衆議院

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第8号 令和5年4月5日(水曜日)

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令和五年四月五日(水曜日)

    午後一時六分開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 井原  巧君 理事 岩田 和親君

   理事 関  芳弘君 理事 細田 健一君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      青山 周平君    石川 昭政君

      稲田 朋美君    加藤 竜祥君

      上川 陽子君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      塩崎 彰久君    鈴木 淳司君

      土田  慎君    冨樫 博之君

      長坂 康正君    福田 達夫君

      牧島かれん君    松本 洋平君

      宗清 皇一君    山際大志郎君

      山下 貴司君    大島  敦君

      菅  直人君    田嶋  要君

      馬場 雄基君    山岡 達丸君

      足立 康史君    遠藤 良太君

      前川 清成君    中川 宏昌君

      鈴木 義弘君    笠井  亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (GX実行推進担当)   西村 康稔君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (内閣官房GX実行推進室次長)

   (資源エネルギー庁長官) 保坂  伸君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            覺道 崇文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           福永 哲郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     塩崎 彰久君

  今枝宗一郎君     加藤 竜祥君

  堀井  学君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     堀井  学君

  加藤 竜祥君     今枝宗一郎君

  塩崎 彰久君     石井  拓君

    ―――――――――――――

三月三十日

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。西村国務大臣。

    ―――――――――――――

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

西村(康)国務大臣 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略等により、世界のエネルギー情勢は一変し、諸外国は早期の脱炭素社会への移行に向けた取組を加速しています。こうした中、資源に乏しい我が国においても、グリーントランスフォーメーション、いわゆるGXに向けて取り組むとともに、エネルギーの安定供給を確保することが重要です。

 このため、再生可能エネルギーの最大限導入に向けて、系統整備を加速しつつ、国民負担の抑制と地域との共生の両立に取り組むとともに、原子力については、安全性の確保を大前提とした上でその活用を進めるなど、脱炭素電源の利用促進と電気の安定供給を確保するための措置を講ずる必要があります。

 本法律案は、こうした内容を盛り込んだ上で、本年二月に閣議決定したGX実現に向けた基本方針に基づき、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 まず、電気事業法の一部改正です。

 第一に、発電用原子炉の運転期間を四十年と定めた上で、原子力規制委員会による運転停止命令等を受けていないこと等の基準を適合していると認められるときに限り、経済産業大臣が認可し、運転期間の延長を認めることとします。その際、運転期間は最長で六十年に制限するという現行の枠組みは維持した上で、安全規制に係る制度の変更等の予見し難い事由により運転を停止した期間と認められる期間に限り、六十年の運転期間のカウントから除外することとします。

 第二に、広域系統整備計画に定められた一定規模以上の電気工作物の整備等を実施する一般送配電事業者等は、その整備等に関する計画について、経済産業大臣の認定を受けることができるものとし、広域的運営推進機関の業務に、当該認定を受けた者に対して当該電気工作物の整備等に必要な資金の貸付けを行う業務を追加します。

 次に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部改正です。

 発電用原子炉設置者に対して、運転を開始した日から起算して三十年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、あらかじめ、その発電用原子炉について、十年を超えない期間ごとに、当該施設の劣化に関する技術的な評価を行い、その劣化を管理するための措置等を記載した長期施設管理計画を作成し、原子力規制委員会の認可を受けること等を義務づけることとします。

 次に、原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の一部改正です。

 使用済燃料再処理機構の業務に廃炉推進業務を追加した上で、同機構の名称を使用済燃料再処理・廃炉推進機構に改めるとともに、同機構が行う廃炉推進業務に必要な費用に充てるため、実用発電用原子炉設置者等に対して、同機構に廃炉拠出金を納付することを義務づけることとします。

 次に、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法の一部改正です。

 第一に、既存の再生可能エネルギー発電設備を最大限活用するため、認定事業者がその発電設備の増設等を行う場合は、増設等に係る部分にのみ最新の価格を適用する措置を講じます。

 第二に、再生可能エネルギー発電事業計画の認定の要件にその事業の実施内容を周辺地域の住民に周知することを加えるとともに、認定基準に違反する認定事業者に対して交付金による支援額の積立てを命ずる措置を創設するなど、事業規律を強化します。

 第三に、今般、電気事業法において創設する認定制度の認定を受けた事業者が、当該認定に係る計画に従って、再生可能エネルギー電気の利用の促進に資する電気工作物を設置しようとするときは、その工事を開始した日から、特定系統設置交付金の交付を受けることを可能とします。

 次に、原子力基本法の一部改正です。

 エネルギーとしての原子力利用は、国及び原子力事業者が安全神話に陥り、東京電力福島第一原子力発電所の事故を防止することができなかったことを真摯に反省した上で、原子力事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立ってこれを行うものとし、当該原子力利用に当たっての国及び原子力事業者の責務を明確化する等の措置を講じます。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

竹内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房GX実行推進室次長兼資源エネルギー庁長官保坂伸君、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官覺道崇文君、経済産業省大臣官房審議官福永哲郎君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君及び資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石川昭政君。

石川(昭)委員 自由民主党の石川昭政です。

 今回、五本の束ねということで、大変複雑な法律になっておりますけれども、国民の皆様に分かりやすく、大臣それから役所の皆様も御答弁いただきたいと思います。

 それで、本題に入る前に、急を要する事案が中国で発生いたしましたので、これだけちょっと一問先にお伺いしたいと思っております。

 去る三月二十六日、アステラス製薬の中国の現地法人の日本人の方が中国の国家安全局に拘束された事案が発生いたしました。これについては、私の地元、高萩市に工場があるものですから、非常に他人事でないなということで心配をしているところでございます。

 また、中国も反スパイ法ということでかなりこれから範囲が拡大していく中で、中国への投資を呼びかけつつ、日本の経済活動というのが難しくなっていくのではないかというふうに感じております。こういったリスクを、中国に出ている企業はリスクを認識すべきだと思っております。

 また、鈴木英司さんという、六年ぐらい中国で拘束されて帰国した方から直接お話を聞きましたけれども、起訴されれば間違いなく一〇〇%有罪だと。なので、今、恐らく、起訴される前の居住監視中という取調べの状況にあるようなんですけれども、この期間にいかに解放を求めていくかということが重要だというふうに鈴木氏は言っております。

