衆議院

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第5号 平成29年6月6日(火曜日)

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平成二十九年六月六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 松野 頼久君

   理事 土屋 品子君 理事 松島みどり君

   理事 村井 英樹君 理事 簗  和生君

   理事 山本ともひろ君 理事 鈴木 義弘君

   理事 高井 崇志君 理事 伊佐 進一君

      青山 周平君    尾身 朝子君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      神谷  昇君    神田 憲次君

      黄川田仁志君    小松  裕君

      古賀  篤君    佐々木 紀君

      田所 嘉徳君    田畑 裕明君

      豊田真由子君    中山 展宏君

      馳   浩君    福山  守君

      古田 圭一君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    北神 圭朗君

      坂本祐之輔君    篠原  豪君

      津村 啓介君    伊藤  渉君

      輿水 恵一君    島津 幸広君

      真島 省三君    伊東 信久君

    …………………………………

   参考人

   (国際核融合エネルギー研究開発機構(ITER)名誉機構長)

   (未来エネルギー研究協会会長)          本島  修君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     佐々木 紀君

  小松  裕君     田畑 裕明君

  谷川 弥一君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     青山 周平君

  田畑 裕明君     小松  裕君

  宮路 拓馬君     谷川 弥一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について)


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     ――――◇―――――

松野委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として国際核融合エネルギー研究開発機構(ITER)名誉機構長・未来エネルギー研究協会会長本島修君に御出席をいただいております。

 この際、本島参考人に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、本島参考人から三十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 御発言の際は着席のままで結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、衆議院規則により、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、本島参考人にお願いいたします。

本島参考人 松野委員長、ありがとうございます。

 最初に、松野委員長及び委員の皆様方に、私を参考人として呼んでいただきましたことに感謝申し上げます。核融合エネルギーの実用化に向けての現状と今後について意見を述べさせていただく機会を得ましたことを大変感謝しております。

 松野委員長には、二〇一一年の秋に国会議員の先生方と一緒にITERまで来てくださいまして、大変勇気づけられました。そのことをきのうのことのように覚えております。おかげで大変元気が出た次第でございます。

 きょうは、お手元にございますこの二枚ずつの、全部で二十五ページになりますけれども、その資料に基づいて説明をさせていただきます。それからもう一部、「激動する世界に思う」という、ことしの二月号「電気評論」でございますが、これは参考資料としてお配りさせていただきます。

 では、二ページ目です。

 まず申し上げたいことですが、核融合エネルギーの開発を進めることは新たな時代のイノベーションを生み出します、このことを先生方にまず申し上げたいと思って参りました。

 我が国は、エネルギー資源に乏しく、破壊されつつある地球の環境を守りながら、エネルギー需要の増大にどう対応していくのか。地球の温度上昇を二度C以下に抑えるためのCOP21は二〇一六年十一月に発効いたしましたが、いまだに世界の足並みはそろっておりません。核融合エネルギーを我が国主導で早期に実現して大規模なエネルギー生産を開始することが、この問題の主要な解決策であると考えております。

 核融合エネルギーの実証を目指すITERでございますが、後ほど詳しく説明させていただきます。安全で持続可能な社会の実現に向けて、長期間使用可能な、これはもう十万年とか二十万年の規模で使用可能になります、エネルギーの実現に向けた人類の挑戦です。新たな時代へのステップになるわけです。

 我が国には、核融合科学研究所、岐阜県土岐市、自然科学研究機構に所属します。那珂核融合研究所及び六ケ所核融合研究所、茨城県の那珂市、それから、大学等に高度な研究基盤と優秀な人材を擁しております。これをぜひ活用いただきたいと思います。

 核融合エネルギーの開発、研究はプラズマ物理学を基本としておりまして、必要なキーテクノロジーというのは多岐にわたります。真空、ダイバータ、超電導、材料、溶接、電力、ブランケット、トリチウム制御、安全、組み立て、品質管理、プラズマ応用といったことでございます。産業応用の幅も広いと言えます。

 続きまして、先生方御承知のとおりではあると思いますが、三ページ目です。

 核融合研究の目的は、地上のミニ太陽を実現することであります。その目的を一言で言いますと、安全かつ恒久的な新しいエネルギー源の実現にあります。

 基幹エネルギー源としての核融合エネルギーはどういうものか、その属性というのはどういうものかと申しますと、燃料となる重水素が海の中に多量に含まれています。水の中に〇・〇三%ございます。皆様の体の中の水分にも同じ量が含まれているわけです。

 左上の図をごらんいただきますと、この重水素、それからもう一つの燃料である三重水素、これは人工的につくり出します、それを一億度に磁場の中で加熱しますと、核融合反応が持続的に起こります。一億度は磁場を使って十分に断熱されますので、それから、一億度というととんでもない高温ではありますが、圧力としては十気圧程度ですので、十分制御できるということが申し上げられます。

 反応を起こすと、ヘリウムが出るわけでして、それから中性子が出ます。中性子は安全に遮蔽する必要がありますが、その技術はもうできているわけでして、この中性子を外側に置きました同じく海から取り出しますリチウムに吸収させますとトリチウムが発生する、こういう燃料を増殖するサイクルがつくれるわけなんです。三十万年ぐらいは使えるであろう。排出ガスはヘリウムである。低コストの水素ガス生産も可能になります。水素エネルギーシステムの構築にも貢献いたします。

 左の真ん中の図ですが、核融合反応をエネルギー源として使って、そこから百万キロワットぐらいのエネルギーを取り出して、水蒸気をつくって、電気を発電する、こういう仕掛けでございます。

 我が国が引き続き世界をリードしていくための科学技術のイノベーションを生み出すことができます。そして、科学技術立国に必要な優秀な人材を育ててきましたし、育てることができます。

 ちなみに、ポリタンク一個の海水からは、一番左側の下の図にありますとおり、石油二百五十本分のエネルギーが取り出せます。これを使わない手はないのではないか、こういうふうに申し上げられます。

 成功の暁には、地球環境の保全と世界平和に貢献します。人類の高度文明を一万年の単位で続かせるためでございます。

 ここで、持続可能で発展する世界をつくるための条件について見ていただきたいと思います。ページ四です。右下の番号で申しております。

 炭酸ガスの排出を抑えること。地域的に偏らないエネルギー源を持つこと。材料等の資源が再生可能であること、これは、繰り返し繰り返し使う必要があるからです。コストがリーズナブルであること、当然、安くないと社会には受け入れてもらえません。社会的受容性を持つこと。安全でなければなりません。そして、ビジネスとして民間の積極的な参入が得られることも必要でございます。そのほか多数の条件が複雑に絡み合ってまいります。

 下の三枚を見ていただいて、どう思われるか。

 私も思うのですが、北極海の氷は解けております。毎年解けているのが今問題になっているわけです。日本の衛星「いぶき」が、平均の炭酸ガス濃度が四〇〇ppmを超えたということを一昨年の十二月に検出しております。東京は、この部屋の中も結構高くて、多分一〇〇〇ppmぐらいにはなっているんじゃないかと思います。ただ、我々は二〇〇〇ppmぐらいまでは呼吸ができるんです、生物というのは意外と厳しい環境で進化してきましたので。ですから、緊急の問題という認識になりにくいところがあるんですね。これが環境問題の大きなところではないでしょうか。

 そして、真ん中が原子力発電所です。これを見ると緊張感が走る場合が多いんじゃないか、特に一般の皆様は。右側が縄文、弥生時代の竪穴式住居で、これは見ると安心感を感じるのではないか。なぜかというと、我々は、進化をして、非常にすばらしい環境に生きているわけです。しかし、下手をすると、私たちの子孫が再びこのような家に住まないといけなくなるということもあり得るわけです。

 それから、日本海側の原子力発電所について申し上げますと、東南海地震が来たときに太平洋岸それから大阪湾岸の発電所が津波で大きなダメージを受ける可能性があるので、やはり震源から遠い日本海側に発電所を持っておくということは、そういう緊急事態には非常に重要なんじゃないか。これは申し上げるまでもないことではないかと思います。

 それで、五ページ目に移らせていただきます。

 では、核融合エネルギーの開発がなぜイノベーションを生み出すのか。

 これは、具体的な例は後ほど申し上げますが、核融合エネルギーが宇宙の本質にかかわっているからだ、こういうふうに私は考えております。核融合エネルギーは宇宙に普遍的に存在しています。なぜなら、恒星のエネルギー源は核融合反応です。太陽もそうです。宇宙の物質の九九%はプラズマなわけです。

 その下はもう閑話休題でございますが、私が思うには、今、宇宙空間に地球型の惑星を見つけ出すということが科学的にも天文学等で活発になっています。

 これには目的がありまして、宇宙空間で我々と同じような高度文明を見つけることができると、そこから電波なりが飛んでくるのに数万年かかるわけですね、それを検出するということは、確率論的にこの文明が数万年続いているんだということになるんです。これは、ドレイクの法則という法則があります。我々の人類も数万年続く可能性があるんだということを確率論的に証明できるわけなんですね。

 私が核融合研究者として申し上げたいのは、そこの百万キロワットの核融合発電所からは、一秒間に一兆の百億倍という大量のニュートリノ、これは梶田先生がノーベル賞をもらわれたニュートリノです、発生していますので、ニュートリノは何の障害もなく飛んできますので、物理天文学の総力を挙げてこのニュートリノの検出を試みると、宇宙文明がいるんだということの証明の近道になるんじゃないか、こういうふうに申しています。これは、少し道筋がずれましたけれども、私の夢としてです。

