第6号 令和6年4月5日(金曜日)
令和六年四月五日(金曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 長坂 康正君
理事 あかま二郎君 理事 泉田 裕彦君
理事 小林 茂樹君 理事 武井 俊輔君
理事 城井 崇君 理事 白石 洋一君
理事 三木 圭恵君 理事 國重 徹君
石橋林太郎君 尾崎 正直君
大西 英男君 勝目 康君
金子 俊平君 菅家 一郎君
小島 敏文君 小林 鷹之君
小林 史明君 小森 卓郎君
佐々木 紀君 櫻田 義孝君
田所 嘉徳君 田中 英之君
高木 啓君 谷 公一君
谷川 とむ君 土井 亨君
中根 一幸君 中村 裕之君
西野 太亮君 古川 康君
武藤 容治君 石川 香織君
枝野 幸男君 小宮山泰子君
神津たけし君 伴野 豊君
馬淵 澄夫君 谷田川 元君
赤木 正幸君 漆間 譲司君
高橋 英明君 伊藤 渉君
日下 正喜君 高橋千鶴子君
古川 元久君 福島 伸享君
たがや 亮君
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国土交通大臣政務官 石橋林太郎君
国土交通大臣政務官 尾崎 正直君
参考人
(公益社団法人全日本トラック協会副会長) 馬渡 雅敏君
参考人
(敬愛大学特任教授) 根本 敏則君
参考人
(全日本運輸産業労働組合連合会中央執行委員長) 成田 幸隆君
参考人
(立教大学経済学部教授) 首藤 若菜君
国土交通委員会専門員 國廣 勇人君
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委員の異動
四月五日
辞任 補欠選任
小林 史明君 西野 太亮君
田中 英之君 勝目 康君
同日
辞任 補欠選任
勝目 康君 田所 嘉徳君
西野 太亮君 小林 史明君
同日
辞任 補欠選任
田所 嘉徳君 田中 英之君
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四月五日
建設労働者の雇用改善、担い手確保・育成に関する請願(伊藤渉君紹介)(第八八九号)
同(吉田統彦君紹介)(第八九〇号)
同(寺田学君紹介)(第九一二号)
同(宮本徹君紹介)(第九一三号)
同(笹川博義君紹介)(第九三九号)
同(重徳和彦君紹介)(第九四〇号)
同(御法川信英君紹介)(第九四一号)
同(山口壯君紹介)(第九四二号)
同(逢沢一郎君紹介)(第九五五号)
同(近藤昭一君紹介)(第九五六号)
同(井坂信彦君紹介)(第九七三号)
同(緑川貴士君紹介)(第九七四号)
同(冨樫博之君紹介)(第一〇一二号)
同(山崎正恭君紹介)(第一〇一三号)
危険なライドシェアを許さず安全な公共交通を守ることに関する請願(吉田統彦君紹介)(第八九一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)
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○長坂委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、公益社団法人全日本トラック協会副会長馬渡雅敏君、敬愛大学特任教授根本敏則君、全日本運輸産業労働組合連合会中央執行委員長成田幸隆君及び立教大学経済学部教授首藤若菜さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、馬渡参考人、根本参考人、成田参考人、首藤参考人の順で、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、まず馬渡参考人、お願いいたします。
○馬渡参考人 公益社団法人全日本トラック協会の副会長を務めております馬渡雅敏でございます。本日は、トラック業界を代表して意見を述べさせていただきます。
皆さんのお手元に、物流の二〇二四年問題という冊子がありますけれども、大体これに沿って発言をさせていただきます。
一ページから五ページに書いておりますけれども、トラック運送業は暮らしと経済を支えるライフラインですが、全国約六万三千社の約六割が、保有車両台数十両以下の小規模トラック事業者であります。保有車両台数の少ない事業者ほど、経営状況が悪いという傾向にあります。
また、エッセンシャルワーカーたるトラックドライバーの長時間労働が課題となる中、平成三十年六月に働き方改革関連法が成立し、五年間の猶予期間をいただき、いよいよ今月から、トラックドライバーにも罰則つきの時間外労働の上限規制、年九百六十時間というものが適用されました。
あわせて、ドライバーの拘束時間、休息期間、運転時間等の基準である自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、いわゆる改善基準告示が見直され、ドライバーの拘束時間は、一年当たり原則三千三百時間に制限されます。今まで三千五百十六時間ございましたけれども、三千三百時間に制限をされる。
現状、トラック事業者の約三割、長距離事業者の約四割が、年間九百六十時間の上限を超過するドライバーを抱えている状況に鑑みれば、規制の適用により、ドライバーの労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、物が運べなくなる可能性が懸念をされております。いわゆる、物流の二〇二四年問題と言われております。三ページに、大体、全体の構図を描いております。
一方、トラックドライバーの労働時間は、全産業と比較して約二割長く、年間所得では中小型ドライバーで約一割低い、トラックドライバーの有効求人倍率は全職業と比べて約二倍高いなど、若者を中心に担い手不足が続いている状況でございます。ドライバーの待遇と労働環境が改善され、今よりも短い労働時間で、今よりも稼げる魅力的な産業とならなければ、担い手確保は困難であることから、ドライバーの労働時間の短縮と、適正運賃収受による賃上げが喫緊の課題となっております。
こうした状況を踏まえ、平成三十年に、議員立法により貨物自動車運送事業法が改正され、令和五年度末までの時限措置として、荷主対策の深度化と標準的な運賃制度が創設されました。
まず、荷主対策の深度化は、長時間の荷待ちや運賃・料金の不当な据置きといった、トラック事業者の法令違反の原因になる行為を荷主や元請事業者が行っている疑いがある場合に、国土交通大臣が荷主に対し、是正を要請することができる制度であり、ドライバーの労働条件の改善や取引環境の適正化に資するものであります。
標準的な運賃については、ドライバーの労働条件の改善等を図るため、法令を遵守して持続的に事業を運営するための参考となる運賃を示すことが効果的という趣旨から、ドライバーの賃金を全産業の標準的な水準に是正することなどを前提として、業界の実勢運賃の水準と比較すると、一定程度高い水準に設定されておりますけれども、業界としては、この高みを目指して果敢に運賃交渉に臨むべきと考えております。
改正法の成立以降、国土交通省が中心となって様々な取組が進められており、年間労働時間や年間賃金について、全産業平均との差は縮まりつつあります。一方、新型コロナウイルスの蔓延や原油価格の高騰により、赤字企業の割合は増加傾向にあるなど、取組は道半ばとなっております。
こうした状況を踏まえ、昨年六月には、再び議員立法により貨物自動車運送事業法が改正され、これらの制度が当分の間の措置として延長されました。
こうした中、議員立法による制度を幹として、二〇二四年を目前に、政府全体としても二〇二四年問題への対応を抜本強化していただいております。昨年六月の関係閣僚会議で取りまとめられた、物流革新に向けた政策パッケージ等に基づき、政府を挙げて、商慣行の見直し、物流の効率化、荷主、消費者の行動変容といった、物流革新に向けた政策パッケージに基づいて、政府を挙げて様々な施策を講じていただいております。
特に、荷主対策の深度化については、昨年七月に国土交通省において全国百六十二名規模のトラックGメンを創設し、悪質な荷主等への是正指導を大幅強化しているほか、標準的な運賃については、先月、運賃水準の平均八%の引上げや、荷役料金や下請手数料等の新たな運賃項目の設定等、見直しを行っていただき、着実に取組を進めていただき、大いに期待しております。
六ページになりますけれども、トラックドライバーの長時間労働の要因は、発荷主、着荷主の、積込み、積卸し場所における長時間の荷待ちや荷役作業であります。国交省さんの調査によりますと、一運行当たりの平均荷待ち、荷役時間は約三時間程度であります。ドライバーの労働時間の短縮を図るためには、この荷待ち、荷役に係る時間を削減していくことが不可欠であります。
一方、これはトラック事業者の努力だけでは到底実現が困難でありますので、発着荷主の御理解と御協力が極めて重要であります。例えば、荷物の受取、引渡日時やパレットの利用など、荷待ち、荷役作業時間の削減に大きく貢献する事項については、荷主が決定権をお持ちであることから、荷主側が主体的に改善に向けて取り組んでいただくことが必要であります。
本法案では、荷主等に対し、荷待ち、荷役時間の削減、納品までのリードタイムの延長等の努力義務を課した上で、一定規模以上の荷主さんには、具体的な取組に関する計画の作成等を義務づけることとされております。これにより、ドライバーの労働時間削減のための取組が大きく前進するのではないでしょうか。
我々トラック事業者がドライバーの賃金を上げるためには、その原資となる運賃を十分にいただく必要があります。しかし、トラック運送業は中小企業が多く、荷主や元請事業者に対する交渉力が弱いということがありまして、適正な運賃を収受できていないのが現状です。また、トラック業界における多重下請構造も、実運送事業者の適正運賃収受が進まない要因の一つと考えられることから、多重下請構造の是正に向けて取り組む必要がございます。
トラック運送は輸送需要の繁閑の差が激しく、需要の変動に柔軟に対応するために、自社のドライバー不足の補填や、荷主からの突発的な運送依頼への対応のため、一定の下請構造が生じることはやむを得ないというふうに考えておりますけれども、一方、過度な下請構造により、実運送事業者の適正運賃収受が妨げられている実態にあるほか、荷主や元請事業者においても、数次の下請の事業者が実運送を行っているということを把握をしていないなど、前提となる環境がまだ整っておりません。
業界としても、下請次数を二次までに制限すること、また、下請手数料を運賃に上乗せして収受できるよう荷主と交渉を進めること、契約の書面化を推進することなどを掲げておりまして、多重下請構造の是正に向けた取組を進めているところ、本法案により措置されている実運送体制管理簿や、新たに下請手数料の項目が設定された標準的な運賃を活用しながら、業界一丸となって多重下請構造の是正に取り組む所存であります。
トラックドライバーの労働環境の改善は、トラック事業者のみでは実現が難しいです。荷主さんの理解と協力が必要不可欠であります。前述のトラックGメンは、荷主に対して交渉力の弱い立場にあるトラック業界にとっては、この取組は大変心強いところであります。百六十名程度のトラックGメンに対して、トラック事業者は六万三千社存在しております。
今般の法案によって、悪質な荷主の情報について、地方実施機関から国土交通大臣へ通知する規定が設けられておりますが、業界としてもトラックGメンの活動に協力、後押しをしていきたいと考えております。そのためには、更なる連携強化のために、地方実施機関の機能強化などが必要であるというふうに考えております。
結びになりますけれども、今般の法案は、トラック業界を含む物流産業全体の持続的な成長のために必要不可欠であるというふうに思います。二〇二四年問題をスタートとして、トラック業界の構造的な課題を解決するためにも、是非、本法案を可決、成立していただきたいというふうに思っております。業界としても、ドライバーの長時間労働是正と賃上げによる処遇改善に向けて、全力で取り組んでいく所存でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○長坂委員長 ありがとうございました。
次に、根本参考人、お願いいたします。
○根本参考人 敬愛大学の根本でございます。
本日は、物流生産性向上による持続可能な物流の実現というテーマで意見を述べさせていただきます。
スライド二枚目を御覧ください。
物流の二〇二四年問題を説明しようとしましたけれども、馬渡さんの方から概略を説明いただいたので、私の方からは、多重下請構造、店着価格制度というものが悪い影響を与えているということをお話ししたいと思います。
三枚目をお願いいたします。
店着価格制度というのは、御存じのように、発荷主と着荷主が運賃込みの店着価格で取引する商慣行です。着荷主は、運賃、運送契約に含まれる条件を知らされません。
多重下請構造というのは、発荷主と元請事業者が運送契約を結び、二次、三次、四次の下請に実運送を依頼する商慣行です。その都度一〇%程度の手数料が発生します。このようなケースでは、貨物を実運送する下請のドライバーも、運送契約の内容は必ずしも知らされません。その結果、下請のドライバーが配達時に、着荷主に行きますけれども、荷待ち、荷役などを要請されたときに断りにくいということが起きます。
要するに、荷主、特に着荷主、元請の責任の明確化が必要だということであります。
四枚目をお願いいたします。
物流効率化のためには、労働生産性を高めることが重要です。ただ、労働生産性というのはちょっと厄介な概念でありまして、二つの労働生産性を区別する必要があります。
普通は付加価値労働生産性を指しますけれども、これは付加価値、すなわち、売上げから費用を引いたものを時間で割ったものです。しかし、物流政策を評価するときには、物的な労働生産性、すなわち、輸送トンキロを労働時間で割ったものが役に立ちます。
さて、これまでの動きを振り返ってみると、デフレが長く続きました。そして、荷主は利益を上げるためにあらゆるコストの削減を図ってきたわけですけれども、物流コストも例外ではなく、物流コストの削減、すなわち支払い運賃の削減に努めました。その結果、運賃、ドライバー賃金が下がったわけです。
二〇二一年に総合物流施策大綱が策定されまして、二〇二五年までに付加価値労働生産性を二〇%上げるという目標を立てましたけれども、今のところ改善の兆しはありません。
次のページをお願いいたします。
トラックの運賃は、一九九〇年以降、ほとんど上がっていません。最近になって一五%ぐらい上がっていますけれども、燃料費の上昇をカバーするには至っておりません。
そして、その下の方にグラフがありますけれども、これは、去年の夏に総合物流施策大綱のフォローアップ会合というのがありまして、その中で、付加価値労働生産性がどれだけ改善したかを紹介されたわけですけれども、二〇二一年からほとんど改善していなくて、二〇二五年の目標値に届くかどうか心配されているところであります。
次のページをお願いします。
どうしてこのようなことになったのかということを検討する中で、検討会のメンバーが非常に面白いグラフを持ってきてくれたわけですけれども、物流コストとドライバー賃金には正の相関があることが分かりました。四十五度線上に点がプロットされているんですね。この縦軸は何かというと、荷主の売上高に占める物流コストの割合です。横軸は、道路貨物運送業の年間賃金水準です。トラック会社では、事務の方もいますけれども、ほとんどドライバーの賃金が大宗を占めるので、これはドライバー賃金と読み替えてください。
そうすると、一九九五年には物流コストが六・五%であって、賃金も高かったんですが、それが年を経るごとにどんどん下がってきた。これはやはり明らかに、物流コストを下げる結果として賃金が下がったというふうに考えていいのではないかと思うわけです。
次のスライドをお願いします。
そこで、これまでの関係を逆回転させる必要があるというわけです。すなわち、これからはドライバーの賃金を上げることが最重要課題なわけですから、ドライバーの賃金を上げるために、その原資となる運賃も上げてもらい、そして物流コストは上がる。若干価格に跳ね返るということは、やはり許容してもらわないといけません。
例えば、仮に物的な労働生産性を二五%向上させることができるとしましょう。この二五%を仮置きさせてください。そうしたらば、その果実を皆で分け合えるんじゃないでしょうか。労働時間の減、二〇%削減、それからドライバーの所得を一〇%アップ。それから、若干の運賃値上げということですけれども、これは、その果実を分け合うというんですから、荷主は運賃が下がることを期待するかもしれませんけれども、今、実は、二割も三割も高くなって当然だという意見が多いんですね、学者の中でも。ですから、その上げ幅を一〇%に抑えることができるということで、荷主さんも御の字というふうにしたらどうかというのが私の意見であります。
次のページをお願いいたします。
