衆議院

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第3号 平成29年4月25日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十九年四月二十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松野 頼久君

   理事 土屋 品子君 理事 松島みどり君

   理事 村井 英樹君 理事 簗  和生君

   理事 山本ともひろ君 理事 鈴木 義弘君

   理事 高井 崇志君 理事 伊佐 進一君

      青山 周平君    尾身 朝子君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      神谷  昇君    黄川田仁志君

      小松  裕君    古賀  篤君

      田所 嘉徳君    谷川 弥一君

      豊田真由子君    中山 展宏君

      馳   浩君    福山  守君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      八木 哲也君    北神 圭朗君

      坂本祐之輔君    篠原  豪君

      津村 啓介君    伊藤  渉君

      輿水 恵一君    島津 幸広君

      真島 省三君    伊東 信久君

    …………………………………

   国務大臣

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)         鶴保 庸介君

   文部科学副大臣      義家 弘介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  小川  壮君

   政府参考人

   (内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室次長)  矢作 友良君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 緒方 俊則君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山脇 良雄君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        井内 摂男君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            松尾 元信君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           板倉 康洋君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           椎葉 茂樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           谷内  繁君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           竹内 芳明君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            藤木 俊光君

   政府参考人

   (防衛装備庁技術戦略部長)            三島 茂徳君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  長島 昭久君     篠原  豪君

同月二十五日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     神田 憲次君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

松野委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、内閣官房内閣審議官小川壮君、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室次長矢作友良君、内閣府大臣官房審議官緒方俊則君、内閣府政策統括官山脇良雄君、内閣府知的財産戦略推進事務局長井内摂男君、金融庁総務企画局参事官松尾元信君、文部科学省大臣官房審議官板倉康洋君、文部科学省初等中等教育局長藤原誠君、厚生労働省大臣官房審議官宮嵜雅則君、厚生労働省大臣官房審議官椎葉茂樹君、厚生労働省大臣官房審議官橋本泰宏君、厚生労働省大臣官房審議官森和彦君、厚生労働省大臣官房審議官谷内繁君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、経済産業省大臣官房審議官竹内芳明君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長藤木俊光君及び防衛装備庁技術戦略部長三島茂徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。各党持ち時間の範囲内で御質疑いただきますようよろしくお願いいたします。古田圭一君。

古田委員 おはようございます。自由民主党の古田圭一と申します。

 質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。きょうは、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、学生時代に日本化学会に入会いたしまして、まだ会員ですので、毎月、「化学と工業」という会誌が送られてきます。その会誌のことしの一月号の巻頭言は、京都大学の本庶佑教授が書かれていました。本庶佑教授は、文化勲章も受賞されまして、がんの免疫療法のオプジーボの開発で御存じの方も多いかというふうに思います。

 その本庶佑教授が書かれました巻頭言の中に、一九九二年にたまたま見つけたPD―1分子が免疫のブレーキ役であることを発見し、実験を続け、がんの増殖を抑えることができることを二〇〇二年に発表した、当時は免疫によるがんの治療は製薬業界ではタブーで、ここからの産業化への道がなかなか困難であった、粘り強く産業界の説得に当たったが成功しなかった、最終的に自分自身で企業化を決意し、公開された特許を見たアメリカのベンチャーが大きな興味を示し、今日の企業化への道が開けたが、PD―1抗体が医薬品として承認されるまで二十二年の歳月が流れたというようなことが書かれてありました。

 基礎研究で画期的なものが発見されても、実用化に結びつかなければ何にもなりません。GDP六百兆円経済の実現に向けて、大学等で基礎研究の成果を欧米や中国に先駆けて日本で実用化に結びつけるシステムの確立が必要であります。また、どのような研究テーマを推進するかということも大変重要だと思います。

 昨年十二月に取りまとめられました科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブについて、今後どのように具体化されていくのか、お伺いいたします。

鶴保国務大臣 官民投資拡大イニシアティブにつきましては、それぞれ細目的に、目的とするものを分けて、それぞれに目標を持って取り組もうと考えております。

 三つのアクションとして、第一に、民間投資誘発効果の高い研究開発投資ターゲット領域に各省施策を誘導する新たな予算制度を設けることとしております。そしてまた第二に、産業界からの投資拡大を図る大学改革などを入れる制度改革、そしてまた第三に、PDCAサイクルの確立や政策効果の見える化を進めるエビデンス構築を目標としており、その具体化に向けた取り組みを進めさせていただいております。

 一番目の予算編成プロセス改革の関連では、官民研究開発投資拡大に向けて、研究開発投資目標である対GDP比一%を達成するための具体的な道筋を示すとともに、科学技術イノベーション官民投資拡大推進費の対象となるターゲット領域を今月二十一日のCSTI会議において決定させていただきました。

 また、第二の制度改革におきましては、国立大学へ土地や株などの評価性資産を寄附する際の譲渡、取得を非課税とする要件緩和の検討、あるいは、公共調達の活用等における中小・ベンチャー企業の育成強化、技術ニーズとシーズのマッチングを行うフォーラム、プラットホームのようなものをつくろうということの立ち上げなどを進めさせていただいております。

 そして、第三番目のエビデンス構築におきましては、科学技術関係予算の分析、大学等の財務運営状況の見える化を進めさせていただく、こういう方針で進めていきたいと考えております。

古田委員 しっかり進めていただきますよう、よろしくお願いをいたします。

 次に、戦略的イノベーション創造プログラムについてお伺いいたします。

 このプログラムの特徴の一つとして、基礎研究から実用化、事業化までを見据えて一気通貫で研究開発を推進するというふうにあります。また、各テーマは五年間のプログラムとなっておりますけれども、基礎研究から実用化、事業化までを行うには五年間では時間が足らないような気がいたします。時間のかかるテーマではこのプログラムは使いづらいということも考えられますけれども、いかがでしょうか。

山脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の戦略的イノベーション創造プログラム、SIPにつきましては、御指摘のとおり、基礎研究から実用化まで一気通貫で、社会的課題の解決、産業競争力の強化を生み出す五年間のプログラムであります。

 その成果を達成するために、まず研究マネジメント面での強化もしているところでありまして、具体的には、プログラムディレクターの強力なリーダーシップのもと、縦割りを排した府省横断、かつ本格的な産学連携体制を構築するとともに、明確な研究開発目標、マイルストーンの設定をするというような特徴を有しております。

 また、プログラムの着実な実施を図るために、CSTI有識者議員で構成されるガバニングボードにおきまして、出口戦略についての適切な助言、厳格な評価を行うということを通じて、五年間の実用化、事業化につなげるように取り組んでいるところであります。

 具体的に一例申し上げますと、革新的な燃焼技術を取り扱うテーマにおきましては、本格的な産学連携体制を構築する。具体的には、大学のチーム、企業のチームが一体的にエンジン燃焼の基礎原理を解明し、これによって燃焼効率を飛躍的に向上、加速的に実現するということを実現して、産業界がその成果を生かすというような仕組みの構築にも取り組んでいるところでございます。

 このような取り組みを通じて、SIPが実用化、事業化につながる成果を生み出せるように、引き続き努めてまいりたいと考えております。

古田委員 次に、宇宙政策についてお伺いをいたします。

 通信・放送、測位、地球観測などを通じた衛星データというのは、さまざまな利用が進展していくことが見込まれております。GDP六百兆円達成の柱の一つとして宇宙分野、とりわけ宇宙産業を推進していく大臣の御決意をお伺いいたします。

鶴保国務大臣 宇宙分野におきましては、先般、宇宙関連二法も成立をさせていただき、そしてまた、技術革新による衛星のダウンサイジングも進んでおるところでございまして、価格低下と性能向上が同時に進行するという状況が起きております。この状況をしっかりと捉まえて、宇宙を国民生活に広く利用できる環境を我々としてもサポートしていきたいと考えております。

 また、我が国におきましては、準天頂衛星の整備が進んでおりまして、来年より、世界最先端となりますセンチメートル単位の高精度衛星測位が可能となります。こうした社会インフラとも言える状況を背景に、自動車や農業機械の無人走行など、新たな価値を生み出すチャンスを活用していただけるように進めていきたいというふうに考えております。

 具体的には、我々としては、こうした宇宙分野と非宇宙分野の融合による新事業創出を狙いとしたスペース・ニューエコノミー創造ネットワークと称した、先ほどのフォーラム、科学技術全体の宇宙版と理解をしていただければと思いますが、こうしたマッチングの場を提供し、引き続きこうした宇宙産業の創出を促す仕組みをつくっていきたいというふうに考えております。

古田委員 ありがとうございます。

 今のお話の中でありましたけれども、我が国の準天頂衛星では、数センチメートルの精度を実現できる。それに比べて、米国等は十メートルということなんですけれども。

 我が国が有する宇宙分野の強みを生かした宇宙システムの海外展開に向けての大臣の御決意をお伺いいたします。

鶴保国務大臣 現在、世界の宇宙産業は年率約五%程度で成長しており、我が国の宇宙産業基盤の維持強化に向けて、この世界市場の拡大が重要となっております。

 政府全体におきましても、経協インフラ戦略会議を設けてインフラ輸出に取り組んでおりますけれども、宇宙も一つのインフラとして位置づけました。

 また、宇宙分野はさまざまな技術が用いられる分野でもございまして、炭素繊維技術やバッテリー技術など、我が国企業が持つ世界有数の技術の強みを生かすことができる分野と考えております。

 先進国、新興国を問わず、人工衛星データを解析するプレーヤーの重要性が高まっておりますが、新興国においては宇宙関係人材の育成も大事である。積極的に支援をします。

 私自身、トルコへ昨年も行かせていただき、こうしたことを背景に、宇宙衛星のトップセールスに行かせていただきました。政治主導であるべき分野でもあると認識をしておりまして、積極的、能動的に活動してまいりたいというふうに考えております。

古田委員 どうもありがとうございます。

 次は、知財戦略についてお伺いをいたします。

 私の地元は山口県の下関であります。下関といえば、フグを思い浮かべていただく方も多いんじゃないかというふうに思います。

 その下関ふくが、昨年、水産物で第一号となる地理的表示保護制度、GI制度に登録されました。シャンパーニュ地方のシャンパンと同じように、ブランドとして国外にも販路の拡大が見込まれます。

 また、工業製品に関して言えば、せっかくすばらしいものを開発しても、特許や実用新案等の重要性について認識が薄くて、すぐまねをされて、ビジネスチャンスがあってもそれを逃している地方の中小企業経営者の方もおられるのではないかというふうに思います。

 知的財産戦略を地方にも浸透させ、地方創生に活用することが重要と考えますけれども、大臣のお考えをお伺いいたします。

鶴保国務大臣 御指摘のとおり、地方経済を支える中でも、知的財産戦略をしっかりと根づかせていくということは重要なことだと考えております。

 地方に行けば行くほど、知的財産に対する意識がともすると低くなりがちでありますから、知的財産推進計画二〇一六というもので昨年五月に取りまとめさせていただきました計画の中では、地域の中小企業に対し、知財総合支援窓口やよろず支援拠点を通じた知財意識を高める活動の実施や相談体制の強化を図り、また、デザインやブランドなどの活用や技術の標準化により、海外展開を目指す企業への支援を進めておるところであります。

 また、特に農林水産分野などにおきましては、我が国で開発された品種を守ってブランド化をしていくための地理的表示、先ほど委員御指摘の地理的表示、GI保護制度の活用をし、また、品種の海外登録の促進などを進めさせていただいております。

 加えて、アニメツーリズムなど、地方の魅力あるコンテンツを産業化することも地方創生には有効であると考えておりまして、この計画において、コンテンツとそれ以外の産業の連携の促進や地方発コンテンツの制作、発信への支援を通じて、地方発の商品、サービスの需要拡大や観光客誘致につなげる取り組みを位置づけております。

 今後とも政府一丸となって地方創生に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

古田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 地方では少子化が進んでいまして、バスの路線も廃止されたり減便となったりしております。高齢で目や体が不自由になれば自分で車の運転もできず、病院や買い物に行くにも大変で、生活に大きな支障が生じます。

 そのような中、自動走行する車を利用できるようになれば高齢者の生活の不安も払拭できますけれども、車自体の開発はもとより、位置情報を収集する通信衛星、地図のデータベース、運転免許、道路交通法、事故の場合の責任など、課題は広範囲にわたります。

 自動運転の推進に向けて政府一体となって取り組むべきだと考えますけれども、その取り組み状況についてお伺いをいたします。

矢作政府参考人 お答え申し上げます。

 自動運転の推進に向けた政府の取り組み状況についてお尋ねがございました。

 自動運転は、交通事故の減少、あるいは高齢者を含めた地域の新たな移動サービスの実現などに寄与するとともに、我が国の自動車産業が世界をリードする競争力を維持する上で必要不可欠な技術、このように考えてございます。

 この自動運転をいち早く社会で実用化するためには、関係省庁が個別に取り組むだけでなく、今委員から御指摘ございましたように、関係する取り組みを一体的に推進していくことが重要と考えてございます。

 こうした観点から、政府では、IT本部におきまして、民間及び関係省庁の参加のもと、自動運転に関する総合的戦略として、官民ITS構想・ロードマップを毎年策定してございます。

 昨年五月に策定したロードマップにおきましては、高速道路での自動運転やあるいは限定地域での無人自動運転移動サービスを二〇二〇年までに実現することを目標に掲げ、取り組むべき課題と対応を取りまとめてございます。

 また本年につきましても、自動運転に関する国内外での最新の産業あるいは技術動向を踏まえまして、IT本部におきまして新たな官民ITS構想・ロードマップの策定に向けた検討を進めているところでございます。この中では、完全自動運転の実現を見据え、政府全体の制度整備の方針を策定していくこととし、そのための基本的考え方あるいは検討体制等を記載する予定でございます。

 引き続き、関係省庁と連携し、政府一体となって自動運転の推進に取り組んでまいりたい、このように考えている次第でございます。

古田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 原子力の利用を進めていくには、まださまざまな課題が残っています。課題を解決していくには、信頼を回復するとともに、原子力利用全体を見渡して考えることが重要であります。また、原子力技術者や研究者の確保、育成等も重要と考えております。

 原子力委員会では、中立的、俯瞰的視点から中長期を見据えた原子力利用全体の方向性を示すこととされておりますけれども、担当大臣として、原子力委員会に期待する役割をお伺いいたします。

鶴保国務大臣 御指摘のとおり、信頼回復そして課題の克服のために、原子力委員会には引き続き重要な役割を担っていただきたいと考えております。

 こうした信頼回復や従来の原子力利用における課題の克服のためには、原子力利用全体を見渡しまして、専門的見地や国際的教訓等を踏まえた独自の視点から方向性を示すことが重要であると考えております。原子力委員会では、幅広い視点や有識者の意見を聴取しつつ、国民理解の深化や高速炉について等の重要な論点について、原子力委員会としての見解、考え方を示してきたところでございます。

 今後、「原子力利用に関する基本的考え方」を適切なタイミングで公表するなど、原子力委員会がみずからの考えをしっかり発信していくよう我々もサポートし、必要な役割を果たしていくよう期待をしてまいりたいというふうに思います。

古田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 安全保障技術研究推進制度についてお伺いをいたします。

 平成二十八年度の予算は六億円でしたけれども、平成二十九年度予算は大幅にふえて約百十億円が計上されております。

 しかしながら、日本学術会議は、「政府による研究への介入が著しく、問題が多い。」ということを含む声明を出しておりますけれども、国民の理解をどのように得てこの制度を利用した研究を進めていかれるのか、お伺いをいたします。

三島政府参考人 お答えいたします。

 日本学術会議が独立の立場において決定した声明について、防衛省としてコメントすることは差し控えます。

 他方、我が国の高い技術力は防衛力の基盤であり、安全保障環境が一層厳しさを増す中、安全保障に関する技術の優位性を維持向上していくことは、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守ることに不可欠です。安全保障技術研究推進制度は、こうした状況を踏まえ、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、先進的な民生技術についての基礎研究を公募、委託するものであります。

 防衛省としましては、本制度について、より正確に御理解いただけるよう、ホームページや平成二十九年度の公募要領に、受託者による研究成果の公表を制限することはない、特定秘密を初めとする秘密を受託者に提供することはない、研究成果を特定秘密を初めとする秘密に指定することはない、プログラムオフィサーが研究内容に介入することはないといったことを明記したところであります。

 本制度につきましては、受託者の研究の自由が最大限尊重されるべきという前提のもと、引き続き、さまざまな媒体や場面を通じて丁寧に御説明をし、周知を図ってまいります。

古田委員 自衛のための技術というのは大変重要だと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 最後ですけれども、水素社会の実現に向けてどのように取り組んでおられるのか、また、今後の取り組みについてお伺いをいたします。

