衆議院

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第15号 令和5年5月17日(水曜日)

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令和五年五月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 井原  巧君 理事 岩田 和親君

   理事 関  芳弘君 理事 細田 健一君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      石井  拓君    石川 昭政君

      稲田 朋美君    今枝宗一郎君

      上川 陽子君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    塩崎 彰久君

      鈴木 淳司君    瀬戸 隆一君

      谷川 とむ君    冨樫 博之君

      中川 郁子君    長坂 康正君

      平沼正二郎君    深澤 陽一君

      福田 達夫君    古川 直季君

      堀井  学君    牧島かれん君

      松本  尚君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    山下 貴司君

      吉田 真次君    大島  敦君

      菅  直人君    櫻井  周君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      馬場 雄基君    山岡 達丸君

      足立 康史君    遠藤 良太君

      前川 清成君    中川 宏昌君

      鈴木 義弘君    笠井  亮君

    …………………………………

   経済産業大臣       西村 康稔君

   内閣府副大臣       星野 剛士君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 飯田 陽一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     中原 裕彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           藤本 武士君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          飯田 祐二君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (特許庁長官)      濱野 幸一君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    清水 幹治君

   政府参考人

   (特許庁審査業務部長)  野村 栄悟君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     瀬戸 隆一君

  上川 陽子君     深澤 陽一君

  土田  慎君     平沼正二郎君

  長坂 康正君     中川 郁子君

  松本 洋平君     谷川 とむ君

  山際大志郎君     古川 直季君

  篠原  孝君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     石川 昭政君

  谷川 とむ君     松本 洋平君

  中川 郁子君     長坂 康正君

  平沼正二郎君     塩崎 彰久君

  深澤 陽一君     上川 陽子君

  古川 直季君     山際大志郎君

  櫻井  周君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     松本  尚君

同日

 辞任         補欠選任

  松本  尚君     土田  慎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 不正競争防止法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不正競争防止法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官飯田陽一君、法務省大臣官房審議官保坂和人君、文化庁審議官中原裕彦君、経済産業省大臣官房審議官蓮井智哉君、経済産業省大臣官房審議官藤本武士君、経済産業省経済産業政策局長飯田祐二君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、特許庁長官濱野幸一君、特許庁総務部長清水幹治君及び特許庁審査業務部長野村栄悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。また、質問の順番についても御配慮いただきまして、誠にありがとうございます。

 貴重な時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 今回、この法案、不正競争防止法等の改正案ということでございますが、いわゆる知的財産権に関する一括しての改正だというふうに承知をしております。したがいまして、本日は、まず特許法、また特許制度について質問させていただき、その後、不正競争防止法、商標法、意匠法、それぞれの改正のポイントについて質問をさせていただきます。

 まず、特許法についてでございます。

 今回は、百九十五条の二で、手数料の減免制度について見直しがされるというふうに承知をしております。特許制度に関しては、特許特別会計がございまして、この会計については、受益と負担の関係を明確にしつつ、財源としての手数料等の適切な改定を行う観点から設置された特別会計というふうに承知をしております。そして、収支相償の下で運営されており、これまで一般会計に依存したことはないというふうにも承知をしております。

 ただ、この十年を見ますと、特許特別会計、プライマリーバランスというのかどうか分かりませんが、単年度で見ますと、それぞれ赤字がずっと続いております。繰越金もどんどん減ってきているという状況です。そうしたことから、昨年の四月一日には値上げもしたというふうにも承知をしております。

 今回は、百九十五条の二の手数料減免制度見直しということで、手数料減免を受けられる対象をちょっと減らすということでございます。

 そこで、お尋ねをいたします。

 今回の手数料減免制度の見直しで、特許特別会計の収支改善、どれほど寄与するんでしょうか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 審査請求料の減免件数の上限設定につきましては、一部の企業において、資力等に制約のある者による発明を奨励し産業の発達を促進するという制度趣旨にそぐわない形での利用が見られている実態を踏まえまして、運用を適正化するものでございます。

 特許特別会計への影響につきましては、この運用の適正化により、審査請求料の減免を受けられる件数に一定の上限を設け、これを超える審査請求については審査請求料を満額納付いただくこととなりますため、他の条件が同じであれば、特許特別会計に入る手数料の収入を増加させる方向に働くものと考えております。

 上限件数につきましては、今後、政省令で定めることとなりますところ、例えば、あくまで過去の審議会での検討の途中段階における一定の仮定を置いた試算であり、制度の詳細はこれから検討いたしますが、仮に上限を六十件とした場合、年間約七・五億円の増収が見込まれるという試算をお示ししたことはございます。

 いずれにいたしましても、上限設定の対象者や上限件数につきましては、意欲ある中小企業、スタートアップ等によるイノベーション創出を阻害しないよう最大限配慮して、今後決定してまいりたいと思っております。

櫻井委員 今回の法改正の趣旨、特許庁では、公平性を担保する、一部の企業が濫用しているんじゃないのか、こういう話でございますが、一方で、やはり特許特別会計、これは火の車ということもあって、この点に対する配慮もあるのではないのかなというふうにもお察しをするところでございます。

 この特許特別会計について、実は、ちょっと今回の法改正からは離れますけれども、去年の通常国会で、内閣委員会におきまして経済安全保障法案というのを審議した際に、特許出願の非公開制度に関連して、この特許特別会計についても質問をさせていただきました。昨年の法案の審議の中では、特許特別会計を使うかもしれないというような答弁があったものですから、改めて、この場で確認をさせていただきます。

 特許庁における、経済安全保障法案の中で一次審査ということを行われますけれども、つまり、内閣総理大臣に見てもらうのかどうかという事前の振り分けを特許庁でするわけですが、これは経済安全保障法六十六条で規定されている一次審査でございます。これに関連してシステム改修が必要になる、それからスタッフも更に今まで以上に必要になるというふうに考えられるんですが、こうした費用については、一般会計、特別会計、どちらで負担することになりますか。

西村(康)国務大臣 特許出願の非公開制度、ここについては、特許庁において、御指摘のように、保全審査の対象となり得る技術分野に属する発明が記載されている出願を抽出するなどの一次審査を行った上で、内閣府が、安全保障上の観点から機微技術を含む特許出願に係る発明を保全することが適当か否かの審査を行うということとしております。

 このため、特許庁におけます一次審査の業務などに対応するためにシステム改修が必要となるということで、令和五年度当初予算では、システム改修費用十八・三億円を内閣府所管の一般会計に計上した上で、特許特別会計に繰り入れるということとしております。

 そして、経済安保推進法に基づきます特許出願の非公開制度は、これまで企業が安全保障上の理由で特許出願を自重していたような発明についても、今回の特許出願非公開制度で先願の地位を確保できるということにすることで、企業の知財経営の推進と併せて経済安全保障、双方が実現できるということを図る重要な制度であります。

 令和六年度以降においてこの一次審査に係る費用の財源につきましても、今後、財政当局や内閣府と相談しながら精査をし、検討してまいりたいということであります。

 五年度予算につきましては、内閣府に一般会計で計上した上で特許の特別会計に繰り入れるというやり方をやっておりますが、今後のことにつきましては、財政当局、内閣府ともよく相談して対応していきたいというふうに考えております。

櫻井委員 大臣、この特許特別会計を預かる立場として、赤字続きですから、是非しっかり守っていただきたい。

 つまり、経済安保、これはもちろん大事でございますが、これは特許法の外側の話です。特許庁の外側のことでございますので、これは一般会計でしっかり、今回も手当ていただいているということですが、引き続きそのようにお願いしたいと思います。

 また、スタッフについても、これまで技術分野の分類をやってきたじゃないかと言われるかもしれませんが、これまで、別に、その技術分野の分類、間違っていても誰も困らなかったんですね、単に参考情報としてやっていただけですけれども。今後は、内閣総理大臣に送るのか送らないのかという非常に重大な判断を伴うということで、これは相当な気の遣い方でやらなきゃいけないということで、スタッフも拡充する必要があるんだというふうに思います。そういった観点で、増えた分についてはちゃんと一般会計で手当てしてもらうように是非お願いいたします。

 続きまして、経済安保法の六十七条で、今度、保全審査ということで、これは内閣総理大臣に特許出願が移るわけでございますが、これに係るシステム改修費、人件費等については、一般会計、特許特別会計、どちらで負担するんでしょうか。

星野副大臣 お答え申し上げます。

 特許特別会計は、産業財産権制度の利用者による負担を明確にし、歳入と歳出が均衡された運営をされることを確保するために創設された特別会計でございます。

 これに対し、保全審査は、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度、及び保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響等の事情について検討をし、これらを総合考慮の上、保全指定をすることが適当か否かの判断をするものでございます。

 いずれにせよ、保全審査に係る費用の財源をどの会計から支出すべきかについては、特許特別会計として産業財産権制度の利用者一般に転嫁すべき性質のものかという点も踏まえて、財政当局と相談をしてまいりたいと思っております。

櫻井委員 まだ決めていないということですか。それはちょっとまずい。まずいといいますか、おかしいでしょう。だって、特許特別会計から出すって、おかしいと思いませんか。大臣、どうですか。大臣、答弁はいいですけれども、おかしいと思いませんか。

 だって、これ、内閣府でやっているんですよ。内閣府でやるのに、何で特許特別会計を使うんですか。おかしいでしょう。ちゃんとそこははっきりしてもらいたいということで要望させていただきます。

 次の質問に移らせていただきます。

 次は、八十条です。

 これもまた財源問題なんですが、その前に、特許出願の非公開、つまり、保全指定を受けた場合に損失補償制度ということがあるわけなんです。つまり、保全指定を受けてしまうと、特許の実施もできないし、外国出願もできない、いろいろな不都合が生じる、出願人に不利益が生じるということです。

 先月、四月二十八日の閣議決定の基本指針の二十一ページには、「補償の範囲については、「通常生ずべき損失を補償する」と規定されており、これは一般的に、相当因果関係がある損失を意味するものである。補償を受けるには、実際に「損失を受けた」ことが必要である。」というふうに書いてあって、この損失の範囲、かなり何か狭くされてしまうんじゃないのかというふうに心配をするんですよ。

 保全指定を受けるような技術ということは、やはり相当、漏らしちゃいけない、公開したくない、すべきでないということですから、相当の高いレベルの技術だと思うんですが、それが、実施できないし、外国出願もできないし、いろいろな不都合、あるんですけれども、実際に損失を受けた範囲とかと言われて狭く見積もられちゃうと、企業としては非常に大きな損失というか、回復できない損失がたくさん残ってしまうんじゃないのかというふうにも心配をします。

 特に、特許を受けていて、特許権を持っていて侵害されたときの損害賠償でも、日本はすごく小さく見積もられる傾向、諸外国に比べて小さいんですけれども、今回の場合は特許査定を受けているわけでもない発明についての扱いなので、ある意味、仮定に仮定を重ねてというか、フィクションの世界の中で損失額を算出するということになるので、これはさじ加減というのが非常に大きくなってしまうんですよね。

 そこで、ちょっと、今日、副大臣に来ていただいておりますので、もう一度質問させていただきます。

 保全指定に係る損失補償制度、八十条の算定において、実施能力を超えた分は評価されるのか、つまり、ライセンス相当額は損失として認定されるのかどうなのか。外国出願が禁止されたことによる損失はどのように評価されるのか。損失額の算定の立証責任はやはり出願人が負うことになるのか。保全指定されるような高度な技術を発明した出願人に対しては、そうした技術の、実施できなかったことによる、産業といいますか、会社の衰退を防止し、むしろ技術開発を支援するような意味合いも込めて、幅広く損害を認定するべきだというふうに思いますが、このことについての見解も教えていただきたいということ。

 最後に、財源問題ですが、この損失補償制度は、これは一般会計から出すのか、特許特別会計から出すのか、どちらか。

 幾つか質問させていただきましたが、まとめてお答えをお願いいたします。

星野副大臣 特許出願の非公開制度の損失補償については、法第八十条の規定により、保全指定を受けたことにより損失を受けた者に対して、通常生ずる損失を補償することとしております。

 このため、補償の対象となり得る損失については、国内での損失に限らず、例えば、外国で特許権を取得できれば得られたであろう利益についても、損失の発生及び保全指定により外国出願が禁止されたことと損失の相当因果関係が仮に認められれば、補償の対象となり得るものと考えております。

 また、特許出願の非公開に関する基本方針に記載のとおり、補償となり得る損失やその算定の考慮要素の例について、QアンドA等の形で示すことで、請求人から見た予見性を高めてまいりたいというふうに考えております。

 そして、特許出願の非公開制度における損失補償制度は、安全保障の観点から保全指定を受けた特定の特許出願人が受けた損失を補償するものでございます。

 いずれにせよ、損失補償の財源をどの会計から支出をすべきかどうかにつきましては、財政当局と相談をしてまいりたいと考えております。

櫻井委員 一年たってまだ決まっていないんですよね、財源問題。これも特許法の外側、特許庁の外側でやることですから、特許特別会計に手を突っ込むのはやめていただきたいということを改めて要望させていただきますし、大臣、その方針でよろしくお願いいたします。

 その上で、今、ちょっと説明の中で余り明確におっしゃっていただけなかったんですが、保全指定を受けるような高度な技術を持った出願人、やはりこれはしっかり応援していくべきだと思うんですね。これは、ともすれば実施もできないし云々かんぬんと、いろいろなことで、もうその会社、出願人自体が、事業が難しくなるかもしれない。大企業だったら余裕はあるかもしれないけれども、中小・ベンチャー企業の場合だったら非常に厳しい状況に置かれるかもしれないということなので、やはりこれは産業政策としてもしっかり応援していくべきだと思うんです。

 そこで、大臣にお尋ねをいたしますけれども、産業振興は、やはり内閣府ではなくて経済産業省の仕事だと思います。保全指定を受けるような技術、これが停滞してしまわないように、むしろ、技術開発を更に促進していくために支援していくこと、これを御提案申し上げますが、大臣、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 まさに、損失補償、在り方につきましては、内閣府において、通常生ずべき損失を補償するという規定に基づいて、どの範囲で相当因果関係があるのかということで判断がされていくものというふうに思います。

 その上で、本法に基づいて非公開の対象とする発明は、公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明というふうにされております。

 こういう定義でありますので、直ちに当該発明が支援すべきものであるということを直接意味するものではないんですけれども、御指摘のように、経済安全保障上重要であるということから特許非公開制度の保全指定の対象となるものということでありますので、そうした点も配慮しながら、また、いろいろな支援策もありますので、その支援の意義なども考慮しながら、仮に支援策活用の申請があれば、そうした重要性なども考慮しながら判断をしていきたいというふうに考えております。

櫻井委員 大臣から前向きの答弁をいただきましたので、ありがとうございます。

 ただ、これ、保全指定を受けましたというと秘密にしなきゃいけないわけですよね。だから、経済産業省に補助金の申請とかするときに、いや、この技術は秘密にしなきゃいけないから言えないんです、言えないんだったら、説明できないんだったら補助金出せませんよみたいな押し問答が窓口で起きるんじゃないのか、こういう心配もしているものですから、その点も何らかクリアいただくように。内閣府に問い合わせて教えてもらうのがいいのかどうか、それとも、保全審査を受けたということをもって相当な技術なんだというふうに認定するのがいいのか、いろいろなやり方があろうかと思いますが、是非その点も御考慮いただきたいというふうに思います。

 続きまして、ちょっとここから先はテクニカルな質問になってくるんですが、分割出願についても、これは経済安保法の関連でいろいろ議論があったところでございます。

 そこで、お尋ねをいたします。

 保全審査に付された特許出願の機微技術、これを削除して分割出願した場合、元の出願が出願公開されていなくても、出願日の利益、元の出願の出願日の利益は受けられるんでしょうか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 分割出願は、特許法第四十四条に基づきまして……(櫻井委員「制度はいいから。受けられるかどうかだけ」と呼ぶ)よろしいですか。はい。

 経済安全保障推進法第六十六条第七項によれば、特許庁から内閣への送付後であっても、特許査定、拒絶査定、出願公開以外の手続は留保されないため、分割出願等の特許手続は可能でございます。

 分割元の出願が保全指定されて非公開とされた場合であっても、保全対象となった機微な部分を削除して分割出願をすれば、分割出願は保全指定されることなく、元の出願の出願日の利益を受けつつ、特許査定を受けることができます。

櫻井委員 どうもありがとうございます。ちょっとそれ、いろいろ業界の中では気になっていたということですので、確認させていただきました。

 続いてもう一つ、似たような話で、パリ優先権についてもお尋ねをいたします。

 保全審査に付された特許出願の機微技術の部分を削除して、パリ条約四条の優先権を主張して外国出願をした場合、優先権証明書は発行してもらえるのかということなんです。元の出願は非公開ですから、どんな優先権証明書になるんだろうか、こういう疑問でございます。

 それから、一応、事前の説明では、機微技術の部分をマスキングした優先権証明書が発行されるというふうにも聞いておるんですが、そのような証明書が外国の特許庁で受け付けてもらえるのかどうなのかということも併せて御説明ください。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 パリ条約による優先権制度についての制度の詳細は割愛させていただきますけれども、第一国の特許庁は、第一国での出願日及び第一国に出願された発明の内容を証明するための優先権証明書を発行いたしまして、他国の特許庁がそれを見て、出願された発明が第一国の出願に含まれていることを確認できる仕組みでございますけれども、特許出願に複数の発明が含まれて、そのうち一部の発明のみが保全指定された場合、出願人が、保全指定された発明を削除した形で他国に出願をし、特許取得を目指すことは可能でございます。

 このときに日本の特許庁が発行する優先権証明書は、日本の特許庁に元々出願された内容を基礎に、保全指定された発明の内容が見えないようにマスクする等の処理をした上で発行する予定でございます。

 また、優先権証明書を発行する際に、一部がマスク処理されていても日本国特許庁が適正に発行した優先権証明書であることを説明する文書も併せて交付するなど、出願人が他国で不利な扱いを受けないよう対処してまいりたいと思います。

櫻井委員 続きまして、ちょっと内閣府にもお尋ねをいたします。

 早期審査制度についてなんですが、特許庁で今やっているスーパー早期審査等の場合には、審査がえらくすごい早くなっていて、一か月でファーストアクション、場合によっては特許査定を受けることができるというふうになっております。ただ、保全審査に付されると、早期の特許査定を受けることができなくなってしまいます。

 ただ、早期審査、スーパー早期審査の制度趣旨を考えますと、保全審査で時間がかかってしまうというのはとても困るといいますか、残念なことですので、保全審査もスピーディーにやっていただくということを提案申し上げるんですが、内閣府としてどのようにお考えでしょうか。

飯田(陽)政府参考人 お答えいたします。

 この制度の運用に当たりましては、その手続が特許出願人にとって過度の負担にならぬように、それから、現行の特許制度の手続に遅延等の支障が生じないように留意することが極めて重要だというふうに思っております。

 また、保全審査におきましても、特許出願人の実務等に配慮をいたしまして、保全指定が例えば不要と判断できた場合には、速やかにその旨を通知するということとしております。

 その上で、今御指摘のございました早期審査制度あるいはスーパー早期審査制度という、優先的に審査をする仕組みを利用するという出願人に対してということでございますけれども、内閣府におきましては、保全審査の初期の段階から特許出願人との意思疎通、コミュニケーションを図りまして、特許出願人が早期の権利化のために御指摘の制度に申請している背景なども聴取しながら、迅速かつ適切な保全審査を実施していきたいというふうに考えております。

櫻井委員 早期審査をつけているというのは出願を見れば分かる話ですし、過去には、今は大分解消はされているんですけれども、特許庁において、審査請求してもすごい順番待ちで、二年ぐらい待たされるというようなことも過去にはございました。

 そういうことで、順番の行列が非常に長くなってしまうと、保全審査の方は大丈夫なのかな、そんな心配もするものですから、そのときには、そもそも保全審査に何件回ってくるのか、また内閣府での審査の体制はどうなるのかというのはまだ決まっていないというふうにも思いますけれども、しかし、もし万が一行列ということになったら、やはり早期審査、スーパー早期審査の出願については、順番を飛ばして前に割り込んで審査をするとか、そういった配慮を是非お願いしたいというふうに思います。

 続きまして、経済安保の特許出願の非公開制度に関連して、弁理士の代理ができるのかどうなのかということです。

 これも昨年の内閣委員会で質問させていただいたところ、これは法律にのっとってというふうに言われて、法律、弁理士法を見ますと、特許庁に対する手続、一部、経済産業大臣に対する手続も弁理士は代理することができますけれども、内閣総理大臣に対する手続というのは法律上はないということになっておりますので、そうすると、できないというふうにも読み取れるということで、非常にこれは大問題になったわけです。

 出願人からしてみたら、代理人たる弁理士に手続をお任せしているというのに、ある日突然、弁理士ではなくて、出願人に直接しかも内閣総理大臣の名前で来たら、びっくり仰天ですよね。そのときに、じゃ、どう対応するのか。しかも、いろいろな書類を出せとか言われたときにはどうしたらいいんだろう。そのときに、弁理士に相談したら弁理士法違反ですというふうに言われるんじゃ、たまったものじゃないということで、これはちょっと業界内大混乱といいますか、大騒ぎになっております。