八枚目に、物流政策の方向性を示しています。これは検討会の取りまとめに加筆したものですけれども、荷主による物流生産性向上の取組、物流事業者による物流生産性の取組に大きく分かれますけれども、真ん中、オーバーラップしているのは、両者が連携して取り組むべきものであります。
そして、荷主、物流業者に対する新たな規制としては、物流生産性向上の中長期計画を策定してもらい、その取組状況を報告してもらうこと。そして、荷主にあっては、物流統括管理者を役員クラスで選んでもらい、この物流生産性向上の中長期計画を、責任を持って策定してもらうということです。
また、元請トラック事業者に対する規制としては、実運送体制管理簿の作成、それから、運送契約の書面化をお願いしたいというふうに思うわけであります。
九枚目、お願いいたします。
さて、先ほど、物流生産性向上の目安、二五%と申し上げましたけれども、実は、労働時間が二〇%、全産業平均よりも多いわけですけれども、八〇%の労働力で仕事をこなそうとすると、一割る〇・八で一・二五、要するに、二五%生産性を向上させると、二〇%労働時間が削減できます。ただし、もし、その運んだことに対して同じ運賃を収受できれば、ドライバーの賃金は上がりません。ですから、若干の運賃の値上げもお願いしたいということなんです。
この二五%、例えば、施策ミックスA、分かりやすいところでいうと、モーダルシフトですね。今、海上、鉄道輸送で四億トン運んでいますけれども、これで五億トン運べば、長距離トラック輸送一億トン分のドライバーの時間がまた別のところに使えますので一億トン生み出せる、そういうことですね。荷待ち時間九十四分を八十一分に減らせば、その荷待ち時間に割いていたのを運転に回せる、一億トン生み出せる。そういうことで、合計すると六億トンなんですけれども、実は、荷役と荷待ちだけを四〇%減らすだけで六億トンが生み出せる。
ですから、そんなに難しい目標ではないということを、ここで強調したいわけですね。着荷主さんの協力が得られれば二五%の生産性向上は達成できるというふうに思うわけで、それによって、結果的に物流の付加価値労働生産性を改善していければいいんじゃないかというふうに思います。
以上です。(拍手)
○長坂委員長 ありがとうございました。
次に、成田参考人、お願いいたします。
○成田参考人 おはようございます。運輸労連の執行委員長の成田でございます。
まず、本日は、このような場で意見陳述の機会をいただいたことに感謝を申し上げたいというふうに思います。
運輸労連は、運輸産業に集う仲間が結集する労働組合でございます。中央本部登録は四百組合で十万九千名ですが、加盟四百組合には十五万五千人の組合員を抱えており、その多くはトラックドライバーであります。日々、現場最前線で活躍をしている、運輸産業で働く仲間の立場から、業界の現状、課題について意見を申し上げたいと思います。
まず、今回提出されている法案については、いわゆる物流の二〇二四年問題への対応に当たり必要不可欠な法案であると理解しており、早期の成立を求めるものであります。
私たち物流事業者で働く仲間は、コロナ禍でもそうでありましたが、物流は、経済、国民生活を支える重要な社会インフラであり、決して物流を止めてはいけないという思いで日々業務に就いていることをまず申し上げておきたいと思います。
そこで、お手元に配付している資料を御覧いただけますか。
まず、運輸労連の二〇二四年春季生活闘争における三月末の解決状況でありますが、四月二日になりますかね。昨年は、平均賃金引上げ額が、単純平均で前年を千八百四十六円上回る四千九十三円となり、二十七年ぶりに四千円台での解決に至りました。本年は、四月二日現在で解決組合の平均賃上げ額は六千四百五十三円となり、加重平均でも八千四百五十二円と、前年からは大きく前進をしていますが、メディアで報道されているように、昨日段階の連合全体での賃上げ平均額は一万六千三十七円となっており、他産業と比較すると更に格差は拡大しているのが実態であります。
次の資料は、一九九〇年以降の加盟組合の賃金引上げ解決額の分布図であります。一九九〇年に物流二法が施行された以降、賃上げ解決額が低額に移行しているのがお分かりになると思います。
一九九〇年代半ばから、日本の多くの製造業が海外進出をしていったことなどもあり、日本国内の貨物総輸送量は減少傾向となっていきましたが、いわゆる規制緩和をきっかけに新規参入事業者数が反比例して増えていった結果、事業者間の過当競争が激化し、今に至る多重下請構造を生み出し、現在のような荷主の優越的な商慣行が醸成されたと考えております。
そこで、このような課題をどのように改善をしていくかでありますが、冒頭申し上げましたが、物流は、経済、国民生活を支えるインフラであり、物流事業者のみならず、荷主企業、そして一般の消費者を含め、物流に関わる全ての方々の理解と協力が必要であると考えます。
これまで日本の物流は、長時間労働、そして、全産業と比較して、低い、厳しい労働条件で業務に当たっているトラックドライバーに支えられてきたと言っても過言ではありません。このことなどから、トラックドライバーは、脳・心臓疾患による労災支給決定件数が統計開始以降ワーストワンの状況にもあります。事業継続に向けては、こうした状況の改善は不可欠であり、トラックドライバーの労働時間の管理の変更が急務と考えています。
今、トラックドライバーは、慢性的な人手不足に加え、高齢化も著しく、一九八九年の大型トラック運転手の平均年齢は四十・三歳であったものが、二〇二一年には四十九・九歳と、ほぼ五十歳であります。今後更に高齢化と労働力不足に拍車がかかることが想定できるため、若い入職者を増やすためには、賃金の引上げを始め、労働条件の改善は不可欠であります。
加えて、私たちの産業では、長らく、労働時間の長さで給与支給を維持してきましたが、今後、労働時間の長さや歩合給に依存する賃金体系から脱却を図っていかないといけないというふうに考えております。
とりわけ、今回の法改正では、全ての荷主や物流事業者に対し、荷待ち、荷役の削減等の取組について努力義務を課すほか、一定規模以上の事業者には中長期的な計画策定を義務づけることとされており、国が取組状況をしっかりとフォローアップする仕組みとなっております。これにより、荷主と物流事業者が協力して効率化に向けて取り組むことになり、その結果、トラックドライバーの労働時間や労働環境の改善につながっていくものと考えています。
また、元請事業者に対し、実運送体制管理簿の作成が義務づけられますが、多重下請構造を明らかにすることはその是正に向けた第一歩であり、さらに、先月告示された新たな標準的運賃では、運賃表が平均八%引上げとなっていることに加え、下請手数料が新たな運賃項目として設定されており、元請事業者は、荷主から収受した運賃からこの下請手数料を差し引くのではなく、必要な分、運賃に上乗せして収受することになります。
そのためには、管理簿による下請構造の把握が不可欠であり、法律と標準的運賃が相まって、実運送を担う下請事業者が適正運賃を収受できるようになると期待をしています。そのことで、若い人たちに選んでいただける業界へ変革をしていきたいですし、持続可能な物流を実現につながるものと考えております。
繰り返しになりますが、物流産業の持続性のためには良質なドライバーの確保が必要であり、そのためにも、安全、安心とともに、労働条件、賃金の引上げが大前提であります。そのためには、労務費、物流費がサプライチェーン全体の中で適正に価格転嫁されていく仕組みが有効に働くことが大切だと思います。
現在、厚生労働省が発表している二〇二三年毎月勤労統計調査によると、道路貨物運送事業は、総実労働時間が二千三百七十三・六時間で前年比一・一%増、現金給与総額が四百四十八万五千百九十二円で一%減となっています。こうしたことから、全産業との比較では、労働時間が二割長く、年間所得は一割から一割五分低い現状は変わっておりません。
労働組合としては、こうした現状の改善を図り、年間労働時間は全産業と同水準になるよう、そして、年間総収入は全産業を上回るような水準となるよう、様々な課題にチャレンジをしていきたいと思います。
是非、今後も国、行政のこれまで以上の環境整備をよろしくお願いしたいと思います。
以上であります。ありがとうございました。(拍手)
○長坂委員長 ありがとうございました。
次に、首藤参考人、お願いいたします。
○首藤参考人 おはようございます。よろしくお願いいたします。立教大学の首藤若菜と申します。
本日、このような場でお話しする機会をいただき、大変光栄に存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
私は、労使関係を専門に研究しておりまして、物流の専門家ではございません。労働問題としてトラックドライバーの研究をしてまいりましたので、本日はその観点からお話をさせていただきたいと思います。
まず、トラックドライバーの労働時間と賃金の推移を御紹介したいと思います。
三ページの図一を御覧ください。
この図は、大型のトラックドライバーを対象としたものですが、一月当たりの実労働時間数を青い線で示し、時間当たり賃金額を赤い線で示しております。
労働時間数の方は、中長期的に見ますと減少傾向が確認されますけれども、近年はコロナの影響もあってアップダウンが見られていまして、どこまで削減されているのかははっきり言えない状況です。他方で、赤い線の方の賃金水準は上昇の傾向が確認されるということが分かるかと思います。
続いて、次のページの図二を御覧いただければと思います。
では、賃金の中身、どこで賃金が上がっているのかというところですけれども、青い線が賞与、赤い線が所定内給与ですけれども、所定内給与はさほど増えておらず、賞与のところで増大しているということが分かるかと思います。
トラックドライバーの賃金体系は、そもそも歩合給の比率が高いということを特徴としておりまして、基本給の低さがドライバーの収入の不安定さにもつながってきたと言われています。現在見られているこの賃金の増加についても、長期に安定したものであるのかどうかというのは、まだ不透明な部分が残されているというふうに考えています。
続いて、五ページ目の図の三を御覧いただければと思います。
上昇が見られるというふうに先ほど申し上げましたが、より長期の視点から見てみますと、これは、一九八五年から二〇二三年までの賃金の、年収の推移を、男性労働者の平均との格差を示したものになります。トラックドライバーは九六%が男性でありまして、日本は男女間の賃金格差が極めて大きいという特徴がありますので、男性の賃金と比較するということがすごく重要だと私は考えています。
赤い線が大型のトラックで、青い線が普通、小型のトラックで、トラックドライバーは高卒労働者が多いので、緑の線で高卒労働者の平均を示しております。これを見てみますと、赤い線がずっと、二〇一〇年頃までかけて格差が拡大してきているということが分かると思います。
トラックドライバーの賃金水準、先ほどほかの参考人の方々からもございましたが、一九九〇年、二〇〇三年の規制緩和を受けて、賃金水準は一貫して低下をしてきました。およそ九〇年から二〇一〇年頃までに二割ぐらいの賃金水準の低下が見られております。
この間、男性労働者の平均年収も伸び悩み、高卒男性の平均年収も低下をしましたが、それ以上にこの業界の労働者の賃金水準というのは下がりましたので、格差が拡大してきているというふうに思っております。
さらに、二〇〇〇年代に入ってからは、賃金の低下のみならず、例えば社会保険料を支払わない事業者であるとか、従業員に健康診断を受けさせない事業者というのも増大してきたということも分かっております。
ですので、二〇一〇年以降、確かに賃金水準は上がってきていますが、これは、それまでに下がってきた賃金の揺り戻しというような面があると思っております。大型トラックドライバーの賃金は、いまだに年収レベルにおいて高卒男性の平均に追いついていない、こういうものが実態となっております。
続いて六ページから、この十年ほど、十年から十五年ほどにどのような政策が打たれてきたのかということを簡単に御紹介したいというふうに思います。
私は、労使関係の観点から労働基準法の改正に着目をして御説明をしていきたいと思いますが、現在、物流の二〇二四年問題が叫ばれていますが、労働時間の規制は段階的に行われてきており、実は、この業界では二〇二三年問題というふうに呼ばれるものもございました。
二〇二三年問題というのは、二〇二三年四月から中小企業にも月六十時間を超える時間外労働の割増し賃金率の引上げが適用されるということになりました。トラック業界は、月六十時間を超える時間外労働の従事者が非常に割合が高いということから、この影響が極めて大きいというふうに考えられていました。
次のページ、御覧いただければと思います。
この労基法の改正に合わせて労働時間をどうやって短縮していくのかということで、全国には、取引環境・労働時間改善協議会というものが設置をされまして、各地域で、トラック運送会社、労働組合、荷主らが集まって、労働時間の削減のためのパイロット事業等が進められてきました。
ただ、この協議会の中でも盛んに意見が出されたものは、その労働時間を減らしていくためには運賃や商慣行を見直さなければならないという点でした。
これは既に出ておりますので、簡単に御説明しますが、例えば、トラックで荷物を輸送する際、高速道路を使った方が早く運ぶことができます。でも、実態としては運賃が非常に安くて高速代金を捻出することができず、下道を走って荷物を運んでいるというような実態が多々あります。
ですので、そういったところで適正な運賃を死守していく、高速代金を死守していくというようなことが進められてきました。運賃の交渉の目安を示す標準的な運賃も、二〇一八年に導入されたということになります。
さらに、そういった取組が進む中で労基法が改正されまして、二〇二四年問題と言われる残業時間の上限規制の導入が決まります。
八ページにあるとおり、持続可能な物流の実現検討会が設置されまして、その中で議論された内容が、昨年六月にはその政策パッケージとして提出されました。それらの内容を前提に今回の法案が提出されたというふうに理解しております。
この間進んできたこうした動きにいかなる特徴があるのかという点を、私が専門とします労使関係の観点から述べますと、これは四者構成にあるというふうに私は考えています。
九ページになります。
労働時間の削減であるとか賃金の水準の低さであるとか、こういった労働問題の解決は、通常は政労使の三者で議論されるというのが労使関係の中では一般的です。政労使の三者間で法案が作られ、制度の見直しが図られる、この三者構成主義というのはILOが規定していることで、国際的な標準でもあります。
しかし、トラック業界で起きてきました長時間労働や社会保険料の未払いといった問題は、顧客である荷主の行動やこの業界の商慣行が要因となっているというふうに考えられています。
こうした問題は、もちろん物流に限らない問題ですけれども、トラックで特に顕著だというふうに思います。ですので、改善協議会でも、荷主を巻き込み、話合いが進められてきました。
さらに、厚生労働省は、改善基準告示の見直しに当たり新たな制度を導入していまして、長時間にわたる悪質な荷待ちをさせている荷主に対して労基署が配慮要請をするというようなことも行っています。
もちろん、荷主は使用者ではありませんので、ドライバーを何時間待たせても労基法の違反で追及されるということはございません。しかし、荷主の行動が変わっていただかないと、ドライバーの労働実態というのはなかなか変容しないという実態があります。ですので、荷主の行動変容というものを求めてきたというのが、この四者構成というような特徴にあるのではないかと思います。
最後、十ページを御覧いただければと思います。
ただ、非常に大きな問題となるのは、荷主にとっては、その自身の行動を変容するインセンティブを持ちにくいという特徴があります。
荷主にドライバーの労働時間の削減の協力を要請しても、その必要性は理解していただいても、もしその協力にコストがかかるような場合には、行動を変えるということはそんな簡単なことではありません。高速代金の負担をすれば、当然、その分運賃が上がりますし、パレットを使うにしても、荷待ちを減らすにしても、それに対するコストがかかってくるという可能性があります。
運賃を極力安くしようというのは、ある意味、荷主にとっては経済合理的な行動ではあります。ただ、多くの荷主が適正な運賃を支払わないということに寄れば、ドライバーの労働時間を短くすることは難しく、その結果、なり手が減り、物流の停滞が引き起こされます。
こうしたミクロにおいて経済合理的な行動が、社会全体、マクロにおいて不合理な事態をもたらすということは度々起こり得るわけですけれども、経済学ではこうした事象を合成の誤謬というふうに呼びます。
