衆議院

メインへスキップ



第5号 令和4年5月20日(金曜日)

会議録本文へ
令和四年五月二十日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 長島 昭久君

   理事 江渡 聡徳君 理事 北村 誠吾君

   理事 杉田 水脈君 理事 中川 郁子君

   理事 笠  浩史君 理事 渡辺  周君

   理事 美延 映夫君 理事 竹内  譲君

      江藤  拓君    斎藤 洋明君

      櫻田 義孝君    高木  啓君

      塚田 一郎君    辻  清人君

      中谷 真一君    葉梨 康弘君

      藤井比早之君    梅谷  守君

      近藤 和也君    西村智奈美君

      三木 圭恵君    浜地 雅一君

      鈴木  敦君    笠井  亮君

    …………………………………

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表)     横田 拓也君

   参考人

   (北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長)        西岡  力君

   参考人

   (特定失踪者問題調査会幹事長)          村尾 建兒君

   参考人

   (龍谷大学教授)     李  相哲君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          水野 真司君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     近藤 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 和也君     下条 みつ君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

長島委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表横田拓也君、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長西岡力君、特定失踪者問題調査会幹事長村尾建兒君及び龍谷大学教授李相哲君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、横田参考人、西岡参考人、村尾参考人、李参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言いただきますようお願いいたします。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、まず、横田参考人、お願いいたします。

横田参考人 おはようございます。北朝鮮に拉致された拉致被害者家族会代表の横田拓也と申します。

 本日は、私の姉、横田めぐみを始めとする多くの拉致被害者の救出のために、このような形で発言の機会をいただきましたこと、心からお礼申し上げます。ありがとうございます。

 私の姉、横田めぐみは、今から四十五年前の一九七七年十一月に、新潟市内の寄居中学校からの下校途中に、北朝鮮の工作員たちによって拉致されました。当時十三歳の、中学一年生のときに起きた事件です。

 二〇〇二年に五人の拉致被害者とその御家族が北朝鮮から帰国することができましたが、今も、人質として多くの拉致被害者たちが北朝鮮国内で拘束され続け、私たちの助けを求めています。

 私が説明するまでもなく、北朝鮮国内の食料事情は想像を絶するほど厳しいものです。医療環境も劣悪かつ脆弱です。発言の自由、移動の自由、思想の自由は全て奪われ、厳重な監視下で、拉致被害者たちは毎日必死で命をつないでいる状態と言えます。

 金正恩委員長は、北朝鮮国内で新型コロナウイルスの感染拡大をようやく認めました。このニュースの裏で、拉致被害者を始め、北朝鮮国民は、これまで以上に自由を剥奪された生活を強いられていることを忘れてはなりません。

 姉、横田めぐみの帰りを待つ私たち家族としては、大雪が降れば、姉の健康は大丈夫だろうか、食料不足のニュースを耳にすれば、姉や姉の家族が十分な栄養を取れているだろうか、新型コロナウイルス感染拡大のニュースを聞けば、姉は元気で暮らせているだろうか、いつもこのような心配をしています。拉致された自分たちの家族や兄弟を待つそれぞれの拉致被害者家族は、全員、このような心配をしながら毎日生活をしている状況です。

 姉、横田めぐみが拉致された当時、私は九歳でした。一九九七年に設立した家族会の初代代表は、私の父、横田滋です。最前線で十年間闘い続けてきました。めぐみとの再会を願っていましたが、残念ながら、二年前に他界いたしました。二代目の代表は飯塚繁雄さんです。国内外を飛び回り、十四年間も声を上げ続けてこられました。拉致された妹の田口八重子さんを取り戻すために全精力を注がれてきましたが、残念ながら、昨年十二月に、再会はかなわず他界されました。

 家族会設立から二十五年、身を粉にして闘い続けたにもかかわらず、家族との再会がかなわない、この無念さをしっかり受け止める必要があると思います。当時九歳だった子供世代である私が三代目の家族会の代表に就かせていただきましたが、当時九歳の人間が今こうして最前線で声を上げなくてはならないというこの運命の非情さを、当たり前のこととして受け止めてほしくはありません。

 自分の家族を取り戻すために北朝鮮と闘うこと自体は、家族としては当然です。一方で、このような国家ぐるみで行われた重大な人権侵害に対して、日本国家、日本政府が毅然とした態度で私たち家族会以上に最前線で闘っていただく必要があると思います。人権問題であり、主権侵害、領海侵犯という重大な事案であることを再認識していただきたいと思っています。

 そのために、国会でもっとこの問題について深い議論をしてほしいと思います。国家として拉致被害者を取り戻すために何ができるのか、厳格な法執行を更に強化するために何ができるのか、工作員たちが再び侵入しないためにどのような法的及び物的な準備が必要なのか、こうしたことへの議論を深めていく必要があると私は考えています。

 私たち家族会、そして支援してくださっている救う会の運動方針を改めてこの場で申し上げます。全拉致被害者の即時一括帰国です。この要求の水準を下げることも、変えることもありません。

 部分的解決や段階的解決というアプローチは容認できません。日朝両国に調査委員会や連絡事務所を設置するという考え方にも賛同いたしません。拉致被害者たちは、北朝鮮当局によって、二十四時間、厳重監視下で、誰が、どこで、いつ、何をしているかを全て完全に把握されています。そのことがあたかもない前提に立ち、調査委員会や連絡事務所を設置して何か新しい情報を見つけましょうという聞こえのよい考えは、北朝鮮当局がもくろむ幕引きと時間稼ぎに手をかしていることを意味します。この点を間違えることがないよう、しっかり御議論いただきたいと思っています。

 今、国際社会は、いかに平和と安全が一つの暴挙によりいとも簡単に壊されてしまうことを目撃しています。同時に、自国の主権、自分たちの歴史や文化、一人一人の人権や家族、そして平和を守るために勇敢に戦い続けている姿を目に焼き付けています。

 翻って、日本はどうでしょうか。十三歳の少女が侵入してきた北朝鮮の工作員たちによって拉致されながらも、四十五年間、解決することができていないのです。自分たちの国民を絶対に守り続ける、拉致された全ての拉致被害者を必ず取り戻す、主権、人権を絶対に守るという強い覚悟を持ってほしいと思っています。

 拉致被害者の親世代の高齢化が進んでいます。私の母、横田早紀江も八十六歳です。必ず、姉、めぐみを北朝鮮から取り戻し、日本の地で再会し、抱き合わせてあげたいと思っています。拉致された有本恵子さんと父明弘さんとを抱き合わせてあげたい、拉致された田口八重子さんと飯塚耕一郎さんとを抱き合わせてあげたい。この当たり前の願いが一刻も早く実現できるよう、引き続き皆様の変わらぬ御支援と御協力をいただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。(拍手)

長島委員長 ありがとうございました。

 次に、西岡参考人、お願いいたします。

西岡参考人 西岡力でございます。

 私はメモを準備してまいりましたので、それを見ていただきながらお話を聞いていただくと感謝いたします。

 時間がありませんので、すぐに本題に入ります。

 今、横田拓也さんからも話がありましたが、私たち家族会、救う会の救出戦略は、制裁の圧力を背景にして日朝首脳会談を実現して、金正恩委員長に全拉致被害者の即時一括帰国の決断を迫るということであります。

 では、まず第一段階の、首脳会談実現のために何が必要なのか。

 今、北朝鮮は、制裁、そしてコロナなどで体制の危機に直面していることは間違いありません。ですから、ここにチャンスがあります。

 そのために、国内世論を盛り上げていくということは絶対に必要であります。昨年十二月に、人権週間で、先生方もブルーリボンをつけてくださって国会の審議に臨んでくださったことを感謝しております。是非、もっともっとみんなでブルーリボンをつける運動を広げていっていただきたいというふうにお願い申し上げます。

 また、新しい国会決議の議論が一部であるというふうにも聞いておりますけれども、国会の意思、国民の意思、主権者の、主権国家としての国会の意思を拉致問題解決のために示していただくということも是非御検討いただければありがたいというふうに思っております。

 そして、国際社会に対しては、拉致問題を解決しない限り制裁が緩まないようにするということです。

 北朝鮮には、親の世代の家族会のメンバーが被害者と抱き合うことなしには拉致問題解決というふうに日本人は思いませんよ、日朝関係改善はありませんよというメッセージを送り続けることが必要だというふうに思います。

 そして、アメリカなどに対しては、拉致問題の深刻さと日本にとっての拉致問題の重要さの理解を得て、北朝鮮がトランプ時代のように再度米朝首脳会談を選んだ場合は、拉致問題を核と並んで議題に上げていただくようにお願いする。小泉訪朝のときのように、先に日朝首脳会談が実現した場合には、命が関わっている被害者の帰国を日本が優先して交渉して、それが実現したらば、核問題が進展なくても、国連制裁に違反しない人道支援を行うことについては容認をしていただくというような交渉を是非しておいていただきたいというふうに思っております。

 二の、首脳会談での決断を促すのところは、時間の関係で省かせていただきます。後でお時間があれば読んでいただければと思います。

 三の、私ども家族会、救う会が全拉致被害者の即時一括帰国にこだわる理由であります。

 先ほど拓也代表もお話をしましたけれども、北朝鮮当局は既に全員の名簿を持っています。そして、それを見ることができるのは金正恩委員長らごく少数の最高幹部だけだと思います。

 二〇〇二年に横田めぐみさんや田口八重子さんら八人が死亡と通告されたのは、当時の最高権力者の金正日委員長が、秘密を多く知り過ぎているので帰さないと判断したためだ。その金正日委員長の決断、決定を覆すことなしに八人を取り戻すことは困難であります。しかし、八人について、死亡の証拠は全くありません。八人の中の一人については死亡の証拠があるというんじゃなくて、八分のゼロであります。そして、生存を示す情報はあります。

 一括帰国にこだわらないと、日朝首脳会談で、この八人について、一番秘密を知っている人たちだと彼らが認識しているわけですから、再度死亡というふうにされてしまって、そして、秘密を余り知らない人を数人出してくる、それで終わりにしようとするという危険性があるということであります。

 日本政府の拉致問題解決の定義は、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の帰国であります。有無にかかわらずと言っております。そして、二つ目が真相究明、三つ目が実行犯の引渡しです。これは、犯人と言っていないで実行犯と言っているところにも意味深いと思っておりますが。

 私たちは、この解決が実現するまで何もするなと言っているわけではありません。一が実現するまで一切支援をするなと言っているわけです。一、二、三の中で、一だけを最優先でしてほしいと。もちろん、主権国家ですから二と三も解決しなければならないと思いますが、そこは時差があってもいい。一が最優先だ、そして一には分割はあり得ないというふうに思っております。

 産経新聞が、昨年の総選挙で各党にアンケートをしてくださいました。家族会、救う会は全拉致被害者の即時一括帰国を基本方針に掲げています、数人の被害者の返還などでいわゆる部分帰国を北朝鮮が示した場合、容認しますか、あるいは即時一括帰国にこだわりますかという質問に対して、自民党、公明党、立憲、維新、国民、共産の六党がこだわるという回答をしてくださったことを大変心強く思っております。ありがとうございます。

 次に、北朝鮮情勢についてお話し申し上げます。

 今、ウクライナの戦争が起きているわけですけれども、私が入手した情報によりますと、プーチン大統領は、開戦前に金正恩氏に、一週間以内に戦争を終わらせるというふうに通報したと聞いております。同じ話を、産経新聞の台北支局長の矢板さんが月刊「正論」の今出ている号に書いています。私は北朝鮮から取りましたが、矢板さんは台湾から取った話です。

 北朝鮮は、今のロシアの戦争に大変関心が高いです。なぜなら、同じ武器を持っているからです。北朝鮮軍の武器は旧ソ連製です。そして、今ロシアが使っている武器よりもバージョンが古いやつです。だから、今のロシアの武器がどれくらい効能があるのか、実戦でどれくらい強いのかということに大変関心があって、参観団を出しているというふうに聞いています。

 そして、プーチンは習近平氏にも連絡をして、習近平氏は、もしもロシアが一週間以内に戦争に勝つならば、台湾と戦争を考えると。その場合に、中国から北朝鮮に対して依頼があった、台湾での戦争をする場合に、米軍を攪乱するために朝鮮半島で局地戦を起こしてほしいと。朝鮮人民軍はその作戦の検討をしていたというふうに私は聞いています。西海五島といいますけれども、そこでの局地戦を考えていた。ところが、今、戦争がうまくいっていないということで、全てそれが御破算になったということであります。

