衆議院

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第8号 令和4年4月8日(金曜日)

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令和四年四月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中根 一幸君

   理事 柿沢 未途君 理事 小島 敏文君

   理事 塚田 一郎君 理事 土井  亨君

   理事 城井  崇君 理事 小宮山泰子君

   理事 市村浩一郎君 理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊藤 忠彦君

      石原 宏高君    泉田 裕彦君

      小里 泰弘君    大西 英男君

      加藤 鮎子君    加藤 竜祥君

      金子 俊平君    菅家 一郎君

      木村 次郎君    国光あやの君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      櫻田 義孝君    笹川 博義君

      田中 良生君    谷川 とむ君

      中川 郁子君    根本 幸典君

      三ッ林裕巳君    宮内 秀樹君

      宮崎 政久君    和田 義明君

      稲富 修二君    枝野 幸男君

      神津たけし君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    谷田川 元君

      渡辺  周君    渡辺  創君

      足立 康史君    池下  卓君

      高橋 英明君    山本 剛正君

      河西 宏一君    北側 一雄君

      古川 元久君    高橋千鶴子君

      福島 伸享君    たがや 亮君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    加藤 鮎子君

   国土交通大臣政務官    木村 次郎君

   国土交通大臣政務官    泉田 裕彦君

   参考人

   (東京工業大学環境・社会理工学院建築学系教授)  中井 検裕君

   参考人

   (学習院大学法務研究科教授)           大橋 洋一君

   参考人

   (東京大学名誉教授)   太田 猛彦君

   参考人

   (大阪府北部農と緑の総合事務所地域政策室長)   北山 和宣君

   国土交通委員会専門員   武藤 裕良君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     加藤 竜祥君

  根本 幸典君     三ッ林裕巳君

  宮内 秀樹君     国光あやの君

  枝野 幸男君     渡辺  創君

  池下  卓君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     大西 英男君

  国光あやの君     宮内 秀樹君

  三ッ林裕巳君     熊田 裕通君

  渡辺  創君     枝野 幸男君

  足立 康史君     池下  卓君

同日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     根本 幸典君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 特定土砂等の管理に関する法律案(足立康史君外二名提出、衆法第一八号)

 土砂等の置場の確保に関する法律案(足立康史君外二名提出、衆法第一九号)


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     ――――◇―――――

中根委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案、足立康史君外二名提出、特定土砂等の管理に関する法律案及び足立康史君外二名提出、土砂等の置場の確保に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、東京工業大学環境・社会理工学院建築学系教授中井検裕君、学習院大学法務研究科教授大橋洋一君、東京大学名誉教授太田猛彦君及び大阪府北部農と緑の総合事務所地域政策室長北山和宣君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、中井参考人、大橋参考人、太田参考人、北山参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず中井参考人、お願いいたします。

中井参考人 東京工業大学の中井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、昨年の九月から十二月まで、盛土の災害防止に関する検討会というものの取りまとめを仰せつかっておりましたので、そちらでまとめた提言を中心に本日発表させていただきたいと思います。

 お手元の資料を御覧いただければと思います。

 一ページ目は、委員のメンバーと開催経緯でございますので、こちらは飛ばさせていただきます。委員は、多方面の盛土に関する専門家から構成をされているということでございます。

 二ページ目に行きますけれども、提言は、大きくは三つの内容からでき上がっております。

 一つ目が、盛土の総点検と関連する法制度の状況。二番目が、危険な盛土箇所に関する対策ということで、こちらは、今回の盛土の総点検で発見された、危険があるというような盛土についてどういった対策をしていけばいいかということでございます。三番目が、危険な盛土等の発生を防止するということで、こちらは、予防の方の仕組みについての提言ということになっております。

 三ページ目をお開きください。

 まずは、盛土の総点検と関連する法制度の状況でございますけれども、盛土の総点検について概略をお話しさせていただきます。

 今回、全国の盛土についての総点検を、これは各地方自治体の方にお願いをして点検をしていただいたということですが、この検討会の開催時点、取りまとめの時点では、全国で総点検の対象箇所になったのが三万六千二百二十六か所、このうち、取りまとめの段階で目視等による点検が完了した部分が二万八千百五十二か所ということで、約八割について目視等の点検完了の報告を受けました。

 この二万八千百五十二か所中、法令手続との関係において許可、届出等の手続が取られていなかった盛土、手続内容と現地の状況に相違があった盛土、こちらは、法令手続に沿っていないという盛土でございます。それから、現場の状況について必要な災害防止措置が確認できなかった盛土、こちらは、擁壁ですとか、あるいは水抜き措置といったような部分でございます。それから、盛土の中に廃棄物の投棄が確認された盛土。

 こういったいわゆる問題のある盛土がそれぞれございまして、これらは重複しているものもございますが、重複を除くと千三百七十五か所ということで、点検完了の二万八千百五十二か所に対しては四・九%、約五%の盛土が、このように問題がありそうだというものも含めての盛土ということが報告をされました。

 これらの全ての盛土が直ちに危険というわけではございません。この中で、まだ目視による点検ですので、もう少し詳細な調査が必要だというような盛土も含まれておりますけれども、この取りまとめの時点では、これら五%の盛土についてはより突っ込んだ措置が必要だということでございました。

 それで、関連する法制度の状況ですけれども、盛土はいろいろな法律によって現在規制をされておりまして、まず、国土全体は、国土利用計画法によりまして五地域に区分をされております。それぞれの地域ごとに対応する法律が盛土についての規制を行っているということで、例えば、都市地域ですといわゆる宅地造成等規制法、宅造法と呼んでいるもの、それから、農地については農地関連の法律、林地については林地関係の法律でそれぞれ規制をされているということでございます。

 しかしながら、それぞれの法律がそれぞれの目的を持って制定されておりますので、それぞれの中で、例えば許可を必要とするような盛土の規模ですとか、あるいは、それらの許可の基準とか、そういうものが異なっているということがございまして、全国一律の規制にはなっていないということでございます。

 これに対して、都道府県あるいは地方自治体の方で条例を作って、いろいろ苦労されながら対応されてきているという状況がございました。地方自治体の方の意見としても、全国一律のきっちりとした盛土に対する規制が欲しいという、そういう強い要望があるということで、それに対応するような形で議論を進めていったということでございます。

 次に、四ページ目に参ります。

 こちらは危険な盛土箇所に関する対策ということで、先ほど申しました五%の盛土について、基本的には行為者等に対する法令上の措置の徹底ということで、まずは、法令上の適正な手続を取っていないものについてはきっちりとそれを取っていただく、それから、安全が確認されないものについては安全対策を行っていただくという内容でございます。

 ただし、それが速やかに行われないような場合には、提言の中でも書いてございますけれども、ちゅうちょなく、行政、地方公共団体に対して、必要な措置、これは行政代執行も含めて取っていただきたい。本来、これらはあってはならない盛土でございますので、安全を確保していただきたいということを強く提言の中で申し上げております。

 それから、危険箇所について、対策が完了するまでの間についても、これは周辺の住民の皆さんに被害が及びそうな場合には、きっちりとそれを周知して、監視カメラ等で安全を確保していただくことも提言の中で要望しているところでございます。

 五ページ目に参ります。

 危険な盛土等の発生を防止するための仕組みといたしましては、まず一番目には、先ほど申しましたように、国土の五地域にそれぞれの規制、盛土に対する規制がございますので、これらを一律の規制として国土に適用されるような形にしていただくということで、これは新しい法制度ということになります。五ページ目の2に、隙間のない規制と書いてございますけれども、ここがそういう意味でございます。

 したがいまして、盛土等の安全性の確保については、全国一律の安全基準で当該基準への適合を求めていただきたい。この全国一律の基準で行っていただきたいというのは、全国知事会のヒアリングでも、その中でもそういったような要望が出されたと記憶をしております。

 それから、責任の所在の明確化と危険性の確実な除去並びに厳格な罰則ということで、これまで比較的緩い罰則しかなかったわけですが、今回、厳しい罰則、法人に対しては三億円というように聞いておりますけれども、そういった廃棄物処理法の罰則と同程度の厳しい罰則を求めているということでございます。

 六ページ目に参ります。

 法制度もさることながら、盛土の対策については、これをどう執行していただくかという点が極めて重要でございます。執行していただくのは地方公共団体の皆さんということになります。不法盛土発見時の現認方法、手続等、こういったことについては、国の方でしっかりとガイドラインを整備し、ガイドラインだけではなくて、国からのかなり丁寧な支援をしていただかないと、地方公共団体の方では対応することが恐らくできなくなってしまいます。

 したがいまして、ここは非常に丁寧に国の方に、現場で苦労されている地方公共団体の皆さんへの手厚い支援をお願いをしているところでございます。

 それから、許可地一覧の公表、現地提示と通報情報の共有ということで、許可地の一覧ですとか、あるいは許可の現地提示等により、これは、住民の皆さんが、ここはおかしな盛土なんじゃないかと通報をしていただくのがやはり一番ということになりますので、そういった環境整備についても配慮をしていただきたいということでございます。

 最後に、元々盛土は、建設工事から発生する土の搬出先でございます。それで、これらについてもこの提言では触れておりまして、建設発生土を発生させる発注者あるいは元請業者に対して、搬出先の明確化というようなことを求めております。こちらは、資源有効利用促進法を強化するという内容で是非対応いただきたいということでございます。

 その他、廃棄物混じり盛土の発生防止等もございますけれども、時間の方も来たようでございますので私の発表は以上とさせていただきますが、今回、盛土の新しい法律ということで、提言の内容に沿ったものだと理解をしております。是非とも、この盛土の新しい規制を成立させていただけるようお願いいたします。

 以上でございます。(拍手)

中根委員長 ありがとうございました。

 次に、大橋参考人、お願いいたします。

大橋参考人 大橋でございます。

 このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私がこの法律を見まして、まず一番中心的な課題だと思いますのは、盛土の災害に着目して人命を守る、そういう法律を整備していただきたいということだと思います。

 従前の法律を見ますと、様々ありますが、それぞれ、宅地、農地、森林というような利用目的からする限定がありまして、その制度間に規制の隙間があって、今回、その隙間をつかれて、熱海のような悲惨な事故が起きたというように考えております。

 そこで、そういうような対象行為を拡大するというような観点からいいますと、従前の宅地造成に加えまして、特定盛土等でありますとか土石の堆積にまで拡大するというのは、これは非常に的を射た対策だというように考えております。

 また、従前の宅造法が都市周辺の丘陵部に重点を置いたというようなことがありますが、都市の中心部でありましても、また、山林部、農地部でありましてもこういうリスクはあるというようなことから、また、従前は、自分の足下が危ないとか隣の崖が崩れてくるという、いわばそういう相隣的な規制であったのを、今回の熱海でありますように、自分の上流からリスクが来るというようなことから、そういう周辺でありますとかそうした隣接地域への規制を拡大するというような必要性が問われています。そういう観点からいいますと、特定盛土等規制区域の創設は、まさに目的にかなったものだというように考えております。

 こうした観点から、ともかく包括的な規制の仕組みをつくっていただく。今回は、形式上は宅造法の改正というような名目ではありますけれども、やはり盛土のリスクに応じた盛土規制の一般法を是非制定していただきたいというように考えております。

 そうした観点から私が注目しておりますのは、この法律が共管になっているという点であります。従前は農地と都市ということが区別されて、そこに隙間が出てきた。ですけれども、今回は両省が手を取り合ってというのは、これは非常に未来志向的な取組だと思いますので、是非そこは伸ばしていただきたいと思います。

 二番目に、事実調査の重要性であります。

 地方公共団体は、案外自分の足下が見えていないということがありまして、実態をまず拾っていただく。しかし、今、財政難がありますので、そこは非常に厳しいという状況があります。

 そういう観点からいいますと、今回の法律で、国庫補助で調査を支える、これは非常に重要な視点だというように考えております。ですから、先ほど中井先生からお話があった全国点検でありますとか、今までの既存の法律の規制区域、今回の調査結果を総動員して、こういう事実調査を行っていただきたいというように考えております。

 三番目は、是非、地方公共団体からの要請に応えていただきたいということでございます。

 地方公共団体は、これまで残土条例というようなものを作って、新規のこうしたリスクに対して政策課題を発見して、対応してきたわけでございます。しかしながら、条例が持つ限界があります、罰則上の限界もあります。また、地方公共団体の制度間に格差があれば、どうしても業者は甘い方に流れるといいますか、そういうような隙をつかれるような仕組みにならざるを得ないということもあります。また、都道府県が条例を作り、更に市町村が条例を作るというようなことになりますと、全体的に制度の概観性が悪いというような問題も生じてきます。

 そういう観点からは、是非ここで一度、全国一律の法律を作っていただきたいというのが法律家から見た場合の願望であります。これは、同じことが全国知事会からの要請としても出ているところでございます。

 次に申したいのは、規制の実効性を上げるということであります。

 個別規制法を見ますと、規制は全体的にやはり甘かったというような印象を持ちます。また、先ほど言いましたような条例上の限界もございます。また、規制がある場合であっても、裾切り規制といいますか、一定の規模以上を設けることによって、さらに、その規模が大きいというようなことがありまして、結局、規制がなかなか働かない。そういう中で、地方公共団体は法定外行政指導によって対応してきたわけですけれども、こうした任意の、同意に基づく仕組みというのは限界があって、それが結局うまくいっていなかったということだと思います。ですから、是非強度な罰則をつくっていただきたい。