合成の誤謬を克服していくためには、私は政治の力が必要だというふうに考えています。持続可能な物流という意味でのマクロな合理性を担保するために、政府による規制的な措置が必要だと考えておりまして、今回の法案の意義は、まさにそこにあるというふうに思っております。
さらに、現在、こうした法規制がかかるということを前提に、多くの大手の荷主が実際に行動の変容に移っています。今まで、いろいろ話合いに参加したり呼びかけられたりしても、なかなか変化してこなかった物流の現場が、今、できるだけ小荷物をまとめて運ぼう、ドライバーの待ち時間を減らそうといった取組が始まっております。
こうした物流の効率化は、もちろん簡単なことではございません。現場の方々は大変な苦労をされていると思いますが、こうした取組こそが、今、日本社会で求められている生産性の向上につながっているというふうに私は思っております。
何時間働かせても安い賃金で幾らでも働いてくれる労働者がいるという状況の中では、なかなか生産性の向上は進みません。労働時間の削減が現場に様々な負担をかけていましたが、こうした努力が日本経済をまさに強くしていくのだというふうに考えております。
以上となります。(拍手)
○長坂委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○長坂委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。古川康君。
○古川(康)委員 自由民主党、古川康でございます。
参考人の皆様方には、朝早くから、お忙しい中、こうして来ていただき、見解について開陳いただきましたことを心から感謝を申し上げる次第でございます。
まず、馬渡参考人にお伺いをいたします。
お話にもありましたように、全日本トラック協会として、二〇二四問題、更に言えば、もっとその前の時代から、この業界における様々な課題について問題提起をしていただいておりました。御尽力いただいていたことに心から敬意を表する次第でございます。また、先ほどは法案の成立に対する思いも述べていただき、本当にありがとうございました。
そこで、一点お伺いをいたします。
今回の法案で、全ト協として盛り込んでもらってよかったこと、あるいはこの法案に期待する点、まずお聞かせください。
○馬渡参考人 御質問に答えたいと思います。
今回の法案は、今まで我々が、物流二法以降、我々も失われた三十年という形になってきたんですけれども、それに対して、荷主さんにも規制的措置を考えていただいたということは非常にうれしいことでございます。
ただ、反面、着荷主さんを含めた荷主さん、それから消費者の方の行動変容がなければ、我々はなかなか交渉力が弱くて進めることができませんので、これから先、チェック機能も含めて、是非、国会の先生方にもお願いをしたいというふうに思っております。
以上でございます。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
それでは、根本参考人にお伺いをいたします。
生産性の向上なくして持続可能な物流の実現なしということ、全くそのとおりかと思います。その中でのお話にもございましたが、着荷主の問題でございます。下請の実運送を担っておられる会社が貨物を届けに行ったとき、着荷主から長時間の荷待ちや荷役作業を要求されてもなかなか断るのが難しいんだ、このようなお話もございました。まさに、着荷主の行動変容、意識改革が求められると思いますが、今回の法改正あるいはそれを含むところのパッケージなど、様々な政策によって改善されていく見通しがあるとお考えでしょうか。
○根本参考人 結論から言えば、改善されていくと思います。
まず、荷役時間、荷待ち時間というのをちゃんと荷主が記録をしてほしい、そしてそういうものに対して削減する目標を立ててほしい、そしてそれがどの程度進んだのかを報告してほしい、そういう仕組みになっていますから、着荷主、荷主の責任としてそういうことが管理されれば自然と減っていくのかなと。
あと、やはり運賃と荷役というのを別々にして、料金としてちゃんと払ってくださいということも含まれていますから、やはり荷主さんとしては払いたくありませんから、なるべくそれを短くしたいというインセンティブが働くと思います。
以上です。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
次に、成田参考人にお伺いをさせていただきます。
この春の賃上げの状況のことについてなんですが、どのような状況でございましょうか。特に、大手と中小零細ではかなり状況が違うのではないかというふうにも思っております。まだ中小零細については、四月が始まったばかりですので、結果は出ていないと思うんですが、手応えをどのように感じていらっしゃるのか、教えてください。
○成田参考人 ありがとうございます。
運輸労連の集計、先ほどありましたように、まだ途中ではありますけれども、感触でいいますと、大手の、十三組合あるんですが、そこの賃上げの率の平均よりも中小の方が、今の解決している中では、少し増えているという感じがありますので、いろいろ、労働力不足の中で、それぞれの事業者を含めて、労使でしっかりそこを話し合って結果が出てきているというふうに思っております。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
首藤参考人にお伺いをさせていただきます。
本来、二〇二四問題という言い方になっていますが、働く人から見たら、働く時間が減り、そしてしっかり賃金、給料が支払われるようになる、更にそれが増えていくということ自体は問題ではなく、むしろ目指していくべき方向ということではなかったかと思います。その方向に向けての一里塚が今回の法案になるのではないかというふうに思いますが、様々、それでも解決すべき課題は残されていると思います。
多重構造の話、着荷主の話など様々ある中で、首藤参考人の目から御覧になったときには、これから解決しなければならない最優先の課題というのは何であるのか、教えていただければと思います。
○首藤参考人 まず、二〇二四問題という言葉の使い方については私も違和感を抱いておりまして、必ず括弧をつけて使っております。労働者にとってみればこれはプラスのことであるというのは、おっしゃるとおりだと思っています。
今回の法案によって様々なことの改善が期待されておりますけれども、私は、やはり最大の問題としてあることの一つは多重構造の問題であると思っておりまして、多重構造の是正については、十分なメスが入るかどうかというのは、まだちょっと不透明な部分があると思っております。
取りあえず、今回の法案がもし可決、成立すれば、それで一歩前進ではあると思いますけれども、さらに、この多重構造をどのようにしてなくしていくのか、減らしていくのかということは、更なる取組が必要だというふうに考えております。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
今、多重構造の話が出ましたが、馬渡参考人にお伺いします。
馬渡参考人は、この多重構造のいわば構造的な解決に向けて、どのようにお考えでございましょうか。国によっては、例えば二次までしか下請は駄目だというような立法をしているところもあると伺っております。その点も含めて、お考えをお聞かせいただければと思います。
○馬渡参考人 多重下請のことについて返答いたします。
他国では、下請は二次までというところもあるというふうに聞いておりますけれども、我が国でもそういうふうに決めていただいて、そこで、労働者のいろいろな健康問題であるとか、いろいろな労働時間であるとか、そういったものを解決していくべきだというふうに思っておりますし、一番は、いわゆる水屋さんという方々がたくさんいらっしゃいます。ただ、水屋が悪いと言ってしまうと、中小零細のところはもうほとんど自分で、本当の、真の荷主さんを持たなくて経営をされているところもありますので、それよりも、やはり今後、行政によってそこら辺のところのチェックを厳しくやっていただければなというふうに思っております。
今、マッチングアプリみたいな形で、我々が知らないところで、いわゆる水屋さんとは違った形で、ネット上でやられている部分もございますので、そういった方々が、運送の責任、安全、リスクを負わずに固定の手数料を受け取られる、こういったところは問題というふうに認識をしておりますので、是非そういったチェックをお願いしたいと思います。
以上でございます。
○古川(康)委員 ありがとうございます。
根本参考人は、この多重下請の問題について、どのようにお考えでしょうか。
○根本参考人 私は、今回、法案の中にあります実運送体制管理簿を作るというのは効果的なんじゃないかというふうに思っています。
国交省の資料を見ましたらば、そこに、誰が実運送を担うのか、トラック会社の名前、さらに、ドライバーの名前まで書くようになっているんですね。発荷主さんが、この方が届けに行きますよということを着荷主さんにお知らせできる。着荷主さんは、誰々さんが来るんですねという、そういうドライバーに対するリスペクトが生まれると思うんですね。発荷主さんが運賃を払ったときに、それが多段階になって、実際にドライバーさんに届くのかどうかということにも思いをはせることができると思うんですね。ですから、この管理簿を作ることによって、私は改善していくと思っています。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
多くの場合、着荷主から見たら、自分の荷物を運んできた人が、どこの会社の何という人なのかということが分からない、そういう状態になっているなということを、確かに思うところでございます。こうしたことを含めて、この多重構造の問題については、しっかり解決に向けて取り組む必要があるということを改めて感じた次第でございました。
また一方で、消費者の行動変容というか、意識の変革ということも求められていると思います。それが象徴的な表現として、送料無料問題というのがあると思います。
これは馬渡参考人があちこちで、問題だということをずっとかねてから御指摘をいただいていたところでございます。政府としても動き始めているというふうに理解をしておりますが、ただで運ぶ者はなく、それを言うならば、例えば医療費の無料化という言葉がありますが、お医者さんが何も医療をただで診てくれているわけではなくて、公費で負担しているから利用者の負担がゼロあるいは低額になるということであって、こうした無料という言葉に、どうしても人間は引かれてしまうことは事実でありますが、これが誤解を生むということになっていると思います。
この送料無料問題についての御所見を、馬渡参考人、お聞かせください。
○馬渡参考人 送料無料におきましては、消費者庁の皆様にも御協力をいただいて、一定のハレーションはあったような気がします。
ただ、やはり、送料を当社で負担しますとか、送料を我々が何円以上は負担しますとか、そういった形で、誰が負担されているのかをはっきりされれば、この問題というのは、送料無料、ネットワークのインフラをやられている方々が負担されているのか、それとも、各出店者が負担をされているのかというのがはっきりすれば、やはり皆さん、そこの御理解を得やすいのかなというふうに思いますので、是非、言葉狩りじゃないんですけれども、変えていただいて、誰が負担しているかをはっきりしていただければなというふうに思っております。
以上でございます。
○古川(康)委員 まさに、そういう意味では、送料当社負担という言い方をしているような事業者さんもいらっしゃいますけれども、まさにそういったものが正しい表現と言えるんだなということを思った次第でございます。
働いていただく方、運んでいただく方に対するリスペクトが必要ということの中で、成田参考人にお伺いをいたしますが、今、こうしたことでいろいろな改善策に取り組まれているわけでございますが、この業界で、この世界で働こうとする人たちというのは増えつつあるのか、それとも、まだまだなかなかそういったところまではたどり着いていないというふうにお考えなのか、率直な感じをお聞かせいただければありがたく存じます。
○成田参考人 ありがとうございました。
率直に、まだたどり着いていないというのが本音だと思います。その背景には、あるいは長時間労働、そして低賃金というところがあると思いますので、今回のいろいろな法案の中でその辺が改善していって、若い人たちを含めて、この業界に入っていただく方をしっかり増やしていくことを努力していきたいと思っています。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
首藤参考人にお伺いします。
様々な課題がありながらも、社会全体としていい方向に向かわなければという方向性だけは見えてきているように思います。この法案に対する期待をお聞かせください。
○首藤参考人 この法案は、まだ可決、成立していませんけれども、この法案が出ていることだけでも、かなり多くの、荷主さんを含めて、行動変容が起き始めているということでは、私は非常に強く期待しているところではあります。可決、成立されれば、非常に、これまで動かなかった物流の状況が大きく変わっていく一歩になるというふうに期待しています。
○古川(康)委員 ありがとうございました。
最後に、馬渡参考人に、この法案に対する期待を先ほど伺ったので、逆に、残された部分、これからこういった点に力を入れてほしいということをお尋ねしたいと思います。
○馬渡参考人 ありがとうございます。
先ほど述べましたとおり、これからがスタートでございますので、是非、全体でチェック機能を強化をしていただきたいとともに、新しい標準的な運賃ができました。これも、賃金であったりとか、いろいろな、油の問題であったりとか、そういうものがどんどん上がっていく状況であれば、速やかにまた改善していっていただければいいなというふうに思っております。是非よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○古川(康)委員 ありがとうございました。終わります。
○長坂委員長 次に、白石洋一君。
○白石委員 立憲民主党の白石洋一です。
本日は、四人の参考人の皆様方、貴重な御意見、御陳述、ありがとうございます。
そこで、私は、活動地域が地方なものですから、地方の観点から皆様方の御意見をお伺いしたいなと思います。
具体的には、私、四国の愛媛というところなんですけれども、この働き方改革によって、これまで、地元の長距離トラック運転手、そして長距離輸送業者、首都圏が主な顧客です。行って帰るのは、これまでは四日間だったということですね。お届けして、そして、帰り、荷物をできるだけ積んで戻ってくるのが四日間だったと。それが、今回のこの働き方改革、いいことです、それは、基本的にはいいことですけれども、そのことによって五日間になるということなんですね。どうやっても五日間になると。
それを四日間で済まそうとすれば、高速道路を使う。それで料金が大体四万円ぐらいする、それが収受できない。あるいは、帰り、フェリーを使う。オレンジフェリーというのがありまして、大阪から愛媛にトラックを積んで帰れるというのもありますけれども、これはトラック運転手の休息時間にカウントされるということなんですが、それで余計に四万円ぐらいかかってしまう、こういったことなんですね。
これらのことを考えたら、これからの経営、そして運転手さんはどうしようかと。一つは、中継基地というのがあるじゃないですかという話が出ております。中継基地、下道だったら北陸を通っていくということなので、そこの、北陸の例えば石川県に造るかと。そうすると、そこで運転手の確保はどうするということがあります。そこから、では運転手を自前で採用するのか、それとも連携させるのか。あるいは、そこでどうしても積替えが発生しますよね。こういったことを考えると、どうしてもやはりコスト高になってしまう。
こういったところを考えると、この法案の中にも、そういった地方の長距離運送業者に対する施策というのは何かといったら、中継基地を整備しますということが書かれてはいますけれども、ここでちょっと皆さんに、四人の方にお伺いしたいんですけれども、こういった地方の長距離運転手、そして長距離輸送業者に対する施策というものは、どのようなものが望ましいでしょうか。まず、馬渡参考人、お願いします。
○馬渡参考人 私自身も九州の佐賀でございますので、長距離輸送を余儀なくされているところでもあります。
何が必要かというと、今回、同時に改善基準告示も短くなりました。全体三千三百時間、拘束時間も短くなりました。そういったものを勘案をすると、日にちは、二日で運んだやつが三日で運ぶようになるということです。それから、帰りも、実は帰り荷を探す時間も必要ですから、もう一日、どうしても往復一日ずつ増えるというふうに思っておりまして、これが六日かかるということになると、やはり、荷主さんが今までと同じような時間で運びたいとおっしゃったら、高速道路を使わざるを得ない。