 その次のページ、六ページ目です。

 世界をリードする我が国の核融合研究ですが、トコマック、ヘリカル、レーザーという三方式、日本は基盤を持っております。

 トコマック型は、元原子力研究機構、現在の量子科学研究開発機構でしてきて、大変な実績を持っております。ヘリカル型は、トコマックとは違うんですが、ヘリカルコイルを使います。核融合科学研究所でしております。それから、レーザー方式というのがありまして、これはレーザーを使ってばしんと反応を起こそうという、大阪大学で基盤があります。

 この六ページで申し上げたいのは、この三つの方式が、日本で長い実績があり、基盤を持って、世界的にも評価されているということです。

 次のページですが、ここで世界の研究の最前線を説明いたしますと、多くの装置を擁して研究が進んでおるわけです。ITERについてのスケジュール、それからその後の段階、DEMO炉でございますが、示しております。協調と競合の世界でございます。日本も負けていられないということがございます。

 日本については、一番真ん中、上にありますように、LHD、核融合科学研究所です。それから、量子放射線機構、略して申し上げますが、トコマックの建設が現在進んでおります。それから、右下の方にありますのが、IFMIFという材料試験装置の試験が六ケ所村で進んでおります。こういった研究が進んでいます。

 そして、我が国の研究の着実な進展、核融合研究開発については八ページにまとめました。

 時間がかかっているということは事実でございますが、ゼロからの出発で、急速に進んできたということを示しております。加速器やスーパーコンピューターに比肩できる進展をしております。

 九ページでございますが、私の研究歴をごく簡単に自己紹介させていただくためのものでして、今までITERを含めて三段階のチャンスをいただいております。私のこの研究の発展の中で、いろいろなチャンスをいただきました。

 ITERですが、七カ国・地域から成る公的な国際プロジェクト、九ページの一番下のところです。フランスの原子炉法規で規制される核施設、ニュークリアファシリティーでありまして、出資者のみならず参入企業を含め多くの民間のステークホルダーを擁する大変チャレンジングなプロジェクトです。それだけ難しいということも言えます。

 そこで、次のページ、十ページに行っていただきますと、ITERの目的をまとめてあります。

 ITERですが、インターナショナル・サーモニュークリア・エクスペリメンタル・リアクターの略ではありますが、ラテン語で道という意味も持っております。

 ITERは、炭酸ガスフリーなエネルギー源となる商業用核融合炉に至るまでの道です。ITERは、国際協力でして、パワーの増幅器です。約十倍の増幅能力を持っております。後ほどまた説明いたします。それに対して商業炉は、私はマネーアンプリファイアーだと申しています。電力を出しますので、売れるわけです。したがって、ビジネスになるわけです。その前の段階がITERです。

 二つ目のポチは、核融合エネルギーの安全性の実証です。それから、科学的、技術的に利用可能であることを実証するための実験炉であります。

 ITERは、五万キロワットのエネルギーを入れて、五十万キロワットの出力を出します。ですから、十倍のエネルギーを出します。これで核融合ができるということを日本の皆様及び世界に示すことを目的としていまして、その次に進むかどうかは、このITERの参加国も独自に進めていく手はずになっております。

 日本は間違いなく行ってくれると思いますし、ヨーロッパ、アメリカも恐らく。ただ、アメリカは石炭をたくさん持っておりますので、少しおくれるかもしれません。中国は非常に強力に進めております。

 全ての知的財産、ノウハウですが、七つのメンバーが共有いたします。日本の出資は全体の九・一%ですが、結果は一〇〇%もらえる、こういう取り決めでございます。ヨーロッパは約四五%、やはりサイト国ですので。

 設計、組み立てはITERが行い、参加七極は製造して、それを物納、物で納めるという形です。約二万三千トンの重さを持ちまして、部品の数も二万点。それから、建物は全体で三十五万トンの重量になります。非常に大きなプロジェクトです。

 次のページですが、ITERの現状を申し上げたいと思います。

 私もITERを離れて二年ぐらいたっておりますので、その内情は一〇〇%理解していないところがございますが、まず、私のいるときから申し上げていたことは、ITER計画はターニングポイントを通過し、夢が現実の目標になっているんだ、これが重要なことです。頂上はまだ先だけれども見えているということが申し上げられます。したがって、各国の取り組み方は真剣度も増してきていると私は見ております。

 現在、やはり大きなプロジェクトであるがゆえの困難というのはありまして、正直に申し上げますが、数々の、種々の要素を加味して、コストと計画の改定が行われました。

 これは文部科学省からいただいた資料です。運転開始が、二〇二〇年の十二月が二五年、約五年のおくれ。核融合の運転開始、先ほどの五十万キロを目指しての燃焼実験、重水素、三重水素、これが二〇二七年から二〇三五年。終わりはなるべくおくらせないようにしようという計画ですし、そのめどもつきつつあります。

 やはり先生方にぜひお願いしたいのは、計画が延びるということによって、経常経費、インフレの影響、それから、新しい技術の開発の結果、新しいことを入れてくるといったことも発生いたしますので、どうしても現在の見積もりで五百七十億円ぐらいが必要になってくるということが現状でございます。しかし、投資効果は十分にあるはずだ、こういうふうに強く申し上げたいと思います。

 そして、我が国が準ホスト国としてのリーダーシップをさらに発揮していただきたい、こういうふうに思うわけです。

 その下の写真ですが、こういう一こまも五年間の私の在任中にありました。

 左側は、二〇一三年の大臣級会合でございます。EUのエネルギー担当コミッショナー、エッティンガーさん、それからフランスの科学技術大臣が、女性の方です、来ていただいています。それから、日本からは文部科学省の福井副大臣が来てくださいました。

 そして、その次の年には、当時のEUのバローゾ大統領が訪問してくださいました。この写真は、スタッフの前でスピーチをしていただいたときの写真です。

 その次のページを見ていただきたいんですが、建屋の建設が進んでおります。トコマックピットの大きさは、八十掛ける百十の、建物の高さは六十メーターです。左下のとおりです。四百九十三本の免震構造体が支えております。これは、フランスの原子力発電所は全てそういう構造になっていまして、免震構造体が下にあります。日本では、ないことですね。

 右側の図は、最もクリティカルなパスである建屋です。横軸がちょっと見にくいんですが、一番右が現在、それから右から三番目が二〇一五年で、私が離任したあたりですが、青い線が作業量、作業者の人工を示していまして、右肩上がりで作業量がふえている。これは、順調に進んでいるんだということを示すわけです。私も大変心強く思っております。

 それから、次のページへ移らせていただきますが、主要機器を示しております。超電導コイル、真空容器等で、旗がありますが、各国の分担でして、大事なことは、二万三千トンの機器のうち、我が国は主要な機器をとっているということでございます。これは、技術的なノウハウが十分たまる構造になっております。

 それを示したのが十四ページでして、いろいろな分担で、詳細は省かせていただきますが、超電導関係、材料関係、赤い字が日本のところです。計測装置等も日本はとっております。日本は、基本的にはおくれは発生しておりません。大変頑張ってくれております。

 次が、やはり安全性というのは非常に重要なので、二ページ使って、簡単ですが説明させていただきます。

 まず十五ページですが、福島やチェルノブイリのような事故は核融合プラントでは起こりません。その理由は、燃料のプラントの中の量が一グラムだからです。十六ページにもありますが、原子炉との比較をしています。

 核融合炉の場合は、炉心にある燃料が一グラムで、石油八トン分のエネルギーしかありません。ですから、万一何か起こっても、そのエネルギーの被害の範囲でおさまるわけです。これは大きい。

 ところが、原子力の場合は、これも非常に安全性に配慮はされているわけです。私は批判するつもりは全くありませんが、五百トンの燃料をあらかじめ炉心に入れて、少しずつ燃やしていくわけです。だから、制御ができなくなると福島のようなことになってしまう。この違いが大きいわけですね。

 核融合炉は、原子炉より技術的に高度であって、複雑でございます。したがって、つくることは難しいわけです。原子炉に比べると随分おくれて、まだ実現していないという事実がそれをあらわしております。しかし、安全性は高いということが言えます。これが大きな点です。ですから、十五ページの三つ目のポチに書きましたが、どのような異常が生じてもプラズマを停止できるんだと。

 それから、十五ページの上から三つ目のポチにありますように、私はニュークリアオペレーターを務めましたので、日本でいえば原子力規制委員会の対象になるわけでございます。その中で、安全に求められる要素というのは、放射性物質の閉じ込めと周辺への被曝、その二つだけでございます。

 では、ちょっと急がせていただきます。

 十七ページ、これは日本の今後を示しております。やはりITERを成功させて、今の日本の基盤を有効に使って次の段階に進もうという計画です。二〇五〇年を目途にしております。

 それから、十八ページ目ですが、世界も実用炉に向けてのロードマップがITERの進展とともに進んできています。

 特に中国について述べさせていただきます。習近平主席が二〇一一年に研究所を訪問している写真を見せておりますが、中国は本気でありまして、大学に核融合学部を新設して、人材の養成等も進めております。それから、ITERの装置もつくろうとしております。日本は絶対負けてはいられないと思います。

