衆議院

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第10号 平成29年4月19日(水曜日)

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平成二十九年四月十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西銘恒三郎君

   理事 今枝宗一郎君 理事 岩田 和親君

   理事 中根 一幸君 理事 西村 明宏君

   理事 宮内 秀樹君 理事 津村 啓介君

   理事 本村賢太郎君 理事 佐藤 英道君

      青山 周平君    秋本 真利君

      大塚 高司君    大西 英男君

      加藤 鮎子君    金子 恭之君

      神谷  昇君    木内  均君

      工藤 彰三君    小島 敏文君

      小松  裕君    佐田玄一郎君

      鈴木 憲和君    田所 嘉徳君

      津島  淳君    中谷 真一君

      中村 裕之君    根本 幸典君

      橋本 英教君    藤井比早之君

      古川  康君    堀井  学君

      前田 一男君    望月 義夫君

      荒井  聰君    黒岩 宇洋君

      小宮山泰子君    松原  仁君

      水戸 将史君    村岡 敏英君

      横山 博幸君    伊佐 進一君

      北側 一雄君    中川 康洋君

      清水 忠史君    本村 伸子君

      椎木  保君    野間  健君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   国土交通副大臣      末松 信介君

   内閣府大臣政務官     長坂 康正君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊丹  潔君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           坂口  卓君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局整備部長)         奥田  透君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  栗田 卓也君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        山田 邦博君

   政府参考人

   (国土交通省国土地理院長)            村上 広史君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   政府参考人

   (気象庁長官)      橋田 俊彦君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     青山 周平君

  木内  均君     小松  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     秋本 真利君

  小松  裕君     木内  均君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水防法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)


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     ――――◇―――――

西銘委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水防法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省都市局長栗田卓也君、水管理・国土保全局長山田邦博君、国土地理院長村上広史君、観光庁長官田村明比古君、気象庁長官橋田俊彦君、内閣府大臣官房審議官伊丹潔君、法務省大臣官房審議官金子修君、厚生労働省大臣官房審議官橋本泰宏君、大臣官房審議官坂口卓君及び農林水産省農村振興局整備部長奥田透君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村岡敏英君。

村岡委員 おはようございます。民進党、秋田県出身の村岡敏英でございます。

 きょうは水防法の質問をさせていただきたいと思っておりますが、その前に、報道等であります「てるみくらぶ」の問題なんです。

 私の出身地の人でも、海外には行っていないんですが、この「てるみくらぶ」に申し込んで、結局こういう状況になったという方からもお話を聞きました。

 いろいろな方から話を聞きますと、新婚旅行で行かれていたり、また、親が七十歳以上になって、お金をためて旅行に連れていこうと思っていたところが、もうこのような状況で旅行には行けない。また、海外に行っていて、本当に楽しみにして、一生に一度行くか行かないかの方々も、本当に旅行でのいろいろな楽しみをしようと思っていたのが、こういう状況になった。

 今なお、「てるみくらぶ」、四百人以上の方が海外でも被害に遭っている。また、国内で、まだ旅行には行っていないけれども、被害に遭っている人たちがいる。

 こういう状況の中、国交省は観光を所管する官庁でありますので、今の現状というのはどのようになっているか、また、その把握を教えていただきたい、こう思っております。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、「てるみくらぶ」を利用して海外におられる旅行客の方々が、現地で追加の費用負担を求められるケースがあったというようなことは承知しております。ただ、それ以上に大きなトラブルがあったという報告は受けておりません。

 なお、「てるみくらぶ」の破綻に際しまして、会社にどの程度の負債があるのか、それから決算が真正であったのか、こういったことについて、現在、破産管財人の方でも確認を行っているところでございますけれども、もう少し時間を要するというふうに聞いております。観光庁といたしましても、事実関係の把握に引き続き努めてまいりたいと考えております。

 冒頭申し上げました、「てるみくらぶ」を利用して海外に行かれた方、あるいはこれから海外に行かれる方につきましては、これまでも対応しておりますとおり、当該旅行会社を利用して旅行される旅行者がお持ちの航空券というのは、運送契約が成立して、運送義務が発生いたしておりますので、きちんと航空機に搭乗できるよう航空会社に働きかけをする。それから、当該旅行会社を利用した旅行者が渡航している国、地域の公館に対しまして、邦人旅行者より支援要請があった場合に適切に対応するよう、外務省と連携して対応しております。それから、今後も海外に行かれる方のため、当該旅行会社に対しまして、責務をきちんと果たすように要請を行っているところでございます。

 引き続き、旅行者が円滑に帰国できるよう、関係各方面と連携して適切に対応してまいりたいと考えております。

村岡委員 ぜひ、多くの人が被害に遭っているということで、しっかり現状を把握して、支援策をやっていただきたいと思っております。

 また、「てるみくらぶ」に就職が内定していた人たちは民間のいろいろな旅行会社に勤めているということで、その点も、国交省は直接ではありませんけれども、若い学生の方々が就職して夢を描いていた部分もありますので、そこもフォローしていただきたい、こう思っております。

 そして、この「てるみくらぶ」は一つの会社ですけれども、今後、日本から海外に行く人たちもどんどんふえていく、また、インバウンドで、オリンピックに向かっていろいろな方々が観光で来る。この観光業の部分の中で、今後、こういうことに対しての対策を国交省で考えていかなければならないと思っていますが、どんな対策をとっていきたいと考えておりますでしょうか。

田村政府参考人 観光庁におきましては、今回の事案の大きさに鑑みまして、さらなる消費者保護等の観点から、類似事案の再発防止に向けまして、昨年、旅行業法の改正内容を検討しておりました新たな時代の旅行業法制に関する検討会のもとに、ワーキンググループを設置することといたしました。

 このワーキンググループにつきましては、できれば今月中に一回目の会議を開催して、もちろん弁済制度のあり方のほか、オンライン時代のビジネスのやり方、それから企業自身の監査体制などガバナンスのあり方等につきましても、有識者の御意見をいただきながら、幅広く、かつ、できるだけ速やかに検討を進めてまいりたいと考えております。

村岡委員 これから経済成長の中で一つ大きな部分が、やはり観光。この観光自体が、こういう事件がありますと、これが沈んでいくようなことがないように、そして、こういう利益のある、経済成長する分野というのは、必ず、前に進む方向もありますが、暗部というか、企業自体に倫理観がないところも出てきますので、そこはしっかりと観光行政の中で対策を立てていっていただきたい、こう思っております。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 平成二十七年九月の関東や東北の豪雨で、また平成二十八年八月の台風十号等で、逃げおくれなんかで本当に多数の死者や、また、甚大な経済損失が発生しました。それを受けて、本法を、これから水防対策に役立てていこうということで、新しい法律を考えたことだと思っております。

 それで、この水防法をこれから進めていく上で、こういうことが起こったように、どのようなことが必要と考えてこの法律をつくったのか、見解をお伺いしたい、こういうふうに思っております。

末松副大臣 お答え申し上げます。

 近年、全国各地で水害が頻発、激甚化する中、平成二十七年九月の関東・東北豪雨による被害を受けまして、国土交通省では、施設では防ぎ切れない大洪水は発生するものとの考えに立ちまして、社会全体でこれに備えるため、ハード、ソフト一体となった水防災意識社会再構築ビジョンの取り組みを国管理河川を中心に進めてきたところでございます。

 このような中、平成二十八年の八月には、台風十号等の一連の台風によりまして、国管理河川の支川や県管理河川といった中小河川で氾濫が発生しまして、逃げおくれによる多数の死者や甚大な経済損失が発生いたしたところです。

 これらの中小河川では、人的にも制約がございますし、財政的な制約があります中で、直ちにハード対策による対応を行うことには限界があることから、まずは、水害リスク情報の共有や地域一体となった避難確保体制の整備といったソフト対策や、既存のストックを活用したハード対策の強化が一層求められているところでございます。

 今回の水防法等の一部改正案では、このような状況を踏まえ、水防災意識社会再構築ビジョンの取り組みを中小河川も含めた全国の河川でさらに加速させ、洪水等からの逃げおくれゼロと社会経済被害の最小化を実現し、関東・東北豪雨や台風十号のような被害を二度と繰り返さないための抜本的な対策を講じたいと考えております。

 私の地元でも、備える、守る、逃げるという、この言葉をキーワードにして取り組んでいるところでございます。

村岡委員 その考え方の中で進めていくことが大切だ、こう思っております。局地的な豪雨であったり予期せぬ天候の変化によって、施設では間に合わない、やはり、しっかりと逃げおくれないような形の部分での対策をとっていくことが必要だと、同じ認識であります。

 その中で、要配慮者利用施設のことでお聞きしたいんですが、今、これは新法ですから、これまで努力義務だったわけですけれども、これまでの計画、要配慮者施設の作成状況なんかはどのようになっているか、教えていただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 水防法に基づきます要配慮者利用施設の避難確保計画の作成につきましては、市町村地域防災計画に位置づけられている施設が対象となります。全国には、平成二十八年三月末で、対象となります施設が三万一千二百八施設ございまして、そのうち七百十六施設で避難確保計画を作成しているところでございます。

 今回の水防法改正によります避難確保計画の作成の義務化とあわせまして、計画の作成を促進するために、作成に係る手引の充実、あるいは地方公共団体向けの点検用マニュアルの作成、モデルとなる地区で得られた効果的な避難等に関する知見を市町村に提供する等の支援策を講じることとしておりまして、福祉部局等の関係機関と連携して取り組んでまいりたいと思っております。

村岡委員 多くの施設がこの計画を立てていかなければならない、こういうことになりますけれども、施設によって、それをつくる作成能力というのもありますが、計画を立てなくても一応罰則はない。しかしながら、公表する。

 公表によって正確に計画を立て直すということでありますけれども、罰則をなしにして、まずは公表にとどめたという理由はどのような理由でしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 避難確保計画を着実に実行するためには、要配慮者利用施設の管理者が主体的に計画を作成するということが重要でございますので、罰則規定は設けていないところでございます。

 今回の水防法の改正では、避難確保計画を作成しない要配慮者利用施設に対して、市町村がその作成を求める指示を行って、その指示に従わない場合には、さらに当該施設を公表できることとしております。

 多くの要配慮者利用施設では既に火災とか地震に対する避難計画が作成されておりまして、水害等に対する避難確保計画は、これらの計画に必要な事項を追加して作成するものであって、大きな負担になるものではありません。

 国土交通省といたしましては、計画作成の負担軽減のために、施設管理者等が速やかかつ適切に計画を作成することができるよう、簡易な入力フォームを用意する等手引を充実することにより、計画作成を支援していきたいと思っております。

 さらに、大規模氾濫減災協議会の場で計画の作成状況をフォローアップしていくなど、福祉部局等の関係機関と連携しつつ、要配慮者利用施設の計画作成の実効性を高めてまいりたいと考えております。

村岡委員 公表によって、その施設に安全性がなければ、もちろん、そこの施設に入所する人がいないという部分もありますけれども、法律というのは、何の法律もそうですけれども、法律を設定してそのとおり計画を立てても、それが、年数がたつとおろそかになる。

 例えば、消防なんかでも、消防法の中では検査のときは適正だと。しかしながら、いざ火災が起こったときには、例えば、避難階段のところに荷物がある、また、スプリンクラーをつけなきゃいけない施設のスプリンクラーも働かない、いろいろなことがあるわけです。そのフォローをどうやってこれからやっていくのか、教えていただければと思います。

山田政府参考人 先ほども少し申し上げましたけれども、この計画の策定を着実に進めていくために、今回、大規模氾濫減災協議会というのを設けます。その場でその計画の策定状況をフォローアップしていくということもいたしまして、今後とも、福祉部局等の関係機関と連携しながら、要配慮者利用施設の計画作成の実効性を高めていきたいと考えているところでございます。

村岡委員 一回目の計画はいいにしても、それからのフォローというのが、これはいつ来るかわからないわけで、やはり災害というのは来ることがわからないわけですから、そこはしっかりと対策をとっていただきたい、こういうふうに思っております。

 次に移ります。

 浸水被害の軽減地区の指定等なんですが、水防管理者には水防予防組合というのが含まれると思いますが、これは、ほかの水防管理者と異なり、地縁的な結びつきだと考えております。このような団体に、地区の指定といった半ば公権力を使っての指定ということに関して、これは、指定された側がどのように考えるかということもありますし、さらには、指定されたことによって財産的な被害がある場合もある。この点はどのように考えられておりますか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今般の水防法の改正によりまして創設いたします浸水被害軽減地区の指定は、既存の資源を最大限活用するという観点から、現在は宅地ですとかあるいは生活道路等の用途に供されているものの、浸水の拡大を抑制する効用があります輪中堤防等の保全を図ろうとするものでございます。

 このため、本制度では、土地の所有者の自発的な協力を得つつ輪中堤防等の保全を図り、その所有者に管理を任せたまま一定の行為規制を課すこととしているものでございます。

村岡委員 今、輪中堤の話なんかも出ましたけれども、もちろん、輪中堤にして、それが建設された当時はすぐわかるわけですけれども、何十年たつと、所有権がどんどんかわっていきます。相続された方々というのは、それを知っていない場合もある。そこで、自分でやりたいというときに、自分の財産の利用権の問題も出てきます。その点はどう考えていらっしゃいますか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 浸水被害軽減地区の指定は、浸水の拡大を抑制する効果があると認められます輪中堤防等が存在する土地に対して行われるものでございます。

 指定の際には、当該地区が浸水被害軽減地区に指定された旨を公示いたしますとともに、浸水被害軽減地区であります旨を表示した標識を当該土地に設置することとしております。

 例えば、指定されました土地の相続が行われた場合におきましては、浸水被害軽減地区の指定の効果は引き続き発揮されることになると考えております。

村岡委員 その辺の公示も、土地を相続したり、また買ったりする人たちのためにも、やはりしっかりとそこはしていただきたい、こういうふうに思っております。

 次に移ります。

 大規模氾濫減災協議会の設置というのがありますけれども、水防災意識社会再構築ビジョンに基づく協議会の設置状況は、実際、今どのようになっていますか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 水防災意識社会再構築ビジョンに基づきます協議会は、平成二十七年の関東・東北豪雨を踏まえまして、施設では守り切れない大洪水は必ず発生するという考え方に立ちまして、社会全体で洪水に備えるための取り組みを行うため、まず、国管理河川を中心に設置を進めてきたところでございます。その後、平成二十八年八月の台風十号等の一連の台風災害等を受けて、都道府県管理河川においても設置を進めているところでございます。

 現在、協議会の設置状況でございますけれども、平成二十九年三月末までに、国管理河川では、百二十九地区全てで協議会が設置済みでございます。都道府県管理河川では、三百二地区の設置見込みに対しまして、六十七地区で協議会が設置をされているという状況でございます。

村岡委員 設置はされているようでありますが、国と都道府県の協議会の連携というのが大切だと思うんですが、どのように考えられていますでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 一昨年の関東・東北豪雨では、洪水の氾濫によりまして多数の逃げおくれが生じまして、的確な避難勧告の発令ですとか広域避難体制の整備といったものが必要といった課題が明らかになりました。

 このような課題に対応するために、河川管理者、水防管理者等の多様な関係者があらかじめ密接な連携体制を構築して、ハード、ソフト対策を一体的に進めるために、大規模氾濫減災協議会を設置することとしたものでございます。

 都道府県の協議会の設置に当たりましては、例えば、国の協議会と合同で開催をしたり、あるいは、国がアドバイザー等として参画する等によりまして、国、都道府県の取り組み内容の整合が図れるように、また、共同で取り組むことによりまして効率的、効果的に取り組みを推進できるように、取り組み内容を共有して連携を図ることとしております。

 今後とも、大規模氾濫減災協議会を通じまして、水防災意識社会の再構築を図るための取り組みが進むよう、国、都道府県が一体となって取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

村岡委員 国と都道府県の連携が必要だというのは、例えば一級河川、県や市やいろいろなところで管理している河川があると思いますが、決して一級河川の国交省の部分だけで災害が起きるわけじゃなく、その中には支流があります。支流の中で起きやすいというのも、また、一級河川の中でも、ここは県の管理、いろいろ複雑に絡んでいるところがある。その連携をしっかりしなきゃいけないという認識に立って、この連携をきちっと進めていただきたい、こう思っております。

 次に移ります。

 大規模氾濫減災協議会において今のように連携はしていくわけですけれども、浸水の、先ほど言った輪中堤だとか、いろいろなところの掘削とか何かしたときに、これはしちゃいけないとかという助言は、先ほど、指定されるということですけれども、具体的には、それぞれの人たちにどんな助言や、これをしちゃいけないということを決めるのか、そこを教えていただきたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 水防管理者であります市町村が、浸水被害軽減地区が有する浸水の拡大を抑制する効果を保全するために必要があると認める場合には、盛り土や切り土を行おうとする者に対しまして、助言、勧告をすることができることとしております。