 罰則を設けていただくということは、別に権力主義的な思考ではありませんで、そのようなことをすることによって、盛土の政策が重要なんだということを是非制度的にお示しいただきたいということと、抑止力を高めていただきたいということで、そういう観点からいいますと、両罰規定、法人重科は目的にかなったものだと思います。

 また、このような罰則が設けられますと、実際、その罰則を伝家の宝刀として背景にすることによって、行政指導自体の実効性が上がる、こういうことも一般的には認められますので、罰則を何が何でも進めるということよりは、むしろ、そういう行政指導の実効性を上げる意味でもお願いしたいと思います。

 さらには、事業者が関連してきますので、明文規定にはなっておりませんが、事業許可の取消し等は厳しく対応していただくというようなことは大事かなという気がしております。

 それで、この制度を動かす上では、この法律だけではなかなかうまくいかずに、ほかの廃棄物処理法制、土壌汚染、さらには資源の再利用の促進法制というようなものと連携を取っていただく、さらには、国の省庁間の連携を取るだけではなくて、地方公共団体レベルでは首長部局と警察部局の間の連携を取っていただくというようなこと、さらには、それを確実にするような意味で、先ほどお話がありましたマニュアルや人材派遣をしていただくことが大事かと思います。

 この法律に見られる規制は二つの局面がありまして、新規の盛土をどのような形で適正にコントロールするかという問題と、既存の盛土に対してどのように対応するかというようなことがあります。そういう点では、許可制の厳格化と改善命令の向上ということがポイントになるかというように思います。

 それと、五番目ですけれども、この法律を見て気がつきますのは、地元の説明会の義務づけとか標識の設置とか許可の公表とか、ある意味、非常にアナログな手法が並んでいるわけですけれども、これは、私は非常に重要だと思います。

 このような積極的な情報提供をすることによって、市民の交渉力が上がる、市民監視が期待できる、それによって、結局、市民が地域の政策や実情に理解を深め、それが地域の防災能力を高める、こういう循環があるのではないかというように考えております。

 最後に、法律が制定された後の話なんですけれども、執行と運用を進めていく上では、この法律では、とりわけ基本方針をどのような形で位置づけるかというような問題とか、あと、非常に重要なポイントが政省令に委ねられているという問題があります。

 具体的に言いますと、規制区域の指定、許可の対象規模、中間検査の対象規模とか、技術基準というようなものであります。このようなところにつきましても、是非先生方に、いい意味で監視をお願いしたいというように思います。

 最後に、この盛土の問題はまだまだ分からない問題がありますので、今回一回の法律改正で全て問題が解決できるとはなかなか考えにくいところがあります。そういうような意味では、一定期間を設けた後に、その成果を振り返っていただくというような意味での見直し規定は是非入れていただきたいというようにお願いしたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

中根委員長 ありがとうございました。

 次に、太田参考人、お願いいたします。

太田参考人 太田でございます。

 私は、山地災害あるいは森林というのをずっと見てきた、現場を見てきた、その感想を中心にしてちょっと現状をお話ししたいと思っております。

 一ページにございますように、実は、今回の盛土、実際には大規模な盛土の大部分は森林山地で行われているということがこの法律の基本になってきたわけでございます。そういう場所では崖崩れとか土砂の流出ということなんですが、もう一度この基本のところを是非しっかりと対応していただいて法案を作成していただきたい、こういうふうに思っております。

 そんな観点から、まず最初に、何といっても、現場が傾斜がある場所ですよね。平地に盛土を造るのではない。宅地造成なんかも、もちろん傾斜があるところでやりますけれども、基本的には、通常の盛土は平地を基本にしているということですが、ここは傾斜があるということでございます。

 そして、傾斜がある森林というのは、その斜面の表面は大変ルーズな風化土壌層、そこに木が生えているわけでございます。実際に起こっている森林での崩壊の現象を見ますと、その辺りが崩れるのがほとんどでございます。林地に、あるいは山地に造る盛土というのは、そういう自然の、表層崩壊というんですが、そういうものとほぼ同じメカニズムで考える必要があるのではないかなというふうに思います。

 最近、非常に災害が多い、雨が多くなっているということでございまして、写真をつけておきましたけれども、ぎりぎりのところで、森林の力で崩壊を防止している。昔は森林がなかったんですが、今は森林が充実しまして、相当止めております。止めておっても雨が更に増えたということで、こういう崩壊が起こっているというところでございます。そういう場所に盛土が基本的に造られる、こういうふうに考えております。

 そうしますと、表層のルーズな土砂、これを全部取るという、それだけでも大きな量になってしまいます。その辺りをどうするかということでございます。

 それから、実は、その表層崩壊というものは、そこに図示しておりますけれども、へこんだ斜面で起こるわけです。もちろん、地震でも起こります。出っ張ったところが落ちますけれども、へこんだ斜面、降雨ですから、集まります。そうすると、そういうへこんだ斜面というのは盛土の量が多くなるわけですから、そこを狙うわけですよね。そうしますと、そこはへこんだ斜面が崩壊している。写真を見ても分かりますように、へこんだ斜面が崩壊しているということですね。それが崩壊すると土石流化する、こういうふうになっているということでございます。そういうところが、谷や沢が大規模な盛土の適地になっている、こういうことでございます。

 そういうところですので、この辺をどう処理するのかということでございます。当然、浸透水が出てくるということでございます。

 そういう場所への盛土でございますので、二ページにありますように、山地での盛土というのは不安定な斜面への盛土である、風化土壌層の上への盛土というのは不安定性を増加させる、こういうことでございます。

 全部切り取るということができるのか、なかなかそれは大変でございます。平地では盛土のみの安定を考えればいいんですが、斜面上では、風化土壌層を含めた、あるいはそこに入ってくる浸透水の集中を含めた安定を考える必要があるということです。大型盛土の議論では、平地とか、あるいは海岸の液状化のところでの議論が多かったようですけれども、ここでは、風化土壌層あるいはその下の水の機能、この辺りを考えるというのが山地での盛土の一番基本的なところであろうか、こういうふうに思います。

 したがいまして、是非、これから作られると思うんですが、盛土の安定には厳格な技術基準が必要である。そして、工事中のチェックのみではなく、将来にわたって、というのは、例えば、盛土は、そのままその上に森林が収まりますと、林地になります。林地になりますと、実は、厳密に言えば、半永久的に厳しいチェックが必要だという感じにもなるわけでございます。

 不安定な斜面上への盛土を考えると、また、近年の豪雨の増加傾向を考えると、建築確認のように本当は全部チェックするのがよろしい、私はそういうふうに思っておりますが、この基準を例えば何とか以上としますと、それより下のところでは伐採をしただけの上に積まれてしまうとか、いろいろな問題が起こってくるので、この辺を是非検討をしていただきたい、こういうふうに思います。

 そして、森林の保全は不可欠でございます。林地に戻していただいた方がいいのです。そうした場合には、地目が変わるわけではないと思いますので、森林の多面的機能の持続的な発揮というのがずっと今言われておりますけれども、そういうふうに対応していただきたい、こういうふうに思います。

 次に、三ページでございます。特定盛土等規制区域の指定でございますけれども、指定区域の参考になるものとして、既に御承知のように、土砂災害特別警戒区域と、それからもう一つ、実は、こちらの対応で区域指定の調査等に係る、土石流危険渓流を含む土砂災害危険箇所というのが国交省の方で調べられているというふうに思います。また、治山事業の推進や警戒、避難に供するということで、山地災害区域というのがあるということでございます。

 そういう辺りについて、現在の科学水準で、実は、よく知られている、土砂災害に関するハザードマップ類というのができております。大変信頼できるマップでございます。ですけれども、実は、水のハザードマップに比べますと多少精度は落ちます。それは私たち土砂災害の研究者がサボっている、こうは言わないでください。

 実は、土砂災害というのは地下の災害なんです、スタート。水は、あるいは土石流でも、地表に出れば、どこでどのぐらいの量ができると想定すればシミュレーションできます。しかし、中というのは大変重要でございます。なかなか大変でございます。ということもありまして、実は、この特定盛土地域の区域指定というのは、今まで調べられたことの網だけで十分であるとは必ずしも言えません。この辺りのことも是非お考えいただきたいと思います。

 そして、三点目、私の話の三点目になりますけれども、やはり運用面についてちょっと危惧がございます。

 といいますのは、特定盛土地区の監督官庁として、林野庁とか都道府県、まあ農水省ですね、の林務の関係部局というのが私は考えられるんじゃないかなというふうに思っております。法律的に厳密には私は分かりませんけれども、そういうふうに思っております。

 そうしますと、山地、森林というのは、都市地域や農業地域に比較して生産性が低いわけですよね。生産性が低いから、粗放な管理を我々はやっているんです。森林とはそういうものです。そういうところですから、都市や農地に比べれば、関係する人員も、あるいは管理の費用もそれほど大きくはないということです。ですから、例えば林地開発許可制度の適用というのも、やはり森林から見ると、一ヘクタールということになるわけですね。その半分とかもっと小さくという話があっても、なかなかそうはいかないわけです。

 そこに、厳しい技術基準が適用される盛土という都市の構造物といいますか、構造物と言いませんね、人工物ですかね、それが設置されるので、やはり検査技術とか、現状というのは例えば森林とか市町村のそういう部署だけではとても難しい、こういうふうに思っております。

 さらに、盛土工事は、先ほどから言われていますように、監視とか無許可工事の探索など、人員を要するという管理上の問題もございます。

 そういうことで、市町村、さらには県あたりがもう少しこの部分をしっかりと組織をしないと、なかなか今の既存の組織では難しいのではないかなというふうに推測をしております。是非、その辺りのところ、他部局の協力とか、そういうことでやっていただければいいかなというふうに思います。

 最後に、附帯の二法案を簡単に読ませていただきました。中井先生の検討会で相当議論されていると思いますので、私は、その辺も含めて、そういう法律も是非作っていっていただきたいな、こういうふうに思います。

 以上で私の陳述といたします。どうもありがとうございました。(拍手)

中根委員長 ありがとうございました。

 次に、北山参考人、お願いいたします。

北山参考人 大阪府の北山です。

 本日は、このような意見を述べる場を設けていただいたことにお礼申し上げます。

 私の方からは、実際に現場で残土処分など盛土行為の指導に携わっていた立場から御意見を述べさせていただきます。

 初めに、大阪府の土砂埋立ての規制状況について説明させていただきます。

 今から八年前の平成二十六年二月、大阪府北部の山麓斜面に民間事業者が堆積した土砂、いわゆる盛土が崩落しまして、周辺の道路や農地に土砂が流出、道路が長期間にわたって通行止めになるという事案が発生しました。

 幸いにも、崩落時に車両の通行もなかったことから人的被害は発生しませんでしたが、この事案を受けて府としても対応を検討する中で、一つの問題点が挙げられました。それは、残土処分を始めとした土砂の埋立行為の安全確保を主目的とする法律や条例というものがなく、また、開発行為に制限を課す法令は幾つかあるものの、それらは対象となる行為や場所が限定されているため、様々な場所で実施される埋立行為に対して効果的な規制が困難であるということです。

 そこで、大阪府としましては、平成二十六年十二月に、府域全体を対象として三千平方メートル以上の土砂の埋立て等を許可制とする、土砂埋立て等の規制に関する条例を制定、翌二十七年七月から施行しまして、土砂埋立て等の適正化に努めているところです。

 また、この条例の運用と並行しまして、土砂の崩落などの問題が全国的な課題となっていたこと、さらに、土砂、いわゆる建設発生土は府県境を越えて広域的に移動する特性を有しておりますことから、各府県の連携が必要と考え、その対策などについて情報を共有し、問題解決に資することを目的とした土砂問題対策全国ネットワーク会議を大阪府の呼びかけにより平成三十年に設立して、意見交換等を行ってまいりました。

 この会議には、土砂条例の制定府県を中心とした二十三府県の地方自治体がメンバーとなっているほか、国の関係省庁にもオブザーバーとして参加していただいているところです。

 このように土砂問題の対策に取り組んでいる中で幾つかの課題が明らかになってきましたが、いずれにしても、地方自治体のみで対応していくことには限界があるために、これまで、関係する都道府県知事ですとか近畿ブロックの知事会等から、国に対して建設発生土の適正処理に関する法制度の整備を要望してまいりました。

 大阪府から国に対して要望を行ってきた内容としましては、三点ございます。

 まず、一点目としまして、建設発生土は府県境を越えて移動しますことから、それぞれの府県単位では土砂の発生元や搬入ルートを特定することが難しく、一旦搬入が始まってしまうとそれを止めるのは非常に困難であるということから、建設残土の発生から搬出、処理に至る流れを管理し、情報共有できる仕組みをつくること。

 二点目としまして、多くの地方自治体で埋立行為を規制する条例が制定されておりますが、許可制であったり届出制であったり、また、大阪府と同様に埋立て等について許可制としている自治体はあるものの、それぞれの許可基準に差があるということ、さらに、条例そのものを設けていない自治体もあるというようなことで、規制の緩い地域に建設発生土が集中するといったおそれもあることから、建設発生土の搬入、埋立て等の行為については許可制として、国民生活の安全、安心を確保できる全国統一的な許可基準を設けること。

 最後、三点目としまして、条例で定めることができる罰則については、地方自治法によりまして二年以下の懲役又は百万円以下の罰金という制約が設けられており、これでは不適正な土砂埋立ての行為者に対する抑止力が十分に発揮されないということがありますので、罰則を強化すること。

 以上の三点を要望してきたところです。

 今申し上げましたように、建設発生土の適正な処理に向けた法制度の整備について国への要望活動など様々な取組を行ってきた中で、この度、盛土規制法の制定に向けた動きが進んでいることにつきまして、関係する皆様に感謝申し上げるところです。