 そういったことも踏まえて、先月、四月二十八日の閣議決定の基本方針の十四ページの脚注のところには、「特許出願人をサポートする弁理士等の者は、法令の範囲内で、特許出願人からの相談に応じたり、審査担当官と特許出願人との意思疎通の場に同席することが可能」というふうには記載されております。

 これで大分安心はできるんですが、ただ、ちょっと念のために確認させていただきたいのは、同席とありますけれども、代理人の弁理士は、保全審査の審査担当官と直接意思疎通することができるのかどうなのか。また、代理人弁理士が、保全審査等において出願人が内閣総理大臣に応答する書類作成に当たってアドバイスしてもよいのかどうなのか。この点について教えてください。

飯田(陽)政府参考人 お答えいたします。

 先ほど答弁もいたしましたとおり、私ども、保全審査に当たって、特許出願人の方との意思疎通は非常に重要だというふうに思っております。

 その中で、弁理士の方の役割ということで御質問をいただいているわけでございますが、ただいま委員の方から御紹介いただいたとおり、基本指針に御指摘の旨記載させていただいております。

 その上で、質問に関連して、審査担当官と特許出願人の意思疎通の場に同席できるというのは、法令の範囲内でできますということを基本指針で明らかにしているわけでございますが、今御指摘のございました審査担当官と直接やり取りすることができるのかということについては、私ども、法令の範囲内でやり取りをしていただけるものというふうに考えておりますし、また、様々な特許出願人の作業の中で、特許出願人からの相談に応じてアドバイスされることもあるのだろうというふうに考えております。

櫻井委員 大分問題は、ちょっと安心したところがございますけれども、今後、実際に運用するところで困った問題が発生したらば、また御要望させていただきます。

 続きまして、不正競争防止法の方に移らせていただきます。

 今回の法改正、デジタル空間における模倣行為の防止におけることについて、不正競争防止法で手当てをしておるわけなんですが、他方で、こうした模倣行為を防止する手段としては、ほかにも意匠法や商標法、著作権法等による方法もあり得るというふうに考えるんですが、現行制度ではどのような保護が可能なのかということをお尋ねしたい。

 あわせて、もし仮に保護が不十分な点がありましたら、今後それぞれ法改正をするべきだというふうにも考えるんですが、これについても教えていただけますでしょうか。

 これは多分、特許庁と文化庁、それぞれ分かれると思いますので、それぞれお答えをお願いします。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 デジタル空間における画像の、まず意匠権による保護に関しまして、現行は、自動販売機の商品選択画像やカーナビの経路表示画像のように、画像デザインによって機器や機器に関連するサービス等の付加価値を向上させるものに限って保護の対象としておりまして、装飾的な画像や映画、ゲーム等のコンテンツ画像は保護対象となっておりません。

 デジタル空間における画像の意匠権による保護につきましては、昨年、法曹界、産業界、学界の有識者を構成員といたします特許庁政策推進懇談会において検討いたしましたところ、意匠権による画像の保護範囲を装飾的な画像やコンテンツ画像にまで拡大することは、意匠権が、不競法の形態模倣規制とは異なり、他者の模倣ではなく、自分が独自に創作した意匠に対しても他者の権利が及ぶため、クリエーターの創作活動に与える影響を懸念する声があったことから、中長期的視野で検討を深める必要がある旨取りまとめられたところでございます。このような議論も踏まえ、今後も、ユーザーの意見も聞きながら、必要に応じて対応を検討してまいりたいと思います。

 他方、商標法に関しましては、現行法上も、デジタル空間内での使用を意図した商標登録は可能でございまして、必要な保護を受けることも可能でございます。例えば、有体物の靴を模したデジタル空間内の靴は、コンピュータープログラムとして分類されますため、デジタル空間内の靴についての権利を欲する場合には、コンピュータープログラムについて商標登録をすることが可能でございます。

 ただし、商標権者でない者が、デジタル空間内の商品についての登録商標をデジタル空間内の商品に付して販売する場合には権利侵害と認定される可能性が高いですが、現実世界の商品についてのみ登録された商標をデジタル空間内の商品に付して販売する場合には権利侵害と認定されない可能性がございます。

 このような点を含め、引き続き、司法判断の蓄積や国際的な動向を注視しつつ、保護の在り方について必要な検討をしてまいりたいと存じます。

中原政府参考人 著作権法におきましては、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」というふうにされておりまして、無体物について私人の財産権等を規定しているところでございます。

 したがいまして、デジタル空間におきまして著作物を再製する行為につきましては、複製あるいは公衆送信といったことに該当しまして、その利用に当たっては、原則として、著作権者の許諾を取らなければならないというふうになると存じております。このため、著作権者の許諾を得ずに無断で著作物を複製し、あるいは公衆送信をした者は、著作権を侵害することになります。これに対しては、著作権者は当該侵害行為の差止め請求あるいは損害賠償請求を行うということが可能であるとなっております。

櫻井委員 ちょっとさっき言い忘れたんですが、内閣府の副大臣、多分、もう質問はこれでなくなっていると思いますので、御退席いただいても大丈夫です。それから、文化庁も今の答弁で最後だと思いますので、ありがとうございました。

 ちょっと今、特許庁長官の御説明の中で一言御要望申し上げたいんですが、例えば洋服について、最近、アバターとか、仮想空間の中で人が活動したりということがありますけれども、そうすると、その洋服の意匠を模したものとか、それこそバッグとか、そういったものについて、リアルじゃなくて、アバターとか、デジタル空間と同じような使用形態でということもあり得ると思うんですね。ですから、それは一応検討の対象になり得るのではないのかというふうにも考えますので、そこはしっかり御検討いただければというふうに思います。

 今回の法改正、不正競争防止法というのは、ある種漠然とした法律でして、若干、権利範囲というか権利の強さという意味では弱いものですから、やはりしっかりと、本当に守らなきゃいけないものについては意匠法なりでしっかり守っていただきたいということを要望させていただきます。

 あと、商標法に関連しましても、商品区分ということではございますけれども、確かにこれはそういうことで、デジタル空間を区分として登録してくださいということになると、これは特許庁の収入になって、さっき、冒頭、問題提起させていただいた特許特別会計にはプラスに働くかもしれないなと。ここはしっかり、稼ぐところは稼いでくださいということをお願い申し上げます。

 続きまして、今回の不正競争防止法の改正の中で、十九条の二で、国際的な営業秘密侵害事案の域外適用の話がございます。

 日本国外での事案について、日本の裁判所で判決が出ましたということの場合に、具体的にどうやって執行するのかという問題が残るかと思います。判決が出たけれども執行ができないということであれば、意味を成さなくなると考えるんですが、この点、どういうふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の企業の営業秘密が海外の企業に侵害をされまして、訴訟において損害賠償請求が認容された場合、日本国内に相手方企業の財産がございましたら、損害賠償の対象として、その財産の差押えは可能でございます。

 一方、日本国内に相手方企業の財産がない場合、海外にある相手方企業の財産を差し押さえるためには、相手国が、我が国の外国判決の承認制度、これは民事訴訟法に規定がございますけれども、これと同様の規定を置いている場合など、基本的には、海外の裁判所で日本の判決の承認が必要でございます。このため、御指摘のとおり、実際には強制執行が難しいといった場合もあると考えられます。

 また、差止めにつきましても同様に、海外の裁判所による日本の判決の承認が必要だと認識してございまして、このため、実際の差止めには困難が伴う場合もあると考えております。

 しかしながら、仮に海外での強制執行等が難しかったという場合だとしても、日本の裁判所で日本の不正競争防止法に基づく判決が出ることが明確になりますと、海外の訴訟相手を和解を含めた日本での交渉の場に引き出すことが容易になるなど、企業の訴訟戦略からもメリットがあるといった御指摘を、実際にこれは営業秘密に関する国際的な事案を経験した企業からもいただいているところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、こうした事後的な救済のみならず、日本国内で事業を行う企業の営業秘密であって日本で管理されているものを海外で使用や開示等した場合には、日本で訴えられる可能性があるとかいうことが明確になることによりまして、海外での営業秘密の侵害に対する一定の抑止的な効果も期待できるなど、今回の措置には一定の意義があると考えてございます。

櫻井委員 法改正そのものは意義があると私も賛同するんですが、ただ、執行できないというふうに足下を見られると、その意義が半減してしまう、損なわれてしまうのではないのかというふうにも心配するものですから、その点についても、今後、運用しながら、必要なところがあれば改善をいただきたいというふうに思います。

 続きまして、商標法の改正についても質問させていただきます。ちょっと時間が迫ってきておりますので、一問飛ばして、同姓同名の他人の承諾の範囲について質問させていただきます。

 これまでは同姓同名の他人全ての承諾が必要だったのが、今回の改正で、同姓同名の他人のうち、著名の、著名人だけということでよくなったというふうに承知をしております。しかし、この著名の範囲がどこまでかということがちょっと分からないものですから、その点について教えてください。また、そのことについては審査基準で記載されるのかどうかも併せて教えてください。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 氏名を含む商標の登録に際しまして、承諾を得ることが必要な他人の氏名に知名度の要件を課すこととしておりまして、出願された商標の商品分野の需要者、消費者の間に広く認識されている、いわゆる、申し訳ございません、著名ではなくて、周知か否かを要件とすることとしてございまして、いわゆる周知につきましては、指定商品分野の相当程度の需要者に知られている、又は一地方の相当程度の需要者に知られているような状態を指します。

 この知名度の要件の具体的な内容や判断の運用につきましては、現行の商標法における、既存の芸名等については著名ということが要件になっていまして、既存の著名の審査例であるとか裁判例の判断枠組み、また、諸外国においての類似の制度における知名度の要件の運用状況も参考にいたしまして、審議会において議論し、審査基準を策定してまいりたいと考えております。

櫻井委員 今の御答弁だと、結局、どういう基準になるのかまだ分からないということだったと思います。これは、どこで線を引くのかというのは大変難しい問題だとは思いますが、せっかく法改正していただくということで、実務上は大変ありがたい話だと思いますけれども、ちゃんと運用するためには、承知いただいているかと思いますが、基準が必要ですので、この点、よろしくお願いします。

 最後、ちょっともう時間が最後になりましたので、これで最後の質問になろうかと思いますので、大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。

 知的財産権の保護の強化ということについて、やはり必要なのではないのかと常々思っているところです。

 この知的財産権、例えば特許についても、権利侵害の場合、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、損害賠償額、日本は非常に少ない傾向にある。諸外国では三倍賠償、五倍賠償、これは、ヨーロッパ、アメリカとか先進国だけじゃなくて、韓国とか台湾とか中国でもそういった制度を設けて、知的財産権の保護を図っているという状況です。日本はそういった損害賠償制度が弱いということになりますと、日本で特許を取ってもしようがないんじゃないかということにもなりかねません。

 この点、これまでいろいろな委員会で私も質問で取り上げてきたわけなんですが、民法七百九条との整合性、これは法務省が嫌がるということで全然前に進まないということはございます。ただ、グローバルスタンダードということを考え、やはり三倍賠償の制度を導入していくことを考えるべきだと思うんですが、この点について大臣に教えていただきたい。

 その前段としてもう一言申し上げさせていただくと、特許出願も今ずっと、二〇〇六年をピークに、そのときは四十万件の出願があったんですが、そこからどんどんどんどん減っていって、二年前にはとうとう三十万件を割り込んでいるという状況です。特許庁に言わせれば、登録件数は変わっていないから大丈夫なんですということなんですけれども、横ばいということは、要は停滞してしまっているということなので、こういった観点からも、やはりもう少し、日本の知的財産権、保護していくべきではないか、していく必要があると思うので、是非大臣にその考え方をお示しいただければというふうに思います。

西村(康)国務大臣 御指摘のとおり、アメリカ、中国、韓国では、まさに知財に限らず、懲罰的な賠償制度が導入されておりますが、一方で、欧州では、実際に生じた損害を賠償するという実損補填、補償ですね、そうした原則を踏まえて、懲罰的な賠償制度は導入されていないということで、各国それぞれ事情があるんだというふうに思います。

 そうした中で、令和三年度法改正の附帯決議でも、こうした動向をしっかり注視しながら検討すべきという御提案があったところであります。

 その後、有識者の検討会を特許庁でも行っておりまして、その中では、日本の法体系になじむのかどうかという観点、それから、中小企業が予想外、想定外のリスクを抱えるのではないかという点も示されました。また、令和元年の特許法改正で損害賠償額の算定方法が見直されておりまして、高額な賠償が認められてきております。抑止力も持つような裁判例も出てきているということがあります。

 そうした点から、現時点では、産業界、有識者からも、裁判の動向など事態の推移を見つつ慎重に判断すべきといった御意見が多数であります。今の時点で導入の必要性は高くないと考えておりますが、引き続き、裁判の動向などは注視をしていきたいと思います。

 一般論で言えば、御指摘のように、日本がこれから新しい時代を迎える中で、技術開発を起こし、イノベーションを起こしていく中で、やはり知的財産をしっかり確保し、知財立国として世界をリードしていく、そういう立場にならなきゃなりませんので、そういった観点、大きな方向性を頭に置きながら、特許を含めた知財制度をしっかりと考えていきたいというふうに思います。

櫻井委員 時間になりましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

竹内委員長 次に、馬場雄基君。

馬場(雄)委員 おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。福島二区の立憲民主党、馬場雄基です。

 本日は、不正競争防止法等の一部を改正する法律案についてお伺いさせていただきます。

 櫻井議員のように、私はこの道のプロというわけではないわけですけれども、現場で働く弁理士の方々や住民の方々とこの法案について少し話し合ってきたこと、その部分について是非とも議論させていただければというふうに思います。

 初めに、私がこのレクを伺ったときの率直な印象なんですけれども、まさに、なるほど、どうぞやった方がいいというふうに思ったのが率直な印象でした。今回私が立つ視点は、この改正案そのものというよりかは、改正した後の運用のときにどういう問題が起きるのだろうか、そういうところをイメージして質問させていただければというふうに思います。

 まず、損害賠償額の算定規定についてです。

 まさに櫻井議員からも先ほど指摘がありましたけれども、この件について、現場の皆様はまずプラスと思っていらっしゃると思います。

 本改正では、今まで認められてこなかったライセンス料相当額、つまりは、営業秘密が盗まれ悪用された際に、これはあってはならないことなんですけれどもね、あってはならないことなんですけれども、被害に遭った企業が相手企業に対して損害賠償を請求する、そのときに、これまでは、どれだけ被害があったとしても、被害に遭った企業の生産力分しか請求できなかった、それが、本改正によって、加害者の、いわゆる加害を加えた側の生産能力分の額を請求することができるようになった、こういう認識だというふうに思っております。妥当です。妥当でなきゃいけないと思います。

 その上で、確認したいことがあるのが、損害賠償額の算定、これはライセンス料相当額とされていますけれども、その定義、そしてその額は誰が立証していくのか、そして、それがどのように決定されていくのか、確認させてください。

飯田(祐)政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたとおり、今回の法律案におきましては、令和元年に改正されました特許法を参考にいたしまして、販売能力を超える分の損害額についてもライセンス料相当額分を増額できることとしております。

 これは、基本的には、最終的には損害額は裁判所が認定することになります。裁判所の認定に当たりましては、当該営業秘密の実際の使用許諾契約における使用料率や、例えばそれが明らかでない場合には業界における使用料の相場等も考慮に入れながら、当該営業秘密自体の価値、すなわち営業秘密の内容や重要性、他のものによる代替可能性、当該営業秘密を製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、それから営業秘密保有者と損害者との競業関係や営業秘密保有者の営業方針などを総合考慮して判断されることになると思っております。

 御指摘いただきましたように、企業が算定するに当たっては、何を基に算定するかが大事だと思っておりまして、このような諸事情を踏まえましてライセンス料相当額を算定することが適切でありまして、この内容は、私ども、逐条解説にも記載をいたしまして、今後しっかり、趣旨、内容について、こうした訴訟を考えていらっしゃる方に向けて周知をしてまいりたいというふうに考えております。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 今までのいわゆる損害額のところに関してはしっかりと定義があったというふうに思いますが、今言われているライセンス料相当額に関しては、いわゆる数式がまだない状態だというふうに思っています。これは難しいことだというのは承知していますが、しっかりと立証責任を負っていくためにも、ここの整理は絶対に必要だというふうに思っています。

 また、これを証明していくのは、恐らく損害を受けた企業だというふうに思います。裁判をしたり、様々な業務的そして金銭的な負担も負っていくわけですけれども、これはやはりあくまで御自身で賄っていただくという視点で合っているでしょうか、確認させてください。

飯田(祐)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の制度そのものは、まさに侵害行為の損害額との因果関係が明らかでなくて立証することが困難であるということで、今申し上げたように、例えば、元々の制度では、損害額を侵害額の販売数量に被損害者の一個当たり利益を掛け合わせて算定する規定を設けましたし、今回、ライセンス料の規定を設けました。

 御指摘のとおり、このいろいろな規定を利用するといたしましても、損害額を請求するに当たっては、まさに訴える側が、侵害品の販売数量や被侵害者の一個当たり利益については御自身で立証していただく必要がございます。これは、そうした負担はございます。

 したがいまして、まさに、先ほど申し上げましたけれども、なるべくその負担を減らすように、私ども、逐条解説やいろいろな考え方を示し、裁判例がもし蓄積してまいれば、そうしたものもしっかり周知をして、まさに訴える側の企業の方の損害額立証における負担をなるべく下げられるように取り組んでまいりたいというように思っています。

馬場(雄)委員 まさにここが問題だというふうに思います。

 是非西村大臣ともお伺いさせていただきたいんですけれども、つまり、損害を与えた相手側ですけれども、本来払うべきものを払うにすぎないわけですよね、ライセンス料相当額というのは。つまり、被害を受けた側は負担があるけれども、これは幾分仕方ないと思うんです、自分で立証していく必要性はあると思うんですけれども、それをどれだけ負ったとしても、本来取れた分が戻ってくるだけであって、相手側は、本来払わなきゃいけないものを払っているだけですから、ある意味でいうとやり得になってしまわないかというところが、この改正を踏まえてもまだ残るというところが問題だというふうに思っています。

 この点が、いわゆる被害者の権利を保護するに適切であるのか、あるいは、今の考えだけでは不十分ではないかという指摘に対して、西村大臣、どのようにお考えか、是非お聞かせください。

西村(康)国務大臣 先ほどもちょっと御議論ありました、まさに損害賠償額を、算定に当たって、懲罰的に賠償を認めるべきではないかという御議論だと思います。上乗せすべきではないかと。

 これは諸外国で制度が多様でありまして、アメリカ、中国、韓国では御指摘のような懲罰的な賠償制度が導入されておりますけれども、欧州ではそのような形は導入されていないということもありまして、それぞれの国内法制のバランスの中で判断されているものと思います。

 令和三年に特許法などを改正しましたときに附帯決議をいただいておりまして、こうした懲罰的賠償制度についての導入について、附帯決議を受けまして、昨年、法曹界、産業界、学界の有識者を構成員とする特許庁政策推進懇談会で議論を行いました。

 その中で、まさに日本の不法行為、損害賠償の法体系において、懲罰賠償制度のような実損の填補を超える抑止的、制裁的な制度が、生命侵害の場合でも認められていないという中で、知財制度での導入は許容性の観点から困難であることといった議論や、あるいは、制度の導入、まさに知財体制を十分に整えていない中小企業などにとって想定外のリスクになり得るということ、そうした懸念、また、令和元年改正後の特許法においては、損害賠償額の算定方法が見直されておりまして、高額な賠償も認められるようになってきております、そうした知財権の侵害に対する抑止力を持つような裁判例も出てきております、といったようなことが議論がされております。

 さらに、今回、不正競争防止法におけます賠償額の算定規定に関する改正は、令和元年の特許法改正による改正と同様の趣旨の損害賠償額の算定方法の改正でもあります。

 このため、現時点では懲罰的な賠償制度の導入の必要性は高くないと考えておりますが、今回、改正後の裁判例なども含めて、引き続き、注視をしていきながら、よく見ていきたいというふうに考えております。

馬場(雄)委員 大臣、ありがとうございます。

 私も、このレクを伺わせていただいている中で、今しゃべってもそうなんですけれども、やはり何か違和感が残ってしまうなというのが正直な印象です。もちろん、これまでの議論の過程があったのは分かるんですが、例えば、中小企業さんにとっての想定外のリスクと言われるならば、逆に言うと、それをしっかりとケアしていけばいい話だというふうに思っています。

 是非とも、被害者の保護という観点も含めて、この点、一旦立ち止まって考えてもいいのではないかなということを、最後、ここは御指摘申し上げたいと思います。

 続きまして、資料をお配りさせていただきました、一の、デジタル空間における形態模倣行為の防止というところで御質問させていただければと思います。

 これは、バーチャル空間の意匠権の整理をするというのが本改正の趣旨だと思っておりますけれども、一の左の部分、デジタルとリアルで類似したファッション例というのがあるんですが、これとこれが同じである理由というものを是非教えてください。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただいた配付資料でございますこれは、デジタルとリアルで書いてあるのでございますけれども、これはあくまでイメージではございますけれども、例えば、リアルの商品を真正品として、デジタルの商品を模倣品として考えた場合、デジタルの商品がリアルの商品に実際に依拠して、かつリアル商品の特徴を踏まえてデジタルの商品と実質的に同一と言えるような場合、こういった場合に模倣に該当するというふうに考えてございます。

