衆議院

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第6号 令和6年3月29日(金曜日)

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令和六年三月二十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岡本 三成君

   理事 小林 鷹之君 理事 鈴木 隼人君

   理事 松本 洋平君 理事 山下 貴司君

   理事 荒井  優君 理事 山岡 達丸君

   理事 守島  正君 理事 中野 洋昌君

      井原  巧君    石井  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      国光あやの君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    冨樫 博之君

      中川 貴元君    福田 達夫君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    吉田 真次君

      和田 義明君    若林 健太君

      大島  敦君    落合 貴之君

      小山 展弘君    重徳 和彦君

      田嶋  要君    山崎  誠君

      市村浩一郎君    小野 泰輔君

      山本 剛正君    吉田 宣弘君

      笠井  亮君    鈴木 義弘君

    …………………………………

   経済産業大臣政務官    石井  拓君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   参考人

   (九州大学副学長・水素エネルギー国際研究センター長)           佐々木一成君

   参考人

   (一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会副会長)

   (川崎重工業株式会社代表取締役社長執行役員)   橋本 康彦君

   参考人

   (東京工業大学名誉教授) 柏木 孝夫君

   参考人

   (特定非営利活動法人気候ネットワーク理事長)

   (弁護士)        浅岡 美恵君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

岡本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、九州大学副学長・水素エネルギー国際研究センター長佐々木一成さん、一般社団法人水素バリューチェーン推進協議会副会長、川崎重工業株式会社代表取締役社長執行役員橋本康彦さん、東京工業大学名誉教授柏木孝夫さん、特定非営利活動法人気候ネットワーク理事長、弁護士浅岡美恵さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用なところ本委員会に御出席をいただきまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。参考人各位の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようにお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず佐々木参考人にお願いいたします。

佐々木参考人 九州大学の佐々木です。

 本日は、貴重な機会をいただき、私の方から、「水素社会推進法への期待」と題しまして、この資料を使いまして御説明したいと思います。

 私は、三十五年間、水素エネルギーの研究、教育に携わってまいりました。さらに、総合資源エネルギー調査会の水素・アンモニア政策小委員会と脱炭素燃料政策小委員会の委員長も務めさせていただいております。九州大学では大学を挙げてこの水素エネルギーに取り組んでおり、それらの経験も踏まえて御説明申し上げたいと思います。

 二ページ目を御覧ください。

 これまで、石炭から石油、そして天然ガスに燃料がシフトしてまいりました。ですが、天然ガスですら炭素を含む化石資源でございますので、使ってもCO2を出さない、いわゆる脱炭素燃料を使うことが重要になってまいります。それが、水素や水素キャリアのアンモニアということになります。

 ただ、その供給網、いわゆるサプライチェーンをつくるのには、十年、二十年の年月がかかります。分かりやすい例が天然ガスの輸入でございますけれども、それが始まったのが一九六九年でございましたけれども、各御家庭に都市ガスとして供給されるまでに十五年から二十年かかったということがございます。ですので、本法案では低炭素水素等と書かれておりますけれども、水素などの脱炭素燃料が社会全体に使えるようになるまでには、同程度の時間がかかると思われます。まさに、国を挙げてエネルギー転換を着実に進めていく必要がございます。

 三ページ目を御覧ください。

 脱炭素イノベーションに向けた方向性が二〇一八年の資料に書かれておりますけれども、表の左側に書かれておりますとおり、足し合わせますと、我が国の年間CO2の排出は約十一億トン、当時でございますけれども、その約半分弱が発電時に出る電力由来でございます。再生可能エネルギーを増やし、安全性が確認された原子力発電所を再稼働させたとしても、出力調整のために必要な火力発電は、水素発電で脱炭素することができます。

 また、電力部門以外からのCO2排出も大きな課題でございます。運輸、産業、民生の各部門からのCO2排出は日本の全体の半分強でございますけれども、水素やアンモニアが脱炭素燃料や原料として使うことができます。つまり、低炭素水素等は、電力と非電力の両方のカーボンニュートラルに貢献できるということになります。

 御存じのとおり、電力は送電網が国内の隅々まで行き渡っておりますけれども、この低炭素水素につきましては供給網はまだございません。本法律案は、まさにその供給網、サプライチェーンづくりを後押しするようなものでございます。

 四ページ目を御覧ください。右上にページ数がついております。

 技術開発におきましても、水素の位置づけや重要性は認識されてまいりました。これは二〇二〇年の革新的環境イノベーション戦略の概要をまとめた資料でございますけれども、まず、左上にありますように、国内の再エネの利用拡大、これは、多くの国民、そしてここにおられる各党の思いでもあると思います。

 しかし、この再エネ電力はまさに変動が激しく、電力系統に入れられない地域や時間帯が増えてきております。私がおります九州でございますけれども、九州のみならず、北海道や東北などの地方圏でも余る再エネが出てきております。それらのエネルギーを捨てるのではなく、水の電気分解で水素にすれば電化が難しい燃料や原料に使える、これが水素の大きな価値でございます。

 二つ目でございますけれども、海外で、再エネ電力が安い地域が増えてきております。中東、オーストラリア、北米、チリなどの南米でございますけれども、これらの地域から送電線で再エネ電力を日本まで運んでくるわけにはまいりません。右上にありますように、海外の再エネ電力から水素を作れれば、再エネを船で世界中から日本に運んでくることが可能になります。特に大都市圏の脱炭素化に期待されております。

 つまり、水素の大きな価値というのは、国内の再エネをより使いやすくする、そして、世界中の再エネを水素の形で日本に持ってこれるということが言えると思います。

 三点目でございますけれども、CO2というごみを捨てられない時代になってまいりました。このCO2を地中に埋めるのが、併せて御審議いただいておりますCCS、カーボン・キャプチャー・アンド・ストレージでございますけれども、CO2を地中に埋めずに、回収して炭素源として使うということもできます。例えばSAFと言われているジェット燃料などの炭化水素燃料を作るときにも、水素が必要になってまいります。

 このように、水素は、脱炭素社会の電力、燃料、原料、これを賄うまさに戦略物資と言えると思います。個人的には、GXを支える戦略技術である水素は、DX、デジタルイノベーションを支える戦略技術である半導体にも相当するものだと考えております。

 五ページ目を御覧ください。

 カーボンニュートラルに向けて、包括的な取組が必要になってまいります。その真ん中下の図に書いておりますように、1の電力の省エネ、2の電源の脱炭素化、3の電化の促進、4の燃料の省エネ、そして5の脱炭素燃料への転換が大事な方向性と言えると思います。水素やアンモニアなどの低炭素水素等は、2の電源の脱炭素化と5の脱炭素燃料への転換、これに大きく貢献するものでございます。

 六ページ目を御覧ください。

 上側に描かれておりますけれども、水素、アンモニアなどを入れていくことによって、電化が難しい産業部門や運輸部門などの、まさに非電力分野の脱炭素が視野に入ってまいります。

 電力では、再エネを増やしてからも必ず残る火力発電でございますけれども、これの燃料を脱炭素燃料である水素、アンモニアに転換していくことで、電力の脱炭素化が可能になります。

 資料の一番下に書いておりますけれども、我が国は、二〇三〇年に電源構成の約一%、二〇五〇年には一〇%を水素やアンモニアでの発電に置き換えていくことを掲げております。二〇五〇年には水素を年間二千万トンということでございますけれども、これは、熱量換算いたしますと、ちょうど我々が今メインで使っております天然ガスの約五千万トンぐらいに相当します。昨年の天然ガスの輸入が約六千六百万トンということでございますので、二〇五〇年にはこの脱炭素、低炭素水素等が天然ガスと同じぐらい使われるという世界になるというのがこの目標でございます。

 七ページ目を御覧ください。

 ちょうど石油ショックが起こった約半世紀前頃から、新エネルギー技術の技術開発を日本はまさにぶれずに着実に進めてまいりました。日本が強い分野でございます。

 まずは、効率が低かったエンジンやタービンを効率が高い燃料電池に変えていく研究開発が鋭意進められ、御存じのとおり、家庭用の燃料電池、エネファームや燃料電池自動車などが実用化されたものでございます。

 最近は、使っても出てくるものは水だけという水素の大きな価値が高く評価されまして、水素エンジンや水素タービンの開発も着実に進められているところでございます。石炭火力へのアンモニアの混焼にとどまらず、アンモニアの専焼を可能にするタービン技術などの研究開発や実証も現在進められているところでございます。

 八ページ目を御覧ください。

 CO2を出さない水素循環の社会をつくれるのが、この水素の価値でございます。ただし、他方、環境に優しくても、値段が高いと皆さんに使っていただけないというのがエネルギーでございます。水素などの脱炭素燃料はやはりまだ高いという課題が正直ございます。一立方メートルの水素が大体百円ぐらいで、セダンタイプのハイブリッド車と水素燃料電池自動車の燃料代が同じぐらいになるということで、水素で走る乗用車が実用化しているということであります。

 今後、二〇二〇年代には水素で走るトラックやバスなどの商用車、そして二〇三〇年には水素発電が始まる予定です。さらに、化学工業や製鉄などの脱炭素化が難しい産業分野で、まさに脱炭素燃料や原料が今後必要になってまいります。

 本法律案は、脱炭素燃料、原料の本格導入を包括的に後押しする、まさに歴史に残る画期的な法律と言えると思います。

 九ページ目を御覧ください。

 社会実装に向けた取組も鋭意進められております。例えば、昨年開催されましたジャパンモビリティーショー、私も伺いましたけれども、水素で走るトラック、海外勢の水素燃料電池自動車、首都圏で実証されている水素列車が展示されておりました。

 十ページ目を御覧ください。

 字が細かい資料で大変恐縮ですけれども、我が国が水素社会構築への取組を加速するために、水素基本戦略を昨年改定したところでございます。

 二〇四〇年の目標を掲げたこと、そして水素で、技術開発で勝ってビジネスでも勝つことを明言しております。作る、運ぶ、使うための技術開発を着実に進めるとともに、左下に書いておりますように、大規模サプライチェーンをきっちりつくっていくということが基本戦略に明記されております。

 他方、国際競争は激化しております。右下に書かれておりますけれども、アメリカでは、御存じのとおり、インフレ抑制法の下で五十兆円規模の予算を用意されておるということは御存じだと思いますし、水素を含む戦略分野でその予算を確保しているところでございます。欧州も、グリーンディールとして、グリーン投資基金などを設立して兆円単位の予算を考えています。カーボンニュートラルに向けて日本が世界と伍していく非常に大事なタイミングで、この法律がまさに出されたということになります。

 十一ページ目を御覧ください。

 水素関連の小委員会の中では、約二年前から我が国のあるべき制度について包括的な議論を進めてまいりました。その一つが、価格差に着目した支援でございます。

 真ん中の下ぐらいに書かれておりますけれども、低炭素水素等を作る際にどの程度CO2が排出されたかを意味する、いわゆるカーボンインテンシティー、炭素集約度を国際的な指標といたしまして低炭素水素等を入れていくことが明記されておるところであります。海外でも、ドイツ、イギリス、EUで同等の制度がスタートしておりますし、フランスでも検討されていると伺っております。

 二つ目でございますけれども、水素やアンモニアなどの供給網を、供給側がインフラをつくっても、利用をする側が途中で使うのをやめてしまうと、国全体といたしましては無駄な投資になってしまいます。ですので、供給者と利用者が連名で一体的な事業計画を作っていただくこと、これが大事なポイントになってまいります。これによって、いわゆる鶏と卵のどっちが先かという議論を超えて、低炭素水素を着実に皆さんで力を合わせて社会に入れていけるようになると思います。

 さらに、三点目のポイントといたしまして、二〇三〇年までの供給を始めていただくとともに、例えば、十五年間の国の支援の後に十年間自立して供給を続けていただくということを考えております。つまり、今年、二〇二四年に法律ができて、これから制度が始まりますと、我が国がカーボンニュートラルを達成する二〇五〇年までの脱炭素燃料の導入のレールを引く、日本のエネルギーの市場の歴史の中でも非常に重要な法律になると考えております。

 十二ページ目に、本法律の大事な点を私なりにまとめてみました。

 この法律は、二〇五〇年までの脱炭素燃料普及のレールをきっちり引き、事業者や地域の背中を押す法律だと言えます。値差支援で脱炭素燃料を使いやすくし、拠点整備によってコンビナート等での地域の雇用確保や産業の脱炭素転換を後押しすることができます。燃料や原料のグリーン化を進めることでカーボンニュートラルな製品を世界中に輸出しやすくなります。四番目が、国が保安を主導するところです。安全、安心を自治体任せにせず、国がきっちり汗をかくというところがポイントと考えております。

 もちろん、法律制定後も不断の努力が必要です。国内の再エネをより使いやすくできれば、国産水素が増え、エネルギー自給率も上げることができます。さらに、国際競争が激化する中で、スピード感とスケール感、これを持って進めていく必要がございます。さらに、安全はもちろん、安心のための社会受容性向上を不断に進めることが、これはあらゆるエネルギー分野で重要でございますし、低炭素水素等も同じでございます。

 十三ページ目に、一例といたしまして、社会受容性向上への私どもの九州大学の取組を示させていただきました。九州大学の伊都キャンパスには二〇〇五年から水素ステーションがあり、多くの方に水素自動車に乗っていただいたり、水素ステーションの外も中も全て見ていただいております。我々は水素キャンパスと呼んでおりますけれども、お時間がありましたら是非御視察いただければ幸いでございます。

 最後の十四ページ目にありますように、時間は正直かかりますけれども、低炭素水素は脱炭素社会を回せる燃料になります。エネルギーや環境、経済社会の在り方も大きく変えるポテンシャルがございます。他方、低コスト化や、長期にわたる技術開発や普及戦略、そして社会受容性も重要でございます。

 水素関連の小委員会、審議会では、そのような議論をオープンに行ってまいりました。詳細はユーチューブ動画で全て見られるようになっております。是非、お時間があったら御覧いただければ幸いでございます。

 私からは以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

岡本委員長 佐々木先生、ありがとうございました。

 次に、橋本参考人にお願いいたします。

橋本参考人 皆さん、おはようございます。

 水素バリューチェーン推進協議会副会長を務めております、川崎重工業株式会社の橋本でございます。

 本日は、水素社会推進法の審議に当たり、このような機会をいただき、誠にありがとうございます。

 水素バリューチェーン推進協議会は、略しましてJH2Aと以下は呼ばせていただきます、こういった団体でございますが、法人化をしてまだ二年でございますが、メンバーの中には二十年、三十年と水素に関わってきたメンバーもございます。そうしたJH2Aにとりまして、水素社会推進法が国会に提出され、審議される場面にこうした形で参加させていただけるということは、大変な喜びでもありますし、また、それを実行する我々にとっては身の引き締まる思いでもございます。

 我が国にとっての水素社会構築の目的は、第一にはカーボンニュートラルの実現、そしてエネルギー資源の多様化と関連産業の活性化にあるというふうに考えております。こうした目的を、国際競争力と安全、安心を維持向上させながら達成する必要がございます。すなわち、皆さんよく御存じのSプラス三E、これをしっかり実現する、これが大事であると考えております。

