衆議院

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第11号 令和5年4月14日(金曜日)

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令和五年四月十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 井原  巧君 理事 岩田 和親君

   理事 関  芳弘君 理事 細田 健一君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      石井  拓君    石川 昭政君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      大岡 敏孝君    加藤 竜祥君

      上川 陽子君    熊田 裕通君

      小森 卓郎君    國場幸之助君

      佐々木 紀君    塩崎 彰久君

      鈴木 淳司君    土田  慎君

      冨樫 博之君    長坂 康正君

      深澤 陽一君    堀井  学君

      牧島かれん君    松本 洋平君

      宗清 皇一君    山際大志郎君

      山口  晋君    山下 貴司君

      菅  直人君    田嶋  要君

      馬場 雄基君    森田 俊和君

      山岡 達丸君    足立 康史君

      遠藤 良太君    前川 清成君

      中川 宏昌君    鈴木 義弘君

      笠井  亮君

    …………………………………

   参考人

   (公益財団法人原子力安全研究協会理事)      山口  彰君

   参考人

   (国際環境NGO FoEJapan事務局長)   満田 夏花君

   参考人

   (一橋大学名誉教授)

   (武蔵野大学経営学部特任教授)          山内 弘隆君

   参考人

   (龍谷大学政策学部教授) 大島 堅一君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     大岡 敏孝君

  今枝宗一郎君     加藤 竜祥君

  上川 陽子君     深澤 陽一君

  福田 達夫君     塩崎 彰久君

  松本 洋平君     熊田 裕通君

  大島  敦君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     上杉謙太郎君

  加藤 竜祥君     今枝宗一郎君

  熊田 裕通君     松本 洋平君

  塩崎 彰久君     山口  晋君

  深澤 陽一君     上川 陽子君

  森田 俊和君     大島  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     稲田 朋美君

  山口  晋君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、公益財団法人原子力安全研究協会理事山口彰君、国際環境NGO FoEJapan事務局長満田夏花君、一橋大学名誉教授、武蔵野大学経営学部特任教授山内弘隆君、龍谷大学政策学部教授大島堅一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 皆様、おはようございます。ただいま御紹介いただきました原子力安全研究協会の山口でございます。

 本法案につきまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、お手元の資料で、意見のポイントにつきまして、資料冒頭の囲みボックスで整理いたしました。四点ございまして、第一に、本法案は、何よりも安全を優先した原子力利用を求めるものである、安全最優先を明記したもの。それから二点目、脱炭素社会の実現に貢献するべく基本的な施策を述べたものである。そして三点目、持続的なエネルギー確立が実現できること。そして最後に、電気事業の安定性と予見性、これを確保するものであり、これは、ひいてはエネルギー、電力の安定供給につながるものであると考えてございます。

 これから陳述します意見は、資料に示します次の項目、現状認識に基づくものでございます。まず、エネルギー政策とは、安価なエネルギー、電力を、全ての国民、全ての産業界、ここに安定に供給する、これが目標でありまして、また原点でございます。脱炭素社会の実現は、化石燃料中心の産業、社会構造を大転換することであり、それは極めてハードルが高いと言わざるを得ません。また、エネルギー政策喫緊の重要課題、これは、足下のエネルギー危機の克服、それからエネルギー政策の遅滞、こういったものの解消、これが最優先課題である。

 以上の三点の現状認識に基づき、以下、意見を述べさせていただきます。

 まず、お手元の資料の三ページの図を御覧ください。

 こちらに世界の一次エネルギーのシェアを、一八五〇年から二一〇〇年、そこまで二百五十年間の時間軸で描いてございます。出典は、マルケッティという方の一九七七年の有名な論文でございます。彼は、生き物が生存競争で争っていく、生存競争を行う、それと同じ考え方を用いてエネルギーのシェアを考察しました。この図の中で、黒い実線が、木材、石炭、石油、ガス、原子力といったエネルギー源のシェアを示しております。その黒い実線の周辺に細い線が描いてあるのが御覧になれると思います。これは一九七〇年までの実データでありまして、彼のモデルがこの実データをきちんとフォローできている、予測できているということを指摘しているところでございます。

 この図を見ますと、石炭がまきを超えたのは一八八〇年、そして一九三〇年代に最大のシェア七〇%を占めてございます。石油が石炭を超えたのは一九六〇年、そして一九七〇年代に最大四九%のシェアを占めてございます。このように、一九七〇年までは、潤沢で低廉で安定なエネルギー、これを求めて新しいエネルギーが開発されますと、それが主役を取って代わる、そういう構図でございました。

 この図に一九六五年から現在までのデータを私の方で追記してございまして、それが色のついた太い線で描いてあるものでございます。この図を見ますと、一九七〇年代以降、データはモデルの線から乖離してございます。ほとんどのエネルギーが横ばいの傾向になっている。その中で、原子力と再生可能エネルギーがそれぞれ、一九七〇年代、それから二〇〇〇年代から伸びている、活用され始めたということが分かります。こうして、その時代で最も潤沢、低廉、安定なエネルギーを選択するという時代、七〇年以前でございますが、それから、エネルギー源を多様化する、あらゆるエネルギーをうまく組み合わせて使っていく、そういう時代へと転換したのだということでございます。

 もう一点、この図中の右の方に、現在のエネルギーミックスの数字が書いてございます。化石エネルギーが上から石油、石炭、天然ガス、これを合計すると八四%、そして脱炭素エネルギー、水力、再エネ、原子力、これが一六%です。なお、日本もこの世界の合計と同じ八四%、一六%という数字になってございます。

 今般、GX実現に向けて基本方針が決定されたわけですが、この化石エネルギー八四%、脱炭素エネルギー一六%、これは日本も世界も共通なわけですが、それを逆転させるということを目標としてしっかり掲げないといけません。

 では、そのために何が必要でしょうか。GX実現のポイントは、省エネ、再エネ、原子力、この三つです。また、GX実現に取り得る電源のオプション、これは三種類と考えます。まず、再エネと長時間の蓄エネルギー技術の組合せ、そして二番目に火力と炭素回収、貯留技術の組合せ、三番目に原子力、そういうことになります。エネルギー危機の克服とエネルギー政策の遅滞解消のため、あらゆるエネルギーの選択肢を追求するという基本方針、これはぶれてはならないと考えます。

 さて、一ページに戻っていただきまして、次に、原子力基本法についてでございます。

 原子力基本法の公布は一九五五年。その目的は、将来のエネルギー資源の確保であるとされました。基本方針としては、平和利用、自主、民主、公開の原則、安全確保、それが述べてあります。

 今回、原子力基本法の改正で最も重要な点の一つは、基本方針に、原子力の事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力を求めたということ、また、国の責務として、平和利用は安全性の確保を前提とするとしたことであると考えます。

 福島第一原子力発電所の事故を防げなかったことの反省と事故から学んだ教訓を生かして、そして、安全最優先を基本方針に明記し、それを前提として基本的施策を遂行される、そういう内容でございまして、私としては評価してございます。これが、資料冒頭の囲みボックスの一点目、安全最優先というのがポイントであると申し上げた点でございます。

 さて、エネルギー基本政策は、エネルギー政策基本法に基づき、エネルギー需給に関する施策を求めてございます。これが施行されたのは二〇〇二年六月。その目的は、地域及び地球の環境の保全、それから経済社会の持続的発展としてございます。

 この度の原子力基本法改正では、その目的として、エネルギー資源の確保と並び、地球温暖化の防止ということが加えられたわけでございます。また、第二条として、国の責務は、非化石エネルギーの利用促進、エネルギー供給に係る自律性の向上に資するといたしました。

 エネルギー政策基本法と平仄を合わせ、エネルギー資源の確保と脱炭素を原子力基本法の骨格としたわけで、GXの実現、これを牽引する役割を担うというものと期待してございます。資料冒頭のボックスの二点目、これがカーボンニュートラルという点です。

 さて、資料の二ページ目、原子力の持続的活用というところを御覧ください。

 ここ数年、日本の電力需給体制、これが脆弱化してございます。二〇二二年三月には電力需給逼迫警報が出され、この先は計画停電に行かざるを得ない、そういう状況にあるわけでございます。こうした毎年のように経験する電力不足、これは日本が、既に述べましたように、化石エネルギーと脱炭素エネルギーの比率、これは世界平均と同じ八四%が化石エネルギーに依存しているわけでございまして、脱炭素のベースロード電源、二〇二二年のエネルギー白書によりますと、原子力が世界全体では四・三%なわけですが、日本は一・八%という数字でございます。すなわち、この脱炭素電源一六%の中でも原子力の占める割合がこのように低いこと、これが、非化石エネルギー利用促進と自律的なエネルギー需給構造の構築が喫緊の課題であると申し上げる理由でございます。原子力は、他のエネルギー源や技術と相まって、エネルギー政策の自己決定力を高める持続的なエネルギー源と位置づける必要があると考えてございます。

 GXの基本方針では、原子力は、安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて、脱炭素のベースロード電源として重要な役割を担うと位置づけられました。GX脱炭素電源法では、原子力発電に係る高度の技術維持確保、人材育成確保、産業基盤の維持強化、研究開発成果の円滑な実用化、安定な事業環境の整備、そしてバックエンド事業の着実な実施、こういった点が記されてございます。

 エネルギー政策は国家百年の計だと考えてございます。新しいエネルギーが登場して普及するには、五十年、百年という期間がかかります。十年程度以内で結果を出すべき比較的短期的な政策だけでなく、中長期的な展望を見据えなければなりません。単一エネルギーに過度に依存することのリスクを認識して、長期的な視点を忘れないようにしなければなりません。原子力の基本的施策は、発電からバックエンドに至る、いわゆる核燃料サイクルに取り組む重要性、それによって持続的なエネルギーシステムの実現に貢献することを述べてございます。これが、冒頭ボックスの三点目、持続性ある社会ということでございます。

 さて、足下のエネルギー危機、需給逼迫に対処するため、既設の原子力発電所を安全に活用することが不可欠です。既存の軽水炉を六十年間運転するとしても、二〇四〇年からは毎年一ギガワット程度、百万キロワットの発電所一基ずつの割合で設備容量は低減していきます。

 資料四ページ、こちらを御覧ください。

 世界では四百四十基、この資料とちょっと違ってございますが、IAEAのデータベースが一昨日改定されまして、これが現在の数字でございます。そのうち運転中は四百二十三基ということになってございます。それで、営業運転中の四百二十三基と四百四十基の差は、実はサスペンデッドという新しいカテゴリーがつくられてございまして、日本の安全審査中あるいは未申請の原子力発電所がここに分類されました。

 原子力発電所の年齢構成を見ますと、四百四十基のうち五十歳以上は二十七基、四十歳以上は百十四基という実績でございます。下の図は設備容量を合計したものを年齢ごとに整理したものであり、上の図は年齢ごとに設備利用率を描いたものでございます。上の図から、四十年を超えたプラントで、いろいろトラブルが生じて設備利用率が低下するというような傾向は見られません。特定の運転期間を定める合理的な根拠はないというのは、世界的にも共通の技術的な認識でございます。この図はそのことを端的に示していると考えてございます。

 また、この図から、米国の原子力発電所の平均年齢は四十三歳、それに対して日本は三十一歳です。今後、各国で運転経験が蓄積されています、そういうものをしっかり共有して、エビデンスを踏まえて、利用の在り方を今後とも見詰めていくということが大切であると考えます。

 原子炉等規制法では、長期施設管理計画を定め、劣化評価を行うということで、三十年時点から十年以内で厳格に審査を行うということがうたわれてございます。安全確保を前提とするという、これを満足する制度であるというふうに評価してございます。

 先ほど、IAEAデータベースにサスペンデッドというカテゴリーが新設されたということを申し上げました。それほどに、原子力発電所がこれだけ長期間停止しているということは、国際的に見ても例外的な状況にあるわけでございます。電気事業法において、延長する運転期間が二十年を超える場合、条件付で停止期間を考慮する、それを認めるという方針は、規制委員会による劣化の管理がしっかり行われること、事業者の安全確保への取組がちゃんとできること、そして海外の運転実績、こういう点から見ても適切であり、合理的であると考えてございます。

 原子力基本法が定める事業者の責務、安全を不断に見直し、安全向上の体制を強化し、防災の体制を充実強化する、そのためには適切なリソース配分をすることも可能となってくると考えます。したがって、事業予見性を高めるものにつながるわけですし、それがひいては安全の向上にもつながるものだと考えてございます。これが、ボックスにある四点目でございますエネルギー安定供給です。

 以上の意見を述べさせていただきましたが、最後に、脱炭素社会の実現と経済安全保障の両立という大目標を私たちは掲げているわけでございます。エビデンスベースで、今後とも、得られる知見を反映しつつ、原子力の価値を実現することを期待して、意見陳述、終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 次に、満田参考人にお願いいたします。

満田参考人 皆さん、おはようございます。FoEJapanの満田と申します。

 本日は、このような場にお呼びいただきまして、ありがとうございます。

 FoEJapanは、気候変動や森林保全、エネルギー政策などに取り組む国際的な環境NGOです。三・一一の後は、福島原発事故の被害者の支援に取り組んできました。例えば、福島の親子が自然の中で伸び伸びと遊べるような、そういった保養の場を提供するような、福島ぽかぽかプロジェクトというんですが、そういったことに取り組んでまいりました。

 それでは、GX脱炭素電源法案について意見を述べさせていただきます。

 まず申し上げたいのは、福島原発事故は終わっていないということです。事故原因の解明も完全には終わっていません。

 多くの人々がふるさとを失いました。なりわいや人とのつながり、四季折々の自然を分かち合う、そうした喜びを失いました。私の友人、知人、親戚も、断腸の思いで避難を強いられました。今もふるさとに帰れない人が多くいます。原発事故は終わっていないのです。

 原発事故はまた、日本全国の電力供給に影響をもたらしました。皆さんも御記憶のことと思います。当時、街の明かりは消え、計画停電が実施されました。つまり、電力供給の不安定化を招いたということを忘れてはならないと思います。

 原発事故に関する国及び東電の責任は曖昧にされたままです。原子力損害賠償法に基づく賠償措置額、千二百億円ですが、これは据え置かれたままです。賠償、廃炉、除染などの費用は、政府試算で二十一・五兆円にも上っています。東電は賠償を支払い切れないため、国は原子力損害賠償廃炉支援機構をつくり、それを通じて多くの公的資金、私たちの電気料金、そして将来世代からのお金を東電に回す、そういった仕組みをつくりました。万が一、次なる事故が起こったときに、原子力事業者だけでは賠償金を賄えず、国による手厚い支援が行われ、そのツケは再び国民及び将来世代に回されるということが繰り返されます。

