衆議院

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第17号 令和5年5月24日(水曜日)

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令和五年五月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹内  譲君

   理事 井原  巧君 理事 岩田 和親君

   理事 関  芳弘君 理事 細田 健一君

   理事 落合 貴之君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 中野 洋昌君

      石川 昭政君    稲田 朋美君

      今枝宗一郎君    上川 陽子君

      岸 信千世君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    杉田 水脈君

      鈴木 淳司君    土田  慎君

      冨樫 博之君    長坂 康正君

      深澤 陽一君    福田 達夫君

      堀井  学君    牧島かれん君

      松本 洋平君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    山下 貴司君

      吉田 真次君    大島  敦君

      櫻井  周君    階   猛君

      田嶋  要君    馬場 雄基君

      山岡 達丸君    足立 康史君

      遠藤 良太君    前川 清成君

      中川 宏昌君    鈴木 義弘君

      笠井  亮君

    …………………………………

   経済産業大臣       西村 康稔君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            新発田龍史君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    角野 然生君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            小林 浩史君

   参考人

   (株式会社商工組合中央金庫代表取締役社長)    関根 正裕君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     岸 信千世君

  上川 陽子君     深澤 陽一君

  宗清 皇一君     杉田 水脈君

  菅  直人君     階   猛君

  篠原  孝君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  岸 信千世君     石井  拓君

  杉田 水脈君     宗清 皇一君

  深澤 陽一君     上川 陽子君

  櫻井  周君     篠原  孝君

  階   猛君     菅  直人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)


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     ――――◇―――――

竹内委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として株式会社商工組合中央金庫代表取締役社長関根正裕君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総合政策局参事官新発田龍史君、中小企業庁長官角野然生君及び中小企業庁事業環境部長小林浩史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹内委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。落合貴之君。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 本日は、中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案の審議ということで、トップバッターで質問させていただきます。

 今回の質問を準備するに当たりまして、過去の議事録を取り寄せて、見ましたら、私は、当選以降、八年半で十三回、商工中金について取り上げていることに気づきました。

 それで、国会議員になって初の質問も実は商工中金についてで、このままだとモラルハザードになっちゃうんじゃないかと。答弁されていたのが、政務官だった関筆頭でした。

 それを見返したわけですけれども、ただ、状況は、組織の形態、悪い部分も残してきたことでやはりモラルハザードが起こって、大きな不祥事も実際にその質問の後に起こっているわけでございます。

 元々、経緯を振り返りますと、二〇〇六年に商工中金の完全民営化が決まりました。リーマン・ショックそれから東日本大震災で、危機対応業務をやる政府系の金融機関は今後も必要だということで、完全民営化は二回延期になりました。そして、二〇一五年、第二次安倍内閣におきまして法改正が行われまして、実質的には無期限で、完全民営化をいわば先送りするという法律が通ったわけでございます。

 商工中金は政府系金融機関として必要だと国会で繰り返し説明がなされる中で、七年前、二〇一六年の秋くらいから続々と不祥事が発覚をいたしました。そのときの社長は元経済産業事務次官の方で、副社長は元国税庁の長官の方でありました。長年の天下り先にいわばなっていた、無理やり、必要以上に存在意義が強調され過ぎてしまったのではないかというふうに私は思っています。

 大規模な不祥事の発覚後に、今日お越しいただいております関根社長を民間からお招きしまして、経営再建がある程度なされて、この度の法改正、政府が保有株式を売却するというような法改正が行われるわけでございます。

 商工中金の存在が、天下り先の確保が大きな目的になってしまって、実態に合わない経営が行われてきた、そのことによって組織のガバナンスが利かなくなってしまったのではないかと思います。

 大臣、歴代の事務次官が社長に就いてきたというようなこと、そういったことから組織の存続自体が目的になってしまっていたのではないかということについて、大臣、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 商工中金のこれまでの経緯について、誰よりも詳しい落合委員であります。商工中金のいわばファンとして、叱咤激励の意味での御質問だと思います。

 今御説明ありましたけれども、様々な不祥事あり、また、一時期、二〇一五年当時、財務状況も悪かったということもあり、いろいろな背景の中で、保有株式を売却せずに政府は来たわけであります。そうした中で関根社長が就任され、改革を進めてくる中で、政府が商工中金の株式を保有する意義が低下してきたということもあり、今回、このような法案を提出させていただいております。

 そして、御指摘の商工中金の人事の件でありますが、商工中金の取締役は、まず、取引先代表者や社外取締役等で構成される人事委員会の審議と答申を受ける、それから、社外取締役が過半を占める取締役会で選任議案を決定した上で、株主総会において選任されるというプロセスを踏んで決定される仕組みとなっております。特に、代表取締役については、選任された取締役会において代表取締役の選定の決議が行われ、その決議を主務大臣が認可するというプロセスを踏むことになっております。

 という中で、適材適所でふさわしい人材が選ばれてきたものというふうに思いますけれども、もう御案内のとおり、国家公務員の再就職につきましては、国家公務員法上、第三者機関であります再就職等監視委員会による厳格な監視の下、各府省による再就職のあっせん等は禁止されておりますので、商工中金の取締役候補者として、選定に当たっても経産省によるあっせんはないということで聞いておりますので、これまで、ふさわしい人材がこのプロセスを経て選任されたものというふうに認識をしております。

落合委員 法律にはひっかかっていないということですけれども、これは、株式会社化する前においては、理事長がずっと基本的には経産省からの方、それから副理事長は大蔵省からの方、そのルールどおりに、株式会社化されても、代表取締役社長は経産省の方、それから副社長は財務省の方と、きっちりすみ分けもなされているわけです。ちなみに、今、社長、副社長は官僚OBは就いていませんが、専務は経産省、常務は財務省という形で、ずっとこの伝統は残っています。

 これは、しっかりしたプロセスで選任されたという説明はされたとしても、誰がどう見ても、各省庁からの指定席になってしまっているということは明らかだと思います。

 それで、こういう状況で、でも商工中金は政府系金融機関である必要がある、危機対応業務がそれなりの量あるということを、アベノミクスの下でも、景気がいいと政府は言っているにもかかわらず、個別には危機対応業務はたくさんあるんだというようなことを商工中金については言ってきたわけです。

 実際には、危機対応融資というのは、商工中金の内部で、書類の改ざんや自作によって、実際には必要ないものまで全部、危機対応融資ということで処理をしていたわけです。従業員が約三千八百人なわけですけれども、この件で処分された従業員は八百名以上です。三千八百人の組織で八百名以上も処分を受けました。この規模の不祥事を起こした民間金融機関というのはあるんでしょうか。政務官、いかがですか。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御案内のとおり、商工中金と民間金融機関では取扱業務が異なっておりますので、処分事例に関する単純比較は難しいと考えておりますが、その上で、いずれにしましても、商工中金の本事例につきましては、長期間にわたって多数の職員が不正行為を行い、監査部等の本部の複数部署が不正行為の隠蔽に関与した等の点で、重大かつ異例な事案であったものと認識しております。

落合委員 三千八百人中八百名が処分を受けた、二割以上の職員が処分されているわけです。これは、はっきりとした証拠がないと処分しないと思いますので、ほかにもグレーな方もいらっしゃったと思います。普通、民間の金融機関であれば、お取り潰しになってしまうんじゃないかなというふうに思います。しかし、取り潰されませんでした。

 そもそも、中小企業庁が検査、監査をしてきたわけです。それから、金融庁もしてきました。不正を見抜けなかった責任、これは経済産業省や中小企業庁にあった、大きな責任があったということでよろしいですね。

西村(康)国務大臣 危機対応業務で不正事案、二〇一六年に危機対応融資の水増しが発覚をしたわけであります。この背景は、まさに政府系金融機関としての甘えがあったものというふうに私ども認識をしております。

 そうした下で、その後、経産省、財務省、金融庁の三省庁で解体的な出直しをしていくということの下に、民間の関根社長を迎え、検討会で様々議論をしてきたわけであります。

 現場の隅々までなかなか経産省として監督することは難しいわけでありますけれども、いわば、繰り返しになりますが、政府系金融機関としての甘えが全体としてあったということだと思いますし、その背景には、やはり、おっしゃるような、経産省としても十分に厳しい目で見てきたのかという部分は、我々、改めてこれからも問い直していかなきゃいけないというふうに思います。

落合委員 三千八百人中八百人が処分されるような事態で、書類の改ざんや自作が行われてきたわけです。これをずっと見抜けなかったわけです。それについて検査、監査が甘かった。商工中金も悪いんですけれども、それを監督する中小企業庁や経産省の責任も大きくあったんじゃないでしょうか。いかがですか。

西村(康)国務大臣 当時の状況をもう一度よく見直さなきゃいけないと思いますが、まず、商工中金内で甘えがあり、水増しがあり、それをチェックできなかったということ、これが組織的な大きな問題であったということであります。

 そして、そういう事態を招いてしまったことからいえば、これは幅広く言えば、当然、中小企業庁、役所側にも、監督なり日常の活動の中での様々な課題があったものというふうに思います。

落合委員 なので、検査体制等、不十分なところがあったと。それ以降も見直したでしょうが、今後も気をつけていきますということでよろしいですね。

西村(康)国務大臣 その後、民間から関根社長を迎えて、様々な改革がこの間進められてきております。そうした中で、私ども、政府として株式を保有することの必要性、意義が低下してきたということで、今回、民営化に向かって進み出すわけでありますので、そういう意味で、商工中金の体制も整ってきている、改革が進んできた。そして同時に、私どもも改めて、政府の株を保有することを、今後売却をしていくわけでありますので、そうした中で、一定期間は株式を持つ、二年以内ということでありますから、まだ持つわけでありますが、引き続き、この商工中金の改革を進めていく姿をしっかり見ていく、これは監督を含めてしていくということで進めていきたいと思っております。

落合委員 私が伺っているのは、商工中金自体も反省して改革をしているんです。ただ、所管は経産省で、しかも、検査をするのも中小企業庁がやってきたわけです。これだけ大規模な書類の改ざんをしていても、見つけられなかったわけです。それについて、しっかりと責任が中小企業庁側にもあったと認めるか。

 ちなみに、当時発覚したときの世耕大臣は、責任がありましたということで、大臣の報酬も一部カットしています。当時は経産省の体制にも責任があったというふうに認めています。大臣もそれは認めますね。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、当時、世耕大臣は俸給の二か月分を自主返納し、また、事務次官、中小企業庁長官も厳重注意処分ということで俸給の一〇%、二か月分をそれぞれ自主返納しております。

 御指摘のように、そうした不祥事、水増しなど不正事案を防げなかったことについて、当時、商工中金を監督指導する主務省として重く受け止めてそうした対応を取ったということで、私自身も理解しております。

落合委員 まだ政府が株を持ちますからとかいう答弁でしたけれども、今回は、政府は株は手放しますけれども、経産省の所掌の中に入ったままになるわけですし、完全民営化ではありません。ですから、人ごとではなくて、経産省もびしっと線を引いて、しっかり役割を果たすという姿勢でいっていただかなければならないわけです。

 一番最初に指摘したように、元事務次官が歴代の社長になっていたら、中小企業庁長官は元部下がなるわけです。部下が元事務次官に対して厳しく言えるのか、そういう体制がもう何十年も続いてきたわけです。そういうなれ合いの状況があって、それでこういう大きな事件が起きた。ですから、私は、経産省、通産省の商工中金に対する姿勢、これに大きな問題があったというふうに思います。

 次、金融担当の政務官にも伺いますが、金融庁も金融機関を相手としての検査をしてきたわけです。これだけ大規模な不正が、民間金融機関では起こるようなことは普通はあり得ないわけです。これが政府系金融機関では起きました。金融庁の責任もあるんじゃないでしょうか。いかがですか。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 金融庁としましても、不祥事件の前から、預金者保護、信用秩序の維持、そういう観点から商工中金のモニタリングを行ってまいりましたが、結果として、不適切な業務運営の根本原因であるところの内部統制あるいはガバナンスについて十分な指摘を我々は行えなかったということについて、反省すべきところは反省すべきであるというふうに考えております。