藤木政府参考人 水素社会というのは、例えば燃料電池自動車あるいは家庭用の燃料電池、さらには水素発電など、水素が身の回りのさまざまな分野でエネルギー源として利用される社会というふうに我々は定義づけております。

 そのために、短期的には、今申し上げました家庭用の燃料電池でございますとか、あるいは燃料電池自動車、水素ステーションといったようなものについて導入支援、あるいはそのための規制見直しといったようなことを進めてまいりたいと思っております。

 また、中長期的には、水素を大量に生産、調達し、そして使っていく、こういう社会を目指しておりまして、二〇三〇年ごろを目途に、例えば、国際的な水素サプライチェーンの構築、あるいは水素発電の本格導入といったようなものに向けまして、現在、技術実証を進めているところでございます。

 また、水素を何からつくるかというのは重要でございます。その低炭素化を進めるという観点で、再生可能エネルギーから水素を製造していくということも今実証を進めているところでございます。

 今月十一日には、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議というのが開かれまして、安倍総理からも、こうした取り組みに関しまして、二〇一七年内、ことしのうちに水素社会の実現に向けた基本戦略を策定するように、そして、政府を挙げて水素社会の実現に向けて取り組むよう御指示があったところでございます。

 経済産業省といたしまして、関係省庁と連携いたしまして水素社会の実現に向けて取り組みを着実に進めてまいりたいと考えております。

古田委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたので終了いたします。

 どうもありがとうございました。

松野委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。時間も限られておりますので、早速ですが質問に入らせていただきます。

 初めに、ゲノムデータを活用したがん治療のイノベーションについてお伺いを申し上げます。

 先日、私は、国立がん研究センターを訪問し、臨床がんゲノム診断の現場を見させていただきました。ここでは、がん細胞と正常な細胞のゲノムデータを比較し、どの遺伝子の変異で発現したがん細胞かを特定する遺伝子プロファイリングにより、治療法の選択や治療の効果についての研究が進められておりました。このようなゲノム診断による遺伝子プロファイリングにより、患者の個々人に合った効果的な治療を進めることができるようになります。

 ここで、一人のヒトゲノムDNA配列は約三十億文字、その膨大なゲノム情報を読み取る作業のことをシーケンス、読み取り装置をシーケンサーというそうですけれども、現在、高速に大量のシーケンスデータは出てくるようになりました。しかし一方で、この解析がボトルネックになっている状況もあるというふうに伺っております。

 日本人の死因別死亡率のトップはがんであるんですけれども、そのがんの効果的な治療を実現するための鍵の一つが、このゲノム情報に基づいた個別化医療の確立にあると思います。そのためには、オール・ジャパンの体制で、膨大なゲノムデータを蓄積し、解析するための情報基盤の整備やゲノム解析研究者の育成など、国家的なプロジェクトとして取り組むべき必要があると考えます。

 そこで伺いますけれども、このゲノムデータ利活用による我が国のがん治療のイノベーションの推進への取り組み状況につきまして、お聞かせ願えますでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘もありましたが、近年、個人のゲノム解析技術やその結果を解釈するための情報通信技術が飛躍的に向上しておりまして、一人一人の患者の特性に即した、従来よりも効果が高く、副作用の少ないがん治療を届けることが可能となりつつあります。全国の患者さんにがんゲノム医療を届けるためには、患者個人のがんの原因となったゲノム変異や治療効果等に関する情報等を集約しまして、人工知能等を用いて解析するとともに、治療に当たる医療関係者等を支援する拠点の整備が必要であると考えております。

 昨年末には、総理から厚生労働大臣に対しまして、がんに立ち向かう国民の皆様の命を守るために、がんゲノム医療の計画的な推進を行うようメッセージがあったところでもございまして、厚生労働省といたしましては、国内の医療従事者や研究者のお力を結集して最新のがんゲノム医療を国民に提供する仕組みを構築するために必要な機能や役割を検討することを目的に、がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会というのを開催しておりまして、本日は三回目の御議論をいただく予定としております。

 全国の皆様の英知を結集しながら、一刻も早く国民の皆様にがんゲノム医療を届けられるように取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

輿水委員 もうぜひ総力戦でしっかりと取り組んでいただければと思います。

 ここで、ゲノム医療の実現のためにもう一つ重要なことは、遺伝子プロファイリングにより、どの遺伝子の変異により発現したがんかを特定した上で、その異常な遺伝子の発現を阻害したり抑制したりする薬剤の開発、これが大事であると思います。そのためには、ゲノム解析から創薬までの一貫した強力な研究体制の構築が必要と考えるわけでございますけれども、現状と今後についてお聞かせ願えますでしょうか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、ゲノム解析で得られた遺伝子情報を利用した予防、診断に加え、新たな薬剤の開発等の利用に向けた利活用は極めて重要な課題であると認識しております。

 そのため、平成二十七年四月に日本医療研究開発機構、AMEDを設立いたしまして、関係省庁でばらばらに支援していた医療分野の研究開発を集約し、創薬研究など、分野横断的な支援を一体的に実施できる体制を構築した上で、ゲノム研究につきましては、研究者が利用できるバイオバンクの再構築、分野ごとに複数の研究拠点が持つゲノム情報のデータベース整備等につきまして、AMEDが司令塔となって進めているところでございます。

 さらに、ゲノム情報を用いた医療等の実用化につきましては、関係府省、関係機関が連携して推進するため、健康・医療戦略推進本部のもとにゲノム医療実現推進協議会を設け、御指摘のがん領域における創薬等のための研究体制を含め、具体的な検討を進めておるところでございます。

 政府といたしましては、引き続き、ゲノム医療における一貫した研究体制の整備に取り組んでまいりたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさにAMEDはそのためにある、そういった機能を生かしながら、そういった創薬、一貫した取り組みを進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして、ここで今も、AIの活用とかICTの技術活用がこのゲノム医療の現場でも進んでいると思うんですけれども、次の質問といたしまして、ICTの基礎知識を備えた幅広い分野における人材の育成について確認をさせていただきたいと思います。

 今日、ICTの急激な発展によりあらゆる分野におけるICTの活用が進んでいるわけでございます。特に、あらゆる物や事がインターネットにつながるIoTの進展によりインターネット上にも膨大なデータが蓄積され、それをAIにより解析した結果を組み合わせて新しいサービスや商品等も生み出されるわけでございますが、このICTの進化というのは科学技術イノベーションの世界においてもまさに大きな役割を担うんだと思います。健康や医療の分野の研究開発においても、膨大なデータを活用し、新しい知見を生み出す、ゲノムの医療の実現においても、まさにこのすぐれた、ゲノム解析に特化したAIといった活用も期待をされるわけでございます。

 このAI、またIoT、ICTの社会のあらゆる分野のAIの実装のためには、特定の分野や作業者に特化して、機械学習、深層学習により強化された、そういったAIをいかに高いレベルで完成していくか、そういった中であらゆる分野での新しいイノベーションも生み出されやすくなると思うわけです。

 そういった中で、このICTやAIは、先ほどのゲノム医療だけではなく、今後幅広い、医療、あるいは農業や物流、移動、エネルギーなどの分野の現場で活用する必要があると思うわけですけれども、そのあらゆる分野において不可欠な道具とも言えるICT、AI等を活用して、日本から新しいサービス、商品を生み出すための人材の育成、こういった教育環境の整備というのは非常に重要であると考えるわけでございますけれども、この点についての取り組み状況をお聞かせ願えますでしょうか。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 世界的に情報科学技術、とりわけ人工知能技術が急速に進展する中、我が国といたしましても、AIの普及に伴う経済、産業、さらには社会のあらゆる領域への影響について対応を検討していくことは極めて重要であるというふうに考えてございます。

 政府といたしましては、御指摘いただいた科学技術イノベーション総合戦略二〇一六のほか、未来投資会議のもと成長戦略の一環として設置されました人工知能技術戦略会議におきましても、AI人材育成に向けた府省横断的な取り組みについて取りまとめたところでございます。

 文部科学省におきましては、こうした政府全体の方針に沿いまして、人工知能の革新的な基盤技術の研究開発と人材育成を一体的に実施する拠点の形成、また博士号取得者などを対象に企業、大学などのコンソーシアムを通じたデータ人材育成の研修プログラムの実施、また学部学生に対する産学連携によります実践的な教育の推進、それから、大学におきまして、文系、理系の枠も超えまして、全学的な数理及びデータサイエンス教育を実施する拠点の整備など、AI、ビッグデータ、IoT、セキュリティー及びその基盤となりますデータサイエンス人材の育成、確保に資する施策を体系的に実施しているところでございます。

 引き続き、文部科学省といたしましては、ICT、AI人材の育成に向けて幅広い取り組みを積極的に進めさせていただきたいと考えております。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさにそういったトップレベルのAIの人材育成と同時に、また若い世代からそういったものに触れる教育も含めて進めていただければと思います。よく米国等では、AIの、新しい技術を開発する世代というのは二十代だと言われているわけで、その二十代のときに最高に力が発揮できるような、そういった持っていき方もぜひとも一緒に検討して進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 こういった新しい科学技術イノベーション、まさに支える財源と人材というのが大変重要になるわけでございますが、最後の質問として、技術立国を支える研究開発と商品開発の好循環の構築という観点で質問をさせていただきます。

 少子高齢化が進行する日本の繁栄と発展の道を開くためには、先ほどのゲノム医療の現場を初めさまざまな分野で、将来にわたり科学技術イノベーションをしっかり推進しながら、科学技術立国としてのそういった国づくりが大変に重要であるというふうに考えるわけでございますけれども、そのためには、しっかりとした研究者を育てていく、また、そのための研究の資金をしっかり確保していく、こういった取り組みが重要であると考えるわけでございます。

 ここで、研究開発投資においては、例えば、応用段階に入れそうだ、入れるのではないか、そういった技術につきましては、国と民間企業と、また金融機関が協力をして、充実した資金のもとで、より短期間での技術の実用化を進めて、いち早く高付加価値の製品、商品、サービスを世の中に出していく。そういったことの中で、そういった技術が早く収益を生み出せる、そういった環境をつくる、そしてその収益を次の投資へしっかりと回していけるような好循環をつくるとともに、今後進展が期待される基礎的な研究についても、将来への明確な応用ビジョンを共有しながら、しっかりとそこにも投資をしていくような、基礎研究から応用までの安定的な十分な資金供給と、また人材の育成、そういった好循環をしっかりと構築する必要がある。

 まず、このことが今後の日本にとって大事な問題だと思うわけでございますけれども、鶴保大臣の方に、この辺の取り組みについて、考え方についてお伺いしたいと思います。

鶴保国務大臣 まさに問題意識は同じでございまして、我々の今科学技術を取り巻く環境の中で、真水で十分あり余るぐらいの予算を編成できればそれに申し分はないわけでありますが、官民があわせて研究開発投資に向いて、御指摘のような科学技術の研究開発の好循環を生み出す仕組みをつくっていかなければならない。

 その意味においては、先ほどの応用に際する、実装化の前夜になっているようなものに対して、より実装化を進めていくような仕組みができないか、そして、それがまた再投資に向いていくような仕組みができないかということから、少し説明の順番は違うんですけれども、私どもとしては、まず、ニーズとシーズをくっつけるような、先ほどもちょっと御説明を申し上げましたが、科学技術イノベーション・マッチング・フォーラム、これは仮称で、サイエンスIMFと称しておりますけれども、そういうフォーラムを立ち上げて、マッチングの場をつくって、そこから実装化をし、そしてそこで新たな技術を社会実装化して産業を生んで、そこからまた研究機関に再投資をしてもらえるような仕組みをつくろうじゃないかというような話でございます。

 先月二十四日も、こうした私どものプランをTSURUHOプランと名前を名づけて発表させていただきましたけれども、具体的には、先ほどお話をちょっとしたことと重複いたしますけれども、こうした新たな民間投資が今までは少しできにくい部分もあったんですね。

 例えば、国立大学や研究開発法人に対して、評価性資産というようなもの、土地だとか株式だとか、こういうものをもって、これを投資するということならば、その評価性資産の現価を、現在価値をしっかりと出してからでないと寄附ができないような仕組みになっておりましたから、こうしたことも、寄附する際の譲渡所得を非課税とする等々の要件緩和をこれから進めていかなければならない。

 また、こうしたことによって、ベンチャーが生まれ得る素地をつくっていく。私どもの新しいこういう技術を使って資金提供をしていただきたいが、今はお金がないけれども、私たちの株を買っていただきたいというようなこともこれからしていただけるようにもなっていくであろうというようなこと。あるいはベンチャーの育成のために、公共調達では、ある程度、こうした中小のベンチャー企業の育成に向けていくために、公共調達の一定割合を中小、ベンチャーに振り向けていくというようなことができないか等々を柱とする計画を立てさせていただきました。

 これらを通じて、これだけで全て好循環が発出していくというわけではないかもしれませんが、お金、知識、そして人材、こうしたものの三つがどこからか動いていくように、まずはやれることからやっていこうじゃないかということで計画を立てさせていただいておるところであります。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさにあらゆる企業と大学のコラボレーションで、今までの研究開発費が、いろいろな情報からすると、十倍、二十倍になって、そして開発が進められるようになったケースもある。そういった中で、今度はそれをどう商品化していく、また、したときにその辺の権利関係をどういうふうに整理していくか、そういったこともトータルで見ていただきながら、しっかりそういったコラボレーションの中で新しい技術が生み出されやすい、また短期間で生み出せるような、そういった環境整備をまたお願いしたいと思います。

 そして、結構、やはり日本の基礎研究者というのは、前回の伊佐委員の質問からも、非常に予算が少ない中で頑張っていらっしゃると。先ほどのゲノムのデータどりの研究者も、年収約三百万ぐらいで一生懸命頑張っている、そういう状況。しかし、なぜそこにあるかというのは、これに役立ちたい、また、ここの日本にいることによってこういったいいデータが集められて研究としては非常に魅力があるという、ただ単にお金だけではなくて。そういった研究環境というものをどう整えていくかという、こういった中でもいい人材を育てられる、また日本でしっかり持って新しいイノベーションにつなげられる、そういったことがあると思うわけでございます。

 最後に、またもう一度、鶴保大臣にお伺いいたしますが、このような優秀な研究者、技術者を確保するためには、まさに資金面だけではなく研究に役立つデータの利用環境、そういったものの整備も必要だと考えるわけでございますけれども、この現状と今後の展望についてお聞かせ願えますでしょうか。

鶴保国務大臣 政府におきましては、国立研究開発法人や大学等を中心として、研究データを産学官で利活用できるためのデータプラットホームの整備や、学術情報の流通を円滑に進めるためのネットワークインフラの整備等の取り組みを行ってきております。

 また、議員立法として提案をされました、昨年十二月に成立をしました官民データ活用推進基本法に基づきまして、本年三月三十一日、総理を議長とする官民データ活用戦略会議を立ち上げ、推進体制を整えたところであります。今後、オープンデータの推進等を強力に進めてまいりたいというふうに考えております。

輿水委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

松野委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 民進党の鈴木義弘です。

 大臣の所信が三週ぐらいずれてしまったものですから、新聞の記事に先に出ちゃったこともありますので、お許しをいただきたいというふうに思います。

 大臣は所信の中で司令塔という言葉を何回かお使いになっていると思います。そこで、きょうは何点かにテーマを絞ってお尋ねしたいと思います。

 科学技術イノベーションの一番根幹をなすところは大学教育だというふうに私は思っておりますし、大学改革をしなければ、そこから先に出る大学院だとか、国の独法である産総研だとか、いろいろな研究開発機関があるんですけれども、そういったところにつながっていかない。

 特に思うんですけれども、産業界に近いところの研究開発をするセクションと、大学のようにアカデミックを追求していくところと、やはり役割があるんだと思うんですけれども、そこのところを緩やかにすみ分けしていった方がいいんじゃないかというのが、過去の科学技術・イノベーション特別委員会でも質問させてもらったんです。

 きょうは、特に大学改革の中で何点か質問をしていきたいというふうに思います。

 まず一つは、産業界からの投資拡大のための大学改革などの制度改革、エビデンス構築の実行に向け全力で取り組んでいくというふうに大臣は述べておられるんですね。制度改革の一番大事なことは、改革をした見える化が国民に示すことができるかどうか、わかりやすく。そこをどうお考えになっているか、まず初めにお尋ねしたいと思います。

鶴保国務大臣 委員御指摘のとおり、科学技術イノベーションの状況に関する客観的根拠に基づいた効果的、効率的な実施、実行が重要だと考えております。

 このため、第五期科学技術基本計画におきましては、我が国の科学技術イノベーションの状況を定量的に把握するための目標値や指標を活用し、フォローアップを行うことが明記されました。