でも、今の慣習、商慣行でいえば、高速を我々が使っても、運賃の中に含んでいるから、自分で自由に途中で乗ってくださいというのが商慣行です。ですけれども、労働時間の問題を考えると、全線高速で行かないとやはり難しい。特に、六日間で自分の営業所に帰ってこなきゃいけないという規制もございますので、そういったものも勘案すると、高速道路の代金をきちっとお客様からいただく、それから、当然、長距離だと油の代金をきちっといただく。サーチャージでいただくかどうかは別にして、それが必要なんじゃないかなというふうに思っております。
以上でございます。
○根本参考人 まず、高速道路を使ってその料金をちゃんと払ってもらうというのは、今回の法案の中でもちゃんとうたわれていることだと思います。
あと、やはり、JR貨物とかフェリーを長距離部分で利用するというのは重要なことだと思います。政府の緊急パッケージの中でも、今後十年程度でJR、フェリーを倍増させたいという目標もあるわけですから、是非それも、うまく使えるところで使っていくべきかなと。
あと、三点目、中継基地、これは有効だと思います。特積みは、大きなトラック、ダブル連結トラックなんかを東京からずっと走らせていって、途中で運転手さんが乗り換えていくというふうなやり方をしていますけれども、貸切り便の場合は、途中で荷物をリレーするような形になるのかもしれません。その場合、やはりセミトレーラー連結車でヘッドを外して持っていってもらう、そういう中継の仕方も有効で、実際、コネクト浜松というところで中継輸送を今いろいろやっている物流事業者がありますけれども、運転手乗換えパターンと荷物を入れ替えるパターン、いろいろなパターンで中継輸送が進んでいると思います。それも有効だと思っています。
以上です。
○成田参考人 私、労働組合という立場でありますので、先ほども少し申し上げましたが、これまでドライバーの長時間労働の中で日本の物流が支えられてきたというふうに思っていますので、そこをしっかり改善していく必要があると思っています。
特に、長時間の連続運転の中で、疲れとか集中力の低下などで事故を起こしてもいけないと思いますので、そういう意味では、このトラックドライバーの環境について、お客様企業にしっかり説明をするということが大事かと思いますし、そして、そこで適正料金をいただくということかと思いますので、そんなことだと考えています。
○首藤参考人 もう既に意見も出尽くしている感じがありますけれども、私は二点申し上げたいと思います。
一点は、やはり運賃を上げるしかないんだと思っています。いろいろなことをやっても、全てにコストがかかりますので、それをやはり適正に反映させていくような仕組み、仕掛けが必要であって、高速代金も燃料費もそうですけれども、やはり別建てで実費を収受するというような形の体系をつくっていかない限りは収受できないと思いますので、それが本当に求められていると思います。
もう一点は、私は、やはり中継拠点を設けていって、できるだけ、一回トラックに乗ったらもう五日、六日帰ってこれないというような働き方こそ変えていかないといけないんじゃないかと思っています。トラックドライバーは男性が多いですけれども、今後の労働力不足を考えると、女性の労働力も活用していくというのは非常に重要であって、そういうことを考えますと、やはり日帰りで運行できるというような体制を組むためには、やはり中継拠点を設けていく。
でも、中継拠点を設けて多数で運べば、それだけ人件費も上がりますから、それもまた運賃に跳ね返ってくるわけですけれども、やはり運賃を上げていき、働きやすい環境をつくっていくということだと思っています。
以上です。
○白石委員 ありがとうございます。
中継基地というのも有効な手段ということなんですけれども、それでまた帰りの荷物をどうするか。積替えしてから帰りの荷物を積む。こういったことは、やはりもう業者さんにはできないことですので、是非政府の政策として取り組んでもらって、やはり地方の製造工場、物づくり、あるいは農産物、運送にハンディがかかってしまって、そのことによって需要が減ったり、あるいはそこでの工場の縮小につながることを私は危惧するものであります。
それで、次の質問でありますけれども、かかった、まずは人件費、そして高速代、あるいはフェリー代とか、そういったものを荷主さんからちゃんと収受するんだと。その手段として、今ある標準的な運賃、これを最低運賃にすべきだという声があるんですね。
実際、人件費については最低賃金というのがあります。それと同様に最低運賃というのがあれば、これは適正な価格で物を運ぶ。それは、下請が幾ら五次になり六次になったとしても、その六次であっても、最低運賃が確保されているのであれば、先ほどから出ている、仲介手数料一割相当分は上乗せしていくわけですから、解決するということがあります。
この最低運賃を、標準運賃から最低運賃にしてほしいという声について、それぞれ四人の参考人にお伺いしたいと思います。
○馬渡参考人 今おっしゃったような意見があるのは承知しております。我々も今、新しい標準的な運賃を改定していただいて、これからそこに向けて頑張ろうというふうに思っておりますし、将来的には、私の個人の意見では、そこを最低運賃にしていただけるというのは非常にありがたいなというふうに思っております。
ただ、今すぐそういうふうには、やはり社会的に、荷主さん、消費者の方を含めて、相当コンセンサスをいただけるというのが必要なのかなというふうに考える次第です。
以上でございます。
○根本参考人 確かに、三次、四次下請となって、実運送事業者の手取りの運賃が低くなるのは問題で、それをどうするかということですけれども、まず大事なことは、実運送体制管理簿を作り、二次下請までに制限してもらうという、まずそれが一番基本じゃないかなと思うんですね。
多段階になったときに、その手数料がどんどんかかるんですから、それを荷主さんに払ってもらうということはどうなのかなと、それは少し私は疑問に思っているところです。
結局、段階があるということは、トラックのビジネスは繁閑がありますから、忙しいときに合わせてトラックドライバーとトラックを確保しておくと、閑散期にはなかなか困ってしまうわけですね。
ですから、言ってみれば、下請さんは元請さんにとってはリスクを回避する保険のようなものなので、そこは元請さんの責任でやはり払うのが基本で、そこを荷主に遡って請求するのはどうかなと。荷主さんも、大手ならいいんですけれども、中小の荷主さんはとても価格転嫁できなくて困っているわけですから、そこを中小の荷主さんにツケを回すのはいかがかなと私は思っています。
○成田参考人 私たち、労働組合ですので、先ほどから申し上げていますように、働く人たちの労働条件引上げという意味では、先ほど言われたような最低ということもあると思いますが、まずは標準的運賃について、事業者がお客様企業にしっかり説明をして、そのことをしっかり理解をいただいて、収受するということだと思っております。
○首藤参考人 最低運賃については、現在、標準運賃がありますので、まずそこがきちんと履行できるようにということを期待しますけれども、そこがうまく機能しないのであれば、検討の余地があるんじゃないかと私は考えています。
実際、価格を下支えするようなことをすると、多重構造自体がなくなっていくというような事例も他業界では起きています。つまり、価格が高くなると、下に投げられなくなってくるというようなことも起きるわけですので、そういったことも含めて、検討するべきテーマかなというふうに思っております。
○白石委員 ありがとうございます。
そして、次の質問なんですけれども、働き方改革によって、休憩を取らないといけない、四時間運転したら三十分は最低限取らないといけないということで、高速道路のパーキングエリア、サービスエリアが非常に混雑して、休めない。むしろ、これだったら、従来の働き方で一気呵成に荷主さんのところにお届けして、早く帰りたい、そういう声もあったりします。
運転手さんの労働環境の整備と、途中で休める環境、一泊することもありますでしょうし、この辺りについて、成田参考人、どのようなお考えでしょうか。
○成田参考人 これまで労働組合としても、サービスエリア、パーキングエリアの様々な改善に向けて、求めてきました。特に、これから、先ほどもありましたが、女性の活躍も含めて、様々な環境を整備していかないと、なかなかドライバーが増えていきませんので、これからもそこの確保は必要だと思います。
特に、大型の駐車升に普通の乗用車の駐車が、状況があるというふうなこともありますので、その辺も含めて、利用者のマナーの向上に向けても、やっていけば改善をしていくと思いますので、そんな考えであります。
○白石委員 時間が来ましたので、終わります。本当にありがとうございました。
○長坂委員長 次に、漆間譲司君。
○漆間委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の漆間と申します。参考人の方々、本日は本当にありがとうございます。
早速、全ての参考人にお伺いしたいと思います。
まず、今回、標準運賃であったり新たな運賃項目で運賃を上げようとする、そういった作用はあると思うんですが、それが実際にドライバーのお給料にしっかりとこれが反映される保証があるのかということが委員会の方でも議論になっておりました。これがドライバーの給料の上げ幅にしっかりと寄与するという保証があると思うか、そのチェックする仕組みがあると思うかということについて、全ての参考人にお伺いしたいと思います。
○馬渡参考人 きちっと経営をしている事業者であれば、実際に実運送事業をやって標準的な運賃を収受した場合には、必ず毎年賃金を上げるような原資が出てくると思います。
今、原資が出てこない状況でありますので、賃金、それから賞与もありますけれども、月例賃金はきちっと払うけれども、賞与ではなかなか出しにくいという部分もありますし、歩合制のところもありますので、いずれにしても、運賃が上がってちゃんと歩合に跳ね返るようになれば、歩合制のところは上がっていくと思いますし、そうでない固定給のところも、我々も、全ト協でもそういうふうに事業者の皆さんを指導するつもりでおりますので、やっていきたいというふうに思っています。
以上でございます。
○根本参考人 私の余り専門とするところでないので、素人的な回答になってしまいますけれども、トラック会社の人間関係で、馬渡さんのところのように、社長さんとドライバーさんが仲よくて、どれだけ運賃を取ってきて、それがドライバーさんにどれだけ還元されるのかということがすごく分かっているようなところはいいと思います。
もう少し冷ややかなところは、ドライバーさんも、じゃ、この会社を辞めようかなといって、別のいい社長さんのところに移るでしょうから、そのメカニズムの中で、ちゃんと運賃が賃金に反映されるんじゃないでしょうか。済みません。
○成田参考人 私、実際、労使交渉を行っておりますので、その中で、様々な経営協議会というのも、いろいろ、それも労使でありますけれども、料金改定の、どれぐらいできたのかとか、そんなことも労使協議の中でやっていまして、そういう中で、そこがしっかり、最終的には春季生活闘争とかで企業側と交渉するわけですけれども、そういうことを聞きながら、しっかり今やっているところです。
先ほどありましたように、少し中小のところでは厳しいかも分かりませんが、それは、我々労働組合として、そのようなことの消化をしながら、しっかり労使でそのことを確認するようなことを、取組をしていければ、つながっていくと思っています。
○首藤参考人 運賃上昇が賃金の上昇につながるのかという点は、私、まさに専門で、これは極めて重要なポイントだと思っております。
回答から申し上げますと、その保証は全くないと思っています。
これはトラック業界だけの話ではなくて、この過去三十年間、日本では、生産性の上昇はしたものの賃金が上がってこなかったというのが日本の実態ですので、価格が上がれば賃金が上がるという保証は全くないと思っています。
そこで、どうすればいいのかということですけれども、今、成田参考人の方からもありましたけれども、やはり一つは、労働組合による賃上げの要請であり、労働組合によるチェック機能を働かせるということだと思っています。
ただ、労働組合の組織率は一六%ですから、ほとんどの人たちは組合でカバーされていません。そういった人たちを含めて、本当に賃金を上げたいというのであれば、トラックドライバーに対して、特定最賃であるとか、ほかの仕組みを使って賃金を上げることにやはり特化したような施策を取るべきだというふうに私は思っています。
以上です。
○漆間委員 ありがとうございました。
特定ドライバーに対して特定の最低賃金を設けるという御意見が先ほど首藤参考人の方からありましたけれども、それを、労働時間も含めてしっかりとチェックしていかなければならないと思うんですけれども、もしそういう仕組みを作るとすれば、具体的にどんな仕組みがいいのかということについても、お考えがあれば、おっしゃっていただけますでしょうか。
○首藤参考人 特定最低賃金の仕組み自体は、日本の制度として、今、存在していますので、最低賃金というのは、地域別最低賃金と、特定の産業や職業に対する最低賃金がありますので、それをやろうと思えば、それこそ労働組合とトラック協会と一緒になってやっていくと。
最低賃金で賃金が上がれば、運賃の中の、例えば、トラックの中では原価の四割ぐらいが人件費になっていますので、そこの部分が強制的に上がるということであれば、それを交渉材料として、運賃の値上げにも私は有効に働くのではないかというふうに思っています。
ですので、仕組み自体はもう既にありますので、やるか、やらないかというような問題なのではないかというふうに思っています。
○漆間委員 それでは、また全ての参考人にお伺いしたいと思います。
今回、標準的運賃八%上乗せだったり、新たな運賃項目が、設定で運賃が上昇していくという効果を狙おうとしておりますけれども、これによって、消費者に届く商品価格への影響、どの程度あると思われているか、影響をどういうふうに考えているか。先ほど送料無料というお話もありましたけれども、商品価格への影響、そちらを全ての参考人にお伺いしたいと思います。
○馬渡参考人 消費者の方の影響ですか。(漆間委員「そうですね。商品価格ということで」と呼ぶ)
今までも、メーカーの方が商品の価格を上げる際に、物流費が上がりましたと言われることが多いんですけれども、この物流費も、輸入品の物流費が今回相当上がっています。これもやはり物流費です。
我々は、国内物流費、トラックドライバーが一生懸命運んでいるんですけれども、そこの部分は陰に隠れているときが多いですし、荷主さんによっては、海外から入るものは払わざるを得ないので、港までは物流費が上がりましたということなんですけれども、港から先、消費地まで行く分に関しては、もう少し、製品を値上げするまで待ってくれというふうな形になりますので、消費者の方の影響としては商品の価格が上がって、その跳ね返りとして、我々国内物流事業者もそれ相応の標準的な運賃をいただけると本当にありがたいなというふうに思っています。
以上でございます。
○根本参考人 先ほど売上高物流コストというのをお示ししましたけれども、それが五%だとします。そして、荷主が払っている物流コストの中には、当然、海外分とか倉庫の保管料もありますから、トラックに対してどれだけ運賃を払っているのかというのは、仮にその半分としましょう。そうすると、二・五%が一〇%上がるとなると、〇・二五%の影響があるということかもしれません。
ただ、この〇・二五が大きいのか小さいのかということですけれども、今、人件費が五%上がるとか、そういうふうなことを春闘で言っていますけれども、そういうのに比べるとはるかに小さな影響だと思います。
○成田参考人 少し私の立場からは難しいんですが、運賃が上がっていくわけですから、当然、メーカーの方もその分だけ商品価格を上げないと多分対応できないと思います。それぐらいの話なんですけれども、よろしくお願いします。
○首藤参考人 消費者への影響というのは何%、どれくらいあるというような具体的な数値を申し上げることはできないんですけれども、私は、ある程度影響はあってもやむを得ないのではないかというふうに考えています。
この間、過去、九〇年以降の規制緩和において、やはり消費者の利益は非常に増してきたんだと思っています。それに対して労働者の利益というのが削られてきたという部分がありますので、それは少し揺り戻していくということが必要なのではないかというふうに私は見ています。
以上です。
○漆間委員 この法案の目的は、ドライバーの魅力を上げていくということであるんですけれども、一方で、先ほどお話の中にもありましたように、規制緩和によってトラックの事業者が増えたことが、荷主の立場が強くなって、トラックドライバーだったりトラック事業者の立場が弱くなったという御意見もいただいているところなんです。
