衆議院

メインへスキップ



第17号 令和4年6月3日(金曜日)

会議録本文へ
令和四年六月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中根 一幸君

   理事 柿沢 未途君 理事 小島 敏文君

   理事 塚田 一郎君 理事 土井  亨君

   理事 城井  崇君 理事 小宮山泰子君

   理事 市村浩一郎君 理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊藤 忠彦君

      石原 宏高君    泉田 裕彦君

      上田 英俊君    小里 泰弘君

      加藤 鮎子君    加藤 竜祥君

      金子 俊平君    菅家 一郎君

      小林 茂樹君    櫻田 義孝君

      笹川 博義君    田中 良生君

      谷川 とむ君    中川 郁子君

      宮内 秀樹君    宮崎 政久君

      柳本  顕君    山本 左近君

      和田 義明君    稲富 修二君

      枝野 幸男君    神津たけし君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      谷田川 元君    渡辺  周君

      池下  卓君    高橋 英明君

      山本 剛正君    河西 宏一君

      北側 一雄君    古川 元久君

      高橋千鶴子君    福島 伸享君

    …………………………………

   国土交通大臣政務官    加藤 鮎子君

   国土交通大臣政務官    泉田 裕彦君

   参考人

   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      藤田 友敬君

   参考人

   (一般社団法人関東交通犯罪遺族の会代表理事)   小沢 樹里君

   参考人

   (自動車損害賠償保障制度を考える会座長)

   (日本大学危機管理学部長・教授)         福田 弥夫君

   国土交通委員会専門員   武藤 裕良君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     加藤 竜祥君

  根本 幸典君     山本 左近君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     大西 英男君

  山本 左近君     上田 英俊君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     柳本  顕君

同日

 辞任         補欠選任

  柳本  顕君     根本 幸典君

    ―――――――――――――

六月一日

 国土交通行政を担う組織・体制の拡充と職員の確保に関する請願(神谷裕君紹介)(第一三九三号)

 同(荒井優君紹介)(第一四三一号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第一四三二号)

 同(道下大樹君紹介)(第一五〇二号)

 同(吉川元君紹介)(第一五四三号)

 震災復興、国民の安全・安心の実現への建設産業の再生に関する請願(荒井優君紹介)(第一四三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 自動車損害賠償保障法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

中根委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、自動車損害賠償保障法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学院法学政治学研究科教授藤田友敬君、一般社団法人関東交通犯罪遺族の会代表理事小沢樹里君及び自動車損害賠償保障制度を考える会座長、日本大学危機管理学部長・教授福田弥夫君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、藤田参考人、小沢参考人、福田参考人の順で、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず藤田参考人、お願いいたします。

藤田参考人 東京大学の藤田と申します。

 本日は、意見陳述のため貴重な機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、金融庁において自動車損害賠償責任保険審議会の会長を拝命しているほか、今回の自賠法改正に関する関係者の議論の場となりました今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会の座長を務めさせていただいております。

 本日は、この検討会の審議に関与した立場から、中間とりまとめの内容を御紹介しつつ、今回の制度改正について意見を述べさせていただきます。簡単な資料をお配りさせていただいておりますので、これに基づいて説明させていただければと思います。

 まず、自動車事故対策勘定の在り方について検討を始めることとなった経緯ですが、令和二年八月に国土交通省において、福田先生を座長とする今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会が設置され、被害者の方々の声を丁寧に伺ったところ、今後の被害者支援の在り方について、施策を充実、維持する必要性があることが分かりました。

 他方、被害者支援等の財源に係る現在のスキームは、平成十三年に積立金の運用益を活用するものとして確立したものですが、これが、将来に向けての財源の裏づけとしては、仕組みとして維持し難いことも明らかとなってまいりました。

 そこで、自動車事故対策勘定の在り方について、令和三年八月より改めて検討が行われるに至ったわけであります。

 そこで、二点目として、検討の前提となる被害者支援、事故防止対策をめぐる現状について御説明させていただきます。

 まず、交通事故の減少に伴い負傷者数は減少しているのですが、毎年発生する重度後遺障害者数は横ばい傾向で、このような被害者の方に対しては、今後も長期間にわたって支援を行う必要があります。

 また、事故被害者をケアする家族が高齢化し、被害者を介護する人がいなくなる、いわゆる介護者なき後の事故被害者の生活支援の問題ですとか、被害者のリハビリ機会の充実など、異なる対応が必要となる問題がいろいろとあり、今後の被害者支援の充実が求められております。

 また、依然痛ましい交通事故も度々発生し続けて、被害者やその御家族、御遺族から、同じ思いをする人を一人でも減らしたいという強い声をいただいております。自動車事故防止対策の充実を求める声が強くなっているわけであります。

 これに対して、被害者支援、事故防止対策のための施策を行う財源となる積立金の運用益が、金利水準の大幅な低下等により、施策を実施するには全く不足しておりまして、施策実施のため、毎年、積立金の取崩しが続いております。その結果、積立金の総額は大きく減少を続けており、レジュメに記載させていただいた表のとおり、このままですと、遠くない将来に枯渇してしまいます。

 なお、過去に自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れた残高六千億円余りがあります。この繰入金こそが問題であって、これさえなければ問題はないはずだと思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、御注意いただきたいのですが、仮にこの繰入金が全額直ちに今返済されたとしても、現在の金利水準では全く十分な資金とはなりません。その結果、被害者支援、事故防止対策を行うために積立金を取り崩し続けるという状況は変わらず、ただ枯渇までの時間が延びるにすぎません。やはり平成十三年に採用されたスキームは、持続的な財源としてはもはや維持できない状況になっているわけです。

 このような状況を踏まえ、交通事故被害者等が安心して生活できるために、被害者支援、事故防止対策のための財源が近い将来に枯渇するといった不安が残る状況を速やかに解消し、持続可能な仕組みへの転換を図る必要があるという問題意識が生まれてきたわけでございます。

 以上を前提に、今後の自動車対策勘定のあり方に関する検討会の議論が開始されました。この検討会には、学識経験者のほか、交通事故被害者の団体及び自動車ユーザーの団体から御参加をいただいております。

 以下、検討会における議論について、簡単に御紹介させていただければと思います。

 まず、全ての委員に共通していたのは、被害者支援、事故防止対策を更に充実させつつ、維持していく必要があるということです。逆に言うと、財源が厳しい以上、縮小、廃止して構わないといったことをおっしゃる方はいらっしゃいませんでした。

 議論が分かれたのは、そのための財源確保の在り方であります。こちらについては、委員間で若干の温度差がありました。

 一部の委員からは、自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れられた繰越金が残っているということが問題視されました。この繰入金は元々、自動車ユーザーの保険料を原資とした運用益なのであって、ユーザーに負担を求めるのであれば、まずは令和四年度における一般会計からの繰戻し額の増額と令和五年以降の繰戻しの継続を約束させると同時に、今後の繰戻し額返還のめどをロードマップとして示してもらいたい、こういう意見が出されたわけであります。

 これに対して別の委員からは、厳しい財政事情を踏まえると、被害者支援の施策を継続していくための安定的な財源を別に確保することは避けられないということ、車社会において誰もが加害者や被害者になる可能性がある中、被害者を救済する仕組みが続く社会でなくてはならないといった観点から、繰戻しの議論とは別に、被害者支援や事故防止対策が持続可能な仕組みを直ちに検討すべきである、こういう意見も出されました。

 このように、財源の在り方に関してはメンバー間で若干の温度差があったのですが、令和三年十二月に至り、財務大臣と国土交通大臣の間の大臣間合意がなされ、そこでは、令和四年度予算における繰戻し額の増額、令和五年度以降の繰戻し額の目安とその継続という返済計画の大枠が示されました。

 これを受け、検討会においては、現実的な選択肢として、賦課金制度を導入して財源を確保することにより、被害者支援や事故防止を長い将来にわたって安定的、継続的に実施できるようにしてはどうかという方向が示され、最終的に本年一月、中間とりまとめとして合意に至ったわけでございます。

 次に、四点目として、検討会の中間とりまとめの提言内容について、若干補足させていただければと思います。

 中間とりまとめでは、財源の確保手段として賦課金方式を提案しております。財源確保の手法としては、論理的には、これ以外に例えば租税方式も考えられるわけですが、自賠責保険料の中に賦課金を設ける方が、車社会の利益を享受する者の負担により、車社会の犠牲となる被害者等を支援するという受益、負担の関係が明確になること、自賠法においては既に事故被害者のための政府保障事業の財源を徴収するための賦課金が用いられていることなどから、現実的な選択肢としてより受け入れられやすいだろうと考えられたわけです。

 ただし、賦課金の導入に際しては、ユーザーの負担が不当に増加しない配慮が必要であることは論をまちません。

 具体的な金額については、事業規模や自動車事故対策勘定の積立金として確保すべき水準を勘案して慎重に検討することになりますが、保障勘定の剰余金をひき逃げ等の損害の填補に支障がない範囲で活用するほか、早い段階で賦課金を導入し、積立金の取崩しによる財源の確保も並行して行うといった措置によって、賦課金の水準を抑え、ユーザー負担の抑制に努めることが必要となります。

 以上のような観点を踏まえ、具体的な賦課金額については、現時点で試算して想定される最大値である百五十円を超えない範囲で、できる限りユーザー負担の抑制を考慮した水準を長期にわたって維持するという観点から、検討会において引き続き検討することとしております。この点は、また後で触れさせていただきます。

 五点目として、安定的な財源の使途について申し上げます。

 自動車ユーザーに新たな負担を求める以上、これを財源として行われる被害者支援、事故防止対策の内容が自動車ユーザーの納得感が得られるものでなければなりません。今後の被害者支援や事故防止対策の具体的な使途の選定に際しては、費用対効果を意識し、無駄を排除するため、できる限り施策の見える化を行い、その効果検証を定期的に行う必要があります。

 中間とりまとめでは、安定的な財源の確保が野方図な歳出の拡大につながらないよう、法律その他の措置によりその使途を明らかにすることを提言しており、今回の法案では、これに対応する規定の整備が含まれております。

 六点目の導入時期について、中間とりまとめでは、令和五年以降の可能な限り速やかな導入に向けて、可及的速やかに制度設計を行うべきとしています。

 検討会では、介護者なき後の対策などの被害者支援の充実が喫緊の課題となっており、現状では決して時間的余裕がないという強い声が聞かれました。もちろん、導入に際しては、自動車ユーザーへの丁寧な説明を行い、納得を得られる努力を続けることは不可欠の前提ですが、制度の速やかな導入により、被害者、御遺族の先行き不安をできるだけ早く払拭していただきたいという趣旨です。

 最後に、今後継続して検討すべき課題についても触れておきます。

 中間とりまとめの提言は、今後も一般会計から繰戻しを着実に行うことを前提として、賦課金を導入することにより、被害者支援や事故防止対策を恒久的な枠組みの下で実施できる体制に転換するというものですが、具体的な財源の使途や詳細な賦課金の金額の水準については更に十分な検討が必要です。

 また、先ほど触れました、実施される被害者救済、事故防止対策に関する効果検証の在り方についての検討も必要となります。

 今後、ユーザー団体、被害者、遺族団体の御意見も十分伺いながら、更に議論を深めていきたいと考えております。

 また、検討会では、被害者支援や事故防止に必要な情報発信と丁寧な説明を行うことが、自動車ユーザーの理解を得るために必要であるという意見を数多くいただいております。実際、被害者支援、事故防止の実施の中核を担う独立行政法人自動車事故対策機構、NASVAと呼ばれていますが、この認知度が低いというのは大変大きな問題だと思っております。さらに、情報の積極的な発信は、現実に支援を必要としている方へのアウトリーチという観点からも必要です。したがって、制度改正に際しては、関係者において広報の充実にも積極的に取り組んでいただきたいと考えております。

 以上、今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会における検討内容について、御説明させていただきました。

 今回の法案は、自動車ユーザー団体、被害者、遺族団体を始めとした関係者の方々による長年の真剣な議論と調整の結果を反映したものです。この法案が成立し、新たな制度の下、中間とりまとめで示された観点を踏まえた適切な運用がなされることにより、ユーザーの理解の下、今後とも充実した被害者救済、事故防止対策が安定的に継続されることを期待して、私の意見陳述とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。(拍手)

中根委員長 ありがとうございました。

 次に、小沢参考人、お願いいたします。

小沢参考人 よろしくお願いいたします。

 私は、一般社団法人関東交通犯罪遺族の会の小沢と申します。

 本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、二〇〇八年に、平成二十年、飲酒運転による交通事件により、義理の両親を亡くし、双子の弟妹が二人とも高次脳機能障害、PTSD、弟に関しては下半身麻痺という後遺症を負った遺族です。

 交通事故により、死亡事案、後遺症事案、当事者家族として、交通事故に対して多角的な視点で見てまいりました。裁判では罪名が三つ、四人の加害者と刑事事件だけで五年間、裁判に関わりました。命の貴さ、また生きていくことの苦しさ、さらには支えていく家族の苦しさやもどかしさを知っている家族であると思っております。だからこそ、遺族、後遺障害に偏る支援ではなく、どちらにも支援が行き届く、そのような仕組みが国土交通省におきましてしっかりと構築されることの必要性を感じております。

 これまで遺族団体として多くの被害者の方との接点を持ってきた中で感じたことを踏まえまして、本日は意見を述べさせていただきたいと思います。

 多くの被害者や遺族の方とお話をさせていただく中で、具体的なニーズといたしまして、被害者や遺族として当然抱く喜怒哀楽の様々な感情を外に出せる場所が欲しい、このような日常の急激な変化、そして、同じ家族であってもどのように接していいか分からないなどといった、さらには、通常経験することもない裁判への対応など、様々な支援の必要性を感じてきました。このため、遺族団体としての活動では、当たり前のことを当たり前に安心して聞ける団体を目指して、活動してきたところでございます。

 こうした取組を続けていく中、被害者や遺族が当たり前のことを当たり前にすることができる社会を実現するため、関係省庁などへの要望を行ってまいりました。

 国土交通省に対しましては、一昨年秋、当時は赤羽交通大臣でございましたが、団体として直接御要望を伝えさせていただく機会もございました。大臣というお立場でもありながら、遺族の支援や理解を同じ目線で寄り添って聞いていただきました。また、国土交通省の職員の方の多くが非常に交通事故にも被害者救済対策にも強く関心を持ってくださっていたことに、驚きとともに、大変感謝をいたしました。