 なお、この度の法案の御審議に際して、特にお願いしたいことが一点ございます。

 国におかれましては、盛土行為に際して許可が必要となる規制対象エリアを、人家に影響が及ぶ範囲など、限定的に運用することを考えておられると聞いております。

 しかしながら、仮に人家等が存在していなくても、道路や鉄道といった公的な施設に影響が及ぶ、あるいは、発生源が山の奥の方であっても、想定以上の距離で土砂が流れ出し、遠く離れた人家にまで影響が及ぶといったことも考えられ、その範囲を想定するのは非常に難しいと思われます。また、大阪府を含め、既に府県域全域を対象として条例を制定している府県もあるため、新たな法律により規制区域が限定されてしまうと、同一の府県内で規制の強弱がまたできてしまう、そして、規制の弱い地域に不適切な土砂埋立てが集中するといったことも考えられます。

 このようなことから、法規制の対象とならないいわゆる白地地域というのをできるだけ少なくして、幅広い地域を規制対象にできるように、運用面での御配慮をお願いしたいと思います。

 最後に、一刻も早い法律の制定と施行をお願いしまして、私からの意見を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

中根委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中根委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。柿沢未途君。

柿沢委員 四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。大変有益な知見をいただけたというふうに思います。

 順次、御質疑をさせていただいてまいりたいというふうに思います。

 中井先生は、有識者会議の座長を務められたということで、この法案を策定するに当たっての基礎をつくっていただいた方だというふうに思います。

 そうした点でまずお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、先ほど来出ておりますけれども、抜け穴や法の網をかいくぐって、悪徳業者がそれをすり抜けて悪さをする、こういうことがないようにしてほしいと。これは熱海市長から先日視察の際に言われた言葉なんですけれども、自治体の長の方がこれだけ厳しい言葉を使われて私たちに訴えかけるというのはなかなか珍しいというふうに思います。それだけ、この世界では、法の網をかいくぐって悪さをしようというような方々が残念ながら存在をしていて、それを何とか防がなきゃいけないということだと思います。ですから、形式的にこれだけのことをやりましたよといっても、ここに抜け穴があるとそこをついてくるということになるわけです。

 先ほど来、許可対象地域と届出対象地域がある、また、国の法律と条例との間で白地の地域が存在しかねないというような、そういう指摘がここまで各参考人の先生方の意見としてありました。

 今回作られている立法において、このような抜け穴、法令の網の隙間というものはどれだけなくなっているのかということについて、是非、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

中井参考人 今御指摘のあったことにつきまして、考えていることをお答えさせていただきます。

 許可の対象、あるいはその抜け穴対策ということなんですけれども、どんな仕組みをつくってもその抜け穴を探してくる、そういうよからぬ人はいるということは承知はしておりますけれども、ここは、盛土をどこまで今回の仕組みで規定するかということかと思います。

 まずは、やはり人命あるいは家屋、財産の安全ということが第一義ですので、そこに影響を及ぼす範囲というのが今回の法案の中身だというふうに考えております。したがいまして、そこの部分については、抜け穴は、可能な限り、あるいは、基本的には非常に今回の法案は少なくなっているというように理解をしております。

 それから、どの辺りまで盛土等の規制区域を指定するかということについては、これからガイドライン等の作成が行われるというふうに理解をしておりますけれども、必要最低限というよりは、やはり安全側を見越した上で是非指定をするということを考えていただきたいというように思っております。

 以上でございます。

柿沢委員 ありがとうございます。

 大橋参考人と太田先生と、あと北山参考人とお伺いをしたいと思うんですけれども、全国一律の法律ができるわけです。そして、法人には三億円の罰金という大変抑止力の高いと思われる重罰が科されるようになるわけです。そういう意味でいうと、当然のことだと思いますが、今まで法律が存在してこなかったのと比べると、やはり大きな違いを生じることにはなるというふうに思いますけれども、その認識でよろしいかどうか、お三方にお伺いしたいと思います。

大橋参考人 私は、今回これだけの罰則を書いていただくということになりますと、やはり制度的に扱いが違ってくると思います。とりわけ、警察の協力を得やすくなるというような点は地方公共団体レベルだと非常に大きいかなというのは、産廃の例なんかを見ますと、思います。ですから、そういうような体制を取っていただいてやるということが大事かなと思いますし、扱いは大きく変わるんじゃないかと考えております。

太田参考人 法律全体を見ますと、中井先生の検討会の内容がかなり盛り込まれているということで、かなりの危惧はなくなってくるのではないかなというふうには感じております。

 ただ、先ほど言いましたように、これを管理していくというところについては、相当、運用面で変更していかなければいけない、あるいは充実させていかなきゃいけないというところがございます。また、技術の面につきましても、やはりもう一段の検討をしていただいた安全な基準を作っていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

北山参考人 これまでそれぞれ参考人の方もおっしゃっておられたように、今までは規制されていなかったものを新たに規制する必要が生じたということでございますので、やはり新たな規制がかかる区域が広がるということはやむを得ないものと考えております。それはもう国民の生命の安全、安心というのを守るために必要不可欠なものではないのかということで考えるところでございます。

柿沢委員 ありがとうございました。

 太田先生から、ただということで、管理また運用、恐らくそういう点でしっかりやっていかないと機能しないものになってしまう可能性があるよ、こういう御指摘があったと思います。

 その点で申し上げると、私は、一九九八年の長野冬季オリンピックの頃に、NHK長野放送局の記者になりまして、現地にいたんですけれども、あの当時、インフラ整備で高速が通ったり新幹線が通ったりしました。高速で一番最初に来たのは何かというと、ごみを載せたトラックだったんですね。山奥の自然豊かな沢に廃棄物をぼんぼん埋めて、また、不法な焼却炉なんかもありましたけれども、こういう問題、都市のごみが高速を通って田舎に持ってこられて誰も見えないところで不法投棄されている、こういう現場をたくさん見ました。

 しかも、それを規制しようと思ってやっている県庁の職員とかというのは、さっきの悪徳業者じゃないですけれども、かなり筋の悪い方々もいらっしゃいましたので、大変身の危険を感じながら、実際にお隣の岐阜県で、廃棄物処理業者に対し厳しいペナルティーを科そうとした首長が殺されちゃうみたいなことも、あの当時あったんですね。こういう方々との向き合いになるわけなんです。

 さっき中井先生からお話がありました、点検の結果、千三百七十五か所ということで、災害防止など安全措置が確認されずというのが六百五十七か所あったということなんですけれども、例えばフェンスが設けられていないとか、そういうことだというんですけれども、これはフェンスを設けると災害防止の安全措置だということになるんですけれども、むしろ、周辺の住民からは全く見えなくなって、中で何が起きているか分からなくなるというような、こういう部分もあるわけです。

 住民通報等々の規定をされていて、そういう意味では、周辺の人たちが不安を感じないようにということに意を用いた法律にはなっていると思うんですけれども、やることになっている中間検査とか、こういう立入りの場面に住民の皆さんが実際に中に入って同行するというようなことも、私は、非常に必要なのではないか、実際に現認をするということが非常に大切だと思います。

 熱海の土石流災害も、気がついたら県の基準の三倍もの盛土になっちゃっていた、こういうことが起きるわけですので、そうした意味で、現地に住民が入るということの抑止力的有効性ということを是非中井先生に御見解をお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

中井参考人 現地の検査について情報を提供するということは、これは非常に重要だと思います。

 しかしながら、実際にそこに立ち入るかどうかは、これは、あくまでも私有財産の土地でございますので、慎重な検討が必要なんじゃないかなというふうに、その他の、例えば再開発事業とか、そういうところでも、立入りについてはかなり慎重な、同意等が必要になっておりますので、今委員おっしゃられたようなことは直ちには無理かなと思いますけれども、情報をしっかりと、とにかく、検査をした、あるいは先ほどのフェンスの内側がどうなっているのかといったような、そういった情報を周辺に提供していくということは極めて重要だというふうに考えております。

 以上です。

柿沢委員 私の個人としての経験も含めて今のお話をさせていただいたわけなんですけれども、北山参考人は、まさに自治体の当事者としてこの問題に関しての現場を実際に見られている方だというふうに思いますので、何か気がついたらそうなっていた、不法な行いをしている人というのはどうしたってそれを隠そうとするわけですから、そういうことが起きる可能性はあるんだというふうに思うんですけれども、実際に、現場の方々として、向き合っている立場として、今のお話についてどういうふうにお考えになられるか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

北山参考人 まさに、土砂の不適正な盛土というのは、早期発見というのが非常に重要であると考えております。

 我々としましても、定期的に管内をパトロールして発見しようとするというようなことはやっておりますけれども、やはり山間部も含めますと隅々まで全て見て回るということは不可能なことですので、そのためにいろいろな対策を取っております。例えば、民間の事業者、例えば宅配便の事業者であったり、そういうところと連携協定を締結しまして、何か不審なものを発見すれば通報してもらうといったような取組も行っているところでございます。

 とはいえ、なかなか発見すること自体が難しいということもありますし、どこでやられるか分からないということはありますので、やはり規制区域については隅々まで広げていただけないかと考えるところです。

柿沢委員 今の宅配事業者と連携してというお話は、なかなかこれはアイデアとしては優れたものではないかというふうに思いますので、こうした知見をやはり共有していくことが非常に大切だなというふうに感じるところであります。

 一方で、建設残土に関しては、やはり発生するものをどこに持っていったらいいかということの順番で、不法な、あるいは法令の基準を超えた処理というものが行われていることがあるというふうに思います。

 その点で、いろいろと発生源に関する、搬出元に関する問題も指摘をされましたが、中井先生、最後は時間もなかったようですので、そこに対する手当ての必要性の問題について、提言を踏まえて少しお話をいただければと思います。

中井参考人 廃棄物が入っている土はさておきますと、土そのものは自然由来のものでございますので、これは有効に使っていただくというのがまずは第一義かと思っております。

 その観点から、たしか平成二十四年の資料だったかと思うんですけれども、約八割ぐらいの土は適正に利用されているというような資料がございまして、残りの二割が残土というような形で積まれているということかなと思います。

 その部分については、やはり発注者それから元請業者が基本的には責任を持って最後まで利用に努力をするということがまず非常に重要で、それでも使い切れないものについて、これは他の公共事業あるいは他の民間の工事で使っていただく。とにかく、使っていただくということを第一義的に考えていくべきではないかということで提言の方は取りまとめさせていただいたところです。

 ただ、建設残土が盛土の原因になっているということは、そのとおりでございますので、これについて、今回は、資源有効利用の観点から強化をしていただきたいということでございましたけれども、将来的には、更に一段、そこの運用をモニタリングしながら再度考えていくということはあり得るかというふうには思っております。

 以上です。

柿沢委員 時間になりました。

 四人の先生方、本当にありがとうございました。以上で終わります。

中根委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 立憲民主党の渡辺でございます。

 参考人の先生方、本日は早朝よりありがとうございます。

 時間もございません、早速質問に入らせていただきますが、私は、熱海市を含めた静岡県の第六区、伊豆半島を中心とした選挙区でございます。まさに今回の悲惨な土石流災害によって、大きな、我々は、痛ましい経験をいたしました。それが契機となって、今回の法律の制定に向けて今議論が始まったということでございます。犠牲になられた方々の思いに応えるためにも、早期の法律の制定と、そして施行を求めて、今取り組んでいるところでございます。

 まずお伺いをしたいのは、四人の先生方にそれぞれ、中井先生、大橋先生、太田先生、そして北山室長に伺いたいのですけれども、ここにもございますように、まず、実効性の問題についてでございます。

 何よりも規制の実効性の向上ということを大橋先生も書いてございますけれども、今回の静岡県熱海の伊豆山の土石流災害を受けて、静岡県でもいわゆる検証委員会が設置をされて、中間報告が出されております。そしてまた、私の住んでおります沼津市というところにおいても、先般、悪質な無許可の盛土があったということで、その事業者が逮捕をされて公表されることとなりました。

 それぞれ自治体に条例があるんですけれども、例えば、条例に基づいて、事業者に対しては、改善命令そして中止命令を出す。違反の事実があった場合は公表して、さらにまた停止命令を発出するんですが、そこにも何年という時間がかかっております。そこにはやはり、行政当局が事業者あるいは所有者に対して改善を命じても、例えば、従わない、一回は指導に従って中止はしたけれども、数年空けてまた再開される、そんなことが繰り返されることによって、その間にその違法な盛土がどんどんどんどん高く堆積をしていくということがございます。

 こうした中で、こうした状況を踏まえて、私どもは、やはり相当厳しい、行政代執行に至るまでの間の期間はある程度定めて行わないと、結果的に、それを繰り返している間にどんどん時間はたち、盛土は堆積をされていくということでございます。

 そういう意味において、これはやはり何らかの形で、行政指導を二回受けたら直ちに行政代執行をする、命令発動基準ということを大橋先生は書かれておりますけれども、こうしたやはり一種の発動基準を明確に決めた方がいいのではないかと思います。そうしなければ、いたずらに時間だけが浪費されるところにつながって、結果的に危険が高まるということが懸念されますが、各先生方、いかがお考えか、実効性確保のためにどうするべきかということを是非伺いたいと思います。

中井参考人 委員おっしゃるとおり、いろいろな執行に対する、勧告ですとか指導、それから中止命令等々の段階がございます。最後は行政代執行ということになるわけですが、こういうところにそれぞれある一定の基準、次の段階の発動にはどれぐらいの期間で何回ぐらいのあれがあればというようなことは、基本的には非常に有効かというふうに思っております。