 計画本体には、我が国の状況について、達成すべき状況を定量的に明記した目標値として八つの目標値を掲げております。

 これに加え、達成すべき数値目標は含まれませんけれども、我が国の科学技術イノベーションの状況を把握するための指標として、基本計画策定時に、俯瞰的状況把握のための二十一の主要指標を設定させていただきました。これらについては、PDCAに値するような、目標値をちょっと立てるに値しないというか、立てるにふさわしくないようなものも含まれておりますので、あえてこのところは数値目標を入れませんでした。

 また、本年三月には、政策分野ごとの状況把握のための詳細な指標を取りまとめさせていただき、具体的には、修士から博士課程への進学率や、国際共著論文数や、ベンチャーキャピタルによる投資規模など、約八十項目の指標をつけております。

 これらの目標値、数値のデータにつきましては、毎年度収集し、公表をさせていただくことになっておりますので、これらもぜひ活用していただければというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、これらを使ってきちっとしたPDCAサイクルの確立をし、政策効果の見える化を目指してまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 数値化するのはなかなか難しいところもあると思いますし、未来に向けていかにその数値が変わっていくかということも予測できるかどうかというのはなかなか難しいと思うんです。

 ただし、過去のデータについていろいろな、去年の十二月のときはインパクトファクターを一つの題材に質問させてもらったと思うんですけれども、三月の中旬ぐらいにネイチャーインデックスというところが、日本の科学技術成果の発表の水準が低下しているという警鐘を鳴らしているペーパーが発行されたわけですね。ここ十年間でほかの科学先進国におくれをとっているということが明らかになったんです。

 ですから、今大臣が御答弁されて、八つのテーマというより指標があった二十一のテーマで見ていて、それを毎年毎年数字を出しているんですと。それは日本国内だけの数字なんです。わかりますよね。いろいろな数字、特に文部科学省は、いろいろな数字を出すんだけれども、それがリンクしているのかというと、全然リンクしていない。

 例えば、私たちが子供のころ習った、英検の一級、二級、三級とありますよね。この英検の三級が、高校の入試と大学の入試でどこぐらいまでできたら、では、一級に値するのが大学入試なのか、二級に値するのが高校入試なのか、TOEIC、TOEFLはどうなのかといったとき、全然リンクしていないで、世の中でばらばらで動いている。でも、就職しようとすると、TOEICの何点以上じゃないとうちは就職できませんよ、こうなるわけです。

 だから、司令塔というふうな考え方で大臣のお立場があるのであれば、そういったものを一本、縦軸というより縦串をぶすっと刺した方がいいと思うんですよね。だから、外国から出るような指標が出たときに、それに憂えている大学の関係者だとかOBの人方が出てくるんだと思うんです。政府主導の新たな取り組みによってこの低下傾向を逆転することができなければ、科学の世界におけるエリートとしての座を追われることになりかねないと警鐘を鳴らしている方もいらっしゃるんです。

 もう一度、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鶴保国務大臣 ネイチャーインデックスの御指摘は私どもも承知をしております。これらについて比較、分析をした上で、私どもは、しっかりとしたエビデンスに基づいた科学政策をつくっていかなければならないという問題意識も共有をしておるということを申し上げておきたいと思います。

 ただ、先生が御指摘のとおり、どの指標が、どこまでの目標値をクリアすればネイチャーインデックスにおけるような評価が高まるのか等々についても、少し時間と経験値の蓄積が必要なのではないかというふうにも考えておるところであります。

 もちろん、先ほど申し述べましたような進学率でありますとか国際共著の論文数でありますとかベンチャーキャピタルの投資規模等々の、明らかにこれらについてはゆるがせにできないなと思われるものについてはしっかりと見ていく必要があると思いますが、二十一、そしてまた八、相当な数、八十の指標等々を並列的に、これを時系列的に見ていくということにも相当な意味があるんだろうというふうに私は考えております。

 先生方のこれからの御指摘、御示唆に負うところは多いわけでございますが、海外との比較においても、今後、研究を進めながら、さまざまな改良を施してまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 ネイチャーインデックスと言ってもなかなか御理解いただけない方もいらっしゃると思うんですけれども、日本の研究が低下傾向にあるというふうな指標がどういう意味合いなのかといったときに、二〇〇五年と二〇一五年の日本の論文出版数を比較している指標なんですよね。十四分野中の十一の分野で減少しているという傾向なんです。

 伝統的に日本が強い分野である素材科学及び工業の論文出版数が一〇%以上減少しており、減少率が最も大きかったのが計算機科学で、三七・七%も減少してしまっているということなんです。ただし、医学、数学、天文学、この三つの分野においては十年前よりもふえている。しかし、査読つき文献を多く網羅するスコーパスデータベースに収録されている全論文数が二〇〇五年から二〇一五年にかけて約八〇%増加しているにもかかわらず、日本からの論文数が一五%しか増加していないということなんです。全論文で日本からの論文が占める割合が七・四%から四・七%に減少しちゃっている。

 だから、昨年もノーベル賞を受賞した人がいて、日本は科学技術立国だとか、まだまだすぐれている分野はたくさんあるんだというふうに言っているんですけれども、これは、過去に論文を幾つ出しているかということの結果、ノーベル賞を受賞しただけの話なんです。だから、これから先に対して、論文数がこれだけ減少してきていると、あと十年先まではいいでしょう、でも、三十年先、四十年先は日本人からノーベル賞は出ないんですよ。やはり論文を出すということで、それに基づいて産業化をしていく、世の中に還元をしていって役立ててもらうというのが、ノーベル賞の受賞の一番のステータスというんですか、ただいいものがぽっと生まれたからそれでノーベル賞を受賞できるということじゃないんですよね。

 こうした全般的な低下傾向にあって、日本の若い研究者たちは厳しい状況に直面しており、フルタイムで働けるポジションも少なくなっている、こういうふうに指摘されているわけです。

 私たちの年代、私はもう五十四になりますけれども、もう終わりなんです。五十、六十の人、頑張っている人もいますけれども、やはり、いろいろ知恵を出して、いろいろな研究をして、体力も含めて、論文をばたばたばたばた、実験してデータを集めて論文にしていって、やれるのは二十代後半、三十代、四十代の前半と普通は言われているんです。

 日本政府の研究開発支出額が、世界で依然トップクラスであるものの、二〇〇一年以降は横ばいなんです。一方、ドイツ、中国、韓国などのほかの国は、研究開発への支出を大幅にふやしています。この間に、日本の政府は、大学が職員の給与に充てる補助金を削減してきたんです。国立大学協会の資料によると、その結果、各大学は長期雇用の職位数を減らして、教育者を短期契約で雇用する方向へと変化してしまった。短期契約で雇用されている四十歳以下の研究員の数は、二〇〇七年から二〇一三年にかけて二倍以上に膨れ上がっちゃっているということなんです。

 この状況を打破するための方策と大臣の決意をお聞きしたいんです、今御説明申し上げましたので。

鶴保国務大臣 先生の御指摘のような論文数の低下ということに危機感を持つ者はたくさんございます。

 その上で申し上げますが、この論文数の低下の原因が那辺にあるか等について、しっかりこれは見ていかなければならない。今、フルタイムで働くポジションが少ないという御指摘等々については、これはもちろん、大学の運営費交付金等々の、大学の運営についての改革も必要であろうと思います。また、論文を書く場所が、研究機関等々の問題であるとするならば、これは官民あわせた考え方で進めていかなければならないというふうにも思います。

 こうしたこと、これが一つ答えなのだということではなくて、全体的に、先ほどの先生の、答弁もさせていただきましたけれども、知、それからお金、そして人材の育成の三つが十分に好循環を生んでいくような歯車を動かしていくために何からできるかということから、私ども、TSURUHOプランと称してさまざまな提案をさせていただいているところでございます。

 恐らくは、今後、その御指摘のような問題点について直截な答えが出てくるやもしれませんが、私どもとしては今でき得る限りの努力をさせていただいているということを御理解いただきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 官民というお話を今大臣から答弁いただいたんですけれども、民の方は、逆に、学術論文を出さなかったり、特許を出さないんです。本当の基本的な研究開発で出たものに関しては、論文も出さないし、特許も出さない。全部秘匿にするんです。そうしないと、情報も漏えいするし、ほかにまねされちゃうんです。

 だから、昔はどんどんどんどん特許を出したり、論文を発表して、それを学会で発表したり、いろいろな出版物に発表したりして、その参照を得ながらどんどんどんどん引っ張ってきたんですけれども、今は企業の方は、やはり戦略として、論文を出したり特許を出したりしない方向も一部あるんです。だって、特許は二十年しか保護してくれないんです。

 いつも私、例示を出すんですけれども、コカ・コーラの原液、あれは本当に企業の一部の二、三人にしかつくり方を教えていないんだそうです。

 日本でも、私たち、コカ・コーラおいしいおいしいと飲む。私も、二カ月に一回ぐらい、ポテチとコカ・コーラを飲むのが無性に喜びになるんですけれども、これはアメリカにやられちゃっているのかなといつも思うんです。

 あのコカ・コーラの原液がアメリカから空輸で飛んでくるんですけれども、結局、カラメルだとか水は日本で調達、炭酸もそうです。もとの本当のもの、今の科学技術というより分析技術でいけば、この中に何が入っているかはわかるんです。それと同じものをまぜてもあの味が出ない。それがみそなんです。これは特許は出していないんです。論文も発表していないんです。それが企業戦略なんですね。

 だから、そこのところを見間違えて司令塔をおやりになろうとすると、ただ、今頑張るだけやっているので理解してくれということではちょっと心もとないなというふうに思うんです。

 例えば、もう一つ。国立大学の教員数と職員数の推移データを文科省からいただいたんです。

 平成十九年の教員数六万一千三百五十九人から、平成二十八年六万五千八百十二人というふうにちょっとふえているんです、四千人ぐらい。なぜ職員数が平成十九年六万九百八十七人から平成二十八年七万九千二百九十八人と大幅に増加しているのかということなんです。

 苦しい苦しいと言いながら、運営交付金をどんどんどんどんこの十年間カットしてきているのに、職員の数はふえて、教員の数もちょっとふえているんだけれども、職員の数が教員の数よりふえていれば、それはやはりイノベーションは起きないんじゃないかなと思うんです。

 本来であれば、教員の数をふやしていって、事務方になる人には、申しわけないんですけれども支出を抑えて、教員を確保していく。短期で雇用する人を長期にしていって、少し生活の安定を見ながら、いい研究をしてもらうという方向に向けていくのが大学改革じゃないかというふうに思うんです。

 文部科学省の所管ですが、外部資金の導入をするための環境整備だけが大学改革ではないと思うんですけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鶴保国務大臣 お答えをする前に、先ほどの官民の論文の話でありますけれども、先生の言われるとおり、民間が論文を出さなくなってきているという傾向については、まさにそれは理解をします。

 ただ、これらの問題点として、やはり実装化について、いい技術やそしてまた基礎研究を持っておったとしても、これを実装化するスピードがかなり遅くなっているという問題意識もあります。

 したがって、そうしたことに対しても、IMF、先ほど申しましたマッチングのフォーラム等々をつくってこれを支援していくということも一つの手だてなのではないかということも強調しておきたいというふうに思います。

 大学の方でありますけれども、大学改革について、私どもとしては、もちろんこれは大学を所管する文部科学省の所管ではありますけれども、この機能を強化するということについての問題意識は、極めて重要な問題意識を持っております。

 研究力の強化に向けて、不断の見直しと機能再構築を進めるということはもとより、大学改革を促すシステムを整え、質の保証を徹底する大学ガバナンスの充実強化が必要であります。

 具体的には、第五期科学技術基本計画の方針として、科学技術イノベーションの基盤的な力に関するワーキンググループというものを立ち上げさせていただきまして、先ほど来、繰り返すようでありますが、大学改革の幾つかの提案をTSURUHOプランとして提案させていただきました。

 いずれにいたしましても、研究開発の活発化、それに伴う知の創出と人材輩出の促進を、さらなる投資拡大といった好循環を促すために、さまざまなことをさせていただく所存であります。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 ところで、大学関係者は、基礎研究が大切だという呪縛から解かれていないと私は思うんですね。何が基礎研究かという定義があやふやなんです。

 京都大学の先生が、自分の体験を通して、「研究文化の日米比較」と題した講演の記述を目にしたんです。大学改革をこれから遂行していくに当たって、一つの提言だと私は受けとめたんです。

 日本の大学の先生は、その大学を卒業して、同じ大学の大学院を出て、自分のところの研究室に所属してそのまま上がってきたという先生がごく普通の日本の大学の先生だと言っているんです。東大を出れば、東大の大学院を出て、東大の研究室、自分が出た研究室に助手か何かで残って、助教になって、教授になって、何とか研究所の所長になって、こういうのが大体パターンなんだと思います。京大も、ほかの大学も同じだと思います。

 研究の一般的傾向は、例えばアメリカの場合、戦略的に見たときに、明確な目標と時間制限、機動的に見たときには、新分野の開拓に積極的、しかし失敗も多いというふうにこの先生は見ているんです。

 では、日本はどうなのかといったとき、長期的には、短期的に利益に惑わされない、言葉をかえれば無関心だということです。ゴーイング・マイ・ウエー、私のことを言っているわけじゃないんでしょうけれども。あとは、継続的、一分野を時間をかけて追求、ある意味では惰性だと言われているんです。

 これ、日本人は大好きなんだ。おぎゃあと生まれて、物心ついたときから野球を何十年も続けないと、殿堂入りが、入れられない。空手でも柔道でも何のスポーツでも、何十年とやらないと殿堂入りにならない。オリンピックで優勝したから殿堂入りになるかといったら、そうじゃない。世界大会で優勝しても殿堂入りにはならない。長い期間、その道に、ずっと同じことをやり続けられる忍耐力と、逆に言えば、これはスポーツのことを言っているんじゃないですよ、惰性だというふうな見方をされる場合があるということです。

 成功か失敗かよくわからない研究が多いということなんです、大学の研究は。だって、お金にならなくてもいいんだもの。この日本では惰性で研究をやっている人が継続的な研究をやっている中に紛れ込んでいることも事実ですとこの人は述べている。

 予算の出し方と社会の制度が日米では違う。特に日本の大学の場合、危機感がなくてもやっていけるし、企業の大きな基礎研究所も同じだと言っているんです。新しい分野を積極的に開発せず、むしろ同じことを一生懸命にやって、その分野のオーソリティーになる方がよいと考えている人が多いという。しかし、アメリカでは、その分野のオーソリティーになっても、その分野自体が衰退してしまっては全然意味がないと考えるんです。

 自分がやっている研究を、三十年、四十年、その先生は大学で教えます。それが社会でもう全然役に立たない研究であってもずっとそれをやる先生を私も大学のときに見てきました。だから日本の大学はセミナーが少ないというんですね。逆に、アメリカの大学の場合は、いろいろなテーマの模索をして、異なる専門の分野の人たちとの交流に積極的だ。日本は、現在のテーマに集中、専門家同士、いつも同じ顔ぶれ。政治も同じかもしれませんね。交流を重視した方がいいんじゃないかということなんです。

 なるほどとうなずくところがたくさんあるんですけれども、まとめて、キーワードとして、この方は競争だと述べているんです。連携じゃないんです、競争なんです。競争とはどういうことかとわかりやすく述べてもらっているんですけれども、社会的要請であることを認識すること。例えば、広く人々と交流しなければいけない、あるいは、自分で物を考えて何かに新機軸を出していかないといけないということは、社会的要請であって、結局それは競争というものが生んだ短期的あるいは長期的な文化の一面ではないかと述べているんです。

 さらに、競争に強いシステムの構築が今後の課題だろうし、もう一つ、経済活動とは直接関係なくても人類にとって重要と認められるものを含めて、付加価値の高い研究成果を生み出すシステムというものを何らかの形で構築していかなければならないと述べている。ごもっともだと思うんです。

 高い研究成果を生み出すことは、アカデミックな研究だから黙ってやらせてくれというのは今後成り立たないし、日本の大学は学生にいかに付加価値をつけて卒業させるかが重要だと述べているんです。

 大学改革にこのような視点、尺度で、予算や教員の数、質の配分をするように、より具体的な指標、見える化が求められると思うんです。先ほど大臣が御答弁されたことは、全般的な概念なんだと思うんですね。それをもう一歩踏み込まなくちゃいけない時期に日本も、悲しいかな、もう来てしまっているということです。

 ぬるま湯の中で、ずっとそこで自分の好きな研究を長くやれば、それでお金がもらえる時代じゃないんだというのをきちっと司令塔として鶴保大臣が国民に示さないと、大学に対しても、研究開発している人にも。それが大臣の今の役割じゃないかなというふうに私は思うんですけれども、御所見をいただければと思います。

鶴保国務大臣 大変熱い思いを御開陳いただきました。

 大学については、先ほど来申し上げておりますが、これらについて、予算あるいは運営等々のことで、私どもとしてはしっかり、先ほど来申し上げているような指標やエビデンスをお示ししながら提案はしてきたつもりでございます。