 JH2Aは、そうした課題を解決し水素社会構築を加速するために、第一番目に水素の需要創出、二番目には技術革新によるコスト削減、三番目には事業者に対する資金提供、この三つを目的としまして、二〇二〇年十二月に任意団体として、そして二二年の四月に社団法人化いたしました。

 当時は、欧州で水素戦略が策定されるなど世界的に官民による水素の取組が加速されており、それまで水素技術で優位であった日本が競争で抜かれるリスクも実感しておりました。そのため、我が国でも、海外に劣後することなく課題解決に取り組むため、業種横断的な団体、JH2Aを設立した、こういった経緯がございます。

 現在の会員は、水素バリューチェーン、すなわち水素を作る、運ぶ、ためる、使う、この全分野にわたる民間事業者と、自治体の皆様、関連団体、アカデミアの皆様による四百十三社・団体となっております。

 会長には、トヨタ自動車の内山田エグゼクティブフェロー、三井住友フィナンシャルグループの国部会長、そして岩谷産業の牧野会長の三名による共同会長、そしてその下には、副会長として、私、川崎重工から、そして東芝、三井物産、ENEOSから合わせて四名、そして理事二十六名の構成で成立しております。

 JH2Aの中では、五つの委員会を設けまして、メンバー各社から出向者二十名の事務局員を配して、その二十名がサポートしながら活動をいたしております。

 まず、第一の事業化委員会では社会実装プロジェクトの創出と政策支援の実現、規制委員会では規制、制度の解決、CO2フリー委員会では水素の低炭素化推進、渉外委員会では関連団体との渉外、連携及び普及活動、そして金融委員会では資金調達の選択肢の提示に向けた検討、こういったものを進めております。

 水素社会推進法に関連する課題への取組に関しても、幾つか御紹介させていただきます。

 まず、作る分野において、法案にも記載する水素の低炭素化に取り組んでおります。

 カーボンニュートラルに貢献するためには、水素は、製造、流通過程も含むライフサイクルで低炭素、すなわち炭素集約度の低いものでなければならないと考えております。低炭素の基準やその数値の算定方法、認証については、海外でも多く検討されており、水素の輸入が想定される我が国では、そうした議論に積極的に関与していく必要がございます。そのような認識により、ISOでの算定方法の標準化等の国際的議論にも、日本側の意見を反映すべく、積極的に私どもから参画いたしております。

 また、作る分野では、水素の国産もエネルギーセキュリティーの観点から極めて重要であると考えております。そのため、種々の再生可能資源、低炭素資源をお持ちの自治体の皆様とともに国産の電解水素に関する検討も進めさせていただいております。

 二つ目は、国内サプライチェーンに関する取組でございます。

 今回の拠点整備支援によって構築される水素の供給、消費拠点から、さらには全国に向けて水素を供給するためのサプライチェーンの最適化検討、すなわち、どこの需要地や中間地に向けて、どのぐらいの量を、いつ、何によって運ぶのか、それはどれが最適か、こういった課題を皆さんとともに検討を進めております。これは、欧州等で検討が進んでいます水素パイプラインの日本におけるグランドデザイン策定も含んでおります。

 また、輸送部門では、大きな需要が期待できる商用車に対する水素ステーションの最適配置や、農機、建機といった分野でも事業モデルを検討し、事業者の方々のみならず、自治体の皆様とも連携しながら進めている状況でございます。

 三つ目は、大規模供給、利用を達成するための技術課題と法的課題の検討でございます。

 今回の法律でも、国による一元管理や高圧ガス保安法等の特例措置といった形で大きな流れをつくっていただいております。水素の用途は、これまでの工業原料用から、大規模な発電、製鉄、輸送、業務民生用といった大きな広がりを見せております。その新たな役割と技術の進歩に合わせて、しっかりした技術的根拠に基づく法整備が必要というふうに考えております。こうした認識により、液化水素設備、あるいはパイプライン、MCH輸送船、高圧トレーラー、水素品質、電気分解設備、そしてモビリティーの多様化といった様々な項目を課題として挙げて取り組んでおります。

 四番目には、水素ファンドでございます。

 水素ファンドは、JH2A設立時の課題の一つでもある事業者に対する資金提供を実現すべく、検討いたしております。

 今回の計画認定制度でも、価格差支援、拠点整備支援という形で盛り込んでいただいておりますが、水素市場黎明期における需要と供給のギャップを埋めるためには、何らかの対策が必要でございます。

 このギャップに対して、民間側の取組としまして、リスクマネーを提供して、バリューチェーンの構築に寄与することを目的としたものです。現在、会員企業内の投資家候補を中心に、ファンドマーケティングを展開しているところでございます。計画認定制度での支援措置と併せることで、黎明期を乗り切り、水素バリューチェーン事業の自立を達成したいというふうに考えております。

 最後に、水素社会推進法への期待を述べさせていただきます。

 水素社会構築には、水素そのものの低炭素化、需要の創出、適正なコストとプライス、そして安全、安心で身近な水素といった課題を海外と劣後することなく解決する必要があるというふうに考えております。その解決に取り組む旗印としての水素社会推進法の制定、具体的な施策である計画認定制度による価格差支援、拠点整備支援、高圧ガス保安法等の特例措置は、自律的な水素社会の成長を促進するものと大変期待しております。

 当然のことながら、水素社会構築は事業者の努力だけでは達成が不可能でございます。そうした環境において、今回の水素社会推進法は、事業者に低炭素水素の将来ビジネスを行うための予見可能性を高め、我々の活動を大いに加速させる大変有用な法律、制度であると認識しております。

 一方で、欧州や米国でも既に政府の強力な支援策が充実しており、水素社会早期成立に向けた国際間の競争も激しさを増しているところでございます。

 二〇一七年に世界に先駆けて水素基本戦略を策定いただいた日本政府、さらには、燃料電池車や水素エンジン、液化水素運搬船など様々な技術で世界をリードする日本の企業体において、GX移行債活用や規制の合理化を通じて一刻も早く水素社会をつくっていきたいという強い強い思いがございます。そのためには、JH2Aが企業連合を組成する民間側の中核機関としてしっかり機能し、お役に立てるよう、早く、大きく発展していきたいというふうに考えております。

 皆様、御清聴ありがとうございました。(拍手)

岡本委員長 橋本副会長、ありがとうございました。

 次に、柏木参考人にお願いいたします。

柏木参考人 御紹介いただきました、東京工業大学の名誉教授をしております柏木でございます。よろしく、どうも。

 まず最初に、なぜカーボンニュートラルが出てきたのか。これはやはりパリ協定まで遡ることになります。

 パリ協定、最初は二度上昇ぐらい、二度上昇というのは、産業革命から二一〇〇年、今世紀末までに、平均気温が変化するんですけれども、平均気温の上昇が二度と。我々、最初は二度上昇ぐらいでいいだろうと思っておりましたけれども、IPCCの見解であるとか、医師の見解であるとか、医学部系の論文だとか、いろいろなことを読みますと、やはり一・五度上昇ぐらい以下に抑えないと、どうも人体がそれに追随できないと。要するに、マラリアがわっと来るとか、ウイルスがもっとはやってくるとか、やはり非常に大きな問題になるので、人ありきだ、生体ありきだ、人体ありきだということで、じゃ、一・五度上昇でいこうじゃないかと。

 そのためには、やはり先進国と発展途上国では格差がありますから、先進国が見本として二〇五〇年カーボンニュートラリティーを達成する、このノウハウをきちっとした上でそれを発展途上国に移していく、こういう考え方が非常に重要になってくるというふうに私は思っております。まずは、一・五度上昇ということが先進国の中でコンセンサスが得られたのが大体二〇一八年、一九年ぐらいでしょうか。

 二〇年頃、諸外国はこぞってこのカーボンニュートラルというコンセプトを出しています。それで、じゃ、カーボンニュートラルを達成するためにはどうすればいいかというと、これはもう先生方よく御存じのGX、グリーントランスフォーメーションで化石から非化石の流れをつくり出すことだと。これは、非化石の中にも、再生可能エネルギーはありますし、もちろん原子力もありますし、いろいろなものがあるというふうに考えてよろしいと思います。GXを達成するためには、もちろんDXと一緒にならないと。日本はちょっとDXが遅れていますから、これを頑張らないと、幾ら頑張ってもGXは進まないということになりますから、これを一体化して捉えるということが一つ大事なことなんです。

 いずれにしましても、GXを達成するための手法として、私は三ついつも挙げているんですよ。

 一つが、即効性のある省エネルギー。省エネルギーをばかにしちゃいけません。省エネルギーは即効性がありますから。

 それから、その次が、電力がこれからやはりゼロエミッション型の電力にどんどん移っていくことになりますので、そう考えますと、いろいろなものを電化すればゼロエミッションに近づいてきてカーボンニュートラルに近づけられるということで、電化。これは一番分かりやすく言うと、やはり車でしょうね。燃焼してCO2を出している車を電化にしていく、あるいはFCVにしていく、水素にしていく、こういうことが極めて重要な電化ですね。

 三つ目が、やはり再生可能エネルギーは増えていく。もちろん、世界の中でも日本の中でも増えるのは、限界費用がゼロに近い太陽光と風車ですよ。

 地熱が今〇・三%しか入っていませんから、これを二〇三〇年で一%、元を三倍まで持ってこれるかということですね。なかなかこれはそう簡単なものじゃなくて、今、太陽光が一割ぐらい入ってきましたでしょうか、一〇%。これを二〇三〇年で一五%まで持っていきたいと我々は思っています。

 もちろん、風車は、もう国内で陸地内だとなかなか大きなものができませんので、洋上でうまく造っていけば稼働率もいいし、そういう意味では、風車が大体今〇・九%、一%弱入っているものを五%まで持っていく。これは大変なことです。だから、洋上風力をやるとか、あるいは、太陽光はペロブスカイトの新しい技術開発をやるということが極めて重要。技術開発はもちろん重要。

 ただ、日本は、技術開発は重要だということは誰でもオーケーするんですよね。ところが、ビジネスモデルに関してはどうも欧米にやられっ放しで、技術で勝ってビジネスモデルで負けるという場合がありますので、それがないような形に持ってこないと、特に水素に関しては今用意ドンで始まっていますから、ここは非常に重要になってくるというふうに私は思っています。

 日本のこの水素の流れについてずっと考えてみますと、まず、日本は技術に関してはすごかったですよ。どういうことをやったかというと、まず、二〇〇九年にエネファーム、設置型の七百ワットの燃料電池、これを商品化ですから。商品化ということは、万が一のことがあってリコールになれば大きなダメージを受けることになりますから、なかなか商品化はできません。リースモデルにするとかという話になってしまいますけれども、商品化をした。それで、二〇一四年にミライでしょう。

 そのときにちょうど、経済産業省の中のエネ庁の中に、水素・燃料電池戦略協議会というのをつくっていただいた。たまたまその座長を私がやらせていただいた。これは協議会ですから民間の企業がたくさん入っていまして、それに学、産学でやっている。だから、民間の企業としてはもろに好きなことをばんばんおっしゃいますから、そういう会がないとやはり本格的にいい法律に結びつけられない、こういうふうに思うわけですね。

 その後、ずっと考えますと、日本もカーボンニュートラリティーを言ったのが前総理の菅さんですよね。菅前総理が二〇二〇年の十月二十六日の日に、うちもカーボンニュートラルだと。これは大体、世界は二〇〇〇年ぐらいからぶわっとカーボンニュートラルを言い出しましたから。日本は、だから、同じぐらいの時期に菅さんが言っていただいて、その後すぐ予算を取った。これは大変なことだったと思います。

 これはすごく速かったんですよ。令和二年の第三次補正予算で二兆円、税金から取ってきましたからね。ですから、国債で取るのもいいんですけれども、これは民間の金ですからいいんですけれども、これは税金を取っていますから、非常に使い方もきちっとしなきゃいけないということも併せながら、随分速く進んできたということは間違いない。

 それで、総理が替わって、二〇二二年にGX移行債というのが、国債でお金をつけて、百五十兆ぐらいかかるぞと。大体二〇五〇年の世界の水素マーケットが百五十兆円と言われていますから、そういう意味で、倍々ゲームなんですよ、二〇三〇年は四十兆、二〇四〇年八十兆、二〇五〇年百六十兆。倍々で伸びていきますから、これを逃す手はない。ですから、そういう意味では、スピーディーにやっていくということが非常に重要になってくる、私はそう思っております。今年から移行債も公募が始まって、一・六兆円というのが集められているというふうに聞いております。

 日本も、そういう意味では、二〇一四年に我々の水素・燃料電池戦略協議会ができて、そしてどうなったかというと、その中で我々が二〇一七年に水素基本戦略という冊子を出しているわけですよ。これは世界で初めてですから。

 そのときには、欧米は余り意識していなかったんですね。うまくやっているな、日本は技術は勝ったし、よくやっている、このぐらいの目でしか見ていなかった。これは一・五度上昇がまだ明確じゃなかったからですよ。それで、一・五度上昇になってから、いや、ちょっと待て、日本に技術では負けた、だけれども、ビジネスモデルは、日本はまだそれはやっていないと。二兆円をつけたり、移行債とかといったのは二二年ですから、二〇二〇年でようやく二兆取っただけですから。そういう意味では、水素が高ければ、それは物は売れませんよね。売れないものを作ってもしようがないだろうという話になりますと、やはり、ビジネスモデルで欧米は日本よりもいいものを早く作っていく。もうスピードアップはすごかったですね。

 大体、二〇二〇年の六月に、ドイツがハイドロジェングローバルという、なかなかやり方がうまいんですよ。ODAの金を使ったり、世界の金を、金利安のものをどんどん使ってアフリカの北部を発展させるんですね。そして、ドイツに定額で買ってあげる。定額ということは、フィード・イン・タリフで買ってあげる。固定価格で買ってやる。そうすると、お金はドイツからアフリカの北部に流れていきますから、ある意味では、ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸とのエコノミックサーキュレーションを行うということになりますから、今の時代にぴったし合った話になっている。そして、横目でロシアのガスを見る。おまえのところのガスは要らないと。

 もううちは、アフリカの北部に再生可能エネルギーを入れて、そして、パイプライン・アンド・ワイヤー・アンド・ファイバー、自営線と通信線を入れながら、今、電気が必要なときは電気を送れ、電気が要らなければ水素にして送ってくれということをやったのは二〇二〇年六月ですよ。

 七月には欧州委員会が何をやったかというと、欧州は、EUの中にパイプライン構想を始めると。水素パイプラインですよ。これは連携しているわけですよね。八月には、今度はフランスがピンク水素、夜余っている原子力の、今全体の電力の中で六四%ぐらい行っていますでしょうかね、その夜間電力で水素を作って、それをこのパイプラインに流し込んでいくということを彼らは連携してやっているわけですね。イギリスは、もちろんのことながら、二〇二二年には値差支援とかいろいろなことをやっているわけですよ。

