として、物を大切にする長寿命化社会に移行していくのと一緒にGXをやっていかないと、需要があるんだから何でも供給すればいいという考え方では、やはり達成できないんじゃないかと思うんですけれども、その辺の御所見を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、中野(洋)委員長代理着席〕

西村(康)国務大臣 鈴木委員御指摘のとおり、日本が直面しております資源制約、エネルギー制約、環境制約、こういったことに対応するためには、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提としてきたような、そのようなシステムからは脱却しなければならないというふうに思います。

 私も、経産省の職員であった頃、最初のリサイクル法に関わったんですけれども、その後いろいろ進展してきているとはいえ、先般聞きましたら、衣服、毎日焼却、埋立てされる服の総量が一日当たり大型トラック百三十台分、一千三百トンと言われておりまして、毎日毎日ですね、リユースやリサイクルにつながっていないという現実もございます。

 それで、御指摘のとおり、製品の長寿命化あるいはそれを意識した設計なども含めて、資源の効率的、循環的な利用を図りながら付加価値を最大化していくという、いわゆるサーキュラーエコノミーと言われるこうした循環経済への移行を加速することが重要だというふうに考えております。

 先般閣議決定しましたGX実現に向けた基本方針におきましても、この資源循環の取組を重要事項として位置づけておりまして、製品の長寿命化に資する循環配慮設計の推進などに取り組むこととしております。

 かつては日本人も、もったいないという、これは英語でも言われたりもしました、そうした価値観、あるいは日本の高い品質、これも生かしながら、サーキュラーエコノミーの取組を前提とする社会構造への転換を進めてまいりたいと思いますし、一時期はマイコップとか自分のお箸を持ち歩くような、一時期ちょっとブームのようにもなったことがありましたけれども、しばらくするとまたそうした運動もだんだん静かになっている面がありますので、やはり社会全体でそうした機運を盛り上げながら、そして、全体としてのサーキュラーエコノミー、循環型経済に向けた取組、しっかりと進めていきたいというふうに考えております。

    〔中野(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(義)委員 是非、電気の関係とかエネルギーだけじゃなくて、社会全体をやはり変革していかないと、そこは目標達成につながっていかないんじゃないかなと。是非頑張っていただきたいと思います。

 それと、次に、二年前に、電力自由化を推進するために電力卸売市場でオークションの仕組みを取り入れてスタートしているんですね。八年ぐらい前の電事法の改正のときに、その仕組みを大きく後押ししていこうということになったんですけれども、実際、二年前に何が起きたかといったら、卸売価格が高騰してしまった。

 市場のゆがみがこの二年で解消したのか。カーボンプライシングをしようといって、排出権取引だとか、いろいろ仕組みをこれから具体的に考えていくんだと思うんですけれども、今まで電力の卸でやっていて、価格が高騰してしまった。

 例えば、Jクレジット、今日は余り詳しくは御質問しませんけれども、Jクレジットの、一年度ごと、幾らで取引されているのか、ずうっと一覧表になっているのがホームページか何かで出ていたと思います。それを見ていくと、年々上がっているんですね。じゃ、なぜそれは上がっちゃうの。玉がないからです。売り買いにならない。だから、高い玉しかないから、じゃ、自分もそれをやったら高い玉になるんだけれども、もしかしたら下がることもあるんですね、たくさん玉が出てくれば。欲しい人、売りたい人、買いたい人が均衡して初めて価格が決まってきますから。そういう話になったときに、いきなり、玉が少なくて価格がぽんと跳ね上がったときに、誰が一番割を食うのかということです。それは需要家ですよ。企業かもしれないし、個人かもしれない。

 そこのところを踏まえた中で制度設計していかなくちゃいけないんだと思うんですけれども、今のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、二年前からの卸市場改革、高騰対策についての状況について、私の方からまず御答弁申し上げます。

 御指摘いただきました二〇二一年一月の市場価格の高騰というのは、当時の寒波による需要の大幅な増大というものとLNGの在庫減少による需給逼迫が生じたということが原因でございます。これによって卸電力市場で売り切れが継続的に発生し、買い入札価格がスパイラル的に上昇していったということが相まって価格高騰につながったと認識してございます。

 ここの要因の分析でございますが、委員御指摘のとおり、市場における需給という面で考えたときに、供給サイドの面に課題があったと認識してございまして、高需要期における休止火力発電所の稼働をもっとしっかり確保しておかなければならない、同時に、追加的な燃料調達、いわゆるLNGの確保をしっかり事前に準備をしておかないとならないということを我々としても認識しまして、その対策を打ってまいりました。また、これは、中長期の観点からの供給力の確保、新規投資の促進ということもこれからやっていかなければならないと思っております。また、需要側も対策していく、これが一つの話です。

 もう一つ、市場価格の高騰、スパイクというものを、市場のゆがみといいますか、メカニズムを変えていくという取組も我々は必要だと思っておりましたものですから、二〇二一年一月にインバランス料金に上限制を導入して、当時二百円、そして七月に八十円、二百円という二段階制に移行し、二〇二二年四月から調整力のコストに連動した形の取引にしてきているところでございます。

 こうしたことを講ずることによりまして、今、近時、足下では、国際情勢の変化による燃料価格の高騰等によって価格は高い水準ではあるわけでございますが、当時のような極端なスパイク、高値ということが生じるような事態にはなっていない。いずれにしろ、これから改革、見直しは続けていかなければならないと考えてございます。

鈴木(義)委員 答弁、短くお願いします。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 今の答弁を踏まえた上で、排出量取引制度においては、これは、市場機能を活用することで、効率的かつ効果的に排出削減を進めることが可能である一方で、一般的には、市場価格が変動するため、取引価格に対する予見可能性が低い点が課題と言われております。