 今回、運用の指針を作られる、ガイドラインを作られる中でも、是非そういうことに触れていただければなというふうに思っております。

 以上です。

大橋参考人 今おっしゃったとおりでして、我が国はやはり行政指導文化がすごく根づいていて、ずっと行政指導を続けていて、なかなか法定の命令には入らない。例えば宅造法でいいますと、勧告が法令上あっても、全国でどれくらい実績があったかと数えてみると、何件、そういうレベルで、ましてや罰則までなかなかいかないというようなところがありまして、それは一つは、そういう不利益処分をやる場合には行政手続法上のいろいろな規制がありますし、罰則ですと刑事訴訟法上のというようなことがあって、地方公共団体の方がどうしてもそういう手順に不慣れなところもあるというようなこともあります。

 とりわけ、地方公共団体、日本の行政システムを見ますと、国レベルですと局でやっているようなものが、都道府県になると部になって、市町村に行くと課になるという、執行体制が逆三角形になっている、そういう問題がありますものですから、その一番最前線のところにそれだけのものをやらせるということは、やはりいろいろな知見をある程度見える化して、基準にしたものをきちっと出して、これを粛々とやる。

 特に人命が関わっていることですからということで、そういう基準の整備をきちっとやって、今回はもうこういう事故があったわけですから、伝家の宝刀はきちっと抜く、そういう姿勢を持ってやるということが大事で、近年でいいますと、産廃でそういう姿勢がうかがわれますし、また空き家対策でもそういうような形で代執行が進んだというような実例もありますので、そういうようなところを参考にしながら、先行してやった地方公共団体の知見を是非文書にして、それをシステムにして、小さいところでも、知見がなくても、運用できるようなところまで落とし込むということが重要ではないかと考えております。

太田参考人 もうお二人の先生で答えが出ているんじゃないかというふうに感じております。

 私はその辺りの専門ではありませんけれども、やはり全体にできるだけ急ぐという必要がございますね。そういう感じをしております。ただ、内容的にはお二人の先生方がおっしゃったような形で。

 それをやっていくには、先ほどから言っておりますけれども、やはり対応する部署の充実あるいは技術的な充実、この辺がないと、なかなか決めてもいかないということだろうと思いますので、その辺りに注目をして対応していく必要があるんじゃないかなと思います。

 以上です。

北山参考人 大阪府の土砂条例を執行する上でも、行政指導から、さらに、命令、行政代執行へと至ったような事例もあるわけですけれども、やはり命令であったり代執行であったりというようなところになりますと、まず、違反事実の特定が非常に難しい。

 その現場にある土を誰がいつ持ってきたのかというのを立証できなければいけない。先ほど委員からもありましたように、元々土が盛ってあるところに、自分は上に盛っただけやというようなことを言われますと、では、どこからどこまでがその人が持ってきたのかというようなことを説明するのは非常に難しい。

 さらに、代執行まで至るとなりますと、では、その土砂が本当に住民に対して危険を及ぼすようなものなのかというようなことも我々が立証しなければならないというようなところもありますので、非常にハードルが高いという現状があります。

 そういう意味では、ある一定の基準で命令が発動できるような内容というのは、非常に好ましいのではないかと考えます。

 以上です。

渡辺(周)委員 ですので、やはり盛土が一度できてしまうと、なかなか、事業者なり所有者なりに対して、その責任を取らせるには、時間もかかるし、相当な手続も必要とされるということでございます。

 ですから、特に斜面、不安定な斜面に盛土をするということを考えれば、やはりできるだけ許可制という形を取って、建築確認のような許可制が理想だと、我々と同じように、太田参考人がそのように今日のいただいた資料にも書いてございますけれども、例えば、建築確認の許可制を理想とする場合、何らかの、専門家による、例えば都道府県にあります森林審議会のような形の機関を必置するということが、私はやはりあるべきだろうと思いますけれども、一回盛土が始まってしまえば、なかなか難しい部分、それについて、先生はこのように書いていただきましたけれども、その点についての太田参考人の御意見を更に伺えればと思います。

太田参考人 届出制か許可制か、大変難しいところだろうと思います。

 ただ、先ほどからお話し申し上げていますように、ルーズな斜面、例えば、小規模な盛土ですが実際には残土の捨場みたいな対応にもなっているわけですね、現実には。そういう場合に、伐採はするでしょうけれども、その上に積むというようなことになりますと、先ほど言ったように、非常にバランスのところで斜面というのは維持されているわけでございますので、そのバランスが崩れることになるということになります。

 そういうことがありますので、実はかなりチェックをしないと少量でもなかなか不安定だろう。それを、じゃ、風化土層は取ってやったらどうかと。平地でしたらそういうことになるかもしれませんけれども、山地ですので、風化土層は、例えば崖錐なんかですと非常に厚いところもあるということで、その辺も考えますと、相当危険を伴っているということがあるわけですね。

 それから、現実には、詳しくは知らないんですが、地目が変わるわけではない、また自然に森林に戻る、そうすると浸透が起こるということもありますので、この辺りの技術的な対応ということを考えますと、できるだけチェックが進むようにしたい、してほしいという気になるわけですね。それには、技術的な、あるいは、先ほど北山参考人の方もおっしゃいましたけれども、どういうふうにその現場を見るかというのは、なかなか難しいということもございます。

 そんなこともありますので、私は、できる限りその辺りを、小規模であっても危険も伴っているということを御認識いただいて対応していただきたいな、こういうふうに思っております。

渡辺(周)委員 静岡県の報告書の中間報告の中で、既存の根拠法令の問題点という中で、静岡県の条例について検証して検討すべきではないかと記載されている部分をちょっと参考に読み上げますと、例えば、届出に当たっても、届出受理に当たって、技術面に関しチェックを要する事項が多く、この面で技術吏員の薄い市町では十分対応できていたのかどうかと。やはり人材の面でなかなか専門家がいないと。いろいろなほかのことも、行政職の方々はたくさん仕事を持っておりますので。

 そうした中で、今、太田参考人、この資料にもございますが、盛土の安定には厳格な技術基準が必要であって、また、工事中だけでなくて、将来にわたって、厳密に言えば半永久的に厳しいチェックが必要であると。

 先ほど申し上げたように、一回許可をして、一回届出が受理されてしまえば、その後のチェック体制もなかなか厳しいんですけれども、当然、そこに至るまでの間に、その専門家がどれだけいるだろうかということに関しては、相当、自治体が、まだまだ吏員においては不足しているところがございます。

 この点について、そういう専門家が全国を回っていらっしゃる、例えば太田参考人、自治体の今の現状を見て、その点はどう率直にお考えになっていらっしゃいますでしょうか。その点について伺いたいと思います。

太田参考人 技術の部分は、山地の災害、治山も砂防も含めて、土砂の管理あるいは土砂のチェックというのは、そういう技術はそれなりにもちろんございます。ございますけれども、規模が、例えば堰堤等に比べますと、やはり土量等の問題が、むしろ、量は大きいんですけれども、技術としていろいろ考えていくのには不十分というような状況だろうと思います。

 盛土がたくさん届けが出されますと、それをみんなチェックしないといけないということになると、今の体制ではなかなか難しいのではないかなと思います。

 それから、先ほどもう一つ話がございましたけれども、森林審議会等でという話が今ございましたけれども、確かにそういうところにというのもあるんですが、もう一つは、盛土を、地域を指定する場合には市町村の話を聞くみたいになっていますが、許可の部分についても、大規模なものについては何かそういうこともあってもいいのかなという感じはいたします。

 実は、山の方については、災害対策基本法の方で、最近は地区防災計画を作るようになっております。そういうところでは、その地域の人たちが結構山の奥まで見て、そしていろいろ議論をしているという状況もございます。

 そういう状況も含めますと、それが市町村に上がってくるということもあるかと思いますので、そういう情報も含めて対応していったらいいんじゃないかなというふうに感じております。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 時間が来たので終わりますけれども、参考人の先生方、どうぞ、それぞれの専門分野で今後も私どもに御指導いただけますようお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中根委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 参考人の先生方、本当に今日はお忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございます。

 私は、今日、大阪府の北山室長にお越しをいただいていますが、八年前に大阪府で大規模な土砂崩落があった選挙区の者でございます。

 ちょうど、土砂が崩落した翌日に、当時環境委員会だったと思いますが、土砂の問題を質問通告していたんです、土砂は問題だと思って。当時、やはりいろいろなごみも混ざっているケースも多かったですから。たしか、私の地元でもいろいろなそういう有害なものも一部検出された記憶がありますが、環境委員会で通告していたんですね。よし、あしたはその質問だという前の夜に大規模な土砂崩落がありまして、翌日から国会での問題提起を始めました。

 しかし、なかなかうまくいきませんでした。国会で質問することはいたしました。それから、日本維新の会として議員立法を作りました。当時は、盛土の規制だけではなくて、今回も議員立法を出していますが、トレーサビリティー、それから置場の確保、この三つを三点セットで建設残土安全確保法案というのを出しました。

 私は、地元に自民党の先生もいらっしゃいましたから、今はちょっと落選中でいらっしゃいますが、相談に行きました。そうしたら、やはり自民党の議員の方は、みんなとは言いませんけれども、この分野はやりたくないんですね。

 今日も、見てくださいよ、この出席人数。もう私は怒りで火を噴きそうです。いや、出席いただいている先生方、特に公明党の先生方は出席いただいていますが、自民党は半分ですよ。さっきは半分以下でした。

 私はふだん定足数というのは気にしない人間です。定足数なんかどうでもいいんです。でも、今日は、お客様、先生方にわざわざお越しをいただいてお話を聞く場ですよ。北山室長なんかは大阪から来てもらっている。何ですか、これ。一事が万事なんです。

 公党を批判するとまた懲罰動議が出るので言いませんが、自民党がやってきた政治、自民党が戦後、一九五五年から考えてももう還暦を過ぎていますね、皆さん。自民党は、この六十年以上、こういう政治をやってきたんです。だから、熱海で二十六名の方が亡くなり……(発言する者あり)二十六名、ちょっと今、誰、不規則発言。名前を言ってごらんよ、議事録に残しましょうよ。(発言する者あり)高橋先生、しっかりやります。

 僕は本当に怒っているんですよ、自民党を。だから、熱海は、自民党の不作為の結果なんです。二十六名の方が亡くなり、一名の方が災害関連死で、二十七名の方が亡くなり、あとお一方はまだ見つからないんですよ。これは自民党の不作為なんです。私は、だって、同僚議員に頼みましたから、一緒に議員立法をやりましょうと。そうしたら、私の議員立法を見るなり、いや、これはやりたくないと。お金をもらっているんでしょう。いろいろあるんでしょう。

 そして、今日の朝、理事会で我が党の市村理事から修正協議の申入れをしました。修正協議しましょうよ。

 ところが、与党筆頭はうんともすんとも言わなかったそうですよ。うんは言ったか。(発言する者あり)いやいや、聞いていますよ。結論は出ましたか。(発言する者あり)いやいや、修正協議についてはまだ、はいと言われていない……(発言する者あり)決まったの、修正協議。じゃ……(発言する者あり)いやいや、修正協議入りを我々は申し込んだけれども、じゃ、今日から本件は修正協議入りする、いいですね。

 委員長、いいですね。

中根委員長 足立君、参考人の質疑をしてください。

足立委員 これは参考人の皆様にも聞いていただく必要があるんです。

 委員長、修正協議入りするでいいですね。

中根委員長 足立君、参考人の質疑を続けてください。

足立委員 参考人の先生方、大変失礼しました、お見苦しいところを。

 しかし、参考人の四先生方は、皆さん、私が言っている問題の深刻さ、御理解いただいていると思います。

 ごめんなさい、時間があれなので、北山さん、今日はありがとうございます。

 御指摘をいただいた、要は、白地がある、大阪府の条例は白地がない。私はその方がいいと思います。

 もう一つ、大阪府の条例には、そもそも許可制以前に、禁止区域がありますね。私の豊能町はいまだに土砂が動いているので禁止区域を設定してもらいました。禁止区域を設定してようやく止まったんです。

 私は、白地をなくす、禁止区域をつくる、この大阪府の条例が今回の閣法よりも優れている点については国も検討すべきだと思いますが、大阪府は、やってみて、白地がないことは、先ほど御指摘があったように、有効だと思うと。

 ちょっと、私がこういう態度でやっているから発言しにくいですね。済みません。悪いのは僕なので。

 禁止区域はやはりあった方がいいと思いませんか、北山さん。

北山参考人 土砂搬入禁止区域の規定につきましては、埋立て等の行為者だけでなくて、土砂を搬入する者に対しても制限を課すことによって、不適切な埋立地への土砂の搬入そのものを止めようということで設けているものでございます。

 府としましては、一旦土が入り出すとなかなか止めるのは難しいという状況がありますので、そこも踏まえて、発生元の対策として、土砂の発生から搬出、処理に至るまでの流れを管理する仕組みというのを整えていただければと考えているところです。

足立委員 ありがとうございます。

 今、北山参考人からおっしゃっていただいたように、私も、地元で聞いているのは、これは有効だと。実際に、私の地元は、許可制では止まらなかったものが禁止区域で止まりました。だからやはりこれは有効なんです。それぐらいこの分野は、先ほど柿沢委員もおっしゃいましたが、なかなか難しい分野であります。警察が本当に入らないとできない世界なんですね。