 そして、北朝鮮は、今、通常兵力が自分たちも大変弱いというショックを受けています。ロシアの地上軍は世界最強と言われていたのに、こんなに弱いのか、同じ武器で武装している自分たちの軍隊も弱いのではないかと。特に士気の問題で、ロシア軍の兵士たちが士気が低い、ウクライナの人たちと話ができて、ウクライナの状況を見たら、自分たちは解放軍ではないということが分かってしまって、士気が低くなっている。

 今、北朝鮮の兵士たちはみんな、韓国のドラマを見ています。見ていない人はいないぐらいです。韓国が貧しくて、アメリカの支配から助けなくちゃいけないと教えているわけですが、戦争が始まったら、韓国が豊かだ、ドラマで見たとおりだということを分かってしまったら、士気はどうなるんだろうかということが権力中枢部で言われているそうであります。だから、核にこだわっているんです。いよいよ核にこだわっているんです。

 今までは、アメリカを朝鮮半島から追い出す、第二次朝鮮戦争を起こしたときにアメリカの介入をさせないというために、アメリカまで届く核兵器を持つということが金日成時代からの戦略だったのでありますが、もちろんそれは残っていますが、それだけではなくて、短距離で、戦場で使う、もう通常兵力では勝てないので、戦術核について今開発をしている。

 今回、ICBMに燃料を入れているという報道がありました。これは戦略核ですが、数日前行ったSLBMの発射実験、これは射程の短いものでした。最近、射程の短い、核を積めるミサイルの発射実験をたくさんしています。そして、金正恩氏は、核の先制使用もあり得るということを二度話しました。それも危機感の表れであります。

 そして、今は建国以来の大動乱だといって、コロナ蔓延を認めました。今朝の報道によると、昨日までで発熱者が二百二十四万人、死亡者六十五人と言っていますけれども、これは少な過ぎます。私の聞いたのでは、一万人は超えていると聞いています。

 ただ、今コロナ患者が出たわけじゃないわけです。前からいたんです。じゃ、なぜ発表したのか。地方で治安が大変乱れている、このままいったら何か起きるかもしれないという不安が高まっている。それで、大規模な発熱が起きている、うちにいろというふうに言うために、今回言ったというふうに聞いています。もちろん、実際、平壌を中心に、はやっているということが第一の理由ですが、もう一つ、治安の維持ということがあったということです。

 五月の上旬に、これはコロナ蔓延発表の直前ですけれども、平安南道の朔州郡というところで、保衛員、これは政治警察員です、が夜中に殴り殺された死体が、朝、発見されました。その首のところに、人民たちが何か悪いことをしたのか、おまえたちが悪いことをしたんだろう、悪いことをしたやつらがしていない者をいじめている、人民をいじめるやつは復讐されると書いてあった。このような治安機関員が襲われる事件が頻発していると聞いています。

 経済制裁が効き、そしてコロナの蔓延、中朝貿易が遮断されている中で、本当に苦しくなってきています。その中で、日本は、人道支援をする準備があるというメッセージを出しているわけです。ただし、先ほど言った拉致解決の定義の一、二、三の一だ、全被害者の即時一括帰国という人道的な行為をするなら、日本は国連制裁に違反しない範囲の中ですることができる、そういう話を、日朝首脳会談を実現させて岸田総理の口から北朝鮮の最高指導者に言っていただくということができるのではないか。

 北朝鮮の中では、中国は改革・開放を迫る、韓国は情報が流入して体制危機を招く、まずアメリカに接近して、ミサイルなどを発射して挑発して、制裁の解除と人道支援を得る、ただし、アメリカは大規模な経済支援をしないことは分かっている、だから日本しか大規模な経済支援はもらえないんだという議論があるということは聞いております。

 まだ、どこに出ていくか、出口をどうするかということを最高指導者は考えているんだと思いますけれども、日本としては、まず全被害者を帰しなさい、帰せれば核問題が解決しなくてもできることはあります、核問題が解決して国交正常化になればもっとできることがあります、二段階でできることがありますというメッセージを今発すべきときではないかというふうに思っております。

 以上であります。(拍手)

長島委員長 ありがとうございました。

 次に、村尾参考人、お願いいたします。

村尾参考人 おはようございます。特定失踪者問題調査会幹事長をしております村尾建兒と申します。

 本来ならば、ここで代表の荒木がお話しさせていただくところですが、本日、調査で北海道に行っております。代わりに私の方からお話しさせていただきます。

 まず、昨日、そこの官邸前で、特定失踪者の御家族が、岸田総理と面会をしたいと、これは、過去から歴代の総理に対して、特定失踪者御家族と会ってくださいと要望を何度も出しております。そのたびに、官房長官で、拉致問題担当大臣でということで、これまで一度も特定失踪者の家族と総理大臣がお会いしたことはございません。そこで、昨日は、その御家族の一部が集まって官邸前でアピール行動をさせていただき、その後、議員会館にて記者会見を行いました。いらしてくれた議員の皆さん、今日もいらっしゃっています、本当にありがとうございます。

 そこで、特定失踪者家族会代表の今井会長から思いを預かってきておりますので、まずそれを読ませていただきます。

 特定失踪者家族の願い。特定失踪者家族会、今井英輝。

 岸田総理は特定失踪者家族に面会してください。

 日頃から総理も官房長官も、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者を取り戻すと言っておられますが、その言葉と現実は矛盾していて、私たち家族が何度も要求しても、認定していない人の家族には会わないと断り続けています。北朝鮮につけ込まれる隙を与えないというのが理由ですが、かつて小泉総理は、認定、未認定などという前に横田さんたち御家族と面会をしておられ、その思いを胸に金正日と対峙してくださいました。

 今こそ岸田総理は、認定、未認定にかかわらずの姿勢を明確に国民と北朝鮮に示してください。それは特定失踪者家族に面会することです。幾人かでもその代表と面会していただき、認定被害者のほかにも多数の拉致被害者がおり、政府は日本国民を見捨てないという意志を国の内外に態度で示してください。それは、岸田総理がいかに強い思いを持っているのかを国民に示し、北朝鮮政府に示すこととなります。総理が面会を拒むことは、すなわち北朝鮮の思うつぼなのです。日本政府は、認定被害者以外は拉致とは思っていないと間違ったメッセージを発信しているのです。

 さらに、あえて言えば、特定失踪者の中にはもしかしたら拉致とは関係ない人もいるかもしれないが、確実に拉致をされた人々は八百人以上いるのだということを発信することも必要と思います。

 また、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者を取り戻すという発言は総理も官房長官も幾度も発信しておられますが、全ての拉致被害者を政府は確実に把握しているのでしょうか。もし、北朝鮮がこれだけですといった名簿を出してきたときに、それに対応できる確証は持っているのでしょうか。国民に分かるように説明していただきたいと思います。

 ここまでが、今井さん、特定失踪者家族会会長の思いでございます。これは、家族会の中で共有をしていただいて、これを是非持っていってほしいというふうに託されてまいりました。

 ここに書かれているとおり、私たちも、特定失踪者問題調査会、それから家族会として、幾度も岸田総理に、面会をしてほしいということを伝えております。総理と特定失踪者との面会は、歴代総理に幾度も要請していますが、いまだに実現していません。認定の有無にかかわらずと言っている政府の姿勢が全く矛盾していることの象徴です。

 岸田総理は、自民党総裁に選出されたとき、挨拶の中で、岸田文雄の特技は人の話をしっかり聞くということでありますと言っておられます。是非その特技を発揮していただき、特定失踪者家族会の話をしっかり聞いていただきたく、衆議院特別委員会の皆様には、是非、岸田総理と特定失踪者の家族の面会の実現に向けて御尽力をお願い申し上げます。

 続いて、私たちがやっている北朝鮮向けのラジオ放送「しおかぜ」というのは皆さん御存じだと思います。

 この「しおかぜ」、二〇〇五年の十月から発信を始めまして、二〇〇七年からは、前総理大臣、前菅総理が総務大臣のときに、国内の、日本の八俣送信所という茨城県古河市にある送信所から、現在、北朝鮮に向かって放送できるようにしていただきました。

 その八俣送信所から発信をしているわけですが、短波送信施設に、長い間使われているものですから、老朽化の問題というのが来ています。それについてちょっとお話をします。

 現在、NHKが独占使用権を持つKDDI八俣送信所は、人道的な見地から、「しおかぜ」に送信施設使用を認めてくれています。しかし、NHKの合理化や予算削減から、二〇二四年度には、現在「しおかぜ」が使用中の百キロワット送信機二機が削減され、「しおかぜ」が実施している同一時間、別周波数、二重放送とこれを呼んでいますが、同じ時間に別の周波数を使って二本同時に放送しています。その送信機移行の期間中、約十か月間、二波一遍に放送ができなくなるんですね、一波のみの放送しかできなくなるというふうにされています。

 北朝鮮当局は、「しおかぜ」に異常に妨害電波をかけてきていますが、その状況から見て、効果、有効性は明らかです。二重放送が一時的にできなくなるということは、国家の最重要課題として掲げる拉致被害者救出の矛盾と感じざるを得ません。

 基本的に、現在では、デジタル化が進んで、短波送信というのは忘れがちとなったメディアであることは間違いないです。ただし、インターネットや衛星通信など、世界と日本をつなぐのは、海底ケーブルやパラボラアンテナ、そういう物理的なものに委ねられているというのが現状ですね。

 どんなにデジタル化が進んでも、先進国の多くは、短波送信を活用して、世界へ向けた情報発信、プロパガンダ放送などを続けています。現在の、ロシアが侵攻中のウクライナ、ここも、英国のBBCや台湾のRTIなど、そのほか短波送信が見直されて強化されています。

 この現状を見ても、非常に短波放送というのは重要な送信手段であるということがお分かりかと思いますが、日本の短波送信がこのまま削減されてしまえば、我が国が今確保している、国際競争でこの周波数というのは獲得するんですが、まず、これが他国に流出してしまう。それから、送信技術の喪失ですね。これはもう既に、現在、日本の国内の企業は、短波送信機自体を製作することができなくなっています。今現在、八俣送信所で使われているのも、海外製のものを買ってきて使っているんですね。それで、技術者はどんどん高齢化して引退していくという状態が続いていて、完全にこれは技術喪失というふうに言っていいと思います。

 日本唯一の送信施設、KDDI八俣送信所は、それこそ在外邦人の保護など安全保障、危機管理の観点から見ても、国益にかなう重要な施設であることは間違いないというふうに思います。よって、政府は積極的に関与して、この技術喪失を、それから設備の管理を、安定的に運用できるようにしていただく必要があるというふうに認識しております。

 衆議院特別委員会の皆様には、この拉致被害者救出のために希望の光を送り続けている「しおかぜ」の安定的な運用をするためにも、是非、この送信機の更新それから維持に政府がしっかりと関与するように御尽力を賜りたいというふうに思います。あわせて、是非、このKDDI八俣送信所の実態を知っていただきたく、現地視察をお願いできればというふうに思っております。

 以上でございます。(拍手)

長島委員長 ありがとうございました。

 次に、李参考人、お願いいたします。

李参考人 皆さんこんにちは。龍谷大学、李相哲と申します。

 今日は、特別委員会にお招きいただいて光栄に思います。

 今日の私の話したいテーマというか趣旨は、拉致問題を解決するにはどうすればいいか、そういう話をちょっとしてみたいというふうに思います。

 資料を二枚配付しましたけれども、一枚目は令和二年六月に書いたもので、北朝鮮という国、金正恩政権の本質は、戦後、今日に至るまで全く変わっていないという趣旨のコラムです。それから、二枚目の令和三年のものですけれども、金正恩、今の北朝鮮政権をどう攻めるべきか、そういう趣旨のコラムですけれども、非常に残念なことに、このようなコラムを毎年書いて、既に一枚目から二年がたっても、やはり北朝鮮という国の本質は全く変わっていない。

 北朝鮮に対して日本政府は、この二十数年の間に様々なことをやはり試みてきました。圧力もかけてみましたし、それから制裁もした、それから支援もしたし、対話もしたんだけれども、全く進展はないんですよね。

 ただ、一つだけを我々国際社会は北朝鮮に対してやっていない。それが何かというと、力で北朝鮮を攻めたことはないんですよね。

 私は、北朝鮮を攻めろということではないんですが、どのように金正恩を動かすかといったら、金正恩にとっては、日本と交渉する動機がまずないんですよね。

 まず、怖くない。それから、今、国際制裁の中で、日本と話し合ったって支援を受けることもできない。そんな中で、アメリカとそれから国際社会との交渉をさておいて、日本とまず話し合うということはないんですよね。