 なお、御指摘のイメージでございますが、リアルの商品、デジタルの商品の事例としてお示しした平面図がございますけれども、これはデジタル空間の服が、こちらでございますけれども、これはデジタル空間上では一応三次元という形でアバターに着せているといったような形状を持つものと考えられるところでございまして、リアルとデジタル両方の商品を比較をした場合、この商品の形態の全体から見て独自の部分といったところが実質的に同一と言える、こういった場合には、これは同様な同一性があるというふうに認められるのではないかと考えてございます。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 私がやはり今ここで質問させていただきたいのは、この法案が通った後に混乱を招かないかという、その視点だけ質問させていただきたいんですけれども、実質的に同一というふうに本当に定義でき得るのかというところは結構難しいところもあるんじゃないかな、個々人によって判断が変わってくる可能性もあるなというふうに思います。

 また、今、実際は、リアルとデジタルというふうなお話がありましたけれども、本来であれば、本当のリアルで手に触れる服とバーチャルで映像に出されているもので比較しないと、本当の比較にはならないんだというふうに思います。

 結構、これはすごく難しいと思いまして、実際の三次元の空間で存在している、肌感覚というか、手に取れるものがあるものとデジタル空間で映し出されたものを、ただでさえ、2Dと2Dの紙面でさえ難しいこの比較を、本物のリアルな部分と2Dのところ、3Dと2Dで比べると、より訳が分からなくなって説明がし切れなくなる。だからこそ、実はここに皆様方の説明責任が問われているような気がしていて、ここを明確に議論しなくてはならないのではないかというふうに私は思っています。

 多分今ここで質問しても同じことが返ってきてしまうなというふうに思いますので、このままちょっと西村大臣にお伺いさせていただきたいんですけれども、このままでは、多分、法案を運用していく際に、考えてもいなかった、まさに想定外の問題とぶつかってしまう可能性というのはあるというふうに思います。

 ただでさえ形態模倣の定義というのは難しい中で、リアルのものとバーチャルのものを比較するならば、より実態に即した、まさにリアルとバーチャルで例示をして考えを示していく必要性があるのではないかというふうに思いますけれども、西村大臣、今後の方向性、具体的なものを教えていただけたらうれしいです。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、私どもの資料から今日配付資料を出していただいておりますけれども、リアルの、実際の服と、メタバース上でアバターが着ている服など、リアルの商品とデジタル空間上の商品についても、今答弁もありましたけれども、基本的には、これまでと同様、依拠性そして実質的同一性に基づいて形態模倣に該当するか否かを判断していくということになります。

 しかしながら、御指摘のように、個別の案件によっては、まさに形態模倣であると判断されるのか、非常に判断が難しい場合があり得るというふうに考えられます。

 したがって、今後、形態模倣に該当する場合の考え方を産業構造審議会の不正競争防止小委員会におきまして更に整理をして、経済団体や中小企業団体、あるいは、まさにこういうデザインをされるデザイナーとかクリエーター、こういった方々などにも分かりやすく幅広く説明する場を設けていきたいというふうに考えておりますし、関係機関とも連携しながら、考え方の周知徹底に努めていきたいというふうに考えております。

馬場(雄)委員 具体的に御答弁いただきまして、ありがとうございます。是非、説明する際には、手に触れる実際の3Dのものと、そしてバーチャルの2Dのもの、その比較を用いて説明された方が今後のいわゆる混乱は防げるのではないかということを、こちらで最後申し上げたいと思っております。

 さらに、もう一つ、これは指摘にとどめたいと思いますけれども、恐らくこの法案の改正は性善説に基づいていると思います。原告側が被害を被ったという中で動く場合と、被害を被ったとわざと言って、いわゆる性悪説に立った場合、結構いろいろなところで権利濫用のおそれも、これは免れないというか、否定ができない状態だというふうに思っています。

 だからこそ、権利濫用をされたことを想定した上で、どうやって対処していくのか、その対処方針というものも併せて検討すべきではないかということを、こちらで御指摘をさせていただければというふうに思っています。

 時間の関係上、少し質問を前後させていただきたいと思います。

 この法案に限らず、特許、あるいは意匠、商標など、全般についての取締りについてお伺いしたいと思います。

 特許庁は、あくまで法案を作成いたしますけれども、実際の取締りは行わないと思います。警察や、あるいは検察、そして裁判所等がこちらのところを担っていくことになると思いますけれども、つまりは、これらの機関との連携であったり、法律を作った後に適切に運用することができる人材の育成というものが極めて大切になると思っております。

 この点の人材育成方法について、どのように今考えていらっしゃるのか教えてください。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、連携の方でございますけれども、私ども特許庁におきましては、税関当局と相互の制度の理解を深めるため、職員の相互派遣等を実施をしまして、水際での模倣品対策における連携を図っております。また、産業財産権の権利侵害に関して警察が捜査を行う場合には、捜査関係事項照会に適切に対応するなどの捜査協力を通じまして、産業財産権侵害の摘発に貢献をさせていただいておるところでございます。

 さらに、私ども特許庁は、特許無効審判など、裁判に準じた行政審判を担わせていただいております。審判に携わる職員、審判官でございますが、この審判官に対しまして、審理訴訟業務に必要な能力を育成するための各種研修を実施をしているほか、知的財産高等裁判所、また地方裁判所、具体的には東京、大阪でございますが、こうしたところに本年五月現在で計十九名の職員を派遣をするなど、裁判所との連携も積極的に行っているところでございます。

 今後とも、人材育成を着実に実施していくとともに、法執行機関と連携をしまして、産業財産権の保護にしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 こちらに関して、やはり、より拡充をしていかなくてはならないのではないか。なぜかというと、知財立国という言葉があります。二十年前だと思いますけれども、小泉政権下で提唱された、国の、まさに目指すべきビジョンの形だというふうに思います。その政策の効果もあって、恐らく弁理士も増えました、そして制度もできました。いろいろな体制が拡充してきた中で、我々はその理想像にたどり着いてきているのかというところを一旦立ち止まって考えなければいけないというふうに思っています。

 申請件数でいえば、大企業が八三%、中小企業の申請割合は約一七%。一体、この形が理想であるのか、この形を知財立国と呼んでいいのか、様々なところで問われなければいけないと思います。だからこそ、人材育成というところもまた必要ではないかというふうに私は思っています。

 私が思う知財立国というイメージですけれども、企業や団体の大きさに左右されることがなく、あらゆる方が自ら生み出した知財、まさに知識、知恵というものをフルに活用して、世界に誇る技術をもって社会を牽引していく、これが私にとっての知財立国のイメージです。ですが、今の状態でいえば、大企業が中心になってそれを行っている中で、なかなか、そういうふうな中小企業が埋もれてしまっていないかというところを指摘させていただけたらと思います。

 これは何も、特許庁さんが何もやっていないと言うつもりは全くありません。費用の減額制度だってやっています。中小企業のオーナーさんに対する講演会だってやっています。各種関係団体さんも、いろいろなやり方で盛り上げていこうと努力されているのは分かります。ですが、今ここに至って、その理想像に近づいてきているかというと、まだまだ遠い位置にあるのではないかというふうに考えざるを得ないんだというふうに思います。このままの延長線上でどれだけやったとしても理想に近づいていかないとするならば、やはり改革の息吹というものはずっと吹かし続けていかなければならないんだというふうに思うわけです。

 今回の改正に至ったとしても、本当は、このような全体を捉える問題意識であったり危機感、まさに、問題意識だけではない、危機感というものを知らしめていく文言があってもいいのではないかと思うわけですが、西村大臣、いかがお考えでしょうか。

西村(康)国務大臣 まさに知財立国というものを目指して取り組んできているわけでありますけれども、最近とみに、デジタル化あるいは新たな技術が様々進展してきておりますし、国際化も進んできております。SNSなどのデジタル空間で使用した意匠に関するマーケティングであるとか、あるいはアバターに着せるもの、小物の販売など、特に、中小企業とかスタートアップとか、また個人事業主であるデザイナー、クリエーターなどの方々の事業活動が多様化してきているものというふうに認識をしております。そうした実態の中で、今回、法改正の中で、時代の要請に対応した知的財産制度に見直していくということで、知的財産権の中でも中小企業の取得の割合が高いブランドとかデザインなどの保護強化の改正を行うこととしております。

 御指摘があったとおりでありますけれども、特許庁では、既に、デザイナー、クリエーターなどの個人事業主やスタートアップを含む中小企業が知財の取得、活用を円滑に行うことを後押しするために、様々な制度を実行してきております。

 全国四十七都道府県に、中小企業が、ブランド、デザインなど知的財産の相談可能な知財総合支援窓口を設置しておりますし、また、中小企業を対象に審査請求料あるいは特許料を軽減をしてきております。さらには、中小企業のブランド化などの知財戦略の構築に向けた、特許庁職員による伴走型の支援などを実施してきております。まさに、こうした取組を通じて、中小企業の知財を活用した新たな事業へのチャレンジなども後押ししてきているところであります。

 先ほど数字の御紹介がありましたけれども、こうした支援策の効果もあって、この十年間で中小企業による特許出願件数は約七千件増加をしておりますし、また、特許出願を行った中小企業者数、さっきは出願件数ですね、今回、企業者数で見ると約一千社増加をし、また、中小企業による商標の出願件数が約三万四千件増加するといったこと、また、この商標出願を行った中小企業者の数でいいますと一万七千社増加するということで、知財を活用する中小企業の裾野の拡大が図られてきているものと思います。

 ただ、まさに急速に技術も進化し、世界は変化をしてきておりますので、大企業は当然でありますけれども、こうした中小企業が知的財産をしっかり確保しながらそれを経営に生かしていくという、権利取得から活用していくところまで含めて、知財経営支援にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

馬場(雄)委員 西村大臣、きっと今の状態が知財立国と言える形ではないと思っていますし、きっと大臣もそこは受け止めてくださっていると思います。確かに、件数が増えてきているのは評価できると思います。しかし、絶対この現状に満足してはならないと思います。一旦立ち止まって、どういうふうにもう一回戦略を見直すのか。これまでの延長線上では恐らく足りないんだというふうに思いますので、私も、知財立国を絶対に目指していきたいと思いますから、引き続き皆様と一緒に議論させていただければというふうに思います。

 最後に移りたいと思います。

 資料二、是非御覧いただければうれしいです。

 こちら、私、どうしてもレクを伺っている中で分からなかった点ですけれども、国際展開開発件数というものがここに書かれております。これ、ごめんなさい、白黒で印刷したのでよく分からない状態になってしまったんですが、右側にある、一番上にあるのが実は日本なんです。国際展開開発件数だと日本が一位になりますというグラフなんですけれども、どうも私の想像とやはりちょっとかけ離れている状態なんです。アメリカよりも上なんです。中国よりも上なんです。しかも、ずっと一位らしいんです。これは委員の皆様のイメージと合っていますか。私、どうも違和感を覚えてならないんですよね。

 この国際展開開発件数は、一か国だけじゃなくて、二か国以上に出願をした特許を指しているそうです。ですが、日本は、例えば半導体、再生可能エネルギー技術など、少し前までは世界でトップシェアを誇っていたものが、今、やはり風前のともしびとなって、まさに危機の状態になっています。

 こちら、特許庁さんに伺いたいと思うんですが、国際展開開発件数一位、これはすごいことだと思います。ですが、この数字が持つ意味は一体何なんでしょうか。一位だけれども技術は何もかもやられてしまったのか、この一位という意味はどういったところにあるのか、是非教えてください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 国際展開発明とは、複数の国、地域へ出願された発明を意味するということで、委員御指摘のとおり、データが取得可能となっています二〇一七年までは、我が国は国際展開発明の件数では十年以上首位を維持しております。

 海外への出願には、出願書類の翻訳費用や現地の代理人費用など、国内出願に比べて多くの費用を要することから、国際展開発明は、そのようなコストをかけてでも出願人が海外における市場獲得のために権利化を目指す価値があると考えている発明と言うことができるというものでございます。

 我が国の国際展開発明件数が首位であることは、我が国企業が、グローバルな事業活動に資する有用な発明を多く創出をしていること、そして創出した発明の海外での権利化を併せてきちっと進めていることを示唆していると考えております。

 特許庁としましても、企業のグローバルな事業活動における知財活用支援に引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思ってございます。

馬場(雄)委員 これ、皆様、どうでしょう。同じ考えですか。もし一位だったらもっと日本はすごいんじゃないかなと思ってしまうのは、私だけではないと思います。(発言する者あり)ありがとうございます。一位だったら誇りたいんです。もっと経済、よくなっている。

 これは、もしかしたら、じゃ、技術はたくさんあるかもしれないけれども経済に結びついていないのか、技術はあって申請はすごいんだけれども、それが結びついていないのか、果実になっていないのか。ここは最も分析が必要な部分なんじゃないのかなというふうに思います。

 一位であることを私は誇りに思いたいです。この強み、一位であることを強みに生かしたビジネス展開など、展望を描くことはできないのでしょうか。もう一度だけお伺いさせてください。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁といたしましては、この国際展開発明というものが各国に比べても日本は非常に多いということ、これを経済発展にしっかりと生かしていくということで、特許庁としても、しっかりとした分析をこれから始めたいと思ってございます。

 以上でございます。

馬場(雄)委員 今、分析はされていないということですか。今のこの時点での、もし何か展開であったり、分析であったり、そういうものがあれば是非教えていただきたいと思ったんですが。お願いします。

清水政府参考人 今、具体的にお示しできる分析結果というものを持ち合わせてございませんが、これからしっかりと分析をして、この意義というものを検証したいと思ってございます。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 西村大臣、こちらは質問はしないですけれども、すごいことだと思うんですよ、一位というのは。ただ、この一位の意義を我々はしっかり理解しているのか、この強みをしっかりと生かした国益を我々はつくることができているのかというところは、やはりこれは真剣に考えるまさにポイントだというふうに思います。

 一位ならば一位らしく堂々といたいです。一位ならば一位らしく、その意義をちゃんと理解して、そしてグローバルに日本の企業たちが活躍する姿を私は実感として持ちたいというふうに思っています。でないと、この一位というものに魂が宿らないと思うんですよね。

 だからこそ、今回あらゆるレクを伺ってきた中で、ここだけが異様に違和感を覚えてしまった部分ですし、今お伺いしても、今からその分析を始めるじゃいけないんだというふうに思うわけです。是非とも、今日の議論させていただいたことを踏まえて、次の議論をさせていただくときには、その部分を議論させていただければというふうに思います。

 我が国の知財戦略、特許庁が実際に先頭に立って是非とも道を切り開いていただきたい、そして、私もその部分をしっかり考えていく覚悟を申し上げて、今日の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、遠藤良太君。

遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。

 今日は不正競争防止法の改正案について質問させていただきたいと思いますけれども、先ほどから、冒頭、いろいろ質問ありましたけれども、私も同じような問題意識を持って今日も質問させていただきたいと思うんです。

 我が党で昨年の四月にメタバース・Web3・0議員連盟というのを立ち上げまして、メタバースのデジタル空間における模倣品であったりとか、こういう課題については、ずっと、いろいろな団体からヒアリングをしまして、準備をいろいろしてきたんですけれども、その中で、今回、明確に法律で規定するというところについては非常に意義があるというふうに、法改正については非常に評価できるのかなというふうに思っています。

 その中で、特にまず確認したいのが、商品を、無体物を含むと規定して適用対象にしていくという方向性があるように思うんです。この辺り、まず確認したいと思います。

飯田(祐)政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法でございますけれども、商品形態につきまして、有体物の形態でなければならず、無体物は含まない、現時点ではそのようになってございます。

 この理由は、従前は、メタバースなど、デジタル空間での商品の形態を模倣する行為そのものが想定されておりませんでした。

 しかし、近年では、まさに今委員御指摘いただきましたとおり、アバターに着せる服や小物など、デジタル空間での利用を前提とした商品が登場してきておりまして、そうしたデジタル空間上の商品の形態を模倣してもうけようという行為の増加が懸念されている状況でございます。

 このため、今回の改正では、デジタル空間上の形態模倣品の提供行為も不正競争に含まれるようにするものでありまして、具体的には、無体物を想定した、電気通信回線を通じて提供する行為を追加するものでございます。

 したがいまして、今回の改正により、商品の形態には、今まで入っていないということでございましたけれども、無体物も含まれると解することになりまして、これは逐条解説等でも改訂をして、もし法律を通していただければ、明確にしてまいりたいと思っております。

遠藤(良)委員 デザイン空間で作成されたものを著作物というふうに捉えることもできると思います、メタバース空間ですね、こういった著作物として捉えることもできるんですけれども、従前で、著作権法内で対応することについてはどのような限界があるのかを確認したいと思います。

中原政府参考人 著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」というふうにされておりまして、無体物につきまして私人の財産権等を規定しております。

 これによりまして、著作物の要件を満たす場合には、現実空間のみならず、デジタル空間で作成されたものにつきましても著作権法で保護されるというふうに理解をさせていただいております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 文化庁さんは、質問はこれで終わりますので、御退室いただいて大丈夫です。

 以前、足立議員の方が生成系AIの質問の中であったように、指針などのソフトローで対応する方向性もあるというところで、つまり、柔軟性があるというメリットがあるんだと。損害賠償などの判例の蓄積で、不正競争防止法の適用対象にすることにどのようなメリットがあるのかを確認したいと思います。

飯田(祐)政府参考人 お答え申し上げます。

 先日の御答弁で、文化庁さんから、まず文化庁としては、生成AIと著作権の関係で、現行の制度について正しく理解していただくということで、理解を進めるためにソフトロー的なもので進めていくということでございました。

 不正競争防止法におきましては、先ほども御答弁申し上げましたが、例えば、他人の周知又は著名な商品等表示を使用した商品を提供する行為、別の規制の、周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為等がございますけれども、これにつきましては、実は、リアルの商品のみならず、例えば、他人の商品等表示を不正に付したプログラムをインターネットを通じて提供することが想定されたことから、そのような行為も規制対象となることを明確にするために、平成十五年法改正で、先ほどもちょっと申し上げましたが、電気通信回線を通じて提供する行為も追加をしてございました。

 ただ、形態模倣につきましては、平成十五年当時はデジタル空間上で商品の形態を模倣するような行為が想定されていなかったために、当時は法改正は行っておりませんでした。

 しかしながら、近年、先ほど申し上げましたけれども、アバターに着せる服や小物など、デジタル空間での利用を前提とした商品が出てきておりまして、今回は、そうした意味で、ソフトローではなくて、明確に法改正をして、デジタル空間上の形態模倣品の提供行為も規制対象とするということで、不正競争防止法におきましては、著作権法と違って、制度を変えて規制対象とするということを行わせていただきたいというふうに考えております。

遠藤(良)委員 先日、私、経産委員会でスパイ防止法について御質問させていただいたんですけれども、最近、日本企業で重要な技術が流出するケースが増加している。令和四年で検挙件数が二十九件。中国に流出したケースもあるという答弁があったと思います。

 改正案では、国外における日本企業への侵害行為について、日本の裁判所において民事で訴えを提起できるということにされていると思います。中国の反不正競争法では明文の規定はないが、民訴法上の解釈において、訴えられた不正競争行為が中国国外で発生し、権利侵害の結果が中国国内に発生した場合に、人民法院により管轄することが明確化されているということなんですけれども、中国とのバランスという観点からも、今回の法改正としては妥当だというふうに判断されているのか、この辺り、確認したいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、まず、日本企業の営業秘密、これが海外に流出している疑いのある事案として、ここ数年で毎年一、二件程度、これは刑事事件としても発生してございます。したがいまして、民事事件についても、正確な把握がなかなか難しいのでございますが、これは同等以上発生しているというふうに我々は見込んでいるところでございます。

 ちなみに、過去の民事訴訟で、日本の裁判所に裁判管轄が認められるか、また、日本の不正競争防止法が適用されるかが不明確だったということで、その争いに多くの時間が割かれたという事案がございました。

 このように海外で発生した日本企業の営業秘密の侵害について、裁判管轄や準拠法をめぐる争い、先ほどの中国の法律も同様だと思いますけれども、基本的には、日本の場合も、民事訴訟法ですとか法の適用に関する通則法、これで、損害の発生がどこであるか、日本であればということで、そこの判断要素がございます。そこの立証が非常にやはりコストがかかる、そういうような御指摘がございましたので、規定を整備して日本の裁判所でも民事の損害賠償などを請求できるということを明確化してほしいといったような要望を、経済団体からもいただいておりました。

 こうしたことなどを踏まえまして、今回の法改正によりまして、海外で営業秘密が不正使用等されても、日本の裁判所で日本の不正競争防止法に基づき損害賠償などを請求できるということを明確化するのが、今回の法律の改正の趣旨でございます。

 これによりまして、国内で事業を行う企業にとって、日本の裁判所で不正競争防止法に基づき裁判できることの予見可能性が高まり、管轄等をめぐる争いについてのコストですとか負担が軽減されるとともに、より安心した企業の海外ビジネス展開に資するものと考えております。

