衆議院

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第17号 平成30年5月23日(水曜日)

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平成三十年五月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村 明宏君

   理事 鬼木  誠君 理事 金子 恭之君

   理事 新谷 正義君 理事 土屋 品子君

   理事 盛山 正仁君 理事 矢上 雅義君

   理事 小宮山泰子君 理事 赤羽 一嘉君

      秋本 真利君    井林 辰憲君

      岩田 和親君    大塚 高司君

      大西 英男君    加藤 鮎子君

      門  博文君    神谷  昇君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      鈴木 憲和君    田中 英之君

      高木  毅君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      中村 裕之君    根本 幸典君

      鳩山 二郎君    福山  守君

      藤井比早之君    藤丸  敏君

      星野 剛士君    三谷 英弘君

      宮内 秀樹君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    山本 公一君

      岡本あき子君    川内 博史君

      高木錬太郎君    初鹿 明博君

      松田  功君    道下 大樹君

      森山 浩行君    早稲田夕季君

      伊藤 俊輔君    大島  敦君

      前原 誠司君    森田 俊和君

      北側 一雄君    高木 陽介君

      広田  一君  もとむら賢太郎君

      宮本 岳志君    井上 英孝君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国土交通副大臣      牧野たかお君

   国土交通副大臣      あきもと司君

   国土交通大臣政務官    秋本 真利君

   国土交通大臣政務官    高橋 克法君

   国土交通大臣政務官    簗  和生君

   会計検査院事務総局次長  腰山 謙介君

   会計検査院事務総局第三局長            戸田 直行君

   政府参考人

   (内閣府民間資金等活用事業推進室室長)      石崎 和志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊丹  潔君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 長谷川 豊君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 筒井 健夫君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   富山 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           八神 敦雄君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  織田  央君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            由木 文彦君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         田村  計君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  栗田 卓也君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        山田 邦博君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  石川 雄一君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  伊藤 明子君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 奥田 哲也君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  蝦名 邦晴君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 北本 政行君

   政府参考人

   (国土交通省国際統括官) 篠原 康弘君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 近藤 智洋君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事)         伊藤  治君

   国土交通委員会専門員   山崎  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     中曽根康隆君

  田中 英之君     熊田 裕通君

  藤井比早之君     井林 辰憲君

  望月 義夫君     藤丸  敏君

  初鹿 明博君     高木錬太郎君

  道下 大樹君     松田  功君

  早稲田夕季君     川内 博史君

  森田 俊和君     前原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     宮路 拓馬君

  熊田 裕通君     福山  守君

  中曽根康隆君     門  博文君

  藤丸  敏君     望月 義夫君

  川内 博史君     早稲田夕季君

  高木錬太郎君     岡本あき子君

  松田  功君     道下 大樹君

  前原 誠司君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     星野 剛士君

  宮路 拓馬君     藤井比早之君

  岡本あき子君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  星野 剛士君     田中 英之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案(内閣提出第五二号)

 船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案(内閣提出第五三号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長由木文彦君、土地・建設産業局長田村計君、航空局長蝦名邦晴君、政策統括官北本政行君、法務省大臣官房審議官筒井健夫君、厚生労働省大臣官房審議官八神敦雄君及び林野庁森林整備部長織田央君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。矢上雅義君。

矢上委員 ありがとうございます。立憲民主党の矢上雅義でございます。

 本日は、先日参考人質疑がございました所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案とかなり長い名前でございますけれども、質問させていただきます。

 実は私、昭和三十五年生まれで、ことしで五十八になるんですけれども、私も人生経験は短い方でございますが、これだけ大きく時代がさま変わりしたことを驚いております。

 実は、ちょうど今から四十年前になりますけれども、大学一年生のときに、私の地元は熊本県球磨郡相良村というんですけれども、山つきの村です。そこで、相良村役場主導で地籍調査がございました。そのときに立会人をやってくれということで、山にも入り、また、田んぼ、畑にも入り、そして、宅地の境界決めにも参加いたしました。

 当時は、山に入るときも、草木を払いながら、みんな手に鎌を持ったり腰なたを下げて立ち会うわけですけれども、必ずと言っていいぐらい、お隣さん同士で境界を決めるときの争い事が起きて、みんな顔を真っ赤にして、もうけんか状態のような形で地籍調査をやったことを覚えております。

 地籍調査のおかげで仲がよくなったり、逆にお隣とけんかして口もきかなくなったりとさまざまなことがあったんですけれども、当時の地権者の方は、山に対しても、田んぼに対しても、畑に対しても、なおさら、我が家と隣の家とのブロックの境決めについても、かなりいろいろな思いがございました。

 昔のことですから、毎日田んぼや畑に出る農家のあぜは、弓のように曲がってきまして隣の土地を侵食するぐらいのあぜのつくりになってきたんですけれども、何年かたつと、最後は、境界の石とか境界の杉、ヒノキをもとに真っすぐあぜをつくり直すということでそれほど厳しい戦いをしてきたんですけれども、実は私が驚きましたのが、三年ほど前、相良村に私が持っております四反の田畑を管理することができないため、同じ町内の方にただでもいいから受け取っていただけませんでしょうかと言いましたら、皆さん、ただでも要らないということで全員お断りになりました。

 お聞きしましたら、田んぼ、畑を含めてもう草木がどんどんはえてきます。そうすると、年をとってから草払いをするのが自分じゃできない。そうなると、シルバー人材センターとか地元の森林組合にお願いして年何回も払うと、結局、自分の年金から手出しですから、国民年金から手出ししていくことではもう大変生活が厳しくなって、自分が持っている田んぼ、畑だけでも年金を食い潰すのに、人の分までお預かりすることはできないという現状でございます。

 そういうことで、このように大きく土地に対する国民の思いがさま変わりした中で、今回、国土交通省より、何らかの形でもいいから改善していきたいということで所有者不明土地に関する法案が出されたことについては、大変ありがたいことだと思っております。

 ここでまた改めて、本法案の提出の背景及び制度の目的、手法などについて、石井国土交通大臣よりお聞きしたいと思います。

石井国務大臣 人口減少に伴います土地利用ニーズの低下や地方から都市等への人口移動を背景といたしました土地の所有意識の希薄化等によりまして、不動産登記では、所有者の氏名や所在がわからない土地、いわゆる所有者不明土地が全国的に増加傾向にあり、将来的には更に所有者不明土地が増加すると指摘をされております。

 このような所有者不明土地につきましては、公共事業用地の取得などさまざまな場面で所有者の探索に膨大な時間、費用、労力を要し、事業計画の変更を余儀なくされたり、事業の実施そのものが困難になるといった問題に直面をしております。

 このため国土交通省といたしましては、所有者不明土地の利用の円滑化を図ることを目的といたしまして、公共事業のために土地を収用する場合の手続の合理化、公園や広場など地域住民の公共的事業に一定期間の使用権の設定を可能とする制度の創設、所有者の探索を効果的に行うための仕組みの構築等を内容とする本法案を提出することとしたところでございます。

矢上委員 ただいま大臣より、公共用地に関する手続の合理化や、また、所有者不明土地に対する探索についてのお話がございました。

 そして今回、本法案では、特に土地収用法の一部合理化、そしてまた、例外的な措置としていろいろな制度が新たに提案されております。

 特に、土地を収用若しくは使用する場合にどのような公共工事を想定しておるのか、また、その対象は従来の土地収用法が対象とする事業と重なるものかどうか、その範囲について国土交通省にお聞きいたします。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 今回の収用手続の特例につきましては、事業といたしましては、土地収用法第三条各号に列記をされております、いわゆる収用適格事業と同一のものでございまして、それらが対象になるものであります。かつ、個別に申し上げれば、その中で、土地収用法に基づく事業認定を受けていることが前提となります。

 ただし、本特例の対象となる土地につきましては、簡易なものを除いて建築物が存在せず、現に利用されていない所有者不明土地であって、反対する権利者のいないものに限定をしております。

矢上委員 今回の事業の対象としては、まず、土地収用法三条における収用適格事業であること、及びまた、事業認定を受けておるものであるということになっておりますけれども、この事業認定についてはかなり公平性が担保された形で行われるんでしょうか。

 具体的にどのような形で事業認定というのは事例として行われるのか、簡単で結構ですから教えてください。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 事業認定は、事業認定庁、国ないしは都道府県知事が起業者からの申請を受けて認定を行うものでございますが、要件がおおむね四つございまして、一つは、今申しましたような土地収用法の第三条の各号列記の対象の事業であるということが一つ。それから、起業者にそういった事業を行う意思とか能力があるというふうなこと。それから、その当該事業の執行が土地の適正かつ合理的な利用に資するものであること。それから、その当該事業に公益性が認められるということ。

 おおむねこの四つの要件を満たしているかどうかということを認定庁の方で判断をして認定をするということでございます。

矢上委員 ありがとうございます。

 そういうことで、収用適格事業に該当すること、また、事業認定の四つの要件に該当することということでかなり縛りがかけられていると思いますけれども、さらにまた、この土地利用の前提として、所有者又はその存在が不明と判断される場合に、それらの方々を十分に探索したかどうかという判定基準というものはどのようになされるのか、国交省にお伺いいたします。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 探索のお尋ねでございますが、この法案では、「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」を「所有者不明土地」として定義をしております。

 この探索の具体的な方法でございますけれども、一つは、登記事項証明書の交付を請求すること、それから、住民票、戸籍、固定資産課税台帳などの書類に記載された情報の提供を求めること、それから、一定範囲の親族等に照会することなどを定めることを想定をしているところでございます。

 こうした探索が十分に行われたかどうかにつきましては、収用の特例の裁定の申請書に、「特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情」として、事業者が行った具体的な探索行為を記載をしていただきまして、都道府県知事がこれをもとに確認をするという手続を踏むこととしております。

矢上委員 先日以来の説明で、この所有不明者等を一定の努力のもとに探索するということですけれども、特に、先ほど申されました公的な帳簿類、そのあたりについて各、国、県、市町村を含めてそれぞれの関係者が合理的な範囲で情報を共有するシステムを考えておるということもございましたが、そのことについてちょっとお伺いしたいと思います。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 不動産に関する情報に係るものといたしましては、各省でいろいろ台帳とか、農地の関係であれば農地台帳でありますとか、それから、我々もそういった不動産情報の国土利用計画に基づくものとか持っておりますが、何といってもやはり不動産登記簿が中心というところでございますので、不動産登記簿を中心にいたしまして、そういった各省が今保有している情報の横の連絡、これをとる必要があるだろうということでございまして、政府一体となりまして、そういった円滑に共有できる仕組みということを検討してまいるということになっているところでございます。

矢上委員 それともう一つお尋ねですけれども、このような探索事業を行うに当たりまして、国だけでなく、現場におきましては各市町村、各都道府県の担当者が行うと思うんですけれども、やはりこの探索という基準について全国的な均一性、整合性を図るためには、よくあるように、国主導若しくは都道府県主導での、そのような探索基準の設定の仕方また理解の仕方についての研修や訓練、教育なども予定されておられるのでしょうか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 先ほども答弁させていただきましたが、探索の具体的な方法は、登記事項証明書の交付の請求でありますとか、住民票、戸籍、固定資産課税台帳等の書類の提供を求めることとか、一定範囲の親族等に照会することということ、これは政令で明確に定めるということで、そこら辺に余り幅がないような形に明確に定めることを想定しておりまして、そういったことで、そういう意味では余り都道府県によって差が出ないような形にいたしますし、そういったことに基づきまして、法案が成立いたしました暁には、講習会等できちんと公共団体等に周知をしてまいりたいと考えております。

矢上委員 それでは次に、相続登記が困難な事例について幾つかお伺いいたしたいと思うんですけれども、よく私が耳にしますのが、相続登記の際に同意取付けに失敗するケースとして、他の相続権者が外国に居住している場合が多々あります。外国に長くお住まいの方には、日本の印鑑証明とかによる同意書方式にはなじみがない上に、ただで分けてあげるのに何度も連絡してきて面倒くさいなと言って感情を害されて、同意取得に協力してくれない方もおられます。

 特に、外国にお住まいの方が高齢者の場合には、もう長年、例えばアメリカでしたらサイン方式であるとか、その居住されておる外国の方式になれた上に、高齢者であることから、事細かく何回も何回も日本の方から、他の相続権者から依頼があると、感情を害されて協力されないということがよくあるんですけれども、ここでお聞きしたいのが、一番多いのが、共有者の一部が所在は判明しているが、アメリカ等に住んでいる場合の同意書の取得は具体的にどのように行うのか。

 特に、アメリカのように、サイン方式で、他に印鑑証明などの制度が存在しない国での同意書の取得等について、具体例についてお聞きしたいと思います。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 公共事業のために用地を取得する場合におきまして、所有者の間で売買契約を締結したり所有権の移転登記をしたりする場合におきましては、基本的に本人の記名押印により同意を取得することが必要でありまして、印影を市区町村が発行する印鑑登録証明書で証明するということを求めてございます。

 しかし、所有者が外国に居住している場合には、日本国内において印鑑登録がされていない場合もございます。このような場合につきましては、印鑑登録証明書にかわりまして、本人の署名について現地の公証人の証明や在外公館の証明を受けることで対応することが可能でございます。

 このような手続につきましては、国土交通省におきまして平成二十八年三月に、所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドラインというものをつくっております。このガイドラインの周知徹底に努めてまいりたいと思います。

矢上委員 ありがとうございます。

 特に、外国に長年住んでおられる方が、理解していただけずに、感情を害して協力していただけない、そういうことで公共工事の際の用地取得にも困難をきわめておる事例もございますので、外国にお住まいの方にわかりやすいようなガイドライン及びその周知徹底についてぜひお願いいたします。

 次に、これは仮にの話でございますけれども、今回の法案を前提として、ちょっと具体的なケースを想定してみます。

 例えば五人の共有者の方がいて、そのうち二人が賛成、そのほか三人が、十分な探索の上、所在不明なケースに当たるとする場合、仮にこの土地の実勢価格が一千万円とします。原則としてこのケースの場合、土地収用法の手続にかけた場合と本法案による場合の手続の中での具体的な相違点など、メリット、デメリットというよりも、今回の法案でもメリットがどこにあるのか。簡単で結構ですから、教えていただければと思います。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 土地収用法の裁決手続を経る場合は、所有者不明土地を取得する場合、現行制度におきましては、収用法に基づく事業認定を受けた事業につきまして、収用委員会によるいわゆる不明裁決の手続、これは審理手続も含めてでございますが、不明裁決の手続を経て、所有者の意思にかかわらず、土地を取得することが可能となります。

 これに対しまして今回の収用手続の特例につきましては、土地収用法に基づく事業認定を受けた事業につきまして、収用しようとする土地が、反対する権利者がいない特定所有者不明土地、簡易なものを除き建築物が存在せず、現に利用されていない土地ということでございますが、そういった特定所有者不明土地であれば、収用委員会ではなく、都道府県知事の裁定により、審理手続を経ずに土地を取得することとしております。

 こういった手続の特例によりまして、いわゆる手続の合理化、円滑化ということが図られるものと考えております。

 なお、土地所有権の私権の制限の内容そのものに変更はございませんが、手続の円滑化、合理化というところが違うというところでございます。

矢上委員 ありがとうございます。

 ところで、土地収用委員会であれば、権利の取得また物件等の明渡しの裁決について二本立てで行われるということになっております。

 ただし、本法案では、特例として、都道府県知事の裁定で、この権利取得及び簡易な建物等の物件等の明渡しの裁決も同時にできるということでなっておりまして、かなり工夫はしてあるんでしょうけれども、私たちから見たときに、土地収用委員会を経ないということは、これまで土地収用委員会が有してきた第三者性という公平性の担保はどのあたりで確保できるのか。教えていただきたいと思います。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 そもそもこの収用の特例の対象の土地が、いわゆる特定所有者不明土地ということで、簡易なものを除いて建築物が存在せず、現に利用されていない土地である、かつ、反対する権利者がいない、そういったいわば入り口を絞った形で設定をしているということでございまして、まずそれが一点ございます。

 補償金額等について明示的な反対者がいないことにつきまして、この法律によりまして、一定の期間、公告縦覧という手続も設けているところでございます。

 このような、入り口を絞っているということや、新たにこの法律におきまして、反対者がいないことを公告縦覧の手続により確認をすることとしておりますので、このような手続を経た上で都道府県知事が裁定を行っておりまして、そういった手続的な担保はきちんととれているということで、中立性、公平性は担保されているというふうに考えているところでございます。

矢上委員 ただいまの答弁では、争いが少ない、争いがまず考えられないという形で入り口を絞って、さらに、公平な手続を重ねていくということで将来のトラブルを防ぐということだと思います。

 それを前提にした上で、この法案で予定しております所有者不明若しくは所在不明の者に対する補償金が、これは恐らく法務局だと思うんですけれども、補償金が供託された場合、供託期間終了後、最終的にはこの供託金はどこに帰属するんでしょうか。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、補償金が供託されました場合に、その供託金は、国庫金のうち、歳入歳出外現金である保管金に該当するものとされておりまして、供託所から日本銀行に政府預金として預けられることになります。

 預けられました供託金は、独立して運用管理されるものではなく、他の政府預金とともに統一的に運用管理されているものと承知しております。

 それで、最終的に被供託者である所有者から還付請求がされた場合には、その供託金は、基本的に、被供託者に還付され、供託された補償金はその所有者に帰属するということになります。

矢上委員 還付請求する請求権者ですけれども、それは例えば事業者ということでよろしいんでしょうか、この土地収用法の事業を行う。それとも、土地の本来の、例えば先ほど申しました、二人所有者がおられますよね、その方たちに帰るんでしょうか。

筒井政府参考人 基本的には、その共有者間の持分割合がどうなっているかによっても若干異なりますけれども、所在が不明の方のために補償金というものの供託がされることになると思いますので、その方々に還付請求権があり、その方々の所有に帰属することになるということだろうと思います。

矢上委員 重ねて補足の質問でございますが、所在がはっきりしている方が何人かおられたらその方々に還付される可能性があるんでしょうけれども、逆に、全員所有者が不明の場合の還付金というのは、結果的には供託した事業者に戻るのか、それとも、所有権者がいないというような形で国の方に行くのか。そのあたりのところをもし御理解であれば、よろしくお願いします。

筒井政府参考人 供託されました補償金は、基本的に、所在不明の方のために供託されるということになりますので、その方々のために供託され続けるということが恐らく基本になるだろうと思います。

 ただ、その供託金、還付請求権が消滅時効に係るという理論的な可能性自体はございます。その場合には、国庫の方の所得に繰り込まれていくことは、可能性としてはございます。

矢上委員 ちょっと急な質問であれでしたけれども、よくわかりました。ありがとうございます。

 それと次に、相続登記に関することで、また、時効取得等に関することがあり得るかということでちょっとお聞きしたいんですけれども、またこれも、相続登記が困難な場合の具体的な事例をちょっと御紹介いたします。

 農家の長男若しくは商家の長男が事業を承継している場合で、相続持分が確定しないまま相続登記が放置された状態、この状態でこのいわゆる一部の相続権者、ここでは前述しました長男等に当たると思いますけれども、当該土地を長期に占有したとしても、これが民法上の取得時効制度の対象にならないということでようございますでしょうか。確認いたします。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 土地所有権の取得時効が成立するためには、土地の占有者が所有の意思を持って一定期間土地を占有することが必要となりますけれども、この所有の意思があるか否かは、占有者の内心の意思によって決まるものではなく、占有取得の原因である権限などによりまして外形的、客観的に定まるものと解されております。

 御指摘のような事案において取得時効が成立するか否かにつきましては、個別具体的な事情によって異なり得るため、一概に申し上げることは困難でございますけれども、その上であくまで一般論として申し上げれば、御指摘がありましたように、土地が相続されて共同相続人の共有となっている場合には、各共有者は共有持分に基づいて共有物全体を使用することができるというそういう権限を有しているわけでございますので、共同相続人の一人が土地全体を占有していたといたしましても、権限の客観的性質上、特段の事情がない限りは、他の共同相続人の持分についてまで当該占有者に所有の意思があるとは言えないことになると思います。

 したがいまして、御指摘のような事案では、原則として取得時効は成立しないものと考えられます。

矢上委員 御指摘のように、一般的な判例と学説では、相続を原因とする長期の占有については取得時効が適用されないということでございますけれども、これは提案としてですけれども、この相続人の一人があくまでも単独で使用収益を行い、固定資産税などの相続義務を果たしている場合、かつ、他の相続権者が一切の異議申立てをしないまま十年若しくは二十年以上の占有が継続した場合に、事業承継を目的とする限りで、将来的に時効取得の制度の対象にできないかということも御検討いただきたいと思います。これはあくまでも提案でございます。

 それともう一つ、実はこれは考え得ることなんですけれども、相続人が時効取得の対象とならないということから、これはあくまでも想定ですけれども、この登記をできない相続人が、第三者に依頼して脱法若しくは違法行為の形で時効取得を偽装するケースについてお尋ねします。

 当該不明土地を善意の第三者に十年以上占有させる等の偽装工作を行い、裁判所より時効取得の成立判決をもらった上で一旦法務局で登記を行い、その後、登記名義人として、その依頼した第三者から依頼人へ名義を移転するということは制度上ばれずに行うことができると思いますけれども、いかがでしょうか。

筒井政府参考人 お尋ねがありましたように、事情を知らない第三者を利用して真実に反する内容の判決を得るといった事例の存在につきましては、まことに申しわけありませんが、当省では把握はしておりません。

 その上であくまで一般論として申し上げますと、時効取得したことを理由に登記手続をすべきことを命ずる旨の確定判決があったという場合でありますと、登記官は、それ以外に他に却下事由がない限りは、その登記申請を拒むことはできないという結論になると思います。

矢上委員 このような、第三者に依頼して偽装工作を行い、善意の第三者による時効取得を経た上で、相続登記が困難な、真の所有者である相続権者に名義を移すということは理論上あり得ることですから、このことが把握できないとしても、これは、登記官の審査権限が形式的審査に限られておりますのでやむを得ないことですけれども、可能性としてこういうことが起こり得る。

 仮にこのような偽装工作に行政書士、司法書士等が参画した場合、これまでの代書屋さん的な立場だったらいいんですけれども、今では行政書士さん、司法書士さんも、少額訴訟の当事者として弁護士さんと同じような権能を持つ、司法の一角を担う立場にございますので、このような事例が起きないためにも、先ほど私が申し上げました、相続を原因とする時効取得制度の適用の対象となり得るのかということも将来的には検討課題としていただければということで提案させていただきます。

 またさらに、登記と売買契約のそごが生じてトラブルとなり得るケースなんですけれども、これはよく田舎にあるケースなんですが、高齢の山林所有者のところに、ある日突然、立木の買受け業者があらわれて、立木だけでなく、山ごと、土地ごと丸々買いますからよろしくお願いしますということで契約書を結ぶ。そして、契約書を結んでその履行をする際に、立木だけでなく土地代もきちんと支払ってそのお年寄りの山林地主を安心させた上で、役所に伐採届を出さないまま、突然立木の伐採をしてしまう。その高齢の山林地主は気づかないままです。

 そうすると、ある日突然、役所の方から、何で勝手に切ったんですかとか、再造林はいつされるんですかとか、そして、年をまたがると固定資産税の請求書が送られてくる。そこでこの方は慌てたとしてももう後の祭りで、もう買受人はどこかにドロンして、いない。しかも伐採した立木は、しかも善意の第三者に転売され続ければ、この立木がどこに行ったかもわからないということで、伐採後の山林地主としての責任だけこの高齢の地主が負うということになります。

 また、これに関連しますけれども、保安林の持ち主、保安林の山林地主にこのような手法を用いた場合に、大変なことになると思います。

 この問題を更に聞く前に、保安林についての伐採等に関する手続等の具体的な流れについて、林野庁の方にお聞きしたいと思います。

織田政府参考人 お答え申し上げます。

 保安林制度につきましては、森林法に基づきまして、水源の涵養、災害の防止等の公共目的のために必要のある森林を保安林として指定をいたしまして、一定の伐採、転用規制を課すなどによりましてその保全を図るというものでございまして、そして、保安林内で立木の伐採を行う場合には、事前に都道府県知事の許可を受ける必要がございます。

矢上委員 時間もございませんし、今私が指摘したことが具体的にどこであったというわけではございませんけれども、売買の際に登記をしないで済むと、高齢の山林地主をだまして保安林を無断で伐採し、善意の第三者に転売することにより、後で気づいた役所が高齢の山林地主に問い合わせても、架空の売買契約書と現金だけが残っておったという事例も考えられますので、このあたりもやはり、売買契約及び登記の関連の必要性について考えさせられる事例だと思います。

 いずれにしましても、所有者不明土地から生まれてくるトラブルを予防する場合に、先日の参考人質疑でも、登記の義務づけとかいろいろ御提案がございました。しかし、現状では非常にその登記の義務づけについては厳しいということでございますので、ちょっと私の提案なんですけれども、登記をその場で直ちに義務づけることが困難であるとすれば、登記をすべき権利者、その方が追跡可能となるシステムを考えたらいかがかと思うんです。

 例えば、不動産取引の売買契約履行時、物件等の引渡時に、登記の際に必要となるであろう登録免許税の概算前払いを真の所有者に義務づける。売買契約の履行時に、もう一回言いますけれども、登記に必要な登録免許税の概算前払いを真の所有者に義務づけて、そこで登録免許税の納付済み証を交付する。そして、この方が法務局で登記する際に登録免許税の納付済み証を提示して登記を受けるというように、わかりやすく言いますと、現行の、自動車の三年に一回、二年に一回の車検を受ける際に、都道府県に対する自動車税の納付済み証の領収書を添付しなければ車検が受けられません。

 そういうことで、もし仮に登録免許税の事前納付済み証という制度ができ上がり、これが役所から発行された段階で各関連省庁に連絡がオンラインで行く。例えばこの保安林等の場合には、役場の税務課、営林署、そしてまた農地台帳、林地台帳などに記載される。このように、国にとって、また、国民にとって重要な財産の異動があった場合に限ってでも構いませんから、このようなオンラインによる真の所有者の追跡は必要ではないかと思います。

 あと、最後にもう一つ。相続登記については、お父さん、お母さんが亡くなられて遺産分割協議が済むまでの間、一年ないしは二年かかりますので、どうしても登記するまでの間にタイムラグが生じてしまいます。そこで、遺産分割手続中であったとしても、暫定的に相続権利者の共有名義の登記を、登記の手続経費を減免することを条件に行えないか。若しくは、相続権者で構成する特定の組合を立ち上げ、構成員の住所、氏名、連絡先をきちんと書いた名簿一覧をもとに、その代表者名義での暫定的な登記手続ができないか。それについても登記の分の経費等は減免するという形で、少なくとも、一番問題が起きやすい相続登記におきまして、将来、所在不明者を探索することが容易になり得るようなマニフェスト方式というものも考えるべきではないかと思います。

 産業廃棄物におきましては、マニフェスト制度によって、伝票によって追跡調査をして違法行為をなくしますけれども、タイムラグが生じて登記が放置されやすい分については、何らかの形でのマニフェスト方式を入れるべきではないかと思います。

 私、きのう急に質問することになりまして勉強させていただいたんですけれども、日本の民法というものは、明治維新以来、フランス民法を手本にして、契約の自由、そして所有権の不可侵性というものが二本の柱になっています。ところが、幾ら所有権が不可侵であったとしても、売り主が契約の自由を利用して善意の第三者に二人も三人も四人も約束してしまいますと、それぞれに対して所有権が発生してしまいます。

 要するに、所有権の不可侵性と契約の自由のこの二つを日本の民法の基本原則としていく以上は、その二つのかけ橋として、この登記制度というものの重要性が認識されなければならないわけでございます。

 最初に売買の買受人となった者が登記をすれば、善意の第三者に対抗できる。単なる手段ではなくて、現行民法の契約の自由そして所有権の不可侵性を担保する大きな三本目の柱として登記制度を国民に啓蒙していくこととともに、先ほど申しましたように、電子化、オンライン化による土地情報基盤制度の確立をこれから急いでやるべきだと思います。

 法務省の皆さんにおかれましては、この登記制度の重要性に気づいておられるからこそなかなか手が出せないという御苦労はわかっておりますけれども、こういう時代になってきましたので、ぜひとも考え方を改めていただきたいと思います。

 最後に、国土交通省より始めましたこの端緒でございますけれども、先ほど申しました土地情報基盤整備等の確立について、御決意、若しくは御努力されていただきますことをお願いしまして、国土交通大臣に最後の質問をいたします。

石井国務大臣 所有者不明土地問題の解決を図るためには、登記簿と戸籍簿、各種台帳の連携を図り、不動産登記簿を中心に土地所有者情報を円滑に把握できるようにすることが重要であると認識をしております。

 これらの土地所有者情報に関する各制度は各省にまたがっており、関係省庁で連携することが必要であります。政府一体となりまして、土地所有者情報を円滑に把握する仕組みについて検討を深めてまいりたいと考えております。

矢上委員 ありがとうございました。

 どうぞ前向きに取り組んでいただきますことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

西村委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 本法案は、相続の機会に相続登記がされないなどのさまざまな事情により、不動産登記簿では所有者の所在が確認できない土地が全国でふえているために対策が必要だという背景をもって出されてきた法案であります。

 まず大臣に基本的な確認をしておきたいと思うんですけれども、今回の法案は、所有者不明土地が今後も生まれ、増加し続けることを国交省として容認し、それは仕方がないことだという立場でつくられた法案でございますでしょうか。

石井国務大臣 本法案は、所有者不明土地に関する対策といたしまして、まずは所有者不明土地の利用の円滑化を図るものであります。ただ、政府として、所有者不明土地が今後もふえ続けることを容認するものではございません。

 所有者不明土地の発生抑制や解消に向けた抜本的な対策につきましては、登記制度や土地所有のあり方等と深く関連するため、政府一体となって検討することが必要でありまして、国土交通省といたしましても、登記制度を所管する法務省など関係省と連携しつつ、引き続き、土地所有に関する基本制度の見直しについて検討を深めてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 容認するものではないという御答弁でありましたけれども、では政府参考人にお伺いいたしますけれども、所有者不明土地を円滑に利用する仕組み、今回の中に、所有者不明土地の発生を抑制し、解消するための条文があるかどうか。これは事実を確認させていただけますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 本法案における所有者不明土地を円滑に利用する仕組みにつきましては、所有者不明土地の利用の円滑化を図ることを目的としているものでございまして、所有者不明土地の発生抑制、解消を直接の目的としているというものではございません。