 したがって、排出量取引制度の進め方につきましては、GXリーグの排出量取引の試行ですとか、あるいは、二〇二六年度からは排出量取引制度本格稼働に続く形で、発電部門はさらに二〇三三年度から有償オークションを導入することとしておりまして、過去の教訓あるいは諸外国の事例なども踏まえて、段階的に発展させることで、よりよい制度としていきたいと思います。

 その中で、先ほど御指摘の、供給が足りないということについて言えば、これは排出権についても、供給者が少ないということだと同じような問題が起こる可能性がございますので、そういう意味では、なるべく多くのプレーヤーに市場に参加してもらうという形で、取引に厚みを持たせるという形を考えておりまして、そのようなことも含めて検討を進めていきたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 この卸売市場で一つ私はおかしいんじゃないかなと思うのは、発電事業者ならいいんです、取引の玉も出す、それが、発電事業者でない、小売の方に立って、卸売市場から電気を買って売るというのをなりわいにする人も入るわけじゃないですか。カーボンプライシングの説明を聞くと、やはりそういう人がいるから活性化するんだという考え方で制度設計しようとするわけじゃないですか。でも、商売をやっている人か私たち個人が結局CO2を排出しているだけであって、排出していない人が、投資家さんというのか商社といっていいのか分かりませんけれども、その人が、お金を持っているからといってばさっと来て、安値で買って、つり上がったらぱっと売って、株みたいなことをやられたんじゃ制度がうまくいかないと思うんです。

 その辺をやはりちゃんとスキームの中で入れていかないと、何だか知らないけれども、それで最後は結局国民に負担を押しつけるようなこと、要するに、価格転嫁させるということは、国民に負担を押しつけるということです。補助金を出すとか減税するとかと前の人が質問していましたけれども、要するに、GXをやろうがDXをやろうが、最終的には社会的コストをどこまで下げられるか、そこのインセンティブをどうつくるかということがリーグの最終的な目標だと思うんですね。そこを見誤っちゃって、金もうけだけの場をつくったってしようがないだろうと私は思うんですけれども、その辺についての御答弁は、担当でよろしいですか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 カーボンプライシングは、炭素に値づけをすることで、GX関連製品、事業の事業性を向上させるものでございます。排出量取引によりまして、社会全体で効率的、効果的に削減を行うための炭素価格が発見され、当該価格が、経済社会全体に行動変容を促す、いわゆるシグナルとしての効果を発信することが期待される、そういう仕組みでございます。

 このため、先ほど申し上げましたように、多くのプレーヤーが市場に参加してもらう形にして、取引に厚みを持たせ、市場の流動性を確保することによりまして、乱高下しにくい、適切な価格形成を促すことが重要だと考えております。

 排出量取引市場での価格は、一義的には排出枠の需給により決まります。海外での排出量取引制度におきましては、排出枠を他社に売る事業者が少ないと市場価格がなかなか形成されないことから、制度の対象となる多排出事業者だけでなく、金融機関など、制度対象事業者以外の市場参画も認め、価格形成を図っているものと承知をしております。

 また、昨年九月から本年一月末にかけまして、東京証券取引所において実施したJクレジットの取引所取引の実証におきましても、取引価格は、省エネで八百円から千六百円、再エネでは千三百円から三千五百円、森林では一万円から一万六千円となってございまして、我が国における炭素価格も公示されつつありますけれども、実証にはクレジットの創出者や製造業者などの需要家のみではなく、売買を仲介する事業者も参画したことで、取引の流動性が高まったと考えております。

 まさに御指摘をいただいた、投機的な動きが過度になされることにより、安定的に価格が形成されないことは望むところではございません。他方で、実排出者のみが参加する市場では、取引の厚みが生まれず、売買が活性化した取引市場ともなりにくいため、流動性を生み出す金融機関等にも魅力的な市場づくりが必要になると考えております。

 また、価格高騰につきましては、排出者取引制度が本格化する二〇二六年度以降におきましては、中長期的に炭素価格を徐々に引き上げていく前提で、上限価格と下限価格から構成される価格帯をあらかじめ示すことで予見可能性を高めるとともに、この法案で規定している二〇三三年度からの有償オークションにおきましても、入札単価の価格帯を定めよう、このように考えております。

 いずれにせよ、来年度から始まるGXリーグの取組を通じまして、必要なデータを収集し、知見、ノウハウの蓄積を行っていくことで、国内外の先行事例も踏まえた制度設計をしていきたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 答弁、もう少し短く簡潔にしてもらわないと。幾つか質問を考えていますので。

 私がもし当事者であって、それで、投機の対象にされたんじゃ困る。まあ、ヘッジをかけましょうということなんだと思うんですね。プラス一〇パーなのか二〇パーなのか、下限で二〇パーなのか、株式でやっているようなことを導入して入れようということなんだと思うんですけれども。結局、市場で全てがうまくいくかといったら、先ほど申し上げたように、電気の卸でうまくいっていない。そういうことが起こり得るだろうということで、是非、制度設計を具体的にするときに。

 それと、もう一つ。経産委員会で、別の、何年か前のときにも御質問したときに申し上げたんですけれども、まず役所が手本を見せた方がいいんじゃないかなと思うんだな。自分たちがGXを推進しますという法律を作りました、経産省が率先してGXを推進するのは、こういうことをやったからこれだけCO2を削減することができました、削減したことをカーボンプライシングのところで売りますよ、だから、皆さん一緒にやりませんかと言わないと。民間で頑張ってもらえばいいんだ、役所は、私たちは管理監督するだけでいいんだ、そうじゃないと思うんですね。まず隗より始めろと。