遠藤(良)委員 そこで、企業にとっては、証拠の収集であったりとか執行の実効性の観点から、日本の裁判所ではなくて海外の裁判所を選択するということもあり得ると思います。

 日本の企業をどういうふうにサポートされていくのかをお尋ねしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、証拠収集の容易さですとか執行の実効性、こういった観点から、日本ではなく海外の裁判所を選択するということも、企業の訴訟戦略上は十分にあり得ることでございます。私どもの審議会におきましての検討におきましても、企業の訴訟戦略を制限することにならないように、今回の法改正をするに当たっても、配慮するようにということを求める御意見もございました。

 こうしたことを踏まえまして、今回新設する不正競争防止法の十九条の二の第一項でございますが、「日本の裁判所に提起することができる。」と定めているところでございまして、いわゆる専属管轄と言われているものではなく、競合管轄というもので、海外の裁判所に提起することは当然可能でございます。

 その上で、証拠収集等について、日本企業に対してサポートという御指摘でございました。

 ちなみに、今回の改正で、海外での営業秘密侵害に対して日本の不正競争防止法による裁判が認められた場合には、この同じ不正競争防止法に基づく文書提出命令、これは七条に規定がございますけれども、こういった法的な手続、手段も活用することが可能になります。

 こうした規定の活用なども踏まえながら、今後、営業秘密の海外における侵害に対する訴訟における証拠収集、本当に、このような実態も踏まえまして、円滑な訴訟遂行に向けた対応について更に検討を深めてまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 損害賠償額算定規定の拡充というところで、改正案では、侵害者にライセンスをしたものとみなして損害賠償額を増額できるということになっているんですけれども、今回の、営業秘密の侵害に対して能力を超えて損害賠償ができる、侵害者にとっては大きなコストになり得ると思うんです。特許では令和元年改正で追加されたという事項なんですが、不正競争防止法で、特許法と同じ方向性で今回改正されると。

 特許法においては、損害賠償額算定規定の拡充によって、侵害行為の抑止につながっているということが考えられるのかどうかをお尋ねしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 令和元年の特許法改正におきまして、特許権侵害による損害額の算定方法の見直しをさせていただいたところでございます。

 第一に、特許権者の生産能力等を超えるとして損害が認められなかった部分についても、侵害をした者にライセンスしたとみなして損害賠償を請求できることとなりました。

 第二に、ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たって、特許権侵害があったことを前提とする額、これは、裁判所が侵害を認定した上でのライセンス料でありますので、侵害が確定しない状況で決定される通常のライセンス料よりは高くなるというものでございまして、この額を考慮できることが明文化されたものでございます。

 その後の裁判例でございますが、特許権者側の損害額に基づく算定方式、今申し上げた改正内容はこの特許権者側の損害額に基づく算定方式の場合だったわけでございますが、特許法上、侵害した者の利益から特許権者の損害額を推定するということが別の規定で認められております。この別の規定、直接の対象ではありませんので、生産能力を超えた部分の損害が認められるのかどうか、ずっと争いがございました。

 この場合も、特許権者の生産能力を超える部分で侵害した者の利益がある場合は、それをライセンス相当額として特許権者に損害を認めるという裁判例が、この令和元年改正後に出てございます。知財訴訟では高額な約二十七億円の損害額が認定をされたという例でございます。令和元年の特許法改正の趣旨に即した裁判例等があるということで認識をしてございます。

 また、同じく裁判例として、ライセンス料率の算定に当たり、侵害をした者に対して、業界における平均的なライセンス料の約二倍の損害額を算定した、認めたというものがあるということも承知をしております。

 このように、高額賠償を認める方向で裁判例も示されているということでございます。令和元年改正により特許権侵害の抑止力は高まっているというふうに考えてございますが、引き続き裁判例などを注視してまいりたいと思います。

遠藤(良)委員 営業秘密を保護するという観点から、今回の改正の方向性は理解できるんですけれども、外国公務員への贈賄に対する罰則の強化というところで、法人で三億円から十億円以下への罰金の引上げというところになっていると思います。

 OECDの優先勧告に基づいてというところなんですけれども、国によっては、外国公務員から従業員に対して賄賂を要求してくるところもある。賄賂を提供する者が、つまり、出てくるというところでは、どのようにして海外に進出する企業に周知していくのか。従業員の国籍を問わず処罰ができるようになるという点では、企業のリスクマネジメントが非常に重要であるんだというところなんですけれども、これはどういうふうに対応されていくのかをお尋ねしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正によりまして、罰則が強化されること、また、今御指摘のあったように、日本に主たる事務所を有する法人の外国人従業員に適用管轄が拡大されること、こうしたことを踏まえまして、海外進出企業に対する外国公務員贈賄防止についての周知等の支援が一層重要であると認識してございます。

 企業への周知につきましては、二〇〇四年に企業の自主的、予防的アプローチを支援するために外国公務員贈賄防止指針というものを策定しておりまして、その後、事業環境の変化を踏まえ、計六回にわたって改定してございますが、これに併せて、当該指針の手引ですとかパンフレット、こういったものを作成し、関係団体、セミナー等での講演などを通じまして、企業への周知徹底をこれまで図ってきているところでございます。

 周知に加えまして、経済産業省では、外国公務員贈賄防止の総合窓口というものを設置してございまして、広く相談を受け付けてございますところ、ここ三年、二〇二〇年の四月以降では九十件以上の対応をしているところでございます。

 さらに、企業単独での、今御指摘のように、不当な要求を拒絶するというのがなかなか困難な場合というのがございますので、こういった場合の現地日本の大使館や領事館の日本企業の支援窓口というのがございますが、そういったところ、あるいはジェトロ、現地の商工会議所等に相談をするほか、これらの機関を通じて、不当な要求を停止するよう現地政府に要求するといった対応も可能だということなども周知しているところでございます。

 今回の改正と併せまして、外国公務員贈賄防止指針とその手引やパンフレットを改定し、ホームページでの公開に加えまして、全国の知財総合窓口ですとか国内外のジェトロの事務所を始めとする関係団体に広く頒布、周知するとともに、現地の日本大使館や領事館などの担当者への改正内容についてのウェブ研修などを通じまして、海外進出企業に対する支援に注力してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 僕も海外で仕事をしていた中で、これは本当に結構深刻な問題が現地ではあったりとか、特に中国なんかはこういう賄賂の国なので、本当に、今も実は結構横行していると私自身は認識はしていて、これはしっかりと経産省としても取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 質問一つ飛ばさせていただいて、最後、ちょっと大臣にお尋ねしたいと思います。

 今回のこの法改正の中で、メタバース空間でのNFTのデザインの普及とか、こういったところも可能性はあると思いますけれども、実際、改正によって、大臣、どのような御所見をお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。

西村(康)国務大臣 まさに時代が大きく変化をしてきている、特に技術の進化が非常に速い中で、まさに日本の経済力、特に企業の生産性を向上させて競争力を高めていくためには、いろいろな、設備投資を含めたそうした投資の中でも、研究開発や人材、そして知的財産など無形資産を含めた投資、これを拡大してイノベーションを起こしていくということが重要だと認識をしております。

 そうした中で、特に知財の分野においては、デジタル技術の活用などに伴って、SNSを使用した、SNS上での意匠に関するマーケティングであるとか、あるいは、デジタル空間でアバターに着せる服や小物の販売など、特にスタートアップや中小企業、そして個人でデザイナーやクリエーターの方々が活動するという、そうした活動は非常に多様化してきております。こうした知財を活用した事業、取組を是非後押しをしていきたいというふうに考えております。

 そうした中で、今回の改正案の中で、法律案の中で、意匠登録出願前の公開デザインに関する手続の要件緩和であるとか、デジタル空間における模倣行為の防止であるとか、あるいは、既存の商標と類似する商標あるいは他人の氏名を含む商標登録制度の整備であるとか、そういった措置を講ずることとしておりますけれども、これらによって、新たなブランド、デザイン、あるいはデータ、知財、こうした保護の強化が可能になってくるものというふうに思います。

 こうした措置によって、まさにデジタル空間における様々な事業展開も含めて、デザイナー、クリエーター、こうした事業展開を是非後押しをしていきたいと思いますし、新しい時代を迎えている、どんどん進化をする中で、日本の企業、日本人のクリエーターも是非大いに活躍をしてもらいたい。先ほど来御議論があります知財立国にふさわしい、そうした取組を是非後押しをしていきたいというふうに考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 今朝も、日経新聞でしたか、クラスターさんが海外の案件を受託したというところで、実際、僕も議連でいろいろな団体にヒアリングしていると、大臣がおっしゃられたみたいに、やはりクリエーターさんがなかなか守られていないということが本当に課題があった。今回はこの法改正において、非常に僕個人的にも本当に評価したいなというふうに思います。

 ちょっと次の質問に移りたいと思います。

 前回ちょっと積み残したところなんですけれども、燃料電池と電気自動車のところなんです。

 日本国内では、今、水素ステーションのところで、現在百七十か所、水素ステーションがある。水素ステーションを一か所造るのに約五億円かかるんだというところなんですけれども、政府としては、二〇三〇年までに、二〇三〇年には九百か所を目指しているんだというところで、実際、水素ステーションの見通しをまず確認したいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 水素ステーションですが、先生おっしゃっておられるとおり、現行、二〇二〇年度整備目標百六十か所については達成しておりますが、二〇三〇年千基程度というのが現行の目標でございます。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 タクシーとか、バスとか、トラックとか、航続距離のある商業利用ができるのかが大きなところだと思います。

 FCVの普及の可能性については、今の捉え方ですね、どのような捉え方をされているのかというところで、海外でも、タクシーやバス、トラックといった航続距離の大きい交通手段においては、FCVのニーズが認められるというところのようなんですけれども、普及としては、今の現状、どんな状況でしょうか。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 FCV、燃料電池自動車は、先生御指摘のとおり、航続距離が長く、充填時間が短いといった強みがありまして、自動車分野におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、重要な選択肢の一つと考えております。

 これまで日本では約八千台導入されてきております。海外におきましても、排出ゼロ車両の一つとして各国の電動化目標の中に位置づけられておりまして、例えば、米国では乗用車を中心に約一万四千台、中国ではバス、トラックなどの商用車を中心に約一万二千台が導入されていると承知しております。

 一方で、車両や水素の価格が高いことや、水素ステーションの整備といった課題があることから、よりニーズの高い分野に政策リソースを重点的に投入することで、市場を早期に立ち上げて、コスト低減やステーション整備の好循環をつくっていくことが重要だと考えております。バスやトラックなどの商用車は、移動距離が長く、長時間の稼働が求められることも多いため、燃料電池自動車の導入が期待できる分野だと認識をしております。

 このため、車両の価格差の課題について、これまで実施してきた乗用車の車両の購入補助に加えまして、商用車につきましても、燃料電池自動車や電気自動車の高い導入目標を掲げる事業者に対しまして、今年度から購入補助を開始したところです。

 こうした取組を、先ほど答弁のありました水素ステーションの整備と両輪で進めていくことによって、燃料電池自動車が選択肢となるような社会の構築を目指してまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 海外では、実際、FCVの評価はされていると思います。航続距離も電気自動車に比べると非常に長い、給油するにしても短くできるというところが利点があって。

 一方、アメリカ、中国、韓国ではEVがリードしているんだと。東南アジアにおいても中国、韓国のEVが先行していたりとか、インドネシアでは一方で日本車が九割を占めているんだというところもあったりすると思います。

 実際、東南アジアにおいては、日本車のシェア、どのように維持をしていくのかをお尋ねしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、東南アジアでは、例えばインドネシアにおきましては、二〇二二年に日系メーカーが九割超の販売シェアを占めている一方で、中国や韓国系のメーカーの電気自動車の販売が約一万台となっておりまして、二〇二一年の約六百台と比較して徐々に増えてきていると承知しております。

 こうした中、日本車のシェアを確保するためには、ハイブリッド技術など、これまで培った日本の強みを生かす形で様々な選択肢を用意して、実情の異なる各国市場それぞれでの販売を確保しつつ、電気自動車においても競争力を確保することが重要と考えております。

 経済産業省といたしましても、電気自動車市場の拡大に向けた、日本企業による電気自動車の実証事業を後押ししてまいりました。今後も、東南アジアでの電気自動車の普及状況ですとか政策も注視しつつ、こうした産業界の具体的な取組、これは日産、トヨタがタイやインドネシアで電気自動車の販売を開始していたりとか、トヨタとホンダはタイで、三菱自動車はインドネシアで、電気自動車の現地生産を今後開始する旨を発表するといったような動きがございますので、こうした具体的な取組を緊張感を持って後押ししてまいりたいと考えております。

遠藤(良)委員 ありがとうございます。

 是非しっかりと、このFCV、EVについても、日本国としてもしっかりと支援していただきたいというふうに要望しまして、質問を終わりたいと思います。

竹内委員長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 不正競争防止法等の改正案について質問させていただきたいと思います。

 我が党の方でも検討させていただきましたけれども、この法案、実務的な改正が多いということで、必要な改正が含まれているのかなというような評価をさせていただいておりますけれども、そういう中で、私は、国際的な観点ということから、それを中心に幾つか質問させていただきたいというふうに思っています。

 馬場委員も先ほど形態模倣行為の規制の話について質問されていましたし、また、先ほど遠藤良太委員も営業秘密に関する裁判の管轄の話も質問されていましたが、それとちょっと似たような話なんですけれども、デジタル上の形態模倣商品が出てきた場合に、それが海外で行われた場合はどういう扱いになるのかなということ。

 これはなぜかといいますと、今、生成系AIでも、海外のサービスが日本のクリエーターさんのものを学習したりして生み出していたことがありますし、また、AIを使うまでもなく、今、デジタル上で全て入手可能ということになっていますから、そういう意味だと、日本国内のことだけで法整備していてもなかなか効果的ではないというようなこともあると思いますので、そこについて、今、どのようにこの権利保護を図っているのか、特に、国外において侵害行為があった場合に、クリエーターさんがどういう対応ができるのかということを教えていただきたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、国境をまたいで形態模倣を始めとする不正競争行為が行われた場合には、民事に関しては裁判管轄、すなわち、いずれの国の裁判所で裁判を行うのか、もう一つ、準拠法、すなわち、いずれの国の法律で裁判を行うのかといったことが大きく問題になるわけでございます。

 まず、形態模倣商品の提供行為がデジタルの場合も含めて海外で行われた場合、こういった場合だとしても、このデジタル商品の提供なりサービスが日本国内に向けられたサービスと認められる場合など、当該形態模倣行為による結果が発生した地が日本国内であると裁判所が判断するときは、日本の裁判所で裁判を行い、そこで日本の不正競争防止法における判断を求めることができると考えてございます。

 日本での裁判の結果、外国での模倣品の提供行為に対して差止めや損害賠償などが認められた場合、少なくとも日本国内に相手方企業の財産があれば、損害賠償の対象として、その財産の差押えは可能でございます。

 一方、先ほど申し上げましたけれども、日本国内に相手方企業の財産がない場合、海外にある相手方企業の財産を差し押さえるためには、我が国の外国判決承認制度と同様の規定を置いている場合、海外の裁判所による日本の判決の承認が必要になります。このため、場合によっては強制執行が難しいといった場合もあるものと考えられます。

 しかしながら、仮に海外での強制執行は困難だとしても、日本の裁判所で日本の不正競争防止法に基づく判決が出ることが明確になれば、海外の訴訟相手を和解を含めた日本での交渉の場に引き出すことが容易になるといったメリットも、そういったことを経験した企業から指摘されているところでございまして、事後的な救済のみならず、デジタル上の形態模倣商品の提供行為、こういったものが不正競争行為であることが日本の法律上明確になるということでの一定の抑止効果というものを期待できるのではないかというふうに考えてございます。

小野委員 ありがとうございます。

 大企業とかであれば、海外で侵害行為が起こった場合には対応が可能なのかなという印象は持っているんですけれども、ただ、デジタル上のクリエーティブな作品の発表というのは、今、個人でもやれるようになっていて、そういう方々が生み出したものがネット上で爆発的に広がって、物すごく大きな利益とか財産上の価値というのを生み出すというような時代にもなっていますので、ここは価値を共有できる国同士で国際的な取決めを進めていく。

 そして、前回も私も質問させていただいた中で申し上げましたけれども、やはりこういったクリエーティブの部分で日本の個人が非常に世界的にも通用するような高い価値を生み出しているトップの国だというふうに思いますので、そこを政府がやはりほかの国を巻き込んでイニシアチブを取っていくということは今後大事じゃないかなというふうに思いますので、そういう意味では、特許庁を始め知財関連の皆さんが国際的な場にどんどん出ていって勉強もしていただくとか、大臣には、そういった予算、国際的にも通用する、そして旗振りを日本からやっていくような、そういった形での人材育成というのもしていただきたいなというふうに思います。

 次に、今回の改正案にも入っていますけれども、データセットなどのデジタルの価値物について不正競争によって営業上の利益が侵害されたという場合に、被侵害者の販売の能力を超える数量に基づいた損害額の算定というものが問題になってくるんですけれども、これは、実際の侵害された側の生産能力が、例えばリアルな実物を作る工場を持っている場合で、しかも、リアルなものを大企業が作った場合にはその生産能力の差というものが算定し得ると思うんですが、デジタルの場合には、無限に販売できる可能性だってありますし、大企業とそれから中小企業の販売能力も、確かに事実上は違うのかもしれませんが、算定する場合には非常に難しい問題を伴うと思うんですが、この辺、どういうふうにお考えなんでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございまして、今回の改正法案においては、生産や販売などの能力に制約のある企業の損害の回復がより適切に行えるように、令和元年に改正された特許法も参考にしまして、販売などの能力を超える分の損害額については、ライセンス料相当分を増額できるという規定にしたいと考えております。

 この場合において、御指摘のとおり、リアルの商品においては、被侵害者の規模などから、物理的に生産や販売などの能力に限界が存在するというのが通例でございますので、被侵害者の販売などの能力を超える数量というのが想定できるわけでございますが、先ほど御指摘ありましたとおり、デジタルの商品については、複製が容易であることなどから、被侵害者の規模に応じた販売等の能力の限界がなくて販売が可能であるといった場合もありまして、そういった場合には、ライセンス料相当額分の増額ではなく、侵害者が販売した全数量に被侵害者の一個当たりの利益の額を乗じて得た額が損害額となるというふうに考えております。

小野委員 どれぐらい販売したのかということを把握するのは、確かにデジタル上だから、そういう意味ではやりやすいというところはあるとは思いますけれども、それも、裁判手続上でどのように認定していくのかというところは結構難しい面もあるのかもしれません。正直にどこまで出してくれるのというところもあるでしょうし。

 ただ、権利侵害者に対してちゃんと正当な損害額を算定するという方向で権利者の保護を図るという意味では、これは非常にいい改正だというふうに思っていますが、デジタルの中でどうやっていくのかなというのは非常に実務上難しい課題もあろうかと思います。是非これは、裁判所だけじゃなくて、皆様の方でもしっかり知恵を出して、そして、被侵害者がちゃんと救済されるような方向で検討も進めていただきたいと思います。

 以上で不正競争防止法の質問は終わって、次に、特許法の改正の方に行きたいと思うんです。

 今回、国際的な枠組みということで、アップデートするような改正がいろいろ盛り込まれておりますけれども、世界知的所有権機関、ここに特許を出願するというようなことで、デジタルアクセスサービス、DASというもの、これを世界知的所有権機関が設立をした。これが二〇〇九年から始まっているんですけれども、我が国が、こうしたデジタルサービス、国際的な枠組みに参加した時期はいつなのかということと、それから先進主要諸国の参加状況というものも教えていただきたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました世界知的所有権機関のデジタルアクセスサービスにつきましては、日本国特許庁は、世界に先駆けまして、二〇〇九年四月一日に加入をしております。

 そして、他の主要国、機関の参加状況についてでございますが、米国は二〇〇九年四月二十日、韓国は二〇〇九年七月、中国は二〇一二年三月、欧州特許庁は二〇一八年十一月にデジタルアクセスサービスに加入をしております。

 デジタルアクセスサービスにつきましては、パリ条約に基づく優先権の主張を伴う出願をする際に、出願人自らが各国の知財庁に対して個別に行っていた書類送付等の手続を簡素化すべく、デジタル化された優先権書類を、世界知的所有権機関を経由して複数の知財庁間で共有し合うサービスでございます。

 今後も、ユーザーの利便性向上のために、手続のデジタル化につきまして検討をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

小野委員 ありがとうございます。我が国が先駆けてというところに力が込められておりましたけれども、本当にすばらしいことだなと思います。

 事、我々は、日本のデジタル化というのはもう周回遅れだとか、そういうことがよく言われていて、確かにそういう面もあろうかと思うんですが、知財に関しては、デジタル化について我が国が一番最初に始めたということで、ほかの国、アメリカはその同じ四月二十日、これは私の誕生日なんですけれども、それは別といたしまして、アメリカよりも、そしてほかの国よりも、先進諸国よりも早かったということで、これは英断だったかなというふうには思っています。

