衆議院

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第5号 平成30年12月4日(火曜日)

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平成三十年十二月四日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 谷  公一君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 岩田 和親君

   理事 金子 恭之君 理事 根本 幸典君

   理事 松本 文明君 理事 矢上 雅義君

   理事 津村 啓介君 理事 中野 洋昌君

      秋本 真利君    石崎  徹君

      鬼木  誠君    加藤 鮎子君

      門  博文君    神谷  昇君

      黄川田仁志君    工藤 彰三君

      小島 敏文君    古賀  篤君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高木  毅君    谷川 とむ君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      鳩山 二郎君    藤井比早之君

      三谷 英弘君    宮内 秀樹君

      宮崎 政久君    望月 義夫君

      盛山 正仁君    簗  和生君

      荒井  聰君    福田 昭夫君

      道下 大樹君    森山 浩行君

      伊藤 俊輔君    小宮山泰子君

      下条 みつ君    伊藤  渉君

      北側 一雄君    広田  一君

      もとむら賢太郎君    宮本 岳志君

      井上 英孝君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    工藤 彰三君

   国土交通大臣政務官    田中 英之君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  石田  優君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 奥田 哲也君

   国土交通委員会専門員   山崎  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月四日

 辞任         補欠選任

  土屋 品子君     中曽根康隆君

  中谷 真一君     石崎  徹君

  福田 達夫君     田畑 裕明君

  山本 公一君     宮崎 政久君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     中谷 真一君

  田畑 裕明君     福田 達夫君

  中曽根康隆君     黄川田仁志君

  宮崎 政久君     山本 公一君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     土屋 品子君

    ―――――――――――――

十二月四日

 リニア新幹線で南アルプスの自然を壊さないことに関する請願(宮本岳志君紹介)(第四五一号)

 同(本村伸子君紹介)(第四五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国土交通行政の基本施策に関する件

 建築士法の一部を改正する法律案起草の件

 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

谷委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省住宅局長石田優君、自動車局長奥田哲也君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷委員長 建築士法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、盛山正仁君外五名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会及び日本維新の会の六会派共同提案により、お手元に配付してありますとおり、建築士法の一部を改正する法律案の草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。盛山正仁君。

盛山委員 本起草案の趣旨及び内容につきまして、提出者を代表して御説明申し上げます。

 建築士法は、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定めて、その業務の適正化を図り、もって建築物の質の向上に寄与させることを目的として、議員立法により、昭和二十五年に制定されたものであり、これまでも時代の要請に応じて改正が行われてきたところであります。

 しかしながら、近年、建築士試験の受験者数が減少するとともに受験者の高齢化が顕著であり、また、業務を行っている建築士の高齢化が進んでおり、このままの傾向が続く場合、建築物の安全性の確保等において重要な役割を担う建築士人材の確保が困難となります。このため、建築士試験の受験資格を改めることなどにより、建築士を目指す若者が、より早期により見通しを持って建築士の資格を取得することができるよう、建築士資格制度の改善が望まれているところであります。

 本起草案は、このような状況に鑑み、建築物の設計、工事監理等を担うすぐれた人材を継続的かつ安定的に確保するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、一級建築士、二級建築士又は木造建築士の免許は、それぞれの試験に合格した者であって、大学等において国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業し、建築に関する実務の経験を一定期間以上有する者等でなければ、受けることができないこととしております。

 第二に、大学等において国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて卒業した者は、建築に関する実務の経験がなくても、一級建築士試験を受けることができるものとする等、受験資格について所要の見直しを行うこととしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 建築士法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 本件について発言を求められておりますので、これを許します。宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 確認的な質疑的発言をさせていただきます。

 建築物の安全、安心のために、建築士、とりわけ一級建築士の役割は大きいと思います。ところが、建築士の高齢化が進んでいるということを聞きます。

 国土交通省の資料によれば、設計事務所に所属している一級建築士のうち、五十代以上が六五%に上るのに対し、二十代は一%のみ。一級建築士の高齢化は顕著だと言わなければなりません。