 そうした中で、国土交通省におけます被害者支援のあり方の検討会にも委員として参画をさせていただくようになりまして、自賠責制度における被害者支援、事故防止について、具体的な内容につき、その財源をめぐる状況についても認識したところでございます。

 その中で、支援の事業の内容につきまして、被害者、遺族支援、事故防止の両輪の体制で充実していただきたいと強く願います。交通事故による被害に遭った被害者や遺族への支援の充実、これらは大変重要な課題です。そして、同じ思いをする方を一人でも減らしていただきたい、これが何より重要であると感じております。

 私自身は遺族団体の代表をしておりますので、まず、遺族の観点から伝えさせていただきます。

 具体的には、自賠責制度における支援内容として、ひき逃げ等の被害への対応はされております。ですが、遺族への支援はこれまでほとんどなかったことにつきまして、被害者救済の情報や心のケアの支援の充実が必要であると感じております。

 特に、遺族や遺児のための教育環境面のフォロー、交通事故の被害に遭った後、大人だけではなく、子供たちにもしっかりと心のケアが受けられるよう、環境整備が必要でございます。その一つとして、交通事故を経験した当事者が交通遺児、家族の家庭教師を担えるような仕組みができないかと考えております。

 また、後遺障害が残る場合でございます。医療面につきましては、リハビリテーションの体制の充実が必要です。私も参加した検討会の委員には、約三十年もの長期にわたりまして遷延性意識障害の介護をされている方や、御自身に脊髄損傷が残り、必死にリハビリを経て検討委員会の委員として参加されている方、高次脳機能障害の家族の見守りサポートを約二十年続けられている方が参加しております。それぞれの障害に応じたリハビリテーションが受けられること、これが非常に重要です。

 遷延性意識障害の場合は、療護センターやその機能を持つ委託病床があります。在院期間中はもちろんのこと、退院後も療護センターや委託病床のリハビリテーションを受けたいという場合には受けられるような環境になってもらえると、遷延性意識障害を持つ、介護をする家族にとっては安心できるのではないでしょうか。

 そして、親なき後の介護についても急速な対応が必要でございます。

 また、脊髄損傷や高次脳機能障害におきましては、昨年七月に、今後の被害者救済対策の在り方について取りまとめられました報告書で初めて、両者がリハビリテーションを受けられる環境整備に取り組むことが示されました。今後、急性期の病院を退院した後、一つの病院で比較的長期にわたって脊髄損傷からの社会復帰に向けたリハビリテーションを継続して受けられる病院探しや、高次脳機能障害の方の社会復帰に取り組む自立訓練施設探しなど、やっと探し始めたという段階でございます。これらの取組も充実をさせていっていただけたらと思います。

 次に、福祉面についてでございます。

 圧倒的にヘルパーの方の数が不足しております。特に、医療的なケアをできるヘルパーの不足は本当に深刻です。障害者が地域で生活を営むことができないという大変厳しい現状がございます。様々な障害に応じたスキルのあるヘルパーも少なく、質の面、量の面からも、ヘルパーの確保が早急に取り組んでいただきたい課題であると思っております。

 加えまして、介護者が介護ができなくなったときの対応が非常に困難な現状があります。厚生労働省の施策として、入院、入所施設から地域生活への流れがあり、それについては納得をしております。これが、対応できる地域の受皿が足りていないと委員会で聞いてまいりました。地域の受皿の確保をするために、是非、皆さんに耳をかしていただき、取り組んでいただきたいと思います。

 これまで全ての交通被害者や家族、遺族の話をしてまいりましたが、親なき後の介護が叫ばれている一方、ヤングケアラーの存在を知っていただきたいと思います。

 個人的な話にはなりますが、義理の両親が死亡、弟妹は高次脳機能障害、第四腰椎脱臼骨折、事故後も何度もの手術をしてまいりました。病院に関しては二十三か所、それに伴い薬局が別に併設されております。この病院通いは今も続いています。家族の中で手が回らない、でも介護を頼めるほどでもない。そこで、当時四歳であった息子、今年ちょうど大学一年生となりましたが、裁判の期間中、刑事裁判、民事裁判合わせて、八年間、ずっと彼の人生を犠牲にしてきたことを親として情けなく感じております。お友達と遊びたかったと思います。宿題を犠牲にして御飯作りを優先してもらったときもありました。一番ひどかったのは、自殺をしないか見てくれと頼んだこともありました。

 遺族になると、心も体も壊れます。障害を持つ家族がいれば、家族の犠牲は当然と思われるかもしれません。心を病んでいたり障害を持った家族がいれば、その家族を、介護で、家族で担わなくてはならない、社会に頼ることができない、これが今の社会の現状です。だからこそ、介護への問題は、高齢化だけではなく、若き社会の担い手にも、交通事故に遭った瞬間、誰もが苦しむ問題なんです。この私たちの家族は一例であり、本当に多くの方が遺族になり、当事者になり、声に出すことも戸惑う状況が続いております。被害者支援からこぼれ落ちている、これが社会の問題でございます。

 このような課題のほかにも、ショートステイの課題、家庭崩壊、介護者のうつなど、課題は山積しております。これまで以上に被害者、遺族の声に寄り添った施策をしていただきたい。もし財源が厳しいなら歳出を抑制すればよいという声もお伺いします。これ以上、命が失われることを目の前で見たくはありません。課題はとても多いですが、国民一人一人に愛のある施策を今後期待したいと思っております。

 事故防止においても、高齢ドライバーがハンドルを握らなくても安心して生活できる社会、現実、ドライブレコーダーの導入促進、飲酒運転の検知器の導入など、事故を未然に防ぐための対策をしっかりと講じていただくことが必要かと思います。

 国土交通省やNASVAから出されております自動車アセスメントなどのしっかりとしたデータは、これまでの多くの事故を防いできた、命を守るデータであると私は思っております。事故防止の取組を自動車業界の方々に知っていただく機会をつくっていただくことが、安全な車社会の実現につながるのではないかと思っております。

 さらに、ソフト面の対策として、子供たちへの交通安全教育も、加害者目線だけではなく、被害者目線に立った教育がされることが必要です。被害者目線を知っていただくことが、命の大切さや家族の大切さを考える心のケア、又は相手を思いやる教育につながるのではないかと思っております。また、グリーフケアという悲嘆のケアについても浸透していっていただけたらなと思っております。

 交通事故は、誰もが被害者になり得ます。被害者支援の充実は、被害に遭ったそれぞれの被害者に対し、施策の中で、偏った支援ではなく、平等に講じていただくことが必要です。社会の誰もを救済できる受皿として、自賠責保険が被害者支援の要であっていただきたいのです。

 このほかにも充実していただきたいことを挙げれば切りがないんですが、このような施策の充実に取り組むためには財源の裏づけが必要でございます。

 検討会における議論でも、先ほど意見を述べられました藤田様のおっしゃるとおり、まずは一般会計からの繰戻しが今後もしっかりと継続して行われることが重要であると考えております。

 一方で、それだけに頼る状況になることは、数十年先の未来、子供たちの未来を考えたとき、また、介護を今まさに受けている方にとり、大きな不安がございます。社会における財源の不安を早く払拭していただきたい、そのように考えております。

 そのためには、手元に積立金がある程度ある今、賦課金制度を導入していただくことは必要であり、これをこれ以上後回しにはできない状況であると思います。

 自動車そのものの安全性向上により、将来的に事故は更に減っていったとしても、これまでに事故の被害に遭った方も多く、将来にわたった継続した支援が必要になることが見込まれております。この観点からも、被害者支援、交通事故防止、これが永続的な仕組みの下で実施できる体制をすぐにでも確立していただく必要があると思っております。

 一方で、賦課金導入は、自動車ユーザーの皆様の負担を求める取組であるため、自動車ユーザーの皆様の御理解をいただけることが重要であると考えております。そのために、国土交通省におきまして、自賠責のお金の使い道につきまして、自動車ユーザーに届くよう、私たち遺族や被害者が置かれた状況について、含めまして、広報をしっかりと行っていただくことが必要です。

 皆さんにいま一度、御自宅の道路を通るときを想像していただきたいのです。日本の横断歩道の中で、どれだけの方が車を止めているでしょうか。現状は、手を挙げている子供を無視してまで横切る交通社会です。いま一度、車は凶器であること、道路には、年齢も様々で、障害を持つ方もいる。様々な方が使う道としての認識を、改めて自動車ユーザー一人一人が、自分自身のハンドルを持つ自覚として、他者への愛を考える、歩行者優先の道路であることを意識づける機会になっていただきたいと思います。海外では横断歩道で必ず止まる、このように日本でも必ず変えていきたいと思っております。

 改めて広報の在り方について検討をしていただき、広報の充実を図っていただきたいと思いますし、広報の充実に際しましては、交通事故被害に遭われた方を救済する制度を早期に情報を届ける被害者ノートなども活用していただきながら、広報と被害者支援の必要性を同時に訴える形で知っていただけるようにするために、保険会社など様々な連携を図ることについて検討していただきたいと思います。

 以上になります。

 ありがとうございました。(拍手)

中根委員長 小沢参考人、ありがとうございました。

 次に、福田参考人、お願いいたします。

福田参考人 よろしいでしょうか。

 御紹介いただきました、自動車損害賠償保障制度を考える会の座長で、日本大学危機管理学部長の福田弥夫でございます。

 この度の自賠法改正に関し、参考人として意見の陳述をさせていただく機会を与えてくださったことにお礼申し上げます。

 参議院でもお話ししましたが、本日は、日本で唯一、財務大臣に、お金を返してくださいと言うことができる会の代表として衆議院にもお招きいただいたかと思います。

 まず、我々の会は、法案賛成で一致しております。

 初めに、平成二十二年に結成された考える会の若干の説明をさせていただきます。

 民主党政権の事業仕分と埋蔵金発掘騒動の中で、交通安全特別会計がその対象となり、交通事故被害者救済事業が大きく後退するのではないかという危惧感から、交通事故被害者を守るために、当時の自賠責保険審議会委員を中心に結成されました。

 資料の一と二を御覧いただきたいと思います。自動車総連や日本自動車会議所、そしてJAFなどのユーザー団体や、被害者団体の代表、学識経験者などがメンバーです。

 平成二十九年からは、特別会計へ繰り戻されていない約六千億円の早期繰戻しを求めて、財務大臣、国土交通大臣などへ働きかけてまいりました。粘り強い活動の結果、平成三十年から繰戻しが実現し、昨年十二月には、大臣間合意で、向こう五年間の繰戻しが約束されております。しかし、元利合計で現在の残高が六千億円を超えており、将来にわたる被害者救済事業の継続実施への影響を心配しております。

 私は、平成十一年から運輸省の自賠責保険制度の在り方を考える大臣懇談会、そして、平成十七年から十年間は自賠責保険審議会、現在は国土交通省の自動車損害賠償保障制度の在り方を考える検討会のメンバーを務め、自賠法の改正に、二十三年、関係しております。

 今回の改正は、平成十三年の改正において積み残しあるいは将来の課題とされた点への対応でございます。

 簡単に平成十三年改正について御説明いたします。

 平成十三年改正前の自賠責保険は、国が六割の再保険を引き受ける形になっておりました。このような仕組みとしたのは、昭和三十年に自賠責保険が創設された当時は、日本の損害保険会社の財政的基盤が十分ではなく、リスクヘッジ及び被害者保護の観点からです。長い間、保険料の六割を国が預かり、保険金の支払いに際しても、その六割を国が払うという形で運用されてきました。四割は民間の保険会社です。

 保険は、保険料が入ってきても、それがすぐに保険金としては出ていきません。その間のタイムラグによって、資金運用による運用益が発生します。もっとも、ノーロス・ノープロフィットの原則の下に運用されており、損害率の検証によって、定期的な保険料の見直しが行われております。

 平成十三年当時、運用利回りが好調であったところから、特別会計へ約二兆円の運用益が滞留しておりました。また、損害保険会社の財政的基盤も昭和三十年当時とは比べ物にならないほど強固となり、再保険制度を維持する必要性が減少したため、平成十三年の改正で再保険制度を廃止することになりました。

 その際、この運用益をどう処理するかが大きな課題となりましたが、最終的に、二兆円を二十分の十一と二十分の九、すなわち、一兆一千億円と九千億円に切り分け、一兆一千億円はユーザー還元を目的として自賠責保険料への充当を行い、残りの九千億円を運用して被害者救済事業に充てることになりました。

 当時の試算では、約九千億円を運用すれば被害者救済事業に必要な資金は確保できると考えられました。一般会計への貸出しの元本残高は約六千三百億円でしたが、平成八年以降、毎年ではないのですが順調に繰り戻されており、短期間で全額繰り戻されるであろうと、心配もしておりませんでした。

 ところが、平成十五年の五百八億円を最後に、我々が働きかけを行った平成三十年まで繰戻しはストップしてしまい、運用によって賄うはずであった被害者救済事業のための原資は切り崩されてまいりました。

 今回の改正で導入される予定の賦課金については、再保険制度を廃止した平成十三年改正に際しての衆議院及び参議院の附帯決議において、社会経済情勢の推移等を踏まえ、施行後五年以内の賦課金導入の可能性の検討と示されております。あれから二十年が経過し、この賦課金を選択する必要が生じたための今回の改正であります。

 自賠責保険について簡単に御説明いたします。

 この保険は、交通事故の加害者の賠償資力を確保することを目的として昭和三十年に制定された強制保険です。

 戦後の経済成長に伴い、モータリゼーションが進むに比例して、交通事故件数は増加し、死者数も増加しました。ところが、自動車保険への加入は任意であったために、加害者が保険に加入していないために十分な賠償能力がなく、泣き寝入りをせざるを得ない被害者が続出して、大きな社会問題となりました。それを解決する手段として、強制保険としての自賠責保険が導入され、被害者に対する基本的な保障を提供することになりました。なお、スタートしたときの保険金の上限は、死亡で三十万円です。