 それで、じゃ、日本は遅れたかというと、日本は全く遅れてはいなくて、技術では勝っているわけですから、あとはビジネスモデルさえうまくやれば。これをスピーディーに。だから、規制改革とビジネスモデル、そのために、二〇二三年の二月から五月ぐらいに、また水素・燃料電池戦略協議会を始めました。

 このときはすごかったですよ。もう水素のステーションを造ったりしていましたし。それも、水素ステーションも制約が多くて、すぐ検査しろとか。そういう日本の制約をうまくスピーディーに変えられないというデメリットが出てきてしまって、民間としては、欧米では一年以内でできる緩和を日本に持ってくると三年以上かかる、これじゃ日本では水素はできないぞということを言う企業もたくさんありました。

 それで、そういうのをエネ庁が全部受けて今回のこの新法につながったというのがこれまでの流れですね、それは非常に重要な時期に。だから、もたもたしていると駄目なんですよ。それで、技術ではもう勝っているわけですから、商品を出しているわけですから、だから、あとはビジネスモデルさえうまくついていけば、これは、まあまあ。

 今度は、この中に値差支援を入れる、これにGX移行債を使う。すると、これはフィード・イン・タリフとは違いますね。だから、フィード・イン・タリフを固定価格と訳すのもおかしいですよね。値差支援の課徴金を、幾らか課徴金が要りますよね、差額に。その差額を電気料金に乗せるのがフィード・イン・タリフですよね。今の自然エネルギー系のものはそうですね。

 ところが、今度の、今出されている法案の中の値差支援、これは、企画書が認定を受けると、非常にオールマイティーになってきて値差支援も受けられる。この値差支援は、国債を買った額からその支援が行われるということになりますので、これは水素を使う人たちの水素の料金に転嫁されるわけではない。だから、フィード・イン・タリフではない。ですから、フィード・イン・タリフと今回の値差支援とは全然違うものだということを頭にやはり入れていく必要があるんじゃないか、こういうふうに私は思っています。

 これがうまくいきますと、最終的にはやはり、我々としては、日本は技術国家で、かつビジネスモデルまでうまくいくということになりますと、どういうことになるかというと、成長戦略にいかに結びつけられるか。ですから、成長戦略は、技術がもちろんなければ成長戦略はできませんから、だから、ここがやはり難しいところで、大体、狙っているのはASEAN十か国ですよ。あそこにはシンガポールがありますから。シンガポールはDXがベストファイブに入っていますからね。

 日本は残念ながら、二、三年ぐらい前からどんどん落ちています。二、三年前は、六十四か国のうち、DX、五十項目ぐらい全部採点して、二十七位だったかもしれませんね。去年が二十九位かな。それで、今年になって三十四位まで落ちていますから。やはり、行政改革ができていない、一気通貫でワンストップサービスができないというところがある。これはGXもできないということになりますから、それをやはりうまく一緒にしながら、そしてビジネスモデルと併せながら持っていけば、日本は成長戦略に結びつけられるだろうと私は思っております。

 そうすると、どういう成長戦略になるかというと、メイド・イン・ジャパンの燃料電池であるとか、日本は、SOECという、燃料電池の逆をやらせる電気分解、ただ陽極、陰極を入れて電気を通してぼこぼこぼこぼこやる電気分解とは違って、燃料電池の逆をやらせる。ちょっと高温ですけれども、非常に高効率な電気分解が可能になります。こういうものも日本の特技芸として持っておりますから、まず電気分解装置があって、タンクはもう商品ができているわけですから、上から落としたり、ショットガンで、ピストルで撃っても爆発しないぐらいの保安は持っていますので。そして、燃料電池はいろいろなものが出ています、今。

 この三つが非常に大きな、パイプラインもありますし、これをプラットフォームの上に乗せて、そして、一つのプラットフォームを運営する国として、カーボンニュートラルは日本に任せておけば、カーボンニュートラルは日本が請負人になれば、プラットフォーマーとして機能することによって、それぞれの国の、例えばASEAN十か国であれば、その国々の特技とするところを入れてあげながら、決め手となる要所要所のテクノロジーに関しては日本製が必ず入っているというようなことを我々は考えておりまして、日本がカーボンニュートラルのプラットフォーマーになるということが非常に大きな日本の成長戦略につながっていくというふうに私は思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

岡本委員長 柏木先生、ありがとうございました。

 次に、浅岡参考人にお願いいたします。

浅岡参考人 気候ネットワークの浅岡と申します。

 本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私どもの気候ネットワークは、約四半世紀にわたりまして、地球温暖化問題、気候変動問題に取り組んでまいりました。とりわけここ数年は、二〇〇〇年頃からこうした水素、アンモニアを電力部門において利用するという提案がなされるようになりましてから、この問題に焦点を特に強めて議論してまいりました。

 私自身は、京都で、弁護士業が本業でございまして、京都議定書以来こうして関わってまいったところでありますが、本日は、こうした気候ネットワークの取組に加えまして、法律家の観点から、弁護士という実務家の観点から意見を申し上げたいと思います。

 まず、先ほど、三人の御意見を私も拝聴しておりました。米国やEUのこうした水素に関する大きな支援のお話もございましたが、一つ御説明が足りないのは、こうした国におきまして、発電部門において水素やアンモニアを活用するという方策は全くないということであります。これは大変大きな違いであることを念頭に置いていただきたいと思います。

 そういう中で、日本におきましては、一枚めくっていただきまして二ページ目を御覧いただきますと、法律に従って問題を指摘させていただきたいと思います。まず、法の目的でございます。

 先ほど柏木先生からも、世界は一・五度を目指すと合意をいたしまして、それに取り組んでいるというお話がございました。ところが、この法律の目的の中には、世界的規模でエネルギーの脱炭素化に向けた取組が進められる中でという言葉があるのみでありまして、気候変動に取り組むとか一・五度の目標に整合させるということはなく、単に、低炭素水素等の供給及び利用を早急に促進するということがあるのみでございます。

 振り返ってみますと、二〇〇二年、京都議定書に日本が署名、批准をいたしますと、エネルギー政策基本法が策定されました。この法の目的には、二ページ目に書いてございますように、もって地域及び地球環境の保全に寄与するとともに我が国及び世界の経済社会の持続的な発展に貢献することを目的とすると明確に書いているわけでありまして、地球環境への貢献が経済とうまくかみ合っていくこと、これが将来の方向であると。SプラススリーEという言葉は、これには私は整合していないと思っております。

 次のページを御覧くださいませ。

 昨年十二月、ドバイでCOP28が開催されました。私もそこにも参りましたが、世界はここでも一・五度を目指すと確認をいたしました。そして、その実現のために、二〇三〇年までに、ここが大事であります、二〇三〇年までに温室効果ガスを四三%削減、三五年には六〇%削減、これはIPCCの報告によるものでありますが、これが必要である、そのために再エネを設備容量三倍、エネルギー効率は二倍に引き上げる、こういう形によって、エネルギーシステムの脱化石燃料化、トランジショニング・アウェー・フロム・フォッシル・フュエル、こういう方向に向かっていくのだ、これを合意したところであります。日本もここに参加しております。

 次をおめくりくださいませ。

 なぜこのように世界が動いているのかということでありますが、御案内のとおり、昨年は大変暑い、世界的にも最も暑い年となりました。一・五度を目指すというその一・五度に世界の平均気温がほぼほぼタッチしてしまったという状況になりまして、グテーレス事務総長は、地球沸騰化の時代に入ったと言ったわけであります。そして、ここで合意をしたことは二〇五〇年カーボンニュートラルだけではない、そこに至る道筋が大事だ、二〇三〇年にどこまでできているのか、これが問われている、これが国際社会の認識でございます。

 次のページを御覧くださいませ。

 なぜ一・五度を目指したのかということを確認いただきたいと思います。

 今、世界平均では、何年かの平均でいきますと、公式には一・一度か二度ぐらいだと言われていますが、これよりも必ず厳しい気候変動に我々は見舞われるものであります。二度、三度になりますと、大変激甚化した気候災害が頻度も増し、激甚化もしてまいります。こうしたことは人々の生命、健康を脅かすものでありますし、そして、これは人々だけではなくてビジネスの活動環境にも大きな影響を与える。

 そういう意味で、パリ協定ができましたときには、ある意味で環境条約として受け止められたところがありますが、今日、パリ協定は人権条約である、これはブラジルの最高裁がそのように判決で書いております。そしてさらに、これは経済条約である、皆さんの世界の経済の基盤となるものだ、こういう御理解をしていただきたい。

 特に、IPCCの一番最新の報告では下のこの図のようなものが示されておりまして、我々のような世代と比べまして、二〇二〇年に生まれた子供たちがどれほど深刻な状況の中で暮らさなければならないのか、その将来世代の経験する温暖化は今の対策に懸かっている、皆様方の対応に懸かっている、これも御理解いただきたいと思います。

 次、ページをおめくりください。もう時間がありませんので急ぎます。

 なぜこうかといいますと、これまでの累積の世界の総排出量が地球の平均気温と比例をしているということでありまして、一・五度にとどめるということは、これから世界で出せる排出量が限られている。五〇%の確率でも五千億トンしかありません。日本に割り当てられるものは、勘定しましても六十数億トンにしかならない。これをどうやって使ってトランジットするのか。この中で水素などもどう使うのかということを議論していただかなければなりません。

 次のページを御覧ください。

 こうした残余のカーボンバジェットと呼ばれるものを考えていきましたときに大事なのは、二〇五〇年カーボンニュートラルではありません。これは必須でありますが、十分条件ではありません。二〇三〇年までの経路、二〇三〇年にどれだけ削減するのかということであります。

 ちょっと時間もありませんので、飛ばします。

 次のページ、おめくりください。

 そして、そのようなことができるのか。これもIPCCやIEAが既に示しております。先ほどからもお話もありましたように、太陽光や風力は大変ポテンシャルもあるし、経済合理性が何よりも何よりもある。だから世界はこれに動いているわけであります。IEAも、必要な八五%は既存のこうした技術を活用することでできるのだと。水素がなければできないということではないということであります。

 次のページをおめくりください。

 このように、気候変動対策の、世界の目指していることと整合する話をここで議論していただきたいということであります。

 その観点から、法案の問題点の二番目でありますが、ここでは詳しく申しませんが、この法案を読みましても、例えば外国の方がこの法案を読みましても全く意味が理解できないと思います。中身は何も書かれていない。全て経産大臣が決める、あるいは省令に委任するということであります。これは国際社会に示せる法ではないと思います。

 次のページを御覧ください。

 二〇三〇年には二〇一九年比四三%、二〇三五年には六〇%削減する、これがドバイでの合意でありますが、IPCCはそれを全てのセクターで同じように削減してくださいと言っているわけではありません。発電部門はまず早く削減する経路、左の図は電力などエネルギーセクターの削減の経路であります。また、運輸や建物に関する部分も代替策が可能でありますので、それを次にはやっていかなきゃいけない。これらをもう少し分かりやすく見せたものが、右のIEAの削減の経路であります。世界はこういうスキームで動いている、日本はどうするのだ、これを忘れないでいただきたいと思います。

 次に、十一ページを御覧ください。

 法案の三番目の問題は、先ほども申しましたように、省令委任ばかりなのですけれども、何しろ対象事業すらここには書かれておりません。この法案の本則には、どうした事業にこの法案が適用されるのか、本則にはないのです。不思議な法案と言わざるを得ません。探しましたら、唯一、附則の中に、附則の二条の二項に、発電部門、ガス事業などという言葉がありますので、これはやるつもりなんだろうと思いますけれども、なぜこのようなことなのか。

 発電事業などにおける水素、アンモニアの使用というものは、十一ページの下に書いておきましたように、京大の大城先生が、それは不適なものだ、効率的にもよろしくないものだ、こうしていることでありますが、右の方に置いておりますものは、二〇二一年、第六次エネルギー基本計画を定めましたときの経産省の長期エネルギー需給見通しにおいて示されていた水素、アンモニアの発電部門における使用のプログラム、これが一%の詳細になるわけでありますが、まさにこれがそのまま今回の法案の中に、数字的にも合っている説明がこれまでなされていると思います。

 次のページ、十二ページを御覧ください。

 このようにして、七兆円のお金をGX投資として出すということが言われておりますが、そのことによって削減できる量は十年間かかって〇・六億トン、一年にしますと六百万トン。これは、CO2の排出量の六%にもなるか、こういうような僅かなものであります。どれほどの経済効果を見込んでいるのか。およそ二〇三〇年目標には遠いということに加えて、経済効果が極めて乏しいと言わざるを得ないものであり、これは発電部門に使おうとするからのことであります。

 次、十三ページを御覧ください。

 法案の問題の四番目として指摘いたしますのは、低炭素水素という、この低炭素のレベルも法案にはございません。

 これまでの審議やあるいは審議会等では三・四キログラムというものが示されておりますけれども、比較しやすいように、ここにグラフをつけておきました、水素、天然ガス、そして、ここで言われる三・四キログラムかもしれないというものと比較いたしました。電力のCO2排出係数も計算をしてみました。二〇%混焼いたしましても天然ガス火力に到底及びません。五〇%混焼いたしましても、とてもとても及びません。これをいつまで、五〇%というと、今回の目標では二〇四〇年ということです、どうやって一・五度目標に整合する日本の排出削減経路を取るのでありましょうか。これは考え直していただきたい。

 問題点の五番目、経済的支援であります。

 先ほどから何度も経済的支援、価格差に着目した支援とおっしゃいましたが、不思議なことに、この法案には全くその言葉がございません。どういう法案なのかと、これは本当に不思議でございます。

 いろいろ書かれておりますけれども、JOGMECが助成金を出すとしか書いていません。三十五条には、国は資金確保に努めるとはあります。どんな財源でこれを賄おうとするのか、どんなスキームか、これをどうやって海外に説明するのでしょうか。いや、省令でこうなんですと言っていくのかもしれません。これは海外からは奇異な目で見られる、そういうことを御留意いただきたいと思います。

 次、十五ページを御覧ください。

 この法案の安全性への配慮というのは、私どもの、法律家の目から見ますと不思議に思えます。

 例えば、三十六条二項は、公共の安全の維持、災害の発生の防止を図るため必要な最小限度のものしかしないと。わざわざなぜ最小限度などとして安全対策に書くのでありましょうか。

 次、時間もありませんので本当に飛ばしますが、法案の問題の七番目でありますけれども、五条、六条に協力義務というものがあります。自治体に協力をさせる、また関係事業者に協力させるというのがありますが、一般事業者の協力義務、これは何を求めているのでしょうか。このような方策を取りたくないという事業者もたくさんいらっしゃる。国際競争に耐えていくためには今からこんなことに頼ってはいけないと考える人たちなどにどのような協力を求めたいという趣旨なのか、よく議論いただきたいと思います。