 その後、金融庁におきましては、外部からの情報の分析の高度化など、モニタリング手法の向上を図っておるところでありますけれども、今後も、様々な御指摘を踏まえまして、モニタリングの高度化に取り組んでまいりたいと考えております。

落合委員 念のための確認ですが、今は、経産省と財務省だけではなくて、金融庁からも取締役を、OBの派遣をしています。しっかりそこは、なれ合いではなくて、線引きをして、厳しく対応するということでよろしいですね。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、今回、こういう重大かつ異例な事件があったということの中で、我々、預金者保護、信用秩序の維持という観点で所管をしておりますけれども、そこは大変重要な点でありますので、委員の御指摘も踏まえて、しっかりとした対応を取っていきたいと思います。

落合委員 民間金融機関と比べたら、大きい地銀と同じぐらいの規模でございます。そして、完全民営化されるわけでも今回ありません。日本の金融機関に対して大きな影響を商工中金の存在は与えますので、是非しっかりとした対応をお願いできればと思います。

 それでは、その次に、今後の商工中金についてお伺いできればと思います。

 本日は、関根社長にお越しをいただきました。商工中金の不祥事を受けて、元経産事務次官の当時の社長は辞任をされました。そして、民間から関根社長が就任をされて、組織を立て直して、そして今回、コロナ禍においての危機対応も私は評価されるべき内容であるというふうに考えています。

 過去になかったようなこの規模の不祥事を起こした政府系金融機関の立て直しというのは、今まで事例がなかったことだと思うんですが、ここまで立て直してきた改革の中身について、ポイントを伺えればと思います。

関根参考人 お答えいたします。

 まず、過去の不祥事の原因は、営業店への過度な業績プレッシャー、危機対応業務を武器として利用したこと、そしてコンプライアンス意識の低下、ガバナンス体制の欠如であったと認識しております。

 私も、この商工中金の立て直しのために、新たなビジネスモデルの確立など様々な手を打ってまいりましたが、就任以来、私が心血を注いだことは、コンプライアンスを第一とする組織風土改革であり、職員の意識改革でございます。

 風通しのよい組織で、一人一人の職員が自主性を持って、中小企業のお役に立つというミッションを体現できる組織へ変革することが重要であり、これがなければ真の意味での立て直しにはならない、組織改革、ビジネスモデル改革の大前提であると認識しておりました。

 具体的には、まず、営業店の割当てをなくし、各営業店がお客様にどう貢献するかという観点で、自主的に目標を作ることに変えました。そして、この計画は、管理職だけでなく、営業店の職員全員で作成するような仕組みにいたしました。また、個人ごとの数値目標、いわゆるノルマの設定もなくし、自律的、自主的に仕事ができるような仕組みに変えました。私自身、営業店のマネジメント層に対して、数字の話は一切せず、マネジメントの在り方を話すようにしてまいりました。部下が結果を出すためのマネジメント、部下がどう生き生きと仕事できるかを考えるように対話をしてまいりました。また、ダイバーシティーも積極的に進めてまいりました。女性職員が活躍できる場や、中途採用も積極的に実施してまいりました。

 こうした取組の効果は、三百六十度評価や職員のエンゲージメント調査などの活用により、定期的に確認をしつつ、定着を図ってまいりました。その結果として、組織風土が変わったと感じております。

 組織風土改革は一朝一夕に実現できるものでないと認識しておりますが、これが実現できたことが、商工中金が立ち直った最大のポイントであると承知しております。もちろん、この思いはこれからも変わりませんし、これがしっかりと定着するよう、引き続き努力してまいりたいと思っております。

落合委員 一歩ずつ一歩ずつ改善されているというふうに思います。

 一つ今後心配なのは、この法改正後も、改正案の二十二条の三のところに、民営化後も危機対応業務を実施する責務が課されるわけでございます。組織の特徴として、やはり危機対応業務を中心にやってきたので、民間の金融機関と比べると、破綻懸念先、要管理先、要注意先、特に要注意先がかなり多いわけで、今言った三つ足すと多分四割ぐらいに達していると思います。民間金融機関と比べたら、財務状況は余りよくない状況なわけです。

 こういった中で、政府が株を一%も持たない状況で、役割としては危機対応業務を実施する責務が課される、絶対にやらなきゃいけないということになるわけですが、このバランスというか、この財務状況のままこの責務を課されるということで、役割を果たしていくことは可能というふうに考えているかどうかについて伺えればと思います。

関根参考人 お答えします。

 まず、財務状況について、要注意先以下が多いということでございます。私どもは非常に査定を厳格にやっておりまして、通常、一期赤字になっても、民間ですと、改善が見込まれるということであれば正常先のままにするんですが、私どもは、一期赤字になっても要注意先にするということで、非常に保守的に厳格にやっております。かつ、個人向けのローンがないので、住宅ローン等もございませんので、まさに中小企業向けの融資ということの特徴の中からそういう高さになっているというふうにも言えるというふうに考えております。

 また、この危機対応業務を引き続き担うことができるのかという御指摘でございますけれども、私、就任してから、新たな経営改革プログラムに取り組み、危機対応業務に依存せず、民間金融機関とは差別化された新たなビジネスモデルの確立に挑戦をしてまいりました。その後、コロナ禍が起こり、新たなビジネスモデル確立の中で磨き上げた事業性評価力も生かして、不正を起こさないようにして危機対応業務を実施してまいりました。この新たなビジネスモデルとの両立ができたことから、今後も両立できるものと考えております。

 なお、昭和恐慌の中小企業運動から生まれた当金庫にとって、セーフティーネット機能はDNAであり、今後も当然に発揮していくべきものと考えております。危機対応業務も引き続き担ってまいる所存であり、法律上の責務継続も当然のことと認識しております。加えて、商工中金の根本規範である定款に規定することを、六月に開催される定時株主総会で付議することといたしております。

落合委員 こういう形の金融機関がないので、試行錯誤にはなっていくと思います。

 大臣に伺います。

 民間の金融機関になったとしても、危機対応業務は責務としてやってもらうわけです。もちろん、バックアップは経産省としてしていくということでよろしいですね。

西村(康)国務大臣 今、御説明もありましたけれども、まさに中小企業のための商工中金改革ということで、商工中金自身も、組織としてのいわばDNAとして危機対応、危機時の資金繰り支援を担っていく、そうした意思を表明しておりますし、御指摘のように、法律でしっかりと明記をしているところであります。

 そして、今回の改正法案では、商工中金が的確に危機対応業務を実施できるよう、危機対応準備金の制度は存置をすることとしております。

 加えて、この危機対応準備金については、リーマン・ショックの際の危機対応融資の残高の減少度合いを加味し、過去に一度返納したところはありますけれども、新型コロナで再度、危機対応業務を発動した際は、危機対応のための予算措置、これは令和二年度に二次補正で約四千億円も行っていたところであります。

 以上を踏まえて、今回の改革後も、危機対応業務については、危機対応準備金とともに万全な仕組みとなるよう、我々としても努めてまいりたいというふうに考えております。

落合委員 今後の将来についてなんですが、金融機関の経営をしていくに当たって、直近の経営も重要なんですけれども、こういう将来像に向かっていくということも重要だというふうに思います。地銀や地域金融機関の方々から意見を伺うと、民業圧迫になるんじゃないかというような懸念も多くされていることは確かだと思います。

 中長期的に、どういう金融機関を目指して経営をされていくのかについて、ポイントを伺えればと思います。

関根参考人 お答えします。

 まず、今後の商工中金の経営としては、中小企業の中長期的な構造改革課題、例えばDX、GX、グローバル化、人材不足、産業再編等が考えられますが、これらが高度化、多様化する中で、地域を支える金融機関の対応力や動向に呼応しながら、地域貢献を共通価値にした、中小企業専門金融機関としての役割が重要であると承知しております。

 具体的には、中小企業のニーズが大きいと考える出資業務の強化、人材不足、DX支援など、新たな取組を強化してまいりたいと考えております。

 例えば、商工中金では、二〇二二年度に出資専門チームを社内に創設いたしました。外部から招聘した専門人材をリーダーに据えて、出資業務を強化しているところでございます。今回の改革により出資業務において支援範囲、対象が広がることを生かして、これまで以上に再生企業等への出資業務を拡充してまいる所存です。

 また、中小企業の企業価値向上に向けたDX支援については、業務範囲の拡充も踏まえ、金融機能とも融合した中小企業向けのデジタル基盤となり得るサービスの構築を目指してまいります。昨今、SaaS業者等が提供するサービスは飛躍的に高度化しておりますが、それらを活用したシステム化やIT化を進めることができない企業は多く、何から手をつければいいか分からないといった声も聞かれております。こうした企業がワンストップで会計や受発注管理等の様々なSaaSサービスを利用できるプラットフォームとなるシステムを構築し、さらには、そのプラットフォームの中で商工中金を含む金融機関、専門家による経営支援や金融サービスの提供を行うことを目指し、検討、準備を進めてまいります。

 このように、今回の改革も生かし、ビジネスモデルの一層の高度化、深化をさせていくことに加え、不断の経営の合理化、効率化、経営戦略と連動した人的資本経営の推進、これらにより、強みである全国ネットワークや事業性評価を強力に磨き上げることとともに、それらを支えるシステムインフラを強化すべく刷新してまいる考えでございます。

落合委員 中盤から後半にかけておっしゃったことは、古きよき間接金融を現代版にするという形で、私は、非常に重要であり、日本の地域金融機関の、成功すればお手本になるというふうに思います。是非模索をしていくべきだというふうに思います。

 前段おっしゃったこと、これは私は、注意して行っていかなきゃならないというふうに思っています。出資とか事業再生、企業再生なんですが、ちょっと離れて見てみるといいことのように思えるんですけれども、実際にやっている具体例を見てみますと、リストラして、企業価値を高めてファンドなどに売る。結局、事業が商品化されて、企業が商品化されて、金融市場の中で売られるようなことが、特に平成の時代、行われてきたわけです。これが果たして地域経済の役に立ってきたのかというと、私は疑問だと思います。短期的には価値が、不良債権を減らすですとか、あったかもしれませんが、三十年もこれが行われてきたということは、デメリットの方が大きくなっている。平成のこの金融のビジネスモデルは改めていかないと、私は、日本経済を良好な状況に持っていけないと思います。

 政府の審議会のアドバイザーの方々も、平成のビジネスモデルでもうけてきた人たちが入っていることは確かです。その方々の言っていることは新しいようで実は古いモデルだというふうに思いますので、是非そこの部分は取捨選択をして経営判断をしていくべきだというふうに私は思います。

 次に、経産大臣に伺います。

 政府の保有株式は、今、四六%ちょっとございます。上場するのであればマーケットに売ればいいわけですけれども、組合金融ですので、不特定多数の方々に株を売るわけではないわけでございます。こういった中では、例えば不当廉売が行われたりですとか、いろいろ注意をしなきゃいけないことがあると思います。こういった政府の保有株を売却するに当たって注意しようと思っていること等ございましたら、御答弁いただければと思います。

西村(康)国務大臣 御指摘のとおり、現在、政府は商工中金株式の四六・五%に当たります一千十六億円を出資しているところでありますが、その株式につきましては、国会での御審議を経て改正法案が成立すれば、公布から二年以内に全部売却することが政府の基本方針であります。

 その手順としては、他の政府保有株式の売却事案と同様に、改正法案の成立後、まずは財政制度等審議会国有財産分科会におきまして売却スキーム等について御審議をいただいた後に、分科会の決定に基づいて政府保有株式の処分を進めていくことになります。

 あわせて、政府保有株式の全部処分に向けて、株主資格を有する方々への積極的な情報提供、そして、全国中小企業団体中央会からの要望を踏まえて、中小企業のための金融機関という根幹を変えない範囲において、株主構成の多様化を図る観点から、中小企業団体中央会などの中小企業を支援する機関も株主資格の対象とする政令の改正などを行うことを検討しているところであります。