 そういう中で、様々な改革をされていますが、後ほどもうちょっと大臣にもこれはお伺いしたいと思いますが、ただ、そうはいってもやはり遅れているところもいろいろあって、これは後で質問させていただきますが、せっかくこうやって世界最先端で、一番最初にデジタル化を、特許の出願も、第一庁から第二庁とか、ほかのところに申請をする手間をデジタルで全部、一発やればオーケーというような仕組みを導入したわけですから、こういった心意気をもう一回思い出していただいて、これからも、ほかがやっているからという後追いではなくて、最初にやはり最新のこういったデジタルの生産的な仕組みというものをどんどん取り入れていくということも、今後も頑張っていただきたいというふうに思うんですね。

 ちょっと話は別になりましたけれども、特許法の改正で、もう一つ。

 先ほども複数の委員の皆様からも質問がありました。中小企業等の特許出願審査手数料等の減免制度の見直しというものが今回行われているわけなんですけれども、これによって件数の上限に達すると見込まれる社の見込み数というのはどんなものなのかということと、そして、かなり中小企業でたくさん申請をしているというようなところがこれから影響を受けるわけでありますから、ここに対する激変緩和措置というのを考えていないのかということをお伺いしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 審査請求料の減免制度の見直しは、一部の企業におきまして、資力等に制約のある者による発明を奨励し産業の発達を促進するという制度趣旨にそぐわない形での利用が見られている実態を踏まえまして、審査請求料の減免を受けられる件数に一定の上限を設けることにより、運用を適正化するというものでございます。

 上限設定の対象者や上限件数につきましては政省令で定める予定とさせていただいておりまして、現時点で件数の上限に達すると見込まれる企業数をお示しするということは困難でございますが、意欲ある中小企業、スタートアップ等によるイノベーション創出を阻害しないよう最大限配慮して、今後決定をしてまいりたいと思ってございます。

 その際、中小企業の平均的な減免適用件数は約三件、中央値は一件でございますので、本措置の影響を受けるのは一部の企業の方々と考えられますけれども、中小企業に対しましては、法案成立後、その施行までの間に広く丁寧に周知をしてまいりたいと思ってございます。

小野委員 ありがとうございます。

 中小企業の特許の出願の平均が三件で、中央値一件ということで、それに比べると、かなり多くの特許を出している中小企業というのは特殊だと。私も、ちょっと資料をいろいろと読んでいると、影響があるのが恐らく二十件台だというような感じかなというふうに思うんですけれども。

 ただ、先ほどもちょっと話が出ていましたけれども、これを見直すことによって、七億円ぐらいですか、それぐらいの特許料収入が改善するというようなことで、今まで減免を受けていた人たちがそれを払うことになるわけですね。そして、それが結構、二十社ぐらいで七億というと、それなりのお金になるわけですね、一社当たり。そういう意味だと、かなりの経営的なインパクトがあることも事実だと思います。なので、やはりそういった中でどのように経営のインパクトを見ていくのか。

 あと、特許の内容がどうなのかという話もあると思いますけれども、そういったところに関しては今後注視をしていただいて、そして、中小企業はもう特許の出願件数はこんなものなんだみたいな、そういう考え方も余りするべきではないと思いますし、おっしゃるとおり、でも、本来は、ほかの企業が払っているような、ちゃんと手数料を払うべきだというのは本来の形ではあるんですが、ただ、余りにも、いきなり経営環境が大きく変わってしまう改正でもあろうかと思いますので、そこは是非留意しながら今後の執行状況を見ていただきたいというふうに思います。

 今度は、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律について、この改正案についてお伺いをします。

 特許庁に対するオンライン申請というものができるということになるわけなんですけれども、これが、従来のXML形式に加えて、新たにPDF形式によって行われるようになるということなんですけれども、これをなぜこのようにするのかという理由を教えていただきたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁では、ユーザーへのサービス向上の観点から、今般の書面手続のデジタル化によりまして、原則、全ての申請手続についてオンライン申請可能とすることとしているところでございます。

 特許庁に対するオンライン申請においては、特許庁システムによる高度なデータ処理を行いやすいXML形式というファイル形式を採用しておりますけれども、この形式によるオンライン手続を実現するためには、大規模な特許庁システムの改造費用と期間が必要となるところでございます。

 一方、通常のビジネスで広く利用されておりますPDF形式で申請を受け付けるとした場合には、特許庁システムの大規模な改造が不要となり、これらに係る改造費用と期間を抑えられるとともに、ユーザーの利便性が高まることから、速やかにデジタル化を図るため、今般、オンライン申請可能となる申請手続にはPDF形式を採用することとしたところでございます。

 PDF形式でございますが、特許庁システムによる高度なデータ処理は難しいファイル形式でございますけれども、必要に応じまして、一部のPDF形式の書類は、受け付けた後に特許庁におきましてXML形式に変換することにより高度なデータ処理を可能とする予定であり、デジタル化の利点も生かせるようにすることを考えているところでございます。

 引き続き、技術の進展、ユーザーニーズ等も勘案しながら、更なるデジタル化に向けた検討を進めてまいりたいと存じます。

小野委員 XML形式は、これは、データベースにそのまま載っけられるとか、マークアップ言語ということで、事務処理とか、様々な大量な情報をしっかりいろいろな形で利用するには非常に便利だというふうには思うんですが、ただ、それは結構敷居が高いということもあろうかと思いますので、PDF方式でも出せるようにするというのは妥当だとは思うんですね。

 ここでもう一回ちょっと御質問したいんですが、PDFといってもいろいろあって、例えば、うちの党の部会も結構デジタル化をしているというふうには思うんですけれども、実際のところ、うちの政調の職員さんで、普通に紙でプリントしたものをそのままPDFにして、それでデジタル化とか言っているんですけれども、こういった紙ベースのものを単にPDF化したものも、これも受け付けるということなんでしょうか。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員御指摘ございましたような様式のものもPDFとして受け付けることを予定をしてございます。

小野委員 はっきり通告はしておりませんでしたが、打合せのときにはこういう議論もさせていただきましたが、ありがとうございました。

 もちろん、中小企業の方で、まだまだPDFの中身についても、PDFの中でもどういうものがあるのかということもなかなか分かっておられない方もいらっしゃいますし、特許庁として様々な間口を広げながらデジタル化というものに対応するというのは、私はある一定程度は理解をしたいというふうに思いますが、ただ、先ほどおっしゃったように、特許庁の側でPDFを受け取ってそれをXML化するというような作業、これを例えばアナログ方式のPDFというものでやろうと思ったら、多分これは、職員さん、もう死ぬと思うんですよね。

 ということで、そういった運用ももちろん今は許容していいとは思うんですけれども、ただ、特許を出そうというふうにされる方であれば、ちゃんとデジタル上のPDFというものにして出してくださいよということを推奨するぐらいのことは、やはりやっていく必要があると思います。

 多くの特許をこれからどんどん生み出して、そのスピードを速めていく、審査のスピードを速めていくということも、これは特許庁としてやはり頑張らなきゃいけないところだと思います。そういったディテールにこだわって仕事をするというのは結構大事だと思いますので、そこは、出願する際にそういったことをしっかりと申請する側にお伝えするという努力もしていただきたいというふうに思います。

 時間がちょっと余裕が今日はあるので、一言、委員の皆様方と、そして経産省の国会連絡室の人にもちょっとお願いしたいんですけれども、答弁者もファクスをやめてください。答弁者の、ファクスじゃなくて、もう本当に、メールで済ませていただきたいんですよね。

 やはり、我々、デジタル化、細かいことなんですけれども、これは委員の側からファクスでお願いしますというような要望があるのかもしれませんが、しかし、先進国の中でファクスなんて使っているところはもう日本しかないわけですから、やはり全て仕事をデジタルで回すというような、そういった細かな努力を、これは役所側もそうですし、議員側もちゃんとそこを意識してやっていく必要があると思います。

 何か平気で、我々、こうやって委員会の中での様々な連絡をファクスでやるというのが、結構普通に言っているんですけれども、私、すごくこれには違和感がありまして。やはり、結局、経産省さんもファクスをするんですが、その文書は別に手書きじゃないですよね。ちゃんとこれはワードか何かで作って、それをわざわざ印刷して、その後、ファクスを送っているというようなことでもありますので。

 そうした細かい仕事の在り方そのものを様々な場所で改善していくということが、日本の生産性の効率にもつながるというふうに思いますし、また、CO2削減、無駄な紙も使わずにやれるということもあると思いますので、非常に細かい話ではありますが、今日はちょっと時間がありますので、そのこともちょっとお願いをしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問なんですけれども、今回の法案、いろいろと一通り勉強させていただきまして、冒頭で申し上げたような、国際標準に合わせていくようなアップデートというものが多く入っていました。

 そういう中で、先ほど質問させていただいたDASの加入とかいうのは、これは世界で一番最初に我々が始めたということで、こういった非常に誇れるような内容もあったんですけれども、ただ、やはりほかの面で後れを取っているという部分もあるのかもしれません。

 質問の時間の関係で、全部を、最先端を行っているのかとか、あるいはどれぐらい日本は遅れてしまっているのかという確認はできなかったんですけれども、やはりこの知財の分野、特に、G7の報道でもありましたけれども、これからどんどん環境が変わってきて、そして、AIによる著作権の侵害とか、新たな問題もどんどん発生していく中で、我が国がこの知財分野のデジタル化という面で、世界に後れを取らずに、そして、ちゃんと最先端で行っているのかどうか、あるいは、スピードが実は遅いんじゃないか、この辺に関する大臣の御認識を最後にお伺いしたいと思います。

西村(康)国務大臣 私が、昭和六十年、一九八五年に経産省に入ったんですが、その頃にちょうど、ペーパーレス計画ということで、特許全体のコンピューター処理をしようということが始まっていた頃だというふうに思います。その後、平成二年に世界初の電子出願システムを導入したというふうに認識をしております。

 その後、様々な取組の中で、原則全ての申請手続についてオンライン申請を可能とするべく、手当てを行ってきているというふうに思います。

 そして、御指摘があったように、今回の改正で、デジタルな空間における様々な態様について、不正競争を明確化したわけであります。

 この間、小野議員ともいろいろ議論させていただいたチャットGPTを始め様々、AIを含めていろいろな技術が進化をしてきておりますので、そうした新しい時代に対応できるように、言語モデルだけではなくて、画像、動画、ロボティクス、様々なモデルも出てきておりますので、そういったことに知財がどう対応していくのかということは物すごく重要な課題だというふうに思いますので、そうした新しい技術に対応した知財の在り方も引き続き御議論させていただきながら、我々も心して取り組んでいきたいというふうに思います。

小野委員 ありがとうございます。

 昨日、私も、自民党の平先生が主宰された、コンテンツ認証イニシアチブというようなことについても知って、やはり、民間の方でも進めていますが、これは政府の方も乗り遅れないで、逆に旗振りをするという気概でやっていただければというふうに思いますので、大臣、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、山下貴司君。

山下委員 自民党の山下貴司でございます。

 私、自民党の知的財産戦略調査会のデジタルコンテンツ小委員会の小委員長も務めておりまして、今回の法改正、これは、デジタル化、国際化に対応して知財制度を一括して見直すものでありますし、特に、メタバースなど、デジタル空間での新しい経済取引が活発化している中で、極めて重要な法改正と考えております。

 この法改正においては、例えば、他人の商品の形態を模倣したものを提供する行為をデジタル空間でも規制対象とする、あるいは、商標でも、これまで認められてこなかった領域をカバーする、営業秘密の保護を強化するなどがございます。本日はこれを中心に伺いたいですけれども、ほかにも、外国公務員贈賄罪でも罰則を国内最高レベルまで引き上げるなど、時宜を得た改正と認識しております。

 それでは、まず、形態模倣、意匠の関係について。

 今お手元に資料を配付資料として配っておりまして、今改正の全体像は資料一ということでありますが、デジタル空間上の知財保護について、これは資料二と資料三を見ていただきたいんですけれども、既に様々な保護措置が取られております。

 デジタル空間では、例えば勝手に音楽とか写真を使ったら著作権法であるとか、あるいは勝手に商標をデジタル空間上で使ったら商標法とか、そういった適用対象があるんですけれども、デザインに関わる意匠法というのは、基本的にはリアルなものに限られておりまして、デジタル空間には及ばない。

 この点、不競法では、デジタル空間におけるデザイン等の形態の保護について、例えば、周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為など、これは不正競争として規制されているということでありますが、他人の商品の形態模倣提供については、原則としてリアルなものしか対象となっていなかったものを、今回、対象とするということでございます。

 資料二においては、リアルなものを例示はしているんですが、これをデジタル上で使う行為、これも適用対象となるということでありますが、本改正で規制対象となるデジタル空間上の形態模倣について、どのような基準で判断されることになるのか、周知表示や著名表示とどういうふうに違うのかということについて、これはリアルの商品では裁判例が既にあると思いますので、それを踏まえて、ちょっと分かりやすく政府参考人に教えていただければと思います。

飯田(祐)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、今回は、不正競争防止法の形態模倣行為における対象にデジタルを加えるということでございまして、この場合の模倣するは、他人の商品の形態に依拠しているか、これは、例えば、アクセス可能性で原告の商品が販売された後に被告商品が販売されているですとか、それから短期間で被告商品が販売開始されたことなど、そこで依拠しているかどうか、それから、他人の商品の形態と実質的に同一の商品を作り出しているかどうかということが模倣の定義でございます。

 このうち、実質的に同一とは、真正品と模倣品を対比いたしまして、形態が同一であるか、実質的に同一と言えるほどに酷似しているか、私ども、いわゆるデッドコピー品と呼んでいますけれども、そういうことが求められております。具体的には、対象となる商品を比較して、商品の形態全体から見て独自の部分が実質的に同一であるかどうかで判断されるということでございます。

 他方、もう一つ御指摘いただきました、周知表示混同惹起行為、それから著名表示冒用行為におきましては、既にデジタルも対象になっておりますけれども、この両者の場合には、同一、酷似に限らず、類似していても不正競争の対象となっております。

 具体的には、取引の実情の下において、取引者や又は需要者が、両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似なものと受け取るおそれがあるかどうかで判断される、こうした違いがございます。

山下委員 ありがとうございます。

 不正競争防止法上は、周知でもない、著名表示でもないけれども、形態をデッドコピーをする、こういった行為をデジタル上でも禁止するものだということでありますけれども、このデッドコピーに関して、たしか期限三年ということで区切っております。

 著名表示や周知表示というのはこうした期限がないということで、果たして三年で足りるのか、三年を超えて、これが例えば有名になったり、みんなが本当に認識したりするようになった場合には、どういう規制になるのか。場合によっては、デジタル上の意匠法の改正とか、そういうのも踏まえるべきじゃないかという意見もありますけれども、当面、現行法の中で、改正法も含めて、どういうふうな対応関係になるのかということについて教えてください。簡潔に。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 デジタル空間におけます画像の意匠権による保護に関しまして、現行は、自動販売機の商品選択画像やカーナビの経路表示画像のように、画像デザインによって機器や機器に関連するサービス等の付加価値を向上させるものに限って保護の対象としておりまして、装飾的な画像や映画、ゲーム等のコンテンツ画像は保護対象となってございません。

 デジタル空間における画像の意匠権による保護につきまして特許庁政策推進懇談会において検討いたしましたところ、意匠権による画像の保護範囲を装飾的な画像やコンテンツ画像にまで拡大することは、意匠権が、不競法の形態模倣規制とは異なって、他者の模倣ではなく、自分が独自に創作した意匠に対しても他者の権利が及ぶため、クリエーターの創作活動に与える影響を懸念する声があったことから、中長期的視野で検討を深める必要がある旨取りまとめられたところでございます。このような議論も踏まえまして、今後も、ユーザーの意見も聞きながら、引き続き対応を検討してまいります。

 一方、不競法におきまして商品形態を模倣した商品を提供する行為を不正競争としております理由は、先行者が資金、労力を投下して商品化した成果にただ乗りして利益を得ることが、事業者間の公正な競争を確保する観点から望ましくないからでございまして、主な保護対象となるファッション等の商品はライフサイクルの短いものが多いところ、先行者の投資回収期間を踏まえ、販売開始から三年間を保護期間としてございます。

 デジタル空間上の商品におきましても、ライフサイクルが短いものが多いと想定されますところ、その模倣品対策として、この三年間の保護期間により、適切な保護を図ることができると考えてございます。

 なお、この三年間の保護期間のうちに商品の形態が周知や著名となった場合には、当該商品の形態と類似した商品を電気通信回線を通じて提供する行為は、三年が経過した後も、周知表示混同惹起行為や著名表示冒用行為に該当し、不正競争として差止めや損害賠償の対象となり得ます。

 こうした措置によりまして、行為規制法であります不正競争防止法において十分な保護が行われていると認識をしてございます。

山下委員 今回の改正によるものは、確かに三年なんだけれども、これはデッドコピーだよと。ただ、それがだんだん有名になって、例えばケリーバッグであるとか、あるいは、周知、著名表示のような形態になったような場合には、今度はそちらの方で三年を超えても規制対象になりますよということで、デジタル空間においても保護されるということでございました。

 次に、そうした形態模倣行為の次に、営業秘密保護の強化ということで、先ほど損害賠償額の拡大については同僚議員から質問がありました。私が伺いたいのは、営業秘密使用の推定の拡大ということでございます。

 これについては、現行法では、資料の五にもありますけれども、被告が営業秘密を不正に取得しなきゃいけない、スパイ行為のように。かつ、その営業秘密を使用すれば生産できる製品を生産している場合には、営業秘密を使用したと推定できる規定があります。だから、推定だから立証が容易になるわけですよね。

 これは非常に強力な規定なんですけれども、ただ、これは、推定が働くのは、産業スパイなどの悪質性の高いものに限定されている。しかし、オープンイノベーションや雇用の流動化を考えると、産業スパイまではやっていないんだけれども、元々従業員として働いていました、それで、適正にそれをダウンロードなりなんなりしてアクセスして、そして、辞めた後、勝手に使っちゃう、あるいは、不正な経緯を知らずに使っていたけれども後で実は真実を知りましたというような場合、これについても対象を広げるべきじゃないかということであります。

 そうしたことで、営業秘密の使用の推定の拡大をする、挙証責任の転換をされるわけですけれども、これの実質的な意義と期待される効果、これをちょっと端的に教えてください。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 もう既に委員からほぼ趣旨を御説明いただいたものですから、ありがとうございます。

 まさに、営業秘密を用いて生産するなどの不正使用行為でございますが、やはり侵害者の内部、工場の中などで行われるものですから、営業秘密保有者から不正取得した営業秘密を侵害者が実際に使用しているかを原告が立証することは困難ということでございまして、これを、生産方法等の技術上の秘密を不正に取得した者が、その秘密を使用すれば生産することができる製品を実際に生産した場合には、当該秘密を使用したはずであるとの経験則が働くことから、当該使用の秘密についての立証責任を侵害者に転換する、これが使用等の推定規定でございます。

 この対象は、先ほど御指摘がありましたように、まさに産業スパイ、あるいは、こういった産業スパイの経緯を知っていながら情報を入手した者というふうに、悪質性の高い者に限定してございますけれども、これは、御指摘にございましたように、昨今のオープンイノベーションの進展ですとか雇用の流動化等を踏まえまして、今般の改正においては、元々アクセス権限のある元従業員などがその営業秘密が記録された媒体などを許可なく複製した場合、あるいは、不正な経緯を知らずに転得はしたけれども、その経緯を事後的に知った者が、警告書などが届いて不正な経緯を事後的に知ったにもかかわらず、営業秘密が記録された媒体などを削除しなかった場合といった、産業スパイなどと同様に悪質性が高いと認められる場合に適用対象を拡充するものでございます。

 これによって、営業秘密侵害事案で多く見られる元従業員の競合相手方への転職事案、こういったもののうち、悪質性の高い場合にも推定規定が適用可能となることから、これまで以上に営業秘密保護の強化というものを図れると考えております。

山下委員 こういったことで推定規定が働くということは、これは日本の裁判所でそういった推定規定が働くということで、通告はしていますけれども、こちらからちょっと時間の関係で申し上げると、例えば国際的なこういった営業秘密の侵害とかがあるわけでございます。某国が、従業員として働いてきて、一身上の都合で辞めましたといって、その某国の方で勝手に使われちゃっているということもあるということでございます。

 こういった国際的な営業秘密侵害について、今回の法改正では、新たに不競法を適用して、日本の裁判所に訴訟管轄を認めることとしたということで、この背景と効果ということについては、レクを受けた内容で説明をすると、結局、これは管轄をめぐって非常に争いがあって、不毛な裁判上の争いがあるということで、これが某有名な鉄鋼の関係の事件でも争われたということ。これがなくなって、日本に管轄があるんだよと。日本に管轄があれば、例えば先ほどおっしゃったような推定規定も活用しながら適正な損害賠償ができるということで、これも非常に大きな効果があるんだろうというふうに思います。

 次に、氏名を含む商標なんですが、資料六をちょっと見ていただくと、要するに氏名表示、我々、特に服飾関係なんかは氏名を使った商標というのが非常に有名なわけですけれども、最近、裁判所が、ブランドに詳しくないのか、例えば、「ヨウジヤマモト」、「ジュン アシダ」、これを拒絶査定をやったというようなことがあった。既に同一のものは過去に認識されているんだけれども、駄目だ、人の名前だから、そういうことなんです。