 経産大臣として、いち早くこの拘束された日本人の方を解放するように動いていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解、取組をお伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 今回の邦人拘束事案につきましては、政府として、中国側には厳重に抗議をするとともに、早期解放を引き続き強く求めていく考えであります。

 このような事案が発生しますと、中国でビジネスができないという不安の声、強い声、これが経済界にもございますし、十分理解できるものであります。中国との経済関係、これも、安全面も含めた正当な経済活動が保障されること、そして、透明で予見可能なビジネス環境があってこそのものであります。

 経産省として、中国ビジネスに関わる企業関係者の安全確保や透明で公平なビジネス環境の確保に向けて、これは私自身含めて様々なレベルで中国側に対して粘り強く働きかけていきたいと思いますし、中国のビジネス環境をしっかりと見極め、我が国産業界との間で注意喚起を含めた適切な対応を重ねてまいりたいというふうに考えております。

石川(昭)委員 これは外務省だけの問題ではなくて、政府挙げて是非取り組んでいただきたいとお願い申し上げます。

 次に移ります。

 さきの委員会でも採決いたしましたGX推進法について、私も議論を聞いていてちょっと気になる点がございますので、ここで確認をさせていただきたいと思います。

 今後十年間で百五十兆円の官民の投資を行うということでございますが、百五十兆円もの巨額を投じて、どれだけ我が国のエネルギー自給率が向上するのかという視点がいま一つ分からなかったわけでございます。

 もちろん、特定の国に依存するということは避けるべきだというのは共通の認識だと思いますけれども、これから、水素であるとかSAFとか合成燃料とか、新しい燃料を作る場合に、国の政策を見ますと、四〇年頃に何万トン、あるいは数値目標とコストというような目標はあるんですけれども、我が国で自給できる割合がどのくらいか、こういう指標が私は欠けているんじゃないかと思うんです。これについて、大臣の御見解をお伺いします。

西村(康)国務大臣 まさにGXは、化石燃料からの脱却にとどまらず、エネルギー、全産業、ひいては経済社会の大変革を実行するものであります。GXの取組を進めることで、脱炭素、エネルギー安定供給、そして経済成長の三つを同時に実現することが重要でありまして、この方針に基づいて、GX基本方針を閣議決定し、法案も提出させていただいているところであります。

 その中で、再エネの最大限活用、安全性が確保された原子力の活用など、御指摘のエネルギー自給率の向上に資する脱炭素効果の高い電源への転換を推進する方針を明確にしているところであります。

 また、GX経済移行債による二十兆円規模の支援対象についても、排出削減のみならず、経済成長、競争力強化についても重要な要件としておりまして、国内の人的、物的投資拡大につながるものを対象とし、国内への波及が見込めない設備投資など国内排出削減に利かない事業などは支援対象外とすることを想定しております。

 エネルギーは社会経済活動を支える基盤、土台であります。できるだけ安価で安定的なエネルギー供給を確保することは最重要課題でありまして、百五十兆円超の官民投資によって、二〇三〇年四六%排出削減、この目標実現を加速させ、それに必要となるエネルギーミックスを実現できれば、エネルギー自給率は現在の倍以上の三〇%程度となる見込みであります。

 御指摘のように、脱炭素化を進めても、結局海外に依存するということになってしまっては、自給率、我が国の安定供給ということにつながらない面がありますので、安定供給の確保ということ、そしてエネルギー自給率の向上、これにも資する形でしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

石川(昭)委員 政策的には是非そういう方向で取り組んでいただきたいと思います。

 次に、原子力委員会の役割についてお伺いしたいと思います。

 去る二月二十日、原子力委員会において、原子力利用の基本的な考え方というものが示されました。

 本来、原子力委員会というのは、私が考えるに、原子力に対する研究開発などの推進と規制を、バランスを考慮しながら、原子力の適正利用の方針を示す役割があるのではないか、むしろ、そういう役割を是非取っていただきたいと思うんですね。

 例えばですけれども、今の原子力規制の中で、ゼロリスクはないんだということで今審査が進んでいるわけですけれども、やはりこの中に、安全目標を入れていくとか、そういった欠けた部分を是非取り入れたらいいのではないかということを原子力委員会から原子力規制委員会に投げかけてみるとか、検討を促してみるとか、そういう役割を果たしながら、規制と推進をバランスよく進めていく、そういう役割を私は期待したいんですけれども、これについて、今、原子力委員会はどのように考えていますか。お伺いしたいと思います。

覺道政府参考人 お答えを申し上げます。

 原子力委員会では、今委員から御指摘ございましたように、今後の原子力政策について政府としての長期的な方向性を示す原子力利用に関する基本的考え方を本年二月二十日に決定をいたしまして、その後、二月二十八日の閣議において、尊重される決定がなされてございます。

 当該基本的考え方におきましては、原子力安全を最優先課題として取り組んでいくことが必要と指摘するとともに、国による規制活動については、必要となる審査に加え、規制当局と原子力発電事業者が対等な立場でのコミュニケーション等を通じて、原子力発電事業者の自主的な安全性向上の取組を促していくことが重要であるとしてございます。

 基本的考え方の取りまとめに当たりましては、原子力規制庁からのヒアリング、原子力規制委員会と原子力委員会との意見交換を実施をいたしまして、それらの議論等も踏まえまして取りまとめられたところでございます。

 また、今御指摘ございました安全目標につきましては、諸外国におきましても、各国の規制当局による目標設定がなされているものと承知をしているところでございます。

 原子力委員会としましては、今後とも、原子力規制委員会との意見交換会の実施などを始めまして、各省庁及び関係機関と積極的にコミュニケーションを図り、基本的考え方の実効性を高めるために尽力をしてまいりたいと考えてございます。

石川(昭)委員 是非、規制委員会とも綿密にコミュニケーションを取っていただきたい、これはお願いしたいと思います。

 それでは、今回の法案の肝であります運転停止期間の延長についてお伺いしたいと思います。

 これは、いわゆるサッカーでいうとロスタイムの部分を、後ろに延長を認めるという話でございます。これは、安倍政権当時もそういう構想はあったものの、なかなか前に進まなかった。それが、岸田総理それから西村経産大臣の下でこういう法改正がなされるというのは、大きな英断だと私は評価したいと思います。

