衆議院

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第1号 令和4年3月29日(火曜日)

会議録本文へ
令和四年三月二十九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

  内閣委員会

   委員長 上野賢一郎君

   理事 井上 信治君 理事 工藤 彰三君

   理事 平  将明君 理事 藤井比早之君

   理事 森山 浩行君 理事 足立 康史君

   理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      石原 宏高君    金子 俊平君

      川崎ひでと君    神田 潤一君

      小寺 裕雄君    杉田 水脈君

      鈴木 英敬君    高木  啓君

      永岡 桂子君    平井 卓也君

      松本  尚君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    柳本  顕君

      山田 賢司君    吉川  赳君

      和田 義明君    大串 博志君

      堤 かなめ君    中谷 一馬君

      本庄 知史君    山岸 一生君

      阿部  司君    堀場 幸子君

      河西 宏一君    平林  晃君

      浅野  哲君    塩川 鉄也君

      緒方林太郎君    大石あきこ君

  経済産業委員会

   委員長 古屋 範子君

   理事 石川 昭政君 理事 長坂 康正君

   理事 松本 洋平君 理事 落合 貴之君

   理事 山岡 達丸君 理事 小野 泰輔君

   理事 中野 洋昌君

      井原  巧君    石井  拓君

      岩田 和親君    大串 正樹君

      上川 陽子君    国定 勇人君

      国光あやの君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    土田  慎君

      中川 貴元君    中野 英幸君

      西野 太亮君    西村 明宏君

      星野 剛士君    堀井  学君

      山下 貴司君    山本 左近君

      荒井  優君    梅谷  守君

      大島  敦君    神津たけし君

      末次 精一君    山崎  誠君

      漆間 譲司君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    笠井  亮君

    …………………………………

   議員           堀場 幸子君

   議員           阿部  司君

   経済産業大臣       萩生田光一君

   国務大臣

   (経済安全保障担当)   小林 鷹之君

   内閣府副大臣       大野敬太郎君

   厚生労働副大臣      佐藤 英道君

   内閣府大臣政務官     小寺 裕雄君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   経済産業大臣政務官    岩田 和親君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高村 泰夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  室田 幸靖君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三貝  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  木村  聡君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  泉  恒有君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            阿蘇 隆之君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     北林 大昌君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席経済安全保障政策統括調整官兼貿易経済協力局長)  飯田 陽一君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            松尾 剛彦君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       黒田淳一郎君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          奈須野 太君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官官房審議官)           春日原大樹君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出第三七号)

 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

上野委員長 これより内閣委員会経済産業委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明に代えさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石川昭政君。

石川(昭)委員 おはようございます。自由民主党の石川です。

 今日は内閣委員会と経済産業委員会の合同審査ということで、経済産業委員として本日参りました。今日はよろしくお願いいたします。

 まず、この経済安全保障の分野、私は大変重要な法案だと思っておりますが、私がこの重要性を認識をしたのは、二〇一九年三月頃に発生しましたキードラッグ問題というのがございました。これは後で政府参考人からもお話しいただこうと思いますけれども、簡単に言いますと、手術で使う抗菌剤、セファゾリン注射剤というのがあるんですけれども、これがなかなか国内に入ってこなくなった、こういう問題がございました。それによって、現場の手術がなかなかできなかったりという事態が発生しまして、感染症学会など四学会から、この安定供給について政府として取り組んでくれということが、二〇一九年三月、つまり、コロナウイルスの発生以前からこういう問題が提起されたわけでございます。

 これについて、その後、政府は様々策を講じていらっしゃると思いますので、その後、どのような今経緯にあるか、これについて政府参考人からお答えをいただきます。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 抗菌薬の原材料につきましては、採算性等の理由から海外からの輸入に依存しているものが多くございまして、議員御指摘のとおり、二〇一九年三月には、海外の製造所のトラブルによりまして、日本国内におきまして長期にわたってセファゾリン注射薬の供給が滞り、医療の提供に深刻な影響を及ぼす事態となったことがございました。

 こうした状況を踏まえまして、厚生労働省では、令和二年度の補正予算におきまして、海外依存度の高い抗菌薬の原薬また原材料、こういったものの国産化に向けて、国内製造所の新設や設備の更新を支援するための事業を実施いたしますとともに、令和三年度の補正予算におきましても、この取組を継続すべく、必要な予算の確保を行ったところでございます。

 なお、セファゾリンの現在の供給につきましては、製造所のトラブルの解決によりまして同じ年の十一月には供給が再開されておりまして、現在は安定的に供給が行われております。

 さきの教訓も踏まえまして、厚生労働省におきましては、まずはこの令和三年度の補正予算の事業を着実に執行し、国内の医薬品の安定供給の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 これはキードラッグ問題として世間でも取り沙汰されたわけでございます。これがあらゆる分野に至るということが、我々、勉強していく中で分かってきたわけです。

 そこで、今回の法律案の中で、サプライチェーンの強靱化ということで、先ほど申し上げた医療とか特定重要物資を指定して、安定供給確保に関する取組の方針を定める。また、供給確保計画の策定ということが今回の法律案の中に盛り込まれております。これはこれで私は重要なことだと思っておりますけれども、しかし、これはかえって日本の弱点を公表することにつながるのではないか。これは裏表の関係があると思いますけれども、これにつきまして、公表の在り方とかをどうしていくのか。日本の弱点を余り公表するようなことは私は好ましくないと思っておりますけれども、これについて政府はどう考えているか、お答えをお願いいたします。

大野副大臣 ありがとうございます。

 委員の御指摘いただいたポイントは非常に重要なポイントであると認識をしておりまして、本法律案では、御指摘いただいたように、安定供給確保の基本指針において定め、そして物資ごとに取組方針というのを示していく、そこで一定の方向性とかあるいは取組の内容というものの方向性を示すということになっておりまして、これらの公表をするということにしております。

 この公表するというのはどういうことかというと、政府としての統一的な方針を示すこととともに、事業者にとっての予見可能性をある程度高めていくという観点から、公表することというのは基本的に重要だと思っておりますが、一方で、御指摘いただいたように、我が国のチョークポイントをさらすという懸念がございます。

 そういった観点から、予見性の確保とそれから安全保障、これをバランスを取りながら適切に定めてまいりたい、検討してまいりたい、このように思います。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 外国の事例などあると思いますので、そういったことを参考にしながら、より日本の物資の安定供給強化につながるような、そういう方針、計画作り、そして公表の在り方をよく考えていただきたいと思っております。

 そして、次にお伺いしたいのは、日本にはたくさん機微技術を持つ企業がございます。これは、有名企業だけでなく、中小企業もたくさんございます。そういう高い技術を持つ企業を守って、そして発展させていくということは、これは論をまたないわけでございますけれども、そういった企業を海外から買収したり、いろいろなことが今現に行われているわけです。

 最近ですと、東芝が、アクティビストという外国人投資家によって、様々な経営方針をめぐって今混乱をしている状況であります。こういうことは日本の国益にとって、私は極めて懸念を持っております。東芝というのは、原子力技術であるとか防衛産業、それから量子技術など、将来に向けた、今非常に高い技術を持つ。このような企業がこういう事態にならないように、まあコア企業にも指定されているわけですけれども、これをどうやって守っていくのか、これについて政府の考えをお伺いしたいと思います。

萩生田国務大臣 我が国では、先生御指摘のような、国の安全保障に関わる技術の流出や事業活動の喪失などの、国の安全等を損なうおそれのある外国投資家からの投資に適切に対応するべく、外為法に基づき厳格な投資管理を行っております。

 外為法については、国の安全等を損なうおそれのある投資への対応について一層万全を期すべく、最近では、令和元年に、外国投資家が上場企業の株式を取得する際に事前届出を求める閾値を一〇%から一%に引き下げる法改正を行い、また、国際情勢や技術動向の変化を踏まえ、事前届出を求める業種に、サイバーセキュリティー関連や、防衛産業とも関わる重要鉱物関連の業種を累次追加するなど、不断に制度や運用を見直してきたところです。

 また、幅広い産業を所管する経産省として、関係省庁と連携を強化し、これまで蓄積してきた投資管理の知見を共有するなど、政府全体の能力向上にも貢献をしてまいりました。

 今後、投資管理の執行体制の更なる強化を図るなど、引き続き万全の対応に努めてまいりたいと思いますし、今お話あったように、中小企業などでも機微技術を持っている場合がありますので、ここはしっかり俯瞰してまいりたいと思います。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 令和元年の外為法の改正は非常に、私は、海外との関係においてもすばらしい改正だったと今でも思っております。

 最近は投資マネーというのがいろいろなところでMアンドAを行っているわけですけれども、いい場合もあるし、これがある一定の目的を持ってその企業に近づく場合もございます。

 また、投資組合、ファンドは、非常に匿名性の高いファンドもございます。日本にとって懸念国のマネーが入ったファンドがいろいろなところに近づいていった場合に、これは外為法で止めるのは非常に難しいというふうに思っておりますけれども、こうした場合の買収の防止策というのはどのようになっているのか、政府参考人にお伺いします。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 外為法では、ファンドにつきましても、それが直接、間接かを問わず、外国投資家からの出資比率が五〇%以上を占める場合、あるいは業務執行役員の過半数を外国投資家が占める場合などにつきまして、これを外国投資家と定義しておりまして、これらの要件を満たすファンドからの対内直接投資についても投資規制の対象としております。また、外国投資家ではない者が外国投資家のために潜脱的に対内直接投資を行う場合であっても、これを外国投資家とみなして規制の対象としております。

 その上で、外国投資家から事前届出があれば、審査を行いまして、国の安全等を損なうおそれがある場合には変更、中止の勧告、命令を行うことになりますし、また、仮に、無届けのまま、あるいは虚偽の届出をして投資が行われた場合は、罰則の対象となるのは当然でございますけれども、その投資が国の安全等を損なうおそれがある場合には、株式の処分を含めて必要な措置を命ずることができるとされております。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 株式保有の五〇%以上ということでありますので、これも更なる見直し等も必要になるかと思います。

 次に、小林大臣にお伺いしたいと思います。

 この海外との取引が非常に複雑で活発になる中で、不適正な取引相手を排除するという意味で、アメリカでは、エンティティーリストを作ったり、いろいろなものをやっているわけですけれども、また、今回立ち上がりましたNSSが、こうした貿易管理とか投資の管理とか、海外でいうとCFIUSのような強力な司令塔機能を私は発揮していただくべきではないかなというふうに考えております。

 外から見ますと、この外為法につきましては、先ほど御答弁いただいた経済産業省であったり財務省が見ているわけですけれども、ちょっと外から見えにくいんですね。やはり、犯罪を取り締まるのは警察であったり消防とかいろいろ、その役所にとっての、所管省庁等の看板が見えると我々も安心できるわけですけれども、なかなか外から見えないものがございます。そういう意味では、これからNSSが重要な役割を果たしていくべきだと思いますけれども、小林大臣の所感をお伺いしたいと思います。

小林国務大臣 まず、アメリカのエンティティーリストについて言及ございましたが、これは、国家安全保障や外交政策上の利益を害する活動に従事した主体を掲載をして、これらを仕向け先とする輸出について、多くの場合は一律に原則不許可とする輸出管理制度と承知しています。

 我が国の輸出管理制度につきましては、あくまで個別事案ごとに輸出の許可、不許可を判断しておりまして、経済制裁を行うにしても、国又は地域単位で指定をし、個別の主体単位で輸出禁止措置を講じることはございませんでしたが、今般、ロシアのウクライナ侵略に直面いたしまして、経済制裁として、G7として連携をして、ロシアの軍事関連団体を指定し、これら主体に対して事実上全ての品目の輸出を止める措置を講じたところでございます。

 エンティティーリストとは異なるものの、今後とも、厳しい国際環境の中で、輸出先の個別の主体に着目した輸出管理にも適切に対応していくと承知しています。

 CFIUSについての言及もございました。

 近年、安全保障に影響を与え得る外国投資家による対内直投に対する審査の役割は一層重要になっています。先ほど萩生田大臣からも言及ございましたけれども。

 こうした状況の下で、外国投資家による対内直投に適切に対応する観点から、政府全体での投資の審査能力の底上げに努めておりまして、昨年七月に、NSS、国家安全保障局と財務省が共同議長となる、アメリカのCFIUS類似の関係省庁会議を設置いたしました。この会議におきましては、定期的に関係省庁が対内直投の動向や審査手法等に係る知見の共有などを行うほか、必要に応じて、臨時的な、より広い、各省横断の事前投資審査を実施しているところでございます。

 各省によって安全保障に関する知見の蓄積というのはやはり異なりますので、こういう枠組みを通じて全体の底上げを図っていきたいと考えております。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 是非活発に取り組んでいただきたいと思います。

 次に、セキュリティークリアランスの見送りについてお伺いします。

 今回、残念ながらこの法案の中に入らなかったわけですけれども、特定秘密保護法でも類似の適性評価制度というのがもう既に制定をされて、現に五万九千人の方を実施をしているわけでございます。そういう意味では、海外との情報のやり取りをする中で、やはりこういった機微情報にアクセスできる人物に資格を付与すべきだと私は今でも思うんですけれども、これについて政府の御見解をお願いしたいと思います。

小林国務大臣 経済安全保障は多岐にわたるものでございますから、技術情報の流出対策にも取り組まなければならない、これは非常に重要な課題だと考えております。

 こうした中で、これまでの様々な経緯の中で、四つの分野を特定した上で、また有識者会議において累次議論がなされてまいりました。この会議においては、セキュリティークリアランスについて、一部言及はあったんですけれども、今回の法制に含むべきとの議論にはならず、したがって有識者会議の提言にも含まれませんでしたので、この法案には反映はされていないところでございます。

 このクリアランスについては、様々な声があることは承知をしていて、これは個人の情報に対する調査を含むものでもございますので、国民の理解の醸成の度合いですとか、海外において実際にクリアランスを取得する、取得を要請される具体的事例の検証などを踏まえた上で、今後の検討課題の一つになり得ると認識しています。

 ただ、この法案におきましては、我が国の技術優位を確保する観点から、技術流出対策について措置を講じることとしておりまして、具体的には、官民技術協力を推進する上で、官民で情報の交換などを行う協議会を設けて、その構成員に安全管理措置を求めるとともに、国家公務員並びの守秘義務、これを課すこととしたところでございます。

 まずは法案の成立に全力を尽くして、この制度の下で技術流出対策というものをしっかりと講じていきたいと考えております。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 この流出についてはある程度罰則等がかかっているようですけれども、私が言っているのは情報にアクセスできる方への資格の付与でありますので、引き続き検討をお願いしたいと思います。

 それで、時間の関係もございますので、最後に、人権のデューデリジェンスについてお伺いしたいと思います。

 これから、経済分野においても、人権問題というのが非常にビジネスの懸念につながってまいります。二月十四日、自民党の経済産業部会と外交部会で岸田総理に、人権デューデリジェンスについての政府の考え方をまとめるようにということで、提言をお出ししております。

 萩生田大臣におかれましては、政府内での検討について、今どういう状況なのか、お伺いして終わりたいと思います。

萩生田国務大臣 国際社会において人権問題への関心が高まる中、経済産業省では三月九日に、企業のサプライチェーンにおける人権尊重、いわゆる人権デューデリジェンスに関して検討会を立ち上げ、業種横断的なガイドラインを作り始めたところです。継続的に検討会を開催し、今年の夏までにガイドラインの策定をしたいと思います。

 なお、ガイドラインが経産省所管分野のみならず全ての産業分野に適用されるように、内閣官房に設置された関係府省庁会議とも連携してまいります。日本企業にとって、予見可能性が高く、国際競争力強化につながるものにしていきたいと思います。

 また、欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の導入が進み、企業のビジネス上の不透明感が高まっているため、国内のガイドラインの整備に加えて、企業が公平な競争条件の下で積極的に人権尊重に取り組める環境を整備していく観点から、国際協調により各国の措置の予見可能性を高める取組もしっかり進めてまいりたいと思います。

 今後、国際協調に関する議論など国内外の動向を踏まえながら、人権DDに関する将来的な法律の策定可能性も含めて、関係府省庁とともに更なる政策対応について検討してまいりたいと思います。

 同時に、様々な先端技術を有する我が国として、人権侵害に対するツールとして、輸出管理の枠組みが活用可能かどうか、議論、検討するとともに、基本的価値観を共有する欧米等々同志国と緊密に連携してまいりたいと思います。

石川(昭)委員 ありがとうございます。

 まだ時間があるようですので、最後に一問追加して終わりたいと思っております。

 先ほどの技術の流出、機微情報の流出に関しまして、大学あるいは研究機関での流出を食い止めるという意味で、研究インテグリティーの確保に係る対応方針というものを昨年四月、政府は定めております。これの実施状況と今後の見通しについて、終わりたいと思います。

阿蘇政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年四月、統合イノベーション戦略推進会議で決定された研究インテグリティーの確保に係る対応方針においては、研究者自身による適切な情報開示、大学や研究機関等のマネジメントの強化、研究資金配分機関による申請時の確認の三点を掲げ、研究インテグリティーを確保していくこととしております。