 今回、これが改正されることによる効果、これは、最後、大臣に聞きたいので、役所からは端的にお答えいただきたいと思うんですが、これの効果を教えてください。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたとおり、ほかにも事例もございまして、例えば、アルファベットで「TAKEO KIKUCHI」といった形でデザイナーの方が氏名のブランド名を商標として出願しても、同姓同名の他人の承諾がない限り、当該商標の出願が拒絶されるという事態が生じているところでございます。

 こういった中で、デザイナーの方、服飾を含むデザイナーの方からの、氏名をブランド名として採用することの多いファッション業界を中心に、本規定の要件緩和の要望があるということでございますので、こういった方々の御要望を踏まえて今回改正をいたしまして、こういった方々の御出願もいただけるということを期待をしているところでございます。

山下委員 裁判上、非常に厳しいような認定をされていたことに対して、きちんと法律で手当てをしたということでございます。

 こうしたことも含めて、様々な、知財一括法ということで、本当に大改正を成し遂げていただいているわけですけれども、この知財一括法について、これが、西村大臣、成長戦略の責任者としても閣僚としてなされましたけれども、今改正がこういった成長戦略に及ぼすインパクト、それをどのように御認識か、是非、希望が持てる答弁をよろしくお願いいたします。

西村(康)国務大臣 まさに、産業構造が物すごく速く変化をしておりまして、新たな技術がどんどん進化をしてきているということで、付加価値の源泉が物からサービス、さらには無形資産へと変わってきている、そんな時代だというふうに思います。

 現在、日本のサービス収支を見てみますと、まさに知財の使用料の国際収支は世界で三番目の黒字なんですが、アメリカが九兆円、ドイツが四兆円の中で、日本は約二兆円。かなり増えてきてはいるんですが、まだアメリカ、ドイツに比べると少ないということで、今後ますます、まさにAIやメタバースなどの登場によって知財の重要性は高まってくるものというふうに思っております。

 その中で、先ほど来御議論いただきましたように、デジタル化に伴う、あるいは国際化に伴う様々な要請に応える形で、今回、一体的に見直しているものであります。

 メタバースへの対応、あるいは登録可能な商標の拡充とか、手続の簡便化とか取組をしてきておりますので、是非、クリエーター、デザイナーの方、そして、スタートアップを含めて大いに活用していただいて、知財戦略の中で、経営をしっかりと前へ進めていただきたい。その中で、無形資産への投資、国内投資の拡大、そしてイノベーションを起こしていくというところを是非強力に進めていきたいというふうに考えております。

山下委員 ありがとうございました。終わります。

竹内委員長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 不正競争防止法等の一部を改正する法律案、知財一括法ということで、早速、通告に従いまして質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回、知財一括法ということで、様々な、特許の関係、商標の関係、不正競争防止法等々を含めて、かなりいろいろな論点で法律を一括で改正をしていただいたと思っております。当然、その背景として、デジタル化や国際化というふうなことがある中でということで、非常に重要な法案だというふうに思っております。

 この知財の制度、今日もずっと関係の議員の皆様の質疑もお伺いもさせていただき、かなり専門的な議論になることも多いんですけれども、非常に日本の成長にとって重要な分野であるというふうに改めて痛感をしております。今回、制度についても、私も、かなり制度も専門的ですので、もう一度勉強もさせていただきまして、また、いろいろなビジネスの現場からもいろいろなお声もいただいております。そうしたお声を基に、一部重複するような質問もあるかもしれませんけれども、質疑をさせていただければと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず冒頭、西村大臣の方にお伺いをしたいと思うんです。

 先ほどの山下先生への最後の御答弁にもありましたとおり、知財のような無形資産への投資を進めていくということが日本の成長にとって非常に大事だということは、経済産業省でもずっと議論もしてまいりました。日本の成長率が低い、あるいは企業の生産性が伸びない、これも数字で比較すると、もう大臣もよく御承知かと思いますけれども、やはり日本は有形資産の投資の割合が非常に高くて、七割ぐらい有形資産だというデータもあります。アメリカなどは無形資産が逆に八割ですとか、かなりの割合にあるということでございます。やはりここが成長の違いではないかということもございますし、今回、スタートアップなどがしっかりと知財を活用して成長できるように、こういうことも法律改正の大事な目的の一つだというふうにも挙げられております。

 岸田政権、スタートアップ元年ということで、昨年来、政策を強化をしております。もちろん、スタートアップもいろいろな論点もありまして、そもそも人材の問題ですとか、あるいは資金のような話ですとか、当然、事業段階に応じた支援ですとか、いろいろなことが、全部やっていかないといけないんですけれども、知財の分野でもそれをしっかり後押しをしていくということが今回非常に大事なんだろうというふうに思います。

 ですので、ちょっと総論的なところで、まず冒頭、大臣にお伺いをしたいんですけれども、スタートアップや中小企業、知的財産を活用して成長していくということは非常に大事なことだというふうに思います。今後の国の取組、大臣としての御決意も含めて、また、この法案がそうしたことにどのように資するのかというところも含めて、大臣の方からまずは総論的に御答弁いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、知財は企業のイノベーションの源泉でありますし、また、イノベーションを時代時代で起こしていく原動力となる一つの大きな主体が、やはりスタートアップでもあります。そうした中で、スタートアップを始め知財を活用すること、企業の経営力強化の観点で極めて重要であるというふうに認識をしております。このため、経産省におきましては、中小企業やスタートアップにおける知財を活用した経営力の強化に向けた支援を行ってきております。

 具体的には、スタートアップに対しまして、ビジネスの専門家とともに、弁理士、弁護士など知財の専門家をチームで派遣し、経営戦略と一体となった知財戦略の構築を支援するプログラムであるとか、あるいは中小企業が技術、ブランド、デザインなど知的財産について相談可能な、いわゆる知財総合支援窓口、これを全国四十七都道府県に設置をしてきておりますし、また、中小企業などにおける外国への出願費用とか、海外で権利侵害された場合の訴訟費用への助成などの取組も行ってきております。

 さらに、本年三月には、特許庁、そして独立行政法人工業所有権情報・研修館、INPIT、それから日本弁理士会、そして日本商工会議所が知財経営支援ネットワークを構築をし、イノベーションの掘り起こしから知財経営の推進、事業化まで、きめ細かく支援する体制を強化をしてきているところであります。

 こうした取組によって、中小企業、スタートアップにおける知財経営の更なる定着、そして稼ぐ力の向上に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えておりますし、是非、新しい時代に、こうした無形資産への投資も含めて、知財を活用しながらイノベーションを起こしていく、その中心的な主体として、中小企業の皆さん、スタートアップの皆さんに頑張っていただきたいなというふうに思っております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 冒頭、大臣から総論的な形でお話をいただきました。先ほど大臣もお話をいただいた、各都道府県に総合支援窓口を設置をしていただくであるとか、あるいは、INPITなどのそういう機関も活用して、やはり中小企業に対しては、特にそういう経営戦略等も含めた伴走型というか、しっかりとそういう支援を、あるいは相談できるような、そういうところを充実をさせていくというところが非常に大事だというふうに思っておりますし、また、そうしたことをしっかり活用していただくというか、やはりまだまだそういうところがあるというふうなことを御存じないというところも多いかというふうに思います。

 これは、知財に限らず、経産省がやっているよろず支援の相談窓口みたいなところも含めてそうなんですけれども、しっかりといろいろな形で国が後押しをしていくよということは、体制としてはやはり整えているわけでございますので、あとは、どのくらい活用をしていただいているのかというところも、大臣、是非しっかり今後も見ていただいて、いろいろな場面で、こうした周知徹底等も含めて、是非、活用を促していただけるようにまたお願いできればというふうに思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、少し法律の条文に沿って、各論の方にも入らせていただきたいというふうに思います。

 先ほどまさに大臣の御答弁にもありました、中小企業が特許をしっかりと活用しやすくするということが非常に大事だというふうに思っておりまして、そういう意味では、以前から、特許を申請するに当たっての様々な、一つは手数料の軽減みたいな措置、こういうこともやってまいりましたし、あるいは、そうしたところに対して助成をしていく、予算措置的な、そういうところもやってきたというふうに思っております。

 例えば、特許料の手数料。今回、中小企業の手数料等減免制度というところの改正もあるんですけれども、今、手数料は二分の一に軽減をされているということであります。元々は全部の中小企業対象ではなかったんですけれども、平成三十一年ですかね、改正のときに、これを拡充をして、できるだけ多くの中小企業の方が特許を活用していただきやすくというところを狙ったものであるというふうに思っております。

 今回、申請の件数制限ということで、確かに、事例を見ますと、年間千件以上申請をしているような、大企業ぐらい申請をしている例もあるというふうな実態を踏まえての改正だということも御説明はいただいておるんですけれども、そもそもの、中小企業に知財をしっかり活用をどんどんしていただこうという大きな政策の方向性、特に、知財の活用の意欲の高い中小企業であるとかスタートアップ、こうした方々の意欲を阻害をする制度になってはいけないんじゃないか、こういう現場からのお声もいただいております。

 改めて、制度改正の概要、あるいはその趣旨、そして、こういう意欲の高い中小企業やスタートアップというものを果たして阻害しないのか、こういう点についても政府参考人の方から答弁をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 審査請求料の減免制度でございますけれども、資力等に制約のある者による発明を奨励し、産業の発達を促進するということが制度趣旨でございます。

 二〇一九年から中小企業一般にその対象範囲を拡大をいたしまして、この推移、経緯を見ておりますと、一部の中小企業の方におきましては、平均的な大企業をも大きく超えるような件数の審査請求を行い、減免の適用を受けているという実態がございます。こうした、制度趣旨にそぐわない形での利用が見られているという実態がございますので、今回、審査請求料の減免を受けられる件数に一定の上限を設けることによりまして、運用を適正化させていただきたいというものでございます。

 上限設定の対象者や上限件数につきましては政省令で定めることとさせていただいておりますけれども、御指摘のとおりでございまして、意欲ある中小企業やスタートアップ等によるイノベーション創出を阻害しないよう最大限配慮をするという形で、今後決定してまいりたいと思ってございます。

 こうした考え方を踏まえまして、新産業を創出する高い能力が期待される小規模事業者、スタートアップや、企業とは性質が異なる大学、研究機関等に対しましては、これまでと同様、上限を設けないことを想定をしてございます。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 今後、具体的には政省令でというお話もございましたが、そうした考え方をしっかり踏まえて制定されるものというふうに受け止めさせていただきました。

 もう一つ、ちょっと済みません、順番前後しますけれども、中小企業に対するこういう知財あるいは関連の支援ということで、ずっと議論にも出ておりますが、損害賠償算定規定の見直しのところも少しお伺いができればと思っております。

 大変小さな企業であっても、非常に価値のある技術を有しているようなところも非常に多いかと思いまして、それが侵害されるケースというのはあるというふうに思っております。それは大変大きなロスということで、今までは、営業秘密を持っていた方の実際の生産能力や販売能力というところによって損害賠償が考えられてきたということで、これが不十分ではないかというふうな御指摘を受けて、今回、ライセンス料相当額のような違った概念をしっかり入れて、損害賠償のところを拡充をするという改正をしております。

 具体的な制度の議論はもう今までの中で様々あったかと思うんですけれども、今回、こういう価値のある技術を有しているいろいろな中小企業に対するメッセージとして、こうした企業などが営業秘密を侵害された場合に、今回の改正によって、どのように救済というものが大きく今までよりも拡充をして向上していくのかというところについて、少し制度を分かりやすくお話しいただければと思いますので、よろしくお願いします。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 現行法における営業秘密を侵害された場合の損害額の算定でございますが、侵害者が販売した数量に被侵害者の一個当たりの利益の額を乗じて得た額を損害の額とすることができるわけですが、この損害の額は、先ほど御指摘があったとおり、被侵害者の製造や販売などの能力に応じた額を超えない限度となっております。

 このため、例えば、中小企業の営業秘密を侵害した企業が大量に侵害品を販売している場合にも、営業秘密を侵害された中小企業は、自らの製造や販売の能力を超えない限度でしか損害の請求ができなかったということでございます。

 しかしながら、被侵害者自身が販売をしなくても、一般的には、営業秘密などを他人に使用許諾、ライセンスをすることにより利益を得る機会もあると考えられまして、そのようなライセンス機会を毀損したことの逸失利益も含めて損害額を算定することが望ましいと考えられるということから、販売等の能力を超える分について侵害者に使用許諾、ライセンスをしたとみなして、使用許諾料相当額として損害賠償額を増額できる規定を追加することとしたものでございます。

 その結果、まさに販売等の能力が大企業に比べ制約のある中小企業にとりまして、その能力を超える分についても損害請求が可能になることから、より適切な損害回復が可能になるものと考えております。

中野(洋)委員 時間となりましたので終わらせていただきますが、今回、様々、中小企業やスタートアップにとってもプラスになる改正かというふうに思います。しっかりと中身のところも皆さんに知っていただいて、是非御活用できるようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れさまです。国民民主党の鈴木義弘です。

 順次質問をさせていただきたいと思います。

 今回の不正競争防止法、この法律が二〇一八年に改正して五年しかたっていないんですね。この五年間で法改正に向けた立法事実が、要するにどのぐらいの不正があったのかというのと、それにより被害金額がどのぐらいあったのか、この五年間の間で、まずそれをお尋ねしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の不正競争防止法の改正項目、多岐にわたることから、主要項目の一つである国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化、これについて申し上げますと、日本企業の営業秘密が海外に流出している疑いのある事案がここ数年で毎年一、二件程度、これは刑事事件として発生してございます。民事事件も、正確な把握が難しいんですけれども、同等以上発生していると見込まれてございます。

 また、この五年間における海外関連の営業秘密侵害事案の損害賠償額の全体、総額というのはなかなか把握が難しいのでございますが、最高額としましては、例えば約十億円の損害賠償が認められた、このような事案も出てございます。

 このように海外での日本企業の営業秘密の侵害が生じている中で、裁判管轄や準拠法をめぐる争いに多くの時間が割かれることのないよう、日本の裁判所でも民事の損害賠償等を請求できることを明確化してほしいというような経済団体からの要望もいただいておりまして、こういったことも踏まえて、海外で営業秘密が不正使用されても日本の裁判所で損害賠償等を請求できることを明確化した、こういったような形で、一定の立法事実を踏まえて改正しているところでございます。

鈴木(義)委員 御答弁いただいたんですけれども、これ、できるのかなと思うんですが、例えば日本の営業秘密を海外で生産して海外で売っちゃった場合に、日本の裁判所に訴えたといっても、実際、相手方の国で取れるものなのかという話ですね。もうこれだけいろいろなもの、人とお金と物が動いてしまう時代の中で、日本の国内法を整備しただけで、実際に海外で日本の営業秘密を使って商売を始めちゃって、裁判をやる、日本で裁判を起こしたとしても、相手方がもう海外にいるということになったときに、実際にそこで損害賠償でお金をもらえるものなのか。

 じゃ、日本の法律で、外国の人に懲役なり罰金なりを科すことができるのかという問題をクリアにできるかどうか、再度お尋ねしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、海外における営業秘密侵害事案につきまして、先ほどもちょっと申し上げておりますけれども、少なくとも日本国内に相手方企業の財産があれば、それは、その財産の差押えは可能だと。

 日本国内に相手方企業の財産がない場合でございますが、海外にある相手方企業の財産を差し押さえるためには、海外の司法当局による日本の判決の承認ということが必要になります。このため、場合によっては強制執行が困難となる場合もあるというのは御指摘のとおりでございます。

 しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、日本の裁判所で日本の不競法に基づく判決が出ることが明確になれば、それに基づいて、海外の訴訟相手を和解を含めた日本での交渉の場に引き出すことは可能だということになりますので、企業の訴訟戦略的にもメリットは生じるということでございます。

 あともう一つ、海外で営業秘密侵害があった場合にこれを日本の刑罰で罰せるのかということにつきましては、海外における営業秘密侵害についても、日本の営業秘密であった場合には、実は可罰である、罰することは可能であるということで、その際には、刑罰が通常の罰則に比べてもやや重い刑罰という形になってございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 これは聞いた話なので、実際の事実がきちっと提示できないと失礼な話になってしまうんですけれども、ある外国の人が日本で会社を起こして、二年ぐらいでその会社を畳んでしまって、また本国に戻っちゃう。そこで何を商売にしているかといったら、物を売るんですけれども、そこに消費税も含まれます、消費税を払わないでそのまま帰ってしまう事案の話を聞きました。何年かたって、また日本に来て、違う会社を起こすんだそうです。商売するのは日本でやる。それが不正競争防止法に関わるものなのか知財に関わるものなのかは別として、そういう方がいらっしゃる話を聞くんですね。

 それに対応できるかといったら、税務調査が入るといっても、一年目は大体、会社を起こして、調査が入るというようなことをしないんですよね。二年目ぐらいに、入るんじゃないかと思ったときに会社を畳んじゃって、自分の国に帰っちゃう。また、ほとぼりが冷めたら日本に来て商売を始める。こういうパターンに対応できるかといったときに、これはなかなか難しいと思うんですけれども、そういうことも視野に入れて対応してもらえたらなというふうに思います。

 二番目、外国公務員等に対する不正の利益の供与等に関わる罰則の見直しのところで、今まで日本では罰金額が五百万だったのを、これを三千万ぐらいに引き上げたというのは承知しているんですけれども、でも、他国では、米国で約三千三百万、為替によって前後するんだと思うんですけれども、英国では上限がなし、ドイツでは約十五・二億円と、上限が日本よりも圧倒的に高い国が多いんですね。何でこんなに、五百万から三千万にしたというのは多少引き上がったんでしょうけれども、それでもやはり外国から見れば安いという感覚。

 これはやはり法律を作ることによって、事件にならない方がいいんですよね。事件になって三千万取ります、いろいろな制度で損害賠償を訴えて、じゃ、取れるかといったら、今お話ししたように、外国に戻ってしまったら取りようがない、現実。だから、抑止のためにはもっとハードルを上げておいた方がいいんじゃないかと考えるんですね。何でこんなに安いのか。

 あと、スライド制を導入している、損害額に応じて、三千万アッパーじゃなくて、一億だとか十億だとかといえばどんどん罰金額を上げていくというスタイルの国もあるんですけれども、なぜ、じゃ、日本はこのスライド制を導入しなかったのか。

 この二点をお尋ねしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 外国公務員贈賄罪の罰則につきまして、外国公務員贈賄の防止条約、その実施法でございますので、この条約についてですが、第三条において、自国の公務員に対する贈賄に適用されるものと同等のものとする旨が規定されてございます。

 現在の外国公務員贈賄罪の自然人に対する罰金刑の上限額は五百万、御指摘のとおりでございますが、日本の公務員に対する贈賄罪、これは刑法百九十八条で規定されておりますが、この罰金刑の上限額は二百五十万であることから、現行法においても、条約の先ほどの三条を踏まえますと、条約の履行義務を果たしていると考えてございました。

 しかしながら、現行の法定刑につきましては、ほかのOECDの外国公務員贈賄防止条約の加盟国と同等の水準とは言えない。OECDから勧告を受けているとともに、十分な進展がなかった場合には何らかの措置を講じる可能性を指摘されたところでございますし、また、国際的に事案の高額化も想定される中で、効果的な犯罪抑止を図る必要性が高まっているといった課題がございました。

 これを踏まえまして、昨年設置した外国公務員贈賄に関するワーキンググループ、これは私どもの審議会の下につくりましたけれども、そこにおきまして、法定刑を引き上げる改正をすべきとの御提言をいただいたことを受けまして、外国公務員贈賄防止条約をより高い水準で的確に実施するため、自然人に対する罰金刑の上限額を、国内の財政経済関係犯罪の中で最高レベルとなる三千万円に引き上げることとしたものでございます。

 なお、法人に対する罰金スライド制の導入についての御指摘がございましたけれども、こちらにつきましては、この同じワーキンググループにおける議論においては、日本においてはやはり一般的な制度ではないということ、贈賄で得られた不正な利益の算定の困難性を踏まえると運用に恣意性が生ずるんじゃないかというような指摘がされる等、慎重な意見が多かったところでございます。

 こうした御意見も踏まえつつ、効果的な犯罪抑止のためには、法人に対する罰金刑の上限額を引き上げることが適切であると今回判断したものでございます。

    〔委員長退席、中野(洋)委員長代理着席〕

鈴木(義)委員 例えばアメリカなんか、日本と、損害賠償のときの懲罰的な考え方がアメリカにあるから、例えば損害額が一億しかなくても、懲罰的な意味で十億とか二十億とか百億とか損害賠償をかけるんですよね。日本はどっちかというと行儀がいいから、隣近所をよく見て、国内の公務員の人と見比べてという話になったときに、じゃ、三千万だけれども、五億も十億ももしかしたら袖の下をもらっちゃったり使ったりしたときに、三千万でいいのかというのは必ず議論が出てきちゃうと思うんです。それは、これから何年か先にまた見直しということを考えるんでしょうけれども。

