衆議院

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第3号 令和元年11月27日(水曜日)

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令和元年十一月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 津村 啓介君

   理事 石川 昭政君 理事 小渕 優子君

   理事 大岡 敏孝君 理事 関  芳弘君

   理事 簗  和生君 理事 青柳陽一郎君

   理事 中島 克仁君 理事 太田 昌孝君

      あかま二郎君    井林 辰憲君

      今枝宗一郎君    今村 雅弘君

      越智 隆雄君    大隈 和英君

      大西 宏幸君    岡下 昌平君

      神谷  昇君    小泉 龍司君

      杉田 水脈君    谷川 弥一君

      出畑  実君    渡海紀三朗君

      中村 裕之君    西田 昭二君

      百武 公親君    藤井比早之君

      船橋 利実君    本田 太郎君

      伊藤 俊輔君    大串 博志君

      大島  敦君    吉良 州司君

      篠原  豪君    早稲田夕季君

      古屋 範子君    畑野 君枝君

      串田 誠一君

    …………………………………

   国務大臣

   (情報通信技術(IT)政策担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     竹本 直一君

   外務大臣政務官      中谷 真一君

   文部科学大臣政務官    青山 周平君

   厚生労働大臣政務官    小島 敏文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  渡邉その子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小平  卓君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   松尾 泰樹君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        松尾 剛彦君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 河野  真君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           小宮大一郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           玉上  晃君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           梶原  将君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           増子  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           千原 由幸君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           渡邊 昇治君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           上田 洋二君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           吉田 郁子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十七日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     船橋 利実君

  大隈 和英君     百武 公親君

  馳   浩君     西田 昭二君

  和田 義明君     本田 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  西田 昭二君     馳   浩君

  百武 公親君     大隈 和英君

  船橋 利実君     あかま二郎君

  本田 太郎君     大西 宏幸君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     和田 義明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

津村委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する実情調査のため、去る二十五日、十四名の委員が参加し、旭化成株式会社本社を訪問、本年ノーベル化学賞を受賞されました吉野彰博士と懇談いたしましたので、参加委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 懇談では、まず、吉野博士から、ノーベル化学賞受賞者三名の貢献内容、基礎研究及び若手研究者の環境整備の重要性、リチウムイオン電池の開発がノーベル化学賞を受賞した理由について説明を聴取した後、産業界における研究の支援策、新技術を我が国で社会実装するための方策、研究成果が出るまでの研究者の日々の取組、埋蔵リチウム枯渇への対応策、我が国のベンチャー企業の課題、大学の研究環境悪化に関する政府への提言、研究における多様性、海外との科学技術協力のあり方などについて意見交換を行いました。

 なお、吉野博士からは、研究者やベンチャー企業を育成するために、失敗を許容した資金提供の仕組みが必要である、基礎研究を行った企業に対して税制優遇があると企業も基礎研究に取り組みやすい、我が国が環境問題を解決する切り札となる技術を開発すれば、間違いなく世界を制覇する、産学官の連携はドイツが最もうまくいっている、現在の大学は中途半端であり、純粋な基礎研究と応用研究をはっきり分けて両輪で進めることが理想である、外国との技術協力においては、まず無償供与から始め、グローバルスタンダードをとった上で自社に還元させる仕組みをつくるのが理想であるなどの御意見をいただきました。

 今回の吉野博士との懇談に当たりまして、吉野博士御自身を始めとして、御協力いただきました方々に深く御礼を申し上げ、報告といたします。

    ―――――――――――――

津村委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、内閣官房内閣審議官渡邉その子君、内閣府大臣官房審議官小平卓君、内閣府政策統括官松尾泰樹君、内閣府宇宙開発戦略推進事務局長松尾剛彦君、警察庁長官官房審議官河野真君、消防庁国民保護・防災部長小宮大一郎君、文部科学省大臣官房審議官玉上晃君、文部科学省大臣官房審議官梶原将君、文部科学省大臣官房審議官増子宏君、文部科学省大臣官房審議官千原由幸君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、経済産業省大臣官房審議官渡邊昇治君、経済産業省大臣官房審議官上田洋二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。関芳弘君。

関(芳)委員 トップバッターで竹本大臣に質問させていただきます。非常に光栄でございます。よろしくお願いいたします。

 ただいま津村委員長の方から、旭化成にこの委員会で訪問させていただきまして、ノーベル賞を受賞なさいました吉野博士からいろいろ御示唆を賜った次第でございまして、私も参加をさせていただきました。本当に勉強になる思いでございましたし、いろいろ、今後、私も政治家としてしっかりと取り組んでいかないといけないと思う課題をたくさん目の当たりにしたところでございます。