 その後の日本の経済発展とモータリゼーションの発展は先生方御存じのことで、日本の経済成長を牽引する産業の一つとして、自動車産業は日本が世界をリードする基幹産業へと大きく成長しました。自動車台数の増加とともに、不可避的に交通事故は発生します。そのため、ある意味で、交通事故の被害者は国の政策の犠牲者ともいうべき存在です。

 ところで、自賠責保険が誕生した頃は、歩行者が被害者というのが中心でした。しかし、車対車の事故が増加し、乗車中に死亡する被害者が増加してきました。いわば走る凶器型の事故から走る棺おけ型の事故への変容です。ここで、自動車ユーザーは、加害者にも被害者にもなるという位置に立つことになります。

 このことが、自動車ユーザーが負担する自賠責保険料を被害者救済事業にも利用することが許される理由です。

 自賠責保険は、単に加害者に対する賠償資力の確保だけではなく、被害者救済事業とセットになった、自動車ユーザーによるいわば自助、共助の仕組みだということです。自賠責保険と被害者救済事業は表裏の関係に立ち、このような自動車保険制度は比較法的に見ても例がなく、世界に誇ることのできる交通事故被害者救済のための制度であります。

 積立金を活用して実施されている自動車事故対策事業は、安定した運用益が確保され始めた昭和四十二年からスタートし、昭和四十八年に、自動車事故対策センター、現在の自動車事故対策機構が設置されてから本格化します。現在の被害者救済対策事業の柱は、重度後遺障害者への支援事業であり、療護施設の設置、運営、介護料の支給、訪問支援などが実施されています。

 私は、今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会の座長を務めましたが、これは、当時の赤羽国土交通大臣の被害者救済に寄せる強い思いによって設けられました。これまでの対策は、最重度の後遺障害である遷延性意識障害に遭われた方を中心としておりましたが、社会保障制度の変化や介護者の高齢化等を踏まえた、きめの細かい被害者救済対策の在り方について検討を加えました。

 報告書の概要は、一、療護施設の充実、二、リハビリ機会の確保、三、介護者となる家族の高齢化の進展等により介護が困難になった後、いわゆる介護者なき後への備え、四、事故後の支援、五、今後留意すべき事項から成ります。その中でも、私は、介護者なき後への備えが特に最優先課題ではないかと考えております。

 今回の改正は、被害者救済にとって大きな進歩です。それは、賦課金の導入により、これまでは附則として、いわば限りのある積立金を原資として、当分の間、実施するものとされていた被害者救済事業を、本則によって、恒久的に実施することとなり、この制度の安定的かつ継続的な維持が可能となるからです。

 なお、賦課金導入によって安定的な財源は確保することができますが、五点ほど指摘させていただきます。

 まず、繰戻しの問題です。

 先ほど藤田先生も小沢さんも御指摘のとおり、一般会計へ繰り入れられていて、いまだ繰り戻されていない約六千億円は、自動車ユーザーが自助、共助のために支払った自賠責保険料が原資であって、税金ではございません。この法改正の当然の前提として、繰戻しの継続及び早期の返済があると考えております。

 次に、被害者救済事業の効果検証の必要性です。

 被害者救済レベルを下げることは決してあってはなりませんが、医療技術などの進歩によって新たな施策が必要となる一方、必要性や効果の乏しいものも出現することが予想されます。必要性や効果を定期的に検証する仕組みは必要だと考えます。事故件数や死者数は減少していますが、支援を必要とする重度後遺障害者は必ずしも減少しておらず、脊髄損傷、高次脳機能障害、あるいは被害者の遺族など、この制度による支援が必要な方はいまだに増加しております。

 三番目は、賦課金導入に際しては、新たな負担を自動車ユーザーに求めるわけですから、中間とりまとめにも記載があるとおり、負担者である自動車ユーザーの納得感が得られるようにすべきであることは言うまでもなく、自動車ユーザーへの丁寧な説明と広報などによる理解を得る活動が必要だと考えます。

 四番目として、繰戻し額とも連動しますが、賦課金のレベルは、自動車ユーザーに負担感を余り与えることがないレベルであるべきだと考えます。

 五番目として、今回の法改正は令和五年四月一日からの施行となりますが、実際の賦課金額等については、引き続き国土交通省において開催される検討会において議論されることが予定されており、そこで慎重な議論がされることを望むとともに、三点目にお話ししたとおり、負担者となる自動車ユーザーの納得感、理解を得ることが、本制度を真に維持していくには必要だと思います。

 最後に、私と一緒にこの会を立ち上げた桑山雄次さんを紹介いたします。

 桑山さんは、交通事故に遭われた遷延性意識障害の息子さんを二十五年以上も自宅で介護されています。高校教師の職も、介護のために辞めました。桑山さんの最大の心配は、介護者なき後の問題です。これはなかなか結論が出ない問題ですが、そう言っているうちにも時間は経過し、状況は悪化していきます。

 先ほど申し上げましたように、交通事故の被害者は、国の経済的繁栄の犠牲者とも言えます。一刻も早い対応が必要です。時間は余り残されてはいません。

 以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

中根委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中根委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自由民主党の中川郁子でございます。

 今日は、参考人の皆様方には、お忙しい中、国会までお出かけをいただきまして、貴重な意見をいただきましたこと、私からも心からお礼を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 そして、三人の方にそれぞれ質問をさせていただきたいと思いますが、今、三人の皆様方が共通しておっしゃっておられたのが、自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れられた繰入金の繰戻しについてでありますが、今後ともこの制度がしっかりと継続できるような繰戻しを実現するために、私自身も政府に働きかけていきたい、このように思っているところでございます。

 それでは、お一人お一人、申し訳ありませんけれども、質問させていただきたいというふうに思います。

 まずは、最初に藤田参考人にお聞きをしたいというふうに思います。

 藤田参考人におかれましては、これまで、今回の制度改正に関わる議論を取りまとめてこられる中で、被害者の方々の声を丁寧に伺ったところ、施策充実の必要性が認められたとのことですが、具体的にどのような施策が必要なのでしょうか。

 また、自動車事故対策勘定の財政事情について、検討会においては具体的にどのような議論があり、今年一月に公表された検討会の中間とりまとめにつながったのか、教えていただきたいというふうに思います。

藤田参考人 御質問ありがとうございました。

 二つ御質問がございました。

 最初の、被害者の方々の声につきましては、実は、私が座長を務めました今後の自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会でももちろんお伺いはしましたが、より本格的なヒアリングは、その前年に開催された、福田先生を座長とする今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会で行われております。

 したがって、より詳細なことについては、場合によっては福田先生にお伺いいただければと思いますが、私の方から簡単にその結果についてお答えしておきますと、その検討会では、遷延性意識障害や脊髄損傷、高次脳機能障害、そして交通事故の遺族の方々が参加されて、被害者、遺族の方々が置かれている非常に厳しい現実、現状について説明がなされたと聞いております。

 具体的な指摘としては、例えば次のようなものがありました。これはその検討会の報告書にまとめられておりますが、例えば、療護センターの老朽化対策ですとか、あるいは、遷延性意識障害、脊髄損傷、高次脳機能障害など、障害の態様に応じたリハビリテーションの機会の確保ですとか、介護なき後対策ですとか、被害者、遺族の支援の充実の必要性、こういったものが特にニーズが高いものとして指摘されたというふうに伺っております。

 次に、自動車事故対策勘定の財政事情に関する検討会における議論ですけれども、次のような点でまず共通の認識があったと座長としては理解しております。

 まず第一に、現在のままだと、必要な費用を賄うための資金が早晩枯渇してしまうということ。

 二番目に、一般会計への繰入残額がいまだ残っているということは非常に遺憾であって、繰戻しは今後とも引き続き求める必要があること。

 しかし、残額全額を直ちに返済しろということも、これは幾ら何でも現実に可能とは思われず、長期にわたって返していただくしかないであろうということ。

 現在の超低金利を前提にしますと、運用益によって費用を賄うという現在のスキームはもう破綻している、それは、たとえ全額繰戻しが行われたとしても、それでも足りないというレベルの運用益しか得られないということ、したがって、継続的なインフローが見込めるようなスキームに転換しないともたないということ。

 この辺りまでは、ほぼ全員の委員の共通の認識があったと理解しております。

 ここから先が、若干というか、ある程度の意見の対立があった、温度差があったところですが、これは、一般会計への繰入残額の問題にどこまでこだわるか、そういうことです。

 当然、ユーザー団体などは、この問題を非常に深刻に捉えて、返還の道筋がある程度示されることが大前提であるというふうに強調されました。

 ただ、念のために申し上げますと、ユーザー団体といえども、全額直ちに返せ、返ってくるまでは賦課金は一切まかりならぬといった、そこまで極端な対応を取られたわけではなくて、もう少し穏やかなレベルでの要求ですけれども、しかし、そのある程度の見通しが大前提だという意見でした。

 他方、それは、もちろん、繰戻しというのを求め続けることは当然ではあるけれども、しかし、現在の喫緊の課題との関係では、それと切り離して、賦課金は、それはそれで検討を直ちに進めてほしいという意見もありました。

 結局、どうなったかというと、年末の大臣間合意で、それが一応評価されて、賦課金制度の創設を含む中間とりまとめの内容で合意できた。

 大ざっぱにまとめますと、財政についてはこういう議論があったということでございます。

 以上でございます。

中川(郁)委員 藤田先生、ありがとうございました。

 いろいろな御意見がある中で、喫緊の課題がある、そして、低金利の中でどうしても賦課金の導入が必要である、そういう合意に至ったということがよく分かりました。ありがとうございました。

 次に、福田参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 福田参考人におかれましては、この問題に関する専門家として本当に長年関わってこられた、特に、先ほど御発言されたように、自動車ユーザー団体や被害者団体でつくる自賠責制度を考える会の座長としても活動をされてこられたということで、制度についても経緯についても一番詳しい方だというふうに承知しております。

 考える会としても、自賠責制度は、自動車ユーザーの支払った保険料で、不幸にして交通事故の被害に遭った人たちの救済を確かなものにするため、世界に誇れる自助、共助の仕組みということを訴えておられるお立場だというふうに思います。

 先ほど、その立場からも、被害者救済や事故防止対策などの事業を持続可能な仕組みにする今回の改正について、賛成だとおっしゃっておられました。一方で、先ほどからお話があった、ネックとなっているのは、一般会計からの繰戻しの問題だというふうに思います。

 今回、ユーザー団体も含めた皆さんでこの法改正に合意された背景と、今後、法改正された後の制度の運用について求めていくことを教えていただければと思います。

福田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、私らの会がなぜ法案に賛成したかということだと思うんですけれども、やはり被害者救済、これを安定かつ継続的に実施するために、この方策しか今考えられないのではないかということなんですね。

 ただ、会員の中でも、メンバーの中でも、いや、繰戻しが全額されるのが前提ではないかと。先ほど藤田先生もおっしゃったとおり、じゃ、六千億全部返ってきて、今やっている被害者救済事業ができますかといったら、これはできません。低金利の時代で、平成十三年改正当時のスキームは破綻しています。新たな財源を求める、その中で、我々は、賦課金の導入ということに、やはりこれしか道はないだろうというふうに考えた次第です。

 ただし、賦課金を導入することによって安定的な収入が維持できますので、じゃ、その使い道をどうするんだということは非常に大きな問題になってきます。そこで、効果検証をきちんとやる、それがこの賦課金導入には不可欠なものだと思います。

 あともう一点、なぜ我々が賛成しているかというと、今回の改正によって、自賠法七十七条の二によって、先ほども言いましたけれども、今までは、附則の中で、財源のある限り行う被害者救済事業という位置づけが、きちんと法の条文の中に書き込まれて、安定した事業として行うことができるということで、これは私は非常に大きいと思います。本則の中に書き込むこと、これは非常に大きな意義だと考えております。

 取りあえず、以上でございます。

中川(郁)委員 ありがとうございます。

 効果検証をしっかり行っていくということでありますので、私もしっかり注視していきたいというふうに思います。

 小沢参考人にお話を伺いたいというふうに思います。

 当時四歳だった子供さんが大学生になった、家族も大変だった、小さい方も大変だった、この話は、自分に置き換えても、本当に大変でいらっしゃったというふうに思います。

 そういう中で、ヤングケアラーの問題、また介護者なき後の支援の問題、いろいろお話をいただいたわけでありますが、被害者支援の充実は、被害に遭った当事者、当事者家族、遺族、それぞれに対する支援を平等に講じていくことが必要であると感じているというふうにコメントをいただきましたけれども、この考え方について詳しく教えていただければと思います。

小沢参考人 御質問いただき、ありがとうございます。

 私たち遺族、また当事者、また当事者家族、様々な立場から、私自身もそうですが、遺族でもあり、当事者家族を見守るというところを考えると、今、先行して遷延性意識障害へのサポートというものが国土交通省内においてしっかりとまずは基盤をつくってくださって、それを継続していくこと、それからまた変えていくということが必要かと思います。

 また、先ほど私の方でお話をさせていただきました昨年七月のあり方検討会の中でも、脊髄損傷又は高次脳機能障害についての支援施策について今後検討していくというふうな形で道が開けてきたというところでございます。

 一方でですが、遺族の支援というのが全くございません。その中で、どの方、どの当事者、どの遺族に関しても、やはりそれぞれが心のケアやそれぞれのニーズがございます。

 特に、親なき後の制度、本当に脊髄損傷に関しては、御自身が、それこそ自身が介護をしなくてはならない状況下で、自分自身を保っていかなくてはならないという方が検討会の中にいますが、それに対して、しっかりとリハビリテーションが受けられないという状況が本当に問題だなと思っております。

 何にしろ、病院の中では対策が組めている、ところが、地域に戻った際、家の中でできることの中で、家から通える範囲でのニーズが、全く足りていない。これが、更に被害者に対しての救済が遅れる理由になっているのかなというのを感じます。

 そのようなことから考えると、やはりそれぞれのニーズに耳を傾けて、それぞれの対策の中で対応していただくというようなことが、今後、課題としてより必要になっていくのかなと思っております。

