衆議院

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第9号 令和7年4月16日(水曜日)

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令和七年四月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 井上 貴博君

   理事 勝俣 孝明君 理事 加藤 鮎子君

   理事 中谷 真一君 理事 城井  崇君

   理事 神津たけし君 理事 森山 浩行君

   理事 奥下 剛光君 理事 西岡 秀子君

      石橋林太郎君    大西 洋平君

      梶山 弘志君    加藤 竜祥君

      金子 恭之君    岸 信千世君

      工藤 彰三君    国定 勇人君

      栗原  渉君    小寺 裕雄君

      小森 卓郎君    高見 康裕君

      田所 嘉徳君    谷  公一君

      土屋 品子君    西田 昭二君

      三反園 訓君    阿久津幸彦君

      尾辻かな子君    小宮山泰子君

      下条 みつ君    白石 洋一君

      津村 啓介君   長友よしひろ君

      伴野  豊君    松尾 明弘君

      松田  功君    馬淵 澄夫君

      阿部 弘樹君    井上 英孝君

      黒田 征樹君    徳安 淳子君

      臼木 秀剛君    鳩山紀一郎君

      赤羽 一嘉君    中川 康洋君

      たがや 亮君    堀川あきこ君

      福島 伸享君

    …………………………………

   国土交通大臣       中野 洋昌君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   国土交通副大臣      古川  康君

   外務大臣政務官      松本  尚君

   国土交通大臣政務官    高見 康裕君

   国土交通大臣政務官    国定 勇人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           今井 裕一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高橋 秀誠君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    河南  健君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  宮武 宜史君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  平岡 成哲君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    宮澤 康一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 伊藤 哲也君

   国土交通委員会専門員   國廣 勇人君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  大西 洋平君     栗原  渉君

  小森 卓郎君     岸 信千世君

  谷田川 元君     松尾 明弘君

  徳安 淳子君     黒田 征樹君

  古川 元久君     臼木 秀剛君

同日

 辞任         補欠選任

  岸 信千世君     小森 卓郎君

  栗原  渉君     大西 洋平君

  松尾 明弘君     谷田川 元君

  黒田 征樹君     徳安 淳子君

  臼木 秀剛君     古川 元久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 船員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)


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     ――――◇―――――

井上委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、船員法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付のとおり、国土交通省海事局長宮武宜史君外六名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。城井崇君。

城井委員 立憲民主党の城井崇です。

 今回も、中野大臣、よろしくお願いをいたします。

 早速、質問に入ります。

 船員法ということであります。今回、閣議決定の遅延がございまして、この件について大臣に伺いたいと思います。

 船員法等の一部改正案につきましては、三月十四日の閣議決定を予定されておったという認識でございましたが、三月十一日に国土交通省から、改正内容の一部について、影響を受ける関係者への詳細な説明に時間を要している状況にあるため、閣議決定期限である三月十四日までに閣議付議を行うことは困難になりましたとの説明がありました。その後、三月二十五日に進捗状況について御説明があり、三月二十八日金曜日に閣議決定に至りました。

 船員法は、一九九五年の漁船員訓練、資格証明及び当直基準条約の国内実施を担保する役割を担っておりましたことから、同条約についても、三月十四日の閣議決定が延期をされ、三月二十八日に閣議決定に至ったということでございます。船員の現場だけでなく、関係各所に影響が及んだという指摘をいただいております。

 そこで、国土交通大臣に伺います。

 この船員法等の一部改正案の閣議付議が遅延することになった理由と今後の再発防止策について、大臣の認識を聞かせてください。

中野国務大臣 城井委員にお答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本法案、閣議決定が遅延をするということがございました。本法案におきましては、船員の安全を確保するための実技講習の実施を一部の漁船にも義務づけるための規定を整備をするということとしております。この当該規定につきまして、関係者への説明に時間を要したということが、閣議決定が遅延をしたその理由でございます。

 今後、再発防止ということでございます。制度改正による影響を受ける関係者、我々も説明をしてきたつもりではあったんですけれども、しかし、やはり、こうした改正による影響を受ける関係者への丁寧な説明を徹底をするということかというふうに思っております。そのようなことを徹底をすることにより、このような事態を招かないように、しっかりと対応してまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

城井委員 しっかり引き締めて当たっていただきたいということを、改めてお願いしたいと思います。

 現場への説明に時間を要したということでございますが、そのほかに交通整理すべき対応があったのではないかというふうに推察をいたしております。

 そこに絡むところでお伺いします。例のSTCW―F条約についてであります。

 これまで我が国が、一般の船員訓練等を定めるSTCW条約、船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約でありますが、これに批准し、商船、漁船の区別なく同一の資格体系を構築して、国内法において漁船員に対して、STCW条約に準じた義務が課されてきました。国際的に見ても、漁船員の働く現場に対して高いレベルの義務が求められているというのが、船員の働く現場の受け止めです。

 その上で、この度、漁船員の訓練、資格証明の要件及び当直基準等を定めるSTCW―F条約に批准することで、義務が追加されることになります。このSTCW―F条約に批准した場合、外国人労働者が母国で取得した漁船の海技免状を我が国で活用することができるようになるということなんですが、船員の働く現場からは、漁船や漁船員の安全を確保することは必要、漁業の現状を踏まえると人材確保は必要。しかしであります、しかし、我が国の漁業の現場で求められる高い熟練度を有した漁船員として、外国人労働者を迎え入れることができるのかと懸念をする御意見が寄せられています。

 そこで、国土交通大臣に伺います。

 外国人労働者にも、我が国の漁船員と同じように、まずは、船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約、いわゆるSTCW条約に準じた義務を果たしていただき、その上で、漁船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約、STCW―F条約に準じた義務を追加して果たしていただくべきだと考えます。例えば、STCW―F条約に基づく義務だけで我が国における承認試験を受けていただくようでは十分ではないと考えます。大臣の考えを聞かせてください。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 委員の御指摘のとおり、現行の船舶職員及び小型船舶操縦者法におきましては、商船、漁船の区別なく、船舶職員には、商船の乗組員の資格等を定めたSTCW条約で求められている知識、能力を有するということを、海技免許の取得等を通じて求めているということでございます。

 これに加えまして、今回のSTCW―F条約の締結によりまして、改正法では、我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む船舶職員には、海技試験とは別に、漁船特有の操船に関する知識、能力を、講習の受講を通じて習得をいただくということとしております。

 この結果、我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む日本人の船舶職員には、委員御指摘のSTCW条約で求められているというものと、STCW―F条約で求められているものの両方の知識、能力を有することを求めることになるという制度でございます。

 委員が御指摘をいただきました、では、それでは、STCW―F条約に基づいて外国が発給した資格証明書を受有している外国人が、我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む場合はどうなのであるかという御懸念だと思います。

 先ほどの説明しました考え方に基づきまして、そうした場合におきましても、STCW条約で求められているものと、STCW―F条約で求められているものとの両方の知識、能力を有するということを、これはしっかり求めてまいりたいというふうに考えております。

城井委員 W条約とF条約と、両方クリアしてということを求める、こういう話でありますが、実際に、外国人労働者、外国人船員の皆様にどうやって担保をするのかというのは、大臣、この点は具体的にお話しいただけますか。

中野国務大臣 具体的に、どういう形で承認する際の要件等を定めていくかということでございます。

 基本的な考え方は、先ほど説明をさせていただいたとおりでございます。STCW―F条約に基づいて外国が発給した資格証明書を受有している外国人について国土交通大臣が承認をする際の要件等につきましては、今後、詳細は、関係者の御意見を承りながら、しっかり検討してまいりたい、このように考えております。考え方としては、先ほど御説明したとおりでございます。

城井委員 現場の安全等に関わる話でありますので、特に、他国の理解を得るのには手間暇、時間もかかると思いますので、そこは丁寧な対応を是非お願いしたいというふうに思います。

 続きまして、漁船員条約締約国証明書を受有する者の特例について大臣に伺います。

 船舶職員法第二十二条の三に関係する新設条文に、漁船員条約の締約国が発給した漁船員条約に適合する船舶の運航又は機関の運転に関する資格証明書を受有する者であって国土交通大臣の承認を受けたものは、第四条第一項の規定にかかわらず、船舶職員となることができるものとするとあります。

 機関に関する資格証明書を受有する者と条文に盛り込まれているのは、これまで、船長又は航海士に関する部分の改正であるとの説明と矛盾しているのではないか。検討会の最終取りまとめにおいても、機関部と無線部についてはW条約に基づく承認試験であるとして結論が得られているものであります。この点、大臣、認識をお聞かせください。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 機関に関する部分につきましての御質問をいただきました。

 STCW―F条約におきましては、他の締約国が発給した資格証明書を承認をするということで、自国の漁船の船舶職員になることを認めるという仕組みが設けられておりますが、条約の規定上は、甲板部、機関部等の部門による区別は設けられていないというのが条約の規定でございます。

 今般の法律改正案におきましても、STCW―F条約の当該規定の趣旨を踏まえまして、甲板部、機関部等の部門による区別なく、ほかの締約国が発給した資格証明書についての国土交通大臣の承認に関する規定を定めているというところでございます。

 しかし、じゃ、実際どういう運用をするかということにつきましては、これはSTCW―F条約国内法制化検討会の取りまとめ、委員が御指摘いただいた取りまとめもございますので、これを踏まえまして、今後、関係者の御意見を伺いながら検討してまいりたい、このように考えております。

城井委員 大臣、今の検討会の最終取りまとめの結論は重要だと思っていますが、確認です。

 機関部と無線部についてはW条約に基づく承認試験である、この結論の方向で取り扱っていただくという確認をこの場でしたいんですが、いかがでしょうか。

中野国務大臣 運用に関する制度設計につきまして、今後、関係者の御意見を伺いながら検討してまいりますということを答弁をさせていただきました。ここは、先ほど申し上げたとおり、STCW―F条約の国内法制化検討会の取りまとめを踏まえるということでございますので、これは慎重に対応を当然してまいりたい、このように考えております。

城井委員 踏まえての慎重対応という答弁でありました。しっかり、ここは引き締めて当たっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 続きまして、船員に対する教育訓練について大臣に伺います。

 今回の改正案では、船舶所有者に雇入契約をした船員に対する生存技術訓練、消火訓練、応急手当てなどの実施を義務づけています。特に、遠洋区域、近海区域、沿海区域を航行する船舶に船長等として乗り組む特定雇入契約を締結した船員に対しては、生存技術や消火技術を習得するため、それぞれ、登録機関が実施する実技講習を受けさせることになっています。

 そこで、大臣に伺います。

 この教育訓練の費用負担につきまして、特定雇入契約を締結した船員に対する生存訓練及び消火訓練は、それぞれ、登録生存講習機関及び登録消火講習機関において、五年ごとに、実技の講習の受講料は一回十二万円程度という説明を聞いておりますが、この五年に一回、二種類の実技講習の受講料、漁船員が負担する場合であっても会社が負担する場合であっても、相当の負担となると考えます。この受講料の負担を軽減すべきだと考えますが、大臣の考えを聞かせてください。

中野国務大臣 実技講習の費用等についての御指摘をいただきました。

 実技講習は、非常時に船員の安全を確保するために必要となる基本的な知識や技術を習得するための重要な訓練でございます。STCW―F条約への締結に際しまして、一定の漁船員に義務づけられるというものでございます。

 一方、この実技講習の費用などについては、委員からも一回十二万円程度は非常に負担だという御指摘がございましたが、一部の漁業関係団体から、この受講費用が一人当たり十二万円から十六万円程度ということになるのであれば非常に負担感が大きいといったような懸念の声をいただいたところでございます。

 このため、国土交通省としましては、水産庁や水産関係団体と連携をしながら、漁船の基地港の周辺基地で低廉に、より低い価格というか、低廉に実技講習を実施できる体制を整備するための方策について、現在、検討を進めているところでございます。

 漁船員につきまして、費用の点も含め、実技講習を受けやすい環境整備というのをしっかり図ってまいりたいというふうに考えております。

城井委員 船員の現場によりますと、汽船は終身雇用が多い、訓練を受けたら会社に戻るということでありました。漁船の場合は業界にとどまるというふうに聞きました。船に愛着を持つが、会社に愛着を持つ者は少ないという、そんな言葉も聞こえてきたところであります。

 ですので、今ほどの検討のところでも、会社が負担する場合と、そして、個人が負担するか、あるいは会社が負担したいと考えるかどうか、こうした点をしっかり踏まえた整理をいただくことをお願いしておきたいというふうに思います。

 次に、実技講習の受講のために、登録講習機関の機関数について聞きたいと思いますが、船員の現場からの御意見では、訓練は必要だ、しかし、訓練機関が、現場からのお声では十二か所という数字でございましたが、これでは少ないという声です。政府の説明では、現時点で登録が見込まれる機関は約十機関とのこと。実技講習の受講のために、登録講習機関の数が、これが十分か。増やすべきではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

中野国務大臣 登録講習機関の機関数についても御指摘をいただきました。

 実技講習は、STCW条約に基づきまして、今既に商船を対象に行われておりまして、受講ができる訓練機関の数は、現在、全国で十四機関でございます。このほか、船舶の所有者や水産高校なども自ら訓練機関となりまして、雇用船員に対して実施をするものが五機関、五つございます。

 これら訓練機関におきましては、年々、定員等の拡大が行われまして、現在、受講会場は全国で三十二か所に広がっておりまして、そういう意味で、全体の定員という意味では、一定の量は確保されているのかなと思っております。

 他方で、船員がやはり、下船して、船から降りた際のタイミングでタイムリーに受講できる環境が望ましい、あるいは、受講会場の多くが今、西日本の方に所在をしているということで、漁船の基地港が集まるのは東日本でございますので、この辺に、こちらは少ないという等のことから、更なる訓練機会の拡充を図っていく必要があるというふうに私も考えております。

 このため、国土交通省としましては、漁船の基地港の周辺地域における講習の実施体制の整備を支援をしていくほか、既存の民間の訓練機関に対しましても、受講会場の拡大等について働きかけを図ってまいりたいと考えております。

城井委員 大臣からも拡充の必要性について言及をいただきました。是非、現場の声をしっかり聞いていただきながら、取り組んでいただくことをお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、海技人材の養成ルートの強化について伺いたいと思います。

 船員不足への対応で、今回の改正案では、安定的な船員の確保、育成のため、内航船員への新規就業者数の増加、二〇二三年で七百六十一名だったところを、二〇三〇年に九百名という目標、効果が掲げられております。

 しかし、個別の取組の目標が明確ではありません。個別の取組目標もしっかり示した上で、政府全体で安定的な船員の確保と育成に取り組むべきだと考えています。

 そこで、海技人材の養成ルートの強化について大臣に伺います。

 まず、一般大学の卒業生に対応する養成ルートの強化では、海技教育機構海技大、三級、一般大卒の拡大は、具体的にどの程度拡大するのか。

 水産高校との連携強化、これは四級、五級という想定ですが、具体的に何名程度、入学志願者の拡大を行うのか。

 陸上からの転職者等を念頭に置いた養成ルートの強化では、五級海技士養成の拡大策の検討、そして、六級海技士短期養成課程による養成数の拡大、こうしたものがありますが、この具体的な数値目標はどうか。

 この海技人材の養成ルートの強化における個別の具体的な数値目標について、大臣からお答えください。

中野国務大臣 数値目標についての御質問でございます。

 今後の海技人材の確保の在り方に関しましては、官民一体となって検討をするということで、昨年四月に設置をしました、海技人材の確保のあり方に関する検討会におきまして、五つの方向性に沿って対策を講じていくことが必要であるという中間取りまとめを、昨年十二月に公表させていただきました。

 その中で、五つの方向性の一つとして、委員御指摘いただきました、海技人材の養成ルートの強化を掲げさせていただきました。今後の少子化等を見据えまして、御指摘のとおり、一般大学の卒業生に対応する養成ルートの強化、これは三級。そして、水産高校との連携強化、四級、五級。陸上からの転職者等を念頭に置いた養成ルートの強化、五級、六級という、これらの対応策が示されたところでございます。

 個別の目標はどうかという御質問であったのですけれども、これらの対策についての各級の個別の具体的な数値目標というのは設定をしていないんですけれども、本法案に係る目標としましては、内航船員への新規就業者数を、二〇二三年の七百六十一名から二〇三〇年に九百名に増加をさせるということを掲げております。この目標の実現を含めまして、着実に養成ルートの強化に取り組んでまいりたいと考えております。

城井委員 それぞれ、目標、数、頑張りましょうでは間に合わないのではないかという危機感から今の質問を申し上げたところであります。

 特に、船員養成教育機関の維持、定員拡大については、今、船員の現場からは、海技教育機構の大幅な運営費交付金の削減によって船員養成員数増加を図れないという御意見が届いているところであります。いわゆる身を切る改革というのが念頭にあったようでありますが、逆効果が過ぎるという状況になっているということを指摘しておきたいというふうに思っています。

 特に、この大幅な運営費交付金の削減は、船員養成員数の増員を図れないだけではなく、大型練習船教育へ及ぼす影響も大きい。新たな技術等への対応を図る船員教育への取組を阻害しているというのが、船員の現場の声です。

 大臣、ここは強いリーダーシップの下で、練習船、学校施設の拡充や教員の確保など、具体的な施策を講じるための予算措置、定員拡大、やるべきだというふうに考えます。特に、他省庁、文部科学省所管の商船系の大学や商船系高専を始めとした船員養成教育機関の入学定員の拡大、維持に向けた予算の確保などについても、強く大臣から働きかけていくべきであります。