 それから、低放射化材料の開発が必要ですが、これは六ケ所村の研究所で進んでおります。

 それから、十九ページ、二十ページは、もう一つの方式でありまして、私が二〇〇九年まで所長をしておりました。こういうヘリカルなコイルを使います。絶対にできないだろうという装置を一九九八年に完成して世界をはっと言わせたんですが、これは、私はプロジェクトマネジャーをしましたが、期限内に予算内につくらせていただきました。そういうことも評価してITER機構長に推挙されたと思っております。

 最近、重水素の実験が地元の御了解も得て始まって、一億度の発生に成功しております。こういうアクティビティーがあります。

 それから、その次のページ、二十一ページを見ていただきたいと思いますが、民間活力の参入とその必要性です。

 世界的には数多くの企業が参入し出しております。左側のリスト、ちょっと見にくいと思います。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ等ですが、日本も一社ございます。我が国にはまだその機運は醸成されていないというふうに思います、もう少し活発になってほしいと。

 民間の開発意欲は、ビジネスそのものですから、高い活力を持ち、リスク評価もきちっと厳格に行って、決断も早く、責任の所在も明確です。

 右の方に、ジェネラルフュージョンというカナダの企業がございますが、百億円を集めて、七十人の社員を雇って、ビジネスとしての研究をしております。私はその科学アドバイザーも務めております。

 イノベーションについてですが、二つ御説明したいんです。

 一つは、二十二ページ、地磁気が今消滅しようとしています。千年後にゼロになります。そうしますと、生命体の危機が訪れる可能性がありますので、核融合の技術を使って、十二本の鉢巻きを巻いて、今の約十分の一の地磁気を発生させると、飛行機にも乗れるし、地上の水とか空気が太陽風、太陽からの放射線ではじき飛ばされて火星とか月のようになることを防ぐことができるという構想です。火星と月は地磁気がないんですね。ですから、ああいう世界になっております。詳細は省かせていただきます。

 コストですが、私の見積もりでは一千兆円です。GDPと比べて、人類がもし滅亡するかもしれないというときにはこれぐらいの出資は得られるんじゃないかと。これは極端なイノベーションです。

 もう一つは、次のページ、二十三ページを見てください。これは、私が学事顧問をしております春日井にあります中部大学の超伝導センターでの結果を紹介しております。やはり超電導技術です。

 既に、一キロメーターの五万キロワットの送電線の開発に成功しておりまして、この応用例は、シベリアにある豊富な天然資源をシベリアまたはサハリンで発電して、ロスがほとんどない超電導線で持ってくると、海の中を通すわけですが、日本に大量のエネルギーを確保できる、そういうことに役立つはずだということで開発しております。現在、次の十キロのラインの建設を進めようとしております。これは比較的近未来のイノベーションです。

 そのほか、先ほど申しましたが、多くのイノベーションがありますし、例えば、超電導になりますが、NMR等の技術にも使われております。

 二十四ページ、二十五ページ目は私のまとめでございますが、読んでいただければと思います。

 機構長時代に、各極との契約行為、プロキュアメントアレンジメントを九〇%結んだということが非常に大きなことの一つと考えております。その結果、現在、物がサイトへ搬入され出している。

 二十五ページでございますが、七つの参加極とITERチームに対して、ITERの進展に対する大きな努力に心から敬意をこの場をおかりして表させていただきます。そして、感謝しております。

 設計段階から製作、インフラ建設に移行しており、物品も製作が開始され、ITERは、建設の進展により、既に折り返し地点を通過しております。

 ITERにかかわる我々の目的と責任というのは、ITER建設の進展を社会に開示して、その全容、コスト、スケジュールにかかわるリスクを関係者とステークホルダーが容認できる範囲に抑えることだと肝に銘じております。

 そして、我が国に強くお願いしたいことは、今後も準ホスト国として最大の努力を傾注して全ての課題に挑戦していただきたい。巨大かつ複雑な国家プロジェクトの性質、初期条件に由来する困難を乗り越え、ITERのプロジェクトを完成へと導くためでありますが、それが我が国が得られる利益の最大化につながると確信しております。

 我が国の強力なコミットメント参画によりまして、ITERプロジェクトを俯瞰するITER機構の組織、協力の文化そして仕事のプロセスに抜本的な変革が進むと期待できます。これを確信しております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

松野委員長 ありがとうございました。

 以上で本島参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

松野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山展宏君。

中山(展)委員 おはようございます。自由民主党の中山展宏でございます。

 本島先生、大変貴重な御講話をありがとうございました。早速でありますけれども、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 六月の一日、今月の一日になりますけれども、トランプ大統領がパリ協定から離脱表明をいたしました。温室効果ガスを発生しない核融合エネルギーが実現すれば、人類にとっても地球にとっても未来に大きな利益につながると思いますが、このトランプ大統領のパリ協定からの離脱の表明、いかがお受けとめになられたか、御所感をお教えいただければと思います。

本島参考人 大変残念なことだと考えております。

 ただ、ニュースによりますと、二〇二〇年までは時間があるということですので、その間に考え方を変えてくれるのではないかと。

 それから、現在、ITERについてはいろいろなブリーフィングが行われている最中だと思いますので、特にリアクションが出ておりませんし、石炭を掘って燃やすためには、それにかわるクリーンな、炭酸ガスを出さないエネルギー源が必要になるはずですので、ブレーンが、特にエネルギー省の皆さんが、そういったことをいろいろ今後ブリーフィングされていかれるのではないか、こういうふうに期待しております。

 もうちょっとだけですが、これに、順問題を解く手法なんじゃないかということを失礼ながら書いておりますけれども、境界条件がはまってくると今度は逆問題を解くことになってきますので、いろいろなことが起こるのではないか、こういうふうに思っております。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 私も非常に残念に思っておりますが、先生のお取り組みが、大統領のまた意向も変わってくるんだと思っておりますので、努めてまいりたいと思います。

 これからITER計画についてお伺いをしたいと思います。

 ITER計画は大変超長期な、しかも超大型国際プロジェクトであります。NASAが主導したような国際宇宙ステーションであったりとか、また、緒についたばかりのリニアコライダーといった国際プロジェクトもありますけれども、日本を初め七極が、ゼロから国際約束に基づいて計画を進めておられます。

 本島先生は機構長として本当に大変な御苦労をされたと思いますが、先般、きょう御説明をいただいたように、スケジュールやコストの見直し、特に予算での大幅な増額ということを伺いました。そういった状況を考慮に入れても、我が国がITER計画に参加している意義について改めてお教えいただきたいと思います。

本島参考人 ありがとうございます。

 やはり我が国は、準ホスト国、もうあと一歩で日本に誘致できるところまで行っていたわけですが、準ホスト国としての技術的基盤それから政治的なバックグラウンド、ポテンシャルを持っておるわけです。準ホスト国としてリーダーシップをこういう大きなプロジェクトの中で発揮し、リーダーシップをとり続けていくということが、結果として、見える場合と見えない場合があると思いますが、日本の国益になるはずだ、こういうふうに思います。そこが一番重要な点だと思います。

 ですから、粘り強く、しかも、向こうへ行って頑張っている人たち、私も向こうにいるときに日本からの応援が一番うれしかったですから、ぜひ応援を続けていただければ、彼らは二倍じゃなくて十倍ぐらい頑張ると思います。よろしくお願いしたいと思います。

中山(展)委員 ITER計画の中では、参加七極が費用分担の方法として、分担金のほか、先ほどおっしゃったように、機器を製作し、物納する方法を、仕組みをとられています。例えば、超伝導トロイダル磁場コイルですか、中核的な真ん中のコイル、三菱重工業さん、東芝さんが半分を担っておられますが、ほかの参加極も製造していると伺っています。

 各極がITER計画の中で機器製作ノウハウをしっかり蓄積していくことはそれぞれの国にとって有意義であると思いますが、かえって、一方で、技術水準を均質化していくことであったりとか、全体としての、機構長としてのマネジメントすることの難しさもおありになったと思います。それによってスケジュールのおくれが出ている側面も否めないと思いますが、ITER計画が物納という仕組みを採用した意義と、我が国がそれをどのように積極的に活用していくべきか、もう一度先生の方からお話をいただきたいと思います。

本島参考人 物納の方式は、やはりITER協定が二〇〇七年につくられたときの基本的なこととして各極が承認したことでありますが、その意義は、やはりそれぞれの国が物を、設計はITERでするという原則で、ビルド・ツー・プリント・デザインと申しますが、製作設計に非常に近いところまでして、それを、プロキュアメントアレンジメントと申しまして、いわゆる契約行為で各極と設計図を渡して、コストについては二〇〇七年に取り決めた表に基づいて各極がつくる、こういう仕組みで、非常に合理的な仕組みでございました。

 物納の大きなメリットは、日本の場合、特に大きな、重要なところをとっている限り、そのノウハウがたまる、企業にもたまるというところでございます。技術的なノウハウは一〇〇%共有だと申しましても、やはりつくったことがあるかないかで大分違うというのも現実だと思います。そういう点でございます。

 ITER機構にもう少しお金があるとITER機構もやりやすいことがふえるというのは事実でございます。私も最後の理事会のときに、次の機構長にはもっとお金を渡してほしいということをはっきり申しましたけれども、それは理事会の議長も、うん、そのとおりだと。皆さん、うんうんとおっしゃっておりました。そういう状況でございます。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 済みません、駆け足で質問させていただいて恐縮です。

