衆議院

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第3号 平成30年4月12日(木曜日)

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平成三十年四月十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笠  浩史君

   理事 小渕 優子君 理事 大岡 敏孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 展宏君

   理事 八木 哲也君 理事 高井 崇志君

   理事 稲富 修二君 理事 伊佐 進一君

      井林 辰憲君    石川 昭政君

      今村 雅弘君    尾身 朝子君

      大隈 和英君    岡下 昌平君

      神谷  昇君    小泉 龍司君

      杉田 水脈君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    谷川 弥一君

      渡海紀三朗君    馳   浩君

      宮下 一郎君    山口  壯君

      和田 義明君    櫻井  周君

      宮川  伸君    吉田 統彦君

      大島  敦君    城井  崇君

      伊藤  渉君    平野 博文君

      畑野 君枝君    井上 英孝君

    …………………………………

   国務大臣

   (情報通信技術(IT)政策担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     松山 政司君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   文部科学副大臣      丹羽 秀樹君

   総務大臣政務官      小倉 將信君

   財務大臣政務官      今枝宗一郎君

   文部科学大臣政務官    新妻 秀規君

   厚生労働大臣政務官    田畑 裕明君

   厚生労働大臣政務官    大沼みずほ君

   経済産業大臣政務官    大串 正樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)

   (内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室内閣審議官)           向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鎌田 光明君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山脇 良雄君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局次長)       川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        高田 修三君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 篠原 俊博君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小出 邦夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           信濃 正範君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           松尾 泰樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           千原 由幸君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       佐野  太君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            磯谷 桂介君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           上田 洋二君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    小山  智君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            高島 竜祐君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

笠委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官・内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室内閣審議官向井治紀君、内閣官房内閣審議官鎌田光明君、内閣府政策統括官山脇良雄君、内閣府知的財産戦略推進事務局長住田孝之君、内閣府知的財産戦略推進事務局次長川嶋貴樹君、内閣府宇宙開発戦略推進事務局長高田修三君、総務省大臣官房審議官篠原俊博君、法務省大臣官房司法法制部長小出邦夫君、文部科学省大臣官房審議官信濃正範君、文部科学省大臣官房審議官松尾泰樹君、文部科学省大臣官房審議官千原由幸君、文部科学省科学技術・学術政策局長佐野太君、文部科学省研究振興局長磯谷桂介君、経済産業省大臣官房審議官上田洋二君、特許庁総務部長小山智君、中小企業庁経営支援部長高島竜祐君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笠委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笠委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡委員 おはようございます。滋賀県、自民党の大岡敏孝でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、先日聞かせていただきました大臣所信に対して、私から質問させていただきたいと思います。

 最初に、大臣所信の中に、世界最先端のIT国家を実現できるということが書かれております。

 しかしながら、現状を見ますと、他の委員会でも問題になっておりますとおり、例えば、年金機構におきましては、外部業者に手入力を委託していると。国民から手書きで上がってきた資料を、業者に一枚一枚手入力で電子化させている。これにつきまして、国内の業者に委託したわけですが、契約に反して中国の企業に再委託をし、事実上中国人が手入力をしていた。このことによりまして、国民の個人情報につきまして、表示誤りが五十五万件、五十五件ではなくて五十五万件、入力誤りが七万件、そして入力漏れが七万九千件に上るということが明らかになっておりまして、もちろん他の委員会でも激しい議論がなされているところでございます。

 さらに、ほかの省庁におきましても、現状では行政機関の縦割りをなかなか乗り越えることができずに、例えば、さまざまな、印鑑証明だとか登記簿だとか、国民から見れば同じ行政機関であるにもかかわらず、情報のやりとりがなされていなくて添付書類を要求されたり、また、今の技術では3Dプリンターを使って実印も簡単に偽造できる時代になっているにもかかわらず、いまだに印鑑主義が蔓延していたり、あるいはさらに、先ほど申し上げたように、そのようにして集めた手書きあるいはアナログな資料を、わざわざデータ化するために手入力をしている、そしてミスをしているということが見受けられます。

 こうした現状をどのように感じて、どう変えていくのか。このことについて、まずは御質問をしたいと思います。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、現在まだ、国民の手続、そういったもの、国と国民との関係におきましては紙が横行しておるといいますか、必ずしもデジタル化が万全に進んでいないというのは御指摘のとおりだと認識しております。そのため、昨年末の安倍総理からの指示を踏まえまして、政府全体として、行政のあり方をデジタル前提で見直すデジタルガバメントの実現を目指しております。

 具体的には、各種手続のオンライン原則の徹底。これまでは紙でやっていた手続をオンラインでもできるというふうな考え方なのを、オンラインが原則であって紙でもできると。最終的にはオンラインに持っていくということを原則として徹底させてまいりたい。あるいは、行政手続におけます添付書類、今御指摘のありましたような印鑑証明等々の添付書類につきましても、原則全て撤廃というような法案の検討を進めているところでございます。

 加えまして、実行計画におきましては、各府省に対しまして、デジタルガバメントを戦略的に進めるための計画の策定を義務づけているところでございます。

 今後、議員御指摘のような情報の手入力といった事案を防ぐために、デジタルガバメントの考え方を各府省に徹底することが重要であることから、内閣官房として、各府省の取組内容やその進捗状況をしっかり確認してまいりたいと考えております。

大岡委員 ありがとうございます。

 次に、少し具体的に伺いたいと思います。

 先ほど申し上げました、例えば年金の話です。

 年金につきましては、これは、ミスだの漏れだのがございますから、今後当然修正をしていかないといけないということなんですが、現在では、改めて、また別の業者によって、また手入力を頼むということが検討されているというふうに聞いています。しかし、もう御存じのとおり、手入力をしている限りはミスも漏れも防げないわけです。まして、人不足、またもう一度外部あるいは外国に委託されないとも限らないわけですね。

 したがいまして、こうしたことは、今OCR等の機械も極めて高度化しておりますので、こうした機械化を進めることによって、できるだけミスを減らしていくように進めていくべきだと考えておりますが、内閣府としてこの年金機構に適切な指導助言をする考えがないか。私としては、年金機構に本当に任せっ放しでいいのかという非常に強い危機感を持っておりまして、皆さんとして指導助言をする考えがないか、伺いたいと思います。

向井政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、私どもも年金局からこの事案につきましては聴取をいたしまして、相談を受けているところでございます。

 本件につきましては、先生おっしゃるように、最終的にはやはり何が原因かといいますと、年金機構に対するそういう申請等の紙回りが、紙が多過ぎるということに尽きるんだというふうに思っております。

 年金機構の案件は、御承知のとおり、非常にボリュームが大きいものですから、一%出てきただけで何十万件というふうなことになるということでございますので、最終的にはとにかくできるだけ紙を減らしていって電子的にできるようにする。そのためには、単にそれだけではなくて、業務のやり方や、場合によっては制度の仕組み自体も見直していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 さらに、それまでの間にOCR等の機器を使って手入力をできるだけ減らしていくというのも非常に重要でございますので、これらにつきましては、年金局とともに、今後どうやったら最も効率的かつミスが少なくて済むかについて、年金機構を指導といいますか、私どもは直接の権限はございませんけれども、年金局とともに考えてまいりたいというふうに考えております。

大岡委員 ありがとうございます。ぜひ、松山大臣を筆頭に、横串を刺していただいて、しっかりとこうしたものを指導していただきたいというふうに思っております。

 あわせて三点目でございますが、ほかにも、先ほどの事例は国民が相手でございますので、なかなか手書きを全て電子化しろと言っても難しい面がある。しかし、例えば、内部の事務であってもいまだに手書きを続けているものというのはたくさんあるんですね。

 例えば、きょうもたくさんお見えですけれども、皆さん、公務員のお一人お一人の身上調書、これはいまだに手書きだという省庁は山ほどあります。しかも、名前だ、住所だ、これまで何年から何年、どういう仕事をしていたか、これまで書かせている。こんなの、書かなくたってわかっているじゃないですか、何年から何年、この人が何をやっていたかなんというのは。名前もわかっているし、住所もわかっている。わかり切ったことをずっと書かせて、一番大事な、この後何がしたいか、どういうスキルを磨こうとしているか、どういうビジョンを持っているか、ここの欄なんかはちっちゃいわけですよ。

 私、これでは本当に何の意味もないと。むしろ、こういう内部でやれるものは全て電子化する。まさにそれは、しかも期限を十分区切れるわけですから、相手がみんな公務員なので。私は、そうしたことはきっちり年限を切って、そして着実に進めていくという姿勢が必要だというふうに思っておりますが、これについてはどのようなお考えか、教えていただきたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 残念なことに、先生御指摘のとおり、紙と、デジタルで提出できる場合もありますけれども、併存しているがために、一旦デジタルから紙に打ち出したやつをまた手入力しているという事例も見受けられまして、極めて不合理であると考えております。

 このため、行政内部の業務につきましてはできるだけデジタル化を進めてまいりたいというふうに考えておりまして、今回、先ほど申し上げましたような各府省のデジタルガバメント計画にそういうものを盛り込ませて、期限を区切ってやらせてまいりたいというふうに考えております。

 これは、やはり各府省庁のそれなりのトップ層が必ずしもデジタルを理解していないといいますか、やはりこれまでやってきたことを踏襲するということが多く行われていることが問題ではないかと考えておりますので、そういう頭の切りかえと申しますか、発想を変えていくことから始める必要がございます。

 これらにつきましても、政府全体で取り組んでまいります。

大岡委員 ありがとうございます。

 続きまして、またあわせて、大臣所信の中に世界に先駆けた生産性革命ということがうたわれており、破壊的なイノベーションを通じた新事業、新産業の創出ということが言われております。また、それに対して、関連予算として中小企業の生産性向上策が盛り込まれております。これについて質問させていただきたいと思います。

 済みません、先ほど来、資料をおつけしていたんですが、資料の説明をするのを忘れておりまして、先ほどの年金問題は一ページ、二ページ、そして、三ページ目以降をごらんいただきたいと思います。

 例えば、三ページ、四ページで御紹介をさせていただいておりますが、中小企業向けの補助事業としまして、ものづくり補助金、サポイン、そのほか、持続化補助金などがございます。これらは補助金適正化法という法律の対象とされていまして、この補助金を受けたことによって収益を上げた場合は国庫に返納しなければならないということにされています。

 もちろん、これはどんな小さな会社であっても適用されているのが実態でございまして、例えば、多くの中小企業が使っていただいている、四ページ目に書かせていただいております、ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業の補助金につきましては、五年間書類を保管しないといけない、中小企業であってもですね。まして、五年間毎年毎年、この補助金によって買った装備がどれだけ利益を得たのかということを調べて、もし利益が出ていれば収益を返せということになっているわけです。

 しかし、御存じのとおり、中小企業では、この事務処理をする人員もいないわけでございますし、そもそも、例えば中小の工場、中規模の工場であったとしても、一つの機械がどれだけ利益を生んだのかという個別原価計算というのができるような設備を持っているところはないわけですね。更に言うと、一体、利益が出ているけれども、この利益がこの製造装置によるものなのか、そのほかの工程の改善によるものなのか、あるいは営業努力によるものなのか、これははかることはできないわけです。しかし、制度として、中小企業であっても零細企業であっても、これを義務づけている。

 私は、これは極めて不合理なんじゃないかなというふうに思っておりまして、まず、制度を所管する財務省にお尋ねをしたいというふうに思います。きょうは、今枝政務官にお運びいただいております。

 まず、財務省として、こうした成長途上にあります小さな企業に過度な清廉潔白さを求めて過重な事務処理を強いるよりも、大きく育てて雇用と法人税でもって社会貢献をさせるということの方が社会正義に合っているのではないか、合理的なのではないかと考えますが、この点についてどのようにお考えか、教えていただきたいと思います。

今枝大臣政務官 お答えを申し上げます。

 大岡委員は元財務大臣政務官でございまして、大変重要な御指摘かと思います。

 補助金等適正化法においては、各省各庁の長は、補助事業等の完了により当該補助事業者等に相当の収益が生ずると認められる場合においては、当該補助金等の交付の目的に反しない場合に限り、その交付した補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべき旨の条件を付すということができるとされております。

 これは、国民から徴収された税金で賄われた補助金等の交付によって得られた利益をその補助事業者等に全て帰属させることは、公益と私益のバランスを失するものであり、妥当ではないと認められる場合があることから、補助事業者側の相当の収益が生じた場合に、補助金等の金額を限度として、当該収益を国に納付させる旨の補助条件を付すことができるようにしたものでございます。

 ただし、当該補助条件は、補助金等の交付の目的に反しない場合に限って付すことが認められているというものでございまして、補助金等の政策目的、また、補助事業者の負担能力等の個別の事情に鑑みて、収益納付条件を付すことが補助金等の交付目的の達成を図る上で適当か否か、当該補助金等を所管する省庁において丁寧に検討をし、当該条件を設けるか否かを御判断していただく必要があると財務省としては考えております。

大岡委員 答弁ありがとうございます。

 同様の趣旨のことが、五ページ目、これは平成二十三年の閣議決定資料の一部でございますけれども、まさに、一応、「所管省庁 財務省及び関係省庁」ということで、そうした趣旨が書かれているわけです。

 しかし、残念ながら、事実上、事務処理の点、また、成長途中の企業であるということ、事情を十分考慮できていないのが現状の制度ではないかなというふうに思っております。

 こうしたことに鑑みまして、先ほど申し上げたような、困難なこともあれば、本来のこの補助金の目的は中小企業を大きく成長させることであるということを考えますと、中小企業においてはやはり収益納付の制度を廃止するべき、収益納付制度の適用を除外するべきだと考えますが、中小企業を所管しておられる経済産業省として、どのように考えておられるか、教えていただきたいと思います。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 経済産業省といたしましては、補助金適正化法の趣旨等を踏まえまして、営利を目的とする事業者が行う営利事業に対して直接的に補助する場合など一定の条件を満たす場合に収益納付を求めることとしております。中小企業に対する補助金についても、このルールに基づき、個別の補助金の目的等を勘案し、収益納付の要否を判断しているところであります。

 具体的には、営利を目的とする事業者が行う営利事業に対して直接的に補助を行うものづくり補助金等には収益納付を求める一方で、収益の増加ではなく災害からの復興を目的とするグループ補助金等においては収益納付を求めておりません。

 また、書類の保管や収益納付額の算出について中小企業に一定の負担をいただいていることは認識しているところであります。

 そうした点も踏まえまして、収益納付を求める場合、ものづくり補助金やサポイン補助金を含めた一般の補助金には、原則、事業完了後五年間を対象に収益納付を求める一方、小規模事業者のみを対象とする持続化補助金等には、事務処理コスト等も考慮し、事業実施年度のみを対象に収益納付を求めることとしております。

 なお、実際にどの程度の規模で収益納付が行われるかの実績は、例えばものづくり補助金においては、平成二十九年九月時点で、平成二十六年度補正事業は七件の、全体の〇・〇六%、平成二十五年度補正事業は三十八件、全体の〇・二八%、平成二十四年度補正事業は六十九件、全体の〇・七一%となっております。

 一方で、概ね、平成二十六年三月に終了しております平成二十四年度補正事業におきましては、四四%が事業化に成功しておりまして、今後、収益納付は増加すると見込まれております。

 引き続き、補助金適正化法の趣旨や個別の補助金の目的、事業者にかかる負担等も踏まえまして、収益納付の制度を適切に運用してまいりたいと考えております。

大岡委員 若干、ちょっと弱腰な答弁だなと思いましたけれども、重ねて申し上げますけれども、簡単に言うと、先ほどおっしゃったとおり、収益納付、制度自体を私は疑問視しているわけじゃないんです、制度は重要だ。ただし、中小企業あるいは小規模事業者に関しては、事務負担の方が多過ぎる。先ほど答弁がありましたとおり、一%未満しか収益納付されないんですね。にもかかわらず、何千社何万社という企業が五年間毎年毎年、もうかったか、もうかっていないかという帳簿を書かないといけない。しかも、それが正確かどうかもわからない。先ほど申し上げたとおり、利益はその製造装置で出ているのか、それとも営業努力で出ているのかわからないわけですから。

 さらに、小規模事業者でいえば、例えば田舎の駄菓子屋さんが、たまたま観光地になったからといって急に外国人が来るようになった、レジ周りを変えた、クレジットカードで決済できるようになった、これを補助金をもらってやりましたと。じゃ、それが一体どれだけ利益を生んだのかはわからないわけです。おばあちゃんの努力もあるかもしれない。外国人がふえたから和式便所を洋式便所に変えました、これは補助金をもらったと。これだって、一体どれだけ利益を生んだかなんて誰もわからないわけですね。

 誰もわからない資料を毎年毎年書かされている。しかも、一%以下の収益納付しか事実上なされていない。これは多くの国民負担を、単純に役所が負担しなくていいから見えないかもしれないけれども、その裏には何千何万という人たちが多くの国民負担をしているわけでありまして、ここはもう少し合理的に今後判断するべきだということを、ちょっと時間がないので、申し上げたいと思います。

 三つ目でございますが、せっかく大臣が御同席いただいておりますので、こうしたやりとりをお聞きいただいて、今後、IT化の推進、あるいは、中小企業も含めた全国民的なイノベーションをどのように進めていくか、決意をお聞かせいただきたいと思います。

松山国務大臣 お答えいたします。

 大岡先生御指摘のとおり、少子高齢化が進展する我が国におきましては、ITを最大限活用して国民生活の質的向上あるいは中小企業の生産性を押し上げるということは、本当に必要不可欠であると認識しています。

 特に、中小企業の生産性向上は、私自身も中小企業に過去、籍を置いておりましたので、極めて重要な課題だと認識いたしておりますし、ITの徹底した活用は、中小企業あるいは小規模事業者の生産性の向上の観点からも有効な施策であると考えています。

 その実現のために、まず、隗より始めよでございまして、行政サービスのデジタル改革を実現するために、本年内にデジタルファースト法案を策定するということで、今取組を強力に推進しているところでございます。これによって、国民のみならず、中小あるいはベンチャーを始めとする企業が行政手続に費やす時間や労力というものを大幅に削減ができると予想しています。

 今後、こうしたデジタル改革を地方や民間にも横展開することで、国民や企業に大きなメリットが実感できる、そんな世界最先端のIT国家をしっかりと目指してまいりたいと思います。