 次、十六ページを御覧ください。

 これらの法案の総括的な問題ですけれども、五年後見直し規定というものが附則の中にあります。今回の水素法とそれからCCSに関する事業法の見直し規定を比べていただきたいと思います。水素法にはわざわざ第二項がございます。これは、読んでまいりますと、電気やガス事業で水素やアンモニアの導入が進んでいなければ、それを進める方向にしか見直しはしないと読む人がいらっしゃるのではないでしょうか。大変不思議に思います。

 もう時間も参りましたので、最後のまとめは、基本は省略いたしますが、水素社会推進法という略称がつけられておりますが、今国民の中に、水素社会はどのようなものかというコンセンサスがあるでしょうか。大変大きな誤解を招きかねない、ミスリーディングではないかと思います。

 そしてまた、最後に一つ申し上げたいのは、二〇二五年にはパリ協定に基づくNDCを提出し直さなければなりません。そして、第六次エネルギー基本計画の改定時期も今年迎えるということになっております。

 この法案は、第六次エネルギー基本計画に係る非化石エネルギーに化石由来の水素を位置づけるとか、そして、GXでこうした電力事業にも多大の金を出していくとかに加えまして、更にこうした形で電力事業にお金を出していくということについてまとめたものであります。この上で、どうやって第七次エネルギー基本計画が前向きに改定されるのでありましょうか。再生可能エネルギーの抑制になっていくこと必定ではないかと懸念をいたします。

 ということで、いろいろ皆様から期待がございましたが、大変大きな懸念があることも踏まえて御審議いただきたいと思います。

 以上、ありがとうございました。(拍手)

岡本委員長 浅岡理事長、ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井原巧さん。

井原委員 おはようございます。自民党の井原でございます。

 今日は、四名の参考人の先生方、御出席賜りまして、本当にありがとうございました。

 この度、国会に提出された今法案、水素法案とCCS、これは我が国にとりまして本当に重要な法案だというふうに思います。確かに、お話あったように、太陽光、風力発電など再エネの普及は進んでいるわけでありますけれども、そうした電力の低炭素化だけでは対応し切れない、例えば製造業とか化学とか、この分野におきまして、水素やCCSはカーボンニュートラルを実現するためにはまさに今現実にはラストピースとなる技術だろう、こう思っておりまして、誠にこの法案は重要だろう、こう思っております。

 まず佐々木先生にお伺いしたいんですけれども、これは、実は私自身も、十八年ぐらい前になるんですけれども、九州大学工学部にお世話になって、水素について研究したことがございまして、その御縁で質問したいと思います。

 といいますのも、十八年前、ちょうど私はまだ田舎の四国の四国中央市というところの市長でございまして、その町は九万人ぐらいの町だったんですけれども、製紙産業がとにかく集積していて、二〇〇四年の新市発足以来、ずっと紙の生産量は日本一なんですね。ただ、問題は、製鉄、化学に次いで、電力に次いで、CO2の排出量が多い産業を抱えている、こういう町でございました。

 当然、紙を作るためには一トンの紙に百トンの水が要るぐらい水資源を確保しなきゃならないので、ダムを実は三つ造って、一億トンの水を貯水している、そういう町なんですね。

 ところが、景気動向等によって生産調整が当然されますから、完全買水、契約で水を企業が買うんだけれども、時には使わずに海に流す、こういうことがあって、その余剰水を何とか有効活用できないかということで、市と企業とで検討会を当時、十八年前開いたんです。そのときに行き着いたのが水素製造だったんですね。

 どこか取っかかりがないかなということで探すと、日本で最もそのとき進んでいたのが九州大学の工学部だったということで、たしか石原教授という方だったと思いますが、石原教授にいろいろ御指導をいただきました。先進地というか、研究が進んでいたのは、青森県も非常に進んでいたので、石原教授と私どもの市の職員とそして製紙会社の技術者とで、先進地まで行って取り組もうというふうなことをしたことがあります。

 ただ、当時はまだまだ国も全然支援がなくて、製造コスト、供給先、保管や運搬、こういうことが非常に困難でございまして、結果的には頓挫し諦めた、そういう経験がありまして、今回、十八年を経て法案成立に向かっていることは大変私にとっても感慨深いところがございます。

 そこで、佐々木先生にお伺いしたいのは、新たな技術ということでありますから、水素の普及を図っていくためには、何より正しい知識を広く国民一人一人に丁寧に説明していく必要があると思います。そして同時に、水素産業の発展に合わせて、高校や高専、大学等において人材を育成し、地域の新しい産業に育てていくことが重要だと思います。

 これまでリードされてきた、そして最前線で活躍されてきた佐々木先生に、水素についての普及啓発や人材育成、それと確保、そしてその支援の重要性についてお伺いしたいと思います。

佐々木参考人 まず、御指摘ありがとうございます。

 大学は、やはりいろいろな貢献ができると考えています。その中で四点ぐらい、手短に、今日のお話についてお答えさせていただこうと思います。

 まず一つは、まさに水力発電で、その電気を本来でしたら有効に利用できるはずなのが、あるときには海に捨ててしまわざるを得ないということでありますので、その話でいきますと、電力を作ったときに、それを捨てずに水の電気分解で水素を作る、そうすると、水素ですとためることができるということになります。その当時は、恐らく水の電気分解の、大型にやるという技術がなかったのでできなかったんですけれども、今、水素基本戦略でも水電解というところで政府もかなり力を入れておりますので、それが現実になるというのが一点目です。

 あと、製紙の産業はやはり熱を使う産業と私は理解しております。なので、水素を作って、それを製紙産業で、まさに熱利用でカーボンニュートラルは苦労されていると思いますけれども、その中で、その熱源としてうまく水素を使っていただくということでは利用価値が出てくるのかなというのが二点目です。

 それから、三点目がいろいろな分野、質疑も私も聞かせていただきまして、いろいろな分野でもそうなんですけれども、やはり今人の取り合いなんですよね。いろいろな分野で、やはり、新しいことをやる、でも人がいないということを言われておりますので、我々も、大学院では、九州大学に、これは世界で唯一だと思いますけれども、水素エネルギーシステム専攻というのがありまして、大学院の教育をしております。世界でも唯一だと思います。

 そういう人材育成をきっちりやるということは大学の責務だと思っておりますし、最後、四点目でございますけれども、我々、先ほどの資料の中で、水素ステーションがあったり水素自動車があると。これは、高校生とか中学生に課外学習で来ていただくんですよね。やはり、カーボンニュートラル、皆さん関心があるんですけれども、どうしたらいいんですかということを考える場として大学というのは使っていただけるのかなと思います。

 これは、九州大学に限らず、日本全国の大学や高校、高専でこういう取組をやはり地道にやっていく。その中で、もちろん課題もありますし、いろいろな解決すべきこともありますけれども、そういうのをオープンに議論する場として、こういう大学や高校、高専をうまく活用していただけるのかなと思います。

 私から四点、以上です。ありがとうございました。

井原委員 先生、ありがとうございました。本当に人材確保が重要だし、地方に拠点を広げていくときに、市町村も含め各中小企業にしっかり水素についての技術者を育成していくことは誠に重要だ、こう思っております。

 次に、この社会が水素という新たな技術に移行していくということは、日本にとっても、先ほどお話がありましたように、大きなビジネスチャンスであることは間違いありません。今リードすることができれば、将来、大きな市場を日本がかち取ることができる、こういうふうに思います。

 私の地元というか、松山なんですけれども、貫流ボイラーのシェアで三浦工業というのが日本一なんですけれども、三浦工業も最近、水素ボイラーを開発して、積極的にこのチャンスを生かそう、そんな努力をしている企業もございます。

 そこで、今がまさに重要な時期だというふうに思うんですけれども、日本企業が水素技術でチャンスをつかみ取るにはどういった戦略が必要なのか。これは、柏木先生と橋本先生にお聞きしたいと思うんですけれども、柏木先生は先ほど、技術で勝ってビジネスでいつも日本は負けている、こんな話もありましたし、また、現場のビジネスの最前線で取り組んでおられる橋本先生にも、それぞれ、その戦略についてお伺いしたいと思います。

柏木参考人 柏木です。どうもありがとうございました。

 三浦工業は非常に斬新な企業で、普通、ボイラーメーカーだと思っているんですけれども、ボイラーはもう断トツトップですよね。営業もうまいしね。ただ、燃料電池も彼はやっているんですよね、新しい、金属板をうまく、細かい穴を空けて。ボイラーだけじゃもったいないと。

 高温のものを使うのならば、まずは電力を取って、そしてその後で、SOになりますから、固体酸化物形になりますので、比較的高温で、四百度、五百度、六百度とか、そういう温度で駆動するということになりますと、最後に蒸気が出てきますので、そうすると、電気と蒸気のカスケード、ハイブリッドですね、こういうことをやった方が合理的だということで、例えば、三浦の話だったものですから、三浦工業でいえば、そういうボイラーメーカーが上位の電気を取る、そういう技術開発までやっている。これがまさに、ほかにはできないようなテクノロジーを斬新にチャレンジをしていく。ここら辺にすごく大きな商機があるんじゃないか、私はそういうふうに思っています。

 水素燃焼に関しては、もう既にタービンもできていますし、ノズルの部分だとか燃焼器のところで高温になりますので、そういう高温に耐えられるような材料開発というのが非常に重要になってくる、そう思います。

 以上でございます。

橋本参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 確かに日本企業は、大変技術が好きで、物づくりも一生懸命やってきた結果、ビジネスモデルで劣後するという苦い過去もございました。

 私どもの例でいいますと、昔、LNG運搬船、これは日本の誇る技術で、我々も一九八一年に日本で初めて出して、しばらくは非常に大きな産業となっておりましたけれども、残念ながら、その基本ライセンスであったりというのを欧州が持っていたために、それが中国、韓国に流れ、あるいは、先ほど言いました規制とかいろいろなところでも、実は、日本の内部では、事細かなディテールの部分までのデータを、一つのルール化して、それを開示してやった結果、日本の技術がほとんど海外に流れてしまった。

 今、海外ではどうしているかというと、皆さん御存じのようなTUVとかいろいろな団体が、実は、向こうも専門家で、性能基準でいろいろなものをやり取りする形で、認証する側も専門家、こちらも専門家で、技術の内容で、これが板厚一ミリ合っていますか、溶接長はどうですかということではなくて、この性能のパフォーマンスができるようになっていますかということをお互い専門家で議論することによって認証する、こういった制度を使うことによって、実は、欧米の方では、技術をブラックボックス化して、取った技術を守っていく、こういったことがございます。

 最近、水素でいいますと、先ほど言いました、元々のライセンスの部分、あるいは技術認証、あるいはそういった部分は、従来、日本はやってこなかったんですけれども、今、JH2Aでもそうですし、私ども川崎重工もそうですけれども、こういった部分がやはりビジネスとして成立させるのに極めて大事だということで、こういった部分の、日本発の標準化であったり、ISOの基準に日本の基準を入れ込んでいく。あるいは、先ほども言いましたけれども、こういう世界の基準に対して、日本が入って、一緒に物を言いながら日本の基準を入れ込んでいく、こういった部分にも積極的に参加しております。

 我々、全体としましては、こういったいわゆるビジネスとしていく、ここにどれだけ力を入れるかということは、これはJH2Aでもそうですし、参加企業もみんな、そういった形の部分に大変力を入れております。

 これからは、技術で勝っている部分を今後も続けていける、あるいは、今回、法案の方で、高圧の保安法等々の特例措置がございますけれども、こういった中に、やはり我々の、いろいろな、そこでの競争力強化のための、日本のいろいろなところでの競争力強化のところを入れ込んでいただくような形でお願いして、ディスカッションできるような体制が進む第一歩ではないかというふうに思いますので、今回の法案も、そういった、事業で勝っていけるためのものを後押ししていけるような形にしていただいているというふうには認識しておりますが、我々事業者も、ともすると物づくりに一生懸命になってしまうというこの日本の体質から、やはり事業目線でやっていくということに事業横断でみんな取り組んでいるところでございますので、先生方にも応援いただきながら、しっかりこれを日本の事業としても勝っていけるものにしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

井原委員 ありがとうございました。

 持ち時間はもうあと二分、一分ぐらいしかございませんので、浅岡先生にも御質問を気候変動でしたかったんですけれども、また次回の機会というふうに思っております。

 先生方からお聞きして、私なんかは地方の出でありますから、やはり水素産業としていかに地方拠点をつくって地域を活性化させるか、それの一つの本当に大きな機会だとも思っております。

 今後、やはり新技術だから、迷惑施設じゃないんだけれども、原発でもないんだけれども、まず住民の同意を、理解を取っていくのがこれから地方にとって課題なので、今後の保安体制についてもまた先生方の御指導をいただいて、この法案がしっかりと根づくように取り組んでいけたらというふうに思っております。

 大変ありがとうございました。終わります。

岡本委員長 次に、中野洋昌さん。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 今日は、佐々木参考人、また橋本参考人、柏木参考人、浅岡参考人の四人の皆様から大変貴重な御意見を頂戴をいたしまして、本当にありがとうございます。

 まさに、今回議論になっている水素社会の、利用の促進という、大変に非常に大きなテーマだというふうに思っておりまして、私も、公明党でいろいろなエネルギーの対策ということで議論をしてきたんですけれども、水素社会を早くつくっていかないとというふうなことも訴えさせていただいています。

 佐々木先生の方には、もう何年か前になると思いますけれども、党のエネルギー対策本部でも様々御意見を頂戴したりですとか、また、私、地元が兵庫県でございますので、神戸の方で、今日橋本参考人に来ていただいておりますけれども、ちょうど経済産業大臣政務官をやっていたときに、「すいそ ふろんてぃあ」がまさに進水式ということで行かせていただきましたり、また、いろいろな取組も聞かせていただいたり、そういうこともさせていただきました。

 また、地元の兵庫県の尼崎市というところなんですけれども、岩谷産業さんの水素の研究所もございまして、水素ステーションも商用第一号ということで地元でできたものですから、いろいろな、そういう技術的なところでお話を伺ったりとか、そんなこともしてまいりました。

 まさに今回、それを利用促進していく法案が審議されていくということで、非常にこれからの展開に期待をしておるところでございます。

 まず、佐々木参考人にお伺いをしたいんですけれども。

 九州大学の方でもかなり前から、水素のいろいろな形の実用化から研究から、本当に牽引をしていただいていると思っております。長らくいろいろな研究をされてこられて、そして、技術的には、かなり日本はそういう意味では非常に進んでいるというふうに思っておるんですけれども、それをどうやって水素社会というところまでしていくかという中で、やはり相当大がかりな取組をしていかないとそれが進んでいかないんだろうというふうに思っております。

 カーボンニュートラルをしっかりやっていくというところの中で、水素の基本戦略を世界に先駆けて作ったりですとか、あるいはGI基金を設置をしてやっていく、あるいはGXの経済移行債をやっていくということで、かなりスピードを上げて今取り組んできているところだと思うんですけれども、佐々木先生の方から、今の水素社会を実現していくための取組の御評価というか、今の日本のやっている大きな取組の評価と、そして、ここの分野に将来的には更にもっと力を入れていった方がいいとか、今後加速していく分野、そういうことも含めて是非御評価いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

