衆議院

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第9号 令和5年4月12日(水曜日)

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令和五年四月十二日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 木原  稔君

   理事 加藤 鮎子君 理事 津島  淳君

   理事 中根 一幸君 理事 長坂 康正君

   理事 伴野  豊君 理事 谷田川 元君

   理事 赤木 正幸君 理事 伊藤  渉君

      泉田 裕彦君    小里 泰弘君

      柿沢 未途君    菅家 一郎君

      工藤 彰三君    小寺 裕雄君

      櫻田 義孝君    杉田 水脈君

      田中 英之君    田中 良生君

      谷川 とむ君    冨樫 博之君

      土井  亨君    中川 郁子君

      中村 裕之君    西田 昭二君

      根本 幸典君    平沼正二郎君

      深澤 陽一君    古川  康君

      宮崎 政久君    武藤 容治君

      山口  晋君    石川 香織君

      枝野 幸男君   おおつき紅葉君

      小熊 慎司君    城井  崇君

      小宮山泰子君    神津たけし君

      下条 みつ君    末次 精一君

      一谷勇一郎君    金村 龍那君

      前川 清成君    山本 剛正君

      北側 一雄君    中川 康洋君

      古川 元久君    高橋千鶴子君

      福島 伸享君    たがや 亮君

    …………………………………

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   国土交通副大臣      石井 浩郎君

   国土交通大臣政務官    古川  康君

   国土交通大臣政務官    西田 昭二君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 宇野 善昌君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            瓦林 康人君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 堀内丈太郎君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  高橋 一郎君

   政府参考人

   (運輸安全委員会事務局長)            柏木 隆久君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石井 昌平君

   国土交通委員会専門員   鈴木 鉄夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  柿沢 未途君     小寺 裕雄君

  小林 史明君     杉田 水脈君

  中村 裕之君     山口  晋君

  枝野 幸男君     おおつき紅葉君

  下条 みつ君     石川 香織君

  山本 剛正君     金村 龍那君

同日

 辞任         補欠選任

  小寺 裕雄君     柿沢 未途君

  杉田 水脈君     小林 史明君

  山口  晋君     平沼正二郎君

  石川 香織君     下条 みつ君

  おおつき紅葉君    枝野 幸男君

  金村 龍那君     山本 剛正君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     中村 裕之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海上運送法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

木原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海上運送法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長宇野善昌君、総合政策局長瓦林康人君、自動車局長堀内丈太郎君、海事局長高橋一郎君、運輸安全委員会事務局長柏木隆久君及び海上保安庁長官石井昌平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木原委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自民党の中川郁子です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 一年前の四月二十三日、乗員乗客二十六名を乗せた観光船カズワンが北海道の知床沖で消息を絶ちました。私の地元からも四名の方が乗船しておられました。そのお一人、当時二十二歳の鈴木智也さん、結婚直前であったとのことで、将来を誓い合った方と思い出に残る御旅行となるはずでした。私も葬儀に参列をいたしましたが、御両親にかける言葉が見つかりませんでした。

 斉藤大臣は、二月七日の記者会見で、四月二十三日の追悼式典に出席予定であると御発言をされたと伺っています。改めて、本法案への思いと決意をお聞かせください。

斉藤(鉄)国務大臣 間もなく知床遊覧船事故から一年を迎えます。改めて、お亡くなりになられた方々とその御家族の皆様方に対し、心よりお悔やみを申し上げます。また、今回の事故に遭遇された方々とその御家族に心からお見舞いを申し上げます。

 事故発生の翌日、私も現地に赴き、乗船者の御家族の方々と面会させていただきましたが、このような痛ましい事故が二度と起きることがないよう、徹底的な安全対策を講じていかなければならないと、当時、私自身、強く決意をいたしました。今もその決意にいささかも変わりはありません。

 このような決意の下、国土交通省として必要な対策を講ずるべく、昨年四月二十八日に知床遊覧船事故対策検討委員会を設置し、昨年十二月二十二日の第十回検討委員会において、旅客船の総合的な安全・安心対策を取りまとめました。

 この旅客船の総合的な安全・安心対策には、事故発生後に明らかとなった様々な課題に対応する六十六の対策を盛り込んでいます。

 これらの対策については、実施可能なものから速やかに実行に移していますが、今般の改正法案は、その実施に当たって法律改正が必要な事項を措置するものです。

 このような痛ましい事故を二度と繰り返さないよう、国土交通大臣として、改正法案の内容を責任を持って着実に実行し、旅客船の安全、安心対策に万全を期してまいります。

 そして、このような決意の下、来る二十三日の追悼式典で、私自身、お誓いを申し上げてまいりたいと思っております。

中川(郁)委員 斉藤大臣、ありがとうございました。

 カズワン沈没事故における海上保安庁の救難体制についてお伺いをいたします。

 事故を受けて、海上保安庁の警備救難部長、海上保安監を歴任されました、海上災害防止センターの伊藤裕康理事長は、ヘリコプターを使った警備救難範囲に係ること、現場海域の巡視船の更新に係ること、海保から自衛隊への災害の派遣要請の遅れに係ること、この三点についてインタビュー記事で言及をされています。

 四月一日には、釧路航空基地に新たに機動救難士を配置し、増員もされました。ヘリコプターについては、今年度内に三機目が配備をされ、網走海上保安署の巡視船についても更新されると一部報道で伺っております。

 そこで、北海道、とりわけ道東における海上保安庁の救助、救難体制の強化、自衛隊への派遣要請に係る改善策についてお聞かせください。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 知床遊覧船事故を受けて、海上保安庁では、四月に釧路航空基地に機動救難士を新たに配置するとともに、機動救難士等がヘリコプターに同乗し、出動してから一時間以内で到達できないエリアであった北海道東部海域について、この状況を解消しております。

 加えて、今年度中に釧路航空基地へのヘリコプターの増強やオホーツク海域に面する部署への大型巡視船の配備を行うことにより、北海道東部海域における更なる救助、救急体制の強化を図ることとしております。

 また、海上保安庁では、事故発生後、自衛隊への早期災害派遣要請に関し、直ちに徹底的な点検を行い、防衛省・自衛隊との間で精力的に調整を行い、その結果、初動時において現場の状況に係る情報が不足する場合であっても、事故発生直後から情報共有の上、即時に災害派遣要請できるよう、手続を見直し、迅速化を図りました。

 海上保安庁においては、これらの取組等により、今後の海難救助体制に万全を期してまいります。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 行方不明者の捜索もまた再開されるというふうに伺っています。海上保安庁の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 カズワンの沈没原因について、事故直後、専門家は、エンジントラブルがあってエンジンが停止した後、大きな横波を受けて転覆したか、暗礁に乗り上げた際に、船体に穴が空いて浸水し、沈没したと誰もが指摘をしていたというふうに思います。

 しかし、船体を引き揚げて調査した結果、船首の甲板にあるハッチの蓋がなくなっていて、その蓋を固定する留め具もきちんとかかっていないことが判明いたしました。事故二日前に行われた訓練に立ち会った同業他社の人は、ハッチの蓋を確実に閉めることができなかった、そう証言もしています。

 運輸安全委員会は、船首付近の甲板にあるハッチの蓋がきちんとロックされていなかったため、船の揺れで開き、大量の海水が船内に流れ込んだ、しかも、船体内部を隔てる壁に穴があったため、海水が後部まで流れ込んでエンジンが停止した、波の力で蓋が外れて、大量の水が客室にも流れ込んで沈没を早めたと推定する調査結果を公表しています。つまり、ハッチがきちんと閉められ、隔壁が密閉されていたら、エンジンが停止することなく、船は沈没しなかったということになります。

 また、日本小型船舶検査機構、JCIは、事故三日前の検査で、ハッチの蓋の外観は点検したけれども、留め具については、正常に動くかまでは確認しなかったとのことでした。

 国土交通省は、この甲板ハッチの点検の際、留め具の確認を始めとする七分野六十六項目を盛り込んだ再発防止策を講じました。それを受けて、この度の法律改正を提出されることになり、行政処分や罰則を強化することとしたわけです。細かい制度改正について評価する声も多いですが、制度を改正するだけではなく、継続的にチェックすることが必要であるというふうに思います。

 国の代行として日本小型船舶検査機構、JCIが船舶検査を行うわけでありますが、JCIが検査を行う際の体制強化についてお聞かせください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 知床遊覧船事故対策検討委員会における検討を踏まえまして、日本小型船舶検査機構の検査方法を総点検、是正し、その強化を図っておるところでございます。

 御指摘をいただきましたハッチカバーの締めつけ装置の作動確認を必ず実施することを含め、強化した検査を着実に実施するためには、御指摘のように、機構の体制強化が必要でございます。

 このため、国土交通省より、検査業務の改善のための具体策を検討するよう指示し、機構は、本年二月二十日、検査員の新規採用等による検査体制の強化、また、検査業務の改善を常に持続的に進めるための業務改善室の設置による内部監査体制の強化などを内容とする業務改善計画を策定し、体制強化に向けた取組を進めておるところでございます。

 国土交通省といたしましては、機構の業務改善計画が着実に実施され、しっかりと体制強化が図られますよう、引き続き必要な指導監督を行ってまいる所存でございます。

中川(郁)委員 是非とも、必要な人員を確保して、継続的にチェックすることをお願いしたいというふうに思います。

 お手元の資料を御覧ください。

 こうした動きを受けて、国土交通省は四月四日に、小型旅客船の甲板の下を仕切る隔壁を、そして甲板については、水を通さない水密構造とすることを義務づけると発表いたしました。対象は、母港や避難港から二時間以内に往復できる限定沿海や、更に遠くを航行する小型旅客船です。

 今まで限定沿海では義務づけられていませんでしたが、水密隔壁を設置することによって、座礁などでどこかの区画が浸水しても、ほかの区画に水が流入しないようにして沈没を防ぐ。また、甲板については、これまで船首のみ水密化を求めていましたが、今後は、波の打ち込みに備えて、船体中央部や船尾を全て水密構造とすることとなりました。これは大変重要なことであると思います。主に新造船が対象ということですが、スライド式救命いかだも含めて、負担が増えるという声もあります。

 二点についてお尋ねします。既存の船に、補助金などを創設して水密構造とすることはできないのでしょうか。救命いかだも含めた支援策はあるのでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月に運輸安全委員会が公表した経過報告書において、早急に講じるべき施策として、小型旅客船の隔壁の水密化に関し検討すること等の意見が国土交通大臣に提出されました。

 これを受け、隔壁の水密化について、学識経験者や造船技術者などから成る検討会を設置して検討いたしました結果、波の打ち込みや万一の座礁、衝突等への効果が高い水密全通甲板の設置、並びに、いずれか一区画に浸水しても沈没しないような水密隔壁の設置を義務づけますことにより、小型旅客船の安全性を更に高めることといたしました。

 その際、ただし、委員御指摘の既存船につきましては、新たに隔壁を設置して水密構造とするためには、船体切断等の大工事を伴いまして、船舶の安全性を抜本的に見直す必要がございます。

 例えば、特にFRP、繊維強化プラスチックは、層を重ねる、積層することにより強度の連続性が保たれてございますが、一旦切断をし、接着する場合には、当該箇所の強度が著しく低下するおそれがある等の技術的な課題がございます。

 そのため、委員御指摘の既存船について、なかなか、新たに隔壁を設置して水密構造とすることが、対応が困難でありますことから、それに代えまして、対応が困難な既存船や五トン未満の小型船に対して、その安全を守るべく、浸水警報装置並びに排水設備の設置等を求めることといたしております。

 委員御指摘の支援策としましては、まず、改良型救命いかだや業務用無線設備、非常用位置等発信装置などの導入につきまして、予算面で手厚い補助を講じているところでございます。

 隔壁の水密化等につきましては、御指摘の支援策の要否を含め、その制度化の具体化に向けて更に詳細を検討してまいる所存でございます。

中川(郁)委員 是非ポンプなども支援を講じていただければというふうに思います。

 カズワンの運航責任者のずさんな管理については、到底許されるものではありません。しかしながら、今回の対策を踏まえると、ここまでの安全策が当時から整備されていれば、そもそもこのような事故は起きなかったのではないか、乗客の御家族のこの方は、まだお子さんが行方不明の方でありますけれども、そのように複雑な思いを語っておられます。当然のことだというふうに思います。

 行政関係者の皆様には安全意識の改革を求めまして、質問を終わらせていただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

木原委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 早速、海上運送法等の一部改正法案、質問に入らせていただきます。

 先ほどもございましたとおり、本年四月二十三日で知床沖遊覧船事故から満一年となります。お子様二人を含む十八名と船長及び甲板員がお亡くなりになり、旅客六名が今も行方不明という未曽有の海難事故となりました。お亡くなりになられた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げます。二度とこうした事故を起こさせない、そのための法改正である、そのことを念頭にお聞きをしていきたいと思います。

 今回の法改正においては、一つ、事業者の安全管理体制の強化、また一つ、船員の資質向上、そして行政処分、罰則等の強化、さらには旅客の利益保護の充実という四項目から構成をされていると承知をしております。これらの実効性をどう上げていくのか、こういう問題意識で一つずつ確認をさせていただきたいと思います。

 まず一つ目の、事業者の安全管理体制の強化ですけれども、この法律の中で、事業許可の更新制度を創設をすること、また、届出事業者の登録制へ移行をすること、さらには、安全統括管理者、運航管理者への試験制度の創設という、以上三項目が法律事項と理解しておりますが、既存事業者はどのように対応することになるのか、お伺いしたいと思います。

 具体的には、事業許可の最初の更新、これはいつまでに行えばいいのか、また、届出事業者の登録、これもいつまでに行えばいいのか、また、安全統括管理者、運航管理者資格の取得、これもいつまでに行えばいいのか、さらに、小規模事業者も多数お見えになる世界ですので、この安全統括管理者と運航管理者資格、両資格は一人で兼務が可能なのかどうか、この辺りのことについてまず答弁をお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 事業許可の更新制は、法律の公布から一年以内に施行することとされております。対象となる事業者については、安全管理体制を支える人材の確保計画を作成した上で、施行から三年以内に申請を行う必要がございます。

 登録制につきましては、法律の公布から二年以内に施行することとされてございまして、対象となる事業者において、施行から二年以内に登録の申請を行う必要がございます。

 また、安全統括管理者並びに運航管理者の資格者証の取得は、法律の公布から三年以内に施行することとされており、対象となる事業者については、施行から一年以内に資格者証を持つ者の選任を行う必要がございます。

 以上、いずれの制度も、事業者への十分な周知、事業者による準備、指定試験機関の立ち上げ、受験機会の確保等、その円滑かつ確実な導入に必要な期間を考慮したものとなってございます。

 また、お尋ねの安全統括管理者と運航管理者の兼務につきましては、安全統括管理者は、輸送の安全確保のための運営方針を定めて体制を整備する役割を、また、運航管理者は、現場におきまして日々の船舶の運航を適切に管理し、定められた運営方針を実行する役割をそれぞれ担っておりますが、両管理者を兼務いただいたとしても、輸送の安全確保に関する業務に支障を生ずるものではないことから、両管理者の兼務は可能としてございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今答弁ございましたとおり、事業許可の更新は一年、届出の登録は二年、両管理者の試験については三年ということで、これは、例えば事業許可の更新制度、今ございましたとおり、安全確保計画、一つ一つがそれなりの組織のある事業者なら対応できると思うんですけれども、先ほど申し上げたとおり、小さな事業者もたくさんお見えになると思いますので、国交省及び各地の運輸局、しっかりサポートの方もお願いをして、いわゆる書類的なものが整ってオーケーということではないはずですので、実質的な安全性の向上ということをよく注意して、法案成立後、着実に進めていただきたいというふうに思います。

 続いて、船員の資質向上についてですけれども、船長要件の強化として、事業用操縦免許の厳格化、修了試験の創設など、それから初任教育訓練の実施、これを法定しています。

 一問目と同じように、既存事業者への対応はどのようにするのか、答弁をお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 初任教育訓練は、法律の公布から一年以内に施行することとされております。事業規模の小さな小型旅客船事業者であっても船長などの資質向上に取り組めるよう、具体的な実施方法や留意点、使用する教材の例等をまとめましたガイドラインを策定すること等を予定してございます。

 また、いわゆる事業用操縦免許でございます特定操縦免許につきましては、法律の公布から一年以内に施行することとされており、当該免許の取得要件である講習内容の拡充を図るとともに、修了試験を創設することといたしております。

 現在、当該免許を受有して船長等として乗船されている方につきましては、施行から二年以内に講習の拡充部分に相当する移行講習並びに修了試験を受けていただくことで、引き続き船長として乗船できることとさせていただいております。

伊藤(渉)委員 これは通告はしていないので、答えられればでいいんですが、今ありましたとおり、初任教育訓練、一年、これを実施するのは社内ですか、それとも、何かどこかに行ってそういう訓練を受けられるようになるのか、答弁、可能ならお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 初任教育訓練につきましては、それぞれの事業者が運航します海域の特性、あるいはその事業特性等に鑑みまして、しっかりと事業者においてそれぞれの特性に応じた訓練を行っていただくことを想定してございます。

