衆議院

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第6号 令和5年3月29日(水曜日)

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令和五年三月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 木原  稔君

   理事 加藤 鮎子君 理事 津島  淳君

   理事 中根 一幸君 理事 長坂 康正君

   理事 伴野  豊君 理事 谷田川 元君

   理事 赤木 正幸君 理事 伊藤  渉君

      泉田 裕彦君    小里 泰弘君

      柿沢 未途君    菅家 一郎君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      櫻田 義孝君    塩崎 彰久君

      田中 英之君    田中 良生君

      谷川 とむ君    冨樫 博之君

      土井  亨君    中川 郁子君

      中村 裕之君    西田 昭二君

      西野 太亮君    根本 幸典君

      深澤 陽一君    古川  康君

      宮崎 政久君    武藤 容治君

      枝野 幸男君    小熊 慎司君

      城井  崇君    小宮山泰子君

      神津たけし君    下条 みつ君

      末次 精一君    馬淵 澄夫君

      一谷勇一郎君    前川 清成君

      山本 剛正君    北側 一雄君

      中川 康洋君  斎藤アレックス君

      高橋千鶴子君    福島 伸享君

      たがや 亮君

    …………………………………

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   国土交通副大臣      石井 浩郎君

   国土交通大臣政務官    古川  康君

   国土交通大臣政務官    西田 昭二君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小林  豊君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            三好 敏之君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    真渕  博君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           里見 朋香君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           澤井  俊君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房公共交通・物流政策審議官)  鶴田 浩久君

   政府参考人

   (国土交通省国土政策局長)            木村  実君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  丹羽 克彦君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  塩見 英之君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 堀内丈太郎君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  高橋 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  堀田  治君

   国土交通委員会専門員   鈴木 鉄夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     塩崎 彰久君

  下条 みつ君     馬淵 澄夫君

  古川 元久君     斎藤アレックス君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     西野 太亮君

  馬淵 澄夫君     下条 みつ君

  斎藤アレックス君   古川 元久君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     小林 史明君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

同日

 交通運輸産業における迅速な運賃改定と賃金・労働条件への確実な反映を求めることに関する請願(新垣邦男君紹介)(第五四七号)

 同(泉健太君紹介)(第五四八号)

 同(大西健介君紹介)(第五四九号)

 同(落合貴之君紹介)(第五五〇号)

 同(櫻井周君紹介)(第五五一号)

 同(階猛君紹介)(第五五二号)

 同(中谷一馬君紹介)(第五五三号)

 同(西岡秀子君紹介)(第五五四号)

 同(西村智奈美君紹介)(第五五五号)

 同(前原誠司君紹介)(第五五六号)

 同(牧義夫君紹介)(第五五七号)

 同(柚木道義君紹介)(第五五八号)

 同(渡辺周君紹介)(第五五九号)

 同(荒井優君紹介)(第五六七号)

 同(石川香織君紹介)(第五六八号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第五六九号)

 同(神谷裕君紹介)(第五七〇号)

 同(末松義規君紹介)(第五七一号)

 同(徳永久志君紹介)(第五七二号)

 同(山崎誠君紹介)(第五七三号)

 同(稲富修二君紹介)(第五八〇号)

 同(枝野幸男君紹介)(第五八一号)

 同(大河原まさこ君紹介)(第五八二号)

 同(城井崇君紹介)(第五八三号)

 同(後藤祐一君紹介)(第五八四号)

 同(藤岡隆雄君紹介)(第五八五号)

 同(本庄知史君紹介)(第五八六号)

 同(岡本あき子君紹介)(第六〇八号)

 同(近藤昭一君紹介)(第六〇九号)

 同(末松義規君紹介)(第六一〇号)

 同(野間健君紹介)(第六一一号)

 同(渡辺創君紹介)(第六一二号)

 同(長友慎治君紹介)(第六六三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

木原委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房公共交通・物流政策審議官鶴田浩久君、国土政策局長木村実君、道路局長丹羽克彦君、住宅局長塩見英之君、自動車局長堀内丈太郎君、海事局長高橋一郎君、港湾局長堀田治君、警察庁長官官房審議官小林豊君、金融庁総合政策局審議官三好敏之君、消費者庁審議官真渕博君、文部科学省大臣官房審議官里見朋香君及び経済産業省大臣官房審議官澤井俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木原委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 立憲民主党の馬淵でございます。

 今日は一般質疑という機会を、私も質疑として、いただきました。

 今日は斉藤大臣と、昨日登壇で高速道路関連法の質疑がございましたが、今日は一般質疑の中で、いわゆる高速道路の政策について、これを議論させていただきたいというふうに思っております。

 まず冒頭にお尋ねをしたいと思っているのは、今回、道路関連法が提出をされましたが、昨年の十二月、首都高、そして今年に入って阪神高速並びにNEXCO三社、これらいわゆる高速道路各社が、新たな更新計画として約一兆五千億、これはトータルですが、更新事業を、大規模改修ということでの計画を発表し、そして、この度、償還期間を五十年延長するという法案が提出をされたわけであります。

 そこで、まず冒頭にお尋ねをしたいのは、本来ならば、このような長期の計画を提出するということであれば、この更新計画というのが相当以前に準備されていなければならなかったのではないか、このように考えるわけでありますが、なぜ今までそれをしてこなかったか、大臣、率直にお答えいただけますでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 最新の知見で可能な範囲において、長期的な修繕や更新の計画を作成していくことが重要である、このように認識しております。

 高速道路につきましては、平成十七年の民営化時以降、通常の維持管理費や修繕費は見込んでいるところでございます。

 その後、平成二十四年の笹子トンネル天井板崩落事故を契機として、メンテナンスの重要性が再認識されるとともに、更新が必要な具体の箇所が顕在してきたことを踏まえて、平成二十六年法改正で料金徴収期限を十五年延長し、更新に着手しました。

 平成二十六年から開始した法定点検を契機といたしまして、新技術も活用しつつ、より詳細な点検を行ったことで、前回法改正時には見通せていなかった新たな更新が必要な箇所が判明し、今回の改正法案で料金徴収期限を延長するものでございます。

 構造物の正確な劣化予測に基づき、個別の更新事業などを正確に見通し、将来にわたる長期的な更新事業の計画を作成することは困難であると認識しております。

 このため、更新事業の計画につきましては、最新の点検結果や老朽化などの知見に基づき、随時修正していく必要があると認識しております。

 今般の改正法案は、明らかになった更新需要などに応じ、逐次料金徴収期間を延長する制度としたものでございまして、その際、債務返済の確実性の観点から、債務返済期間を五十年以内とする新規定を設けたものです。

 また、料金徴収期間の最長の延長年数として、料金徴収期限を令和九十七年に設定し、平成二十六年からの法定点検で判明した新たに更新が必要な箇所に加えて、現時点の知見で見通せる今後更新が必要となる蓋然性の高い箇所の更新財源も確保しており、長期的な視野を持った改正内容としております。

 今般の改正法案による制度の下、定期点検の結果に基づき、明らかになった更新需要に対し、必要な更新事業を順次実施してまいります。

馬淵委員 大臣、なるべく端的にお願いしているので。今日は、大臣と私しか答弁と質疑者はいませんから、政府参考人はお願いしていませんので、端的にと言えば、端的にお答えいただきたいと思います。

 るるおっしゃいましたが、しかし、修繕箇所、こうしたものが特定できないというお話がありました。これは私も国交省から何度も聞いておりますが、通常考えれば、構造物というものでありますから、耐用年数から長期の計画というのは見込めるものであるはずです。

 したがって、こうした修繕計画を行うということは必然であるわけでありますが、今回、今までそれを作ってこなかったということが明らかになっているわけです。

 そこで、耐用年数について確認していきたいんですが、構造物の耐用年数、これは何年と明確に区切れるものではないことはよく承知をしています。

 二〇〇四年の四月九日の衆議院の国土交通委員会、佐藤信秋道路局長は、耐用年数についてこうおっしゃっています。耐用年数という形で明確に何年、こういう基準があるわけではございません、そのとおりなんですね。しかし、幾つか参考になる部分があるかと思いますということで、平均的な耐用年数を計算する上では、一つの目安として、大蔵省令による構造物の耐用年数などもあります、これは、減価償却資産の耐用年数などに関する省令、こういうことで、これを整理する上でいろいろな観点から御議論いただいた上での一つの目安、こんなふうにお考えいただければよろしいのかと思います、こう、耐用年数に関しては、特定はなかなか難しいんだけれども、このような、減価償却の大蔵省令に基づくものというのは一つの目安だというふうにおっしゃっていました。

 また、税法上での耐用年数、これが一つの基準となるという見解でありましたが、一九九五年十一月の十日、道路審議会の中間答申、ここでは償還期間の設定について記されておりまして、高速自動車国道全体の平均耐用年数、税法上適用される耐用年数を高速自動車国道の諸施設に当てはめた場合に算出される平均的な耐用年数は、おおむね四十五年から五十年程度と計算されることを基本とすることが望ましい、これが答申に書かれていました。

 つまりは、構造物でありますから、これはいつかどこかで限界が来る、長くて五十年程度の耐用年数ということにこの議論が進められてきたわけであります。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、改めて、この耐用年数五十年程度というのは、当然、国交省や機構あるいは道路会社、これらの三者が認識していたはずであります。点検しなければ分からないというのは、これはおかしな話であって、必ずどこかでこの耐用年数が来るわけですから、大規模修繕計画を立てるのは自明のはずなんですね。

 なので、大臣、これは端的にお答えいただきたいんですが、このような計画を立てることは自明であったはずですが、いかがお考えですか。お答えください。

斉藤(鉄)国務大臣 構造物の劣化の進行状況というのは、馬淵委員、技術系の御出身ですのでお分かりかと思いますが、その置かれている状況や使用の形態等で随分変わってくるものです。

 例えば、隅田川に架かっているいろいろな橋梁等は、大きな更新事業はしなくても、きちんと丁寧にメンテナンスしてきたことで、百年近く今たっております。

 今回、私たちは、確実にこれは直さなくてはいけないということが分かったものについて、そして、そのコストがある程度明確に分かったものについて、それについて更新事業を行っていく、ですから、これだけのお金が必要だからこれだけ利用料をいただきますということを、ある意味では一対一対応で明確にさせる、それが私は国民に対しての誠実な態度だと思います。

 大体五十年ぐらいだから、それでざっと計画を立てておこうというよりも、一つ一つ、これだけが必要になってきた、だからこれだけお願いをいたしますという考え方で我々はやっているということでございます。

馬淵委員 点検でなければ分からないから計画を立てていないというお話、五十年間はおおむねそうだったとしても、ざっと計画を立てるのは国民に対しての説明がつかない、今そういう御趣旨の答弁でありましたが、三者の中で、国、機構、会社、見ますと、例えば二〇〇九年の八月五日、NEXCO中日本は明確に、高速道路の構造物、このうち、橋梁、高架橋、耐用年数は、鋼橋、鉄鋼製の橋、四十五年、コンクリート橋が六十年と示しています。

 また、今年の一月でありますが、こうした関連法案が提出されるということに絡んでということだと思いますが、由木文彦東日本高速道路会社の社長は、記者会見で、老朽化対策について、道路公団民営化当時は見通していなかったと発言されています。つまり、耐用年数は見積もられており、当然、大規模修繕計画を織り込んでおくべきだったのに、見通せていなかった。これはなかなか大変な問題であると私は思います。

 大臣、繰り返し言いますが、端的にお答えくださいね。時間の浪費はもったいないです。なので、改めてお伺いしますが、今申し上げたように、公団民営化時点で、この大規模修繕、更新、この議論は十分に行わなかった、このように思われるんですが、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほど私申し上げましたように、修繕、維持、これにお金がかかる、これは当然のことでございます。しかしながら、その一つ一つの修繕、維持について、構造物の老朽化について正確に見通すことは、これはなかなか困難です。一つ一つの施設について見通すことは、これはなかなか、その使用状況やその後の場の環境において見通すことは困難。

 ですから、鋼橋に、いわゆる鉄で造ったそれについておおむね何年というのは、その知識はあるわけですけれども、一つ一つの施設についての正確な、今後の老朽化を見て、それに基づいて老朽化対策、修繕計画を作っていくということは、これは、ある意味で、正確な値を出して、それに基づいて修繕計画、また更新計画を立てていくという姿勢の方が、より国民に対して説明責任がつく、このように私は考えます。

馬淵委員 繰り返し、点検しなきゃ分からないという、これはもう一貫して国交省の説明がそうなんですが、一方、先ほど申し上げたように、公団の民営化のときにはこれは十分な議論はなされていないわけです。なぜそのような状況になってきたのか。

 つまりは、外環道などの新規事業に対する投資、これを優先した結果、本来行うべき更新事業を、これを後回しにしてしまった、これが現実ではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。端的にお答えくださいね。

斉藤(鉄)国務大臣 そういうことではございません。

 例えば、今、東京外環を例に挙げられました。東京外環の整備につきましては、利用者負担による有料道路方式での整備を基本としつつ、不足分は税負担を活用することとしております。

 そして、その財源は、東京外環への投資による収入の増加分や、料金収入及び金利の計画と実績の差などであり、更新事業の確実な実施に影響を与えないように整備を進めております。

馬淵委員 外環道、おっしゃるように、その他の財源も入っているということでありますが、少なくとも、更新事業、長期の計画を立てずに今日まで来たことは事実です。

 このような状況の中で、先ほど繰り返しおっしゃっている、点検を行って、確実性を持って措置をしていく、だからこれだけの時間がかかるんだというお話でありましたが、点検の結果、予算を措置する、これは単年度で決める国の直轄事業であればおかしくないんですよ。点検をして、これは必要だということで、予算は単年度ですから、そこで決めていくというような仕組みは、これは直轄事業であれば当然です。

 しかし、この高速自動車国道というのは、長期的な債務返済、これを行って無料化するという、いわゆる償還主義の下で行っていますから、計画的な修繕、更新というのが当然求められるんです。ですから、これは本来でいえば、これまで四十五年分の償還期間、四十五年分の修繕計画、大規模修繕、大規模の更新を含めて、これは計画を措置しなければならなかったはずです。

 そもそも、プール制導入のとき、一九七二年三月二十四日の道路審議会答申、ここでもこのように述べられています。車の出入り制限を行う等、一般の道路と比べて一層高度の機能を持ち、利用者に質の高いサービスを提供し、維持管理に要する費用が高いことも、それが有料制になじみやすい理由となっている。つまり、プール制の当時からこの維持管理の重要性、必要性というのは認識されていました。

 そしてさらに、この償還主義に関しては、一九九二年一月十六日の道路審議会中間答申、ここで、もう既に、高規格幹線道路の整備と管理の在り方について、償還期間満了後の維持管理費の確保等の観点から、その負担については、るるありまして、今後議論されることが望ましい、このように書かれているんですね。つまり、既に三十一年前から、高速道路の維持管理、これについて長期的な負担を議論することが求められていたんですよ。

 これを一切行わずにやってきた、これが現実じゃないですか。こうしたプール制導入のときから再三にわたって指摘をされてきているんです。突然じゃありません。笹子トンネルで始まった話じゃないんです。一九七二年のプール制導入からです。

 こうした状況の中で、皆さんのお手元にお配りをしました資料一を御覧いただきたいと思います。これは道路整備特措法とその施行令であります。

 これは衆議院の調査局でまとめていただきましたが、特措法の二十三条、これを御覧いただきますと、料金の額は、次の基準に適合しなければならないということです。何かといえば、料金の額は、貸付料及び会社が行う当該高速道の維持修繕を料金の徴収期間に償うもの、こう書かれています。そして、施行令は、五条の二、修繕からその費用に係る債務を引き受けるものを除くとなっています。

 これはどういうことか。つまり、料金収入、これは償還期間内の料金収入、これと費用、これは償還期間内の機構保有の道路資産の貸付料といわゆる軽微な維持修繕の費用、これが同じにならなければならないということを言っているんですよ。

 料金水準とは、つまり、今申し上げた貸付料と維持修繕、ざっくり言えばですよ、これが同等になるように料金を定めなさいというのが二十三条の法の趣旨なんです。

 しかし、この償還期間内に明らかに必要となることが分かっている更新や大規模修繕、これを費用を見込まないままに料金の額を決める、これは法の規定に反することになります。逆のケースもありますよ。例えば、費用を過大に見積もって、いわゆる空積みです、それによって料金水準を故意に引き上げる、これもこの法令違反になります。

 もう一度議論を整理しますと、特措法二十三条、料金徴収の根拠は、償還期間内の料金収入、これが、道路資産の貸付け、そして会社が行う維持修繕、これらの費用を足したものでなければならないとなっているんです。この現行法令というのは、大規模更新や大規模修繕を行った資産は、機構が保有して会社に貸し付けて、会社が貸付料を払うことになり、そして貸付料を料金に反映させなければならないんです。