 そして、なおかつ今回の予算等々についても努力をしていただいているというふうに聞いておりますが、なお一層これを、費用対効果等々、見える化を進めていかなければいけないという話は先ほど御答弁をさせていただいたとおりでありますが、恐らくは、大学等の財務や運営状況の見える化、分析をより一層進めていかなければならない、一つ一つ、何に使われているか、またそれがどういう効果を生んでいるか等々についての調査も進めていかなければいけないのだろうというふうに思います。

 どこまでが我々ができる範囲であるか等々についてはこれからのところもございますが、そういう思いを共有しているということだけは御理解をいただきたいと思います。

 また、大学の中の人材教育において、社会に役に立つかどうかを無関係に研究をするということについてはさまざまな御意見がございます。以前、ノーベル賞をとられた大隅教授とお話をさせていただいたときも、そういった世知辛い世の中であっても、我々のこの基礎研究についておおらかであって、おおらかに許していただけるような社会をつくっていただきたいという発言もございました。また、世界の研究者の思いとして、そうしたこともたくさん、基礎研究をやっていらっしゃる分野については特にそういう思いを持っていらっしゃる方が多いということも承知をしておるところであります。

 したがって、こうした社会背景を醸成していくためにも、先ほど申し上げているような社会への実装化等々につき、しっかりとした効果を、国民が理解をしてくれるような効果をより進めていくことも私たちの役割なのではないかという視点から、TSURUHOプランというものもつくらせていただきました。

 第五期科学技術基本計画において、文科省においても、学生や研究者等を対象に、実践を通じて起業家精神を有する人材を育てる次世代アントレプレナー育成事業プログラムを今年度より開始する予定ということも聞いておりますから、こうしたこととも相まって、政府一丸となって御指摘のような問題に対処していきたいと考えております。

鈴木(義)委員 同じ内容の、もう一つ質問したいんです。

 個々の技術に詳しいエンジニアという方はたくさんいらっしゃるんだそうです。その人たちを集めて新しいプロジェクトをつくるとか、世の中にどのようなニーズがあるか、どのようなものをつくらなければならないかといったビジネスセンスやプロジェクトセンスを持っている日本の技術者が非常に少ないというふうに言っているんです。逆に言えば、そういう人材をつくっていくことが求められているということですね。

 今大臣が御答弁されました、基礎研究が大事なんだと。何が基礎研究なのかわからない。基礎だ基礎だ、これは大事な基礎研究なんだと学者の先生方は言うんです。これは基礎研究なんだから大事なんだと。

 でも、日本は科学技術で御飯を食べていかなければならないんでしょう。好きな研究をやっていて、それが基礎研究なんだから大事にしてくれ、それを許容してくれというのは、それで食べられる、ほかにもっと、石油がたくさん湧くとかダイヤモンドがたくさん採掘できるとかという国にあるんだったら、どうぞお好きな研究をやってくださいというのは可能かもしれません。でも、日本は人が財産だというふうに口を酸っぱくみんな言うんです。それなのに、ぬるい研究とは言わなくても、好きな研究をやらせてくれというのは、ちょっと時代が今求めていないんじゃないかなと思うんです。

 だから、今申し上げましたように、くどくなりますけれども、目ききをつくっていくということが今の日本の制度の中で、経済産業委員会でもほかの委員会でも私は質問しましたけれども、法律を知っている人は法律だけなんです。弁護士さんは、科学技術のことが全然わからなくて裁判に臨むんです。弁理士さんが今度法廷に立てるようにも、過去に弁理士法も弁護士法も改正になっているのは承知しているんですけれども、中身がよくわからない。

 だから、例えば医療の世界でも、結局、薬剤がわかる先生が医療に来るとか、先ほども前任者の方が、バイオの関係で研究開発する人で、逆に法律がわかる人がやるとかですよ。そういうプログラムをつくって、それに応募してくれる人には例えば無料で教育を教えますよ、それは国が欲している人材だから、そういったものを国が提示する時代だということなんです。大学が言ってきたものを後追いして、これを認めますということじゃなくて、こういう人材を今日本の中では欲しているんですというのを国が出していくということが必要なんじゃないかということなんです。

 だから、いろいろな立場の先生方からいろいろな御意見を頂戴するんだと思うんですけれども、国が今必要な人材はその先生方はわからない。そこのところを大学改革の中に入れていかなければならない時代じゃないかということなんですけれども、もう一度、もしお考えがあれば御答弁いただきたいんです。

鶴保国務大臣 大学の中身については、副大臣がお見えですから御答弁いただければと思いますが、冒頭、その問題意識の中で、私どもとしても、ターゲット領域を決め、官民投資の拡大を誘発する仕組みをつくろうということに動き出してきているということであります。

 社会に必要な人材を国が決めるとまでは言いませんけれども、我々がこうした思いを提示することによって、そこにしっかりとした人材、よき人材が集中していくということ。

 そして、なおかつ、先ほど先生、まさにその言葉を使っていただきました、私どもの目ききという言葉。どの研究が社会に、より実装化に向けてしっかりとしたものになっていくか、あるいはどういった研究がすばらしい研究なのか等々についての目きき、目きき人材がやはり欠けているという意識は非常に危機感として持っております。

 したがいまして、先ほど来何度も申し上げておりますが、ニーズとシーズをくっつけていくようなマッチングのフォーラムを立ち上げることによって、その中からそういった人材の育成も企図していくということを考えておる次第であります。

鈴木(義)委員 ぜひ、推進役また司令塔として御活躍いただければなと思います。

 せっかく副大臣にお見えいただいておりますので、文科の関係で一つだけ質問したいと思います。

 昨年から国会でも盛んに、給付型奨学金制度の議論が活発に行われていて、ことしから一部先行的に給付型奨学金が始まりました。

 幾つかの点が抜け落ちているというふうに私自身思うんですけれども、二〇〇七年に大学全入問題が社会問題となり、二〇一八年には、来年ですね、受験者数がピークを迎え、経営不振の大学が立て続けに潰れる、大学の再編統合が起こる、下位の大学が専門学校化しているというふうに過去にも何回も言われてきた、それがもう始まっているんだと思います。先日、新聞でも、公立化、すがる地方と題して、大学自体の存続が地方自治体を巻き込んだ問題に発展しているということが記事で出ていたんです。

 大学とは何をしに行くところなのか、大学は学生に何を提供する場なのか、問い直す時期に来ているんじゃないかということです。学生に人気がある、ないは重要なファクターの一つでしょうが、しかし、学生を集めるためが目的化してしまい、受験の内容を簡略化したり学生が飛びつきそうな名称にしたり、一時的に目先を変えただけで、本来の大学の役割が変節してしまっていると危惧している一人です。

 大学の運営やあり方の話をすると、必ず大学自治だという声が聞こえてきます。大学の質の話で優劣をつけるようにするべきと考えるんですが、お尋ねします。

 また、大学の授業で高校や中学の授業で教えることをやめませんかということですね。大学入試の厳格化と卒業に対して厳格にしていく議論なくして大学の運営のためだけの定員確保や税金投入を議論するより、大学の人材育成という質を初めに議論すべきだと考えています。

 先ほども申し上げましたけれども、大学に入って、その学生にどれだけの付加価値をつけて卒業させるかというのが大学の役割で、そこに指標を持った方が私は本来の大学になるんじゃないかと思うんですけれども、御答弁いただきたいと思います。

義家副大臣 問題意識は共有しております。

 その上で、学校教育法第八十三条第一項において、大学は、学術の中心として、学生に対し広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開することを目的とすると定められております。

 とりわけ、人口減少や経済社会のグローバル化、産業構造の変化が進む今日、大学においては、さまざまな分野で活躍することのできる高度人材の育成、ますます多様化する国民の学習ニーズへの対応、学術研究の深化、そしてイノベーションの創出、教育研究機能を生かした地域社会の発展への貢献などが求められているところでございまして、文部科学省では、昨年三月に省令改正を行いまして、卒業認定と教育課程の編成に関する方針の策定、公表を全ての大学に義務づけ、各大学が育成すべき人材像を明確化し、学生の学習の質を向上させる取り組みを体系的、組織的に行うことを求めているところでございます。

 具体的には、各大学では指導方法の改善と学習成果の評価の精緻化が必要であり、指導方法の改善について、一方的な講義形式から、学生の主体的な参加を求める少人数によるアクティブラーニングへの転換、評価の精緻化として、成績評価の基準を明確化し、厳格に評価をしていくなどの取り組みを促しておるところでございます。

 さらに、本年三月六日、中央教育審議会において、「我が国の高等教育に関する将来構想について」、これは委員の危機感と共有した上での将来構想について諮問したところでございまして、その中で、学生の質をいかに高めていくかについても研究、検討を深めてまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 科学技術・イノベーション特別委員会で質問することじゃないと思うんですけれども、大臣の所信の中に「大学改革」というような一文が入っていましたので。

 結局、前段で今御質問申し上げたのは、大学のあり方だとか大学の先生方の研究のことを申し上げたつもりなんですけれども、そこに入ってくる学生のことは、今後、やはり文科委員会というより文部科学省で、講義に三日出てこないと、事務局からその学生さんに携帯電話をかけて、そろそろ授業に出てきてくださいとかという大学の話も聞きますし、単位が取れないと、親が出てきて、何でうちの子供に単位やれないんだというふうに教授に食ってかかる親がいたりするのも現実あります。そういうのを、ちょっと違うんじゃないというのをやはり国が発信しないとだめなんだと思うんですね。

 今副大臣が御説明いただいたことは、いろいろな大学で取り組んで、今させているという話で、全部がやっているわけじゃなくて、いいところ取りをして御説明いただいているんだと思うんですけれども、ぜひそれを大学というふうに名がつくところに徹底して、お願いしたいと思います。

 次のテーマに移りたいと思います。生命倫理についてなんです。

 科学技術・イノベーション会議生命倫理専門調査会で百三回にわたって会議を重ねているという資料を目にしました。

 文部科学省、厚生労働省、それぞれにばらばらの調査会や部会、委員会が乱立していると思うんです、この生命倫理に関して。整合性がとれているのかどうか。司令塔を自任する内閣府担当の鶴保大臣であれば、機能が発揮しているのかどうか。ちょっと失礼な問いかけかもしれませんけれども、同じような名称の委員会が幾つもあるんです。そこを統括するのが内閣府の大臣の部署になるんじゃないかと思うんですけれども、それについて御所見を伺いたいと思います。

鶴保国務大臣 総合科学技術・イノベーション会議の生命倫理専門調査会においては、生命科学の急速な発展に対応するため、文部科学大臣や厚生労働大臣の諮問に応じて、クローン技術やヒトES細胞技術をめぐる生命倫理上の課題について調査審議を行っております。そして、その後、基本的な方針を示すという役割を担っております。

 こうした調査会における検討結果を踏まえて、文科省や厚労省に設置された各委員会等での検討を行い、各省庁が具体的な指針を策定させていただいておりまして、基本的な指針のもとに具体的な指針を各省庁がやっているという御理解をいただければと思いますが、今後とも、このような府省庁間の連携体制が効果的に機能し、御懸念のような問題が起きないように、しっかりと注視をしてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 生命倫理の一番の根幹は、私は政治の場でもきちっと議論しなくちゃいけないと思うんですけれども、人が生まれるということと、人が亡くなる、死ということですね、それに対して人間がどこまで手を加えていいのかというのを、きちっと国民的コンセンサスを得ながら議論をして、ここまでですよというのを決めないと、今、DNAのいろいろな研究開発、ゲノムも含めて、隣の韓国では、自分がかわいく飼っていた猫とか犬を、ペットのクローンを五百万とか一千万でつくって売っちゃいますよということをやるわけですよ。羊のドリーちゃんも、あれを世に出した研究者が、世の中に出していけなかったものを私はつくってしまったと後から自戒をしているんです。

 それで、総合技術会議生命倫理調査会の第五十三回の会議の中でも、国レベルの倫理委員会の必要性が訴えられているんです。今まで検討してきたことがあるのか、お尋ねしたいと思います。

鶴保国務大臣 生命倫理専門調査会では、主に受精胚や生殖細胞という生命の出発点に焦点を当て、さまざまな最先端技術応用に関連した基礎的研究から臨床応用に至る生命倫理的課題について議論を重ねてまいりました。

 この議論を深めるため、科学的合理性のみならず、社会的妥当性、後世代への影響を含めた人への安全性の配慮、個人個人がそれぞれ受け継いでいる遺伝的多様性を尊重する社会的視点等多角的な視点から、さまざまな立場の意見を踏まえ、検討しているところであります。

鈴木(義)委員 検討してきたということでよろしいんですかね。よろしいんですね。

 平成二十七年九月九日、生命倫理専門調査会の中間まとめと称して「ヒトの幹細胞から作成される生殖細胞を用いるヒト胚の作成について」を、平成二十八年四月二十二日付で「ヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究について」の中間まとめが発表されました。昨年のことですね。四月四日の新聞報道には、厚生労働省が、生命倫理専門調査会の、ゲノム編集で受精卵の遺伝子を改変する研究について、基礎研究は容認するが、出産に向けた臨床応用は容認できないとしている考え方に合わせた形で、一年以内に指針で禁止を盛り込む方針とのことなんです。

 生命倫理専門調査会は、研究者コミュニティーにおいては、広く科学的、倫理的、社会的観点から、開かれた形で議論を積極的に主導することを、研究者だけではなく、さまざまな立場の人の意見に耳を傾け、社会的に議論を重ねることを期待していますが、国民や研究者コミュニティーに議論が進むことを期待するのではなく、日本国として、生殖細胞の作成、ヒト胚の作成をどこまで規制するのか、基本的な考えを示して、各所管省庁に任せるのではなく、各関係省庁の司令塔として、国民的議論が進むように大臣が指揮をとるべきだと考えるんですけれども、御所見を伺いたいと思います。

鶴保国務大臣 先ほど来の答弁と重複する部分もございますが、こうした調査会においても問題意識は持っております。倫理や宗教、医学、哲学等の幅広い有識者において検討を行うとともに、シンポジウムを行いまして、これらの場で国民との直接対話の実施や、パブリックコメントなどもさせていただき、国民の意見を求めてきたところでございます。

 御指摘の、昨年十二月に示した「ヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究について」においても、さまざまな立場の人の意見に耳を傾けつつ、関係各省も交えて、あるべき仕組みについて検討を深めている、方針を示したところであります。

 まだまだ至らぬところがあるやもしれません。今後、虚心坦懐にこれらについて不断の努力を重ねていくことを申し上げておきたいと思います。

鈴木(義)委員 ちょっと時間がないので、最後に質問、もう一点だけ。

 生命倫理の中で、もう一つ重要な課題があると思っています。それは、脳科学の発達なんです、AIも含めて、ICTも含めて。脳機能についての理解が進む中で、研究の最前線として、神経科学と並んで注目を集めているのが生命倫理の分野だというふうに言われているんです。

 約四年前に、アメリカの生命倫理に関する大統領評議会で脳科学の道徳的問題が議論されました。その中で、生命倫理及び遺伝学の専門家であるスタンフォード大学の先生は、神経科学における大きな議論を五つ紹介しています。

 予測。病気の発症、犯罪を引き起こすことを予測できるか。

 心を読む。麻痺患者との意思疎通やうそ発見器に応用できるか。

 三、責任能力。脳疾患による判断能力の喪失が裁判で認められるか。

 四、治療。医療への応用はどこまで可能か。

 五、能力向上。薬剤による能力向上は許されるのか。

 倫理はこれまで道徳上の問題であったのですけれども、これからは神経科学に基づいた脳に関する議論になるのではというふうに言われているわけです。

 そうは思わない、神経科学によってさまざまな問題が持ち上がっているように、他の技術もさまざまな問題を提起している、ただ、脳は私たちの自己認識に重大な影響を持つもので、神経科学のもたらす問題は特に根本的なものになると。

 さらに、どんな技術についても二つの疑問を問うてみる必要がある、こういうふうにこのスタンフォード大学の先生は述べているんです。一つ、その技術が機能するかどうか。二つ目、その技術が機能するとしたらどうするか、どんな技術にもメリット、デメリットがあるというふうに述べているんですけれども、国が環境づくりや整理を行うべきものは、まさしくデメリットまたはリスクをどう軽減するかに尽きるんじゃないかと思うんですけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鶴保国務大臣 御指摘のような御懸念は十分考え得ることでございます。

 ライフサイエンスの研究開発を行う上で、こうした研究の過程に生じる生命倫理的な問題は必然的に起こり得る問題である、しっかりと対処していかなければならないというふうに考えております。

 今後、こうした脳科学分野においても検討すべき生命倫理上の課題が生じる場合には、生命倫理専門調査会においてしっかり検討を行ってまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