 これを踏まえ、研究者や研究機関、経済団体等への丁寧な説明を重ねた上で、昨年十二月、研究者に対し、所属研究機関や研究資金配分機関への適切な情報提出が求められることを明確にするため、競争的研究費の適正な執行に関する共通的なガイドラインの改定を行いました。本改定による取組は、本年四月以降に公募を行う競争的研究費から順次実施することとしております。

 研究者や研究機関の理解を得ながら、実効性ある取組を進めていくことが重要と認識しておりまして、内閣府として、来年度中に、大学や研究機関等における関係の規程や体制の整備の実施状況を把握するためのフォローアップも行うこととしております。

 引き続き、幅広い関係者への丁寧な説明を続け、研究インテグリティーの確保へ向けて取り組んでまいります。

石川(昭)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

上野委員長 次に、山本左近君。

山本(左)委員 ありがとうございます。おはようございます。自由民主党の山本左近です。

 冒頭、ロシアによるウクライナへの侵略行為は明確な国際法違反であり、武力による現状変更の試みは断じて許されません。犠牲となられた方々に心より哀悼の誠をささげ、御冥福をお祈りするとともに、戦禍において日常生活が奪われてしまった全ての方々にお見舞いを申し上げます。

 二月二十四日に始まった侵略は、既に一月以上がたっています。政府には、世界とより強く連携し、一日でも早くロシア軍の暴挙を止めるため、強く働きかけていただくことを求めます。

 そして、本日この場に、質問の機会に立たせてくださいました国民の皆様、先輩議員の皆様、そして同僚議員の皆様、関係する全ての皆様に感謝を申し上げます。

 それでは、経済安全保障推進法案について質問をさせていただきます。

 この国際情勢が激変する中ではもちろんのこと、近年、国際的にサプライチェーンの複雑化、また米中対立による国際経済の不安定化など、私たちの生活、経済活動に対するリスクが顕在化してまいりました。そういった状況の中で、より生活の安定、経済活動を守るために、この経済安全保障推進法案は極めて重要な法案であると改めて確信しております。

 法案の中で、四つの制度のうち、まず、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度についてお伺いします。

 第五十条の中で、主務大臣は、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者を特定社会基盤事業者として指定することができるとし、対象分野は電気、ガス、水道、石油などの十四分野が指定されております。

 ここでお伺いさせていただきたいのは、対象分野のうち、第五十条第十号で定められている電気通信事業者とありますが、電気通信回線設備の設置の有無と事業の規模によって分けられている登録電気通信事業者と届出電気通信事業者の両方を含むとされていますが、それぞれ国内に何者あるか、教えてください。

北林政府参考人 お答えいたします。

 電気通信事業者の数についてでございます。

 令和四年二月末時点で、登録電気通信事業者は三百三十一者、届出電気通信事業者は二万二千六百四十六者、両者の総数は二万二千九百七十七者となっております。

山本(左)委員 ありがとうございました。

 特に届出電気通信事業者は非常に数が多い。二万二千六百四十六者あるということで、中には、メッセージアプリやウェブサービス内でのユーザー同士のメッセージのやり取りができるサービス事業者も含まれていますが、指定の範囲など、枠組みについて、今後どのような基準で考えられているのか、お伺いさせてください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の基幹インフラに関する制度では、電気通信事業法上の電気通信事業者の区分でございます登録事業者と届出事業者を区別することなく、規制対象となり得る事業として電気通信事業を規定しているところでございます。

 このため、特定社会基盤事業者の指定基準に該当する者につきましては、御指摘のございました届出事業者であっても、特定社会基盤事業者として指定し、規制対象とすることは可能でございます。

 指定基準につきましては、閣議決定いたします基本指針を踏まえ、主務大臣が広く意見募集を行った上で、個別事業分野の特性等に応じて具体的に定めることとしておりますが、一般論として申し上げますと、中小規模の事業者を指定するような基準は基本的には想定していないところでございます。

 また、基本指針では、特定社会基盤事業者の指定に関する基本的方向性などを明示いたしますほか、事業所管省庁におきまして事業者と密接な意思疎通を図っていくこととしてございます。

 これらの取組を通じまして、事業者の予見可能性を確保し、無用の不安を生ずることのないよう努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

山本(左)委員 ありがとうございます。

 ただいま、一般論で、中小企業は対象ではなく大企業が対象であり、かつ、それも、いきなり指定をしてというわけではなく、密接なやり取りの上で決めていくということをお伺いさせていただきました。

 それでは、この法案について、各号並べられている、基本的な考え方として今お話しいただいた部分はあります。今後も、数多く、自分たちの事業が、もちろん大企業であれば当然だと思いますけれども、中小企業の中でも、指定されるのではないかと思っている方たちもいる可能性もあります。そういった経済安全保障推進法案における基本的な考え方、そして、この法律案を進めるに当たって私たちの国家及び国民生活をどのように守っていくのか、小林大臣に是非お伺いさせていただきたいと思います。

小林国務大臣 現在、国際情勢が複雑化をし、また、DXを含めて社会の構造が変化をしていく中で、経済合理性だけでは割り切れない事例が増えてきているんだと考えています。いかなるときであっても国民の皆様の命と暮らしを守り切らなければいけない、その経済面からしっかり対策をしていくということでございます。

 中小企業の方々については、規制という意味では、できる限りやはり負担を小さくしていかなければならないと思っておりますし、これまでも産業界の皆様と様々意見交換をさせていただいておりますけれども、できる限り、経済活動の自由にしっかりと配慮するとともに、予見可能性を確保する形で制度設計をしてまいりたいと考えております。

山本(左)委員 小林大臣、ありがとうございます。

 今後、中小企業の方たちへの規制の負担を小さくしていくという答弁をいただきまして、誠にありがとうございます。やはり、こういった不安になっている方たちに対しても、そういう不安はなく、そして、かつ、経済的な合理性を重要視するだけではなく、私たちの生活もしっかりと守っていくといったところを御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 同じく、同法の五十条における十三号について、改めて金融の部分についてもお話を伺いたいと思います。

 この金融というところが十三号で入ってきて、決済手段も重要なインフラであるというふうに認識し、理解させていただきました。この金融についてお伺いいたします。

 この十三号ホについて、資金決済に関する法律第二条第十項に規定する資金清算業及び同法第三条第五項に規定する第三者型前払い式支払い手段の発行業務を行う事業とあります。

 ここで少し質問させていただきたいんですけれども、今現在の資金決済の在り方に加え、これから、未来の資金の決済の在り方というと、現在、QRコードですとか、またキャッシュレス社会を推進している中で、個人間送金事業者も資金移動事業者として対象となり得るのか、なり得ないのか、また、それはどのような法律で対象としているのか、お伺いさせていただきたいと思います。

小林国務大臣 まず、この法案では、基幹インフラ役務に関しまして、国民生活及び経済活動の基盤となる役務であって、その安定的な提供に支障が生じた場合に国家国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがある役務の提供を行う事業を特定社会基盤事業として規制対象とすることとしています。

 委員御指摘ございました資金決済につきましては、キャッシュレスでの決済手段を提供する事業については、仮にこれが止まると、物品の購入などへの支払い、あるいは企業が行う取引などの経済活動に大きな影響が生ずるおそれがございます。このため、法案の五十条一項の十三号、十四号におきまして、規制の対象となり得る事業として規定をしているところでございます。

 御指摘のございました資金移動業につきましては、資金決済法上、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことと定義されております。これは、銀行法第二条第二項第二号で規定する為替取引として、今回の法案の五十条一項十三号イに規定する銀行法二条二項各号に掲げる行為のいずれかを行う事業に該当することから、資金移動業は、この法案の第三章のいわゆる基幹インフラの安全性確保に係る制度の規制対象となり得ます。

 規制対象となる事業は最終的には政令で定めることとしておりますが、資金移動業につきましては、前払い式支払い手段とともに多頻度小口決済の代表的な支払い手段となっているものと承知をしておりまして、その決済手段としての重要性に鑑み、規制対象とすることを想定しているところでございます。

山本(左)委員 ありがとうございます。

 ただいま、第五十条一項のイの、銀行法第二条第二項各号に掲げる行為のいずれかを行う事業として、こういったキャッシュレスやまた資金移動については法律として明記されている、内包されているということを認識させていただきました。

 そして、ここで、昨日、岸田総理が、制裁の抜け道として使われる懸念が指摘されている暗号資産について見解を述べられていました。暗号資産に対応するため、外為法を改正する準備を進める考えを示されましたが、経済安全保障推進法案において、この暗号資産、仮想通貨など、暗号資産交換業が現在対象から外れているというふうに読めるんですが、この辺り、政府の見解をお聞かせいただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました暗号資産の交換業につきましては、暗号資産、これは、銀行送金やいわゆるキャッシュレス決済とは異なりまして、現時点におきましては、国民生活や経済活動における決済手段として幅広く使用されているとは言えないと考えてございます。

 したがいまして、本法案では、そうした実態を踏まえて、規制の対象となり得る特定社会基盤事業の範囲には含めないということとさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

山本(左)委員 ありがとうございます。

 現在では決済手段として幅広くないから含めていないんだということですね。つまり、今後、この法案が通って数年たった後に、こういった暗号資産等が決済手段として、もし国民の中で幅広く使われるようになったら、それはまた検討いただくということなんでしょうか。

小林国務大臣 この基幹インフラ事業に限らず、この法案の附則には、見直し規定ということで、この法案の施行後三年をめどにということで入れさせていただいておりますけれども、三年に限ることなく、本当に、世の中の状況が変わっていって、やはりこの法律の中身を見直していく必要が生じれば、その都度タイムリーにそれは変えていく、それが国民の皆様の命、暮らしを守るということだと考えています。

山本(左)委員 小林大臣、誠にありがとうございます。

 世の中の変化に合わせて法律も変化させていくというところ、国民の生活を守るために非常に重要な法律案であることを改めて認識させていただきました。

 続きまして、特許出願の非公開制度についてお伺いいたします。

 G20の中で特許非公開制度がないのは日本、メキシコ、アルゼンチンの三か国のみ、機微技術の拡散を防ぐという安全保障の観点から導入する必要があると私は理解しています。

 特許非公開の対象になってしまうのではないかという不安の声をよく聞く一方で、この非公開制度をつくることによってしっかりと守られるので、特許を安心して提出ができる、そういった声もあります。

 これまで特許出願にちゅうちょされていた発明者の方々へ私はメリットがあると考えますが、小林大臣に見解を伺いたいと思います。

小林国務大臣 委員の御理解のとおり、特許出願の非公開制度は、安全保障上機微な発明であっても特許出願されると一律に公開されるという問題に対処をして、機微技術の拡散を防ぐことを目的とするものでございます。

 機微技術の発明者の中には、自らの発明が出願の公開を通じて機微技術の拡散につながることを懸念をして特許出願を控えているという実態があるとも承知をしております。

 したがって、この新しい制度は、機微技術の発明の出願につきまして、国が公開の是非を判断した上で、仮に安全保障上のリスクが認められる場合には非公開の措置が取られるという点で、そうした懸念を解消する意義を有すると考えております。

 つまり、新制度は、委員御指摘のとおり、これまで特許出願ができていなかった機微技術の発明者にも特許出願また取得の道を開くものであるとも考えております。

山本(左)委員 小林大臣、ありがとうございます。

 この機微技術を守ることによって国益を守る、そして発明者の人たちへの、しっかりと守っていくということで、この特許の非公開制度、非常に大事なことだと私は改めて認識させていただきました。

 その中で、特許出願の流れについてお伺いしたいと思います。

 第六十六条の中で、特許庁長官は当該特許出願の日から三か月を超えない範囲内において内閣府に送付するとしていますが、これはなぜ三か月という期間を設定されたのでしょうか。お伺いさせていただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁で行います第一次審査は、保全すべき発明が含まれ得る技術分野等をあらかじめ国際特許分類等の形で政令で定め、これに該当する発明が記載された特許出願のみを定型的に選別、抽出いたしまして、内閣府による第二次審査、保全審査でございますが、こちらに送付する手続でございます。

 現在の特許実務におきましては、出願を受けると、まず国際特許分類を付与する運用としてございます。

 新制度の第一次審査では、年間三十万件に及びます全出願を対象に着実に処理する必要がございますことから、そのような現在の運用をベースといたしまして、国際特許分類での選別、抽出を行うことを考えているところでございます。

 第一次審査の期間につきましては、出願人の立場を考慮いたしますれば、できる限り短時間であることが望ましいと考えてございますが、その一方で、特許庁の国際特許分類に係る実務が現状三か月以上の期間を要している。

 それらのことを総合的に勘案した結果といたしまして、法案第六十六条第一項におきまして、その期間を特許出願の日から三月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過する日までと規定させていただいたところでございます。

 以上でございます。

山本(左)委員 ありがとうございます。

 年間三十万件あるということで、非常に精査していくのは大変だと思いますし、また、そこで特定技術が機微情報かどうかという判断をしていくというのは非常に大変なことだと思います。

 そして、続きまして、第七十八条において外国出願の禁止について規定されていることについてお伺いします。

 外国出願をしてはならないとしていますが、これは十か月を超えたら出願できるというふうに読むことができるんですけれども、これについて見解をお聞かせください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 法案第七十八条第一項は、日本で特許出願をすれば、保全指定がされるか、出願の取下げ、却下等がない限り、特許出願の日から十か月を上限とした政令で定める期間経過後に外国出願禁止が解除されることとしてございます。

 出願人の立場を考慮いたしますれば、その期間はできる限り短い期間であることが望ましいと考えてございます。

 その理由でございますけれども、パリ条約におきまして、最初の国に出願してから十二か月以内に他国にした出願につきましては、他の特許出願人に対しまして、最初の国への出願日をもって優先権を主張できることとされてございます。その準備のために時間的猶予を確保することが期待されるからということでございます。

 他方で、非公開とするか否かを判断いたしますためには、発明の安全保障上の機微性に加えまして、非公開とした場合に生ずる産業の発達への影響などを厳密に審査いたしますとともに、保全審査に先立ちまして、出願人の方に対し出願維持の意思確認を行うことも必要でございます。それらの手続には一定の期間を要するところでございます。

 そうした事情を総合的に勘案した結果といたしまして、第七十八条第一項ただし書におきまして、「特許出願の日から十月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過したとき」と規定いたしまして、十か月という外国出願禁止期間の上限を設けることとさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

山本(左)委員 ありがとうございます。

 最後の質問をさせていただきたいと思います。

 第七十条と外為法を比べてみますと、外為法は規制の幅が広いんですが、この法案の保全指定の対象範囲というのはどのように考えられているのか、見解をお聞かせください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 外為法の輸出管理制度は、国際輸出管理レジームに基づき、国際的な平和及び安全の維持の観点から、特定国において技術を提供することを目的とする等の技術提供取引等を経済産業大臣の許可に係らしめるものでございます。その規制対象は、武器、原子力のほか、先端材料、エレクトロニクス、通信、センサーなど、軍事転用可能な幅広い民生技術のうち、省令等で規定する仕様やスペックに該当するものとなっております一方で、その技術が国際的な平和及び安全の維持を妨げるおそれのある用途に利用されないことが確からしいか否か等の基準により審査が行われまして、問題がなければ許可されるものと承知しているところでございます。

 一方で、本法案で導入いたします特許出願の非公開制度は、特許出願を通じた機微技術の拡散を防止することを目的とするものでございます。審査を通じまして非公開とされます場合には、特定国への技術提供はもとより、国内での技術提供や公開も制限されることとなります。このため、本制度では、経済活動やイノベーションへの影響も考慮した結果といたしまして、非公開となり得る範囲としては、外為法の規制範囲より狭い核技術や先進武器技術などの分野に限定するということを想定しているところでございます。

 以上でございます。

山本(左)委員 以上です。ありがとうございました。

    〔上野委員長退席、古屋委員長着席〕

古屋委員長 次に、中野洋昌さん。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 この経済安全保障確保推進法案、本日は連合審査ということでございますので、経済産業委員会の方から私の方が質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 昨今の経済、国際情勢等も踏まえまして、やはり経済安全保障は大変に重要なテーマでございます。これを確保、推進をする法案ということでございます。本法案については、既に我が党でも様々検討を行い、そして同僚の議員の皆様からも御質問していただき、経済安保というのは非常に重要だ、他方で、経済活動に与える影響というのも考慮しつつ、合理的に必要な限度のものとしていくべきではないかということも含めて議論をさせてきていただいております。

 他方で、私、経済産業委員会側として今質疑をさせていただこうと思っておりますが、重要物資の安定供給、サプライチェーンの強靱化というテーマが例えばございますけれども、これは非常に経済全体にも影響を与える非常に重要なテーマであります。他方でまた、日本の産業をどう振興していくのか、産業振興策のような側面もございまして、本日は連合審査ということもありまして、私、サプライチェーンの強靱化というこの一点、この分野に絞りまして今日は質疑をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

 米中対立というものがあります。あるいはコロナ禍ということでございます。経済安保という観点もそうですけれども、そもそも国際的なサプライチェーンが今大変に混乱をしている、こういう情勢であります。そして、当然、ウクライナの情勢もあります。物資の高騰、不足、やはりこうした対策をしっかりやっていかないと経済情勢、国民生活に大変な影響があるのではないか、こういうことがございますので、サプライチェーンの強靱化というのが大変な重要なテーマであります。