 だから、それが、経産省だけじゃなくて、国ばかりじゃなく、千七百の自治体にも協力してもらってやってもらえば、最初にまずそれを促すような形を取らないと、民間だって、はい、分かりましたと、リスクがあるところに入ってきませんよ。それが一つ。

 もう一つは、例えば私のところで、CO2を一〇%下げましょうといって努力するのにコストが五百万かかりました、でも、市場で売り買いしているのが、その見合った量を買うのに一千万かかりますといったら、自分のところで五百万かけて下げますよ。ここには手を出さない。逆のことが起きたときに、自分のところでは一千万かかるんだけれども、市場に五百万で売っていれば、ここは何にもしないで、五百万で買ってきますよ。そういうことが起こり得るということですね。

 でも、それじゃ、CO2削減できたのかといっても、その事業者さんは、自分がコスト削減するよりは、ここのリーグなりプライシングのところで取引しているところから買ってきた方が安いとなれば、みんなこっちから買いますよ。そこで起きるのは、自分が削減するよりもこっちが安いとなれば、買う人が増えるということは、玉を出す人がいなければ価格がどんどん上がっていくということですね。それが目的なら目的で構わないんですけれども。

 やはり、その辺のことを、実体験というのかな、実社会でどういうふうに物が動いているかとか取引されているかというものも考えて制度設計しなければ、いいものにはなっていかないと思うんですね。

 そこのところを短めにちょっと答弁いただきたいんですけれども。

畠山政府参考人 御指摘のように、排出量取引制度は、効率的、効果的にCO2削減を果たす上で重要な仕組みだと思っておりますけれども、御指摘のように、価格がつかなければ、それにばかり頼るというようなことも生まれかねませんので、そうならないようにしっかり制度設計していきたいというふうに考えております。

 御指摘の点につきましては、例えば千円と五百円の例をおっしゃいましたけれども、これは、排出量取引制度、これからの制度設計にもよりますけれども、基本的には毎年枠がかかる、そういうものになります。したがって、自分のところで削減しなければ、翌年もまた買わなければいけないということになりますので、そういうことも含めて考えた上での制度設計にしてまいりたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 だから、参考人のときにもお尋ねしたんですけれども、今私がCO2をどのぐらい出しているのといったときに、本人が自覚がなければ、どこまで下げていいかも分からないじゃないですか。

 次の質問に入っていくのがそこのところなんですけれども、自主的目標を設定して、最初のうちは、どうぞ希望者だけ集まってください、四百社集まったのが今度は六百社になりました、どんどんどんどん人気が出てきたんだというふうに説明を受けるんですけれども、結局、それで果たして本当にそれ以上広がっていくのか。

 それをやるときに、私の事業所がどのぐらいCO2を出しているのかをカウントするんです。例えば、電気は電力会社から買っています、それが再生可能エネルギーなのか火力なのか原子力かは別にして、電気に色はついていない。じゃ、あなたが使っている電気は何キロワット使っているから、CO2をこのぐらい出しているんだろうというのを、やはり計算を自分のところでできるような仕組みもつくらないと、参加していいかどうかも判断つかない。だから、市場から買ってきた方がラッキーなのか、自分が努力した方がいいのか、その経営判断もできない、今の状態で。

 これから制度設計をつくっていくと思うんですけれども、それで二〇三〇年までに四六%、あと七年で、自主目標をやっていった中で本当にできるかということです。

 先ほど申し上げましたように、トラックだって発注するのに一年かかっている、物によっては二年かかっている、これが現実です。だから、今、新しいトラックを買いたい、じゃ、すばらしい、CO2の排出量が少ないトラックができ上がりました、黙って二年かかる。その状況の中で、あと七年で四六%削減できるんだったら、やはりもう少し、まあ、この法律ができてからなんでしょうけれども、詳細な情報を国民や事業者に伝えないと。自分のところでどのぐらい出ているんだからと。

 ただ、お話を聞くと、十一億五千万トンCO2が出ているんだけれども、個別の細かい話は分からないという。それで、十一億トン、削減目標にして、ニュートラルにするというのを二〇五〇年でやろうとするから、じゃ、個人の何の努力をして、一事業者が何を努力したらその目標に達成できるのかというのを、もう少し分かりやすい説明をしないと達成できないんじゃないかなというふうに思うんですけれども。

 だから、二〇三〇年の目標を掲げていながら、自主的目標の削減量の総和が達成できるのか、誰も分からない、自主的目標だから。その辺はどう考えるのか。

 大臣、答弁しますか。短めにお願いします。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、足下で、この四月から開始するGXリーグの排出量取引制度、これはプレッジ・アンド・レビュー方式、そういう意味では自主目標設定でございます。これは、自ら二五年度までの排出削減目標を設定し、市場取引も活用して削減を行うということでございます。これは、企業が目標を設定して、金融市場を始め世の中に開示することで、企業に説明責任が発生し、強いコミットメントや削減インセンティブが高まることが期待され、結果として、目標達成に向けた一定程度の規律が働くというふうに思っております。

 自らが設定した目標を達成した場合は、制度による追加的な金銭負担は発生しないわけでございますけれども、今のような、そういうプレッシャーがかかることでその規律がかかる、こういうことだと思っております。

 ただ、分かりにくいことも相当あるし、特に中小企業におきましては、自身の排出量も正確に把握できないというところがございますが、ここはしっかり丁寧に、分かるような仕組み、あるいはそういうことの研修も含めて丁寧に取り組んでいきたい、そういうことも含めた制度設計をしていきたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 本会議で西村大臣にお尋ねしたときに、JクレジットとGXリーグというのは互換性があるかと言ったら、ありますよと答弁されたんですね。