 この特措法二十三条、これが示すこの料金の規定、これに対して、長期の修繕計画も含めて盛り込んでいないというのは、これは明らかに特措法の法令違反、二十三条違反になりますよ。大臣、いかがですか、端的にお答えください。

斉藤(鉄)国務大臣 民営化以降、通常の維持管理費や修繕費は見込んでいたところでございます。しかし、民営化当時においては、将来の更新の必要性は認識していたものの、高速道路の建設から約四十年が経過したところであり、更新が必要となる具体の箇所が明らかではなかったため、更新は計画に盛り込んでおりませんでした。

 他方、平成二十六年七月に改正道路法施行規則が施行され、点検は、必要な技能を有する者が、近接目視により、五年に一回の頻度で行うことを基本とする法定点検を開始しました。

 この平成二十六年から開始した法定点検を契機とし、新技術も活用しつつ、より詳細な点検を行ったことで、前回法改正時には見通せていなかった新たな更新が必要な箇所が判明したということでございます。

馬淵委員 いや、大臣、私が聞いているのは、二十三条の法の趣旨は、料金と、貸付け、修繕費、これを足したものが一致しているというのが前提だと書いてあるわけですよ。その部分に関して言うと、長期の計画を入れないということは、これは料金を規定する二十三条違反にならないかと尋ねているんです。文章を読んでくれと言っていませんよ。法律論なんです、まさに。二十三条違反になるんじゃないか、私はそのことを言っているんですよ。お答えください。

斉藤(鉄)国務大臣 ですので、その対象になるのは、明らかに直さなければならない、更新しなければならないということがもし明確になっていれば、それは当然、中に入っているということになるかと思いますが、先ほど来申し上げているのは、それがその時点では明らかに、明確にすることはできなかった。これは、先ほど申し上げたように、技術上の限界からくるものでございます。

馬淵委員 いや、大臣、もう一度確認しますよ。これは明らかに法令違反なんですよ。法令違反を今日まで続けてしまった。その結果、しわ寄せとして、この長期の償還期間の延長などというとんでもない話が出てくるんですよ。

 これは、では、どの段階で誰の責任か、私はそんなことを今問うているんじゃないですよ。この法令違反であるという事実を認めなければ、まともな道路政策の議論はできないじゃないですか。

 大臣、もう一回聞きますよ。二十三条をよく見てください。料金の額は、適合するものでなければならないんですよ、これ。その適合とは何かというと、貸付料と維持修繕なんですよ。軽微な修繕はよし、そうじゃないものは貸付料に入るというのが、施行令の五条の二なんです。債務を引き受けるものを除くと。これは修繕じゃないよ、大規模修繕は債務の引受けに入るから、これは除くんだよと。つまり、貸付料になるんです。

 料金というのは、貸付料と、この修繕、その他費用、これらを足したもので一致しなきゃならないとなっているんですよ。そうなっていないじゃないですか。少なくとも、長期の計画に入れていないんですよ、一度も。これは法令違反じゃないですか。

 大臣、御自身の考えをちゃんとおっしゃってください。私も一年四か月、国交省、道路行政も含めて見てきました。そして、このような状況というのが起きることも、私自身は、あの当時、全く違う政策を進めておりましたから、想定もしなかった。しかし、今回、長期の償還期間、それも百年先に及ぶような法案が出てきている。根本を正さなきゃならない部分だと思うんです。

 大臣、もう一度聞きますよ。これをよく御覧ください。政治家として長きにわたって関わってこられた、政策に精通された斉藤大臣だからこそ、私は申し上げたいんです。国交省の、それこそ役所が言う言い分じゃなくて、これはおかしいんじゃないかということ。この法文から明らかに違うじゃないですか。大臣、お答えください。これは法令違反じゃないですか。

斉藤(鉄)国務大臣 今、この条文の意味は、まさに馬淵委員おっしゃったとおりだと思います。

 そして、その含むべき項目の中に、過去の時点の知見では、それを盛り込むことは技術的に非常に難しかった、不可能とは申し上げません、非常に技術的に難しかったということを私は申し上げているところでございます。

 この条文については、まさにそのとおりだと思います。

馬淵委員 条文についてはそのとおりだと言っていますけれども、要は法令違反だということですよ。

 これは法令違反だということ、私はそれを聞いているんです。条文については書いてあるとおりだ、それはそうですよ。現状は法令違反でしょうと確認しているんです。いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 技術は日々進歩します。また、実際の現場の状況もいろいろな状況で、それぞれの構造物で違ってまいります。それらの中で、正確にそれを見通すことは困難であった。

 これまでやってきたことは、しっかりとした、明確になったものについては、それを速やかに明示し、国民に説明し、その料金制度の中に入れてきたということ、これは確かでございます。そういう意味で、この法令にできるだけ沿うように努力してきた、これは事実でございます。

馬淵委員 法令に沿うように努力してきたけれども、していなかったんでしょう。私はそれを聞いているんですよ。端的に答えてください。

 大臣、今そのような答弁をされていて、これは議事録に残ります。失礼な言い方かもしれませんけれども、恥ずかしいですよ、今の御答弁は。

 端的にお答えください。法令に違反していたじゃないですか。どうですか。

斉藤(鉄)国務大臣 この有料、償還主義、総収入と総支出の考え方という中でも、更新については見込めるものだけを入れるという考え方でございます。

 そういう意味で、今回、大規模な更新が必要になってきたという部分につきましては、技術の開発や、いろいろあって新たに得られた知見によって我々計画をさせていただいているものでございます。

 これまでの考え方、見込めるものを確実に国民の皆様に提示し、そしてそれを料金制度の中に組み込んでいくという法の趣旨からすれば、私は法令違反ではない、このように思います。

馬淵委員 いや、そうじゃないんですよ。これまでどうだったかと言っているんですよ、私は。かつ、確実でなければならないなんて話じゃないんです。

 大臣、この料金の設定の中には、例えば、その前提となる交通需要予測、これは私、昔国会でもやりましたよ。交通需要予測というのはあくまでも予測です。確実性の高いものであるかどうかも分かりません。予測で入れているんです。そして、この交通需要予測と併せて、将来の金利も同様に予測数値で入れるんです。それによって料金が設定されていくんです。確実な知見、あるいは、今、最新の技術、関係ないんですよ。

 当たり前ですけれども、地方自治体も含めて、将来の様々な予測を立てながら一定の仮定を置いて、その上で、これは協定を結んでいるんです。料金水準を決めているんです。ならば、長期計画は、当然ながら、先ほど申し上げたように、耐用年数五十年、近いものであれば、到来するのは読める、入れて当然なんです。それができていないんですよ。

 大臣は繰り返し差し込まれた答弁書を御覧になって読んでおられますけれども、確実性の高い最新の技術、関係ないですよ。その他の要素に関しては、今申し上げたように、将来予測でやっているんです、現実には。今巻かれている協定書はそれに基づいてなっている。

 法令違反じゃないですか。大臣、いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 今回、いわゆる構造物の老朽化に対しては、当然、先ほど来申し上げているように、当初から見込んでおりました。しかしながら、現実問題として、その予測を大幅に超える老朽化が進んでいる、そして、建物、構造物全体を取り替えなくてはいけないほどの更新事業が必要になってきている、こういう現実がございます。

 先ほど申し上げましたように、そういうことが明らかになった時点で、今回、それを明らかにして、更新を進めていくために料金制度の中に組み込ませていただいた。

 そして、この法令につきましては、基本的に、見込めるものを入れた制度ということになっておりますので、そういう意味では、我々が今回見込めるものが明らかになった時点で速やかにその作業をしている、こういうふうに私は理解しております。

馬淵委員 反省に立っているのはよく分かっていますが、それでも、今おっしゃっている話は、長期の計画を作るということではないんですよね。

 繰り返し、ここだけは確認しなきゃならないので言いますが、今日までにおいては、これは二十三条違反ですよ。再三、様々な審議会、答申、中間答申を含めて、その維持更新、様々な大規模修繕についての議論が必要だ、進めなければならないと指摘されていたにもかかわらず、行ってこなかったんですよ。

 とうとうこの状況で、笹子トンネルだといって大慌てをして、点検を始めて、いや、こんなにかかるなという中で、償還期間の延長、これはそうなるしかないというのは普通に考えれば分かりますよ。料金の値上げか、税投入か、あるいは償還期間の延長か、これしかないんですから。どう考えても、今この場をしのげば済むという発想に立てば、期間の延長、これが一番手っ取り早いんでしょうね。

 そんな法律を出すような状況になった今日までは、間違いなく二十三条違反を行ってきたということじゃないですか。まず、その先の話は、これから法案審議があるじゃないですか。だけれども、私が申し上げているのは、道路政策の基本を確認したいと言っているんです。根本の話ですよ。

 これは二十三条違反になるじゃないですか。なぜそれを法令違反じゃないと言い切れるんですか。大臣、お答えください。

斉藤(鉄)国務大臣 国の役割は、高速道路会社が、国に対して、事業許可申請、事業計画を出します。国は、その申請を許可をいたします。そして、事業計画と料金収入が一致しているかどうかを確認をいたすわけでございます。そして、これまで、これはきちんと一致してきております。そういう意味で法令違反ではない、このように申し上げている。

 そして、先ほどの二十三条のことにつきましては、先ほど来、同じような答弁になりますけれども、国として、最もその時点で得られる知見で計画を立ててきたという意味では、私は法令違反ではない、このように思います。

馬淵委員 もう絶対に法令違反を認めるなという様々なレクがあったんでしょうけれども、大臣は国交省の所管する政策全てのトップでいらっしゃるんだから、これは改めさせなければ駄目ですよ。

 法案も出して、今更できない、変えられない、そんなお気持ちでいらっしゃるんだったら、いやいや、これはおかしいじゃないかと、今日役所へ帰って、国交省の役人、それこそ幹部たちに詰めればいいんですよ。幾らでも、これから審議が始まるところですから、修正可能ですよ。そもそも、なぜこんなことになったんだという話を、大臣は徹底して局に詰めなければなりませんよ。

 一貫して、私は、過去の審議会も含めて、答申を含めて、見ました。とにかく、笹子トンネル以降、いわゆる長期の修繕や更新事業が必要だと叫ばれるような状況になって、慌ててこれら点検を始め、そして各社に対しても指示をして、ようやくこの数字が出てきたわけですけれども、この一兆五千億、出てくるまでの一年間というのは全くその話は出ていないんですね。審議会もそれほど開かれていませんでした。つまりは、この間に、とにかく、何とかその場しのぎするんだったらどうすればいいのかという話で、償還期間の延長しかないな、そういう議論が進んでいたと簡単に予測できますよ。

 だから、大臣がやらなきゃならないことは、こういうごまかしをいいかげんにやめろという指示を出すことなんですよ。二十三条違反で、正々堂々とやっていない、こんなごまかしの政策をやって、そして、では、会社が損をしたか、損はないんですね、これ。では、誰が損したか。国民ですよ。国民に負担を押しつける。しかも、いつ終わるか分からない話じゃないですか。これはいつ終わるか分からないんですよ。先ほどの話でも最新の知見でとおっしゃっていますが、これは長期の計画を作るのかと聞いたら、いや、それはまだ分からないと言っていますよ。こんなでたらめな、ごまかしの、いわば償還主義というのは名ばかりで、無料で開放するなんということは到底考えられないような法案が出てくること自体問題ですよ。大臣が指導力を出さなきゃならない場面じゃないですか。

 これ、恐らく、大臣のお立場で、ここで申し訳ありませんでしたと言えないのはよく分かっていますよ。でも、これ、役所に帰って、徹底して詰めなきゃならない課題ですよ。

 これは野党の諸君あるいは与党の皆さん方も、この法案の審議の中で、これほど重要な問題を起こしているということを認識していただきたい。二十三条、法令違反を続けてきたわけですから。

 では、その責任はどこにあるのか。これ、役所に聞くと、三者それぞれみたいなことを言いますよ、国とそして機構と会社。では、本当にこれはそうなんですか。

 お手元の資料に二で、高速道路会社の取締役の責任について、これは衆議院の法制局に確認をしました。つまり、法令違反を行ってきた、これは一体誰の責任になる、これについて何度も何度も道路局にも聞きましたけれども、曖昧でしたよ。つまり、法の定めがはっきりしていないということであります。

 これを御覧いただいて分かるように、高速道路会社、これは会社法の規定が適用されることが前提となって、取締役の責任については、会社法の規定の適用除外の規定や特例の規定は設けられていませんと。したがって、こうなりますと、十条、十五条、特措法四十六、四十八条、国土交通大臣はこの会社法一条に規定する会社に対する関与の規定が設けられているということから、国交大臣による関与についての責任は国土交通大臣に存在しますというのが解釈です。

 つまりは、今、現行法は、機構も会社も、そして国も、では、こうした場合、繰り返し言いますよ、会社が損失を被るとかいった、いわゆる一般の会社法の適用外の話です、結局、損をするのは国民ですから、では、こうした責任を誰が取るのかということが全く規定されていないんですよ。

 責任の所在が曖昧なこの今の仕組み、これは明らかに道路公団民営化の失政じゃないですか。この仕組みに対してどのような責任を取らせる体制にするかというのは、まさにこれも大臣のリーダーシップでとことん詰めなきゃならない課題ですよ。大臣、それはいかがお考えですか。

斉藤(鉄)国務大臣 私は、今の高速道路料金制度、まず、借金をしてこれを建設しました、その借金に対して、利用料金をもって償還していく、そして、その体制は上下分離方式で行っていくということ、そして、その借金の返済プラス今後行われる更新事業に対して、これも利用者負担で償還をしていくというシステムそのものは、大きな議論をして、平成二十六年に、十五年に定められたものだと思っております。今回、そのときの基本的なつくられた枠組み、そして考え方によりまして、今回の法案も提出をさせていただいております。

 そして、今回の法案のポイントは、これまで、ある意味で分からなかった更新事業について、それが明確になってきた、そのことを既に決めた枠組みの中で、利用者による償還という仕組みの中でやっていくということで、私は妥当な法案だ、このように思っております。

馬淵委員 責任は曖昧になっていますから、これは仕組みを変えなきゃ駄目ですよということを申し上げているんですよ。それに対して、大臣、どうお考えですかと私は聞いているんです。

 もう一回確認ですよ。今の法令では曖昧になってしまうから、では、このままじゃ駄目でしょうと言っているんですよ。いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 私は今の法案では駄目と思っておりませんので、そういう意味で、今の御質問には、誰それに責任があるというお答えはできかねます。

馬淵委員 この質疑をお聞きいただいている委員の皆さん、また、これは議事録も残りますが、つまりは、償還主義はもう破綻しているということなんですよ。このような状況を、何も周りが全く気づかなかったわけではありません。

 二〇二一年の社会資本整備審議会の道路分科会、ここでのいわゆる中間答申、ここにも、高速道路についても、更新、進化を継続していくためには、資金調達等々、これらについては特定の時点で債務をゼロとすることを前提とするのではなく、債務の一部又は全てを保有し続けるという案を検討することも考えられる。もう償還主義、これは見直さなきゃ駄目だということも委員の中で出ているんですね。もう破綻していますよ。

 この償還主義が破綻しているという状況をしっかりと確認をしていただいて、来る審議のところでは、委員の皆さんに、徹底して、こうした問題点を明らかにした上で、ただしていただくことをお願い申し上げます。

 大臣、最後に一言ありますか。よろしいですか。(斉藤(鉄)国務大臣「はい」と呼ぶ)

 では、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

木原委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 私からは、まず、物品の運送の料金についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 いろんな分野で人手不足が今問題になっていますが、特に物流では、COVID―19の下でも物流が非常に、宅配業などが、運搬量が増えたということなどもあって人手不足が既に深刻になっておりますが、そうした状況の中で、いわゆる働き方改革がいよいよトラックドライバーの皆さんらにも適用されると。いよいよ物流関係の人手不足が社会全体の問題になってくるという局面を迎えつつあると思っております。

 トラックドライバーなどの物流の人手不足というのは、やはり重労働に比してその賃金が低い、ここに本質的な問題があると言われていますが、この点を、まず、大臣の認識をお聞かせください。

斉藤(鉄)国務大臣 まさにトラックドライバー、エッセンシャルワーカー、非常に社会にとって重要な役割を担っていらっしゃるお仕事であるにもかかわらず、例えば、平均給与は全産業平均よりも大きく低い、また、労働時間も長時間にわたっているという現状ですし、ここに大きな原因がある、このように思います。

枝野委員 各事業者ごとに若干の濃淡はあるかもしれませんが、トラックドライバーなどの賃金が低いのは、やはり運送料金が低く抑えられていて、賃金に相当する部分が、今はやりの価格転嫁が十分できていないと。そもそもの物流の運賃そのものに問題があるのではないかという指摘もあります。