 冒頭、まず政府の方に、サプライチェーンの強靱化を図っていこうということも含めた本法案を提出するに当たりまして、やはり、その背景や国際情勢、それをどのように認識し、分析をした結果、提出をしているのか、これについて、まず政府の見解をお伺いをしたいというふうに思います。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、近年、世界各国が戦略的物資の確保や重要技術の獲得にしのぎを削る中、我が国として経済安全保障を確保するためには、経済構造の自律性の向上、我が国の技術などの他国に対する優位性、ひいては、国際社会にとっての不可欠性の確保に向けた取組を推進しながら同志国との協力を拡大、深化させていくことが必要と認識をしております。

 次に、世界各国におきましてはサプライチェーンを強靱化する取組が進められており、我が国においても関係省庁により重要な物資の安定供給を確保するための様々な措置が講じられているところでございます。他方で、重要な物資の安定供給が損なわれる事態を未然に防止するため平時から総合的かつ業種横断的に取り組む制度については、整備されていないのが実情でございます。

 本法案におきましては、国民の生存や国民生活、経済活動を損なうことがないよう、平時から我が国にとって重要な物資の安定供給を図るための枠組みを整備することでございます。

 以上でございます。

中野(洋)委員 先ほど、平時からしっかりとこういう取組をということを御説明をいただきました。少し、問題意識としてかなり共通するものがあるというふうに感じておりますけれども、今まで、コロナ禍の中でやはりいろいろなものが、マスクや例えば医療機器が不足をするということもありました。あるいは、中国で製造していたようなものが、非常にサプライチェーンが混乱をして、やはり、外国で一国で製造しているというよりは、国内の企業も、このサプライチェーンの強靱化をして、一部、例えば国内回帰をしていった方が、やはりリスクとして、これは必要なことではないかですとか、いろいろな議論がございました。

 経産省としても、サプライチェーン補助金ということで、やはり企業の国内立地ということも支援をしてまいりましたし、昨年の経産委では、半導体、これについては法案も作りまして、やはりこれは大きな予算も投じまして、これは産業政策としてもしっかりやっていくべきだ、こういう議論もしてまいりましたし、また予算措置でも、様々、ワクチンの製造設備、デュアルユースをしっかり支援をしていこうとか、いろいろな、サプライチェーンの強靱化という意味ではやはりそれぞれ取組はしてきたというふうにも認識はしております。

 そうした今までの取組、そして今回、改めてこの本法案を準備をし、これをやっていく。今までの取組と一体何が違うのか、どういうことがこの法案によって強化されようとしているのか、これについても政府の見解を伺いたいというふうに思います。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、世界各国で、重要な物資の他国依存に伴う供給リスクの高まりが顕在化しております。こうした状況を受けまして、先生御指摘のとおり、関係省庁では一部の物資につきまして様々な予算措置を講じさせていただいております。

 一例を申し上げますと、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金ということで五千百六十八億円、それから、先端半導体の国内生産拠点の確保ということで六千百七十億円、それから、ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業ということで二千二百七十三・八億円、こういった形で、重要な物資のサプライチェーンの強靱化につながる予算措置が講じられているところでございます。

 他方で、本法案では、先ほど申し上げましたように、平時から重要な物資の安定的な供給の確保を図るため業種横断的かつ総合的に取り組む法的な枠組みを措置するものでございます。

 具体的には、真に安定供給確保が必要な重要物資を絞り込んで、これを政令で指定できるようにいたします。また、助成金による金融支援、市場環境の整備などを通じて、民間事業者による生産基盤の整備それから供給源の多様化などの多様な取組を総合的に支援するための法的な枠組みを整備することといたしております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 やはり、先ほど政府に答弁いただいた、平時からしっかり総合的に準備をし、また支援も総合的な形でしっかりやっていくということが非常にまさに大事であるというふうに私も思います。そういう意味では、特定重要物資を法案で指定をしていって、供給確保計画を作って支援をしていくという、法律のたてつけとしては非常にシンプルな法律ではあるんですけれども、これを実際にやっていくに当たっては、やはりどういうものを指定し、どういう計画でやっていくのか、これが非常に大事になってくるのではないかというふうにも思っております。

 今までの法案の議論の中でも、例えば何が指定をされるのかということも含めていろいろな議論をしてまいりましたけれども、今後しっかりと検討していくということではあると思うんですけれども、よく条文を見ますと、いろいろな原材料ですとか設備などについて外部に過度に依存をしてはならないというふうな、そういう意識が非常に強く表れているんだというふうに思います。

 他方で、これは昨年の半導体の法案のときも議論になったんですけれども、例えばアメリカでは、半導体分野だけでも非常に大規模な支援を国が行って、やはりこれは国策としてやろうとしている。アメリカは、例えば六兆円規模ですとか、非常に大きなそういう法案を準備をしているという話もございますし、あるいはグリーンやデジタル、いろいろな成長分野、この投資を国としてしっかりやっていくんだ、こういう流れがある。EUも同じであります。復興パッケージということで非常に大規模な、グリーン、デジタル等も含めていろいろな投資が行われるということでございます。

 そういう意味では、我々、我が国は半導体ということで法律を準備をして一つは支援しているわけでありますけれども、例えば今後議論になってくるであろう蓄電池、こういうものもあります。

 今は競争力を日本は確かに持っているかもしれない。これは半導体の法案のときに萩生田大臣とも、半導体の産業政策はどうだったのかという、そういう意味では、ある意味、今までの失敗も率直に認めながら今回しっかりやっていくという議論もさせていただいたと思いますけれども、こうした、それぞれアメリカもEUも、とにかく国策としていろいろな分野でこれを、自国がしっかり競争力が保持できるように、外部に依存しないように、こういうことで取組をしっかり支援をしていく、こういう体制を取っているわけでありますので、今は一定の競争力があっても、これから産業政策として、要は競争力を失っていくかもしれない。

 例えばかつての半導体のように、世界シェアが非常に高かったけれども全く作れない、最先端のものができない状態になってしまったということであってはいけないということでございますので、やはりこういう必要な物資については、今後外部に、これは条文には依存するおそれがある場合ということもありますけれども、やはりそういう外部に依存することがないように産業政策としてしっかり支援をしていく、こういう視点が大事なのではないかというふうに思います。

 この点について、萩生田大臣、どうお感じになるか、答弁いただけますか。

萩生田国務大臣 特定重要物資の指定については、内閣総理大臣が作成し、閣議決定を行うこととなる安定供給確保基本指針に基づき検討がなされることとなるものであり、現時点で具体的に想定される物資を申し上げることは、まず差し控えたいと思います。

 その上で申し上げれば、特定重要物資の指定は、脆弱性の克服だけでなく、不可欠性の獲得、維持という観点も考慮して行われるものと認識しております。実際に、我が国には、安全保障の観点から不可欠な技術、言い換えればチョークポイント技術が存在をします。

 私の地元に、中小企業なんですけれども、最先端の量子コンピューターの研究開発に使われる高性能な電子ビーム描画装置を製造できる会社があるんですけれども、量子コンピューターは既存の暗号を無力化することが可能で、安全保障の観点から米中ロを始めとする各国が技術開発にしのぎを削っているため、その技術が世界から注目を集めるようになっております。

 このように、世界的に技術開発競争が熾烈を極めている現状に鑑みれば、こうした技術について、企業任せにするのではなくて、我が国としても安全保障の観点から、集中的、戦略的な育成策を講じていくことが不可欠だと思っています。

 こうした考え方に基づき、サプライチェーンの脆弱性を解消するという視点からだけではなく、日本が有する技術的優位性を維持拡大させていくという観点からも、経済安全保障推進法の下での取組を進めていくことが重要であると考えています。

 なお、本法案に基づく特定重要物資の指定は安全保障の観点から行われるものであり、単純な産業競争力強化の観点から行われるものではないというふうに承知をしております。

中野(洋)委員 同じ趣旨の質問、小林大臣にもお伺いをしたいというふうに思います。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 特定重要物資につきましては、有識者会議の提言も踏まえまして、現に海外に過度に依存している場合だけではなくて、今後過度に依存するおそれがある場合につきましても、委員御指摘のとおり、要件として規定しているところでございます。

 この過度に依存するおそれのある場合というのは、具体的には、現在は我が国が技術的な優位性を有している物資であっても、各国の研究開発あるいは積極的な投資によって、将来的にこの物資の供給を他国に依存する可能性がある場合ですとか、中期的に国民生活、経済活動にとって重要な先端技術を我が国で保有できず、他国に依存する可能性がある場合などを想定しているところでございます。

 したがって、委員御指摘のようなケースも支援対象となり得ると考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございました、両大臣から御答弁いただきまして。

 何を指定していくのかというのはまさに今後の議論でございますけれども、非常に重要であると思いますので、しっかりそうした観点も含めてやはり御検討いただきたいというのは改めてお願いをしたいと思います。

 そして、その上で、支援の供給確保計画というのを定めることになっております。

 これはやはり、半導体一つ取ってもそうなんですけれども、この供給確保の計画の中身ですとか、あるいは、安定供給確保支援法人あるいは独法が支援をするというスキームではありますけれども、どういうところを支援をしていくのかという、何が本当のチョークポイントなのかというのは、結構いろいろな、分野によってはやはり議論があると思っておりまして、例えば、半導体でも、いわゆる製造拠点そのものの問題であるという認識も当然あると思いますし、例えば、資源がというふうな考え方をしますと、例えばレアメタルでありますとか、半導体だとレアガスのネオンですとか、必要な、必ずこれがないとできないというふうなものもあるでしょうし。

 あるいは、製造拠点というよりも、やや材料的なところ、作っているところがチョークポイントなのかとか、何をすれば安定供給できるのかというのは割と物によってかなり違ってくるなと思いまして、そこのポイントがずれると、何か、製造拠点は支援して持ってきたんだけれども、実際にチョークポイントがずれてしまうとこれが効果を発揮しないということでありますので、供給確保計画というものを認定し支援するという単純な法律の中身にはなっておりますけれども、やはり実際にやる上では、サプライチェーン全体をしっかりと把握をした上で、本当に効果の高い取組を支援をする、こういうことが不可欠なのではないかというふうに思います。

 この点について、政府の御認識をお伺いしたいと思います。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 この法案に基づきまして経済産業省が所管する物資が特定重要物資として指定された場合には、経済産業省として安定供給確保取組方針を作成することになります。

 その作成に当たりましては、ただいま委員から御指摘がございましたとおり、サプライチェーンは単一の物資によって構成されるものではなく、原料から部品、材料、製造装置、さらには最終製品に至るまで様々な要素によって構成されるということを考慮した上で、安定供給確保のための施策を実施することが重要であるというふうに認識しております。

 そのための経済産業省としての取組でございますけれども、二〇一九年に大臣官房経済安全保障室を設置いたしまして、一つは、サプライチェーン分析に基づく、日本が保有する重要技術あるいは製品の洗い出し、二つ目として、技術、素材などの国際的な偏在の状況の把握あるいはマッピング、そして三つ目として、経済安全保障に係る海外情報の把握あるいは地政学的状況の評価を進めてきているところでございます。

 今後、政府として特定重要物資の指定について検討することとなるわけでございますけれども、経済産業省としては、これまでの、それから今後のサプライチェーンに関する調査の成果の提供も含めまして、経済安全保障政策の推進に貢献してまいりたいと考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 指針の策定、そういった施行に当たっての観点かと思いますが、よろしくお願いをしたいと思います。

 そして、もう一つ、例えばコロナのときも、マスクを国内生産すれば補助しますということで、実際にやったんですけれども、じゃ、実際にコロナ禍が、マスクの需給が安定をしたらどうなったかというと、やはり安価な外国産が当然入ってきて、要は、その後、生産を続けられるのかみたいな議論が、実は私の知っている会社でもそういうことがあったりもいたします。

 やはり、サプライチェーンを強靱化をしてしっかりと確保するということは非常に大事ではあるんですけれども、他方で、今それを日本でやっていないというのは、それなりのやはり経済合理性があるからそれをやっていないということもあるんだというふうに思います。そこが果たして両立できるのかというのは、非常に、実際にやる上では重要な観点だと思います。

 もちろん、産業政策としてしっかりやっていくんだということもあろうかと思いますけれども、こうした経済合理性がある形の支援がしっかりできるのか。あるいは、場合によっては、実際に作ってそれを支えるためには、その製品の、しっかりとそれを支えていくものを、場合によっては国の方で支えないといけないみたいなものも、物によっては存在し得るのかなというふうにも思っております。

 この経済合理性との両立、こういう観点について、現在、政府がどう考えているか、答弁をいただきたいと思います。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございます。

 民間事業者による経済合理性を踏まえた取組に対する支援を通じまして、対象物資の安定供給確保を図ることを基本としております。

 支援に当たりましては、物資の特性を踏まえて、民間事業者が選択する取組について、必要に応じて支援可能なスキームとすることで、民間事業者の経済合理性を踏まえた取組により重要な物資の安定供給確保が図られるように措置してまいります。

中野(洋)委員 ありがとうございました。

 済みません、もう一問通告しておりましたが、ちょっと時間が参ったようですので、質問を以上で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、落合貴之さん。

落合委員 おはようございます。立憲民主党の落合貴之でございます。

 本日は、この内閣委員会と経産委員会の合同審査ということで、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案、いわゆる経済安保法制の審査でございます。

 まず冒頭、萩生田経産大臣にお気持ちを伺えればと思います。

 この法制は、かなりビジネスの世界、経済界に大きな影響を与えます。したがって、経産省も実質的に、実務的に、施行されたら関わる部分が大きいわけでございます。しかし、審議は内閣委員会で、この今回の合同審査も今日の三時間しか今のところはセッティングがされていません。内閣委員会に経産大臣が出向いて答弁しているわけでもございません。

 これは、経産大臣としては、もっと合同審査などの時間をつくって、答弁に立ちたいんじゃないか、意見を公式に言いたいんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

萩生田国務大臣 御心配ありがとうございます。

 確かに、経産省、いよいよ法律がワークすれば、いろいろな企業の皆さんに予見性をしっかり示していったりする、そういう重要性がありますから、リンクしていることは事実でありますけれども、制度設計については、これは小林大臣中心に今までもやってきましたので、また必要があれば政府参考人を同席させていただくようにさせていただきますので、私が一緒に同席して、人をかき分け、手を挙げて、どうしても答えたい、そういう環境ではございませんので、必要に応じてしっかりサポートしていきたいなと思っています。

落合委員 これは先端的な分野の産業がかなり関わりますので、産業政策全体にもかなり大きな影響を与える法制だと思います。

 これは我が会派の理事からも要望を出していると思いますが、もう少し、経産大臣の内閣委員会への出席ですとか、あと合同審査の開催を、是非この場でも求めていきたいと思います。

 委員長、お取り計らいをお願いいたします。

古屋委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

落合委員 それで、特に冷戦以降、グローバル化の時代と言われてきました。世界が一つになって、これからはボーダーレスなんだと。お金の移動も自由にしていきましょう、それから生産はコストが安いところでしていきましょうということで、供給網をかなりグローバル化し、複雑に絡み合わせてきました。この三十年、そういう方向で進んできました。

 経済ですとか金融のグローバル化が進んでいくにつれて、賃金がなかなか、生産コストが安いところで生産するので、世界的に賃金が上がりにくくなってしまう、富が偏在しやすくなってしまう、それから、経済の不安定化も激しくなってしまうという副作用がどんどん出てきました。

 こういったグローバル化、グローバル生産自体の礼賛を見直さなきゃいけないということで、私も申し上げてきたわけですが、これは近年、新冷戦というか多極化というか、混沌が始まって、この情勢の中、それからコロナによるサプライチェーンの毀損ということで、ようやく過度なグローバル化、ボーダーレス化が見直されるようになってきています。

 この法制は防衛ですとかそういう部分に限っているわけですけれども、この法制を機に、いい方向に生産体制も軌道修正をしていくべきだと思います。これを機に、国内の必要なものは国内で作っていく比率を上げていって、国内で日本の富を循環させていく、国民生活に必要不可欠なものはなるべく自分たちで賄えるようにしていく、そういう政策が、これからはある意味、必要なのではないかと思います。

 これは、安倍政権、菅政権の政策とは明確に方向転換になっていきますので、是非、必要なものはこれを機に、思い切ってやっていただきたいと思います。

 まず、経産大臣に伺います。

 この法制は、トランプ政権のとき、中国との貿易戦争というようなことが言われてまいりました。二〇一八年に国防権限法二〇一九が施行された、これが、日本での議論のきっかけになってきたと思います。

 しかし、アメリカと中国の貿易額を見てみると、二〇一九年は確かにショックで減っているんですけれども、その後ぐんぐんぐんぐん貿易額は伸びています。法が施行される前よりか後の方が貿易額は増えていて、今、米中の貿易額は過去最高を更新しています。