 あと、それと同じように、懲役刑も、日本は五年で、他国は十年以上と上限が長い国が幾つも散見されるんですね。なぜ日本は他国よりも短いのか。今、審議官が御答弁いただいたのと同じような答弁になると思うんですけれども、簡潔にお答えいただきたいと思います。

蓮井政府参考人 御指摘のとおりでございます。現在の外国公務員贈賄罪の懲役刑の長期は五年であるのに対しまして、日本の公務員に対する贈賄罪の懲役刑の長期は三年であることから、現行法においても条約の履行義務を果たしていると考えたところでございますが、この条約をより高い水準で的確に実施するために、懲役刑の長期をほかの国内の財政経済関係犯罪の中でやはり最高レベルである十年に引き上げるとしたものでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 いただいた資料を見ていきますと、米国で、日本の企業に対して何百億も罰金をかけるんですね。そういう日本の企業さんが外国で仕事を取りたいがために賄賂を渡したという情報が、アメリカは情報をちゃんと取れるんだね、日本とはちょっと制度が違うんでしょうけれども。日本が幾ら制度を国内で上げたとしても、じゃ、そういうリサーチを誰がやるのかという問題が出てくると思うんです。所管は経済産業省が所管の法律になるんですけれども、実際に情報を取ったり、それを検挙する、捜査をするというのは違う部署になってしまうと思うんですね。

 幾ら法定刑を上げたり、罰金刑を上げたとしても、外国の政府に袖の下を渡しているのに、表から行って、こういうことはありませんか、大丈夫ですかって。例えば内部告発からもらったとしても、その外国の政府の役人に袖の下を渡して仕事をもらっちゃっているのに正直に話をするかといったら、私はなかなかそこのところが難しいんじゃないかと思うんだよね。

 じゃ、外国の政府との連携とか、誰がこれを捜査をするとか検挙をするとかという話になっていくのか、まずお尋ねしたいと思います。

    〔中野(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

保坂政府参考人 犯罪の捜査ということになりますと、警察ですとかあるいは検察がその端緒をつかんで捜査を開始するというのが一般的でございます。

 具体的にどのような形で端緒をつかむのかとか、あるいは、どのような捜査をするかにつきましては、捜査機関の活動内容に関わる事柄でございますので、具体的にお答えすることは差し控えたいと思います。

 一般論として申し上げますと、捜査当局におきましては、刑事事件として取り上げるべきものにつきましては、今回のいわゆる外国公務員贈賄罪に関する改正の趣旨も踏まえつつ、必要に応じて、国際的な捜査協力の枠組み、これも活用して外国にある証拠の収集にも努めるなど、法と証拠に基づいて適切に対処するものと承知をいたしております。

鈴木(義)委員 やはり連携を取るといったときに、外務省があったり、法務省があったり、経済産業省とか、内閣府とかというのはあると思うんですね。そこと大体連携を取ると言っても、連携しないんだよね。こういうところで答弁するときは、連携するとか、協議、協力するとかと言うんですけれども、そこのところがやはりちょっと日本は弱いかなと思うんです。

 例えば、現金ばかり相手に賄賂を渡すことばかりじゃないと思うんですね。今の時代ですから、キャッシュレスだというんです。こっちから何千万、何億円のキャッシュを持って、飛行機に乗って、相手の国に行ってお金を渡すなんというのはちょっと考えられないよね。日本円で持っていったってしようがないから、使えない国もあるし。というと、そこの国の通貨に現金化して渡したりするんでしょうけれども。

 今、仮想通貨だとか、バーチャルなところでお金のやり取りをしたりするし、あとは、例えば金みたいなもの、今も一グラム七千円ぐらいいっていると思うんですけれども、そういう高価なものを賄賂で渡す。もっと言えば、そこの国の役人さんの子弟が例えば日本に留学しに来たよといったときに、マンションを一室買ってやるとか、もっともっと複雑になっていくと思うんです。

 だから、それは経済産業省だけで完結できるような話じゃないから、そこのところはやはり法務省、検察なり、警察庁とどこまで情報を開示して連携を取るか、これも本当に営業秘密の部類になってしまうと思うんですけれども、その辺の対策は取れているのかどうか、お尋ねしたいと思います。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 外国公務員贈賄罪の取締りにつきましては、先ほど御答弁ございましたように、捜査機関である検察、警察が適切に対処をしていて、事案に応じて、捜査共助等を通じた外国政府の連携がなされているというふうに承知をしてございます。

 私ども、一応法律の方を所管している経済産業省といたしましても、外国公務員贈賄罪が疑われる情報が経済産業省に届いた場合には速やかに法執行当局に情報提供する、あるいは、逆に、個別の事案というわけではないですけれども、一般論としても、不正競争防止法のこの部分にこれは該当するかどうかといったような解釈についてお問合せがあった場合にはこれにきっちり対応するといったことを行っておりまして、引き続き、こうした法執行当局との連携を図ってまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 こういう知的財産の関係の話になれば、やはり一番大事なのはインテリジェンスの話になっていくわけですね。だから、情報をどこまで的確にキャッチして、それにすぐ俊敏に対応するかということが大事になってくると思うんです。

 インターネットを使ってどんどんどんどんITで高度化していけばいくほど、三番目の質問になってくるんですけれども、送達制度の見直しをすることによって、インターネットを通じた送達制度を整備するというふうにうたわれているんですけれども、一番問題になってくるのはセキュリティーの話だと思います。

 先般も、私も法務委員会の方に所属していて、質問された方がいらっしゃったんですけれども、法務省が攻撃に遭っちゃったんだね。セキュリティーは万全にやっているんだと答弁されると思うんですけれども、でも、実際、法務省のホームページにアクセスできないような攻撃が行われたのは事実、あるわけです。

 その辺の、一つの省でそれが起きたんだから、じゃ、自分のところはもっとレベルを上げるとか、何か対応してきたのかどうか、お尋ねしたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 デジタル化された書類を特許庁から出願人にインターネットで送達をするオンライン送達制度につきましては、平成十七年度から運用してございます。ユーザーの利便性向上や手続の迅速化の観点から、今般、この送達制度の見直しを行うことといたしております。

 従来から、このオンライン送達制度の運用に当たりましては、専用の出願ソフトを用いた限定された通信のみを許可すること、複数段階のファイアウォールの設置、多重のウイルスチェックといった措置により、外部からのサイバー攻撃を防ぐとともに、電子証明書を利用した本人認証といった措置によりまして第三者による成り済ましを防ぐなど、セキュリティー確保に万全を期しております。

 御指摘のようなサイバー攻撃等の事案の動向にも十分留意をしつつ、引き続き、オンライン送達制度のセキュリティー確保に万全を期してまいりたいと思ってございます。

鈴木(義)委員 これも法務委員会で質問に使わせてもらったんですけれども、これからは本人確認というのが一番重要になってくると思います、ネットを使えば使うほどですね。相手の顔が見えない、それが本人なのかどうか、その会社が本当に実在しているのかどうか、極端な言い方をすればですね。

 じゃ、本人確認、今までやってきているのかといったら、ほとんど免許証か保険証かマイナンバーカード。そこに出ている写真が本当にその人物かどうか、誰が確認しているのか。誰も分からないんです。それでも本人確認していると。一応それは建前上そうやられるんでしょうけれども、本当にその写真の人物が、私なら鈴木義弘なのかどうか、誰が確認するのか。

 高度化になればなるほど、一回システムに乗ったら後は分からなくなっちゃうというのが、このインターネットがどんどんどんどん高度化になっていくときに、難しい案件になってくるんじゃないかなというふうに思います。

 特に、特許の、知財の関係でいけば、どこの誰が出した、普通余りあり得ないと思うんです。ただ、外国の出願が入ってきたときにどうするかという話が必ず出てきます。だから、日本で出願するんだったら、今のところ日本語に翻訳しないと受け付けないと思うんですね。これが何年か先になったときに、グローバルなんだからイングリッシュでもいいとかチャイナ語でいいとかなんとかという話になると、もっとそれを確認するという作業が出てくると思うんです。そうなったときにどうするという話です。

 それと、意外と、私たちは日本国内にいるんですけれども、リサーチをするのに、お金を払ってリサーチはできるんですけれども、外国の企業が私なら私のところにオーダーをしてきました、じゃ、その企業がどういう素性の企業なのか、どうやって調べるのかというのは、システム化になっていないんです。特許の話ばかりじゃなくてですね。本当にそこの所在のところでちゃんと営業活動しているなり研究開発しているのかというのを、特許庁がどうやって確認するのかという話になってきますよ。膨大な数の特許申請なり実用新案なり意匠登録だとか、外国の企業さんとか個人もいっぱいいらっしゃると思うんです。どこで見分けるかという話です。是非そこのところも入れて、法律が改正になった後も、運用のところで是非お気をつけいただきたいなというふうに思います。

 一つが、次、商標におけるコンセント制度の導入というのがあります。

 消費者に出所混同のおそれがない場合は併存登録を認めるというふうになっているんですけれども、誤認、混同しないと認められる場合はと書いてあるんですね。じゃ、誰がそれを認定するのかという問題です。

 それともう一つ、契約を必ず義務化した方がいいと思うんです、書面で義務化する。

 いろいろな職種の中で、不動産業でもいろいろな、廃棄物でも、必ず法律で書面による契約をしなさいというふうに義務化しているんです。ですから、私はやはり世の中のいろいろな苦情だとか悩み事を話を聞いていくと、元請さんと下請の関係だとか孫請だとか、契約書をほとんど交わしていない。四十年来のお客様だから、今までそういうことはなかったと。でも、トラブルが起きると、じゃ、そのトラブった金額を、よくて折半、下手すれば下請に押しつける業者さんもある。それは契約を結んでいないから。そういう事例を聞くわけですね。

 だから、今回みたいな制度を改正するんだったら、やはり、少しずつでもいいから、契約書を義務化するような形、書面によるですね、口頭契約だけじゃなくて、そういうふうにしていかないと、後でトラブるんじゃないか。Aという使い方でいいよと言ったら、商売っ気が出ちゃってBという使い方をやれば、必ずトラブルになります。だって、口頭で言ったって、いや、何となく、いいよいいよと言ってくれたからというんじゃ、後で必ずトラブルになりますよ。そこのところを防ぐためには、やはり書面を義務づけるような制度を入れないと、後でトラブルになると思うんですけれども、その辺を対策としてお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正で導入するコンセント制度でございますけれども、他人の先行登録商標と類似する後行商標の出願につきまして、特許庁の審査官が、一、先行商標権者による同意、そして二、先行登録商標と出願商標との間に混同が生じないことを説明する書面に基づきまして、出所混同のおそれの有無を実質的に審査をしまして登録の可否の判断を行うこととなるところでございます。

 具体的に、特許庁の審査で確認する内容といたしましては、第一に、先行商標権者によります出願人の商標が登録されることについての同意があること、そして、現在の両商標の使用状況、例えば、実際に商標を使用する商品の用途、販売地、提供地などに違いがあることなどにより現時点で混同を生じていないことを確認することといったこと、第三に、将来的に混同を生じさせないことの取決め、第四に、その他必要に応じまして混同が生じないと審査官が判断できる合理的な説明を予定しているところでございます。

 なお、実際には、事業者の方から、今申し上げた内容が記載された、御指摘がございました契約書の写し等の提出を受けまして、一体のものとして審査をすることなどを想定しているところでございます。

鈴木(義)委員 イレギュラーな話ばかりお尋ねしているのかもしれませんけれども、例えば契約書も、今の時代ですからペーパーで出すんじゃなくてネットで、電子ペーパーというんですかね、PDFでやるかエクセルでやるかワードでやるか分かりませんけれども、そういうもので出してもいいよとなるんだと思うんです。じゃ、それが本物かどうかというのは誰が確認するのかという話だね。

 ペーパーで出すということは、郵送で受け付けるのかメール便でやるのか分かりませんけれども、対面でやっていれば本人確認が容易にできると思うんですけれども、権利を持っている人と実際にペーパーを出した人のをどうやって照合するのかというのは必ず大事になってくると思います。

 次に、デジタル空間における形態模倣行為の防止についてというので、先ほども御質問があったと思うんですけれども、これから、私はちょっと前回もAI倫理について御質問して、十九日の日も一般質疑があるやな話を聞いていますから、もう一回AIについて御質問したいんです。

 結局、AIを利用して商品開発がどんどんどんどん増えていった場合、そのときに、形態模倣行為というのが、現物はあって、AIが作り出していくんですけれども、線が引けなくなるときが私は来るんじゃないかと思うんですね。だから、そうなったときに、ある程度今からでも対応を考えなくちゃいけないと思うんです。

 例えば、絵みたいなやつは誰でも見れば分かるんですけれども、音楽の場合どうするかということです。いろいろなジャンルの音楽がありますから、それをAIならAIにインプットして、そこから新しいものを作り出したときに、これは形態の話なんですけれども、音楽の場合は分からなくなってしまうんじゃないかなと思うんですね。

 だから、今からでも、やはり、どこまでどうするということを議論した中で、防止に対応していくような制度が必要なんじゃないかと思うんですけれども、その点について御答弁できれば。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 不正競争防止法の、御指摘の形態模倣の観点から申し上げれば、例えば、AIを用いて元の商品の形態を模倣した、いろいろAIにデータを入れて、それを模倣した商品が提供される場合というのは確かに考えられると思います。

 この場合に、これが他人の商品形態を模倣した商品の提供行為として不正競争になるかどうかということについては、先ほど来議論がございますけれども、現行の不正競争防止法の要件に基づきまして、他人の商品の形態に依拠をして、これと実質的に同一の形態の商品を提供しているかどうか、この二点の要件に該当するかどうかということで判断されると思います。

 上記要件を満たす場合には侵害者に対して損害賠償請求を行うことができるとなるわけでございますが、御指摘のとおり、今後、新しい技術によってどういった形が出てくるか、それによってどのような更に細かい論点等が出てくるか、こういったことも、今後の訴訟ですとか様々な事案の積み重ねによって、それらに応じた具体的な、個別に更に検討すべき論点、あるいは作るべきルール、こういったものを踏まえながら、しっかり我々は引き続き検討してまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 一つ考えられるのが、発案者は日本で作ったんですけれども、AIを使って、まあAIを使わなくてもいいんでしょうけれども、外国でAIを使って同じ模倣品を作られちゃったときに対応できるのかということです。既にもう模倣品を作って売っちゃっていて、アメリカとけんかしたりしている国もありますしね。

 だから、例えばこういうものでも、ちょこっと形を変えただけで、いや、違うものだよ、それはうちのAIで作らせたものだからあなたのところと一緒じゃないですよと言われたときに、対応できるかということも出てくると思うんです。外国が一番厄介だなと思うんですね。

 六番目、手数料減免制度の見直しについて、先ほども御質問があったと思うんですけれども、中小企業庁の定義というのは過去に何回か見直されて、資本の金額と従業員者数、これも製造業とか農林水産業だとかサービス業だとか、それによって、資本金の額と、オア、従業員の数で中小企業として認定、認定というんですか、みなすんですけれども。

 結局、資本金が一億円しかなく、コロナで一部上場の会社がどうしても売上げがどんどん落ちてしまったので、資本金の額を減額して一億円まで下げて、上場を取り消して、一億円に下げていくんですけれども、でも、実際に資本の部のところの内容が、すごくお金がいっぱいあるわけです。それに対する、資産の部のところにはお金がいっぱい、財産があるわけですね。だから、資本金だけは下げたって、実際、ここの資本の部、資産のところが全然変わっていなければ大企業なんですよ。それも中小企業。

 だから、それは何でといったら、結局、資本金の金額と従業者数で中小企業の定義をしているからそういうことが起きるんですけれども、もし資本の部のところをきちっと捉えますよということになれば、一部、件数に制限を求めるということが、今は資本金の額と従業者数でやっているだけの話なんですけれども、もう一個違う指標を入れることによってカバーできるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺はどうお考えになっているか。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の減免制度の対象となる中小企業の定義につきましては、御指摘のとおり、中小企業政策における定義に従って、資本金や従業員数等を参照しながら運用しているところでございます。

 ただし、減免制度の対象となる中小企業の類型や適用される軽減率につきましては、その制度趣旨を踏まえまして、企業の規模だけではなく、研究開発能力や産業の発達への寄与度等を総合的に勘案して定めているところでございます。

 例えば、中小企業の資本金要件は満たすが大企業から二分の一以上の出資等を受けている、いわゆる大企業子会社については、原則として減免制度の対象外とする一方、その研究開発能力に着目をいたしまして、一定以上の試験研究費等の比率などの要件を満たせば減免制度の対象としているところでございます。

 一方、今般の見直しは、減免制度の対象外である大企業の平均的な審査請求件数をも上回り、数百件以上、企業によっては千件を超える規模で大量に制度利用をされる方が見られることから、こうした方は審査請求料の負担力が十分にあると考えられることから、運用の適正化を図りたいと思っているものでございます。

 このため、見直し後における資力の有無の判断は、企業の資本金等ではなく、減免を受ける一年度当たりの審査請求件数で判断をし、減免を受けられる件数に一定の上限を設けることにより、対応することとしたいと考えております。

鈴木(義)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 不正競争防止法等改定案について質問いたします。

 本法案は、不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法の、知的財産関係の六法を一括して改定すると。その内容は、知的財産の活用と保護に関するもの、デジタル化など手続の整備、見直し、国際的な事業展開に関わる制度整備など、多岐にわたっております。本来ならそれぞれの法案ごとに、これまでの経過や現状はどうなっているのか、改善すべき点や問題点、これを解決するものになっているのかなど、一つ一つ議論することが必要でありますが、この短い審議時間では様々な論点について十分な審議ができないわけでありまして、その中で、知的財産制度を産業の発達と国民生活の向上に資するものにするとの立場で、不正競争防止法と商標法に絞って質問したいと思います。

 まず、不正競争防止法の外国公務員、賄賂に関する罰則強化、拡充部分について確認をいたします。

 西村大臣、この規定は、OECDの外国公務員贈賄防止条約の締結に当たって、その実施を担保する国内法として一九九八年に盛り込まれたものと承知しております。

 条約十二条の相互審査条項に基づく贈賄作業部会による締約国間の相互審査での指摘事項というのがあって、これに対応するために、これまでに、いつ、何回、法改正による対策強化を講じてきたか、そして、今回は、その中で特徴、ポイントはどこにあるのか、簡潔に御答弁願います。

西村(康)国務大臣 お答え申し上げます。

 これまで、御指摘のOECD贈賄作業部会におけます相互審査の指摘に対応するため、四回、不正競争防止法の改正を行ってきております。まず、二〇〇一年に外国公務員の定義の拡充、二〇〇四年に属人主義の導入、二〇〇五年に自然人に対する制裁の引上げ、二〇〇六年に法人の公訴時効期間の延長の四回の改正であります。

 そして、現行の外国公務員贈賄罪への法定刑につきましては、他のOECD外国公務員贈賄防止条約加盟国と同等の水準とは言えず、OECDから勧告を受けるとともに、十分な進展がなかった場合には何らかの措置を講じる可能性が指摘をされ、また、国際的にいろいろな事案の高額化も想定される中、効果的な犯罪抑止を図る必要が高まっているという課題がございました。

 こうしたことを踏まえまして、昨年、産業構造審議会に新たに外国公務員贈賄に関するワーキンググループを設置をいたしまして、その中で、これまでもこうした勧告を受けてきたことや、日本の公務員に対する贈賄罪などの国内の他法令とのバランスを踏まえつつ御審議をいただきまして、法定刑を引き上げる改正をすべきとの提案があったところであります。

 これを受けて、外国公務員贈賄防止条約をより高い水準で的確に実施するために、外国公務員贈賄に対する法定刑を国内の財政経済関係犯罪の中で最高レベルとするとともに、日本に主たる事務所を有する法人の外国人従業員に適用管轄を拡大し、当該法人に両罰規定を適用できることを明確にすることとしたものでございます。

笠井委員 勧告の中で何らかの措置を講ずるとまで言われるほど、なかなか進んでいなかったという話もありましたが、国際的に汚職、腐敗防止活動を展開しているNGOトランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発行している腐敗輸出報告の報告書二〇二二年版では、日本が四段階のうち最低ランク、消極的な国に位置づけられております。

 今年三月にまとめられた外国公務員贈賄に関するワーキンググループの報告書では、我が国の腐敗防止に対するコミットメントを国際社会に発信し、国際的な議論、取組をリードするというふうにあるんですけれども、私、リードどころか随分遅れているというのが、今、日本の実態ではないかと思うんですけれども、その辺の認識、大臣、いかがですか。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、海外のNGOトランスペアレンシー・インターナショナルによる、外国贈賄に関して、輸出に占めるシェアとか外国贈賄事案に対する執行の程度などを考慮して点数づけをした評価において、日本が四段階で最低ランクに位置づけられているということは承知をしております。これは、外国贈賄事案に対する執行件数が少ないことが要因の一つであると認識をしております。

 しかしながら、日本の捜査当局においては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき適切に対処しているものというふうに承知をしております。執行件数が少ないことが必ずしも日本企業が海外で贈賄行為を多く行っていることを示しているとは限らず、このNGOの評価だけで日本企業が外国公務員贈賄罪に対する意識が低いと考えることは適当ではないというふうに考えております。