 そんな中で、日本政府は、私は昔から主張することなんだけれども、この北朝鮮政権というのを日本はどう考えるかということですね。

 私は、二つの選択肢があって、金正恩政権を温存させて、しかも金正恩政権を我々の交渉相手として丁重に扱うか、それとも、レジームチェンジを目標に上げて、それで様々な外交力を動員して北朝鮮を攻めるかというこの二つですけれども、私は、北朝鮮を変えて拉致問題を解決するには、レジームチェンジ以外に方法はないと思っているんですね。

 金正恩が突然善良な人間に変わって、日本の拉致問題を先に解決してくれるとは全く思えない。しかも、北朝鮮を攻めてレジームチェンジをしなければならない理由はごまんとありますけれども、まず、この国は、コラムにもあったように、全く旧態依然なんですね。体質が変わっていない。本質も変わっていない。

 今朝の北朝鮮の労働新聞をちょっと見ますと、今、北朝鮮ではコロナが約二百四十万以上、発熱者と言っていますけれども、発生しています。しかし、これは数字をどういうふうに読むかなんだけれども、ここからも北朝鮮のうその体質が見え隠れしているんですね。

 二百四十万のコロナの、コロナ感染と思われますけれども、北朝鮮は発熱者と言っているんですが、その中の百七十万人が完治されたというんですよね。しかし、北朝鮮がコロナを認定した、確認したと発表したのは十三日で、一週間足らずで、北朝鮮という劣悪な医療設備とか医療体制の状況の中で一週間で百七十万人を完治したということは、これは到底信じられないんですね。しかも、北朝鮮で検出したのはステルスオミクロン株と言っていますので、日本のような先進国でも治療には二週間ぐらいはかかるというふうに見られますけれども、北朝鮮では、三日で治ったとかそういう宣伝をしてきている。

 しかもこの国は、ですから、うそをついているというその本質は全く変わらなくて、このようなうそをついているのは、やはり、住民を落ち着かせて、政権が言うことを聞いてくれというふうな状況にあると思います。

 それからもう一つ、この国は旧態依然だと思っているのは、人権とか、北朝鮮住民の人権もですよ、これを踏みにじって、政権維持を優先させている、そういう印象があるんですね。

 北朝鮮のテレビを見ますと、オミクロンというのは、コロナというのは怖くないんだ、塩水でうがいをして、ヨモギの煙を立てて、それでちょっと頑張ったら、三日ですっかり治ったというふうにテレビで連日報道しているんですね。これは、今の金体制がこういう、コロナの怖さを知らないからなのか、この宣伝も本当に不可解なんですね。

 しかも、金正恩は、意志と信念でこのコロナを克服しようと。これまで北朝鮮はうそをついて、意志とかそういう士気を高めて危機を乗り越えたと思いますけれども、コロナだけは恐らく金正恩の話を聞いてくれない。なので、今、北朝鮮はこれからどうなるかということが非常に気になるところですけれども、これを機に日本がどうするのか。

 バイデン大統領がそろそろ日本に来られるんですね。そんな中で、金正恩に対してどうするかということは、昨年書いたコラムの一部をちょっと読み上げます。バイデン政権は、人権問題を対北朝鮮外交の中心に据え、人権じゅうりん加害者に対し責任を問うつもりというふうにブリンケン国務長官が言ったんですね、明言しました。ここに来て、米国の対北朝鮮政策の優先順位は、拉致問題を優先課題に挙げる日本政府の方針と一致したと言えます。

 ですから、今までアメリカは核問題解決を最優先して、拉致問題を、ちょっと順位から下がったというか、二番手になってしまったんだけれども、ここに来て初めて、バイデン政権の言っていることが本当であれば、人権問題が最重要課題で、優先順位が一番になった。これは日本と完全に一致したものですから、この際、日本は、期限を設け、拉致問題解決に向け交渉に応じる姿勢を見せなければ、米国や人権問題に関心を寄せる世界の国々とともに、金正恩氏を国際裁判にかけるなどして、責任を問うための行動を起こす必要があるというふうに私は考えます。

 私の発表はこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

長島委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

長島委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様方、大変御多忙の中、また、こういった拉致問題に対して、当事者、御家族の横田さんも今日臨席いただきまして、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 また、今日、私、公明党でございまして、第四会派でございますが、トップバッターで質問させていただきます。ちょっと委員会の関係で、特に自民党の高木先生に順番を交代いただきまして、心より感謝申し上げます。

 横田参考人にお聞きをしたいと思いますが、御家族として様々な思いを今語られまして、私も、しっかりと心にもう一度お言葉を胸に刻み、この拉致問題に当たっていかなきゃならないというふうに改めて認識をさせていただきました。

 特に、雪が降れば、本当に今寒くないか、食料危機があれば、本当に食料は大丈夫なのかということは、もう当然のことでございます。私にも子供がございますし、自分自身の子供がそういったことになったとき、また兄弟がそういった状況になればどういう気持ちであるかということを、我々国会議員、もう一度しっかりと胸に秘め、この問題に当たっていかなければならないというふうに改めて決意をさせていただきたいと思っております。

 そして、我々の役目としては、しっかりとこの拉致問題をもう一度更に国内で国内世論を盛り上げていくこと、これは我々の責務だと思っております。また、特に国際社会においてしっかりとこれを訴えていかなければならないというふうに思っております。バイデン大統領も来日をされますし、六月の十六日には、横田さんが自ら国連のサイドイベントで、インターネットで様々発信をされるというふうに聞いております。

 先ほど、横田参考人、様々御意見を言われましたが、もっと我々国会議員また日本政府、そして国際社会に訴えたいこと、強い言葉でも結構でございます、今日は恐らく報道も入っておりますので、その言葉をしっかりと国民また世界に伝えていただくことが大事だと思っておりますので、先ほどの意見陳述以外で更にお伝えしたいことがございましたら、是非御開陳をいただければというふうに思います。

横田参考人 ありがとうございます。

 私自身もそうですし、拉致被害者家族会のメンバーは、全国を回っている講演会ですとか集会ですとか、いろいろなところで同じことをある意味申し上げているんですが、この拉致問題、拉致事件というのが、言い方の表現の問題かもしれませんが、家族会の方の問題だよねとか、横田家のかわいそうな事件だよねというような捉え方をしている風潮が一部にあるというふうに思っていて、でも、それはある意味正しい側面があるんですが、大きく間違っていると私は思っていて、これは、やはり日本国民が一人一人に課せられている、私たち、自分たちの問題なんだということをみんながどうやって我が事として思うのかということがキーだと思っています。

 そのために、例えば二〇〇二年に日朝首脳会談がありまして、もう随分時間がたっているわけです。今の中学生や高校生の方々がリアルタイムではその実態を、歴史の事実を知らないということがあって、親の世代は知っていても、家庭の中でこうした問題が、重たい問題というのもあって、語られることがないとするときに、若者がこの問題を知らない。そういう意味では、教育現場の中で、どうやったらこの問題を、国家の問題、私たちの問題、主権の問題だということを、理解を浸透させていくかというのがとても大事なんだろうということを思っています。

 あともう一つは、これは岸田総理と官邸で面会をさせていただいたときに御本人様の方にも私の方からお伝え申し上げた内容ではあるんですが、岸田総理からは、国内向けに対して、北朝鮮、金正恩委員長と無条件で会う、その用意があるということを繰り返し発言をいただいています。これ自体は大変ありがたいことなんですが、もう一つ踏み込んでいただいて、金正恩委員長に対して声を、御自分の言葉として発言をしていただければ、私はなお心強いというふうに思っています。

 それは、この問題を解決して、日朝両国が平和を歩もうではないかと。あなた方も明るい未来を描けるし、日本がこの四十五年間苦しみ続けてきたとげが抜けて、家族も喜び、日本も明るくなる。あなた方も明るい未来を描けるんだ、だから日朝首脳会談を開こうということを、日本国内向けでもあり、更に踏み込んで金正恩委員長に対して強く働きかけていただくこと、これをやはり政府、国会、国家自体が、岸田総理がそういうふうに向けて動いていただくように活動していただければありがたいなというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

浜地委員 横田さん、ありがとうございました。

 私も、先日のこの拉致特別委員会で、拉致問題は国家犯罪、日本に対する主権侵害、国際的な犯罪であるということを確認をさせていただきました。

 先ほどお言葉がありましたとおり、これは横田家の問題や、また御家族だけの問題ではない、当然でございます。改めて、この拉致事案というものが我が国に対する国家犯罪、これに対して我々が何もできずに現在いるというような、本当に恥ずかしいような状況であることをしっかりともう一度認識をさせていただきたいと思っています。

 また、先ほど、岸田総理に対する様々な御提案もございました。これも含めて、我が党においても、しっかりとやはり金正恩に訴えかけるような、そういった発言、こういったことを求めてまいりたいというふうに思っております。

 ありがとうございます。

 続きまして、西岡参考人、また李参考人にも聞きたいと思います。

 先ほど、制裁と拉致事案の解決ということのお話がございました。李参考人からは、金正恩からとってみると、日本は怖くない、交渉したって単独の支援はなかなかないんだというお話もございました。

 米朝首脳会談というものが恐らく、そうなりますと、キーになってこようかと思っております。特に、先ほど李参考人からございました、バイデン政権は、拉致問題をレベルを一つ上げて、問題に取り組むということでございます。

 前回、シンガポールで米朝首脳会談が実現したときには、当然制裁もございましたが、一つには、軍事的な動き、米、そして日本も含めて、共同訓練をいたしました。空母打撃群をしっかりと日本海に展開をし、爆撃機も実は北朝鮮上空に飛ばしました。恐らく、これは怖かったんだろうというふうに思っております。

 今後、制裁の強化と、共同演習のような軍事的なプレッシャー、これをどうかけていくべきか。これが逆に、逆効果になるのかどうか、それともやはりプラスになるのかどうか、バイデン政権との間でどういうお考えなのかを、西岡参考人そして李参考人にお聞きをしたいと思います。

西岡参考人 ありがとうございます。

 シンガポール会談の背景に軍事的圧力があったというのは、私もそういうふうに思っております。B51が二機、元山沖で演習したということもあったと承知しています。

 ただ、今、日本とすると、そこはちょっと李先生の、先ほど、短い発言ですから表現の違いかもしれませんけれども、日本は、核問題が動かなくてもできる部分があるというふうに私は申し上げています。日本は世界一厳しい制裁をしているので、国際制裁と隙間があるんです。全ての貿易を止めているということもそうです。その部分は拉致で使える。あるいは、国際制裁も、人道支援は禁止していません。その部分を使ってほしい。だから二段階だと申し上げたんですが、しかし、北朝鮮が今まさにICBMを撃つかもしれない。燃料を入れたという段階であります。核実験の準備もほぼ終わっているという段階です。そうなったら、二〇一七年に戻る。

 そのときにはアメリカと歩調を合わせて圧力をかけていくということも必要ですし、その中で、大きな風が吹いて何が起きるか分からない中で、拉致の旗を絶対降ろさない。アメリカが先に交渉するときも、拉致を絶対議題に上げてもらう。トランプ大統領はそうしてくださいました。小泉訪朝のように日本を先に選んだときは、拉致を先に、人道的なもの、二段階の中の一段階を先に使う、そういうことが必要だと私は思っています。

 以上です。

李参考人 ありがとうございます。

 北朝鮮の外交の鉄則の一つが、いかなる事態に陥っても、アメリカは先に北朝鮮を攻撃しない、それから中国は絶対北朝鮮を見捨てないということがあるので、金正恩政権からすると、米韓合同軍事訓練が北朝鮮侵攻につながるとは彼らは思っていないんですよね。

 ただ、彼らがそれが一番嫌なのは、米韓合同軍事演習をするときは、全軍をやはり動員して緊張状態をつくらないと軍の機構が弱まってしまうので、それをするには財源が必要なんですね。だから、米韓軍事訓練に必死で反対しているという側面はあります。

 ただ、制裁で何ができるかということですけれども、これをどう評価するかなんですね。私は、二〇一七年十二月の最後の制裁決議、これはかなり厳しいもので、それまでの制裁決議というのはほとんど北朝鮮にとっては実効性のない、生ぬるいものだった。ですから、本当の意味での国際制裁が北朝鮮に効いてきたのは二〇一八年以降、ですからこれまで約四年ぐらいですが、もう既にこの制裁の効果は様々なところで来ているという状況なんですね。

