衆議院

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第10号 令和6年4月19日(金曜日)

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令和六年四月十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岡本 三成君

   理事 小林 鷹之君 理事 松本 洋平君

   理事 山下 貴司君 理事 荒井  優君

   理事 山岡 達丸君 理事 守島  正君

   理事 中野 洋昌君

      井原  巧君    石井  拓君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      国光あやの君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    冨樫 博之君

      中川 貴元君    福田 達夫君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    吉田 真次君

      和田 義明君    若林 健太君

      大島  敦君    落合 貴之君

      小山 展弘君    重徳 和彦君

      田嶋  要君    山崎  誠君

      市村浩一郎君    小野 泰輔君

      山本 剛正君    笠井  亮君

      鈴木 義弘君

    …………………………………

   経済産業大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣政務官    石井  拓君

   政府参考人

   (財務省財務総合政策研究所副所長)        鈴木 孝介君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         南   亮君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席スタートアップ創出推進政策統括調整官)      吾郷 進平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           菊川 人吾君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井上誠一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          山下 隆一君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官)          吉田健一郎君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          畠山陽二郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    滝澤  豪君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松浦 哲哉君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

四月十八日

 原発を廃止し、再生可能エネルギーに転換する原発ゼロ基本法の制定に関する請願(志位和夫君紹介)(第一一二〇号)

 岸田政権の新原発推進政策の撤回に関する請願(志位和夫君紹介)(第一一二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)


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     ――――◇―――――

岡本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省財務総合政策研究所副所長鈴木孝介さん、経済産業省大臣官房総括審議官南亮さん、経済産業省大臣官房首席スタートアップ創出推進政策統括調整官吾郷進平さん、経済産業省大臣官房審議官菊川人吾さん、経済産業省大臣官房審議官井上誠一郎さん、経済産業省大臣官房審議官浦田秀行さん、経済産業省経済産業政策局長山下隆一さん、経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官吉田健一郎さん、経済産業省産業技術環境局長畠山陽二郎さん、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄さん、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹さん、特許庁総務部長滝澤豪さん、中小企業庁事業環境部長山本和徳さん及び中小企業庁経営支援部長松浦哲哉さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田嶋要さん。

田嶋委員 おはようございます。立憲民主党・無所属の田嶋要でございます。今日もどうぞよろしくお願いいたします。

 齋藤大臣、米国出張お疲れさまでございました。昨日も本会議でその御報告を聞いたわけでございますが、大臣として手応えがあったかどうか、そしてまた最大の成果は何だったかということをまず御答弁いただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 私も、かつて経済産業省に勤務していたときに、通商政策局の米州課におりまして、大臣の米国出張のサブ、ロジ含めまして、それこそ何十回と担当してまいりましたけれども、今回の訪米というのは、一言で言うと、私はかなり大きな成果、いい訪米になったのではないかなというふうに考えています。

 最大の成果なんですけれども、一言で言えば、経済面において、特にDXですとか先端重要技術について、日米の連携を深めていこうというところが非常に力強く感じられた訪米になったというところが、私は非常に大きな成果だったのではないかなというふうに思っております。

 特に、私が現職の頃はアメリカとは対立ばかりでありましたものですから、そのときと比べますと、まさに隔世の感がした、そういう訪米になりました。

田嶋委員 当時の闘いぶりは、もう昔から随分齋藤さんからもお話を聞かせていただいていたような気がします。

 資料の一を御覧をいただきたいと思います。

 今大臣からもDXの話がございました。昨日の御答弁の中でも先端技術分野での競争力の維持強化とありまして、まさにデジタルの先端技術分野でございますが、最新のデータとして、これは、見ていただくと、三位シンガポール、そして韓国がその下、そして台湾、香港と、中国もちょっと下にありますが、アジア勢がずらっと、五か国ぐらいがトップ三十に入っております。

 日本はどこか、圏外です。日本は圏外についに落ちておるわけでございまして、こういうのを見ていると、今大臣がおっしゃったような思い、そして、昨日も、こういう表現でしたね、日米経済関係について、日米両国が世界の経済成長を共に牽引していく、双方向の投資の促進、こういうことで一致したというふうにあるんですが、私は、今日の法案にもつながりますが、本当にパートナーとして一緒にやるだけの実力がついていっているのかということに強い強い危機感を感じます。

 もはや、これを見ると、日本は足を引っ張る存在になりつつあるのではないか、セキュリティークリアランスの議論もこの国会ではございましたが、そういう危機感を持って今日は具体的にお尋ねをしたいというふうに思いますが、このランキングの状況は齋藤大臣はどのようにお考えですか。

齋藤(健)国務大臣 私も思いは共有しているところがあります。この三十年間、日本の世界における位置づけの低下というものは、私自身は看過できないものがあると思っています。

 ただ一方で、そのランキングには表れていない日本の強みというものもまだまだたくさんあると思っていますので、そういうところを大事にしながら挽回をしていきたいというふうに思っています。

田嶋委員 希望を捨てないことは僕も大事だと思っておりますので、常にどこかに光を求めてお互いに頑張りたいと思いますけれども、ただ、スピード感というところに私は大変強い懸念をしておりますので、今日はそのお話もさせていただきたいと思います。

 時を同じくして、先週日曜日、大きなお顔、齋藤さんのお顔を日経新聞に発見しましたので、これをちょっと読ませていただきまして、中堅企業という区分のお話も書いております。「力の強い大企業に対し、弱い中小を支えるという発想に立ってきた。」という、これまでの発想ですね。

 その中で、平成の三十年を「改革という宿題をやらなかった夏休み」というふうに表現をなさいました。私は、齋藤さんもこの三十年のうちの十年以上は国会議員ですので、齋藤さんも夏休みを取っていたのかというふうに誤解をされるような表現かなという感じがちょっといたしますが。

 要は、ポイントは、かつて日本が危機感を持ってアメリカに追いつこうとした、そして、今は逆にアジアの国々から追い上げられているけれども、十分な危機感を持っているのかということをこの場所でおっしゃっていらっしゃるわけでございますが、その中で、いろいろな手をこれまで打ってきた、それは小泉改革の頃から安倍総理の政権までいろいろ打ってきた、しかし、それでも日本は浮上しなかった。

 その次に、「問題は政策だけではなく、産業界や官僚を含めたプレーヤーの方にもあったのではないか」、問題がそういう側にもあったのではないかという問題意識ですね。これはどういうことを意味しているのか、もう少し具体的におっしゃっていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 大きな構図で申し上げますと、そこに書いてありましたけれども、私、ちょうど、役所に入って、八〇年代の半ばから後半にかけまして、日本の貿易赤字がアメリカとの関係で巨大な額になり、それに対してアメリカが、それこそ、まず為替レートで、八五年、何とか円高にして日本からの輸出を抑えようとか、それから、ヒューレット・パッカードのヤング会長が、経済界、産業界それから教育まで含めてアメリカは見直して日本と闘わなくちゃいけないとか、それから、御案内のように、もう田嶋さんは詳しいと思いますけれども、アカデミズムも、MITなんかで、日本の競争力の源泉はどこにあるのかとか。

 つまり、政界、官界だけではなくて、産業界そしてアカデミズムも含めて、日本の台頭ということに物すごい危機感を持って日本に対峙してきたというのを実体験しているものですから、今、今度日本が、九〇年代、恐らく後半ぐらいからアジアの国を中心とする追い上げを受ける中で、かつてのアメリカのような危機感があったんだろうかというところがちょっと違うんじゃないかなというのが一つありまして、これはだから、何も官界だけではなくて、経済界、アカデミズムも含めた全体としての印象として申し上げているということです。

田嶋委員 本当にそうですね。私も強い強い危機感を持っております。希望を持ちたいですけれども、もはやこのまましぼんでいくのではないか、そういう恐怖感も持ちながら日々取り組ませていただいている思いでございますが、そういった中で、今回、法案を出されました。

 これまでの二本は新しい産業を日本に起こす、そして、今回の法律は、まさに競争力全般ということで、非常に重要な試みということで、常に変化をしながら新しい仕掛けも行っていくという中での一法かなというふうに思うわけでございます。

 まずは資料の二を御覧ください。

 先ほど申しました新聞でも、これまでの反省は、力の強い大企業に対し弱い中小を支える、そういうような位置づけにあったということでございますが、この資料の二、実際の法人税負担率ということで、これは我が党の江田憲司先生、齋藤さんの先輩ですね、が財金の方で二年前に配付した資料でございまして、これを作ってくれたのは財務省なわけで、相当抵抗されたそうでございます。これをちゃんと強調しておいてくれと江田さんからは言われておりますので、出てくるのに相当抵抗されたと。しかし、ようやく出てきた。

 これは、今の齋藤大臣の御所見で、要するに、大企業に対して中小を保護する色彩の強い政策だった、今回、中堅というものを真ん中に設けるというのは私も別に反対はしませんし、結構だと思うんですが、不思議でならないのは、もう多くの方が御承知のことかもしれませんが、法人税率負担だけを見ると、結局、租特とか何だかかんだかでいろいろな特典がついて、一番軽い負担なのは大企業だということがこのグラフの意味するところなんですね。

 これは、今急にお見せして齋藤大臣には恐縮でございますが、多分こんなことは当然御存じかと思うんですが、財務省とのいろいろな中でこういう日本になっているのかもしれませんが、私は、これはおかしいんじゃないかなというのがやはり多くの皆さんと共有するところであります。

 これは資本金で切っていますので、今回二千人以下というふうに中堅を言っているので、必ずしも真ん中のグラフが中堅ではないとは思うんですが、しかし、どう考えても、一番小さな一千万円以下の資本金の法人税率よりも大企業の法人税率の方が一番低いというのはおかしい、正義に反するというように私は思うんですけれども、これはどう思いますか。これは前から言われていることなので、別に急に出てきた話じゃないんですが、何でこういうこと一つこの国では正されていかないのかというのが非常に謎なんですけれども、齋藤大臣、この時点での御見解をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 済みません、ちょっと、いきなり見たという感じなので、精査した十分なお答えはできないかもしれませんが、恐らく大企業は租特なんかを非常に上手に使われているので、表面の税率よりもかなり実際に払っている税負担率というのは下がっている傾向があるんじゃないかなというふうに推測はいたしますけれども、ちょっとそれ以上のコメントは今できません。済みません。

田嶋委員 いきなりお配りしまして恐縮でございますが、しかし、これは割とよく言われている話です。多くの人の人口に膾炙しております。

 したがって、やはりこれは大臣、これが事実だとしたら、少なくとも財務省から出てきている資料だということなので、もう既に財金で使われた資料ですから、こんなことが続いていたらおかしいでしょうというのが、今回、中堅企業までわざわざ設けて、大企業には支援がない、中小企業には支援が手厚い、中二階をつくるという発想だと思うんですが、これはそれに反するものだと私は思いますので、是非、この点に関して、事実かどうかも含めて検証して、これを是正するということでお願いを、事実ならばですよ、是正していただきたいということを私はお願いしたいと思いますが、齋藤大臣、うなずいていただいていますが、よろしいですね。

齋藤(健)国務大臣 ちょっと、何ゆえこのようになっているかについて、少し調べさせてください。

田嶋委員 続きまして、今申し上げた中堅企業という概念をきちんと立法に入れて導入するという部分に関してお尋ねしたいと思います。

 一つちょっと個別の話をしますが、今の大企業との関係もあるんですが、大企業の一〇〇%子会社というのがよくありますね。その子会社が二千人以下の企業になっている場合に、その企業、つまり、子会社であるその企業も中堅企業に該当して、今回の支援の対象にはなり得ると考えてよろしいんでしょうか。

菊川政府参考人 今御指摘があった点でございますけれども、我々の支援をしていく観点に鑑みまして、大企業、いわゆるみなしで大企業になっている、こういったところについては対象から除くということで整理をしていくということだと思っております。

田嶋委員 みなし大企業というのは中小企業と大企業との関係だと思うんですが、今回、中堅企業という概念を入れたわけでしょう。中堅企業は、正社員というんですか、常勤が二千人以下というところしかなくて、資本金とかはないわけですけれども、ここには大企業の一〇〇パー子会社というのは入るということですか、入らないということですか。

菊川政府参考人 入らないものと理解しております。

田嶋委員 ありがとうございました。

 やはり、先ほどのグラフもそうですけれども、結果として大企業への支援になってしまったら、私は、もう一〇〇%子会社であれば、当然ながら連結対象でもありますし、同じ会社というふうにみなすこともできるわけなので、そこに今回わざわざつくる中堅企業の手厚い支援が行くというのは本末転倒だというふうに考えますので、そこは是非お願いをしたいと思います。

 そして、次の質問に移らせていただきます。

 今回、中堅企業というものをつくったということで、役所からいただいた資料に、韓国や台湾における類似の政策の導入から十年ぐらい遅れて今回は導入しているという参考資料がついておりました。新聞の社説などにもそんな指摘がございましたけれども。

 例えば、先ほど、一番最初にお見せしたグラフなどを見ても、DXでもはるかに台湾も韓国も日本より先んじている国ですね。そうした状況の中で、十年今回遅れて中堅企業というものを立法したいということでありますが、タイミングはこれで最適だったというふうに考えておられるか、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 政策立案の過程におきまして、海外の政策や産業の動向、これをタイムリーに把握して政策の検討材料とすること、これは重要でありますし、私自身もそういうことで取り組んできた経験があります。

 今回、経済産業省では、これまでの十年の間に、韓国や台湾が参考としたとされるドイツの産業や政策の動向も参考にしながら、中規模の企業を対象とした様々な政策も進めてきてはいるんですね。

 具体的に講じてきた施策としては、例えば、地域の中核的な役割を果たす中堅・中小企業に対する集中的な支援枠組みを構築したり、中小企業を卒業した企業に対する一部の、一部ではありますが、中小企業支援の対象への追加ですとか、中堅企業も含めて、世界市場のニッチ分野でシェアを有するなど優良な企業の選定みたいなことも行ってきているわけです。

 その上で、今般、三十年ぶりの高水準の賃上げ、国内投資という潮目の変化を持続させて成長型経済への転換を実現する方策を検討する中で、中堅企業の過去十年間の動向を分析してみたところ、大企業を上回る設備や人材投資の伸びがあった、また、地域の良質な雇用の担い手としての役割を果たしてきた重要な企業群である、そういう実態を踏まえて、施策の深化、これをやっていかなくちゃいけないだろうというふうに今回決断するに至ったということであります。

 こうした分析に加えまして、韓国や台湾などの中堅企業政策の動向も参考としながら、我が国の中堅企業政策の方向性を審議会にて議論もさせていただいて本法案を提出したということでありますので、私は、田嶋委員と問題意識は共有をしているつもりでありますので、海外の産業政策の動向、これも引き続きタイムリーに把握、分析をして、不断の見直しも行って、効果的な施策の企画、実施、これに努めていきたいというふうに考えています。

田嶋委員 前回の二法案と同じように、齋藤大臣が最近大臣になられたわけで、それまで国会議員としてはあえて経済産業分野はやってこられなかったわけでございますので、私は今の答弁にならざるを得ないのかなと思います。私はこの経済産業委員会にしばらくおりますけれども、毎回、通常国会では、中小企業政策の法案が出てきていますね。そういう意味では、やってこなかったという意味ではないですね。実質的にはいろいろな挑戦はしてきたと思います。

 しかしながら、今回初めて中堅企業というものを立法で位置づけるというようなことを試みるということは、やはり、それが十年前に韓国や台湾でやってきたことなので、私は、何がしか今までの実質的な取組では足らないから、今回あえてこういう法案が出てきたんじゃないのかなと思うんですよ。だから、それは、大臣は最近この中身を御覧になられて、それまでは違うところをやっておられたということなので仕方がないかなと思うんですが、ちょっと私はこれは腑に落ちない。

 今回、アメリカから帰ってきて、何かアメリカと同じことをいきなり始めるというそのスピード感に比べると、韓国や台湾がやっているときに、私たちは、デジタルを見ていたって、全然下の方にいる国なんですよ。もうちょっと謙虚に、台湾や韓国がこういうことを始めたということを敏感に察知して、そのメリット、デメリットを分析するということを習慣化しなきゃ私はいけないというふうに思っています。

 実は、私には経験がありまして、これは二年前でございますが、配付資料の三を御覧ください。

 当時、特許庁の長官は宗像さんでございました。そうした女性の、特許庁が頑張って法案を提出するということで私の部屋に御説明に来られたのが、意匠法の関係、いわゆる知的財産の全般の中の意匠法の分野ですが、いただいた資料の一つがこの三なんです。「諸外国における画像デザインの保護開始時期」というものなんですね。

 詳細は省きますけれども、私は、これを見て、やはり今日と同じ印象を受けたんです。ああ、何だ、やりたい、改正したい内容は、韓国はもう二〇〇三年から始まっているんだね、中国でも二〇一四年から始まっているんだねと。じゃ、法改正を日本がやりたいというのは、少なくとも、中国から比べても十年近く、まあ七、八年遅れてやるんですかという話をしまして、それを委員会で問わせていただきました。

 私が、今回の改正は最適なタイミングだったのかという問いに対して、宗像政府参考人は、「今回の改正のタイミングは、最適なタイミングで提出できたというふうには考えておりません」「むしろ一部はもっと早くできればよかったなと考えております。」そういう答弁があったわけでございます。

 私は、そういうふうに長官がおっしゃったということで、じゃ、早くにこういうことを導入した国々の方が実はまずい結果になっていたとか、日本が戦略的にタイミングをずらしてやっているんだったら理解できるんですよ、そういうことも伺ったんですが、宗像長官からは、日本における意匠の出願は減少している、他国では意匠の出願が増えているという中で日本で出願が減ったということは、そういうものが保護されていないので出願できなかったということで減ってしまった、結果として、そうした国々においては、「ネットワークを活用した企業が成長しておりますので、彼らが失敗したということはなかった」と。逆に言えば、遅れた我々の方がよくなかったということを彼女はお認めになっていると私は理解をいたしております。

 本当にこういったことが起きて、そして、私はこういうことを申し上げました。大臣も今おっしゃいましたけれども、世界の国々と競争しているわけであります、その中で、特にアメリカ、中国はもちろんですが、アジアであれば、韓国や台湾や、そうしたDXを見ても日本よりも先を行っている国々がある中で、そして、我が国は、たくさんの方々を経産省、ジェトロは出向させていますね。何をしているんだという話に私はなると思うんですよ。

 それは、やはり彼らが常にアンテナを高くして、この国では今回こういう産業政策が導入された、これが評価に値するかどうかということを、いち早く会議体を設けて、それで取捨選択して、これは大していい政策じゃないねということだったら、そのまま置けばいいと思うんですよ。しかし、それに対して機敏に対応できているのかどうかということが私は非常に心配に当時なりました。

 世耕大臣にお尋ねをしました、そういう仕組みがちゃんとあるのかと。つまり、産業政策面等での立法があったようなときに、すぐさまそれを研究して、我が国が後れを取ったのかどうかを評価して、そして、そのタイミングから、やはり日本も立法をするべきだとか、そういうことを検討しているのかと。それに対して、世耕大臣は、仕組みはあるわけでございます、非常に重要な国に、合計二百名を超える職員を派遣、常駐させていまして、日常から、現地の政府あるいは相手の国の企業の情報といったものの動向調査をしている、ただ、それがアクションにつながってきているかどうかというところは、まさに田嶋委員と同じ私も懸念を共有しております、こういうふうに正直におっしゃったんですよね。懸念を共有してくれていたんです、当時の大臣。