宮本(岳)委員 条文にはないんですね。

 先ほど大臣の方から、関係閣僚会議を開催をしているという話もございました。これは大臣も参加されていると思いますけれども、政府はこの問題で関係閣僚会議を開催をして、大臣、結論は出たのでございましょうか。

石井国務大臣 政府におきましては、所有者不明土地の発生抑制や解消に向けた抜本的な対策を含めまして所有者不明土地対策を総合的に推進するため、所有者不明土地対策の推進のための関係閣僚会議を開催をしたところであります。

 閣僚会議におきましては、「土地所有権や登記制度の在り方など財産権の基本的な在り方に立ち返って、土地に関する基本制度についての根本的な検討を行う」ことが確認をされたところであります。

 引き続き、関係閣僚会議を中心として、総合的に対策を進めてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 この関係閣僚会議、ようやく一回目を開催したところでありますけれども、問題の発生源について対策がまだ明確になっていない。問題の発生源についての対策が明確にならないうちにまずは利用円滑化というのは、私は、少し話の筋が逆ではないのかというふうに思います。

 所有者不明土地がなぜ生じるのか、今空き地となっている所有者不明土地をどう管理し、治安などを守っていくのか、相続登記がなされないことや土地所有権放棄が認められていない問題をどうするのかなど、関係閣僚会議でもまだ議論しているようなこういう状況のもとで、なぜ原因の対処法も確立しないまま利用の円滑化ばかり急ぐのか。これは政府参考人にお答えいただけますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 この所有者不明土地の問題、非常にいろいろな要因の中で起きているものでございまして、一朝一夕にはなかなか片づかない。関係省庁も多くございますし、原因も複雑でございます。

 そういった中で当面まずやるべきこととして、実際に既に所有者不明土地になっている土地が、いろいろな地域におきまして外部不経済をもたらしたり公共事業の円滑な執行を妨げる要因になっているということで、そういった所有者不明土地を原因として発生しているそういった困った状況に対してまず対処するべきということでこの法案を提出したものでございまして、引き続き総合的な対策を、先ほどの閣僚会議を中心にいたしまして検討を続けていくということでございます。

宮本(岳)委員 結局は今度の法案は、公共事業を進める上で支障となっている土地収用のためのコストと時間を省こうというものであります。

 しかし、今進められている公共事業の中には、住民合意のない事業もございます。しかも、利用のための手続を現行法よりも簡素化するというわけですから、安易に所有者不明土地と認定してしまう方向に流れかねない、こういう危惧、不安があるということを指摘しておきたいと思います。

 次に、憲法二十九条の財産権保障と土地収用の関係についてお伺いをしたいと思います。

 手続保障の面、住民意思の反映の面、この二つの面から確認をいたします。

 まず、これも事務方でいいですけれども、土地収用法第一条の目的規定を読んでいただけますか。

由木政府参考人 お答えいたします。

 土地収用法第一条におきましては、法律の目的といたしまして、「この法律は、公共の利益となる事業に必要な土地等の収用又は使用に関し、その要件、手続及び効果並びにこれに伴う損失の補償等について規定し、公共の利益の増進と私有財産との調整を図り、もつて国土の適正且つ合理的な利用に寄与することを目的とする。」と定められております。

宮本(岳)委員 公共の利益の増進と私有財産との調整を図るのが土地収用法だということであります。

 私有財産というのは、言うまでもなく、憲法二十九条で基本的人権として保障された財産権のことであります。

 では、土地収用法は、憲法の財産権を保障するため、現行法では地権者に対してどのような手続保障を定めているのか、ごくかいつまんで御説明をいただきたいと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 土地収用法は、公共の利益となります事業の実施における公共の利益の増進と私有財産との調整方法をルール化したものでございます。

 内容としては、大きく分けて、事業認定の手続と収用裁決手続という二つの手続を規定しております。

 まず、事業認定の手続でございます。

 国土交通大臣等の事業認定庁が、申請事業が土地を収用する公益上の必要性を有することを認定するという手続になっております。

 具体的な手続の流れでございます。

 まず、起業者において事前説明会を開催をいたします。その後、起業者から事業認定庁に事業認定の申請をいたします。申請がなされた後、市町村長が、申請書類の写しを二週間、公衆の縦覧に供します。その間、利害関係人は意見書を提出することが可能であります。事業認定に対して異議がある旨の意見が提出された場合には、事業認定庁は、第三者機関の意見を聴取するということとされております。また、公聴会の開催請求があった場合には、事業認定庁において公聴会を開催をいたします。

 このような手続を経まして事業認定庁は、申請をされました事業が土地収用法の第三条各号の一に掲げるものに関するものであること、起業者が当該事業を遂行する十分な意思と能力を有する者であること、事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること、土地を収用し又は使用する公益上の必要があるものであることの全てに適合すると判断する場合に事業認定を行うこととなっております。

 次に、収用の裁決手続でございます。

 収用の裁決手続は、都道府県に設置されます収用委員会が土地所有者等に対する適切な補償内容を決定をいたします手続でございます。

 具体的な手続の流れでございますが、まず、起業者において土地や物件の現況等を記載した調書を作成をいたしまして、それを添付して収用委員会に裁決申請をいたします。申請がなされた後、市町村長が申請書類あるいはその写しを二週間公衆の縦覧に供します。その間に土地所有者等は意見書を提出することが可能でございます。収用委員会におきましては、原則として公開により審理を行いまして、意見を述べることを希望する土地所有者等がいればその意見を聴取の上、権利取得裁決及び明渡し裁決において補償内容について裁決を行うこととなっております。

 裁決後は、起業者が決定された補償内容に基づいて補償金の支払い等を行うことによって土地を取得することが可能となる。

 以上のような手続になっているところでございます。

宮本(岳)委員 これらの手続は、先日の参考人の橋本氏も指摘されたようにまだまだ不十分でありますけれども、憲法二十九条が保障する財産権を最終的に取り上げることを可能とする法律だからこそ、一定の手続を必要としてきたわけです。

 ところが今度の法律は、所有者不明土地について特則でこの手続を簡素化するということです。土地所有者に対し公開の審理を保障してきた収用委員会を知事の裁定にかえるということになっております。財産権保障にとって重大な変更だと思うんです。

 所有者不明土地とはいえ、土地収用後に本来の所有権者が名乗り出る可能性はゼロではありません。公開の収用委員会の審理手続をなくして知事の裁定にかえ、不明とはいえ、存在する土地所有者の手続保障の機会をなくすことについて、憲法二十九条の財産権保障との関係で検討はしたのですか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 本法案の土地収用法の特例は、御指摘のように、収用委員会の裁決ではなく、都道府県知事の裁定によりまして、審理手続を経ずして所有者不明土地を取得できることとするものでございます。

 これは、まず、本特例の対象となる土地を、所有者不明土地ということで法令に定められた探索をまず行った上で所有者が明らかでない土地という中で、さらに、簡易なものを除きまして建築物が存在せず、利用されていない特定の所有者不明土地に限定をしているため、個別性の強い建築物の補償や移転料、営業補償の算定が不要となりますので、収用委員会並みの補償算定に関する専門的知識は不要であること、それから、明示的に反対する権利者がいないことを手続的に担保する条文も設けてございます。そういった公告縦覧を行った上で、権利者が異議を申し立てた場合には申請を却下するとしていることから、審理手続による権利者の意見聴取は不要であることを勘案したものでございます。

 このため、本法案の土地収用法の特例は、現行の土地収用法と比べて財産権の保障を何ら弱めるものではなく、憲法二十九条の関係で問題はないものと考えております。

宮本(岳)委員 私、少し国土審議会土地政策分科会特別部会のワーキンググループでの議論というのも見せていただいたんですけれども、「財産権の制限や収用には相応の理由が必要であるが、権利の社会的な拘束性と制限の程度の均衡が重要である。その意味で、権利を奪う収用については公共性が厳しく求められるが、私権との調整が行いやすい場面で簡素化した公共事業に関する措置を検討し、権利制限の程度が弱い場合については公共的事業に関する措置を検討するという切り分け自体は合理的。」と議事要旨にはそう書かれているんですけれども、これは、「切り分け自体は合理的。」と言っているだけでありまして、財産権との検討がされたとは言いがたいと私は読んだんです。

 先ほどの答弁も、現行の手続の中で省略できるものを列挙したわけでありますけれども、それでは聞きますけれども、所有者不明土地に対して、現行制度にはない新たな財産権保障の手続を今回一つでも追加したものがありますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 まず入り口といたしまして、この特例の対象となる土地を、探索を尽くしても所有者が確知できない所有者不明土地であり、かつ、先ほど申しましたような、簡易なものを除いて建築物が存在せず、利用されていない所有者不明土地に限定しているということでございまして、まず入り口を絞っておりますし、それから、そういった土地についてこの今回の特例の申請があった場合、裁定の申請があった場合につきましては、確知されている所有者にあらかじめ周知を図った上で公告縦覧を行いまして、権利者が異議を申し出る機会を担保しております。さらに、そういった異議を申し立てた場合につきましては、申請を却下するということが明文化されております。

 このような条文上の措置をとっているということでございます。

宮本(岳)委員 入り口を絞ろうがどうしようが、新たに財産権保障の手続というものは、条文上は追加したものはないわけですよ。土地収用についていかに簡素化するかが先にあって、憲法の財産権保障を制度上いかに担保していくのかというそういう問題意識は希薄だと言わざるを得ないと思います。

 結局、時間、労力、費用というコストをできるだけ省いて公共事業を推し進めたいという事業者側の立場を優先したもので、地権者の財産権をないがしろにするものではないかということを指摘をしておきたいと思います。

 次に、法案では改正の対象となっていない事業認定手続についてただしたいと思います。

 昨日の参考人質疑で橋本参考人が、「土地収用法の事業認定に至る手続は、公聴会を開催して第三者機関の意見聴取をすることになっております。しかし、この第三者機関というのは、国土交通省の社会資本整備審議会であり、主に審議するところは土地収用部会であります。この委員は、起業推進をする国土交通大臣がその責任者であり、その審査をするところも国土交通省の事業認定庁である。」と述べられました。

 これは大臣にと思ったんですが、昨日、大臣ではなく参考人という話もありましたが、どちらでも結構です。この指摘をどのように受けとめられましたか。

由木政府参考人 お答えいたします。

 国土交通大臣が行おうとする事業認定に対しまして異議がある旨の意見が提出された場合には、委員御指摘のとおり、社会資本整備審議会の意見を聞き、その意見を尊重しなければならないこととなっております。

 審議を行います社会資本整備審議会公共用地分科会の委員につきましては、こうした制度が導入されました平成十三年の土地収用法の一部改正に当たりまして、衆参両院で附帯決議が付されております。

 その内容は、委員が特定の分野に偏ることなく、法学界、法曹界、都市計画、環境、マスコミ、経済界などの分野からバランスよく人選するとともに、事業を推進する立場である中央省庁のOBを加えないことということで事業認定の中立性、公正性等の確保に努めることという附帯決議がなされております。

 現在の委員は、この附帯決議に従いまして、特定の分野に偏ることなく、今申し上げましたような広い分野からバランスよく人選をされているということになっているものでございます。

宮本(岳)委員 手続は適正に行われているとの御答弁ですけれども、橋本参考人も昨日指摘をしておりました。土地収用部会での議事録を住民が要求しても開示されたものは全て黒塗りの議事録、昨日そこで皆さんに示してお見せになっておりましたけれども、事業の公共性を担保するためにもこういう黒塗りということでは困るのでありまして、土地収用部会での議論が公開されるのは当然だと思いますが、いかがですか。

由木政府参考人 お答えいたします。

 社会資本整備審議会公共用地分科会の個別の議事録でございます。

 議事録につきましては、その公開により委員の意見等が公になれば、個別の議論を捉えて個別の委員に対する非難等がなされるおそれがございます。こうした事態は委員の自由かつ率直な意見の表明等に影響を及ぼしかねず、土地収用法の事業認定に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、審議や議事録は非公開という取扱いをいたしております。

 また、そのような理由から、議事録について情報公開請求がなされました場合に、委員による意見の表明、交換、判断等に係る情報が含まれている部分は不開示とさせていただいております。

 なお、この不開示処分に対して不服審査請求も出ておりますが、総務省の情報公開・個人情報保護審査会より、不開示とすることを妥当とするという答申もいただいているところでございます。

 ただし、議論の内容や結論につきましては、発言者が個別には特定されない形で議事要旨を公表しているところでございます。

宮本(岳)委員 適正にやっていると幾ら答えていただいても、適正かどうかを確認するすべはない。黒塗りのものしか見ることはできない。特定されない形で要旨がというだけだというのでは、胸を張っておっしゃるんだけれども、なかなか確証がないと思うんです。

 橋本参考人は、知事が事業認定をして知事がこの案件では裁決もできるとなると、「左手で答案用紙を自分でつくって右手でサインをする、オーケーです、こういうことになるのではないか」と指摘をされ、関係住民の皆さんたちはこの問題に大変疑問を呈していると警鐘を鳴らしておりました。

 土地収用手続が住民置き去りにならないようにこうした声に真摯に向き合うべきであることを指摘をし、さらに、今申し上げた知事の裁定にかえるという法案の問題についてお聞きをしたいと思います。

 まず確認したいんですが、現行の土地収用法でも不明裁決制度を活用して所有者不明土地の収用ができると思うんですが、これはそうですね、事実ですね。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 土地収用法に基づく収用裁決の申請に当たり、過失なくして権利者を確知できない場合には、裁決申請書に当該権利者を記載せずに裁決申請をすることが可能です。

 この場合、収用委員会が、収用手続を行った上で、補償を受けるべき権利者を不明としたまま裁決することとなり、起業者は、補償金を供託した上で土地を取得することが可能となります。これを不明裁決と呼んでおります。

 このような不明裁決により、これまでも所有者不明土地の取得が行われてまいりましたが、所有者不明土地は、建築物が存在せず、利用されていないものが多く、このような土地はその補償額の算定が容易でもあるにもかかわらず、収用委員会の裁決を求めなければならないこと、所有者不明土地は共有地が多く、判明している権利者は一切反対していないのにもかかわらず、一人でも不明所有者が存在する場合には審理手続を行わなければならないことといった、実質的に意義に乏しい手続を行わなければならないという課題がございます。

 このため、今般、建築物が存在せず、利用されていない所有者不明土地に限りまして、反対する権利者がいない場合には、収用委員会ではなく、都道府県知事の判断によりまして、審理手続を経ず土地を取得できることとする特例措置を講じたものでございます。

宮本(岳)委員 今回の法案は、所有者不明土地の収用手続に、現行の収用委員会の裁定を知事の裁定にかえるというものがございます。その理由は今答弁があったとおりですけれども、これは憲法上の財産権保障との関係で問題があるということは私が指摘したとおりであります。

 それだけではありません。十八日の当委員会で谷川とむ議員が、「事業実施主体と裁定主体が同じになる場合も想定されると思います。このような場合は、裁定申請事項の確認や裁定において適切な判断が行われるためにはどのような措置が講じられることになるのか」と質問されました。これに対して田村局長は、御指摘のような都道府県が事業を実施する場合につきましては、「直接事業を担当する部局とは別の部局が確認や裁定を担当することをこの法律の基本方針等におきまして定めることとしております。」こう答弁をされました。

 しかし、これは、事業主体たる知事の意思決定に対して都道府県の部局がその是非を判断するというものであります。都道府県の部局に果たしてそのような権限があるのか。法令上の根拠をお示しいただけますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 土地収用法の特例におきまして、御指摘のように、事業主体と裁定主体がともに都道府県知事となる場合はあり得ます。

 このような場合につきましては、例えば、道路整備を担当する部署などの事業を直接担当する部署とは異なる部署が裁定の事務を担当することを基本方針等において定めること、それから、補償金額について収用委員会の意見を聞くこと等の措置を講ずることによりまして、一定の客観性や中立性が担保されるものと考えております。

宮本(岳)委員 いやいや、そんな、県の職員が知事の意思決定と異なる確認や裁定をすることはあり得ないと申し上げておかなければなりません。何の担保にもなりません。事業を実施するのも都道府県知事、裁定するのも知事というのでは、自分の事業について自分で裁定を行ってゴーサインを出すことになります。まさに自作自演だと指摘をしなくてはなりません。

 次にただしたいのは、リニア中央新幹線建設事業と法案との関係です。

 この事業にかかわって沿線で多数の所有者不明土地が存在している、これは事実ですね。

田村(計)政府参考人 リニア中央新幹線の事業に係りますところにつきまして所有者不明土地がどのように所在しているか、していないかということについては、把握をしてございません。

宮本(岳)委員 では、リニア事業で所有者不明土地、これを活用したいという場合も、この土地収用法の特則は使えますね。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 土地収用法の特例制度の対象は、土地収用法の収用適格事業の対象と同一でございます。

 リニア中央新幹線に係る事業につきましては、土地収用法第三条第七号に規定する、鉄道事業で一般の需要に応ずるものの用に供する施設に該当いたします。

 このため、リニア中央新幹線に係る事業が土地収用法に基づく事業認定を受けた上で、対象の土地が特定所有者不明土地に該当し、当該土地の取得について反対する権利者がいない等の一定の要件を満たす場合には、本法案の土地収用法の特例の対象になり得ます。

宮本(岳)委員 なり得るという答弁でした。

 リニア中央新幹線事業では、沿線で多数の所有者不明土地の存在が判明しております。JR東海が土地の取得に苦慮しているという運動団体の報告もあります。JR東海は土地収用を行うこともあると地権者に公言しており、これをおどしと受け取っている方もおられます。財産権を取り上げるぞとおどしているようなものです。

 運動団体からは、本法案は、タイミング的にもリニア推進のために出されてきたという指摘もございます。リニアに三兆円もの公的資金を投入するだけでなく、土地収用についても政府はJR東海に対して至れり尽くせりだと言わざるを得ないと思うんです。土地収用法の特則については決して認められないということを改めて指摘しておきたいと思います。

 最後ですけれども、昨日の参考人質疑で、本法案に賛成の立場で出席をしておられた国土審議会の土地政策分科会分科会長の山野目章夫参考人も、今まででも、不動産登記の事務、人権擁護、供託、戸籍にかかわる事務をするのに手いっぱいの状態だと述べられ、そこに所有者不明土地問題や相続登記の推進という新しい課題に立ち向かわなければならない、法務局の職員を減らすのをやめていただきたいと語られました。

 国会でも、毎年、衆参の法務委員会で、法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願が全会派一致で採択をされております。

 きょうは法務省に来ていただいておりますけれども、最後に、所有者不明土地問題の解決を進める上でこの法務局の定員の増員こそ必要だと私は思うんですけれども、法務省の所見をお伺いをして質問を終わります。

筒井政府参考人 法務局がその機能を十分に果たし国民や社会の期待に応えるためには、所要の体制の整備に取り組んでいく必要があると考えております。

 今回の特別措置法案第四十条の規定に基づく新たな登記官の業務を始めといたしまして、法務局に対するさまざまな新しい社会的要請に的確に対応するためには、体制の整備を行うことが重要であると考えておりまして、平成三十年度におきましては、所有者不明土地問題への対応に必要な要員として、登記官二百二十三名の増員が措置されたところでございます。

 今後とも、必要な人員の確保に向けて、私どもとしても最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 終わります。

西村委員長 次に、もとむら賢太郎君。

もとむら委員 無所属の会のもとむら賢太郎です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、地籍調査について数点お伺いいたします。

 平成二十九年三月時点で面積ベースの進捗率は約五二%ということでありまして、過去にもこの質問をさせていただきまして、大臣からも御答弁いただいておりますが、地籍調査の主体は市町村でありまして、費用の二分の一が国、都道府県と市町村で残りの四分の一を均等負担、特別交付税が八〇%交付され、実質的には都道府県と市町村は五%ずつの負担となっております。

 政令市を見ても、岡山市の五二%が最も高く、次いで熊本市の四三%、横浜市の三八%、新潟市三六%、そして私の地元相模原市と京都市が一%と非常に低く、札幌、静岡市も三%と低くあります。

 地域によって地籍調査の進捗に差が出ているというのはどのような理由で捉えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 現在、地籍調査は、平成二十二年に閣議決定をされました第六次国土調査事業十カ年計画に基づいて進められております。平成二十九年三月末時点の全国の面積ベースの進捗率は、先ほど御指摘ありましたように、約五二%である一方、都市部の進捗率は二四%、林地の進捗率は四五%と低くなっております。

 地方別の進捗率につきましては、東北地方や九州地方ではおおむね八〇%以上となっている県も多く、比較的地籍調査が進んでいる一方で、都市部の占める割合の、関東地方や、都市部とともに林地の占める割合が高い近畿地方では三〇%未満の都府県が多く、進捗がおくれている状況です。

 この主な原因といたしましては、都市部におきましては、土地が細分化されており、対象の筆数が多いこと、権利関係がふくそうしており、境界確認に時間を要すること、建築物等が障害となり、測量に時間と経費を要することが考えられます。

 林地におきましては、高齢化等の進展によります筆界確認が困難な地域の増加や急峻な地形によりまして、土地所有者の立会いが困難であること等が原因として考えられます。

 また、地籍調査の実施主体が市町村でございますが、この実施主体である市町村等における予算や実施体制の差が、進捗に差が出る一因と考えているところでございます。

もとむら委員 三・一一の東日本大震災でも、東北の岩手、宮城を始めとする被災三県も非常に今地籍調査が進んでいて、そして、非常に復旧復興が早かったということもございますので、この地籍調査は非常に私も関心を持っております。

 第七次国土調査事業十カ年計画に向けて検討を行っているところだと承知をしていますが、平成三十二年度からの十カ年における目標を教えていただきたいと思います。

石井国務大臣 平成三十二年度から始まります第七次の国土調査事業十カ年計画を見据えました地籍整備のあり方等につきましては、中長期的な地籍整備の推進に関する検討会におきまして有識者の方々に御検討いただきまして、本年の二月に中間取りまとめを公表したところであります。

 国土交通省では、この中間取りまとめを踏まえまして、次期の第七次国土調査事業十カ年計画の策定に向けまして、所有者が不明な場合を含めた立会い等の手続の合理化、官民境界情報の迅速な整備方策、新技術による測量の効率化、民間測量成果等の有効活用、災害想定地域等の優先地域での重点的実施の促進等について検討することとしております。

 今後、これらの施策の具体化に向けて検討を行うとともに、その効果について推計を行いまして、第七次国土調査事業十カ年計画におけます国土調査事業の量としての調査面積の目標を設定をしてまいりたいと考えております。

もとむら委員 先ほどは失礼しました。東日本大震災、岩手、宮城、福島でありまして、被災三県、この沿岸部の地籍調査が進んでいるという点を指摘したかったんですが、失礼いたしました。

 今、地籍調査は昭和二十六年から行われておりまして、今大臣からもお話しいただいた六次計画では、進捗率を五七%として、都市部四八%、山村部五〇%として、平成三十一年までが第六次でありまして、先ほどのお話を聞くと、進捗率五二%でありますので、目標達成までちょっと厳しい部分もありますので、第七次ではまた目標を高く上げて、前進するべく、リーダーシップに期待してまいりたいと思います。

 次の質問に入りますが、登記所備付け新規地図作成作業、土地家屋調査士の皆さんからは十四条地図と言われている、平成十六年度より、法務省においてもこの地図作成作業を重点的に実施していると承知をしていますが、地籍調査と地図作成作業のすみ分けはどのように行っているのか、お伺いいたします。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 登記所備付け地図の整備として、法務省では、全国の法務局におきまして登記所備付け地図作成作業を実施していますが、国土交通省では、市町村等を実施主体とする地籍調査を推進しております。

 両者の役割分担につきましては、平成十五年六月に内閣に設置された都市再生本部が示した民活と各省連携による地籍整備の推進の方針に従いまして、登記所備付け地図の整備が不十分である都市部において、公図と現況が大きく異なり、地籍調査が困難な地域である地図混乱地域などについては法務局が担当すること、それ以外の地域については市町村等による地籍調査を行うこととしております。

 これによりまして、法務省による登記所備付け地図作成作業は、平成十六年度より、登記所備付け地図作成作業十カ年計画に基づきまして、全国の都市部の地図混乱地域において、さらに平成二十七年度からは、同様の十カ年計画等に基づきまして、大都市の枢要部や地方の拠点都市、東日本大震災の被災地におきましても、重点的に実施されていると承知をしているところでございます。

 また、市町村等が実施する地籍調査は、法務省による計画地域以外を対象にいたしまして、第六次の十カ年計画に基づきまして、大規模災害想定区域や社会資本整備の重点予定地域等において実施しているところでございます。

もとむら委員 平成二十七年度から、横浜地方法務局において、私の地元相模原市の橋本駅周辺地域を対象に実施をされておりまして、きのうも指摘をさせていただきましたが、この橋本というのは、リニアの新駅が、中間駅ができる予定でございますが、このリニア中央新幹線の駅建設予定地であることからも、今後の土地取引等の活性化が見込まれる地域として選定されたものというふうに伺っておりますので、今後もこの対応をしっかり注視をしてまいりたいと思います。

 次に、神奈川県内においては、法務省の地図作成事業での筆界特定率が地籍調査率よりも高いと伺っております。この理由は何か。このノウハウは地籍調査事業にも生かせないのか、お伺いいたします。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 筆界確認に至る作業内容と手順につきましては、法務省が実施する登記所備付け地図作成作業と市町村等が実施する地籍調査とでは同様でございます。

 そのうち、土地所有者等の所在が明らかでないため立会いを求めることができない場合につきましては、筆界を明らかにする客観的な資料の収集、分析、筆界案の作成を行いますけれども、登記所備付け地図作成作業におきましては登記官みずからが、地籍調査におきましては市町村等の担当者が法務局と協議をした上で定めるということでございます。

 土地所有者等の所在が明らかでないため立会いを求めることができない場合の作業内容、手順につきましては、上記のようなところが異なるところでございますが、この手続の中で、客観的な資料の収集、分析、筆界案の作成に関する経験値が法務局の登記官と市町村等の担当者間で異なることが、筆界が確認できた割合の差の一因であると推測をしております。

 引き続き、国土交通省といたしましては、法務省と連携して、筆界の確定に努めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、新谷委員長代理着席〕

もとむら委員 神奈川県の土地家屋調査士会の相模原支部からも、この地籍調査の結果、筆界未定地となる土地が多数見受けられるけれども、地図作成作業は筆界特定率が高い、この成果を相模原市が行う公共事業などにもうまく連携させることができればより効果が大きいんじゃないかという話もいただいておりますので、その辺をまた指摘をしておきたいと思います。

 次は、所有者不明土地の課題について数点お伺いいたします。

 平成二十八年に、外国人によって買収された森林は二百二ヘクタール。そのうち二百一ヘクタールは北海道ということでありまして、平成二十四年三月、北海道では、水源地域の土地売買の事前届出を義務づける条例を制定しているというふうに伺っております。

 水源保全地域の指定区域の全所有者四千百六十六名に通知を郵送したところ、その四割以上が宛先不明で返送されてきたということでありまして、その後、移転先の追跡調査を行ったが、判明したのはわずか二十七名ということであります。

 この所有者不明土地はさまざまな問題を起こし得ることがありまして、例えば、所有者が登記をしないまま土地が売買されてしまえば、水源地の保全や安全保障上重要な土地が知らないうちに外国人の手に渡ってしまうことも考えられるわけでありまして、政府はこうした問題についてどのように認識をされているのか、お伺いいたします。

石井国務大臣 我が国の安全保障上重要な国境離島や防衛施設周辺等におきます外国人や外国資本による土地の取得に関しましては、国家安全保障にかかわる重要な問題と認識をしております。

 このため政府におきましては、平成二十五年十二月に閣議決定をされました国家安全保障戦略におきまして、国家安全保障の観点から国境離島や防衛施設周辺等における土地所有の状況把握に努め、土地利用等のあり方について検討することとしておりまして、現在、関係省庁において調査等が実施されているものと承知をしております。

 また、森林や水源地につきましては、外国資本による森林買収への関心が高まる中、農林水産省におきまして、平成二十三年に森林法を改正をし、新たな森林の土地取得に対して届出義務が課されるようになったと承知をしております。

 国土交通省といたしましては、こうした政府全体の動向を踏まえつつ、必要に応じまして関係省庁と連携をしながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

もとむら委員 私の地元の相模原市も水源地域があるんですが、中国人の皆さんがバスで水源地域を見に来ているといううわさも一部ありまして、地元でも、水源林に対する、国の保全に対する責務を言う声を多くいただいておりますので、ちょっときょう委員会で取り上げさせていただきました。

 一点指摘をさせていただきますが、所有しているが登記をしていないなどの、行政の台帳で所有者が不明なだけであれば実際売買が可能でありまして、売買届出や登記書きかえを放置すれば行政が把握できないということもございますので、そういう点を一点指摘して、次の質問に入らせていただきます。

 次は、所有者不明の未然防止について数点お伺いいたします。

 間もなく団塊の世代が七十五歳を迎える二〇二五年を迎え、大量相続時代が訪れます。きのうも山野目参考人にこの質問をさせていただきまして、一つ強調して申し上げるとすれば、土地情報基盤の整備、登記簿及びそれを所管する国の機関と、戸籍及びそれを所管する公共の機関との間の連携がうまくとれていないという問題があると山野目参考人からも指摘をされましたが、所有者不明土地となることを未然に防ぐためにできることはないか、お伺いいたします。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地が生ずる要因の一つとして、相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されております。そこで、法務省におきましては、この問題の拡大を防ぐために、相続登記の促進に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、今後、相続未登記の土地が発生することを防止するための取組として、市町村の窓口で相続登記の促進のための広報用リーフレットを配布することを依頼し、多くの市町村に御協力いただいているほか、平成二十九年五月から、相続人の相続手続の負担を軽減し、相続登記の促進を図るために、法定相続情報証明制度を開始し、現在まで多くの方に御利用いただいているところでございます。