 この海技教育機構の運営費交付金の増額を始めとした船員養成教育機関の維持、定員拡大のための取組、大臣、ここはやるということで是非おっしゃっていただきたいと思いますが、お考えを聞かせてください。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 我が国の船員養成の中核を担う海技教育機構の予算につきましては、令和七年度の当初予算で約六十四億円を確保したところでありますが、これは引き続き、必要な予算の確保に努めてまいりたいと思います。

 また、海技教育機構の入学定員につきましては、今、段階的に拡大を図っているところでありまして、令和六年には四百五名まで拡大をしたところでございます。

 入学定員の更なる拡大につきましては、御指摘のように、学校の施設や練習船の収容人数等、受入れ側の制約要因がある中で、これはどういった工夫ができるのかということも含めて、業界関係者の意見を聞きながら、しっかり検討してまいりたいと考えております。

 昨年十二月の、海技人材の確保のあり方に関する検討会におきましては、一般大学の卒業生や陸上からの転職者に対応した養成ルートの強化等の取組が必要である旨の取りまとめをいただいたところであります。

 国土交通省として、中間取りまとめに沿って、海技教育機構の養成基盤の強化を図ってまいります。また、先ほど述べた養成ルートの強化を進めるとともに、委員の御指摘の既存の養成ルート、商船系の大学、高専、水産高校、これを所管する文部科学省とも緊密に連携をしながら、船員の安定的な確保、育成につなげてまいりたい、このように考えております。

城井委員 大臣、海技教育機構の運営費交付金の増額、来年度に向けて取り組むということ、決意を述べていただけますか。

中野国務大臣 海技教育機構の予算につきましては、引き続き必要な予算の確保をしっかり努めてまいりたいということは先ほども述べさせていただきました。

 当然、我々も、この中間取りまとめをまとめさせていただきましたので、海技教育機構の養成基盤の強化というのはしっかり図ってまいりたいと思いますので、委員の御指摘もしっかり受け止めまして、しっかり必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

城井委員 実際のところ、今ほど申しました運営費交付金は、二〇〇一年に百五億円ありましたが、長期にわたる削減が続いて、二〇二四年度には約六十五億円、二〇二五年、今年度は六十四億円ということで、事業運営に支障を来している状況が現にあるということを是非大臣にもかみしめていただいて、来年度の増額に向けた取組をお願い申し上げまして、時間が参りました、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 立憲民主党、白石洋一です。

 まず、船員法の前に、愛媛県来島海峡西側で、海難事故が過去ありました。二〇二一年五月に三人が死亡、そして、二〇二三年には一人が死亡、一人がいまだ行方不明ということで、その後、その原因究明そして対策として、昨年の七月に、この来島海峡の西側の航行ルールを変更した、新ルールを適用した。

 それからもう一年たっているわけですけれども、ここまでの新ルール適用の状況について、お聞かせください。

宮澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生先ほどおっしゃられました、来島海峡航路西側において発生した衝突海難を受けて、海上保安庁では、この海域に海上交通安全法に基づく経路を指定し、令和六年七月一日より運用しております。

 この来島海峡航路西側の経路指定については、運用開始前より海域利用者に対し周知活動を行うとともに、実際に当該海域を航行する船舶に対しては、海上交通センターから情報提供を行っております。その結果として、経路指定の遵守率は、ほぼ一〇〇%と高い水準となっております。

 また、経路指定後、来島海峡航路西側入口付近では同種の事故は発生をしておらず、経路指定の効果があるものと考えております。

 海上保安庁では、経路指定の効果を検証するため、当該海域の利用者に対するヒアリングなどを実施しており、例えば、西口付近の混雑がなくなり通りやすくなった、西口に向かう外国船のショートカットがなくなり安心できる、西口の出入りがしやすくなったといった肯定的な意見をいただいているところでございます。

白石委員 遵守率はほぼ一〇〇%ということで、これによって事故が防げているのかどうか。ただ船長が気をつけて航行しているのにすぎないのかもしれない。ここを、ルールを変えたことによって事故が今のところないのかどうか。そこはやはりこれからも検証していく必要があると思うんですね。

 昨年七月に変更しました。もうそろそろ一年がたつ。一つの節目でもありますから、これで本当によかったのか、特に、現場の声、船長、パイロット、水先案内人の声をしっかり聞いて、このルールだから今までのところ事故がなく済んでいるのか、それともまだほかにも打ち手があるのではないか、こういったところをヒアリングの上、公式に検証をしていくべきじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

宮澤政府参考人 お答え申し上げます。

 ヒアリングというお話でありまして、先ほど、ヒアリングの結果の事例もちょっと触れさせていただきましたが、この対象となるのは、先ほどおっしゃられましたとおり、フェリーの船長であるとか、水先案内人であるとか、こういった方々からの意見ということを聞いた結果でございます。

 今後でございますけれども、先ほど申し上げましたような状況も踏まえつつ、今後も、審議会の方、交通政策審議会において検証を行っていく、そのほかに、先ほど申し上げましたような海域利用者の御意見等も踏まえながら、引き続き、来島海峡の安全確保に努めてまいりたいと思っております。

白石委員 是非、ここでもう二度と海難事故は起こさないという決意でもって取り組んでいただきたい。特に、聞いていると、やはり商船を中心に物事を考えている感じがするんですけれども、漁船の方々、漁船の船長さんも、ちゃんと、サイズは小さいのかもしれませんけれども、たくさんここは船が、漁船が通っていますので、そこへの配慮も是非していただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 次に、船員法でありますけれども、内航船の船員不足についてお伺いしたいと思います。これは、昨年の四月に、ここ国交委員会で私が質問いたしました。その後のフォローアップの意味も兼ねて質問します。

 船員養成ルート、幾つかあると思うんですけれども、海技教育機構、商船大学、そして商船高専、それから水産高校、あとは一般とあると思うんですけれども、それぞれの学校の就職人数、その就職も海上に就職した人数と、その卒業生に占める割合、推移をお示しください。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 船員養成機関を卒業した卒業者の数と海上関係への就職率、この推移について御質問だと理解いたしました。

 まず、独立行政法人海技教育機構につきまして、これを卒業して船員として就職した者につきましては、ちょっと口頭で読み上げさせていただきますけれども、まず、令和三年度につきましては、就職人数が三百四十八名、全体に占める海上就職率につきましては九一・八%、令和四年度につきましては、同じく、三百四十九名、九一・一%、令和五年度につきましては、三百二十六名、八九・八%となっております。

 これより先は文部科学省からいただいたデータとなりますけれども、商船系大学につきましても同じように答弁させていただきます。令和三年度につきましては、就職者数六十八名、就職率八八・三%、令和四年度につきましては、六十九名、八三・一%、令和五年度につきましては、五十一名、七九・七%。

 続きまして、商船系高専について御説明申し上げます。これにつきましては、令和三年度、百三十九名、七〇・九%、令和四年度、百二十三名、六六・八%、令和五年度、百十七名、六八・四%となっております。

 最後に、水産高校について御説明申し上げます。水産高校の海洋漁業系学科及び水産工学系学科の本科と専攻科についてのデータでございます。令和三年度の就職人数が五百二十名、割合でいきますと四一・七%、令和四年度が、四百二十六名、割合でいきますと三七・五%、令和五年度が、四百五十四名、四一・三%となっております。

 済みません、時間がかかりました。

白石委員 ちょっと聞いているだけだったらあれですけれども、とにかく、この水準、比較的高いとは思うんですね。特に、先ほどは海上就職者ということなんですけれども、進学を除くと九割ぐらいで推移している、これが現状だと思います。つまり、海員養成学校に入学して卒業さえしてくれたら、九割は海の仕事に就いてくれる、こういうことだと思います。

 そして次に、先ほども城井委員からもお話がありましたけれども、運営交付金のこのところの推移、概要だけでいいのでお伝えいただけますでしょうか。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、独立行政法人海技教育機構の運営費交付金につきましては、令和五年度六十五・八億、六年度六十五・一億、令和七年六十四・五億となっております。

 このほか、これは文部科学省からいただいたデータになりますけれども、例えば東京海洋大学におきましては、これは商船系の学部を含めまして、全体で、令和四年度五十六・二億円、令和五年度五十四・五億円、令和六年度五十六億円となっております。

白石委員 運営交付金でいったらほぼ横ばいだ、この三年間でいうと。二〇〇〇年当初から比べると減っているというのが見受けられるということですけれども。

 それで、考えるに、大臣、やはり内航船の船員を増やすためには、まず、この養成大学の定員を増やしていく、定員を増やしていって、その定員を増やすには運営交付金を増やさないといけない、さらには、そこで、インセンティブ、授業料が軽減されている、こういう形で定員を増やして、そして就職者を増やす、こうでなければ到底船員を充足できない。

 この十年間でモーダルシフトを二倍にする、三〇年前半までに二倍にするというところがある。一方、今、就職で、求人倍率は四・六倍であるということを考えたら、海技士というのは資格で、資格は学校を経ないと取れない、原則ですね。ということを考えたら、やはりこの定員を運営交付金とともに大幅に増やしていくということが必要なんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 養成ルートの強化策をどうしていくのかということかというふうにも考えております。今後の海技人材の確保の在り方に関しましては、官民一体となって検討、先ほど申し上げました昨年四月に設置をした海技人材の確保のあり方に関する検討会で五つの方向性というものを出させていただきました。中間取りまとめを昨年十二月に公表させていただきました。

 この五つの方向性の一つであります海技人材の養成ルートの強化といいますのは、今後の少子化等を踏まえて、御指摘のような、一般大学の卒業生に対応した海技大学校の養成ルートの強化、あるいは水産高校との連携の強化、そして陸上からの転職者等を念頭に置いた民間の養成ルートの強化等、様々なところにおいてしっかり強化をとにかくしていこうという対応策が示されたところでございます。

 こうした対応策も含めまして、中間取りまとめで様々対策が示されております。これをやはり総合的にやっていかないといけない。これを総合的に講じていくということで、船員の将来にわたる安定的な確保、育成というのをしっかり図っていく必要があるのではないか、このように考えております。

白石委員 もちろん総合的にやるんですけれども、中でも、やはりこの海技人材の育成ルートの幅の拡大ですね。人数、定員を拡大するというところを、是非、運営交付金の拡大、これとともに、次の、来年春の入学に向けて取り組んでいただきたいというふうにお願いします。

 それから、次の質問は、海のハローワークで海技人材、内航船員を募集していますけれども、今、その倍率が四・六ということです。陸のハローワークとの連携というのがもっとあってもいいんじゃないかなと。そもそも、海のハローワークは陸のハローワークと別になっているというところからおかしいなという感じもするんですけれども、この海、陸、ハローワークの連携について、これからの取組を聞かせてください。

宮武政府参考人 深刻化する船員不足に対応していくためには、船員教育機関の新規学卒者のみならず、陸上からの転職者等の求職も増やしていくことが必要です。

 そのためには、ハローワークの利用者が船員の求人情報にアクセスできるよう、ハローワークとの連携強化を図ることも重要です。

 ハローワークとの連携につきましては、これまでも、ハローワークでの船員の未経験者求人情報の掲示、船員に関するポスター掲示、リーフレットの備置き、あるいはハローワーク主催の就職セミナーでの船員ブースの出展などの取組を実施してまいりました。

 今年度は、更に一歩進んだ連携を図るために、国土交通省の職員が自らハローワークに出向きまして、ハローワークにおいて船員の職業紹介を行う、そういうモデル事業を実施する予定としております。

 こうした取組を通じまして、ハローワークとのより効果的な連携を実現してまいります。

白石委員 海からの募集も是非どんどん進めていただいて、そのときに、海技士の資格を持っていなくて、海上の仕事に興味があるという人もいると思うんですね。この際、海技士の資格を取ろうという人も出てくると思うんですけれども、教育機関を経ていない人が海の仕事に興味を持った場合に、ハローワークとして海技士の資格取得を支援する、こういったことがあってしかるべきだと思うんですけれども、今の状況を教えてください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 ハローワークを経由して出させていただいております教育訓練給付金制度というのがございます。御承知のとおり、一定期間の雇用保険の被保険者期間を有する方が、主体的に厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講して修了した場合に、その受講費用の一部を保険給付として受け取れるものでございます。御指摘の海技士の資格取得につきましては、令和七年四月一日現在で、海技大学校や海上技術短期大学校等が提供する十八講座を教育訓練給付金の対象として指定しておりまして、令和五年度実績といたしましては、海技士の資格取得を目指す講座を修了し、教育訓練給付金を受け取った方は五十三人というふうな実績もございます。

 引き続き、国土交通省とも連携をいたしまして、こうした教育訓練給付金制度の指定講座の更なる拡大や制度の活用促進にしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。

白石委員 海技士資格取得の教育訓練給付金を受け取った人というのは五十三人と、非常に少ないと思います。これは是非、陸のハローワークでもどんどんこの資格を紹介し、そしてこの資格を取って海の仕事に就いてもらう、こういうことを国交省と連携して進めていただきたいと思います。そうでなければ、本当に、有効求人倍率四・六、解消できませんし、さらに、まだまだこれから人を増やしてモーダルシフトを二倍にしようとしている、到底間に合うとは思えませんので、是非よろしくお願いします。

 次に、今回の法律で、STCW―F条約の条件で、漁船の船長又は航海士として求められる乗船履歴とそして漁船特有の知識というのが二つあって、この二つを備えていたら、外国人への、日本での漁船乗り組み、相互承認というのが認められるということになっていると承知しています。

 その相互承認の条件というものはどういうものを考えていらっしゃるのか、国交大臣、お願いします。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 相互承認の条件について御質問をいただきました。

 現行の船舶職員及び小型船舶操縦者法におきましては、商船、漁船の区別なく、船舶職員には、商船の乗組員の資格等を定めたSTCW条約で求められている知識、能力を有するということを、海技免許の取得等を通じて求めているところでございます。

 一方、今回、STCW―F条約を締結をいたします。によりまして、改正法では、我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む船舶職員には、漁船の乗船履歴を求め、海技免許とは別に、漁船特有の操船に関する知識、能力を講習の受講を通じて習得をしていただく、これが制度の説明でございます。

 この結果、我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む日本人の船舶職員には、STCW条約で求められているものと、STCW―F条約で求められているものと両方の知識、能力を有することを求めるということでございます。

 では、外国人の相互承認はどうかという御質問でございますが、この考え方に基づきまして、STCW―F条約に基づき外国が発給した資格証明書を受有している外国人が、我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む場合についても、STCW条約で求められているものと、STCW―F条約で求められているものとの両方の知識、能力を有することを求めてまいりたいと考えております。

白石委員 現行のSTCW条約で求めているレベルですけれども、これは、おおむね、外航船に乗れる三級海技士相当というふうに受け止めてよろしいんでしょうか。

宮武政府参考人 お答えいたします。

 STCW条約で定められております要件につきましては、それぞれの各国において具体的なカリキュラムの内容を定めることになりますけれども、日本におきまして、例えば、STCW条約が求める知識、能力といたしましては、航海計画の策定ですとか船位の測定、あるいはブリッジリソースマネジメントといった基本的なところを要件としております。

 具体的に、三級に該当するか、四級に該当するか、これについては今ちょっとお答えできる状況にはございません。済みません。

白石委員 是非、現行のレベルでいえば、つまり、Wのレベルでいえば三級海技士、そのレベルに、プラスフィッシング、漁船特有の技能の訓練を修了する、こういったことを念頭に進めていただきたいと思います。

 次に、今、このF条約締結によって、特定漁船というふうに、漁船の中で特定と言われる漁船がどれぐらいあるのかというと、漁船が十一万のうち、特定は大体五百七十隻というふうに言われていますけれども、その分布、都道府県の分布、地理的な分布、概要を示してください。水産庁、お願いします。

河南政府参考人 お答えいたします。

 特定漁船につきましては、主に遠洋マグロはえ縄漁船や、サンマ棒受け網漁船、海外まき網漁船、遠洋カツオ一本釣り漁船などが該当することになると承知をしているところでございます。

 これらの漁船につきまして、漁業を営む際の本拠地で見ますと、長崎県、宮城県、静岡県、北海道の順に多い状況となってございます。

白石委員 そこに基地がある、そこにお住まいの漁業関係者が、これから新しい資格を取ることを義務とされるということなんですけれども、なかなか資格取得というのは難しい面があると思うんです。救済措置、経過措置というものはどんなものがあるんでしょうか。

 それから、もう一つは、講習を受ける地理的な場所の配慮というのもまたしないといけないと思うんですけれども、二つの質問、併せてお答えください。

宮武政府参考人 救済措置と、地域的なバランスに関するお尋ねをいただきました。

 まず、救済措置に関しまして。

 今般の船舶職員法の改正によりまして、一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む者につきましては、漁ろう操船講習の課程を修了した者、又は、水産高校等において一定の期間内に必要な科目を修めて卒業した者のいずれかに該当することが必要となります。

 一方で、本法律案の施行前に漁船員として従事した者であって、国交大臣の認定を受けた者は、本法律案の施行後二年間、漁ろう操船講習を受講しなくても、船長又は航海士として乗り組むことを可能とする経過措置を設けております。