 この一級建築士の高齢化は、一級建築士試験の受験者の急減と高齢化が影響しております。一級建築士試験の受験者数は、二〇〇七年から二〇一七年までの十年間で四万六千二百四人から三万一千六十一人へと三分の二に急減いたしました。一方で、受験者の平均年齢は、三十二・四七歳から三十四・八二歳へ、二・三五歳も上昇しております。試験受験者の急減と高齢化を放置すれば、将来、一級建築士の人材確保が困難になりかねません。

 そこで、国交省に確認しますが、事務所所属の一級建築士が高齢化していることと、一級建築士試験の受験者が急減し高齢化していること、この原因をどう考えておりますか。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、建築士事務所に所属しております建築士の高齢化につきましては、建築士の試験の合格率自体には大きな変化がございませんが、一級建築士試験の受験者数が大幅に減少した結果、かつて昭和六十年代には年間七千人ほどおられた合格者数が現在は四千人程度まで減少し、新たに建築士となる若い世代が減少したこと、また、受験者の年齢につきましても、先ほど御指摘がありましたとおり年齢が上昇していること、これらが主な原因であると理解しております。

 また、そういう受験者の減少、高齢化に関しましては、平成十七年に発覚いたしました構造計算書偽装問題を受けた制度改正などによりまして、大学などの卒業後の実務経験のカウントが厳格化されたことから、受験で必要な実務経験を満たすための期間が長期化していること、また、このため、卒業後相当の期間を経てからのペーパー上の受験となりますので、実務を行いながら受験を準備する負担が重くなっていること、そういったことから、受験を諦める方が増加するとともに受験者の平均年齢も上昇しているというふうに関係の団体からも伺っておりますし、国交省としても同様の見解を持っているところでございます。

宮本(岳)委員 私も、この間、建築士関係団体の皆様から話をお伺いいたしました。

 二〇〇八年の建築士法改正に伴う実務経験要件を満たすために、建築士試験の受験準備が大変だという話を何度もお聞きをいたしました。しかし、話をよく聞きますと、実務経験として設計事務所に勤務した方が、労働条件が厳しくてとても受験勉強などできないという現状があるという話も聞くわけですね。

 これは、建築士が働く設計事務所で労働条件が劣悪なところがあるということでありまして、そうなると、試験制度だけを変えても建築士の高齢化は変わらないのではないか。例えば、試験に合格した後、実務経験をした者でも、その後、一級建築士として免許登録しないことになりはしないかという懸念もあります。

 そこで、提案者にお伺いするんですが、設計事務所の長時間労働や低賃金など労働条件が悪いことこそ、高齢化や受験者減少の原因として検討すべきではないか、試験制度にとどまらずこの点を改善してこそ、一級建築士になりたいという若者がふえるのではないかと思いますが、提案者、いかがでしょうか。

盛山委員 建築士は、医師、弁護士、公認会計士などの他の国家資格と比べ、平均年齢が高いにもかかわらず、労働時間は長く、賃金は低い傾向にあります。特に、建築士試験受験者の主要な年齢層となる二十代中盤から三十代前半の時期は、長時間の勤務を行っている実態があると承知しているところです。

 こうしたことを踏まえますと、宮本委員が御指摘のとおり、建築士の高齢化、受験者数の減少は、試験制度だけではなく、労働条件あるいは長時間労働も原因の一つであると考えているところでございます。

 今回は、建築士試験の受験資格の見直しをお願いしているものでございますが、それだけで全てが解決すると我々考えているものではありませんが、解決の一つの手段になると考えております。

 将来の建築士を安定的かつ継続的に確保するためには、さきの通常国会で働き方改革法も成立したところでございますが、建築士の労働条件等を改善し、魅力的な建築士業界としていくことが重要であると考えておりまして、国土交通省あるいは関係の政府、そして業界において改善がなされることを期待しているものでございます。

宮本(岳)委員 政府が進められている働き方改革法に対する評価はさまざまでありますけれども、ぜひ、今御発言にあったように、労働条件の改善をしっかり進めていただきたい。

 ことしになってから、大阪北部地震では、小学校のブロック塀倒壊で生徒が犠牲となる痛ましい事件がございました。KYBや川金ホールディングスによる免震オイルダンパーのデータ偽装事件もございました。昨今、建築物の安全、安心に対する信頼が大きく揺らいでおります。