大岡委員 終わります。ありがとうございました。

笠委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 日本の研究力、イノベーション能力、イノベーションの力というのが低下していっているということは長らく言われてまいりましたが、さまざまな指標があります。一番簡単なのは、論文、特に論文の被引用件数というものを見ると、この十年間でどんどんどんどん下がって、昔、十年前は四位であったものが、今十位になっているというようなデータもあります。本当にいろいろな指標が日本の今の研究力の低下というのを物語っているわけですが、いろいろな要因があると思います。

 一つは研究開発投資、こういうところも、他国と比べて、他国は伸ばしているにもかかわらず、日本は本当に、横ばいかあるいは減っていったりしているというような現状があったり、産学の連携の規模があったり、あるいは大学の制度改革、さまざまな要因があると思うんですが、私、きょう取り上げたいのは、若手の研究力です。

 というのは、日本は今こういうふうに勢いを、研究力を失いつつあるとすれば、これから将来どうしていくかというのを考えたときに、しっかりと若手の研究者に対しての支援というものを充実させていくべきじゃないか、そういう視点で質問させていただきたいと思います。

 現状は、非常に今、若手研究者を取り巻く環境というのは厳しいものがあります。資料の一、配付させていただきました。見ていただきますと、研究者の道に進むかどうかというまず最初の段階なんですが、修士課程の学生が次の段階、博士課程に進むかどうか、この進学率の推移です。これは軒並み下がっています。いろいろな学部ごとに色を変えていますが、軒並み、平成三年からのグラフですが、ずっとこの進学率は下がっているんです。これはもちろん少子化の影響は関係ありません。というのは、実数で言っているんじゃなくて進学率ですから、パーセントであらわしていますので。軒並み、博士に行く人はどんどんどんどん今減っている状況なんです。

 では、なぜ減っていくかということなんですが、一つは、よく若い研究者の皆さん、博士課程の方がおっしゃるのは、社会がなかなか評価してくれませんねというわけです。簡単なのが、この次の資料、資料二を見ていただくと、初任給がそもそも違うと。日本であれば、博士まで苦労して取っても初任給は大体一・一五倍。アメリカの場合は一・六倍。中国は、私、六、七年前、中国の科学技術を分析した本を出したことがありまして、そこそこ売れたんですが、そこで調査した結果が、中国は三倍です。新卒と比べて博士課程は三倍給料を出しています。多分、今はもっと開いていると思います。

 こういうような状況の中で、博士まで行くと採用も難しいというような状況ですが、この処遇あるいは採用において、社会からの評価、企業からの評価というものは必ずしも今高いと言えない状況ですが、文科省はどういう取組を今していますか。

信濃政府参考人 今先生から御指摘がありましたとおり、博士課程の修了者について、学部卒業者ですとか修士課程の修了者と初任給の差額がわずかであるということで、学歴や能力に見合った処遇がなされていないという現実がございます。

 また、ある調査によりますと、企業の九割は博士課程修了者をそもそも採用していないという結果もございます。その理由としましては、企業ではすぐに活用できないですとか、社内教育による方が効果的であるといったようなことが挙げられております。

 ただ一方で、別の調査によりますと、実際に博士課程の修了者を採用した企業、ここに聞きますと、その八割が、採用後の印象として、期待を上回っているですとか、ほぼ期待どおりというふうに回答しておりまして、この割合は、学部卒業者ですとか修士課程修了者に対する評価を総じて上回っているということがございます。

 したがいまして、まずは企業が博士課程修了者の能力を適正に評価できる機会を充実していくということが大事ではないかというふうに考えております。

 このため、企業と博士課程修了者の相互理解が進むことを期待いたしまして、文部科学省では、大学と企業が連携して博士課程教育を実施する博士課程教育リーディングプログラム、これに取り組んでおりますし、企業等との人材交流、共同研究が持続的に発展される卓越大学院プログラム、これを本年度から開始するということにしております。さらに、若手研究者の新たなキャリアパスを開拓する卓越研究員事業というのがございますが、これを通じまして企業と若手研究者の接点がより広がることも期待しているところでございます。

 引き続き、こういった事業を通じまして、博士課程修了者が適切に評価をされて、そして処遇や採用の環境が改善されるように取り組んでまいりたいと考えております。

伊佐委員 そうなんですね。採ってみたらよかった、そういうふうに博士課程の方が適切にやはり評価されるという取組が非常に大事だと思っております。

 今就職の話をしましたが、就職じゃなくて、研究者として研究を続けていくかどうかという観点で、資料三を見ていただければと思いますが、じゃ、研究を続けるとなったときに何が障害になりますかというアンケートの結果がこのグラフになっております。一番多いのを見ていただくと、例えば4ですね、短期間の成果が求められる。短期間での成果主義というものがある。これはちょっと、よく言われますので、後で取り上げたいと思います。第二位は、七番、7ですかね、安定的な研究資金が確保できない。5、6もそうです、資金の話。

 研究資金についてまず取り上げたいと思うんです。

 というのは、例えば、ノーベル賞の受賞者がどういう資金を獲得してきたか。ノーベル賞を受賞される受賞の理由の発見をされるのは、平均で大体三十七・一歳と言われています。そのときに発見した、若手のときに発見したのがノーベル賞になるんです。三十七・一歳になるまで、例えば、今、きょう配付していませんが、いろいろなノーベル賞受賞者の研究資金の獲得状況を見ていますと、いろいろな資金を徐々にステップアップに合わせてつないでいっているんです、ふやしていっています。

 これが適切にちゃんとつながるかどうかというのが一番のポイントだと思っておりまして、まず最初、一番最初は、科研費と言われる、本当に基盤的な、スタートの資金です。この科研費、まさしくスタートアップの一番大事な資金ですから、こういう資金こそ若手に重点投下するような方向で充実させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の科学力を強化するためには、国力の源である学術研究を担う若手研究者の育成、確保が重要であると考えておりますけれども、若手研究者が自立的な研究を実施する上で、安定的な研究資金の確保が課題であると認識しております。

 文部科学省におきましては、研究者の自由な発想に基づく幅広い分野にわたる学術研究を支援する科学研究費助成事業、科研費につきまして、平成二十九年度から、科研費若手支援プランといたしまして、若手研究者に独立して研究する機会を与え、研究者としての成長を支援する研究種目である若手研究の採択率向上等を図る取組や、論文等の実績よりもアイデアの斬新性等を重視して大胆な挑戦を促す研究種目である挑戦的研究の創設などの改革を実施しております。

 今後とも、科研費において若手研究者支援の一層の重点化を図るなど、若手研究者が自由な発想に基づく研究に挑戦しやすい環境の整備に努めてまいります。

伊佐委員 ありがとうございます。

 大型な資金というのももちろん大事だと思うんですが、大型のものが少ないよりも、その一部でもできるだけ若手がとりやすい若手研究種目に移換していっていただきたいというふうに思っております。

 この科研費の、次のステップアップをしたとき、ある程度科研費で成果が出ましたとなったときに、じゃ、これをもうちょっと深めていきましょうとなったときの次のステップになるのが、JST、科学技術振興機構の持っている、さきがけと言われるものです。

 これは若手の登竜門と言われていまして、ノーベル賞受賞者も大体これをとっている。倍率がそこそこ高くて、狭き門だと言われております。科研費に行って、さきがけに行くというのが、今、若手で、しかも基礎研究という要因もあってなかなか競争的資金をとりにくい中での二大資金源になっていますが、このさきがけについてもぜひ充実していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のJSTの戦略的創造研究推進事業では、トップダウンで定めた戦略目標に基づき、イノベーション志向の戦略的な基礎研究を推進しております。その一環として、主に若手研究者を対象とした個人研究型のさきがけを実施しております。

 さきがけでございますけれども、若手研究者の独創的で挑戦的なアイデアを広く募集すること、トップクラスの研究実績を有する研究総括が、合宿形式の研究報告会やサイトビジット等を通じてきめ細かい助言指導を行うこと、異分野の研究者との交流、連携の促進を通じて、研究の視野を広げ、将来にわたるネットワークが形成されることなどを特徴としておりまして、研究者として伸び盛りの時期における、次代を担う研究者の育成を担っております。

 この結果、例えば、さきがけの採択時に任期つきの職にあった研究者が研究期間終了後に任期のないテニュア職についた割合が約五〇%、また、研究者が研究期間終了時までに助教から准教授のように昇進した割合が約四〇%と、若手研究者のキャリアアップに大きく貢献してございます。

 文部科学省といたしましては、このような実績を有するさきがけの充実が重要と考えておりまして、現在、約一〇%の採択率の向上を目指したさきがけの採択課題数の拡大や、さきがけより更に若い研究者を支援対象とする制度の充実などを通じまして、次代を担う若手研究者の育成を着実に推進してまいりたいと考えております。

伊佐委員 御答弁いただいたとおり、このさきがけ、こうした資金があることによってポストが得られるというような効果もあると思います。

 そこで、ちょっとポストの話もしたいと思うんですが、資料三の、さっきの、何が障害になるかというのを見ていただくと、例えば3、雇用が不安定だというところがあります。

 この雇用については、資料四を見ていただくと、いかに今若手の安定的なポストが減っているかです。上が平成十九年度で、下が平成二十五年、六年後の経緯、六年間の姿ですが、左が任期つき、つまり不安定なポジション、右が任期なし、安定的なポジション。この丸で囲っているところ、赤枠とか青枠を見ていただくと、若手層、二十四歳、二十五歳、三十歳、三十五歳、この平成十九年度から二十五年度を見ていただくと、不安定なポジションはふえています。安定的なポジションは減っています。つまり、今、若手は安定的なポジションはどんどん減っていっている状況なんです。

 こういう状況で、さっき、障害になります第一位と言った、資料三の、例えば、短期間の成果が求められる。これは何で短期間の成果が求められるかというと、これはもう恐らく理由ははっきりしていまして、任期つきなので、短期間の雇用なので、自分がこうだと思う研究テーマをなかなか独創的なテーマで進められない。これは何とかすべきじゃないかと思いますが、このポスト、任期なしのポスト獲得、安定的なポスト獲得という観点で、若手研究者をしっかりと支援していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。新妻政務官。

新妻大臣政務官 今委員に、資料四、また資料三の3、4で示していただきましたように、若手研究者をめぐる状況は大変に大きな課題があると思っております。

 ここで、博士課程の修了者が我が国の科学技術イノベーションを牽引する研究者として自立することができるよう、そのキャリアパスの形成を図るため、若手研究者が安定かつ自立的に研究を行う環境を整備することが大変重要であると考えています。

 このため、文部科学省では、一つ目、優秀な研究者が安定かつ自立したポストについて研究できる環境を実現する卓越研究員事業や、2、教員の業績評価制度の適正化や年俸制、クロスアポイントメント制度の活用などの国立大学における人事給与マネジメント改革の推進により、若手研究者のポストの確保を図っております。

 今後とも、博士課程修了者が研究者として自立し活躍することができるよう、我が国の将来を担う若手研究者の安定かつ自立した研究環境の整備に努めてまいります。

伊佐委員 若手研究者の中でも、特に女性の研究者の方の環境について、最後、松山大臣に質問させていただきたいと思います。

 とりわけ女性の場合、出産であったりとか育児であったりと、ライフステージがさまざまありまして、その中で、出産、育児、介護にかかわる女性の研究者の方をどうやってサポートするか、支援していくかということも大事な観点だと思います。

 これは女性研究員の割合ですが、今第五期が始まっております、第四期の科学技術基本計画の中で、女性研究員をこれだけにしようという目標値がありました。その目標値は、農学は三〇%は女性にしよう、医歯薬は合わせて三〇%、理学系は二〇%、工学系はせめて一五%まで持っていきたいという目標だったんですが、残念ながら達成できなかったという状況です。

 この女性研究者の活躍促進という観点で、大臣の決意を伺いたいと思います。

松山国務大臣 お答えいたします。

 多様な視点やすぐれた発想を取り入れて科学技術イノベーション活動を活性化していく、そのためには、女性の能力を最大限に発揮できる環境整備、その活躍を促進していくことが極めて不可欠でございます。

 しかしながら、女性研究者の割合ですが、増加傾向にあるものの、主要国と比較するといまだ低い水準にございまして、理工系分野における女子学生比率、その伸び率も低い状況にございます。

 また、研究活動と出産、育児等の両立が困難な環境に置かれている場合があるということ、あるいは女性のキャリアとしての理工系進学等に関する保護者の認知や理解が進んでいないということ、そういったことから、必ずしも女性研究者が十分活躍できる状況には至っていない面もあるというふうに認識をしているところでございます。

 このため、第五期の科学技術基本計画では、それまでの計画に引き続き、自然科学系全体での女性研究者の新規採用割合を三〇%にするということを明記をいたしまして、女性が研究等とライフイベントの両立を図るための支援を行うということにいたしております。

 具体的には、例えば内閣府及び文科省において、研究と出産、育児等の両立やあるいは研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進をしていく、ダイバーシティー実現に取り組む大学に対する支援、また、女子中高生の理系分野への興味、関心を持っていただくためのシンポジウムを開催をしたり、さまざま取組を行っているところでございます。

 政府としても、引き続き、科学技術イノベーション分野における女性の活躍推進に向けまして、関係省庁と連携してしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

伊佐委員 大臣、ありがとうございました。

 若手人材の話ときょうは宇宙の話もしたかったんですが、少しちょっと時間がなくなってまいりましたので、せめて宇宙の人材の話だけでも大臣に質問したいと思うんです。

 宇宙の研究開発力、宇宙のイノベーション力という観点で、では、宇宙開発の技術者とか研究者はどこで一体育っているのかということですが、これはもう、具体的な研究開発プロジェクトに携わっていくことで力をつけていく。つまり、具体的な研究開発プロジェクトが先細っていくと、それだけ若手がそこで学んで育って訓練を受けていく場所が減っていく、人材が枯渇していくという状況になります。それが一番はっきりわかるのが宇宙プロジェクトだと私は思っていまして。というのは、一つ一つのプロジェクトがかなり大玉、大きいですので。

 これは、資料五を最後に見ていただきますと、例えば左の方を見ていただくと、各年齢、二十四歳、二十五歳、三十歳、年齢ごとに、ロケット開発、どういう開発に携わったかと。Nロケット、H1ロケット、H2ロケット、H2A、H2Bと。この棒の高さが厚みです、研究者の。経験しましたよと。当然、若手は昔の研究開発のロケットのNとかH1、H2というのは経験していませんので、これは厚みは何もありません。最近のロケットになると厚みがある、こういうグラフになっているわけです。だから、黄色の部分というのは、全く人材が不足している、経験値が不足している分野になります。

 これがどうなっていったかというと、右のグラフを見ていただくと、黄色がどんどんどんどんふえていっている、つまり何のプロジェクト開発も経験しないまま研究者が大きくなっていっているという状況で、このままいくと、研究開発でロケットをつくったことがありません、メンテナンスはもちろんやっていると思いますが、研究開発はやったことありませんという人がどんどんふえていく。こういう状況になっていったときに、最後ぎりぎり間に合ったのがH3ロケットです。長らくプロジェクト化、ようやく予算を認められて、H3ロケットができるようになったので、恐らく、もう一本後ろに線がつくことになったんですね。

 というように、しっかりと、技術力の維持、若手の人材の維持という観点を考えれば、実用化の部分はもちろん大事です、利用の部分も大事なんですが、この技術力の根幹は、研究開発プロジェクトを少なくとも一定の程度は確保するということじゃないかと私は思いますが、大臣、いかがですか。

松山国務大臣 お答えいたします。

 平成二十八年四月に閣議決定された宇宙基本計画、この中においても、宇宙安全保障の確保あるいは民生分野における宇宙利用の促進、また、宇宙産業及び科学技術の基盤の維持強化、これを我が国の宇宙政策の目標として掲げているところでございます。

 この中で、科学技術は、安全保障の強化あるいは民生分野における利用の推進に係る基盤として位置づけておりまして、こうした観点から、先生御指摘のとおりに、必要な研究開発プロジェクト等の推進を通じて我が国の技術力あるいは開発力を維持強化するということで、これらを担うすぐれた人材を育成していくこと、極めて重要と考えております。

 引き続き、この宇宙利用に関するニーズも踏まえて、必要な研究開発等を着実に推進しまして、その成果の社会実装を促進することで、我が国の産業の高度化、効率化、あるいは新産業の創出というものをしっかりと実現してまいりたいと思います。

伊佐委員 大臣、本当に、産業界との宇宙の分野での連携も非常に力を入れていただいておりますので、引き続き御支援いただければと思います。

 終わります。ありがとうございました。

笠委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・市民クラブの櫻井周です。

 本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、大臣の所信に対する質疑ということですので、早速、大臣の所信についてお尋ねをしたいと思います。

 先日の大臣所信におきまして、科学技術イノベーション政策を推進していくという大臣の御決意、大変頼もしく聞かせていただきました。一方で、我が国の科学技術イノベーションに関する問題として、日本からさまざまな先端技術が流出している、漏えいしているという問題もございます。こうした問題についてちょっと大臣の所信をお伺いしたいと思いますけれども、その前に、幾つか事例を紹介いたしたいと思います。

 例えば、先月、三月二日、日本経済新聞の記事には、「日本企業文書 止まらぬ流出」、こんな記事もございました。内部管理の強化が必要だ、こういう記事でございました。また、もう少し振り返ってみますと、ちょっと前の話になりますけれども、新日鉄住金の技術が韓国の鉄鋼大手ポスコに流れた、こうした事件もございました。また、東芝の研究データが韓国の半導体企業に流出した、こうした事件もございました。こうした事件は、たまたま見つかったというようなところ、氷山の一角にすぎないというふうに思います。

 イノベーションをしっかりと推進する、それは大変重要です。しかし、せっかく推進して得られた技術がどんどん漏れてしまったということであっては、我が国の競争力強化につながりません。日々国益が損なわれている、こうした可能性もあるわけでございます。

 ところが、残念なことに、大臣の所信の中では、こうした技術漏えい対策についての言及がございませんでした。攻めの姿勢は大変すばらしいけれども、守りもしっかり固めていく必要があろうかと思いますので、そこで質問をさせていただきます。