 それと、国際社会は、制裁を、ターゲットをどこに置くかなんだけれども、核を捨てろと。しかし、核を捨てたとして、この国が善良ないい国になることはないんですよね。核を捨てても、拉致を敢行して、住民の生命を何とも思わない、ならず者国家という本質は変わらない。

 ですから、北朝鮮問題の根本的に解決すべき問題は、私は人権問題だと思います。ですから、人権問題を解決して、本当に善良な、日本のような国になれば、核だって彼らは必要としないわけですから、ですから、人権問題にやはり制裁のターゲットを絞って、更に言えば、私は金正恩に制裁のターゲットを絞るべきだと。そうしなければ、北朝鮮は慌てないし、核はアメリカもあるし、中国もある。ですから、その論理は、世界の論理がなかなか、金正恩にとっては怖くもないし、圧力にもなっていない。なので、私は、金正恩という犯罪者をかくまって拉致問題の解決を拒んでいる、この犯罪性にターゲットを絞って、人権問題を前面に出して、それで攻めるべきだというふうに思います。

 ありがとうございました。

浜地委員 ありがとうございました。

 しっかりと、そういった思考も考えながら、また発信をしていきたいと思っています。

 特に、私の方は、北朝鮮、コロナ、韓国政府は、新たな尹政権はいち早く人道支援を打ち出しましたけれども、これは本当にどうしたらいいのかなと、日本としても。容易にやると難しいし。ただ、御家族がいらっしゃるわけですから、また、横田さんのお気持ちになると、実際に北朝鮮はどれだけコロナが蔓延しているんだろうという気持ちもございます。ただ、これは安易に支援の手を傾けると私はよくないというふうに思います。これに対しては、この発言に対しても批判があるかもしれませんが、それぐらい強い態度でいくべきだなと私自身は思っております。

 村尾参考人に御質問をしたいと思っています。

 先ほどの短波放送の件は大変私も参考になりました。これは実際、二波出ている中で、現在、これはメンテナンスにより、一時、二〇二四年に中断をするのか、それとも、根本的にこれは、将来的にこの短波放送の放送施設といいますか技術がもうなくなってしまう方向なのか、これは多分、非常に重要だと思っております。

 ですので、この委員会で取り上げていただきましたので、また総務委員会とも連動しながらこの問題は取り上げることが大事だと思いますけれども、その辺り、もう少し、最後に詳しく教えていただければと思います。

村尾参考人 ありがとうございます。

 その部分に関して言えば、二〇二四年に百キロワット二機が廃棄されることにより、十か月間、一時的にアンテナの張り替え工事をやる。アンテナの張り替え工事をやって、今、現有している三百キロの送信機とつなぎ替えて、そこから再開できる。その十か月も、これは工事期間の大まかなまず目安である。だから、短縮される可能性もあるし、延びる可能性もまだある、まだはっきりした数字ではないんですが、そういう状態であります。

 現実問題として、「しおかぜ」ができなくなるというわけではないんですが、今、もう一機、三百キロの送信機があって、これも三十年に近くなる、二十年を超えている送信機なんですね。今度、次になると、それを使うことになるんです。そうなるとまた同じことが起きるので、できれば新しいものに更新して、安定的に運用できないかということを考えております。

浜地委員 時間が参りました。改めまして、四人の参考人の皆様、ありがとうございました。

 以上で終わります。

長島委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 立憲民主党の笠でございます。

 今日は、四名の参考人の皆さん、本当にお忙しい中おいでいただき、また、貴重な御意見等々をいただいたことを、まずもって心より感謝を申し上げます。

 まず、早速質問に入りたいわけですけれども、横田拓也さんも、本当に、家族会の代表に就任をされて、また、いろいろな思いを持って活動されていると思います。

 先ほど、岸田総理に対して、やはり本当にメッセージを、直接に金正恩に対して伝わるように、自分が覚悟を持って、本当に条件をつけずに会って解決するんだ、そういう思いを述べてほしいという強い言葉があったわけですけれども、近く、あさって、アメリカのバイデン大統領が就任後初めて日本に来日するわけですけれども、この中でも、日米首脳会談でも、当然、この拉致の問題、岸田総理は取り上げるものと私は確信をしておりますけれども、その中で総理にどういったことを期待をしたいのか。あるいは、拉致家族として、被害者の家族の皆様方がもしバイデン大統領と会う機会がこの来日の際あった場合に、どういったことをバイデン大統領にお伝えをしたいというふうに考えておられるか。その点をまず伺いたいと思います。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 現時点では、正式、正確にはバイデン大統領との面会が決まったわけではないので、お会いできるという前提、想定の中での回答になってしまいますけれども、私としては、代表の立場、横田滋、早紀江の息子、めぐみの弟という立場、個人の立場でいっても、やはり、この苦しみや悲しみや、何十年も闘ってきた、最後に会えなくなったその無念さというものを、どうか一人の人として受け止めてほしい、聞いてほしいという、心と心のメッセージをまず送りたいというふうに思っています。

 あと、日米の外交の問題は、もちろん私がタッチする領域ではないんですが、先ほど救う会の西岡会長がお話しされていたように、やはり今後、米朝交渉ですとか日朝交渉、それがどちらが先か後かという問題はこれから、流動的かもしれないんですが、そのときに、日本が意思を持って、当事者としてこの人権問題、拉致問題を解決させるからどうか理解をしてほしいんだ、そういうことをきっちりバイデン大統領の方に、外交として、総理として強い発言力を持ってお伝えいただければ、私たちとしてはありがたいなというふうに思っております。

 以上でございます。

笠委員 ありがとうございました。

 今、本当に、バイデン大統領が初めて来日をするということ、そして、先般、韓国でまさに文政権から尹政権に替わったということで、この拉致問題解決のために、日本と米国、そして韓国、やはりこの協力というのは非常に、連携というのが大事になってくると思いますけれども、西岡参考人と李参考人に伺いたいんですが、韓国が今度尹政権に替わったということで、これで、この拉致問題の進展に向けて今までと環境が何か変わってきた点があるとすれば、あるいは、日本としての外交アプローチ、そういった点で求められるものがあれば、是非お話を伺いたいと思います。

西岡参考人 ありがとうございます。

 まだ尹政権がどのような対北政策を取るかはっきりはしていませんけれども、林外務大臣が就任式に行かれたときに、拉致問題について協力を表明するということを言ってくださったと。

 朴槿恵政権のときは、朴槿恵政権の例えばイ・ビョンギ駐日大使は家族に会ってくださいました。新潟にも、現場にも行きました。朴槿恵政権、あるいは朴槿恵さんは、野党の政治家の時代、何回か私たちに会ってくださっていました。そういう理解がありました。

 文政権になってそういうことがなくなったのでありますが、その朴槿恵政権のレベルまで戻ってくださればありがたいなと思いますし、何といっても、韓国の情報機関は北朝鮮の情報を一番持っています。横田めぐみさんの拉致についても、韓国の情報機関の情報が契機になって明らかになったのであります。その分野について、なかなか文政権のときにうまく情報機関同士の交流ができなかった部分が正常化されていくことは、日本にとって大変プラスではないかなと思います。

 以上です。

李参考人 御質問ありがとうございます。

 尹政権は、明確に、北朝鮮は主な敵、主敵というふうに方針を転換しているんですね。それからもう一つは、就任演説で、北朝鮮非核化、北朝鮮が核開発を中断すればというふうになっているんですね。これまでは朝鮮半島非核化として、非核化がちょっと曖昧になってしまったんですが、その点も認識は明確になっているようです。

 ただ、ちょっと残念なことに、北朝鮮住民に対する呼びかけとか、それから、尹政権が究極的に何を目指すのかというのがはっきりしていないんですね。韓国憲法では、統一を実現するというふうに明確に書いているんですよ。統一するには、不法に政権を樹立してそこに居座っている金政権を倒すべきなんですね。ですから、そのビジョンをはっきりと語るのか、その目標なしに、それを曖昧にすれば、いろいろな政策をやったって、何のための政策なのかが明確でない。

 そういう目標の中で、繰り返しになりますけれども、核を北朝鮮が捨てたとして、いい国にならない。ですから、北朝鮮を攻めるのは、やはり人権とか、今、北朝鮮の本質、うそをついたりとか人権をじゅうりんしたりとか、そういうことを明確にして金正恩の責任を追及して、韓国は統一を目指すんだ、それに、日本とか価値観を共有するアメリカとかと緊密に連携していくということをやはり日本も韓国に求めて、その前提があって初めて金正恩が慌てて、そういう人権問題とかに重い腰を上げるんじゃないかというふうに私は思います。

 以上です。

西岡参考人 一言ちょっと言い忘れたことがあって、いいですか。

 尹大統領の就任式に韓国の拉致被害者家族会が招待されました。これは今までなかったことだと思います。

笠委員 西岡参考人にもう一点伺いたいと思います。

 先ほど、いわゆるコロナ、今、二百二十四万人とも二百四十万人とも言われますけれども、それで六十五人ぐらいしか亡くなっていないというのはまさに少な過ぎて、どこまでを信用すればいいのかと私も非常に疑念があるわけですけれども、ただ、参考人がおっしゃっていた、今、六重苦という中の二番目にコロナの蔓延、そして六番目に住民と幹部の不満と反体制勢力活動ということで、コロナの蔓延というのが非常に今深刻であるならば、これが、この体制に亀裂が入るような、そういう可能性というのもあるのか。

 現状、どういうふうに分析をされているかをもう少しお聞かせをいただきたいと思います。

西岡参考人 ありがとうございました。

 まず、感染者がゼロだったということは信じられないというふうに思っています。内部の情報もいろいろありまして、感染者はあったと思います。ただ、今回大騒ぎしている理由の一つは、平壌でかなりはやったということがあると思います。

 ただし、今、地方では、コロナで死ぬのも飢え死にするのも同じだ、まず食料を何とかしてくれという声が高まっているんですね。

 去年の秋の収穫は悪かったです。協同農場の農民の人たちが配られたものでほぼ食べ尽くしていて、四月ぐらいになって、今、ないわけですね。今、田植をしなくちゃいけないんですが、田植をするときには都市から農村支援をやるんですけれども、今、それは郡や市を越える移動は禁止ですから、できない。協同農場だけでやれといって、コロナが蔓延しているけれども、毎日熱を測って、発熱していない人は仕事をしろと言っているんですが、うちに行ってみると、いなかったりするんです。食べ物がないので探しに行っている、あるいは、山に入って斜面を自分で耕して、そこでトウモロコシを作って何とか食べている。そういう中で、今、肥料もないので、今年の田植が余りうまくいかないと、今年の秋の収穫はどうなんだろうかという心配もあって、一体、生活をどうしてくれるのかという声が出ています。

 そして、もう一つ注目すべきは、軍隊にも食料がないんです。今、何とかトウモロコシの御飯と塩のスープは食べられているようですが、たんぱく質や脂のものはほとんど供給できない。理由は、コロナを理由にして中朝貿易を閉じたんです。

 実は、九〇年代の半ばから、各軍団は自分たちで食べろと言われているんです。中央からお金が来ないんですよ。物資も来ない。自分たちで貿易をして食料を確保し、あるいは兵器、弾薬なども確保しなくちゃいけないという体制なんですが、だから、それぞれの軍団が貿易会社を持っているんですけれども、それができなくなっているということもあって、兵士の中の栄養失調者もたくさん出ているし、夜になると兵士たちが強盗化するというようなことも起きていまして、もちろん、だからこそ強い権力で統制しているんですけれども。

 もちろん、今どういうことが起きているかというのは断片的な情報で分かるんですが、今後どうなるかというのを予想するのは大変難しいことでありますけれども、北朝鮮の治安担当者の人たちも何が起きるか分からないと言っているという話を聞きました。先ほど申し上げたように、治安担当者の人たちが殺されたりするんですから、だから、末端では本当にわさわさしている。

 だからこそ、人道支援といっても、私は、ワクチンなど、彼らは欲しがらないと思います。今、国内向けに大騒ぎしているのは、金正恩委員長のおかげで結局コロナに勝ちましたという宣伝をしているので、国際社会のはもらわないです。中国から薬はもらいましたけれども、ワクチンはもらわないと思います。