 なお、同じNGOによる腐敗認識指数の評価によれば、専門家及びビジネスに関わる人の公的分野の不正に関する認識レベルでは、日本は百八十か国中十八位と上位に位置づけられております。このように、日本は、社会として贈賄を不正とする問題意識は強く、必ずしも腐敗防止に対する意識が低いわけではないというふうに認識をしております。

 いずれにしましても、今回の法改正で先ほど申し上げたような改正を行うことにしておりまして、この改正を通じまして、腐敗防止に対する日本のコミットをしっかり示していきたいと思いますし、改正の内容も含め、海外に進出する日本企業がこうした贈賄行為を行うことがないよう、経済団体や中小企業団体とも連携して、積極的にしっかりと周知をしていきたいというふうに考えております。

笠井委員 一つのNGOの評価だけでは言えないんだという話もありましたが、OECDの贈賄作業部会からの審査というのは四回受けているわけですね。このOECDの贈賄作業部会というのは、加盟国同士が相互に審査、評価し合って高めていこうという場ですよね。

 そういう中で、四回審査を受けた中で、一回目には、一九九九年に、日本は外国公務員への贈賄を違法とする法律の執行に十分努力していない、そして二回目、二〇〇四年には、積極的に取り組むべきだ、つまり、そうなっていないと。三回目、一一年には、いまだに外国公務員贈賄事件に積極的に取り組んでいない、度重なってそういうことを指摘されて、そして一九年の四回目でも、いまだに十分に実施していない、そう指摘され続けていて、冒頭、大臣、そう言われましたけれども、何らかの措置を講じないといけない、全然進まないならと言われるほどまでになっていると。

 つまり、これは本当に率直に、国際的に見て、贈賄の取締りが甘い国だと言える、消極的な国だと批判されているということをやはり真摯に受け止めるべきだと思うんですけれども、そこのところは、大臣、いかがですか。

西村(康)国務大臣 先ほど申し上げましたように、様々な評価がありますので、必ずしも日本の企業がこの外国公務員贈賄罪に対する意識が低いというふうには私自身は考えておりませんが、ただ、OECDから指摘を受けていることも事実でありますので、それに真摯に対応していくということも必要であります。

 そのため、今回、この法律案を提出をさせていただいたということでございます。

笠井委員 様々な評価と言わないで、OECD作業部会から言われているということで、真摯にと、そこのところをしっかり言われるというのが大事だと思うんですよ。

 今回の改正は、第四期の審査で指摘をされた四つの優先勧告に対応するためのものというふうに伺っております。ワーキンググループの報告書によれば、その第四期の審査では、第三期の審査で未履行とされた勧告、これにも焦点が当てられているということが述べられておりますが、報告書にそのような趣旨が書かれていることは間違いないですね。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、外国公務員に関するワーキンググループの報告書において、第四期審査は第三期審査で未履行とされた勧告に焦点が当てられている旨、記載されてございます。

 当該記載は、OECD贈賄作業部会が取りまとめた第四期の審査報告書に、前期審査の未履行の勧告の実施の進捗状況に焦点を当てる旨の記載があることを踏まえたものと承知してございます。

笠井委員 第三期審査が実施されたのはいつですか。

蓮井政府参考人 第三期審査におきましては、二〇一一年七月に、OECD贈賄作業部会の審査チームが日本を訪問し、審査を実施しております。その審査を踏まえまして、同年十二月、二〇一一年十二月に報告書が公表されたところでございます。

笠井委員 第三期審査に基づく勧告を出されて、八年間も未履行のままだった。だから、第四期の審査では、日本の外国公務員贈賄に対する制裁が、法律上も運用上も、条約三条の基準、いわゆる制裁を十分に満たしていないとまで厳しく指摘をされているわけであります。

 第四期の審査の勧告の総数というのは何項目ありますか。

蓮井政府参考人 第四期審査におきまして、日本は、十七の分類、五十一項目の勧告を受けているものと承知しております。

笠井委員 五十一項目のうち、完全実施済み、それから部分的に実施されているもの、それから実施されていないものというのは、それぞれ何項目になるでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 第四期審査において日本はOECD贈賄作業部会から五十一項目の勧告を受けた、そのうち七項目の勧告を完全に実施し、二十三項目の勧告を部分的に実施し、二十一項目の勧告を実施していないと評価されているものと承知してございます。

 なお、そのうち、優先して対応すべきと勧告された四項目の指摘について、今回、不正競争防止法を改正することにより対応するものでございます。

笠井委員 そのことは分かっています。

 五十一項目の勧告中二十一項目、四割強が未実施ということであります。西村大臣、しかも、今回の法案に盛り込まれた四つの優先勧告は、実施されていない二十一項目のごく一部にすぎない。

 二〇二一年十一月のG20のローマ首脳宣言、二〇二二年五月のIPEF、繁栄のためのインド太平洋経済枠組みに関する声明でも、贈賄防止の取組の強化の必要性がそれぞれ指摘をされております。

 今回実施する四項目以外に残された十七の勧告項目について、これはやはり、引き続き政府を挙げて、継続的な検討、そしてどうやって具体化するかについても行っていくべきだと思うんですけれども、それは当然することになりますね。

西村(康)国務大臣 OECDから勧告を受けておりますので、そういう意味で、一つ一つ整理をしながら真摯に対応していくという姿勢は非常に重要だというふうに思っております。

笠井委員 国際的に公正で透明なルール整備の関心が高まっているという状況で、国際約束を着実に履行する観点からも、優先勧告項目を制度的に担保することは急務の課題であります。同時に、優先勧告四項目にとどまらず、他の項目についても、真摯にというふうに言われましたが、検討の継続を強く求めたいと思います。

 次に、商標法へのコンセント制度導入についてであります。

 商標法第四条第一項第十一号は、他人が既に登録している商標に類似した商標は登録できないとしております。

 先行商標権者の同意があれば登録を認めるコンセント制度については、一九九四年五月の工業所有権審議会の商標問題検討小委員会以来、実に三十年近く議論が重ねられてきた。

 そこで、諸外国での実施状況なんですけれども、濱野特許庁長官に伺います。二〇一五年度特許庁委託調査では二十の国と地域を調査した結果を取りまとめておられると思うんですが、コンセント制度を実施しているのはそのうち何か国、地域になるでしょうか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一五年度に特許庁が実施をいたしましたコンセント制度についての委託調査における調査対象の二十の国、地域では、米国を始めとする十八の国、地域においてコンセント制度が運用されていたことが確認をされました。

 なお、コンセント制度の存在が確認されなかった国、地域は、韓国とスペインでございました。

笠井委員 二十か国中、韓国、スペイン以外はあるということですけれども、では、まだ有していないという韓国とスペインについては、それぞれ導入の動きというのはあるんでしょうか。どんな段階になっていると承知されているでしょうか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国特許庁は、令和五年一月に公表された二〇二三年度業務計画の中で、推進するべき施策の一つとして、商標併存同意制度、コンセント制度の導入に関して明記をしているところでございまして、その後、令和五年三月には、コンセント制度の導入に関し、商標法の一部改正法案が国会に提案されていると承知をしてございます。

 スペインにつきましては、誠に申し訳ございません、手元に資料がございませんので、後で御報告をさせていただきます。

笠井委員 商標制度小委員会での議論では、コンセント制度は、出所混同の防止という商標法の法目的にそぐわず、需要家の利益の保護にもとる、商標制度は国ごとに制度の相違があり、安易に外国に倣うべきだということにはならないという意見が委員の一人からあって、反対されたということでありますが、濱野長官、需要家の利益の保護というのは、これは商標法の目的の一つだと思います。法案では出所混同を防止するための措置がどのように規定をされているのか。事前事後、それぞれの根拠条文と趣旨を端的に示していただけないでしょうか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、恐縮でございます、スペインでございますが、導入はされてございません。

 続きまして、コンセント制度について御答弁を申し上げます。

 今回の法改正では、コンセント制度の導入に当たって、需要者、消費者が出所について混同しないよう、需要者、消費者の利益を保護する仕組みを措置をしてございます。

 具体的には、商標法第四条第四項によりまして、登録時に審査を行い、当事者間の合意があっても、例えば、商標を使用する商品の用途等がほぼ同じで、明らかに需要者、消費者が混同するおそれがある場合に該当すると審査官が今後審議会で定めてまいります審査基準に沿って判断する場合には、登録を認めないこととしております。

 また、登録後も、商標法第二十四条の四によりまして、商標の使用により混同が生じるおそれのある場合には、当事者間で混同を防止するための表示を請求できる制度とするとともに、商標法第五十二条の二第一項によりまして、不正競争の目的により使用した結果、混同が生じた場合には、何人も登録を取り消す審判を請求できる制度としてございます。

笠井委員 商標小委員会では、日本弁理士会の役員の委員も、諸外国の制度はいろいろあるけれども、今回の日本の提案のようにいろいろな出所混同防止の手当てがされている制度は余りない、審査段階、登録後における十分な手当てがなされており、消費者保護についても全く問題ないと評価をされております。私、妥当なものだと考えます。

 そこで、次の問題ですが、知的財産制度の要となるのが特許庁の審査官であります。

 長官、主な外国特許庁が審査官の増員を図っている中で、我が国では審査官の人数が十年以上にわたり減らされてきた。審査官一人当たりの年間処理件数というのを伺いたいんですが、EU、米国、日本でそれぞれ何件というふうにつかんでいらっしゃいますか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国における特許審査官一人当たりの審査件数につきましては、一概には比較は難しいものの、日米欧中韓の五つの知財庁に関する業務処理量などの統計データがまとめられた報告書に基づきまして、国内出願の審査件数と国際出願の審査件数の合計をそれぞれの知財庁の特許審査官の数で割ることで一人当たりの審査件数を試算いたしましたところ、二〇二一年において、米国知財庁は年間七十二件、欧州知財庁は年間五十八件、日本国特許庁は年間百六十九件でございまして、日本は欧米と比べるとおよそ二・五倍となってございます。

笠井委員 二・五倍、EUとの関係では三倍ですね。

 私、審査官という方は現場で懸命に頑張っていらっしゃると思うんです。NHKの「サラメシ」という番組でも、特許庁の審査官の皆さんが出てきて、それぞれ本当に大変苦労しながら案件を扱っていらっしゃる。お互いに相談もふだんできないので、昼食のときに弁当を食べながらお互いに意見交換して学び合っているという話も紹介されていましたが、人数がこんなに少なくて、減っているということで、迅速な審査とか質の高い審査が求められる中で、実際には現場でどんな苦労を審査官はなさっているか、端的に御紹介いただけますか。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども特許庁におきましては、審査官に対して様々な研修をして人的能力の向上も図っておりますし、そういう中で、外注等も使いながら審査の効率化に努める、また、デジタル化、AIの活用化を図りながら審査の効率化に努めているところでございます。

笠井委員 一人一人が苦労されているということは間違いないですよね。だって、外注化しながらも。その点はどうなんですか、長官の認識としては。端的に。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁の長官といたしまして、日々、特許庁の審査官の皆様には大変御尽力をいただいて、世界最高品質、最高速の審査を目指すということで、大変な御苦労をいただいているというふうに思っておりますし、それを誇りに思っております。

笠井委員 その言葉は是非私も伺いたかったことなんですが、大臣、政府が掲げている特許審査期間の迅速化とか世界最高品質の特許の実現というのは、やはり現場の審査官の負担によって支えられている、大きいと思うんですね。

 審査官一人当たりの年間処理件数が欧米の二倍以上、二・五倍という話もありましたが、この実態のままでいいんでしょうか。

西村(康)国務大臣 まさに、審査官の皆さん、本当に懸命な努力で対応していただいていることを、私からも改めて敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。

 その上で、先ほど答弁ありましたけれども、検査件数、一人当たりが約二・五倍ということで、欧米よりもかなり多い件数となっております。

 そうした中で、先進国の中でやはりトップレベルの審査の質とスピードを維持していくということが重要であるわけですけれども、今もお話がありましたとおり、そのために、先行技術文献の下調べを外注をするであるとか、あるいは特許審査関連業務のシステム化など、審査の効率化も進められてきているものというふうに思います。

 これからも、どんどん新しい技術が出てくるわけでありますし、業務も増えてくる中で、やはりデジタルの技術を活用しながら、効率化に向けてしっかり取り組んでいきたいというふうに思います。

笠井委員 技術を活用するのは当然必要だと思うんですが、問題は、特許、実用新案部門では、恒常審査官の人員不足を補うために、二〇〇四年以降、任期つきの審査官、任期五年で最長十年を採用して対応してきたと思うんですが、二〇二四年度以降はその任期の期限が到来をして、このままでは毎年百人ずつ審査官が減っていくことになる。

 大臣、審議会でも委員から意見があったように、これはゆゆしき事態だということについては認識ありますよね、こんなに減っちゃったら。

西村(康)国務大臣 御指摘の任期付審査官についてでありますが、まさに審査の質の向上と迅速化を目的に平成十六年度から採用し、平成二十六年度に延長してきておりますけれども、今年度末から約百名ずつ任期の期限が到来していくということで、御指摘のとおりであります。

 これまで、この任期審査官の確保や審査業務の効率化を通じた審査能力の確保によって、審査請求から権利化まで十四か月という審査期間に関する政府目標に向けて取り組んでいるところであります。

 優れた特許技術によりグローバルな事業展開を促して我が国のイノベーションを促進するということに寄与するために、まさに特許審査の質及びスピードを、これまで同様に、あるいはこれまで以上に堅持していく、保っていくことは非常に重要であります。

 経産省としては、業務の一層の効率化も図りながら、こうした状況においても必要な審査能力をしっかりと確保していきたいというふうに考えております。

笠井委員 百人も減っていって、とにかく質、スピードが大事だ、効率化する、デジタルも入れるから大丈夫という話で、私は、ゆゆしき事態だという認識をまず持つべきだと思うんですよ。だって、一人の負担が増えますよ、これ、まさに。

 二〇一三年の六月七日に閣議決定された知的財産政策に関する基本方針では、二〇二三年まで、今後十年間の知的財産政策の柱である産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築ということで、重点化政策を掲げております。その中で、「知的財産制度の基盤となる特許庁の審査体制について、任期付審査官の確保など、必要な整備・強化を図る。」ということを明記しているわけですね。

 だから、質、とにかくスピード、効率化、デジタルをやるからいいんだという話にならなくて、政府の立場からも、来年度以降の次の十年間の審査の速度や質を維持するためにも、審査官の人員拡充というのは避けて通れない取り組むべき課題ではないかと思うんですが、それは違うという話になりますか。

西村(康)国務大臣 私ども、この審査能力の確保を是非していきたいというふうに考えておりますけれども、一方で、国家公務員である特許審査官の定員は、政府全体の定員合理化計画も踏まえるのが前提であります。その上で、特許庁としても、審査業務に対し必要な定員を、精査を行い、関係部署との調整も行っていきたいというふうに考えております。

 特許庁では、先ほど申し上げたような文献調査の外注であるとか、あるいは、平成二十九年からは、特許審査における外国特許文献への特許分類付与、あるいは、発明内容を入力すると関連する過去の特許を類似度の高い順に検索表示する機能にAIの技術も活用しております。こうした技術の精度向上も図っているところであります。

 いずれにしても、こうした技術も活用しながら、あるいは外部リソースも活用しながら、審査のスピード、質をしっかり確保していきたいというふうに考えております。全体として能力を確保できるように取り組んでまいりたいと思います。

笠井委員 政府全体の合理化計画だとか総定員法とかという話になってくるんだけれども、やはり担当大臣としては、やはりこの分野は大事だ、だから、いろいろな取組をしながらも人員拡充も取り組むということで、課題にするというぐらいはっきりおっしゃらないと、これは本当に、国際的に見ても、しっかりとした体制を取っているとは言えないということになってきます。そのことはしっかりと求めていきたい、強く求めていきたいと思います。

 最後になりますけれども、経済安全保障推進法で導入された特許出願非公開制度についてであります。

 来年春の施行に向けて、二〇二三年度予算に計上されている金額は幾らで、内容はどのようなものか、改めて説明を端的にお願いします。

濱野政府参考人 お答え申し上げます。

 特許出願非公開制度では、内閣府が、安全保障上の観点から機微技術を含む特許出願に係る発明を保全することが適当か否かの審査を行うこととしております。

 この内閣府の審査に付すためには、特許庁において、年間約三十万件に及ぶ特許出願から、保全審査の対象となり得る、政令で定める特定技術分野に該当するものを抽出する必要がございまして、また、保全指定された特許出願の管理などを行う必要があるため、特許庁のシステムを改修するための経費が必要となります。

 こうした点を踏まえまして、本経費については、十八・三億円を令和五年度内閣府所管一般会計に計上した上で、特許特別会計に繰り入れることとしてございます。

笠井委員 特許非公開制度というのは、民生技術を軍事技術に吸収をして戦争遂行に動員した戦前の秘密特許制度を復活させるものだと、私も法案審議で議論をしてまいりました、指摘もしてきました。現行憲法とは相入れない制度を国民負担で準備しているということは極めて重大だ。

 大臣、最後に。更に重大なのは、非公開の対象となる機微技術の一次審査に当たる審査官に対して適性評価制度を導入しようとしていることでありますが、適性評価制度はプライバシーを脅かして深刻な人権侵害をもたらすものじゃないか、この点での大臣の認識を伺います。

西村(康)国務大臣 機微情報を扱う者の適性を評価する制度、いわゆるセキュリティークリアランス制度につきましては、経済安全保障分野における制度の導入に関して、現在、内閣官房の有識者会議において検討が進められているというふうに承知をしております。

 いずれにしましても、経済産業省としては、まさに特許出願非公開制度の一次審査を行うわけでありますので、一次審査が適切に行われるよう、施行に向けた準備を着実に進めていきたいというふうに考えております。

笠井委員 岸田総理の指示で二月に立ち上げられた経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議、そこでは、初回の二月二十二日から既に、特許非公開制度の技術を取り扱う人について一定の信頼性、適性というものを確認することは必要だという発言が出ている。

 特定秘密保護法では、軍事、外交に関わる公務員を対象に安全保障情報に関する適性評価が既に実施をされているわけですが、その内容は、犯罪、薬物やアルコール依存症歴、それから精神疾患、信用状況その他の経済的状況などのセンシティブな個人情報を、評価対象者のみならず、関わりが深い家族や同居人についても報告、調査するものであります。

 深刻な人権侵害をもたらすことは明白であって、この点では適性評価制度は導入すべきではない、強くこのことは求めておきたいと思います。

 質問を終わります。

竹内委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、不正競争防止法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

竹内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、岩田和親君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山崎誠君。

山崎(誠)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    不正競争防止法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 一 政府は、本法に基づく改正内容について、国民や中小企業を含む産業界に対し具体例を用いて説明するなど、丁寧な周知に努めること。また、事業活動がグローバル化するとともに、国内外問わず雇用が流動化し、営業秘密侵害事件が増加傾向にある中、我が国の産業競争力における営業秘密の重要性に鑑み、我が国企業の営業秘密の保護強化に向けて万全を期すこと。

 二 デジタル空間におけるコンテンツの保護及び利用を推進し、経済活動を活性化するため、本改正にとどまることなく、幅広く知的財産権に関する法律の改正についても速やかに検討すること。

 三 登録可能な商標の拡充、意匠登録手続の要件緩和、形態模倣商品の対象拡大等、本法の施行に当たっては、デジタル空間における経済取引が活発化している現状に鑑み、結果的にクリエイティブな活動に制約を課すこととならないよう、保護と利用のバランスを適切に考慮した上で、事業者の予見可能性を高めるため、審査基準等の明確化及び周知徹底に努めること。

 四 知的創造物の権利については、意匠法等の知的財産権に関する法律の保護対象の範囲及び保護と利用の在り方について、適時適切に見直しを行うこと。

 五 政令による特許に関する審査請求料減免制度に係る上限件数等の設定に当たっては、中小企業等の特許権の取得等の知的財産活動が萎縮することのないよう、資力等の制約がある者の発明奨励・産業発達促進という本制度の趣旨を踏まえ、十分に検討を行うこと。また、中小企業等の知的財産活動の実態に即した支援に努めること。

 六 知的財産分野におけるデジタル化やグローバル化の一層の進展及び事業活動の多様化等の環境変化、また他国の出願件数が増大する中において我が国の出願件数が減少傾向にある状況等を踏まえ、事業者の負担軽減に資するための制度の国際調和等、真に我が国の知的財産権の保護強化・拡充に資するよう、我が国の知的財産制度について諸外国の先進的な取組等も踏まえつつ、適時適切に本質的な対応をすること。

 七 世界的な利用拡大が進む生成系AIについて、新技術の発展に配慮し、既存の知的財産権の保護の枠組みを関係者に十分周知徹底した上で、最新の技術動向が知的財産権に与える影響やそれに対する海外の対応状況等を注視しつつ、我が国の知的財産制度の在り方について検討を行うこと。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

竹内委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

竹内委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、西村経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。西村経済産業大臣。

西村(康)国務大臣 ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

竹内委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

竹内委員長 次回は、来る十九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会


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