 先端技術と重要技術に関する情報が流出、漏えいしている、この現状に対してどのような対策を進めていこうというふうにお考えなのか、大臣の御決意をお伺いいたします。

松山国務大臣 お答えいたします。

 物があふれて、人々の価値が多様化している現在、御指摘を賜りましたように、単に技術的にすぐれたもの、あるいはサービスだけではビジネスに勝てない例がふえてきていると確かに認識をいたしております。

 このため、企業には、ユーザーから求められる物やサービスを企画するとともに、その中で開発した技術などの知的財産というものをどのように活用していくかという観点から、ビジネスの戦略というものを練ることが求められていると存じます。

 こうした認識のもとで、知的財産戦略本部に、昨年九月に、知財のビジネス価値評価検討タスクフォースというものを設置をいたしました。ビジネスの中で知的財産が果たす役割を明らかにするとともに、各企業がその重要性を認識できるようにする取組等について検討を現在進めているところでございます。

 今後、ここでの成果を広く普及することによって、我が国の企業がビジネスにおいてこの知的財産を戦略的に活用できるようになるよう、しっかりと努めてまいりたいと思っております。

櫻井委員 ちょっと私の通告の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、多分、その御答弁は別な質問に対する御答弁でございまして、端的にもう一回お尋ねしますけれども、技術漏えい、これに対してどういう対策を国として進めていくのかということについて、この質問もしますと通告させていただいているので、多分どこかにあると思いますので、ちょっとよろしくお願いいたします。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 企業にとりまして、競争力の源泉の一つであります技術が、昨今、人を介し、あるいは紙でありますとかUSBなどの情報媒体を通じ、さらにはサイバーを介して社外に流出してしまうという事態が散見されていると認識をしております。技術情報を適切に管理することの重要性が一層高まっているというぐあいに考えております。

 そのため、技術情報の特徴に着目をして、その具体的な管理方法を示す重要技術管理ガイドライン、これを昨年の四月に政府としても公表しておりまして、その後、これを全国で説明会を開催するなど、企業における技術情報の適切な管理を促してきたところでございます。

 また、加えまして、技術等の情報の適切な管理についての外部からの予測可能性、これを高めることによって、オープンイノベーションをどんどん進めていって、産業競争力の強化を図るために、産業競争力強化法の改正において、技術等の情報の管理に係る認証の制度、これを提案をさせていただいているところでございます。

 この提案は、共同研究などの相手方において、技術等の情報について適切な管理が行われているかといった点をしっかりと確認できなければ安心できないといった声にも応えるものでございます。

 産業競争力強化法の改正による認証制度、単にこれを施行するだけではなくて、重要技術管理ガイドラインを参考に、主務大臣が定める認証に係る基準について、丁寧な説明を始めとして、広く産業界において認証の取得を促していくための環境整備、これをしっかりと進めることで情報の適切な管理を促していきたいというぐあいに考えております。

櫻井委員 今審議官の方から御答弁いただきましたけれども、大臣の方でも、技術漏えい対策、このイノベーション、攻めも重要ですけれども、守りの方に対する御決意、もしあれば、よろしくお願いいたします。

上田政府参考人 先ほど申し上げましたように、技術を守っていくということは、これは産業競争力強化においても非常に重要なファクターでございますので、先ほど申し上げたようなガイドラインをしっかり徹底していくとか、産業競争力強化法のもとで認証制度をつくるということで、これは産業界にしっかり普及をして、攻めのみならず守りの方もしっかり政府として固めていきたいというぐあいに思っております。

櫻井委員 いや、ちょっと私は今、大臣の所信に対する質問ですので、大臣の意気込みもちょっと聞かせていただきたいな、攻めだけじゃなくて守りについての意気込みも聞かせていただきたいなということで質問させていただいているんですけれども、審議官の意気込みはよくわかったんですが、大臣の意気込みはいかがでしょうか。

松山国務大臣 技術情報の漏えい管理は極めて大事ですので、連携しながらしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

櫻井委員 守りもしっかりと固めていただきたいというふうに思います。

 私の方からも、幾つか具体的な取組について、諸外国で既にやっていることは少なくとも我が国でも進めるべきではないのかという観点から質問をさせていただきます。

 まず、特許に関連することでございますが、例えばアメリカであれば、アメリカ国内で発明したものはアメリカで出願をする、第一国出願制度というものが採用されております。こうすることで、国内での科学技術の開発についてはしっかりとまず国内で囲い込むというような政策がとられているわけです。しかし、我が国ではそうした制度はとられていないというのがございます。

 一時期、日本の特許庁の審査が遅いというので、海外で、特にアメリカで第一国出願をしてしまうというような事例もございました。こうしたことから、場合によっては技術が漏えいしてしまうリスクもちょっと高まるわけです。

 また、あと、日本の特許庁、昔は電子図書館と言っておりました、今は模様がえしまして、特許情報プラットフォームということになっておりますけれども、ここには、特許公報など出願した内容、それから特許になったもののいろいろな技術情報が掲載されているわけです。

 特許というのは、出願したら公開されるというのが大原則でございますが、しかし、そこは技術の宝の山になっているという中で、そこへアクセスする方、どこの国からアクセスしているのが多いかというと、日本語で書いてある文書にもかかわらず、日本からではなくて、中国や韓国からのアクセスが非常に多いということも言われております。これでは技術情報がどんどん漏れていってしまっているのではないのか、こういうことも心配するわけです。アメリカでは、非常に重要な技術については秘密特許制度というのもございます。

 そこで、お尋ねをいたしますが、やはり技術を守るために、そして我が国の産業競争力を守っていくために、第一国出願制度や秘密特許制度、こうしたものの導入も検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えいたします。

 我が国の特許法におきましては、出願人が出願国を自由に選択できる制度となっております。また、特許出願につきましては、その内容が公序良俗に反しない限り、原則として出願から十八カ月経過した後に全件公開することとなっております。またさらに、特許権を取得したものについては全件公開するということになっております。

 この趣旨は、権利者がみずから選択した国において、発明の公開の代償として特許という独占権を付与するということとともに、第三者に対して新技術の存在を知らせて、その利用を促し、研究開発の重複投資を防止するというところにございます。これによりまして、特許制度本来の目的である発明の保護及び利用を促進することにより、発明を奨励し、産業の発達に寄与するということを図っているものであります。

 一方、諸外国におきましては、今御指摘のありましたとおり、自国内で完成した発明の外国出願を制限する第一国出願制度や、出願内容の公表を制限するいわゆる秘密特許制度を導入している国があるということは承知しております。こうした制度につきましては、特許制度における発明の公表の趣旨と国家安全保障上の秘密の保護の要請に留意しつつ、慎重に検討すべきことと認識しております。

 また、特許の審査につきましては、以前は確かに遅いという御指摘もございましたが、この四年間で、最初の応答まで二十カ月以上かかったものが九カ月ということで、今世界最速水準になっているということもお伝えさせていただきます。

櫻井委員 特許制度というのは、公開の代償として独占権を付与という制度趣旨があるわけでございますが、ただ、全部公開してしまうことによって、やはり我が国の国際競争力がそがれているのではないのか、他国に倣って、もう少し研究をして、そうした守りの部分を固めていくべきではないのかということで、ぜひ慎重であってもしっかりと検討をしていただきたいというふうに思います。

 それから、あともう一つ、この知的財産制度において、損害賠償ですね、侵害された後のことなんですけれども、我が国の損害賠償制度というのは、損害に対して、それを補填するというような考え方から、実際の損害額を全て認定されるわけではないというようなこともあって、結局、訴訟に勝っても、部分的には泣き寝入りせざるを得ない部分というのがあるのではないのか。

 訴訟の手間を考えると、なかなか、訴訟に持ち込んでまでやるのかということになってしまうと、結局、やった者勝ち、侵害した者勝ちというようなことになっているのではないのかというふうにも心配するわけです。

 例えば、昨日、実は文部科学委員会の方でも質問させていただきました。著作権法侵害の、これは漫画村というサイトなんですけれども、そういったものがあって、我が国の貴重な漫画文化、こうしたものがお金を払わずにネットでただで読めてしまう。しかも、場合によっては発売日より先に読めてしまうということで、重大な損害が出ているというにもかかわらず、なかなか訴訟にも踏み切れずに放置されてきたという現状がございます。

 最近、新聞報道によりまして、政府の方でも御検討されているというようなことについては、昨日も答弁いただいたところではございますが、こうしたように、日本の知的な財産、こうした文化、著作権も含めたものが損なわれているにもかかわらず、十分な補償というか、裁判で勝って、侵害したら割に合わないんだというような制度には必ずしも今はなっていないのではないのか。

 先ほど紹介いたしました新日鉄住金の技術漏えいでも、これは三百億円の損害賠償で和解しております。三百億円というのが高いか安いかですけれども、私はすごい安いと思います。これはもう企業の競争力の根幹の部分をたった三百億円で解決してしまうのかと残念でなりません。

 そういった意味でも、例えば諸外国でとられている三倍賠償制度、そういったものも検討するべきだと思いますが、いかがお考えでしょうか。

小山政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお話のありましたいわゆる三倍賠償制度につきましては、国内外でさまざまな議論があると承知しております。

 御指摘のありましたように、確かに日本の特許権侵害訴訟における損害賠償認容額というものは、アメリカと比較して低いという状況にございます。ただ一方で、米国以外のドイツ、中国、韓国などの主要国と比較した場合、日本の賠償額というのは相対に高い水準にあるというのが現状であります。

 今後、損害賠償に係る制度やその運用の背景としての社会的評価などを踏まえまして、幅広く関係者と議論していきたいと考えております。

 なお、これに関連しまして、今般の特許法改正におきましても、証拠収集手続を強化する立法的な措置というものを講じております。特許権侵害訴訟において、裁判所が非公開のいわゆるインカメラ手続で書類提出の必要性を判断できるようにするということとともに、中立の技術専門家がこの手続に関与できるようにするということを予定しております。

 これらを通じまして、より適切な損害賠償請求が実現できる環境を整えていきたいというふうに考えております。

櫻井委員 日本の知的財産に関する損害賠償額、ドイツとか韓国に比べて大きいというお話もございましたが、これはなかなか比較するのは難しくて、日本の場合、小さな案件だったらそもそも訴訟しないというふうなことから、もうよっぽどのものが出てくるということもあるんでしょうし、それだけ日本の技術が高いということかもしれませんので、これは侵害された内容に対してということになってくるので、一概には言えないと思います。

 ただ、御指摘のとおり、アメリカがはるかに高いというのは事実だと思いますし、アメリカはそれだけ、いろいろな文化的な背景もあるんでしょうけれども、技術防衛に対して熱心にやっているということだろうというふうにも思いますので、そうしたことも含めて御検討いただきたいと思います。

 あと、知的財産権の専門家という意味では、弁理士という制度が我が国にはございます。ただ、例えばアメリカですと、弁護士がいて、弁護士の中から特許技術について詳しい人がパテントアトーニーということになるわけですが、我が国の場合は逆でございまして、弁護士であれば弁理士業務も当然にできるというような、弁護士法三条二項というような条文もございます。

 技術情報に必ずしも精通していない、また弁理士会の会則にも服しない、そうした人がこうした最先端技術に接するというようなこともあって、これはこれで技術漏えいの一つの抜け道になるのではないのか。過去にそうした事案が発覚したことは私自身は承知しておりませんけれども、可能性としてはある。

 さらには、今後は外国法事務弁護士との混合法人を設立できるようにするというような検討も進められておるところでございます。そうしたことになってくると、やはりそこから外国に抜けていくのではないのか。先ほど申し上げた第一国出願とかそういったものもない中で、我が国の技術を本当にちゃんと守れるのかどうか、ここが非常に心配なところでございます。

 どこで穴を塞いでいくかというのは一つ課題でございますが、ただ、私としましては、やはり弁護士であってもちゃんと弁理士登録を受けて、実務修習と研修を受けて、専門家として活動するべきだというふうに考えますが、この点、どのようにお考えでしょうか。

小出政府参考人 お答えいたします。

 弁護士法上、弁護士は、法令及び法律事務に精通する者として、弁護士法三条一項に規定されている法律事務を行うことを職務としております。

 この点、弁理士が行うことができる知的財産権にかかわる事務等は、いずれも弁護士法三条一項の一般の法律事務に含まれますことから、弁護士法三条二項において、弁護士は当然に弁理士の事務を行うことができることが注意的に規定されているところでございます。

 実際上も、弁護士の扱う一般の法律事務はあらゆる法令及び法律事務に広く及び得るものでございまして、弁護士が行う個別の法律事務の中に弁理士の行い得る事務が含まれる場合、弁理士登録がなければその部分の事務を行うことができないとすると、弁護士による迅速、円滑な、また一体としての法律事務の遂行が阻害され、国民の法的ニーズに応えることができない結果となりかねないということでございます。

 また、弁理士登録をしない弁護士が行った弁理士の事務の内容が弁護士法五十六条の定める懲戒事由に当たる場合には、所属弁護士会による懲戒処分の対象となり得ることから、弁理士登録をしない弁護士の行う弁理士の事務の適正は確保されているものと考えております。

 したがいまして、弁理士登録を行わない限り弁理士の事務を行うことができないとするような方向での弁護士法の改正は難しいと考えているところでございます。

櫻井委員 いろいろ、弁理士会で処分されなくても、弁護士会の方で処分されるんだからいいんだというようなことをおっしゃいますが、それだと、やはり自律性といいますか、弁理士制度といいますか、知的財産、非常な我が国の競争力の源泉であるところがしっかりと守れるのかどうか。一手間ふえるわけですから、その分、抜け落ちる部分が出てくるのではないかということで、ちょっと今の答弁には承服しかねるんですけれども、もう時間がなくなりましたので、最後の質問にさせていただきます。

 これもまた日本経済新聞の記事でございますが、三月十九日の記事で、「中国発、知財の「一帯一路」 官民一体の利、学ぶとき」というような、こういった記事もございました。

 お隣の中国では、知的財産権も含めて、マーケティング戦略も含めて、必死でやっているわけでございます。それに対して、我が国はちょっとナイーブに過ぎるのではないのか、そうした危機感も私は持っているわけでございます。我が国の企業が持つ技術競争力、十分に生かせていないといいますか、ちょっともったいないような状況になっているのではないのか。

 ただ、政府があれこれしろといって官民一体でやるというのも、これまたちょっとやり過ぎのような気もします。

 ただ、政府として、もう少し支援できるところがあるのではないかというふうにも考えるんですが、いかがでしょうか。

笠委員長 内閣府住田知的財産戦略推進事務局長、時間が来ておりますので、答弁は簡潔に願います。

住田政府参考人 御指摘の点でございますけれども、まさに我が国の技術を上手に使いながら、また知財を上手に使いながら、何とか市場をとっていこうということは非常に大事だと考えてございまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、例えば知財のビジネス価値評価検討タスクフォースといったような場におきましては、やはりこれから、技術だけではなくて、ユーザーが何を求めているのかということで、ユーザーが求めているような物やサービス、これを上手に企画していく、デザインしていく、この能力が非常に大事だというふうに考えてございますので、いろいろな政府のレポートの中でもそうしたことについてしっかりと提言していきたいというふうに考えてございます。

櫻井委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

笠委員長 次に、吉田統彦君。

吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 もう二十分しかない貴重な時間ですので、しっかり質疑に入らせていただきます。

 委員長、ぜひ、次はもっと長目に、しっかり時間を確保していただいて、イノベーション、科学技術は国家の根幹ですから、二十分ではいい議論ができませんから、この倍、三倍と時間をとっていただきたいとまず最初に要望させていただきます。

 最初に、iPSのことに関して、臨床研究等々を含めて、ちょっと質問させていただきたいと思います。

 二〇一〇年の十一月十八日の神戸新聞からの抜粋を要約しますが、先端医療センター病院、今の神戸市医療センターに改編された病院ですが、それと理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター、これは今、多細胞システム形成研究センター、CDBとなっておりますが、この研究グループが、iPSから作成した目の網膜色素上皮細胞を使って、加齢黄斑変性の患者に対する臨床研究を二〇一三年度に始める意向が当時はあった。iPS細胞は再生医療への応用を期待され、世界初の臨床研究となる可能性が高いと。実際なったわけです。

 研究グループの平見恭彦副医長、高橋政代チームリーダーらは、この未分化のiPS細胞から不純物を取り除いてつくられた網膜色素上皮細胞が正常に働けば加齢黄斑変性の治療に役立つ、症状の悪化をおくらせることができる、そういったことを言っておりました。臨床研究は、当時五人程度を想定していました。

 そういった形で、有効性、安全性を確認して、その上で、二〇一六年度には一般の治療として承認を受けるための臨床治験を始めたいと当時言っていました。

 実際は、二〇一四年の九月十二日に一例目の患者さんへの、自家iPS細胞由来の網膜細胞を使った加齢黄斑変性の臨床研究としての移植手術が実施をされています。二〇一四年の九月十二日です。これは自家移植です。

 二〇一七年の三月二十八日に、今は神戸市医療センター中央市民病院となりましたが、そこの栗本康夫眼科部長と会見を開いて、高橋政代さんは、他家のiPS細胞を用いた滲出型加齢黄斑変性の臨床研究の一例目の移植手術を行っています。

 その後、全五症例に移植手術を施行して、二〇一八年の十一月に全症例が一年の経過観察期間を過ぎる。ここで恐らく何らかの情報公開がなされることを期待しておりますが、二〇一〇年のさっき紹介した新聞のタイムコースと比べると、むちゃくちゃおくれていますよね。むちゃくちゃおくれているんですよ。

 このおくれているということに関して、ちょっと政府、大臣でもどなたでも結構です、政府の御答弁をいただきたいと思います。

磯谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問ございました加齢黄斑変性に対する研究支援でございますけれども、世界初の技術でありますiPS細胞につきましては、均質で高品質なiPS細胞を作成する方法や、移植する細胞への効率のよい分化誘導法等の基礎研究や基盤技術の開発を継続しつつ、有効性だけではなくて品質、安全性も重視しながら、関係府省と連携してその臨床応用を目指す必要があると認識しております。