 そこで、お伺いしたいと思います。

 原子炉が止まるというのは、いろいろな理由で止まっているわけです。十三か月に一回の定検であるとか、ちょっとした地震があるとか、いろいろな理由で止まるわけです。その中で、今、東電柏崎刈羽のように、電力会社の不祥事によって、審査が止まったり、原子炉が止まったりするケースもございます。

 そこで、この運転停止期間をどう判断、ここは認める、ここは認めないというその基準があるはずなんですけれども、この取扱いについて、どのような機関で誰が判断していくのか。それから、停止期間も、送電を止めた時点なのか、それともタービンと原子炉を切り離すとか、あるいは燃料棒を抜いた時点とか、いろいろなタイミングがあるわけですけれども、これについて、今の検討状況はどのようになっているでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の運転期間に関する措置は、実質的な運転期間六十年という上限は維持しつつ、震災以降の法制度の変更など、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限り、六十年の運転期間のカウントから除外することを認めるという利用政策の立場からの政策判断を行うものでございます。

 その中で、今委員からお尋ねのありました点について申し上げますと、電気事業法の改正法案の中で、運転期間については「発電事業の用に供するため、発電用原子炉を運転することができる期間」と規定しておりまして、お尋ねの、運転期間のカウントから除外する期間のまず始点について申し上げますと、具体的には、運転中の原子炉については、法制度の変更や行政指導等に基づき、当該原子炉を送電系統から切り離したいわゆる解列の時点だと考えておりますし、運転停止中の原子炉につきましては、運転することができなくなる原因となった法制度の変更や行政指導等の効力が発生した時点というふうに考えてございます。

 いずれの場合におきましても、具体的な期間等につきましては、事業者からの申請内容を個別に審査した上で判断していくものと考えてございます。

 その上で、今委員から御指摘がございました柏崎刈羽原子力発電所につきましては、二〇二一年四月に、核物質防護の不備、これは事業者の不備によりまして、原子力規制委員会から核燃料移動禁止命令が出され、運転できない状態にございます。このように、事業者自らの行為の結果のみにより運転停止していることが客観的に明らかな期間については、カウント除外の対象とはならないものと考えているところでございます。

 他方、特定重大事故等対処施設及び新規制基準において新たに要求されたもの、こういうものにつきましては、これに対応するための停止期間は、カウント除外の対象となり得ると考えてございます。

 いずれにいたしましても、この法の執行に当たりましては、的確な審査体制を整備することが重要であり、この上で、どういう期間になっていくかということの審査は、成立した暁にはしっかりと対応してまいりたいと考えてございます。

石川(昭)委員 やはり事業者が自らの不祥事だとか不備によって止まった場合は、このカウントには該当しない、除外されるというわけですから、これは事業者にとって安全とかガバナンスとかいうものに対してきちっとやろうという動機づけになると思いますので、それは非常にいい方向だなというふうに思います。

 次に、事業環境整備について、大臣にお伺いしたいと思います。

 今、安全対策工事も含めると、約一兆円ほどの、一基一兆円ほどの投資が必要となってまいります。原子力事業者がこれから必要な安全対策あるいは廃炉費用を安定的に積み立てるためには、持続可能、安定的な事業環境の整備というのが必要ではないかなと考えております。

 今回の法改正の中では市場の整備というものは含まれていないようですけれども、今後どのように市場の整備というのを考えていらっしゃるか、大臣にお伺いします。

西村(康)国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。

 今後、安全性の確保を最優先に、立地地域の理解を得ながら、まず再稼働を進めるということと同時に、今回の御提案をさせていただいております運転期間の延長を含め、既存の原子力発電所を着実に運営していく、このことで、安定的な価格による電力供給を実現しつつ、将来の投資等の取組に向けた経営基盤の強化も進めていければと思います。

 その上で、御指摘のとおり、原子力事業者が安定的に投資を行っていくためには、現在の事業環境の在り方について検討を加えて、適切な措置を行っていく必要があると認識をしております。

 こうした問題意識の下に、電力市場制度の再点検等を踏まえた計画的な脱炭素電源投資への支援など、予見可能性の向上に資する事業環境の在り方について、有識者の御意見もいただきながら、検討を急ぎたいというふうに考えております。

石川(昭)委員 ありがとうございます。早期の検討をお願いしたいと思います。

 次に、規制委員長にお伺いしたいと思います。ちょっと幾つか、何点かあるので、まとめてお伺いしたいと思います。

 本日も規制委員会が開かれまして、この高経年技術評価、あるいは運転延長認可制度について、検討チームを立ち上げて今検討が進んでいるということでございます。これは今、現時点では省令レベルの規則としてやっているわけですけれども、これが今回法制化、法定化されるということになりますが、そうすると、どこがどう変わっていくのかというのがまず第一点。

 それから、今五人の規制委員会の委員で審査しておりますけれども、それぞれ分野が異なるわけですね。そうすると、審査していく中で、他分野、自分とは違う分野のものに対して、非常に異議を挟みにくい審査体制になっているというふうに思います。また、事務方と委員と意見が異なった場合、どうしても委員の意見が通りやすいんじゃないか、このように私は感じているわけです。こういった審査の体制でこれからもいいのかと私は疑問を持っているんですけれども、委員長の見解をお伺いします。

 三点目が、志賀原発の敷地内の断層の評価が、二〇一六年の評価から七年たってひっくり返ったわけですね。地質、地盤の審査のやり方というのは、私、もう少し考えた方がいいだろうというふうに思います。過去の地質審査の事例なんかをもう一回専門家の方にレビューしてもらって、炉安審でも燃安審でもいいと思いますけれども、もっと効率的な審査ができるんじゃないか、そういう検討を是非進めていただきたいと思います。

 以上三点、お伺いします。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 三点でございますので、少々長くなりますけれども、できるだけ短めにお答えさせていただきたいと思います。

 高経年化した発電用の原子炉に関する安全規制、現在、二つの制度から成り立ちます。

 一つは、高経年化技術評価制度というものでございます。これは、運転開始後三十年とそれ以降十年ごとに、高経年化に関する技術的な評価結果あるいはその結果を踏まえた長期の施設管理方針が災害防止上支障がないことを審査し許可する制度でございます。

 もう一つが、運転期間の延長認可制度でございます。これは、運転開始後四十年目の劣化状態の点検結果、劣化状況に関する評価結果やこれを踏まえた施設管理方針から施設の基準適合性を審査し認可した場合、運転期間を最大二十年延長できる制度でございます。