マーケットの仕組みとして、これから特定技能で、自動車運送のドライバーの方々、外国人の方々が増えてくることが政府の中で検討されているんですが、普通に、外国人の労働者が増えるということは、マーケットの仕組みからいうと、また、労働者が増えることは、労働者の環境をよくしていこう、ドライバーの魅力をよくしていこうという作用と逆方向にあるのではないかなと思うのですが、特定技能で外国人のトラックドライバーが増えることについてのお考えを、済みません、全ての委員の方に、よろしければお伺いしたいと思います。
○馬渡参考人 そういった議論があるのは承知しております。特定技能一号ということで考えていただいているということは、非常に我々にとってはありがたい状況です。
というのは、地方では、どんなにあがいてもと言うと変な話ですけれども、我々九州だと、例えば、半導体関連のシリコンアイランドということで、そちらの方がはるかに賃金が高いですから、日本人の方が本当に入ってこない状況であります。そういった地域においては、特定技能で入ってきていただけるような外国人がいらっしゃるというのは非常にありがたい。
ただ、聞くところによりますと、うちにも普通にビザを取って入ってきている外国人が働いていますけれども、やはりこの円安によって、本国の友達の方がはるかにいい給料をもらっているとか、そういうこともありますので、多分、これから先は、外国人労働者の方も、日本人か日本人以上の、働き方が厳しければそれ以上のものを要求されると思いますし、それを払っていかないと、外国人の方もまた自国に帰られるというようなことになると思いますので、それはもう我々が、業界が挙げて頑張らなきゃいけない部分かなというふうに思っております。
以上でございます。
○根本参考人 外国人労働者をどう考えるかというのは私の専門外ですけれども、素人なりに考えますに、やはり、日本は人口が減少しているわけですから、いろいろな職種で外国の方に入ってきてもらった方が日本の活力がつけられるんじゃないかというふうに思いますので、トラックドライバーも是非入ってきてもらったらどうだろうかなと思います。
以上です。
○成田参考人 私、労働組合の立場ですので、安易な解決策にならないような対策を講じる必要があるというふうに思います。
特に、外国人の方の人権保護に配慮した受入れが大前提でもありますし、安全、安心、共生社会を実現していく必要性からも、受入れ企業は、法律をしっかり遵守して、人権に配慮した事業者等に限るべきではないのかなと思っております。
○首藤参考人 人手不足の中、どうしても外国人労働力に頼らざるを得ないというような実態は私も様々なところで聞いておりますので、事業の継続のための必要性というのはあるのかなというふうにも思いますが、マクロ的に見たときに、本当に人手がどこまで不足しているのか。つまり、今なかなか運賃が上がらないような状況がまだあるわけですので、過当競争の状況というのは今日でもまだ存在しているんだと思うんですね。
事業者が多過ぎて、その多い事業者がみんな人を募集しますので、人手は不足しているように有効求人倍率では見えますけれども、荷物の量と比べたときの人手というのがどこまで本当に不足しているのかというのは、なかなかちょっと算定が難しいんですけれども、今運べているということは、もしかしたら不足していないのかもしれなくて、そこで外国人が更にどっと入ってくると、やはり賃金、労働条件の改善というのはなかなか進まなくなる可能性もあるというところは少し懸念をしているところではあります。
以上です。
○漆間委員 以上で私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○長坂委員長 次に、國重徹君。
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。
本日は、何かと御多用の中、四名の参考人の皆様に当委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。
まず、馬渡参考人、首藤参考人にお伺いいたします。
かつてブルーカラーの花形職と言われていたトラックドライバーが、現在のような低賃金になってしまった、その背景や根本原因について、どのように分析をされているのか。また、ここから得られる教訓についてどのようにお考えか。それぞれお伺いいたします。
○馬渡参考人 では、事業者の立場から答えさせていただきますけれども、我々は、やはり物流二法が始まったこと、規制緩和になりましたけれども、規制緩和そのものはいい部分もあったと思うんですけれども、事運賃とか労働者、トラックドライバーにとっては、今やもう、そのことによって競争が行き過ぎてしまって、そこを少し是正していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに感じている次第です。
今回も規制措置を入れていただきましたけれども、規制措置を入れたことによって、今度は、緑ナンバーのトラックを使わないで白ナンバーのトラックを使っていこうという荷主さんもぼちぼち出ております。ですから、そういったことも含めて、やはりきちっと行政も、それから我々も、チェックをしながら進めなきゃいけないのかなというふうに考えている次第でございます。
以上でございます。
○首藤参考人 私も馬渡参考人と基本的には同じ意見でして、トラックドライバーの賃金、労働条件の低下は、規制緩和に起因しているというふうに考えています。
規制を緩和すれば競争が激しくなって、より生産性の高い事業者が残り、淘汰が進むんだというふうに当初は考えられていましたし、一般的にはそういうふうに論じられています。でも、トラック業界において規制緩和後に起きた事態というのは、まさにその逆だったんじゃないかというふうにも思っています。つまり、トラック業界では、規制緩和後、非常に中小零細の規模が大きくなって、中堅規模がほとんど潰れていく。生産性は下がっていきました。運賃も下がっていきました。
ですので、いわゆる一般的に言われている規制緩和のプラスの面というのは、この業界ではそんなふうに起きなかったというところを、まさに政府を含めてどのように総括されているのかなというふうに思っているところではあります。
以上です。
○國重委員 両参考人、ありがとうございました。
新たな制度をつくる際には、立法事実、この必要性、これについて丁寧に検証するとともに、それによって生じ得る副作用というのがどのようなものがあるのか、またその副作用がどの程度なのか、その深刻な影響についてきちんとフォローがされているのか、こういった多角的な観点で、特に我々立法府にいる者としては、そういったことを冷静に見極めていかなければならないということを改めて認識をさせていただきました。
次の質問に移ります。
次は、根本参考人、首藤参考人にお伺いいたします。
現在のトラックドライバーの長時間労働の大きな要因として、長時間の荷待ち、荷役作業が挙げられています。今般の法改正では、この是正に向けた取組も盛り込まれているわけでありますけれども、他方で、こういった行為というのは、本来、既存の法令においても規制対象となり得る行為だったわけであります。具体的には、下請法でありますとか、あるいは、荷主と物流事業者の取引において優越的地位の濫用を規制するために指定されている独占禁止法上の物流特殊指定、これらに定める禁止行為の類型に、長時間の荷待ち、荷役も該当し得るわけであります。
しかし、現場の実態としては、荷待ち、荷役を当たり前のように求める行為が横行しております。それは一体なぜなのか。これらの法令がうまくワークしていないのであれば、何がネックになっているのか。また、今回の法改正では、そういった不具合は一定クリアされていて、ワークする仕組みとなっていると評価されているのか。これらの点についてお伺いしたいと思います。
○根本参考人 これまで、デフレが長く続いて、荷主さんたちは本当に、物流コストを下げることに注力してきたわけですね。そして、トラック事業者は多かったですから、ある程度無理を言っても何か引き受けてくれる、そういった中でこの荷待ち、荷役というのは生じていたわけですけれども、今度の新しい労働規制でそれはもうまかりならぬというか、そういうことはできなくなるということがはっきりしたわけだと思います。
これまでも、独占禁止法とか、厚労省のいろいろな、監査とかあるいはトラックGメンとか、あるわけですけれども、今後、そういうものが一体となって連携しながら、荷主あるいは元請をしっかり取り締まっていくということが法律に書かれていますので、今後はこういうものが少なくなっていくのではないかと期待しております。
以上です。
○首藤参考人 長時間の荷待ちや荷役、悪質な商慣行がなぜ是正されてこなかったのかという点なんですけれども、結局、事業者が告発をするというんですか、こんな、トラック運送会社がこれだけひどい荷待ちがありますということを、声を上げること自体が極めて難しいという実態が今でもあると思いますけれども、結局、声を上げると仕事が奪われてしまって事業が成り立たなくなってしまう。これは過当な競争があるからだと思いますけれども、そういう中でなかなかその声は上げられない、みんな分かっていてものみ込むというような実態があったんだと思っています。それは、荷主勧告の制度ですとかいろいろな制度がありましたけれども、うまくそれがワークしてこなかったと思っています。
でも、今日は、やはりトラックGメンの制度というのは、声が上がる前にこちらから出かけていってどうなっているのかを見て、ドライバーに直接話を聞いて、悪質な荷主のところに行って話をしていくというような、一歩踏み込んだ対応がなされていまして、そこは従来との大きな変化なのではないかというふうに私はちょっと期待をしながら見ているところではあります。
以上です。
○國重委員 ありがとうございました。
しっかりと個々の運用等についても注視をしていく必要があると思っております。
次に、馬渡参考人と根本参考人にお伺いいたします。
今般の法改正では、多重下請構造を明らかにするために、元請事業者に実運送体制管理簿の作成を義務づけています。また、契約条件を明確にするために、荷主、トラック事業者、利用運送事業者に契約時の書面の交付なども義務づけています。
他方で、発荷主と元請事業者との契約時点では、下請が何次までいくのかというのは明確になっていない場合が多いと思われます。また、荷待ち、荷役が生じるのは、これは着荷主との関係ですけれども、契約時点では実運送事業者の荷待ち、荷役時間も明らかになっていないのが通常だと思います。ですので、契約書に、荷待ち、荷役時間まで盛り込んで契約金額を書くというのは、これは極めて難しいというのが実態だと思います。
こういった中で、下請手数料や荷待ち、荷役費用を含めた適正な費用をどうやって元請が荷主に請求できるのか、運賃の精算は荷物の運送が完了した後に行うことができるとしたとしても、実際に元請が荷主にそれらの費用を請求できるのか、また、荷主にきちんとそれに応じてもらえるのか、この点についてどのようにお考えかという点と、また、これに関して今後必要な取組についてお考えのことがあれば、御教示いただきたいと思います。
○馬渡参考人 御指摘のとおりだと思います。
運送を始める前に運賃が決まっていない、若しくは料金が確定していないということは、往々にして今でもあっています。ですから、そこら辺のところを先に規定するとか、書面化をしっかり料金を入れてやるということは、まだ分からない部分があります。
今、我々非常に困っているのは、着荷主さんのところで何が起きるかが分からない状況でそこの部分というのをどうやって確定させていくのか、あらかじめ、こういうことはしませんというふうに契約書に書いても、実際には決まっていないことに対してしませんという話になるというふうに思いますので、今、元請とかいろいろな責任を持った方が受けたところは徐々に改善されていくと思いますけれども、他方、いわゆる水屋さんですね、取次ぎだけをしている方、それからマッチングサービスの方、こういった方々は、ぱっと会わせて、自分は責任ありません、あとは相対で責任は取ってくださいねというような形でやられていますので、これが相場下落の一因になっているというふうに思っています。
先ほど古川先生のときも述べましたけれども、運送の責任とかリスクを全く負わない、それから、安全のことを全く考えなくても、手数料だけ取られる方、そういうような形態は、今回の二〇二四年問題を契機に根本的に見直す必要があるんじゃないかなというふうに思っております。
以上でございます。
○根本参考人 御指摘のように、発荷主と元請が契約するときに、第何次下請が実運送するかというのは分からないケースもあるかと思います。
しかし、今回の法律で、実運送体制管理簿を元請が作らなければいけないということになっているわけですから、それをしっかり、元請の責任として帳簿を作り、そしてそれを発荷主さんがいつでも見られるようにする、実際に届けるのはこの事業者、ドライバーですよということを発荷主さんに言えるようにするということが趣旨ですから、それはまず徹底できるだろう。
それから、契約時点に荷役とかの条件を入れられるのかという話ですけれども、これは現場では結構難しいというお話もありましたけれども、理屈上は、運賃とそういう荷役に関わるような料金、それをしっかり明記する、荷役はないぞとか、荷役はあるぞとか書いていただいて、それで契約する、そして、実際がそれと違った場合は、当然、実運送の人にもそれは分かるわけですから、違いますね、じゃ、別途、また料金、払ってくださいということがちゃんと交渉できるような仕組みにするというのが、この法の考え方じゃないかなというふうに思います。
以上です。
○國重委員 ありがとうございます。
要は、現場の実態を踏まえると、やはり、荷物の輸送が完了した後にもきちんと請求できる仕組み、下請も下請手数料の分が一〇%程度というようなことで、今回、標準的な目安が示されたわけでありますけれども、こういったこととか、荷待ち、荷役時間、これをきちんと、最終的に荷主さんに請求ができるような環境整備も含めてやっていかないと、実運送体制管理簿とか契約書を作ってもやはり十分な効果が発揮できないと思いますので、是非、今日は参考人質疑ですけれども、今日、四名の参考人の皆様から貴重な御意見をいただきました。それを基に、しっかりと、政府には、より現場でワークするような仕組みを、更に環境整備を整えていっていただきたいと思います。
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
○長坂委員長 次に、高橋千鶴子さん。
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本日は、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、本委員会に御出席いただき、また、大変貴重な御意見を伺いました。ありがとうございました。
早速質問させていただきます。
最初は、馬渡参考人と成田参考人に伺います。
二〇二四年問題に対応して、政府が様々なパッケージなどを打ってきたわけでありますが、とはいえ、本来、それに対応するはずのこの法案が四月に入ってから審議入りをしたということ、非常に私は残念に思っております。
改善基準告示は、一般の労働者と比べ、年間二百四十時間も長い労働時間にとどまりました。それでも、このままでは輸送力が不足し荷物が運べないとの声が大きいことと、また、現場のトラックドライバーからは、非常にこれも残念に思うんですけれども、現状の状態からいくと、もっと長く働かせていただかないと暮らしていけない、そういう率直な声も寄せられている。そうすると、なぜ五年も猶予しておきながら、四月を迎えてしまったのかなというふうに思っているわけです。
それで、現場では、もう四月に入ったということで、ドライバーや関係者の間で何か変わったことがあるのかどうか、実態をお聞かせいただきたいと思います。
○馬渡参考人 先ほどの成田さんの方が言われるかもしれませんけれども、各運送会社でも人手不足に対応して、やはりトラックドライバーの生産性を上げるとともに待遇も改善しようというために法律を作っていただいているわけですから、我々が応えなければ絵に描いた餅になりますので、そこはしっかりやりましょうということで協会も言っておりますし、多分、労働組合の方もそういうような要求を出されて、これから進んでいくんだろうというふうに思います。
経営者の立場からいいますと、そういうふうにして応えなければ、ほかの産業に行かれます。ドライバーとしてだけじゃなくて、これから先も、さっき申し上げましたように、工場の労働者の方が賃金が高いからそっちに行こうとか、そういう労働の流動性は確かに高まってきていますので、一定のトラックドライバーのいい部分、ほかの人に煩わされないで、ハンドル一つで行けるというのをよしと思っていただいている方もいらっしゃるので、そういった方に、きちっと待遇を改善しながら対処していきたいと思いますので、法律には本当に期待をしているところでございます。
