衆議院

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第13号 令和6年4月26日(金曜日)

会議録本文へ
令和六年四月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岡本 三成君

   理事 小林 鷹之君 理事 鈴木 隼人君

   理事 松本 洋平君 理事 山下 貴司君

   理事 荒井  優君 理事 山岡 達丸君

   理事 守島  正君 理事 中野 洋昌君

      井原  巧君    石井  拓君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      加藤 竜祥君    神田 憲次君

      国光あやの君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    高木  啓君

      冨樫 博之君    中川 貴元君

      仁木 博文君    福田 達夫君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    宗清 皇一君

      吉田 真次君    和田 義明君

      若林 健太君    大島  敦君

      落合 貴之君    小山 展弘君

      重徳 和彦君    田嶋  要君

      山崎  誠君    市村浩一郎君

      小野 泰輔君    山本 剛正君

      吉田 宣弘君    笠井  亮君

      鈴木 義弘君

    …………………………………

   経済産業大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣政務官    石井  拓君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            川上 大輔君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            新発田龍史君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         南   亮君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席スタートアップ創出推進政策統括調整官)      吾郷 進平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           菊川 人吾君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井上誠一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           荒井 勝喜君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林  出君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西村 秀隆君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          山下 隆一君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官)          吉田健一郎君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          畠山陽二郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 松山 泰浩君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    滝澤  豪君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    飯田 健太君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         今井  新君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     仁木 博文君

  山際大志郎君     高木  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     大串 正樹君

  仁木 博文君     大岡 敏孝君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     山際大志郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)


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     ――――◇―――――

岡本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官川上大輔さん、金融庁総合政策局参事官新発田龍史さん、経済産業省大臣官房総括審議官南亮さん、経済産業省大臣官房首席スタートアップ創出推進政策統括調整官吾郷進平さん、経済産業省大臣官房審議官菊川人吾さん、経済産業省大臣官房審議官井上誠一郎さん、経済産業省大臣官房審議官荒井勝喜さん、経済産業省大臣官房審議官田中哲也さん、経済産業省大臣官房審議官小林出さん、経済産業省大臣官房審議官田中一成さん、経済産業省大臣官房審議官浦田秀行さん、経済産業省大臣官房審議官西村秀隆さん、経済産業省経済産業政策局長山下隆一さん、経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策統括調整官吉田健一郎さん、経済産業省産業技術環境局長畠山陽二郎さん、資源エネルギー庁次長松山泰浩さん、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹さん、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長久米孝さん、特許庁総務部長滝澤豪さん、中小企業庁次長飯田健太さん、中小企業庁事業環境部長山本和徳さん及び国土交通省大臣官房技術審議官今井新さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。重徳和彦さん。

重徳委員 立憲民主党、重徳和彦です。

 今日は四十分ほどお時間をいただいております。ありがとうございます。

 最初に、齋藤大臣、大変重要な取組を進めていただいております。三月五日に立ち上げられました町の書店を振興するプロジェクトチーム、大臣はそのときの記者会見でこうおっしゃっています。

 町中にある書店は、多様なコンテンツに触れることができる場として、地域に親しまれており、創造性が育まれる文化創造基盤として重要だ、こうした書店が近年激減していて、約四分の一の自治体から書店が消えている、これは何も一中小企業の問題ではなく、まさに日本人の教養を高める一つの基盤だということであります。海外でも、書店の減少について危機感を感じている国も多々出てきていて、フランスや韓国でも同じ問題意識で取り組んでいる、我が国としてどこまで何ができるかしっかりやっていきたい、このような決意を述べられています。

 これは経済産業省の取組ではありますけれども、本質は、経済的に小さな書店が立ち行かなくなることを支えていくということ以上に、日本人の教養というものを読書に求めるということだと思います。私は、これは国力そのものだと考えております。

 今、ただ、現状は、小さな書店はもう、コストのかかる店舗を閉めて、それで外商といいましょうか営業をかけて、いろいろなところに本を売りに行く、こういうところに専門特化して仕事をしているようなところも出てきております。

 このことに関しまして、同じような問題意識を持っておられる有識者のお一人として、藤原正彦先生がいらっしゃいます。私は、二〇〇五年の「国家の品格」以来、藤原先生の大ファンでありますとともに、二〇二〇年に「本屋を守れ 読書とは国力」という本を出されておりますので、今日はそれを資料にして、皆さんに配付をさせていただいております。

 重要な部分を、線を引いてありますので、ちょっと読み上げてみたいと思います。

 「読書こそ国防である」というんですね。かつて、欧米列強が幕末の日本に来たときに、識字率九割以上の日本人を見て、この教養ある日本を植民地にすることはできないと断念をしたのではないかということをおっしゃっています。

 「町の本屋こそ文化の拠点であり、インターネットで情報は得られても知識や教養は絶対に育たない、」「私の提言は、インターネットでの書籍流通に規制を加えて町の書店を救わなければならない、というもの。」だと。「本の価値をつり上げるばかりでなく、」このネット販売がですね、「本の価値をつり上げるばかりでなく、」値段をつり上げるばかりではないという意味ですけれども、「出版社の価格決定権や編集権まで握り、アマゾンの気に食わない本は売らないなど、思想統制につながりかねません。」というんですね。

 つい先日も、公正取引委員会がグーグルを行政処分しました。こういったネットの巨人というものはいろいろなことを支配的にやろうとしますので、こういった懸念も決して見くびってはならないことだと思います。

 「日本でも知識人や各層のトップが立ち上がり、国会議員を巻き込んでスマホ規制やネット書店規制の運動を立ち上げるべきでしょう。」「郊外に書店が増えるのは結構だと思いますが、本当に重要なのは駅前にある小さな書店のほうです。」というわけですね。「読書に関する健全な罪悪感」、つまり、本を読まなきゃ、そういう「罪悪感を老若男女に植え付けること。これこそ、駅前の小さな書店がもつ最大の存在意義です。」「結果として教養を身に付けるチャンスを逸し、大局観のないリーダーやエリート、そして国民ばかりになってしまった。」ということもおっしゃっています。

 さらには、「小学生から教科書も読まず、自由にタブレット画面に没頭させたら、本の世界に対する憧れなど生まれようがない。「本嫌いの子供を量産する」という亡国の教育に、文科省も教師も親も命懸けで邁進しているのです。」というわけですね。

 これに対しては、まあ紙じゃなくてもいいんじゃない、電子書籍があるんだからという向きもあるかもしれませんが、これはテレビでもやっていましたけれども、文科省が二十一歳の若者を対象に、令和四年、調査しています。この一か月で読んだ紙の書籍がゼロ冊という人が六二%なんですね。では、電子書籍を読んでいるかというと、この一か月で読んだ電子書籍ゼロ冊というのが七八%。紙も読んでいないが、電子書籍はもっと読んでいない、こういうことなんですよ。という文科省の調査もあります。

 続けます。

 「人間にとって、情報がいくら増えようと無意味であることを知るべきです。」「人間は本を読むことで初めて孤立した情報が組織化され知識となり、体験や思索や情緒により知識が組織化され教養となる。」ということです。

 これはちょっと面白いことを言っているんですけれども、AIというものを軽視していると言うんですね、藤原先生は。「AIに毎分一億句の俳句をつくる能力はあっても、そのなかで「いちばん優れた句」を選ぶことはできない」んだということですね。なぜかというと、その後、そのよしあしを判断する情緒というものが必要なんだと。ちょっとアンダーラインは引いていませんけれども、人間の深い情緒は、究極的には人の死に結びついています、「有限の時間ののちに朽ち果てる、という根源的悲しみがすべての情緒の中心にあります。したがって、逃れられない死のないAIは永遠に深い情緒を身に付けることができない。だから大したことはない、」だから優れた俳句を選ぶことができない、こういう話なんですよね。ということでございます。

 かなりのことを申し上げましたが、教養というものが、本当に資源のない、この経済産業委員会でいつも言われる、資源のない日本において、唯一、人間というものが、人材というものが日本の資源であるとよく言われることであります。

 経産省のこの書店振興プロジェクトチームの問題意識、取組について、御説明をいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、重徳議員に、この書店振興PTについて御質問いただきまして、本当にありがたく思っています。

 藤原先生に限らず、今回、このPTのことが報道されましたら、実に多くのマスコミあるいは電話等での問合せが大変殺到しておりまして、私は、やはり世の中の人も同じ問題意識感を多くの人が持っていたんだなということを改めて感じました。

 確かにデジタル書籍で本を読むということもできるわけでありますけれども、例えば、ちょっと感覚的なお話になりますけれども、「新・平家物語」全十六巻をタブレットで読むかなということなんかを考えますと、やはりデジタル書籍というのは、リアルな本の補完にはなっても代替にはならないんじゃないかなというふうに思っているところでありますので、私は、書店には書店の持ち味、デジタル書籍にはデジタル書籍の持ち味、そして図書館には図書館の持ち味があって、その三つが共存することによって、日本人の教養力とか社会の文化力というものが維持強化されていくんだろうと思っているんですが、一方で、本屋だけがどんどんなくなっていくということで本当にいいんだろうかというのが問題意識の出発点なわけであります。

 本年三月五日に省内に部局横断のプロジェクトチームを立ち上げたわけでありますけれども、様々な問題があることは私も承知をしていますが、まずは書店経営者など皆様の声をよく伺うことが重要だと考えていますので、先日は書店経営者の皆様にお集まりいただき、車座ヒアリングを実施をしたところであります。

 書店をめぐる課題や問題点、これはいろいろありますので、これを整理した上で、どういう対応ができるか、経済産業省としてできるところは何か、こういったことを見極めた上で、実行に移していきたいというふうに考えています。

重徳委員 経産省としての取組は大臣が引っ張っていっていただきたいと思いますが、経産省だけの課題というより、もっと大きな課題であるようにも思います。このプロジェクトチームを機に、これは議員側の責任として、立法府の役割としても何か取組をしなければならないんじゃないか。フランスでは、小さな書店を守るために、ネット書籍販売で値引きをしたりすることを禁じる、無料配送を禁じる、こういう法律があるとも聞いております。何かしらの立法も必要になるんじゃないかな、こういうことも思っておりますので、与野党各議員、皆さん方にも、いろいろな輪を広げていくことができればと思っております。

 さて、産業競争力強化法について質問をさせていただきます。

 まず、全体的な話として、アメリカではIRAという法律があります。これと今回の産業競争力強化法案を比べますと、全体的に比べると、日本の今回の法案は、例えばSAFに関して言えば国内設備、国内での設備投資が対象になる、そして新増設が対象となるということですが、アメリカでは新増設ではなくてもよい、税額控除が適用されると聞いております。それから、税額控除枠の繰越しというものも、日本は原則四年なんですが、アメリカでは二十年と聞いております。さらに、アメリカ特有のタックスクレジットという形で税額控除枠というものを他に売っていくということもできる。

 こうした違いがあると聞いておりますが、こうした違いについて、あるいは、そのほかにも大きな違いがあるのかということをお聞きします。やはりフェアな、同じ土俵に立たなければ、こういった産業競争力というものはまともに競争できないと思いますので、その土俵を整えるのが政府の役割だと思います。いかがでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の米国インフレ削減法、IRAを始めといたしまして、世界各国は、各国それぞれの戦略分野における投資促進策を打ち出しております。

 本税制につきましては、我が国における戦略分野のうち、特に生産段階のコストが高いなどの理由から投資判断が困難な分野について、生産段階における税額控除措置を創設するものでございます。

 御指摘のIRAに基づく生産段階の税額控除措置と本税制の措置内容については、生産、販売量に応じて税額控除を行うという点や、二十年という御指摘がございましたが、実は米国のIRAも、多くの分野で定めている控除期間は十年間でございます。この適用期間などは比較的同様ということだと思いますが、その一方で、それぞれの国の産業構造や強み、さらには既存の支援策や制度などを踏まえて、対象としている物資、そして物資ごとの税額控除額、繰越期間の長さ、そして、まさに御指摘のとおり、米国においては、一部の物資については税額控除を他社に移転できるといったような点もございまして、こういった点は違いがあるというふうに承知をしております。

 投資促進策には様々な手法がございまして、各国とも自国の産業構造に合わせた手法を採用してございます。我が国としても、日本の産業構造の特徴や強み、分野ごとの特徴、さらには既存の支援策そして制度も踏まえまして、効果的に講じていくことが重要だというふうに認識してございます。

 我が国のGX促進政策については、本税制と併せましてGX経済移行債を活用した二十兆円規模の投資促進策、さらには、規制そして制度面での対応といたしまして、再エネ導入を促進するFIT、FIP制度、そして成長志向型カーボンプライシングの導入を行っていくこととしております。これらを併せまして、米国にも決して見劣りしない内容というふうになっていると認識してございます。

 このように様々な政策を効果的に組み合わせることで、国内投資を強力に引き出して、戦略分野における世界的な政策競争にもしっかりと対応してまいりたいというふうに考えてございます。

重徳委員 次に、SAFについて質問させていただきます。

 この法案において国産SAFを支援するということでありますが、ちょっと確認的な質問なんですけれども、税額控除が適用される条件というのは、あくまで国内で生産した場合に限るということなんですね。例えば、日本の事業者、日系の事業者が国外にSAFの製造プラントを新増設、こういう事例というものは税額控除の対象にはならないということなんでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねを頂戴しました戦略分野国内生産促進税制、今回の産業競争力法の趣旨でもございますけれども、我が国における戦略分野のうち、特に生産段階のコストが高い等の理由から企業の投資判断が容易でない、国内投資が容易でない分野につきまして、国内での投資判断を強力に引き出そう、そういう観点から生産段階における措置を講じるものでございます。

 そういう意味で、今お尋ねがございました、日本の事業者が日本国外にSAFの製造プラントを新規に建設してSAFを生産した場合につきましては、国内での投資を促すための本税制について、税額控除の対象とはしていないものでございます。

重徳委員 国内投資を誘導するということではありますが、ちょっと更問いになりますけれども、二〇三〇年までにこの航空燃料、SAFを一〇%まで引き上げるという目標を立てておられると思いますが、今の枠組みでちゃんと達成できるという見通しを持って、国内に限るという考え方だという理解でよろしいでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 このSAFの利用の促進ということは、カーボンニュートラルの実現のために非常に重要な要素の一つだと考えてございます。この税制上の措置において、国内製造装置が整備され製造が進んでいくこともございますけれども、この制度に限らず様々な制度等を通じまして、若しくは支援措置を通じまして、総合的な形でこれを推進していくということになろうと考えてございます。

重徳委員 では、ちょっとここで大臣にお尋ねしたいと思っています。

 SAF、バイオで航空燃料を作っちゃおうという話なんですけれども、いろいろなものから、原材料からSAFは作れると聞いております。廃油とか、あるいは植物性といいましょうか、例えばサトウキビなんかからも作れるというふうに聞いています。

 それで、もし世界的にSAF製造競争みたいなことが起こったときに、原材料を集められるかどうかというところが一つの焦点になると思います。日本の場合はもう今既に、海外からかなり原材料を輸入しないといけない、こういう議論になっているようであります。

 そういう中で、今言ったサトウキビなどを海外で量産させて、増産させて、それをSAFの原料にしよう、こういうことにもなってくる動きもあると思うんですが、これは、大臣、農水大臣も経験されていますので、心情的な面も含めて、農家の方々に、食べ物を作ってくれ、これ燃やすから、燃料にするからというような、こういうやり方というのはなかなか、各国の食料自給とか食料政策にもよるのかもしれませんけれども、どうしても、お百姓さんの気持ちになると、立場になると、やはり胸が痛むというか心が痛むという部分があると思います。

 本来食べ物、人間の口に入るものでありながら航空燃料に使うみたいな、そういうやり方ということそのものについて、お考えをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 大事な御指摘だと思います。

 まず、SAFの利用に当たりましては、国際的にも食料競合のない非可食原料、これは食べない原料という意味ですけれども、非可食原料の利用促進や、原料生産から消費までのライフサイクルにおいて様々な環境、社会的影響を考慮するなどの持続可能性を遵守することが求められています。

 非可食原料の利用については、我が国の民間事業者の取組として、例えば既に東南アジア等の地域で非可食の原料を海外で栽培をしてSAFの原料として活用する取組が行われているケースがあります。

 御指摘の点ですけれども、当然、食料政策に留意をして、生産量やコストなどが見合えば、国産農産物を地産地消のSAF原料として活用することも可能でありますし、既に関係事業者に対してヒアリングを行うなど、農林水産省とともに連携して取り組んでいるところであります。

 強引にやることは、当然、農家との関係もありますので、私も大臣経験者でもありますので、それは適切ではないと思っていますが、耕作放棄地も増えていますし、生産コストのかからない方法での栽培というのも可能だろうと思っていますので、よく農林省とは連携をしながら取り組んでいきたいと思っています。

重徳委員 もう一つ、農村的な観点からの質問をさせていただきます。

 このSAFというのは、てんぷら油で飛行機を飛ばすなんと言われてちょっと面白い話題提供にもなっているわけですが、基本的に、今すぐ想定されるのは、飲食店とか、まとまった廃食油が集めやすいところからまずは集める、これは当然のことなんだと思いますが、家庭ごとの使用済油というものも全部集めればまあまあな量になる。飲食店は四十トンに対して家庭用も十トンぐらいは出る、まあ全部かき集めればでしょうけれども、という数字もあります。なので、一部のスーパーなんかでは地域と連携して集める、回収する動きもある、そういうような記事も出ております。

 私は、エネルギー、とりわけバイオマス分野のエネルギーというものは、十年、二十年前から、地域ごとの何か自給自足的な、地域循環ともいいます、あるいは地域分散型ともいいます、地域ごとでエネルギーを回すというようなイメージとともに語られていた面があると思うんですね。だけれども、なかなか全国的に物すごく進んでいるとは今言い難い状況だと思います。

 いろいろな理由があると思うんですけれども、ちょっと想像してみれば分かるように、各地に点在している、家から出るごみとか、あるいは農業のわらとか畜産のふん尿とか、そういうものはもう本当に点在していますから、それを日々集めるということ自体、なかなか大変なことになります。だけれども、さらに、それを集めた上で、各自治体ごとに何か発電所を造って、それで電力を供給するとか、場合によっては熱と一緒に熱電併給でやるなんという、そんなシステムを千七百もある各自治体ごとに、まあ、やってよと言ったってなかなかやれないと思うんですよ。

 そこで、今回のような国家的プロジェクトでもあり、また大企業、石油の元売のような、特定少数の資本力もある大企業がSAFの原材料を集めますよという、集約的なそういう出口があれば、どこの自治体も原材料を集める、集めてどこかへ運ぶというところまでできれば、あとは大企業さんがSAFという非常にクリーンな燃料に変えてくれるんだと。何らかの対価がもらえるのであれば、それは地域が潤うということにもなる。こんなところが第一歩になりやしないかなというふうに思うんですね。

 いわば毛細血管からがあっと集めてくるわけなんですけれども、その毛細血管の仕組みがきちんとできれば、今度は、いずれ将来的には、各自治体ごとに出口をそれぞれつくって、それぞれ発電するなりそれぞれ熱電併給するなりして、地域づくりに分散型で生かしていく。こんなふうな段階的な取組の大きな第一歩というふうに、このSAFの、今回の法案をきっかけとしたシステム構築というものができるんじゃないかなというイメージを持っているんですが、大臣、どんなイメージを持っておられますか。

齋藤(健)国務大臣 確かに、その毛細血管の部分が非常に重要だと私も思っています。

 将来的にSAFの製造、供給に向けましては、安定的ということと安価、そういう原料の確保というのが重要になります。実は、既にSAFの製造事業者が、御指摘のように、地方の自治体や飲食チェーン、あるいは廃棄物処理事業者との連携を進めて、原料となる廃食用油や都市ごみなどの効率的な回収に向けた取組が広がってきています。

 昨年五月に、国交省と共同で立ち上げた官民協議会がございまして、そこにおいても、農林水産省や環境省とも連携をしまして、御指摘のように、原料の確保を含めたサプライチェーンの構築に向けた課題解決に取り組んでいるところであります。今後、SAFの原料候補になり得る国産原料を取り扱う関係者をお招きして、事業化に向けた課題、これを抽出をしていこうということを検討しています。

 先行する取組がありますので、それなども参考にしながら、引き続き、国産原料の活用も含めたSAF製造、供給体制の早期確立に向けて、取組を進めてまいりたいと考えています。

重徳委員 では、次々行きます。次は、自動車についてです。

 自動車、EVの製造、販売を支援するという仕組みが今回の法案に載っております。一方で、EVは課題も多いですね。四月二十三日日経新聞一面に載っておりました、日本とヨーロッパでEV向けの電池の再資源化を共同で行おう、こういう記事でございました。要するに、電池にはレアメタルがたくさん使われておりますけれども、これは供給元がやはり中国がかなり大きく占めておりますので、一旦車に積んだ電池はもう再資源化する、域外に流出するということを防止するということが大事であろうと。

 本当に、リチウムに関して言っても、加工、精製は中国で六五%行われている、コバルトの加工、精製は中国で七六%行われている、グラファイト、黒鉛は、採掘が中国で七〇%、加工、精製は中国で一〇〇%、これはIEAによるとという報道でありますが、このような状況ですので、経済安全保障という観点を重視しなきゃいけないというふうに思います。

 カーボンニュートラルも大事なんですけれども、だからこそ、日本はマルチパスウェーと言われる多様な選択肢というものがそういう意味でも必要なんだろうというふうに思って、常々私も申し上げているわけであります。

 通告ベースでいうと一つ飛ばしますけれども、ちょっとドイツの動きに私は注視しております。

 というのは、まず、去年の三月にEUの方針を転換させたのは、基本的にドイツであろうと見ております。すなわち、二〇三五年以降にエンジン車の新車販売を禁止するというEUの方針に対しまして、そこは、合成燃料、e―フュエルの使用を条件として、エンジン車の販売も認めようじゃないか、こういう、方針を転換しましたね。このときにドイツがいろいろと動いたんじゃないかと思うんですけれども、その辺り、経産省はどう分析されていますか。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 ドイツは、乗用車販売台数で世界第二位のフォルクスワーゲンを始めとしまして、世界的な自動車メーカーを擁し、主要輸出品目に自動車が含まれるなど、我が国と同様に、自動車生産が基幹産業の国でございます。

 ドイツにおいては、まず、EU全体として、二〇三五年までに新車販売でEV、FCVの割合を一〇〇%とする目標を掲げつつ、ドイツ国内においては二〇三〇年までにEV千五百万台の普及を目指すなど、EVをカーボンニュートラル実現に向けた主要な手段と捉えていると認識しております。

 一方で、委員御指摘のとおり、エンジンを搭載しました車両につきましても、合成燃料のみで走行する車両の登録を二〇三五年以降も実施できるようにするとの方針で、欧州委員会と交渉してきたものと認識しております。

 日本も、EVだけでなく、水素や合成燃料も含めた多様な道筋、マルチパスウェーを通じて、脱炭素の実現を目指す立場でございます。合成燃料の活用に向けては、ドイツ主催の合成燃料の国際会議への出席や、閣僚級による意見交換などを実施してきたところであります。引き続き、ドイツとの連携を深めてまいりたいと考えております。

重徳委員 もう一点、ドイツの動きについてどう分析しているかをお聞きします。

 去年の年末、十二月でEVへの補助金が突如として、ちょっと違う理由もあってというふうに聞いていますが、ドイツが打ち切ったと。これは結構大きいですよね。購入した個人に対して、日本円でいうと五十万円から七十万円ぐらいの補助金を出していたのを打ち切ったということで、当然ながら、EVの販売台数がドイツにおいて激減していると聞いております。

 この動きについて、どう分析されていますか。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 ドイツにおける足下のEV販売台数は、昨年十二月、前年同月比約四八%減、本年の第一・四半期は前年同月比で約一四%減であったと承知しております。

 これは、コロナ対策予算を気候変動対策に転用することが違憲で無効である、この憲法裁判所の判決を踏まえまして、昨年十二月に、当初の予定より一年前倒しで、EVの購入補助金が突如として打ち切られた、それによる影響が多分にあると考えております。

 他方で、ドイツの新車販売に占めるEVの比率は、昨年、二〇二三年は一七%と世界平均を上回る水準であるほか、補助金廃止の影響を受けた二〇二四年の第一・四半期におきましても、一〇%と一定の水準を維持しております。

 ドイツ政府の政策については、二〇三〇年までに保有台数でEV一千五百万台、充電インフラを一千万基普及させるという従前からの目標に変更はございません。同政府として、EVの普及を引き続き目指す大きな方向性に変化がないものと考えております。

重徳委員 確かにそうなんですね。

 メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス氏も、ちょっと柔軟な体制を取るというようなことを言っています。モビリティー転換の速度は顧客と市場の条件が決めるものであって、無理な進め方は難しいが、しかし、将来はバッテリーEV一〇〇%を目指すんだということを引き続き言っております。フォルクスワーゲンも、そして欧州自動車工業会も同様に、後戻りはあり得ないというようなことを言っていますので、EVに関して前に進めていくという方向性は少なくとも現時点では変わらないんだろうと認識をしております。

 一方で、ドイツを中心に、政治的にもいろいろな動きがヨーロッパにおいてはありまして、今、ドイツでの最大野党、キリスト教民主・社会同盟、CDU、CSUというんですけれども、そこでは、内燃機関の新車販売禁止の方針を撤回すべしというようなことを言ったり、そして、今年六月には欧州議会の選挙がありますが、このCDU、CSUが所属しております欧州人民党というところが、中道右派と言われる政党ですが、内燃機関の車の禁止措置の撤回を求めていくのではないかという観測もあります。

 大臣にお聞きしたいと思います。

 EUの中でも、非常に前向きにEVを進めると言っているEUの中でも、ドイツは、今言ったような意味でちょっと違うスタンスを取っていると思います。そして、産業界も基本的には前向きにEVを進めようと言っておりますが、政治的には、いろいろな思惑もあってブレーキをかけようとしている勢力もある、こういったことであります。

 しかし、大事なことは、その時々の流れがどうこうということ以上に、日本とドイツの産業構造で共通する部分が多い、自動車産業や鉄鋼とか、第二次産業がかなり多い、製造業が多いという点において共通するところが多いと思います。ですので、専ら、EU、アメリカ、日本、中国なんて大ぐくりにEUは言われますが、より、EUの中でもドイツとの連携といいましょうか、情報共有といった、心合わせといったものをしっかりとやっていくことは、日本にとってプラスになることが多いんじゃないかなと考えております。

 大臣、どのようにドイツという国を見ておられますか。

齋藤(健)国務大臣 ドイツは、日本と同様、製造業が名目GDPの約二割を占めておりまして、しかも、主要な輸出品目が自動車などの輸送機械を始めとした機械類であるという点、日本と共通点があります。

 この共通点も踏まえまして、日本とドイツの間では、主要製造産業の課題や対策について議論する日独産業政策対話など、製造業を始めとする産業協力が行われています。例えば、航空機、船舶、自動車といった運輸分野の脱炭素化に向けましては、合成燃料も選択肢の一つとなり得るという点で、日本もドイツも共通の立場であると理解をしています。

 こうした中で、昨年九月にドイツで行われました合成燃料に関する国際会議には、日本も参加をして、合成燃料の認知度の向上ですとか国際ルールの整備等に向けて、継続的に議論を進めていくことについて確認をさせていただいています。

 これに限らず、日独間では、両首脳及び主要閣僚による政府間協議や、経済産業分野の協力を議論する枠組みとしての次官級対話などを通じて、緊密に連携をしています。これらの対話などを通じて、産業構造の共通点を生かした更なる産業協力に向けた議論を加速していきたいと考えています。

重徳委員 残りの時間で、航空機産業について質問をします。

 愛知県を中心にMRJの生産に取り組んできましたが、撤退してしまいました。

 今年四月、今月ですね、経産省の産業構造審議会の航空機産業小委員会にて航空機産業戦略というものを策定されたと聞いております。

 ちょっと説明は聞いたんですが、なかなか難しくて、何か二つアプローチがあると。一つは、規模の大きい市場で、海外主要OEMとの連携の中でインテグレーション能力を獲得するんだと。もう一つが、小型機の脱炭素化とか、次世代空モビリティーというんですか、新たな市場がある、ここで主導していくんだと。最終的には、この二つのアプローチを進めていって、ボリュームゾーン市場、ここはもう、海外OEMと伍する立場として、国際連携による完成機事業の創出を目指すと言っているんですが、なかなかのみ込みにくい説明で、これを改めて分かりやすく説明していただくとともに、何かキャッチフレーズでもつけて、航空機産業をこうしていくんだ、こういうことをちょっと宣言していただくようなことはできないでしょうか。お願いします。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今月、航空機産業戦略を策定いたしました。これは、世界的に航空需要の拡大が見込まれる中で、脱炭素化やデジタル化といったゲームチェンジをチャンスと捉えまして航空機産業の競争力を強化していくことは、経済成長はもちろん、経済安全保障の観点からも極めて重要と考えているからでございます。

 こうした中、その内容につきましては、今回の戦略で、三菱スペースジェットが開発中止に至った要因、背景をしっかりと踏まえまして、海外主要航空機メーカーとの国際連携の枠組みの中で、部品サプライヤーとしての地位に満足せず、収益性が見込まれる具体的な開発プロジェクトにおいて設計など上流工程にも参画して、完成機事業を実施する技術的、事業的な能力をステップ・バイ・ステップで獲得していくこととしております。

 こうした方針の下、我々、二〇三五年以降に想定される次世代航空機に向けて、自律的な成長を可能とする産業構造、これへと変革していくことを目指すものでございます。

 委員御指摘のとおり、分かりやすく説明していくようにということがございました。こうした戦略の内容について、御指摘も踏まえまして、今後も国内外に対して丁寧かつ分かりやすい発信を行ってまいる所存でございます。

重徳委員 一段の努力をお願いしたいと思います。

 最後に、大臣、これはよく防衛産業で議論になるんですが、やはり航空機産業、もうちょっと大きな一つの、最終的には企業として、事業体として再編が必要なのではないか。国際競争に勝っていく、伍していくためには、やはり大きな事業基盤が必要なんじゃないかと考えますが、この航空機産業の業界再編についてのお考えをお尋ねいたします。

齋藤(健)国務大臣 個別産業の再編の是非については、民間企業が主体的に検討をまずは進めていくものであろうと考えていますので、行政の方からこうすべきだと強制しても進めることができるものではないというふうに思っています。

 その上で、航空機産業について申し上げれば、航空機の開発、製造は、長期かつ巨額の開発費用を長期間にわたって回収する、リスクの高い事業構造になっています。このため、海外主要航空機メーカーでも、企業間での経営統合、合併のほか、リスクをパートナー企業間でシェアする事業体制の構築などが行われております。

 我が国で今後の次世代航空機の開発プロジェクトを進める際には、国内外でどのような体制を組むことが適切か、プロジェクトごとにそのリスクも踏まえて検討していくということなんだろうと私は思っています。

 次世代航空機の事業化を目指すべく、今月策定した航空機産業戦略に沿って、我が国航空機産業の取組、これをしっかりと支援してまいりたいと考えています。

重徳委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

岡本委員長 次に、関芳弘さん。

関委員 自由民主党の関芳弘です。

 今日は産業の競争力についてということで、大臣とまたお話しさせていただきます、質疑させていただきますことを本当に楽しみにしてまいりました。

 私が政治家になっていつも抱いている夢なんですけれども、日本の企業を世界ナンバーワンクラスに全部引き上げていきたい。とてつもない夢だと思いますけれども、それに挑戦しようということで政治家になろうということで、今も頑張らせていただいているんですが、それはもう皆さん同じだと思います。

 経済産業省も与党も野党も関係なく、みんな一緒だと思うんですが、そういう際におきまして、最近の数字を見ておきますと、いろいろな数字が出ているわけですが、会社の時価総額、一九八九年、平成元年なんですが、この日は大変なことがありました。平成元年、何があったか。私が社会人になったんですね。このときから私の社会人スタートでございます。

 このときの世界の企業の時価総額トップテンから、何と、トップテンに日本の企業が七社入っていたんですね。すごいですよね。第一位がNTT、億ドルベースですが、千六百三十八億ドル、NTTが世界第一位。第二位、第三位、第四位、第五位と日本の銀行が続きます。日本興業銀行、私の古巣、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行といって、七百億、六百億ドルぐらいなんですね。

 世界で、その時価総額、第六位に初めてアメリカが出てきます。それ以上は全部日本。IBM、六百四十六億ドル。第七位が三菱銀行。第八位が、ここはアメリカです、エクソン、五百四十九億ドル。九位が東京電力、五百四十四億ドル。十位にイギリスです、ロイヤル・ダッチ・シェル、五百四十三億ドルとなりました。

 そして、昨年の二〇二三年、調べてみました。びっくりしました。日本の企業、一九八九年は十社中、世界第十位中、一位から十位中の七社が日本。日本の企業は昨年ゼロです。

 第一位、アメリカ・アップル、二兆六千九十億ドル。すごいですね、桁も一桁上がっているんですね。第二位、マイクロソフト、すごいですね、二兆一千四百六十億ドルですね。第三位はサウジ、サウジ・アラビアン・オイル、一兆八千九百三十一億ドルといきます。四位、五位、六位といきますと、アルファベット、一兆三千三百二億ドル、アマゾン・ドット・コム、一兆五百八十四億ドルで、六位がエヌビディア、六千八百六十億ドルといきますね。テスラは八位、六千五百六十四億ドルで、十位がビザ、四千七百五十三億ドル。

 アメリカがずらっと並んで、三位にサウジアラビアが入っています。日本の企業はありません。日本は、じゃ、どこの会社がトップだったんだ。トヨタ自動車、三十九位、二千五百四億ドルですね。

