衆議院

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第17号 令和6年5月24日(金曜日)

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令和六年五月二十四日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 岡本 三成君

   理事 小林 鷹之君 理事 鈴木 隼人君

   理事 松本 洋平君 理事 山下 貴司君

   理事 荒井  優君 理事 山岡 達丸君

   理事 守島  正君

      井原  巧君    石井  拓君

      大岡 敏孝君    加藤 竜祥君

      神田 憲次君    国光あやの君

      杉田 水脈君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    冨樫 博之君

      中川 貴元君    福田 達夫君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    吉田 真次君

      和田 義明君    若林 健太君

      大島  敦君    落合 貴之君

      小山 展弘君    田嶋  要君

      山崎  誠君    市村浩一郎君

      小野 泰輔君    山本 剛正君

      吉田 宣弘君    笠井  亮君

      鈴木 義弘君

    …………………………………

   経済産業大臣       齋藤  健君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   文部科学副大臣      あべ 俊子君

   農林水産副大臣      武村 展英君

   内閣府大臣政務官     平沼正二郎君

   経済産業大臣政務官    石井  拓君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 古谷 一之君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            川上 大輔君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            藤吉 尚之君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田  薫君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           淵上  孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  孝之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           伊藤 学司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           奥野  真君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           清浦  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           増田 嗣郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           坂田  進君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         南   亮君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括・保安審議官)    辻本 圭助君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    茂木  正君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進政策統括調整官) 川合  現君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           菊川 人吾君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井上誠一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西村 秀隆君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     猪狩 克朗君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         山影 雅良君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         山田  仁君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    飯田 健太君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           舟本  浩君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           北澤  歩君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  若林 健太君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     若林 健太君

    ―――――――――――――

五月二十三日

 消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

岡本委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官川上大輔さん外二十七名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司さん。

鈴木(淳)委員 おはようございます。自由民主党の鈴木淳司です。

 久々にこの場所で質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございました。

 それでは、早速に質問に入りたいと思いますが、このほど総合エネルギー調査会基本政策分科会が開かれまして、いよいよエネ基の議論がスタートしたということであります。

 そこで、今まさに第七次エネルギー基本計画の策定に臨むに当たり、果たして政府はいかなる認識を持って、エネルギーに関して我が国が置かれた環境変化をいかに認識をして、いかなる覚悟でそれに取り組もうとしているかをお尋ねしたいと思っております。

 前回のエネ基は、総裁選挙を控えた時期だと思っておりますけれども、当時は再エネ主張論者と原子力技術の向上を目指す論者の激論が印象的でありました。原子力二〇から二二%、再エネは三六から三八%超という不思議な表現でもありましたけれども、そんなことを覚えております。

 さあ、その前回のエネ基から、世界は激動期に入りました。

 ロシアのウクライナ侵攻が始まったのは二〇二二年二月二十四日でありますが、ロシアの天然ガスパイプラインのストップによって、世界的なエネルギー危機が始まりました。ロシアの天然ガスを主要なものとしていたヨーロッパ諸国が一気にLNGの調達に動いた、こういうこともありまして、まさに世界的なエネルギー危機でもありました。三月二十二日でありましたけれども、需給逼迫で、あわや東京、関東大停電、こういう危機の状況もありました。

 カーボンニュートラルの世界的な要請も高まっておりますし、そしてまた、円安の進行によって、燃料調達価格の高騰がありました。それらに伴う原発の再評価の動きや西側諸国の連携など、我が国のエネルギーを取り巻く状況は、大きく変化しております。

 こうした中、前回とは、エネルギーに関わる大きな環境変化の中で、エネ基は、もはやエネルギー分野にとどまらず、国家の産業形態の在り方そのもの、あるいは国家戦略そのものに関わる重要な方針決定となりました。

 そこで、果たして、政府は今、いかなる認識と決意を持って今回のエネ基の改定に臨もうとしているのかについてを経産大臣にお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 二〇二一年十月に第六次エネルギー基本計画を閣議決定して以降、我が国を取り巻くエネルギー情勢は、大きく変化をしています。

 具体的には、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化などの地政学リスクの上昇を受けたエネルギー安全保障への要請の高まり、また、カーボンニュートラルに向けた野心的な目標を維持しつつも、各国において多様かつ現実的なアプローチが拡大をしてきていること、エネルギー安定供給や脱炭素化に向けたエネルギー構造転換を自国の経済成長につなげるための産業政策の強化が行われてきていること、生成AIなどのDXの進展に伴う電力需要増加の可能性などの変化があると考えています。

 現時点では、二〇五〇年のカーボンニュートラル実現に向けた道筋が具体的に描けておらず、今後、電力需要が増大する可能性があるが、その規模やタイミングを見通すことも難しいです。さらには、様々な技術開発の進展度合いを見通すことも容易ではありません。

 こうした中、脱炭素電源の安定供給を確保できるかが国際競争力に直結しかねない状況にあるため、過去にはない難しさがありまして、今、日本のエネルギー政策は、戦後最大の難所にあると考えています。

 このような強い危機感を持って、次期エネルギー基本計画の改定に向けて取り組んでいきたいと思います。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。全く同じ認識を持っております。

 エネ基に関しては、もう一点お尋ねしたいと思っております。

 本格的なデジタル社会の到来や、AI、データセンターの立地、大規模次世代半導体工場の進出など、もはや、従来とは異なる時間軸でのエネルギー需要の急拡大をしようとしておりますけれども、まさに、電力供給が産業政策の在り方と世界の優劣すら決めかねない、しかもそれは脱炭素電源であるという要請が必須であります。

 果たして、政府は現在、この状況にどのように備えようとしているのかをお尋ねいたします。

山田政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、DXの進展に伴いまして、今後、電力需要が増加するとの指摘があるということで認識をしております。

 今後の電力需要の見通しや、それに対応した脱炭素電源の確保、これは次期エネルギー基本計画の重要な論点の一つでございます。

 今後、DXの進展による電力需要増加の可能性や、光電融合のような省エネ技術の開発が進む可能性を踏まえつつ、エネルギー供給を確保するための電源投資の在り方も含め、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

鈴木(淳)委員 それでは次に、この機会にふだん思うことを幾つか尋ねてみたいと思います。

 電力自由化、電力システム改革の議論から十一年余が経過いたしました。これまで、もちろん、プラス面、マイナス面、様々な側面があったと思いますけれども、その中で、特に電力に最も必要な安定供給確保への投資そのものが危うくなっているのではないか、こういう嫌いはないか、そう思うんですね。

 安定的な電源投資が危うくなっているのではないかとの危惧は、従来の火力等にとどまりません。それは、脱炭素のベースロード電源たる原子力も全く同じでありまして、原子力については、例えばイギリスのRABモデルのような試みがされておると聞いておりますけれども、我が国の取組状況はいかがでございましょうか。電力システム改革のいわゆる検証と今後の取組についてお尋ねをいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの電力システム改革は、東日本大震災の教訓を踏まえ、安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大という三つの目的を実現するため、取り組んできたところであります。

 その結果として、災害や事故など不測の事態が発生した場合にも、全国大での迅速かつ円滑な電力の融通や復旧対応が行われるよう、広域的な電力供給システムが構築されたこと、多くの事業者が小売電気事業に参入し、再エネに特化したサービスメニューなど需要家の選択肢が拡大したこと、小売全面自由化以降、家庭向け自由料金が規制料金よりも安価な価格水準で推移してきたという実績があるなど、一定の成果が出ているというふうには認識しております。

 一方で、採算性の悪化により火力発電所の休廃止が進むなど、足下では安定供給面での課題も生じていると認識しております。このため、必要な供給力を確保するための制度である容量市場を令和二年度に導入したところでありますけれども、加えて、脱炭素電源への新規投資を広く対象に、投資回収の予見性を確保するための長期脱炭素電源オークション、これを昨年度から導入しております。

 また、御指摘いただきましたとおり、改正電気事業法の規定に基づいて、電力システム改革の検証を進めているところでありまして、供給力確保についても検証を行った上で、二〇二五年三月までに取りまとめることとしております。

 こうした取組、検討を通じて、電力の安定供給に向けてしっかりと取り組んでまいります。

鈴木(淳)委員 長期にわたるいわゆる巨額の電源投資が必要でありますが、この安定供給のための電源投資は、やはり、何といっても予見可能性そのものが勝負でありまして、これを高める努力が必要だと思いますね。これは、もちろん従来の火力にとどまりません、原子力もそうであります。その双方についての努力をお聞かせください。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 投資回収の予見性の確保ということが重要だということは、全く御指摘のとおりでありまして、特に長期脱炭素電源オークションにおきまして、原子力あるいは脱炭素に向けた火力も含めて、しっかりと安定供給の確保に向けた取組、検討を進めてまいりたいと思います。

鈴木(淳)委員 原子力は御答弁ありませんけれども、続けます。

 原子力発電について引き続きお尋ねしますが、私は、この二年間、自民党原子力規制に関する特別委員会で、原子力の規制の最適化の議論を取り組んでまいりました。安全性をないがしろにするつもりは全くありませんけれども、それでも規制審査の効率化というのは絶対に必要でありまして、この問題でありました。

 安全性の確認された原発再稼働は政府の方針でありますけれども、その確認は原子力規制委員会並びに規制庁が担当します。もちろん真摯に取り組んでいただいておることは知っておりますけれども、まだまだ規制審査に膨大な時間がかかりまして、審査の効率化、最適化、更なる最適化が必要だと思います。規制委、規制庁の皆さんの真摯な努力は認めますけれども、それでも、原発の本格的再稼働、安定的な稼働にはまだまだ時間がかかるのが事実でしょう。それまで果たしてサプライチェーン、産業はもつのか。

 そこで、政府は、原発の稼働が軌道に乗るまでの間、我が国の原子力産業全体やサプライチェーンなどをどのように支えて維持を図っていくかについて、方針をお尋ねしたいと思います。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、原子力技術、人材、サプライチェーンの維持強化、これは喫緊の課題でございます。

 昨年、関連する企業、団体から成る原子力サプライチェーンプラットフォームを立ち上げまして、現在、研究開発や技能実習、技術、技能の承継などをサポートする支援メニューを中小・中堅企業を含む全国約四百社の原子力関連企業に展開しております。

 加えて、昨年度の原子力産業基盤支援に対する予算額、これは十八億円だったところ、今年度予算では五十八億円に増額して計上しております。

 具体的な支援策としては、例えば、機器製造から撤退する企業の技能承継、部品供給体制の構築のために必要な設備投資、海外の建設プロジェクトへの参画に向けた設備改修や海外規格の取得などの支援に取り組んでいるところでございます。サプライチェーンの実態に即した支援の強化に、引き続きしっかりと取り組んでまいります。

鈴木(淳)委員 原子力につきましては、西側諸国が原子力への投資を怠っている間に、今や中国やロシアに、ともすれば、技術的にも、キャッチアップどころか先行されている、物量もそうでありますが、そういう状況であろうかと思います。

 最先端の原子力技術で中国やロシアに負けないためにも今こそ西側の力の結集が必須でありますけれども、この問題について、政府は今いかなる連携と協力に取り組もうとしているのかについてお尋ねをいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、我が国が原子力政策を進めるに当たっては、米国、イギリス、フランスなどの同志国との連携強化、これが大変重要と考えております。

 昨年七月に決定されましたGX推進戦略では、同志国との国際連携を通じた原子力サプライチェーンの強化や研究開発の推進などに取り組む旨を明記してございます。

 また、先月開催されましたG7気候・エネルギー・環境大臣会合におきましても、強靱なサプライチェーン構築や革新炉開発の推進等に向けた協力へのコミットメントを確認したところであります。

 こうした背景を踏まえまして、経済産業省としては、小型モジュール炉、SMRを含む革新炉開発における国際協力の支援、こうした革新炉の導入支援にもつながる欧州、アジア等の第三国へのインフラ整備、人材育成の支援、原子力サプライチェーンプラットフォームを通じた支援の一環として、米国やカナダ等への官民ミッションの派遣を含む日本企業の海外展開支援などの取組を進めておるところでございます。

鈴木(淳)委員 今、世界はDX、デジタルとGX、グリーン、脱炭素でありますが、この二つの大変革の中にあって、恐らく後世から見てもまさに歴史的な社会構造の大変革の中にあると思われます。まさにその渦中にある我が国の経世済民をリードする立場の齋藤経産大臣に対する期待は大きいと思います。

 まさにその時代の場にある経産大臣として、最後に、改めてこの歴史的変革をリードしていくための決意のほどをお聞かせいただければありがたいです。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のとおり、今まさに社会全体での大変革が起こってきていると思っています。GX、DXは決して一過性の変化ではなくて、構造的な変化であります。これに加えて、国際経済秩序の変化なども同時に起こってきています。世界的に、これまでとは違ったやり方が求められる、そういう時代の転換点を迎えていると考えています。

 重要なことは、この社会の大変革を前にして立ちすくむのではなくて、こうした世界的な転換をチャンスと捉え、それを乗り越える挑戦をしていけば成長していくことができる、こう考えています。

 GXにつきましては、産業革命以来の化石燃料中心の産業構造、社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するものでありまして、化石燃料への過度な依存から脱却し、エネルギー安定供給を確保しながら経済成長と脱炭素を両立する重要な取組であります。

 そして、DX。生成AIに代表される技術革新は全く新しい付加価値を生む可能性を秘めており、こちらもサプライチェーン全体を劇的に変えるものであります。また、DXによって電力需要は増加する一方、生産工程の変革によって省資源、省力化が進む可能性もありまして、GXとDXは相互に連関するものでもあります。

 こうした変化の可能性こそが将来への期待でありまして、新たな需要にもつながります。このため、GXやDXなど社会課題解決分野に着目をして、これまでのように民間に任せるだけでなく、政府も一歩前に出て、積極的な産業政策を展開することが必要と考えています。また、既に半導体分野などでは米国と連携するなど、同志国との連携も重要と考えています。

 こうした考え方でここ数年取り組んできた産業政策の効果もありまして、国内投資や賃上げなど、足下の日本経済は潮目の変化を迎えています。しかし、三十年間続いたコストカット型の縮み思考は、二年間で簡単に変えられるものではありません。私は、ここからが正念場だと思っています。積極的な産業政策を更に展開をして継続をしていきたいと考えています。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 終わります。

岡本委員長 次に、大島敦さん。

大島委員 どうも、おはようございます。大島です。

 前回の質問は、議論させていただきまして、臨場感があって面白かったです。引き続き、航空機産業について議論したいと思います。

 復習として、航空機工業振興法ですか、この法律は、航空機等の国際共同開発を促進するための措置を講ずることによりという、この航空機工業振興法、これはYS11を造るときの根拠になっている法律と理解しているんですけれども、質問通告はしていないんですけれども、そういう理解でよろしいかどうか、御答弁をください。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございます。

大島委員 一九八六年に改正が行われて、YS11の生産を終了したので、そのときにこの国際共同開発を推進するためという条項が入ったと思うんですけれども、その点についても御答弁いただければと思います。

田中(一)政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

大島委員 当時の議事録を読むと、私と同じようなことを言っている人が当時もおりまして、ブラジルとかインドネシアでさえ国産機を造っておる、なかなか古い方の表現ですね、日本よりはずっと、まだ開発途上国と言われている国々がやっておるのに、工業先進国と威張っておる日本がもう国産化を放棄して共同開発で大きいところへぶら下がっていこう、いつまでも下請をやろうということは何としても私はうなずけぬわけです、こういう質問をしていらっしゃる先輩議員がおりまして、なかなか当時の議事録は見識のある議論を積み重ねていたなと思っていまして。

 この戦略、この間、戦略を作られたので、せっかく作られたので、まずは国際共同開発を促進するということ、前回も指摘したとおり、このワードがあるから政府の三菱に対する資金援助は五百億円で終わってしまったのかなと思うので、今後、航空機開発をするに当たっては、国際共同開発にこだわることなく、国際共同開発も視野に入れながら国内単独でもやるという視点も、法律上変えた方が自由でいいのかなと思うんですけれども、何か、政府参考人の方、答えられますか。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 航空機の開発ですけれども、巨額かつ回収期間の長い投資を要します。したがって、大きなリスクをその観点で伴います。また、その完成機メーカー、これは今、世界ではボーイング、エアバスといったごく少数の外国企業に限られております。

 こうした背景から、委員御指摘のとおり、航空機工業振興法、これは、我が国の企業の国際共同開発への参画を促進するための措置を講ずることによる航空機工業の振興や産業技術の向上、国際交流の進展といったことを目的として定めております。

 委員御指摘の、MRJの御指摘がありましたけれども、御存じのとおり、三菱スペースジェット、これは、三菱航空機が総額約五百億円の政府予算を活用しまして、先進的な空力設計技術や操縦システムなどを開発しております。一定のこういった、法律の下ではありませんけれども、別途必要な支援をこのように行ってきたところでございます。

大島委員 これ以上は更問いはしない予定ですけれども、大臣も、見直した方がいいと思うので、よろしく御検討ください。

 続きまして、今回の戦略に基づき、具体的にはどのような取組を行うのか、予算の措置をするのかについて、御答弁をお願いします。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省としましては、委員御指摘の新たな航空機産業戦略、先月作りましたけれども、これを踏まえまして、完成機事業を見据えたインテグレーション能力、これは、開発のみならず、安全認証など総合的な事業実施能力のことを意味しておりますけれども、これを向上するためのプロジェクト、これを官民の連携を通じて具体化を進めていきたいと考えております。

 その際、カーボンニュートラル、これに対応するための次世代航空機や次期単通路機開発への参入を見据えて、技術開発のリスクや長期間にわたる費用の回収、認証の取得、そういった航空機産業が本質的に有する特徴も踏まえまして、航空機産業を支えるための必要な支援措置を政府としてしっかり検討して講じていきたいと考えております。

大島委員 国土交通省にお伺いをいたします。

 前回の議事録を読んでいて、MRJで新しい知見が得られたのかについてお伺いをしたところ、電気配線ですか、何か新しい取組をしてという、そのことをもう一回答えていただけますか。

北澤政府参考人 お答え申し上げます。

 三菱スペースジェットの型式証明においては、例えば航空機の電気配線に関しまして、世界的にも新しく導入された基準の設定の背景や具体的な審査の手法等について、米国や欧州の航空当局と意見交換を行うことなどによりまして知見を深めることができたものと考えてございます。

大島委員 何か具体的にという事例を挙げていませんでしたか。今言われましたか。

北澤政府参考人 お答え申し上げます。

 電気配線に関する基準の設定の背景ですとか具体的な審査の方法、またそれの目的といったものにつきまして、米国や欧州の航空当局と意見交換を行って知見を深めることができたものと考えてございます。

大島委員 前回の御答弁の中で、三菱スペースジェットの型式証明においては、例えば航空機の電気配線に関して、世界的にも新しく導入された基準の設定の背景や具体的な審査の方法等について、米国や欧州の航空当局と意見交換を行うことなどにより知見を深めることができたと考えておりますという答弁をいただいておりまして、ここに私はすぐに反応してしまいまして、だからこそ、こういう知見を積み上げて、検査をされる各国の人たちがお互いに認め合うという領域を広げることが必要だと理解いたしました。

 だからこそ、国土交通省においても、今日は経済産業委員会ですから国土交通大臣がいないことが非常に残念でして、国土交通大臣とまたこういう議論をすることがありましたら、ここはしっかりと理解をしてもらおうかなと考えております。なかなか目立たない部隊なので、しっかりと役所の中で応援していかないと先細りが予想されるものですから、やはり、五年とか十年、結構長い期間がかかると思います。

 私も、前回申し上げてはいないと思うので述べますけれども、二十代後半に西ドイツにいたときに、技術屋さん、会社の技術系の方とISOの会議に出たことがあって、ISOの会議の、本当にワーキンググループの更に小さい会議なんですけれども、鋼管、鉄のパイプの小さな非破壊検査の形を決める国際会議で、日本の私の会社の技術屋さん以外は全てで同じソサエティー、各国ごとに。ですから、この間ギルドと言ったのは、こういうソサエティーに入らないと、なかなか、規格というのは、お互いに自分たちの意見を通せなかったり、あるいはいろいろな情報交換ができないので、ですから、型式証明というのはそういう感じかなと理解した。

 ですから、各国ごとにそういうソサエティーの中に入るということが必要だと思うので、大島としては、この地味な領域は、標準とか規格とかは応援をずっとしておりますので、そこに加えたいなと思うので、もう一回決意でも述べてください、政治家じゃないんですけれども。

北澤政府参考人 お答え申し上げます。

 三菱スペースジェットの型式証明においては、米国や欧州の航空当局とは、型式証明に係る審査に関する協議を頻繁に行うことで、認識や知見を共有するとともに、当局間で緊密なネットワークを確立することができ、加えて、相互に強力な信頼関係も構築することができたものと考えております。

 こうした知見やこうした欧米との緊密なネットワークなどについては、今後開発される航空機などの審査においても活用できるものと考えてございます。

大島委員 そうすると、やはり航空機開発というのが結構大切だ。具体的に、もう一回新しい航空機を造るのであれば、そこの設計段階から、型式証明されるヨーロッパ、アメリカ、そして我が国、検査部隊をしっかりつくって、同じ認識の中で設計段階から積み上げていくと設計変更等がないかなと思っております。

 MRJについても、納期が延期されることは私は全然気にしていなかった、やはり、最初に手がけることは、最初からうまくいくわけがないので。ただ、最後までやり遂げるというところが必要だったなと思っているものですから、是非、その点は、政治が一生懸命にバックアップしないと進まない点があるかなと思うものですから、注力をしていきたいなと思います。

 今、この間のGX、二十兆円、全部で百五十兆円とか、防衛予算で四十兆円を超えているとか、宇宙分野では、宇宙戦略基金、文科省が十年間で一兆円の予算を投じるとしておりまして、また英国とかイタリアとの戦闘機開発もあり、研究開発を担う人材が不足することが予想されると思うんですよ。

 これだけ巨額の資金を政府が産業界に投じていきますから、今までの産業界の中でも、多分、航空宇宙の分野というのは限られた要員の中でやっていると思うんです。私もある方とお話ししたときに、NASAがあって、スペースXですかがあって、何か技術系の方がこっちに移動しちゃったんじゃないかと言われる方もいらっしゃる。NASAにいた人が、そんなに開発できる人はおりませんので、民間の方に移動しちゃっていて、NASAの方が大分手薄になっていたりもするので、ここの人材の問題、やはり大学の工学部、大学院から民間に入ってというところなので、ここを今後どのように対応するか、お答えいただければと思います。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、航空機開発などを担う人材を育てていくことは、民間、防衛を問わず、航空機産業として極めて重要なことだと認識しております。

 一方で、人材育成には一定の時間を要することから、航空機産業戦略においては、様々なプロジェクトが委員御指摘のようにある中、限られた人的リソースの中で、当面の民需、防需において過度なプロジェクトの重複を避けながら、開発、認証、製造、アフターマーケットを含めた事業経験を積む機会を確保していくことの重要性を示しております。

 今後のプロジェクトの具体化については、人材確保やサプライチェーン維持強化の観点からも、防衛省とも連携の上、進めてまいりたいと考えております。

 また、航空機産業が、委員御指摘のとおり、学生などが集まる高い魅力を有する産業であり続けるためには、完成機事業を見据えた産業の更なる成長の目標を掲げて、それに向けた具体的な取組を進めていくことが必要と考えております。今回策定した戦略は、こうした観点からも重要な役割を担っていると考えております。