 さて、事故当時、福島第一原発一号炉は、運転開始後四十年の高経年化技術評価による検査に合格したばかりでした。高線量が続き、立ち入れない場所が多いので、高経年化というものが事故の進展にどのような影響を与えたのかは今もって不明なままです。最近、ようやくカメラが入って、原子炉を支えるペデスタル部、土台部ですね、ここでコンクリートが溶けてなくなり、鉄骨がむき出しになっていることが分かりました。大変危険な状況だと思います。私たちは、まだ原発事故に対して人知が及ばない部分があることを謙虚に認識すべきだと考えています。

 ここで、是非皆さんにお願いしたいことがあります。国会主催で、福島での公聴会を実施してほしいのです。福島原発事故に対する真摯な反省に立つのであれば、国会主催で、福島で、たくさんの人たちの声、原発事故によってそれまでの生活を失った人たちの声を是非お聞きください。国会主催の公聴会の前例もあると思います。是非御検討いただければと思います。

 第二に指摘したいのが、プロセスに関する問題です。

 GX基本方針については、案が固まってから、年末年始に一か月のパブリックコメントが行われ、三千九百六十六件の意見が寄せられました。その内容について、GX実行会議など公式な場では検討されていません。

 また、今年一月から三月にかけて、全国六か所で経済産業省による説明、意見交換会が開催されました。参加者からは、原発推進政策、とりわけ運転期間の延長に関して、批判や疑問の声が上がりました。参加者からは、出された意見をきちんとGX基本方針に反映してほしいと述べた、そう言った方も多かったんです。しかし、経産省は、ここで出された意見はGX基本方針には反映しませんと言い切りました。このように、国民の声が反映されていないことは大きな問題だと思っています。

 また、国会審議のやり方も、今回のように束ね法案として一括して提案されているのは問題ではないでしょうか。

 原子力基本法のように原子力の根幹に関わる大きな改定や、今までの運転期間の規制の在り方を覆すような多岐にわたる論点がある中、これを束ね法案としてしまっては、丁寧な個別の審議を尽くすことができません。是非、個別の審議を行っていただければと思います。今からでも遅くありません。是非、国民参加の下で、開かれた議論を丁寧に行っていただきたいと思います。

 第三に、原子力基本法の改定について述べたいと思います。

 今回の改定は、国の責務を詳細に書き込みました。国の責務と書いてありますが、内容を見てみると、これは国による原子力事業の支援です。国民の理解の促進、地域振興、人材育成、産業基盤の維持及び事業環境整備などを含んでいます。これは、以下の観点から問題と考えています。

 エネルギーの安定供給やエネルギー部門における脱炭素化は、原子力のみならず総合的に考慮すべきです。現行のエネルギー政策基本法で十分に対応できるのではないでしょうか。

 また、例えば再エネ特措法において、ここまで詳細に国による支援が書かれていません。お手元の資料の二ページ目に、再エネ特措法との比較した表を掲載させていただきました。著しいアンバランスが生じていることはお分かりいただけると思います。原子力のみを特別扱いしているのではないでしょうか。

 本来、原子力事業者が自らの責任で実施すべき内容を、国が肩代わりすることになるのではないでしょうか。結果的に、原子力事業者を過度に保護する内容になっており、市場原理をゆがめ、公平性に欠くと思います。

 また、原発がエネルギー安定供給、自律性の向上に資するかは疑問です。例えば、大規模集中電源である原発の事故やトラブルは、電力供給に広範な影響を与えます。これは、現に福島第一原発事故が示しているとおりです。また、ウラン燃料は一〇〇%輸入に依存しています。つまり、国産エネルギーではありません。国際情勢の不安定化とは無縁ではないのです。

 第四に、原子炉等規制法の運転期間の上限に関する現行規定を削除することの問題点について述べたいと思います。

 二〇一二年当時、運転期間上限に関する定めは、明らかに規制の一環として原子炉等規制法に盛り込まれました。このことは、今国会において岸田首相が答弁しているとおりです。

 二〇一二年六月二十六日付の内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室の資料によれば、原子力安全規制の三本柱として、一、重大事故対策の強化、二、バックフィット制度、三番目として四十年運転規制の導入が挙げられています。この三つは福島原発事故の教訓を踏まえたものです。

 その後、運転期間の上限を撤廃する理由となる新たな事象が生じたわけではありません。すなわち、原子炉等規制法からこれを削除する立法事実はないのです。

 政府は、運転期間の上限は利用側の政策として整理したと説明されています。根拠として、原子力規制委員会の令和二年七月二十九日の文書、運転期間延長認可の審査と長期運転期間中の発電用原子炉施設の経年劣化の関係に関する見解を挙げています。しかし、当該文書の趣旨は、運転期間から長期停止期間を除外することに否定的な見解をまとめたものであり、策定過程において、運転期間の上限の撤廃の可否について、原子力規制委員会の委員の中で議論が行われたものではありません。これは、原子力規制委員会の石渡委員も御指摘なさっていることです。根拠とするには不適切です。

 運転期間の上限に関する規定を原子炉等規制法から電気事業法に移すことに伴い、原発の運転期間の延長をする認可権限は、原子力規制委員会から経済産業大臣に移管されます。認可に当たっての基準も、劣化評価に基づく安全規制から、利用上の観点に移ります。すなわち、電力の安定供給を確保することに資するか、事業者が業務実施体制を有しているかなどです。

 政府は、原子炉等規制法に三十年を超える原発の劣化評価を規定することにより、規制は強化されるとしています。しかし、従来から、原子炉等規制法に基づく規則で、三十年超えの原発に対する十年ごとの劣化評価というのは、高経年化技術評価として行われてきました。今回これを法律に格上げすることになりますが、基本的には従来の制度の延長線上で、新しい制度というわけではありません。つまり、今回の改定は、原子力規制委員会の権限を縮小し、規制を緩和するものとなります。

 第五に、運転停止期間の除外は合理性がありません。

 電気事業法の改正案で、延長申請の際、一、関連法令の制定、変更に対応するため、二、行政処分、三、行政指導、四、裁判所による仮処分命令、五、その他事業者が予見し難い事由によって運転停止を行っていた期間については運転期間に上積みできることとしています。

 運転停止が事業者にとってたとえ予見し難い事由に起因するものであったとしても、当然のことながら経年劣化は進行します。

 また、利用側の観点に立ったとしても、運転延長を認めるか否かの判断基準は、その時点及び将来における電力需給状況であり、過去における運転停止の事情はこれとは関係ありません。上記の停止期間を運転期間に上積みできるという合理的な理由はありません。

 ここに挙げられている運転停止事由については、運転停止を命令するか要請するべき社会的あるいは法令上の要請があり、法律に基づく権限に基づいて、それぞれの行政機関や司法により判断されたものです。運転停止の必要がなかったと経済産業省が認定することは適切ではありません。

 以上の理由により、私は、GX脱炭素電源法案を今国会で承認することは、福島原発事故の教訓をないがしろにし、国民の安全を脅かし、未来世代に大きな負担を負わせると考えています。将来にわたって大きな禍根を残すと言えるでしょう。

 是非、皆さん、慎重な御審議をお願いいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 次に、山内参考人にお願いいたします。

山内参考人 山内でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。日頃からエネルギーあるいはこういった事業環境を研究する者にとって、こういう陳述の機会を与えていただいたことは大変幸せに思っております。

 まず、お手元の資料を御覧いただきたいんですけれども、一ページ目の下の部分、そこにJ・S・ミルの引用を掲載しております。これは一八四八年ですから二百年近く前ですけれども、私、経済学が専門でございまして、その経済学からこういった分野をどう見るかということについて、自分の研究分野といいますか対象を皆さんにお分かりいただくために書いております。

 ミルの「経済学原理」の中の一部に、当時のロンドンのいわゆる公益事業、水道とかあるいはガス事業というのがあったんですけれども、これについての記述がございまして、当時、こういうガスとか水道とかというのはロンドンの市内に数多く存在した。ところが、ミルが言うには、こういったことで数多く存在するよりも一つにまとめた方が効率的じゃないか、こういうようなことを言ったわけであります。まあ、非常に分かりやすい議論ではなくて、これは我々の分野では自然独占、こういうふうな言い方をするわけですけれども、その自然独占ということから公益事業の研究というのは始まっているところがございます。

 そういった前提ですので、一ページめくっていただいて、次のページの下を御覧いただきたいんですけれども、こういった公益事業の自然独占性ということから始まって、二十世紀それから二十一世紀になって大きく事業のやり方を変えてきたというのが、これは世界全体のトレンドということであります。

 我が国におきましては、電力システム改革、あるいは、エネルギーシステムということで、ガスも含んでシステム改革をするということで、そういった自然独占の状況から、競争をここに導入する。逆に、ミルとは反対の方向で、競争を導入して、そこで競争を進めることによって効率化あるいはイノベーション、こういうものが生まれるんだ、こういう議論があって、それが実施されたのが特に二十一世紀になってから、日本の場合ですと、ということだと思います。二〇一四年に電力システム改革が法的には完了した、こういうことになるわけであります。

 それで、今日ここで申し上げたいのは、私の研究分野からいうと、こういったシステム改革というのは、これは間違っていたとは思いませんけれども、一つの転換期を迎えているのではないか、こういうふうなことを皆さんに申し上げたいということであります。

 二枚目の、これはスライドの四、そこのところに電力供給の特性と安定供給というふうに書いてあります。言わずもがなでありますけれども、日本で電力を安定的に供給することの重要性、これは国民的な価値ということだというふうに思っております。この安定性というのは、容量の問題もありますし、それから、国際的なリスク、経済安全保障も含めて、安全を含めて安定供給をしていく、こういう姿勢を考えるということだと思います。

 そこで、二十一世紀になって、システム改革を進めて、競争が進んで、いろいろ効率化が進んだわけではありますけれども、大きなポイントとして、そこにありますように、需要が変動するリスクとか、あるいは供給変動のリスクというものを、マーケットだけでは耐え切れない、こういう状況が生じているのではないかというふうに考えております。

 今回、特に、国際情勢から、ウクライナ問題から世界的エネルギー価格の高騰ということがあり、これによって、昨日も東京電力の料金値上げについて議論があったところでありますけれども、こういった大きな変動が起きてくる、こういうようなことがあるということであります。特に、これに加えて、もちろん、今回の法律の主眼でありますけれども、脱炭素、長期的にこれを進めていかなければならない、こういうようなことからしますと、将来に向かっての不確実性に加えて、マーケットでどういうふうにそれを処理していくか、こういうことが問われているのが現代であるというふうに思っております。

 それで、先ほど申し上げましたように、マーケットだけでは耐え切れないところを、今、少し軌道修正する時期に来ているというのが私の主張でございまして、例えば、具体的な例で挙げた方が分かりやすいと思います、そこに長期脱炭素電源オークションというのがありますけれども、御承知のように、これは、長期的に見て脱炭素しなければいけないということで、その電源の投資を促すような仕組みをつくったということであります。二十年間ぐらい固定費の大宗の部分を何らかの形で償還すること、保障することによって、新しい電源を導入するということであります。

 さっき、マーケットの限界と言いましたけれども、我々、経済の目からすると、マーケットというのは、やはり短期的な視点というのが基本であります。十年先、二十年先、硬い言葉で言うと、異時点間の資源配分効率と書いてありますけれども、要するに、今の時点から見たときと、十年先、二十年先にどうなるべきかということ、これは、政府目標で脱炭素と言ったとしても、それぞれの事業者がどう行動するかという面においてはかなりリスクがあって、なかなかそれを実現することが難しいというのが実態だと思います。要するに、マーケットだけでは二十年先、十年先の資源配分を適正化できない、こういうことであります。

 こういったときに、そこに補整をするという意味で、何らかの形の介入、介入といいますか支援をしていく、こういうようなことの必要性がある、これが長期脱炭素電源オークションという形になっているわけであります。

 ここに競争がないかというと、そんなことはなくて、イン・ザ・マーケット、フォー・ザ・マーケットと書いてありますけれども、コンペティションというのは、まずは参入するときに、オークションですから、それぞれの電源について、オークションで安いものを選ぶ、革新的なものを選ぶ、効果的なものを選ぶ、そういうコンペティションがある。それから、脱炭素の場合には、作ったところで、これはまた卸売市場にその電源を出していく、こういうことでありますから、そこでもまた競争がある。こういうことでありますので、いろいろな意味で競争は使うんですけれども、リスクの部分を公的な負担として取ってあげる、こんなようなことが重要ではないかなというふうに思っています。

 そこで、もう一つ、変動に対する対応ということでいうと、まさに、我々が求めている再生可能エネルギーの変動性、これについてどう対応していくのかという問題があります。

 これには幾つかの手法があって、それで対応していくわけですけれども、それはもう皆さん御承知のとおりでありますけれども、一つは、ストレージでためておいて、いつでも使えるようにする、こういうやり方。もう一つは、広域的に運用することによって、それによって変動リスクを除去する、こういうやり方。それからもう一つは、もちろん、需要側をコントロールすること、デマンドレスポンスとかいろいろなやり方、これによってこれを制御するというやり方があるわけであります。

 そのために、今回の法律で書かれた、次のページをお願いしますけれども、ここから少し法律の内容について具体的にお話ししたいと思いますけれども、系統整備について、これを進めましょうということ。マスタープランを作って、それに従って、具体的にやるのは電気事業者さんあるいはそれに関係する事業者さんということになるわけですけれども、系統整備を進めるということが提案されているわけであります。

 私は、これは非常にすばらしいことだというふうに思っております。簡単に言ってしまうと、道路を造るということに近いわけでありまして、道路を造っていろいろなところの流通を促進する、それによって経済全体を浮揚する、こういうようなことが行われるということであります。

 それで、実は私は、PFIとかPPPという分野の仕事を随分実際に今行わせていただいているんですけれども、電気の道路をどう整備するかというときに、官民協調型、パブリック・プライベート・パートナーシップ、こういうものを使ってそれを整備したらいいんじゃないかということを考えておりましたところ、今回の法案で実現されているのがそういった内容になるというふうに思っております。

 六ページのスライドは、これはお役所の方が作られた、今回の再エネ導入の環境整備ということで、特に連系線とか系統を整備するときに、かなり大きなやはり投資になる。

 次のページを開いていただくと、マスタープランが下の方にありますけれども、例えば、これは今まであったような系統の問題もあるし、それから連系線の問題もあるんですけれども、大規模に、例えば北海道の再生可能を東京に持ってくるというときに、ここはよく議論されているように、海底に直流送電線を引いて、それで持ってくるというような提案がある。これが一兆、二兆というようなことで言われるわけでありますけれども、民間企業で一兆、二兆というのは、これは大変な投資でありまして、そういったところのリスクを取ってやる、これによって道路を造ろうというのが、ここで言うPPP的な発想に基づくインフラ整備だというふうに思っております。

 それで、そこには、財源的に言うと、先にある程度一定の、事業期間中にも、建設工事の段階にもお金を交付する、あるいは貸し付ける、こういう形で資金を提供してあげて、それで、運用になった、供用になった後はそれを料金で回収していく、こういうシステムだというふうに思っています。