 まず大臣に、この吉野博士の御受賞につきまして、ノーベル賞を御受賞されたということに対しての御感想をまず第一声でお聞かせ願いたいと思います。

竹本国務大臣 おはようございます。

 吉野先生のノーベル賞受賞についての感想ということでございますけれども、ともかく、去年に続けてとっていただいたことに非常にうれしく思っております。しかも、大学の研究者じゃなくて、産業界の現場からこういう賞をいただいたということは非常にうれしい。田中耕一先生に続く一つの業績だろうというふうに思っております。

 科学技術イノベーションを成長戦略の重要な柱と考えているわけですけれども、そういう意味では、非常に大きい励みになることは間違いないということであります。今回の受賞が、科学技術に対する社会の期待や関心を一層高め、次代を担う若い世代に夢を与えるとともに、新たな課題に積極的に挑戦する契機となり、今後も世界トップレベルの研究成果が生み出されることを強く期待いたしております。

 これまで、自然科学分野のノーベル賞を受賞した研究は、研究者が三十代、四十代の若い時期に取り組んだ成果が多くを占めております。吉野先生も、たしか三十三歳ぐらいに始められて、成果が出たのは三十七歳と言っておられましたから、まあ、大体そんな感じかなと思いますが、政府といたしましても、世界で最もイノベーションに適した国づくり、まあ、アメリカの方がちょっと進んでいるような感じはしますけれども、ぜひ、世界一になることを目指してしっかりと頑張っていきたい、その旗を大きく掲げていただいたことに深く感謝をいたしております。

関(芳)委員 大臣、ありがとうございます。

 本当に、今後、吉野博士のように、ノーベル賞がどんどん出ていく日本の国であり続けたいな、そのように努力を私もしてまいりたいなと思うわけでございます。

 吉野博士も、会社、民間企業であれば、二年ごとにいろいろな目標を立てて、それの成果をしっかりと確認、検証して評価もしていく、一方、大学とか、いろいろな専門の研究機関におきましては、民間の企業とは違いますので、そのような二年ごとの成果とか、非常に短期間での評価がされると大変でしょうから、そこのところについては、違う評価の仕方、また期間のあり方もあるのかなというふうな御意見もおっしゃっておられました。

 このように、日本が、ノーベル賞を受賞される方々がますますふえていただきたいとまた思うわけでございます。その際、今回は民間企業の吉野博士でございましたけれども、日本の政府としても、大変、それを後押ししていくために、重要な役割を担えることだと思います。どのようなことができるのかということをお考えか、そのことにつきましてお伺いしたいと思います。

竹本国務大臣 我が国のノーベル賞受賞者は二十六人プラス一、二十七だったか。中国が一つしかもらっていない、韓国はゼロと考えると非常にすばらしいことでありますが、ヨーロッパは、例えばオランダなんか十四ぐらい、イギリスはたしか十七と聞いたんですが、いずれにしろ、それなりの地位は占めているんですが、アメリカは二百三十ぐらいだったと思う、二百三十八か何かだったと思いますが、それぐらいの大きな差があります。

 だから、先生おっしゃるように、研究基盤を、きっちりと落ちついて研究できるような環境をつくってあげる必要があると思います。学者の方ですと、任期つき雇用が非常に多いんですよ、研究者の方には。ですから、期間が五年とか限られておりますと、非常に焦るというか、短期間に結果を出さなきゃいけないというような苦しみもありますし、また、待遇も必ずしもいいとは限らない、こういうこともございます。研究費も十分でないということもございます。こういった、基礎研究に打ち込む環境をきちっとつくることが、やはり政府としてやるべき一番大事なことかなというふうに思います。

 それから、研究者であることが非常に誇りある立場なんだというような認識を持ってもらえるような社会的な評価のあり方というか、そういうこともやはり考えて、ここに挑戦していただくことが世界人類のためにもなり、日本のためにもなるんだというような雰囲気をつくっていくことも大事かなというふうに思っております。

 いずれにしろ、研究者の研究環境が非常によくないということに対しては、非常な危機意識を我々も持っております。

関(芳)委員 大臣、この際、大臣の任期期間中にそこをがらっと変えていただくぐらいのパワーで、今後の日本のノーベル受賞者が倍増していきますように、ぜひ御指導いただけたらと思います。