 このような政府保有株式の全部処分に向けた取組について、政府としても適切に進めてまいりたいというふうに考えております。

落合委員 売却額についてはしっかり注視をするということで、よろしいですね。

西村(康)国務大臣 今申し上げましたように、新たに株主を要望される方もおられますし、基本的なスキームについては国有財産分科会における審議を踏まえて決定されることになりますが、御指摘のように、様々な状況を踏まえながら、適切に対応していきたいというふうに考えております。

落合委員 政府保有株を管理しているのは財務省だと思いますけれども、商工中金自体を責任を持って対応するのは経産省であると思います。保有株の売却額、これはかなり、どういう値をつけるかというのは重要な問題になると思いますので、ここはしっかりと注視をいただければと思います。

 最後ですが、ちょっとこの商工中金ですとかの問題から離れて、中小企業金融全体の在り方についてなんですが、様々な中小企業、小規模事業者がいらっしゃいます。そういった中で、基本的に困っていることがあって政治家に相談するときは、自民党の地元の議員に恐らく相談すると思うんですが、それでも納得ができないときに、たまに我々野党にも相談があります。

 最近、地方の、しかも県庁所在地ではない場所にある事業者からの相談が私は増えてきているということを感じています。

 その内容を聞いてみますと、今までオーバーバンキングだというふうに言われてきたわけですが、私は、地方の金融機関が多過ぎるのはもしかしたら県庁所在地だけで、それ以外の地区というのは、オーバーバンキングの逆、取引金融機関の選択肢が少な過ぎの状況になってしまっていることじゃないかなというふうに思っています。

 地域の金融機関を見てみますと、一九八〇年以降、地方銀行の数はほぼ変わっていません。しかし、第二地銀、信用金庫、信用組合は平均すると半分ぐらいに減っています。

 そうなると、地方ではどういうことが起きているかというと、二行から借りていたものが、その二行が合併して一行になりました、そうなると、その一行の金融機関は、会社の借金の額が二行分になっているわけです。プラス、コロナがやってきてゼロゼロ融資なども借りました、こうなると、一社に対して、その金融機関が、もうさすがにこれ以上ちょっと貸せませんという状況になるわけです。しかし、その地域にその金融機関しかない、隣町の金融機関に頼まなきゃいけないとなると、ちょっと余りこの地域は知らないのでということになるわけです。

 実質的に貸し渋りのようなことが、政府が地域金融機関の統合を進める上で、地方の県庁所在地以外の地区においては物すごく貸し渋りのような事態が起きてしまっている。これがやはり地方経済の成長できないことにつながっているというふうに、私は具体例として幾つもそういうものを見てまいりました。

 金融庁は、なるべく小さい金融機関は体力がある方にしようというふうな政策を進めていくわけですけれども、経産省としてそこはストップをかけて改善させていく必要があると思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 御指摘のような大きな課題、なかなか短時間で議論することは難しいんですけれども、ミクロの視点とマクロの視点と、両方見ながら考えていかなきゃいけないのかなと。

 御指摘のように、ミクロで見ますと、地域で金融機関の支店の数が減り、いわばユニバーサルなサービスがなかなか受けられないという地域も出てくるわけでありまして、金融機関に加えて、農協、漁協、郵便局などを含めて、それぞれの地域の、ミクロでどういうふうに対応していくかということを考えなきゃいけない視点が一つ。

 それからもう一つは、マクロで、地域全体では、日本全体で人口が減少し、企業の数も減っていく中で、地域の金融機関の再編、これは基本は個々の機関の経営判断でありますけれども、やはり、再編ということも含めて、これは避けては通れない課題であるというふうに認識をしております。

 そうした中で、今回の商工中金は、支店の数がいっぱいあって営業する人もいっぱいいるわけではなくて、むしろ、各県にあり、拠点にあって、全国ネットワークがある、また、再生案件を手がけてきたというところが特色なわけでありますので、その商工中金と地域のそれぞれの金融機関とが連携することで地域の経済を支えていく、そうした機能を果たしていけるんじゃないかなということを期待しているところであります。

 是非、引き続き、こうした大きな課題についても、我々、頭に置きながら考えていきたいというふうに思います。

落合委員 時間が来たのでこれで終わりにしますが、このまま統廃合を進めていくと、DX化すれば決済機能はどこにいてもできると思います。しかし、与信機能は著しく全国的に低下をしていくと思います。それに対して手を打っていくべきだというふうに思います。

 それから、前段で質問したことで、商工中金の過去の不祥事に対する経産省の姿勢というのがだんだん人ごとになってきている。これはしっかり反省をし続けていかなければいけない問題だと思います。同じような問題を起こしてはいけません。その姿勢が後退していると思いますので、是非考え直していただければと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

竹内委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 先週に引き続きまして、今週も質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは早速質問に入らせていただきますが、ちょっと通告の順番を入れ替えさせていただいて、商工中金の法律の方を先にさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、まず政府保有株の商工中金株の売却の手順についてでございます。これは先ほど落合議員から質問ございましたので、私からは一点に絞って質問させていただきます。

 今資料としてお配りしております商工中金の株の値段、これは公開はされていないですけれども、組合員同士で取引はされているというふうに承知をしております。この数年は百七十三円で取引をされているということなんですが、今回、政府保有株が、二年間という、ある意味、短期間のうちに大量に売却されるというふうになると、値崩れしてしまうのではないのかというふうにも心配するんですが、この点、どのようなことをお考えでしょうか。手続等はこれから審議会等で決めるんですというのが先ほどの答弁でしたけれども、この点、ちょっと心配するものですから、是非お答えをお願いいたします。

西村(康)国務大臣 先ほども答弁させていただきましたが、四六・五%を今保有をしておりまして、これらについては二年以内で全部売却するというのが基本方針。そして、これは他の政府保有株と同様に、財政制度審議会国有財産分科会においてこのスキームは御審議いただいた後に、この決定に基づいて処分を進めていくことになります。これがまず大前提であります。

 その上で、今資料もお配りいただいておりますけれども、商工中金の民間保有株式については、毎年安定的に一株当たり三円を配当しております。このところの経営も安定してきておりますので、そうしたことを背景として安定的に配当しているということ、それを受ける形で、背景として、二〇一八年、七年以降、一株当たり百七十三円ということで、非常に安定して推移をしております。

 そうしたことも踏まえながら今後検討がなされていくということでありますが、新たに、中小企業団体中央会など、株主としてなりたいという要望もありますので、そうしたことも踏まえた政令改正なども検討しているところでありますが、いずれにしても、審議会での、分科会での決定に基づいて、処分を着実に進めてまいりたいというふうに思います。

櫻井委員 これは、今、既に商工中金の株を持っておられる方といいますか組合から見ますと、組合の資産として計上されているんだと思うんですね。それが値崩れしてしまうと、やはり組合の財務体質にも関係してくることだと思いますので、是非この点は注意をしてやっていただきたいというふうに思います。

 やはり、政府が持っている株を売るというのは、なかなか簡単ではないというふうに思います。私、ふだんは財務金融委員会の方に所属をしておるんですが、こちらでは、預金保険機構が持っている大昔に長銀と日債銀から買った株、三兆円あったのが、自社株買いとかで買いますといって引き取ってもらったものはありますけれども、一兆円はまだ残っていて、これは、売るはずだったのが、麻生総理の時代に、リーマン・ショックがあったから、ちょっと一旦停止をするということになって、結局、その後、売れていないという状況です。これは、難しいと思いますけれども、値崩れしないように是非お願いをします。

 続きまして、監督官庁、経済産業省から商工中金への天下り問題について。これも先ほど落合議員から質問されておりますので、そこから先、ちょっと細かいところに踏み込んでまいります。

 二〇一六年の不祥事発覚以降、社長それから副社長に相当する方は天下りポストではなくなったわけなんですけれども、ただ、今、専務と常務はまだ、それぞれ経済産業省とそれから財務省から天下りで来ているということで、天下りが続いていることについて、大臣、これはどうなんでしょうか。やはり経営幹部に残っているというのは余りよろしくない、先ほどの落合議員の質疑を聞いていてもそういうふうに感じるんですが、どのようにお考えでしょうか。

西村(康)国務大臣 御指摘のように、商工中金の取締役及び執行役員三十一名のうち、取締役の二名が元国家公務員、一名が国家公務員からの出向、現役出向ということだと思いますが、となっております。

 この取締役の選任については、まず、取引先の代表者や社外取締役などで構成されます人事委員会による審議と答申を受けます。それから、社外取締役が過半を占める取締役会で二〇二二年五月十八日に選任議案を決定した上で、二二年六月二十一日の株主総会で選任といった、透明性のある適切なプロセスを踏んでいるものと承知をしております。

 取締役のうち一名は経産省OBの元国家公務員でありますが、御指摘の当該者についても、今申し上げました透明性のあるプロセスを経ていること、そして、商工中金からは、この当該者について、経済産業省での勤務経験や商工中金取締役兼専務執行役員としての業務執行等により培った中小企業金融に関する豊富な経験と幅広い見識を商工中金の経営に生かしてもらうため、候補者として選任したというふうに聞いております。

 なお、国家公務員の再就職については、もう御案内のように、国家公務員法上の規制がありますので、当該者の取締役候補者としての選定に当たっても、経産省によるあっせんはないというふうに聞いております。

櫻井委員 ちょっと申し遅れましたけれども、私も、過去に政府系金融機関で勤めていた、そんな経験もあったもので、今回質問に立たせていただいているわけなんです。

 商工中金の社長にも本日来ていただいておりますので、改めて質問させていただきますが、幹部社員に天下りを受け入れるということについては、一体どういう理由で採用されているのか。

 必ずしも、役所出身ということは、金融実務は基本的には携わったことがない方々なわけです。そういった方々が、大所高所からというのであれば、非常勤の取締役の方がいらっしゃるわけですね。取締役九名のうち五人は社外取締役的な形で、執行役員と兼務されている方は四人で、その執行役員と兼務をされている取締役四人のうち二人が役所出身というのは、いかにも役所偏重なのではないのかな。仮に受け入れるとしても、取締役というような形ならまだ理解しようとすることができるわけなんですけれども、この点について、何で採用されているのか教えていただけますでしょうか。

関根参考人 お答えします。

 専務執行役員のことが一番メインかと思いますけれども、先ほど大臣が答弁されたように、これは私の方からお願いをして就任していただいております。監督官庁からの天下りのあっせんは一切ございません。これはもうはっきりと申し上げたいと思います。

 まさに、当該者については、元々執行役員として商工中金に来ており、その後、専務執行役員として活躍をしていただきました。

 この間、私も彼の仕事ぶりを見ておりまして、中小企業金融に関して非常に造詣が深い、かつ、商工中金の中で培った経験、見識、これはまさに今後の商工中金の経営に生きるというふうに私も判断いたしましてお願いをし、また、株主総会で過半を占める民間株主の賛同を得て取締役に就任してもらったというところでございます。

櫻井委員 政府の関与があるという中においては、役所出身の方が役員等にいた方が安心、何かと政府とのやり取りの中でということなのかもしれませんけれども、ただ一方で、私もかつて政府系金融機関で働いていたときの経験からすると、天下りの役員の方というのは必ずしも実務を分かっていないから、一から説明しなきゃいけなくて結構大変なんですよね。そうすると、やはりどうしても仕事が滞りがち、二手間、三手間かかってしまうわけなので、ラインのところには本当に役所の方がいいのかどうかというのは、これから重々検討された方がいいのではないのかなというふうには思います。

 先ほど言われたように、一回、専務とか常務とかそういった形ではなくて、もう少し下のポジションで入って、そこから上がってくるという方もいらっしゃる。最近の天下りの傾向としては、そういう傾向があるようなんです。確かに、いきなりぽんと上の方のポジションで来ると目立っちゃうから、ちょっと下の方で入れて、それで、すぐ内部昇格みたいなふりをするという、ちょっとある種のロンダリング的なことも最近は行われているようなんですけれども、それはそれで、確かに中の経験は積んだ上でということかもしれませんけれども、しかし、ずっとやっていた方に比べれば、また、そういう業界でずっとやってこられた方に比べると、やはりそういった経験、ノウハウというのは必ずしも十分ではないというふうにも思います。その点はよくよくお考えいただいた方がいいかなというふうに思いますので、申し上げておきます。