 その中で、ブロック塀の安全点検を行う問合せ先として設計士団体も入っております。耐震偽装やレオパレス21社のような違法建築で不正を発見し、告発されている建築士の方もいらっしゃいます。建築物の安全、安心を確保するために、専門家としての一級建築士の役割はますます大きくなっていると思います。したがって、その能力、適性はしっかり担保される必要があるのは言うまでもありません。

 では、今度の法案で受験者の門戸を広げることになるわけですけれども、一級建築士の能力や適性は担保されるか、建築士の技量が低下して、建築物の安全、安心への信頼が低下することにつながらないか、提案者に御説明いただきたいと思います。

もとむら委員 今回の改正法案は、現在、建築士試験を受験する際の要件となっている建築に関する実務の経験について、免許を受ける際の要件に改めるものであります。

 これによりまして、建築に関する実務の経験について、建築士試験の前後にかかわらず、免許を受ける際までに積んでいればよいこととなり、建築士試験の受験機会は拡大しますが、建築士として免許を受ける際の要件は改正前と基本的に変わらないため、新たに建築士となる者の能力や適性は担保されるものと考えております。

宮本(岳)委員 しっかり担保していただきたいというふうに思います。

 大学卒業後すぐに一級建築士試験を受験できることにいたしますと、人格形成期でもある大学の四年間が、ともすれば受験予備校のようにならないかという懸念もございます。この点にも十分配慮すべきだと考えます。

 そして、今後の建築士制度が建築物の安全、安心のために一層資するものとなるように、法律をつくって終わりではなく、その後の運用もしっかり国会で議論すべきだということを申し述べて、発言といたします。

谷委員長 これにて発言は終了いたしました。

 これより採決いたします。

 建築士法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付してあります草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

谷委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

谷委員長 次に、貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、盛山正仁君外五名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、国民民主党・無所属クラブ、公明党、無所属の会及び日本維新の会の六会派共同提案により、お手元に配付してありますとおり、貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案の草案を成案とし、本委員会の提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。津村啓介君。

津村委員 国民民主党の津村啓介でございます。

 本起草案の趣旨及び内容につきまして、提出者を代表して御説明申し上げます。

 我が国の国民生活及び経済活動を支えるトラック運送事業においては、一部に長時間労働を前提に事業を行う等法令を遵守しない事業者が存在し、事業の健全な発達を図るための規制の適正化が求められています。

 一方、トラック運転の業務について、平成三十六年度から時間外労働の限度時間の設定がされること等を踏まえ、運転者の不足により重要な社会インフラである物流が滞ってしまうことのないよう、緊急に運転者の労働条件を改善する必要があります。

 本起草案は、このような現状に鑑み、貨物自動車運送事業の健全な発達及び事業用自動車の運転者の労働条件の改善を図るほか、運転者の不足により国民生活及び経済活動の重要な基盤である円滑な貨物流通に支障が生ずることのないよう必要な措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、一般貨物自動車運送事業等の許可の欠格事由を拡充するとともに、事業の許可基準においては事業計画が事業用自動車の安全性を確保するため適切なものであること、約款の認可基準においては原則として運送の役務の対価としての運賃と、それ以外のサービス等に係る料金とを区分して収受することを明記するなど、規制の適正化を図ることとしております。

 第二に、貨物自動車運送事業者等の輸送の安全に係る遵守義務を明記するとともに、事業の適確な遂行に関する遵守義務規定を新設することにより、事業者が遵守すべき事項を明確化することとしております。

 第三に、貨物自動車運送事業者が法令を遵守して事業を遂行できるよう荷主の配慮義務を新設するほか、既存の荷主勧告制度について対象を拡大する等の制度の強化を図ることとしております。

 第四に、時間外労働の限度時間が平成三十六年度から設定されるため、平成三十六年三月三十一日までの間、貨物自動車運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為をしている疑いのある荷主に対し、国土交通大臣は、関係行政機関と連携して、荷主の理解を得るための働きかけを行うことができ、さらに、荷主への疑いに相当の理由がある場合は、違反原因行為を行わないよう要請し、要請をしてもなお改善されない場合は、公表を前提とした勧告を行うことができる制度を新設することとしております。