伊藤(渉)委員 そうすると、事業者が自らやるということですので、これもやはり先ほどと同じように、小規模事業者の方へのサポート、これを是非しっかりお願いをしたいというふうに思います。

 三つ目は、船舶の安全基準の強化についてお伺いします。

 先ほどの質問でも出てまいりましたけれども、まず一つは、法定無線設備から携帯電話を除外をする。それから、業務用無線設備等の導入を促進をする。船首部の水密性の確保を行う。また、改良型救命いかだ等の積付け義務化と早期搭載促進などが挙げられております。

 これも、それぞれ対応するのに一定の期間を要すると考えますが、同様に、いつまでに対応するよう事業者に求めていくのか、答弁をお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 法定無線設備からの携帯電話の除外、改良型救命いかだ等の積付けの義務化、船首部の水密性の確保につきましては、関係省令や告示を改正することにより、カズワンのように限定された沿海区域を航行する小型船舶に対し、措置することとしてございます。

 具体的には、まず、法定無線設備からの携帯電話の除外につきましては、昨年十一月に関係の告示を改正し、海上運送法に基づく許可を受けた事業の用に供する旅客船に対しまして、新造船は直ちに、既存船は本年五月末までに除外を求めることといたしました。

 また、改良型救命いかだ等の積付けにつきましては、一定の水温を下回る水域を航行する旅客船に対し、令和六年度より義務化し、適用日以降最初の定期検査までに積付けを求める予定としてございます。

 また、船首部の水密性の確保につきましては、旅客を運送する船舶に対し、水密全通甲板の設置、並びに、いずれの一区画が浸水しても沈没しないような水密隔壁の設置を令和七年度を目途に義務づける予定としてございます。

 また、このような対策が困難な既存船や五トン未満の船舶につきましては、浸水警報装置並びに排水設備の設置等を令和七年度を目途に義務づける予定としてございまして、これにつきましては今後併せて経過措置を検討していく所存でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 これも今の答弁の中身なので、通告していませんが、可能なら。

 法定無線設備から携帯電話を除外については、本年五月までというふうにおっしゃいましたが、現時点でどのような状況になっているのか、五月末までに対応が完了できるのか、見通しが可能なら、お願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 関係の事業者には、今私が申し上げたようなスケジュールで規制を改める、対策を進めるということを十分お知らせ、周知をさせていただいておりますので、現場におきまして、順調に本年五月末までに除外が行われるものと考えてございます。

伊藤(渉)委員 まさにカズワンの事故のとき、これが一つのポイントだったと記憶をしております。無線があったけれども壊れていたのか、何か、携帯電話しかなかったというような記憶がございますので、これは速やかに、また確実に進めていただきたいと思います。

 四つ目は、これまで一つ一つ細かなことを確認させていただきましたが、まさに小規模事業者への対応ですね。

 実際にこれを適用していく際に、小規模事業者がどの程度きちっと対応できるのか。また、ただでさえ海上運送事業者における人手不足、これもございます。一方で、我が国は観光は一つの産業として強化をしようとしておりますので、安全面を強化をしながら人手をきちんと確保していく、これはなかなか簡単なことではないであろうなと推測をいたします。

 その意味で、海上運送事業における小規模事業者に対する配慮、また、安全性向上のための取組に当たっての何らかの支援、これについてのお考えをお伺いいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案の策定に当たりましては、中小事業者の御意見も幅広く伺った上で、小規模事業者については、その運航形態を踏まえた運航管理体制を求めること、また、事業者への制度の周知期間や、事業者が新制度に適合するための準備の期間などを考慮して施行日や経過措置を定めていることなど、中小事業者も適切に対応いただけるようにしてございます。

 さらに、中小事業者を含め、事業者が本法律案に基づく措置を円滑に講じることができますよう、例えば、安全統括管理者や運航管理者の試験の受験機会を得やすいように、試験の実施場所や頻度を十分に確保すること、また、両管理者の講習につきましては、ウェブでの受講を可能とすること等の実施も図ってまいります。

 また、あわせて、予算面でも、中小事業者などの取組を促進すべく、改良型救命いかだや業務用無線設備等の導入に手厚い補助を講じてございまして、しっかりと支援をさせていただきたいと考えてございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 残り時間僅かですので、これで最後にいたします。

 この法案では、今まで御質問したこととは少し違う話で、安定的な国際海上輸送の確保について、外航船舶確保等計画を作成し、国が定める基本方針に適合すれば、新造船に対して特別償却を可能とする制度、これが盛り込まれております。この特別償却については、税法において、かなり思い切った措置をしていると承知をしております。

 経済安全保障の観点から、日本籍船及び船員の確保、これは重要な課題でございます。私の記憶ですと、昨年の年末年始に当たってはコンテナが不足をして、いろいろな物づくりにも大変影響が及んだということもございました。

 この日本船舶・船員確保計画によって、日本籍船及び船員確保の現状はどのような状況になっているのか、また、今回の外航船舶確保等計画は、この日本籍船及び船員確保にどのような影響を及ぼすと考えているのか、最後に答弁いただいて、終わります。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 外航日本籍船につきましては、御指摘の日本船舶・船員確保計画制度並びにトン数標準税制の創設以降、着実に増加をしてございます。第一次計画の開始時、平成二十一年度では百七隻であったところ、令和三年度は二百七十隻、約二・六倍となってございます。

 また、外航日本人船員につきましては、その減少に歯止めがかかり、おおむね二千二百人程度で推移してございます。特に、日本船舶・船員確保計画の認定事業者におきましては、第一次計画の開始時、平成二十一年度は千七十二人であったところ、令和三年度は千二百六十七人、約一・二倍と増加してございます。

 令和五年度税制におきましてトン数標準税制を延長したところでございまして、引き続き日本船舶・船員確保計画制度を通じた日本籍船、日本人船員の確保を図ってまいります。

 また、船舶に係る御指摘の特別償却制度におきましては、日本籍船の特別償却率を外国籍船よりも高く設定してございます。

 これに加えて、今回新たに創設する外航船舶確保等計画制度並びに特別償却の拡充は、日本船主による船舶投資の促進を図るものでありますことから、その中核となる日本籍船の確保の促進にも資すると考えてございます。

 両制度をしっかりと運用することによりまして、日本籍船、日本人船員の確保を図ってまいる所存でございます。

伊藤(渉)委員 終わります。ありがとうございました。

木原委員長 次に、城井崇君。

城井委員 立憲民主党の城井崇です。

 今回も、斉藤国土交通大臣、よろしくお願いいたしたいと思います。

 まず、法案への質疑に入ります前に、元国土交通事務次官の民間企業の人事への介入問題について、国土交通省による全省を対象とした調査の実施をするべきだとの観点から伺います。

 三月三十日の朝日新聞で、国交省元次官、OBを社長に要求、空港関連会社の人事に介入かとの報道がありました。国土交通省は、所管する交通分野の企業で代表取締役社長を務める者が、国土交通省が所管する航空分野の企業の人事に関して発言したことを本人も認めました。報道はいわゆる氷山の一角で、国土交通省が所管する分野の民間企業に対して職員OBが常態的に介入している可能性があり、国土交通省による点検と調査は必須であると考えます。

 平成二十九年に文部科学省で職員の再就職が問題となりました。このときに、文部科学省は、全職員と退職した職員を対象とした調査を実施して調査報告書を公表しました。

 国土交通省は、職員OBが再就職先あっせんや民間企業の人事等へ介入したり、職員による職員OBに対する再就職などを目的とした情報提供が行われたり、職員OBによる職員に対する再就職などを目的とした要求や依頼が行われていないかなど、個別、組織的にかかわらず、関与、介入の有無を明確にするため、全職員や職員OBを対象とした客観的な調査を実施し、公表するべきと考えます。国土交通大臣の見解をお示しください。

斉藤(鉄)国務大臣 国土交通省OBについては、国家公務員法に基づく再就職に係るあっせん規制の対象となる現役の職員ではなく、一般論としては、こういった法規制の対象に当たらないOBの行動について、国土交通省としては調査する立場になく、また、その権限も有しないものと考えております。

 また、関係する部門の幹部職員に対して確認を行いましたが、現役職員による空港施設株式会社への再就職のあっせん、OBから国土交通省に対する働きかけのいずれについても確認されませんでした。

 加えて、本件の報道のような事例については、他に承知しておりません。

 したがいまして、全職員や職員OBを対象として調査を行う予定はありません。

 なお、平成二十九年の文部科学省の事案は、再就職等監視委員会による調査の結果、同省において再就職等規制違反があったとの認定がなされたこと等を受けて、同省において第三者を交えた調査が行われたものと承知しております。

城井委員 大臣、それはちょっと甘いと思います。まず、一般論としてOBは対象外ということですが、先ほどのお話のとおり、文部科学省では退職した職員も対象として最終的には調べたわけです。

 では、現役職員の調査はどうだったか。本件だけに仮に限ったとしても、国土交通省自体がやるということは、いわゆる客観性、第三者性、他から見たときにも、それはそうだねというふうにきちんと認めていただける、そんな調査内容になっているかといったときに、国交省だけ調べたということでしたら、これはお手盛りと言われてもしようがない、こういう状況だというふうに考えますよ。

 もう一回聞きます。現役職員への調査もさることながら、OB職員に対しても、客観的で第三者から見ても間違いがない、第三者性を確保した調査、やるべきだと考えますが、いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回の調査は、OBの発言が、現役職員の、また国土交通省が関与しているかの誤解を与えかねない、そういう発言である、こういう報道を受けまして、我々は調査したわけでございます。その調査の結果、誤解を招きかねない発言であった、これは大変遺憾なことである、このように私も申し上げております。

 その上で、今回、その現役職員に対して、我々としては、私の指示を出しまして、関係が可能性がある、そういう現役職員に対してしっかりと調査をした、このような調査をした次第でございます。

 OBに対しては、先ほど申し上げましたように、私ども、調査をする、そういう権限はございません。

城井委員 大臣、私が申し上げたのは、客観的で第三者性を確保した調査ができたかということを聞いているわけです。内部調査をしっかりやったということを聞きたいんじゃないんです。他から見ても、外部から見ても間違いないかどうかというのを言っているわけです。

 まず一つは、本件について。そしてもう一つは、これが氷山の一角ではないかという疑いを晴らさねばならぬ残念な状況なわけです。この点を含めて、客観的で第三者性のある調査をきちんとやるべきだと考えますが、大臣、これでもやらないんですか。

斉藤(鉄)国務大臣 今回、現役職員が関与しているという疑いは全くございません。

 先ほど例に挙げられました文科省の例は、明確な現役の関与があるという、国家公務員法違反があった、そのことを受けて調査されたものだと思います。今回は、明確な関与があるということはどこからも出てきておりませんので、したがいまして、我々は我々できちんとした調査を行わせていただいたということでございます。

城井委員 今の大臣がなかったとおっしゃる部分は、残念ながら、当事者である国土交通省が調べた結果でしかないというのが現在の状況です。客観的な調査、第三者による調査も含めて、外部の目から見ても堪え得る結果でなければ、大臣、それは説得力のある説明にはならないんです。残念ながら、本当になかったということをまだ我々は確認ができない状況であります。

 そこで、委員長、お願いしたいと思います。やはりこの件、客観的で第三者としての調査なくしては、本件がどうだったか、そして、そのほかに、氷山の一角として、ほかになかったのかどうかというのは、やはりきちんと客観的に調べないとこの懸念は拭えないというふうに考えます。全職員と、そして職員OBを対象にして、全省調査を行って、本委員会に報告いただくことを求めます。理事会での取り計らいをお願いします。

木原委員長 理事会で協議いたします。

城井委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、本法案に対する質疑に入ります。

 海難防止の取組と安全対策について伺います。

 令和四年四月に発生した北海道の知床遊覧船事故から、四月二十三日で一年となります。改めて犠牲者に哀悼の誠をささげるとともに、行方不明者が一日も早く発見されることをお祈りしたいと思います。また、心痛が今なお続く被害者の御家族の皆様にもお見舞いを申し上げたいと思います。

 また、残念なことに、本年二月に発生した愛媛県の来島海峡での内航貨物船の衝突事故を始め、その後も痛ましい海難事故が続いて発生しています。

 海難事故や災害事故は、貴い人命に関わる重大な問題であるだけでなく、現職の船員や新規就業者を海運や水産産業から遠ざける要因にもなっています。ついては、徹底した事故原因の究明と海難事故の再発防止に向けて、運輸安全委員会による海難事故調査結果に基づき、改善施策や措置などが国土交通省によって着実に履行されるべきであるというふうに考えます。

 現地における取組状況を伺おうと思いましたが、先ほど、他の委員からの質問で答弁がありました。それを踏まえて、一つ伺います。

 我々立憲民主党からも、これまで、数々の問題点、課題の改善を指摘してまいりました。それも含めての六十六の対策について答弁がありました。今回の法改正も含めてということで理解をしています。

 大臣、逆に言えば、六十六も対策を打たねばならぬほど安全対策が不足していた、この不足が著しくあったという点、やはりこれは認めざるを得ないのではないかと思いますが、国として、これまでの取組の不足をお認めになりますか、大臣。

斉藤(鉄)国務大臣 今回、このような事故が起きたこと、それに対して、国土交通省の監査、検査等を、責任を持つ立場として、今回の事故を重く受け止めております。二度とこういう事故を起こさないという決意の下、我々、今回の事故の教訓も踏まえまして、今回、六十六の対策を専門の方々の御意見を伺って決めたところでございます。

城井委員 是非着実に進めていただきたいと思いますが、その中でも気になる点を幾つかお伺いしたいと思います。

 まず一つは、小型船舶に対する検査の見直し、充実についてです。

 海上交通の安全を図るために整備された法や制度が適正に遵守されるように、厳格な管理、監査の実施、そして、是正改善事項について再確認するなど、実効性のある検査とするために国土交通省は積極的に取り組むべきだと考えます。

 特に、今回の当該事業者の運営のずさんさ、そして、日本小型船舶検査機構、JCIによる慣れからくる緩みや検査のずさんさも知床遊覧船事故の要因となったことを踏まえた対応改善がなされるか、これを国民は見ています。

 しかし、現場からは、十分な安全対策の必要性と同時に、検査にかかる費用負担が大幅に上がるのではないかとの懸念する声が届いています。増大する検査費用への補助を国として行うべきです。

 現時点における検査の実効性の確保については、先ほど、他の委員の質疑への答弁で、日本小型船舶検査機構、JCIの対策強化、検査体制や業務改善室の設置などの言及があったところでありますが、それも踏まえて、大臣、検査費用の負担や、また、それに対する政府による補助の在り方、ここはやるべきだというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 国土交通省といたしましては、知床遊覧船事故対策検討委員会における検討を踏まえ、日本小型船舶検査機構、JCIの検査方法について、合理的な理由なく国と異なる方法で行われていたものを総点検で洗い出して、全て変更又は廃止し、強化を図るとともに、機構の実施する船舶検査の現場を国が確認するなど、機構の監督強化を図っております。

 また、機構は、検査業務の改善を常に持続的に進めるための業務改善室の設置等を内容とする業務改善計画を本年二月二十日に策定し、船舶検査の実効性の更なる向上に向けて取組を進めているところです。

 国土交通省としては、業務改善計画が着実に実施されるよう、必要な指導監督を行ってまいります。

 検査費用の負担増大の御懸念につきましては、例えば、船底の健全性検査に際し、追加の費用が発生しないよう、事業者が自主的な整備のため陸揚げした際に確認を行うなど、安全を確保しつつ、船舶検査を効率的に実施することで、事業者の負担が過度なものにならないようにしてまいりたいと考えております。

城井委員 国土交通省内でも、そして、検査に当たる日本小型船舶検査機構においても、人命が懸かっているということを改めて肝に銘じながら検査に取り組んでいただくことを切に要望したいと思います。

 次に、小型船舶の安全対策に資する装備に対する予算補助の充実について伺います。

 この度の対策強化により、小型船舶を扱う事業者には、船舶への装備品等の追加の安全対策を求められることとなります。加えて、国土交通省は、小型旅客船に浸水の拡大を防ぐ水密隔壁の設置などを義務づけると発表しました。先ほども同僚議員からも質問があったところであります。

 これらの小型船舶の追加対策は、多くの真面目で安全対策に力を入れてきた、しかも、コロナ禍の影響を長期に受けている事業者に大きな費用負担を求めるものであります。対策を徹底する観点で国としてどのように支援していくか、とりわけに具体的な予算措置について伺いたいと思いますが、先ほど、いわゆるFRPなどの大工事の話、そして、救命いかだなどの装備についての予算面での支援についての答弁がございましたが、これは、具体的にどのような形で予算措置が行われるのか、確認したいと思います。大臣、お願いします。

斉藤(鉄)国務大臣 万が一の事故発生時の被害の軽減を図るため改良型救命いかだの積付けなどを義務づけるとともに、小型旅客船の安全性を高める観点から、水密隔壁の設置等を義務づけることとしております。