 また、本年四月からは、平成三十三年三月三十一日までの期間、既に発生している相続とこれから発生する相続のそれぞれに対応するために、一定の要件を満たす土地について、相続登記に関する登録免許税を免除する特例が設けられたところでございます。

 さらに、相続登記の義務化の是非などにつきまして、相続等が生じた場合にこれを登記に反映させるための仕組みのあり方という観点から、研究会において現在検討を進めているところでございます。

もとむら委員 次に、不動産登記の義務化についてお伺いいたします。

 平成二十九年五月二十三日の指定都市市長会が取りまとめた提言でもこの義務化という文言がございますけれども、きのう、参考人質疑の中で山野目参考人から、登記の義務化をしても実効性がなく、解決につながらないと指摘をされております。

 また、罰則をどうするか、罰則を実効的に発動することができるのか、過料とするなら一回で終わりなのか、遺産分割の期限との関係などの課題があるときのう御答弁いただいておりますが、この不動産登記の義務化について、実効性の有無を含めてさまざまな見解があることは承知をしていますが、政府としてはどのように捉えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

筒井政府参考人 所有者不明土地が生ずる要因の一つとして相続登記がされないことがあり、それに対する対応策として、相続登記を義務化すべきであるとの指摘がされているところでございます。

 そこで法務省におきましては、相続登記の義務化の是非を含む登記制度、土地所有権のあり方について研究会において検討を進めているところでございます。

 研究会におけるこれまでの検討におきましては、ただいま御指摘がありましたように、また、昨日の参考人からも御指摘がありましたように、相続登記の義務化をすることの是非について、仮に義務化をするとした場合には、その実効性をどのように確保するのかという点が重要な課題の一つとされているところでございます。

 法務省といたしましては、相続登記の義務化の是非について、相続等が生じた場合に、これを登記に反映させるための仕組みのあり方という観点から検討を進めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 次に、山野目参考人がきのうも、所有者不明土地の未然防止策として、先ほど申し上げた、一つ強調して申し上げるとすれば、土地情報基盤の整備、登記簿及びそれを所管する国の機関と、戸籍及びそれを所管する公共の機関との間の連携がうまくとれていないという問題が、先ほどもお話ししましたが、指摘をされております。

 土地に関する情報の一元化や、戸籍情報と登記情報の関連づけなど、情報の連携を行っていくことはできないのか、お伺いいたします。

筒井政府参考人 所有者不明土地問題に対する対応として、土地所有者情報の中で最も基本となる情報である不動産登記を中心といたしまして、土地所有者に関する情報の連携を図り、関係行政機関が土地所有者の情報を円滑に把握することができるようにするための仕組みを構築することが重要であると考えております。

 具体的には、例えば、不動産登記と戸籍等を連携させ、不動産登記における所有者情報について、その者が死亡しているかどうかなどの最新の情報を適切に把握することができるようにする仕組みの構築について検討を行っているところでございます。

 このような仕組みの構築に向けて、関係省庁とも連携しながら、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 きのうの参考人の山野目参考人が部会長を務めていらっしゃる国土審議会土地政策分科会特別部会においても中間取りまとめが昨年十二月に行われておりまして、まとめの後に土地情報基盤の整備等を含めて「本格的に検討を行っていくこと」とされておりますし、また、所有者不明土地問題研究会座長であります増田寛也元総務大臣も、登記簿は国、固定資産税の課税台帳は市町村、農地は農業委員会の農地台帳、それぞれの部局が全部情報を共有化できる仕組みが必要だろうというふうに述べられておりますので、この辺をまたぜひ、指摘を鑑みながら前へ進めていただきたいと思います。

 次の質問でありますが、土地が所有者不明になる原因は登記簿が更新されていないということであります。これを未然に防ぐため、さまざまな住民サービスを総合窓口で一括して受け付けているケースがあるんですが、例えば、家族などが亡くなり死亡届を出してきた人に対してあわせて土地の登記も促す取組があったり、また、窓口では登記の意義や手続方法なども丁寧に説明され、これにより登記件数もふえているという実例もあります。

 京都府精華町では、死亡届に来た住民に登記を促すなど、総合窓口を設置して成果を上げていると聞きますが、こうした取組を全国の自治体に広げていくべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

筒井政府参考人 所有者不明土地問題の要因の一つとして相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されておりますことから、法務省においては、この問題の拡大を防ぐために、相続登記の促進に取り組んでおります。

 そのための方策として、委員からは、京都府精華町における先進的な取組を御紹介いただきましたけれども、一般的な取組の一つを申し上げますと、登記の専門家団体である日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会と連携の上、相続登記の促進のための広報用リーフレットを作成し、死亡届の受理時にこれを配布していただけるように、各法務局、地方法務局から全国の市町村に対して協力依頼を行っているところでございます。

 その結果、現在、全国の七割を超える市町村におきまして、死亡届を受理する際に相続登記の促進のための広報用リーフレットを当該届出人に配布していただいております。

 また、全国の三割の市町村におきましては、市町村が作成している死亡に伴う各種手続一覧表の中に、相続登記の申請についての記述を加えてもらっております。

 法務省といたしましては、引き続き、市町村の御協力を得ながらこのような取組を広げてまいりたいと考えております。

    〔新谷委員長代理退席、委員長着席〕

もとむら委員 次に、登録免許税の話題もきのう参考人の皆さんからお話しをいただきましたけれども、相続時に登記について市役所の窓口でできるようにすることや登録免許税を減免するなど、登記しやすい環境を整えていくことが必要だというふうに考えております。

 現在、登録免許税の免税は行っていますけれども、これも国民に知ってもらうことが必要だというふうに思います。

 登記しやすい環境整備、国民の理解増進に向けて政府はどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

筒井政府参考人 委員から御指摘ありましたように、所有者不明土地の解消に向けて新たに特例が設けられました登録免許税の免税措置につきまして、積極的に周知、広報に努めるとともに、登記しやすい環境整備に向けて相続登記の申請手続の負担の軽減を図ることが重要であると認識しております。

 そのための具体的な取組として、先ほども申し上げましたけれども、市町村の窓口で相続登記の促進のための広報用リーフレットの配布をしていただくことを依頼したり、それから、平成二十九年五月から、相続人の相続手続の負担軽減そして相続登記の促進のために、法定相続情報証明制度を開始し、現在まで多くの方に御利用いただいているところでございます。

 法務省といたしましては、引き続き、相続登記の必要性、重要性について国民に理解していただけるよう周知、広報に最大限努めるとともに、相続登記の申請手続の負担を軽減する観点から、相続登記の手続の簡略化についてもあわせて検討を行っております。

 今後とも、所有者不明土地の解消に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

もとむら委員 次に、所有権について、厚生労働省の方にお越しいただいておりますので、質問させていただきます。

 先日、市県民税が払えずに厚生年金が差し押さえられ、電気代も払えずに電気がとまっており、病気のために働くこともできない、だが、離れた土地を親から相続したために生活保護を受けられないという相談がございました。

 京都府に確認したところ、維持管理等の問題もあって利活用できない土地は寄附を受けられないこと、自治体からすれば税金も手間もかかるので理解できるところでありますけれども、こうした問題の中で、利活用できない土地であっても所有していれば生活保護を受けることができるのかどうか、お伺いいたします。

八神政府参考人 生活保護と土地所有についてお尋ねがございました。

 まず原則から申し上げますと、生活保護制度では、利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用してもなお最低限度の生活を維持できないという方に対して保護を行うということになってございます。したがいまして、不動産等の資産は、原則として処分をしていただくこととなります。

 ただし、そうは申しましても、一方で、現在住んでいる住宅ですとか、今御指摘ございました、活用していないもののすぐには買い手がつかない土地など、個別の事情によりまして、例外的に、不動産等を所有したまま保護を開始ができるという取扱いをしております。

 その上で、例えばすぐに買い手がつかない土地を保有する場合には、福祉事務所は保護開始後に土地の処分を指導し、その後、売却をできた際に保護に要した費用の返還を求める、こういった取扱いとなってございます。

もとむら委員 今御答弁あったように、生活保護を受けるときに認められるのは生活に必要な財産のみでありまして、住宅や田畑など、原則としてそれ以外の資産は処分しなければならないわけでありますけれども、利活用できない土地の処分は簡単ではないわけでありまして、その点も、今回私も相談を受けて感じたところでございますので、そういった事例もぜひまた考慮しながら、最後のセーフティーネットと言われているものでありますので、十分御検討いただきたいというふうに思います。

 次に、相続した土地が活用できず、自治体に寄附することもできないという事例がふえておりまして、先ほど指摘もしましたが、この問題を突き詰めていきますと、所有権の放棄を認めるかという話に行き着くのではないかというふうに思います。

 きのうも参考人にこの質問をさせていただきましたが、所有権の放棄についてはどのようにお考えなのか、お伺いいたします。

筒井政府参考人 まず現状を申し上げますと、土地所有権の放棄につきましては、民法上明文の規定がなく、確立した最高裁判所の判例も存在しないことから、放棄の可否を一概にお答えすることが困難な状況であります。

 仮に一般論として土地所有権の放棄が可能であると解するといたしましても、放棄を認めますと、一方的に不動産の管理コストや固定資産税の負担を免れ、これらを国の負担とすることになりかねませんことから、個別の事案において土地の放棄が認められるか否かにつきましては、当該事案における具体的な事情に照らして極めて慎重な検討が求められるものと考えております。

 もっとも、法務省におきましては、所有者不明土地の発生を予防する観点から、土地所有権の放棄を可能とする制度を導入すべきであるとの御意見があることを踏まえまして、現在、研究会において、土地所有権の放棄を認める制度を創設することの是非を含めて、所有者不明土地問題の解消に向けた検討を鋭意進めているところでございます。

 土地所有権の放棄を認める方向で法整備を行うといたしますと、その要件や放棄された土地の帰属先のあり方など検討すべき課題が多くございますけれども、引き続き、関係省庁と連携してしっかり検討を進めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 所有権を放棄する制度を整えることで所有者不明土地が減るのではないかなという考え方もございますが、きのうの参考人質疑で山野目参考人から、「土地を自然に還す」、そういう発想による国有財産の新しい考え方を提案をされているわけでありますので、そういった点も十分鑑みながら御検討をお願いしてまいりたいと思います。

 所有者不明土地の利用について一点お伺いいたします。

 ここは幾つかちょっと提案をしたんですが、地域福利増進事業の利用権の設定数が施行後十年間の累計百件という目標は少ないように感じますが、いかがでしょうか。

田村(計)政府参考人 お答えします。

 地域福利増進事業による所有者不明土地の利活用の見込みにつきましては、利用が容易に想定されるケース、例えば、ごみが不法投棄されているなど適切に管理されていない土地を公園、広場に整備するとか、空き家法によって定められている特定空き家を代執行で除却した後の空き地を公園、広場に整備するといったケースを念頭に、市町村に対して実施したアンケートに基づきまして推計を行い、施行後十年間で百件の利用権の設定を目標としております。

 地域福利増進事業は全く新しい制度でありますので、周知啓発が重要と考えております。このため、今後、ガイドライン等を整備するとともに、公共団体とも連携をし、周知啓発を図ることによりまして、この事業の利用の拡大に努めてまいります。

もとむら委員 最後に法案の成果について、私どもは賛成の立場でありますが、大臣に対しまして、この法案が成立しました後、所有者不明土地が減少していくことが期待できるのかどうか。大臣の所見をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 本法案は、所有者不明土地の利用の円滑化を図るものでありまして、所有者不明土地を減らすことを直接の目的とするものではございません。

 所有者不明土地の発生抑制や解消に向けた抜本的な対策につきましては、登記制度や土地所有のあり方等と深く関連するため、政府一体となって検討することが必要であります。

 このため政府におきましても、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議を開催をし、その中でも、「土地所有権や登記制度の在り方など財産権の基本的な在り方に立ち返って、土地に関する基本制度についての根本的な検討を行う」こととしているところであります。

 国土交通省といたしましても、登記制度を所管する法務省など関係省と連携をしつつ、引き続き、土地所有に関する基本制度の見直しにつきまして検討を深めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 大臣がお話しいただいたように、本法案の目的、第一条に、直接的に所有者不明土地を減らすことが目的じゃないということは十分承知をしているわけでありますが、所有者不明土地問題研究会によりますと、所有者不明土地による経済損失は、二〇一六年単年で約一千八百億円と推計され、二〇四〇年単年で約三千百億円となり、二〇一七年から二〇四〇年の累計で約六兆円となってまいりますので、そのことも指摘をしながら、きょうの質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 立憲民主党の森山浩行でございます。

 質問に入ります前に、きのう新聞で報じられた加計問題、愛媛県の新文書につきまして安倍首相は、いわゆる二〇一五年二月二十五日ですけれども、御指摘の日に加計理事長と会ったことはない、念のためきのう官邸の記録を調べたが、確認できなかったと述べており、それに対して官房長官は、入邸記録は業務終了後速やかに廃棄される取扱いとなっており、残っていなかったと説明、政権幹部は、新聞に掲載される首相動静にも載っていないと強調したというような記事が本日の新聞に載っております。記憶や記録がないということは、面会を否定する明確な根拠にはなりません。

 ちなみに、首相動静ですけれども、当日、二〇一五年二月二十五日、首相動静の欄の中には、八時十三分から八時五十二分、零時六分から零時五十四分、二時五分から二時三十三分、三時三十三分から四時九分、四時四十三分から五時三十分というような形で、十五分という時間をとれる箇所が複数あります。

 このような状況でありますけれども、首相がおっしゃっていること、会っていないということについては、大臣はどうお考えですか。

石井国務大臣 総理がはっきり明言されていらっしゃいますので、総理のおっしゃるとおりだと思っております。

森山(浩)委員 ということは、愛媛県がうそをついているということになりますけれども、そういう認識でよろしいですか。

石井国務大臣 愛媛県のことは私はよく承知をしておりませんが、総理がしっかりと真実を述べていらっしゃるというふうに思っております。

森山(浩)委員 まあ、どちらかがうそをついていないとこれはおかしいわけなんですよ。

 ですから、大臣は、国土交通大臣であるとともに安倍政権の閣僚でございますので、しっかりと閣議で確認をしていただいて、政権としてこうだというような答えを出していただきたいと思いますので、お願いをしておきます。

 もし何かありましたら答えていただいてもいいんですけれども、大丈夫ですか。(発言する者あり)そうですね。この間も、国土交通大臣としては責任を果たしたなどというような答弁が繰り返されましたけれども、森友問題のときもそうですが、国土交通大臣としてだけ責任を果たしていいというものではありません。安倍内閣の一員としてきちんと確認をしていただいて、報告をいただきたいというふうに思います。

 それでは、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法についてですけれども、所有者不明土地が全国的に増加というのがこの法律を出した根拠となっています。

 それでは、この間どのようにふえてきたのか、資料をお持ちでしょうか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地につきましては、東日本大震災からの復興に際し所有者の探索に多大な時間等を要したことが契機となって、大きく認識されるようになったものと考えております。そういったことで、その総量を時系列的に、網羅的に把握したものは現時点ではありません。

 部分的な調査といたしましては、平成二十八年度の地籍調査を行った約六十二万筆におきまして、不動産登記簿により所有者の所在が判明しなかった土地、すなわち広い意味での所有者不明土地の割合は、筆数ベースで約二〇%となってございます。

 また、同調査におきまして、市町村による所有者探索の結果、最終的に所有者の所在が判明しなかった土地の割合は、筆数ベースで約〇・四%です。これは、本法案の定義の所有者不明土地の割合に近いものと考えてございます。

森山(浩)委員 今のお話でいきますと、平成二十八年が初めての全数調査ということだということですけれども、それでよろしいですか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 今の御紹介いたしました数字は、平成二十八年度の地籍調査の対象の六十二万筆でございます。

 全国筆数ベースで大体約二億筆と言われておりますので、そういう意味では、その中の部分的な調査としての結果を御紹介したということでございます。

森山(浩)委員 その点でしか数字がないということでありますから、全国的に増加というのには根拠がないということでよろしいですね。

田村(計)政府参考人 土地に関する直接のデータとしては今御紹介したものでございますけれども、あと、国土交通省の直轄事業の用地取得業務におきまして隘路となっている案件の要因を調べたものがございますけれども、そういったものにおきましては、所有者不明が隘路の要因となっているというのが第一位になったのが平成二十一年からでございまして、これは傾向的にずっとふえてございますので、そういったことからも、所有者不明土地が増加しているということはうかがえるということでございます。

森山(浩)委員 あくまでも推測だということでございます。

 というのは、昭和四十年代ごろから土地がどんどん上がっていくという中で、我々のところにも泉北ニュータウンなどがありますけれども、その土地の人間ではない人がたくさんの土地を買う、これは登記簿含めてですけれども、そして土地がどんどん上がっていく中で資産を形成していく、途中で会社が倒産をするなどというような事例も多発をいたしました。その中で、一体誰が持っている土地かわからないというようなところはふえてきたというふうに認識をしています。

 ですから、東日本大震災後に急にふえたとかいう話ではなくて、公共事業をやっている中での隘路となっているものがふえたという部分でしか数字としては把握をされていないということです。

 現状有姿分譲というのが、現状確認をしないままで登記をするというようなやり方がありますけれども、境界不明土地については、分筆登記、これは実際に行かなくてもできるようになっているんですね。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 既に調査が行われているような場合は別ですけれども、基本的には調査を行うということになると思います。

森山(浩)委員 いや、問題ない場合は省略をしてもいいんだというのが現実の作業の中では行われているようなんですが、そういう認識はありますか。

筒井政府参考人 既に調査書が整っている場合であれば、御指摘のように調査をしないで行うということはあると認識しております。

森山(浩)委員 そうなんです。登記をするというときに、きちんと調査をする、そしてそれを登録をしていくというのが大事なわけなんですけれども、二億筆ありますよ、大変な作業だと思います。

 しかし、その中で、転売、転売を重ねてなかなか大変だ、もう誰が持っているかわからぬというもの以外にも、親から子へ相続をしていくというときに、いや、実はまだひいおじいちゃんのまま残っているんだよというようなものも少なくありません。

 登記制度、この手続と費用についてどのようにお考えでしょうか。

筒井政府参考人 所有者不明土地が生ずる要因の一つとして、相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されております。その原因といたしましては、今御指摘がありましたように、相続登記の手続を行うことへの負担感でありますとか、相続登記に要するコストの問題などが挙げられております。

 法務省といたしましては、この問題の改善に取り組んでいるところでございまして、具体的には、平成二十九年五月から、相続人の相続手続の負担を軽減し、相続登記の促進を図るため、法定相続情報証明制度を開始し、現在まで多くの方に御利用いただいているところでございます。

 また、本年四月からは、平成三十三年三月三十一日までの期間、既に発生している相続とこれから発生する相続のそれぞれに対応するために、一定の要件を満たす土地について、相続登記に関する登録免許税を免除する特例が設けられたところでございます。

 さらに、相続登記の手続の簡略化等の登記制度、土地所有権のあり方等につきましても、本年度中の法制審議会への諮問を目指して、研究会において現在検討を進めているところでございます。

森山(浩)委員 水源の土地を外国の企業が買うとか、いろいろな形で問題が各所で出てきているところでもあります。登記をきちんとするというところについては、法務省さんには一義的に頑張っていただかねばなりませんけれども、各省それぞれ工夫をしながら推進をしていくようにお願いをしたいというふうに思います。

 さて、今回ですけれども、所有者不明土地を、収用の手続が変わる、あるいは福利増進事業、これで使うというような話ですけれども、これはどのようなニーズがあってこの提案に至りましたか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 所有者不明土地につきましては、公共事業用地の取得などさまざまな面で、所有者の探索に膨大な時間、費用、労力を要し、事業計画の変更を余儀なくされたり、事業の実施そのものが困難になるといった問題に直面しております。

 例えば、明治時代の登記のまま相続登記がされておらず、相続人多数となり、かつ、一部相続人が特定できなかったため、公共事業のための用地取得に多大な時間と労力を要した事例もございます。

 また、地方公共団体におきまして広場等としての利用の意向がある土地につきまして、一部の土地が相続登記されておらず、所有者の所在が不明となっているため、樹木の伐採や利用の方針を立てることができないといった事例もございます。

 このため国土交通省といたしまして、所有者不明土地の利用の円滑化を図るため、公共事業のために土地を収用する場合の手続の合理化、公園や広場など地域住民のための公共的事業に一定期間の使用権の設定を可能とする制度の創設、所有者の探索を効果的に行うための仕組みの構築等を内容とする本法案を提出したところでございます。

森山(浩)委員 つまり、都道府県から困っているよという話があったということでよろしいですか。

田村(計)政府参考人 都道府県も含めまして、市長会からの要望もございました。現に、国土審議会においてどういう法案にするかという骨子を議論を重ねてきたところでございますが、その中には指定都市市長会の代表として神戸市の市長にも御参画をいただき、御意見をいただいているところでございます。

森山(浩)委員 ということで今回の制度なんですが、現在の制度とまずはどう変わるのか。そして、公共事業における収用手続の合理化というような話になると、これは私権の制限ではないか、このような心配もあるわけですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

田村(計)政府参考人 収用手続の特例につきましてお答え申し上げます。

 所有者不明土地を取得しようとする場合、現行制度では、土地収用法に基づく事業の認定を受けた事業につきまして、収用委員会によるいわゆる不明裁決の手続を経て、所有者の意思にかかわらず、土地を取得することが可能となっております。

 これに対しまして今回の収用手続の特例におきましては、土地収用法に基づく事業の認定を受けた事業につきまして、反対する権利者がいない特定の所有者不明土地、すなわち、簡易なものを除き建築物が存在せず、現に利用されていない土地に対象を限定をいたしまして、収用委員会でなく、都道府県知事の裁定により、審理手続を経ず土地を取得することができることとしております。

 これは、特定所有者不明土地に限って対象とするものであることから、個別性の強い建築物の補償や移転料、営業補償の算定が不要であること、補償金額等につきまして、明示的な反対者がいないことを公告縦覧により確認することから、意見聴取手続が不要であることから、収用委員会ではなく、都道府県知事の裁定ということにしているところでございます。

 このように、本法に基づく収用の特例は、現行制度におきまして不明裁決の対象となっている土地につきまして、更に対象を限定をして手続の合理化、円滑化を図るものでございまして、その結果として、土地所有者の私権の制限の内容そのものには変更はございません。

森山(浩)委員 見つからなかったから公共事業に使った。その後、持ち主が見つかった場合、出てきた場合は、これはどうなりますか。

田村(計)政府参考人 収用手続の場合でございますれば、今回設けました特例の手続を経まして、裁定を経て所有権が事業者に帰属すれば、後は、補償金を供託をしておりますので、それを受け取るということになります。

 地域福利増進事業につきましては、十年間を上限とする利用権の設定というところでございますけれども、所有者があらわれ出た場合につきまして、その当該利用期間を終了した後に返還を求められた場合は、原状に回復してお戻しをする、ないしは、補償金は供託をしておりますので、その補償金を受け取っていただくということになります。

森山(浩)委員 供託をしてやるので取りっぱぐれはないということで、私権の制限には及ばない、当たらないということでございます。

 地域福利増進事業の方ですけれども、これはどういった事業が対象となりますか。

田村(計)政府参考人 地域福利増進事業の対象事業でございますが、この法案におきまして、地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われる事業と定義をし、その対象となる事業は各号で限定列挙しております。

 具体的には、生活環境の向上など地域住民の共同の福祉又は利便の増進を図る事業で、一定期間の利用後に原状回復が可能なものを対象としております。事業主体は限定をしておりません。例えば、公園、広場、駐車場、仮設の道路、仮設の園舎、購買施設、教養文化施設などが想定されるところであります。

森山(浩)委員 今のところの想定ということでありますけれども、これは、やっているうちに更に広がるということは考えられますか。

田村(計)政府参考人 今回そういった各号列記をして、一部、政令委任はございますけれども、明確に事業の範囲を限って法案としてはつくらせていただいております。

 今後、この事業が利用される中で、どういったニーズが生じるかというふうなことも踏まえながら適時適切に見直しをすることはあろうかと思いますけれども、その場合につきましても、きちんと審議会等の議論を経て検討してまいりたいと考えております。

森山(浩)委員 今の話だと、現在の事業については法案に書いてあります、ふやす場合には審議会を経て変えていくというような言い方をされましたけれども、法案を改正するということですよね。

田村(計)政府参考人 審議会と申しましたのは、この法案そのものが国土審議会の議論をいただいた中で原案をつくってという流れがあるものですから、そう申し上げました。

 それから、法律かどうかということにつきましては、各号列記で事業を書いてございますが、最後に政令に委任しているところもございますので、その政令に委任された範囲で追加することは法技術的にはあろうかと考えております。

森山(浩)委員 そう、そこの部分なんですよ。だから本当に、私権の制限という部分に触れる可能性が出てきますので、それについてはきちんとやはり国会にも報告をしていただきながら、政令でいや変えちゃいましたよというような形でさくさく進んでいくようなことがないようにしていただきたいと、これも要望をしておきます。

 さて、調べてもわからないというのが所有者不明土地でございます。二〇%のうちの〇・四%ということですけれども、しかしながら、先ほどの地域福利増進事業については、所有者があらわれたときには、十年あるいは年限までやって、その後返すこともあるというような規定になっております。

 収用の場合はお金で済むわけですけれども、福利増進事業については借りているだけですからということだと思いますけれども、これは、いろいろな公共的な団体あるいは役所の中の資料を調べた上で所有者不明となっているわけですけれども、この所有者があらわれるというのはどのような場合が想定をされますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 地域福利増進事業と言われましたので、地域福利増進事業の手続に沿って御説明いたします。

 本法案では、地域福利増進事業につきまして、事業を実施しようとする者が公簿に基づく調査、親族等への照会等により土地所有者等の探索を行うこととした上で、さらに、六カ月間の公告縦覧手続において不明の所有者が名乗り出る機会を確保しております。

 このため、こうした手続を経た上でなお、事業開始後になって不明所有者があらわれる可能性は非常に低いものと考えておりますが、今回、不明所有者の財産権を保護する観点から、あらわれ出て明渡しを求めた場合については、原状回復した上で返還するという措置も設けているところでございます。

 なお、例外的に事業開始後になって不明所有者があらわれる場合としては、なかなか考えにくいのではありますけれども、例えば、登記名義人やその相続人が、相当の期間にわたりまして住民票を移さないまま転居を繰り返すなどして、住民票上の居住地を長期間離れておりまして、所在を確知できなかった場合等は想定されると考えております。

森山(浩)委員 つまり、登記上の人でなくても、例えば、おじいちゃんが持っていた土地だよというところの孫が、長期海外に出張していて帰ってきたなどというようなときには、これは持分割合を計算して所有者として認めていく、こんな話でしょうか。

田村(計)政府参考人 地域福利増進事業につきましては、裁定をして使用権を設定をすることになりますが、その賃料相当額につきましては、不明所有者分につきましては、いわゆる供託をするということになっております。そこでまず金銭的な補償は確保されているということ。

 それから、先ほども申しましたが、仮に不明所有者があらわれ出て土地の返還を求めた場合につきましては、当該使用権の消滅の後に原状回復して返すという措置をとっておりまして、不明者があらわれ出てきた場合にはそういった措置を選択をするということになると考えております。

森山(浩)委員 いやいや、そういうことではなくて、所有者があらわれるという事例はどのようなときかということで、要は、登記がしてありません、おじいちゃんの名前のままになっています。でも、何の書類も持っていないんだけれども、この孫であるというような状況の人が帰ってきた、突然あらわれたというときには、これは、書類は何にもないんだけれども、返す、あるいは供託金を渡すということはできるんですね。

田村(計)政府参考人 済みません、失礼いたしました。

 そのあらわれ出た人が登記名義人の法定相続人であって、そのお孫さんなら孫が実体的な所有権を有しているということをきちんと証明していただければ、補償等を受け取ることは可能だと考えております。

森山(浩)委員 そうですよね。

 そこで最初の話に戻っていくわけなんですが、登記がなされていない土地がたくさんあるということは、つまり、役所の方で全ての書類を調べていっても誰が現在相続をしているかということがわからないという状況になっているということで、全ての書類を調べて、しかも、探索をしても現地まで行ってもわからないというような状況、これをやはり解消していくためには、戸籍の制度、しっかりとしていかなければならないということだと思います。

 探索を合理化というふうにもあります。個人情報保護の観点から、制度設計上、一体誰がこれを求めることができることになっていますか。

田村(計)政府参考人 お答えします。

 まず探索の情報を求めるというのは誰かということにつきましては、この法律に定められました地域福利増進事業等事業を実施しようとする、その準備のために必要とする者ということでございます。

 公共事業と地域福利事業の実施の準備のために必要だということでございまして、所有者情報を行政機関内部で利用できる、所有者情報の提供を地方公共団体に請求できる、当該土地に物件を設置している者に所有者情報の提供をできるということになるということにしてございます。

 このうち、公共団体への請求は、地域福利増進事業を実施しようとする民間事業者やNPOなど公的機関以外の者が、事業実施の準備のために行うことも可能としてございます。

 この点につきましては、個人情報保護の観点から、公共団体が本法の規定に基づきまして所有者情報を民間事業者に提供しようとする場合につきましては、台帳等に記載されている本人に情報提供の可否について確認し、その同意を得なければならないこととしております。

 また、民間事業者が目的を偽って個人情報を不正に入手することがないよう、情報を請求する事業者は、公共事業や地域福利増進事業の実施を予定していることを疎明する資料、事業を営むために事業者としての許可等が必要な場合については、それを受けていることを示す資料等を請求に当たりまして提出しなければならないことといたしまして、情報請求の目的が当該事業の準備のためかどうか、請求する事業者の適格性を確認するということにしております。

森山(浩)委員 民間やNPOなどにも情報が提供されることがある、しかし、本人同意が必要なので大丈夫だということなんですが、ほかの目的に使用しないようにというのは当然ですけれども、個人情報保護という部分については十分に制度の中に入れていただきますように、よろしくお願いをいたします。