 それで、次のページ、ちょっと御覧になったかもしれませんけれども、スライドの七というのは、実はこれは、私、二十年ぐらい前に教科書に書いたものなんです。

 昔、この当時はまだ道路公団というのがございまして、道路公団が有料道路を整備する、そういうとき、どうしたかというと、そこに書いてありますように、Aの部分、これは建設費、これに相当するものを、借入れもあるんですけれども、基本的に政府のお金を入れて、それでその建設を行う。その後、収入が入ってくる、それから維持管理費もありますけれども。

 要するに、AとCというところを、長期にわたって、最初の基本ですと、三十年間の償還期間、こういう形でBの収入と合わせる、こういうことをしてきた。基本的にはこれと同じような仕組みで送電線を整備したらどうかということでありまして、その意味では、こういったインフラ整備の官民協調型、これが望ましいのではないかということであります。

 五ページにありますように、さっき見ていただきましたけれども、いろいろな系統整備の提案があります。これは、マスタープランをまず作りましょうということであります。マスタープランを作る重要性というのは、ある程度将来を見通して、こうなるということを示すことによって、電源の立地の促進とか開発の促進、これが成るわけで、マスタープランを作るということです。

 ただ、やみくもに造ると国民負担だけが増える、こういうことになるわけでありますので、レジュメの方にありますけれども、BバイCとか費用対効果、これをきちっと見定めながらこれを進めていくということが必要ではないかなというふうに思っております。

 それから、今回の法律で太陽光パネルの更新とか増設に対して支援をするということでありまして、ある意味では、現状で認定を受けて、それで事業をしていくところ、それが少し毀損したとか、一部ですね、それから、更にそれに増設するということもあり得るわけでありますけれども、こういったものというのは非常に重要なこれからの再生可能エネルギーの供給源になろうかというふうに思っています。

 そのために、今回、その部分を認めようということでありますが、注意すべきは、新しい増えた部分の買取り価格は、買取りとか、あるいはFIPでもそうですけれども、支援部分というのは現在のシステムのやり方。ですから、例えば、昔、一番古いのは四十円でやっていましたけれども、四十円、三十円と下がっていって、今支援の価格は随分下がりましたけれども、増設部分というのはその安い支援のやり方でありますので、こういった増設というのは、非常に安い価格で再生可能エネルギーを増やすということであります。

 昨今、さっきもちょっと言いましたけれども、御承知のとおりでありまして、エネルギー価格の高騰を受けて、電力の発電単価というのが上がって、それで、今回、七社が値上げ申請しているわけですけれども、そういうふうに変動していく高い価格と比べると、再生可能エネルギーは、確かに変動もあって、それから利用率も一〇〇%というわけにはいかないんですけれども、ただ、かなり競争的な、十分匹敵し得るような価格で電気が提供できるようになってきたということでありますので、これを生かさない手はないというふうに思うわけであります。

 ちょっと余談になりますけれども、御承知のように、今、日本の最大の期待といいますか、洋上風力というのがございますけれども、洋上風力の今第二ラウンドを、公募をして第二ラウンドをやっています。第一ラウンドで商社が中心になって提案した案件というのは、今の卸売価格よりも全く安い価格の電力の価格で発電する、こういうことになっているわけであります。

 それから、ちょっと時間があれですので少し簡単にいきますけれども、次に、事業規律の問題というのがある。

 これは、私も実は、調達価格等算定委員会というのをお手伝いしていた時期もございます。今は違いますけれども。実際に再エネを入れていくと、いろいろな不具合とか地域、周辺との摩擦、あつれきというのがあるわけでありまして、それについてはきちっと対応しよう、こういうことでありまして、ある意味ではクオリティーをちゃんと確保した上で量を増やしていく、このために必要だということで、十ページのところに少しそれについて書いてあるところでございます。

 さて、時間でございますので、最終的に私の結論的なことを申し上げると、私の立場としては、やはりこういった再生可能エネルギー、これを大量に日本に導入する、それが、第六次エネルギー基本計画でもありますように、三六から三八ぐらいまで非化石を増やそうと言っていることであるとすれば、これをどう増やしていくかというところが持続的な脱炭素戦略ということになると思います。

 それで、これは声を大にして言いたいんですけれども、これはエネルギー業界だけでやっていても恐らく達成できないんですね。いろいろな分野とカップリングをしてそれを達成するということ、政府としてはそういうことを主導していっていただきたいというのが、まず一つ私が申し上げたいこと。

 もう一つは、国を見ていると、実は私は財政制度等審議会の、国有財産というのをいろいろ議論する場にいるんですけれども、例えば行政財産で目的外使用みたいなものというのは極めて厳しかったんですけれども、だんだんと規制が緩んで、あるいは、もっと国有財産を利用しよう、こういうような立場の今議論をしていますけれども、でも、こういった脱炭素について、それをどう利用するかなんということについては、まだまだ開発の余地があるといいますか、議論の余地がある。ここは、国全体でこういう脱炭素を進めるというのであれば、そういった財産を使っていくというのが一つ重要なことだと思っています。

 皆さんに参考資料としておつけしたのは、成田空港。成田空港は、実は私、成田の出身でございまして、それでこれに非常に関心を持ってやっておりまして。

 成田空港というのは、御承知のとおり、いろいろ問題もある、騒音の問題もあるわけですけれども、非常に広大な土地をお持ちでいらっしゃるということでありまして、そこに新しい電力会社をつくって、基本的には、太陽光でありますけれども、将来的には百八十メガぐらいの発電所を造って、成田空港の電気をそれで賄おうと。

 それだけではなくて、恐らくこれは余っちゃうので、一つは、それを使って、今話題になっているSAFなどございますけれども、航空機に対する脱炭素燃料、これを作る。水素を作ってそれに持っていくという手もあるし、それからもう一つ、地元としては非常に重要だと思っていますのは、実は成田というのは地域電力会社というのを周辺市町でつくっているんですけれども、そこと連携してこの電気を地域に流す、こういうようなこともあるわけであります。

 それで、百八十メガというと十八万キロワットでありまして、本当に小さい火力発電所ぐらいのものであります。もちろん、設備利用率が違いますから、それを全部、常時発電するというわけじゃないんだけれども、非常に重要な電源になる。こういう施設、要するに、国の資産を使いながら長期的な脱炭素の電源を入れていくという、まだまだ余地があるというふうに思っていまして、これは国全体の対応としてそれをお願いしたい。それこそ本当にGXの真骨頂ではないかなというふうに思うわけであります。

 そのほかにも、ちょっと書いてありますけれども、例えば鉄道を使うとかいうこともそうですし、それから、こういう運輸分野だけではなくて営農の発電というのもあるわけでありまして、こういった、要するに範囲の経済とか書いてありますけれども、いろいろなことを組み合わせながら脱炭素を進めていく、この姿勢が非常に重要ではないかなというふうに思っております。

 ただ、このときに重要なのは、最初に申し上げたように、やはり電気というのは、全体をコントロールする、そういった、すり合わせという言葉を書きましたけれども、個別の企業が提供するものをちゃんと効率的にすり合わせて、そして安定的に供給する、これが大事でありまして、その意味では、その点での公的主体のイニシアティブ、そういうものが必要だというふうに思っております。

 そういった観点からすると、今回の法案というのは、再エネ関係のところでいうと非常に重要な法案であるというふうに考える、これを私の結論として、陳述を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 次に、大島参考人にお願いいたします。

大島参考人 おはようございます。龍谷大学の大島と申します。

 私は、環境経済学を専門にしておりまして、大学院時代から、気候変動問題、原子力問題、また再生可能エネルギーの政策について研究してまいりました。

 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、GX脱炭素電源法に関する御意見を申し上げます。

 お手元の資料に従って申し上げたいというふうに思います。

 二ページ目を御覧ください。

 GX脱炭素電源法は、GX推進法と一体の関係にあると理解します。今回御意見を申し上げますGX脱炭素電源法は、いわゆる束ね法案として政府より提出されました。大変重要な法律が五つ組み合わされたものとなっております。それぞれが重大な論点を含んでいます。内容は極めて複雑で、今ほかの参考人の方からも御指摘があったように、再エネ特措法なども含まれています。こういったものを、束ね法案という形では十分な審議が尽くせないというふうに考えておりまして、非常に残念に思っております。また、広範な影響を及ぼすにもかかわらず、国民理解も進みにくいというふうに考えております。まずは、このような束ね法案とするのは大変不適切であったと言わざるを得ません。

 再エネ特措法に関して、再エネ事案に関しては、例えば長崎県の五島列島の宇久島で、いまだに一キロワットアワー当たり四十円で買い取る案件が残っておりまして、四百八十メガワット、四十八万キロワットがこれから建設されるというようなことがあります。これは、電気料金の高騰が問題になる中で、今これをやるのかというような事案が残っているという問題もあります。

 ですが、今回、束ね法案ということなので、余りそのことについてはお話しできません。したがって、特に原子力についての論点についてお話ししたいと思います。

 三ページ目を御覧ください。

 今般の法案は、気候変動対策、電気料金高騰、電力需給逼迫が背景となっております。では、これらが現在の原子力の状況で解決できるのかということが問題になります。

 四ページ目を御覧ください。

 政府は、二〇三〇年度に二〇一三年比四六%排出削減という目標を掲げています。ところが、これは現段階で、恐らく達成できないというふうに考えます。

 第六次エネルギー基本計画には、原子力を二〇から二二%にするという目標が含まれています。

 今年三月に、電力広域的運営推進機関、OCCTOが電力供給計画の取りまとめを発表いたしました。これによると、二〇二二年度の場合では、石炭三一%、LNG三六%、石油四%、原子力六%、再エネ二二%でした。これに対し、二〇三二年度の計画ですが、石炭三一%、LNG二九%、二〇二二年度のものとほぼ同じになります。原子力は五%にとどまります。再エネは三〇%に拡大します。原子力は目標に到達できない、大幅に下回るという見込みです。

 これからすれば、原子力はまず可能性に低く、これにかけるのは危険です。むしろ、世界的にも需要が大きい省エネ、またビジネス界からも期待が大きい再エネに政府は集中的に取り組むべきだというふうに考えます。

 次に、五ページ目を申し上げます。

 原子力とCO2排出削減については、国際的にも注目される研究領域です。イギリスのサセックス大学のソバクール氏は国際科学雑誌のネイチャーエナジーに、原発と再エネ、CO2排出削減の関係について論文を発表しております。これによると、これは大ざっぱに申し上げますが、原子力が増えてもCO2排出削減が国レベルではもたらされなかったということが分かっております。一方、再エネを増やした場合はCO2排出削減がもたらされました。また、再エネと原子力にはトレードオフの関係、二律背反の関係があって、原子力発電を増やすと再エネが伸びにくい傾向があるということも分かっています。

 したがって、CO2排出削減のためには、原子力も再エネも両方やるということは誤りです。再エネを増加させることこそがCO2排出削減に直結します。

 次に、六ページ目を御覧ください。

 日本の原子力発電の現状を改めて確認したいと思います。福島原発事故以降、原子力発電は大きく衰退しました。二〇二〇年度の割合は約四%にすぎません。もはや原子力は主力電源でもベースロード電源でもありません。

 次に、七ページ目を御覧ください。

 これは今後も続くと思われます。この図は私が作りましたが、原子力発電の設備容量をグラフにしたものです。縦軸に原子力発電の設備容量、横軸に年を表しています。仮に二〇三〇年度に原子力の割合を二〇から二二%にしようとすると、このグラフにありますように、大ざっぱに言うと三千万キロワット程度の原発が必要です。

 ところが、1の稼働原発を見ていただくと分かりますように、現在稼働している原発は約一千万キロワット程度しかありません。今後、2、3にあるように、運転を四十年、六十年と考えた場合、いずれ寿命に達し、次々に廃炉になっていきます。これは、どのような原発であっても必ず寿命が来ます。それに伴い、4、5のように、原発の容量は次第に減っていきます。運転延長をしたとしても、結局は同じ運命をたどります。これに加えて、実際には規制基準適合性の審査に申請していない原発が多数あります。そのため、申請した原発は現在三千万キロワットもありません。

 したがって、どんなにうまくいったとしても二〇三〇年度に原発比率二〇から二二%の目標を到達するということはありません。まさに、原発は衰退しています。その衰退に依存すれば、国家にとって重要な温暖化対策目標を達成できなくなってしまいます。

 八ページ、九ページを御覧ください。

 これは国の原子力小委員会に昨年資源エネルギー庁が示した資料の一部です。厳しい現実が具体的に示されています。これを見ますと、国内プロジェクトは中断、輸出案件は全て失敗、サプライチェーンは存続危機、さらに、大手企業が原子力事業から撤退、中核サプライヤーは次々に廃業しています。

 一方で、ここではお示ししませんが、核燃料サイクルも破綻しています。

 これらの事実に鑑みれば、原子力発電事業は衰退産業だと言えます。今後は、福島原発事故の後始末、通常炉の廃炉、放射性廃棄物の処分、また、福島原発事故から発生する膨大な放射性廃棄物、これに対して非常に長い期間、後始末事業を続けていくことが必要です。これが原子力事業の中心的な部分になります。

 次に、十ページ目を御覧ください。

 電力価格高騰の問題に移ります。電力価格の高騰は、原発とは直接の関係を持ちません。

 ちょっと急がせていただきます。済みません。

 十一ページ目ですけれども、福島原発事故後の原発に関連するコストについて見てみます。

 電力各社の原子力発電費、国費投入額、事故対策費用で、合計およそ三十三兆円が原子力に投じられてきました。あるいは、今後確実に投じられる費用も含めて三十三兆円というふうになっております。三十三兆円を一・二億人の人口で割りますと、一人当たり二十七万円、四人家族で百万円を超えています。

 これらは、主に電気料金を通じて国民負担になっています。まさに、原子力発電は電気料金の底上げ要因になっています。別の言葉で言えば、原子力は国民に経済的恩恵をもたらしているのではありません、コスト負担をもたらしているのです。

 十二ページ目を御覧ください。

 昨年の電力需給逼迫も、実は原発とは基本的に関係ありません。このときの逼迫は、十年に一度の希頻度現象が、電力施設がメンテナンスする時期に重ねて起こったということによって発生しました。原発が動いていても同じことが起こっていたと言えます。また、今冬は対策が取られていましたので、特段電力逼迫は起きませんでした。これも原発とは直接の関係がありません。

 以上の観点から、改正案について御意見を申し上げます。

 十三ページ目を御覧ください。

 原子力基本法改正案についてです。今回、大幅な変更が含まれています。書換えと言ってもいいかもしれません。

 十四ページ目です。

 まず、目的です。温暖化防止が目的に位置づけられたため、原子力がいわゆる脱炭素電源として今後用いられる可能性があります。効果がほとんど見込めない原子力を温暖化対策に含める必要は特にありません。むしろ、そのことが、先ほど申しましたように、必要な再エネ拡大を妨げる要因にすらなります。