 例えば、切り土を行う高さですとか箇所の変更を申し入れるときに、浸水の拡大抑制の効果が損なわれないように、その施工方法あるいは時期等につきまして助言、勧告すること等が想定されると考えております。

村岡委員 その辺のところが、しっかりとした助言とかそういうものがなければ、もう既に工事が終わっていて、これをまた原状復帰しなきゃいけないような状況にならないようにしていただきたい、こう思っております。

 それから、水防管理者から水防活動の委任を受けた者による緊急通行及び公用の負担等となっておりますが、これはどんな場合を想定して負担等を考えていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 水防活動を迅速に行うために、水防団長等には、緊急の必要がある場合に、他人の土地を通過する緊急通行とか、あるいは、必要な土石あるいは車両の使用等の公用負担が認められているところでございます。

 水防管理団体は、公用負担により損失を受けた者に対しまして、時価によりその損失を補償することとされておりまして、これまで、水防活動で車両を使用した際等に、水防管理団体が適切に損料や修理費用を補償した事例があると承知しております。

 今回の水防法改正におきまして、水防活動の委任を受けた民間事業者にも緊急通行や公用負担を認めることとあわせて、これらに伴う損失についても、水防管理団体が補償することとしているところでございます。これによりまして、緊急通行や公用負担に伴う損失補償について明確化され、民間事業者が実施する水防活動も含め、迅速な水防活動が実施できるものと考えているところでございます。

村岡委員 これまでどのような事例でそういう公的負担があったり、そういうことがあったか、データはありますでしょうか。事例があればということで。

山田政府参考人 お答えいたします。

 例えば、水防を行うときに木流し工法というようなものがございます。これは、竹とか木を堤防の川側につるしまして川の洪水の勢いを緩めるということでございますが、そのようなときに、竹木を利用して水防工法に用いました、そのときに、所有者に対して公的負担をしようと思ったんですけれども、実はこれは、本人、所有者側は補償は辞退をしておりますけれども、そういうような場合に補償する等々の例がございます。

村岡委員 基本的には道路を使うわけで、私有地なんかでも、道路があるところはそれほどの補償というのはないと思うんですが、実は、川の近くには田んぼや畑がたくさんあるんです。そこのところで、道が余りないようなところが決壊しそうだとか、いろいろなことになると、田んぼでも畑でも、それは通っていかなきゃいけない、緊急の場合は。

 それとまた、変な話ですけれども、本当の緊急になれば、人の所有している山といいますか、そこからも土を削らなきゃいけない。こういうことも、実際には、全体の被害から考えればやらなきゃいけないという判断をしなきゃいけない。こういうことをしっかり想定しておかなきゃいけない。そこの点は、想定してやっていただけますでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、我々は、水防活動を行うために適切な措置をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

村岡委員 次に移りますけれども、河川法の一部改正及び独立行政法人水資源機構法等の一部改正ということで、特定の河川工事代行なんかのことが書かれておりますけれども、今回の法改正で、どのような場合に国や水機構などの権限代行が可能になるのか、教えていただければと思います。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 近年、都道府県等におきましては、人員の不足ですとかあるいは技術力の低下というものが顕在化しております。実際に、これまでも、被災県から、国による工事の施行の要望も頂戴しているところでございまして、今後、高度な技術力や機械力を要する工事を的確に実施できなくなるおそれが高まっていると言えると思っています。

 このため、今回の河川法等の改正によりまして、権限代行制度を創設することとしております。その実施に当たりましては、都道府県知事等から要請があること、当該工事が高度の技術力または機械力を使用して実施することが適当であると認められるものであること、そして、都道府県等の工事の実施体制その他の地域の実情を勘案して、代行することが適当と認められること、この三つを要件としているところでございます。

村岡委員 もう時間が参りましたので最後にしますが、この水防法改正を踏まえて、今後、どのように治水対策を進めていくのか、石井大臣にお聞きしたいと思います。

石井国務大臣 近年、全国各地で水害が頻発、激甚化する中、施設では防ぎ切れない大洪水は発生するものとの考えに立ちまして、社会全体で洪水に備えるため、河川管理者、都道府県、市町村等の関係者が連携して、ハード、ソフト一体となった減災対策を総合的かつ一体的に推進する必要があると認識をしております。

 特に、平成二十七年の関東・東北豪雨や平成二十八年の台風十号の被害を踏まえまして、関係者から成る協議会の設立、避難勧告の発令に資する水害対応タイムラインの作成等を進めるとともに、河川整備基本方針に基づき、施設により安全を確保しようとする規模の洪水に対して、洪水氾濫を未然に防ぐ対策としてのハード整備を着実に推進する取り組み、ダムの再開発等の既存ストックを最大限に活用する取り組み等を進めてまいります。

 さらに、水防法改正によりまして、これらの取り組みを加速いたしまして、逃げおくれゼロと社会経済被害の最小化の実現を目指してまいりたいと考えております。

村岡委員 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民進党の荒井聰でございます。

 冒頭、大臣にお願いがあるんです。

 最近の行政をめぐるいろいろな問題で、私は、役人出身の政治家として、今の状況をとても残念に思います。と申しますのは、そんたくという言葉が、あたかも美風のような感じでとられているのではないかというふうに思われてなりません。

 これは、かつて、私の農水省時代の先輩でもありましたけれども、伊東正義さんという硬骨漢の政治家、中身が変わらないで表紙だけかえてもだめだと言って総理大臣を断った硬骨漢の政治家ですけれども、その方が、よく係長や課長補佐と懇談をしてくれて、昔の役人というのはこうだったんだ、あるいは、政治家とのつき合いはこうするんだといったようなことを懇談の場でいろいろやっていただきました。

 というのは、伊東正義さんは、かつて最右翼の農地局長だったときに、時の農水大臣からそんたくをせよと言われたのを、断固断ったんですね。この予算はあなたの予算ではありません、国民の予算ですと言って断固断りました。それがゆえんで、伊東正義さんは左遷されてしまいました。

 しかし、当時の農水省の若い役人たちが伊東正義さんの帰還運動というのをやって、その大臣がかわった後ですけれども、農水省に戻ってき、食糧庁長官になり、農水事務次官になり、その後政治家に転身したんですけれども、そういう話を若い私たちによく語ってくれたことがあります。

 そんたくという言葉は、これは法治主義に反します。近代民主主義国家の最大の原則というのは法治であります。法に基づいて平等に取り扱うということです。しかし、そんたくというのは、平等に扱わない、そういう意味であります。誰かに特別に考慮するということでありますから、これは絶対やってはいけないんですね、公的な機関に勤めている政治家や行政官は。そういう話をぜひ若い人たちに語ってやってほしいんです。

 さて、きょうは水防法の改正です。

 水防法の改正は、旧河川局が提案しているんだと思います。

 まず、委員長が、水管理・国土保全局長という長い名前を言いにくそうにしゃべっていますけれども、私は、どうして河川局という伝統ある名前をこんなに簡単に変えたんだろうと。役所は余り簡単に名前を変えるべきじゃないですよ。(発言する者あり)そうか。それじゃ、変えた方がいいですよ。違いますでしょう。(発言する者あり)そうかね。いや、だから、もういいですよ、やめておいてください。

西銘委員長 質疑を続行してください。

荒井委員 はい。

 いずれにしろ、そんなに簡単に受け入れるというのは、僕はおかしいと思いますよ。役所というのは伝統ある名前をもっと大事にした方がいいと私は思います。私の意見です。

 さて、大河川局が出してきたこの法律、私は、少しスケールが小さいんじゃないか、規模が小さいんじゃないかというふうに思います。河川行政全般、あるいは治水行政全般を扱うのであるならば、もっといろいろなところを巻き込んだ大きな構えというような法案にならなかったのか、そんなふうに思います。

 そこで、きょう、国土地理院は来ていますか。

 国土地理院は、日本国の詳細なマップを持っているはずです。そのマップがどの程度使われているのか、利用されているのかということも含めて、その精度について御説明いただけますか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 国土地理院では、地形データといたしまして、国土の地表面について、水平方向に一定間隔ごとの高さのデータを整備、保有しております。

 国土全体につきましては、二万五千分の一の地形図の等高線情報から十メートルの間隔でデータを整備しております。また、平野部を中心に、より高精度の測量が可能な航空レーザー測量等の結果を活用いたしまして、五メートルの間隔でデータを整備しております。

 これらのデータは、さまざまな活用が可能なデジタルデータの形で提供しておりまして、実際に地方公共団体等で洪水等の浸水想定区域の把握などに活用されているところでございます。

 国土地理院といたしましては、地形データへの多様なニーズを踏まえまして、今後ともその整備に努めてまいります。

荒井委員 国土地理院は物すごく精緻なデータを持っているんですよね。こういうデータが十分活用されているのかというと、私は、必ずしもそうじゃないんじゃないかという感じを持っています。

 次に、気象庁。

 最近の気象庁は、非常にきめの細かいデータを観測し、また予測ができるようになっています。これらについて、気象庁は、雨量予測やあるいは今後の予測データといったものについて、今どの程度の精緻さを持って観測をしたり、あるいは将来予測をしているのか、御説明いただけますか。

橋田政府参考人 お答えいたします。

 気象庁では、現在、大雨が予測されるような場合には、一日先までの府県程度の範囲における二十四時間雨量の予測を発表しております。さらに、六時間先までにつきましては、一キロメートル四方における一時間ごとの雨量を予測いたしまして、これを降水短時間予報として発表しております。

 さらに、局地的かつ急な大雨に対しましては、三十分先までにつきまして、二百五十メートル四方における五分ごとの雨量を予測いたしまして、高解像度降水ナウキャストとして公開、提供しているところでございます。

 加えまして、このような雨量予測を、それまでに降りました雨量や地形のデータ等も組み合わせまして、土砂災害や洪水害等の発生の危険度の高まりを評価する技術の開発を行ってきているところでございます。

 気象庁では、このような成果を踏まえまして、お手元の資料にございますように、ことしの出水期よりは、市町村ごとに、翌日までの三時間ごとの一時間最大雨量などを時系列で提供いたしますとともに、これは改善一でございますけれども、土砂災害や洪水害等の発生の危険度や切迫度をわかりやすく提供する改善を行うこととしております。

荒井委員 そこで、気象庁からいただいた資料なんですけれども、気象庁一、二とあります。流域雨量指数という試みをしているということで、各市町村ごとに今の細かいメッシュで出水などを予測しながら、市町村に提供しているということであります。この流域雨量指数についてもう少し説明していただけますか。

橋田政府参考人 お尋ねのありました流域雨量指数でございますけれども、資料の説明にございますように、この流域雨量指数は、河川の上流域に降りました雨水が河川に沿って流れ下る量を数値化したものでございます。この流域雨量指数につきましては、一キロメートル四方ごとに計算いたしまして、過去の中小河川における災害発生時の値に基づきまして設定しました基準と実際のリアルタイムの予測値を比較することで、洪水の危険度の高まりを把握することができるようになってまいりました。

 気象庁では、この流域雨量指数を活用することによりまして、洪水警報を発表いたしました市町村におきまして、実際にどこで危険度が高まっているかを地図上で確認できる危険度分布を、ことしの出水期より公開、提供することとしております。

 また、この流域雨量指数につきましては、内閣府が本年一月に改定いたしました避難勧告等に関するガイドラインにおきまして、流域雨量指数の予測値が洪水警報基準を大きく超過する場合には避難勧告を発令するなどと、その具体的な活用が記載されているところでございます。

 各地の気象台では、現在、市町村に対しまして、この流域雨量指数とその活用につきまして丁寧に説明を始めております。

 河川管理者であります都道府県ともよく連携いたしまして、市町村における避難勧告の発令等、防災対応を支援してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

荒井委員 この推測というか、流域雨量指数の概念なり、この実行は、大河川流域では実行されているんですか、実施されているんですか。それはどうですか。

橋田政府参考人 お答えいたします。

 大河川についても計算はされております。一方、大河川につきましては、観測値、実際の水位値がございますので、そこは水管理・保全局と連携しながら洪水予報を出していく、そういう仕組みでございます。

 以上でございます。

荒井委員 河川局長と言ったらいいのか国土保全局長と言ったらいいのか迷いますけれども、局長、今の気象庁のああいう試みというものを河川行政の中に十分取り入れているのかどうか、そこはどうですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 水防法では、河川管理者が指定した河川におきまして、洪水時の河川の水位を予測して、また、あらかじめ、万が一堤防が決壊した場合の氾濫域を計算した浸水想定区域図を作成することとされております。

 現在、洪水時には、気象庁によります実況雨量データを活用して水位予測を行っております。また、浸水想定区域の計算に必要な流域の地形データは、先ほどの国土地理院によります航空レーザーの測量等の結果を活用した詳細な地形データを使用することを基本としているところでございます。

 今後、気象庁によります降雨の予測の精度が向上することも視野に入れまして、急激な水位上昇のために現状では難しい中山間地の洪水予測、あるいは、長時間先の予測精度に今現在課題がございます平野部の河川の水位予測を可能とするためのモデルの開発に取り組んでいるところでございます。

 また、先ほどございました流域雨量指数の件でございますけれども、河川の氾濫によります水害の危険性は、多くの場合、水位計によって観測される水位により判断されますけれども、しかしながら、急激に水位が上昇する河川ですとか、あるいは水位計の設置が困難な河川におきましては、雨量の情報を活用して、洪水に伴う氾濫の危険性について判断できる場合がございます。そのような水害の危険性を把握、周知する際に参考となるガイドラインを平成二十九年三月に取りまとめたところでございます。その中で、雨量の情報として、流域雨量指数の活用についても位置づけたところでございます。

荒井委員 局長、二十九年から云々とおっしゃっていましたけれども、私は、力もお金もある河川局がどうして今までやっていなかったんだろうと。そして、外側では、地図情報のデータですとか、あるいは、気象庁の技術開発、技術の高度化というのは相当なものですよね。それをどうしてもっと敏感に反映させるような行政になっていなかったんだろうかと。そこはとても残念に思います。私も、水にかかわってきた技術屋の一人として、ある意味では今ごろかという感じさえいたします。

 その中で出てきたのがこの水防法の改正だと思うんですけれども、本来はもっともっとやるべきことがあったんじゃないだろうかというふうに思います。その意味では、河川局というのは技術屋集団なんですから、新しい技術にもっと鋭敏な感覚を持つということが必要だと思います。河川局長にそのことをお願いしておきたいと思います。

 ところで、新しい仕組みをつくるときには、どういうふうにお金と人をつくるのかということが大事だと思うんですけれども、この水防法の改正の基本的な考え方は、人は、市町村から、あるいは既にある消防団とか、そういうものを使うということなのではないかと思いますし、お金は、恐らく市町村に交付された交付金ということなのではないかなと思うんですよね。恐らく、これではうまく動かないんじゃないかと私は思います。

 新しい財源なり新しい人材というものをどういうふうに育成していくのか、創出していくのか、そういう観点が大事なんだと思いますけれども、それはどうですか。議論するときに、局長はどういう議論をされたんですか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今回の水防法改正によりまして、例えば避難確保計画の作成を義務づけているわけでございます。これは、例えば要配慮者利用施設の方々がそういう計画を立てたり訓練をするわけでございます。

 これに対して、国としても、ただ手をこまねくというわけではなくて、交付金によります支援ですとか、あるいはさまざまな技術的支援、特に、手引等を改正いたしまして、できるだけ簡易にそういう避難確保計画ができるような、そういう支援も視野に、現在この中で考えているところでございます。

 今後とも、それぞれの施設、あるいは市町村、都道府県とよく連携いたしまして、この水防法の趣旨が伝わって、実効性のあるものにしていきたいというふうに考えているところでございます。

荒井委員 治水にかかわるというか、水にかかわるダムというのは、特定多目的ダム以外にもたくさんあるんですよね。農業用のダムは、恐らく特定多目的ダムよりも数が多いと思います。それから、大型のダムという意味では、発電用のダムはかなり大きなポケットを持っているダムでもあります。これらのダムについては、河川局が水利権を許可しているわけですので、把握していると思うんですよ。

 そういうダムについて、治水的なことに活用してほしいというような要請は恐らくしていないんだと思うんですけれども、きょうは農水省が来ていると思うんですけれども、今、農水省で、地域から、地元から、自分たちの農業用ダムについて治水的なことも運用してはどうか、あるいはしたいといったような要望はありませんか。

奥田政府参考人 お答えいたします。

 農業用ダムは、委員御承知のとおり、かんがい用水を貯水するために造成されたものでございまして、洪水調整のための、つまり治水のための容量あるいは施設を有しないところでございます。

 一方、ダムの下流の地域からは、農業用ダムであっても、大雨に備えて、水位を下げて事前放流を行うなど、治水効果を高める操作ができないかといった声があることは承知しております。