 委員御指摘の支援策としましては、まず、改良型救命いかだや業務用無線設備、非常用位置等発信装置などの導入について、予算面で手厚い補助を講じているところでございます。補助率最大三分の二という形でございます。令和四年度補正予算では約三十五億円、これは内数ですけれども、確保してございます。

 水密隔壁の設置等については、御指摘の支援策の要否を含め、その制度の具体化に向けて、更に詳細を検討してまいります。

 国土交通省といたしましては、事業者の安全意識の徹底や、船員の資質向上等を含め、事業者の安全性向上のための取組の促進にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

城井委員 着実にお願いしたいというふうに思います。

 もう一点伺います。

 知床遊覧船事故の被害者御家族への対応について伺います。

 国土交通省並びに海上保安庁、それぞれにどのように対応してきたか。今なお対応を続けていただいているというふうに聞きました。大臣、国としての反省点と今後の課題への対応について、認識をお聞かせください。

斉藤(鉄)国務大臣 国土交通省では、事故発生直後から、海上保安庁と一体となって御家族の皆様への窓口を設け、各種手続や心のケアを含めた様々な御相談への対応、毎週二回のオンライン説明会による捜索状況などの報告、地元の運輸局の担当者からの定期的な御連絡などの取組を現在も行っております。

 御家族の皆様からは逐次御意見や御要望を伺っているところですが、これまでのところ、国土交通省に対する感謝の声の一方で、例えば、オンライン説明会は誰でも発言しやすい場にしてもらいたい、質問に対する回答をより率直なものにしてほしいなどの御要望もいただいており、説明会の運営などについて改善を図っていく余地があるものと考えております。

 国土交通省といたしましては、御家族の皆様の御希望をきめ細かく把握し、それらに最大限対応しながら、今後とも御家族の皆様への支援に努めてまいりたいと思っております。

城井委員 今の答弁を踏まえて、一つお伺いします。

 海上保安庁による捜査時の対応についての反省点や改善点についてはいかがでしょうか。例えば、証拠品への取扱いや御家族等関係者への対応についての反省点、改善すべき点はいかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 委員御指摘の、被害者御家族から、海上保安庁による証拠物としての電子機器の取扱いや海上保安官の言動について、改善を求める意見がございました。

 これを踏まえまして、海上保安庁では、水没した電子機器の取扱いに係るマニュアルを作成し、このマニュアルを踏まえた早期鑑定の実施や、証拠品の取扱いに関する御家族への丁寧な説明等について、全国の捜査員に対し、指導したものと承知しております。

 また、海上保安官が御家族に接する際、配慮が欠けていた部分があったと認められたため、御家族に対し丁寧な対応を周知徹底するとともに、これらに係る継続的な研修を実施することとしております。

 いずれにいたしましても、海上保安庁においては、引き続き御家族に配慮した対応を徹底してまいります。

城井委員 引き続き、着実かつ丁寧な対応をお願いしたいというふうに思います。

 続いて、船舶の抱える課題について幾つか伺いたいと思いますが、通告を一つ飛ばさせてください。

 船舶への備付け医薬品について伺います。

 令和三年末以降、新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬が特例承認されて、医療機関や薬局において医師の処方箋により購入することが可能となりました。しかし、現時点では、経口抗ウイルス薬は、船員法施行規則第五十三条に掲げる、船舶に備え付ける医薬品そのほかの衛生用品の数量を定める国土交通省の告示に記載されていないことから、船内に備え付けることができない状況だと海事関係者から聞きました。

 新型インフルエンザが流行したときには、船内で新型インフルエンザを発症した船員に対する対応を検討するため、医師及び薬剤師並びに労使の代表者から成る衛生用品表検討委員会が設置され、最終取りまとめでは、医師が乗り組んでいない船舶においてインフルエンザ様症状の船員がいる場合には、無線診療による医師の診断に基づき、必要に応じて抗インフルエンザウイルス剤を船内に備え置かなければならないとすることが適当と報告をされました。

 この報告を受けて、船員法の規定により、医師又は衛生管理者を乗り込ませなければならない船舶に適用される甲種衛生用品表及び乙種衛生用品表に抗インフルエンザウイルス剤を追加する、衛生用品表告示の一部改正が行われることとなりました。

 船員の就労状況を踏まえて、船内において新型コロナウイルス感染症を発症した船員への対応を検討するため、この衛生用品表検討委員会を設置して、可及的速やかに、経口抗ウイルス薬、いわゆるコロナの飲み薬でありますが、これを船内に備え付けるよう、国土交通省として対処すべきと考えますが、大臣、やっていただけますでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬については、現在、三つの薬が承認されているところであり、いずれも医師の処方が必要な薬となっております。

 これらの薬の船内への備付けについては、抗インフルエンザウイルス剤の船内への備付けの義務づけは承認から約十年が経過した段階であったのに対し、新型コロナの経口抗ウイルス薬は、緊急承認等が行われて日が浅いこと、抗インフルエンザウイルス剤に比べて、個々の船員の既往症に応じてふだん服用している薬との併用が禁止されているケースが非常に多く、かつ複雑であることなどの課題があり、船内で急に副作用が起きた場合の対応も困難であるため、医学的な観点から慎重な検討が必要と考えております。

 いずれにいたしましても、船内に備え付ける医薬品等の見直しについては、今年度、検討会を設置する予定でございまして、御指摘の薬の取扱いについても、その中で議論したいと考えております。

城井委員 陸上においても海上においても命は守られなければならないというふうに考えます。検討の場を設置いただけるということでありました。事は命と健康に関わりますので、迅速な対応を是非お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 続いて、船員の確保、育成の推進について伺います。

 少子高齢化の進行で、船員の高齢化や後継者不足が深刻になっています。外航海運では、平成二十年度トン数標準税制の導入に当たって、経済安全保障の観点からも確保すべき日本籍船と日本人船員の数値目標を設定していますが、船舶数は増加する一方で、日本人船員数は一向に増加をしていません。

 国内海運では、陸上職に比べても長時間労働で、相変わらず厳しい就業状況です。海運業全体でも確保、育成をしていかなければなりませんが、働き方改革はまだまだだというふうに思っています。現場からは、まず入ってもらうこと、そして、残ってもらうことの二つが大切だということで、切実な声が届いています。

 これまでにも、船員の働き方改革について、海事産業強化法案の質疑で大臣ともやり取りをして、有望な若手の皆さんが離職することなく、しっかり海運業に貢献していただけるように、活躍していただけるような労働環境づくりにしっかりと取り組んでいくという趣旨の答弁をいただいたところであります。その後の進捗、取組の成果、大臣、お聞かせください。

斉藤(鉄)国務大臣 船員の働き方改革を実現し、若手船員の定着を図るため、海事産業強化法により船員法等が改正され、令和四年四月に施行されました。

 これを受けて、同月より、船舶所有者に労務管理責任者の選任を義務づけるなど、長時間労働の是正等の措置を行う仕組みを構築するとともに、ガイドラインの作成や地方運輸局への相談窓口の開設による相談体制の充実を図ってきたところです。

 昨年十月に実施したアンケート調査では、船員の労働時間が以前よりも減りつつあるといった声をいただいております。

 一方、船員の労働時間に配慮した運航計画の作成に関して、船舶所有者からの意見に、オペレーター、運航事業者が必ずしも十分対応できていない場合があるとの声もいただいております。

 そのため、国土交通省に設置した内航海運と荷主との連携強化に関する懇談会を通じた各種ガイドラインのより一層の浸透等を図ることで、荷主、オペレーター等の関係者間の更なる理解と協力の醸成を図ることが重要と考えております。

 国土交通省といたしましては、有望な若手船員の皆様が日本の海運業に貢献し、活躍していただける労働環境づくりに引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと決意しております。

城井委員 どうも、大臣、現場の受け止め、やってほしいことと少しずれがあるようですので、それはまた次の質疑の機会に提案したいと思います。

 今日は、これで終わります。ありがとうございました。

木原委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 石川香織です。よろしくお願いいたします。

 私は、知床と同じ道東エリアと言われる十勝というところ選出の議員です。今日は、委員の皆様に御配慮いただきまして、質問させていただきたいと思います。

 事故から一年をたとうとしておりますが、被害者の家族の方々は、まだ、いまだにあの日の出来事を現実として受け入れるような状況ではないし、ましてや、法律をこうしてほしいと考える状況でもないと思います。ただ、今回こういう改正案がありますので、被害者の家族の方などが直面した課題に対しての配慮が少しでも盛り込まれるといいなという思いで、今日は被害者の家族の方と直接関わってきた方のお話を中心にちょっと質問させていただきたいと思います。

 ある被害者の家族の方は、事故発生直後から捜索活動などがありまして、長期にわたって会社に出勤することができませんでした。その分の給料補償というのは、事故を起こした事業者の入る保険の中から補償される可能性があるということでしたが、そこから受け取ると、相手が反省をしているという証明になる可能性があるということで、裁判が有利になるという話も聞かされまして、そう聞かされるとどうしても受け取ることができなかったそうです。

 しかし、それを見かねたその家族の方が勤めている会社の社長さんが、発生直後からおよそ十か月間、お給料、ボーナスなどを満額支給をして支えたそうです。コロナ禍、業績も厳しい中で、その会社の社長も、給料を補償するということはもちろん義務ではありませんでしたが、人としての判断だったというお話をされておりました。

 本来、正式な手続であるはずの、事故を起こした事業者から被害者に払われるはずの慰謝料が裁判の戦術に使われてしまっているような現実が家族を苦しめる要因の一つにもなっているというふうに感じました。

 また、別の被害者の家族の方は、出勤できない日が続きまして、被害者支援室に相談したそうなんですが、結局、会社との交渉などは御自身で行っている。手当を受け取っているそうなんですが、やはり、事故の発生直後に、全ての手続、会社の交渉も含めて自分でやることが非常につらかったという話でしたし、被害者支援室でもう少し具体的な助言が欲しかったという話もありましたし、今後、手当が切れてから会社復帰するまでの道のりも非常に不安に感じているという様子も伺いました。

 先ほども城井委員の質問からもありました、今、週二回でオンラインでの機会を設けているということでありますが、それ以外にも、被害者の家族の方のケアに関しては、やはり国の機関と直接つながり続けているという体制が続くことが非常に重要だと考えます。この点について、まずお伺いいたします。

瓦林政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省では、事故の発生直後から御家族の皆様への窓口を設けさせていただきますとともに、それぞれの御連絡先をお伺いしまして、御家族の皆様と常に電話やメールで相互に連絡を取り合うことができる体制を整備いたしました。

 その上で、この連絡体制を活用いたしまして、本省と地方の関係部局全てが連携しまして、各種手続や心のケアを含めました様々な御相談への対応、毎週二回、火曜日、金曜日でございますが、オンライン説明会による捜索状況などの御報告、地元の運輸局の担当者からの定期的な御連絡、これは御要望を踏まえて週に一回だったり二週間に一回だったりしますが、こういった定期的な御連絡などの取組を現在も行ってございます。

 国土交通省といたしまして、今後とも、御家族の皆様と相互に連絡を取り合う体制を継続いたしまして、御意見や御要望をきめ細かく伺いながら、御家族の皆様への支援に引き続き取り組んでまいります。

石川(香)委員 先ほども、そのオンラインの会議の中で、感謝の声がある一方で様々な声があるということを、大臣、御答弁もされておりました。悩みとか課題というのは年月とか状況に応じてまた変化していく可能性があると思いますが、受け止める側の御苦労もあったんだと思います。でも、是非、引き続きつながりが保ち続けられるように最大限努力をしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 一方で、今回は、事故の対応に関しては国が前面に立って対応に当たったという印象があります。大臣も翌日に現地入りしていただいたというお話もございましたが、社会に与える影響が大きかった事故ということもありまして、現地での被害者家族のケア、それから船の引揚げも非常に早い対応だったと思います。

 また、四月の二十三日にウトロで追悼式が予定されておりますが、これは地元の観光協会などが実行委員会という形で行うということになっております。

 いろいろなこうした事故、例えば鉄道事故などでは、鉄道事業者がこうした追悼式などを主催するというのが普通でありますけれども、この返信先が国土交通省になっております。

 今回の事故を起こした事業者のような小規模事業者が全てを対応できないということは事実でありますが、今回の追悼式に関しては、国は足りないところをフォローしているという状況であるそうですけれども、やはり、こうした国のサポートが当たり前と思われないようにしなければならないということも重要だと私は感じております。あくまで責任は事業者にある、法的な義務を負えない、責任を取れないような事業者はやはり営業するべきではないと思います。

 今回の追悼式典の実行委員会に名を連ねている観光協会の方も、地元の方の言葉をかりれば、本来、観光協会も被害者に近い立場であるという話もされておりましたが、真面目に頑張っていた事業者も多大なダメージを受けています。

 いいかげんな事業者には営業させないということを国の法律の中でしっかり念押しをする必要があると思いますし、特に、事故が起きた際の対応などに関しては、事業者が確実に行えるような措置を今回の改正案でも触れるべきだと私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 有限会社知床遊覧船においては、事故直後の特別監査を踏まえ、安全管理体制の改善意識が見られないことから、昨年六月に事業許可の取消しを行っておりますが、取消し後においても、しっかりとした自覚を持って、補償など御家族への対応を真摯に行うよう繰り返し求めているところでございます。

 今回の事故を受けまして、国土交通省としては、万が一事故が起きてしまった場合の被害者や御家族に対する事業者の賠償資力を担保するため、事業許可に当たって事業者に締結させている船客傷害賠償責任保険の限度額について、現行の三千万円から一億円に引き上げる予定でございます。

 また、海難発生時の行方不明者の身元特定や補償などをより確実に行うため、今般の法改正を受けて、旅客名簿の作成と備置きを義務づける事業者の対象範囲を拡大する予定でございます。

 こうした被害者への支援措置を講ずる一方、有限会社知床遊覧船のような安全意識の低い事業者を排除するため、今般の改正法案により、事業許可更新制を導入し、一定期間ごとに不適格な事業者を退出させるとともに、監査の機動的、重点的な実施や罰則の強化等を図ることとしております。

 これらの取組によりまして、利用者保護の徹底を図りつつ、旅客船の安全を確保してまいりたいと決意しております。

石川(香)委員 北海道経済は観光も大きな柱でありますけれども、依然、観光は回復しておりません。知床地区を代表してウトロ事業者の方にお話を聞きましたが、道内での観光事業者などでの会合では、事故が与えた観光業界への思いもあってか、今でも済みませんから始まってしまうとお話も打ち明けてくださいました。事業者への積極的な支援を引き続きお願いしたいという声も地元の観光事業者からは聞かれました。

 知床は、世界遺産にも登録された本当にすばらしい場所でありまして、日本の財産だと私は思っております。今回の改正案の中で、事業者へのルールを改めて安全対策を徹底するということは、訪れる人の安心にもつながると思いますけれども、今後も、この対策の中で、知床地区を始め道東エリアを含めて、観光を元気づけることができるように、大臣からもしっかり後押しをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 世界自然遺産である知床半島において、遊覧船は自然やヒグマなどの観賞に有用であり、多くの旅客が利用する観光手段となっております。

 しかしながら、委員御指摘のとおり、知床遊覧船事故を受けて、利用者の足が遠のくなど、地元の事業者に影響が生じたものと承知しております。

 事故防止対策に万全を期し、遊覧船の利用者の皆様の信頼を取り戻すべく、昨年十二月に知床遊覧船事故対策検討委員会において、様々な課題に対応する旅客船の総合的な安全・安心対策を取りまとめたところです。ハード、ソフトの両面から対策を重層的に強化することにより、旅客船の安全、安心対策を確実に行ってまいります。

 国土交通省としましては、まずは知床における遊覧船事業の安全対策を徹底し、必要な情報発信を行って、利用者の皆様に安心して乗っていただけるような状況を整えるべく、今般の法改正を始めとする様々な対策をしっかりと講じてまいります。

 また、地元自治体や観光事業者と緊密に連携しながら、世界自然遺産である知床半島の魅力を発信し、知床地域への誘客を力強く進めてまいりたいと思っております。

石川(香)委員 是非お願いしたいと思います。

 海上保安庁も、今、沖合、空からの捜索活動を続けておりますけれども、流氷がありますので、これが解ける、四月の二十三日の事故から一年を大体めどに、また潜水士の方による捜索もスタートするということです。

 こうした事故を二度と起こさないための実効性のある法律の施行、それから、被害者の家族のケアの継続、そして、知床を含む北海道の特に道東エリアも、この支援の特段の配慮を改めてお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

木原委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 委員長、冒頭、定数を確認してください。これじゃやれません。

木原委員長 はい。

 では、定足数は満たしておりますので、伴野君、質問をお願いします。

伴野委員 余り事を荒げるつもりはないですけれども、委員長、私は野党筆頭として、これまで何度か、ポイントで定数をチェックしてと言ってきました。警鐘を鳴らしてきました。