 今日、林野庁の方にお越しいただいているんですけれども、CO2の吸収を、森林の手入れをすることによって、例えば今、間伐の適齢期になっているのが、なかなか間伐できなくて、山から切り出せなくて、新しい苗木を植えることによってCO2の吸収量を増やすということが、なかなか林業が難しい状況になっているのは承知しているんですけれども、どのぐらいこれから、二〇五〇年に向けてで結構ですから、お金をつければ吸収できていくものなのかどうか。その目標が一億トンあるのか二億トンあるのか、直近で何%とかというような話は聞いていますから、中長期的に見て、このぐらい吸収できるような形で、お金があればできるんだという目標があるのかどうか、お尋ねしたいと思います。

小坂政府参考人 お答えいたします。

 我が国の森林は、人工林、これを中心に、我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成に貢献してきているんですけれども、実は、この人工林、近年、高齢級化しまして、やはり森も高齢級化すると吸収能力が下がりますので、CO2の吸収量は減少傾向で推移しています。

 こうした中、森林吸収量を確保するためには、議員御指摘のように、間伐をちゃんとやるということだけじゃなくて、切って、使って、植えるという循環をしていかなきゃいけないと思っています。循環すると、森林が吸収した炭素を木材利用で長期貯蔵し、その後に植えれば若い森林が増えて成長が旺盛になる、そういうことをやる必要があると思っていまして、こういう取組をやることによって、地球温暖化対策計画においては、二〇三〇年の森林吸収量を約三千八百万二酸化炭素、二〇一三年の総排出比で二・七%とすることを目標としています。

 そのためには、林業は非常に採算性が悪化していますので、例えばJクレジット、そういったことで外部資金を導入するとか、そういう工夫をして、林野庁の方もいろいろな補助事業を使って、きっちりこういう循環が確立できるようなことを進めていかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。

鈴木(義)委員 是非、八割が森林と言われているこの日本でそれを活用することで、やはり地域振興、地方創生につながっていくと思うんですね。だって、東京の中では、この都市部では森林を増やそうとしたって無理な話、まあ、公園があったり緑地帯があったりはするんですけれども。

 だから、ここで問題になってくるのが、大臣がお答えいただいた、JクレジットとGXリーグというのは互換性があるんですよといったときに、ポイントを二倍とか三倍とか格差をつけられちゃったら、森林整備の方にお金が行かないんだと思うんですね。そこのところは、今回のやつで資料をいただいても、全然そこが見えてこないんです。

 いや、産業界で使うんだから、そっちはそっちで頑張ってねというのでは、一番冒頭申し上げましたように、GX推進というのはどういうことなのかということに、最終的には、やはり、緑が多くて、CO2を吸収して、こっちで出すけれども、吸収もしてもらいながら、豊かな生活と経済の活力というのがバランス取れるかどうかということにつながっていくんだと思うんです。

 それを、こっちのグループだけで金もうけできればいいやということじゃなくて、そこをきちっと手当てできないと、本当の目的が、手段が目的になっちゃったのでは本末転倒じゃないかという考え方です。

 最後に大臣、もし御答弁、もう時間で終わりますから。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、カーボンニュートラルを進めていくに当たって、森林の役割も重要であります。

 そして、これまでJクレジットという形、あるいは東証でこの排出量取引の実証も進めてまいりましたので、その中では、森林に関わる排出量については一万数千円の高い値段がついていたりしておりますので、そうしたことも踏まえながら、是非、御指摘のように、しっかりと四六%できるのかという点もあると思いますので、これまでの経験、そして四月から始まる中でいろいろな検証をしながら、しっかりとした制度設計をしていきたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 終わります。

竹内委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十四分開議

竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今週、三月二十日、国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCは、第六次統合報告書を公表いたしました。今のペースで温室効果ガスを排出し続ければ二〇三〇年に排出限度に達してしまうとして、二〇二五年までに排出を減少に転じさせ、二〇三五年には二〇一九年比で六〇%減らす必要がある、このように提示をいたしました。

 冒頭ですが、西村大臣、当然同じ認識でいらっしゃいますね。

西村(康)国務大臣 今回のIPCCの統合報告書でありますけれども、この十年間における、急速かつ大幅で、即時の温室効果ガス排出削減の必要性を全世界に呼びかけるものとして受け止めております。

 報告書の中には、幾つかのシナリオを代表して、温暖化を一・五度に抑えるような世界全体の温室効果ガスの排出推移は、二〇三〇年には一九年比で温室効果ガス四三%減、三五年には六〇%減となる数値も紹介されているものと承知をしております。このIPCCの、いわば加速して取り組まなきゃいけない、このことについては私も同じ思いであります。

 その上で、我が国は、二〇五〇年カーボンニュートラルを実現し、三〇年度には一三年度比四六%削減という国際公約を掲げております。道半ばの状態でありますので、その公約の達成、そしてエネルギーの安定供給と経済成長を確保しながら進めていくということで、GXの基本方針を閣議決定し、今回の法案を提出させていただいております。

 まさに、二十兆円規模の先行投資支援をしっかりと行って、技術開発、社会実装を早く進めていくということでこの目標の達成を加速をしていくということで、今回の法案を活用していく、カーボンプライシングの構想を活用していきたいと思っております。

 いずれにしましても、まずは、この我々の目標実現に向けて、今回のカーボンプライシングを含め、しっかりと実現をし、加速をしていきたいというふうに考えております。

笠井委員 加速して取り組むことについては同じ思いというふうに言われたんですが、IPCCの特徴というのは政府間パネルですから、この提起している中身については、一言一句、参加している政府が同意した中身になっている。同時に、そういう意味では、二〇三五年には一九年度比で六〇%減らすということについても、そうした提起を果たす責任が、やはりIPCCに入っている以上は日本にもあるということなんですよ。そこのところ、加速には同意するけれども日本で頑張りますみたいな、日本の目標でやりますでは駄目なんだと。