 それで、今大臣からもお話ございましたが、アメリカは非常にたくさんのノーベル賞を受賞されている方がいらっしゃるということでございますが、アメリカに限らず、今中国もすごい、経済界でもパワーを発揮し、それを裏づけする技術革新が進んでいっております。

 特に今、アメリカのGAFAに対しましては、その技術力から企業が非常に強くなってきているところでございますが、そのGAFAに対抗しまして、中国では今、BATHと言われる企業集団もでき、それぞれもまた非常にすごい技術力を有しているところでございます。

 GAFAとBATHをちょっと比べてみますと、ネット検索エンジンの企業においては、GAFAはグーグルですね、BATHの方ではバイドゥ。ネット通販企業の方では、GAFAはアマゾン・ドット・コム、BATHの方はアリババグループですね。SNS企業の方では、フェイスブック、それに対抗してテンセント。スマートフォン企業では、アップルに対抗してファーウェイテクノロジーズ。

 こういうふうな、GAFAとBATHはよく比較されるわけですが、このテクノロジーに裏づけされました企業パワーというものの進展と変革が、ここ数年で非常に速いスピードで進んでいる。それが、企業価値、時価総額にも非常に大きな影響が出てきているところでございます。

 それをちょっと比較をしてみました。二〇一〇年と二〇一九年、二〇一九年は三月なんですが、この株式の時価総額なんですけれども、二〇一九年、時価総額世界ナンバーワンはマイクロソフトで九千四十七億ドルですね。このマイクロソフトは二〇一〇年、九年前は第五位でございまして二千十八億ドルですから、四倍以上にも時価総額はなっている。それで一位を獲得したということなんですが、有名なところでございますと、二〇一〇年、アップルは二千二百八十九億ドル、ことしは、アップルは八千九百五十七億ドル、これも大体四倍以上ですね。

 こういうふうな中におきまして、先ほど申し上げたアメリカと中国の新興企業でGAFAだとかBATHだとか言われている企業が、この時価総額上位に入り込んできております。

 アマゾン、八千七百四十七億ドルで第三位、アルファベット、これはグーグルですが、八千百六十九億ドルで第四位、フェイスブック、四千七百五十七億ドルで第六位、アリババは四千六百九十二億ドルで第七位、テンセントは四千四百十二億ドルで第八位。今申し上げたアマゾン、アルファベット、フェイスブック、アリババ、テンセントなんかは、九年前には時価総額の二十位以内に全然入っていなかった企業なんですね。じゃあ、日本を代表するトヨタ自動車、時価総額は今世界第何位かといいますと、世界第三十位ぐらいですね。

 すごい状況の変化がありますが、この企業をやはり支えていっておりますのが、今竹本大臣が御担当してくださっておりますテクノロジーの部分だと思います。

 また、この企業群の経営者ですが、驚くことに非常に若いんですね、皆さん。それぞれの若い野心家がこの企業を生んだわけですが、その人たちの生年月日をちょっと見てみました。

 ファーウェイは少し年齢はいかれていますが、任正非さん、一九四四年生まれ。アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスさんは一九六四年生まれ。アリババのジャック・マーさんは一九六四年生まれ。バイドゥのロビン・リーさんは一九六八年生まれ。ハイシリコンの何庭波さんは一九六九年生まれ。テンセントのポニー・マーさんは一九七一年生まれ。グーグルのラリー・ペイジさんなんかに至っては一九七三年生まれですね。フェイスブック、マーク・ザッカーバーグさんは一九八四年生まれ。私が一九六五年生まれでことし五十四歳ですから、私より年下の人たちがいっぱい、もうこんな、何千億ドルもの時価総額の会社をつくり上げていっている、このような状況でございます。

 やはりこのような企業が生まれてきた根底にありますのは、いわゆる、竹本大臣が今御担当していただいております科学技術、この技術部門の新しい発展だと思います。

 ファーウェイなんかは、スマートフォンの世界シェアは、今、サムスン電子が二〇%、アップルが一五%、ファーウェイは一四・七%で第三位なんですけれども、このファーウェイの強さというのはすごいですね。基地局がないとスマートフォンというのは動きませんが、基地局は、ファーウェイは世界の二六%を押さえて、一位のエリクソンが二九%ですが、第二位で、スマートフォンのシェアも世界でナンバースリーなら、基地局に至っては世界ナンバーツー、両方総合すると世界ナンバーワン企業とやはり言っても間違いないでしょうね。スマートフォン第一位のサムスン電子、二〇%、世界シェア。ただし、基地局に至ってはたった五%しか持っていないと。