 また、同日までの間、国土交通大臣は運輸審議会に諮り、一般貨物自動車運送事業の能率的な経営のもとにおける適正な原価及び適正な利潤を基準とした標準的な運賃を定めることができることとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。小宮山泰子君。

小宮山委員 国民民主党の小宮山泰子でございます。

 委員会提案、貨物自動車事業法改正案に対する質疑をさせていただきます。

 トラック運輸事業は、昭和二十六年に全面改正された道路運送法により、需要調整をベースとした免許制度や許可運賃制度等の事業規制のもと、高度経済成長期による輸送需要の増加や幹線道路の整備を背景に発展をいたしました。

 平成二年に、道路運送法の貨物部分を新たに法制化した貨物自動車運送事業法が施行され、トラック運送事業の需給調整規制廃止等の変更が行われました。この規制緩和により、トラック運送業界には新規参入が相次ぎ、平成二年当時は四万社だったが、平成十七年には現在とほぼ同等の約六万社に増加をしております。

 従来から、中小事業者が大半を占めるトラック運送事業者は荷主に対して弱い立場にあり、元請の大企業が受注し、実運送は下請の中小事業者が担う多重下請構造が拡大しているため、バブル崩壊後の景気低迷により、厳しい経済環境の中、過当競争が激化し、運賃・料金の低下により経営環境が悪化していると聞いております。現在は、法令に違反して事業許可取消しを受けた者の短期、欠格期間二年ですが、での参入や、同事業取消しの処分逃れのための自主廃業を行う者、処分を受けた者と親密な関係者による参入なども散見されております。

 規制の適正化により、悪質な事業者を業界から排除することが可能となるか、この法案においての見解をお聞かせください。

津村委員 御質問ありがとうございます。

 ただいまの小宮山泰子委員の御指摘のとおり、現行法では、事業許可の取消しを受けるなどした者は、二年間の欠格期間の後に、再度事業への参入が可能となっております。

 本法案では、バス事業者などの旅客自動車運送事業者同様、欠格期間を五年に延長しまして、再参入の規制を厳格化しているところでございます。

 また、貨物自動車運送事業者が処分逃れのために自主廃業した後に再度参入する場合は、本法案では、廃業後五年間は再度の参入ができないこととしております。

 同様に、許可を受けようとする者と密接な関係にある者が取消処分を受けている場合も、処分後五年間は参入ができないこととしております。

 このような欠格期間の延長や欠格事由の新設によりまして、悪質な事業者が排除され、業界の正常化が一層進むことを期待しております。

 以上です。

小宮山委員 ありがとうございます。

 運送事業者は、荷主との交渉力が弱いために、現状、必要なコストに見合った運賃を収受することができていないために、運転者は収入を確保するために長時間労働も余儀なくされています。また、荷主の方からは、発した荷主から受け取った着荷主からの指示によって、料金を収受できない積込みや荷おろし、棚入れなどの作業をサービスとして強要されるケースもあると聞いております。また、これも多発していると聞いております。

 運転者の長時間過重労働や対価を伴わない役務の発生に対して、本法案はどのように問題解決されていくこととなるのか、説明をお願いいたします。

津村委員 小宮山委員の御質問にお答えいたします。

 本法案では、平成三十六年三月三十一日までの時限的措置ではありますが、一般貨物自動車運送事業の能率的な経営のもとにおける適正な原価及び適正な利潤を基準として、国土交通大臣が定める標準的な運賃を告示する制度を導入することとしております。これによりまして、立場の弱い貨物自動車運送事業者が荷主との交渉を一層進めやすくなり、適正な運賃を収受することができるようになることを期待しているところでございます。

 また、本法案では、運送約款におきまして、原則として運送の役務の対価としての運賃と、それ以外の役務又は特別に生ずる費用に係る料金とを分別して収受することを定めさせることとしております。これによりまして、運送以外のサービス等が発生した場合には、それに応じて料金を請求しやすくなる効果があるものだと考えております。