 続きまして、地域的なバランスについてお答え申し上げます。

 訓練を実施する機関につきましては、所在地が、現在、北海道や仙台にもございますけれども、数としては西日本が多くなっておりまして、漁船の基地港が集まる東日本等に少ないことがありますので、更なる訓練機会の拡充を図っていく必要があると考えております。

 国土交通省といたしましては、漁船の基地港の周辺地域における講習の実施体制の整備をするほか、既存の民間の訓練機関に対して受講会場の拡大等について働きかけを行ってまいります。

白石委員 是非、遠洋航海の基地の近くに資格取得の機関を設置していただく、このことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、神津たけし君。

神津委員 立憲民主党の神津たけしです。

 中野国土交通大臣、そして斎藤財務副大臣、本日、どうぞよろしくお願いいたします。

 私の方からは、まず、有効求人倍率、船員の人材不足が年を追うごとに深刻になっているというところで、ここについて今日はちょっと焦点を当てて質問していきたいと思っております。

 内航、外航別に、日本人の船員の必要人数、不足人数、求人倍率はどのくらいあるのか、また、今後同じような船員不足の傾向が続けば輸出入や物流にどのようなことが起こり得るのか、教えてください。

中野国務大臣 神津委員にお答えを申し上げます。

 有効求人倍率ということでございます。令和六年四月時点における内航貨物船員の求人倍率は約三・八倍でございます。外航貨物船員の求人倍率は約〇・三倍でございます。内航海運において船員の不足感が高まっているものと認識をしております。

 現時点において、船員不足により国内、国際の海上物流に大きな支障が生じている状況にあるとは認識をしておりませんが、今後もそのような事態が起きないように、しっかり対処をしていく必要があるというふうに考えております。

 例えば、内航海運につきましては、安定的な国内物流の確保のためにその機能を十分に発揮をし、そして、モーダルシフトの受皿としての役割を果たすため、船員を将来にわたって安定的に確保、育成するための対策にこれまで以上にしっかり取り組んでいくことが必要であると考えておりますし、外航海運につきましては、将来の海上輸送の中核を担う基幹職員の確保も必要と考えております。日本船舶・船員確保計画制度に基づく事業者による計画的な船員の確保や、官労使一体によるキャリア形成のための訓練の実施などを通じました中小の外航船社への若年層の就業支援も図ってまいりたいと考えております。

神津委員 今、私が聞いたことに答えていないんですよね。私が聞いたこと、今後の物流についてどのようなことが起こり得るのかということを伺いました。現時点では問題がないということを答えられたんですが、今後、将来的にどのようなことが起こり得るのかということを聞いております。

 それから、答えていないのが、今の日本における船員の必要人数、不足人数。

 それから、有効求人倍率については、内航で三・八倍と外航で〇・三倍というふうにお答えされたんですが、配付資料をちょっと見ていただきたいんですが、配付資料では四・六七。恐らく、今日ここにいらっしゃる皆さん、船員法のレクを受けたらば、四・六七というふうに説明を受けてきたんですが、何でこの大きな差が生じているのかというところをまた教えてください。

宮武政府参考人 まず、有効求人倍率の数字でございます。

 漁船、内航、外航を含めた数字は四倍を超える状況になっております。内航と外航で分離しますと、内航が三・八倍、外航が〇・三倍なんですが、漁船が更に高いレベルになっていますので、総合的に見ますと四倍を超える状況で、お手元の資料の数字になっているというところでございます。

 あと、御指摘がございました日本人船員の必要人数、不足人数につきましては、申し訳ございません、私どもで集計できておりません。現時点において、どれぐらいの人数が不足しているか、必要となっているのか、これについては、現状、データがございませんので、申し訳ございません。

 あと、もう一点ございました、海上運送に今後起こり得る事態につきまして、これは予断を持って申し上げることは難しいところではございますけれども、このままの状況で船員不足が続くとなれば、恐らく、内航の船が止まっていって、国内の物流が混乱を来すという一般的なことは容易に想像できると思っております。

神津委員 ほかの局では、例えば、昨年は物流の二〇二四問題とかの質疑をやりましたけれども、何割の人材が不足しているから将来的に何十%の荷物を運べなくなってしまうということをちゃんと計算していらっしゃいます。そういうところにおいては、やはり、今この船員不足がある中において、このまま船員が不足していくと物流がどのぐらい滞ってしまうのかというところをちゃんと計算していただきたいと思います。

 それから、必要人数、不足人数については、また後でやりたいと思います。

 今回の法改正では、船員不足をなくすためにはどのような改正を行っていくのか、教えてください。

宮武政府参考人 お尋ねにつきましては、令和三年に成立しました海事産業強化法との関係での御質問だと理解いたしました。

 船員の働き方改革を実現いたしまして、若手船員の定着を図るという目的で、海事産業強化法というのが令和三年に成立しております。船員法……(神津委員「聞いていないよ。今回の改正」と呼ぶ)済みません、失礼しました。(神津委員「今回の法改正では、船員不足をなくすためにどのような法改正を行うのか」と呼ぶ)済みません、聞き違いをしておりまして、申し訳ありません。

 今回の法改正におきましては、地方公共団体による無料の職業紹介を可能とすること、それと、船内の環境を改善することによって船員にとって魅力のある環境とするための、船舶の所有者に対する環境改善のための努力義務を課すということが大きな柱になっております。

神津委員 私が国交省から実際に書いてもらっている答えでは、地方公共団体による無料の船員職業紹介の解禁、船員募集情報の適正化、快適な職場環境の形成、非常時における安全衛生確保のための訓練等の措置を講ずるというところを回答としていただいております。

 これを行えば、人員不足が解消されて、有効求人倍率も大幅に下がるんでしょうか。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、法律改正に盛り込ませていただいた部分につきましては、昨年十二月に私どもの方で検討会を行いました結果、海技人材の確保のあり方に関する検討会中間取りまとめでいろいろ、五つの方向性と対策案をまとめた中の、法律に関わる部分を盛り込んだものでございます。

 それ以外に、海技人材の養成ルートの強化ですとか、海技人材の確保の間口の拡充、陸上からの求職を求めるといったものもパッケージとして、トータルで施策を講じることで船員不足の解消を図ってまいりたいと考えております。

神津委員 私が聞いたのは、今おっしゃられたような内容を行えば人員不足が解消されて、有効求人倍率が大幅に下がるのかというところを聞かせていただきました。イエスかノーで是非とも答えていただければというふうに思います。

 それから、今、有効求人倍率は上がり続けているというところに対しては、これまで、二〇二二年四月にも、前回の船員法改正のところですかね、働き方改革を導入して、船員の労務管理の適正化というものが図られてまいりました。

 ただ、今、実態をちゃんと把握しているのか。この後、労務管理がちゃんと適正に行われるのかというところ、実態を把握しているのか、教えてください。

宮武政府参考人 御指摘ございました法改正の後、私ども、令和五年十月に実施いたしました船員の働き方改革に関するアンケート調査、この結果によりますと、船員の労働時間が以前よりも減りつつあるといった声をいただいております。実際、近年、船員一人当たりの総労働時間は減少傾向にあります。また、年間取得休日数は増加傾向にあります。これによって、船員の働き方改革が着実に進んでいるものと考えております。

 以上でございます。

神津委員 私が聞いているところは、記録簿と時間外手当の連動がないというようなことも伺っているところでございます。

 現在では、何%くらいの企業が、固定での残業代ではなくて、実際に働いた残業代を支払っているのか。船の中では、仕事と休憩の線引きが非常に曖昧ということから、定額働かせ放題になっているというような現状もあると聞いております。この習慣を変えて、働いた分は賃金に反映されるように実効性を高めるべきではないかと思いますが、国交省では、ちゃんとこの実効性を高める措置として、今の実態を把握したりとか、そこに対する対応というのをやっているのか、教えてください。

宮武政府参考人 残業代につきまして、労使合意により、一定限度の時間外労働に対する定額の割増し手当、これを固定割増し手当と称するといたしますが、を支給する実態があることは承知しています。ただ、申し訳ありません、何%がこういう固定割増しを使っているかというデータは今持ち合わせておりません。

 また、制度上は実際に働いた時間外労働に対する割増し手当を支払わなければならないとなりますので、定額の割増しを超えた分については当然残業代として払わなければならないという仕組みになっております。

 国交省が行います船員労務監査などによりまして、実際に働いた時間に応じた時間外手当が支払われていない実態、これが確認された場合には、国交省として適切に指導を行うことにより、実態を改善してまいりたいと思っております。

神津委員 国交省が以前に行った調査では、九九%の船が電子機器を労務管理のところへ導入していないという実態もあるというふうに伺いました。ここについて、ちょっと時間がないので聞くことはやめますけれども、今まだ四割ぐらいの船でしか電子機器を導入して労務管理を行っていないという調査もございました。というところでは、しっかりと働いた時間というものが給与に反映されるように調査を行っていただきたいというふうに思います。

 固定額の残業代があったとしても、やはり時間に応じた賃金を払われないというところがあると思うんですが、便宜置籍船にも船員法は適用されるのか、教えてください。

宮武政府参考人 いわゆる便宜置籍船につきましては、外国籍の船舶でありますため、我が国の船員法は原則適用されません。

神津委員 日本商船隊の中で、どれくらいの割合の船に本船員法が適用されるのかというところが重要だと思っております。

 日本商船隊の全体の隻数に対する割合、トン数に対する割合、どのくらいあるのか、教えてください。

宮武政府参考人 日本商船隊のうち、船員法が適用されるものは、隻数ベースで一四%程度、トン数ベースで二二%程度となっております。

神津委員 日本商船隊の中でも、やはり日本企業が持っている船の中でも、ほとんどの船について、あるいはほとんどの人材については、日本の法律も適用されないというところとなっております。

 今、多くの企業においては利益をやはり追求していかないといけないという中においては、タックスヘイブンの会社に船籍を置いて営業していらっしゃるというところが非常に多い。これは、私は、道理的なところであるというふうに、論理的なところでもやはり納得せざるを得ないような状況でもあるというふうに思っておりますが、ただ、日本の海運、日本船籍の船がこんなに少なくて、そして日本人の船員がこんなに少なくて本当にいいのかという問題意識を持っております。

 私たちは、今、貿易においては九九%を船による、海に頼った貿易を行っている。それから、エネルギー源の九割をやはり輸入、そして食料も六割を輸入に依存しているような国でもございます。そうした意味においては、この海運がなければ私たちの生活は成り立たないということについて、もし有事がどこかで発生したときに、今この日本商船隊、特に外国の方々、多くの方々が外国の方々ですね、本当に有事があったときに日本に物資を命懸けで運んでくれるのか、外国船籍の船が日本に本当に物資を命懸けで運んでくれるのかというと、大きな疑問を持つところでもございます。

 そこで、ちょっとお伺いしますけれども、日本商船隊の人数なんですが、今、何人いらっしゃるか、そのうち何人が日本人でしょうか。

宮武政府参考人 お尋ねは、日本商船隊の船舶に乗り組む船員の総数だと理解いたしました。

 日本商船隊に乗り組んでおります船員は約五万三千人、このうち日本人船員につきましては約二千人となっております。

神津委員 今、日本商船隊の乗組員五万三千人のうち、日本人はたったの実は二千人なんですよね。

 私、アフリカにいたときには、アデン湾、紅海のところにおいて、海賊対策の案件についても携わったことがあるんですけれども、やはり危ないところ、地域を通過しなければならないというようなところがございます。アデン湾においては、イスラエルとハマスの争いを元として、今年にはフーシ派がアメリカの商船を攻撃したということもございました。そして、日本郵船の船においても、二〇二三年十一月に拿捕されて、一年一か月ほど係留された後に、ようやく今年になって一年一か月ぶりに解放されたということもございました。

 こうした意味においては、私はやはり日本の船をちゃんと守っていかないといけないというふうに思っております。

 それから、有事の際であったとしても物流は止めてはいけないというふうに思うところでもございます。

 今、海上運送法二十六条に基づいて、日本政府は民間企業に対して出航命令というものを出せると思うんですが、これは有事のときでも出せるんでしょうか。

宮武政府参考人 海上運送法二十六条第一項におきまして、航海命令の規定がございます。これは、災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、かつ、自発的に当該航海を行う者がいない場合又は著しく不足する場合に限り発令することができるとされておりまして、航海命令の対象に有事は含まれておりません。

神津委員 有事の際には航海命令を出すことができないということなんですが、そうしたらば、これはもう民間企業の御意向次第で、私たちのこの日本に、物流が、海運で物が運ばれてくるかどうか、有事のときに物が運ばれてくるか、もし台湾有事があったときとかそういうときに、ちゃんと荷物が入ってくるか、食べられるものが入ってくるかというところが、それ次第になってくると思うんですよね。

 というところにおいて、私は、今、日本の物流は安定的ではないのではないかというふうに思っているんですが、政府は有事の物流の維持をどのように行っていくのか、教えてください。

中野国務大臣 平成十九年、交通政策審議会において答申が出ております。緊急物資の輸送や避難住民の誘導等、有事における輸送については、有事法制の枠組みの中で対応することが適当であるという整理でございます。政府全体の枠組みの中ででございます。その中で国土交通省としても適切に取り組んでまいりたいと考えております。

神津委員 済みません、有事法制のことを私は事前にレクでは聞いていなかったんですが、有事法制の場合には、そうしたら、自衛隊が荷物を運んでくれるということなんでしょうか。

 自衛隊においても、輸送艦は三隻しかないということを伺っております。今月六日には自衛隊が、輸送艦不足の状況を改善するために、海上輸送群というものを発足させました。そして、今、三隻しか持っていないので、民間船舶二隻と契約して、自衛隊、何かあったときに、有事のときにはこの民間の企業に手伝ってもらって物を運んでいくということをやっていらっしゃるんですが、それでも、民間の企業を合わせても、たったの五隻しかないんですよね。

 ここについて、有事法制のときなんですけれども、自衛隊が運ぶという理解なのか、それとも、有事のときでも国民が餓死しないように、国交省がちゃんと物流については見ていくのか、教えていただけますでしょうか。

宮武政府参考人 有事法制につきまして、国土交通省は所管しておりませんけれども、我々の理解でありますると、有事において民間企業が輸送を担うという明確な定めがあるとは理解しておりません。

 以上でございます。

神津委員 今、有事のときには物流が止まってしまう可能性があるということが私は分かったというふうに思っています。やはり、有事のときであったとしても物流を滞らせないという努力が私は必要ではないかと思っています。

 二〇〇七年の調査なんですが、これは国土交通大臣から交通政策審議会に対して行った、今後の安定的な海上輸送の在り方について諮問がなされました。そのときに、答申として、安定的に物流を行っていくために最低限必要な日本人船員の数というのは五千五百人、今およそ二千人、これに対して五千五百人必要だというふうに言われておりました。そして、船の隻数についても四百五十隻必要だというふうに言われていましたが、今、日本の船籍の数というのは三百十一隻しかありません。

 こういうところについて、私は、やはりもう少し危機感を持って、五千五百人、それから四百五十隻をせめて確保していくんだということが必要だというふうに思っています。

 これについて、今、二〇〇七年以降、実はこの調査は行われていないんですね。私は、国土交通大臣としてちゃんと調査を、諮問をもう一回行って、どれだけ、今の日本について、最低限必要な日本人船員の数、それから隻数というのも、有事のときにも対応できるようにちゃんと諮問していくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

宮武政府参考人 御指摘いただきました船員数、船舶数につきましては、有事を想定したものではございませんで、これは、最低限日本人が生活していく上で必要な物品を輸送するための必要な隻数、船員数を算出したものでございます。

 したがいまして、有事というよりも、経済安全保障的な発想で作ったものでございます。

神津委員 経済安全保障の観点からも、いずれにしろ全くやはり追いついていない、達成できていないというところがあると思っています。

 大臣にお伺いしますが、日本の安全保障のために、私は有事のときだと思っていますけれども、やはり経済安全保障とか、それから食料の安全保障、エネルギーの安全保障のためにも、物流を止めないという御決意とともに、日本人船員、日本船籍の船を増やしていくべきだと考えますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

中野国務大臣 日本籍船、そして日本人船員の確保が必要であるということは、御指摘のとおり、平成十九年の交通政策審議会答申におきましても、日本人船員については、我が国の邦人の保護の権限が及ぶものであり、そして、船舶に対する日本の管轄権を適切かつ確実に行使することが期待されるものであるということで、これは常時確保しておく必要があるということが答申されているところであります。

 これを受けまして、今、海上運送法におきまして、日本船舶・船員確保計画というのを設けているところでございます。計画的な外航日本人船員の確保に努めているというところでございます。

 外航の日本人の船員の人数につきましては、先ほど来数字としては答弁させていただいておりますけれども、減少傾向というものには歯止めがかかっている現状であるということは答弁させていただきます。

神津委員 歯止めがかかっていると思うのですが、目標とする人数、五千五百人には全く達成できていないと思うので、ここを是非とも増やしていくことをお願いしたいと思っています。

 私は、人材を増やしていくためには、なりたいというふうに思ってくださるようなメリットというのをやはり設けていくべきだというふうに思っています。

 財務副大臣、ちょっと最後の方に伺わせていただきたいと思いますが、今、外国においては、百八十三日以上外航で出ていらっしゃる方については免税措置を取っていらっしゃる国がほとんどになっているところでございます。そうした意味においては、日本もやはり同じような条件にしていかないと、なかなか、船員になったとしても、ほかの国に行って結局働いてしまうようなことが増えてしまうと思うんですが、所得税をなくしていくこと、ここについては、大臣、いかがでしょうか。