以上でございます。
○成田参考人 ありがとうございます。
今回いろいろ、先ほどドライバーの給与の仕組みのことも少しお話ししましたが、少し労働時間が長くなる、なったらそれで賃金がどうなるという話もありましたけれども、今までは、やはり労働時間の長さでどうしても賃金ができ上がっていた部分がありますので、そういう意味では、私たち、組合、現場から聞きますと、時間短縮に取り組むことについては組合員も理解していますが、そのことによって逆に賃金が下がるということになると、そこはすごいアレルギーがあるというか、それは許されないということになりますので、そういう意味では、賃金の仕組みというのを、やはり基準、基本給的なものを上げながら、そして手当に依存しないような形に、仕組みを変えながらしていかないと、実質の賃金が増えても時間外が減って、総支給が減ったという形になりますので、その辺もテーマとして思っていまして、そういう意味では、しっかりそういうことができるように、労働組合としてもその環境等の整備をしていきたいと思っています。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
特に、馬渡参考人からは、応えなければという決意をいただいたと思いますし、やはり本来は働き方改革、いい方向に向かうはずであったわけですから、そこからスタートして、課題を解決していくというふうにしていければいいなと思って伺っておりました。ありがとうございます。
それで、次は根本参考人と首藤参考人に伺いたいと思うんですが、先ほど来ちょっと話題になっていますが、一九九〇年の物流二法による規制緩和の影響をどのように見ているかということなんです。
参入規制と運賃規制を緩和して以降、一・五倍にトラック事業者が急増して、非常な買いたたきといいましょうか、ダンピングになったと思うんですが、ただ、不思議に思うのは、三十年たって、ドライバー不足は叫ばれるけれども、トラック事業者の数はほぼ横ばいになっている。また、荷主に交渉したくても、もっと安い事業者がいるんだからというふうな圧力を受けているという現場の声も聞きます。
だから、結果として、三十年、そうした事業者を野放しにしてきたのか、あるいはそういう事業者が増える土壌があるということなのか、御意見を伺いたいと思います。
○根本参考人 御指摘のように、規制緩和がありましてトラック事業者は増えました、ただ、ドライバーさんの数はどんどん減る一方ですということなんですけれども、規制緩和によって優良な事業者が生き残るというメカニズムが働かなかったんだと思うんですね。
というのは、やはり経済的な規制の緩和と同時に、社会的な規制の強化もセットでやるべきだったかもしれません。例えば、社会保険にちゃんと入ってください、過積載をやめてください、労働時間を守ってくださいとか、そういうことをきめ細かく、もしちゃんと規制を強化して取締りをすれば、例えば、分かりやすいところでは、過積載をして安い運賃を提示するとか、そういうふうなメカニズムが働けば、真面目にやっている人は困りますし、運賃が下がってしまうわけですから、やはりルールを守ってやりましょうという意味での社会的な規制の強化を、経済的な規制の強化と一緒にやるべきだったのかなというふうに思います。
以上です。
○首藤参考人 今、根本先生の方から、経済的規制の緩和と社会的規制の強化を同時にやればというお話がございました。私も物流二法の影響はすごく大きいと思っていまして、ある程度、社会的規制の強化は行われてきたんだと私は認識をしています。
それで、これはセットでやらないといけないんだという議論は、以前からあったと思っています。ただ、セットでやったとしても、経済的な規制の緩和に引きずられていったというのが実態なんじゃないかというふうに思っています。
ですので、セットでやれば本当にうまくワークするのかどうかというのも、私はこの過去三十年間のトラック業界を見てみると、やはり経済的な市場競争というのは非常に強い力を持っていて、そちらにどうしても引きずられていく面があったのかなというふうに私は思っているところではあります。
いまだにトラックの事業者数は横ばいで、多いというのも本当におっしゃるとおりで、この段階でも参入してくる事業者がたくさんいるというのも事実です。ただ、入ってきている事業者さんが本当に適正な事業をできるような環境にあるのかどうかというようなところを、やはりもう一度チェックを、きちんと厳しくできるような体制をつくっていくということも考えていく必要があるのかなというふうに思っております。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
この規制の在り方ということをすごく考えさせられました。ありがとうございます。
それで、馬渡参考人にもう一度伺いたいと思うんですが、先ほど、ドライバーの所得をアップさせる、そこから逆算的につくっていくという提案、大変興味深く伺いました。
先生は、多重下請構造に、今回の実運送体制管理簿、これは非常に期待をされているというふうに思うんですが、やはり見える化をしていくことが重要だと思うし、そこに載せていくものとして、例えば運賃とか手数料などを書き込むとか、そうしたことはできないものだろうかと、これを本当に有効に働かせるためにいろいろ考えているんですが、御意見があったら伺いたいと思います。
○馬渡参考人 荷主さんもいらっしゃいますので、我々が例えばネット上で情報開示をしてしまおうということについては、荷主さんたちの承諾も必要だというふうに思っています。
今のところ、荷主さんたちは、ここの会社に幾ら出したとか、こっちの会社に幾ら出したとかは、基本的には教えないというふうにおっしゃいますので、開示をしていくというのは、荷主さんたちと話を進めて、一緒に協力して労働時間を短めようね、その代わり、時間当たりの単価を上げるためにも、荷主さんも協力しようというふうな話があれば、ひょっとしたら開示をオーケーしていただけるのかなというふうに考える次第です。
以上でございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
同じ質問を根本参考人にも伺ってよろしいでしょうか。
○根本参考人 確かに、今の実運送体制管理簿、そういう運賃とか料金は、基本的に記載しなくてもいいような形になっていると思います。やはりそこを全部出すというのは、今、馬渡さんがおっしゃったように、それぞれビジネスでいろいろな人と取引をしていますから、そこを全部さらけ出すというのもなかなか難しいのかなという感想を持っています。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
政府からは、逆に手数料が見えてしまうと値引きの抗争になっちゃうんだみたいなことを言われまして、それを何とか逆転させられないのかなということを今一生懸命考えておりました。ありがとうございます。
それから、首藤参考人にもう一度伺いたいんですが、先ほど陳述の中で、普通は三者協議なんだけれども、消費者を交えた四者協議という提案がありまして、なるほどなと思っております。
今、例えば大きな課題となっている再配達をなくしていくことの問題で、政府は、消費者が再配達をなくすための工夫をすればポイントを付与するというふうに言っているのは、私、逆に、逆さまなんじゃないのかなと。むしろ、お願いするんだったら、追加料金を消費者が払うべきじゃないのかしらというふうに思うんですね。先ほど来言われている送料ゼロというのも全くそのとおりだし、もっと消費者の理解を粘り強く得ていくこと、ただではないんだ、二度手間だったら二度料金はかかっているんだというふうなことなんかを、だから、協議をしていくと同時に、政府自身がもっとそこを分かってもらう努力も必要なんじゃないかなと正直思っているんですが、御意見を伺いたいと思います。
○首藤参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。
消費者にポイントを付与するのか、追加料金を支払うのかということなんですけれども、基本的にはどちらも同じなんだと思っているんですね。要するに、価格に差をつけるということなんだと思っています。価格に差をつけることによって、消費者に、経済合理的に行動することによって物流の効率化に協力していただくというような仕組みをつくっていくことが重要だと私は思っています。
それをやるためには、価格が見えないと当然差がつかないということになりますので、送料無料というのは、そう考えると論外な話でして、価格が見えることによって、例えば急いでいる荷物はそれなりに高い価格であっても急ぎで持ってきてもらう、でもゆっくりでよければ安い価格になりますよ、どちらを選びますかというような選択肢ができれば、消費者も経済合理的に考えて、例えば安い方でゆっくりでいいですというようなことをやったり、再配達をお願いする場合には倍の料金を払いますとか。ですので、やはり価格の見える化ということは、私は鍵なんだというふうに思っています。
以上です。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
見える化の意味が非常によく分かったなと思います。ありがとうございました。
成田参考人に、もう一言伺いたいと思うんですが、荷役の問題で、ドライバーが、約束じゃないのに、行ったら普通に仕事をさせられるという感じ、それがどこにも出てこない、いわゆる賃金としてどこにも出てこないということ、だから、待機時間が長いことと同時に、不要な仕事をさせられている、これをどうにかしてやはり解決していかなきゃいけないと思うんですが、先生の御意見を伺いたいと思います。
○成田参考人 ありがとうございました。
不要かどうかは分かりませんが、契約にないことをさせられているというのは現状としてありますので、今回のいろいろな法案の中でそこをしっかり整理をして、我々もそのことをしっかり伝えていくということが大事だと思いますので、そんなことで取り組んでいきたいと思います。
○高橋(千)委員 ちょっと余裕があるみたいなので、馬渡参考人にも今の質問を伺ってよろしいですか。
○馬渡参考人 済みません、今、成田さんだと思って、よく考えていなかったんですけれども、どういう御質問でしたでしょうか、済みません。
○高橋(千)委員 ごめんなさい、ドライバーが荷役を手伝わされるという問題についてです。
○馬渡参考人 契約にないことは、もう日常茶飯事です。その辺のところも、一番ひどいのは、本当に、スーパーまで行って、売場まで並べさせられている運転手もおります。ですから、そういったことは本当にやめていただきたいですし、実際、そういったスーパーさんに入るときには、テレビカメラがあって、そこの周りでぐるっと一回り、こう手を上げて回らなきゃいけない。要は、何か盗んでいないかというようなことをさせられた上に、売台まで並べろと。もっとひどい場合は、消費期限が過ぎたものは回収してこいというような荷主さんも、いまだにいらっしゃいます。
ですから、我々からいうと、常識的な部分が、いまだに我々を小間使いのように使っておられる部分を、まず改めていただければなというふうに思う次第でございます。
済みません、質問を聞いていなくて、申し訳ございません。
○高橋(千)委員 貴重な実態を聞くことができて、ありがとうございました。
終わります。
○長坂委員長 次に、古川元久君。
○古川(元)委員 国民民主党の古川元久です。
今日は、四人の参考人の皆様方には早朝から国会においでいただいて、大変貴重なお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。
私は、この法案、四人の参考人とも評価をしていらっしゃったと思うんですが、私たちも基本的にはこの方向はやらなきゃいけないというふうに思っております。ただ、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、この物流の現場の状況というのは、私も、後ろにいらっしゃる坂本会長なんかからも、もう前から本当に大変厳しい状況というのは伺っていて、もっと早くこれをやれなかったのかなと。
例えると、今回の法案は、夏休みの宿題をやっていなくて、八月三十一日が終わっちゃって今日は九月一日で、もう学校に行く前に、とにかく慌てて空欄を埋めなきゃというので埋めているんだけれども、全部埋められなくて、ここまでしかやれなかったみたいなので持ち込んでいるというような状況じゃないかと思います。
ですから、今の状況だと、これはちょっと四人の参考人の皆さんの感じをお聞かせいただきたいと思うんですが、この法案が通って、しかも、もうこの四月からは時間外労働の上限規制もかかるようになって、じゃ、その状況の中で、今日、馬渡参考人がお使いになった資料の三ページにあった物流の二〇二四年問題で、こういう問題が起きますよということが起きないで済むのかというと、一定程度は起きてしまうんじゃないか。あるいは、こういう状況が起きないんだったら、それは、法違反の行為、行動が、やはり違反行為である長時間労働とかをやらない限り、こういうことが起きないということにはならない。
だから、現実は、こういう問題が起きない状況というのはなかなか想定しにくいんじゃないかと思いますが、参考人の皆さん方はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
○馬渡参考人 そこに、三ページに率直的な意見を書かせていただいています。
こういうことが起こらないように、本来早めにやらなきゃいけないという御意見もあったかと思いますけれども、やはりコロナで、いろいろな事業者が荷主さんのところにお伺いしようという話をしても、コロナだから来ないでくれというのが本当に多かったです。ですから、もう三年ぐらいは、実際に荷主さんとこういったことを話して、ならないようにという周知徹底をしたいんだけれども、できなかったという事業者が多いのも、多分一因あるかと思います。
あとは、それでいよいよせっぱ詰まってきたので、もうコロナも収まったので、こういうふうにやらなきゃいけないねという形で、遅いかもしれませんけれども、こういうふうにしてやっていただいて、やはり一般の消費者の方とか荷主さんに御理解を求めるというのは非常に大事だと思います。
先ほど再配達の話もありましたけれども、送料無料のときも、私、消費者庁さんでお話をさせていただいて、その日のヤフーのニュースの一番でした。いろいろな方からSNSで反響がありまして、そのうちの半分ぐらいの、若い女性の方が中心だったんですけれども、そんなふうにして、再配達がいかに大変かというのは知らなかった、ですから、これから先は一回で受け取るようにしましょうという肯定的な意見が非常に多くありました。
ですから、やはりみんなに知っていただいた上で、こういうことを進めますからよろしくお願いします、ドライバーの賃金を上げなきゃいけないとか、待遇改善、時間短縮もしなきゃいけないというふうに、丁寧にやはり説明していくのも大事なことかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○根本参考人 確かに、法案の審議が四月にずれ込んでしまったのは残念ですけれども、持続可能な物流の実現を目指す検討会は一年半ぐらい前に始まりまして、去年の秋ぐらいに大分盛り上がってきて、マスコミの取り上げ方も大きくなりました。
実際に、荷主さんの中には、もう取り組みを始めているところもありますし、この一月の最新データでも、運賃が五%ぐらい上がってきているというのも明らかですし、やはり取組が進んできているのかなというふうな気がします。
そういう意味で、四月から一四%運べなくなるということを私たちは言ったんですけれども、それは何もしなければ一四%運べなくなるということですけれども、荷主さんも物流事業者もいろいろな対策を取り始めていまして、それが典型的に分かるのは、自主行動計画というのを全日本トラック協会も昨年末に作りましたし、スーパーマーケット協会も作りました。
その中で、荷待ち、荷役をこれぐらいの時間に収めよう、取りあえず二時間ずつで、近い将来、一時間に収めようとか、具体的な目標を掲げておりますし、それぞれの業界でそういう取組が始まっていますので、実際は、そんなに運べなくなるというふうな極端なことは起きないんじゃないかと私は思っています。
以上です。
○成田参考人 私は労働組合の立場ですので、ここにあるような、ドライバーの給料が下がるとか、他産業への流出というのは避けなきゃならないというふうに思っています。
それで、物が運べなくなるといいますが、私たち、現場で働いている仲間としては、決して運べなくなるのではなくて、しっかり物を運ぶ、決して物流は止めないという思いで日々やっていまして、そのためにはこういう協力が必要だということでありますので、そんな観点で、これからもしっかりやっていきたいと思います。