 だから、ここまで言ってくれたら、そこからいろいろ対策を取られたのか、見直されたのか、どうなんですか。人はいっぱいいますよ、しかし、アクションにつながらなきゃ意味がないですよね。

 先ほど言ったように、ほかの国だっていろいろな試行錯誤ですから、よくない政策だったら、それはうちは、日本は採用しなくたっていいと思うんですよ。しかし、十年遅れて採用しているんだったら、何で五年前に採用できていないんですかということを私は問いたいですね。現に、意匠法ではこういう問題があったということを長官がおっしゃいました。

 大臣、どうですか、こういうエピソードというか話を聞いて。こういうことが過去にあって、果たしてできているのかですよ、アクションが。どうですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、問題意識は全く共有をいたしております。

 その上で、私は、今、世界の国は、EVもそうですし、DXもGXもそうですし、今までと違って、それぞれの国、地域も含めてですね、新しいことをどんどんやっていく、しかも巨額の税金を投入しながらという、相当今までと違う局面に入ってきていると思っていますので、私は、世界の動向を見て、それに遅れずに日本も手を打っていくというのは、今まで以上にというか死活的な重要な課題になってきていると思いますので、私は、田嶋さんと問題意識は全く共有をいたしますので、その点については全省を挙げて、そういう目配りについて、まず感度もよく目配りするのと同時に、積極的に新しい政策を推進するように心がけていきたいと思います。

 私が久しぶりに戻ってきた中でも、やはり半導体やDXについては、私は、かなり一生懸命やってきているなという印象は正直持っているんですけれども、ただ、油断なく、引き続きやっていきたいと思っています。

田嶋委員 一生懸命やっているとか目配りをちゃんとやるとかいうのは、もう当たり前のことだと思いますよ、それは。それを情緒的に評価するのも結構ですけれども、そういう仕組みがちゃんとでき上がっているかということを私は当時も問うているんですね。

 どういうことかというと、それぞれの国に大きな予算を立てていろいろな人を派遣しているのは、やはり、その国の政策を、スパイ活動じゃもちろんないわけで、ちゃんとしっかりと比較すべき相手のいろいろな動きを察知して、それをテーブルにのせて評価をして、我が国としてどういうリアクションを取るべきか、あるいはプロアクティブに何がしか動くべきか、そういうことをジャッジしなきゃいけないと思うんですが、そういうのは議事録はあるんですか、あるいは、そういう会議体はあるんですか。今だったらオンラインで、私だったら、私だったらですよ、月に一回はそういう会合をすべきだと思いますよ。台湾の代表、韓国にいる人、ヨーロッパにいる人、アメリカにいる人、どういう動きがこの一か月で、台湾では起きているか、韓国では起きているか、立法はどうだ、予算はどうだ、税制はどうだ、こういうことをやるべきだと私は思いますよ。

 それをルーチン化するようなメカニズムが、当時私はそれを提案しているんですよ、あるんですか、今は。

齋藤(健)国務大臣 まず、それほど重要なことを聞かれるのであれば、事前に質問等を伺えれば、私は、今の現状をしっかり調べて御答弁できるし、足りないと思うところがあれば、それを率直に申し上げたと思いますけれども、今申し上げられるのは以上だけです。

田嶋委員 私が前回、世耕大臣ですから随分前ですけれども、事務方の方はそれを御存じだったと思うし聞いていらしたと思うんですが、今そういう仕組みがあるんでしょうか、どうでしょうか。

菊川政府参考人 立場上、経済産業省全体について答えるというところについては差し控えたいと思いますけれども、例えば、今委員の方から御指摘があったような今回の中堅企業のところについて、どういうルーティン化がされているか、しっかりとやられているかというところにつきましては、実際、韓国にも出張者を派遣いたしまして、向こうの政策当局とやり取りをして状況を把握してやってまいりましたし、そういう形で日々の中でやっております。

田嶋委員 具体的な質問通告をしませんでしたので大臣おっしゃるとおりだと思いますが、ただ、これは、本当に私は、二年前に同じ懸念を持っていると大臣がおっしゃられたので、当然、その懸念に基づいていろいろ検証して組み立てていただいて、強化していただいているという前提に立っているから。

 実は、同じ時期に、先ほどの意匠法じゃないところで同じような話が出てきました。今回、もう一個出てきましたよね。それはボックス税制ですよ。イノベーションボックス税制も、何かほかの国は相当前からやっていたという中で、今回始めたと。何でそういうことが続くのかなというのが私はよく分からない。いや、大した政策じゃないから無視したんだよということが記録として残っていれば、私は、いいですよ、ちゃんと評価したんだなと。

 では、大臣、今日、お願いします。これから、そうしたことを一度検証していただいて、私だったら、そういうルーチンチームをつくって、比較優位が取れるために、常に他国の立法などをウォッチし、アクションにつなげるべきかどうか、そういうことを検証するような体制を経産省内でグローバルに整えるべきだと思っておりますので、大臣、御答弁いただきたい。

齋藤(健)国務大臣 世耕さんの御答弁は、私も実感として、まだ着任してそんなにたっていないのであれなんですけれども、つまり、結構情報は入ってきていると思います。常日頃、少なくとも私が勤務していた頃でさえ、海外の情報というのは、派遣している人から詳細に、結構新しい政策なんかはレポートが来ます。だけれども、世耕さんおっしゃるように、それがアクションに結びついているかというところについては私は検証が必要だなと思いますので、ちょっと検証してみて、足りないところがあれば当然改善をしていきたいと思っています。

田嶋委員 情報はいっぱい入ってきていると思いますが、例えばこの例も、そして意匠法の例も、韓国、台湾とか中国とか、何か複数の国がやっているということは、これはお互いにらみ合ってやっているんですよ、競争環境だから。だけれども、日本だけリアクションが遅い。要するに、変化に適応できる能力という、時々指摘される日本のその部分は大丈夫かということですよ。御著書で書かれているとおりですよ。

 それを是非……(齋藤(健)国務大臣「そのとおりです」と呼ぶ)そのとおりと。お願いしたいと思いますよ。頑張りましょう、一緒に、本当に。是非お願いします。

 いや、私もこれは気になりますもの。だって、ジェトロに経産省はいる、大使館にも経産省はいる、経産省は大体のところにいるじゃないですか、当たり前ですけれども。なのに、何をやっているんですか、ワインばっかり飲んでいたら駄目ですよ、そういう皮肉を言いたくなりますよ、それは。だから、是非お願いしたいと私は思います。これは今日解決する課題じゃないけれども、今からでもどんどんレベルアップはできると思いますよ。お願いしたいと思います。

 それでは、意匠法を終わりまして、ソーラーの話に行きたいと思うんです。

 今回、いろいろ重点的に支援する戦略分野国内生産促進税制とか、アメリカのIRAを参考にいろいろなことをやろうということで、それ自体は結構だというふうに思うんですが、前回、山崎委員も質問されましたけれども、私も、齋藤さん、これは齋藤大臣が来る前からの話で申し訳ないんですけれども、私の率直な印象は、これはいつも言いますが、日本の経産省は、部長がいらっしゃるのに申し訳ないんだけれども、やはり、ソーラーは生かさず殺さず程度の支援しかしていないという感じなんですよ。(発言する者あり)それでいいじゃんという声もあるわけですよ。そこはやはり政府の考え方なんでしょうかね。

 配付資料の四を御覧ください。

 これは前回山崎さんの資料にもあったかもしれませんが、左下に、日本の毎年の、ちっちゃい字で済みませんけれども、数字がどんどん下がってきている、FITの認定ですかね。タイトルのところにも、日本だけが市場崩壊する太陽光発電ということで、私も、そういう意味では、メガソーラーの鴨川の問題、これは齋藤大臣、忘れていないと思いますけれども、ゴールデンウィークを過ぎたらひとつよろしくお願いしたいと思いますが、鴨川のようなケースが全国にたくさんある。最近だったら、五島列島なんかもひどいケースがニュースになっていました。

 そういうケースを一方で抱えながら、しかし、広げていかなきゃいけないと私は思いますよ。しかし、現在の状況を例えて言うならば、悪貨が良貨を駆逐するような現状にある。全部悪者に見えている、ソーラーが日本中で嫌われ者になっているという状況は、私は、ゆゆしき状況だし、結局日本が道を間違える元だというふうに考えておるんですね。

 大臣、その辺はどういう御認識ですか。やはり、リップサービスではなくて、本気になって再エネ、省エネ、特に再エネの中では太陽光を頑張る、風力も頑張る、そういうことで大丈夫ですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、再エネについては、二〇三〇年に導入目標、電源構成比三六から三八%の実現、これを掲げて、今、政府最大限の努力をしているわけですね。この目標自体が低いと言われたら、もうこれはどうしようもないんですけれども、これに向けて今全力を挙げてやっているし、その中で、おっしゃるように、太陽光とか風力というのは一つの大変重要な貢献をする電源だと思っていますので、私自身は、この三六―三八に向けて、太陽光や風力も含めて全力を尽くしていくという気持ちでいます。

田嶋委員 是非お願いしたいと思います。言葉にうそはないと思います。

 そうしたら、なぜ太陽光が、そして、これからペロブスカイトも出てくるタイミングですね、来年ぐらいから市場にも出てくると言われています。アメリカのIRAはちゃんと太陽光、再エネが支援の対象に出ていますが、経産省からいただいた資料の三ページ、物資ごとの控除額みたいな話になってくると、ここには半導体とか、電気自動車とか、グリーンスチール、グリーンケミカル、いろいろ、SAFもございますけれども、太陽光みたいな話は影も形もない。

 言うまでもなく、ペロブスカイトは日本産の技術であって、齋藤さんと私の選挙区もある千葉県なんかに豊富にあるヨウ素を使うということで、わくわくしますよね。にもかかわらず、どこにも出てこない。何でかなと思うんですけれども、そこはどうでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 投資促進策は様々な手法がございます。分野ごとの特徴、あるいは既存の支援策や制度も踏まえて効果的に講じていくことが重要だ、このように考えております。

 御指摘のとおり、今回の戦略分野国内生産促進税制では再エネは対象となっておりませんけれども、再エネへの支援については、まず、事業者の投資回収の予見性を担保することで再エネ導入を促進するFIT、FIP制度がございます。加えまして、例えばペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力などを対象に、グリーンイノベーション基金を活用して研究開発投資を強力に進めるとともに、令和六年度予算におきましては、例えば太陽光パネルであればパネルの製造事業者、こういったサプライチェーン構築を支援する予算を新たに措置するなど強力に支援を行っていく、そういう考えで進めているところでございます。

田嶋委員 資料の五を御覧ください。

 日本の太陽光のコストのグラフが出ておりますけれども、予想されたとおりというか心配されたとおりというか、世界一高いんですよ、ロシアと並んで。これは、設置コスト、ハード、ソフトですよ。十年前も聞いていました、設置コストがすごく日本はかかるという話も聞いていましたけれども、いまだにこういう状況ですよ。それは広がらないわと思いますよ、こういうことであれば、一つは。

 次の資料を御覧ください、六ページ。

 これは、アメリカのIRAを見ると、研究開発、設備投資、生産段階、販売段階、それぞれ税額控除ということをやったりして、別にFITがあるからほかではやりませんとかいう話にはならないわけですよね。そういうことなんです。

 だから、私は、どれだけ戦略的に大事かということを考えたときに、大臣、ここから大臣に問いたいと思いますが、ペロブスカイトでまた負けていいんですかと。

 前回の山崎さんの配付資料で、私はあの資料は初めて見ましたけれども、私もそれ以前に、いわゆる特許の数、基本特許の数、中国、韓国の追い上げ、かなり危機感を持っていましたが、前回の山崎さんの資料は、かなりもう厳しい、更に踏み込んだ、日本は負けつつあるよというメッセージの記事だったんですね。ああ、そこまで来たかと。神奈川で発明されて、ひょっとしたらノーベル賞みたいな話もあって、そして、今日に来て、来年からいよいよ、日本のメーカーも動いている中で、齋藤大臣、ペロブスカイトでまたシリコンの二の舞でいいんですか。いいわけないですよね。(齋藤(健)国務大臣「いいわけない」と呼ぶ)いいわけないですよね。いいわけないんだったら、手を全て打たなきゃいけないと私は思うんですが、打っていないと思います。どうですか。

齋藤(健)国務大臣 ペロブスカイトについては、私はまだ日本企業に強みのある分野がたくさんあると思っています。この分野を生かしながら、やはり世界でリードできるような実装を進めていかなくちゃいけないという思いでいます。

 中国とかの話がありましたけれども、直接の質問ではなかったですけれども、調べたところによりますと、中国企業は自国内での出願件数は多いんですけれども、二つ以上の国、地域へ出願された発明などの件数であります国際展開発明件数を分析しますと、依然としてまだ日本がトップ水準にあるということでありますので、私は、現時点において、日本のペロブスカイトについては大きな可能性があると思っていますので、これがかつての太陽光パネルのようなことにならないように、経済産業省として全力を尽くしていくということは、私だけではなくて、職員も同じ思いだろうと思っています。

田嶋委員 これは、全く同じ思いでありますが、瞬間風速、今の時点では勝っていますという話は非常に心もとなくて、二、三年後に結果が出ますよ、これ。

 だから、本当に、じゃ、逆に言えば、何でシリコンというのはあんなに凋落したのかというのは、僕、七不思議の一つなんですよ。最初は世界一だったでしょう、シリコンも。やがて、姿形もない国になったわけですよ。半導体と同じですよ。半導体は、今、こうやって復活させようとしているわけだけれども、何か太陽光はさほど力が入っていなかったような気がしますね。もういい、中国にやらせておけみたいな感覚でやっていたのかなと思いたくなるぐらい、あれよあれよという間に存在が消えていったのがシリコンだから。

 前回も、山崎さん、ここから本当に立て直せるんですかと。だって、同じような流通でしょう。同じようなサプライチェーンになるんじゃないですか。日本の中でシリコンからペロブスカイトに置き換わって、いきなり勝てるのかなというのが、私は大変心配。ここから先は水かけ論になるから、お互い見守っていきましょう。私は大変懸念しております。

 そして、次の質問ですが、これは農水大臣として齋藤大臣が成果を上げていただきました。ここなんですよ、やはり大事なのは。ただ、ここも嫌われ者になりつつある。

 次の資料、七ページでございますが、農地のポテンシャル、これはもう鴨川のメガソーラーとは訳が違うから。だけれども、これはやはりいろいろな誤解とか、そしてやはりここも悪貨が良貨を駆逐し始めているんですね。二割ぐらいの、なんちゃって農業を下でやっている連中がいるから、ソーラーシェアは駄目だという空気が横溢してきている。

 私は、こういうことは、やはり冷静に考えて、いいものを応援する仕組み、ソーラーが大事だとおっしゃるんだったら、齋藤大臣、たまたま農水大臣をやられて経産大臣をやられる人は最近珍しいですよ、両方見えていますから。是非このソーラーシェアを全力で応援していただきたいということを私はあちこちの委員会で今差し替えしながらやらせていただいていますから。来週は総務委員会でやりますから。総務大臣にも、自治体がこれは大事だからね。

 そういうことで、もう時間が来ています、それから、ちょっとまとめてですけれども、次の資料を御覧ください。

 東京都は立派に、屋根上ソーラー、来年の四月からスタートです。このグラフは何を意味しているか。東京都はキロワットアワーで十万円を支援しているから、四十万円の支援、屋根の上に四キロワット。だから、四十万円、初期投資が下がるのは結構なんですが、これは一番上のグラフですね、初期投資を全く支援しなくてももうペイするのが屋根上ソーラーなんですよ。だから、これから未知の分野の研究開発とかとは訳が違う。もうこれは実装をどんどんどんどん広めなきゃいけない。

 ところが、経産省は余りこういうことには力を入れてくれていないような気がするんです。二〇三〇年までが勝負だといって、あと六年しかないのに大丈夫かなと。齋藤大臣、答弁を探さなくても、頭の中に全部入っていると思いますよ。いや、本当の話。だから、これは是非、ソーラーシェアも屋根上ソーラーも、悪貨が良貨を駆逐する前に良貨が悪貨を駆逐できるように、齋藤さんのリーダーシップを期待したいんですよ、これはもう。本当にラストチャンスですよ。

 今日は、残念ながら、後で、研究開発とか大学の問題、これは深刻だと思います。どう思います、皆さん。今から四年か五年前に、ネイチャー誌が警鐘を鳴らして、いずれも先進国で最低レベルですよ、日本の科学技術、研究開発力。(本を示す)こういうのが出たのが五年前。もうそれからずうっと言われていて、更に愕然とするようなデータがついこの間、資料九ですね、御覧をいただきたいと思います。

 これは、与野党を超えて、みんなで考えなきゃいけない。経産省、文科省に任せていいんですか、ここを。一番上流の部分ですよ、これは。産業力に直結するのが大学の研究開発力。落ちているのは日本だけじゃありませんが、数が激減しているのは日本だけです。二割も論文数を激減させているのは日本だけですよ。そして、五年前にも同じようなニュース記事を見ました。山極先生という京都大学の学長が財務省と論争していますよ。当時と状況は変わっていないどころか、更に悪化をしている。つまり、この五年間でもどんどん悪くなっているんです。まずいですよね。

 齋藤さん、踏み込んでくださいよ。もう領空侵犯してくれて結構ですから。ちょっと言葉を今訂正します、そういう言葉はいけないと思います。是非、文科省がメインでやっている大学のことも、経産省は川下側の責任を担っているんだから、これはほっておけないですね。

 ということを申し上げて、御答弁は、ソーラー、特に屋根上ソーラー、東京都が引っ張っているもの、それから農業との関係のソーラーシェアリング、これは経産省は全然本気に見えませんので、是非、齋藤大臣の中で風景を変えていただきたいと思います。最後にお願いします。

齋藤(健)国務大臣 私自身は、先ほど申し上げましたように、三〇年目標、三六―三八%、これを実現するということは、経済産業省が負っている最も重要なミッションの一つだと思っています。その実現のために必要なものは何でもやるということが我々の果たすべき役割なんだろうと思っています。その中で、もちろん営農型もあれば、屋根置きのパネルも一つの重要なファクターだと思っています。

 ただ、農林の経験をした観点からいきますと、なかなか現実には、現場で進めようと思っても難しい話があるのも一方で多々経験をしてきておりますので、ハードルが高いというところは御理解をいただきながら、全力で取り組んでいきたいと思っています。

田嶋委員 ありがとうございます。

 いいプラクティスを広げようとしている人たちも大勢います。この間、全国の第一回の大会が千葉商科大学で開催されました。私も行ってきました。やはり本当に、これはほっておくとどんどんどんどんイメージが悪くなって農業の敵みたいになっちゃうといけないから、本当にいいソーラーシェアリングを是非広げていただきたい。井上部長も是非お願いしますね。

 以上で終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、大島敦さん。

大島委員 よろしくお願いします。

 JICの前に、やはり価格転嫁の状況について伺いたいと思います。

 先日、電機の労働組合の地方の方とお話ししたときに、価格転嫁の問題はどうなっているんですかと聞いたところ、これまでここで御指摘したとおり、一次下請のところまでは価格転嫁は進んでいるんですけれども、二次、三次になるともう、やはり経営陣が購買担当に対して価格転嫁にしっかり応じろよとは、浸透していない感じがします。