 この全体を見まして所有者不明土地問題のこれからというところなんですが、まず、地籍自体が十分把握をされていないという問題があります。大阪などでは全体の二%ほどしか地籍がきちんと確定をしていない。全国でも半分ぐらいというようなこともあります。

 もともとの、この土地が誰のものかという部分、地籍そして登記という両面からきちんと国土の姿を正しくあらわすような形にしていかなければなりません。法務省の問題だから登記は法務省に任せておいたらいいんだということではなく、国土交通省としても、できることをきちんとバックアップしながらやっていくべきだと考えますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

石井国務大臣 国土交通省といたしましては、当面の課題であります所有者不明土地の円滑な利用に向けた法案を国会に提出させていただいたところであります。

 所有者不明土地の発生自体を抑制すること、また、その解消に向けた抜本的な対策につきましては、委員御指摘のように、登記制度や土地所有のあり方等と深く関連をいたします。この問題につきましては、政府一体となって検討することが必要であります。

 このため政府におきましても、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議を開催をいたしまして、その中でも、「土地所有権や登記制度の在り方など財産権の基本的な在り方に立ち返って、土地に関する基本制度についての根本的な検討を行う」こととしているところであります。

 国土交通省といたしましても、登記制度を所管する法務省など関係省と連携をしつつ、引き続きまして、土地所有者の責務のあり方など、土地所有に関する基本制度の見直しについて検討を深めてまいりたいと考えております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。ぜひ、抜本的な解決に向けて頑張っていただきたいと思います。

 最後に森友問題ですが、十時に数百ページに及ぶ交渉記録というのが出たということです。これの最終的な判断については財務省の問題でありますけれども、起こっている現場は大阪府であり、大阪航空局であります。しっかりとこの真相解明に協力をして、森友問題の真相解明に尽力をいただきたいと思いますが、最後に大臣、いかがですか。

石井国務大臣 本日、財務省より、森友学園への国有地売却の件について、森友学園等との応接記録についての調査結果が公表されたものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、この森友学園への国有地売却の件につきましては国会等でさまざまな御指摘を受けておりますので、引き続き、丁寧な説明に努めることが重要であると考えております。

森山(浩)委員 以上、終わります。

西村委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 日本維新の会の井上です。所有者不明土地の特措法の法案の質疑に入らさせていただきます。

 所有者不明土地、聞く話では、九州の面積ぐらい所有者の不明の土地があるということで、昨日の参考人の質疑の際にも山野目先生に少しその件についてお伺いをしたら、土地というものが有効な資産であった時代と、それからまた、特にここ近年、そうじゃない環境がある。そういう中で、そういう所有者不明で、登記をしない、相続しないというような流れがあるんじゃないかというようなお話があったやに思うんですけれども、ただ、それは実際、環境の話で、システムとしてやはりきっちりとできていれば、そういう所有者の不明ということ自体が根本的に生まれてこなかったというふうに思うんです。

 ですから、そういう意味では、昨日の参考人もおっしゃっていたように、初めて所有者の不明に関する土地に関しての体系的な法律が整備されるということは、厳しい言い方をすれば遅きに失していますけれども、非常に重要なことではないかな。これから、こういう所有者不明の土地をどんどんやはり減らしていくということを進めていただきたいなというふうに思うんです。

 所有者不明土地は、人口減少や超高齢社会を迎える我が国において、土地利用ニーズの低下や地縁、血縁関係の希薄化等により資産としての土地に関する国民の意識の希薄が見られるなど、社会的状況が変化する中でやはり増加している。所有者不明土地に関する問題は多岐にわたり、所有者不明の土地が災害復旧や耕作放棄地の解消、空き家対策などの地域のための公益的な事業を行おうとする上で支障を来しているという事例も発生していると聞いています。

 また、人口減少と高齢化が進む中、相続を契機に故郷の土地の所有者となり、戸惑う人たちもいてる。このような土地は相続登記というのが適切にされないことも多いため、放置していると将来的に所有者不明になる可能性が高く、こういった問題も所有者不明土地に関する問題だというふうに我々は考えています。

 所有者不明土地問題への対応を考える上では、まずその実態というのを把握することが必要だと思いますけれども、この所有者不明土地の定義と、現在、所有者不明土地をどの程度定量的に把握しているのか。また、将来的にはどの程度深刻化するというふうに予測されているのか。お答えいただけますでしょうか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 本法案では、「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」を「所有者不明土地」と定義をしております。

 探索の具体的な方法は、登記事項証明書の交付の請求、住民票、戸籍、固定資産課税台帳の書類に記載された情報、一定範囲の親族等に照会をするといったことを想定をしております。

 この所有者不明土地につきましてその総量を網羅的に把握したものは、現時点ではございません。部分的な調査といたしましては、平成二十八年度の地籍調査を行った約六十二万筆におきまして、不動産登記簿により所有者の所在が判明しなかった土地、すなわち広い意味での所有者不明土地の割合は、筆数ベースで約二〇%となっております。

 また、同調査におきまして、市町村による所有者探索の結果、最終的に所有者の所在が判明しなかった土地の割合は、筆数ベースで〇・四%でございます。これが本法の定義に近いものと考えています。

 将来的なお話でございますが、将来的には、二〇四〇年まで死亡数は増加するとの推計もございまして、相続機会も増加するものと考えられます。このまま何の対策も行わなければ、所有者不明土地は加速度的に増加してしまうおそれがあるものと考えてございます。

井上(英)委員 ぜひ加速度的にふえていくということを抑制していくためにも、非常に大事だなというふうにも思いますので、以下、るる御質問をさせていただきます。

 続いて、所有者不明土地が公共事業の支障になっている場合への対応というのについてお伺いをいたします。

 今回、特措法では、公共事業における収用手続を合理化、円滑化するために、国、都道府県知事が事業認定した事業について、収用委員会にかわって都道府県知事が裁定できるというふうになっています。

 第三者機関ではなく、知事が裁定するということを可能にした理由は何ですか。

田村(計)政府参考人 お答えします。

 収用委員会は、土地収用法上、収用しようとする土地について適切な補償内容を判断することとされています。このため、専門的知見や高度な中立性、公平性を有する機関として、都道府県知事のもとに置かれているものであります。

 新制度は、簡易なものを除き建築物が存在せず、現に利用されていない土地に限って対象とするものであることから、個別性の強い建築物の補償や移転料、営業補償の算定は不要となります。また、補償金額等につきまして、明示的な反対者がいないことを公告縦覧により確認をすることから、意見聴取手続も不要であります。

 このため、収用委員会並みの補償算定に関する専門的知見や高度な中立性、公平性は不要であると考えられます。

 他方で、収用委員会は七名の合議体でございまして、日程調整等に時間を要するなど機動的な対応が難しい面もあります。また、多くの事案を抱えているケースもあります。

 そこで、この法案では、適切な事務配分の観点も踏まえまして、都道府県知事が裁定をすることとしております。これは、収用委員会の事務局が置かれており、都道府県が土地の評価など簡易な補償額の算定を行う能力を十分に有していると考えたためでございます。

 これによって、手続の合理化、円滑化を図ることとしております。

井上(英)委員 収用委員会はやはり非常に専門性も高いですし、そういうことからすると、逆を言えば、収用委員会の手続をある意味省くわけですから、それだけ環境の限定された物件になるということにはなると思うんですけれども、まずはしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 特措法による収用手続の合理化、円滑化に関する措置によって、収用期間というのはどの程度短縮できるのか、お答えいただけますでしょうか。

田村(計)政府参考人 お答えします。

 国土交通省の直轄事業の例をもとにして算定をいたしたところでございますが、現行では、収用手続に移行してから収用委員会の裁決までの期間は、国土交通省の直轄事業における事例をもとにした試算によれば、約三十一月となっております。

 本法案では、簡易なものを除き建築物が存在せず、現に利用されていない土地に限り、反対する権利者がいない場合には、収用委員会でなく、都道府県知事の裁定により、審理手続を経ず土地を取得できることとしております。

 こうした収用手続の合理化、円滑化に加え、事業認定の円滑化、所有者探索の合理化をあわせて図ることによりまして、所有者不明土地の収用手続に要する期間を約十カ月程度短縮し、三十から十を引いて二十一ということでございますが、三分の二の期間にスピードアップできると見込んでございます。

井上(英)委員 今回のこの特措法で、公共事業における収用手続の合理化、円滑化のほか、地域住民の福祉、利便の増進に資する事業のために所有者不明土地を利用する場合に、都道府県が公益性を確認して一定期間公告した上で、上限十年、利用権を設定することが可能になったというふうになっています。

 国土審議会特別部会の中間取りまとめでは、最低五年程度という一定期間とされていましたけれども、十年の上限になったのはなぜですか。お聞かせいただきたいと思います。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、国土審議会土地政策分科会特別部会の中間取りまとめにおきましては、使用権の存続期間について、「最低五年間程度の一定期間」とされていたところです。

 この点、処分の権限がない者が設定する民法の短期賃貸借の期間の上限が五年間となっておりますが、地域福利増進事業の使用権につきましては、地域福利増進事業は一定の公益性を認められた事業であること、所有者を探索するための措置を尽くすことから、不明所有者が事後的にあらわれる蓋然性が低いこと、現に利用されていない土地であり、不明者が積極的な利用意向を持っている可能性が低いこと、不明者は賃料相当の補償金を受け取り、原状回復された状態で土地の返還を受けることができることから、不明所有者の財産的な損失は生じないこと等から、より長期の存続期間とすることが許容され得るものと考えております。

 また一方で、事業の継続性にも配慮をし、借地借家法におけます事業用定期借地権の下限の期間が十年とされていることも踏まえ、存続期間の上限を十年としたところでございます。

井上(英)委員 地域福利増進事業においても、所有者不明土地の活用というのが図られるよう事業の発案から実施まで早期に行われるということがやはり必要だと思いますが、裁定申請からどのくらいの期間で特定所有者不明土地の活用というのが可能になるということを想定しているのか、お答えいただけますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 地域福利増進事業の申請内容によって手続に要する期間は変わるため、一概に申し上げることはできませんが、標準的な期間としては、裁定申請から裁定までには最低でも、一つは申請内容の確認、関係市町村長の意見聴取等の手続期間として約三カ月、それから権利者が申出を行う縦覧期間として、これは法定でございますが、六カ月あります。三足す六で、合わせて九月ぐらいは要するものと想定をしております。

井上(英)委員 九カ月でぜひ、利用する以上はやはり早くできるようにお願いをしたいと思います。

 次に、所有者があらわれて明渡しを求めた場合は、期間終了後に当然、原状回復、そして、異議がない場合はその使用の延長というのが可能とありますけれども、真の所有者など異議を述べたい方があらわれた場合に、異議を申し立てる相手先が明確にわかり、その異議が確実に尊重されるような丁寧な対応というのが必要と考えますが、国交省としてどのようにお考えか、お答えいただけますか。

田村(計)政府参考人 お答えいたします。

 地域福利増進事業の土地の使用権は、設定されると最長で十年間権利者の私権が制限されることから、所有者不明土地の権利者がみずからの意思を表示する機会を確保することは必要と考えてございます。

 このため、土地使用権の存続期間中は、その土地が地域福利増進事業の用に供されている旨等を記載した標識を、使用権者が土地の区域内に設置することとしております。

 標識の具体的な記載事項といたしましては、事業者の名称、住所等のほか、不明者が連絡をとれるよう、都道府県の担当部局等を定めることを想定しております。

 そして、土地使用権を延長する際も、土地使用権の設定の際と同様に、判明している権利者には事前に通知をした上で公告縦覧を行い、知事に対して異議の申出を可能としており、権利者の意思が尊重されるようにしております。

井上(英)委員 所有者があらわれた場合はまたいろいろ別の問題が起きてきますので、丁寧な対応というのをお願いしたいなというふうに思います。

 今回の特措法に直接盛り込まれているものではありませんが、所有者不明となっている共有私道の問題についてお聞きをしたいと思います。

 きょう、法務省から参考人にお越しをいただいています。

 相続登記されずに一部の所有者が不明になったため、共有私道の舗装の修復や公共下水管の設置など、全員の同意なしで可能とする法務省指針が出されたということでありますが、地方自治体が共有私道の工事に補助金を交付する条件として、全員の同意を必要としている地方自治体もあるというふうに聞きますが、地方自治体への周知はどのように考えているのか、お答えいただけますか。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 複数の者が共有する私道につきまして、必要なライフライン工事や私道の整備工事を行う場合に、事実上、ただいま御指摘がありましたように、共有者全員の同意を得る運用がされておりまして、共有者の所在を把握することが困難な事案におきまして、工事の実施に支障が生じているとの指摘がされております。

 こうした指摘を踏まえて、法務省に設置されました共有私道の保存・管理等に関する事例研究会では、本年一月にガイドラインを取りまとめております。

 このガイドラインでは、例えば、共有の私道に公共下水道を新設する事例については、私道の共有者の持分の価格に従い、その過半数で足りるとするなど、民法等の解釈と工事に当たっての対処方法が明らかにされております。

 法務省では、このガイドラインをホームページで公表するとともに、共有私道の整備を行う地方公共団体の関係者に広く参照していただけるよう、全国市長会、全国町村会を始めとする関係機関の御協力を得て、全国の地方公共団体に周知したところでございます。

 法務省といたしましては、このガイドラインが地方公共団体の担当者の実務上の対応の参考とされ、各種工事の円滑化に資するよう、引き続き、効果的な周知活動に努めてまいりたいと考えております。

井上(英)委員 お願いしたいと思います。

 これは所有者が不明の場合なんですけれども、所有者がわかっている場合でも、僕がちょっと一個聞いた話では、こういう工事をするのに、下水道敷の土地の所有者に同意の書面をもらうのにブラジルまで行かれた方がおられるというふうにも聞いたりもしています。

 所有者がおられるんですけれども、そういう環境をいろいろ考えていくと、もちろん、財産権というのは明確に守られなければなりませんけれども、その辺の対応もさまざまちょっとお考えをいただいて、これも自治体によって非常に先進的な、京都なんかは非常に先進的ですし、そういうのもまた参考にしてお考えをいただけたらというふうに思います。

 今回の特措法は、所有者不明土地を利用する場合について主に対応するというものでありますけれども、そもそも、所有者不明土地が発生しないようにする対策というのがやはり何より重要ではないかと思います。

 所有者不明土地が生まれる主な要因としては、やはり相続登記が適切にされていないということであります。

 相続登記がなかなか進まない理由の一つである土地の資産価値の変化では、東京、大阪、名古屋などの三大都市圏において公示地価というのは上昇していますけれども、ちょっと駅から離れた郊外では地価が落ち込むというようなところもあって、二極化が進んでいるというふうに聞きます。

 土地を所有することは固定資産税などの継続的なコストが発生し、過疎地などの市場価値の低い土地を相続した場合、土地の所有が、資産ではなく、ただただ負担になってしまうという状況も考えられます。

 また、土地所有者の調査は、所有者の親族を中心に相続人を洗い出し、文書などを通じて連絡をしたり、相続人が複数いる場合には合意形成も必要になり、自治体の職員にとっても非常に大きな負担となります。

 こうした中、登記の義務化の是非についてどのように考えているのか。今研究会で検討中とお聞きしていますけれども、現状どのような議論か、お答えください。

筒井政府参考人 ただいま御指摘いただきましたように、法務省におきましては、相続登記の義務化の是非を含む登記制度と所有権のあり方について、研究会において検討を進めております。

 研究会におけるこれまでの検討におきましては、相続登記を義務化することの是非について、仮に義務化をするとした場合には、その実効性をどのように確保するのかという点が重要な課題の一つであるとされているところでございます。

 法務省としては、相続登記の義務化の是非について、相続等が生じた場合にこれを登記に反映させる仕組みのあり方という観点から、本年度中の法制審議会への諮問を目指して検討を進めてまいりたいと考えております。

井上(英)委員 時間もなくなってきました。

 また、所有者不明土地を増加させないために、遠く離れた土地を相続し、戸惑っているような方がおられる。以前、委員の中からも質疑がありましたけれども、今後、所有権を手放すような仕組みというのもぜひ必要だと考えますので、検討していただけたらということを要望しておきます。

 最後に大臣にお聞かせいただきたいんですけれども、これまで述べてまいりました対策を含めて所有者不明土地問題を根本的に解決していくためには、土地所有者の責務を明確化し、関連する制度を抜本的に見直す必要があると思うんですけれども、最後に決意といいますか、お聞かせいただけますでしょうか。

石井国務大臣 所有者不明土地の発生の抑制や解消に向けた抜本的な対策につきましては、登記制度や土地所有のあり方等と深く関連をするため、政府一体となって検討することが必要であります。

 このため政府におきましても、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議を開催をし、その中でも、「土地所有権や登記制度の在り方など財産権の基本的な在り方に立ち返って、土地に関する基本制度についての根本的な検討を行う」こととしているところであります。

 国土交通省といたしましても、登記制度を所管する法務省など関係省と連携をしつつ、引き続き、土地所有者の責務のあり方など、土地所有に関する基本制度の見直しについて検討を深めてまいりたいと考えております。

井上(英)委員 以上です。ありがとうございました。

西村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西村委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本岳志君。

宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表して、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案に反対する討論を行います。

 第一に、土地収用法が定める収用手続は、憲法二十九条が保障する土地所有権そのものを奪う手続です。財産権の侵害度が最も高い手続であり、権利者に対する十分な手続保障があってこそ、公共目的で権利を奪うことが正当化されます。その手続保障のために、土地収用法は事業認定から収用委員会に至る制度を定めているのであり、この手続はより充実されることこそ必要で、所有者不明土地を理由に簡素化すべきではありません。

 現行法でも、不明裁決の制度により、収用委員会の手続を残したまま、所有者不明土地の収用は可能です。新たな制度を創設する必要はありません。

 しかも、国土交通省の地籍調査でも、登記簿だけでは所有者不明土地が約二〇%あるところ、所有者探索を行えば〇・四一%まで所有者不明土地の割合は下がります。加えて、本法案では所有者の探索手段を合理化する制度も創設されるので、その効果も期待できます。

 それにもかかわらず、収用委員会の公開の審理や裁決の手続を省略し、一方的な知事の裁定にかえることは、本来存在する土地所有権者の手続関与の機会を不当に奪うものです。憲法二十九条に基づく権利者の保護のためには、現行の収用手続をより充実させることや、法務局職員の増員こそ重要です。

 第二に、本法案の土地収用の特例は、収用委員会による裁決を知事の裁定にかえることにより、事業者と裁定者が同一人になる場合が生じ得ることになります。

 事業実施主体と裁定主体が同じになれば、客観的な確認や裁定は担保されず、自作自演により事業を進めることが可能となります。さらに事業者は、自分の一存で利害関係人にも地域住民にも何ら説明せずに公共事業を進めかねません。手続の透明性、公平性が確保される保証がありません。

 質疑を通じて、本法案がリニア中央新幹線建設事業の対象になり得ることが明らかになりました。政府は、既にJR東海に三兆円の公的資金を投入し、さらに、土地収用にも使い勝手のいい制度を用意する、そんな至れり尽くせりには断固反対だと申し上げて、反対討論といたします。

西村委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西村委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、盛山正仁君外五名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会及び日本維新の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。小宮山泰子君。

小宮山委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

    所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

 一 裁定主体である都道府県知事が地域福利増進事業者又は土地収用法に定める起業者となる場合には、裁定の透明性及び公平性が確保されるよう、必要な措置を講ずること。

 二 現に所有者が不明となっている土地についての相続登記を促進するため、相続により土地の所有権を取得した者が当該土地の相続登記を行おうとする場合において、所有者不明土地の相続人の負担軽減を図ること。

 三 所有者不明土地の発生を抑制するためには相続登記の促進が必要であることから、市町村から登記官に登記名義人の死亡の情報が伝達されるなど、登記官がその死亡事実を把握することができるようにして、共同相続人に遺産分割の協議や相続登記を促す仕組みを検討すること。

 四 財産管理制度の円滑な利用を図るため、複数の土地共有者が不在者であるときは、不在者財産管理人は、複数の土地共有者を代理することができる仕組みを検討すること。

 五 土地の管理の放置を防ぐため、土地の所有権の放棄の在り方について検討すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西村委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣石井啓一君。

石井国務大臣 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、審議中における委員各位の御意見やただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を始め、理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 まことにありがとうございました。

    ―――――――――――――

西村委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事伊藤治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として国土交通省総合政策局長由木文彦君、都市局長栗田卓也君、水管理・国土保全局長山田邦博君、道路局長石川雄一君、住宅局長伊藤明子君、鉄道局長藤井直樹君、自動車局長奥田哲也君、航空局長蝦名邦晴君、国際統括官篠原康弘君、観光庁長官田村明比古君、内閣府民間資金等活用事業推進室室長石崎和志君、大臣官房審議官伊丹潔君、警察庁長官官房審議官長谷川豊君、財務省理財局次長富山一成君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官宇都宮啓君及び環境省大臣官房審議官近藤智洋君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局次長腰山謙介君及び第三局長戸田直行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田中英之君。

田中(英)委員 お昼からは一般質疑ということで、このたびこの質疑の機会をお与えいただきました理事の皆様方、また、同僚の皆様方に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 一般質問の中で私自身今回取り上げさせていただこうと思ったのは、河川、これの整備や管理のあり方についてお伺いができればと思います。

 いろいろと地元地域に戻ると、これまでの台風や大雨によって各地いろいろなところで災害があって、私の地元京都でも数年前にありました。そういった意味から、地元の皆さんのお声を少しでも届けられればと思います。

 実は、先週金曜日に地元に戻るときでありますけれども、東京駅の放送で秋田県行きの新幹線は本日はないというようなアナウンスが流れていて、何でなのかなと思うと、秋田県では大雨が降っていて実は新幹線が動いていなかったということで、後でいろいろとニュースなんかで見させていただくと、雄物川が氾濫して、これは昨年に続いてということであったらしいのでありますけれども、浸水被害というものを引き起こしていたということでありました。

 お聞きすると、昨年も同じような形であり、そして、堤防の氾濫防止の工事をそろそろ始めようかと言われるようなところでのこういった災害であったので、大変地元の皆さんからすると、残念といいますか、一日でも早く本当はそういった整備ができていればなという思いが多分あったというふうに思います。

 まだまだこういった災害、記憶にあるところで言いますと、二十七年の九月には栃木県鬼怒川の堤防決壊、これは本当に広範囲における浸水で、残念ながら命を落とされるといった方もおられるほどの被害であったというふうに思います。

 この間いろいろと本当にこういった災害が起こっているわけでありますけれども、命を落とされた皆様方には御冥福と、また、まだまだ回復ができていない地域があるやと思います。一日も早い回復を願うところでもございます。

 そして、ちょうど五年前でございますけれども、京都でも同じように台風十八号によって水害が起こったわけであります。実は、その前二年間も同じように京都の南部で宇治川が氾濫するということもあり、そして、北部の方では由良川、そして桂川という、京都の中の、ある意味で、一級河川、大きな河川が氾濫するということが実は続いておりました。

 実は、嵐山という地域が特にテレビで映った印象が皆さんにもあるかもわかりませんけれども、あのときの実は対応というのは、その数年間、十年の間に実はほかにも起こっておりましたので、水がついたとき、特に観光地域の旅館なんかは、どのようにすればお客さんに安全に退避してもらうかなんということも考えておられたので、速やかな対応をとっておられたということに、ある意味では教訓を生かしていただいているんだなという思いと、また、掃除をして翌日からすぐ営業するんだというそういった強い意思を持ってやられていた姿には、本当によくよく知る方もいるので、目頭が本当に熱くなる、そんな思いであったことを私自身も覚えております。

 ああいった行動がとれたのも、やはり、全国のああいう旅館をされている方々、いろいろな地域で災害が起こった際にそれぞれが助け合っておられる姿や、また、お客さんからも、一日も早く復活をして、営業再開をして観光に行けるようにしてほしい、そんなお声もあったとも聞いております。

 二十五年の台風十八号、この被害によって京都では、災害対策の緊急事業推進費として五年間で百七十億円の予算をつけていただき、実は、ちょうどことしが丸五年になるわけでありますけれども、下流域から掘削を始め、築堤や、堆積した土砂を撤去する、また、井堰も撤去するなど、河川の整備が行われてきたところであります。本当におかげさまでこれまでの危険な状況が今までよりは改善をされ、嵐山を始めとする桂川流域の安全、安心を次の世代の皆さんにも何とかつないでいけるんだということを示すことができたものと感謝をも申し上げるところであります。

 しかしながら、なぜ、ではこういった災害が起こってしまったのだろうということを地域の皆さんはやはり考えることがあるというふうにも聞きます。そういった災害が起こらないことや起こらないようにすることが、また、未然に防ぐようなことができることを、やはり、これはどんな地域の方々でも望まれることであろうかと思います。

 ですからこそ、このような災害が起こってしまった理由はどこにあるのか、また、どうしても起こってしまってから集中的に改善を図っていくということをするわけでありますけれども、できれば本当は事前にやっていただければなという、やはりその声は絶たないわけであります。

 そこででございますけれども、実は、役所の方にもお聞きしましたし、地域の皆さんにもお聞きしました。桂川の水域というのは大変長いので、下流域の方ではいろいろな整備をしてきていただいたということは承知をいたしております。ただ、水についた、災害が起こったそういった地域、その周辺は、例えば河道の掘削なんかもしていただいていたのかなという、実はそういった風景も見たことがないというふうにもよくおっしゃっておりました。

 そういった意味では、長年、河道掘削というものもあの周辺でされていたのか、若しくは、されていないのであればどうしてなのかということや、また、実際はやっていたと言うのであれば、これまでの取組をお教えいただければなと思いますので、お願いします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 一般的に河川改修に当たりましては、予算制約がある中で、一つは、引き堤などによる堤防整備や補強、二つ目には河道の掘削、三つ目にはダムの遊水地の整備など、さまざまな治水手段を、各河川の特性や流域の状況に応じて適切に組み合わせながら対策を進めてきているところでございます。

 桂川におきましては、まず、全川において効果のあります日吉ダム建設事業に昭和五十七年度より着手するとともに、昭和六十三年度からは、下流部に位置し、川幅が狭いために治水上ネックとなっている大下津地区において、川幅を広げます引き堤、これを優先的に進めてきたところでございます。

 その後、大下津地区の引き堤事業における代替地移転等についておおむねめどが立ったために、平成二十三年度から、最下流部となる下植野地区から、水位低下のための掘削に着手をしたというところでございます。

 今後とも、桂川の治水安全度を向上させるために、現在実施中の桂川緊急治水対策等によりまして、掘削や築堤等の対策を推進してまいりたいと考えているところでございます。

田中(英)委員 実は、山田局長はここの地域のことをよくお知りをいただいているというふうに思っております。

 ですからこそ、あえて言わせていただきますと、実際は、ずっと長年かけて昭和の時代からやってきていただいた部分はかなり下の方でありまして、ずっと上流に上っていくところでは、そういった作業というのを本当はなかなかやっていただけていなかった。しかし、それだけの水を受け入れるところを下流域でしっかりとつくらないと、上流域がなかなか整備されない、こういったこともわかるわけでありますけれども、バランスをとって本当にやっておいてくれはったらなというような実はこんな声もございますので、これまでいろいろと取り組んでこられたこと全てが正しいかどうか、こんなことも検証いただきながら、それぞれの河川の特性もあろうかと思いますので、そういう意味では、再度、桂川流域、この河川についてはいろんなことを考えていただきながら、まずは国管理の部分のそういった整備というものを完結させていただいて、残る課題、これは都道府県が管理するところもありますので、そんなことも実は考えていただければなというふうに思います。

 実は今、緊急対策でやっていただいたというところでありますが、下流域はあんな形で整備をこれはし続けてきていただいたというふうには思っております。でも、今少し申し上げたとおり、例えば、定期的に河道掘削なんというものは本当はしていただけていれば、嵐山のあの地域、三年続けて実はオーバーフローしましたので、そういうことがなかったのかなと思わなくも、やはり正直、済みません。これは地元の皆さんの実は協力もあっていることでありますけれども、どのように堤防をつくるかというのを、観光地で景観がなかなかうるさいところでありますので、国土交通省の皆さんにも御苦労いただいているということはよくよく承知いたしております。

 しかし、できることであれば、発生してからではなくて、定期的といいますか、予防を先にやっていただくような対策というのが重要ではなかったかなと思いますけれども、このあたりについての御見解をお伺いしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 一たび水害が発生いたしますとその復旧復興に多大な時間と費用を要しまして、社会経済活動にも大きな影響を与えることから、予防的な対策を着実に進めることが重要であると認識をしております。

 例えば桂川におきましても、約四千億円かけて上流に日吉ダム等のダム群を設置したことによりまして、平成二十五年洪水においては、水防活動と相まって、約一兆二千億円の被害を回避することができました。

 一方、大規模な被害を受けた河川におきましては、同程度の降雨があっても被害が発生しないよう、再度災害防止のための事業を集中的に実施することになりますけれども、全国の治水対策費がほぼ横ばいの中、近年の水害の頻発により、予防的対策のための予算が減少傾向にあるのが実態でございます。

 しかしながら、予防的な対策を着実に進めることこそが重要であるとの認識のもと、今後とも必要な予算の確保に努めるとともに、河川整備計画に基づいた予防的な対策を進め、着実に治水安全度の向上に努めてまいりたいと考えているところでございます。

田中(英)委員 やはり予算なんですよね。この部分が実はないと、我々も望んでいれば、住んでおられる方も望んでいても、また、役所の皆さんも、やりたいという思いがあってもできないということでありますが、しかし、本当に取捨選択をしながら、どちらが本当は効果的、効率がいいのかということ、人の命のことを思うと毎年ちょっとずつやってもらった方がいいのかなと思えば、抜本的にがっとスピード感を持ってやるということでは、事が起こってからというふうでは遅いんですが、集中的にやっていただくということの方が効率がいいのかな、実はこういったこともあると思います。

 しかしながら、やはりその周辺に住んでおられる方々が申されるのは、水がついてしまったら実は一緒なんやということでありますので、どうしても私の場合は、定期的にできるものがあれば、特に管理をしっかりと国がしていただいているところは管理者としてやっていただけたり、また、都道府県、一般の市町村なんかも管理しているところは、そういうところはしっかり管理してもらうことによって、ああ、ことしはここをやらなあかん、来年はここをやらなあかん、こんなことを決めることが難しい部分があっても、どうか鋭意努力をしていただきながら、未然に防げるその対策というものを少しこれからはもうちょっと考えていただければなというふうに思いますので、この点については要望をさせていただければなというふうに思っております。