 それぞれの支援施策については、先ほどもおっしゃっていましたが、それまでの経過を見ていただき、対策の必要性を見ていただければなと思います。

 私からは以上でございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 最後にもう一度、藤田参考人にお願いしたいんですけれども、今、小沢参考人や福田参考人の意見についてどのように受け止め、そして、これからの検討会においてもどのように議論を取りまとめていくか、一言だけいただければと思います。

藤田参考人 どうもありがとうございます。

 今、福田参考人、小沢参考人から伺った意見は私も全くそのとおりだと思っておりまして、今後の検討会では、とにかく施策の見える化を進める、そして、必要な施策が何であるかということについて慎重に検討し、ユーザーの納得の得られる無駄のない適切な施策を実施するように尽力していきたいと考えております。

 今月も検討会は予定されておりますけれども、そこではそういう検討を始めたいと思っております。

 以上です。

中川(郁)委員 今日は、本当にありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございます。

中根委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党の栃木県第四区の藤岡隆雄と申します。

 今日は、三人の参考人の先生方、本当に御多忙な中、こうして委員会にお足をお運びくださり、貴重な御意見を賜ったこと、私、若輩でございますが、心から感謝を申し上げたいと思います。

 また、藤田参考人におかれましては、今回の検討会の座長として取りまとめに御尽力をされたこと、敬意を表します。

 また、小沢参考人におかれましては、本当に御自身も耐え難い悲しみも受けながら、御遺族、被害者のために寄り添った活動をされてきましたことに心から敬意を表したいと思います。

 また、福田参考人におかれましては、日本で唯一、財務大臣に、お金を返してくださいというところを、自動車ユーザーにとっては最も代弁してほしいこと、これを本当に真っ正面から活動されてきたことに心から敬意を表したいと思います。

 まず、私からお聞きをしたいこと、先ほどから少し出ている話でもございます。ある意味、平成六年度から、いわゆる自動車ユーザーの皆様が払っていただいたものが原資の、いわゆる特別会計から一般会計に約一兆一千二百億円繰入れをした。そして、しばらくの間返済がない期間、平成十六年度から平成二十九年度、返済がない期間も経まして、今なおやはり約六千億円残っているという話がございました。本年度は五十四億円ということでございますが、五十四億円、これ、六千億ということですと、百二十年近くかかってしまうのかどうなのかというふうな指摘もあるというふうに思います。

 改めて、これは財務省から国土交通省さんにしっかり返していただかなければいけないということをやはり強く私は思うわけでございますが、この全額返済の計画を立ててもらう、あるいは、さらには、早期に、やはり少しでも早期に戻していただく、それをできるだけ担保をしていく、さらには、こういうことを国民の皆様にもしっかり伝えていかないといけない。なかなかこの事実は余り伝えられていない、知られていないということも、御尽力をされている中でちょっと済みませんね、言い方があれでしたら申し訳ないんですが、もっとできるだけ知っていただきたい。

 早期に、担保、そして知っていただきたい、伝えていくこと、これを藤田参考人と福田参考人にちょっとお聞きをできればと思います。

藤田参考人 繰戻しの問題というのが今回我々が議論するときに常に背後にあって、深刻な懸念として、また、私たちとしても非常に遺憾な状況にあるということについては、繰り返し申し上げさせていただきましたし、私も全くそのとおりだと思います。

 今御指摘のあったとおり、五十四億円で、このペースで返すと百年以上かかるということが望ましいとも思えない。いずれ、増額して返せるときには、もう少しペースを上げて返していただくといったことをしていただく必要があるということは間違いないと思います。もちろん、各年の財政事情もありますので、できることとできないことというのはあるにせよ、今後もより強く働きかけ、更なる増額ということを働きかける、お願いせざるを得ないような、そういうこともあるかと思います。そのためには、ありとあらゆる手段を講じること、いろいろな方の御助力を得る必要があることも、全く御指摘のとおりだと思います。

 この問題が知られていないということというのが深刻であるということについても共感いたしますので、私も広報に努めますけれども、先生方におかれましても、是非、この問題について、常に問題提起をして、働きかけをしていただきたいと思います。

 ただ、一つだけ私の立場から懸念を申し上げますと、この問題の取上げ方を非常にゆがんだ形でしてしまいますと、この制度の維持や発展に対してよくないようなイメージを与える可能性がある。財務省がお金を返さないからユーザーからお金を取り上げることで借金の肩代わりをさせているというような、そういう宣伝のされ方をされると、非常に不健全な形でこの問題が捉えられかねない。そんな点については非常に注意を要するのですが、ただ、この問題が残っていること、それを適切な形で多くの方に知ってもらい、できるだけ早期に返済をお願いするように尽力したい。私ももちろん努力は続けますけれども、先生方にも是非御助力していただきたいと考えております。

 以上です。

福田参考人 先生、御質問ありがとうございます。

 藤田先生と同じなんですけれども、この一般会計への繰入れという話を初めて聞いたのは、私が運輸省の大臣懇談会のメンバーになったときで、それは一体何ですかということがスタートだったですね。

 ただ、十三年改正スキームのときの議論で、大丈夫、安定的に返ってきているからと。ああ、それだったら大丈夫ですね、では、九千億を運用してきちんとやれますねと。

 ところが、今、藤田先生もおっしゃっていますけれども、全部返ってきてもできないんです。切り崩していくしかない。なくなったらどうするの。そのときにまたそういう議論をすればいいじゃないかというような先送りだけは、決してやっていただきたくないんです。それが私の一番の心配なんですね。

 被害者救済事業を継続的、安定的に実施するための仕組みをどうつくっていくか、これが賦課金である。じゃ、繰戻しの方はどうするの。これは安定的に返してもらって、そのコンビネーションでうまく被害者救済事業を実行していくということだと思うんです。

 私らの会は、一旦お取り潰しに特別会計がなりそうだったときにできて、それがそのまま維持されたのでしばらく活動を中止していたんですが、全然返ってこないということで、また活動再開を始めました。

 そのときに私はこう思いました。毎年のように財務大臣に会いに行って、お金を返してくださいと言って、国土交通大臣に会いに行って、早く返してもらってください、私らこれを何年やるんですかと。

 どこかできちんと毎年安定的なロードマップを作ってもらえばこういうようなことはしなくても済むし、被害者団体も、一体いつになったら安定的に私らを救済する被害者救済事業が確保できるのか、こういう心配があるから、今回の大臣間合意については、すごくそういう意味では評価していますし、賦課金導入もこれしかない選択肢だと思って考えています。

 以上でございます。

藤岡委員 ありがとうございました。

 私も、被害者救済事業、この必要性については本当に理解しておりますので、その点については御安心くださればということを申し上げておきたいなということを思います。

 小沢参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど、横断歩道を通るときにどれだけの車が止まるかという話もおっしゃっていました。私も、実は地元で、子供の通う小学校のところで旗当番をやったりしていることがあるんですね。本当に、止まらずに、立っているのに止まらないで行ってしまうとか、非常にそういう危機感を共有しますので、そういう話を教えていただいたこと、またそこも感謝申し上げたいということも思います。

 そこで、いわゆる被害者救済の支援ということで、独立行政法人の自動車事故対策機構、NASVAに関してちょっとお聞きしたいというところがあるんですけれども。

 いわゆる、先ほどから、遷延性の意識障害を抱えられた方を専門的に受け入れるという療養施設ですね、これが全国で十一か所、三百十床ということでよろしいんでしょうかね。ここで、実際、事故で障害を抱えられた方のうち、三分の一ぐらいの方が利用というふうなのが資料で出ておったのを見たんですけれども、これが実際、例えば足りているかどうかとか、そういうふうな視点や、あるいは、さっき退院後の話もされておりましたが、これは入院期間三年間ということになっておりますが、これが実際どうなのかどうかとか、そういう視点などから含めて、まず御意見があればということですね。

 それから、いわゆる介護者なき後の生活に関しても、いろいろなお声を聞いていらっしゃると思います。そのことについてということと、あとヤングケアラーのことにつきましても、何か更にお聞きしているようなことがあれば是非陳述をお願いできればと思います。

小沢参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、一番最初のNASVAの状況でございます。詳しくは、国土交通省の方で見ていただければはっきりと分かると思います。私の方で全てが確認できている状況ではございません。

 ですが、私の家族の事案ですが、私は埼玉県に住んでおります。埼玉県で交通事故に遭いました。私の弟は、これから更にリハビリが必要だといったときに、埼玉県内に病院がないということを言われたんです。ないわけがないんです。ところが、リハビリを専門としてこれを支援できる場所がないということで、どこに行ったかというと、山梨県まで行ったんですね。山梨県まで行って、結局、二十一歳の若き彼、そしてお父さん、お母さんを亡くしたばかりの悲嘆している彼を山梨県まで送り迎えしなくてはならない。さらに、そこには救急車を使って、民間救急車を使ったりとかして送らなくてはならない。

 さらに、山梨でリハビリテーションがある一定度終わった後、地域に戻ってきたときに、なかなか、中途半端な、支援ができない、要は、リハビリテーションがうまくできるところが近くにないということに愕然としました。

 最終的にどうなったかというと、自宅でこのようなことをしてくださいということを専門の先生から伺って、それを基に毎日メニューを決めて、家族がサポートしながら、家族が声かけしながら、彼は第四腰椎脱臼骨折という麻痺も、更に高次脳機能障害という両方の障害を負っていますから、自分が例えば痛みがあったり、骨に全部金属が入っていたんですね、この金属が折れてしまったときも、自分で、ギシギシ音がする、だけれども、それが何かが分からない、これが高次脳機能障害なんですね。自分の異変すら気づかない。なので、適切な状況下で支援するということが難しい環境でございました。なので、両方の専門家が必要であった。それから、適切なサポート、介護施設又はリハビリテーションの状況、又はヘルパーさんが必要だったと私は考えております。

 このようなことを考えると、やはり地域で生きるということの必要性というものの重要さを御理解いただけるのではないかと思います。

 また、介護者につきましてですけれども、本当に、介護者なき後というのもそうですけれども、実際に、御自身、皆さん、多分私がまだ若く見えると思うんですけれども、自分自身が弟、妹を抱えて、実際同年齢なんですね。私が先に死ぬか、彼らがいつまで生きられるか、分かりません。約六歳差がありますが、年を取れば取るほど、どちらが先に逝くかは分かりません。そのような中で、彼らが何かあったとき、私がどのように対処ができるのかなというのは今から考えています。

 ですから、私が年を取ったときに、ここの検討会でしっかりと親なき後の介護について議論をしていただき、結果をしっかり担保してもらった将来になっていただきたいという思いからも、私はこの思いについては非常に強く関心がございます。

 ヤングケアラーの問題に関しては、実際に心の支援の必要性があると思います。

 先ほどお伝えしましたが、NASVAというところがございます。このNASVAでは友の会というものがございまして、遺族の子供であれば参加ができるというものでございます。この心の居場所づくりというのは非常に必要不可欠かと思います。

 NASVAというのは全国各地に配備されておりますが、より身近に、それこそ、例えば埼玉県の中でも、町、県に、各月でもいいですから、地域ごとに少しずつ近寄ってきて、本当に子供たちが行ける距離で対応させていただければなと思います。

 なぜかというと、例えば、介護をしている、又は遺族で、心が病んでいる人に対して、すごい遠くまで支援をしてくださいと言いに行くのは大変難しいです。このようなことから、例えば今の状況であればZoomなどでもいいですから、心の交流をできる場所というものが大変必要かなと思っております。このようなことからも、心のケアを支援をすることが、若者の不安や恐怖、又は成長の過程の必要性。

 又は、交通事故に遭ったからということでいじめられる子供というのは実は少なくありません。このようなことから救済を行わなくてはならない。

 それから、親と子供で思っていることが違った場合、その場合にも耳を傾けるすべが必要かなと思います。

 上記のことから、NASVAのする役割というものも、より重要で不可欠なものであると私は考えております。

 以上でございます。

藤岡委員 本当に今まで寄り添って活動されてきた小沢参考人ならではの真に迫る意見陳述、本当にありがとうございました。

 最後に藤田参考人にお伺いしたいと思うんですが、賦課金の拡充ということで、ある意味、新設に近いという捉え方もできると思うんですが、いわゆる負担額の決定の在り方ということですが、これは政令で定めるということになっております。

 参議院の方でも質疑があり、また、参議院の方では附帯決議も付されているということもありますけれども、今後、この負担金の額の決定の在り方につきまして、やはり、今後の検討会など第三者でのきちっとした客観的な視点での検討、あるいは福田参考人からもありました使い道の検証とか、国会への報告など、こういうところからちょっと最後に御意見を、御陳述をお願いできればと思います。

藤田参考人 時間も限られておりますので、手短に答えさせていただきます。

 もちろん、透明性、客観性を担保するための第三者機関を介在させて、意見を踏まえた上で施策を決定し、それに必要な金額を定めるプロセスは必要であります。恐らく、現在の検討会か、それの後継のような機関、検討会のような組織をつくるんでしょうけれども、そこには、ユーザー団体と被害者団体、両方の代表に参加していただいて議論を踏まえることが必要だと思います。

 PDCAサイクルをちゃんと回して、きちんと毎年、実績、データに基づく検証をしていきたいと思います。そのための必要な視点、長期的に見なきゃいけないもの、短期的な効果を重視するもの、いろいろあるでしょうから、そういう視点を今まさに検討会で洗い出しをして、洗練させようとしているところであります。そういう形で続けていきたいと思っております。

藤岡委員 三人の参考人の先生方、ありがとうございました。

 終わります。

中根委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会の市村浩一郎でございます。

 本日は、参考人の三人の皆様、大変今日は貴重なお時間を賜りましたこと、感謝を申し上げます。

 まず、小沢参考人にお話をお聞きしたいと思います。

 私も、いわゆる地震等の被災者の心のケア等に努めてきた経験を持っておりまして、非常に、被害者の立場で物を考えていくということの大切さというものをずっと考えてきた者の一人でございます。

 小沢さんの場合は、御自身が遺族であり、かつ被害者の御家族という立場で、また、五年の裁判を経験され、先ほど、もどかしさというお言葉もありました。今はそういった被害者の皆さんの声をまとめ上げる立場なので、自分の思いをそう素直に発することはなかなか控えておられると思うんですが、この場で、先ほど、もどかしさということで表現された思いを、いま一度ここでちょっと披露していただくことはできませんでしょうか。