大島委員 政府がお金を投じることは私はいいことだなと思っていまして、何年か前に茨城県に核融合炉の施設、実験装置を視察したときに、研究者の方から伝えられたのは、次の、例えば実証炉とか実験炉とか実用炉とかは政府でしっかりと閣議決定してほしいと言われた、五千億とか一兆円ぐらいかかるんですけれども。そうすると、民間企業も技術系の方を雇われるし、大学、大学院生もそこに向かって勉強していくようになるので、そういうことが必要だというお話を伺ったことがある。

 それから私は考え方を変えて、政府がしっかりとピン留めすることが必要だというふうに数年前に立場を変えているものですから、本来であれば、民間企業でやっていただければいいんですけれども、民間企業もなかなか、リスクに対して大分逃げ腰になっているものですから、是非政府の中で、どうやって、一番いいのは閣議決定ですけれども、しっかりとここに注力してやっていくという分野を示すことが、研究開発の基盤を含めて、技術系の方、希望を持ってということにつながると思うので、よろしくお願いします。

 次に、前回は本田技研の話をしまして、本当に、「官僚たちの夏」、昭和三十八年、一九六三年の佐橋滋企業局長の話をしまして、当時は、特定産業振興法案、要は、自動車産業を幾つかのグループに分けようと。今の経産省も同じですけれども、手を替え品を替え、この法案を持ち出して、通そうとしたんですけれども、廃案になってしまったというのがあって、今、本田技研があるわけなんです。

 この法案を読んだときに、ホンダジェットは、日本で開発するのは、何かこういうことがあったから開発するのをやめてアメリカの方に行ってしまったのかなと思ったんですけれども、それは違うので安心してください。アメリカの方が開発しやすいということと、プライベートジェットの市場もたくさんあって、型式証明も取りやすいということがあって、向こうの方に、アメリカでの開発で。こういう、ホンダというと、多分、DNAが埋め込まれていると思うので。

 だって、本田宗一郎が航空機に対してやり始めたのはこの点のタイミングなんですよ、技術屋を採り始めているのは。やはり、ホンダの夢をかなえる。だから、本田宗一郎というよりも、私は藤沢武夫氏の方を、この二人がいてようやくホンダが成り立っているので、藤沢武夫氏、私と同じ高校を出ていて、この人は高卒なんです。高卒で優れた経営者です。やはりこういう方たちが担って、非常に柔軟に対応されてきたのかなと思っております。

 藤沢武夫が語っているんです。当時、藤沢武夫氏は、新しく販売する小型スポーツカーS五〇〇の価格当てクイズをやった、このクイズには五百七十三万通の応募はがきが返ってきた、S五〇〇を発売しようとしたとき、三十八年ももう暮れかかっていた。この藤沢武夫氏が言っているのは、特振法案が国会で成立したら、あたしは、このはがきを背景に、むしろ旗を揚げて通産省などに抗議に行こうと思っていたと言っていますので、ですから、やはり法律って結構大切だと思う。

 ですから、次に聞く航空機製造事業法は、これができたのが昭和二十七年だから、日本が独立を果たした直後ぐらいですか。多分日本の産業がまだ強くなかった時代の法律で、いまだに生きています、この法律は。この第一条に、「この法律は、航空機及び航空機用機器の製造及び修理の事業の事業活動を調整することによつて、」という、「調整」という重い文言が入っておりまして、ここの解釈について御答弁をお願いします。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の航空機製造事業法、この第一条に法目的がございまして、この法律の目的ですけれども、航空機の製造や修理を行う事業者に対する許可などを通じて、生産技術の向上を始めとした航空機産業の発展を図り、我が国全体の経済発展を実現することを目的としております。

 航空機産業は、高度な技術や設備が求められる産業でございます。かつ、その産業基盤の維持は、経済安全保障の観点のみならず、防衛産業の中核としての役割を有し、国の安全保障政策の一部を担う重要な産業でございます。そのため、適切な技術水準を確保し、国が防需、民需の動向を踏まえ、無計画な過剰投資や企業の乱立などを防止する観点から、許可事業としております。

 引き続き、今後の市場動向を踏まえながら、適切に執行してまいりたいと考えております。

大島委員 昭和二十七年で、これは多分改正は行われていないと思う。行われていないので、この二十七年のままずっと今まで来ているので、廃止するのか、新しい法律に変えた方がいいのではないのかなと思う。(発言する者あり)改正されていた。改正されていたんですけれども、多分、ここの条文は変わっていないかもしれないので。

 今のこれがあると、例えば空飛ぶ自動車、これも航空機ですから、こういう参入についても、なかなか、この法律を読みながら参入をされる方が出てくると思うので、もっと自由な環境を整えた方がいいと思うんですけれども、その点について、同法は既存の事業育成の性格が強く、航空機への新規参入の障害になっていないのかなと危惧するものですから、その点についての答弁をお願いします。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、航空機製造という、高度な技術水準と設備を必要とする事業でございます。そのため、品質の均一性や信頼性の確保、そういった観点を確保していく必要があります。

 委員御指摘のように、新規参入事業者に対するハードルになっていないのかという点でございますが、そういった法目的を維持しながらも、自由に研究開発を促して事業活動を促進していく観点から、様々な有識者の意見も踏まえ、二〇二三年に試験的に製造する場合に求めていた届出を廃止するなど、一層の合理化を図っているところでございます。

 今後とも、製造技術の発展状況などを見極めながら、必要な規制の在り方を検討していきたいと思っております。

大島委員 役所の方と、楽しく議論を若い方とさせていただいたときに、何か政策がちぐはぐかなと。貿易については、一九八九年以降、どんどんどんどん自由にすれば何かお互いの依存が高まって、経済が発展してよくなるんだと思っていたんですけれども、他国においては、安全保障の領域はしっかり守りながら、その点は譲らないところがあったのかなと思っていて、前回もお伝えしたかもしれないけれども、私の鉄鋼業の先輩で組合の幹部の方が、去年御一緒して懇親を深めたときに、ラスベガスの、米国の鉄鋼業の大会に出席した、そのときに米国の鉄鋼業の組合の幹部からこう言われたと言うんです、私たちは安全保障で守られているからと。

 やはり国の根幹のところはしっかり安全保障で守るという領域を持ちながら運営をしているというところがあるので、ですから、どこを守るのか、どこを自由にするのか。

 ですから、この法律の哲学としては、航空宇宙産業をもっと強化していくのであれば、規制は見直した方がいいと思う、今の時代。ですから、その点についても大臣に今後お願いしたいものですから、たまには答弁をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 委員に丁寧に御質問いただいて、いろいろな感想を持ったんですが、まず、政策の振り返りを的確に行っていくということの重要性、これも確認をさせていただきましたし、また、グローバル市場を狙う上で、政府が一歩踏み込んで、積極的な産業政策というものを展開をしていくことが必要だと。その際には、当然のことながら、国内の安全保障に関してもしっかり明確な意識を持って取り組むということが大事だということは、私も同感であります。

 その上で、航空機産業は、やはり我が国にとって極めて重要な産業だと思っています。カーボンニュートラルに向けた動きというものが出てきておりますので、これを新たなビジネスチャンスとして、この機会を活用しながら、将来に向けて我が国航空機産業の競争力を強化をしていきたいというふうに思っています。

 航空機産業戦略におきましても、単なるサプライヤーの位置に甘んじることなく、完成機事業を見据えたインテグレーション能力を向上していくということも明確にしておりますので、そのためのプロジェクトというものを官民連携で具体化をしていけたらと思っています。その際、政府支援の在り方についても、既存の枠組みにとらわれずに、新しい環境に適応して検討していくことがやはり必要なんだろうなというふうに思っています。

大島委員 御答弁ありがとうございました。

 ここの二つの法律、航空機製造事業法と、もう一つが航空機工業振興法、こういう法律は見直した方がいいと思うので、是非検討をお願いをいたします。

 もう一つ、価格転嫁についての今の現状について教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 中小企業庁ではこれまで、価格交渉促進月間、三月、九月でございますけれども、この月間に基づく企業名の公表や、状況の芳しくない発注者の経営トップに対する指導助言などを通じ、取引慣行の改善に取り組んできております。

 直近の月間の結果が出ておるのが昨年の九月でございまして、この月間に基づいて実施した調査では、発注企業からの交渉の申入れがあった企業の割合が増加するなど、価格交渉しやすい雰囲気が醸成されつつある一方で、価格転嫁率は四五・七%となっており、転嫁率を上昇させることが必要と認識しております。

 ただ、現状におきましても、価格交渉においても十分な対応が行き渡っているものではないものと認識をしております。

 現在、二〇二四年三月、本年三月の月間に基づく調査を実施しているところでございまして、その結果も踏まえながら、特に、サプライチェーンの深い階層にまで価格転嫁を浸透させるよう、今後も粘り強く取り組んでまいる所存でございます。

大島委員 前回も指摘しましたとおり、価格転嫁あるいは給与アップというのは、安倍政権から菅政権、そして岸田政権と、もう八年ぐらいずっと取り組んでおりまして、やはり、仕組みを変える時期に来ているのかなとも思います。

 私は、私の選挙区内の物づくりの経営者の皆さんと物すごく親しくて、彼らの工場を時々見に行ったりしております。従業員規模も十人、二十人から五十人、百人ぐらいの企業の方たち。

 この間総会があったので、懇親会から二次会までつき合って、皆さんといろいろお話を聞いていたときに、心が折れるという発言をされていた経営者の方もいて、従業員規模がパートさんを入れて五十人ぐらい、価格交渉に行ったら、けんもほろろで心が折れて帰ってきましたとか言われて。

 もう一人の方からは、リーマン・ショックのときのボッシュの例を出して、こう言われたんですって、リーマン・ショックのとき、ボッシュの担当の方から。私たちはドイツの会社なので、ドイツの雇用を守るために、価格は高いんだけれども、一部ドイツに発注を変えると言われた。

 ボッシュという会社は非上場の会社で、ボッシュ財団は利益を社会還元に向けていますから、ですから、日本の資本主義そのものの在り方が問われているかもしれないなと思う。

 やはり、今の、皆さんサラリーマン経営者の方が非常に多くなっていて、前回も申し上げましたとおり、就業人口における被雇用者、だから雇われている人の割合が、当選してから、八三%、今九〇%。ですから、そのために前回も衝動に駆られるというお話をさせていただいたと思う。

 あるいは、私の同僚議員は、消費税は輸出すると輸出企業は還付されるので、それをやはり下請まで配分、もう一回戻した方がいいのかなという議論をされる議員の方もいらっしゃるので、やはり、仕組みを変えるということが結構大切かと思います。

 大島も、実は一回仕組みを変えようとしたことがありまして、三期生のときに内閣委員会で。当時は警察の不祥事が物すごく多くて、三期生で筆頭理事でして、警察庁長官を呼べとみんな言うんですよ、先輩議員が。私はいろいろと考えまして、どうしてこういう追及を私たちはしなければいけないのかと。

 調べてみると、そういうことかと。警察の入っている建物の中で、国家公安委員会は一番上の階にいらっしゃるんですよ。ああ、国家公安委員会の委員の皆さんが仕事をしていないから、私たちの仕事が増えるということに気づきまして、それで、自民党の筆頭理事の方を説得をして、理事会を秘密会にして、国家公安委員会の招聘を決めた。水曜日の午前中、臨時国家公安委員会が開かれて、内閣委員会は流会となりました。でも、その後、警察の不祥事は起きていません。だから、そういうことなんですよ。

 やはり、私たちはここで何回も同じ議論をするのではなくて、そろそろ仕組みを変える段階に来たのかなと私は判断しているので、ここで幾つか提案をさせていただいているわけですよ、衝動に駆られるというところで。ただ、それはほかにも手段があるかもしれないので、是非役所の中で御検討いただいて、できるだけ中小・小規模企業が今後廃業することなく日本経済を支えていける環境をつくれればいいかなと思うものですから。

 私の質問はここで終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 次に、荒井優さん。

荒井委員 立憲民主党の荒井でございます。

 今日は、文部科学省と農林水産省の皆さんにもお越しいただいて、学校の給食のことについて、この経産委員会で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 思い返すと、コロナがあったときに、生徒たちが学校に通えなくなりまして、そして自宅で学習をするということ、そのときに、まさにGIGAスクールという形の、パソコンを配ってそれぞれ自宅で勉強するという制度が充実してきたというふうに思いますが、その一方で、実は、学校現場から感じたことは、学習の個別最適化というものは、こういったGIGAスクール等、端末を使うことでできるようになったものの、逆に、給食というものの重要性というものに学校現場が気がついたのがこのコロナの大きな学びだったのではないかと思っています。

 学校現場からすると、給食の時間、特に高校とかになるとお弁当の時間になることも多いですが、このお昼時間というのは割と、二の次と言うと言い方は語弊があるかもしれませんが、やはり勉強する時間が最優先、授業の時間が最優先で、そしてお昼を取る時間というのはどちらかというとその次という形になるんですけれども、でも、実は、学校に生徒たちが集まってきて一緒に同じものを食べるというもののこの時間帯の重要さ、そしてまた、お宅によっては学校の給食でやはり栄養価を満たされる子供たちもいることに改めて学校が気づいたのが大きな学びだったというふうに思っています。

 ただ、昨今、まさに物価高が進んでいる中、エネルギー価格、そして物価、それぞれの消費財の価格も上がっている中で、給食が非常に厳しい状況に置かれていまして、最近では、ちょうど昨年の十一月ぐらいにたくさんニュースになりましたけれども、例えば、給食のそれぞれのおかずが、もやしの量が増えていくとか、あと、卵ワカメスープの中で卵を減らさざるを得ないとか、給食費に関しては保護者がほぼ負担していますので、一定の給食費に対して事業者の人たちが大変苦労しながら、その価格内で何とか必要なカロリー数を満たした給食を提供しようと努力をしてきたわけです。

 ただ、そういった中で、去年の秋口ぐらいにも、給食事業者が倒産するというケースも結構相次ぎまして、非常にこの学校給食をめぐる問題というのが、コロナから始まり、その重要性をみんな分かったものの、物価高とともに難しくなってきている状況があります。

 今日資料をお持ちいたしましたが、昨年の十月に、岸田総理がまさに給食事業者の皆さんとのヒアリングというものをされて、給食事業者からも何点か提案があった。一つ目はプロポーザル方式の導入であったり、入札方式への最低価格の設定であったり、あと、契約期間中に人件費が変動した場合に請負金額について交渉機会を持つこと、また、年収の壁の解消等々の、そういった提案があったというふうにこちらの資料にも書いてあります。

 岸田総理も、「支援も必要であることを感じた。」等の前向きな答弁をされているというふうに書かれていますが、この提言に対してその後どのように進めているのか、教えていただけますでしょうか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 学校給食等が、物価高の影響に左右されることなく、中長期的、安定的に実施されるということは大変重要であると考えてございまして、文部科学省では、昨年十一月に、都道府県教育委員会等に対しまして、学校における食事提供等の安定的、継続的な運営を図る観点から、食事提供等の業務を民間事業者に委託する場合の留意点等を示した通知を発出をしたところでございます。

 具体的には、物価上昇等を踏まえた適切な契約変更等の観点から、契約の途中でエネルギー価格や食料品価格、労務費等の価格変動や最低賃金額の改定が生じた場合には、契約金額の変更や受託事業者への支援など適切に対処をするということ、複数年にわたる契約を結ぶ際には、あらかじめ賃金又は物価の変動に基づく契約金額の協議及び変更等について規定を設け、適切に対処をするということ、また、安定的に実施可能な事業者を選定するという観点から、事業者の選定に関しては、価格に加えて、事業の安定性等価格以外の要素も考慮するなど適切に対処するということを示しているところでございます。

 なお、重点支援地方交付金におきましても、こうした契約金額の変更を含めて、エネルギーや食料品価格高騰等の影響を受ける事業者への支援が含まれておりますところから、各自治体に対してその活用を促してきているところでございます。

 文部科学省といたしましては、こうした取組を通じまして、学校給食等の安定的な運営が行われるように努めてまいりたいと存じます。

荒井委員 ちょっと質問には入っていないんですけれども、学校給食に関してですけれども、元々、義務教育の無償化というものを定めていっているときに、そもそも、学校給食そのものは本当は同じように無償化していきたいという、そういった、法律のたてつけというよりも、国会の答弁がこの制度ができた当初の頃にあったというふうに伺っているんですが、それがなかなか今進んでいない現状もあるんだと思います。

 ちょっとその辺りの詳細なことを、文科省、お答えいただいてもよろしいでしょうか。済みません、質問にはなくて。

森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校給食につきましては、学校給食法という法律におきまして学校給食についての基本的な事柄が定められているわけでございますけれども、その中で、学校給食の実施に必要な施設整備に要する経費、学校給食の運営に関する経費のうち一定のもの、施設設備の整備、運営、ランニングコスト等については設置者の負担とし、その他の経費、食材費等については保護者の負担とするというふうにまず定められているところでございます。

 そして、その上で、学校給食費無償化についてでございますけれども、この点につきましては、一部の自治体で学校給食が実施されていないといった状況もございますので、児童生徒間の公平性などの観点から、詳細に実態を把握した上で課題を整理する必要がある、このように考えているところでございます。

 そして、昨年十二月に閣議決定されました、こども未来戦略におきまして、「学校給食費の無償化の実現に向けて、まず、学校給食費の無償化を実施する自治体における取組実態や成果・課題の調査、全国ベースでの学校給食の実態調査を行い、「こども未来戦略方針」の決定から一年以内にその結果を公表する。 その上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等も含め課題の整理を丁寧に行い、具体的方策を検討する。」というふうにされているところでございます。

荒井委員 ありがとうございます。

 まさに昨年のちょうど五月ぐらいに、今年の六月に向けて学校給食についての全国調査を行って発表する等のお話だったというふうに思います。今、その最終取りまとめに向けて努力をされているんだと思いますが、こうして給食というものの重要性というものがどんどん高まっているときだからこそ、やはり、無償化のお話もしたいんですが、もう一つ、その中身を充実していくこと、つまり安かろう悪かろうでも困るわけでして、共に食べるものというものを非常に充実させていくことが大事になっていくんだと思います。

 ただ、先ほど申し上げたように、学校の教育という現場からは、なかなか食べ物のところまで気が回らないという、そんな感じがしていたんですが、だからこそ、農水省が、まさにその食べ物を、子供たちにどういういい食べ物を提供するかということが今非常に重要になっているんじゃないかと思うんです。

 今、農水省として、学校給食にはどういう取組をされているのか、教えていただけますでしょうか。

武村副大臣 お答え申し上げます。

 農林水産省では、学校給食を食育の生きた教材として活用し、地域の食や食文化等の理解を深め、生産者の御努力や食に関する感謝の念を育むため、学校給食における地場産物の活用等を促進しているところです。

 このため、学校給食における地場産物の活用に向けた地域の関係者の取組を後押ししているところでありまして、具体例としまして、神奈川県寒川町では、生産者と給食関係者が連携して学校給食に地場産物を供給、使用する体制をつくり、地場産野菜の給食での活用が大幅に増加をしたほか、静岡県袋井市では、コーディネーターを派遣し給食と生産の現場をつなぐことで、規格外品の野菜を使用した地場産メニューを実現をしたところです。

 また、有機農産物の生産から消費までの取組を進めるオーガニックビレッジの創出を進める中で、地域の有機農産物の学校給食への試行的な導入を支援をしているところでありまして、例えば千葉県木更津市や茨城県常陸大宮市では、二年から四年後に全ての小中学校の給食に有機米を提供する予定となっております。

 今後とも、文部科学省等の関係省庁と連携をしまして、地場産物等の活用を進めることにより学校給食の充実を図ってまいります。

荒井委員 ありがとうございます。

 特に袋井市では、まさにコーディネーターという方が、給食を作る皆さんと、そして農協とかJAとか、その間に入って、いろいろとやり取りをしながら規格外品のものを使えるようにしたり、そういうことで取引額が十倍になったり、地場産物の使用割合が約四倍になったり、非常に効果が出ているんだなというのを改めて思ったんですね。

 確かに、給食センターの皆さんは本当に、その日その日、給食を作ることにやはり一生懸命ですから、それをどうやって更に、もっと高めようかというところは、やはりある程度の外部の知恵や、そしてまたリソースがないとできないことがあると思いますので、是非こういった取組を積極的に行っていただきたいというふうに思っております。

 僕も学校の校長をしていてよくよく分かったんですが、学校のクラスでは、例えばスポーツができたり勉強ができたり、そういう人たちは、クラスで人気が出て、いろいろな形でいろいろなチャンスがあるんですが、決してなかなかそういうところにチャンスが巡ってこない子たちというのも自然とできてしまうところがあるわけです。ただ、実は僕の高校でも農業の部活があったんですけれども、農業を、例えば、植物を植えたりとか、一次産業、酪農を手伝ったりということをすると、割と、常日頃、教室ではそんなに目立たない子たちが物すごくいい笑顔で一生懸命やったり、そして、そのできたものを周りの人たちに食べてもらったり、そして、親御さんがすごく喜んでくれたり、新聞でも取材をされて、その新聞の取材の写真を見た学校の先生たちが、あの子がまさかこんな表情をするなんて思わなかったと。そういう効果があるんだ、やはりそれが一次産業の強みなんじゃないかと僕は思うんですね。

 そういった意味でも、どうしても今の日本の教育は、普通科高校で大学への進学みたいなことをどんどん進めていくところがなきにしもあらずなんですが、本当は、一次産業の担い手として成る、ポテンシャルのある子たちが学校にはたくさんいるんだと思うんですね。

 一方、農水系の委員会とか部門会議とかに行くと、担い手の不足に物すごく皆さん困っているんですが、実は学校にはたくさんいるんだということも含めて、その接点は、実は給食から入っていって、地場のまさに作り手の、担い手の皆さんのところに手伝いに行ったり、例えば家庭科の時間で一緒に御飯を作ったりしながら、そうすると、その子たちにとってはまさに一つの就職先、若しくは将来の自分のビジョンとして、農業、一次産業というのが出てくるんじゃないかというふうに強く思っていますので、是非、農水省に、文科省とのコラボレーションみたいな形を更に実現していただきたいというふうに思っております。

 そして、文科省に伺いたいんですが、是非そういった給食への、農水省を含めて、地域の、教師以外の様々な人たちとの、これも探究の学習みたいなものにつながっていくことだというふうに思いますので、是非積極的な、給食を使った学びというものも深めていっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

あべ副大臣 委員にお答えさせていただきます。

 学校給食は、栄養のバランスの取れた食事の提供によりまして子供たちの健康の保持増進を図るだけではなくて、食に関する指導、これを効果的に進めるための生きた教材として大きな教育的意義を有しているというふうに思っているところでございます。

 子供たちに対して給食の時間においても食育を推進することは非常に重要なことでございまして、その中でも、学校給食において地場産物また有機農産物などを活用すること、これは、地域の食文化また産業への理解、生産者への感謝の気持ちを育んでいくなど、子供たちの食に関する理解を深めるために大変有効であるというふうに文部科学省としても考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、学校現場また生産者の互いのニーズを調整するコーディネーターの派遣に対する支援などを通じまして、引き続き、学校給食に対する地場産物、有機農産物などの活用促進を図ってまいりたいというふうに思っております。