○首藤参考人 既に今、様々論点が出ましたので、出ていないところをちょっと幾つかお話しさせていただきたいと思います。
まず、この法案が遅過ぎるという点は私も同意するところなんですけれども、この法案自体は、特定事業者に対して規制をかけていくというようなところがありまして、大手についてはかなりいろいろな取組が進んでいますけれども、中小の事業者にまでこれが広がっていくのかというのは、まだ不透明だと思っています。
荷主の荷物を運んでいる中小の運送会社などに話を聞くと、本当、四月以降、もう我々は二択を迫られていますと皆さんおっしゃいます。二択というのは、もう仕事を断るか、法律を守らないかという二択ですという話です。
実際どうなっていくかというところは見えないところもありますけれども、時間外労働の労基法の規制というのは年九百六十時間ですので、年間の残業時間に規制がかかっているところです。ですので、四月にすぐ、この年九百六十オーバーということは当然あり得ないわけで、これが年末ですとか年度末のところで、もしかしたらオーバーになってくる、それで、これ以上運べないというようなことは、もう少し先に起きる可能性は私はあり得るかもしれないと。
特に、中小の荷物を運んでいる事業者さんのところで何も改善が行われなければ、年末、年度末に、いわゆるパートの就業調整のような形で、ドライバーの労働時間調整というのをせざるを得なくなる可能性も出てくるかもしれない。その結果、もちろん、労働時間の減少で収入が減っていけば、ドライバーの離職が起きると、この後、二年後とか三年後に、人手が足りなくて運べないというようなことも起きる可能性もあるかなというふうに見ています。
以上です。
○古川(元)委員 今日のお話の中でも、あるいはこの間の委員会の議論の中でも、やはり荷主との力関係の弱さというところが指摘されています。そこをどう強めていくかというと、現場は本当に一番、トラック協会あるいは組合の皆さん方、現場の本当の大変さというのがなかなか、本当にちゃんと伝わっているのかなと。ですから、本当にそれは、断るときには断るぐらいのことをしないと、やはりまずいというふうにならないんじゃないかなというふうに思います。
ですから、本当にここは、力関係をどう、もっとバランスを強めていくか。今日、首藤参考人が言われた四者なんていうのも非常に大事かなというふうに思いました。
それで次に、これは馬渡参考人と成田参考人にお伺いしたいと思うんです。
これは今日の議論の中でも、高速を使った場合の料金でありますが、私は、高速をもう定額乗り放題という形にする。やはり日本は、高速道路が距離制になっているということで、これは本当に、トラックの皆さん、運転手さんに、多分相当なやはり負担をかけている要因じゃないかと思うんです。
だから、高速道路を定額にすれば、これは相当、トラック運転手の皆さん方の働き方が変わってくるし、定額であればちゃんとそこも乗せられるということで、いいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○馬渡参考人 大賛成であります。
常々、私、九州からなものですから、キロ当たり十円にしていただけないかという話をしています。千キロで一万円です。それ以上はもう上がらないというふうな、我々、事業者ですよ、緑ナンバーのトラックはもう大事な産業であるので、そういう施策をするというふうに決めていただくと、多分、今、白ナンバーでたくさん走られている方も、緑になろうというふうに思っていただける部分もあるのかなと思いますので、大賛成です。
以上でございます。
○成田参考人 トラックドライバーの労働時間が短くなるという観点から見れば、私もその方がいいと思っています。よろしくお願いします。
○古川(元)委員 是非皆さんも声を上げていただいて、国会の中でも上げてはいるんですけれども、なかなか前へ進まないので、是非よろしくお願いいたします。
時間も限られてきましたけれども、では、またこれも馬渡参考人と成田参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほどから、ドライバー不足で外国人の労働者をという話がありますが、私は、現実には、今の日本の安い賃金、中でもトラックドライバーは安い賃金で、こんな賃金で日本に来てくれるような外国人はほとんどいないんじゃないかなと。トラックを運転するだけだったら、もっと賃金の高いアメリカやオーストラリアへ行けばいいわけで、何もわざわざ本当に環境の悪い……。
ですから、もう外国人を頼るということはできない状況じゃないかなと思いますし、また、それだけじゃなくて、今は翻訳ソフトとか簡単にできて、海外で最低限の、まあビジネスするには自分でしゃべらなきゃいけないですけれども、生活するんだったら、スマホを持っておけば、それだけで生活ができるようになったら、日本人のドライバーでさえも、こんな安い賃金だったら外国に行って、アメリカあたりに行くと、トラックの運転手さんなんかは最低でも年収一千五百万から二千万ぐらいだという話も聞きます。外国人ドライバーなんか受け入れられるどころか、日本人ドライバーがどんどん海外にも行ってしまうんじゃないか、そういう危惧を持っていますが、いかがでしょうか。
○馬渡参考人 今から入ってくる外国人ドライバーさんなので、返事をしっかりするのは難しいと思いますが、道交法とかそういったものを理解できるような日本語の知識、どうしても、標識も含めて、止まれと書いてあるのは日本語でしか書いていないから、そういったものを理解ができるような日本語の知識は最低限必要だと思います。
今、N4で考えられている部分もあるかもしれませんけれども、順次、やはりN2ぐらいないと難しいような気がします。N1は必要ないんじゃないかなと。漢字、我々よりも知っている子がいますから、N1は必要ないかな。
それから、外国人ドライバーの、さっきおっしゃったように、やはり自国で、東南アジアから来ていても、三割ぐらい、貨幣の為替の問題で、自分のところの方が高いと思って来たんだけれども、もう同僚と一緒かも、同僚の方が高いという子が出てきています。
ですから、これから特定技能で入ってきたとしても、もう既に入ってきている方も、ドライバーも含めて、いろいろな職種オーケーというふうな形にしていただかないと、多分おっしゃったように、余りうまみがないねと。今、日本人が外国に、賃金が高いからとどんどん逃げている時代ですから、さっきおっしゃった指摘は本当に的を射ているというふうに思っております。
以上でございます。
○成田参考人 私も、これだけ円安の中で本当に来てくれるかなというところがありますが、物流も、荷物をただ単に運ぶだけじゃなくて、そこにはやはりコミュニケーションもありながら、大事な貨物を運んでいるというドライバーの自負もありますので、そんな簡単にできる仕事じゃないと思っているんですけれども、そんな意味で、先ほどの中で答弁申し上げましたが、やはりしっかり人権なりに配慮した事業者に限って取り扱うべきではないかと思っています。
○古川(元)委員 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。
○長坂委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 無所属の四人で組んでおる会派、有志の会の福島伸享でございます。
本日は、四人の参考人の先生方、ありがとうございます。
この問題は、私、ずっと二〇二一年に国会に戻ってから何度も委員会で取り上げさせていただいておりまして、地元のいろいろな様々な、私の同級生とか、トラック会社、運送会社をやっている人からの話をお聞きするんですけれども、どうもここで行われている議論と地元で聞く話というのは、ちょっと乖離している部分もあるんじゃないかなと思うんですね。
その一つの大きなものが標準的な運賃でありまして、後ろにいらっしゃる坂本会長は、斉藤大臣との対談で、標準的な運賃は認可運賃より強い、告示運賃より強いものはないとおっしゃっていらっしゃいますけれども、私の周りでなかなか標準的な運賃が役立っているとおっしゃる運送会社の方はいらっしゃらなくて、基になっている統計を見ても、回収率は一割未満で、四万四百六十八者、統計の対象となる会社がいるんですけれども、標準的な運賃を提供しているのは、パーセントで言わないで実数でいうと三百十者であって、そのうち理解を得られたというのは五十九者しかないんですよね。
実際、現場で標準的な運賃、今までやってきたのは本当に役立っているのかどうか、ちょっと馬渡参考人にお伺いしたいと思います。
○馬渡参考人 先ほど申し上げましたように、三年の期間を経ておりますけれども、その三年がほとんどコロナ禍で、値上げの交渉に行っても、本当に、コロナで来ないでくださいと言われて行けなかったという事業者もたくさんおります。
今、一生懸命やっておりまして、政府の方でも、昨年、公正取引委員会の方でも、この標準的な運賃というのを運賃交渉の指標としてよろしいということに、そういうことにしていただきましたので、それをもって、もう全く、いや、こんなの話にならぬよという話になれば、下請いじめとか買いたたきとか、そういうのに該当するおそれがありますというのがはっきりガイドラインでも出ておりますので、ちょっと拙速にはなりますけれども、コロナでなかなか行けなかった分、これからみんな頑張って、そういうのも協会の会員さんたちには示しながら、頑張りましょうというお話をしているところですので、多分これからだんだん荷主さんたちにもお分かりいただくことになるというふうに考えております。
以上でございます。
○福島委員 ということは、まだこれまでの標準運賃に対して政策の検証はできていないんだと思うんですね。
先ほど来、最低運賃、これもいいという話も先ほど馬渡参考人からいただきましたけれども、この国会、同じように建設業法の改正が出ていて、建設の現場の方の話も出ているんですが、そこはまさに最低賃金規制的なものが入っているんですね。これはなぜ建設業ではできてトラック業界ではできないのか、その辺りの難しさ、業界が抱える特有の事情というのがあるのであれば、馬渡参考人に教えていただきたいと思います。
○馬渡参考人 建設業の場合は、建設のレッドブックですか、赤本というのがあります。そこにそれぞれ毎年の指標が出ておりますので、ある程度は建設業界内でもコンセンサスが出ている。それから、賃金も、人が集まらないものですから、やはり建設単価に反映させてほしいということを言われている。それから、公共事業の占める割合も建設の場合はかなりあるというふうに聞いていますので、そういったものにきちっと書き込んであるというふうに聞いております。
これから我々がお願いしなきゃいけないのは、公共的な部分で、例えば物を運ぶとか、そういった場合に、新しい標準的な運賃を基に書き込んでいただく、若しくは契約を結んでいただく、そういったことが必要なんじゃないかな。それは建設業も我々も同じ立場だというふうに思いますので、まだまだお願いしていかなきゃいけない部分というのは多いと思いますけれども、民間取引が圧倒的に多いものですから、なかなかそういう機運にならなかったということがあるかと思います。
以上でございます。
○福島委員 ありがとうございます。
私は、これはステップ・バイ・ステップかなと思っておりまして、標準的運賃をやってみて、その状況を見ながら徐々に最低運賃的なものに進んでいければいいんじゃないかなと思っております。
そこの障害になるのは、やはり、これまで何度も取り上げられている多重下請構造であるというふうに思っておりまして、私の周りの人も、三次下請か四次下請か分からないまま、本当の荷主が分からないまま運んでいるような方も結構多いと思うんですね。今回、トラック協会さんで二次下請までに制限するということを出されるということを先ほどお聞きしましたけれども、これは、アメリカなんかはそもそもそこを法律で規制しているわけでありまして、私は、二次下請まででできるんだったらこれは法規制してもいいぐらいじゃないかと思うんですけれども、法的規制を入れることについて、馬渡参考人、いかがお考えになられるか、教えていただければと思います。
○馬渡参考人 先ほど来言いましたように、規制緩和という流れがございました。我々も、あの時点で、こういった規制緩和ができてというのは一九九〇年の話でありますので、バブル真っ盛りの頃であります。やっと法律というか規制緩和ができたところにあのバブル崩壊が重なっているということでこの三十年があると思うんですけれども、それを繰り返してはいけないと思いますので、行き過ぎた規制緩和じゃないように、ある程度の規制は残しましょうと。
何か、安全の問題とか、それから労働者を守る部分、そういった問題に関してはやはり規制が必要なんだろう。レッセフェールじゃないですけれども、自由に市場経済に任せますというふうにはならないなと。やはり立場が弱いですから。
そういうふうなことも考えながら、私はやはり、どんどん毎年でも、標準的な運賃がコストを反映した形で改善がされて、その改善策が最低運賃ですよと言えるような日が早く来てほしいとは思っています。
以上でございます。
○福島委員 ありがとうございます。
このことも、我々立法府で規制をどう導入するかというのはこれから議論していかなければならないと思っております。
次に、成田参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、これは法律じゃないんですけれども、今回、再配達の半減のためのポイント還元制度というのを導入しようとしております。
これは、今、宅配が五十億個ぐらいあって、再配達されるのはそのうち十数%で六億個だと。それに対して予算は今四十五億円なんですね。六億個で四十五億円だと、一個当たり七円とか八円なので、私、これは効果あるのという議論を国会でやっていたんですけれども、このポイント還元制度、どのように評価されるか、教えていただければと思います。
○成田参考人 ありがとうございます。
この仕組みについては、一定程度の再配達を減らす効果は見込めるかと思いますが、最終的に、その費用が将来的に事業者の負担とか、そういうふうにならないようにお願いをしたいと思います。
そんな中で、様々な、受取のロッカーの設置だとか、再配達にならないような仕組みをどんどん考えていくべきだと思っています。
○福島委員 四十五億円で期待が持てそうですか、どうですか。ちょっと御感想を。
○成田参考人 期待していますというか、効果は、一定の評価はあると思いますので、そうとしか言えません。済みません。
○福島委員 同じように、テールゲートリフターの補助金というのもあって、これは人気があってすぐなくなっております。
恐らく、これから人手不足を解消するのは女性の労働力だと思っておりまして、でも、これまで、どうしても重い荷物を持つから男性の職場だったのが、このテールゲートリフターが進めば、女性もこうした運送業に入っていくことができるという効果があると思うんですけれども、この補助金に対する御期待とか御評価はいかがでありますでしょうか。
○成田参考人 補助金といいますか、先ほどからありますように、労働力不足の中で、やはり女性ドライバーの声もそうでしょうし、高齢者の方もそうですし、圧倒的に男性と女性は体力が違いますので、先ほど言われたようなことを含めて、やはり女性の方たちが我々の業界に入ってきていただかないと成り立たないと思っていますので、どんどんその辺の補助金は増やしていただきたいと思っています。
○福島委員 労使挙げて、業界を挙げて要求していただければ、私たちも頑張って応援団になって、財務省に強く訴えてまいりたいと思っております。
次に、根本参考人にお伺いいたしますけれども、九ページに物的労働生産性を向上するための試算のようなものをまとめていただいております。すごい分かりやすくて、なるほどと思うんですけれども、私、これを見て、一番効果が大きいのは、荷役時間とか荷待ち時間は、確かにこれは減らさなければなりません。でも、逆に一番効果が根本的に上がるのは、この三番目のモーダルシフトじゃないかなと思うんですね。
海上、鉄道輸送にシフトするとか、あるいは、先ほどの高速道路料金もそうですけれども、私は、この物流政策だけじゃなくて国土政策的な観点から、どういうネットワークをつくっていくのか、インフラネットワークをつくっていくのか、それをどのような価格体制でやっていくのか、そうしたことも進めなければ、根本的な環境の変化につながらないと思うんです。
ですから、私、このモーダルシフトというのは、これは四億トンから五億トンと試算していますけれども、逆に四億トンから八億トンと倍増するぐらいの目標を決めれば、更に労働生産性というのは向上すると思うんですけれども、その辺りの御見解はいかがでしょうか。
○根本参考人 全く賛同いたします。