 十五ページ目を御覧ください。

 基本方針についてです。ここでは、福島原発事故の教訓が踏まえられていません。各種の裁判で被害者側、被害を受けた人たちが提起してきた、国と事業者の福島原発事故発生責任が書かれていません。これを明記すべきです。

 十六ページ目です。

 法案では、国の責務が新設されています。全体として見れば、原子力発電促進政策を講じること、これを専ら国の責務にしています。

 十七ページ目を御覧ください。

 福島原発事故が実際に起きました。福島原発事故を踏まえれば、事故が発生したときの国や事業者の責任はどうなるのか、どう責任を取るのか。これについては、法案では全く書かれておりません。安全確保が前提と書かれていますが、事故が発生したときの国、事業者の責任が書かれていない、これは大変な問題です。これでは、対策をすれば大丈夫なのだということの安全神話の上書き、安全神話の再来と言わねばなりません。

 十八ページ目を御覧ください。

 国の講じる施策に関する部分です。国が講じる施策が非常に詳しく具体的に書かれています。これが特徴です。専ら開発に力点が置かれている、これでは原子力基本法とは呼べません。

 十九ページ目を御覧ください。

 開発法としての性格が最も表れているのが、原子力基本法第二条の三の三の改正です。ここに書かれているのが条文です。ここでは、電気事業に係る制度の抜本的改革が実施された状況においても原子力事業を安定的に行うことができるよう、国が事業環境整備をすると書かれています。

 この事業環境整備という言葉は、私、原子力政策をずっと研究しておりますが、これまで原子力発電の国民的な追加的コストが発生した場合に、追加的な国民負担制度をつくる、このときに使われる、都合よく経済産業省が使ってきた政策用語です。このような政策用語は原子力基本法にふさわしくありません。

 二十ページ目を御覧ください。

 次は、原発運転延長に関わる電気事業法改正案について述べます。

 第一の問題は、安全規制の観点から定められた運転期間に関する権限を経済産業省に移すことです。これは、新たな形で規制のとりこをつくり出すことにつながります。第二の問題点は、バックフィット義務履行のための停止期間や行政指導による自主的な停止期間、仮処分などの司法判断があったときの停止期間、そのほか予見し難い事由による停止期間など、ありとあらゆる非常に幅広い理由で停止期間を運転期間から除外するということになります。

 二十一ページ目を御覧ください。

 バックフィット義務履行のための停止期間を、一律、運転期間から除外する合理的な理由はありません。これは、法律に従う、義務だからです。

 二十二ページ目です。

 仮処分についても書かれています。仮処分というものは、行政規制によるものではなくて、私人間の問題解決のために裁判所が判断したものです。これを、幾ら仮処分が取り消されたからといって、行政側が勝手に、必要がなかったとの理由で運転期間から除外することはあり得ません。これは、裁判官の独立を定めた憲法第七十六条に抵触する可能性すらあります。大変問題な条項だと思います。

 二十三ページ目です。

 行政指導による停止期間についても書かれています。これも、行政指導に従うか従わないかというのは事業者の自主的な判断によります。当然ながら、自主的に停止した以上、自主的停止期間を運転期間から除外することに根拠はありません。

 二十四ページ目、申し上げます。

 まとめさせていただきます。以上、るる申し上げましたように、原発は、危険なだけでなく、温暖化対策として効果はほとんどなく、コストも高く、時間的に間に合いません。仮にGX脱炭素電源法が成立すれば、原子力法体系は、原子力開発推進法ないしは衰退する原子力を救済する法律に変貌することになります。

 具体的な将来は、次のようになると考えます。

 第一に、国として、原子力から撤退できなくなります。その結果、原子力発電のための国民負担が一層増加することになります。これによって、原子力事業者には深刻なモラルハザードが生じます。

 第二に、原子力事業者、産業が法律上特別視され、優遇され続けます。裏を返せば、原子力事業者以外の事業者との間で著しい不公平が発生します。これは電力自由化が進んでも起きます。そのように書かれています。

 第三に、原子力発電に関する問題が深刻化し、ますます解決困難になります。利用側から運転期間が定められるようになるため、安全性軽視が制度化されてしまいます。また、破綻した核燃料サイクルが放置され、国民負担が拡大していきます。放射性廃棄物処分に関連する地域では、要らぬ対立を引き起こすことになります。

 今、原子力発電について、このような法律を作ると、建設二十年、運転が四十年から六十年、廃炉に二十年から三十年、およそ百二十年の間、また原子力発電を新設するようなことにつながります。

 以上、御意見を申し上げましたが、このような機会をいただきまして、本当に心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)

竹内委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。國場幸之助君。

國場委員 自由民主党の國場幸之助です。

 本日は、貴重な質疑の機会をありがとうございます。

 参考人の先生方には、それぞれのお立場から大変高い見識を御披露いただきまして、本当にありがとうございます。

 また、質問の機会をいただきました理事の先生方にも感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 まず、山口彰参考人にお尋ねをしたいと思います。

 我が国は、エネルギーの自給率が一一%と極めて低く、化石燃料のほぼ全てを海外から輸入しているという現状を踏まえた上で、安定供給とカーボンニュートラルの実現と経済成長を追求していかなければなりません。

 山口先生が御指摘のように、エネルギー政策は国家百年の大計であり、短期、中期、長期の視点と、一つのエネルギーに過度に依存せず、スリーEプラスSを追求するのが基本だと思います。この視点からも、何よりも安全性に最大限配慮した原子力をいかに活用するのかは、国家的な課題でもあります。

 今回のGX脱炭素電源法案の最大のポイントの一つは、原子力規制委員会による安全性の確認を大前提として、原発の運転期間の在り方を整理している点でございます。

 そこで、問題の核心は、運転期間制度を見直しても安全性は必ず優先されるという担保をどのように確保するのかという点を、国民へ分かりやすい説明責任を果たしていくことだと思います。

 海外の事例も踏まえながら、山口先生の御見解をお願いしたいと思います。特に、運転停止期間も含め、経年劣化と安全性を把握し対処する際のポイント、本質とは何なのかという点についても御説明をお願いしたいと思います。

山口参考人 山口でございます。お答えしたいと思います。

 まず、運転期間延長に対して、どうやって安全が担保されるかということでございます。

 安全の確保につきましては、原子力規制委員会、ここがしっかり責任を持ってやっていただくこと。

 それで、今回の法律の中でもしっかり書き込まれたことは、長期施設管理計画、これをちゃんと提出しなさいと。しかも、長期施設管理計画の中に、劣化の評価の方法、劣化の評価の結果、それから劣化の管理、これをしっかり書き込みなさいということが書かれました。これは、三十年の運転のときから十年以内で出していくわけですから、その点で、きちんと劣化の評価それから劣化の管理が行われるということが法律で書き込まれたということは、大変重要なポイントだと思います。

 もう一点、原子力事業者の責任、責務というものも書かれました。その中で、安全確保に関してしっかり取り組む、その体制を整備、強化する、そういうことが書き込まれました。ですから、事業者におきましても、そういったことができない限り、この運転期間延長の申請というのはやってはならないということになってございます。

 ですから、そういう観点で、もちろん技術的には一方で見ていく、あるいは一方で、この法律として制度的に安全を担保するということが明確化されたものだというふうに理解してございます。

 それから、二点目で、少し技術的なお話かと思うんですが、今の状況もそうなんですけれども、海外といろいろ国際会議の場等で議論しておりまして、四十年あるいは長期運転をやったときの問題としては、まず、原子炉容器の中性子照射脆化、格納容器、コンクリート、それから電気、計装品、そういう幾つかの注目すべきところが挙げられてございます。

 アメリカは既に四十年を超えて運転している発電所が幾つもありまして、そういうところが国際会議の場で運転経験を出しております。それで、具体的には、取り替えないといけないというようなものは、ダクトのようなもの、それから埋設ケーブルの埋設管のようなもの、そういうものだという運転経験が蓄積されてございます。

 そういった国際的な長期運転に伴う安全評価の方法、あるいは着目するべき設備、システム、それから、蓄積されていくそういう劣化の経験、更に加えれば、我が国でもそうなんですが、取り替えられる機器は取り替えることができるという意味で、例えば、よく美浜の三号機の運転期間延長で出されますけれども、原子炉容器のようなものを除いては、多くの設備が取り替えられているという状況でございます。ですから、技術的観点からおきましても、しっかりリスク評価、安全管理ができているものというふうに解釈してございます。

 私からは以上になります。

國場委員 ありがとうございます。

 山口先生に改めてまた確認をしたいんですけれども、運転開始三十年を超えて運転する際、十年以内ごとに、高経化の技術評価と劣化状況や劣化予測に関する詳細な記載を求めるまさに長期施設管理計画、先生の今の御答弁にもありましたけれども、その策定というものが今回の一つの特色だと思います。

 そしてまた、それを事業者により作成をして提出するということになっていると思うんですが、その際の安全確保の留意点について懸念する声があるのも事実でございますので、その点についてどのようにお考えになるのかというのが一点目。

 また、二つ目に、今後、規制委員会が現行制度に比べて高い頻度で厳正に審査を行いますが、この審査を行う体制というものは、また審査の方法というものは、現状でよいのか、何か変化点があるのか、その点についての御見解をお願いします。

山口参考人 山口でございます。お答えしたいと思います。

 事業者が長期施設管理計画を出すということに対しての、懸念する点ということであったと思います。

 私の考えますところは、今日の資料でも御説明いたしましたけれども、まだ、一番運転期間の長い原子炉では五十余年だったと思います。すなわち、これは何を意味しているかといいますと、原子力発電所を利用してから、今の第二世代と呼ばれる原子力発電所が主流なんですけれども、五十年余りの運転経験を持っている、すなわち、六十年から先の領域というものは現実には明確には言えない、そういう状況にございます。

 ですから、今の事業者が安全確保のためのいろいろな取組を行うに当たって気になる点といいますとすれば、今後、蓄積される運転経験をいかにきちんと海外のプラントと共有して、それをフィードバックしていけるか。ですから、必ずしも、六十年の時点で、今どこを注目すべきかということを断定的に言うのは適切ではないと思います。むしろ、これからの国内外の経験をしっかり見て反映していく、その仕組みをきちんと取り込むということが大事だと思ってございます。

 それから、二点目で、審査について御質問があったかと思います。

 現実に今、六十年、あるいはそれに予見できない運転停止期間をプラスするというところが審議されていて、じゃ、そのときにどういう具体的な形で審議をするのかという点。これは、先ほど申し上げましたのと同じ理由で、今、規制庁、規制委員会が審議中、議論中であると認識してございます。まさにそういう状況で、是非、規制委員会は、国際的な規制情報交換会議というところにも定期的に出席してございますし、そういうところの場で経験を共有する。

 申し上げましたように、日本は平均年齢三十一歳に対して米国四十三歳ということで、多くの経験が蓄積されるはずですので、それを審査の中にしっかり生かしつつ、今後、六十年運転が、四十年、今、日本は四十数年のところなんですが、それがもう少し時間がたったときにしっかりそういうものが反映できるような規定、それから内規、あるいはルール、そういったものを議論して作っていく、そういうような審議する場というのは今後必要であろうかと思ってございます。

 以上になります。

國場委員 ありがとうございました。

 続きまして、山内弘隆先生にお尋ねをしたいと思います。

 山内先生は、再エネ系統整備の必要性を強調されておりました。今回、第六次基本計画の中でも、二〇三〇年の再生可能エネルギーの割合を三六%から三八%としておりますが、そのためには、再エネ大量導入とレジリエンスの強化のために系統整備が極めて重要でございます。

 広域連系系統のマスタープランの実現、風力発電の適地である北海道からの海底直流送電の整備には、どのような課題があり、具体的に加速する取組の際の留意点をお聞きしたいのが一点目の質問であります。

 もう一つは、私は沖縄県の出身なんですが、沖縄や離島は、今回の広域連系系統のマスタープランに位置づけられておりません。しかし、二月十日に閣議決定されたGX基本方針では、「電源や系統規模等の制約を有する離島等の地域の実情を踏まえつつ、必要な取組を推進していく。」と記載されております。海洋国家日本には、多くの有人離島があります。離島のGX推進に具体的にどのような取組が必要とお考えでしょうか。教えてください。

山内参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、大規模な系統整備のポイントですけれども、特に、委員御指摘のような海底直流送電線ということになりますと、やはり海底を使うということの権利関係とか調整問題、これが第一の問題でありますけれども、それについて合意を真摯に推し進めるということだというふうに思います。

 それから、事業環境という視点については、私申し上げましたように、いかにリスクを軽減させて、そして長期的に安定的にこれを使わせるような仕組みをつくるかということでありまして、その意味で、繰り返しになりますが、今回、公的な、公的というのはOCCTOの方からのお金ですけれども、これをある程度充てながら進めるということがかなり効果的ではないかなというふうに思います。

 更に申し上げると、やはりこれは誰がどういうふうな形でやるかということでございまして、一つは、既存の事業者さんは送配電会社という形で系統をお持ちなわけですね。それと、やはりコーディネートをうまくしなければいけないという面があって、そういったところが主体なのかなとも思いますし、さらには、私、個人的な意見ですけれども、やはりこういったところに新しい技術とか、革新的な事業手法とか、こういったものを持ち込めるような主体というものも、何らかの形で参画していくとか、そういうことが重要ではないかなというふうに思っております。

 それから、御質問の二点目の、離島のGX問題でありますけれども、これは言うまでもなく、系統とは隔絶されているということが前提で、もちろん全く隔絶されているわけではないんですけれども、やはり、委員御指摘のように、その地域地域でどういうふうにGXを進めていくか、こういうことだと思います。

 具体的に言うと、マイクログリッドとか、そういう形を取りながらその地域で進めるということが現実的な問題ではないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

國場委員 山内先生にもう一点お尋ねしたいんですが、先生が、今日の資料にはなかったと思いますけれども、エナジーシフトというインタビュー記事の中に、脱炭素化の火力発電の重要性というものを指摘をされておりました。第六次の計画の中でも、二〇三〇年の化石燃料は四一%となっておりますけれども、エネルギーの安定供給の観点からは、脱炭素型の化石燃料、ゼロエミッションの火力発電の研究開発は追求し続けるべきである、このような趣旨のことを先生がおっしゃっておりました。

 確かに、グローバルサウスの多くは化石火力でありまして、ゼロエミッションの化石火力は、国際社会でも、我が国のプレゼンスの向上にも大きく今後つながっていくと思います。

 山内先生のお考えでは、脱炭素化を目指す火力発電を今後どのように位置づけていくべきであるのか、この点についてのお考えをお聞かせください。

山内参考人 火力電源をこれからどうするかというのは、国内だけでなく、国際的に我が国がいろいろ注目されているところだというふうに思っております。

 それで、第六次エネ基の火力電源の分担率といいますか構成比が比較的、諸外国と比べると高いというようなこともありますけれども、やはり火力を使いながら脱炭素していく、そういう必要性は感じるところであります。