 以上です。

荒井委員 どうもありがとうございます。

 是非文科省が中心になって、給食を更にどう充実していくのか、そしてその先には、先ほど文科省にも答えていただきましたけれども、給食をできるだけ安くしていく、無償化にするのが本当は望ましいというふうに思っていますし、これは自民党の茂木幹事長も以前おっしゃっていたことだと思います。与野党通じてそういう願いがあるんだと思っています。調査では年間四千億というふうに言われていますが、そういった金額というものを何か新しい形で捻出してでも学校の給食を充実していく、これを是非やっていただきたいな、やっていきたいなというふうに思っておるわけです。

 そして、齋藤大臣にお伺いするわけですが、まさに経済産業省としては学校の給食というのはもちろん直接は所管外なことは重々承知しておるんですが、民間の事業者として、約半数ぐらいの給食は民間事業者が請け負っているかと思います。そういった意味では、地域の中小企業の皆さんが一生懸命子供たちのための御飯を作っているわけでもありますし、また、様々な、子供たちの将来の就職先としても、農業も含めて、こういった、地域の食に関する大きなマーケットを拡大していくことにもつながっていると思います。

 実は、あえてこの経産委員会でお話しさせていただこうと思ったのも、まさにGIGAスクールのときも、前回のこの委員会でもお話しさせていただきましたが、やはり文科省だけではなかなか突破できないところを、経産省の若手の皆さんが頑張って一人一台のパソコンを実現したこともふと思い出して、学校給食を充実させていくということにも経産省の何らかのサポートみたいなものがあってもいいんじゃないかとも思いましたし、また、齋藤大臣は以前は農水大臣もお務めであったというふうに思いますので、まさに農水相をやられていた知見からも、もっともっと農水省が学校の中でいろいろなことを展開することもまたし得るんじゃないかというふうに思いまして、齋藤経産大臣の所見も含めて思いを伺いたいと思いまして、質問させていただきます。

齋藤(健)国務大臣 確かに、GIGAスクール構想実現の際には、我が省が民間教育産業を所管をするという観点で、その実現にも協力をさせていただいたということがありましたけれども、もちろん委員の問題意識は大変よく理解をいたしましたが、さすがに給食無償化について、経済産業省としてどういう取っかかりでここに関与していくんだろうかということについては、なかなか答えがないなというふうに思っているところであります。

荒井委員 ありがとうございます。

 与野党の様々な議員の思いでもあるというふうに思います。実は、立憲と維新も文部科学委員会では共同で法案を提出させていただいたことがありますので、是非こういったことが実現していきますよう、そして、ただ単に無料にすればいいわけではなくて、充実していくことが大事ですので、地場の農家の方の産品がしっかりと子供たちの口の中に入るよう、そういった取組を是非これからも両省含めてお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 学校給食に関しては以上になりますので、続いて、次の質問に行こうと思います。それぞれの大臣の方は大丈夫でございます。

 続いて、MアンドAのことについて、今度は経産省、経産大臣に伺いたいと思います。

 前回の産競法のときにも、税制によってサポートする形でMアンドAを進めていくんだ、そういったことを、国として、これは施策として進めている、そういうふうに承りました。ただ、一方では、実際にMアンドAの現場では労働者や労働組合が置き去りになっているということも多々あるのではないかと思います。

 昨年末も、そごうと西武デパートがMアンドA、買収されるというときに、最終最後の段になって労働組合がストをするということもございました。今、海外では、まさに新日鉄がUSスチールを買収するに当たっても、労働組合からの大きな意見があって、そして、いろいろな形で難しくなっているというふうに思います。

 MアンドAといっても、例えば、事業を売却する、先日も電機メーカーがプロジェクター事業を売却するというような話になりましたけれども、でも、これは売却するといっても、何か部品を売るだけではなくて、それに連なった人も同時に売却しているわけですね。御自身はこの会社に入ったというふうに思っても、事業ごと売却されるということは、やはり非常に、そこで一生懸命働いていた方々にとってはいろいろな思いがある中で、売られる側、残る側みたいな形になっている。

 これが結局、その後のその会社やその事業にとっても非常に、単に売ったから、金額的に売り買いしたから成功だというわけではなくて、その事業がちゃんと成長していくかどうかというのは、まさに労働者の人たちとの大きなコミュニケーション、濃いコミュニケーションというのが必要だと思います。

 もちろん、全ての情報を事前に提供するということは難しいとは思いますが、でも、成功するMアンドAというのは、まさに労使共に一体となってやっていくことだと思いますが、ここの点において、経産大臣としてどのようにお考えか、教えていただけますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 事業の再編、特に自社からの、御指摘のように事業を切り出すという場面におきまして、当該再編を円滑に行うためには、その再編の意義などについて丁寧にコミュニケーションを行って、労働組合や従業員の方々の理解と協力、こういったものを得ることというのは、私は不可欠であると認識をしています。

 そのため、経済産業省といたしましても、事業再編を円滑に実行するためのベストプラクティスをまとめた事業再編実務指針というのを作って、そこにおいて、事業再編の実行時に、事業再編の理由や意義、事業再編後の従業員の地位等について、労働組合や従業員一人一人に対して誠実に丁寧な説明を行うことが望ましいとしているところであります。

 さらに、事業再編時に税制優遇や金融支援等の支援措置を受けることができる産業競争力強化法上の事業再編計画を活用して事業再編を行う場合には、従業員の地位を不当に害するものでないことを認定要件といたしまして、実際の運用においては、労働組合等との協議等により、十分な話合いを行うことなどを求めることとしています。

 従業員の理解、協力を得ながら事業再編を円滑に進めることで、企業の持続的な成長が実現できるんだということだと思っていますので、引き続き関係省庁とも連携して取り組んでいきたいと思っています。

荒井委員 今日は厚生労働省にもお越しいただいていますが、まさにこういう、売却されるそこの事業にひもづいている方々というものは、どういうふうに法律的には守られているのかというところを教えていただけますでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 会社分割や事業譲渡等の事業再編におきまして、労使コミュニケーションは重要な課題であると考えております。

 会社分割や事業譲渡に当たりましては、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律や、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針等におきまして、事前に、労働者の過半数で組織する労働組合等と協議するよう努めることとされておりまして、厚生労働省といたしましても、引き続き、関係する各種法令、指針の内容、その解釈についての周知を図ってまいります。

荒井委員 ありがとうございます。

 僕も実は事業譲渡を受けて学校を経営したことがございますが、譲渡を受けてから、やはり労働組合の皆さんと相当細かく打合せをしたという覚えがございます。やはり労働組合は、事業を譲渡するというとき、前任の理事長に対して、物すごく理事会と、当然ながら、経営から逃げるのかみたいな感じで大分厳しいやり取りをして、そして、その火中のクリを拾いに行ったという形で行ったわけですが、やはり労働組合の皆さんを中心に物すごく硬くなっていて、皆さんの気持ちを解きほぐしながら、ちゃんと向き合ってもらうのに物すごく時間がかかったのを覚えていますし、でも、いい学校にしていきたいんだということを伝えるのに、やはり非常に入念なコミュニケーションが必要だったなというふうに思うんですね。

 やはりMアンドAというのは、こうして、売却する側には売却する側なりの事情はあるんですが、された側の人たちにとっては物すごく心が傷ついている中で、新しく乗り込んでいったからといっても、簡単に打ち解けて、さあ、やっていきましょうという話にはなりにくくて、法律的にはもちろん担保されていると思います、でも、一方、技術論的には、物すごく丁寧にやっていく必要がある。

 まさに、人的資本経営みたいな形で、従業員を大切にしていてももちろん売却せざるを得ないときは本当にあると思いますが、やはり新しくMAして買収した側も、従業員を大事にする会社なんだということを広く見せていく。つまり、人的資本経営をしっかりやっているところこそMアンドAに対してはより積極的になっていただいて、よりいい、ここの会社に新しく来てよかったなというふうに思ってもらえるような、そういうMAこそ、より成功事例につながっていくんだと思います。

 今、経済産業省でも、まさに人的資本経営を大分推し進めていると思いますが、まさにMアンドAにこそ利くものだというふうに思いますが、大臣から所見を伺えればと思います。

齋藤(健)国務大臣 まさに御指摘のとおりだと思っています。事業再編を成功させる上でも、そこで働いてくださっている方が理解をして、できれば今まで以上に一生懸命働いていただけるようにすることが、むしろMアンドAを成功させるために必要なんじゃないかなというふうに思います。

荒井委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、次に進みたいと思います。

 二〇二二年のこの経産委員会ですので、ちょうど萩生田大臣のときだったんですけれども、萩生田大臣のときに未来人材ビジョンというものを取りまとめられました。萩生田大臣もまた、その直前まで文部科学大臣でもありましたので、やはり教育や人材の育成に対して大変強い思いがあったからこういったことをされているんだろうと思って、その内容に関しても、中間取りまとめ、非常にいい文章だったというふうに思いますが、その後、この文書、この取りまとめというのは、どういった形で経産省の施策に生かされているのか、教えていただけますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 二〇二二年五月に経済産業省において未来人材ビジョンを取りまとめ、公表をいたしました。このビジョンは、より少ない人口で社会を維持するためには社会システム全体の見直しが迫られている、そういう問題意識の下で、雇用、人材育成と教育システム、これを一体的に議論をした点に特徴があったんだろうと思っています。

 その上で、これから向かうべき二つの方向性として、旧来の日本型雇用システムからの転換と、好きなことに夢中になれる教育への転換、これがうたわれまして、十二の具体策が示されて、この内容は、総理大臣を議長とする教育未来創造会議の提言にも多く取り込んでいただいたということになっています。

 現在、これらのビジョンや提言に即した形で関係省庁が取組を進めているところですが、経済産業省におきましては、五百七十社を超える日本企業が加入する人的資本経営コンソーシアム、これを設立して運営しています。それから、キャリア相談からリスキリング、転職までを一体的に支援する仕組みの創設、あるいは、企業が大学等に共同講座を設置し、運営する際の支援の実施、あるいは、中学校や高校等において、民間教育事業者と連携し、いわゆるエドテック等を活用した新しい学び方を実証する事業の実施、こういったことに取り組んでいるところであります。

 今後とも、関係省庁と連携しながら必要な対応を行っていきたいと考えています。

荒井委員 ありがとうございます。

 このときの質問の中で、文科省の取り組んでいるトビタテ!留学JAPANについてお伺いしました。トビタテ!留学JAPANというのは、下村さんが文科大臣のときに立ち上げた、官民による、税金ではなくて民間の資金で大学生や高校生を海外に留学させるプロジェクトとして大々的に始まりまして、非常に大きな効果を僕は発揮しているというふうに思っています。

 ただ、コロナの期間中で海外に行けなくなったのと、その期間中にちょうど第一期が終了するということで、その後の第二期のお金の集まり方が非常に苦しい、そんな状況も伺っていましたが、そのときにこの経産委員会で、やはりお金を集めるのはどうしても民間企業から集めることになりますので、文部科学省ではなくて経産省が主管した方がいいんじゃないですかみたいな、そんな質問をここでさせてもらったんですが、でも、文科省に伺いますが、今は、第二期、どんなふうに進んでいるのか教えていただけますでしょうか。

あべ副大臣 文科省におきましては、意欲と能力のある全ての日本の若者が海外留学に自ら一歩を踏み出す機運を醸成することを目的といたしまして、平成二十五年から、社会総がかりで日本人の学生生徒の海外留学を後押しするトビタテ!留学JAPANを推進してまいりました。これまで、平成二十五年から令和四年までの第一ステージにおきましては、実は大学生等のコース六千八十二名と高校生のコース三千三百八十九名の合計九千四百七十一名を採用してまいりました。

 現在、令和五年から令和九年までの第二ステージ、委員がおっしゃったところでございますが、より若い時期からの海外経験を充実させる観点におきまして、高校生を対象といたしましたプログラムを重点化しながら、五年間で五千名程度の派遣を目標に取組を進めているところでございます。

 このプログラム、委員がおっしゃったように、民間企業、団体からの寄附金を財源といたしまして官民協働で実施しているところでございますが、第二ステージにおきましては、令和五年の六月現在、七十一の企業、団体から三十三・八億円の御支援をいただいているところでございます。また、帰国生には、民間企業の就職はもちろんでございますが、NPO、スタートアップ企業、これを立ち上げる方など、多様な人材を社会に多く輩出しているところでございまして、未来を担うグローバル人材といたしまして、幅広い国、地域への留学経験が日本社会に還元されているものと認識しているところでございます。

 文科省といたしましては、引き続き、関係省庁、産業界の皆様とも連携しながら、海外留学の支援、若者の海外留学の機運の醸成に努めてまいりたいというふうに思います。

 以上です。

荒井委員 ありがとうございました。

 三十億集めるというのは本当に大変なことで、改めて、二年前に経産委員会で、経産省がやった方がいいんじゃないかということを言ったことに対しておわびしたいというふうに思いますし、文科省の皆さんが旗を振っていただいていることに改めて感謝いたします。本当に、三十億集めているのはすばらしかったと思います。このお金で、まさにいろいろな形で若者が世界で頑張っていますし、帰ってきた人たちの頑張りが今本当に、だんだんいろいろな形で波及していると思いますので、どうぞしっかりと今後も是非よろしくお願いいたします。

 今度、経産大臣にお伺いしたいのが、先日、一番最初の大臣とのやり取りの中で、北海道から来ましたということで、是非経産大臣としていつか北海道に行ってくださいという話を伺いましたけれども、先日、多分、大臣が北海道に行ってラピダスを見ていただいたと思います。

 北海道のデジタル分野、カーボンニュートラル分野でのポテンシャルを、今度は経産大臣として、どのように御覧になってきたのか、お答えいただけますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 先日、大臣になって初めて北海道を訪問しまして、ラピダスのパイロットライン建設現場を視察をいたしました。

 北海道には、千歳市のラピダスのほかにも、石狩市や苫小牧市ではデータセンターの新設が計画をされておりまして、経済産業省としても支援を決定をしています。

 実際に訪問いたしまして、自然が豊かで広大な大地を有している北海道は、いわゆるシリコンバレーのように、世界最先端の研究者を呼び込むことができる可能性を有していると実感をいたしました。経済産業省が強力に推進しているラピダスプロジェクトを核として、北海道内に半導体、デジタル関連産業の集積が進んでいくことを大いに期待しています。

 また、北海道は、カーボンニュートラル分野についても大きなポテンシャルを有しています。洋上風力発電を始め、多くの再エネ導入を見込んでおります。また、余剰電力などを活用したグリーン水素製造も期待をされるのではないかと思っています。

 例えば、札幌市や新千歳空港では、再エネを活用して製造された水素等の利活用が検討されております。水素の地産地消を実現するモデルの一つになるのではないかなと。

 また、CCS事業のポテンシャルも大きく、苫小牧ではCCSの事業化に向けた取組が地元の理解を得ながら進んでおり、ブルー水素製造の可能性もある地域と認識しています。

 このように、北海道の高いポテンシャルには大いに注目をしています。北海道において、こうした強みを生かした産業集積が進み、日本のDX、GXを先導していただくことを期待しています。

荒井委員 ありがとうございました。北海道への強い思い、しっかり承りました。

 最後になりますけれども、奨学金の代理返還、前回伺いましたけれども、是非経産省でしっかりと進めていただければと思います。

 どうもありがとうございました。

岡本委員長 次に、田嶋要さん。

田嶋委員 おはようございます。どうぞよろしくお願いします。古谷委員長もありがとうございます。

 今のお話を聞いていて、齋藤大臣も北海道に大臣になって初めて行かれたということで、これは一つ注意しなきゃいけないなと私も思うのは、視察に行くといいところばかり見せてくれるんですよね。ありますよね、やはりそういうことというのは。だから、その話だけ受け止めて、すごいなとなっちゃうと、これはやはり気をつけなきゃいけないなと。

 記憶として新しいのは、私はMRJの視察に行ったんですよ。委員会で行ったんですよ、委員会で名古屋まで。もう胸を躍らせましたよ、私は。おお、日本初のが出てくるかとかいって。それから六回延期して、こういうふうだもんね。だから、視察に行ったから何か高揚感を持ってうまくいくといったら大間違いだから、ここは本当に気をつけなきゃいけないなというふうに思いました。

 それで、今、荒井委員からも人材育成の話がありましたけれども、ちょっと順番を入れ替えさせていただきまして、高度人材、人材育成のことをまず質問に入らせていただきたいと思います。文科省の方も今日はお越しで、ありがとうございます。

 今、荒井さんからも、文科省も頑張ってくれという話があって、これは本当にケース・バイ・ケースであります。どうしてもこれは、人材の観点では、文科省と経産省は、私の認識では川上と川下というような役割分担でもあるのかなということで、今日はそうした分野の御質問をさせていただきたいんです。

 まず文科省に、今から二十年前に国立大学が法人化をされて、二十年たちましたが、私がずっと気になっておるのは、ちょっと前、今から五、六年前ですか、七、八年前ですかね、京都大学の当時の学長とそれから財務省の偉い方が論争をされておって、この道は正しい道か間違えた道かということで、割とはっきりと京都大学の学長は、誤った、失敗したというふうに言っておるわけでございまして、そのてんまつは今どうなって、今どっちの方向の政策が進んでいるのかをお尋ねしたいと思います。

伊藤政府参考人 ただいまお尋ねをいただきました御指摘、二〇一九年度の予算の編成過程における当時の財務省の方と京都大学総長との議論等を踏まえた御質問かというふうに承ってございますが、当時の予算編成過程におきましては、国立大学法人運営費交付金の配分等に関する様々な議論がなされたところでございまして、文部科学省では、そうした国立大学関係者等の意見も丁寧に聞きながら、二〇一九年度予算におきましては、各大学の教育研究の成果の向上や経営改善に向けた一層の努力を促すために、成果に係る客観的指標に基づいて配分する仕組みを部分的に導入をいたしました。

 それも含めまして、大学運営に必要な経費について、運営費交付金としてしっかりと確保に今努めているところでございます。

田嶋委員 配付資料の五を御覧いただきたいんですが、これは最近の記事ですよね、四月、先月ですけれども、七割の学長は、悪い方向に進んだと。

 私も、最近、母校のOBの方、大学関係者、大勢と話をする機会がありましたが、異口同音に、どっちかというんだったら失敗なんですよ。

 今、気を遣われて、失敗しましたとはやはり言えないですよね。言えないかもしれないけれども、大きく軌道修正を図っている、そういうことですか。これはボディーブローのように利いてきて、やれ半導体だ、やれ液晶だ、やれ有機ELだ、やれMRJだ、どれもこれも何かぱっとしない状況になってしまっている原因のやはり一つに私はあるのじゃないかなということが今日のテーマでございます。

 そこで、齋藤大臣に御同意いただけるところもあるかと思いますが、日本の研究力の低迷ということで、今見ていただいたのは学校現場のお声でございます。

 次の資料の六を御覧いただいて、これは前回お配りして、余り時間がなかったところですが、これも文科省の資料なんですけれども、これはよく出るやつですよね。論文数、特にトップ一〇%引用ですけれども、すごいのは、四位から十三位ですけれども、途中、こういったことが話題になったときは八位ぐらいのときがあったんですね。つまり、そこから更に悪くなってこういう状況になっている。

 私は、数字を見て愕然とするのは、本数が一五%減っているのは日本だけなんですね。ランクを下げているところも、みんな本数は上がっているんです。中国は激増ですけれども、アメリカだってイギリスだってドイツだってイタリアだって韓国だって、韓国は圏外からですね、全部、順位も上がったり下がったりしていますが、論文数は上がっている。日本だけ激減しているんですよ。

 これは五年前も同じ話を聞いていたから。十年前からも言われていたと思います。日本の科学技術力、研究開発力は、まあ同じじゃないかもしれませんが、大丈夫かと。

 だから、京都大学学長がああやって現場から財務省に反論するという勇気を持ってやっておられるのに、状況が何か更に悪化しているんじゃないかということを私は非常に危惧しておるんですが、齋藤大臣の目からはどう映っておりますか。

齋藤(健)国務大臣 とにかく研究力は、経済成長の実現や社会課題解決に貢献するものでありまして、極めて重要と認識しています。

 その上で、研究力を取り巻く状況につきましては、我が国の注目度の高い論文数の順位の低下など、諸外国と比較して、相対的に日本の研究力の地位が低下しているという認識は我々も持っています。

 加えて、研究開発への投資に関しましても、ここ数年の我が国の企業を含めた研究開発費総額の伸び率は、欧米各国の伸び率と比較しても鈍化をしています。

 また、企業の研究開発投資に対する五年後の付加価値を示す研究開発効率についても、我が国は諸外国と比較して大きく低下をしておりまして、我が国の研究開発の量や質共に伸び悩んでいる状況であると認識しています。

 このように、我が国の研究力が相対的に低迷し、今申し上げましたように、研究開発の質的、量的にも伸び悩んでいる状況に対しましては、経済産業省としては大変強い危機感を持っています。

 こうした状況を踏まえて、経産省としてできることといえば、GXや半導体、AI、量子といった技術革新が加速化している分野への研究開発予算措置ですとか、それから民間企業の積極的な研究開発を促すための税制優遇などを行って、何とか研究開発力向上につながらないかと思って取り組んでいるところであります。

田嶋委員 ずっとこういう状況がますます悪くなっているという印象で、本当に、もう心配を通り過ぎて、怖いぐらいの状況だと私は思っております。

 今、齋藤大臣からるるございましたが、今日は特にもう一つ、今、人材という点には言及なさいませんでしたが、人の意味で、やはり少し具体的に考えるべきではないかと。

 資料の七を御覧をいただきたいと思います。これも中央教育審議会からでございますが、別に大学院に行けばいいということではもちろんないかもしれませんけれども、この審議会で配られたんでしょうけれども、修士も、博士も、企業の研究者に占める博士号取得者の割合も、何でこれだけ日本だけ際立った異常値になるのかなと。

 博士の数を見ていただくと、落ちているのは日本だけですよね。韓国は一・五倍ぐらいになっている。韓国と日本は少子化問題のように共有している問題もあるんですが、物すごく韓国の方がいい結果を出している分野もたくさんありますね。この分野がその一つではないかなと。

 かつて、大臣もよく御存じの大前研一さんという方が、笑いながら、時代が移ろって、会社の名前を出すのも恐縮ですけれども、日本のある会社と韓国のある会社で求める英語力の差が全然違うようになった、日本の会社は七百五十点で入れるけれども、韓国のあの会社には九百点なきゃ入れないというようなことをよく言っていました。それは一つの象徴的な話。別に英語だけじゃないですね。

 だから、もっと高度人材を国全体で危機感を持って強めていくには、私は、齋藤大臣、出口をしっかり用意してあげなかったらふん詰まっちゃうような気がするんですよね。大学院まで行くと何か自分の市場価値が落ちるみたいな話、だから、日本は大学院に行ってもPhDまで行きたがらないみたいな、それで行き詰まってしまうというような話を、よくこれも何年も聞いております。

 そういう意味で、今経団連さんも頑張っていただいておるんですが、何か、博士課程の卒業者の、産業現場でもっとポストを用意して、受皿を用意していくということ、そうした部分も、先ほどの研究開発への支援とかお金の部分だけではなくて、経済産業省が文科省とタイアップしながらやってほしい、やるべきだと私は思っておるんですが、経産大臣に聞きますね、どうですか、これは。

 ここは、この経産委員会では、ちょっと抜けちゃっている、余り話題になりにくいかもしれませんが、お金の話だけじゃなくて、もう経団連がああやってレポートをまとめましたから、相当経団連も危機感を持っていると思いますが、それぞれの、少なくとも研究開発力がやはり必要な分野では倍増していくような、GAFAのような企業はスタンフォード大学の周りによく本社を構えるという、いい人材こそが命だというふうな話がありますので、ちょっとそこら辺が日本は何をやっているのかなという危機感を持つんですが、大臣、いかがですか、そこは。