 続きまして、今度は、商工中金から事業会社、天下りというのかどうかはともかく、転職というか派遣されている方がいらっしゃるかと思います。このことについてちょっと御説明をお願いいたします。

 どの程度行かれているのか。特に、民間金融機関でもこういったことはよく行われているかと思います。テレビのドラマでも、出世競争に負けた人が事業会社に出向みたいな、片道切符の出向みたいなのをドラマでやっていたりもしますけれども、そういった形で、ある種、天下りをやっているというような事例もあったりしますし。

 今回、一〇〇%出資が可能になるということになると、そういった、天下り先を確保するために出資をするということになりはしないか、こんな懸念、うがった見方かもしれませんけれども、そんな心配もするものですから、商工中金から事業会社への人の移動について御説明をお願いいたします。

関根参考人 お答えします。

 まず、中小企業では、財務や総務といった管理部門のマネジメントに従事できる人材が不足しているというケースが相応にございます。そういう中で、取引先経営者から対応できる人材の派遣を要請される、基本的にこの要請に応えているということでありまして、実情を申し上げると、その要請に応え切れないぐらいの要請が来ております。

 こうしたニーズに応えるために、当金庫業務に通じて様々な経験を積んだ人材を要請のあった取引先に紹介して、出向を経て当該取引先へ転職するというケースは相応にございます。これは取引先への人材供給の一助になっていると認識しております。

 なお、こうした経緯から、当金庫から取引先に移った人材が銀行借入れの業務を担当し、当金庫から資金調達を行うケースもございますが、当金庫出身者の在籍の有無にかかわらず適切な審査に基づいて与信判断を行っており、いわゆる情実融資のような運用は一切ございません。

 また、法改正による業務範囲の見直し等も踏まえて、今後、新たな子会社の設立も検討してまいりますが、あくまでも地域や中小企業のお役に立つというためのものであって、役職員の天下り先確保という観点で子会社を設立することはございません。

櫻井委員 今、社長から明確に、天下り先を確保するために一〇〇%出資するわけではないという御答弁をいただきましたし、また、事業会社に人を派遣しているから、転職していったからといって、そのつながりで情実融資をするというようなこともないとはっきり御答弁いただきましたので、安心いたしました。

 続きまして、民業圧迫のことについてもこれまで議論がされております。この点についてお尋ねをいたします。

 具体的にどういうことかということで事前にお話を聞いたところ、民間金融機関とは金利の引下げ競争はしません、こういうお話でございました。

 ただ、融資を受ける側は、事業会社からすると、金利は少しでも安い方がいいわけです。競争させて、金利の引下げ競争をさせたいわけなんですよね。ですから、それは、商工中金としてはそういうつもりであったとしても、知らず知らずのうちにそういうふうになってしまうのではないのか、ほかの民間金融機関からしてみれば、やはり民業圧迫だというふうに思われるようなことになってしまうのではないのかということなんです。

 そこでお尋ねしたいのは、民業圧迫というふうに認定されるのはどういったケースなのか、ないしは、どういう手順を踏んでいれば、これは民業圧迫に当たらないというふうに言われるのか、そこについて御答弁をお願いいたします。

角野政府参考人 お答えいたします。

 民業圧迫回避規定についての考え方でございます。

 二〇一五年の法改正によって、民業圧迫回避規定、これが措置されました。これを踏まえまして、商工中金では、取引先に対して他の金融機関の金利等の取引条件を下回るような提案を行わないこととするとともに、民間金融団体との定期的な意見交換の場を設置しているところであります。

 加えて、二〇一九年に、民業圧迫回避規定を具体化する形でクレジットポリシーを策定し、地域金融機関との信頼関係に基づき連携、協業を行うこと、顧客とのリレーションに基づかない金利面での競争を行わないことなど、考え方を明確にしており、今回の改革案を議論した政府の検討会においても、関根社長は、低利融資で民間金融機関の肩代わりを推進するといったことはクレジットポリシーに反する行為であり、断じて行わないと表明をしておられるところでございます。

 こういったことの実効性を確保するために、検討会報告書を踏まえまして、商工中金が金融団体との意見交換の場において、貸出金利の状況など、適正な競争関係の確保や連携、協業の履行状況に関する客観的なデータを提供するとともに、可能なデータについては公表することを求めるというふうにしているところでございます。

櫻井委員 今の御説明は、ある意味、事後的にチェックをしているということなんですが、商工中金の窓口の担当の方からすると、何をやったら民業圧迫と認定されるのか、何をすれば民業圧迫じゃないというふうになるのかということは必ずしも明らかでないと思うんですね。一方で一応収益を上げろというふうに言われている中で、他方で民間と競争しちゃいけない、一体どうすればいいのかということになっちゃいますので、ちょっとそこはどうすればいいのかというのがはっきりするように明示していただいた方がいいのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、危機対応業務についてもお尋ねをいたします。

 これは、ちょっとまたほかの議員からも質問させていただくことになろうかと思いますけれども、要するに、法律的には民間の金融機関もこの危機対応業務を実施することができるというふうに承知をしておりますが、しかし、現実問題として、参入はないというふうにも聞いております。

 商工中金しかやっていない、これは何でそうなっているのか、何で参入してもらえないのか、嫌がる理由があるのかどうなのかということについて御説明をお願いいたします。

西村(康)国務大臣 御指摘の危機対応業務につきましては、商工中金に限らず、民間金融機関が指定金融機関として参入して危機対応業務を担うことが期待されているところであります。御指摘のとおりであります。

 ただ、全国地方銀行協会などから、参入に当たっては、日本公庫への報告とかシステム対応など、負担が大きいとの意見が出されているところであります。

 このため、制度を所管する財務省とも連携をして、二〇二二年には、厳格な債権回収業務を課している危機対応融資について、融資先が事業実態を喪失しているなど、明らかに回収の見込みがない場合には債権回収努力義務を解除するということ、また、債務者に三か月以上の延滞が発生した場合などにおける日本公庫への報告頻度を直ちにから週単位での報告に見直しをして、報告負担の軽減をするといった運用改善を実施してきたところであります。

 また、この危機対応業務のシステムについては、融資の要件確認や、主務官庁と公庫への報告のための実績管理などを行うシステムを構築するための負担が課題との意見があります。

 そこで、システム面で民間金融機関の参入を促す取組を今後検討を進めていきたいと思っておりますが、例えば本法案が施行されますと、業務範囲の見直しによって商工中金はシステムを販売することが可能となりますので、商工中金が構築をし、保有してきている危機対応業務のシステムを他の民間金融機関に提供することも選択肢の一つというふうに考えております。

 いずれにしても、この改正法案では、施行後適当な時期に、民間金融機関の指定金融機関への参入状況といった制度の運用状況などを勘案しながら、商工中金の危機対応業務の在り方について更なる検討を加えることとしているところであります。

櫻井委員 商工中金は完全民営化を目指しているということですから、そうであるならば、ほかの民間金融機関もこうした業務をできるようになってもらうのが好ましいというふうに思いますし、あと、大臣の答弁にはございませんでしたが、会計検査院の会計検査が入るのが面倒くさそうだという話もちょっと漏れ聞いております。

 ただ、民間金融機関は、金融庁の検査とか日銀の考査とか、いろいろなのには慣れているのかなと思いますので、この点も含めて、しっかりと、どんどん民間金融機関にも引き受けてもらえるように改善をお願いしたいと思います。

 多分これで最後の質問になろうかと思います。

 危機対応業務とそれから一般業務についてなんですが、これは今、勘定は分かれていない、混ぜてやっているというふうに承知をしております。

 実は、今通常国会におきましては国際協力銀行法を改正しておりまして、こちらでは一般業務勘定と特別業務勘定は分かれていて、ハイリスクのものについては特別業務勘定ということで、これは政策目的があってやるということで、分けて管理をしております。

 商工中金も、この危機対応業務は、これは危機対応準備金等もあって、ハイリスクだからそれに見合う準備金もある、そんな制度になっているわけですから、これはちゃんと勘定として分けて、財務諸表も分けて公表した方がよいのではないのかというふうに考えますが、大臣の御所見をお願いいたします。

角野政府参考人 お答えいたします。

 商工中金が実施しております危機対応業務でございますが、各営業店におきまして、通常業務に関する日常的なリレーションの中で危機対応融資の実行、管理、回収などが行われておりまして、人件費など、危機対応業務固有の経費の算出は容易ではないことから、通常業務と危機対応業務を分けて管理することは難しいというふうに考えております。実際、コロナの危機対応業務に基づく融資先約三・二万者のうち、プロパー融資も実施しておる先は約五割となっているところでございます。

 また、ただいまも御指摘ございましたが、民間金融機関の危機対応業務への参入促進を図るという観点からは、民間金融機関からはシステム対応などの事務負担が課題との意見もあることを踏まえますと、勘定分離を前提にすることで、システム投資の負担が増す事態は回避すべきとも考えております。

 いずれにしましても、危機対応業務の実施に際しては、現行の商工中金法におきまして、事業年度ごとに、当該業務に関する事業計画を作成の上、大臣の認可を受けるとともに、その実施状況を業務報告書に記載して大臣に提出するなど、政府として業務の実施状況を適正に把握する仕組みが制度的に担保されておりまして、これに基づき、しっかりと監督してまいります。

櫻井委員 いや、ちょっと今の答弁、よく分からないですね。

 それぞれ、一般業務でやっているのか危機対応業務でやっているのか、それは全ての案件といいますか融資案件については分かっているわけですよね。ですから、それぞれ寄せて集計することはできるはずで、そんなに大変なことではないはずですし、また、財務諸表で、一応、株式、いわゆる公開ではないにしても広く取引されているわけですから、財務状況をちゃんと的確に示していくという観点からも、やはりこれは一般業務とそれから危機対応業務とを分けてちゃんと説明した方がいいと思うんですよね。

 ちょっとそこはもう一回考え直していただきたいということを要望して、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

竹内委員長 次に、関芳弘君。

関委員 自民党の関芳弘でございます。

 今日は持ち時間十五分ということでございますので、どんどんと質問を進めていきたいと思います。

 今回、商工中金の法改正、非常に重要な改正だと思っておりまして、私もいろいろ、筆頭理事を務めさせていただいている中、さきに法律については党内でよく議論を、それぞれの法律、議論を重ねるんですが、この法律の改正については特によく議論を重ねさせていただいたところでございます。

 まず、重要な法律改正でございますので、その改正の趣旨を御説明いただきたいと思います。

角野政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案でございます。コロナ禍からの立ち直りやアフターコロナでの成長に向けて、信用保険制度における経営者保証改革や商工中金による再生支援機能強化といった中小企業のための商工中金改革を進める必要があることから、中小企業信用保険法及び商工中金法を一体で改正するものでございます。

 中小企業信用保険法につきましては、経営者が経営者保証の提供の有無を選択できる制度を整備するべく、保証料の上乗せを前提に、一定の要件を満たせば、信用保証協会は経営者保証を求めないことを法定化することとしております。

 また、商工中金法につきましては、不正事案発覚後の二〇一七年から五年以上かけ、経営改革を進める中で政府内で議論し、全国中小企業団体中央会などの中小企業側からの要望も踏まえまして、改革案を形にしたものでございます。

 具体的には、民間ゼロゼロ融資の返済が本格化し、今後、中小企業の事業再生支援のニーズが高まると見込まれる今、事業再生支援の優れたノウハウを有する商工中金の事業再生支援などの機能強化を図るとともに、より柔軟で自立した民間のガバナンス移行を目指し、中小企業による中小企業のための金融機関との位置づけを更に明確化することで、意識改革により、職員が一歩踏み込んだ中小企業支援ができるようにするため、政府保有株式を全部売却するものであります。