 こういった米中の貿易額がどんどん増えているというようなことは、大臣、御認識はされておりますでしょうか。

萩生田国務大臣 認識しています。

落合委員 小林大臣もいかがでしょうか。

小林国務大臣 認識しています。

落合委員 過去の、先週の議事録を拝見しても、小林大臣も、主体的な判断ということをおっしゃられています。

 アメリカも、よく見てみると、中国との貿易に関して大きな網を張りながら、しかし個別に判断して、この部分はいいよ、これは重要な部分だけれどもこの部分はいいよというような許可も実際には出しているわけでございます。

 トランプ政権のとき、特に、敵味方をはっきりさせて、貿易戦争をやるんだという姿勢だったわけですけれども、実際には日本も、アメリカに気を遣ってか、二〇一九年、二〇二〇年は貿易額を減らしてきたわけですけれども、去年は増えました。主体的な判断をしながら国益に沿って政策を遂行していくということは、重要なことだと思います。ここは確認をさせていただければと思います。

 経産大臣にまた質問なんですが、サプライチェーンの在り方、これは、去年もおととしもサプライチェーンの在り方について経産委員会にも法案が出ておりました。これから、サプライチェーンというのは国内回帰をはっきりと明確にしていくのか。

 若しくは、サプライチェーンの多元化という言葉も政府は使っています。多元化というのは、国内に持ってくるというよりも、特定の国で生産しているものをちょっとほかの外国に移して、サプライチェーンは国外に移したままにするというような政策と、何かこれは混じっている気がするんですが、これは、産業政策として国内回帰を目指していくのか、そうでないのか。大臣、いかがなんでしょうか。

萩生田国務大臣 まず先生、大前提として、今お話しされた二〇一九年レポートをきっかけにこういう議論になったというふうにおっしゃったんですけれども、そうではなくて、やはり日本は日本で独自に、やはり機微情報などが残念ながら特定国に流出して、そして類似産業が興ってその類似産業に追い越されていく、こういう経験をしてきましたので、かねてから問題意識を持っていました。したがって、アメリカに追随して、そしてアメリカの世界観の中で、そこに従って我々も法律を作るんだなんという近視眼的な話ではないことは是非御理解いただきたいと思うんです。

 それで、前提となる思いは全く同じで、コロナ禍を経験して、これだけの先進国でありながら、マスクがない、注射針がない、防護服がない、こんなことではけしからぬということで、やはり国内で作れるものはしっかり作っていこう、こういう方針を立てさせていただきました。

 先ほど中野先生のマスクの話もありましたけれども、じゃ、ただ作ってくれと言われて、また平時に戻れば安いものの方がいいというふうに消費者が思ってしまうのでは、それではやはり産業が育たないわけでありますから、そういうリスクヘッジをやはり国としてもやっていくべきじゃないかと思っています。

 言い換えれば、たとえ十円高くても日本製のものもちゃんと作っていく。外国製を排除するわけじゃないですけれども、また製造拠点のリスクヘッジもやっていく。こういったことをしっかりやっていきたいと思っています。

 したがって、この法案の中で、サプライチェーン施策につきましては、一つは、一義的には、やはり国内でちゃんと完結できる国になるべきだと思いますよ。その上で、今まで特定国に依存していたサプライチェーンをやはり多角化、分散化してリスクヘッジをしていくという考え方を持っておかないと、何か一つの国とのパイプが途絶えてしまうと一切物が入ってこない、こういうことでは国民生活を守れないと思っていますので、そういう概念でしっかりやっていきたいなと思っています。

落合委員 サプライチェーンの国内化の点で具体的に行おうとしている施策がございましたら、通告もしていますので、大臣、例を挙げていただければと思います。

萩生田国務大臣 済みません、例といいますと、例えば、具体的には、今回、別の法律でありますけれども、半導体を国内で作ることを決めさせていただきました。

 一部の皆さんにしてみれば、今更国内で半導体を作らなくたって、世界に優秀な半導体があるんだからそれを買えばいいじゃないか、こういう御意見もあったんですけれども、実際、日本の基幹産業である自動車産業ですとか白物家電で使う二十ナノ台の半導体というのは、国内でワンチップも作れないという状況がもう十数年続いてきましたので、こういったものを克服していくことが結果として国内の企業の皆さんを強くすることにもなるんだと思っていまして、こういうものは国内回帰というものを目指してきました。

 他方、抱え込みをすることは過去の失敗にも通じると思うので、価値観を同じくする同志国とはやはり技術の提携をしながら、お互いに足りないときに供給し合えるような環境というのもつくっていかなきゃならないので、ここはまさしくバランスだと思っておりまして、例を挙げると幾つも言わなきゃならないんですけれども、まずは足下、日本の産業の中で足りないものは国内にきちんとつくっていく、そこを心がけていきたいと思っています。

落合委員 中国は、二〇二五年までに製造業全体の国内生産の比率を七〇%に上げていこうというようなことを国家目標にはっきりと明示をしています。やはり時代は三十年前と変わってきたというふうにはっきりと思います。ここは産業政策の変わり目だと思います。

 それから、今、ウクライナ等を見ても、いかにドローンが重要かということも、まざまざと具体例を我々見せつけられています。元々ドローンは日本もある程度進んでいたんですが、今は国内のシェアがどんどんどんどん下がってきています。こういったところにやはり力を入れていく必要があると思います。

 それで、具体的な分野の中で小林大臣に伺いたいんですが、先日、私はクラウドについて経産委員会で取り上げました。これは、全てのビジネスがDXと関係するというようなことで、政府も、デジタル化してください、DXを進めてくださいと言っているわけです。今の段階だと、デジタル化とかDX化というのは、ほぼクラウド化に近いわけです。

 そうなると、クラウドってどこの企業ができるんですかというと、今までは日本の企業もやっていたんですが、競争力が落ちて、ほとんど海外の企業に頼っているわけです。デジタル化が進めば進むほど、クラウドの支払いで国外に支払いが流出している。去年は、クラウド分野での海外への支払い赤字が、クラウド分野だけで一兆円を超えているんです。それでもまだ、日本企業のデジタル化は半分も進んでいない。半分ぐらいのシステムは二〇三〇年には老朽化して使えなくなってしまうと言われているわけです。このままいくと、日本の富は膨大に流出をします。

 それから、政府のデジタル化、政府の情報も、全部外国企業が受注しているわけです。データというものを取り扱う上でも、データの価値も簡単に渡してしまっている。安全保障上も問題だと思います。そうだからこそ、EUは、クラウドの自立化ということを二〇二〇産業政策アップデートの重要課題としてはっきりと挙げているわけです。

 この法制にはクラウドという文字が見えないんですけれども、大臣、これはどういう位置づけで考えていらっしゃるんでしょうか。

小林国務大臣 まず、この法案では、例えば、広く国民生活、経済活動が依拠しているにもかかわらず、その供給を外部に過度に依存又は依存するおそれがある物資を特定重要物資として指定をし、平時から民間事業者の取組を適切に支援していくということです。

 また、委員御指摘のとおり、あらゆる産業がその部素材としてソフトウェアを利用している状況であることを踏まえて、この法案の物資というターム、用語には、通常含まれる有体物に加えましてプログラムを含むこととしておりまして、例えば、クラウドサービスのシステムの稼働に使用されるプログラムが特定重要物資として指定され、その安定供給確保に取り組むことは可能となっている、そういうたてつけです。

 もっとも、先ほど来話が出ているとおり、これからいろいろ細かなルールは決めていくので、現時点で予断を持って申し上げることはできないことは御理解いただきたいと思いますが、クラウドサービスにつきましては、今後も市場の成長が見込まれますし、また、社会インフラに更に広く浸透していくことを踏まえますと、この分野において国内に事業基盤を確保することは重要だと認識をしております。

 いずれにしても、クラウドサービスをどう捉えて、何が物資として指定されるかというのは、現時点では予断できませんけれども、先ほど申し上げた法律上の要件に照らして、適切に判断していきたいと考えます。

落合委員 予断できると思います。電子政府化を進めようと言っている政府のデータさえ日本の企業が受注できないんですから、これは大変重要な問題であると思います。

 今、クラウドの赤字は、日本の貿易黒字の半分ぐらいをなくしてしまうぐらいの、それぐらいの額、赤字です。これは是非早急に取り組むべき問題だと思います。

 もっと踏み込んで発言していただきたいんですが、いかがですか。

小林国務大臣 大変申し訳ないんですけれども、現時点で予断を持って言及することはできませんが、その上で、今委員からの御要望ですので、イメージを持って御審議いただくために例を挙げて説明させていただきます。ちょっと、萩生田大臣のいる前で恐縮なんですけれども。

 社会のデジタル化の進展に伴ってクラウドサービスが不可欠となっていく中で、我が国のインフラ事業者などが活用可能な、秘匿性が高いデータ運用が可能なクラウドサービスの安定供給確保を図るためには、我が国においてクラウドサービスの稼働に使用されるプログラムを生産そして開発可能な体制を確保する必要があると考えます。

 また、秘匿性が高いデータ運用が可能なクラウドサービスを提供するに当たりましては、プログラムの生産開発体制の確保に加えまして、物理的なサーバーの確保のほか、システムの設計や高いセキュリティーを実現するプログラムの開発、ネットワーク機器の確保も必要になります。

 そのため、クラウドサービスの安定供給を図るに当たりましては、クラウドサービスの稼働に使用されるプログラムを特定重要物資に指定した上で、ベンダーが整備するクラウド用サーバーの整備費用ですとか、あるいは高いセキュリティーを実現するプログラムの研究開発を支援することも想定されるところではございます。

落合委員 時間が来てしまったので、通告した分の半分ぐらいしかできなかったんですが、是非また経産大臣と一緒の審議を実現いただければと思います。

 クラウドは恐らく、自前でできるようになったら、また次の次世代クラウドが出てきちゃうと思います。そういう意味で、先手先手を打って、研究開発もどっさりお金をつけていく必要がある、そういう分野がたくさんございますので、是非前向きに取り組んでいただければと思います。

 それでは、大島委員に替わります。ありがとうございました。

古屋委員長 次に、大島敦さん。

大島委員 今回の法案の中で、先端的な重要技術の開発支援に関する制度について質問します。

 私の問題意識、二〇一七年、五年前の私のレポートの一文を紹介させてください。

 量子コンピューターのアイデアを発案したのは東工大の西森秀稔教授でした。しかし、持続的に資金を募って研究開発を続け、まだ完全に実用化レベルではないものの、世界に先駆けて一定レベルの量子コンピューターを開発したのはカナダのD―Wave社でした。D―Wave社の経営者が、日本人の書いた難しい論文に基づいて開発を決意し、一九九九年に会社を設立し、資金を集め続け、完成へとこぎ着けたことに心から敬意を表したいと思います。とはいえ、これに投じた開発資金は、総額でも百五十億円程度にすぎません。

 日本の大手企業が内部に多くの資金を持っていることは御案内のとおりですが、百五十億円程度なら日本の大手企業にとっては大した負担ではないのですから、やる気があればD―Wave社より先に同じレベルの量子コンピューターを発売することもできたはずです。そうならなかったのは、言い換えると、量子コンピューターだけではなく多くの技術分野で日本の大手企業が将来に向けて投資を怠っているからと言わざるを得ません。

 五年前の私のレポートの一文でした。

 それでは、先端的な重要技術の開発支援による成果のイメージについて、小林国務大臣にお尋ねをいたします。

 カナダのD―Wave社の量子コンピューターは、我が国の研究者が理論提案を行ったアニーリング手法を基に開発されております。同社は、十五年前に、十年間にわたる百五十億円の投資により技術開発を行い、これが現在の量子コンピューターブームにつながっております。

 本法案による先端的な重要技術の開発支援は、このD―Wave社のような事例がモデルとなっていると考えております。このような将来に実を結ぶ技術を育てることの重要性は私も大いに認識しておりますが、D―Wave社のように、あまたの論文の中から将来に実を結ぶ技術を見出し、プロトタイプまで仕上げること、このような論文の芽を捉える能力を備えることが必要だと考えますが、政府の見解をお聞かせください。

 また、政府は、成果が出るまでの期間として何年のスパンを想定し、具体的にどのようなレベルの成果として結ぶことをイメージされているのでしょうか。お願いします。

小林国務大臣 委員御指摘のとおり、先端的な重要技術を育成するためには、学術論文などあまたある技術シーズから、将来性のある技術を見出す力、いわゆる目利き力というものが重要になってくると思います。

 この法案におきましては、こうした役割を担う一主体としてシンクタンクを法的に位置づけておりますほか、具体的な技術の見定めに関しましては、研究開発事業におけるプロジェクトの公募を通じて寄せられる提案も当然活用していく方針でございます。

 また、この枠組みは、将来にわたりまして、国としての優位性を維持し確保していく観点から、民生利用や公的利用への幅広い活用を目指して、先端的な重要技術の研究開発を進めるものでありまして、委員お尋ねの成果といたしましては、具体的製品の開発、試作に至る前までの段階を目標としているところでございます。

 また、期間についてのお尋ねもございました。

 研究開発の期間につきましては、個々のプロジェクトの研究内容や技術の成熟度などによって変動し得るものでございますが、指定基金として念頭に置いています経済安全保障重要技術育成プログラムの場合は、研究開始から最長十年程度を目安として考えているところでございます。

大島委員 続きまして、技術の切り分けと成果の活用についてお尋ねいたします。

 旧ソ連によるスプートニク・ショックを受けて創設された米国のDARPA、国防高等研究計画局や米国国防総省の技術が民生転用された手術支援ロボットのダビンチの例を見ても、最先端技術は防衛技術、安全保障から生まれるものと言えます。一羽のカモが先導をするように、最先端技術は安全保障技術が先行しており、また、安全保障技術と民生技術を切り分けることは極めて難しくなっております。

 政府は、技術の切り分けは可能という認識でしょうか。本法案においては、我が国の優位性ひいては不可欠性を確保する、多義性のある技術の獲得が目指されていると承知しておりますが、その研究成果は、民生技術は民間に引き継がれ、安全保障技術は防衛省に引き継がれるという理解でよろしいでしょうか。

小林国務大臣 先端的な技術というのは、多義性がございます。多くの意味があるという意味での多義性がありますことから、研究開発段階におきましてはその用途を予断することはなかなか難しい点もございます。

 アメリカでは、インターネット、GPS、これが有名な例ですけれども、こうしたものは、国防総省で開発された技術が民生に展開されていく、いわゆるスピンオフが多数生まれているとされます。

 今回コロナで注目されましたメッセンジャーRNAのワクチン技術につきましても、元々は、バイオテロの技術の一環として、国防総省の機関である、委員御指摘のDARPAの資金援助を受けて研究が進められてきたものでもございます。

 一方、AIあるいは量子、こうした研究開発は、今、大学あるいはスタートアップ、こうしたボトムアップで進められているケースがございまして、最先端技術は防衛技術、安全保障から生まれるとは、必ずしも今、言い切れない状況になってございます。

 我が国の研究開発は従来から民間部門が中心的な役割を担ってきておりまして、研究者の多くも大学や企業に所属しております。

 このため、この法案の枠組みが目指している、宇宙、海洋、AI、量子、こうした先端的な重要技術の育成に際しましては、こうした我が国の状況や研究開発の実態を踏まえることが必要であると考えておりまして、アメリカの国防総省の事例のように、殊更、防衛用途での活用を強調する必要はないのではないかと考えております。

 現時点では、研究成果の取扱いについて一概にお答えすることは困難ですけれども、いずれにしても、研究成果の社会実装の在り方というのは、この法案のたてつけの中では、プロジェクトごとに組成されていく協議会の枠組みの中で、研究者や関係省庁、あるいはシンクタンクなどを交えて検討されることとなります。

大島委員 小林大臣、先ほども述べたスプートニク・ショックによって、当時のケネディ大統領が、一九七〇年代に月面に人類をという計画を立てられて、そのときに生まれたのが半導体だと承知をしております。

 ですから、その半導体にかける投資金額、研究費の金額は、多分莫大な金額を立てて、ようやく半導体を開発したと思うので、やはり、投資の金額は、国がやるということは、民間では収益に乗らない研究開発をしっかりやってほしいと思っているんです。そのことが、やはり今、我が国ですと、安全保障の技術開発については、これはなかなか、大臣おっしゃるとおり、難しい環境がある。諸外国は、これは、多くの資金投入をしているわけですよ、米国中心に。EUもそうですし、中国、ロシアもそうかもしれない。

 ですから、やはり、国として、研究開発の最先端、その分野、どこにそれが眠っているのか、それを見ながら、是非取り組んでほしいと考えています。

 続きまして、特定重要技術調査研究機関、シンクタンクの位置づけについてお尋ねをいたします。

 ここ数十年、日本企業を始め民間の研究機関は、縮小が続いてきました。

 このような中、本法案により法的に位置づけられる特定重要技術調査研究機関、シンクタンクは、どのような組織となることが想定されているのでしょうか。優秀な人材の就職先、受皿として、民間の研究機関を代替するものとなるのでしょうか。

 今後、育てていくべき技術の芽を論文等から見つけ出し、このシンクタンクにおいてしっかりと調査分析し、政府がビジョンを作成し、NEDOやJSTなど、ファンディングエージェンシーが公募を行い、協議会が伴走支援しながら、研究開発、社会実装につなげていくことでよろしいでしょうか。民間の研究機関が再び活力を取り戻すまでの橋渡しとしての存在となるのでしょうか。