荒井委員 地域の住民にとっては、上流にダムがあれば、そのダムを最大限活用してほしいと思うのは自然の成り行きだと思うんですよね。しかも、気象データが非常に精緻に得られるようになった。そうすると、それにあわせて、ダムの操作も、精緻なダムの操作というのができるのではないかと思うのは、私は自然だというふうに思うんですよね。

 したがって、大河川局ですから、力も人もお金も持っている河川局ですから、いろいろなところを巻き込んで、今の治水効果をもっと高めるための工夫はないのか、そのための法律改正はどうあるべきなのかという観点が少しく欠けていたのではないか、河川局だけの範囲内での改正ということにとどまってしまったのではないかというふうに私は思います。それが一つです。

 もう一つ、お金の話ですね。お金の話として、これは、恐らく、市町村に交付している交付金の中から、そういう団体への交付とか、あるいはきめの細かい計画をつくるためのお金というのを用意しようとしているんだというふうに読み取れますけれども、これでは、市町村にとっては、今まで使っていたお金のどこかをやりくりしてそこへ持っていくというだけに終わってしまいますよね。独自財源というのが可能性があるのならば、独自財源を頑張るべきだと私は思います。

 今から二十年ぐらい前の河川局長さんでしょうか、竹村公太郎さんという方が最近本を出版されました。自分の河川局長時代の話を引用されながら、多目的ダムの操作あるいは運用について、きめの細かい運用ができるようになったのだから、そのポケットの余裕分を使って水力発電をしてはどうかという提案であります。私は、極めてすぐれた提案だと思います。

 昭和三十四年のダム運用基準が環境権を加えてちょっと変わっただけで、現実的には、昭和三十四年時代の気象観測のデータをベースにしていたり、あるいはそのときの運用というものをベースにしていたもので、それから随分技術が変化をしていますよね。その変化を取り入れた運用基準の改正をすることによって、私は、ダムのポケットの活用というものは、治水や発電にもっと大きな活用ができるんだと思います。

 どうですか、局長。

山田政府参考人 お答えいたします。

 再生可能エネルギーとしての水力発電は、国土交通省におきましても積極的に推進すべきだというふうに考えているところでございます。多目的ダムの賢く柔軟な運用によりまして、水力エネルギーの活用を促進していくことは重要と考えているところでございます。

 既存の多目的ダムを活用して水力発電を増強する方策としては、洪水の調節容量を発電容量に活用することが考えられますけれども、その際、洪水が予測される場合には、貯水位を事前に所定の水位まで速やかに低下させる必要があります。

 貯水位の低下に当たりましては、下流河川の安全管理を行いながら長時間をかけて放流を実施すること等が必要とされております。また、ダムで事前に放流するための降雨予測については、ダム流域という非常に狭いエリアが対象であるために、依然として精度上の技術的制約があることも事実であります。

 このような制約を踏まえつつ、国土交通省といたしましては、水力発電を含むさまざまな用途にダムの容量を活用できるよう、個々のダムの状況を勘案しながら、ダムの弾力的運用を開始しているところでございます。

 また、水力発電の促進につきましては、発電事業者との連携が不可欠でございまして、国土交通省、経済産業省及び電気事業者の間でも既に意見交換を開始しております。今後とも、関係者が連携して取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

荒井委員 私は、かねてからずっと気象庁に対して、通報の仕方、単なる観測官庁じゃだめだ、将来を予測して、そういう通報のシステムというものをきっちりつくるべきだということをずっと言い続けていて、ずっと嫌な顔をされていました。

 今、スマートフォンというのは、高校生でさえ九六%の人が持っています。中学生でも大半の人が持っています。これを使った通報のシステムというのは、今、民間ベースでも物すごい勢いで進んでいます。私は、この手法というか技術を、お金も力もある河川局はもっと活用するべきだというふうに思います。かなりの技術は気象庁が民間と一体になって行っているようですので、逃げるというのが災害では一番大事だと思いますから、それが必要だと思います。

 最後に、今までの議論を聞かれて、大臣、感想も含めて、今後の新しい河川行政あるいは治水行政というものについての御決意を伺いたいと思います。

石井国務大臣 今委員が御指摘いただきましたスマホ等を活用して周知するという試みは、実は始まっておりまして、地震のときにエリアメールでプッシュ型のお知らせをする、その手法を活用して、昨年の九月から、関東・東北豪雨で被害が大きかった常総市と、それから四国の肱川、大洲市で始めまして、ことし、それをさらに広げていく。

 ですから、洪水警報が出た場合等に、その地域にお住まいの、市町村にお住まいの住民の方にはプッシュ型で連絡するというような形での技術を取り込んだ周知法というのを始めているということは、一言申し上げておきたいと思います。

 その上で、近年、全国各地で豪雨が頻発し、激甚化する中、治水対策を進めるに当たりましては、きょう委員から御指摘をいただいたような、気象や地形などのデータや、また既設ダムなどを最大限活用することは重要と考えております。

 今回の水防法改正におきましても、例えば、洪水予測というのはなかなか小さな河川では難しいところもあるのですが、過去の浸水実績等の既存データを活用して水害リスク情報を周知するという制度ですとか、あるいは、既設ダムの再開発事業等の国による代行制度等を創設いたしまして、既存のデータやストックを活用する取り組みを加速化するところでございます。

 国土交通省といたしましては、新たな技術開発も推進しながら、水害から国民の生命と財産を守るため、全力を挙げて防災・減災対策に取り組んでまいりたいと考えております。

荒井委員 以上です。ありがとうございました。

西銘委員長 次に、水戸将史君。

水戸委員 民進党の水戸将史でございます。

 三番目になりますから、ちょっと重複するところもあるかもしれませんが、それはお許しいただいて、順次質問させていただきたいと思います。

 まず、水資源機構について何点かお尋ねしたいと思います。

 今回の改正におきましても、機構法も改正しまして、機構に対してもより一層機能強化を図っていこうというような意図が見えておりますけれども、水資源機構の果たすべき本来的な役割というのはそもそも何だったのかということを、概要的に簡潔にお答えください。

山田政府参考人 お答えいたします。

 独立行政法人水資源機構は、我が国の産業と人口が集中いたします利根川、荒川、淀川等の全国七つの水系におきまして、水の安定供給及び洪水調節等を行う組織でございます。

 具体的には、水資源開発促進法に基づいて指定されたフルプラン水系におきまして、ダム、用水路等の建設、維持管理を行って、農業用水、水道用水、工業用水の確保、供給を行うとともに、洪水被害の軽減や流水の正常な機能の維持を行うといった役割を果たしております。

 同水系に係ります面積は国土の一七%でございますけれども、その地域の人口は全人口の五二%、製造品出荷額は全国の四五%を占めておりまして、水資源機構は、水の供給を通じて、我が国の社会経済発展に大きく貢献しているというふうに考えております。

水戸委員 概要の説明をいただきました。

 もちろん、一義的には水の安定供給ということで、ともすれば、利水、治水でいえば、利水面に対してある程度機能を発揮していこうという部分があるというような御説明でございました。

 今般、法改正をいたしまして、都道府県レベルでなかなかカバーし切れない、そうした河川等の改良工事と災害復旧工事に対しましては、国もしくは水資源機構がその役割を代行する、都道府県からの要請に基づいて代行することができるんだというふうにしようとしていますね。

 では、具体的に、国に対するものなのか、機構に対するものなのか、その代行業務はどちらなのか、いわゆる相違点を具体的に、簡潔にお答えください。どういう形でこれは役割分担されるのか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今回の水防法等の改正、河川法等の改正でございますが、権限代行制度を創設する趣旨は、人員不足あるいは技術力低下が顕在化しております都道府県等を、国または水資源機構が技術面から支援することでございます。

 既存の資源を最大限に活用して社会全体で防災・減災対策を進める上では、国とともに、ダムの工事等につきまして国と同様の高度な技術力を有する、都道府県等を支援し得る能力を有する水資源機構を活用することが必要でございます。

 水資源機構は、過去五十年にわたりましてフルプラン水系内の水資源開発を担ってきたことから、多様な水利権者から合意を得るための調整に当たっての知識経験を有しております。

 このように、フルプラン水系におきまして、水資源機構により事業を実施することが効率的な場合には、都府県からの要請に基づきまして、水資源機構が権限代行を実施するということになります。

水戸委員 ちょっとわからないところは、七つの水系の話を水資源機構が取り扱ってきた、フルプラン水系もそうでありますけれども、都道府県が、では、このダム工事、河川工事は国に任せよう、では、こっちは水資源機構に代行してもらおうとか、その判断基準なんですね。地域分けをするのか、いわゆる国管轄は国がやるのか、水資源機構はそれ以外をやる、そういう役割分担というのは、具体的にどういう判断基準で仕事を代行させるかということを、もうちょっと具体的に説明ください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたけれども、水資源機構は、過去五十年にわたりましてフルプラン水系内の水資源開発を担ってきておりましたので、多様な水利権者からの合意を得るための調整に当たっての知識経験を有しております。

 このように、フルプラン水系におきまして、水資源機構によって事業を実施することが効率的である場合、そういうふうに都府県が考える場合におきまして、水資源機構に権限代行が要請されると考えているところでございます。

水戸委員 ですから、効率がいい悪いなんというのは、では、それは効率がいいか悪いかという判断そのものが都道府県知事の判断に委ねられる、そもそも都道府県ではなかなか判断とか技術的なものができないから任せるという話だったんですけれども、その判断基準はあくまでも都道府県の裁量ということですね。もう一回。

山田政府参考人 あくまでも、今回の代行制度等につきましては、都道府県からの要請に基づくものでございますので、基本的には都道府県の方で、どちらに権限代行するか、そしてそれを要請するということになると考えているところでございます。

水戸委員 いざという場合ですけれども、災害復旧とか事後の処理のこともあわせてでありますけれども、やはり、うまく整理をされて、現場トラブルがないような形で速やかなるすみ分けをしていくことを強く要請し、また期待するものであります。

 実際、先ほど言った水資源機構の役割の中において、ダムのこういう工事も当然取り扱っているわけですね。ダムは、先ほど荒井委員も申し上げましたとおり、治水面と利水面がありまして、雨が多く降る場合は治水の作用を、雨をある程度ためながらも、利水という形で生活用水とか農業、工業用水に使う、もちろん電気にも使うという話になります。

 きょうは表でもお示しをさせていただいていますが、資料一なんですが、これは東京都消防庁の資料、若干古いんですね。これは昨年度が入っていませんから、二十八年度を本当は加えなきゃいけないんですけれども、この一覧表を見てもわかるとおり、特に利根川水系は、平成以降二十数年間で八回に及ぶ、やはり昨年も取水規制が行われましたよね。私が危惧するのは、特に大都市、特に、東京一極集中が進んでおりますから、東京のみならず、東京近郊にお住まいのある方々、さまざまな形で仕事をする方々も含めてなんですけれども、水不足がかなり頻繁に起こっているんじゃないか。これを見るだけでも三年に一遍ぐらいの頻度で渇水現象が起こっているということが見てとれるんですけれども、大臣、水の安定供給については大丈夫ですか。大臣の御見識を。

石井国務大臣 近年におきましても、国が管理している主要な河川におきましても、全国各地で毎年のように取水制限を伴う渇水が発生している状況にあります。

 また、気象庁によりますと、過去百年間におきまして、一ミリ以上の降雨がある日数は減少傾向にあり、今後も予断を許さない状況にあると考えられます。

 首都圏の水がめである利根川水系におきましては、昭和四十七年からの四十五年間に、取水制限を伴う渇水が十六回発生しております。昨年には、利根川上流部において例年になく降雪量が少なかったことや、その後の少雨の影響によりまして、利根川上流ダム群の貯水率が六月に過去最少レベルまで低下し、六月から九月にかけまして、三年ぶりに取水制限が行われたところでございます。

 国土交通省におきましては、渇水が予想されたことから、河川水に余裕のある利根川の下流から流量の少ない江戸川へ北千葉導水路を活用してポンプで送水することで、上流ダム群の貯水量を温存いたしました。

 さらに、六月十四日から九月二十一日にかけまして、私自身をトップといたします国土交通省渇水対策本部を設置し、国民の皆様に広く節水を呼びかけ、啓発に努めたところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後とも、降雨や降雪等の気象状況を注視し、早期に渇水に至る状況を把握するとともに、関係省庁とも連携し、渇水による国民生活や経済活動への影響を可能な限り抑制できるよう、適切に対応してまいりたいと考えております。

水戸委員 これは質問項目を具体的に挙げていませんでして、御存じだと思って、あえて聞きます。

 今大臣おっしゃったように、昨年、七十九日間にわたっての、わざわざ三年ぶりに国土交通省も渇水対策本部を設けてこれに取り組んできた経過がありましたね。

 これはもちろん、昨年の渇水の状況は、御存じのとおり、積雪の少なさ、雪解けの早さ、また五月の少雨、雨が少なかったということが原因ですけれども、ことしは、今の積雪状況と雪解けの状況というのはどうでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今年度につきまして、利根川水系の状況でございますが、平年並みぐらいの積雪がございまして、現在のところは平均的な推移をしているというふうに私どもは認識しているところでございます。

水戸委員 毎年毎年いろいろな判断基準があると思いますので、もちろん、五月からの空梅雨とか、そういうことがないように祈っているわけでありますけれども、やはり、いろいろな備えを含めて、渇水対策に万全を期していただくことを求めるものであります。

 先ほども若干聞いたんですが、やはりダムの水量調整というのは、治水と利水は、御存じのとおり、利水というのはいっぱいダムに水をためておけばいいわけですよ。しかし、治水という場合は、余りため過ぎちゃうと機能がなくなっちゃいますから、ある程度放流しなきゃいけないというのがあるんですね。非常に難しい、相矛盾するような政策を同時並行的に行わなきゃいけないというのもあるんですね。

 ですから、渇水対策は水量をなるべく確保する必要があるということで、例えば、放流の間隔をある程度広げるとか、予備放流の頻度について工夫するとか、ダムの水量調整に関して、今まで以上に、電力の話もありましたけれども、やはり渇水対策を交えた場合には、もっといろいろな形で運用を、うまく現代に合わせた形でやるべきだと思うんですが、それに関しては今どうでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、例えば多目的ダムを活用いたしまして渇水対策を強化する方策といたしましては、洪水期に水位を低下させて確保しております洪水調節容量を利水に活用することが考えられますけれども、その際、洪水が予測された場合に、貯水位を直前に所定の水位まで速やかに低下させる必要があります。

 貯水位の低下に当たりましては、下流河川の安全管理を行いながら、長時間をかけて放流を実施すること等が必要とされております。また、ダムで事前に放流するための降雨予測については、ダム流域という比較的狭いエリアが対象でありますので、依然として精度上の技術的制約があることも事実であります。

 このような制約を踏まえつつも、国土交通省としては、渇水対策の強化を含むさまざまな用途にダムの容量を活用できるよう、個々のダムの状況を勘案しながら、先ほどお話ししたようなダムの弾力的運用を開始しているところでございます。

 また、先ほど大臣がお答えいたしましたとおり、平成二十八年の利根川の渇水では、北千葉導水路の活用によりまして利根川上流ダム群の貯水を温存すること等によって、渇水対策に努めてきたところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後も、関係利水者等との調整をしつつ、ダムの運用の工夫等を行うことにより、渇水被害の軽減に努めてまいりたいと考えております。

水戸委員 いろいろなソフト面、ハード面の充実化をしなきゃいけない、これは一筋縄にいけるような話じゃありません。もちろん、これは永遠のテーマですからね、渇水対策なんというのは。

 気にするのは、やはり東京オリンピックなんですね。二〇二〇年、海外から多くの観光客が東京にどっと押し寄せてくる。前回の東京オリンピックもそうだったらしいんですけれども、やはり渇水のときにちょうどオリンピックという年であったらしいんです。

 東京オリンピックだけをやり玉に上げる必要はありませんが、常日ごろから、いわゆる水量調整も含めて、ダムのかさ上げをするとか、具体的に、他の水系、利根川水系以外にも多摩川とか相模川水系もありますけれども、いろいろなことをやっているのはわかりますが、この渇水、首都圏の生活を、また、いろいろな社会活動、経済活動をいかに支えていくかという大切な水ですから、これに対しましていろいろな手だてが必要だと思うんですけれども、厚労省、来ていますね。厚労省、御見解を。

橋本政府参考人 お答え申し上げます。

 渇水に対する備えということでございますが、常日ごろからの準備といたしましては、各水道事業者におきまして、渇水時の組織体制ですとか業務分担をあらかじめ明確化しておくということと、それから、渇水を想定した訓練を行うことによってその徹底を図る、こういったことがございます。