 しかしながら、よりによって私のときにこのざまだったら、野党を引き揚げさせますよ。いいですか。どうしますか。

 与党だけで定数に達するまで、私は立ち上がりません。遺族に失礼ですよ、やじでも飛んでいますが。

木原委員長 では、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

木原委員長 では、速記を起こしてください。

 質疑を続けます。伴野豊君。

伴野委員 改めて申し上げますが、何度か警鐘を鳴らしてきたんですよ。多分、それは筆頭理事さん以下、皆さん方御存じだと思うんですね。でも変わらなかったという、残念ですけれども、先ほどまではそうだったわけです。そういう状態であれば、うちももちません、本当に。遺族の方にどういう申し開きができるのか。法律を上げたけれども、審議のときに何人いたんですかと。(発言する者あり)そこはやじを飛ばすところじゃないと思いますよ。

木原委員長 御静粛にお願いいたします。

伴野委員 では、冒頭、まず大臣、これは大臣にお聞きすることじゃないかもしれませんが、今御覧になっていて、大臣はどう思われましたか、率直に。

斉藤(鉄)国務大臣 私は、今回の法律案の御審議をお願いしている立場でございます。

 知床遊覧船事故、本当に重く受け止めておりまして、二度とこういう事故を起こしてはならない、そういう意味で、この一年間、有識者委員会を設け、御提言をいただきながら頑張ってまいりました。そして、この法律案を出させていただきました。御審議、どうかよろしくお願いいたします。

伴野委員 そういうお答えしかないかと思いますが、多分、大臣も一議員にお戻りになられたら、政治家に戻られたら、やはり遺族の方あるいは御家族の方、それから関係者の方、やはり絶対に事故を起こしてはいけないという気持ちがあるなら、確かにそれは、トイレに立つようなこと、どうしてもという、そこまで言ってきたつもりはないです。しかしながら、余りにもひどかったので、さすがに野党ももちませんので、先ほどの発言をさせていただいた次第です。

 これはもう、委員会の出席は与野党ありません。だから、お互い気をつけましょうよ。(発言する者あり)まだ言いますか。

 では、本日の本題に入らせていただきたいと思います。

 海上運送法等の一部を改正する法律案、このきっかけになったのは、先ほど来お話がある、残念ながら、知床遊覧船事故があったからでございます。

 本当に、私も、事故調査報告書といいますか、現時点で出ている報告書、余り感情的にならないように努めたつもりですが、やはり御遺族のお気持ち、御家族、さらには関係者のお気持ちを考えれば考えるほど、非常に心が痛む、息苦しい思いをして今回の法案を読み、質疑に入らねばと、自分自身、政治家の矜持として今ここに立たせていただいているつもりです。

 順番に今日用意した質問をしていくべきだと思いますけれども、残念ながら、ちょっと冒頭、少しそういうムードでもないかなと思いますので、一つ目は少し空気が変わったら質問させていただきたいと思います。

 それと、これは通告していませんが、多分、次の十月四日が来ると、大臣も二年がたつと思うんですね、大臣になられて。ちょうど一年半ぐらいです、今。

 一年目は、多分、安全運転をせざるを得ない、やはり御自身も省庁を把握しなきゃいけない、言わなきゃいけないこともなかなか言いづらい環境だったかもしれません。しかし、もう一年が過ぎ、永久に大臣をやれるわけじゃありませんから、もうそろそろ斉藤大臣の誠実な性格を前面に出されて、先ほどの城井さんの質問に対する答えも、正直言って、私も、非常に絵空事といいますか、本当に大臣のお言葉なのかなと疑いたくなるところが何か所かありました。

 ですから、あえて、時間があれば最後の方に御答弁いただいて結構です。今、一年半がたって、そしてしかも、残念ながら、大臣のときに、またとんでもないOBの事件が今発覚したさなかであります。その中で、今何を思うか、今すぐじゃなくて結構です、ちょっとお時間を、最後の方に時間があったらお聞きしますので、そのときは正直に吐露してください。

 では、まず知床のところから行きます。

 先ほども城井さんの質問の中で、六十六の対策をやったお話がありました。正直言いまして、私も一つ一つ読ませていただきました。あるいは、どういう根拠があってそういう対策になっているかというのも、できるだけ調査して、自分なりにチェックしたつもりです。

 その上で申し上げると、六十六の対策をやっていただいた、これは専門の方の御尽力もいろいろあって、いろいろな角度からやっていただいたのはありがたいですし、大臣も技術御出身ということで、多分、そちらに対しても細かく見ていただいたから六十六項目という、普通だったら、政治家っぽかったら、三十項目とか五十項目とか、切りのいい数字でしようものを、あえて六十六という、多分、チェックされていくとこういうことだったんだろうと思います。しかし、今となっては、六十六もやらなきゃいけないことがあったんですかという、そっちの思いを強く持っています。

 それで、先ほどの、御遺族の立場に立ってというようなところがありましたが、そこを考えれば考えるほど、残念ですけれども、確かに事務的なチェックとか、形式的なチェックは整っているんですけれども、人がやることです。人がやるというところに着目したときに、そして、命をなくすのも人です。全部、人が中心の事象なんですよ。その割に、人の心に届くようなことになっているのかなという見方をすると、非常に残念な思いをしているところであります。

 私の思いは大臣のお答えを待ってから述べたいと思いますが、大臣、複層的とか総合的という言葉はすごくいい言葉です。全部やっているような感じに、あるいは錯覚します。

 では、ちょっと極端な聞き方をしますが、この中で、六十六の中で一つだけしかできないとしたら、何をおやりになりますか。

斉藤(鉄)国務大臣 まず、事故の原因につきましては、運輸安全委員会、独立した委員会である運輸安全委員会が調査をして、いろいろございました。その中にも、いわゆる検査、監査する側に起因する原因というのもございました。これらについては、我々、反省し、責任を取っていかなくてはいけないんだろう、このように思っております。

 そういう意味で、どれか一つやらないといけないということであれば、今回の法改正を契機に、国、そして小型船舶についてはJCI、小型船舶検査機構に委託しておりますけれども、国からも人が行って、ある意味で、国と一体としてやっております。そこがしっかりとした監査をする、また検査をする、その姿勢、そして、ふだんの仕事に対しての緊張感と姿勢、これを持っていく。

 そういう、六十六の中にこれに該当するというものはありませんけれども、今言ったことが何番目のこれだというものはありませんけれども、まさにその点が一番大事な点だと思います。

伴野委員 今、どちらかというと、監査をする側の厳格さというか、そこを言われたんだと思うんですが、私は全体を通して思いましたのは、監査をされる側の人も監査をする側の人も抜け落ちているというか、残念ながら希薄であるということをすごく、今回の事件をずっと時系列にいま一度読み起こさせていただいて、そう思います。

 大臣なら多分御存じだと思いますが、ハインリッヒの法則ですね。これは多分技術屋さんだったら確率論で絶対に最初の方に学ぶことだと思います。

 重大事故が起きるまでに中事故がどれぐらいの確率で起こって、中事故が一個起きる前にどれだけの小事故が起きるか、小事故一個が起きる前にどれだけのヒヤリ・ハットがあるか、これも大体統計学で出てきているんですよ。

 だから、そういうことをいつも、当然、事業者あるいは責任者であれば、自分がどれだけ減点されているかというのを意識してもらっていなきゃいけませんし、そうじゃないと最後は絶対に重大事故になってしまうんです、確率論からいくと。見落としていくと、どんどんどんどん。

 チェックしている方もそうですよね。残念だけれども、令和三年の五月から十月までの間に七つもの事故に至る残念なことが起こっている。そうすると、監査する側も、この事業主は相当危ないぐらいは日頃から思っていていただかないと、監査のプロ、チェックのプロと言えるのかなというようなことを考え出しました。

 何が言いたいかというと、多分、鉄道の大好きな大臣ですから、安全は輸送業務の最大の使命であると言ったら、すぐぴんとこられると思うんですね。これは安全綱領の第一条です。鉄道が全ていいとは言いませんし、鉄道も重大事故をやっています。だから、こういうことを徹底して、場合によっては、重大事故をやっちゃった分だけ、こういうところが先んじているかもしれません。

 国交省も、四月三日ですか、入省式、新たな省庁の職員が入られて、今研修を受けていらっしゃるところだと思いますが、私は、一度国交省を挙げて安全教育を徹底されたらどうかと思います。絶対に損はないと思いますし、私自身も若いときにそれをやって、何度も唱えさせられて、何度も単純な動作で覚えて、だけれども、いまだに忘れないんです。

 正直言って、若いときは、何度も何度も繰り返すので、もう分かっているよ、信用されていないのかとか思ったりもした時期があります。でも、この動作を繰り返すこと、あるいは朝礼で同じことを何度も言う、このシンプルな動作が意識上のものを意識下に入れてきたんだなとつくづく思うんですよ。

 この意識下に入れてこそ、輸送に関わるプロの使命だと思いますし、プロなら安全に対する感覚を意識下に、意識の下に入れてくれ、まだ意識で考えているのは、残念ながら、アマチュアとそんなに遠くない、これをすごく感じてしまったんですね。これはチェックする方もチェックされる方も、どっちも。

 確かに大手はいろいろな教育をされていますから、多分やってくださっているんだと思うんです。今回のような事故が起きるのは、やはり残念ながら、確率論からいっても零細です。零細企業。安全教育というようなことがなかなか経費の方が出せない、だったら公が出していいじゃないですか。徹底的にこれを大臣のときに先鞭をつけていただけませんか、いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 私も社会人になって建設業に入りましたので、まさに安全第一、毎朝朝礼で安全標語を唱えという社会で育ってまいりました。そういう意味では、安全こそ全てに優先するということはよく理解できます。ただ、それが社会全体の意識につながっているのかということが今、伴野委員から問題提起されたのではないかと思います。

 国土交通省は、まさに安全を第一としなくてはいけない現場を多く抱えた、所管する省庁です。そういう意味で、安全こそ、第一義的には各事業者がやることなのかもしれませんけれども、そういうことをしっかり確認する、その方法をちょっと検討させていただきたいと思います。

伴野委員 やはり、安全教育にはお金もかかります。時間もかかります。だから、大臣の在任中に何か先鞭をつけていただいて、在任期間中に全てをと申しません、だから、その歴史がどんどんどんどんレガシーとして続いていくように、この事故の遺族の方、被害者の方に少しでも報いる気持ちでやっていただければありがたいかと思います。

 冒頭いろいろありましたので時間が随分来てしまっていますが、あと五分弱ですか、要点だけ言っておきます。

 きつい話というか、ちょっと未来の見えない話ばかりというか、未来を見るから安全教育をやってほしいんですけれども、ちょっと大臣の答弁が明るくなるようなお話として、今回の法律も、海洋国家日本と、これはやはり小学生に、私が小学生のときはもっとこの部分を学んだんじゃないかと思いますが、ある大学の先生も指摘しましたが、海洋国日本という記述が小中学校の教科書から少なくなっているというレポートも読みました。

 やはり、野球も少年野球からやるからああいうスターが生まれるわけで……(発言する者あり)まさに。だから、やはり海洋国日本を標榜するなら、是非、小中学生に教育の場でもきちっと、我が国はなぜ海洋国でなければならないか、そして何をやっていかなきゃいけないか、資源のない国だから、輸出入が止まっちゃったら大変なことになるというようなことも、視点をきちっと教えてさしあげれば、今の子は賢いですから、どんどん未来を見てやっていくと思います。

 それと、あともう一つ、これもお答えは要りません。目に見える形で、例えば、斉藤大臣のSとフューチャー、Fで、SF二〇三〇として先進船のモデルを、これも国費を半分ぐらい入れていいと思います、民間のお金を出せるところは全部、日本の技術の英知を結集して、先進船のモデルを大臣のときに先鞭をつけてください。これもお願いです。ここはもう回答は要りません。

 ちょっと、さっきの城井さんの質問の中での御発言として、やはり大臣らしくないなと思ったのは、もうここまで来ちゃうと国民が許しませんよ。もっと言うなら、私も地元でよく聞きましたけれども、またやったとかそんなレベルじゃないんですね。もう、うんざりを通り越して気持ち悪い、そういう部類に入っちゃっているんですよ。これは、今の現職の職員のちゃんとやっている人にとってもつらい話だし、それから、先ほどあえて入省式のことを申し上げましたが、この四月三日に入られた方も本当にうんざりしていると思うんです。

 あえて言いますけれども、有為な方は、こんなことをしなくても、いろいろなところから逆にその経験と知恵を使わせてくださいというところは多分あるんだと思うんですよ。もうこんな、本当に時代錯誤というか、あえて言葉を言えば反社会的に使われるような言葉を吐いて、省庁の権限をあたかも自分の権限のように振る舞っている先輩OB、この方たちがどちらかというと上り詰めちゃっているから残念になっちゃう。

 このこともよく考えていただいて、堂々と第三者の審査を受ければいいじゃないですか。いかがですか。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回は、まさにそのOBが、国土交通省が関与しているかのような、つまり法令違反であるかのような、誤解を招きかねない発言があった。実際に我々調査をしまして、そういう発言がありました、これは甚だ遺憾である、このように申し上げたところでございます。

 しかしながら、国土交通省の関与はなかった、直接の関与はなかったということでございますので、これを、もちろん、今回の件に関しまして、関係する可能性のある人に対してはしっかりとした調査を行いました。その上で、一切関係なかったということが明確になっております。

 そのほか、事例についても報告されておりませんので、このことにつきましては、第三者委員会で調査をする、先ほどありました文科省の事例とは違う、このように考えております。

伴野委員 政治の世界での大先輩の斉藤大臣に対しては失礼な発言だったらお許しください。

 やはり、我々政治家は歴史の審判を受けるんですよ。今答弁されたことを、三年後、五年後、議事録を読まれて、訂正したくならないことをお祈りしたいと思います。

 以上です。

木原委員長 次に、前川清成君。

前川委員 日本維新の会の前川清成でございます。

 大臣、私も、法案の質疑に先立って、本田勝元国土交通事務次官が、空港施設株式会社に対して、国交省の有力なOBの名代、こういうふうに告げた上で、国交省OBの山口勝弘さんを社長にするよう要求した件に関して、少しだけ質疑させていただきたいと思います。

 この空港施設株式会社ですけれども、山口勝弘さんもそうですし、それ以前の社長も国土交通省のOBだったそうです。この空港施設株式会社に圧力をかけたというか口利きをしたというか、本田元事務次官、この方は現在東京メトロの会長ですが、本田さんの前の東京メトロの会長、この方は安富正文元国土交通事務次官です。

 この東京メトロとかあるいは空港施設株式会社のように、国交省OBが指定席のように再就職している会社、団体などなどはほかにもあるのでしょうか。

宇野政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の国家公務員法では、管理職職員であった者が、国家公務員を離職後二年以内に営利企業の地位などに就いた場合、再就職先の名称、再就職先の業務内容などを、離職時の任命権者を通して内閣総理大臣へ届け出なければならないこととされています。

 国土交通省OBの再就職状況につきましては、通常、この届出を通じて把握することとなりますが、本届出制度においては、例えば再就職先での辞職、あるいは辞職後二年が経過した後の再就職の状況などについては把握することとはされておらず、国土交通省のOBがどのような組織のどのような地位へ恒常的に再就職しているかという点について、広く全体像を把握することは困難です。

前川委員 宇野さんに申し上げておきますが、以前の質問通告のときも申し上げました。私、政府参考人の方を登録するのは基本的に嫌なんです。なぜならば、今のように、聞いてもいないことをだらだら答えて、私の時間が空費されてしまう。知らないというんだったら、知らないとお答えいただくだけで結構なんです。もしこういうことが繰り返されるようであれば、次からは全て大臣にお答えいただくというふうにいたします。

 その上で、国交省のOBの指定席の一つに損害保険会社があるということを指摘させていただきたいと思います。

 本田勝元事務次官は、国交省事務次官を退官した後、損保ジャパンの顧問をされていた、あるいは日本興亜損保の顧問もされていました。あるいは、今般、鉄道・運輸機構の理事長に就任されました藤田耕三さん。この方も元事務次官ですけれども、退官後に損保ジャパンの顧問をされています。

 本田さんとか藤田さん、存じ上げませんが、きっと優秀な方なんだろうと思います。優秀な方が退官後も社会において御活躍いただけることは大変好ましいことだと思いますが、しかし、その結果として、国交省の政策が損保会社のためにゆがめられてはならないだろうと私は思っています。きっと大臣も同じ思いだろうと思います。

 そこで、一つ例を挙げたいのは、今回、国交省が交通事故被害者ノートというのをお作りになりました。大臣、この交通事故被害者ノートは何の目的のために国交省が作ったのか、被害者救済のためということでよろしいですね。

斉藤(鉄)国務大臣 元々、民間団体が作成するあらゆる犯罪被害者の方々向けの被害者ノートがございましたが、当事者の方々から交通事故に特化したものをとの強い御要望を受け、国交省において作成したものでございます。