小沢参考人 先生、ありがとうございます。

 もどかしさというのは、ある日突然、交通事故に遭います。これは多くの当事者によく言われますが、交通事故だから仕方ないよ、交通事故だから我慢しなよ、又は、お金が入ってくるんだから、宝くじに当たったと思いなよというような言葉をたくさんかけられてきました。このような言葉で家族の命が返ってくるなら、家族の健康が返ってくるのであれば、私はそのお金は要りません。そのお金を戻してでも、やはり私たちの家族を返してもらいたい、そして今の、笑顔がある未来を返してもらいたいと思うのは、多くの遺族や当事者が思うことであると思っております。

 その中で、一番はやはり、自分自身がサポートをしてもらうというときに、多くのところで高次脳機能障害というものをまだ理解されないときでございました。私の事故は今から約十四年前でございますから、高次脳機能障害という言葉すら、市役所の方であってもなかなか存じ上げないというような状況でございました。それは病院でも同じです。ですから、この病気が何なのかということに対して、そもそも二年間苦しみました。

 このようなことから、適切に病名を理解することや適切に支援を行ってもらえる場所というのが分かりませんでした。当時、NASVAさんに御相談させてもらったことがありました。ですが、中途半端に私が相談してしまったという部分もあります。

 そして、もう一つは、私たち家族というのは、父と母が亡くなっているので、私の息子と娘に関しては事故の直接の被害者ではないという捉え方をされて、よく遺族で救済されるのは、お父さん、お母さんを亡くした、又は兄弟姉妹を亡くした子供なんですね。なので、私は、四人が家族、大事故で巻き込まれている、一人だけでもやはり大変だと思います、ですが、四人も巻き込まれているのにもかかわらず、支援していただけるという家系図の中に息子と娘が当てはまらないというのが、大変困惑いたしました。

 子供だけではなく、大家族、家族が何人も災害に遭った場合、又は二人でも構いません、この状況になると、一人でも、一人を亡くすという状況は悲惨でございます。そこが、家族で四人も被災するというような状況になると、肉体的、精神的にも限界が来ます。そのようなことからも、やはり支援の限界というのを感じております。

 その中で、今まさしく、私のことをなかなか言えないという、本当にそうだと思うんですけれども、自分の自信、経験というのは、様々なことを経験した知識だと思っております。

 一番最初は、関東交通犯罪遺族の会というのは、お茶を飲む会から始まったんですけれども、今は相談支援業務をしております。

 一番大変なのは、私もそうでしたけれども、子供が寝た後に相談をしたいんですね。多くの御家族が同じことを言うんですけれども、会社が終わった後、又は子供が寝た後にひっそりと相談したい。そうすると、民間の犯罪被害者支援室、又は、多分、NASVAさんもそうだと思うんですけれども、日中にしか相談を受けていないんです。そうすると、どうなるかというと、二〇二一年の統計になるんですけれども、私が、一月から三月までの統計を取って、平均で一月から三月まで五千五百分の相談業務を行っております。一日で換算すると平均三時間の支援をしているということになるんですが、これがお正月、一日から始まります。元旦から始まって、三十一日まで相談支援というのは始まりますし、下手すると、お子さんが亡くなって、同じ兄弟がいるとなると、十時から相談をしたい。まあ、状況が状況でございますから、私はそれに対応いたします。そうすると、やはり十時から一時まで相談に乗る。

 急性期の方に関しては、そこから弁護士さんにつなげる、市役所につなげる、被害者支援センターにつなげるとなると、やはり各遺族団体が今同じ状況下にあります。夜間の相談業務が余りにも多くて、ケアという段階で、命のダイヤルというのもそうなんですけれども、やはり夜間が多いと聞いております。命のダイヤルからも電話がかかってきたことがあって、私、今、命のダイヤルさんに電話したら、ここに電話しろと言われて、そちらに電話しました、どちらですかみたいな形で電話がかかってきて、そこから心のケアというものをさせてもらったこともございます。

 このようなことを考えると、様々な視点から被害者は今困窮していて、支援の場所を探している。そうすると、やはり、NASVAであったり、全国の各都道府県に今、条例が制定されておりますが、このようなものがより普及されるということが心の支援につながるのではないかと思っております。

 長くなってしまって申し訳ございません。

市村委員 感謝いたします。またいろいろお聞かせください。

 それで、今度は藤田先生にちょっとお尋ねをさせていただきたいと存じますが、今、事故件数は減った、死亡者も減っている、また、けが人も、おけがをされる方も減っている、しかし、重度の障害者の方が横ばい状態であるというのが、与件として議論されてきていると思うんですが、これはやはり与件なんでしょうか。もう横ばいというのは当たり前と思っての議論になったのか、それとも、横ばい状態というのはちょっと統計的にどうかというような議論はなかったんでしょうか、審議会の中で。教えていただければと思います。

藤田参考人 交通事故が将来どういうふうになるか、とりわけ被害者が、どういう形の被害者が増えるか、あるいは減るか、そういった予想そのものについては検討会そのものが扱うことではございませんので、現在あるデータを基に議論をさせていただいたということにはなります。

 ただ、個人的な感想を申し上げますと、亡くなるということがなくても、医療が発達することによって、命は助かったけれども、非常に重篤な障害を抱えた状態で命を長らえるという方が出てくるということは、これは容易に想像できることではあります。また、そういう場合に、非常に長期的に周りの方や、御本人も含めてですけれども、被害者の側の費用が大変膨大なものになることも確かであります。

 与件とするのかと言われて、それが一切変わらないと断言する材料は私にはございません。あるいは、そもそも、何十年後かには自動運転が現実化して、自動車事故の在り方が根本的に変わる世界も考えられないわけではありません。ただ、そういう予想、未来予想に基づいてこういう制度を立てることはできませんので、あくまで現在ある状況を見て、それがなぜ起きているかという辺りまでは若干考察はしましたけれども、それを前提に議論を続けさせていただいているところでございます。

 以上です。

市村委員 なぜそれをお尋ねしたかといいますと、先ほどから藤田先生は、やはり見える化が必要であり、自動車ユーザーの納得が必要であると。このお金がどう使われるか、ここをもっとしっかりと見せていかなくちゃいけない、こういうことなんですね。

 ですから、NASVAさんが余り、認知度が低いというのは、福田先生からもお話がありました。やはり、NASVAが一体何をやっているのかということについて、もっと知っていただく。知っていただくためには、その中身について、しっかりと数字も出しながら、こういうことをやっているんですということ、そういうことをもっとはっきりさせていく必要があるんじゃないかと思っているんですが、福田先生、NASVAというのはやはり必要でしょうか。

福田参考人 先生、ありがとうございます。

 NASVAは必要でしょうかと言われたら、必要ですというふうに考えます。いろいろな支援事業をやっています。それじゃ、NASVAを廃止して、ほかに誰がどのような形で今行われている被害者救済事業、支援事業を行うかということだと思いますよね。私は、必要です。

 じゃ、今の運営について更に改善すべき点があるのであれば改善は必要でしょうけれども、少なくとも、必要な事業を私はNASVAはきちんと行っていっていただいている、そのように理解しております。

 以上でございます。

市村委員 ありがとうございます。

 今回、賦課金ということになってまいりますので、これは福田先生もおっしゃっているように、やはりユーザーの納得感というのが得られなければならないということでありますので、是非とも、NASVAというものの認知度が低いということであれば、もっとNASVAの役割を、特に小沢さん、そういった意味では、ずっとNASVAが何をやっているかということはよく御存じだと思うし、また、かつ、NASVAというところがもっと改善をした方がいいということも、多分、小沢さんのお立場からいろいろな思いもあられると思います。

 ですから、今回こうして、まあ私どもは当然賛成、この法律の改正に賛成な立場から申し上げているんですけれども、今後また審議会もすぐ始まるというようなことで、さっきお話もありました。これから賦課金の額も具体的に決めていく、話をしていくということでありますので、やはり先ほどからおっしゃっているように、とにかく自動車ユーザーが納得していくというところが必要だと思います。

 それで、今回、自動車事故被害者ということで、いろいろな自賠責、昭和三十年からということでありますから、長きにわたって、先生方を始め、大変いろいろな議論をされてきたと思います。ここでの知見というのは、いろいろな被害者支援に生かせると私は思いたいと思っているんですね。

 これは自動車事故だけじゃなくて、先ほど、始まる前に我が党の山本委員からも、秋葉原の事故では、自動車でひかれた、自動車での事故の方の被害者にはこれが適用されるんですけれども、犯人が車を降りた後、そして殺害に回った、その被害者の方にはこれは適用されない、こういうことがあるということで、先ほど山本委員の方から、これは大変問題であると。

 やはり一般化するというか普遍化するというか、それは、自然災害の被害者でもあり、自動車でもあり、また犯罪被害者でもあり、いろいろな意味での被害者というのは、被害者という形で例えば障害を負ってしまうということは、これは同じなんですね、自動車事故だろうと、自然災害だろうと、犯罪だろうと。

 だから、ここでの、今までのNASVAでも培ってきた知見、被害者支援の在り方について、一般化する、普遍化するということが大切だと思いますが、小沢参考人、どうですか。御意見、聞かせてください。

小沢参考人 ありがとうございます。大変重要な問題かと思います。

 そもそも、犯罪被害者支援というものが、諸外国と比べて、日本が担っている被害者への救済の金額というのは非常に低いものでございます。

 これはあるデータがあるのですが、今ちょっと手元にないので言えないんですが、ある国では、国の規模感において、一人の支援する財源が約百四十三円から七百幾らまであるんです。ところが、日本というのはそれより更に低いんですね。なので、そもそも、犯罪被害者、又は交通事故被害者に対しての支援に対しての理解がなかなかなされていない現状があると思っております。

 一番分かりやすいことでいうと、犯罪被害者の中で、裁判員裁判が始まりました。裁判員裁判には有給の休暇制度というものがございます。また、心のケアセンターで、二十四時間やっている心の電話相談がありますが、被害者にはありません。なので、二十四時間やっているところにどうにか駆け込みたい。又は、被害者休暇制度についても、厚生労働省がこのようなものを出していますけれども、被害者等の回復のための休暇制度というものは、義務では、あって確実に強制的に取れるというものではないのが日本の現状でございます。

 これは絶対的に変えていかなくてはならないと思いますし、どの被害者においても支援又はサポートが国によって保障されるような社会になれば、私たちが苦しまずに、元々の力を取り戻すという意味では、サポートしていただけるのではないかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

市村委員 終わります。ありがとうございました。

中根委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 おはようございます。公明党の河西宏一と申します。

 本日は、参考人の皆様方にわざわざ国会まで足をお運びいただきまして、また、先ほどは大変重要な御意見を賜りまして、大変感謝を申し上げます。

 また、長年の皆様の取組に心から敬意を表させていただきます。

 また、先ほども大変先生方から御紹介いただきました今回の法改正、また救済対策の在り方、公明党の赤羽前国交大臣の強い思いも込められておりまして、本人からも昨日、参考人の皆様方に本当に度々お越しになっていただくこと、心から御礼を申し上げさせていただきたいということでございます。この場をおかりしまして、お伝えをさせていただきます。

 初めに、検討会の座長を務められました藤田友敬先生にお伺いをいたしたいと思います。

 今回の自賠法及び特別会計に関する法改正でございますけれども、この目的、先ほどもおっしゃっておりましたけれども、何のためにという点を最初に明確にいたしたいというふうに思っているわけでございます。

 本改正をめぐりましては、新たな賦課金の導入とか、あとは、先ほど来ありますけれども、一般会計から特別会計への繰戻しの問題、この財源論をめぐる論点、これも非常に大事だと思っております。先ほど来ありますとおり、財源がなければ施策の拡充もかなわないわけでございまして、新たな負担を求めるのであれば、当然これは大切な議論の柱だと思っておりますし、私もしっかり、この財源の確保、後押しをしてまいりたいと思います。

 その上で、これとともに、その先にある、誰のため、何のためというところ、ここがやはり、財源を恒久化して、被害者支援、またその御家族の皆様への支援、そしてまた事故対策、これを安定化させて、そして恒久化もしていくということを充実をさせていくこと、この政策目的、これを自動車ユーザー、また全国民にしっかりと知っていただくということが非常に今回の審議で大事なんだろうというふうに思っているところでございます。

 こうした観点からも、改めてになりますけれども、本法改正は何のために行うのか、その政策の目的、特に優先的に解決をすべき喫緊の課題などお考えがあれば、是非、藤田先生にお伺いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

藤田参考人 御質問どうもありがとうございました。非常に重要といいますか、最も基本的な問題点について御質問いただいたと思っています。

 今回の法改正の最大の目的は、これも繰り返しになりますけれども、被害者保護対策、事故防止対策の充実ということを、持続可能な安定的な財源によって実施することを可能にするということになるのだと思います。

 これらのことは全くやってこなかったわけではもちろんなくて、従来も、被害者保護対策、事故防止対策は、平成十三年改正のときに暫定的措置としては既に附則に規定され、現実に実施されてきました。

 これまで行ってきた施策の実績などを踏まえて、これを恒久的にやることが望ましいという政策判断があって、それを、安心して、被害者の方々からすると、いつこれが中断されるか分からないようなことがあると困るわけですから、しかも何十年ものスパンで考えなきゃいけないような対策も、被害者の救済もありますので、安定した持続可能なスキームを確立するという必要性がある、このために今回の改正をしたというふうに目的については理解しております。そのために、そういうものであることを多くの国民の方に知っていただく必要はあります。

 この観点で一点だけ補足させていただきますと、被害者救済の方は割と理解が得やすそうなのに対して、事故防止対策について、自賠法、どの目的で、こういうことをやっていいのかというふうなことをおっしゃる方がいるかもしれませんが、事故防止対策の典型として挙げられておりますものの一つとして、先進的な技術を活用した防止策が、典型的には衝突被害軽減ブレーキのようなものですけれども、実際、こういうものが普及するようになってから事故は明らかに減り、その結果、自賠責保険料も減額が続いております。

 このように、事故を減らすような事故防止対策を進める、普及させるということは、ユーザーにとっても、自賠法の下で被る負担を、総額を減らすという意味があって、ユーザーの負担軽減にもなっているという意味で、非常に意味のある政策なんだと思います。