 ですから、このスマートフォンの世界、これからの、AI、IoTとかいろいろ今言われておりますが、この世界で、本当に世界を席巻できるパーセンテージを押さえているファーウェイのような企業パワー、それに対してやはりアメリカは今非常に警戒感を持って、次の質問に入っていくわけですが、日中、貿易摩擦、世界経済への影響がすごく心配されております。

 こういうふうな中におきまして、今申し上げたようなファーウェイ始め中国企業の実力がどんどんと強くなってきておりますが、このような中国企業の技術のうち、世界レベルで、日本企業との競争上脅威となってきているのはもう事実だと思うんですけれども、そのことについて政府はどのように今御認識をしているか、教えてください。

渡邊(昇)政府参考人 中国企業の技術に関します認識に関しまして、お答えを申し上げます。

 中国の研究開発投資総額は、日本、イギリス、ドイツを抜いてトップのアメリカに追いつく勢いということでございます。論文数を見ましても、アメリカをしのぐ状況でございます。とりわけ、量子関連技術や5G等の先端技術において、世界に先駆けた動きが活発に行われているというふうに認識をしております。

 また、中国製造二〇二五というのがございまして、これは重点十分野というのがございます。例えば次世代情報通信技術ですとか工作機械、ロボット等でございますけれども、これにつきましても、例えば世界知的所有権機関への出願特許というのを日本、中国、アメリカで比較してみますと、出願件数及び出願特許の評価額、この伸び率は、中国は日米を圧倒しております。そういったことで、大変その存在感を増しているというふうに認識をしております。

関(芳)委員 もうおっしゃるとおりだと思います。

 このような中、本当に、日本企業がどのように世界との競争に勝ち抜いていかないといけないのか。本当にオール・ジャパンの体制を組まないといけないと思うんですね。そうしないと、そうやってさえも、なかなか難しいと思います。

 トヨタ自動車、研究開発費、一年間にかけるその金額は一兆円と言われておりますが、ファーウェイ、研究開発費、一年間で三兆円とか言われていますね。トヨタ自動車の三倍も、毎年毎年、研究開発費をかけている。このような中、どのように日本は対抗していったらいいと思いますでしょうか。

松尾(泰)政府参考人 今委員御指摘のとおりだと思います。

 そういった中で、私どもといたしましては、先ほど経産省からもございましたような認識を持ってございます。

 私ども、本年六月に閣議決定させていただきました統合イノベーション戦略二〇一九があるわけでございますけれども、その中でも、AIあるいはバイオ、それから量子といった戦略を作成しております。そしてまた、先ほど先生言われましたスタートアップにつきましても、拠点をつくるべく支援をさせていただいているところでございます。

 一方で、今委員御指摘のように、さまざまな課題があるわけでございまして、やはり我が国の技術的な優位性の確保、維持、そしてまた、技術のいろんな、転用防止といった観点から、技術の流出、これも一方で守ることが重要だというふうに認識してございまして、さまざまなガイドラインをつくっているところでございます。大学それから企業、自主的な体制で、さまざま体制整備していただいているわけでございますけれども、引き続き、内閣府それから全省を挙げて、いろんな対策に取り組んでいきたいというふうに思ってございます。

関(芳)委員 ぜひオール・ジャパンで頑張っていただきたいと思います。

 世界の空港の半分以上の統合ITシステム、そこにファーウェイの製品が入っているんですね。もう飛行機はファーウェイなくしては動かない、世界の半分は、こんな状況にまでなってきております。

 こういうふうな、やはり、私、技術革新が進んでいく際には、経営者の意識というのも非常に重要だと思います。その際に、アマゾンでは、顧客第一主義というのを徹底しようと、そのために何が必要かということで今のようなシステムを開発していった。グーグルに至っては、世界じゅうの情報を整理してあまねく情報を提供するんだ、その理想に燃えて検索エンジンをつくった。このような意識がなければだめですね。