 これについては、貨物自動車運送事業法に基づいて、令和二年の四月に標準的な運賃というのは告示をされている。これに基づいて、せめてこれぐらいの線で運賃は決めてくださいということを国土交通省が示していると認識していますが、これはどの程度効果を上げているんでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほどおっしゃいましたように、令和二年四月に、貨物自動車運送事業法に基づきまして標準的な運賃制度を創設して、荷主等への周知、浸透を図ってきたところです。

 この結果、令和三年度末に国土交通省が実施したアンケート調査では、約半数の事業者が標準的な運賃を用いて運賃交渉を行ったとの結果が出ております。

 また、標準的な運賃を用いた交渉の結果、このうち約三割が荷主から一定の理解を得られたとの結果が出ているところでございます。

 これをどう評価するか、全体から見れば僅か一・五割しか役立っていないというふうに見るのか、半数の人が、しかし、この標準運賃を使って価格交渉をやった、ある程度効果が出ていると見るのか、あれかと思いますが、もうちょっと効果が出ていいのではないかなと私自身は思っております。

枝野委員 馬淵さんの質問と違って前向きな御答弁をいただけたことは評価をしたいと思いますが、交渉した結果、半分ぐらいの荷主がこれに応じてくれた、だけれども半分ぐらいはそこまで届いていないな、これなら一定の効果かなと思いますが、全体の一五%しかこの標準的な運賃に準じていないということですよね。ということは、八五%は、結局やはり、国土交通省が標準的と判断しているその水準に達していないということになるわけですね。

 やはりこれは、このままではいけないんじゃないですか、大臣。

斉藤(鉄)国務大臣 まさに、このままではいけないと思いまして、今、国土交通省も、また、内閣を挙げていろいろな努力をしているところでございます。

枝野委員 いろいろな努力の前に、一つお尋ねしておきたいと思いますが、標準的な運賃というのは、いろいろなコスト、人件費を含めたコストを計算して、これで作っているわけですね。

 そうすると、この一年ぐらいで大幅に燃料代のコストが上がっているわけですね。それから、人件費についても、これから働き方改革で一人当たりの労働時間を短くせざるを得ないわけですね、運送会社は。この二つの点では、標準的な運賃を大幅に上げないとおかしいですね。いや、既に上がっていないとおかしいと思うんですが、これはどうするんですか。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほど、国土交通省としても、また内閣としても、これは大変大きな課題だという認識の下で努力していくというふうに申し上げましたが、その中で、この問題についてもしっかり議論をしていきたいと思います。

 標準的な運賃をこういうふうにしますという計画は今すぐにございませんけれども、これからしっかり議論をしていきたいと思います。

枝野委員 大事なところなので念押ししたいと思います。

 間違いなくこの一年間で燃料は相当大幅に上がっているわけですから、この標準的な運賃を計算する上のベースになるところの、一番ある意味では大きいところの一つが相当大幅に上がっているわけですよ。一方で、これから、働き方改革の効果もあり、元々低過ぎるドライバーの皆さんなどの賃金を上げざるを得ない。こういう状況の中にあるわけですから、相当大幅に、できるだけ早く標準的な運賃を上げていただきたいということを強く大臣にお願いしますが、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 検討させていただきたいと思います。

枝野委員 もう一言欲しいんですけれども、是非、前向きにぐらいつけていただきたいんですが。

 その上で、そのほかにもいろいろなことをやりますと。何をやろうとされているんですか。なかなか簡単じゃないのは分かっていますよ。要するに、民民の契約ですから、それにどこまで強制力を持ってやっていくのかというのは、簡単じゃないのは分かっていますが、具体的に幾つか挙げてもらえませんか。

斉藤(鉄)国務大臣 まず、荷主団体や経済団体、いわゆる荷主団体の皆様に、この標準的な運賃の制度、また、今物流業界が置かれている現状をしっかり御理解いただき、価格転嫁がしやすいような状況をつくっていく、その努力でありますとか、そういう努力がまず一番ですけれども、そういう努力をしております。

枝野委員 努力の一つとして、これぐらいは急いでやっていただきたいと思っているのは、ネット通販などで送料無料という表示がいまだに山ほどあるんですよ。済みません、私も個人としては、実は今朝もここに来る前に議員会館で、一つネット通販をぽちっとしたんですが、やはり送料無料と書いてあると、そこを優先的に押しちゃうんですよね。

 でも、これは送料無料なんじゃなくて、実態は、送料が売主負担あるいは売主側負担なのであって、別に送料がただになっているわけではない。でも、やはり送料無料というのは、ネット通販などでこれだけ山ほど見ていると、何となく勘違いするわけですよ、消費者も。何か、運送はただで行われるものだみたいな。

 これは、やはり社会的にも大きな影響はあるし、実際に、送料無料というのが、今やネット通販のところでベースみたいな感じになっていると、やはり、この送料のところをいかに安く抑えるのかというのが、ネット通販でたくさん売るための一つのポイントになる。それをやればやるほど、当然、運送会社に対しては、それは運送料を安く抑えろという物すごい圧力の元になる。この送料無料のネット通販などの表示はやめさせるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 国土交通省としては、通販事業者の送料の表示方法について指導などを行う立場にはありませんが、運送事業を所管する大臣として、委員御指摘の、運送事業者が適正運賃を収受することができないことは大変大きな問題だ、このように考えております。

 委員から、送料無料の表示が適正運賃の収受の妨げになっているのではないかとの御指摘がありましたが、令和三年六月に閣議決定された総合物流施策大綱におきましては、商取引において、物流業務は無償で提供されていると誤解を招くかのような表現は見直しが求められるとされています。

 国土交通省としては、運送事業を所管する立場から、関係省庁と連携してこの問題に取り組んでいきたいと思っております。

枝野委員 消費者庁と経産省に来ていただいています。まず、消費者庁。

 消費者がこのことの誤解で直接損するわけじゃないので、消費者庁の観点から、誤解を与えるのはけしからぬとは言いにくいのは分かるんですが、現状、これについての、つまり、送料無料問題についての見解等、消費者庁としてできることはないか、お答えください。

真渕政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、消費者庁としての送料無料という表示についての見解ということでございますけれども、我々が所管しております景品表示法という法律がございますけれども、この法律において、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある表示を規制する法律でございまして、その中の一つとして、取引条件などについて、著しく有利であると一般消費者に誤認されるような表示を規制しております。

 ただ、お尋ねの送料無料と表示された商品につきまして、商品の代金と一般消費者が実際に支払う代金にそごがないのであれば、この法律上の問題とすることは難しいと考えております。

 ただ、我々が所管しております法律で個別に取り締まるというのはなかなか難しいわけでございますけれども、我々消費者庁といたしましてできることとしましては、消費者が送料無料という表示を目にしたときに、実際にはそこには物流コストが生じているということを理解した上で、合理的な消費行動を行うことが望まれる、これは間違いないことでございますので、今後、我々としても、関係省庁と連携しつつ、消費者の理解が進むよう普及啓発に努めてまいりたいと考えております。

枝野委員 そうなんですよね。消費者庁の消費者保護という観点からはなかなかやりにくいということで、経産省、来ていただいています。

 ネット通販は、やはり広い意味では経産省が所管なのかなと思いますので、これはやめさせなきゃいけないんじゃないですか、経産省。

澤井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、物流コストの認識の低さ、これが例えば、再配達、それから小ロットでの発注による積載効率の低下といった形で物流に非常に負荷をかけている、こういう状況だと承知しております。

 こうした状況を改善するためには、やはり、物流を支えている皆様の受け取る対価、これが適正なものとなるように、荷主企業あるいは消費者の皆様の認識を向上させていくことは重要だというふうに認識しておるところでございます。

 このため、経済産業省では、国交省や農水省と連携しまして、持続可能な物流の実現に向けた検討会というものを行っております。その中で、例えば、不適切な商慣習の是正ですとか物流の効率化に向けた環境整備、こういった構造的な改革に加えまして、荷主企業や消費者の認識の向上といったものに対する取組、これも実効性のある措置を検討しているところでございます。

 こうした取組を通じまして、持続可能な物流の実現に向けて万全を期してまいりたい、このように考えてございます。

枝野委員 余り時間はないと僕は思っていまして、それこそ、トラックドライバーが足りなくなって、今のような物流の量を確保できないんじゃないか、こういう民間の試算もあるぐらいですよ。急がなきゃいけないと。

 ネット通販は、幸いなことに大手の寡占に近い状態にありますので、大手二、三社ぐらい、ちゃんと行政指導でやってもらえば、相当変わるんですよ。これは経産省、やってください。大手二社、僕は二社かなという感じがするんですけれども、私、ユーザーの直感としては。ぐらいのところが送料無料をやめたら、相当変わりますよ。これぐらい行政指導できないんですか、経産省。

 そして、経産省にやらせる責任は、僕は国土交通大臣にあると思います。もし、トップは外資だから、やってくれないんだったら法律を作りましょうよ。景表法じゃ無理だから、確かに、消費者保護と違うから。まず、大手二、三社のところに行政指導で従わせる、やってくれないんだったら、断る権限はあるわけですから、行政指導なら。まず行政指導を強力にやって、駄目なら法律を作りましょうよ、大臣。いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 今ここで、分かりました、法律作りますとは言えませんけれども、この問題の非常に根深さというのを感じております。

 先ほど申し上げましたように、誤解を招くような表現が、今の物流事業者の待遇、また物流業者の長時間労働につながっている、こういう認識の下に、我々もしっかり対応していきたい、このように思います。

枝野委員 是非、大臣、よろしくお願いします。

 消費者庁と経産省、結構でございます、お帰りいただいても。

 ちょっと順番を変えて、他省庁を呼んでいる、三番目の通学路の安全確保の方を先にやりたいと思います。

 通学路の安全確保は、実は、中央でいうと省庁にまたがっております。現場においても部局が分かれております。

 通学路について一番よく分かっているのは学校であり教育委員会。教育委員会、特に、通学路の安全といった場合、小学生が中心ですので、市町村の教育委員会。一方で、例えば、信号などは警察、そして道路そのものについては道路の管理者、大きい意味では、国のベースでは国土交通省、こういうことになっておりますが、これについても、現場では、学校や教育委員会、現地の警察と、そして道路管理者との間で、合同点検という仕組みが設けられているというふうに承知をしています。

 ただ、これは多分、地域によって相当差があるし、学校の多さとか交通環境によって相当差があって、何か、二、三年ごとに一回、学校一つごとだというと二、三年ごとに回ってくるみたいなところもあれば、毎年のようにきちっとやっているところもあるのかもしれません。

 そもそも、この合同点検という仕組みは十分に機能していると思われますか、大臣。

斉藤(鉄)国務大臣 通学路の交通安全対策については、関係省庁と連携して強力に推進し、児童などの安全を確保することが大変重要であるという認識の下、合同で、今、いろいろな対策を講じているという仕組みを持っております。

 平成二十四年の京都府亀岡市での事故を契機として、通学路の交通安全の確保に向けて、学校、教育委員会、警察、道路管理者などが連携して、合同点検や対策を推進する体制が各市町村で構築され、以降、継続的に危険箇所の点検や対策が実施されてきたところです。

 令和三年の千葉県八街市での事故の際も、この推進体制を活用した合同点検が実施され、点検を通じて抽出された対策必要箇所について、道路管理者と学校、教育委員会、警察が連携して対策を進めていただいており、現行の体制は機能しているもの、このように考えております。

 引き続き、通学路における交通安全対策が着実に進むよう、合同の体制をしっかり進めていきながら、国土交通省としても必要な助言や支援を実施してまいりたいと思っております。

枝野委員 文部科学省に、政府参考人に来ていただいていると思います。

 まず、主体は学校なんですよね。国土交通省や警察は受け身であります。ですので、学校、教育委員会がしっかりとこの重要性を認識して、そして、学校の状況、後で申し上げますが、非常に変わるんですね。その変化に応じて、しっかりと必要なことを警察やあるいは道路管理者に伝えて、しかも、スピード感を持って対応してもらわなきゃいけないと思っているんですが、こうしたことについては文部科学省はどういう認識をお持ちですか。

里見政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど国土交通大臣からもお話がございましたけれども、通学路の合同点検は、平成二十四年の京都府亀岡市での事故を受けまして、各自治体において、教育委員会、学校、PTA、警察、道路管理者等による市町村単位の推進体制が構築をされ、以後、継続的に危険箇所の点検、対策が実施されていると承知しているところでございます。

 また、令和三年六月に千葉県八街市で発生した事故を踏まえまして、文部科学省、国土交通省、警察庁とで連携いたしまして、全国の自治体に対して、見通しのよい道路や、幹線道路の抜け道になっている道路など、車の速度が上がりやすい箇所など、新たな観点も踏まえまして通学路の合同点検を実施したところでございます。

 こうした通学路の合同点検は、各自治体で構築された推進体制の下で実証され、点検の結果、抽出された対策必要箇所につきましては、学校、教育委員会、道路管理者、警察により、順次対策を進めていただいているものと承知をしておりまして、現行の体制は機能しているものと考えております。

 文部科学省といたしましては、引き続き、関係省庁とも連携しつつ、各自治体の通学路の安全確保に向けた取組を促してまいります。

枝野委員 通学路の安全の問題というのは、問題に気づいたら急いで対応していただかないと、保護者にとっては、実は直接的には余り意味がないんですよね。もちろん、小学生でも高学年でもリスクがある。だからそういうところを安全にしなきゃならないということはありますが、小学校でも低学年ほどやはり交通事故のリスクが高い。自分の子供が小学生低学年でいる間というのは二年間とか三年間とかという短い期間で、子供が中学生になればちょっと状況はまた違うよねとかになるわけですよ。当事者にとっては、三年、五年遅れても困る。しかも、学校ですから、安全が確保されるまではちょっと遠慮しておいて使わないようにしようというわけになかなかいかないわけですから、臨機応変が必要なんですよ。

 これは例えば、新しい道路ができたりとか、いろいろな状況によって、急に通学路の状況が変わるケースはあり得るわけですね。これは道路管理者、道路管理者を管理しているのは国土交通省ですから、そういう変化に対してはむしろ先行して、学校、親に注意喚起を促し、また、警察などに、例えば、通学路にここはなっているんだから、こういうふうに信号とか、こういったことを対応しろと現場でやってもらわなきゃいけないわけですね。

 それから、実は、現にこれはうちの地元であるんですが、大きなマンションができて、その大きなマンションにだけ、一つのマンションから一つの小学校に、この五年ぐらいで新たな児童が五百人を超える規模で出る、こういうところがあったりするわけですよ。

 都市近郊では今もあるんですよ。少子化とはいったって、特に、東京から一定の距離があって、一定の価格で買えるマンションみたいなところは需要があるので、それは大型マンション化されていますから、そこに若い世代がまとめて来ると、一つの学校に五年ぐらいで五百人ですよ。新しい通学路なんですよ。そこに信号がないと言っているんですよ。五年後に信号がついたってしようがない。ある意味で遅れちゃうわけですよ。

 こういう話は、実は全国に、数がべらぼうに多いわけじゃないけれどもあり得ると思うんですよ。そうすると、問題が起きそうだと分かったら、半年、一年で対応してもらわなきゃいけないということになるわけですね。

 そうすると、この合同点検を、全ての学校、全てについて、毎年毎年やれとまでは言いませんよ。だけれども、道路が新しくなるとか、あるいは、今のように、急に子供の数が増えるみたいなことが起こる、これは少なくとも市町村の教育委員会は分かるわけですよね。そういうところのイニシアチブで、そういうところはきちっと、道路管理者、警察に加わってもらって、そして、そこでの需要に対しては、例えば、信号をつける順番とかガードレールをつける順番とか、いろいろなものが事実上あるのは知っていますが、しかし、やはり子供の安全ということを最優先した中で、道路管理者や警察は臨機応変の対応をしていただきたいというふうに思います。

 時間の関係があるので、警察庁に来ていただいていますが、文部科学省、警察庁、そして大臣の順にお答えいただけますか。

里見政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御指摘いただきましたように、新しい事態に対しまして、常に継続的に危険箇所の点検、対策を学校の方でも実施をいたしまして、教育委員会と連携をしまして、道路管理者、警察等にしっかり伝えさせていただくというこの仕組みを通じた連携が重要であると考えております。

 文部科学省でも引き続き、こういった連携体制を強化するように周知してまいりたいと考えております。

小林政府参考人 お答えいたします。

 通学路における交通安全の確保につきましては、合同点検のプロセスが大変重要でございます。このプロセスに当たりましては、教育委員会、学校、警察、道路管理者等が連携して点検を進めるとともに、その対策に当たりましても、連携して進めているというところでございます。

 警察庁としましても、この合同点検の仕組みにおきまして、教育委員会、学校、道路管理者等と地元警察署が緊密に連携して対策を進められるよう、通学路における交通安全の確保が継続的に行われますよう、これまでも通知をしてきたところでありますが、引き続き都道府県警察を指導してまいりたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 八街の事故の後、いろいろ、各地域で総点検をして、ここをこういうふうにしたいというのが上がってまいりました。それを一つ一つ今対策を完了させていっているところでございますが、ある程度残っています。その残っているところにやはり着目、ちょっと注意が行き過ぎて、新たに起こっている問題についてなかなか目が行き届かないところがあったということも正直あるかと思います。