 したがって、被害者救済対策に加えて、事故防止対策についても持続的な財源によって行うことの必要性というのは、適切に説明することでユーザーの納得を得られるものと確信しておりますけれども、そういった目的を達成する法律と私は理解しております。

 以上でございます。

河西委員 大変にありがとうございます。

 大義名分とともに、被害者そしてまた御家族の救済とともに、先ほどありました先進技術などの、しっかり事故自体を低減をさせていくということに今回も使われていく、大変重要な御指摘だったと思いますので、しっかりこの後の質疑でも踏まえさせていただきたいと思っております。

 続きまして、小沢樹里参考人、代表理事にお伺いをいたします。

 まず、先ほど来るるございました、御本人が交通事故を経験された当事者でなければ分からないこと、あらゆる思いを抱えながら遺族団体を立ち上げられて、これまで多くの方々に寄り添ってこられたことに、まず心からの敬意を表させていただきたいと思っております。

 先ほど、ヤングケアラーのお話がありました。ちょうど私も今、下の息子が四歳でありまして、ちょっと想像しながら伺ったんですけれども、本当に様々な思いを抱えてこられながら、それをまた他者に寄り添うという力に変えられて、本当にすばらしいお取組だったというふうに思っております。

 その上で、小沢参考人から、参議院の方でも御紹介がありました、先ほどもちょっと若干触れていただきましたが、被害者ノートについてお伺いをいたしたいと思います。

 実は、私も今回の質疑に向けまして準備、勉強をさせていただきました。ただ、恥ずかしながら、私自身も、自賠責制度や事故対策事業の詳細までははっきり言って知らなかった自分に気づかされたというのが一番大きな点でございます。ここまで非常に大事な、重要な制度なのかということでございます。

 他方で、自動車事故に遭われた後、私も、全国脊髄損傷者連合会と関係者の方々にもお話を伺ったんですけれども、長年NASVAの存在を知らずに、本来受けられるべき支援が受けられなかったという本当にあり得ない事例ですとか、あるいは、自治体に救済を求めても窓口を紹介されて終わりという非常に事務的な対応もあったというふうに伺いまして、やはりアウトリーチの必要性を再認識をいたしたところでございます。

 そこで、小沢参考人に、このアウトリーチをしていく中で、被害者ノート、自動車事故における被害者ノート、今鋭意作成中ということも伺っておりますけれども、これをどう活用していくべきなのかということ、特に政府や自治体に果たすべき役割があればお伺いをいたしたいと思います。

 その中で、特に公明党、地方議員とのネットワークを重視をしております。市区町村会議員の方々が果たすべき、あるいは期待をする役割など、もし御所見があればお伺いをいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

小沢参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、そもそも今作ろうとしているのは、国土交通省版、交通事故に特化した被害者ノートでございます。ですから、実は被害者ノートという原型は既にございます。今日、持ってくればよかったなと思ったんですが。

 被害者ノートを作ろうと思ったきっかけでございますが、それは、私が経験した際に、様々なものをノートに書いていきました。警察、検察、それから裁判、それぞれの場所場所によって情報が分散されているということを一つのものにまとめられないか。それから、被害者の心の状況の、心理状況、又はお金の対応の仕方、いわゆる人一人が亡くなった場合、人一人を消していく作業を行政の中でしていかなくてはならないというのが現状です。ですが、どうしても悲嘆状況だとチェックを見逃しがちなんですね。

 全く正常な状況で考えるのであれば、どの作業もある程度できるかもしれません。私も実父を亡くしていますが、そのときは、やはりある程度冷静に、病気ということから、できましたが、犯罪被害者になった瞬間、悲嘆という悲しみを抱えて、壮絶な体験をした状態で、物事を冷静に、人一人を消すという作業が大変難しく感じました。

 そのことから、刑事、検察、又は裁判においての物事、それから心の成り行き、お金の流れ、又は行政手続を一貫したノートを作ろうと思ったものでございます。

 実は、光市の母子殺害事件の本村さんが被害者IDというのを作ろうとしていたんですが、やはりそれは個人情報保護法の観点から難しかったと。であれば、ノートで自分自身が持つのであれば大丈夫なんじゃないかと提案したのが私でございました。そこから、様々な方を巻き込んで、一緒に共に考えていただいて、基の被害者ノートは作れました。

 ところが、情報が多過ぎるんですね。多過ぎるがゆえに、交通事故にとって必要な部分が見逃されがちになってしまうので、そこで、国土交通省内において交通事故専門の被害者ノートを作ることによって、被害者の方が、例えばNASVAにすぐ直結できる。例えば犯罪被害者になったときに、行政機関が、今、各行政、自治体において、犯罪被害者の支援の条例がどんどんと作られています、これが市区町村までしっかりと下りてもらうことでの意義にもつながると思いますし、議員の方々が、それぞれ、被害者ノートがあるんだよというものを伝えていただくということができれば意義があるのかなと思います。

 波及効果としましては、やはり国土交通省の方が作ってくださった元々のノートも、冊子があるんですが、それも非常によくできているんですね。それを統合した形で、情報をより的確に、厳正に、そして心のケアもしながら、情報が渡せる被害者ノートが作れればいいなと思っています。

 普及に関しては今後の課題ではあると思いますが、この被害者ノートが、ある意味、NASVAの広報にもつながればいいなと私は考えております。

 以上でございます。

河西委員 ありがとうございます。

 我が党もしっかり連携を取りながら、地域に隅々まで、伝わるべき方に伝わるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。大変にありがとうございます。

 最後に、福田弥夫先生にお伺いをいたしたいと思います。

 御指摘のあった自動車ユーザーの納得感の点についてお伺いをいたしたいと思います。

 今回、新たな賦課金制度が導入をされる方向ということでございまして、やはりユーザー側から見れば、しかも、今回、政令で賦課金の額も決まっていくというところで、具体的に救済や事故防止がどう拡充をされて、見える化がされていくことが非常に大事だというふうに思っております。また、先ほど小沢参考人の方からも本当にるるお話がございました、関係者の方がどれだけ苦しまれて、どういう人生を歩んでこられてくるのか、こういったことも伝わっていくことも、納得感にもつながっていくんだろうと思っておりますし、また、やはり誰もが被害者にも、また加害者にもなり得るという自覚にもつながっていくというふうに思っております。

 そこで、今後こういった周知啓発を行うに当たって、政府や自治体、また我々政治家自身もどうこの見える化に努力をしていくべきか、具体的に御意見があれば、重ねてお伺いをいたしたいと思います。

福田参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に難しいかなというふうに、具体的にどうしたらいいですかと言われると、今すぐにはちょっと思いは浮かばないんですが、少なくとも、いろいろな今までやってきた施策があって、それをきちんと検証していって、それで新たな、例えば医療技術が発展してきます、そうすると、それをまたどのように導入していくか。そういうことをきちんきちんと公開して、みんなで議論をして、被害者団体、ユーザー、学識、それで一つ一つ確かめて施策を行うということだと思います。

 それでも、無制限に拡充するということはできませんから、一定の規模感を持ってそれを実施していく。これは一回採用したからといって未来永劫やるものではないということは、先ほどのPDCAをきちんと回して検証していくということ、これが非常に重要だと思っております。

 以上でございます。

河西委員 PDCAを基本に、しっかりと推進の軸にしていく、周知の軸にしていくということでございました。大変にありがとうございます。

 今日、皆様からいただいた御意見を踏まえまして、来週には対政府質疑も予定をされております。しっかりと皆様に実感をしていただける法改正となるよう、しっかり努力をしてまいりたいこと、決意を申し上げまして、以上とさせていただきます。

 大変にありがとうございました。

中根委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 国民民主党の古川元久です。

 今日は、三人の参考人の皆様方には大変貴重なお話をお聞かせいただきまして、誠にありがとうございました。

 特に、小沢参考人のお話、自動車事故というのは、本当に一瞬にして当たり前の普通の暮らしが、被害者の人はもちろんですけれども、その御家族も含め、本当に多くの人に影響を与えるということを改めて痛感をさせていただきました。

 また、もっと言えば、これは今日の福田参考人のお話にもありましたけれども、自動車ユーザーというのは意図せずに加害者になるということもあって、加害者になった人も、その人の人生も、またその御家族も、やはりこれは事故によって一変してしまう。

 そういった意味では、やはり事故を起こさないということが必要であって、先ほど小沢参考人の方からお話がありましたように、どんなに補償されても、結局、その事故前の暮らしが、その御本人はそうですし、また御家族に戻ってくるわけではありませんので、改めて、事故をなくしていく、そのための努力をしていかなければいけないということを私自身も再確認させていただきました。

 私たち国民民主党でも、被害者支援のための事業を継続的、安定的に行っていく、そのための今回の財源を確保していくという、これはやはり必要なことだというふうに考えております。

 ただ、今日のお話でもありましたし、参議院の方でもあったんですが、やはりどうしてもひっかかってくるのが、特に、自動車ユーザーの皆さんの納得というところでまいりますと、この一般会計に繰り入れているお金が、まだ六千億円が返っていないというところであります。

 最初に、藤田参考人と福田参考人のお二人に簡単に確認をさせていただきたいんですけれども、元々やはり自賠責の保険料で入ってきた、運用した運用益、これを特別会計から一般会計に繰り入れて、そこで活用するという、これはやはりそのお金の性格からいっても、そういうことは本来はやるべきものではない、元々おかしいものであるということについては、お二人もそう思っていらっしゃると思いますけれども、その点を簡単に確認させていただければと思います。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

藤田参考人 一言でお答えさせていただきます。

 本来、この自動車安全特別会計のお金を一般会計に貸し出すということ自身がやや安易な転用であったのではないかということは、私も感覚は共有してございます。

福田参考人 私も藤田参考人と同じ意見です。

 いろいろな事情があったんでしょうけれども、基本的には、自動車ユーザーからの自賠責保険料、それによる運用益、それを税金と同じようにしてしまった、これはやはり間違いの始まりではなかったかと思います。

古川(元)委員 まさにおっしゃるように、今、税であれば、まだ百歩譲って、同じ税ですねというところはありますけれども、これは本当は保険料としてユーザーから受け取ったものですから、やはりそこのところがそもそもおかしい。おかしいものを繰り入れておいて、返します、返しますといいながらちっとも返ってこない、予定どおり。いまだに六千億近くもある。

 福田参考人は、今日は、今回の大臣の合意といいますか、これは信頼できるというふうに言われましたけれども、結局、そういう合意をしても、また何かちょっと状況が悪くなるとほごにされてきたという歴史があって、なかなか、やはりここのところに対する信頼、信用が今欠けてしまっているんだと思うんですね。

 ですから、今日のお話でもありました、やはりこの賦課金を理解してもらうためには、ユーザーの理解。理解というときに、やはり政府の中での、本来使っちゃいけないものを勝手に使っておいて、そして、返しますといいながらなかなか返さない。今度こそはと言われても、こんなにこういうことが繰り返されると、信用しろという方がやはり無理で、その点をどうやってユーザーの皆さんに理解してもらうかということは、今までと同じように、ちゃんと大臣間で約束しています、政府の中で確認していますというだけではこれは済まないのではないか、それではなかなかユーザーの理解は進まないんじゃないかと思いますが、お三方の率直な感じはいかがでしょうか。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

藤田参考人 厳しい御意見ですが、私も、確かに、今ユーザーの信頼が完全に確保できているかというと、かつて、長年返さなかったということの悪いイメージというのは消えていないとは思います。

 今回の大臣間合意というのは、内容としては私は画期的なものだと思いますし、少なくとも、一定の期間コミットするということを明言したということは非常に大きいと思いますが、その言葉の約束が、やはり長年の行いによって言葉の重みが薄められている感はあるかもしれません。

 この点については、しかし、これ以上のことを現段階で講じることができるとも思えませんので、繰り返しこのことを国会なりほかの公の場で常に明るみに出し、監視の目を厳しくする形で今後も厳しく責任を問う、それが実施されないことの責任を問うという形で担保していくという以外にはないのではないかと思います。

 現段階で国民の万全の信頼があるかと言われて、そこに若干の不安があること自身は私も共有させていただきたいと思いますが、しかし、だからといって、一切前に進めないような、そこまで信頼が欠けているような状況でもないのではないかというふうな感想を持っております。

 以上です。

小沢参考人 私も、一人の、一ユーザーでございます。また、普通の主婦という観点からも、百円、例えば上がるといたします。この百円、本当であれば積立てをして子供のために使いたいと思ったときに、その百円がどのようなものに、何を対価に、何をしっかりと構築されて使われているのかという説明さえしっかりあれば、もし例えば私の子供が、又は私の主人が被害者になったり加害者になったときに、どちらもが担保されるものであるということの必要性というものを、改めて、この車社会において、それぞれの認識というものが今少し欠落しているように感じます。

 そもそも、車はあって当たり前という社会の中から、車優先の社会に今なっているから、少し欠落している部分もあると思っております。そもそも意識改革が必要で、歩行者優先の考え方、又は、自分自身がなり得るんだということを前提に考えていただけたらなと思います。

 また、一人の、本当に主婦としてですけれども、やはり今までのことに関しては、私も全ての流れを聞いてはおりますが、そう思っても仕方ない部分もあるとは思いますが、被害者団体や当事者の声、また、お二人、両方いらっしゃいますが、このような専門家が今もう一度集まって開催している、この言葉というのは、少しずつ広報という形で信頼につなげていく力にもなり得るのではないかと私は思っております。

 以上でございます。

福田参考人 私の方からは、確かに、信用していいのかと言われても、それは大臣と大臣の合意ですから、それが守られないということはどういうことなのだろうかというふうに考えます。大臣間の、五年にわたる大臣の、一応きちんと提示していただきましたので、これを守れないということがあり得るのかなというふうに、私は、逆に、もしそういうことが本当にあったら、私たちは何を信用していいんでしょうかというふうに思います。

 それだけあの合意は私は重いものだと思っていますから、絶対に約束は守られるものだと思っております。

 以上でございます。

古川(元)委員 私もそう信じたいですし、やはりそういうふうにユーザーの皆さんに思っていただくということが、繰り返しになりますけれども、私は、この被害者支援の事業と事故防止のための対策のために持続可能な安定的な財源を確保する、そのためのこういう今回の取組は必要なことだと思っています。