佐々木参考人 まず、御指摘どうもありがとうございます。

 それで、私も三十五年この分野を研究していて、もちろん、私は工学部の人間ですので、技術開発も一生懸命やって、新しい材料を開発したりとか、次の世代の燃料電池自動車に使えるまさに触媒を国家プロジェクトで開発したり、そういうところをやっております。

 他方、水素分野で、審議会の委員長もさせていただいて改めて感じるのは、やはり日本で、特に技術系の人間が技術開発だけに集中してしまっているというところが、先ほども柏木先生からもありましたけれども、ビジネスで勝てないということがエネルギーで繰り返されてきた。これは、水素ではもうこれだけは避けたい、要は、ビジネスに勝つために何を考えるかということが非常に大事だということ、そこが日本がやはりなかなか手が回ってこなかったということだと思います。

 それを考えるといったときに、結局、まずはやはりビジネスマインド、ビジネスをつくっていくという橋本参考人のお話もありましたし、突き詰めると、やはり国のルールから変えていかないと日本が世界に行って勝てないなというのは、もうこれは十年ぐらい前からいろいろな先生方とお話ししてきました。なので、今日、私はここに立って、水素社会推進法という、まさに国のルールを皆さんで作っていただけるというのは本当に感無量でございますし、その日本のルールを作った上で、まだまだ不十分なところは多いし、小さく産んで大きくきっちり育てたいということだと思いますけれども、世界のルールにきっちり発展させていくというのが大事だと思います。

 最後に、欠けているところとありましたけれども、実は、我々大学でも考えているのは、技術系の人間だけがやっているのでは、やはり水素社会というのはつくれないんですね。ただし、大学の中では、例えば経済分野でライフサイクルアセスメントをやっている先生もいます、我々にも法学部の先生方もおられますので、そういうまさに人文社会学の先生方を今一生懸命巻き込んでいます。

 九州大学でカーボンニュートラルの取組をやっている先生が、全部エネルギー研究教育機構という下で集めているんですけれども、それが二百四十人、教授、准教授、助教が集まっていますので、そういうチームの皆さんも巻き込んで、ライフサイクルアセスメントや社会のルールをどう作れるのかということを、まさに今議論を始めているところですし、まさにこの水素社会実現というのは総合知で取り組むべきことだと思っております。

 まだまだその分野は大学はなかなかうまくいっていないところもありますけれども、これからは、そういう先生方も巻き込んで、水素社会実現に対してアカデミアも貢献できればと考えております。

 私からは以上です。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 確かに、佐々木先生おっしゃられたような、アカデミアの中で、技術の分野だけではなくて、やはりいろいろな総合知でというか、そういうことがまさに必要だというふうにも非常に感じております。その分野で、今まさに多くのチームを巻き込んで更なる議論をされているということで、非常に期待をしておりますし、是非お願いをしたいと思っております。

 橋本参考人にも少しお伺いをしたいんですけれども、JH2Aという、利用者、民間のいろいろな方々を代表してということでありますので、先ほども、国際競争で勝つ、ビジネスとして成立をさせるというお話もいただいたんですけれども、今まさに水素社会の、利用を促進する法律をこれから作るという状況でありますので、是非民間の立場から、この法律への期待ですとか、あるいは、日本の政府に、更なる国際競争に勝つための取組というか、どういうことを求めていきたいのか、こういうことを是非お伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

橋本参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 私ども、水素という新たなことにチャレンジするということは、もちろん今回政府からも御支援いただきますけれども、我々民間にとっても、巨大な投資をして、そして、まだ値段が下がらない状態から値段が下がるという状態をつくるために、我々も頑張って投資をしております。

 しかしながら、やはり我々の目的は、我々がつくっているのは、ただ単に、液化水素運搬船を造る、あるいは燃料電池車を造るということではなく、水素社会をつくる、つまり、多くの人が参加して、多くの人に利用していただける環境をつくるということになります。

 そうしますと、どうしても、こうした新しいものをつくって社会に普及させる間というのは、かなり、資金の面、値段の差、そして、あるいは従来やってきたことと違うことをやりますので、いろいろな法律的な違いというのは、どうしても生じてきます。そういったところで、我々は実は、先ほど言いましたように、国際競争の中で、かなりスピーディーに物事を進めていかないといけない。

 こういう形で、私ども民間もかなりリスクを取ってしっかり前に進んでおりますけれども、そのリスクを応援するという意味で、今回の法律は、値差支援であったりとか、いわゆる設備に対する支援、あるいは保安法の一元の措置であったりという形で、いわゆるスピーディーに、将来を予見する形で民間がリスクを取れるという形の法案を作っていただいたということは、我々企業にとっても、やはりリスクを取ってそれを前に進めようということが一層加速できますし、やはり、将来の予見性が長い形での法案にしていただきますと、それに向かって、かなりの大きな投資をする、決断をする、そして、そこから新たな雇用を生み出して、そういうふうに産業転換していくというふうな形になっていくと思います。

 我々は、実は、水素に移行する間には、水素レディー商品といいまして、現在のものでも使えるけれども、次の水素も入れながら、例えばつなぎでやれるような商品であったり、こういった、移行期に対していろいろな手だてを我々も打ちますけれども、やはりこういった法律を使っていただいて、我々がよりスピーディーに動ける形で御支援いただけるというのは大変ありがたい法律ですので、これを是非我々に活用させていただきたいと思いますし、これを機に、我々もしっかり皆さんの御期待に応えるように開発、そして社会実装を進めていきたいと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 やはり、民間の方でも大きなリスクを取って大きな投資をされていくということで、しっかり予見可能性が持てるような、先ほど橋本参考人がおっしゃられた、しっかりした支援がやはり必要だということで、改めて認識をさせていただきました。

 続きまして、柏木参考人に次はお伺いをしたいんですけれども、先ほど来、皆様のいろいろなお話をずっと伺っていると、やはり日本は物づくりは強いというか技術開発ということで、とにかくこれは先行してきたと。

 その中で、やはりビジネスで勝てるように、水素はそれはやらないといけないということを、いろいろな皆様が今回大きなテーマだということで掲げられておられるということを改めて感じまして、柏木参考人のお話の中でも、やはり規制改革やビジネスモデル、こういうのが今非常に大事だ、ビジネスで勝つためにというお話がございましたので、是非この点について、もう少し詳しくというか、今何をやるべきかということも含めて是非お話しいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

柏木参考人 今問題になっているのが、発展途上国がこれからがんがん伸びていくということになりますと、資源はなくなるし、何でも高くなっていきますよね。そうすると、やはり、リサイクリング、循環型。直線的、今までは大量生産、大量消費、大量廃棄というこの一方通行的な物づくり、あるいは一方通行的な経済学、こういうものが最も安価に物ができるというふうに思われていたのが、最近がらっと変わっていると私は思っていまして、二十一世紀型というのは、いかに循環型に持ってこられるかと。そうすると、マテリアルリサイクリング、プラス、エコノミックサーキュレーションですね。

 ですから、固定価格買取りなんかもそうなんですよね。あれはドイツが一番得意で、旧東、西ドイツがあって、旧西ドイツは金回りがいい、旧東ドイツは農業国家で余りよくない、だけれども、再生可能エネルギーを三倍で買ってやるということになると、その三倍のお金はどこから来るかというと、エネルギー多消費型の西から東に移る。ここで、サーキュレーションが起きますね。だから、これが一つの輪。日本も本当はそういう形にやはりすると非常にいいと私は思っていますけれども、都市から農山村へ、一次産業がn次産業化するということになるわけです。

 ですから、そういう意味では、エコノミックサーキュレーションになるような、こういう、水素に関してもキャリアをうまく、アンモニアなんかもそうですね、キャリアにして、うまく水素を回していくとか、それによってエコノミックもサーキュレーションする、だから都市から農山村へお金が移っていくというふうなことをすれば、非常に今世紀の経済学に合ってくるんじゃないかと。

 あともう一つは、大学と、大学はもう治外法権で自分たちの好きにできると思ったら大間違いで、やはり、外部からニーズを持った人材、企業人ですよね、企業人を学内に引き入れる、特任教授で入れて、そして、学内の教員はシーズを持っていますから、シーズで、余りニーズが分からないシーズをやっている場合もあるので、そこと結びつけていく、このことをソリューション研究と我々は定義していますけれども、そういう大学改革というか、産学の連携というものをうまく使うこともこれからの新しいビジネスモデルの形成には役立つものだと思っております。

 以上でございます。ありがとうございます。

中野(洋)委員 済みません、ちょっと浅岡参考人に質問できなかったんですが、時間が参りましたので、以上で終了させていただきます。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、山崎誠さん。

山崎(誠)委員 立憲民主党の山崎誠でございます。

 今日は貴重な御意見をありがとうございました。

 では、早速質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 まず、やはり、今議論をする中で、気候変動対策としての意義、これは、大局に立って、その出発点を忘れてはいけないというのは、先ほどの浅岡参考人のお話からも非常に感じたところです。

 私どもは、やはり日本の省エネ、再エネは、まだまだ進みが遅いし、十分でない、掲げている目標も、例えば、二〇三〇年に再生可能エネルギー、電源構成三六から三八、温室効果ガスの削減目標も二〇一三年比四六%ということで、不十分だということで常に意見しているわけでありますが、浅岡参考人にお聞きします。

 この日本の現状をどう評価されているか、そして、気候変動対策として本当に日本が優先すべき政策というのはどういうものか、改めて御意見をお伺いしたいと思います。

浅岡参考人 御質問ありがとうございます。

 二〇三〇年の目標が大変重要である、そしてそれが実現されることが大変重要であるということを先ほど申し上げさせていただきましたが、日本の二〇三〇年の目標は二〇一三年比、四三%、これを国際的な議論に合わせまして二〇一九年比で見ますと、三五%でしかありません。四三%といいますのも世界全体でのものでありまして、先進国はより多く削減することが求められている中、目標自身がもっと引上げが求められている、これは客観的な状況でございます。

 ところが、現在の対策では、私どもが見るところは、二〇三〇年の四六%削減の実現は極めて危ういと言わざるを得ないと思います。

 実効性のある対策はカーボンプライシング、炭素税などでありますが、それは今はなきに等しいもので、本格的にというのは二〇三三年とかいうような話でございますので、当面はそうした政策を欠いている。そして、再生可能エネルギーは二〇三〇年の目標も危ういのではないかと思われる最近の実情であろうかと思います。

 これは世界の趨勢から本当に大きく遅れておりまして、どうやってこれを加速させるような政策を、措置を取っていただけるのかと期待をしているところですが、ほとんどそこの前向きな議論は見られず、むしろ電力に、水素、アンモニア混焼をいかに進めるかという今回の議論が先行しているというのは懸念すべき状況ではないかと思います。僅かに二〇三〇年一%、二〇五〇年でも一〇%、そして二〇五〇年でもCCS頼みである、海外にずうっとエネルギー源を依存し続けるということは日本の経済の将来に合わないということを大変懸念しているところでありまして、まさに、省エネはともかく、再エネを増進するための政策を本当に強化していただきたいと思っているところです。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。貴重な御意見、ありがとうございます。

 次ですが、私は前回の質疑でも強調させていただいたんですけれども、水素、アンモニアの用途というもの、これをエネルギー効率あるいはコストというような面で見たときに、やはり、再生可能エネルギーで賄うことができる電気とか熱については、極力、再生可能エネルギーは自前で、自国で供給をするというのが私は筋じゃないかなと。水素はやはり補完的なエネルギーとして、産業用の高熱だとか水素還元製鉄だとか、モビリティーでも大きなバスだとかトラックだとか、電化が難しいものに限定していくということが私は前提じゃないかなというふうに思うのでありますけれども、これは、浅岡参考人、そして佐々木参考人にも御意見をいただければと思います。

浅岡参考人 ありがとうございます。

 私どもは、水素や水素のキャリアとしてのアンモニア、又は船舶の燃料として今議論されているアンモニアなどは不適であると申し上げているのではございません。水素の利用価値はあること、ある分野があるわけでございますし、よく理解をしておりますし、これは、この前の委員会でも大臣も、排出削減が困難な分野に利用が期待されている、これは世界共通の期待でございます。その困難な分野は、大臣もおっしゃっておられますように、鉄鋼とか高温を使う化学であるとか、飛行機は必ずしもということみたいですけれども、船舶などは本当に現実の問題としてあるというふうに考えてございます。

 そうした観点で、最も再生可能エネルギーの転換が経済的に合理的であり、ポテンシャルも日本では十分考えられ、そして、それをいかに上手に拡大していくのか、うまく活用するところに知恵を絞る、これが先生方に本当に期待をしたい、お願いしたいと思うところでございます。

佐々木参考人 御指摘ありがとうございます。

 私も全く同感でございまして、よく、再エネか水素か、どっちを入れたらいいんだじゃないかという御批判もいただくんですけれども、これらはあくまでやはり補完する関係にあると思います。ですから、水素の審議会の中の中間取りまとめにも書かれておりますけれども、まず再エネの電気を使う、これがまずあります。その上で、やはりなかなか電化できないところというのが必ずありまして、例えば工場ですと、やはり高温の熱源、これは全部電気でやるというのは難しいところがあります。そういうところにうまく水素が入るということは、水素の大事な価値だと考えております。

 あと、中間取りまとめの中でも、やはり国産の水素をできるだけ入れましょうということは明確に書かれておりますので、再エネを入れにくくするのではなくて、国内の再エネを使いやすくするのが水素だというのが、一番、大方針の根幹にあるということは御理解いただきたいと思います。

 以上です。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 私も非常に同感でありまして、確認することができました。大事な点だと思います。

 次ですけれども、低炭素水素等ということで、低炭素の基準についてが、これがまた一つ、今、議論の中でもきちっと明確になっていないということかと思います。今後この基準をどう下げていくのか、最終的にはグリーン水素に集中していかなければいけない、この点どういうふうに考えるのかというのが私の一つの大きな疑問であります。

 二〇五〇年にグリーン化できればいいという話ではないとカーボンバジェットの話が浅岡参考人からもありましたけれども、本当にできる限り前倒しで実現していかなければいけない、この低炭素そして脱炭素化の話だと思うのであります。

 この辺り、浅岡参考人、そしてまた、済みません、佐々木参考人にお聞きしたいと思います。

浅岡参考人 水素につきましては、まず大事なのは、グリーン水素を目指すということが明記されることであろうと思います。そして、そのタイムラインは、気候変動対策の世界が目指している流れに整合する時間枠でやっていく。

 二〇三〇年に三・四キログラムというのが、これまでの、この法案提出までの審議会などの資料に書かれているものでございましたけれども、それは大変遅きに失する。今の時点でもっと、三・四よりもライフサイクル全体での排出量として下げているものが必要でありますし、それを更に下げていく目標が、一定の年限が示されているということがなければ、そのように動いてはいかないということになろうかと思います。