 私も、実は、選挙のたびに、有権者の皆様に、申し訳ないけれども、申し訳なくないけれども、当選させてほしいということで選挙をいつもしていますが、私は落選すると命に関わりますので、バッジをつけているから何とか身の安全を守っています。しかし、私は、国会でこの問題、この八年間取り上げ続けてきました。バッジを外した途端にどっかに失踪するかもしれませんので、そのときは捜していただきたいと思いますが、でも、自民党が放置してきた日本の経済社会というのはこういう経済社会なんです。新しい経済社会をつくっていきたい、こう思います。

 あと六分ほどございますので、四人の先生方にトレーサビリティーの話をちょっと伺いたいんです。

 今日、先ほどこの紙で太田参考人も、一番最後のところに、トレーサビリティーは重要だが、その取扱いは資源の有効利用の観点や廃棄物処理法の関係と一緒に議論すべきと。同感です。同感ですが、やはり、この土砂の問題、着地点だけで議論しても限界がある。やはり、発生者の発生者責任をしっかりと踏まえる観点からも、トレーサビリティー。

 それから、土砂といってもいろいろな土砂がある。ごみが混ざっていることもある。土質も違う。やはり、どこから来た土砂かということが分からないと、安全確認、私は元々土木屋ですから、プロですからよく分かります、安全を確保するためにも、どこから来た土かが分かることが重要だと思いますが、四先生の御意見を賜れればと思います。

中井参考人 建設活動から出る残土について、トレーサビリティーというのは私も非常に重要だと思います。

 ただ、先ほども申しましたけれども、土は基本的には有効利用していただきたいということなので、現行の資源有効利用法、あるいは廃棄物処理法との整理は私も必要だというふうに思っております。

 現に、残土のトレーサビリティーについては、いろいろな新しいICTを使ったような試みも、それこそ試行ですけれども、始まっているというように聞いていますので、是非そういうところをまずは支援をしていただくということかなと思っております。

 以上です。

大橋参考人 土のトレーサビリティーの問題は重要だとは思います。

 ただ、今回のこの法律に盛り込まれた内容自体がかなりいろいろな宿題がたくさんあって、これを短期間でやるということ自体、非常に難しい問題を含んでおります。

 それで、今回、これを踏まえて、産廃の方面ないしは先ほど出ていました再生利用の観点からも見直しがされるということですので、その成果を見て、先ほど私が申しましたけれども、見直しの後にまだ問題が残るのであれば、その段階でというような形で考えるのが現実的ではないかと考えております。

太田参考人 私の方は、専門ではありませんけれども、先ほどから申し上げましたように、中井先生の検討会でも相当議論をされているということでございますし、今も参考人もありましたような関係ですので、是非その辺と一緒に議論をしていただいて、やっていただきたいという感想だけでございます。

 以上です。

北山参考人 大阪府としましては、埋立ての規制、埋立現場のそのものの規制だけではなく、建設発生土の発生者側の責任を明確にして、発生から搬出、処理に至るまでの流れを管理する仕組みが必要と考えておりまして、これまでもそのように国に要望してきたところです。そこを是非実現していただきたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 今日は、少し、参考人の先生方の前で大変お恥ずかしいことを申し上げて、参考人の先生方にはおわびを申し上げたいと思いますが、国会は本当に大切なところで、国権の最高機関として法律を作るところです。だから、私は、本当にこの八年、真剣にこの問題に取り組んでまいりましたので、こだわりがあります。

 先生方がおっしゃっていただいているように、大前進です、今回。この分野において、それぞれ別の法益のための法律が、砂防法とか森林法とかあったけれども、この盛土という視点で法律ができることは、これは大変大きな飛躍であるということで、私は、斉藤大臣や関係の国交省の皆様、農水省の皆様には感謝をしております。

 ただ、やはりこれは一歩にしかすぎないと思うんですね。次のステップ、次のステップとやっていくときに、この法律、閣法には、附則の五条に検討規定がありますが、この法律の施行後五年をめどとして、この法律による改正案の規定について検討する。五年先だし、それから、検討対象も今回の改正の部分だけなんです。すごく閣法って狭く検討規定を書くんです。

 私たちは、国会として、この検討規定では足りない、今日出たような課題をしっかりと明記して、五年を待たずに、必要なときには適切なタイミングで今日出た論点についてしっかり検討できる、そうした検討規定を入れなければ、到底私は、この八年、御迷惑をかけた皆様に、また、熱海の被害者の皆様に顔向けができない、亡くなられた二十七名の方を弔うこともできない、そういう思いで採決に臨んでまいりたいと思いますので、是非、与野党の先生方には、今申し上げた条文修正について提案をしてまいりますので、是非、御協力、御支援のほどお願いします。

 ありがとうございます。

中根委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 中井先生を始め、四人の参考人の先生方に今日はお運びをいただきまして、改めて心から御礼を申し上げます。

 今日、先生方の意見陳述の中にもございましたし、これまでの質問の中でも、一つの大きなこの法律の論点として、いわゆる規制区域の在り方についてございました。よって、ここについては、四人の参考人の皆様にお伺いをしておきたいと思っております。

 これも先生方に私が申し上げるまでもありませんけれども、この法律は、これまで課題であった安全性の確保のための規制を全国一律でかけようということでございます。これはもう皆さん大賛成だと思っております。よって、この必要性は論をまちません。

 一方で、規制をする以上、権利、つまり、いわゆる経済活動の自由を制限するわけですから、その規制をする理由と定義というものは明確にしなければ法治国家ということになりませんので、要は、その定義がどうなのだという議論を、今日、先生方にさせていただければと思います。それはつまり、法文上何と書かれているかということに尽きると思っておりまして、改めてちょっと今日は紹介をさせていただきたいと思います。

 まず、宅地造成等工事規制区域、これはどう定義されているかといいますと、都道府県知事は、基本方針に基づき、かつ、基礎調査の結果を踏まえ、宅地造成、特定盛土等又は土砂の堆積に伴い災害が発生するおそれが大きい市街地若しくは市街地となろうとする土地の区域又は集落の区域、これらの区域に隣接し、又は近接する土地の区域を含む、これらであって、宅地造成等に関する工事について規制を行う必要があるものを、宅地造成等工事規制区域として指定することができると、まず大前提として置かせていただいております。

 さらに、二十六条におきまして、特定盛土等規制区域というものを設定をしております。この定義はこうなっています。都道府県知事は、基本方針に基づき、かつ、基礎調査の結果を踏まえ、宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域であって、土地の傾斜度、渓流の位置その他の自然的条件及び周辺地域における土地利用の状況その他の社会的条件から見て、当該区域内の土地において特定盛土等又は土砂の堆積が行われた場合には、これに伴う災害により市街地等区域その他の区域の居住者その他の者の生命又は身体に危害を生ずるおそれが特に大きいと認められる区域。つまり、様々修飾しておりますが、最終的にそれらが人命に危害を生ずるおそれがあるこの地域は、区域指定ができると定義をしております。私はこの法文を読む限り、必要十分な定義ができていると思っているわけです。

 よって、今日、北山参考人もおっしゃっていただいたとおり、白地地域をできるだけ小さくする、もちろんそうです。人命に及ぶようなリスクがあればそこは指定できるというところまで定義をしているこの法文で、なお、こういうところが白地になったら困るなというところが、私はこの法文を確認する限り、現時点では思い当たっていないものですから、この法文で必要十分ではないかと理解をしているわけです。

 この点につきまして、四人の先生方から御意見をお聞かせいただければと存じます。

中井参考人 委員から御指摘のありました、まず、宅地造成等規制区域ですけれども、これはもう以前からあった区域で、いわゆる都市地域の中に適用されるものだと理解しております。

 今回、特定盛土規制区域ということで、これまで宅地造成規制法では適用されなかった農地や林地等にも適用される区域として、特定盛土規制区域が新たに創設されたということで、定義としては私も必要十分、人の生命ということで十分だと思っております。

 ただ、これは実際にどういうところにそれを指定するかについては、今、指定に際してのガイドライン等々が必要かなということで、先ほど申し上げたのは、必要最低限ということよりは、人の命に関わることですので、安全側のリスクを取った上で指定を考えるということを是非考えていただきたいと思っております。

 以上です。

大橋参考人 今御質問にありました中で、これは人命を守ることをまず第一義にした法システムなんだという、そういう前提をまずしっかり置いた上で条文を読んでいただくということをしないと、これだけだと不十分だという御批判があるのかもしれません。

 ですから、そういう思いを、もちろん法律制定時にも出すことも大事ですし、これから作られる基本方針でありますとか政省令というものも、それを踏まえてですね。

 そうしますと、片方で、法律の中には、どうしても財産権を規制する法律には必ず必要最小限という条文が入りますので、それとちょっと対抗するようなことを言うことになりますので、やはりこれは、そういう人命を守る意味から今まで以上に広く網を張るシステムなんだということは置いた上で、運用していただくということが大事かなと思います。

太田参考人 安全側とか人命尊重という形で少し広くということですが、それを実際にどう取るかというのは、これは技術的な問題もあるし、調査の問題もあるということでございます。

 その状況を私の方の三ページのところにちょっと書いてみたわけでございますが、先ほど言いましたように、今ある調査内容も必ずしも十分かどうかは分かりません。さらに、先ほども御質問にお答えしましたけれども、災害対策基本法の地区防災計画、私の、先進的なところですけれども、お話を聞くことによりますと、その元がどこから土砂が出てくるのかということで、相当上をいろいろ探っております。そういういろいろのことを考えますと、ここに出ているもの以外も含めて網を張っていただければ、今先生方が言われたような条文の内容に対応してくるだろうと思いますが、何度も申し上げますけれども、その調査とか人員とかというのは大変でございます。森林地の中で、例えば、現状で調査するとしても、森林になっております。その中で、どこが盛土なのかということになるわけでございますね。そういうことも含めますと、相当、調査の方も慎重にやらなきゃいけないという、実質の面でそういう感想を持っております。

 以上でございます。

北山参考人 大阪府としましては、府条例と同様に、全域に規制をかけていただきたいというふうには考えているところでございますが、区域指定の制度ということであっても、できるだけ漏れのないように、また、指定に際して調査等に都道府県の負担が余りかからないように、できるだけ負担が少なくなるようにというような、重ねてになりますけれども、運用面での配慮をお願いしたいと考えております。

伊藤(渉)委員 大変ありがとうございました。

 先生方からおっしゃっていただいたとおり、この規制は、人命そして国民の財産を守るための、安全性を確保するために規制をするということ、この法律の立法趣旨をよく理解をしていただいて現実の運用が行われるように、我々も引き続き努力を重ねていきたいと思います。

 そういう意味で、まさに執行体制について、今日わざわざ大阪府からお越しをいただいておりますので、引き続き北山参考人にお伺いをしたいんです。

 一方で、今、行政が抱えるリソース、マンパワー、なかなか、十分と言えるかどうかというのをいろいろなところで散見をして、私も心配をしております。前回の法案の質疑でも、国土交通省に対しましては、地方整備局を中心に、リソースの充実、マンパワーの充実、これを引き続き強化をしてもらいたい、そういうお願いをしたところです。

 せっかく今日大阪から現場の室長にお越しいただいておりますので、まさに国への要望といいますか、この法律、生命を守るこの法律を現実の上で運用する上で、こういうところを是非手厚くサポートしてもらいたい、そんなお話、せっかくですので、お聞かせいただければと思います。

北山参考人 今回の法案の執行体制につきましては、やはり様々、今後の課題というのはあるとは考えております。

 特に、面積要件が、通常、都道府県の土砂条例では三千平米程度以上を対象とするものが多いのですが、今回の法案では五百平米以上から対象になってくるということで、非常に細かいものを拾っていくという必要が出てきますから、その辺の対応に人的な面で非常に難しさがあるのではないかというふうに考えております。

 我々も、三千平米以上は都道府県の条例で、それ以下のものについては市町村の方に条例を作っていただいて、規制をしていただくようにというお願いをこれまでもずっとしてきたところですが、やはり市町村は、先ほど委員の方からもありましたけれども、技術面でそういう人材が不足しているというようなこともあって、規制するのは難しいというような御意見もいただいているところもありますので、やはりそういうマンパワーの面でなかなか、まだまだ課題があるのではないかというふうに考えるところです。

伊藤(渉)委員 引き続き、北山参考人にお伺いしたいんです。

 私も、いわゆる土木屋、土木工学出身で、技術系の人間なものですから、自治体、特に基礎自治体における技術系人材の不足ということは、今回審議されているこの盛土規制法のみならず、解決に向けて努力をしていかなければならない課題だと思っています。

 大阪府といっても大変広いですし、そこにある基礎自治体も、大きな大阪市のような自治体から小さな自治体までありまして、じゃ、その小さな自治体にどれだけの技術者がいるのかということになってくるんだと思います。しかし、具体的な技術を背景にした規制を実行しようと思えば、そこが分からなければやはりできないわけですね。

 その意味で、国は地方自治体をサポートする、府は基礎自治体をサポートする。基礎自治体が、本当にいわゆるそこに籍を置く公務員の方だけで対応できるのか、これからやはり民間の力もかりるために外注という行為が必要になるのか、その辺りについては、現時点で結構です、ざっくばらんにお聞かせいただければと思います。

北山参考人 今御質問いただいた内容につきまして、なかなか今の時点で私の方から公式な見解として御意見を述べさせていただくことはできないんですけれども、こういう開発規制の業務につきましては、可能な限り、やはり公務員といいますか、直接職員で対応できるような体制をつくっていくのがまず第一ではないかなと、私、個人的には思うところです。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 そのためにも、そこにマンパワーが十分確保できるように、我々もしっかり支援の方をしていきたいと思います。