 こういうふうな時価総額だけでは、いろいろなことは測れませんが、IMDという国際競争力を測る機関がありますけれども、ここのときに、一九八九年、平成元年、私、社会人一年目、バブル絶頂期でしたが、日本は世界第一位でした。昨年、二〇二三年は、何と世界第三十二位。

 私は、日本の企業が世界トップにずらっと並んでいただく夢を持っているんですが、こういうふうな白物家電も、当時の松下電器とか、名前はよく出ていました。私も銀行員時代、担当もしていましたけれども、こういうふうな事態において、私も自分の夢をしっかりと確実につかみ取っていきたいと思うんですけれども、大臣、このような状況の中において、今回、この産業競争力強化の法律、今の大臣の思いをちょっと聞かせてください。

齋藤(健)国務大臣 まず、平成元年がそんなに重要な年だとは、ちょっと気がつきませんでした。

 いずれにいたしましても、私も現職でいた頃は、経済産業省はいろいろな産業分野を担当することになりますけれども、自分が担当した産業が世界最強になるように仕事をするのが経済産業省の職員の仕事である、そのために、補助金が必要なら補助金を取るし、規制緩和が必要なら規制緩和をするし、規制強化が必要なら規制強化をする、それらはみんな手段であって目的ではないという思いで仕事をするべきだと当時思っていたことを、今、関議員の御質問の中で思い出していました。

 三十年間につきまして、原因を一言で言うというのはなかなか難しいことだと思いますが、ただ、やはり一つ大きいのは、企業がコストカットに注力して、チャレンジするということが、ほかの国に比べまして弱かったのではないかなということは強く感じています。

 具体的には、企業は、安定した国際秩序の中で、生産コスト等が安価な海外拠点をどんどん増やして活用して、利益を拡大をしていくという一方、他国との価格競争、これは激烈なものがありましたので、その中で、徐々に価格支配力というのを失っていって、国内における設備投資や人への投資というものが、明らかにドイツと比べても後ろ向きになってきたということは、間違いなく言えるんじゃないかなと思っています。

 こういったグローバルな価格競争に加えまして、バブル崩壊後の不良債権問題ですとか、リーマン・ショックですとか、長引くデフレなど、様々な要因があったと考えていますが、政府の政策も、民間主導という考えの下で、民間の制約を取り除く市場環境整備策が中心であって、新たな価値創造に向けた取組というのが、結果として、民だけではなくて官においても十分ではなかったのではないかという認識は率直に持っています。

 したがって、これからは、経済産業省として、二〇二一年から、GXやDXなど社会課題解決分野を成長の源泉だと捉えて、そこに産業政策を強化をしていくという経済産業政策の新機軸というものを打ち出して、継続的に取り組んでいます。将来の飯の種を生み出すんだ、そして、賃金や成長の源泉となる社会課題解決型の国内投資を推し進めるんだということで、あらゆる政策を総動員して、民間企業の予見性を高めて投資を引き出すことで、潮目の変化が生まれているところをうまく有効に活用していきたいというふうに思っています。

関委員 齋藤大臣、ありがとうございました。本当に熱い思いといろいろな課題に対する御認識、これを一緒に進めて、また日本の企業が世界のトップに返り咲くように頑張っていきたいと思うんですね。

 一方、こういうふうな政策、非常に重要なんですが、大臣も今おっしゃいましたけれども、世界との競争という、独自の努力もありますが、世界と比べてというところはやはり非常に重要な観点で、我々も常に世界への対応を意識しておかないといけないと思います。

 そういうふうな中において、世界の国はこんなこともやっているぞ、日本も今回こうやるけれども、それ以上にこんなこともやっているぞ、そういうふうなところの比較から考えた場合には、どのようなことがポイントになりますでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、国際的に見ますと、世界の各国が自国内への投資を促そうと産業政策を活発化しているというふうに認識しております。我が国も、世界の中で競争力を確保できる強い産業を生み出していくためには、そうした他国の産業政策との競争に対応できる投資促進策が必要であるというふうに認識しております。

 本法案に盛り込んでおります戦略分野国内生産促進税制やイノベーション拠点税制は、世界で活発化する投資獲得競争に対抗しまして、世界と比べて遜色のない事業環境を整備するということを目的に、過去に例のない、大規模、長期の投資やイノベーションを促進する新たな措置であるというふうに考えております。

 そして、この法案での措置もございますが、その他、予算など他の政策ツールも総動員して、しっかり取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

関委員 そうですね。政策の総動員をして、私も夢に挑戦していきたいと思いますので、またいろいろ、今回の法案だけでは全部が全部は対応できない項目もあるかと思います、また、時代の変化もあると思いますので、その際には次々と手を打っていただきますように、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、こういうふうに我々も熱い思いでやって、こういうふうに制度もやっていこうというふうな中において、実際に汗水垂らして頑張っていただくのは企業側でございます。その我々の思いも、企業の思いも、企業もそれはもう本当に大変な思いをされて競争されていると思うんですが、そういうふうな中において、経営者に対して、私もいろいろな日本の経営者、中小企業、大企業、お話を聞かせていただくんですが、経営者のお考えもいろいろですが、日本の経営者側に、例えば政府の方から、こういうことはどうでしょうか、もっとこういうところは頑張ってもらえませんかとかいうふうな思いがある部分があれば、聞かせていただきたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省といたしましては、経済産業政策の新機軸として、国内投資、イノベーション、所得向上を促す積極的な産業政策に取り組んでおりますけれども、委員御指摘のとおり、実際にイノベーションを生み出し、新たな価値を創造し、賃金として労働者の方々に分配していくということをやっていけるかどうかは、本当に企業の、大企業、中小企業の皆様の御努力に懸かっているというふうに思っております。

 成長型の経済への移行に向けましては、日本企業においての期待という御質問でございましたので、日本企業において、社会課題解決が成長の源泉になるという視点を是非政府と共有いただいて、やはり果敢にリスクを取って挑戦していただくということが大事だというふうに思っておりますので、それを期待しているところでございます。

 私ども、そういう期待の下、本法案では、大企業、中堅企業、スタートアップ等、それぞれの特性に応じた施策を用意をしておりまして、産業競争力の強化を後押しするというものでございまして、企業のアニマルスピリッツに火をつけ、幅広い企業の挑戦を促していきたいというふうに思っております。

関委員 おっしゃるとおりですね。もう投資もどんどんやろう、挑戦しようという気持ちは、やはり、企業、物を作る、サービスを提供する、競争という項目は、どうしても避けられません。ですから、そういうふうな競争に勝ち抜こうという経営者、リーダーの強い意識を、ばっと火をつけるような感じを、我々も一緒に、共に共有していけたらいいなと思うんですね。

 そこで、次に、これは私が非常に日頃から思っていることなんですが、なかなか達成するのが難しいかもしれないことなんですけれども、今の日本の会社の労働者の方々の働き方について、ちょっと私の個人的な考え方を申し上げたいと思うんです。

 以前に、私、副大臣をさせていただいておりますときに、中国に、一帯一路の第二回世界大会に副大臣で行かせていただいたことがあるんですが、もう四、五年前ですね。そのときに、ファーウェイの副社長も来られていて、話をする機会がありました。

 そのときに、ファーウェイの副社長、こんなことを言うんですね。関さん、我々の会社は、二十四時間三百六十五日、一月一日のお正月も、会社の電気が消えたことはありませんと言うんですね。それで、日本って何か、早く帰る、働き方改革という法案を通そうとしているの、大丈夫なんですかみたいなことを言われたんですね、ファーウェイの副社長から。

 それで、今の制度になっているわけですが、非常に日本の企業の課題としては、生産性を上げようということがあって、先般も、地元、私、神戸ですが、川崎重工業役員、ぶっちゃけて言うと社長ですが、お話しさせていただくと、今まで六時、七時、八時までかかっていたのを、三時ぐらいまでででき上がるように、生産性を上げるような仕事の仕方で頑張っていこうねということで、労働者の方にも話しかけてくださっているそうではあります。

 しかし一方、こういう話もありました。兵庫県洋菓子協会というのがあって、洋菓子を作るその人たちが、世界選手権があるんですね、おいしい洋菓子を何分以内に作る。何と、神戸のメンバーが去年世界チャンピオンになったんです。

 その兵庫県洋菓子協会の会長さん、佐野さんのお話を聞いていると、関さん、ちょっと困ったことがあって、どうしたんですか、我々、お客さんが店に来なくなった五時以降、そのときに、新しく入ってきたお店の若い子たちに技術を伝承し、こうやって作ったらおいしいものができると教えていく、五時以降がものすごい大事な時間なんです、そのときこそ、世界のチャンピオンのナンバーワンの技術を、みんな若い人たちに教えていくんですよ、こんな話なんですね。それまで、五時までお客さんが来て、もう教える時間がないんですね、お客さん対応で。

 一般の企業も、お客、取引先とかから電話がいっぱい来て、実際にお仕事ができるのは五時以降かもしれませんね。でも、今、若い人たちは、この法律の改定の影響があるのか、しっかりと早く帰れるにこしたことはないんですが、五時になったら帰らないといけないみたいな意識がまた広まったりもしていたりして、一方、先輩方は、今こそ教えたいのに帰ろうとする、若い人が。これはえらいことだなという話があります。

 この働き方改革の法律を通そうとするとき、私も十七年近くサラリーマンをやっていて、そのときの同僚なんかと話したときに、関君、あれは早う帰れと、我々、仕事に人生の夢をかけて、とてつもなく稼いでいこうかとか、銀行でしたから、こんな新しい金融商品をつくろうか、お客さんから電話がかかってこなくなった五時以降に、資料も全部そろっている会社に残って、ばっと今から深めていきたいな、でも早う帰れと言われる。ここがポイントなんですが、我々働いている労働者側が上司に対して、今日、もうちょっとここ、仕事を深めたいので、帰らんと仕事をもっと、人生に夢をかけていますから残っていきたい、これがこの法律でできなくなるんじゃないかという質問を同僚から言われたことがあるんですね。

 ですので、早く効率を上げて帰れるようにする今の法律を否定するわけでありません。それはそれでおいておいて、並行して、自分の人生の夢を、仕事の夢をかけている人はもうちょっと残っていいような、並行して何か法律ができたらいいなみたいなこともあるし、先ほどのファーウェイのような、世界との競争の中において、日本の技術、生産の質を高めて競争をしないといけないという面もあるし、そういうふうな点において、今の法律を否定するわけじゃないんですけれども、更にプラスアルファで、何か足して、日本の強みをもっともっと強くしていけるような、最低でも、今までの技術が若い人たちに伝承できなくなるようなことがないように、そこら辺について何か御意見があれば聞かせてください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきました労働時間に関する法規制の問題につきましては、多様な意見が、様々な御議論がありまして、難しい論点だとは思いますが、ただ、一部の経済団体からも、やはり例えば、一定のスタートアップに関しては、時間外労働の上限規制の適用対象から除外をして、個人が自らの意思に基づいて、実情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる実効性の高い制度を構築すべきという声が経済界の一部からもあるということは承知をしております。

 労働時間に関する一律かつ画一的な規制が、個々の労働者と企業の双方が望む働き方の選択肢を狭め、その活力の発揮を妨げる可能性があることには留意が必要だというふうに思っております。

 もっとも、現行の制度におきましても、裁量労働制などの柔軟な労働時間を適用する制度というのは、仕組みとしてはございます。昨今、厚生労働省においても、対象となる業務の追加などもなされているというところでございます。

 経済産業省としても、企業の皆様には、労働者の健康確保を前提とした上で、是非こうした制度も御活用をいただき、各企業、個人に合った多様な労働時間制度を活用していただきたい、選択していただきたいというふうに思っております。

 その上で、経済産業省としては、人材は企業の価値創造の源泉でございますので、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上を目指す人的資本経営への転換を後押ししてまいりたいというふうに考えているところでございます。

関委員 夫婦共働きの家庭が非常に増えまして、どんどんと労働環境も変わってきますし、そういうふうな中において、また、すぐに結論は出てこない話だとは思いますが、よくよく、みんな関係される省庁も含めまして、この問題については考えていきたいと思います。

 それで、あと二問質問したかったんですが、一問だけになるかもしれません。その場合はごめんなさい。

 先般、日本の大切な産業である蓄電池、この蓄電池の会社、工場見学にちょっと行ってまいりました。

 そこの会社は、大阪の会社なんですが、テスラの自動車の底に四千本ぐらい、そこの日本の会社の蓄電池がずっと並べられているのが、工場の入口に飾ってありましたり、ああ、すばらしいなと思ったわけなんですが、そこの役員と話をしていますと、我々、コアコンピタンスになるところの機密的な情報のところの製造過程のところの機械自身は我々自身で作ります、しかし一方、自分らだけで会社全ての製品が作られるわけではありませんから、いわゆる三百社ぐらいとサプライチェーンをつくって最終製品を作っていくんですと。その三百社はどんな会社ですか。もちろん地元に近いところもあるけれども、ほとんど中小企業ですよという話だったんですね。

 こういう中において、非常に力を入れていかないといけない蓄電池という重要な製品。その会社、その本体の会社自身の、中心となる親元の会社自身を応援するだけでなくて、周りの三百社を一斉に応援していかないと、蓄電池の世界的な競争に勝てるのかというような疑問を、そのお話を聞いていて、そこの会社が大事なんですという話を役員から聞いていて思ったんです。

 その際に、そういうふうな蓄電池を作っている大本の会社のところには、政府として支援する策はいろいろ取ってくれていると思うんですが、周りのサプライチェーンの三百社にも併せて、特にターゲットとして考えながらも、応援するようなこともやはり考えていく必要もあるのかなと。いろんな企業に対する公平性も重要ですが、そういうふうな戦略的な観点、それについて御意見を聞かせてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 サプライチェーンの重要性は今委員御指摘のとおりだと考えておりまして、例えば、価格転嫁の問題にしても、サプライチェーンの深い階層にある事業者から、価格転嫁しづらいという指摘があることも、私ども、承知をしております。

 このため、まずは発注側である大企業側の取組というものを促していくというのを、足下、取り組んでおりまして、大臣、また副大臣、政務官の方から、大企業の業界団体であるエレクトロニクス、自動車、産業機械、流通のトップに対して要請を行っております。

 具体的には、発注者として、直接の取引先一社一社と丁寧に価格交渉、価格転嫁に応じていただくことに加えて、直接の取引先だけでなく、サプライチェーンの先にいる企業の取引まで考慮して取引価格を決定し、長くしみついたコストカットの意識や商慣行の払拭を求めているところでございます。

 もちろん、受注側の中小企業側に対しては様々な支援策を講じておりますけれども、このようなサプライチェーン全体での取組というのが特に重要な、産業分野においては喫緊の課題だと考えております。

 この辺りは、パートナーシップ構築宣言といった取組も含めて更に取組を進め、サプライチェーンの先まで、価格転嫁も含めて、しっかり産業活動ができる環境整備に取り組んでまいる所存でございます。

関委員 残り時間が少なくなりましたので、最後、経済安保との、今回の産業競争力の法案の関連を一言聞かせておいてください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 米国そして欧州を始めといたしまして、戦略分野の投資促進策が世界的に活発化しております。また、こうした政府による産業振興というのを強力に推し進めている国として、中国という国がございます。

 本税制は、電気自動車、グリーンスチール、半導体など、広範なサプライチェーンを持つ戦略分野における国内への投資を実現しようとするものでございます。こうした戦略分野の生産、供給能力、そしてサプライチェーンを国内に維持拡大し、安定供給を確保することは、我が国の経済安全保障上、極めて重要であるというふうに考えてございます。

 本税制にとどまらず、予算、税制、規制、制度などの政策を効果的に講じることによりまして、戦略分野における国内投資を迅速に実現し、我が国の経済安全保障環境を改善してまいりたいというふうに考えてございます。

関委員 どうもありがとうございました。

 これで終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、冨樫博之さん。

冨樫委員 おはようございます。自由民主党の冨樫博之でございます。

 それでは、齋藤大臣に、先般の訪米について質問します。

 この委員会でも、もう既にいろいろな委員の先生方から質問が出ておりましたが、改めて、クリーンエネルギーの成果についてお伺いをいたしたいと思います。よろしくお願いします。

齋藤(健)国務大臣 訪米時に実施いたしました、ポデスタ大統領上級補佐官との政策対話では、エネルギー移行を加速させ、クリーンエネルギーのサプライチェーンを構築し、産業競争力を向上させるために、日本のGX推進戦略と、それとアメリカのインフレ削減法のシナジーを高めていこうということで合意をしました。

 また、この観点からは、洋上風力などのクリーンエネルギー技術の開発や投資を促していくための環境整備、これを日米で協力して進めていく方向で一致をいたしました。

 また、日米首脳会談の成果として公表されましたが、野心的な目標の下で洋上風力の推進を目指すアメリカのフローティング・オフショア・ウィンド・ショットというプロジェクトがありますが、その最初のパートナーに日本がなったということは、両国の関係強化に向けた具体的取組の一つだと思います。

 同じく成果文書で言及されました、日本の産業界による新たな技術研究組合、FLOWRAとも連携しながら、洋上風力の研究開発などを推進して、低コスト化ですとか大量生産を実現していきたいというふうに考えています。

冨樫委員 成果があったというようなお話でありますけれども、特にカーボンニュートラルの実現に向けて、今お話もありましたが、洋上風力発電を最大限導入していく必要があります。

 従来の領海内への案件形成はもとより、今後日本が世界第六位のポテンシャルを持つ排他的経済水域も活用していくべきと考えますが、今後の洋上風力の取組について、大臣、お聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のとおり、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、洋上風力発電は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札であると考えています。

 洋上風力は、二〇三〇年の導入目標であります五・七ギガワットに向けて、これまで約四ギガワットの導入が見込まれております。さらには、足下では約一ギガワットの公募を実施するなど、着実に進んでいると考えています。

 今後、二〇三〇年までに十ギガワット、二〇四〇年までに三十から四十五ギガワットの案件を形成する目標を掲げておりまして、その実現に向けては、現在想定されている領海内の海域だけではなく、排他的経済水域においても洋上風力の開発を進める必要がありまして、政府としては、領海内を対象としている現行の再エネ海域利用法の範囲を、我が国の排他的経済水域まで拡大するための改正法案を提出しているところであります。

 内閣府、国交省、環境省、農水省といった関係省庁とも緊密に連携しつつ、地域や漁業と共生する洋上風力発電の最大限の導入に向けて取り組んでまいります。

冨樫委員 そこで、更にお聞きしますけれども、洋上風力は、カーボンニュートラルといったエネルギー政策面のみならず、日本に新たな産業を興したり、地元周辺の産業にプラスになるといった産業政策、両面からも取り組む必要があると考えます。

 日本における新たな輸出産業となるよう、国内に新たなサプライチェーンを構築していくことや、メンテナンス等を含めた人材確保をしていくため、国としてどのように取り組んでいくのか、齋藤大臣の見解をお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、洋上風力発電の推進に当たり、電力安定供給ですとか産業競争力の強化の観点から、国内におけるサプライチェーンの構築や地域との共生、これは極めて重要な課題だと思います。

 このため、再エネ海域利用法に基づく発電事業者の選定に当たりましては、事業者が提案するサプライチェーンに関する計画、この計画について、重点を置いて評価しています。また、洋上風力のサプライチェーン構築に向けた設備投資や、訓練センターの設置といった人材育成についても支援をしているところであります。

 こうした国の取組と並行して、例えば秋田県は、国内最多となる四つの促進区域に加えて、港湾内の洋上風力二区域を擁する、まさにこの分野で日本をリードする地域だと思っています。

 秋田県や、第一ラウンド公募で選定された発電事業者が、県内企業の積極的な活用に向けて、地元企業と発電機メーカーとのマッチングなども進めています。

 さらに、国内の海運会社が秋田県立男鹿海洋高等学校と連携をして、校内にメンテナンス作業員等を育成する総合訓練センターを今月開所したところであります。

 こうした取組や、我が国の取組は、我が国のエネルギー安定供給の確保のみならず、産業競争力の強化ですとか地域経済の発展にもつながるものでありまして、各地域の自治体とも緊密に連携をして、積極的に支援をしていきたいと考えています。

冨樫委員 どうも、大臣、ありがとうございました。

 まさに私がお話をしたいというようなことを大臣がお話ししていただいたので、申し上げることもないんですが、ただ、やはり秋田県は、今その再生可能エネルギー、さらに、先ほどお話にあったとおり、二〇五〇年、洋上風力は主力電源、もうこれが、そういう考えの下で今進めているということでありますし、おかげさまでここまで進んだ秋田県は、やはり、何だかんだ言っても、海域利用法の法案の改正によって拠点港が指定された、拠点港二港が指定された。これは能代港と秋田港です。秋田港はもう既にでき上がって、ここで港湾内の洋上風力を立てるためにフル活動して、昨年の一月に商業化されています。ですから、二十三基の港湾内の洋上風力が、もう既に稼働しています。

 これの経済効果等々、先ほど来、サプライチェーンはまだ起きていませんでしたけれども、今度、一般海域内に進む、本当に沖の方に出る着床式の洋上風力、これは、秋田県内、先ほど話にあったとおり、四海域、四促進区域にもう事業者が決まって、二八年から三〇年までに稼働するということになっておりまして、何と原発二基分です。東京タワーと同じ高さの洋上風力が稼働するということで、原発二基分。このことが、今話されたような、地元にいかに地域貢献をするのか、あるいは経済効果を生むのか、そしてサプライチェーンが本当に起きてくるのか、ここが一番大事なところです。

 さらには、秋田県は、農業県みたいな県であります。何も海沿いだけの自治体が、いろいろな意味でのいい経済効果が上がるのではなくて、特色あるそれぞれの県、特に秋田県の場合、今話したとおり農業県ですから、こういう農業に新たなエネルギー、例えば、余剰電力等々で、できた電気で水を分解して水素にして、水素に今度はCCS、二酸化炭素等々も入れながら新たなエネルギーを作って、そして、それを農業にも資するような、そういうところまでいくのが私の夢でありますので、是非ひとつ、そのことにこれから頑張っていきたいと私も思っていますし、また、いろいろと御指導願いたいというふうに思います。

 そういうわけで、今、洋上風力に対しては、更に進んでいますので、浮体式もこれからを見込んでまた誘致に頑張りたい。さっき、ちょっと言いましたけれども、CCSも由利本荘沖の沿岸に、それも国の方から指定されて、認められておりますので、今後、それもまた、これから進んでいくと思います。そういう意味において、大変お忙しいでありましょうけれども、時間があったら、是非、秋田の方に足を延ばしていただきたいということも、ついでにお話をさせていただきたいと思います。

 それでは、質問に入りますけれども、米国や欧州では、戦略分野の国内投資を強力に推進するため、大胆な投資促進策を講じていると認識しています。本法案では、電気自動車やグリーンスチールといった戦略分野への投資、生産に対する大規模、長期の税制措置を講じることとしていますが、世界との競争に勝ち抜くために、税制だけでなく、予算措置も含めて、政策を総動員していくのか、具体的な対応を伺いたいと思います。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的にも、自国内の戦略分野の投資を促す産業政策が活発化しておるところでございます。我が国でも、世界の中で競争力を確保できる強い産業を生み出していくために、こうした他国の産業政策との競争に対応できる投資促進策が必要であると考えているところでございます。

 御指摘のございました税制面では、本法案をベースにいたしまして、戦略分野国内生産促進税制、そしてイノベーション拠点税制、こういったものは、世界で活発化する投資獲得競争に対抗して、海外に比べて遜色のない事業環境を実現するために、過去に例のない大規模、長期の投資やイノベーションを促進する新たな措置であると考えております。

 加えまして、一方で、予算措置といたしましては、世界をリードする先端分野への投資促進のために、例えばGX分野では、鉄鋼、化学などの排出削減困難な産業の製造プロセス転換の支援、そして、持続可能な航空燃料、いわゆるSAFの製造、供給体制構築支援など、大胆な予算措置も講じているところでございます。

 こうした、本法案に基づく税制、金融面の措置、そして予算も含めた全ての政策ツールを総動員いたしまして、我が国の有望な産業分野において積極的な産業政策を展開、継続して、国際競争に勝ち抜いてまいりたいと考えております。

冨樫委員 ありがとうございます。

 次にですけれども、戦略分野国内生産促進税制については、日本経済全体にその効果を促進させる観点から、対象となる自動車メーカーや鉄鋼メーカーだけでなく、サプライチェーン全体にその効果を波及させることが必要であると考えられますが、経済産業省としてどのように考えているのか、お尋ねをいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 本税制は、特に生産段階のコストが大きい、そうした理由から、初期の設備投資支援のみでは投資判断が難しい分野について、国内投資を促進することを目指すものでございます。

 本税制を通して、対象分野となります電気自動車あるいはグリーンスチール等の分野での国内投資を実現し、その生産、販売が拡大していくことで、サプライチェーンを通じた部素材等への発注、そして供給の確保、拡大、さらには雇用、そして所得への好影響など、幅広く経済波及効果が生じると考えております。

 加えまして、サプライチェーンを構成する中小企業への支援、対策も重要であると認識してございます。中小企業向けの賃上げ促進税制、そして徹底した価格転嫁対策を進めることは大変重要であり、また、革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化投資の促進などについても、引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

冨樫委員 次に、国内投資を拡大させる観点からは、生産拠点だけでなく、研究開発拠点としての立地競争力を高めていくことも重要であります。

 本法案で措置されるイノベーション拠点税制について、海外でも同様の制度が既に導入されているとも聞いていますが、今回、本税制を導入する意義と狙いについてお伺いします。

田中(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、米国、ドイツ、フランスなどの主要国における研究開発投資が増加する中で、我が国国内の研究開発投資は、ここ十五年間、横ばいで推移しております。

 また、MアンドAなどを通じまして、企業が海外に研究開発拠点を設ける事例が増加しておりまして、研究開発活動のグローバル化が進展する中で、研究開発拠点の立地選択において、減税措置の有無がその意思決定に影響を及ぼす状況となってきていると認識しております。

 こうした中、企業が自ら国内で行った研究開発の成果である知的財産権から得られた所得に対する減税措置、すなわち、今回のイノベーション拠点税制のような制度が、欧州のみならず、アジア諸国においても導入や検討が進んでいる状況でございます。

 こうした状況を踏まえまして、我が国の研究開発拠点としての立地競争力を強化し、国内における将来の飯の種を生み出す研究開発投資を後押しし、イノベーションの創出を促進させるため、本税制の導入が必要であると認識しております。

冨樫委員 ありがとうございます。

 MアンドAにより中堅・中小企業のグループ化を進めていくことは、中堅企業等の成長といった観点だけでなく、後継者のいない中小企業の事業承継といった観点からも重要であります。

 一方で、中小企業がグループに入った後、その雇用がしっかり守られ、グループ入りした企業も含めて、グループ全体で賃上げが行われていくことが何よりも重要であると考えます。一緒となる中小企業の雇用や賃上げをどのように守っていくのか、お尋ねします。

吾郷政府参考人 お答えいたします。

 人口減少などによりまして人手不足が深刻化する中で、経営力の高い成長企業に経営資源を集約化するということは、MアンドAをする中堅企業等の成長に資するのみならず、MアンドAによってグループの一員となる中小企業の収益力向上や賃上げなどにも資するものと考えております。

 ただ、御指摘のとおり、こうした取組を推進する上で、売手側の中小企業の雇用に配慮しながら賃金等の労働条件の向上につなげて、買手だけではなくて売手も含めたグループ一体で成長していくことが重要で、買収される中小企業の雇用や賃上げにも配慮するような要件を、今後、本法の下位法令においても設けることを検討してまいりたいと考えております。

冨樫委員 次にですけれども、今般の法改正では、イノベーションや新陳代謝を促進するため、産業革新投資機構の運用期限延長や、NEDOによるディープテックスタートアップへの補助といった措置が盛り込まれています。

 社会問題の解決やイノベーション創出の担い手として、今後、スタートアップの果たす役割はますます重要になっていくと考えられますが、スタートアップを支援する意義と、法案で講ずる措置によりどのような効果を狙っているのか、経済産業省の見解をお伺いします。

吾郷政府参考人 お答えいたします。

 スタートアップは、新しい技術やアイデアなどのイノベーションの担い手として、社会課題を成長のエンジンに転換をし、日本経済を牽引する重要な存在でございます。

 政府は、スタートアップ育成五か年計画を一昨年の十一月に策定をいたしまして、二〇二七年度にスタートアップへの投資額を十兆円規模にするという目標を掲げて取組を進めているところでございます。この目標を達成するためには、やはり、スタートアップが更に大きく成長できる環境の整備というのが重要でございます。

 こうしたことから、この法案におきましては、一つ目、産業革新機構の運用期限を延長することによりまして、リスクマネーが不足する成長段階のスタートアップへの資金供給の強化をすること、そして、NEDOの商用設備投資などの事業開発の活動への補助業務を追加することによりましてディープテックスタートアップの支援を強化すること、そして三点目、ストックオプションを柔軟かつ機動的に発行する仕組みを整備することによりまして優秀な人材の確保を促進すること、そして四点目、投資事業有限責任組合、LPSの投資上限規制を受ける外国法人の範囲を見直すことによりましてスタートアップの資金供給の円滑化を図ること、こうしたことを行うことによりまして、スタートアップの更なる成長を促進してまいりたいと考えております。

冨樫委員 時間になりましたので終わりますけれども、いずれにしても、この産業競争力強化法をしっかりと成立させて、中堅・中小企業の発展のために頑張っていきたいと思います。

 どうも今日はありがとうございました。

岡本委員長 次に、中野洋昌さん。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 早速、通告に従いまして、質問をさせていただきます。水曜日に引き続きましての質問となりますので、前回質問し切れなかった部分も含めて確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 前回は、私、戦略物資への支援という中で、半導体について取り上げて、質問を最後にさせていただいておりました。日本の半導体、特に先端半導体、これをしっかりと復活をさせていくというビジョンを最後に語っていただきまして、ステップ一、二、三ということで、まずは国内の製造拠点をしっかり整備をしていくというところから、次世代技術、また将来技術ということで、しっかり研究開発も含めてやっていくということでお話がございました。

 特に、今、JASMですとか、いわゆる台湾のTSMCともしっかり連携をして、キャッチアップをしっかりしていくということはやっていただいております。北海道でいえばラピダスのような、これはまさに先端的なところ、次世代の技術、こういうことだと思いますけれども。

 水素の法案の審議のときにも参考人の皆様が結構おっしゃっておられたのが、やはりどうしても日本は技術というところに非常にこだわってしまうというか、技術はしっかりやっていくんだけれども、それをビジネスにしていくときに、しかし、結果的にそれが最後うまくいかないというふうなことは避けないといけないというふうなことは非常に印象強く思っております。

 私、半導体もやはりそういう視点も大事なのではないかと思っておりまして、例えば、JASMなど、いわゆる需要家、自動車メーカーですとか、この半導体は、日本で、ここでしっかり使っていくというところがかなりはっきりしている形の投資だと思っております。非常に分かりやすいと思います。

 しかし、他方で、先端半導体、これからの技術というところになりますと、どういうビジョン、どういうビジネスモデルで、しっかりそれが稼げるのかというところまで含めてやはり考えていかないと、技術的にはいいものができたんだけれども、それがしかし結果として、産業としてうまく成り立っていかなかったというふうなことであってはいけないというふうに思います。

 例えば、最先端の分野でも、じゃ、いわゆる半導体を誰が買ってくれるのか、どういうニーズがあるのかというところも含めてしっかり絵を描いていく必要があるのではないか。例えば、最先端の半導体を使うのは、AIの分野ですとか、そういうところが想定されるかと思いますけれども、そういう需要側との連携も含めて、どうやってこうした分野のビジネスモデルを描いていくのかということは非常に大事な角度かと思いますけれども、これについてどうお考えか、答弁をいただければと思います。

西村政府参考人 お答えさせていただきます。

 半導体は、デジタル化や脱炭素化の実現に向けた不可欠なテクノロジーでございます。とりわけラピダス社が取り組む次世代半導体は、委員御指摘のような生成AI、自動運転などに用いられ、世界的にも需要が拡大する見込みと認識をいたしております。また、これも委員御指摘のとおり、その需要家をどう取り込むかということは極めて重要でございます。

 こうした中、ラピダス社においては、こうした増加が見込まれる需要の確保に向けて、今月、アメリカの西海岸にマーケティング拠点を開設したところでございます。今後、顧客の獲得に向けた具体的な取組が加速することを期待したいと思っております。

 経済産業省としても、次世代半導体の需要創出が重要と考えております。

 具体的には、アメリカのテンストレント社、技術研究組合最先端半導体技術センター、ラピダス社、これらが連携して取り組む二ナノ世代のAI半導体の研究開発の支援、また、自動車用先端SoC技術研究組合、ASRAが取り組む自動車の知能化、電動化の実現に向けた自動車用先端半導体の研究開発の支援、こういった取組に対する支援も行ってまいります。

 経済産業省としては、我が国の強みを更に強化していく観点も踏まえ、こうした取組を始めとするユーザー産業の育成にも取り組んでまいりたいと考えております。

中野(洋)委員 様々御答弁いただきまして、いずれも大事な取組だと思いますので、是非これは進めていただければと思います。

 制度の中身の部分も少し確認をしたいんですけれども、半導体の支援、様々な今までの補助金もありまして、ポスト5Gの基金でありますとか、いわゆる先端半導体的なところの、これは設備投資を支援をしてきたんだと思っております。あるいは、安定供給の確保ということで、いろんな半導体の関連の産業でありますとか、あるいは、レガシー的なところも含めていろいろな支援をしてきた中で、今回、いわゆる戦略的な国内投資の拡大ということで、設備投資に加えて、生産量に応じた税の対象にするものも新たにできるというところでありますので、今までの支援との違いと、今回、何を対象にしてどういう狙いなのかというところについて、ちょっと改めて確認をさせていただければと思います。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御認識のとおり、半導体産業における投資促進策として、補助金と税制がございます。それぞれ対象とする事業の特性が異なってございます。