 ただ、問題は、そうじゃなくて、食べるものですね。あるいは肥料ですよ。あるいは薬品もないんですね。そういうものが欲しいのは間違いないですね。でも、名分がないと受け取らない。韓国に頭を下げてということはできないでしょう。日本から九〇年代に食料支援をしたときは、日本が植民地支配を謝って持ってきたと言ったんですね。私は、そういうことを言ってもらってもいいと思っています、ただし、被害者を全員帰すという決断をするなら。

 大混乱が起きる。安定できない、その中で核に頼っているということで、何かいろいろ大きなことが起きると思います。その中で、政府が機動的に、一体彼らが何を欲しいのか、そして、どこに金正恩氏とつながるパイプがあるのか。最大限、まずは被害者を助けるということですから、メンツもちゃんと維持してあげますという交渉をして、ただし、全員帰さなくちゃ駄目ですよ、認定、無認定にかかわらず全員ですよということは譲らないで、ぎりぎりのところで交渉してほしい、その後ろに国会があり、国民があるという今の体制を維持してほしい、そういうふうに思っています。

笠委員 それでは、特定失踪者問題調査会の村尾幹事長に伺いたいんですが、先ほど、とにかく総理に家族会の皆様方と会ってほしいというお話がありました。

 これは、なぜ会わないのかというのを端的に、どういうふうに思われているかということをお述べいただきたいと思います。

村尾参考人 ありがとうございます。

 御家族や我々が感じているのは、やはり政府が北朝鮮に突っ込まれることが嫌なのではないかと。もし認定していない人と総理大臣が会うということは、日本政府として、こういう人たちも拉致被害者だという中に、枠に入ってしまう。そうすると、北朝鮮側からそれに対して、違う人までそういうふうに国がやっているというふうに言われてしまうことが嫌なばかりに会わない。

 事実、帰国された曽我ひとみさんは全くそういう人ではなかった。あるいは、先ほど言ったとおり、小泉さんは、認定なんという言葉がないうちに会っている。そういう意味でいえば、今の状態と全く変わりませんので、是非会っていただきたいというふうに思います。

笠委員 時間が参りましたので終わらせていただきたいと思いますけれども、委員長、是非、今のこの特定失踪者の家族の皆様方と総理の面会、当委員会としてもしっかりと総理に、岸田総理にそういった要請をすべくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 今日は、本当に参考人の皆様方、ありがとうございました。

長島委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延映夫でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様、ありがとうございます。そして、ただいまは貴重な御意見を伺いまして、質疑を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 今、皆様の御意見を聞いておりますと、やはり、なぜ拉致問題が前に進まないのかという、本当にじくじたる思い、私もこの委員会の理事として、非常に、これを何とか前に進めなければならないと強く強く思っているところであります。

 そこで、質疑に入らせていただきますが、先ほど横田参考人がおっしゃっておられました、要するに、若い世代、私の子供ぐらいの世代になると、なかなか、拉致問題に対する、マスコミの調査なんかも見ておりますと、やはり十代とか二十代前半の方が一番拉致問題に関心が低いというようなことも出ております。

 本年度、田口八重子さんの御長男の飯塚耕一郎さんの半生を描いた本を、小学校、中学校、高校でダウンロードで全員に見てもらえるということになっているようです。これはいいことだと思います。

 実は、私の事務所のスタッフは二十代半ば、それから私の娘は十代なんですけれども、その者にこの質問をする前に聞いたときに、やはり学校で一度も、拉致問題に対するいわゆる学習の機会というのは、余り記憶がないということを言っているわけなんです。

 私は、これを風化させないため、そして、本当に、北朝鮮によるこんなとんでもないような人権じゅうりんが行われた、人権問題があるということを、やはり若い世代、小学校、中学校、高校でしっかり教育することが必要だと思うんですが、この点について、四人の参考人の皆さんからそれぞれ御意見をいただけますでしょうか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 これまで、教育現場のお話というのは幾度か私も聞いているところがあるんですが、すごく積極的にこの問題に取り組んでいただいて、若者、学生の皆さんに、子供たちにこの問題を深く浸透させようという努力をしてくださっている方がいらっしゃるのも知っていますし、一方で、あるところの現場では、この拉致問題が政治の問題だから扱いにくいじゃないかということを理由に取り扱わないですとか、若しくは、この問題を教室の中で話をすると、例えば、そのクラスとかその学年に在日の方々がいらっしゃって、その人たちが聞くに苦しくなって、ゆえに扱いにくいんだというようなことを理由にこの問題が前に進んでいかないといったようなことがあることを私は承知しています。

 ただ、これは、拉致問題というのは、申し上げるまでもなく人権問題であって、もっと言うと主権の問題でありますから、それはもう私たちは堂々と、大人である教師が、子供たち、学生さんとか高校生、中学生の皆さんに、もちろん、言葉を選んで平易な内容で伝える努力は要ると思うんですが、それはもう完全に一人の日本国民のものとして、教師の立場を超えて子供たちにしっかり伝えていく役割、責任はあるんだろうというふうに思います。

 そういった、先ほど申し上げたような誤解をまず解いてもらって、しっかり子供たちに伝えていくことが大事だと思いますし、一つの手段としては、今、日本政府、拉致対策本部の方にいつも御支援いただいているんですが、昨年から教職員さん向けに、コロナ禍なのでオンラインの形式でしたけれども、私やほかの関与者が一時間ぐらいの持ち時間をいただいて、教職員の皆さんに、拉致問題とは何なんだ、どうしてこの問題が未解決なんだろうと教師の人から若者に伝えてほしいんだということを訴えるオンラインの形式のセミナーの機会をいただきました。今年も実施予定と聞いておりますけれども。

 我々は我々で、そういった機会を有効活用させていただいて、大人世代、教師の方々にもう一回理解を深めてもらって、どうして子供たちに言う必要があるんだ、伝える必要があるんだということを分かっていただけるような努力をそれぞれの持ち場でしっかりやっていければと思っています。

 以上でございます。

西岡参考人 ありがとうございます。

 家族会、救う会の運動方針の中に、一人一人の被害者に寄り添った広報をしてほしい、しましょうというのを書いてあります。

 横田めぐみさんという名前はかなり知られているんですけれども、例えば鹿児島で、中学校とか高校で、めぐみさんのビデオだけを見るのか。市川さん、増元さんという地元の認定被害者がいらっしゃるわけですよね。じゃ、市川さんの物語とか増元さんの物語の、そういう子供に見せるものができないのか。

 そういうことの中で、拉致対策本部とも我々の運動方針の下に御相談しましたらば、飯塚耕一郎さんが主人公のアニメがあるんですね。先生がおっしゃってくださったように、そのアニメ、いろいろ考えて、アニメというかコミックですね、コミックスがあって、それを紙で買ったらいいのか、いろいろなことを考えたら、電子版があったということで、電子版の著作権料を政府が持っていただいて学校で使えるようにしてくださるということができましたから、埼玉県では特に、「めぐみ」のビデオを見た後、耕一郎さんのも見られるというふうにはなったわけですけれども。

 兵庫県も、有本さんのことを含めてビデオを作ってくださいました。熊本県は、副教材、教育委員会が作ってくださっています。鳥取県も、松本さんを中心にしたものを作ってくださっています。

 そういうふうに、めぐみさんという名前はすごくビッグネームになっていますけれども、例えば、私は、新潟の救う会の人たちに言うんですけれども、曽我さんも新潟県の被害者だと。いつも十一月だけに集会をやるんじゃなくて、八月の曽我さんのいなくなった日にも集会ができないかとか、いろいろなことを考えています。めぐみさんのことをみんなに知ってもらうためにビデオの上映運動もしておりますけれども、一人一人の被害者には人生があって、それが無理やり奪われたんだということを知るためには、実は、日本にいるときどんな人だったのかということを知ると、ああ、こんなだったんだと分かるんですよね。

 例えば、松木薫さんは、大学のスペイン語の先生になると決まっていたんです。大学院に行って、指導教官が一年だけ語学留学してこいと言っていた。聞くところによると、フィアンセもいたというんです。大体私と同じ年ですから、彼は帰ってきて大学教授をやって、私もそろそろ定年でと、そのくらいの人生が奪われちゃっているんです。

 人生が奪われたということを分かるためには、連れていかれる前がどうだったのかというのをみんなが知ったらいいじゃないか、そういうことをやるのが広報の一つのやり方じゃないかと思っています。

 ありがとうございます。

村尾参考人 ありがとうございます。

 私自身、実は、東京都の教育委員会からお願いされて、中学生向けの人権啓発のビデオに出演しております。そこでは、水泳で金メダルを取った岩崎恭子ちゃんなんかと一緒に、人権という観点から拉致のお話をさせていただいているんですね。もし、あなたのお子さんや御家族、大切な御家族が北朝鮮に連れていかれたらということをテーマにアプローチをしているんですが、その中で、ラジオ放送の「しおかぜ」のお話なんかもさせてもらっています。

 もう一方で、東京都の教育委員会からお願いされているのは、先生たち、それから教職員の人たちに向けた勉強会、講演会をさせていただいて、その講師をやっているんですが、そのときに現場の先生方に話を聞くと、政府は、「めぐみ」のアニメを学校に配っています。それが全く使用されていないなんという新聞記事が出たりとかしていますが、実際に先生たちのお話を聞いてみると、その年のカリキュラムが決まった後にそういうものをやれというふうに言われても、全く入る余地がない、しかも、この教材をどう使えばいいのかも分からないと。

 そもそも、先生たちが拉致問題のことについて深い知識を持っていないというところにも問題があるんですけれども、もっと丁寧なアプローチをすれば、道徳の時間なんかを使ってやることは十分できるんだと思います。僕は、その辺を心がけて先生たちにお話をするようにしていますので、それがあって、各自治体なんかではそういう機会に呼ばれることが多くなったんですね。だから、全てはアプローチの仕方次第ではないかなというふうに思っています。

李参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、拉致問題に関する啓蒙活動というか、政府主催のそういう行事に呼ばれて、それで講演をしたりとかしたんですね。その都度、私は、なぜ拉致問題は解決しないのかということをずっと語ったりとかして、一向に前進しないことに本当にじくじたる思いをしています。

 ただ、それでも日本政府は、諦めず、努力をし続けてきた。これは国家としてとても高く評価されるべきだと私は思っているんですね。

 隣の韓国の文在寅政権時代は、北朝鮮首脳と三回会いながら、最近抑留された韓国国民、七人ほどいるんですが、一言も返してほしいということを言わなかったという批判があるんです。余りにも比較するまでもない事例かもしれませんが、私は、国家の在り方としてこれはとても大事な問題で、拉致被害者を救うその過程というのは、我々は本当に高く評価している部分もやはり皆さんが共有して、国家の在り方とか、それからこの拉致問題が持つ意義は、私たち一人一人の人権に関わる問題、人類共通の普遍的な価値と関係ある問題だということがどんどん広がってくれれば、私はとてもいいことじゃないかというふうに思います。

 具体的にどういうふうにすればいいかということは、もう政府がかなり多方面で努力されていますので、私も協力できる部分があれば是非協力したいというふうに思います。

美延委員 今の四名の皆様からのお話、しっかり私も受け止めさせていただきたいと思います。

 次に、横田参考人にお伺いしたいんですが、インタビュー記事を拝見しておりますと、やはり国会がまだまだこの拉致問題に対して機能ができていないという厳しい御指摘をいただいたのを私も拝見いたしました。私も、この委員会の理事の一人としても誠に申し訳ない気持ちなんですが、実際、今、国会に一番してほしいことというのは、横田参考人はどういうことをお考えなのか、御教授願えますでしょうか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 私は民間人の一人なので、具体的にこれとこれとかということを御注文できるような立場じゃないんですが、拉致問題を取り巻く問題というのは、実はすごく多くのものに関与していると思っていて、例えば、よく言われているのが、やはり、姉を含む日本人が拉致されたというのは、北朝鮮の工作員が日本国内から拉致をしたということを考えると、スパイ防止法はなぜ日本にないんだろうかとか。

 若しくは、まだ日朝の外交交渉が進んでいない中でこういう話をしても絵空事かもしれませんが、例えば、姉やその他の拉致被害者が日本に帰国できたときに、先ほど西岡先生のお言葉、表現をかりると、うちの姉、めぐみは、ビッグネーム、余りにもこの拉致問題のシンボル的な存在になってしまったゆえに、帰ってきたときに、多分、日常の生活というのは逆にもうできないぐらい、メディアスクラムを含めて、治安維持も含めて、相当困難な生活が予想されます。そうした環境整備とか法整備とかというのが本当にできるんだろうか、議論していただけているんだろうかとか。