 やはりそれを理解してもらうためにも、そこのところをしっかり担保していく。それは、やはり我々も含めて、しっかり政府の姿勢をチェックをしていくということも大事だというふうに思っております。

 時間がなくなってしまいましたので、もう一つお伺いしたいと思いますが、これは小沢参考人の方にお伺いしたいと思います。

 先ほどから今日のお話を伺っておりますと、本当に被害者支援事業というのはかなり幅広い範囲のところで、今の被害者支援事業というのは、やはり被害者の、そして家族の方からすると、相当、ごく一部のところしか対象になっていないというふうな感じを持っていらっしゃるんじゃないかなと思うんですね。ですから、これをもっと伸ばしていく、広げていく必要があるなという感じを、今日、私はお話を伺って思ったんです。

 ただ、一方で、例えばヤングケアラーの問題とか何かになってくると、交通事故の被害者の御家族の方以外でもやはりそういう人たちもいらっしゃって、ほかの理由でそういう状況になっている人と、交通事故が起因でと。だから、御希望でいいんですけれども、どの辺のところまで、やはり交通事故が起因で起きたのであれば、そこはこの事業の中でやってもらいたいと思われるか、あるいは、そこのところはまた別の事業として考えてもらえればいいと思われるか。

 率直な思いでいいんですけれども、被害者支援事業の、今回のこれからの賦課金の中でやっていく事業、どういうものをやっていくかというときに、どの辺のところまでやってほしいというふうに率直に思われているか、その点をちょっと教えていただければと思います。

小沢参考人 御質問にしっかりと答えられるか少し自信がございませんが、私の思いをお話しさせていただきます。

 まず、本来、そもそもヤングケアラーが必要、又は親なき後の介護が必要という方はもちろんいるというのは存じ上げます。

 その中で、そもそも、先ほど福田参考人がお話しした、走る凶器から走る棺おけという問題が、やはり昭和三十年代から含めて、交通事故というのが最大限多くなった時期がございます。いわゆる人の命が非常に軽く扱われた時期でございます。私はそう思っています。

 その中で、やはり一番最初は加害者との折衝も自分で行っていた。それが、今は保険というもので救済されるようになった。それほど交通事故というものは、生活の全てを、全く知らない他者によって変えられてしまうというのが現状だと思っております。

 その中で、あくまでもこれは被害者、遺族として、又は当事者家族としてお伝えするとするのであれば、この財源の中で、適切な金額又は適切な支援が皆さんで話された中で受けられるという限界というのはあると思います。それ以上を求めているわけではなく、今必要な十分な上限の中でしっかりと私たちは支援を受けられるというのがまず一番の課題かと思っております。

 以上でございます。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 この問題というのは、本当にやはり被害者の皆さん方の思いを最大限尊重していかなきゃいけないことだと思います。ただ、その上で、今そういう御丁寧なお話がありましたけれども、同時に、じゃ、どこまでやっていくのか。

 ですから、こうした問題については、今後、どこまでこの新たな賦課金の中でやっていくかという議論が行われていくことになるんだと思いますが、この辺のところをあと藤田参考人と福田参考人に、簡単に、もう時間があれですから、お願いしたいんですけれども、やはりこの辺のどこまでというところについては、これから議論をされていく、していくべきだというふうにお考えでしょうか。どうでしょう。

藤田参考人 どこまでという問題は、もちろん、今後の検討会で検討するところでございます。

 実際、次回の検討会はもうスケジュールされておりますが、そこでは、かつてなされた事業の評価や、さらには、今後やるべき事業のリストアップ、そういったことはもうアジェンダになっておりまして、早速検討を開始させていただく予定でございます。

 以上です。

福田参考人 藤田参考人と同じでございます。

 きちんと検証して、やっていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

古川(元)委員 時間が来たので、終わります。どうもありがとうございました。

中根委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、三人の参考人の皆さん、本当に、御出席いただきまして、また、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。

 この法案は参議院先議でございますので、参議院で我が党が反対をしたのはもう既に御承知だと思います。

 ですが、今まで皆さんがお話しされてきたことに異を唱えているわけでは全くなくて、方向性は一緒だと思います、共有しているものだと思います。

 やはり自動車ユーザーが加害者にも被害者にもなり得るということ、その責任を必ず果たすために国がこれを義務づけている自賠責の中で被害者対策また事故防止対策をきちっとやっていくために、制度的に安定したものにしていくこと、財政的にも安定したものにしていくことという点では、本当に必要な措置だと思っております。

 ただ、国に対して、このままのペースで繰戻しをしていけば百年かかるわけですから、それをよしとはしないのだ、やはり約束は早く守るべきだという立場で異を唱える人がいなければいけないという形で反対をしたものでございますので、前を向いて一緒に頑張っていきたいということでお話をしたいと思います。

 最初に、小沢参考人に伺いたいと思うんですが、本当に、先ほど息子さんのお話も、何とも胸が詰まる思いをして聞いておりました。壮絶な経験をされながら、被害者支援と普及啓発活動に取り組んでいるということ、本当に大変な思いをされていると思います。心から敬意を表します。

 また、同じ経験を持つ方がアドバイスをするということは大変意義あることだと思うんですけれども、先ほども御答弁の中にありましたように、相談の電話が夜中がほとんどであるということで、実は、行政が昼間で終わっちゃうこともあって、そのかなりの部分を、小沢さんを始め被害者の会の方たちが担っているということでありました。

 なので、思うことは、それ自体は本当に大事なんだけれども、ただ、やはりもっと行政に担えることがあるんじゃないのかということを思うんですけれども、いかがでしょうか。

小沢参考人 ありがとうございます。

 夜間の支援についてでございますが、本当に先生がおっしゃるとおり、行政の支援の拡充というのは必要であると思っています。

 例えば、分かりやすく言うと、市役所が、一番最初は五時まででございました。ところが、とある段階から、火曜日だけ七時にやりますよとか、土日の午前中だけ開庁しますといったときに、大変多くの方が助かったというのは多くの方が存じ上げていると思います。これが被害者支援にも当てはまるのではないかなと思っております。

 例えば、性犯罪でいうと、二十四時間、早急な対応が必要でございますから、例えば埼玉県でいうと、アイリスホットラインというところは二十四時間で相談体制を行っております。これは、各都道府県、ほとんど今二十四時間体制にしていこうというような体制が組まれていると私は考えておりますし、聞いております。

 ところが、やはりこの相談業務という中で、ほかの、他罪種の方に関しては、まだまだそこの緊急性が乏しいというようにも感じておりますが、実際に、今、目の前でうちの主人が死にそうだ、なぜかというと、余りにも悲嘆して、自殺を図りたいといったとき、これは緊急対応でございますから、本来であれば、しっかりとした対応ができればいいなと思います。

 このようなことから、もしかしたらNASVAさんの負担になるかもしれませんが、例えばNASVAさんであっても、週一回、又は土日のどちらかの午前中だけでも、午後だけでもいいですから、そのような開催、又は、市区町村の各条例がございます、この条例を基本とした犯罪被害者支援窓口、この窓口が、ただ単に次のところに支援をするというだけではなくて、ここに相談ができますよというだけではなくて、専門家とまではいきませんが、傾聴するという状況をつくれないかというのが私の考えです。

 実際に、多くの遺族団体は、私も含めてですけれども、ゼロ円で、ボランティアで支援をしています。はっきり言って、御飯をこうやって作りながら聞くときもあります。本当に、塾の送り迎えが遅れたときも、塾の送り迎えができないときも、御飯を待ってくれというときもたくさんありました。でも、私たちの家族は、命の大切さを十分分かっているから、それぞれどうにかしようと思います。

 これは、私の家族だけではなくて、多くの家族がこの現状を知っていただければ、ああ、やはり必要だよね、本当に困ったときに相談ができるというのは必要だよねと思ってくださると思うので、そこは多くの方に知っていただいて、どうかその支援の拡充に対応していただければなと思います。

 私からは以上でございます。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 先ほど三か月間で、五千五百分というお話をされていましたけれども、本当に大変なことだと思います。命のダイヤルもつながらない。つまり、かけたいということは、そういうせっぱ詰まった状態になっている方が、何度かけてもつながらないんだというので電話をもらったりしたことがあります。

 そういう意味でも、本当に日常の家事をやる中でも応えてくださっている皆さんの活動に、しっかりと行政がそれを理解して応えていくような仕組みを早急につくっていく必要があるのではないか、このように思っております。

 貴重な御意見をありがとうございました。

 次に、藤田参考人と福田参考人にそれぞれ伺いたいと思います。

 平成六年の大臣合意は、平成十二年度までに一般会計から自賠特会に繰り戻す予定でありました。その後、五回の大臣合意によって期限が先送りされてきましたけれども、この繰戻しが予定どおり進まなかったためにできなかった事業というのはあるんでしょうか。

 例えば、昨年七月の、今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会の報告書では、現状課題として、療育施設への入院待ちをしている待機患者の最少化という論点がまずありますよね。

 こういう形でもう少し前倒しに進んでいるはずだったのになみたいな問題意識がもしありましたら、伺いたいと思います。

藤田参考人 現在、足りない施策が幾つかあることは否めないところだと思います。今現在、百数十億円で施策を実施しておりますけれども、我々としては、二百億円規模ぐらいのものでやることが必要だと考えております。

 ただ、因果関係として、繰戻しが進まなかったから、積立金の減少を抑えるために非常に節約して、やれるものがやれなかったということなのかどうかということについては、必ずしも因果関係があるというふうには私は認識してはおりませんけれども、ただ、このままの状態ですともう十年でゼロになってしまいますし、そうなると更に削減しなきゃいけないので、今言われた御懸念というのは、このままの状態が続くと本当に実現してしまうということになるかと思います。

 したがって、安定的な財源を一刻も早く確保することで、そういうことに至らないようになればというふうには思っております。

 現在まで非常にこの繰戻しが進まなかったことによって決定的なダメージをどこまで受けたかということについては、必ずしも決定的に深刻とまでは捉えておりませんけれども、ただ、将来的には、何も手を打たないと大変なことになるというふうには認識しております。

 以上です。

福田参考人 ありがとうございます。

 私も藤田参考人と同じで、繰戻しが遅れたために実施ができなかったという事業は恐らくないのだと思います。

 ただ、何がダメージだったかといいますと、どんどんどんどん切り崩していったということです。必要な範囲でこの積立金を取り崩していきましたが、これが返ってきたことによって、一部、繰戻しが成ったことによって切り崩しの額は減っていますが、やはりかなりの額がもう減ってきてしまっている、これが大きな問題だったというふうに考えております。

 以上でございます。

高橋(千)委員 引き続きお二人に伺いたいと思うんですが、本法案の土台となる自動車事故対策勘定のあり方に関する検討会中間とりまとめにおきまして、被害者支援、事故防止対策を更に充実させつつ、維持していくべきということ、財源が厳しいのであれば縮小、廃止しても構わないという発想は、もちろん、委員会の中に誰もなかったというお答えだったと思います。それはそのとおりだと思うんですね。私も全く共有するものであります。

 それで、そもそも、この繰戻しの議論が起こったきっかけといいましょうか、出だしは、政府による再保険制度が廃止して、その分配をして、積立金が云々という話だったわけですけれども、これは本体の話だからとおっしゃるかもしれませんけれども、自賠責保険そのものですよね。やはり再保険の考え方というのは、仮に六割政府が保障するということを変えたとしても、何らかの形で、国が義務づけている以上、国が責任を持つという仕組みは残しておいたらよかったのではないか。その中で、今回の別途の被害者対策と事故防止対策というのもきちっと位置づけていくというような制度設計を考えはできないものなのかと思っておりますが、いかがでしょうか。

藤田参考人 平成十三年の段階にまで遡って、今、その段階でゼロベースで議論すれば、いろいろな議論は可能だったのかもしれません。

 ただ、今現在、既にその平成十三年の政策を前提に、再保険の廃止に伴う資金を元に一定の事業を続けてきた実績があって、それを承継させるためどういう方法が適切かという形で議論を立てざるを得ないのではないかと思います。

 その結果が今回の中間とりまとめなんですけれども、いろいろ、ゼロベースの議論というのは、思考実験として、また、あるべき制度を考える上では有益ではありますが、今の法案との関係では、やはり対案として議論できるようなものではないというふうに考えております。

 以上です。

福田参考人 御質問ありがとうございます。

 平成十三年当時、私は委員をやっていましたので、今思い出していますけれども、完全な再保険制度の廃止という議論のほかに、六、四を、八、二、もう少し民間の方を増やしたらどうかとか、そういう議論はありました。ただし、規制緩和等の関係から、できるだけ、政府がこういうことを維持していくというのはやはり好ましくないということで、完全な再保険制度の廃止になりました。

 それに伴って、新しく、当時は保険金を払うときに運輸省の方で内容のチェックをかけていたんです。そうすると、過少払いとかが出てきます、当然。保険会社が支払ってきたものを全部、再保険の保険金を支払うわけですから、そのときにチェックする。だから、いわゆる事前チェックが行われていました。

 ところが、再保険制度がなくなりましたので、事後チェックになりました。それでできたのが自賠責保険紛争処理機構になります。自賠責保険・共済紛争処理機構というんですけれども、これが事後のチェック、保険金をもらった人から、あるいは、こういう形だということを受けた人がそこへ申請して、これで正しいのかどうか、あるいは、いわゆる過失割合の問題はこれでいいのかどうかとか、そういうことを事後にチェックする制度というふうに、それが再保険の制度の廃止とともに設けられておりました。

 以上でございます。

高橋(千)委員 規制緩和の流れの中で、私どもは、この再保険の廃止に対して反対をいたしました。

 今、藤田参考人がおっしゃったように、まるで振出しに戻した議論をしようという議論をしているのではないんです。福田参考人がおっしゃってくださったように、事後チェックの仕組みがあるんだからと。ただ、その事後チェックの仕組みなんだけれども、保険会社から払われていないという人をたくさん知っていますので、今の制度そのものに非常に問題がある、自賠責本体が本来の役割を果たしているのかということは議論していく必要があると思っております。今日は、もうそのことはお話ししませんけれども。