 といいますのは、やはり、先ほど申しましたように、日本全体の安定供給ということを考えると、急速に火力を廃止するということはなかなか難しいことが一点。

 それからもう一つは、やはり火力を使いながら技術革新、イノベーションを起こしていくという必要があります。よく今言われますように、アンモニアの混焼とか、これから始まるわけですけれども、更に行けば、水素をどう使うか、あるいは、そういったミックスとしてそのイノベーションをどう起こしていくかという面において、火力というのが、もちろんカーボンリサイクルという面から一つありますし、それからもう一つは、今、水素のように全くグリーンであれば炭素を出さないというものもありますし、そういったものの技術革新をどう進めるかということがあると思います。

 それともう一つは、やはり水素、アンモニアというのは、今、日本の、これから脱炭素の非常に大きな主役になっていく。これを、ちゃんとサプライチェーンをつくる。それを、現実的な形で、日本で使えるような、具体的に言うとコスト水準ですけれども、これを実現していくために最初は支援が必要かも分からないけれども、その中でコストを下げていって主力にする、こういうシナリオ。そのためにも、一定程度、やはり火力の重要性があるのではないかなというふうに思っています。

 以上でございます。

國場委員 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様、山口参考人、また満田参考人、山内参考人、大島参考人の四人の皆様より大変貴重な御意見をいただきましたこと、改めまして感謝申し上げます。ありがとうございます。

 今回議論をしておりますGX脱炭素電源法案でございますけれども、やはり日本のエネルギー政策の今まさに大きな転換点ということでもございます。その中で、やはりGXを早く実現をしていくというのが、エネルギー政策としても、そしてまた日本の経済成長という意味でも、非常に重要な論点であるというふうにも思いますし、また他方で、足下のいろいろなエネルギーの、ロシアのウクライナ侵略でございますとか、様々なエネルギー危機、燃料の高騰でありますとか、供給が不安定になっていることでございますとか、様々な危機にも同時に対応を足下ではしていくという視点も踏まえながら、しっかりエネルギーの問題を考えていかないといけないのであろうというふうに思っております。

 そういう意味では、今後の方向性として、私自身としては、やはり再エネを主力電源化をするというのをしっかり加速をしていくという中で原発への依存度を下げていくという、今のエネルギー基本計画にもありますけれども、こうした方針をしっかり進めていくということが重要ではあると思いますし、他方で、今回、原子力のところも議論になっております。現下の状況を考えると、安全を最優先をしながらという中で、今ある原子力をどう活用していくかという観点もやはり必要になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。

 そこで、まず冒頭、山内参考人に再エネの関係でお伺いをしたいと思うんですけれども、再エネをいかに主力電源化させていくのか。その中で、今、政府が目標として掲げております目標についても、これを本当にどれだけ達成ができるのか。また、国際的な情勢も見ますと、これを更に加速化できないかというふうな御意見もあるところでございまして、先ほど山内参考人の方からも、これはエネルギー業界だけでやっていてはやはりちょっと限界があるというふうなお声も、御意見も頂戴をしたところであります。

 やはり、経済産業省などと意見交換をしておりましても、再エネの適地がどうしてもだんだん少なくなってきたという議論であるとか、そういう必ずしも地政学的に有利な環境ではないという中で、どうやってこれを進めていくのかということが非常に大事だというふうに思っております。

 そういう意味では、最後、お時間も少しなかったと思いますので、成田の事例なども挙げていただきましたけれども、エネルギー業界以外のところも含めてどういうことで加速化していけるのか、あるいは、今ある政府の目標を更に超えるような、そういうポテンシャルがあるというふうな御意見もありますけれども、そうしたことを発揮していくためにはどういう取組が必要なのかということにつきまして、もう少し詳しく先生からお伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

山内参考人 ありがとうございます。

 最後の方に、私、資料で成田空港の事例を出しましたけれども、実はあれは国土交通省でありますけれども、空港、航空における脱炭素化のプロジェクトの一つであります。それで、第六次エネ基を作るときに既にその議論が始まっておりまして、第六次エネ基で三六―三八というあそこの再エネの割合には、空港における脱炭素の促進によってその一部を担う、要するに、それが内数として入っている。そのときは実は成田のその百八十というのはなかったんですけれども、全国に空港が百弱ぐらいありますけれども、国管理、地方管理合わせて、そういったものをいかに使っていくか。これはやはり、空港はかなり面積を要しますし、それから、逆に言うと、周辺に対する迷惑施設という面もあるわけですよね。だから、そういった面でも、空港を使って脱炭素というのは非常に優れたアイデアだというふうに思っております。

 同じ並びでいうと、港湾というのもございまして、港湾も今、カーボンニュートラルポートということで、これも国土交通省でございますけれども、それを進めていらっしゃいます。ただ、港湾の場合、空港よりも更に自治体関与というのが多いものですから、そういったところで少し、トータルとして再エネをどう入れるかというところの視点に欠けるのかなというふうに思っておりますけれども、空港と同じぐらいのポテンシャルがあるんじゃないかなというふうに思っていまして、これは六次のエネ基のときの内数には入っていないし、これから進めていくところだというふうに思っています。

 それから、私、ちょっと国土交通行政、運輸行政も少し関わっていますので、その関係でいうと、鉄道、これはかなりのポテンシャルがあります。鉄道といっても、鉄道の沿線にパネルを張ってというようなこともないこともないですけれども、それよりも、鉄道を使ってどう地域を脱炭素するのかというのがあります。

 今、近畿の方で、鉄道会社が中心になって、町づくりとともに脱炭素というようなことをやっている事例があります。

 それから、私、少しお話を伺っているところでは、静岡で、清水港に再エネの大きな発電所を造る。そのエネルギーをどこに持っていくのかというと、あそこに鉄道会社が、静岡鉄道というのがあるんですけれども、これが清水港から静岡市まで行っている。そうすると、静岡市までその再エネを運んできて、官庁関係にピュアな再エネを供給するとか、さらには、鉄道というのが、沿線ですから、今の話、ですから、沿線に再エネを普及させるとかということで、そういうセクターを超えた、カップリングした、そういう供給というのはまだまだあるというふうに思っております。

 私は運輸行政がもう一つの専門分野ですので、そういったことを例に挙げますけれども、恐らく、それだけではなくて、営農型というのもありますし、農業とかその他の分野でもある。そういったことを、要するに、経済の言葉で言うと、範囲の経済といいますか、それを使っていくのだろうなというふうに思っています。

 それのときに非常に重要なのは、先ほど申し上げましたけれども、やはり国として統一的な政策を取って、企業経営でいうと全社戦略という言葉を使いますけれども、そういった意味では、戦略を取っていくのが重要ではないかなというふうに思っております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 いろいろな事例を挙げていただいて、オール・ジャパンで取り組んでいけばまだまだ加速化していけるというふうなことも非常に感じさせていただきましたし、地域との連携というのも非常に大事だなということを改めて感じております。

 もう一つ、他方で、いろいろな事例も御紹介いただいておりますけれども、やはり太陽光などが非常に多いというふうにも思っておりまして、そうすると、どうしても調整力の問題が、太陽光を更に進めていくとなるとどうしても避けて通れないところかなというふうに思っております。

 そういう意味では、今回の法案でも、そういう調整力というところも含めた議論もなされているとは思いますけれども、山内先生の方から改めて、例えば系統でありますとか、あるいは蓄電ということもあろうかと思いますけれども、こうした調整力についての、今後、どういうところを加速させていくべきかというところを御所見いただければと思います。

山内参考人 ありがとうございます。

 再エネ、調整力をどういうふうに確立していくのかということについて、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、ためるとか、あるいは需要を減らすとか、現在でもやっているものがありますけれども、例えば蓄電池に対しては、私、技術的なことは専門ではございませんけれども、やはり、もう少しイノベーションによってコストを下げられないのかとか、そういった点での、GXの本当に支援とかできないのかとか、そういったことを思ったりもします。これは典型的なやり方ですけれども。

 あともう一つは、デマンドのレスポンスで、さっき、電気の方も、個別にやっているだけじゃなくて全体をシステマチックに動かさなきゃいけないと申し上げましたけれども、需要の側でも、やはり産業構造をいろいろ勘案しながら、そういったデマンドの方をコントロールしながら変動に対応していく、こういうことがあろうかというふうに思っています。

 更に言うと、やはり国全体として、あるいはマクロ全体で需要変動をどうするかというと、結構なコストがかかるということはあるんですけれども、これは積み上げで、今申し上げたように、地域でそれをどういうふうに対応するのかというのは一つあるかと思います。

 例えば、ある工場があって、そこにパネルを張って、そこで水素を作る。水素というのは一つの蓄電池みたいなものですから、水素キャリアで、いろいろなところでエネルギー源にまた還元できる、こういうことも思っていて、その水素を使って、例えばある工場なんかですと、メタンを作る、Eメタンを作るとか、そういうような地域的な対応もある。メタンを作ればいつでも使えるということになりますし、それから、さっきも言いましたSAFなんというのも水素を作ることによってできるということで。

 申し上げたいのは、ですから、マクロでやるときに技術革新的にどういうふうにコストを下げていくのかということと、それからもう一つは、地域地域で変動を吸収していくようなシステム、これはいろいろなインセンティブが要ると思いますけれども、そういうことで対応するのがいいのではないかなというふうに思っております。

中野(洋)委員 ありがとうございました。大変貴重な御意見をいただきました。

 今度は、ちょっと原子力の関係で山口参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、今回、運転期間の議論がなされております。

 山口先生からお出しいただいた資料で、高経年化しているところの原子力の資料についてもいただいております。

 その中で、今回、基本的には六十年の、四十年プラス二十年の運転期間というものは維持をしつつも、運転を、他律的な要因で止まっているところについてはカウントから除外をするというふうな仕組みの制度になっております。

 先ほどの御説明でも、IAEAの中でも、長期間停止をしているようなものは非常に例外的な取扱いというか、そういう位置づけというかカウントになっているというふうなお話もあったと思うんですけれども、基本的に、規制庁などと議論していると、停止期間の考え方については、コンクリートなどは劣化は進むものの、例えば中性子の照射脆化みたいなことは生じないといったふうな議論もあるんです。

 基本的には、停止期間がかなり長期間停止しているのは余り日本以外に例がないというふうには思うんですけれども、この期間の安全性の考え方については、どういうふうに考えていけばいいかというか、どういうふうにそこを判断、評価していけばいいのかというところについて、もし御意見がありましたらお願いいたします。

山口参考人 御質問にお答えしたいと思います。

 今回の前から、既に日本は震災の後十年ぐらい停止して、その後、九州電力の玄海発電所が最初に稼働したわけですけれども、もうそのときから、長期間運転したプラントをどうするのかという議論はあったかと理解してございます。そのときには、規制庁の中では、長期に停止したプラントの稼働における特別な評価というものをやってございます。ですから、そういうものを配慮した見直しが、検討がなされているということでございます。まず、それが一点目。

 それから、長期運転期間中の劣化でございますけれども、今御指摘がありましたように、原子炉圧力容器などにつきましては、運転していなければ中性子の照射脆化がない。一方、コンクリートとか、あとケーブル類、そういったものは劣化はするだろう。そういうものは、別途引っ張り上げまして、特別点検という形で評価をしてございます。

 そういう形で、実際に運転中でなくて長期停止していた場合にプラントにどういう影響があるのかというのは、相当程度技術的な議論が進んでいて、それが今の評価に反映されているということでございます。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 時間もあれですので、最後にちょっと一問だけ、山口先生にもう一つだけお伺いしたいんですけれども。

 原子力を進めていく中で、どうしてもバックエンドの問題がなかなか進んでこない、見えてこないというのが、やはりなかなか理解が進まないというところの一つであるかなというふうに思いますので、このバックエンドの推進について、本法案での位置づけの評価と、今後どういうところを取り組んでいくべきかというところについても、最後に一言、御所見いただければと思いますので。

山口参考人 バックエンドの点についての御質問にお答えしたいと思います。

 今回、GXとして、バックエンドプロセスの加速化ということが一つの柱として挙げられたと思います。余り公になかなか議論にのりにくいんですけれども、実は私、これは一番重要なポイントの一つではないかというふうに理解してございます。

 その中には、まず、廃止措置ですね。もう既に二十基以上、廃止措置になった炉がある。それを、廃止措置というのはリスクをだんだん下げていくというプロセスですので、いかに効率的に経済的に知見を共有しながらやるか、それが大切になってまいります。それが、今回、法改正の中でしっかりそういう仕組みをつくるということが指摘された点、大変重要だと思います。

 あともう一つは、再処理と最終処分です。再処理と最終処分、実は、原子力というものは、核燃料サイクルをやることによって非常に効果が増してくる。世界各国はそういう点を目指しているわけでございまして、今回、再処理の竣工、六ケ所村のですね、それと、最終処分の処分場の選定、あるいは文献調査の点につきましても、国を挙げてNUMOとともに取り組んでいくという点が明確に書かれたという点、これは、原子力を持続的に使っていくという点で大変意義があると思いますし、国の長期にわたるエネルギー政策の中の大きな柱になるものだ、そういうふうに考えてございます。

 以上になります。

中野(洋)委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、山崎誠君。

山崎(誠)委員 こんにちは。立憲民主党、山崎誠でございます。

 今日は本当に、それぞれの皆様から貴重な御意見をいただきまして、この委員会の質疑もまた一層幅が広がったのではないかというふうに思います。本当に心から感謝を申し上げます。

 限られた時間なので、皆さんにお聞きしたいことはあるんですが、順番をつけていきます。

 まず、満田参考人にお伺いをしたいと思います。

 実は今日、今日というか明日ですが、ドイツは残りの三基が停止をして、脱原発が完了するということであります。極めて大事な日を迎えているのがドイツ。これは、世界でもやはり注目する動きだと思います。

 そういう意味で、お答えがすぐ出てくるかあれなんですけれども、環境あるいは脱炭素というこの視点から、世界では原発の意義というものをどのように捉えているか、これは感想でも構わないんですが、国際NGOのお立場で、世界は脱炭素のために原発を使うんだというこの動きについてどのように評価をしているのかというのを、ちょっとお聞きしたいんですが。

満田参考人 御質問ありがとうございました。

 私のネットワークは市民社会とかNGOのネットワークなんですが、原発というものは新たな不公正、不正義を生むという点で、クライメートジャスティスという言葉を若者たちがある意味標語みたいにして言っていっている中には、気候変動を起こした先進国あるいは富める層により、気候変動の影響が弱い層に及んでいる、原発というものは、やはりウラン採掘から運転から廃止に至るまで放射性物質を出し続け、かつ、社会的にも、核のごみが弱いところに押しつけられたり、原発そのものも過疎地に押しつけられたりという社会的な不平等を生むという意味で、原発を使っていくべきではないというふうにしております。