 先ほど来、各省庁も継続的という言葉をキーワードにして答弁をしておりますけれども、この継続してやっていくということが非常に大事なので、そういう新たな問題に対してもしっかりと対応できるように、国土交通省としてもよく連携してやっていきたいと思います。

枝野委員 大臣、大変いい御答弁をいただいて、ありがとうございます。

 是非、文部科学省、現場の教育委員会に、臨機応変に遠慮なく道路管理者や警察に呼びかけるようにと。そして、警察の方、今、いい御答弁をいただいたと思っていますので、現場においては、学校や教育委員会の呼びかけに応じて、柔軟に、臨機応変に対応するように、省内に持ち帰って、何らかの形で現場に伝わるようにしていただくようお願い申し上げて、お二人、もうお帰りいただいて結構です。

 さて、最後に大臣。

 私、去年、おととしの暮れからかな、国土交通委員会に参りまして、それは、公共交通、やはりこれからは公共サービスを充実させることがこの国にとっては重要だと。

 ただ、ちょっと違和感をずっと持っていて、一般に公共と言われている場合と、公共交通とついた場合と、これはどうも意味が違っているという感じをいたしております。

 これは、そうしたら、国土交通省、指摘をくださいまして、令和三年に決定した第二次交通政策基本計画というのがあるそうですね。ここにこういう記載があるんですね。公共について、「社会的視点に立ち、無料もしくは十分に廉価な価格で、」廉価な価格でというのは安くですね、「十分な量と質が提供されるべき財やサービスを意味することが少なくない。」と書いてあります。

 そのとおりですね。公共とは、我々は一般的にはこういうものだと思っています。ただ又は安く、誰もが十分な量と質が提供されて利用できるサービス。だから、公共性があるサービスなんだと。

 ところが、この基本計画の中には、そう書く一方で、公共交通については、旅客運送契約の下で、運賃を支払えば誰もが利用可能な運送サービスを意味するとしていて、つまり、十分な量と質とか無料若しくは十分に廉価な価格でというのが入っていないんですよ。さらに、公助を求める社会的要請が強まる中においても、この二つの意味の違いを意識した上での対応が必要であるとしているんですね。いいんですか、こんな認識で。

斉藤(鉄)国務大臣 令和三年五月に閣議決定された交通政策基本計画においては、先ほど、今委員から御指摘のあったような表現があるところでございます。

 御指摘の二つの意味の違いを踏まえ、「具体的には、交通事業者をはじめ地域のあらゆる関係者の連携・協働の下で、地方公共団体が中心となって、まちづくりと一体的に持続可能な地域公共交通の姿をデザインし、スピード感を持って取組を進め、目に見える成果を上げることを目指すべき」とされております。

 今回、先日、御審議、御可決いただいた改正法案におきましては、また予算におきましても、まちづくりと一体で進める取組として、社会資本整備総合交付金に新たな基幹事業として地域公共交通再構築事業を追加する、それから、介護分野など異業種を含む関係者との連携、協働を促進する等の取組を通じて、交通政策基本計画の内容を具体化したものとなっております。

枝野委員 大臣、ここからは答弁要旨を外れてやり取りさせてください。

 やはりここの違いは、無料若しくは十分に廉価な価格でということが公共交通に要求されるのかされないのか。そしてもう一つは、十分な量と質が提供されるべきという縛りが公共交通といった場合にかかるのか、かからないのかなんですよ。

 これまではどうも、第二次基本計画に書かれている文言を見れば、無料若しくは十分に廉価な価格でというのも、十分な量と質の提供ということも、従来の公共交通については実はかかってきていない。基本的には民間企業が提供して、そして約款に基づいて、みんなが同一の条件で公平に利用できれば公共交通なんだ、こういうことで考えてきたわけですよ。

 歴史的な経緯、分からないじゃないです。多くの公共交通と呼ばれるものが民間企業によって提供されてきた。そして、私たちには、いい悪いは別として、もう三十五年前ですが、国鉄の分割・民営化という、これは各論ではいろいろな問題があったかもしれないけれども、一つの成功体験があるわけですよ。だから、余り公が関わらないで民間に委ねていた方がいいんだという一種のトラウマがあるんですよ、成功体験の縛りが。

 だけれども、もはや、「十分な」の十分のこの程度にはいろいろな評価があるかもしれないけれども、一定の量と質をきちっと提供する責任、それから価格についても、ある程度、みんなが払える料金というこの二つの縛りをかけないと、これからの交通の多くの部分は駄目なんじゃないですか、大臣。

斉藤(鉄)国務大臣 まさに公共という言葉が持つ二つの意味、その両方が必要になってくると私は思います。

枝野委員 従来の意味での約款に基づいて誰でも公平に使えます。これはベースとして、私の申し上げた公共性の低いものであったとしても、それは交通機関であるならば誰でも料金さえ払えば同じように使える、危険物を持ち込むような方は別として。そういうものでなければいけない。これは多分ベースであるし、一種、政治はルールを作って、それを民間に委ねればやってくれるわけですよ。

 でも、その結果として、やはり必要なサービスが提供されない、移動ということについて提供されない、そのことによって生活が成り立たないという地域が現に山ほど出始めているわけですよ。これからますますこれが増えていく可能性が高いわけですよ。しかも、そこを民間で維持しようとすればべらぼうに高い運賃になるし、そこを個別の対応でやっていたのでは、あえて言いますが、変なアンフェアなゆがみが出かねないわけですよ。やはり一定の範囲のところで、移動についての、まさに移動の権利を確保するための量と質、そして一定の料金というものについて、今、公共交通と言われているもの全てと必ずしも言うつもりはありませんが、相当部分のところはやはりこういう公共性を持っているんだと。

 あえて言えば、人の移動だけではなくて、先ほど言った物流も、物流がなければ、いわゆる宅配便がなければ、もう社会が成り立たないよみたいなところが現にたくさんあるわけですから、ここの一部も含めて、やはり、一般的な意味で、無料若しくは十分に廉価な価格、十分な量と質が提供される、この二つを備えなければならない公共の交通が大変多いんだということについて確認をさせてください。そういう認識でよろしいですね。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほどもまさにそういう認識の下で答えさせていただきました。両方が大事だ、そのために、今回、地域公共交通の法案を出していただいて、公も、事業者、地域、そして国、一体となってこの公共交通を守っていこうという法案を出させていただいたところでございます。

枝野委員 その意味で、これは名前をつけた方がいいと思いますよ。つまりは、従来の意味での公共、誰でも公平に、約款に基づいて使えるという意味での公共、これは交通全般についてやってもらわなきゃならないけれども、その中で、ある程度の部分は、やはり十分な量と質、価格、これは政治の力で、公の力でしっかりと提供するんだ、提供主体は民間だとかですね。

 やはり、これは名前をつける。第一種公共とか第二種公共というのがいいとは思わないんだけれども、同じ公共といっても、特に交通については、従来の意味での広い公共と、でも、我々がもっと力を入れなければならない、もっともっと厚くしなければならない公共と、これはやはり名前の呼び替えも含めて、私も考えてみますけれども、ひとつ考えていかないと、同じ公共といっても、この委員会の中で公共性とかをやり合っている中でも、多分ずれが時々生じているなと感じることがあります。

 そこは大臣、これは答えはすぐに要りませんが、ちょっと考えてみていただけませんか。

斉藤(鉄)国務大臣 非常に深い話ですので、少し私自身も考えてみたいと思います。

枝野委員 大臣、本当にこれは、私、この話をしたくて実は国土交通委員を希望してこの一年半やっているので、是非、私もこの間考えてきていますが、なかなかいい知恵はありません。やはり、こういうのは意外と役所の方がうまかったりするので、是非本当に、従来の国交省の言う広い意味の公共と、でも、他の役所にも通用する、もっと充実させる、公が責任を持つ、範囲としては狭いけれどもという公共と、しっかりと使い分けられるように、そして、後者の方を充実させる。

 特に、最後に申し上げますが、先ほどちょっと申し上げましたが、三十五年前、私が大学生の頃、国鉄改革だなんていう話が盛り上がっていたんですよ。あれはいろいろな評価があります。いろいろな評価がありますが、もう民営化されて三十五年なんですよね。あの議論をしている頃からは四十年なんですよ。社会状況は全然違うんですよ。

 でも、やはり、特に当時の運輸省、国土交通省的には、あのとき、たたかれもしたけれども、JRがその後それなりに頑張ってやってくれているということもあって、何となく過去の成功体験になっているんじゃないかと思います。でも、実際には、民営化から三十五年たって、やはり、北海道の在来線をどう残すのかとか、中国地方の在来線をどう残すのかという話は、中国地方は大臣もよくお分かりだと思いますが。

 やはり、あのときの発想のままではもう通用しないことが三十五年たって生じてきているわけだし、社会状況が、中曽根行革で日本がまだこれから大きく高度成長の頃のように成長するのではないかという幻想が持てた時代と、これからは、もうこの間は安定成長でいかに豊かさを充実させていくのかという、こういう時代とでは、やはり物の発想は違ってくるし、高齢化が進んでいく、人口減少が進んでいくということの中では、競争を幾らアピールしても、競争を幾ら迫っても、それではもう効率化できないよね、効率化しても対応できないよねと、物すごく僕は増えていると思う。

 だから、国鉄改革を、これを成功でしたねと言い切ってしまうとまたいろいろな声があるかもしれませんが、少なくとも、国鉄改革の成功部分からも、一度もう脱却しないと、日本の交通政策は駄目だ、もう時代が違うという前提で交通政策は組み立てるべきだ、このことを申し上げて、私の今日の質問は終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

木原委員長 次に、前川清成君。

前川委員 おはようございます。日本維新の会の前川清成でございます。

 今日、冒頭、本来予定している質問に加えて、昨日の保津川の転覆事故についてお尋ねをしたいと思います。

 私も、もう三十年ぐらい前ですかね、保津川下りに乗ったことがあります。嵐山ぐらいまで下りていきますと、川幅も広くて水深もあって、なんですけれども、上流の方は川幅もそんなになくて、水もそんなに流れていなくて、危険を余り感じずに楽しめる、そういう遊覧船だったというふうに記憶しています。三十年前なのでよく覚えていないんですが、ライフジャケットも着けていなかったように覚えているんです。

 今回、こういう事故があって、お亡くなりになりました。民間のやることを国がどこまで関わるのか、あるいは干渉するのか、国の守備範囲の問題というのはもちろん承知しております。民間にできることは民間に任せるべきです。と同時に、やはり国民の安全に関わることについては国も積極的に関わっていかなければならないと思っています。

 知床の遊覧船の事故もありました。今回のこともありました。昨日のことですので事前に紙での通告もさせていただいていませんが、この種事故が繰り返されることについて、大臣の今日時点でのお考え等がありましたら、ちょっとお聞かせをいただけたらと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 昨日、京都府の保津川において、保津川遊船企業組合が運航する川下り船の転覆事故が発生しました。今回の事故によりお亡くなりになられた方とその御家族の皆様方に対し、心よりお悔やみを申し上げます。また、今回の事故に遭遇された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 この事故を受け、国土交通省では、昨日、近畿運輸局の運航労務監理官二名を現地に派遣したところでございます。また、運輸安全委員会による事故調査も行われると承知しております。

 国土交通省としては、今後、得られた情報を踏まえ、必要な対応を適切に行ってまいりたいと思います。

前川委員 知床の事故で海に投げ出された方々が、海の水が冷たくて、それで命を失われたというふうな報道に接しました。この時期、まだまだ川の水は冷たいと思うんです。先ほども申し上げたように、民間がやることについて国が余り干渉するべきではないと思っておるんですけれども、遊覧船の時期、こんなのについては検討する必要があるのかないのか。そんなことを言うと流氷の観光もできなくなってしまいますので大変難しいと思いますけれども、是非、その辺も含めて今回の事故も御検証いただいたらと思います。これについては御答弁は結構です。

 その上で、本来予定していた質問をさせていただきますけれども、昨日から道路整備特別措置法の審議がスタートいたしましたが、私は、高速道路だけに限らず、一般の道路や橋、あるいはトンネルなどにおいても、国民の安全を損なう危険な場所というのがあるのではないか、道路の、あるいは橋の、トンネルの管理は万全なのかということを今日質疑させていただきたいと思います。

 その一例として、令和四年、去年の八月三日の奈良新聞の記事なんですけれども、八月二日に国と奈良県、市町村、NEXCO西日本が会議を開催しました。この奈良新聞の記事によりますと、奈良県内には橋が九千九百五十二あります。そのうち、六千百七十四の橋について点検を済ませました。その結果、緊急に措置を講ずべき橋というのが十三、早期に講ずべき橋が六百十五、長期的な観点からは措置が望ましい橋が四千六百二、修繕不要は九百四十四ということが確認されたようです。

 ここで言う、緊急に措置を講ずべきというのはどういう意味なのか、あるいは、早急に講ずべきというのはどういう意味なのか、まずお答えをいただけたらと思います。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 各道路管理者は、平成二十六年度より、管理する橋梁、トンネルなどにつきまして、点検要領に基づき、五年に一回の頻度で点検を行うこととしております。その結果については、判定の一から四までの四つの区分で診断をしております。

 お尋ねの、まず早期に措置を講ずべき状態と申しますのは、四段階の判定の区分のうち二番目に状態が悪い状況でございまして、構造物の機能に支障が生じる可能性がある状態としておりまして、道路管理者は修繕などの対策を行う必要がございます。

 また、緊急に措置を講ずべき状態というのは、四段階の区分で最も状態が悪いものでございまして、構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高い状態としております。

 この場合には、早期に措置を講ずるべき状態と同様、修繕などの対策を行う必要がございますが、緊急に措置を講ずることができない場合には、当面の安全を確保するための応急的な対策や、大型車の通行規制、また通行止めなどを行う必要があるというふうに思っております。

前川委員 今のお答えは、ちょっと抽象的過ぎてよく分からないんです。

 もっと具体的に言うと、緊急に措置を講ずべき橋というのは、今にも落ちそうで、誰かが死んでしまいそう、そういう意味なのかどうか。

 と同時に、緊急にというのはどれぐらいの期間を指しているのか。今にも橋が落ちそうだというのやったら、もうすぐにやってもらわないと困りますので、緊急にというのがどれだけの期間なのか、あるいは、早急にというのがどれぐらいの期間を指して言っているのか、この点、はっきりとお知らせいただけたらと思います。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、早急にというのは、次の点検のタイミングまでには必ず修繕をしなくちゃいけないものというふうに思っております。

 また、緊急というのは、それまで待たない、構造物の状態によっては変わると思いますけれども、まずは通行止めをするだとか、大型車を規制するだとか、そういったものを速やかにやっていただきたい、そういう段階と思っております。

前川委員 道路局長、先ほどの御説明で、五年に一度の点検とおっしゃっていましたよね。そうしたら、緊急でも五年以内にやればいい、そういう意味なんですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 緊急というのは、まさに速やかにやっていただきたいということでありまして、次の五年後という、そういう意味ではございません。

前川委員 奈良県内に緊急に措置を講ずべき橋が十三あった、去年の八月の段階で、こういうことなんですが、現在までに、この十三の橋については修理、修繕は終わっているんでしょうか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の八月の時点で、速報として、十三か所あるというふうになっておりましたが、その後、精査して、現在では十一の橋梁となっております。

 それで、これらの橋梁に対する対応でございますけれども、管理する地方公共団体、これが実施することとなりますけれども、現在、全ての橋梁で当面の安全を確保するための通行規制又は通行止め、これを実施しているところでございまして、今後、修繕などの対策に着手すると聞いております。

前川委員 今のお答えは、十三じゃなくて、正しくは十二でした、その十二の橋についてはいずれも通行止めにしていますということですよね。

 でも、通行止めにしたらその橋を渡れないので、その地域の皆さん方はお困りですよね。それはどうなるんですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに通行止めになっておりますので通れないというわけでございますが、代わりの、近くに別の橋梁があるとか、そういったものによってアクセスを確保するということになると思います。

前川委員 後で触れたいと思うんですけれども、人口が減っていく、過疎が進んでいく、そうであれば、今あるインフラをどう維持するか、社会機能を維持するためのインフラがどこまで必要なのかというのも考えなければならないと思います。

 今の局長の御答弁であれば、通行止めにしているけれども、ほかに橋があるから大丈夫なんだというふうに私には聞こえてしまったんですけれども、それだったら、そもそも、橋を造り過ぎたのと違うのというふうに思ってしまいます。そこのところはちょっとまた後で議論をさせていただきたいと思います。

 その上で、先ほど申し上げたように、奈良県内に九千九百五十二、橋があって、そのうち、修繕不要が九百四十四。ですから、八五%の橋は、緊急か早期か、あるいはいつかは別にして、修理が必要、こういうことになります。