 作成に当たっては、当事者の方の御意見もよく聞きながら作りました。

前川委員 大臣、今の当事者というのは、交通事故の被害者という意味でよろしいですか。

斉藤(鉄)国務大臣 はい、そのとおりです。

前川委員 交通事故の被害に関して、自賠責保険というのがあります。この自賠責保険では、担当者によって支払う金額が異なったら困るので、賠償基準というのを定めています。例えばですが、不幸にして両目を失明してしまった場合、後遺症一級ですが、自賠責の基準では、慰謝料として一千百万円が支払われることになっています。

 ところが、この自賠責の基準とは別に、裁判所の基準というのもあります。大阪とか東京とか、大きな裁判所では、交通事故の民事事件が全て一つの部、集中部に集まります。大阪であれば、第十五民事部というところに全部集まってきます。そこで、やはり裁判官によって、例えば、前川裁判官は優しいから慰謝料がたくさんだけれども、斉藤裁判官はけちなので慰謝料が少ない。こういうことになっても困るので、各裁判所では、集中部では、賠償基準を定めて公表しています。

 大阪地裁の基準というのは、こういうふうに本になって販売されていますが、同じ後遺症一級について、自賠責の基準は千百万円、大阪地裁の基準は二千八百万円、二倍も違うんです。ただ、こんなことを知っている被害者の方というのは少ないと思います。そのことを利用してかどうか知りませんが、損害保険の社員たち、示談交渉に当たる社員たちは、被害者に対して、これは自賠責保険の基準なんです、だから正しいんですと言って、示談案を提示します。裁判所の基準があって、裁判所の基準だったら二倍ぐらいもらえますよというふうなことは口にしません。保険会社の社員は朝から晩まで交通事故の示談をやっていますが、交通事故の被害者の方は一生に一回の方が多いので、保険会社の社員がそう言うたら、ああ、そうなんかな、こう信じて示談してしまいます。

 この委員会には、公明党の北側委員とか、あるいは立憲の枝野委員とか、あるいは維新の私とか、法曹資格を持った委員が何人もおりますが、これは、交通事故の被害弁償に、示談に当たって最も基本的なことなんです。要は、損害保険会社が自賠責保険の基準しか提示しない、これを信じたらあかんということが一番大事なことなんです。

 ところが、この被害者の声を聞いて作ったはずの交通事故被害者ノート、六十三ページまであります。非常に細かいことも書かれています。それにもかかわらず、一番大事な、交通事故の賠償基準には自賠責基準と裁判所の基準があって、裁判所の基準だったら二倍もらえますよ、もっともっともらえますよ、だから、自賠責保険の基準だけを信じて示談したら駄目ですよということが書かれていないんです。

 大臣、これはやはり、国交省のOBが損害保険会社に天下りしている、その結果として政策がねじ曲げられたということじゃないんですか。

斉藤(鉄)国務大臣 自動車事故の損害賠償額の算定基準については、国が定める自賠責の支払い基準のほか、委員御指摘の、過去の判例に基づく裁判所基準と呼ばれるものがあることを承知しております。

 交通事故被害者ノートは、事故直後の混乱する状況の中でも当事者の方々が事故状況の記録を残せるよう、また、様々な支援制度を知っていただけるよう、当事者の方々の御意見も伺いながら、分かりやすさを重視して作成したものでございます。

 特に、当事者の方々から、突然の事故で混乱している被害者にとって、詳細で分厚い資料は活用できないというお声があったことから、できるだけ簡潔にまとめております。

 また、裁判における損害賠償については、個々の事故により事情が異なることから、弁護士に相談することが望ましいと考えております。

 このため、交通事故被害者ノートには、裁判の流れや弁護士紹介支援などの各種相談先の案内を中心に記載をしているところでございます。

前川委員 委員長、是非、この被害者ノート、一度、お目通しください。

 大臣、今、官僚から渡されたペーパーをお読みになりましたけれども、基本的なこと、簡単なことだけじゃありません。

 例えば、重症頭部外傷の治療と家族の役割とか、あるいは、支援の輪をつくる、地域の相談機関の役割とか、報道機関との対応方法とか、インターネットの被害救済とか、非常に細かな話ばかり書いています。本当に、昨日交通事故に遭ってお困りの方が、この本を読んで、ああ、そうなんかなんか思いません。

 今申し上げたとおり、一番大事なのは、保険会社の示談案をうのみにしたらあかんということなんですよ。その一行がどこにもないんですよ。やはり大臣、これは、是非国交省においても御検討をお願いしたいと思います。

 いずれにしても、委員長、既に我が党の赤木委員からも理事会で御提案していると思いますが、この本田元事務次官らによる口利きの問題というのは、単に喉元過ぎて熱さ忘れるだったらあかんと思います。

 是非この件について、この委員会で、また、国交省だけではないと思います。ほかの省庁の問題もあると思います。あるいは、大臣が国家公務員法云々とおっしゃいました。そうであれば、国家公務員法の改正も視野に入れて議論するべきだと思いますので、お取り計らいをお願いしたいと思います。

木原委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議をいたします。

斉藤(鉄)国務大臣 交通事故被害者ノートにつきまして御発言がありましたので、私からもちょっと答弁をさせていただきます。

 私は、この交通事故被害者ノートにつきましては全部読みました。また、こういう交通事故に特化したノートを作ってほしいという、中心になって動いていらっしゃる方ともお会いし、お話を伺いました。そういう当事者の方々の意見を取り入れて作ったつもりでございます。

 しかしながら、これは今回だけでおしまいということではございません。今、委員御指摘の点等も含めて、これからよりよいものにしていきたい、このように思っておりますので、実際に役立つもの、本当に事故に遭って混乱されている方にお役に立つものを作りたい、そういう気持ちはいっぱいでございますので、今後、改善をしていきたいと思います。

前川委員 それでは、カズワンの事件を受けて、今般、海上運送法が一部改正されます。

 これまで委員からも発言がありましたが、本当に被害者の皆さん、御遺族の皆さんに心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 私も、六年前だったと思いますが、妻と二人で北海道を旅行いたしました。カズワンではありませんが、やはりウトロから知床の遊覧船に乗りました。まさかそれが命の危険のある船だなんということは、遊覧だということはとてもとても思っていませんでした。御遺族の方も、そして被害者の方もさぞや御無念かと思います。本当にお悔やみを申し上げたいと思います。

 その上で、ちょっとこれは私からは質問通告していないんですが、先ほど石川委員の質疑で、事業者に加入を義務づける損害保険の限度額を引き上げたんだ、一億円に引き上げたんだという御答弁がございましたけれども、これは一事故についてなんでしょうか。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 事業者が万一事故を起こした場合の賠償資力の担保につきましては、事業許可に当たって船客傷害賠償責任保険の締結を義務づけております。

 現行は三千万円でございます。これを、これより、一事故、旅客一人当たり一億円、一人当たり一億円を限度額とするよう引き上げる予定でございます。

 なお、この事故を起こした事業者においては、一億円の支払い限度額に入っておりました。

前川委員 そうしたら、人、被害者一人について一億円で、一事故については幾らなんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事故を起こしました事業者が締結しておりました保険においては、一人当たり一億円。六十五人乗ることができますので、六十五億円ということでございます。

前川委員 違う。今回の事故じゃなくて、これから義務づけるのは一事故当たり幾らですかという質問です。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 これより義務づけの額を引き上げようと思っておりますのは、一人当たりの旅客について、三千万円から一億円ということで諮ってまいる所存でございます。

前川委員 一事故当たりについて聞いているんですが、もう何か時間の無駄ですからやめます。

 それで、今回、外航船舶の確保をするために特別償却率を引き上げるということも御提案になっています。

 国土交通省からいただいた資料、何も私だけいただいたんじゃありません、皆さん方に配られている資料によりますと、二〇一〇年の時点で、日本のシェアは一六%でした。ただし、外航船舶の総トン数は、世界で十一億六千五百万トンでした。二〇二一年にそのシェアが一六から一一に落ちました。しかし、外航船舶の総トン数は二十一億一千六百万トンです。

 そうしたら、十一億六千五百万トンのうちの一六%であれば、総トン数でいうと一億二千八百十五万トン。これに対して、二十一億一千六百万トンの中の一一%だったら、二億三千二百七十六万トン。日本の外航船舶は二倍に増えていることになります。国交省の資料によればですね。

 船は増えているにもかかわらず、どうして税制上の優遇措置を講ずる必要が今回あるんでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 世界全体の海上輸送量は、二〇二〇年、コロナの影響により一時的に減少したものの、中長期的には増加傾向にあり、世界全体の船舶保有量も同じく増加傾向にございます。

 こうした中で、競合国においては、経済成長に伴い、船主が積極的な船舶投資を行うことにより、船舶保有量を大きく増やし、国際シェアを高めております。

 これらの国の中には、船主に対する手厚い税制優遇措置を講じている国もございます。

 一方で、日本船主の船舶保有量は微増にとどまっているということで、日本船主の国際シェアが相対的に低下してきている、こういうふうに認識しております。

前川委員 大臣、私、今申し上げたとおり、微増じゃなくて、日本の船主が持っている外航船舶というのは、トン数でいうと約二倍に増えているんです。ですから、なぜこういう税制上の優遇措置が必要なのかということをお尋ねしました。

 それと、今大臣の方から経済成長というお話がありましたが、これも大臣よく御存じのとおりですけれども、例えば、一九九五年の時点で、世界のGDPに占める日本の割合は一七・六%でした。それが二〇二一年には五%にまで低下しています。今、世界のGDPに占める日本の割合は五%なんです。でも、船は一一%持っているんです。

 じゃ、今、貿易、海外との輸出入が大事だというお話がありましたけれども、二〇二二年の数字ですが、世界の貿易量に占める日本の輸出量というのは僅かに三%です。輸入は三・五%しかありません。ちょっと手元の資料が古いんですが、二〇一八年の時点で、日本の輸出量は、世界の貿易に占めるのは三・八%。これに対して、今、中国どうこうというのがこの資料にも書いていますが、中国の輸出は、全世界の一二・八%なんです。

 日本の輸出入は世界全体の三%しかないにもかかわらず、船は一一%持っている。私は、十分過ぎるぐらい持っているんじゃないのかな、だったら、別に外航船舶の船主についてだけ税制上のえこひいきをする必要はないのではないのかな、こういうふうに考えているんですが、大臣、いかがでしょうか。

 大臣に、これ、通告しているよ。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国、九九・五%の貿易を海上輸送に依存してございます。日本の外航海運は、日本の産業と暮らしを支える、経済安全保障上、大変重要な役割を果たしていると存じております。

 日本の船主がしっかりと計画的に船を保有することが、経済安全保障をしっかりと確保し、日本が産業及び暮らしをしっかりと確保して成長していくための位置づけであると考えてございます。

前川委員 そのような浪花節を聞いているんじゃなくて、海上輸送が大事だと言っているじゃないですか、僕も。

 そうじゃなくて、今聞いてもらっていたと思うけれども、日本の輸出は世界貿易の三%です。輸入は三・五%しかないんです。それなのに船は一一%ある。要は、需要に対して船は十分過ぎるぐらいあるんじゃないですかと。船が減っているんだったら別だけれども、国交省からもらった資料でも、船は二倍に増えているんですよ、十年の間に。どうして、これ、税制上の優遇措置が必要なんですか。

斉藤(鉄)国務大臣 確かに、輸出量とか輸入量についてはそうかもしれません。

 しかし、先ほど来、日本は海洋国家というお話もございました。世界の中における、いわゆる外航海運で大きな日本は地位を占めてまいりました。その地位が相対的に大きく低下してきている、これは事実でございます。

 先ほど、船の大型化に伴ういわゆる船腹量につきましては、世界が、ほかの、特に中国、韓国が大きく伸びている中で、日本は先ほど申し上げましたように微増にとどまっている、相対的にシェアが低下してきている、こういうことから、再び、先ほど伴野委員のお話にもございましたが、海、海洋国家としての地位を取り戻すべくということと、それから、今局長が答弁いたしました経済安全保障という観点もございます。

 特に、今、大きく伸びているところが、税制上、例えば、もう船について税金は取らないとか、そういう非常に極端な税制を実施しているという現実もあり、日本もしっかりこれに対して競争力を持っていかなければならない、このような観点から、今回、このような税制措置としたものと私は考えております。

前川委員 大臣、やはり税制というのは公正で公平でなかったらあかんと思うんですね。それは、国際競争は大事です。だったら、トヨタ自動車はもう法人税をただにしましょうか、トヨタ自動車、乗る自動車は消費税をただにしましょうかというわけにはいかへんと思うんです。どこにどういうふうな税制を措置していくか。だから、船が大事だからといって優遇措置を講ずるというんだったら、それなりのやはり根拠が要ると思います。

 その上でお尋ねしたいんですが、特別償却率を今回引き上げますが、税収、どの税金が、幾ら、どれぐらい、どうなるのかということをお答えいただけたらと思います。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 この特別償却は、法人税等の課税の繰延べを行うものでございます。

 令和五年度税制改正におきましては、外航船舶の特別償却率について、最大一二%の引上げが行われたほか、既存制度について所要の見直しを行いました。

 これらの改正によりまして、平年度における減収の見込額につきましては、僅少であると見込んでございます。

前川委員 その一二%云々というのは資料をもらっているから知っているんですけれども、私が今聞いたのは、じゃ、法人税がどれだけの期間でどれだけ減ってしまうんですかということです。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 税の繰延べでございますが、平年度における減収見込額につきましては、十億円未満の減収見込みであると考えてございます。

前川委員 そうしたら、十億円の減少ということは、船主さんが支払う税金も十億円ぐらいしか減らない、こういうことですよね。

 それで、じゃ、その十億円のお金の流れ。特別償却率を引き上げました、法人税が十億円まけてあげることになりました、そうしたら、そのお金はどういうふうに回り回って外航船舶の建造に充てられることになるんですか。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 本特別償却制度は損金算入でございますが、課税が繰延べされるということでございますので、一時的に船主の税負担が軽減されるということでございます。

 これによりまして、船舶取得時に船価の約一割に相当する資金の確保が可能となり、その資金を活用して、新たな船舶への投資が可能となると考えてございます。

前川委員 大臣は今の海事局長の説明を聞いて腹に落ちましたですか。私はなかなか納得できないんですけれども。これは租税特別措置ですよね。というか、当然、見直しをしますよね。どういうふうに検証されるのか。

 例えば、これまで様々な租税特別措置がありました。例えば、これはいいですけれども、アジア拠点化法という法律があって、日本にアジア本社をつくったら、研究開発拠点をつくったら、法人税をただにしてあげましょうみたいな法案がありましたけれども、租税特別措置がありましたけれども、結局、その法律で日本に来てくれる外国企業はなかったというふうに聞いています。

 この租税特別措置も、検証はなさるだろうと思います。どういうふうに検証をなさって、効果について見定めた上で、廃止するんだったら廃止する。この辺の計画をお聞かせいただけたらと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 先ほど局長が答弁しましたように、今回繰延べされた金額は、新しい造船の投資に回るということでございます。これが船主の競争力を増やし、日本の海洋国家としての競争力を増やすということにつながると思っております。

 特別償却率の引上げについて、その効果を検証し、必要な措置を講じていかなければなりません。今回創設する外航船舶確保等計画については、海上運送法に基づき、その実施結果について報告を求めることとしております。この報告も活用しながら、外航船舶確保等計画制度並びに特別償却の引上げの効果、だから、きちんと新造船に回ったのか、新造船に回ってその船舶量が増えているのかということを検証していきたいと思います。

前川委員 効果が出ていないとなれば、この制度は廃止するということでよろしいですか。

斉藤(鉄)国務大臣 それは、効果を見ながら、税制の議論の中で決せられるものだと思います。

前川委員 ですから、効果がなかったら元に戻す、あるいは廃止するということでよろしいですか。

斉藤(鉄)国務大臣 そこは、先ほど来申し上げておりますように、日本の舶用、また外航海運の競争力ということも総合的に考えながら、また、外国との競争条件ということも考えながら、これは決せられるだろうと思います。

前川委員 大臣、私も、日本が海に囲まれている、LNGにしたって、鉄鉱石にしたって、全部船でやってくる、トヨタ自動車が造った自動車も、船に乗ってアメリカに売られていくということは承知しておるんですよ。

 だから、日本が、外航船舶が必要ないとか、そんなことを言うつもりはありませんが、こういう税金の使い方が、あるいは、税金の優遇の仕方がクレバーなのかどうか、これは常に検証していかなければならないと思います。

 業界団体がこうしてくれと言うたんですというふうに事前に説明を受けましたけれども、じゃ、業界団体が言えば何でものめるという時代はもう終わったのではないかと私は思っています。このことを指摘させていただいて、質疑時間が終了いたしましたので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

木原委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 国民民主党の古川元久です。

 間もなく知床遊覧船の事故から一年が経過をいたします。いまだ行方不明の方々が一日も早く見つかることを改めてお祈りするとともに、事故で犠牲となられた皆様方に心より哀悼の意を表したいと思います。また、御遺族の方々には心よりお悔やみを申し上げたいと思います。