 また、緊急連絡管というものを整備いたしまして、それなどによりまして関係機関との連携等に努めているところでございます。

 また、実際に渇水になったときの対策ということになりますと、状況に応じまして、河川管理者ですとかほかの利水者との連携、緊急の水源の活用、あるいは取水制限、応急給水などの対策を行いまして、影響の緩和に努めているところでございます。

 私ども厚労省といたしましては、渇水時におきまして渇水対策を円滑に推進するために、日本水道協会と関係自治体、それから水道事業者等で構成されます水道渇水対策連絡会というものを設置いたしまして、情報の共有に努めているところでございますが、今後とも、渇水が生じた際には、状況の把握に努力いたしまして、必要に応じて水道事業者の支援に努めてまいりたいと考えております。

水戸委員 いろいろな手だてを講じて、あの手この手を使って、全世界が注目するオリンピックでありますから、そのときに、よもや、天気は気まぐれでありますけれども、渇水状況じゃないということを祈りつつ、やはり未然の防止を含めて全力を挙げて取り組んでいただくことを強く要望します。

 また水防法に戻ります。済みません、渇水の話と水防の話は全く別な話ですけれども。

 今回、水防法の改正がありましたけれども、この中で、ちょっと私も一点疑問に思うのは、緊急通行を法の改正で認めております。今までも、消防団等々、準公務員の人に対しては、いわゆる人の土地に対して勝手に入って、そしていろいろな水防活動をするのもオーケーよという形にしているんですね。

 今回の法改正はどういうことを想定しているのか、また、仮に、具体的に損失補償が生じた場合、いろいろなケースがあると思いますけれども、それに対して損失補償をどういう形でやるのかについて、具体的に簡潔にお答えください。この法改正について。

山田政府参考人 お答えいたします。

 今回、水防団はなかなか人の確保が難しいということもございまして、水防団の補佐的な役割をします、その補助する方々に、水防団でしたら、そもそも水防法で認められている土地を通行する等……(水戸委員「正確に答えて」と呼ぶ)済みません。水防管理者から委任を受けた民間事業者に対しまして、緊急時において、他人の土地を通過する緊急通行ですとか、あるいは、必要な資機材の使用等の公用負担を認める、水防団だけではなくて、水防管理者から委任を受けた民間事業者もそういう公用負担を認めるということとしているところでございます。

 具体的には、堤防ですとかあるいは水防活動の現場に向かう際に、私道や田畑を緊急に通行することですとか、あるいは水防工法に使用する竹木等の資材を使用すること等を想定しております。

 また、損失補償につきましては、これらの緊急通行や公用負担に伴いまして、土地や資機材等の所有者等に損失を与えた場合には、必要な費用等を所有者等に補償するということとなっております。

水戸委員 いわゆる財産権の侵害、これは今までもいろいろな議論があったんですね。

 災害対策基本法でも、二〇一四年十一月十四日に一部改正して、そして、いわゆる道路管理者が、例えば、緊急車両が通行するとき邪魔な車がある、これは大地震のときとか、雪害も、雪が多くて、緊急車両が通って、車が放置されていて邪魔だからどかすということに関して、今まではいわゆる公権力の行使ができなかった部分を改正して、そういうことは道路管理者ならばできるというふうになったんですね。そうした私的財産権を公権力で排除することができるということを認めることになりました。これは、土地の一時利用もそうなんです。他人の土地の一時利用も、道路管理者だったら勝手に使用することができるよと。これは緊急的なことです。

 今回も、水防ですから、ある意味緊急的なことなんですけれども、気になるのは、道路管理者という公的な立場の人間がやるのはいいんだけれども、今回は、建設会社とか民間人がやってもいいよという話になったんですね。そうなった場合に、民法との、いわゆる財産権の中で、例えば、その土地の所有者が拒否した場合、入っちゃだめだよ、何で勝手に使うんだと言った場合、そういうことが行使できるのかということについて、民法上、これは法的に違反行為になるんじゃないか。私はそれを恐れるんですが、どうでしょうか。

盛山副大臣 委員が御指摘いただいたように、災害対策基本法、これまでの災害を踏まえて、道路管理者ということでの改正が行われたわけですね。

 今回の水防法の改正ということでございますけれども、委員が御懸念されるように、不法行為が成立するかどうかというのは、最終的には具体的な事案ごとに判断されるべき事項で、なかなかぴたっとしたお答えをできるということではないんですが、一般論として申しますと、今回の水防法の改正で、明文で、水防管理者から委任を受けた者による緊急通行を認めるということになりますから、このような改正が行われる以上、違法性が認められず、不法行為は成立しないものになるのではないかな、そんなふうに現在のところ考えているところでございます。

水戸委員 確かに、緊急的な話ですから、ある程度、人命救助とかいろいろな災害への対策に対して、余り個々人の意思を確認してやるというよりも、強行的にやるということもそれはやむを得ない場合がありますけれども、やはり法的なしっかりとした整合性をとるべきだなということで、あえて今質問させていただきました。

 今、法務副大臣も、一般論ではあるけれども、やはりこれはこれとして法的にはやむを得ない措置であるから合法的であるよという御答弁をいただきましたから、そういう形で、緊急、速やかな形での対応を私は望んでいきたいと思っております。

 時間がないから最後の一点にいたしますけれども、今回の改正によりまして、市町村の地域防災計画上において、昨年も非常に被害がありましたけれども、福祉施設とか学校とか医療施設、いわゆる要配慮者利用施設というんですか、こういう施設に対して避難確保計画とか避難訓練を実施しなさいということを義務づけするわけでありますけれども、これは土砂法においても同じような形で、このような施設に関してはそうした計画を義務づける、実施を義務づけるというふうにあるんです。

 実際、この資料二を見ておわかりのとおり、このグラフは都道府県のグラフなんですけれども、一つの府県に棒グラフが二つあります。右の方は、これはある程度警戒できると推計する場所なんですが、左は、イエローとレッドというふうに、これは色分けがちょっとわかりませんけれども、実際に整備をしてちゃんと指定をしたところなんですね。

 つまり、今回、土砂法においては、区域指定をしなければ、同じ市町村にあっても、河川沿いにおいてはそうした施設に対して義務づけするけれども、土砂崩れがあるような地域に関してはこれに指定しない限り義務づけはされないという、私は、同じ市町村にあっても、そのような施設によって虫食い状態が必ず生じてくるなと思っているんです。やはり、そうした危ないところに対しては速やかに指定をすべきだと思うんですけれども、なかなかこれは都道府県で進んでいかないんですよ。

 ですから、国交省として、これはちゃんとした形で音頭をとらなければいけないと思っているんですけれども、これに対してどうでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 土砂災害警戒区域が未指定の箇所につきましては、区域の指定をまず促進するとともに、土砂災害警戒区域の指定の有無にかかわらず、全国の要配慮者利用施設の管理者を対象に、土砂災害の危険性について理解を深めていただくための説明会を開催するなど、避難確保計画の作成や避難訓練が実施されるよう促していきたいというふうに考えているところでございます。

水戸委員 ですから、速やかにこういうものを、市町村の中において、今言ったように、義務化される施設と、義務化されない、やらなくてもいいよということになってはいけませんから、同じ市町村内における、河川沿いだろうが災害が起こりやすい地域だろうが、しっかりした形で一元化しながら、どうせその施設に対する義務化をするというならば、そういう形を徹底していただくことを強く要望して、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 水防法について質問をいたします。

 今回の法改正では、洪水や土砂災害のリスクが高い社会福祉施設、学校、医療施設などの要配慮者利用施設に対して、避難確保計画の作成、そして避難訓練の実施を義務づける改正が盛り込まれております。

 昨年、台風十号によって、岩手県岩泉町の小本川沿いの高齢者福祉施設、グループホームにおいて、入居者九名の方々が逃げおくれ、亡くなられました。亡くなられた方々に、心からの哀悼の意を申し上げたいと思います。そして、被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 逃げおくれゼロのためにも抜本的な対策が必要だということは言うまでもないというふうに思いますけれども、まず、厚生労働省にお伺いをいたします。

 避難確保計画の作成、そして避難訓練実施を義務づけるとしても、実際に逃げおくれゼロにできるかどうかということが問題だというふうに思うんです。岩泉町の高齢者福祉施設、グループホームでは、被災時にはどういう職員態勢だったのか、お答えをいただきたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の台風第十号によりまして、今ございました岩手県岩泉町の認知症高齢者グループホームが被災し、利用者の方々が亡くなられるという痛ましい事態があったと認識をしております。

 当該被災したグループホームにおきましては、水害を想定した非常災害に関する計画が策定されていなかったとか、あるいは、当時発令されていた避難準備情報の意味合いを理解していなかったという事情もあったと承知しております。

 今委員の方からお尋ねのグループホームの当時の職員態勢でございますけれども、台風十号の接近に伴いまして、職員の帰宅が困難になることを考慮して帰宅させており、管理者一名であったということで承知をしております。

本村(伸)委員 やはり一名だったということですけれども、施設の職員の方々の人数が減る夜間の問題についてお伺いをしたいというふうに思うんです。

 日本医療労働組合連合会、医労連の皆さんの二〇一六年の介護施設夜勤実態調査の結果を見てみますと、グループホームですとか、小規模多機能型の施設ですとか、看護小規模多機能型施設で、回答のあった全ての事業所で一人夜勤というふうになっております。また、特別養護老人ホームや老人保健施設、短期入所でも一人夜勤が散見されまして、回答のあった職場の二割弱が一人夜勤だったということでございます。

 この一人夜勤という状況は、防災上も防犯上も、そして何よりも日常の安心、安全のためにも、改善しなければならないというふうに思います。

 具体的に御紹介いたしますけれども、例えば、秋田県の介護職員の方の声です。

 定員十六名のショートステイで、夜勤は職員一人、十六時半から九時の十六時間半の勤務です。十九時半から翌朝七時まで本当に一人。早番の職員の顔を見ると本当に安心します。認知症のない方はまずいません。休憩二時間が設定されていても、一人夜勤でどうとれというのでしょう。コールや排せつ介助、徘回の利用者さん対応、転倒しないように走り回っているのが現実で、体も気持ちも休まる時間がありません。

 こういう実態があちこちであるということです。

 東京都内の特別養護老人ホームが朝日新聞にも紹介されておりましたけれども、例えば、夜八時半から翌朝七時まで、四十七名の方々を二人の職員でケアしているという状況で、夜勤中の呼び出しコールは九十回を超えるという、必死に皆さんが働いているという状況でございます。

 こういう現状で本当に災害時に避難できるのかという問題があるというふうに思います。避難できると考えているのか、厚生労働省にお伺いしたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 介護サービスにおきましては、利用者の状態に応じて適切なサービスが提供されるように人員配置を定めておりまして、例えば、認知症のグループホームにおきましては、夜勤職員を一ユニットに一人以上配置するように義務づけております。このほか、夜間に職員を手厚く配置した場合には、報酬上の加算措置というものも設けてございます。

 また、お尋ねの災害時における対応でございますけれども、やはり、災害時における対応につきましては、あらかじめ、関係機関や地域関係者との連携も含めまして十分な対策を講じて、利用者の安全を最優先に考えて早目早目に対応するということが大切だと考えております。このため、各サービスの運営基準等におきまして、非常災害に対します具体的な計画を立てて、非常災害時の関係機関への通報、連携体制の整備ということを定めてございます。

 加えまして、事業者に対しましては、あらかじめその計画に災害時の人員体制や関係機関との連携体制を決めておく、避難訓練を実施して計画の検証、見直しを行う、それから、計画の策定の際には地域関係者と連携協力して課題や対応策を共有するということについて、対応できるような取り組みをお願いしているというところでございます。

本村(伸)委員 危険な、災害時にリスクを負うような一人夜勤というのは、やはりなくさないといけないというふうに思うんです。

 地元の愛知県内の医療の現場の方々や介護の現場の方々のお話をお伺いしますと、やはり、とりわけ夜間は一人勤務も多くて、災害などがあったら一緒に死ぬしかないというふうにおっしゃっておりました。日々必死に頑張っている方々に、こういう思いを絶対にさせてはならないというふうに思うんですね。

 避難確保計画の作成や避難訓練の実施を義務づけるというのであれば、やはり、夜間であっても確実に避難できる、逃げおくれゼロを保障する職員体制がどうしても必要だというふうに思います。避難確保計画、避難訓練が義務化される新たな段階になるわけですから、夜間の職員をふやすなどの体制強化、そしてそのための予算をふやすこと、介護や障害者福祉など社会福祉施設で一人夜勤を許さない基準をつくっていただきたいというふうに思いますけれども、厚生労働省、お願いしたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど高齢者のサービスについてもお答えしましたけれども、高齢者のみならず、障害者、児童等の入所、入居系のサービス等におきましては、最低基準としまして、利用人数に応じて一定数以上の夜間に勤務する職員等の配置を行うということも規定しております。

 また、先ほど申し上げましたように、サービスあるいは施設の種類によっては、夜間の手厚い人員配置というものを報酬でありましたり措置費というようなもので評価する、加算ということでの夜勤体制の強化ということも図っておるところでございます。

 実際の各サービス等におきます夜勤の体制につきましては、先ほど申し上げましたけれども、利用者の状況あるいは地域との連携状況も考慮した上で対応されているものと承知をしておりまして、非常時の災害対策計画を策定して、避難訓練等も実施するということも求めておるところでございます。

 ですから、福祉サービス等におきます夜勤体制につきましては、今回の水防法改正の内容を正しく理解していただくのはもちろんのことでございますけれども、こうした取り組みを含めまして、災害が起こった際の利用者の安全が確保されるように対応を図るということが重要であると考えております。

本村(伸)委員 今、いろいろ加算があるというふうにおっしゃいましたけれども、介護施設夜勤実態調査の結果を見ましても、グループホームや小規模多機能型施設では、全てが、そういう加算をとらずに、一人夜勤ということにあるわけです。加算をとって人をふやして、では、採算がとれるのかということで、事業として成り立たないから、加算して人が配置できないという現実もあるというふうに思うんですね。そういう点でも、厚生労働省としてしっかりと基準をつくっていただいて、予算をふやしていただきたいというふうに思うんです。

 国土交通大臣に次にお伺いをしますけれども、国交省、国土交通大臣の責任として、今回、避難確保計画、避難訓練の義務化がなされるわけですから、厚生労働省、厚生労働大臣とも連携して、医療の現場、介護の現場、障害福祉の現場、児童福祉の現場、そして生活保護の方々が必要があって入所されている施設もございますけれども、そうした現場や学校の現場で、防災上も、本当に必要な体制、職員の数が夜間もとれるように、ぜひ協力体制を要請していただいて、体制をしっかりとしていただきたいんですけれども、大臣、お願いしたいと思います。

石井国務大臣 要配慮者利用施設の現場におきまして、水害時の避難に必要な防災体制を確保することは重要でございます。

 国土交通省では、施設の管理者等に水害の危険性や水害に対する防災体制の必要性等を認識していただくための説明会を、厚生労働省や都道府県等と連携して全国で開催しているところであります。そこで得られた知見も活用いたしまして、施設においては避難確保計画を作成することとなりますが、その過程で、水害時の避難に必要な防災体制が検討されることとなります。

 また、計画に基づく訓練を実施することで、施設の防災体制を担う職員の技術力が向上するものと考えております。特に、小規模な施設の場合では、地域の防災体制の中で施設の避難活動を行うことが有効な場合があると考えられ、計画作成や訓練を通じて、自治会等の地域と連携した防災体制を構築することも重要と考えております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、厚生労働省等とも連携し、要配慮者利用施設における必要な防災体制の確保を支援してまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 少なくとも一人夜勤の状況をなくすためにも、体制強化を、国交省、厚生労働省連携してつくっていただきたい。必ずやっていただきたいというふうに思います。

 そもそも、洪水や土砂災害のリスクが高い地域に要配慮者利用施設をつくらせない規制も必要だというふうに思います。少なくとも水害が想定される地域では、つくらせないか、もしつくるのであれば、床上浸水しない状況を、かさ上げなどしながら、水没しないように施設を建てるなどの規制が必要だというふうに思います。

 国交省が出しております「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」の中でも、「自然災害から命を守るためには、災害の発生の危険性が高い区域にはできるだけ人が住まないようにすることが重要である」というふうに書かれているわけですから、とりわけ、高齢者や障害者や子供たち、病気の方々が過ごす福祉施設や医療施設、学校などの要配慮者利用施設は、洪水や土砂災害のリスクが高い地域につくらせない規制が必要だというふうに思います。

 災害弱者の方々にはそもそもリスクの少ないところに住んでいただく誘導策あるいは規制、こうしたことを、国交大臣として真剣に検討を始めていただきたい、そして実施をしていただきたいと思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

石井国務大臣 水害や土砂災害のリスクを踏まえた適切な土地利用の推進のためには災害のリスク情報の共有が重要であることから、水防法に基づく浸水想定区域図や家屋倒壊等氾濫想定区域等の公表、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定等を進めているところであります。