 そして、アンモニアは、水素からアンモニアを作る過程で大変大きなエネルギーを要するわけであります。ですから、アンモニアとしての利用は、それでもなお必要なところということを考えないといけませんので、よりより慎重な使い道、用途ということを限定し、しかし、それが必要であれば上手に使っていく、それはあり得ることだと考えております。

佐々木参考人 水素にはいろいろなものがありますけれども、もちろん、大きく分けますと、いわゆるブルー水素という化石資源由来のものと、自然エネルギーから作ったグリーン水素というのがございます。多分、審議会の議論でもそうですし、我々の多くの方の思いというのは、やはり最後はグリーン水素にしたい。これの大きな目標というのは、この法律の中にも思いは入っているのかなと思っております。

 ただし、現実、やはり水素はまだまだなかなか高いですし、グリーンも高い、ブルーも高い。皆さん、もちろんグリーンにしたいというのは分かるんですけれども、じゃ、どのぐらいの価格で、やはり今の何倍もの価格ですとなかなか使っていただけないというのは正直今の状況ですし、二〇三〇年にもそういう状況がまだまだ続くのかなと考えております。なので、いきなり全部グリーンにしないと駄目だというのは、やはり、事業者にとって、そして社会全体にとってはちょっと厳しいのかなということだと思います。

 いわゆる天然ガスの場合には、大体一キログラム、水素を天然ガスからそのまま作ってCO2を出すと、ちょうど十一キログラムぐらいが出ます。それが今回三・四ということですから、七割は頑張って下げているということですから、学校でいきますと七十点は取っているというところであります。

 将来的には百点満点、つまり十割減を目指すというのが多分大きな方針だと思いますので、まずは七割も認めていただいて、将来的にやはり百点満点、十割減を目指す。それに対しては、やはり五年だけでは駄目で、十年、十五年のスパンで、でも着実にグリーン化が進んでいくというのを我々は考えています。

 私からは以上です。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。貴重な御意見だったと思います。ありがとうございます。

 もう一つの大きな課題は、やはりコストダウンだと思うんですね。コストダウンのロードマップは示されているんですけれども、それが本当に具体的にどういうふうに描けているのか、その技術的な背景だとか、あるいは投資の計画だとか、そういったものが今のところよく見えていないというところなのでありますけれども。

 橋本参考人に、このコストダウンの道筋、具体的にはどこまで描けているのか、どんな財政支援がこの部分で必要か、ちょっとお聞きしたいと思います。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 現在、全てがパイロットレベルで物がつくられております。我々がコストに一番利くというのはやはり大量生産、大量の効率的な物づくり。

 例えば、今、私どもで造っています液化水素運搬船でいいますと千二百五十立米ぐらいですけれども、実はこれは最大十六万立米ぐらいまで上げることができます。これはLNG船はそのぐらいのものになって、それでいきますと、一回の船で運ぶ分が、今、百二十八回走らせて、そして百二十八倍の人をかけてやっていることが一回で済む形になります。これは、今、流通しているようなタンクのサイズであったり、あるいは、機械のサイズであったり物のシステムであったり、こういうものができるといいんですけれども、ただ、まだ需要がないときにそんな大きなものを造って、誰も造らないとどうしますかという形で、さすがにここは造る側も二の足を踏む。そこを造っても、高いものであれば売れない。

 やはり、そこには、少し、それをスケールをどんどん上げていきながら、そして、そこに資金を入れていただいて、それを上げていくと確実に値段は下がっていきますので、やはり、そこのスケールアップに対して途中の間で御支援いただきながら、我々はしっかり、そこに対して、技術的な面も含めてコストダウン、更に大型になっても皆さんに使いやすいように努めていく。これが我々企業側の努力の一番大事なところだと思っておりますけれども、やはり、そこに行くまでに、使われる側とそれとの間を埋めるというふうな意味においても、こういった支援をいただけるというのは、我々がそこに向かえる大変大きなモチベーションになるというふうには考えてございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 最後に柏木参考人に、ビジネスモデルのお話がありまして、プラットフォーマーという話は非常に面白く、興味深く聞いていたんですけれども、最後に、国内の製造をどうするのかという点、国内で製造できるかどうかという点、その可能性についてちょっと御見識をお聞かせください。

柏木参考人 全てのをメイド・イン・ジャパンでやれとは言っていないんですよ。あるプラットフォームの中に、SOECのような日本の得意とする電気分解装置、タンク、それから燃料電池ですね、これはもう日本が商品化している唯一の国だと言っても過言じゃありませんから、そういう基本的な技術に関しては日本のものを使わせてもらって、それぞれの国に、例えば電力はじゃ洋上風力から持ってこようかというときには、その国の洋上風力をうまく使う。そして、そのプラットフォームをいつも一つのワンセットで送って、今までは各企業が売り込みに行っていましたね、それをワンセットにしちゃって、ですから、コンプリートする会社が一つのプラットフォームの上に乗って、これが日本製だというような言い方を最初にイニシャルステージではやっていく必要があるんじゃないかという意味で私は使っておりまして、それを運営するのがプラットフォーマーだという意味づけです。

 以上です。

山崎(誠)委員 ありがとうございました。終わります。

岡本委員長 次に、小野泰輔さん。

小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔です。

 今日は、四人の参考人の先生方、大変貴重なお話をありがとうございました。

 私は、水素社会というのは本当に、化石燃料でずっとこの二十世紀から来たんですが、それを大転換すると。化石燃料も魔法の技術みたいなもので、石油から何でも生み出せる。それで我々の生活が、人類社会は本当に豊かになったわけですが、ただ、今、行き詰まりを見せているというところで、水素で新しい未来を開いていこうというのは、非常に私は夢のある話だなというように思っています。

 私自身も、熊本で副知事をやっていたときに、ちょうど佐々木先生が、九大とそれから福岡県の麻生渡知事が一生懸命、水素社会をやるんだと、かなり昔からおっしゃっていて、九州として手伝わなきゃいけないなということで、熊本県庁に水素ステーションを一・六億円かけて造ったんです。大分反対があったんですが、私は、やはり、でも、それぐらいのリスクは負わなきゃいけないだろうなと思って。それで、今あれはどうなっているのかなと思ってちょっと調べてみたら、何か来年度撤去されるようで。ただ、八年間働き続けたんですね。もちろん、水素自動車が少ないというのがちょっと問題だったんですが、ただ、やはり、この水素社会をつくるためにはリスクを負わなきゃいけない。

 そして、鶏が先か卵が先かという話がありましたが、それをやはりできるのは国しかないだろうと思いますので、それに対してみんなが一緒になってやっていくということが必要なんだろうということを、やはり、この委員会だけではなく、国民全員が共有すべきかなというふうに思います。

 質問させていただきたいことがたくさんあるので、私は、ちょっと視点を絞りまして、水素社会への移行をいかに成功裏に円滑に進めるのかという観点で、ちょっと項目を絞って御質問させていただきたいと思います。

 最初に佐々木先生にお伺いしたいんですけれども、先生の資料の中で、八ページ、これは非常に重要な図だと思っています。段階を経て、だんだんだんだん水素のコストが下がってくるに従って適用分野が拡大されていくだろうという図なんですが、これは本当に、市場原理に任せていればこういうことになると思うんですが、私はこの図の順番ではいけないと思っていまして、つまり、価格差支援というのはそういうことのために今回やるんだと思っています。

 先生、私は、価格差を埋めて、例えば水素還元製鉄なんていうのは産業界でもかなりCO2の排出が大きい分野ですから、ここは水素の値段が下がるまで待ってはいられないということがあります。ですから、この矢印のような形の順番じゃなく、今回の法案で提案されているようなスキームを生かして、どういう視点で、例えば産業育成とか、それからあとは水素の需要拡大、カーボンニュートラルとか、いろいろな観点があると思いますが、どういう形で今回の法案のスキームを用いていけばいいのかというお考えをお聞かせいただきたいと思います。

佐々木参考人 非常に革新的な御質問、ありがとうございます。

 この八ページ目の図で、例えば水素還元製鉄を見ていただきますと、一立方メートルの水素で八円なんですね。これは、今の石炭を使っている製鉄と同じエネルギー価格でやると、このぐらいの水素じゃないと厳しいということになります。もちろん、今回の法律が根拠になって、ある程度支援はいただければありがたいなと思っています。

 ただし、二〇三〇年に三十円ぐらいになるとして、それと八円の間の値差支援をやるとなると、これはかなり、当然、国の負担というのは大きくなると思います。

 なので、私もグリーンイノベーション基金のモニタリングの委員をやっているんですけれども、製鉄企業さんに申し上げているのは、もちろん水素を安くする努力は供給事業者さんがします、それに対して国もある程度御支援いただければありがたいです、ただし、他方、グリーンスチールを買いたいという企業さんもあるんですよね。やはり、各企業さん、グリーンなプロダクトを作っていますということをアピールするのが、お客様にもそうですし、金融投資家にも大事な点ということになりますから、国が全部面倒を見るのではなくて、供給事業者も頑張る、作っているメーカーさんも頑張る、ただし、それで頑張り切れない部分はやはり国に背中を押していただければありがたいなと思います。

 そうすると、この時系列の図というのはかなり前倒しできると思いますし、商用車だけではなくて、発電、化学工業、製鉄を含めた産業分野、これがまさに同時並行でカーボンニュートラルに向かって大きく動き始めるんじゃないかなと思います。この法律というのは、まさにそれを後押しできる国のルールだと考えております。

 私からは以上です。

小野委員 ありがとうございます。

 水素還元製鉄のような技術を早く確立をして、それをコストダウンしていくということが国際競争でもあるので、この下の分野について、やはり、水素がかなり下がるまではなかなかできないんだというようなことだと多分競争に負ける可能性もあるので、そういう意味では、これは具体的に国がどれぐらいのお金を入れて支援するのかという計算をちょっと精緻にしなければいけないと思うんです。

 私は、上から下に流れるようなことに拘泥せずやっていくというようなことも必要だと思いますから、是非、専門家の先生方で、そういうことも念頭に入れながら、どうやって水素の関連産業、物づくりも含めて勝っていくのかという形で、大胆に考えていただきたいというふうに思うんですね。

 それに関連しまして、今回の値差支援のことについてちょっとお伺いしたいと思います。

 先ほど柏木先生から、ドイツはFITをやっていると。水素を購入するときに、輸入するときに固定価格で買い取るとか、あるいはアメリカの場合には税額控除でやるというようなことをやっています。我が国は値差支援ということでやっているんですが、私、先ほど佐々木先生からのお答えがあったように、全部を国がかぶるというわけにもいかないというようなこともある一方で、値差支援ということが、ほかのFITとかそれから税額控除に比べて優位性もあるんじゃないかなと。あるいはデメリットもあるかもしれませんが、この点について柏木先生にお伺いをしたいというふうに思います。

 そして、その後で、産業界として橋本参考人に、この政府の値差支援というところについて、ほかのFITとか税額控除に比べてどういうようなメリットが民間としてもあるかというところについて、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

柏木参考人 値差支援は、さっき申し上げたみたいに、GX移行債で公募して集めた、まあ企業がベースだと思いますけれども、個人もお金を払いますよね。これは、自主的に、グリーンボンドですから、ある意味では利率は上がってくるだろうと。ですから、預金を預けるよりも違う、それも売れるということもありますから、ある意味では、それぞれの投資する人たちのお金をうまく使ってそれを、水素の量が多くなればなるだけ価格は下がっていくと思いますので。フィード・イン・タリフになりますと、水素を使う人というのは限られていますよね、その人に値段を加えるわけですから。

 電力みたいに大勢の人が、ほとんどの人が使っているというのは税金と同じみたいなものになりますので、それと今これからいこうという水素とは一緒にはできないということで、全くフィード・イン・タリフとは違う、こういう、有志が出したものに対して五〇年までは返さないということになっていれば、それは適切な使い方ができるところに随分大きな差があるんじゃないか、こう思っています。

 以上です。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 こういった、どの制度においてもサポートいただけるという意味では同じ部分もありますけれども、値差支援という形でやると、買う側にとっては、ほかと同じような価格で買えるというふうな意味合いにおいて、やはりそこに移行するときのいわゆる消費マインドという意味においては、非常にそこに対するハードルが下がる。

 自分がやって、そこからサポートしてもらうというのは一定のやはり仕組みが要りますけれども、値差支援というのは、今、ガソリンが上がったときに、それをやったら従来と変わらない形で例えばガソリンが買えるのと同じように、いわゆる使う側の消費マインドを促進するという意味では非常に効果がある仕組みだというふうに我々産業界としては捉えております。

 ありがとうございました。

小野委員 ありがとうございます。

 私は、今回のこの値差支援という仕組みは非常にいいなと思っているんですね。電気の場合には、電気というのは一通りですよね、電気以外にはないんですけれども、水素というのは、その用途が、例えば製鉄ですとか、あるいは何かケミカルを作るときとか、それから燃料電池車を動かすとか、用途が違うわけで、先ほどの佐々木先生のこの図でも、結局、固定買取り価格制度にしちゃうと、一番上にいる水素乗用車とか、そういうところの人の方が利用しやすくなっちゃうので、結局、市場においてそういう人たちだけが使っちゃうみたいなことにもなりかねないんじゃないかと。

 今回、私が把握している限りだと、この値差支援のスキームというのは、それぞれの組成されたプロジェクトにおいて根差支援をどれだけするかというのは違ってくるというふうに理解していますので、その意味では、戦略的に、ここはやはり厚めにちょっと支援してあげようということができると思うんですね。もちろん、その妥当性というのをちゃんと精緻に考えなければいけないんですが、そこに関しては、黎明期の水素社会を実現しようという意味では非常に柔軟に制度設計ができるということで、非常にそこはいいのかなと思っています。

 ただ、もちろん、国際的に、アメリカなんかはもう十年以内に一ノルマル立米当たり一ドルを切るみたいなことを言っていて、これは結構本当にそうなのかなと思うんですが、でも、それぐらいのところに負けないように、我々も余りお金を入れ過ぎないということも当然大事だと思いますので、是非ここのコントロールを、経産省も一生懸命考えるでしょうが、先生方も是非そこには積極的に様々な御示唆を与えていただければというふうに思います。

 もう残りも少ないので、最後に一問お伺いしたいんですけれども、水素というのは、私は、石油と同じように、冒頭申し上げたように、いろいろなことで利用可能性があると思うんですね。そこで、一番私が面白いなと思っているのは、水素キャリアの問題なんですね。

 石油の場合だと普通にタンクにためておくだけですけれども、水素の場合には、液化水素、MCH、アンモニア、メタネーションという形で様々な貯留方法があると思います。

 これは、それぞれの技術がどういうふうに発達するのか、どういうニーズが出てくるのか、それからその貯留のコストはどれぐらいなのかということによって変わってくるとは思うんですが、佐々木先生に、これから水素のキャリアの問題としての方向性は、どこかに収れんされていくのか、それとも多様な形で共存するような形になるのか、この辺、多様な形になると、それはそれで結構技術開発も大変だなと思うんですが、この見通しについてお伺いしたいと思います。