 私の選挙区の中でなかなかいい特殊メッキをしている会社があって、そこの会社はこの間、埼玉県のDX大賞を受賞したので、訪問し、取材をさせていただいて、価格転嫁できていますかと聞いたら、個社名は言いませんけれども、言った方がいいかな、三菱さんとか日立さんが直接取引しているので、応じてくれていると言っていました。ですから、大きな会社の購買部門はしっかり応じているというのは確認をさせていただきました。丁寧に応じていただいているというお話を聞きました、ダイレクトな取引は。

 ただ、二次、三次になってくるとなかなか応じていただけない状況があるので、その認識についてまずお答えいただければと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 中小企業庁では、価格交渉促進月間に基づく企業名の公表や発注者の経営トップに対する指導助言等を通じ、取引先が多く波及効果の高い大企業から取引方針の改善を促してきておりますが、委員御指摘がありましたように、サプライチェーンの深い階層にある事業者から価格転嫁しづらいとの御指摘があることも認識してございます。

 そこで、中小企業の賃上げ交渉が本格化している三月下旬以降、発注側である大企業の業界団体、エレクトロニクス、自動車、産業機械のそれぞれの業界団体のトップの皆さんに対しまして、発注者の立場として、まず直接の取引先一社一社と丁寧に価格交渉、価格転嫁に応じていただくこと、これに加えて、直接の取引先だけではなく、サプライチェーンの先にいる企業の取引まで考慮して取引価格を決定するよう、齋藤大臣、岩田副大臣から直接要請し、長くしみついたコストカットの意識や商慣行の払拭を求めているところでございます。

 また、受注側の中小企業の皆さんからも積極的に交渉を申し出ていただくことが重要と考えておりまして、全国の下請かけこみ寺や、よろず支援拠点に設置した価格転嫁サポート窓口も御活用いただきたいということで、広報を行っております。

 価格交渉、価格転嫁の実態を踏まえながら、二次請、三次請といったサプライチェーンの先まで価格転嫁を行える環境整備に取り組んでまいる所存でございます。

大島委員 前に、アクティビスト、物言う株主について取り上げたことがありまして、日本国政府よりも物言う株主の方が上場企業に対しての影響力が強い国なのかなと今思いました。年金のGPIF、あるいは共済組合、日銀含めて、上場企業の一七%を保有しているのが我が国なわけです。でも、アクティビストの方が圧倒的に影響力が強い感じがする。

 日銀が持っている株、日本のETF、株式総数は、GPIFよりも若干多くて、簿価で三十七兆円かな。まあ、株は上がったり下がったりしますから、政府が第三者機関をつくって一回引き取った方がいいのかなと思っています。

 そこで衝動に駆られるのは、与党も野党も、皆さん、価格転嫁しろ、賃金を上げろと言っているんだから、一回そういうことを叫んでみてもいいのかなという衝動に駆られたりもするんですよ、なかなか控えながら言わないといけないんですけれども。でも、多分皆さん、そういうようなことは考えていらっしゃると思うんですよね。だって、アクティビストの方がよっぽど上場企業に対して影響力があるんだもの、日本国よりも。

 ですから、そこは、この間は物流の観点からお話をさせていただいて、しっかり下請構造について担当を決めて、最後の最後まで分かるようにした方がいいのではないのかなというお話もさせていただきました。ですから、さっきの衝動に駆られるというのは、やるという話じゃなくて、そういう考えを持たれているかもしれないなというぐらいにとどめさせていただいて、それで、是非その点はお願いしたいんです。

 これからJICについてお話をさせていただくんですけれども、去年のちょうど今頃、物流の話をして、量子コンピューターのアニーリングタイプが一番向いているのかなというお話をさせていただいた。これは組合せ最適化問題に特化したコンピューターで、どういうような荷を積むのとか、どういうルートを通った方がいいかというのは最適なコンピューターでしてと。この話をしたところ、日本でトライしている会社があった。それで、この間取材に行ってきた。いや、なかなかだなと思いましたね。

 これから投資の話も引き続きしていくんですけれども、例えば、この量子コンピューターのアニーリングタイプは、日本の西森秀稔先生が一九九〇年代に論文を書いて構想を発表して、面識のないカナダの教授が、これはいけるのではないかなと思って、一九九九年にD―Waveをつくって、二〇一一年に一応完成させたというストーリーがある。当時のベンチャーキャピタリストから集めた金額は百五十億円なんですよ。大した金額じゃない、大手の研究所から見れば。こういうことをトライしていないということが、私が二〇一七年にレポートを書いたときには問題であると指摘をさせていただいているんです。

 てっきり、このソフトウェアで動かしている会社は、量子コンピューターのアニーリングタイプを模擬したタイプのコンピューターもあるものですから、それを使っているのかなと思いました。ただ、取材してみると、毎日D―Waveのカナダにあるスーパーコンピューターを使っている。いや、面白かったですよ。まだ経路まではやっていませんけれども、ダブル連結のトラックにどうやって物を運ぶかを、毎日量子コンピューターで、ここはこういう荷積みをしてくれというのを明確にやっているんです。

 どうしてこういうことにトライしたのかと聞いたところ、個社名を挙げるのは控えますけれども、二〇一六年にある大手自動車会社が、自動車産業ではなくてモビリティー産業であるという定義づけをして、二〇一七年に会社をつくった。そこの関連のトラック製造メーカーと一緒に一七年につくって、そのときに、要は物流について、ですから二〇二四年問題よりもずっと前に、物流についての課題意識を持って、これを解こうとしたというんですよ。それで、この会社は量子コンピューターが一番最適であるということに目をつけてやり始める。

 将来的にはトラックは売れなくなるんです。要は、積載率が今四〇%ですから、これが七割、八割に上がってきて最適な物流を組めるようになるとトラックの需要は落ちるんです。それでも果敢にトライしているというところが日本の企業の中でもあるのかなと思って、私は次はソフトウェアの開発会社に行こうかなと思っていまして。アニーリング型の量子コンピューターのソフトウェアのプログラムは難しいと聞いているので、どういう人たちがやって、どうしているのかというのは見たいところなんですよ。

 それで、私、気づいたのは、こういう質問をした、世界でこういうことをやっている人はいるんですかと聞いたら、いないと言う。こういうソフトウェアをしっかりと開発して公開していくとデファクトになっていくという予感がした。こういうところというのは面白くありませんか。

 やはり、私は、去年も申し上げましたとおり、できるだけ、物流という我が国経済の血管に当たるところについては海外には依存したくないと思っているので、こういうところを是非温かく見守りながら育てていくことが必要ではないのかなと思いました。

 それで、JIC、株式会社産業革新投資機構について質問をさせていただきます。

 今から三十年前に鉄鋼会社のシステム部でベンチャー投資の案件を見ていた時期がありまして、その時期には、二十億円の会社に投資したら、一九九四年には二千億円まで大きくなっている会社がありました。シリコングラフィックス、「ターミネーター」とかあるいは「ジュラシック・パーク」のコンピューターCGのワークステーションを作っている会社で、二十億円のときに、鉄鋼会社からうまく金を引き出せたら、みんなでカリフォルニアでバスに乗ってピクニックに行ったという話を聞いたことがあって、それで二千億円まで。

 一回、株主総会にも出たことがある。なかなかおしゃれな会社で、今のグーグルがあるマウンテンビューにあって、大学のキャンパスみたいなところで、そこで、カフェテラスでマックラーケンという二千億円の社長がプレゼンする。私のこちら側に小学生二人がネクタイを締めていて、一時間のプレゼンが終わった後に、何か質問があるのかと応えたら、この小学生が手を挙げまして、おたくの会社のインディゴというワークステーションのマーケティング戦略を教えてくださいと頼むと、二千億円の社長もしっかり答えていたときに、日本の資本主義は負けたと実感をしました。公文式では勝てない領域があるのです。ですから、先ほど田嶋先生がおっしゃっていたとおり、小学生からの初等教育から含めて全部変えていかないと難しいと思う。

 私が当選してから昨年までの間に、就業人口におけるサラリーマンの割合は、雇われている人の割合は七%増えている国なんです。八三%から九〇%に増えている。お父さんがサラリーマン、あるいはおじいさんもサラリーマンの人たちが多い社会になっていて、私も、サラリーマンでいたときには、使える給与の範囲内でしか考えなかった。ただ、私、親がサラリーマンではなかったので、自分でビジネスをしたいと考えていたものですから、その後、会社を辞めることになるのですけれども。

 ですから、多分、どうやってベンチャーをつくってユニコーンにするという夢を追うことは、結構我が社会においては大変なことだと思っているのですけれども、今回はJICの法案なので、何点か質問をさせてください。

 まずは、JICとその子会社があって、今のパフォーマンス、出資の回収状況について教えてください。

菊川政府参考人 お答えいたします。

 ベンチャーキャピタルへの出資を行う官民ファンドであるJICでございますけれども、本格的に投資活動を二〇二〇年の十二月から二〇二三年十二月まで三年間やっておりますけれども、三十五のベンチャーキャピタルに対して五千億円の出資を約束をするということになってございます。このうち、四百七十五件、そして約千八百億円が投資先ファンドを通じて国内のスタートアップに出資されまして、その出資が呼び水となって計一・一兆円の民間投資を生み出している、こういったところでございます。

大島委員 このJIC、ちょっと特殊な位置づけだと思うのです。民間からも百億円程度の資金が入っていて、総トータル四千億円ぐらいだと伺ったんですけれども、特殊な立ち位置の中での特殊な投資の仕方があるかなとは思っています。

 シリコングラフィックスはうまくいったんですけれども、もう一つ、スーパーコンピューターを作っている会社があって、そこにも投資していて、四半期に一回会社に来るのです、お金を出してくれといって。それで、出していって、そのときに、もう三十年前ですけれども、現金燃焼率というのを思い浮かべました。現金が燃焼していきます、資金が。それで、うまく開発スピードが追いついてくるとブレークする。三十年前にも、これはルーレットと同じだと思いました。二倍から三十六倍まであって、年間通して浮いていればいい、五年間通して浮いていればいいというのが私が実感したベンチャー投資だった。

 ただ、そこには技術を見る目というのが結構必要です。たまたま、私、二十代の後半のデュッセルドルフの事務所が技術系の事務所で、技術屋の中で所長と大島以外はみんな技術系だったので、一緒に出張していたものですから妙に詳しくなっていたりもして。

 ですから、そういう人たちが多分まだ育っていないかもしれない。甘利大臣の時代から、目利き人材、目利き人材というけれども、なかなか目利き人材がいないところもあって。

 それで、政府参考人に突然伺うのですけれども、目利き人材といった場合に、私、経験から、自分の金をかけないと本気にならないなと思っている。私も、情報システム部にいるときに部長に、大島もこれだけ資金を出すから会社も出してと言ったら断られました。やはり、自分で本気にならないのです。自分のお金を一千万なり二千万なり三千万なり投資して、それに応じて会社の方から、一億円なり、じゃ、ちょっとこれは五億円なり十億円なりと。そうすると真剣にやるというのが多分人間なのかなと思っていて、このJICの役員の皆さんの報酬体系について教えていただければと思います。

菊川政府参考人 突然の御質問でございますので。

 我々は、残念ながら投資というのはなかなかできないんですけれども、ファンド運用者が自ら出資をしてリスクを取っていくということについては非常に大事な点だろうというふうに思っております。

 そういう観点から、JICそのものもそうですけれども、JICの役員の方々というのは、JICの子会社が運用するファンドに対して、一定の自金をきちっと拠出する、運用者自らも出資をするということを求めているところでございまして、その報酬に関しましては、したがって、自分のリスクに応じて上がってくる部分も連動しているところはあるというふうに認識をしております。

大島委員 私は、本当のファンドであれば、品がないという言い方だともっと品がなくなってしまうから、先ほどのアクティビストのようなところはやはり、要は、本当に収益を狙ってのファンドなので、いいか悪いかというのは言及は避けますけれども、もっと長期的なビジョンを持ったファンドがJICなのかなと思っていて。

 今回、二〇五〇年までに期間を広げるのは、そういう意味合いかということでよろしいですか。あっちこっち飛んで済みません。

菊川政府参考人 ありがとうございます。

 まさに長期の考え方は非常に大事だと思っておりますし、二〇五〇年というところにつきましては、先ほど来からのここでの御議論でもありますけれども、ディープテック分野でありますとか例えばGXの分野、ここは非常に長期の投資等々が必要になってくるだろうと。

 これは二〇五〇年のカーボンニュートラル目標というのが国際的に認知されていることからも明らかでございまして、そういったことを踏まえながら、今回の二〇五〇年までの延期、運用期限の設置ということをお願いしたいということでございます。

大島委員 これまでだと、役所の方に伺うと、五年ぐらいでエグジット、新規上場であるIPOとか他社への譲渡であるMアンドA、解散や事業終了により支援を撤回していくということ、エグジットということを伺ったんですけれども、二〇五〇年というと五年に縛られることはないかなとは思うんです。

 やはり、去年ですか、防衛産業の強化法案という法律が私どもも賛成させていただいて通りまして、本当に、防衛装備品ということも分野としてありますけれども、もっと広い意味での安全保障の領域があるかと思うんですよ、広い意味での安全保障が。様々な技術があって、例えば光学望遠鏡のガラスの部分は熱膨張率がほぼゼロでして、日本の会社しか作れない。

 こういうことということもやはり安全保障上物すごく必要でして、そういうことを持っていること自身も必要なので、是非政府にお願いしたいのは、そういう分野も含めて、二〇五〇年、この間私がここで述べたとおり、人口も生産年齢人口も二千万人減る過程ですから、その中で守っていく中小あるいは中堅企業、上場企業もあるかもしれない、そういう観点でのJICの役割も必要になってくるのかなと思うんですけれども、その点についてもお答えいただければと思います。

菊川政府参考人 非常に重要な御指摘をいただいたと思っております。

 JIC、五〇年ということではございますが、他方で、やはり、運用して、ある一定の期間でちゃんと収益を上げていく、こういった点も非常に大事ですので、そこのバランスを図りながらしっかり成果を上げていくということかなと思います。

 JICは、産業競争力強化法に基づく投資基準にのっとりまして、新産業の創出や産業競争力の強化というところに取り組む事業者とか、そういった事業者に投資する民間ファンド等に、いわゆる民業補完、そういった観点を含めて対応していくということでございます。

 今委員の方から御指摘があった、いわゆる先端の技術でありますとか、それが、いろいろな分野、今御指摘があったような防衛産業もそうかもしれません、こういったことも含めて、新たな技術を含めた新産業創出、それから産業競争力の強化、こういったところに資するということであれば、JICの投資対象になり得るというふうに認識しております。もちろん、官民ファンドたるJICについては、投資評価の基準に基づいて、事業性とか経済性とか収益性、ここの観点からも検討されることになるので、個々の判断についてはそれぞれあると思いますけれども、委員の御指摘についてはしっかりと受け止めたいと思います。

大島委員 是非、大臣もその点をお含みいただければなと思います。やはり、官民でやっているということの公的なセクターがやる役目は違うと思いますので、その点を是非お考えいただければと思います。

 先ほど田嶋委員から研究開発力についてのお話がございました。

 私、日本の全ての研究機関に訪問しておりまして、昨年の原子力の審議についても、六ケ所村、午前中は核融合炉、午後は核燃サイクル、大洗に行けば高速増殖炉あるいは高温ガス炉、東海の研究所では、中性子を当てて八千年、十万年を三百年まで放射能を落とす技術開発とか、全部見て、ただ一つ残っているのが文科省の防災科学研究所でして、相当疲弊していると私は思っています。

 ここ三十年間の日本の財政の在り方、予算組みがおかしいと思っている。これは経産省の責任ではなくて政治の責任です。やはり三十年間の予算の在り方がおかしかったので、日本が全体的に衰えてしまったのかなと思っておりまして、経産省にお願いしたいのは、長期的な動向は他国と比較してどのような状況なのか、日本企業が最後まで技術開発をやり抜くには政府が更なる研究開発費を支援すべきであると考えておりまして、その点について御答弁いただければと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 研究開発投資につきまして、米国や中国など、他国が研究開発費を大幅に増大させている中、我が国におきましては、全体の研究開発投資は横ばい、ここ十五年はもうほぼ横ばいで推移をしておりまして、日本としての将来の飯の種を生み出す研究開発投資の現状に私としても危機意識を持っているところでございます。

 世界各国が産業政策を活発化させている中で、日本国内では、これまで、民間主導という考え方の下、政府としては市場の環境整備を中心とした政策を進めてきた結果、国として研究開発から社会実装に至るまで徹頭徹尾取り組むということがやや弱かったのではないかというふうに認識をしております。

 こうした内外の状況に対応すべく、経済産業省では、二〇二一年から、GX、DXといった社会課題解決分野を成長の源泉と捉えまして、政府として一歩前に出て産業政策を強化する経済産業政策の新機軸に取り組んでいるところでございます。

 御指摘の研究開発につきましても、GXや半導体といった重点分野で総額約五兆円の基金を造成いたしまして大規模かつ長期の研究開発支援を行うとともに、我が国の研究開発拠点としての立地競争力強化のため、国内で開発した知財から生じる所得への減税措置であるイノベーション拠点税制を創設し、民間の研究開発を支援しているところでございます。

 さらに、イノベーションの担い手であるスタートアップの取組を後押しするため、実用化に向けた研究開発から量産化までの実証の支援など、ディープテックスタートアップへの支援を強化するほか、今般まさに提出させていただいております産業競争力強化法の改正案におきましても、NEDO法を改正して、ディープテックスタートアップの商用化のための設備投資といった事業開発活動への補助業務を追加をするという内容を盛り込んでございます。

 こうした措置を活用しながら、研究開発、もちろんこれは大事ですけれども、研究開発から社会実装に至るまで、政策を総動員いたしまして、我が国のイノベーション創出、そして産業競争力の強化の措置を加速していきたい、このように考えているところでございます。

大島委員 時間がないので、次回に回そうかなと思ったのですけれども、質問をします。

 先ほど田嶋委員からもありまして、一九八九年に出た本で、「メイド・イン・アメリカ」という本があって、よくできている本です、MITが、どうして米国の産業がこうなってしまったのかというのを世界中に二百人以上の研究者を派遣してまとめたレポートです。

 多分、それが参考になって、その後の産業政策は大きく変わったと思っていて、本当に、若い経産省の職員の皆さんを、大体会社は十年たつと辞めたくなるものですから、その時点でプロジェクトをつくっていただいて、一、二年、しっかり取材して、レポートを見たいのです。そこにやはり若手の国会議員の皆さんを巻き込んでいただいて、現状認識を定性的じゃなくて具体的事実に基づいて知るということを是非大臣にお願いしたいので、よろしくお願いします。

齋藤(健)国務大臣 全く同様の問題意識でありますし、私も「メイド・イン・アメリカ」は読んでありますし、今でも本棚に入っている本なんですけれども、田嶋委員の質問にもお答えさせていただきましたけれども、あのときのアメリカの熱量というものというのは本当にすさまじいものがありました。

 私は、やはり経産省の若い人には期待をしておりますので、海外にできるだけ出して、それも、マスターを取ってくるとかそういうことだけではなくて、政策のシンクタンクですとか、例えばニューヨークの投資ファンドですとか、あるいはメーカーの人たちですとか、そういう方々と幅広く議論をして研さんを積んでそれを国内の政策立案に生かしていく、そういうことはできるだけやっていきたいなと思っています。