 以上です。

山崎(誠)委員 本当に貴重な御意見だと思います。やはり世界的な視野から見て、これからこのGXということをどういう形で実現をするかというのは、日本の国家の威信というか、そういったものにも関わる大事なテーマなんだろうなと思います。貴重な御意見であったと思います。

 もう一点お聞きをしたいのは、今回の法案の中で、原発に対する国民の信頼確保とか、原発に対する理解というものがキーワードになっていまして、それを前提に運転をしていくとか活用していくということになっているわけでありますけれども、市民社会との接点を多くお持ちの満田さんから見て、今、日本において、原発に対する国民の信頼というものはきちっと確保されているのか、確保されないとするならば、この法案によって確保することができるのかどうか、御所見をお伺いしたいと思います。

満田参考人 お答えします。

 原発に対する国民の目はとても厳しいと私は感じております。

 確かに、各種世論調査でずっと、原発の再稼働を始め原発に対する反対の意見というのは六割ぐらいを維持していたと思うんですが、最近の世論調査では、その状況が少し原発容認に変わってきているようなことも感じています。それは、政府がおっしゃるように、ウクライナ危機を踏まえた厳しい電力需給というものが、私自身は原発はそれを解決するものではないというふうに考えておりますが、そういった中で、大きな電源を求めるという心理はあるというふうに感じています。

 ただ、聞き方にもよりますけれども、将来的に脱原発していくんだというその方向性については、かなり多くの人がそういうふうに思っているというふうに感じています。

 だからこそ、もし、原発、国民の理解を求めるのであれば、政府が決めてからその理解を求めるのではなくて、それは理解の押しつけになると思うんです。政府は、こうしたGX基本方針案の段階で、やはり全国各地で公聴会をやるべきでしたし、原発回帰の大きな政策転換をするのであれば、まずは、私としては、福島原発事故の被害を受け続けている福島そして全国各地で、市民による市民参加の下で、徹底的に開かれた場で議論していただきたかったというふうに考えています。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 私の理解もそうでありまして、例えばドイツが脱原発を決めたときのお話は有名でありますけれども、国民的な議論が行われて、様々な観点から原発を評価をした結果がやはり今回だと思うんですね。

 そういう意味で、私は、国民の皆さんが本当に原発のことをどこまで理解しているのかなと。それは、もちろん、政府が言っているようなプラスの面もあるかもしれない。ただ、負の部分というのもまた大きくて、福島の原発事故の状況についてもまだまだ収束に至っていない、そういったことがちゃんと伝わっているのかなというのが、非常に議論のベースとして私は疑問でありますし、そこが大事なのかなというふうに思います。

 大島参考人にお聞きをしたいのでありますが、貴重な、様々な御指摘ありがとうございました。

 一つ、御主張の中で、原子力発電の量の多さがCO2の削減には影響を与えていないんだという研究成果などもお示しをいただきました。これについて、政府は真っ向から違うことを言っているんですね。GXのためには原発を動かすんだ、CO2削減のためには原発が必要なんだという主張なのでありますが。

 原発は寄与していないというこの主張の根拠というか、もう少し御説明いただけますでしょうか。

大島参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 御紹介いたしましたソバクール氏らの論文は、世界百二十三か国で過去の二十五年間のデータを分析して、統計的にどういった傾向があるのかというのを調べた論文です。ですので、何か、原子力発電がどういうことに影響を与えてCO2削減を妨げているというふうに書いてあるものではなく、むしろ、統計的にしっかりと見た場合に、原子力発電が多いからといってCO2が減るとは限らない、減らないという傾向が見られたということが明らかにされているわけです。

 これは、IPCCの最近発表されました報告書、第六次評価報告書にも採用されている論文でありまして、これは非常に重大なことだと思います。CO2排出削減と原子力を国としてどういうふうに考えるのか、これは政策レベルの話だと思います。事業者としての話ではなくて、国レベルでどういった政策を導くのかということを考える場合に、非常に重要な知見を表すものだと思っています。

 また、何でこういうことになるのかということに関しては、若干の考察も書かれておりまして、やはり原子力発電が、再エネは間違いなくCO2を減らすということが分かっているんですけれども、要は、原子力を中心とする大規模型電源を前提とする電力システムと、主に分散型電源である再生可能エネルギーを支える電力システムとの間で、大きなそごがある、だから、原子力を入れてしまうと再エネのシステムと矛盾する傾向があるので、そういったことが起きているのではないかというようなことも書かれておりました。

 また、原子力は最も高いオプションであって、原子力でCO2排出削減をしようとすると非常に高くなるということが強調されておりました。

 以上です。

山崎(誠)委員 貴重な御意見ありがとうございます。

 残りあと五分ということでございますので、ちょっと質問が十分にできなくて残念なのでありますが、山口参考人にもお聞きをしたいと思います。

 一昨日も私、委員会で質問させていただいて、安全の問題です。検査の可能性、劣化に対してどこまで検査が徹底できるのかということについて、山中委員長、規制委員会の委員長にもお聞きをしました。検査にもやはり一〇〇%はないんだという御説明でありました。

 例えば、劣化の進んだものについて、それは厳重な検査をするわけでありますけれども、結局、原発という設備だと、どうしても近寄れなかったり、陰になって見えなかったり、本来、検査をした方がいい箇所が検査ができない、そういう指摘がありまして、それについて質問したときにそういう御回答であったということなのでありますけれども、この検査が本当に原発の安全をどこまで確保できるのかというところで、ちょっと所見をいただきたいと思います。

山口参考人 お答えしたいと思います。

 検査につきましては、目視検査はありますし、そのほかに渦探傷法ですとか、超音波を使った検査とか、最新の技術を駆使した検査が行われております。

 一方で、今御指摘になりましたように、じゃ、検査はこれが完全かというと、それは必ずしもそうとは言えない、それもまた事実であると思います。

 一方で、原子力発電所は、保安規定により、通常の運転管理、それから経年化の管理、これがしっかり行われてございます。一般に故障とか損傷というものは徐々に徐々に進展しつつ表れるもので、こういった検査と、それから日々の点検、兆候の監視、そういうものを組み合わせて最善の検査をやっている。

 これにつきましては、特に四十年を超えたからどう、あるいは四十年未満だからどうというわけではありませんで、同じように万全の検査を行って対処をしている、そういうふうに実践されているということでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 もう一点お聞きをしたいんですけれども、これも私、前から御質問していて、地震のリスクです。

 基準地震動がそれぞれ決められていて、それをベースに設計が進められている。当然、劣化が進めばまたそれも、一定の許容範囲の中で収まるようにもちろん強度計算などはされているというふうに理解しているのでありますけれども、地震大国の日本にあって、これは見解の相違もあるのかもしれませんが、原発が置かれている立地の地点でそれ以上の地震がないという、このリスクについて、私は、それ以上の地震が起こることがあると。

 例えば、スクラムですか、緊急停止が利かなくなるようなことが起こり得るんだというふうにも、これも前更田委員長とも議論させていただいて、一定の余裕があったとしても、それを超えるものが来た場合にはそういったリスクはあるんだ、地震によって過酷事故がやはり避けられないということをお聞きしているんです。

 これについて、検査を幾らしてもどうにもならないんじゃないかと思いますが、こうしたリスクについては山口参考人はどうお考えでしょうか。

山口参考人 地震のリスクにつきましては、今御指摘の点は、恐らく、設計基準の地震動を上回るような地震ということで考えて御質問いただいたと思います。

 当然ながら、設計基準を上回る地震動については、設計の中でしっかり見ているというわけではございませんが、大きく二つのポイントで安全を確保すると。

 それは、プラントの持っているいわゆる安全裕度というもので、余裕を持った設計になっている。一般に、原子力発電所は、遮蔽などの理由により、建屋そのものはとても頑健に造られております。それが岩盤に設置されておりますので、極めて耐性の高いものになっている、それが一点。

 それからもう一つは、確率論的リスク評価というものが行われておりまして、今御指摘にありましたような、例えば緊急炉停止系、それがうまく作動しなかった場合、プラントがどういう事象推移を進んでいくのか。それから、バックアップとして、例えばホウ酸水を注入するなどによって炉を、出力を止めていく方法がどうなのか。そういったリスクを評価して、設計基準地震動の、かなり大きい地震動までリスク評価は行われております。

 大体、国内外のリスク評価で実績を見てみますと、設計基準の地震動の三倍とか、そこらあたりまで十分、安全裕度があるというような評価が一般的でございまして、設計基準地震動を超えたものにつきましては、決定論ではなく、確率論という形でいろいろな評価が行われて安全を確認している、そういう状況にございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 勉強させていただきました。ありがとうございます。

竹内委員長 次に、前川清成君。

前川委員 日本維新の会の前川清成でございます。

 今日は、四人の先生方、それぞれのお立場で貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございます。

 意見陳述の中ではどの先生方もメインではお話しにならなかったんですが、私が原子力発電に関して一番心配していることをまずお尋ねさせていただきたいと思います。それは使用済燃料のことです。

 使用済燃料を、先生方御存じのとおり、再処理せずに直接処分したならば、天然ウラン並みの有害度まで低下するのに十万年かかるというふうに言われています。十万年といえば、もうこれは可視的な過去ではありません。十万年の人類に高レベルの放射性廃棄物を押しつける、これはもう、いいとかあかんとかの話じゃなくて、私は罪ではないのかなとまで思っています。

 再処理をしたら八千年程度になる、再処理して更に高速炉で燃やせば三百年程度になる、こういうふうにも言われておりますが、六ケ所村の再処理工場は、着工後三十年かかって二十六回稼働が延期されております。あるいは、高速炉の「もんじゅ」、これは失敗をして廃炉が決定をいたしました。

 ついては、先生方の専門分野、私は委細は知りませんが、山口先生と満田先生と大島先生に、高速炉というのは本当に可能なのか、事故は起こらないのか、二つ目には、再処理というのは可能なのか、稼働期間中、事故は起こらないんだろうか、そして、高速炉も再処理も不可能な場合、この十万年の管理、これをどう考えたらいいのか、この点について御意見を承れればと思います。

山口参考人 お答えしたいと思います。

 まず最初の御指摘の点、高速炉は可能なのかという点でございます。これは、お答えは、可能です。

 現実には、現在、ロシアではBN600、BN800、そういう原子炉が稼働しており、BN600は四十年以上にわたって、今、設備利用率八〇%以上という非常によい状況で運転してございます。それから、アメリカでもFFTF、EBR2という高速炉、それから、日本も今、常陽が審査中という状況。このように、フランスなども含め、各国で進んでおります。

 高速炉の一番の今やはり重要なポイントというのは、高速炉を建設していく環境がなかなか訪れてこない。なぜかといいますと、それはウランの需給が緩んでいるから。すなわち、ウランがあるとすれば、軽水炉を燃やす、続けて使うという方にインセンティブが働いて、研究開発投資をして高速炉をやろうというところに行かない、そういう状況と認識してございます。

 ですから、当然ながら、高速炉は、今、二十一世紀半ば実用化ということで進んでいるわけでございますが、状況を見ながら、そこは柔軟に取り組まれるものと理解してございます。

 それから、再処理は可能かということですが、こちらも可能でございます。日本でも、東海村のJAEAの再処理工場、それから、フランス、イギリスなどでも再処理工場を稼働してございます。

 それで、日本は今六ケ所村で建設中なんですが、御指摘のとおり、二十六回竣工延期になっている。今、二〇二四年上期のできるだけ早い時期に竣工するということで鋭意進められているというふうに理解してございますが、一方で、再処理工場を造り始めたときから規制基準ががらっと変わってございます。私はむしろ、しっかり日本原燃には、新しい規制基準に対してちゃんと取り組んでいただいて、安全に造っていただく、そこを是非お願いしたいと思います。

 それから、あと、事故はないのかという点ですが、これは当然ながら、科学技術ですので、運転していく間にはいろいろなトラブルがあるということは避けられないかと思います。

 しかしながら、軽水炉の歴史を見ましても、あるいは、宇宙、新幹線あるいはそのほかの技術を見ましても、そういうトラブルを克服してきて発展してきたというのが人類の歴史でございますので、私は、そういうものからしっかり学んで、よりよいものに進化させていくということを期待してございます。

 こういう観点で、最後に、最終処分でございます。

 最終処分の基本は、これまで世界中でいろいろな議論が重ねられた末、最終的には、一番安全な方法は人間の居住空間から隔離をすることが一番いいのではないか、それが今たどり着いた結論ということでございます。

 ですから、基本的な方針は、それが恐らく一番いいものだろう、ただ、隔離をするにしても、その危険度が、有害度が続く期間はできるだけ早い時期がよいだろう、そういう観点で、高速炉で高レベルの放射性廃棄物の中の半減期の長いものを燃やしてやる、そういう研究開発が鋭意進められている段階。こういうものが実用化すれば、相当最終処分に対する負担も減っていくというふうに期待してございます。

 以上です。

満田参考人 非常に根本的かつ重要な御質問だと思います。私も同様の問題意識を持っております。

 原発はトイレなきマンションというふうに言われておりまして、核のごみ、使用済核燃料をどうしていくのかが定まっていない状況でここまで来てしまっていることの方が私は問題ですし、驚きだと思っています。

 まず、再処理工場について。御指摘のように、六ケ所再処理工場、二十六回も延期しております。もう何か工事が終わる前に老朽化してしまうんじゃないかというブラックなことも言われておりますが、たとえ完成したとしても、これを動かし続けることによって、御存じのとおり、プルトニウムを生み出し、かつ、このプルトニウムをどうにかしなくちゃいけないということで、MOX燃料で燃やす、プルサーマルが提案されているわけなんですが、使用済みMOX燃料は、御存じのとおり、日本の国内では処理できないというような、本当に堂々巡りの問題になっておりますし、コスト的にも大変高いものですし、動かし続けることにより本当に多くの放射性物質を大気中や海に流し続けることになります。そういうわけで問題だと考えています。

 また、高速炉については、私は特別な知見はないんですが、私どもは、夢の原子炉と言われた「もんじゅ」の失敗に学ぶべきだと思っています。国費が、一兆円ですか、投じられて失敗したその経験に学び、もはや日本はそういう夢のような、ギャンブルみたいなことに国費とかそういうものを投じていくような余裕があるのか、今目の前にある危機的な状況に国費又は公的リソースを投じていくべきではないかと。

 そして、原発については、使用済核燃料の問題が解決しないまま動かし続けるのは、御指摘のように、非常に私は罪だというふうに考えております。

 以上です。

大島参考人 本当に、原子力問題に関する究極的な課題について御質問いただきまして、ありがとうございます。

 この高速炉、核燃料サイクルというのは、その事業が構想されたのは一九六〇年代の話です。私は一九六七年の生まれですけれども、私が生まれた頃ないしその前ぐらいに構想された、もう六十年近い前の構想です。それがもう現実に合わないというのは、日本が数々の失敗を繰り返したことによってこれは明らかです。