 国連のグテーレス事務総長は、気候の時限爆弾は時を刻んでいる、先進国の指導者は二〇四〇年のできるだけ近い時期においてネットゼロ達成を約束しなければならない、こういうふうに言いまして、主要国に対して、排出削減目標を年内のCOP28までに更新するように呼びかけているわけですね。

 まずは日本の目標四六%、三〇年度やりますという話で言われるんですが、大臣、当然、こうしたIPCCや国連の事務総長の提起を踏まえて、年内に目標を更新するということになりますね。

西村(康)国務大臣 まず、パリ協定の一・五度目標を踏まえて、二〇五〇年カーボンニュートラル、そして二〇三〇年四六%削減を実現をし、その上で五〇%の高みに向けて挑戦を続けるということを表明しているところでありまして、このパリ協定を踏まえ、それとも整合する目標であると認識をしております。

 この目標を実現するために様々な計画、地球温暖化対策計画、あるいはエネルギー基本計画、そしてGX実現に向けた基本計画を閣議決定しているところでありまして、これらの方針に沿って取組を進める、そして、今回のこの法案で加速をしていくことで、二〇三〇年度四六%削減、これを着実に実行し、そして取組を二〇五〇年ニュートラルに向けて進めていくということで、私は、このIPCCのまさに今回の提言もしっかりと受け止めた上で、日本として、まずこの目標に向けてしっかりと行動を起こしていく、加速していく、このことを進めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 IPCCの提言をしっかり受け止めるんだったら、今じゃ駄目だということを提起されているということなんですよ。ましてや、先進国の中で、G7の議長国となっているわけですから、本気度が問われる。

 大臣、端的に伺いますけれども、排出削減というのは、やり切らなければならないという、死活的だからやるのか、それとも、やれるところまでやればいい、こういうことなのか、どっちなんですか、基本姿勢で。

西村(康)国務大臣 この気候変動への対応はもう全世界的な、全ての国が取り組まなきゃならない、また、全ての地球上にいる住人一人一人が取り組まなきゃいけない課題だというふうに思っております。

 その意味で、日本として、しっかりとこの目標の実現に向けて取り組んでいかなきゃいけないと思っておりますので、今、まず目の前の目標は三〇年四六%削減、これを確実に実行していく、実現をしていく。そのために今回の法案も提出させていただいているところであります。

 日本として、この約束を果たしたいというふうに考えております。

笠井委員 やらなきゃいけないということであれば、年内に更新するということで、見直し更新は必須だということになります。

 これはまた総理にも、議長国のやはり首相ですからたださなきゃいけない問題ですが、本当に大きな問題で、IPCCの報告書は、この十年の選択や行動は現在から数千年先にまで影響すると警告した上で、今すぐできる限りのやはり気候変動対策を取れと言っているわけで、グリーンを称する本法案がこの立場と整合するのかどうか、この根本が問われているというふうに思います。

 そこで、伺います。

 GX実現のための基本方針で、二〇二三年度から試行的に開始するとしているGXリーグですが、これは本法案の条文ではどう規定されているでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 本年四月より活動を開始いたしますGXリーグ、これは、脱炭素に果敢に取り組む企業群が国際的なリーダーシップを発揮し、ビジネスの力で世界に貢献していくための取組でございます。政府としては、GXリーグを段階的に発展、活用していく方針でございます。

 具体的には、自らの排出量を市場取引も活用して削減することで、社会から正当に評価されるための環境整備を行うとともに、炭素排出の少ない製品、ビジネスが収益性を高めるための各種のルール形成をすることを目指す、官民連携の新たな取組でございまして、一月末の時点で、我が国の排出量の四割以上を占める六百七十九社からの賛同を得ているところでございます。

 政府としては、GXリーグを段階的に発展、活用していく方針でございまして、来年度から排出量取引を試行的に開始いたしまして、知見やノウハウを蓄積しつつ、二六年度から排出量取引制度の本格稼働を目指します。

 その際は、更に公平性や実効性を高めるべく、更なる参加率拡大の検討や、企業が設定する目標が政府指針を踏まえたものであるかの民間第三者認証、目標達成に向けた取組が不十分な事業者に対する指導監督などの規律強化の検討も行う考えでございます。

 お尋ねの、今般の法律案においてGXリーグがどう書いてあるかということでございますけれども、これは、直接GXリーグを規定している、そういう条項はございませんけれども、今般の附則第十一条第二項におきまして、特定事業者排出枠に係る取引を行う市場の本格的な稼働のための具体的な方策を含めて検討を加えるとしておりまして、GXリーグにおける排出量取引を含めたGXリーグの進捗、あるいはカーボンクレジット市場の実証等を踏まえて、先ほど申し上げたような点も含めて、検討を深めていくこととしております。

笠井委員 いろいろ言われましたけれども、条文上の規定はないと。

 確認しますが、GXリーグにおける排出量取引制度というのは、政府の説明文書にもはっきりしていますが、自主参加型で、自主的に目標を設定をし、企業の自主努力に委ねるというものであることは、そういうことですね。

畠山政府参考人 はい。

 参加は自主で、目標設定は自主的に行い、ただ、遵守は自主でございますけれども、守らないケースにおいては、それをきちっと説明していただくということにしているものでございます。

笠井委員 説明はする、ただ自主努力です。

 大臣、三月十五日の質疑でも確認をしましたが、日本の最大排出部門というのは、三七%、約四割を占める発電所、電力部門であります。そこでの削減が決定的な鍵を握っているときに、参加するかどうかも、目標設定も、目標達成も自主性任せと。説明するというふうに言いましたけれども、自主性任せです。これで本当に求められる削減というのができるんでしょうか、仕組み上。