政府の緊急パッケージでも十年程度で倍増という目標を掲げていますけれども、最初、その目標を聞いたとき、私も少し実はびっくりしたんです。大丈夫かなと。
というのも、鉄道も内航海運も、現在のキャパシティーの八割ぐらいはもう埋まっているような感じで、ここから倍増するためには、相当インフラのてこ入れもしなきゃいけませんし、船社にあっては、新しい航路をつくるため、あるいは船を導入するとか、そういうことも必要になってきますから、これは、船社さんも、荷物が本当にあるかどうか分からない段階で船を買うのは大変です。ですから、これは、荷主も、政府、政府はそのインフラですけれども、それから船会社も、一致団結してやるぞと、それぞれの中長期計画の中でコミットメントを表明して、協調した投資を行わなければ実現しないと思うんですね。そういう意味で、政府がしっかり旗を振るということも大事じゃないかなと思っています。
以上です。
○福島委員 私は、この問題は国土形成計画の議論でもさせていただいたんですけれども、やはり、インフラ整備とか、どうやってトラックから内航海運とか鉄道輸送に移さなければならないか。鉄道は今JRになっていて民間になっているところだけれども、私はそこにも公的なお金を入れる必要性はあると思っておりますので、そうした国土政策の議論も併せてやっていかなければ根本的なものができないんじゃないかと認識を共有させていただいたと思います。
最後に、首藤先生の、五ページ、年収格差の推移なんですけれども、もう一度、もう一問したいので端的にお答えいただきたいんですけれども、一九九〇年代に年収格差が高卒男性とトラックドライバーで広がっている要因は、端的に言って何でしょうか。
○首藤参考人 端的に言うと、トラックドライバーの賃金の低下が著しかったということだと……(福島委員「なぜ賃金が低下したんですか」と呼ぶ)運賃が急速に低下してきたことに起因していると思っています。
○福島委員 運賃の低下はなぜ起きていますか。
○首藤参考人 運賃の低下は、私は規制緩和によるものだと思っています。
○福島委員 それは、規制緩和によって需給が変わったからということでよろしいでしょうか。
○首藤参考人 厳密に言うと、規制緩和によって、まず事業者が増えたことと、あと貨物量も減ってきたというところが大きいと思っています。
○福島委員 ありがとうございます。
それでいいますと、今は逆に、貨物量はそこそこ増えて、ドライバーが足りなくなって、需給が引き締まっていると、本来であれば値段が上がって賃金も上がるはずなんですね、今の逆を行くから。でも、私は、そうならないから今この議論をしているんだと思いますけれども、その原因はどこにあるとお考えになられるか、教えていただければと思います。
○首藤参考人 まず、幾つか複合的な要素があると思いますけれども、荷物自体の、産業構造の変化なんかも変わってきていて、非常に小口の荷物が増えているというようなところも運賃の低下に影響していると思っています。
今でも、結局、この業界は事業者数がまだ多過ぎるというか、過当な競争にあるんだというふうに思っていまして、だから上がっていかないというような状況にあるというふうに私は見ています。
○福島委員 ありがとうございます。
恐らく、その産業構造的な問題というのをどう解決、先ほど来議論があるように、規制緩和はしてみたけれども、ちゃんとした競争が起きなかったわけですよね、想定するような。その結果、中小の多くの事業者の参入を許して、需給が引き締まったとしても価格が上がらないという、そうした構造になっているという問題だというふうに確認いたしました。
恐らく、それも今回の法案では、それに対する対応というのはなかなか見出し難いことがありますけれども、そうした点も、これから私たち立法府で議論していかなければならないと思っております。
今日は、四人の参考人の先生方、有益なお話をいただき、ありがとうございました。
以上でございます。
○長坂委員長 次に、たがや亮君。
○たがや委員 れいわ新選組のたがや亮と申します。本日は、お忙しい中、参考人の皆様、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
私は、ドラフト八巡目で、なかなか質問がかぶってしまうということもあって、違う角度の質問もあろうかと思いますが、何とぞ御了承をお願いします。
まず、全ての参考人の皆様にお伺いをいたします。
物流業界、トラックドライバーを憧れの職業にするために、夢のある話として何が必要なのか、一つでも二つでも結構ですのでお聞きしたいんですが、昔、私が小学生の頃は、菅原文太さん主演の「トラック野郎」というのがありまして、みんなこぞってプラモデルを作った覚えがあります。皆さんの中で、何がこの業界にとって、はやるきっかけになるか、教えていただければと思います。
○馬渡参考人 我々も、経営者として、いかに、夢がある、それから、先、将来があるということをどうやって示そうかというふうなことを日夜考えておりますけれども、なかなか正解がございません。
昔のことを言うと笑われるかもしれませんけれども、基本的には、我々トラック業界は、いろいろな部分を含めて、時間は長いんだけれども、はるかに一般の事務をするよりは稼げるということで人が入ってきていただいた側面はあると思います。ですから、今、長く働けないということは、もう残業代ももらえませんということで、根本的に時間当たりの賃金、基本給を上げていかないと追いつかないという形になりますので、しばらくは、夢を語るよりも目の前の現実を語りながらリクルートをしていくような形になるのかなというふうに思っておりますけれども。
先生おっしゃったように、やはり夢がないと今の若い人たちは入ってきません。仕事に対して自分が何かコミットしているとか、人のために役に立っているとか、そういうものがないと、多分、つまらなくなって辞められる方が多いです。
ですから、その辺のところは、我々業界を挙げて考えるべきところかなと思いますけれども、今のところ、衣食足りて礼節を知るという形になってきていますので、まずは衣食を確保しようというふうに思っているところでございます。
以上でございます。
○根本参考人 私は、トラックの大型化が役に立つんじゃないかと思います。セミトレーラーとかフルトレーラー、そういう運転技術を要するものというのを日本でもっとどんどん使うようにしていったらどうかなと思います。
欧米、それからアジアも、長距離輸送は大体、セミトレーラー主体です。日本は単車という小さなトラック、十トントラックを使っているんですけれども、非常に効率が悪い。何で単車を使っているのかというと、それは特車の許可が必要で、その許可を得るために一か月ぐらいかかる。やはり使いにくいということもあってそうなっているんです。
物流施設をしかるべきところに造る、そして、幹線道路に面するようにする、いろいろな手当ても必要ですけれども、いずれにしても、四十トンクラスが許可なしでそれぞれの国も走っているので、そういうふうにしてもらって、大きなトラックを運転するんだからそれだけの技能が必要で、それだけお支払いしますというふうな仕組みにしていったらどうかなと思います。
以上です。
○成田参考人 トラックドライバーが憧れの職業になるようにということでありますが、よく就職活動で企業が学校とか訪問して、高校生とかの就職に行きますと、なかなか就職担当者の方もトラックドライバーを勧めていただけないというような状況にありまして、そういう意味では、今、トラック協会さんもやられておりますが、本当に、先ほど、先生からありましたが、すごいトラックに小学生時代からどんどん乗ってみるとかそんなことをして、憧れのような、そういうことを、小さいときからそんなことがあったらいいなと思いますし、あと、飛行機でいえばパイロットの方とか、船でいえば船長さんとかありますけれども、トラックドライバーのマイスター制度じゃないですけれども、すごいレベルを上げたような、何かそういうものがあるとこれからは憧れの職業になっていくかと思いますので、そんな感じです。
○首藤参考人 先ほど根本先生の方からもございましたが、幹線輸送のところは、もう本当に大型化していて、セミトレーラーやダブル連結トラックや、そういったものを使って輸送していくことが効率的でもありますし、高い運賃を獲得することにもつながりますので、それを進めていくとともに、やはりそういったものの職業資格みたいなものを打ち立てていって、新たな資格をつくることによってより高い賃金水準を、その資格を取れば取れるというようなものをつくっていくということが重要で、憧れは、私、経済学をやっているというところもありますけれども、やはり賃金と非常に結びつきますので、賃金が上がれば憧れも上がってくるというふうにも思っております。
ただ、もう一つの懸念としましては、この業界は、やはり自動運転の普及によってなくなるのではないかというようなことを若い方たちは言うことがありますので、その辺の見通しですね。なくなる部分もあると思うんですけれども、全部なくなることは、アメリカにおいても、なかなかそんなすぐに、三十年、五十年ないんじゃないかと言われていますので、その辺の見通しも示せるといいのかなというふうには思っています。
○たがや委員 ありがとうございます。
おおむね、やはり効率化を図ることによって、賃金上昇が憧れの基になるということで承りました。
根本参考人と首藤参考人にお伺いをいたします。
アメリカでは物流の多重下請をなくすために法規定がありますが、商慣行の違いはあるといえども、日本においても同じような法規定にすることは可能だと思われるでしょうか。
○根本参考人 私もその問題は非常に興味を持って調べたんですけれども、アメリカでは、主に安全に関して懸念がある。要するに、下請に仕事が回ったときに責任関係がはっきりしなくて荷主さんからクレームが来た、こういうことではまずいから、もう少し多段階性を減らしてということでそういう仕組みをつくったんですけれども、実は、運送事業者は下請に出せないんですけれどもブローカーさんなら下請に出せるという業がありまして、物流事業者がブローカーを兼ねるとかいうような形で、何かやはり余りすっきりしない形で残っているような形で、どうも、いろいろ調べているんですけれども、それによって安全の面も格段によくなったというデータも余り出てきていないので、その面に関してはもう少し調べさせてもらいたいというか、勉強しなきゃいけないかなと。法律を作ればうまくいくということではなさそうだということが少し分かってきました。
以上です。
○首藤参考人 要するに、適正な競争環境をどうつくっていくのかということなんだと思っています。多重下請を規制によって排除していくというのは当然一つのやり方なのかもしれませんけれども、ほかにも幾つものやり方があるのではないかというふうに思っています。
結局、下請に投げることが得にならないような仕組みをつくっていくということもあり得るのかなと思いまして、先ほど申し上げた最低の運賃みたいなものもそうかもしれませんし、最低の賃金で、より安価にできないような仕組みをつくるというようなこともあり得るかもしれませんし、あと、結局、下請に投げる理由が、やはり荷物の繁閑の差が物すごく大きいというところがありますので、そちらの方を見直していくようなやり方もあり得るかなというふうにも思っています。
○たがや委員 ありがとうございます。
それでは、次の質問で、全ての参考人にお伺いいたします。
高速道路料金のコストも運賃や賃金に少なからず影響しますけれども、ずばりストレートにお伺いしますが、高速道路料金を無償化にすることは物流業界にとって画期的でしょうか。高速道路の無償化は画期的でしょうか。
○馬渡参考人 無償の対象になるのが誰かということになるかと思います。
確かに、無償化になるのは、単純に目の前のことだけを言えば助かると思いますけれども、反面、じゃ、誰が、補修費とか、やはり凸凹はできますから、今のところ、そういう凸凹が大型トラックのせいだということで大型トラックがたくさん払うような、キロ単価を四十円ぐらい払っているんですかね、そういうふうな形になっていますけれども、応分に負担して、補修費相当分は無償化で国費を入れられるのであればいいんですけれども、それほど楽じゃないでしょうから、やはり、補修をきちっと定期的にできるぐらいのものはみんなで払いましょうというふうな形になるのはうれしいなと思います。
ですから、定額で、先ほど言いましたように、一万円以上になればもう緑ナンバーはいいですよと言っていただくのは非常にうれしいなというふうに思います。
以上です。
○根本参考人 私は、物流問題のツケを道路行政に回すのは問題があると思います。
どういうふうな輸送体系にするのかということを考えてみたときに、今、フェリーも長距離で使いたい、鉄道も長距離で使いたい、それぞれのモードにどれだけの費用がかかっているのか、そして、それをやはり物流業者に負担してもらって、荷主さんに負担してもらうというのが筋ですよね。そして競争するのが筋だと思います。ですから、高速道路料金はやはりしっかり払ってもらって、それを荷主さんに払ってもらえばいいわけですから。
道路を傷めるのは主に大きなトラックですよね。これから、維持管理・更新、更新がとても重要になります。ですから、それだけの費用がかかっているとすれば、まず一義的に、それはトラック事業者さんに払ってもらわなきゃいけないというのが原則だと思います。
以上です。
○成田参考人 課題は多くあると思いますが、私の立場からすれば、労働時間が減って労働条件が上がってくれば、ありがたいことだと思っています。
○首藤参考人 高速代金は結局、本来、誰が支払うべきなのかというところで、無償化をすれば一見運送会社さんにすごくメリットがあるように思えるんですけれども、ただ、本来はやはり、根本先生もおっしゃっていましたけれども、荷主が負担するべきものであって、荷主の負担をこれ以上軽くする必要があるのだろうかというようなところはあります。なので、きちんとむしろ収受できるようにしていくということの方が重要なのではないかと私は考えています。
○たがや委員 ありがとうございます。
それでは、馬渡参考人と根本参考人にお伺いします。
一定規模以上の事業者への規定の作成などの義務づけは、事務手続が煩雑になり、事業者にとって様々な負担が増すと思います。全運送事業者のうち、二十台以下の小規模事業者が全体の約七六%を占めておりますけれども、義務づけとなると、相当な事務負担、場合によっては金銭的に負担がかかると思いますが、一定規模の線引きというのはどの台数のレベルで見ていくというのが妥当なのか、ちょっと難しい質問かもしれませんが、大体、イメージで結構ですので、お答えいただければと思います。
○馬渡参考人 台数は、我々は、こういうふうにしてくださいという部分はありません。一定規模は一定規模。
今まで、いろいろな法律とか、いろいろな形で規制がありましたけれども、大体、多数、大手の方々からまず規制が始まって中小零細にだんだん回ってくるというふうなことですので、一気に、二十両とかそういうふうな話ではなくて、最初は、何百台とお持ちの大手さんがいらっしゃるわけですから、そこから始めていただいて、台数だけ見ると、六万三千社のうちに、上から台数をお持ちのところを計算していくと、かなり大手さんで台数は占めている業界ですので、まずはそこのところから規制をしてみて、不具合とかいろいろ不都合な部分が出てくると思いますから、そういうものが分かってから、順次、事務能力が少し、やはり大手さんに比べれば、一人で経理から事務から全部されているような事業者が多いものですから、徐々に下ろしてきてもらうというふうに思っていただくのが現実的じゃないかなというふうに思います。
以上でございます。
○根本参考人 今回の改善基準告示を見ると、非常に複雑で、いろいろな例外規定なんかもあって、これは実際にどういうふうに管理するんだということが本当に心配になるぐらいなんですね。これは、手書きでやっているような仕組みではとても管理できない。やはり、トラック事業というのはIT化していかなきゃいけないということがこれでまたはっきりしたと思うんですけれども。
そういう意味で、計画を作ったりその報告をしたりというのを、僕は、そういう作業が大変だから勘弁してあげたらというのではなくて、そういう作業はもう必ず必然なんだから、できるだけ、小さいところも含めて、そういうことを徹底するように仕向けていくというふうにしたらどうかなというふうに思います。
以上です。
○たがや委員 時間が来たから終わります。
今日はありがとうございました。勉強になりました。
○長坂委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の方々に一言申し上げます。
本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
次回は、来る十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十五分散会