 さて、今回の法改正は、この痛ましい事故を受けてのものでありまして、今後二度とこのような事故を起こさないためにも必要な改正だとは思いますが、今日の議論でもいろいろ出ていますけれども、幾つか懸念もありますので、そうした点についてお伺いしたいと思います。

 まず、さきの事故は、今の法律の下で求められている必要な安全対策をちゃんと講じていなかった、そうした事業者が起こした事故であります。そのことによって、今回、安全対策が強化されることとなったわけなんですが、これによって、いろいろ新たな追加の安全対策を取らなきゃいけない。

 これまでの法律の下でちゃんと安全対策をしっかり講じてきて、そういう問題もなく、事故も起こすことのなかった、そういう真面目な事業者まで今回の法改正に伴って安全対策が強化される、そうしたコスト負担を負わなければいけないことになるわけでありますが、こうした事業者の皆さん方の理解、これをどのように得ていくつもりなのか、大臣の御所見をまずはお伺いしたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 これまで真面目にやってこられた事業者の方、たくさんいらっしゃいます。しかしながら、事故直後に私ども全国で実施した緊急安全点検において、安全管理体制の不備が発見されたという事業者もまた多くいらっしゃったということも事実でございます。

 したがいまして、特定の悪質な事業者のみの問題として取り扱うのではなく、こうした痛ましい事故が二度と起きないよう、全国の事業者の安全、安心対策の徹底を図ることが必要と考えた次第でございます。

 真面目な事業者の方に御理解をいただくにはどうしたらいいかという御質問でございますが、例えば、処分を受けた事業者の事業許可の更新期限は一年又は三年ということで短くする、優良な事業者については五年とするとか、中小零細事業者については運航実態を踏まえた運航管理体制を求める、現実に即した運航管理体制を求めるというような形にして御理解を得たい、このように思っております。

 また、今回の対策を検討した検討委員会には事業者からも参画をいただいたほか、業界団体との意見交換や全国の旅客船事業者へのヒアリング等を通じて意見を把握し、必要に応じ、対策に適切に反映した、このように考えております。

 今般の改正法案の施行に当たっては、改めて事業者に対して丁寧な説明を行ってまいります。

古川(元)委員 説明を行うのは当然だと思うんですけれども、本当に真面目にこれまでちゃんとやっていて、何も問題もなかった、事故もなかったようなところが、もちろん、今回の安全対策をやることは必要なことだと思うんですが、それに伴っていろいろなコストがかかる部分、やはりそこのところを何らか考えていくということも、これは必要じゃないのかな。ただ説明して理解してもらう、プラス、そうしたことも是非考えていただきたいと思います。

 特に、旅客船の事業者、今回の対象になる事業者、これは恐らく、多くはそんな大企業じゃなくて、やはり中小とか零細事業者だと思うんですね。

 ちょっと事実関係のところをお伺いしたいんですが、こうした今回の法改正の対象になる事業者のうち、中小零細事業者の数とか割合はどれくらいあるんですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 国内で、現在、旅客を運送する船舶運航事業者は約五千五百事業者でございます。

 フェリーなどの旅客船により定期運航を行う事業者は約四百おりますが、その九割以上はいわゆる零細事業者を含む中小事業者であると承知をしてございます。

 また、それ以外の遊覧船や海上タクシーといった不定期運航を行う五千余りの事業者については、そのほとんどが中小事業者であると承知をしてございます。

古川(元)委員 ありがとうございます。それだけ、ほとんどがやはり中小零細ということですよね、今の話だと。

 そうなると、今後は、要は、さっき私、最初にお伺いしましたけれども、新たな安全対策を施すためにコストがかかるけれども、中小零細事業者はそれだけのちゃんと対応できるだけの体力というのはみんなあるんですか。いかがですか、そこは。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の中小事業者については、やはり事業規模が小さいことになりますので、営業収入等についてもそれに比例した状況にあると考えてございます。

 そのような中、私ども対策を講ずるに当たりましては、中小事業者を含め、事業者がこの法律案に基づく措置を円滑に講じることができますように、例えば、管理者の試験の受験機会を得やすいように、試験の実施場所や頻度を十分に確保すること、あるいは管理者の講習をウェブでの受講を可能とすること等の対策を講じますとともに、予算面でも、中小事業者等の取組を促進すべく、改良型救命いかだや業務用無線設備等の導入にしっかり補助を確保して、支援をしてまいりたいと考えてございます。

古川(元)委員 これは中小零細の、特に零細の事業者の中には、これ以上ちょっとコストをかけてこの事業を続けるのはできないな、これを機会にもうやめちゃうという、そういう事業者が出てきませんかね。

 日本は観光立国だということで、まさに日本は本当に海に囲まれているわけですから、そういった意味では、そういう事業者の存在というのは大事だと思うんですが、真面目にやってきたんだけれども、なかなかこれ以上の対応をするだけの体力はないので、これを機会にやめてしまうという、そういうところが出てくる懸念とか、そういうことはないですか、どうですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、中小の事業者は各地において極めて重要な役割を担った事業を行っておられます。

 今般、改正法案の施行に当たっては、改めて事業者に対する御説明を丁寧に行い、中小の方々であっても円滑な対応ができるよう努めてまいりたいと思いますし、事業の実態を勘案しつつ、必要な対策を講じてまいりたいと思っております。

 他方、先ほど伴野委員の御質疑でもございましたように、今回の本当に痛ましい事故を二度と決して繰り返してはならないということをまずもちますと、旅客船の安全対策というのは、申し上げるまでもなく、運送事業の大前提でございますので、安全に責任を持てない不適格な事業者というのはやはりやっていただけないものということが大原則でございますので、そのような中で、誰もが安心して旅客船を利用できるような安全を確保すべく、中小の事業者さんにもしっかりと円滑に御対応いただけるような対策を講じてまいりたいと思っております。

古川(元)委員 もちろん、私も、やはりちゃんと安全対策はやらなきゃいけない、担保しなきゃいけない、新たに規制強化すれば、ちゃんとそれを守ってもらわなきゃいけない、それは大前提です。

 ただ、現実問題として、今まで何にも問題を起こしたことがなくて、ここまできちんと安全対策をやっていた事業者でも、今回のに対応できなきゃ、結局それは不適格事業者として排除されることになるんだと思いますけれども、ある種、そういうものが出てくることを、もうそこは、今回の法改正によって、そういういわば選別というのは行うんだと。

 だから、先ほど数のお話がありましたけれども、この数がある程度、一定程度、守れなくて、達成できなくて減ること、そこはある種想定内というふうに考えておられるのか、その点の認識をお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 選定あるいは想定内ということで私ども考えてございません。

 先ほど大臣からお答え申し上げましたが、知床の事故直後に、実は七百九十事業者、全国で安全点検を行ったのでございますが、例えば、運航管理者が船舶運航中にいなかったとか、運航記録簿が記載されていないとか、あるいは安全教育訓練をしていないとか、定点連絡をしていないとか、今回のカズワンであれだけの事故を起こした、それぞれの、これはやってはならないという要素をいろいろな事業者で、具体的に数を申し上げますと、全国七百九十事業者のうち百六十二の事業者でやはり不備があったものですから、私どもとしては、これは特定の会社のことではなくて、全国どこでも起こる可能性のある、本当に気をつけてしっかり安全を徹底しなきゃならない状況にあるというふうに決意をいたしました。

 その上で、人の命を乗せて運ぶ以上は、しっかり安全を背負っていただく事業者に運営していただきたいという気持ちでございます。

 その上で、中小の事業者さんにもしっかり円滑な対策を取っていただけるよう、必要な対策を講じてまいりたいと思っております。

古川(元)委員 私も全く思いは同じなんです。やはりちゃんとこれは守ってもらわなきゃいけない。ただ、現実、体力とか何かでそこまでやれないとか、そういった意味では、やはり強化することによってある程度事業者数は減ってきてしまうということは、それは想定されるんじゃないのかなという気がするんですよね。

 そもそも、さっきからお話があるように、今のルールの下でも、規制の下でもちゃんとそれが、全然できていないところがそんなにあったというわけですから、そういうところが本当に、悪意でそういう状況だったところも、それはあると思いますが、一方で、やはり中小零細でそこまで対応できなくて、そういう状況で運航していた、危ない状況でやっていたところもあると思うんですね。

 ですから、そんなところは、更にということになったら、なかなか、やはりこれはもう続けていけないということになるんじゃないかと思いますし、今まで何とかかんとか、そういう、小さくなくても、今までの基準であればちゃんとやっていたところも、しかし、更にとなると、なかなかそこまでと。

 だから、そこは、本当にちゃんとやる気がある真面目なところには、少しいろいろな意味で、財政的な面も含め、サポートして、やはりそういう真面目な事業者を守っていくようなことも是非考えていただきたいということをお願いしたいと思います。

 次に、これは今、事業者そのものの話ですが、今回、船員の資質向上があります。

 ただ、今回の事故の背景の一つには、やはり船員不足、今でもなかなか船員は少ない。これは船員だけじゃなくて、とにかく人口もどんどん減って働き手が減っている中で、決してこの船員というのが魅力ある職業、給料も高くというか、そういうものとは残念ながら思われていない。そういう状況の中で、船員不足が深刻であることも、ある種、直接の原因では当然ないですけれども、事故なんかにつながっていった、そういう背景としては一因としてもあるんじゃないかというふうにも考えられるわけなんです。

 そういった意味では、これはもう本当に、もちろん船員の資質向上というのは事故を起こさないためには必要です。だから、やらなきゃいけないことだと思うんです。ただ、そこまでそういう資質を求めたときに、更に船員不足が加速をするということにならないか、そういう懸念を私は持つんですけれども、そういうところの懸念はありませんか。どうですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正では、小型旅客船の船長などを対象として、特定操縦免許に係る講習の内容の拡充や修了試験の創設、初任教育訓練の実施などの措置を通じて、その資質向上に取り組むこととしてございます。

 このうち、初任教育訓練につきましては、安全対策にしっかりと取り組んでいただいている事業者においては、従来から適切に実施されてきたものであると考えてございます。

 また、現在、特定操縦免許を受有して船長などとして乗船されている方につきましては、施行から二年以内に講習の拡充部分に相当する移行講習並びに修了試験を受けていただくことで、引き続き船長として乗船できることとしてございます。

 私どもといたしましては、このような措置を講じまして、今般の制度改正によって、小型旅客船の船長等の数が大きく減少するといった事態を招くとは考えてございませんけれども、ただ、引き続き、委員の御指摘を踏まえ、関係者の御意見を丁寧に丁寧に伺いつつ、適切な制度設計を詳細にわたって行ってまいりたいと存じております。

古川(元)委員 ちゃんとした必要な資質を持った船員を確保するというのは、物理的な安全対策と同時に、やはりどうしてもこれがないと、船員がいなければ、結局、船を動かせないわけですから。

 だから、そもそも船員が足らないわけですよね。船員に限らず、今、日本全国本当に労働者不足です。ですから、私は、この船員の資質向上のための規制を強化することはもちろん必要、やらなきゃいけないと思いますが、同時に、やはり船員不足の状況を改善をする、そのための何らかの対策というのも、もう一方でやはり講じていくということをしないと、さっきから申し上げていますけれども、この旅客船というのは、今回対象となる事業というのは、日本の今後の観光立国とかそういうところで考えたら、あるいは地域の交通の足を維持するということでは、やはりそれは大事な人たちなんですよね。

 ですから、やはりそういう人たちを、安全で、ちゃんと命を守ってやってもらうことは大事なんですけれども、同時に、そういう人たちがどんどんどんどん数が少なくなってしまうということは、これもやはり避けなければいけない。

 ですから、そういった意味で、やはり何らかの船員不足の状況を改善するための対策を講ずるということも、これも考えるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律の施行に当たって、先ほど申し上げたような、しっかり中小の事業者さんが対策を円滑に取るということについては、先ほどお話を申し上げました。

 また、それにとどまらず、船員の全般的な確保対策につきまして御指摘を頂戴したと思いますが、内航船員に関しては、船員の働き方改革を実現して、若年、若手の船員の定着率の向上を図るために、船舶所有者に労務管理責任者の選任を義務づけるなど、適切な労務管理体制を構築することによって労働環境の改善を図ってまいります。

 また、あわせまして、船員の計画的な雇用、育成に取り組む海運事業者に対します支援や、一般教育機関出身者の内航船員への就業促進のほか、女性活躍の推進、海上ブロードバンドサービスの普及に向けた関係省庁と連携した環境整備など、各般の取組を着実に進めてまいりたいと思ってございます。

古川(元)委員 むちがあるのであれば、やはりあめも同時にないと、厳しくするだけでは本当に先細ってしまいますから、是非そこは考えていただきたいと思います。

 最後に、大臣にちょっとお伺いしたいと思いますけれども、それこそ、今までの中でもそれが十分ではなかったということが今回分かったわけなんですけれども、その中でもルールがちゃんと守られていなかった。だから、厳しくすれば守られるという保証があるわけじゃないんですね。ですから、やはりどんなに規制や処分、罰則を強化しても、結局、その実効性が担保されなければ、それは絵に描いた餅で意味がないわけです。

 先ほどから御答弁であるように、今までルールがちゃんと守られていたかどうかも、今回の事故があって、チェックしてみて初めて分かった。だから、やはり日頃からちゃんとルールや基準が守られているかどうかというのが、なぜ担保されていなかったのか。

 今度、こういう、厳しくしたときに、ちゃんとそれが担保される、そのためにはどういう体制や、あるいはどういう対応をするのか。やはりそこがないと、行政としては、これだけやりました、これでもう、これが守られていれば事故はないはずですといっても、しかし、それが、実態、現場で守られていない、守られているかどうかのちゃんとチェックもされていない、そういう状況の中では、結果的にまた同じような事故を起こしかねないと思います。

 ですから、そのための、実効性を担保するための対応としてどう考えているかを最後に大臣に伺いたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 実効性の担保というのは非常に重要な点だと思います。

 実効性の担保としては、行政処分、それから罰則の強化、それから監査の強化策が盛り込まれております。

 このうち、監査体制の充実につきましては、令和五年度に運航労務監理官を増員いたしました。

 それから、監査を行う職員の意識改革を徹底するため、昨年六月と本年一月に、海事局幹部が現場に足を運び、地方運輸局の現場職員との対話を行っております。

 さらに、監査能力の向上については、自動車の監査部門との人事交流を行うとともに、他の運送事業の監査の知見を活用するなど、運航労務監理官の能力を向上させるための取組を進めているところでございます。

 これに加えて、通報窓口に寄せられる情報も活用しつつ、リモートや抜き打ち監査等による効果的かつ効率的な監査の実施を図ってまいりたいと思っております。

 このような取組を通じまして、今般の法改正の実効性をしっかり確保していきたいと思いますが、先ほど来おっしゃっておりますように、魅力的な職場になって、若い人がたくさん来る職場になることということも非常に重要な背景だと思います。その両面で頑張っていきたいと思います。

古川(元)委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。

木原委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 あの乗客乗員二十六名が死亡、行方不明になった知床の遊覧船事故から間もなく一年になろうとしております。改めて、被害に遭われた皆様に心から哀悼の意を表するとともに、御遺族の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 今回の海上運送法改正案は、昨年十二月に公表された知床遊覧船事故対策検討委員会による最終報告を踏まえた法改正であり、当然の措置と思います。

 ただ、国土交通行政というのは、こうした重大な事故、犠牲や悪質な業者の登場があって法改正につながるという繰り返しであります。やむを得ないとは言いたくない、何とかこれ以上の犠牲を生まないようにできないか、そういう思いで質問したいと思います。

 まず、昨年の質問の際、私は、安全統括管理者と運航管理者は兼任すべきでないとただしました。そもそも、桂田社長は許可を与えるべき人物ではなかったわけでありますが、社長が安全統括管理者と運航管理者を兼ねていた。しかも、運航管理補助者は船長であって、船に乗っているわけです。補助できるはずもないわけですよね。なのに、答弁では、兼務することが直ちに安全管理上の問題となるとは考えていないというところにとどまっておりました。

 今回の法案では、この点、どのように整理されたのでしょうか。

    〔委員長退席、長坂委員長代理着席〕

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、この事故を起こしました事業者、桂田元社長、自らが運航管理者であることをしっかりと意識せず、運航管理者としての職務を果たさなかったことが今回の事故の大きな要因になっていると思ってございます。

 御指摘の、まず、安全統括管理者と運航管理者の関係でございます。

 安全統括管理者は、輸送の安全確保のための運営方針を定めて体制を整備する役割を、また、運航管理者は、現場において日々の船舶の運航を適切に管理し、定められた運営方針を実行する役割を担ってございます。

 これらの両管理者の責務は互いに相反するものではないと考えてございます。

 仮に、安全統括管理者と運航管理者、この二役が兼任されたとしても、輸送の安全確保に関する業務に支障を生ずるものではないと考えてございまして、今般の改正法案では、安全統括管理者と運航管理者の兼務は認めてございます。