 補助金は、先端ロジック半導体など、経済安全保障上重要であり、その初期投資の負担が大きいもの、これらについて、その初期投資を支援することで企業の投資判断を引き出すということを目的といたしております。

 他方、税制については、マイコン、アナログなどの従来型半導体であって生産段階でのコストが高いものについて、本税制を通じた税額控除を措置することによって事業者の投資判断を引き出すということを目的としたものでございます。

 なお、補助金で支援した案件については、税制措置の対象外といたしております。

 半導体には事業特性の異なる幅広い種類の半導体が存在することから、今後とも、それぞれの特性等を踏まえて必要な施策を講じてまいりたいと考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。支援の中身について、どういう考えで何を支援するのかということを説明をしていただきました。

 半導体について、私、もう一つ大事な観点は、いわゆる戦略的な物資であります。ですので、いわゆるサプライチェーン、これも含めてしっかりと、海外に依存をして、何かチョークポイントがあって、何かあったら生産が途絶をするということは避けなければならないということだと思っております。

 もちろん、製造工場そのものというのもやはり大事ではあるんですけれども、サプライチェーン、特に上流の部分からいきますと、やはり部素材でありますとか、もっと言いますと、原料も含めて、しっかりと製造ができる、あるいは、余りにもどこかに依存をするということを避けるというふうないろいろな戦略が大事なんだと思っております。

 もちろん、その戦略の中で、取り組む分野はいろいろあるわけでありますが、例えば、原料の部分でいきますと、半導体の製造で必要な原材料ということで黄リンというものがあります。

 リンそのものがやはり輸入にどうしても頼っている部分があって、過去にはリンショックのような、輸入が非常に危ないのではないかというふうなこともございましたし、また、こうした一定の国に余りにも依存し過ぎると、それで経済的にそこで威圧をしてくるというふうなことも避けなければ、我々は対抗していかなければいけないということで、今、日本の黄リンの輸入に関しても、いろいろな各国、世界でも四か国しか生産国がないというふうなものでもありますし、現在、ベトナムからの輸入が多いという状況かとは思いますけれども、できるだけ、こういうものも含めてサプライチェーンを強化をするということも大事なんだろうと思っております。

 例えば、経産省で今取り組んでいただいていることで聞いておりますのは、リンを国内で回収をすることができるものというのは、例えば、下水汚泥とかも含めていろいろあるわけであります。こうしたものも活用しながら、しっかりと、こういう原材料も含めて確保するような研究もされているというふうに伺っておりまして、私、これは非常に戦略的にも重要な取組なんだろうというふうに思っております。

 半導体の産業の育成ということに加えて、サプライチェーンの強化、特に原材料も含めて、しっかりとここの強化を図ることも非常に大事だということで、是非この取組は力を入れていっていただきたいと思うのですが、これについて答弁をお願いいたします。

西村政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、半導体の生産に不可欠な製造装置、部素材、原料、こういったところまで、国内の生産拠点の整備を通じたサプライチェーンの強靱化を図る必要があるものと思っております。

 特に、委員に言及をいただいた黄リンを含めて、半導体原料は、その調達を海外に依存している場合があり、供給途絶のリスクの軽減のための対策を促進することが重要だろうと考えております。

 そのため、半導体原料については、経済安全保障推進法に基づいて、黄リンを始めとした四品目を支援対象に指定して、そのリサイクルの推進、国内生産の強化、備蓄、輸送体制の強化、こういったことに向けた設備投資等を支援することといたしております。

 経済産業省としては、令和五年度の補正予算において積み増しをいたしました安定供給確保支援基金を通じて積極的な国内投資を呼び込んで、原料を含めて更なる半導体のサプライチェーンの強靱化を図るために必要な取組を実施してまいりたいと考えております。

中野(洋)委員 非常に大事な取組でありますので、是非力を入れていただきたいと改めてお願いを申し上げます。

 戦略的国内投資の拡大で、もう一問、質問させていただきます。

 今週の火曜日に参考人の質疑があった中で、戦略分野の国内投資促進税制、過去に例のない長期的な支援措置になるということで、これは非常に、どういう形で効果を評価するのかとか、長期的な投資になるわけでありますから、政策評価の在り方やそれに伴う政策の見直しなどが非常に大事なんだというふうな御指摘がありました。

 確かに、長期的に将来の予測をするというのは非常に難しいことでありますし、一回支援を今回これで決めれば、それは一旦支援をしていくということではあると思うんですけれども、何が戦略物資なのか、あるいは、本当にどういう効果があるのか等も含めて、やはりこれはしっかり効果を測定をしていただいて、必要な見直しはしっかりとやっていくという、こういうことも大事だと思っております。

 こうした点についてどうお考えか、答弁いただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 グリーントランスフォーメーション、それからデジタルトランスフォーメーションといった戦略分野においては、各国が国内投資促進策を次々と打ち出してきている状況でございます。こうした競争的な環境の下で、本税制は、電気自動車、グリーンスチール、SAF、半導体といった戦略分野の国内投資を強力に促進するということを目的としてございます。

 本税制を活用するためには、まずは、遅くとも令和八年度末までに本法案に基づく事業適応計画の認定を受けて、国内における新たな投資を決定、開始することが必要となってございます。

 したがって、本税制の適用期間は十年間という長期の措置ではございますが、税制措置の対象となるには、まず投資判断というものを今後三年弱の間に行う必要がございまして、その期間に国内投資の判断が行われたかどうかというのがまず大事になるわけでございます。こうした点をまず踏まえまして、最初の政策評価を行うということが可能となっている状況でございます。

 まさに委員御指摘のとおり、本制度を活用した国内投資の状況、そして、今後の技術や世界の動向なども踏まえまして、本税制のほか、補助金、そして規制、制度などを含む効果的な投資促進策を不断に検討してまいりたいというふうに考えてございます。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 次のテーマに移りたいと思います。

 中堅企業関連措置、まず冒頭、大臣に全体をお伺いをしたいと思うんですけれども、経済産業省、特に中小企業庁、こういう中小企業の生産性をどう向上させるか、あるいは、中小企業の投資をどう促すか、これは恐らく地域経済を活性化させるという意味も含めていろいろな取組をずっとしてきたんだろうというふうに思っています。

 私のいろいろな取組で思い出すのも、例えば地域未来牽引企業みたいな、地元でいろいろな取引が多い、影響の多い企業というのを指定をするというか、それを決めて、そこをじゃあ支援してみようかみたいな取組もありましたし、いろいろな地域の中での積極的な投資の計画を立てて応援をするという、地域の中核的な企業にできるだけ支援をすることで、地域経済、あるいは地域の雇用であるとか、そういうものを引っ張ろうというふうな、そういう発想がずっとあったのかなというふうに、私は何となくここ十年ぐらいの流れを見てそういうことも感じてはいるんです。

 他方で、もう一つ議論があったのが、いわゆる中小企業から大企業に成長しようとすると、またそこはそこで、ちょっと支援が減ったりとか、大きくなるところはちゃんと支援しないといけないよねという、他方で、大企業、中小企業の線引きの議論みたいなところもずっとあったかというふうに思います。

 今回、中堅企業という新しい定義を置く、それを応援をするという、ここは一つまた新しい切り口をされたのかなというふうにも思いながらも、今までのいろいろな議論や流れもあったものですから、改めて、この委員会でも様々議論はあったかと思いますけれども、この中堅企業という新しい定義を設けてこの支援を強化をしていくという狙いが何なのかということについて、大臣にまず答弁いただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 中堅企業は、十年前と比較をいたしますと、大企業を上回る、実は、従業員数ですとか給与総額の伸び率がありまして、国内売上げ、国内投資の着実な拡大を通じて、地方における良質な雇用の提供者であり、さらには、経営資源の集約化等により、前向きな新陳代謝の担い手としての役割を果たしている重要な企業群なんだということであります。

 こうした特性から、中堅企業の成長は、日本経済を成長型へ移行させていくために極めて重要なファクターなのではないかと認識をしています。

 他方、日本における中堅企業から大企業への成長割合というのは、国際的に見ても低い状況であるという現実も一方であります。人手不足等の課題に対応しつつ、国内外の大企業と競争していくための成長投資ですとかMアンドA等を十分に行えていないのではないかといった課題も存在しているわけであります。

 このため、本法案によりまして、中堅企業のうち、特に賃金水準や投資意欲が高い中堅企業を対象に、複数の中小企業をMアンドAした場合の税制措置等を講じまして、中堅企業の更なる成長や、中堅企業、中小企業によるグループ一体での収益力の向上等を促進していきたいと考えています。

 こうした中堅企業支援の枠組み構築を通じまして、成長意欲のある我が国企業が、中小企業から中堅企業、そしてその先へとシームレスに成長を目指せるような、そういう環境の整備につなげてまいりたいと考えています。

中野(洋)委員 大臣から改めてその狙いを答弁をしていただきました。

 非常に地域の雇用を担っていて、そして、投資としても、大企業はかなり海外投資ということが今まで多かったと思うんですが、やはり中堅企業はしっかり国内に投資をしているんだという現状と、それを更にしっかり後押しをしていく、あるいは、MアンドAなどグループ化等も含めて拡大を図っていく、そういうことだというふうに思いますし、私も非常にそこの視点が大事なんだろうというふうに思います。

 あとは、やはりそれがどう効果的に後押しをしていけるのか、そうした地域で、国内に、そして地元に投資をしていただけるという、ある意味、地域の経済というところも考えても、ここをしっかり後押しをしていくということが非常に大事だなというのは私も認識をしておりますので、是非しっかり後押しをする。今回の支援措置でどれだけ効果があるのか、あるいは、もっと何か違う手だてを打った方がいいのか等々も含めて、効果の検証も含めて、是非、ここはよく考えて支援をしていっていただければということで、改めてお願いをしたいと思います。

 もう一点、これもこの委員会でも様々議論がありましたけれども、中堅企業、大きくなるところを後押しをして、MアンドAなども含めて、しっかり効率的な、あるいは戦略的な、そういう投資をしていくというのは非常に大事な角度かと思います。

 やはり、中堅企業以外の、本当に中小企業というか、そういう裾野のところでどう生産性を上げていくのかというのも、他方でこれは必要な議論だというふうに私は思っておりますし、それも含めて、今までの中小企業政策というものが広がりを持ってやってこられたのかなというふうに思っております。

 特に、中小零細の企業となってくると、なかなか投資というところで思い切ったところができないというところもあるかもしれませんし、今は、本当に人手不足というか、省力化、省人化の投資というのを、令和五年度の補正予算で取っていただいたやつがいよいよ動き出すか、そういうふうな状況もありますけれども、やはり、中堅企業以外の中小企業への支援の取組というところも、改めて、どう取り組むのか、少し総論的になるかもしれませんが、答弁をいただければと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 現下の中小企業のやはり課題としては、今御指摘のありました人手不足への対応というところが重要になると思います。現在働いていらっしゃる人材の、更に活躍を促していくという観点等々も含めて、やはり、持続的な賃上げ、この課題が最重要ではないかと考えてございます。これを、我が国の雇用の七割を占める中小企業でありますので、価格転嫁の促進や生産性の向上を取り組み、収益、売上げを拡大していくことが重要であると存じます。

 このため、価格転嫁対策としては、価格交渉促進月間等の取組を粘り強く続け、中小企業にとって価格交渉しやすい環境を整備していく、先ほどの質疑でもございましたが、サプライチェーンの隅々まで価格転嫁を浸透させていくことが重要と存じます。

 また、賃上げにつきましては、中小企業向けの賃上げ促進税制について、前例のない長期となる五年間の繰越措置を創設いたしておりまして、赤字でも賃上げに挑戦する中小企業の後押しとなるよう抜本強化したところでございます。

 また、御指摘いただきましたように、中小企業の構造的な人手不足を乗り越え、生産性を向上し、収益、売上げを拡大することについての支援も重要でございます。このため、カタログから選ぶような簡易で即効性のある省力化投資や、新商品、サービスの開発に向けた設備投資等の支援を、令和五年度補正予算にて既に措置しているところでございます。

 こうした取組を通じまして、様々な厳しい環境、課題に直面している中小企業にしっかり御活用いただけますように、全国四十七都道府県に設置している、よろず支援拠点等における経営支援をしっかり行いまして、丁寧にサポートしてまいる所存でございます。

中野(洋)委員 済みません、時間が来たのでもう終わりますが。

 ちょっと最後、質問できなかったんですが、この法律の中の最後の、標準化と知的財産を活用した市場創出、これも非常に日本の弱い分野で、大事な分野だというふうに思っております。これもしっかりやっていただければということで、これは答弁は求めません、お願いだけ申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、落合貴之さん。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 一昨日に続きまして、本日も、新たな事業創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 まず、前回の私の質問の最後の質問との関連で、産業政策についてですが、いろいろ過去の政府の政策を振り返ってみますと、一番分かりやすいのは二〇〇一年のe―Japan戦略かなと。これは、五年で世界のトップのIT国家になると宣言したにもかかわらず、OECDの統計では、世界とITの投資額を比べてみますと、アメリカは十九年で一・七倍、イギリスは一・五倍、フランスは二・二倍、しかし、日本はマイナス一〇%ということで、国家戦略を大々的に掲げても、なかなか投資が増えない。だからこそ、今二十何年たって、IT、デジタルの分野はかなり苦戦をしています。

 少し前までは、この二〇〇一年の頃は、携帯も、日本のメーカーの携帯をみんな使っていたわけですが、今、スマホはみんな外国製、クラウドや5G、6G、ドローン、AI、デジタルプラットフォーム、なかなか、今重要な分野で厳しい状況であると思います。

 一昨日の大臣の答弁でも、過去の政策に不十分な点があったということをおっしゃられていました。まず、短期利益を出すためでしょうけれども、コストカットに力点が置かれ過ぎていたと。それから、民間主導ということが重要だというふうに当時は特に言われていましたので、政府はなるべく後ろに下がろうと、規制改革に重点を置いてきて、国はどんどん後ろに下がっていったわけです。

 資料を、前に配ったものをお配りしましたが、これはちょうど規制改革等が始まった、あの金融ビッグバン等も始まって、しっかり利益を出せる民間経済にしなきゃいけないというようなことで始まった二十五年前と比べてみますと、売上高は変わっていないのに、しっかり、利益は三・八倍、二十五年前と比べて出すようになりました。しかし、それは設備投資や従業員のお給料を節約して利益を出していたということがざっくりと言えると思います。

 四半世紀も人件費を削減し続けたら、やはり人材が育っていかないということは、日本全体に言えると思います。それから、設備投資を四半世紀もしなかったらやはり産業競争力は落ちていくということが、大きく見ると言えるというふうに思います。

 大臣の答弁にもありましたが、これからは、GXとかDX等戦略分野を絞って、そこを、大規模、長期、計画的に支援をしていく、官と民が協力してやっていくんだというような方針に産業政策が最近変わったわけでございます。

 具体的に、今回の政策の手法、手段を見てみると、ツーステップローンですとか政策減税はこれまでも経産省はやってきたわけですけれども、経済産業の新機軸が始まったことで、具体的に手法は、これが始まったことで今までやっていなかった何かを始めたんですというのは、分かりやすく言うとどういう部分なのか、具体的な手段の変化について教えていただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、委員御指摘のように、この三十年間の経済停滞の背景には、正直申し上げまして、政府による取組も、一時期、市場環境整備、市場環境整備と言われてきて、ほかの国が実は個別産業政策にかじを切っているにもかかわらず、政府の方の取組が不十分だったという点は私は否めないと思っていますので、そこで、新機軸ということで、発想を変えてやっていこうということであります。そこは強調しておきたいと思っています。

 それで、政策ツールについての新味という御質問だろうと思いますけれども、今回の法改正案におきましても、この経済産業政策の新機軸にのっとりまして、社会課題解決に向けた国内投資やイノベーションの拡大等を後押しするために、一つの特徴は、大規模、長期、計画的、そういった視点から政策の打ち手を講じているというところは、まず大きな視点の変化として私は言えるのではないかなと思っています。

 具体的には、戦略分野に関する国内での新たな設備投資を促進する、生産、販売量に応じた最大十年間の大規模な減税措置、この生産、販売量に着目した減税措置というのは、本邦初演と言ってもいいのではないかと思います。

 また、国内での研究開発により取得した知的財産権から生じる所得を対象にした、七年を適用期間とする、これも新たな減税措置であります。

 それから、中堅企業を初めて法律で定義をするということで、中堅企業等が複数の中小企業をMアンドAした場合に、株式取得価額の最大一〇〇%、十年間の損失準備金の積立てを可能とする措置、これも、中堅企業に着目して初めて法律で定義をするということでありますので、こういった点が、これまでにない新たな大胆な施策なのではないかなというふうに思っているところであります。

落合委員 ありがとうございます。

 私は、前回のこの質疑の最後の方にも申し上げましたが、この投資の促進というのは、素人の私から見ても、何でこの分野にお金を持っているファンドですとか大企業が投資しないのかなと。話していても、そういうトップの方々は、この分野はリスクが高過ぎるというふうに言っているわけです。

 ただ、AIの分野もそうですけれども、個別にこの部分が成功するというのは、予測するのは難しいですけれども、明らかにAIは伸びるというようなことも分かっているわけです。そういったことが、これまで、先ほど挙げたようなクラウドですとか、それからスマホもそうですね、明らかに伸びると分かっていたのに投資が行われなかった。

 これはやはり、官民一体である程度お金を出していく、投資をしていくというような、この前のGXの法案もそうでしたけれども、そういったことは重要である。財政を出していくということは、何でもかんでも金を出すということではなくて、そういう戦略分野に出していくということは、重要であると思います。

 ちなみに、今、減税、減税というお話もありましたけれども、今回、所得税法の改正案の際に、我が党は全体では反対をしておりまして、反対討論の中に、この議事録を確認しますと、戦略分野国内生産促進税制、特定分野の発展は必要ですが、十年間で二兆円の減税、これは恩恵を受けられるのは一部の大企業に偏っていると。特に、度々言われてきたのは、これは特定の自民党と仲がいい大企業に偏っているんじゃないかということが指摘はされてきたわけでございます。ここの点はここの委員会でも言及をさせていただければと思います。

 昨日の新聞だったかにも一部取り上げられていましたが、経産省の審議会で、中長期的な観点に立った今後の予測と、それから産業政策、こうやっていくべきだということが、中間取りまとめが発表されたということでございます。

 今回、産業政策についての法改正を議論しているわけですが、中長期的な、おとといですか、発表した点について、その意図をお伺いできればと思います。

齋藤(健)国務大臣 御質問ありがとうございます。

 経済産業省では、二〇二一年から、経済産業政策の新機軸と称しまして、世界的潮流も踏まえた産業政策の強化を開始をしています。足下では、ここ数年の産業政策の成果もありまして、日本経済は大きく変化するチャンスを迎えていると認識しています。

 他方で、国内投資、賃上げ、物価、株価を中心とした三十年ぶりの潮目の変化を前にして、経済界や国民には、強気な見方と弱気な見方、これが混在をしているのではないかと思います。足下の潮目の変化を継続させるためには、中長期的かつ大局的な目線を官民で共有をして、これに沿って施策を強化をしていくということが大事なんじゃないだろうかと考えています。

 こうした観点から、第三次中間整理案として、まず第一に、新機軸の政策の延長線上で、十分に実現可能な、企業の成長ですとか国民の豊かさを示した二〇四〇年頃の将来見通しを提示をいたしました。こうした将来見通しを官民で共有することで、経済界や国民の前向きな挑戦を後押ししていきたいと考えています。

 そして二つ目ですが、この将来見通しに沿いつつも、現下の経済情勢に対応して必要となる施策案、これも提示をしているところであります。例えば、国内投資拡大のため、GX、DX、経済安保などの観点から、半導体、蓄電池、バイオなどの分野への支援を行うこと、イノベーションや新陳代謝を促進するために、AIの開発力強化と利活用の推進、あるいは計算資源の整備に向けた支援を行うこと、それから、所得向上のため、良質な雇用を実現する地域の中堅・中小企業を育成することなどを検討しているわけであります。

 今後、先日審議会の場でいただいた委員からの御意見も踏まえながら、政府全体での政策取りまとめと来るべき概算要求につなげていきたいというふうに考えております。

落合委員 どの分野がこれから必要かというのは、いろいろな議論があると思います。私は、ある程度日本が得意というか、やっていける分野で、経済活動や生活に不可欠なもの、これからその分野については、やはり国内でしっかりと、生産というか、できるように、賄えるように、そういったところにはどんどん投資をしていく、必要不可欠であれば最低限の需要はあるわけですので、そういう分野に特化していく、ある程度力を入れていくべきだというふうに思います。

 その中で、先ほど大臣の答弁にも出ていましたが、重要なのはAIの分野であると思います。これは、一言でAIと言っても、いろいろなものがあるというふうに思います。例えば、今、アメリカ等が強いのは、ネット上で質問したら答えてもらうという分野が強いわけで、恐らく、これはかなり我々にとって当たり前のものに今後なっていくというふうに思います。そこでアメリカはリードをどんどんしているわけでございます。

 いろいろ調べてみますと、例えば、鉄道の運行も、今までもAIのようなものを使っていて、そこは日本の企業が強い。それから、製造業の製造装置も、自分で機械が考えるような、そういうものをもう既に、日本は製造装置が強いわけですけれども、取り入れているということで、AI全体で考えると、アメリカや中国にかなり後れを取ってはいますけれども、特定の分野ではまだまだやっていけるわけでございます。

 今AIが導入されていないような分野でも、これからAIが活躍していく分野もあるでしょうから、AIに力を入れていくということは重要なことだと思います。日本の企業がしっかりAIの事業を確立していく、国産AI、ジャパン・メイドAI、これについて、大臣は御関心があるということでよろしいですね。

齋藤(健)国務大臣 最大の関心を持っています。

 御指摘のように、今、鉄道の話とか言及されましたけれども、私は、AIを活用する点においては、日本の可能性というのはかなり大きなものがあるのではないかなというふうに思っていますので、これから生成AIが、自動運転ですとかロボットですとか創薬ですとか、様々な分野で大きく変革をもたらし得る技術であるということを考えますと、生成AIに絡んだ産業の育成というものは極めて大事なテーマだというふうに考えています。

落合委員 そこで、どんどん投資を促進していかなきゃいけないわけですが、先ほど私が申し上げたいろいろなファンドを持っている方とかとお話ししても、AIに投資した方がいいじゃないですかと言うと、いや、GAFAに勝てるわけないでしょう、アメリカだってGAFA以外はほとんど投資していないんだよと。これは、だから、寡占がかなり進んでしまう可能性があるというふうに思います。

 日本の企業全体の投資額を、ほかの外国企業、国別の投資額を見ますと、これは本当に桁違いというか、もしかしたら二桁、去年の統計とかを見ても違うんじゃないかなと。新しい分野なので、その統計自体もそんなに正確じゃないような状況なんですが、これは毎年二桁違う投資額ですと、かなり厳しいことになってしまうのではないかなというふうに思います。

 これこそ、私がお話ししたのはそこそこ有名なファンドの方なんですが、それでも投資をしないということですので、これはやはり国がある程度動いて、新機軸でも言っている不確実性を減らしていくということが重要だと思うんですが、国がこの分野でもっと前に出ていくということはお考えということでよろしいですね。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、AIの官民投資額、これは出典によってその指す範囲が異なることもあるんですけれども、例えば、スタンフォード大学が出しているレポートでは、二〇二三年のAIに関する民間投資については、アメリカは六十七・二二ビリオンドル、日本はその百分の一の〇・六八ビリオンドルという調査結果も示されていると承知しています。委員御指摘だったので、ちょっと調べてみました。

 AIは、様々な分野の生産性向上や社会課題の解決に貢献し、幅広い産業の基盤となる可能性がありますので、AIの利活用の推進と開発力強化に向けて、私は官民の投資を促すことは極めて重要な課題だという認識をしています。

 このため、令和五年度補正予算におきましては、政府全体で、AI関連予算として約三千二百億円、その中でも特に、経済産業省といたしましては、AI開発力の強化のための予算として、約千九百億円を確保したところでありまして、こうした取組も呼び水として、民間のAIモデル開発ですとか計算資源整備への投資を更に促進をさせていきたいというふうに考えています。

落合委員 私が調べた中でも、去年の官民合わせてのAIへの投資は、恐らく二千億いっていない感じかなと。今、大臣の答弁で、国だけで三千二百億の投資を今年行いますということですので、前に進んでいることは進んでいると思います。

 これは、何十年も見越して民間が投資をしていくべき問題ですので、是非、中長期的に、しかも戦略分野幾つかを挙げるだけじゃなくて、AIというものをばんと掲げて、政策を中長期に打っていくべきであると思います。

 今回、岸田内閣も力を入れて、GX債というのは発行しました。DX債はないわけです。ただ、それに近いものも考えていくべきじゃないかなというふうに思いますので、是非御検討をいただければと思います。

 AIの分野でどこにお金が足りないのか、まあ、全体的にお金は足りないんですが、いろいろヒアリングしますと、人材の確保、これは恐らく、一人当たりのお給料がめちゃくちゃ高騰している。要は、人材を引き抜いたりして、恐らくGAFAがつり上げている部分はあるというふうに思います。この分野のドクター等の方々に聞いてみますと、その分野の学会に論文を毎回投稿しているような研究者は、世界に二千人ぐらいしかいない。ですから、人材の供給量が少ないので、恐らくこれからどんどんどんどんそういう人材はお給料がつり上がっていくんじゃないかなというふうに思います。

 ここの委員会でも、人材の育成ということは答弁がありましたけれども、人材を日本で育成しても、もしかしたら引き抜かれて外国の企業で働くということも、これから、もう今既に起こっていますけれども、かなり起こってくるんじゃないかなというふうに思います。

 ですから、人材の育成だけではなくて、人材の確保のために、これは今までもそうですけれども、研究開発は日本がしたのに、事業化は海外に取られたということはたくさんあるわけですが、AIの分野も、せっかくやったのに全部外国企業に取られたということは、今のままだと起こるだろうなということが予測できるわけです。

 これは、人材確保のために、今まではやっていないでしょうけれども、国がお金を出すぐらいのことを、どこかにお金を出すのであれば、AIの分野は人材確保かなというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 私も委員と認識は共有しているところがありまして、AIの開発人材の育成、確保、これは重要な課題だと思っています。

 ただ、一方で、生成AI技術というのはいまだ黎明期でありますので、このAI開発人材が活躍できるような環境整備がないまま人材育成というのも、ちょっと順番が違ってきてしまうところもありますので、今大事なのは、国内においてAI開発人材がまず活躍できるような環境整備が、開発人材の獲得という観点からも今大事なテーマなんじゃないかなと思っていまして、このため、経済産業省では、AI開発に当たって大きな課題となっている計算資源の利用支援を行う形で、今、AI開発企業を支援をしているわけです。また、ユーザー企業とのマッチングを通じて、販路開拓も支援しようとしているわけです。

 そういうところが軌道に乗らないと、なかなか、来ていただいてもみたいなところが出てきてしまうわけです。

 それで、AIに伴うリスクには対応する必要がもちろんあるので、AI事業者ガイドラインの策定など、AIの利活用を促進するために必要な規律の整備も政府全体で進めています。

 こうしたAI開発を日本で行いやすくさせる取組の影響もありまして、足下では、海外企業を離れて日本で起業をしたり、あるいは、海外で学んで日本で起業するという事例も出てきています。

 引き続き、国内外のAI開発人材が活躍できるような環境を整備することで、人材確保につながるようにして努力をしていきたいなと考えています。

落合委員 おっしゃることも分かるのですが、この分野は、事業自体が人材がいないとできないというものもありますので、ほかの分野と違って、人材が支援の後に来るというよりも、人材と事業の立ち上げはセットであるというふうに思いますので、ほかの分野とは違う政策を打っていく必要があると思います。

 それから、一、二年前と比べても、今、環境が全然変わっているわけで、本当に日々進歩をしているわけですので、数年に一回、産業競争力強化法を改正していますけれども、その数年に一回ぐらいのペースではこの分野は間に合わないわけですので、是非ここは切り出して、どんどん前に進んでいただければと思います。また取り上げさせていただきます。

 いろいろな事業者に今回ヒアリングをしたんですが、この法改正の内容とは別に、事業者の方々が皆さん言っているのは、やはり人手不足というのは、特にコロナ後、本当に深刻である、どんな業界も人手不足に悩んでいるということは確かであると思います。

 その解決策の一つとして、外国人労働者を、先ほどのAIのような高度人材ではなくて、普通の仕事も外国人を労働者として受け入れることで補っていくべきだという意見もあるわけですが、入管法は法務省で、法務大臣もされていましたけれども、これは、産業を見ていく上で、外国人労働者を穴埋めにどんどん入れていくべきか、そうでないと考えているか。大臣のお考えを伺えればと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘は、日本社会において外国人をどう考えるかという重大な指摘も含まれているんじゃないかと思っていますが、外国人労働者の受入れにつきましては、AI等のDX分野を始め、専門的、技術的分野の外国人につきましては、我が国の経済社会の活性化に資するということで積極的に受け入れるということを基本といたしていますが、日本の労働力不足を単純に外国人労働者で補う、そういう考えは持っていないということであります。

 委員御指摘のとおり、現下の人手不足は、人口減少が進み、あるいは、女性や高齢者の労働参加率も既に世界最高水準に達しているという中で、深刻かつ構造的な課題になっているというふうに認識しています。

 このため、まずは、賃上げ等を通じた自社の魅力向上による人材確保の後押しを行う、これは一生懸命やっているわけですが、同時に、省力化投資等の生産性向上への支援等も行っているところです。

 その上で、我が国の深刻な人手不足に対応すべく、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れるために特定技能制度が創設されておりまして、先月には対象分野の拡大等も行われています。経済産業省の分野では、工業製品製造業分野に鉄鋼関連やプラスチック製品関連等の事業所を追加することとなりました。国内人材の活躍促進や生産性向上の取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な分野において、この制度を適切に活用していく、そういう考え方で進めているところです。

 私は法務大臣も経験しましたので、つくづく大事だなと思いますのは、その上で、日本人と外国人が互いに尊重をして、安全、安心に暮らせる共生社会というものを実現していかなくちゃいけないわけで、そのためには、やはりルールや法律を守れない外国人の方には厳格に対応する一方、ルールを守る方が働きやすい環境はしっかり整備をしていくということをしてまいりませんと、ルールを守れない外国人がたくさん日本社会に存在することになりますと、やはり日本人が外国人を見る目が変わったりしてきてしまう、そういうリスクもありますので、このめり張りはしっかりつけていかなくてはいけないのではないかなというふうに考えております。

落合委員 産業政策全体で見ても、コストカットばかりしてきたことは反省しなきゃいけないということで、ただ、例えば、人件費を削減する手段として、非正規雇用が、そういう方法が取り入れられてきた。それから、生産の海外移転も、海外の安い労働者を活用するという上でこの三十年間取られてきました。その次の、人件費削減、抑える手段として外国人労働者をどんどん入れていこうというような話をそのまま政策として取り入れれば、お給料を上げて経済の好循環を実現していくということも果たされないわけでございます。

 ですから、そのためにも、GXと同じようにDX、人が少なくても仕事を回していけるというような経済をつくっていくことが大変重要なことだと思います。その見地に立って、是非、今後も政策を打っていただければというふうに思います。

 また取り上げさせていただきます。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、小山展弘さん。

小山委員 立憲民主党の小山展弘です。

 早速、質問させていただきたいと思います。

 今回、産業競争力強化法の改正案の審議ということでございますけれども、いよいよ政府が、必要な民間の技術開発についても大きな支援をしていくというようなことでございまして、私も大変賛同するところが多々ございます。

 新たな時代に入ったというようなこともおっしゃる方もいるんですけれども、よくよく考えてみますと、冷戦の時代には、日本は日本株式会社などとも言われまして、官民一体となって産業育成に取り組んできたというような産業政策の歴史があるのではないかなと思います。

 先日、大島敦議員も挙げておられましたけれども、アメリカは、一九八〇年代の貿易摩擦のときに、「メイド・イン・アメリカ」という本も出まして、日本に対しては、非関税障壁の撤廃や自由貿易、こういったものを求めつつ、自分の、アメリカの国内については、むしろ日本の産業政策をかなり参考にしてアメリカの産業政策を展開したりとか、その一つの表れが、いろいろなものがありましたけれども、クリントン政権のときの戦略的貿易政策なんかもその一つの表れなのかなとも思っております。

 先日の参考人質疑でも、大橋参考人が、競争政策と産業政策、この両方が必要なんだけれども、この数年間、十数年間ですかね、あるいは三十年間かもしれませんけれども、競争政策、規制緩和とか、落合議員の今の質問にもありましたけれども、その部分がかなりアクセルが踏まれてきたんじゃないかというようなことがありまして、むしろ、新しい時代に入ったというよりも、かつての、かつてと一緒ではないですけれども、アメリカが八〇年代の日本を参考にしたように、今の日本も、振り返れば未来という言葉ではないですけれども、当時の、日本株式会社と言われた時代の産業政策、そのまま持ってくるわけにはいかないにしても、かなり参考になる点があるんじゃないかと思いますけれども、この点についての政府の認識を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 かつての産業政策との比較という御質問の趣旨だと思いますが、確かに、かつての伝統的な産業政策というのは、市場の失敗を是正しようということと、それから幼稚産業保護論、これを理論的な支柱として、特定産業の保護、育成、これが中心だったわけです。

 当時を思い出しますと、アメリカからは、ターゲティングポリシーだと。特定の産業を決めて、そこに政策資源を投入する、そのターゲティングポリシーはけしからぬということでアメリカに言われ続け、その結果だけではないんでしょうけれども、その後、そのターゲティングポリシーから徐々に日本は、市場中心で、市場環境整備が政府の役割だというふうに発想が変わってきているということであります。