 私は、科学技術のブレークスルーは、生命科学と安全保障技術によるところが大きいと考えます。この二つのフィルターを通すことで、正確な技術のスクリーニングができるのではないかと思います。

 是非、このシンクタンクも活用して、二〇三〇年代に実用化できるような技術を見つけ出していただきたいと思います。答弁をお願いします。

小林国務大臣 この法案にたてつけとして規定させていただいております令和五年度に立ち上げる予定のシンクタンクでございますけれども、この法案に基づく委託調査を含めまして、国内外の技術動向、また社会経済動向、安全保障、こうした多様な視点から、科学技術イノベーションに関する調査研究を行うものでございます。

 具体的には、国内外の研究機関とのネットワークを活用しながら、先端的な技術をめぐる国内外の情勢、研究開発動向に関する調査分析、そして政策提言の機能、これが一つです。また、二つ目の機能としては、関係省庁や国内外の関係機関、専門家と緊密に連携の上、様々な情報を集約していくハブとしての機能。そして、先端的な技術動向につきまして高度な知見を有する人材を確保、育成する機能。この三つの機能を主に発揮させたいと考えております。

 あくまで、先生の御質問に対する答えとして、組織に関する現時点でのイメージなんですけれども、数十人規模の専門家による体制からスタートをしまして、専門性、国際感覚、俯瞰力、目利き力、こうしたものを有する優秀な人材の確保に努めつつ、段階的にネットワークの規模や活動内容そして体制を充実させて、将来的には百人を超える規模感で活動していくことを想定しているところでございます。

 また、このシンクタンクにおきましては、まずは経済安全保障の重要技術育成プログラムの実施に資する調査分析を中心に行って、その結果を、政府が公募対象となる技術などをファンディングエージェンシーに示す、先生御指摘のビジョンの検討ですとか、協議会による伴走支援を通じて、課題選定後の個別のプロジェクトの運営に活用することとしているところでございます。

 内閣府において実施している試行事業の実績を踏まえつつ、更に検討を進めて、具体化を図っていきたいと考えます。

大島委員 私は、先端的な重要技術の例として挙げられております人工知能、量子等については、これまで役所の皆様から一番に教えていただいた経験があります。人工知能も、ブームになる前に、人工知能、面白いぞと言われて、日本中の人工知能学者に会い続けたり、量子についても、四年前、五年前ですか、量子暗号についてNICTの佐々木先生の話を聞きに行ったり、本当に、一番最先端のそういう技術情報を持っているのは、意外と官僚機構の皆さんだなという認識を持っています。そのため、優秀な人材は霞が関にこそ存在すると思っており、霞が関の情報ソサエティーができたら非常に意義のあるシンクタンクになるのではないかと感じております。

 令和五年度を目指したシンクタンクの設立に併せ、是非官僚の皆様の知見をこれからの我が国の将来のために生かしていただくことをお願いします。結構、いろいろなことを知っています。

 続きまして、経済安全保障重要技術育成プログラム、指定基金による支援について伺います。

 政府は、経済安全保障の強化の観点から、先端的な重要技術の研究開発から実証、実用化までを迅速、機動的に推進するため、令和三年度補正予算において二千五百億円の経済安全保障重要技術育成プログラム、指定基金を設置しております。

 この指定基金により我が国の経済安全保障に資する研究開発を底上げしていくに当たって、単発の支援では効果がないと考えます。毎年、持続的に二千五百億円を積み増していくのであれば相当のインパクトがあると考えますが、今後の指定基金への資金の補助、第六十三条三項の見通しや、指定基金の資金運用の有無等について御教授いただけないでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 今委員御指摘いただいたプログラム、経済安全保障重要技術プログラムにつきましては、昨年閣議決定されました経済対策におきまして、我が国の技術的優位性を確保するため、先端重要技術に関する研究開発、実用化を支援するとありまして、特に、経済安保強化に向けて新たな枠組み、取組が進展していく中で、五千億円規模とすることを目指すとされているところでございます。

 また、岸田総理の施政方針演説におきましても、国が五千億円規模に向けた基金を設け、人工知能等々の分野における研究開発投資を後押しすると表明したところです。

 これを受けて、令和三年度補正予算におきましては、このプログラムのスタートとしまして、基金を活用して、公募によって重要技術の実用化に向けた強力な支援を行うために、まずは二千五百億円を措置させていただいたところです。

 その上で、今後の我が国の安全保障、経済社会をめぐる環境、そして国際的な科学技術動向やプログラムの進捗状況によっては、対象とする技術、必要な予算規模に変化が生じることは考えられることから、こうした状況の変化を踏まえまして、必要な予算確保に取り組んでまいりたいと考えます。

 委員のお気持ちは非常に心強く受け止めておるんですけれども、これは財政当局との兼ね合い等々もございますので、私の立場としては、しっかりと必要な予算確保に意欲的に取り組んでいきたいと考えております。

 また、この基金におきましては、資金運用を行うことは予定していないということは付言させていただきたいと思います。

大島委員 御答弁ありがとうございました。

 ここ三十年間の日本の停滞は、予算配分が間違っていたのではないかなと思っているものですから、毎年二千五百億円ぐらい、毎年毎年積み上げていくことがやはり必要かなという立場です。

 続きまして、研究成果の検証、公表について、両大臣にお伺いをいたします。

 台湾のTSMC社は、半導体を受託生産するファウンドリーの世界最大手であります。その技術は圧倒的であり、最先端の三ナノメートルという製造プロセスによる試験生産を開始し、今年中に量産を開始すると見られています。その最先端の技術を支えているのは、極小な回路線幅をシリコンウェハーに印刷するEUV、極端紫外線リソグラフィー技術です。この技術を用いた半導体露光装置は、現在、オランダのASML社がほぼ独占しており、インテル、サムスン、TSMCといった企業にEUV半導体露光装置を提供しています。

 元々、半導体露光装置は我が国の得意分野であり、一九九〇年代には、ニコンとキヤノンで世界シェアの七〇%以上を占めていました。しかし、二〇〇〇年代に入り、ニコンやキヤノンはデジタルカメラに注力していったことなどからシェアを落としていき、二〇一〇年代に入ると、どちらの企業もEUV露光機の開発から撤退するに至っています。

 私がお聞きしているところでは、十五年前、産業技術総合研究所においてもEUVの開発を行っておりましたが、途中で中止してしまったということであり、本当に残念だと思います。

 しかし、このような技術こそが安全保障そのものであり、経済安全保障の観点から、守り育てていくべき技術ではないかと感じております。こうした経験から何を学び、将来に生かしていくのかが、将来の研究開発を左右します。

 経産大臣にお伺いしたいことがあります。

 私は、様々なテーマで研究開発に挑戦することが一番大切だと思っております。中には、成功するものも失敗するものもあると思います。これまでの様々な研究テーマについて、もう一度振り返って検証し、今後の研究開発につなげていくことこそが、今後の我が国の将来にとって重要かと思います。

 私としては、挑戦することが大切だと思っていまして、成功とか失敗は余り考えていません。ですから、挑戦することが重要だという観点に立っておりますので、大臣の改めて見解をお聞かせください。

萩生田国務大臣 経産省では、産業競争力強化などの観点から、様々な研究開発事業を実施しています。

 先生御指摘のとおり、それぞれの成果やアプローチの妥当性などを厳正に評価し、その後の研究開発事業の企画立案等に反映させていくことは極めて重要だと認識しています。

 例えば、御指摘のEUVの露光装置に関する研究開発プロジェクトでは、当時、国際連携の視点が十分ではなくて、また、官民を挙げて十分な研究開発費を確保できなかったことで、キヤノンもニコンもやはりそこから撤退してしまったんだと思います。

 その後の社会実装につながらなかった一因であるというふうに考えておりまして、こうした過去の反省も踏まえて、先ほどお認めいただいた半導体については、今度はその研究開発を、我が国の半導体製造装置、素材メーカー、すなわち、半導体部分じゃなくて、前工程も後ろ工程も、中小企業の皆さんも巻き込んで、人づくりもやっていこうということを今回提案させていただいた次第でございます。

 他の研究開発事業についても、これまでの反省も踏まえつつ、より実効的な評価の実施とその後の研究開発支援の反映に取り組んでまいりたいと思います。

 私、一昨年、文科大臣のときに、吉野先生と一緒にノーベル賞の授賞式に参加して、そのとき長い時間御一緒したんですけれども、基礎研究で三割バッターはいないと。もう空振りや凡フライの連続なんだけれども、三割バッターはいないんだけれども、その中からやはり時にホームランバッターが出てくるわけで、そのホームランバッターが出てきたことで、例えば、それが産業につながれば、今まで失った研究費をちゃんと稼いでいるじゃないか、研究員チームというチームで考えてくれれば、もう少しおおらかな対応ができないだろうかという御提案をいただいて。

 実は、日本の基礎研究の中には、研究費が枯渇してやめてしまったものが山ほどあります。七合目、八合目まで登って、あとちょっとというところで倉庫にしまわれてしまった日本の知見というものを、これは経産省じゃないですけれども、文科省の方でもう一回見直しをしようということを始めたところでございますので、先生の御提案は極めて大事だと思っています。

 是非、日本の言うならば礎となるような、すばらしい研究、失敗を恐れずに、経産省もしっかり、企業の皆さんと連携しながら支えていきたいと思っています。

大島委員 ありがとうございます。

 また、経済安全保障担当大臣にお伺いいたします。

 今後、国費を投じて研究開発を推進していく以上、失敗、成功のいかんにかかわらず、その結果を分析、検証し、公表していくことは、政府の説明責任の観点から、我が国の研究開発を前に進めていく上でも、非常に重要であると考えております。

 そこで、本法案に基づく研究開発支援による成果の検証、公表の仕組みが設けられているのかどうか、お尋ねをいたします。

小林国務大臣 研究成果の評価また公表は、政府としての説明責任の確保や研究成果の適切な活用の観点から重要であると認識しておりまして、委員御指摘のとおりだと私も思います。

 したがって、国費を用いて実施される研究開発につきましては、平成二十八年に決定された国の研究開発評価に関する大綱的指針に基づきまして、評価、公表することとされておりまして、この法案の枠組みに基づく研究開発につきましても、当然にその対象となります。

 この取扱いにつきましては、閣議決定する基本指針におきまして、しっかりと明確化してまいりたいと考えます。

大島委員 時間が来ました。終わります。

 ありがとうございました。

古屋委員長 次に、山岸一生さん。

山岸委員 立憲民主党の山岸一生です。今日も短い時間ですけれども、よろしくお願いをいたします。

 引き続きまして、藤井前審議官の問題をお尋ねをしてまいります。

 両大臣には、途中は基本的に政府参考人にお尋ねをしてまいりますので、最後に一言お伺いするかもしれませんが、大臣にはお聞きをいただきたいなというふうに思っております。

 私、この問題をずっと取り上げ続けてきているんですけれども、それは、スキャンダルをやりたいということでは必ずしもありません。この藤井前審議官と経済安保ビジネスというものの問題というのは、私は、経済安保政策の本質的なリスクを表している、端的に表している、そういう事例なんだろうというふうに考えています。

 どういうことか。経済安保、これは非常に大きな政策体系になるわけで、小林大臣もおっしゃっているとおり、全体大きいうちの今回ごく一部を法案にしているにすぎない、非常に大きな射程を持つものだということで、じゃ、どういう内容かといえば、それは様々な業種、業界に対して横串で、経済安保という横串でもっていろいろな規制を加えていくことになるわけです。

 その規制の内容というのは、これも小林大臣がこの間お認めになっているとおり、個別の企業にとっては経済合理性に反することをお願いしなければいけない、国益のためにお願いしなければいけない、そういうものでもあります。

 だからこそ、このルール作りには、公平性、客観性あるいは合理性というものが必要になってくる。もしかじ取りを間違えてしまうと、大多数の企業にとっては経済合理性に反する非常にダメージが大きいものなんだけれども、ごく一部のいわば経済安保業界というんでしょうか、そういう一部の人にとっては大きなメリットがある、こういうふうなものにもなってしまいかねない。もしそういうことになってしまえば、これは国益を守ることはできず、本末転倒になってしまう。この間、私が一貫して藤井さんの問題を取り上げているのは、そうなることを前もって防ぎたいということなんです。

 経済安保ビジネスというものの実態を明らかにして、それによって、ごく一部の利害関係者が政策を左右をして、その他大勢、真面目に働いている国民がダメージを受けるというふうなことが万が一にもあってはならない、しっかりチェックをすることでこの経済安保政策が真に国益を守るルールになるようにという観点から質疑をしていきたいと思います。

 今日は、少し、二年、三年ほど前のことを伺っていくわけなんですけれども、今回、経済安保政策というのが一つのパッケージに初めてなったわけですけれども、これまでも既に、我が国の様々な政策体系のいろいろなところに経済安保という考え方が芽出しをされているというか、既にビルトインされているものが幾つかあります。それらがどういうふうにつくられ、運用されているのか、そこに、じゃ、藤井さんはどういうふうな関わりを持ってきたんだろうかということを検証していくのは、私は、この法案を考えていくためにも大きな示唆を与えるものだろうというふうに思います。

 そこで、防衛省にお伺いしていきたいと思っていますが、防衛省においては、二〇一九年から、民間企業との契約をめぐり、経済安保の観点から、新たな基準を導入をされました。この基準作りには藤井さんも当時防衛装備庁の長官官房審議官として関わっていたということは、御答弁いただいております。

 この基準、少し内容をお聞きしていきたいと思っているんですが、基準に対応していれば民間企業のいわば受注機会が増えて、対応できなければ政府調達から排除をされる、こういうふうな内容でございますので、今回、特定の事業者との癒着が疑われている藤井氏がこの政策づくりに関わっていたということで、この基準の内容というものが本当に合理的なものであったのか、ゆがめられていなかったのかということはやはりチェックをしていく必要があるんだろうと思います。

 この基準について、先般、大串議員への答弁の中で、防衛省さんは、企業との契約に際し、契約相手方に信頼性の高い情報管理体制を要求、確認するための基準、手続であると答弁していますが、ちょっと詳しく伺っていきたいんですね。

 これはどのような位置づけの文書で、具体的な審査項目というのはどういうものになっているんでしょうか。

春日原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の基準につきましては、令和元年の五月、省内の契約手続等を定めた内部規則におきまして、情報保全の観点から、入札参加要件などを定めたものになります。

 名称でございますけれども、契約前のプロセスに関する基準を定めたもの、これが、防衛装備庁における装備品等又は役務の調達における総合評価落札方式の適用に関する事務処理要領の細部事項の調査研究等への適用に当たっての追加事項についてでございます。あと、もう一つ、契約後の情報保全措置の基準を定めた規則もございまして、こちらは、装備品及び役務の調達における情報セキュリティーの確保についてという、二本の内部規則ということになります。

 その内容でございますけれども、まず、契約前のプロセスというところにつきましては、入札参加予定企業に対しまして、業務従事者の経歴それから国籍等の確認を含めて、情報管理体制に懸念がないことの証明を要求する規則、これは新設をされているものでございます。

 それからもう一つ、契約後の情報保全措置、申し上げましたけれども、こちらは規則の改正でございますけれども、親会社などは、第三者として、保全対象となる情報の開示制限の対象でありますということを明確化しております。それから、契約企業に対しまして、保護対象となる情報の取扱者名簿を整備し防衛省に届け出る、そういうことを要求するものでございます。

 以上でございます。

山岸委員 これ以前にも、防衛装備庁、防衛省の様々な調達に関しては、当然、保秘の観点から様々な制約があったと思うんですけれども、例えば、情報セキュリティー特約というふうなものはかつてあるわけですけれども、それとこの二〇一九年五月の基準というのは何が違うんですか。今おっしゃったように、契約にそもそも、満たさないと参加できない、そういう性質を持つのが今回の基準の新しい点だということでよろしいんでしょうか。

春日原政府参考人 先生御指摘のとおり、契約前の部分というところには新設をされております。また、特約の部分につきましては、より厳しく要件を課しているという形になろうかと思います。

山岸委員 以前あったものより少し次元が違う、タイミングが違うということで、厳しくなっているということなんですが、私、ちょっとこの間よく調べてきて、分からないことがあったんですけれども、この二〇一九年頃というのはどういう議論があったかというと、アメリカの基準に合わせなければいけないよねという議論がありました。

 具体的には、NISTの800―171ですか、アメリカの標準に合わせて日本もやっていかなければいけないよねという議論があったと思うんですけれども、この二〇一九年五月の基準というのは、今申し上げた米国基準に同レベルのものを作った、そういうものでしょうか。