佐々木参考人 御指摘ありがとうございました。

 五年から十年ぐらい前は、水素を運ぶ方法は三つあって、これはばらばらにやるのか、どこかでやはり選択と集中をしろという御指摘もありました。結論から申し上げますと、やはりそれぞれのキャリアが、強いところもあるし苦手なところもあるんですね。ですから、適材適所でやはり入ってくるというのが今の考え方ですし、自分はアンモニアが得意だとか、それぞれ得意な業界さんもありますので、むしろ各業界さんが得意な水素キャリアで頑張っていただいて、最終的に切磋琢磨して安いものが適材適所で入ってくるということだと思います。

 例えば、アンモニアの場合には、もう百年ぐらい肥料の原料として世界中で使っていますし、そういう、世界中で取引するという制度もできておりますので、そこは比較的、技術的なハードルは低いということだと思いますし、産業等で使いやすいというのがアンモニアの特徴だと思います。

 MCHは、トルエンに水素をくっつけてということで、私はいつも持っているんですけれども、修正ペンの主成分が、これはメチルシクロヘキサンといって、飛行機にも載ったりしているんですけれども、これがまさに水素キャリアでありまして、これですと、例えば長期備蓄できる水素になるんですね。つまり、エネルギー安全保障の考え方で、備蓄できる水素があるというのがこのMCHの大きな特徴だと思います。

 液化水素は、川崎重工さんが頑張られておりますけれども、やはりLNGが最終的には液化して運んできたという形ですから、ある意味、水素の運び方の理想型だと言えると思います。

 どれがいいかというのは、それぞれ強みもあるし苦手なところもありますので、うまく適材適所で入っていただくのがいいのかなと考えております。

 以上です。

小野委員 ありがとうございました。修正液がそんなものだとは全然知りませんでした。

 今日は、産業の移行という形で、どうやって円滑にするのかという観点から御質問させていただいたんですが、最後に、時間が少しだけあるので、一言だけ浅岡参考人にお伺いしたいと思います。

 国内の余剰電力をちゃんと使っていく、それを水素にするというのも大事だと思うんですが、九州でもかなり再生可能エネルギーを捨てちゃっているんですね、太陽光の出力制限で。こういうのをちゃんと生かしていくにはどうすればいいかというのを、最後、アイデアがあればお聞かせいただきたいんですが。

岡本委員長 では、浅岡参考人、小野さんの持ち時間が終了しておりますので、簡潔に御答弁いただけるとありがたいです。

浅岡参考人 電力の広域利用の連携、これを強化することはまず第一に計画的になされなければならないと思います。それでも、更に更に太陽光発電等、九州では風力も加えて導入していくことが、私ども、期待されますが、その電力を使って水素を製造するということも大変大事だと思います。

 私は、本日の議論でそういうことを全然否定しているわけではございません。だけれども、何に使おうとしているのか。本当に、発電の代わりに使うんだ、このことを混ぜて話をする限りにおいては、非常に話が混乱をし、議論が不正確になっていくということではないかと思っております。

小野委員 終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 本日は、佐々木参考人、橋本参考人、柏木参考人、そして浅岡参考人、お忙しいところ、御意見ありがとうございました。

 まず浅岡参考人に伺いたいと思いますが、本法案をめぐって、一・五度C目標との整合性として、二〇五〇年までの削減経路、これが重要ということで指摘をされました。

 昨年十一月に、イギリスのシンクタンク、インフルエンスマップは、脱炭素社会を目指すとする日本のGX政策について、大部分が世界の気温上昇抑制目標に整合しない、こういう評価結果を発表いたしました。IPCCが示す科学的な対策に照らしてみると、水素やアンモニアとの混焼を掲げてCO2排出の大きい化石燃料による発電を長期に想定するなど、一・五度C目標と整合しない対策が多数含まれると評価したということであります。

 そこで、参考人はCOP28にも参加されたということを先ほどおっしゃっていましたが、日本のGX政策は世界からどう見られていたか、端的に御紹介いただければ幸いです。

浅岡参考人 ありがとうございます。

 先ほどのインフルエンスマップなどの、日本のGX及び水素、アンモニアの、発電事業への混焼、専焼という、大きな用途として考えていることなどへの批判は、本日参考資料でつけました十九ページに、明日香寿川先生がまとめられたものをリスト化しております。また、二十ページには、昨年、バイデン政権の気候変動特使でありましたケリー氏の見解、あるいは、IPCCの新議長でありますジム・スキー先生の評価。これらはおかしい、それは不適である、そうすることは一・五度の整合ある削減経路をたどることはできないと言わざるを得ないわけですね。

 電力部門の排出削減ができないということは、二〇三〇年、日本の現在四割を占める発電部門が本当にこのまま推移してしまいかねない、こういうことですから、おおよそ実現性がないことになってまいります。

 私は、先ほどからの議論に関しまして本当に思うのですけれども、こうした、世界が一・五度を目指しているタイムラインとか削減経路に従った経済政策、あるいはエネルギーの活用の仕方でなければ国際競争には勝っていけない、この点を他の国の人たちも懸念を示され、非常に不思議に思っておられる。そういう指摘は、NGOが指摘しているだけではなくて、多くの人々の非常に客観的な見方ではないかと思います。

笠井委員 ありがとうございました。

 次に、先ほど浅岡参考人から指摘のあった低炭素水素等の定義に関わって、佐々木参考人と柏木参考人に伺いたいと思います。

 本法案では、第二条第一項において、経産省令で定めることとされている、その製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であること等とされております。

 現在、経産省で議論されている基準というのは、その製造時ということで、輸送や利用機器の使用まで、このライフサイクル全体を含むものとはなっていないということになっていると思うんですけれども、そのことについてどういう御見解をお持ちでしょうか。端的にお願いします。

佐々木参考人 天然ガスから水素を作るときに、大体一キログラムの水素を作るときに十一キログラム出ます。それが三・四キログラムということで、審議会でもそれを目標にということが掲げられておりますけれども、そうすると、十一が三・四になるというのは七割減らすということでありまして、それをグリーンにするとゼロになるということですけれども、委員御指摘のとおり、運ぶところとかためるところが入っているか入っていないかというのは、当然その部分も考える必要が出てまいると思います。

 ですから、中長期的には、これはやはりライフサイクルで考えるというのは大きな目標だと思いますし、他方、私も、その御指摘も、委員会を見させていただいて感じたのは、今まさに輸送技術とか貯蔵技術とかを開発中なんですよね。まさにこれで、グリーンイノベーション基金で実際にやってみてどのぐらいの効果があるのか。

 要は、実際に本当に三・四プラスちょっとなのか、三・四をそれなりに超えるのかというところをまさにこれから実証して示していくということですから、まだ実証もされていないところで、そこで数値を入れるというのは、ちょっとこれは事業者として厳しいんじゃないかなということで、少しそこはまだ書いてないということが今回の状況かなと個人的には考えています。中長期的には、やはり将来的にはライフサイクルで考えるというのはおっしゃるとおりだと思っております。

 私からは以上です。

柏木参考人 全くおっしゃるとおりだと思っています。ただ、ウェル・トゥー・ゲートなのかゲート・トゥー・ゲートなのか。全然値が違いますよね。じゃ、どこで、どこから仕入れてきてというので全然その値も違ってきますので、結局、コンセプトは正しいんですけれども、具体的に計算しろといいますと、もう無限に近いほど計算できないという状況になりますので、ある地域に限ってきちっきちっとしたデータベースを用意して、そして、それに合わせて計算の仕方をきちっとすれば、ある程度相対的な差別化はできるんじゃないかと思います。

 考え方に関しては異論はありませんけれども、具体的にやろうということになりますと、まだまだ、データベースをそろえてからやることになる。だから、ある意味では、ゲート・トゥー・ゲートで今やっておいて、商品を作るときの間だけにしておいて、そして、それから徐々にいろいろなデータを集めて積み重ねてサムアップしていくという状況になっていくんじゃないかというふうに想像しています。

 以上です。

笠井委員 経産省は、国際的にも遜色ないということで、やりたいということを、設定したいと言われているんだけれども、私も質問でも言ったんですが、EUでは、数値自体は三・四キロと同じなんだけれども、ライフサイクル全体を含んでいるということになると、少なくともEUと比べると今遜色があるという現実はある。そこは踏まえる必要があるかなと思っております。

 橋本参考人に伺います。

 昨年八月に、私も、衆議院の経済産業委員会の海外派遣で、フランクフルトのカワサキ・ガスタービン・ヨーロッパを訪れる機会がありました。その際に、豪州から日本に運ぶ液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」ということでお話があって、目的が水素の運搬で、水素ガスタービンではなくて既存エンジンを使用して運ぶんだというお話があったんですけれども、この輸送に伴うCO2については、量がどれぐらいで、どういうようにお考えか、そして、このことについてはどのように見ていったらいいというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 現在の「すいそ ふろんてぃあ」は、まず水素のタンクの評価、そしてそれが冷熱でちゃんとできるか、いわゆるボイルオフはどうか、しかも船の揺れに耐えられるかという評価のためにやりましたので、確かに今はございません。しかしながら、現在、これから進めていこうとしている量産型、それに関しましては、実は、水素を運ぶときに出るボイルオフした水素を燃料として水素で運ぶ、つまり、水素で燃焼させますので基本的にはCO2が出ない、こういったものを基本的に量産型で今計画しております。

 こういった形になりますので、現在のレベルは、まず、真空二重殻という形で、水素のタンクの評価、そして、それが船で耐えられるということが実証できましたので、最終的には、いわゆる、運ぶ最中においても全くCO2を出さないという形の船の計画を進めております。

 我々としましては、まず、全体としては、この三・四の中でこういったことが含まれていないというのは、まだそれが実証されていない段階あるいはこれからという段階ですけれども、ただ、それぞれの企業は、それを出さないようにするための方策あるいは将来計画で着々と進めておりますので、将来は、つまりCO2の排出はゼロにしないといけないというためには、今からそういう計画をしていかないといけないというためにやっておりますので、そちらの方も着々と進んでおりますので、御安心いただければというふうに考えております。

笠井委員 水素で運ぶということで計画中ということなんですけれども、もう一方では、二〇五〇年ということがあって、そして三〇年までが非常に大事ということで世界がやっている中で、結局、その削減目標全体との中で間に合うのかという問題もやはりよく考えなきゃいけないかなというふうに思います。

 浅岡参考人に伺いたいと思うんですけれども、今、G7の中で唯一日本が石炭火力廃止の期限を決めていなくて、全国各地で新規の建設を進めてきたというのが状況だと思うんですが、例えば、神戸製鋼所の神戸発電所でも、私も現地を見て、そして話も伺った機会があったんですけれども、関係者のお話を聞いてきたところによると、やはりアンモニア混焼でやっていく、ただ、比率はなかなかすぐにはいっぱい行かないということなんだけれども、三号機、四号機が運転を開始をしていて、二〇五〇年までに石炭火力発電を続けるということに、そういう経過の中でなると。私、これは率直に言って、脱炭素ということからいうと逆行ではないかと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。

浅岡参考人 世界から大変日本の気候変動政策について奇異な目で見られているのは、石炭火力発電所を温存するということが非常に大きな基本にあるということでございます。

 今日の資料の「参考」として、二十六ページに、JERAの執行役員であります奥田氏が二〇二一年三月に語られた言葉を添付いたしましたけれども、こうした新規の石炭火力発電所も、この数年の間に千キロワット近く増えたわけでございますが、これらを含めてある設備を最大限活用する、また、旧一電の方が持っている送電網を最大限活用する、電力会社にとりましては大変経済的な方法かもしれませんが、これは、地球環境だけではなく、日本の経済の今後の在り方全体を大きくゆがめる方針ではないかと思います。

 そうしたことがあるがために、日本は、神戸だけではなくて、基本的には、二〇五〇年まで石炭火力で、現在の火力発電所設備をどうやって活用するかということが、水素、アンモニア混焼という形のものであると、現実にそうなっていますし、おっしゃってもいるわけであります。

 そうしている限りは、G7のほかの国は二〇三〇年までに石炭火力は廃止をしていく、そしてアメリカは二〇三五年までには石炭も天然ガスも廃止をしていく、アメリカの石炭火力は本当にどんどん減っているのが現状でありますし、そういう世界の他のG7の国が進めているものに、全く違う方向で石炭火力をこのように使い続けようとすること、ここに世界は本当に奇異な目を向けているわけであります。

 こうしたことが、大きな水素のプラットフォームを築かれるとかおっしゃっておられるんですけれども、そうなるでしょうか。そのように国際社会が見てくださるでしょうか。本当に、グリーン水素、あるいは一〇〇%のCO2フリーの製造工程で作った機械製品とか製品等でなければ国際社会に流通できない時代が目前に来ているわけでありますので、やはり根本的に、早く見直しができる、そして見直しをしていくスキームというものがしっかり築かれていくことを私は期待しております。

笠井委員 浅岡参考人にもう一点端的に伺いたいんですが、今、関連してなんですけれども、日本政府が、アジア・ゼロエミッション共同体をつくるということで、石炭、アンモニア混焼などの日本のエネルギー政策を東南アジア各国に輸出しようとしている。これはどう御覧になりますか。

浅岡参考人 ありがとうございます。

 これは、サプライチェーンを広げるために使い道を、お仲間を増やしたいということで、アジアの国々は石炭火力を多く抱えるからと思われるのかもしれませんが、しかし、世界の流れは、こうしたアジアの国々も急速に大きく変えるでありましょう。これは、気候変動には対応せざるを得ないからであります。

 CO2フリーの社会に本当に入らないといけない。アンモニアでごまかすようなことではやっていけない。災害が目の前に来る、ビジネスの向上すら動かせなくなる、こういうのを目前に控えているわけであります。

 また、東南アジアの国々は、翻ってみれば、大変豊富な再生可能エネルギー資源を持っておられます。いろいろなものでございます。先般も、オーストラリアが恐ろしく再生可能エネルギーに転換するというふうな話も伺いました。

 こうした意味で、今考えておられるスキームは五年ももたないと私どもは感じております。そうしたことを見越して、アジアの国々の脱炭素化、脱化石燃料、石炭火力発電所から離脱することをサポートする役割の方に日本に立っていただきたいと願うところでございます。

笠井委員 ありがとうございました。

 今日参考人の方々から伺った意見を踏まえて、今後も、徹底審議ということで、法案の審議に向かっていきたいと思います。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、鈴木義弘さん。

鈴木(義)委員 本日は、四人の参考人の先生方に厚く御礼を申し上げたいと思います。

 ちょうどCOP12の京都議定書のときに、私は県会議員だったんですが、そのときに、国がCO2を二〇%削減、こういう時代だったと記憶しています。今から二十年ぐらい前だったと思う。そのときに、本会議で質問に立ったときに、どういう状況になっているかというのを調べたんですけれども、例えば、グリーンランドという北極に近いようなところに、あそこは今雪と氷で覆われているんですけれども、そこにバイキングが入植していた跡が見つかったとか。