 この新機軸に、いよいよもう一回政府として一歩踏み込んだ産業政策の展開が必要だろうということになっているわけでありますが、違いといえば、今回は、世界の不確実性が高まってくる中で、市場だけでは進みにくい社会課題解決分野、こういったところに、産業横断的な対象分野でありますけれども、これを設定をしているということですので、個別の産業ではなくて、社会的課題というものに、ターゲットと言っちゃいけないのかもしれませんが、焦点を絞っているというところが大きな違いなんだろうなと思います。

 そして、こうした分野に政府も大規模、長期、計画的にあらゆる政策を総動員して、単に産業を保護するのではなくて、民間企業の予見可能性、こういう分野における予見可能性を高めて積極的な投資を引き出すことを主眼としているという点、こういうところも違いではないかなというふうに思っています。

小山委員 前回の質疑の際にも質問させていただいて、大臣からも御答弁いただきましたが、自由貿易が世界的にも、これがルールだと。だけれども、電気自動車なんかで、アメリカやヨーロッパが、自分たちに有利なようなルールだということの側面もあろうかと思いますけれども、その自由貿易のルールで、WTOなども、そのルールを更に守らせる、あるいは促進するというようなことでやってきたんですけれども、グレアム・アリソン教授が、勢力圏を認めていくべきじゃないかと。

 第二次世界大戦が終わった直後、世界が一つになった。ところが、その後冷戦になっていって、そこに、行き過ぎた理想主義も駄目だし、だけれども、巻き返しのような形よりも、そのときはジョージ・ケナンが、封じ込めだということで、勢力圏を設定して、お互いにそこから踏み込まずに対立を安定化させようとしたというような側面があったかと思いますけれども、今もちょっとそれに似たようなところがあるんじゃないかと思います。ですから、一つのルールで全世界を覆うというよりも、幾つかの勢力圏を認めて、その中でそれぞれ、勢力圏同士が摩擦を起こさないように安定化させていくというようなところがこれからまた重視されてくるのではないかなと思います。

 それで、アメリカの勢力圏じゃないところは、多分、ルールで貿易をやっていく、ルールで経済をやっていくという、その考え方自体も多分違うんだろうというようなことは思いますし、そことも日本はおつき合いもしていかなければいけないというような、その意味では、冷戦のときと非常に似た部分と、またちょっと違う部分もあろうかと思うんです。

 済みません、ちょっと話が脱線しましたが、しかし、大臣がおっしゃられるとおり、自由貿易が全ての時代から、やはりそれぞれの国で経済安全保障やそれぞれの産業を育成して競争していくような側面がより強まる時代になってきたと思いますので、今回のことも、日本産業の育成に向けて、是非これからも力を入れていただきたいと思います。

 次も大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、今回の法改正についての様々な議論の中で、人口減少についての要因ということで、いろいろな議論があったかと思います。中には、人口減少は経済成長とか景気回復に関係ないんだ、言葉を額面どおり受け取ると、そういう御説明もあったこともございました。

 確かに、人口減少傾向の国でも経済成長を実現している国もありますし、人口減少があるから全て駄目だということではない、そこはそのとおりだと思うんですけれども、しかし、先日、参考人質疑で、たしか滝沢参考人が、人口減少というのもハンデだということで、コストカットの要因の一つというようなことも挙げていらっしゃったと思うんです。

 やはり、人口減少とか人口構成の高齢化というのは、個人消費の減退であるとか小売販売額の減少ということで表れていると言う研究者もおりまして、柳沢伯夫先生なんかは常に、藻谷浩介さんを、審議会の一員として、こういう、現場を自転車で走り回ってくるような、現場を見てきているような人の話を聞いていくべきだということで話されておられたのを、一聴衆として講演を聞いたこともありましたけれども、そういう側面はやはりあるんじゃないかなと。

 ですから、人口減少というのはやはりハンデとしてあるんだということを認めつつ、でも、そのハンデを超えた産業の成長、経済成長というのを目指していくというのが本来の正確な表現ではないかなと思いますけれども、この点、もう一度政府の認識をお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおりだと思います。

 一般的には、人口減少は、当然、労働投入量の減少ということでありますので、経済成長について言えばマイナス要因になるのは事実だと思いますが、しかし、では逆に、この三十年間の経済低迷は人口減少が原因かといえば、私は少なくとも主な原因ではないだろうというふうに思っています。

 日本として、これから、DX、GX、世界全体で投資も伸びるし日本国内の投資も伸びる中で、やはり成長の余地というものは大きくありますので、そこに適切な政策展開を図っていくということに尽きるのではないかなというふうに思っていますので、結論を言えば、委員と同じ認識であります。

小山委員 他策なかりしを信ぜんと欲す、これは陸奥宗光の「蹇蹇録」の中の言葉ですけれども、多分、全ての政策がそういうようなことで、その信ぜんと欲す政策自体が、いろいろな人によって、認識が違う場合もあれば、ある程度共通のところもあろうかと思いますけれども、いろいろな条件があっても、ここをベストだと信じて、ほかに道はないだろうと、他策なかりしを信ぜんと欲すの姿勢で是非取り組んでいただければと。

 何か、バブルをあおったときとか、これだけをやれば全てバラ色になるということが、かえって、ちょっと間違った、油断のような認識を生んでしまうこともあるんじゃないか、あるいは、間違った認識に基づくと、マイナスを過大評価してしまって、できることもできなくなってしまうという、この両方あると思いまして、是非これからも大臣の姿勢でお取り組みいただければと思っております。

 次に、今のコストカット経済、あるいはデフレマインドについて少し触れさせていただきながら、金融のことを少しお尋ねしたいと思うんです。

 私は、自分自身が前回の質問のときに、親事業者によるいわゆる中小企業さんへの過剰なコストカット要求といったものも、コストカット経済、あるいはデフレマインドといったものを少し助長したところもあったんじゃないだろうかということを申し上げましたが、あと、もう一つ挙げられるとすれば、金融検査マニュアルというのもそういう側面もあったんじゃないかと。

 これは、傷口に塩を塗るようなものだと言われて、質問として申し上げるのはやめたんですけれども、金融検査マニュアルも、廃止をしたときに、実際に、金融機関の融資というか、姿勢を萎縮させるような弊害もあったということでホームページにも書かれております。

 プラス、実際にはこの金融検査マニュアルに基づいて自己査定をやって、自己査定をするにも内部格付をしている金融機関がほとんどだと思いますけれども、その内部格付の要件というのは、やはり実際には、金融機関ごとに定めたといいながらも、大体どこも同じような形で、意識しながらやられていらっしゃるんだと思うんですけれども、その要件の中に、実は、企業の自己資本比率を、銀行の方じゃなくて、金融機関の方じゃなくて、企業の自己資本比率が高いと内部格付もよくなるというような、そういうところがあるんです。大体そういうことで共通してやっている。

 ですから、ここのところでも、企業は投資をするよりも内部留保というようなことになっていったところも、これだけがもちろん全てではないですし、間接金融から直接金融へ資金調達が変わっていったということもあるかと思いますが、それもあったのではないかなと思っております。

 そんな中で、間接金融において、融資においても、事業計画や事業の成長性、将来性を評価して、償還確実性をもって融資判断をするというのが本来の融資の姿だと私は思います。ですから、担保というものがあれば、もしも事業が失敗になったときに担保で償還できるということがあるので、なので、償還確実性を高めるという意味では担保はあるかもしれないですけれども、でも、逆に言えば、担保があっても事業計画が駄目だったら貸しちゃ駄目だと思うんですね。逆に、担保がなくても、私も、余りこういうことを言うと、守秘義務違反になってしまって、余計なことを言ったといって失言になるといけないので、そこは慎重に、言いませんけれども、担保があってもなくても、やはり事業計画で判断していくべきだと。

 その観点からすれば、むしろデットが、スタートアップや企業の創業に全く対応できないというわけではないんだと思います。また、そういった起業される新規の企業、あるいは既存の企業が新しく事業を立ち上げる場合でも、事業の、稼ぐ、あるいは、研究開発をしたり、新しい商品を開発したり、それを作るのが企業の仕事ですから、資金計画であったり経営計画であったり、あるいは、金融機関の持っている産業分野に関する情報とかアドバイスを、コンサルタント的役割を果たすことが本来の金融機関の融資担当者の、その人のパーソナリティーにもよりますけれども、やることじゃないかと思っております。

 そういった融資の部分の、本来の、事業計画やそういった企業を評価するといったようなところも含めて、ベンチャー企業やスタートアップに対して、デットとエクイティーのメリット、デメリット、あるいは、それぞれの果たす役割をどのように政府が認識しているか、お尋ねしたいと思います。

菊川政府参考人 今委員の方から、スタートアップ等に関する直接金融、間接金融についての御指摘ございました。

 まさに間接金融、これはすなわち金融機関の方から借入れ等をする資金調達ということになりますけれども、これは株式のいわゆる希薄化を回避をしたり、若しくは、株式発行に比べて資本コストが低いというような特徴があるんだろうというふうに承知をしております。

 また、先ほど委員の方からも、事業性、事業計画をしっかり見てというお話がございました。そういうことで申し上げますと、安定的に売上げを計上できるようになってきた事業段階にあるスタートアップにとっては、更に事業をレバレッジをかけて拡大していくというための資金としても非常に有益であると思いますし、また、直接金融による次の調達までの期間を調整するために非常に有効なケースということで認識をしております。

 他方、直接金融、これは株式発行等で直接資金調達するわけですけれども、これは返済義務がなくて資金使途に限定がないということで承知をしておりますが、このため、先ほど担保というようなお話がございましたが、そうした資産に乏しい中でもリスクを取って急成長を目指すスタートアップには、非常に有用な調達手段であるのではないかとも考えております。

 経済産業省といたしましては、スタートアップがそれぞれの成長段階に応じまして、また、委員御指摘があった事業状況、事業計画の状況に応じまして必要な資金を確保できるように、それぞれの手法の違い、役割、ここをきちっと踏まえながら、資金供給の促進に向けた環境整備を取り組んでいきたいというふうに思います。

小山委員 今回、特に公庫のツーステップローンの場合には、指定金融機関のそういった目利きというか、逆に資金需要をしっかりと捉まえて、せっかくの制度ですから、指定金融機関がツーステップローンで応需していただける、融資実行できるようなことも、やはりこういった間接金融の特徴というものを生かしてもらいたいと思っております。

 余談ですけれども、私、実は最初にお仕えした上司が、証券会社、今はもうみずほ証券さんに合併したんですけれども、当時、農中証券というのがありまして、そこを立ち上げた、投資もかなり経験した支店長で、農林中金は国内最大の機関投資家ということで投資部門も多いんですけれども、よくその支店長から言われたのが、融資担当者こそ投資のアナリストの視点を持たなきゃ駄目だ、投資のアナリストはまた逆に融資の担当者の視点を持たなきゃ駄目だと。

 あの時代の方々は、元々、支店で債権回収とかそういう大変な仕事をした後に、本店で今度は上場企業への金額の大きい貸出しをやった。ところが、経験になるのはそういう大変な、金額が少なくても回収とかそういった方が多分銀行員としては経験が上がるんだろうと思うんですけれども。それで、その後その方は証券会社とか投資の部門に行って、それでまた支店の方に戻った。なかなか、今はもう大分雰囲気が変わっているかと思いますけれども、是非そういった融資の方でも間接金融も頑張ってもらいたいと思っております。

 コストカット経済のことについて、関連してまたちょっとお尋ねしたいと思います。

 さっき落合議員の質問にもあって、失われた三十年と言われているこの三十年というのは、先ほどグラフも出していただいて、非常に配当金が多くなったということで言われておりまして、政府がおっしゃっているとおり、コストカット経済というのは、企業が投資をしなかった、人的投資と設備投資と。それが非常に意欲が少なかったということなんですけれども、やはり株主からの配当圧力というものは少なからずあったんじゃないだろうかと。

 一方で、落合議員のグラフを使うとまたちょっといけないかもしれないですが、一九九五年とか七年以前はどうだったかというと、当時よく奥村宏さんという経営学者というか経済学者の方が、会社本位主義とか、本を出されていますけれども、政策株、安定株のことを結構触れているところがございます。こういった政策株とか安定株主、株式の持ち合いは、結果としてではあるかもしれないですけれども、過剰な配当圧力よりも研究開発やあるいは設備投資、人的投資へと向かわせる後押しをした、そういう側面もあったのではないだろうかと。

 これはちょっと、言うといろいろと市場関係者から怒られるかもしれませんけれども、日本の法人株主は安定株主であって長期固定的な所有者である、その会社も長期的な視点で経営できる、会社の利益が少ないのに配当を増やせと要求する個人大株主もいないから、利益をできるだけ社内に蓄積できるというふうに書籍の中で述べております。また、法人大株主や相互持ち合いこそ日本の会社の特質であって、長期的な経営を可能にしたんじゃないかと。

 ただ一方で、この会社本位主義をどうするかと。これは実は先ほど申し上げた支店長から薦められて読んだのですけれども、このことが、九〇年代、小泉政権の頃かと思いますが、日本の株価が非常に低迷をして、配当性向が低いから、だから株に投資をする方が少なくて株が上がっていかないんじゃないか、だから安定株主は駄目なんだということを、この当時はおっしゃっていたんですね。

 ところが、その後、リーマン・ショックを経て、あのとき言っていたことは大分間違いもあったというようなことも、済みません、これは今日の委員会までに記憶をたどってもちょっと調べ切れなかったんですが、そんなことも述べていらっしゃったのと、研究開発やそういった投資ができなくて、確かに今、株価は最高値といっても、海外の物価上昇率なんかも考えれば、やっと今頃この当時に戻ったというのは、大変日本が、物価上昇率も含めれば、かなり取り残されているというような言い方もできようかと思うんです。

 企業が、こういった、そもそもの成長力であったり、研究開発だったり、新商品の開発ができなければ、企業の評価そのものが下がるので、配当性向ではないところでやはり株価が上がっていかない。もっと上がってもいいと思うんですね。

 そういうこともあろうかと思うんですけれども、改めて、政策株とか安定株主の存在について、政府の認識をお尋ねしたいと思います。

新発田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる政策保有株式ですとか安定株への対応というところでございますけれども、経営への適切な規律づけを通じた中長期的な企業価値の向上という観点から、重要なコーポレートガバナンス上の課題であるというふうに認識をしております。

 したがって、コーポレートガバナンス・コードにおきまして、上場企業に対し、政策保有株式を保有する場合には、その合理性の検証ですとか縮減に関する方針等の開示を求めているというところでございます。

 政策保有株式の評価について、一概に申し上げるのはなかなか困難でございますけれども、例えば、経済合理性を十分に検証しないまま保有を継続して適切に議決権行使を行わないなど、いわば物言わぬ株主としてガバナンスにゆがみを生じさせる場合、その場合には、会社や株主共同の利益を害する点で問題となるというふうに考えておりますけれども、他方で、スタートアップ企業の成長段階において、当該スタートアップ企業との協業によるシナジー効果が見込まれるような場合に、その株式を継続的に保有するということは、当該株式を保有する会社の企業価値の向上というものに加えまして、当該スタートアップ企業の育成にも寄与し得るんじゃないか、そういう指摘もあるというふうに承知しております。

 いずれにせよ、政策保有株式につきましては、企業においてその保有の合理性をきちんと検証して、保有目的を株主や投資家に対して適切に開示をしていただきたいというふうに考えてございます。

小山委員 先ほどの日本株式会社の話じゃないですけれども、そのまま過去に戻るというわけではないと思うんですが、参考にできたりとか、違法なことではないので、そういったところはあろうかと思います。

 次に、JICのことについてお尋ねしたいと思います。

 JICは、傘下のファンドや民間ファンドへの投資を通じて、スタートアップ企業への支援や大規模な成長投資、事業再編等のリスクマネーの供給を実施するということでございますけれども、リスクがある以上は、全てが成功する案件ばかりではないと思っております。

 JICは、令和に入ってから一度も営業利益は出ておりませんでして、営業損失ばかりということで、民間がリスクを取りにくい案件に投資しているから、これはやむを得ないというところはあるんですけれども、このJICの損益の足下の状況と今後についての見通しを政府にお尋ねしたいと思います。

石井大臣政務官 小山委員の御質問にお答えいたします。

 JICの足下の状況と、そして今後の見通しについてでございますが、まず、ベンチャーキャピタルなどへの出資を行う官民ファンドであります産業革新投資機構、JICは、投資活動を本格的に始めた二〇二〇年十二月から二〇二三年十二月までの三年間で、約四十ファンドに対して約一・六兆円の出資を約束しております。

 このうち、既に二千億円が投資先ファンドを通じて国内のスタートアップなどに出資されており、これらのJICからの出資が呼び水となって、投資先において約一・二兆円の民間投資を生み出しているということにもなります。

 そして、このように既に呼び水効果は大きく出始めておりますが、一般的には、利益の発生する投資回収は、出資を行ってから一定の期間の後行われ始めるため、JICとして利益が生まれ始めるのは、まさにこれからだと考えております。

 一方、足下で出資額が積み上がっていくにつれて、出資先のファンドに支払う費用も増加しております。このため、近年、JICの損益は赤字が続いていると認識をしております。

 JIC子会社が運用するファンドの投資先では、既にIPOの事例やMアンドAによるエグジットなどの成果も表れており、今後、投資先ファンドからの回収が得られるよう、投資先ファンドの管理、評価の徹底をJICに対して求めていく所存でございます。

小山委員 二〇二〇年の前に子会社の利益でかなり大きなものがあって、今時点ではJICは利益準備金も大変潤沢ですので、多分これから、今、JICとして二〇二〇年から始めたということではありますけれども、種まきをして、まさに民間ができないことをやるのがJICの役割だと思います。ただ、税金も入っておりますので、中長期的にはせめて収支とんとんになるように、また是非これから頑張っていただきたいと思います。

 あえてというわけではないんですけれども、JICの投資に伴うリスク分析、評価、リスク管理体制についてお尋ねしたいと思います。

菊川政府参考人 お答え申し上げます。

 JICは、産業競争力強化法に基づき定められました投資基準がございます。これに沿って、今委員の方からも御指摘がありましたとおり、民間事業者だけでは対応が難しいリスクがある分野への投資を後押しするという観点からの出資活動を行っているところでございます。

 そういった中で、投資先のファンド、これ、これと個別にございます、そのリスク評価につきましては、過去の当該のファンドの投資、回収の実績でありましたり、投資を行っているチームの体制がどうなっているか、そしてまた外部からの評価、こういったものを様々、るる分析をいたしまして、いわゆるデューデリジェンスというものでございますが、投資評価を行っておりまして、最終的には、投資実務、経営、技術等に精通いたしました社外取締役、こういったところから成る産業革新投資委員会といったところにおいて投資判断を行っているものと承知しています。

 また、投資ファンドごとに目標、またその達成状況、そういったものを定期的に評価をしていく、そして、全体的に事業分野が過度に偏らないということの、いわゆるポートフォリオの管理を行うことも通じて、リスク全体の管理についても徹底するということで運営をされていると承知をしております。

小山委員 JICについて、もう一問お尋ねしたいと思います。

 JICの人材確保のところなんですけれども、他の同業の民間ファンドさんと比較して報酬水準では少し劣っているということで、人材確保に苦労しているというようなことが財政制度審議会の資料にも記載があります。

 民間ファンドでは一定水準以上の報酬を出さないとなかなか有為な人材が採用できず、限られた人材の獲得競争もかなり激しいということもあるんですけれども、報酬面で制約のある官民ファンドの人材確保の方針について、また今後の見通しについて、政府の見解をお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、官民ファンドであるJICでは、他の公的機関における制度設計も踏まえた報酬体系になっておりますので、民間の投資ファンドと比べれば、その報酬水準は劣後する場合もあると認識しておりまして、人材採用における課題の一つだと思います。

 一方で、JICは、政策目的を達成する機関として、公益性が高く社会課題の解決に貢献し得る新たな価値を提供する企業への支援ですとか、大規模な事業再編等により我が国産業の競争力強化に資する案件など、民間ファンドでは手がけることができない投資活動に従事することができるという魅力もあるんだろうと思います。

 人材の募集に当たりましては、このような公的ファンドならではの魅力を強調するとともに、JICやINCJの定例会見などの対外説明の場において、投資案件の政策的意義や、JICグループでの経験を経て民間ファンドへのキャリアアップですとかスタートアップへの転身を図った事例を紹介することなどを通じまして、意欲の高い人材の獲得に努めているところであります。

 経済産業省としても、JICとの対話を定期的に実施をして、優秀な人材確保のための方策に関して意見交換を行っておりまして、JICの活動を担う優秀な人材の確保に向けて、JICと連携しながら、しっかり取り組んでいきたいと考えています。

小山委員 最近は、これは多分JICに限らず、経産省の職員さんとか、本当に給料がよければ、みんな今仕事しているだろうかと。我々も質問をして、遅くまで答弁書を書いていただいたりとか、そう考えたりしますと、人は何のために仕事をするかというと、給料の多いということだけが目的じゃないということだと思いますし、是非、先ほど大臣の答弁でおっしゃられたような、民間でできないようなことを手がける、あるいは公共性、公益性、まさに意味のある仕事をしているんだと。

 もちろん、みんな意味があるんだ、私はそういう認識を持っていますけれども、その中でも特に、公共性、社会性、あるいは日本の産業の育成、こういった戦略的な分野についての育成に、他の民間ファンドではできない意味のあることをしているんだというような、是非、そういう使命感というものを持っている方々で、かつ、そういった思いプラス能力のある方々が来ていただいて、残っていただければと。

 結構、どこの金融機関でも、あるいは経産省さんでも、入ってかなり若い時期に辞められる方とか、あるいは、最近、就職が決まったそばから何とかナビとかで次の就職先を探すというような若い人もいらっしゃるみたいで、私はちょっとそういう感覚がないので、自分も年を取ったのかなとも思いますけれども。

 でも、その中でも残って、まさに今いらっしゃる方々、頑張っていらっしゃいますし、多分齋藤大臣も経産省にお勤めだったときにはそうだったんじゃないかと思いますので、是非、そういう思いのある人材を集めていただいて、頑張っていただきたいと思います。

 次に、戦略分野国内生産促進税制のことを最後にお尋ねさせていただければと思います。

 中堅・中小企業のGX支援も対象とはしておりますけれども、一方で、GXとか脱炭素経営への企業の意識は、投資やコストに見合う効果が見込めないんじゃないか、何から取り組めばよいか分からないといったような声も、中小企業、中堅企業さんからは聞かれます。

 こういった中小・中堅企業さんのGXの推進について、政府はどのような考え方、対策を持っていらっしゃいますでしょうか。

石井大臣政務官 お答えいたします。

 中小企業、中堅企業がGXに取り組むことは、エネルギーコストの削減や、いち早く取り組むことによって将来の受注拡大につながる可能性があるといったメリットがございます。

 しかし、他方で、先生御指摘のとおり、何をしたらよいのか分からないという声を始め、情報が不足している問題があると承知しております。

 このため、中小機構における相談窓口の設置や、支援機関が支援策の積極活用を働きかけるプッシュ型の支援、さらには、専門家がエネルギー使用の改善のアドバイスを行う省エネ診断の支援の強化などを行っております。

 また、中小企業にとって、投資コストの負担の課題もございます。

 GXに資する設備投資などを支援するものづくり補助金や、省エネ設備への更新を支援する省エネ補助金などの予算措置を拡充するとともに、カーボンニュートラル投資促進税制の中小企業向けの措置内容を拡充するなど、各種の施策を講じております。

 このように、企業からの相談へのきめ細かい対応や支援策など情報の提供、さらには、支援策の拡充、実行など様々な施策を講じて、中小・中堅企業のGX推進に向けてしっかりと取り組んでまいる所存でございます。

小山委員 是非、やはり中小・中堅企業に、賃上げもそうですし、こういったGX、DXの取組も、やはりそういった裾野が広がっていかないと、なかなか日本全体としてもこの取組が不十分になると思いますので、こういった中小企業、中堅企業さんへの、とりわけ中堅企業という枠も今回の法律でできますので、GXの支援、是非政府にもお願いしたいと思います。

 ちょうど今時間も来ましたので、これで質問を終わらせていただきます。

岡本委員長 午後零時五十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十五分開議

岡本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大島敦さん。

大島委員 これまで質問通告をした中で、各委員から質問された項目を除外して質問をしていきたいと思います。一番最後の方から行きます。

 中堅・中小企業におけるMアンドAの在り方。

 本法律案では、特定中堅企業者等による成長を伴う事業再編の計画を主務大臣が認定した場合について、中堅・中小グループ化税制等の支援措置を講ずることとしています。

 これまで、中小企業への各種優遇措置を理由に、合理的に中小にとどまる企業が一定数あると見られる一方で、中堅企業から大企業へと成長する企業の割合は国際的に低いといった問題が指摘されてきました。中堅企業への支援の強化により、成長意欲のある企業が、中小企業から中堅企業、そして大企業へと成長を目指せる環境整備は必要なものだと考えます。

 他方で、我が国経済は転換期にあります。賃金と物価が共に上昇し、日銀の政策修正を機に金利のある世界に移行していく中で、企業は収益構造の一段の強化を迫られることになり、耐久力で劣る中小企業、小規模事業者の動向が懸念されます。

 中堅企業等によるMアンドAを後押しするに当たっては、買手側の中堅企業等が、売手側の中小企業、小規模事業者等が有する技術、ノウハウの維持や、従業員の地位、労働条件の保全にも配慮した上で、労働移動の受皿となり、産業全体の賃金の底上げや、生産性の向上等の役割を負うことができるかなどを見極めることが重要になると考えますが、中堅・中小企業におけるMアンドAの在り方について、政府の見解を伺います。

菊川政府参考人 今般の措置におけるMアンドAの在り方についての御指摘がございました。

 まさに、経営力の高い成長企業に経営資源を集約化していくということは、MアンドAをする中堅企業等の成長のみならず、MアンドAによりグループの一員となる中小企業全体の、その収益力向上や賃上げ等にも資するのではないかと思います。

 そういった中で、御指摘がございましたような、技術、ノウハウの維持、活用、また雇用、賃金等々の労働条件の向上、こういったところについての、買手だけではなくて、売手というようなところについての御指摘があったかと思います。

 このため、そうした指摘も踏まえまして、本法案の措置によって、MアンドAによるグループ化の取組を後押しする際には、売手側の中小企業の技術、ノウハウの維持、また従業員の地位、労働条件の保全にも配慮するような要件を設けるということについて検討してまいりたいと考えております。

大島委員 ありがとうございました。

 それでは、特許庁に伺います。

 大企業からの要請に従い、下請中小企業が自ら開発した技術等を差し出さざるを得ない現状があります。中小企業が自らの技術を守るためには、知的財産の広報、普及啓発が極めて重要であり、政府としてはどのような中小企業の知財活用支援に取り組むのか、伺いたいと思います。

滝澤政府参考人 お答え申し上げます。

 知的財産は企業のイノベーションの源泉であり、企業の経営力強化の観点でも極めて重要です。このため、経済産業省においては、中小企業における知財を活用した経営力の強化や知財取引の適正化に向けた支援を行っております。

 知財取引の適正化に向けては、下請Gメンによる取引実態の把握の中で、技術、ノウハウの保護に関しても、重点的な項目の一つとしてヒアリングを実施しています。知財の侵害のおそれがある事例が見られる業種に関しては、自主行動計画に明記するよう呼びかけを行っただけでなく、その徹底にも取り組んでおります。

 また、下請中小企業振興法に基づき、望ましい取引慣行を定めた振興基準においても、書面等で契約内容を明確化すること等を通じ、下請事業者の知的財産を保護することを定めております。

 さらに、特許庁としても中小企業からの相談に柔軟に対応するため、全国四十七都道府県に知的財産について相談可能な知財総合支援窓口を設置するとともに、知財取引の適正化に関する動画教材等を配信し、知財の活用に対する意識の向上を図っております。

 加えまして、特許庁、INPIT、日本弁理士会及び日本商工会議所で知財経営支援ネットワークを構築し、知財取引の適正化も含め、あらゆる経営課題に対し、全国一律で高品質な支援をきめ細かく実施する体制強化を図ったところでございます。

 これらの取組により、引き続き、中小企業における知財取引の適正化や知財経営の更なる定着を図り、稼ぐ力の向上に向けて取り組んでまいります。

大島委員 ありがとうございます。

 もう何年か前なんですけれども、弁理士会の皆さんとお話ししたときに、中国の会社に累損を抱えていた中小企業が買収をされて、中国で物すごく伸びる企業になったという話を聞いたことがありまして、私たちが知らない、なかなか顕在化していない知財が、中小・小規模事業者、持っていらっしゃると思いますので、その点を、経済産業省、そして特許庁の皆さん、是非、商工会議所、商工会等もあるものですから、先ほどのネットワークを強化していただいて、できるだけ我が国に富が落ちるようにしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 続きまして、株式会社産業革新投資機構について質問いたします。

 JICは、当初の想定どおり機能しているのか。これまでの実績を踏まえて、JICや旧機構は、我が国のスタートアップ支援全体から見てどの程度貢献し、民間のリスクマネーをどの程度誘発し、現時点で当初の想定どおり機能していると評価できるかどうか、政府の見解を伺います。

菊川政府参考人 JIC等々の現時点の評価ということでございます。

 JICは、VC、ベンチャーキャピタル等のファンド出資を通じて、民間資金の呼び水となることが期待されております。その結果、投資先において計約一・一兆円の民間投資を生み出しているものと承知をしております。

 また、JICは、ディープテック分野でありますとか、そういった民間資金が不足する分野を中心に投資活動を行うとともに、国内外の機関投資家からの資金を受託するための組織体制の整備、改善など、投資ファンドの成長支援にも積極的に取り組んでいるところでございます。

 また、JICの子会社が運用するファンドの投資先においては、いわゆるIPOですけれども、既に上場しているような事例や、MアンドAによってエグジットしたような成果も表れているところかと思います。

 また、旧産業革新機構につきましては、これは二〇〇九年、投資活動を開始したタイミングですけれども、それから十年間で、日本全体のスタートアップ資金調達額、これは民間のデータですけれども、約二・五兆円のうちの約一割に当たる約二千五百億円の投資を行うということで下支えをしてきたということだと思います。

 具体的には、民間ベンチャーキャピタルでは対応が難しい分野において、長期、また大規模な資金を中心に投資、支援を行っておりまして、エグジット済みのスタートアップについては、投資額を上回る投資回収を実現しているところでございます。

大島委員 JICがユニコーン企業を生み育てるための戦略について伺います。

 これまでの実績のうち、IPOの件数自体については、それほど重要ではないと考えます。

 というのも、IPOを行っても、その後の株価や業績がさえない企業が我が国では多く見られます。スタートアップにとって上場はゴールというわけではなく、資金調達の一つの手段であり、IPOを行わず、非上場のままでも、資金調達ラウンドを重ねることで規模が大きくなっていくケースがあり、それが物すごく大きくなるとユニコーン企業につながります。

 スタートアップ支援は、何もなかったところから起業する、つまりゼロから一を生み出すことにも意義がありますが、それよりも、一を十にする、十を百にすることも重要です。JICや旧機構が関与して、我が国経済を牽引するようなユニコーン企業が新たに生まれたといったことは、これまでに残念ながら耳にしたことがありません。既存の市場や技術を根本から変える破壊的なイノベーションによりゲームチェンジを起こすようなユニコーン企業を育てる、この点がJICに課せられた一つの使命ではないかと考えます。

 JICは、ユニコーン企業を生み育てるために今後どのような戦略を取ろうとしているのか、政府の見解を伺います。

菊川政府参考人 ありがとうございます。非常に重要な御指摘をいただいたと思います。

 委員の御指摘のとおり、時価総額が小さいままスタートアップが上場して、そのまま成長していかないというのは非常に課題かなというふうに思っております。

 そういった課題に対応するためには、ベンチャーキャピタルの投資期間が終わった後に、それを引き受けていくような、いわゆる非上場株式のセカンダリー取引の活性化をしていくこと、そしてまたグロースステージ、事業が拡大していく、そういったステージの支援を通じてやっていくということが非常に大事かなと思っております。

 JICは、先ほど御答弁申し上げましたとおり、リスクマネーを民間投資資金が不足する分野に供給をしていくということが大事ですが、その中でも、ユニコーン企業の創出というのは非常に重要な分野の一つということで認識、また位置づけているところでございます。

 なかなかユニコーンが登場しないという御指摘をいただいておりますけれども、御指摘を踏まえて、グロースステージの支援、また海外投資の呼び込みに注力をして、国内外の機関投資家から資金を受託するための組織体制の整備、改善など、積極的に取り組んでいきたいと思います。

 なお、旧産業革新機構は、ユニコーン企業、多いかどうかということは別といたしまして、存在をしておりますし、またネクストユニコーンと言われているような企業、こういった創出にも貢献してきているところでございますので、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

大島委員 続きまして、JICの期間延長により目指す二〇五〇年の姿。

 新規事業を成功に導くのは本当に難しいことです。研究開発から事業化までのプロセスで乗り越えなければならない障壁を表現する用語として、魔の川、死の谷、ダーウィンの海といった言葉があるぐらいです。

 様々な新規事業の撤退案件に私は携わってきたことがありまして、JICは、オープンイノベーションによる産業競争力の強化と民間投資の拡大という政策目的の実現を図りつつ、民間単独では支援が困難な領域に長期投資を行うといった使命を有しています。同時に、公金を原資とする以上、最終的に出資金額以上を回収して赤字にならないことも求められているということで、困難な立ち位置にあることは確かだろうと思います。

 JICは、旧機構が蓄積してきた経験をどのように生かし、特にスタートアップ支援について今後どのように注力していこうとしているのか、政府の見解を伺います。

菊川政府参考人 今後の長期の具体的な投資額でありますとか、どれぐらいその成果が上がっていくかということについての想定はなかなか難しいところでございますが、二〇五〇年カーボンニュートラルの目標の達成といった社会課題の解決の目標もございます。