 また、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内にある土地の取引の際には、災害リスク情報を提供すること等を不動産関連事業者等へ求めているところでございます。

 これらの取り組みによりまして、災害リスク情報が十分考慮された適切な土地利用が図られることを推進してまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 国交省が出している「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」にも、「災害の発生の危険性が高い区域にはできるだけ人が住まないようにすることが重要である」という認識が示されているわけですから、とりわけ災害弱者の方々にはやはり命を守る具体策が必要だというふうに思いますので、ぜひこの点、進めていただきたいというふうに思います。

 次に、改めて確認をしますけれども、今回、避難確保計画の作成あるいは避難訓練の実施を義務づけられる要配慮者利用施設というのは全国でどのくらいあり、現在、避難確保計画を持っている施設、避難訓練をやっている施設はどのくらいあるのか、お示しをいただきたいと思います。

 そして、二〇二一年までに一〇〇%を目指すというふうになっておりますけれども、どのように実現するのか、お答えをいただきたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 水防法等に基づく要配慮者利用施設におけます避難確保計画の作成及び訓練の実施につきましては、市町村地域防災計画に位置づけられている施設が対象となります。

 水防法に基づく施設は、平成二十八年三月末で三万一千二百八施設ありまして、うち七百十六施設で計画が作成され、計画に基づき訓練が実施された施設は二百三十七施設でございます。

 また、土砂災害防止法に基づく施設は、平成二十八年三月末時点で七千三百二十五施設ありまして、うち千二百九十二施設で計画が作成され、訓練が実施された施設は五百六十九施設でございます。

 多くの要配慮者利用施設では、既に火災や地震に対する避難計画が作成されておりまして、水害等に対する避難確保計画は、これらの計画に必要な事項を追加して作成することも可能だと考えております。

 また、これまでも、水害や土砂災害のリスクの高い区域に所在いたします要配慮者利用施設における計画作成を促進するため、平成二十五年の水防法改正による努力義務の創設、計画作成のための手引等の公表、厚生労働省や都道府県等と連携した説明会の開催等の措置を行ってきたところでございます。

 今後は、さらに、簡易な入力フォームを通して避難確保計画を作成できるようにする手引の充実、それから、地方公共団体が適切に計画作成を指導できる、関係機関と連携した点検用マニュアルの作成、そしてモデルとなる地域において関係機関と施設管理者等が連携して避難確保計画を検討、作成し、そこで得られた効果的な避難等に関する知見を市町村に提供する等の支援を、福祉部局等の関係機関と連携して推進してまいりたいと思っております。

 これらのさまざまな取り組みを講じることによりまして、二〇二一年までに一〇〇%の計画作成の実現を目指して支援してまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 ありがとうございます。

 私は東海ブロック選出なんですけれども、国交省の資料の中でも、例えば愛知県には、対象の要配慮者利用施設は千三百四十五施設ありますけれども、避難確保計画は二十一施設しかつくっておりません。一・五六%ということです。静岡県では七百九十一施設で六施設、岐阜県では千三百六施設で二十一施設、三重県では、四百十二施設ありまして、ゼロ施設でございます。

 避難確保計画の策定や避難訓練を各施設が問題なく実施できるように、市町村が主体といっても、やはり法律で義務化するわけですから、政府としてもしっかりと支援をしていかなければいけないというふうに思います。

 国交省は、市町村任せにせず、各施設の実態を把握した上で、避難確保計画ですとか避難訓練を実施、策定するために、人が足りなければ人を派遣するですとか、財政的な支援が必要であれば財政的支援をする、体制強化もしっかりとしていただきたいというふうに思います。これまでも地方事務所に災害情報普及支援室というものがあったようなんですけれども、今言いましたように、避難確保計画の策定も全く進んでいなかったわけですから、こうした体制強化もお願いしたいというふうに思います。

 時間がないので、ちょっと二問一緒に質問させていただきたいんですけれども、もう一つ国交省にお願いをしておきたいのが堤防についてなんです。

 国交省の現場の職員の方々にお話をお伺いしますと、堤防決壊を防ぐ日常的な予算がじわじわと減らされているということもお伺いをいたします。堤防の草刈りの回数も減ってしまっている。堤防の草刈りというのは、軽視されがちですけれども大事な予算なんだ、草を刈って、堤防がひび割れていないかとかをチェックする上でも大事な予算なんだと職員の方々が強調しております。堤防の草刈りを怠りますと、ミミズがすむようになり、そしてモグラが発生して堤防が穴だらけになり、空洞化して、結局、堤防が弱くなるということもあるんだと現場の職員の方々が強調しておられました。

 日常的な草刈りなどの堤防のメンテナンスのお金がじわじわ減るようなことがあってはならないというふうに思います。こういう日常的な基本的な予算をふやしていただくということ、そして、国がこういう状況であれば、地方自治体が管理している河川というのも大変な状況だというふうに思いますので、地方自治体の河川堤防の維持管理についても、やはり国がしっかりと支援をするべきだということを質問させていただきたいと思います。

石井国務大臣 まず、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成や訓練の実施につきましては、先ほど局長から申し上げたようなさまざまな支援策に加えまして、防災・安全交付金により市町村へ支援をしてまいります。

 防災・安全交付金は、ハード整備とあわせて行われる要配慮者利用施設の計画作成や訓練といったソフト対策に係る費用の補助等を市町村が行う場合には、効果促進事業として、その費用について市町村への補助が可能であります。今年度より、支援対象を、ハード整備を実施する河川の沿川のみならず、ハード整備を実施する河川の流域内のどの河川の沿川でも可能としたところでございます。

 また、維持管理ですが、平成二十五年に、河川法に、堤防を含む河川管理施設等の維持または修繕に関する技術的基準が位置づけられまして、河川法施行令に具体的な技術的基準が定められました。さらに、必要となる最低限の維持管理を行えるよう、堤防等の河川管理施設の点検のための要領等の技術マニュアルを整えたところであります。

 これらの基準に基づく維持管理を適正に行うため、国の管理する河川の維持管理に係る必要な予算の確保に努めておるところでありまして、平成二十二年度以降、平成二十九年度まで、毎年増額となっているところでございます。

本村(伸)委員 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保です。

 早速質問に入らせていただきます。

 平成二十七年九月に発生した関東・東北豪雨災害、平成二十八年八月に北海道、東北地方を襲った台風十号等による甚大な人的、物的被害の実態を踏まえ、これからも全国各地において発生する可能性のある豪雨災害への対策として法律改正が行われるものと認識しております。

 一昨年、利根川水系鬼怒川の堤防が決壊した現場からの衝撃的なテレビ映像は今も記憶に残っており、衆議院災害対策委員として、水害の爪跡が残る茨城県常総市の災害現場を視察してまいりましたが、自然災害の猛威を改めて実感いたしました。国民をあらゆる自然災害から守ることは行政の最重要課題であるとの思いを込めて、質問させていただきたいと思います。

 初めに、平成二十七年十二月十一日に水防災意識社会再構築ビジョンが策定され、全ての直轄河川とその沿川市町村において、平成三十二年度を目途に水防災意識社会を再構築するための取り組みを行うこととなっております。

 これまでの、施設整備により洪水の発生を防止するものから、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものへと意識を根本的に転換し、ハードとソフトの対策を一体化して社会全体で備える、水防災意識社会の再構築への取り組みが必要であるとのことですが、国は、国民に対してどのように周知徹底させていく考えでいらっしゃるでしょうか、答弁を求めます。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 水防災意識社会の再構築を図るためには、住民等が、水害リスクに関する十分な知識と心構えを共有して、洪水が発生した際にはみずから主体的に行動する意識を社会全体に浸透させることが重要と考えています。

 そのために、住民がみずからリスクを察知して主体的に避難できるよう、住民目線のソフト対策へ転換することといたしまして、立ち退き避難が必要な家屋倒壊等氾濫想定区域の公表ですとか、住民がとるべき行動をわかりやすく示した洪水ハザードマップへの改良とか、あるいは避難行動のきっかけとなる情報をリアルタイムで提供するためのスマートフォン等を活用したプッシュ型の情報等の提供、これらの取り組みを推進しているところでございます。

 また、これらの取り組みを住民一人一人に浸透させることが重要でありまして、ソフト対策に関する説明会の実施、あるいは住民等の実践的な避難訓練、そして小学生等への防災教育等を行っているところでございます。

 今後、大規模氾濫減災協議会におきまして、これらの施策の具体的な進め方等を関係者が一体となって検討いたしまして、水防災意識社会の再構築を図るための取り組みを強力に推進してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、西村(明)委員長代理着席〕

椎木委員 今回、施設整備により洪水の発生を防止するものから、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものへと意識改革を行うとのことですが、これによってハード対策がおろそかになることにはならないのでしょうか。

末松副大臣 先生の御指摘は大変重要なことでございまして、昨日も、治水課長の泊課長以下若手職員とも、おろそかになってはならない、ハード対策は重要である、そういう話し合いを行いました。

 現状は、気候変動等の要因によりまして集中的な豪雨が増加するとともに、施設の能力を上回る洪水の発生も懸念されております。そのため、施設では防ぎ切れない洪水にも備えることはもちろんですが、まずは、ハード対策を着実に推進することが重要です。

 具体的には、洪水氾濫を未然に防ぐ対策といたしまして、優先的に対策が必要な全国約千二百キロメートルにおいて、平成三十二年度までに堤防整備などを実施することといたしております。

 また、既存ストックを最大限活用する取り組みとして、既設ダムを有効活用して治水機能等を強化するダムの再開発、かなり難工事と伺っておりますが、この取り組みを進めてまいります。

 ハード対策がおろそかになることの御懸念でありますけれども、国民の生命と財産を守るハード対策は極めて重要であると考えており、今後とも、ソフト対策と一体となって、引き続き着実に推進してまいりたいと思います。

 なお、財源と予算がつけば、国交省としては着実に事業を進めたいという気持ちでございますので、何とぞ御理解ください。

椎木委員 今の末松副大臣の答弁で、若干不安な思いは払拭されました。ありがとうございます。

 次の質問に入ります。

 多様な関係者の連携体制を構築し、的確な避難勧告の発令等により洪水等から逃げおくれゼロを実現するために創設される大規模氾濫減災協議会について、それぞれの地域に同じような大規模氾濫減災協議会が設立されることとなりますが、都道府県に大きな負担にはならないのでしょうか、答弁を求めます。

山田政府参考人 お答えいたします。

 大規模氾濫減災協議会の対象となります洪水予報河川あるいは水位周知河川は数多く指定されているために、大規模氾濫減災協議会の設置に当たりましては、協議会の構成員となります地方公共団体等の負担を軽減するため、圏域や行政界などを考慮して複数河川をまとめて協議会を設置することとしております。

 また、都道府県による大規模氾濫減災協議会の設置に際しましては、各地方整備局に相談窓口の設置ですとか、都道府県協議会を国の協議会と合同開催する、あるいは都道府県協議会への国のアドバイザー等の参画、これなどを行いまして、都道府県の取り組みを支援していきたいと思っております。

 いずれにしましても、大規模氾濫減災協議会の運用に当たりましては、地域の実情も考慮いたしまして、より効率的な取り組みの実施に努めるとともに、協議会の構成員となる地方公共団体等の負担を軽減するよう取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

椎木委員 次に、警察、消防、自衛隊等の、いわば災害対応のプロとも言える人たちを積極的に大規模氾濫減災協議会の構成員にすべきではないかと考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 大規模氾濫減災協議会は、大規模氾濫による被害の軽減に資する取り組みを総合的かつ一体的に推進するために必要な協議を行う協議会であるため、洪水時の住民避難や、あるいは水防活動などの減災対策を推進するために不可欠な責任を有しております、水防行政を行う国土交通大臣、都道府県知事や、住民の避難等の事務を行う市町村等を必須構成員としております。

 一方、警察、消防、自衛隊についても、氾濫による水害の発生に際して、水防管理者からの援助の要求による避難誘導や、都道府県知事等からの派遣要請による救助活動などを担う水防の関係機関と考えております。

 改正水防法におきましては、各協議会で取り組みを推進するため必要と認められる者を協議会の構成員に加えることも可能であることから、当該地域の実情や実施すべき取り組み内容を踏まえて、必要に応じて警察、消防、自衛隊等の関係機関も協議会に参加してもらうことを想定しているところでございます。

椎木委員 ありがとうございます。

 次に、避難勧告等をどのタイミングで発令するかによって、地域住民の生死を分ける可能性もあると考えます。洪水発生時に市町村長が河川の状況を適切に把握していなければ避難勧告等の発令がおくれると思うのですが、河川管理者との連携について現状どのような体制をとっているのでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 これまでの水害におきまして、河川の水位や降雨状況があらかじめ定められていた避難勧告の発令基準に達したことが市町村幹部まで伝わらずに、避難勧告等が発令されない状況のもとで被害が発生することがございました。このような事態を繰り返すことなく、市町村長が災害時に避難判断を適切に行うためには、河川の情報や水害の危険性について的確に把握していただくことが必要であります。

 国が管理いたします河川におきましては、洪水時に、河川を管理する河川事務所から市町村長へ、直接ホットラインで河川の状況や今後の見通し等を伝える取り組みを既に行っておりまして、このような体制をとることが重要と考えております。

 同様の体制を都道府県が管理する中小河川におきましても定着する必要があることから、地域の実情に合わせた伝達手法、留意点等を整理した中小河川におけるホットライン活用ガイドラインを作成しまして、本年二月六日に都道府県に提供したところでございます。

 都道府県には、各河川に設置される減災協議会の場等を活用して、対象となる市町村を検討、調整いただき、人口、資産の多い主要な河川等から段階的にホットラインの構築を進め、遅くとも来年の梅雨期を目途にホットラインを構築していただくよう依頼をしているところでございます。

椎木委員 次に、逃げおくれゼロを実現するためにICTを活用する対策を推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。

根本大臣政務官 委員御指摘のとおり、洪水からの逃げおくれゼロに向け、効率的、効果的に災害リスク情報を提供するとの観点から、ICTを活用することは重要だと考えております。

 ICTの活用により、多くの住民に一斉に、リアルタイムで、切迫感のあるライブ画像等の情報が提供可能になります。このため、逃げおくれによる被害が多数発生した平成二十七年九月関東・東北豪雨を契機に、住民の主体的な避難を促進する住民目線のソフト対策として、スマートフォン等を活用したプッシュ型の洪水情報の配信、河川水位、レーダー雨量、河川監視カメラの画像など、河川情報を住民へリアルタイムで配信する「川の防災情報」の充実などに取り組んで、進めているところであります。

 今後とも、ICTを用いた技術開発に努め、円滑かつ迅速な避難により、逃げおくれゼロの達成に全力を尽くしてまいります。

椎木委員 ありがとうございます。

 根本政務官におかれましては、私の期待どおりの御答弁をいただけたと思っております。ありがとうございます。

 次の質問に入ります。

 国民の生命財産を守るためには、市町村長によるリスク情報の周知だけではなく、自然災害から命を守るすべを身につける防災教育が重要であると考えますが、現状、どのような対応がなされているのでしょうか。

末松副大臣 お答え申し上げます。

 自然災害から命を守るためには、行政による公助のみならず、自助の精神に基づきまして、住民一人一人が災害時に適切に避難できる能力を養う必要がございます。

 したがいまして、先生御指摘のとおり、子供から家庭、さらには地域へと防災知識等を浸透させる防災教育を日ごろから進めることが重要であると考えております。美しい小川でも親水性と危険性の両面があるということを知る必要があろうかと思います。

 このため、国土交通省におきましては、災害時の写真や動画等の提供、降雨を体験できる機材の貸し出し、河川及び砂防事務所の職員による出前講座等の実施を通じまして、小学校、中学校等における防災教育の実施を支援いたしてまいりました。

 平成二十八年度からは、これらの取り組みに加えまして、各都道府県の教育委員会等と連携いたしまして、意欲的な学校におきましては、わかりやすい授業の流れやポイントを整理した、学校ごとに作成する指導計画作成への支援を開始いたしたところでございます。

 国土交通省におきましては、引き続き、これらの取り組みを進め、自然災害から国民の命を守るため、協議会等も活用しながら、防災教育の支援に努めてまいりたいと存じます。

椎木委員 ありがとうございます。

 私も、地方行政が長く、教育委員会で勤務していました。この防災教育は、今の副大臣の答弁のとおり非常に大事だと思いますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。ありがとうございます。

 次の質問に入ります。

 水害対策において重要な役割を担っている水防団の団員数減少についてお聞きいたします。

 水防団員の高齢化やサラリーマン化による平日参集の困難等が、地域の水防力を確保するための課題となっております。現在、水防団員を確保するためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 国土交通省では、水防団員を確保するために、公務災害補償の充実ですとかあるいは退職報償金制度の創設等、処遇改善に努めるとともに、毎年、各地域において、さまざまな水防工法や情報伝達訓練を行う水防演習を開催する等、水防活動の重要性の普及啓発等に努めているところでございます。