 ただしながら、他方、先ほどの委員の御指摘にもございましたが、船長と運航管理者との関係はまた別でございまして、船長は、海上において適切に運航判断を行い、旅客の安全を確保することが、また、運航管理者には、特に、船長と独立した立場で、陸上において適切に運航判断を行うこと、例を申し上げれば、気象、海象の悪化が予想される場合に、船長に対して陸上から運航の中止を指示することが求められてございます。

 このように、それぞれがそれぞれの役割を求められているところでございますため、職務中の運航管理者が船長として船舶に乗船する場合には、それぞれに期待される職務を全うできず、輸送の安全に支障を生ずるおそれがありますことから、職務中の運航管理者については、今回の改正により、船舶への乗組みを禁止をさせていただくところでございます。

高橋(千)委員 安全統括と運航管理者が一人二役である場合もあるということは残念ではありますけれども、今、後段でお話しされたように、船長と運航管理者は別であると。ですから、乗っている人が管理者よということはあり得ないということが確認をされたと思います。

 でも、それは本来当然のことだと思うんですね。法律上は違法じゃなかったわけです。だから、特別監査をやっていても、運航管理補助者も不在であったと。不在なのが当たり前なんです、船長なんだから、乗っているんだから。それを分かっていて淡々と書いてあった、そのこと自体が納得できなかったわけであります。

 次に、安全統括管理者と運航管理者、それから一般旅客定期航路事業者、これが経営トップになるかと思うんですけれども、その三者の関係性がどのようになるのかということなんです。

 改正案は、国はが主語の部分が増えました。許認可権などが明確にされたと思います。一方、それ以外の責務については主語が様々ですので、この部分に関する最終的な責任は誰にあるのか、それが主語で整理されていると思うんですが、確認をしたいと思うんです。

 例えば、カズワンの場合、当日天候が荒れていて、船長は船を出すべきではないと考えたわけですが、安全統括であり運航管理者である社長が出せと言った。これはやはり、関係性を考えると、社長の命令だから断れないという、そういうことがあってはならないということが今回の反省だと思うんですね。

 そこを確認しつつ、例えば、旅客の保護、船舶の安全管理、運航の判断、訓練の実施、それぞれ責任を持つのは誰か、簡潔にお答えください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員最初に御指摘の運航の可否判断、これは、船長が出航前に気象、海象情報を収集し、運航基準に照らして出航可否の判断を行うこととなっておりますが、これに加え、運航管理者が運航を中止すべきと判断した場合には船長に中止を指示することとされておりまして、その場合、船長はこの指示に従う必要がございます。

 簡潔にということでございましたので、これを含め、私どもとしては、海上運送法に基づき事業者が定めることとされております安全管理規程で具体的な責務が規定されておりますので、以降、簡潔にお答え申し上げます。

 委員御指摘の二点目、旅客の保護でございますが、基本的には事業者の責務ではございますが、乗船中は船長が人命の安全確保のために必要な措置を講ずることとなってございます。

 また、船舶の日頃の点検等の管理につきましては、船長が定期的に船体等の点検を実施することになってございます。

 また、社員への定期的な訓練の実施につきましては、安全統括管理者と運航管理者が協調して安全教育や事故処理訓練をしっかりと実施することとなってございます。

高橋(千)委員 乗船中は船長というお話がありましたけれども、船舶の安全管理についてもそうだと。でも、それをさせるのは事業者なんじゃないでしょうか。ちょっとこのお答え、一言でお願いします。

    〔長坂委員長代理退席、委員長着席〕

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員御指摘の旅客の保護について、もちろん乗船中の船長の義務はありますが、基本的には事業者が、事業を行う以上、しっかりと責任を持って遂行していくということでございます。

高橋(千)委員 そうなんです。条文に船長はという条文は一言もありませんので、ここは確認をしたかったなと思います。

 次に行きますが、船員法で、小型旅客船の乗組員に、船舶が航行する海域の特性等に応じた操船に関する教育訓練、その他安全に関する教育訓練の実施を船舶所有者に義務づけることとなっております。カズワンの船長が、知床の荒い海に対して、穏やかな海での経験しかなかったことから、海域の問題は昨年も指摘があったと思います。

 ただ、実際に訓練を行うには、どのくらいの期間か、訓練をする側の体制があるのか、どのように行うのか、実効性を担保するためには大変心配があります。零細な業者の場合、やはり地域で協力し合うとか様々な工夫が必要かと思いますが、訓練の具体化について伺います。

高橋政府参考人 今の委員の御指摘を踏まえてお答え申し上げます。

 今回の法改正により創設されます初任教育訓練につきましては、気象、海象の変化など海域の特性等を熟知しているベテランの船長などが初任の船員に教育訓練を行うことを私どもとしては想定してございます。

 ただ一方、新たに当該海域で事業を始める場合など、自分の社内にベテランの船長が存在しない場合も想定されますほか、より高度な内容について教育訓練を行うニーズも想定されます。

 このため、委員の御指摘にもございましたが、自社のベテランの船長による教育のほか、当該海域で運航する他の事業者のベテラン船長等を招き、教育訓練を行いますこととか、あるいは、効率的かつ効果的に実施することができますように、地域の協議会において、他の事業者と共同で外部講師を招いて教育訓練を行うことなども認める方向で検討を進めておるところでございます。

 さらに、中小の事業者であっても船長などの資質向上にしっかり取り組んでいただけますよう、初任教育訓練の具体的な実施方法や留意点、使用する教材の例などをまとめたガイドラインを策定することを予定してございます。

 あらゆる事業者が初任教育訓練を適切に実施できますよう、しっかりと対応してまいります。

高橋(千)委員 これは、実際にガイドラインが実効あるものになるのかということも大事だと思いますけれども、せっかく大事なことを書いたんだけれども、実効を伴わないと意味がありませんので、そこはよろしくお願いしたいと思います。

 それで、事故から一年がたって、同業者への影響などはどのように把握をされているのかということです。私自身が電話をいただいた業者ですとか、直接お邪魔をした業者、いずれもこれは宮城県でしたけれども、例えば塩竈などは、元々はフェリー航路というか生活の足として、交通の手段として欠かせない役割を果たしていた。それが廃止になって、幾つかの変遷を経て今観光遊覧船をやっているという方でした。ですから、地域経済にとっても重要な役割を果たしているし、そういう経験を積んできているので、社長自ら、当然、船長にもなれるし、安全確保については最も大事にしてきたわけなんです。

 そうした業者の皆さんが今回のことでマイナスの影響があってはならないし、コロナの影響や燃料代などの負担増もあって大変厳しい状況に置かれているのは事実だと思います。こうした同業者への支援も必要かと思いますが、大臣、お願いします。

斉藤(鉄)国務大臣 高橋委員御指摘のとおり、知床遊覧船事故を受けて利用者の足が遠のく、これは北海道だけでなく全国的に起きた現象でございます。影響が生じたものと承知しております。

 さらに、旅客船業界は、新型コロナウイルス感染症の影響や燃料油価格高騰により、現在も事業者によっては収益状況が回復していないものと承知しておりますが、全国旅行支援の実施や水際対策の緩和により、全国的には回復の兆しも見えてきております。

 こうした中、国土交通省としましては、令和四年度補正予算を活用し、交通事業者による地域への誘客や実証運航等に対して支援を実施するなど、更なる利用促進を図ることとしております。

 さらに、知床遊覧船事故を受けた旅客船の安全対策のため、事業者による救命設備、無線設備の導入に手厚い補助を講じております。

 今後とも、旅客船の安全、安心対策を徹底するとともに、事業者の運航、運営支援に努めてまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 最後にお話しされた救命設備への補助などは、絶対必要だということを今回強調されたわけですから、大事なことかなと思って聞いていました。引き続きお願いいたします。

 それで、行政処分、罰則等も強化されました。知床遊覧船事故対策検討委員会の報告書には、起こった事案に照らして一つ一つ対策強化を提案し、また、それを政省令で先行実施も含めて具体化していることは理解します。問題は、規制官庁である国としての反省には触れていない、不十分だと思っています、報告が。

 監督する側とされる側に癒着がなく、緊張感を持った関係性が必要だと思いますが、具体的にどう考えますか。

斉藤(鉄)国務大臣 昨年十二月に取りまとめられました旅客船の総合的な安全・安心対策には、対策の実効性を確保するため、監査や行政処分の強化が盛り込まれております。

 このうち、監査については、その実効性を確保するため、人命最優先、安全第一で厳格に監査を行うべく、海事局幹部が地方の現場職員との対話を行い、職員の意識改革の徹底に取り組んでおります。

 これに加え、リモートや抜き打ち監査を導入するとともに、外部からの情報を活用するための通報窓口を設置するなど、監査の強化を図っているところです。

 また、行政処分につきましては、処分の客観性を確保するとともに、現場の運航労務監理官がちゅうちょなく行政処分を実施できるようにするため、違反点数制度を導入し、処分基準を公表することとしております。

 国土交通省としましては、このような監査や行政処分の強化を通じて、人命最優先、安全第一との意識の下、緊張感を持って事業者の監督を行ってまいる決意です。

高橋(千)委員 緊張感を持ってというお答えがありました。

 ただ、検討委員会の報告書には、例えば、特別監査を行うとともに、その後、抜き打ちで改善状況の確認を行ったにもかかわらず、十分に是正するには至らなかった。それから、虚偽の届出が行われたけれども、その真偽について十分な確認ができていなかった。このように、今抜き打ちでやりますと言ったけれども、やっていたわけですよね。やっていても確認できなかった。

 この委員会で、申請書などを様々公開してもらって見た、素人の目から見ても、これはおかしいじゃないかと指摘されるようなことを、見て見ぬふりだったのか、あるいは見ようとしなかったのか、そうしたことの分析が何もないわけなんですよ。だから、やりますと言っただけでは通用しない。そこは、大臣、もう一言ありますか。

斉藤(鉄)国務大臣 まさにその点についても、我々、深く重く受け止めておりまして、しっかり、今回の検討委員会の報告書も含めまして、我々、緊張感を持ってやっていきたい、このように思います。

高橋(千)委員 日本小型船舶検査機構、JCIが、今年二月二十日、業務改善計画を発表しました。ここでも「国から提供される監査情報を活用して検査を行う」と強調されているんですけれども、では、これまでどうだったのかということも含めて、改善方向を伺います。簡潔にお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 従来、JCIと国との間では互いの情報を共有する仕組みが存在せず、国の監査情報をJCIの船舶検査で活用する取組はございませんでした。

 しかしながら、国とJCIとの間で互いの情報を共有し、活用することが事故防止に資すると考えられますことから、昨年九月より、国からJCIに対して監査情報を提供し、機構は当該情報を活用して、注意を要する事業者に対する船舶検査をとりわけ慎重かつ入念に行う取組を開始したところでございます。

 引き続き、国の監査情報を船舶検査において活用すること等により、実効性の向上を図ってまいります。

高橋(千)委員 これ、本当に読んでびっくりしたんですよね。互いに情報を共有する仕組みは存在せずと。本当であれば国がやるべき検査を、代わってやっているわけですよね。それなのに、情報共有もしないで、国の検査官から指摘をされて、同じ検査じゃなかったなどということを今更書いているということは、本当にゆゆしき事態だと思うんです。

 JCIの理事長などは国交省の指定席になっているわけですよね。元運輸局長が理事長をやっています。そこまで通じていながら、肝腎の監査に必要な情報は全く共有されていない。余りにお粗末な実態だと、これは強く指摘をしていきたいと思います。

 時間がないので、済みません、続けます。

 最後に、一般論で大臣に一つ伺いたいんです。

 昨年十月、政府のデジタル臨調が、人による目視や常駐などを義務づけるアナログ規制の撤廃を広げると決めました。九千二十九件もある条項や政省令を二〇二四年の国会までに改正するということで、九九%のアナログ規制が廃止されるとの報道もありました。今国会にも、その第一弾として、書面掲示規制とフロッピーディスク等の記録媒体に関わる規制についての改正案が提出されております。

 一方、知床遊覧船事故対策検討委員会報告にもリモートによる監視の強化が挙げられているように、目視ではない検査などが取り入れられています。

 人の目の届かない部分をドローンなどで見ることができたり、継続監視にITを活用など、効果的な側面がある一方で、目視でなければならない分野、あるいは組み合わせることで、目視とデジタルを組み合わせることで本来の効果が上がるということもあるのではないかと思いますが、この点について、大臣の考えを伺います。

斉藤(鉄)国務大臣 デジタル技術の活用は、少子高齢化の進む我が国が生産性の向上や人手不足の解消を図る上で重要な手段の一つです。

 このような考え方から、政府では、昨年十二月に、目視規制や実地監査、常駐専任といったいわゆるアナログ規制について、見直しの方針と見直しに向けた工程表を確定し、国土交通省でも、所管する法令の関係条項について見直し作業を今進めているところです。

 見直しに際しましては、目視規制などが安全性の確保を目的としている場合には、それが引き続き確実に担保されることを大前提とすることとしております。

 このため、例えば、目視という手法が高精度カメラやドローン等による確認で代替できるかどうかについて、必要な場合には予算も活用して、個々に実証実験や検証を行い、安全性が確実に確保されると判断される場合に限り、目視以外の手法も新たに認めることとしています。

 私も、実は、個人的な経験を言いますが、昔、非破壊検査の技術者でございました。非破壊検査は今非常に高度な技術を使って検査をしておりますが、やはり大前提はまず目視です。技術者が目で見てまず判断すること、これが大前提で、その上で高度な技術を使っていくというのが最も効率がいいということを私自身よく分かっておりますので、この点も踏まえて国土交通省で実行していきたいと思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 終わります。

木原委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 私は小型船舶の操縦士でありまして、学生時代は二百日間ヨット部で海に出ていて、危ない目にも遭っているので、海の怖さというのを知った体験を踏まえて質問すると言いたいところでありますが、まず、私が思うのは、国会というのは、憲法四十一条で、「国の唯一の立法機関である。」と定められているんですね。法律は、これは我々が作る法律なんです。何か国土交通省が作った法律を我々が審議しているように思うけれども、我々が作る法律でありますから、まさにそうした観点から、今日は、法律の条文の解釈とか運用を明確化する質問をしていきたいと思います。

 まず一点目ですけれども、今回の改正海上運送法第十五条で、名簿の作成、備置き義務、今までは船長が船に備え置くというのを、事業者の責務にして事業所に備えるというふうに改正をいたしました。

 この十五条を読みますと、ただし書があって、「当該船舶の航行する区域及び航海の態様を勘案して国土交通省令で定める場合は、この限りでない。」という義務の免除の規定があります。これはどういうことを想定しているのか。特に、船舶の航行する区域及び航海の態様を勘案としておりますから、どういうことを定める予定なのか、答弁をお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 旅客名簿の作成等につきましては、船舶の航行する区域及び航海の態様を勘案して、名簿の作成による効果と、旅客や事業者の負担を考慮した上で、義務づけの適用除外となる場合を省令で定めることとしてございます。

 具体的には、事故により旅客が死亡されたり、行方不明となられるリスクが比較的低いと考えられます、湖や港内、港の中等の、我々、平水区域と呼んでございますが、平水区域のみを航行する旅客船や、沿海区域を航行する旅客船であっても運航時間が短いものなどについては、旅客名簿の作成等の義務づけの、御指摘の適用除外とすることを検討してございます。

福島委員 ありがとうございます。答弁で確認をいたしました。

 今回の制度の一番の柱は、安全統括管理者、運航管理者の資格者証制度、あるいは試験制度の創設だというふうに思っております。

 今回の改正法案、海上運送法第十条の四において、事業者に安全統括管理者の選任義務をかけております。その中で、十条の四第三項で、安全統括管理者は、「当該小型船舶に船長として乗船しようとする者が次に掲げる要件に適合することの確認を行わなければならない。」となっておりまして、特定教育訓練を修了した者、小型船舶操縦士であることという要件をかけております。これは、仮に統括管理者がこの要件の適合を確認しなかったり、あるいは虚偽の確認を行った場合には、罰則はあるんでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の船長に関する要件については、一義的には船舶所有者が、船員法に基づき教育訓練を実施すること、船舶職員法に基づき特定操縦免許を受けている者を乗り組ませることについて、それぞれ義務を負っておりまして、これらの法律、すなわち、船員法、船舶職員法では、船舶所有者に対する罰則を併せて規定してございます。

 また、海上運送法、今お読みいただいた第十条の四の第三項は、このような船舶所有者による義務の履行を前提といたしました上で、そのより確実な実施を図るため、安全統括管理者にも船長の要件の確認義務を課しております。

 またさらに、安全統括管理者が当該義務に違反しました場合には、海上運送法に基づく輸送の安全確保命令を事業者に発出し、この輸送の安全確保命令に違反した場合には、同法に基づく罰則の対象とすることとしてございます。