 今回国会に提出いたしました原子炉等規制法の一部改正案は、これら二つの制度を統合しまして、これまで運転開始後四十年目に一回行ってきました施設の基準適合性審査を、運転開始後十年を超えて運転しようとするとき、その十年を超えない期間ごとに行う、現行制度に比べて高い頻度で厳正な審査を行います。

 新たに認可対象として作成を義務づける長期施設管理計画、これには、これまで認可する保安規定の中で定めていた長期の施設管理方針に加えまして、劣化状況や劣化予測に関する詳細な記載を求めることで、より厳格な審査が可能になると考えております。

 結果、運転期間がどのようになろうとも、基準への適合性を確認できない発電用原子炉の運転は認めないという厳格な制度になってございます。

 運転開始後三十年を超えようとして運転する場合に、十年以降、十年を超えない範囲で審査をしていくということに訂正させていただきます。

 問いの二つ目でございます。

 原子力の安全確保に必要な専門知識は多岐にわたります。したがいまして、委員の人選もかなり広い範囲で行われております。五人の委員の専門はかなり異なりますし、それは自然なことであるというふうに考えております。

 規制委員会の場では、五人の意見が、専門分野にかかわらず、個々の議題の背景や論点を十分に理解した上で議論を交わして、合議の上で決定をさせていただいています。自身の専門分野から外れるからといって、異議を挟みにくいということはないものと考えております。

 また、事務局の規制庁職員と委員の間の関係について申し上げますと、事前に問題意識を共有した上で審査会合に臨みますので、審査会合の場で実態的に対等な立場で議論を交わしております。一人の意見に規制庁の職員が一方的に従うということはございません。

 最後の御質問でございます。

 新規制基準適合性に関する審査といいますのは、サイトの立地条件によるところが極めて大きく、基準地震動、基準津波等の自然ハザードの評価が厳しいサイトで審査に時間を要しております。

 その上で、審査を効率的、効果的に進めることは原子力規制委員会としても望ましいと考えております。審査の予見性を確保するために、審査の早い段階で論点を明示するとともに、審査会合の最後に指摘事項を双方で確認し、共通理解を得るなど、今、改善の取組を進めているところでございます。

 いずれにいたしましても、審査を確実に着実に進めていくためには、規制委員会と事業者の双方の努力が必要であると考えております。引き続き、安全の確保を最優先に審査プロセスの改善を図ってまいります。

 志賀の件でございます。

 新規制基準への適合性審査につきましては、有識者会合の評価結果を重要な知見として参考にしつつ、原子力規制委員会が最終的な判断をするところになってございます。

 今後の課題については、より正確、確実な評価を行うためにデータの拡充が必要であると有識者の会合で評価をいただいたところでございます。

 有識者の会合で評価いただいた課題に基づいて、事業者が拡充したデータによって断層活動を否定する明確な証拠を示せた事例になると考えております。有識者会合の指摘は極めて有意義であったと考えております。

石川(昭)委員 一問残りましたけれども、また次の機会にしたいと思います。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、土田慎君。

土田委員 ありがとうございます。自由民主党の土田慎でございます。本日はよろしくお願い申し上げます。

 今日、私は、再エネに資する系統整備について主にお伺いをさせていただこうと思っております。

 大きく、させていただく質問としては二点でございます。一点目が交付金について、そして二点目がケーブルの切断リスクについてでございます。

 二〇三〇年の温室効果ガス四六%削減目標、そして二〇五〇年のカーボンニュートラル実現に向けて、再エネの導入、系統整備というのは非常に大事なんだというふうに認識しております。

 我々自民党は、どうしても、原発前のめりで、再エネのことを余り考えていないんじゃないかみたいな話をたまに言われたりするんですけれども、むしろ逆で、再エネについて、そして電力の安定供給について責任を持って考えているからこそ、こういう系統整備の議論を真剣にやっているんだというふうに思っております。

 そこで、まず最初に西村大臣にお伺いしますけれども、三月に系統整備のマスタープランをまとめた、掲げたと思いますけれども、系統整備の重要性と意気込みを教えてください。

西村(康)国務大臣 再エネを最大限導入していく、大量に導入していくと同時に、供給の安定性の強化、このためには、御指摘の、地域間の電力融通を円滑化する系統整備を加速していくことが極めて重要であります。

 御指摘のように、三月二十九日に、二〇五〇年カーボンニュートラルを見据えた将来的な系統の絵姿を示すマスタープランを策定をし、六兆円から七兆円が必要との試算も示されたところであります。今後、これを踏まえて、全国で送電線の整備、これを着実に進めていきたいというふうに思います。

 一方で、北海道と本州を結ぶ海底直流送電等の、巨額の資金が必要となる送電線の整備については、着工から運転開始までの初期費用に係る資金調達が新たな課題として顕在化しているところであります。

 そのため、今回の法案では、海底直流送電のような特に重要な送電線については、着工段階からの再エネ賦課金の交付、それから電力広域的運営推進機関による貸付け、これによって必要な資金調達を円滑化する予定であります。加えて、民間資金の活用に向けて、先日修正の上、可決いただいたGX推進法で措置する債務保証などの金融支援の活用も視野に入れて、検討を進める予定であります。

 こうした措置を総合的に講ずることによって、再エネの最大限導入、御指摘のように、私たちもこれを是非進めたいと思っておりますので、そのための必要な送電線の整備をしっかりと進めていきたいと思います。

土田委員 大臣、ありがとうございました。

 今、大臣のコメントの方からもいただいたマスタープランの中で、長期展望においては、この系統整備に係る費用として六兆円から七兆円の投資が必要ということになっております。その六兆円から七兆円の中でも半分弱の大きなウェートを占めるのが、まさに大臣もおっしゃいましたけれども、北海道―東京間の海底直流ケーブルの整備です。

 これは、何で大きなウェートを占めて、かつ、かかる予算というのがかなり、一兆円ぐらい幅がある見立てになっておりますけれども、何でそんなに幅があるしボリュームも大きいのかというところに関して、恐らくこれは、海底を掘ったりだとか、調査したりだとか、深いところを通したりとかというのでお金がかかるし、不透明な部分も大きいんだとは思いますが、一方で、例えば九州地方の系統整備には百億、中部地方三十億というふうに考えると、何かある意味、数字の幅があり過ぎて感覚が狂っちゃうんですけれども、何でこの北海道―東京間のケーブル整備、系統整備、こんなにお金がかかるし、かつ、幅があって不透明な部分が多いのかということを教えてください。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 このマスタープランの費用の試算に当たりましては、陸上の場合と海上直流送電の場合と、大きく環境が違う面がございます。