 このほか、地域の水防に対する意識を高めるため、水防演習に地元の大学生や自治会、婦人会、建設業界等に参加いただく、また、水防団員の士気高揚のための表彰、叙勲等を行うなどの取り組みを行っているところでございます。

 今後も、引き続き、水防活動の重要性の普及啓発等を通じまして、水防団員の確保に努めてまいりたいと考えているところでございます。

椎木委員 次に、災害救助等に従事する際の水防団員の安全確保について、どのような対策を行っているのでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 水防団員の安全確保につきましては、東日本大震災の際に多くの水防従事者が犠牲になったことも踏まえまして、平成二十三年に水防法を改正いたしまして、都道府県等の水防計画に、水防活動に従事する者の安全の確保を位置づけることといたしました。

 これを受け、国土交通省では、施行通知やパンフレット等によりまして、水防事業者の無線機の携行やライフジャケットの着用、退避ルールの策定等の必要性を周知しまして、その定着にも努めているところでございます。

 国土交通省といたしましては、引き続き、水防活動に従事する方々の安全確保が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

椎木委員 水防活動を行う建設業者等へのインセンティブが必要ではないかと考えますが、この点についてはいかがでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 多くの地域で水防団員が減少、高齢化する中、迅速な水防活動や重機を用いた大型土のう設置などを行う建設業者等は、地域の水防活動において非常に重要な役割を担っていると考えております。

 このため、建設業者等による水防活動に関する広報資料を作成して、その重要性を広く社会に認知してもらうよう努めているところでございます。

 また、国土交通省や多くの都道府県の公共工事の発注におきまして、水防活動を含めた災害活動の実績や災害協定の締結が総合評価落札方式の評価対象になっておりまして、建設業者による地域の水防活動を評価しているところでございます。

 いずれにしましても、地域の水防活動における建設業者等の果たす役割は非常に重要なものと考えております。このようなインセンティブ等により、建設業者等がやりがいを持って水防活動を行える環境づくりに努めてまいりたいと考えているところでございます。

椎木委員 次に、昨年八月に発生した台風十号による岩手県小本川の氾濫により、高齢者施設では逃げおくれによる多数の死者がおります。洪水等から要配慮者の円滑かつ迅速な避難の確保をどのように図ろうと考えているのでしょうか、石井大臣の御見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 今回の水防法等の改正によりまして、現行は努力義務とされております要配慮者利用施設における避難確保計画の作成と避難訓練の実施を義務化することによりまして、円滑かつ迅速な避難の確保を図りたいと考えております。

 避難確保計画の作成を支援するために、作成に係る手引の充実、地方公共団体向けの点検用マニュアルの作成、モデルとなる地区で得られた効果的な避難等に関する知見を市町村に提供等の取り組みを予定しております。

 また、要配慮者利用施設の計画作成や訓練に係る費用の補助等を市町村が行う場合には、その費用について、防災・安全交付金により市町村へ支援することができるところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後とも、関係機関と連携いたしまして、要配慮者の円滑かつ迅速な避難の確保に向けた取り組みを支援してまいりたいと考えております。

    〔西村(明)委員長代理退席、委員長着席〕

椎木委員 昨今、気象等が激甚化していることを踏まえ、今後どのように治水対策を進めていこうと考えているのでしょうか、石井大臣の見解をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 近年、全国各地で水害が頻発、激甚化する中、施設では防ぎ切れない大洪水は発生するものとの考えに立ち、社会全体で洪水に備えるため、河川管理者、都道府県、市町村等の関係者が連携して、ハード、ソフト一体となった減災対策を総合的かつ一体的に推進する必要があると認識をしております。

 特に、平成二十七年の関東・東北豪雨や平成二十八年の台風十号の被害を踏まえまして、関係者から成る協議会の設立、避難訓練の発令に資する水害対応タイムラインの作成等を進めるとともに、河川整備基本方針に基づき、施設により安全を確保しようとする規模の洪水に対して、洪水氾濫を未然に防ぐ対策としてのハード整備を着実に推進する取り組み、ダムの再開発等の既存ストックを最大限に活用する取り組み等を進めてまいります。

 さらに、水防法改正によりまして、これらの取り組みを加速化し、逃げおくれゼロと社会経済被害の最小化の実現を目指します。

 今後とも、国土交通省の現場力を最大限活用し、水害から国民の生命と財産を守るため、全力を挙げて防災・減災対策に取り組んでまいりたいと存じます。

椎木委員 以上、きょうは十二項目質問させていただきました。前回の委員会でもお話しさせていただいたんですけれども、私は、前日の午後の早い時間に通告はさせていただいていまして、できるだけ詳細に通告もさせていただいています。そのせいか、大臣初め政府参考人からも、大変詳細にわたった答弁がいただけていると思っております。

 この法案、大臣の趣旨説明にもありましたけれども、近年、全国各地でますます頻発、激甚化する洪水等に対しての逃げおくれゼロと社会経済被害の最小化を実現するために必要な措置を講ずることの目的に沿った法案だと思っております。

 そういう意味では、その法案に対する抜本的な対策、またその考え方について、きょうは、大臣、副大臣、政務官、政府参考人から、本当に、我が党が若干懸念していた部分も払拭できる答弁がいただけたと思っております。

 この法案も、我が党は積極的に賛成の立場でおりますので、この後の質疑終局後の賛否でも賛成の立場で、この法案成立後もしっかりこういった大事な法案にはかかわってまいりたいと思いますので、そのことを一言申し上げまして、若干時間は早いですけれども、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

西銘委員長 次に、田所嘉徳君。

田所委員 茨城一区の田所嘉徳でございます。

 私の選挙区は一昨年の関東・東北豪雨におきまして鬼怒川決壊という大惨事に見舞われましたので、この水防法等の改正案について質問の機会をいただきました。ありがたいなと、心より感謝を申し上げるわけでございます。

 津波というのは海にしか来ないんだと思っておりましたら、まさに津波のように川の水が押し寄せて住宅がのみ込まれる様子、大変私はショックを受けました。本当に信じがたいような大変な災害だったと思います。

 また、ヘリとかボートで本当に多くの人が救助される、手を振ってヘリの到来を待っているというような状況も報道されておりまして、四千三百人が救助されたということでありますから、まさにこれは、逃げおくれも大変多かったのかなというふうに思うわけでございます。

 そういう中にあって、避難勧告あるいは指示が出されなかった、あるいは決壊してから出たというような状況について、大きな批判がされたわけであります。これでは逃げようがないということであります。

 大変な問題であると思いますけれども、このようなことで、常総市において避難勧告とか指示がしっかりと出されていればこういうことがなかったのかどうか、その点をまずお聞きしたいと思います。

伊丹政府参考人 お答えいたします。

 自然災害から住民の生命を守るためには、避難行動を開始すべきタイミングで、市町村が、空振りを恐れずに避難勧告等を発令すべきでございます。

 しかしながら、住民避難の実効性を高めるためには、単に避難勧告や避難指示を出すだけでは不十分でありまして、避難対象者を明確にし、とるべき避難行動についても、繰り返しわかりやすい言葉で伝達すること、住民が、みずからの命はみずからで守るという意識を持って避難行動をあらかじめ考えておくこと、そして、できるだけ多様な伝達手段で伝えることなどが必要であると認識しております。

田所委員 私がこれをお聞きしましたのは、避難勧告あるいは指示等、そういった制度の意義ということ、それに私はちょっと疑問を持っております。

 先ほど、空振りを恐れずにというようなことが言われました。これは一定程度意味もあるのかもしれませんけれども、程度があると思うんですね。オオカミ少年になってしまっては困りますし、この勧告制度については、いろいろそういう点で考えるべきところがあるというふうに思っております。エリアも危険度についても明確ではありません。早期に大きく網をかぶせておけば、それでもう批判はされないということにはならないというふうに私は思うんです。

 例えば、二〇一一年九月の台風十五号では、水戸あるいはひたちなか市では、五万人に対して避難指示が出されました。実際に動いたのは九百何十人程度だったようでございます。

 こういうのを見ますと、私は、出せばいいというものではないんだろうと。それが本当に行動に結びつくのか、それを受けた人がどうこれを判断するのかということと一緒でなければ意味はないんだろうというふうに思っております。

 関東・東北豪雨においても、避難勧告が、大体、水戸なんかでも全然離れていますよ、三万人に出ているんですね。石岡でも六万人に早々と出ております。

 では、これでよかったのかといえば、私は、そうではないんだろうというふうに思っております。やはりしっかりとこの意義が信頼されるためには、内容、エリア、そういったものが精緻なものでなくてはならないというふうに思っております。そういうことをしっかりとまず果たせるような、そういうあり方、逃げおくれをゼロにするための実効性のある、そういった制度にしていかなければならないというふうに思っております。

 そこで、今般のこの水防法等の改正の中で、ハードとソフトをあわせてしっかりと対策を行うということでございます。その全体像につきまして、私はお聞きしたいと思っております。

 まさに、ソフトの充実、大変着目はいいと私は思っておりますので、鬼怒川氾濫の教訓をしっかりと踏まえたこと、そのソフトの面からどのように災害対策に結びつけようとしているのか、お尋ねをしたいと思います。

末松副大臣 お答え申し上げます。

 平成二十七年の関東・東北豪雨では、鬼怒川等における洪水の氾濫によりまして多数の逃げおくれが生じ、的確な避難勧告の発令や広域避難体制の整備が必要といった課題が明らかになりました。

 このような課題に対応するためには、地方公共団体や河川管理者、水防管理者等の多様な関係者が、あらかじめ密接な連携体制を構築しておくことが大切でございます。

 このため、国土交通省では、平成二十八年から、まずは国管理河川において、関係者が一堂に会する任意の協議会を設置し、避難勧告発令までの水害対応タイムラインの作成や、広域避難体制の構築等の取り組みを進めているところでございます。

 一方、都道府県管理河川における協議会の設置が十分に進んでいない中、昨年、小本川等の都道府県管理の中小河川におきまして、氾濫が発生いたしました。

 このため、今回の水防法改正におきまして、大規模氾濫減災協議会制度を創設しまして、都道府県管理河川への取り組みを加速するとともに、協議会の取り組みの実効性、継続性を高めることといたしてございます。

田所委員 この中で、やはり大規模氾濫減災協議会というものが大変大きな意味を持ってくるんだろうというふうに思っております。

 ついては、国協議会は必置でありますけれども、ノウハウのちょっと低いだろうと思われる都道府県等については任意という点では、若干弱いのかなと。聞いてみますと、余り河川のない都道府県もあるじゃないかというようなことも言われるようでありますけれども、運用においてしっかりと全て網羅できるように進めるべきだろうというふうに思っております。

 内容についても、例えば、一番もとである気象学、気象台からの情報等によって、線状降水帯でどうだというふうな話が今回はありましたけれども、そういった雨量の予測から、あるいは避難の交通をどう確保するのか、そして施設がちゃんと完備されているのか。大体、今まで五万人とか六万人とかに出しても、施設なんか何もやっていないんですよ、実は。それだけのことを手当てしているわけではない。そういうことですから、そういったものと関連したところに信頼が出てくるんだろうというふうに思っております。

 そしてまた、これは首長が責任を持つということであります。しかしながら、それだけの知見があるのかどうかということも非常に疑問でありますし、最終的には住民がみずから判断するということでありますが、住民も半信半疑だ。受け入れるところも明確じゃなければそうなってしまうわけでありまして、しっかりと実効性のある、構築された形というものが重要だろうというふうに思っております。

 そこで、市町村長の役割が重い中において、避難勧告あるいは指示を発令するについて、正確な判断をするその根拠を、やはり判断基準の明確化、あるいはそれ以前に、市町村長がそれを理解しなければならないというふうに思うんです。

 常総市ではホットラインがありまして、氾濫危険情報、警戒情報あるいは発生したという情報を七回送っているんです、これを出すべきだと。そのほかに、今言ったものを出している。たびたび連絡して、それでも出なかったという状況がございます。

 そういう中で、どうこれを理解させてしっかりと進めるのかということをお尋ねしたいと思います。

長坂大臣政務官 お答え申し上げます。

 避難勧告等につきましては、先ほどの答弁にもございましたが、空振りを恐れずに発令すべきであることをこれまでも内閣府から市町村に対して呼びかけてきたところでございます。

 さらに、内閣府では、避難勧告等に関するガイドラインをことしの一月に改定いたしまして、市町村が地域の実情に応じた定量的な発令基準を作成するための具体的な設定の考え方や、河川管理者等からのホットライン等を生かした、市町村長の意思決定を補佐できる体制の構築等を追記したところでございます。

 内閣府といたしましては、本ガイドラインの実効性を高めるため、都道府県、市町村の防災担当職員に対する説明会や研修を実施してまいりました。さらに、市町村長の初動対応力を高めるため、首長が集まる場を活用した講演会や、消防庁と連携した首長向けの研修会等を毎年実施しており、特に、就任後間もない首長に対しまして積極的な参加を呼びかけているところでございます。

 今後とも、市町村が適切に避難勧告等を発令できるよう、関係省庁と連携して市町村を支援してまいりたいと考えております。

田所委員 的確な対応を示していただきまして、ありがとうございました。

 確かに、ガイドラインを、本当に完成度の高いものをお示ししていく、あるいは、ホットラインにおけるしっかりとしたサポートというものを充実させるということは、本当に重要だろうというふうに思っております。

 私も、地元で堤防を管理に行った人たちなどから聞きますと、堤防が揺れていたと言うんですね。水も噴き出していたし、あるいは漏水している箇所もあったということですから、やはり決壊するところを、どうなっていくのかというのをしっかりと見定めていく、そういったことは、非常に真剣に精緻にやっていく必要があるというふうに私は思っております。

 常総市はこういう状況でしたけれども、隣接する下妻とか筑西市などについては、こういった警報も出されておりました。そういった格差が生じてはならないわけでありますから、そういった首長さんへの積極的な指導というものもお願いしたいというふうに思っております。

 続きまして、勧告、指示等に基づいて実際に行動する住民の理解というものが大変重要だというふうに私は思っております。これでそれぞれの人が判断していくわけであります。

 勧告等は出たけれども、何をしろと言うんだ、あるいは、そのうち何とかなるだろうということで済ませているというような状況もある。あるいは、ハザードマップも、さっき言ったような津波になるような天井川、そして家が流されるようなところは、たしかハザードマップを見直しているところも市町村であるわけであります。あるいは、河川管理者において浸水想定もされているわけでありますので、そういうものを理解した上でそれぞれが判断できるような、そういう手法というものが私は求められるというふうに思っておりますけれども、その点について質問したいと思います。

長坂大臣政務官 お答え申し上げます。

 平成二十七年の関東・東北豪雨で大きな被害を受けた常総市の一部地域では、地区の住民、市や警察、消防、河川管理者、気象台等の関係機関が一堂に会し、住民一人一人がそれぞれの環境に合った災害時の時系列の対応をみずから定めるマイ・タイムラインの取り組みが進められていると承知しております。

 いざというときに住民が的確な避難行動がとれるようにするためには、市町村等が、居住地にどのような災害リスクがあるのか、想定される災害に対してどのような避難行動が望ましいか、災害時にどのような情報が提供されるのか等について、マイ・タイムラインのような取り組みや訓練を通じて、住民に対して丁寧に説明することが重要であると認識しております。

 ことし一月に改定した避難勧告等に関するガイドラインでは、これらの取り組みを始める市町村の参考になるよう、参考事例集を作成したところでございます。

 関係省庁と連携いたしまして、市町村のこのような取り組みをこれからも支援してまいりたいと考えております。

田所委員 マイ・タイムラインということで、新しく考案されたということでございます。リスクを認識して、そしてタイミング等が自分で日ごろからわかるような、事前にそういういろいろなイメージも描けるということで、大変重要だと思っております。ただ、まだスタートしたところでありますので、これをしっかりと普及させるように頑張っていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 続きまして、それぞれの方に情報をどう伝達するかというところでございます。

 そういう中にあって、屋外スピーカーもありました。しかし、これはなかなか聞き取れないですね。非常にわかりにくいところもありますし、消防署とか市の広報車等のいろいろな広報活動も効果的かもしれませんけれども、余り災害が大きいときにはこれも動けませんので、いろいろ限度もあるということだろうと思います。

 そういう中で、先ほど大臣から、実はもうプッシュ型メール発信が行われているんです、こういうことですが、実はじゃまずいんだろうと私は思うんですよ。みんなわかってきて、これからそういう時代になるんだということがわからないと、やはり受け手側でそれを理解して行動に結びつけるということができませんので。