 そうすると、今まで、これはそもそもの話で、いや違うと言ってもらっても結構ですが、温暖化で、氷河期があって、温暖化になってと、ずっとこう行っているわけじゃないんですね。過去にいろいろある。それは遺跡だとかいろいろなものから推測できているんだと思うんですけれども。そうすると、今私たちが置かれているのは、この頂点を突き抜ける温暖化になっているのか、それとも、下がってきて、上がりっぱなのところにいるのか、そこのところがよく分からないんですね。

 でも、COP12のときもそうですけれども、CO2削減。ちょっと前までは、フロンガスが温暖化によくないといって、フロンガスをやめて、違う代替フロンガスに替えていった歴史があったと思うんです。今はCO2なんです。でも、これがまた、じゃ、本当にそうなのかという学術的なものがもし出てきたときに、今まで投資してきたものは何だったのかということになり得る可能性もあるんじゃないかなと思います。

 それと、先週はCCSの参考人の質疑を、意見陳述をいただいたんですけれども、結局、国内だけじゃなくて、海外ともやり取りしますと。水素も同じだと思うんですね。先ほども御答弁の中で、アメリカは一ドル切るようなことをやり始めていると。いや、何てことないんですよね。安い水素を作ることによって製造業を呼び込もうと。私はそう思うんです。それに対抗するんだったら、それよりも安くして製品を作らなければ、日本の国際競争力は下がってしまうということにつながるんじゃないかと思うんです。

 ちょっと漠然としたお尋ねの仕方なんですけれども、その辺の見方を是非。国内だけを一生懸命やっても、どうしてもコスト高になってしまうと国際競争力は上がっていかない。それで製品を作っても買ってくれる人はいない。

 日本もそうですね。CO2を二〇三〇年までに四六%カットするんだという大上段の野心的な目標を菅元総理のときに掲げたんですけれども、あと六年しかないんです、四六%カットするのに。じゃ、そのときに、日本がそれに突き進むんですけれども、それによってコスト高になった商品を、世界のどこの国の人が、ああ、いいことをやってくれた、じゃ、あなたのところの商品を必ず買ってあげますよと言ってくれるんだったら、どんどんコストを上げたとしても、地球環境の、CO2の削減に貢献しているんだから、やった方がいいと言ってくれるのかどうか。

 そこのところの考え方を、まず最初に、簡潔で結構ですから、お答えいただけたらありがたいなと思うんですが。

浅岡参考人 御質問ありがとうございます。

 IPCCという世界の科学者の総知見によりまして、これは国連の機関でございますが、現在の気候変動、温暖化は人間活動によるものである、そしてこれは、人類がこれまで経験していないレベルに既に達しており、今後更に更に、このままいけば拡大していく、こういうことを指摘しておりまして、それで、先ほどお見せいたしました削減経路が必要だという結論になっているわけでございます。

 氷河期が来るのではないか、今が一番暑いのではないか。これは残念ながら、私が専門家からお聞きしているところでは、人類の文明史的な時間というのはせいぜい一万数千年でございます、エジプト、メソポタミアを入れましても。そして、次の氷河期が訪れるのはというのは、研究者たちの一致したところでは、早くて六万年後。とてもとても間に合うスパンではございません。

 そもそも、そういうことによって今温暖化が進んでいるのではなくて、人間活動によって進んでいることなんだと。ですから、世界中が、科学者だけではなくて、国連の機関を含めて二百か国の国がこうしたCOP28の先ほど申しましたような合意をしているということは、自らを救うためであります。

 自らの国民を救うのは国の責務でありますし、そしてそれが、地球規模全体の人々を救う、そして、ビジネス、産業を持続可能に続けていくためには、ここは温暖化に対応するための排出削減をしていくことが不可欠である、この合意の下に進んでいることをやはり前提としていただきまして、今回、日本の排出削減は非常に不十分であると。

 そうしたところで、日本が、高いコストで買ってくれるのかという以前に、例えばEUにはもう売れなくなるということが考えられます。あるいは、国境炭素税というものを含ませて、日本に炭素税がなくても、EUに売り込むにはこれだけのコストアップをいたしますというような時代にもうなっております。ほかの国々もそうした動きを取りかねません。

 それくらいやはり切迫し、深刻でありますから、いろいろなことをやる余裕ではなく、やはり本当に早く削減する、何よりも電力部門を再生可能エネルギーで増やしていくための政策を日本はまず優先して、最大お金も投じていくべきであろうと思っております。お願いいたします。

柏木参考人 二十年ぐらい前なんですけれども、私、IPCCの第二次レポートの執筆代表者というのを拝命していまして、そのときに、温室効果ガス、特にCO2ですね、CO2の増大は自然現象ではなくて、人為的な活動によって増大するということを明記した。それが第二次で、それからどんどんどんどん進んできて、第六次まで来ていると思いますけれども、そのとき私たちが言われたことは、DESという言葉を使われた。ディベロップメント、エクイティー、サステーナビリティー。要するに、それぞれ各国が、平衡性に富んだ持続可能な開発とはどうあるべきかというテーマできちっとIPCCのレポートをまとめてくれというのがチェアマンからの要望でありました。

 そのときに、まず、寒冷期に向かっているという答えはなくて、やはり増大しているという答えですから、やはりそれをなるべく現状レベルに抑えるという、これが最も、我々が考えるある期間において、数百年とかそういう期間においては重要なことなんだということで、CO2の人為的なものはなるべく抑制していく、そういう答えにしてきたわけで、長期にわたって寒冷期に向かっているという答えを出す人は今はいないと思うんですよね。ですから、温暖化に向かっているので、やはりそれを抑えるというのが大局的な答えだと私は理解しております。

 以上です。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 この問題で、もう一つ、私は、忘れているんじゃないかと。先ほど柏木参考人の方から、大量生産、大量消費、大量廃棄と。私も先週、大臣にこの質問をもう何回もしているんですけれども、その価値観を変えない限り難しいんじゃないかということですね。

 私たちは、身の回りのもので、使い捨てのものをいっぱい便利に使っています。それを製造するのにもCO2を出すし、捨てた後も結局CO2が出ている。だから、それを、ライフサイクルをどう変えていくかというところを、やはり国が打ち出していかなくちゃいけないと思うんです。

 ただ、私も昔、バイクに乗っていて、ツーストとフォーストというのがあって、今日、川崎のメーカーの社長が来られているんですけれども、ツーストは理にかなっているんだよね。駆動部分も少ないし、コストも安くて馬力も出るし。あのオイルの混じった白煙を嗅ぐと無性に勇気が湧いてくるという時代をくぐってきたんですけれども、イの一番にフォーストを出してきたのがホンダさんだったんですよね。

 それから、ツーストからフォーストの時代、排ガス規制がかかってきたりなんなりで、今、先ほども柏木参考人も御答弁いただいたように、社会制度も変えていかないと、やはりこれは乗り切れないんじゃないかと思うんです。

 例えば、日本は車の免許を取ると五十ccのバイクまでは免許を持っていれば乗れちゃうんですね。でも、今もう五十ccのバイクは造らなくなっちゃった。何でかなと思ったら、売り先が、五十ccじゃなくて、そこの国の税金に基づいて、百ccとか百二十ccのバイクだったら、まあ日本でいえば赤ナンバーなんですけれども、もうそういうバイクしか売れなくなっちゃった。五十ccのバイクが売れない。だから、それに対応していくしかないので、今郵便局の人が乗っているバイクを見たら、えっ、何で赤ナンバーがついているのかなと思ったら、電気バイクだという。こういうのも実際に社会の中には入ってきていますよね。

 それで、結局何を申し上げたいかといったときに、今は需要側の話は全然出てこなくて、供給側の話ばかりがいろいろな法整備をしたりなんなりしていくんですけれども、これは、経済を拡大させるため、日本をもっと豊かにするためということは私も否定しないんですけれども、需要側の方にも少し協力してもらうような制度をつくっていかないと、GXの社会をつくっていくのにはなかなか無理が、どうしてもひずみが出てくる。それは何でかというと、世の中、経済ベースで動いちゃっているということです。

 それを変えていかない限り、地球温暖化を抑止して、一・五度を目標にして下げていくということにつながらないんじゃないかと思うんですけれども、その辺の本のお考えを、いま一度四人の参考人の方にお聞かせいただければと思います。

佐々木参考人 御指摘ありがとうございました。

 これは水素の価値の根幹の部分なんですけれども、今日の議論でもありましたように、水素というのはいろいろなものから作れる、いろいろな地域で作れるというのが一つの大きな価値なんですけれども、もう一つは、いろいろなところで使えるというのが水素の価値なんですね。

 ですから、もちろん、今回、製鉄とか化学とか、そういう電化が難しいところを補完するというのもありますし、変動が激しい再エネを入れようとすると、やはりその調整力として火力発電というのを必ず残さざるを得ないところがありますので、そういう電力で使う。それから、特にモビリティーですね。トラック、バスというところは、企業さんもやはり、カーボンニュートラル、いろいろな使い方をすべきだということでありますので、実はいろいろな用途に使えるというのが水素の価値であります。

 私も、この法律案を見て、どこにそれが書いてあるのということで思ったんですけれども、実は附則のところに、五十二条か何かまであって、その次に、附則のところに、いろいろな用途で使うということが書かれておりますので、法律というのはこういう書き方をするのかなということで納得したんですけれども、まさにいろいろな用途で使えるということですから、それは本当にいろいろな方、業界と話して、水素の用途を増やしていくというのが我々の使命だと考えております。

 私からは以上です。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。そして、バイクを御愛用いただきましてありがとうございます。

 バイクのようなもので、一つの例でいいますと、例えば、じゃ、バイクのようなマーケットで、お客さんから見て水素とかEVというのはどうなんだというふうな観点でいいますと、我々は、バイクのお客さんで、やはり電動化になってそれを楽しむお客さん、これは一定数いらっしゃいます。

 しかし一方で、やはりバイクの馬力があってバリバリいう音が大好き、こういうお客さんがいる。この中でカーボンニュートラルが進んで、やはりカーボンニュートラルになってもバイクは楽しいよねというお客さんのために何をしているかといったら、FCVではなくて水素エンジン、直噴で水素で回せる、CO2を全く出さないエンジンを開発する。これをすることによって、バイクファンが、音も好きですし、そういったものも大好き、そしてそれも、更にカーボンニュートラルにもなれる。

 もっと言いますと、実は水素というのは、燃焼スピードが速いおかげで、ターボチャージャーを入れなくても、ばんといったときにすごくアクションが速いんですね。ですから、ある意味で、そういったマーケットで使われる方のニーズに応えるような水素の商品を造って、今言われたマーケットのニーズを我々が取り込みながら、それでもカーボンニュートラルを実現していく。

 一方で、我々、小型の方は、いわゆる電動の自転車、電動アシスト。しかも、高齢者になるときに、高齢者でも乗れるようなもので、高齢の方が安全に乗れてというふうなものを使うときに、EVというふうなものを少しうまく使いながらやります。

 したがいまして、我々は、こういった、社会がこれからカーボンニュートラルになっていくときに、もちろん、我々はビジネスをやっていますので、お客さんに受け入れてもらう商品にしないといけないというふうな形においては、そういう努力をしています。

 例えば今、こうしたお客さんが、カーボンニュートラルはいつ来るのかな、非常に分からないけれども、でも準備しないといけないといったときに、我々は、水素レディー商品という、このレディーというのは準備しているという形で、今の天然ガスでもいけるけれども、水素が来たらいつ混焼して、〇%から一〇〇%まで自由な形で混焼できる商品を出していく。今、お客さんが更新するときに、じゃ、水素が来ても大丈夫なものを造って、やっていても安心だ、だからこちらを選びたいというふうにお客さんの購買意欲を増しながら、でも、気がつくと水素に対応できる商品がマーケットに存在している、こういった努力も企業側としてやっております。

 したがいまして、我々は物を作る側の立場だけでなくて、やはりふだんから売っていかないといけませんので、そういった努力もしっかりしながら、今回いただいた法案をうまく使いながら展開していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

岡本委員長 この後、柏木さん、浅岡さんに御意見をお伺いいたしますが、鈴木さんの持ち時間が終わっておりますので、簡潔に御意見を伺えますと幸いです。申し訳ありません。

柏木参考人 二十世紀型と二十一世紀型の産業の在り方というのは全くがらっと変わってきて、昔は産業と生活の米だった石油がデータに移っていく。それから、産業の基盤の鉄が半導体に移る。直線的な経済、直線的な物づくり、これがリサイクル型に、循環型に移る。エンジンからモーターに移る。こういう変化のある中で、やはり我々はコンセプトを変えていかないと、全てがやはり、これは一つの例を言ったにすぎないんですけれども、この水素というのは、ある意味では二次エネルギーを今度は一次エネルギーの中に入れて、そういう意味では再生可能エネルギーとのなじみがいいということもありますし、燃料として出てくるのは水だけだということもありますので、選択肢を増やしていくということも非常に重要になっていくんじゃないかと思います。

 以上です。

浅岡参考人 ありがとうございます。

 この法案は、水素等供給及び利用の促進に関する法律という意味で、需要側を見込んだ法律であると私は理解をしております。その需要先が発電事業に水素、アンモニアを使う、これが水素の日本の利用の仕方をゆがめている一番大きな元である。確かに、だから、これは需要側の使い方の問題であるというふうに捉えていただきたいというふうに思います。

 京都議定書の頃から水素という話はありました。私たちもそんな、何となく水素みたいな話がございましたが、どうやって水素を得るのかということのエネルギーを考えますと、なかなかそれは遠い話であったというときに、再生可能エネルギーが大変コスト低下して利用できるようになったときに、これがその解にある意味でなったわけであります、そのとき得なかった解が。

 それが二〇一〇年前後ぐらいから、特に福島の原発事故後、大変これは国際的に、世界に広がったわけであります。そのことによって大きくスキームが変わりました。だから、再生可能エネルギーが電力に使える、その電力は多くの産業に使える、このスキームに変わったことで、パリ協定は、皆さんが経済的にやっていけるものだと理解したからこそパリ協定ができたと理解しています。明らかに、低廉なエネルギー源として再生可能エネルギーが活用できるのだという下で作られたものです。

 それで、なおかつできない部分は水素であるかもしれない。水素っていろいろあるよね、でも、やはり高いのをどうするかと。高くても必要な部分というのは限られる。

 こういう、頭の整理といいましょうか政策の整理をごちゃごちゃにいたしましてこういう日本の進路を決めますと、本当に将来に大きく禍根を残すことを大変私は懸念していることをお伝えします。

 もちろん、いろいろな行動変容も必要であるということは言うまでもございません。

鈴木(義)委員 本日はお疲れさまでした。

 ありがとうございます。

岡本委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、委員会を代表いたしまして一言御礼を申し上げます。

 本日は、大変貴重な御意見を承りまして、ありがとうございました。本日の御意見を今後の充実した審議に生かしてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

 この際、お知らせいたします。

 内閣委員会との連合審査会は、来る四月二日火曜日午前九時から開会いたします。

 次回は、来る四月三日水曜日午前八時三十分理事会、午前八時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十一分散会


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