 そうした観点から、二〇二二年の十一月に策定しておりますが、スタートアップ育成五か年計画がございます。これを、二〇二七年度に十倍を超える十兆円規模ということをするほか、将来においては、先ほど御指摘ございましたユニコーン企業を百社創出するというような目標も掲げられております。そうしたところから、JICの活動も、こうした目標の実現に資するよう取り組んでまいりたいと思います。

 また、知見をどのように活用するかという御質問、御指摘をいただきました。

 先ほども、旧産業革新機構についての取組、また成果については御紹介したところでございますが、そうした知見についてもしっかりと活用していきたいというふうに思います。

大島委員 ありがとうございます。

 JICの事業再編支援について伺います。

 JICは、スタートアップ支援だけではなく、子会社であるJICキャピタル株式会社を通して事業再編にも関与しています。出資の規模を比較すると、スタートアップ支援よりも事業再編の方がはるかに大きな金額になっています。

 JICキャピタルは、半導体関連事業を含むJSR株式会社及び新光電気工業株式会社の株式を株式公開買い付け、TOBにより取得する予定であることを発表しています。このTOBに係るJICキャピタル及びその他の共同投資家、金融機関による総拠出額は、両件合計で約一・三兆円に上る予定です。

 他方で、旧機構は、ディスプレー関連事業を営む株式会社JOLEDや株式会社ジャパンディスプレイに対する支援による事業再編等に関与してきましたが、経営不振に陥った企業を救済するような例が目立ったとの指摘も一部報道に見られます。

 特定の民間企業に対して集中的に巨額の資金を投入することについては、市場をゆがめる可能性が否定できず、議論があるところです。今回のTOBの意義及び正当性と、これにより目指す我が国半導体産業の将来の姿について説明を求めます。

菊川政府参考人 御指摘いただきました案件についての見解でございますが、やはり、政策意義の高い案件については、民業補完を徹底した上で、JICキャピタルによる投資活動を通じた支援を行う必要があるのではないかというふうに考えてございます。

 御指摘の案件でございますが、そうした観点から、JSRが中核を担う半導体の材料について、将来の需要増加に対応した供給能力の確保に必要な投資規模を迅速に確保するための構造改革、そうした、まず事業再編を進めていく必要があるということが一点。

 また、新光電気工業については、半導体の更なる高機能化、多機能化のニーズに対応するために、同社の半導体パッケージ基板に関する技術開発と事業化を支援すること、ここは我が国の産業競争力強化に向けて重要であるのではないかと認識をしております。

 そのために、今般、JICキャピタルがそれぞれ対象会社を非公開化することによりまして、資本構成による制限を受けずに、時間的な業績変動に動じることなく、企業価値の向上、そして技術の深化、これを続けることで、我が国半導体産業の国際競争力を高めていくことにつながるのではないかと認識しております。

大島委員 ありがとうございます。

 続きまして、二〇五〇年カーボンニュートラルの全体像と本改正案の効果について伺います。

 政府は、産業競争力強化とCO2排出削減を同時に実現すべく、今後十年間で百五十兆円を超えるGX投資を官民共同で実現していくこととしています。

 昨年十二月に取りまとめられた分野別投資戦略においても、「官も民も一歩前に出て、国内にGX市場を確立し、サプライチェーンをGX型に革新する。」としています。本改正案でも、GXなどの戦略分野の商品の生産、販売量に応じた戦略分野国内生産促進税制の創設に関する規定が盛り込まれています。

 このように、政府は大々的にGX投資を推進していますが、企業の認識について、政府はどのように把握しているのでしょうか。

 衆議院経済産業調査室が昨年十一月に、株式会社帝国データバンクに委託して、全国約二万七千社の企業を対象に実施したアンケート調査によれば、企業規模が小さくなるほど、GXや脱炭素経営をネガティブに捉えている企業の割合が高いという結果が出ています。また、回答者の生の声を見ると、何をどうしてよいか分からないといった回答や、本格的な脱炭素経営に取り組むには原資が不足している、あるいは、費用対効果が見込めないといった回答が寄せられており、まだまだ経済構造の転換には課題があるように思われます。

 カーボンニュートラル実現に向けて官民一体でのGX投資を促進するのであれば、あらゆる分野でサプライチェーンを支える中小・小規模企業がGXに対する理解を深め、投資に踏み切ることができる環境を整え、つくっていく必要があると考えますが、政府の認識と現在の取組状況についてお答えください。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 排出削減と産業競争力強化、経済成長を共に実現していくGXの推進に向けては、御指摘のように、昨年、GX推進法が成立いたしまして、二十兆円規模の投資促進策などの新たな施策を実行し始め、企業のGX投資がまさに動き始めたところだというふうに認識しております。世界のGX分野の投資促進策が次々と打ち出され、投資や取組が進む中で、我が国の取組も戦略的に加速させていくことが必要だ、このように考えております。

 こうした中、中小企業におきまして、取引先から、排出量の把握や排出削減の協力を要請されたというケースも増え始めているということだと承知しております。こうした動きにも対応するため、排出量の算定方法を分かりやすくまとめた資料などを作成、広報するとともに、相談窓口の開設もしたところでございます。

 さらに、中小企業の具体的な排出削減の取組支援として、省エネ診断について、前年の申込実績の二倍の案件数に対応できるよう予算を確保したほか、省エネ補助金などの予算や税制の拡充も行っているところでございます。

 他方、中小企業がGXに取り組むことは、エネルギーコストの削減ですとか、あるいは、いち早く取り組むことにより受注の機会が拡大をする、そういう可能性があるというメリットもございます。

 このため、まさにこうした中小企業が取り組むメリットの理解増進を図りつつ、関連施策や取組の実行、強化を通じまして、中小企業も含めたGXに向けた取組をしっかり後押ししてまいりたい、このように考えております。

大島委員 続きまして、事業適応計画に係る現行の支援策の活用状況について伺います。

 戦略分野国内生産促進税制に関連して、事業適応計画に係る現行の税制措置として、デジタル関連投資を支援するDX投資促進税制及び脱炭素化投資を支援する、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制があります。また、現行の金融支援として、日本公庫が指定金融機関を通して行う長期、低利の大規模融資、ツーステップローンがあります。

 これらの支援措置について、これまでの活用実績、件数、支援活用企業の特徴、効果等についてお示しください。そして、活用実績を踏まえて、現行の支援策及び本法案による支援策の活用の在り方について、政府の見解を伺います。

菊川政府参考人 税制二つについての実績と、また、今後の在り方についての御指摘だったと思います。

 DX投資促進税制につきましては、これは今年の四月十九日の時点でございますが、適用件数としては四十四件ございます。また、活用企業の特徴といたしましては、規模の大きい企業を中心に様々な業種で活用されているところでございます。

 また、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制でございますが、これも同じく本年四月十八日の時点でございますが、件数としては百六十二件の活用がございます。製造業でのやはり活用が多いという状況でございますが、非製造業においても様々な業種で活用されているところでございます。

 また、ツーステップローンについての御指摘もございました。ここについては、いずれも活用実績がないというところでございまして、ここについては、これまでの金利状況等々も勘案することがあるかとは思いますけれども、今後の金利情勢を踏まえて、使い勝手のいい制度に、引き続き、運用等を含めて考えてまいりたいと思います。

大島委員 続きまして、イノベーション拠点税制の制度設計について伺います。

 税制改正により新たに設けられるイノベーション拠点税制は、企業が主に国内で自ら開発した特許及びAI関連のソフトウェアの著作権から生じる譲渡所得やライセンス所得について、三〇%の所得控除を適用するものです。

 本改正案では、標準化、知的財産の活用の状況に関する調査規定を設けることとしており、イノベーション拠点税制の対象への該当性の調査についても、同規定を活用することとしています。

 調査の具体的なスキームを始めとする制度設計の詳細や、来年四月一日からの施行に向けたガイドラインの検討、公表等のスケジュール見通しについて伺います。

 また、イノベーション拠点税制の創設により、平年度で二百三十億円の法人課税の減収が見込まれていますが、この算定の根拠について、政府の見解を求めます。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正で新設いたします調査規定によりまして、一定の知的財産権を用いていることを確認できた場合に、イノベーション拠点税制を適用することとしてございます。

 具体的には、ライセンス取得又は譲渡取引をする知的財産権の調査を行い、特許権又はAI関連のソフトウェアの著作権かどうか、それから、国内で自ら研究開発をして取得したものかどうか等を経済産業省において確認することを考えてございます。

 こうした調査の内容を含めた制度詳細につきましては、業界団体や外部有識者等との議論を行い、検討を行った上で、事業者が円滑に本制度を利用することができるように、今年中をめどにガイドラインなどで示してまいりたい、このように考えております。

 また、減収額についてのお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、イノベーション拠点税制による減収規模は、平年度で年間二百三十億円程度となると試算をしてございます。

 この減収規模につきましては、関連する統計データなどに基づき計算をしてございまして、経済産業省企業活動基本調査の技術取引の受取額や、特許庁の知的財産活動調査における知財取引に係る経費などを基にいたしまして、本税制の対象となるであろう所得を算出し、これに所得控除率などを考慮に入れて試算したものでございます。

大島委員 最後の質問になります。

 イノベーション拠点税制の対象範囲、また、対象となる知的財産の範囲について、特許権とAI関連のソフトウェアの著作権とされていますが、人間の生命に関わる重要な領域である医薬品、医療機器のイノベーションなども幅広く含まれているのかを確認するとともに、厚生労働省を始め関係省庁とも連携を行っていくのか、政府の見解を伺います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 イノベーション拠点税制の対象となる知的財産権には、御指摘の医薬品や医療機器に係る特許権及びAI関連のソフトウェアの著作権も含まれてございます。

 今回、厚生労働省も共同要望省庁として本税制の要望を行ったところでございまして、引き続き、こうした関係省庁とも連携しながら、本税制の制度執行や今後の検討を進めてまいりたい、このように考えております。

大島委員 ありがとうございました。

 終わります。

岡本委員長 次に、山岡達丸さん。

山岡委員 山岡達丸でございます。

 産業競争力強化法案、私、二回目の質疑に立たせていただきました。前回の審議の続きを今日はさせていただくんですけれども、今日は、委員会の日程としては採決ということにさせていただいております。

 我々の会派は、この法案についての態度を組織内で協議させていただいて、政調の経済産業部門に関わる、それぞれ意見はありますし、それは委員会質問や附帯で述べさせていただきますが、総員賛成という立場で、この長期にわたる支援を、国内投資をしっかりとひもづけていくということに、そのことは、我々もしっかりこれを応援していこうという立場でさせていただきますが、他方で、財政金融分野の皆さんの御意見としては、その長期の支援を税制で行っていくことへの透明性はどうなのかという、そうした疑義は呈されているというところでもありますので、そうした課題は我々会派全体で、またいろいろな機会で問わせていただきながら、ただ、本当に、この産業の、私たち日本の将来の、大きくまたエンジンをかけていく意味において、この法案の審議が終わった後も、私たち、また様々意見や、あるいは、気づいたこと、質疑をさせていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。

 私、前回の質疑で、グリーンスチールのことを取り上げさせていただきました。戦略分野国内生産促進税制をもっていわゆる税額控除をしても、利益を出さなきゃいけない構造をつくらなきゃいけない中で、生産コストは上がって、しかも、価格転嫁できなければ利益にならない。そうしますと、税額控除があっても、そのことをもって、投資促進にこれだけをもってつながるのか、政府としてもっともっと手を打たなきゃいけないものがあるだろうという提起に対して、大臣から様々前向きな御意見もいただいたところでもありますけれども、今日は、その中のテーマの一つとして、鉄の源の確保について、大臣に少し見解を御答弁いただきたいと思っております。

 電炉には、還元鉄、大量の確保が必要になります。そうした中で、EUなどは、北欧で産出される良質な鉄鉱石を確保して電炉に使おうというような動きもある。こうして、じゃ、日本の民間企業はどうしていくかということになりますと、日本は、今、UAEやオマーンなど中東諸国に対して、良質な鉄鉱石の確保にいろいろアプローチをしていくという動きになっているということが伝えられてきているところであります。

 電炉は、高炉と違って鉄の還元が単独ではできませんので、別のプラントで還元鉄を作るというプロセスが必要になりますけれども、そこに当面必要な天然ガスも中東で産出されるということで、資源も中東、そして、そのプロセスにある還元鉄の製造も天然ガスを使うと中東、将来的には中東に、ちょっと私も全ての地勢を把握しているわけじゃありませんが、イメージも含むかもしれませんが、砂漠地帯が非常に広がっている中で、そこに太陽光パネルを敷き詰めて、そこの電源を使って水素を作り、天然ガスを水素に切り替えて、還元鉄もグリーンな形で作るということまで視野に入ると、中東というのは非常に魅力のあるエリアだということを私も聞いているところなんですけれども。

 プロセスをそこまでもし海外によるところになれば、最終製品を、グリーンスチールそのものの製造拠点も海外に置いた方が合理的なんじゃないかみたいな、そうした懸念も非常に持つ中で、だからこそ、今回のような国内投資にひもづけて、日本としてしっかり産業を、グリーン製品を応援していくという形というのは非常に重要なのかなということを考えるわけでありますが、いずれにしろ、電炉のグリーンスチールの資源確保のために海外を求めていくということは非常に必須の状況になっているわけであります。

 大臣に伺うわけでありますけれども、ただただ海外との民間事業者の交流ではなくて、資源確保のためにそれぞれの国にアプローチするということになりますと、事業者のやれることを超えて、政府の役割というのは非常に重要なポジションになってくるんだろうと思っているんです。

 よく、総理大臣がどこか行きましたといったら、経産大臣もそうでしょうけれども、民間事業者もそこについていって地元の事業者の皆さんとマッチングするとか、そういうことはよくあると思うんですけれども、他方で、この資源確保という視点でいえば、政府は更に踏み込んで、民間事業者のできないことをやはりやっていくべきだということを思うわけでありますが、大臣、見解を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 鉄鋼業の脱炭素化に向け、今後、一定程度、高炉から電炉への転換が進んでいく、そういう状況におきまして、高機能な鉄鋼製品の製造が可能となるよう、品質のよい鉄鋼原料となる鉄スクラップや御指摘の還元鉄を確保していくことが求められます。このため、経済産業省では、これらの確保に向けて積極的に取り組んでいます。

 御指摘の還元鉄に関して申し上げれば、昨年三月、ブラジルでの、還元鉄の原料となる鉄鉱石ペレットの工場新設プロジェクトに対して、株式会社日本貿易保険、NEXIによるファイナンス面での支援を実施をするとともに、昨年七月の岸田総理のUAE訪問時には、総理立会いの下で、日本とUAEの企業との間で、まさにこの還元鉄に関する協業体制の構築に関する覚書を締結をいたしております。

 還元鉄の確保につながる民間投資案件に対するファイナンス支援に加え、政府自ら資源国との関係構築、連携にも取り組んでいるところでありますので、委員と問題意識は同じだろうと思っています。

 引き続き、こうした取組を通じて、官民が連携をして還元鉄の確保に向けて取り組んでいきたいと考えています。

山岡委員 資源に関わることでありますので、まさにカントリーリスクという言葉もありますけれども、国の政治情勢で様々影響を受けることもあろうかと思いますので、大臣最後におっしゃっていただきましたけれども、政府自らの関係性、ここには非常に重要な視点を置いて取り組んでいただきたいということを思っております。

 今お話にもいただきましたけれども、海外にも資源を求めていくわけですけれども、国内での鉄源の確保も非常に重要だ。そこに、今お話ありました鉄スクラップ、スクラップというのは、一度何か製品を作られてそこで生まれるものでありますけれども、これにも良質なものからそうでないものまであるということなんですが、電炉には良質なスクラップを使って、純度の高いものを使って作っていくということではありません。

 私、北海道でありますけれども、室蘭市は物づくり産業があって工場も様々あり、苫小牧市は自動車メーカーもありますから、ある種、鉄スクラップの産出地といいますか、副産物で生まれますから、そうした状況であって、この鉄スクラップの国内状況は、今、年間七百万トン弱が海外に輸出されている、これは国内の生成量の一五%に相当されているということを、昨日、経産省の皆様に伺いました。その輸出を目的に港湾整備までしたりとかして、これまではそういう時代だったんだろうと思うんですけれども、グリーンスチールという状況が生まれれば、やはり、国内で製造されるものは国内で使っていくという環境づくりというのが非常に重要なんだろう。

 もちろん、鉄のスクラップの質の違いはあっても、全体としての生産量、やはり需給の逼迫というのは起こってくるというふうに思うんですけれども、この鉄スクラップの業界というのか、今までの、フリーにいろいろ事業をされていた中で、やはり、余りよろしくないというか、そういう営業のされ方をされている。業界の中では不適正ヤードという言葉を使われているそうでありますけれども、周辺住民との調和も考えずに、安全管理も十分でないまま鉄スクラップを集めて、そうしていろいろ迷惑をかけるものですから、業界団体とか自治体が問題解決に向けていろいろな動きをしようということもあって。

 今までは、副産物の生成で海外にも出していた、韓国とかにも出していたというものですけれども、これから、鉄スクラップを国内で確保していくというグリーンスチールの時代になるのであれば、やはりこれを機に、この不適正ヤードの問題にも向き合って、例えば、認証制度みたいなものが適正なのかという議論もいろいろありますけれども、やはり政府として、きちんと政府主導で健全な市場づくりに取り組んでいただきたいと思うんですが、大臣の御見解をいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、先ほどお答えをしたとおり、今後、一定程度、高炉から電炉への転換が進んでいく中では、鉄鋼原料となる鉄スクラップの確保、これを進めていかなくてはいけないと考えています。

 特に、高機能な鉄鋼製品に活用できる品質が高い鉄スクラップにつきましては、国内で不足していく可能性があります。このため、経済産業省としては、鉄スクラップに混入した不純物を検知して、より高い精度で、品質が高い鉄スクラップを分別するための技術開発、この支援に取り組んでいるところであります。

 また、鉄スクラップに含まれる銅やスズといった不純物の影響を軽減しながら鉄鋼製品を製造する技術、これも重要でありまして、こうした技術の研究開発にも取り組んでいます。

 御指摘の不適正ヤードにつきましては、金属スクラップを扱う事業者の団体から、環境対策が不十分な事業者が存在するといった声をいただいているところであります。

 このため、経済産業省としても、スクラップ事業が適正な形で行われるよう、関係省庁と連携しながらしっかり取り組んでいきたいと思っております。

山岡委員 まさに、これから国内市場をしっかり健全にしていくというステップだと思いますので、是非有用な取組をしていただきたいと思っております。

 国内で、鉄の確保ということで、鉄スクラップの技術の向上にも力を入れていただくということなんですけれども、やはり鉄源の、大きな魅力ある国内のこれからの存在として、私は、船というのがあると思っています。

 使われなくなった船舶を解体して鉄を確保するという、シップリサイクルという言葉があるんですけれども、特にアジア諸国で船の解体作業は今までも行っているわけですけれども、これが、安全上の問題であったりとか、人権上いろいろ課題のある労働環境であったりとか、環境への悪影響とか、そうした懸念が国際社会で議論されて、二〇〇九年に、シップリサイクル条約ということで、そういう環境をよくしていこうということで日本も批准しているんですけれども、アジア諸国を巻き込みますので、もう間もなくこれが発効されるというところに来ているところであるんですけれども。

 こうした、国際社会の中でシップリサイクルというのが行われている中で、北海道室蘭市、先ほども申し上げました、鉄の町とも言われていますけれども、ここにあります室蘭工業大学の清水教授という方のアイデアも踏まえて、このシップリサイクル、船の解体を、先進国として先進的な方法をもって、労働環境あるいは手法も、労働にも配慮して、環境にも配慮した形で行っていくというパイロット事業を国の実証実験としてやっているという実績もあります。

 しかも、これは国から言われてやったというよりも、室蘭市は、地方都市として新しい産業をいろいろ求めていく、その一つのアイデアとして、独自にシップリサイクルに取り組んできたという中で、室蘭港の岸壁沿いで、ウォータージェットカッターみたいな、水を使って鉄を切るとか、いろんな技術を行使してやってきたということなんですけれども。

 国土交通省の皆さん、今日は来ていただいていますけれども、この室蘭市で進められた先進国型のシップリサイクルシステムの構築に向けた実証事業、この評価を述べていただければと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇九年に、船舶の解体における労働の安全の確保及び環境保全を目的としたシップリサイクル条約が、国際海事機関IMOにおいて採択されました。

 大型船舶の解体は、インドやバングラデシュなどの開発途上国を中心に行われている中で、日本国内において、どのようにすればこの条約に適合した形で大型船舶の解体が可能であるかなどにつきまして、調査事業を二〇一〇年に実施いたしました。その際、室蘭の事業者の参画や地域の御協力をいただきまして、岸壁に係留した大型船舶の解体の実証を行いました。

 その結果、国内の岸壁におきまして大型の船舶の解体を行うことが技術的に可能であることが確認できました。

 このような重要な成果が得られました一方で、従来、開発途上国で解体されている大型商船につきましては、船舶の購入や解体に要した費用と比べ、鉄スクラップなどの売却による収入が低く、事業性の観点からは採算が取れないことが明らかになりました。

 今後、仮に解体船舶の購入価格やスクラップ鉄の売却価格の市場環境が変化してきましたら、室蘭の実証事業で得られました様々な知見が大いに生かされるというふうに考えております。

山岡委員 ありがとうございます。

 これから私がまさに述べたかったことなんですけれども、この結果は、六億円、人件費とかも含めて費用がかかって、四億円程度の売上げだったということで、二〇一〇年現在では、なかなか事業としてはこの瞬間は難しいのかなというお話だったんですが、今、国交省に御答弁いただきましたけれども、これは二〇一〇年当時の話なんですけれども、二〇二四年はカーボンニュートラルの時代で、電炉のための良質な鉄スクラップが必要な時代になってくる。私は、本当にそうした中で、二〇一〇年のことなんですけれども、この取組がやはり国内で鉄を確保するためにも重要な、私は一つのツールになるんじゃないかなということをこの場でも申し上げさせていただきたいと思います。

 しかも、カーボンニュートラルは鉄だけじゃないんです。船舶もカーボンニュートラルですから、これから船舶の切替えというのも、エコ船にしていくというのも、国交省さんが、皆さんも今進めておられますし、二〇〇〇年代は、中国を始めとする新興国が自分たちの国で海上輸送をするんだということで、自国で造船場を造って、相当、船を造ったものですから、世界の船舶の建造量が一気に増大した。二〇〇八年のリーマン・ショック頃からそれは一気にまた止まっていっちゃうわけですけれども、しかし、船は、国交省さんに伺ったら、寿命が二十年から二十五年ぐらいだということで、この船舶ブームで造られた大量の船がまたこれから廃船になってくるという中を迎えてくるわけであります。

 電炉に使う良質な鉄スクラップを確保するという観点で、私が提起させていただいたのは、国交省さんの事業でやっているんですけれども、製鉄の事業は、まさに経産省で取り組んでいく中で、是非この話を共有していただいて、このシップリサイクルの可能性に大臣に着目もしていただきたいですし、今後、関心を寄せていただきたいと思いますけれども、御見解をいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、私どもとしては、大型の船舶は、解体する際に鉄の部分のみを切り離しやすく、不純物の混入を抑えた品質の高い鉄スクラップを回収することができる重要な資源の一つであると認識しています。

 室蘭でのシップリサイクルの実証事業については、造船業者、船の解体を行う解体事業者、スクラップの流通を担う商社、スクラップを活用する鉄鋼メーカーや鋳物メーカー、大学、研究機関など、シップリサイクルにおいて重要な役割を持つ様々な事業者が参画していまして、鉄の町として発展してきた室蘭ならではの取組であるというふうに認識をしています。

 その上で、国交省から答弁もありましたとおり、こうした実証事業を通じて、国内の岸壁に係留した大型船舶の解体が技術的に可能であるということは確認をされたんですが、その一方で、船舶の購入価格と解体に要した費用の合計を比べると、スクラップ鉄等の売却による収入が低くて、事業性の確保という観点から課題も明らかになったものと承知をしています。

 こうした室蘭での実証事業の結果を踏まえつつ、シップリサイクルの実現に向けた検討が今後も関係者で進められていくこととなると私は認識していますので、経産省としても、必要に応じて、どのような貢献ができるか検討してまいりたいと考えています。

山岡委員 大臣から大変心強い御答弁をいただいて、本当に感謝申し上げます。

 地方都市としていろいろなアイデアを出しながら、これから何に挑戦していこうかという様々なアイデアの一つの中で、もちろんこれが最終的に事業性を確保できるのかどうかというのは、これはすごく重要なポイントなんですけれども、是非、今のお話にもありましたけれども、国交省さんとも話をいろいろしていただきながら、着目、注目をしていただきたいということを強く申し上げさせていただきたいと思います。

 今回、話は少し変わりまして、中堅企業の支援、そして中小企業のお話に少し質疑を移らさせていただきたいと思います。

 中堅企業という新しい枠組みを今回つくって、その中でさらに、優良といいますか、給与水準が高くて国内投資をよくしているという事業者を特定中堅企業ということで支援するということでありますけれども、そうした事業者さんは、割と地方でも名士といいますか、それなりに存在感があったりして、既にいろいろうまく回しておられたりとかしている状況もありますので、ある種、経産省側からこれらの政策の方向性をしっかりアプローチして理解していただくという取組も重要だと思っていますし、三百万者以上ある事業者の一万者を切るという数字でありますので、私は、今日、後ろにも、担当された課長の森さん、おかけになっていますけれども、審議官、局長の皆様も含めて、本当にこの中堅企業者に、国内の全ての皆様ときちんと直接つながるぐらいの気迫でそうした政策を進めていただきたいなということを強く感じているところであります。

 その上で、質問の中身は中小事業者の話に入っていくんですけれども、中堅企業を中心にいろいろな地域の課題の解決をやっていくとすれば、中小事業者の意欲ある人たちに対しても、やはりきちんとした施策が必要だと思っています。今回の法律の射程とはまた違いますけれども、経産省は中小企業庁を通じて様々な施策を実施していただいているわけであります。

 その中で、今回伺いたいのは、まず、中小事業者の生産性革命事業のことについてであります。ものづくり補助金とか、小規模事業者持続化補助金とか、IT補助金とか、そうしたものの母体になる事業でありますけれども、中小企業基盤整備機構の交付金を通じて複数年にわたって支援するということと、三、四か月ごとに締切りを設定して、年間に複数回公募する。そうしますと、しかも、年度にこだわらずといいますか、よく政府の予算の都合で、年度末までにはもう締切りが来ちゃって年度内執行をしてくれないとみたいな話を、こういうのを乗り越えて、この機構を使うことによって、ある種、事業者の実情に合わせた申請ができるということで、私はすごくすばらしい仕組みをつくっていただいているのかなということを感じるわけであります。

 特に、こうした補助金の申請というのは、意欲ある本当に若い経営者の方も多く参画しようとしますし、これをきっかけに、自分の会社の強みとか弱みとかを分析して、今後の経営戦略とかをある意味考えるきっかけにもなるということにもなっているところであります。

 中小企業への補助金をめぐっては、様々な議論はあるんでしょうけれども、やはり自ら計画を立てて、リスクに手出しもして、負担もしてでも計画を立ててやっていくという前向きな人たちというのはきちんと育てていくべきだ、中堅企業とともに中小企業もやっていくべきだということを申し上げさせていただきたいと思います。

 そこで、ちょっと済みません、中小企業庁の飯田さんに伺いたいと思います。今日はありがとうございます。

 現状、四月の年度始めなんですけれども、先ほど申し上げました、年度を越えても申請できる、複数回という特徴があるはずの事業だったんですけれども、現在、ものづくり補助金とか小規模事業者持続化補助金の公募は終了して次回の見通しもないということで、申請を検討していた事業者の皆様が今後どうなっていくのか、継続するのか、自分も予定していたんだけれどもとか、そういう心配の声が寄せられているところでもありまして、今、そうした趣旨であるのにも関わらず、事業が公募を終了している状況はどういうことが事情にあるのか、御答弁いただければと思います。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねいただきました、生産性革命推進事業でございます。

 まず、持続化補助金でございますけれども、これは一般的に財政基盤が脆弱である小規模事業者の販路拡大を支援するという観点で効果がある政策だと思ってございます。追加の公募についてのお尋ねでございます。現在、補助金事務局や商工会、商工会議所とも連携しながら検討、準備を進めているところでございます。

 それから、ものづくり補助金でございます。こちらも稼ぐ力を強化していくという観点で非常に重要な補助金でございます。これは令和四年度の第二次補正予算などにおいても措置をしたんですが、今委員御指摘のとおり、当時、中小企業基盤整備機構の運営費交付金として措置されておりまして、五年おきに策定する中小機構の中期計画期間内の範囲の中において、弾力的に公募を行ってきたというわけでございます。

 他方で、中小機構でございますが、令和五年度末が中期計画の切れ目になってございます。したがいまして、令和五年度、昨年度の補正予算におきましては、運営費交付金ではなくて補助金として措置をいたしました。このため、ほかの多くの補助金と同様に、令和六年度末までに、確定検査を含めて完了する必要がございます。そのためには、確定検査もやりますので、その前に事業そのものは年末までに終了するということでございまして、この補助金は大型の設備投資が多くて、事業期間は半年から十か月ぐらいかかってございます。年末の事業の終了と必要な事業期間の確保の観点から逆算いたしまして、申請の受付は令和六年三月までということになってございます。(山岡委員「いずれも継続が前提なんですか」と呼ぶ)そこは、補正予算で措置された補助事業でございますので、その事業については令和六年度末までに終了する必要がございますので、現在、公募は令和六年三月で終わっているということでございます。

 以上でございます。

山岡委員 いろいろ、せっかくの事業なんですけれども、今の制度上の都合の中で終了しているということでありますけれども、最後に補正予算への言及も、お話もありましたけれども、これは継続を前提に、小規模事業者持続化補助金は準備中だというお話がありましたけれども、是非続けていただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。

 続けて伺いたいんですけれども、今目玉の事業の一つでもあります省力化投資補助金ということがあります。全国的な人手不足を解消する様々な手段はありますけれども、それでも、省力化、これを中小企業の皆さんにも進めていこうと。カタログで選ぶという、できるだけ簡単な申請というのがコンセプトなんですけれども、公募要領が公開されて、五人以下の事業所は基本的に上限二百万と、いろいろな条件を満たせば三百万円なんですけれども、二十一人以上は最大で一千五百万円の補助金が上限だと。

 これは省力という目的ですから、どの程度に効果があるのかということを考えれば、人数によって補助額の上限が変わるのは、それはよく分かるんですが、ただ、問題は、事業者の規模にかかわらず、事後を含めた事務手続の負担は同様のものを求めている要項になっていまして、事業報告後に五年間にわたって過年度報告するとか、実地調査は必ずするとか、収益納付金等を規模の大小にかかわらず要求するんですけれども、これらの要求は、事業再構築補助金とか、ものづくり補助金とかに相当する程度のものでありまして、人手が足りないところに人手不足を解消するためにしている措置なんです。

 小規模なところに、すごく大型の補助金レベルの事務手続を求めるというのは、実態に合わないんじゃないかということを強く思うわけでありますけれども、これは、事務負担はちゃんと規模に合わせて小さくしていくべきじゃないかといいますか、見解を伺いたいと思います。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘がございました省力化投資補助金でございますけれども、この補助金は、今御指摘ありましたように、カタログから製品を選ぶことで、簡易で迅速な申請が可能となっておりまして、小規模事業者にも是非積極的に御活用いただきたいというふうに思ってございます。

 手続はかなり簡素にしておりまして、具体的に申し上げますと、申請に必要な事業計画書、これは、例えば事業再構築補助金なんかですと、経営者にしっかり事業計画を作っていただくことも大事でございますので、A4ペーパーでいいますと大体十から十五枚程度、御申請いただくんですが、この補助金ではA4で一枚程度の簡素なものでいいということに、可能としております。

 それから、通常の補助金ですと、価格の妥当性を判断するために相見積りを必要とするわけでございますけれども、これに手間や時間もかかるわけですが、この補助金では、カタログの登録時点で中小企業庁が価格の妥当性を判断するということで、申請者による相見積りは不要としてございます。

 それから、採択と交付決定を同時に行って、交付審査手続自体も不要とするとか、あるいは、フォローアップにおいては、実績報告を販売店がサポートするといった形で、適正な予算執行に必要な申請、報告内容は確保しつつも、事業者の事務負担には配慮していく予定でございます。

 御指摘の、小規模事業者の事務負担の軽減の観点でございますけれども、本補助金の事務局は全国中小企業団体中央会でございます。こうした中小企業団体を通じて、小規模事業者のサポートも行ってまいりたいと考えております。

山岡委員 今いろいろ、るるお話があって、工夫はされているということなんですけれども、やはり規模別に、規模が大小で補助額が違うのに求めるものは同じというのになりますと、金額が高ければ申請の方向性をしようかと思いますけれども、そうじゃないところが鈍るんじゃないかと心配しますので、よく検討していただければと思っております。

 残り時間がないのでもう質問はしませんが、事業再構築補助金、様々議論がありました。コロナの中で、事業者にいろいろな業態転換を求めていく、これはコロナが終わっても、今、新たな課題、中堅企業に対してと同じように中小企業も事業転換を求める措置として、私は、是非定期的にやっていただきたいと思っております。

 秋の行政レビューで非常にひどい言われ方をしていました。是非委員の皆様にも、ユーチューブでこの秋の行政レビュー、見られますので、確認していただきたいんですけれども、中小企業者の実態に合っていないんじゃないかというような発言も含めて、しかも、いろいろ中小企業庁側から説明を返そうとしても、もう説明しなくていいですみたいな、説明すらさせないような勢いで行政レビューが進んでいたというのが動画で残っていますので。