    〔委員長退席、小林(鷹)委員長代理着席〕

齋藤(健)国務大臣 まず、大学等における研究力の強化そのものが極めて重要だろうと思う上で、今、司令塔である総合科学技術・イノベーション会議を中心として、大学における研究力強化等を含む科学技術政策全般に取り組んでいます。

 それで、経産省としては、大学における研究の質、量の向上や企業の生産性向上の観点から、まずは産学連携で共同研究の推進を進めるということも一つ重要だろうと思っています。

 そして、産学連携推進に当たりましては、例えば、研究の対価が産業界から適切な価値づけがされにくいということですとか若手研究者が産学連携に踏み出しにくい等の課題が存在をしています、この産学連携の分野においては。

 こうした課題に対応するために、共同研究の適正な対価の設定など、産学連携を進めていく上での課題と対応をまとめまして、産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインを文科省と共同で作成し、普及に努めているということと、若手研究者と企業との産学連携のマッチング、研究を支援する官民による若手研究者発掘支援事業等にも取り組んでいます。

 博士人材の活躍の実態についても調べる必要があるということで、経済産業省として、令和二年度から毎年度、大学発ベンチャー調査等を通じて企業の博士人材の採用人数等の実態を把握をするということを行っています。また、令和四年度には、産業界における博士人材の処遇向上に関する調査というものを行って、まず実態把握に努めているということであります。

 それで、最終的には、その受皿というお話がありましたけれども、やはりこういった人材に企業で活躍していただく上では、いかに大学院を出ても同じ昇給スピードになるということでは何のために勉強してきたかということになりますので、やはり日本企業においてもジョブ型人事の導入ということが進んでいくことが一つ効果的なんだろうと思っていますので、我々としては、個々の企業が自社に合ったジョブ型導入の方法を検討できるように、多数の企業事例を集めて導入プロセス等を具体的に明らかにしたジョブ型人事指針をこの夏にも公表したいなというふうに思っていて、これも一助になればと思っています。

田嶋委員 ありがとうございます。

 是非経済産業省も、先ほどの川下で人材を受け止める側ですので、今まで以上に強い危機感と関心を持って、大学院、大学レベルでの教育ということ、人材育成ということにも強い関心を持っていただきたいというふうに思います。

 文科省も、頑張っていただいているとは思うんですが、輩出された人材がどう産業界で活躍できるかという部分に関しては、もっと経産省と連携をしながらやっていただきたい。この他国との差は小さな差じゃないですよね。本当に、あらゆる先端産業の下請産業しか日本にはなくなっちゃうんじゃないかというぐらい厳しいものがあると思うし、ボディーブローですよ、これは。頑張ったって、いい成果が出てくるのは早くて十年後ですよ。だから、これまで何をやっていたんだろうというふうに本当に思います。

 だから、財務省と京大学長のバトルは、私は京大学長の方に分があるとはっきりと思っておりますけれども、そういうことははっきりとおっしゃらないとは思いますが、しっかり軌道修正して、現場の大学関係者が悲しむようなことはやめてほしいんですよ、本当に。それで、彼らを応援して、PhDを持たれた方が活躍できるスタートアップや大企業、中小企業をつくっていってほしいということを改めてお願いしたい。

 ところが、齋藤大臣、もう一つやはり残念なのは、そもそも霞が関は大丈夫かという問題。これは言うまでもないですけれども、どんどん若い人も辞めて魅力がなくなってきていると言われていますが、資料八でございますが、最近、森田先生からこういうふうに中間報告を川本さんが受け取られたということで、今、齋藤大臣の口からもジョブ型ということがございました。

 これは、私、二十一年ここで仕事をしていても時々感じるんですけれども、二年ごとに人が異動して、何か細切れ過ぎちゃっているような印象があるんですよ。齋藤大臣も御著書の中でゼネラリストの育成ということの重要性は言われていまして、私、それは反論しません、それは賛成なんです。ただ、全員ゼネラリストでいいのかなという感じがして、何かちょっと、学歴だけじゃないけれども、もうちょっと腰を落ち着けて、その分野のプロみたいなふうにしていくべきじゃないかなと。

 例えば、今回水素の法案が成立しました、CCSも。その二年間だけ盛り上がってそこでやって、あとは野となれ山となれという気持ちではないと思いますけれども、組織としてはやっていただいているにしても、私、そういう人事で本当にいいのかなという強い思いがもう長いことしておりますので、その点に関して、齋藤大臣がゼネラリストの重要性を強調されているので、その点ちょっと、私はあえてお尋ねをさせていただきたいと思います。いかがですか。

    〔小林(鷹)委員長代理退席、委員長着席〕

齋藤(健)国務大臣 私は、実は経済産業省で大臣官房秘書課で人事を三年近くやっていまして、まさにこのローテーションの具体的なことをやっていたわけであります。

 今御指摘の点はそのときもずっと悩んでいたことでありまして、どこまで専門家を養成していくかということについての、まあ養成も分かるし、一方でやはりゼネラリストも必要だということの中で、どういう人事ローテーションをしていくかというのは悩みではありました。

 ただ、私、一つ発見いたしましたのは、役所の仕事も、担当すると、常に、今までに経験したことのない新しい事態にどう対応するかというのの連続であります。そういう事態のときに、こうしたらうまくいくんじゃないかという感覚を持てる人というのは、やはりゼネラルな経験をしている人にそういう発想が湧く。つまり、多様な経験をしている中で、新しい出来事に直面をしたときに、これはこうじゃないかということで見当がつきやすくなるというのが、やはりゼネラルな経験をしている一つの大きなメリットなんだろうと思うんですね。

 ですから、私の考えとしては、もちろん、今この瞬間どういう人事ローテーションを考えて行っているかというのはちょっと私は秘書課に確認はしていませんけれども、やはりゼネラリスト育成を前提としながら、この専門性を、時々何回か同じような経験をさせるなどして人事ローテーションをしていくのが一番いいのかなというふうに思っています。

 一方、社会人の経験者の採用ですとか弁護士の任期付採用などを通じて外部から専門性の高い人材を取り込むという取組、これも併せてやっていかなくてはいけないと思っていまして、これには、例えば経産省を辞めた職員が民間で専門性を高めて再度経産省に戻ってくるなんというケースも含まれているわけでありますので、そういう形での専門性の向上というものはしっかりやっていかなくちゃいけないかなと思っています。

田嶋委員 公務員の人事全体といえばもう本当に大きな話になってしまうと思うんですけれども、やはり、経済産業から見えているのは、その司令塔も、人の育成の在り方が大きな曲がり角に来ているような感じがします。

 齋藤さんは今ゼネラリストの重要性ということをおっしゃいましたけれども、本当は私は、一人一人の希望で、動きたい人は動くし、動きたくない人はずっと頑張るという選択肢、それがジョブ型だということだと思うんですよね。だから、新卒一括採用も含めて、まあ日本には日本のやり方があるからということで私もいいのかなと思ってきたんですが、事ここに至れり、これだけ惨たんたる状況がいろいろなデータではっきりしてくると、産業界のみならず、経産省を始めとした霞が関も少し考え直す必要があるというふうに私は感じています。

 この森田さんの御提言も含めて是非考えていただきたいと思うし、それから、PhDが何人いるかということは、産業界も一%、国も国家公務員の一%ですよ。極めてこれも低い。多いところは防衛省とか、まあ病院を持ったりしていますから、あるいはそういうところですけれども、経産省にもっと、自然科学も関わる話ですし、そうした深い分野に関する理解をしている人がしっかり腰を落ち着けて仕事をする必要、役割ということもあるのかなと私は思っています。全員がゼネラリストである必要は全くないと、私の意見を申し上げさせていただきます。

 それでは、ちょっと戻りますが、その前に、配付資料の九をちょっとお尋ねさせていただきたい。

 これは質問通告していませんけれども、齋藤大臣に以前、世襲問題についてしましたね。あのとき齋藤さんは、非常に話しづらいというようなことを言って、ここでこれ以上は止めさせていただきますということをおっしゃっていました。

 この配付資料は、野田佳彦さんが二回にわたって予算委員会で取り上げた質問、今まさに政治改革が始まったわけでございますので、これは私は大変大事だと。野田さんも令和の政治改革の一丁目一番地ということでおっしゃっておりましたが、齋藤大臣にお尋ねしますが、これはやはり御党の中ではタブーなんですか。

齋藤(健)国務大臣 今、経産大臣としてここに立たせていただいていますので、自民党の中で、しかも私はこの問題に担当として取り組んだことはありませんので、ちょっとコメントは控えさせていただきます。

田嶋委員 残念ながら初挑戦で僅かな差で落選をされたときに、御著書の中で、自分は地盤も看板もかばんもないとはっきり本に書いてあるんですよね。ということは、そこにやはりハンディがある、つらさがある。私と同じですよ。そういう状況の中で、この問題をいつまでもタブー視していて政治改革が完了するのかと私は思っております。しつこいと思われているかもしれませんし、経産大臣の所管とは違うかもしれませんが、同じ政治家として、私はこの問題を避けるわけにはいかない。だから、私も覚悟を持ってこういう場で聞かせていただいているんですね。

 野田さんのルパン三世の話は、多分閣僚席で聞いておられたと思います。もう一つ出た衝撃的な言葉として、野良という言葉ですよ。皆さんの中では野良という言葉が使われている。これは野田さんがおっしゃっていますから。それを私は聞きました、どういう方がそういうことをおっしゃっていたかという話も。悲しくなりますよ、悲しくなる。

 これは、金の問題で、地盤を非課税で譲る、そこを課税化するということだけでは解決しない問題ですよ。だから、世襲じゃない人だってたくさんいるんだから、もっと声を上げて、みんなでフェアなルールを作っていこうということを国民運動でやはりやるべきだということを、齋藤大臣は御答弁しにくいと思いますので、私から改めて提言をさせていただいて、その資料は後ほどじっくりとお読みいただきたいと思います。

 それでは、最初の方に戻らせていただきますが、前回やらせていただいた価格転嫁。

 改めて、今日は公取委員長、ありがとうございます。いい指針を出していただいて前進はしていると思いますが、配付資料の一のとおり、大変、欧米と比べると、これもまた彼我の差ですよ、本当に。デフレが三十年続いたから仕方がないとか、いろいろ意見を、ここに書いてある出典元からも聞かせていただきましたが。

 そこで、私、ちょっと一つ質問を飛ばしますけれども、公取委員長に、この指針の中で、発注者の行動として、最賃の上昇率に基づいた受注者の希望価格に関する尊重義務ということが書いてございますね。これは、尊重義務ということは義務づけるということと同じで理解していいのか、そこら辺はどうなんですかね、非常に微妙な書きぶりですけれども。

古谷政府特別補佐人 お答えをいたします。

 労務費の円滑な転嫁のための指針ということで、発注者、受注者双方に取っていただきたい行動、求められる行動ということでお示しをしております。したがいまして、法律上の義務とか、そういう位置づけではございませんけれども、発注者の方には、この指針に沿って受注者と十分な協議をしていただきたい、そういう趣旨の指針でございます。

田嶋委員 恐る恐るというか、用心深く、今までやっていなかったことを、一歩ずつ、石橋をたたいて進んでいるような印象なんですけれども、私は危機感として、前回も申しました、大企業はすごい結果が出たね、春闘が二回続けて、だけれども、全然上がらないよ、上がるわけないよとおっしゃる声を私は地元でたくさん聞いているんですね。その落差にどう対応できるのか。このままいけば、格差の広がることに背中を押していることになりかねないということがあります。

 一歩踏み出して、何がしかの義務づけみたいなことを含めて今後やはり考えるべきではないか。最低賃金というのがまさにそういう制度でありますが、格差をこれ以上中小と大企業の間で広げないために、何がしかのそうした制度を考えるお考えはおありかどうかを、経産大臣、お尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、この価格転嫁を何としても成し遂げたいということで我々は努力してきているわけでありますが、一方で、これはもうまさに民民の取引そのものというところなんですね。そこにどこまで政府が関与するかということで、大変悩みながらここまでやってきているということであります。

 今までやってきたことについてはもう御承知の上ではありますけれども、私は、この年二回のアンケート調査も抑止効果にはつながっているんだろうと思っています。そして、このアンケート調査に基づいて、発注側事業者の価格交渉、価格転嫁の状況を公表したり、結果の芳しくない親事業者の経営トップに対し事業所管大臣から指導助言等、かつてないような思い切った措置も講じてきているわけでありますので、私は、ある意味かなりぎりぎりのところをやってきているのではないかなというふうに思っています。

 一方、その環境整備も必要ですので、中小企業向けの賃上げ促進税制についても、五年間の繰越措置を創設して、赤字でも賃上げに挑戦できるような環境整備をするですとか、それから、生産性を向上させるための、例のカタログから選ぶような省力化投資支援を行うとか、かなりのことをやってきていると思いますが、こういったアンケート調査の結果なんかもこれからよく分析、検討して、また何ができるかということは引き続き考えていきたいと思っています。

田嶋委員 ありがとうございます。

 よくやっていただいていると思います。しかしながらということでございまして、是非、現場の声の中に分け入っていただいて、全然うちは上がらないよという方々の声を聞いてください。上がっている人はいいです。だけれども、全然うちは上がらないよ、うちの業界は上がるわけないよという声を私はたくさんいただいています。そこをやはり、よく動いているね、上がってよかったねじゃなくて、そこは是非両方の役所にお願いをしていきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 それでは最後の質問をさせていただきますが、資料の二を御覧ください。

 齋藤大臣が予算委員会で、我が党の階さんの質問の関係で、これは競争力強化法の関係です、競争力強化法。アメリカのバイデン政権のIRA法になぞらえてというか、同じような大きな税額控除ということを決めたわけで、私どもも、それを含めた法案には賛成をさせていただきました。

 その関係で、齋藤大臣から、「サプライチェーンを通じて、関係の中小・中堅企業等の投資や、その雇用従業員の方々の所得の確保、拡大にもつながっていく、そういうものでなければならない」ということで、この戦略分野の国内投資の税制を、「したがって、大企業優遇政策だと断定し切ることは私はできない」と、非常に回りくどい、二重否定みたいなことを言われておりますが、やはりちょっと自信がないのかなと。つまり、大企業支援になっちゃう結果になりかねないということを私もちょっと心配しているんですね。

 資料の、この次のページとその次のページを御覧いただきたい。

 要するに、アメリカの方は、いろいろなステージごとに分けて税額控除を実現しているわけですね。それが資料の三であります。結果として、部材とかいろいろなところの企業が恩恵を被り得るということですね。例えば、電極活物質とか、バッテリーセルとか、重要鉱物とか。

 次のページを御覧いただきたいと思うんです。四ですが、税額控除の譲渡という制度をあらゆる部分の税制に関して導入をしているのがアメリカでありまして、私は、これも過去のいろいろな苦い思いからでありますが、遅れているのを挽回しようとほかの先進国の制度を持ってくるのは悪くないわけで、ところが、部分的にコピーして、大事な部分はコピーしないために、日本だけがうまくいかないという事態になりかねないということをあえて私は申し上げたいというふうに思うんです。

 齋藤大臣に、これは最後の質問ですが、例えば、EVがたくさん売れたら、売れた台数に応じて大きな税額控除がその会社に行くということなんですが、台数が増えるからみんなハッピーだよねで済んじゃう話なのか、そうじゃなくて、サプライヤーとか中小・小規模事業者にもみんなそのベネフィットが均てんしていく、トリクルダウンという言葉じゃないと思うんですが、そういうことを考えていくのか、どちらですか。そこを明らかにしてください。

齋藤(健)国務大臣 まず、この政策というのは、戦略分野での投資を促進するというのが第一の目的であるということは御理解いただきたいと思います。

 その上で、こういった選定した戦略分野は大変裾野の広い分野でありますので、あわせて、中堅・中小企業を含め、サプライチェーンの強靱化にもつながっていかなくてはいけないという思いはありますので、ですから、そういう意味では、そういった経済効果がサプライチェーンを通じて幅広く雇用や所得に及んでいくということ、これも併せて重要だろうと思っています。

 そこで、先ほど来申し上げておりますように、いかに転嫁を進めていくかという努力も併せてやっていきますし、それから、直接税制で波及がされるというわけではないんですけれども、本税制と併せて、例えば、電気自動車の構成部品である蓄電池、部素材、さらには半導体の製造装置、部素材については、初期投資の大きさが課題であるということを踏まえて、補正予算で初期投資の支援策を措置していまして、こうした措置は、中小企業を含めたサプライチェーンに、彼らがこの部素材等を生産しているのであれば政策に乗ってくることもできるということでありますので、そういう様々な政策等をトータルに考えて、サプライチェーンの強靱化にもつながっていくように努力をしたいと思っています。

田嶋委員 ありがとうございます。

 税制によって波及させていくわけではないがとおっしゃいましたので、そこはちょっとアメリカとは手法が違うということでありますが、いつも申し上げているように、悪魔は細部に宿るわけでございますので、しっかりとチェックをし続けて、そして、本当に中小・小規模事業者までその恩恵が届くような、そういう仕組みであるかということを定点観測していく必要があるのではないかというふうに思いました。

 ありがとうございます。以上です。

岡本委員長 次に、松本洋平さん。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平です。

 今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 ちょっと短い時間ではありますけれども、テーマを二つさせていただきたいと思っております。

 まず最初は、フュージョンエネルギーについて質問をさせていただきたいと思います。

 実は、四月になりますけれども、当経済産業委員会、我が党の有志のメンバーで、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構那珂フュージョン科学技術研究所に視察に行ってまいりました。

 この施設におきましてはJT60SA計画というものが行われておりまして、核融合エネルギーの早期実現のために、いわゆるITER計画と並行いたしまして日本と欧州が共同で実施するプロジェクトといたしまして、JT60SAの装置を実際に拝見をして、説明をお聞きをしてきたところであります。この施設は、昨年十月二十三日に初のプラズマ生成に成功をするなど、成果を収めているところであります。

 現在、世界各国が、このフュージョンエネルギーの産業化を目標といたしまして、国家戦略を策定をしています。また、民間投資を喚起し、スタートアップらによる研究開発も加速させまして、技術の囲い込み、またサプライチェーンの強化というものを図っているところであります。

 また、お隣の中国におきましては、国家主導で多大な資源を投入いたしまして研究開発を加速しているということでありまして、まさに、本当に国際的に大変重要な分野という形の中で、それぞれが国が主体となってこの技術開発というものを進めている、そして実用化を進めているという状況だと思っております。

 このように、各国が積極的に取り組む背景は、一つは膨大なエネルギーの創出、二つ目が固有の安全性、三つ目が環境保全性、そして四つ目が豊富な燃料源などの特徴を有しており、世界のエネルギーをめぐる状況を一変させるほどのインパクトがあるからこそ、これを国家目標としてそれぞれの国がやっているということでもありますし、我が国としても、研究開発、今実用化に向けて取り組んでいるという状況だと理解をしております。

 視察にお伺いをした際に説明をしてくださった技術者の方がおっしゃった言葉というのが私は大変印象に残っておりまして、これまでは、石油もそうですしガスもそうですけれども、そうした資源を持つ国がエネルギー大国であり、エネルギーの覇権を握ってきたわけだけれども、これからの時代は技術を持つ国がエネルギー大国となり、エネルギーの覇権を握っていく社会にこれができれば変わっていくんですという説明が、私は大変印象に残っております。

 そういう意味では、まさに資源に乏しくて、これまで過去の歴史を振り返ったときに、この資源をいかに確保するのかということに大変苦労をしてきた先人たちの歴史があります。また同時に、この資源が一つの大きなきっかけとなって戦争に突入をしていったというのも我が国の過去の歴史だと私は思います。そういう意味において、私は、このフュージョンエネルギーというものを日本の国として大切にしていかなければいけないと思います。

 同時に、現在、我が国には既にこのフュージョンエネルギーに関する主要な技術が存在をしている国でもあります。そういう意味では、産業界と連携をして取組を加速するということがとても重要だと思いますし、そういう意味では、今、研究開発という段階という話ではありますが、やはり経済産業省の果たす役割は私はとても重要だと考えております。

 そこで、まず初めに、核融合に対する経済産業省の認識と支援の考え方がどういうものなのか、また、将来の産業化やサプライチェーン構築に向けた検討会を産業界としっかりと始め、進めていくべきではないかと思いますけれども、そこのお考えについてお伺いをいたします。

齋藤(健)国務大臣 核融合は、その反応において二酸化炭素が発生をしません。そして、万一の場合は反応が止まります。高レベル放射性廃棄物が生じないなどといったメリットがありまして、将来のエネルギー源として経済産業省としては大いに期待をしています。人によっては、夢のエネルギーという言い方をする人もおられます。

 一方で、反応の連続化ですとか、投入エネルギー量を超えるエネルギー量を回収し発電するめどがまだ立っていないということなど、越えるべき大きなハードルもありまして、将来に向けた研究開発を進めることが重要であると考えています。

 そのような状況を踏まえまして、政府としては、昨年ですけれども、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を取りまとめました。内閣府、文部科学省を中心に研究開発の支援強化等をこれに基づいて実施をしているということです。

 経済産業省としても、内閣府や文部科学省とも連携をして、この核融合と共通性のある分野の技術開発等、これへの支援を検討をしていきたいと思っています。また、将来の産業化フェーズ、これを見越して、今年三月に設立をされましたフュージョンエネルギー産業協議会、こういったものともいい連携をさせていただいて、検討していきたいと考えています。

松本(洋)委員 是非進めていっていただきたいと思いますが、フュージョンエネルギー、社会実装をしていくためには越えなければならないハードルが多数あるというのは、そのとおりであります。そして、その越えていかなければならないハードルを越えた先にある大きな節目となるのが、まずは実際に電気を発電していくということを実現していく発電実証という段階なんだと思っています。これを世界に先駆けて達成を目指していくことが大変重要であります。

 我が党の中、政務調査会のところに科学技術・イノベーション戦略調査会フュージョンエネルギーPTというものが存在をいたしまして、その中でも提言を出させていただいているところでありますけれども、その中でも、世界に先駆けての発電実証というものを提言として押し出させていただいております。

 こうした野心的な目標を国が設定いたしまして挑戦的な研究をする制度といたしまして、ムーンショット型研究開発制度というものがあります。このムーンショット目標の十というものが昨年設定されたんですね。それには「二〇五〇年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現」というふうになっているというふうに承知をしているところであります。

 今申し上げましたように、そういう意味では、核融合、まだ発電実証ができていない段階ではありますが、この発電実証を行うためにムーンショット型研究開発などをどう強化していくのか、その取組につきまして内閣府にお伺いをしたいと思います。

川上政府参考人 フュージョンエネルギーにつきましては、エネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する次世代のエネルギーとして期待をされておりまして、新たな産業として国際開発競争も激化しているという状況にございます。

 昨年策定をいたしました国家戦略では、フュージョンエネルギーの産業化をビジョンに掲げておりまして、ITER計画、原型炉開発と続くアプローチに加えまして、多面的なアプローチにより実用化を加速するということになっております。

 小型化それから高度化等の独創的な新興技術の支援策を強化するために、昨年十二月に総合科学技術・イノベーション会議におきまして、フュージョンエネルギーの多面的な活用を目指すことを掲げたムーンショット目標、これを決定いたしまして、現在、プロジェクトマネジャーの公募を行っているという状況で、国家戦略を踏まえた取組につきまして推進をしているという状況でございます。