 でありますから、先ほど、画像なんかも含めていろいろな種類の発信をしていけるんだということが言われましたが、これをどう運用して伝達をしっかりしたものにするのか、この点についてお聞きをしたいと思います。

山田政府参考人 委員御指摘のとおり、洪水時におきまして個々の住民の方々に洪水氾濫の危険性を迅速かつ確実に伝達することは、重要だというふうに考えているところでございます。

 このため、先ほど申しました、国土交通省では、携帯電話事業者の緊急速報メールサービスを活用いたしまして、洪水情報のプッシュ型配信に取り組んでいるところでございます。

 この取り組みは、平成二十七年九月の関東・東北豪雨を踏まえまして、平成二十八年九月から、全国に先駆けて、鬼怒川流域の常総市等を対象に運用を開始したところでございます。平成三十二年度までに国が管理いたします全国百九水系へ順次拡大していく予定でございまして、本年五月からは六十三水系にエリア拡大することとしているところでございます。

 今後も引き続き、取り組みを促進し、多くの水系でできるだけ早く運用開始ができるよう努力してまいりたいと考えているところでございます。

田所委員 それでは、今、具体的に鬼怒川緊急対策プロジェクトが進行しております。六年間で六百億円を投じてしっかりと整備をする、ソフト事業も含んでいるということでございます。

 そういう中にあって、最近は、よく政府が、できることは何でもやるということを言っております。私は、できることは何でもやるなんという言葉は、普通なら空虚な言葉だろうと思っておりました。当然、そういうことは言うわけであります。しかし、私は、この鬼怒川の対応を見ておりまして、現実に二十四時間休まないで本当にしっかりと対応してきたという姿を見まして、まさに、できることは何でもやるという意義を若干再認識したところがございます。

 そういう中にあって、やはりしっかりとこれの整備を迅速に進めるということが重要であります。

 こういった河川のような自然公物につきましては、判例などでも、予算の抗弁、肯定の抗弁ということで、これが排除されないということであります。そして、過渡的な安全性で足りるというようなことも言われているので、私は、若干おおらかにやっているところがあると思いますけれども、今のような被害の状況を見てみますと、やはり予測可能性が大いにあるわけでありますから、それを踏まえて、しっかりとした整備を進めていくべきだろうと。

 現在のこのプロジェクトの進行状況についてお伺いをいたします。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 鬼怒川緊急対策プロジェクトは、鬼怒川におきまして、これまでにないほどの降雨を記録した平成二十七年関東・東北豪雨の再度災害防止を図るために、国、茨城県、そして常総市など沿川七市町が主体となりまして、平成三十二年度の完成を目標に、鬼怒川の約四十四キロ区間におきまして、堤防整備や河道掘削などのハード対策と、住民の円滑な避難のためのソフト対策を一体として取り組むプロジェクトでございます。

 ハード対策につきましては、河川激甚災害特別緊急事業、いわゆる激特事業等によりまして、常総市三坂町地先決壊箇所の復旧工事ですとか、あるいは漏水が発生した箇所の対策を完成するとともに、常総市若宮戸そして下妻市前河原地先の大規模溢水箇所につきまして、被災時の水位相当の盛り土を完成するなど、着実に進捗しているところでございます。現在、堤防整備に必要な用地の取得や洪水時の水位低下のための河道掘削などを推進しているところでございます。

 ソフト対策につきましては、逃げおくれゼロの取り組みとして、住民一人一人が自分自身の環境に合ったマイ・タイムラインを作成する取り組みや、全国に先駆けて洪水情報のプッシュ型配信を実施するなど、住民の円滑な避難の実現に向けた取り組みを進めているところでございます。

 今後も、地域の安全、安心を確保するために、茨城県、常総市など沿川自治体と連携しながら、ハード対策、ソフト対策ともにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

田所委員 再度災害防止というようなことも一つの目標になっているようですので、しっかりと進めてもらいたいというふうに思います。

 また、きょうは質問できませんでしたが、ダムの効用等についてもしっかりと考慮しながら、二度とこういった洪水そして水害が起きないように、ハード、ソフト整備を進めていただきたいということを言いまして、終わります。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。

 きょうは、水防法等を改正する法律案ということで、四点ほど御質問をさせていただきたいというふうに思っておりますが、今、ちょっと大臣が参議院の方に行かれているということですので、私は、主に山田局長に質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 一つ目には、タイムラインの策定の進捗状況、これについてお伺いをしたいというふうに思います。

 本改正案では、国交大臣、さらには都道府県知事が指定する河川において、流域自治体、河川管理者等から成る大規模氾濫減災協議会を設けるとともに、その協議会において、的確な避難や被害拡大防止のための関係者の役割、連絡体制を時系列で整理した水害対応タイムラインを作成、さらには点検するというふうになっております。

 このタイムラインにつきましては、平成二十三年九月に発生した紀伊半島大水害、これは私の地元でございますけれども、ここで甚大な被害が発生した三重県紀宝町において、その災害対応の教訓から、全国で初めて導入されたものでございます。

 私は、地元議員の一人として、これまで何度もこの紀宝町に赴くとともに、平成二十八年三月の当委員会では、このタイムラインの全国での導入を図るべきであるとの質問をさせていただきました。国交省からは、そのとき、全ての国管理河川とその氾濫により浸水のおそれのある七百三十の市町村において、タイムラインを昨年の梅雨の時期までに約四百の市町村で策定を行って、さらには、残りの市町村については平成三十二年度までに策定をしてまいりたい、このような答弁をいただいたところでございます。

 また、昨年九月十日に国交省が記者発表した内容では、昨年の八月現在で、この対象の七百三十市町村のうち、五百八十九の市町村でタイムラインの策定が行われた、このような発表がなされたところでございます。

 私は、タイムラインについては、避難勧告発令のタイミング、また被害の最小化という観点からも、その有用性、さらには効果は非常に高いというふうに考えておりますが、現在まで、この対象七百三十市町村におけるタイムラインの策定がどこまで進んでいるのか、その進捗状況について御答弁を願いたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 水防災意識社会再構築ビジョンの取り組みの一つといたしまして、避難勧告着目型の水害対応タイムラインとして、国管理河川の氾濫により浸水のおそれのあります先生御指摘の七百三十市町村を対象に、本年三月末までに六百五十七市町村で策定いたしました。残りの市町村につきましては、平成三十二年度末までに策定することとしているところでございます。

 先ほども委員からお話がございました紀宝町のように、多くの関係機関が連携いたしました多機関連携型のタイムラインにつきましては、関係機関が多岐にわたって、調整も一定の時間を要することから、現在、各地方整備局の管内で二地域程度を基本に、全国二十地域で取り組みを進めているところでございます。

 一方、都道府県が管理いたします河川におきましても、タイムラインの取り組みを拡大していくことが重要でございまして、国土交通省では、昨年八月にタイムライン策定・活用指針を公表いたしました。今後、各河川において設置されます都道府県大規模氾濫減災協議会等の場におきましても、都道府県の方々が管理する河川のタイムラインの策定について検討されることとなると考えております。

 国土交通省といたしましては、都道府県管理河川について、人口、資産の多い主要な河川等から段階的にタイムラインの策定を進めて、おおむね五年以内を目途にタイムラインを構築していただきたいと考えているところでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今、七百三十市町村の中で、既に六百五十七で策定が進んでおるという御答弁をいただいたところでございます。さらには、紀宝町のように、関係機関が非常に連携しながらの、本格的なと言ったらちょっと言い過ぎになりますが、タイムラインについても二十地域を基本に進めていきたい、こういったお話をいただきました。

 実は、関東・東北豪雨の常総市、さらには昨年八月の台風十号の岩泉町では、タイムラインは策定されていないという状況がございました。

 実は、今回、紀宝町、これは全国で一番最初にタイムラインを策定したところなんですが、この町長と私が懇談をさせていただくと、こういうふうにおっしゃるんですね。やはりタイムラインができたことによって、関係機関と協議を重ねるので、顔の見える関係がしっかりとできるんだという話をされます。さらには、事前に減災に取り組む体制をつくることによって、町民にまでそういった事前の行動、取り組みが本当に周知できる、こういったお話をいただいたところでございます。

 今後も、このタイムラインについては策定をしっかりと加速させていただきたいというふうに思いますし、また、つくり上げた市町村についても、常に協議、検討を重ねて、より実効性のあるものにしていただくことが、つくって終わりではなくて、そこの部分をまたお取り組みとして進めていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、要配慮者利用施設の避難確保計画の作成義務についての国の支援について、御質問をさせていただきたいと思っております。

 実は、ここの部分については、既に村岡委員また本村委員からも御質問がありまして、そして、要配慮者利用施設において、いわゆる手引の充実でありますとか、さらには、その手引を簡素化することによって、つくりやすい状況をつくり上げる、また、市町村が行う点検のマニュアルを作成していきたい、こういった御答弁を既にいただいたところでございます。

 実は、この作成義務づけにつきましては、平成二十七年六月の、通常国会に提出をされました活火山法においても、国が、各施設が計画をつくるときの手引書を作成するというような答弁をいただいたところでございます。

 それで、私の方としては、この手引書の充実、さらには簡素化されたものの手引書、また市町村が使うマニュアル、これをいつぐらいまでに策定し、そして発表していくのか、この部分をお伺いしたいというふうに思います。

 特に、この法律は公布から三月を超えない範囲で施行されるというふうに書いてありますので、その範囲までにおつくりになることが大事じゃないかと思いますが、局長の御答弁を願いたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 要配慮者の円滑かつ迅速な避難の確保のために、避難確保計画の作成というのは非常に重要であるというふうに考えております。

 このため、簡易な入力フォームを通して避難確保計画を作成できるようにする手引の充実ですとか、あるいは、地方公共団体が適切に計画作成を指導できるよう、関係機関と連携した点検用マニュアルの作成等につきまして、福祉部局等の関係機関と連携して、改正法の施行に合わせて実施していきたいというふうに考えております。

 国土交通省といたしましては、これらのさまざまな取り組みを速やかに講じることにより、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成等を支援してまいりたいと考えているところでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 その時期について、今、改正法の施行に合わせて進めていきたいというお話をいただいたところでございます。

 今回は、施行は公布から三月を超えないところというふうにこの法律にはとどめられておりますので、その範囲内でおつくりをいただいて、それで、現在のところは、この作成、実施率は二%と非常に少ないところでありますし、また、その対象施設は民間の施設が多いゆえに、ここも、使いやすい、今、入力すればそれができるというような、そういった簡素な手引書も考えているというお話がありましたが、やはり、そういったつくる側の立場に立ったものをおつくりいただいて、お進めいただきたいというふうに思いますので、その点、私の方からも御要望を申し上げたいというふうに思っております。

 三点目に、目標の設定についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 今回の水防法の改正に伴って、目標、KPIの設定で、洪水時の逃げおくれによる人的被害ゼロを実現するために、具体的な目標を二点書かれております。

 それで、今回は、甚大な災害の教訓から、逃げおくれゼロ、さらには社会経済被害の最小化を実現し、同様の被害を二度と繰り返さない抜本的な対策が急務との思いから提出をされておりまして、その目標、KPIについても、洪水時の逃げおくれによる人的被害ゼロを実現するというふうにお書きいただいております。

 具体的にその目標を見ますと、一つには、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成、避難訓練の実施率は、先ほども申し上げましたが、二〇一六年三月現在約二%であるものを、二〇二一年までには一〇〇%にする。また、大規模氾濫減災協議会の設置率については、二〇一六年十二月現在約三七%であるものを、同じく二〇二一年までに一〇〇%にすると明記いただいておるところでございます。

 しかし、今回の改正案では、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成、さらには訓練の実施は義務化するというふうになっております。また、大規模氾濫減災協議会の設置についても、確かに都道府県管理河川については努力義務ではありますが、今回の改正案の趣旨から見ると、この協議会の設置はまさしく今回の改正内容の根幹をなすものであり、私は非常に重要な取り組みであるというふうに思っております。

 そのような観点から見ると、私は、今回の目標、KPIに示された、今後五年間でその実施率を一〇〇%にするという数字は、私の感覚でありますが、少し歩みが遅いのではないか、このように感じるところがございますが、いかがでしょうか。五カ年で設定しているところの国交省の見解を伺いたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 避難確保計画の作成等の義務化の対象となります要配慮者利用施設は現時点で多数あるということ、それから、それぞれの地域の状況、あるいはサービス形態、それから施設規模や立地の状況が多様であるということ、三つ目に、市町村が各施設の計画を確認、指導するのに相応の時間を要すること、これらの理由から、現在、目標の期間を二〇二一年までとしているところでございます。

 また、協議会の設置につきましては、指定の河川数が大きく異なりますことなどの地域の事情によって、直ちに協議会を組織することが困難であるということですとか、あるいは、協議会を設置いたします河川である水位周知河川等の指定を今後も拡大していくということも踏まえますと、同じく目標の期間を二〇二一年までとさせていただいているということでございます。

 国土交通省といたしましても、少しでも早く、避難確保計画の作成ですとかあるいは協議会の設置が進むということは非常に重要でございます。きょうこれまでいろいろと答弁してまいりましたような、要配慮者利用施設の避難確保計画作成義務化に当たっての取り組み支援ですとか、あるいは、都道府県の協議会の設置に当たっては、例えば、各地方整備局に相談窓口を設置するとか、都道府県の協議会の国協議会との合同開催とか、あるいは都道府県協議会への国のアドバイザー等としての参画といった取り組みの支援によりまして、できる限り前倒しで目標を達成できるよう取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 確かに、施設数も、既に答弁いただいていますが、対象となるのが水防法だけでも三万一千二百八ある、さらに、土砂法になるとさらにそれがプラスされるというような状況、これはもう十分理解しております。しかし、災害というのはいつ起こるかわからないという中で、さまざまな支援を重ねていただきながら、少しでも早く策定していくことがやはり大事じゃないかなというふうに思っております。

 それで、今、局長から前倒しでというお話をいただいたわけですが、現場の感覚として、二〇二一年までだから、それまでにつくればいいというような感覚に現場がなるのか、二〇二一年ではあるけれども、極力早くつくっていき、そして、その策定したことによって訓練も実施していこうとなるのか、現場の意識がどちらになるのかによって、KPIの目標一〇〇%に対しての歩みが違ってくるというふうに思うんですね。そういったところも都道府県とか市町村ともよく協議をしていただきながら、策定を進めていただきたいなというふうに思っております。

 さらには、この協議会についても、その前段となる指定もこれからであるとか、さらには、その協議会も、いろいろな河川に絡むところが合わさって広域でやるようなところも確かに出てくると思います。そういった中においては、さまざまな責任者の人員の確保とか、こういったところが難しいところもあるのは確かに事実としてあるのかなというふうに思います。

 やはり、この協議会の設置が行われることによって、初めて、そこでの具体的な協議でありますとか連携でありますとか、また、先ほども申し上げたタイムラインの作成、点検、こういったものが行われていくのではないか、今回の水防法改正の一つの大きな根幹になるのが協議会の設置であるというふうに思っておりますので、その点につきましても改めてのお願いを申し上げて、各現場において、協議会の設置、さらには避難確保計画の作成が本当に進むような形で、国交省は現場とよく連携をとっていただきながらお進めいただきたいということをお願いさせていただきたいというふうに思っております。

 きょうの質問で一番多かったのは、避難確保計画の作成が一番多かったんじゃないかなというふうに思います。やはり、そこが進むことを改めてお願い申し上げます。

 最後に、少し観点が変わっての質問をさせていただきます。

 洪水回避等を目的とした流量確保のための河川の河道掘削の予算の確保について、きょうはソフト対策中心の質問ではありますが、やはりハードの部分を最後にお伺いさせていただきたいと思っております。

 今回の改正案は、全国各地で頻発、激甚化している豪雨に対してハード、ソフト両面から一体的に対策を講じるため所要の措置を講じる、このような内容になっておりますが、私は、河川の洪水回避については、やはり、根本的課題として、河川の流量確保の必要性があるのではないかというふうに考えております。

 現に、各都道府県及び市町村からは、おのおのが管理する河川の流量確保のための河道掘削ないしは河床掘削の要望が近年大変多く出されております。私も三重県出身ですが、三重県からも国交省に対してこの要望が出されているところでございます。

 また、今回、社会資本整備審議会河川分科会のもとに設置されました大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会から出された「中小河川等における水防災意識社会の再構築のあり方について」の答申の中でも、今回の北海道、東北地方の豪雨による被害の特徴として、中小河川等では、土砂の流出による河床上昇や流木等による橋梁での河道埋塞が発生しているとまとめられております。まさしく、河床が上がっていることが今回の洪水の発生の一つの原因になっているという指摘がなされているわけでございます。

 この流量確保のための河道掘削については、国直轄河川においては当然国費で行われているところでありますが、都道府県及び市町村管理河川については、維持補修の範囲として、おのおのの単費予算で行われておる、これが実情でございます。