 若しくは、北朝鮮への強い制裁は、国際社会よりも格段上に日本はやっているという話は、西岡先生からも話がありましたが、本当に、じゃ、今のままで足りているんだろうかという議論はもっとしてほしいと思っているんです。金融制裁に抜け道、抜け穴はないのかとか、いろいろなことがもっと、私は、できることがいっぱいあるんじゃないかなというふうに今でも信じています。

 例えば、みなとみらいにある、北朝鮮の工作船が展示されていますが、ああいう工作船が今も堂々と入ってきているとは思えませんが、やはりあのリスクは今でも残っているわけなんです。そのときに、私、先ほどの、冒頭の発言の機会のところで申し上げたとおり、日本の海を守る海上保安庁の例えば装備の強化とか人員の強化とか、それを根拠づける法的な整備とかというのは、これは拉致問題の家族会の立場を超えた発言なので、余りそこは申し上げるつもりはないんですが、そうした国民を守るという点ではある意味共通項だとすると、そうしたことというのは、拉致問題にかかわらず、全てのものが実は絡んでいて、主権を守るんだということをもっと意識した御議論というのがあっていいのではないかなというのを常々思っています。

 以上でございます。

美延委員 ありがとうございました。

 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

長島委員長 次に、高木啓君。

高木(啓)委員 自由民主党の高木啓でございます。

 今日は、四人の参考人の皆さんには、御出席をいただきまして、本当に心から感謝を申し上げたいと存じます。

 また、質問の時間も賜りまして、誠にありがとうございます。

 今年は、横田めぐみさんが新潟の海岸から連れ去られて四十五年、北朝鮮が拉致の事実を認め、被害者五人を帰国させることになった第一回日朝首脳会談から二十年、そして、めぐみさんの御両親ら被害者家族が組織的救出運動に踏み出した家族会の結成から二十五年という節目に当たるわけであります。長い年月がこの間過ぎてきたわけでありますが、結果として成果の乏しい現状を見るときに、私も一政治家として、大変申し訳なく、ざんきの念に堪えないわけであります。

 本日は、自由民主党を代表して、全拉致被害者の即時一括帰国を目指して、参考人の皆さんに改めて、質問を通じて私たちの活動にも是非御示唆をいただきたい、このように思っております。

 質問に入らせていただきます。

 まず、現在、北朝鮮が体制の危機に直面しているというお話がございましたが、金正日時代からこうした話というのは何度か聞いてきたわけであります。

 しかし、今回、コロナ感染拡大を突然発表したことなどもあって、今まで以上に体制の危機が深刻であるということを私は裏づけていると思いますし、また、西岡先生から詳細に、体制の危機に関するその他の具体的根拠も聞かせていただいたわけであります。

 そこで、今、政府と国会は、全拉致被害者の即時一括帰国実現の道筋を今こそつけるべきであって、無条件での日朝首脳会談に北朝鮮が応じざるを得ない状況、これをやはりつくっていかなければならないと思います。そのためには、今までの経験からいって、北朝鮮に対しては、融和策ではなくてやはり制裁なんだという、力の行使というものが私は最も有効だと思いますし、先ほど来議論になっていますけれども、やはり経済制裁もまだまだ余地があるのではないか、私はそう思います。

 改めて、経済制裁の強化を図るべきだと思いますので、その部分での更なる検討というか、何ができるのかということを進めるべきだと思います。

 例えば、金正恩の個人資産の凍結はされておりませんし、また、同じく金与正や、あるいは政権幹部である崔竜海、あるいは同じく政権幹部である趙甬元等の、こうした人たちの個人資産凍結などは、やはりもう一回、私は、経済制裁という意味では考えるべきだというふうに思うんですけれども、是非この点については、西岡先生から、また李先生からも御意見を賜れればありがたいと思います。

西岡参考人 先ほど李先生もおっしゃいましたけれども、二〇一七年に三つの、国連安保理で制裁決議があって、特に、十二月の決議で完結したわけですけれども、大変厳しい制裁がかかっている。

 端的に言うと、北朝鮮の外貨を断つということなんですね。輸出は大体、北朝鮮は六十億ドルはしていたんですけれども、今はそれが六億ドルもできなくなっている。輸出の九割ぐらいがずっとできなくなっている。毎年毎年、その分、外貨が減っているんです。三十九号室という金正恩の統治資金がほぼ枯渇している状態に今なっている。その前に、日本からの送金をできなくするように、日本で様々なことをやってくださいました。今はほとんど行っていません。

 そういうことで、効いていることは間違いない、だからこれを維持すべきだというふうに私は思っておりますが、今先生から直接御質問があった件については、私は慎重であります。

 象徴的な意味の制裁ですね。今、金正恩の財産が日本にないですから、おっしゃった幹部たちの財産もないので、ただし、象徴的な意味で日本がそこまで踏み込んだということはあると思いますが。一方、総理が無条件で会いましょうと言っている状況の中で、象徴的な意味の制裁を今するということ、ここで議論されるというのは一つの抑止力になるというふうに思いますけれども、なかなか微妙ではないか。

 私たち家族会や救う会は、金正恩氏個人を国際刑事裁判所に訴追するという北朝鮮人権に関するNGOの枠組みができたとき、入りませんでした。家族と一緒にやっている立場として、金正恩氏個人を訴追するというところまで踏み込むのはちょっとできないと。趣旨に賛成し、一般の学者としては、いろんなこと、言いたいことがありますが、救う会の会長としては、入れないと思いました。

 今、人質が取られている、犯人の手元にある、そして四十五年たっているという状況であります。そういうことの中で、先生方も一緒に知恵を絞っていただいて、ダメージを与えなくちゃいけないが、しかし、反発されて、日本を交渉相手からはじくということになっても困る。

 特に、最高指導者については、彼らの考え方というのは物すごく特別なものがありますので、それを私は肯定するわけではありませんが、そういうものがあるということが前提なので、そこを踏まえてどう知恵深く対処するかというのが必要だというのが私の意見であります。

 以上です。

李参考人 ありがとうございます。

 最近の労働新聞、北朝鮮、中央委員会の機関紙ですね、労働新聞の報道では、金正恩氏が日本の総連に二億円以上を送ったというふうな報道があったんですね。そういうお金を差し押さえることはできないのかというふうに私は思いますけれども、そのほかに、今、北朝鮮問題がなぜ解決しないのかという根本に戻って考えた場合に、私は、中国の存在があるんですね。

 今回のコロナでも、北朝鮮は、COVAXとか国際機関の支援は拒みつつ、中国には既に支援を求めていて、ほぼ確認された情報ですけれども、北朝鮮が高麗航空機三機を中国に送って、医薬品をもう既に運んでいる。それから、先週末頃に、中国から十五名の支援隊が北朝鮮に入った。ですから、これから、北朝鮮にうるさいことを言わず、それから北朝鮮の政権の存続を望む中国は、無条件で北朝鮮を支援するというふうに見られるんですね。

 ですから、一番効果的な方法は、バイデン大統領が日本に来られますけれども、私は、中国に対するセカンダリーボイコット、これはアメリカでもワームビア法と称してかなり厳しい法律はできているんですが、アメリカ政権がそれを実行に移していない。

 ですから、私は、中国に対して、例えば石油一つでも止めたら金正恩を追い詰めることは十分可能だと思います。ですから、本気になって、今のところは、金正恩を説得し金正恩を攻めるよりは、私は、中国を攻めて、金正恩が仕方なく、あるいはもう追い詰められて、それで日本とか国際社会と話をするという状況をつくるべきだというふうに思います。

 以上です。

高木(啓)委員 それぞれ、ありがとうございました。よく分かりました。

 続きまして、特定失踪者問題調査会の村尾幹事長に伺いたいんですが、私も、歴代総理が一度も特定失踪者の家族の方々と面会をしていないということに対しては、やはり、もっとやるべきだろうというふうには思います。このことについては政治的にはいろいろな考え方があるんだろうと思いますけれども、やはり会ってほしい、私も個人的にはそう思います。

 そのことは前提として、もう一つ、今日御提起のあった短波放送の話なんですが、これは間違いなく聞いているだろうというのは多くの識者の一致した考え方だと思います。北朝鮮がこれほど妨害電波を出すということも、やはり証拠だというふうに思うんですが。まさにこれが拉致被害者、北朝鮮にいる被害者の方々の一縷の望みになっている可能性もあるわけでありまして、これを、ですから、一系統というか一波にしてしまうなんということはあってはならないと思うし、やはりここは、政府がしっかりと十分な手当てを行うべきだと思うんです。このことに対して政府は何を具体的にすべきなのかということが一つ。

 もう一つは、現在中断されている中波放送、このことについても、早期、私は復活をすべきだというふうに思うんですけれども、どうしたらいいか、是非教えていただきたいと思います。

村尾参考人 短波のことについては、これは御指摘のとおり、北朝鮮は非常に強い妨害電波を発射してきています。

 今もずっとお話に出ている新型コロナウイルスのことについては、まだ武漢ウイルスと言われていた二年前の一月に、我々は「しおかぜ」で北朝鮮にコロナ情報を流しているんですが、そのときに更に妨害電波が、北朝鮮のレベルが上がるという事実がありました。ですので、その当時からもう既にそういう病状が入っていて、北朝鮮はそれに対して妨害をするということで、向こうはかなりのそういう危機にあるんだろうという認識を持っていたんですね。

 今、短波で一番必要だということは、やはり安定的にあの施設を運用していかなくてはいけないということ。これは、もちろん被害者を救出するために、今、我々は一日三時間半の放送をやっていますが、この枠をもっと増やし、万が一北朝鮮が有事になった場合には二十四時間の放送をするというふうに、これは、総務省とNHKとお話を詰めて、できることになっているんですが、そんなときに、送信機がこれはもう故障だから使えないとか、そういうことになってしまっては元も子もないわけで、しっかりとその辺はメンテナンスをして、新しいものに更新するとか、そういうことをしっかり見ていただきたいということがあります。

 それから、中波放送については、我々は海外の施設を使ってやってきました。具体的にはモンゴルです。モンゴルから北朝鮮に向かって中波送信をしていたんですが、これは、非常に難しい政治的な問題があって、という理解をしているんですが、モンゴル政府から送信ができないというふうに言ってきました。

 中波というのは、国内向けの電波というふうに決められていて、国内だけの枠の中で使うということになっているんですが、実は、電波には垣根がなくて、もちろん韓国でも北朝鮮でも日本の中波放送というのは聞けてしまうんですね。特に夜の場合には距離が届くので、モンゴルから平壌まで千三百キロ、九州から平壌までは八百キロぐらいなんですね、十分、北朝鮮の中で中波を受信できるチャンスはあるんです。

 ですから、我々の意思としては、国内向けの中波送信を、夜の時間帯に日本人向けにやる、それが結果論として北朝鮮に聞こえてしまっても、要するに管理のしようがないということで、これは国内の啓発にももちろん使えますし、多くの皆さんに、今、ラジオは、AM放送をFMに切り替えるとか、非常にメディアとして使われなくなっているので、その有効活用にもなるというふうに考えていますので、その辺のことを考えて、今後お力をおかりできればというふうに思っています。

高木(啓)委員 ありがとうございました。

 時間もありませんので最後の質問になるかと思いますが、横田拓也さんにお伺いしたいと思います。

 横田さんは、月刊「正論」の令和三年十二月号で飯塚耕一郎さんと対談をされておりまして、その中で、結論として、国としてどうすべきなのか、何があるべき姿なのかということが、我が国に対しては見えない、こういう最後の記述がございます。

 めぐみさんを始め、全ての拉致事件を念頭に、私は、戦後の我が国と日本人に、国家のありようというものをこの言葉は鋭く問うたのだというふうに感じました。横田さんから見て、我が国に今最も足りないものは何なのか、是非御教授いただきたいと思います。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 私ごときがお答えできるような内容ではないかもしれませんが、この拉致問題という切り口だけでいうと、やはり、日本もそうですし、世界もそうですが、平和であることはとても大事だし、それを守り続けることは大事だと思うんですが、平和というものはただでは本当は入らないんだということを、やはり一人一人の国民が意識していく必要があると思うんです。

 そのときに、国家、政府というものは、主権をどうやったら守り続けられるのか、人権を守るにはどうしたらいいのか、他国と渡り合うにはどうする必要があるんだということをやはり真剣に御議論していただく必要があって、そのときに、何の罪もない十三歳の民間人の少女が、海外からではなくて日本国内から拉致されているのに何も手を出せない、これはもう本当に主権国家の形としてはいびつ過ぎるような実態です。