 私は、そういうあの議論に通じた、延長の形ではなくて、今後も本当に事業者のためになる事業再構築補助金としてきちっとやっていただきたいということを申し上げさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

岡本委員長 次に、山本剛正さん。

山本(剛)委員 日本維新の会の山本剛正でございます。

 日頃の行いが悪いのか、今日はちょっと女房がここに来ておりまして、監視をされておりまして、ちょっとお恥ずかしい話なんですけれども、やはり日頃の行いが悪いということで。だから、ここで今日は厳しく大臣に詰め寄っていこうかなと思うんですけれども、やはり結局いつもどおりやらせていただきたいというふうに思います。

 かなり議論が煮詰まってきているなと、私、聞いていて思います。論点もかなり絞られてきていて、中堅企業のお話であったりとか、スタートアップの話であったりとか、戦略商品であったりとか税の話、ここに結構集約されているのかなという印象を持っております。

 その中で、前回私は中堅企業の話とスタートアップの話をさせていただきました。参考人質疑にも立たせていただきまして、いろいろ本当に有意義なお話を聞かせていただいたんですが、やはり税のところですね。

 やはり私は、租特そのものを考えた方がいいなという立場でいつもいるんです。これはなぜかというと、これは釈迦に説法でありますけれども、税制の原則は公平、中立、簡素、これは基本中の基本でありまして、やはりそこからずれているということが一つ。

 税に至っては、私は、シンプル・イズ・ベスト、これをやはり貫きたいという思いがございます。国会はまさに税を論議するという話を昔したことがありますけれども、税率は本当に国会議員だけが決められるわけでありますから、やはり、税に対する議論というものは本当に深く慎重に、そして積極的にやっていかなければならないというふうに私は思っています。

 それで、今回の租特でありますが、一・九兆円とか数字も出ています。産業競争力強化のための政策ツールとして、一時的な税制措置である租税特別措置に頼らずに、やはり私は正面から課題に取り組むことが重要であるというふうに考えておりますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 やや税制に関する一般論に近い御質問になっているかもしれませんが。

 税制に関する措置の在り方について申し上げれば、中小企業をどうするみたいな、一律に原則的な取扱いを定める法人税法等の一般法に基づく恒久措置が適切な場合もあれば、あるいは、特定の政策目的を達成するための租税特別措置が適切な場合もあると考えていますので、実現すべき目的に応じて柔軟に設計することが大事なんじゃないかと思っています。

 それで、令和六年度税制改正におきましても、戦略分野国内生産促進税制における十年間の適用期間や、イノベーション拠点税制における七年間の適用期間など、企業の予見可能性、これを高める観点から、従来の租税特別措置にとどまらない長期的な措置を講じているものもあるわけでありますので、繰り返しになりますが、実現すべき目的に応じて柔軟に設定することが大事なのかなと思っています。

 なお、私は、委員は日頃の行いが悪いとは全く考えておりませんので、つけ加えさせていただきます。

山本(剛)委員 大臣のお墨つきをいただいて、私も本当に晴れ晴れとした気持ちでございます。

 この間、荒井委員の質問で財務省が答えて、僕、行政の答えとしてはあれは本当に百点満点だなと思ったんですが、租特の話は、今大臣がおっしゃられることは本当にごもっともであると思います、ターゲットを絞っていくことの重要性も非常に私は分かるんです。一方で、やはり政治的に考えたときにどうかということは我々政治家は考えなければいけない。

 先ほど、どなたかが、何か自民党の好きな業界にそれが行ってみたいな話をしていましたけれども、私は、そういうことではないと思うんですよ。それもあるかもしれませんけれども、そもそも何年かで毎回毎回更新更新という形になって、簡単に言うと形骸化しているものもたくさんあるわけでございます。一方で、例えば石石税、原料炭なんかは、もう当分の間税になって、いわゆる恒久化ということになっています。

 だから、やはり期限を区切ると、ある種、出口戦略が非常に難しくなると思うんですね。その出口戦略、今回十年という期限がありますが、やはりもうちょっとやってくれという話になったときに、ここは行政の出番ではなくて政治の出番になるわけですよ。政治の出番になったときに、例えばみんなで鉢巻きを締めて、よし、守るぞみたいな感じになってやってしまうと、また古い政治だというふうに言われかねないということがあって、私は、行政の皆さんがおっしゃっていることは本当によく分かります、理解もしています、もちろん同意しています。一方で、政治的側面で考えたときに、これは十年で本当にやめられるのか、出口戦略はどうなのかというところはあると思うんです。

 だから、この十年でやめられるかどうかというのを、まずちょっと政府の方に聞いてみたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 十年とおっしゃっているのは、この戦略分野国内生産投資促進税制のことかと存じますけれども、この税制は、欧米を始め、戦略分野における強力な国内投資促進策が打ち出されて世界的な競争が激化する中で、特に生産段階におけるコストが高い等の理由から投資判断が容易でない分野について、事業全体の予見性を確保する、そういうことで、戦略分野における新たな国内投資の判断を促進するものでございます。

 このため、できる限り早期に国内投資や生産を促す、こういうことをしたいというふうに思っております。

 そういうことで、本税制につきましては、令和八年度末までに認定を受け、投資を決定した場合に適用される租税特別措置としているところでございます。また、事業者にとっての予見可能性の確保の観点から、十年という長期の適用期間を設けてございます。なお、生産開始から八年目以降は税額控除額が低減する仕組みも導入してございます。

 また、こうした税額控除を生産、販売量に応じて措置することで、生産コスト低減や市場創出に向けた事業者の取組を一層促し、税制の適用期間を通して事業採算性を確立することも期待をしているところでございます。

 さらに、経済産業省としては、この税制以外にも、例えば成長志向型カーボンプライシングの導入など、規制、制度等を通じた市場創出の取組も通じまして、本税制の適用期間が終了した後も戦略分野における生産が維持拡大するよう、必要な施策にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

山本(剛)委員 私が言いたいのは、要するに、十年でやめられるのかどうかということなんです。もうちょっと延長すれば競争力が本当につくよといったときに、どういう判断をするかですよね。やはり、最後の最後でちゃんと、まきをくべることが必要なのかどうかという判断というのは非常に重要になってくると思いますし、一方で、ずっと長きにわたってやっていくと、保護政策になりかねないというところがあると思います。

 ですから、先ほど評価の話もありましたけれども、やはり評価はしっかりとやっていく、これは参考人の方もおっしゃっていました、評価をしっかりとやっていくこと、そしてやはり、なるべく期間内にきちっと終わるといいますか、投資がどんどん進んで競争力がついているという状況をつくるように誘導していくことも私は重要だというふうに思っています。

 租特は、全体で減収が約八兆円ぐらいあると言われているわけですよね。法人税だけでも、これはちょっと調べたんですよ、二・三兆円、二兆三千億円ですね。これはかなり大きいなという印象です。やはり、この金額を聞くと、公平性はどうなんだ、中立性はどうなんだと考えてしまうんですね。だから、役割を終えた租特はやはり私はやめるべきと。

 これはちょっと本当は財務省を呼んで財金とかでやるような議論なんですけれども、せっかく今回租特の話が出ているので大臣のお考えを聞きたいなと思っているんですけれども、役割を終えた租特はやはり私はやめるべきだろうと。若しくは、それを本当に終われるのかということをどのようにお考えになっているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおりだと思っていまして、租税特別措置は、有効な政策方法となり得る一方で、税制の基本原則である公平、中立、簡素の例外だというふうに位置づけられていることから、真に必要なものに限定していくことが重要だと考えています。

 そのため、租税特別措置の適用期限到来などの機会に際して、必要性や政策効果をよく見極めた上で、役割を終えた税制については廃止することも含め、見直しを行っていきたいと考えています。

山本(剛)委員 ありがとうございます。

 例えば石石税なんかは私も最もたるものかなと思っているんですが、でも、結局、今、環境問題があるからといって環境に使っていきますみたいな話がもっともらしく聞こえますけれども、本来、環境にお金がかかるのであれば、環境、やはり、その課題に正面に向き合って新税をつくればいいだけの話なんですよ。でも、国民の納得が得られないからというのであれば、じゃ、環境問題というのは何なんだという話じゃないですか。だから、そんなつけ替えみたいなことをやるような政治は、私はもうやめていくべきだというふうに思います。

 大事なものにやはりお金がかかるんだということ、それは国民に負担をしていただかなければいけないんだという、これは政治側の気概が足りないからこそそういったことが起こるわけで、これは自分への戒めも含めて、税の議論はこれからもやっていきたいなというふうに思っております。

 それで、この税制が一・九兆円ぐらいありますよと。これは我が党の小野議員も質問したんですが、この税制の直接的恩恵を受けるのは、いわゆるメーカーさんというか、そういったところですよね。それにまつわるサプライチェーンの皆様方には直接的な恩恵は行かない。この間の答弁では、いろいろな中小企業政策等で支援をしていきますよと言う。でも、それは全ての中小企業に支援をしているわけだから、それが一・九兆円に係るサプライチェーンの皆さん方への支援にはならないと私は思うんですよ。

 やはり、これがどのように、そういったものではなくて、どうやってその一・九兆円もの規模の恩恵をサプライチェーンの皆様方が受けられるのかというのをちょっと説明をいただきたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 この戦略分野国内生産促進税制でございますけれども、電気自動車、グリーンスチール、半導体など、広範なサプライチェーン上にあり、幅広く経済波及効果をもたらす分野を対象としております。

 世界で戦略分野の自国内での投資を実現するための投資促進策が次々と打ち出される中、我が国において、こうした戦略分野の国内投資を実現できずに、地域の中堅・中小企業を含めたサプライチェーンが崩れることは防がなければならないというふうに考えております。

 また、例えば、電気自動車の構成部品である蓄電池ですとか半導体の製造装置、部素材につきましては、主に初期投資の大きさが課題であるということを踏まえまして、令和六年度予算などにおきまして初期投資支援に必要な予算措置を盛り込んでおります。こうした支援策も、この税制と組み合わせることで政策効果が発揮されるものでありまして、その意味で、この税制の意義はこの点にもあるというふうに考えております。

 こうした方策に加え、今まさに先生は別だということをおっしゃいましたけれども、中小企業向けの支援策なども講じ、本税制により国内投資を実現し、その効果を広く波及させていきたい、このように考えているところでございます。

山本(剛)委員 世間一般ではそれを机上論と言うんですよね。実際、要はサプライチェーンの捉え方だと思うんですけれども、私は、じゃ、その一・九兆円の恩恵というものは一・九兆円にとどまらないようにしなければならないと。要するに、遠心力がかかって、それが大きくなって大きくなって、例えば賃金に反映するとか、価格に反映するとか、やはりそういったところをどういう視点で見ていくかということが私は大事だというふうに思っています。

 方程式のように、こうすればこうなるからこうなるであろうは、経済の世界では、実体経済の中ではなかなかうまくいかないのが現状で、これがうまくいくんだったらどの商売もうまくいくんですよ。でも、そういうふうになっていないのはなぜかというふうに考えたときに、この一・九兆円の規模を見て、その恩恵をどのように回転をさせていくか。要するに、とどまらないようにすることが大事なんですよね。そこに、例えば補助金だったら補助金でもそうですし、税制でもいいんですけれども、そこに出しました、そこにとどまらないようにするにはどうすればいいかということを考えることが私は非常に重要だというふうに思っています。

 だから、回っていくことで要は遠心力がかかって、基本的には、よく人、物、金というような言い方をしますけれども、私は、物、人、金だと思うんですよ。物は勝手に動きませんから。だから、物を動かす努力をすれば人が動くんですよね。人が動くから金が動く。だから、物を動かすその動力は何なのかとか、動かすための施策は何なのかということをやはり突き詰めて私は考えていく必要があるというふうに思います。

 ですから、これはもう釈迦に説法になりますけれども、もちろん机上論も大事かもしれませんが、やはりそこはしっかりとウォッチをしていただいて、産業競争力がつくこと、そして日本経済の全体の底上げが図られるというところまで是非経済産業省の皆さん方には見ていただきたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 次に、法案の二条の十四項のところにある産業競争力基盤強化商品なんですけれども、この二条の十四項を読むと、いろいろな商品、一応、こういうことがありますよという説明は受けましたが、例えば議論の中でよく出てくるようなペロブスカイト太陽電池が入っていないというような話があります。

 この二条十四項の文章を読むと、今は入っていないけれどもこれから入っていく可能性は当然ありますよというものなのか、それとも、いやいやいや違いますよというものなのか、この対象物資の妥当性についてちょっと御説明をいただきたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 この税制は、先ほど申し上げたような戦略分野の中で、特に生産段階のコストが高いことなどから投資判断が容易でない分野を対象に、初期投資の時点ではなく生産段階に入った以降に、生産、販売量に応じた税額控除措置を講じるものでございます。

 また、これらの分野は、いずれも広範なサプライチェーンを持ち、物づくりの基盤を支えるものでありまして、我が国の産業競争力の強化に向けて、本税制を通じてこれらの分野の国内投資を促進することが重要だというふうに認識をしております。その意味で、その対象分野は妥当なものだというふうに思っております。

 その追加がどうなのかということでございますけれども、投資促進策は様々な手法がありまして、分野ごとの特徴も踏まえて講じることが大事だと思っております。

 この税制の対象の追加は現時点では具体的には想定をしておりませんけれども、今後の技術や世界の動向などを踏まえまして、本税制などの投資促進策や規制、制度なども含め、効果的な投資促進策は不断に検討していきたいというふうに考えているところでございます。

山本(剛)委員 条文上は、「政令で定める商品であって、今後の我が国産業の基盤となることが見込まれ、かつ、国際競争に対応して事業者が市場を獲得することが特に求められるものとして主務省令で定める要件に該当するものをいう。」というふうになっているので、まあ、現時点ではという話でしたけれども、これを読む限りでは、やはりこれに合致していれば当然その対象の商品になるということが見込まれるということで今の答弁ではいいんですよね。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 少し技術的になって恐縮ですけれども、税制を適用するものにつきましては、既にこれは可決しておりますけれども、租税特別措置法で明示的に法定をされております。その中で、その対象、実際税制を適用する場合にはこの産業競争力強化法の認定を受けなければいけない、こういうことになってございます。

 そういう意味では、厳密に言いますと、いわゆるここの対象の品目に上がるということと税制の適用になるということは、これはストレートにつながってはいなくて、租税特別措置の方でしっかりその品目について法定をしなければ税額控除の効果は及ばない、こういうことになるわけでございます。

山本(剛)委員 御丁寧にありがとうございます。非常に分かりやすかったです。ありがとうございます。

 その中で、合成燃料が入っているわけでございますけれども、私は、本当にこの合成燃料は是非やっていただきたい。これはどこかでも言ったんですけれども、やはり、今の石油の代替になり得るのであれば、インフラは全て使えるわけでございますからというのが一点と、もう一つは、何よりも、我が国がこの技術の中で先んじていけば、いわゆるバイオとか廃油とかというのはもう今世界で取り合いですから、だから、そういうのではなくて、本当に純粋な合成燃料を私はどんどん突っ込んでやっていくべきだと思うんですけれども、それは、前にも申し上げたんですが、我が国が始まって以来初めて、要は、資源の輸出国になれるという非常に大きな夢のある話なんですよね。

 ですから、この合成燃料を是非やっていこうという強い決意を伺いたいんですが、大臣にお尋ねをしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 合成燃料、e―フュエルですが、既存の内燃機関や燃料インフラが活用できる、御指摘のとおりです。また、化石燃料と同等の高いエネルギー密度を有するというメリットがあります。二〇三〇年代前半までの商用化を目標に掲げているところであります。

 この目標を達成するために、グリーンイノベーション基金において、総額約五百五十億円の予算により進めているe―フュエルの大規模かつ高効率な製造プロセスの開発について、これを更に加速させるための事業内容を、今、事業者を含む関係者と検討を進めているところでありますし、NEDOを通じて、大学や石油元売等が参加する、コストの低減を目指した次世代型のe―フュエル製造技術の開発を行っています。

 また、将来の国内プロジェクトの立ち上げに向けた事業者による検討を後押しをするんですが、それとともに、事業者による海外プロジェクトへの参画を後押しすることを通じた早期のノウハウの獲得を促していきたいと考えています。

 こうした取組を通じまして、合成燃料の早期商用化に向けて、政府として全力で取り組んでいきたいと思います。

山本(剛)委員 ありがとうございます。是非お願いします。

 私がゴウセイだから合成燃料を言っているわけではなくて、これは私は本当に夢のある話だと思っています。エネルギー業界にいた人間としては、やはり、今までさんざんアラブの靴をなめて、資源のない我が国の、簡単に言うと、石油は世界では戦略物資です、でも国内に入った瞬間、生活物資に切り替わるんですね。このリスクを今までずっと民間が負っていた。政府ももちろん備蓄等でやっていましたけれども、やはり、そういった意味では、まさに実はこれは商社がつくった文化、歴史だというふうに私は思っています、エネルギーに関しては。

 そういう意味で、私は、何とかこれを転換させて、輸出国になって、その貿易収支を見たいという夢がありますので、是非、大臣、お願いしたいというふうに思います。

 最後に、せっかく、ちょっと法案からずれるんですけれども、新たな事業の創出ということで、私は、前も申し上げましたが、やはりクールジャパン、絶対的にやるべきだという思いを持っています。

 ただ、クールジャパンが始まって、私、実はその話が出たときに、当時の財務大臣、野田財務大臣に直筆で手紙を書いて、本会議場で、これに予算をつけてくれという手紙を渡しました。晴れて予算がついたわけでありますけれども、私が考えていたのは、世界のアイデアが日本に集まるようにして、プラットフォームにして、そのプラットフォームをどんどん幅を広げていくことによって、日本が持っているアレンジ力で、前に大臣に申し上げましたけれども、日本は、ゼロから一じゃなくて、一を十にする技術が非常に強いということで、気がついたら、いろいろな技術を持っている日本の中小企業の皆さん方がそのプラットフォームに乗ることによって、いつの間にか世界に出ていっているというようなものをつくっていくことがいいなというふうに思っているんです。

 このクールジャパン、やはり、今までいろいろ失敗もあって、ちょっと衣替えはしなければいけないかなというふうに思っているんですけれども、私は今度また一般質疑にもし立つことがあれば全てクールジャパンでやりたいと思っていますが、大臣、是非、これに取り組む姿勢というものを大臣自身がお持ちであられるのかどうか最後に聞かせていただいて、終わりたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 私は、委員と完全に意見が一致しているかどうか分かりませんが、海外で生まれたものを日本で大きく発展させていくということは、結構過去も多く行われてきたと思いますし、最近では、恐らくクールジャパンの中に入るんじゃないかと思うんですけれども、ゴジラ・マイナスワンなんというのは、日本で生まれたキャラクターが今や世界で大変なブームで、どこの国もゴジラ、ゴジラと言われるようになるというのは、これもクールジャパンの一種なのではないかなと思っていますので、これも日本の稼ぐ力の一つになり得るんじゃないかなと思っています。

山本(剛)委員 これも後日じっくりやらせていただきたいというふうに思います。

 終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、守島正さん。

守島委員 日本維新の会の守島です。

 今日は採決前ということで、最終日、網羅的に聞いていきたいというふうに思っています。

 まず、前提としてなんですけれども、今回の法案、成長の種をつくるという考えは理解しているんですけれども、産業構造審議会の経済産業政策新機軸部会の中間取りまとめの現状認識において、失われた三十年と呼ばれる停滞が続いた理由の一つに、政府も、民間主導という考えの下、民間の制約を取り除く市場環境整備施策を中心とし、新たな価値創出に向けた取組が結果として不十分になったとしておりまして、おとといも、吉田政務官も現状の問題認識を同様に答えていたんですけれども、この認識のことを部会では行き過ぎた新自由主義と表現されていまして、よく議員の皆さんからも行き過ぎた新自由主義的な言葉を聞きます。

 この行き過ぎた新自由主義というのは何なのか、定義を教えてください、大臣。

齋藤(健)国務大臣 高度成長期から一九八〇年代にかけまして、日本は、市場の失敗の是正と、幼稚産業保護を理論背景とした特定産業の保護、育成を中心とする伝統的産業政策を展開したと承知をしています。

 他方で、アメリカとの摩擦や途上国的なキャッチアップ型の成長モデルが限界を迎えたことなどを背景に、一九九〇年代以降、当時、欧米で新自由主義的な産業政策が主流となっていた中で、日本も、民間主導という考えの下、民間の制約を取り除く市場環境整備策を中心とした産業政策に転じたわけであります。

 これを産業政策と呼ぶのかどうかというのも個人的には思うところがありますが、その結果として、政府としても、積極的な投資促進などの新たな価値創出に向けた取組が不十分になってしまったという反省があります。この点を指して、行き過ぎた新自由主義だったのではないかという表現をしているということであります。

守島委員 前段の政府が関与しないというところと、市場創出がおざなりになった点というのが、多分、二つ分かれていたと思うんですけれども、どこまで行き過ぎと言っているのか、ちょっと分かりづらくて。

 ちなみに、自民党さんの綱領を見ると、一丁目一番地に正しい自由主義と民主主義の下に何たらかんたら進歩を求めると書いていて、自由主義はよくて新自由主義は駄目なのかということを感じてしまって、自由主義を冠に用いる政権政党が使う自由の意味が僕もちょっとしっかり分からなくて、これまでの政府が行き過ぎた新自由主義政府というんだったら、これからの政府は何なんでしょうか。行き過ぎないケインズ主義というふうになるんですかね。ちょっと分からないんですけれども。

 大臣が言った、新たな価値を創出する取組が不十分で是正したいという気持ちは分かるんです。それが、政府が市場の制約をすることを肯定して、何でもかんでも政府ができるというようにするのは、それは計画経済になってしまうし、まさに計画経済に振れるんだというのであれば、それは非常に危ういんじゃないかなというふうに思っています。

 民間の制約を取り除く市場環境整備をすることまで含めて行き過ぎた新自由主義とするのであれば、それは私は飛躍し過ぎだというふうに思っていて、大臣、今首を振ってくれて安心したんですけれども、こうした表現を政府とか経産省がしてしまったら、民間の自由な経営が何か日本の成長を阻害したように扱われてしまっていることに事実としてつながっていることもあるんです、これは。

 政府は、民間の制約を取り除く市場環境整備は行き過ぎと考えているんですか。大臣の見解をお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 まず申し上げなくちゃいけないのは、民間の制約を取り除く市場環境整備を進めることの重要性を否定するという趣旨ではありません。やはり、そういう意味では、自由主義が前提となっているということでありますので、言葉の遊びみたいになってしまうかもしれませんが、行き過ぎない自由主義というのが大事なんだろうなというふうに思っているわけであります。

 ただ、過去に関しては、私が勤務をしているときもそうでしたけれども、とにかく政府は後ろにいればいいんだ、あとは市場が優勝劣敗を決めるし、それによって最適な答えが得られるんだということを徹底をし過ぎたがゆえに、一つ一つ、これから商売、飯の種になるようなものを政府も応援していくんだという意識そのものが、私は、自分の経験からして、かなり薄れてきたという時代を通り越してきているものですから、そういう表現が出てきているんだろうというふうにも思います。

守島委員 大臣、ありがとうございます。

 その点、民間の経営を制約しないというところに関しては誤解だと言ってくれたことは、非常に安心しています。

 おとといの質問で、うちの市村議員も、アベノミクスは、第三の矢というか、成長戦略とか規制緩和が弱かったんじゃないかという話をされていたんですけれども、我々維新の会としては、やはり、市場づくりが駄目だったということを思っているわけじゃなくて、そういう認識に立っているわけじゃなくて、例えば、今、ライドシェアの議論とかをやっていますけれども、むしろ政府による市場の制約が悪影響というようなことももちろんあって、物によっては自由な市場整備というのをまだ求めているものもあるんですね。

 なので、市場環境整備、政府が一歩引いていたこととか余り介入しなかったことが一概に悪で失われた三十年が生まれたという認識では全くないですし、今の政府を行き過ぎた新自由主義政府というふうにみなしているわけでもないので、こうした何々主義的な表現をしてレッテル貼りをするのを、ある種、考え方が違う立憲さんや共産さんが使うのはまだしも、僕は、自民党さんが使うこともあるということに関しては、すごい違和感を感じます。

 我々は、あくまで、今回の法案もそうですけれども、新しい価値をつくっていくとか国際競争力をちゃんと強化して将来の飯の種をちゃんとつくっていこうという経産省の方向性に関しては賛同していますし、その点に関して真摯に議論をしていますので、規制緩和のせいで停滞が続いたとか、そういう概念で捉えられるというのはちょっと考えてもらいたいなというふうには思っております。

 個人的には、私も、国会議員になるまでは地方議員をやっていたんですけれども、大阪市議時代に、例えば地下鉄事業の民営化とか大規模公園を民間に運営委託するような、民間活用みたいなことを結構大阪ではドラスチックにしておりまして、その都度、自民党の議員から、そんな新自由主義的な政策はやめろみたいな批判を結構受けるんですよ、新自由主義的な民営化はやめろみたいな。

 新自由主義というのをどういうふうに使っているのかなというのが非常に疑問だったので、政府にそういう意図がなくても、マイナス表現として自由市場を使われている方が多い現状は、これは、例えばこれから政府は歳出改革とかいろいろな行革をしていくと思うんですけれども、経産省ももちろんですけれども、何か縮小するに当たって、それは自由主義だみたいなことが言葉として返ってくる可能性があるので、それは本当に気をつけた方がいいかなというふうに思っていて。建設的な投資をするというのと行政改革をするということを、多分、経産省もしっかりやってくれていると思うんですけれども、そういった、僕が揚げ足を取っているように思われるかもしれないですけれども、その後揚げ足を取られる可能性にもつながっていくので、そうした主義的レッテル貼りはお互いに気をつけた方がいいかなというふうに思っているので、前段としてこういう話をさせていただきました。

 再分配後のジニ係数とかも三十年横ばいなので、自由主義のせいで日本が壊れたみたいなことに余り政府は乗らないでいいと僕は思うので、しっかり経済政策をやってほしいなというふうに思っています。

 それでは続いて、戦略分野国内生産促進税制に関して聞きたいと思います。

 先日、大岡議員の質問でもあったように、今回の減税措置で、減収額が約二千二百億円、十年で二兆円規模となって、数字的にはこれはインパクトが大きい政策になっています。

 政府は、年々先送りにしているものの、プライマリーバランスは黒字化を目指しているので、この税制を含めた今回の法改正は、財政的に見ると、短期的にはマイナスに働くと思います。

 この十年の減税期間が終わって産業が成長したことで、付加価値としてか税としてそれを回収できてこそ、やはり投資対効果というふうに思っているんですけれども、中長期的な財政への影響とかそういう投資対効果という点でどのような見通しを考えているのか、お答えください。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 この税制は、戦略分野のうち、特に生産段階のコストが高いことから従来の初期投資支援では企業の投資判断が難しい分野について、国内投資を強力に引き出すためのものでございます。世界で戦略分野への国内投資を自国内で実現する産業政策が活発化する中で、本税制を通じて戦略分野への投資を国内で実現することが重要な政策効果だというふうに考えております。

 また、こうした国内投資を実現し、生産を拡大することで、サプライチェーンを通じた部素材等の発注や供給の確保、拡大、さらには関連分野での投資や雇用、所得への好影響などの経済波及効果が幅広く生じることも期待されるところでございます。

 さらに、本税制が対象とするGX、DX等の今後グローバルに市場の拡大が期待される分野におきまして、その生産に係る国内サプライチェーンの構築ですとか製品の市場創出が進むことは、経済への好影響を将来にわたり生じさせる上で重要であると考えておりまして、そうしたことを狙ってこの税制を導入をしていきたい、こういうことでございます。

守島委員 将来の成長のためという点に関しては本当に一致していますし、とはいえ、例えば、GX移行債の予算のときもそうですし、先日の水素、CCSもそうなんですが、かなり投資の規模が大きいので、投資対効果という点で口酸っぱく言ってきましたけれども、やはりどうしても成長というと抽象的になってしまうので、しっかり財政に関しても国に貢献するような形で今後検証していってほしいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

 危惧する点を大臣に聞きたいんです。

 そもそも、この制度、米国のインフレ削減法とかEUのグリーンディール政策とか、各国の域内投資がどんどんどんどん盛んになってきているということで、それに対抗するという面もあって、それは、もちろん、国際競争力を担保するために自国の産業基盤をつくっていこうというのは非常に大事なことだというふうに思っておりますが、政府投資とか税制優遇の在り方であったり、その対象がどこかという話は議論の余地があるとして、今政府が目指している二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現とか成長という方向の土台づくりは同じ思いでいます。

 その上で、確認なんですが、そもそもIRAの当事国であるアメリカが大統領選挙を十一月に控えていまして、このままいけば共和党の候補者指名は七月十何日かにトランプさんが正式に任命されるということで、トランプ大統領は様々な機において、パリ協定の離脱も含めて、こういうグリーン市場から撤退するという意思を示唆しているわけです。

 無論、この間の委員会のやり取りで、グリーン市場に行くより普通の市場の方がコストというのは安いわけで、価格的には有利になるから、アメリカという需給共に大きいプレーヤーがこのグリーンマーケットの枠外にいることでマイナスのリスクというのがあると思うんです。

 トランプさんとか共和党を批判するつもりはないんですけれども、エネルギーコストを抑えたいという自国の利益に走るという気持ちは分かりますので、これはもう、ある意味、確率として高く、顕在になっているリスクだと思うんですけれども、日本政府としては割り切ってGXに振っていて、我々もそれに対して同調している分、これはもう明らかなリスクだろうなということにはやはり対処してほしいなというふうに思っているので、そうした、もしトラというんですかね、トランプ大統領が誕生したときのシミュレーションであったりリスクヘッジをどのように考えているのか、大臣の見解をお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 まず、アメリカの大統領選挙について様々な報道があるのは承知していますが、政府として他国の国政選挙に何らかの予見を与えるような発言は私は差し控えなくちゃいけないと思っていますので、そこは御理解いただきたいと思います。

 その上で、世界では、既にGDPベースで九四%の国と地域がカーボンニュートラル目標を表明しておりまして、また、欧米始め各国でGX分野の大規模な投資促進策がもう既に打ち出されて実行にも移されてきている、グローバル企業の投資も動き始めているという現状があります。

 こうしたことを踏まえても、カーボンニュートラル目標や、それを経済成長とともに実現していこうという世界的な流れ自体が大きく変わるということは考えにくいと思っていますので、我が国としては、各国とも連携をしながら、強い決意で、二〇五〇年カーボンニュートラルなどの国際公約と経済成長、産業競争力強化を共に実現していかなければならないと考えておりまして、それに尽きるのではないかなと思います。

守島委員 世界的な潮流は時の政治動向では余り変わらないような状況ということで、それはそれで非常にありがたいんですけれども、多分、共和党もばかではないと思うので、それこそ本音と建前は違うというか、結局、自国の利益を求めて、マーケット形成に有利に、今高い球を投げているのかもしれないですけれども、そういうふうに動いてくると思うので、そういうことに影響されないよう、日本政府もしたたかにマーケット形成に動いてもらって、今大臣がおっしゃったように、他国とのアライアンスも含めてしっかり構築していただきたいというふうに思っております。

 続きまして、この税制の続きなんですが、この税制のメリット、先ほど来、特定の企業、大企業にしか到達しないんじゃないかという話もあるんですけれども、サプライチェーン全体に波及させる必要性はこれまでも指摘があったんです。加えて、GX実現に向けた取組も産業の裾野まで広げていく必要があるので、並行して中小企業へのGX支援などをお願いする次第なんですけれども、そもそも、本税制の対象となる事業者との取引、税制の優遇対象となるところからその先の取引で国内調達を誘発する仕組みというのはあるんでしょうか、お答えください。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 この税制の対象分野は、先ほど来御答弁もさせていただいておりますけれども、広範なサプライチェーン上にある分野でございます。世界でも戦略分野の自国内での投資を実現するための投資促進策が次々と打ち出される中で、こうした分野における国内投資を実現し、生産を拡大することで、それに連なる地域の中堅・中小企業を含め、部素材等の発注や供給の確保、拡大など幅広く経済波及効果が生じると考えております。

 その上で、国内の生産や取引を増加させ、本税制に伴う経済波及効果を更に拡大するには、本税制の適用を受ける企業のみならず、国内の部素材メーカーや地域の中堅・中小企業が競争力を向上させていくということが極めて重要だというふうに考えております。

 このために、例えばですけれども、電気自動車の構成部品である蓄電池ですとか半導体の製造装置、部素材につきましては、主に初期投資の大きさが課題であるということを踏まえまして、昨年度の補正予算や今年度の当初予算などにおきまして、初期投資支援に必要な予算措置を盛り込んでいるところでございます。

 本税制と併せ、これらの施策も講じていくことで、この税制による国内投資の実現や生産の拡大による部素材等の発注や雇用、所得への好影響といった経済効果が国内において広く波及するよう取り組んでいきたい、このように考えております。

守島委員 是非、国内への波及効果をしっかりとしてほしいというふうに思っています。

 しかし、これもおとといの小野議員の質問でもあったんですが、例えば国内に限定するという法律は作りづらいというのは、それはもちろん、原材料が国内に限定されないものがあったりWTOのルールに抵触するというような可能性があるので、法案の中で国内という縛りはなかなかつけられないというのは理解しているんですけれども、政府が国内の需要喚起とか育成という点でやったとしても、やはり気になるのは、税制優遇された事業者が海外調達に走ってしまっては、サプライチェーンへのメリットの波及とか日本全体のGXの普及とかに貢献しない可能性があって、その点を危惧しているんですね。