 実は、奈良県というのは人口も面積も大体全国の一%なんですけれども、では、橋も同じ割合だとすれば、今全国で八十五万の橋について、早期か、あるいは緊急か、いつかは別にして、修理が必要になっているということになるんでしょうか。

 また、橋に限らず、全国のトンネル、道路、既存のインフラについて、一体どれだけの数、修理、修繕が必要な場所、何か所ぐらいあるのか、この辺、分かっていればお答えいただきたいと思います。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年度末時点でございますけれども、全国、橋梁、約七十三万橋ございます。このうち、早期あるいは緊急に措置が必要とされる橋梁、全体の八%の六万一千か所でございます。このうち、緊急に措置が必要な橋梁というものは約七百か所ございます。

 また、トンネルにつきましては、全国で一万一千か所ございまして、早期あるいは緊急に措置が必要とされているトンネル、これにつきましては、約三四%の三千九百か所ございます。このうち、緊急に措置が必要なトンネルというものは約三十か所ほどございます。

前川委員 それでは、今おっしゃったおよそ六万の橋の修繕とか、三千九百のトンネルの修繕、あと、道路もあると思うんです、この後詳しくやりますけれども、それらの修理、修繕のためにどれぐらいのお金が必要になるんでしょうか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 道路インフラの持続可能なメンテナンスのために、損傷が大きくなってから修繕を行うという事後保全から、損傷が軽微な段階で対策を行うという予防保全に早期に転換していくことが重要だというふうに思っておりまして、平成三十年度に、国あるいは地方公共団体が管理する道路の維持管理、更新の費用を推計しております。

 この予防保全への転換が実現した場合、今後三十年間、累計の費用でございますが、約七十一・六兆円から七十六・一兆円の範囲になるというふうな試算をしているところでございます。

前川委員 今後三十年間で七十一兆円から七十六兆円のお金がかかってしまう、こういうことですよね。

 そうしたら、そのお金は全部国が出すというわけじゃなくて、ある部分は都道府県が、ある部分は市町村が負担するということですけれども、国はそれだけの、七十一兆円ないし七十六兆円のうちのどれぐらいを負担するのか、あるいは都道府県や市町村、どれぐらいのお金を負担して、財政がそれを許すのか許さないのか、この辺り、もし予想ができるのであればお答えいただきたいと思います。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、国が管理する道路につきましては全額国費で対応する。また、地方公共団体が管理する道路につきましては、維持管理に要する費用、これにつきましては全額地方公共団体が負担する。ただ、修繕に関しましては、道路の補助事業がございますので、これによって支援をするというところでございます。

 この橋梁、トンネルの修繕を支援する、道路メンテナンス事業補助と言っておりますが、これにつきましては、国費率は五五%で補助をしているところでございまして、先生の御質問の、どういう割合でなるのかというのは、ちょっと申し訳ございませんが、その数字を持ち合わせてございません。

前川委員 今の道路局長の話は、道路は含むんですか。橋とトンネルだけで七十一兆円ないし七十六兆円なんですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 私が申し上げた数字は、道路の本体の舗装等も含んでおります。

前川委員 少し道路のことについて大臣にお聞きをしたいと思います。

 新聞記事を配らせていただきました。二〇一五年、平成二十七年の朝日新聞なんですけれども、平成二十七年の七月三日に、奈良県の十津川村、一番南の方です、司馬遼太郎さんの「街道をゆく」でも描かれた、非常に谷の深い、山の高い、そういうエリアです。その険しい山肌を縫って国道百六十八号線というのが通っております。その国道百六十八号線を女性が軽トラックを運転して通行しておられたところ、上から、重さ六十七キロ、最大幅が五十五センチの岩が落ちてきました。

 その軽トラックに直撃をして、運転しておられた女性は、外傷性心タンポナーデ、大臣、この外傷性心タンポナーデというのは御存じですかね。要は、心臓が圧迫されて心臓と心臓を包む心膜との間に水がたまってしまう、その結果、心臓が拡張できなくなって心臓が動かなくなってしまう、こういう状態です。あるいは、胸骨や左腕の骨折などで、入院が七十六日間、通院二十七か月という大けがを負われました。

 しかも、被害者の女性は夫と二人暮らしだったんですけれども、被害者が入院中に夫は心臓発作でお亡くなりになってしまいまして、夫の死に目にも会えなかった、こういう悲惨な事故が起こってしまいました。

 ただ、この事故現場付近というのは、従前から落石とかのり面の崩落が続いておりまして、奈良県は、平成二十六年十二月と平成二十七年三月の点検によって、この事故現場付近で落石のおそれがあるというふうに認識をして、要対策箇所に指定していました。ところが、その後、一年なりあるいは半年なり、ほったらかしになっていた。その結果、案の定、岩が落ちてきて、女性が大けがをした、こういう事故です。

 ですから、私は、この事故、防ぐことができたんじゃないのかなと。もっと早くに、要対策箇所と分かっているのであれば、落石防止の措置を講じておれば、この事故は防げたのではないのかな、こういうふうに思っておるんですが、大臣、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 奈良県管理の国道百六十八号において、平成二十七年七月に斜面から重さ六十七キログラムの岩が落下し、この国道を自動車で走行していた方が大けがをされたと承知しております。まずは、被害に遭われた方へ心よりお見舞いを申し上げます。

 道路を管理していた奈良県からは、当時、県が管理する道路で落石のおそれのある約千七百か所について、危険度の高い箇所から、順次、落石防止ネットを張るなどの対策を進めていたところ、工事未実施の箇所で落石事故が発生した、このように聞いております。

 また、当時は、その他の工事未実施の箇所も含めて、定期的にパトロールを行うとともに、一定量を超える降雨時には事前通行規制を行うなど、安全確保に努めていたと聞いております。

 一般的に、道路の管理は各道路管理者がそれぞれ責任を持って行うものであり、この事故を防ぐことができたかどうかについては、国土交通省がコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、長坂委員長代理着席〕

前川委員 今、私がお尋ねする前に、大臣の方からお話しいただいたんですが、千七百か所、要対策箇所が千七百か所あったというふうに新聞報道にもなっています。

 この千七百か所というのは、その後、もう既に何年もたっているわけですけれども、対策は全部終わったんでしょうか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 奈良県が管理する道路で、令和四年の三月時点までに、この千七百か所のうち、約五百八十か所で対策が完了しているというふうに聞いております。

前川委員 局長、今、奈良県が管理する部分で千七百か所、こうおっしゃいましたけれども、ということは、奈良県の南部の山間地域で、県が管理する部分では千七百か所、国が管理する部分でも何か所、市町村が管理する場所でも何か所かその要対策箇所があって、実は要対策箇所は千七百ではなくて、二千なのか、三千なのか、五千なのか、ある、こういうことですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 奈良県の管理で申しますと千七百か所でございます。それ以外に管理しているのが市町村等ございます。国も管理しているところがございますが、それを含めますと二千六百か所ございました。

前川委員 その二千六百か所については対策は終わっているんですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、奈良県の、終了しているのが五百八十か所と申しました。それで、この二千六百に対応するものとしては、八百三十か所が完了しているところでございます。

前川委員 そのほったらかしになっている部分というのは危険はないんですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 残っている箇所につきましては、日々パトロールをするなどの対応をやっているものというふうに推測をしております。

前川委員 平成二十七年の十津川村の落石事故も、パトロールはしていたんだけれども、でも、岩が落ちてきて死にかけた。

 同じように、パトロールしていたら岩が落ちてこないというわけじゃないので、その何千という箇所で今、命の危険にさらされている、こういうことになるんじゃないんですか。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 そういった要対策箇所につきましては、日々、優先順位をつけながら計画的に整備を進めているところでございます。

前川委員 二〇一一年の八月に紀伊半島大水害というのがありまして、今取り上げた国道百六十八号線も大変な被害を受けました。その被害を受けて、今、百六十八号線は、それこそ何十メートルという高さの橋脚を建てて、その上にもう高速道路のような立派な道が高規格道路として造られています。

 確かに、これは地元からすればありがたいし、例えば、十津川村には大きな病院はありませんので、もしも急病あるいはけが人等が出た場合に、救急車で運ぶ、五條市まで運ぶ、その際の救急車の通り道にもなるので、地元では命の道なんていう表現もするんですが、でも、他方で、何千か所も、命の危険にさらされる道路が放置されている。ほったらかしにされている。その一方で、高規格道路が建設されていく。

 私は、税金の使い道、これが正しいのかな、優先順位がもしかしたら違うんじゃないのかな、まずは既存のインフラから危険を取り除く、こちらの方が大事じゃないのかなと思うんですが、大臣、この点、いかがお考えでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 高規格道路である五條新宮道路は、国道百六十八号に並行して、紀伊半島内陸部と沿岸部を結ぶ延長約百三十キロメートルの道路で、奈良県、和歌山県、国で整備を進めております。

 このうち、十津川村地区でございますが、現道の線形が著しく悪い箇所や斜面崩壊のリスクが高い箇所など、課題の大きい箇所から、区間を区切って順次整備を進めているところであり、十津川村では、長殿道路など四つの事業を国による権限代行事業で整備しております。

 平成二十三年の紀伊半島大水害時には、既に完成済みの区間において、孤立地域の解消や支援物資の輸送などの効果を発揮しており、この道路の整備により災害時のリダンダンシーが確保され、地域の安全、安心の確保に寄与するものと考えております。

 一方、この道路整備と並行して、古い現道においては、奈良県がのり面の防災対策や老朽化対策を進めていると聞いております。

 国土交通省としては、引き続き、五條新宮道路の整備を推進するとともに、奈良県の行う現道の防災対策などについても必要な支援を行い、地域の安全、安心の確保に努めてまいりたいと思います。

前川委員 十津川村というのは余り全国的に有名でないのかもしれませんけれども、源泉かけ流しの温泉があったり、あるいは、ジビエというんですか、イノシシとかそういうもののお肉もおいしかったりしますので、大臣も機会があれば是非、高規格道路を使って御視察をいただいたらと思います。

 地元の方々は確かにこの高規格道路というのに期待しておられるし、何よりも、そこで雇用が生まれる、仕事が生まれるというのもあると思うんです。ただ、立派な道路ができる横で人が死にそうな事故が起こってしまうというのは、私はやはり税金の使い道、優先順位が違うような気がしています。

 先日も少し申し上げましたけれども、子供が生まれてこない。八十万人弱しか生まれてこない。このままの出生率だったら、三十年後の生まれてくる子供の数は四十万人になっちゃう。かつて二百七十万人生まれていた時代から、日本という国が大きく縮んでいく。そうであれば、便利だから何でもやりましょうという時代じゃなくて、今あるインフラをどうやって維持して、あるいはどうやってこの国が縮んでいくのか、そこも考えなければならないように思っています。

 道路管理についても、知りませんが、国交省というと、何か行け行けどんどんのような感じがするんですけれども、縮んでいくという社会を前提にこれからの行政というのを考えていく必要があると私は思うんですが、最後にこの点、大臣にお尋ねしてよろしいでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 縮んでいくという言葉には少し抵抗を感じるところでございますけれども、人口減少社会において、しかし、社会資本整備、これはしっかり行っていかなくてはならない、人口減少を食い止めるためにも行っていかなければならないと思いますが、その基本的考え方として、先ほど前川委員おっしゃった、既にあるインフラをしっかりメンテナンスをして、これを長寿命化させていくということは非常に重要ですし、国土交通省としても、そちらの方に今、これからの社会資本整備はそういう方に重点を置いていくことになる、このように私自身考えております。

前川委員 時間が参りました。

 今日の本当にメインにやりたかったところまでたどり着いていないんですが、これは次回にさせていただきたいと思います。

 自動車局長と金融庁の三好審議官にもお越しいただいていますが、質問できずに申し訳ありませんでした。

 これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

長坂委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

    〔長坂委員長代理退席、委員長着席〕

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、公営住宅問題について質問します。

 まず、公営住宅法第一条には、「国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」とあります。このことは、憲法二十五条、生存権の保障の趣旨にのっとり、住宅に困窮する人がないよう国と地方の役割を明記したものと思いますが、大臣に確認させてください。

斉藤(鉄)国務大臣 公営住宅法第一条は、日本国憲法第二十五条の趣旨にのっとり、法の目的を明らかにしたものであると考えております。

 ここでは、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として、公営住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸するという、国と地方公共団体の役割について規定しているものと認識しております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 よく私たち、住まいは人権と主張しておりますが、まさにこの公営住宅法そのものが憲法二十五条に基づいているものだということを改めて確認をさせていただきました。

 ここで言っている地方公共団体というのは、都道府県並びに市町村という意味でよろしいでしょうか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 公営住宅法二条の一号によりますと、地方公共団体という用語の意義は、「市町村及び都道府県をいう。」というふうにされておりますので、この市町村及び都道府県は、公営住宅法三条の規定によりまして、低額所得者の住宅不足を緩和するために必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならないということになります。

高橋(千)委員 ありがとうございました。確認しました。

 そこで、資料の一枚目を見てください。

 三月五日付の河北新報です。「老朽県営住宅の廃止検討」と見出しが躍っております。今年一月六日、突如、宮城県内の該当する世帯に県から一枚の文書が届きました。県営住宅等の集約に伴う移転支援の方針なるもので、受け取った住民は寝耳に水だと不安の声を上げております。

 宮城県が管理する県営住宅は百一団地、記事の中にかなり書いてありますが、五百四十八棟、九千四十八戸です。その大半が昭和四十年代後半から昭和六十年代までの二十年間に供給されており、耐用年数を超える住宅は順次廃止していくというものです。

 資料の二枚目に「「県営住宅の集約に伴う移転支援の方針」の概要」というものがありますが、真ん中ら辺に書いていますが、用途廃止住宅の検討ということで、耐火構造七十年、準耐火構造五十五年、木造が五十年というように期限をまず明記をして、その下、一年目に入居者説明会、意向調査、二年目に移転支援の実施などを行って、おおむね十年で移転完了とあります。

 今年度に説明会対象になる予定団地は六団地、五百七十一戸あり、二〇三〇年度までに二割以上の県営住宅で移転説明会が始まることになります。記事の中にありますが、村井知事は二月二十七日の会見で、老朽化が進行し、安全上の問題が発生する前に、十分な期間を設け、より居住環境の整った住宅への移転を円滑に進める、一人一人の事情が違うので、一方的に追い出すのではなく、よく話を聞きながら移ってもらう形にしたいと述べたと報じております。

 国交省は、まずこの事案を承知しているでしょうか。また、県からはどんな相談を受けていたのでしょうか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、県営住宅等の集約に伴う移転支援の方針、中間案でございますが、これにつきましては、令和四年の十二月に、宮城県から私どもの東北地方整備局に報告があったと聞いておりまして、その際、宮城県の方からは御相談はなかったというふうに報告を受けてございます。

 国土交通省としては、そういう承知状況でございます。

高橋(千)委員 今のはどういう意味でしょうか。地方整備局に報告があったけれども、相談ではないという意味ですか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 御報告をいただきましたが、県からの御相談はなかったというふうに報告を受けています。

高橋(千)委員 なかなか衝撃の答弁でありました。

 そもそも、住宅を造るとか、それぞれの供給戸数そのものについては、当然、国の補助がありますので、協議があると思います。そういう意味でも相談があるのかなと思っていましたら、なかったという答弁でありました。

 それで、背景として、少子化による人口減少と、三・一一の大震災を受けて災害公営住宅が建設されたことで、県内の公営住宅数が震災前の一・四倍となったんだと、需要を供給が上回っていると説明をしています。

 令和二年八月の宮城県県営住宅ストック総合活用計画において、公営住宅の供給は、市町村が地域ニーズに基づき主体的に取り組むことを基本とし、県は県営住宅の新たな建設及び建て替えは行わずと書いてあるんですね。

 それで、ちょっとびっくりするんですが、まず、公営住宅の供給は市町村が主体的に取り組むことを基本というこの県の方針は、一番最初に聞いたように、地方公共団体というのは県と市町村が両方のはずであって、互いに責任を持つものと思いますが、確認させてください。

 また、新たな建設及び建て替えは行わないというのは、将来的には県営住宅を全廃するという意味にしか取れません。こうした方針を持つ地方公共団体はほかにあるでしょうか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、都道府県と市町村の関係でございますが、それぞれに、公営住宅法の三条の規定に基づきまして、必要と認めるときは公営住宅の供給義務があるという関係にございます。

 それから、お尋ねでございます、県のストック総合活用計画に、新しい建設や建て替えを行わないという点についてでございますけれども、これは令和二年度に改定をされました計画でございまして、今後十年間におきます県営住宅の維持管理や修繕、性能向上、あるいは用途廃止などの取組方針を定めたものでございます。

 ここの中では、御指摘のとおり、新たな建設及び建て替えについては行わず、既存ストックの長期活用を図るとされておりますところでございますが、これは、先生の先ほどのお話もございますように、県内の公営住宅をめぐる諸事情を勘案しまして、この計画の期間でございます令和十一年度までの当面の方針として定められたというものであり、また、計画期間中も五年ごとの見直しを行われるというふうに承知をしてございます。