 時間も残り僅かになりましたので、最後に中井先生にお伺いしたいと思います。

 この法律は、施行後、国土交通省の目標として、五年以内に全都道府県等で規制区域を指定するというふうに目標を設定をしております。

 これまで提言をいただいた中でも御議論があったかと思いますけれども、このスピード、もちろん早いにこしたことはありません。規制区域の設定がなされるまでは、いわゆる規制がかからないわけですから。

 我々が国交省から聞いているのは、約三万六千か所の盛土について点検をしていて、措置が必要な盛土が約千百か所ある、それはこれから詳細を調査したりとか、いろいろあると。そういうこともやっていかなければならないわけですけれども、一つは、五年以内という目標の妥当性について。

 また、その間行う既存盛土への必要な措置について課題等、御所見ございましたら、お願いしたいと思います。

中井参考人 五年以内ということなんですけれども、もちろん早い方がいいにこしたことはございません。ただ、一方で、現在の、今回の盛土点検で出てきた、危険性がある、ありそうな盛土、これについては五年に限らず早急に措置をしていただきたいというふうに思っております。

 それから、新しい特定盛土規制区域等の指定については、やはり調査も必要ですし、あるいは、今回多方面に、それこそ行政が連携をする必要がございます。都市の部門、山林の部門、農地の部門、そういったことも含めてですけれども、可能な限り、私も早くこの措置をしていただきたいというふうには思っております。

 以上です。

伊藤(渉)委員 貴重な御意見、大変にありがとうございました。先生方の参考意見もしっかり認識をしながら、法案を仕上げていきたいと思います。

 ありがとうございました。

中根委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 国民民主党の古川元久です。

 今日は、四人の参考人の皆様方には、大変お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただきまして、誠にありがとうございました。

 私の地元は、元々は丘陵地みたいなところが戦後開発されて、私の住んでいるマンションなんかもまさにそういうところに建っているんですけれども、昨年の熱海の土石流の後、そういう土石流災害とか、そういうもののハザードマップ、自分のところも見てみたら、都市部なんかでも、大規模じゃないんですけれども、私の住んでいる周りも、結構、ここは危ないですというふうに、もうハザード指定されている地域があるのに気がついたんですね。多分、周りに住んでいる人はほとんど、都市部であると、そういう土砂災害みたいな、余り気がつかないと思うんですけれども、小規模のものであれば、そういう山を崩してそこを住宅地にしたようなところは、やはりどこでも起こり得る話じゃないかということで。

 この問題は、まさにそういう、いかにもやはり危ないというところでだけじゃなくて、安全だと思っている地域でも起こり得る問題として捉えなきゃいけないなということを私自身も感じたわけなんでありますけれども、そういった意味では、これは早急に対応していくという意味で、この法改正というのは非常に大事なことだと思っています。

 前提として、いろいろ指定するに従って、今回盛土の総点検をやったわけなんですけれども、かなり、急遽これだけの、三万六千二百二十ですか、それを目視で二万八千百五十二件ということなんですが、目視でどれくらいきちんとチェックできるものなのか。かなり、しかも短期間にやったんですけれども、これの、いわゆる信頼していいという、今回、目視によるチェックで四・九%、まあ五%弱ということだったようなんですけれども、これでどれくらいきちんとチェックできるというふうなものなのか。この辺についての御知見があられるんじゃないかと思われる中井参考人と太田参考人とそして北山参考人の方から、今回のこの目視によるチェックでどれくらいかなり正確にといいますか、そういう問題のあるところはチェックされたというふうに思われるか、御意見をお聞かせいただければと思います。

中井参考人 私は厳密に言うと盛土の技術的な部分が専門ではないんですけれども、目視による確認ということで、傾斜、擁壁、水抜き措置、そういったものは目視で確認して、安全であるというふうに判断されたものと私は思っております。

 ただ、例えば、草が生い茂って、そういう安全が確認できないものというのもございまして、それは詳細な調査をしていただくというように、取りまとめの段階では聞いております。

 以上でございます。

太田参考人 これは、まずは地形から対応するわけですね。それで、治山であっても、砂防であっても、どういうところが危険なのかというのはある程度の基準とかそういうものがございます。そういうことで対応を今までしてきている、目視であってもそういうものを基準にしてやってきていると思うんですが、私のようなところから見ますと、実は、その中の水の問題、先ほど私は、へこんだ斜面とか凹斜面とか、最近はゼロ次谷という言葉もあるわけですが、そういう部分の、大きな斜面であっても、そのへこんだ部分というのが結構危険なんですよね。その辺のところまで踏まえて対応するという技術になると、ちょっとなかなか難しい、なかなか一般には難しいと思います。そういう形で対応してきているのは、やはり治山の分野、砂防の分野だろうと思います。

 ですから、その辺りの技術を持った人に手伝ってもらって対応しないと、なかなか難しいんじゃないかなというふうに私は感じております。

 都市の基盤の話だけでは、ちょっとやはり自然が違いますので、その辺りのところは是非御理解いただいて、対応していただきたいと思います。

 以上です。

北山参考人 盛土の点検につきましては、時間の制約ですとか箇所数が非常に膨大であるということもあって、目視による点検ということが行われたところです。

 この点検に当たっては、例えば、その斜面にクラック、割れ目が発生していないかとか、先ほどもありました湧水、斜面からどこか水が漏れ出ているようなところがないかとか、そういうような観点から調査を行っておりまして、今現在、目視でできる限りで確認した範囲では、一定、安全が確保できている、直ちに崩落するような危険はないというふうに判断しているところです。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 ちょっと、引き続いて太田参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほどお話があった、結局、そこの安全性というのも、形式的に、例えば水にちゃんとやれているかだけじゃなくて、やはりその土壌によって相当違うんじゃないか。

 今日お示しいただいた広島・呉の表層崩壊の多発、この辺の地域は、やはり土壌が非常にもろい、そういった意味で崩れやすい。だから、本来やはり、今度基礎調査をやるということになっているんですけれども、ときには、形式的にいろいろなちゃんと対応策をされているかだけじゃなくて、そこの土壌がどういう土壌なのかという、やはりそこも踏まえていないと、形式的なところだけでは、土壌が違えば当然もろさとかそういうものが変わってくるんじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

太田参考人 そのとおりでございまして、先ほど言った技術の部分に対応している人たちは、そういうところは対応をちゃんときちっとできております。

 例えば、この私の写真でも、二枚ありますけれども、土壌がというか地質が違うわけですね。そういう状況は、当然、その分野では当然のことと思っております。

 ですから、目視と言われても、その地域地域に対応している人たちは、それぞれの地域についてそういう知識を持って目視をしているというふうに感じております。

 ということですので、逆に、全く対応できていないというと、なかなか地形あたりぐらいしか対応できないということなので、その辺が技術の問題ということでございます。

 以上です。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 次に、中井参考人にお伺いしたいと思いますが、検討会でかなりいろいろなことを検討して提言していただいたんですが、今回の法改正で、この提言されたことのどれくらい実現されたというふうにお考えか。

 そして、残された課題として、早急に対応する、それこそ法律を作ったりとか改正が必要だと思われているところはどういうところがあるか、中井参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

中井参考人 今回の法律につきましては、法律として作らないといけないところについてはかなりの部分対応していただいている、ほぼ提言に沿った形で法案を作っていただいたというふうに感じております。

 法律ではなくて、例えば省政令でもちろん対応できるところもございまして、資源有効利用活用法などはそちらの方で対応していただけるというように私は認識をしております。

 以上でございます。

古川(元)委員 今との絡みで、大橋参考人の方にお伺いしたいと思いますが、行政法学者のお立場から見て、今回の法改正、今、中井参考人の方は、ほぼ法律上のは対応できているんじゃないかというふうに御発言されましたが、大橋参考人から見てはいかがでしょうか。まだやはりここは新たな法改正とか追加でやるべきところがあるというふうにお考えの部分はあるでしょうか。

大橋参考人 私、この法律を見まして、今までの個別法で足りないと常々思っていたようなところに、今回の報告をまとめていただいて、かなりそれを実現していただいたということと、先々の法律に対しての方向性を示すようなところもいろいろ入っていて、そういう点では、非常に有意義なというか、個別法にとどまらない、この災害法の分野で一般的な姿を表した法律かなというような気がしております。

 ただ、問題点としては、あと、この分野、災害が起きるたびに法律ができて、もうジャングルのようにいろいろな法律が入り組んでいて、相互関係が私から見てもよく分からないところが多々あるような分野ですので、それをやはり今回整理していただいて、先ほど言いました連携の話ですけれども、それをどこまで取っていただけるかという点が重要なのかなという印象を持っております。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 私も、大きな前進ではあると思うんですけれども、今参考人が言われたように、もうちょっと、全体、ほかの関連する法律、ちゃんとトータルになっているのかと。

 先ほど、共管になったところを評価されましたけれども、私も役所で仕事したことがあるんですけれども、共管というのはよさそうでいて、どっちも無責任になる、どこも。だから、ちゃんと、俺の責任だという、どこかの役所に持たせないとみんなが無責任になりかねないところもありますので、私は、共管というのはよさそうに見えて実際はどうかというところがありますから、そういった意味でも、ちょっとこれは引き続きの、法改正といいますか、検討が必要じゃないかというふうに思っております。

 時間もなくなってまいりましたが、大事なことをちょっと北山参考人にお伺いしたいと思うんですが、今日の参考人の皆さん方、やはりこの法律ができても、実際に現場でいろいろ適用すると、やはりマンパワーの問題、これを指摘されました。

 実際に行政の現場でやっていらっしゃって、やはり人手が足りないというふうに思いますけれども、現実問題、今この状況、そして今後もどんどん人口も減っていくような状況の中で、こうした分野について、人をちゃんと充てて、そしてチェックもできてフォローもできるような、そういう現場の現実があるのか。また、それをやる人は、それをチェックする人とか何かはそれなりのやはり知識がないと、ただバイトみたいな人でやるということはできないと思うんですけれども、そういうことは、人材の養成とか何かも、行政の現場にいらっしゃって、本当にできると思われるかどうか、北山参考人の御意見を伺わせていただきたいと思います。

北山参考人 委員御指摘のとおり、人材の育成というのは非常に、いろいろな面、分野でかと思いますが、課題になっているところです。特にこの土砂の埋立規制については、非常に技術的な面での申請内容のチェックというのは難しいところもありますので、そういう人材を育てていかなければならないというところがあるわけです。

 例えば、我々としても、大阪府の内部で技術者の研修会なんかも頻繁に行いまして、そういう育成には努めているところですけれども、森林法の林地開発許可なんかでいいますと、林野庁が主催して林地開発許可の研修なんかも実施されているというところがありますので、そういう研修なんかも国の方でやっていただいて、人材の育成というところにももっと力を入れていただけたら非常に助かるというふうに考えます。

古川(元)委員 実は、先日、所有者不明土地の法案の議論がここでもあったんですけれども、そういうのを探すのも、やはりこれはまた人がいない。どこも、行政、よくいろいろなことを、最終市町村というんですけれども、末端でやる人たちは、いろいろと仕事ばかりあっても、実際に現場がいない。特に最近の、まあ霞が関でもそうですけれども、係員よりも課長補佐の方が多いんじゃないかみたいな、そういう状況もあったりするわけであって、やはりそういった意味で、本当にちゃんと現場の人を増やしてやっていかないと、せっかく法律を作っても、絵に描いた餅になるんじゃないかと思います。

 最後に、ただ、そういう状況ではありますけれども、簡単にそういう人手不足は補えないと思うんですが、その一部分を、例えばドローンとか、あるいはロボットとか、AIとか、そういう技術を使って、それなりに人手不足を埋め合わせることが可能なような状況はあるのかどうか。これは中井参考人と、あと太田参考人の方からお伺いをさせていただきたいと思います。

中井参考人 委員御指摘のとおり、新しい、例えばドローンによる測量技術等々を使って、盛土を、不法な盛土というんですか、手続がされていないような盛土を早急に発見するというようなことは、これから十分に考えられると思います。

 実際、熱海の伊豆山の土石流においても、そういった技術を活用して、盛土の部分がどれぐらいあって、どれぐらいの体積が流れたのかということを、一日、二日の間に、これは、現在の測量技術ですと大体十センチ解像度ぐらいのデータがあるんですけれども、以前のもの、おおよそ一メートルメッシュと聞いておりますけれども、そういったことで、どれぐらいの土が流れたのかということを非常に短時間で把握をしていただけているということがございます。

 こういった国土の数値情報化、そういったことを通じて、あるいは測量技術の発展を通じながら、マンパワーの不足を解消していける部分はあるかと思います。

 ただ、最後は、やはり私は人材の育成ということは非常に重要だと。やはり人間が、最後、きっちりと安全な盛土ができているかどうかを確認するということは非常に大事だと思っておりますので、技術の発展もさることながら、そちらの方をおろそかにしてはいけないということも強調させていただきたいと思います。

 以上です。

太田参考人 今、技術の方から見ても、中井先生の言われるとおりでございます。ドローンとかあるいはレーザーとか、その辺り、もう当然のことでございます。そういうものを駆使しながら探査していくというのは当然でして。それで、最後に中井先生もおっしゃいましたけれども、やはりしかし人間の方も必要であるという、もう先生の御答弁のとおりだろうと思っております。

 そういう新しい技術は、使うのは当然でございます。

 以上です。

古川(元)委員 時間になりましたので、終わります。

 どうもありがとうございました。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

塚田委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、四人の参考人の皆様、お忙しい中、本委員会に御出席いただき、また、貴重な御意見を賜りました。大変ありがとうございました。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、中井参考人に伺いたいと思います。