 私はもともと三井住友銀行で働いていましたけれども、松下幸之助さんが、三洋の井植さんと、それと奥さんのむめのさんと三人で、四畳半で会社を開いたときに、住友銀行の先輩、支店長がそこに行きました。そのときに、幸之助さん、あなたの夢は何ですか、その話をしたときに、今の松下電器の、パナソニックのあるような姿をそのスタートのときから言われたということで、昭和の金融恐慌のときでございますが、白紙小切手を渡して、幾らでも、その理念を成功させてくださいということで、あなたの理想は必ず実現できると思うぐらいの具体的な話を今してくれましたということで、無償のお金を渡したんですね、住友銀行は。第一号でできたラジオは今も福島支店に飾られております。

 そういうふうな理念が物すごくやはり経営者は要ると思いますので、この成り行きはしっかりと考えていきたいと思うんですが、最後の一問だけ短く。

 このような中、アメリカ、中国がすごい戦いになってきている中、サプライチェーンは今世界につながっていますが、アメリカ、中国の戦いがもっと激しくなったとき、このサプライチェーンが影響を受ける可能性があると思うんですけれども、そのとき、日本もいろいろな研究開発体制、サプライチェーンを組んでいますが、どのような影響が出てきて、また、それに対して何か今お考えがあれば聞かせてください。

松尾(泰)政府参考人 委員御指摘のとおり、サプライチェーンのグローバル化が進む中で、日本の競争力維持の観点から、国際連携、これは不可欠でございます。そういった観点から、大学、国研、民間企業、さまざまなフェーズで国際共同研究を進めていくことが重要だと思ってございます。

 一方で、その中で、意図せざる技術流出、これもございます。関係法令の遵守、リスクマネジメントが高いレベルで必要になってくるわけでございまして、先ほど申し上げました、私ども、大学、国研の外国企業との連携に係るガイドラインをつくっているところでございます。

 このガイドラインにつきまして、しっかりと遵守していきたいと思っていますし、また、民間企業同士の国際連携につきましても、これは、グローバルなオープンイノベーション、そしてまた、その環境の構築を通じた日本企業の市場獲得といった観点から必要になってくるわけでございまして、国際研究開発事業等を活用しながら、適切に政府として推進していきたいと思ってございます。

関(芳)委員 以上です。ありがとうございました。

津村委員長 次に、太田昌孝さん。

太田(昌)委員 公明党、北陸信越の太田でございます。

 本日は、科学技術・イノベーション推進特別委員会の質疑ということで、このような機会をいただきましたこと、心から感謝を申し上げる次第でございます。

 私、このたびの災害発生に際しまして、さまざまな技術によって御支援をいただいていることに感謝を申し上げながら、SNS、AI等を活用した災害対応について、何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず冒頭、このたびの台風十九号によりまして亡くなった方に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様方に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 今回のSNS、AIを活用した住民からの情報収集、さらに、住民からの問合せに対応した動きについて若干御紹介をさせていただきたい、こういうふうに思います。

 台風十九号発生直後に、長野市では五百四十件もの一一九番通報があって、一時的に一一九番がつながらなくなりました。また、消防では、通報を受けた際に救助要請が相次いでいて、すぐに救助に行けるような状況にない、そのようなことがあったことから、ツイッター上で救助を求める投稿が相次いだわけでございます。

 そこで、長野県庁では、十三日の朝から、急遽、台風十九号長野県被害、こういうハッシュタグをつけまして、ツイートを呼びかけました。六名の職員が専属でツイッター上の情報収集に当たりまして、職員が投稿した人と直接やりとりをするなどして、災害対策本部の被災情報を共有するシステムに入力をしてまいりました。この情報が消防や自衛隊にも当然伝わるわけでございまして、長野県によりますと、五十件の投稿が実際の救助につながったということであります。

 また、今回対応した六人の職員につきましても、こうしたSNSを通じての情報収集、提供を想定をして災害時の対応を行うことが災害時の所掌事務として定められていたということであります。

 本来は、むしろ情報提供ということを想定をしていたということでございますけれども、今回、災害時のSNSの活用について、これまでにない取組と成果を上げ、被災者の命を具体的に守ったという意味でも大いに評価をしたいと思いますし、また、こうした取組が今後広がっていくことを期待をしたいというふうに思います。

 また、兵庫県の神戸市や伊丹市などでは、防災チャットボットを活用した防災訓練が行われております。これは、LINEなどのSNSを通してAIが自律的に被災者とコミュニケーションをとり、対話の中から、安否確認や物資不足、被災情報などの災害関連情報を自動で抽出、集約をして、被災直後から数カ月先の避難生活まで継続をして被災者に必要な情報を自動で提供する、次世代の災害対応システムというふうに言われております。導入した自治体においては、被災状況の早期把握、救助活動や被災者への迅速な対応に役立つと好評を博しております。