 このため、御指摘の計画は、宮城県が公営住宅を今後必ずしも全廃するということまで決めたものではないというふうに理解してございますし、県も同様の説明をされているというふうに承知してございます。

 ほかの公共団体ではというお尋ねでございましたが、今後十年間の同じような計画、方針の中で、同様に新しい建設や建て替えを行わないというふうに定めているところもあるというふうに承知をしてございますが、将来的な全廃まで決めたという自治体については把握をしてございません。

高橋(千)委員 今の、あるというのはどこか、お答えできますか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 県あるいは市町村が作成されておりますストック活用総合計画、全てについてつぶさに確認をしたわけではございませんけれども、手元で私どもが把握できている範囲で申し上げさせていただきますと、岩手県、富山県、それから岐阜県、香川県においては、この同様の計画において、今後十年間、建設や建て替えについては行わないという内容になっていると承知をしてございます。

高橋(千)委員 十年間建て替えをしないということと、将来的にもしないということでは大分意味が違ってくると思いますので、もし局長がおっしゃるように、将来的には全廃という意味ではないんだとはっきり言えるのであれば、それはそうかもしれないんですが、今、住民は、では、どうしたらいいのかということで、非常に迷って、困っているわけなんですね。

 元々、県は災害公営住宅を一棟も造っておりません。岩手県は二千数百も造っていますから、全く違うわけなんですね。それでいて、仙台市が建設した災害公営住宅や市営住宅に将来的に空きが増えるだろうと、それを当てにしているということなんです。私は虫がよ過ぎると思います。

 仙台市当局は、この問題を市議会で問われて、この方針案につきましては昨年十二月に初めて県の担当課から概要について説明があったと答えて、移転先の中に市町村営の住宅などが入っているんだけれども、仙台市の市営住宅の高い応募倍率を踏まえると、現状では移転先としての住戸を確保することは困難と答えているんですね。仙台市の持っている市営住宅は一万一千九百三十戸、うち災害公営が三千百七十九戸です。将来人口が推計の都度、ピークが後年度に変化している、つまり、若い世代がまだまだいるということだし、生活保護受給者数も増加しているということで、需要が減っていくというふうにはまだ見極められない、こう答えているんですね。

 今も、市営住宅に応募しても抽せんで当たらず、何年も待っているという希望者がいます。そうした事情を飛び越えて、県営が老朽化で廃止するから優先入居というふうにはならないはずなんですね。

 それで、大臣に伺います。これは一般論でよろしいですので。

 県と市町村が近隣の住宅同士で集約をしたり、あるいは市営から県営など管理者が替わるなど、様々な工夫を行って、移転が入居者の精神的、経済的な負担にならないこと、現在、市営住宅への入居を待機している方がいるわけですから、そういう方に不利益にならないように、よく市と県が話し合って方針を決めていくことが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 委員御指摘のとおり、一般論として、公営住宅の集約などにより居住者が移転を余儀なくされる場合においては、対象となる方の居住の安定の確保を図ることが極めて重要です。

 このためには、居住者の御負担が少なくなるよう、関係する事業主体が相互に十分連携することが必要と考えます。

 御指摘の宮城県の計画においても、市町村と協議の上で、市町村と調整しながら進める旨が明記されている、このように承知しております。

高橋(千)委員 そうなんです。調整しながら進めていくと書いているんだけれども、それ、調整する前に出ちゃったんですよ、利用者に対して。だから、市の方だって聞いていませんよという話になっちゃった。これは非常にまずいことだなと。だけれども、そうはいっても、これからどう解決していくかというときに、絶対調整や話合いは必要だなと思ってお話をさせていただきました。

 共産党の県議団が行ったアンケートには、お知らせをもらった方たちが、内容は分かったけれども、突然、集約、移転のチラシが入り、驚いています、ついの住みかと思っていました、高齢で年金暮らし、低い家賃だからこそ支払いできているのに、環境も変わり、家賃の補助、支援もしないで、ここを出ていけというのは言語道断だと、三年前に引っ越ししてまた引っ越すのはつらいです、年も年なので、八十五歳、引っ越しできない、ずっと住み続けたい、出ていけとはひどい、様々あるんですね。もちろん出ていけと言われたわけではないんですが、余りの突然の通知にそういう印象を受けた方が多いのはやむを得ないことだと思うんですね。

 今年二月一日現在で、県営住宅の六十五歳以上の高齢者世帯、三千七百四十六、五一・七%にもなります。うち高齢者の単身世帯は二六・三%です。しかし、十年後は、六十五歳は七十五歳になって、八十から九十歳になって引っ越ししなければならないのか、そこに途方に暮れているわけですよね。

 また、議員団との懇談の中で、十年前になって初めて移転準備するということで、自分のところの説明会は六年後になると。六年後に十年後の話が初めて聞かされる。どうせ引っ越すんだったら、少しでも若くて動けるうちがいいのにという声がありました。もっともな話だと思うんですね。

 宮城県も、移転支援の方針として、高齢者を始め、低所得者世帯、障害者等、配慮の必要な方への対応、通院、通学などの移転先への希望などを支援していくと書いてあります。やってもらわなきゃいけません。

 それで、一般論で、入居者自身の都合ではない移転をさせられる場合、引っ越し費用への支援はあるか、また、家賃を現状維持とする必要があると思うんですが、家賃補助、どうなっているか、お願いします。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 入居者の方々の不安への対応ということでございますが、事業主体の都合で公営住宅を集約する、その際に、居住者の方に移転をいただく際には、居住の安定が図られるようにする、また、御心配、御負担ができるだけ小さくなるようにする、そうなるように丁寧な対応をすることが重要だと認識しております。

 その上ででございますけれども、公営住宅の除却に伴って移転が必要となる入居者に対しまして、地方公共団体の方で移転に必要な費用を支払うという場合に、国の方におきましても、その費用に対しまして、社会資本整備総合交付金等によりまして支援を行うこととしてございます。

 また、公営住宅の除却に伴いまして、新たに入居をしていただく他の公営住宅の家賃が従前の公営住宅の家賃を超えて、居住の安定の確保のために必要な場合におきましては、地方公共団体の方で、入居者の急激な家賃上昇を避けるために、家賃を減額するということにしておりまして、国におきましては、こういった減額措置に対しましても、社会資本整備総合交付金等によりまして支援を行うこととしているところでございます。

 引き続き、移転が必要となる入居者の居住の安定が図られますような取組を着実に進めてまいります。

高橋(千)委員 どちらも社総交で対応できるというお話でした。

 激変緩和だと、さっき言ったように、年齢を重ねていくわけですから、収入が増えるというわけではないわけですよね。なので、今の公営住宅の仕組みに近いもの、同じものになっていくように支援が必要だと思いますが、そうなっているでしょうか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 御移転をいただく際の移転先の公営住宅として、どのような住戸にお入りいただくかについては、事業主体の方でできるだけ多くの選択肢を御用意をし、移転をされる方にできるだけ多くの選択肢を与えて、選んでいただくということが大事だと思います。

 その際に、現在の、従前の住戸よりも家賃が上がるもの、同じようなもの、様々な選択肢を提供する中で、従前家賃と同じような家賃の住戸に入りました場合には、従前の家賃をそのままという御負担になりますけれども、より高い家賃の住戸を選ばれるという場合におきましては、急激な家賃上昇を避けるための減額措置を講じる、こういう考え方かと存じます。

高橋(千)委員 ちょっと、同じ答弁だったような気がしますけれども。

 それで、ちょっと時間の関係で一つ飛ばしまして、用途廃止の計画が出てしまったことで、新規の募集がされないのでしょうか。そうすると、困るわけですよね。既に入居者から、廃止が決まったからと、修繕を頼んでもやってもらえないという声が聞こえています。

 しかし、さっき言ったように、全て廃止ということが決まっているわけじゃないわけです。また、私は、必要な分は、同じ数ではないかもしれないけれども、やはり建て替えもやっていくべきだと思っています。そういう点でも、新規の募集というのは必要だと思います。積極的に募集や修繕も行っていくべきだと思います。その点で意見を聞きたい。

 それで、資料の三番を見ていただきたいんですが、県営住宅の一般公営住宅は、浴室は一〇〇%あるんですけれども、浴槽が設置済みなのは二九・八%、三割を切っているんですね。お風呂給湯設備も二七・五%になっています。

 大臣は、風呂なし公営住宅がこんなにあるのを御存じでしょうか。決して宮城だけの話じゃないんです、実は。健康で文化的な生活を営むに足りるという公営住宅法第一条に照らしても、このままでよいのかということも踏まえて御答弁をいただきたい。

斉藤(鉄)国務大臣 最初の御質問でございますが、建て替えについては先ほど局長が答弁したとおりでございますけれども、住宅の質のレベルを維持していく、そのための修繕、これは当然必要だ、このように思っております。

 用途廃止を予定している公営住宅において、入居者募集や修繕を行うかは、地方公共団体が、地域の公営住宅ニーズや用途廃止の時期など地域の実情を踏まえ、判断するものと考えております。

 浴室の問題でございますが、公営住宅法制定当初は、その整備の基準に規定が置かれておりませんでした。その後の生活レベルの向上を踏まえ、昭和五十年の改正により、浴室を設置しなければならないことといたしました。浴室は、健康で文化的な生活を営むに足る住宅のために必要であると考えております。

 浴槽等の設置を地方公共団体が行うか入居者が行うかは、事業主体である地方公共団体が判断しており、入居者が浴室に浴槽等を設置して自宅で入浴できる環境にあるケースも少なくないと思われます。

 国土交通省としては、浴槽を含めた浴室の設置に対して社会資本整備総合交付金等により支援してまいります。

高橋(千)委員 浴室は必要ですとまで言ってくれたのに、浴槽は自治体に任せると言われるのはちょっと残念な気がいたしました。やはり、一条の精神に照らして、また、時代が変わってきているということもあるんですから、これはもう一声、やはり見直しをしていただきたいと思います。

 今、本当に、災害時の問題や困窮者の対策や、そして子育て支援という点でも公営住宅の役割は見直されてきていると思います。ニーズはどんどん増えてきていると思うんですね。そういう意味で、廃止だけが前に出るということではない見直しを求めていきたいし、是非国も相談に乗っていただきたい、このことを求めて、終わりたいと思います。

木原委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 今日は、現在審議会で議論が大詰めを迎えております国土形成計画について、私、昨年の三月二日の最初に、国土交通委員会で質疑に立ったときも大臣と議論をさせていただきました。そのとき、私からは、国土形成計画というのは、国家としての意思とか理念が求められるものであって、国土計画というのは国土をデザインすることそのものですから、まさに政治そのものなんだというような議論をさせていただきましたけれども、ちょっと大臣には、政治家としての思いをいま一つしっかり受け止めていなかったような気もいたしますので、今日は、質問通告のときにもあらかじめ申し上げましたけれども、理念的な話をさせていただきますので、御自分のお言葉でお答えいただければと思います。

 前回も、下河辺淳さんという、私の水戸一高、山口代表も出ている、そこの先輩でありますミスター国土官僚の言葉というのを紹介しました。国土計画とは何か。国土を論ずるということは、簡単に言えば、人と自然の関わり方をいろんな角度から論ずるということだと思います、国土政策論を論ずるときにいろんなアプローチの仕方があるんですが、基本的には、歴史を見るということは大きな見方の一つだろうと思いますと。つまり、国土交通省の所管ではなくて、もっと広い観点から見なければならない。

 塩谷隆英さんという元経済企画事務次官の方が一昨年、「下河辺淳小伝 二十一世紀の人と国土」というのを書いております。ここでも下河辺さんの言葉として、新全総、昭和四十四年に作ったときに、下河辺さんが塩谷さんにこう言っていたと。時代は日本列島をどのように使っていくのかという新しい国家百年の計を求めていたということでありまして、資料一に前回の議事録をつけさせていただきました。

 資料三、次のページをめくって裏なんですけれども、これは昭和四十四年の新全総の前文なんですけれども、二ポツの「新しい社会への対応」、ちょっと細かいものなんですけれども、読むのは省きますけれども、非常に理念的なことが書かれております。最後の全総は、「二十一世紀の国土のグランドデザイン」ということで、平成十年に作られたものですけれども、ここでも、「我々は、今、二十一世紀の幕開けのときを迎えようとしている。」と書いてあって、非常に理念的な大きな時代認識が示されております。

 確かに、国土総合開発法の目的が国土の開発とか産業立地の適正化というのがあったのを変えて国土形成計画法で国土の整備にするなど、ターゲットとするものは変えておりますけれども、私はこの広い歴史的な観点から、理念的な面から国土をデザインするという精神は、国土形成計画も全国総合計画も変わらないと思いますけれども、そうした精神、引き継がれていると考えているか、是非一言で簡潔にお答えください。

斉藤(鉄)国務大臣 全総も国土形成計画も、これからの日本をどのような国にしていくのか、国土という観点から長期的方向性を示すものだ、このように思っております。

福島委員 ありがとうございます。

 それを前提として今から議論を進めたいんですが、三月七日の国土審議会計画部会に骨子案が提示されました。確かに今、ここでも示されている時代の重大な岐路に立っている。人口減少、少子高齢化、巨大災害リスク、気候変動の深刻化、ポストコロナ禍の時代、働き方の変化、あるいは国際情勢が緊迫化している、そうした時代認識は、全ての国民、我々政治も持っていると思います。

 そして、今回の新しい計画のキャッチフレーズが、新時代に地域力をつなぐ国土、何か物すごい平凡なんですよ。国土構造の基本構想というのが、シームレスな拠点連結型国土、国土づくりの基本的な方向性が、デジタルとリアルの融合による活力のある国土づくり。

 資料四を御覧いただきたいんですが、これまでの全総、国土形成計画の真ん中あたりに基本目標というのがあります。例えば、一全総の地域間の均衡ある発展、国土の均衡ある発展というのはずっとそれから数十年にわたってキャッチフレーズとして生き続けました。三全総は、開発方式等の定住構想というのも、これも人口に膾炙する言葉となりました。四全総の例えば多極分散国土とか、こうしたものは全て大体十年ぐらいのキャッチフレーズになる言葉だったんですね。でも、新時代に地域力をつなぐ国土というのは、学校の何かスローガンみたいなものとしてはいいのかもしれないけれども、哲学とか理念とか、感じません。

 この国土形成計画は、二〇五〇年、更にその先の長期を見据えつつ、今後おおむね十年間程度、つまり、二〇五〇年に日本がどうなっているかと描くのが、新時代に地域力をつなぐ国土では何も見えないんですね。言葉に力がないんです。これは下河辺さんも言っているんですけれども、国土計画というのは、国民の皆さんに二〇五〇年はこういう国になるんだと、明るい未来を描いてもらうものでなければならないと思うんですよ。

 大臣、一体、この二〇五〇年の日本の国土は、この言葉じゃ分からないんです。大臣の言葉でどんな国土になるというふうにおっしゃられるか、ちょっとお聞かせいただけないでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 この言葉ですけれども、いろいろ、我々も議論し、そして、審議会でも御議論をいただいて出てきた言葉でございます。

 この言葉に、私も議論に参加させてもらいましたから、私が考えているのは、これまで、今、この人口減少社会において東京一極集中という問題がございますが、いかに全国の、全土の活力を維持していくかという観点から、これまで、コンパクト・アンド・ネットワークという概念を我々主張してまいりました。それに、デジタル田園都市国家構想、そのデジタルという観点も含めて、つながるという、これまで言ってきたコンパクト・アンド・ネットワーク、プラス、デジタル。言葉にしてしまうと何か矮小化されているような気がしてしようがないんですが、そういうイメージを私は持っておりまして、それを表す言葉だ、このように思っています。

福島委員 多分、今の言葉を聞いて、国民の皆さんが、ああ、この国土形成計画で日本はこんないい国になるんだと思い浮かばないと思うんですよね。

 かつての、例えば、最初の一全総であれば、これまで農業地域であったところに新たなコンビナートとかそういうのができて、地域に様々な産業が生まれるという発想があったでしょうし、定住構想であれば、一つの文化圏を単位とした新しい人間のつながりができるというのが分かっただろうし、多軸型国土構造形成だったら、例えば、整備新幹線などで様々なところがつながれるという具体的な絵が描かれたんだと思うんですね。

 これをずっと通して読んでも、単なる国土交通省の既存の政策の羅列を言葉で飾ったようにしか、申し訳ないけれども見えない。

 例えば、中枢中核都市等を核とした広域圏の自立的発展と広域圏間の交流、連携の強化とかというのが書いてあって、そのため、これを支える国土基盤の充実強化と書いてあるんですが、じゃ、この中枢中核都市とはどういう姿なのと。更に言えば、骨子の二十六ページには、生活圏内人口十五万人程度を想定とした地域生活圏の形成とかと書いているんですけれども、僕らはみんなどこかに住んでいるわけです。例えば、私であれば水戸市民、人口二十七万人の水戸市に住んでおります。これが中枢中核都市だとするならば、この町がどういう町になっていくのか。