 さて、少し先ほど触れましたけれども、桂川のこの流域というのは、国が直接管理するところ、また、ちょうどあの嵐山の上流から上のところは都道府県が管理をするというふうになって分かれております。京都市内と実は亀岡市というところで分かれるところでありますけれども、やはり国が管理していただいているところというのは、ああ、しっかりと整備が前に進んでいるなということがやはりよく見えるみたいです。だけれども、亀岡市の皆さんからすると、上流域でありますので、本来なら、日吉ダムができ、それでも水を京都市内の下流域に流さなければならないところを、そうすると京都市内がまた水についてしまうので、実は辛抱しているというところがございます。

 以前も、山田局長とはお話をした際に霞堤の話をしたわけでありますけれども、自分のところの土地をウン十年と少し堤防の高さを下げて、そしてそこに水がふえてきたときにはすっと流れ込むという、農作業を実はそこはされているところでもあって、結局諦めなければならないということもあるところを何十年と辛抱いただいています。

 と考えますときに、少し距離の長い河川でありますが、この上下流のこのバランス、どのようにとっていただくことによって、それぞれの地域での改修を進めていただくことによって、どっちもが安心して本当にその地域で暮らし、仕事がすぐできるのか。このことについて少しお伺いできればと思いますし、この霞堤をつくっておられる方々、この人たちの気持ちについて何か一言あれば、局長からお願いしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 河川の改修は、沿川の人口、資産や過去の災害の発生状況、流域の特性等に応じながら、治水安全度の上下流バランス、本支川バランス等にも配慮しつつ、優先順位をつけながら事業を実施しているところでございます。

 桂川におきましては、嵐山地区等の下流側の国管理区間だけではなく、亀岡地区等の上流側の府管理区間の整備を進めてきておりまして、桂川の水位を全川的に低下させるための日吉ダムの建設、それから、下流のネック箇所にある大下津地区の引き堤事業、そして、上流の亀岡市内における昭和五十七年出水に対応するための引き堤事業や河道掘削等、各地で事業を実施してきたところでございます。

 さらには、先ほど委員からも御指摘がございました。直轄区間で緊急的な対策を行い、流下能力が向上した段階で、府管理区間では、その流量増に見合った霞堤の開口部のかさ上げの実施を予定しております。

 これまで浸水等が多かったところにつきましても、下流のこの緊急対策等によりまして、少しでも早くこの部分のかさ上げをしたいというふうに考えているところでございます。

 引き続き、上下流の治水安全度のバランスを図りながら、府管理区間を含め、桂川全体の治水安全度の向上を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

田中(英)委員 毎年、本当に局長にはこの地域の皆さんにお会いいただいております。そのときに切実なる思いを実はお伝えいただいております。

 今回、下流域の、京都市内の国交省管理の部分はある程度河道掘削ができて、霞堤のかさというのをちょっと上げることができるやに聞いておりますけれども、最終的にはやはりそこを閉じるということが、その地域の皆さんの本当に長年の願いでありますので、またいろいろと知恵をかしていただいたり、また、これはお力添えをいただく中でこの地域の治水というものを守っていただければと思いますので、お願い申し上げたいと思います。

 もう時間がないので、最後、一つ申し上げたいと思います。

 いろいろな河川を見させてもらいます。一つ、資料でつけているような河川でありますけれども、もうこれは要望にとどめますけれども、天井川になっているところで、一番下は、車がとまっているところはこれは河川です。ふだんは雨が流れません。でも、上のところに見えているのはこれは門扉です。通路になっているので、雨が降ったら門を閉めに行って、一番上のこういった状況になります。

 こういった河川というのは大変危険な状況にあると思いますので、恐らくここは都道府県、市町村が管理しているところになるわけでありますけれども、なかなか国土交通省の方までは、それぞれが管理責任を持って管理しているので、そういった声が届かないかもわかりません。でも、やはりそういった危険な河川というものはできるだけ国交省の方でも吸い上げていただいて、特に危険なところは速やかに対応をしていただけるような環境、システムをつくっていただきますこと、このことはもう要望にさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、岩田和親君。

岩田委員 自民党の岩田和親でございます。

 本日こうやって質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げながら、三つの項目について質問を進めてまいりたいと思います。

 まず最初、早速に地元案件で恐縮ですが、佐賀県内の広域幹線道路ネットワークの整備についてということでお尋ねをさせていただきます。

 時々、この今の人口減少時代、こういうときにさまざまなインフラ整備をしていいのか、そのような御意見を言われる方がおられますけれども、これは全く逆であるということをまず強く申し上げておきたいと思います。人口減少時代だからこそ、地方に道路などのインフラを整備をして広域的な交流をより活発にしていく、産業の生産性を向上させることで活性化を図らなければならないと強く私は考えております。

 佐賀県においても広域幹線道路ネットワークの整備を進めているわけであります。この整備が、九州佐賀国際空港の利便性向上にもつながるなど地域の発展の基盤となること、災害時の避難や救急、救援に必要な、命をつなぐ道路であることは言うまでもなく、地元から早期整備の声がますます強くなっているところです。

 特に、二〇二三年には佐賀県で国民体育大会と全国障害者スポーツ大会が開催されます。県外から選手や観客を迎えるため、県内での移動をスムーズに行うためにも、国における東京オリンピック・パラリンピックと同様の位置づけで、この国体の開催に向けて道路整備を加速化していきたいと私は考えております。

 そこで、有明沿岸道路について国が進めている大川佐賀道路、佐賀県が進めている佐賀福富道路、また同様に、佐賀唐津道路の進捗と今後の見通しについてお伺いします。

石川政府参考人 お答えいたします。

 佐賀県内の広域幹線道路ネットワークにつきましては、九州佐賀国際空港や唐津港へのアクセス強化とともに、周辺の幹線道路の渋滞緩和による物流の効率化や地域間の連携促進の観点から、有明海沿岸道路や佐賀唐津道路などの整備を進めておるところでございます。

 有明海沿岸道路につきましては、有明海沿岸の空港や都市群を連携する道路でございまして、現在、佐賀県内におきましては、大川佐賀道路、九キロございますけれども、国土交通省が用地買収、早津江川橋等の工事を推進をしておりますとともに、佐賀福富道路、これは十・五キロございますけれども、六・五キロが既に開通済みでございまして、残る四キロにつきまして、佐賀県が用地買収及び工事を推進しているところでございます。

 一方、佐賀唐津道路でございますけれども、佐賀県内を南北に縦貫いたしまして、西九州自動車道と有明海沿岸道路を結ぶ道路でございます。

 現在、多久佐賀道路一期区間、これは五・三キロメートルでございますけれども、国土交通省が地質調査や道路設計を実施しておりまして、佐賀道路、四・二キロございますけれども、これにつきましては、佐賀県が今年度からの用地買収着手に向けて必要な設計を実施しているところでございます。

 引き続き、地域の皆様方の御協力をいただきながら、佐賀県と連携しつつ、有明海沿岸道路及び佐賀唐津道路の一日も早い全線開通に向けて事業を進めてまいります。

岩田委員 今日までの着実な事業の進捗に感謝を申し上げながら、やはりこうやって、もちろん佐賀県に限らずですけれども、各地の必要な道路を整備をしていくためには、やはり道路予算の総額の確保が重要であります。ともどもに頑張っていきたいということをこの場で申し上げておきたいと思います。

 次に、民泊の健全な発展についてというようなテーマで質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 住宅宿泊事業法の六月十五日の施行まであと三週間ばかりとなりました。法の施行を控えまして準備状況について伺っていきたいというふうに思いますが、住宅宿泊事業者また住宅宿泊管理業者の届出の状況と仲介業者の登録の状況はどのようになっていますでしょうか。また、都道府県や保健所など、この制度の現場レベルでの準備状況はどうなっているんでしょうか。お聞きします。

田村(明)政府参考人 お答え申し上げます。

 三月十五日から住宅宿泊事業法に基づく各事業の届出や登録の受け付けが始まっておりますけれども、私ども把握しております五月十一日時点でございますが、住宅宿泊事業の届出の受け付け件数が七百二十四件、住宅宿泊管理業の登録の申請件数は五百十二件、住宅宿泊仲介業の登録の申請件数が三十三件となっております。

 このほか、相当数の関係者が地方自治体の窓口等に相談に訪れているというふうに聞いておりまして、今後、施行日が近づくにつれまして、住宅宿泊事業の届出件数等も更にふえていくものと考えられるところでございます。

 また、地方自治体におきましては、これまでに必要な体制の確保や説明会等を行っていただいておりまして、現在、窓口での相談対応、それから、ホームページや手引等による届出方法の周知等を行っていただいております。

 観光庁といたしましては、関係自治体連絡会議における情報共有、それから、民泊制度運営システムの整備、コールセンター及びポータルサイトを通じた届出方法の周知等を行っておりますけれども、引き続き、地方自治体と連携して円滑な施行に努めてまいりたいと考えております。

岩田委員 仲介業者の三十三というのは、多い少ないというのはちょっと私も何ともわからないところでありますが、ただ、これから駆け込みというのがあるにしても、三週間という残りの期間の中でこの数字というのは、結構少ないんだなと、改めて私もそういうふうに受けとめたところであります。

 一説には、大手民泊仲介サイトの登録件数は六万件超、また、別の調査では、東京で約二万件の民泊があるというふうに聞いているところです。こういった数字からすると、施行直前にしては数が少ない、このように思うわけですが、施行に当たり、この既存の事業者が今後どういうふうにされるのか。まさか、届出がないまま違法民泊が大量発生するというふうなことがあってはいけないわけであります。この点、どのように対応されているのか。

 特に、いざ違法の取締りというふうな形の観点からもしっかりしていただきたいと思いますが、この点、伺いたいと思います。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 違法民泊対策といたしましては、まずは、きちんと住宅宿泊事業法の届出をしていただくか旅館業法の許可を取得していただくことが必要でございまして、これを促す観点から、これまでも厚生労働省におきまして、簡易宿所の許可取得要件の緩和などの措置を講じているところでございます。

 その結果、先ほど住宅宿泊事業の届出が少ないという御指摘いただきましたが、簡易宿所の施設数が増加しているというような地方自治体もあると承知しているところでございます。

 その上で、違法な営業を行う事業者への対応を強化するため、昨年、旅館業法を改正いたしまして、まず、無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査権限の創設、それから、無許可営業者に対する罰金の上限額の引上げ、これは三万円を百万円に引き上げてございます。こういったことを行ったところでございまして、住宅宿泊事業法と同じ、ことしの六月十五日に施行予定でございます。

 この改正旅館業法に基づきまして無許可営業者への取締りを強化することにより、違法民泊対策を徹底してまいりたいと考えているところでございます。

 さらに、今月二十一日、違法民泊対策関係省庁連絡会議を設置、開催いたしまして、観光庁、警察庁等の関係省庁と、今後の違法民泊対策について、情報共有、連携強化することについて議論をいたしました。また、この会議では、地方自治体において、警察と連携しつつ旅館業法違反の取締りを徹底いただくことについて確認しまして、会議終了後速やかに、厚生労働省から通知を発出したところでございます。

 今後とも、観光庁、警察庁などの関係省庁とも連携しつつ、違法民泊対策を徹底することにより、民泊事業が適切に運営されるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

岩田委員 今ちょっと答弁でも触れていただきましたけれども、法施行によって、法律が対象としている事業者であります、この場合、狭い定義の民泊と申し上げますが、こういう事業者が生まれただけではなくて、関連したさまざまな動きがある、こういうふうに私は受けとめております。

 例えば、大手コンビニ各社が仲介サイトなどと提携をして本人確認や鍵の受渡し等を行う、また、大手企業が内装を統一化してブランド化したり民泊の運用代行をしたりするなど、民泊に関連するさまざまな事業をスタートするといったニュースがあっております。

 一方、簡易宿泊所の制度を使った民泊が増加している。先ほど答弁いただきましたが、こういう話もあります。これまで簡易宿泊所といえば決していいイメージはありませんでしたが、民泊として新たにスタートするものには、旅館、ホテルと遜色のないものもあると思われます。

 こういった動きを私は、広い定義の民泊事業、また、その関連する事業が拡大している、このように受けとめております。

 このような、法成立、施行をきっかけとする民泊にかかわる事業の動向について国としてどのように把握しているのか、また、その状況についての所見を伺いたいと思います。

田村(明)政府参考人 いわゆる民泊というものにつきましては明確な定義はございませんけれども、住宅の全部又は一部を活用して旅行者等に宿泊サービスを提供することを指して民泊と言うことが一般的でございます。

 この民泊を実施するに当たりましては、住宅宿泊事業法に基づくもののほか、先ほど答弁もございました旅館業法上の簡易宿所の営業許可や特区民泊の認定等によることも可能でございまして、それらの許可件数等も増加傾向にあるというふうに聞いております。

 また、住宅宿泊事業法の施行を契機として、保険会社によるホスト向け保険の提案、コンビニ事業者による鍵の受渡しサービス、鉄道会社による民泊事業の実施、人材派遣会社によるホストの育成等、さまざまな業種の参入が進んでいるものと把握しております。

 このように、大手企業の参入によりさまざまな形態による民泊サービスが提供されることや関連事業が拡大することは、健全な民泊サービスの普及に向けて望ましいことであるというふうに考えております。

岩田委員 ちょっと時間が限られてきましたので駆け足で参りますけれども、この法律は賛否さまざまな議論を経て成立したものであります。私も、既存の旅館、ホテル業の方々からの声と、そしてまたシェアリングエコノミーという時代の流れとの間でいろいろ悩みましたけれども、結果として、この法制化によって、訪日外国人の増加による宿泊需要に対応できること、また、違法民泊や周辺住民とのトラブルなどにルールをかけることができたということはよかったと考えております。

 施行に当たり、ぜひいいスタートを切っていただいて、運営いただくことを期待をしております。

 また、そのためにも、まず、宿泊需要が高いといっても、民泊の法制化が既存の旅館、ホテルを圧迫するだけという状況になってはいけないと思います。これらのイコールフッティングや健全な役割分担がなされることに十分配慮していただきたいと思いますし、また、民泊が犯罪の温床にならないこと、民泊が持つ負のイメージを払拭するような取組などの課題を解決していく必要があると考えます。

 そもそも民泊は、その地域に暮らしているように風土や文化を体験できる宿泊を理想としてスタートしたと聞いております。利用者からは単なる安い宿泊先、事業者からは空き部屋の手軽な活用方法、投資運用の一手段といった状況から、観光の上でも、新しい付加価値を提供するようなサービスへと成長していくことを促すことが大事だろうと思います。

 法施行をきっかけとしまして、この住宅宿泊事業はもちろんのこと、簡易宿所や特区民泊、関係ビジネスなども、総合的な民泊関連事業の健全な成長、さらには、旅館宿泊も含めた観光業の発展を国としてリードしていくべきだと考えます。

 国の認識をお尋ねしたいと思います。

田村(明)政府参考人 訪日外国人数が急増していることに伴いまして、多様な宿泊ニーズに対応していくことが求められておりまして、さまざまな形態による宿泊サービスが提供されることが重要であるというふうに考えております。

 今先生もおっしゃいましたように、民泊というのは、日本人と交流し、その生活を体験したいというニーズや、できるだけシンプルでリーズナブル、あるいは中長期の滞在に適した宿泊サービスを求めるニーズに対応するものでございまして、新たな宿泊モデルとして健全に発展することが期待されるところでございます。

 一方、旅館、ホテルは、プロによる高品質な宿泊のサービスを求める客層に対応するものでございますけれども、増大する外国人旅行者の需要の取り込みも課題でございまして、国としても、WiFiの整備やトイレの洋式化、多言語対応等、インバウンド需要へ対応した取組に対して支援を行っているところでございます。

 観光庁といたしましては、このような支援等によりまして、さまざまな宿泊ニーズに対応し、多様な選択肢を用意し、宿泊業の活性化を図ることによりまして、二〇二〇年の訪日外国人旅行者数四千万人等の目標の達成に向けて努めてまいりたいと考えております。

岩田委員 いよいよ施行であります。しっかり頑張っていただきたいと思います。

 最後に、観光による地方の経済活性化についてということで、一問お尋ねしたいと思います。

 本当に、これだけ外国人の旅行者数がふえてきているということ、そしてまた消費額がふえているということ、大変すばらしいことだというふうに思っております。

 特にまたこの増加に伴って、やはりこれが経済に及ぼす影響、これに今注目が集まっているところでありますが、特に、各地域が、観光の振興によって地域経済の活性化、地方創生を図っていくことを更に力を入れて取り組むべきだ、このように考えておるところであります。

 佐賀県も今、外国人の延べ宿泊者数について二〇一二年と二〇一七年を比較した伸び率で全国二位だそうであります。五年間で約九倍増加をしている状況であります。これは、九州佐賀国際空港へのLCC誘致を始めとした取組なども頑張っておりますし、その結果として、団体客が減って寂れておりました武雄温泉、嬉野温泉、こういったところを始めとした観光地に外国人の観光客が目立つようになってまいりました。また、タイのドラマのロケ地になった祐徳稲荷神社では、タイ語のおみくじがある、こんなことも今やっているところでございます。

 これからこうやって各地方が観光振興のために頑張っていく、これを地域の経済の活性化につなげていくために国としてもどのような取組を進めていくのか、お尋ねしたいと思います。

簗大臣政務官 お答えいたします。

 岩田先生が御地元でも大変に御尽力をされている観光振興、インバウンドによる地域経済活性化や地方創生についてのお尋ねでございますが、訪日外国人旅行者数を二〇二〇年に四千万人などの目標を定めた明日の日本を支える観光ビジョンにおきましても、観光先進国への三つの視点の一つとして「観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」と明記されておりまして、訪日外国人旅行者の地方誘客を進め、その経済効果を全国に波及させていくことは大変重要であると考えております。

 このため、観光ビジョンに盛り込まれた文化財の観光資源としての開花等について、政府一丸となって取組を進めてきました結果として、昨年の三大都市圏以外の地方部における外国人延べ宿泊者数は三千百八十万人泊と対前年比プラス一五・八%となり、三大都市圏の対前年比プラス一〇・二%を上回るとともに、地方部の延べ宿泊者数のシェアが約四割となっておりまして、着実に地方への誘客が進んでいるものと考えております。

 また、宿泊業における建築物の工事予定額は、佐賀県を始めとするインバウンドの伸びが大きい上位県において大幅に伸びておりまして、地方経済の活性化にも寄与しているものと考えております。

 他方で、三大都市圏以外の旅行者消費額は約三割にとどまっておりまして、訪日外国人旅行者の地方誘客を進め、その経済効果を全国に波及をさせていくためには、これまで以上に訪日外国人旅行者の地方への来訪、滞在拡大につながる取組を強化していく必要があると考えております。

 そのためには、各地域において、観光地域のマネジメント及びマーケティングを担う法人であるDMOが中心となり、多様な関係者が広域的に連携した上で取組を進めることが重要であると考えております。

 このため国土交通省といたしましては、地方における観光戦略に対し、地域固有の自然や生活、文化を活用しながら各地域における体験型観光の充実を図るとともに、広域連携DMO、地域単位のDMO、地方公共団体等の多様な関係者による広域的な連携を図る観点から支援を行いまして、訪日外国人旅行者の地方への来訪、滞在の促進をより一層進め、地方経済の活性化につなげてまいりたいと考えております。

岩田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 質問の時間をいただきまして、委員長、理事の先生方に心から感謝を申し上げるところでございます。

 本日、森友学園関係の新たなさまざまな書類が公表をされたということで、膨大な量になりますから、これからさまざまな方々がさまざまな分析をされることになろうかというふうに思います。

 私、きょう財務省にも来ていただいているのでまずお尋ねをしたいのは、新聞やテレビの報道等で、改ざんについては、その決裁文書の意味、内容が大きく変更をされているわけではないので、根幹が変更されているわけではないので、不起訴になるのではないかという趣旨の報道があったりするわけですけれども、それは、対森友との契約という意味においては、その決裁文書の意味、内容、根幹は変わっていないということなのかもしれませんが、対国会、対国民という意味においては、きょう公表された膨大な分量の真の決裁文書、そしてまた面接交渉記録等、それらを隠さざるを得なかった、改ざんせざるを得なかったという意味において、対国民、対国会にという意味における決裁文書の根幹は大きく変更をされたのではないかというふうに思います。

 そこで財務省に改めてここで、まだ財務省さんは書換えという言葉をお使いになられていらっしゃいます。私は、これだけのものを隠していたわけですから、隠すために改ざんしていたわけですから、そろそろ改ざんという言葉をしっかりとお使いになられるべきではないかというふうに考えますが、まず財務省としての御見解を教えていただきたいと思います。

富山政府参考人 お答えをいたします。

 今御指摘の決裁文書の書換えにつきましては、三月十二日に国会に御報告をしたところでございますけれども、書き換えられた文書を見る限り、当時、昨年の通常国会での答弁とそれまでの答弁が誤解を受けないように行われたというふうに見られるということで、三月十二日の発表以降、書換えという単語を使わせていただいているところでございます。

 ただ、今委員の御指摘もございましたが、この書換えが行われた経緯あるいは目的といったことにつきましては、財務省の人事当局を中心とする調査を現在も行っているところでございます。そういった意味で、この人事当局による調査が、最終的な調査結果というものを速やかに出すというふうに申しておりますので、そういった調査結果を踏まえた上で考える部分もあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、決裁文書を書き換えるというようなことはあってはならないことでございまして、深くおわびを申し上げたいと思います。

川内委員 やはり書換えという言葉を変えないんですね。

 対国会、対国民を欺く、今、富山次長も、あってはならない行為だというふうに御発言になられたわけですけれども、あってはならないことをされたことを書換えという言葉で表現するというのは、いかにも私は不適切であると累次にわたって申し上げているわけですけれども、その調査をされるセクションに、改ざんという言葉を使うべきであると川内から指摘があったということをしっかりお伝えいただきたいというふうに思います。

 そこで、会計検査院にも来ていただいているんですが、何でこんな大幅なディスカウントが行われたのか、値引きが行われたのか。国土交通省さんは、いや、適切な値引きだったんです、適正だったんですと今でも言い張っていらっしゃるわけですが、会計検査院さんに教えていただきたいと思いますが、会計検査報告の四十ページには、近畿財務局及び大阪航空局は、全てのくいの施工が完了した後の三月十四日に現地確認を行った、その際、両局は、本件土地の敷地内に廃棄物混合土が広範囲にわたり散在して積み上げられていたことを確認し、同席した小学校校舎の設計業者から、これらの廃棄物混合土は、長さ九・九メートルのくい工事の過程において発見されたものであると説明を受けたとしているとの記述がございます。

 廃棄物混合土という言葉は会計検査院さんがおつくりになられた言葉であり、近畿財務局、大阪航空局、設計業者のいずれも廃棄物混合土という言葉は使っておりません。

 さらに報告書の同じ四十ページで会計検査院は、森友学園が小学校校舎の建設を始めたところ、森友学園は、くい工事において廃棄物混合土が排出されたり、廃材等が掘削機の先端に付着したりしたことを理由に、平成二十八年三月十一日に、近畿財務局に対して、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物が発見されたと連絡していたと記述をしております。

 会計検査院さんに教えていただきたいんですけれども、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物というものが存在するということについて、会計検査院さんとして何らかのエビデンスを徴求をされたのでしょうか。エビデンスがあったのでしょうか。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 会計検査院といたしましては、報告書におきまして、深度三・八メーターについて、廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができず、深度九・九メーターを用いる根拠について確認することができないことなどから、「地下埋設物撤去・処分概算額の算定に用いた廃棄物混合土の深度については、十分な根拠が確認できないものとなっている。」と記述しているところでございます。

川内委員 いやいや、済みません。三・八とか九・九とかいうことを聞いているんじゃなくて、新たな地下埋設物が存在するということについて確認をしたのかということを聞いているんです。そのエビデンスがあったのかということを聞いているんです。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 委員お尋ねのエビデンスにつきましては報告書において記述はございませんが、報告書の記述におきまして、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない、地下三メーター以深にある新たな地下埋設物であると判断したとしていると近畿財務局は判断したところに対しまして、会計検査院といたしましては、深度三・八メーター及び九・九メーターを用いる根拠については、廃棄物混合土の深度については、「十分な根拠が確認できないものとなっている。」というふうに記述をしているところでございます。

川内委員 いや、局長さん、ちゃんと答えてくださいよ。三・八とか九・九とかいうことを確認する前に、貸付合意書で対象としていた地下埋設物に該当しない新たな地下埋設物が発見されたからいろいろな計算が始まったわけです。大前提なんですよ。

 その貸付合意書に該当しない新たな地下埋設物があるということを会計検査院としては確認をしたのかということを聞いているんです。確認していないならしていないということですよ。相手に言われたままでしたというんだったら、そう言えばいいです。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 貸付合意書については、今回の売却につきましては貸付合意書に基づくものではなく、新たな契約書に基づきまして取引が行われたというふうに考えております。

川内委員 ちょっと局長、今の答弁はだめです。そこにちょっと立っていてよ、すぐ答えてもらわないと時間がもったいないから。

 新たな地下埋設物が見つかったから、新たに契約を結んで、売買契約にかえたわけでしょう。新たな地下埋設物の発見というのが売買契約の前提なんですよ。だから、新たな地下埋設物があるということを会計検査院は確認したんですかということを聞いているんです。

 だから、会計検査報告にはその部分に対する記述はないということはおっしゃられた。記述はないと。エビデンスがあったのかということを聞いているんですよ、新たな地下埋設物があるということの。それを答えてください。新たな地下埋設物があったということを証明するエビデンスを確認したのかということです。確認したのかしていないのかですよ。事実ですから、これは。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 その点につきましては、報告書におきまして、新たなエビデンスにつきまして確認したのかどうかについて記述はしていないところでございます。

川内委員 いや、委員長、ちゃんと答えさせてください。記述をしていないということと、確認しているかしていないかはまた別問題ですから。

 新たな地下埋設物があるということを確認したのかと聞いているんですよ。何でこんなことに時間をかけさせるんですか。確認していないんだから、確認していませんと言わなきゃ。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 新たな地下埋設物につきましては、深度三・三メーター以深のものでございますけれども、検査院といたしましては、深度三・八メーターについても廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができずと、あるいは、九・九メーターについても確認できないというふうに記述をしているところでございます。

川内委員 いや、だから、三・八とか九・九を確認していないというんじゃないんですよ。それは新たな地下埋設物を前提としているじゃないですか、今。新たな地下埋設物を前提として、三・八とか九・九と今言ったんですよ。だから、新たな地下埋設物の存在を確認したのか、エビデンスがあったのかということを聞いているんですよ。

 答えてくださいよ。何で答えないんですか。新たな地下埋設物があるということを確認したんですかということを聞いているんですよ。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 会計検査院の検査におきましては、新たな地下埋設物があったことを前提に検査を実施したものではございません。

川内委員 いや、前提に検査を実施したものでないって、前提にして三・八とか九・九とかと言ったじゃないですか。

 ちょっと委員長、これではちょっと質問を続けられないですよ。

 新たな地下埋設物があることを確認したんですかって、たったこれだけのことを聞くのに何で答えないんですか。

 ちゃんと答えさせてくださいよ、委員長、ちゃんと答えなさいと。確認したのかしていないのかを答えなさいと委員長から命じてくださいよ。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 新たな地下埋設物の存在を何らかの形で確認した上で検査を実施することは、その新たな地下埋設物を当方で、その前の段階で確かに確認しなければいけないところでございますけれども、そこの、あったというのを前提に検査をするということは事実上できないことでございますので、私どもといたしましては、新たな地下埋設物があったことを前提に検査を実施したものではないということでございます。

川内委員 いや、だから、会計検査院、では、次長が来ているから、次長が答えてくださいよ。新たな地下埋設物の存在は確認していないと。これはとても大事なことなんですよ。新たな地下埋設物が発見されたから売買契約につながるわけですから。

 会計検査院として、新たな地下埋設物の存在がある、発見されたんだということを別に確認はしていませんよと。それだけのことです。ちゃんと答えてくださいよ、めちゃ大事なことなんですから。

腰山会計検査院当局者 お答えいたします。

 地下三メートルより浅いところにある地下埋設物につきましては、それ以前の調査において全てが撤去されているわけではございませんでしたことから、売買契約の締結後に森友学園の方から申請があった地下埋設物につきましては、既知の地下埋設物であったのかどうか、それとも新たな埋設物であったのかどうか、そのことにつきましては、報告書においては、深度三・八メートルというのは三メートルよりも深いところでございますので、そのものについては廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができない、このような言い方をしているところでございます。

 実際にその三・八メートルのところにあったのかなかったのかということについては、確認をできていない。それが、既知のものであったのか、それとも新たな地下埋設物であったのかということについて、確認ができていないということでございます。

川内委員 いや、だから、深度三・八メートルとわざわざ数字をつけなくていいですから。新たな地下埋設物の存在があるということを会計検査院としては確認しておらないと。三・八メートルを除いて答弁してください。三・八メートルは関係ないですから、この際。

戸田会計検査院当局者 お答えいたします。

 新たな地下埋設物があったということを前提に検査を実施したものではないということと、会計検査院といたしましては新たな地下埋設物があったということを確認したわけではないということでございます。

川内委員 新たな地下埋設物があったということを確認したわけではない、やっとここまで答えてもらうのに十五分かかったわけですけれども、一分で終わることですけれども。

 今となっては、何のエビデンスもない新たな地下埋設物が存在をするということを前提に、三・八とか九・九とか四七・一とか、二万二千五百円とか、そういう数字を掛け合わせて値引き額が算定をされていったわけですけれども、検査院は、財務省や国交省に新たな地下埋設物ということを聞かされて、そしてまた工事業者からも聞かされて、まさかそんなことでうそをついたりしないだろうと多分思ったと思うんです。