大島委員 終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、山岡達丸さん。

山岡委員 山岡達丸です。

 今回も質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 産業競争力強化法案ということで、これまでも議論はありますが、私は、今回の法改正の中にいわゆる鉄鋼分野の税制優遇というのが含まれておりますので、そのことについて質疑をさせていただきたいと思います。

 私自身も、政治活動のエリアに北海道室蘭市という場所がございまして、ここは鉄の町とも呼ばれて、歴史的にも鉄鋼業が盛んで、鉄鋼に関する政策はこれまでも積極的に関わってきたところでありますけれども、今回の法案では、グリーンスチール、いわゆる生産の過程で脱炭素といいますかカーボンニュートラルのプロセスを踏んで鉄鋼製品を作っていくということで、戦略分野国内生産促進税制の対象に位置づけて、税制優遇をすることによって国内の設備投資を促していこうというものが含まれています。

 具体的には、グリーンスチールの生産には、高炉から電炉に切り替えるということになったときに、その後の生産や販売量に一トン当たり二万円の税額控除を十年にわたって行う。八年目以降はこの税額控除の金額も下がってくるということでありますけれども、生産設備投資の初期投資への支援はまた別に考えるとして、長期にわたって生産、販売にも税額控除を約束することで、国内への、もちろん国内投資が要件でありますけれども、設備投資を促すというような、そうした狙いが含まれる税制ということで、こういう長期にわたる税制はこれまで日本の歴史の中でも初めてというような状況でありますので、大分踏み込んでいるということは思うところであります。

 このグリーンスチール以外でも、グリーンケミカル、化学に関する分野であったりとか、あるいは脱炭素燃料の航空燃料のSAFであったりとか半導体であったりとか、あるいは電気自動車などにも同じように、国内投資をした場合、長期にわたる税額控除を約束するという仕組みが今回の法案に含まれているというふうに私たちも説明を受けているところでありますけれども、今回のこの制度は画期的であるというふうには思うんですが、他方で、あくまでも税額控除であるということなんだろうと思っております。

 まず政府に確認させていただきたいんですけれども、今回の税額控除という仕組みは、生産、販売後に利益を出さなければ控除をする枠がないといいますか、控除のしようがないという仕組みで、つまり、利益なしには恩恵は受けられないという制度ということでよいか、この辺りをちょっと答弁していただけますか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 本税制は、対象企業による物資の販売量と物資ごとの税額控除の単価を基礎として求めた金額を、当該企業の所得に対する法人税額から控除する制度でございます。したがって、委員御指摘のとおり、実際に本税制によって企業が納めるべき法人税額が控除されるためには、当該企業に所得、すなわち利益が生じていることが必要となります。

 なお、本税制については、例えば対象物資の価格変動などの外部要因がある場合でも、事業全体の予見可能性を高めるという観点から、最大四年間の繰越しができる制度も盛り込んでございます。

山岡委員 今御説明ありました四年間の繰越しというのも、これもかなり大きく踏み込んだ措置ではあるということは私も聞いておるんですけれども、他方で、やはり利益を出さなければならないということが前提であるというお話であります。

 鉄鋼業界の方とも私もいろいろ意見交換しますけれども、グリーンスチールという言葉ではありますけれども、最終製品は鉄でありますので、機能に差は基本的には存在しないと。脱炭素プロセスとカーボンニュートラル生産ということで、プロセスにコストがかかるわけですね。最終製品には機能に差がない鉄だとしたら、一般的に言えば、競争上は大変不利なわけであります、通常の鉄に比べても。

 今回の制度、私は今確認しましたけれども、その中であっても、利益を出さなければ恩恵はないと。これは国内の設備投資を促す政策なんだと思いますけれども、利益を出せるという見通し、コストがかかっても利益を出せる見通しが立たなければ、この税額控除の制度を設けても設備投資は進まないということになるんだということに思うんです。

 例えば、同じ仕組みで、今回の対象になっております脱炭素の航空燃料で、いわゆるSAFと言われるものがありまして、この航空機燃料については、もう既に国際的なコンセンサスの中で航空機の一〇%に導入していこうと。二〇三〇年にも日本では義務になりますから、しかも、この混入割合は更に義務が高まっていくだろうというふうに見通しがありますから、これは生産プロセスでコストがかかるわけでありますけれども、制度として導入義務があれば、それは価値は当然ありますし、価格に生産コストを乗せても当然競争力が生まれてくるわけでありますけれども、グリーンスチールはそのような分かりやすい見通しが今ないわけであります。

 大臣に伺うわけでありますけれども、十年にわたる税額控除というのは、これはこれで大変重要な一つの措置だと思いますけれども、あわせて、別の方法をもってグリーンスチールの市場価値を上げていく、価格転嫁しても競争力が保てるというようなことについての政策を別に行っていくということについて、大臣から強いコミットメント、強い決意をお示しいただかないことには、やはり、これから国内に設備投資をしていこうという皆さんが、税額控除という踏み込んだ措置があっても、それでも判断が難しいんじゃないかということを感じるわけでありますけれども、大臣、考えを明確にお答えいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 高炉から革新的な電炉への転換など、鉄鋼業の脱炭素化に向けたプロセスの転換は大規模な投資になります。生産コストの大幅な上昇は避けられません。

 一方で、御指摘のように、現状におきましては、コストアップがあっても、例えばグリーンスチールとして製品単価当たりの排出がどれだけ削減されるのかを示す価値や指標ともいうべき、いわばGX価値というものが国の内外の市場で認められるか今の時点で見通しを持つことは難しい、そういう課題があると思います。

 他方、こうした市場黎明期において投資促進と需要創出を同時に実現をしていくためには、政府として、GX経済移行債を活用した大胆な先行投資支援を講じることに加えて、成長志向型カーボンプライシングの導入など、規制、制度等を通じたGX市場創出に向けた取組についても、御指摘のように、車の両輪として一体的に進めることで、民間企業による大規模な投資を促進していきたいと思っています。

 その際、市場創出の前提となるGX価値の見える化あるいは評価基準の国際標準化、こういったことなど、GX価値を有する製品に対する需要の創出、拡大が進むような市場環境の整備に取り組んでいくということが私は重要だと思っていますし、これは一国だけではなかなか進められないと思っています。

 先週の米国でのポデスタ大統領上級補佐官との閣僚級対話におきましても、日米間でこうした政策連携について協力していく、こういった重要性も共有しています。

 GX価値が国の内外の市場において適切に認められるような、これはまだ少し時間がありますので、必要な検討を進めていきたいと思っています。

山岡委員 大臣にもう一言伺いたいんですけれども、非常に難しい課題ではあると思うんですけれども、これはやれるんだ、そうするんだという、ちょっとパッションの部分でありますけれども、その決意をやはり大臣に示していただくことが重要だと思っておりますが、一言いただけませんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 当然その決意で取り組んでいきたいと思っています。

山岡委員 ありがとうございます。

 非常に判断の難しい投資なんですけれども、世界がきっとそう動くだろうということで、長期にわたる巨額な設備投資ということになりますので、税額控除もその一つなんだとは思っておりますが、是非このコミットメントはしっかりやっていただきたいということも、私からも強く申し上げさせていただきたいと思います。

 あわせて、これは政府に確認したいと思いますけれども、グリーンスチールは今、高炉から電炉というのが基本というふうに置いているようでありますけれども、その手段は様々あると思っております。

 先日、事業法が衆議院では通過しましたが、CCSを組み合わせる形でもこれはグリーンスチールになるんだということは、当然、理屈の上ではそうなるんだと思っておりますけれども、水素還元製鉄という技術のハードルは非常に高くて、それでも熱を必要とするということで、これもCCSを組み合わせるということが必要ですから、鉄鋼の中ではCCSというのは非常に重要な位置づけなわけであります。

 グリーンスチールの生産、販売に合わせての税額控除は、CCSを組み合わせた計画についても同様の優遇を行っていくということが妥当だと思うんですが、いかがでしょうか。

浦田政府参考人 お答えいたします。

 CCSは、産業や発電の脱炭素化、低炭素水素の製造などの分野において導入が想定され、鉄鋼業においても将来の活用が期待される脱炭素化技術の一つとして検討が進められているものと承知をしてございます。

 他方、現時点におきましては、政府の予算も活用しつつ、ビジネスモデルや支援制度の在り方について検討しているという段階でございまして、鉄鋼各社において具体的なCCS事業の投資決定の時期を示す段階にはないものというふうに認識をしております。

 今般の税制におきましては、令和八年度末までに具体的な投資案件として申請され、主務大臣の認定を受ける必要があるわけでございますが、こうした時間軸の中で、CCSによって排出量が削減された鋼材を対象とするということは想定をしていないということでございます。

山岡委員 今お話にもありましたけれども、現段階で投資決定を判断しているような、そういう事業者の段階ではないということと、令和八年であるということでありますけれども、令和八年までには事業が進まなかったとしても、この政策の延長の上では、グリーンスチールということでいえば、CCSを組み合わせたものも当然グリーンスチールに入ってくるということの理解でよろしいでしょうか。一言お願いいたします。

浦田政府参考人 お答えいたします。

 CCSによって排出量が削減されたグリーンスチールも本税制の対象となるかどうかということにつきましては、我が国としては、戦略分野における新たな国内投資を強力に促進していくという観点から、各分野の特徴などを踏まえまして、予算、税制、規制、制度といった政策を効果的に講じていくという考えでございます。

 将来における本税制の対象追加につきましては、現時点では具体的には想定はしてございませんけれども、今後の技術や世界の動向などを踏まえまして、税制のほか、補助金や規制、制度などを含む効果的な投資促進策を不断に検討していきたいと考えてございます。

山岡委員 今政府から文脈の中でお話がありましたけれども、CCSを組み合わせたグリーンスチールという言い方をされておられますので、これはグリーンスチールという定義の中に入ってくるということでありますから、様々な今後の支援の中にも組み込んでいただくということが妥当なんだろうということを、今のお話からやはり酌み取らせていただきたいと思います。

 その上で、これも大臣にまた改めて伺うわけでありますけれども、先ほど、GXとしての価値が認められる、その政策にも強い決意を持って取り組んでいくというお話をいただきましたけれども、あわせて、やはり生産コストがこれは非常にかかっていくという、そのコストの方の問題も何とか考えていかなきゃいけないということが鉄鋼の課題なんだろうということを思うわけであります。

 今回、十年間という長きにわたる支援措置、しかし、八年目からは七五%、九年目五〇%、十年目二五%ということで、控除も急激に減っていくわけであります。そういう意味では完全な支援の形は七年目までということで、四年間の繰越しもあるよということは先ほど御答弁でもありましたけれども、しかし、一つの高炉は十五年から二十年ぐらいの活用をするという鉄鋼の世界でいえば、十年というのが短いとも言える期間なんだろうと思うわけであります。

 なので、先ほど、まだ見通しはなかなか具体的には立っていなくてもやるんだというお話をいただいた市場価値の向上についても、この短い期間の中で成立させていくという見通しがあってこそ、やはり、なら設備投資していこうという話になるということになるんだと思いますし、同時に、生産コストを低く抑えるという意味でいえば、今、私は、CCSを組み合わせたグリーンスチールというのが今後出てきて、これもまた検討には入るんだと思いますが、現状は電炉への切替えを前提としているということになりますと、消費電力というのは大きく増えるわけであります。

 これまで高炉であれば余剰で生み出される熱を別の目的に利用していた、それも生み出されなくなるということでいえば、その部分を、じゃ、電力で補うんだとすれば、それは非常に莫大な電力量が必要になってくるということにもなってくるわけであります。

 安定的な電力供給というのが大前提でありますけれども、安くそしてグリーンであるということまで求められるということが、その環境が整えられるのかというのが、しかも、時間は十年という、もちろん、今後も更にこの税額控除の措置を継続していくんだとか、また、三年後の見直しの中に更に増やしていく、追加していく、様々な議論はあると思いますけれども、少なくとも今はこの与えられた情報の中で設備投資をしていくということになりますと、やはり価格転嫁とコストの低減というこの二つの、コストの低減の部分、悠長な対応もしていられないんだろうということを強く感じるわけであります。

 大臣、ここの部分の見解をお示しいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、鉄鋼業の脱炭素化に当たりましては、例えば高炉から電炉に転換をするということになりますと、まず巨額の設備投資が必要である、それから、御指摘のように、再生可能エネルギーを中心とした大量の電力が必要となるんだろう、それから、鉄スクラップや還元鉄といった鉄鋼原料の確保もこれはやらなくちゃいけないということで、生産コストは大きく上昇するものと想定をされます。

 今般の税制は、こうした生産段階でのコストの高さを乗り越えて投資を促すために講じているものでありますけれども、将来の出口戦略を見据えて、併せて、生産コストそのものを低減させていくという努力、これもやっていかなくちゃいけないと思っています。

 生産コストを低減させていくためには、まずは省エネの徹底がありますし、余剰太陽光発電を活用するデマンドレスポンスへの対応によって電力コストの低廉化を図るなど、事業者における効率化の取組を促していく、これはもちろんのことでありますが、官民が連携をして、GXの取組を加速させて、再エネ、原子力、さらには経済性のある形での水素の活用など、安定的で安価な脱炭素エネルギー供給を目指したり、あるいは、スクラップの活用拡大に向けた技術開発や、還元鉄の確保に向けた資源国との関係強化など、低廉な鉄鋼原料の安定調達に向けた取組、こういったものも進めるなど、様々やることはあるなと思っていまして、生産コストの低減について、脱炭素化と経済成長、共に実現できるようにしっかり取り組んでいきたいと思います。

山岡委員 大臣、余剰太陽光も使うんだ、本当にあらゆる手段を用いるんだというお話がありました。

 他方で、今、生産コストの高さを乗り越えるための税額控除だというんですけれども、利益が出なければ税額控除は受けられない。大臣が以前いらっしゃった農林水産省の政策では、生産費と販売額の差額をそのまま支援するという、農業政策はかなりドラスチックな政策なわけでありますけれども、こちらは経済政策ですから、それはそれでこういう形なんだと思いますけれども。

 なので、同時に、価値の向上とコストの低下という措置は必ず政策で必要だということは私の立場から申し上げさせていただきたいと思いますし、スクラップの話もまた次回、機会があるときにちょっと取り上げさせていただきたいと思うんですけれども、本当に打つべき手段はたくさんあるんだろうということを感じさせていただいております。

 この中で、国際情勢の話を少し伺いたいんですけれども、先日も訪米されて、その御説明の中でも、対中国とのお話もあったということであります。

 中国は、こちらも鉄鋼の大きな生産国でありますけれども、現在、中国の景気も余り芳しくないということで、鉄鋼の国内需要も減少して生産過剰になって、結果として世界中に安価に輸出されるということにもつながっていくんじゃないかということが今言われています。

 日本に直接入らなくても他国の需要を取ってしまえば結果的に全体の価格低下につながるわけでありまして、生産プロセスにコストのかかるグリーンスチールですから、なお競争力にも課題が出てきて、中国においてダンピングにもつながる過剰生産状態ということが、これは非常に問題、課題だと思うんですけれども、これは政府に確認しますが、この輸出の現状をどう考えてどう対策していくのか、御答弁いただければと思います。

浦田政府参考人 お答えいたします。

 中国における鉄鋼の生産能力でございますが、二〇一四年をピークといたしまして、その後緩やかに減少してきているというところでございます。他方、昨年以降、中国国内の景気低迷に伴いまして鋼材需要が落ち込む中、海外への輸出を増やす動きも見られてございます。

 ダンピング輸出につながる過剰な生産能力は、市場歪曲的な補助金などの支援措置によって生じている可能性もございます。そうした認識の下、我が国といたしましては、鉄鋼グローバルフォーラムやWTOといいました多国間の枠組み、あるいは二国間での対話を通じまして、各国の生産能力や政府支援措置などの情報の透明化を促してきているところでございます。

 引き続き、関係国とも連携をし、ダンピング輸出につながる過剰生産能力問題への対応を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

山岡委員 大臣に伺います。

 経済安全保障の議論があって、中国製品の特にデジタル最先端製品については様々措置が国内でも立法されたりとかしているわけでありますけれども、経済安全保障の文脈で言えるかどうか分かりませんが、経済問題としては、鉄鋼分野でも、中国への対応というのは、まさに日米での同盟国や同志国との連携というのも非常に重要になるんじゃないかということを感じるわけであります。これまでの御答弁でも、訪米されて、経済分野の先端分野での連携という話もありましたけれども、鉄鋼分野でもやはりきちんとした連携は必要なんだということを強く申し上げさせていただきます。

 そこで、今テーマになっていますのが、日本製鉄によるアメリカの鉄鋼大手のUSスチールの買収が大きな注目を集めていますけれども、業界横断型の労働組合は、これは反対の立場ではありますが、経営側は今回の買収はUSスチールにとって最善ということで、今月十二日の臨時株主総会では買収提案が承認されて、賛成率は九八%を超えたと。

 ここでさらに、USスチールと日本製鉄の共同声明も昨日発表されたということで、買収は米国鉄鋼業及び米国全体に多大な利益をもたらす、そして、USスチールが何世代にもわたり米国の象徴的な企業であり続けることを確かなものにするということをUSスチールと日本製鉄が共同声明で出すということで、大変意義深いことであると思います。

 グリーンスチールへの対応技術とか高級鋼材などのイノベーションをリードする日本製鉄だからこそ技術力、資本力には申し分ないですし、労働者にとっても雇用維持という観点ということと、地域経済にとってもプラスになるという視点ももちろんありますけれども、この対中国の事情を踏まえたときに、今回の件は日米双方の鉄鋼分野の世界的な競争力を高めていくという意味で非常に意義があるんだということを、私は感じるわけであります。

 これは、しかも、いろいろな協力が言われる中で、鉄鋼分野においての日米の協力の姿でもあると思っておりますし、双方向での投資の促進ということも進めようというさなかの議論でありまして、他方で米国大統領選挙もあって、我々も選挙が絡むといろいろちょっと言葉の表現が変わったりすることもありますけれども、米国内に様々な声があると思いますけれども、やはり日本としては日米協力の形の中で推し進めるべき件だと思っております。

 大臣の意欲と意気込みを確認させていただければと思います。御答弁願います。

齋藤(健)国務大臣 まず、今般、岸田総理とともに訪米をしまして、その際、私自身も経済安全保障やクリーンエネルギー等について率直な議論を行うことができて、そして経済分野における日米協力の方向性を確認することができました。

 私が、先ほど申し上げましたけれども、通商産業省に在籍した際には、まさに通商摩擦の真っただ中にありましたが、今日のように様々な分野において協力を進めることができるということを大変うれしく思っています。引き続き、経済分野での日米協力を深めて、日米同盟を新たな次元に引き上げていく、これを努力をしていきたいと思っています。

 その上で、本件について申し上げますと、先般の訪米時の首脳の記者会見におきまして、岸田総理から、本件は、現在、当事者間で話し合われていると承知をしている、日米両国にとってよい話合いになることを期待している、日本としては、米国政府において法に基づき適正に手続が進められると考えている、日本は米国にとって最大の投資国であり、米国で約百万人を雇用している、日本からの投資は拡大基調であり、今後も両国にとってウィン・ウィンな流れを確実なものにしていきたい、そういうふうにお答えになっておりまして、私としても、この認識に尽きると考えています。