 御指摘の高橋政代プロジェクトリーダーを代表とする加齢黄斑変性に対する研究につきましては、先生が今御指摘の経緯をたどっているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、有効性だけではなくて品質、安全を重視しながら慎重に研究を進める必要がある中で一定の時間を要しておりますが、先ほど先生御紹介いただいたような、例えば、平成二十七年にiPS細胞ストックを用いて、二十九年に網膜色素上皮細胞移植が実施された、そういうことで着実に進捗をしているものとは認識をしてございます。

吉田委員 多分もうちょっと役所も見てもらった方がいいんですが、自家移植が世界初で実際されているのはすばらしいことなんですよ。すばらしいことなんですけれども、この後、実際には、理研は、自家iPS細胞を使用することの問題は培養時間とコストの削減が大変重要課題であると言ったきり、自家移植を一旦やめていますよね。他家移植にかじを切った。その辺が全然国民に対しても説明されていない。

 患者さんたちは研究の進展を待ち望んでいるし、少なくとも毎年数億円以上の予算が投下されていますよね、国から。最低二億の年もあるけれども、重なっている年は五億ぐらい、五億以上かな、予算が組まれているわけです。だから、我々は大変期待をするんですが、このままだと、ES細胞由来のいわゆるRPE、網膜色素上皮細胞による再生医療だとか、あと、国内でも、iPS細胞によるパーキンソン病、脊髄損傷、脊損の治療、あと、肝臓や心筋の再生におくれをとる可能性があると私は大変心配しております。

 ある種、幸運なことに、RPE細胞の分野で今までずっとアメリカで最もリードしていた企業は、ES細胞からRPE細胞をつくっていましたよね、このOCATA社。ちょっとこれは何と略すのかわからないですが、OCATA社というのが二〇一五年にアステラスに買収をされているわけです。

 ただ、アステラス、日本の製薬メーカーですね。それでもなお、やはり理研のiPS細胞の臨床研究や治験が、日本はせっかく薬機法をつくって、早期承認制度をつくって、そのアドバンテージを失わないか、大変日本の再生医療界は懸念しているんです。

 かつて、理研の高橋さん、彼女も、エグゼクティブという雑誌だったと思います、その取材で、アメリカで、ES細胞からつくったRPE細胞より先に、許可を得て、市場を押さえたいと意気込んでいたと。こういった状況を含めて、やはりちょっと遅いですよね。

 政務官、多分ここをしっかり見ていただいたので、どう思われますか。

大沼大臣政務官 お答えいたします。

 吉田委員が提起していただきました加齢黄斑変性に対する臨床検証につきましては、厚生労働省といたしましても、再生医療実用化研究事業におきまして、平成二十五年度から平成二十九年度までの五年間に総額約七・六億円を支援しているところでございます。

 委員御指摘の、進捗がちょっと遅いんじゃないか、また情報公開についても徹底してほしいという御意見でございますが、平成二十九年の十一月には、まずは他人のiPS細胞を用いた臨床検証については、予定症例数が終了しており、現在経過観察期間中ということで、ことしの秋にはその経過観察期間が終了するものというふうに理解しているところでございます。

 高橋政代プロジェクトリーダーには、AMEDの一般向けの成果報告会等々でも、幅広く一般の国民向けにも成果を発表いただく機会を設けていただきたいというふうに思っておりますし、今後も、個人情報の取扱いには十分配慮しつつ、広く情報提供を求めるとともに、国民のそういった機運を高めることによって、しっかりとこの研究自体を前に進めるよう尽力してまいりたいと思います。

吉田委員 政務官、しっかりお答えいただきました。

 本当に情報公開がしっかりしないと、これだけ予算をかけて、やはりちょっと、皆さん、国民は納得しない部分もあるし、期待をしている部分、ほかに抜かれてしまう、これはせっかく日本が世界のフラッグシップでやっているものなので、抜かれちゃったらもう元も子もないんですよ。だから、しっかりやっていただきたい。

 今言っていただいたように、ことしの十一月に、情報公開、他家移植の五症例をしっかりとしていただきたい。知財との関連もあるので、そういうところはしっかりもちろん配慮していただきたいと思います。

 ただ、もう一つ、自家移植というものに関しては、実は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン、これは世界最高峰の科学誌です、二〇一七年三月十六日付で発表しています。私も読みました。これは二〇一七年三月十六日なんです。手術は、さっき言ったように、二〇一四年九月十二日の移植手術なんです。

 今後の展開とかも含めて、自家移植、確かにお金もかかるとか、コスト、培養の技術とかいろいろあるんですけれども、それでもやはり一般の方に、国民の皆さんに広く知らしめるべきだと思うんです。

 ちょっと、そこももう一言、しっかり発表させます、情報公開させますと、政務官、お答えいただければと思います。

大沼大臣政務官 委員御指摘のように、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンで報告がなされて、同じ日に理化学研究所の方のホームページでもアップをしているところでございます。

 また、AMEDにおきましては、この成果報告会というものもしっかりしたところでございますが、広報のあり方についてはまだまだ不十分という委員の御指摘をしっかりと受けとめたいと思います。

吉田委員 私もホームページをちゃんとチェックしましたけれども、やはりあれでは国民の皆さんがなかなかちょっとわかりづらいし、報道の皆さん、メディアの皆さんもちょっとわかりにくいと思うので、もうちょっとかみ砕いて説明していただく必要があるのかなと思います。

 大変しっかりと答弁いただき、ありがとうございます。

 もうちょっと後で、もしかしたら一問、時間次第でちょっと行きたいので、次の議題に移りたいと思います。

 ベンチャーの問題ですね。スーパーコンピューターの開発を手がけるベンチャー企業をめぐる国の助成金不正受給事件がありました。ペジーコンピューティングが八億円の所得を隠して法人税約二億円を脱税した疑いから、るるあったわけでありますが、事件では、斉藤被告ですね、社長でありましたが、この方が複数の助成金をだまし取った詐欺容疑ということで再逮捕されています。

 NEDOが最初の助成金の採択を決めたのは、平成二十二年一月の同社設立から半年後だったわけであります。その後、ペジー社は、二十二年から二十九年度、五事業でNEDOから助成金を得ています。総額は三十五億二千四百万円ですね。ほかにも、ウルトラメモリ社が数億円、エクサスケーラー社、これは文科省所管の国立研究開発法人から六十億円の無利子融資が認められて、約五十二億が融資されていた。立件された助成金を含めて約百億円の資金投入が決まっていた。結局、文科省の五十二億は返還ということになったと聞いています。

 こういう事件、もちろん再発防止が極めて重要ですよね。再発防止は極めて重要。しかし、国内のベンチャーの創出力を損ねるようなことがあっては絶対いけない。

 今、やはり世界の、さっきのOCATA社もあれはベンチャーなんですよ、そういったベンチャーがアメリカやヨーロッパでは非常に大きな力を持って産業を活性化しているので、こういった再発防止に向けて、そして、かつ、ベンチャーの創出力や力、日本の力を損ねることなく、できればベンチャーの力をしっかりと後押しするようにしていただきたいんですけれども、そこに関してちょっと御意見を。どなたでも結構です。

佐野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘がありましたように、ベンチャーに関してでございますが、迅速で機動的な研究開発型ベンチャーは、すぐれた研究成果や技術シーズをスピード感を損なうことなく市場創出につなげていくという上で、非常に重要な役割を果たすことが期待されているところでございます。

 このため、文部科学省におきましては、起業に挑戦し、イノベーションを起こす起業家人材の育成、いわゆるアントレプレナーシップの醸成を行うことでありますとか、起業前段階からベンチャー設立に向けたビジネスモデルの構築や研究開発を支援することでありますとか、大学等のシーズを用いた研究開発型ベンチャーによる実用化開発を支援することといった、ベンチャーの成長過程に合わせた支援プログラムをこれまで実施してきたところでございます。

 今後とも、先生御指摘のように、研究開発ベンチャーに対する支援の流れを失速させることなく、関係省庁とも連携しながら、その支援の推進をしっかりと行ってまいりたいと思ってございます。

吉田委員 本当に局長おっしゃるとおりで、今回のことはあってはいけないことなので、再発はさせていただいては困るんですけれども、局長を中心にしっかり政府の皆さん一丸になって、ベンチャーの本当に前に進める力、これは絶対に日本国として損ねてはいけない、そのように思うわけであります。

 それでは、ちょっと時間があれですけれども、AMEDに関してちょっと質問させていただきます。

 AMEDが発足する前は、日本版NIHという言葉が頻繁に出ていました。しかし、AMEDというのはNIHとは全く違う構造をとっています。つまり、今のAMEDは日本版NIHにはなり得ておりません。

 NIHというのは、御承知だと思いますけれども、現在、二十七の大きな研究所や病院から構成されていますが、AMEDはそのような施設を一切保有していないんです。当初から、予算をふやして、みずからの研究所や病院を持つべきではないかという指摘はずっとあったわけでありますが、アメリカNIHとの違いは、自前の研究室がないことで、例えばAMEDが独自の研究室を持てば、日本国内だけではなく、世界じゅうの優秀な研究者を集積させて、しっかりとした研究ができると思います。

 また、場所はおのおの独立していても結構ですので、あまたある国内のナショナルセンターの組織を統合して、日本版NIHをもう一度目指してみてはいかがかなと思いまして、これはちょっと政府の御意見をいただきたいと思います。お願いします。

越智副大臣 AMEDについての御質問でございました。

 まず、我が国とアメリカとでは、医療研究が行われてきた歴史的過程が異なるというふうに考えております。

 アメリカのNIHは、もともと研究室として設置されまして、その後、傘下の研究所等をふやしてきたのに対しまして、我が国の場合は、NIHのような中核組織はそもそも存在せず、大学や研究所等に対して基礎研究から実用化まで切れ目なく支援する体制の構築が課題である、そういう問題意識の中でAMEDが発足したわけでございます。

 我が国では、研究管理の実務を担う中核組織としてのAMEDが設立されて、AMEDは自前の研究所を持たずに、これまでにすぐれた実績を出している既存の大学、研究所等の能力や機能を最大限に活用する、そういうことにしたわけでございます。

 現に、AMEDに文科省、厚労省、経産省等の医療分野の研究開発予算を集約し、AMEDが基礎研究から応用研究、実用化に至るまで一体的に研究管理、支援を実施しているということでございますので、今後とも、我が国の研究環境を踏まえながら、AMEDを中心に、国内外の大学、研究所と連携しつつ、戦略的に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

吉田委員 副大臣、そのとおりなんですけれども、だから日本版NIHをつくろうとなったんですよ、あのときに。

 だから、おっしゃるとおりなんです。おっしゃるとおりの経緯があったから、それではブレーンサーキュレーションもできないし、優秀な研究者を日本に呼び込めないからそうしようと思ったわけであって、それはもうAMEDができる前の過程の話をるる御説明いただいたわけなんですよ。わかっています、それは。だから、そこでもう一回発展的にやりましょうというのが私の質問の趣旨なんですね。

 では、ちょっと質問を続けますね。

 文科省というのはブレーンサーキュレーションを推進しています。これは世界的な潮流からいっても当然なことで、絶対やらなきゃいけない。

 ただ、日本のブレーンサーキュレーションの問題点は、海外で研究をしている日本の研究者、特に、萌芽的な研究や独創的な研究であればあるほど、その受入先がないんです。いいですか。だから、AMEDが独自の研究室を持って、世界じゅうの研究者、これは日本人だけじゃなくて海外も含めて、理想の研究ができる魅力ある施設にしないと、ブレーンサーキュレーションという意味でも、海外から優秀な研究者を採る、そして、日本の国から出ていって世界的にすごくいい研究をしている人をもう一回日本に呼び戻す、でも、これが、AMEDがそういう組織にならないと無理なんですよ。

 私も、実際、自分が医者ですし、研究者でアメリカでずっとやっていましたから、その欠点をよくよくわかっているからこういう質問をしているんです。どうですか。

越智副大臣 今、さまざまな課題の御指摘がございました。

 現状、どういう形で取り組んでいるかということを御説明したいと思います。

 まず、ブレーンサーキュレーションをしっかりと起こすために、スケールの大きな研究ができた方がいいんじゃないかという課題があると思いますけれども、こういう点につきましては、医療分野の研究開発予算を重点的、戦略的に配分すべく、健康・医療戦略推進本部が司令塔となって、AMEDを通じた研究だけじゃなくて、ナショナルセンター、理化学研究所などによるインハウス研究も含めて、一元的な予算要求、配分調整を対象としているということでございます。

 そしてまた、研究開発の実施においても、この本部のもとで関係省庁、機関が連携して取り組んでいるところでございまして、具体的には、例えば、東北メディカルバンク計画などを推進したり、あるいは、すぐれた研究の成果としては、発声障害を治療するための医療機器をつくったり等々、現行体制でも一定の成果を上げているというふうに考えております。

 また、ブレーンサーキュレーションについても、一点だけ申し上げると、これについても、本年度から実施するわけでありますけれども、学術的に質の高い論文誌に複数の論文を掲載している若手PIをリーダーとした国際的なチームを形成して、ノーベル賞級の研究者をメンターとして、国際ワークショップを開催して国際共同研究につなげる、こういった事業も今年度から取り組むということにしているところでございます。

吉田委員 時間が来ているので、ちょっと最後に簡潔に一問だけ。

 おっしゃるとおりで、ぜひ頑張っていただきたい。トランスレーショナルなリサーチをしていかないと世界に負けますから、頑張っていただきたい。

 最後に、ブレーンサーキュレーションという意味で、もう一問だけ簡単に。

 AMEDの組織改編はやはり僕は必要だと思いますけれども、それは検討してください、ちゃんと。

 WPIがありますね、文科省。これは、世界トップレベル研究拠点プログラムに期待するところなんですけれども、この進捗と成果を簡潔に、最後に質問させていただきまして、終わります。

磯谷政府参考人 簡潔にお答え申し上げます。

 先生御指摘のWPIでございますけれども、世界じゅうからすぐれた研究人材が集まる頭脳循環のハブとなる国際研究拠点を構築することは大変重要だというふうに考えております。

 このため、文部科学省では、平成十九年度から、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPIを通じまして、世界じゅうから第一線の研究者が集まる、目に見える国際研究拠点の形成に取り組んでおります。

 具体的には、各拠点において、拠点内の研究者の人事決定権も含めて、拠点長の強力なリーダーシップを発揮できるような管理を行うとともに、海外から世界トップレベルの研究者を招聘しまして、その割合を三〇%以上とするなどを目安にしております。

 これによりまして、例えば、研究者におきましては、世界の優秀な外国人研究者の割合が実績で平均で四〇%を超えるということもありますし、実績といたしまして、いわゆるトップ一%論文などの質の高い論文の輩出割合が、世界のトップ機関であるハーバード大学やスタンフォード大学を上回るなど、卓越した研究水準を達成し、国際的にも高い評価を受けているところでございます。

 これまで十一の研究拠点を採択するとともに、本年度、新たに二つの研究拠点を追加で採択することとしておりまして、引き続き、文科省としても、本事業を通じました拠点形成に取組を推進してまいりたいと思っております。

吉田委員 終わります。ありがとうございました。

笠委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 希望の党の稲富でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、AIの基本的な点と、あと行政のイノベーションについて御質問させていただきます。

 まず、今、AIというのがはやりというか、どこでも言われる言葉ではございます。私のような素人には、一体どれが本当なのかよくわからない部分がたくさんございます。

 そして、一体何なのかということで、資料一をごらんいただければと存じますが、人工知能については、専門家でもまだ定義がこのようにたくさんございまして、中には、人工知能とは、人工的につくられた、知能を持つ実体とそのまま言いかえているだけだったり、究極的には人間と区別がつかない人工的な知能のこと、あるいは、人工的につくられた人間のような知能、あるいは、この一人には、人工知能を明確に定義できないという方もいらっしゃりということで、一体何なのかということなんです。

 政府として、これから、いずれにせよAIを進めるということでしょうから、どう定義をされているのか教えていただければと存じます。

松山国務大臣 稲富委員にお答えいたします。

 人工知能、AIの定義につきましては、現在、研究者によっても、委員御指摘のようにさまざまな考え方がございまして、明確な定義は困難と言われていると承知をいたしております。

 その背景として、そもそも知性や知能に関する明確な定義がないことから、人工的な知能を定義するということもまた困難であるというふうに指摘をされていると聞いています。このため、現時点において、政府として、人工知能、いわゆるAIを明確に定義することは困難と言わざるを得ません。

 その一方で、いわゆる人工知能の関連技術を幅広く捉えて、IoTシステムの構築技術あるいはビッグデータの解析技術等も含めて、我が国が目指す社会であるソサエティー五・〇を実現するための基盤技術として、基礎研究から社会実装までの幅広い取組を強力に推進しているというところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 定義をということ自体がもしかして愚問なのかもしれません。私のような者ではよくわからないところでございますが、ただ、難しいというか、わからない、まだこの分野は初期段階であるということとは言えるのかなということを、答弁を聞いて思いました。

 資料二をごらんいただければと思います。

 日米中のAI官民投資、年間でございます。比較が出ております。日本、米国、中国、政府予算そして民間投資を比べると、日本と米国の差はもう明らかですし、日本と中国を比べた場合においても、やはり中国が圧倒的な政府予算を投じていることがわかるかと思います。

 日本は、米国、中国と比べて、AIに関する研究、技術の水準、どのようなものにあるのか。研究論文の質、量、政府予算、技術開発などを総合的に判断した、現時点での評価をお伺いをしたいと思います。

松山国務大臣 お答えいたします。

 米国、中国におきましては、例えば、米国のグーグルやアマゾン、フェイスブック、中国のアリババなど、巨大プラットフォーマーがインターネット上で保有する膨大なビッグデータと多額の資金力を背景に、人工知能、AIの研究開発に戦略的に取り組んでおります。

 我が国は、平成三十年度で人工知能関連予算として約七百七十億円を確保したものの、研究論文の質あるいは量ともに、米国、中国にかなりおくれをとっているというのが現状であると認識をしております。

 こうした状況の中に、我が国が人工知能の分野で国際的な競争力を確保していくためには、例えば、我が国の強みとして長年培ってきた物づくり技術、あるいは現場のデータと人工知能を融合した研究開発等に戦略的に取り組むことが重要と考えています。また、世界に先駆けた研究開発等を通じて、諸外国がまだ取り組んでいない、そういう技術等の確立にも取り組んでいくことが必要であると考えています。