斎藤副大臣 お答えいたします。

 外航船員に対する税制の適用につきましては、国土交通省において、平成二十三年度に日本人船員に係る税制に関する検討会を設置し、検討を行われたものと承知をしております。

 その結果も踏まえまして、国土交通省におきまして、住民サービスの受益に応じた負担等の観点から、所得税ではなくて住民税減免を要望することが適切と判断されて、平成二十四年度税制改正要望におきまして、外航船員に係る住民税減免を要望され、一定の結論を得たものと承知をしております。

神津委員 時間が来てしまいましたので、終わります。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、西岡秀子君。

西岡(秀)委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。どうぞ今日はまたよろしくお願いいたします。

 まずは、法案質疑に入る前に、一問質問をさせていただきます。

 先般発生いたしました、長崎県壱岐沖で墜落いたしました医療用ヘリコプター事故について質問させていただきます。

 対馬空港から福岡の病院へ向けて搬送中に、患者の方、そしてその御家族、また離島の医療に尽力されていた若い医師、大変貴い三名の方の命が犠牲となりました。大変深刻な事態であるというふうに受け止めております。心より御冥福をお祈り申し上げ、また、負傷された皆様にもお見舞いを申し上げたいと思います。

 当該ヘリの運航会社においては、二年前にも二名の方の死亡事故が発生しておりまして、徹底した事故原因の究明とともに、再発防止策を求めたいと思います。

 同時に、ドクターヘリを補完する医療用ヘリコプターが離島の医療にとって大変重要な役割を今果たしていただいているという実情を踏まえて、今後、国交省としてどのように安全対策を確保してその体制を守っていく方針なのかということについて、まず、中野大臣にお伺いをさせていただきます。

中野国務大臣 西岡委員にお答えを申し上げます。

 四月六日に発生をいたしましたエス・ジー・シー佐賀航空による航空事故につきましては、現在、海上保安庁による捜査及び運輸安全委員会による調査が進められているところでございます。

 国土交通省では、本事案と同型機を運航する事業者を含む小型航空機を運航する全事業者、全ての事業者に対しまして、基本動作、法令遵守、非常操作手順の再確認及び徹底等の注意喚起をまず行わせていただいたところでございます。

 エス・ジー・シー佐賀航空社に対しましては、運輸安全委員会の調査を待たずして、当面の再発防止策を検討し実施をするようにということで指示をしたところでございます。さらに、今後監査を行ってまいりますので、この結果に基づきまして、必要に応じ追加の対策を取るように指導してまいりたいと考えております。

 今後、国土交通省としましても、この航空事故の調査の進捗状況も踏まえながら、再発防止に向け必要な措置を講じることにより、航空の安全、安心の確保に万全を期してまいりたい、このように考えております。

西岡(秀)委員 調査結果が出るまでは一年程度の時間も見込まれている中で、今取れる措置を既に取っていただいているということでございますけれども、我が国においては有人離島は四百以上ございます。島民の命を守る取組を未来につなげていくことは大変重要だと思っておりますので、徹底した原因究明とともに、再発防止にしっかり取り組んでいただくことを強く要望を申し上げたいと思います。

 それでは、船員法改正案について質問させていただきます。

 まず、本改正案の内容は大きく三つの柱から成っておりまして、海上における安全性の規制強化の観点から今般日本が批准を目指しているSTCW―F条約の国内担保法としての改正、船員不足の深刻化への対応、また船員行政手続のデジタル化、この三つの柱から成っております。

 まず、私からは、F条約締結への対応について質問させていただきます。

 これまでの我が国の船員資格は、漁船、商船の区別のない日本の船員資格の体系を基に規定をされておりまして、このことが職域の選択肢と労働力の流動性確保につながってきた歴史がございます。

 今般、F条約を批准するに当たり、これまでのWの免許を持って乗船されてこられた船員の皆様の権利をどのように守っていくのか、担保していくのかという観点が大変私は重要だと考えております。

 これまでも漁船員にも準用されてきましたW条約と今回批准を目指すF条約の位置づけも含めて、中野大臣の基本的な御見解をお伺いしたいというふうに思います。

中野国務大臣 まず、基本的な考え方ということで申し上げますと、現行の国内法におきましては、商船、漁船の区別なく、船舶職員となるためには、商船の乗組員の資格等を定めましたSTCW条約に準拠した海技免許の取得が必要でございます。

 この考え方というのは漁船の乗組員の資格等を定めたSTCW―F条約の締結後も同様でございますが、STCW―F条約において一定の漁船の船長、航海士に漁船特有の操船に関する知識や能力が求められておりますので、この知識や能力につきましては、海技免許とは別に、講習の受講を通じて習得をしていただくこととしております。

 いずれにいたしましても、STCW―F条約の締結後も、我が国の海技免許の制度としては、商船、漁船の区別なく、STCW条約に準拠したものであるというのが基本的な考え方でございます。

西岡(秀)委員 今御答弁をいただきましたけれども、しっかりその権利は守られるという理解でよろしいでしょうか。確認をさせていただきます。

中野国務大臣 先ほど、位置づけを説明させていただきました。この考え方に基づけば、そのようなことになる、権利を守られるということで認識をしております。

西岡(秀)委員 今の質問とも関連いたしますけれども、続きまして、承認制度についてお伺いをさせていただきます。

 現在、W条約に基づく締約国資格受有者承認制度によりまして、既に多数の外国人職員が日本船籍に乗り組んでおられます。今回批准するに当たっては、法改正によって、W条約に基づく締約国資格受有者承認制度を新たに導入して、資格証明書を持つことで日本船籍の特定漁船に船舶職員として乗り組むことを可能とするものでございます。このことによって、結果として外国人船員の乗組みが一層広がるということになるわけでございます。

 今回、F条約の批准による承認制度を進めるに当たっては、労使の合意が前提というふうになりますけれども、外国人船員に対して、日本漁船員と同等の資格取得のルール、つまり、Fの資格だけではなくWの資格を条件にすべきではないかという現場のお声をお聞きをいたしております。このことに対する大臣の御認識、御見解をお伺いをさせていただきます。

中野国務大臣 承認制度についての御質問であります。

 我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む日本人の船舶職員には、STCW条約で求められているものと、STCW―F条約で求められているものとの両方の知識、能力を有することを求めることとなります。

 この考え方に基づきまして、では、外国人の場合はどうなのかということであります。

 STCW―F条約に基づき外国が発給した資格証明書を受有している外国人が我が国の一定の漁船に船長又は航海士として乗り組む場合についても、これは、STCW条約で求められているものと、STCW―F条約で求められているものと両方の知識、能力を有するということを求めてまいりたい、このように考えております。

西岡(秀)委員 今御答弁ございました、安全性の観点からも、また熟練した技術、この技術の統一的な基盤というものは大変重要だというふうに思っておりますので、このことについては、今大臣から御答弁ありましたけれども、しっかりそこは基本として押さえていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、F条約は、海上における安全性の見地から、漁船員の訓練、資格証明の要件及び当直基準等を定めるものでございます。既に我が国は一般船員の訓練等を定めるW条約を批准しておりまして、これは漁船員にも、先ほど申し上げたように、準ずる義務が課せられております。F条約を批准するということになりますと、特定雇入契約を契約した船員に対する生存訓練及び消火訓練等の基本訓練の実技講習が義務づけられることとなります。

 先ほどからも御議論があっておりますけれども、命を守る講習の必要性、これは必要不可欠なものであるというふうに認識する一方で、実際に実技を受講するということになりますと、今の既存施設が限られていること、先ほどの御答弁からもあるように、施設が地域的にも偏在していること、また、受講に当たっての負担、大変負担が増加するという現場の懸念の声をお聞きをいたしております。

 具体的には、その費用を企業が負担するのかどうかということもまだ明確でない中で、先般、事業者や漁業者への周知が十分でないために法案提出が遅れた経緯もございまして、この制度自体をまだ御存じない事業者や漁船員も多くおられるのではないかと推察をいたします。

 どのような負担軽減策、また周知、広報の徹底を図っていかれるのかということについて、中野大臣にお伺いいたします。

中野国務大臣 負担軽減と丁寧な周知ということで御指摘いただきました。

 御質問の実技講習につきましては、非常時に船員の安全を確保するために必要となります基本的な知識、技術を習得するための重要な訓練でございまして、STCW―F条約への締結に際しまして、一定の漁船員に義務づけられるものでございます。

 委員からも御指摘ございましたとおり、実技講習の実施の場所や費用などについて、一部の漁業関係団体からは、例えば、受講場所の多くが西日本に所在しており、漁船の基地港が集まる東日本等に少ない、あるいは、受講費用が一人当たり十二万円から十六万円程度になるのであれば負担感が大きいといった懸念の声をいただいたところでございます。

 国土交通省としましては、既存の民間の訓練機関に対しまして、受講場所の拡大等を働きかけるとともに、水産庁や水産関係団体とも連携しながら、漁船の基地港の周辺地域で低廉に、低廉な価格で実技講習を実施をできる価格を整備をするための方策について、現在検討を進めているところでございます。

 そして、今回、法案の閣議決定が当初予定より二週間遅れました。この間、関係者への丁寧な説明を行い、改めて関係者から条約の締結とそれを担保する船員法の改正が必要であるという意向も示されたところでございます。

 今後、実技講習の運用に当たりましても、関係者の御意見あるいは御懸念、こうしたところに耳を傾け、そして丁寧に説明をさせていただきながら、この取組を進めてまいりたいと思っております。

 よろしくお願いいたします。

西岡(秀)委員 しっかり現場のお声を聞いてという御答弁がございました。しっかりお声を聞きながら、周知徹底を含めて、負担軽減策、しっかり進めていただきたいというふうに思います。

 一問、後に回させていただきまして、本改正におきまして、漁船における航行上の安全の向上として、二〇二三年から二〇二七年までの、死傷災害発生率の対前年比六・〇%の目標が掲げられております。基本訓練の対象としては段階的に義務づけを行うこととされておりますけれども、一方で、小型船舶の事故が多数発生をしている現状がございます。

 この現状を踏まえますと、二十トン未満の小型船舶も対象にすべきであるというお声もありますけれども、国交省の御見解をお伺いをしたいと思います。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 基本訓練につきましては、まずは、STCW―F条約で求められている範囲と同様の、無限定水域、これはEEZを超える水域でございますが、において航行する三百総トン以上の漁船の全ての漁船員を義務づけの対象としております。この内容は、使用者団体、労働者、学識経験者等で構成された検討会におきましても、令和六年八月に合意されているものでございます。

 それ以外の船舶につきましては、この検討会の取りまとめにおきましては、段階的に義務づけを行うこととされております。対象船舶の下限値につきましては、二十総トンを基本に検討するとされているところ、今般の義務づけの定着状況も踏まえながら、今後、関係者の意見も伺いつつ、検討してまいりたいと思っております。

西岡(秀)委員 小型船舶の安全対策もしっかり進めていただきたいということを申し添えたいというふうに思います。

 続きまして、深刻な船員不足への対応についてお伺いをいたします。

 今日お配りをいたしておりますけれども、先ほどからの議論もございます、四方を海で囲まれ、貿易の九九%、国内貨物の四三・七%を海上運送が担っております。その船舶の航行に欠かすことができない船員の役割、この重要性は言うまでもございませんけれども、ただ、少子高齢化、人口減少の中で、船員のなり手不足は大変深刻な状況になっております。

 その中で、海技人材確保のあり方検討会中間取りまとめが先般行われました。人材養成ルートの強化、人材確保の間口の拡充等が挙げられております。

 しかし、一方で、今日お配りをいたしております海技教育機構における組織改革という図の中で、大変、やはりこのスリム化、独法移行後、身を切る改革という名の下で、四十億円の運営費交付金の削減が進められてまいりました。組織のスリム化の一方で、様々な御努力は続けていただいているというふうに思いますけれども、今この深刻な船員不足に対する政府の取組の本気度、私は認識が問われる局面に来ているのではないかというふうに考えております。

 船員は、我が国の国民生活、経済にとって必要不可欠で、欠かすことのできない大変重要な仕事だというふうに思います。船員教育における学ぶ施設ですとか練習船など、教育環境を最先端のものにして、将来に夢と希望を持って学べる環境整備も進めることが大変求められているというふうに思います。

 それと同時に、やはり必要な予算をしっかり確保していくこと、このことがなければ、今申し上げた施策も進めることができません。人材育成の面では、他の交通産業と比べて脆弱な部分もあるという中で、企業、業界と一体となって連携をした取組も急務であるというふうに思います。

 今の状況に対する大臣の御見解と、今後の方針をお伺いをさせていただきます。

中野国務大臣 委員御指摘のとおり、船員の確保、育成は喫緊の課題であると認識をしております。船員不足を解消するとともに、船員を始めとした海技人材の将来にわたる安定的な確保、育成が図られることが極めて重要であります。

 船員の確保、育成に関しましては、これまでも、我が国の船員養成の中核を担う独立行政法人海技教育機構における安定的な船員の養成、そして日本船舶・船員確保計画制度の創設、あるいは六級海技士の短期養成コースの創設、こうした取組を今まで進めてきたところでございます。

 平成二十九年には、委員御指摘の内航未来創造プランにおきまして、海技教育機構における内航向けの海技士の入学定員の増加に取り組むこととされたところでございます。これを踏まえ、平成二十九年当時の三百九十人から令和六年には四百五人まで、段階的に拡大を図ってきたところでございます。

 さらに、深刻化する船員不足の状況を踏まえ、昨年四月に海技人材の確保のあり方に関する検討会も設置をさせていただき、船員養成に関わる官民の関係者が一堂に会して検討を行ってきたところでございます。

 昨年十二月の中間取りまとめでは、本法案の内容でもございます、地方公共団体による無料の船員職業紹介事業の解禁、快適な海上労働環境の形成の促進のほか、海技人材の養成ルートの強化、そして海技人材確保の間口の拡充等の施策等、官民が一体となった取組を進めることとされたところであります。

 国土交通省として、今後の船員の新規就業者の増加に向けて、必要な予算の確保を図るとともに、官民一体となって、この中間取りまとめで示された取組内容を着実に進めてまいりたいと考えております。

西岡(秀)委員 運営交付金、これはやはり増額していくことが私は必要不可欠だというふうに思いますので、しっかりとお取組をお願い申し上げたいと思います。

 文部科学省にもお越しをいただいておりましたけれども、時間の関係で、また次回質問をさせていただくことをお許しいただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組の難破船、たがや亮です。本日もよろしくお願いします。座礁船でもいいです。

 早速質問に入ります。

 今回の船員法の改正では、船員不足の深刻化への対応として、船舶所有者が快適な海上労働環境の形成、すなわち、船内の職場環境、船員室の居住環境、インターネットの利用環境をつくる、形作ることを努力義務として定めております。

 問題は、この規定が努力義務にとどまっていることです。実効性をどのように担保するのか、中野大臣のお考えをお聞かせください。

中野国務大臣 海上労働環境の形成についてということで御質問をいただきました。

 船員不足が深刻化をしている中で、多様な人材を海上労働市場に呼び込み、将来にわたって船員を確保していくためには、海上労働の職場そのものの魅力を高めていくということが重要だと考えております。

 今回の法律案では、船舶所有者に対しまして快適な海上労働環境の形成のための措置を講じることを、これは御指摘のとおり努力義務ということでありますが、求めることとしております。

 これは、船舶の航行区域ですとか航路、あるいは航海の期間や態様によりまして、船舶所有者が講じることが適当な措置が異なるということから、画一的な基準による義務づけではなくて、それぞれの船舶所有者の実情に応じた自主的な努力に委ねることが適当であると判断をしたものでございますが、実効性を確保していくということで、それに向けて、船舶所有者が講ずる措置が適切かつ効果的なものとなるよう、国が指針を作成、公表するとともに、必要な指導及び助言を行うこととしております。

 これらを通じて、船舶所有者の取組を国としてもしっかり促してまいりたい、このように考えております。

たがや委員 ありがとうございます。

 フレキシブルにやられるということですけれども、そもそも、船員の労働環境について、労働基準法と船員法との関係はどのようになっているのか、御説明をお願いします。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 船員は、陸上からの支援が得られにくい海上において船舶を航行するといった就労に加えまして、長期間乗船した状態で生活するといった、陸上の労働制度では想定していない特殊な働き方をしている実態がございます。

 このような船員の働き方の特殊性に対応いたしまして、ILOの国際条約において、船員の労働分野は陸上とは別の条約で扱われているなど、国際的にも陸上とは別の労働制度が取られております。我が国におきましても、労働基準法の特別法であります船員法におきまして、労働時間、休日等に関し、陸上の一般労働者とは異なる定めを規定しているところでございます。

たがや委員 ありがとうございます。

 船員不足の解消のために労働環境を改善するのに、努力義務にとどまっているというのは、陸上の労働者と比べてちょっと雑な扱いを受けているなという印象を持ちました。船員不足の解消につながるよう、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 そもそも、議論の前提として、今回の法改正の対象となる全国の船舶の数は、民間所有の船舶と政府や自治体所有の船舶を合わせて一万七百二十二隻とのことですが、船員用の居室の数の把握はされているでしょうか。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ありました、全体の船舶の船員の部屋の数がどれだけあるかについては、申し訳ありません、把握してございません。