 陸上の送電線、例えば今委員御指摘がありました九州の地内送電線のようなものは陸上にあるわけでございますが、これにつきましては、これまでの実績も多々ございます。ある程度、引くケーブルの場所、架空線についてはどこでというのが想定されますので、これは、過去、これまでの実績に基づいた、電力広域的運営推進機関が公表しております送変電設備の標準単価というのがございます、これを使ってございます。

 一方で、御指摘の海底直流送電でございますが、これは、今検討しているものを案で申し上げますと、北海道から本州、地点もどこになるかまだ決まってございませんけれども、かなり長距離のものを、かつ、海底ということも想定してございますので、どういうルートを使っていくかということによって、相当必要な費用というものが変わってまいります。その状況に応じて設備構成、ケーブルの種類、敷設の方法があり得る中で、現在、試算においては幅を持ってお示ししているものでございます。

土田委員 ありがとうございます。

 不透明な部分が非常に多くて幅があるんだということだと思います。とはいっても、やはりある程度数字を詰めていかないと、結局、試算の幅よりも例えば五千億円多くなっちゃいましたみたいなことだと、これからの、更に後の系統整備にも非常に支障を来すような結果になってしまうと思いますので、そこの数字の詰めという部分、しっかりとよろしくお願いいたします。

 そして、系統整備するに当たって非常に莫大な資金がかかるというお話も先ほど大臣の答弁の中でいただきましたけれども、再エネ賦課金の中から交付金が出る、いろいろな種類の交付金が出るんだと思います。そして、交付金の中には大きく二つ種類があって、それは、一つが特定系統設置交付金、二つ目が系統設置交付金、これは特定がついているかついていないかなんですが、特定がついている方は、系統を設置する工事が始まってから電気の使用を開始する前までに出る交付金、そして、特定がついていない系統設置交付金の方は、電気の使用が開始してから交付を受ける交付金なんだと思います。

 それで、私が質問したいのが特定系統設置交付金の方でございますけれども、いわゆる電気の使用を開始する前から支給されるということは、再エネ賦課金のどこから財源として持ってくるのか。要は、使用する前の電力に対して利用者はお金を払わないといけないのか。ちょっとその辺の財源の部分、教えてください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、二つ交付金があると。そのうちの特定系統設置交付金でございますけれども、地域間連系線などの電気工作物の整備等に当たりまして、御指摘のとおり、再エネ賦課金を財源とし、その工事着工段階から交付するものとして検討いたしております。

 これは、御指摘のとおり、電気の利用者は、当該設備が運用されて再エネ電気の流通による便益を受ける前に、特定系統設置交付金の財源として再エネ賦課金が徴収されることとなります。

 他方で、この点につきましては、交付金を工事開始日から交付することによりまして、資金調達コスト、金利などですね、これが削減される効果が見込まれます。この全体費用を低減するということによる将来的な国民負担の低減に資するもの、かように考えてございます。

 なお、今般の改正は、再エネ賦課金の交付する期間を着工段階まで拡充する、前倒しするものでございまして、この連系線の整備に伴う再エネ賦課金の負担総額を増やすものではなく、むしろ資金調達コストの部分だけ軽減するというものを目的とするものでございます。

土田委員 ありがとうございます。

 ある意味、将来自分が使用しないかもしれない電気に対して利用者はお金を払わないといけないという要素、部分があるんだと思います。これは、要は、系統整備の事業期間、工事期間というのもある程度の長さ、期間が取られるんでしょうから、ちょっと極端な言い方かもしれないですけれども、自分が死んだ後に使われる電気に対して今お金を払わないといけないみたいなことも生じちゃうんだと思いますので、そこの部分、何で系統整備をしないといけないのかという本当に意義の部分と、予算の、費用の負担の部分、しっかりと国民の皆さんに納得してもらえるように御説明いただければと思います。

 また、先ほど総事業費の振れ幅が大きいという話を申し上げましたけれども、繰り返しになりますけれども、北海道―東京の系統、海底直流送電のケーブル、系統整備というのは、大体、予算としては二・五兆円から三・四兆円というふうに試算されているわけでございます。また、特定系統設置交付金に関しては、ある意味、工事が始まってすぐ支給されるわけですから、総工費が確定していない段階でそもそも交付金として出されるんだと思います。これだけ事業規模が大きいと、先ほど金利分、利息分の支給になるかもしれないというような構想段階の話をいただきましたけれども、ただ、利息であっても、額が額なだけに非常に大きいなというふうに思っています。

 例えば、特定系統設置交付金で多く支給し過ぎたら、後の系統設置交付金で調整するんだと思いますけれども、この海底HVDC直流ケーブルに関して、施工コストの振れ幅が大きい中で、どうやって工事完了前から設置される特定系統設置交付金の金額を計算していくのかというところを教えてください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のような問題点に対応できるように、今回の制度を我々としては工夫をいたしているところでございますが、系統増強を実施する事業者は、広域系統整備計画に基づき、系統増強を行うための整備等計画を作成しまして、経産大臣に届出を行っていただく制度になっております。

 この整備等計画が、電気の安定供給の確保の観点から特に重要な送電線を対象とするものであって、認定の要件を満たす場合は、経産大臣がこれを認定し、特定系統設置交付金の交付を受けることができる、こういう制度になってございます。

 この場合の特定系統設置交付金の交付額でございますけれども、個別の系統ごとに策定して、経産大臣に届けられる整備等計画におきまして、その概略工事費、再エネ寄与率を定めることで算出される制度にしたいと考えてございます。

 工事開始後に御指摘のとおり工事費などのコストの変動が見込まれる場合は、当該系統を整備する事業者は、その計画の変更について経産大臣に届出を行って、これに基づく交付申請を行うこととなっております。

 また、計画自体が認定の要件を満たさなくなった場合には、事業者のアクションを待つことなく、経済産業大臣が事業者に対して計画の変更を指示することもできる制度になってございまして、こういう形で、工事費の変動を生ずる場合には的確に計画変更を行っていき、個別の状況を踏まえてそれを精査することになりますが、交付額の変更も適切に反映されるように、制度をしっかり運用していきたいと考えてございます。