 こうした観点から、人工知能技術戦略会議、平成二十八年に立ち上げましたが、この中で我が国が強みを有する基盤技術等を特定した上で、戦略的イノベーション創造プログラム、SIP、あるいは官民研究開発投資拡大プログラム、PRISM、これを活用して、関係省庁、産学官連携のもとに研究開発等の取組を積極的に推進してまいりたいと思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 そこで、米国がそこに対してすごく投資し、そして予算をかけているというのは予想がつくわけですけれども、中国でございます。資料三ページをごらんください。

 「中国政府のAI関連計画」というものでございます。これを見るとかなり野心的な計画でございまして、二〇二〇年まで、二〇二五年まで、そして二〇三〇年までと年次を区切って、数字を出して計画をしております。「二〇三〇年までに」というところで、最後のところでは、「中心的産業の規模を一兆元超、」でございまして「関連産業の規模を十兆元超とする。」と。一元が十七円でございますので、規模として、関連産業の規模は百七十兆円の規模を目指すということを書いてあるわけでございます。非常に野心的だとは思いつつ、国家としてこれを目指すということを書かれております。

 そこで、日本としての、先ほど大臣も答弁をいただきましたけれども、将来的にどのような市場規模あるいはビジョンを持って臨もうとされているのか、再度御答弁を賜れればと思います。

松山国務大臣 お答えいたします。

 御質問の我が国の市場規模目標でございますが、政府としては人工知能に関する市場規模目標は定めてはおりませんが、一方で、委員御指摘のとおり、中国においては国務院が人工知能のコア産業あるいは人工知能関連産業の市場規模目標ということを定めていると承知しています。

 今後、この人工知能をめぐる国際競争が激化する中、我が国としては、人工知能の研究開発あるいは社会実装を加速していくためには、市場規模もさることながら、AI、IT関連の人材不足の解消が喫緊の課題であるというふうに考えております。こうした観点から、ことしの四月に開催をされました総合科学技術・イノベーション、いわゆるCSTIにおきまして、AI人材基盤の必要性について議論を行ったところでございます。

 内閣府としましては、関係省庁と連携協力のもとに、数万人規模の先端AI、IT関連人材の確保、また、国民全体レベルでITリテラシーの醸成に向けた施策の検討を速やかに行って、ことしの夏に統合イノベーション戦略をまとめる予定でございますので、これにしっかり盛り込んでいきたいと考えているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 それでは、地方行政サービスのイノベーションの話題に移りたいと思います。資料の四に移れればと思います。

 地方行政サービス改革については、平成二十七年八月、総務大臣通知として「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」という文書を発出して、効率的、効果的に行政サービスを提供する観点から民間委託やクラウド化等の業務改革の推進に努めるよう、各自治体、各地方公共団体に要請をされております。

 資料四をごらんになっていただきますと、そういう意味で、先進事例として私の地元の福岡市を取り上げさせていただきます。配付資料のとおり、今、福岡市は行政サービスをLINE上でこのように展開をしております。登録をすると、この資料のとおり「防災」「ごみの日」「子育て」というのを選択し、そして資料五ページに移っていただきますと、「エリア」を、自分が住んでいる場所を登録する、あるいは知りたい項目を選択するということをすると、自分自身が知りたい情報、そして地域の情報というものが、そのとき、必要なときに通知を受けるという仕組みがございます。

 地方行政のサービス改革の観点ということを考えますと、市民の利便性をどう向上させるかということが最も大事なことだと思います。例えば、ホームページを毎日見に来て、自分の関係あるサービスを探せということではなくて、市民が求める情報に合わせて役所からその人に合わせた情報を自動で送るシステムというのは非常に利便性が高まるというふうに考えますが、見解を伺います。

小倉大臣政務官 お答えを申し上げます。

 まず、人口減少が進む中で、地方公共団体が限られた人員で質の高い公共サービスを効果的、効率的に提供するためには、ICTを積極的に活用し、業務改革を進め、簡素で効率的な行政体制を実現をすることが必要という基本的認識を私どもは持っております。

 その上で、委員に御紹介いただいた福岡市の取組は、チャットアプリを通じて、防災やごみ出し、子育てなどの生活に密着をした市政情報の中から、利用者のニーズに応じて情報をリアルタイムに届けるものと承知をいたしております。

 私の地元の東京都の町田市もごみ分別アプリを導入しておりますけれども、福岡市さんはかなり広範にやられているなというような、そのような印象を抱きました。

 いずれにしても、このような取組は、必要な行政情報を住民に提供することで住民の利便性向上につながりまして、行政サービスの質を高めるもの、このように考えてございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 もう一つの事例を紹介をさせていただければと思います。渋谷区でございまして、資料六でございます。これはAIを活用した子育て相談サービスと言えると思いますが、例えば、このように、里帰り先で予防接種を受けたいとか子供に熱があるのですがということを送信すると、それに対して答えてくれるというサービスでございます。

 このように、よくある、子育て中の世代には必ずある質問、そういう典型的な質問については、こういった機械で、あるいはAIで対応できる時代がいつかは来るのではないかと思います。そして、子育てに限らず、ほかの分野でも実用化できれば、住民からは、例えば、行って相談をする、あるいは電話をしなければいけない、深夜にはなかなかつながらない、そういった壁を取り払うことができると思います。

 行政のイノベーションとして、AIと言っていいのかどうかわかりませんが、の活用を進めることが、やはり利便性にかなうし、先ほど御答弁をいただきましたけれども、少子化にあって人材が足りなくなる中、更に進めていくことが必要ではないかと思うわけですが、政務官の答弁を再度求めます。

小倉大臣政務官 お答えを申し上げます。

 委員が御紹介いただきました渋谷区におきましては、チャットアプリを活用いたしまして、住民が子育てに関する悩みを打ち込みますとAIが自動で応答するシステムの実証実験を行った、このように承知をしております。

 まさに委員がおっしゃったように、このような取組は、子育て中で昼間に窓口に行くことが難しい住民の皆様方にとって、時間や場所にかかわらず一定の基本的な相談ができる環境を整えるもの、このように考えられます。

 総務省といたしましても、自治体の行政経営改革の先進事例の一つと考えておりまして、このような取組がほかの団体においても進んでいきますように周知に努めてまいりたいと思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 これらさまざまな地方行政のイノベーションを支援する財政的な措置というのも同時に、先ほど前向きな答弁をいただきましたけれども、必要だと思いますが、その点もお伺いをいたします。

小倉大臣政務官 お答えを申し上げます。

 財政的な支援ということでございますが、これまでの例を紹介をいたしますと、まず、総務省では、平成二十八年度から業務改革モデルプロジェクトを実施をさせていただいております。

 この事業におきましては、自治体の窓口業務や内部管理業務につきまして、ICT化、オープン化、アウトソーシングなど、住民の利便性向上につながる業務改革にモデル的に取り組む自治体を選定しておりまして、財政的な支援をこの自治体に対して行っているところであります。

 例えば、昨年度、平成二十九年度におきましては、ソフトウエア、ロボットによる業務自動化、RPA、ロボティック・プロセス・オートメーションを導入する先進的なモデル事例、例えば、時間外申請の業務を、RPAを使うことによりまして大幅に負担を軽減をするようなモデル事業を支援をしたところでございます。

 今年度もこの業務改革モデルプロジェクトを継続をいたしまして、自治体におけるAIを活用した業務改革についても、全国のモデル事例となるような先進的な取組に対しては支援を行ってまいりたいと思いますので、どうかまた、引き続き御指導をどうぞよろしくお願いいたします。

稲富委員 ありがとうございます。

 この行政のイノベーションという観点からすると、今のことと同時に、方法、ツールも問題になると思います。

 資料七をごらんください。今は、ウエブサイト、若い方々が、ホームページ、そしてSNS、何を使うのかという、これは総務省さんの調査なんですけれども、ほとんど結論的に言うと、ウエブサイトよりもSNSの方が見る時間が長くなってきているということでございます。上が平日の使用の時間、下が休日でございます。

 平成二十四年から二十八年で、それぞれ時間をとっているわけですけれども、平成二十四年からすると、上も下も、いずれにしても青い棒グラフがどんどん伸びていっているのがわかるかと思います。これはSNSを使っている時間でございます。

 結論的には、ウエブサイトを見る時間よりも、圧倒的にSNSを見る時間の方が長い。これは、わざわざホームページに行くよりも、スマホでSNSをやっている時間が長いというのが現状だということでございます。

 そこで、これから、市民の利用という観点からすると、ホームページも必要ですけれども、よりSNSを活用していくということを考えていくことが必要だと思うんですが、その点の見解も伺います。

小倉大臣政務官 お答えを申し上げます。

 稲富委員がおっしゃったように、SNS、いわゆるソーシャル・ネットワーク・サービスは、操作の手軽さ、すぐれた情報拡散力といったメリットがありまして、民間、公共分野を問わずにその利用が急速に進んでいるものと承知をいたしております。

 総務省におきましても調査をいたしております。地方公共団体が住民参画等のためにSNSを利用している状況を調べましたところ、都道府県におきましては、平成二十五年にSNSを利用していた団体がわずか二十九でありましたのが、平成二十九年には四十一団体、市区町村につきましては、同じく平成二十五年には四百五十五団体でありましたところ、平成二十九年には一千百二十団体に増加をいたしております。

 特に、SNSは若い人たちがよく使うコミュニケーションツールというのは、稲富委員御指摘のとおりだと思います。長野県では、中高生の相談窓口をSNSにしたところ、実証事業でございましたのでわずか二週間余りでしたけれども、一年間で来た相談件数の約二倍の件数がやってきたということで、将来の窓口としては大変期待の持てるものだと思っております。

 そういった状況に鑑みまして、私ども総務省といたしましては、地方公共団体が、成り済まし等の防止や不適切な発言等のリスクを回避しながらSNSをうまく活用いたしまして効果的な情報発信を行っていくことを期待をさせていただいているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 国の取組についてもお伺いをします。

 マイナンバーなんですけれども、国のマイナポータルというページがございます。そのマイナポータルのウエブサイトがございますが、マイナポータルのLINEアカウントというのもございまして、資料八でございます。

 マイナポータルの方の登録、そしてサイトの登録でこれだけの人数があるということで、まず、マイナンバーを民間業者に一部委託をするというのは、恐らく行政からすると非常に勇気の要る判断だったのではないかと思います。その点はすごく評価をすべき点だと私は思います。その一方で、これを見てみると、やはりLINEの方が圧倒的に登録が多いということでございまして、先ほど政務官からも御答弁いただきましたけれども、更に活用を進めていくという方向が必要ではないかというふうに思いますが、この点の見解も伺います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のマイナポータルは、市区町村の子育て関係の行政サービスの検索あるいは電子申請を可能とする、内閣府が提供しておるウエブ上のサービスでございます。

 マイナポータルは、昨年十一月より本格運用を開始しましたが、このサービスを多くの方に手軽に使っていただくため、SNSと連携することとし、まずは、子育て世代に身近な媒体であるLINE上でマイナポータルの検索機能を利用できるようにしております。

 具体的には、LINE上でマイナポータルの公式アカウントを登録すれば、自分の利用したい子育て関係の行政サービスを検索できるようになり、さらに、検索した行政サービスを申請したい場合には、マイナポータルの画面にジャンプして電子申請が可能となるものでございます。

 議員御指摘のように、LINE上では電子申請までは行わないこととしております。これは、個人情報の入力はあくまでマイナポータル上で行うという観点からこのような取扱いとなっておるものでございます。

 利用者視点に立ちまして、LINE上での検索からマイナポータルでの電子申請手続への画面遷移はシームレスに行うように配慮しておりますが、民間事業者が提供するサービス上におきまして公的な申請を扱うことが例えば個人情報の観点から適当であるか等の課題につきましては、慎重に検討する必要があると思っております。

 政府といたしましては、まずはLINEを通じ、子育て世代の方々にマイナポータルの利便性を実感していただいた上で、マイナポータルのウエブサイトから電子申請サービスを活用していただくことを考えておりますが、SNSはLINEだけではございません、いろいろな、大きなものから小さなものまで多数ございますので、これらのSNSとはどんな連携ができるか常に考えながら、より利便性の高いマイナポータルを目指して頑張ってまいりたいというふうに考えております。

稲富委員 ぜひ前向きに取組をいただきたいと思います。

 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。

笠委員長 次に、城井崇君。

城井委員 希望の党の城井崇でございます。

 引き続き質疑をさせていただきたいと思います。松山大臣始め、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、ポストドクターの出口としての常勤ポストの増加の必要性についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 松山大臣は、大臣所信におきまして、若手研究者の活躍促進と述べられました。民間企業の就職や研究費についてはほかの委員からも本日触れていただきましたけれども、実際のところ、博士の受皿になる大学教員の採用数も減少しております。ポストを得ることができたとしても、例えば、任期つきの特任教授、特任助手でありますとか、同じく任期つきの特別研究員であります。

 文部科学省の「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査―二〇一五年度実績―速報版」によりますと、こうしたポストドクターの数は、ピーク時よりも減ってはおりますが、約一・六万人と高い水準が続いております。最も研究に専念できてしかるべきいわゆるポスドクの人たちが専念できていないというのが、大臣、現状であります。

 文部科学省の同じ調査によりますと、このポストドクターの進路ですが、ポストドクターなどを結局継続、続けているという人が七〇%、大学教員はほんの九・四%、そのほかが九・七%で、よくわからないとかお亡くなりになったというのが一〇・九%。二〇一五年度から一年の間で常勤のポストを得ることができたポスドクは一割に満たないという状況であります。

 万年ポスドクをふやすというのが政府の狙いだったということはないというふうに思いますけれども、実際、行き場のない博士、非正規の研究者や職員だらけになってしまっております。最近では、国立大学で、経験ある非正規職員の雇いどめも発生しております。研究現場をこのまま放置することはできません。

 このポストドクターの出口、我が国の研究開発の最前線としての常勤ポストをふやす具体策について、松山大臣とそして文部科学省と、それぞれにお伺いいたします。

松山国務大臣 城井先生にお答えいたします。

 ポストドクターですが、我が国の大学や研究機関における研究活動において大変重要な役割を担っていると認識をいたしております。一方で、雇用が不安定、キャリアパスが不透明等の指摘もあると承知をしています。

 今後、ポストドクターが安心して研究活動にいそしむことができるように、大学等における安定的なポストの確保、また人材流動性の向上など、若手研究者の活躍機会を創出していくことが大変重要であると考えております。

 また、大学における非正規職員の雇いどめにつきましては、各大学におきまして、労働契約法の趣旨を踏まえて適切に対応していただく必要があると考えております。

 いずれにしましても、我が国の科学技術イノベーション力を向上させるためには、創造性豊かな若手研究者の活躍促進が極めて重要でございます。その具体的方策を、ことしの夏ごろに、統合イノベーション戦略の中にしっかり盛り込んで進めてまいりたいと思っております。

新妻大臣政務官 城井委員、御指摘ありがとうございます。

 ポストドクターは、我が国の研究活動の重要な担い手であり、実績を積んだポストドクター等の若手研究者が挑戦できるポストの拡充は大変重要であると認識をしております。

 このため、文部科学省におきましては、優秀な若手研究者が安定かつ自立したポストについて研究できる環境を実現する卓越研究員事業や、教員業績評価制度の適正化や年俸制、クロスアポイントメント制度の活用などの国立大学における人事給与マネジメント改革の推進により、若手研究者のポストの確保を図っております。

 また、研究現場を支える職員の雇用形態につきましては、労働関係法令に基づき、各法人が適切に判断し、定めるべきものと考えております。改正労働契約法の趣旨を踏まえ各法人が適切に対応していただけるよう、引き続き、厚生労働省と連携をしながら情報提供や制度の説明を行ってまいりたいと考えております。

 今後とも、我が国の将来を担う若手研究者の研究環境の整備を図ってまいります。

城井委員 キャリアパスの不透明性について、大臣からも言及をいただいて、認識は共有できているというふうに思っております。

 その上でですが、多様なポストをつくっていくこと、あるいは、先ほど御紹介いただいた政策の入り口というのは大変重要だというふうに思うんですが、ただ、今ほどの御答弁の中で、具体的に、じゃ、幾つ常勤ポストをふやしていけるかという、その数、目標というものがなかなか明らかになっておりません。

 先ほど申しましたように、常勤ポストが今幾つあるか。大学教員でいうと、一割を切っていますよと御紹介申し上げました。ポストドクターをやむなく継続している方が七割おられます。こういう状況を変えていくためには、大臣、やはり、ポスドクと常勤ポストの割合がせめて逆転するように、正規で働ける研究者の人たちがふえていくように、逆転を目指してというようなことも含めて、数字の明示が必要になってくると思うんですが、この具体的なポストの数の方針について、ぜひお示しをいただく方向で言っていただけませんか。

松山国務大臣 大変重要な内容でございますので、御指摘を含めて、しっかり前向きに検討していきたいと思います。

城井委員 前向きに検討ということで、ぜひよろしくお願いいたします。

 もう一つ、大臣、現場の研究開発に当たる皆様の声をお届けしたいというふうに思います。

 大学の教員の定年の延長の時期と重なった影響もありまして、最近、博士を取った人たちよりも、むしろ三十代半ばの若手研究者の方が、能力が高くても就職の面で割を食ってしまっているという傾向が今現場でございます。

 また、若手研究者向けのいわゆる学振でありますけれども、博士取得後八年未満のものが多くて支援対象から外れるケース、そして、育休をとった女性の研究者も同じルールが適用されておりまして、現場で大変困っております。

 このようにして、いわゆるルールは必要なんですけれども、年齢の制限や期間の制限というものが現場の実情と合っていないという状況があります。この点について、ぜひ見直し検討をやっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

松山国務大臣 重要な御指摘だと思いますので、その辺もしっかり受けとめて検討させていただきたいと思います。

城井委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それでは続きまして、いわゆるAI、人工知能の導入インパクトについての政府見解についてお伺いしてまいりたいというふうに思います。

 大臣所信でも、人工知能について触れていただきました。また、先ほどは、我が党の稲富委員から、定義についての質問がございました。大臣からは、定義は困難、基盤技術だ、こうした趣旨の答弁をいただきましたけれども、このAIの影響からはなかなか逃れがたいというふうに思っております。