春日原政府参考人 必ずしも同レベルのものというものではございません。

山岸委員 一言で申し上げると、中途半端な基準ではなかったのかなというのが、私、この間調べてきた感想です。

 元々情報セキュリティー特約がありました、これを強化していかなければいけない、どういうものにするのかといったら、アメリカで作っているようなこのNISTの800―171、こういう高い基準にしていきましょうねという議論がある中で、なぜ、この二〇一九年五月、どっちともつかないと言うと失礼かもしれないけれども、アメリカ基準には達していないけれども、ちょっと厳しくしました、こういう基準をわざわざ作らなければいけなかったのかなということが、ちょっと私も調べて分からなかったんですが、これは、防衛省さん、何か理由がありましたら教えてもらえますか。

春日原政府参考人 恐れ入ります。

 SP800―171という議論、当然承知をしておったところでございますけれども、まず、きっちりとした保全体制をできるだけ、できるところから早くやっていくということでございます。

 非常に厳しい情報をめぐる安全保障環境でございますので、そういったところでの対応を丁寧にやっていくという考えで進めておるところでございます。

山岸委員 できるところから早く作ろうとしたということですが、だから、そのできることを早く作っていく中にあって、当然そのとき、この経済安保の第一人者であった藤井長官官房審議官が大きな役割を果たしていたんだろうというふうに推測をされるところです。

 この基準と藤井さんの関与をお聞きしたいと思うんですけれども、せんだっての答弁で、文書審査等をしていたということを御答弁いただいていますけれども、この等には何を含みますか。具体的には、外部との調整は含まれますか。

春日原政府参考人 藤井元審議官の職務でございますけれども、防衛装備庁の総括整理職といたしまして、総務であるとか人事であるとか会計、そういったところの業務を担当しているところでございます。

山岸委員 この基準の作成に関して伺っております。

春日原政府参考人 以前の御答弁と重なりますけれども、文書審査、そういったものを中心とするもろもろの業務ということになります。

 調整というところでございますけれども、この規則、これもさきの答弁にございましたけれども、中心となっておりましたのは、装備品の調達に関する制度を所掌する調達管理部、それから産業保全を所掌する装備政策部が中心になっているというものでございます。

山岸委員 中心はよく分かりました。

 ただ、藤井さんは長官官房審議官という枢要な職にあったわけですから、この基準作りに当たって、例えば、総理官邸かどうか分かりませんけれども、ほかの省庁との様々な調整という部分について、藤井さんの役割というのはあったのかなかったのか、お伺いしています。

春日原政府参考人 お答え申し上げます。

 大変恐縮でございますが、省外とのやり取りというものが当時どういう状況であったかというところにつきましては、現在確認中というところでございまして、現時点ではお答えができません。

山岸委員 確認中ということなので、確認をいただけるというふうに今理解をいたしました。

 あったかなかったか確認するということなので、私、当然、この基準作りは政府としても重要な関心事だったはずですから、当然しかるべき、総理官邸においては、例えば官房副長官あるいは補室、そういうところでしっかりとチェックをしていくというのがあり得べき政策づくりの流れだろうと思います。となったときに、じゃ、誰が窓口なのか、責任者なのかとなれば、これは長官官房審議官でいらっしゃった藤井さんがその任に当たるということが十分想像されるんだろうと思います。

 そもそも、なぜ藤井さんがこのとき防衛装備庁にいたのかといえば、この経済安保の専門家として送り込まれているわけですよね。この基準作りに藤井氏が積極的に関わっていたと考えるのがむしろ自然だというふうに思います。何か、非常に藤井氏の関わりが小さい方へ小さい方へというふうな御答弁の仕方をされるんだけれども、そうではなくて、私は実態を明らかにしていただきたいなというふうに思います。

 ちょっと防衛省さんに聞いてもなかなか前向きな答弁が出てこないので、内閣官房にお聞きしたいと思うんですけれども、官邸内では、この基準作りについて、防衛装備庁と何らかの協議、調整、連絡というのはしていましたか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省と、その省外の一部でございます内閣官房のやり取りについてでございますけれども、どのようなやり取りがあったのかということにつきましては、先ほど、防衛省において現在確認中というふうに答弁されましたけれども、そのように承知をしてございます。

 防衛省の確認の過程の中では、内閣官房も必要な確認を行いたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

山岸委員 是非、双方から誠意ある確認をお願いしたいなというふうに思います。万が一、後から藤井氏が、この問題についてまた、前回、メールの件であったような非公式な関与ということが、あるいは情報漏えいというふうなことがあったら、これは非常に大きな問題だと思います。是非ともしっかり確認をしていただきたいと思います。

 実際、せんだっての質疑の中で、今日いらっしゃらないけれども、金融庁さんは、NSCとこういう協議をしましたということを、しかも相手方は藤井さんでしたということを端的にお出しをいただきました。やはりこういったことは、情報開示を適正にいただくということの中で政策の信頼性を担保していきたいと思っております。

 今日、もう一個テーマを予定しておりましたけれども、ちょっと時間がなくなってまいりましたので次回にしたいと思うんですけれども、これはやはり、藤井氏がこの間、政策のいろいろなところに経済安保ということを、売り込むというのかな、入れてきたということは、それは政策のプロとして私は理解できるところがあります。しかし、その過程の中でルールをゆがめていなかっただろうか、何か特定の関係者の思惑によってそのルールが変わってきたこと、藤井さんを介在して変わってきたことはなかっただろうか、これはやはり幅広く洗っていかなければいけないというふうに思いますので、引き続き、この問題、同僚とともに議論をしてまいります。

 ありがとうございました。

    〔古屋委員長退席、上野委員長着席〕

上野委員長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 本日は、内閣委員会と経産委の合同審査会ということで、経産委の方にも質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 そういうことで、私は、今日は、経済安保法について、小林大臣中心にお伺いをさせていただきたいと思います。

 そして、この法案に対しては私どもの会派からも対案を出させていただいておりますので、今日は同僚の阿部議員そして堀場議員にも答弁のためにお越しいただいていますが、この二つの法案を対比するという形で、経済安保法制について議論が深まればというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 これはもう既に内閣委員会の方でも、私どもの会派の議員含め様々な方が質問されているというふうに思うんですけれども、この経済安保というものが何かということについての、その定義について最初に御質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 今回の政府の法案については、私は率直に、この法案を見たときに、様々なアラカルトの四つの経済安保の政策メニューが並んでいて、それをホチキスで留めたような構造になっているなと。

 これは、ある意味、仕方ない面もあると思うんですね。やはり、中国を始めとして、自由主義とそれから専制主義で対立をして、どのように経済安全保障を急いで確保するかというような議論が政府の中にもあって急がれたということもあるとは思うんですけれども。

 しかし、経済安全保障というのは、これはもう、ここに掲げられている四つの施策だけで収まるものではなくて、先ほどの質問でも、やはり防衛の装備とか、いろいろな問題があります。それぞれの法律でしっかりと縛りをかけていかなければいけない部分というものがあります。ほかの法律によっても規制されている部分がありますので、この法案だけやっていればいいというものではないということは当然のことなんですけれども。

 その中で、問題は、この法案が冠として経済安全保障というものを掲げているからには、どのような理念や哲学に基づいて行われているのか、特に、経済活動の自由を縛るという意味で非常にこれは重い問題でもあるというふうに思いますので、そこをしっかり法律に書き込むべきだったのではないかというふうに私も思っておりますし、そのように多くの議員からも指摘をされているところだと思っております。

 そこで、最初の質問でございますけれども、小林大臣に、今回の法案で経済安全保障の定義というものが入っていないということについて、どのような経緯があったのか、どのような理由なのかということを御説明いただきたいと思います。

小林国務大臣 ありがとうございます。

 委員から、アラカルト、ホチキスで留めた印象があるというふうに御指摘ありまして、そういう印象を与えてしまったのであれば大変申し訳なく思うんですけれども、そういうわけではないんです。

 これは、急に政府の中でぱっと始まったわけではなくて、自民党の中でもずっと議論があって、特に、やはり、我が国の主要産業の脆弱性分析、リスクシナリオをいろいろ考えて脆弱性を洗い出す作業をやっていて、その中で浮かび上がってきた課題、まあたくさんあります。その中で、政府といろいろ連携をしながら、昨年の骨太の方針に経済安全保障についての課題というのを盛り込んで、その中で、分野横断的なもので、喫緊に法整備をしなければいけないということで、この四つをまずはやるということです。

 その意味で、そういう経緯になっていることは御理解いただきたいと思っていまして、この四つの項目についてまず法整備を行うものであって、経済安全保障、委員がおっしゃるとおり、かなり多岐にわたる概念ですね、これが全てではありません。重要な一歩だとは思っていますが。

 そういう意味で、必ずしも定義を要するものではないと思っておりますが、やはり国会審議の場ですので、国民の皆様にあえて私の経済安全保障の基本的な考え方、理念を申し上げると、これは、国益を経済面から確保する、その国益というのは、現行の国家安保戦略にも三つ書かれていますが、一つは、国の独立、主権、また国民の生命、財産、身体を守っていくこと、二つ目として、経済的な繁栄の実現、三つ目として、基本的な価値に基づく国際秩序の擁護、強化、こうした国益を経済的な手段をもってしっかりと確保していくことが重要であるというふうに考えております。

 今後、総理が、おおむね一年をかけて国家安保戦略を含む三文書を改定すると言っていまして、ここに経済安保をどういう位置づけにするのかというのは極めて重要だと思っておりまして、そういう中で、さらに、政府としての見解というのを明確に位置づけていけたらというふうに思っています。

 この国会答弁を通じまして、我が国の基軸となる考え方が重要だというふうに再三申し上げているんですけれども、その中で、あえて申し上げると、我が国の自律性の向上と、他国に対する、これは技術を含めた優位性ですとか不可欠性の獲得というものが極めて重要な切り口になると考えているところであります。

小野委員 大変詳細な答弁をありがとうございました。

 そういった内容を是非これからしっかりと盛り込んでいただく、やはりそれが、法律、大きな権利を縛る上で、やはりその考え方自体をしっかり定めていくというのは大事なことだと思っています。

 そこで、法案提出者にお伺いしたいんですけれども、定義が今回、政府案にないことについて、どういう問題があるというふうな認識で法案提出に至ったのか、その辺を御説明いただければと思います。

堀場議員 日本維新の会、堀場幸子です。

 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案、以降、維新案と呼ばせていただきます、提出者の一人として、お答え申し上げます。

 経済安全保障の定義や理念が明らかにされないことで国民の理解が進まないおそれはないのかという御質問をいただきました。

 政府案は、四つの個別施策を中心に、まずは対処すべき経済施策を規定していると承知しております。そして、この四つの施策の詳細は、基本方針、各個別の基本指針で示されることと承知しております。

 このような政府案の構成は、安全保障に対する柔軟な対応を可能にする一方、その理念、哲学が法文上に明記されていないことから、国民の理解が進まないおそれがあるのではないかと危惧しております。

 維新案では、経済安全保障の骨格となる部分の定義を置いた上で、経済安全保障に関する諸施策についての基本原則、経済安全保障に関する諸施策の策定及び実施に当たっての配慮事項を定めた上、国の基本原則にのっとり、かつ、配慮事項に基づき、経済安全保障諸施策を実効的かつ総合的に推進する責務を課しております。また、国の経済安全保障の重要性に関する国民の理解の増進を深めることを求めること等としており、これらの規定により、安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進を図ることとしております。

小野委員 堀場議員、ありがとうございます。

 答弁の中でもありましたように、私は、小林大臣がおっしゃった国益の確保というのは本当に大事で、当たり前の話だと思うんですね。これは本当に皆さん、全員で追求していかなければいけない問題だと思っていますけれども、そこにやはり国民の理解というものを、先ほど何度か言及がありましたけれども、そこが非常に大事だというふうに思っていまして、そのためにも、何のために経済安全保障をやるのか、そして、その政策をつくる上での、これからも恐らく様々な施策を追加していかなきゃいけないというふうに思います。

 例えば、今回でも、特許の話であれば、やはり特許の法制の中に入れ込むべき話だったと思うんですけれども、それは、形は別として、やはり、どういった形で、権利制限を行うとか自由経済の活動を制限する、それを国民の理解の下に行うかという視点が非常に大事だと思いますので、その辺の哲学の部分を是非入れ込んでいただきたいと思います。

 そこで、小林大臣に御質問をさせていただきたいんですけれども、そういう意味で、今回の法案にいろいろな哲学とか定義とかというものが抜けているんですけれども、これから内閣総理大臣が作っていく政府の基本方針というものが非常に大事だというふうに思っています。こういう中で、先ほど私が申し上げたような事項をできる限り盛り込んで、そして国民の皆さんに、今のこの国際情勢が厳しい中で、どのように経済活動の自由とそして安全保障の実現を両立させるのかということをしっかりと盛り込んでいくべきだというふうに思うんです。

 その中で、先ほどちょっともう言及もあったので、繰り返しの答弁になられるのかもしれませんけれども、この経済安保法案の下で作った基本方針というものがほかの法令にもしっかりかぶっていくような、そういったコントロールというものをしていくべきだというふうに思っていますが、この辺について、この基本方針がどこまで及ぶのかということについて御見解をお伺いしたいと思います。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 基本方針も重要なんですけれども、もちろん法文が重要であるわけです。その中に、委員のおっしゃるとおりだと思います、理念としては、経済活動の自由、予見可能性を高める、大切だと思っていますし、私たちもそういう思いを共有しながらやっています。

 法文の中に何も書かれていないかというと、そうではなくて、実際に、経済活動に与える影響とか産業に与える影響に配慮する、そういうのを勘案するというような文言を何か所かにちりばめているので、そういう思いというのは、法文にも出ていると思うんですが、基本方針の中でも、経済活動の自由、これは大原則だと思っておりますから、そういったものはできる限り明確にしていきたいというふうに思っています。

 また、具体的に基本方針がどこまでカバーするのかというお話がございました。

 この点につきましては、法文の中に照らして申し上げますと、第二条の第二項に、この四項目ですね、サプライチェーン始め四項目の実施について基本的な事項を定めるというふうに書いてありまして、その次の第三号に、今回の四つの項目以外の、安全保障の確保に関して、総合的かつ効果的に推進すべきその他経済施策に関する基本的な事項を定めることとしております。

 すなわち、今申し上げた第三号というのは、具体的には、国民の生活を支える重要な産業が抱える脆弱性、強みの点検、見直し、先ほど私は自民党の中でそういうこともやっていたということですけれども、こういうものをしっかりと政府の中でも制度化していこうというふうに思っておりまして、そういうことをイメージしています。

 また、さらには、安全保障の確保のために、この法案に基づく措置が効果的に施行されるように、例えば、外為法などのほかの施策も統一的、当然、政府ですから、整合的に講じるべきことなどを定めることを想定しているところでございます。

小野委員 ありがとうございます。

 まさにそこが本当に大事だと思っていまして、この経済安全保障は、その四施策にとどまるのではなくて、本当は、何度も申し上げているように、法律でそういったフィロソフィーをしっかり入れていくべきだというふうに思いますが、是非、小林大臣のリーダーシップの下で、ほかの法令にも及ぶ、経済安全保障の考え方と国民の理解が進むような方針をしっかりと作って、そしてそれが、全ての経済安全保障に関わる、あと経済活動に関わる分野にしっかりとその精神が行き渡るようにしていただきたいというふうに思います。

 私なりに、じゃ、この理念とか哲学は何なのかということをちょっと考えてはいたんですけれども、もちろん、経済安全保障とか、それから公共が果たす役割、これに対して自由な経済活動のバランスをどう取っていくのか。これは、トレードオフというか、やはりどうやってバランスを取るのかということに尽きるというふうに思います。

 それと、あと、先ほど小林大臣がおっしゃった予測可能性ですよね。これは特許のところで非常に問題になっておりますけれども、これももちろん限界はありますが、それをできる限り確保していくということはやはり視点として大事だというふうに思っております。

 また、我々がコロナ対策でも再三申し上げているように、自由な経済活動が妨げられた場合の補償の問題とかですね。これも、大臣おっしゃったように、しっかり法案には書かれていて、例えば特許の場合にも、これが非公開だった場合に、それでどんどんその特許を使おうというふうになった場合に損害を補償するみたいな規定もちゃんと書いてあります。

 そういう意味では、その精神がいろいろなところにちりばめられていることは私も理解しているんですけれども、しかし、やはりそれを、この経済安全保障を、しっかり国益を守るためには何なのか、今後もそういう施策はこれからやっていかなきゃいけないので、それをしっかりどこかで大きな哲学として打ち出していただきたいというふうに思います。

 また、あと、これは後の質問が時間があればやりたいと思いますけれども、自由の確保というのをなるべく認めた上で、罰則をしっかりとめり張りをつけてやるということ、こういったこともこの哲学に盛り込むべきだというふうに思っていますので、是非、この基本方針の策定というところについては、私も注目して、しかも御期待も申し上げたいというふうに思いますので、是非頑張っていただきたいというふうに思います。

 次に、維新の案の方について再び質問をしたいというふうに思いますけれども、この法案では、特出しで、国際経済秩序の形成の促進ということ、これをやはり経済安全保障の枠組みの形成を通じて目指すべきだというふうに明記をしてあるんですけれども、このことを特に明記した意義というものを御説明いただきたいと思います。