 あわせて、商工中金が危機時の資金繰り支援や再生支援、スタートアップ支援等のリスクの高い事業をしっかりと行うことを担保するため、危機対応業務の責務や危機対応準備金制度は維持するとともに、特別準備金制度を存置し、商工中金法は維持するものであります。

 なお、商工中金は、株式会社化以来、法目的に完全民営化を規定していることから、将来的な完全民営化の勘案要素として、特別準備金の状況を含む自己資本の状況、ビジネスモデルの確立状況、危機対応業務の在り方等を規定し、将来改めて商工中金法の廃止等を判断することとしております。

 こうした措置を一体的に講じることで、中小企業に対する平時、危機時の金融機能の強化を図り、地域の経済、雇用を支える中小企業が持続的に発展することができる環境を整えていきたいと考えております。

    〔委員長退席、中野(洋)委員長代理着席〕

関委員 ありがとうございました。

 本当に我々が大事にしないといけない中小企業なんですが、中小企業というのは、コロナが終わって、まだその痛みが十二分に解消できていない。また、今、物価がどんどん上がっていますね。電気代、ガス代、そしていろいろな資材も高いし、ひょっとしたら手に入ってこない場合もある。一方で、人件費を上げてくださいと政府からもお願いしています。こういうふうな中において、売り先に対して、価格も十二分に上げる交渉が一〇〇%できていないような業種もたくさんある。こういうような中小企業、困っているのが今実際の現状ですね。さらには、もう人まで足りない。

 こういうふうな中小企業がたくさん困っている項目がある中において、それをいかに助けていこうかというふうなところを、金融の部門と一緒に我々は手を差し伸べていかないといけないというのが立場だと思うんですね。その中の中核を担うところの金融部門で、政府との関連があるというふうなこの商工中金について、今回、法改正というのは本当に大変な重要な項目だと思っています。

 そういうふうな中におきまして、私も、政府が持っている株を売ってしまうということによって、商工中金自身に対する信頼が薄れたり、政府が、いわゆる中小企業を、このような苦しい中において、救っていかないといけないんだというふうな状況の中において、一歩引くような姿が世の中に感じられては、これはいけないなと。このところ、一番、今回のこの法律のところで、世の中に見える見え方として心配をしたんですね。

 一方、そういうふうな中において、私が中小企業のいろいろな団体の方々とお話をさせていただいて、トップリーダーの役員の方々からお話を聞かせていただいて、この法律がすとんとやっと腹に落ちたんですが、その言葉が、我々が、中小企業自身が政府が持っている株をどんどんと買っていって、そして我々中小企業と一緒に歩んでもらえるような、そのような中小企業のための金融機関となってほしいので、そのためには、いろいろな金融手法をもっともっと、今まで規制がかかっていた以上に自由に使っていただいて、我々中小企業を助けてほしい、そして一緒に歩いてほしい、だからこそ政府の株は我々が取得していって、政府は売ってもらうんだと。この言葉があったからこそ、私はこの法律に対して、初めてすとんと腹に落ちました。

 関根社長にお伺いしたいんですが、そういうふうな、中小企業自身の要望に沿った、中小企業を生かしていくために今回我々は法律改正を、商工中金さんとしてもしっかりと納得をして、それに対応した動きをしようと。中小企業を助けるんだという意味がこの法律にいかにこもっているか、その志を聞かせていただきたいと思います。

    〔中野(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

関根参考人 お答えします。

 まず、私、二〇一八年に社長に就任しまして、先ほどもお答えしましたように、組織風土改革ですとか職員の意識改革、新たなビジネスモデルの構築など、様々な改革に取り組んでまいりました。しかし、今回の法改正で、これが真の改革に向けたスタートラインに立つという認識でございます。商工中金が真に中小企業のお客様のお役に立ち続けていくための改革というふうに位置づけております。

 また、この改革に当たって、全国中小企業団体中央会様から、中小企業の皆様からは、株主資格制限を維持した上で政府株を全部処分し、組合及び組合員企業に対する長期安定的な融資や危機対応業務の継続はもちろん、出資機能の拡大ですとか、事業承継支援の充実、フィンテックなどの新しい高度な金融サービスの提供、DX、GX支援、人手不足の支援等の御要望があるというふうに承知しております。

 商工中金は、中小企業による中小企業のための金融機関として、こうした中小企業の皆様からの御要望にお応えしていくために、昨年制定した企業理念、パーパス、ミッションでございますが、「企業の未来を支えていく。日本を変化につよくする。」を商工中金の定款に規定するなどして、中小企業に寄り添い、御要望、ニーズに沿った金融等を実施することで未来を支えていく志を、将来にわたり、ぶれない、組織における共通の価値観として根づかせることを徹底してまいりたいと思っております。

 その上で、中小企業の皆様に対する金融機能を維持しつつ、自立して経営のスピードを加速させ、中小企業への専門性や全国ネットワークといった特性を生かし、地域金融機関と連携、協業しながら、より広範に、困難を極める中小企業の課題解決に取り組んでいく所存でございます。

関委員 関根社長、ありがとうございました。

 今、関根社長のその御発言をお伺いしておりまして、昔こういうことを言った人がいましたが、それを思い出しました。アメリカです。人民の人民による人民のための政治、そう言われた方がいらっしゃいましたが、中小企業の中小企業による中小企業のための商工中金、関根社長、こういう感じが、今の御発言で受け止めましたですね。ですから、関根社長、是非そのお気持ちで頑張っていただきたいと思うわけでございます。

 そこで、金融機関ですが、実は私は、十七年ほど金融機関で働いておりました。野党筆頭の落合筆頭と実は同じ銀行だったんですね。そこで、実は、金融機関は違うんですが、竹内委員長も金融機関でいらっしゃったということでございまして、金融機関についてちょっと一言、私申し上げておきたいと思うんですが、金融機関、銀行とかでお金を貸す側、それから預金を預かる側ですが、お金を貸す外回りの人って、よく稼ぐというか、よく仕事のできる金融機関の外回りの人の仕事の仕方というのは、一般の人がイメージを持っているのと全然実は違うんですね。

 会社に来ました、会社の財務部に来ました、財務部長と、御社においてはこういうふうな今財務状況ですから、幾らお金を借りてください、うちからお金を借りてくださいなんて、こういうふうな、その会社の財務状況ばかり話をする金融の営業マンは、これはなかなかよく成績を上げない金融マンなんですね。

 どういう金融マンが成績を上げるかというと、よくできる金融マンは、その会社に行くと、財務部なんか行かないんですね。どこへ行くか。商品開発部に行くんですよ。その会社の商品開発部に行って、その会社が作っているものについて、どういうふうなサプライチェーンを、しかもどういうふうに物を作って、それでどういうふうな製品ができている、それを今の世の中のマーケットの中においてはこう変えた方がいいんじゃないかというのを、そこの企業の社員となり切ったような感じで提案する。この営業マンはむちゃくちゃ仕事ができるんですね。その会社の社員そのものになってしまうんですね。それで、こういうふうに自分の会社の商品を変えようというときには、こんな設備を入れないといけないから、じゃ、三千万、五千万、お金が必要になりますね、じゃ、お貸しさせていただきます、そこで、売上げがすごくその会社が上がりました、そうしたら、その売上げがぽんと、預金もうちに入れてくださいねみたいな、こんな営業の仕方が、一番よく稼ぐ銀行の営業マンの形なんですね。ですから、そういうふうな提案型。

 いかに中小企業が今、先ほど申し上げたように、苦しんでいる中小企業が多い中において、商工中金さんが頑張って、今度はもっともっと事業をやって営業していこう、頑張っていただこう、やっていただくのを物すごく期待するんですが、そのときに余りにも優秀過ぎると、私がちょっと一つ心配するのは、各、日本も北海道から沖縄までいろいろ地域はあるんですが、信金、信組さん、金融機関で余り体力が大きくないところの営業マンと営業自身が、仕事自身が重なってしまって、今度、商工中金さんが自由に仕事をされるので、我々の仕事の提案よりも商工中金さんの方がたくさん選ばれるようになるんじゃないのかなと、不安があるというんですかね、そういうようなところがあってはなくて。先ほど関根社長が言われたように、困っている各全国の中小企業を助けていくんだというところを信組さんとか信金さんと一緒にやっていくんだ、こういうところが非常に重要になってくるかと思いますので、そこの点に対する不安を彼らが持たないように是非頑張っていただきたいと思うんですが、そのことについて一言御意見を、誰からでも結構ですから、聞かせていただけたらと思います。

角野政府参考人 お答えいたします。

 商工中金改革を議論した政府の検討会では、全国信用金庫協会や全国信用組合中央協会から、連携、協業の関係性の維持、深化のため、商工中金法に民業圧迫回避規定を存置するとともに、連携、協業の規定も新設してほしい、あるいは、事業者支援の一層の徹底のため、官民を挙げて取り組む関係性の維持向上が最も重要、こういった御意見を頂戴いたしました。

 こうした御意見を踏まえまして、今回の改正法案においては、政府保有株式を全部処分したとしても、特別準備金制度などが残る中では、民間金融機関からイコールフッティングへの懸念がございますことから、適正な競争関係を阻害することのないよう特に配慮するという民業圧迫回避規定を存置することとしております。

 加えまして、商工中金と民間金融機関の連携を一層強化する観点から、連携、協業規定を新設するとともに、商工中金から政府に対する法律に基づきます半期ごとの業務報告におきましても、民間金融機関との連携、協業の状況を報告するよう求める方針でございます。さらに、地域の民間金融機関の声が商工中金の経営陣や政府に届くような仕組みの構築も検討してまいりたいというふうに考えております。

 政府としては、こうした取組を通じて、商工中金の事業状況を随時検証し、信用金庫、信用組合を含めた地域金融機関との一層の連携、協業が機能するよう取り組んでまいります。

関委員 頑張ってください。

 終わります。

竹内委員長 次に、福田達夫君。

福田(達)委員 自由民主党の福田でございます。

 今日は、質問の機会をありがとうございます。

 調べてみましたらば、私、経産委員会が一番長く所属しているんですが、前に経産委員会で御質問させていただいたのが十年前でございました。十五分間いただいたことがありまして、与党って本当に質問の機会が難しいんですけれども、本当に、そういうふうに見ますと、いつも、ちょっと今日はいらっしゃらないけれども、馬場さんが初々しい質問をされているとか、足立さんが縦横無尽に抜き身の刀を振るっていらっしゃるのを見ていると、羨ましいなと思っているわけであります。

 今日、商工中金、本当は関先生が三十分やった方が深まるんじゃないかというふうに思ったんですが、実は私ども、党の中小企業政策調査会、この幹事長とそして事務局長をやらせていただいております。この商工中金に関しましては、昨年から数か月間かけて相当突っ込んで議論をしてまいりました。同じ自民党の中でも様々な意見がありました。しっかり進めるべきであるという意見もありましたし、慎重な議論もありました。それを長い間、時間をかけまして、中小企業庁若しくは関根社長とも話をさせていただきながら、議論させていただきまして、やはり、長く議論をすると、様々な論点が含まれるだけではなくて、お互いの思っていることが本当に分かるんだなということを、それを感じた数か月でありました。その結果として、我々の中では、今回は、関根社長率いる商工中金にしっかりと社会における役割を果たしていただこう、そのチャンスを与えると言っては言い方はおかしいですが、そのことを是非お願いしたいということで党の中の議論を終えたわけであります。

 何となれば、やはり今、難しい時期ですね、非常に難しい時期。先ほど関先生もおっしゃっていましたけれども、中小企業を取り巻く環境というのはなかなかまだ難しい。コロナにおいてBSが傷んでしまった企業がいっぱいある。また、コロナの間に、大企業は、コロナを理由にして、全ての遅れてきた改革をやってしまおうというふうにその三年間の中でなったというふうに解せます。