 ただ、船舶に関する基準で申し上げますと、例えば、沿岸から二十海里以内で航行する二百総トン以上の船でありますと、全て個室を備えるというふうになってございます。

たがや委員 ありがとうございます。

 船員全体のうち女性が占める比率は約二%とのことですが、人手不足の解消には女性船員が更に就業しやすくなる環境整備が必要と考えますが、女性専用の船室、トイレそして風呂などをどのように整備していくのでしょうか。これらも努力義務でよいのでしょうか。もし、船舶所有者による環境整備が追いつかず、故意に女性船員を採用しないおそれが生じては、海技人材の確保のあり方に関する検討会でも話し合われている、女性船員が安心して活躍できる就業環境の整備につながらないのではないでしょうか。中野大臣の見解をお聞かせください。

中野国務大臣 お答え申し上げます。

 船員不足が深刻化をしている中で、女性にとって働きやすい環境整備を図るということは大変重要であります。

 このため、今回の法律案におきまして、船舶所有者による快適な海上労働環境の形成が進むよう、先ほど国が指針を定めますということで申し上げさせていただきましたが、この指針には、女性にとっても働きやすい環境を整備をするという観点も加えるという方向で検討してまいりたいというふうに考えております。

 他方で、努力義務というのは、先ほども申し上げたとおり、快適な海上労働環境を形成するために船舶所有者が講じることが適当な措置が、船舶の航行区域、航路、航海の期間、態様等によって異なるということから、画一的な基準による義務づけではなく、船舶所有者の努力義務としたものでございますが、いずれにしても、船舶所有者が講ずる措置が適切かつ効果的なものとなるように、必要な指導助言を行い、女性にとって働きやすい環境整備の取組というのを促してまいりたいと考えております。

たがや委員 大臣、ありがとうございます。まだまだ女性の進出の余地があると思います。

 大型トラックドライバーを例に出すと、女性が占める数が約三万人で、割合が約三・六%と言われています。二〇一四年からの十一年間で約一万人増えました。女性船員の割合約二%の約二倍です。女性船員も今後増える余地があると思います。女性が働きたくなるような環境整備、少なくとも、女性専用の船室やトイレ、お風呂、それを御検討いただければと思います。

 次に、快適な海上労働環境の形成に向けて、実効性を担保するための海上労働環境の指針と、その指導助言の方法はどのようになるのか、お伺いをいたします。

宮武政府参考人 御指摘の指針の内容につきましては、船舶所有者が快適な海上労働環境の形成のための措置として講ずることが望ましい措置などの内容を示していく予定です。ただ、具体的な内容に関しましては、今後、施行日までに、関係者の御意見を伺いながら検討してまいります。

 また、今回の改正法案におきまして、国は、指針に従って、船舶所有者又は団体に対して必要な指導及び助言ができるとされております。先ほど申し上げました指針の検討に併せまして、どのように指導助言をやっていくのかにつきましても検討してまいります。

たがや委員 ありがとうございます。

 それでは、指針の作成には、検討会や協議会などを組織して、広く関係者の意見を聞く予定はあるのでしょうか。検討会のメンバー構成はどのような人々が想定されるのか、また、船舶所有者や男女の船員代表、荷主、関係する行政機関などの当事者はメンバーに入る余地があるのか、教えてください。

宮武政府参考人 指針の作成に当たりましては、事業者団体、労働組合、学識経験者などの幅広い有識者に御意見を伺いながら検討することが必要であるというふうに考えております。

 御指摘のありました経営者、男女の船員代表、荷主、関係機関なども想定しましてメンバーを考えてまいりますけれども、具体的な進め方につきましては今後検討してまいります。

たがや委員 快適な海上労働環境の形成に向けて、船舶所有者側へのインセンティブを働かせるために、呼び水として財政的な支援をすべきと考えますが、政府の見解をお伺いをいたします。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 今回の法律案では、先ほど来答弁させていただきました、船舶所有者が講ずる措置が適切かつ効果的なものとなるように、国が指針を作成、公表するとともに、必要な指導及び助言を行うこととしておりまして、まずは、これらを通じて船舶所有者による自主的な取組を促してまいりたいと思いますけれども、既存の支援措置の中にも、例えば、荷役作業の遠隔自動化など、船員の労働負担の軽減等に資する技術開発や実証への支援がございますし、また、鉄道・運輸機構の船舶共有建造制度によりまして、船内の居住環境を向上し、労働負担を軽減する設備を導入する船舶の建造支援でございますとか、快適な海上労働環境の形成に資する支援措置がございます。

 船舶所有者の自主的な取組を促していく際には、これら既存の支援措置の積極的な活用というのもしっかり呼びかけてまいりたいというふうに考えております。

たがや委員 ありがとうございます。

 既存の支援措置の範囲内ということではなくて、負担額の一割でも二割でも構わないので予算を増額して、インセンティブを働かせていただければなと思います。

 漁船員条約を国内で履行するために、漁ろう操船講習の修了や、船長や航海士として乗船するための条約となりますが、対象となる人数や講習の内容、開催場所、開催頻度など、講習が円滑に行われるための具体的な方法はどのようになっているのか、お伺いをいたします。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありました講習は、二種類あると考えております。一つは漁ろう操船講習、もう一つは基本訓練に伴います実技講習、二つございます。

 まず、漁ろう操船講習につきましては、漁労作業の特性を踏まえた操船方法などに関する知識、能力を習得するためのものでございます。その具体的な内容につきましては、現在、水産庁と連携しまして、検討を行っているところでございます。想定しますのは、座学での講習でオンラインでの受講を可能とするなど、可能な限り受講者の負担とならないよう、その内容をできるだけ早期に漁業者にお示しできるよう、検討を進めてまいりたいと思っております。

 もう一つございます、基本訓練に伴います実技講習につきましては、先ほどから御質問いただいておりますように、実際に消火あるいは生存のための実技の講習を行うことになりますので、これにつきましての負担軽減策が非常に重要であると考えておりますので、これについても並行して検討してまいります。

たがや委員 ありがとうございます。

 オンライン研修は受講者の負担にはならないと思うんですけれども、私もそうですけれども、皆さんも経験あると思うんですけれども、オンラインでやっていると何かいま一つ頭に入ってこないなという感じもしないこともないので、更なる検討はお願いいたします。

 次の質問に参ります。

 船員不足の対応策として、地方自治体による船員職業紹介事業を創設していますが、どのように実行されるのか、具体的なイメージをお伺いいたします。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 無料の船員職業紹介事業につきましては、まず、どのような自治体が実施いただけるのかというところがポイントになってこようかと思います。

 想定しております地方公共団体といたしましては、例えば、離島航路を維持していく上でその担い手の確保が課題となっている地域、こういったところが考えられますし、あるいは、海運業が地域の基幹産業になっている、そういったところが担い手を増やすために必要となっている、産業振興につながるような地域、こういったところが想定される自治体でございます。

 こういった自治体に対しましては、私ども、この事業が円滑に進むように、必要なサポートをさせていただきたいと思っております。

たがや委員 では、特に小規模の自治体へは船員職業紹介事業を、国による運営のサポートが必要と思うんですけれども、政府のお考えをお伺いします。

宮武政府参考人 地方公共団体におけます無料の船員職業紹介事業の実施に当たりましては、国土交通省といたしましても、説明会の開催、業務マニュアルの策定や個別の相談支援などのサポートを丁寧に行うことを検討しております。

 地方公共団体の導入意向を踏まえつつ、国としても、船員分野への新規就業者数の増加につながるよう努めてまいります。

たがや委員 ありがとうございます。

 予算の増額、そして小規模の自治体へのサポートをしっかりお願いします。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございます。

井上委員長 次に、堀川あきこ君。

堀川委員 日本共産党の堀川あきこです。

 船員法改正案のうちの、船員募集、海上労働環境の改善に関わって質問をしたいと思います。

 今回の改正案で、地方自治体による無料の船員職業紹介事業、これが創設されるということは、必要な措置だというふうに考えています。一方、求人票にどういう情報が表示されているかというのは、労働者、求職者にとっては仕事を選ぶ上で大変重要な情報だというふうに認識をしています。中でも賃金に関する情報というのは極めて重要だと思うんですね。

 そこで、資料一を御覧いただきたいと思います。

 これが船員の職業紹介の求人票ということなんですけれども、一番下が賃金欄になっております。そこに月額手取賃金と表示をされています。陸上の職業では、基本給と各種手当がそれぞれ分けて明記されているというのが一般的です。この月額手取賃金とは何なのか、なぜ船員の賃金はこうした表記になっているのか、お答えください。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたように、船員の求人票におきましては、賃金の記載方法を月額手取賃金としております。これは、総額の総支給額という表示じゃなくて、実際に船員が受け取ることができる金額を明確にするという観点から、手取り賃金という形で表示させていただいているところでございます。

堀川委員 ある船員のOBの方から、船員の賃金というのは丼勘定になっていて、自分が受け取っている賃金の内訳が分からない仕組みになっている、こういうふうなお話もお聞きをしました。

 備考欄のところに基本給や手当等の詳細を記載することもできるというふうなことになっていると思うんですけれども、それはあくまで必須事項でなくて補足事項なんですよね。

 求人者の善意に任せるのではなくて、月額手取賃金という表示に不安を抱く求職者が出ないように、基本給や各種手当をそれぞれ表示するようにすべきではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 船員の求人票における月額手取賃金の欄には、先ほど局長から答弁させていただきました手取りの月額賃金額を記載をするということとしております。月額の手取り賃金は、基本給のほか、乗船手当、航海日当等、各種手当が含まれた賃金額として示すこととしております。

 一方、必須事項ではございませんが、企業の判断により、基本給、手当等の詳細など、給与の詳細も含め、企業のPRするポイントを求人票の備考欄に補足して記載ができるようにもしております。

 現在、船員の求人票につきましては、船員の労働条件や給与体系等を踏まえた求職者目線で分かりやすい内容となるように、手取りの月額賃金額に加えて総支給額の記載欄も設けるなど、その記載内容の見直しを進めているところでございます。

 引き続き適切に対応してまいりたい、このように考えております。

堀川委員 総支給額だけではなくて、今大臣がおっしゃったように、この月額手取賃金の中に乗船手当や航海日当も含まれる、それ以外に家族手当や勤続手当や職務手当なんかも含まれていくというふうに思うんですけれども、やはり給与や手当の表示をざっくりではなくて詳細に記載するということは、求職者が求めている重要な情報だというふうに思うんですね。そうした記載が陸上の職業では一般的なんですよね。

 船員不足を解消するために、これは必要な措置だと思いますし、積極的な提案をさせていただいているというふうに思うんですけれども、是非検討するぐらいはしていただきたいんですけれども、大臣、もう一度答弁をお願いします。

中野国務大臣 どの程度、給与の詳細を記載をすべきかという点もこれは含めまして、記載内容の見直しを検討してまいりたいと考えております。

堀川委員 船員不足の解消に努めるというふうなことであれば、このことについてもしっかり検討を行っていただきたいということを再度求めておきたいというふうに思います。

 次に、内航船の船内供食、船員の食事環境のことについてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 今回の法案は、船舶所有者に快適な海上労働環境の形成のための措置を講ずる努力義務を課すというふうなことで、様々な措置、通信環境の整備であったり、個室のシャワーを作るであったり、そういうことが挙げられております。数週間、数か月間、長期間船上生活を過ごす船員にとって、食事というのは大きな楽しみの一つでもあるというふうに思いますし、おいしくて栄養やカロリーバランスの取れた食事が提供されるようにするということは、船内環境や労働環境改善の重要な柱の一つだというふうに思っています。

 この船内供食の改善の必要性、そして、その中で船員への食事の提供を専門で行っているというのが司厨員、コックさんですね、この司厨員の果たす役割について、大臣はどういうふうに認識されているでしょうか。

中野国務大臣 職住が一体でありまして、陸上から隔離された船内生活を送る中では、船内での食生活というのが不可欠であります。また、船員が健康であることは、安全に船内等の作業を行う大前提でもございます。さらに、健康に配慮したおいしい食事が船内で提供されるということは、船員にとって大きな魅力でもあると考えております。

 このように、司厨員が行う調理を含め、船内においておいしく充実した食事が提供されるということは、健康で安全な船員労働の実現と船員の職業としての魅力の向上を図る上で重要なことであるというふうに認識をしております。

堀川委員 ありがとうございます。

 司厨員が今乗っていない船では、乗組員が買い出しから調理まで、時間を割いて担っているというふうな実態があるかと思います。その中で、買い出しに八十分かかったりとか、全員分の食事を作るのに八十分かかったりとか、そういう実態があるということは国交省の調査でも分かっていることだというふうに思います。この司厨員が乗船しているのとしていないのとでは、やはり船員の食事環境であったりとか、あるいは労働環境というのは大きな差が出てくるというふうに思うんですね。

 国交省が令和三年にガイドラインを策定をされて、それに基づく取組をこの間されてきているというふうにレクでも説明をいただきました。このガイドラインができて既に三年以上経過をしているわけなんですけれども、このガイドラインに基づく取組で船員の食事が改善されてきているのか、調理時間が短縮されたり、あるいは食事の内容が改善されているのか、その効果についてお答えください。

宮武政府参考人 御指摘ありましたガイドラインは、船舶所有者などに推奨される取組として、船内の設備等の改善充実、寄港地の設備等の改善充実、宅配サービスなどの活用などを具体的に示しているものでございます。

 ただ、このガイドラインに基づく取組の効果につきましては、現時点におきまして把握できておりません。

堀川委員 ガイドラインを作ったんだけれども、その効果が把握できていないというふうなお答えでした。

 取組の実態を把握していないのであれば、これからでも実態を把握するようにすべきではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

中野国務大臣 御指摘の船内供食改善ガイドラインは、健康に配慮したおいしい食事の提供の実現、そして船員の供食作業の負担の軽減の観点から、船舶所有者が取り組むことができる具体的な取組を示したものでございます。

 このガイドライン、令和三年の十二月に作成をされたものですが、多くの船舶の所有者に取り組んでいただくために、まずは内容の周知をしっかり図っていくということが重要であるというふうに考えております。

 この周知を十分に図った上で、今後、現場で働く船員の声を伺いながら、実態調査の必要性も含めまして、引き続きどのような船内供食が望ましいのかについては検討してまいりたいというふうに考えております。

堀川委員 是非、船員の労働環境、その中での食事の要素というのは大きな要素だというふうに思いますので、実態調査も含めて検討をお願いをしたいというふうに思います。

 続いての質問です。

 司厨員ではない船員が、通常の運航業務に従事をしながら、乗組員の健康や好みだったり栄養バランスを考慮しながら、日々の献立を考えて食材の調達から管理から、おいしい料理を作り続けるということは極めて困難だというふうに思います。ガイドラインの中でも、そのことについて容易ではないというふうに書かれているわけです。

 その上で、ガイドラインには推奨される取組の事例というのが書かれてあるんですけれども、これらの取組では、船内供食は抜本的に改善されないというふうに思うんですね。それよりも、やはり司厨員を、船舶を運航させる上でなくてはならない船員として位置づけてはどうかというふうに思うんです。

 これまで議論してきたように、司厨員というのは、乗組員の健康や生活の満足度や定着率向上を左右する重要な存在だというふうに思っております。大臣からもそういうふうな答弁がありました。現時点で、千トン以上の船については司厨員の配置義務があるというふうなことなんですけれども、今すぐにとはなかなかいかないかもしれませんけれども、この司厨員の位置づけについて、改めて検討してはいかがでしょうか。

中野国務大臣 お答えを申し上げます。

 もちろん、船員の健康の管理や調理負担の改善のためには、専任の司厨員を乗船をさせるということも有効な方策ではございますが、一方で、アンケートの調査によれば、コストの問題ですとか、あるいは物理的なスペースの問題により、専任の司厨員を雇用することが厳しい船舶があるという現状についても把握をしているところでございます。

 ですので、こうした実情を踏まえまして、令和元年の七月に、船舶料理士資格の効率的な取得に関する検討会におきまして、司厨員がいない船舶においても健康に配慮したおいしい食事が取れるようにということで、船員の負担軽減に資するガイドラインを作成することが適当であるという方向性が取りまとめられたところでございます。これを受けて、先ほど、議論させていただいている、令和三年十二月の船内供食改善ガイドラインを作成をさせていただいたところであります。

 国土交通省として、ガイドラインの活用に向けまして周知を進めることで、船内調理業務の負担の軽減を図りつつ、健康に配慮したおいしい食事の実現を図ってまいりたい、このように考えております。

堀川委員 司厨員を配乗しようにも、財政的な負担が壁になっているというふうな指摘、認識をしております。貨物の船舶の場合、やはり荷主が払う運賃が船員の賃金や司厨員の配乗に大きく影響をしています。

 陸上の貨物運送を担うトラックでは、多重下請構造の下で、末端のトラックドライバーが生活できる賃金が受け取れるようにということで、国交省が標準的な運賃を示しています。内航船についても、同様の仕組みの導入に向けて検討を始めてはいかがでしょうかと思いますが、大臣、お願いします。

中野国務大臣 内航船員の労働環境の改善を円滑に進めていく上では、荷主や内航海運業者の間において、その原資の確保に必要となる適切な運賃や用船料の収受がなされることが不可欠でございます。