 特にこの五年、例えば、二〇一三年九月に発表された論文で、オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイそしてマイケル・オズボーンによる試算、米国において、十年から二十年の間に労働人口の四七%がAIに代替可能であるという試算が発表されまして、世界じゅうに衝撃が走りました。私の仕事は大丈夫かと、国民の間でも随分と話題に上がったものでございます。

 この学説は学界でその後否定をされまして、この著者も、新たに生み出される雇用は考慮していないということは認めております。人工知能学会会長の山田誠二氏も、個人的には噴飯物だという発言をされていると聞きました。

 我が国では、今後、労働人口の一〇%をAIが代替し得るものというのが妥当な予測だ、人口減少を考えれば対応できる範囲内だ、こうした見方も示されております。

 日本政府として、このAIの導入のインパクト、社会的な影響、特に、労働人口を代替し得るかという部分について、その影響をどのように評価をしているか、また、シンギュラリティーの到来についての想定はいかがか。こうした部分について、全体の部分では松山大臣から、そして、労働人口への影響については厚生労働省からお伺いしたいと思います。

松山国務大臣 お答えいたします。

 内閣府におきましては、平成二十八年五月に人工知能と人間社会に関する懇談会を設置いたしておりまして、人工知能に関する倫理や法、経済社会への影響、そしてまた研究開発等について幅広く検討しておりまして、昨年三月に報告書を取りまとめました。

 この中では、今後の人工知能の進展に伴う雇用や働き方の変化に対応して、教育や環境整備等の政策が重要であることを指摘をいたしております。同時に、人工知能は国民の豊かな暮らしに貢献する重要な技術でありますので、国際的な競争が激化していることから、政府としては、スピード感を持ってこの研究開発を推進していくことが重要と位置づけております。

 政府は、昨年の三月に、我が国初の人工知能技術戦略を策定をしまして、この中では、生産性サービス、健康・医療・介護、そして空間移動、これを三分野重点事業として位置づけておるところでございまして、これをもとに、関係府省が連携をして、生産性の向上や医療診断支援あるいは自動走行などの研究開発や社会実装というものを推進をしております。

 引き続いて、政府を挙げて、この人工知能に関する研究開発は加速をしながら、社会や産業に大きなインパクトをもたらすよう、画期的な成果が上げられるように取り組んでいきたいと思っているところでございます。

田畑大臣政務官 お答え申し上げます。

 人工知能は、今松山大臣もお話しされましたとおり、国民の暮らしですとか産業や社会に大変大きなインパクトを与えるわけでございます。そしてまた、当然期待される重要な領域ということであろうかと思います。そのうち、雇用に与える影響については、やはり諸説あるものだというふうに承知をしているところであります。

 厚生労働省においては、平成二十九年度版の労働経済の分析において、経産省の新産業構造ビジョンの中間整理を踏まえて、人工知能の進展等による産業構造の変化によって、一つには、定型業務が中心となっている職種におきまして就業者数の減少が見込まれるということ、二つには、専門的な技術が必要な職種やコミュニケーション能力等が求められる職種においては就業者数の増加が見込まれること等を、我々、整理をしているところでありますが、雇用に与える影響は職種によってもまさにさまざまであろうかというふうに予想をしているところでございます。

 人工知能の進展によって、省力化の効果が人手不足の状況を上回ることになれば、失業が生じるということになるわけでありますから、人工知能等の進展による雇用、労働への影響について、これは引き続きしっかり把握、分析、検討に取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

城井委員 いわゆるAIの影響、特に労働人口への影響はなかなかはかりがたいというふうに私自身も思っております。

 では、何が人間の仕事に残るかというふうなことを見ておきますと、例えば、クリエーティビティーが伴うもの、そしてマネジメントにかかわるもの、そしてホスピタリティーに関係するところというのが、それでも人間に残るということが学界でも言われております。

 これまでも、産業革命というものは幾度かございましたけれども、そのたびに、人間にしかできない新たな仕事というものが生まれてきた部分がありますので、ぜひ、人間を真ん中にということでの取組はしっかり心得ていただいての取組を政府でもお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、大学や研究機関のベンチャービジネス投資の促進についてお伺いしたいと思います。官民の研究開発投資をふやしていく大変大きな入り口だというふうに思っております。前向きな取組になりますか、確認をしたいというふうに思います。

 まず、研究機関によるベンチャーキャピタルについてです。

 二〇一八年四月八日の日本経済新聞によりますと、国の研究機関によるベンチャー企業への投資を促すために、利益を国庫に納めなくてもよいというふうに制度を見直すというふうにありました。この新たな制度見直しも含めてでありますけれども、この仕組みで民間のベンチャーキャピタルとの役割分担がどのようになるのか。民業圧迫にならないように工夫をされると思いますが、この点をお示しください。

山脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問いただきました制度については、国立研究開発法人における経営努力認定に関する制度改善の件と承知しております。

 これまで、国立研究開発法人が自己収入等によります利益を上げた場合、その利益について、翌年度に、法人の経営努力の結果として得たものであるとの認定を主務大臣等から得た上で、原則として、その五割を国庫に納付する、五割はその法人において執行することができるというふうにされてきたところですが、この制度では、国立研究開発法人が積極的に民間資金を獲得するといった自己収入増に向けた努力に対して十分なインセンティブが働きにくいという状況であったと考えております。

 このために、今年度から、経営努力認定の基準を緩和するとともに、知財収入でありますとか受託収入等の自己収入による利益は、十割全額を認定をして、当該法人が国庫に納付することなく翌年度以降に執行可能とするようにするなど、制度の改善を行ったところでございます。なお、この利益については、ベンチャー企業への投資をするということだけではなくて、研究開発施設など幅広い用途に充てることが可能となっているところでございます。

城井委員 続きまして、国立大学のベンチャーキャピタル投資についても一点確認をさせてください。

 官民イノベーションプログラムは、総額一千億円をかけて、東北、そして東京、京都、大阪の各国立大学発のスタートアップ企業を育てよう、大学の意識変革を促そう、研究成果の社会還元を促そう、そういう取組になっております。

 この取組が進んでおりますけれども、大阪大学のベンチャーキャピタルの関係者の声として、対象大学の研究をもとにした企業に限定したため、卒業生が学外で起業した会社への投資が難しくなった、こうした報道が出ておりますけれども、これは事実でしょうか。卒業後の学外における起業に対する国立大学ベンチャーキャピタルの対応について、見解を確認させてください。

新妻大臣政務官 ただいま御指摘がありました官民イノベーションプログラムにつきましては、産業競争力強化法におきまして、大学ベンチャーがその大学の研究成果を実用化するときに、その大学ベンチャーに対して出資ができるとされております。

 この研究成果には、実用化する研究成果が、その大学での研究成果がもとになっている場合が含まれております。したがって、御指摘のような、卒業生が起業した大学ベンチャーについても、その卒業生が在学中に行った研究をもとにした成果を実用化するものであれば、出資の対象となり得ると考えております。

 具体の投資判断は各大学のベンチャーキャピタルが行うことになりますが、このような解釈については、再度、大学及び大学のベンチャーキャピタルに周知してまいりたいと考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 大学での研究成果がもとになればということで確認をさせていただきました。ありがとうございます。

 最後に、宇宙産業振興、特に小型衛星の利活用についてお伺いをしたいというふうに思います。

 宇宙産業の振興の環境整備の一つとして、小型衛星の打ち上げがあるというふうに思っております。宇宙基本計画でも、そして宇宙産業ビジョン二〇三〇などにおいても、その取組想定がなされているというふうに承知をいたしております。

 この利活用の見通しをお聞きしたいのと、それにあわせましてですが、この利活用に向けて、私から提案が一つございまして、日本国内において、特に自動車産業やIT産業の集積のある福岡県北九州市のように、部品産業を含めた物づくり技術の集積やバックグラウンドがある地域で小型衛星の製造ラインを設置していくという方法がなじむというふうに考えております。この小型衛星を今後、数をふやしていく、製造を図っていくという段階において、地域の物づくり産業等の振興にもつなげていくという観点も考慮しながらの取組という部分についての政府の見解をお伺いしたいというふうに思います。

松山国務大臣 お答えいたします。

 近年、国内外におきまして、民間企業を中心に、多数の小型衛星を打ち上げよう、より多くの衛星画像データ等も取得しようとする動きが出てきております。

 先生御指摘のことも踏まえて、今後の小型衛星の需要については、民間ベースの話でもございますし、基数など正確な数値も十分調べることは困難でございますけれども、さまざまなベンチャー企業が小型衛星の活用を検討をしているところでございます。我が国のベンチャー企業では、アクセルスペース社は将来に五十基もの衛星を打ち上げる構想も持っておりますし、こうした動きが加速をして、世界的に小型衛星の需要が伸びていくものと考えております。

 また、近年、衛星から得られる画像データ等をさまざまな分野で積極的に活用する取組が進んでいると認識しておりまして、我が国が得意とする農業分野でありますとか、衛星画像データをもとにおいしいお米の最適な収穫時期がわかるようになるなど、新たなビジネスが生まれ始めておるところも事実でございます。加えて、地震や津波あるいは洪水、災害状況の把握にも役立てておられるところでございます。

 政府としても、こうした新たな分野での実証事業を通じて、より一層の衛星データの利活用の促進を図るとともに、御指摘の地域の物づくり産業も含めた異業種間のマッチング支援などもしっかりやっていきたいと思っておりまして、我が国の宇宙産業の振興に努めていきたいと思っております。

城井委員 終わります。ありがとうございました。

笠委員長 次に、平野博文君。

平野委員 無所属の会の平野博文です。

 松山大臣と初めてこの委員会で議論をさせていただこう、こういうことでございます。よろしくお願いしたいと思います。

 二十分ですので、余り多くのところについては語れませんが、先ほど、これは通告をいたしておりませんが、同僚の稲富さんが御質問されたと思うんですが、AI、いわゆる人工頭脳についての定義はない、こういう御発言をされたというふうに思いました。この資料によりますと、いろいろな考え方のもとに、人工頭脳とはこういうものだということでありますが、大臣、物すごくこれは広がっていくと思うんですが、単純に一つの技術なんだというふうに割り切っていいのか。

 私は、やはりこれは違うと思うんですね。したがって、これは各研究者がそれぞれ勝手に想像してやっているということじゃなくて、やはり政府としても、科学技術立国を目指す我が国でありますから、人工頭脳とはこういうものなんだということを明確に定義をした上で、どう進めていくかということを考えた方がいいと私は思うんですが、大臣、どうですか。

松山国務大臣 先生御指摘のこともよく理解ができるわけでございます。

 平成二十八年の総務省の情報通信白書の中では、非常にさまざまな考え方があるということで、人工知能、このAIを、知的な機械、特に、知的なコンピュータープログラムをつくる科学と技術を一般的に説明するというふうに非常に苦しいまとめ方になっているんですけれども、御指摘も踏まえて、少しその辺は考えていきたいと思います。

平野委員 いや、これは一つのテクノロジーじゃないと思っています。

 といいますのは、何年か前に、もう忘れましたが、クローン技術ということが実はございました。このときにも私は非常に悩みました。何を規制をし、何をこれから科学技術の進展として生かしていくのか、こういうことで相当悩んだわけであります。

 したがって、これも、私、逆に言いますと、同じような次元で、ひとり歩きしていく可能性が多分にあると思うんですね。したがって、研究者の倫理が問われる、こういうことに私は発展する可能性があると思うんですね。

 一つの定義に、心を持つメカなんという定義をされている人もいますよね。心を持つメカなんといいますと、私が小さいころには、今おられる人は皆若い人が多いと思いますが、鉄人28号というのがあって、誰かが遠隔操作をしてロボットを飛ばすわけですよ。このAIを入れたとき、どうなるんですか、これは。この辺、大臣、どうですか。科学技術担当ですから、通告していませんよ。どうなるんですか、あれは。

松山国務大臣 大変難しい予想だと思いますけれども、考えれば考えるほどやはりさまざまなことが予想できますので、いろいろ考えていかなければならないのではないかと思っています。

平野委員 したがって、それほど無限に広がる可能性のある、私は、メカであるという表現は決してこれは正しくない、物体なんだ、こういうふうに思わないといけない、こう思っていますから、定義はないなんて政府が言わないで、何としても、これは、ある意味、リスクが伴ってきますから。今、それぞれ議員のお話でいきますと、いいところにどういうふうに活用しようか、こういうことを一生懸命やられている。これも大事なことでありますし、それは当然だと思いますが、その反面、リスクの、影の部分が必ず出てまいります。この影の部分が、私、非常に大きな課題が出てくるのではないかなという懸念がするものですから、そういう視点で、ぜひ大臣、見きわめていただきたいなと、これは御要望しておきたいと思います。

 それでは、本題に入らせていただきたいと思います。

 本日は、先ほど来有意義な御質問もあるし、大臣あるいは政府の答弁がございました。そういう視点で、先ほど言いましたように、影の部分という視点から見たときに、特に我が国に最近、研究不正、こういう発覚がたくさん散見するように思います。研究所の現場の実態というのはどういうふうになっているか、今後の我が国の科学技術研究開発のためにどんな手当てが必要なのか、こういう視点で議論をしていきたいと思っています。

 まず、ことし一月に京都大学のiPSの細胞研究所で研究不正が発覚をいたしました。iPS研は、我が国の再生医学においてまさに中核的な存在だと私も思っておりますし、実績、研究環境など、いろいろな面で我が国の研究機関を代表する一つの存在であると思っております。そのiPSの中でも研究不正が発生した、こういうことについては、関係者に大変な衝撃を与えているんだろうと思います。

 この件を知って、大臣、どういう所感を持たれましたか。

松山国務大臣 お答えいたします。

 研究不正行為でありますが、国民の科学技術への信頼を揺るがし、科学技術の発展を妨げかねない、まさに極めて重大な問題であると認識をいたしております。

 しかしながら、大学や国の研究機関等において研究不正行為が発生していることは残念ながら事実でございます。

 直近のこの研究不正行為の事例としては、先生御指摘の、京都大学のiPS細胞研究所の研究者が論文の捏造、改ざんを行ったということが明らかになって、関係者の処分が先般行われたところでございますが、これについては、国立大学を所管する文科省から、再発防止を徹底するよう重ねて指導するとともに、他の大学等々の研究機関に対しても同様の措置がとられたものと承知いたしております。

 私ども内閣府としても、改めて、この研究不正行為が科学技術に対する信頼失墜につながらないように、重大な問題であるということを認識した上で、大学、研究機関等に、研究不正防止に向けた適切な対応がなされるように、引き続き関係省庁としっかり連携をとって取り組んでまいる所存でございます。

平野委員 大臣、僕、最初に言っておきますけれども、私は、このiPS研の体制や管理に問題があったとは思っていないんですよ。我が国の研究風土等々における仕組みの中にこういう問題が起こり得る要因があるんだろうと私は思います。

 iPSの研究所以上に管理が行き届いている機関は本当に我が国の中にあるんでしょうか。僕はないと思っていますよ。

 そういう意味において、一義的に、今大臣おっしゃったけれども、不正を起こしたことは極めて問題だとは思っていますが、そういう視点での対応ではこの問題というのは解決しないんだろう、私はこういうふうに実は思っています。

 一体我が国の科学技術研究の現場で何が起こっているんだろうか、このことをやはり深く究明をしていかなければ、当然、不正を起こした研究者については一義的にはその人の責任ではあるんだけれども、そういうふうな、起こる要因になっている環境が何なのかということをやはり突き詰めていくことが私は一番大事なんだろう、こういうふうに思っています。

 不正に手を染めるというのは正当化されない、これも事実であります。しかし、研究機関がどのような課題を抱えて、不正となってあらわれてくるのか、このことをやはり真剣に考えていかなきゃいけないと思いますし、特に今回、大学、あるいは理研でも起こりましたよね。

 丹羽副大臣、どうでしょうか。僕は、本当に、不正を起こした本人は当然だと思いますが、なぜ起こってくるんだろうか、このことをやはり真摯に見詰めておかないといけないんだろうというふうに思いますが、副大臣、所見があれば。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 研究不正が起こる大きな背景といたしましては、研究活動における不正行為への対応等に対するガイドライン、これは平成二十六年に文部科学大臣決定で行われておりますが、まず一つ目としまして、研究環境について、急速な競争が非常に激しくなってきているということがございます。また、研究分野の細分化や専門性の深化、さらには研究活動体制の複雑化や多様化の結果、研究者同士でお互いに研究活動の実態を把握できなくなっている、そういった状況にもなりつつあります。

 こういったことから、科学コミュニティーの自浄作用が働きにくくなってきているといったことが指摘されていると考えております。

平野委員 今、丹羽さんが言われたように、私はそういう視点もあるんだろうと思う。ただ、最も重要な点というのは、やはり科学研究の社会に対する私は責任なんだと思うんですね。ガイドラインも、人々の科学への信頼を揺るがす、科学研究はやはり社会からの信頼と負託の上に成り立っている、このことがやはり一番大事なんだ。その認識が研究者にどれだけあるんだろうか、当該の文科省あるいは政府の関係機関はそういう視点で研究開発について見ているんだろうか、ここが私は非常に大事な視点だと思うわけであります。

 したがって、真実を探求する、あるいは研究開発をしていく、こういうことについては大事なことでありますし、萎縮させることは私は決してよろしくない、こう思っています。

 ただ、我が国の、これまた定義みたいなことを言ったらかたくなるんですが、じゃ、研究不正というのは、一体どういう理屈で研究不正というんでしょうか。

丹羽副大臣 研究不正についてお答えいたします。

 特定不正行為として、平野先生がおっしゃられた、定義づけされておりますことにつきましては、具体的には、故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん、盗用等が特定不正行為という形で定義づけられております。

平野委員 そこは諸外国と若干違うんだよね。

 我が国は、やはり諸外国というのは、これは結果不正なのか、研究プロセスの過程での不正をもって不正というのか。結果を発表して、後から検証されたら不正だった、それで糾弾されている。途中のプロセスはどういう状態であろうが、結果、発表しなければ不正にならない。