 ところが、私の地元に帰りますと、コロナが終わって早く元の世界に戻りたいというふうに皆さんおっしゃっている。全くベクトルが別でした。

 世界は、多分、大企業が目指した進む方向に行ってしまったと思います。産業再編、産業転換が間違いなくコロナの初期の頃から見え始めていた。ところが、中小企業の世界は、まだまだそこまで転換をしなければいけないというふうに思い切っていなかった、思い切れていなかった。その中において、まだ元に戻りたい。

 だから、僕、申し上げるんですけれども、コロナの前の世界って本当にそんなに楽でしたか、楽しかったですか、結構厳しくなかったですかと。だから、我々は価格転嫁などをしっかりと、自由主義経済の中にもかかわらず政治が手を突っ込んで、取引口座も変えなきゃいけないということをやらせていただいてきたわけでありますので、というふうに言うと、ぱっと皆さん気づかれるんですね。そうでもなかったよね、割と厳しかったよね、若しくは、本当に我々がやってきたことを評価されていなかったよねと。

 やはりこの局面を使って次に行こうじゃないかというふうに思われる方は、でも一部であります。しかし、この一部の前に進もうと思っている方々、しかも難しいのは、どこに行けば正解かが誰も分からない、これは我々も分からない、多分、大企業も分からない。世界中の誰もが分からない中において、しかし、前に進まなきゃいけないというふうに思っている方々、いかにこれを応援していくのかということがとても大事なわけだというふうに思っております。

 先ほど落合議員がおっしゃっていましたオーバーバンキング、これはマクロでは全くそうだと思います。なので、金融庁もこの二十年間使って様々なことをやってきたと思いますけれども、しかし、ミクロで見ていくと、じゃ、前に向かって進んでいくんだ、こういう人たちを応援しなければいけないこの時流になって、それに本当に合っている金融セクターがどれだけいるのかということは、正直、疑問視というか、疑問視どころか、もうちょっと頑張ってほしいなと思うような気持ちが僕にはあります。

 その観点からしますと、まずは政府として、金融セクターに対して、我々、中小企業を応援する立場、地域の生活の安定を支える中小企業というものに対して、我々が、中小企業を支える金融セクターに対してどういうことを求めるのか、また、金融セクター全体に求めることについて、そのうちの中で商工中金に何を求めているか、政府の方から答弁を求めます。

角野政府参考人 お答えいたします。

 コロナから平常状態への移行が進む現在、金融セクターには、中小企業に対して、コロナからの立ち直りに向けた再生支援や、事業再構築や前向きな投資を促すための経営者保証に依存しない融資、そして今御指摘もいただきました一歩前に進んだ構造転換、GX、DXに対応した、そういった構造転換を促すような長期の信用供与を強化することが求められているというふうに考えております。

 こうした中で、商工中金は、リーマン・ショック以降も全国の再生案件に関与することにより再生支援人材を育成するなど、再生支援に優れたノウハウを有していること、そして、経営者保証に依存しない融資比率は地銀トップクラスであること、五年以上の長期融資が約五割ということで、自動車産業などの戦略策定と資金提供の一体支援による構造転換支援に積極的に取り組んでいること、こういった強みを有している存在であるというふうに考えております。

 商工中金が、こうした強みを最大限発揮し、中小企業金融において今申し上げました役割をしっかりと果たしていけるよう、民間ゼロゼロ融資の返済が本格化し支援ニーズが高まると見込まれる今、再生企業への出資機能など業務範囲の制約を見直し、中小企業による中小企業のための金融機関との位置づけを更に明確化することで、意識改革によって職員が一歩踏み込んだ支援ができるようにするため、政府保有株式を全部売却するといった改革を実行することが必要と考えております。

福田(達)委員 ありがとうございます。

 まさに、信用供与をこの新しい方向へ向かう日本社会にどう与え続けるのか、それが、我々がこの経済産業委員会でも一番意識するポイントなのかというふうに思います。

 まさに攻撃こそ最大の防御でありまして、余りこの経済産業委員会では防御の話ばかりしていると、それを守るための盾もどんどん薄くなっていってしまいます。個々の事業者もそうですけれども、社会全体、やはりこの盾を厚くしていくため、若しくはその守るエネルギーを強くするためにも、新しい方向に向かう議論というのをより多くされるべきなのかなというふうに思っています。

 この週末に、熊本の天草に二日間かけて行ってまいりました。その中でも、上天草市でお目にかかった経営者の方々がすばらしくて。なかなか、二・四万人、二万四千人の市域でございますから、本当に人が少ないところでありますが、もう既に高付加価値。僕は、この国の抱える二大問題点は、人口減少とそれから逆内外価格差。日本が安過ぎて海外の金額には合っていない。これ、ちょっと本当は一時間ぐらい使って議論とかしたいところなんですけれども。何しろ、生産性、生産性というふうに政府も言うし、いろいろな方が言うんだけれども、そのときに単価の議論をしなさ過ぎた。この二十年間、単価を上げるという議論をしないで、高付加価値化という話をし続けた結果として、削り込むことによって生産性を上げることをやってしまった。これは、バブルが終わった後の三つの過剰というものの悪い後遺症なんですけれども。

 とにかく、コロナが終わって、国を開ける、外貨を稼げる、外国人が来るようになるときまでには、しっかりと高付加価値なもの、高いものを、売れるものを作っていくのが必要だったのでありますけれども、天草ではもうこれをしっかりやっていました。一般の日本人は行きにくい、しかし、お金を持っている外国人にとっては、安くはないという大体一泊六万から八万ぐらいの、一人頭六万円から八万円の旅館を造っていたりとか、そういうことをしっかりやって、入れ込みの金を日本の経済に回すことによって、デフレで冷めてしまっている日本経済を温める、若しくは、海外からの輸入に起因するインフレというものを外貨を使ってしっかりと乗り越えていくということを、小さいコミュニティーでもやっていました。

 これを、しかも事業再構築補助金を使ってやっていてもらったので、僕からすると非常にうれしかったんですけれども。このような方々を応援するということが、巡り巡ってその地域にお金を引っ張るということでありますし、その地域に職をつくるということでありますし、また、そういう新しいチャンスというものを、しっかりとしたチャレンジをやることによって、しっかりと前に進むという印象を地域の方に与えられる、これが一番大事だと思っています。

 そこで、やはり、先ほど関先生もおっしゃっていました。既存の民間金融機関がこれをやっていただきたかったんですけれども、なかなかこれはできなかったところもあります。既存の民間金融機関と新しくなった商工中金、これがどういうふうに連携していくのか。若しくは、民間金融機関ができないビジネスモデルのチェックなんかについて、これをしっかり商工中金にやっていただくわけでありますけれども、これは政府としてはどういうふうに、いつ頃チェックをしていくのか、このことをお聞きしたいと思います。

角野政府参考人 お答えいたします。

 商工中金は、先ほど述べましたとおり、事業再生支援の優れたノウハウを有しているほか、事業性評価も大きく進んでいるところ、各都道府県に店舗があり、全国ネットワークを有しているという特色も存在しております。

 一方で、地域におけるネットワークや地域密着型支援については、地域金融機関に強みがあり、商工中金が中小企業のための金融機関としての役割を十分に果たすためには、地域金融機関との連携、協業が不可欠でございます。金融機関団体からの要望も踏まえ、法律案では、連携、協業の規定を創設することとしております。

 また、ベンチャー、再生支援や危機時の資金繰り支援などリスクの高いビジネスの実施を担保するため、今回の法律案においては、特別準備金や危機対応準備金の制度は存置することとしております。

 こうした規定や制度の整備だけではなくて、中小企業に対する支援の質を向上させていくためには、事業再生支援等のリスクの高い業務に取り組むビジネスモデルだとか、民間金融機関との連携、協業が実際に機能するか、政府としてもしっかりと検証することが必要でございます。

 このため、今回の改革では、政府としても引き続き商工中金の事業状況を随時検証することとしておりまして、具体的には、半年ごとに主務大臣に報告することを義務づけるとともに、改正法案の施行から二年以内の適当なタイミングで、商工中金の事業の状況について検証することとしております。

 こうしたことも踏まえながら、今後も商工中金の事業の状況を随時検証し、必要に応じて改善を促すことで、商工中金が中小企業のための金融機関としてのビジネスモデルを確立できるよう、政府としても取り組んでまいりたいと考えております。

福田(達)委員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げましたとおり、この数か月間、関根社長を始め、商工中金の方々とも様々に議論させていただきました。さっき落合先生が、政府がちょっと緩んでいないかということもおっしゃっていました。緩むか緩まないかというよりも、本当に関根社長が考えていることをやっていただけるのであれば、政府の方が置いていかれないかというふうな気がするぐらい、今現在、関根体制においては商工中金は随分と変わってきたなという印象を受けています。

 先ほど申し上げましたとおり、正解が本当に見えないんですよね。VUCAの時代というふうにいいますけれども、誰も正解が分からない。逆に言うと、正解がないんだから、何でも取りあえずやってみればいいじゃないか。ただ、ビジネスです。ビジネスはやはり、十打ったらば、大体当たるのは二か三、八か七は失敗する。しかし、その失敗の中からも更に復活するような、そういう階段をつくっていくというのが今の世の中では必要であり、今の状況のフェーズでは必要でありますし、失敗をあげつらうんじゃなくて、失敗したところから学ぶというこの循環をつくっていくというのが、本当は我々もここで議論すべき。本当にそれで大丈夫なのかというふうに政府に突き詰めるんじゃなくて、政府が間違えたらば、なぜ間違えたのかを踏まえた上でもってどうするのかというのが、我々が今議論すべきことなんじゃないかというふうに思っています。

 そういう環境の中で、関根社長は、正解が見えない中でも、それでも挑戦する経営者を支援するだとか、また、地域社会では必ずしもできていない課題解決型提案や事業再生をリードしたいという意思をすごく強く感じました。

 そして、これは地元でも、地元の地銀、第二地銀、若しくは信金、信組さんとも話をしていますが、そういう立ち位置であるのであれば、我々としても是非それの教示は受けたいし、しかし、我々も持っているものがあると。彼らにももちろんプライドがありますし、力もありますから、そこを是非かみ合わせていきたいという話は、少なくとも群馬県では聞いています。

 その代わり、そのリスクは大分大きいはずです、民間企業が取るよりも。何しろ、前が見えないわけでありますし、担保でやるわけじゃありませんから。事業性評価って、これも、事業者側も確定したものがないのと同じぐらい、皆さんの側にもない。

 ですから、今回は様々な方面から議論もありました。残すだの、全部売れだの、いろいろなことがありましたけれども、特別準備金についても残置されるというふうに我々としては結論づけて入れたわけでありますが、商工中金が、地域民間金融機関をリードしてでも、いかにその役割を果たしていくのか、また、民間金融機関との役割分担をどのように考えるか、関根社長から最後によろしくお願いいたします。

関根参考人 お答えします。

 福田先生、関先生始め、様々な先生方としっかりと議論させていただきました。ありがとうございました。

 二〇一八年、私、就任したわけですけれども、むしろ今の方が身の引き締まる思いでございます。といいますのも、これも先ほど申し上げましたように、今回の法改正は、私にとってはゴールではなく、真の改革へのスタートだというふうに位置づけております。前中期経営計画で確立したビジネスモデルをベースに、更に進化させていきたいと考えております。

 今御指摘がありましたように、産業構造の変化やコロナからの立ち直り、GX、DXなど、中小企業の抱える課題はますます多様化し難易度を上げており、民間金融機関のみでは十分な支援が得られない分野も少なからずあると認識しております。

 そうした中で、商工中金が中小企業専門金融機関として培ってきたノウハウや特別準備金制度等も活用して、スタートアップ企業、MアンドAによる事業再構築を検討する企業、事業再生局面にある企業など、各ライフステージにおいてリスクを取ってチャレンジする事業者を積極的に応援していきたいと考えております。

 例えば、脱酸素に向けたEV化など大きな転換点にある自動車産業においては、専門チームを設置し、産業構造転換支援を積極的に行う取組を既に開始しております。そうした分野を中心に、民間金融機関をリードしていきたいと考えております。