 国土交通省では、令和三年に内航海運業法を改正をしまして、契約書面交付の義務づけなどを措置をするとともに、内航海運業者と荷主が遵守すべき事項等を、内航海運業者と荷主との連携強化のためのガイドラインとしてまとめ、周知を進めているところでございます。

 また、令和七年度におきましては、適正な運賃及び用船料の収受に当たって必要となる、運賃や用船料を構成する費目に係る標準的な考え方の策定を行う予定でございます。

 国土交通省としましては、これらの取組を通じて、内航海運業者の適正な運賃、用船料の収受を後押しをしてまいりたいと考えております。

堀川委員 適正な運賃なしには、やはり船員の労働環境の改善というのは図れないというふうに思います。労働環境の改善のために、引き続きこの問題は取り上げていきたいということを申し上げて、質問を終わります。

井上委員長 次に、奥下剛光君。

奥下委員 日本維新の会の奥下でございます。

 船員法ということで、私の地元に海はございませんので、秘書時代に仕えた広島の議員の地元の方々に久々に連絡して、いろいろ現場の声を聞いてまいりました。この船員法、よりよいものを作っていくためには、やはり現場の声を反映させるということが一番大切だというふうに思っておりますので、そういった方々の声を今日は質問していきたいというふうに思います。

 まずは、適用範囲の明確化についてお尋ねします。

 船員法は、船員の権利や義務を定めているわけですが、その適用範囲が曖昧な部分があるという声があります。特に、どの業種や職業に適用されるのか、現場にいらっしゃる方々ですら分からなくなるときがあるということらしいんですけれども、これをもう少し明確に示していただきたいという声がありますが、いかがでしょうか。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 船員法の適用対象となる船員の範囲につきましては、船員法一条、それと施行規則一条において定めております。具体的には、日本船舶、日本船舶以外の日本法人が所有する船舶や国内各港間のみを航行する船舶などの船舶に乗り組む船長、海員、予備船員が適用対象となっております。

 ただし、これらの船舶のうち、総トン数五トン未満の船舶、湖、川又は港のみを航行する船舶、こういったものに乗り組む者につきましては、船員労働の特殊性の観点を踏まえ、船員法の適用除外としております。

 つまり、こういう、適用となる者、適用除外となる者、いろいろ錯綜しておりますので、曖昧さといいますか、分かりにくさを招いているものだと思います。

 ただ、個別の案件に応じまして、私ども、船員法を運用しております最寄りの地方運輸局において、お問い合わせいただけますれば、丁寧に対応させていただきたいと思っております。

奥下委員 ありがとうございます。

 いや、本当に、先ほど申し上げたように、現場でも、この場合はどうなんだろうという声があるみたいなので、是非きちんと対応していただきますようお願いいたします。

 次に、求人情報の虚偽待遇等の記載等禁止についてお尋ねしたいと思いますけれども、これまでに記載虚偽などで裁判案件になったことがあるんでしょうか。あったとしたら、どういった結果だったのか、教えてください。

宮武政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ありました船員の求人情報について、これまでに虚偽の内容を記載したことを理由に裁判となった例は承知しておりません。

 ただ、今回、法律に盛り込ませていただいた背景をちょっと御説明させていただきたいと思います。

 昨年、国土交通省におきまして、船員や海運事業者等を対象といたしまして、求人情報サイトなどにおける船員の募集情報についてアンケート調査を行いました。

 そうしましたところ、虚偽の労働条件、休暇期間ですね、虚偽の労働条件や給与水準について誤解を生じさせる表示、こういったものが求人情報サイトに掲載されていた事例、あるいは、最新でない求人が修正されないまま掲載され続けていた事例、募集情報などと実際の労働条件とが乖離していた事例、こういったものが存在することが明らかになりました。

 このため、今般、船員職業安定法を改正いたしまして、船員募集情報提供事業を位置づけるとともに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁止する措置を義務づけることといたしたものでございます。

奥下委員 ありがとうございます。

 虚偽というか、先ほど御答弁にもあったように、ホームページが更新されていなかったとか、そういったことが多いみたいですけれども。

 これまで、現場の話だと、最低賃金の設定基準であるとか、雇用契約の複雑性であるとか、労働条件の多様性が問題になって、現場では裁判を起こしたいという声もあったみたいですけれども、いろいろ、会社との話であるとか、なかなかそういった証明をすることが難しいということで取り合ってもらえなかった、それで裁判できなかったというような方々もいらっしゃるそうです。

 こういった求人情報、民間のサイトとかを見てみると、求人情報ともう一つ、そういった業界の声みたいなのがありまして、僕が見たところでは、海運業界はやめておいた方がいいと思われる大きな理由というようなのもあるんですよ。

 三つ、大きな理由を挙げられていまして、一、激務で多忙なイメージがある、二、世界情勢の影響を受けやすく不安定な側面があるから、三、環境問題の対策によりコスト増が予想されるからというようなことが大きく書いてあって、また別で残業時間とかにも触れられていまして、日本郵船が三十四時間から三十六・五時間、商船三井が三十六・二時間から四十八時間、川崎汽船が四十六から五十二・六時間の大体平均の残業時間であると。

 これは、求人広告で過去にそういった仕事をされた方とかからアンケートを取った、あくまでも聞き取り調査レベルのもの、数字らしいんですけれども、今の日本の平均残業時間が二十五時間というふうに言われているみたいですけれども、それから考えると、ほかの業種からしたら、やはりちょっと長い。やはりこういったものを見られた方が、本当にそういったふうに、幾らここを虚偽記載の禁止をしたところで、なってくるのかなというふうにも思います。

 船員法と労働基準法の双方において労働者の権利に関する規定が存在するがゆえに、特定の状況下では重複や不整合が生じる場合があると思います。これによって船員に対する権利の理解が難しくなる場合はあると思いますので、是非こういったところも注意して見ておいていただけたらなというふうに思います。

 次に、国際的な規制強化への対応についてお尋ねします。

 当然、船員法は各国で異なるわけですけれども、国際的な船舶運航において、船員が異なる法制度の下で働くことは当然あります。国際的な基準、先ほどからずっと皆さん質疑をされていますSTCW―F条約だったりILOの海事労働条約など、いろいろ指導があると思いますけれども、より国際的な基準に対する整合性を高めていくためにはどういったことをされていく必要があるとお考えでしょうか。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 船舶は、国際航海をいたしますので、いろいろな国の法を直接的に受ける場面が多々参ります。このために、国際的に調和した基準作りというのが昔から盛んに行われております。船員につきましても、IMO、国際海事機関において国際的な船員のルール作りが行われておりまして、かねてより、我が国におきましては、船員の安全性向上に資するように様々な貢献をしてまいりました。

 特に、今般のSTCW―F条約の改正におきましては、我が国が主導してきた改正の内容でございまして、漁船に乗り組む船員の安全性向上に着実に寄与するものであるというふうに考えております。

 引き続きまして、国際海事機関などにおきますルール作りに積極的に参画するとともに、国際的な信用を損なわないよう、条約で定められたルールを我が国としても遵守するなど、適切に対応してまいりたいと思っております。

奥下委員 是非、国際的な指摘や評価を受けながら改善に取り組んでいただいて、信用や競争力が損なわれることのないようにお願いしたいというふうに思います。

 次に、労働条件の適正についてお尋ねします。

 船員は長時間労働を強いられる場合が多く、適切な休暇が確保されないことがこれまで問題視されてきております。特に外航貨物船とかはそうだと思いますけれども、波の状況とか運航スケジュールによって労働時間が不均衡になることは理解できます。

 もう少し実効的な規則を現場の方では求められておりますが、この辺りの見解はいかがでしょうか。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました長時間労働とか長期乗船とか、そういったもので、船員の労働環境における課題が各種調査により明らかになったことを踏まえまして、令和三年に海事産業強化法による船員の働き方改革を行ったところでございます。

 船員の労務管理の適正化を図るために、船舶所有者に対しまして、労務管理責任者の選任を義務づけました。これにより、各船員の労働時間等の状況に応じた適切な措置を船舶所有者が講じる仕組みを構築したところでございます。

 このほか、船員の労務管理の適正化に関するガイドラインの作成ですとか、地方運輸局への船員労働の総合相談窓口の開設による相談体制の充実、こうしたことを通じまして、船員の働き方改革の実現に取り組んでまいりました。

 これらの取組の実効性につきましては、引き続き船員労務監査などを通じて担保してまいります。

奥下委員 是非、先ほどの求人情報にもつながる話とは思いますが、持続可能な労働環境を構築していくことが必要だと思いますので、引き続き、労働時間は減ってきているとはいえ、きちんと対応していっていただきたいなというふうに思います。

 次に、福利厚生についてお尋ねします。

 船員の福祉制度について、十分な規定がない場合や実効性を欠く場合があるというふうなお声があります。船員の健康管理や生活環境の向上に向けた、より具体的な施策がもう少し欲しいという声がありますが、いかがでしょうか。

宮武政府参考人 委員御指摘の船員の健康管理につきましては、船員法に基づく乗船時の健康証明書の確認に加えまして、先ほど申し上げました令和三年の海事産業強化法による働き方改革に資する制度改正に併せまして、船員労働安全衛生規則を改正いたしまして、令和五年四月から、船員向け産業医制度の導入、健康検査結果に基づく健康管理、過重労働対策、メンタルヘルス対策といった四つの制度を新たに導入したところでございます。

 また、生活環境の向上につきましては、今般の船員法改正案におきまして、海上労働の更なる安全性向上や職場環境改善に資する措置として、船舶所有者に対しまして、快適な海上労働環境を形成するよう努めなければならない旨の努力義務を課すこととしております。

 船員の健康管理につきましては、船員労務監査などの機会により、適切な実施を促してまいります。また、生活環境の向上については、快適な海上労働環境を形成するための努力義務に係る措置の着実な実施に関しまして、今後、ガイドラインの策定、公表を予定しているところでございます。

 引き続き、関係者の皆様の意見を伺いながら、船員の労働環境向上のための取組をより一層進めてまいります。

奥下委員 先ほど、たがやさんのときの質疑にもありましたように、大臣の答弁で、船員の居住改善であったり、堀川さんのコックの問題であったり、本当にそれしか楽しみがない、そういったことを踏まえて、そういった御指導をしていただいているのは分かっているけれども、会社側としては、低コストでより効率のいいつくりをしようとするので、やはり乗られている側の方たちとはちょっと気持ちが乖離している、そういったお声があるので、是非こういった声をお届けしておきたいと思います。

 次に、安全管理体制についてお尋ねします。

 船員の安全に関する規定や管理体制が現場の実情に適合しない場合が多々あると聞いております。特に事故の防止策や緊急時の対応策が不十分であると考えますが、この辺りの見解はいかがでしょうか。

宮武政府参考人 船員の安全衛生、特に船内作業における事故防止につきましては、海上労働の安全性向上、担い手確保の観点からも重要であると考えております。

 船員の安全衛生につきましては、作業環境の整備などの安全基準や船内作業による危害の防止を図るための必要な事項などを船員労働安全衛生規則に定めまして、船員労務監査などにより遵守状況の確認を行い、その確保を図っておるところでございます。

 また、船内作業における事故防止のために、国土交通省では、船員災害の減少目標や船員災害の防止に関し基本となるべき事項を定めました船員災害防止基本計画を五年ごとに作成しております。

 さらに、毎年、船員災害発生実績を把握した上で、年度ごとの具体的な取組方針を定めるなど、継続的な見直しを行うことで、現場の実情に適合した船員災害防止に取り組んでいます。

 今後とも、船舶所有者、船員、関係団体などの意見を伺いながら、総合的かつ計画的な船員災害防止対策を推進してまいります。

奥下委員 私、実家が建築資材の会社をしているものでして、特にセメントとか運搬、大分特別な職業だと思いますけれども、そういった方々、船に乗られている方は、やはりセメントの粉じんであったりとか化学物質への暴露が健康に影響を及ぼして、体調を崩した方も過去にはいらっしゃるということでした。

 これは各会社の対応によるとは思うんですけれども、是非、労働基準法とかにおいても、労働環境の安全衛生に関する基準が当然設けられていますけれども、船員法では海上での独特の環境に適応した別の基準がもうちょっとあってもいいんじゃないのかなというお声がありますので、僕が今回聞いた声はかなり特殊な職業だと思いますけれども、そういったほかの特殊な職業はいっぱいあると思うので、もうちょっとそういったことも視野に入れて、今後、よりよいものにしていっていただけたらなというふうに思います。

 次に、教育訓練の制度についてお尋ねします。

 船員の教育や訓練に関する制度が不足しているという指摘がございました。船舶事故も増えている中、もう少し質の高い訓練がなければ船員の安全運航や専門性の向上に支障を来す可能性があるというふうに考えますが、より十分な教育体制の構築を今後されていく見解はございますでしょうか。

宮武政府参考人 今後の訓練体制についての御質問でございます。

 まさに、今回、法律案に含めております基本訓練、これが該当するのではないかと考えております。

 基本訓練のうち、特に実技講習として生存訓練、消火訓練、これが求められております。これらの訓練は、非常時に船員の安全を確保するために必要となる基本的な知識、技術を習得するための重要な訓練でございます。これを実施することによりまして、船員の安全確保というのに非常に役立つのではないかと考えております。

奥下委員 御答弁いただいたように、生存訓練、消火訓練ですね。これは五年ごとに実技試験が義務づけられているわけですけれども、現状、その船員の方々、やはり高齢化していることや外国人の方も増えていることから附帯にも書いておりますけれども、私、個人的には五年ではなくて、もう少し、三年であるとか、やる講習の回数をもうちょっと増やしていった方がいいんじゃないかなというふうに思っております。

 あと、これは分からないですけれども、一回の講習料が十二万ですか、十二万だから、高いから五年おきにしているのかなというふうにも一瞬思ったりもしたんですけれども、こういったところの改善も是非今後お願いしたいなというふうに思います。

 次に、船員の権利についてお尋ねします。

 船員が持つ権利、労働権や人権についての保護がまだ不十分じゃないかと。特に外国人籍の船員、移民船員の権利について、これは言うとあれですけれども、漁船ですかね、なんかは特に外国人の方が多くて、いまだに、いまだにという言い方は変ですけれども、いじめとか、やはり対立があったりすることがあるらしいです。

 こういったこともあるので、より明確な規定を設けていただきたいという声がありますが、いかがでしょうか。

宮武政府参考人 外国人船員に対するいじめ、嫌がらせに関する御質問でございます。

 船員の労働に関する関係法令につきましては、日本人船員と外国人船員との別にかかわらず、我が国の船員法の適用を受ける船舶に乗り組む者を保護対象としております。

 船員法につきましては、船内での苦情処理手続に係る規定を設けております。具体的には、船舶所有者に対しまして、労働に関する法令などに関する苦情につきまして、適切に処理を行わなければならないことを義務づけております。

 また、パワーハラスメントを始めとした様々なハラスメントの防止対策につきましては、各種法令に基づきまして、事業者に対し、必要な措置を講ずることを義務づけているところでございます。

 また、地方運輸局におきましても、船員労働の総合相談窓口を開設しております。いじめや嫌がらせに限らず、船員労働に関しまして幅広くお問合せをいただく体制を整えておるところでございます。

 これらの措置を適切に運用するとともに、関係者の意見も伺いながら、外国人船員も含みます船員全般の労働環境の改善に、引き続き取組を進めてまいります。

奥下委員 相談窓口もあるということですが、なかなか、相談に行ける、電話する時間がないとか、言葉の問題でなかなか伝わりにくいというような現場のお声はありましたということはお伝えしておきたいと思います。

 外国人の方々が、自分たちの、僕が見たのはベトナム人の方ですけれども、コミュニティーに対して、自分たちの職場はこんなのですということをユーチューブで発信されているサイトが幾つかあります。今の求人広告もそうですけれども、若い方を求人で求めていくのであるならば、多分彼らは、そういった広告よりも動画でやはり、今の御時世、見ていくんだと思うんですよね。

 そうした中で、例えば、陸上自衛隊なんかも自分たちのPRでユーチューブをやられています。海上自衛隊もやられていますけれども、海上自衛隊は何か訓練ばかりで、ちょっと格好いいなというのがあるんですけれども、中には自分たちの職場環境を紹介するようなものもあって、やはり、昔でいうタコ部屋みたいな、個室はない、いや、けれども、ベッドがいっぱい並んでカーテンがかかっているから個室なんですみたいな動画もありました。

 やはり今の子たちというのは、なかなかそういうのを見ると、多分僕は引いちゃうんじゃないかなというふうに感じます。だから、こういった動画一つの配信で大きく、今、民意が動く時代でもあるので、こういったこともなかなか注意して見ていただきたいですし、こういったことにも力を入れていっていただきたいなというふうに思います。

 船員法に関する問題点は多岐にわたると思います。十五以上の法律や規則、いろいろなことが絡んでくると思うので、時代の流れに合わせて新たな課題にも直面していくと思いますが、今回の改正は、実効性の向上、国際基準との整合性を重視することが大切であって、関係者間の共闘や情報共有、これを促進していくことでよりよい法案となることに努めていただきますようお願いいたしまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

井上委員長 次に、勝俣孝明君。

勝俣委員 自由民主党の勝俣孝明でございます。

 本日は、船員法等の一部を改正する法律案ということでございまして、質問させていただきます。委員の先生方からの質問がありましたので重なる部分があると思いますけれども、御容赦いただければと思います。