 私は、非常に中核市というのは大事だと思っているんです。それは、例えば、大学もある、産業もある、大きな商店街もある、交通もそれなりに公共交通も整っている、何よりも大事なのは、学ぶ場所とともに、芸術館という美術をやる場があって、そこには楽団も劇団もあって、さらに、プロのサッカーチーム、バスケチームもあって、つまり、人間が生きていくうちの潤いの全てのワンパッケージが経済圏として成り立つのが二十五万ぐらいの中核市じゃないかと思うんですよ。そこに、我々の同級生なんかは、電車で三十分かけて、学校に通ってきたり、週末にはプロスポーツを見に来たりして、そこで一つの大きな生活圏が成り立つんですよ。

 それが、じゃ、さっき大臣がおっしゃったデジタルとか、そうした中で、五十年後にはどうなっていくのかという姿が見えれば、ああ、なるほど、自分の生活は、二〇五〇年、この町に住んで、こうなるんだと分かると思うんです。

 この中枢中核都市がどういうものなのかも分からないし、生活圏内人口十万人程度と、人数で割るのはいいですけれども、十万人程度の町というのは、どういうもので結ばれるのか。職場に行くのに、車で行くのか、公共交通でいくのか、あるいは、その生活圏内の十万人の都市から中枢中核都市にはどうやって行くのか。

 私は、例えば、この中枢中核都市というのができれば、その中枢中核都市同士を早く結ばなきゃ駄目だと思うんです。そうしたら、整備新幹線じゃなくて、むしろ、在来線を高速化しなければならないかもしれないし、一杯飲んで帰ろうといったら、やはり、車を使わないで公共交通を使いたいわけですよね。でも、駅からどこかへ行くのにも、バスがないとなったらできないから、それは今議論しているような公共交通のリデザインに向けての法律もあるかもしれないけれども。

 ただ、全体の、我々、そこに住む人がどうなるのかという、人間がないんですよ。人間は、交通だけで生きるわけではない、インフラだけで生きるわけでない。様々な文化があったり、それが親から子へ、子から孫へと引き継がれる、その場が都市なわけですから、そうした絵を描けるような国土形成計画に私はなっていないと思うんです、残念ながら、今回のを見て。

 二〇五〇年、私は水戸の二十七万の中核市に住んでおりますけれども、我々国民の生活は、この国土形成計画の下、二〇五〇年はどういう暮らしをするのか、どういう暮らしを思い描いているのか、ちょっと大臣、それをお答えいただけませんでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 今回は、先ほど申し上げましたように、私の言葉で言って、私、語彙力がないんですけれども、これまでのコンパクト・アンド・ネットワークにリアルとデジタルの融合というような考え方を兼ね備えさせて、これからの人口減少社会の基本的な構造をつくっていく。そして、そのコンパクトの核になる一つとして中核都市、そして、その下位のレベルにある人口十万の一つの核、こういう位置づけにしているわけです。

 中核都市については、一定の都市機能、防災、安全、また医療等の機能を持たせる。そして、十万人については、最低限の生活レベル、買物とか、日々の生活を送っていく上での最低限のサービスが提供できる。そういうものを有機的に結びつけていく、こういうイメージ。当然、それを結ぶ交通というのも非常に重要になってくると思います。

福島委員 それはもう、大臣、国交省を担当されて長いですけれども、まさに役人的なんですよ。

 だって、町で僕らが演説するときに、日本の将来はコンパクトだ、デジタル・アンド・リアルでどうたらこうたらって、私は少なくとも地元で演説するときはそう言いませんね。そこにいる、目の前の人の暮らしがどうなるかという、夢を持ってもらえるような言葉をなるべく言うようにしますよ。今の言葉はお役所言葉であって、我々政治家が国民に語りかける言葉ではないというふうに思うんですね。

 何でそうなっちゃったのか。これは、最後の全総、さっきの二十一世紀の国土のグランドデザインを作るときに、下河辺さんがメモを残しているんですね。それが本のどこかに書いてあって、後で参考資料で読んでいただければいいと思うんですけれども。

 例えば、そこに書いてあるのは、そのときの全総、平成十年のですよ、作るときに、二十世紀の国土軸の改造、改造ですよ、二十一世紀の東日本国土軸の整備、太平洋新国土軸と日本海新国土軸の整備、その後が、歴史的東アジア国土軸の復興とか、復興なんですよ。太古の昔は、大陸との交流が、長崎とかああいうところとか、盛んでしたよね。もう一度、歴史的な東アジア国土軸の復興というのは、平成十年の時点で、これからはアジアが中心になるからそっちの軸をつくりましょうと、これは文明論なんですよ。

 「人と国土」という、それを作るときに書いた雑誌の巻頭言では、第五次計画というのは戦後五十年の歴史の延長線上ではない、新しい日本の次の五十年のための第一次計画として位置づけられることに意味があると思う。物すごい長期で、理念的なものを考えているんですよ。そうした歴史認識とか理念とか哲学が、申し訳ないけれども、さっきから繰り返しているコンパクトとかデジタルとリアルとか、その片仮名言葉からは全く出てきません。

 何でそうなっちゃったのかなと思って、この国土審議会計画部会のメンバーを見たら、確かに、それぞれの分野では、縦割りの分野では専門家なんでしょうけれども、文明論とか哲学とか、そういうことを論じられるいわゆる幅広い教養を持った人というのは入っていないんですよ。これは国土審議会でも議論されますので、国土審議会のメンバーもしかりで、唯一入っているのが、ここにいる小宮山泰子さんが国土審議会のメンバーになっている。政治家が入る審議会というのは珍しいんですよ。

 私は、このプロセス自体が余りにもお役所仕事過ぎだったんじゃないかと思うんですよ。官僚の答弁、後ろからの、読まないでくださいね、あらかじめ申し上げておきますけれども。

 やはり、ここに日本の最高の知性を入れなきゃ駄目なんです。国土交通省の所管の専門分野の学者じゃなくて、日本の将来を見通せる人、我々政治家もそういう存在じゃなきゃならないから、この審議会には政治家も入っているんですよ。

 もう一度、そういう観点から、でも、そう思ったら、余りいないんですね。かつては丹下健三さんとか梅澤忠雄さんとか名立たる人たちがこうした計画を作るのに携わってきましたし、下河辺さんという人も、旧制水戸高校で教養を学んだ、水戸学の素養もある非常な教養人であり、異色の、異能の官僚だったんです。昔でいえば堺屋太一さん、国土交通省は嫌いかもしれないけれども、静岡県知事の川勝さんとかは下河辺さんの流れを引く人なんですよ。

 でも、やはり、そうした国土のデザインをやる、その知的な基盤を持った人を加えて議論しなければならないと思いますし、ちょうどここに来る前、国土交通省のホームページを見ていたら、かつての、首都機能移転のときに、いろいろな人たちの、有識者のコメントをホームページに載せています。そこに恐らく日本の知性の最高レベルの人の多くが並んでいるんですね。

 ですから、私は、この作るプロセスがそもそも間違えたから、さっきからおっしゃるコンパクトとかデジタル、リアルとかという血の通わない言葉になっちゃっているんですよ。国会議員にだっているんですよ、猪瀬直樹さんとかね。いっぱいいるんですよ、そういう知見を持った人は。だから、もうちょっとそうしたバックグラウンドを持った人の声も聞いて、まだ作るまでに時間が多少あるでしょうから、話を聞いた方がいいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 国土形成計画は、先ほどの審議会、計画部会の先生方、それから国会議員やいろいろな分野の方に入って御議論をいただいております。そして、いろいろな方、経済界との対話、意見交換、それから、若い人たちに入っていただいて、今後の国土の在り方についての対話等、いろいろな努力を積み重ねて、御議論をいただいて、今回のこのたたき台、案ができているものと思っております。

 いろいろな分野の方の意見を総合する、そういう福島委員の考え方そのものには、そのとおりだと思います。

福島委員 いや、私が言っていることは意味が違うんですよ。いろいろな人の意見も聞くのも大事だと思います。でも、座長の増田さんは、立派な方だと思いますけれども、私から見たら、審議会のまとめ役としては適任なのかもしれないけれども、哲学とか理念とかが卓越した人と思えないんですよ。

 最高の知性が必要なんです。最高の知性は何かといったら、分野横断的な教養を持った人ですよ。かつては、そういう人がいっぱいいた。そういう人がこの国の未来を描く素案を、とがっていてもいいから作らないと、今後五十年間の日本の姿は描けないと思いますよ。会社の経営者や学生に聞くのもいいですよ、じゃ、その人が二〇五〇年の姿を描けるんだったら、もっとその人は別の活躍の場があるはずなんですね。だから、そうした、この国の五十年間を決める大事なものだという認識が欠けた委員の構成に残念ながらなっちゃっているんじゃないかと思います。

 下河辺さんはこういうことも言っています。この国土計画をやるのに、できるだけ国会議員には遠慮をいただこうという話が出ました、しかし、私としては、国土審は代議士が入っていた方がよいという意見を述べた経験があるんです、審議会では、代議士も入って、フリートーキングの懇談会という形ができた方がいいと思うんです、国会においても、国土総合開発計画についての審議は、建設委員会では私は少し限界を感じていて、もっと国政として総合的な土俵で論争すべき政治課題じゃなかろうかと。

 私は、この国土計画こそ我々政治の役割だと思うんです。ここにいるメンバーで入っているのは、小宮山泰子さんだけにその役割を背負わせるというのは余りにも重荷だとも思うんです。いや、能力は十分にあると思うんですけれども、でも、やはり一人なんですよ、この国土交通委員会の中で入っている方は。そうなんですよ。(発言する者あり)今、小委員会をつくるという話がありました。

 これは、今のままいくと、五月二十六日に計画原案が計画部会で取りまとめられて、パブコメに付されて、六月以降、国土審議会で議論され、夏頃に閣議決定されることになっております。

 与党の皆さん、寝ていらっしゃる方が多いですけれども、寝る話じゃないんですね、これは。権力そのものなんです、国土のデザインをどうするかというのは。皆さんが与党として議論しなきゃならないし、我々も超党派で議論に参加したいんです。国土交通省の審議会が作って、こんな冷たい言葉だったら、地元で演説のネタにもなりません。

 ですから、委員長、この国土形成計画を、これは前回も言ったまま一年間放置されているんですけれども、この国土交通委員会の場において、集中的に、与野党で、フリートークでもいいですが、これまでにないやり方でも結構だと思いますので、議論する集中審議の機会をいただくことを求めたいと思います。

木原委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議をいたします。

福島委員 是非これは実現させていただきますことをお願い申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

木原委員長 次に、深澤陽一君。

深澤委員 自由民主党の深澤陽一です。

 本日、一般質疑の機会をいただきました。理事の皆様に心から感謝を申し上げまして、早速ですが、質疑に入らせていただきます。

 トラックドライバーの労働時間の上限規制が二〇二四年四月から始まりますが、改正内容に関しましては、拘束時間の最大時間が、改正前十六時間であるのに対しまして十五時間、休息時間を継続して八時間であったのに対して、原則は十一時間ですが、下限として継続九時間となりました。現実を踏まえた制度設計の苦労が見て取れる内容だと感じております。

 このように、一定の配慮はあるものの、依然として、いわゆる二〇二四年問題は大きな課題であると感じております。

 そのような中で、トラック輸送を代替する手段として海運への期待が高まっているということは私も認識をしております。代替する海運といたしましては、運ぶものによりまして、フェリーあるいはローロー船がありますが、私の地元の清水港におきましては、既に九州や東日本との間にローロー船の航路があり、この航路の更なる活用が大変重要であると感じております。

 一方で、ローロー船の荷役を扱う清水港袖師地区におけるローロー船ターミナルですが、令和元年の台風十九号による高潮で浸水被害を受けており、それに加えて、そもそもターミナルの老朽化という課題もありまして、早急に対策が必要な状況であると、私も何度か御要望や説明に伺わせていただきました。

 最近では、中部横断自動車道の開通、新東名高速道路の延伸がありました。そして、間もなく国道一号線バイパスの一部供用開始となります。清水港へのアクセスはますますよくなります。そのため、このローロー船のニーズは更に高まるものと期待をしておりますが、そのためには、先ほど述べた清水港袖師地区のローロー船ターミナルの老朽化、高潮対策を早急に進めていただきたいと考えますが、国交省のお考えをお伺いいたします。

堀田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、トラックドライバーに対する時間外労働規制が適用される、いわゆる二〇二四年問題や、これらに起因いたしますトラックドライバーの労働力不足に対応するため、ローロー船の活用は非常に重要であり、そのニーズもますます高まるものと認識をしております。

 また、このローロー船は、災害時の機動力確保の観点からも大変有効であるというふうに考えております。

 こうした中、清水港のローロー船ターミナルである袖師第一埠頭は、供用開始から四十年以上が経過いたしまして、施設全体の沈下など老朽化が進展していることや、令和元年の台風十九号によりまして浸水被害を受けたことなどから、御指摘の老朽化、高潮対策が急務となっているというふうに認識しております。

 国土交通省といたしましては、令和元年の台風十九号以降、港湾管理者である静岡県や港湾利用者と連携いたしまして、袖師第一埠頭における老朽化、高潮対策について技術的な検討を進めてきたところでありまして、これらの検討結果に基づいて早急に対策を図ってまいりたいと考えております。

深澤委員 ありがとうございます。

 私の地元の袖師地区の埠頭に関しましては、今御説明がありましたが、早急に対応していただけるということでした。海に面して仕事をしますので、それに対して高潮とかあるいは津波対策とか、非常に難しい部分があって御苦労いただいたと思いますが、前向きな答弁をいただいたのに感謝申し上げます。

 加えて、この袖師地区は四十年経過ということでありましたけれども、清水港全体で見ましても、四十年、五十年の港、岸壁が多くございます。現在も更新をいただいておりますが、これは全国を見ても恐らくそういうことだと思います。

 そういう意味でも、国土強靱化を含めて、様々、計画的にといいますか、予算の確保を、これからも継続して、是非、大臣の方には要望を、期待をしておりますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、もう一つ、台風十五号に関連して質問をさせていただきます。

 国道一号線バイパス清水立体の整備についてお伺いをいたします。

 国道一号線バイパス清水立体事業は、平成三十年度から施工が始まり、当初はおよそ十年で完成を目標に進められてまいりましたが、その後、静岡国道事務所を始め国交省の皆様の御努力で、まずは令和八年度中に上り線から前倒しで供用開始との見通しが公表されました。地元としても大変期待をしているところであります。

 国道一号線バイパスは、静岡市内で一日およそ六万台ほどの交通量があり、日中は慢性的な渋滞が発生し、特に朝夕の渋滞は、企業だけでなく、我々地元住民にも解消してほしい課題となっております。そのため、清水立体の一日も早い全線開通が期待をされております。

 一方で、この事業が進む中で、生活道として使っていた方々にとっては、ルートが変わってしまい、人によっては不便になるとの心配の声が上がっております。この点に関しましては、現在、継続して国道事務所の皆様が地域ごとにワークショップを開催していただくなど、課題の解消に努めていただいていることを承知しており、そのことに対しましても重ねて感謝を申し上げます。

 そのような様々な課題に対して丁寧にこれからも取り組んでいただけることに期待をしておりますが、さて、ちょっと話題を変えまして、昨年九月、静岡市内では台風十五号に伴う線状降水帯が発生し、市内に大きな被害をもたらしました。比較的高台を走っております国道一号線バイパスも道路冠水が起こるなど、危険な状態が発生いたしました。今後、立体化によりその多くは解消されるものと思われますが、一部、新幹線との交差部分は構造上低くせざるを得なく、そこに昨年の台風十五号のときに大きな道路冠水が発生いたしました。

 視界の悪い状況での冠水は大変危険で、開通前に課題の検討をしていただきたいのですが、その課題の認識と対策について、お考えをお伺いいたします。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 国道一号の静清バイパスの清水立体区間につきましては、静清バイパスの中で唯一の立体化が完了してございません。前後の区間と比べて速度低下が著しく、早期の立体化が望まれているところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、清水立体につきましては、早期の整備効果を発現させるため、まず、東京行きの上り線、これにつきまして令和八年の春頃の開通を目指して事業を進めているところでございます。

 現在、全ての橋梁下部工事に着手済みでございます。上り線の橋梁上部工事についても現場での架設に着手するなど、全面的に工事を進めておりまして、引き続き、地域の皆様方の御協力を得ながら、一日も早い完成を目指して整備を進めてまいりたいと考えております。

 また、委員御指摘の東海道新幹線と国道一号との交差部において、昨年九月、台風十五号の大雨によりまして道路が冠水いたしまして、約五時間の通行止めが発生するなど、災害時の交通機能の確保の面で課題があるものと認識をいたしております。