 次に、また、台風十九号発生のときに、長野県、長野市では、被災者からの問合せに対しましてLINE上で二十四時間対応することができるチャットボットシステムを採用をいたしました。これは、定期的に行っている公明党の長野県議団とLINE株式会社との意見交換の際に出されましたアイデアでありまして、このチャットボットを私どもも応援をさせていただいた経過がございます。

 被災者は、このチャットボットシステムを通して、罹災証明の申請方法や避難所情報、生活再建資金の調達などの情報を簡単に得ることができます。私も利用しているのですが、特に長野市のアカウントは、スマートフォンを三回タップするだけで答えにたどり着くことができる、非常に使い勝手がよいものとなっております。

 今回、資料としてつけさせていただきましたけれども、これは実は、二ページ目ということになりますけれども、被災者支援が、一つタップするとこのような画面に行きまして、そして罹災証明の発行についてというような形で、具体的にここを押すと、実際にその罹災証明、必要な情報を得ることができるというような形になってございます。年配の方々でも利用しやすい設計になっているためで、長野市によりますと、利用者は四十代から六十代が多いそうであります。

 さらに、ちょっと裏面を見ていただきますとわかるのですが、下の時間別受信メッセージ数ということを見ていただきましたとおり、住民が情報を求める時間というのは、いわゆる市役所の職員が電話対応できないような夜遅く、深夜にまで及んでおります。したがって、これは、被災者が必要なときに必要な情報を得ることができるようになっている、このように考えるわけでございます。

 さらに、メッセージを受信した総数ですが、上に書いてありますとおり、一カ月で二十五万件を超えているということで、この二十五万件が、実際に災害の対応をしている行政の現場に電話が集中をしたということを考えたときに、この業務の負担軽減策としても非常に有効だというふうに考えます。

 このアカウントは、現在、百四十パターンのFAQで構築をされておりまして、若手職員が日々更新作業を行っているということであります。こうしたFAQ、当然のことながら、毎日のようにフェーズが変わるわけで、日々進化しておりまして、長野市によりますと、他の自治体でもこれをぜひ活用を今後していただければというようなことの中で、オープンデータ化も検討をしているそうであります。

 このような、今申し上げましたとおり、SNSを活用した、人を救援するような動き、あるいは、こうしたチャットボットを使って、ある意味人を介さずに災害情報を被災者に伝える動きというのが今回一つ出てきたということでありますけれども、こうした災害情報の迅速な情報収集、被災者に対する情報提供には、更に現在のこのチャットボットを進化させたAIチャットボットのような取組がもう一段必要であろう、こういうふうに考えるわけでございます。

 AI技術を用いることによりまして、より効果的かつ効率的な災害対応が可能となるものと考えますが、この点につきまして、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

竹本国務大臣 国民の生命と財産を守るため、限られた資源の中で最大限の災害対応を行うことが重要な課題であります。その実現のために、先生おっしゃるように、AI技術は極めて有効な手段だと思っております。

 内閣府におきましては、戦略的イノベーション創造プログラム、SIPにおいて、浸水範囲や道路の通行どめなどの各種災害関連情報を電子地図上に取りまとめて情報提供する防災情報共有システム、SIP4Dを開発いたしまして、既に災害対応の現場で活用がなされております。

 先般の台風被害におきましても、内閣府の職員が現場に行きましてこの方式を使いまして、結構役立ったというふうに報告を受けております。

 さらに、AI技術を活用した取組として、災害時に国民一人一人に対してスマホを通じて避難に必要な情報等を迅速かつ的確に提供するとともに、被災者等からの被災状況を収集、分析する、先生おっしゃっている防災チャットボットの開発を進めております。

 こうしたAIを活用した防災技術は、現在の災害対応を格段に進化させたものであると理解しておりまして、その実現のための研究開発に引き続き取り組んでいきたい、このように思っております。

 新しいこういったAIは、絶対に役立つものであるんですけれども、それが時として、何らかの障害で全く動かないというようなこともあり得るので、そういったこともないように、きちっとした対応をとっていかなきゃいけないなと思っております。

 私も、阪神・淡路大震災に神戸市内で遭ったんですけれども、携帯電話が全部ストップするんですね。タクシーもなし。それで、非常に困ったんですが、普通の、十円玉を入れる公衆電話が何回もかけたらやっと通じまして、被災地から大阪府へ歩いて逃げたというか避難したことがあります。