 今後は、ITERそれからJT60SAで培った技術や人材を最大限活用いたしまして、国際連携も活用して原型炉に必要な基盤整備を加速するとともに、先日設立総会を開催をいたしました産業協議会、Jフュージョンとも連携をいたしまして、安全確保の基本的な考え方を今年度中に策定するということを目指してまいります。

松本(洋)委員 私自身、少し問題意識を感じているのは、よく、このフュージョンエネルギーに限らず、研究開発は日本は先行するんだけれども、それを社会実装していく段階で日本というのは勝てないというのは、もうこれまでも各委員からも質問が出ているとおりで、それは大きな課題だと思います。

 やはり、我が国のプロジェクトの進め方として、研究開発を進めて、そして、その後に産業化、実装化を進めていくということは、もちろんその順番は大事なんですけれども、一つの道路を順番を追って走っていくんじゃなくて、やはり、それぞれが一緒になって同時並行的に進めていくということも私は大変重要になっていくんじゃないかと思います。特に、この核融合のような、フュージョンエネルギーのような、大変、国にとっても極めて重要な技術に関しては、そして国際競争が大変激化をしている分野においては、そうした考え方の転換というものも私はやっていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

 先ほど齋藤大臣からも、そうした趣旨の取組を進めていらっしゃる、また、進めていくというお話があったと思います。これは日本の国の大きな転換点になるような技術でありますので、是非とも成功に導き、そして世界に先駆けて実現をすることができるようにお願いをしたいと思います。

 時間がもうありませんので、ちょっと順番を変えさせていただいて質問をしたいと思います。

 もう一つ質問させていただきたいのは、福島の話であります。

 私、以前、経済産業副大臣を務めておりました際に、福島の担当をさせていただきました。毎週末、福島に参りまして、被災者の皆さん、そして自治体関係の皆さんといろいろと膝詰めでお話をさせていただいたのを今でも覚えております。

 私が経産副大臣を務めているときに検討を始めたプロジェクトが、いわゆる拠点外、特定復興再生拠点区域外への帰還また居住の検討を開始するということでありました。

 地元の被災地の皆さんからは、自分たちのふるさとにいつになったら帰れるのか是非早く教えてほしい、是非それを実現してほしいという切実な声を大変強くいただいたところでありまして、それを何としてでも実現をしていかなければいけないという思いで、実際に、私の下に経産省でチームをつくって、その検討を始めさせていただいたというような歴史がございます。

 そして、令和三年に、国は、二〇二〇年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう避難指示解除を進めていくとの方針が示されまして、現在それに向けた作業が進められているというふうに認識をしているところであります。その進捗状況を是非教えていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 当時の松本副大臣の御尽力もありまして、御指摘のように、二〇二〇年代をかけて、帰還意向のある全ての住民が帰還できるように取り組むことが政府の方針となっております。これを踏まえて、特定帰還居住区域の制度の下に、本年四月までに大熊町、双葉町、浪江町、富岡町で計画認定がなされています。

 今後、認定された計画に基づきまして、除染やインフラ整備を始めとする避難指示解除に向けた取組を進めていくことになります。

 私自身、大熊町、双葉町の帰還困難区域を訪れて、まさに震災が起きてから時が止まったかのような様子をこの目で拝見をして、早く自宅に帰りたいという住民の方の思いに応えなければならないと痛感をしたところであります。

 地元の思いをしっかり受け止め、住民の方の可能な限り早い帰還に向けて、政府一丸となって、特定帰還居住区域の整備、そして避難指示解除に向けて全力を尽くしていきたいと思います。

松本(洋)委員 時間が参りましたので、これで質問を終わりたいと思いますが、帰還をされた皆さんが、しっかりとふるさとで生活をし、そして、なりわいによって暮らしていくことができるように、是非、経産省として責任を持ってやっていただきたいと思います。

 また、ちょうど私が経産副大臣をやっていたときは、まさにALPS処理水のタンクが満杯が近づいているという状況でもありましたから、これらに関しましても、地元の皆さんから大変いろいろな御意見を頂戴をしたところであります。

 今回、中ロが事実と異なるそういう発言をしまして、大変遺憾に思っているところでありますけれども、是非、大臣、しっかりと対応をしていただいて、そうした事実と異なる風評を払拭していただくように更なるお取組をお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

岡本委員長 次に、小野泰輔さん。

小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔です。大臣、よろしくお願いいたします。

 今日は、こども家庭庁さん、文科省さんにもお越しいただいて、あと警察庁さんにもお越しをいただいております。

 今日は、いつも私は産業政策を中心にやっておりますけれども、ちょっと違うテーマで質問をさせていただきたいと思います。

 昨日、日本版のDBS法案が衆院を通過をいたしました。それともちょっと関連するんですが、私の支援者の方がこの間私の部屋にもお越しになって、こういうことがあったんです。お子さんが塾に通っていらっしゃるんですけれども、その塾の中で、生徒同士で性的な加害行為が行われたという問題がありました。

 今回の、昨日通過した日本版DBS法案というのは、そういったものが対象になっていないというふうには思っているんですね。日本版DBS法案というのは、これはどういうものかというと、教員など及び教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止をするんだということで、あくまでも規制対象は、学校の先生とか塾の先生とか、そういった大人、教育者の側が性暴力を子供たちにしないようにということを規制する内容なわけなんです。ですから、生徒同士でいろいろな性暴力が起きた場合にどうするのかということは、なかなかこれはスコープには入っていないというふうに思うんですね。

 最初にちょっと御質問させていただきますが、今回私が相談を受けたものは学習塾における加害事案だったんですが、そういった学習塾での性加害事案の数とか、そのうち生徒同士の加害事案というものがどれぐらいの数なのかということを、把握できているのであれば教えてください。

和田政府参考人 お尋ねの学習塾における性加害事案数につきましては、学習塾に限定した統計がないことからお答えすることは困難でございますが、十八歳未満の児童に対する性加害全般の状況を申し上げますと、令和五年中の児童に対する強制性交等及び強制わいせつの検挙件数、刑法改正後の不同意性交等及び不同意わいせつの検挙件数の合計は二千四百三件であり、うち被疑者が十八歳未満であったのは三百五十四件となっております。

小野委員 数字をお答えいただきましたけれども、これは学習塾ということには限らないということですよね。やはり、データとしてもなかなか取れないというところもあるんだと思います。学習塾というような場面ではどうなのかとか、それから児童同士ということについても、これはなかなか絞り込みもできないようなところがあると思うんです。

 先週チャットGPTも4オムニというのが出て、既に使っていらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、私は早く行政がAIを導入すべきだと思っていて、例えば、こういった事案も、一枚一枚のデータを全部読み込ませると、今は、本当にものの数分で、自分で、定性的な文書といいますか、データベースみたいなものを整備しなくても、どれぐらいの事案が、例えば青少年同士の性加害事案があるのかということも全部、AIがデータを、ちゃんとその中身を全部調べた上で処理してくれますので、そういう意味では、やはり私は、AIをちゃんと行政で活用するということもやっていくと適切な手が打てると。行政がちゃんと対策するためには正しいデータがなきゃいけないので、そういう意味では、いろいろデータがないというようなこともおっしゃっているんですが、子供を守るという意味でも、この分野は進めていただきたいと思います。

 それから、一般の行政分野において早くAIを導入して活用する。経産省は来年からやるなんと言っていましたが、私は早くやった方がいいと思いますが、ちょっと話はずれましたが、そのことを申し上げておきたいと思います。

 何でこれを経産委員会でやっているかというと、私も、議員になって最初の頃に経産委員会のメンバーになったので、いろいろな役所のレクをいただいたんですが、その中で、教育に関しても実は経産省も絡んでいますよということで、この学習塾は、実は経産省の所管なんですよね。

 ということで、ちょっとお尋ねをしたいのが、そもそも、学習塾において生徒児童を保護するためのガイドラインというのは、何か経産省が作っているのか、あるいはこども家庭庁の方でやっているのか、それとも文科省なのか、ここについてお伺いしたい。

 そして、学習塾において、対策が実際に、こういった生徒同士での加害事案とか、そういったものにちゃんと対応するための対策は行われているのか、あるいは行政としてその状況を把握しているのか、これについてそれぞれお伺いしたいと思います。

山影政府参考人 経産省からまずお答えさせていただきます。

 学習塾におけます生徒を保護するためのガイドラインといたしましては、公益社団法人全国学習塾協会が、学習塾に通う子どもの安全確保ガイドラインというのを策定しているものと承知してございます。

 本ガイドラインにおきましては、安全を重視した学習環境の整備等を目的といたしまして、学習塾内の施設設備の安全確保を図るため、例えば、センサーや防犯カメラ等監視システムの活用等によりまして、死角をつくらない教室づくりに努めるということなどが示されております。その上で、このガイドラインに沿いまして、実際に全教室への防犯カメラの設置等の対策を行っている学習塾があるものと承知してございます。

 本ガイドラインの策定に当たりましては、経済産業省を始めといたしまして関係省庁も連携して作ったところでございますけれども、その改定も含めましてですけれども、引き続き、関係省庁と連携しながら、業界における取組を促進してまいりたいと考えてございます。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省として、民間事業者、学習塾等に対するガイドラインというのを単独で作成しているものはございませんけれども、今経済産業省からお話ございました、学習塾の児童生徒の安全確保について、公益社団法人全国学習塾協会がガイドラインを作成する際に、文部科学省としても、関係省庁の一つとして策定に協力してきたという経緯はございます。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 子供への性暴力防止という観点では、昨年度の補正予算によりまして、今年度、教育、保育業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するための指針のひな形ですとか事例集を策定することとしておりまして、その際には、今し方経産省や文科省の方から御紹介もいただいたような材料につきましても参考にさせていただきながら、いずれにしても、横断的に使えるものを策定していきたいというふうに考えているところでございます。

 教育、保育業界の団体においては、このひな形を参考としていただいて、各業界の特徴に応じたガイドラインを策定していただくなどをいたしまして、児童への性暴力防止を進めることを促してまいりたいというふうに考えているところでございます。

小野委員 基本的には、学習塾の業界団体が自主的にガイドラインを定めていて、各省庁とも、それを策定するための手助けをしているとか、あるいは、省庁同士で連携しながら状況の把握に努めているというようなことだろうと思います。

 まあ、それ自体でもちろん救われるということでもないんだと思うんですね。今回、そういうことが起こっていて、そして、被害を受けた親御さんともお話をしていて、恐らく、泣き寝入りをしているようなケースだってあるんじゃないのかというふうにおっしゃっています。

 その御両親ともおっしゃっていたのは、今の塾の成果主義というか、とにかく今は受験熱が非常に高まっていて、そういう中で成果を出さなきゃいけない、こんなトラブルというものは、証拠がないとかいうことであれば、塾の方も認知をしないというようなこともあるんじゃないのかというような御経験をされている。そういう中で、我々が、学習塾というのは相当長い時間子供たちで過ごすわけですから、そこでの安全性について行政としてもちゃんと関心を持って、そして適切に学習塾が運営されているのかということは、このDBS法案の範疇だけではなくて考えなければいけない問題だろうと思います。

 私もレクで皆さんに来ていただいたときに、被害事実の認識について、私が御相談を受けたケースだと、学習塾と被害生徒側が対立している、いやいや、そんな性的被害なんてうちには起こりようがないというようなことを言っているということなんですけれども、そういうときに、じゃ、行政として何ができるのかということもちょっと皆さんと議論したんですが、誰も何も答えられなかったということで、私もちょっと本当に、自分自身も行政にもいましたから、暗たんたる気持ちがしたんですね。

 先ほど、死角がないようにカメラを取り付けるとか、いろいろなガイドラインが定められているということですが、もちろん、それが完璧に行われるわけでもないとは思います。当然、教室に設備を十分に備えるだけの余裕もないというところも当然あるでしょうし、たとえその設備をちゃんと整備したとしても、どうしても二人きりになっちゃうような時間帯があったりするというようなことだって起こるとは思うんですね。

 ただ、やはりこういうことが起こっているし、そして、それを把握し切れていないケースもたくさんあるんだというふうに思うんです。私は、この日本で、私が御相談を受けた一件だけではないと思います。多くの親御さん、子供たちが、そういったことが行われたけれども、必ずしも学習塾の側で把握し切れていないものがあって、そういうものが泣き寝入りで終わってしまっているようなこと、その可能性をやはり我々は認識しなければいけないというふうに思うんですね。

 これは答弁がなかなか難しいので、私は不要というふうにしましたけれども、ただ、この場で、私はやはり、これは、経産省が一応学習塾の所管ということです。経産省は、大体、STEAM教育とか、教育の内容の方について、民間とともにブラッシュアップしていこうというような立場で今まで仕事をしてきたというふうに私は理解していましたが、今回のこの学習塾での生徒同士での性加害の問題というものを知りまして、やはり経産省も、このことについて、今回の私の質問でちょっと皆さんに頭に置いていただきたいというふうに思うんですね。

 あと、こども家庭庁、文科省も含めて、子供の安全を、今回のDBS法案ができたからということだけではなくて、もっともっとあらゆる可能性を考えて仕事をしていただくということを求めていきたいなというふうに思います。

 この問題、最後に、私も冒頭に申し上げたので、皆さんは私の申し上げている内容の繰り返しになるのかもしれませんが、一応お伺いしたいと思います。今回の日本版DBS法案は、生徒同士の性加害の問題の場面で一体何か機能するところがあるのかどうか、これを確認をしておきたいと思います。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 子供性暴力防止法案と我々呼んでおりますけれども、それ自体は、御紹介いただいたように、従事者による児童対象性暴力等の防止を念頭に置いたものでございますけれども、かつ、この枠組みにおきましては、学習塾についても、一定の要件に該当をして、内閣総理大臣の認定を受けることで、同法案のスキームの対象になるということでございます。

 そして、この認定を受けた事業者でございますけれども、性犯罪歴の確認ということがこの法案では特に注目されがちなんですが、幾つかの義務づけがございます。

 この認定を受けた事業者でございますけれども、まず、児童等が相談しやすい体制の整備をすること、児童等への面談等による早期把握のための措置、それから従事者への研修受講等、こういったことを義務づけておりまして、また、認定を受けるに当たりましては、児童対象性暴力等が生じるおそれがある場合に取るべき防止措置、疑いがあった場合の事実の調査、それから被害児童を保護、支援する措置について、対処規程という形で作成をしていただきまして、それを遵守していただくといったことも義務づけをしてございます。

 このように、子供間の性暴力の防止につきましては、本法案で先ほど申し上げたように直接対象とするものではありませんけれども、認定事業者等において、今申し上げたような措置を講じることによりまして、子供間の性暴力についても、早期にその端緒が発見されたり、また適切な対応が行われることは期待されると考えておりますし、また、その一環として、先ほど研修を義務づけるとも言いましたけれども、要は、事業者において、そうした子供たちの動きに対して敏感に気づけるようなことについても喚起するような、そんな研修素材の作成等も検討していきたいと思っておりますので、様々な意味で、子供間の性暴力防止に寄与するのではないかと考えてございます。

 子供同士となると、特に若いので、性犯罪歴の確認といった意味では、多分初犯の方がほとんどだと思いますので、そういった意味では、学習塾の先生を含むスタッフの皆さんが、ちゃんと気づいていただける、そういったことについて自分たちは責務があるんですよということを認識していただくことが、この法律の非常に重要な要素だと思いますので、いずれにしても、そういった形で、この法律案がしっかりと、子供同士も含めて、性暴力を防げるような形で運用していけるように努力していきたいと考えてございます。

小野委員 ありがとうございます。結構踏み込んで御答弁をいただいたと思います。

 加害者が、学校の先生とか塾の講師とか、そういう大人だけじゃなくて、やはり、あらゆることが子供を預かっている以上は起こるということを考えて、関係者に、認定事業者にも様々な義務が課せられておりますけれども、子供を守るということを、本当にいろいろなことを想定した上でやっていくというのを是非、こども家庭庁もそうですし、経産省もしっかり事業者とコミュニケーションを取りながら、こういったことが起こらないということのために努力をしていただきたいなというふうに思います。

 今日のこの質問は、被害を受けたお子さんも含めて御覧になっています。我々が本当に子供を守っていくんだという強い決意がないと、やはり安心して学べるということもできないと思うので、是非これは、大臣始め皆様にも認識をいただきまして、仕事を進めていただきたいというふうに思います。

 次に、この学習塾ということと関連して、私は、教育について皆さんとちょっと議論をさせていただきたいというふうに思うんですね。安倍政権のときも、子育てとか教育というものに対して国が支援をするべきだということで、努力はしてきたというふうには思うんですね。

 まず最初に、データをお伺いしたいんですが、我が国の家計からの教育支出及び国内総生産に占める教育に関する公財政支出の比率というものが、高等学校等就学支援金制度とか大学等の高等教育の無償化という施策でどういうふうに変化をしているのか。

 これは、例えば、OECDの中ではかなり下位だというようなことは皆さんももう御承知のとおりだと思いますが、結構、その後、先ほど申し上げたような無償化の施策とかで、順位は上がるはずだ、あるいはパーセンテージが上がるはずだというふうに説明はされていたんですが、これはどうなっているんでしょうか。

淵上政府参考人 お答え申し上げます。

 高等学校の就学支援の制度は、二〇一〇年から始まっておりますけれども、この前後の比較につきましては、まず、初等中等教育段階における家計負担の割合、これは、二〇〇九年度が七・七%だったものが、二〇一〇年度は五・〇%となってございます。また、初等中等教育段階の国内総生産に占める公財政支出につきましては、二〇〇九年度が二・七%で、二〇一〇年度が二・八%となってございます。

 高等教育の修学支援新制度は、二〇二〇年の四月から始まりましたけれども、この前後の比較としましては、高等教育段階における家計負担の割合は、二〇一九年度に五一・九%だったものが、二〇二〇年度には五一・二%、また、同じく高等教育段階における国内総生産に占める公財政教育支出の割合は、二〇一九年が〇・六%、二〇二〇年は〇・七%となっております。なお、二〇二〇年度につきましては、コロナの影響もあったかと思いますので、その影響も留意する必要があろうかとは思います。

小野委員 お聞きしていると、もちろんいろいろな変動要素はあると思うんですけれども、それほど変わっていないなという印象ですね。

 ですから、人づくりは国づくりですし、子供を育てるのにお金がかかって、なかなか子供の数を増やせないという現状がありますから、やはり、政府として、もっともっと子育て充実ということを図っていく、教育費についても、公的な財政支出というものの比率は、方向性としてはもっともっと増やしていくべきなんだろうというふうに思っています。

 皆さんにお配りしている資料をちょっと御紹介したいと思います。私の手元にも、その基になっている「平成維新」という大前研一さんの本で、ちょうど私はまだこの頃中学生だったんですが、ただ父親がこれをよく読んでいました。ビジネスマンは結構これを買っていたんですね。

 そこに書いてあること、私は本当に同感だなというふうに思うんですけれども、資料を御覧いただきますと、「学校教育が充実していれば本来いらない、不必要な教育関連費用」ということで大前さんが挙げておられまして、塾とか家庭教師とか、もろもろそこに書いております。参考書とか予備校、それから浪人のコスト、あるいは下宿をして都会の大学に通うとか、あるいは、教育をやはり充実させるためにはお父さんだけが単身赴任をして子供はそのままとどまるということで、単身赴任コストなんというのも入れていますが、年間で約三兆円ぐらいのお金が余計にかかっているんじゃないかというふうにおっしゃっているんですね。

 そのほかにも、「子供たちが必要のないことを学ぶ時間の損失」ですとか、「有益なことを習わなかったことによって起こる機会損失」とか、特にこれが私は深刻だと思いますが、「受験生や浪人生や親たちの余分な精神的負担など、表に出てこないものも考え合わせると、文部行政の不備のために起こる損失は膨大なものとなる。」ということで、厳しく指摘をされています。

 別に私は文科省が何もやっていないとは思いませんし、この「平成維新」の本では、第一章では通産省が一番激しくたたかれているということで、全ての省庁がぶった切られているので、皆さん落ち込んでいただく必要はないんですけれども。

 ただ、やはり私は、今、塾は本当に大変なんですよね。都内だと、もう小学校の四年生ぐらいから塾漬けになって、十時ぐらいまで勉強してというようなことをやっているんですね。それはやはり、受験戦争が激しくなって、特に公教育の方も信頼できないという親御さんが増えていると思うんですけれども、一貫教育というのが進んでいることもあるんですが、とにかく中学からもういいところに行かないと、やはり、子供たちが本当に大丈夫だろうかという親の心配もあるということなんですね。

 経産省は、所管官庁として、学習塾というところもスコープに入れて様々な取組をしていると思いますが、そもそも学習塾というのはどういうふうにあるべきなのかということについて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

山影政府参考人 お答えいたします。

 学習塾は、教育や学習に関わる多様なニーズに対応するサービス業の一つと考えてございまして、そのまさしく産業としまして健全な発達は重要なものと認識してございます。

 経済産業省といたしましては、これまでも、学習塾の業所管官庁といたしまして、例えば学習塾業界向けの新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインの策定といった、他省庁との連携が必要な案件も含めまして、学習塾業界とコミュニケーションを図りながら様々な取組を進めているところでございます。

 あくまでも教育産業の健全な発達のためという観点から、引き続き、文部科学省あるいはこども家庭庁等の関係省庁及び業界とも連携しながら取組を進めてまいりたいと考えてございます。

小野委員 レクのときにもいろいろ議論したんですけれども、私は、かなり経産省は踏み込んでやっていいんじゃないかと。コロナ対策とかそういう一般的なことはもちろん、必要なことはやるんでしょうけれども、ただ、やはり、どういう人材をつくっていくかというのは我々の国づくりにも関わることなので、経産省も、ではどういう人材が必要かというところから逆算をして、塾、それからあとは、私は、学校の現場にもちゃんと物を申していくというか、文科省と一緒に教育の施策を進めていくということも必要なんじゃないのかなと思うんですね。

 ちょっと時間がなくなってきたので少し急ぎたいと思うんですけれども、私は、日本の子供たちというのは大人以上に生産性が低いと思うんですよ。先ほど申し上げたように、もう小学校の半ば以降から受験勉強して、夜の十時ぐらいまで勉強している。昼間も学校に通ってフルタイムでやっているのに、夜もそんなことをやっている。土日だって結構出るわけですね。しかも、大人みたいに残業代がもらえるわけじゃありません。長々と夜まで勉強して、親が逆に金を払っているということで、私は、日本の教育自体が非常に非効率で、そして子供たちはもっと子供のときにやらなきゃいけないことがあると思うんですね。

 私は自分の子供を受験をやらせないというふうに思って、全然成績はよくないんですが、それでいいと思っています。もっともっとやらなければいけないことが子供のうちにはあるというふうに思うんですけれども、こうやって子供が夜中まで勉強をしているということが本当にいいのかどうか。

 これは大臣にも自由にお答えいただきたいんですが、やはりこれは、私は、もうちょっと考えなきゃいけない、もっと感受性が豊かで創造性のある大人をつくるにはこんなことじゃ駄目だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 一般論として申し上げれば、子供がしっかりと睡眠を取って健康を維持しながら生活を営むということは当然でありまして、受験勉強によってそうしたものを犠牲にするということは決して望ましいことではないと思います。

 御指摘のように、感受性豊かな時期にいかに様々な経験をするかということが人格形成、能力形成の上で私は極めて重要だと思っていますので、そういった時期に受験勉強一色に染めてしまうということは好ましいことではないというふうに思っています。