 運送事業者において一定の適正な収入の確保が可能となれば、運転者の労働時間の短縮その他労働条件の改善に取り組むことにつながると期待しております。

 本法案が我が国の国民生活及び経済活動を支えるトラック運送業の健全な発展に資することを期待しております。

 以上です。

小宮山委員 大変ありがとうございます。

 これまでなかった、約款をしっかりと提示をすること、そういうのは本当に重要かと思いますし、本日、盛山委員の方から提示もありましたけれども、原価及び適正な利潤を基準とした標準的な運賃を定めることができる、これも提示されるということになれば、さまざま課題はありますけれども、いい方向に行くのではないかと思っております。特に、事業者が遵守すべき事項を明確化することにより、運転者の過重労働の防止というものにつながることもこの法案によって期待をされますし、また、社会保険未加入事業者の問題など、さまざまな課題が取り組まれることを期待しております。

 この法案が通ることにより、貨物自動車運送事業の健全な発展及び事業用自動車の運転者の労働条件の改善が図られることが先ほどの質疑によって確認がとれましたので、そのことも期待をいたしまして、私の質疑といたします。

 ありがとうございます。

谷委員長 次に、前法案に引き続き、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 貨物自動車運送事業法改正案を起草したいとの話を伺ってから、私も事業者団体や労働組合などからいろいろと御意見をお伺いいたしました。その上で幾つか確認をしたいと思います。

 まず、改善基準告示の見直しについて伺いたい。

 今度の法案は、参入規制の強化や荷主対策の深度化、標準的な運賃の告示制度の導入など、トラック労働者の労働条件の改善につながり得る内容が盛り込まれておりますけれども、直接改善する項目はありません。トラック労働者の労働条件を改善するためには、過労死ラインを超える長時間労働を認めている改善基準告示の見直しと法制化が欠かせないと考えます。

 働き方改革関連法案の附帯決議、これは残念ながら、私たちはこの附帯決議に参加しておりませんけれども、この中では、第二で、改善基準告示の見直しがうたわれております。

 本法案が働き方改革関連法施行を念頭に置いた措置を講じるというのであれば、改善基準告示の見直しについても、より強力に政府に迫っていく必要があると思いますが、これは盛山提案者、そして津村提案者、御両人にお伺いしたいと思います。

盛山委員 今議員が御指摘されましたが、改善基準告示につきましては、我々自民党も共同提案しました働き方改革法の、衆議院では五月の厚生労働委員会でございました、参議院では六月の厚生労働委員会でございましたが、この両院の附帯決議におきまして、平成三十六年度からの時間外労働の上限規制の適用までの間に見直しの検討を進めること、総拘束時間等の改善について速やかに検討を開始すること、見直しに当たっては、トラック運転者について、早朝、深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態等の業務の特性を十分に踏まえて、勤務実態等に応じた基準を定めることとされているところであります。

 この両院の附帯決議の趣旨を踏まえまして、所管であります厚生労働省を中心に、国土交通省その他関係省庁とも連携をして、実態を踏まえながら、長時間労働の是正が進むよう、改善基準告示の見直しの検討が進められていくもの、この法案が通れば進んでいくものと考えているところでございます。

津村委員 国民民主党の発議者として答弁させていただきます。

 改善基準告示の見直しに関しましては、今、盛山委員からも御紹介がございましたけれども、働き方改革関連法案の参議院審議の際の附帯決議におきまして、「トラック運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態や危険物の配送などその業務の特性を十分に踏まえて、労働政策審議会において検討し、勤務実態等に応じた基準を定めること。」といたしております。

 働き方改革関連法の施行後五年の猶予の間に、改善基準告示のあり方について、トラック運転従事者の実情、業務の特性を検証しながら、労働者、事業者双方の多様な意見を十分に聞いて、労働政策審議会でしっかりと議論を行っていくことが望ましいと思料しております。

 私は国民民主党の発議者でございますが、この参議院の審議の附帯決議をめぐる議論、非常に各党重要な議論をされたというふうに思っております。この附帯決議の趣旨をしっかりと生かしていくために、我々がこれからの五年間やらなければいけないことはたくさんあるわけですけれども、物流、トラック運送業が日本経済の極めて重要な柱であるということを十分認識して、丁寧なきめ細かい議論を進めていきたいというふうに思っております。

 ぜひよろしくお願いします。

宮本(岳)委員 トラック労働者を始めバスやタクシーなど自動車運送事業の労働者が過酷な労働を強いられている大もとに改善基準告示があるのであって、早期にその見直しと法制化が必要であることを指摘しておきたいと思います。