 今後、静岡県また静岡市と連携をいたしまして、冠水の被害を特定した上で、必要な対策を早急に進めてまいりたいと考えております。

深澤委員 早急に考えていただけるということでありました。

 私、以前、学生時代は長野で過ごしておりましたので、静岡から長野に、高速道路を使って車で大学と地元を行き来していたんですけれども、もう大分前ですが、二十年以上前ですから、そういうこともあるのかなと。高速道路を、ちょうど下りを走っていたときに、坂道の最後でちょうど大きな水たまりが突然発生して、そこに突っ込んでしまいまして、かなり危ない思いをしたというのが記憶にあります。

 そういうことはほとんど今の高速道路ではないと思われますが、しかし、今回の国道のバイパスの話ですけれども、そういった信号がない区間で突然大きな水たまりができてしまう危険性がある場合には、本当に危ない状況が発生すると思います。そのほか、いろいろな豪雨対策も含めて全般的に気をつけていただいて、是非、いろいろな対策を講じていただいて、安全に利用できる道路の完成に向けて御尽力を、お力添えをいただきたいというふうに思います。ということで、要望とさせていただきます。

 続きまして、質問に移ります。

 中部横断自動車道に関しまして質問いたします。

 二〇二一年八月に新清水ジャンクションから双葉ジャンクションにかけて全線開通いたしまして、構想から三十四年ほどかけて静岡―山梨区間の供用開始となりました。この道路建設によりまして、周辺には新規の企業立地があり、また、観光用道路としても大変多くの方々に利用され、当初の期待どおりの効果が出ていると感じております。

 この道路建設には、行政や経済団体はもとより、当初から多くの地域住民の皆様も建設促進活動に御尽力をいただいておりました。例えば、私の地元では、するが女性みちの会という団体が、いつもピンクのおそろいのウェアで大会や国土交通省への陳情などにも御参加いただいておりまして、活動に勢いをいただいておりました。

 その中で、特に、両河内地区というところからの参加者が多かった印象が残っているのですが、当初、中部横断道開通に当たりましては、スマートインターチェンジやサービスエリアができ、また、一部の地域は、残土処分のため、その両河内地域の方々は住まいを移していただく御協力まで決まっておりましたが、その後、政権交代によって、事業仕分がありまして事業の見直しとなり、それまでの両河内地区の計画事業はほとんどなくなってしまいました。予期せぬ計画変更に地元も一度は落胆をいたしましたが、その後、防災の観点とスマートインターチェンジの必要性を私の先代の望月義夫代議士が力強く訴えていただいた結果、スマートインターチェンジに関しましては、事業が再決定といいますか、復活をいたしました。

 そのような経過もありますので、このスマートインターチェンジの早期実現には、地元も並々ならぬ期待をしております。静岡市もアクセス道の整備や周辺地域の利活用の検討も進めており、一日も早い供用開始が待たれますが、質問といたしまして、現在の両河内スマートインターチェンジの進捗状況と今後の見通しについてお伺いいたします。

丹羽政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の両河内スマートインターチェンジでございますけれども、中部横断道の新清水ジャンクションと富沢インターチェンジの間に設置されるETC専用のインターチェンジでございまして、令和三年の八月に事業化をしております。

 現在、静岡市及びNEXCO中日本におきまして、詳細設計を実施しております。令和五年度には用地測量に着手する予定と聞いております。

 この両河内スマートインターチェンジでございますが、防災機能の強化、また、観光振興の活性化など整備効果が期待されているところでございまして、国土交通省といたしましては、引き続き、早期供用に向けまして、静岡市及びNEXCO中日本に対しまして財政的な支援を行ってまいりたいと考えております。

深澤委員 ありがとうございます。

 非常にこの両河内地区を始めこの方々は、結構、事業の、なくなったり復活したりと振り回されておりますので、しっかりとこれが進捗、進められるようにお願いをしたいと思います。

 最後の質問に移ります。

 日本の貿易のおよそ九九%が海上輸送でありまして、その基盤である日本の造船業は重要な産業であります。さらに、その造船業を支える舶用品製造業も大変重要であり、昨年成立した経済安全保障推進法によりまして、エンジン、ソナー、プロペラの三つの舶用製品が特定重要物資に指定されました。

 しかし、この三品目以外にも、日本には非常に高い技術で優れた舶用製品を造っているメーカーがあり、車以上に部品数の多い造船業においては、それらを守っていくことが経済面でも大きな意味があると思います。

 以前、船の建造が国内であっても、価格競争の結果、最近では舶用製品を中国や韓国のものを採用されてしまうケースがあって、これまで以上に注意して営業に取り組まなければいけないというような話を伺ったことがあります。これがどの程度の業界を反映している意見なのか分かりませんが、こういった観点で質問をさせていただきます。

 日本の海運のために、造船、特定重要物資に加え、国内の舶用製品も守るべき重要な産業ではないかと考えますが、お考えをお伺いいたします。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の経済と安全保障を支える船舶を建造する造船業並びに船舶向けの部品や機器を製造する舶用品メーカーは、御指摘のように、我が国にとって極めて重要な産業であると考えてございます。

 昨年十二月、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資として指定したエンジン、プロペラ、ソナーはもとより、委員御指摘のとおり、我が国の舶用品の高い性能と品質は、我が国の海運、造船業の競争力の源泉であります。指定を行った特定重要物資以外の舶用品も含めて、安定的な供給に必要な事業基盤や国際競争力の強化が大変重要であると考えております。

 一昨年に制定した海事産業強化法では、事業者による計画を認定して、事業基盤の強化に向けた設備の導入等を金融、税制等により支援してございますが、本制度は、舶用品メーカーも対象としておりまして、国交省よりその積極的活用を業界に呼びかけておりまして、具体の申請もいただいているところでございます。

 さらにまた、舶用品メーカーの国際競争力の強化を図るべく、造船事業者との間の仕様の標準化や生産情報のデジタル化を推進してございます。

 我が国の舶用産業の事業基盤と国際競争力の強化に向けて、メーカーの方々のお声もよく聞きながら、しっかりと取り組んでまいる所存でございます。

深澤委員 ありがとうございます。

 終わります。以上です。

木原委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、物流業界における二〇二四年問題について、これは今国会、予算委員会でも取り上げさせていただきましたけれども、引き続き、この国土交通委員会でも取り上げさせていただきたいと思います。

 まず最初の質問は、まさに当委員会の議員立法で行った改正貨物自動車運送事業法における標準運賃告示後の運賃の動向についてお伺いをいたします。

 労働条件の改善、事業の健全な運営の確保のために、国土交通大臣が標準的な運賃を定めて告示できる制度、これは令和五年度末までの時限措置でございます。トラック事業者が法令を遵守して持続的に事業を行っていくための参考となる運賃を国が示すことによって、荷主から適正な運賃を収受しやすくするように設けられたものでございます。

 運賃の現状次第で、この標準運賃告示制度の延長のための法改正も必要になってくる、こう考えておりますけれども、令和二年四月、標準的な運賃の告示後の現在の運賃の状況について政府参考人にお伺いいたします。

堀内政府参考人 お答えいたします。

 トラック運送業につきましては、コストに見合った適正な運賃の収受ができておらず、他の産業と比較して賃金が低いなど、労働条件の改善が課題となっております。適正な運賃を収受できる環境を整備することは大変重要であると考えております。

 このため、令和二年四月に貨物自動車運送事業法に基づき標準的な運賃制度を創設し、荷主などへの周知、浸透を図ってきたところであります。

 この結果、令和三年度末に国土交通省が実施いたしましたアンケート調査では、約半数の事業者が標準的な運賃を用いて運賃交渉を行ったとの結果が出ております。

 一方、標準的な運賃を用いた交渉の結果、荷主から一定の理解を得られたのは、このうち約三割であったとの結果も出ております。

 こうした状況を踏まえて、国土交通省としては、引き続き、標準的な運賃の活用に向けて、荷主等への理解と協力を呼びかけるとともに、時限措置の延長等の所要の措置につきましても、関係者の声も伺いながら、議論を深めてまいりたい、そのように考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただいたように、まず、運賃を公示したのが五〇%、そのうち、公示した運賃に対して運賃の改善が見られたのが三〇%。ということは、トータル、全体の一五%ということですね。

 つまり、全体、今、ただでさえ賃上げをしなきゃいけない、加えて人手が不足している、経済のまさに血液を担うこの物流において、正しい運賃を収受している事業者の方が一五%しかいないということですから、これは大変厳しい状態だ。とてもじゃないけれども賃上げなんかできないんだと思います。賃上げができなければ人がいなくなりますので、そういう問題意識でこれから取り組んでいっていただきたいと思います。

 続いて、二〇二四年問題ですね。二〇二四年四月以降の輸送能力についてお伺いいたします。

 二〇二四年四月以降は、年九百六十時間の時間外労働の上限時間が適用され、さらに、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、改善基準告示について、年間拘束時間上限を原則三千三百時間とするなどの見直しが実施をされます。労働時間削減のために具体的な対応を行わなければ輸送能力が不足する可能性が指摘をされています。

 本年一月十七日に行われた持続可能な物流の実現に向けた検討会第五回で示された中間取りまとめ案によりますと、二〇二四年四月以降に、二〇一九年と比較して、つまりコロナ前ですね、二〇一九年と比較して不足する輸送能力は、地域差はありますけれども、全体で輸送能力の一四・二%、営業用トラックの輸送トン数換算で四・〇億トン相当が不足すると既に中間取りまとめで指摘をされています。ドライバー数の減少も加味して二〇三〇年度の物流需給ギャップについて試算した場合、輸送能力の実に三四・一%、営業用トラックの輸送トン数換算で九・四億トン相当が不足する可能性があると。これはゆゆしき事態だと私は考えています。

 この中間取りまとめ案では、一つ、荷待ち時間や荷役時間の削減を始めとする物流生産性向上の取組、もう一つ、労働環境改善を通じた担い手確保の取組、そしてもう一つ、モーダルシフト等によりトラック輸送量を減らす取組を進めていくこと等々、なすべき課題は多岐にわたることも記されております。果たして来年の春までに対応できるだろうかと、正直、私は心配をしながらこの政策の推進を見守っております。

 今申し上げたとおり、物流業界が置かれた状況を改善すべく、引き続き、当然取り組んでいただくとともに、私も、また皆さんもそうじゃないかと思いますが、現場でお話をお伺いすると、あと一年で本当にこの状況を改善できるんだろうか、物流機能が、これまでどおり発揮することは相当にハードルが高いんじゃないか、こういう声を聞くわけです。

 ですから、現場に行くと、分かりやすく言うと、働く本人が働きたいんだったら今までどおり働かせてもらえませんかという声があります。ただし、これをやってしまったら元のもくあみなので、私が思うには、そういったことと、もう二つ、少なくとも条件が必要で、賃金上昇を当然見込める場合、もう一つは、そのために運賃の適正化が荷主との間で進む場合、そういう条件を前提に、当面の間、労働法制上の条件を緩和するなどの、働く人の環境改善と世の中のニーズがマッチするような仕組みが必要ではないかという意見が、これは私だけじゃないと思いますけれども、現場に行くといっぱい言われます。そういう意見もありますけれども、ここは是非、大臣に現時点の受け止めをお伺いしたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 同じ問題意識でございます。また、そういう声も我々もお聞きしております。

 これを踏まえまして、まず我々がやっていることですが、貨物自動車運送事業法に基づく荷主等に対する働きかけや要請に加えまして、物流DXやモーダルシフトによる輸送の効率化に取り組んでおります。

 そして、荷主を所管する経済産業省や農林水産省と共同で検討会を開催し、荷主や消費者も一緒になって、より実効性のある措置に取り組めるよう検討しているところでございます。

 こうした中で、一昨日、御同僚の委員による御質問を受け、岸田総理から、近日中に新たな関係閣僚会議を設置、開催し、緊急に取り組む施策を取りまとめる旨の発言がありました。これについては、現在、会議の設置、開催に向けて調整中であると承知しております。

 国土交通省としては、これまで以上に、関係省庁、産業界と緊密に連携して、政府一丸となった取組の中で、スピード感を持って、この二〇二四年問題に対応してまいりたいと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 多分、昨日の参議院の、おとついですかね、予算委員会でも、この問題、同僚の宮崎議員が取り上げておりますので、まさに政府を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 その上で、現時点で私が思っている印象は、まだまだ、荷主の方も含めて、当事者意識にちょっと欠けるというか、このままいったら自分が運んでほしいものが運べなくなるという、極めて、目の前にリスクがぶら下がっているんですけれども、それはちょっと俺たちが何とかするものじゃないと思われている人がまだまだいるんじゃないか、これが私の受けている印象です。

 これは、本当に効率化していくためには、荷主と、物を運ぶ方と、本当に腹を割って連携しないとできません。なぜなら、生産性効率、一番シンプルに言うと、トラックの積載率を上げるということです。できるだけトラックの後ろをいっぱいにして物を運ぶようにする。そのためには、いろいろなお客さんが、例えば、鉛筆一本だけあそこに運んでと言われていたら絶対上がりません。つまり、荷主と運ぶ側の事業者が本当に連動していかないとこの課題というのは解決できないと私は思っておりますので、国交省の担当の方もよく分かっていただいておりますので、大臣の御指導の下で是非とも進めていっていただきたいと思います。

 物流の生産性向上という観点で、これはまたちょっと毛色が違うんですけれども、物流倉庫などのひさし、これと、建築面積及び容積率の合理化についてお伺いします。

 物流全体の生産性向上という観点から、近年、物流倉庫などでは大規模なひさしを設けるニーズが増えております。倉庫を見たことがある人は分かると思いますが、荷物を積み降ろしたりするのにひさしがあるんですね。このひさしは、すごく細かいことですが、建蔽率の算定時に建築面積に算入されるので、不便だったんです。本当はでっかいひさしをつけたいのに、建築面積に入っちゃうものだから、そこを調整しなきゃいけなかった。これの合理化が求められていました。

 そして、ここについては、建築物のひさしについて、以前は、端から一メートルまでは、建物の壁面から一メートルまでは建築面積に算入しないとなっていましたが、見直しによって、敷地境界線との間に空地を確保することなど、一定の要件を満たす倉庫のひさしについては、建物の端から五メーターまでは建築面積に算入しないと。建蔽率制限の合理化の検討を進めてきたというふうに承知をしています。

 同じように、容積率についても、延べ面積に含めない方向で検討が進んでいると承知をしておりますが、今日現在の状況、そして今後の見通し、お伺いをいたします。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 物流倉庫等に大規模なひさしを設ける際の建蔽率、容積率の制限の合理化についてでございますが、物流業界の方から御意見をいただいてまいりました。これも踏まえまして、専門家等の意見も伺いながら、良好な市街地環境を損なわない範囲で、どのような規制の合理化が可能かの検討を行ってまいりましたが、その結果につきましては、今委員から御紹介いただいたとおりでございます。

 この建蔽率の規制の合理化につきましては、建築基準法の施行令を改正いたしまして、四月一日から施行する予定にしてございますし、また、容積率の方につきましても、延べ面積に算入しないということができる旨を明確化する技術的助言を三月二十四日に地方公共団体等宛てに通知をさせていただきました。

 これらによりまして、大規模なひさしの設置が進み、雨でも荷物の積卸しに支障が生じにくい作業環境が確保されますことで、物流の効率化が期待できるものと考えておりまして、説明の動画等を作りまして、広く周知を図ってまいりたいと存じます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 まさに、一つ一つ、物流全体の生産性向上に取り組んでいただいておりますことに感謝を申し上げ、残り時間が一分を切りましたので、引き続き住宅局長に通告しておりましたが、またの機会とさせていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

木原委員長 次に、内閣提出、道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣斉藤鉄夫君。

    ―――――――――――――

 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤(鉄)国務大臣 ただいま議題となりました道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 高速道路について、近年道路構造物の点検を強化したことにより重大な損傷の発見が相次いでいることから、道路構造物の抜本的な性能回復を図る更新事業を推進する必要があるとともに、国土強靱化等の社会的要請を踏まえ、四車線化等の必要な事業についても推進する必要があります。また、あわせて、高速道路料金の未払いがあった場合の事後徴収の強化や、サービスエリア及びパーキングエリアの機能の高度化を図っていく必要があります。

 このような趣旨から、この度、この法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、高速道路の更新事業等に必要な財源を確保するため、料金徴収期間を延長することとしております。あわせて、債務の返済を確実に行うため、債務返済期間を設定することとしております。

 第二に、高速道路料金について、車両の運転者又は使用者に請求できることを明確化するとともに、高速道路株式会社等が、軽自動車及び二輪車の車両の使用者の情報を取得することができることとしております。

 第三に、サービスエリア及びパーキングエリアにおける利用者の利便の確保に資する施設と一体となった駐車場の整備に対して、新たな財政支援を行うこととしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

木原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

木原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る四月四日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る四月四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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