 まず、一番知りたいのは、なぜこの法案が宅地造成等規制法の改正というスキームだったのかということであります。

 六日の政府との質疑の中でも、やはりどうしても、規制される盛土行為の内容とか様々な基準となるべき問題が、現行法をベースというお答えに当然なってくるわけなんですね。

 そうすると、やはり期待されていたのはもっと広い範囲、自治体の条例はそうであるように、エリアを指定しないで許可があり、届出がありみたいな、そういうイメージを持っていたと思いますし、また、建設残土の発生から最終処分まで追いかける仕組みや、発注者、元請から始まって責任の所在を明確にした規制ということを期待されていたかなと思うんですが、どうしてこの宅地というところになっちゃったのかということを伺いたいと思います。

中井参考人 私もその問いについては余り定かではないんですけれども、恐らくは、元々、盛土という行為は宅地を造成する中でかなり行われていたので、そういう意味では、宅地造成法という中にかなり技術的な基準等も整備されていたということで、そこがベースになってということなのではないかなというふうに思っております。

 あと、どこが共管というか主管するかというようなことでいきますと、やはりこういった技術者あるいはマンパワーを抱えているところという意味では、都市を担当していた、都市地域に当たる宅造法というのがやはりそこでもベースになったのかなというふうに、これは私、想像ですけれども、思っておるところでございます。

 以上です。

高橋(千)委員 そうすると、法律を具体化していく上で、技術的な理由といいましょうか、基準の決め方とか、それを審査する人の部署の力とか、そういうふうなことを中心に考えたのかなというのは分からなくもないんですね。

 ただ、この間も議論をされているように、人家に必ずしも近くなくても、やはり山林からの影響もありますよねということも言われていたし、そのことを当然踏まえるべきだと思いますのと、それから、やはり自然環境の関係、これは、人家と直接結びつかなくても、でも、やはり水源地でありますとか、当然影響があると思うんですよね。

 そういう意味でも、そこを含んだものにしていくという必要があるかなと思っているんですが、もう一言、御意見を伺います。

中井参考人 盛土による災害の防止の検討会でも発言をさせていただいたところなんですけれども、法律の主管はさておき、これは各省で連携をしていただかないと運用もままならないということで、こちらの検討会自身は内閣府の防災のところで各省が集まって行われて、それぞれ御協力いただきながら取りまとめることができたというふうに思っております。

 私から最後にお願いとしてそのときに申し上げたのは、是非運用の面でも連携を強めていただきたいと。もちろん、法律ですので主管、共管というのはあろうかと思いますけれども、ここで議論したことは、やはり各省連携、あるいは各分野が連携をしていかなければ盛土についての安全を守ることはできないということで、それは、出席をしていただいていた事務局、省庁の皆さんもそういうことで御理解いただいているというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 確かに、国交委員会でこの法案をやっているわけですが、先生の検討会は内閣府が主催をしておりましたので、そういう意味では連携というのは非常に大事かなと思って伺いました。

 もう一度中井参考人とそれから大橋参考人に伺いたいんですが、実は、この法案が、既にある盛土、あるいは法施行前の計画中の盛土に対して、その危険性を可視化して対策を迫るような効果があるのかどうか。期待されるわけですけれども。

 今、なぜ宅地造成法なんでしょうかと聞きましたけれども、現行法の中でも安全確保義務があるわけですよね。だとすれば、それがもう少し生きていれば、これまで見てきた災害というのがもう少し抑えられたんじゃないのかという思いがあるんです。つまり、既にある宅地が、そもそもそれは盛土なわけですよね、大きな意味でいうと。中越地震での高町団地や中越沖地震での山本団地、大規模盛土滑動崩落対策事業によって再生した団地がありますが、逆に言えば、安全対策が不十分な盛土でもあったわけであります。

 古くは、やはりニュータウンとして造成をされた。しかし、災害が起こったときに、元の造成主がもういない、裁判しようなんという話が出ても、だって相手がいないじゃないなんという議論の場に居合わせたこともあります。

 そういう意味で、既にある宅地の安全確保が強化されるんでしょうか。伺いたいと思います。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

中井参考人 この法律ができまして、特定盛土等規制区域が指定されるわけですけれども、指定されると、その区域指定前に行われていた盛土についても規制等の対象になるというように理解をしております。

 したがって、まずは土地所有者に保全の義務がかかるということですし、安全な対策が取られていない場合には勧告や指導ということになってまいります。

 また、昔の盛土ですので、新しい現在の技術基準に適合しているかどうかについても、これも可能な限り、現在の基準に適合するように指導することができるというように認識をしております。

 したがいまして、指定後の盛土だけに適用されるのではなくて、それ以前からの盛土にも適用されると理解をしております。

 以上です。

大橋参考人 今回のこの法律で、確かに、先ほど御質問がありましたように、宅造法の改正という形を取っているんですけれども、実質は盛土にポイントを当てたものとして作り変えているというのが私の認識でして。

 しかも、この盛土の問題に対しては、これだけの罰則を盛るだけの強い関心を国として持っているということで、サンクションも置いたというような中での法的な仕組みですので。今まで、ここに勧告と書いてあっても、先ほど申しましたように、実際の実例はほとんどないような運用実態でした。ですけれども、今回は、体制整備をお願いしますということは、勧告も含めて、まして改善命令もですね、きちっとやるときにはやれるような体制を示してくださいということをお願いして、しかも罰則も強化していますので、それはやっていただけるという前提で、今までとはやはりここは一段階上がったということだと思います。

 ですけれども、その場合に、既存のものについての対応を厳しくするということでありますと、既にできたものがありますので、その場合の命令発動基準の在り方というようなことについては相当慎重に議論して作らないといけないかなという問題は、ここは非常に難しい問題があるように認識しております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 最初に中井先生がお話しされたように、昔の盛土も、今の技術基準に合うかどうかやはり見る必要があるとおっしゃったこと、私、そういうつもりで政府に質問したんですけれども、現行法のベースがあるとおっしゃられるので、違いが全然見えてこなかったわけなんですね。やはりそこがあって初めて、本当の意味での安全確保ということになるんじゃないのかな、法律を作った意味が出てくるんじゃないのかなというふうに思っておりました。

 大橋参考人が、勧告、ほとんどやられていないんだよとおっしゃったのは、全くそのとおりだと思うんですよね。それこそ、所有者不明土地の問題のときも、勧告を書いたこと自体が大きな意味があるからということを、私、質問したことがありました。本当にそれが、先生おっしゃるように、ちゅうちょなく発動されていって、正しく運用されたらいいなと思っております。

 もう一問、大橋参考人に伺いたいと思います。

 土砂災害警戒区域、特別警戒区域などの開発規制にも近いスキームになるのかなと思っているんですね。例えば、二〇一四年の広島での土砂災害、安佐北、安佐南の地域ですと、起こってみると、どうしてこんなところに家を建てていたのかなと外から来た人は思うわけです。でも、住民は、県営住宅が建ったので、県が建てるなら安全だと思ったと言っておりました。また、宅地造成される前に沢があったとか、いろいろなことを全く知らずに、そういう情報がなく、ニュータウンだというイメージで入居してくるという状態があるわけですよね。それで、土砂災害警戒区域の指定が追いつかないという行政の事情と、真面目に指定していたらもう住むところがなくなるよとお話しされたのは、実はさっき話題になった呉市の議員さんだったんですね。そうした悩みもあったんだろうと。

 ですから、今回の法案によって更に行政の負担も大きくなるとは思いますけれども、やはり土砂災害警戒区域という既存のスキームが効果的に活用されて、相乗効果になって、見える化がちゃんと進んで安全対策になればいいなと思っているんですが、先生のお考え、伺いたいと思います。

大橋参考人 土砂災害の警戒区域は、土砂が流れてきて危なくなる領域にかけるんですけれども、今回の場合は、上流にあるようなところに盛土がされると困るというような形で、更にそれを拡大するような形での区域設定というようなことになりますので、そういうところはきちんとやっていただくということ。

 今お話にありましたように、この問題は、今日は盛土と命の関係で話していますけれども、居住空間というようなものがエリアとの関係でどうなのかという都市法制とも関わるような問題があって、やはり、そちらの方の居住誘導とかそういう仕組みと、こちらの方で出している情報、シグナルをそちらでどう受けていただけるかというところの、先ほどから繰り返している制度間の連携の問題というようなものもあるのかなと思いますので、そういうところをきちっとやっていただくということ。

 あとやはり、こういう規制区域をかけるというときは、促進する方もいますけれども、反対の意見も当然出てくるというのが常であります。まあ、反対は主に土地所有権に基づくような主張ですけれども。

 ただ、最近、節目が変わったかなと思うのは、地方公共団体レベルでも安心、安全というか、とにかくやはりこういう命を守るということについての関心というのが非常に高まってきて、ほかの法制でも、いろいろな不動産取引の説明義務のところでもこういうことをちゅうちょなく盛り込むとか、いろいろなそういう改正が行われていますので、そういう流れの中で、これもきちっとした区域を設定していただいて、全体として統制を取っていただくことが大事かなと考えております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 先生は、著書の中で、やはり区域指定をされると、土地の所有者や居住する市民が地価が下がるなどということで、行政担当者が恐れるという指摘をされていらっしゃいますよね。だけれども、災害対策はやはり人命に関わることなので、地価への影響といった考慮は横に置いておき、危険な箇所については粛々と指定を進めるべきとおっしゃっていらっしゃる。それは、非常に私は共感するところでございます。そういう意味もあって質問させていただきました。

 同じ趣旨で、せっかくですので、北山参考人に行政の立場から。

 やはりこの法案には、残念ながら、必要十分で最小限にということが書かれてあるんですね。やはり私的財産権を過度に制限してはならないということを言っているんですが、しかし一方では、今お話ししたように、やはり国民の命を守らなければいけないということとの関係では、余り過度に規制を恐れてはならないんじゃないかとむしろ私は思っているんですが、いかがでしょうか。

北山参考人 我々大阪府としましても、まさに、府民の安全、安心の確保ということをまず考えるということで、府の土砂条例につきましても、区域を指定して規制をかけるということではなくて、行為の内容そのもので、全面的に、エリアを決めずに規制をかけるというような手法を取ったところでございますので、国におかれましても、できるだけ幅広く規制がかかるようにしていただけたらというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 太田参考人にも森林の関係で質問を用意しておりましたが、時間になってしまいましたので、申し訳ありません。

 本当にありがとうございました。

 終わります。

中根委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 野党系無所属の五人の会派であります有志の会の福島伸享でございます。

 四人の参考人の先生方、本日は、大変ありがとうございます。

 私の選挙区は茨城一区というところでありまして、比較的低い山とか、あるいは平地林が多いところであって、しかも首都圏に近いですから、これまでも様々な建設残土とか産廃の不法な埋立てとか、そうしたものに悩んだところでございました。

 先週も、週末、地元に帰ったら陳情をいただきまして、やはり県外の業者、しかも、その土地の持ち主が、いつの間にか、熱海の土石流のところの土地と同じ所有者が所有しているところが林地開発をされていて心配だという陳情をいただきましたし、あと、栃木県の業者が産廃混じりの土地を入れているんだとさっき福田先生に言ったら、いや、俺のところは茨城から来ているんだという話をしておりまして、これは、真面目な話、かなり悪質な業者がいるのが実態だと思うんですね。

 そこで、まず北山参考人にお聞きしたいんですけれども、足立委員の話だけ聞くと認知がゆがむものですから、大阪で、具体的にこんな困った事例があって、これまでの条例とか法律では対応できなかったという代表的な悪質な事例がありましたら、そこを教えていただけたらと思います。

北山参考人 我々の方の条例を運用する中で困った事案というのは様々あったわけなんですけれども、やはり土砂の搬入を止めようと思って指導しても止まらないということがありまして、それは、埋立てを行う者にとっては、受け入れれば受け入れるほど単純に収入が上がっていくということなので、行政が指導に入っても、隙を見て入れれば、それだけまた収入が得られる。

 あるいは、土砂の受入れというのが、基本的に、代金を先に受け取ってチケットを発行して、それを持ってきたトラックの土砂を受け入れるといういわゆる前払い制になっているものですから、埋立ての行為を行っている者が仮に止めようと思っても、入ってくるものを止めることはできない。もし止めてしまうと、その建設残土を発生させている工事そのものにも影響が及ぶというようなこともあって、やはり我々の経験からいきますと、一旦入ったものを止めるのは難しいということがありますから、今回、これまでも要望しているとおり、発生元からの対策、トレーサビリティーというのをお願いしているところでございます。

福島委員 恐らく、それはトレーサビリティーの重要性だと思うんですね。恐らく、罰則だけでは対応できない。

 特に、業者が例えば反社の影響があったりとか、職員の命や財産に危害を加えられるおそれがあったりというと、罰則だけでは対応できない部分があるというのが実態であると考えてよろしいでしょうか。

北山参考人 まさにその点もありまして、先ほども述べましたように、条例の規定でいきますと、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金ということで、業者の方もそれを熟知していますので、我々が止めるように指導しても、百万円払ったらいいんだろうというような悪質な方もおられますので、そういう意味では、罰則の強化というのは非常に重要と考えております。

福島委員 ありがとうございます。

 では、次の論点なんですけれども、先ほど来論点となっている特定盛土規制区域の指定の話なんですけれども、どうもこれはイメージを聞いていると、これが住宅用の盛土をベースにしてつくっているからか、都市部に限定されるような気がするんですね。