 それで、三・八とか九・九については検査しました、その数字の根拠は確認できませんでしたと検査報告に書いているんですけれども、新たな地下埋設物が存在するというふうに国交省や財務省が会計検査院に申告したというのは、これは検査に対する重大な影響を与えたのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

戸田会計検査院当局者 お答えいたします。

 繰り返しの答弁になりますけれども、新たな地下埋設物があったことを前提に検査を実施したものではございませんので、したがって、現時点におきまして、検査に影響があったというふうに考えてはおりません。

川内委員 いや、この貸付契約で合意されている既知の地下埋設物であるか否かというのは、検査に重大な影響があるじゃないですか。財務省さんが以前公表した法律相談文書にも、法務監査官が、この新たな地下埋設物というのは一体何なんだ、これが貸付合意書で合意されている地下埋設物以外の地下埋設物なのか、それとも本当の新たな地下埋設物なのか、これはわからぬ、これはよく調査せないかぬねと法律相談文書に書いてありますよ。

 だから、新たな地下埋設物ということを確認したのか否かということを私はしつこく聞いたわけで、新たな地下埋設物であるということを確認しなければ新たな売買契約にもならないし、これは非常に重要なことなんですよ、貸付契約を解除して売買契約にしているんですから。

 それは、新たな地下埋設物が見つかったからですよ。これは重大な影響があるじゃないですか。何でそんな、重大な影響がないとか言い切っちゃうんですか。あなた、本当に検査院の人ですか。検査院プロパーですか。もしかして、財務省、国交省の出向者じゃないですか。(発言する者あり)プロパーですか。では、プロパーですと言ってよ。

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 プロパーでございます。

川内委員 検査院の検査を担当する責任者の方が、こんな重要な概念について、検査に影響はありませんでしたと言い放つ。会計検査院、もうやめた方がいいです。なくなった方がいいです。何の役にも立たぬということです、国民にとって。

 地下埋設物が見つかったから、新たな事情変更が起きたから、貸付契約を解除して売買契約にするんですから。宮本先生、そうですよね。これは宮本先生が一番詳しいんだから。それを、いや、別に関係ありませんと。

 もう一回答弁してください。これは重大な影響があるでしょう。この新たな地下埋設物が貸付契約五条で合意されている地下埋設物であったならば新たな契約にはならないわけですよ。そうでしょう。これは重大な影響があるじゃないですか。

戸田会計検査院当局者 お答えいたします。

 繰り返しの答弁になり恐縮でございますが、確認された廃棄物混合土につきまして、近畿財務局が地下三メーター以深にある新たな地下埋設物であると判断したことに対して、地下埋設物撤去、処分費用の算定に関する会計検査院の結果といたしまして、深度三・八メーターについて廃棄物混合土を確認していることの妥当性を確認することができず、深度九・九メーターを用いる根拠について確認することができないことなどから、「地下埋設物撤去・処分概算額の算定に用いた廃棄物混合土の深度については、十分な根拠が確認できないものとなっている。」としたところでございまして、新たな地下埋設物があったことを前提に検査を実施したものではございません。

 したがいまして、現時点において、検査に影響があったというふうには考えてございません。

川内委員 会計検査院の検査というのは、相手が言っているとおりに、ただその数字の計算を検算するだけなんですか。違うでしょう。検査院は、合規制とか、契約の内容が適正なのかどうかとか、法律に照らして正しく処理されているのかとか、そういうことまで含めて検査されるんでしょう。そういうふうに書いてあったと思いますよ、検査報告書に。僕は素人なのでうろ覚えで言って申しわけないけれども、そういうことを検査されるわけで、相手が言っている計算が正しいかどうかだけ検査したのであって、あとは知りませんと今おっしゃったんですよ。

 それは検査なんですか。検査院の検査なんですか。検算しただけなんじゃないですか。次長、これは重要な影響があったと、契約を変更する事由になっているんですから。どうでしょうか。

腰山会計検査院当局者 近畿財務局におけます会計経理において契約を変更したということでございますから、その会計経理におきましては重大な影響があったということかと推察をしております。

 しかしながら、検査に重大な影響を与えたかどうかということはこれとは別の問題でございまして、会計検査院といたしましては、近畿財務局が新たな地下埋設物であると判断したことに対して、その合理性について検査した結果、その十分な根拠について確認することができなかったということを記述しているところでございます。あくまで本院の自律的な検査の結果として、その判断の合理性について確認したところ、その妥当性を確認することができなかったという結果について記述しているところでございます。

川内委員 だから、ちょっと水かけ論みたいになっていますけれども、新たな地下埋設物が存在するという概念そのものが契約の変更につながり、そして大幅な値引きにつながって、もしかしたら国庫に対する重大な損害を与えているのかもしれない。

 そこ全体を検査するのが検査院であって、だとするならば、新たな地下埋設物の存在についてのエビデンスは確認しなかったとおっしゃられたわけで、私は、検査に関して不備があったのではないか、瑕疵があったのではないかということを指摘せざるを得ないわけでありまして、このことに何か二十分以上かけちゃって、本当はこれは五分で終わる予定だったんですけれども。

 新たな書類などがきょう公表されているわけですが、私は、まだまだ財務省の内部の資料とか、有益費というか、貸付契約から売買契約に至る過程の中で、財務省の中でさまざまなやりとりが行われていたのではないか、財務省、航空局との間でさまざまなやりとりが行われていたのではないか、まだその辺の書類は出てきていないのではないかというふうに想像いたしますので、検査院としても、気を緩めることなく検査に当たっていただきたいということをお願いをしておきたいというふうに思います。

 それでは、この値引きの問題について、航空局、国土交通省は今でもこの値引きの額の算定について、妥当であった、適切であったというふうに考えていらっしゃるのかということを教えてください。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の森友学園への国有地の売却をめぐりましては、さまざまな報道がなされまして、私どもでもさまざまな調査を進めているところでございますが、航空局が行いました見積りにつきまして、現時点でその考え方を変更するというところには至っていないということでございます。

川内委員 考え方を変更するに至っていない。すなわち、適切であった、適正であったと考えているということなんでしょうけれども、その理由を教えてください。

蝦名政府参考人 これまで御説明をしてきました、既存の調査等で明らかとなっていた範囲のみならず、職員などの現地確認などの追加の材料も含めまして、当時、検証可能なあらゆる材料を用いて時間制約の中で行ったという状況でございます。

 こうした御説明をしてきました内容の考え方を変えるような事実に今まだ接していないということでございます。

川内委員 何を言っているかさっぱりわからぬのですけれども、ちょっとおさらいしましょう。値引き額八億一千九百万円を見積もったのは大阪航空局補償課であるということでよろしいですね。

蝦名政府参考人 大阪航空局の見積りは、伊丹空港の移転補償跡地の売却に付随しまして、近畿財務局から依頼をされて大阪航空局が対応していたものでございます。

 本件土地の近畿財務局への処分依頼につきましては大阪航空局長までの決裁により行い、一方で、近畿財務局への見積りの回答は、処分依頼に付随する省庁間のやりとりということで、補償課長までの決裁によって行ったということでございます。

川内委員 大阪航空局補償課が八億一千九百万、値引き額を決裁したと。

 この決裁にかかわった人数は、補償課長以下四名ということでよろしいですね。

蝦名政府参考人 大阪航空局が行いました見積りにつきましては、大阪航空局という組織で行ったものでございますけれども、お尋ねの見積りの決裁の状況を御説明申し上げますと、補償課におきまして、起案者の係長が、専門官、課長補佐、課長の決裁をとっておりまして、起案者を含めまして、決裁を行った者は合計四名ということになります。

川内委員 大阪航空局という組織で行ったものではあるが、決裁にかかわったのは四人なんですよ、四人。航空局全員が書類を見たわけじゃないでしょう。書類を見たのは四人でしょう。何を言っているんですか、あなた。

 この四人の中の技術職は一名ということでいいですね。

蝦名政府参考人 大阪航空局の見積りにつきまして、お尋ねの決裁の状況は、先ほどのとおり四名でございますが、専門官が土木職の職員でございまして、技術職は一名ということでございます。

川内委員 その一名は土壌や地質の専門家ではないということでいいですね。

蝦名政府参考人 委員の御指摘は、今回の地下埋設物の撤去、処分費用の見積りに当たりまして、これらの職員自身が、高度な学術的、専門的な地質や地盤調査の能力、知見を有している必要があるのではないかということだと存じますが、そのような観点から申し上げますと、御指摘のような能力、知見が必ずしもあるわけではございませんけれども、大阪航空局の補償課は、平成二十一年から二十四年にかけまして地下構造物調査等を行って、現地の土地の状況を詳しく把握しておりまして、土木職の職員につきましても、産業廃棄物の処分を含むさまざまな工事の積算を行ってきておりまして、土木工事の発注を行う知見、経験といったものは有しておりまして、今回の見積りを行うに当たりまして必要となる実務能力というものは有しているというふうに考えております。

川内委員 その技術職の人は、地下埋設物が存在する場合の工事の見積りなどもプロだ、やっているというふうにおっしゃられるわけですが、それは決裁に入っていた技術職の方であって、起案したのは事務官でしょう。違うんですか。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、起案したのは係長で事務職でございますけれども、決裁そのものは組織として対応しておりますので、途中で技術職の職員も見積りを行っているということでございます。

川内委員 いや、だから、起案した人には何の知見もないわけですよ、地下埋設物の何とかとか。途中で、決裁するラインの中に、四人の中に技術職の方が一人いたということですけれども。

 それでは、過去、国土交通省さんが平成二十七年、二十八年に発注した工事で空港土木建築工事について、平成二十七年に四十八件、平成二十八年度に発注した土木建築工事については四十九件、産業廃棄物撤去、処分を実施していることからというふうにおっしゃっていらっしゃいます。地下埋設物の撤去工事にかかわる工事を平成二十七年、二十八年、九十七件やっています。その中で、いろいろやっているんですけれども、知見は有していますよというふうにおっしゃっているわけですけれども、この九十七件の大阪航空局発注工事の起案は何課ですか。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました九十七件の工事の積算につきましては、大阪航空局の土木建築課というところが行っております。

 これはいわゆる直轄の工事でございますのでそこが担当して行っているというところでございますけれども、大阪航空局の補償課も、先ほど申しましたように、土地の状況を、当時の調査を経験して把握をしているということ、そして、土木の職員につきましても、産業廃棄物等の処分を含むさまざまな工事の積算を行っておりますので、その意味で、見積りを行う知見や実務能力は十分有しているというふうに考えておりまして、そうした意味において、大阪航空局としての組織としての知見や能力のことを御紹介するために、九十七件のことについて御答弁を申し上げてきたということでございます。

川内委員 その九十七件の土木建築工事のうち、課長さんが決裁できる金額というのは幾らですか。

蝦名政府参考人 大阪航空局等の地方航空局が工事を発注する場合に、これは工事を発注する予定価格の決裁ということになりますけれども、一千万円以下の場合が総務部の経理課長、一千万を超えて一億円以下の場合は総務部長、一億円を超える場合は地方航空局長というものが決裁権者ということになります。

川内委員 発注工事の場合は、課長さんが決裁できるのは一千万円までです。本件土地の値引きの場合は、補償課長が八億一千九百万円を値引きしているわけです。

 この値引き額の見積りについて、この補償課長さんが八億一千九百万円もの値引き額を決裁できる決裁権限規定みたいなものが大阪航空局の中にあるんですか。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 本件土地の処分依頼につきましては大阪航空局長までの決裁により行っておりますが、見積りは、これに付随する省庁間のやりとりでありましたので、補償課長までの決裁によって行ったということでございます。

 委員御指摘の点につきましては、見積りの決裁を補償課長が行うことを定めました内部規定といったようなものはございません。

川内委員 規定はない、省庁間のやりとりだからいいんだと。

 省庁間のやりとりだったらば補償課長に幾らまででも決裁させていいんだというのは、何を根拠に言っているんですか。法的根拠が何かあるんですか。どこかに書いてあるんですか。省庁間のやりとりであれば課長に幾らまででも決裁させていいよということがどこかに書いてあるんですか。

蝦名政府参考人 今回の見積りにつきましては、大もとであります本件土地の近畿財務局への処分依頼につきまして大阪航空局長までの決裁により行っているということは、御説明してきているとおりでございます。

 課長等の職員がどこまでの中身を決裁するかという点につきましては、決裁事項の内容や性質に応じて判断をしているということでございますけれども、今般の見積りでは、先ほど申しましたように、大もとの本件土地の処分依頼というものが大阪航空局長までの決裁によって行っておりますので、その処分依頼に付随する省庁間のやりとりということで、担当部署であります補償課長までの決裁によるということで行ったということでございます。

川内委員 いや、ですから、省庁間のやりとりだから課長の決裁でいいんだよということがどこに書いてあるんですかということを聞いているんです。

 役所というのは、全部決まり事で、法令にのっとって仕事をするわけですよね。省庁間のやりとりであれば課長に値引き額については幾らまででも決裁させていいんだということがどこに書いてあるんですかと聞いているんです。

蝦名政府参考人 繰り返しのお答えになりますけれども、本件は、見積りの大もとであります本件土地の近畿財務局への処分依頼について大阪航空局長までの決裁によって行っておりまして、これに付随するということで省庁間のやりとりでありましたので、担当部署で補償課長までの決裁によって行っておりまして、こうした決裁事項の内容や性質に応じて判断をしているということでございます。

 こうした点を具体的に何か規則のようなもので定めているというわけではございません。

川内委員 それは適切だと思っているんですか。これは、値引き額を算定したと、去年、航空局長さんは答弁していますよね。八億一千九百万円の見積りというのは値引き額なんだ、値引き額を見積もったんだと答弁しています。こんな巨額な金額を見積もるのに、課長に決裁させる決裁規定はない、省庁間のやりとりだからよいのだと。

 では、その省庁間のやりとりをする中で課長さんに決裁させていいということはどこかに書いてあるんですか。どこにもないんでしょう。どこにもないと言ってくださいよ。

蝦名政府参考人 お答えは先ほど申し上げたとおりでございますけれども、今回の見積額でございますけれども、これは値引き額というストレートなものではございませんで、これは、近畿財務局からの御依頼をいただいて、地下埋設物の撤去、処分費用の見積りを行った。それを、その後の手続といたしまして、近畿財務局において不動産鑑定評価というものを行って、その上で決定をされているということでございますので、あくまでもこれは、その地下埋設物の撤去、処分費用というものを当時の状況下において見積もって提出をさせていただいたということでございます。

川内委員 いや、もう極めて不誠実な答弁で、「将来埋設物が出てくるリスクの分だけ土地の価格を下げておく。そこで、売却時点のみならず将来見込まれる分も含めまして地下埋設物が出てくるリスクを見込んでどれだけ価格を下げておくべきかということを、地下埋設物の撤去、処分費用という形で見積もらせていただきました。」値引き額を見積もったと航空局長が言っているんですよ、答弁で。現金そのものですよ。八億一千九百万円、見積もったんですよ、金額を。

 それを何か今ちょっとわけのわからない答弁をされたけれども、省庁間のやりとりだからいいんだという答弁はおかしいでしょうということを言っているので。それは、そういう省庁間のやりとりだから課長に決裁させていいなんということはどこにも書いていないわけですから。書いていない、どこにもありません、そういう決まりはないですということを言わないと。言ってくださいよ。

蝦名政府参考人 もう一度お答え申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、大もとである本件土地の近畿財務局への処分依頼について大阪航空局長までの決裁によって行った上で、その処分依頼に付随する省庁間のやりとりでありましたので、担当部署である補償課長までの決裁によって行ったということでございます。

 先ほど申しましたように、そういうような、先生の御指摘のような点の規則といったようなものはございませんけれども、そのような考え方で今回の見積りを行ったということでございます。

 見積りにつきましては、近畿財務局に提出させていただいた後、不動産鑑定等の手続は経て価格は決定されていったということでございまして、あくまでも見積りは、土地の価値といいますか、そこをどういうふうに考えていくかということで見積りを出させていただいたということでございます。

川内委員 補償課長、八億一千九百万、決裁する権限規定はありません、省庁間のやりとりだから課長に決裁させてよいという規定もありません、でもいいんだもん、こうおっしゃるわけですけれども、だからこそ、この八億一千九百万の値引きを算定するに当たっては適切さを欠く部分があったのではないかということに関しては、お認めになられた方がよいというふうに私は思いますよ。

 もう一度、今でも適切だと思いますか。

蝦名政府参考人 今般の見積りに関しましては、売り主の責任が一切免除されるとの特約を付すことを前提に、その実効性を担保するために、既存の調査で明らかとなっていた範囲のみならず、さまざまな現地確認など追加の材料も含めまして、当時、検証可能なあらゆる材料を用いて行われたものでございまして、限られた時間の中で検証、見積りを報告しなければならないという状況下でのぎりぎりの対応であったというふうに認識をしているということでございます。

川内委員 しかし、霞が関というのはすごいところだなと思いますけれども。

 ちょっと最後は財務省さんにもう一回聞かせていただくんですが、平成二十七年の九月四日に現場で打合せをしていらっしゃって、きょう出てきた資料で判明したんですけれども、有益費対策工事のときに、土壌汚染の対策工事、それから、地下埋設物の撤去工事をしてごみがたくさん出るわけです。国交省の見積りでは約五千トンというふうに見積もっていただいたわけですけれども、それを一体どうしたんですかと聞いたら、わかりませんというふうに今までお答えになられていたんですが、籠池さん側から出てきた現場打合せメモでは、財務省が埋め戻しを指示したというふうに書いてある。

 ところが財務省さんは、いやいや、そんなことを指示した覚えはないです、適正に処理しなさいというふうに言っていましたというふうにおっしゃっていらっしゃったわけです。

 きょう出てきた小学校事案に係る応接記録、平成二十七年九月四日付の記録の本日の打合せ結果概要というところを見ると、上記の国の方針を踏まえ、建築時に掘削した発生土の処理については、建築に問題を生じないレベルのものは埋め戻しによる場内での処理を検討。対応が困難な場合には改めて協議することで合意。工事進捗を停滞させることはできないので、今回問題となった箇所は、一旦埋め戻しの上、工事を続行させることとした。要するに、埋め戻しを黙認したというか合意したというか、みんなで話し合ったと。

 これは、財務省だけではなく航空局もその場にいたんですが、廃棄物の埋め戻しは産業廃棄物法違反になるわけですけれども、環境省に来ていただいているので、廃棄物の埋め戻しは廃棄物法違反ということでよろしいかというのをちょっと手短に、あと一分しかないので。

近藤政府参考人 申し上げます。

 一般的に廃掃法では、排出事業者は、その事業活動に伴って生じた産業廃棄物をみずからの責任において適正に処理しなければならないとなっております。

 産業廃棄物につきましては、廃掃法に基づく処理基準に従って適正に処理する必要がございまして、当該廃棄物を基準に従わず地中へ埋立処分することは、適当な処理とは認められないと考えております。

 なお、廃掃法では、法に定める基準に適合しない処理を行う等した場合についての適宜の罰則等を用意しているということでございます。

川内委員 廃棄物処理法違反を打合せをしていたことについて、財務省、国交省、両省にちょっと御感想をいただきたいというふうに思います。

富山政府参考人 お答えをいたします。

 今御指摘の平成二十七年九月四日の交渉の記録でございますが、この当時は、掘削の過程で分別することが現実的に困難な、また、校舎の建築に当たり支障とならない細かいガラスくずなどが混入した土の処理について議論をしていると承知をしております。

 先方からそうした土の場内処理を検討したい旨の話があったというような記録になっておりますが、それに対して対応していたものというふうに考えているところでございます。

川内委員 いや、それは廃棄物処理法違反なんですけれども。

富山政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘の廃棄物処理に関する法令との関係につきましては、きょう公表させていただいた交渉記録との関係でどういった御答弁ができるかは、また、省内の方で検討したいと考えております。

蝦名政府参考人 きょう公表された資料というのはまだちょっと十分検証できておりませんので、ちょっとこの場で御答弁を申し上げる状況にないということでございまして、また、ちゃんと確認をした上でお答えさせていただきたいと思います。

川内委員 国交省には申し上げておきますが、廃棄物まじり土が現場に存在する場合のマニュアルというのを国交省はちゃんと世に出していますからね、どうすればよいかということについて。

 終わります。

西村委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原です。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 国土交通委員会で石井大臣に質問するのは恐らく初めてだと思います。基本的な事柄が中心でありますので、基本的には大臣にお答えをいただきたいと思いますし、また、実務的なところはほかの方でも結構でございますので、基本的には大臣にお答えをいただきたいと思います。

 まず、国交省の使命というか役割について、少し大きな話をさせていただきたいと思うわけでありますけれども、大臣がどういう思いでこの国交大臣をされているのかというところを伺っておきたいと思います。

 もちろん国交省というのは、国土保全、これは、海上保安庁も含めて日本の国土を守るということ、それから災害対策、災害復旧復興、また、インフラの整備、維持管理、こういった極めて重要な役割があるわけでありますけれども、国土交通省は経済官庁ですよね。記者さんたちも経済部の方が来られているということで、国土交通省というのは経済官庁でありますが、この経済官庁としての国土交通省を大臣はどのようにお考えになっているかということをまずお聞かせをいただきたいと思います。

石井国務大臣 国土交通省はさまざまな役割がございますけれども、私が一番重要な役割と考えておりますのは、何といいましても、国民の安全、安心の確保、これが第一だと思っております。

 その上で、今委員から御指摘いただきましたように、経済官庁という側面もございます。国民が豊かさを感じられるような社会を築いていくために、我々としても最大限貢献をしていきたいというふうに思っております。

前原委員 私は、二〇〇九年から一年間、国土交通省におりましたけれども、そのときに、ちょうどリーマン・ショックの後でして、どうやったら日本の経済がよくなるかということをいやが応でも考えなきゃいけない状況でございました。

 そのときに国土交通省の中に成長戦略会議というのをつくりまして、座長が当時の武田製薬の長谷川さんにやっていただき、いろいろな有識者の方に入っていただいて成長戦略会議をつくって考え方をまとめたわけでありますけれども、この考え方、省議決定はしておりますけれども、大臣、これについての内容を御存じですか。

石井国務大臣 恐縮ですが、存じ上げておりません。

前原委員 ぜひまたお時間のあるときでも見ていただいたら結構なんですが、五つの成長戦略というのを決めて、一つは海洋です。そのときに、国際コンテナ戦略港湾とか国際バルク戦略港湾、あるいは拠点港湾、例えば日本海側の拠点港湾とかクルーズ拠点港湾とか、こういうものを決めた。特に、集中と選択というのを行いまして、国の直轄の港が百二十六から六十六まで減る。そのかわり、減らした分を、今のような、いわゆる国際港などに指定をしたりする。

 それから、二つ目は観光です。これは、インバウンドをふやすということの中でさまざまな取組を、ビザの緩和、あるいは業界との連携というものをやらせていただいた。

 三番目が航空です。この航空については、羽田の国際化とか、関空、伊丹の統合の話とかオープンスカイ、こういったもの、あとは空燃税の減免、こういうことを書かせていただいている。

 四つ目が国際展開、官民連携ということで、インフラの海外輸出、パッケージ輸出とか、官民連携というのは、これはPPP、PFI、コンセッション、こういうものを進めていくということ。

 それから、五つ目が住宅、都市でありまして、例えば一つの例で申し上げると、住宅でいうとサ高住とか、それから、都市のところでいうと、REITを建てかえにも使えるようにという形に変える。

 こういったことを五つの分野で省議決定までしております。

 その中で、取り組まれていること、取り組まれていないこともあろうかと思いますけれども、ぜひ大臣には、経済官庁であるということと、成長を担うさまざまなエンジンが国交省の中にはあるということの中で一度お目通しをいただければと思いますし、きょうの質問は、その中から幾つか掘り下げて質問をさせていただきたい、こう思っております。

 まずコンセッションについて伺いたいと思いますけれども、政府は、PPP/PFI推進アクションプランというのをつくっておりますね。このプランにおいて、空港、有料道路、水道、下水道、文教施設、公営住宅、MICE施設、クルーズターミナル、この各分野をコンセッション推進の重点分野と設定しているんです。

 つまり、政府としては、今申し上げたものをコンセッション推進の重点分野に設定をしているわけでありますけれども、このうち、有料道路分野のみが特区制度を使わないとコンセッションが活用できない仕組みになっているんです、特区制度を使わないと。

 しかも、この特区制度の対象は地方道路公社の有料道に限られておりまして、例えばNEXCOなどの、高速道路保有機構が持つ有料道路は含まれていない、こういうことになっているわけでありますが、ほかの分野と違って有料道路分野だけ、では、なぜ、政府全体としてはこの分野を重点分野に設定をしているにもかかわらず、有料道路だけが特区制度になっていて、そして保有機構に入っているものは含まれないという仕立てになっているのか、御答弁をいただきたいと思います。

石川政府参考人 ちょっと経緯を説明をさせて……(前原委員「経緯はわかっています」と呼ぶ)(石井国務大臣「私がよくわかっていない」と呼ぶ)

 お答えいたします。

 地方道路公社が管理いたします有料道路につきましては、道路整備特別措置法に基づき、公的主体である公社に限って有料徴収を可能としているため、コンセッション方式を活用することができないとされていたところでございますが、平成二十七年の構造改革特別区域法の改正において道路整備特別措置法の特例を設けることによりまして、公社管理有料道路につきまして、公社が運営権を設定し、民間事業者が道路の運営や料金の収受を行うコンセッション方式の導入を可能としたものです。

 また、全国的な措置でなく特区として導入した理由につきましては、まず、今回の特例により、愛知県道路公社におけるコンセッションを試行的に実施をいたしまして、民間の運営による効果、課題等を検証、評価しながら全国展開の是非を判断すべきものと考えたためでございます。

前原委員 では、今の御答弁をいただいた続きで質問いたしますけれども、この愛知県の道路公社の案件はうまくいっていますか。そして、どれだけの、公社で行った場合よりも、より高い収益というものが得られるという想定をされていますか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 愛知県道路公社におけますコンセッション事業につきましては、道路分野における初めてのコンセッション事業として、愛知県道路公社を管理者、愛知道路コンセッション株式会社を運営権者といたしまして、平成二十八年十月一日より運営が開始されているところでございます。

 これまでのところ愛知県からは、公社管理時と同様の管理水準やサービス水準を維持しながら運営が行われており、また、民間ノウハウを活用したパーキングエリアにおける地域活性化の取組や、地域の魅力と交通安全をPRするイベントの開催など、意欲的に事業に取り組んでいるというふうに伺っております。

 国土交通省といたしましては、愛知道路コンセッション株式会社が民間の知恵と工夫を最大限に生かしながら、効率性はもとより、利用者の安全、安心が確保され、良質なサービスが提供されることを期待しております。

前原委員 局長、私の質問に答えておられないんです。つまりは、特区でやってどれぐらいの収益が上がりましたかということを聞いているわけです。私が答えます。

 要は、三十年間で公社の場合は一千百六十九億円だったものが、民間に任せて千三百九十一億円の収支になるわけですよ。つまりは約二百億円ぐらい改善するわけです。二百億円、三十年間で、このコンセッション方式をやった方がプラスになるという、言ってみれば、特区における試行というもの、試しに行うということについてプラスになるわけです。

 それで、特区って何ですか。ここから大臣にお答えいただきたいんですけれども、特区というのは、うまくいくところが幾つか出てきたら、それを全面展開、普遍的にやっていくというのが特区の考え方ではないでしょうか。

 ということになれば、愛知県のほかには、きのうレクを伺うと、千葉県が同じようなことをやろうとされているという話を聞いておりますけれども、公社は結構あるんですよ。なくなっている公社もありますけれども、解散した公社は、二年前の三月の時点なので数が変わっているかもしれませんが、地方道路公社三十二、解散されたものが十二あるわけでありますが、三十二からあるわけです。その公社が、いわばこのコンセッション方式を、先ほど局長が御答弁されたように、特例制度でやれるわけですよ。

 愛知県では成功を一定程度おさめているということになれば、この特区制度を普遍的にやるということを行うべきじゃないですか。

石井国務大臣 平成二十七年の構造改革特区法の改正によりまして、地方公共団体が特区計画を作成、申請して認定されることによりまして、愛知県だけではなく、全国の公社の管理道路についてコンセッション方式の活用が可能となっております。

 現時点では、愛知県以外からは公社管理道路のコンセッションの実施に関する具体的な提案はいただいておりませんけれども、この愛知県の公社の先行事例について、他の道路公社へのコンセッション事業の適用拡大を図るために、情報提供を始めとした横展開を積極的に図ってまいりたいと考えております。

前原委員 今大臣が御答弁された中身を私なりに解釈しますと、愛知県はうまくいった、うまくいった例があるんだから、ほかの地方道路公社も、こういう仕組みがありますからできるだけ使ってくださいということを情報提供していこう、こういう御答弁だったと思うんです。

 もちろんタイムスケジュールはあると思います、どのぐらいの試行期間を置くのかということはあると思うんですが、特区というのは、うまくいったらこれは全面展開していくというのが特区の私は役割だと思いますので、今まさに大臣が御答弁されたように、情報提供していくということは、前向きに考えておられるということであれば、全体が、いわゆるコンセッションが道路においてもできるようにということを考えるべきではないかという質問をさせていただいております。いかがですか。

石井国務大臣 愛知県の事例をもう少しよく勉強しなければいけないというふうに思っています。

 愛知県の場合、この道路公社の場合は、ある意味でドル箱路線といいますか、非常に収益の高い、上がる路線があって、全体八つの路線をコンセッションをやれているという面がございます。

 各県の道路公社では必ずしもそういう路線があるとは限りませんので、どういう方式にしたらいいのか、何というんでしょうか、つまみ食いだけされるということになりますとちょっと困る面もございますので、もう少しよく愛知県の事例を研究して横展開をしていきたいというふうに思っています。

前原委員 おっしゃることは理解はできるんです。

 そうなると、実はここ、本丸があるんですよ、この話は。つまりは地方公社じゃないんです。NEXCOなんです。あるいは首都高であり、阪神であり、本四であり、こういったいわゆる高速道路の償還主義というものを見直して、そして、ある意味での恒久有料です。こういった形にしていくということにこの話を突き詰めていけばつながるんではないかという話なんです。それはちょっと後で質問させていただきます。