山岡委員 大臣からお話が今ありました。総理の御答弁を引用されていますけれども、水面下で、やはり法にのっとって適正に、無理なものを成立させようということではなくて、やはり法にのっとって適正に進めることが本当に両国にとってもすばらしいことでありますので、本当に様々な手腕に大いに期待をするところでもあります。

 米国は、トランプ政権以降、鉄鋼に二五%の関税をかけて、CHIPS法やIRA法、今回の法律もそれに関連しますけれども、保護主義が過熱していますけれども、今回、やはり同盟国、同志国の枠組みということをもって懸念国に対応していくんだということは極めて重要だと思っていますので、是非また今後、取組を強化していただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございます。

岡本委員長 次に、守島正さん。

守島委員 日本維新の会の守島です。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、今回の法改正において、中小企業者の範囲を超える規模のものについて中堅企業を定義して成長を後押しすることは、エビデンスベースでも合理的な支援策と感じているんですけれども、この機にそもそもの中小企業支援策に対する評価もすべきと思っていて、先日も大臣に対して中小企業の新陳代謝を促していくことが重要という話をさせていただきました。

 というのも、やはり、事業継続が難しい事業者の延命を図るよりも、業界の再編とか他分野での創業を支援する方が、結果として、同じマーケットで補助金を受けて成り立っている事業者が減るので、価格も一定適正なものに近づいてくると思うし、生産性の向上にも資すると思っています。

 なので、過度な延命策よりかは、むしろ、MAとか、会社整理後も第二創業ができるような環境づくりの方が健全でかつ効果的なんじゃないかなというふうに思っていて、実際、世の中、商売がうまくいくかどうかというのは分からないですし、そこは努力ももちろんで、運次第な部分ももちろんあるかもしれませんけれども、政府が全て救えるわけじゃないですし、結果として、マーケットが公平だからこそ市場経済が成り立って、一定、競争原理による付加価値の創出というところにつながっていっているというふうに思っているんですね。

 なので、中堅企業創設に当たって、規模の経済とか範囲の経済というのを求めて、生産性とか経営力を向上させていくという理念は、これは広く共有されるべきと思っていまして、本法案で、例えば、特定中堅企業者を定義した上で、MアンドAの際の優遇税制をするなどの支援措置は有益だというふうに個人的には思っていて、もっと中小の事業者にも事業再編による成長を志向してほしいなというふうにも感じています。

 そのためには、もちろん買手サイドの意識とか税制というのも大事なんですけれども、むしろ、買手よりも小さい企業が想定されている売手に対して啓発していかないといけないかなというふうに思っていまして、というのも、私が知る範囲ですら、やはり、中小企業の、特にオーナー経営者なんかは、買収というイメージに対して、余り芳しく思っていないというか、忌避感を持っている方が、よくハゲタカみたいな捉え方をされると思うんですけれども、そういう方はまだ多い状況でして、あくまで御自身とか親族による経営にこだわるという方も多くいます。

 事業の継続性より資本の固定化というのを優先してしまうがゆえに、市場環境についていけないとか、事業を転換できないとか継承できないとか、そういったことがあって経営がうまくいかず、結果として企業が成り立たなかったら、従業員とか技術を守れないことになるわけなので、そういったケースにつながるので、こういう技術とか雇用を守るというためにも、業界の再編とかMAということに関してはより小規模な事業者に対する理解の醸成が必要だと思うんですが、その点、経産省に聞きたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 近年、MアンドAにより会社を譲渡することについては抵抗感が薄れてきているとは存じますけれども、委員御指摘のとおり、いまだにMアンドAに悪いイメージを持つ中小企業の経営者がいることも事実だと認識しております。

 こうした背景も踏まえまして、経済産業省、中小企業庁としては、テレビ番組や新聞、ウェブ媒体等の多様なメディアを活用して、周知、広報に積極的に取り組んでおります。その際、MアンドAの売手側においても、事業や雇用の継続ができた、シナジーを発揮してコストダウンを図れたといった、売手目線でのMアンドAの成功事例も織り込んでいるところであります。

 また、MアンドAに関する知見が少なく、MアンドAの進め方が分からない売手の方を念頭に、中小MアンドAガイドラインにおきまして、中小MアンドAにおけるプロセスや成功事例を紹介しておるところでございます。これらを通じ、不安の解消を図っております。

 さらに、中小企業庁が委託し、四十七都道府県に設置している事業承継・引継ぎ支援センターを中心に、商工団体や金融機関等で構成される事業承継ネットワークも活用しながら、事業承継やMアンドAに不安を持つ中小企業も含めて、専門家が伴走しながら、ワンストップで支援できる体制を構築しているところでございます。

 引き続き、これらの取組によりまして、中小企業の皆様がMアンドAに対する的確なイメージを持っていただくべく努めてまいる所存でございます。

守島委員 ありがとうございます。

 資本の移動に関して、企業者がある種ハードルを低く、マインド的にハードルを低く、フラットに見てくれるような環境になればいいと思うので、是非そうした環境をつくっていくためにも尽力いただきたいというふうに思っていますし、この法案自体が新陳代謝を促す法案になればいいかなというふうに本当に期待している次第なんですけれども。

 そのためには、やはり業界再編だけじゃなくて、第二創業とか、あとスタートアップ、ここに力を入れるべきと思っていまして、本法案でも投資とかスタートアップを誘発するための施策がたくさん、四つぐらいあったと思うんです。各施策の論点はこの委員会内外で詰めていきたいと思うんですけれども、全体の目標観をちょっと大臣に聞きたくて、現状、スタートアップ五か年計画の目標である二〇二七年に十兆円規模というところに関してはまだ遠いという状況だと思うんですけれども、この法案改正でどの程度スタートアップに寄与して、目標にキャッチアップしようと考えているのか、大臣の見解をお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 スタートアップは、新しい技術やアイデアなどのイノベーションの担い手として、社会課題を成長のエンジンに転換をして、日本経済を牽引していく重要な存在であると思っています。

 御指摘のスタートアップ育成五か年計画においては、二〇二七年度までにスタートアップへの投資額を十兆円にする、こういう目標を掲げておりまして、更なる裾野の拡大に加えて、スタートアップが大きく今度は成長する環境の整備も必要になっています。

 足下では、金利上昇による資金調達環境の悪化等によりまして、実は、米国におけるベンチャーキャピタルの投資額が前年比で約三〇%減少するという局面にあります。グローバルで見ると、スタートアップの資金調達額が大きく落ち込んできています。そのような中でも、日本のスタートアップへの投資額は、これまでの政策効果も相まって相対的に堅調に推移しておりまして、スタートアップエコシステムの裾野も広がりつつあるのかなと認識をしています。

 本法案では、産業革新投資機構、JICの運用期限延長によるグロースステージのスタートアップの成長支援のほか、大きな可能性を秘めたディープテックスタートアップへの支援、あるいはスタートアップの優秀な人材確保や海外市場の獲得等への支援を措置しておりまして、これらの取組を進めていくことで、目標の達成に向けて加速をしていきたいと考えています。

守島委員 ありがとうございます。

 グローバル的には投資額が減っているということなんですが、元々、世界市場と比べて、日本のスタートアップ投資というのは低かったというところが法改正の最初の考えだったと思うので、そこはキャッチアップしていってほしいというふうに思っていますし、大臣おっしゃったように、やはり、成長するところに対して、付加価値がどんどん増えていくところに対して投資するというのは、政策的には正しい方向だというふうに思っていますので、是非よろしくお願いします。

 中小企業政策の方向性として、ずっと私の見解を述べさせていただいているんですが、ここに至る理由を少し話をさせていただくと、先日軽く自分のバックボーンも話をしたんですけれども、私は、サラリーマン、鉄鋼業を辞めてから、診断士の取得を目指しながら、昼間は家業の町工場で働いていたというか、働き始めたときにリーマン・ショックが起こりまして、二〇〇八年、九年あたりですね、リアルに売上規模が十分の一以下ぐらいの状況に本当になったんですよ。

 長い間、今日、明日の仕事がもう全くない中で、現場は在庫を作ったりしていて、利益にもならないしという状況で、本当に、帝国データバンクとか東京商工リサーチの倒産状況を見て、うちの会社だけでもどうやったら生き残るかということをずっと考えていたような日々がありましたし、極論、自社の雇用さえ守れれば、どんな低価格でも仕事を請けて延命しようという感覚で仕事をしていた、頭を下げて仕事をもらいに行っていたという日々が結構ありました。リーマン・ショック後からやはり一、二年はそんな感じだったと思います。

 今は、会社の立て直しをやって、細々とですが経営というのは成り立っていまして、零細企業であることには変わりませんが、どうにかやれているんですけれども。

 僕自身もフライスとか旋盤を動かしながら日銭を稼いでいた身からすると、乾いたタオルを更に絞るみたいなことをよくこの委員会でも話をされているんですけれども、タオルがあるだけでいいなというか、そういう、仕事が全くない状況があったので、ある種、みんながタオルを絞り合う競争をしているところに政府が水をちょっと入れたとしても、それがずっと続くわけではないし、むしろ、そこに甘えてしまって、生産性自体が鈍化して、価格とか賃金に転嫁できないというか、安い仕事請け合いみたいな競争になってしまっていたという現実を知っているので、それは、極論、企業努力して利益をちょっとでも生もうとしている競争意識ということも阻害しかねないというふうに思っていて、そういう経験からこういう考えに至ったわけなんです。

 だから、経産省が言っているように、賃上げとか価格転嫁というのは非常に重要だと思っているんですけれども、やはり、その前提として、マーケットのフェアさというのは僕は大事だというふうに思っているので、こういうことを口酸っぱく言わせていただいております。

 日本の経済成長にとって事業再編というのは必要という観点だけじゃなくて、さっき中小企業庁さんがおっしゃってくれたように、事業者としても、たとえ事業採算性が低いところでも、MAとかを通じて事業が守られたり雇用が守られたりとすることにもつながるので、そういう意味で、適切な情報を提供してほしいというふうに言っていました。

 続いて質問するんですけれども、なので、政府の企業支援策に関しては、肯定的に見ることもあれば、懐疑的に見ることも個人的にはあって、今やっている事業再構築補助金について聞きたいんですけれども、例えば、新規創業する人たちは資金ということに関して非常に厳しい参入障壁があるのに、創業済みの企業に関しては新規事業に対して補助をするというのは、これはもう原則としてアンフェアなんじゃないかなと感じてしまうんですが、事業を生産性の高い分野へ移転を促すというのは理解しますが、では、何で融資じゃなくて、ここは補助なんですかというところをお聞かせください。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の事業再構築補助金、この事業につきましては、ポストコロナ、ウィズコロナの経済社会の変化に対応するための思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としております。

 今般、未曽有のコロナ禍におきまして、思い切った事業再構築はやはり既存事業よりも高い事業リスクを伴うことに加えまして、コロナ禍で売上げが激減した事業者の方も多いことから、設備投資以前に運転資金の確保にも苦しんでおられるという状況にあったことに鑑みまして、今回、補助金として措置したものであります。本事業によりまして、多くの中小企業の皆様のお取組を後押しできたと考えております。

守島委員 補助にした理由ということに関しては、思い切った施策、事業転換が必要ということを、その妥当性というのはこれからちょっとまた議論をしていきたいというふうに思っているんですが、補助が一定有用だとして、では、この事業再構築補助金の評価自体というのはどうするんですか。

 例えば、融資であれば、不良債権になるようなことがあれば、債権回収を通じて、その融資したものの妥当性というのがチェックされるし、報道もされると思います。昨今の記事のように、グロスで倒産数とかも評価されることもあるんですけれども、補助金にしたら、政府の施策が失敗したときの評価というのは分かりづらいというか、政府はそういうときにきちんと責めを負うのかというのがちょっと分かりません。

 今回、事業再構築補助金に関して、補助事業者に対して、事業がちゃんとなされるかということに関しては義務を課していると思うんですけれども、経営の中身について評価はどうするのかというのと、特に事業再構築補助金の採択事業者をグロスで統計的にどう評価していくのかということに関して、お聞かせください。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 事業再構築補助金におきましても、事業の効果検証は重要であると認識しております。補助事業の終了後、三年目から五年目にかけまして、年次で補助事業の進捗、売上げ、収益等を含む事業化状況報告を必須としております。

 昨年度、初回の事業化状況報告が提出されたところでありまして、現在その結果を分析しております。

 この報告につきましては、可能な限りデジタルデータで収集をしておりまして、このデータをEBPM目的のために大学等の研究者の皆様に御提供するなどして、こういう取組を通じまして、マクロ分析、マクロ経済への影響等も分析可能である、かように考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 その点、本当にしっかりやってほしいんですね。融資と違って、政府がエクイティーに手を出すとか補助金をするということになると、やはり評価が曖昧になって、正しかったのかというのが分かりづらいというのが多分これまでもそうであったと思うので、そこの分析は本当にしっかりやってほしいということを改めてお願い申し上げます。

 では、再構築補助金で補助を出すということを有益とした上で、この再構築補助金の申請において交付決定の前に事前に事業への着手を認める制度が今あるんですけれども、この事前着手の採択と交付決定には差異がありますが、この点についての説明をお願いします。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業庁における通常の補助事業の場合には、事業開始は交付決定後とされておりまして、交付決定前の支出は補助対象とはなりません。しかしながら、事業再構築補助金につきましては、新型コロナという未曽有の緊急事態において、中小企業が経済社会の変化に対応するための事業再構築を早期に開始できるように、特例措置として事前着手制度を導入したものであります。

 御指摘の事前着手届出と交付決定の違いにつきましては、事前着手は、あくまでも交付決定前の支出も補助対象経費としたい旨の届けでありまして、審査は伴いません。他方、交付決定につきましては、支出した経費が実際に補助対象となるか否かについて、審査を経て決定されるものであります。

守島委員 事前着手は審査じゃないとおっしゃるんですが、事業者はそこを理解していない方も結構いて、コロナにおいても、本業ができないから、緊急時ということで、ほかの業態に転換する必要があるということで、事前着手を認めていると思うんですけれども。

 先ほどおっしゃったように、資金繰りも難しい状況にあるから補助だという話をされていましたが、本当に資金繰りが困難な企業であれば、交付されるか分からないものに対して金融機関から融資を受けるのは難しいんじゃないかなと思っているし、資金がある会社にとっても、交付決定がなければ、これは相応のリスクを負うことになると思うんです。

 というのも、実際に、事前着手制度のせいで、期待して投資したけれども交付決定されずに経営がより苦しくなったとか、逆に、新規事業をするのに、たまたま新規事業をしようと思っていたのに補助金を受けられてラッキーだ、追い銭をもらったよみたいなことを言う感覚の声もあるんですね。この事業採択をうまくするために、コンサルタントみたいな人もばっこしているというのも聞きますし、まさに補助金ビジネスの温床にもなりかねないんじゃないかなというふうに思っています。

 中小企業庁の支援策というのは、これまで不正とかもたくさんあったように、やはりここに関してはしっかり見ていくべきだというふうに思っているんですね。事前着手制度の是非を決める、緊急時としての事前着手というのは必要だったかもしれないですけれども、制度自体、やはり概念が曖昧な上、不公平も起こるし、税投資に対する効果が見えづらいと思っていて、不公平と感じているんですが、この点についても聞こうと思ったんですが、時間なので終わりますが。

 コロナの融資が貸し倒れている状況も踏まえると、緊急時じゃなくて平時の対応に戻していかないといけないし、公平な制度ということに省庁が努めないと、やはり、公平な市場こそが、最初から言っているように、企業の成長とか日本のためになるというふうに思っていますので、その点、是非留意して取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、山本剛正さん。

山本(剛)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の山本剛正でございます。

 昨日、今日で北海道でも桜が咲いたということで、日本全国に春が訪れて、東京は随分暑くなって、この体ですから、この暑苦しさを存分に発揮して、これからの季節は、本当に、おまえ寄ってくるなと言われるぐらいなんですけれども、ちょっとおつき合いをいただきたいなというふうに思いますが、よろしくお願いします。(発言する者あり)ありがとうございます。

 所信の質疑でも申し上げましたが、産業競争力は非常に重要だ、でも、残念ながら、所信の中では、いろいろなものの折り合いの中で三行しかなかったというお話をさせていただきましたが、その文脈よりも何よりも、やはり、今踊り場から抜け出そうとしている中で、どのような効果をこの法案で発揮することができるのか。

 非常に方向性はもう申し分なくよろしくて、ただ、細部にここで魂を宿さないと、やはり、例えば、不景気だった時代に、今、トリクルダウンで、大企業がもうかれば、それから中小企業ももうかっていくみたいな話があったけれども、なかなかそれがうまくいかなかった。

 今回も、対象の商品であったりとか物資であったりとか、あとは企業さんを指定する中で、そこをいろいろ支援をする、その効果がどこまでやはり影響を及ぼすのかということは、私は非常に重要であろうというふうに思っています。

 例えばサプライチェーンという言い方を最近よくしますけれども、チェーンという言い方だと、鎖でつながっている、だからそのつながっているもの自体がよくなるみたいな感覚になるんですけれども、本当にそれで、ここを支援したら周りにも影響が及ぶのか。いろいろ税制であったりいろいろな支援策であったりということは、やはり検証をしていかなければいけない。また、進めていく中で、それをやはり常にウォッチしていかなければいけないんだろうなという思いを持って、この法案をちょっと読ませていただきました。

 まず、中堅企業者というものを定義をして、第二条二十四項には、この法律において中堅事業者とは、常時使用する従業員の数が二千人以下の会社及び個人、括弧、中小事業者を除くをいうということで、人数だけで区切っているというところが、なかなかざくっとしているなという印象と非常に明確だなという二つの側面での印象がございます。

 でも、こういうふうに区切ってしまいますと、中小企業が大企業となって、いろいろな、先ほど税制で、実は大企業の方が税金を払っていないよという、あれは結構よく言われる話で、私もそうだなと思って聞いていたんですけれども、でも、優遇政策は結構やはり中小企業もそれなりにある中で、どちらかというと手厚くある中で、中小企業としての優遇がなくなったところに、今回のこのくくりの中で、大企業から相当数の企業さんが中堅企業というカテゴリーに入ってくるんだろうなということを私はちょっと想像をしております。

 一方、中小企業さんの中には、こういった優遇措置とかがなくなる、いろいろな自分たちの環境が変わるのが嫌だなと、これを嫌って、大企業になることというか、積極的に規模拡大をしてこなかったというか、ちゅうちょをされていた企業さんがあるのも私は事実だというふうに思います。

 ですから、今回のこういうくくりが、新しいカテゴリーができるわけでありますけれども、そういったカテゴリーの企業群に新たな今回の支援策を創設をすることによってどんな影響が出るのかを想定されているのか、若しくはどんな効果が期待をされているのかというのをちょっと大臣にお答えをいただきたいというふうに思います。

齋藤(健)国務大臣 中堅企業は、十年前と比較してみますと、大企業を上回る従業員数、給与総額の伸び率がありまして、国内売上げ、国内投資の着実な拡大を通じて、地方における良質な雇用の提供者でもあります。さらには、経営資源の集約化等によって前向きな新陳代謝の担い手としての役割を果たしている重要な企業群なんだろうと思います。

 こうした特性から、中堅企業の成長は、日本の成長型の経済への移行において大きな役割を果たすのではないかと認識をしています。

 他方、日本における中堅企業から大企業へ成長をしていく割合というのは、逆に、国際的に見ると低い状況にあるということであります。人手不足等の課題に対応しながら、国内外の大企業と競争していくための成長投資ですとかMアンドA等を十分に行えていないといった課題、これも指摘されるところであります。