 中小企業の賃上げとか価格転嫁が重要というのは我々も思っている次第なんですけれども、私も、小規模零細企業の当事者として、国内で価格が上がる方向で弾力性が強化されて大企業の価格に価格転嫁ができるように促してくれたとしても、それが、ある種、国内企業同士の中小企業が競争する環境にあればいいんですけれども、国内調達自体がコスト高になるという理由で海外調達に向かわれてしまっては元も子もないというか、過去そういう事例が結構多かったのかなというふうに思っているので、比較的、労組などを有する大企業の賃上げなんかは、春闘を見ても、うまくいっているのは見ているんですけれども、大企業が利益を得ている分、最終的なしわ寄せが結局中小に向かうんじゃないかということは危惧しています。

 とはいえ、自国の産業を保護的に守るとか強い縛りをつけると言っているわけじゃないんですが、政府の政策が結果として真っ当に頑張る中小企業を苦しめてしまうことだけは避けたいと思っていますので、ルールの範囲内で政府投資をしっかり中小企業の利益とか賃金上昇につなげていただきたいというふうに思っているんです。

 労働組合を有する大企業なんかの後に、これから中小企業の賃金というのが明らかになってくると思うんですけれども、結果、中小企業の生産性向上というのが余り見込めず、大企業ほど賃金の上昇率が上がらなかった際はどういうふうな手だてを考えているのか、お聞かせください。

菊川政府参考人 戦略分野をめぐる国際的な競争の中で我が国の中小企業が取引先として選ばれ続けるためには、税制の効果を、幅広いサプライチェーン全体、今日もいろいろ御議論がございましたけれども、そうしたサプライチェーンを構成する中小企業の競争力の向上につなげることが重要と考えてございます。中小企業の価格転嫁の推進に向けて、この税制の適用を受ける企業も含めて、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 また同時に、中小企業向けの賃上げ促進税制を活用した賃上げ及び人材確保でありましたり、様々な革新的な製品、サービスの開発等々、そうした省力化投資なども進めていきたいと思ってございます。

 サプライチェーンを構成する中小企業自身も、コストカット型の思考から脱却して、高い技術力と付加価値を強みとして競争を勝ち抜けるよう、新たな政策を総動員してまいりたいと考えてございます。

守島委員 時間があると思ったんですけれども、ちょっとずつなくなってきたので、続いて行きたいと思います。ちょっと通告の順番といろいろ入れ違いが起こるかもしれませんが、御容赦ください。できなかった分は、また一般質疑に回したいと思っております。

 続きまして、中堅企業の創設に関して伺います。

 我々も、エビデンスとして中堅企業という企業規模体が成長が見通せるものであり、そこに投資するというのは合理的だなというふうに思っておりますが、先日もあったんですけれども、外形標準課税対象企業が減資して一億円以下にする事態が多発していて政府も税制改正を行ったという状況下で、やはり税の公平性という観点で応益負担というのが大事なんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、企業としては、どうしても行動として、より有利な条件、それは民間なので利益を上げていかないといけないとは思うので、そういう行動に出るというのが現実だったわけです。

 今回の法改正においても、税制優遇を受けるために採用抑制をしたりする企業が出てくるのは想定しておくべきかなというふうに思っていますが、そのような、成長に資するための政策が成長を阻害する動きにつながったら、これは本末転倒だというふうに思っていますので、採用抑制など、そういった成長にマイナスな動きをするような企業が出てしまうことに対してどう牽制していくのか、教えてください。

菊川政府参考人 非常に重要な御指摘、ありがとうございます。

 投資や賃上げなどの成長意欲が高い、また国内投資や国内所得の向上を通じて国内経済に貢献する高いポテンシャルを有する、そうした企業を特定中堅企業として支援をしていくことを要件としているわけです。

 そういうことでございますので、例えば、今おっしゃったような、従業員数を減らしてあえてその対象になろうとするような企業でありましたり、規模を無理に維持をして成長しようとしない企業、こういったものについてはそもそも対象となるものではないというふうに認識をしております。

 ただ、制度の趣旨をしっかりと周知をして、御指摘のような状況を助長するようなことのないように努めていきたいというふうに考えています。

守島委員 ありがとうございます。

 認定のところで一定歯止めをしてくれると思っているので、その点はお願いしたいですし、企業としても、動機づけとして、やはり利益を出さないといけないというところは分かっているので、今回、二千人という線引き、どこで線を引くんだと言われると思いますけれども、線を引かざるを得ないというのが省庁の立場だと思うので、とはいえ、線をすぱっと引くことで不公平が生まれるがゆえに、企業からしたら、ちょっとでもその線の中に入ろうという動機になってくると思います。

 理想としては、従業員がちょっと減れば、それに応じて優遇割合がちょっとずつ大きくなるみたいな、そういう限界性があるような施策ができればいいと思うんですけれども、いかんせんそれが難しいということで、将来的にはやはり、そういう公平、比例するような制度というのを目指してほしいなというふうに思っていて、それはお願いだけになります。

 中小企業施策についてちょっと聞こうと思っていたんですが、先にちょっとスタートアップ等に回させていただいて、中小政策に関しては、今後の質疑も含めて、やれるところまでやりたいというふうに思っています。

 続いて、JICのスタートアップ支援に関して伺います。

 今回、運用期限を延ばすという法改正になっていますが、そもそも、機構に関連する原資が約三兆円あるものの、これまでリスクマネーの供給が不足していたというふうに評価されているんですけれども、その理由と今後の方針というのをお聞かせください。

菊川政府参考人 リスクマネーの供給が不足しているという点でございますが、足下では、欧米中心に金利上昇といったことで資金調達の環境が悪化をしてきている、そういったようないろいろな、様々な状況があろうかと思います。

 一方、日本のスタートアップへのリスクマネーの供給は、これまで政策も講じてきたわけですけれども、相対的ではありますけれども、比較的堅調に推移してきたかなというふうに思ってございます。

 他方で、御指摘のとおり、日本のスタートアップへのリスクマネーの規模そのものは欧米と比べると大きく劣後しています。ヨーロッパなんかと比べると十分の一ぐらいじゃないかというふうに思っておりますけれども、依然として様々な課題があるんだろうというふうに思っております。

 そうした中で、先ほどGXについての御議論がございましたけれども、二〇五〇年のカーボンニュートラル目標、こういったことが国際的に認知されている中で、やはり中長期、海外では非常に長期のファンドも立ち上がってきておりますけれども、そうした課題に応えるために今回期限の延長ということをお願いさせていただき、様々な問題意識の下で、JIC等の国内外のVCへの出資機能を強化して、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

守島委員 世界的には資金調達が難しいとおっしゃっていたんですけれども、日本の場合、今、JICに関しては、どちらかというと、供給する能力はあるけれども、まだそこまで至っていないというところなので、しっかりその点を埋めていってほしいと思います。

 続いて、ディープテックスタートアップに関してですが、NEDOがミドル期以降の事業開発活動についても支援を行えるようにすることは、これも技術の実用化、商用化に資するという点で賛同するんですけれども、これまでの基金の規模一千億に対してまだ低位にとどまっているということで、ミドル期以降の支援をしていくことで個別の支援としてどの程度の補助になっていくのかというのと、また、グロスでどれぐらいの規模、全体観で交付していくのかという目標観があれば教えてほしいです。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この追加する業務、これは、ディープテックスタートアップが市場を立ち上げるために行う事業開発活動、例えば商用の設備投資ですとかソフトウェア投資、顧客ニーズを踏まえた製品、サービスの改良など、これを補助するということを考えてございます。

 この段階は事業モデル確立に向けて試行錯誤を繰り返す必要がございますけれども、革新的技術を用いた新事業に対しては、顧客候補は受入れに慎重になることが常でありまして、完成品に近い状態で製品等を供給できる体制を整備し実績を積み重ねないとなかなか顧客がつかない、こういう問題がございます。

 このため、販売の予見性が立ちにくい早期の段階から量産規模の設備投資が必要にならざるを得ない、そういう可能性が高いなど、通常のスタートアップと比べても状況が異なりますし、かつ、大企業のように既存事業を元に融資等で資金調達をすることも容易でないというのがディープテックスタートアップの特徴かと思います。

 こうした状況から更なる支援が必要とされており、今後、スタートアップの事業状況や、既存の制度、これは最大三十億円規模の研究開発支援を受けられるんですけれども、その内容も踏まえて、市場を立ち上げる段階に適した規模、ちょっとまだ具体的に幾らということまで決まっているわけではないんですが、市場を立ち上げる段階に適した規模で支援をしていきたい、このように考えております。

 今回改正をして追加をする業務につきましては、GX関連分野のスタートアップの研究開発や社会実装支援を抜本的に強化するため、GX関連分野での実施を検討してございます。この分野のスタートアップに対しては、今申し上げた追加の業務だけではないんですけれども、今年度を含めて今後五年間で二千億円規模の支援を行う方針を示しておりまして、この中で継続的にこの業務を実施していくことを考えてございます。

守島委員 マーケットに供給するためには、多分、今まで三十億円規模の研究投資だったのが、実用化ベースになると、それがどういう規模になるか、これは分からないですけれども、肌感覚として、やはり商用化に向かう段階の方が予算というかイニシャルコストも高いんじゃないかなというふうに思っていて、その分、二千億円の枠というのが、想定しているのであれば、大体幾らになるかというところは、件数が大体出てくると思うんですけれども。

 全てが飯の種になるか分からないという中で、やはり投資額をしっかり確保するのと、しっかり成長の種になるイノベーティブな企業が生まれて、商品が生まれてくるようなものにしっかりと投資してほしいというふうに思っておりますので、この点、既存の産業を成長させるというのも大事ですけれども、新たな飯の種という点ではイノベーションを生むということの重要性も非常に高いと思いますので、期待するところですので、予算の確保も含めて、しっかりと環境整備に努めていただきたいというふうに思っております。

 続いて、イノベーションボックス税制について確認します。

 欧米ではこうした税制は先行していて、OECDのルールも二〇一五年に形成されていたというふうに聞いているんですけれども、そこから十年遅れで今となった理由をお聞かせください。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、欧州を中心に二〇〇〇年代から、研究開発の結果生まれた知的財産権から得られる所得に対する減税措置、すなわち今回のイノベーション拠点税制のような制度の導入が進んでまいりました。

 一方、当初は税制の対象の知的財産権に特段の制約がなかったということもございまして、多国籍企業が制度導入国に知的財産権を移転することに伴い税収も国際的に移転されるものであるという性質に留意すべきだという議論がOECDでございまして、我が国としては、その議論の動向を注視した上で制度設計をする必要があったということでございます。

 これも御指摘ございましたけれども、その後、二〇一五年にOECDにおいて国際的なルールが整備されまして、それを受けて欧州では制度の見直しが進んだほか、近年、アジア諸国での導入も進んできているという状況でございます。

 こうした中、近年、企業の研究開発の立地選択におきまして、本税制の有無がその意思決定に影響を及ぼす状況になってきており、本税制を導入する必要性も一層高まってきたということだと認識しております。

 加えまして、研究開発費を大幅に増加させている国がある一方で、我が国全体の研究開発投資は横ばいで推移をしているところでございまして、日本として、将来の飯の種を生み出す研究開発投資の現状に危機意識を持っている状況でございます。

 こうした中で、経済産業省では二〇二一年より、政府として一歩前に出て産業政策を強化する経済産業政策の新機軸に取り組んでおります。研究開発から社会実装に至るまで政策を総動員して取組を加速させる中、今般、イノベーション拠点税制を措置するということにしたわけでございます。

守島委員 ありがとうございます。

 租税回避とかも含めていろいろ検討するのに時間がかかったということから、必要なので今回制度設計したということなんですけれども、今回の法改正の制度、措置期間が七年とか控除率とかが今に至った理由というのを、簡単にでいいので教えてください。

畠山政府参考人 このイノベーション拠点税制ですけれども、研究開発拠点としての立地競争力を強化して民間による無形資産投資を後押しするために措置をしているものでございます。そういう意味では、対象所得は、国内で自ら研究開発をした特許権、それから、AI関連のプログラムからの著作権から生じるライセンス所得及び譲渡所得を対象として減税措置を講ずることとしております。

 この税制の減税額の水準ですけれども、国際的に遜色のない水準の措置とするため、対象所得につきまして三〇%の所得控除を認めるものでございまして、法人実効税率ベースで申しますと現在の二九・七四%から約二〇%相当まで引き下げられることとなります。

 さらに、措置期間につきましては、研究開発から特許権等の取得、その収益化にかかる期間を考慮しまして、措置期間を長めに設定する必要があることから、特許権を権利として維持している平均的な期間が統計を基にすれば七年程度というふうに想定されることも踏まえて、租税特別措置としては長期となる七年という期間が設定されております。

 まずはこの制度の着実な執行に努めて、その上で、他の税制と同様に、制度の執行状況や効果を検証し、本税制がよりよい制度となるよう、対象所得の範囲等も含めまして、不断の見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。

守島委員 あくまで国際的に遜色がないレベルということで、これはやり過ぎても違う国の企業が租税回避とかに動いてくる可能性もあるということで、じゃ、どこまでやるのかといったら、これまで議論があったように、立証責任とかが出てくるので、煩雑にならないようにこれからやりながらルールも見直していくという必要があるというふうに思っているんですけれども、財源的には、やはりこれも減収になることはなるので、やはり効果とバランスというのをこれは評価していかないといけないと思うので、制度的な安定性をまずは確保しつつ、その後はやはり財政への影響というのをしっかりと担保していただきたいというふうに思っております。

 残りの時間で、中小企業対策についてちょっと確認していきたいと思います。

 先日、事業再構築補助金の話をさせていただきました。特に、事前着手制度は何でやっているのかという話を聞いたんですけれども、私自身も、コロナ融資とか事業再構築補助金をそもそも否定しているわけじゃなくて、実態として、コロナ後の今に至るまで緊急時の支援が継続されていて、生産性向上に結びつかない結果を生んだり倒産をしてしまったりということがあるので、マクロ的な視点で問題があるんじゃないかというふうに思っています。

 これを、各個別企業を見て、かわいそうという論点になってしまうと、これは何も言えなくなると思いますし、例えば民主党政権下のモラトリアムとか信用保証協会の一〇〇%保証とかを見ていたら、これはやはり現場に多大な負担がかかっていたり金融のモラルハザードというものを生んでいたりというのも感じていたので、それが結局長い景気低迷を生んだというようなことも一因としてあるので、余り各論と総論を混ぜない方がいいかなというふうに僕は思っていて、やはりマクロベースでエビデンスに基づいた中小企業施策というのが大事かなというふうに思っています。

 その上で、事業再構築補助金に関して先日に引き続き確認したいんですけれども、この事前着手制度を今やっていたせいで、期待して投資したけれども交付されずに経営が苦しくなったとか、逆に、この前も言ったけれども、追い銭を受けてたまたまラッキーだったみたいな話もあるし、事業採択のためにコンサルタントもばっこしているという話も聞いて、先ほどの質問でもあったんですけれども、行政レビューできついことを言っていたと言われることもあるんですけれども、実際に、同じような事業再構築補助金の書き方で違う企業がたくさん出していたというのは実態としてあって、やはり不正というのも起こっていたというふうに思っています。

 事前着手の是非を決める緊急時という概念自体が曖昧な上、この事業再構築補助金自体を、ちゃんと使ってくれればいいんですけれども、そうじゃないところもあるという中で、不公平が起きたり、不公平だと思う企業もあったりするわけで、ある種、こうした税投資に対する効果が見えづらい政策になってしまったのかなというふうに思っています。

 こうしたあらゆる方面からの、不公平じゃないかとか、そういう指摘に対する見解と、今後の制度の方向性を教えてください。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 幾つか御質問がわたったと思います。

 まず、事前着手制度でございますけれども、御趣旨は、今委員の御質問の中にもございましたけれども、新型コロナという未曽有の緊急事態でございまして、中小企業が経済社会の変化に対応するため事業再構築を早期に開始できるようにということで、例えば、具体的には、通常、一般に中小企業予算というのは、通常の補助事業は、事業開始は交付決定の後になりますので、交付決定前の支出は対象にならないんですけれども、コロナ禍におきましては、感染症が拡大したり収まったりというのを繰り返す中で、交付申請とか決定というプロセスを経るとビジネスチャンスを逃してしまうというおそれもありましたので、特例措置としてこの事前着手制度を導入したわけでございます。

 これにつきましては、コロナ禍における極めて特例な措置ということで、先日公募を開始いたしました第十二回公募においては原則認めていないという形になってございます。

 それから、事業再構築補助金の意義ということでございますけれども、コロナは五類感染症に移行したものの、今なおコロナ債務を抱える事業者の皆さんもいらっしゃいます。こうした事業者の皆さんで自己負担も含めて前向きな新規事業に取り組むという方、こういった方は引き続き応援する必要があると思いますけれども、他方で、本事業の主要な支援先といたしましては、物価高騰ですとかグリーンなど、ポストコロナの事業環境の変化に対応するため思い切って新規事業に取り組む事業者に移行していく、そういうふうに考えております。

 具体的な制度といたしましても、六枠あった支援枠を三枠に統合いたしまして、コロナの影響を今なお受けている事業者向けは一枠、残りの二枠は、成長分野、特にGXへの進出、それからサプライチェーンの強靱化といった前向きな枠に再編をいたしました。それから、新型コロナ対策として実施していた特例的な措置である事前着手制度、これは原則廃止ということでございます。それから、コロナの影響を受ける事業者向け支援の対象の限定や審査の厳格化、EBPMの強化、こういった抜本的な見直しを行った上で第十二回公募を開始したところでございます。

守島委員 ありがとうございます。

 今回、十二回公募からは事前着手は原則取りやめたということで、多岐にわたって制度を、ちょっと事前着手も含めて聞いてしまったんですが、やはり、緊急時は緊急時、平時は平時というふうに分けて、めり張りをつけていかないと、市場の求めるところ以上に厚遇になってしまうというところがあると思うので、それはそれで、やはり普通のマーケットで頑張っている中小企業に対するアンフェアな制度になりかねないということを踏まえたら、頑張る事業者に変なダメージを与えない、公平に競争してもらうということも重要だと思うので、その点も留意して、新たに事業再構築補助金も見直していただけたらというふうに思っております。

 以後、また引き続き質問したいと思いますが、本日は終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 本日は、産競法等改定案のスタートアップ企業関連措置に関して質問します。

 まず、齋藤大臣、現在、NEDO、新エネルギー・産業技術総合開発機構が行っているディープテック・スタートアップ支援事業の内容はどのようなもので、二〇二二年度補正での予算額は幾らか。また、今回の法案でどのような業務を新たに追加することになるんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 革新的な技術の事業化に取り組むスタートアップ、すなわちディープテックスタートアップは、我が国経済の成長とともに社会課題の解決の担い手として重要であるというふうに考えています。

 他方、ディープテックスタートアップは、長期かつ多額の研究開発を要することが事業化の障壁でありますので、NEDOにおけるディープテック・スタートアップ支援事業では、こうしたスタートアップの試作品の開発から量産化の実証を支援するものであります。令和四年度の補正予算におきまして一千億円を措置しているところであります。

 加えて、本改正によりまして追加する業務につきましては、ディープテックスタートアップが市場を立ち上げるために行う事業開発活動、例えば、商用の設備投資やソフトウェア投資、顧客ニーズを踏まえた製品、サービスの改良等を補助することを考えているところであります。

笠井委員 つまり、実用化研究開発から事業化までの全体を通してNEDOが支援するようになる、そういうことですね。

齋藤(健)国務大臣 先ほど申し上げたように、NEDOに追加する、事業開発段階の設備投資なども含まれているということであります。

笠井委員 このディープテックスタートアップとは、どの分野の企業を指すんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 ディープテックスタートアップとは、先ほど申し上げたように、社会課題の解決に向けてということで、AIあるいはロボティクス、新素材、量子、航空宇宙、バイオテクノロジー等の様々な領域において、科学的な知見に基づく技術の事業化に取り組む、そういうスタートアップでございます。

笠井委員 内閣府に質問します。

 二〇二〇年九月三十日の核融合戦略有識者会議で、科学技術・イノベーション推進事務局が「核融合戦略の策定に向けて」という資料を出しております。その二ページの「核融合エネルギー(フュージョンエネルギー)とは」という冒頭四行と、それから十四ページの「国内の核融合ベンチャーの動向」で紹介されている四社の企業名を紹介してください。

川上政府参考人 内閣府が事務局を務める核融合戦略有識者会議の第一回資料において、核融合エネルギーとは、「軽い原子核同士(重水素、三重水素)が融合して別の原子核(ヘリウム)に変わる際に放出されるエネルギー。」「太陽と同じエネルギーで、ウラン燃料を用いる原子力発電と全く異なる。」と記載されております。

 また、「国内の核融合ベンチャーの動向」として紹介されている企業については、浜松ホトニクス、京都フュージョニアリング、ヘリカルフュージョン、エクスフュージョン、以上の四社でございます。

笠井委員 その四社は全てディープテックスタートアップということでよろしいんですね。

川上政府参考人 それで結構でございます。

笠井委員 経産省に確認しますが、NEDO法では、機構の業務範囲から「原子力に係るものを除く。」と規定していますね。確認です。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 NEDO法第十五条におきましてNEDOの業務範囲が規定されているところ、御指摘のとおり、同法同条第一号及び第二号におきまして、NEDOが開発を行う技術につきましては、「原子力に係るものを除く。」と規定されているところでございます。

 当時の資料によりますれば、原子力に係る技術を除外したのは、原子力基本法第七条において、原子力開発については、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構により原子力に関する研究開発が進められているためである、ただし、これは専ら原子力開発のために用いられる技術の開発を行わないこととしているものであって、原子力開発に用いられ得る技術の開発まで排除するものではないと記載されているところでございます。

笠井委員 四社の中のエクスフュージョン、大阪大学発のスタートアップですが、冒頭で確認したNEDOのディープテック・スタートアップ支援事業を二〇二三年度第二回目の公募で交付決定を受けております。どうして核融合の企業がNEDOの助成対象になっているんでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の株式会社エクスフュージョンは、ディープテック・スタートアップ支援事業におきまして、ハイパワーレーザー加工機による難加工材の高精度高速加工の実現という研究開発テーマで採択され、交付決定を受けてございます。

 この内容といたしましては、一般的に加工の難しい炭素繊維複合材料、CFRPと言ってございますけれども、これにつきまして、同社が有する高出力のレーザーを高精度で制御する技術を基にして、スピードと品質を両立させてこの材料を加工する技術の確立を目指すものでございます。

 同社としては、こうした技術を確立させることで、炭素繊維複合材料を利用する可能性があると想定している自動車業界等におきまして材料の需要を高め、それによって同社のレーザー加工技術に係る事業が拡大する構想を有しており、本事業のための体制を構築して取り組んでいるものと承知しております。

 なお、同社の提案に対しては、技術の優位性や市場の将来性、また取引先となり得る企業との共同開発を含めた連携の状況など、技術面、事業面の双方で外部有識者による審査の結果、採択に至ったものでございます。

 本支援事業での支援対象となる研究開発はレーザー加工技術の開発を目的としたものでございまして、NEDO法上の業務範囲に含まれるものだと考えております。

笠井委員 レーザー加工技術と言いますけれども、結局それで何をやるかというと、原子力に係るものになっていくわけであります。

 この企業は、経産省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム、J―Startup企業に選定をされております。

 齋藤大臣に伺いますが、企業紹介によれば、レーザー核融合商用炉の実用化を目指す国内唯一の民間企業だということになっております。まさに原子力に係るものであります。NEDO法にある「原子力に係るものを除く。」という規定からすると、今いろいろな解釈の仕方でいろいろ言われたけれども、明らかにこれは逸脱しているということになるんじゃないんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 ディープテック・スタートアップ支援事業において採択された株式会社エクスフュージョンの研究開発テーマは、同社及び大阪大学における研究開発の成果である先進的なレーザー技術を応用して、炭素繊維等の加工しにくい材料を高い精度で速度を高めて加工できるようにするということであります。こうした技術は、自動車業界を含む様々な業界で利用されることが期待をされています。

 こうした先進的なレーザー技術は、核融合を含め様々な事業領域に応用される技術であると認識はしていますが、今回NEDOがエクスフュージョン社の事業を採択した主たる理由は、あくまで炭素繊維等を加工するためのレーザー技術の優位性やこの事業領域での事業構想、将来性が高く評価されたことと認識しておりまして、NEDOが実施する業務として問題はないものと考えています。

笠井委員 まあ、非常に苦しいと思うんですね。核融合をやるということで、そういう中で企業がやりながら、そこでレーザー技術を使ってということで、それに支援するということになるわけです。

 内閣府に伺います。

 昨年、二〇二三年四月十四日に発表したフュージョンエネルギー・イノベーション戦略では、フュージョンエネルギーを新たな産業として捉え、世界の競争に我が国も時機を逸せずに参入し、実用化、産業化を実現するとして、核融合産業協議会を設立するとしました。

 今年三月二十九日に実際に設立された産業協議会の役員、会長、副会長、常任理事、理事の属している企業はどこでしょうか。

川上政府参考人 核融合産業協議会として三月に設立された一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会、通称Jフュージョンの役員を申し上げます。

 会長は、京都フュージョニアリング株式会社、副会長は、住友商事株式会社、株式会社ヘリカルフュージョンの二社でございます。

 常任理事は、古河電気工業株式会社、日揮株式会社の二社です。

 最後に、理事は、株式会社アトックス、大和合金株式会社、エクスフュージョン、三井物産株式会社、株式会社フジクラ、三井不動産株式会社、日本電信電話株式会社、株式会社LINEAイノベーション、三井住友海上火災保険株式会社、株式会社IHI、三菱重工業株式会社、東芝エネルギーシステムズ株式会社、株式会社INPEX、三菱商事株式会社、ブルーレーザーフュージョン合同会社、清水建設株式会社の十六社です。

 以上の計二十一社が役員になります。

笠井委員 今、計二十一社の、役員の属している企業名を挙げてもらいましたが、そのうち、今伺っていますと、日揮、アトックス、三井物産、三井住友海上火災保険、IHI、三菱重工業、東芝エネルギーシステムズ、三菱商事、清水建設は、原子力産業協会の加盟企業であります。

 経産省に更に伺いますが、会長の京都フュージョニアリング、これは京都大学発のスタートアップだと思うんですけれども、ここは二〇二〇年度と二一年度の経済産業省の原子力産業基盤強化事業の補助を受けていると思うんですが、受けているかどうか。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の原子力産業基盤強化事業におきましては、京都フュージョニアリングに対しまして、二〇二〇年度予算において約一・二億円、二〇二一年度予算において約三・六億円を補助してございます。

笠井委員 この原子力産業基盤強化事業ということの目的というのは一体何でしょうか。ちょっと詳しめに教えてください。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力産業基盤強化事業は、原子力の安全性、信頼性を支えている原子力産業サプライチェーン全体の強化のため、サプライヤーの技術開発、事業承継及び原子力人材の育成等に対して支援を行うものであります。

 本事業の補助を受けて京都フュージョニアリングは、核融合発電に使用される部材、例えば、電力高周波加熱装置、ジャイロトロン、高熱流束放射性ガス排気装置、ダイバータ等について、設計、製造等を実施したものと承知してございます。

笠井委員 原子力基本法は昨年改定をされたわけですが、国が講ずる措置として、第二条の三の一で、「原子力発電に係る高度な技術の維持及び開発を促進し、これらを行う人材の育成及び確保を図り、並びに当該技術の維持及び開発のために必要な産業基盤を維持し、及び強化するための施策」を定めているわけであります。

 今答弁がありました原子力産業基盤強化事業というのは、そういう点では、答弁があったように、原子力利用の安全性、信頼性や効率性を支えている原子力産業強化のための競争力向上とか人材の育成等に取り組んで、人材、技術、産業基盤を維持強化する、まさに国の施策そのものだということだというふうに思います。

 そこで、この京都フュージョニアリングは、二〇二三年五月十七日の時点での累計資金調達額は百二十二億円というふうに発表しております。出資者は、三菱商事、関西電力、日揮、電源開発・Jパワー、三井物産、三菱UFJ銀行など、原子力関連の大企業がぞろぞろ名前を連ねているわけであります。

 そこで、内閣府に伺います。

 大体、なぜ内閣府の戦略では核融合と言わずにフュージョンエネルギーなどという表現を用いることにしたんでしょうか。

川上政府参考人 昨年四月に策定したフュージョンエネルギー・イノベーション戦略では、核融合は核分裂との原理の相違に起因する特徴を有することや、近年、英国や米国においてはエネルギー分野ではフュージョンと呼称していること等を踏まえ、核分裂との混同等の疑問に対して丁寧な説明で理解を得つつ、核融合エネルギーをフュージョンエネルギーと表現することとしております。

笠井委員 今紹介がありましたその中で、核分裂との混同等の疑問というふうにおっしゃったんですけれども、これは具体的にどんなことですか。

川上政府参考人 核分裂との混同等に関しましては、核という言葉がそこについていて、そこで誤解を受けるということがないように、はっきりと区別をするという意味でございます。

笠井委員 誤解というのはどういう誤解ですか。

川上政府参考人 言葉の混同でございます。(笠井委員「いや、それは分かります。何をどう誤解するの」と呼ぶ)

 核分裂という言葉と核融合という言葉を間違って使うということがないようにという意味でございます。

笠井委員 誤解というのは誤解だ、そういうことは分かるんですけれども、いや、あえてなぜ、そういうことの疑問に対して丁寧な説明というのは、どんな丁寧な説明をするんですか、これは。

川上政府参考人 丁寧な説明ということでございますけれども、これは、言葉上きちんと意味を取り違えないように表現をするということを何回も繰り返し丁寧に説明しながら、国民にフュージョンという言葉の浸透を図っていくということでございます。

笠井委員 なぜそんなことをやらなきゃいけないのか、私は聞いていても理解できないんですが。

 齋藤大臣、四月十日の日米共同声明でも、こうあります。「我々は、フュージョンエネルギーの実証及び商業化を加速するための日米戦略的パートナーシップの発表を通じたフュージョンエネルギー開発を含む次世代クリーン・エネルギー技術の開発及び導入を更に主導する。」というふうにされています。

 東京電力福島第一原発事故以降、原子力発電に国民から厳しい目が向けられている中で、あえて核融合と言わずに、実用化のめどもないのに、スタートアップだと。フュージョンエネルギーという看板を掲げて、日米共同で原子力産業を支援して、維持、延命を図ろうというものじゃないかと思うんですけれども、大臣、どのように考えていらっしゃいますか。

齋藤(健)国務大臣 そもそも、経産省による核融合産業支援というものについて、これは、将来にわたりましてエネルギーの安定供給に対して責任を果たし、そして脱炭素社会を実現していくために、再エネだけではなくて原子力も含めあらゆる選択肢を追求していくことが不可欠であって、安全性の確保を大前提に原子力の活用を進めていくというのが我々の考えであって、核融合は、その反応において二酸化炭素が発生しない、万一の場合は反応が止まる、高レベル放射性廃棄物が生じないなどのメリットがありまして、資源エネルギー庁の審議会での議論では、核融合は新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の一つとして整理をされているところであります。

 一方で、核融合には、反応の連続化や、投入エネルギー量を超えるエネルギー量を回収し発電するめどがまだ立っていないなど、解決すべき大きな技術的課題もあります。

 このように、核融合は、将来のエネルギー源として期待できる一方、いまだ基礎的な開発段階にあるために、他の原子力技術の知見やサプライチェーンも活用しながら将来に向けた研究開発を進めていくものでありまして、その支援については、内閣府や文部科学省と連携する必要がありますけれども、経済産業省としても、原子力発電分野の技術開発支援やサプライチェーンの維持強化等の観点から技術開発等の支援を今後も検討していきたいと考えておりまして、日米連携もこういう流れの中にあるものでございます。

笠井委員 エネルギーというと、大臣がいつもあらゆる選択肢というふうに言われるんですけれども、そして、この核融合については、よさそうな点がある、メリットがあるように言われるんだけれども、これは、実際には、トリチウム、三重水素で内部被曝の危険性がある問題とか、あるいは、放射性廃棄物、特に低レベルでいうと処分場がないわけですね。そして、大臣も言われたけれども、実用化されておらず、まだ世界中でどこにもなくて、いつまで幾ら投じるかも分からないじゃないかという問題になってきます。支援対象の、原子力産業に救いの手を差し伸べているということになる。

 やはり今やるべきは、エネルギーの安定供給と自給率向上に力を発揮する再エネと省エネへの抜本的転換であり、そこへの支援強化だ、今ある技術を本当に最大限生かすことだということを改めて言いたいと思います。

 問題はそれだけじゃありません。経済安全保障の枠組みに産業を強引に動員しようとしていることも指摘しなければなりません。

 経済産業省に伺います。

 昨年、二〇二三年十一月二日に、経産省は、経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプランを発表しております。その三十八ページの「スタートアップの防衛産業参入促進」の部分を読み上げてください。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の二〇二三年十一月に取りまとめられました経済安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプランの三十八ページのところでございますが、「スタートアップの防衛産業参入促進」として、「現状と課題」、科学技術の発展が戦闘の様相を変える新しい戦いに対応していくには、これまで防衛産業との関わりが薄かったスタートアップが持つ民生先端技術を、積極的に防衛装備に活用していくことが必要不可欠。他方、スタートアップが防衛産業に参入していく上では、防衛省・自衛隊のニーズが分からない、長期的な調達サイクルに対する財務基盤がない、シーズ技術に対する資金の不足といった課題が存在。早期装備化のニーズを踏まえ、防衛省と経産省でスタートアップ活用に向けた課長級会議を開催し、ニーズとスタートアップをマッチングする機会を創出するとともに意見交換を実施。

 「具体的なアクション」としまして、「防衛省・自衛隊の技術ニーズに基づき、経産省が有するネットワークからスタートアップを紹介、マッチングさせる枠組みの構築等」「防衛産業へのスタートアップ参入促進に向けた環境整備」でございます。