 次に、荷主対策について聞きたいと思うんです。

 今度の法案では、荷主には元請事業者も含まれると承知しておりますけれども、着荷主も含まれるのか、この点、発議者に確認したいと思います。

盛山委員 トラック運送業におきましては、発荷主側だけでなく、着荷主側で荷待ち時間あるいは追加的な附帯業務が発生するところも多いということで、宮本委員が御指摘のとおりでございます。また、他の運送事業者に部分的に運送業務を委託することなども多々行っているところでございます。

 このため、トラック運送業の働き方改革を進める上では、元請事業者や発荷主に加えまして、着荷主についても理解、協力を得ることが重要であると考えています。

 現行法におきましても、例えば、貨物自動車運送事業法第六十四条の荷主勧告制度においては、荷主に勧告を行う際の要件については、違反行為が荷主の指示に基づき行われたことが明らかであるとき、その他当該違反行為が主として荷主の行為に起因するものであると認められるときなどと規定されているところであり、元請事業者、発荷主、着荷主のいずれの行為についても適用対象となっているところです。

 今般の改正により追加されます第六十三条の二の荷主の配慮義務や、附則第一条の二の関係行政機関の長との協力による荷主への働きかけなどの規定につきましても、これらの荷主については、元請事業者や発荷主だけではなく、着荷主を含めてしっかりと運用していただく必要があるものと考えているところであります。

宮本(岳)委員 しっかりと運用していただきたいと思うんですね。

 次に、運賃の告示について聞きたいと思うんです。

 標準的な運賃の告示制度の導入ですけれども、法案はできる規定になっておりますが、時限措置の期間内に必ず告示をするのか。これは国土交通省自動車局長に聞きたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 トラック運送業におきましては、中小事業者が大半を占めておりまして、荷主に対する交渉力が弱いことなどから、必要なコストに見合った対価を収受しにくい状況にあるところでございますが、その機能を維持していくためには、法令を遵守しつつ持続的に運営することができるよう、適正な対価を収受できる環境を整えることが重要でございます。

 今般の改正におきましては、さきの通常国会で成立いたしました働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律に基づきまして、トラック運送業について、平成三十六年度から時間外労働の限度時間の設定がされること等を踏まえ、トラック運送業がその機能を持続的に維持していくに当たっては、法令を遵守して運営を行っていく際の参考となる運賃を示すことが効果的であるとの趣旨により、平成三十五年度末までの時限措置として標準的な運賃の告示制度が設けられたものと理解をいたしております。

 標準的な運賃の具体的な設定の方法等につきましては今後検討することとなりますが、条文の趣旨に沿うことができるよう適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

宮本(岳)委員 条文の趣旨に沿うことができるよう適切に対処したいというのは、告示をしていただけるということでいいのかどうか。これはちょっと自民党の提案者に確認しておきたいと思います。

盛山委員 この法案が成立しました暁には、当然そのような対応がとられるものと我々は期待しているところでございます。

宮本(岳)委員 幾つか確認をしてまいりましたけれども、私どもは、そもそも、こういう事態に立ち至った原点である一九九〇年の物流二法というものについての総括と反省が必要だというふうに考えております。

 本来であれば、事業者、労働者、荷主などを本委員会にお招きをして、しっかりこの間のトラック事業の現状やトラック労働者の労働条件について御発言もいただいて、もっと時間をとった審議が必要であると考えておりました。

 また、荷主勧告制度ということも発議者から出されましたけれども、無理な着時間指定や過積載を取引条件とする、荷主に不当な行為が指摘された場合には勧告制度がある、こう言うわけですけれども、荷主勧告というのが発せられたのは過去一度もないわけですね。だから、過去一度もないものに勧告制度を強化しても、法改正の効果があらわれないということも考えられます。

 こうした実態を国民の前に明らかにしてこそ法案の実効性も確保できると考えますし、そういう点では、今後ともしっかりこの議論を進めることを求めて、質疑的な発言を終わりたいと思います。

谷委員長 これにて発言は終了いたしました。

 これより採決いたします。

 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付してあります草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

谷委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 ただいま決定いたしました本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時六分散会


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