松野委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました高井崇志でございます。

 きょうは、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、きょうはまず、去年の十二月に成立をいたしました官民データ活用推進基本法、これは議員立法でございまして、超党派で準備を進めてきた法律でございます。

 実は、少し手前みそになりますが、この法律のもともとの原型は、民主党政権のときに原口総務大臣が、デジタルファースト、いろいろな行政手続なんかをやはりもうこれからは紙ではなくてインターネットでできるようにしよう、デジタルでできるようにしようと。

 これは、実は二〇〇二年に韓国が電子政府法というのをつくって、それで韓国では一気に広がった、それを我が国でも取り入れようということで挑戦をしたときがあったんですが、残念ながら、そのときは成立をさせることが、法案提出もできなかったわけでございます。その後、何年かたって、今、ビッグデータ、オープンデータの時代になりまして、より強固ないい法律になったな、そんな自負をしております。

 特に、去年の十二月、内閣委員会、私も内閣委員会のメンバーでございまして、当時は、例のカジノ法案が急に出てまいりまして、総務委員会は大混乱の中で、到底この議員立法なんか通せないかなという雰囲気だったんですが、関係者の努力によって、本当に針の穴を通すような日程で通すことができた。しかし、私は、この法律は本当に通ってよかったな、非常に重要な、大きな意味のある法律だというふうに思っています。

 きょうは、この官民データ活用推進基本法について幾つかお聞きをしたいと思いますが、まずは、担当する、所管する大臣として、鶴保大臣の、この法律を今後どのように政府としても活用していくかについて、お考えをお聞かせください。

鶴保国務大臣 以前申し上げたことがあるかもしれませんが、各地方の大学等々も何件か視察をさせていただき、そこで必ず言われたことが、データの利活用についての社会をもう少しおおらかにできるようにならないか、特に研究目的についてはしっかりとしたデータ利活用ができないと世界におくれをとるという話を皆さんが言っておられました。

 そんな中、昨年十二月に、御指摘の官民データ活用推進基本法もでき、今後、こうしたことを背景に、同会議において取りまとめる計画においては、我が国のこれからを支える新しいインフラとしてのデータ流通基盤を、官民挙げて取り組む各種施策をつくっていきたいというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、行政手続のオンラインの原則化、あるいはオープンデータの推進、あるいは分野横断的なデータ連携の促進、また、国、地方のシステム改革等を中心として、官民データ利活用に関する具体的施策を盛り込もうと考えております。

 大きな理想を掲げるとともに、重点分野を定め、国民や企業がいち早くデータを利活用できるメリットを享受し、安心、安全、豊かさを実感できるよう、PDCAも含めてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

高井委員 この法律の非常に大事な点は、官民データ活用推進基本計画、これを政府とそれから都道府県にも義務づけたというところに大きな意味があると思っていまして、今後、政府の計画づくり、あるいは都道府県にも、これは総務省が担当することになるのかと思いますけれども、ここが非常に重要になってくる。

 それと、何といってもこの法律は、官民データ活用推進戦略会議が設置され、その議長が内閣総理大臣ということで、総理の権限によって、まあ、各府省それぞれ自分たちの所掌業務があって、なかなかこのIT化、データ活用というのが進んでこなかったという現実があります、そういったものを総理大臣、総理大臣がといっても、総理が現実に細かなことをできるわけじゃありませんから、それにかわって鶴保大臣が各府省に対してこれを指示してやってもらう、やらせるということに肝があると思いますので、大臣の役割は極めて重要だと思いますので、ぜひそこは頑張っていただきたいと思います。

 それでは、少し具体的な中身を聞かせていただきますが、まず第十条、ここがやはり一つ大きな、行政手続のオンライン化原則、デジタルファーストと言われている部分ですが、これは民主党政権のときにやろうと思ってできなかったということを先ほど申し上げましたけれども、あれからまた何年かたって、法律はできなくても、行政手続の電子化、オンライン化はできないかというのは常にチャレンジし続けてきて、一定の成果も上がっていると思いますが、なかなかやはり、正直、例えば隣の韓国などに比べれば全然できていないなという気がするわけでありますが、いよいよこの法律ができたことによって、行政手続のオンライン化はどのようにこれから実行していくお考えでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 官民データ活用推進基本法十条一項におきまして、国は行政手続のオンライン利用を原則とするように必要な措置を講ずるということでございまして、政府としても極めて重要な課題と認識しております。御指摘のとおり、必ずしもこれまでうまくいっていなかった部分もあろうかと思っております。

 このため、IT総合戦略本部のもとにワーキンググループを設置いたしまして、行政手続のオンライン利用を推進するための方策を検討しまして、三月に中間整理を公表してございます。

 この中間整理では、デジタルファーストとともに、コネクテッド・ワンストップ、できるだけワンストップで、ワンスオンリー、一度出した情報は一回で済むようにという原則を立てまして進めてまいりたい。そして、国民や事業者が一つの窓口で必要最小限の資料で電子的に手続が行えるような方向性を記載しているところでございます。

 今後、この中間整理を踏まえまして、原則オンライン化に向けた具体的な対応内容、主体、期日等を記載したアクションプランを策定いたしまして、その内容を官民データ活用推進基本計画に位置づけてまいりたいと考えております。

 また、この計画の策定後におきましても、地方公共団体が行う手続などはこれまでなかなかまだ全て把握されていないというふうな状況にもございますので、これらの手続を全て実態を解明した上で、業務全体の改革、BPRを進めつつ、行政手続の原則オンライン化に向けた取り組みを推進してまいりたいと考えております。

高井委員 今、向井審議官がおっしゃられたように、やはり行政改革とセットだと思うんですね。これは業務の改革を進めていくということに資するものでなければならないと思いますし、一方で、やはり国民の皆さんの利便性確保、まあ、制度ができてもなかなか、私もちょっと事務方からお聞きしましたら、デジタル化したんだけれども、ほとんど利用者がいなくて、結局やめてしまっているというものもあると。やはりこれはまだまだ使い勝手の問題ではないかな。

 パソコンにカードリーダーをつけてやる、マイナンバーカードも今度できますけれども、そういったやり方で本当に普及するのか。一方で、スマートフォンでマイナンバーカードの機能を代替するというような取り組みももう実証実験などが始まって、方針があると聞いていますので、この分野は本当におくれてしまっていますけれども、おくれている分、私は、一周おくれであれば一気に挽回するチャンスもあるんじゃないか、そんなふうに思っていますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 それともう一つ、今度は第十二条に、官民データの円滑な流通を促進するため、データ流通における個人の関与の仕組みの構築というような項目があります。

 これは、個人関与の仕組み、パーソナルデータストアとか、あるいは情報銀行、データ取引市場なんという言葉が新聞などでもたびたび出ており、法案づくりの検討をしているような新聞報道もあるわけですが、この情報銀行を初め、個人がデータの利活用をするに当たって、自分が進んで、これは利活用してほしい、いや、この情報は困るんだというようなことをやはり個人が決めることができないと、個人情報保護の観点からは大きな問題があるわけですが、この第十二条のこの部分についてはどのように取り組んでいくおつもりでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 AI、IoTのもと、潜在力を存分に発揮させ、あるいは超少子高齢化や経済活性化等の我が国の直面する課題の解決につなげるために、官民が保有するデータを積極的に活用することが不可欠であると考えております。

 昨年九月に、鶴保大臣のもと、データ流通環境整備検討会を立ち上げまして、分野横断的なデータ流通、活用に向けて検討し、三月十五日に中間取りまとめを行ったところでございます。

 中間取りまとめの中では、パーソナルデータを含めた多種多様かつ大量のデータの円滑な流通を実現するためには、個人関与のもとでデータ流通、活用を進める仕組みであるパーソナルデータストア、あるいは情報銀行、データ取引市場が有効というふうにされてございます。

 他方で、情報銀行等は、現時点では構想または実証段階のものも含め、分野横断的なデータ活用に向けた動きが出始めてきた段階であると認識してございます。

 このため、情報銀行等の仕組みの社会実装に向けては、今後、事業者、政府等が連携して、実証実験など、社会的にどうやれば取り入れられるかということを研究していく必要があると思っております。

 政府におきましては、その結果などを見ながら、実態に合わせて、分野横断的なデータ流通、活用を促進するための法制度整備につきまして、関係省庁と連携して検討していく予定としてございます。

高井委員 法制度については関係省庁と連携して検討というお答えだったと思います。

 私も、必ずしも法律をつくるべきと思うわけではないんですが、ただ一方で、民間で始まったばかりだ、その動きを見てという御答弁にも聞こえたんですが、しかし、やはりこの分野、政府が率先して促進というか誘導というか、していかないと、結局、消費者、利用者、国民が置き去りにされてしまう、自分たちが関与することなくどんどんデータが使われるということにもなりかねませんので、ぜひここは引き続きよく検討していただきたいなと思います。

 それともう一つ、第十五条ですね。ここでは、情報システムに係る規格の整備、互換性の確保、官民の情報システムの連携を図るための基盤の整備というようなことが書かれておりますが、これも非常に大事な点で、これもまさに民主党政権のときに、こういったことも法案にしようと思っていた部分であります。

 日本の情報システムは、非常にいろいろな、いろいろなといっても大体数社のベンダーがそれぞれのグループを持っていて、地方自治体のシステムなんかも大体その数社のベンダーが構築をしていて、そして、お互いの互換性がない。ですから、一旦発注したベンダーにシステムの改修をお願いしても、そのベンダーの系列のところでしかできない。

 全国統一で一個のシステムをつくればコストも安くなるんじゃないかと、実は、きょうは質問しませんけれども、国保の厚労省のシステムでそういうシステムをやろうとしたところ、それは全国一律の、あるベンダーのシステムになったんですけれども、では今度、それを全国の自治体に入れていこうと思うと、それぞれの自治体がそこのベンダーとは違う系列のシステムをほかのシステムでは組んでいるものですから、そこの互換性が確保されなくて、結局、何か結果的には高い値段を取られてしまったなんという具体的な事例もあって、私は、やはり我が国のベンダーロックインと言われる、情報システムが幾つかのグループの本当に縄張りになっていて、それがなかなか互換性が確保されない、このことが、情報システムに国も地方自治体も非常に多くの予算を費やすことにもなり、また利便性も悪くなっていくと考えております。

 そういう意味では、この第十五条というのは非常に重要な規定だと思いますが、今申し上げたベンダーロックインの我が国の状況などは、政府としてどのように認識をしていて、それをどのように改善していく考えか、お聞きいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、いろいろなシステムが、国、地方を通じて、あるいは国の関係団体も通じて、ばらばらに構築されているということから、幾つかの問題が生じていると考えております。

 一つは、データ構造が全部違っていて、同じ名前がついていても中身が違ったりするので互換性がないような場合、それから、語彙が違うというふうな場合がございます。これらについては、データ構造の標準化の推進、それから共通語彙基盤の利用の促進、さらに、API機能の整備、連携等を推進するということが必要になってこようかと思います。

 一方で、御指摘のベンダーロックインにつきましてもいろいろな要因があろうかなと。

 一つは、やはり調達する側の規模が小さいといいますか、市町村等の場合でございますけれども、なかなか、調達する側にそういうITリテラシーの問題があったりして丸投げをしてしまう、その結果としてベンダーロックインになる場合、一方で、例えば国で巨大調達をする場合に、一つの会社では受け切れないがためにコンソーシアムを組む場合、いろいろなパターンがあろうかと思っております。

 ただ、これらにつきましても、これまで見てまいりましたけれども、やはり発注側にベンダーをある程度コントロールできるだけの力量が必ずしも十分ではないのかなという気もしております。

 御指摘の国保なんかにつきましても、やはり私どもIT総合室で直接乗り込んでいって交渉の場にも関与するぐらいの、そういう気構えでやっていく必要があるのかなと。

 さらに、できるだけばらばらにつくらせることをやめさせて、例えば地方自治体にシステムをつくるための補助金を配るというんだったら、国一本でつくるなり、あるいはアプリをつくって配るなり、そういうふうな方策をやはり細かく今後見ていく必要があるのではないか。それによって、できるだけ安く、効率的な調達を行う必要があろうかなと思っております。

高井委員 まさに向井審議官のおっしゃるとおりで、わかっていらっしゃるならぜひ実行していただきたいと思いますね。

 本当に、発注側なんですよね、自治体。でも、日本は千七百十八も自治体があって、それぞれ小さな市町村にとてもそんな発注能力はありませんから、やはりそこをどうやってまとめていくかということだと思います。

 さっきから韓国の話ばかりして恐縮ですけれども、実は韓国は、この間、総務委員会でも申し上げましたが、地方自治体の共同法人があって、そこが一個のシステムを国費でつくって、それを全自治体に無償で提供しているということをやっているんですね。

 しかし、その韓国が実はモデルにしたのは、日本の今のJ―LISと言われる、昔はLASDEC、地方自治情報センターを、韓国は、日本もいい取り組みをやっているといってモデルにして、やったのに、いつの間にか向こうははるか先を進んで、我が国はおくれているという実態でありますから、本当に今、向井審議官がおっしゃったとおりなので、ぜひこれは各省に乗り込んでいって。

 ただ、そういう意味でいうと、向井審議官ばかり責めるのは申しわけないと思うのは、やはり人が足りない、人も権限も予算もこのIT総合戦略室は足りないわけでありますので、これはぜひ大臣の政治力で人を本当にふやしていただきたいなと。これは私は官房長官にも内閣委員会で何度もお願いしているんですけれども、ここをやることによって飛躍的にいろいろな、情報通信の話だけじゃなくて、世の中の仕組みそのものも大きく変わっていく、IT、ICTというのはそういう手段でありますので、ぜひここは力を入れて取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、少し話題がかわりますが、シェアリングエコノミーというものがあります。

 これもITによって世の中が大きく変わるという代表例だと私は思っているんですけれども、物であるとか場所、スペースであるとか、あるいはお金とか労働力といったリソース、それから移動手段、こういったものをみんなでシェアしよう、共有しよう、そういう取り組みであります。これはインターネットの世界になったら、もう避けて通れない、世界的にもそういう流れが起きておりますし、当然、我が国にもそういったサービスが順次始まっているわけです。

 これは内閣官房で、鶴保大臣のところで所管をされ、いろいろな検討をしていただいていると聞いておりますが、このシェアリングエコノミーについてどのように評価をされておられ、そしてまた、その将来性はどのように考えておられるか、お聞かせください。

鶴保国務大臣 御指摘のように、シェアリングエコノミーは、さまざまな分野でさまざまなアイデアが生まれ、そしてビジネス、サービスが日々登場しておるという認識であります。恐らく、こうしたことが地域活性やあるいはビジネスの創出等々に大きな役割を果たしていくのではないかという期待がある反面、さまざまな問題も提起されております。

 民泊等々で言われておりますとおり、安全性の確保、あるいは納税者、納税義務が果たして履行されているのか、事業として認定がされていない状況でそれを誰が納税するのか等々、こうした問題がある中で、これからシェアリングエコノミーというものをいかにしてつくっていくか、いかにして利用していくかという方向で考えざるを得ない中でありますから、私たちとしては、ルール設計をしっかりと構築し、国民の理解が得られる形でしていくべきであるというふうに思います。

 具体的には、CツーCであるがゆえに安全性や信頼性の確保が必要であるということの認知徹底、そしてまた、ビジネスとして社会の実装化が進められる順序、例えば、過疎の村で宿泊施設が全くないようなところで民泊を先行的に施行するであるとか、あるいはプラットフォーマーと言われるような方々の責任をどうしていくか等々についての一般的な考え方は、我々の方で考えていくべきなのではないかというふうに考えております。

高井委員 もちろん課題がたくさんあることは承知しており、この後の質問でお聞きしたいと思うんですが、ただ一方で、やはり私は、世の中の大きな流れの中でその課題をどう解決していくか。この流れをもうとめることはできないし、我が国だけとめたってとまらないし、あるいは、もし無理やりとめたら、それは我が国が本当におくれてしまうことになるわけであります。

 やはり、シェアリング産業というのを一つ一つの産業で見るといろいろな課題があるんですが、私はよく申し上げるんですけれども、政府の中で大局的見地で検討するところがまだないんじゃないか。それはやはり内閣官房、鶴保大臣のところでやっていただきたいと思うんです。

 例えば、私はスウェーデン政府がつくったビデオを見せてもらったことがあります。スウェーデン政府は、シェアリングエコノミーがどんどん広がって、AI、自動運転の時代になると、もう自家用車というものがなくなるんだ。自家用車がなくなって、車がどんどんどんどん動いていて、そこに手を挙げた人がどんどん乗り合わせていって、移動手段がそうなっていく。そうなると、何が起こるかというと、実はスウェーデンの国土の二〇%が駐車場なんだそうですね。そうすると、二〇%の駐車場が要らなくなる。そうなったら、そこにスキー場ができます、公園ができますみたいな話をしているわけですね。