福島委員 本当にそれで大丈夫なのかを私は疑問を持つんですね。

 知床の場合でも、先ほど高橋さんから話がありましたように、実際は運航管理の実務のない人を社長自らが運航管理者として虚偽の届出を行っていたわけですね。これは直罰規定を置かないと、虚偽の届出をやったのは防げないんじゃないですか。今の船員法とかのやつで、虚偽のものをやったときに、すぐ罰がかけられるようになっているんでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 安全統括管理者が船長に関する要件の適合を確認しなかったり虚偽の確認を行った場合に、当該安全統括管理者に直接、海上運送法の規定によりまして罰則がかかるということではございませんが、ただ、これは繰り返しはいけないと思いますので、先ほど申し上げましたように、船長に関する要件について、船舶所有者に対する義務を船員法、船舶職員法でかけて罰則を規定しているところでございますし、安全統括管理者が義務違反の場合には、海上運送法に基づく輸送の安全確保命令を事業者に発出し、同法に基づく罰則の対象として担保させていただこうと思っているところでございます。

福島委員 いや、だから、そういう事後的な規制では駄目だと思うんですよ。直罰をかけなきゃ駄目だと思うんですよ。だから、これは私は法律の穴だと思うんですね。事後的にしか結局かけられないわけですね、罰が。だから、虚偽のものをやった人はいけませんよと罰をかけなければ、事故が起きた後に改善命令を出したって、もうそのときは人の命が失われている可能性があるわけですから、ここはその法律の穴であるということを私はまず指摘をしたいと思います。

 もう一点は、この教育訓練です。特定教育訓練で、船員法百十八条の四で、船舶所有者は、海域の特性に応じた操船に関する教育訓練その他の航海の安全に関する教育訓練を実施しなければならない。この規定に違反した人は六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金の直罰規定があります。しかし、どのときに罰がかかるのか。教育訓練を実施しなければ罰がかかるのか、それとも、海域の特性に応じた操船に関する教育訓練が適切に行われなければ罰がかかるのか、どっちなんですか。やらなかった罰なのか、適切な教育訓練が行われなかったときの罰なのか、どちらなのでしょうか。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 改正船員法第百十八条の四に定めます特定教育訓練は、その具体的な内容や時間数等の基準につきましては省令や告示で定めることとしてございます。

 同条に違反した場合には、船員法に基づく行政処分を行うことができますが、例えば、船舶所有者が特定教育訓練を全く実施せずに重大な事故を発生させた場合などの悪質な場合には、行政処分を経ることなく司法送致の対象となり得るものと考えてございます。

福島委員 これも、だから事後なんですね。

 結局、事前にちゃんとした海域の特性に応じた適切な操船に関する教育訓練を行わなかった場合は何の罰則もないんですね。その後の百十八条の五には二項というのがあって、規定に違反する事実があったときは、是正するために必要な措置を取るべきことを命ずることができると措置命令があるんですよ。でも、こっちの条文は措置命令がないんですよ。だから、これもやはり欠陥なんじゃないですか。どうですか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の措置につきましては、別途の条項で、百十二条におきまして措置を講じておるところでございます……(福島委員「何ですか、もう一回」と呼ぶ)百十二条、今ちょっと……(福島委員「百十二条に書いてあるんですか」と呼ぶ)はい。において別途措置を講じておるところ……(福島委員「何の措置を講じているんですか」と呼ぶ)

福島委員 何の措置を講じているんですか、百十二条。

木原委員長 では、速記を止めてください。

    〔速記中止〕

木原委員長 速記を起こしてください。

 高橋海事局長。

高橋政府参考人 申し訳ございませんでした。

 お答え申し上げます。

 先ほど委員御指摘の、直罰規定があるかということについては、直罰規定はございませんけれども、今回は行政処分を行いまして、その実効性の担保を図ってまいりたいと考えてございます。

福島委員 行政処分は、何かが起きたときの事後的なものなんですよ。だって、教育訓練の充実と言っているんだから、その教育訓練が適切かどうかを事前に判断して、例えば措置命令をかけるという規定は実はないんですよ、この法律には。だから、私はそれも一つの欠陥だと思います。

 我々、賛成するつもりですから、ここで審議を止めたり、採決を止めるつもりがないので先に進みますけれども、要は、結構法律に穴があるんです、この法律は、いっぱい。もういいです。

 次に、試験機関、講習機関の問題です。こうしたものは、第三者、民間が試験を行ったり講習を行ったりいたします。

 海上運送法第三十二条の十二で、一に、安全統括管理者の指定機関は一つだけ指定されます。ほかに、安全統括管理者講習とか運航管理者講習機関とか特定操縦免許講習はまた登録されるというふうになっているんですけれども、これは、どういったところを指定したり登録することを想定しているんでしょうか。

高橋政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の安全統括管理者並びに運航管理者につきまして、その指定試験機関並びに登録講習機関につきましては、両管理者の業務の遂行に必要な海事法令あるいは船舶の安全運航に関する知見を有する機関を想定してございます。

 また、登録特定操縦免許講習機関につきましては、発航前検査や人命救助など、事業用小型船舶の船長として身につけるべき知識や能力を習得させることができる機関を想定してございます。

福島委員 それは抽象的な答弁なんですね。具体的にどこかというのは、なかなか、一に限り指定するだから、出来レースとは言えないでしょうから、言えないんでしょうけれども、だから、これも先ほど前川委員などからも質問があったとおり、一に限るですから、ちゃんとしたところをやらないと、ただでさえも今日は天下りシリーズなわけですよ。また天下り機関を置くのかと。

 海上運送法第三十二条の十三の第一項に指定の基準があるんですけれども、試験事務計画を作って、計画が試験事務の適正かつ確実な実施に適合したものであることとか、計画の適正かつ確実な実施に必要な経理的、技術的な基礎を有するものと、もう指定の基準が非常に抽象的で、誰でも取れることなんですね。一に限りだから、オンリーワン、ナンバーワンのところじゃなきゃ駄目なはずなんですけれども、大臣、この選定について、私は、今、ただでさえ疑われている国土交通省ですから、公正かつ透明なプロセスで指定すべきだと考えますけれども、お考えはいかがでしょうか。

斉藤(鉄)国務大臣 今般の改正法案におきましては、一定の要件に適合する民間機関を指定して、国に代わって安全統括管理者及び運航管理者の試験を実施させることができることとしております。

 試験の実施に当たっては、試験内容や合否判定の基準の統一性、また公平性を確保する必要があり、他の国家試験の実施例も踏まえて、一者のみを指定することとしております。

 指定試験機関として民間機関を活用するに当たっては、民間機関から申請がなされ、法令で定める客観的な基準に基づいて指定を行うこととしておりますが、御指摘を踏まえ、公正かつ透明なプロセスが現に確保されるよう努めてまいります。

 当該機関の人員体制については、この当該機関において決定するところでございますが、その場合でも、国家公務員法の再就職等規制など、決められたルールが遵守されるのは当然の前提として、必要な人員体制が構築されるものと考えております。

福島委員 そのように是非よろしくお願いいたします。

 本当は、例えば登録講習機関についても、登録を取消しする要件が定まっているんですが、これが余りにも定型的だったので、講習の質とか、講習がどれだけ効果を上げているかとかということで取消しをしたり改善したりする条文は、実はないんですよ。時間がないので議論しませんけれどもね。これも法律の穴になっております。

 だから、何で私はこのことを申し上げるかというと、前も言いましたけれども、大臣と一九九九年、ジェー・シー・オー事故のときに、大臣が科学技術政務官で、私は課長補佐で、原子力災害対策特別措置法の制定を行いました。そのときに、六十六条で、今回の運用でもある公益通報者制度的なものを日本の法制で初めて原子炉等規制法を改正して入れました。これは、私とか当時の斎藤圭介さんなどが提案して、入れさせていただきました。

 あわせて、そのときに炉規法を改正して、今回の海上運送法であるようなポイント制を入れて、当時の炉規法は、原子炉設置の許可の取消しと、いきなり重い、重罰が下されますから、そういう制度の改正もしようとしたんですけれども、時間がなくてできなくて、結局、私も異動してしまって、それが実現しませんでした。

 結局、その後、十年たった後に、東日本大震災で、福島第一原発で事故が起きたときに、原子力災害対策特別措置法は機能しなかったし、原子力事故は、ジェー・シー・オーの事故が最後だと思っていたのが、また、より更に大きな事故が起きたんですね。大臣はどう思っているか分かりませんが、私はこれは一生の悔いです、本当に。あのときにちゃんとしていればよかった。

 私は、法律改正だけでは駄目だと思ったんですね。そのときに、例えば、原子力保安検査官を各サイトに常駐させましょうとか、保安だけじゃなくて防災の専門家を入れましょうということで、自衛隊のOBの方をもう一度任用して各サイトに送ったり、あるいは、民間の原子力技術者を原子力保安検査官などに置いたりというようなこともやりましたけれども、結局、十年たったら、それが形骸化して、単なる役所の人事異動になっちゃっていたんですね。

 今回一番大事なのは、法律に書いてあることじゃなくて、先ほど来、古川委員や高橋委員のときにもあるように、抜き打ちとかリモートの監視とか、あるいは点数制度とか、その運用だと思うんですけれども、この運用は、法律に書いていない以上は、人がどうやるかなんですよ。今回の事故対策の検討委員会の取りまとめで、監査体制の強化というのは、関係者の十分な理解を得つつ、必要な措置を講じる、余りにも抽象的なんですね。

 資料の二というのがありますけれども、そこに全国の運航労務監理官の配置状況がありますけれども、私の茨城は、今、一を二にする。それはいいと思うんですけれども、これは余りにも脆弱だと思うんですよ。

 この記述にしているのは、財務省とか総務省とかのことを気にしてこうした抽象的なことになっているんだと思うんですけれども、この規制の実施体制の根本的な強化が必要だと思うんですけれども、大臣、どの程度気合を入れて入れるか、ジェー・シー・オー事故のときの思いも含めて、語っていただければ幸いです。

木原委員長 持ち時間が経過をしておりますので、質疑を終了してください。

 斉藤大臣、簡潔に答弁願います。

斉藤(鉄)国務大臣 今回、いろいろな過去の事故の反省を踏まえて、実効性のあるものにしていきたいと思っております。

 法体系だけはきちっと作りましたので、それに心を込めてこれを実行していきたい、このように思っております。

福島委員 もうちょっと踏み込んだ答弁が欲しかったですけれども、以上にします。

 ありがとうございます。

木原委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組のたがや亮です。

 知床遊覧船事故より一年がたとうとしております。犠牲になられました方々にお悔やみを申し上げますとともに、御遺族の皆様にお見舞いを申し上げます。

 さて、小型旅客船の事故を本案をもって限りなくゼロにできるよう、しっかりと議論をしていきたいと思います。

 早速ですが、大臣、国土交通省として、知床沖の事故がなぜ起きてしまったのか、どのような原因だったと認識しておられるでしょうか。できるだけ端的にお願いします。

斉藤(鉄)国務大臣 事故の原因につきましては、独立した委員会であります運輸安全委員会において、昨年十二月に経過報告が出ました。

 この経過報告においては、一つに、船体構造の問題、それから発航の可否判断及び運航継続の判断に問題があったこと、三番目に、本件の会社が安全管理規程を遵守していなかったこと、そして四点目に、監査、検査の実効性に問題があったこと、このように指摘をされております。これらが原因でございます。

 我々としては、その監査、検査の実効性に問題があったことということを特に重く受け止めております。

たがや委員 昨日のレクにおいては、総括がまだでき上がっていないということでしたので、事故発生から丸一年がたちます。まずは、一日も早い総括が必須ですので、しっかりと取り組んでいただけるようお願いをいたします。

 次の質問に参ります。

 法令遵守をチェックするための事業者の監査、船体の検査などで、運輸局と小型船舶検査機構で質、量ともボリュームを上げなければならないと思いますが、その辺り、どのような取組になっていますでしょうか。お願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 監査、行政処分の実効性を確保する観点から、地方運輸局の体制強化が極めて重要であると考えてございます。令和五年度には運航労務監理官を増員して、必要な人員の確保に努めているところでございます。

 監査能力の向上を図るために、自動車の監査部門との人事交流、あるいは他の運送事業の監査の知見の活用等、能力の向上も進めてございます。

 これに加えて、抜き打ち、リモート監査等により効果的かつ効率的な監査の実施を図ってまいります。

 また、船舶検査につきましては、国交省より検査業務の改善の具体的方策の検討指示を受けまして、JCIにおきまして、本年二月二十日、検査員の新規採用あるいは能力強化に向けた研修の充実等による検査体制の強化、検査業務の改善を、常に、持続的に進めるための業務改善室の設置による内部監査体制の強化等、業務改善計画に取り組んでおりまして、しっかりと体制強化に向けて指導してまいりたいと思います。

たがや委員 人事の方、人のボリュームなんですけれども、運輸局では百八十一名プラス二十七名の増名、検査機構の方は百四十名おり、人は足りているということなんですけれども、監査や検査というのは安全確保の肝の部分ですので、人手が足りていると思い込むことがないように、適宜、必要な人数の見直しなど行っていただくようお願いをいたします。

 最後の質問に参ります。

 観光客の皆様が安心して旅客船に乗ることができるようにするための本法案の成果物にするべきだと考えております。

 以前、本委員会に、斉藤大臣に、優良事業者認定制度を提案させていただきました。船舶の保守整備体制、経営状況などを総合判断して事業者を優良と認定し、認定証を発行するという制度です。

 この提案に対して大臣は、ううん、一つのアイデアだとうなっていただきましたが、その後の肝腎の答弁をいただいておりませんでした。

 旅行代理店や観光客が利用する船舶を選ぶ際に、認定証のマーク、ステッカーなどを目にすることで、安心して選択ができるようになります。

 資格取得の義務や高額の罰則といったいわゆるむちだけでなく、プラスになるようなあめも、制度全体を円滑に遂行するために必要だと思いますが、この優良事業者認定制度は取り入れていただけますでしょうか。大臣にお伺いします。

斉藤(鉄)国務大臣 旅客船事業者の安全性の評価・認定制度につきましては、事業者の安全性向上に関する取組状況を利用者が簡単に確認できるようにするとともに、事業者の安全への取組を促進します、こういうことで、昨年五月の本委員会におけるたがや委員からの御提案も踏まえつつ、知床遊覧船事故対策検討委員会において検討をしていただきました。

 その結果、昨年十二月にこの検討委員会で取りまとめられた旅客船の総合的な安全・安心対策において、令和六年度中に安全性の評価・認定制度を創設することが盛り込まれたところでございます。

 制度の詳細は今後詰めてまいりますが、旅客船の総合的な安全・安心対策を盛り込まれた様々な事項、この委員会が出した安心対策に盛り込まれた様々な事項を、この評価・認定制度の評価内容として取り込みながら、貸切りバスなど他の交通モードの事例等を参考にして、利用者にとって分かりやすく使いやすい仕組みを構築してまいりたいと考えております。

たがや委員 まとめます。

 大臣、ありがとうございます。昨年の委員会で大臣にううんとうなっていただいたのに、うなっただけでスルーされたらどうしようかと思いましたが、提案が取り入れていただき、制度化に向けているということで、大変うれしく思います。さすが、斉藤大臣です。ありがとうございます。

 質問を終わります。

木原委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

木原委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、海上運送法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

木原委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

木原委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、津島淳君外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党及び有志の会の七会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。谷田川元君。

谷田川委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読して代えさせていただきたいと存じます。

    海上運送法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

 一 これまで事故で多くの犠牲者が出ていることを踏まえ、安全の確保は旅客船事業を営む際の大前提であることを常に念頭に置き、事故を生じさせないため、規制当局として毅然とした姿勢を堅持し、たゆみない安全確保に努めるよう促すこと。

 二 本法で強化された規制が実効性を伴うよう、関係者に対する適切な助言、監査を行うこと。また、日本小型船舶検査機構の検査の実効性が伴わなかったことが事故の要因の一つとなったことを踏まえ、同機構への監督強化や、国との情報共有を徹底し、同機構の検査の実効性を高めること。

 三 事故被害者のご家族に対する支援については、ご家族が一日も早く再び平穏な生活を営むことができるようきめ細かく継続的に、単なる情報提供等にとどまらない、ご家族の要望を十分に踏まえた対応を行っていくよう努めること。

 四 現行の救命設備の課題を解消できる新たな救命設備の開発と、その船舶への搭載を促進すること。特に、中小零細事業者が、費用の面から導入を躊躇してしまうことがないよう、早期搭載に向けた必要な支援を継続的に行うこと。

 五 抜き打ちやリモートによる運航管理体制等の事業者への監査、及び違反点数の累計による適時適切な行政処分等の新たな規制を実効的に運用するため、地方運輸局等の体制を拡充すること。

 六 安全統括管理者講習機関の登録、指定試験機関の指定に当たっては、公正で透明なプロセスによって行い、天下り等行政との不適切な関係を疑われぬようにすること。

 七 世界単一市場である国際海運市場において、経済安全保障の観点から我が国商船隊が競争力を確保し続けられるよう、必要な財政や税制の支援措置を継続的に講じていくこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

木原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

木原委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)国務大臣 海上運送法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま全会一致をもって可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、本法の施行に当たりましては、審議における委員各位の御意見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を始め、理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 誠にありがとうございました。

    ―――――――――――――

木原委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

木原委員長 次回は、来る十九日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十分散会


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