 経済産業大臣の立場から申し上げれば、いわゆるエドテックの活用によって、学習時間を削減しつつも、子供の理解状況に応じた学習を効率的に行って子供の学習の生産性向上を図るということは大事だと思っていますし、こうした考え方の下で、経済産業省では、AIドリル等を活用して、学校現場で、個々人が理解度に応じて学習を進める実証事業などを実施をしてきています。

 今後も、経済産業省として、文部科学省と連携をいたしまして、公教育を含めた子供の学習の生産性向上に貢献をしていきたいと思っています。

小野委員 今できることをやっておられるというようなことだろうと思いますが、私は本当に大胆に、これだけ大人も、時間内でちゃんと働き方改革をして生産性を上げましょうとやっているんですが、子供に関しては全く置き去りにされていると思うんですね。

 ここで大前さんが指摘されている年間三兆円というのは、私は、これは、もう公で金を出して全部買い取って、学校のオンタイムの時間、要するに子供たちが本来勉強しなければいけない時間の中でやるべきだと思うんです。それを、夜中にやらないと、日本の社会の中でちゃんと学校に行って、そして活躍することができないという世の中をつくってしまっているのが、私は今の問題点だろうというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなったので、経産省としてやはり公教育に入っていってほしいということをちょっと大臣に一言申し上げて、そういうことで、やはり我々、教育を文科省だけで考えるんじゃなくて全体でやって、大胆に、学校の時間の中の教育をどうやって充実させて、その後の時間を子供たちに開放してあげるということがやはり豊かな人間性の涵養につながるんだということをちょっと申し上げて、最後の質問に行きたいと思います。

 物流二〇二四年問題について、法案も通過をして、荷主側をやはりちゃんと指導するというようなことも含まれているんですけれども、経産省として、やはり私は意識の改革が必要だと思うんですね。いろいろ事業者側でも様々な手だてをするということもありますが、荷主が変わらないと、やはり結局この二〇二四年問題も本当の意味で解決しないだろうと思います。

 経産省として、その点、どういうことを支援とか啓発をやっていくのかを最後にお答えいただきたいと思います。

山影政府参考人 お答えいたします。

 物流の負荷軽減あるいは効率化をするに当たりましては、物流事業者のみならず、荷主の取組が極めて重要と考えてございます。経済産業省は、荷主企業の多くを所管することでありますので、荷主の意識あるいは行動の変革を積極的に促進していかなければならないと考えてございます。

 そのため、国土交通省、農林水産省と連携いたしまして、荷主が取り組むべき事項をガイドラインとして示し、その取組を促すとともに、所管業界に対しましては、自主行動計画の策定と同計画に基づく取組の実施を要請してまいりました。

 これを受けまして、既に、製造業、流通業等で百以上の団体、事業者が、業界ごとの事情も踏まえた自主行動計画を策定し、具体的な取組が始められていると承知してございます。

 また、先ほど御指摘ありましたとおり、荷主の取組を実効的なものとすべく、今通常国会におきまして、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律、これが成立してございます。これにおきまして、荷主に対して、荷待ち、荷役時間の短縮等に向けた取組を課すこととしておりまして、荷主側業界に対して、この法律に基づく取組を進めていただくよう、今後周知に努めてまいります。

 さらに、経済産業省といたしましては、並行して、中堅・中小企業等を含めた荷主企業における荷待ち、荷役時間の短縮等に資する設備投資やデジタル化を促進すべく、例えばバース予約システムやフォークリフト等の導入に関する実証事業を実施しまして、物流業界やドライバーの方々の負担軽減にもつながる荷主側の取組、これを積極的に促しているところでございます。

 経済産業省として、引き続き、関係省庁及び荷主側業界とも緊密にコミュニケーションを取りながら、物流の負荷軽減や効率化に向けた取組を官民で連携を進めてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

小野委員 ありがとうございます。

 終わりますけれども、やはり経産省がやる責任はかなり大きいと思うんですよね。荷主側の、立場が強い人たちを、どうやってちゃんと意識を変えていくのかということが必要だと思います。

 あともう一つ、やはり設備投資が大事だと思うんですよね。やはり仕組みを変えていくには、例えばパレットの問題とかというのも、結構負担が大きいよねとかという話があるんですが、やはり設備投資しないと、世の中は効率的に、そして合理的になっていかないので、ここについての大胆な投資というのもこれから進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、守島正さん。

守島委員 日本維新の会の守島です。

 早速質疑に入りたいと思います。

 先般の産業競争力強化法の際に確認させていただこうと思っていた事項も踏まえまして、独立行政法人中小企業基盤整備機構さんに対して聞きたいと思います。

 まず、当機構の目的及び対象を確認させていただきたいんですけれども、加えて、先般の産競法で定義された中堅企業は、機構の支援対象に入るのか。入るのであれば、この四月から、機構は新たな中期経営計画の中にあるんですが、各種目標のうち、中堅企業をどの程度ターゲットとしているのか、指標があれば教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 中小機構の目的でございます。

 中小機構、独立行政法人中小企業基盤整備機構法の第四条におきまして、「中小企業者その他の事業者の事業活動に必要な助言、研修、資金の貸付け、出資、助成及び債務の保証、地域における施設の整備、共済制度の運営等の事業を行い、もって中小企業者その他の事業者の事業活動の活性化のための基盤を整備すること」を目的としてございます。

 こうした目的に基づきまして、中小企業者を中心に、多様な経営課題に向けた専門家によるハンズオン支援や相談窓口の設置の支援、新市場の開拓支援、大学校等を通じた人材育成支援、事業承継などの推進支援、共済事業の運営などを実施しております。

 その際、法の目的に基づきまして、本来の目的達成に支障のない範囲内で、中小企業者以外の事業者に対する支援を行うことも認められております。

 昨今、地域経済を牽引し、良質な雇用を生み出す中堅企業の役割が重要となっております。中小機構におきましても、中小企業支援で獲得した様々なノウハウを活用し、中小企業以外の者を支援することは有用であると考えております。

 これまでも、大規模災害時における融資あるいは債務保証事業などの支援を行ってきたところでございます。中堅企業支援を通じまして地域の中小企業、小規模事業者に裨益すべく、適切に取り組んでまいりたいと考えております。

守島委員 あくまで目的は中小企業支援ということで、その目的とか法の定める範囲で中小企業以外にも支援するという話なんですけれども、一応、機構の主眼は中小企業という認識でいいと思います。

 中堅企業に関しての言及はなかったんですけれども、中小企業以外というところまで対象を広げると、仕事をするに当たっては、川上から川下まで大小様々な企業とか産業が結びついているので、金融機関も含めて、中小企業といえどステークホルダーだらけなので、実質どこまででも対象と言えるのかなというふうに感じてしまうんですね。

 ちなみに、機構に対する政府のこれまでの累計出資とか投資額というのを、簡単にでいいので教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 中小機構への政府出資でございますけれども、独立行政法人通則法第八条に基づきまして、その業務を確実に実施するために必要な資本金として出資をしているものでございます。令和四年度末時点の政府出資金は約一兆二千億円となってございます。

 この政府出資金の下で、中小機構は、中小企業者向けの工業団地やショッピングセンターなどの設備投資への融資、いわゆる高度化融資でございますが、このほかにも、ファンド出資を通じましたベンチャー、スタートアップ企業などへの資金供給円滑化のための支援、起業家や第二創業に取り組む中小企業を支援するためのインキュベーション施設の整備などに取り組んでいるところでございます。

守島委員 出資額という形で一兆二千億円投じているということで、中小企業支援施策の妥当性は別として、これほどの額を機構に出資している状況を鑑みると、やはり、政策の目的どおりに事業がなされているのか、予算がちゃんと目的どおりに執行されているのかというのが大事です。

 先ほどの話で、機構の支援対象が中小企業に関連するところまで包含した上で、それぞれ企業の規模別とかに線引きして、個々の数値目標、中堅はこうとかそういうふうに置いているわけじゃないので、具体にこれが中小企業施策という定義とか線引きが難しいというのもあって、私自身、この国会では、この委員会でも結構厳しめな意見を言い続けていますし、昨年の行政レビューなんかでも中小企業支援施策に厳しい指摘なんかもされていたので、この点はやはり精励していかなければいけないかなというふうに思っているんですが。

 このように、大きな予算を投じて国家も中小企業施策をやっていて、政策目的と予算を突合していかないといけないと思っているんですが、同時に、気になるのが、中小企業施策というのは異なる機関が似たようなサービスを提供していることです。

 例えば、国も中小機構を通じて、今おっしゃってくれた経営相談とか人材育成とかそういうのはやっていて、補助とか融資とかもやっているんですけれども、これは地方公共団体も同様にやっていて、例えば、東京都であれば中小企業振興公社であったり、私がいる大阪であったら大阪産業局という公益財団法人がやっていたりするんですけれども、都道府県も支援組織を有していますし、また各市町村もそうした支援組織を持って中小施策をやっている。また、別な話ですけれども、民間も商工会議所なんかで、それはもう会員向けですが似たようなことをやっていて、それに対して国も一定、補助金であったり出資というのはあると思います。

 このように、中小企業支援施策というのは、国とか、広域とか基礎という各レイヤーの自治体が担っていて、それぞれ仕事とかサービスが完全に分業されずに重なっている部分があるかなというふうに思っているんですけれども、不明瞭な役割分担による行政事務というのは、コストとか負荷というのを必要以上に生んでしまう上に、投資と効果の相関性を分かりづらくすると考えているんですけれども、このすみ分けということに関して中小企業庁さんはどう思っているか、教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、国と地方の役割のお話でございます。これは、中小企業基本法に国と地方についての規定がございます。

 中小企業基本法第四条でございますけれども、国は、同法の基本理念にのっとり、中小企業に関する施策を総合的に策定し、実施するということになってございます。

 それから、地方公共団体の方につきましては、中小企業基本法第六条に規定されておりまして、国との適切な役割分担を踏まえて、その区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施をするということでございます。

 いわば、国は、業種や地域横断的に広く中小企業一般に関する施策を講じるわけでございますけれども、地方公共団体は、その区域の諸条件に応じた施策をその地域ごとの実情に応じて策定、実施しているところだと承知しております。

守島委員 今おっしゃっていただいたように、国は総合的で、地方はその地域というすみ分けをしているということなんですけれども、先ほども私は話したんですけれども、実際に企業活動をエリアとか規模で線引きするというのは困難で、地域や産業の垣根も越えて有機的に事業が営まれているので、自治体は地域の支援といっても、結果的に受けるサービスは重複していたりするんですね。

 ちなみに、具体的に言うと、私は大阪市議出身なので、大阪府と市で重複している事務の統合なんかもいろいろさせていただきました。中小企業関連でいうと、大阪府の公益財団法人さんと大阪市の公益財団法人さんが、ほんまに百メートル、二百メートルぐらいの支援拠点でそれぞれ仕事をしていたんですね。大阪市は産業創造館というのがあって、大阪府はマイドームおおさかというのがあって、そういう似たような支援をしているサービス主体を統合して大阪産業局というのを設置して、利用者にとっても分かりやすいワンストップの窓口をつくったり、範囲の経済とか規模の経済を利かせて合理化するなど、機能強化を図ってきた経緯があります。

 その前でいうと、大阪府と大阪市が持っていた信用保証協会なんかも維新の下で統合したんですけれども、それも財政効果を上げています。

 ほかでいうと、例えば、都道府県の信用保証協会を有している自治体に市の信用保証協会があるということもまだありますし、僕が市議になった当初は、都道府県の信用保証協会から断られたから、市議さんを通じて市の保証協会でどうにかならないかみたいな陳情があったりして、昔と違って審査がそんなに差異があるわけじゃないので、そんな口利きはできないということで拒否していたんですが。今、そうした、審査の基準が明らかに違うとか、口利きがあるみたいなことはもうできないので、一元化してもそんなマイナスな影響が出るという、逆に、一元化して融資が広がるというのであればどんな基準でやってんねんという話になるので、そうした似たような行政サービスは統合できるところもあるとは思うんですけれども。

 これは一例なんですけれども、何が言いたいかというと、中小企業施策であればどの主体がやってもいいというわけじゃなくて、行政責任の明確化はさっき図られているとおっしゃっていましたけれども、やはり役割分担をしっかりすれば、財政効果であったり、利用者にとっては、ここに行けばいいよね、出口も分かりやすいというようなことにもつながってくると思うので、より効率的な支援機関が構築できると思っています。

 そうした絵を国も描いていって、地方は地方の役割があるとおっしゃっているんですけれども、やはり合理的な事例とかを、見直した中でそういう適配みたいなことを促していくべきじゃないかというふうに思っているんですが、考えを教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県、国と自治体の関係のお尋ねでございますけれども、府と市の関係、自治体の中のことについてはちょっと御答弁は控えさせていただきますけれども、国と都道府県の関係でございますけれども、上乗せとよく言われますけれども、そういったことについて申し上げます。

 例えば、補助事業なんかでもあろうかと思います。私ども承知しておりますのは、国の補助金が出て、自己負担分があるわけでございますけれども、例えばその地域の小規模事業者の経営状況なんかを鑑みると、自己負担分について更に上乗せをするといったようなケースがあると承知をしております。

 それから、支援機関についてでございますけれども、国も支援機関をもちろん持っているわけでございますけれども、やはりその地域に特有の産業だとか事業だとかというのがあると、そこにある種特化したような体制を構築されておられる、そういったような事例もあるようには承知をしてございます。

 御指摘のように、責任の明確化だとか、あと支援機関同士の役割分担のことでございます。これは、私どもも昔勉強してお示しした経緯もあるわけですけれども、あるいは、評価の在り方ですとか、これは個別の施策ごとに違うと思いますけれども、しっかりと対応してまいりたいと思いますし、自治体の方々にも、こういった考え方ですとか役割分担については、いろいろコミュニケーションを取る機会はございますので、適切にお伝えしてまいりたいと考えております。

守島委員 ありがとうございます。

 国と地方の役割分担もしかりですが、地方間に関してはなかなか国がコミットできないとおっしゃっているんですが、やはり、総務省なんかでも公営企業に対してこういうやり方があるよみたいなことを事例として展開していたりもするので、そこも一定、政府として、効率的な姿があるのであれば、是非提示していただきたいなというふうに思っております。

 こうした主張をさせていただいているんですけれども、この関連で、若干、じゃ、国の話に関して細かいことを例に挙げさせてもらいたいと思います。

 中小機構が中小企業向けの研修等を行う機関として、先ほどもおっしゃってくれた大学校、中小企業大学校を設置しています。この大学校は宿泊施設も有しているんですけれども、中小企業大学校の宿泊稼働率を教えてほしいのと、ちなみに、先日も言いましたが、私、この四月まで十五年間、診断士でしたので、そうしたこともあってちょっと確認したいんですけれども、大学の宿泊稼働率の中に中小企業診断士の登録養成課程での受講者が含まれているのか、分かる範囲で教えてほしいです。内訳ももし分かれば教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業大学校における宿泊施設の稼働率でございます。

 コロナ前は五割を超える水準でございましたが、令和二年度は、コロナ禍で研修自体を取りやめた期間があったため、稼働率も四割を切る水準まで低下をいたしました。

 一方、コロナ禍を経て、中小企業大学校の施設における研修に加えまして、必ずしも宿泊を施設としない各地域の都市部での研修ですとか、あるいはオンライン研修も整備をいたしまして、多くの方々に受講をいただける取組を進めております。こうした中でも、足下、令和五年度では、稼働率は五割弱まで回復している状況でございます。

 次に、お尋ねの診断士の関係でございますけれども、宿泊施設の稼働率には診断士養成課程の受講者は含まれております。

 中小企業診断士養成課程、御承知のとおり、六か月の長期間にわたりまして、演習を三百三十時間以上ですとか、現場における実習を三百十二時間以上実施するなど、こうした充実した研修プログラムを実施しておりまして、これによって診断士として必要な学識の応用能力や実務能力を習得していただくものでございます。中小企業大学校にとっても大切なプログラムであると考えてございます。

守島委員 内数までは分からなかったんですけれども、五割ぐらいしかなくて、かつ、それは診断士の養成課程を含めていると。養成課程を含めているということは、診断士は半年の養成課程ですけれども、それが年二回ぐらいあるので、かなりの分、水増しと言っては失礼かもしれないですけれども、稼働率のかさ上げに使われています。

 宿泊施設単体としてもやはり稼働率は低いんですね。宿泊施設の経営状態は、だから芳しくないんですけれども、その手助けとして、実際に国家試験をパスする、二次試験をパスするための施設として利用されているんですが、ちなみに、この登録養成課程、宿泊も含めた入校生って、研修費用は幾らかかるのか、教えてください。もう端的でいいです。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業大学校が実施する診断士養成課程の研修費用は、原則約二百三十万円でございます。

守島委員 大臣、リアクションしていただいたように、高いんですよ。二次試験だけですよ、これ。この登録養成課程を通れば、今みたいに、お金はかかるけれども二次試験はパスできるんですね。

 そもそも機構に多額の政府の出資金が入っているので、実態として、この大学が中小企業者のための施設になっているかという点を確認したいんですが、やはりこの費用であれば、一般的な中小企業に勤める人には負担は大きくて、そもそも入るのが難しい、有休とかもくれないとなかなか通えないということなんですけれども、この中小企業診断士の登録養成課程受験者の受験者数とか合格者、また産業別とか企業規模別のカテゴリーを分かる範囲で教えてください。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、診断士養成課程の受講生の選考方法につきましてでございます。一次試験といたしまして書面の審査、小論文でございますが、それから二次試験として面接審査を実施しております。この課程に入るための合否の判定に当たりましては、外部の診断士から成る委員会におきまして、審査基準などに基づきまして厳正に審査をしていると承知をしております。

 それから、直近の診断士養成課程の受験者の割合でございますけれども、産業別では信用金庫や地方銀行などの金融機関が約五割、商工会連合会や商工会議所などの経済団体が約二割を占めておりまして、規模別では従業員三百人超の金融機関などが約六割を占めているところでございます。

 同じく合格者の割合につきましては、産業別では信用金庫や地方銀行などの金融機関が約七割、商工会連合会や商工会議所などの経済団体が約二割を占めておりまして、規模別では従業員数三百人超の金融機関などが約六割を占めているところでございます。

守島委員 そうなんですよ、ほとんど金融機関と経済団体の方が行く施設になっているんです、これ。受ける母数も多いですし、合格率になるともっと金融機関とか経済団体に所属する人の方が高くて、もう九割になっているということです。

 金融機関も中小企業のためになっているという理屈、それはいいんですけれども、やはり、中小企業支援の目的というのは、直接的には中小企業支援をすることで、それが機構の主眼だというふうに思っているんですけれども、大学校が実態として金融機関とか経済団体の研修施設と化しているのであれば、それは目的とずれるとまでは言わないんですけれども、その必要性があるんだったら、僕は、直接金融機関の人材育成を支援するとかそういう名目で予算を組まれないと、政策評価しづらいと思うんですね。これもまるっと中小企業施策と言ってしまうと、本当に分からないんです。

 しかも、これは国家試験の合否に関連する支出なので、ステークホルダーが多いという理由で金融機関出身者とか経済団体出身者が結果優遇されていることに関しては違和感を持っています。僕は診断士の試験は運よく一次、二次を試験でストレートで合格することができたんですけれども、僕の知る範囲では、取引先の金融機関の診断士ホルダーというのはおおむね会社のお金で中小企業大学校に行って二次試験をパスして取得していて、地場の企業とか独立を目指している受験勉強をしている人が大学校に行って養成課程に入っているという人を聞いたことがありませんでした。今確認しても、やはり大きな組織に入っている人が受験して、実際行っている、合格して。合格もしやすくなっているというのが実態なんですね。

 つまり、そもそも、そんなにお金もない、時間もない、会社からの支援もない、そういう中小企業従業員とか、独立して頑張ろうと思っている、コンサルタントを目指そうという人に対する支援をしているのかというと、そういう施設になっていないというふうに思っています。

 こうした偏在に関して意見がありましたら。これも端的でいいです。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 今金融機関の方々のお話でございますけれども、中小企業大学校において金融機関を含む支援機関などの職員が診断士養成課程を受講するということは、中小企業基盤整備機構は中小企業支援担当者などの養成を行うということにもされておりますので、そういった趣旨からは外れるものではないというふうに考えてございます。

 地域の金融機関や商工会、商工会議所などの中小企業関係団体、これは中小企業に対する経営の診断や助言を通して中小企業を支援することを業務としているものでございまして、診断士養成課程、先ほど申し上げましたように、非常に充実した研修プログラムを六か月にわたって行っております。こうした診断士養成課程を受講されることで、支援業務の能力の向上に直結するというふうに考えてございます。

 中小企業庁といたしましても、経済団体や金融機関の方々も含めて、こうした診断士養成課程の研修を修了した方々が、将来、経営の現場で質の高い中小企業支援を行って、中小企業にもしっかりと裨益することを期待するところでございます。

守島委員 今おっしゃる点は否定していないんですれけども、やはり、受験者の割合より基本的にそういう金融機関とかの方の合格率が高くなっているということは、どちらかというと、そういうところの支援機関に比重が行っているということは実態として見られるわけですね。

 そういう人たちというのは、会社も休めて、有休ももらえて通えるというので、やはりフラットな立場で受験している人とはちょっと違うと思っているんです。

 僕が資格取得したときは、一次、二次合わせて大体四%ぐらいの合格率だったので、資格取得、僕もサラリーマンを辞めて一年で取ると結構奮起してやったので、今後の人生において死活問題になる人もいると思いますし、そういう人のための組織でもあってほしいなというふうに思っていて、一定、条件があって、雇用環境が守られて、大きな組織に所属している人のための研修機関であるのであれば、それは中小企業支援施策とまるっとしていいのかというと、ちょっと微妙だというふうに思っていて、そういう金融機関の人材育成をしようというのであれば、そういう予算として投じてくれれば、こういう議会でチェックしたり、いろいろなところ、会計検査院とかでもそれが正しいのかというふうな意見にもなると思うので、そういう点で評価したいなというふうに思っています。

 今回、一つ例示をさせていただいただけなんですけれども、全体的な流れとしては、中小企業支援というカテゴリーにすると本質的に政策目的と予算が突合しづらいというのが僕は問題意識であって、中小企業に対する支援名目で各レイヤーが支出をして、総花的にこれが中小企業のためですよと言ってしまえば、本当に重なる部分、二重行政を生んだり、じゃ、本来目的としている中小企業の支援というところにちゃんと予算が行っているのかというところが非常に分かりづらくなってくると思っています。

 そうしたことも踏まえて、配置の在り方であったり、予算のつけ方であったり、予算の明確化ということに関して政府は取り組んでいただき、評価しやすいような仕組みにしていただければ、しっかり、これが中小企業のため、こういう支援機関のためというような形というのが分かりやすくすることで、まるっと中小企業施策、全部いい、悪いというような、行政レビューとかでもそういう評価になってしまうので、そこはやはりもうちょっと明確化していってほしいなというふうなことを思いとして伝えさせていただきたいところでございます。

 残すところ時間があと僅かなので、最後、少しだけライドシェアについて聞きたいと思います。

 私も超党派のライドシェア勉強会に参加しているので、この間の取組は理解していますし、一定、評価もしているので、細かい話は除いて。

 まず簡単に、先日、全国知事会から、万博を契機としたライドシェアの規制緩和の話があったわけなんですが、大臣にも話があったと思います。万博はもう一年を切っているので、需要増は目に見えているわけで、新法成立とか法改正を待っていたら間に合わない可能性があります。