 実は、日本の中でも、あのトヨタ自動車がですよ、もう自動運転になったら車は売れなくなるというか、自家用車という概念はなくなる、そうなったときに自分たちはどう生き残っていくかということを、トヨタではチームをつくってもう検討しているという話も聞きました。

 やはり、こういう少し先の将来を見据えた検討というのを政府のどこかの機関がやらなきゃいけないんだというふうに私は思っていますが、それをやるのは、今は内閣官房だと思います。私は実は、これはもっと、総務省とか経済産業省とかも、それぞれ一つの課ぐらいつくってやるべきだということをいつも申し上げておりますが、きょうは内閣官房だけですので、指摘するにとどめたいと思います。

 一方で、今大臣からお話のあった負の側面、課題もあるわけです。民泊とライドシェアの話が出ましたけれども、特にライドシェアなどは、諸外国でも、乗り合わせたら凶悪犯罪に遭う、強盗とかレイプとか、そういった例が後を絶たない部分もあるわけです。

 やはりそういった面をあわせて考えていかなきゃならないわけでありますけれども、その辺の負の側面については政府としてはどのように考えておりますでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 シェアリングエコノミーはいろいろな主体が参画いたしますので、御指摘のような負の側面というのはあろうかと考えております。特に、シェアリングエコノミーをめぐりまして、安全性、信頼性の確保ということで、特に我が国では、他国と比較して、情報通信白書などの指摘にもありますように、事故やトラブル時の対応に不安とする消費者の声が多いのかなと思っております。

 IT戦略室におきましては、昨年七月からシェアリングエコノミー検討会議を開催いたしました。そこで多数のシェアリング事業者からヒアリングをいたしまして、いろいろなシェアリングがあるんだなと。一方で、彼らも真面目にやっているけれども、いろいろな課題も抱えていることもちゃんとお聞きいたしました。そういう団体からは、やはり消費者が安心してサービスを利用できる環境の整備について国も協力してほしいというふうな要望もいただいたところでございます。

 その検討会議におきまして、昨年十一月に、シェアリングエコノミー推進プログラムというのを公表してございます。これらで、できるだけ、例えば事業者の方も弁護士を使ったり、あるいは公的な紛争解決機関を使うなど、いろいろな努力をしながらそういう信頼を得ていく、一方で、私どももそういうふうな事業者の御努力に対して何らかの後押しをしていくというふうな方向性で進めてまいるということで、このシェアリング推進プログラムに基づきまして、民間団体等による自主ルールの普及、展開を通じて、その普及、展開に政府が関与することによりまして、安全性、信頼性の確保等に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

高井委員 今申し上げた負の側面、そういった面をやはり克服していかないとシェアリングエコノミーは進まない。相反する概念かもしれませんけれども、しかし、それを相反すると言ってしまったらもう終わってしまうので、そこをぜひ政府にも力を入れて取り組んでいただきたいと思っております。

 私も、シェアリングエコノミー協会という、シェアリングエコノミー事業者が百数十社加盟されている団体とよく意見交換をして、内閣官房の取り組みには非常に評価をされておられますけれども、やはりまだまだベンチャー企業が多い分野でありますし、こういったベンチャー企業をもっともっと政府として支援していくべきではないか。

 あるいは、やはり規制緩和も大きな問題で、規制は各省庁がそれぞれ持っています。なかなかシェアリングエコノミーの観点から政府として意見を言ってくれる組織というのはないものですから、やはりこれは内閣官房が中心に各省庁に対して規制緩和を求めていくということも必要ではないかと思いますが、そのあたりの取り組みはいかがでしょうか。

向井政府参考人 お答えいたします。

 昨年十一月に公表いたしましたシェアリングエコノミー推進プログラムを踏まえまして、本年一月、内閣官房IT総合戦略室にシェアリングエコノミー促進室というのを設置したところでございます。

 このシェアリングエコノミー促進室は、広報、情報提供、相談対応のほか、業界団体による自主ルールの普及促進、関係府省との連絡調整等の取り組みを推進する機能を担うこととしてございます。本年一月の促進室の設置以来、数多くのシェア事業者から相談、四月十二日現在で四十六件寄せられております。関係法令や支援スキームについて、関係府省との連絡調整、地方自治体への紹介等の支援を行っているところでございます。

 今後とも、促進室を通じまして、シェアリングエコノミー企業からのニーズに適切に対応していく、また、委員御指摘の規制に関する要望等が寄せられた場合には、グレーゾーン解消制度とか企業実証特例制度、各省でやってございます活用支援や規制改革推進会議との連絡調整を図るなど、関係府省としっかり連携して対応してまいりたいというふうに考えております。

高井委員 我が党にもシェアリングエコノミー研究会議員連盟というのを立ち上げ、私は事務局長をさせてもらっていますが、どうも、シェアリングエコノミーという言葉だけで、既存業界といいましょうか、旅館業とか、あるいはタクシー、ハイヤーの業界、公共交通は非常にアレルギーがやはりあるわけですね。当然だと思います。負の側面もあるし、雇用が奪われるという不安もあるわけです。

 しかし、さはさりながら、そういった皆さんの不安を解消していけるようにしていくということが何よりこのシェアリングエコノミーの普及にとって大事だと思いますし、繰り返しますけれども、このシェアリングエコノミーそのものがなくなるということはもうこのインターネットの時代にあり得ないと思っていますので、いかにそういった既存業界の方と折り合いながら進めていくかというのが課題だと思いますので、ぜひこれは内閣官房で、鶴保大臣、頑張っていただきたいと思います。

 実は、フィンテック、金融のIT化、これも同じような話でございまして、私は、フィンテックというのは、金融業のIT化じゃなくて、世の中の仕組み、町づくりを全部変える、そんなようなものだと思っております。

 きょう、松尾参事官に来ていただきましたが、実はあす、フィンテック法の審議が財務金融委員会であって、私は質問に立つことになりましたので、ちょっとこれは飛ばさせていただいて、後で時間があったらお聞きをしたいと思います。

 このフィンテックも、本当に、金融庁には申しわけないんですけれども、金融庁だけがやる話じゃなくて、私は、内閣官房であったり総務省、あるいは経産省、特にやはり内閣官房、ICTという観点から、フィンテック担当の部署をシェアリングエコノミーと同じように置いて、やはり、金融の視点じゃない、ICTの視点からやるべきだと思いますので、それはちょっと御検討いただきたいと思います。

 それでは、次の話に行きますが、きょうは文科省にも、初等中等教育局長に来ていただいたので、デジタル教科書のことをお聞きしたいと思います。

 今、超党派で教育の情報化議員連盟というのをやって、法律をつくろうとしています。情報化教育の基本法をつくって、今、もう素案はできて、各党に持ち帰って検討いただいている段階です。

 その中に、教科書というのは、今、紙が前提なんですね。法律上、全部紙を前提にした書きぶりになっています。しかし、これからデジタル教科書というのが出てきたら、これはやはりいろいろな点を、著作権の問題であったり、あるいは教科書予算というのは約四百億ぐらいだと思うんですけれども、これは紙の教科書をつくるための予算なんですが、これも私は、これからデジタルの時代ですから、副読本的な扱いじゃなくて、きちんと教科書と位置づけて、紙をなくせとは言いません、紙と併用でいいと思いますけれども、紙とデジタルの教科書を両方併用してこれは進めていくということを文部科学省においても考えていただかなきゃいけないと思いますが、そういったことに対する検討状況や今後のお考えをお聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねのデジタル教科書についてでございますが、文部科学省の有識者会議におきまして検討を行いまして、昨年の十二月に報告書を取りまとめております。

 この最終報告におきましては、少なくとも、デジタル教科書の導入段階につきましては、基本的には、紙の教科書を基本としながら、デジタル教科書を併用できるようにすることが適当であるということとした上で、デジタル教科書については、教科の一部の学習に当たって、紙の教科書にかえて使用することで、教科書の使用義務の履行を認める特別の教材として位置づけることが適当であるという提言をいただいております。

 文部科学省といたしましては、今後、この最終報告の内容も踏まえまして、さらに具体的な制度の設計について検討していきたいと考えております。

高井委員 ちょっと、わかったようなわからないようなお答えだったんですが。

 有識者の検討結果を尊重するのもいいですけれども、我々、議員連盟で国会議員同士が相当頻繁にこの議論をやっておりますので、その法律もつくりますから、ぜひそれも踏まえて、特に著作権の扱いとかは非常に重要だと思いますし、予算の問題も重要だと思います。

 もうこれも時代の流れですよ。教科書だけいつまでも紙で未来永劫いくなんてことはあり得ないので、だったら、やはり一歩先んじて、先手先手を打っていくということを、特に教科書業界はサイクルが長いので、学習指導要領をつくっていっても、十年スパンで動く世界ですから、早目早目にやらないと本当におくれていってしまいますので、ぜひこれは、局長、生涯学習局の方は情報化は結構頑張っているんですけれども、この初等中等教育局が情報化というのをもっと受けとめていただかないと、本当に時代に取り残されますから、これはお願いしたいと思います。

 それと、次にデジタルアーカイブ等についてお話をお聞きしたいと思います。

 我が国でいろいろな、本とか、絵画とか、映画とか、写真とか、地図とか、あるいは動画、こういったものをもうインターネットでどんどん見られる時代でありますが、実は我が国で、ポータルサイトと呼ばれる、ここを検索したらいろいろなそういう文化財とかが見られますよというものは極めて貧弱であります。

 これは、この問題に一生懸命取り組んでいる中村伊知哉さんという慶応の教授、実は総務省の私の元上司なんですけれども、この中村さんのブログのコメントなのでちょっと正しいかどうか確認できていませんけれども、中村さんによると、ヨーロッパでは、EUではヨーロピアーナというEU横断の検索サイトがあって、三千万点のものが検索できる、ところが、日本の国立国会図書館はたった四十八万点だ、予算額を比較すると、フランスではサルコジ政権のときに一千億円、このポータルサイト作成に予算をとった、しかし、日本はわずか二千万円しか使っていない、ちなみに、二千万円というのは道路工事の二十五センチ分だと、こういう全く貧弱な、アメリカの国立公文書館の職員は二千五百名いるそうですが、日本の公文書館には五十名しかいないとか、二桁違うわけです。

 ところが、このヨーロピアーナを検索すると、実はジャパンという検索語は何と四位に入っている。ですから、皆さんはジャパンには関心があるんですけれども、ところが、日本のデジタルアーカイブは貧弱だから全然ヒットしなくて、本当は漫画とかJポップとかファッションとかに皆さんは興味があるんですけれども、そんなものが全然検索にかからない、そういう状況になっています。

 私は、このヨーロピアーナ並みとまではいかなくても、やはりもうちょっとこのデジタルアーカイブ、日本は真剣に取り組むべきだと思いますが、いかがですか。

井内政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、ヨーロッパ、EUにおきましては、ヨーロピアーナというデジタルアーカイブが構築されておりますし、そのほかの国につきましても、国主導でのデジタルアーカイブの整備が進展しているというふうに認識をしているところでございます。

 一方、我が国におきましては、書籍でございますとか文化財などの分野ごとにデジタルアーカイブの構築が進められてきているところでございますけれども、諸外国のような分野横断的なアーカイブの連携というのは十分にできていないというふうに認識をしているところでございます。

 我が国におきましても、分野あるいは地域横断のデジタルアーカイブを構築して日本の知識を集約することによりまして、教育、防災、ビジネスへの利活用でございますとか、さらには、インバウンドの促進でございますとか、海外における日本研究への活用が期待できるのではないかというふうに考えているところでございます。

 このような認識に基づきまして、内閣府におきましては、一昨年の九月に関係省庁等連絡会及び実務者協議会というものを設置いたしまして、分野、地域横断の統合ポータルサイトの構築を目指しまして、まずは、各分野、地域のアーカイブの連携のあり方でございますとか、連携に当たっての目録所在等情報、いわゆるメタデータの標準化や公開ルールのあり方につきまして、国立国会図書館でございますとか関係省庁、関係機関等とともに議論を重ねてきたところでございます。

 今後、このような内容を政府全体の知財戦略でございます知的財産推進計画に反映することによりまして、関係省庁、機関の連携をさらに深めまして、我が国における分野、地域横断のアーカイブの構築に向けた取り組みを加速化してまいりたいと考えているところでございます。

松野委員長 鶴保大臣はよろしいですか、デジタルアーカイブ。

鶴保国務大臣 個人的には大変進めたいと思っておりますが、今審議官が答弁をした取り組みを強力に後押ししていきたいというふうに思います。国会等々で委員長とも、過去にこのアーカイブ運動を進めさせていただいた経緯もございます。先生方の御議論をいただきながら、しっかりやらせていただきます。

高井委員 これは本当に予算が大事なんですね。今審議官は予算のない中でやれることをるる御説明いただきましたけれども、やはり予算をとってこないとどうしようもないので、これはもう大臣しかできませんから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 それで、同じデジタルアーカイブで関連してちょっとお聞きしたいんですが、内閣官房で「我が国におけるデジタルアーカイブ推進の方向性」というのを取りまとめられて、ジャパンサーチなるポータルサイトができるということでありますが、やはりこれは地域でそれぞれアーカイブを整備するということが大事なんですね。

 ですから、実は二つ質問通告しているのを一個にまとめますけれども、震災アーカイブというのも、これは実は総務省なんですけれども、非常に力を入れて、東日本大震災のときにアーカイブをたくさんいろいろな場所でつくってくれました。先般、熊本地震でもアーカイブがつくられて、震災の記録をしっかり映像で、動画で、あるいは写真で残しておくということが大事ですが、これはやはり、自治体がやるには構築費用と運営費用が大変過大だと聞いて、なかなか自治体だけでやることは難しい面があります。

 今まさに、さっきのヨーロピアーナみたいなものを国として進めていくという意味でも、自治体がこうやって整備していくことに対して国として何か支援ができないのか、あるいは資料収集なんかをお手伝いできないのかと考えますが、いかがですか。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 大規模な災害の経験を教訓といたしまして、今後の災害対応に生かしていく観点で、災害対応の経験を教訓に加えまして、被害の実情とか復旧復興に関しますさまざまな情報につきまして、後世に残すアーカイブをつくることは大変重要と考えております。

 こういったふうなアーカイブの構築に当たりましては、さまざまな機関が有しますデータの情報収集であったりとかデジタル化、分類や検索のためのタグづけ等の作業にさまざまな能力が必要になってまいりまして、東日本大震災につきましては各自治体に対しまして、そしてまた、平成二十八年度におきましては熊本県に対しまして、財政的な支援が行われたところでございます。

 また、現在、東日本大震災のポータルサイトを運営しております国会図書館の知見も活用しながら、大規模災害に関します情報の収集、保存、活用の仕組み等の諸課題につきまして検討を進めておりまして、熊本県とも連携いたしまして、円滑にアーカイブの構築やその活用が進んでいきますように取り組んでいきたいと考えております。

井内政府参考人 デジタルアーカイブ全体と地域との関係についてお答えいたしますけれども、御指摘のとおり、分野、地域横断のデジタルアーカイブを構築していく上におきましては、地域においてもアーカイブの整備をしていくことが非常に重要であるというふうに考えております。しかしながら、地域においてそういったものを構築するためには、財政上の課題に加えまして、技術や法務上の専門知識を有するスタッフが不足しているであるとか、あるいは相談する相手が近くにいないとか、そういった課題も指摘されております。

 このため、今年度は、地域におきますアーカイブの構築と連携の促進に向けまして、そのように指摘されている課題に関しまして、各機関の協力や連携のあり方を検討することというふうにしております。

 また、地域ごとのアーカイブにおきまして、メタデータの共有化を促進するつなぎ役への支援のあり方につきましても、関係省庁などと連携しながら検討してまいりたいというふうに思っているところでございます。

高井委員 これは本当に予算の問題だと思いますので、ぜひ大臣、お願いいたします。

 最後に、もう時間だと思うので、もう一問だけ。

 これは大臣に多分通告していたと思うんですけれども、今、個人情報保護の関連で、個人情報千二百六十万件も去年一年で漏えいしてしまったという問題があります。これを、仮に漏えいしたとしても、今いろいろな技術で、暗号化されて、万一漏えいしたときに見えなくなってしまうという技術があって、民間企業なんかは結構そういうのを入れている会社があります。

 私は、国においてもこういったものを推奨していくことによって、これを普及させていく、例えば、個人情報保護規則で、こういった場合は漏えいしても漏えいに当たらないというようなことをやっていくことによって、過度な負担が自治体職員とかにもかからなくなるんじゃないかと考えますが、大臣のお考え、いかがですか。

鶴保国務大臣 この御質問を受けたときに、事務方も相当調べたようであります。具体的な詳細なところにちょっと行き当たらなかったみたいで、そういった仕組みがあるのであれば、ぜひそれは、先生御指摘のような重要な技術だと思いますから、前向きにというよりも積極的にこれは導入の方向で検討したいというふうに思います。