 ただ、やはり労働保険特会なんかも似たようなところがあって、非常に額が余っているから、もう国の繰入れをしなくていいんじゃないかという議論をずっと重ねてきたんです。だけれども、やはり国の繰入れというのは、安定的に確保するために、何かがあったときのために必要だということで維持をしてきて、今、コロナ禍で猛烈に特会が枯渇するという議論になっていて、やはり国の役割は必要だよねという議論になっている。

 なので、そういう形で、私は、繰入れのような何らかの仕組みが必要じゃないかと思っているんです。ただ、それ以前に繰戻しがされていないものだから、そこに議論に至らないということがあって、繰戻しをまず確実にさせていくということが必要なのかなということで思っているということであります。

 ちょっと時間がなくなって残念ですけれども、ありがとうございました。

中根委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 野党系の無所属議員五人で組んでおります有志の会の福島伸享と申します。最後の質疑者になります。

 本日は、三人の参考人の皆さん、本当にどうもありがとうございます。

 特に、小沢さんの話を聞いて、平和な生活が、何の落ち度もないのに一瞬にして変わって、大変な思いを家族の皆様方もされるということ、加害者の身になってもらえば、恐らく悪意はないにしろ、そうした罪を背負ってしまい、多くの人に迷惑をかけるということをお聞きして、改めてこの事業の重要性というのを感じた次第であります。

 私自身、特に被害者支援の安定的な財源というのは必要であると思っておりますが、一方、これが自動車のユーザーから賄われる以上は、ある程度の納得感と、もう一つはやはりガバナンスが必要だと思うんですね。税であれば、厳密に税率を国会で議論をし、法律によって規定され、その使い道は予算で審議を行い、決算も審議を行うということになっていて、我々国会がその役割を果たしているかどうかは別にして、果たされるんですが、この仕組みは、なかなかそれが、ちょっと違う形になっていることから、私は慎重な議論が必要ではないかなと思っております。

 そうした点で見たときに、今回新たに賦課金を拡充して被害者支援をやるというときに、先ほど来、古川先生の議論でもありましたけれども、ヤングケアラーとか医療ケアとか、それは非常に大きなものです、国全体として抱える問題なんですが、特に、自動車ユーザーに負担をいただいている、納得感を得る観点から、今回の賦課金でどうしてもこれは必要だというナンバーワンのものがあれば、小沢参考人、是非お聞かせいただければと思います。

小沢参考人 ありがとうございます。

 今の質問の中で、ナンバーワンをということでしたが、端的に言えば、私は、そのナンバーワンという言葉がないからこそ苦しんできたのかなと思っています。どれもが必要な支援で、被害者の救済、そしてアセスメント事業、このどちらもが両輪で動くことが被害者の救済又は被害者をつくらない制度なのではないか。

 更に言えば、交通事故にもそれぞれの被害者の特性がございますから、その特性に応じた支援がこれまでされていなかったからこそ、更に議論をして、していただければなというのが私からの答えでございます。

 答えになっていないかもしれませんが、済みません。

福島委員 ありがとうございました。

 率直な思いをお伝えいただき、そうなのかもしれません。しかし一方、やはりこれは国民のお金をいただいてやることであるわけですから、ある程度の納得性、透明性が必要な中でどうこの事業を運営していくかというものの難しさというのを、改めて今のお答えで、私自身、実感させていただきました。

 次に、藤田先生にお聞きしたいんですけれども、先生の書かれた「自動運転と法」という本の一部を読ませていただいて、その中で、特に、今、自動運転というのが進んでいますよね。自動運転技術が進化すると、責任を負う者がいなくなり、自賠責の枠組みが維持できなくなるということはないとこの本には書いてあるので、引き続き自賠責が維持されるんだということはおっしゃっています。

 しかし、運転の自動化が進展すると、運転者、運行供用者の過失とは扱われなくなる反面、自動運転装置が事故防止のために十分機能しなかった、そういう理由で、自動車の構造上の欠陥で取り扱われる場合があるというようなこと、要するに、自賠責保険から恐らくPL法的なものに変わっていく比率が大分高まっていくんじゃないかなと私は想定したんですけれども、これは、自動運転が進むと自賠責保険というのは将来どうなると予想されるでしょうか。

藤田参考人 私は研究者として、自分の著作について予想もしなかった読者が得られたときの喜びというのはこの上ないので、非常に感謝させていただきます。

 今のお話は、長期的に見たときに、人間のヒューマンエラーと無関係に事故が起きるという現象が増えれば増えるほど、確かに筋として、PL法の方に移行するのが自然のようにも思えます。ただ、自賠法をこのまま置いておくとその移行は非常に起きにくいというのが、長期的に見たときの課題だと思います。

 自賠法を残しておかないと責任主体がなくなるという問題がありますので、当面はこれでいいと思うのですけれども、長期的に見ますと何が起きるかといいますと、本の後ろの方の難しいところで、細かなところで書いたのでなかなか伝わりにくかったかもしれないのですけれども、自賠法上の運行供用者は、自動車に欠陥がないということを言わないと責任を免れない。しかし、この人が一旦責任追及をされた後、メーカーがそもそも安全性のない自動運行装置を提供したんでしょうとPL法で求償しようとすると、自分が欠陥を証明しなきゃいけない。欠陥がないことの証明を押しつけられ、欠陥の証明を押しつけられるということになって、結局、全く自分がコントロールできないようなリスクについて、一般消費者である自動車ユーザーが負担するリスクがあるというのが、あの本の中で訴えた一つの大きな問題でした。

 どう解決するかということは、なかなか解が見えません。製造物責任法に行くんだというと、何で特定の商品だけ欠陥の証明責任を例えばメーカーが負うんだといった議論につながるかもしれません。これは国の事業で、今の政府保障事業のようなところに組み入れるんだというと、そういうお金の使い方でいいんですかという議論がもちろん出てくるでしょう。かといって、自賠法上の責任を簡単に免除してしまうと、責任主体が今度はなくなってしまうかもしれません。

 だから、この点は将来検討しなきゃいけないのですが、ただ、今のままの制度を維持することが自動車ユーザーに不当な負担を課す可能性があることは、長期的には考えなきゃいけないと思います。

 ただ、これは今回の改正そのものというよりは、より長期的な自賠法の課題だと思います。

福島委員 ありがとうございます。非常に知的に面白い話だったですね。

 長期的と先生はおっしゃいましたけれども、私はそんな長期じゃないと思っているんですね。レベル5の自動運転の実用化というのは二〇三〇年代と言われていて、でも、恐らく、まあ、首を振られておりますけれども。ただ、携帯電話の普及とかを見ても、こうした新しい技術というのは、普及し始めたら意外と早く技術進歩するものなんですね。自賠責保険自体はなくならないにしても、恐らくその負担の在り方とか額とか、そうしたものは徐々に変えていかなきゃならないというのは、もう既に、これから、まさに今やらなきゃならない問題として始まるという意味では、私は、そんな長期の、タイムマシンを造るような話ではないというふうに思っているんです。

 それで見ると、今回の大臣合意は果たして納得できるかというと、令和四年度の繰戻し額は五十四億円、このままだと百年以上かかりますという話で、百年たったら、自動車すらあるか分からないときですよね。やはり今の制度での安定というのは、多分、五年か、長くても十年だと思うんですよ、たとえ今回の制度をつくったとしても。それをたった五十四億円しか出さないというのは、私は納得できないと思うんですけれども、福田先生。

 これはちゃんと法律で規定した方がいいと思うんですよ、役所を縛るために。大臣間合意だからといったって、政権が替わるかもしれないし、大臣だっていなくなっちゃうわけですよ。だから、きちんと法定すべきだと思うんですけれども、その点、福田先生、どうお考えでしょうか。

福田参考人 ありがとうございます。

 まず、自動運転のことをちょっとお触れになりましたので、そのことについて回答しますと、しばらくかかるというふうに私は見ておりました。

 それはなぜかというと、レベル5については、完全に一般道をドライバーレスで走るわけですから、同時に、今の通常の車が共存します。だから、歩行者に対するものも、レベル5がどれだけ交通事故を防げるか、飛び出しに対する対応、いろいろな議論があります。

 ですので、私は、じゃ、自賠責保険がどうなるかというと、将来的に完全にレベル5だけが走るようになれば、恐らくそういう議論、そういう問題はあるのかもしれませんけれども、それでも、自動車の運行によって負傷する、死亡するという人間が出る以上は、現在の被害者救済事業、安全事業と表裏一体となっているこの自賠責保険は決してなくしてはいけない、維持すべきものだというふうに考えています。まず、これが一点です。

 それから、大臣間合意を法定化するというのは、済みません、私はそのやり方がよく分からないのですが、それについて、残念ながら、私は保険法の人間ですので、そのようなことが可能かどうかについてお答えする所見はございません。申し訳ございません。

 ただ、強烈な形で縛りをかけるということは、可能であれば、それはしていただければと思います。

 以上です。

福島委員 立法的には可能だと思うんです。大臣の合意を法律にするんじゃなくて、何年か以内に繰り戻すということを法律で規定することは、特別会計法などで、技術的には、私の役人の経験からすると、できるんじゃないかなと思うんです。

 もう一つは、その財源を考えるに当たって、これは藤田先生にお聞きしたいんですけれども、本当に考えたのかということでありまして、運用利益が上がらないというふうにおっしゃっていますが、歴史的に見て、これだけ低金利が長期に続いた歴史は、古今東西、ありません。まさに今アベノミクスの失敗とかが議論が行われていて、金利を上げるべきだという議論が盛んに国会でなされておりますが、いつ金利が上がるか下がるかというのはこれは分からないですけれども、このようなゼロ金利の状況が何十年も続くということは、私は、資本主義体制である限りはあり得ないと思っております。

 しかし、この財投預託は、短期だと〇・〇〇一%、そんな運用をする人は、今、普通の皆さんの財産だったらあり得ないと思うんですよ。

 私は、かつて東京財団というところにおりまして、笹川先生がいらっしゃいますけれども、モーターボートのお金を元にしたシンクタンクに勤めていました。確かにここも今は厳しいんですが、二一年度でいうと、基本財産が百六十七億で、運用益は七億得ているんですよ。約二%の利回りで運用しているんですね。モーターボートの収益金ですから、公的なお金ですよ。ですから、非常に手堅い運用をしているんですけれども、それでもやはり二%なんですよ。

 今回、賦課金ということを国民の皆様方に御協力いただく以上、この運用利回りを上げるということも考えなきゃならないんです。これは財投預託しかできないというのもひどいと思うんですよ。国に低金利で貸すことを私は強要されているわけじゃないと思うんですよ。

 最近、いろいろな制度で、例えば、トップの大学のお金の基金とか、いろいろな政策で基金というのが今つくられまくっているんですよ。しかも、それは三%以上で利回りをやれなんという話も出ているんですよ。

 この審議会の検討の場に当たって、この財投預託自体を見直してもっと運用利回りを上げようということは検討されたのかどうか、その点について、藤田先生、お願いいたします。

藤田参考人 御質問ありがとうございます。

 特別会計の積立金の運用方法につきましては、財政融資資金法によって規制されておりまして、財投特会と年金特会を除いて、全て財政投融資資金に預託しなければならない旨、定められています。

 したがって、財投以外で運用するようにするためには、この法律を改正して、年金特別会計のような例外規定を設ける必要があることになります。

 これ自身は、国の財政の在り方に関わる重要な変更になりますので、非常に大きな論点を含む話で、自賠法改正の可否を検討する今回の検討会の任務をはるかに超えたものです。

 したがって、検討会では、この財政法、財政に関する規律を変えてという議論はしておりません。

 ただ、今の御質問との関係で、若干、私の個人的な意見を二つほど補足させていただければと思うのですが、一つには、被害者対策等に用いられる特別会計の積立金はできるだけ安定的に運用する必要があることは言うまでもありません。

 年金の運用を見ていただくと、長期的には確かに三%後半の利回りになってはいるんですが、毎年、大きく揺れております。御承知のように、マイナスの年もあります。

 しかも、自動車安全特別会計の規模は、年金基金とは比較にならないぐらい小さなものです。一万分の一ぐらいではないか、以下ではないかと思うのですが、そういう場合、投資の結果が揺れた場合の影響は大きいわけで、財投をやめて年金のように運用するということについては、若干、私はちゅうちょがございます。

 また、この点は別にしても、年金並みに運用するとしても、その運用益では全く施策のためには不十分です。千六百億円を仮に二、三%で運用したとしても、五十億にも全く満たない。現在、二百億規模の施策を考えている上で全然足りないので、いずれにせよ、運用、活用するにしても、今回のような改正、何らかの財源確保の改正というのは必要となってくるとは思います。

 以上です。

福島委員 先生の今のような説明が、果たして国民の皆さんが本当に、ああ、そうだなと思うかどうかを我々はこれから法案のときに審議していきたいと思っているんですけれども、これは、今、国に預けている六千億と千五百で七千五百ですよね、それで仮に二%で回れば百五十億円ですから、今の事業規模は賄えるんですよね。

 その上でどうするかというのを問うのが本来の国会の、我々の役割だと思っておりまして、やはり、私は、非常に被害者支援というのは大事なのは分かるんです、そのための安定財源も生まなければならないというのは分かるんですけれども、一方、私は茨城県民ですけれども、自動車利用者というのは物すごく負担が重いんですよ。ガソリン代もあるし、税金もあるし、この自賠責保険もあるし、一家庭に四台、五台あるのはうちの地元では当たり前なんです、一人一台なんですね。

 そういう観点から見て、やはりこの問題は丁寧に議論して、本当に被害者支援は充実させなければならない。その一方で、負担いただく国民の理解も得なければならない。そして、一度入れた制度というのは、よく役所で、小さく産んで大きく育てるということがあるんですけれども、その制度を利用してどんどんどんどんあらぬ方向に行く前例もあるのも事実なんですね。

 そうしたことがないような制度にするような検討をこれから国会審議で行ってまいりたいと思っておりますので、三人の参考人の皆さん、今日は、貴重なお声をいただきまして、ありがとうございました。

 以上にいたします。

中根委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、来る八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.