 その質問をする上で一つおもしろい事例があるので、紹介させてもらいたいと思います。

 福岡県の八木山バイパスというのがございますけれども、建設費の償還を終えて無料化したんです、この有料道路を。そしたら交通量が倍増して、朝夕を中心に渋滞が頻発して、人身事故は三倍になった。つまり、無料化してこういう形になったんです。

 これはまずいということで、最近一年では三時間から七時間の通行どめが六回発生しているということで、福岡県などが四車線化を要望している、こういうことなんです。(発言する者あり)よく御存じで、福岡選出の議員さんがお二人並んで、鳩山さんもおられるから三人おられた。(発言する者あり)四人おられる。皆さんおわかりだと思いますけれども、飯塚とあれは篠栗でしたかね、そのところを結んでいるところでありますけれども……(発言する者あり)えっ、鬼木さんの選挙区ですか。(発言する者あり)宮内さん。鬼木さんじゃなかった、失礼しました。

 何を言おうとしていたのか忘れました。そうそう、ですから、償還が終わって無償化したら、混雑をして事故が多発する、渋滞ができるということ、だから無償化はどうなのかということを言っているんじゃないんです。これからこの道路は四車線化して、片側一車線を二車線化して、そしてもう一遍有料道路に戻そう、こういう考え方をされているわけです。

 それで、今の法律の仕組みというのはどうなっているかというと、現行制度は再有料化には建設投資を必要とする、したがって、この八木山バイパスも車線の拡幅の投資を行うということで、それをすると再有料化ができる、こういうことになるわけであります。

 かように、償還が終わっても維持管理は必要だし、お金がかかるし、老朽化対策が必要だし。そして、これは、高速道路の無償化、我々の政権のときに無償化の議論にもあったわけですけれども、無償化するところと有料化で残しておくべきところというのは、やはり、お金を払って混雑したら話にならない、あるいは、無料化して混雑したら高速道路の役割を果たさないということの中でどう峻別するかという社会実験をやっていたわけでありますけれども、こういう形で考えると、要は、恒久有料ということをしっかりと今後、地方公社だけではなくて、全体的にも考えるということが必要になってくると考えるわけでありますが、大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

石井国務大臣 我が国の高速道路については、厳しい財政状況のもと、早期に道路を整備するために、建設や維持管理費を料金収入で賄う有料道路制度を導入しておりまして、原則は、償還期間満了後は無料開放することとしております。

 こうした中、老朽化が進む高速道路の更新について計画的に実施をするため、平成二十六年に道路法を改正をいたしまして、料金徴収年限を十五年間延長しまして二〇六五年までとしたところでありますが、その際の道路法改正時の附帯決議におきましては、償還満了後においても維持管理費用について利用者負担とすることを検討とされております。

 また、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会におきましても、今後の検討課題といたしまして、今後の維持修繕・更新に係る財源の確保については、更新事業の進捗や技術の進展等も踏まえつつ、税金による負担との関係も含め、償還満了後の料金徴収や大型車対距離課金の導入などについて、引き続き精力的に検討すべきとされているところでございます。

 こういった料金徴収期間のあり方については、今御紹介したような提言等もございますので、私どもとしては、引き続き議論を深めていきたいというふうに考えております。

前原委員 そういう議論はあったということをわかった上で、大臣がどのように、つまり政府として、繰り返し申し上げますけれども、コンセッションをこの分野においては進めていくということの一つが道路なんです。そして、特区で愛知はうまくいっている、そしてほかのところも手を挙げてもらいたい。しかし本丸は、やはり全国をカバーしている高速道路なんです。

 先ほど大臣がおっしゃったように、まず、民営化するときに三十年を四十五年に延ばしたわけです。そして今御答弁されたように、平成二十六年に、このときに償還期間をまた十五年延ばしているわけです。ということは、平成七十七年まで償還期間をどんどん延ばしていっているわけです。

 では、それは延ばし続ければいいだろう、固定資産税の問題もあるかもしれない、そういうのはあるかもしれませんけれども、やはり、維持や管理、そして老朽化対策、そして先ほどの八木山バイパスの例も含めて、無償化することによってより混雑をし、その道路の優位性というものが失われる場合もあるというようなことを考えたときに、この高速道路のいわゆる恒久有料化、それをコンセッション方式でやるかどうかは別にして、そういうことはしっかりとやはり検討課題にして、大臣のリーダーシップで、そういうものについて附帯決議等もあるのであれば、あるいはそういった提言があるのであれば、考えますというようなことをぜひ私は御答弁をいただきたいと思いますが、いかがですか。

石井国務大臣 道路法を改正したばかりでございますので、この償還期間をまた直ちに変えるというのは事実上は難しいかと思いますが、今御指摘いただいたことは非常に重要なことと認識をしております。

 私どもとしても、しっかりと議論を深めていきたいというふうに思っております。

前原委員 ぜひ前向きに御検討いただければというふうに思います。

 もう一つの分野、水の分野で一つ、二つ質問をさせていただきたいわけであります。

 東日本大震災の後、あれは五月、連休の後だったと思いますけれども、あれは、三月十一日に地震が起きて、五月、ゴールデンウイークの後だったと思いますけれども、その前にも何度か被災地にも足を運ばせていただいておりましたけれども、仙台に行きまして村井知事とお話をして、仙台空港と、それから宮城県の海岸もいわゆる上下水道が壊滅的な打撃を受けているということの中で、特に小さな町では、技術者も亡くなられている、犠牲になられているということも含めて、宮城県が広域的な水道のいわゆるグループをつくって、空港とそれから上下水道については、いわゆる公設民営というコンセッションでやられればいかがですかという提案をさせていただきました。

 ちょうど関空、伊丹の統合をやって、それで第一号としてこういうコンセッションのやり方というのが一つ進みつつあるところでありましたので、そういう提案をさせていただきました。

 そのときに、結果的には空港についてはコンセッションをやられるということだったんですが、水道については、これは熱心に検討されたんですよ、検討されたけれどもなかなかできなかった。平成二十九年、去年ですか、まだ宮城県はデューデリでやられているんです、これについて。

 この国会に、国会はあとわずかになりましたけれども、改正水道法というのが出てまいります。この水道というものも、後で質問をさせていただく海外展開ということを考えれば、この分野においてコンセッションというものをしっかりと定着させるということも大事だと思いますが、この改正水道法というものが前提になれば、宮城県や、あるいはほかの自治体というものは、浜松なんかもこれは前向きに考えておられるという話を仄聞したことがありますけれども、この水道のコンセッションというのは実現できるんですか。どうお考えですか。

石崎政府参考人 御指摘いただきましたとおり、内閣府の方でこのPPP、PFIにつきましてアクションプランを定めて、上下水道、上水道、下水道双方とも、重点分野として推薦をさせていただいてございます。

 現行の水道法に基づきましても、水道をコンセッション方式でやるというのは法制としても可能でございますし、また、御指摘いただいた宮城県においても、上水道、下水道に関して、現在、積極的な検討をしていただいてございます。

 また、今回、水道法が改正されますと、管理者が市町村のまま、そのままコンセッションをするということができますので、一歩またやりやすくなるという面がございます。

 そういう面でも、今回、コンセッションの方で水道法の改正をかけていると聞いてございます。

前原委員 今お答えいただいたとおり、改正水道法でありますと、今だと自治体が、言ってみれば、この水道を持つのか、あるいは民間が持つのか、二者択一になっちゃうわけです。だから、今もできることはできるんですよ。しかし、天変地異などの起きやすいこの日本列島において全体のリスクをなかなかとれない、こういうことなんです。

 それで、実際に自治体が持ちながらも、その運営について民間に委託ができるということになればかなりプラスになるというふうに思うわけでありますが、私が伺いたかったのは、検討されている宮城県とかあるいは浜松市というのは、その改正水道法、つまりは、今の水道法ではできなくはないですけれども、それだけリスクを負えないということを多分おっしゃっていると思うんです。これは議論されていると思うんです、国交省さんの方でも。

 その際に、改正水道法だったら全て、全てとはちょっと言い過ぎかもしれませんが、いわゆる自治体が逡巡していることについてクリアできるのかどうなのか。その点について御答弁いただけますか。

石崎政府参考人 基本的に、コンセッション、現行水道法でやる場合にも、公共団体があくまで所有権を持って、最終的な責任を持った状態で運営を民営に任せるという方式でございます。その任せる分野、分担をどのくらいにするかというような考え方の中で改正水道法ができた方が、より自由度が広がるという面でございます。

 ただ、いずれにしましても、それにはどういう形で公と民が役割分担を持つかというのは、それぞれの公共団体がそれぞれの特性に応じて判断すべきものでございます。水道法ができた方がよりその自由度が上がるといった意味で宮城県等も改正を期待しているというふうに聞いてございます。

前原委員 石崎さん、私の認識では、現在の水道法は、自治体の持っている水道事業に関する認可を取り消して、そして民間に移すという、法的には完全に責任が自治体から民間に移る形でしかコンセッションが活用できないという認識なんです、私は。今の御答弁はちょっと違うんですけれども、そこはまた、よりお詳しいのはそちらの方だと思いますので、要は私が申し上げたいのは、水道というものも、コンセッションを広げていくためにこの改正水道法で事足りるのか。つまりは、浜松市やあるいは宮城県といったところが、考えておられるところが改正水道法でそれがクリアできるものでなければいけない。

 そういう問題意識を持っているということで私は質問させていただきましたので、水道も広めていくという意味においては、そういったものを担保されているという確認をぜひしていただきたいという意味で質問をしたということでありますが、大臣、何かありますか。

石井国務大臣 恐縮ですが、水道は厚労省の方の所管なものですから、私どもは下水道については申し上げられるのですけれども、実は、下水道も本年四月から浜松市において、コンセッション事業者による事業運営が開始をされまして、そのほか、それに続いて今検討をしている自治体としましては、奈良市ですとか、神奈川の三浦市ですとか、高知県の須崎市、山口県宇部市、宮城県村田町の五つの市、町がございます。

 ただ、まだ下水道のコンセッション、先行事例が少なく、各自治体における理解やノウハウが不足してございますので、私どもは、先行事例の案件形成に向けてガイドラインの策定を行ったり、あるいは先進的な事例の共有を図る、そのほか、コンセッション方式を導入しようとする地方公共団体に対して導入可能性調査や施設の資産評価に係る財政的支援などを行っておりまして、今後とも必要な支援を実施をしてまいりたいと思っております。

前原委員 役所の所管でいうと水道は厚労省であったり農水省であったり、あるいは下水道は違うというのはあるかもしれない、下水道もほかのところもございますが。海外に展開するとか、あるいは、自治体においては一括してやりたいというところもあろうと思いますので、私が申し上げたのは、コンセッションというやり方だと、その分、民間の知恵、資金を活用して、国民に対するサービスが費用面でも中身においても向上する、それをしっかりと担保をしていただきたいということで質問をしているということで、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。

 次の質問に移らせていただきたいというふうに思いますが、飛ばすことで、答弁のために来ていただいている方はちょっと申しわけない面も出てくるかもしれませんが、次はライドシェアについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 タクシー業界がおっしゃっているように、アメリカなどで行われているウーバーという仕組みをそのまま日本に持ってきてライドシェアをやるということについては、私は反対であります。

 他方で、幾つかの点で、全くノーですよということで抗し切れない部分があるんではないかという面があり、そこをどううまくハンドリングしていくかということが大事なことではないかと思って、質問をさせていただきたいというふうに思うわけであります。

 私の選挙区は京都の市内ではありますけれども、北半分が、いわゆる山間地の限界集落が点在をしているところでありまして、京都市内なんですよ、京都市内なんですが、京都市内の一番北部に広河原という場所があるのでありますけれども、その広河原まで行っている京都バスは一日三往復しかありません。三往復だけで、町中に出るのに、バスで町中に出たことがありますが、車でも一時間半ぐらいかかる。タクシーを呼んでも一時間半、来てもらうのにかかる。こういうようなところです。久多というところは、北ではないんですけれども、もっとなかなかタクシーとかが来てもらいにくいところなんです。

 しかも、御承知のとおりそういった限界集落というのは、住まれている方々はほとんど御高齢の方々であります。そういう方々が、例えば病院に行きたいとか、あるいは買物に行きたいとかいう場合において、公共交通機関であるバスというのは三往復しかない。それから、タクシーを呼んでもなかなか来てもらえないし、むちゃくちゃ高い、値段的に。

 こういうことを考えたときに、ライドシェアという考え方を、むしろ私は地元のタクシー会社の方々に、しっかりと取り入れるようなことをやった方がいいんじゃないかということを申し上げているわけです。これについて大臣の御答弁をいただきたいことが一つ。

 もう一つは、タクシー業界のみならず、人手不足というのは非常に今深刻化しておりますし、タクシーの運転手さんの高齢化がかなり進んでいると思うんです。タクシーに乗ると、大丈夫かというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、七十歳以上の方々もかなり多いですし、きのう国交省のレクを伺ったときには、ドライバーの平均年齢が五十八歳ぐらいじゃないか、こういうお答えもございました。

 このいわゆる労働者不足そして高齢化、それは自動運転が確立をすればまた違う話になってくるかもしれませんが、それはまだ私は先の話だと思うんです。そういった、今申し上げた二つの要素、過疎地における、特に高齢者の足を考えたときにどうするのかということと、それから、ドライバーの数が少なくなり、そして少子高齢化が進んでいるということを考えたときに、単にライドシェアはだめだというようなことで果たして済むのかという問題意識を持っていますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

石井国務大臣 タクシーは、ドア・ツー・ドアの輸送を提供できる公共交通機関として、住民の日常生活の足の確保に重要な役割を担っております。

 タクシー事業者が配車アプリを活用して、地域住民に利用しやすく、効率的に配車が行えるサービス提供を行うことは、地域公共交通の利便性向上に資するものであると考えております。主要な配車アプリの導入状況を見ますと、全国各地のタクシー事業者が、アプリによる配車への対応を既に始めているところでございます。

 また、地域住民の日常生活の足の確保のためのタクシー事業者の取組としましては、通常のタクシーサービスを提供することに加えまして、地方公共団体と連携をして、乗り合いタクシーの運行、いわゆるデマンドタクシーですね、の運行を積極的に行っております。平成二十八年度末時点で、全国で四千百七十四コースの乗り合いタクシーが運行されております。

 タクシー事業者は、継続的に地方公共団体を訪問されて、地域のニーズに応じたタクシーサービスの提案を行い、地域の移動手段の確保に更に貢献するよう取り組んでいただいておりますので、国土交通省といたしましては、地方運輸局を通じまして、タクシー事業者と地方公共団体との連携強化についてしっかりと支援していきたいと考えております。

前原委員 アプリの話をされました。後で質問しようと思っていたことですが、インバウンドがふえてきて、そして、海外から日本のタクシーの配車というものを行えないのかということで、韓国あるいは中国、それからウーバー、こういった、韓国はカカオですか、それから中国は滴滴、そしてウーバー、こういったところが大手のタクシー会社と協力しながら、今おっしゃったようなアプリを使っての配車サービスというものをやっているということもあわせて、私はそういったものがどんどん進んでいくということについて、むしろ、タクシー業界が全く努力されていないということを申し上げるつもりはありませんが、ただ、私は一番初めに伺いたかったのは、観光客というのは二の次だと言うつもりはありませんが、大事なことですので、インバウンドをふやすということは。ただ、生活の足として今おっしゃった乗り合いのようなものというのは、実際、先ほど私が申し上げた地域ではないんですよ。ないですし、そしてまた、タクシーもそんな山の中は走っていないわけです。配車アプリを使ったところで、そんなすぐ近くにタクシーなんかないわけですよ。

 したがって、白タクを私は認めるということについてはもちろんそれは絶対反対なわけでありますけれども、タクシー会社が地域住民と協力をしながら、例えば契約を結んで、そして乗り合いみたいなものをしていくというような形で、少し違った協力の仕方というものを、その地域のタクシー会社が中心となってやるということについて後押しをするということがあってもいいんじゃないかと思うわけです。

 先ほど大臣のおっしゃったことがいろいろな地域で取り組まれているということは私も認識をしておりますけれども、それにはまらない地域というのがあるんです。そういった地域においては、地域住民に相乗りをさせてもらうというようなことがやはりあってしかるべきではないかというふうに思うわけでありますけれども、その点についていかがかということを質問させていただきます。

石井国務大臣 先ほどの答弁で御紹介させていただいた以外にも、例えば、自家用有償旅客運送ですとか、あるいは、いわゆるボランティアでやる分については、その実費等を支払うことはそれは許されていますので、その場合を、どの程度が実質的なお礼として認められるのかとか、そういったところについて必要な枠組みの整理も行いながら、このタクシーが、あるいは自動車が、公共交通、バスやタクシーの少ない地域でいかに地域の足を支えていくようになるか、いろいろなケースで我々も勉強していきたいというふうに考えています。

前原委員 国交省には地方運輸局がありますし、地域に応じたニーズ、問題点というのは上がってくると思いますので、そういった多様な取組というものをしっかりとそういう出先機関で頑張っていただきたいということは申し上げておきたいと思います。

 では最後に一問、質問をさせていただきたいと思います。

 いわゆるインバウンド増加に伴う違法行為です。特に京都なんかは、白タクというのが、関空を始め大変散見をされていて、警察も、あるいは国交省さんも頑張っていただいていると思うんですが、検挙数が極めて少ない。恐らく氷山の一角にもなっていないのではないかと私は皮膚感覚で思うわけでありますけれども、むしろこういったものを徹底的に取り締まるということが業界に対するサポートになるというふうに思うわけでありますけれども、現状をどう認識をされていて、そしてさらに、私は氷山の一角だと思いますよ、今検挙できているのは。氷山の一角だと思いますけれども、こういったものについて更にしっかり取り締まるためにはどうしたらいいかということを、大臣、それから警察から答弁をいただきたいと思います。

石井国務大臣 御指摘の訪日中国人に対する白タク行為は、道路運送法違反であり、利用者の安全、安心の観点から問題がございます。

 国土交通省では、このような白タク対策につきまして、警察庁、法務省、業界団体等と連携をし、各地で取締りを強化するとともに、中国語等での注意喚起のチラシの作成、配布を行っております。

 本年は、訪日中国人が増加をいたします二月十五日から二十一日の春節の休暇に合わせまして、取締りや啓発活動を強化をいたしました。

 また、昨年、中国政府に対しまして、中国国内における制度の周知やマッチング事業者への指導につき、協力要請を行いました。その後、本年の春節期間前に、在京中国大使館のホームページにおいて二回にわたり、訪日中国人に対し、営業許可がない車両は安全上の問題が無視できないため、利用しないよう注意喚起がなされたところでございます。

 これらの対策を行う中で、これは報道等でありますが、昨年は三件七名検挙、本年は五月までの間で八件十一名、道路運送法違反等の疑いで検挙されたと承知をしております。

 引き続き、関係機関と連携をしてしっかり対策に取り組んでいきたいと思っております。

西村委員長 長谷川審議官。

 既に時間が経過しておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたいわゆる中国式の白タク行為につきましては、道路運送法に違反する犯罪でございまして、利用者の安全確保の観点からも問題があるものと認識してございます。

 警察におきましては、こうした白タク行為に関連する情報の収集ですとか、あるいはその検挙、これに努めてまいるとともに、国土交通省等、関係機関、団体等との連携によりまして、その排除に向けた諸対策を引き続き推進してまいりたいと考えております。

前原委員 終わります。ありがとうございました。

西村委員長 次に、もとむら賢太郎君。

もとむら委員 無所属の会のもとむら賢太郎です。よろしくお願いいたします。

 ゲリラ豪雨についてはこの委員会でも何度も取り上げてまいりましたが、気象庁によりますと、一時間に五十ミリ以上の短時間豪雨の発生回数は、昨年で三百回を超えて、アメダスによる観測当初の十年間と最近の十年間を比較すると約一・四倍になっているという話もございます。

 そこで、私の地元神奈川県そして東京都の県境をまたぐ河川として、境川という川があります。私の自宅もここから歩いて二、三分のところにあるわけでありますが、境川の河川の氾濫という問題も、特に神奈川県相模原市側では大きな問題となっております。

 神奈川県と東京都による整備状況の違いが生じておりまして、例えば東京都側は、管理区間はおおむね五十ミリ対応の対応が完了しているものの、神奈川県区域は、一部を除いて三十ミリ対応にとどまっております。そこで、私どもの相模原市も、下水管の工事に対しまして、神奈川に合わせた形で、時間雨量五十一ミリに対応する雨水管の整備に取り組んでおるわけであります。

 そこで、雨水管を整備していてもボトルネックが発生しておりまして、さまざまな、東京都側から神奈川県から、そして横浜市も、この境川水系河川整備計画の、まあ三つの自治体が関連しておるわけでありますけれども、そうした中で、この境川において国交省が積極的にかかわり、助言指導などを行うことで事業の加速化を促すべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、鬼木委員長代理着席〕

山田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、境川は、上流から神奈川県管理区間、それから東京都管理区間、再び神奈川県管理区間を流れまして相模湾に注ぐ二級河川でございます。

 境川では、これまでも神奈川県と東京都が連携をいたしまして、それぞれの河川管理者の役割分担のもと、上下流バランス等に配慮しつつ適切に河川整備を進めていると聞いているところでございます。

 一方、神奈川県相模原市の下水道事業の雨水幹線整備におきましては、時間雨量五十一ミリの降雨を目標に整備を進める中、神奈川県区間の河川が改修途上であることから、排水を調整している状況と聞いております。

 これについて、神奈川県からは、境川の河川改修の課題として、下流の神奈川県区間において、沿川の住宅等が連担している区間の対応ですとか、あるいは橋梁等の横断工作物の対応に長期間を要するためと聞いております。

 したがいまして、この下水道の排水調整の課題は、県境をまたぐことが要因ではございませんけれども、国土交通省といたしましても、神奈川県による河川整備について、引き続き、防災・安全交付金により支援するとともに、神奈川県から技術的支援等の御相談があれば積極的に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

もとむら委員 平成二十七年四月に策定した境川水系河川整備計画では、時間雨量六十ミリメートルの降雨に対応するため、河道整備や遊水地の整備までおおむね三十年で整備目標を達成するということになっておりますが、神奈川県だけでも三十年間で一千二百億円もの予算が必要ということでありまして、国交省は社会資本整備総合交付金や防災・安全交付金などの交付によって地方自治体の事業を支援しているというふうに伺っておりますが、地元相模原市からもそういったさらなる支援を期待する声が多くございますので、今後も引き続き御支援よろしくお願い申し上げます。

 次に、公共交通空白地域についてお伺いいたします。

 この公共交通空白地の有償運送が各地で行われておりまして、先ほど前原先生の方からも御質問ありましたけれども、相模原市の中山間部においては、バス事業者から不採算性による撤退の申出がありまして、公費負担によって維持、確保を行っており、バス路線に対する国の補助制度もありますが、交通空白地区の実態にそぐわない、補助限度額によって十分な支援が受けられていないという声があります。

 そこで、市は、路線バスに加えて事前予約制の乗り合いタクシーなどを導入しておりますが、乗り合いタクシーの公費負担も限りがありますので、公共交通空白地の有償運送での支援が検討されたらいいなというお声もいただいております。その中で、運行の方法にガイドラインが欲しいという声を地元自治体からもいただいておるんですが、国交省はどのように捉えていらっしゃるでしょうか。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省といたしましては、地域における移動手段の確保は重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 まず、そのための手段といたしましては、道路運送法による許可を受けたバス、タクシーによる輸送がございます。しかしながら、バス、タクシー事業者によることがどうしても困難である場合に限りまして、市町村やNPO法人等が自家用車を用いて有償で運送できることとする自家用有償旅客運送制度が設けられております。

 国土交通省におきましては、高齢者の移動手段の確保に関する検討会の中間取りまとめを受けまして、これらの輸送手段を、適切な役割分担のもと、地域の交通ネットワークを円滑に構築するために、自家用有償旅客運送の活用に資する手続の合理化、効率化を図るガイドラインを策定をいたしまして、自治体などの関係者に周知をしたところでございます。

 具体的には、このガイドラインによりまして、バス、タクシーといった交通事業者の活用可能性や交通事業者への委託による自家用有償運送の検討を行うなどの検討プロセスの明確化でありますとか、検討プロセスを一定期間かけて行ったことをもって自家用有償運送の導入に必要な合意が成立したとみなす取扱いの確立などを図ったところでございます。

 国土交通省といたしましては、本ガイドラインを活用いたしまして、バス、タクシー、自家用有償旅客運送により、適切な役割分担のもと、地域の交通ネットワークが円滑に構築されるよう、地方運輸局を通じて今後とも必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

もとむら委員 検討に際して、運行管理に関する明確な基準がなく、技量の確認について定期的に行うなどを定めたガイドラインを示してほしいという声がありますので、そのことを十分御認識いただいた中で進めていただけたらというふうに思います。

 次に、公共交通空白地において、デマンドタクシー、いわゆる乗り合いタクシーなどのさまざまな取組が行われておりますけれども、タクシーは公共交通であるという認識がまだ低いように思います。タクシーは、旧タクシー特措法において初めて公共交通として位置づけられたところとは承知をしておりますけれども、この公共交通としての位置づけ、乗り合いタクシーなどの取組に対する国の支援について伺います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 タクシーは、利用者のニーズに応じたドア・ツー・ドアの輸送を提供することができる公共交通機関として、地域の足の確保に重要な役割を担っております。

 今先生御紹介いただきましたタクシー特措法のほか、地域公共交通活性化再生法におきましても、公共交通事業者としてタクシー事業者が位置づけられておりまして、地域公共交通網形成計画の作成及び実施に関し必要な協議を行うための協議会には、関係するタクシー事業者が参加することとなっております。

 協議会での協議を通じまして、タクシー事業者は、地域公共交通を維持するため、ドア・ツー・ドアの輸送という強みを生かしまして、地方公共団体と連携して、平成二十八年度末時点で、ディマンド型の乗り合いタクシーも含めまして、全国四千百七十四コースの乗り合いタクシーを提供しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、地域公共交通確保維持改善事業におきまして、ディマンド型も含めた、乗り合いタクシーによる地域内の生活交通の運行を支援いたしておるところでございます。

 引き続き、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮できるように、必要な支援を行ってまいりたいというふうに考えております。

もとむら委員 タクシーは地域公共交通であるという認識はまだ薄いように感じます。ほかの公共交通に比べて利用料金も高く、タクシーに乗るのがぜいたくだという認識の方が強いのかなという思いもございまして、一点指摘をさせていただきますと、地域公共交通網形成計画策定の際、協議会のメンバーにタクシー事業者が入っていないという声もございますので、そういった声も十分鑑みながら前へ進めていただきたいというふうに思います。

 それでは大臣に、この公共交通空白地の解消に対する御見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 公共交通空白地の解消を始めとしまして、地域における移動手段の維持及び確保を図っていくことは重要な課題と認識をしております。

 国土交通省といたしましても、自家用有償旅客運送の導入の円滑化やデマンドタクシーに対する支援等により、地域の取組を支援しているところであります。

 加えて、過疎地域等を中心としまして、地域の互助による移動手段の確保が必要となる場合について、いわゆるボランティア輸送の明確化等、必要な枠組みの整理も行っております。

 さらに、こうした地域の実情に応じたさまざまな創意工夫が円滑に進むよう、地方公共団体に対する人材育成やノウハウ面での支援も行っておりまして、こうした政策を通じて、引き続き、地域の移動手段の維持及び確保に努めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 次に、電車の遅延についてお伺いいたします。

 私も神奈川県相模原市から毎日電車に乗って国会に来ておりますが、小田急線の遅延など非常に、伊藤委員も同じでありますが、かなり巻き込まれてつらい思いもしたこともありますけれども、この首都圏の電車の遅延について、国交省のワーキンググループは平成二十八年四月に最終取りまとめを行っておりますが、その後、遅延対策や遅延の発生状況はどうなっているのか、お伺いいたします。

藤井政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十八年四月の交通政策審議会のワーキンググループの取りまとめを受けまして、国において、平成二十八年度の東京圏における遅延の発生状況、原因を整理し、平成二十九年の十二月に公表しております。これはいわゆる遅延の見える化というふうに言っているところでございます。

 これにより、例えば十分未満の小規模な遅延、この原因の六割以上は、乗降時間の超過やドアの再開閉など利用者に関連するところに原因がある、あるいは、三十分以上の大規模な遅延の原因の四割以上は自殺である、そういったところが明らかになってきているところでございます。

 この公表結果も踏まえまして、各鉄道事業者におきましては、乗降時間の短縮効果が期待できるワイド扉の車両の導入あるいはホームドアの整備といったハード面の対策に加えまして、乗車位置のサインの変更、ホーム要員の増員、利用者への時差通勤や乗車マナーの呼びかけなど、ソフト面の対策もあわせて進めているところでございます。

 なお、平成二十八年度の遅延の発生状況について見ますと、東京圏の鉄道については、平均して一月のうち十一・七日間、遅延証明書が発行されているということで、これについては、その前の年度と比べてほぼ横ばいということでございます。

 今申し述べました各種対策の効果によってこういった遅延状況が改善することを期待しているところでございます。

もとむら委員 東京都の小池知事が、満員電車解消のために通勤電車を二階建てにすることや時差通勤を提案をしておりますが、こうした提案について国交省としてはどのように受けとめているのか、お伺いいたします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 都市鉄道のピーク時間帯の混雑緩和によって快適な通勤通学を実現すること、これは、豊かな国民生活にとって重要な課題であるという認識をしております。

 東京都が昨年七月に、時差ビズと銘打って、関係企業等に対して、時差出勤の導入あるいは混雑の見える化などによって鉄道利用の分散を働きかけた、このことは、快適通勤を実現するための有意義な取組であると認識をしているところでございます。

 国土交通省としましても、東京都の取組に協力するとともに、早朝時間帯の利用者に対しICカードのポイントを付加する等、鉄道事業者の先行的な取組を広く横展開すること等によって通勤電車の混雑緩和を引き続き推進してまいりたいと考えております。