 それを、先ほどの話に戻ると、どこか、横田さんのところの話だから、かわいそうだよねで終わってしまっているところがよくなくて、自分たちの国が試されているんだということをやはり一人一人が認識すれば、日本はもう国力、経済力は強いわけですから、そういう意識面の強化というのが私は大事だろうというふうに思っています。

 以上でございます。

高木(啓)委員 時間が参りました。本当に今日はありがとうございました。

 終わります。

長島委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 お疲れさまでございます。国民民主党の鈴木敦でございます。いつもお世話になっております。

 私、昨年十月に初当選させていただきまして、初めて皆様からの直接のお声を聞かせていただきました。今までも、様々、いろいろとお話を聞いておりましたけれども、今までになく様々な条件がそろってきたと私も思っております。

 本日、西岡参考人にまずお伺いをしたいと思っておるんですが、本日もいろいろな質問の中でもありましたとおり、北朝鮮の国内状況はもう極めて逼迫をしていて、かつ、我が国もこの三年間苦しめられましたが、新型コロナウイルスの影響も出てきて、かといって、食料が足りないからといって韓国に頼るわけにいかず、もらえるとしたら日本しかないという状況になって、恐らく、次の一手の指し方さえ間違えなければ、この膠着した状況を前に進めることができるのではないかというふうに私も考えるわけでございますけれども、いまだ、様々な制裁をしながらも細々と生き残っておるわけでございまして、何とかしてこれを打開しようと考えたときに、これはちょっと専門的な話ではあるんですけれども、西岡参考人にお伺いしたいんですが、例えば、昨今ロシアにやって話題になりましたようなSWIFTからの除外ですとか、そのような一段高いレベルでの制裁を加えるということに関してはどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

西岡参考人 私は金融の専門家ではないんですけれども、既に実態として、北朝鮮はSWIFTからの除外と同じような対応を受けている。日本は北朝鮮に貿易保険の適用をしたんですね。それからヨーロッパも、貿易代金を払っていないということで、同じようなことをやっています。ですから、もう信用取引しないんです。物を買ってお金を払わなかったわけです。それで、日本はもう保険を出しちゃったんです、たしか八百億円ぐらいだったと思いましたけれども。だから、もう、今度は現金を持ってこないと物を買えないというふうに、今、北朝鮮はそもそも西側に対してはなっているんですね。

 そういう中で、今、国際制裁で、北朝鮮から買ってはいけないもののリストがだあっとあって、それから、輸出してはいけないもののリストもあって、それで輸出がマイナス九割というような状況になっていますので、ロシアのように、国際貿易の中で特に石油などを売って黒字を持っていた国とは違う、かなり追い込むことができているというふうに私は理解しております。

 ただ、SWIFTそのものについて今北朝鮮がどうなっているかは、ちょっと私は専門ではないので、今断定的なことは申し上げられません。済みません。

鈴木(敦)委員 北朝鮮という国に対して様々な意味で制裁をかけるというところで、SWIFTの話をちょっと引き合いに出させていただいたわけです。

 政府側に関しても、この前の所信表明に対する質疑の中で私も申し上げましたが、総理が直接向き合う覚悟ですと何代も連続しておっしゃっているんですが、向こうがこちらを向いていない以上、幾らその決意を言ったところで前に進まないではありませんかとこの前も申し上げましたし、その際に、実際にテクニカルな話で、どうやって向こうをこちらに向かせるのか、これはやはりこちらから伝えるべきだと思うし、我々がどういうカードを持っていて、この手を使って皆さんをこっちに向けるんだ、だから話し合いなさいというお話をするべきだと私は言ったんですが、このとき、林外務大臣が、国会での答弁は向こうも聞いているので、我々の手のうちをさらすから言えないんだ、このような話だったんですね。

 ただ、逆に申し上げれば、この場で話したことは向こうに伝わるので、それが政府の意思を示すんじゃありませんか、私はこのように申し上げたんですが、これにつきまして、西岡参考人それから李参考人に、このような見解をどのようにお考えか、お伺いいたします。

西岡参考人 首脳会談を実現するためには、絶対に秘密交渉が必要だと思います。金正恩氏が信頼できる人間と、それから岸田総理の信頼できる人間が、全く分からない形で何回か会うということが、今行われているのか行われていないのかも私は知りません。トップが会うために、このような国交もない国との交渉の中で、大使館ルートでの交渉は、みんな段取りをつけた段階では必要だと思いますけれども、秘密交渉こそが絶対必要だというふうに思っています。

 そこの中で一番気をつけなくちゃいけないのは、途中経過を漏らさないということです。私はすごくよくないなと思ったのは、ハノイで、当時、安倍政権のときに、たしか情報室長が北朝鮮の工作機関の人間と会っていたという記事がアメリカの新聞に出てしまった。何でこんな記事が出るんだろうかと。

 私たちは、政府に対して経過の説明は要らないと。本当は聞きたいんですよ、もちろん、家族の人は本当に聞きたいんですよ。でも、結果を出してください、言えないことがあるのは承知の上だというふうに申し上げているんですね。

 ただし、岸田総理が金正恩委員長に分かるように、今日本は何ができて何ができないのかというようなことをもっと言っていただくという点は、私も賛成です。

 日本の制裁と国際制裁の隙間があるとか、人道支援はできる、しかし、人道的な対応を北朝鮮がしない中で、一方的にすることはできないと。日本は拉致の解決の定義の一、二、三のうち一を求めているんだ、当面ですね、というような議論を是非国会の中でもしていただきたいと思いますし、それが総理の考えでもあるかもしれませんけれども、与野党一致した考えなんだということを示していただくことが必要なんじゃないかとも思うのであります。

 その辺のことについても、人道支援を、じゃ、どう位置づけるのか、日本の制裁の国際制裁よりも強い部分をどう位置づけるのかというような議論は、是非ここの委員会でも、あるいは各党の中でもしていただいて、それぞれの見解を出していただいて、それが一致しているということになれば、それは実現できるという北朝鮮に対する証文になるわけですよね。そんな議論を是非していただければというふうに思います。

 以上です。

李参考人 ありがとうございます。

 北朝鮮との交渉とか、これはテクニックの問題だったらとっくに解決したと思うんですね。だから、日本は日本の価値を貫くのがとても私は大事だと思っています。

 それから、今日本が厳しい制裁は科していますけれども、本当に北朝鮮の急所をついているのかというのは、私は疑問に思っているんですね。日本には、御存じのとおり、北朝鮮の前哨基地が厳然とまだあるんですよね。それに対して、私はちょっと日本の状況をいまだに詳しく知っているというふうには言えませんが、それにメスを入れないのはなぜなのかということが常に私には疑問なんですね。

 それと、中国とかに関しても、日本が拉致問題を解決するためにも、アメリカと一緒になって、厳しいセカンダリーボイコットに日本も、拉致問題に協力しなければ参加する意向があるということを、やはり公に、世論づくりとかそういうことを、実際やるかやらないかはまた別の話かもしれませんが、そういうことをして、どんどん北朝鮮が交渉せざるを得ないという状況をつくらないと駄目です。

 金正恩を説得してやるということは、今コロナの問題でも、御存じのとおり、国民が百万死んでもこの国は政権は倒れませんので、ですから、余り金正恩が困ることはないんですね。ただ、金正恩が困るのは、彼をターゲットにして何ができるか、そういうことですけれども、私はちょっと日本も戦略的に、やはりできることは、残念ながらアメリカと一緒にすることしか今のところないんですが、少なくとも、日本は強い意思を、絶対諦めない、そういう意思を貫くのがとても大事だと思います。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 様々いただきましたけれども、今日の話の中で一番心に残りましたのは、横田参考人からいただいた言葉でして、そもそも我が国の領土から拉致をされているということで、我が国の国民を守る意思が問われている問題がずっと四十五年間放置をされてきたということを改めて実感をしたわけでございます。

 私たちも、海上保安庁の機能整備につきましては党内でも議論をさせていただいておりますし、我が国の領海、それから排他的経済水域での外国のそういった破壊活動や工作活動については目を光らせるべきだと従前から申し上げてきたわけでございますけれども、実際に、我が国を守り抜くという、国民を守り抜く、これはここから先の話ですけれども、これから先、私たちの国民を守っていくための方策として、横田参考人からは具体的なお言葉をいただきましたけれども、本日四参考人の皆様から、これから先、守っていくために必要な方策をお答えいただければと思います。

西岡参考人 余り大きなテーマなので、簡単に申し上げられませんけれども、やはり、ウクライナの人たちが今見せているような、自分の国を自分で守るという愛国心が一番必要なのではないかなというふうに思います。

村尾参考人 ありがとうございます。

 西岡先生おっしゃるとおり、日本人を助けるのはやはり日本人の手でやらなくちゃいけないと。やはり、自分の国は自分で守る、これは最低限のことだと私も思っています。

 以上です。

李参考人 私も、二十五年前に日本に帰化して、日本国民の一人です。日本は非常に住み心地のいい平和な国でいいんですけれども、これを続けるには、今、世界情勢が大きく変わる中で、日本は大きな決断をしなければならないと思うんですよ。今、中国とかウクライナ情勢もそうなんだけれども、万が一そういうことが突然起きた場合に日本はどう対応するかということを、今からそういうのを議論しないと駄目で、やはり平和は強い力で保てるんだということを日本は認識すべきじゃないか。

 ですから、私は、強硬論者に聞こえるかもしれませんが、やはり、力のない平和はもろいということを言いたいと思います。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 私も西岡先生の言葉に似たものがあるんですが、自分たちが守られている、平和で暮らせているのは、日本が平和である、それはやはり国が大切なんだということを、もう一回足下を見て一人一人が認識する必要があるんだろうと。それが、先ほど申し上げたような人権とか主権とかというところにつながってくるんだと思います。

 三週間前にあるテレビで見た話では、例えば、ロシアがウクライナに大量の爆撃をしているときに、お母さん、女性たち、子供たちが隣国ポーランドに避難してきている、一方で、世界に散らばっていた男性のウクライナの方々が電車に乗って帰ろうとしている。そのときに、あるテレビ局のリポーターが、怖くないですか、帰るんですか、なぜ行くんですかというふうな質問をしたときに、自分の国なんだ、守り抜くために、何がおかしい質問なんだ、当たり前のことじゃないかといったようなことを、一場面私は見た記憶があります。

 そういった気持ちというのが、今、日本人がどうも忘れている嫌いがあるんじゃないかなと。ただで平和は守られないんだ、自分たちが守り抜くんだという気持ちを持つ必要があって、それはやはり、先ほどの教育現場でのお話とか法的枠組みとかということを議論していく必要があるんだろうというふうに思っています。

 以上でございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございました。

 もう時間になりますので終わりにいたしますけれども、今日いただきましたお話、そしてこれから先も議論させていただくお話の中で、北朝鮮によって拉致の被害に遭われた全ての皆様を必ず救い出す、この固い意思については私も表明をさせていただくとともに、本日この部屋の中にいる最も若い人間として、この国家による組織的な犯罪と我が国の国民の尊厳を奪った犯罪行為について、次の世代まで語り継いでいくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

長島委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、横田拓也参考人、西岡力参考人、村尾建兒参考人、そして李相哲参考人、お越しいただきまして、御意見ありがとうございました。

 限られた時間なので、新たに家族会代表になられた横田参考人を中心に伺いたいと思っております。

 この間、家族会代表を長く務められて、当委員会で私自身もしばしば話を伺ってまいりました横田滋さんがめぐみさんと、続いて飯塚繁雄さんが田口八重子さんと、それぞれ再会を果たされないままに他界をされました。

 横田参考人は、その飯塚さんから会長を引き継がれたわけでありますが、今日伺っていても、やはり、生きて被害者と会えない家族がこれ以上増えることは許容できない、まさに全ての被害者の一刻も早い帰国への願いというのはいかばかりかと改めて痛感をいたしました。

 私も、この委員会派遣でめぐみさんの拉致現場にも伺ってその場にも立ちましたし、写真展にも伺って、そして、国会で拝聴した横田滋さん、横田早紀江さんのお話も思い起こしておりますけれども、この間、今やり取りがありましたが、改めて、横田参考人御自身の、この拉致問題解決に向けての日本政府と国会への期待といいますか、本当にそういう思いと、それから、家族会の方々が、じゃ、政府と国会に対してどんな注文を持っていらっしゃるか、併せて紹介いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 拉致問題は人権問題であるということを繰り返し私は申し上げておりますけれども、今日、この特別委員会もそうですし、拉致議連もございますが、この問題だけは、少なくとも日本国内で、やはり全員が一致した価値観で団結して、必ず解決させるんだという気持ちが大事なんだと思います。