 このため、本法案によりまして、中堅企業のうち、特に賃金水準や投資意欲が高い中堅企業を対象に、複数の中小企業をMアンドAした場合の税制措置等を講じて、中堅企業の更なる成長を促すですとか、中堅企業、中小企業によるグループ一体での収益力の向上等、これを促進していきたいと考えています。

 こうした中堅企業支援の枠組み構築を通じて、成長意欲のある我が国企業が、中小企業から中堅企業、そしてその先へとシームレスに成長を目指せるような、そういう環境の整備につなげてまいりたいと考えています。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだというふうに思います。地方の雇用とかそういったものをもう本当に支えている、私もイメージできる企業が結構やはりあります。そういう中で、今大臣のお口から、大きな役割を果たしている、そういった企業群が今回の中堅企業という枠組みの中でできる。ここまでは、もう、いい話ですね。

 でも、一方で、これが進んでいった中で、余り考えたくはないかもしれませんが、いわゆるそういった優遇措置に安住をして、成長を促すということをおっしゃっていましたけれども、でも、これ以上成長するとまたちょっと厳しいことになりかねないから、リスクも大きくなるからということで、成長をためらって、中堅企業の規模をちょっと維持していこうかな、でも、それでも十分大きな役割も果たせるし、いわゆる地方の名士というか旗手というか、そういった立場で雇用もしっかりと守ってくださるという安定型の企業へと変貌をしていく可能性というものも、もちろん否定はできないというふうに思いますけれども、そういった場合についてどのようにお考えかをちょっとお尋ねをしたいと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話のありました従業員数二千人以下の中堅企業の中におきましても、今回政策の対象となります特定中堅企業という部分につきましては、中堅企業の中でも、投資や賃上げなどの成長意欲が高くて、国内投資あるいは国内所得の向上を通じて国内経済に貢献する高いポテンシャルを有することを要件としておるところでございます。したがいまして、規模を維持し、もう成長しようとしない企業につきましては、その対象にならないという形にしておるところでございます。

 また、逆に、適用に必要な計画認定を受けた中堅企業が、計画に基づいて施策の活用をして、中堅企業の規模を超えてしまうという場合もございます。ただ、この場合も、新たな支援対象ということにはならないわけでございますけれども、既に認定された計画に基づいて成長していくという、この計画の期間中の施策の適用、これにつきましては、例えば取消しのようなもの、損失準備金の取崩しや低利融資の返還みたいなものは求めないという、その規模の拡大を妨げないような制度にしておりまして、こうした中で、中堅企業からの卒業を促してまいりたいと考えておるところでございます。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 やはり、そこが非常に重要なところだというふうに思います。だから、常にやはり成長を促していっていただく。これは、成長、成長と一言に言っても、様々な成長の仕方というものがやはり考えられます。

 一方で、例えば、私は、それも所信のときに申し上げましたけれども、日本は成長戦略というのを今まで本当に毎年のように作っていったけれども、なかなかそれがうまくはまっていかなかった。だから、成長の方向性とか、内容だけではなくて方向性とか、いろいろなものがやはり加味されると思います。ですから、そこにやはり適宜適切に支援が入ったりアドバイスが入ったり、そういったスキームといいますかを今後考えていただくことが私はいいのかなと。私は本当に、ここは期待しているんですよ。

 やはり、安定というものを求めたがる嫌いがある中で成長を促すというのは、私も本当に難しいことだというふうに思います。もちろん、成長したいと思っている人たちは山ほどいるんですけれども、じゃ、そのとおり成長できる人たちがどれだけいるかというと、人というか企業でもそうなんですけれども、なかなか実は難しいということは、もう皆様も御案内のとおりだというふうに思います。

 今回の方向性の中で、私はそこが肝になるというふうに思っておりますので、是非、ここを少しうがった見方をしてくれとは言いませんので、成長の仕方、内容、中身、いろいろなものを加味した中で、今後どういうふうに中堅企業さんを育てていくのかということは、経済産業省の中で常にお考えをいただきたい、そしてアドバイスなり支援をしていただきたいというふうに思います。

 ただ、中堅企業さんの中に、結構、本当に相当数出てくる中で、上場の会社もあります、非上場の会社もあります、老舗企業もやはりありますよね、新興の、新しいといいますか、これから本当に新進気鋭の会社もある。様々な形態の企業群が形成をされる中で、本当に一くくりでいいのか。例えば、上場会社と非上場会社ではやはり資金調達の方法も違いますとか、いろいろあります。だから、それで本当に一くくりでいいのかということをちょっと教えていただきたいと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、本法案におきましては、上場あるいは企業年齢に関係なく、従業員規模の拡大とともに、経営の高度化や商圏の拡大あるいは事業の多角化といったビジネスの発展によって労働生産性が向上する傾向にある範囲といたしまして、従業員数二千人以下の企業等を中堅企業と定義させていただいております。そして、そのうち成長しようとする企業等に対して支援措置を講ずるということにしております。

 その理由といたしましては、一つは、上場、非上場あるいは企業年齢にかかわらず、中堅企業の売上規模は数百億円程度というところに多く分布しておりまして、成長に当たっての共通の課題、先ほど申し上げました経営の高度化でありますとか事業の多角化みたいな共通の課題に直面をしているということ。それからまた、上場企業を支援対象から例えば除外するといたしますと、今度は、企業の上場でありますとか外部資本の受入れの判断に影響、ちゅうちょが出てくるということもございます。また、老舗企業でありましても、事業承継でありますとか事業環境変化などを契機に成長意欲が高まるケースもございます。

 こうした点も踏まえまして、既存の中小企業施策と同様に、上場企業あるいは老舗企業等を支援対象から除外する必要はないと考えておりまして、その規模と成長性に着目をして支援対象を設定するという考え方でございます。

 ただ、他方、支援を受けるに当たって事業計画を作っていただくわけでございますが、この中で、中堅企業から大企業へと成長をする経営ビジョン、長期的に目指す姿、事業戦略、成果目標、こういったものを記載していただくことになっておりますので、そこで多様なやり方を応援していくという形になろうかと思います。

    〔委員長退席、中野(洋)委員長代理着席〕

山本(剛)委員 人数でという話だと、今非常に、若い人たちの人口がどんどん減っていって、要するに、人材の確保が今、実は、企業の中で非常に難しいということもささやかれ、今後、将来も非常に厳しいことが予測されているわけですよね。そういう中で、では、設備投資を進めていきます、機械化を進めていって、やはりそこの生産性を向上させていく、それで従業員数が、要は、首を切るという話ではなくて、例えば従業員さんが高齢化をしていて自然減で減っていくということも当然考えられる。また、でも、そこで生産性が上がって、その企業としては非常にまたそれが成長をして、また新たな設備投資につながって、また今度違う人材を雇っていって、また人が戻っていく。いろいろなケースが考えられるというふうに思います。

 ですから、一点の見方だけではなくて、やはり企業というものをどの側面から捉えるのかという、これは別に、まだこれからスタートする話でありますから、ここでせっちん詰めのように私はあえて申し上げはしません、申し上げはしますけれども、質問とかはしませんが、是非私の言っていることも理解をしていただきたいというふうに思います。

 だから、成長の仕方、いろいろな成長の仕方があって、その選択はやはり経営者の方に委ねられていて、それを、いや、こういう支援があるからこういう形でやってくださいよというのはなかなか難しいと思うんですよ。だから、もし可能であれば、そういったものにも先ほども申したとおり適宜適切に、この適宜適切というのが私は非常に重要になるというふうに思いますので、是非考えていただければなというふうに思います。

 次の質問に移らせていただきますが、スタートアップのことは、所信でも出ていながら、ここでも非常に重要な位置づけになっているわけでありますが、所信のときに私が申し上げたのは、スタートアップって、当時何か結構僕は雑な言い方をして、猫もしゃくしもスタートアップとかって、どこでも聞くみたいな言い方をしたんですけれども、私が言いたかったのは、スタートアップって本当に難しいんだよと。

 そのとき、まず申し上げたのが、二〇一二年の補正から始まった創業補助金の話をさせていただきました。これは二〇一八年の当初予算で終わっているわけでありまして、要するに、その何年間かで決着がついている。

 この検証結果はどうですかと聞いたときに、細かい検証結果はそのときはちょっとお答えをいただけなかったんですが、もう一度ここで、やはり通告はしていますので、創業補助金、例えば、どれだけの規模でやったというのは出たと思いますけれども、どれだけの企業がスタートアップで起業されて、その中でどれだけの会社が残ってとか上場してとか、若しくはどれだけの会社がやはり倒産をしてしまってとか、その検証結果をもう一度教えていただきたいというふうに思います。

松浦政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘の創業補助金の検証状況につきましては、現在、平成二十四年度補正予算から平成三十年度当初予算まで六年度間に採択した一万二千二百三十九件の経営状況等についてフォローアップを実施しているところであります。

 また、先ほど御指摘のあった採択した企業の上場等の状況につきましては、採択した一万二千件以上の企業について現在確認作業を行わせていて、その中でも、上場に向けた準備を進めておられる企業さんが存在することも確認しているところであります。

 この創業補助金につきましては、中企庁が旗振り役となって、多くの自治体においても同様の制度が整備されておりまして、その意味でも一定の役割を果たしてきたものと認識しております。

 いずれにしても、私どもとしては効果的な創業支援に取り組んでまいりたいと考えております。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 これは是非検証していただいて、これについては、例えば費用対効果がどうのこうのと言うのは、僕はちょっとお門違いだというふうに思っています。

 いや、そういうことも実は大事ではあるんですけれども、それぐらいやはり創業というものは難しいんですよね。時代の変化にも、やはりその時代の変化を捉えて、そこでやったとやって、ぽんとなっても、やはりまたその先の時代の変化にはついていけなくて駄目になってしまうということもあるし、そういったときに、MアンドAとかそういったものが非常に有効になっていくわけでありますが。

 時間がかかっても構いませんので、これだけスタートアップをやっていこうという機運が国でも地方自治体でも本当にいろいろなところでやはりあります、全国津々浦々でこの機運をしっかりと維持、高めていくためにも、この検証をして、厳しいことをみんなで力を合わせてやっていって乗り切っていくんだ、それで成功に導いていくんだという一つのランドマークみたいなものをしっかりと立てていただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いをします。

 二〇二二年十一月に決定されたスタートアップ育成五か年計画というものがありますね。現在、投資額八千億円程度だというふうになっているんですけれども、これは、五か年計画の実施により、二〇二七年にこの規模の十倍を超える十兆円規模を目標にしていると。

 これは官民一体でやっていくわけでありますが、ユニコーン企業ですね、ユニコーン企業というのは、これは結構ハードルが高くて、評価額が十億ドル以上で設立十年以内の非上場のベンチャー企業がユニコーン企業と言われているかと思うんですが、これはかなりハードルが高い。でも、それを百社創出する目標になっています、この五か年計画では。

 でも、これは足下を見てみますと、もちろんまだ始まって二年ぐらいですからここで評価をするというわけではないんですが、二〇二三年のスタートアップ投資額は七千五百三十六億円だというふうに言われています。まあ、後から判明する調達分も含めても、残念ながら八千五百億程度になるのではないかというふうに言われていて、ユニコーン企業も、実は百社を目標にしているのに数社程度にとどまっているというのが今の現実。

 ただ、これは五か年計画ですから、まだ二年の中で、まだまだ出だしだから仕方がないというところもあるんですが、これをこの五か年計画の中でどのように政府が捉えているかというのをちょっと教えていただきたいと思います。

    〔中野(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

吾郷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、スタートアップ育成五か年計画におきましては、二〇二七年度にスタートアップへの投資額を十兆円規模、そして、将来においては、ユニコーンを百社創出し、スタートアップを十万社とするという目標を掲げておるところでございます。

 足下でございますけれども、御指摘のとおり、金利の上昇、特にアメリカでございますが、資金調達環境が悪化しておりまして、米国におけるベンチャーキャピタルの投資額は前年比で約三〇%減という減少をするなど、グローバルでの資金調達額は大きく落ち込んでおります。

 その中で、我が国のスタートアップの投資額、先ほど先生の御指摘のとおり、今後判明するものも含めて八千五百億円程度ということでございまして、私どもといたしましては、相対的に見れば持ちこたえている、堅調なところにあるのではないかというふうに考えております。

 また、スタートアップの数という意味で、裾野という意味でいいますと、大分、まさに先生も御指摘ございましたが機運が広がってまいりまして、増えてきているというふうに考えているところでございます。

 ただ一方で、ユニコーンの数、いろいろな統計がございますが、私どもが見ております統計ですと、足下では七社ということでございまして、やはり規模の大きいスタートアップの育成というのが十分に進展していない、大きな課題だというふうに考えております。

 こういうことで、今後は裾野の拡大だけではなくて、やはり規模の大きいスタートアップを大きく育てる環境の整備が必要と考えているところでございます。今回の法改正におきましても、NEDOなどによりますディープテックスタートアップへの研究開発支援の強化、それからまた官民ファンドの出資機能の強化などの措置を講じているところでございまして、こうしたことを通じまして、目標の達成に向けた取組を加速してまいりたいというふうに考えているところでございます。

山本(剛)委員 非常に、ある意味野心的な目標でもあると私は思っています。この目標が目的化したら、やはりこれはちょっと具合が悪いなというふうに思います。今ちょっと、持ちこたえているというような表現でありましたけれども、だから出していかなければいけない、投資していかなければいけないみたいな感覚になると、僕は多分うまくいかないと思います。

 やはり、肝は、百社創出することでもなければ、十兆円を投資することでもありません。やはり、日本の産業力、競争力の強化であり、日本の経済のパイをこれで上げていくということなんですね。その結果、それのいわゆる手段としての話だというふうに私は思っています。

 ですから、例えば、もちろんこういう目標であることは、私は悪いことではないというふうには思っていますけれども、本質的なところをどのように捉えているのか。だから、産業競争力の強化であり日本経済の今後の飛躍のためだというところで、今後この目標設定をもう少し何かアレンジしていくとかということ、ちょっとこれは通告していないんですけれども、今の答弁を聞いての質問なんですけれども、もしあれば教えていただきたいと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、スタートアップを今後育成していきたいという政策目的の肝は、やはり経済成長の原動力、そして社会課題の解決の大きな担い手ということでございまして、まさに、そこにどれだけインパクトを与えられるか、効果を発揮できるかというのが最終目的だというふうに考えております。

山本(剛)委員 それが聞きたかったんです。

 私の聞き方が悪いのかもしれませんが、日本の、実は、これだけ長い間トンネルに入っていて、やはり、ぱっと出ていったときに足下が見えない部分というのはたくさんあると思うんです。経済はやはり生き物ですから、そこにきちっと政策誘導をしていくためには、かけ声だけでは駄目だし、目標だけでは駄目だし。でも、残念ながら、スタートアップの分野をばあっと見ていくと、やはり、かけ声、目標に寄りかかっているところが、僕は、非常にあるんじゃないのかなというふうに、ちょっと危惧をしております。

 先ほど来から申し上げていますとおり、難しいことをやっているという自覚の中で、目標を定める、その目標の定め方が目的になってはいけない。根本的な日本の経済の在り方、そして経済成長の在り方というものを考えていくために、そのために多分こういった法整備をされているんだろうと私は認識をしておりますが、これは間違っていないですよね。ですから、本当に期待をしていますし、また、しつこいようですけれども、適宜適切にやっていただくというのが私は非常に重要で、だから柔軟性を持ってやっていただきたい。

 これは大臣にお伺いをしたいと思うんですが、そういった目標、それから本質的な部分というものがある中で、今回のこの法改正は、その部分にどれぐらいの好影響を与えるものなのか、どれぐらいのインパクトを与えるものなのかというのをちょっと教えていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、委員おっしゃるように、日本の経済を活性化するためにスタートアップを活用して応援していこうということですので、認識は共有されているんじゃないかと思います。

 足下の状況を踏まえると、スタートアップ育成五か年計画の目標の実現に向けて、スタートアップが大きく成長できる環境の整備、これが必要だということで、今回の法改正で、例えば、今後大きな可能性を秘めたディープテックスタートアップへの設備投資支援ですとか、産業革新投資機構、JICの二〇五〇年までの運用期限延長によるグロースステージの成長支援ということ、それからストックオプションプールの整備によって優秀な人材が確保しやすくなるなど、そういった支援を講じていますので、これらの措置によってスタートアップのエコシステムが充実されることになりますので、目標の実現につながっていく、そういうことを期待しているわけであります。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 インセンティブも大事です、それに意欲をやはり向上させるということ。ただ、やはりスタートアップの難しいところは、一を十にする話ではなくて、ゼロを一にするところの、そこのてこの入れ方ですよね。それが、インセンティブもあり、いろいろなメニューが私はあっていいというふうに思うんです。

 もう時間がないので、ちょっとここで終わらせますけれども、要は、ユニコーン七社というふうにおっしゃっていただいて、僕は、結構すごいなと思うんですよ。なぜなら、先ほども言ったとおり、評価額十億ドル以上ですよ、設立十年以内の非上場のベンチャーが七社できていると。これは、私は評価していいと思うんです。でも、目標が百社だから、百社から見たらちょっとまだ、どうなっているのと言いたくなるような人が出てくるじゃないですか、そうなっちゃうと。だけれども、やはりそれだけ難しいことをやっているという中で、七社。この成功事例をしっかりとやはり種にしていかなければならないと私は思います。

 もちろん、分野が違ったりいろいろなものが違う中で、同じやり方をすれば同じようになるということはありません。だけれども、やればできるんだという根性論じゃありませんけれども、こういうプロセスを踏んだからこそ、ここはこういうふうになったというのをやはり広くもっともっと世間にアピールを私はしていいと思います。

 いや、七社しかないからアピールできないよじゃなくて、七社の、まずそこの成功の種をしっかりといろいろな方に周知をして、そういう中でこれからその道を進もうという人たちの意欲をやはり向上させることも私はある種の成長への道筋だというふうに思いますので、是非進めていっていただきたいなというふうに思います。

 ちょっとまだまだ質問はいっぱいあるんですが、次回も立ちますのでそのときにやらせていただきますが、あと税制の話とか、産業競争力の基盤強化商品の話を次回はさせていただきたいというふうに思います。

 税制については、ちょっと予告みたいなことを言いますが、そもそも租特でいいのかということをやはり私は常に考えています。租特でやるのではなくて、やはりもっともっと正面からぶつかっていく必要があるのではないかなというふうに私は思っていますし、それが安定した支援策に私はつながるというふうに思っておりますので、またそれは次回にやらせていただきたいというふうに思います。

 時間が来ましたので、ここで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

岡本委員長 次に、笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今回の産業競争力強化法、産競法等改定案の前提となっているのが、二〇二三年六月二十七日の産業構造審議会、経済産業政策新機軸部会第二次中間整理であります。その中で、冒頭の「現状認識」にはこうあります。「「失われた三十年」の振り返りと「新機軸」」、そういうことで始まって「企業は既存事業のコストカットと海外投資に注力し、国内投資は三十年間、大きく停滞、新事業創出に向けての国内での大胆な投資は行われなかった。」こう言われております。