    〔鬼木委員長代理退席、委員長着席〕

もとむら委員 東京都では昨年から、通勤時間をずらして混雑を回避する時差ビズを開始しておりまして、今年度は七月九日から八月十日に千社参加を目指して実施をされるというふうに伺っておりますし、また、総二階建ては、ホームを二層にして一、二階が同時に乗りおりできるようにすることで時間も短縮できるというふうに伺っております。また、投資額は複々線化よりも安価ということでありますので、こういった東京都の提案なんかも、いわゆる時差通勤や二階建ての形をつくることによって、快適に通勤通学ができるような今後の方向性をまた考えていただきたいというふうに思います。

 最後に、首都圏の電車の遅延解消に対する大臣の御見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 鉄道の定時性は鉄道輸送の信頼性の基盤であり、首都圏の鉄道において日常的に発生している遅延への対策は重要な課題と認識をしております。

 各鉄道事業者におきましては、乗降時間の短縮や、混雑に向けたハード、ソフト両面の対策を進めてきているほか、国においても、先ほど御紹介いたしましたように、昨年十二月に遅延の発生状況の見える化を図ったところであります。

 国土交通省といたしましては、今後も遅延の発生状況について継続的に調査、公表を行い、その結果を踏まえて各鉄道事業者に対しハード、ソフト両面での取組を働きかけるとともに、鉄道事業者と協力をしまして、鉄道利用者へのマナーアップを呼びかけるなど、各種の対策にしっかりと取り組み、首都圏の鉄道の遅延解消に努めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 次に、富士山の噴火対策についてきのうの産経新聞の朝刊に、「富士噴火 その時、首都圏は」という形で、「降灰一センチで水道停止」「十センチなら配送網寸断」、政府が対策を検討しているという記事がございまして、これを見てちょっと数点質問させていただきます。

 政府は富士山が噴火した場合の降灰対策について本格的な検討を始めるとのことでありますが、具体的な被害想定や今後のスケジュールについて伺います。

伊丹政府参考人 お答えいたします。

 富士山が噴火した場合の降灰対策につきましては、都市機能が集積している地域を含めた大規模噴火時のモデルケースとして、今年度から検討することとしております。

 各種対策の前提となる降灰による被害の想定につきましては、過去に有識者から成る検討会において取りまとめられたものはございますが、最近の科学的知見や噴火事例等を踏まえて改めて検討する必要があり、これに取り組む予定でございます。

 過去の海外を含めた火山の噴火事例では、降灰による影響として、例えば、農作物の生育障害、道路の通行支障、あるいは空港滑走路の閉鎖等が報告されているところでございます。

 今後、これまでの調査結果等を踏まえて、大規模噴火時の降灰の影響を整理し、有識者の御意見を伺いながら、対応措置について検討を進めてまいりたいと考えております。

もとむら委員 富士山の最後の爆発というのは、江戸時代中期の宝永四年、一七〇七年、宝永大噴火以来三百年強ないわけでありますけれども、改めて、一月に草津の白根山や平成二十六年には御嶽山などの火山噴火も相次いでおりまして、私も災害特に今委員としていますが、全国で、さまざまな地域で火山噴火のニュースも入っておりますので、富士山のこの噴火に対しましての対応はぜひとも前向きに捉えていただきたいと思いますし、この産経新聞によりますと、「首都高速道路は約二年前に対策を検討し始めたばかり。現状では清掃車両をフル稼働させて除灰するしかないという。道路だけでなく、ジェットエンジンが使用できないため航空機は大量に欠航し、東海道新幹線への影響も考えられる。」ということで、こうした交通インフラ分野も非常に国交省として今後対応が必要になってきますので、こうしたことが起こらなければ一番いいんですが、万が一のために備えて、対応を内閣府とともに進めていただきたいと思います。

 最後に、この富士山の噴火対策に対する国交大臣の見解、意気込みを伺いたいと思います。

石井国務大臣 一七〇七年に富士山で発生をいたしました宝永噴火では、大量の火山灰が東側の山麓から首都圏周辺にかけて降り積もっておりまして、噴火に伴い、社会的、経済的影響が懸念されますので、さまざまな広域的な対策の実施が重要と認識をしております。

 これまでも富士山周辺におきましては、噴火後の土石流の対策としまして、沈砂地の整備や訓練等、ハード、ソフトの両面から火山防災対策に取り組んできたところであります。

 今回、内閣府において、富士山が大規模に噴火した場合、何が起こるのか、具体的な被害想定について検討を始めると聞いておりまして、まずは、その結果を踏まえまして国土交通省として対策を検討してまいりたいと考えております。

もとむら委員 これで質問を終わりにします。ありがとうございました。

西村委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、住宅問題について質問をいたします。

 まず、改正住宅セーフティーネット法についてお聞きします。

 この法改正は、昨年の通常国会で参考人質疑も経て全会一致で成立し、十月二十五日に施行されました。単身の高齢者や生活保護の受給者に対し民間賃貸住宅の大家さんの拒否感が高いことや、総務省の調査でも、六十五歳以上の高齢者世帯のうち、民間借家に居住する世帯の約六割が年収二百万未満の低収入であることなど、住宅困窮者対策が求められる中、増加する空き家の対策とあわせてつくられた制度であります。

 二〇二〇年度末までに十七・五万戸、年間五万戸相当の登録住宅を確保する目標で開始いたしましたけれども、法案の審議当時から、規模が小さ過ぎるという意見もございました。家賃低廉化措置の予算も一七年度はわずか三億円で、桁が違うという指摘が法案審議の過程でも上がりましたけれども、新たな住宅セーフティーネットへの期待は非常に大きいものがございます。

 そこで聞くわけですけれども、住宅確保要配慮者の入居を拒まないセーフティーネット住宅の登録数は何戸であるのか。総登録戸数と要配慮者専用住宅の戸数を答えていただきたい。また、改正法施行の後で住宅確保要配慮者の方が何世帯入居されたか、把握しておられますか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十月に施行された改正住宅セーフティーネット法に基づく住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅につきましては、五月二十一日現在で七百七戸が登録されたほか、千四百十四戸が受け付け審査中となっております。

 なお、登録済み住宅のうち、要配慮者専用のものは二百八十一戸というふうになっております。

 それから、そのうちの要配慮者の数でございますが、まず、要配慮者専用のものは当然その要配慮者がお入りになられて、それから、入居を拒まない賃貸住宅につきましては全てが住宅確保要配慮者という形にはなっていない、こういう状況でございます。

宮本(岳)委員 改正法施行の後の入居数はわかりますか。

伊藤政府参考人 セーフティーネット住宅で入居中のものは四百七十四戸でございまして、入居者属性のわかる二百八十八戸のうち、住宅確保要配慮者が入居しているものは百八十二戸となっております。

 また、そのうち、要配慮者専用住宅というのは百六十二戸という形になっております。

宮本(岳)委員 いずれにせよ、極めて少ないわけです。

 では改めて聞きますけれども、昨年度三億円の予算がついた家賃低廉化措置は適用されているのか。自治体数、世帯数、低廉化された金額を答えていただけますか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 家賃低廉化補助の平成二十九年度の実績についてでございますが、改正法が施行されたのが昨年の十月ということもございまして、まだ間もないことから、静岡県の長泉町において、ことし二月から三月までの間、十四戸に対して計六十八万戸の補助を行ったという状況でございます。

宮本(岳)委員 六十八万戸とおっしゃいましたけれども、六十八万円ですね。訂正してくださいね。

伊藤政府参考人 大変申しわけありませんでした。

 十四戸に対して計六十八万円の補助ということでございます。大変失礼申し上げました。

宮本(岳)委員 聞けば聞くほど寂しい数字なんです。

 私の選挙区の近畿では、滋賀県、奈良県、和歌山県では、登録住宅そのものがゼロです。年間五万戸相当という政府の登録目標からすれば、ことしの三月末までに二万五千戸の登録がされていなければならない計算になりますが、遠く及ばない。

 そこで聞くんですけれども、国交省は、住宅セーフティーネットの開始として、これで十分だ、仕組みづくりが順調に進んでいる、こうお考えでしょうか。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、住宅確保要配慮者の居住の安定の確保を図るためには、今後、より多くのセーフティーネット住宅を確保していく必要があるというふうに考えております。

 現時点でセーフティーネット住宅が少ない原因でございますが、制度が創設されて半年ということもございまして、賃貸住宅の所有者に制度が十分知られていないことがある、それから、公共団体が、地域の実情に応じて要配慮者の追加等を行うことができる、賃貸住宅供給促進計画の策定にやや時間を要していることなどが考えられるほか、事業者団体からは、登録に当たっての申請の事務などの負担が非常に大きいという御指摘をいただいているところでございます。

 国土交通省としては、こういう状況を踏まえ、今後もセーフティーネット住宅の登録を促進するため、地方公共団体、事業者団体等と協力して説明会やセミナー等による制度の周知を進めること、それから、地方公共団体に対して賃貸住宅供給促進計画の策定や補助制度の創設を働きかけることとしておりますが、あわせまして、七月上旬をめどに、登録の際の申請書の記載事項や添付書類の簡素化を予定しておりまして、さらに、事業者等が有する既存の物件データをそのままちゃんと入れることができるといったような簡便化をすることで、登録申請に係るデータ入力の手間を縮減するためのシステム改修も進めているところでございます。

 こうした形で事業者団体とも連携いたしまして、セーフティーネット住宅の登録促進に努めてまいりたいというふうに考えております。

宮本(岳)委員 さすがに相当言いわけをされなければ、到底まずい到達点だというふうにお感じになっているんだと思いますけれども、大臣、念のために、一層スピードアップして進めるその御決意を一言お聞かせいただきたい。

石井国務大臣 私どもも今の状況で満足しているわけでは決してございません。今後とも、事業者団体と連携をして、セーフティーネット住宅の登録の促進に努めてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 次に、UR賃貸住宅について聞きたいと思います。

 昨年十月に関西公団住宅自治会協議会が集計した第十一回団地の生活と住まいアンケート調査によれば、公団賃貸住宅に長く住み続けたいとの回答が七四・二%ある一方で、不安、不満として、家賃値上げや収入減少で家賃が払えなくなるとの回答が六一・三%もございました。七十五歳以上の世帯が三八・三%、世帯収入が二百万円未満の世帯が三八・四%と、世帯の高齢化と低所得化が進んでおります。

 UR賃貸住宅は、こういう実態を踏まえて、安心して住み続けられる住宅セーフティーネットの一翼を担わなければならないと思います。

 そこで、URにきょうは来ていただいていますので、UR賃貸住宅の家賃の減免について聞きたいと思います。

 都市再生機構法二十五条四項には、「機構は、第一項又は第二項の規定にかかわらず、居住者が高齢者、身体障害者その他の特に居住の安定を図る必要がある者でこれらの規定による家賃を支払うことが困難であると認められるものである場合又は賃貸住宅に災害その他の特別の事由が生じた場合においては、家賃を減免することができる。」と書いてございます。

 この二十五条四項に基づいた家賃の減免は実際にやられておりますか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 都市再生機構法二十五条四項の規定に基づく家賃減額措置につきましては、配付資料に記載のとおりではございますが、平成二十八年度におきまして、高齢者向け優良賃貸住宅に係る減額措置、これが約二万二千二百世帯、高齢者世帯向け地域優良賃貸住宅減額措置、こちらが百世帯、子育て世帯向け地域優良賃貸住宅に係る減額措置、約千九百世帯、近居促進に係る減額措置が約五千四百世帯、ストック再生・再編に係る減額措置、こちらが約一万五千七百世帯、家賃改定に係る減額措置が約二万八千三百世帯、合計約七万四千世帯に対しまして家賃減額措置を講じているところでございます。

宮本(岳)委員 きょうは、お手元に今おっしゃったものの一覧表を、これはURから出していただいたものを配付してございます。

 では聞くんですけれども、これらの制度は全て、UR賃貸住宅に継続して住み続けている方が入居中に家賃の減免申請をできる制度になっておりますか。いかがですか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 先ほど御紹介いたしました減額措置のうち、資料で申しますと下の二つのカテゴリーでございます。ストック再生・再編に伴う減額措置、それから家賃改定の減額措置、これは特別措置とも言っておりますけれども、これらの制度につきましては既存の居住者の方を対象としたものでございまして、七万四千のうち約四万四千がこちらのカテゴリーとなってございます。

宮本(岳)委員 逆に言うと、上から四つは、住み続けている方には適用されない。新規の方でなければ適用されないということです。

 ちなみに、この家賃改定に係る減額措置というのは、家賃が上がったときに据え置くという制度だと思いますが、今の家賃より下がるということはあるんですか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 家賃をお支払いいただく側の皆様から見ますと単なる据置きではないか、こういうことになろうかとは思いますけれども、私どもの考え方といたしましては、家賃は、その改定日におきまして引上げ後の額に変更されておるという考え方でございます。

 ただし、その改定された額のお支払いをいただくことを免除いたしまして、引上げ前の家賃までにとどめておくということで、私どもの考え方としては減額だというふうに理解をしております。

 それから、先生御指摘になりました、現にお住まいになっていらっしゃる方々がお支払いになっている家賃、それよりも更にその額を名目上も引き下げるようなそういう改定を行う減額制度は設けておらないところでございます。

宮本(岳)委員 設けておらないんですよ。ないんですよ。

 私のところへこういう話が届きました。関東地方のUR賃貸住宅の入居者でありますけれども、機構法二十五条四項の規定による賃貸住宅家賃の減免申請を受けたいと、八十代の女性で要支援二の認定、病院が必要だが歩行も困難、生活保護を受給していたが、突然保護を廃止されて家賃の支払いが困難になったからだということで、個人情報ですからお見せできませんが、それらの書類も全部私の手元に来ております。

 申請書というものがないんです、大体。減額の申請書というのはないんですよ、これは。それで、御自分で申請書を自作して届けた。一カ月以上待たされたあげくに、そのような減免の制度はないという回答が返ってきた、こういう話なんです。

 実は、二〇一六年十一月二十一日、衆議院の決算行政監視委員会の第四分科会で我が党の宮本徹議員がこの減免制度の適用をされているのかと聞いたら、やはり先ほどのずらずらっというのが出て、やっています、こういう話なんですが、実は、現に今住んでいて経済的困難に立ち至った人が今よりも家賃を減免してほしいということについてはまさに制度もない。申請書すらない。無理やり自分でつくって届けても、そんな制度はありませんといって返ってくる。こういう現状なんです。

 これでは本当にそういう方々は救われないんじゃないですか。いかがですか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 お住まいの方々が、それぞれの経済条件が変わったことを理由に機構に対して家賃の減額を求めることができる、そういう制度の御要望があることは承知をいたしております。

 ただし、家賃につきましては、市場価格と申しましょうか、近傍同種家賃とするという都市再生機構法の趣旨を踏まえますと、全ての御要望に沿うことはなかなか難しいかなと思っております。

 先生御指摘の、お答えに時間がかかったというケースにつきましては、個別に承知しておりませんが、おわびを申し上げたいと思います。

 そんな中で、URとしましても、住宅セーフティーネットとしての役割を持続的に果たしていこう、こういう気持ちがございまして、国費等の支援もいただきながら、高優賃を始めとする各種減額制度、これも順次拡大して講じてまいりました結果の現状でありますことは御理解をいただきたいと思います。

 なお、現にお住まいの方が収入等で一定の要件を満たしていらっしゃる場合には、高優賃等の減額措置がある住宅にURの中で住みかえ、転居していただくということは可能でございます。そういった御案内もしてまいりたいと思っております。

 以上です。

宮本(岳)委員 二十五条四項は「家賃を減免することができる。」と書いてあるわけですから、そうしち面倒くさい話じゃないんですよ。法律に照らせばみんなできるんだろうと思っているわけです。そういう制度がないという方が、えっ、何でなんだということになっているんです。

 そこで、今御説明のあった話なんですよ。かといってURは全くそういうものがないかというと、高優賃はあるんです、二万二千二百世帯。

 今お話しあったように、ここへ新たに越せば家賃が下がるんですよ。この高優賃というのは、今あるUR住宅の中であいたところにそういう整備をしているものですから、高優賃の住宅に、その部屋に越せば、理論上は、たとえ隣の部屋であっても引っ越せば下がるんですよ。しかし、今住んでいるところにいると制度はないんですよ。そういうことですね。そうでしょう、事実は。

伊藤参考人 御指摘のとおりでございます。

宮本(岳)委員 おかしいじゃないですか、こんなの。それが可能なら、今のところにお住まいになりながら減免する制度をやはり検討するのは当たり前だというふうに思うんです。

 年をとって年金生活になる、家族を亡くしてひとり暮らしになる、非常に家賃の支払いが困難になるというのは誰もがあることでありまして、そうなると、引っ越しなんというのはなかなか大変なんですよ。では、八十を超えたこういう方に引っ越せと言ったって、いかないわけですから。

 UR機構は、今お住まいの方は今お住まいのままで機構法二十五条四項の減免をやるべきだ。今の冷たい施策を転換して、今お住まいの居住者の声に応えてそういう制度を検討すべきだと思いますが、いかがですか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 私の御説明がやや言葉足らずでございましたけれども、高優賃等の制度を活用した住宅、これは国費も入れていただいておりまして、そのような住宅として補助をいただいて整備をいたしますと、そのお客様については公募をして決めさせていただくということでございますので、任意の方が、私の住宅を高優賃にしてくれと言われて、そこでそれが実現するというものではないものでございます。ここをちょっと先ほどお話しし忘れました。

 しかしながら、高齢者の方々の住まいの安定ということに寄与していくこともURの重要な使命と思っておりますので、引き続き、さまざまな制度、国の御支援もいただきながら検討してまいりたいと思っております。

 以上です。

宮本(岳)委員 そのとおりなんです。高優賃の整備というのはもちろんそういう制度の枠でやっていまして、例えば、今お住まいの高齢者の方がURにお願いしますと、確かに、高齢化された場合に、手すりをつけたりとかということをやっていただけるというんですけれども、高優賃で整備された住宅というのは、そんな手すりどころじゃない、もっときちっと整備されたものですよ。そういうものもやらねばならぬ、やろうじゃないかと言ってやっておられるURだけに、現に今お住まいの方々もどんどん高齢化されて、そのニーズに応えなきゃならない。

 そのときに、高優賃で整備されたところに新たに入居される方はそういう扱いになっていて、自分たちは長年暮らしてきて減免の制度すらない。これではやりきれないというのは、私は、誰が考えたってそうだと思うんです。

 時間が来ましたので最後に大臣に、やはりこういった問題にきちっと応えていくということは私非常に大事だと思うんですが、大臣の御所見をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。

石井国務大臣 UR賃貸住宅は、高齢者や子育て世帯など民間市場では制約を受けがちな弱い立場の方の受皿として、住宅セーフティーネットの役割を果たすことが求められております。

 一方、URは、多額の有利子負債を抱える中、適切な賃貸住宅管理により、健全な経営の確保も求められております。

 このような中で、UR賃貸住宅におきましては、都市再生機構法第二十五条第四項に基づき、高齢者向け優良賃貸住宅に居住する世帯への家賃減額措置や、既存の居住者に対しては、建てかえ時や家賃改定時に家賃上昇を抑制するための家賃減額措置などを講じているところであります。

 今後とも、住宅セーフティーネットの役割と健全な経営の両立を図っていけるよう、法第二十五条第四項の趣旨にのっとり、適切な家賃減額措置を講じてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 ぜひ御検討いただきたいということを申し上げて、時間ですので終わります。

西村委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 十二分と限られた時間ですので、入りたいと思います。

 きょうは大塚委員もまた聞きに来ていただきまして、ありがとうございます。

 それでは、自転車に関してちょっと質疑をさせていただきたいと思います。

 昨年五月、自転車活用推進法というのが施行されました。自転車は、単に気軽で便利な交通手段というだけではなくて、環境負荷の低減、それから災害時における交通機能の維持、そして国民の健康増進等の観点からも期待されているというふうに思います。

 ただ、一方で、自転車のかかわる事故というのは非常に多くて、放置駐輪等の問題も解決にはまだ至っていないという現状があります。

 私の地元の大阪も、やはり平野ですので非常に自転車が多いんです。自転車の課題というのをどのように改善していって自転車のポテンシャルを生かしていくかということについて、るる質疑をさせていただきたいと思います。

 自転車は、現状、車両であることから、原則として車道を走行すべきという考え方とされていますけれども、お子さん二人乗り、三人乗りと子供を乗せた保護者の方からは、車道を走行するというのに抵抗があるという声も聞きます。

 もちろん、車道にちゃんと塗装して、そういう優先レーンとして自転車道があるんですけれども、なかなかやはり車道に出にくいという感じを持っておられる方もたくさんおられると聞きます。

 また、道路によっては、自転車を優先すべき道路もあれば、自転車にはちょっと遠慮いただいている、歩行者だとか車椅子の方々に優先する道路もあれば、また、商品等の配送の搬出する車両の駐停車を優先すべきだという道路もさまざまあるかと思います。

 自転車走行環境の整備に当たっては、このような利用者の声というのを十分に反映しつつ、自動車と自転車、そしてまた歩行者が適切に共存できるように進めるべきと考えますけれども、国交省の所見をお伺いいたします。

石川政府参考人 お答えいたします。

 自動車、自転車、歩行者の交通安全の確保を図るためには、それぞれが適切に分離された自転車通行空間の整備を進めることなどにより、安全で快適な自転車利用環境を創出することが重要であると認識をしております。

 このため国土交通省では、警察庁と連携して、市町村に対して、路線を選定し、その路線における整備形態等を示す自転車ネットワーク計画の策定を促しているところでございまして、現在、政府で検討を進めております自転車活用推進計画にも盛り込む予定でございます。

 この自転車ネットワーク計画の策定に当たりましては、道路管理者や都道府県警察等の関係行政機関に加えまして、自転車関連団体やPTAなどの地元関係者などから成る協議会を設置して検討するとともに、パブリックコメントの実施などにより道路利用者の意見を反映するよう推進しているところでございます。

 また、自転車通行空間の整備を促進するほか、今後取りまとめる自転車活用推進計画に基づきまして、関係府省庁と連携して、自転車に関する交通ルールの周知や安全教育の推進等によりまして、交通事故の削減を図ってまいります。

 国土交通省といたしましては、今後とも、道路利用者の声や、地域の実情を踏まえた自転車走行環境の整備に努めてまいります。

井上(英)委員 自転車の環境の整備というのは地方のニーズというのが非常に高いというふうに認識しているんですけれども、その整備の促進に向けて、先ほども言いましたけれども、本来は歩道と自転車道と車道というのが明確にきれいに分かれている方が、恐らくそれぞれの方が利用しやすいというのは当然だと思うんですけれども、実際、その整備も含めて、国土交通省としては、財政面また技術面、どのような支援を進めていくおつもりか、お聞かせいただけますでしょうか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体によります自転車走行環境の整備に要する費用につきましては、防災・安全交付金等により支援をしておりまして、平成三十年度からは、自転車ネットワーク計画に基づく整備について、重点配分対象事業としたところでございます。

 また、技術面におきましては、国土交通省では、各地域において、道路管理者や都道府県警察が自転車ネットワーク計画の作成やその整備、通行ルールの徹底等を進めるため、警察庁と共同で、平成二十四年十一月に、安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインを作成をしております。

 ガイドラインには、自転車通行空間の計画や設計に関する詳細な考え方を示しておりまして、地方公共団体への周知と技術的助言に努めているところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後とも自転車走行環境の整備について、引き続き、財政面や技術面から支援をしてまいります。

井上(英)委員 ぜひ、自転車の走行環境の整備というのをしっかりとお願いしたいと思います。

 次に、シェアサイクルについて質疑をしますけれども、パリのヴェリブや、またニューヨークのシティーバイク、そしてアジアでも中国のモバイクといった、世界ではシェアサイクルというのが爆発的に普及しています。ちょっとそこまでと気軽に借りられることで、地域の活性化にも寄与しているというふうに聞いています。

 一方で、日本では、一部の都市で実験的な取組や限られたエリアでの取組というのはありますけれども、その規模は、やはり比較にならないほど小さいというふうに言われています。

 これから、二〇二〇年にオリパラというのもありますし、来年にはラグビーのワールドカップもありますし、さまざまな訪日の外国人の方も来られると思いますので、我が国においてシェアサイクルが普及しない理由と、普及していくためにはどういうふうに対策していくのがいいかをどう考えているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

栗田政府参考人 シェアサイクルは、都市内に設置された複数のサイクルポートを相互に利用できる利便性の高い交通システムでありまして、世界の多くの都市で導入が進められ、我が国においても近年導入が進んでおります。

 他方、我が国におけるシェアサイクルの設置の主な課題としまして、一つは、利用しやすい場所にサイクルポートを設置する必要があること、あるいは事業採算性が厳しい状況であることなどが挙げられると考えています。

 サイクルポートの設置場所についてでありますけれども、海外の各都市では、道路などの公共空間にサイクルポートを設置することで、利用者がシェアサイクルを利用しやすい環境がつくられているというように承知しております。

 このため我が国でも、サイクルポートを利用しやすい公共空間に設置できますように、都市再生特別措置法で、道路占用許可の特例による道路上でのポートの設置、あるいは都市公園の中でのポートの占用の付与、こういったことを可能としているところでございます。

 また、事業採算性についてということでありますが、これまでも、サイクルポートの整備に関しては社会資本整備総合交付金で支援を行ってきておりますし、地方公共団体でもシェアサイクルの運営経費等に対する支援が行われているところでございます。

 さらに、シェアサイクル事業者の取組としまして、交通系ICカードを利用できるシステムの導入、こういったことがさいたま市、岡山市などで行われています。あるいは、シェアサイクルの利用で付与されたポイントによる商店街での割引、こういったことで利用率の向上を図るといった取組が行われているところでございますし、富山や岡山市、こういったところでは、車体広告の実施で事業外収入を確保する、こういった取組も進んでいます。

 国土交通省としまして、これらの取組について、シェアサイクル担当者会議などを通じて情報共有、意見交換などを行うなどの支援を進めております。

 引き続きまして、普及に向けまして努力をしてまいりたいと思います。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、こういうシェアサイクル、便利だと思うんです。ですから、どんどん国内でもはやらせていただいたらいいと思います。

 ちょっとサイクルトレーンについても聞こうかなと思っていたんですけれども、ヨーロッパなんかでは、自転車を電車にそのまま載せて、長距離では電車で移動して、目的地に着けば自転車で走る。ただ、日本人の価値観からすると、自転車を電車に載せていると、ちょっとやはりそういう風土ではありませんので、なかなか難しい面もあるかと思いますけれども、グローバルスタンダードではいろいろなニーズがあるということで、また、サイクルトレーンの方もしっかりと一度検討していただけたらということを要望しておきます。

 次に、保険についてお伺いをいたします。

 自転車事故につきましては、歩行者に衝突して自転車側が加害者になるという場合も多く、小中学生や高校生が加害者となる事故も発生しています。

 自動車や原動機付自転車は全て自賠責保険の加入というのが義務づけられていますけれども、自転車については任意の加入というふうになっています。自転車加害事故において高額な賠償金の支払いを命じられたケースもあるというふうにも聞きます。

 このような状況を受けて大阪では、条例によって自転車の保険加入というのを義務づけてはいるんです。ただ、全国的にはまだ義務化が進んでいるとは言えないというふうに思います。

 国としても、保険加入の促進を図るとともに、新たな保障制度についての検討というのが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、自転車事故での高額の賠償請求がなされる場合がございます。例えば、平成二十年に小学五年の少年の自転車が歩行中の六十二歳の女性と衝突し、歩行者の女性が意識不明となったケースでは、神戸地裁から少年の母親に、約九千五百万円の損害賠償金の支払いが命じられた事例があるというふうに承知をしております。

 一方、警察庁の調べによりますと、平成二十九年に、自転車が第一当事者となって歩行者が死亡又は重傷を負った事故のうち、損害賠償責任保険等の加入が確認された自転車運転者は約六〇%にとどまっております。

 このような中、条例により自転車利用者に対し損害賠償責任保険等の加入を義務づける地方公共団体がふえてきておりまして、本年四月一日現在で、都道府県、政令市で見ますと、十六都道府県七政令市が条例を制定しております。

 国土交通省といたしましては、自転車事故による被害者の救済や加害者の経済的負担軽減を目的として、自転車利用者の損害賠償責任保険等の加入促進は重要な課題であると認識をしております。

 このため、今後取りまとめます自転車活用推進計画に基づきまして、地方公共団体に対して、条例等による損害賠償責任保険等への加入促進を図ることを要請するとともに、これによる損害賠償責任保険等への加入状況等を踏まえつつ、新たな保障制度の必要性等について所要の検討を行ってまいります。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 先ほども言ったみたいに多額のお金というのも要求されたりしますので、ぜひ検討していただけたらと思います。

 もう時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、藤井局長にも来ていただいていたんですけれども、鉄道駅の駅周辺の放置自転車について、今後もまだまだそれぞれの駅で課題が残っているということなので、ぜひその辺の整備も含めてよろしくお願いしたいと要望して、私の質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

西村委員長 次に、内閣提出、船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣石井啓一君。

    ―――――――――――――

 船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石井国務大臣 ただいま議題となりました船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 船舶の再資源化により生ずる人の健康及び環境に対する悪影響を防止するため、二〇〇九年五月に国際海事機関の主催により香港で開催された国際会議において、二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港条約が採択をされました。

 同条約の作成を主導してきた我が国といたしましても、国際的な連携のもとに、船舶の再資源化解体の適正な実施を図るための措置を講じ、国際的な義務を果たしていく必要があります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、我が国の排他的経済水域外を航行する総トン数が五百トン以上の日本船舶について、その船舶所有者に対し、有害物質一覧表を作成して国土交通大臣による確認を受けなければならないこととしております。

 第二に、船舶の再資源化解体を行おうとする者は、施設ごとに、主務大臣の許可を受けなければならないこととしております。

 第三に、再資源化解体業者が、再資源化解体を目的として船舶の譲受け等を行おうとするときは、その再資源化解体業者に対し、再資源化解体計画を作成して主務大臣の承認を受けなければならないこととしております。

 第四に、船舶所有者が、再資源化解体を目的として船舶の譲渡し等を行おうとするときは、その船舶所有者に対し、国土交通大臣の承認を受けなければならないこととしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十一分散会


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