 ですから、日ごろ、携帯電話は必ず役立つから大丈夫だと思っていても、そういうこともあり得るんですよね。だから、そういうことで、AI、ロボットを活用した対策というのは非常に有効だと思いますが、更に研究を重ねていきたいなと思っております。

太田(昌)委員 大臣の経験に基づくお話もいただきまして、ありがとうございました。

 確かにそのとおり。私自身も、阪神大震災発災直後、地方自治体の災害担当として行かせていただきました。本当に、十円玉を握り締めて、三十分待って電話するというような状況も確かにございましたし、全く車が動かないという状況もございましたので。当時、まだ携帯電話が一般的でなかったような時代でも確かにあったと思います。

 ただ、一方で、今回のように、水害という、ある意味河川沿いの限定した災害というときにおいて、大変に大きな力を発揮したことも事実でございますので、今おっしゃっていただいた技術の推進、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 今おっしゃっていただきましたSIP4Dにつきまして、ちょっと、もう一つお伺いをしておきたいと思います。

 このSIP4Dですが、災害時の情報共有に際して、これまでは、被災自治体などが必要な情報を探して入手をして処理をしなければならなかったものを、複数の情報を一つのデータに統合をしてデータとして情報を提供するため、そのまま処理が可能となるとともに、利活用側が必要な形でのデータ提供が可能となりまして、情報共有の効率が大幅に向上するものであるというふうに私は認識をしています。

 このたびの台風十九号等による災害に際しまして、SIP4Dはどのように活用されたものか。とりわけ、災害時情報集約支援チーム、ISUTが長野に来ていただきまして、大変に力を発揮していただきました。この取組についてお伺いをしたいと思います。

小平政府参考人 お答えいたします。

 今先生おっしゃったように、SIP4Dのような、関係機関が持っている情報を集約、共有して状況認識を統一することは極めて重要であります。

 内閣府におきましては、このSIP4Dを使いまして、現地で災害情報を集約、地図化をして、関係機関に提供してございます。これをオペレートするチームとして、ISUTという現地派遣チームをことしから本格運用しておりますけれども、今回の台風十九号に際しましても、長野県であるとか福島県などにこのチームを派遣しまして、現地で、浸水等の被災箇所であるとか、開設避難所の情報を関係機関に提供してございます。

 長野におきましては、ワン・ナガノという災害廃棄物の処理プロジェクトが動いておりまして、長野市、自衛隊、関係する行政機関、住民、ボランティア、そういった方々が共同で町中にある災害廃棄物、勝手仮置場などと呼ばれている場合もありますけれども、それを除去する取組を進めています。

 日々ごみが除去されていきますので、日々状況が変わっていきますけれども、その情報をこのSIP4Dの上に載せることで、関係機関で情報共有をしながら、日々のオペレーションに役立ったということでございます。これらの情報提供によりまして非常にうまくいったというふうに思ってございます。

 今後とも、災害対応や訓練を通じまして、ISUTの機能向上に努めてまいりたいと思ってございます。

太田(昌)委員 小平審議官におかれましては、現地にいち早く来ていただきまして、陣頭指揮をとっていただきまして、本当にありがとうございました。

 今のISUT、私も地元長野県の危機管理監等々ともお話をさせていただきました。今、審議官からもワン・ナガノの取組について御紹介をいただきましたけれども、そうした情報のみならず、とりわけ発災当時の被災情報といいますか、水がどの程度つかっているかというような情報などもいち早く提供をする。

 あるいは、ワン・ナガノというのは、どこにどれだけごみがたまっていて、それをまずは、当然、被災者あるいはボランティアが集めて、それを今度は最終的には自衛隊がまた集積場に持っていっていただくというような形になるわけでございますけれども、そういう意味では、被災の状況を加味した中での、ルートまでしっかりと提供をすることができたというようなことの中で、今、割と新聞などで取り上げていただいているワン・ナガノなんという言葉も、現実にはこういったSIP4D、ISUTの御支援があってできていることというふうに思います。

 そういう意味では、本当に、これからも更にちょっとこれは精度を上げていただきたい、こんなふうに期待をしているところでもございます。

 最後に、ちょっと今後の取組についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほど、SIPにおける防災チャットボットの研究開発について御説明をいただくことができました。これは、国立研究開発法人情報通信研究機構が開発をしました対災害SNS情報分析システムが活用されているというふうに伺っております。SIPによって官民の力を結集をしまして、その成果が早期に社会実装されることを期待をしております。