 こうした需要を賄うために、現在、供給方法等は国交省の方で考えているのか、想定があれば教えてください。

舟本政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪・関西万博に国内外から多くの来訪者が見込まれております。会場への輸送や、開催を契機とした大阪や関西の周遊の活発化などにより、移動需要は高まるものというふうに認識してございます。

 これらの対策につきましては、これまで、国際博覧会協会を始め、地元自治体や経済界などの関係者の間で検討が行われておりまして、国交省としても協力をしてまいっております。

 その検討に当たりましては、多数の来訪者の足を確保するという点でございますので、まずは大量輸送可能な公共交通機関の確保が先決であるというふうに考えてございます。その上で、タクシー等の個別輸送機関による移動ニーズについては、交通渋滞や道路空間の制約なども踏まえて対応していくことが求められている、このように考えてございます。

 いずれにいたしましても、道路混雑や環境問題、ドライバー不足などの社会的な問題を生じさせることがないように、万博時の移動需要の増加に対応していきたいというふうに考えております。

 この観点から、鉄道、バス等の公共交通機関の利用促進を基本としながら、タクシーの営業区域を越えた他地域からの応援、また、日本版ライドシェアとも呼ばれておりますけれども、自家用車活用事業などの個別輸送機関の活用も含めまして、どういった交通サービスが地元にとって必要なのかというのを、地元の声もしっかりお聞きをして適切に対応してまいりたい、このように考えてございます。

守島委員 ありがとうございます。

 まず公共交通機関ありきですけれども、その後にタクシーの指定地域解除とか、そういう方策も考えているということで。

 けれども、万博の場合は二十四時間の規制緩和を求めているというところもあって、タクシーの応援がニセコのように入っても、それが賄えるかというと、本当に賄えるか分からないという中で、多様な主体のことも考えてほしいなというふうに思っているんですね。

 最後に大臣に伺うんですけれども、このビッグイベントがもう目に見えてあるわけで、移動需要が賄えず、国内外の方が万博に限らず大阪とか関西の施設とかエンターテインメントが堪能できないということは機会損失だなというふうに思っているので、やはりポテンシャルをフル発揮することが大事だと思っているんですが、直接担当ではない、所管ではない部分もありますが、こうしたビッグイベントの移動方法に対する規制緩和に対する大臣の率直な考えを教えてください。

齋藤(健)国務大臣 大阪・関西万博は二千八百二十万人の来場者を想定しておりまして、来場者の輸送の確保、これは重要な課題であります。この点につきましては、博覧会協会を始め、大阪府市、交通事業者など関係者間で、電車、バスなどの大量輸送が可能な公共交通機関による輸送を中心に検討が進められていると承知をしています。

 その上で、会期中の一般交通需要については、大阪府市、博覧会協会を中心に、その抑制、分散を目的とした、時差出勤、在宅勤務などのいわゆるTDM、交通需要マネジメントの実施の働きかけを進めているところと認識しています。

 御指摘の万博会期中の交通需要増に対応するためのライドシェアの更なる規制緩和の必要性については、まずは、本年四月から開始された自家用車活用事業を各地で利用いただき、その利用状況を踏まえつつ、国土交通省において検討されるものと認識をしています。

 経済産業省といたしましては、博覧会協会や関係省庁とも連携しながら、適切に来場者の輸送確保が行われるように、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

守島委員 ありがとうございます。

 大臣、万博を盛り上げるために関係省庁に働きかけることはすごく助かることだと思いますので、是非どうぞよろしくお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

岡本委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

岡本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、四十日後、七月三日に予定されている新紙幣発行、紙幣のデザインを一新する改刷に伴う中小企業、小規模事業者支援について、飲食店を事例にただしたいと思います。

 二十年ぶりの紙幣切替えに伴って、券売機やセルフレジ、自販機、両替機など、無人で金銭を収受する機器を導入している事業者は対応が求められるということになっております。

 そこで、赤澤財務副大臣に伺いますが、飲食店等で用いられる食券券売機の普及台数、これは、前回改刷時の二〇〇四年と直近二〇二三年で、それぞれ何台ということになっているでしょうか。

赤澤副大臣 金銭機器メーカーの業界団体から聴取をいたしました市中の食券券売機の普及台数を申し上げますと、二〇〇四年末では二万一千台、二〇二三年末では四万九千五百台であると承知をしております。

笠井委員 この間に、二十年間で二・四倍にも増えているわけであります。

 券売機というのは、新規に導入すると約百万円、紙幣読み取り機、それだけのみの交換でも数十万円の費用がかかる。

 赤澤副大臣に伺いますが、国が行う新紙幣発行による負担増ということになるわけですから、券売機の買換えや読み取り機の交換には当然国の支援が必要ではないかと思うんですが、どうお考えですか。

赤澤副大臣 新日本銀行券については、偽造抵抗力強化などの観点から、本年七月三日より発行を開始する予定であり、民間においても、金銭機器の改修などの改刷に対応するための取組が進められているものと承知をしております。

 今回の改刷に当たっては、政府としては、過去の改刷と同様、補助金等の助成は措置しておりませんが、民間事業者などにおかれても、偽造通貨を受け取ってしまった場合の経済的損失を未然に防止をし、安全な取引を確保するというメリットがあることについて御理解いただければと思います。

 なお、今回の改刷については、民間事業者などの皆様になるべく負担をかけず、円滑に改刷への対応を進めていただけるよう、新紙幣のサイズを現行券と同様にするほか、改刷の公表、これは二〇一九年の四月九日でございますが、約五年間の対応期間を設けて計画的に実施してきたところでございます。

笠井委員 公表から約五年の対応期間というんですが、赤澤副大臣、財務省と日本銀行、国立印刷局が共同で券売機などの銀行券取扱機器の製造企業などに対して行ったサンプル閲覧会というのがありますが、その第一回目というのはいつで、そして、主要な券売機製造企業が新紙幣に対応する券売機の発売を開始したのはいつでしょうか。

赤澤副大臣 今回の改刷に当たって、委員御指摘の新しい日本銀行券に関するサンプル閲覧会第一回目を開催をしたのは、二〇二二年一月の二十五日から二月九日までの日程でございました。

 また、もう一つのお尋ねであります主要メーカーにおける新紙幣に対応した券売機の発売日については把握できておりませんが、金銭機器メーカーの業界団体によりますれば、主要な金銭機器については、昨年の五月以降、順次本格的な出荷を開始していると聞いているところでございます。

笠井委員 そこで齋藤大臣に伺いますが、公表から五年ということなんですけれども、そうはいっても、昨年から発売開始ということで、ちょうど一年前ということでありますが、これはやはり、事業者の準備期間としては十分とは言えないんじゃないかと思うんですが、大臣はどのように見ていらっしゃいますか。

齋藤(健)国務大臣 その準備期間そのものについて、ちょっと私の役所の立場としてお答えは申し上げられないんですけれども、本年七月三日からの新紙幣の発行に向けて、財務省や日本銀行等の関係各所において準備が進められています。

 副大臣の答弁とかぶりますが、自動販売機や食券券売機の設置者等が改刷に対応することは、事業者自身が偽造紙幣の被害から身を守るために必要な投資である一方、旧紙幣が直ちに使われなくなるわけではない中、改刷への対応は事業者の判断に委ねられているということであります。

 このことから、政府が改刷への対応のための支援を行わないこと、このことについては御理解いただきたいと思います。

 なお、これまでも政府において、機器の改修等に際して何らかの支援を行ったことがないことも申し添えたいと思います。

笠井委員 準備期間については経産大臣としては言えないと言われたんですけれども、この準備期間というのは、まさにそういう点でいうと、中小・小規模事業者にとっては目の前の喫緊の問題だということで、コメントしないというのは私はいかがかと思うんですが。

 国税庁によりますと、券売機も含む飲食店業用の設備の減価償却とか、それから法定耐用年数は八年であります。多くの事業者にとっては、まだ使える設備を改修、入替えしないといけないということになる。事業者からは、仕方がないので、旧札、今のお金をお店で用意しておいて、新札を使いたいお客さんが来たら、手動で交換、両替しようかと悩んで困っているという話も、全商連、全国商工団体連合会から直接聞いております。

 齋藤大臣、そもそも券売機普及というのは、経産省としても、省力化、そして人手不足解消という点でも推奨してきたものだと思うんですね。じゃ、そのために経産省が行っている、新紙幣対応の券売機導入に使える補助、支援制度は何か、それから、新紙幣対応の券売機への買換えや読み取り機交換に使える補助、支援制度というのはあるのか、改めて確認したいと思います。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しになりますけれども、今回の改刷に当たっては、過去の改刷と同様、改刷への対応のための民間事業者等への支援措置は、先ほど申し上げた理由で、講じることは考えていないんですけれども、ただ、御指摘のように、経済産業省としては、中小・小規模事業者等を支援する観点から、事業者から改刷に関する相談があった際には、その内容が別の補助金等の制度の目的に合致をし、御活用いただける可能性がある場合には、該当する支援施策等を紹介をさせていただくということになろうかと思います。

笠井委員 この別の補助金というのは何ですか。

齋藤(健)国務大臣 省力化を推進するための法律とか、持続化給付金なんかで、販路開拓を目的としたものであるということであれば、可能性はあり得るのではないでしょうか。

笠井委員 ちょっと、趣旨が全然違うんですよ、別の補助金といったって。これに伴ってということになって、実際かかることに対しては。

 経産省に説明を求めると、新札対応そのものが目的でないけれども、新規に導入する場合には、IT導入補助金や中小企業省力化投資補助金を活用して新紙幣対応機器を新規に購入することは可能だと。しかし、今持っていて、新札対応の券売機に入替えを目的とした補助は考えていないということになってきているわけですね。

 既に券売機を使っている事業者には何の補助、支援もなくて、自分で負担しろということになります。この五年間ということで見ますと、コロナ禍で顧客との非接触での対応を求められたりするなど、そういう中で券売機を導入した業者もいらっしゃったわけです。

 現在券売機を導入している事業者が新紙幣を手作業で交換していては手間が増えるだけになる、新札対応機器に入れ替えること自体が省力化とも言えると思うんです。まだ使える機械でも、国の都合で変えなくちゃいけないということになるわけですよね。

 だから、全国の中でも、愛知県の大口町や東京都葛飾区では、中小企業事業者を対象にして、今回の新紙幣に対応する自動券売機等への買換えや、読み取り機交換への補助を行っているという事例が実際にございます。ホームページにも掲載されております。

 大臣、コロナ禍に続いて、今、物価高騰で中小事業者、中小企業は本当にあえいでいる。そういう中で、その上に、国の新紙幣発行で事業者がよもや廃業に追い込まれることがあってはならないと思うんですね。国が支援に踏み切るべきではないか、少なくとも、現行の制度、とりわけ新規導入補助、支援を柔軟に運用しながら、そしてまた複雑な申請も要らないということも含めて、やはり中小事業者それから小規模事業者の負担にならないように、その軽減ということでしっかりと支える、これは本当に経産大臣としてもやるべきことではないかと思うんですが、改めて、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 同じ答弁になってしまうんですけれども、中小・小規模事業者等を支援する観点から、事業者から改刷に関する相談があった際には、その内容が補助金等の別の制度の目的にどうやら合いそうだということであれば、御活用いただける可能性があるのではないかと考えていますので、こういう観点からしっかり取り組んでいきたいと思います。

笠井委員 もうあと四十日後ということであります。今、別の補助金ということで繰り返し言われましたが、やはり当事者にとっては、国が新しい紙幣を発行するんだよね、何でその分、負担をこんなにやらなきゃいけないんだよ、もう本当に事業、大変だよねということに直面しているわけですから、今からでも大至急対策を取る、柔軟にということで、様々なことで相談にも乗り、手だてを取って支えていくという姿勢はお持ちだということを確認したいんですが、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 先ほど申し上げたとおり、別の補助金の制度の目的に合致をして、御活用いただける可能性がある場合には、しっかりと対応させていただきたいと思っています。

笠井委員 きちっと対応するということで、大臣としてもやっていただきたいし、省を挙げて、とにかく、中企庁も含めてですが、検討して具体化をしてもらいたいと思います。

 赤澤副大臣はここまでで結構です。御退席ください。

岡本委員長 じゃ、赤澤副大臣、御退席ください。

笠井委員 次に、消費生活用製品安全法、電気用品安全法など、製品安全四法の現行法の執行に関わってただしたいと思います。

 これら四法の流通後規制ということの一環として、検査のために買い上げる、試買テストが行われています。

 経産省に伺いますが、この試買テストとはどのようなものか、簡潔に紹介していただきたい。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 試買テストは、製品安全四法、正式に申し上げますと、消費生活用製品安全法、ガス事業法、電気用品安全法及び液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律でございます。これにおきまして、特に危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品として政令で指定されている特定製品また特別特定製品につきまして、技術基準に適合しているか、PSマークの表示などに係る法的義務が適切に履行されているかを確認するものでございます。

 このため、毎年度、委託事業で、市場に流通している特定製品等を購入し、法令違反がないかについて確認をしております。

 法令違反が確認された場合には、事業者に対して販売中止や回収などを求めるなど是正のための改善指導を行い、事業者による販売中止や回収などの再発防止策が適切に行われているか、フォローアップも行っております。

 また、試買テストの結果につきましては、その結果を消費者への情報提供や、類似の不適合事案の未然防止などの観点から、発見された不適合事案の概要、また購入の際の注意点を示すとともに、不適合事例の件数や、PSマークの表示がないのか、技術基準に適合していないのかといった不適合の内容などにつきまして公表しているところでございます。

笠井委員 これから聞いていこうというのに、試買テストは何かと言ったら全部答えちゃったら質問もあれですけれども、これから聞いていきます。

 今から二十五年前の一九九九年に、基準・認証一括法案の趣旨説明で、官民の役割分担を見直し、民間事業者の能力を活用などとして、消費生活用製品、電気用品等の政府認証を廃止するという法律改正が行われました。

 当時、我が党は、製品流通前の安全チェックをなくすものであり、事故の未然防止により国民の生命や安全を守るという国の責任を放棄するものだとして、認証制度の廃止に強く反対をいたしました。

 齋藤大臣に伺いますが、このとき、官民の役割分担の見直しとして、政府は法案の趣旨説明で事後措置の充実を図るとしていた、そのことは間違いないですね。確認したいと思います、端的に。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の法律案は、消費生活用製品等の安全性の向上等が見られる中、当時の通商産業省所管の基準・認証関連法律の全般的な見直しを行って提出したもので、この法律案において、措置事項の一つとして、委員御指摘の安全水準の確保等を目的とした事後措置の充実というものを位置づけております。

笠井委員 つまり、開発、生産時の安全確認はメーカーに委ねるけれども、製品流通後は政府がしっかり監視するというものだったわけであります。

 そこで、経産省に伺います。

 法案成立後、一九九九年十一月九日、当時の通産省消費経済審議会製品安全部会が取りまとめた答申があります。消費生活用製品安全法の特定製品及び特別特定製品の指定というものですが、その中の「今後の消費生活用製品に対する安全対策に関する留意点」で、試買テストについてどう記載しているか、記載事項について紹介してください。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の一九九九年、平成十一年でございますけれども、十一月九日付にて消費経済審議会で取りまとめられた答申、「消費生活用製品安全法の特定製品及び特別特定製品の指定について」におきまして、試買テストについて言及がなされているところでございます。

 具体的に申し上げます。

 答申の中でございますけれども、二ポツというところでございますけれども、「今後の消費生活用製品に対する安全対策に関する留意点」といたしまして、先ほど御指摘いただいた基準・認証一括法による法改正により製品流通前の規制を合理化し、製造事業者等の自己確認を基本とした制度に移行することになったが、政府としては、製品流通後の措置を適切かつ機動的に発動していくことが重要であり、このことが製造事業者等の自主的な安全への取組を促し、より一層の安全レベルの向上を図ることにつながるという認識が示されているところでございます。

 御指摘の答申におきましては、この認識に基づきまして、指定された製品の安全確保をしていく上での政策的対応の一つとして、試買テストの充実による市場監視機能の強化を行うことが重要と指摘されたところでございます。

笠井委員 製品流通後の政府による監視モニタリング、抑止力として試買テストの充実による市場監視の強化を求めていたわけであります。今紹介されたとおりです。

 では、直近五年間の製品安全四法に基づく試買テストについて、委託契約額の年度別の合計額は幾らになるでしょうか。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 令和元年度から令和五年度までの過去五年間における、先ほどの製品安全四法に関連する試買テストの委託事業の金額につきまして、各年度ごとの合計額を申し上げますと、令和五年度の、これは契約額でございますけれども、約一億四百万円、令和四年度の決算額につきましては約八千七百万円、令和三年度の決算額については約九千百万円、令和二年度の決算額については約九千万円、令和元年度の決算額については約八千八百万円となっております。

笠井委員 一九九九年当時の政府認証を廃止した法案の審議の際に、試買テストの同年度予算で一億六千万円強と当時の通産省が答弁しているわけです。充実どころか、逆に、直近でいうと、三分の二に減ってしまった。大臣、なぜこのような事態になってしまったんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 試買テストは、PSマーク対象製品を市場から購入して、その製品が安全性に関する表示などについて法律に基づく義務を適切に履行されているものかを確認する調査事業なので、もう買い上げる費用というのが入っているわけですね。

 それで、試買テストでは、毎年、法律違反や事故等の状況に応じて対象製品を決めて、購入をして調査を実施しているわけです。このため、試買テストに必要な製品の購入費用と連動をするわけであります。契約額の多寡をもって事業の評価をすることは、必ずしも適切ではないのではないかと考えています。

 例えば、石油風呂釜というものが対象品目になれば比較的高価でありますし、ライターみたいなものに焦点を当てれば安価なものになるということでありますので、そのときの物によるということが大きな影響なのではないでしょうか。

笠井委員 本当に、こういうのは、なべていくと、いろいろな凸凹があって当然で、その時々の必要な額で契約したからこうなったんだという話なんですけれども、なかなか苦しい答弁だと思うんですね。

 じゃ、その試買テストの結果はどうか。

 経産省に代表例で伺います。過去五年間の電気用品安全法の試買テストで購入した機種数は幾つで、そのうち技術基準の不適合が確認されたのは何機種、何%になるでしょうか。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 過去五年間の電気用品安全法の対象製品に対する試買テストにつきましては、令和四年度は、百六十三機種を購入し、現在、結果は精査中でございます。令和三年度は、百七十六機種を購入し、基準不適合は八十九機種、違反割合は五〇・六%。令和二年度でありますけれども、百四十二機種を購入し、基準不適合は七十二機種、違反割合は五〇・七%。令和元年度は、百三十七機種を購入し、基準不適合は五十三機種、違反割合は三八・七%。平成三十年度になりますけれども、二百四十五機種を購入し、基準不適合は百二十六機種、違反割合は五一・四%でございました。

 基準不適合の具体的な内容を一つ申し上げますと、令和三年度の試買テストの結果におきましては、例えば、モバイルバッテリーにおきまして、過充電の保護機能が不十分であり、上限充電電圧を超えるといったもの、また、ヘアアイロンにおいて、充電プラグにコンセントとの接続部分の発熱を防止するようなポッチ、穴が開いているやつですけれども、あれが抜けているとかいった技術基準が確認されたところでございます。

 なお、試買テストにおける試買製品につきましては、元々、法令違反が多い製品又は事故が多い製品を中心とし、安全確保の観点から、技術基準の不適合が強く疑われるような銘柄であったり商品モデルを優先して購入することとしておりまして、この考え方に基づき、特に最近では、先ほども申し上げましたモバイルバッテリーを中心に試買テストを行っているものであります。したがいまして、製品の選択の時点におきまして、市場の流通製品における不適合の割合が当然高くなるもの、そういうものを狙いながら選択をしているというものでございます。

笠井委員 今、聞いたことに対して、またその評価も述べられたわけですが、個別の例も挙げられましたが、しかし、齋藤大臣、少なくとも近年では、買い上げた機種の半数前後で何らかの不適合が確認されている。なぜこんなに不適合率が高いのか、大臣から見ての御見解を伺います。

齋藤(健)国務大臣 試買テストにおける試買製品は、そもそも、法令違反が多い製品あるいは事故が多い製品を中心として、安全確保の観点から、技術基準の不適合が強く疑われるような銘柄、そういう商品モデルがある場合には、それを優先して試買テストを行っているということが大きな要因なんだろうと思っていますし、あるいは、消費者庁が集約する自治体や消費者からの報告も含む事故情報なんかも活用して、技術基準の不適合が強く疑われる銘柄、そういうものを優先してテストしていますので、それなりの高い率で不適合が発見されるということではないかと思います。

笠井委員 要は、ランダムに選んでいるのではなくて、危なそうなところを選んでやるので、不良率、不適合率が高いというわけですが、大臣、技術基準不適合や表示違反の製品が確認された事業者には、具体的にどのように対応しているんですか。

齋藤(健)国務大臣 試買テストの結果、技術基準への不適合が確認された場合には、まず事業者に対して事実関係を照会、確認をした上で、製品の構造や性能、表示に関する違反状態の是正、社内における法令遵守の徹底といった再発防止策の実施を求める行政指導を行っています。

 また、技術基準の不適合により消費者に危害を及ぼすおそれがある場合には、国から事業者に対し厳しく指導を行うとともに、事業者において自主的なリコールも実施されています。

 さらに、事業者による適切な改善措置が取られないような場合には、必要に応じ、製品安全四法に基づく法的措置を講じていくことになります。

 具体的には、報告徴収や立入検査の実施や、違反状態を放置している場合には、改善命令、PSマークの表示の禁止処分、製品の回収等を内容とする危害防止命令といった行政処分を行うことなどを通じて、違反行為の是正や再発防止策が取られるよう措置していくこととなります。

笠井委員 今述べられました、そして、法令遵守状況についてはフォローアップしているというのが経産省が予算委員会に対して、要求書に対しての回答でもあるわけですが、是正のための改善指導とか法令遵守状況についてのフォローアップということに関していうと、じゃ、実際に改善されたことを確認をしているんでしょうか。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣が申し上げましたとおり、違反が発覚した場合には行政指導等を行っておりますけれども、それでも従わない場合には、立入検査、報告徴収等を行っているものでございます。(笠井委員「ですから、改善されたことを確認しているのか」と呼ぶ)

 そういう面では、実は、実際に法的措置に行く前に、ほとんどの事業者において、自主的なリコールをしたり、製品回収をしたり、消費者への周知をしているということで、かなりの措置が取られているというふうな認識でございます。

笠井委員 では、不適合や表示違反の製品が判明した事業者が、今度は別の製品で、そこでも不適合や表示違反を行っているということはないんでしょうか。

辻本政府参考人 毎年、例えばリコールにつきましては百件程度行われたりしておりますし、我々の方も実際に製品の試買テストのときも数を調べますが、多くの場合におきまして、既に是正はされているというのが我々の認識でございます。

笠井委員 その事業者が別の製品でまた不適合とかを出していることはないですかと聞いているんですよ。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 もし仮に事業者がもう一度是正しそうな製品をした場合には、改めまして、再度、是正措置の行政指導を行うこともございます。

笠井委員 いや、別の製品でしたことがないのかということを聞いているので。そのことの答えがないんですよ。

 齋藤大臣、改善指導、フォローアップ、それは本当に、注意せよということで、必要に応じて行政処分もやるんですからということなんだけれども、私は本当に厳しい姿勢になっていないと思うんですね。結果として、市場に流通している不適合品の割合もなかなか減っていないというのがリアルな現実なので、これで抑止力として機能しているかどうかという問題。