 したがって、研究不正というのは、何をもって不正というんですか。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 実質的には、このほかの、先ほど申し上げました不正行為以外に申し上げますと、他の学術誌等に既に発表されている論文、投稿中の論文とか、本質的に同じ論文を、二重投稿という言葉もございますが、二重投稿したり、また、論文の著作者が適正に公表できない、不適切なオーサーシップ等が不正行為というふうに認識されるというふうに考えております。

平野委員 いやいや、そういうことを言っているんじゃなくて、現実的な、外形上はそういう形になるんですが、発表しなければ不正と言わないんですか、それでは。発表しなければ不正と言わないんですか。

丹羽副大臣 お答えいたします。

 これは研究者自身の考えにもよると思うんですが、やはり研究者自身が、例えば科研費を活用した研究であれば、それが税金によって、国民の貴重な税金によって賄われているとか、そういった意識をもうちょっと高めることが不正の行為の減少につながるのではないかと私は考えております。

平野委員 今、副大臣がおっしゃったことなんだと思いますよ。やはり研究者に対する倫理ですよ。ここのところにもっと我々政府が、そこのところの教育環境がどういうふうに、研究者を養成する過程でそういうものにどれだけ取り組んでいるかというところがやはり問われているんだろうというふうに実は思っております。

 例えば、理研のSTAP細胞がありましたね。これは、不正だ、こういうことで言われたんだけれども、理研では、本当にこれが不正なのかという検証をしておられたですよね。検証の結果、不正だ、こういうふうになったんですが、プロセスの過程で不正が起こっておっても、これをもし再現できたとしたら、このSTAP細胞は不正な研究と言うんですか。もし後々これが再現できて、こういうものができ上がってきましたといったときに、これは不正な研究だと言えるんでしょうか、想定問答をしているようですけれども。

松尾政府参考人 仮定の件でございますので申し上げにくいところではございますけれども、やはり今先生御指摘のとおり、過程においてちゃんとデータを取得をし、それを論文に掲載するときにしっかりと、告発されたときには提示をできるということが重要でございまして、最終的にどうなるかということ、これは基本的に、研究不正であるかどうかというのは論文を発表した後のことでございます。それによって、データが存在するかどうかということでございますので、そういう意味で、STAPについてはそういうことになってございますが、後に、STAPがたとえあったということであっても、その過程においてデータがとられていなかったりとか、ノートにしっかりと、自分の反証ができないということであれば、これはその認定は変わらないというふうには思いますけれども、仮定のことでございますので、なかなか言いにくいところでございます。

平野委員 時間がないので、いっぱい大臣から聞きたいなと思ったんですが、要は、総合的に言うと、なぜ研究不正の起こる背景が出てくるのかなということが僕は大事だと思いますね。

 その一つを指摘しておきたいと思うんですが、私、山中教授のところに行きました。私自身、文科大臣のときに行きました。現場を見てまいりました。意見も山中教授から受けたんですが、今でも覚えていますけれども、それは、研究に対する継続性とモチベーションの上においての問題として、やはり研究者自身が有期雇用にされているという、それで、丹羽副大臣がおっしゃったように、税金を投入しているんだということで、有期雇用、税金を投入している、成果を早く求められる、こういうところでの悪循環がいろいろな事象を起こしているんじゃないか、こういうふうに思うんですね。

 したがって、私はやはり、研究者自身、先ほどポスドクの話も出てまいりました、要は、優秀な技術屋あるいは研究者をどういうふうに評価をし、どういうふうな次元でもってその研究者のモチベーションを下げずに研究をしてもらうかという環境をどうつくっていくかということが非常に大事なんですね。

 この点が、これまた通告というか、これも極めて難しい話だと思いますが、そういう意味で、誰がこの研究成果を評価をするか、技術を誰が評価をするか、ここにかかわってくるんですね。今、これはペケだと大臣が言っても、大臣のミスで、十年後に花が開いた、こういうことになったときに、その評価した評価者がぼんくらであったら、本当にいい研究の種も切れてしまうんですね。

 したがって、大臣、研究成果に対する、研究あるいは技術開発に対する評価、これは基準がありますか。

松山国務大臣 お答えいたします。

 一義的には、基準というものはございませんので、今後検討していく課題にはなろうかと思います。

平野委員 いやいや。予算をとったり税金をいただくときに、これは将来伸びるだろう、これは伸びない、こういう選択をするわけですよ。だから、評価しているわけですよ。だから、何をもって評価しているのかということを言っているんです。

丹羽副大臣 各研究は大学によっていろいろと違うと思うんですが、平野先生も大臣経験者でございますので御承知のとおり、例えば、若い研究者が早目にポストについて研究できるような環境を実現する、今、卓越研究員事業とか、さまざまな取組を文部科学省では行っておりますが、やはり、今現在、研究自体が成果主義的なものが非常に強くなっているというふうに思っております。

 やはり、そういったところを、海外のような、いいところを、事象をまねしながら、日本の研究者も、例えばデスバレーに陥ってもまたすぐ戻ってこれるような、そういったことを、対策を基本的に講じないと厳しくなってくるのかなというふうに考えております。

平野委員 時間が参りましたので終えますが、最後に、改めて、AIに対する定義と、国民の税金を使っていくということですから、やはり客観的な評価システムが要るんだろうというふうに思っています。それがあってこそ、本当に我が国の科学技術立国としての発展に、大きく前に転んでいくんだろうと思いますから、ぜひ大臣、よろしくお願いします。

 終わります。

笠委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 松山政司大臣に所信について伺います。

 科学技術基本法は、第一条で、「科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、我が国における科学技術の水準の向上を図り、もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与する」ことを目的として定められています。つまり、基本法は、まず科学技術の水準を向上させ、その結果として経済社会の発展に寄与することを意図して科学技術に関する総合的な計画を立てなければならないとしています。

 さらに、第二条では、科学技術の振興に当たっての留意点として、研究者らの創造性が十分に発揮されることを第一にしなければならないとして、基礎研究、応用研究及び開発研究の調和のとれた発展に配慮しなければならないとしております。

 科学技術担当大臣と総合科学技術・イノベーション会議は、この基本法の理念に基づいて科学技術の発展を図らなければならないと考えますが、松山大臣の御認識はいかがでしょうか。

松山国務大臣 お答えいたします。

 我が国の科学技術の振興につきましては、委員御指摘のように、平成七年に議員立法で制定をされました科学技術基本法、これに基づいて、政府が五年ごとに科学技術基本計画を定めて、総合的かつ計画的な推進を図っているところでございます。

 平成二十八年に政府が策定しました第五期の科学技術基本計画におきましては、一つは、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組、二つ目に、経済・社会的課題への対応、三つ目に、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化、四つ目に、イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築、この四つを大きな柱として位置づけているところでございます。

 これに基づいて、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIを司令塔に関係府省が連携協力して、基礎研究から課題対応等に向けた研究開発、人材育成あるいは産学連携の幅広い取組を現在推進をしているところでございます。

 引き続き、担当として、科学技術基本法及び科学技術基本計画に基づいて、この科学技術イノベーション政策を精力的に進めてまいりたいと思います。

畑野委員 それでは、科学技術の振興の実績と課題について伺いたいと思います。

 お話のありましたように、一九九五年に基本法が制定されて二十年余りたちましたが、現状はどうなったかということです。

 科学技術・学術政策研究所の科学技術指標二〇一七、資料につけさせていただきましたが、これによりますと、科学論文数の世界シェアの順位では、主要先進国で日本だけが後退しております。全体の科学研究論文数は十年前と比べて三千八百七十本減っていて、そのうち国立大学は二千六百二十本減っているというデータが示され、低下の主体は国立大学だと指摘しております。日本の研究力が低下しているのではないか、その中で特に国立大学は深刻になっているという指摘です。

 松山大臣は日本の科学技術の現状をどのように認識されていらっしゃいますか。

松山国務大臣 畑野委員御指摘のように、文科省の科学技術・学術政策研究所がまとめた科学技術指標二〇一七によりますと、我が国の論文数のシェアは二〇〇〇年ごろから順位が低下傾向にございまして、十年前と比較して我が国全体の論文数及び国立大学の論文数ともに減少しておりまして、我が国の論文数については量的、質的双方の側面において国際的地位の低下が懸念されていると認識しております。

 こうした現状認識に立ちまして、今後、我が国として主要な国際科学誌に掲載される論文数をふやしていくためには、海外のすぐれた研究者にとって魅力あるグローバルな研究環境の確保をする、また、世界トップレベルの研究開発拠点の形成、さらには、国際的な共同研究の促進等が重要であると考えております。

 また、我が国が科学技術分野における国際的なプレゼンスを高めていくためには、大学や国立研究開発法人等において学際的あるいは分野融合的な研究を活性化させていくことも重要であると考えております。

 我が国がグローバル競争に打ちかち、また、イノベーションによる持続的成長を実現するためには、大学等における研究力の強化が重要であると考えております。そのために、具体的方策をこの夏までに統合イノベーション戦略に盛り込んで、今進めているところでございます。

畑野委員 第五期基本計画では、「我が国の科学技術イノベーションの基盤的な力が近年急激に弱まってきている」というふうにしております。この基盤的な力が弱まっているということが重大だと思うんですね。大事なのは、なぜ基盤的な力が弱まっているのかということをしっかり分析して、そして、それを克服する方向に転換していくということだと思うんです。

 総合科学技術・イノベーション会議の議員であり、日本学術会議会長の山極壽一京都大学総長は、昨年の十二月二十五日の第三十四回総合科学技術・イノベーション会議で、次のように発言されました。

 現在、日本の科学、科学者は疲弊し始めている。その理由が選択と集中によって大学間の競争が激化し、一方で科学者コミュニティの力が弱まっていることだと思う。

  特に基礎研究においては、科学者間の競争は栄誉をめぐる競争であったはずである。それがだんだんと限られた資金をめぐって、組織の為に尽くすことが科学者の人生設計に非常に重要な役割を果たすようになった。とりわけ科学的環境を整える為には、やはりお金が必要でその競争が激化している。そういった事情を放置して、これ以上むちを当て続けると落馬する者が続々と出てくるという事態になりかねない。

とおっしゃっております。

 基盤的な力の弱体化、これは選択と集中による過度な資金獲得競争が原因ではないかと思いますが、大臣の御認識はいかがですか。

松山国務大臣 お答えします。

 政府としては、第五期の科学技術基本計画に基づきまして、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化に向けて、大学等における研究活動を安定的、また継続的に支える基盤的経費と、すぐれた研究や目的を特定した研究等を支援する公募型資金、これの最適な配分を考慮して、研究資金全体の効果的、効率的な活用を図ることとしています。

 このうち、競争によってよりすぐれた研究が採用される公募型資金につきましては、研究開発の多様性を確保し、競争的な研究開発環境の形成に資する重要な資金であると認識しています。また、このため、内閣府としては、こうした公募型資金が大学等における研究環境の改善等に資するよう、間接経費の確実な措置、また使い勝手の改善、府省をまたいだ研究費の合算使用等の改善を主導して進めてまいりました。

 また、大学等の基盤的経費に関しましては、第五期基本計画等において、確実に措置をすることとしておりまして、特に国立大学の運営交付金につきましては、平成二十七年度以降、厳しい財政状況下にあっても、前年度同額程度を確保しているところでございます。

 今後とも、基盤的経費と公募型研究資金のバランス、これに配慮しながら、新領域開拓に資する挑戦的な研究あるいは若手研究者への支援の強化を通じて、我が国の研究力の向上に向けて取り組んでまいります。

 したがって、委員御指摘の点については、公募型研究資金等における選択と集中、これによる競争が過度なものになることがないように、適切に配慮していくことが重要と考えております。

畑野委員 過度にならないようにというお話でございました。資金を集中させたところで研究が進むのは当たり前だと思うんですね。問題は、選択されなかったところで研究資金が枯渇して、研究の裾野が狭まっているということです。

 この間、世界シェアの低下は、日本の科学技術予算の名目の伸びが一・一倍と、ドイツの一・七倍などのヨーロッパの国と比べても少ないということですね。だから、研究投資の伸びが少ないゆえに、選択と集中で研究の裾野が狭くなっている、ここを私は解決しなくてはならないと思うんです。

 科学技術・学術政策研究所の伊神正貫研究室長、資料の二枚目のところにつけさせていただきました。雑誌「科学」二〇一七年八月号に、同研究所の調査研究データを用いて、日本からの論文の産出状況を分析した論文を掲載しております。

 伊神氏は、過度な選択と集中とそれに伴う副作用が生じている可能性があるというふうに言っております。御紹介だけしておきますけれども、研究全体を統括し、責任者として論文に名を連ねた研究者の人数は四千六百六十一人減った。その九割は、責任者としての発表論文数が三年間で一本のみの研究者だった。一方で、責任者としての論文が三年間で十本以上の研究者の減少は七十七人にとどまっているということなんですね。

 別のところで伊神氏がおっしゃっているのは、研究の活発なトップクラスの研究者ではなく、科学の裾野を形成するような研究者の活動が弱まっているのではないかというふうにおっしゃっているんです。

 私は、若手教員の話がございました、研究費を重点配分するというのは、またもや選択と集中ということではないかと思うんです。若手もシニアも含めて、日本の研究者全体が疲弊している。シニアから若手に研究資金をシフトしたら、またもや切り捨てられる分野が生まれて、研究の裾野がどんどん狭まっていくのではないかと懸念をしております。

 それでは、どうやって若手研究者の活躍しやすい環境をつくるのか。国立大学協会は予算要望の中で、「国立大学は、法人化以降十年以上にわたる運営費交付金の削減等により若手教員の減少や施設設備の老朽化が進み、教育研究の基盤維持にも困難な状況に直面しています。」と資料の三枚目のところでつけさせていただいておりますけれども、このように指摘をされております。「国立大学が長期的な見通しを持って、安定的な大学運営を行うためには、大学の裁量で使途を決定できる基幹経費の確保が重要であり、優れた取組の基幹経費化を含め、運営費交付金の増額を要望します。」と要望されております。国大協の資料では、外部資金で研究費を措置しても、教育研究を支える基幹的な教員の体制確保は運営費交付金でなければできないというふうに訴えております。

 私は、選択と集中による過度な資金獲得競争を緩和するとともに、若手研究者が活躍できる場を確保するためには、国立大学運営費交付金、とりわけ基幹経費の増額が必要だと考えますが、大臣の御認識、いかがでしょうか。

松山国務大臣 お答えいたします。

 我が国の科学技術イノベーション力を強化していくためには、それを担う創造性豊かな若手研究者の活躍の促進、御指摘のように、極めて重要だと認識をいたしております。

 このため、御指摘もございました国立大学の基盤的経費である運営費交付金、これにつきましては、第五期科学技術基本計画等に基づきまして、文科省において確実な措置に努めていただいております。平成二十七年度以降は対前年度比同額程度は確保されております。

 また、政府全体としても、第五期基本計画に基づき、若手研究者を対象とする研究費支援等の取組の推進を、すぐれた若手研究者が活躍できるように、幅広い取組を進めておるところでございます。

 さらに、基盤的経費と公募型研究資金のバランスを配慮しつつ、優秀な若手研究者の活躍機会の拡大などを通じて、我が国の研究力向上に結びつけていくことが重要であると考えています。

 このため、具体的方策について早急に検討を進めておるところでございまして、この夏には、統合イノベーション戦略、これにしっかり盛り込んでまいりたいと思います。

畑野委員 確保では不十分で、増額すべきだということを申し上げたいと思います。

 国立大学運営費交付金は、法人化後、一千四百五十億円も削減されてまいりました。これを取り戻すぐらいの構えでないと、弱体化した基盤的な力を回復し、活性化することはできないと思います。

 次に、総合科学技術・イノベーション会議で議論をしている統合戦略について伺います。

 これが基盤的な力を強化するものになるのかどうかということです。むしろ、選択と集中を更に強めて、科学者を疲弊させるのではないかと危惧しております。

 安倍首相は、昨年の十二月二十五日の第三十四回総合科学技術・イノベーション会議で、「二〇二〇年に向け生産性革命を実現するためにも、もはや抽象論ではなく具体的な政策を速やかに実行していかなければならない。」と述べ、「中でも、イノベーションの創出拠点として大きな役割が期待される大学について、改革を強力に進めることが必要である。 松山大臣、そして林大臣はよく連携して、戦略策定を待つことなく、来年度から、民間資金獲得の実績を有する大学や、若手重視の人事給与・ガバナンス改革を行う大学を、重点的に支援するなど、改革に向けてめりはりのある対応を実施して頂きたい。」と指示したとされております。

 生産性革命に資するとみなされた大学を重点的に支援する、これは、更に選択と集中が進み、基盤的な力の弱体化が進むんじゃないかと思うんです。しかも、わずか二年で成果を上げろというのは、科学技術の特性を無視したものだと言わざるを得ません。

 科学技術の振興に当たっての留意点として、研究者らの創造性が十分に発揮されることを第一にしなければならない、このようにしてきた基本法の理念に反しているんじゃないかと思いますが、いかがですか。

松山国務大臣 お答えします。

 御指摘のございました、昨年十二月、総合科学技術・イノベーション会議におきまして、総理から御指示がございました。

 政府としては、基礎研究から社会実装まで一気通貫の戦略の中で、イノベーションの創出拠点として大きな役割を期待される大学、ここにつきましては、民間資金獲得、そして若手重視の人事給与・ガバナンス改革等が重要と認識しています。

 こうした取組は、研究者の創造性の発揮や、基礎研究を含めた研究開発全般の振興等につながるものでございまして、委員御指摘のとおり、基礎研究、応用研究、また開発研究、調和のとれた発展という科学技術基本法の理念にも沿ったものであると考えております。

 現在、内閣府におきましては、関係省庁と連携しまして、この夏の統合イノベーション戦略の策定を進めておるところでございまして、この中で、若手研究者の活躍促進、あと、大学における民間資金獲得の促進等に向けた具体的な方策について、今鋭意検討を進めているところでございます。

 科学技術基本法の理念にのっとりまして、こうした取組を通じて、引き続き、政府を挙げて、この科学技術イノベーション政策、しっかり取り組んでまいりたいと存じます。

畑野委員 特定の分野に投資をふやす一方で、それ以外を切り捨てるようなことがあってはならないということを申し上げておきたいと思います。

 さて、最後にですが、総合科学技術・イノベーション会議に設けられたイノベーション戦略調整会議に、防衛大臣が構成員として参加をしております。科学技術政策の立案にかかわる会議に防衛大臣が参加するのは、戦後初めてではないでしょうか。