土田委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、質問を何問か飛ばさせていただいて、ケーブルの切断リスクについて質問させていただきます。

 今回お話しさせていただいているHVDCケーブルとはまた別の、光ファイバーの話でございますけれども、今年の二月に、台湾の本島と馬祖島の間をつないでいる海底ケーブルが二本、中国の漁船と貨物船によって切断されたという事案がございました。そして、これはまだ復旧していません。こういうような海底ケーブル切断の、光ファイバーでございますけれども、事例というのは、台湾だけでこの五年間で二十七件あったようでございます。

 光ファイバーの海底ケーブルといっても、光ファイバーケーブルの外に金属などいろいろ巻き付けていて、十トンぐらいの力を加えて引っ張ってもちぎれない、けれども、たまに、いかりであったりだとか漁具の圧力によって切れちゃうこともあるということでございます。

 そこで私が質問したいのは、この海底直流HVDCケーブルの故意であったりだとか偶発による切断リスクというのをどういうふうに考えているのかという部分。

 あともう一つが、切断されたときに、発電地、例えば北海道から東京に送る場合、北海道で再エネ、将来的に物すごい量を発電していて、ケーブルが切れちゃうと、大消費地である東京に送れなくなっちゃうということが生じるんだと思います。その場合に、発電し続けている電力、電気はどうやって消費するのかということを教えてください。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、海底ケーブルは、通信も電気もそうでございますけれども、海底にあるわけでございます。大型船舶のいかりですとか、漁具等による擦り切れですとか、若しくは海底斜面の崩壊等によって損傷するリスクというものは、これははらんでいるのは事実と認識してございます。

 このため、例えば、世界にはたくさんこういう例はございますので、対応の方法としては、大型船舶の航行ルート、漁業の盛んなエリア、急斜面といった地形の回避を行った上での敷設をするということがまず基本でございますし、また、損傷を防ぐために鉄線によって防護を行ったり、海底に埋設してしまうというような対策、こういったことを事前に講ずるというのが基本になるかと思いますし、私ども、検討を具体化するためには、そういう方策をまずは考えていくことになろうかと思っております。

 ただ、万が一のための備えということはしておかなければなりません。そういう意味でいいますと、海底ケーブルの一本が断絶、損傷した場合でも安定供給が維持できるような設備構成とする。すなわち、三本の送電線というものを一つの設備としまして、一本が仮に切れたとしても他の二本でカバーができるというような方式を取るのを基本とすることになろうかと思いますし、これは今後の検討になってくると思います。

 また、全体の潮流のバランスということの御質問がございましたけれども、バランスが失することがないように、他の既存の連系線を活用した送電を含めた、断線、損傷時における安定供給の確保というのも当然のことながら念頭に置きながら、設備構成をしていくことになろうかと思います。

 いずれにいたしましても、委員御指摘のように、安定供給というのが第一でございますので、これが実現するような形での検討を進めていきたいと考えてございます。

土田委員 ありがとうございました。

 まだ質問を何点か残してしまいましたけれども、時間が来ましたので、質問を終わりとさせていただきます。

 以上です。ありがとうございます。

竹内委員長 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌です。よろしくお願いいたします。

 初めに、今回提出されました法律案の意義についてお伺いをしてまいります。

 日本は、二〇三〇年度の温室効果ガスを四六%削減し、二〇五〇年のカーボンニュートラル実現という国際公約を掲げ、気候変動問題に対して国家を挙げて対応する強い決意を表明しております。政府として、GXを通じたエネルギーの安全保障の実現に向けた取組の一つであり、重要な改正であると言えます。

 今回の法改正では、単にエネルギー需給構造を脱炭素型に転換することにとどまらず、脱炭素を契機といたしまして、我が国の経済を再び成長軌道に乗せ、将来の経済成長や雇用、所得の拡大につなげていくことが求められます。化石エネルギー中心の産業構造や社会構造をクリーンエネルギーを中心とした社会に移行をしていきながら、同時に成長型経済構造への移行推進を図っていかなければならず、これには国民や企業の深い理解と大きな協力が必要となります。

 これらを踏まえまして、GX実現のために脱炭素電源の利用促進を図りながら電気の安定供給を確保する制度を整備するこの法案の意義について、西村大臣にお伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 二〇二一年秋からの資源価格高騰であるとか、あるいは昨年二月以降のロシアによるウクライナ侵略、これらによって、我が国を取り巻くエネルギー情勢、これは世界全体でもありますが、エネルギー情勢は一変したところであります。

 そうした中で、世界全体のエネルギー需給構造、今まさに歴史的な転換点にあるということで、脱炭素社会の実現とエネルギー安全保障、この両立という課題解決に向けて、再エネ、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求していくことが重要だというふうに認識をしております。

 こうした認識の下で、GX実行推進担当大臣として、GX実現と電気の安定供給確保を図るために、再エネを最大限導入するとともに、安全確保を大前提とした原子力活用に向けて、御審議いただいておりますGX脱炭素電源法案を提出をしているところでございます。

 その上で、原子力の利活用に当たっては、安全神話に陥った東電福島第一原発の事故の反省と教訓、これをいっときたりとも忘れることなく、いかなる事情よりも安全性を最優先していく、この姿勢に変わりはございません。

 今回の法案では、その事故の反省を踏まえて、憲政史上初めて安全神話という言葉も法案に盛り込んで、安全神話に陥り、事故を防ぐことができなかったことを真摯に反省という趣旨を盛り込んでいるところであります。事故の反省、事故の防止に最善かつ最大の努力をしていく方針を原子力基本法に明記をしているところであります。

 今後、国会での議論を始め様々な場を通じて、こうした考え方もしっかりと御説明しながら、国民の皆様から幅広い御理解がいただけるように、引き続き丁寧に説明を行ってまいりたいというふうに考えております。

中川(宏)委員 大臣、ありがとうございました。

 歴史の転換点と、あとエネルギーの安全保障だというお話でございましたけれども、このエネルギーの安全保障の観点から、エネルギーの総使用量を下げる省エネは、すぐにできる対策の一つであります。この省エネにつきましては、我が国といたしまして伝統的に技術的優位を誇る分野であります。危機に強いエネルギー需給体制の構築やエネルギー消費量の削減につなげる省エネの取組ですが、これは極めて重要であります。