西村(康)国務大臣 まず、本年四月から開始いたしますGXリーグにおける排出量取引ですけれども、今お話がありましたとおり、プレッジ・アンド・レビューですので、自主的に参加をし、自らの二〇二五年までの排出量削減目標を設定し、市場取引も活用して削減を行うということであります。既に、多くの企業は野心的な削減目標を掲げております。

 これまでも、こうしたプレッジ・アンド・レビュー型の枠組みであります自主行動計画において、産業界が自ら目標を掲げて、そして、事業者の創意工夫の下に、国が想定する削減率を超える削減を着実に実現してきております。

 今回の排出量取引制度においても、自ら目標設定をして、金融市場を始め世の中に開示することで、企業に説明責任が発生し、強いコミットメント、そして削減インセンティブが高まることが期待されます。結果として、目標達成に向けた規律が働くものと考えております。

 余り低い目標を立てたら、何だ、あんたのところの企業はそんな低い目標なのかということになりますので、割合野心的な、高めな目標を達成していくことになりますし、それができないとできないで、また評価が下がりますから、これはかなりプレッシャーになって、各企業には、高めの野心的な目標を立て、それを実現していく、そういうインセンティブが働くものということが期待されております。

 さらに、成長志向型カーボンプライシングと呼んでいるとおり、段階的に発展をさせていく予定でありまして、先般の基本方針におきましても、二六年からの排出量取引制度の本格稼働に際しては、参加企業の自主性に重きを置く中で、しかし、制度に係る公平性とか実効性を更に高めることとしております。

 来年度四月以降に、試行期間として、GXリーグのカバー率とか目標の設定、実際にどういうふうに設定し、どういうふうに達成しているか、そうした状況、また、カーボンクレジット市場の発展状況、国際動向も見ながら、二〇二六年から本格稼働に向けた検討を更に深めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 るるありましたけれども、第二フェーズと言われる以降の話というのは二〇二六年からということで、三年も先の話であって、しかも、大臣が最後に言われたけれども、内容すらまだこれから、決まっていないということであります。

 二〇二二年の十一月二十四日の、産構審、産業構造審議会の小委員会と総合資源エネルギー調査会小委員会の合同会合というのがありました。そこに経産省が提出した論点でも、日本のGXリーグにおける排出量取引、GX―ETSの短所ということを挙げて、GXリーグが始まる前から、自主性任せではいろいろ短所があるということも指摘をし、自ら制度の欠陥を認めているわけであります。

 グテーレス国連事務総長は、IPCC報告書は、あらゆる国、あらゆる部門、あらゆる時間枠で気候変動への取組を大幅に加速させるための警鐘であると。ここまで強調しているのに、全く応えるものになっていない、テンポも合わない、間尺に合わない。

 そこで伺いますが、EUの排出量取引制度、EU―ETS、この導入の時期、参加義務づけの対象、参加企業数と、EU域内のCO2排出量に占める割合、排出総量規制、さらには罰則規定、それぞれどうなっていますか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 EUにおける排出量取引制度、いわゆるEU―ETSにつきましては、まず導入でございますけれども、二〇〇三年にその導入を決定いたしまして、二〇〇五年から制度が開始されたと承知しております。

 一定規模以上の排出を行う施設が制度対象となりまして、対象設備は約八千八百、企業数については、正確な数字は発表されておりませんけれども、約二千三百社ほどが対象となっておりまして、EU全体の排出量の約四割をカバーしているものと承知しております。

 また、排出総量の関係ですけれども、ETSの対象設備全体での排出総量の上限を決めておりまして、例えば、二〇〇五年から二〇〇七年の第一フェーズでは、二〇〇五年比で平均としてはプラス八・三%、二〇〇八年から二〇一二年の第二フェーズでは、二〇〇五年比で平均としてマイナス五・六%、二〇一三年から二〇二〇年の第三フェーズでは、フェーズ終了時点の二〇二〇年において、二〇〇五年比でマイナス二一%となるように設定しているものと承知しております。

 また、排出量に応じた排出枠を期日までに国に提出できなかった事業者に対しましては、引き続き提出の義務が残るとともに、一トン当たり百ユーロの追加的な支払いが必要になるものと承知しております。

 以上でございます。

笠井委員 EU―ETSは、二〇〇三年に法制化を経て、二〇〇五年から開始をしているということでいいますと、日本はもう二十年も遅れているということになります。

 大臣は、GXリーグがEUと同水準だということをこの委員会でも繰り返し答弁をされてきましたけれども、一体どの点がEUと同水準というふうに言われるんでしょうか。

西村(康)国務大臣 こうした排出量取引の制度を始めとして、排出量削減をしていくためのその枠組み、各国の制度は、それぞれの国の経済事情、あるいはエネルギー事情等を踏まえて設計されるものでありますので、一概に比較を行うことというのはなかなか難しいわけでありますが、その上で、御指摘のEU―ETSでありますけれども、世界に先駆けて、今お話がありましたとおり、二〇〇五年から制度運用されているものでありますので、そうした経験とか教訓、これをしっかり学びながら、我々としても制度設計につなげていく考えであります。

 そして、来年度から我々が開始しますGXリーグについてでありますが、電力、鉄鋼など多排出産業を含めて六百社以上の参加表明が既にあるところであります。排出量の四割強、日本全体の四割強をカバーするというカバー率は、これはEU―ETSと遜色がないところであります。

 さらに、目標設定や目標遵守につきましては、自ら排出削減目標を設定し、プレッジ・アンド・レビュー方式で実施しますので、企業側に説明責任が発生して、先ほど申し上げましたとおり、強い意欲、コミットメント、そして削減インセンティブが高まるということでありますから、企業の創意工夫の下、目標達成に向けた規律が働く、このような仕組みを考えているところであります。