 私の父が亡くなった翌日に、記者会見をさせていただいたときに、私、同じようなことを申し上げたんですが、やはりそれは、党を超えて、若しくは報道もイデオロギーを超えて、この問題は必ず一緒の価値観を持って、必ず北朝鮮と、勝つんだ、拉致された自分たちの国民、横田家の家族じゃなくて、日本人を取り戻すために必ず問題を解決させるんだというその気持ちが大事だと思っています。とかく忘れがちなところだと思うんですけれども、ここはやはり絶対に、常に強く持ち続けていただいて、それをどうやって国の政策に落としていただくかというのが大事だろうと思っています。

 以上でございます。

笠井委員 まさに同感で、立場を超えて、この問題解決のために一致して当たる。そして、政権も最優先課題というならば本当にそれにふさわしく取り組むし、当委員会、国会としても超党派で、とにかくこの委員会も頻回に行われるように、大臣の出席日程もしっかりやりくりして最優先で調整してもらいたいと求めてきましたが、そういうことで更に努力したいと思います。

 北朝鮮は、今日の質疑も含めて、インターネットでも、実際に、日本政府や国会の本気度、一致しているのかということも含めて見ていると思うので、私たち、私自身も力を尽くしていきたいと思います。

 次に、この被害者の方々が拉致をされてから四十年から半世紀、さらに、それから家族会が結成されて四半世紀ということになりますが、この間、安倍、菅、岸田総理が、それぞれ、条件をつけずに金正恩委員長と会う用意があると表明を続けられてきたということで、ちょうどそれから、安倍総理が言われてから三年が経過したと思うんですが、拉致問題解決に向けて一歩も進んでいない、まさにそういう無念の思いを先ほども伺いました。

 横田参考人に伺いますが、やはり外交上、これは外交の問題ということになりますが、情勢に応じて柔軟性は必要だとしても、やはり確固とした外交戦略をきちっと我が国が持っていくというのが必要じゃないか。このことを我が党自身も一貫して政府にただしてきたんですけれども、確固とした外交戦略を持ってこの問題に立ち向かっていくということについての参考人の御意見はいかがでしょうか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 私の目から見る範囲で申し上げますと、安倍政権、菅政権、岸田政権、それぞれの当時の首相がこの問題に真剣に向き合って私たちに耳を傾けてくださったことは間違いのない事実ですし、一方で、北朝鮮と、表向きには見えている部分というのは少ないんですが、水面下での深い交渉、慎重な交渉をしてくださっているというのは肌で感じています。それが見えていないし、解決の答えが出ていないので、焦りや多少の不満というものは個人の立場の中では覚えていますが、何もしていないからどうしてくれるんだというようなことの不満は私自身は持っていません。

 また、先ほど西岡会長がお話しされていたように、外交というのはいろいろな複雑なものが絡み合っていますし、北朝鮮への強い制裁は必要な一方で、個人に、金正恩委員長個人を狙い撃ちするような形というのは、やはり学者さんとしてはという話と、会長のお立場ではという話が先ほどあったと思うんですが、それは、私も、家族会の代表としてはどう思うかということと、横田家の一人としてどう思うかということを考えると、後者の部分でいうと、私は、金正恩委員長、その前の金正日も含めて、憎いですよ、本当に。許せないほど、はらわたが煮えくり返っています。今でもその気持ちは変わりません。

 ただ、一方で、姉を含む多くの拉致被害者があの国に拘束されているときに、やはり彼らがそれを決めるスイッチを持っているわけです、生死を決めてしまうスイッチを。それにはやはり、悔しくてもつらくても、取り戻す、解決させるためにはやはり対話が大事だというふうな点でいうと、軽い言葉かもしれませんが、我慢をする必要もあるだろうというふうに考えています。

 そのときに、やはり、日本政府、今でいう岸田総理が外交を進めていく上で、もちろん水面下の交渉ももっと深めていただく必要がありますし、先ほど発言申し上げましたように、やはりそのときにメッセージ性というものを岸田総理に是非発言をしていただいて、金正恩委員長に伝わるような声を上げてほしいというふうに思っています。

 例えが適切かどうか分かりませんが、ウクライナのゼレンスキー大統領のメッセージというものは、その本気度とか、国を守るというその大切な価値観みたいなものが世界共通して響いているから、みんなが耳を傾けてくれている、つらい中でもウクライナの国民はそれを受け止めて一緒に戦おうという気持ちがある。

 そのときに、岸田総理が、この問題は絶対に許せない問題なんだ、でも、あなたと絶対に話し合って、お互いが明るい未来を描けるんだから一歩踏み出してほしいということを、そういう言葉を、熱量を持った言葉を武器にしたメッセージを発していただけるように、みんなが岸田総理を後ろ支えして取り組んでいければありがたいなと思っています。

 以上でございます。

笠井委員 本当に御家族としては我慢しながら、とにかく、でも対話が必要だ、そこに本当に熱量、メッセージ性というのは、重い言葉だと思いました。

 その上で、横田参考人と村尾参考人に伺いたいんですが、それぞれの政権、この間も取り組んできた、そのとおりだと思うんです。

 その中で、第二次安倍政権の時期に最も日朝が接近したということで言われているのが二〇一四年の五月のストックホルムでの日朝政府間協議だったと思うんですが、この協議では、北朝鮮が日本人拉致被害者らに関して包括的で全面的な調査を行って、生存者を発見した場合は帰国させる方向で日本側と協議する、日本は調査開始が確認されれば北朝鮮への制裁措置を一部解除することを柱としたストックホルム合意というのが結ばれました。続く七月三日に、政府から、北朝鮮側の拉致問題に関する特別委員会の体制が発表されている。

 冒頭お話がありましたが、それぞれ、その後いろいろな経過はあったんですが、今、政府の態度はどうかとこの間、昨年聞いたところだと、昨年六月十一日ですが、茂木外務大臣、当時の当委員会での答弁というのは、我が国としては、引き続きストックホルム合意は有効であるというのが立場だという答弁だったわけですね。

 そういう点では、まさに今、この間の経緯も踏まえながら、対話ということであれば、今、政府の本気度と熱意を示す、熱量を示すメッセージ性と言われたんだけれども、まさにそういう点での主体的な外交戦略の知恵というのがそのメッセージの中に込められていくということが必要じゃないかと思うんですが、例えばどういうことが考えられるかというので、横田参考人、どのようにまずお考えでしょうか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 北朝鮮が一番関心を持っているのはどこかというと、それは、日本ではなくて、アメリカのことを、一番関心が高いんだと思うんです。ただ、それは、トランプ政権のときも同じですけれども、米朝が仲よくするときに、アメリカはお金を出さない、出せない、日本が出すんだろうと。そのときに、日本は、この人権問題、拉致問題が解決しないと日朝の中は埋まらない、だから、この日朝の拉致問題、人権問題が解決しないと米朝の問題も結果的に解決しない、三角形の構図になっているわけで、そのことが、岸田政権がアメリカと、来日されるバイデン大統領に、改めてその重要性、人権問題の深刻さというのを伝えていただくことが大事だというふうに思っています。

 なかなか、御質問が難しい問題なので、簡単にお答えできる話ではないと思っているんですけれども、やはり信念が大事だと思っています。それはやはり政治の責任だと思うし、政治というのは言葉が命だと思っていますから、それをどうやってベクトルを力強く変えていくかというのが政治家の責任であり、お仕事だと思っているので、そこはもう、私たちは信じていますとしか言いようがありません。

 以上でございます。

笠井委員 ありがとうございます。

 村尾参考人にも同じ質問をしたいんですけれども、今月、私が訪れた島根県で、特定失踪者のおじに当たる方から、北朝鮮による拉致被害者の可能性が排除されていないとされる特定失踪者の所在確認と帰国に関して、特段の御尽力をいただきますよう陳情いたしますという要請をいただきました。

 二十年にわたって、とにかく消息不明のままで、具体的な解決方向が見られずに、所在もつかめない状態が続いていますというもので、この間も、荒木代表や、ほかの、それ以外の御家族の方々からもお話を伺ってきたんですが、改めてしっかり受け止めたところです。

 それで、そういう御家族、御親族の思いに応える上でも、やはり、主体的な外交戦略の知恵というのが本当に今、日本に求められているんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

村尾参考人 ありがとうございます。

 本当に、御指摘のとおり、三十年、四十年と全く所在が分からない、しかも、我々の御家族の場合は、政府から認定されているわけではございませんので、認定、未認定にかかわらずという、またそこの話になってしまうんですが、非常に不安を抱えている御家族が非常に多いです。

 先ほど、ストックホルム合意の話がちょっとあったんですけれども、二〇一四年のときに、何月だったかな、七月にあれがあって、九月頃に警察庁が、全国の拉致の可能性が排除できない人は約九百人ぐらい、八百何人という発表をするんですね。それが、あのときにちょうど、北朝鮮から何らかの回答があるんじゃないかと、九月の初めぐらいだったと思うんですが、ちょうどその九月頃に警察庁が発表するんですよ。御家族の皆さんは、ああ、警察もそうやって、全国にこれだけの拉致の可能性がある人を認識しているんだというふうに、非常に心強く思ったというのを記憶しています。

 外交的戦略というのは非常に難しいと思うんですが、やはり、先ほどから出ているように、しっかりとしたメッセージ、日本人を全て助けるんだというメッセージ。いかにも、拉致被害者はこれだけですみたいな、そういうメッセージを送るというのは絶対間違いだと思います。やはり、全ての日本人を助けるのであれば、たとえ違ったとしても、北朝鮮にいるよりはいいじゃないですか、日本で見つかった方がいいじゃないですか。そういう人たちも含めて、日本人を助けるために政府は一生懸命やっているということを明確に示していただくことが重要なのではないかなというふうに思います。

笠井委員 ありがとうございました。

 最後に伺いたいんですが、やはり、今お話がありましたが、大事なのは、日朝双方の行動によって、拉致被害者の帰国実現を始めとして、日朝平壌宣言で合意された諸懸案が解決することではないか、前進のために本当に知恵を尽くすことだと思うんです。

 最後になるんですけれども、去る五月十日に、韓国新大統領の就任式に私も日韓議員連盟の一員として出席をして、直接お会いしました尹錫悦大統領との会談では拉致問題でのやり取りがあったので、御報告したいと思うんです。

 日韓議連側が、拉致問題は日本、北朝鮮二国間の問題だが、大統領としての解決へのイニシアチブを要請したいということで求めました。それに対して、尹大統領はこう言われました。もちろんだ、日本人の拉致問題というのは、人権の問題でありながら、普遍的価値の問題だ、尹政権は日本側の立場を積極的に支持しているし、これからも支持していきたいと。北朝鮮の核問題は、韓国の問題であるだけではなく、極東地域、特に日本と韓国に共通した安全保障の問題だ、北朝鮮の核問題への対応についても、韓国と日本が米国と協力して、強い協力関係をつくらなきゃいけない、情報共有をしないといけないという形で応じられたわけですが、こうした国際連携について、一言横田参考人から、それについての御感想とか御意見をいただけないでしょうか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 なかなか日韓の中では、いろいろな歴史問題だとか、いろいろな埋まらない価値観の違いというものが今も残っています。

 それはそれとしておいておくとして、この普遍的な問題、人権問題を解決するために、若しくは、アジアの平和をどうやって守っていくかということを考えたときに、日韓のつながりというのは、この数年、本当にもう空白地帯みたいな形になってしまった実態がありますから、もう一回そこは、結べるところは手をつないで、特に北朝鮮問題では、この横田めぐみという事案が、先ほど西岡会長からの話もあったように韓国の情報網から出てきた話でもあるとおり、やはり、手を取り合って、タッグを組んで解決していく必要があると思うんですね。

 その点では、もうおっしゃるとおり、日韓の連携、再びの強化というのは大事だと思うので、具体的にそれが、私たち家族会が、コロナ禍がどうであれ、韓国の政府の方々とどうやって向き合う必要があるのかというのは、まだ具体的には検討はしていませんが、いずれはそういうことの必要性が出てくるのだろうというふうに考えています。

 以上でございます。

笠井委員 ありがとうございました。終わります。

長島委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.