 昨年の経済産業委員会でも議論されまして改正をされました省エネ法が、この四月一日から施行されました。これにより、省エネに加えまして、大規模需要家に対する非化石エネルギーへの転換の措置などが新たに制度化をされました。

 二〇五〇年カーボンニュートラルに向けて、この改正省エネ法による規制と支援策を組み合わせながら、省エネを含めた需要側の取組を推進していくべきと考えますが、この点につきまして御見解をお伺いしたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 足下のエネルギー価格高騰対策と二〇五〇年カーボンニュートラルの実現の両方の観点から、御指摘のとおり、省エネを含めた需要側の取組、大変重要だと考えてございます。

 昨年の通常国会で改正いただきました省エネ法におきましても、大規模需要家に対しまして非化石エネルギー転換に関する定期報告を義務化し、先日、四月一日から施行させていただいております。

 特に、エネルギー多消費である主要五業種につきましては、各業界と綿密な議論を重ねまして、二〇三〇年度の非化石エネルギー転換の野心的な目安を設定したところでございます。

 この目安を基に企業の非化石エネルギー転換の取組を促していきたいと考えてございますが、例えばセメント製造業におきましては、キルンと呼ばれる業種特有の回転窯で使われる燃料の非化石比率を、現状二一%のところを二八%とするという目安を設定してございますが、これは現状の業界各社の上位一、二割の極めて高い水準に相当する野心的なものとなっております。

 また、自動車製造業におきましては、使用電気全体に占める非化石電気の割合を、現状二三%のところを五九%とするという目安を新たに設定してございます。

 加えまして、省エネ法に基づく定期報告情報を開示する仕組み、これも創設したところでございまして、企業の省エネ、非化石エネルギー転換の取組の情報発信を促し、投資を呼び込んでいきたいと考えてございます。

 このような構造転換を行っていく企業の皆様に対しましては、令和四年度第二次補正予算で抜本強化いたしました、個社で最大二十億円まで支援できる省エネ補助金を活用しながら、省エネ、低炭素化に資する設備導入支援を行っていきたいと考えておりまして、この省エネ補助金につきましては、今後三年間で五千億円規模の支援を行っていきたいと考えてございます。

 このように、御指摘のとおり、規制と支援一体型で省エネを含めた需要側の取組を推進していきたい、かように考えてございます。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 野心的な目標というお話がございましたけれども、省エネにつきまして積極的にやっていきながら、GX促進に向けては、既存再エネの最大限の活用をしていくという点も非常に大事になってくるかと思っております。

 今回、既存の太陽光発電の更新や建設を促すために、更新、増設した場合ですが、既設設備相当分の価格を維持しまして、追加投資部分についてのみ最新価格相当を適用するとあります。これまでのルールでは、更新や増設をした場合に、全体として新しい価格、つまりは買取り価格が下がってしまい、事業者が更新や増設をちゅうちょしてしまうケースが見受けられました。

 今回の改正で、事業者が更新や増設をしやすくするための取組について、この点につきましてお伺いしたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今までの制度では、適切な国民負担を実現する観点から、更新、増設に伴い太陽光パネルの出力が一定以上増加する際には、設備全体の買取り価格が当初の認定価格より低い最新価格へ変更されることになるため、事業者にとりまして追加投資を行うインセンティブが限定的であるという課題がございました。

 今回の法案におきましては、引き続き適切な国民負担とのバランスを図るという上ではございますけれども、既設再エネを有効活用するため、地域共生、円滑な廃棄を大前提に、追加投資を行った場合でも、出力増となる部分のみ、その部分のみ最新価格相当の新たな価格が適用される、既存の再エネの容量相当については、これまでどおりの価格が維持されるという措置を講じることとしたいと考えてございます。

 こうした措置によりまして、適切な国民負担を実現しつつ、太陽光パネルの更新、増設投資を促していきたいと考えてございます。

中川(宏)委員 この最新価格におきましては、もっとインセンティブが働くような価格を設定すべきだという意見もある一方で、再エネ賦課金の交付が増えれば、当然、国民負担は増加してまいります。

 日本といたしまして、二〇三〇年に再エネの導入目標は電力供給の三六から三八%です。これが達成されたとして、再エネの買取り総額は幾らになるのかという点、また、政府は再エネの最大限導入と国民負担の抑制の両立を目指すとしておりますが、当然、コストがかかる再エネということは分かっておりますので、国民の皆様にどのぐらいの御負担をお願いすることになるかということを、ロードマップをしっかり示した上で、分かりやすく丁寧に説明を行っていただきたいと思いますが、以上二点につきましてお伺いしたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 再エネ特措法の下で、再エネの導入拡大に伴い、再エネの買取り費用につきましては、二〇二三年度で約四・七兆円を見込んでおります。二〇三〇年度につきましては、第六次エネルギー基本計画におきまして、約五・八から六兆円程度の水準を見込んでいるところでございます。

 一方で、御指摘のとおり、適切な国民負担、大変重要だと考えてございまして、調達価格等算定委員会における御議論も踏まえ、一つには調達価格等の引下げ、それから二つには入札制度の活用等に取り組んできたところでございます。例えば、事業用太陽光の調達価格は、FIT制度開始当初の四十円から足下では十円程度まで、四分の一まで低減してきているところでございます。

 引き続き、国民負担の抑制に取り組むとともに、御指摘のとおり、再エネ賦課金を御負担いただいている電気の需要家の方々の御理解がしっかり得られるように、ホームページを始めとして分かりやすい情報発信に努め、御理解の増進に努めていきたい、かように考えてございます。

中川(宏)委員 よろしくお願いいたします。

 さて、再エネ導入に当たっては、これまでも様々な地域で再エネ設備でのトラブルが報告をされております。盛土の崩落や環境破壊、また景観が損なわれたということもございました。この対応として、認定手続が厳格化されます。また、違反業者には賦課金を留保しまして、違反が解消されなければ支援額の返還命令が措置をされます。不適格業者対策といたしましては必要な措置だと判断できます。

 ここで、災害の危険性に直接影響を及ぼし得るような土地開発に関わる許認可、例えば森林開発許可などについては認定申請前の取得を求める等の対応も政令で措置するとありますけれども、ほかにどのような場合を想定しているのか、また、関係省庁との連携はどのように進めていくのか、お伺いをさせていただきます。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 災害の危険性に直接影響を及ぼし得るような土地開発に関わる法律に基づく許認可につきまして、FIT、FIPの申請前に取得がない場合には認定を行わないこととする、そういう形にしていきたいと考えてございます。