 先生方、また先生の情報等々、ぜひ提供していただけることをお願い申し上げたいというふうに思います。

高井委員 非常に前向きな答弁を最後にありがとうございました。

 以上で終わります。ありがとうございました。

松野委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 昨年に引き続き、バイオセーフティーレベル4、BSL4施設を中核とした感染症研究拠点の長崎大学への設置問題について質問します。

 二〇一四年三月の日本学術会議の提言では、「国内でのBSL―4施設建設の要件」の一つに「地域住民の合意」を挙げ、地元自治体及び近隣地域住民との信頼関係の確立が不可欠であるとしています。昨年、私の質問に、当時の島尻大臣は、施設の建設等を行うに当たりましては、その必要性、そして安全性などについて、関係する住民の皆様に誠心誠意説明を行って、信頼関係を確立していくということは非常に重要だと答弁されました。

 鶴保大臣にも確認します。

 BSL4施設建設に当たっては、地域住民の合意が非常に大事だ、不可欠だと思いますが、いかがお考えでしょうか。

鶴保国務大臣 まず、前提といたしまして、地域住民の合意は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則第三十一条の二十七で規定する一種病原体等取扱施設の基準の指定要件とはなっておりません。おりませんが、委員御指摘のとおり、これらの施設についての住民の懸念は合理的なものであるというふうに考えております。

 これまでの国立感染症研究所の取り組み等々も参考にしながら、周辺の住民の方々にも必要性や運用体制等をしっかり説明し、理解の促進に向けた取り組みを継続していくことが重要であると考えております。

真島委員 私、先日、現地に行ってきました。配付資料一は、長崎大学医学部、通称坂本キャンパスの地図ですが、このように民家に囲まれた住宅密集地で、建設候補地から最短の民家まで五十メートル、南側には長崎大学病院、北側には浦上天主堂、西北西約五百メートルには多くの観光客が来訪している原爆爆心地公園があります。

 配付資料二の写真の三ですが、これは医学部キャンパス東側の住宅地とBSL3施設の間の道路です。非常にオープンなキャンパスで、地域住民は自由に敷地に入って通り抜けができる、フェンスもこのように低くてすぐに乗り越えられるという大学キャンパスです。

 これを見たら、本当に近隣住民から、安全性への不安や、何でこの住宅密集地なのかという疑問の声、思いが出るのも当然だと思うんです。

 昨年の私の質問に、厚労省は、武蔵村山市の国立感染症研究所のBSL4施設が、一九八一年に整備後、感染症法に基づく厚労大臣指定を受ける二〇一五年まで三十四年間も運用しなかったのは、地元住民の方々の御理解を十分には得ることができなかったからで、今後の指定においても同様に、住民の方々の十分な御理解をいただくことが極めて重要だと答えられました。

 厚労省に確認しますが、武蔵村山市の国立感染症研究所の教訓を踏まえ、長崎大学へのBSL4施設建設の感染症法に基づく厚労大臣指定を行う際も、近隣住民の理解を得ることが大前提になると思いますが、いかがでしょうか。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 私ども厚生労働省といたしましては、施設の完成後には、施設基準に合致しているか等、安全性の観点から審査を行いまして、施設の安全性を確保した上で、感染症法に基づき、特定一種病原体等所持施設として指定を行うことになります。

 国立感染症研究所村山庁舎を特定一種病原体等所持施設として指定いたしました際には、施設見学会や説明会も継続的に実施し、積極的な情報開示や地域コミュニケーションを推進すること、これを厚生労働大臣が武蔵村山市長との間で確認いたしまして、地元住民の理解を得るための取り組みを進めているところでございます。

 長崎大学など今後の指定におきましても、積極的な情報開示や地域コミュニケーションを推進することにより、地元住民の理解を得るよう取り組むことが重要と考えております。

真島委員 昨年の本委員会での私の質問に、吉岡てつを内閣官房審議官は、昨年二月九日の感染症対策関係閣僚会議で決めた基本計画は、BSL4施設の長崎大学への設置を国が認め、それを支援することを決めたものではなく、今後の長崎大学の検討、調整状況等も踏まえつつ、必要な支援を行うものだと、当時の時点では、地域住民の理解が得られているとは判断していないと答弁されました。

 また、坂本キャンパス案についても、地元住民の理解を得られていると判断しているのかと文科省に問いましたら、地元住民の理解を得るために引き続き努力が必要と認識していると答弁をされて、当時の時点では、坂本キャンパスありきではないということを確認いたしました。

 配付資料三に、文科省が作成しましたBSL4施設に係る議論の経緯を示しています。

 昨年の十一月十七日の関係閣僚会議において、長崎大学のBSL4施設整備に係る国の関与について、長崎大学が坂本キャンパスに整備を予定しているBSL4施設について必要な支援を行うと決定をされております。つまり、その閣僚会議で、坂本キャンパスへのBSL4施設設置について住民の合意は得られたと判断をしたということなんでしょうか。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、昨年の五月の本委員会におきまして、議員からの御質問に対しまして、文科省といたしまして、一層の地元の御理解を得るために、長崎大学によるさらなる取り組みが必要である旨お答えをさせていただいたところでございます。

 また、政府といたしまして、昨年の二月の関係閣僚会議におきまして、国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画で、BSL4施設を中核とした感染症研究拠点の形成について、長崎大学の検討、調整状況等も踏まえつつ、必要な支援を行っていくということを決めたところでございます。

 その後、長崎大学による地元の理解促進を図るための取り組み等の状況も踏まえまして、昨年十一月十七日に、長崎大学が坂本キャンパスに整備を予定しておりますBSL4施設を中核とした感染症研究拠点の形成について、長崎大学に対し必要な支援を行うことを同関係閣僚会議では決定をしたところでございます。

真島委員 質問したことに答えられていないんですけれども、その閣僚会議で、だから、去年の質問の時点では、まだ理解が得られていない、長崎大学の努力を見守ると言われたわけですよね、住民の理解が大事だから。そこでそのように判断されたということは、その時点で住民の合意を得られたという判断をされたのか。そして、判断をされたとすれば、もう一つ一緒に答えてください、その根拠は何でしょうか。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 長崎大学のBSL4施設の整備に当たりましては、地元の理解を得るための不断の努力を行うことが重要であるというふうに考えてございます。そのため、長崎大学は地元への説明を継続的に行っていくべきというふうに考えております。

 これまで、長崎大学は、長崎県、長崎市と連携して開催する地域連絡協議会で説明を行うとともに、自治会等での説明会あるいは市民講座、公開講座などを、合計いたしますと百回以上開催するほか、国といたしましても、地域連絡協議会、自治会等への説明会に参加をいたしまして、必要に応じて国の立場あるいは支援策等について御説明をしてきたところでございます。さらに、昨年の十月には、住民向けの公開シンポジウムを文科省と長崎大学で共催するなどの取り組みを行ってきたところでございます。

 文科省といたしましては、これらを総合的に勘案して、一定の理解は広がっているのではないかというふうに認識をしているところでございます。

 また、長崎県及び長崎市におきましても、市民の理解は着実に広がっていると認識していると伺っております。昨年十一月二十二日には、これらの自治体が長崎大学のBSL4施設整備計画の事業化に協力することで合意がなされたというふうに承知をしてございます。

真島委員 総合的に勘案して理解が広がったと判断したということなんですけれども、これまでも何度もレクを受けてきたんですけれども、具体的な根拠というのはなかなか示されなくて、現地の地域連絡協議会に毎回行かれている職員の方、文科省の方からも聞いたら、理解が進んでいると私が感じたんだという自分の主観的な感想を言うだけで、客観的な根拠は何も示されないんです。

 昨年十二月二十五日の長崎新聞で、地域連絡協議会の委員になっている山里中央自治会長道津靖子さんのことを報じています。

 道津さんは、長崎大学薬学部を卒業後、医学部で助手を務め、結婚退職後三十年間、坂本キャンパスの近くで暮らしている。一昨年の長崎大の自治会対象の説明会で、大学が非常に過信しているということを感じて、最も危険な病原体を扱うのならば、安全対策として住宅地から離れた場所につくるべきだとの思いが強まったと。昨年四月に住民に推されて自治会長に就任し、地域連絡協議会で、不安を抱える住民の気持ちを懸命に代弁してきたとおっしゃっています。

 道津さんはこのようにおっしゃっています。グローバル化が進み、日本でも危険な感染症の脅威が高まっているのは理解しているし、施設の必要性はわかっている。だが、事故のリスクはゼロではないと大学側も認める施設をなぜ住宅密集地につくるのか。安全神話を繰り返すような大学側の説明を聞いても、根源的な不安がどうしても消えない。もしBSL4施設ができれば、未来永劫、不安と向き合わねばならない。私たちは、ただ、不安がない普通の暮らしがしたいだけだとおっしゃっている。

 当然の思いだと思うんですね。

 昨年五月の質問で、文部科学省は、長崎大学、長崎県、長崎市の三者による連絡協議会、そのもとに設置された地域連絡協議会の検討を注視しますと、先ほどおっしゃったように、おっしゃいました。この地域連絡協議会には七人の自治会長さんが入っておりますけれども、その七人の方の賛成、反対、中立、坂本キャンパス設置について、それぞれどうなっているでしょうか。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘の地域連絡協議会につきましては、平成二十七年六月に締結いたしました長崎県、長崎市、長崎大学……(真島委員「説明はいいですから、結論だけでいいです」と呼ぶ)はい。

 それで、この地域連絡協議会につきましては、BSL4施設を中核とする感染症研究拠点整備に関する検討を行うに当たりまして、検討状況を地域住民の方に情報提供を行う、それから、地域住民の方々の安全、安心の確保等について協議をするということを目的として設置をしているところでございます。

 したがいまして、この協議会におきましては、長崎大学が地域住民の御意見を伺うさまざまな方策の一つとして、大学周辺の自治会長の方々に御参加いただいているものでございまして、この自治会長の方々に対しましてその賛否の表明をお願いしますというような仕組みにはなっていないというふうに承知をしてございます。

真島委員 三月に新しく発足したBSL4施設設置の中止を求める自治会・市民連絡会、その会長につかれた山田一俊上野町東部自治会長に先日お話を聞きました。

 自治会がとるアンケートの回答率はほとんどの場合で低調だが、本件では回収率が高く、集計すると、おおむね反対が六割、わからないが三割、賛成一割だった。自由記述も多く、住民の関心は非常に高い。地域連絡協議会の委員をしている七人の自治会長のうち、アンケートをして、自治会を代表して反対を表明している会長が二人、あとの会長さんは、自分は個人として参加している、発言は個人の意見だと言っている。この協議会の議論を見て住民の理解が進んでいるかどうかは判断できないはずだと。

 先ほど、地域連絡協議会の状況をもって理解が進んでいると一つの要因として言われたんですけれども、昨年十一月四日の第七回有識者会議でも、オブザーバーの方から次のような意見が出ています。地域連絡協議会が住民の声を聞く場になっていない、自治会長個人の賛成意見でその自治会は賛成ということになりかねない、それで大学が地域住民の理解を得られていると言っても、それは違うと。

 これに対して、ある委員が、本会議ではそういう自治会もあるということを受けとめた上で検討することにしたいとおっしゃっております。

 連絡協議会の議論を見守るとかねがねおっしゃっているんですが、それだけでは住民の理解は判断できないんじゃないか。

 私は先日現地に行きまして、配付資料二の写真の一、これは昨年五月の質問で示したときの長崎大学医学部キャンパスの近くに近隣住民の皆さんが立てられた看板なんですね。それが今、二のようになっております。自治会名が四自治会から十自治会にふえて、反対表明市民数が三千四百三十五名と書かれております。

 昨年五月に私が質問した際、反対の意思表明をしていた自治会は二十自治会でしたが、今、二十六自治会に広がっています。三月二十八日には、坂本キャンパスに近い七自治会と長崎大学の教授、名誉教授六氏などが呼びかけて、BSL4施設設置の中止を求める自治会・市民連絡会が設立されまして、約百八十人が参加して決起集会を開いております。

 誰が見ても、住民の理解が進んでいるどころか、反対が広がっているというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 長崎大学のBSL4施設につきましては、さまざまな御意見があることは承知をしてございます。

 長崎大学におきましては、こういった住民の方々の意見も踏まえつつ、さらなる御理解を得るために不断の努力をしていくことが重要であるというふうに考えてございます。

 なかなか、このBSL4施設で扱うものにつきましては、専門性が高いこともあり、また病原体ウイルスは目に見えないというところもあり、御理解が進んでいない要因の一つかと思いますが、大学には地元への説明を継続的に行っていくべきであると考えており、文部科学省といたしましても、そのために必要な支援も行っていきたいと考えておりますし、また、私ども、三月にこのBSL4施設云々に関します監理委員会というものをつくりまして、長崎大学の住民への理解促進につきましてチェックをしっかり行っていきたいというふうに考えてございます。

真島委員 さまざまな意見がある、不断の努力が必要だ、当たり前のことなんですよ。

 問題は、こんな状況で、去年の私が質問したときよりも明らかに反対の声が広がっているのに、去年の時点で理解が広がっていないからまだ坂本設置を決めるのは早過ぎるとおっしゃっていたのに、何でこう判断されたのかというのが非常に疑問なんですね。

 長崎大学は、一〇〇%安全、リスクはゼロとは言わないとして、テロや人為的ミスを含め、万が一の事態に備えた対応や補償についても検討していきます、また、地震、津波、豪雨、台風、火山など自然災害に対する対応についても、絶対に安全というものはないことを前提に今後の作業を進めていきますと住民に説明しています。

 最悪の事態として、近隣住民等に感染症が発生する被害、そのことによる長崎市民の生活への深刻な影響や同市の観光への深刻な風評被害ということも想定しているんでしょうか。

松野委員長 板倉君、簡潔に。

板倉政府参考人 はい。

 お答えいたします。

 諸外国でも五十を超えるBSL4施設が稼働してございますが、その施設でも現在までに、実験従事者が病原体に感染した事例はございますが、近隣住民に被害が及ぶような事故は発生していないというふうに、まず承知をしてございます。

 そういった中で、文部科学省としては、まず、近隣の住民の方々に被害が及ぶような事故が発生しないように施設の安全性確保に万全を期するということとしております。(真島委員「最悪の事態を想定しているかどうかを答えてください」と呼ぶ)はい。

 また、御指摘の万が一の事故、災害が発生した場合に、国の対応といたしまして、厚生労働省及び文部科学省などが職員及び専門家を現地に派遣いたしまして、関係自治体、長崎大学と連携して事態収拾に向けて対応する、また、重大な被害のおそれのある緊急事態が生じた場合には、政府一体となった初動対処体制をとるなど必要な措置を講ずることなどを、長崎大学が設置主体としてその責任が果たせるよう必要な支援を行うことを関係閣僚会議で昨年の十一月に決定をしたところでございます。

松野委員長 板倉君、簡潔な答弁をお願いいたします。

真島委員 昨年十一月四日の第七回有識者会議で、文科省は、想定外のことが起こり得ないということは絶対ではないので、被害に対する補償が必要となった場合、長崎大学が設置主体として責任を果たせるよう、国が必要な支援を行いますと言っています。

 文科省はまた地域連絡協議会でも、万一、近隣住民等に感染症が発生した場合や被害に対する補償が必要となった場合、長崎大学が設置主体としての責任を果たせるよう、国が必要な支援を行いますと住民に約束しています。

 だから、最悪の事態としてそういう場合を想定しているということで、つまり、近隣住民にはそういう覚悟が求められるんです、こういう施設を住宅地につくるということは。

 文科省は、ただ、現時点でその議論を深めるよりは、プライオリティーとしては安全管理を万全に行うための方策について議論を深めることが重要であると、先ほど言いかけられたことを言っているわけなんですが、これは優先順位が低いと考えているんじゃないかというふうに聞こえるんですよね。起こり得る最悪の事態を優先順位が低いと後回しにしているんじゃないかというふうに聞こえます。それを想定外として対策を怠れば、本当に、まさに安全神話だと思うんです。

 もう時間がありませんので最後に聞きますけれども、昨年十一月四日の有識者会議では、委員から、反対する住民の根源的な問題意識は設置場所である、設置場所について拒否感が固まっており、それを説得するのは難しいんじゃないか、設置場所に戻って議論をする部分がないと進展しないんじゃないかという意見が出ておりますが、どう思われますか。

板倉政府参考人 まず、長崎大学のBSL4施設の設置に当たりましては、有識者会議あるいは地域連絡協議会の方々などの御意見を真摯に踏まえながら、地元の御理解を得るための不断の努力をしていくことが重要であるというふうに考えておりまして、私どもも長崎大学の取り組みにつきまして、文科省に三月に設置いたしました監理委員会を開催いたしまして、この大学の取り組みをしっかりチェックして進めていきたいというふうに考えております。