 本当は、使用済核燃料を再処理して核燃料サイクルを確立するというのは一九八〇年代にできているはずでした。そんな古い古い、ちょっと申し訳ないんですけれども、カビの生えたようなプロジェクトというかプログラムです。これに依拠するのかというのが根本的な問題だと思います。

 高速炉に関しても、高速増殖炉とほぼ同じですので、同じような失敗が繰り返されることになります。

 あとは、先ほど満田さんがお話しになりましたけれども、高速増殖炉には一兆円の建設費がかかり、廃炉には二兆円かかると言っています。ほとんど電気も生まれていません。これは原型炉です。常陽炉は実験炉にすぎません。先ほど山口先生がお話しになりましたように、実験炉です。全く発電をしていません。これが実証炉に行き商業炉に行くまでに、どれだけの時間とコストがかかるかということです。それへ行って、ようやく商業炉になるわけです。

 残念ながら、今まで日本の、国が推進してきた研究開発プロジェクトは、全て失敗しました。それは、やはり政策を決める国会では、重要な事実として認識すべきだというふうに思います。

 また、高レベル放射性廃棄物を含む処分の話ですが、これは、基本は、環境政策論的にいうと産業廃棄物です。産業が出した究極の廃棄物です。本来は事業者責任です。事業者が処分し、費用負担は全て事業者が負うべきです。この原則が満たされるのであれば、事業として満たしてもいいでしょう。ですが、これは全部国民負担にするというふうに言っているわけです。これは著しいモラルハザードだと思います。これはほかの事業では考えられないことです。なぜ原子力だけがこんなふうになるのか。

 ほかに原子力が何か価値を生み出すならいいんですけれども、再生可能エネルギーがこんなことをしている間に非常に安くなり、再エネ一〇〇%の時代が来てしまいます。原子力事業を推進するとしている国も、原子力事業を一〇〇%にするなどという国はありません。再エネ一〇〇%の国はたくさんあります。

 再エネ一〇〇%にするということは、全く絵空事ではなく、現実的な課題です。今は、すぐにできるか、あしたできるかというと、それは無理ですけれども、二〇五〇年を一つの目標にして、できるだけ早く再エネ一〇〇%にするというのは、別に何か困難な、到達不可能な目標ではなく、現実的な、しかも最も安いものだと思います。

 最終処分に至っては、やはり、事業者の責任であることは明確にしながら、民主主義的な、国民的な理解を、国民的な議論を踏まえて決定すべきだというふうに思います。国が決めることではありません。

 ありがとうございます。

前川委員 山口参考人が、エネルギー政策の基本は、安価なエネルギー、電力を全ての国民と産業に安定的に供給することなんだ、こういうふうにおっしゃいました。私もそのとおりだろうと思っています。

 その上で、実は資源エネルギー庁が電源ごとの発電コストというのを計算しているんです。例えば、原子力であれば一キロワットアワー当たり十一・七円とか書いてあるんですが、洋上風力については二十五・九円、こういうふうに書いてあるんです。でも、先生方御存じのとおり、秋田県で三菱商事ほかが十一・九九円で落札をした。この資源エネルギー庁の資料というのは、答えだけ、結論だけが出ていまして、数式がないので、我々はこれに従うしかないのかな、信用するしかないのかなと思っていたんですが、あの三菱商事の十一・九九円を見ると、ほんまなんやろうか、こういうふうに思ってしまうんです。

 それで、原子力の発電コストに関しても、本当に安いんだろうかと。先ほど大島先生の方から詳しいお話がありましたけれども、大島先生が書いておられるものを調査室からいただいた資料で読んだんですが、かつて、原発、百二十万キロワット級の原発一基で建設費が四千五百億円だった、それが今では一兆円を超えているんだと。イギリスのサイズウェル原発は二基で四兆二千億円。満田参考人がお書きになっているのは、ベトナムのニントゥアン原発、これは一基が二兆七千億円。建設費もこのように高騰しています。あるいは、先ほど大島参考人の方から廃炉の費用についてもありました。あるいは、核燃料サイクルが成功すれば別ですが、仮に、十万年間、核廃棄物を地層処分するとなると、一年に仮に一億円で済んだとしても十万年で十兆円。とてつもないお金がかかってしまう。

 そこで、私の時間がもう残り少なくなってしまったんですが、山口先生と満田先生に、原発のコストについて、少しかいつまんで御説明いただけたらありがたいです。

山口参考人 お答えしたいと思います。

 様々な国で原子力発電所を新設するコストについて議論がされているというのは御指摘のとおりで、最近は海外でも、原子力発電所を新設するということで、いろいろなコスト評価を行われてございます。いろいろなデータを集めたものがあって、確かに欧米は上がっていて、一兆円ぐらいかかっているという状況です。一方で、韓国は、UAE、それから国内に、その半額、半分以下の値段で建設している。しかも、ここ数年のところで、韓国の建設費はコストがだんだん毎年安くなっている。そういうのがデータベースとして出てございます。

 それから言えることは、要するに、今コストが高いのは、原子力発電所のキャピタルコスト、技術そのものが高いのではなくて、いろいろな建設のためのプロセスとかファイナンスとか、そういう仕組みがしっかりできていない。

 その理由は、チェルノブイルの事故の後、TMIの事故の後、なかなか新設が欧米で進まなかった、その結果、建設に関するノウハウ、サプライチェーン、ベンダー、そういうものが弱体化してきた、そういうものが原因であるという分析がなされてございます。

 そういう観点で、新設のときのコスト、これをきちんと評価していかないといけないというのは私も全く同感でございますが、コストを、ただ海外の事例があるからそのコストだというふうに見るだけではなくて、いかにファイナンスをしっかりやっていくか、建設費を圧縮していくか、そういうものをこれから議論するということが大事であり、そのための制度設計をしっかりやるということが肝要であるというふうに考えてございます。

満田参考人 これもまた重要な御質問ありがとうございました。

 投資家などがよく参照しているラザードの統計データなんかを見ますと、再生可能エネルギーの価格というのはここ十年で劇的に下がっている、一方で原発は増加している。

 それをどういうふうに見るかというのは、いろいろな見方があると思うんですが、やはり安全対策費の増加というのは大きな要因ではないか。建設費が膨れ上がっている、今、一基当たり一兆円から二兆円というようなことになっているというのが事実かなと思っています。一方で、再エネの方は、だんだん導入が進むにつれてコストが下がってきているという状況かなと思っています。

 よく、じゃ、維持している新設ではない原発を使い続ければ安いじゃないかと。とはいえ、そうとも限らないようなデータもあるんですね。IEAの二酸化炭素のトン当たりの削減コストのグラフなんかを見てみますと、原発の運転延長は、例えば水力のリパワリングですとか事業用のソーラーなどよりも高いコストになっております。

 もちろん、日本の状況は違うと思います。ただ、日本においても原発を維持するだけで数兆円の維持費がかかっているのと、あと、原発の再稼働に向けてとんでもない費用を、安全対策費ですね、柏崎刈羽原発などは、私の記憶ですと、安全対策費のために一兆円以上かけていると思います。

 ですから、これらは、早い段階で、いや、原発からは撤退していくんだ、再エネを主力としてやっていくんだという決断がなされていれば、かからないで済んだコストなのではないかというふうにも考えております。

 それから、もう一つ、含まれていないコストというのは相当あるんじゃないかと私は思っていまして。政府の十一・七円ですかも、からとなっているんですね。つまり、上限については示されていない。

 それから、価格に入らないような、地域の分断とか、要は、例えば核のごみを過疎地に押しつけるみたいなことによる社会的な失われていくものというのは、これは価格に乗らないものなのではないかと思いまして、そういう意味では、そういう観点も必要かなというふうに考えております。

 ありがとうございます。

前川委員 ありがとうございました。大変勉強になりました。

竹内委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れさまです。

 時間がないので、すぐに質問に入りたいと思います。

 今回のこの参考人質疑に当たって、前段でGX推進法というのがありまして、グリーントランスフォーメーションというんですか、舌をかみそうな話なんですけれども、それに基づいて、電源をどう確保していこうかというので、今日の参考人になったと思うんです。

 私も大変危惧をしている一人なんですが、二〇一三年度比で、これは二〇二一年度の排出量なんですけれども、十一億五千万トンのCO2が日本の国内で排出されていると言われているんですけれども、これを三〇年、二〇三〇年ですね、あと七年しかないのに、四六%カットできるかという。

 これは相当なことをやらない限りカットできないと思うんですけれども、まず最初に、それをどう認識されているのか、四人の参考人の方に御所見をいただければと思います。短くで結構ですから。

山口参考人 お答えしたいと思います。

 私も、そう易しい問題ではないと認識してございます。ですから、脱炭素、それから経済安全保障の両立は相当ハードルが高いということで申し上げたところ。

 一方で、目標というものは、それに向かって一つ一つ課題を着実に解決しなければいけないわけでありまして、原子力発電所の場合でいえば、今、二〇から二二%使うという目標が出ているわけです。二〇から二二%使うということでいえば、稼働率とかにもよるんですが、大体二十七基ぐらい稼働できればよい。そうすると、今、十基が既に再稼働済みでございまして、七基が審査を通過しているということですので、それを合わせて、さらに、残りの部分で七、八基が通ればいける、そういう状況です。

 ですから、全く不可能ではないですが、相当ハードルが高いということも御指摘のとおりだ、そういう認識でございます。

満田参考人 私も、十分可能であるし、もっと高い野心的な目標を掲げていただきたいというふうに思っています。

 二〇三〇年の目標は大変重要です。足の速い省エネ、再エネ、あるいは今、再エネがせっかく伸びてきているのに、接続制限でせっかくの再エネを生かせないような、そういった状況がございます。

 そういった、すぐに対処できるような再エネ、省エネ、そして、制度的な問題、需給調整ですとかデマンドレスポンスというようなことの制度的な設計で何とか達成していただきたいというふうに考えています。

山内参考人 私もそんなに簡単ではないというふうには思っております。思っておりますが、六次エネ基を作るときに、二〇三〇の四六と、それから二〇五〇のカーボンニュートラルということを念頭に置いて、そして、電源構成比等、我々、考えてやったわけであります。

 ですから、今、我々が言えることは、二〇三〇に向けては、とにかく、六次エネ基で宣言したような、ああいう政策を進める、こういうことだというふうに思っておりますし、今お話ありましたけれども、再エネの大量導入については、諸々の制限、こういったものを取り除きながら新しい投資を生んでいくということで可能ではないかなというふうに思っております。

大島参考人 私からは、十分可能だと思います。

 最も安いものは省エネです。省エネというのは、初期投資は要りますけれども、必ず回収されます。お金が必ず光熱費の削減ということで戻ってまいりますので、経済的には極めて合理的です。ですが、事業者や消費者というのは、目の前の、直近のお金で判断しますので、そこが進まない。

 だから、そういった今ある最も安いオプションからやることによって、例えば再エネ、省エネで二割、三割減らす、これで三〇%ぐらい減ります。更に再エネの比率が上がっていけば、四六%というのは十分に達成可能です。今ある技術でできる話だと私は思っています。

鈴木(義)委員 じゃ、次の質問に入りたいと思うんですが、例えば原発の依存から撤退した場合に、代替エネルギーがあるのかないのかなんですね。

 再エネが、太陽光だとか、風力だとか、地熱だとか、潮流だとか、いろいろなことを今研究したり実証実験をやっているところもあると思うんですけれども、じゃ、原発に依存しない案をもし日本が採択、今回の法案はそうじゃないんですけれども、代替案があるのか。これだけの、一億二千万人の生活を支えながら、産業活動を結局維持していくためにほかにあるかと聞かれたときに。満田参考人と大島参考人に御所見いただけたらと思うんです。

満田参考人 ありがとうございます。

 私は、再エネ一〇〇%は十分可能だと思っています。現に、先ほどドイツの例が出ましたが、そういうふうに意思決定している国もありますし、近年の再エネの、日本においても再エネの伸びというのはかなり目覚ましいものがあると思います。

 多くの研究機関、自然エネルギー財団を始めとして、あるいは環境NGOも、多くの団体が、再エネ一〇〇%、そして、まずは省エネということで、十分実施可能なシナリオを描いているところでございます。

大島参考人 御質問ありがとうございます。

 原子力発電に関して申し上げますと、先ほどお示ししましたように、現状四%しかございません。ですので、四%をほかで何か満たせるかといったら、満たせます。

 あとは、CO2排出削減と整合的にできるかということでございますが、再生可能エネルギーの伸びはもっと伸びるものでございます。ビジネス界の動きを見ると、再生可能エネルギーの、どれだけ一〇〇%調達するかということでビジネスも沸き立っています。

 こんな産業は多分ほかにはない、今の産業界を見渡す中で、これほど成長性が高いものはありませんので、再生可能エネルギー一〇〇%を目指していくことが大事だというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 例えば、再生可能エネルギーの素材はほとんど外国から調達しているんですよね。再生可能エネルギーをどんどん作って、設置していった方ができるんだろうというけれども、太陽光パネル一つ取っても風車一つ取っても、みんな海外から調達しているんです。

 それで、そこの国が売らないよと言ったときに、日本で、そうなれば自分たちで独自にやっていくしかないんですけれども、この経産委員会でも、何日か前に質問に立ったときに、磁石はどうする、太陽光パネルのシリコンウェハーはどうするといったときに、それを作って売っている国があなたの国には売らないよと言ったら、あと七年間の間でそれが対応できるかということなんですね。だから、他国からほとんど資源を依存しているこの日本が果たして再生可能エネルギーで何とかなるものなのかと。

 先ほど、省エネをすれば二〇、三〇落とせると。例えば、ここの外灯、昔言ったんですけれども、まだ、これはLEDになったかどうかはちょっと確認していないんですけれども、前は蛍光管だったんです。国でそんなことをやっていて、いつになったらできるのというのが率直な話なんですね。それすらももしやれていなければ、議員会館の蛍光灯は今でもLEDじゃないんです。

 そういう今の現実のもの、それをどう対応していくのか、私は本当に疑問でしようがないんですけれども、海外からもし物が入ってこなかったときにどうやって電源構成をしていけばいいのかというのを、手短にちょっと四人の先生方から御意見を頂戴したいと思います。

山口参考人 今、エネルギー基本計画を策定する基本政策分科会の中でも、技術の自給率とか、要するに、自給率というのは、燃料の自給、それだけじゃない、もっと技術とかサプライチェーン、そういうものがしっかり確保できないといけない、そういう議論がなされているところでございます。