 しかし、私は、この河道掘削が河川の流量確保に有益であること、また、近年、豪雨が局地化、激甚化する中で、防災・減災対策、さらには国土強靱化に資するものであることを考えると、都道府県及び市町村管理河川の河道掘削についても、例えば防災・安全交付金など、何らかの国の交付金のメニューに加えるべきではないかと考えますが、国交省の御見解をお伺いします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、河川の維持管理に関する費用につきましては、その河川を管理している者が負担することになっておりまして、都道府県が管理する河川の流下能力を維持するために必要な堆積土砂の掘削等につきましては、都道府県が負担することになっているところでございます。

 ただ、豪雨による出水で流出した多量の土砂が、河道の断面を三割程度以上埋塞する場合ですとか、あるいは下流の狭窄部でさらに被害を発生させるおそれが大きい場合には、その除去に係る費用の一部は災害復旧事業として国が負担することとなっております。

 また、洪水の流下能力を計画的に高める観点から実施をいたします堆積土砂の掘削等につきましては、防災・安全交付金により支援が可能となっているところでございます。

 国土交通省といたしましては、都道府県がみずから行う維持管理に加えまして、このような制度を活用しながら都道府県が適切に河川の管理を行えるように、引き続き支援をしてまいりたいと考えているところでございます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 先ほどの御答弁では、例えば、河川改修に合わせてそのような機能を図るときには維持補修的な河道掘削等もできる、さらには、災害復旧において三割以上土砂が発生した場合は、それに応じてそういった河道掘削等ができる、こういった御答弁をいただいたというふうに思っております。そこも非常に大事な部分でございまして、そのメニューにおいて、私は、柔軟な対応というか、やはり考え方を非常にやわらかくしていただいて、使えるような状況にしていただく、これも一つ大事であるというふうに思っております。

 加えて、今までの観点として、維持補修は単費だよ、要するに、これは確かに地方財政法にも絡む話ですが、というような枠があるわけですけれども、単なる河道掘削かもしれない、しかし、それが、いわゆる防災・減災、さらに国土強靱化に資するんだというような観点から見ると、一点踏み込んだ検討をぜひお願いしたいというふうに思っているわけです。

 一つ事例を紹介しますが、これは国直轄河川ではありますけれども、平成二十三年の紀伊半島大水害で甚大な被害を出した熊野川、これは三重県と和歌山県の間にあるんですけれども、これはいわゆる激特事業ではありますが、ここで河道掘削を行ったところ、その後の平成二十七年七月の台風十一号による豪雨では、熊野川及びその支川であります相野谷川での住宅地の浸水及び越水が回避された、こういった報告も出ているところでございます。

 私は、こういった報告なんかも聞きますと、また、今回の答申における中小河川の特徴なんかも考えますと、そういったところの御検討をお願いしたいというふうに思っています。

 今回の河道掘削予算は、関係機関とも協議の上、ぜひ交付金のメニューに加えていただく、このことの検討を最後にお願い申し上げて、私からの質問を終わらせていただきます。

 大変ありがとうございました。

西銘委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

西銘委員長 速記を起こしてください。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 二〇一五年九月の関東・東北豪雨や二〇一六年八月の台風十号などでは、逃げおくれによる多数の死者が生まれ、また甚大な被害をもたらしました。

 茨城県常総市の鬼怒川では、越水した堤防部分がソーラーパネル設置工事で掘削されていたということも話題になりましたね。国交省はその部分に土のうを積むなど対策をしていたわけですが、結果、防ぐことはできませんでした。このソーラーパネル事業者の土地は河川区域外でありましたので、なかなか管轄が及ばなかったということであります。

 今回の水防法等の一部を改正する法律案におきましては、第十五条に、水防管理者が洪水浸水想定区域内において浸水被害軽減地区を指定できるというふうにされております。これによりまして、例えば土地の掘削、さらには盛り土、切り土、いわゆる土地の形状変更等については水防管理者にその旨を届け出るという制度になるわけですが、水害や地震による決壊などを防ぐ上では、水害リスク情報の周知、それから避難確保計画策定等の義務化、これらとあわせて、やはり堤防の安全性、耐震性を確保するということが何よりも重要だと思います。

 これは、今回の法案の対象になっている中小河川だけではありませんで、例えば、大阪の中心部を流れる淀川の堤防においても同様だと思います。

 淀川の堤防、約四・四キロ区間、縦断方向に道路ボックスを設置する淀川左岸線高速道路二期事業についてもお伺いしたいと思っております。

 淀川左岸線(二期)事業技術検討報告書(案)では、地震によって道路ボックスの交差部の前後の継ぎ手部において、最大で約三百ミリ、三十センチの目開き、結局、道路ボックスをつなぎ合わせますので、それが地震などによってずれる、それが最大値が三十センチに及ぶというようなことが想定されているわけなんですね。それで、「交差部前後に地盤改良を実施するなどして、ボックスの変位を抑制させることとする。」とこの技術検討報告書(案)にはありますが、初めにお伺いします。

 四・四キロ区間に及ぶ淀川左岸線二期事業計画のうち、どの部分に目開きが起こると予測しているでしょうか。

栗田政府参考人 お答えいたします。

 淀川左岸線二期事業は、箱型のコンクリートが地中に縦断方向に並んで埋設されているボックスカルバート構造となっております。鉄道等と交差する部分は、そのボックスをくい基礎で支える構造となっております。

 鉄道等の交差部をくい基礎構造としておりますのは、大規模な地震発生時に、ボックスカルバートが沈下して、近接して交差している鉄道等の橋脚に影響を及ぼさないようにする必要があるためでございます。通常は、くい基礎がなくて、直接地中に埋設することとなります。

 淀川左岸線(二期)事業に関する技術検討報告書(案)によりますと、地震発生時には、くい基礎構造によらない箇所で何も地震対策をしない場合には、カルバート部分が沈下するため、くいで支えられて沈下することのないカルバートのブロックとの間に目開きと呼ぶ継ぎ目のずれが生じることとなりまして、JR神戸線交差箇所付近では、最大三百ミリメートルの目開きが発生すると想定されています。

 同様の、くい基礎と通常の埋設部分が連続しまして目開きの可能性がある箇所を大阪市に確認しましたところ、大淀ランプ付近、阪急電鉄交差箇所、豊崎ランプ付近の三カ所となっているところでございます。

清水委員 配付資料の一をごらんください。これは淀川左岸線の平面図であります。

 今、局長が御答弁になられましたように、阪神高速池田線そしてJR東海道線交差部分の継ぎ手、ここが約三百ミリ目開きが起こるだろうと。あと、そこまではいかないけれども、その他三カ所で、交差部前後の継ぎ手部で道路ボックスの目開きが起こる、こういうふうに予測されております。

 配付資料の二枚目をごらんください。これは阪急電鉄の交差部の写真でございます。

 つまり、堤防に橋梁、橋台が設置されるわけで、そこにかなりの荷重が、負担が増加するというふうなことで、必要な地盤改良が求められるということがこの技術検討報告書(案)に書かれているわけであります。

 それではお伺いしますが、先ほど少し答弁されたと思うんですけれども、改めまして、この継ぎ手部分、とりわけ今おっしゃった四点の地点について、どのような工法によって目開きを抑止する、応答値以内におさめる改良工事を行おうとしているのか、お答えいただけるでしょうか。

栗田政府参考人 くい基礎構造を採用していますボックスカルバートの前後の区間につきましては、沈下量が大きく、目開きの原因となることから、地盤改良による対策が必要でございます。

 技術検討報告書(案)では、深い位置まで対策が可能となるセメント系深層混合処理工法が有効であるとされております。具体的に申しますと、セメント系の固化剤を現地地盤の土砂と混合することによりまして、地盤の強度を上げる方法であります。こうした対策によりまして地盤改良を実施する予定と、事業者であります大阪市から聞いております。

 この地盤改良によりまして、継ぎ目の目開き量を、技術検討報告書(案)で設定された許容値の百ミリ以下に低減することが可能になると考えております。

清水委員 配付資料の三枚目をごらんください。

 今、局長が答弁されましたように、この継ぎ手部分、交差部にくい基礎を打つ、そして、いわゆる道路ボックスカルバートが設置される部分は、固結工法、そして液状化対策のための置換工法、これによっていわゆる地盤改良を行い、災害時の目開きを最小限に抑えるという御答弁でありました。

 それではお伺いするんですけれども、この道路橋示方書、平成二十四年三月、新しい方のもの、改訂されたものなんですけれども、これの下部構造編第九章にはこう書かれております。「基礎の安定に関する基本事項」ということでありまして、配付資料の四枚目にその資料を添付させていただきました。

 つまり、ここでは、「基礎本体の剛性を高めるなどの設計上の対応には限界があり、やむを得ず基礎周辺地盤や支持地盤を固結工法、置換工法等により改良して改良地盤の抵抗特性を設計で期待しようとする場合には、通常の地盤に支持される基礎と同等以上の確からしさで安全性や耐久性が確保されるように、(1)の1)及び2)に基づき、改良地盤の設計法や施工管理方法について検討を行う必要がある。」こう書いておるわけですね。

 それで、(1)の1)及び2)というのは何か。それが配付資料の四枚目でございます。(1)の1)、これは、「基礎に作用する荷重に対する抵抗要素とその力学的特性が明らかであり、限界状態、照査項目、照査値及び解析モデルについて相互の関係性も含めて」、ここからが大事です、「実験等により適切に検証されていること。」(1)の二番は、「1)を」、つまり、実験等により適切に検証されていることですね、「一定の信頼性をもって実現させるための基礎の施工管理方法が確立していること。」

 つまり、今局長が答弁されましたように、道路ボックス部分の地盤改良に固結工法や置換工法を採用するとおっしゃったんだが、改訂版の道路橋示方書によりますと、今私が述べたような、いわゆる実験による適切な検証、それから施工管理方法が確立している、このことが条件として書かれているというふうに思うんですが、今回、この淀川左岸線(二期)事業に関する技術検討報告書(案)には、どこの部分に今私が述べたところが検討されているでしょうか。

栗田政府参考人 技術検討報告書(案)におきましては、くい基礎部分及び隣接部分につきましては、道路橋示方書、それから、その解説、下部構造編等の条件に準拠することとしております。

 今委員御配付の資料のとおりですが、その示方書におきまして、一点目、基礎の設計で想定する荷重を受けてどのように変異し、あるいは影響を及ぼすかについて実験等により適切に検証されること、また二点目として、基礎の施工管理方法が確立していることなどが示されているということでございます。

 ただ、現時点で、淀川左岸線二期事業につきましては、具体的な基礎の設計、施工方法の詳細が決まっておりませんので、現時点では、技術検討報告書(案)に沿った具体的な検証がされているということではございません。

 詳細設計を行う段階で、技術検討報告書(案)に示された方針に沿って、示方書ですとか道路土工構造物の技術基準など、最新の技術基準類などに準拠して検証、設計が行われるというふうに承知しております。

清水委員 今の御答弁は、詳細設計の段階でこれらは検討されていくということだと思うんですけれども、そもそも、この淀川左岸線二期事業の性格について思い出していただきたいんですね。

 この技術検討報告書(案)には、冒頭にこう書いております。なぜこの検討委員会が立ち上げられたか。それは、道路構造物と堤防を一体とした前例のない構造物の安全性、その他技術的な審議を行うことを目的にしているわけなんですね。

 鬼怒川ではソーラーパネルの部分から決壊した、これは日弁連の調査報告書でも書かれているんです。これは、人工堤防ではなく、自然堤防、盛り土だったわけですが、堤防の耐震性、安全性というのは、水防法や河川法の精神からいいましても、やはり強固なものでなければならないわけであって、そのことをもとに、本当に大丈夫かということを最新の知見をもって検討している報告書なんですね。

 さらに、こう書いていますよ。「今後の詳細設計、施工計画および河川協議等の基となる技術的検討結果として活用する」というんです。ですから、設計段階で検討するのではなくて、この技術検討報告書(案)の中で既に実証、検証されて、それが詳細設計に生かされるというたてつけになっているわけですね。

 ですから、今の局長の答弁では、この技術検討報告書(案)の前文にあります立ち上げたことの意義、なぜこれが必要なのかということの精神を逸脱するのではないかというふうに私は思うんですが、もしお考えがありましたら、今私が述べました道路橋示方書改訂版の二つの項目、条件は、この技術検討報告書(案)で実証しなくてもいいという考えですか。それを確認しましょう。

栗田政府参考人 それらにつきまして、現在、詳細設計はこれからということでございますので、そのタイミングで、最新の知見に基づきまして、また、検討報告書(案)の考え方にも沿いまして、確認がされるものと承知しております。

清水委員 この改訂版の道路橋示方書では、さらに次のように述べています。

 「例えば、固結工法」、固結工法というのも、技術的な問題でいうと非常に複雑だということをいろいろ調べました。素人の私が一言でどんな工法かと説明するのもなかなか難しい工法なんですね。

 この工法について、道路橋示方書改訂版はこう述べています。「例えば、固結工法では、一般に下限値により強度が管理されているが、強度が高過ぎることにより設計で想定しない部位での損傷が生じることが懸念されるため、工法や地盤条件等に応じた平均的な強度を明らかにした上で設計や施工管理に反映させることが求められる。」こう書いているわけですね。

 ですから、この淀川左岸線高速道路二期事業という、堤防と一体の道路ボックスカルバートを設置する、こういう特殊な前例のない工事をするに当たっては、設計段階に至る以前に、こうした技術検討委員会を設けているわけですから、ここで検証されるというのが当然の目的だというふうに思うわけであります。

 ですから、今、詳細設計の段階でというんじゃなくて、やはり私は、この技術検討委員会に差し戻して、最新の道路橋示方書が反映されていないわけですから、差し戻して、もう一回検討し直せということは最低求めるべきではないかというふうに思っております。

 それで、最後に石井大臣にお伺いさせていただきたいと思うんですね。

 この道路橋示方書の改訂がいかに重要な意味を持つのか。それは、実は国土交通省自身も認めておりまして、これは二〇一二年五月号の「建設マネジメント技術」というものの「道路橋示方書の改定について」、国土交通省の道路局国道・防災課も含めて寄稿した文章が記載されております。ここには、道路橋基礎に求められる基本的な要件として、これまでは、新たな基礎の設計、施工方法の確立に必要となる要件が必ずしも明らかでなかったことが課題であった、こう書かれているわけです。

 私、繰り返し言いますけれども、この淀川左岸線高速道路二期計画が立ち上がったときには、あの東日本大震災はございませんでした。それで、これも同様に、この新たな道路橋示方書の同解説の初めの部分に、平成二十三年の大地震を踏まえ、いわゆる構造部分、橋台背面アプローチ部分、こういったところの設計、施工について新たに規定されていると。ですから、これをしっかりと検討した報告書でなければ、詳細設計だとか施工管理ということについてうたえないというふうに私は思うわけであります。

 それで、石井大臣は、先日、私とこのテーマをやりとりする中で、「事業主体である大阪市と阪神高速道路株式会社が最新の技術基準やデータ等も踏まえて設計」するものと考えております、このように答弁されました。今やりとりを聞いていただいたとおり、道路橋示方書改訂版が全く反映されていない。ここで言われている基本事項、いわゆる実験等により固結工法が適切に検証されているか、さらに言えば、施工管理法が確立しているか、この二つの条件は満たしていないということでありますから、現段階で、国交省として、現状のままこの淀川左岸線高速道路二期事業の申請を許可する局面にはないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 淀川左岸線二期事業は、河川堤防の中に道路構造物を縦断方向に入れるという意味で、珍しい構造となっております。そのため、学識経験者で構成いたします技術検討委員会におきまして、道路と堤防が一体となった構造物の安全性の照査方法や施工方法に関すること等を検討事項として、平成二十八年三月に技術検討報告書(案)がまとめられております。

 事業の実施に当たりましては、事業主体である大阪市と阪神高速道路株式会社が、技術検討報告書(案)に示された安全性の照査方法等を活用しながら、東日本大震災による地震の波形など最新の知見や、それらを踏まえて改訂された示方書等の技術基準にのっとって設計いたします。

 河川協議に際しましては、最新の河川堤防に関する耐震性の照査の手法を定めた指針等に基づき、河川管理者の国として改めて安全性の確認を行うこととなっておりまして、淀川左岸線二期事業は適切に施工されるものと認識をしております。

清水委員 最新の知見やデータを活用していないのに、なぜ安全に施工されるというふうに言い切れるのか、全く不思議で仕方がありません。

 今回の質疑で、現在出ているこの技術検討報告書(案)は最新の知見やデータを用いたものではない、使い物にならないということは明らかになりました。そもそも、技術的に、こういう構造物と一体の堤防というのは私は認められないというふうにも思います。二期事業は断念すべきであると指摘をさせていただき、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西銘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、水防法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西銘委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西銘委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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