 結びになると思いますけれども、核融合反応は、先ほどおっしゃったように、燃料の供給や電源を停止することによって、制御がしやすい、暴走しないという大変なメリットがおありになると聞きました。

 核分裂よりも安全対策が容易である、ここの一点を捉えて、これは、原発事故の影響によって、核分裂から核融合へ、それから、研究開発者の皆さんの意識というものが変わっていっているものなのかどうか、また人材のシフトは実際にこれから考え得るのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

本島参考人 大変センシティブなところが我が国にはあると思います。

 世界的に申しますと、私がヨーロッパにいましたときに思いましたことは、ヨーロッパ等では、そういう動きが実際に始まっています。実際に、原子力発電所をシャットダウンするというふうな動きもドイツ等であるとおりです。

 我が国の場合は、そういった非常に悲劇的な事故の後、原子力と核融合の違いといった理解が深まってきているのではないか、そういうふうに思います。ただ、まだ核融合については夢の段階でしょうと思われている方がまだまだ多いので、我々の努力不足ということも否めません。

中山(展)委員 ありがとうございました。

 地球の太陽実現に向けて、これからも御尽力され、また開発の中心的な存在として引っ張っていただきますことを心からお願い申し上げて、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松野委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民進党の北神圭朗でございます。

 本島先生、きょうは貴重なお話をありがとうございました。

 私も、大学の後輩なんですけれども、前にあがつく法学部でございますので、技術的なことは余りよくわからないんですが、資源の大変希少な我が国としては、この核融合というのはまことに理想的なエネルギーだというふうに思って、皆さんのこれまでの御努力に心から敬意を表したいというふうに思います。

 質問なんですが、このITERの事業自体は当然私も賛成でございますけれども、今まで大分おくれてきたというのも、これまた事実であります。それで、その大きな理由は、理論とかいわゆる技術の問題よりも、むしろ、組織のあり方の問題が大きかったというふうに聞いているんですけれども、そこは機構長として相当御奮闘されたというふうに思います。

 三、四年前に、第三者機関がITERの機構の分析をして、提言もされて、それに基づいて改革をされたというふうに伺っているんですが、簡単で結構なんですが、今までは何が問題で、改革をされてどう変わってきたのかということをお聞きしたいと思います。

本島参考人 今、第三者委員会、マネジメントアセスメントのことをおっしゃっていただいたと思います。

 私は、真摯にその内容を受けとめて、私の在任中も、マネジメントの強化、特にITER機構とそれから各極、七極の、ドメスティックエージェンシーと申しますが、担当の極がございます。それは大きな研究所に所属している場合が多いんですが、日本の場合は、現在の量子放射線機構の、略語で申しますが、那珂研にあります。そことの一体化を進めるということと、それから、先ほどの御質問にもあった、物納ですので、ITER機構が一旦図面を渡すと、なかなかその先の工程に介入できないという面がやはりありましたので、そういったことを、マネジメントを強化することによって強化していくという方策をとらせていただきました。

 その方法は、さらにビゴ現機構長になって強化されたと聞いております。その結果が加速につながってきているのではないか、こういうふうに思います。

 やはり、国際プロジェクトでほかにひな形が余りないという中での、手探りでマネジメントを進めていくというのはなかなか難しいものがございました。

 以上でございます。

北神委員 ありがとうございます。

 七つの極があって、きれいに言えば分権的な体制でやってきたという話ですけれども、それぞれが計画を変更するときも必ず七極全部同意しないといけないとか、非常に速度がどうしても遅くなってきたという問題があったと思います。それをマネジメント強化されたという話なんですが。

 もう一点だけ。先ほどお話があった、お金がもっとITER機構自体にあったらもっと言うことを聞かせられるというような話がありましたけれども、こういうことはどうなんですかね。ITER機構自体に予算をもっとふやすということは、今後、見通しというものはございますでしょうか。

本島参考人 それは、少しずつITER理事会の方で勘案されているというふうに見ております。また聞いております。

 非常に重要なポイントは、私が在任中に進めようとしましたのは、今の問題を解決するために建設期を早く終わらせるということが重要です。建設期は、物納ですから、いわゆるキャッシュフローが余りないわけですね。ところが、運転期に入る、最初のプラズマを何とかつけて、装置はとにかく必要最小限で完成して、そういう戦略をとることを最優先課題の一つといたしました。

 何が違ってくるかというと、運転経費に変わっていくわけですね。これは、各極が条約で決められた年間の予算をITERに渡して、ITERでそれを差配して使っていくというやり方です。ですから、今の新しい検討中のスケジュールもそれが一部取り込まれているというふうに見ております。ステージドコンストラクションという呼び方をしております。

 やはり、できるだけ早くファーストプラズマ、最初のプラズマをつけてみせて、各国及びステークホルダーの理解を得て、そして運転段階に入る、こういうことが非常に重要なのではないか、こういうふうに思います。特効薬があるとしたら、それではないかと思います。

北神委員 ありがとうございます。

 ぜひそういう方向でまた御指導していただければありがたいというふうに思います。

 米国のロッキード・マーチン社とか、民間企業もかなり進んできていて、二〇二〇年代前半ぐらいには運転開始ができるんじゃないかと聞いておりますけれども、ぜひ負けないように、あと、中国にも負けないように頑張っていただきたいというふうに思います。

 あともう一点。先ほど、ターニングポイント、つまり技術の大きな転換点が見えてきて、今まで、悪い冗談じゃないですけれども、核融合の技術というのは永久に二十年後に完成されるというふうにやゆされていた部分があって、常に二十年後には完成するという話がありましたけれども、必ず今度は、山頂はまだ先だけれどもはっきり見えてきているという、この技術的なところをぜひわかりやすく教えていただければと思います。

本島参考人 やはり、それを私どもが社会に発信しないといけないわけでございまして、この十二ページの写真、ここまで進んでくると、建設現場そのものですけれども、この写真の左側がITER本体が据わるコンクリートの、クラウンストラクチャーと申します、これがもう建ち上がってきているわけです。

 それから、その後ろにある、ITERの写真を張ってありますが、これは組み立て室なんですね。ここでトロイダルコイル等の部品の組み立てが行われます。こういったことが、部品が運び込まれれば対応できるような状態になっております。それから、その後ろにネズミっぽい建物、これは、インドがつくった建物なんですが、一番外側にくるクライオスタットは大き過ぎてインドから船で運んでこられませんので、ここで組み立てるためのものです。インドの場合は、建物の製作におくれは全く出ませんでした。非常に、ヨーロッパとは違って対照的なんですが。いずれにしても、こうやって目に見えるものができてきている。

 それから、各国、日本でいえば、三菱の工場にトロイダルコイルの中の巻き線部がもうできてきている、そういったことを新聞記者の皆さんなんかにもどんどん見てもらって、社会にどういうふうに使われて、どういう意味があるんだということをわかりやすく説明しながら示していくという意味で、先が十分見えているんだ、ITERの完成は間違いないんだということを示せるんじゃないか、こういうふうに思います。

北神委員 ありがとうございます。

 最後の質問ですけれども、先ほどもトランプ大統領のお話がありましたが、先生は楽観的な見通しをされましたけれども、私が調べた感じでは、いわゆる米国国立科学基金、核融合の予算を預かっている所管の官庁ですが、これに対してトランプ大統領は二〇%の予算削減を提案しているという話を聞くんですが、彼のことですから、何をされるかは予測がつかないところがあると思いますけれども、仮に、米国が予算を減らしたり、あるいは脱退、今までも脱退したこともありますので、その場合はこの計画に狂いが生じるかどうかというのを最後の質問としてお聞きしたいと思います。

本島参考人 やはり、アメリカのこの計画の中における存在というのは、それは大変重要な位置を占めておりますので、何らかの形で残ってもらうような努力をする必要がある、こういうふうに思います。

 十五年ぐらい前、RアンドDの段階で撤退しましたのは、また今の状況とは違う理由で脱退していまして、アメリカの場合は核融合はサイエンスとして捉えている面が大きいんですね。ですから、その要求を満たすような形でITERに参画してもらえるような環境づくりが必要ではないかと。

 今の段階では、私の経験から申し上げましても、時期的に、六月ですと、予算は大体厳しい側に振れていたことが多いので、もう少し注意深く見ていきたいな、こういうふうに思います。

北神委員 どうもありがとうございました。

松野委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、心より感謝を申し上げます。

 先ほど、初めに、この核融合炉というのを、私も、一億、数億度に上げて、そして磁場をつくるということで、超電導ということで、マイナス二百七十度のそういった環境の中でということで、本当にできるのかな、そういった思いはしていたんですけれども、先ほどの見えてきたという本島先生のその一言、これはもういけるんじゃないかなということで確信をしたところでございます。

 私も、もともとは民間企業で技術開発の現場にいまして、もうできそうにないことに挑戦をするんですけれども、まずやっている人たちができる、やると決めていけば大体できるものでして、そういった形で、ああ、これはできるんだなということで、改めて感じさせてもらったところなんですけれども。

 一つ、まず初めに、先生がそもそも、この核融合の第一人者としてこうやって長年御活躍をされてきたんですけれども、この核融合は、人類を救うんだ、できるんだ、やれるんだ、こう思って、それに突入した、そのきっかけみたいなことをまず教えていただけますでしょうか。