堀場議員 お答え申し上げます。

 新たな国際秩序の形成を促進することの意義についてどのように考えるかという御質問をいただきました。

 維新案は、ウクライナやロシアをめぐる状況を踏まえ、現在の国際情勢が急激な変化をしているものと認識し、政府案よりも強い危機感を持って提出をしたものでございます。このような危機感は法文上においても明確にしており、基本原則として、経済安全保障に関する諸施策は、新たな国際経済秩序の形成が促進されることとなるようにするという観点を踏まえるということを規定しております。

 それは、例えば、世界全体として経済上のつながりを保ちつつも、安全保障上重要な技術、インフラ、物資等については一部戦略的に切り離されるような緩やかなブロック経済の形成も考えられるかと思いますが、いずれにいたしましても、経済安全保障を実効的かつ総合的に推進することにより、複雑化する国際情勢を先読みし、今後新たに発生する多様な安全保障上の課題に能動的に対処していけるようになることが不可欠だと考えております。

 また、信頼できる国々とのパートナーシップの下、事業者が安心して事業活動を行える環境を整備することが重要であると考えております。

小野委員 御答弁いただきました。ありがとうございます。

 まさに、経済安全保障、国益を守るということだけではなくて、攻める、新しい時代に入った、今までの安全保障環境とは違う中で、我々がルールを作っていって、そして主導していくというような能動的な姿勢というものを是非出す必要があるのではないかというようなことが維新案からは読み取れるというふうに、私は、私自身は法案作成には関わっておりませんが、そういうふうに理解をしております。

 是非、日々の活動で、これは経産省を始めそういった思いでお仕事をやられている方は多いとは思うんですけれども、しかし、やはりもう時代が変わったんだと、より強い決意で、我々が、この経済安全保障に関しても、言われたから、アメリカの基準に合わせるというようなことではなくて、自らが主体的に考えて攻めていく、そして、その結果として国益を守れるような仕組みづくりをリードしていくということを、是非政府にも進めていただきたいというふうに思っています。

 次に、先ほど指摘を申し上げました罰則規定について御質問させていただきます。

 これも、法案の検討段階とか、政府内とか、あるいはこの内閣委員会でも質問が度々繰り返されたことだろうというふうに思いますけれども、四十八条におきまして、経済安全保障に関わるサプライチェーンを担っている事業者に対する、原材料等の生産、輸入、販売、調達、そして保管の状況に関して必要な情報の報告とか資料の提出を求めるというようなことを政府がやるようになっているんですけれども、これに応じなかった事業者に対して罰則が設けられていないということになっております。

 これについて、まず、政府内や内閣委員会でも議論されましたが、改めて、法案提出者として、これは本会議でも足立議員が指摘をしていましたが、改めて、どういう問題があるかということを維新の提出者として見ているのか、これを御答弁いただきたいと思います。

堀場議員 お答えいたします。

 この点に関しては、内閣委員会でも、本当に、私自身、何度も質疑をさせていただいております。

 政府案において、主務大臣が事業者に対して必要な報告等を求めることができるとしていますが、その応答は努力義務とされ、罰則による担保措置は行われておりません。しかし、それでは、事業者が調査に応じないことにより、サプライチェーンの実相が見えてこない事態が発生すると考えております。

 政府案では、例えば、経済安全保障上の問題のある活動を行っている事業者があり、政府から調達先の情報提供を求められた場合に、その提供を拒んでも、罰則は適用されません。そうした事業者が、応答義務の努力義務が課されるのみで、政府に対する情報提供を自発的に行うとは考えられません。この点は、国民の生命と財産を守る十分な安全保障体制を整備するための経済安全保障法制という目的を鑑みれば、政府案の致命的な欠陥であると言わざるを得ないと思っております。

 維新案では、配慮事項として、経済安全保障に関する諸施策の策定及び実施に当たり、罰則規定の整備そのほか必要な措置を講ずることを規定し、国に、配慮事項に基づき、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する責務を課しております。

小野委員 御答弁ありがとうございます。

 ここは、維新案もこの四十八条についての罰則を明記しているわけではないので、ここは非常に私も悩みました、自分自身でも。この後、小林大臣にもちょっと御質問したいと思うんですが。

 報告を求める、それから調査に応じるというところについて罰則まで求めていいかどうかというのは非常に問題なんですけれども、でも、こういった問題も、結局、先ほどの哲学をどういう形で設定するかによって、かなり明確に方針を示すこともできるんじゃないのかなというふうにも思っていますが、小林大臣にお伺いしますのは、政府の検討段階で、この四十八条の罰則を外すということについてどういった理由があったのかということを御答弁願いたいと思います。

小林国務大臣 サプライチェーン強靱化に関する制度についてですけれども、基本的には、民間事業者による取組を支援することを基本としているんですね。規制ではなくて支援メニューの一つなんですね。

 このサプライチェーン調査というのは、この法案の規制や支援の枠組みに入っていない事業者を含めて調査対象とします。なので、サプライチェーン、無数にあると思いますけれども、たくさんあると思いますが、中小・小規模事業者あるいは個人事業主、全て入ってくるんですね。そういう方々を含めて調査対象としているので、そうした方々に罰則つきの応答義務を課すということは、調査を受ける側からすれば強権的であって、自発的かつ率直な情報提供を妨げる懸念もあると考えました。

 また、有識者会議の議論におきましても、比例原則の観点から、調査忌避に罰則を課すことは重過ぎるのではないかといった趣旨の指摘も受けていたところでございます。

 このため、本調査におきましては、罰則による実効性担保は必ずしも適切とは言えず、むしろ関係者の理解を得て調査を進めていくことがより適切だと判断した次第でございます。

小野委員 御答弁ありがとうございます。

 様々な幅広い意見をお聞きになりながら判断をされたということだというふうに思います。

 私も、やはり、どういうサプライチェーンをやっているのかということについて答えないことについて、罰則がいきなり来るというのは、さすがにこれはかなり厳しいというふうにも思っておりましたので。ただ、そのときに、やはり、個別個別に判断するのではなくて、経済安全保障の、これは繰り返しです、私の今日の質問のテーマなんですけれども、やはり一貫した考え方、理解できるような哲学というものを国民の皆さんに説明していくということを、やはりこれを柱として設定していただきたいというふうに思っています。

 それでは、残りの時間、最後にインテリジェンスの問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 これも私ども維新の案にははっきりと書かれているんですけれども、経済安全保障に関する情報の収集、整理、分析や具体的な施策の立案を行う専門的な機関を整備すべしということを書いてあります。これは政府案の場合ですと、そういった業務、事務をやるんですけれども、それを委託することができるとかいうようなことも書いてございますけれども。

 そこで、法案提出者、維新案ですね、お伺いしたいと思いますけれども、政府案の不十分な点ということをどう考えているかということについて答弁いただきたいと思います。

阿部(司)議員 お答え申し上げます。

 政府案では、国の関係行政機関の相互協力の規定はあるものの、経済安全保障に関する情報の収集等やその体制の整備については明記されておりません。

 一方、維新案では、国は、経済安全保障に関する調査研究、情報収集等を行い、そのための専門的な機関の整備等を行わなければならないものとし、インテリジェンス体制の充実強化を図っています。

小野委員 ありがとうございます。

 インテリジェンスの組織というものを含めて、やはり体制整備はこれから是非考えていただきたいというふうに思っています。

 そして、ちょっと法案の中身についても若干質問させていただきますけれども、調査研究能力を有する法人の委託、これについて、委託したこと自体を公表するのかどうかということについて、小林大臣、お伺いしたいと思います。

阿蘇政府参考人 お答え申し上げます。

 本調査委託につきましては、国の予算に基づく事業として、本法律案に規定された要件を満たす委託先を選定の後、委託先の公表を行う予定です。

 一方で、委託事業の調査分析において取り扱う情報の中には、各省庁や個別企業、研究機関の技術及び研究ニーズに関する情報、その他守秘義務の対象になり得る情報といった、公表になじまないものも含まれ得ることから、その調査結果や活動内容の公表の取扱いについては、その方法も含めて、今後、検討してまいります。

小野委員 御答弁いただきましたが、いろいろな御意見があります。公表をできるだけすべきだというようなお考えもありますが、私は反対で、やはり本当に安全保障というのであれば、どういった案件について委託するのか、誰に委託しているのかということについても、事柄によってはやはり厳しく制限しなければいけないというふうに思っています。やはりそこに、他国の情報機関が当然すり寄ってくるということだってあるわけですね。ですので、やはりここは厳格に運用していただきたいということを申し上げておきたいというふうに思っております。

 そして、その代わり、私は、研究機関とか、それから行政、あるいは民間の間での人材の流動性というのは、やはりこれは大事だというふうに思っています。

 ですから、ここの機微な情報が、本当にホットなものが入ってくるには、やはりそこが人も流動化をされないで閉鎖されていると、結局、日本の国益が失われることになる、情報が入ってこないということになりますので、この人材の流動化について、大臣のお考えをお聞かせをいただければというふうに思います。

小林国務大臣 シンクタンクが最新の知見を把握していくためには、委員御指摘のとおり、人材の流動性、これをしっかりと持たせて、新たな知見を取り組んでいくことが重要であると考えます。実際に、海外の主要なシンクタンクの事例でも、人材の流動性の確保に取り組んでいるわけです。

 このため、これから立ち上げる予定のシンクタンクにおきましては、例えば、産学官のネットワークの構築ですとか、また、ほかの機関との人事交流、あるいは任期付職員の活用、こうした一定の流動性を確保しつつ、調査研究を行うことが必要だと考えます。

 一方で、これも委員御指摘のとおり、必要な情報管理はしっかりと行う必要があると考えていまして、この法案では、委託の要件として情報管理能力を求めています。それとともに、委託先の役職員に対する守秘義務を定めておりまして、この調査分析の実施に当たっては、情報管理を徹底することが不可欠であると認識しております。

 引き続き、この立ち上げに向けまして、人材の流動性の確保、それと同時に適切な情報の管理、これを考慮しながら具体化を図っていきたいと考えます。

小野委員 ありがとうございます。

 まさに私はめり張りが必要だと思っていまして、機微な情報、最先端の情報をちゃんと押さえるということで、人材の流動化を図りつつも、先ほど大臣がおっしゃったような情報管理、これは体制面もそうですが、罰則も含めて、そこはめり張りをつけてしっかりやっていくということを進めていただきたいと思います。

 最後、経産省に一問だけお伺いしたかったんですが、ちょっと時間がなくなりました。大変申し訳ございません。是非、経済安全保障、頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党、鈴木義弘です。

 早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 我が党は、参議院に総合的経済安全保障施策推進法案を提出しておりまして、閣法の範疇を超えて、生産設備、エネルギー、食料、医療品など、国民生活と日本の経済を守るために必要な事項を総合的に定めるもので、セキュリティークリアランスについても一考している法案を提出しております。

 我が党の法案につきまして、法案提出者また大臣から、感想でも結構ですけれども、もし御一読いただいていなければ、その旨お答えいただければと思います。

小林国務大臣 目指すべきところ、方向性というのは、決して別の方向を向いているものではないというふうに認識をしております。

 あとはアプローチの仕方だと思っておりまして、私ども政府案も、これも何度か申し上げているとおり、経済安全保障そのものというのは広く取っています。今回は、これまでの経緯の中で、取り急ぎ、分野横断的かつ法整備が必要な喫緊の項目、四項目をとにかく早く整備しなきゃいけないということで法案を出させていただいているところでございますので、私としてはそのように受け止めさせていただいております。

阿部(司)議員 鈴木委員にお答え申し上げます。

 経済安全保障とは、経済学的な観点で見れば、市場が解決できない問題への政府による介入を意味し、効率や自由競争をゆがめる可能性のある施策だと考えております。

 したがって、我が党は、経済安全保障の対象となるべき物資、技術、製品、インフラ、サプライチェーン等は、経済成長とイノベーション促進への影響を最小化させるために戦略的かつ限定的に選定されるべきと考えております。この観点から、対象を拡大することそのものは必ずしも望ましいと考えておりません。

 そのため、今回は、政府案と同様に、サプライチェーンの確保、重要インフラの安定提供の確保、先端的な技術の活用、特許施策の四つの施策において経済安全保障のあるべき姿を示し、政府案に対する対案とし、有意義な議論につなげられると考えました。

 御提案のありましたエネルギー安全保障、そして食料安全保障、さらにはセキュリティークリアランス等については、まず先ほど申し上げました四つの施策を達成することを目指し、経済安全保障の初期的な形を確立した上で、必要性に応じて追加を検討していくべきものと捉えております。その際には、先ほど申し上げたとおり、戦略的かつ限定的な対象選定の視点が不可欠であると考えております。

 以上になります。

鈴木(義)委員 方向性は、閣法も、維新がお出しになった法案も、私どもが出した法案も、そんなに向いている方向が違ってはいないというふうに思いましたので、是非、私どもが提出した法案も、慎重審議の上、御可決いただけるように御協力をいただければというふうに思います。

 例えば、分かりやすいことを今日お尋ねして、安全保障について懸念を示してみたいというふうに思います。

 閣法で海外出願の特許を、禁止をうたっているんですけれども、でも、実際、現場で研究開発をしているところからすれば、基本特許になるものほど秘匿化して、機微情報になればなるほど秘匿化します。特許を出さない。特許を出して、初めてこれが安全保障に関わるものだというのを審査されるわけですから、出さなければ分からないということなんです。

 なおかつ、じゃ、自分の関連している、海外に自分の関連会社があったときに、国内では秘匿化している基本特許を出さないで、応用特許だけ、実質は、こういうマイクを作るということ、マイクの素材、マイクの作り方は基本特許として出さない、でも、マイクだけは形として特許を出した場合に、それが安全保障に関わるものかどうか判断がつくのかということなんです。

 これから議論されると思うんですけれども、その点について小林大臣に御答弁いただければと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました外国出願の禁止についてでございます。

 法案第七十八条第一項で定めております、私ども第一国出願義務と呼んでおりますが、この義務は、日本国内で行われた保全指定の対象となり得る一定範囲の発明につきまして、外国での特許出願より前にまず我が国で特許出願をすることを求めるものでございます。我が国で生まれた発明につきまして、我が国としてその出願を非公開とするか否かを判断する、こういう仕組みを担保しているものでございます。

 御指摘ございました応用特許についてでございますけれども、一般に、製品やサービスの根幹を成す基本的な発明を前提といたしまして、その応用的な用途に係る発明をして特許出願をする、そういうことを指すものという理解の下、お答え申し上げたいと存じます。

 そうした応用発明に係る出願につきましても、基本的な発明と同様に、法案第六十六条の第一項に規定する特定技術分野等の政令に該当いたしまして、かつ、いまだに公になっていないなどの第七十八条第一項の要件に該当いたしますれば、外国出願禁止の対象となります。

 そして、これに違反いたしますれば、第九十四条第一項に基づきまして、一年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金又はその併科という罰則の対象となる、こういう制度でございます。

 よろしくお願いいたします。

鈴木(義)委員 例えば、私がイギリスで特許を出したときに、応用特許を出していて誰がリサーチできるんですかということです。だから、今、法律の何条でこういうふうに罰則規定があるからと言うんですけれども、機微な情報ほどやはり秘匿にするというのが企業では第一原則になっていますから、そこのところはやはりカバーするような整備をしていかなくちゃいけないんだと思います。

 最後にもう一点、議法の、維新の法案につきまして、法律の第十条のところに、調査研究、先ほども答弁にあったんですが、調査研究、情報収集等を行う専門的な機関の整備というふうにあるんですけれども、具体的なイメージをお示しいただきたいと思います。

阿部(司)議員 鈴木委員にお答え申し上げます。

 経済安全保障の対象となる物資、技術、製品、インフラ、サプライチェーン等を選定する際には、将来的に経済安全保障上重要な位置づけになるものを見抜く必要があり、経済や外交等の多分野にわたる高度な知見、そして総合的な分析力、予測力が求められます。

 経済安全保障を担保するためには、確固たるインテリジェンスとそれを可能にする体制の構築が必要であります。我が国は、政府のインテリジェンスに関しては各国に後れを取っており、維新案を契機として、欧米先進国並みの体制を至急整備する必要があると考えております。

 具体的には、内閣情報調査室を中心とした関連省庁における既存の情報コミュニティーの人員及び組織に係る質的、量的拡充、日本版CIAのような、海外において諜報活動を含む高度な情報収集、分析を行える機関の設置、あわせて、インテリジェンス機関のツールとして、例えば、スパイ防止法の制定などの法整備が想定されると考えております。

 なお、国民民主党が参議院に提出された総合的経済安全保障施策推進法においても、その第十一条に「経済安全保障施策に係る情報の収集及び分析を行う体制を整備する」とあり、インテリジェンス体制の充実強化を提言していると認識しております。

鈴木(義)委員 終わります。

上野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、科学技術と特許の問題に絞って取り上げたいと思います。

 まず、小林大臣、二〇二一年度補正予算で二千五百億円が投じられた経済安全保障重要技術育成プログラム、これは、経済安全保障推進法案の第六十三条の特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用を目的とした指定基金として想定されている、そういうことでよろしいんでしょうか。