 他方で、民間金融機関との役割分担という観点では、当金庫は、全国ネットワークという強みはあるものの、拠点は各都道府県に一店舗程度、県内融資シェアも平均二%程度と、リソースが限られております。域内に幅広く展開する地域金融機関は、当金庫よりも多数の地元企業と厚い取引があり、多くの情報も保有しており、お取引先中小企業にとって、地域金融機関と当金庫は相互補完できる関係にあると考えております。

 このような関係を生かし、各地の中小企業に対して、中小企業への専門性や全国ネットワークといった当金庫の強みを生かしつつ、地域金融機関と連携、協業しながら、より広範に、困難を極める中小企業の課題解決に取り組んでまいる所存でございます。

 最後に、民間金融機関との連携につきましては、真に中小企業のお役に立つ、この一点でしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

福田(達)委員 ありがとうございます。

 挑戦する日本社会のリード役をよろしくお願いいたします。

 終わります。

竹内委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時三十九分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時二十七分開議

竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 中小企業信用保険法の改正について、まず伺いたいと思います。

 皆さんのお手元には、一ページ目に、資料を配らせていただいておりますが、信用保証付融資において経営者保証をなるべく取らないようにしようという趣旨だと思うんですが、そのスキームがちょっと分かりづらいと思っております。

 そもそも、信用保証協会、融資のときに保証をつけるというのがお仕事なわけですが、この信用保証協会も実は経営者から保証を取っているというわけですね。保証をつけるだけじゃなくて、保証を取る。それは、なぜ取らなくちゃいけないかというと、保証を取らないと、いざデフォルト、すなわち貸倒れになったときに、信用保険による損失補填が受けられなくなる。でも、この損失補填を受ける原資というのは国民の税金なわけですよね。私は、安易に経営者保証に頼るべきではないとは思いますけれども、他方で、安易に保証を外して国民にそのしわ寄せが来るようなこともあってはならないという立場で議論させていただきたいと思っております。

 今回の改正で、この一ページ目の真ん中やや上ぐらいで、「信用保険の対象となる要件として、「一定の要件を充足している事業者から個人保証を求めていないこと」を定める」ということで、この一定の要件というところ、今のところは、経済産業省令で定めるので具体的な文言は定まっていないとは思うんですが、いただいている資料を見ますと三つほど挙げられていまして、一つ目は、法人から代表者への貸付け等がない、二つ目が、財務書類を金融機関に提出している、三つ目が、直近決算期で債務超過でない、あるいは減価償却前経常利益が連続して赤字でない、こういった三つの要件を満たす必要があるということなんですが、でも、これはスタートアップのときは関係なくなってきますよね、ほとんど。

 ということで、私は、スタートアップのときには経営者保証をどのように外すんだろう、外した場合に、その要件が緩過ぎやしないかということを危惧するんですが、その点について、法律提出責任者である大臣の見解をお願いします。

西村(康)国務大臣 御質問はスタートアップ企業向けで経営者保証を外す場合ということでありますが、御指摘のように、先行して、本年三月十五日から、〇・二%の保証料を上乗せすることで、経営者保証を求めない創業時の信用保証制度の運用を開始しております。

 この経営者保証を求めない創業時の信用保証制度においても、民間金融機関と信用保証協会が適切に運用することで、御指摘のように、安易な制度利用を排除することは私ども可能だというふうに考えております。

 具体的には、この創業時の制度については、今申し上げた保証料の上乗せ、それから創業計画の民間金融機関や保証協会による精査がありますが、それに加えて、まず、創業予定者や税務申告が一期も終了していない事業者については創業資金総額の十分の一以上の自己資金を有すること、それから、創業三年目及び五年目に専門家によるガバナンス体制の整備に関するチェックを受けることということを要件としておりまして、安易な利用を排除できる制度設計をしているところであります。

 御指摘のように、バランスが大事だと思いますので、安易な制度利用を排除するのは当然のことだと思っております。

階委員 今の要件で十分かどうかということを考えなくてはいけないと思っています。

 スタートアップに限らず、経営者保証なしで融資を受けるという場合にどういう要件を満たすべきかということを、私も銀行員でしたので、銀行員時代に大変お世話になった、今も親しくつき合っている中小企業の経営者の方にお聞きしました。そうすると、まず大事なことは、その会社が社員の将来のためにお金を使っている、これが大事だろうと。もう一つは、経営者が私腹を肥やしていない、これが大事だということをおっしゃっていました。

 その企業の経営者の方も、まだこの経営者保証を外すという政府の動きが始まる前でしたけれども、御自身の努力で、今言ったような、社員の将来のための投資であったり、あるいは私腹を肥やさないということを心がけたりしたこともあって、自らの力で経営者保証を外したという方でした。

 大臣に伺いたいのは、先ほど言った経営者保証を求めない一定の要件、その中に、いわば社員の将来のためを考えて従業員の給与水準の引上げであったり、あるいは経営者が私腹を肥やさないために過度な配当であるとか役員報酬の禁止であったり、あるいは会社の経費を流用して自分の私用の外車を買ったりとかそういったことなどにお金が使われないような、そういうことをちゃんと法律に定める、一定の要件として定める必要があるのではないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 委員の問題意識、私も共有する部分もございます。まさに、経営者保証を求めないことによって経営者への規律づけが弱まるということで、会社の資産や利益が従業員に還元されるのではなく、むしろ役員報酬や配当を通じて経営者に流出をしていくということ、あるいは、経営者が安易に廃業を選択しても、経営者の資産は傷まず、結果として従業員が不利益を被るという点、委員の問題意識、共有できる部分もございます。

 この点について、まず、コロナ禍で対応した民間ゼロゼロ融資においてのことが参考になるというふうに考えております。

 ゼロゼロ融資においては、直近の決算書が資産超過であることということ、それからもう一つ、役員報酬、配当、経営者への貸付けなどが社会通念上適切な範囲を超えていないことを金融機関が確認するという要件を満たす場合に、〇・二%の保証料上乗せによって、経営者保証を提供することなく融資を受けることを可能としておりました。

 御懸念、議員の問題意識に対応する観点からは、今回法改正によって整備する新しい制度においても、この民間ゼロゼロ融資の経営者保証を求めない仕組みが参考になるのではないかという観点から、例えば、法人から代表者への貸付け等がないこと、そういった要件の中で、役員報酬や配当が社会通念上適切な範囲を超えないことということを要件の中で位置づけることも考えられるというふうに思います。

 それから、本制度については、中小企業政策審議会金融小委員会で御議論いただく中で、金融機関団体から、詳細な制度設計に当たっては、金融機関とも密接にコミュニケーションを取りながら制度設計してほしいとの声も寄せられておりますので、御懸念の点も踏まえながら、審議会などの場で引き続き具体的検討を進めていきたいというふうに考えております。

 なお、御指摘ありました従業員の給与水準の引上げを要件として設定することについては、なかなか悩ましいんですが、信用保証制度の利用者は財務基盤が比較的脆弱な小規模事業者が大宗を占めているということを踏まえますと、制度の利用を妨げるおそれがあるということも考えられますので、いずれにしても、今後、審議会の場などで議論しながら、要件、しっかりと具体的に検討を進めていきたいと思いますし、省令で規定をしていくことになるというふうに思います。

階委員 そもそも、経営者保証をつけていれば融資を受けられる人が経営者保証をつけなくするということですから、別に融資は受ける道はあるわけですよね。だけれども、経営者保証をつけないといういわば恩恵があるわけですから、それに見合った負担というか努力、これをちゃんと経営者に求めるべきだ。

 今、世の中で一番問題になっているのは賃上げですよね。物価に負けない賃上げをしてもらう。これは特に中小企業の皆さんは大変なんですけれども、逆に、私も経営者に聞くと、これをちゃんとやることによって、会社は従業員のモチベーションが上がっていい方向に向かうんだと。だから、これは決して経営者を苦しめるというよりは、会社をよくする方向に働くんだと思うんです。是非ここを検討していただきたいんですね。

 経済産業省令で定められるというふうに法律上なっていますので、大臣、何とかここを考えていただけませんか。前向きな答弁をお願いします。

西村(康)国務大臣 まさに、日本経済を成長軌道に乗せていく一つの起点は、私は、賃上げ、所得を上げていくということだと思いますので、これは重要な問題意識を有しております。

 そうしたことも頭に置きながら、御指摘の点も踏まえ、審議会で金融機関あるいは中小企業者の団体の意見なども聞きながら、具体的要件、しっかりと検討していきたいというふうに考えております。

階委員 ありがとうございます。

 それと、もう一つ経営者の方に伺った大事なこととしては、一回保証なしで融資したとしても、ちゃんとモニタリング、チェックをして、問題があれば復活できるようにする、これも大事だろうということで、やはり、何を見るかということなんですが、融資するのであれば、経営者保証があろうがなかろうが、事業計画は当然出させるわけですよね。その進捗状況を二、三か月に一回はチェックする。

 そして、もう一つ大事なことは、先ほどの関先生の質問にも共通すると思うんですが、関先生は、財務部じゃなくて、現場というか、商品開発部みたいなところを見るべきだと言っていましたけれども、やはり、工場とか生産部門を見るというのも定期的にやる、これが非常に会社の実態を知る上で大事なんだと。

 財務部は財務諸表を作っていますけれども、中小企業の財務諸表なんて、私も経験がありますけれども、幾らでもごまかすことはできますから、それよりも現場を見ることですね。

 事業計画は、一回出させて終わりじゃなくて、二、三か月に一度ずつ進捗状況をチェックする、こういったことをモニタリングして、問題があれば経営者保証は復活するよ、経営者保証は発生するよということを知らしめて、そして経営者の規律を保つべきではないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

西村(康)国務大臣 今回の法改正によって整備する新しい制度については、まず、法人から代表者への貸付け等がないこと、先ほどおっしゃった点、財務でありますけれども、財務書類を金融機関に定期的に提出しているということの要件に加えて、債務超過ではないこと、あるいは二期連続赤字ではないことのいずれかを満たしていることという財務要件を求める予定であります。

 このうち、経済情勢に左右されることなく自身の取組次第で実現可能である、今申し上げた一つ目と二つ目ですが、法人から代表者への貸付けがないこと、あるいは財務書類を金融機関に定期的に提出していることについては、制度利用時に融資実行後も継続的に要件を充足することを誓約してもらうということを省令で定める予定にしております。

 その上で、誓約したにもかかわらず融資実行後に要件を満たさなくなった場合については、個別の事案も踏まえながらですが、御指摘のように、保証協会が経営者保証の提供を求めることも想定されます。

 そして、要件を満たさなくなった場合であっても、個別の事情により財務書類の提出が遅れるようなケースもあり得ることから、直ちに経営者保証の提供を求めるということまでは考えていませんが、しかし、事業者はその後も信用保証協会や金融機関から借入れを行う立場であるでしょうから、誓約を守るインセンティブは基本的にはあると思いますし、仮に誓約違反が発生した場合には、その後の信用保証協会における保証承諾や金融機関による融資判断においても考慮されるものというふうに考えておりますので、しっかりと誓約を守ってもらえるように取組を進めたいと思っております。

階委員 私の問題意識は、出されてきた書類だけを信じて、ああ、大丈夫だというのはちょっと軽率だと思っていまして、やはり現場を見ること、それから、経営者にじかに、財務諸表提出時だと年に一回とかになってしまいますから、二、三か月に一回は報告に来てもらう。実際、そういうことをやっていると、経営者の方からお願いしなくても、金融機関の方からもう外していいよというような話も出るんだそうです。だから、こういうこともやっていただくようなスキームも考えてもらえればと思っております。

 さて、ここまでの話は信用保証付融資ということなので、金融機関としては、リスクを二〇%ぐらい負う場合もありますけれども、リスクゼロというのもあるわけですね、信用保証付融資の場合は。なので、金融機関、貸す側にとってみればそんなにハードルは高くないんですけれども、そういう信用保証のつかない、いわゆるプロパー融資の方で経営者保証を外すというのは結構ハードルが高いんだと思います。