 実際、私の地元で起きているのは、太陽光で発電をやるために大きく切土をして、表土を剥がしたところから土砂が流れて田んぼを埋めちゃうとか、あるいは、水の流れが変わっちゃって、急峻な流れになったことによってあぜを全部壊しちゃって、水路のあれを壊してしまって、余計工事費がかかるとか、様々な影響が、土砂の、これは盛土だけじゃないんですね、切土も含まれているんですね、表土を剥ぐという行為も全てこの法律の対象ですから含まれていて、今の現行の条文を見ると、こう書いてあるわけですね。

 生命や身体に危害が生じるおそれが特に大きいところを指定するんですね。特に大きいですから、極めて、これは恐らく限定的に解すべきだし、私の地元のように人家の少ないところであっても、現に、先ほど財産権の侵害、制限をするのはいかがかという議論がありますが、起きているのは財産権が侵されているわけですよ。田んぼがもう使えなくなるとか、水路が壊されて、そのための工事費を住民の方が負担しなければならないとかという、そうした事例が出ているんですね。

 そういう意味では、今回の法律の条文ではとても広くは読めないと思うんですけれども、行政法の専門の大橋先生、いかがでしょうか。

大橋参考人 私のイメージですと、現在の宅造法で必ずしも十分かけていないようなところも、都市計画区域に迫るような形でしっかり張っていただいたりとか、今まで漏れていた農地や森林も含めて、広くやはりこの制度はかけていただくということが前提で、それは、やはり一定規模の急斜面のところに盛土があれば、それがある程度流れる、何メーターくらいあれば流れて、それによって、ここに集落とかがあれば人命に影響が出るということが分かれば、この条文ではきっちり読めるというように考えておりますので、そういう形で、私はこれは広くかけていただく仕組みというように理解しております。

福島委員 ただ、現に集落があるかどうかというのは、様々な場合があるんですね。

 私の地元でも、不法な産廃の投棄がなされているようなところは、なるべく人家の目から離れたようなところで行うんですよ。でも、結果として、それが、土砂が流れて、生命身体に特に大きい影響じゃなくても、財産に影響がある場合が多いわけですね。特に、田畑とか森林というのは、大きな生産の基盤であって、生活の基盤になるものでありますから、身体には影響が起きなくても、その人の人生に大きな影響が出る場合があるんですね。

 そうした観点から、太田委員、この規定で、特に森林分野では、十分だと思われますか。生命身体に大きな被害がある場合だけで、その対象となると思われますでしょうか。

太田参考人 盛土というイメージ、それから切土も含めて、そこから土砂の流出ということでございます。

 私の判断では、生命財産はやはり一体というか、そういうふうに考えておりますので、特に大きいというのは、先ほど言いましたように、どういう定義を持つかということで議論になると思いますけれども、私は、先ほどからの御質問に対しては、山の方の盛土の関連を話をしましたけれども、確かに、それが流れてくるということにおいては、それは現象としてはありますので、その辺りはどういうふうにするのかというのは、御議論はいただいていいかなというふうには思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 私は、これは財産も入れるべきだと思っておりますので、この点は、後ほどの委員会の議論で質疑をしたいと思います。

 もう一点は、この法律は、事実上、新しい法律だといいながら、実は、森林法と宅地等造成法をがちゃんこしたような法律になっているんですね。

 ですから、技術的な基準も、宅造法の方では、政令で詳細に定められております。一方、森林法の方は、都道府県知事が、森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがないことという、がさっとした条文になっていて、政令や省令で許可の技術的基準は決められていなくて、都道府県森林審議会の意見を聞くと言っているように、許可のやり方が全然法的に違うんですよね。

 実際、じゃ、都道府県ベースになったときに一律の規制ができるかといったら、私は、森林の場合と、きちんとコンクリートとかで擁壁を造る宅地造成では全く違うから、別の観点でやらなきゃならないと思うんです。

 そこで、二点お聞きしたいと思います。

 まず、中井委員にお聞きしたいんですけれども、国交省は、審議会とか専門家の意見を聞かなくても許可は下ろせるんだと言っているんですね。でも、許可基準を聞いたら、例えば、安定計算をした場合にはコンクリート造りを除外できるという、安定計算というのが出てきたり、構造計算によってコンクリート擁壁の構造を見ると言っていて、構造計算と言った途端に、例のあのヒューザーの話が思い起こされるわけでありますけれども、本当に都道府県レベルの人たちが、専門家の知見を聞かずして、こうした技術的基準を満たすか満たさないかということを見ることというのは果たしてできるのでありましょうか。お聞かせください。

中井参考人 私は盛土の専門家ではないんですけれども、盛土については、地盤工学的、極めてエンジニアリング的な事象だというふうには思っておりますので、そういった技術的検証というのは基本的には可能だというふうに思っております。

 以上です。

福島委員 ただ、これは、普通に書類の表面だけ、ちゃんと出ているかを見るなら分かるんですよ。問題は、悪意のある業者だったわけですね。マンションの耐震偽装のときもそれがあったわけで、普通の都道府県職員に、そうした悪意の偽造とか、そういうものを見抜く能力があると考えてよろしいんでしょうか。

中井参考人 なかなかお答えは難しいかと思うんですけれども、悪意を持って出てきている人たちは、基本的には、多分、こういった技術だけでは無理なような気はいたします。

 しかしながら、そこは、その担当されている技術の方だけではなくて、連携する、それこそサポートいただけるような、そういった行政の職員の方々の基本的にはやはりチームワークでこれは対応していただくようなことなのかなというふうに思っております。

 以上です。

福島委員 ありがとうございます。

 一方、森林の方は、先ほど太田先生の方からもありましたけれども、土砂災害は現状ではなかなか予測困難な部分があるという話をしていただきました。そしてさらに、大規模な盛土の大部分は森林山地で処理されているというのも実態だという話がございました。

 恐らく、今回の法改正で余り森林のことはまだそれほど深まった議論になっていないんですけれども、ここの規制の技術的なものが一番の大事なところではないかと私は思っておりまして、現在は、先ほど申しましたように、森林法上、がさっとした一般的な規定があるだけですが、新しい法律では、政令で技術的な基準を加えることになります。

 国土交通省に事務的に聞いても、今の宅造法と同じようなことをやるんだと言っているんですけれども、でも、実際に擁壁を造ったりということは、山林の中は余り考えられないわけでありますね。あと、盛土だけではなくて、表土を剥ぐとか切土といった場合は、また別の基準が必要かもしれないんですね。その辺りは政令にきちんと書くことができるのか。

 そして、書くことができた場合でも、今、森林審議会の話を聞いておりますが、都道府県の職員だけでその安全性を判断することが可能なのかどうか、その点についてお聞かせください。

太田参考人 これから技術基準の議論があるだろうと思います。その部分については、先ほども申し上げましたように、国交省の方にも砂防という部分がございます。当然、治山という部分が森林の方にございます。そういう技術とか、検討会の方にもそういう先生方が入っておられましたので、そういうことを含めて、今言われたようなことも含めて議論はされていくんだろうなというふうに思います。

 実質的には、やはり国交省と農水省、特に林野庁との協調といいますか、そういうところを中心にしてやっていくということに、両方ともそういう技術者を持っておりますので、そういうところで議論していただくということになるのではないかと思います。

 それから、森林の方から見ますと、詳しくはそういう法律の方は、法律というか制度の方を細かくは知らないんですが、盛土がされたところが地目がその他になるのか、森林でしょう、多分。ということになると、やはり森林の機能とか、あるいは、森林が少なくなることが今問題になっているわけですから、世界的にも。そういうことも含めますと、森林の機能というのを十分発揮していかなきゃいけない。

 当然、その中には、土砂を止めるというか、そういう機能も全部あるわけですので、そういうことも含めて、少し広めの議論をしていただきたいなというふうに感じております。これからの議論に期待したいと思っております。

 以上です。

福島委員 時間が来たので、終わりにいたします。

 先生方、どうもありがとうございました。

中根委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組のたがや亮と申します。

 参考人の皆様、本日は、お忙しい中、貴重なお話をいただき、感謝申し上げます。私からは二、三問ぐらい質問をさせていただきます。

 まず、中井参考人と大橋参考人にお伺いいたします。

 日本各地で現在作成されている土砂災害のハザードマップがございますが、盛土によって人工的で急激な地形の変化が起こった場合、そのハザードマップは正しく機能するのか、機能しない場合はどのようにすべきか、御見解をお伺いいたします。

中井参考人 今、土砂災害のハザードマップということで、いわゆるレッドゾーン、イエローゾーンというのが決められている、そちらの方のお話かなと思います。

 これは盛土があると定期的に変えられるか、変更されているかというような御質問かなというふうに思ったんですけれども、恐らく、一つ盛土ができたのでそこのハザードのエリアを見直すということは、私、実務の方はちょっと存じ上げていないんですが、そこまではされていないのかなというふうには思っております。

 以上です。

大橋参考人 このハザードマップも今進化を遂げている途中でして、これもなるべく現実に合うようにということで。

 ですけれども、このハザードマップのやはり根っこには事実調査というかそういう問題があって、日本の土砂の災害の分野というのは、今まではやはり復旧にすごく重点が置かれていて、その後の復旧対策はやったんだけれども、その前の事実調査、事実調査に基づくハザードマップの定期的な改定というようなところについてはまだまだ体制ができていないようなところがあって、それは、今回問題になっている山地部分だけではなくて、都市部分でも実はそういう問題があってというようなことで。

 さらにまた、このハザードマップは出し方が難しくて、これが直ちに危ないわけでもないんだけれども、地元でしっかりそこは考えて見張ってくださいねという、そういうような内容を持ったものなので、そのような理解、公表の仕方も含めて、今、発展段階にあるところというような、そういう認識でおります。

たがや委員 御意見ありがとうございました。

 次の質問に参ります。

 本日お越しの四人の参考人の皆様にお伺いいたします。

 熱海の違法な盛土において、もし規定どおりの盛土が行われていたと仮定した場合に、被害はどの程度まで抑えられていたと思われるか、御見解をお伺いします。

中井参考人 御質問の趣旨は分かりますけれども、ちょっと私、専門ではないのでお答えしかねますというお答えにさせてください。

 以上です。

大橋参考人 私も専門ではないのですが、しかし、今回のこの法制で問題にしている規模といいますか基準というのは、一メーターの高さでありますとか、せいぜい五メーターとか、今までの自治体の基準を見ると、五百平米とか三千平米とか、そういう基準だと思います。それからすると、今回の熱海のというのは、やはりそれをもう大きく上回るものですので、今回のものが適正に執行されていればああいう被害は防げたのではないかという、感想にとどまりますけれども、そんな意見であります。

太田参考人 あの現場は、その以前に砂防の施設が入っていたというふうに、私は、はっきり言いまして現場を見ておりませんが、入っていたと記憶をしております。その砂防施設を入れるということに対しては、通常の対応、山から出てくる土砂に対応するものを入れているということで、それは安全を見て技術的にきちっと入れていたんだろうと思います。それを当然オーバーしているということでございますので、問題であったということはもう一目瞭然でございます。

 そういうことで、一番最初のときにどういう届出があって、許可されたのか分かりませんが、届出程度だと思いますが、その部分のところに対してどの程度あの雨に対して対応できたかというのは、ちょっとまだ分からないと思います。きちっと、最初の盛土の、一番最初の時点での量に対してどうだったのかとか、そういうことはまだ、調べられているのかどうかも存じておりません。

 ただ、通常の、あの地域からどのぐらいの土砂が自然に出てくるかというようなことはきちっと計算して施設というのは造られているというふうに思いますので、そこは信頼しているというふうに、きちっと土砂災害の対応の方はやっているというふうに認識しております。

 以上です。

北山参考人 熱海の件につきましては、私どもの方では詳細を承知しておりませんので、申し訳ありませんが、回答を控えさせていただきたいと思います。

たがや委員 御意見ありがとうございました。

 最後の質問に参ります。

 この法律の実効性を担保するために、優先順位が一番高い措置は何でしょうか。何かと思われますか。参考人、四人の方にお伺いします。

中井参考人 法律の運用の方だという理解でよろしいかと思うんですけれども、まずは、国としてはしっかりとガイドライン等を整備していただくということなんですが、何といっても、やはり特定盛土規制区域、こちらをしっかりと指定をしていただくということが優先順位が一番高いというように考えております。

 ただ、そのほかが優先順位が低いということを言いたいわけではありませんので、その点、誤解されないようにお願いをしたいと思います。

 以上でございます。

大橋参考人 私は、一つと言われると非常に難しいのですけれども、やはり区域設定のところが出発点であり、そこがキャンバスになりますので、一番大事なところかなと思いますので、そこで妙に制限をかけるようなことをせずに、可能性があるのであれば、そこは予防的であってもしっかりかけていくというようなところ。特に、今回の特定盛土等規制区域の設定というところについてはすごく重要な観点かなと思っております。

太田参考人 私のやはり興味といいますか、注目するところは技術基準だろうと思います。

 指定に関しましては、先ほどから先生方の御意見にもありますように、かなりそろっている。そろっているけれども、逆に、実はそれでも十分でないというところも気をつけていただきたいなというふうに思います。

 以上です。

北山参考人 私の方からは、冒頭から申し上げましたとおり、できるだけ幅広く規制をかけていただいて、白地地域がないような運用を是非ともお願いしたいということでございます。

たがや委員 貴重な御意見をありがとうございました。

 時間が余りましたけれども、質問を終わりにいたします。ありがとうございます。

中根委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十八分散会


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