 御指摘の事前取得が必要な許認可としては、例示いただきました森林法における林地開発許可に加えまして、一つ目は宅地造成等規制法、これは五月の法施行以降は盛土規制法となりますが、この法律、それから、砂防法、地すべり等防止法、急傾斜地法のいわゆる砂防三法、これらを想定しているところでございます。

 関係省庁も参画していただいている、あるいは自治体の方々とも意見交換を深めている審議会でこうした点につきましては既に議論を進めてきておりますけれども、今後、法所管の関係省庁などとも一層密に連携いたしまして、省令の整備や制度運用などにつきまして、本年夏頃までに実現できるようスピード感を持って対応していきたい、かように考えてございます。

中川(宏)委員 今お話があったとおり、具体的にこれから進められて、認定手続が厳格化をされていくわけでありますけれども、再エネ施設が適切に設置され運用されていくこと、まずこれは極めて大事なことであります。

 一方で、厳しくなり過ぎて、再エネを進めていくに当たって、参入に支障が出ないように注意することも併せて見ていかなければいけないというふうに思っております。

 再エネの事業者は、国のクリーンエネルギー化の一端を担う大事な事業だということを理解していただき、責任を持ってやっていただくことがこれから非常に求められてくると思います。現状、国として事前の相談体制はあるというふうにお聞きをしておりますけれども、今回の改正で更に相談体制の拡充というものが極めて必要だというふうに思いますけれども、この点につきましてお伺いをさせていただきます。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、省令改正によって森林法等の土地の安全性に関わる許認可の事前取得をFIT、FIPの認定要件とするほか、今回の法案では、住民説明会の開催など、地域の方々への事業内容の事前周知、これをFIT、FIPの認定要件化するということで、事業の初期段階からしっかりと地域と共生した再エネの導入、これに向けた取組を強化していく内容となってございます。

 その際、再エネ事業者が適切な説明を行うことが地域共生の前提でございますけれども、制度の円滑な運用には自治体等との連携も極めて重要だと考えてございまして、現在既に行っております自治体向けの連絡会の有効活用、あるいは、我々で構築しておりますITシステムにおける自治体との情報共有、こうしたことに加えまして、今後、本法案を踏まえた制度等についての情報発信や連携強化を更に的確に行っていきたいと考えてございます。

 加えまして、事業者に対しても、業界団体とも連携しながら様々な形での情報発信に取り組むほか、弊省では地方経済産業局が事業者の方々の相談を受けておりますが、こうした部局の体制の強化も含めて、事業者が相談できる環境整備にも取り組んでいきたいというふうに考えてございます。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 今御答弁のあったとおり、一番大事なことは、地域と共有した中での導入ということが非常に大事でありまして、それには、今もお示しいただきましたが、自治体との連携、情報共有ということでございます。実際に対応していくのは地元の自治体、これが対応していくわけでありまして、より一層の共有に向けての強化を是非お願いしたいというふうに思っております。

 次に、先ほども御質問でございましたけれども、系統整備につきましてお伺いをさせていただきます。

 再エネ導入に資する系統整備のための環境整備でありますけれども、これは極めて大事な事業になるかと思っております。三・一一や北海道でのブラックアウトを経験しておりますけれども、これから先も、首都直下地震ですとか、また東海、東南海地震も想定をされているところであります。これに備えるためにも、急いで行う必要があるかと思っております。

 特に重要な送電線の整備計画、このようにありますけれども、具体的にはどのような整備計画であるか、この点につきましてお示しをいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、再エネの大量導入と電力供給の安定性強化に向けて、地域間の電力融通を円滑化する系統整備、これを加速していきたいと考えてございまして、これに必要な資金環境整備として、特に重要な送電線の整備計画については、経産大臣が認定する制度を新設できればと考えてございます。

 今回の法案における新たな認定制度では、一つには、その設備容量、あるいは二つには、整備に必要な資金等が一定規模以上の送電線を認定することを想定しております。

 認定する送電線につきましては、今後、事業者から具体的な整備計画の認定申請がなされた後、個別に検討を行う必要がございますけれども、特に巨額の資金が必要となる北海道と本州を結ぶ海底直流送電は、候補の一つになるものと考えてございます。

 今後、三月二十九日に策定したマスタープランを踏まえた広域系統整備計画の検討状況なども踏まえながら、事業者からの整備計画の認定申請を受けて、個別に判断していきたいというふうに考えてございます。

中川(宏)委員 再エネの事業者の方にお聞きをしますと、これはある程度しようがないのですけれども、接続検討の申込みから発電を開始するまでにとにかく時間がかかるというふうに言います。特に、接続検討の申込み、系統連系及び電力需給契約の申込み、また、接続契約の御案内と工事費負担金の御請求という流れの中で、所要工期というものがありますが、これは発電設備等の運転に必要な設備の運用開始までに必要な期間ということでありますけれども、これが七年以上もかかるという場合もあるとお聞きをいたしました。これでは地域と共生した再エネ導入が進みづらいのかなというふうに思っております。

 先ほども触れさせていただきましたが、震災や災害を受けまして、お金のかかる系統整備として全国のネットワークの強化を支援することは大事であり、これは大変意味のあることだと思います。一方、再エネの末端の接続の部分の整備にも力を入れるべきであると思いますが、この点につきましてはいかがでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 系統に新規接続を行う際、これまでは、先着優先というルールの下、系統に空き容量がない場合は、系統増強がなされるまで、御指摘のとおり接続ができないということとされてまいりました。

 一方で、系統の増強には一定の費用と工期を要するため、再エネ等を円滑に系統接続するために既存系統を効率的に活用するノンファーム型接続というものにつきまして、二〇二一年一月より基幹となる系統、また、二〇二三年四月より基幹系統より下位のローカル系統でも開始したところでございます。

 その結果、二〇二二年十二月末時点で、約四千八百万キロワットの接続検討、約九百万キロワットの契約申込みが来ている状況でございまして、こうしたノンファーム型接続の促進により、御指摘の系統接続までの費用と工期を短縮できる効果が見込まれております。

 こうした取組をしっかり進めまして、再エネの更なる導入に向けて最大限取り組んでいきたい、かように考えてございます。

中川(宏)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

竹内委員長 次回は、来る七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十三分散会


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