 そこで、まず齋藤大臣に伺いますが、この現状認識というのは、産業活力再生特別措置法、産活法と産競法がもたらしたものという認識はありますか。

齋藤(健)国務大臣 経済産業政策新機軸部会第二次中間整理においては、現状認識といたしまして、失われた三十年からの潮目の変化が生じているとしています。

 これまでの日本経済を振り返りますと、企業がコストカットに注力して利益拡大を図るコストカット型経済となっておりまして、特に、日本国内における設備投資や人への投資が諸外国に大きく後れを取ったというふうに認識しています。

 こうした現状に至った背景には、長引くデフレなど様々な要因がございまして、産活法と産競法が要因であるとは思っていませんが、ただ、政府も、民間主導という考えの下で、民間の制約を取り除く市場環境整備策を中心としておりまして、新たな価値創出に向けた取組が結果として不十分な側面があった、こういうふうな認識はしております。

 足下の三十年ぶりの高水準の国内投資、賃上げといった潮目の変化を確実なものとして、日本経済を成長軌道に乗せていくことが重要でありますので、今、気を緩めてチャンスを逃して元のもくあみにしてはならないと考えています。

 三十年続いたコストカット型の縮み思考は、二年間で簡単に変えられるものではありません。これからが正念場だと思っていますので、本法案に基づく措置なども活用して、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済への転換ができるように取り組んでいきたいと考えています。

笠井委員 産活法、産競法が要因とは思っていないがというふうにおっしゃったんですけれども、やはり、経過を見てみますと、一九九九年の産活法は、大企業が人、物、金の三つの過剰をそぎ落とすための事業再編、リストラ、人減らしによって競争力を強化すれば日本経済はよくなるとして、株主資本利益率、ROEの向上を最優先した大企業を税制優遇で応援するものでありました。そして、企業が世界で一番活躍しやすい国を目指すとして安倍政権下の二〇一三年に産競法を制定し、それ以降の改正ということで拡充強化してきた結果が今日ではないかと。

 そこで、具体的に伺っていきます。

 NEC、日立、三菱電機による、システムLSIを中心とした半導体部門を分割、統合して設立されたルネサスエレクトロニクス。同社は、産活法の認定を受けて、二〇一三年に政府系ファンドの産業革新機構から千三百八十三・五億円の支援を受けてきました。ところが、二〇一六年に約一万二千人いた国内従業員数は、二〇二三年、昨年には九千人と減り続けてまいりました。全世界では約二万一千人の従業員数ということですから、半分以上は海外です。そして、リーダーシップチーム、役員十一名のうち日本人は四名と、内実は次第に海外中心の会社となっております。

 このルネサスなどへの産活法による支援が、失われた三十年と呼ばれる経済停滞につながっていったのではないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、過去三十年の日本経済を振り返れば、まあ、いろいろありました。不良債権問題ですとかリーマン・ショック、長引くデフレの中で、先ほど申し上げたように、企業がコストカットに注力して、そういう形での利益拡大を図って、設備投資や人への投資が抑制されて、それが結果として経済成長の抑制につながってきた。

 そうした時代にありまして、御指摘の産活法におきましては、過剰供給構造ですとか過剰債務といった経済成長を抑制する要因、これを解決すべく、中核的事業への選択と集中を促す事業再編支援を始めとした各種支援策を講じて企業の生産性向上に寄与してきているということでありますので、産活法の支援によって経済が停滞したというのはちょっと違うのではないかなというふうに思っています。

 実際に、御指摘のルネサス社に対しましては、産活法に基づきまして、日本政策投資銀行の低利融資ですとか産業革新機構による出資等の措置を講じてきまして、こうした措置を通じて、ルネサス社は、同社の強みである高い信頼性などを生かしながら事業の選択と集中などを進めまして、足下では、業績を大幅に改善をして雇用や給与を増加させるなど、半導体の重要なサプライヤーとして競争力強化を実現をしてきています。

 三十年ぶりの高水準の賃上げ、国内投資という潮目の変化、これを確実なものとしたいということで、本法案に基づく措置なども活用して、国内投資の後押しやイノベーションの促進を通じて、我が国経済を持続的な成長軌道、そういったものに乗せていきたいと考えています。

笠井委員 いろいろ言われたんですが、私、二〇一八年の当委員会で、ルネサスの大量リストラ、黒字リストラ、人減らしについて取り上げました。当時の世耕大臣に、この官製リストラということを許していいのかと問うたところ、大臣は、業績が非常に厳しくなって、希望退職の募集ですとか、あるいは生産拠点の一部譲渡、閉鎖を含む厳しい構造改革を行ってきたことは事実、こう認めながらも、半導体のサプライヤーとして競争力強化を実現してきた結果、最近では国内雇用も増やしていますという答弁をされたんですが、先ほど申し上げたみたいに、そうなっていないというのが現実であります。こういう形でやってきたことが積み重なって経済停滞につながったのは明らかではないか。

 そこで、伺っていきたいんですが、産活法、産競法の下で大企業はリストラ、人減らしを行って、日本経済は果たしてよくなったのか。

 いわゆる合成の誤謬というのがあります。私が参議院議員時代の一九九八年、当時の与謝野通産大臣の次のような答弁を鮮明に覚えております。リストラというのはその一つの企業にとってはバランスシートをきれいにするという意味では大変いいわけですが、全部の会社がリストラをやるということは全部の会社で不況運動をやっているのとほとんど同じことで、いわば合成の誤謬ということがここで発生する、こういう批判をされて、これは痛烈でありました。

 合成の誤謬の旗を振ってきたのが産活法以来の国の政策だ、この道の反省がなければ、失われた三十年と言われるんだけれども、それへの対策というのが本当に出てこないんじゃないかと思うんだけれども、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 経済環境の変化によりまして企業がビジネスの力点を構造改革で変えていかなくちゃいけない、これはどうしてもやっていかなくちゃいけないことなんだろうと思います。その過程で生じる負の効果、失業もあるかもしれません、そういうものについてはセーフティーネットを用意しながら対応していく。そして、それだけみんながやったのでは経済は縮小していくだけですので、新しく生まれてくる技術を活用して新しいビジネスを応援をしていくということ、そのトータルで何とか全体が成長していくようにしていくというのが基本的に考えるべきことなんじゃないかなというふうに思っています。

笠井委員 失われた三十年と政府自身もおっしゃっている、やはり、そこのところはよく振り返りながら、どうなのかと。まさに、先ほど、冒頭の中間整理でも言われているようなことが本当に問われてくるんだと思うんです。

 産活法、産競法で、選択と集中によって、不採算部門の切離しと収益性の高い部門への転換を支援してきた結果、大企業は史上空前の利益を上げて、内部留保を積み増してまいりました。

 そこで、財務省に伺います。

 年次別の法人企業統計調査において、直近、恐らく二〇二二年度になると思うんですが、企業の利益剰余金は資本金区分別にどうなっているか、端的に紹介をお願いします。

鈴木政府参考人 企業の利益剰余金についてお尋ねがございましたので、お答えいたします。

 二〇二二年度の法人企業統計における利益剰余金の金額は、金融業、保険業を除く全産業の全規模で約五百五十五兆円となっております。

 そのうち、お尋ねのございました資本金区分別の計数につきましては、資本金十億円以上で約二百八十兆円、資本金一億円から十億円で約八十六兆円、それから資本金一億円未満で約百八十八兆円となっております。

笠井委員 合計で五百五十五兆円と。名目GDPに匹敵する水準の内部留保があって、うち半分以上が、今紹介ありました、資本金十億円以上の大企業ということであります。

 昨年の十二月の自民党、公明党による与党税制改革大綱には、近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない、こういう記載がありますが、大臣も同じような認識でしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の令和六年度与党税制改正大綱において、近年行われた法人実効税率の引下げが必ずしも意図した成果を上げてこなかったと記載されていますが、これは、コストカット型経済の下で、期待された投資拡大や賃上げがなされなかったということを示していると私は理解をしています。

笠井委員 他方で、冒頭に紹介した産構審部会の現状認識にあるように、低賃金での労働確保を可能とした非正規労働の拡大も背景に、平均賃金はこの三十年間一貫して横ばいが続き、それに伴い個人消費も低迷してきたというのが現実だと。そういう現実であるということは大臣も同じ認識ですね。

齋藤(健)国務大臣 一九九〇年代のバブル崩壊以降、企業が足下の利益の確保のためにコストカットに注力をして賃金や成長の源泉である投資を抑制したことが、消費の停滞や物価の低迷、さらには経済成長の抑制につながってきたということであります。

 そうした状況を、先ほど言及いたしました新機軸の第二次中間整理におきましては、御指摘のとおり、「賃金はこの三十年間一貫して横ばいが続き、それに伴い個人消費も低迷してきた。」というふうに表現をしております。

笠井委員 厚生労働省の毎月勤労統計、毎勤統計によりますと、実質賃金は、直近の公表、今年二月でも二十三か月連続で減っております。先ほど潮目の変化ということで冒頭にも大臣は言われたんだけれども、どこが潮目の変化なのかという事態がある。

 全労連、全国労働組合総連合、純中立労組懇、地方共闘などで構成する国民春闘共闘委員会が発表した四月八日の集計によりますと、賃上げは、加重平均で、組合員一人当たり平均で七千三百十二円の二・四〇%ということになっていて、物価上昇には到底追いついていない、こういう現実があると。そういう現実については大臣も同じ認識でしょうか。

齋藤(健)国務大臣 実質賃金が確かに二十三か月連続で下がったということはもちろん認識をしていますが、昨今の賃上げの春季労使交渉の様子なんかを見ますと、私はかなり明るい様子がうかがえるのではないかと認識しています。

笠井委員 明るい様子ということで言われたんですけれども、連合が集計されたということで、本日もまた新たなデータが言われていましたけれども、五%超ということでありますが、これは定期昇給分を含んでいる、それを除けば三・五七%と。中小の賃上げ率はこの調査でも三・三〇%ということで下回っていて、非正規は、時給でいうとプラス六十六・四四円ということですから、本当に僅かですね。やはり、そういう点では、よくなっているというふうに言われるけれども、都合のいいところだけ取っても、なかなかそうなっていないというのが現実だと。

 大臣、結局のところ、産活法、産競法の下で、先ほど内部留保の話がありましたが、富が一握りの大企業とかあるいは株主とか富裕層に集中をして、労働者の所得が奪われて、内需が低迷して、格差と貧困を広げたというのが現実ではないかと思うんですが、この点はどうお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、競争環境や需要構造はやはり絶えず変化をするものであります。そういった変化に伴って、企業の事業構造の変更、これも避けられないところがあります。必要な構造改革を先送りして不振の事業を放置し続ければ、そうした事業に係る資金や人材といった経営資源の価値が毀損して、経済全体に悪影響を及ぼすということにつながっていくわけです。

 産業競争力強化法や産業活力再生特別措置法は、企業が成長の期待できる事業分野に資金や人材といった経営資源を円滑に振り向けることを支援することで、今申し上げたような事態が生じないように、産業構造や就業構造の転換を円滑化するものでありまして、これが原因で格差や貧困が拡大したというのは少し違うんじゃないかなというふうに思っているところであります。

笠井委員 賃金のことでいうと、大臣も価格転嫁とか企業名公表は大事だということも先ほど紹介があったインタビューでも言われていましたが、私は、それも大事だと思うんですが、やはり内部留保を吐き出すというか、私たちは、その一部に課税して中小企業を応援してということも提案していますが、そういうことにやはり踏み込む必要があるんじゃないかと。

 アベノミクス、日本再興戦略二〇一三年の中心政策である産競法は、その前身である産活法以来、株主資本利益率、ROEの向上を最優先にして、大企業のリストラ、人減らしを支援して、米国型の株主資本主義、利潤第一主義を推し進めてまいりました。このために、コストカット型経済と大企業の生産拠点の海外移転によって多国籍企業化と株主配当、内部留保の巨額の積み増しがもたらされる一方で、産業の空洞化と非正規雇用が拡大をする、主要のG5の諸国の中でも生産性向上が国内投資と賃金上昇に結びつかない唯一の国となって格差と貧困が進んだ、これが失われた三十年ではないかと。やはり、この反省をしっかりしないと、それがないままに、形を変えて大企業減税を続けて相変わらず支援しようというのが本法案ではないかというふうに私たちは見ております。

 そこで、中身について幾つか伺います。

 今回の法案の中で新たな戦略分野国内生産促進税制というのがありますが、これについてです。

 本法案では、今後、我が国産業の基盤となることが見込まれ、かつ、国際競争に対応して事業者が市場を獲得することが特に求められるもの、第二条第十四項でそういうふうに言われて、それを、省令で産業競争力基盤強化商品を定めて、その生産、販売計画を主務大臣が認定した場合、生産、販売量に応じて税額控除が受けられるものとしております。

 伺うんですが、例えば、今回支援の対象としているマイコン、半導体については、何ナノメートル相当のものに幾ら控除するというふうにしているんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、半導体は、DX、GX、経済安全保障の観点から重要な戦略物資でありまして、先端領域の半導体だけでなく、本税制の対象でありますマイコン、アナログ等も、自動車、医療機器等、幅広い産業を下支えするものであります。

 本税制は、生産、販売量に応じた税額控除を行うものでありますが、マイコン、アナログ等は、生産段階のコストが大きく、本税制により投資判断を引き出すことが有効であるため、税制措置の対象としています。

 お尋ねのマイコンにつきましては、二十八ナノ以上のロジック半導体を対象に、シリコンウェハー一枚当たりの税額控除単価を、先端性の指標であるノード別に定めています。

 各企業の税額控除額について御質問がありましたけれども、これは実際の生産、販売量等に応じて決まることになるので、現時点で予断を持ってお答えすることはちょっとできないということです。

笠井委員 実際の数字はまだ現時点で答えられないとおっしゃったんだけれども、このような特定商品を作れば作るほど、生産、販売量に応じて、一つ一つの製品の生産、販売に優遇税制で補助するという仕組みだと思うんですけれども、こういう形での異例の手厚い支援というのを中小企業に対してこれまで行ったことはありますか。

齋藤(健)国務大臣 済みません、中小企業も様々な支援策をしていると思いますけれども、これとの関係でどうかというところは、ちょっと今、私、答弁できないので、時間をいただければと思います。

笠井委員 これは私自身調べてみましたが、これまで中小企業に対してこういう形で、特定の商品を作るときに、生産、販売量に応じて優遇税制で補助するというやり方はやっていないと思うんですよ。極めて異例のことをやっている。

 じゃ、伺いますけれども、この戦略分野国内生産促進税制にはほかにも複数の物資が想定をされていますが、FCV、燃料電池車やグリーンスチールなど、さきに当委員会で審議された水素等供給利用促進法案と重なるものもあります。

 水素法案における低炭素水素等供給等事業計画、これが認定されて、同法案による支援措置を受ける事業者も、この戦略分野国内生産促進税制の対象となるんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 本税制は、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF、半導体などといった物資におきまして、今後三年程度、具体的には二〇二六年度末までに新たな国内投資を決定し開始するものが対象であります。

 他方で、水素社会推進法案における支援は、二〇三〇年を目途に供給を開始することを念頭に置いていますので、時期が異なります。

 本税制におきまして具体的に想定されるのは技術的に確立されているものでありまして、例えば、グリーンスチールでは、水素還元製鉄ではなくて、高炉から革新的な電炉への転換ですとか、グリーンケミカルでは、原料を化石由来のナフサから廃プラスチックやバイオ原料への転換をするものなどが考えられます。

 このように、本税制におきましては、水素やアンモニアを原料とする事業は想定しておりません。対象になる事業については、現時点で、水素社会推進法案の支援策が重複して適用されることは考えていないということであります。

笠井委員 時期が異なり、重複して支援することはないということを言われたんですが、特定企業を二重、三重に手厚く支援するものであるという点では、私は許し難いものだと思います。

 しかも、伺いますが、技術革新が猛烈に速い分野で十年超もの生産、販売の減税策というのは、長期リスクとか不確実性ということについていうと、これは高いんじゃないかと思うんだけれども、この点、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 この税制は、欧米を始め、戦略分野における投資を国内で実現するために大規模、長期の政策が次々と講じられてきているという中で、我が国においても戦略分野の国内投資を強力に促進をしなければならないということで措置をしているわけです。

 特に、生産段階におけるコストが高い等の理由から投資判断が難しい、こういう戦略分野について企業の国内投資判断を引き出すためには、事業全体の予見性を確保することが必要であります。したがって、本税制では、産競法の認定を受けてから十年間の税額控除措置等を講じているわけであります。

 これらの分野は、いずれも広範なサプライチェーンを持ち、物づくりの基盤を支えるものでありますので、我が国の産業競争力の強化に向けて、国内投資を促進することが重要であると考えています。

 そして、御指摘の据置期間が長期間にわたることから考えられる懸念といたしましては、例えば、産業構造が変化する中で、本税制の対象物資が陳腐化しないかといった論点、これが考えられるんだろうと思っています。

 他方で、今回の措置の対象となる製品につきましては、GX、DX等の今後グローバルに市場が拡大する分野におきまして、最先端の技術や戦略的に重要な技術を用いて措置の対象となる物資を生産する計画、これを認定するものでありまして、そうした物資がすぐに陳腐化してしまうということはなかなか想定しにくいという面もございます。

 ちなみに、米国も、インフレ削減法におきまして、GX分野における物資を指定し、十年にわたる税額控除措置などにより支援するなど、同様の措置を講じているということもございます。

笠井委員 陳腐化することは想定しにくいと言われましたが、今伺っていても、根拠がない楽観論ではないかと。

 この税額控除による財務省の減収見込みは約一・九兆円、年二千百九十億円程度にも及ぶというものであります。

 そこで、この戦略分野国内生産促進税制は、企業の国際競争力を強化するためのもので、対象製品の生産、販売についての支援措置でありますが、トヨタ、自動車、日本製鉄、製鋼、それから旭化成、化学、ENEOS、石油元売、三菱商事、総合商社やルネサスエレクトロニクス、電機、半導体等が対象になります。

 自動車産業の裾野の広さは以前から指摘をされています。半導体産業も水平分業化が急速に進んでいる業界でありますが、結局、そういう点で、それだけ裾野が広かったり水平分業化があるのに、完成品を作るなどの一握りの大企業への支援になっている、こういうことになっているんじゃないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 この税制は、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカルなど、その多くは大企業が主要な担い手となる分野であること、これは事実であります。他方で、欧米等が戦略分野の投資促進策を次々と講じてきている中で、GX、DX等の中長期的な経済成長を牽引し、我が国が強みを有する物づくりの基盤を支える重要な分野でありまして、国内投資促進策を強力に講じていく必要があり、本税制はその柱の一つだ、そういう趣旨で行っているということは是非御理解をいただきたいなと思います。

 また、本税制によりまして対象分野の国内投資を実現して生産を拡大することで、サプライチェーンを通じた部素材等の発注や供給の確保、拡大、さらには雇用、所得への好影響など、幅広く経済波及効果が生じると考えています。

 その上で、本税制に限らず、サプライチェーンを構成する中小企業への対策も重要であると認識していますので、中小企業向けの賃上げ促進税制ですとか徹底した価格転嫁対策、革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化投資などにも併せて引き続きしっかり取り組んでいきたいと考えています。

笠井委員 今、波及効果ということを言われました。トリクルダウンということもさんざん言われてきましたが、トリクルダウンなどなかったというのが現実であって、中小、下請置き去りということでこの間ずっとやられてきた、そういう中での失われた三十年ということもあると思います。