笠井委員 今紹介がありました、戦闘の様相を変える新しい戦い方に対応するためにと、あえて言葉はそこを、パーレンである中を省かれていますが、デュアルユースが必要不可欠だというふうに言っているということで、そのためにスタートアップを動員しようという、私は、驚くべき重大な中身だと思います。

 既に、防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会なるものが防衛省と経産省の課長級で開かれているということでありますが、公表されているのは、日時、場所、構成員の役職だけです。一体全体何を話し合っているのか、そして、その議事録は公開すべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 この会議でございますけれども、スタートアップ企業と経済産業省、あと防衛省と自衛隊の方々と一緒に意見交換をしております。一堂に会することにより、例えばスタートアップの製品や技術、それについての活発な意見交換が行われているところでございます。

 個別の技術内容に具体的に入っていきますので、具体的な議論の内容については、その議事録を控えさせていただいております。

笠井委員 実際にはそういう協議をやって話し合っているけれども、合同推進しているけれども、それはクローズで、中で、明らかにされないということでありますから、これは重大だと思います。

 「具体的なアクション」で示されている、「防衛省・自衛隊の技術ニーズに基づき、経産省が有するネットワークからスタートアップを紹介、マッチングさせる枠組みの構築等」というふうにある、その「経産省が有するネットワーク」とは何のことか、「マッチングさせる枠組み」とは何でしょうか。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 同会議におきましては、経産省から様々なスタートアップ支援施策、例えばJ―Startupの選定企業などから、その技術や商品に関わり、防衛産業に参入の関心がある企業を選定しまして、そこのマッチングの場に紹介しております。

笠井委員 今回の法案では、企業横断的措置として、経産省所管のINPIT、工業所有権情報・研修館とNEDOに、新たに企業への助言ができるようにしております。INPITとNEDOが保有する情報を活用して助言を行うということで、この問題について事前に説明を求めたら、レクで担当者がそう説明しておりました。

 「経産省が有するネットワークからスタートアップを紹介、マッチングさせる」ということには、INPITとNEDOが保有する情報を活用することが含まれるということになりますか。

田中(一)政府参考人 委員御指摘の、防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会において、防衛省に対してスタートアップ企業などを紹介するため、これまで、INPITやNEDOに対して保有する情報の提供を求め、あるいはそれを用いたことはございません。

 申し上げましたとおり、これまでの企業は、J―Startup選定企業や経済産業省と日頃意見交換などを行っている企業の中から、防衛省・自衛隊の関心がある製品や技術を持つ企業を選定したものでございます。

笠井委員 経産省が有するネットワークからスタートアップを紹介してマッチングさせるというのは、一体どういうふうなことをやるんですか、誰がどういうふうに。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 J―Startup企業、選ばれた企業の中の技術内容をいろいろ我々は承知しておりますので、その中から防衛産業に関心のある企業を選定しまして、先ほどの合同委員会で防衛省などとマッチングさせる取組でございます。

笠井委員 大臣に伺いますが、経産省の答弁にあったように、結局、安全保障に関する産業・技術基盤強化アクションプランには、「科学技術の発展が戦闘の様相を変える「新しい戦い方」に対応していくには、これまで防衛産業との関わりが薄かったスタートアップが持つ民生先端技術を、積極的に防衛装備に活用していくこと」、デュアルユースが不可欠であるというふうにあるわけです。

 そのために経産省なりINPITとかNEDOが企業に助言をするということになれば、これは必然的に、スタートアップの機微技術あるいは営業秘密の保全や、今国会に提出されている重要経済安保情報保護法案にある問題のセキュリティークリアランスですね、適性評価を推進するということになるんですか。

齋藤(健)国務大臣 ちょっと笠井さん、済みません、今審議している重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案のセキュリティークリアランスを推進するのですかという質問の意味がちょっとよく分からないんですけれども。

笠井委員 これはやはり、合同推進会までやって、そして防衛産業へのスタートアップ活用に向けてやって、そこで情報交換しながらということで、先ほど申し上げたように、アクションプランの「具体的なアクション」の中で、防衛省・自衛隊の技術ニーズに基づいて、経産省が有するネットワークからスタートアップを紹介して、マッチングする枠組みを構築していくと。

 具体的に、どことどこをくっつけてやっていくんだ、こういう情報があるよね、ここがこうできるよねという話を経産省が関わって、あるいは関係団体が関わってやるということになると、そのときに機微技術ということが出てきて、それに対してやはりセキュリティークリアランスの問題が出てくるのかというふうに聞いているんです。

齋藤(健)国務大臣 セキュリティークリアランス法案は、政府が保有する重要経済安保情報について、それを扱う民間企業に対する規制というたてつけになっていますので、もし議論に参加することによって民間企業がその情報に触れるということであれば、その民間企業は、新しくできる法律に基づいて、きちんとした適合審査というんでしたっけ、それを受けていなければいけないということになるのではないでしょうか。

笠井委員 既にINPITは、公安調査庁と連携して経済安全保障セミナーというのを開催をしております。案内文には、「中小企業の皆様が保有する技術、データ、製品なども、外国の標的となる可能性があり、これらが流出した場合、思わぬ形で大量破壊兵器等の研究等に転用され、日本の技術的優位性が損なわれる恐れがあります。」というふうにあります。講師には公安調査庁の幹部がついているわけで、本法案にもノウハウや技術の秘匿ということがありますが、それに関してINPITやNEDOが助言する内容が盛り込まれているということになると思うんですね。

 こういうふうなことで、かなり、今回の法案をめぐって、今参議院で審議になっているようなセキュリティークリアランスに関する法案と関わってくる部分があるということについては、大臣も先ほどおっしゃったけれども、そういうことで認識されているということですよね。

齋藤(健)国務大臣 これは新しい法案の話になるんだろう、セキュリティークリアランス法案の内容になるんだろうと思いますけれども、先ほど私がお話ししたように、そもそもこの法案は政府が保有する情報を民間企業が共有するときに適合事業者でなければならないという規制でありますので、もしそういう情報を会議において用いるのであれば、新しくできる法案が適用されることになるということではないでしょうか。

笠井委員 今回の法案で、先ほども申し上げたような形で議論をして伺ってきましたが、結局、戦闘の様相を変えるような新しい戦い方に対応するためにスタートアップを動員していくというような仕組みの中で、実際に、そのために活用に向けた合同推進会も行われて、そして防衛省、経産省の課長級と関連の企業が集まって話合いもしている。

 そして、防衛省・自衛隊の技術ニーズに基づいて、経産省が有するネットワークからスタートアップを紹介をしてマッチングをさせるということになってくると、そこには、大臣がおっしゃったような政府が保有する情報なんかも含めて当然議論になってくる。そして、そういうときにはこうなんだよね、そこは関わりますよという問題になってくると思うんです。

 セキュリティークリアランスで、制度として、身辺調査を行って、秘密を扱う人の政治的思想や病歴、借金などの個人情報を調べる。労働者が調査を拒否すれば不利益を受けるおそれがあって、これは事実上の強制だということになる。集められた大量の情報が政府にたまり続けて生涯監視され続ける危険があるということが、この間の衆議院の審議でも、そして今参議院でもそういうことが議論されているわけですが、思想、良心の自由、プライバシー権を踏みにじる憲法違反そのものだという問題だと思うんです。

 経済安全保障を振りかざした産業動員とか統制とか、あるいは今回の法案に伴う新しい仕組みの中で、やはり産業全体に大きな影響を与えて、そこで働く人の人権侵害をもたらすということになるんじゃないか。そうあってはならないと思うんですけれども、その点は、大臣、どのようにお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 済みません、これはセキュリティークリアランス法案の審議の中で御議論いただくテーマではないかなというふうに思っております。

笠井委員 今回の法案自身がやはり、スタートアップということを含めても非常に様々な問題があると思うんです。そして、やはり、今回のこの問題を見ても、経済産業省が軍需産業そのものに関与をして、そして経済安保を産業全体に広げていくということは許されないというふうに思います。

 今、日本の軍需産業は、安保三文書に基づく大軍拡、これを進めているわけでありますけれども、私はやはり、戦争に依存する経済をつくってはならないというふうに思います。そして、平和憲法の立場で民需での経済発展を追求すべきだ、数々の問題点をはらむ、重大な問題をはらむ本法案は更に徹底審議して廃案にすべきだと。

 このまま質疑終局することに強く反対をして、今日の質問は終わります。

岡本委員長 次に、鈴木義弘さん。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 午前中に同じヨシヒロといういい人が質問に立ったんですけれども、やはり考えていることは一緒なのかなと思うところが後段で出てきますので、かぶったところはお許しをいただきたいなというふうに思います。

 先週質問に立ったときも、そもそもの話をさせていただきました。結局、資本主義の形が過去からどんどん変わってきたんだと思うんですね。今の時代は、株主資本主義と言われているもの、株主の利益になること。ちょっと前は金融資本主義、その前は工業を中心に製造の分野での資本主義が主体になって、今日の株主資本主義につながってきたんだと思うんです。

 これもある識者が言っていたんですけれども、株式上場は株の上場によって資金を市場から調達できると投資銀行や証券取引所は言うんですけれども、全くその逆で、企業の資金が外部に流出してしまうと言うんですね。物を言う株主は、株主にとっての短期利益を求め、株価をつり上げる経営を、まあ増配、アメリカでは、内部留保をすっかり吐き出させるにとどまらず、大株主となったヘッジファンドが会社そのものを清算して、資産を売却して利益を得るという乱暴なケースまである。株主保有の長期化によって、社会インフラの整備、企業の研究開発、ベンチャー企業によって実体経済を成長させ、産業の競争力を高め、雇用を増大させるために必要なのは、中長期な投資が必要で、これが真の意味での成長戦略だとこの人は言っているんです。

 今回の法改正で、いろいろ議論があって最終日を迎えるんですけれども、この法改正が今申し上げたことを、規制というんですか、考え方を変えないで産業競争力強化法を一部改正しただけで、実際それが成長産業につながったときに、おいしいところは全部ヘッジファンドと富裕層に持っていかれてしまうのでは、中長期的な投資が無になってしまうんじゃないかと思うんです。

 今回の法改正が真の意味での成長戦略に資するものなのか、アメリカの二の舞にならないようにというふうに危惧するんですけれども、大臣の所見を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、企業が中長期的な視点から真に必要な成長投資に取り組んでいくということは、私も重要な視点だと思っています。

 こうした観点も踏まえて、本法案では、具体的な企業行動を後押しするインセンティブとして、戦略分野国内生産投資税制やイノベーション拠点税制を始めとした、企業の投資判断に必要な予見可能性を向上させて大規模、長期の投資やイノベーションが促進されるように、過去に例のない措置を講じるということですので、言ってみれば、できるだけ長期的な志向の下でこういう投資をしてほしいということであります。

 また、企業や投資家が短期志向に陥ることなく、双方の建設的な対話を通じて長期視点の企業経営が実現されていくこと、これは一般論として私も必要だと思っていまして、経済産業省では、価値協創ガイダンスの活用促進や持続的な企業価値向上を目指すSX経営、サステーナビリティートランスフォーメーション経営の推進等の取組を進めて、そうした長期視点の企業経営というものを促進をしてきたところでもあります。

 引き続き、本法案だけじゃなくて、予算、税制等も含めあらゆる政策ツールを組み合わせつつ、企業の長期、計画的な挑戦、こういったものを応援していきたいと考えています。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 過去、九年ぐらい前だったですか、予算委員会で麻生財務大臣に質問する機会をいただいたんです。

 バブルを起こしたのは土地だったんですね、土地が高騰していってバブルが起きていくんですけれども。その後、バブルを収束させるのにどうしたかといったら、土地に対する融資を止める。売り買いして利益が出て、五年未満だったら七五%のタックスをかける、五年以上持っていれば二五%、数字が間違っていたらお許しいただきたいんですけれども。

 それと同じように、株を持つということはその会社に投資をするんだから、実質はやはり配当をもらうということだと思うんですね。売ったり買ったりして、金融業の方には失礼ですけれども、そこでさやを取るというのは、本来の資本主義の考え方じゃないんじゃないか、だから、土地と同じように、長期の保有、株を持っている人が売り買いしたときにはタックスを下げて、短期で売買するときにはタックスを上げたらどうですかと言ったんですけれども、一国ではできないよというような答弁だったかなというふうに思います。

 今回の法律の改正の中で、MアンドAが何回でもできるような税制の優遇をしているんですけれども、同じMアンドAをやっても、日本の会社基準というんですか会計基準でいくと、のれん代というのを損失計上しなくちゃいけないので、実質的には、内部のお金が、利益が下がるわけですね。そうすると株価が下がる。

 国際会計基準ではのれん代を計上しなくていい、こういうルールになっているんだそうです。そうすると、それは、損失計上しなければ、MアンドAをして何らかのお金を相手方に渡すわけですから、若しくは株主に渡すわけですから、損失計上しない方が株価は下がらないですよね、傘下に入れるわけだから。

 そういうような、単なる数字とは言わなくても、操作をすることによって株価は大きく影響する、どっちの会計基準を取るかで。これが今回の法改正で目指すことなのか、お尋ねしたいと思います。

菊川政府参考人 今委員御指摘があった税制、中堅、中小のグループ化税制の点だと思います。

 この税制は、人手不足が深刻化する中で、経営力の高い成長企業に経営資源を集約することは、MアンドAをする中堅企業の成長のみならず、そのグループの一員となる中小企業の収益力の向上でありますとか賃上げ、これに資するものということを念頭に置いておりますので、委員が今御指摘があったようなことについては、しっかりと受け止める必要があろうかなと思っております。

 その上で、この税制の適用を受けるために、必要な計画の認定をするということになっております。その認定の要件といたしましては、買手側の企業が、売手側の企業を含めた生産性の向上、雇用の配慮、そして賃上げ等を進めることを求めることとしていきたいというふうに考えておりまして、これまでの御審議を踏まえた対応をしていきたいというふうに考えております。

 そういった点で申し上げれば、いわゆる純投資を目的としたMアンドAのような、短期的に売却をして利益を得るということを目的としたMアンドAは、計画認定の対象としては、いわゆる想定は難しいのかなというふうに思ってございます。

 また、今、短期的に、会計基準の問題はございましたが、いずれにしましても、今回十年間の損金算入を認める税制でございますので、他方で、十年以内に短期に株式を売却した場合には、直ちにそれを益金算入して税金を払ってもらうということになってございますので、株式の短期売買を助長する制度というふうにはなっていないというふうに理解をしております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 では次に、この法改正の中で何回も議論になってきたんですけれども、半導体、自動車、鉄鋼、化学製品、SAF、その他が産業競争力基盤強化商品と位置づけられているんですが、合成燃料や、水素エンジン自動車というんですか、水素製造は対象になっていないのはなぜか、自動車はいいんですけれども、蓄電池は対象にならないのはどんな理由なのか、お尋ねしたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 本税制の対象分野につきましては、欧米を始め、各国がGX、DX等の戦略分野における投資促進策を次々と打ち出している中で、戦略分野の中でも特に生産段階でのコストが高い等の理由から投資判断が難しい分野について、新たな国内投資を強力に促進する観点から決めているところでございます。

 投資促進策には様々な手法があり、分野ごとの特徴や既存の制度なども踏まえて効果的に講じていくことが重要だというふうに考えております。

 御指摘のあった物資のうち、例えば電気自動車の代表的な部素材でございます蓄電池につきましては、この税制によりまして電気自動車製造の国内投資が進むことでプラスの効果があることに加えまして、主として初期投資の大きさが課題であるということを踏まえまして、令和六年度予算などにおいて、初期投資支援の補助金を措置しているところでございます。

 また、本税制の対象となる半導体製造にも必要な部素材等の国内生産能力の維持強化のための設備投資も支援しているところでございます。

 そういうことにしているものですから、今回のこの投資促進税制、すなわち国内生産促進税制の対象にはなっていないということでございます。

鈴木(義)委員 もう三十年ぐらい前なんですけれども、今はJFEといって、川崎にある高炉を見学に行く機会があったんですけれども、そこで説明を受けたときに、鉄を作るときに、普通の乗用車で、一トン当たり十万円で鉄を作るんだそうです。それを自動車メーカーに譲渡して、そこでプレスしたり溶接したりして、側だけの話ですが百万円になる。そこにエンジンをつけて、内装をやったり塗装したりして、二百万になるか三百万になるんだと思うんですね。

 そうすると、電気自動車であっても、エンジンとミッションだとか、いろいろな機械的なものがなくなっただけで、モーターと、一番のキーになるのはやはり蓄電池なんだと思うんです。これが高いか安いかで値段が格段に変わってきちゃうと思うんですね。あとは、だって、タイヤが四つついていて、ハンドルがついていて、中の内装はそんなに変わらないという話になれば、蓄電池のウェートが高いから車格が上がっているだけなのか、それとも、まあいいや、もうけちゃえばといって高くしているのか、それは私たち一般の消費者は分からないんですよね。

 だから、全体で見ちゃって、そっちを促進させましょうといいながら、水素法の法律が先々週にも出てくるし、CCSも出てくるし、これから水素をどんどん活用していきましょうと片やいいながら、この産業競争力強化法の中に水素は位置づけがされていないんだな。こっちはどんどん推進しますよといいながら、こっちは、じゃ、この経産委員会でも質問しましたけれども、川上から攻めていくのか、川下から攻めていくのか。ヨーロッパは川上から、一番CO2を出しているところを対応していって、最後にそうじゃないところをサポートしていく。日本は、こっちもやりながら、こっちもやりながらと。それでできるのかなと思うんですね。

 例えば、またのところで、エネルギー利用環境負荷低減事業適応に資する商品として政令で定めるというふうにうたっているんです。では、この政令で定める商品というのは何なのかというのも、短めにちょっとお答えいただきたいんですけれども。

    〔委員長退席、小林(鷹)委員長代理着席〕

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、その他政令で定める商品につきましては、現時点で具体的に想定しているわけではございませんが、今後の技術や世界の動向なども踏まえまして、税制のほか補助金や規制、制度なども含め、効果的な投資促進策を不断に検討する中で検討していくということかと思っております。

鈴木(義)委員 まあ、この法案も三年もしないうちに改正になったということは、あと二年か三年したらまた改正案を出してくるのかなというふうに思うんです。

 今日も議論になって、いい方のヨシヒロさんが質問した中で、私はもうちょっと突っ込んでお聞きしたいんですけれども、生産、販売量に応じた税額控除措置を講ずると言っているんですね。

 例えば半導体一つ取っても、何種類もの工程があって、マイコンの二十八ナノメーター相当で一万六千円、一枚当たり控除すると書いてあるんです。これも二十工程なのか三十工程あるのか、もっとあるのか、私は半導体は専門じゃないのでよく分からないんですけれども、例えば、EV車で四十万円の税額控除をしますよといって、一万台売れました。単純に計算すると四百億。十万台売れると四千億、税額控除しますよと。それはラッキーですよ。じゃ、EV、どんどん売るよと。マイコンが一万六千円を、ちょっと単純に計算しただけです、十万枚で百六十億なんです。百万枚もし売れたら一千六百億なんです。

 大臣も答弁いただいたんですけれども、サプライチェーン全体で底上げをしていくんですよというふうに御答弁を過去にもいただいたんですけれども、どうやって、下請とか、一次、二次、三次、四次、五次、六次、このメリットを分け与えるんですか。じゃなかったら、サプライチェーン全体が底上げにならないじゃないですか。だって、ここのメーカーだけがどんどん利益を出して、こっちに全然下りてこなければ、ここはただやっているだけの話で、何ら今と変わらない。その分配の仕方をきちっと定義化していかないと。

 例えば、百万個売れました。ここのA社には十万個部品を調達しました。そうしたら、単純に言えば、例えば一万六千円の十分の一、千六百円でいいから税額控除を認めてあげるとか、その下、じゃ、その十万枚のうち五万枚は自分のところで提供しましたといったら、その二分の一、八百円は税額控除するとか、分かりやすくしてやらないと、この最初に四千億とか一千六百億もうけた利益が全体に行き渡らないだろうということなんです。

 どうやってそれを行き渡らせようとするのか、教えてもらいたいと思います。

    〔小林(鷹)委員長代理退席、委員長着席〕

畠山政府参考人 この税制は、欧米を始め、各国が戦略分野における国内投資促進策を次々と打ち出している中で、我が国において、広範なサプライチェーン上にある電気自動車、グリーンスチール、半導体などの戦略分野の国内投資を強力に推進するものでございます。

 この御指摘の、認定事業者に対する税額控除額をサプライチェーン上の部素材メーカーに何か一定のルールで分配をするということにつきましては、対象の戦略分野の国内投資を検討する、この国内企業に投資を決断していただかなければいけないんですけれども、その企業にとりましては本税制で受けられる税額控除額が減少するということで、国内投資が行われないおそれもございます。そうなれば、サプライチェーンを構成する地域の中小企業などにメリットが生じないこととなってしまいますので、セットメーカーにきちっと投資をする決断をしていただくということが極めて大事だというふうに考えております。

 この税制により対象となる戦略分野の国内投資を実現することで、その効果を地域中堅・中小企業を含めた部素材等の発注や供給の確保、拡大、さらには関連分野の投資、あるいは雇用、所得への好影響など、幅広い経済波及効果につなげていきたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 前の委員会でもトリクルダウンの話をさせてもらったんですけれども、一番上のグラスが一番でかかったんです。そこをまた今回の税制優遇でまた大きくしていく。二番目、三番目のグラスは足がどんどんどんどん細くなっちゃって、今でも倒れちゃうかもしれない。上がいなくなっちゃったら困るだろうという今の言い方なんですけれども、いや、そうじゃない前に、下が倒れちゃったら、そもそも調達できないだろうと。

 そこのところをサポートしてあげなければ、大手企業は賃金が二万円も三万円も上がったと新聞で報道されますよ。うちの会社だって、どうしようかといって、何とか、辞められちゃ困るからといって少し上げさせてもらいますけれども、大手並みに上げられないよ、原資がないから、先の見通しも立たないから。それが、中小企業、七割あるんでしょう、働いている人が。数でいったら九八、九%ぐらいが中小零細でしょう、そこがへたっちゃったら、大手も支え切れないでしょうと。だから、そんなきれいごとを言うんじゃなくて、分配の仕組みをきちっと考えてほしいということなんですよ。

 次に、大臣は、私の質問への答弁で、幅広く経済波及効果が生じるものというふうに答えられているんですけれども、結局のところ、エンドユーザーに近いところで商売している人が税制優遇を受けられるんですけれども、下請いじめになっちゃって、今の答弁を聞いていると、下には全然行かないよ、上がいなくならなけりゃ、あなたたちラッキーでしょうと。いや、これは、一次、二次、三次、四次、五次の下請の人たちは全然何の恩恵もないということにつながっちゃうんじゃないかと思うんですけれども、そこら辺の方策をもう一度確認したいんですけれども。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 本税制の対象分野は広範なサプライチェーン上にある分野でありまして、これらの分野における国内投資を実現し、生産を拡大することで、地域中小・中堅企業を含め、部素材等の発注や供給の確保、拡大など幅広く経済波及効果が生じると考えてございます。

 その上で、中小企業における取引適正化あるいは価格転嫁対策を進めることは大変重要であるというふうに認識しておりまして、投資をする事業適応計画の認定を受ける企業も含めて、年二回の価格交渉促進月間の後に実施しているフォローアップ調査に基づきまして、企業リストの公表、あるいは転嫁対策の取組状況が芳しくない事業者に対しては指導助言を行うなど、中小企業の価格転嫁の推進に向けて経済産業省としてしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 是非、一次下請だけじゃなくて、どこまでか分かりませんけれども、そこの一番の川下に、川下というのか、四次、五次、六次でやっているところまできちっと調査してもらいたいと思うんです。

 では次に、製造業の中小企業の規定は、資本金の額が三億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人として位置づけられているんですが、中小企業として様々な優遇を受けるために、コロナのときに致し方ないかなと思ったんですが、元々は資本金の額が五十億もあった会社が一億に減資をして中小企業の適用を受ける、若しくは、従業員の数が何百人何千人もいるんですけれども、中小企業の適用を受けるために資本金の額を上げないという話も聞きます。

 例えば資本金は一億円しかなくて二千人を超えるような企業が仮にあったとき、中堅企業の位置づけにはならないんですね、資本金の額が三億を超えないと。でも、一億の資本金しかない会社が二千人も三千人も四千人も雇用しているといったときに、資本の部のところにある利益剰余金が積み上がっていなければ無理ですよ。一億円の資本金しかなくて、一億円の利益剰余金しかない会社が二千人も三千人も雇用できるかといったら、私は見たことがないですね。何を申し上げたいかといったときに、結局、オアなんです、資本金で該当するか従業員の数で。

 今回の中堅企業の位置づけは、いただいた資料を見ると、この定義から上がったここのところを対象にするのが中堅企業。それは二千人で切ったんですけれども、二千三百人でもいる企業は、資本金が三億以下だったら中小企業の位置づけで、それは除くとなっているんです。では、そこは助けないということなのかということなんです。別の法律でサポートしますというふうに考えるのか。

 言うならば、もう資本金の額ばかりじゃなくて、やはり資本の部で見ていった方がいいんじゃないかという考え方です、本来の企業の規模をですね。資本金の額は一千万しかないけれども、内部で持っている利益剰余金の額が十億も二十億もあるというのが中小企業なのかということです。

 今回、中堅企業の位置づけをしているんですけれども、その辺の整理がどうお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、企業の資本、また従業員数、それらについては様々な実態があると存じます。

 その上で、中小企業の定義につきましては、中小企業基本法におきましては、資本金額と従業員数を用いて中小企業のおおむねの範囲を示しているところであります。これは、外部からの把握が容易で、安定的に対象を画することができるため、中小企業の定義として資本金額、従業員数を用いているものでございます。

 ただし、中小企業の実態は業種や組織形態などによって様々でありまして、中小企業施策の対象としてどういった企業を捉えるかについては、法律、予算、税など個別の施策において、それぞれの目的に応じて個別に検討し、定めているところでございます。

 企業の成長発展を促す施策として、中小企業等経営強化法につきましては、令和三年の改正におきまして、資本金基準によらず、中小企業の定義よりも従業員基準を引き上げた新たな支援対象類型を創設した、このような例もございます。

 今般の産業競争力強化法等の一部改正法案において新たに中堅企業支援の枠組みを創設いたしますけれども、これは、成長意欲のある我が国企業が、中小企業から中堅企業、そしてその先へとシームレスに成長を目指せる環境の整備に資するものでございまして、それ以外の中小企業の定義に該当するものについては、様々の施策を講じて支援を申し上げていく所存でございます。

鈴木(義)委員 私のところも小さい会社をやっていますけれども、成長しないでいいやと思っている経営者はいないと思いますよ。みんな、いつかはでかくなりたいと思っている。なかなかそう思ったってできないから悩んでいるんですよ。いや、成長できそうなところだけは手当てするけれども、そうじゃないところは要らないよと。それが、だから、今回の法案の一番の肝になるのか肝にならないのかは分かりませんけれども。

 では、例えば、ホールディングスになっていて、大手さんでも中小でもやっているんですけれども、事業部会社が幾つもありますと。ここが、まあ四社でも五社でもいいですわ、それをトータルすると二千人を超える規模になるんだけれども、一つの会社で見ていけば、四百人でいいですわ、五社あればトータルで二千人。こういう会社はサポートするのかしないのかといったら、今の御答弁でいくとサポートするんでしょうね。でも、全体で見たら二千人を超えているんですよ、資本金は一億ずつ、ホールディングスになっている。そういった場合はサポートの対象になるのかならないのかといったら、どうなんでしょう。

菊川政府参考人 先ほど中小企業庁の方から、中小企業の定義等々について御答弁ございました。

 中小企業者の定義は、グループ会社を含めない、企業単体の従業員数などを用いていることを踏まえまして、今回の支援の対象となります特別事業再編の主体となる中堅企業者、中小企業者の定義は、単体の従業者の数を基準としているわけでございます。

 他方、今委員の方から御指摘があったような場合についても対応が必要と認識をしておりまして、例えば、従業員数が二千人を超えるような大企業の子会社、こういったものを大企業としてみなして除くことでありますとか、また既に大規模なグループが形成されている企業を対象から除くことなどにつきまして、この法案について成立しました後、整理をしていく下位法令の方において対応すべく検討しているところでございます。

鈴木(義)委員 私がもし経営者だったら、この適用を受けたいなと思ったら、二千人いる一つの会社だったら五つに割りますよ、三つでもいいや。二千人以下だったら全部いいんだから。それも助けなくちゃいけないのかという話になっていくわけです、成長の見込みがあるからと。誰だって、さっき言ったみたいに、成長したくない人はいないよ。利益が出るようにやりたいと思っているし、その分、従業員にも給料を出さなくちゃいけないし、自分たちも少しでも多くもらいたいと思って、みんな商売をやっていると思うんですよね。

 テクニカルなところで受ける受けられないというのは、やはり余りやるべきじゃないと思うんです。数字を出せば出すほど、それをクリアしようと。だって適法でしょう、こういう話になると思うんです。是非、よく検討して施行をしていただければと思います。

 終わります。

岡本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。笠井亮さん。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、産業競争力強化法等改正案に反対の討論を行います。

 産競法は、その前身である産活法以来、大企業のリストラ、人減らし支援で利潤第一主義を推し進め、国民生活と日本経済に大打撃を与えました。

 本法案は、行き過ぎた新自由主義的政策による失われた三十年、コストカット経済の弊害を認めながら、その根幹にある大企業奉仕の政策を転換しないどころか、一握りの特定大企業への支援を一層強化するものです。

 反対理由の第一は、戦略的国内投資と称して、並外れた大企業支援を行うものとなっているからです。

 戦略分野国内生産促進税制は、トヨタ、日本製鉄、旭化成、ENEOS、三菱商事やルネサスエレクトロニクスなど、一握りの特定大企業への巨額の減税策です。経団連の要求に応え、生産、販売量に比例して十年超にも及ぶ長期に減税する異例のもので、財務省の試算で約一・九兆円にも及びます。

 第二に、僅か九百者程度の特定中堅企業に支援を集中することで、圧倒的多数の中小企業は支援の外に置かれ、中小・小規模事業者の淘汰を促進するものだからです。

 一九九九年の中小企業基本法改定による中堅・ベンチャー企業重視への転換により、中小・小規模事業者約百五十万者が淘汰されました。本法案は、一層切捨てを推し進め、更に深刻な貧困と格差をもたらすものです。

 第三に、スタートアップ支援、企業横断的措置と称して、日米共同で原子力産業の維持、延命や軍需産業への支援を強化しようとしていることです。

 原子力産業などがこぞって出資する企業を核融合スタートアップとして支援することは、国民の目を欺くものです。また、経済安全保障の名の下に、民間企業を軍需産業に動員し、本法案でINPITやNEDOが助言できるようにすることは、セキュリティークリアランスで労働者の思想、良心の自由、プライバシー権のじゅうりんにつながりかねません。

 今やるべきは、一握りの大企業支援ではなく、全ての中小・小規模事業者を底支えし、労働者、国民の所得と消費を拡大する施策への転換です。戦争に依存する経済ではなく、平和憲法の立場で民需での経済発展を追求すべきです。

 以上、反対討論とします。

岡本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岡本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、山下貴司さん外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会・教育無償化を実現する会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。荒井優さん。

荒井委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 一 戦略分野国内生産促進税制については、革新的な技術開発や国際的な市場獲得競争の状況を適切に勘案し、税額控除の期間や産業競争力基盤強化商品の品目等について不断の見直しを行うとともに、この政策目的及び効果を中小企業を含めたサプライチェーン全体にまで広く波及させるよう、必要な措置を講ずること。また、当該税制のほかにも、脱炭素製品について、市場価値の向上、国内における生産コストの低減その他競争力確保に必要な措置を講ずること。

 二 イノベーション拠点税制については、国際ルールとの整合性や制度の運用状況等を踏まえつつ、真にイノベーションに向けた投資を促進するものとなるよう、対象となる所得の範囲、算出方法等について、不断の見直しを行うこと。

 三 中堅企業支援及び事業再編支援を実施するに当たっては、支援対象となる中堅企業者の経営力等を適切に評価するとともに、我が国全体の経済成長及び地域に根差した中小企業・小規模事業者の重要性の観点から、事業者が有する優れた技術・技能を始めとする経営資源や従業員の雇用が適切に確保されるよう、必要な予算措置も含め、引き続き十分な支援措置を講ずること。また、これらの支援の対象とならない中小企業者についても、地域における雇用の担い手として大きな役割を果たしていることを踏まえ、今後の中小企業政策の実施に当たっては、切り捨てられることのないよう留意すること。

 四 スタートアップ支援については、株式会社産業革新投資機構の支援実績に対する継続的な検証及び情報開示に努めるとともに、同機構を始めとするスタートアップ支援機関が持つそれぞれの機能を最大限に発揮しつつ、民間のベンチャーキャピタルや事業会社等との連携を強化し、適切な支援環境の整備を進めること。

 五 企業と大学等の共同研究開発に関する、標準化と知的財産を活用した市場創出の計画認定制度を実施するに当たっては、独立行政法人工業所有権情報・研修館及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が適切な助言等を行うことができるよう、体制強化に取り組むこと。

 六 産業競争力強化法や税制等に基づく事業者に対する各種支援措置については、煩雑な手続を要するものもあることから、利用する事業者の利便性等に十分配慮して手続の簡素化に努めるとともに、各々の事業者にとって真に実効性のある制度となるよう、不断の見直しを行うこと。

 七 事業適応計画、特別事業再編計画等の認定を行うに当たっては、下請事業者の価格転嫁に配慮できる基準を設け、サプライチェーン全体として競争力強化が図られるようにすること。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

岡本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岡本委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、齋藤経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。齋藤経済産業大臣。

齋藤(健)国務大臣 ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

岡本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

岡本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十分散会


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