 先ほど、冒頭申し上げたとおり、安易に外すのも、これもよくない。場合によっては、金融機関の場合は背任罪なんということもあり得ますから、だから、適宜適切に経営者保証は求めたり求めなかったりということをする必要があると思います。

 ところで、私が今日お配りしている資料の二ページ目には、新しい金融庁の監督指針、これをつけさせていただいています。金融庁にも来ていただいていますけれども、その中で、保証契約を締結する場合には、主債務者と保証人に対して丁寧かつ具体的に説明を行うということで、何を説明するか、a、bと書いていますね。aは、どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容。bとして、どのような改善を図れば保証契約の変更、解除の可能性が高まるか、個別具体の内容。

 総論としてはそのとおりだと思うんですが、ただ、この具体的な中身がどこにも書いていなくて、そうだとすると、銀行ごと、金融機関ごとに基準が変わってくると、例えば、ある取引先で十行からお金を借りたとして、経営者保証を積極的に外しましょうというところが仮に十のうち九あったとしても、残りの一つが厳しいところだったりすると、客観的に言えば、経営者保証を外してもいいような局面であっても外れないといったようなことも危惧されるわけです。

 そこで、私が申し上げたいのは、もうちょっと具体的に、どういう場合に経営者保証を外していいのか、あるいは、どういう場合に必要となるのか、この明確な基準を金融庁として定めた方がいいんじゃないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

新発田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から今御指摘ございましたように、今回の監督指針の改正により、金融機関における保証の徴求の手続というのを厳格化したところでございます。

 その上で、具体的な個人保証契約の締結の際に、どの部分が十分でないために保証契約が必要となるのか、あるいは、どのような改善を図れば保証契約の変更、解除の可能性が高まるかについて個別具体的に説明をするということを求めておりまして、これによって、安易な個人保証に依存した融資が抑制されるとともに、事業者、保証人の納得感が高まるということを期待しております。

 具体的なところにつきましては、いろいろ、銀行側、事業者側と議論を重ねてまいりましたけれども、経営者保証ガイドラインに定めております三要件のところについて、やはり、事業者の知識経験に応じて、その事業者の理解と納得を得られるような説明をするということが一番大事であって、そうなると、なかなか一律の説明というのは難しい。

 ただ、その中で、ガイドラインの中では、収益力とか資産ですとか、そういったところについては、できる限り定量的な、客観的な、そういった説明が求められる、あるいは、それ以外のところにつきましても具体的な説明が求められるということで、済みません、先生へのお答えに、答えていないのかもしれませんけれども、なるべく丁寧に事業者の理解を得るということを求めているところでございます。

 いずれにいたしましても、このガイドラインの実効性を確保するためには、今後しっかりフォローアップをしていきたいというふうに考えてございます。

階委員 そうすると、十行のうち九行が保証を外しますと言いました、残り一行が保証を外せませんと言いましたというときに、保証を外せない方に引きずられて、結果的に全部の保証が残ったままという事態は避ける必要があると思うんですけれども、こういった、相談窓口を設けるということも聞いていますけれども、相談窓口に今のようなケース、相談が来たら、金融庁としてはどういうふうに指導するわけでしょうか。

新発田政府参考人 ありがとうございます。

 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘ありましたように、この四月から経営者保証のホットラインを設けまして、具体的に何かお困り事があれば私どものところに情報が入ってくることになっております。

 そういった中で、具体的なケースを検討した上で、先生が御指摘のような事例が仮にありますれば、その場合には金融機関に直接ヒアリングをするということで、具体的にどこがどう問題になっているのかということを、そこはいろいろ対応を見ていく必要があるんじゃないかと。その中で、金融機関によって何かぶれがあるということであれば、そういった点については改善を求めるようなことも考えられるというふうに思ってございます。

階委員 五月九日の日経新聞の記事で、地銀さん、百行ぐらいあるんでしょうか、そのうち少なくとも十行以上が、原則、経営者保証を求めない方針を決めたと。この方針というのは、恐らく、今の二ページ目の左下にある改正後の監督指針に基づいて経営者保証の取組方針を公表したということに基づいて、十行以上、原則求めないということを日経さんが調べて記事にしたと思うんですね。

 私、そんなにすぐ変わるのかと。原則求めないというのは結構大きいことだと思うんですね。だけれども、ちょっと待てよと思ったのは、先ほどおっしゃっていたガイドラインの中には、外すかどうかの判断要素の中には、経営者等から十分な物的担保の提供があるということも列挙項目の中にあるわけですよ。

 ひょっとすると、経営者保証は原則外すけれども、その代わりに、経営者から物的保証、要は物上保証人にならなくちゃいけないといったことになると本末転倒ではないかと思うんですが、金融庁が目指しているのは、経営者保証を外すというのは、人的保証だけではなくて物的な保証も外す、担保の提供も求めない、ここまでやって初めてこの監督指針の意図は満たされるという理解でいいでしょうか。

新発田政府参考人 個人保証を免除する代わりに、まさにすり替えるような形で経営者に物上保証を求める行為というものは、必ずしも適切ではないというふうに考えてございます。

 幸いというか、足下において、そのような情報はまだ私どものところに寄せられておりません。

 その上で、金融庁といたしましては、金融機関に対して、個人保証に依存しない融資の一層の促進のために、例えば、停止条件付あるいは解除条件付の保証契約の設定ですとか、ABLの活用といった代替手法の活用も含めて、検討を要請しているところでございます。

 先生先ほど言及いただきましたガイドラインのところでございますけれども、ガイドラインのQアンドAというのがございまして、こちらの点については、まさに物上保証のところですけれども、あくまで会社に財産があるかどうかという要件を補完するものであって、経営者等が十分な物的担保を提供しなければ経営者保証の提供が求められるという趣旨ではなく、経営者による物的担保の提供を推奨するものではありませんというふうに書いてございますので、こうした趣旨にのっとって金融機関が適切に対応するものというふうに考えてございます。

階委員 経営者保証を求めないということは、物的な担保、すなわち物上保証も求めないというのが本来の姿であるということを確認させていただきました。

 さて、コロナ借換え保証なるものがスタートしたようです。これは経産大臣にまたお伺いしますけれども、信用保証の中で、信用保証協会がする保証の中でも、このコロナ借換え保証というのは私は非常に重要だと思っています。

 やはりコロナによって、営業自粛であったり外出自粛によって相当業績が落ち込んで、借金が過剰になっている、元々それほどの収益計上は望めないような事業だけれども、地域経済、地域社会にとっては非常に重要な企業というのは地方にはたくさんあるわけですね。そういったところを存続させていくためには、コロナ債務については、私はある程度、柔軟、寛大な措置が必要だと思っております。

 こちらの委員会ではお話ししなかったかもしれませんけれども、例えばデット・エクイティー・スワップ、債務を株に振り替えるとか、あるいは、震災のときには東日本大震災の事業者再生支援機構なんというのもつくって、債務を買い取り、政府機関が買い取るということもやったりとか、あるいは永久劣後ローンに切り替えるといったようなことなども提案した記憶があります。

 今回の政府のやり方、コロナ借換え保証ということなので、その中身がどうなのかということを三ページ目で、ちょっと資料を上げておりますけれども、例えば保証期間は十年以内で据置期間は五年以内とか、結構、以内ですから、やりようによっては厳しくもできるということなんですが、この辺り、なるべくコロナで苦境に陥った借入事業者の立場に立って、保証条件は考えていただく必要があるんじゃないかと思うんですが、この点について大臣の見解をお願いします。

西村(康)国務大臣 私もコロナ担当大臣をしておりましたので、まさに緊急事態宣言などで経済を無理やり止めることによって感染を抑えようということでありましたので、事業者の皆さんには様々な御負担をおかけし、しっかりと事業、雇用、生活を守るという観点から、様々な給付金と同様、ゼロゼロ融資を措置したところであります。

 まさに本年一月から開始をしたコロナ借換え保証制度は、この民間ゼロゼロ融資が返済本格化を迎える中で、借換えによって返済期間を長期化させ、その間に収益力改善を支援することを目的としております。これまでに約三万六千件、そして九千億円の借換え申込みを承諾しているところであります。

 政府として、本年三月、私、鈴木財務大臣、金融担当大臣とともに、民間金融機関や保証協会に対しまして、本制度の活用を事業者に積極的に提案し、伴走支援に努めることを要請をいたしました。また、民間金融機関には、事業者と対話をしながら計画を策定するよう、事業者に寄り添った対応を求めているところであります。

 なお、本制度は、保証料を〇・八五%から〇・二%まで引き下げ、一〇〇%保証の融資は一〇〇%保証で借換えできるようにするとともに、民間ゼロゼロ融資の上限である六千万円を超える一億円に保証上限を設定することで、新たな資金需要にも対応する制度としております。

 引き続き、本制度をしっかりと広報し、その活用を促してまいりたいと思っております。

階委員 経営者保証の話からまた信用保証の話に戻ったわけですけれども、信用保証の中でもこのコロナ借換え保証というのはやはり柔軟な対応が必要だということを申し上げました。よろしくお願いします。

 最後の質問になるかと思いますが、商工中金の関根社長に伺いたいと思います。

 四ページ目に商工中金の自己資本の内訳に関する資料をつけさせていただいておりますが、通常の資本のほかに二つの準備金がありますね。特別準備金四千億円、これは元々、政府出資分を振り替えて、バーゼル規制の基準を満たすために設けたものだという話を伺っておりますけれども、今現在、BIS規制が求める基準、一〇・五%を二・二六ポイントぐらい上回っているわけですね。そうすると、金額的には千八百二十億円ぐらい余裕があるわけです。

 この余裕分については、本来、特別準備金は政府の出資分でありまして、今回、株は政府は全部売却するわけですけれども、今の厳しい財政状況を考えると、この余裕分、千八百二十億円も早急に返してもらう必要があるんじゃないかと思っておりますが、この点について見解をお願いします。

関根参考人 お答えします。

 まず、特別準備金は、中小企業に対する円滑で継続的な金融機能の発揮のために、二〇〇七年、商工中金法制定時に措置され、当時、この経済産業委員会でも、商工組合中央金庫の完全民営化後においても、中小企業向け金融機能の役割が確実に果たされるよう、財務基盤が十分確保されるまでの間特別準備金を有効に活用との附帯決議があることから、まずは中小企業のためにしっかりと活用してまいる所存でございます。

 その上で、特別準備金は、法律の規則にのっとって、その自己資本の充実の状況その他財務内容の健全性が向上し、その健全性が確保されるに至ったと認める場合に株主総会に諮り、返納の適否を検討していくものと承知しております。

 御指摘の一〇・五%は、バーゼル規制上の国際統一基準行に求められる自己資本比率でございます。こうした規制値、自己資本比率、自己資本額はもちろん、その他の財務内容に関する要素、例えば資金調達、資本調達の状況、格付の状況、中小企業の置かれている環境などなど、そして、これらの状況に加えて将来の見通しも踏まえ、特別準備金が措置された趣旨である中小企業向け金融機能に影響が出ないように、適時適切に検討してまいる所存でございます。

 また、在り方検討会の報告書では、一定額の積立てが求められております。それを踏まえて、当金庫として、今後もしっかりと安定した収益を確保し、国庫納付のための準備として、毎年度一定額の積立てを検討してまいる所存です。あわせて、法律に規定されている主務大臣報告の中でも、特別準備金の額の見通し及びその根拠を適切に御説明していきたいと考えております。

階委員 時間が来たので終わりますけれども、本当に国の財政状況は、防衛にしても子育てにしても、お金が幾らあっても足りないような状況でして、余裕があるんだったら速やかに返す、ここは是非、民間出身の経営者として、やはり公的資金を入れることによって経営もいろいろな足かせが生じるわけですね。ですから、ここはしっかりやっていただくということを最後にお願いし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹内委員長 次回は、来る三十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十八分散会


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