 どう見てもなっていないんじゃないか、我が国内で流通する不適合品を減らしていく対策になっていない、試買テストの在り方については、やはり抜本的に見直しをするということが少なくとも要るんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

辻本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどモバイルバッテリーの例を申し上げましたけれども、実は毎年モバイルバッテリーにおきましては発火事故等が起きているのは、これは事実でございます。毎年、集中的に試買テストを行っても、まだ起きている。

 そういった観点で、どういうところからモバイルバッテリーが入っているかと申し上げますと、実はインターネットモールという形で、海外からのモバイルバッテリーの消費者の購入が行われている、こういう実態がございます。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、こういうふうな製品にどう対処するかという観点から、今般、来週でございますが、審議いただきますが、製品安全四法の改正を行いまして、特にインターネットモール経由でそういった製品が入ってくるのに対してどういう措置をするのかといった、事前の措置についてしっかり共有できるように、法改正をまさに検討しているところでございます。

笠井委員 今現実に起こっていることに対してどうなのかと聞いても、そういう答えがないんですよ。これから法案を審議しますから、そのことについてはしっかりやりますが、一つの事例をもって、そうだというようなことじゃなくて、これだけ高い不適合品が出ているのにということを聞いているわけです。

 最後に、大臣、市場からの買上げ、それで過半数前後も不適合が確認されているのは異常事態だと思うんです。二十五年前に政府認証を廃止して、流通前の確認を民間任せにしてしまったことが今日の事態を招いたんじゃないかということも考えなきゃいけない。政府認証の廃止を根本的に見直して元に戻すべきじゃないか、その点はいかがですか。

齋藤(健)国務大臣 現行法におきましても段階に応じて措置を講じるわけでありますけれども、最終的には危害防止命令ですとか罰則の措置ということも講じるという現行法のたてつけになっていますので、しっかりと運用していきたいと思っています。

笠井委員 今の制度でできているというけれども、これだけ高いのが変わらない状況になっている不適合がある。そして、処分ということでも、実際はほとんどやっていないわけですよ、今日は時間の関係でやりませんけれども。こんなことでは国民の安心、生命と安全は守れない。

 「一般消費者の生命又は身体に対する危害の防止を図る」という消安法の第一条の目的に立ち返った製品安全行政の実施を求めて、今日は質問を終わります。

岡本委員長 次に、鈴木義弘さん。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 もしかすると最後の一般質問になるかなというふうに思って、齋藤大臣と議論ができるのに感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 では、一問目。

 クリエーティブなベンチャー的支援というのはよく経済産業省も使う言葉なんですけれども、なかなか世界にブレークする商品が生まれにくくなったなというふうに感じる一人です。

 ある識者は、現代の日本の科学者は研究時間のほとんどを不得意な管理書類の山をつくるのに費やしている、この状況が続けば、やがて、科学者になれるのは、管理書類の山をつくるのは得意だけれども科学知を生み出すのは苦手な人だらけになってしまうんじゃないかというものです。目的と手段は見事なほどに逆転しちゃっている、科学の進歩は止まってしまうという考え方ですね。

 科学行政は、科学者に対して、不確実な革新と確実な成果とを同時に求めているというんです。すなわち、競争的資金という名の下で、確実、着実かつイノベーティブ、革新的な成果を出せると見込まれる人にしか研究費を出さない制度になっちゃっている。

 革新的な研究、イノベーションは、誰も手をつけていない不確実なものだからこそ革新的だというふうに評価されると、当たり前のことを言っているんです。そして、誰もやったことがないものに確実に成果が出せるはずがない、科学者は、こうした矛盾した要求に対する防衛策として、成果がすぐに出たものしか手をつけなくなると述べているんです。

 私も、もしその立場で、補助金をもらいたい、研究費をもらいたいといえば、そっちの方向に走るかもしれません。

 これは、役割は、文科省と経産省、農水だとかいろいろな事業部がありますけれども、科学行政に任せるだけじゃなくて、経済産業省としてきちっとそこのところはやはり捉えてやっていかなくちゃいけない。これはなかなか難しいと思うんです。何か問題が起きると、ハードルをどんどんどんどん上げて、そのハードルを上げて条件をつけていって、それで補助金を出したり、採択して事業費、研究費を出していくんですけれども、今までのやり方を、これから先もずっと同じやり方をしたら、なかなか金の卵を産むめんどりが増えていかないんじゃないかと私は思うんです。

 では、例えば、今までやってきたやり方で、大谷翔平じゃないんですけれども、何割の打率があったんですかね、一番直近のもので。その前のものも、もしあれば教えてもらいたいと思うんです。これは、科学技術、イノベーションの所管の政務官もお見えいただいていますね、よろしくお願いします。

平沼大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、やはり成果主義に走り過ぎるとイノベーションが生まれないんじゃないかという御指摘だと思います。

 ちょっと具体的な数字の打率につきましては、通告いただいていないのでまた精査させていただきたいと思いますけれども、現在、政府といたしましては、革新的なイノベーションの創出に向けて、基礎研究から社会実装まで様々な段階があって、それぞれのステージに支援する多様な事業が必要で、重要であると考えておりまして、例えば、研究者の自由な発想に基づく研究を推進する科学研究費助成事業、いわゆる科研費でございます、を実施しているほか、創造的な革新的技術のシーズ創出を目的とする戦略的創造研究推進事業、さらには基礎研究成果の社会還元を支援する研究成果最適展開支援プログラム、A―STEPなどを推進をしております。

 そして、また、内閣府においては、野心的で大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進するムーンショット型研究開発制度のほか、府省や産学官の垣根を越えて基礎研究から社会実装まで一貫して推進する戦略的イノベーション創造プログラムなどを実施しております。

 政府といたしましては、第六期科学技術・イノベーション基本計画の中において、「挑戦的な取組を継続していること等をより積極的に評価する。」との記載もされておりまして、これを踏まえまして、基礎研究からイノベーションの創出に至るまでのシームレスな支援を引き続き実施してまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 過去にこの話は何回もお尋ねしているんですけれども、例えば、ムーンショットもそうなんですけれども、一次の審査のときは名前を伏せさせるんです。どこの誰がやっているか分からないで、計画書だけ出してもらって、それでみんなで読み合わせして審査をしてもらう。それで、第二次の審査のときに、きちっとどこの誰だかと言ってプレゼンしないと。そういうやり方も提案していますよ。

 だって、どこかの何とか学会の頂点にいる人の指示を受けた人たちが審査員をやっていれば、この人が唱えていた理論以外のところの理論を出して、それを商業化しようとかなんとか考えたら、全部この学会からははじき出されるんです。真逆の理論を唱えていても、それが正しいか正しくないかはこの人方は分からないということなんです。それで今言ったみたいに力強いイノベーションを起こしていくんですといっても、いつもこの人たちの中で物事を決めていったり採択していたら、イノベーションが起きないということなんです。

 世の中には、釈迦に説法になるかもしれませんけれども、理屈が分からなくても、理論が確立されていなくても、商品になっているものはいっぱいあるんだそうです。では、その一つ一つにきちっとした理論が組み上がっていて、理屈が通っているのか。そうじゃなくても、世の中広く一般に売られているし、流通もしている。では、なぜそういうことが起きるのかということなんです。形の中にいて、幾ら、頑張れ頑張れ、これだけの補助金を出すからといっても、その考え方でやったら、いつまでたっても、こっち側にいる人の発案は日の目が出ないんです。そこをもう一度考え直してほしいということなんです。

 では、今政務官は数値は持ち合わせていないと言うんですけれども、内閣府が今までいろいろな科学技術、イノベーションのことをやってきて、じゃ、何割だったんですか。これは一年で結果は出ないですよ。三年でも出ないし、五年でも出ないかもしれない。十年でどうか、分かりませんけれども、そこのところで、内閣府の所管である科学技術、イノベーションと、経産省の方で、金の卵をめんどりにするように努力していくのが経産省の役割というんだったら、それはそれでいいでしょう。だったら、今まで採択したいろいろな事業がどのぐらい世の中に出て、それが有益なものになっていったのか、日本を牽引する産業に育っていったのか。数値も持ち合わせていなくて、これから美辞麗句を並べていいことだけやっているようなふりをしたって、何も生まれないんじゃないかという考え方なんです。

 もし数字を持ち合わせていれば、内閣府の方でお答えいただきたいと思います。なければないで結構です。

平沼大臣政務官 お答え申し上げます。

 現状、今日の答弁の事前にはいただいていませんでしたので、また省内で、ちょっと出せるか出せないかも含めて検討させていただきたいと思います。

鈴木(義)委員 レクに来たときはちゃんと話したんですけれども。

 では、経産省がやっているもので、今までの打率が何割だったか、教えてもらえませんか。過去のものも、打率が上がってきたのか、上がったり下がったりしているのか、下がってきちゃっているのか、そこのところですね。

石井大臣政務官 お答えさせていただきます。

 先ほど来の話ですけれども、経済産業省の研究開発事業の大部分を実施するNEDOにおいて、研究開発事業終了後における五年後実用化率、五年後の実用化率を定期的に調査しているところでありまして、この調査結果によると、五年後実用化率の実績は、ざっと申し上げますけれども、平成二十年度から二十四年度までの五年間は約二五%、平成二十五年度から二十九年度までの五年間は約二八%、平成三十年度から令和四年度までの五年間では約三七%と、増加して推移をしております。

 委員の御指摘のとおり、研究開発の支援にとどまらず、その成果を社会実装することが重要であると認識しております。このため、今回の産業競争力強化法の改正案においては、研究開発拠点としての立地競争力を向上させるためのイノベーション拠点税制の整備や、NEDOによるディープテックスタートアップに対する設備投資支援、又は、産学の共同研究による知財、標準化を活用したオープン・アンド・クローズ戦略の構築支援などの措置を盛り込んでおります。実用化へ向けての支援という意味でもございます。

 引き続き、経済産業省としても、研究開発など成果の着実な社会実装に向け、効率的な研究開発支援を推進してまいります。

 以上です。

鈴木(義)委員 これは物差しの当て方が、私は、各省庁ごと、ばらばらでいいと思っている一人なんです。

 例えば、特許の数が何本出ました、引用論文数が何本になりました、そこで、上位一〇%の大学が何とか、企業が何とかという尺度でみんな測っていくんですけれども、もしかしたら、一つだけの特許で百億も一千億も稼げちゃう技術ができるときもあるでしょう。

 今パーセンテージでお示しいただいたんですけれども、社会実装できました、商品として外に出ましたといっても、じゃ、それで幾ら稼げたのかという話なんです。特に、産業界に近いところの仕事をされている経済産業省は、やはり、幾らもうかったのかとか、幾ら売上げが増えたのかというところに力点を置くべきなんですね。

 文部科学省みたいなところは、基礎研究をベースにしてやるというんだったら、やはり、論文の引用数の数が高い低いというのは、これは一つの尺度になると思うんです。それを、じゃ、経産省だとか文科省の外郭団体のところにも同じ数字を当てはめ、物差しで測ろうとする。そうじゃないんだと思うんです。それの方が楽だからそうしているだけの話で、別にNEDOが直接事業をやっているわけじゃなくて、予算を配分しているだけの話。では、物質研が文科省の所管であったり、産総研が経産省の所管でありますけれども、そこを、同じ、特許だとか論文の引用数で尺度を当てて、あなたには補助金、これやります、これは将来見込みがありますって、それはちょっと違うだろうという発想なんです。そこのところをもう一回切り替えないと、これから先はイノベーションは生まれていかないんじゃないかという考え方です。是非御検討いただけたらなと思います。

 二つ目。

 先日、経産省は、大したもの、これはよく考えるなと思う、懸賞金型の研究開発事業を本格導入したと新聞の記事に出ていたんです。これも、NEDOを通じて、衛星データの活用やリチウムイオン電池の回収技術で相次ぎ募集を始めた、懸賞金は技術課題や社会課題の解決につながるテーマをコンテスト形式で募ることで、従来の補助金に比べ成果を重視できるとし、今後、人工知能技術の活用なども懸賞金型の開発を実施するというふうに新聞の記事で載っていたんです。苦肉の策なのかなと個人的には思ったんですが、幾つか気になる点があるのでお尋ねしたいと思います。

 ある研究機関は、二〇二六年までにAIが学習するデータが不足する可能性があるという警告を出しています。AIモデルが自らを訓練するためにデータを使い果たすにつれ、AI企業は実際の人間に学習用コンテンツを作成するようになっているというものです。データを入力させる基のデータを人間が手作業でやるということですね。

 企業は、何年もの間、写真の識別やデータの注釈づけ、ラベリングといった単純なタスクのAIモデルを訓練するために、ギグワーカーを使ってきました。しかし、急速に進歩するテクノロジーは、現在、それを訓練するためにより高度な人材を必要としているものということです。私がAIをぱっと作れるわけじゃないということですね。

 ある担当者は、AIをユーザーにとって本当に有益なものにするには人間によるデータの層が重要であり、それは、本当に賢い人間や熟練した人間、特定の専門知識と創造性を持つ人間によって作られる必要があると述べているんです。

 まあ、これから、募集をかけていくのはいつか分かりませんけれども、採択する際に、その作品を点数化して見える化するのはすごく評価できるんですけれども、その中身までどうやって判断するのかというのは、今の時点でもし分かればお答えいただきたいと思います。

田中(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 令和四年度に経済産業省及びNEDOが試行的に実施したAIに関する懸賞金型事業におきましては、民間や大学を含めた幅広い専門家に審査員として参加いただいたところでございます。また、革新的なアイデアや技術を持った者に多く参加してもらうため、AI分野の学会やコミュニティーへの情報発信、AI分野で著名な研究者によるPR活動を実施したところでございます。

 委員御指摘のとおり、AIに関する懸賞金型事業の実施に当たっては、解決すべき課題や評価基準の設定、さらには研究成果の審査等においても、AIに熟知した専門人材の参画を求めることが極めて重要だと考えております。

 そもそも、この懸賞金型事業は、国としてクリアすべき明確な課題を掲げて、特定の技術や手法によらず、目標を達成した者に報酬を与える仕組みであり、委託、補助型に比べて参加者の事務負担を大幅に軽減することが可能であることから、これまで国の研究開発事業に参加してこなかった層へのアプローチも期待できるというふうに考えております。

 懸賞金型事業の参加者に対し、専門家による技術的な支援やネットワーク構築の機会を提供するほか、表彰者に対する更なる委託や補助による追加支援、さらには調達や共同研究などのインセンティブと、共に組み合わせることも検討しておりまして、成果が次につながるような工夫も併せて行っていきたいと考えてございます。

鈴木(義)委員 私は、自由な競争の方がいいと思っている一人なんですけれども、AIに関してだけは、ちょっとよく考えてやった方がいい、規制をかけた方がいいとさんざん過去にも言ってきたんですけれども。

 総務省と経産省が四月にAI事業者ガイドラインというのを公表されて、昨日ですか、審議会の中で答申が出て、AIの規制をかけていきましょうと。これから詳細は詰まっていくんだと思うんです。

 その中で、やはり警鐘を鳴らしている人がいて、そうだなと思うんですけれども、法律面だけじゃなくて、AIを使う側の方が誤って使ってしまった場合に、とんでもないことが起きてしまうんじゃないかということなんです。だから、AIを世に出してしまって、自由に使い始めてしまったらやはり取り返しがつかないから、その前段で規制をちゃんとかけましょうという考え方なんです。

 一つは、人権その他の権利侵害、精神的、肉体的苦痛を与えてしまう潜在的リスク、企業としての信頼を大きく失うおそれがあるんじゃないかとこの方は警鐘しています。GDPRに対応してきた欧米と比べ、日本の組織はコンプライアンス対応に関する成熟度が総じて低いため、基礎を築くところから始める必要があるとこの人は指摘しているんです。

 生成AIが身近な存在になりつつある中、EU議会では、御案内のとおり、規制法が設けられ、ネットや監視カメラ映像から顔画像を収集するなど、人権を脅かしたり人の行動を誘導するAIが禁止になったというふうに聞きます。ベルギーでは対話型AIと会話していた男性が自ら命を絶ったと報じられ、エリザベス女王の暗殺を試みた男性が逮捕される事案が起きていると聞きます。

 AI進化が芽生え始めておりますが、人間を危険にさらすチャットボットやAIに、よい倫理観を持たせることができるのかということです。人間は、トレーニングすることによって倫理観を持たせられるように、いろいろ教育もしてきたし、社会の中、また企業とか組織の中でそれを大事にしてきた文化がありますけれども、AIに本当に倫理観を持たせることができるのか。

 できると言ってもらえればそれで結構ですし、分からないと言えばそれで結構ですから、是非お答えいただきたいと思います。

石井大臣政務官 お答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、AIは、イノベーション創出だけではなく、様々なリスクをもたらし得る存在であると認識をしております。このため、事業者がリスクを認識しながら必要な対応を取ることができるよう、先月、総務省と共同でAI事業者ガイドラインを発表したところであります。

 また、AIのリスクへの対応という観点では、AIの安全性を確保することも重要であります。国際的なAIガバナンスにおける議論も踏まえつつ、二月に、内閣府を始めとする関係省庁の協力の下、当省所管の独立行政法人情報処理推進機構、IPAに、AIセーフティ・インスティテュート、AISIと略させていただきますが、を中心に、アメリカやイギリスを含む国際的なパートナーや国内の産官学と連携しながら、AIの安全性評価手法の検討などの取組を進めてまいります。

 その上で、御指摘のAIの法規制の在り方についても、今後も、国際的な動向を踏まえながら、AI戦略会議などにおいて政府全体で検討していくものと考えます。経済産業省としても、関係府省と連携して、積極的に貢献してまいります。

 以上でございます。

鈴木(義)委員 日本人はやはり真面目だなと思うし、法律は守りましょうとか法治国家が大事だということで、ずっと積み上げてきた文化の国なんだと思うんです。

 でも、世界の中にはそうじゃない国はいっぱいあるから、だから、そのときに、日本からはじかれた人が、そのそうじゃない価値観の国に行ってしまって、AIをまた作ろうとすると、悪意を持って作り始めちゃうんですね。それは止められないと思うんです。

 だから、そこのところを、やはりガバナンスをどうつくっていくかというのは、法律を作ったからとかガイドラインを作っただけでは、なかなか収め切れないのかなと思うんです。

 是非、一年先なのか二年先なのか分かりませんけれども、早い時期で方向を、また、いろいろな諸問題が出てきたらやはり微調整していくような法律を早く制定した方がいいと思う一人であります。

 次に、最後の質問になりますけれども、ビジネス環境の変化の加速とともに人材不足が深刻化する中、どの企業もかつてないほど真剣に組織開発や人材マネジメントに取り組んでいる、しかし、それらの取組は本当にうまくいっているんだろうかということなんです。役所も同じ環境に置かれていると思うんです。

 変化に適応できる組織とできない組織では、一体何が異なるんでしょうか。衰退する組織には共通する特徴があると、ある識者は言っているんです。

 組織学習については、ダブルループ学習とシングルループ学習という考え方があって、過去の前提や常識そのものを疑い、新しい行動の枠組みを取り入れる学習プロセスがダブルループ学習、既存の枠組みや過去の成功体験は正しいという前提で改善策を考える学習プロセスがシングルループ学習です。

 例えば若手の退職率が上がるという出来事が起きた場合、経産省でも同じことが起きていると思うんです、一般の企業でも同じです、ダブルループ学習では、自社のマネジメント基盤、人材育成基盤が時代と合わなくなっているのではないかというふうに考えて、自社の環境ややり方を見直します。その一方、シングルループ学習は、最近の若者は根性がないといった考え方をする。笑っているということは、大臣もやはりそういう考え方なのかな。シングルループ学習しかできない組織では、外部環境の変化に対応できない。私は、これは、民間企業だけじゃなくて、行政機関や、私たち政治に身を置く、政治の世界でもやはり当てはまるんじゃないかと思うんですね。

 いつも疑問に思うとか、何でこんなことを言われなくちゃいけないのかと思うか思わないか。いいからやれと言うのも大事なんです。四の五の言う前にやれよ、やって結果を出せと言うのも一つの方策だと思うんです。ただ、どうしてもやはり、さっきの科学技術の話じゃありませんけれども、考え方が硬直化しちゃっているということなんです。それを積み重ねで、不連続の連続でずっとやってくるんですけれども、その考え方自体がもう時代に合っていないんじゃないかというふうに、ちょっと一人一人が思いとどまって意識を変えることで新しいものが生まれてくる、新しいところに目が行くんじゃないかと思うんですけれども、そのところに関して、もう時間が来ましたので、大臣ですか、政務官、最後だから、頼みますよ。

齋藤(健)国務大臣 今日、鈴木委員の質問に当たらなかったと思っていたんですが。

 確かに、大きく世界の構造が変わったり環境が変化をしたときには、その組織そのもののミッションそのものから見直さなくてはいけないということがあると思うんですが、それがなかなかできずに日常に流されるというのはありがちなことであります。

 私は、そういう意味では、第二次世界大戦前の日本の旧帝国陸海軍の中にもそういうものがあったのではないかなというふうに思っていまして、それを今の行政組織に当てはめてみると、そういう可能性は否定できないと思いますので、常に自分たちが今やらなくちゃいけないことの本質は何なのかということを考えて、できるだけ本質以外のものはそぎ落として物を考えるという癖を、特に幹部が持ち続けなくてはいけないのではないかなというふうに日頃思っているということをお伝えさせていただきたいと思います。

鈴木(義)委員 今度、お茶菓子を持って大臣室に行きますので、どうぞよろしくお願いします。

 終わります。

     ――――◇―――――

岡本委員長 次に、内閣提出、消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。齋藤経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

齋藤(健)国務大臣 消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 インターネット取引の拡大に伴い、国内外の事業者がオンラインモール等を通じて国内の消費者に製品を販売する機会が増大しており、これに伴う課題が生じています。

 具体的には、消費生活用製品安全法等の製品安全関連の四つの法律において、これまで、国内の製造事業者及び輸入事業者が製品の安全性の確保に責任を有する主体として位置づけられてきましたが、海外の事業者が国内の消費者に直接製品を販売する場合には、国内における製品の安全性の確保についての責任主体が存在しないという課題があります。

 また、玩具等の子供用の製品については、子供による安全な使用が適切に確保できていないという課題があります。

 こうした課題に対応し、国内の消費者の生命又は身体に対する危害の発生の防止を図るべく、本法律案を提出した次第です。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、海外の事業者を消費生活用製品安全法等において届出を行う対象として明確化するとともに、海外の事業者が届出を行う際に、国内管理人の選任を求めることとします。

 第二に、国内の消費者に危険が及ぶおそれがあると認められ、かつ、消費生活用製品等の製造事業者又は輸入事業者等によって必要な措置が講じられることが期待できないときは、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、製品の出品削除等を要請できることとします。

 第三に、届出事業者の氏名や特定製品等の型式の区分、国内管理人の氏名等について公表することとするとともに、法律や法律に基づく命令等に違反する行為を行った者の氏名等について公表することができることとします。

 第四に、新たに子供用特定製品という類型を設け、これについて、その製造事業者及び輸入事業者に対し、国が定める技術基準及び使用年齢基準への適合を求めることとするとともに、これらの義務を履行している旨を示す表示のない製品は販売できないこととします。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

岡本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十六分散会


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