小林国務大臣 この経済安全保障重要技術育成プログラムですけれども、先端的な重要技術について、実用化に向けて政府が情報を提供するなど強力な支援を行うことを目的として、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律第二十七条の二第一項の規定に基づき基金造成がなされたものでございまして、この法案の第六十三条第一項の規定に鑑み、指定基金の対象として適当であると考えております。

 こうした観点から、御指摘のこのプログラムを指定基金として指定することを想定しておりまして、閣議決定する予定の特定重要技術研究開発基本指針においてもその方針を示していく考えでございます。

笠井委員 これは、JSTに、そしてNEDOに、それぞれ千二百五十億円の基金が造成されるということであります。

 そこで、萩生田大臣に伺いますが、経済安全保障重要技術育成プログラムに関する経産省の予算の概要資料、私もここにありますけれども、民生利用のみならず、成果の活用が見込まれる関係府省において公的利用につなげていくことを目指す、こういうふうにありますけれども、民生利用のみならずと明記した経産省の技術開発の予算というのはこれまでにあったんでしょうか。

萩生田国務大臣 経済産業省では、産業競争力強化等の観点から、様々な研究開発プロジェクトを実施していますが、御指摘の経済安全保障技術育成プログラムと同様、予算説明資料などにおいて、プロジェクト成果を民生利用のみならず公的利用にも活用すると説明しているものはないと承知しております。

 一方で、災害対応など、開発された技術が公的利用につながることを想定したプロジェクトは存在しています。

 例えば、令和元年度の補正予算で実施した安全安心なドローン基盤技術開発事業では、政府調達も想定し、災害対応やインフラ点検、監視や捜索などに、捜査などに活用する高セキュリティー、低コスト、高性能なドローンの技術基盤を開発しました。

笠井委員 この民生利用ではない活用というのはどういうものか、今、公的利用という言い方をされましたが、この中には防衛省が関わるというようなことについてもあるんでしょうか。

萩生田国務大臣 本プログラムは、経済安全保障に関する施策の一環として、AIや量子、宇宙、海洋などの分野の重要な先端技術について、公的分野での社会実装も志向した研究開発を推進するものであり、防衛装備品そのものの研究開発を実施するものではありません。

 一方、本プログラムの成果に限らず、先端的な重要技術を官民の様々な分野で活用していただくことは当然でありまして、先ほど申し上げたドローンなども、災害対応への応用も考えられる基盤技術の開発を行っております。

 このように、得られた成果をどのような公的分野での活用に結びつけていくかは様々考えられますが、それらはニーズを有する省庁の自らの判断によるものであります。

笠井委員 この資料によりますと、予算執行の担当部署というのは経産省の大臣官房経済安全保障室と製造産業局航空機武器宇宙産業課というふうにありますけれども、武器や宇宙産業にも活用するということは排除されないということになりますか。

萩生田国務大臣 先ほども申し上げたように、防衛装備品そのものの研究開発を推進するという意図は全くございません。

笠井委員 そのものじゃなくても、防衛装備品に使われるような技術も含まれるということになりますね。含まれないというふうに言えますか。

萩生田国務大臣 したがって、その得られた成果をどのような分野で使うかというのは、これは政府全体で考えることでありまして、省庁の自らの判断によるものになります。

笠井委員 このプログラムは、関係省庁が研究開発の当初から関わって、その出口は国主導による研究成果の社会実装や市場の誘導につなげていくというものでありまして、防衛省も研究開発に関わるものがあって、その成果を社会実装するということになれば、これは軍事研究と一体に、軍事産業を育成するということにもなる、そういうことはないということを明言できますか。

萩生田国務大臣 防衛省さんが自ら研究をされるということと、我々経産省がこのメニューを使って得られた成果を皆さんで共有していくというのは、ややアプローチが違うと思います。最終的に活用するかどうかというのは、それぞれの役所の判断によるものだと思います。

笠井委員 このプログラム自身で経産省が関係省庁とと言っている中に、じゃ、防衛省は入らないということになりますか。

萩生田国務大臣 それは防衛省が判断することでありまして、我々が排除することではございません。

笠井委員 排除しないと。だって、経産省の側で関係省庁とやると言っていて、その中に防衛省が判断する、しかし、我々は排除することはないということであります。

 そういうことになりますと、経済安全保障の観点から、先端的重要技術に関するニーズを踏まえたシーズを育成するという事業とあるわけですが、こういう技術が欲しいという国のニーズと、その中に安全保障ということでやはり防衛省もあると。それは要望が先にあって、これを実現するための研究開発をするということになっていくということだと思うんです。

 小林大臣に伺いますが、本法案で導入しようとしている特許出願の非公開制度でありますけれども、こうしたプログラムを通じた技術開発から生まれた発明は、非公開の秘密特許として保全をして、国の管理下に置くというものではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

小林国務大臣 今議員が御指摘いただいた、まず、経済安全保障重要技術育成プログラムですけれども、これは民生利用や公的利用への幅広い活用を目指して先端的な重要技術の研究開発を進めるものでございまして、研究成果というのは公開を基本としています。

 他方で、今言及いただいた、今回措置しようとしている特許出願の非公開制度についてでございますが、これは、民生分野で幅広く活用され発展していくことが期待される技術を特許非公開の対象とすれば、逆に我が国の経済活動やイノベーションを抑制して、保全すべき先端技術の誕生や発展を阻害することになりかねないと考えています。

 そこで、この法案におきましては、保全指定の対象となる発明を、まず、公にすることにより外部から行われる行為によって国家国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度、そして、発明を非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響などの事情の総合考慮によって行うこととしております。

 したがいまして、この経済安全保障重要技術育成プログラムの成果が保全指定の対象となるということは、こうした考慮要素の観点からいえば、基本的にはなじまないと考えております。

笠井委員 この間の大臣の、あるいは政府参考人の答弁、ずっと聞いてまいりましたが、それを見ても、保全審査の対象となる技術分野の指定、これは大臣自身がそういうことでも言及されて、そして、保全審査あるいは保全された特許の実施、この全てについて防衛省が関わるということを繰り返し明言をされております。

 結局、防衛省が欲しい技術ということでいえば、それを研究開発して、非公開の秘密特許に指定をして活用する、そういう制度にもなるということじゃないかと思うんですが、いかがですか。

小林国務大臣 特許非公開制度について防衛省が関与してくるというのは、私もこの国会答弁の間で申し上げています。

 それは、今申し上げた、この保全指定の対象となる発明の中で、公にすることにより外部から行われる行為によって国家国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度というのは、やはり専門的な知見を持っている防衛省にやはりそこは関与してもらわないとなかなか判断することは難しいと考えておりますので、そういう意味で申し上げているわけであります。

笠井委員 防衛省が関与するものがあるということになるわけで、じゃ、次にもう一つ聞きたいと思うんですが、第七十八条の外国出願の禁止規定というのがあります。これは、公にすることによりと今大臣言われた、外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生じるおそれが大きい発明が含まれ得るという、特定技術分野の外国出願を禁止する規定であります。

 政令で定める国際出願を除くというふうにそこにはありますけれども、これはどの国を想定しているんでしょうか。

小林国務大臣 法案の第七十八条第一項におきまして、禁止の対象となる外国出願の定義として、政令で定めるものを除く旨を規定しておりまして、外国出願禁止の例外となるものを政令で定めることとしています。

 この政令で定めるものというのは、今後具体的な対象を検討していくことになりますが、例えば、他国との協定によって、我が国において保全指定して非公開とした特許出願を他方の国でも類似の取扱いとする旨を約束した場合における、当該協定に基づく他国への出願を定めることなどを想定しているところでございます。

笠井委員 例えば他国と協定ということでいえば、既に日米の防衛特許協定があります。これによって、廃止したはずの秘密特許制度が持ち込まれている。米国の特許法によって秘密とされている発明が出願された場合には、日本でも秘密特許として取り扱われている。自衛隊がアメリカから装備品の供与を受けて、武器をライセンス生産するための技術援助を受けるための枠組みであります。

 大臣、この法案というのは、技術育成プログラムで生み出した軍事特許について言えば、それを日米の軍事力強化に役立てるという新たな枠組みになっていくんじゃないんですか。その点、いかがですか。

小林国務大臣 済みません、今、一連の質疑を重ねまして、四項目あります。当然、一体的に運用していくということになるんですけれども、必ずしも特定重要技術の話と特許非公開制度がダイレクトに別にリンクするわけでもないので、ちょっと特許非公開制度について申し上げますけれども。

 今、政令の話を申し上げましたが、委員御指摘のとおり、我が国は既に米国との間で、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との協定を締結しておりまして、同協定に基づく米国への出願を想定しているところでございます。

 ただ、これにつきましては、これまで協定は結ばれているけれども結局運用としては片務的な関係になっておりまして、アメリカの中で特許の非公開という形で指定されたものは日本においても保全しなければいけない、でも、日本にはそういう制度はこれまでなかったので、結局、今回これをやることによって、この協定をベースとすると、これまで片務的なものだったのが双務的なものになりますので、そういう関係にあるということは御理解いただければと思います。

笠井委員 じゃ、伺いますけれども、アメリカでは、年間の秘密保持命令件数とそれから秘密保持命令が撤回された後に秘密保持を要求した連邦政府の組織別の件数と民間出願による件数というのを情報公開しております。

 小林大臣に伺いますが、非公開とされた特許の情報というのは、日本の場合、これを法律に基づいてやろうとするときに、国会と国民にそれは公表されるということになるんですか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 保全指定の件数の公表につきましては、制度の運用状況を国民に明らかにするという意義があることは十分認識しております。

 その一方で、指定件数の多寡や増減が明らかになることによって安全保障上の問題が生じないかといった観点からの検討も同時に必要であると考えております。

 したがいまして、特許出願の非公開制度に関する件数情報の公表につきましては、この国会における議論や、基本指針を定める際に聴取する有識者の意見なども踏まえながら、どこまで公表するのが適切なのかということをしっかり検討して判断していきたいと考えます。

笠井委員 時間ですので終わりますが、詳細は政省令に委任ということで、黙って白紙委任せよということになるのかと。

 戦前の秘密特許制度は憲法九条に抵触、矛盾するとして廃止されて、現行の特許法は公開が原則であります。新たに秘密特許制度を導入しようにも、特許法を正面から変えられないから本法案で別の仕組みで穴を空けよう、こんなやり方は世界にありません。担当大臣として、この間、横串を刺すとしきりに言われますが、これは横串ではなくて横やりだと言いたいと思うんです。

 秘密特許制度は導入すべきではない、このことを強く主張して、質問を終わります。

上野委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 今日、最後ですね。連合審査、よろしくお願い申し上げます。

 昨日の平理事の質問で医薬品が特定重要物資に含まれるということが明確になったと私も思ったんですけれども、それを踏まえて医薬品について質問をしようとしたところ、厚生労働省から極めて後ろ向きの対応が返ってまいりました。

 厚生労働省にお伺いをいたしたいと思います。

 医薬品は特定重要物資に含まれるんですか。

佐藤副大臣 医薬品は国民の健康や生命を守る重要な物質であり、供給の断絶は国民生活に重大な影響を及ぼし得ることから、医薬品の安定供給の確保は重要な課題であると考えております。

 このため、厚生労働省では、海外依存度の高い抗菌薬の原薬を国産化するための支援を行うとともに、製薬企業に対して後発医薬品の原料の供給元を複数確保するよう要請するなど、取組を進めているところであります。

 特定重要物質は、今後政令で指定されるものと承知しておりますが、仮に特定重要物質の指定が行われた場合には、本案のスキームを活用しながら、安定供給の確保にしっかりと取り組んでまいります。

緒方委員 何か、今後指定されるということでありましたが、何となく先般の質疑と若干ずれがあるような気がして、この特定重要物資が、何が含まれるかということについて、この法案、全体そうなんですけれども、よく分からないんですよね。

 もう一つ、厚生労働省にお伺いしたいと思いますが、この法律、公布後九か月で施行となってまいります。既に、法案に則して、ある程度の準備をしているというふうに考えるのが普通かなと私は思ったんですけれども、どのような、そして、どの程度の準備をしておられますでしょうか、副大臣。

佐藤副大臣 本法案におきましては、特定重要物質につきまして、民間事業者の供給確保に対する助成等の支援等の措置を講じることとされているものと承知をしているところであります。

 仮に、特定重要物資の指定が行われた場合の対応に関しては、サプライチェーンの状況によって、例えば原材料等の国産化や供給元の複数確保など、講じるべき対応が異なると考えられることから、法案上の支援、措置をどのように講じていくかについては一概にお答えすることは困難ではありますけれども、いずれにしても、厚生労働省としては、本法案のスキームを活用しながら、安定供給の確保にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

緒方委員 今、答弁を聞いてみて、一番、特定重要物資の中で有力だと思われる厚生労働省ですらと言っていいと思いますが、これぐらいの状況なんですよね。

 公布後、そんなに時間を置かずに施行されるわけでありますが、一番トップランナーであるはずの厚生労働省でこれぐらいだということになると、それ以外の役所になると、もっと遅れが出る役所が出るんじゃないかと思いますけれども、大臣、本当に大丈夫でしょうか。

小林国務大臣 まず、この法案を御審議いただいて成立するということが大前提なんですけれども、その上で、その九か月の間にやることというのは、まず全体の基本方針、そしてサプライチェーンの基本指針、これを有識者の方の意見も伺いつつ決めて、閣議決定していくことです。

 それで、スタートできる状態にして、その九か月のときに、もう既に特定重要物資というのが特定できればいいですけれども、必ずしも九か月の間に、九か月たってすぐに、全て、これですというふうに決めて、別にやることが決められているわけでもなくて、ただ、いずれにしても、基本的なルールを作った上で、できる限り、特定重要物資の指定も含めて、急いでいきたいと考えます。

緒方委員 そうなんですね。私、九か月で、もう施行されるときに、せえのドンで全部出てくると思ったんですけれども、そこはそうではなくて、九か月超えた後、法律が施行された後、随時やっていくというぐらいの温度感だと、それでよろしいんですか。

小林国務大臣 これは喫緊の課題として今回出しておりますので、そこは、特定重要物資の指定は急がなければいけないと思います。

 ただ、同時に、時代の変遷、国際情勢も含めてですが、そういう状況に応じて、やはり国民生活にとって本当に必要不可欠な物資、チョークポイントを持っている物資というのも、やはりそこは変わってくる、追加しなければいけないところというのは、状況としては想定されますので、それは最初に全て出して終わりというものではないということは御理解いただければと思います。

緒方委員 想定外の答弁でありまして、ちょっと驚きましたが、今日、私、時間がないので、萩生田大臣、質問をさせていただきたいと思います。

 人権侵害に基づく枠組みを整えるべきだと、私、それをすごく強く思っておりまして、経済産業省がいろいろガイドライン作りであるとかデューデリジェンスという言葉を使ったりとかいうことで取組をやろうとしているということは、事前のレクでもお話をお伺いをいたしました。ただ、ガイドライン作りとか、あとデューデリジェンスって、英語ですけれども、しかるべく配慮をしてくださいとか注意義務であるとかいうことで、別に法的ツールとしてがちっとしたものがあるわけではないんですよね。

 私は、法的なツールとして、人権侵害に経済面から対応するものを用意すべきだという考えを持っております。大臣、やってみませんか。

萩生田国務大臣 人権と経済安全保障の関係性については様々な見方があると承知していますが、経済産業省としては、サプライチェーンにおける人権侵害の排除に向けて、必要な取組をしっかり行っていきたいと思っています。

 その上で、サプライチェーンにおける人権尊重に向けて、まずは、この夏を目途に、業種横断的なガイドラインを策定したいと思います。日本企業にとって、予見可能性が高く、国際競争力強化につながるものにしていきたいと思います。

 また、欧米を中心に人権尊重を理由とする法規制の導入が進み、企業のビジネス上の不透明感が高まっているため、国内のガイドラインの整備に加えて、企業が公平な競争条件の下で積極的に人権尊重に取り組める環境を整備していく観点から、国際協調により各国の措置の予見可能性を高める取組もしっかり進めていきます。

 今後、国際協調に関する議論など国内外の動向を踏まえながら、人権デューデリジェンスに関する将来的な法律の策定可能性も含めて、関係省庁とも更なる政策対応について考えていきたいと思います。

 同時に、様々な先端技術を有する我が国として、人権侵害に対するツールとして、輸出管理の枠組みが活用可能かどうか、議論、検討するとともに、基本的価値観を共有する欧米等の同志国と緊密に連携していきたいと思います。

 多分、先生と同じ思いなんですが、国内法の整備を急ぐよりも国際ルールをきちんとしておかないとなかなかこれはワークしないというのが私の問題意識なので、そういう意味では、G7ですとか様々な国際会議の場で、今盛んに日本の主張もしています。必ずしも欧米がやっていることが全てだと思っていませんので、このルール作りに、ど真ん中に入って、しっかり外との連携が取れるものを作った結果として国内法を作った方がいいんじゃないか、こんなスケジュールでいます。

緒方委員 その答弁の、今言われたことの先として、答弁の中にもありました人権デューデリジェンスに関する法整備も含めてという言葉があったんだと思います。期待したいと思います。頑張ってください。

 以上です。

上野委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時八分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案

 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案

は内閣委員会議録第十号に掲載


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