 私の一番申し上げたい点は、どんな手にせよ、一つのエネルギーに依存し過ぎてはいけない、そのエネルギーに何か調達できないような状況が起きたときに、ほかでしっかりバックアップできるようなものを、それを持っておくというものがナショナルリスクに対する備えであって、私は、決して再エネがもっと伸びることは要らないと言っているわけではないのです。しっかりと再エネの、例えば今御指摘にあった太陽光パネルを調達できない、そういうときに、ほかのいろいろな手でそれがカバーできる仕組みをしっかりつくりたい、それが何よりも国にとって重要な問題だというふうに思ってございます。

満田参考人 太陽光パネルが調達できない問題については、それは、同じ質問が実は経済産業省が行ったGXに関する各地の公聴会で、関西だったと思うんですが、出たんですね。埼玉でも出ていました。それで、発言者は、何をしているんだ、かつて太陽光パネルは日本が一番技術を持っていたはずなのに、これまで経産省は何をなさっていたのとすごく残念がっておられて、私も同じ気持ちなんです。せっかく太陽光は国産、少なくとも稼働しているときは純国産のエネルギーなので、サプライチェーンも、おっしゃるようなリスクは下げていただきたいと私も切に思っています。

 一方で、やはり、運転、稼働中については再エネは国産だというのは重視すべきだと思いますし、確かにサプライチェーンリスクはいろいろあると思うんですが、それを言うなら原発も、先ほど申し上げたように、燃料についての、ウラン燃料のリスクというのはありますし、あと、サプライチェーンといいますが、下流側のリスクといいますか、海外依存というのも重要な観点で、私は環境NGOなので、そういうライフサイクルにわたる環境影響というのはきちんと、やはり何であれ評価されなければいけないなというふうに考えております。

 再エネもいろいろな再エネがございますので、リスクを分散化することは十分可能なんじゃないかなと考えております。

 以上です。

山内参考人 最近、半導体が製造工程を含め日本に帰ってきたということで、おっしゃるような形でのコアの製品に対するサプライチェーンをどう見るか、そのリスクをどう見るかというのはだんだんと考え方も変わりましたし、国際的な競争力も変わってきたというふうに思っています。

 それで、再エネ関係のそういったサプライチェーンについては、例えば洋上風力の議論をしていて、まずは、事業者選択をするときに、風車そのものは海外製ではあるとしても、それをこれからサポートし供給していく、そのサプライチェーンについてはかなり重要と見て、それを政策の中に織り込んでいく、あるいは評価基準の中に織り込んでいくというようなことを議論しましたし、それから、これから出てくる、有名なものはペロブスカイトですかね、そういった新しい技術については、そういったおっしゃるようなリスクを含めて対応していくんだろうなというふうに思っています。

 その意味では、確かに供給途絶とかが続くことの心配はあるけれども、電源ポートフォリオを考えながら進めていくのではないかなというふうに思っております。

大島参考人 お答えいたします。ありがとうございます。

 海外からの供給途絶があった場合、じゃ、どうなるのかというと、建設が進まなくはなると思いますが、発電施設はそのままあるので、太陽光に関して言うと、燃料は海外に、輸入しておりませんので、無事に何年間かは発電することができるということになります。これは非常に優れた特性だというふうに思います。

 あと、海外に、技術や輸入に頼っているということになりますが、私、一九九〇年代にドイツに調査に行ってまいりました。そのとき再生可能エネルギーの普及政策を最も進めていたのがドイツで、私たちが再生可能エネルギーの普及をしているから日本がもうけているよねと。そのときのトップランナーは日本だったわけです。太陽光パネルもそうでした。風力の技術もありました。では、なぜなくなったのか。ここが産業政策の失敗だったからです。経済産業省が失敗したわけです、これに関して言えば。

 一番トップランナーにあったのに、なぜ衰退したのか。それは国内に市場をつくらなかったからです。国内で、五〇%を目標にするとか、そのとき高い目標を持っていれば。国内市場がある産業は強いわけです。なぜ日本が自動車産業が強いのか、国内に市場があるからです。国内に市場があると、いろいろな、消費者から、あるいは需要家から様々な要望が出てきて、それで不具合を直しながら技術が発展していきます。これが産業の健全な発達なわけです。国内市場を持つことです。

 日本は、国内市場を一旦、人工的に失ったと私は思っています。まさに今GXで求められているのは、この観点です。再エネを一〇〇%にすると言えば、相当喜ぶ企業が出てくるでしょう。それ自体が、再生可能エネルギー自体が非常に活況を呈しているからです。そこをやはり国、特に国会が法律を作りますので、そこで強く打ち出していただくと、恐らくまた国内市場ができ、産業がよみがえると私は信じております。

 以上です。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。終わります。

竹内委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 山口参考人、満田参考人、山内参考人、大島参考人、今日は、お忙しいところ、貴重な御意見ありがとうございました。

 早速質問いたします。

 まず、今回の原子力基本法案の第二条の二で原子力利用を国の責務として新設していることに関して、満田参考人に伺います。

 この第一項では、「国は、エネルギーとしての原子力利用に当たつては、原子力発電を電源の選択肢の一つとして活用する」というふうにあります。これを国の責務としますと、東京電力福島第一原発事故以降、多くの国民が望んできた原発ゼロが選択できない。世界の流れである再エネへの大転換、それから、気候危機打開をしていく、あるいはエネルギーの安定供給を図るという点でも、それを妨げることになると私は思うんですけれども、新規建設を含めて原発を未来永劫活用するという法的枠組みができるということについて、端的に、どのようにお考えでしょうか。

満田参考人 お答えします。

 御指摘のように、これは大変大きな改正になると思っているんですね。

 原子力基本法というのは、原子力、原発を推進するための法律ではなくて、むしろ、原子力を利用するに当たってどういう基本原則に立つかという、そういったものだというふうに理解しています。国の責務として原子力を利用していくんだ、一つの選択肢として活用していくんだ、それで、更に具体的にいろいろな責務というか、支援なんですけれども、そういうことが書かれていくことによって、原子力基本法が性格を変えて原子力産業救済法になってしまうことを恐れています。

 もしこのような抜本的な政策の転換を行うのであれば、やはり各地で公聴会を開き、国民的議論を行うべきだと考えています。

笠井委員 その点では、今、原子力基本法の変貌ということを言われて、先ほど大島参考人が陳述の中でも、原子力救済法に変貌すると言われた。

 その中心の今回の原子力基本法案ですけれども、その中では、原子力利用を国の責務とする一方で、第二条の四で原子力事業者の責務を新設をして、原子力施設の安全性の向上を図るため態勢を充実強化すると。つまり、自主規制、自主的な安全性向上を図ることを事業者の責務としております。

 それに関わってなんですけれども、そのことと、大島参考人に伺いたいんですが、さらに、十六条の二では、電力会社には、原発の安定的な利用を図る観点から、電気事業法で定める原発の六十年超の運転期間ルールに従わなければならないということまでも義務づけているという中身がこの法改正の最後の方にあります。こうしたことについて、大島参考人、どういうふうに思われるでしょうか。

大島参考人 御質問いただきまして、ありがとうございました。

 六十年超のルールに従わなければならないということが含まれていることでございますが、やはり安全性の観点からすれば、元々は、今の現行法では四十年運転が原則なわけです。これはまだ、いまだに生きております。また、四十年たてばそれはもう廃炉しなければならないというのが原則です。これを変えて新たに六十年運転しなければならないとすることは、やはり原子力発電に関するリスクが高まるという方向の改正だというふうに思います。

 また、これは同時に、なぜこんなことをしているかというふうに考えますと、やはり原子力事業者が、安全対策に関連して、福島原発事故後、多額の投資をしてしまいました。これは私からすれば、やり過ぎといいますか、本来考えていなかったようなものまで投資していると思います。柏崎刈羽原発六、七号機に関して言えば、一兆一千六百九十億円の投資です。これは本当に、原子力事業者としても経済性を全く考えないようなことだと思います。

 こういったことがあるがために、それを救済するための一つの策として、私はこういうふうなことを言っているのではないかと考えているわけです。そういう意味では救済法になるということになります。

笠井委員 今おっしゃったことに関連して、もう一問、大島参考人に伺いたいんですが、具体的に言うと、運転期間をめぐっては、条文を原子炉等規制法から削除して電気事業法に移すということがあるわけですけれども、国会では西村経産大臣は、四十年、六十年の枠組みは維持するというふうに言われるんですけれども、実際には、経産大臣の認可によって四十年プラスアルファ年、二十年超という運転延長も可能にしている。

 その経産大臣の認可に当たっては、明確な審査基準もないし、それから審査会も置かず、公開もされない。いわば経産省の恣意的な判断によって原発の運転延長がブラックボックス状態で進むということになるのではないか。経産大臣が認可しますと、今度は原子力規制委員会は長期施設管理計画の審査ということなんですけれども、これも電力会社が提出する書類のチェックだけ。

 これで本当に、リスクということでおっしゃったんだけれども、政府の側は老朽原発を動かすというわけですけれども、この事故の危険というのは、そういう点でも、なくなるのかというのは大いに問題だと思うんですけれども、関連して、いかがでしょうか。

大島参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり、四十年プラス二十年、更に追加のプラスアルファというふうになりますと、原子力では高経年化というふうに称しますが、当然ながら事故や故障のリスクは増えます。

 私、エネルギー政策を研究しておりますので、火力について政策などを見ると、そこでは火力発電については老朽化と書いてあるんですね。故障が起こると書いてあるわけです。原子力発電になると、途端に高経年化と名前を変え、故障も全部発見できるとなっているわけです。全く同じ事業者が、火力発電のときには故障が起きてお金がかかるとさんざんおっしゃっているのに、片や原子力になると、いやいや何ともない、経済性も何ともない、こう言い始めるわけで、これはどちらが本当なんだろうかということになるわけです。

 やはり事業者として、本当は、技術的にいえば、当然ながら老朽化ですし、あらゆる事象は老朽化ですし、事故のリスクも高まるというふうに思っております。

 あと、認可に当たっては、先ほど御意見申し上げたとおり、様々な、ありとあらゆる考えられ得るものを延長できる要件にしています。さらには、想定外のことまでその追加案件に入れられるかのようにしています。これは経済産業省に対してフリーハンドを与えるようなものだと私は思っており、であるからこそ、本来、規制が原子力利用に当たって最大の、一番の課題だと思いますけれども、利用が先にあってその後規制が来るというような、そういった体制になってしまう。そういう意味では、規制のとりこになるのではないかというふうに思っている次第です。

笠井委員 ありがとうございました。

 満田参考人に伺います。

 西村経産大臣は、福島事故の反省を踏まえて、憲政史上初めて安全神話という言葉も法案に盛り込んだ、こう答弁をされています。原発の推進と規制の分離というのは、まさに東京電力福島原発事故の重要な教訓だということだと思うんです。

 ところが、実際には、今回の運転期間延長の法改正をめぐっても、推進側の資源エネ庁が規制側の原子力規制庁と、昨年七月末から年末までの間だけでも十三回もこっそり面談を重ねていたということであります。その中で、利用政策の観点からということで、規制委員会の所管の原子炉等規制法の改正のイメージというのを資源エネ庁の担当者が作って、これは西村大臣のおっしゃるところによると頭の体操だというようなことで言われたり、とにかく、中身については生煮えだということも繰り返されるんだけれども、そういうものであったとしても、それまで作って、規制の側に推進の側が、こっちに移すにはあなた方の法律はこう変えるんですよというものまで渡していたということなんです。

 私、これは、推進と規制の分離どころか、一体というか、また元に戻っているんじゃないか、これこそ新たな安全神話ではないかというふうに思うんですけれども、どんな御感想をお持ちでしょうか。

満田参考人 御質問ありがとうございます。

 ゆゆしき問題であると思っております。国民の多くはこういったことが進行していることを知らないんじゃないかと。一部報道もありますが、とても扱いが小さいですよね。本当にがっかりすると思います。

 福島原発事故の悲惨な教訓を経て規制と利用の分離がなされ、当時、二〇一二年、与野党合意の下、原子炉等規制法に四十年ルールが定められた。

 それで、今回の一連の規制庁と資源エネ庁のやり取りの中で、資源エネ庁が、要は規制の緩和に見えないようにしなければならないというようなメモを残された。

 でも、まさにこの国会での答弁を伺っていても、あるいは政府の説明を聞いても、四十年ルールを原子炉等規制法から削除することは明らかな規制の緩和なのにもかかわらず、従来からある三十年超えの十年ごとの高経年化、劣化評価を若干法律に格上げするということをもって、あたかも新制度のように見せかけていると私は思うんです。これは本当に印象操作ですし、もしやるのであれば、原子力を正々堂々と進めていくのであれば、こんなやり方はせずに、じゃ、どうしていくのか、でも、ちょっとそこら辺は私自身はそうは思っていないのになかなかあれですが、きちんと公開の場で論点を並べて、きちんとした議論をしていただきたいと国民としては強く思います。

 以上です。

笠井委員 最後になりますけれども、満田参考人にもう一問、端的にお答えいただきたいんです。

 今回の原発回帰の大転換の束ね法案について、この間、院内集会や国会議員会館前の集会などを開いておられます。福島始め全国の方々、環境NGOとか、あるいは原発は要らないという声を上げている方、あるいは市民の方々、どんな意見が端的に出ているか、たくさんあると思うんですが、一言。そして、一方、それらの声に一顧だにせず、財界や原子力産業界の要望項目をある意味丸のみして、国の責務としてお膳立てして支援する法的枠組みをつくるというのは、私は、政府の向く方向が違うんじゃないかと思っているんですけれども、その点について一言お願いします。

満田参考人 ありがとうございます。

 私は環境NGOに所属しておりますので、私のFoEJapan自体も、気候変動対策というのが一番のプライオリティーだと思って取り組んでいます。仲間のNGOたちも、気候危機、これはもう喫緊の課題だということで、すごく頑張って取り組んでいるんですね。そうした環境NGOが一致して、今回のGX推進法、GX脱炭素電源法案は、これは経済産業省にフリーハンドを与えることになる、そして、現在ある枠組み、大規模電源、大規模火力、原発を固定化することになるということで、大変な危機感を持っていることを申し上げたいと思います。

 また、本日、私、ここに立つに当たって、福島の皆さんから強い声をいただいています。本当に福島原発事故を忘れたのか、あの悲惨な事故を忘れたのかということを是非言ってほしいと。原発事故は終わっていません。私自身も大変な衝撃を受けました。皆さんもそうだと思います。是非、そういった原点に立って、改めて国民的議論をしていただきたいというふうに思います。

 以上です。

笠井委員 時間が来ましたので、山口参考人、山内参考人には直接質問できなかったんですが、今日は御意見ありがとうございました。

 終わります。

竹内委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

    ―――――――――――――

竹内委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま審査中の本案に対し、環境委員会及び原子力問題調査特別委員会から連合審査会開会の申入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明又は意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会は、来る十九日水曜日午前九時から開会いたしますので、御了承願います。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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