 EUのETSとは、制度への参加や目標達成などについて、企業への義務を課している部分も異なっておりますけれども、気候変動対応が企業の経営課題となった今では、企業自らが金融市場を含めて野心的な目標を開示する、金融市場での評価も非常に大事でありますので、それに向けて創意工夫を持って取り組む仕組みとするということは、一定の合理性があるものと思っております。

 いずれにしましても、二六年度から本格稼働においては、更に公平性や実効性を高めるべく、来年度以降のGXリーグの進捗を踏まえて、更なる参加率の拡大を検討すること、また企業が自主設定する目標が政府指針を踏まえたものであるかの民間第三者の認証、そして目標達成に向けた取組が不十分な事業者に対する指導監督など、規律強化の検討も進めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 随分るる、るる述べられましたが、私が聞いたのは、EUと同水準というのはどこなのかと質問したら、いろいろ伺っていたら、同水準なのはカバー率だけですよね。問題は、どれだけ減らせるかということになってきます。

 三月十七日の当委員会の参考人質疑で諸富参考人は、EU―ETSは、産業のセクターでどれだけ減らすべきかという国家の目標があり、何年頃までにどれだけ減らすのかを決めている、一定以上の規模の排出をする企業ならば強制的に全員入りなさいというふうになるというふうに指摘をされて、他方、日本のGXリーグについては、総量をどうしたいのか定められていない、どれだけ、日本が減らさなきゃいけない量のうちこれだけ実現できるのかが分からないというふうに述べておられます。そのとおりだと思うんです。しかも、罰則もない。GXリーグは、EU―ETSとは同水準と言われるけれども、全く別物だ。

 大臣、これでは、GXリーグは、いわゆる見せかけの環境対策、グリーンウォッシュと世界からも、それから国内からもみなされても仕方がないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょう。

西村(康)国務大臣 日本におきましては、実はこれまでも、まさに自主行動計画という形で、企業が自らプレッジ、目標を掲げて、そしてそれを実行しているかどうか点検していく、レビューですね、プレッジ・アンド・レビューという枠組みで進めてまいりました。

 この自主行動計画において、産業界は自ら目標を掲げて、そして創意工夫の下に、国が想定する削減率を超える削減を着実に実施してきておりますので、そうしたものも踏まえて私ども制度設計をしてきたわけでありますが、おっしゃるように、これから、二六年度までまだ二年間ございますので、様々検討を進めていきたいと思いますし、実際に、この六百社以上、全体の排出量の四割以上を占める企業が参加をしておりますので、この企業がどの程度のプレッジをして、そして、どれほど実行していくのか、こうしたこともしっかり見ていきたいというふうに思っております。

 これまでの経験からいくと、先ほど申し上げましたとおり、金融市場での評価もあります。野心的な目標を掲げて、それに向けて進んでいくということを期待をしておりますし、私ども、二十兆円規模の先行支援も行ってまいりますので、そうした意欲ある取組をしっかりと支援をしていく、そのことで実現をしていきたいと考えておりますが、本格実行まではまだ二年ありますので、海外の動向、そして、それぞれの企業のプレッジ・アンド・レビューの動向も見ながら、しっかりと制度設計していきたいというふうに考えております。

笠井委員 プレッジ・アンド・レビューで進んでこなかったんですよ、日本はなかなか。それで、今も二度にわたって、まだ本格施行まで二年間ある、時間があるというふうなことを言われるけれども、世界はもう、IPCCもそうですが、もう時間がないというふうに言っているわけですね。

 大臣は、三月二十二日の質疑で、カーボンプライシングについて、取組が慎重だった面は否めない、取組が遅かったことは否めないというふうに認められている一方で、日本が突出して厳しくなると、いまだにやはり幾つかの産業では、規制の緩い国にという思いがあるんだろうというふうに言われました。

 そこで、率直に伺いたいんですが、一体どの産業がそんなことを言っているんですか、具体的に。

西村(康)国務大臣 個別の企業名は控えたいと思いますけれども……(笠井委員「産業で結構です。どういう産業」と呼ぶ)例えば鉄鋼の業界など、例えばインドは二〇七〇年のカーボンニュートラルということで、石炭も非常に多く使用しておりますし、私ども、IPEFの枠組みなども通じまして、インドのクリーンエネルギーへの移行をしっかりと応援をしていきたいと思いますし、協調、協力して進めたいと思っておりますけれども、例えばそうした国への移転ということも考えられるわけであります。

 我々として、代替技術とか、国際競争力とか、他国の動向とか、そういったことも見ながら、しっかりと考えていきたいと思っております。

笠井委員 二十二日の答弁のときには、鉄ということは具体的に言われたんです。鉄を始めとして、そういうことを言われてきた、危惧があったものというふうに思うと言われて、その上で、いまだにということで言われて、やはり幾つかの産業と言われたわけですよね。鉄以外に、幾つかの産業と言われたんです。具体的にはどこなんですか、産業でいうと。

畠山政府参考人 これは鉄が典型でございますけれども、排出削減のスピード、これを、いきなり今、排出削減をするだけの技術がまだない多排出産業は結構ございます。これはハード・トゥー・アベート産業と言われるもので、日本でいうと、鉄鋼、あるいはセメント、紙パルプ、そういったものが該当いたします。