 なぜ、これまで入っていなかった防衛大臣を加えたのですか。

松山国務大臣 お答えいたします。

 昨年末、十二月二十五日の総合科学技術・イノベーション会議、CSTIには、安倍総理大臣から、我が国が世界に先駆けてイノベーションを実現するために、グローバルな視座に立って、基礎研究から社会実装まで一気通貫の戦略が必要だと。加えて、生産性革命を実現するために、具体的な政策を速やかに実行していかなければならない。このため、統合的かつ具体的なイノベーション戦略を、官房長官と私を中心に、関係閣僚連携して、夏までに策定するという指示がまずございました。

 これを踏まえて、ことしの二月、官房長官を議長とする関係閣僚会議を開催しまして、このイノベーション戦略調整会議を設置をしました。統合イノベーション戦略の策定に向けた議論を開始したところですが、御指摘のように、防衛大臣を構成員としたことに関しましては、第五期の科学技術基本計画、また科学技術イノベーション総合戦略二〇一七におきまして、国家安全保障上の諸課題に対応するために、関係府省、また産学官連携のもと、必要な技術の研究開発を推進する方針というのが盛り込まれております。

 統合イノベーション戦略においても、安全、安心分野への高い技術力の活用について検討することとしておりまして、こういった観点から防衛大臣にはイノベーション戦略調整会議の構成員ということで参画をいただいているところでございまして、引き続き、統合イノベーション戦略の取りまとめに、官房長官、関係閣僚ともに連携しながら、精力的に進めてまいりたいと思っているところでございます。

畑野委員 科学技術政策の立案に防衛大臣を参加させることは、憲法九条と学問の自由にかかわる重大問題です。戦前、森戸事件、滝川事件、矢内原事件などがございました。

 私は、科学技術の軍事利用への総動員体制に道を開く、こうした防衛大臣を構成員に参加させることは断じて許されない、このことを申し上げて、質問を終わります。

笠委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 よろしくお願いいたします。日本維新の会の井上英孝です。

 最後の質疑ということで、頑張りますので、よろしくお願いいたします。

 先週、松山大臣から、科学技術イノベーション関連の多岐にわたる政策についての所信表明というのがありまして、伺わせていただきました。本日は、それらの政策に沿って、各論も含めて、担当事務局並びに大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 スマートフォンや自動走行といったわかりやすいものを始めとして、世界的に新たな技術やアイデアによるイノベーションというのが日進月歩で本当に進行している中、我が国におけるイノベーションというのが停滞をして国際的な競争力が低下していくということがやはり非常に懸念されます。

 科学技術イノベーションは経済成長には欠かせない必要不可欠な要素であり、我が国の国際的地位を確たるものとするためには、オール・ジャパンでのしっかりとした戦略というのを考えなければならないというふうに思います。

 こうした認識のもとで質問をさせていただきたいと思いますけれども、まずは科学技術予算についてであります。

 先ほど、大学運営費交付金の話等もありましたけれども、第五期科学技術基本計画、五年ごとに作成されているこの計画において、政府研究開発投資の対GDP比一%の達成というのを目指すというふうに訴えておられます。おおよそ六兆円ぐらいの規模を目指すと言われています。実際、年間、今、予算では、通常予算では大体三兆円後半、補正予算も含めておおむね四兆円台というのが大体今までの、平成十三年から見てもなっているんですけれども、そういう面から考えると非常に野心的な目標を掲げられているというふうに思います。

 そこで、本年度の予算ではこの目標に対してどの程度達成感を持っておられるのか、また、今後どのような取組を進めてこの対GDP比一%の目標を達成していくお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

山脇政府参考人 お答え申し上げます。

 総合科学技術・イノベーション会議は、第五期科学技術基本計画に掲げられました政府研究開発投資目標であります対GDP比一%の達成に向けて、昨年四月に具体的な道筋を決定したところでございます。

 これに基づいて、平成三十年度予算におきましては、従来の研究開発事業の拡充というものに加えまして、公共事業を始めとする既存施策に新たな技術の活用を促す取組、いわゆる科学技術イノベーション転換というものを進めることによりまして、平成三十年度予算におきましては、対前年度比二千五百二十一億円の増額、七%増となります三兆八千四百一億円が確保されたというところでございます。

 平成十三年度以降、十六年間で政府研究開発投資が三百億円程度の増にとどまっていたという状況から鑑みれば、一定の評価はできるかというふうには考えております。

 内閣府におきましては、先ほど来議論のあります、ことしの夏の策定に向けて議論を進めております統合イノベーション戦略の中で、政府事業において率先してイノベーションを導入する等の具体的な施策も更に検討をし、引き続いて、財政健全化の取組との整合性を確保しながら、第五期科学技術基本計画の中の政府研究開発投資目標の達成ができるように、関係省庁と連携して努めてまいりたいと考えているところでございます。

井上(英)委員 ぜひ、しっかりと予算を獲得して、頑張っていただきたいと思います。

 ただ、改めて、この科学技術特別委員会に所属して思うのは、横文字もたくさんあって、やはり非常にわかりにくい部分はあるかと思うんですね。結果的にそれを、国民は当然ですけれども、我々も含めて理解してもらおうと思うと、やはりわかりやすい結果ですね、先ほどのスマートフォンだとか自動運転だとか、そういうふうにわかりやすい目標を達成していくことが、やはり国民の皆さん方の関心も呼びますし、それから、後押しというのも招けると思いますので、結果にこだわって、また結果が出ていくと必然的に予算もどんどんどんどんつけていってもらえることになるかと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 特に、産業界からの評価が高いとお聞きをしている戦略的イノベーション創造プログラム、SIPについてお聞きをいたしますけれども、平成二十九年度の補正予算においては、平成三十一年度に開始予定であった次期SIPを前倒しで実施するというふうにお聞きをしています。

 この次期SIPについて、具体的にどのような課題をどのような方向性を持って進めていこうとしているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

山脇政府参考人 御質問の次期SIPに関しましては、御指摘のとおり、平成三十一年度に開始の予定だったものを、新しい経済政策パッケージを踏まえて、前倒しで実施をするという形になっております。

 生産性革命の実現を目指しまして、社会的課題の解決、日本経済、産業競争力の向上にとって重要な分野から課題を検討いたしまして、ことし三月末の総合科学技術・イノベーション会議におきまして、自動走行、防災・減災等の十二の課題というものを決定したところでございます。

 具体的な課題の内容について事例として申し上げますと、自動運転に関しましては、信号情報を始めとする道路交通情報の収集、配信をするような技術基盤を確立した上で、一般道における自動走行レベル3の実現を目指すということを掲げております。

 また、防災・減災の分野におきましては、南海トラフ地震などの大規模災害に対応するために、衛星、AI、ビッグデータ等を活用した避難誘導システムでありますとか、地方自治体、住民が利活用できる災害情報共有・支援システムというものも構築したいということを目指しております。

 また、物流に関しましても、生産から消費に至るまでの流通の徹底した効率化を目指して、世界最高水準の最適化された生産・物流システムの構築をするというようなことも目標に掲げ、このような具体的な目標を掲げているところでございまして、次期SIPにおきましても、その特徴であります産学官連携、府省連携、それから、基礎から実用化、事業化までを見据えた一気通貫の研究開発というSIP型マネジメントという特徴を十分に生かしながら、イノベーションを通じた生産性の向上、日本の産業競争力の強化というものにつなげていきたいというふうに考えているところでございます。

井上(英)委員 答弁ありがとうございます。

 先ほどもありましたように、以前のSIPのプログラムではたしか十一項目、今度は十二項目ですね。先ほどもおっしゃっていただきました、私が言って、わかりやすいものということで、あえて自動走行とか物流だとか、そういうのを象徴的に挙げていただきましたけれども、ほかに、サイバー空間基盤技術とかフィジカル空間基盤技術、それからまた光・量子技術基盤とか、本当に専門性の非常に高い、ただ非常に大事な話だと思うので、ぜひ頑張っていただきたいと思うんですけれども、先ほども言いました、広報的に、対外的に出すときには、やはりわかりやすい、我々も含め、国民の皆さん方にわかりやすいことで実際の結果というのを目に触れるようにしていただくと、なおのことこの科学技術イノベーション分野の必要性とかそういったものが高まってくるのではないかなと思いますので、ぜひとも、次期のSIPにつきましても、それぞれ十二項目、後押しして、いい結果が生まれるように、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 そして次に、知的財産について質問をさせていただきます。

 知的財産戦略については、中長期的な計画を立てて戦略的に進めていくことが重要だというふうに考えます。その中で、新たな知的財産戦略ビジョンというのを策定する予定だというふうに聞いておりますけれども、例えば、二〇二五年から二〇三〇年ごろを見据えたさまざまな項目というのがあるんですね。あるんですけれども、私が一番想像し得る中身というのが、やはりクールジャパン戦略だと思いますので、クールジャパン戦略のあり方だとか、現在どのような検討状況であるのかというのをお答えいただけますでしょうか。

川嶋政府参考人 御答弁申し上げます。

 政府としては、日本のコンテンツや衣食住がより効果的に創出され、海外や訪日外国人に受け入れられるよう、中長期的な観点からクールジャパン戦略を更に深めることが必要と考えてございます。

 そこで、昨年末に、総理を本部長とする知的財産戦略本部のもとに知的財産やクールジャパンの有識者から成る専門調査会を立ち上げまして、中長期的な視点から新たな知的財産戦略ビジョンについて検討を行っております。

 その中で、クールジャパン戦略につきましては、どのような日本の魅力を、どのような外国人をターゲットとして、どのように展開すべきかといった基本戦略のための議論を行っておるところでございます。

 具体的には、外国人の目から見た日本の魅力が何かについて研究、分析し、外国人が強い関心を持つストーリーを活用して付加価値を高めること、あるいは、国や地域別のマーケットの特性を踏まえた海外展開や訪日外国人への対応を推進すること、外国人材の円滑な受入れに向けた産学官が連携した取組を推進すること、そして、日本での滞在経験を持つ外国人や日本ファンへの親近感を高めるような取組を通じまして、クールジャパンの優良顧客やインフルエンサーの層を強化すること、こういったことについて現在検討しておるところでございます。

 こうした検討結果につきましては、ことしの五月ごろに取りまとめを予定しております知的財産戦略ビジョンに盛り込みまして、各省庁の施策に反映させていくことを通じまして、一層効果的に経済成長へつなげてまいりたいと考えてございます。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 訪日外国人も含めて、外国に対しての日本の、クールジャパンを含めて、さまざまなクールジャパンの中でもアニメなんかが代表的にありますけれども、そういったものをどんどんどんどん売り出していって、多くの方々に日本を訪れていただくというか、また、さらには、日本のそれぞれの魅力を、個々の魅力を上げていくということもやはり非常に大事ですので、そういうことをやっていって、知的財産に関してはいろいろな、一般的に厳しいところもあれば、ちょっと考え方に緩い国もありますし、さまざまな国がありますけれども、そういったことも含めて、とりあえず、まずは日本のそういう魅力をどんどんどんどん発信していけるようによろしくお願いしたいと思います。

 では次に、宇宙政策についてお伺いをいたします。

 時間もちょっと限られていますので進みますけれども、準天頂衛星システム「みちびき」がありますけれども、この「みちびき」についてお伺いをさせていただきます。

 この「みちびき」については四基体制の運用によるサービス提供というのをことし、年内にも開始するというふうにお聞きをしております。

 今後、衛星データを活用した新事業だとか新サービスといったものがどういうものか、また、宇宙ベンチャーに対する支援の強化に向けてやはり一層取組が必要だと思うんですね。担当の見解というのをお聞かせいただけますでしょうか。

高田政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、宇宙基本計画工程表に基づき、準天頂衛星システムの民間利活用を推進しております。今後、準天頂衛星の活用により、センチメーターレベルでの高精度測位が可能となり、例えば自動車や農業トラクターの自動走行などの実現が期待されます。これらの実証を通じ、先進的な利用モデルを創出するとともに、成果の社会実装に向けた環境整備を行い、利用拡大を図ることとしております。

 具体的には、例えば海外展開に関し、タイの車線単位での高精度測位情報を活用した渋滞の緩和ですとか、オーストラリアでの無人トラクターを活用した農作業の効率化など、アジア太平洋地域における産業分野での実証を官民協力の上で実施しております。

 また、委員お尋ねの宇宙分野におきますベンチャー育成に関しましても、これもまた宇宙基本計画の中で策定しておりまして、具体的には、先進的な衛星データの利用に向けた、ユーザーを巻き込んだ形での実証事業ですとか、あるいは早期の段階でのアイデアをビジネスアイデアコンテストの形で発掘する、あるいは事業化のためにファンド資金のマッチングを行ったり、DBJ、革新機構などを通じた官民ファンドなどからのリスクマネー供給など、こういったものを合わせまして、早期の段階から事業化の段階まで、切れ目のないベンチャー育成支援を通じて宇宙産業の振興に取り組んでいるところでございます。

 以上です。

井上(英)委員 宇宙ベンチャーも、本当にまだまだちょっと少ないんですよね。そんなにたくさんの数はないんですけれども、しっかりとサポートしていただきたいと思います。

 四基の体制は最終的にどれぐらいを目指しているのか、ちょっとお答えがなかったんですけれども。

高田政府参考人 委員御指摘のとおり、まず、昨年、三基の準天頂衛星を打ち上げまして、今、宇宙空間で四基体制がおかげさまで確立しています。今、測位精度を上げるようなチューニングを最後行っているところでありまして、サービスを十一月から開始するということでアナウンスしています。

 またさらに、持続測位が可能になるためには七基必要でございまして、この七基体制の確立のために必要となる追加三基につきまして整備を進め、平成三十五年度をめどに七基体制にしたいと考えています。

井上(英)委員 ぜひ七基にして、今大体、GPSで、僕も大阪が地元なので、淀川の横を走っていると、淀川を走っているナビになったりするんですね。川の中を走っているような状態になるんですね。GPSではそういうことがあるらしいんですね。これは、GPSはアメリカ製ですかね。これが、この準天頂衛星システム「みちびき」では数十センチぐらいの誤差しかないんですよね。だから、ナビで自分の車が川を走るということは多分ないと思うんですね。ですから、この日本の科学技術を、早くできるように、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、IT政策についてお伺いをいたします。

 国民の皆様方が市役所などの行政手続に費やす時間と労力というのを削減して、生活の質的向上を実現するということは、世界最先端のIT国家を目指す上で必要な取組です。例えば、電子申請システムが整備されていても、添付書類を紙で提出しなくてはならない場合など、かえって国民に多大な負担というのをかけることもあります。また、さまざまな手続をワンストップで行うことで、国民の利便性というのも非常に高まるのではないかなと思います。

 現在進めているこのような行政手続の電子化に向けた、全国的というか、全国に波及するような取組についてお伺いをしたいと思います。

向井政府参考人 お答えいたします。

 政府では、本年一月にデジタル・ガバメント実行計画を決定いたしまして、デジタル技術を徹底的に活用することにより、利用者から見て、すぐ使えて簡単で便利な行政サービスの実現を目指しております。

 具体的には、先生御指摘の、いろいろな手続をするたびに戸籍、住民票等々の書類を求められることが多数ございますが、これらにつきましては、添付書類を一括で撤廃するためのデジタルファースト法案の検討を進めておるところでございます。

 それから、大多数の方々が経験するライフイベントであります介護、死亡相続、引っ越しなどの際に必要となる種々の手続をワンストップ化するサービスについて、来年以降、順次開始できるよう調整してまいります。

 いずれも国民の利便性の向上に資するものであり、着実に取り組んでいきたいと考えておりますが、デジタルの扱いにふなれな方もいることも考慮し、そうした方々も便益を享受できるような仕組みにしていきたいというふうに考えております。

井上(英)委員 市町村といった基礎自治体は、やはりこういう窓口サービスというのが頻繁にありますので、神経を結構使っているんですね。

 うちも、地元、大阪市役所なんですけれども、直接業務というのは各区がやっています。区役所がやっているんですけれども、その区役所では、住民票をとりに行くのも、例えば戸籍抄本だとか謄本をとりに行くのとか、そういう窓口、もう全てワンストップでできるようになっています。だから、そういうことをふだんの基礎自治体というのは物すごい敏感に感じているんですね。やはり間接行政で、だんだん都道府県単位だとか国単位になってくると、そういう直接的なサービスというのには、余りちょっと神経が細やかになかなかなりにくい現状があります。

 先ほどおっしゃっていただいたように、介護だとか死亡相続、特に死亡相続のときなんて、家の中は恐らくてんやわんやになっているときに、あれしろこれしろ、この書類を持ってこいと言われても、なかなか大変だと思うんですね。だから、そういうときにやはりワンストップで、引っ越しもそうですね、この時期、非常に区役所なんかも窓口業務というのは並んだりするんですね。ですから、それを簡素に、要領よく、効率よくやってもらうために、ぜひお願いしたいと思います。

 種々聞いてきましたけれども、こういう総合的で具体的なイノベーションの戦略というのを夏までにおつくりになるということですけれども、最後、大臣の決意をお伺いしたいと思います。

松山国務大臣 ありがとうございます。

 科学技術イノベーション政策は、安倍内閣が掲げる生産性革命、これを通じたGDP六百兆円経済を実現するために大変重要な政策の柱の一つでありますので、政府を挙げた取組をより一層強化していきたいと思っております。

 こうした観点から、科学技術・イノベーション会議、CSTIを司令塔として、関係本部、省庁との連携協力のもと、基礎研究から社会実装までの一気通貫の戦略として、総合的かつ具体的なイノベーション戦略を夏までにしっかり策定したいというふうに思っております。

 具体的には、官房長官を議長として、私は副議長ということで、イノベーション戦略調整会議等の場を活用して、ソサエティー五・〇、大学改革、人工知能などの重要テーマについて、施策の具体化に向けた検討を鋭意進めております。

 今後、さまざまな論点を含めて議論を加速し、担当大臣として、統合イノベーション戦略策定に向けてしっかり頑張ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

井上(英)委員 質問を終わります。

笠委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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