本島参考人 私は、大学の入学が昭和四十二年でして、大学紛争等がその直後にあって勉強できない期間があった世代なんですが、大学の二年生のときに、私は物理でしたから、自分の進路を決める必要がありまして、私自身は、親の影響か、親は原子力研究所にいまして原子力をやっていましたので、やはり、全部そうなんですが、そのころの学生としては、社会の役に立つ、一番役に立つことでやりたいのは何だろうなと思っていたわけです。ちょうど、まだ一億度が必要なのに百万度ぐらいの温度しか出せない時代で、黎明期も黎明期で、いい時代だったんですが、核融合エネルギー、きょう御説明申し上げたようなことの基本的な部分はもう既にわかっていたわけで、原理的な面は。あっ、これだと思いました。

 それからもう一つは、まだ研究が十分進んでいないから自分にもチャンスがあるかもしれぬな、こういうふうに思ったわけです。それが一番大きな動機でした。

 あとは、先生方、皆さんの応援を得て、チャンスもいただいて、努力もしたつもりではいますが、ここまでいろいろなことができたというふうに思います。

 これはもう内々で申し上げたいんですが、息子が聞いたら怒りますので。実は、息子も今核融合の研究者になっていまして、息子は、これは聞いていられると困るんですが、核融合はどうも親の代では終わらぬと見たようですね。自分にもチャンスがあると。そのとおりで、二〇五〇年ぐらいに日本を引っ張っていっている人間の一人になってくれるんじゃないかと。

 いずれにしても、長期的にやっております。

 以上でございます。

輿水委員 ありがとうございます。

 まさに先ほどのドレイクの法則のところで、宇宙レベルで考えると核融合炉はもうできている可能性があるし、またそれをどう実現していくかという、そんな中での、壮大な中でも具体的に今進められているということで、先ほど、重水素実験によりもう既に一億度を超えるイオン温度も達成しているということで、確かに、ターニングポイントを超えて、いよいよ実用化に向けての着実な推進が必要なときになってきたな、そういったことを実感するわけでございます。

 しかし、核融合炉として実用化にはまだ時間がかかる中で、それに向けてさまざまな要素技術というものを今開発されているわけで、その要素技術というのは、我々の通常の、日常の今の課題にもさまざま対応できる、そういったものもあるのかなと思うわけでございますけれども、このITERの開発に当たっての要素技術、我々の今抱えている課題に対応できるようなものはどのようなものがあると考えられるのか、教えていただけますでしょうか。

本島参考人 やはり非常に重要なことでして、それが社会からよく見えるようになるといいんですが、例を申し上げたいと思うんですけれども、超電導技術は、中国の例で申しますと、西安で超電導線をつくって、全て合格したわけです。高い技術レベルを開発できたわけですが、ITERの発注が終わった後どうするかというのは、企業として死活問題になるわけです。

 どうしているかといいますと、今の波及効果をうまく応用いたしまして、その線材の技術をNMRに使っております。中国の場合、市場が非常に広いので、それで長期的にやっていける面があるわけですね。そういうふうに成功している例が既に出ております。

 あとは、マイクロ波は一億度に電子を加熱するために必要な装置ですけれども、マイクロ波を使って陶磁器を焼成する、焼く技術、これは二〇一〇年ぐらいにもう既に開発が終わって、岐阜県東濃地区でかなり普及しております。リニア窯等もできているんですね。

 それから、同じくマイクロ波を使いますと、アスベスト、今状況は大分よくなっているわけですが、アスベストを無害化する必要がありますので、マイクロ波を産廃に印加しますと、アスベストのとんがっている部分が丸くなって、万一肺に入っても発がん性物質等がなくなる、そういうふうな研究。

 それから、現在まだ完成していませんが、もちろん、原子力発電所から出る高レベルの放射性廃棄物を、核融合炉の中性子等を使うことによって寿命を短くするということ、これも将来のスピンオフの一つで期待できるんですが、そういったことにあります。

 それとあと、非常に漠とした言い方をさせていただきますと、一億度のプラズマまで扱う科学技術ができているわけですから、プラズマ応用を半導体産業、こういったところへは、核融合に携わったことのある研究者、または研究室を卒業した学生たちが採用されて、今の日本のITの最先端を支えるというふうな面で貢献しているということが言えると思います。

 やはり、我々は研究者ですから、なかなかビジネスが上手じゃなくて、これは使えますかというふうな言い方ですと限度があるんですね。ですから、先生、こういう問題があるけれどもどうかというふうなことで来ていただけると、いや、どうですかと引き出しをあけられたりするので大変進む、そういうふうに産学連携はしていかないといかぬのじゃないか、こういうふうに思っております。

 ありがとうございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、非常に期待しているのは、ITERで、遠隔でちょっと放射化した炉の中を操作する、そういったことが、例えば福島の廃炉にも使える可能性もあるのではないか。また、先ほどの、磁場をコントロールするということで、高精度なMRIで人の、いろいろな医学の進歩にもつながるのではないか。

 そんなこともうまく組み合わせながら、この研究成果をうまく活用して、さらにこの核融合炉がしっかりと作動して人類の太陽となるようにまた応援をしていきたい、このように感じているわけでございます。

 ちょうど時間となってしまいまして、まだまだ聞きたいところがあるんですけれども、さらなる御活躍を御祈念、期待申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 大変にありがとうございました。

松野委員長 次に、島津幸広君。

島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 きょうは、貴重な意見、お話をありがとうございました。

 核融合の話を聞きまして、私は、若いころに見た映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というのがあるんですけれども、あれを思い出したんですよ。車型のタイムマシンで過去、未来を行き来する映画ですけれども、最初の燃料はプルトニウムだったんですよね。ところが、未来から帰ってきたら、生ごみだとか空き缶だとかを入れてエネルギーにしている。身近なものがエネルギーになるという点で、非常にそういうことを思い出したんです。

 きょうも話されましたけれども、先生も、二〇〇八年十月のプラズマ・核融合学会誌で、宇宙に高度文明が発見された場合の話として、一万年以上続いている社会では必ずや核融合エネルギーを実現していることでしょうと書かれていました。これを読んで、非常に夢とロマンあふれる話だというふうに感じたわけです。

 人類初の核融合炉の実現を目指すITER計画ですけれども、しかし、これはまだ本当に初期段階にあるわけです。しかも、きょうも話がありましたけれども、スケジュールが遅延し、それによりコストも増大する。追加費用は五十二億ユーロ、約六千五百億円で、日本の負担は、分担は九・一%ですから、約五百七十億円ほど。昨年のITER機構の理事会では、この負担決定は暫定とされたと聞きます。各国がその負担増分の引き受けを国内でまとめられるかどうかわからないからだ、こういうわけです。

 日本国内でも、科学技術に対する予算は心細く、福祉や医療などが削られる中で、国民の皆さんも予算の使い方には厳しい目を持ち始めています。「もんじゅ」にこれまで一兆円の国費を使ってきたことに対する批判の声も高いものがあります。

 先生は、「学術の動向」二〇〇九年四月号で、サイエンスの発展を続けるための原則を六つ挙げられています。そのうちの一つに、社会への発信、これを指摘しています。学術に携わる人間は社会に正確に発信していかなくてはならない、これでないとサイエンスの発展がない、こういうわけです。これは国民の税金を投入している政府にも言えることだと思うんです。

 しかし、現状、国民の皆さんがこのITER計画に対してどれだけの理解があるのか、先生の御認識と今後の課題、また、政府としてやっていかなければならないこと、やってほしいことなど、率直な御意見をお聞かせ願いたいと思います。

本島参考人 日本の国民の皆様の核融合に対する認識は、私どもの努力不足もあって、まだまだ不十分なところはあると思います。やはり、それをよりよく御理解いただくためには、特にITER計画でその着実な進展を示すことが必要である。

 今、ターニングポイントを過ぎて、やはり胸突き八丁のところでございます。ですから、これを乗り越えるべく、いろいろな応援をいただけるととてもいいな、こういうふうに思うわけです。

 御質問に直接お答えすべきことは、やはりまだまだ社会への発信というのは、こちら側が十分だと思っている部分はないとは思うんですが、不十分で、これからも努力してまいりたい、こういうふうに思います。

島津委員 ありがとうございました。

 ぜひ、政府としても、やはり国民の皆さんへの発信、理解を得ながら進めていくというのは大事だと思うんです。

 次に、核融合と核分裂、よく比較されるわけですけれども、きょうもお話がありました。

 核融合では、福島第一原発事故のように暴走はしない、核融合反応を速やかに停止することが可能だ。また、原発の場合は使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物が発生しますけれども、その処理技術がまだ未確立だ。これに対して、核融合では高レベル放射性廃棄物は発生しない、低レベルは出るんですけれども、これはこれまでの技術で処理、処分できるというわけです。

 先生も、ITER機構の特別インタビュー、これを読ませていただいたら、その中で、「原子力の場合、炉心に大量の燃料をあらかじめ装填して、少しずつ制御棒を抜きながら燃やしていきます。制御不能になるとメルトダウンをおこしてしまいます。そういったリスクが非常に少ないのが核融合炉だといえます。福島第一原発のような事故は、核融合炉では、絶対におきません。」こう述べられているわけです。