 こういったところについては、実は世界でも必ずしもその技術がないということで、御指摘のEUにおきましても、例えば鉄鋼セクターであれば、排出量取引制度の対象にはなっておりますけれども、大量の無償枠を供与しておりまして、実際の排出実績の、これは時期によりますけれども、一・三倍ですとか一・六倍ですとか無償枠を供与し、それが蓄積をされておりまして、そういう意味では、各国、EUも含めて、こういう特に多排出産業、いきなり排出削減をするのが難しい多排出産業につきましては、工夫をしながら進めているということだというふうに認識しております。

笠井委員 今、具体的に幾つか言われましたが、大臣は、生産活動が国外に移転をして、世界全体で見てもCO2があふれる結果になってしまうと何度も答弁されているんだけれども、やはり、国内でしっかり削減に取り組めと、それで、きちっとどうするかということでの手当てをするというのが政治じゃないかということだと思うんですよ。

 日本が推進している石炭火力発電所でのアンモニア混焼についても、IPCCの報告書は、IPCCが定める脱炭素基準には達していない、達しないというふうに指摘をしている。これにも真っ向から逆行していることをやっているわけです。

 イギリスの独立系メディアは、今月、三月二日に、日本政府のGX戦略はアジア各国の再エネ転換を脱線させるという記事を掲載しました。石炭火力発電所でのアンモニア混焼、炭素回収、貯留技術、CCSなど、化石燃料ベースの技術に依存していることが特に有害であり、これらをアジア諸国に輸出することは、再生可能エネルギーによる解決策がより安価で、より信頼性が高く、しかも利用可能である中で、化石燃料の使用を長引かせるだけだと指摘をして、GX戦略はグリーンウォッシュの実践だ、ここまで言い切っちゃっているわけですね。投資家は日本の戦略や移行債のグリーンウォッシュを警戒しているという報道もあるとも指摘をしております。

 大臣、三月十五日の質疑でも指摘しましたが、投資家から見てグリーン投資だと判断できず、株主等からもグリーンウォッシュと批判されるおそれのあるGX移行債というのを、一体誰が買うというふうに思われますか。

畠山政府参考人 今回法定しておりますGX経済移行債の発行につきましては、これは、その他の国債と一緒に出す統合発行という形式もあり得ますけれども、我々が目指しているのは個別銘柄発行でございまして、この場合は国際機関の認証を受ける形で発行したいと思っております。

 したがって、そうした認証を受けたこのトランジションボンド、移行債につきましては、広く投資家に買っていただけるものというふうに考えております。

笠井委員 フランスの環境国債なんかは、もう本当に、発行してもたくさん売れて、非常に、また更にというふうになっているはずなんですけれども、じゃ、GX移行債がグリーンウォッシュの疑念から市場で買手がつかなかったらどうなっちゃうんですか、これ。

畠山政府参考人 我々としては、先ほど申し上げましたように、国際認証も得て発行することを目指しておりまして、それは、我々として買手がつかないということを想定しているわけではございませんで、きちっと買っていただけるように発行いたしたい、このように考えております。

笠井委員 いや、怪しいと言われているんですよ。認証を得られなかったら大変なことになりますよ。

 十年間で百五十兆円の官民投資などの内訳として、原子力に一兆円、水素、アンモニアに七兆円などと使途は先に決めて、肝腎な排出削減のためのカーボンプライシングの開始は二〇三〇年からで、詳細はこれから決めると。しかも、石油石炭税と再エネ賦課金の減少の範囲内ということで、産業界への負担が極めて少ないことだけは決めようとしている。

 実際に、石油連盟の木藤俊一会長、出光興産の社長は、昨年十二月十九日の会見で、本法案に関して、今後、石油石炭税が需要の減少とともに減り、その部分を充当する枠組みだ、金額としてこれは大きな負担にならない、負担軽いんだよとわざわざ言っているんですよ。

 本法案は、事業者からは、CO2排出削減のインセンティブは生じないと。こんなことで本気の削減、大臣、できると思いますか。

西村(康)国務大臣 それはもう国民の皆さんもそうだと思いますし、企業の皆さんも負担が低い方がいいというふうに感じるのは、普通の自然な発想だと思いますけれども。

 今回のカーボンプライシング、この成長志向型のプライシングは、もう何度も御説明していますが、早く取り組んだ企業は負担が低くなる。そして、二六年、二八年、三三年とそれぞれ導入してまいりますので、その過程で負担が上がって、導入され、入っていくわけでありますので、遅くなってくると、CO2をずっと削減していないと、それに係る負担はどんどん大きくなっていきますので、きちんと取り組んだ企業はいいですけれども、取り組んでいない企業は物すごく大きな負担になるおそれもあるわけでありますから。

 そういう意味で、企業のそれぞれの自主的な取組、これを促していこうということが大きな主眼でありますので、取り組んだ企業は減税的な効果があると思いますが、そうでない企業は負担が重くなるということ、これは産業界もよく認識をしているというふうに思います。

笠井委員 それでは減らすインセンティブにならないんですよ。

 IPCC報告書を受けて、G7広島サミットでは排出削減対策の強化が重要課題になります。G7のうち、アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダは二〇三五年に電源の脱炭素化の目標を掲げて、フランスは二一年に九一%を脱炭素化しました。日本は、二一年に三〇年度の削減目標、五〇年の実質排出ゼロを掲げてはいますけれども、四〇年に向けた目標はない。大臣、これは本当にG7の議長国としては恥ずかしい。広島サミットで世界から大きな批判にさらされることは必至です。

 時間が来たので終わりますが、IPCC報告書に逆行する本法案は撤回をして、原発ゼロ、石炭火力の期限を切った廃止をすぐに決断して、省エネ、再エネの普及によって気候危機打開に全力を挙げるべきだ。

 当委員会でのやはり更なる徹底審議を求めます。そして、質疑終局については断固反対ということを申し上げて、今日の質問は終わります。

竹内委員長 次回は、来る二十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十五分散会


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