真島委員 もう時間ですので終わりますけれども、三月三十日の長崎新聞に次のような投書がありました。

 施設をつくる趣旨は理解できる。ただ、住宅地に隣接したキャンパス内に設置するのは余りにリスクが大きい気がする。不測の事態が起これば、長崎観光にも深刻な打撃を与える。現在の予定地は敷地が広いとは思えない。せっかく国や県も協力すると言っているのだから、国有地なども含め安全な場所を確保した上でつくるのはどうだろうか。むしろ住宅地から離れた場所に広大な敷地を確保し、そこに研究施設や外国からの研究者を含めた生活棟や、飲食設備、病院、ヘリポート、電力自給などのインフラを整備し、一つの町にしたらいいのではないか。

 本当に本気で政府がこのBSL4感染症研究を、日本が世界に比べておくれている、本格的に中長期的にやっていくというのであれば、余りにもこの立地、住宅地への立地というのは中長期的に見ていない。しかも、足元でまた国立感染症研究所のように転びかねない、誤りを繰り返そうとしているんじゃないかというふうに私は思うんです。

 BSL4施設の設置に当たって住民の合意が大事だと大臣もおっしゃいました。これが政府の基本姿勢ですから、坂本キャンパスありきで国が関与していくということを改めて、設置場所から見直していく、そのことを求めて質問を終わります。

松野委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 昨日なんですけれども、二〇二五年の大阪万博に向けまして、松井一郎府知事がBIEに対して正式立候補を表明する文書を提出しました。ぜひとも日本でも万国博覧会の実現を目指したいと思っておるんですけれども、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ということでございます。

 この「いのち輝く」ということに関しまして、先端的な医療技術に関して世界でも日本がリードしていると思うんですけれども、この先端的な医療、先端医療という言葉でメディアで言われたりすることもあるんですけれども、この先端医療という言葉に対して先進医療という言葉がございまして、世間では混同されて使われているような気がします。

 私もかつて先進医療をやっておりまして、かつてというのは、手技としてはまだやっているんですけれども、パーキュテイニアス・レーザー・ディスク・ディコンプレッションといいまして、PLDDと略すんですけれども、椎間板ヘルニア、背骨の骨を構成している間に椎間板という軟骨のクッションがあるんですけれども、それがはみ出るヘルニアに対して、レントゲンを見ながら針を入れて、中に光ファイバーを通してレーザー光線で椎間板ヘルニアの内部のボリュームを減らす、切開手術に比べて患者さんの心身への負担が少ないと、手前みそですけれども、自負しております。

 PLDDもかつて先進医療の中の評価療養の対象でしたけれども、二年間の審査期間を置いて外れました。残念というよりも、きちんとした審査結果だと。技術的にやはりばらつきがあるのは認められないというのは、私は本当に正しい話だとは思うんです。

 では、そもそも先進医療というのは何ぞやということから入ると思うので、まず厚労省から、先進医療とは、先進医療の現状と取り組みの行く末についてお話を聞きたいと思います。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきましては、国民皆保険の理念のもと、必要かつ適切な医療を基本的に保険診療の対象とすることとしております。

 議員お尋ねの先進医療制度でございますけれども、高度な医療技術でございまして、現在は保険給付の対象としておりませんけれども、将来的に保険給付の対象とすべきか否かについてなお評価が必要であるものを対象といたしまして、一定の安全性、有効性を確保しながら保険診療との併用を認めることとしたものでございまして、その結果を見て保険導入の適否を決めるものでございます。

 この先進医療の現行の運用でございますけれども、先進医療につきましては、原則、承認された医療品等の使用を伴う先進医療Aと、未承認の医薬品等の使用を伴う先進医療Bとに分類しておりまして、それぞれに該当する個別の医療技術に関しまして、専門家から成る先進医療会議で安全性、有効性や実施可能な医療機関の施設基準等について審査を行っているところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 今、先進医療に関しまして厚労省にお尋ねしました。将来的に保険診療に取り入れるということで、混合診療という言葉は、実際に法律の用語では、厚労省の立場では使われておられないですけれども、実際に保険診療と保険外の診療とを、将来的に保険に取り入れるということで今承認していただいているというのが先進医療ということで、これは厚労省のお話なんですね。

 では、先端医療に関して、今度は文科省にお尋ねしたいんです。

 やはり先端的医療は、何となく世間の概念として、がん治療ありきと見られているところもあります。ところが、がんも、皮膚がんなどの表面のがんから内臓のがん、血液のがんもありまして、がんといってもさまざまございます。治療方法も、外科的な手術による切除から放射線治療。抗がん剤も、化学療法もありますけれども、オプジーボなどのバイオ医薬品もございまして、ちなみに、化学物質だったらジェネリックというのがありますけれども、こういった生物の、バイオ医薬品のジェネリックに似たものをバイオシミラーといいまして、松野委員長と一緒に、勉強会から、今、議連を立ち上げさせていただいているところなんです。

 国民、患者の皆さんからすると、よくはわからぬけれども特効薬がある、では、なぜ自分のがん治療にその特効薬を使ってくれないと。しかしながら、効果が見られるがん治療もあれば効果が見られない種類としてのがんもある、それが一緒くたになって誤解を生んでいると思うんですけれども、このがんを初めとする先端的な医療というのはどのように進んでいるのか。

 大阪にも、くしくもがんセンターができまして、重粒子線がん治療というのをやり始めました。また、これも大阪にあるんですけれども、外科的手術と放射線治療の間というか、どちらでもないというカテゴリーのBNCT、硼素中性子捕捉療法というのもあります。これは中性子と硼素を使うんですけれども、光に対しての感作物質を入れて、そこに光を当てたりレーザーを当てる、私の研究分野でもあるんですけれども、PDTというのもございます。

 世間では、研究が始まっていると報道ですぐ、治療ができる、臨床ができる、こんな夢の治療法を広げようというところもあって、成長戦略としては成長戦略だとは思うんですけれども、現状をまずよく理解して、やれることはどんどんやっていくんですけれども、やれないことはやれないと整理していくことが大事だと思うんです。

 ところが、がんに対しての国としての取り組みが、残念ながら、まだちょっと国民に伝わっていないという感があるんですけれども、がん治療を初めとして先端的な医療の研究開発の取り組みについて、文科省にお聞きしたいと思います。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の特にがん等の疾患の克服に向けた先端医療の実現、文部科学省としては、基礎研究を推進いたしますとともに、その成果を円滑に実用化につなげていくということが重要であると認識しております。

 そのために、文部科学省としては、まず、がん研究につきましては、次世代がん医療創生研究事業という事業を開始しておりまして、その中で、例えば、患者さん本人の免疫機能を活性化させる免疫療法でございますとか、がん細胞だけを破壊するウイルスを用いた治療法に係る研究などを支援しております。

 また、こういった基礎研究の成果を実用化につなげていくために、橋渡し研究戦略推進プログラムというプログラムも行っております。その成果といたしましては、例えば難病であります脂肪萎縮症に対するレプチン補充療法、これは薬事承認を得たところでございますが、こういった基礎研究の成果をもとにした画期的な成果が創出されているところでございます。

 引き続き、関係省庁と連絡を密にしながら革新的な研究開発を推進するとともに、その成果を実用化につなげていくための取り組みを行っていきたいというふうに考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 実際に臨床で、厚労省の管轄で先進医療という法律のカテゴリーがあって、研究の分野で先端的な医療というのがありまして、私自身開業医でもございますので厚労省の管轄でやっていますけれども、同時に大阪大学の国際医工情報センターというところの招聘教授もやらせていただきまして、医工というのは医学と工学でして、医学と工学をつなぐという橋渡しをやっております。

 特に今、工学の技術の中で発展しているのがロボット技術でございまして、手前みそですけれども、私の技術が先進医療から外れたのは、厚労省の方のお話では、伊東先生は職人だけれども、ほかの人も、職人を育てていかな、なかなか難しいよねという話なんですね。つまり、職人を育てる観点から、これを普遍的なサイエンスに変えていかないけないんですけれども、例えば、私に高校生となる息子がいてるんですけれども、私は息子にその技術を伝えようとは必ずしも思っておりません。どちらかというと、これをサイエンスにしようと思ったら、そこに何とか普遍的なところをできればと思っております。

 そこで、やはり一つキーワードになるのが、AI技術でそれができないか、もしくはロボット技術でそういったことができないかということで考えておるんですけれども、ロボットといっても、ダビンチのような手術機器もあれば、筑波大の山海先生のやられている介護ロボットもございます。介護ロボットも細かいことを言うと幾つかの分野に分かれているんですけれども、今後この分野がどのように発展するのか、これは経産省にお尋ねしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 経済産業省では、より早く、より効果的に、そしてより優しい医療の実現に向けまして、革新的な医療機器、バイオ医薬品、そして再生医療の実用化開発を支援しているところでございます。

 ただいまお尋ねのありました例えばAI技術に関しましては、うつ病等の診断支援技術の開発を進めているところでございます。例えば、患者の表情や会話、あるいは睡眠パターンといったさまざまなデータを多様なセンサーから取得いたします。この取得されたデータを機械学習を使いまして定量的に分析いたしますと、うつ病等の可能性について医師の診断支援が可能になるというものでございます。

 また、ロボット技術につきましては、これは今、さまざまな形で導入が進んでおりますけれども、例えば、今私どものところでやっておりますのは、内視鏡による手術支援ロボットの開発でございます。これは、軟性の、やわらかい内視鏡の先に鉗子を備えたロボットでございまして、医師が患部をモニターでリアルタイムに確認しながら医師の手足と協調して操作をすることによって、より低侵襲で、患者の方に負担をかけない形での手術を可能とするものでございます。

 このほか、例えばがん治療に関しましても、国立がん研究センターなどと連携をいたしまして、血液検査によりまして十三種類のがんを早期に診断する技術開発を進めているところでございます。今後、この分野でも、AI技術の活用によりまして診断精度の高度化を図りつつ、早期の薬事承認を図ってまいりたいと考えております。

 経産省といたしましては、引き続き実用化支援を行うという立場から、基礎研究支援を行う文部科学省、そして、臨床、導入支援を行う厚生労働省と一体となりまして、AMEDにおける医療分野の研究開発支援に取り組んでまいります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 厚労、文科、経産とお聞きしたんですけれども、その中で、文科省さんのお話の中で、ウイルスを使ってがんをやっつけると。では、そのがんはどこにあるかを捜すのに免疫を使うと。免疫細胞をふやすのに、ここでiPS細胞とか再生医療が使われるわけなんですね。ところが、再生医療に関しまして、法律ができたことによって後押しをしてもらえる環境が整いました。これは、この法律ができる前に、京都での幹細胞治療での死亡例を教訓としているわけなんです。

 再生医療の効果のエビデンスの収集が現在進行形でございまして、私自身も、再生医療委員会と再生医療委員、幾つかの委員会に入っていまして、各医療法人とかのチェックを、厚生局の指導を受けながら、二時間ぐらい、資料をつくってきっちりやっているんですね、他の医療法人なんですけれども。

 そこで、例えば、それに反してきちっとやっていない医療機関もあるのも事実でございまして、エビデンスのない症例を挙げて、例えば海外の国では行っているとか、インターネットで過剰に広告を出している例もあるんですけれども、そういったところに、同時に公平なチェックの構築が大事なんですけれども、先ほどの先進医療の補足になると思うんですけれども、この施設基準や審査方法について御説明を厚労省からお願いいたします。

椎葉政府参考人 お答えさせていただきます。

 再生医療につきましては、新しい医療でございまして、御指摘の自由診療を含めまして、科学的な根拠に基づいて実施していただくことが必要であると考えているところでございます。

 そこで、厚労省といたしましては、平成二十六年十一月に施行されました再生医療等安全性確保法に基づきまして、再生医療等を提供する医療機関の管理者に対しまして、提供する再生医療等の安全性、また妥当性につきまして、科学的な文献や実験結果も含めた検討の内容を記載した提供計画の作成を義務づけているところでございます。

 この作成いたしました提供計画につきましては、国が認定した再生医療等委員会の審査を受けた上で国に届け出を行うことを義務づけておりまして、届け出を行わずに再生医療等を行った場合には、罰則が設けられているところでございます。

 また、国に届け出を行いまして再生医療等を実施した場合でも、この再生医療等の提供により保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するために必要があると認める場合におきましては、再生医療等の提供の一時停止を命じるなどの措置によりまして、安全性の確保を行うことが可能となっているところでございます。

 こうした取り組みによりまして、より科学的な根拠に基づいた再生医療が提供されるよう取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に科学的な根拠を厚労省さんもきちっと見ていただいておると思うんですけれども、医者もエビデンスのない治療方法に関しては患者に責任を持てないんですけれども、しかしながら、例えば健康やアンチエージングというキーワード、再生というキーワードで、本当に夢の薬で治るのだとうたっているところもあったり、改善するとうたっているところもあります。

 残念ながら、サメの軟骨を幾ら食べても膝の軟骨は治りません。しかし、それをうたっているところもございまして、エビデンスのない診療、例えば血液クレンジング、静脈血と動脈血を出して、黒い血が赤くなりましたと。それは動脈と静脈だから当たり前なんですよね。ところが、それで何か、アンチエージング、体が健康になると。

 やはり、言葉はあれですけれども、患者さんをだますような治療方法は決して許されるものじゃないと思うんです。

 私のやっているPLDDも、残念ながら、例えばPLDDの後にオゾンを注入したら治りやすいと。これは、イタリアで、はやっていると書いているところがあるんですね。これで、例えば海外からの未承認の薬剤が入る場合の手続等を考えると、こういったことというのは余りにちょっと無法地帯になっているんじゃないかと思っております。

 こういったケースでトラブルが起こった場合、患者さんは厚労省に救済を求めると思うんですけれども、対応措置を検討されているんでしょうか、厚労省にお尋ねします。

椎葉政府参考人 恐らく、先生の御指摘は、医療に対する広告の問題であろうかと思います。

 この広告につきましては、患者保護の観点から、医療法に基づき限定的に認められた事項以外は広告禁止といたしまして、委員おっしゃいますような虚偽であるとか誇大等の不適切な広告につきましては、自治体による指導等を行っているところでございます。

 一方、医療機関のウエブサイトでございます。これにつきましては、これまで、原則、医療法の規制の対象ではないというふうに整理してきたところでございます。ところが、美容医療サービスを受けた利用者の美容医療サービスの消費者トラブルなどが増加しておりまして、利用者の多くがウエブサイトをきっかけとして医療機関を受診している現状にあるというふうに認識しているところでございます。

 このため、本通常国会に提出しております医療法等の一部を改正する法律案におきまして、医療機関のウエブサイト等につきましても、虚偽、誇大等の不適切な表示を禁止し、中止、是正命令や罰金を科すことができるよう措置を講ずることを可能とする改正案を盛り込んでいるところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 広告規制について経産省にもお尋ねしようと思っていたんですけれども、あともう残り時間一分でございますので、ここで鶴保大臣に御登場いただきたいと思うんです。

 きょうの私の質問というのは、シーズであるところの文科省、その臨床応用であるところの厚労省、それを製品化したり普及するための経産省にお尋ねしたわけですけれども、やはりそれを統括する、科学技術イノベーション推進という意味では、国務大臣の鶴保大臣にかかるお力も大きいと思うんです。

 茂木大臣が経産大臣のころはこれをハイウエー構想とおっしゃっていたわけなんですけれども、出口が経産省だから経産省がやられるのかとか、いろいろあると思うんですけれども、やはり科学技術という点で、鶴保大臣に、私の今回の質問に対しての御所見を最後にいただきたいと思います。

鶴保国務大臣 シーズとニーズをくっつけてさまざまなイノベーションを生んでいくということは、先ほど来繰り返し繰り返し答弁をしてきたつもりでおります。

 なおかつ、先生の今の専門分野である、ちょっと私も、そのPDLLですか。(伊東(信)委員「PLDD」と呼ぶ)PLDD、ごめんなさい。初めてのことで、全く門外漢なのでありますが、こうしたことが、では、どこの分野で応用がきくのかについては、専門家、目ききがいれば、しっかりそれをフォローしていただけるような気がいたします。

 バイオと医療が一緒になってこういうことができますよとか、科学技術のこういう、例えば原子物理学というんでしょうか、そういうものと医学がくっつけばこういうふうなことができていくんですよみたいな話も散見されるような時代が来ておりますから、我々、分野に閉じこもることなく、シーズとニーズのマッチングについては虚心坦懐に手を伸ばしていかなければならないのではないかという基本的なスタンスでおります。

 現状、まだまだ至らぬところはあるんですけれども、先生方の御支援を賜りながら、一歩一歩進めていきたいというふうに思います。

伊東(信)委員 よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

松野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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