 さまざまなところで原発に比べての核融合の安全性を指摘されているわけですけれども、しかし、これは逆に言いますと、核融合に対して、核分裂を利用する原発は問題が多く、リスクも高いということの裏返しなわけです。原発の負の遺産がどうなるのか。これは今でも、廃炉の作業というのは非常に長期間、長い年月がかかるわけです。処理できない高レベル放射性廃棄物、使用済み核燃料などをどうするかという問題もあるわけです。

 私たちは、そういうことを考えると、これ以上、リスクのある原発をふやしていくことはどうなのか、原発から手を引いていくべきではないかと思うんですけれども、この問題での先生の将来的なお見通し、またお考えをお聞かせ願いたいと思います。

本島参考人 まず、非常に重要なことと思いますのは、長期的なビジョンが必要になってくるのではないか。日本の国力で核融合の実証炉ができて、電気を発電して、それで三割とか五割とかを賄おうというふうにしていくためには、一年間に一個発電所を核融合でつくっても、百年で百台にしかならないわけですね。ですから、やはり百年ぐらいはかかる。

 ですから、その間に政策を維持していただく必要がありますし、将来的には、核融合炉が百台になれば、それは原子力はもう役目が、御苦労さまでしたということは、私が生きていれば言えると思いますし、その間はいろいろな方法をミックスして考えていっていただく必要がどうしてもあるんじゃないか、こういうふうに思います。

島津委員 ありがとうございました。

 もう一つ、核融合は原発と比べて安全性が高いわけなんですけれども、しかし、リスクがないわけじゃないと思うんです。

 例えば、核融合炉での爆発というのはまずないわけですけれども、電気系統などからの爆発なんかは想定されるんじゃないかと思うんです。もちろん、高レベルの放射性物質が拡散される原発に比べて被害は桁違いに少ないわけですけれども、リスクはゼロじゃないと思うんです。安全神話をもとに進められた原発の苦い教訓もあります。

 核融合炉の開発に当たって、原発との違い、あるいは安全性を強調することとともに、さまざまなリスクも想定して、国民の皆さんにも示して、理解を得ながら進めていくということの必要があると思うんです。

 どういうリスクがあるのか、その点、どう国民の皆さんにお示ししていくかということでお話しください。

本島参考人 その点、ITERでの経験、つまり、フランスの原子力規制当局、ASNからライセンシング、許可を受けたと。その中には、フランスの原子力規制法に基づく縛りを全て受けておるんです。そのことが大変重要な実績になってくると思いますが、やはりその中ではリスクは明確にしております。

 放射線的には、何か起こる、例えば上からボルトが落ちて八百立方メーターの一億度のプラズマに当たった、そうすると、プラズマは一遍にとまってしまうわけですが、トリチウムは放射性物質ですから外へ出てくるわけです。それで、エバキュエーションと申しますが、人の避難とかの計画も立てて、それで許認可をいただいています。被曝量については、事故時でも、一般の皆さんには自然放射線レベルで抑えられるような基準でつくっております。

 それから、地震ですね。今のITERのサイトは、日本で起こるような大陸移動説型の地震は起こらないんですが、やはり局地型の地震はあります。それに対しては、震度七までもつような構造をつくって、それで建物等の許可をいただく。

 それから、津波は来ないんですが、上流にデュランス川という大きな川があって、大きなダムがあるんです。そこからフランスの場合はかんがいをしておりまして、発電もしているんですが、豊かな農地をつくっているんです。そこのダムが決壊したときにどうなるのか、こういう評価もしています。これは十五メーターぐらい水位が上がるんです。津波はないといって安心していられないわけでして、リスクとしてはそのリスクが結構怖いものだというのが後で結論として明確になったんです。

 そういったことを、日本でいえばいわゆるパブコメをいたしまして、フランスの場合はコミッションをつくって、そこで一般の皆様からの二万件ぐらいの質問を受けましたけれども、対応させていただきました。

 そういった経験というのは、私は成功した経験だと思いますから、ほかの国にも応用できることなのではないか、こういうふうに思っております。

 以上でございます。

島津委員 どうもありがとうございました。

松野委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 本島先生、本日は大変興味深いお話をありがとうございます。私、本日先生に御質問ができると思って、きのうから興奮して寝られていない状態なんですよ。

 私自身、いろいろ本当に興味があることがいっぱいございまして、できるだけ夢をかなえる、未来に向けて楽しい質問というか、今後の日本の未来についてのお話をさせていただきたいわけなんです。

 その前提となるところで、核融合の閉じ込め技術で、ITERはトカマク方式を使っていまして、先生がかつてLHDをやられていたところではヘリカル式を使われていまして、本当に素人ながら申しわけないんですけれども、僣越な意見になっちゃうんですけれども、やはりねじれをつくってヘリカルにした方が磁場をつくる上でもかなり効率的だと思いますし、ITER自体がトカマクで進んでいっているんですけれども、とっとと本当にプラズマを発生させることが大事だと思いますし、ITERもとっとと進めるべきだと思うんです。

 その後、日本でやられているBAの計画であるJT60、そこがJT60SAになって、今のところトカマクということなんですけれども、トカマクとヘリカルのメリット、デメリットも含めて、日本もやはりここでヘリカルの方に進めていくべきじゃないかと私は考えているんですけれども、先生の御所見をお伺いしたいと思います。

本島参考人 私はずっとヘリカルの方をやってきましたので、ITERへ行きましたときに、最初にヘッドクオーターミーティングをしましたら、そこでロシアの副機構長が、おまえはITERをヘリカルにする気かというふうな質問をしてきまして、そのときに答えました、これは一言で黙らせないかぬと思いましたから、あなたは知っていますか、きのうの敵はきょうの友という言葉があるだろうと。それで黙りましたけれども、私はITERの成功のために来たんだ、黙れ、こういうわけです。

 ヘリカルがいいかトコマックがいいかについては、現時点ではやはりまだ結論は出せないと思います。ですから、科学技術の開発ということと、それから学問として、学術としての研究をしっかり進めていっていただきたいと思うのはそういうところに理由があります。そういう基盤を持っている国が最後に、勝ち負けでいえば、勝てるはずだと思います。

 ITERは実験炉ですので、やはりコストが高くなっている理由がありまして、初めてやることですから、ヘリカルでやっても一緒ですけれども、これも必要、これも必要、これも必要というふうな最適化はしているわけです。これが、ITERの成功の後は、次の段階では、これは要らない、これは要らない、これは要らない、それから運転する動作範囲もここからここまでとるという、ちょっと抽象的な言い方ですが、でも、成功した条件というのは一つか二つつくるわけですね。では、これだけでいい、そういうつくり方をしますので、コストは随分圧縮できるわけです。

 御質問にお答えさせていただきますが、その前に、したがって、ITERでできることとできないことがあるわけですね。それは、一つは長時間運転なんです。ITERは千秒までしますが、長時間ではありません。ですから、JT60SAをつくって長時間の実証をするというプロジェクトの意義が出てくるわけです。

 それから、ITERは早くつくるということでステンレスを使っておりますが、ステンレスはどっちかというと放射化しやすい材料なんですね。だから、低放射化材料を開発して、百年使って百年置いておくと、また普通の工場で溶鉱炉で溶かして使えるというふうなサイクルを確立するための、鉄とかバナジウム系なんですが、その開発実証が必要である。だからITERではできないわけですね。

 将来、ヘリカルがいいかITERがいいかというのは、ITER自身がその成功の暁にみずから課題を提示する、こういうふうに思います。ですから、その時点で判断していただければいいし、それは、ヘリカルも、車でいえばガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあって、一つへの集中というのは終わりの始まりというふうなこともあり得ますから、幾つか裕度を持たせておいていただいて、日本で百台のうちの七十台がトコマックで三十台がヘリカルとか、そういうバランスが一番いいんじゃないか、こういうふうに思います。リダンダンシーというか、そういうためにも必要なんじゃないか、こういうふうに思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に、ITERのコストがかかる原因とか、ITERにおける問題点も御質問しようと思ったんですけれども、今先生がお答えいただいたことで、私自身、すとんと落ちた気がします。

 加えて、先ほど先生、カミオカンデ、梶田先生のお話をされていましたけれども、昨年、カミオカンデの方に科技特で行かせていただきまして、そのときに、いわゆるブラックホールの連星の重力波を観察するKAGRAを見まして、KAGRA自体はその観察にNdYAGレーザーを使っていまして、私自身、椎間板ヘルニアのレーザー治療にNdYAGレーザーを使っていますので、ちょっと喜んでいたんですね。

 今回の核融合の閉じ込め方式の中に、もう一つ、レーザー方式というのがございますけれども、文献を読んだところで、何のレーザースペックを使っているかというのをきっちりと書いていないところもあったんですけれども、そもそも、今回、一億度を超えられたというのは非常にすばらしい業績だと思いますし、二億度に向けてなんですけれども、そもそも太陽は千五百万度で核融合を起こしていまして、そこに高密度、高圧というのがあると思うんですけれども、そこに何かしら、例えばレーザー方式の方が有利になるところがあるのか、それとも、やはりヘリカル、トカマクのような、空間で閉じ込める方がいいのか、レーザー方式に対する未来の展望について、先生の御所見をお伺いしたいと思います。

本島参考人 レーザー方式は大変興味深い方式でして、もう既に大阪大学、学術研究、学問としてかなり大きな規模になっているんですが、私は日本としても続けていただきたい、こういうふうに思っています。