 まず、基本的な考え方として、私たち、海洋国家である我が国において、海上輸送は国際競争力を強化していく上で必要不可欠であります。まさに国民生活並びに我が国の経済活動を支える社会基盤となっております。その海上輸送をやっていく中で、本当になくてはならないのが船員の皆様であり、海運業や漁業を支えていただいているわけであります。

 本法案の改正で、先ほど来から注目をされております、まず船員の皆様の安全性の確保について、特に今回、漁船員の皆様の安全性の確保についての質問から始めさせていただきます。

 最初に、先ほど来から出ておりますSTCW―F条約の締結に伴う基本訓練、特に実技訓練についてお伺いをさせていただきます。

 基本訓練は、漁船員の皆様の命を守るための大切な訓練であります。安全航海を行う上で非常に重要であるというふうに認識をしております。その上で、STCW―F条約は漁船員の資格や訓練に関する国際条約でありまして、私の地元、静岡県沼津市においても、漁船の寄港地になっておりまして、今回の条約締結によって影響を受ける漁業者の方々も少なくないわけであります。

 STCW―F条約の締結によって、漁船の安全を確保するための様々な措置が国内制度として取り込まれることになりますが、その中でも、基本訓練については実技での講習が義務づけられることから、先ほど来からありますように、これは影響も非常に大きいものというふうに考えられます。

 今回の改正によって、具体的にどういった漁船が対象となり、今後基本訓練を受けなければならない漁船員の皆さんはどれぐらいいらっしゃるのか、お伺いをいたします。

宮武政府参考人 新たに義務づけの対象となる漁船につきましては、STCW―F条約に基づき、EEZ外、排他的経済水域外において航行する国際総トン数三百トン以上の漁船を予定しております。対象となる漁船の隻数は、最大で約三百八十隻を想定しております。

 具体的には、STCW―F条約締約国に寄港する遠洋マグロはえ縄漁船や遠洋底引き網漁船、海外まき網漁船、我が国EEZを越えて締約国に寄港せず公海等で操業するサンマ棒受け網漁船、イカ釣り漁船などが想定されるところであります。

 また、対象となります漁船員の数は、水産関係団体に確認いたしましたところ、日本人が約二千三百人、外国人が約三千百人と承知しております。

勝俣委員 ありがとうございます。

 全国で約三百八十隻、それから、二千三百人、外国人三千百人、非常に多くの皆様が影響を受けられる、また、訓練を受けなければならないということになります。

 繰り返しになりますけれども、この基本訓練は、万が一の危険が迫ったときに、漁船員が自ら命を守るために必要となる知識や技能を身につける非常に重要なものであるというふうに認識しておりますが、先ほど来からありますように、商船については既に義務づけがなされております。

 漁船と商船では、まさに、皆さんから出ておりますけれども、活動の拠点となる地域やスケジュール感なども異なるわけですね。ですから、商船を対象に今までは形成されてきた、先ほど大臣からもありましたけれども、民間の訓練機関による実技講習の実施体制だけでは、漁船の場合は対応が非常に難しいのかなというふうに考えます。

 そこで、新たに実技講習の実施が義務づけられている漁船について、漁船員の皆様に、どのような基本訓練をどこで受けるのか、そして、先ほど来から出ておりますけれども、どれほどの負担が生じるのか、早期の実施体制の構築をどのようにしていくのか、お伺いをいたします。

宮武政府参考人 基本訓練の内容、それと、どこで受けられるのか、どれほどの負担が生じるのかの御質問でございました。

 基本訓練につきましては、生存訓練、それと消火訓練、二つの実技講習がございます。生存訓練は、文字どおり、船から脱出すべき状況になったときに海に飛び込むための訓練。あるいは、消火につきましては、機関室で火災が起こったときに消火するための訓練。こういったものを実際に実地でやっていただくという訓練になります。

 今般、この義務化によりまして、五年ごとの実施が求められまして、これが新たに漁船に義務づけられることとなります。

 一方、実技講習の実施場所や費用などにつきまして、一部の漁業関係団体から、受講場所の多くが西日本に所在しており、漁港の、基地港が集まる東日本などに少ない、あるいは、受講費用が一人当たり十二万から十六万円程度になるのであれば負担感が大きいといった懸念の声をいただいているところでございます。

 国土交通省といたしましては、水産庁さん、あるいは水産関係団体と連携しながら、漁船の基地などの周辺地域で低廉に実技講習を実施できる体制を整備するための方策について、現在、検討を進めております。

 具体的には、令和七年度中に、漁船の基地港の周辺地域でモデル事業を実施いたしまして、関係者が主体となって、地元の施設や自社の機材などを活用することにより、低廉な費用で実技講習を実施する方策を検証します。また、モデル事業の成果を踏まえましてガイドラインを作成いたしまして、漁船の基地港の周辺地域に広く展開します。この取組などによりまして、できる限り低廉に実技講習を受けることができる環境整備を図ってまいります。

勝俣委員 ありがとうございます。

 先ほど来から、十二万円から十六万円という負担の額が出ております。やはり、できる限り負担を減らしていくという努力が非常に重要だというふうに思いますし、水産庁さんと連携しながら、先ほど局長からもありましたけれども、モデル事業を通して、できる限り負担を減らしていくように、また今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。

 私は今、党の方で、現在、国土交通部会長を拝命しておりますが、今回の本法案の国会提出プロセスにおいて、国土交通省と、今日は水産庁さんに来ていただいておりますけれども、水産庁に対して、実技講習の義務づけの内容を、関係する漁業者の方々に御理解いただけるように、丁寧に説明、周知すること、また、関係する漁業者の皆様の懸念には、先ほど来ありますように、負担の話ですとか、そういった懸念には丁寧に耳を傾けて対応するように徹底してもらいました。

 本法案が成立した暁にも、実技講習の義務化の円滑な実施に向けて、引き続き、関係の漁業者の方々と調整を丁寧に進めていくことが重要であるというふうに考えております。

 国交省及び水産庁の御見解をお伺いいたします。

宮武政府参考人 少々繰り返しになりますけれども、実技講習は、非常時に船員の安全を確保するために必要となる基本的な知識、技術を習得するための重要な訓練であります。

 漁船につきましては、今回の法改正で、実技講習の実施が新たに義務づけられることになりまして、関係する漁業者や漁船員の負担が増えることになります。

 国土交通省におきましても、水産庁や水産関係団体とも連携しながら、先ほど申し上げました負担軽減策などについて検討してまいります。

 今後、実技講習の運用に当たりましても、関係者の御意見や御懸念に耳を傾けまして、丁寧に御説明させていただきながら、取組を進めてまいります。

河南政府参考人 お答えいたします。

 今回の船員法改正案によります実技講習の義務づけは、漁船の運航、操業の安全性を高めるものであり、漁船員の命を守るという観点からも、農林水産省として非常に重要と考えてございます。

 私どもといたしましても、例えば、遠洋漁船の基地港の周辺地で安価、簡便に訓練が受けられるようにするなど、実技講習に当たって、漁業者の皆さんに過度な負担が生じないよう、水産業界からの御意見を丁寧にお伺いしながら、国交省と連携して対応してまいりたい、このように考えてございます。

勝俣委員 ありがとうございます。

 いずれにしましても、安全性というのが非常に大事なことであります。是非、国交省そして水産庁、連携しながら、今後丁寧に行っていただきたい、そして負担をできるだけ減らしていただきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。

 時間でございますので、最後に一つだけ、海技人材の確保について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 委員の先生方からもお話が出ておりますけれども、船員不足を解消していく、これは、長い目で見て、将来の船員の担い手となり得る層の裾野を拡大していくことが必要なのかなというふうに考えています。そのためには、船員という職業がどのようなものなのか、そして、職業としての船員の魅力はどこにあるのかを社会の幅広い層に知ってもらうことが重要であるというふうに考えております。

 船員不足の解消に向けて、船員という職業を知ってもらい、そして、船員という職業を選んでもらうための情報発信の強化をしていくべきであるというふうに考えますが、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

宮武政府参考人 御指摘ありましたように、国土交通省といたしましても、船員不足の解消に向けて、船員という職業を知ってもらう、選んでもらう、そのための情報発信は極めて重要であると認識しております。

 これまでも、国土交通省のみならず、関係団体や民間事業者におきまして、特に小中学生といった若年層を対象としました体験乗船や施設見学、出前講座などを始めとしました様々な取組を実施してきているところでございます。

 今後は、これらの取組がより一層効果的なものとなるよう、国土交通省が中心となりまして、官労使の関係者のみならず、教育やリクルーティングの専門家も加えた検討の場を立ち上げ、重点的に取り組むべき訴求対象や訴求手法、これに関する全体的な方針を策定しまして、着実に実行していくことにより、情報発信を強化してまいりたいと考えております。

勝俣委員 終わります。ありがとうございました。

井上委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。

 今日は、船員法等の改正案ということで、御質問の機会をいただきまして本当にありがとうございます。

 私、三重県在住でございますが、実は三重県というのは水産県でございまして、まさしく船員を養成する、例えば鳥羽商船でありますとか県立の水産高校、こういったものがございます。更に言えば、港といたしましても、四日市港とか、また鳥羽港とかがございまして、私も、本当に海や港に親しみながら、おおらかに育ってきた一人でございます。さらには、船員の住民税の減免、これも実は、四日市、鳥羽市、志摩市と、三重県は三市で実施をさせていただいておる。こういった、本当に船員に対して理解のある県だというところがございます。

 初めに、総論的に、船員の確保とか育成の推進について、既にもう、しんがり、ラストツーでございますので重なるところもありますが、質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 我が国の少子高齢化の進行や出生数の減少による人口減少によりまして、あらゆる産業で後継者の確保が困難となっている中、船員の高齢化でありますとか後継者不足、これも深刻な問題となっております。

 例えばですが、外航海運においては、トン数標準税制の導入に当たり、国は、経済安全保障の確立を背景に、確保すべき日本籍船と外航日本人船員の数値目標を設定して以降、日本籍船は増加をしておりますが、既にいろいろな指摘がありましたけれども、外航日本人船員数は一向に増加をしておりません。

 また、内航海運においては、担い手の確保、育成として、船員の働き方改革の着実な推進と法の遵守により、船員という職業を魅力的な職業にしていかなければいけない、こういった方向性も出されています。

 さらには、水産産業においても、漁船員の高齢化や後継者不足は顕著でございまして、特に船舶職員の不足、これは深刻な問題となっております。

 四方を海に囲まれておる我が国においては、国民生活の安定や経済の維持発展には安定した海上輸送、これが不可欠でありまして、それを担う船員の確保でありますとか育成、これは喫緊の課題でございます。

 今回の改正案では、海技人材確保の間口の拡充として、船員職業安定制度の見直し、これが明記をされておりますが、船員の確保、充実に向けては、さらに、これだけではなくて、力強い施策、これが必要だと私は考えます。

 そこで、国交省としては、今回の法改正にとどまることなく、国の各種計画とか基本計画、これに多く、いろいろな船員の確保、育成の具現化、これが明記されておりますが、実効性ある施策を総動員すること、さらには早急に講じること、これが大事だと思いますが、この点について国交省の見解とさらには決意、これをお伺いしたいと思います。

宮武政府参考人 我が国の経済、国民生活に大きな役割を果たします海運の安定的な活動を確保する上で、船員の確保、育成は大変重要と考えております。

 船員の確保、育成に向けましては、船員の計画的な雇用、育成に取り組む事業者への支援などに取り組んでおりますほか、船員の労働環境を改善する観点から、船員の働き方改革を推進しているところでございます。

 さらに、近年の船員不足の深刻化等を踏まえまして、昨年十二月には、海技人材の確保のあり方に関する検討会の中間取りまとめにおきまして、船員養成ルートの強化ですとか、海技人材確保の間口の拡充などの五つの方向性に沿った対策を講じていくことが必要であるとされたところでございます。

 今回の法改正は、この中で法律を改正する必要があるとされた部分について今回提出させていただいておりますけれども、それ以外にも、総合的な対策として、養成ルートを強化するといったことも含まれております。

 これらの対策を総合的にまず強力に推進すること、さらには、御指摘のありましたように迅速に進めていくことによりまして、船員の将来にわたります安定的な確保、育成の実現に努めてまいります。

中川(康)委員 ありがとうございます。

 これは、もう十年来議論をされてきて、いろいろな法改正をされてきているんですが、本当に、評価すべきところもあれば厳しいところもあると思うんですね。ですから、本当に総動員することが大事だと思うし、また、これはやはり早急にやっていかないと、遅くて間に合わなかったという状況もあるかと思いますので、そこをまず総論的に伺わさせていただきました。

 そして、加えて、次に、この養成機関ですね、これはもう何人の方から与野党を超えて質問が出ていますが、私も確認をさせていただきたい。特に、海技教育機構を始め船員養成教育機関の維持及び定員拡大、ここについてお伺いします。

 私ども三重県も、鳥羽商船がありますし、水産高校があります。今非常に定員が確保できていない。水産高校なんかは学科再編までしているんですね。

 まず、海技教育機構を聞きたいと思うんですが、今回、海技人材の確保のあり方に関する検討会の中間取りまとめにおいて、特に一般大学の卒業生に対応する養成ルートの強化を図ることが示された海技教育機構については、平成二十九年六月に取りまとめられました内航未来創造プランの中で、五百人規模を目標に掲げて、養成定員を段階的に拡大する方針、これが示されております。私も、この数字を見させていただきました。

 しかし、この海技教育機構の運営交付金、これは多くの方から指摘がありますが、二〇〇一年度には約百五億円あったものが、二〇二四年度には約六十五億円、さらには、二〇二五年度は補正と当初を合わせて七十三億五千万円と少し持ち直したものの、やはり厳しい状況、これは変わらないと思います。

 このような運営の原資となる運営交付金の削減は、船員養成数の増加を図れないばかりか、新たな技術等への対応を図る船員教育への取組など、これを阻害するものでもあります。国交省としては、船員養成の要となる海技教育機構の練習船や学校施設の充実、さらには教員の確保など、これも定員を満たしておりません。

 具体的な施策を講じるための予算の更なる拡充と併せ、定員の拡大を図っていただいていますが、ここについて、やはり実現をする方向性、これを出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 また、もう一つ。海運業の現場において、求人ニーズが高い特に内航船の船員数については、その総数は微増傾向にあり、新規就業者数も増加傾向にありましたが、近年の状況を見ると、少し伸び悩み、これも見られるところであります。

 そこで、この内航船の船員数の確保についても、さきに述べた海技教育機構や水産高校など各種船員養成機関における新規就業者数の増加に向けた新たな強化策も含めた具体的な取組、これを進めるべきだと思いますが、国交省のお考えと、今後の具体的な取組について御答弁を願います。

宮武政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の船員養成の中核を担います独立行政法人海技教育機構の予算につきましては、御指摘ありましたように、令和七年度当初予算で約六十四億円を確保したところですけれども、引き続き、必要な予算の確保に努めてまいります。

 また、海技教育機構の入学定員につきましては、またこれも御指摘ありました、段階的に拡大しておりますけれども、現在、令和六年度におきましては四百五名となっております。

 入学定員の更なる拡大につきましては、学校施設や練習船の収容人数など受入れ側の制約要因がありますけれども、どういった工夫ができるのか、業界関係者の意見を聞きながら検討してまいりたいと思います。

 別途御指摘のありました内航船に対する対策でございます。

 内航船の船員数の確保につきましては、先ほど申し上げました海技人材の確保のあり方に関する検討会におきまして、例えば、水産高校との連携強化、あるいは陸上からの転職者に対応した養成ルートの強化、これの取組が必要であるというふうな旨が示されております。

 国土交通省といたしましては、この中間取りまとめに沿いまして、海技教育機構の養成基盤の強化を図りますほか、先ほど申し上げました水産高校との連携強化、あるいは陸上からの転職者に対応した養成ルートの強化、これにつきまして、水産高校を所管する文部科学省とも緊密に連携いたしまして、船員の安定的な確保、育成につなげてまいります。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 いろいろな手法があると思うんですが、やはり、船員の養成機関をどう充実、拡充していくのか、さらには運営交付金等予算を確保していくのか、これは大事な問題だと思います。今日の船員法の改正の中で、各党からここの提案が出ているということは、やはりそこに一つの肝があるということだと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 具体的なところを一つ聞きます。

 若手船員の定着促進としての情報通信インフラの整備について、これは私、総務委員会等でも何度も指摘をさせていただいておるんですが、地域社会や家族と遠く離れた海上という特殊な環境の下で就労する船員にとりまして、例えば家族とのコミュニケーションや陸上社会とのつながり、さらには船員のメンタルヘルスの維持等の観点からも、海上における情報通信インフラの整備、これは必要不可欠だと思っております。

 本改正案では、海技人材の多様な働き方の促進と職場環境の改善として、通信環境の整備も含めた快適な海上労働環境形成の促進が明記されておりますが、海上においても陸上と同様な情報通信サービスが利用できるよう、高速衛星通信が利用可能となる海上ブロードバンドの設備の設置促進や料金の低廉化に向けた支援、これは若手の船員の更なる定着促進を図る意味において私は急務な取組だと思っております。

 海上における情報インフラ整備に対する国交省のお考えと、最近の現場における取組の状況、ここのところを御答弁願いたいと思います。

宮武政府参考人 国土交通省におきましては、総務省、農林水産省とともに、海上ブロードバンド対応関係省庁連絡会議や、そのフォローアップ会合を開催いたしまして、低軌道衛星を活用した海上ブロードバンドの効率的な普及に向けた取組を進めてまいりました。