 国際競争力が重要と言われるけれども、産活法、産競法ではそれがついてこなかった。今頃になって国内生産が大事だとおっしゃるんだけれども、既に一九九二年の通商白書はこう言って指摘しておりました。企業活動の国際展開が進むにつれて、従来の国家と企業との関係にも変化が見られるようになってきている、かつては、一国の企業活動の活発化はその国の雇用を増大させ、豊富な財を提供することによって国民生活に貢献するものであった、しかし、国際展開が進んだ企業は、資本の国籍にかかわらず、現地の雇用者を多数擁し、現地の市場を中心として財・サービスを提供すると。多国籍企業の利益と国民の利益が一致しない、国民の暮らしに結びつかないという指摘であります。

 大臣、そういうふうに政府が言ってきたのに、産活法、産競法で海外展開を推し進めてきた結果が、今日の失われた三十年ということじゃないんですか。そこに正面から向き合って、やはりきちっと検証する必要があると思うんですが、最後にどうでしょうか。

岡本委員長 齋藤経産大臣、申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 一九九二年の通商白書について言及がありましたけれども、そのとき私はたしか通産省の通商政策局にいたと思うんですが、その問題意識ははっきり覚えています。

 しかし、今回の措置は、新たに生まれてくるDX、GX、そうしたものが、日本がしっかりと競争力を確保して、そして、結果として、雇用を維持し、経済を活性化していくという見地から講じるものでありますので、その点は御理解いただきたいなというふうに思います。

笠井委員 終わりますが、弊害を取り除くというなら、一握りの大企業支援ではなくて、中小企業、労働者、国民に回って消費拡大する施策への転換こそ必要だ、この間の大企業支援の政策、行き過ぎた新自由主義、構造改革と規制緩和路線をまともに検証せずに、反省もなく、形を変えて大企業減税を続けようというのが本法案だ、これは本当にやってはならない、私はこのことを強く申し上げて、引き続き質疑でただしていきたいと思います。

 今日はこれで終わります。

岡本委員長 次に、鈴木義弘さん。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 今日もやはり目がしょぼしょぼして、年だなというふうに思っておりますが、質問に入りたいと思います。

 ある識者は、アベノミクスの本質は労働者を貧しくして株価上昇と述べているんですね。日本の賃金が国際的に見て大幅に低い状況は、本来は不均衡な状態とは言えない、なぜなら、もしマーケットが正常に機能していれば、日本製品の価格が安いのだから、日本の輸出が増え円高になるはずだ、この調整過程は不均衡がなくなるまで続く、しかし、円高になると輸出の有利性は減殺され、本来は円高を支えるために企業が技術革新を行い生産性を引き上げなければならない、それが大変なので円安を求めた結果だというふうに述べているんです。

 物価が上がらないのが問題なのではなく実質賃金が上がらなかったことが問題、賃金が上がらず、しかも円安になったために、日本の労働者は国際的に見て貧しくなったというふうに指摘しているんです。日本の企業が目覚ましい技術革新もなしに利益を上げられ株価が上がったのは日本の労働者を貧しくしたからだ、それこそがアベノミクスの本質だとこの方は述べているんです。

 振り返ると、地元の町工場では、一ドル七十五円や八十円の時代、元請からこの円高に耐えられるようにコストカットを要求され続けてきました。今日はちょっと市況を見ていないんですけれども、一ドル約百五十三円とか四円ぐらいで推移していると思うんですけれども、それでも今日、七十五円、八十円のままなんですね。これが一番の問題なんだと。だから、中小零細には円安の恩恵が行き届いていないんです。

 そもそも、本改正案の審査をするに当たって、金融緩和、財政出動、規制改革と、三本の矢のアベノミクスを総括してこの法案を出してきたのか。三年前にもこの産業競争力強化法を改正しているんです。まだ三年もたたないうちにまた改正してきたんです。だから、十年前にやったことがどうだったのかということに基づいて、先ほどから大臣が力強く答弁されていることが、実際、総括した中でお述べになっているのかどうか、そこの認識を先にお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 アベノミクスは、実際、数字を見た場合に、デフレでない状況をつくって、GDPを拡大して、企業収益を拡大し、雇用も増進するという様々な成果をもたらしてきたと認識をしています。しかし一方で、この間、企業が足下の利益の確保のために賃金や成長の源泉である国内投資を抑制をしてきた結果、長期的な日本の成長力が低迷をしてきたということ、これが表れてきたのも事実でありますので、それを最大の課題だと認識をして、強い危機感を持って現状を捉えているということであります。

 足下では、今年の春季労使交渉第四回の集計で引き続き五%を超える賃上げの数字が示されて、二年連続で企業の賃上げの動きが加速している。これは安倍総理が辞められた後の動きでありますので、この動きを大事にしていかなくてはいけないということで、投資も増えているので、この潮目の変化をしっかりと捉えて前進をしていこうというのが一般的な考え方であります。

 その上で、本改正案において、戦略分野国内生産促進税制ですとかイノベーション拠点税制、中堅企業の成長を集中的に支援する枠組みの構築、JICの運用期限の延長等の措置、こういった、現状に照らして必要だと思われる措置を講じることで国内投資を後押しするとともに、そうした投資の拡大につながっていくイノベーション、新陳代謝も促進をしていきたいと考えています。

鈴木(義)委員 バブルがはじけるときに、プラザ合意で、G7で、G6というんですかね、行き過ぎた円安で私たちの作ったものが売れない、じゃ、日本をとっちめちゃえといって、三十数年前に円高誘導した。当時、私の記憶が間違っていなければ一ドル二百四十円だった。七十五円まで落ちている。ということは、日本から外に出そうとすれば三倍の価格になってしまう。外国から入ってくるといったら三分の一の値段で、それを日本の消費者は、どっちを選ぶかといえば、安い方を選んできたんですよね。

 いろいろな要因が絡み合っているのは承知しているんですけれども、どうも、私は経済学を習ってきた人間じゃないんですけれども、自分たちが都合が悪くなるとぱっとゲームチェンジするんだね。今回もいろいろなことを言っていますよ。CO2の削減だ、地球温暖化だ何だといいながらも、結局、とどのつまり、ゲームチェンジをしないと自分たちの国の産業競争力を上げられない。それにちょっと追従してやっていかなくちゃいけない、法整備をしなくちゃいけないというのが今の日本の置かれている現状かなというふうに思います。

 先進国はGDPの伸び率がやはり余りこれから上がっていかないだろうと言う識者もいますよね。後進国だとか発展途上国と言われているところの方が経済成長率は上がる、でも、どうしても、日本を含めた、ヨーロッパ、アメリカも、そんなに急激な成長は見込めないだろう、だから、ぱっとゲームチェンジしたいがために、まあ、そうは言わないですよね。

 もう一つ。日本の高度成長期においても三重構造ということが言われた、経済成長を牽引する製造業の大企業と中小零細企業や農家との間で生産性や賃金に大きな格差があるという問題、現在でも同じような問題を抱えていると聞くんです。

 岸田内閣は所得再分配を経済政策の柱にしているんですが、賃金格差については、事後的な再分配政策を幾ら手厚く行っても、いつになっても同じような再分配政策から脱却できないということも聞きます。

 また、この三十年間、中小零細の生産性が低いから賃金が上がらないという言い方をする人もいますが、地元の製造業の経営者の話を聞くと、生産性を上げたくても元請から一日の注文が百個とか二百個しか来ないと。納期は三日後、承諾しなければほかに回す。一万個とか二万個のオーダーになってくると、みんな海外へ出ちゃうんだそうです。これは地元で聞いた話です。だから渋々仕事を請けると聞きました。これで、生産性を上げろ、ICTだ、ロボットだと言われても、導入する資金や人材はすぐにはそろわないというのを、私のお世話になっている地元の中小零細の製造業の方の話を私は受けております。

 また、ある大手の下請で、担当者といろいろ打合せをしてきたんですけれども、五千万の設備投資を受諾して設備をしたんだそうです。そうして、やっと仕事をもらえるようになったんですね。三年目で、お客様のニーズがなくなったからもう仕事は出さないと言われて愕然とした、もう取引はそこで終わり、五千万の投資をして回収できないと。これも地元から聞いた話です。

 現場の声を申し上げればまだまだ枚挙にいとまがないんですけれども、大臣は、さきの本会議における私に対する答弁に対して、本改正案は、中小零細事業者を淘汰させることが目的でなく、中堅企業等にグループ入りしたり中小・小規模事業者の収益力の向上等を通じて、幅広い中小・小規模事業者の成長に資すると考えていらっしゃるというふうに述べられたんですね。

 格差の根本原因の認識と古くからしみついた商習慣、これがいつも問題になるんですけれども、これを是正しなければ、やはり、せっかく法律の改正をして、強いところにお金を集中したり、いろいろなことをやってもらおうというふうに今回の法律を出してきても、それを支えているもう少し小さい規模のところがへたってしまったのではうまくいかないんじゃないかという考え方なんです。それに対する方策をお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、先日の本会議での私の答弁は、この法案自体は中小企業政策ではありませんので、その波及について言及をさせていただいたということであります。

 御指摘のように、やはり、中小企業をめぐる取引の中には、いろいろな商慣行があったり、適正にその価格転嫁が行われないなど、そういうところにも着目した政策が私は必要だろうというふうに思っています。

 それで、きちんとした価格の交渉ができるようにしなくちゃいけないという問題意識では、もう委員御案内だと思いますけれども、定期的に価格交渉を行い、労務費を含む価格転嫁を進めていく、そういった取組をサプライチェーン全体に根づかせていかなくてはいけないということで、毎年三月と九月を価格交渉促進月間と位置づけ、企業リストを公表したり、状況が芳しくない経営トップに対しまして事業所管大臣名での指導助言を行うなど、これは本当にかつてない思い切った措置を講じてきています。

 中小企業の賃上げ交渉が本格化している三月下旬以降、発注側である大企業の業界団体の経営トップに集まっていただいて、私自身が直接、価格転嫁を要請したりしています。

 また、下請Gメン、これも、先生と同じように、全国の中小企業から取引実態を伺ったりしています。そこでは、例えば、支払い期日が長いですとか、理由なく代金を減額されたですとか、それから、契約内容が書面で交付されないですとかノウハウが流用されたなど、様々な声を聞いております。問題点があれば、業界ごとの取りまとめを行って、業界全体での取引慣行の改善、こういったものも促してきています。

 これらの取組のほかにも、手形等の支払いサイトの百二十日から六十日への短縮ですとか、現金での支払い推進ですとか、下請代金の額や支払い期日等を規制する下請代金法の執行強化などにも取り組んでいます。

 こうした対策を粘り強く継続をしていくということが大事だなと思っていますので、引き続きしっかり取り組んでいきたいと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 であるならば、今回の法律の改正で認定をする事業者が幾つも出てきます。そのときに、今大臣がおっしゃったことを履行している、要するに、やっていない企業を認定してもらわなければ、同じことが繰り返されると思うんです。それは約束してもらえるんですか。最終的には主務大臣が認定するということになっているんです。幾つもの項目で認定事業者という言葉が出てきます。だから、そこの中にそれがきちっと、やはり国内の事業者も、価格転嫁も含めてやっていかれる事業者を認定するということでよろしいんでしょうか。

井上(誠)政府参考人 この法律案におきまして、中小・中堅企業ですとか、あと税制措置の認定基準につきましては、今後具体的に検討してまいりますけれども、委員御指摘の点も含めて検討していきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ある先輩の議員が言っていました。検討、検討って、検討使じゃないんだから、検討ばかりしたって結果が出なけりゃ意味がないだろうということなんですけれども、是非、大臣の答弁に基づいて再質問しているので、重く受け止めてもらいたいというふうに思います。

 また、当然といえば当然なんですけれども、ある識者は、物価を上げれば経済成長率が高まるという理由で金融緩和を行ってきたと。ここのところでゼロ金利はやめる決断を日銀がしたんですけれども、マイナス金利、国債を大量に発行して社会にマネーを大量に供給するヘリコプターマネーを実施する、リフレ派の経済理論で物価上昇率二%を目標に経済政策が取られてきた中で、ロシアのウクライナ侵攻から原油や農産物の価格が急騰したため、今ほど賃金を上げるということを当時は言っていなかったと思うんですね。賃上げ賃上げと言うようになったのは、ここ二、三年ぐらい前からだと思います。物価が上がったから賃上げしてもらわないと生活が苦しくなるということなんだと思います。

 しかし、本来は逆で、高付加価値産業が成長するから、その結果として物価が上がるということも聞きます。

 日本とアメリカの財価格とサービス価格の推移を示すグラフを目にしました。一九七〇年から二〇二〇年のグラフで、財価格の動向について日米で大きな差が見られないのは、財、特に工業製品は貿易を通じて同一製品の同一価格化が実現されるから当然のことだろう、そして、工業製品価格が一九九〇年代中頃以降ほとんど上昇していないのは、新興国工業化の影響が大きく、特に、中国がこの頃に本格的な工業化に成功し、世界の工場となって安価な工業製品を世界中に大量に供給したことの影響が大きい、この影響は日本もアメリカもほぼ同じように受けており、日米間で大きな差が見られるのはサービスの価格であるというものなんですね。

 工業製品価格が上昇していないのにアメリカの消費者物価が上昇するのはサービス価格が上昇しているからであり、逆に、日本のサービス価格は一九九〇年中頃までは顕著に上昇したんですが、それ以降は頭打ちになり、その後ほぼ一定になった。消費税の影響を考えれば低下したことになるんじゃないか。

 アメリカで一九九五年以降もサービス価格が上昇したのは付加価値の高いサービス産業が成長したからだ、その産業の中で、金融、保険、不動産賃貸、さらに情報、専門的、科学技術的サービス、経営などが顕著に成長していると聞きます。サービスには貿易の対象とはならないものが多く、中国工業化の影響もない、アメリカでは付加価値の高いサービス産業の成長があり、それがアメリカのサービス価格を引き上げ、消費者物価全体を引き上げたと聞きます。

 過去の成功体験に浸るより、日本社会の産業構造の変革がなければ、健全な物価上昇はあり得ないし、持続的な賃金上昇を望めないというふうに考えるんですけれども、この解決策が、ずっと資料を読み返しても、どっちかというと製造業に力点を置いたような政策になっているんですね。

 今まではそれでよかったんでしょう。でも、この三十年、四十年の間、サービス産業に従事する人の割合が全体の七割なんです。一次産業は二%、製造業である第二次産業に従事している人は二七から二八%、七割がサービス産業。私たち政治家はサービス産業に入るかどうか分かりませんけれども、公務員の方もサービス産業です。運送でも、床屋さんでも、パーマ屋さんでも、飲食店でも、小売店でも、みんなサービス業。金融も保険も。ここが一番日本が成長できていないところだというふうに私は感じるんですけれども、今回の法律の改正でその問題の解決を図ることが可能なのか、大臣にお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 この法案はサービス業をストレートに対象にしているわけではないんですけれども、御指摘のように、GDPに占めるサービス業の割合は五十年で増加をし続けていて、足下ではもう七割になっているということでありますので、投資も物価も賃金も伸びる成長型経済への移行に向けて、当然、サービス業の高付加価値化、適正な価格設定というもの、これも重要になります。したがって、経済産業省としても、サービス業の付加価値向上に向けて、省力化投資を始め、DXの推進などに取り組んでいるところであります。

 この法案は、三十年ぶりの高水準の賃上げ、国内投資という潮目の変化を持続化し、日本経済を成長軌道に乗せていくための国内投資の拡大に向けて、戦略分野の投資環境整備とイノベーション及び新陳代謝の促進を図るものであります。

 ただ、例えば本法案で措置する中堅・中小グループ化税制というのは、サービス業における付加価値向上にも寄与する面があります。例えば、有料老人ホームサービス事業を営む中堅企業が、同業の中小企業をMアンドAして親会社が有するDX技術を共有することで、MアンドAした施設の入居率が七割から九割に高まったという事例もありますので、そういう使い方も中堅企業者対策としてはあるんだろうと思っています。

 経済産業省としては、本法案による措置も含めまして、イノベーションや新陳代謝を促進をしていきたいと思っています。これによりまして、サービス業も含めたDXを始めとする新たな取組によりまして、最終的には持続的な賃金上昇につながっていくように努力をしていきたいと思っています。

鈴木(義)委員 よろしくお願いします。

 元々日本は物を言わぬ株主がほとんどだったというふうに言われているんですね。事例を挙げるのは大変失礼なんですけれども、西武鉄道やカネボウ、ライブドア、オリンパスなど、不祥事が相次いだこともあり、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンスが導入され、二〇一五年がコーポレートガバナンス改革元年と言われて、その年の六月から東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを策定して運用が始まった。

 東証は、コーポレートガバナンスを、会社が、株主を始め顧客、従業員、地域社会などの立場を踏まえた上で、透明、公正、迅速果断な意思決定を行うための仕組みというふうに定義したんです。しかし、実際は、アメリカの企業と同じように、日本社会でも株主還元が行われ、要するに、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの導入で恩恵を受けたのは、従業員でも顧客でもなく、主にファンドと富裕層で構成されている株主ばかりだ、こういうふうに聞くんです。

 だから、今回の、成長を助けるためにいろいろなところからお金を出して、成長を支えていく、もっと大きく伸ばしていくというのはいいんですけれども、最終的に株主還元を目的にしていこうとすれば、この法改正で、もうかっている企業の利益を海外に流出することにつながらないかという危惧があるんです。

 日本で一生懸命知恵を出して汗をかいたら、やはりその利益、果実は、日本国内で次の世代を教育なり育てていく原資にするということですね。それを、ぱっと来て、取られて、おいしいところだけ持っていかれちゃったというような制度でこの競争力強化法を運用されてしまったら、じゃ、何のためにやってきたのということに私はつながってしまうんじゃないかと思うんですが、その点についてお答えいただきたいと思います。

井上(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この法案ですけれども、国内投資の促進を目指すというものでございます。委員御指摘のとおり、現在、日本の上場企業の株式保有割合は、外国人投資家、外国法人の割合が高くなってきておりまして、約三割となっております。多様な投資家から資金調達がなされている、その投資に対して、企業が獲得した利益の一部が還元されているというような状況でございます。

 大事なことは、我が国が成長型の経済に移行していくために、こうした利益とか、あと株主から調達した資金を国内投資に、しっかり投資をしてもらうということで、その果実もしっかり国内に還流させていくということが大事だというふうに認識しております。

 この法案では、国内投資促進ということで、戦略分野国内生産促進税制は、戦略分野への国内での新たな設備投資を促進する、生産、販売量に応じた大規模、長期の減税措置でございますし、中堅企業につきましても、国内の複数の中小企業のMアンドA等による成長を後押しする枠組みということでございまして、海外拠点への投資とか、あと海外企業のMアンドAは、制度上、対象外としていくという考え方でございます。

 引き続き、この法案だけでなく、予算、税制等の様々な政策ツールを組み合わせつつ、企業における大胆な国内投資を促進していきまして、賃上げ等という形で国内経済への裨益につなげてまいりたい、こういうふうに考えております。

鈴木(義)委員 時間が来たので再度お尋ねすることはしないんですけれども、やはり、言葉は適切じゃないんですけれども、いい人をずっとやり続けてきても最後は生き残れないんじゃないかと思う。悪いことをしろと言っているんじゃないですよ、やはり、したたかにこれからの産業育成をしていかないと日本の企業は残っていかない、そう申し上げて、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十三分散会


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