 レーザーについては、瞬間的に反応を起こさせますので、反応そのものの原理は一緒なんですが、メカニズムが大分違うという点があって、興味深いことが多々出てくる可能性はあると思いますし、それから、今御指摘になった医療応用への広がりというのも期待できますし、物質の新しい状態をつくり出すというふうな全く別の学問、それから、宇宙創成のときの状態のシミュレーションができれば、それはそれですばらしいですし、そういったことを、いろいろなところへ活路を見出していっていただければと。

 レーザーで今後の課題というのは、いわゆるペレットゲインと申しまして、レーザーの効率を百倍ぐらい上げる必要があるんですね。ですから、これはもちろん大阪大学、それから世界的にはアメリカのリバモア等で行われていますが、そこにさらに集中していただくと評価がついてくるんじゃないか、こういうふうに思います。

 あと、一つだけ阪大方式について特徴を申し上げたいと思うんですが、我々の研究というのは全然違うんですが、アメリカの場合は水爆のシミュレーションとして使うというのがあるんですね。実際の実験ができないので、リバモアの場合は水爆のシミュレーションをする。阪大がそうかというと、実は違うんです。阪大の場合は、高速点火という効率的な方式を独自に提案して、それで今実験をしているわけですが、シミュレーションに使うタイムスケール、要するにどれぐらいの時間で、非常に早いんですけれども、それが高速点火の場合はさらに十倍早いんですね。だから、シミュレーションにならないんです。ということは、阪大の方式はもう純然たる平和利用ですよということが言えまして、これが大きな特徴になっていくんじゃないか、こういうふうに思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当にいろいろお話は尽きないんですけれども、時間になったので終わります。本当にありがとうございました。

松野委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終わりました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただき、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートをお戻しください。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べください。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は二分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

尾身委員 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。自由民主党・無所属の会の尾身朝子です。

 本島参考人の大変有意義な、そして熱い思いを拝聴させていただき、本当にありがとうございます。

 核融合エネルギーが、エネルギー問題と環境問題、さらには資源の地政学的問題を根本的に解決するという点で、まさに人類社会の発展に不可欠な、安全かつ恒久的な究極のエネルギーであるということを改めて認識いたしました。

 そして、核融合エネルギーの早期実現を目指すITER計画は、技術的先進性に伴う課題や東日本大震災などのさまざまな困難を乗り越えて、この十年で大きく前進したと感じております。

 先ほど、折り返し地点を通過したというお話もございました。我が国は、前人未到のビッグプロジェクトを創成期から牽引してきており、現在でも、ITER計画の準ホスト国として、着実な役割を果たしてきております。本島参考人を初めとする関係者の皆様の御努力に、心より敬意を表したいと思います。

 一方、息の長いITER計画は、現世代の私たちにはその恩恵が見えにくい中で、最先端プロジェクトゆえのスケジュールの遅延やコスト増があり、ITER計画に対して厳しい御意見があることも承知しています。

 改めるべきは改めるとしても、我が国は、科学技術イノベーションの先進国として、長期的、さらに超長期的ビジョンを見据えて、人類社会の未来への責任を果たす義務があると考えます。加えて、我が国は、ITER計画において、先ほどお話にありましたとおり、超電導コイルなどの主要な機器の製作を担当しており、その過程でさまざまなイノベーション創出に貢献しているということも忘れてはなりません。

 したがって、我が国は、今後ともITER計画をリードし、核融合エネルギーの早期実現を国家的課題として進めていくべきだと考えております。

 そこで、お伺いいたします。

 核融合エネルギーの早期実現のために我が国の核融合研究開発をどう進めていくべきか、そして、核融合エネルギーが実現した暁にはどのような明るい社会が訪れるのか、本島参考人の熱いビジョンをぜひお聞かせください。

本島参考人 ありがとうございます。

 まず、どのように進めるべきかについては、やはり、ここまで日本の核融合研究が、私の経験としましても成功してきているわけですので、それは、基盤をしっかりつくっていって、開発の部分とサイエンス、学術の部分とを車の両輪として進めてきた点にあると言えます。ですから、今後もそれを、その分コストがかかる部分が出てくると思いますが、ぜひ続けていただきたい。つまり、日本の科学技術の基盤の一つとして、しっかり維持して育てていっていただけないか、そこの点になるかと思います。

 そうしますと、人も、研究者だけじゃなくて、企業とか、それからビジネスの世界にもいろいろと育って、広がっていく、こういうふうに思います。

 それから、どういう社会かということにつきましては、やはり、これはもう夢になると思うんですが、炭酸ガスがフリーな社会というのは非常に貴重で、我々人類の、もちろん人類だけではなくて、いろいろな生命体も含めて、生物も含めて、選択肢が広がるということだと思うんです。ですから、我々が人間として、知的な動物、責任をそれだけ多く負うわけですが、視野が広がることにつながるはずで、より平和になる社会がつくれるのではないか、そのように思います。

尾身委員 ありがとうございました。

伊藤(渉)委員 御発言の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。公明党の衆議院議員の伊藤渉でございます。

 改めまして、きょうは本島先生には貴重なお話、そしてお時間をいただきまして、本当にありがとうございます。

 ITER計画、大変夢のある重要な取り組みでございますし、この科学技術特別委員会に籍を置く、私のみならず全ての議員が、そのために必要な予算を獲得するために、またこれを機会にさらに力を入れてまいりますことをお誓い申し上げたいと思います。

 その上で、私は、ちょっと非常に素朴なことをお伺いしたいと思って、きょうは手を挙げさせていただきました。

 かつて原子力発電の技術者の方とお話をしたときに、高濃度放射性廃棄物の処分について、彼は私にこう言ったんです。究極は、その廃棄物は何らかの形で太陽に届ければ全て解決するんだと。

 私は、単純に、燃えてしまうのかなぐらいに思ったわけですけれども、そのときはそう深く議論をする時間がなかったので、そもそもそういうことが論理的にはあり得るのか、もしそうだとすると、まさに核融合ということが人工的に可能な時代になれば、原子力発電における高濃度廃棄物の問題も解決の糸口が出てくるというふうに理解をしてよろしいのか、こういうことをきょうぜひお伺いしたいと思って参りました。よろしくお願いいたします。

本島参考人 まず、太陽に打ち込むという点については、私は考えたことがないので、さあ、どうかなと思うんですが、まず太陽は、あれだけ、地球の三十三万倍でしたか、重さがありますけれども、太陽の、四十六億年ほとんど、一%、二%でしか、核融合反応ですね、変わっていないのに、影響があってはいけないんじゃないか、そういう懸念があると思います。

 技術的には、太陽の重力は非常に大きいので、打ち込むのは、太陽ぐらいの大きい星からロケットを打ち出すのと同じぐらいのエネルギー、つまりブレーキをかけないといかぬわけですね。だから、エネルギー的には恐らく収支がつかないんじゃないか、こういうふうに思います。つまり、不可能なんじゃないかなと思います。

 むしろ、核融合プラントから出る中性子またはミューオンとか、今ミューオンを使って福島をはかるような技術もできているとおり、いろいろ発達してきていますが、よくわかってきているんですね。核融合の装置の一部でそういうことを、高レベルの放射性廃棄物を、長寿命のものをもう一回核反応させて、核反応と言うと、気安く言えないことなんですけれども、百年とか短寿命に変えてしまえば、そこで熱が新たに出て冷却の問題とかいろいろ解決する必要はあるんですが、可能性としては研究の余地が十分あると思います。

 そのためには、かなり大きな研究施設をつくる必要がありますので、それなりの投資をしていただく必要があるな、こういうふうに思いますが、可能性としては十分ある、おもしろい、おもしろいというより興味深いことだと思います。

 最後に一言申し上げれば、廃棄物は地上のミニ太陽に持ってきてください、太陽ではなくて、こんなふうに思います。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ある意味、突拍子もない御質問に丁寧にお答えいただいて、ありがとうございます。大変勉強になりました。

 そして、やはりきょう先生のお話を聞いていて、夢を持って、我々、特に政治に携わる者が取り組みを進めていくということの重要性を改めて認識させていただきました。本当に貴重な機会をありがとうございました。

津村委員 民進党の津村啓介と申します。手短に二つ伺いたいと思います。

 今、日本は、大きなビッグサイエンスのプロジェクトとして国際リニアコライダーの誘致ということを議論しているわけですけれども、私もその誘致のメンバーの一人としてワシントンにこのゴールデンウイークに行ってきたんですが、ITERのマネジメントについては、厳しい評価も含めて、いろいろな注意事項を聞いてまいりました。

 先生は、ITER誘致についてはフランスと日本はある意味でライバル関係にあったわけですけれども、そのフランスに日本から行かれて、今後、日本がリニアコライダーのようなビッグサイエンスを誘致するに当たって工夫すべきことであるとか、あるいは慎重に考えるべきこととか、いろいろ思われることがあったと思いますので、その御所見を聞きたいというのが一つ目です。

 もう一つは、きょうは核融合の話に若干終始しているわけですけれども、ちょっと視野を広く広げさせていただきまして、これからもこういう大きなサイエンスに国民の理解を得て大きな予算を使うのはなかなか大変なことだと思うんですけれども、科学技術予算全体の配分を我々政治家なり行政が考えていくときに、すぐに成果が出るもの、なかなか成果が出ないもの、いろいろあるわけですけれども、どういったスタンダードを用いていくべきなのか、今の予算配分に対する先生の御意見を伺いたいと思います。