 昨年二月には電波法関係審査基準が改正されまして、日本籍船において低軌道衛星を利用した衛星ブロードバンドサービスを領海外でも利用できることが可能となりました。これによりまして、従来と比較して安価に海上ブロードバンドサービスの利用が可能となり、海運業界でも普及が進みつつあると認識しております。

 今回の改正法案におきましては、国が快適な海上労働環境の形成のために船舶所有者が講ずべき措置の指針を定めることとしております。本法案の施行に当たりましては、この指針の中にインターネット利用環境の改善のための措置を定めまして、安価な海上ブロードバンドサービスの普及を一層促進してまいりたいと考えております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、関係省庁と連携して、船舶における海上ブロードバンドの普及に努めてまいります。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 若手船員にとってここは大事だと思うんですね。能登半島地震でも活用されたスターリンク、これの受信機を各船舶に置くことによって、大きくやはり状況は改善すると思うんです。ですから、そこを是非進めていただきたいと思うし、そこに対する支援もお願いをしたいということで、この提案を質問させていただきました。

 今、大臣戻っていただきまして、ありがとうございます。

 最後、STCW―F条約について私もお伺いさせていただきます。

 ここも何人かの方が御質問していますが、本改正案では、今回、我が国のSTCW―F条約への加入に合わせて、国際総トン数三百トン以上かつ限定水域外を航行する漁船及びその全ての漁船員に対して、基本訓練としての生存訓練及び消火訓練の実技講習及び五年ごとの能力維持証明を義務づける、これが決定をされました。

 しかし、この基本訓練、特に実技講習については、水産業関係団体から、例えば、義務づけに向けてのスケジュールの難しさや、実施期間が限定されていること、さらには、経済的負担の軽減や漁船員における高齢者の負担への配慮など、幾つかの懸念が示されたところであります。

 そこで、国交省としては、これら水産業関係団体より直接ヒアリングを行うとともに、今回、これら基本訓練を円滑に推進するために、各種配慮、対応を検討したと伺っていますが、この具体的な配慮について、各々の懸念事項に対し、どのような内容を検討し、そして決定したのか、この点、御答弁願いたいと思います。

宮武政府参考人 実技講習は、非常時に船員の安全を確保するために必要となる基本的な知識、技術を習得するための重要な訓練であり、STCW―F条約の締結に際して一定の漁船員に義務づけられるものであります。

 一方、実技講習の実施場所や費用などについて、一部の漁業関係団体から、受講場所の多くが西日本に所在しており、漁船の基地港が集まる東日本などに少ない、受講費用が一人当たり十二万から十六万円程度になるならば負担感が大きい、国内滞在期間などが限られる中、訓練体制の整備状況を踏まえた義務づけをやってほしい、訓練受講による高齢者の負担といった懸念の声をいただいているところであります。

 このため、国土交通省といたしましては、水産庁や水産関係団体と連携しながら、漁船の基地港の周辺地域で低廉に実技講習を実施できる体制を整備するための方策や、訓練体制の整備状況を踏まえた義務づけスケジュール、高齢者など健康上の理由により実施困難な場合の見学への代替など、実施方法の合理化につきまして現在検討を進めております。

 今後、実技講習の運用に当たりましても、関係者の御意見や御懸念に耳を傾け、丁寧に説明しながら取組を進めてまいります。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今回、そういった意味においては、一旦立ち止まって、そういったことを、現場で話を聞いていただいた、非常に大事だったと思いますし、やはり円滑に推進していくこと、これが大事だと思いますので、その点、お願いを申し上げまして、質問を終わります。

 大変にありがとうございました。

井上委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 有志の会の福島伸享でございます。

 中野大臣、参議院との往復、お疲れさまでございます。大臣への質疑は一番最後でありますので、息を整えていただけたらというふうに思います。

 私も、妻の祖父が外航船の船員であったり、私自身、ヨット乗りですので、小型船舶操縦士の免許も持っておりますので、この分野は、ある程度、なじみのある分野なので、質問させていただきたいと思います。

 今回のSTCW―F条約は、海上における安全確保のため、漁船員の資格要件等を定めるものでありますけれども、これは最初、我が国は批准をしておらず、対象漁船を我が国の不利な長さ要件からトン数要件に変えるなど、条約改正の努力をして昨年の採択に参加したということで、これまでの御尽力にまず敬意を表したいというふうに思います。

 資料一がございますけれども、これは締約国、STCW条約の方は百五十か国が加盟しておりますけれども、こっちのF条約の方はほぼ、多くが西側のヨーロッパやアフリカを中心としておりまして、我が国のなじみが深い中国、韓国、あるいはインドネシアを除く東南アジア諸国などは批准しておりません。

 政府は、本条約改正の議論を主導した我が国として、漁船の安全に関する国際ルールに積極的に取り組む姿勢を対外的に示すというふうに説明しておりますけれども、これは、例えば、条約締約国は、改正船員法第百二十条の三や改正船舶職員法第二十九条の三に基づいて、我が国に入港する外国漁船がSTCW―F条約に加盟していようとしていまいと検査できるといった、こうした規定もあるわけでありまして、我が国としてこの条約をどう使っていくのかというのは非常に大事だと思っております。

 特に、先ほど申し上げましたように、アジアがほとんど加盟していない、隣国が加盟していないというときに、我が国が先んじてこれに加盟するということにどういう意義があり、戦略を持ってこの条約に加盟したのかという、その点について外務省、御説明をお願いいたします。

松本大臣政務官 お答えいたしたいと思います。

 STCW―F条約、これは、言うまでもなく、漁船員のための訓練、資格証明及び当直に係る国際基準を定めたものでございます。

 これを締結する意義というのは三つございまして、我が国の漁船員の安全を含む海上における人命及び財産、安全の確保に貢献するものであるというのが一点。

 二点目が、本条約が規定する漁船員の証明を保有しない日本籍漁船が他の締結国の港に寄港する際に、その漁業活動に支障が出る、要は、資格証明を持っていないということになると、次、出港できなくなりますから、というのが二つ目。

 三つ目が、この条約そのものの国際的なルール作りに我々が積極的に関与していく意義があるという、この三つでございます。

 そして、何よりも、遠洋漁業を行う我が国の漁船の円滑な漁業活動を確保するために必要なものというところで、委員がおっしゃる戦略的なことを考えて締結するものでございます。

福島委員 もうちょっと、アジアでなぜ最初なのかという辺りを説明していただきたかったんですけれども、その点は、まあ、外務委員会じゃないので、別にしたいと思います。

 資料二を御覧になっていただきますと、これは左側のグラフが、カラーですけれども、世界の主要マグロ類の漁獲量ですけれども、一番下が赤で、日本は一九八〇年代ぐらいをピークとして、ずっと下がっております。その間、他国は物すごく増えております。右は日本の主要マグロ類の大洋別の漁獲量ですけれども、特に太平洋におきましては、やはり一九八〇年ぐらいをピークとして、があっと下がっているということであります。

 これは、実績が下がっていくと、今後、TAC、つまり最大漁獲量の割当てですね、それも下がる可能性もあるんじゃないかという心配も現場からは出ております。

 これは、一つの要因として、船員が足りていないので、需要はあるんだけれども、漁船の運航を維持するのが困難で、それで漁獲量が低下しているという声もありますし、現実に、法令の基準を満たすために、八十代以上の人に乗ってもらって遠くまで行ってもらうということもやっているというのを、私の知人などからは聞いているところでございます。

 こうした深刻な、漁船の、特に遠洋漁業の人員不足、こうしたものについて水産庁はどのように認識しているか、簡潔にお答えください。

河南政府参考人 お答えいたします。

 我が国の遠洋マグロはえ縄漁業の漁船数、近年減少傾向にございまして、これに伴い、漁獲量も低下をしているところでございます。

 その要因といたしましては、冷凍マグロの魚価の低下、燃油高騰など様々なものがあると考えておりますけれども、御指摘いただきました、特に海技士の確保が困難となっていること、これもその一つであって、重要な問題であると認識をしております。

福島委員 ありがとうございます。まさにそういうことなんですね。

 今回の法改正では、改正船舶職員法第二十二条の三で、先ほど来議論がありますように、STCW―F条約で、締約国が発給した資格証明書を受有する者であって国土交通大臣の承認を受けたものは船舶職員になることができるということで、相互認証のようなものをやって、外国人も入れることができるようになっております。

 これまで、例えばマルシップとか二十条特例といった形で外国人を入れて船員不足を補うということもやってきたわけでありますけれども、商船では既に、STCW条約に基づいて、まず二国間承認協定を締結し、その後、我が国の海事法令に関する講習を修了し、なおかつ、特定船員教育機関の卒業者とか、あるいは民間審査員による能力審査、海技試験官による承認試験などを経て、国土交通大臣による承認を行って、日本船籍への乗組みを認めております。

 今後、このSTCW―F条約の批准に基づくこの法律に基づいて、手続というのは、このSTCWと同じようなものになるのか、簡潔にお答えください。

宮武政府参考人 御指摘の点、現時点におきましては、手続等をまだ明確に定めておりません。

 今後、その具体的な手続につきましては、関係者の御意見を伺いつつ、検討してまいりたいと考えております。

福島委員 今のこの法律を作る段階で手続等は明確ではない、基本的な方向性も答えられない、私はこれは非常に不透明だと思うんですね。

 後で最後にまた大臣と議論いたしますけれども、私は、やはりこのルールの予見性とか柔軟性とか現実性というのが大事だと思っておりまして、また、STCWの世界とFの漁業の世界というのはまた別の現場の実態もあるんじゃないかというふうに思っております。

 私は、この運用面のルールを作ることが極めて、この制度を円滑に運用するためには大事だと思っていて、今の答弁じゃ全然分かりません。これから関係者と協議をするということでありますけれども、私は、ここは是非、漁業の現場の実態を踏まえたルール作りをしなければならない、現実的にしっかりと運用されるようなものにしなきゃならないと思っておりますので、水産庁、この点について積極的に関与していただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

河南政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の承認制度につきましては、今後、国交省において詳細な制度設計がされていくものと承知をしておりますが、農林水産省といたしましても、水産業界の声を丁寧にお伺いして、国土交通省にしっかりとお伝えしていきたい、このように考えてございます。

福島委員 是非その点、しっかりとお願いしたいと思います。

 あわせて、先ほど言いましたように二十条特例というのがありまして、船舶職員法第二十条では、船舶職員の配置基準ですね、配置基準が決まっているんですけれども、船舶が特殊の構造又は装置を有していること、航海の態様が特殊であること等による場合は特例措置を認めております。

 この二十条特例で、これまでそれなりに柔軟に運用されてきたということを現場からは伺っておりまして、漁船の船員不足に大いに寄与したというふうになっております。

 昨年八月のこのSTCW―F条約国内法制化検討会とりまとめによりますと、二十条特例の必要については、F条約の趣旨及び目的を損なうことのないよう安全の担保に配慮しつつ、引き続き関係官労使間で随時検討を行っていくこととするとされておりますけれども、これ、私はやはりちゃんと今の運用が維持されることが大事だと思うんですね。この点については、御見解、いかがでしょうか。

宮武政府参考人 漁船に関しまして、この二十条特例を受けている例といたしましては、海外基地マグロ漁船がございます。これは、海外の港を根拠地として操業する遠洋マグロ漁船でありまして、我が国の沿岸からは離れた海域で操業いたしますけれども、根拠地である港からは一定の範囲内にとどまるため、この特例制度の適用対象とされております。

 この遠洋マグロ漁船に関する特例制度につきましては、STCW―F条約締結に伴い変更することは考えておりません。

福島委員 現在の運用を変えることはないという明確な答弁を確認いたしました。

 なぜ、これを言うかというと、やはりこの分野は運用が非常に不透明なんですよね。このマルシップ制度とか二十条特例とか、こうした制度を使わざるを得ないというのは、やはりこの船員の登用についての硬直的な部分とか不透明なところがあるんだと思うんですね。

 その原因は、まず一つは、今回、先ほどのSTCW―F条約国内法制化検討会とりまとめ、この検討会なんですけれども、まず議事録が全く公開されていないんですよ。議事録公開を求めたら、関係者で何かフランクに話をするために、議事録を取らないことに、公開しないことにしているからと言うんですけれども、国内法を作る議論で議事録を公開しないものなんて、私はこれまでの行政経験で見たことがありません。だから、おかしいと思うんですね。

 しかも、この文書にあちこち出てくるのが、制度の運用に当たっては、労使合意を前提とした上でその詳細について官労使で検討を行うこととすると。これ、何となく、これが何回も出ているんですけれども、私はこれは非常に違和感があります。当然、労使間の合意は必要です。でも、制度をつくる主体、運用するのは国土交通省であり、行政でなければならないというふうに私は考えております。

 まず、これは政策目的があるはずですよね。最初、外務省にもお聞きしましたけれども、政府として、やはりまず第一は、船員の労働力不足の解消だと思うんですね。漁業の面であったら、やはり漁獲量の確保だと思うんです、きちんと人員を確保して。もちろん、日本人船員を充実してしっかり後継を育てていくことは、先ほどの神津委員の質問の中などでも、やはり日本人船員の確保は最重要課題だと思うんです。

 しかし、その上で経済的にも成り立つような、持続可能な、ボランティアで商船や漁船をやっているわけじゃないわけですから、そうしたことも全てをやった政策目的を実現するための制度というのは、労使合意とか労使間の検討の前に、まず政府が私は基本的な方針を示さなければならないんだと思うんですね。そういうのも示さないで、今回も、先ほどの、STCW―F条約に基づく外国人の相互認証について、その具体的な運用は決まっていない、これから議論します、もし議論したとしても、その議論が議事録すら公開されずにどこかでやっているというんだったら、私はこれは駄目だと思うんです。国の法律に基づく運用ですから、私はそこはしっかりとやっていただきたいと思うんですけれども。

 最後に、中野大臣、しっかりとリーダーシップを発揮して、労使間の交渉だけじゃなくて、その前にまず国が基本的な方針を示して、その方針に基づく合理的な制度は国自身がつくって、その官労使の合意があったものについては、それでやればいいでしょう。順序が私は逆だと思うんですね。国のリーダーシップを求めますけれども、大臣の答弁をお願いいたします。

中野国務大臣 今般の改正法案では、STCW―F条約の規定に基づきまして、STCW―F条約の締約国が発給をしました、同条約に適合する旨の資格証明書を受有する者について、国土交通大臣が承認をすることができる旨を規定をしております。

 こうした承認制度の手続等々の御質問というふうに認識をしておりますが、幾つか準備をすることがございまして、例えば、相手国の海技資格制度がSTCW―F条約に適合しているかどうかを詳細に調査をすることでございますとか、あるいは、各船員について、当該国が定める能力の基準等を十分に満たしていることを確保するということでございますとか、あるいは承認試験を行うための体制の準備等を行っていくということでございます。

 様々な準備が必要となりますが、リーダーシップをということであります。国土交通省としても、これは責任を持ってしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

福島委員 私は、大きな団体の推薦も何も受けていないので、労働組合の推薦も受けていない自由な立場で言えるんですけれども、やはりこの分野はちょっと特殊だと思うんですよ。私は、きちんと国がリーダーシップを持って、政策目的を明確にしてルールを決めるということをお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 以上です。

井上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

井上委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、船員法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

井上委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、勝俣孝明君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び有志の会の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。白石洋一君。

白石委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読して代えさせていただきたいと存じます。

    船員法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

 一 漁船員条約締約国が発給した資格証明書の受有者が特定漁船に乗り組むための特例の適用に当たっては、商船と漁船の区別なく、高度の技能を求める我が国の海技免許制度が航行の安全確保に大きく貢献していることを踏まえ、他の締約国における商船と漁船との海技資格の在り方の異同に留意し、航行の安全を損なうことにならないようにすること。

 二 漁船員条約の締結に伴う各種講習の五年ごとの受講が漁船員及び船舶所有者に過度の負担をもたらすこととならないよう、受講料の軽減等を図るために必要な措置を講ずるとともに、受講者の利便のため、各登録講習機関の増加及び偏在の解消に努めること。

 三 最短で令和八年一月に漁船員条約が国内で発効し、漁ろう操船講習に関する規定が施行されることを踏まえ、漁ろう操船講習の具体的な内容を早期に明らかにし、関係者に周知すること。

 四 漁船員条約に係る国内法の運用に当たっては、同条約に定める安全の担保に配慮しつつ、日本船舶の深刻な船員不足に対応し、「労働力の流動性」を最重要事項として考慮する観点から、政府と労使とで意見交換を行った上で、主体的に運用の基本的な方向性を示すこと。

 五 深刻な船員不足の解消へ向けて、働き方改革の推進及び働く環境の整備とともに、人材育成ルートの強化及び人材確保の間口の拡充並びに幼少期からの体験乗船等を通じた海に親しむ長期的な取組を強力に推進すること。また、企業・業界と連携し、一体となって取り組むこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

井上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

井上委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、国土交通大臣から発言を求められておりますので、これを許します。国土交通大臣中野洋昌君。

中野国務大臣 船員法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝申し上げます。

 今後、本法の施行に当たりましては、審議における委員各位の御意見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を始め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 誠にありがとうございました。

    ―――――――――――――

井上委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

井上委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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