本島参考人 リニアコライダーにつきましては、私、それほど承知していないものですから、適切なお答えができるかどうか、ちょっと自信がないんですけれども、物質の本質を探る、それから日本の、特に高エネルギー研での研究の実績、それを発展させていこうというプロジェクトについては、大変ポジティブに受けとめております。ですから、できるだけ合理的に、ローコストで、ただし、計画立ち上げの段階でしっかりした計画をつくっていただくということが重要なんじゃないか、こういうふうに思います。

 それから、リニアコライダーの場合は、コンポーネントが、それぞれのマグネットが比較的小さいですから、物納方式というのが非常にフィットしてくるのではないか、こういうふうに思っております。

 あとは、あちらは間違いなく学術研究ですから、ノーベル賞に届く研究シナリオをしっかりつくっていただくことが重要なのではないか、こういうふうにエールを送らせていただきたいと思います。

 それから、予算の配分につきましては、やはり集中と選択が今後必要になっていくのではないか、こういうふうに思います。

 そのために、例えば、それが研究者の時限雇用とかそういう方向に行ってしまうのはできるだけ避けていただきたい。若い人を長期的な展望を持って、そのためには生活もしていけるようにする必要があるし、海外にも出ていって、帰ってこられるようにする必要もありますね。そういうところのソフト面の仕組みはぜひつくっていただきたい。

 あとは、研究テーマについては、いつまでも同じものをしていくというわけにはいかないと思いますので、集中と選択ということが少しずつ必要になってくるんじゃないか、こういうふうに思います。

津村委員 ありがとうございます。

鈴木(義)委員 本日はありがとうございます。

 二点だけお尋ねしたいんですけれども、御説明いただいた中で、ニュートリノがたくさん出てくるから、使い道が、いろいろな壮大な想定ができるんだというんですけれども、昔、小柴先生の講演を聞いたことがありまして、私たちの手をかざしてもニュートリノは透過しちゃうんだというんですね。それで、核融合の施設ができたときに、ニュートリノを、では捕捉するとか保持するということが今の技術でできるのかというのが一つ。

 あと、プラズマの温度を一億二千万度に上げれば実用化に一歩近づくんだというんですけれども、今一億度まで上がってきたんですけれども、ちょっと想像ができないんですけれども、何千度という単位だったらわかるんですけれども、一瞬なんだと思うんですね。その辺を、ではあと何年かければ一億から一億二千万、では一億二千万でいいのか、一億五千万になるのかといって、どんどんどんどん追っかけていってしまうので、二十年、三十年で実用化できるといったら、また三十年になりました、またこれから先三十年になりますという話になるので、予算の投下が無駄じゃないかというような批判が出てくるんだと思うんです。

 あと何年というのがきちっとプログラムできるのかどうか、そこのところを教えていただきたいと思います。

本島参考人 まず、ニュートリノですが、小柴、梶田両先生がノーベル賞をとられて、日本の非常にすぐれた研究分野でございます。

 今、先生の体を太陽から飛んでくるニュートリノが、先生だけじゃないです、全員ですが、一秒間に一平方センチ当たり六百六十億個当たっているんです。感じませんでしょう。これが放射線だったら大変なわけです。我々はもうとっくに消滅しているわけです。でも、それだけ飛んできている。ほんのちょっと反応するわけですね。ですから、カミオカンデ、スーパーカミオカンデで検出できた。

 それから、恒星の中とか何でも突き抜けますから、太陽系外惑星で四万光年とかのところで一万年ぐらい続いている文明があれば核融合発電所を持っていますから、それに一種のニュートリノ望遠鏡をつくって焦点を合わせれば、今の検出感度が一万倍とか上がらないといけませんのでまだまだ先の長い話をしているわけですね。十分検出は可能だと言えると思います。

 それから、変動の仕方が人為的になりますでしょう、昼と夜がかわったりとか、一年で一回とまったりとか。そういうのは、弁別閾と申しまして、検出感度を上げることはできるんですね。ニュートリノの、超新星爆発のときにわっと来たので昔のカミオカンデでも検出できた、そういうことがございます。

 そういう意味で、今の技術ではできませんが、できる可能性はあるんじゃないか、こういうふうにカミオカンデのグループには申したことがありますが、まだ彼らもそこまで手が回っていないみたいですので、先を楽しみにしているところです。

 それから、温度ですが、温度の定義は、我々は今二十五度ぐらいの世界に住んでおりますが、いわゆる熱平衡状態、ここも空気も大体同じ温度というわけです。

 一億度と申しますが、既に量子放射線機構のJT60アップグレードという装置では五億度ぐらいの温度は出しておりますので、温度的にはもうターゲットはクリアできている、こういう言い方をさせていただけると思います。

 温度のイメージは、非常に温度が高い、例えば太陽の中心は一千五百万度ぐらいあるんですが、表面は五千度ぐらいですね。今我々が、こうやって、すりガラス等で見られる太陽の温度というのは五千度ぐらいなんです。やはり熱平衡状態で決まってくるんですね。そういうイメージで一億度、私もさわったことがないので何とも、さわるとどうなるかとかいうことはよう言いませんけれども、ただ、薄いですから、何か風船が爆発するようなイメージの状態ではありません。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

島津委員 二回目ですが、よろしくお願いいたします。

 ちょっと角度を変えるんですけれども、核融合の研究開発は、二〇一六年四月に、当初の日本原子力研究開発機構から分離されて、放射線医学総合研究所から名称変更された量子科学技術研究開発機構に移されました。この量研機構のホームページを見ますと、「量子科学技術に関する研究開発や放射線の人体への影響、被ばく医療並びに放射線の医学的利用に関する研究開発等の業務を総合的に行うことにより、量子科学技術と放射線医学に関する科学技術の水準の向上を図ることを使命とします。」こうありました。

 日本原子力研究開発機構は福島の原発事故後も国策として進められている原発の推進を担って、核融合の研究開発は医療の研究や技術とともに進めていくというふうに読めるんですけれども、このことで、核融合の研究というのは格下げされたんじゃないか、こういう意見を聞きました。

 移行した経緯、もし承知しておられるようでしたら教えていただきたいし、このことに対する先生の御認識をお伺いしたいと思います。

本島参考人 そのときはまだフランスにおりました関係で、余り詳細には存じておりません。

 ただ、私の経験でも、幾つかの大学共同利用機関、核融合科学研究所もそうですが、全部で十六、そのころはありましたけれども、二〇〇三年でしたか、四つの大きな研究機構に統合されて、マネジメントの強化とそれから予算等の合理化が図られているわけです。

 私が承知しておりますのは、外から見ておりましたので不正確な点があるかと思いますが、やはり当時の原子力機構が、非常に大きな組織になっておりますし、サイクル機構を随分前に統合しておりますし、「もんじゅ」のこと等もまだ懸案事項として残っておりましたので、原子力とは違う、核融合を分離するという力が働いたのではないか、こういうふうに思っております。

 決して格下げではないというふうに、彼ら自身が頑張っていただきたい、こういうふうに思いますし、頑張っていると思います。やはりITERの直接の担当部局ですから、しっかりしていただきたい、こういうふうに思います。

島津委員 ありがとうございました。

伊東(信)委員 二回目ですので、私も手短に一問だけ質問させていただきます。

 今医学の世界で、BNCT、硼素中性子捕捉療法、ボロン・ニュートロン・キャプチャー・セラピーというのが注目されていまして、がん細胞に硼素が取り込まれて、そこに中性子を当てて、細胞内だけ放射線が出て、ほかの細胞を傷つけないという画期的な治療法なんですけれども、問題はこの中性子の加速でして、加速器というのは、ビル一棟分、それを回転性にして大分コンパクトにはなったんですけれども、中性子自体を閉じ込めるところというのが問題なんです。

 ITERの炉内での中性子も、壁に当たれば放射線が発生するし、劣化もすると思うんですけれども、これがそのまま応用に使えると思うんですけれども、ITER及び今の研究の中性子の扱いの、材料も含めて、どのようなことになっているか、先生から御所見をお伺いしたいと思います。

本島参考人 中性子の難しい点は、加速器等から出てくる荷電粒子ではありませんので、したがって、どこかに焦点を合わすということが、理論的にはあり得るんですが、現在、技術的には完成していないところがあるんです。

 ですから、今のボロン、ニュートロンの治療法も、昔は、例えば京都大学の熊取の実験用原子炉に患者さんの、ボランティアですね、頭を突っ込んでという、そういう実験をしたぐらいで、原子力研究所でも、たしかしたと思います。やはり難しかったようですね。

 ですから、今、先生もおっしゃられた、私、そちらの専門ではありませんのでちょっとよくわからないところはありますが、加速器を使って放射線を出して、それが人体の中を生理学的には透過しやすいようなエネルギーにしておいて、ボロンの近くで中性子に変えるとか、そういう方法も検討されているのではないかと思います。そうしますと、積極的に、例えば大脳の中にできたがん細胞を患者に負担を与えずに消滅させることもできるかもしれないな、そういうふうに思いながら御質問を伺っておりました。

 昔と比べると、また全然違う方法でボロンを使った研究が進んでいるというふうに言えると思います。

 以上でございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

松野委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、本島参考人に一言御礼を申し上げます。

 本島参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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