 AIを活用した防災チャットボット、災害の急性期や復旧復興期にも活用が期待されるとともに、特に、危険性が事前に予測できる場合には、災害発生前のフェーズにも大いに役立つものというふうに考えられるわけであります。つまり、SIP4Dに集約されたさまざまな情報と防災チャットボットを連携することで、災害時の状況把握に一層役立つというふうに考えられます。

 例えば、SNSでどこどこで洪水が発生しているというような情報をキャッチする、それに対してSIP4Dの雨量データ解析等々を重ね合わせることで、救援や避難指示などの意思決定にこれは役立つものというふうに考えられます。

 SIP4Dを活用しつつ、防災チャットボットを利用することで、被災自治体でのさまざまな判断支援につながるものと考えますけれども、この点についての御見解をお伺いをしたいと思います。

松尾(泰)政府参考人 今委員御指摘のとおり、さまざまな手法で防災に取り組んでいく、これが必要だというふうに私どもとしても認識をしてございます。

 現在、研究開発を進めております、特に防災チャットボットでございますけれども、これは委員御指摘ありましたように、SNS上でAIが人間にかわって自動的に被災者と対話するシステムということでございます。

 現在、このチャットボットにつきましては、委員御指摘のとおりの開発でございますけれども、実際にそれがどう運用できるのかということも、先ほど大臣からもございましたけれども、実際使ってみるということが重要でございまして、今回も実災害適用させていただきました。

 そういった取組も含めて、さまざま実証させていただいて、その成果を反映するということが必要だと思ってございます。

 そういったことで、防災チャットボットが実用化された段階におきましては、収集された被害状況に関する情報をSIP4Dに集約をし提供する、そういったことも私どもとして必要だと考えてございまして、市町村の避難指示、勧告等の災害対応活動を効果的に支援するということで、引き続きしっかりと対応していきたいと思ってございます。

太田(昌)委員 どうもありがとうございました。

 被災自治体、とりわけ避難指示を出さなければいけない地方自治体、市町村長さんとお話をしますと、一様に、これは情報が欲しいというふうにおっしゃいます。そういうときの決断をするための必要な情報が必要だと。

 そういう中で、今おっしゃっていただきましたとおり、さまざまSIP4Dに集約されたような情報とチャットボットを連携することによりまして災害時の状況把握が進むこと、市町村長さんの、こうした皆様方の救援の指示あるいは避難指示、こうした意思決定に役立つように、どうか開発を進めていただきたいというふうに思います。

 また、そうしたデータを有効に活用するために、これは平常時の準備も必要だというふうに聞いております。基本的には、災害時の新たな情報というのは二割程度、それ以前の、当然、地域性であったりとか地域情報などをしっかりと入れておく、八割はその作業が重要だというふうにも言われております。

 このたびの被災地においては、改良復旧といって、もう一回同じ雨が降ったときにもう一回同じような災害が起きないようにというようなことの復旧を望んでおりますけれども、しかし、千曲川のような長大な川になりますと、河川改修に一定の時間がかかることも想定をされるわけでありまして、今まさに開発研究途上というふうには伺ったわけでございますけれども、どうか、準備が整ったものから順次、これは日常的な訓練として取り入れていただいて、被災地、あるいは被災者、あるいはそうしたところの自治体の安心につなげていただきたいというふうに御期待をしておきたいというふうに思います。

 きょうは、SNSを活用して実際に多くの人命が助けられていることや、チャットボットを活用することで実際に多くの行政の情報を被災者に届けることができたようなことも御紹介をさせていただきました。また、ISUTの皆さんの御支援で、先ほど事例も紹介していただきましたけれども、被災地の支援も、こうした新たな科学技術によって実際の動きも出ているということも御紹介をさせていただいたところでもあります。

 被災地では、いまだに多くの方々が避難所生活を余儀なくされているような状況でもございます。さまざまな皆様方が助けていただいている、そうしたことを感謝を申し上げながら、私自身の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

津村委員長 次に、吉良州司さん。

吉良委員 国民民主、そして立国社共同会派の吉良州司でございます。

 きょうは、大きく三つのテーマについて質問させていただきたいと思っています。一つは理論と実証ということについて、そして二番目は核融合技術、そして三番目は宇宙開発、この三つのテーマを取り上げさせていただきたいと思います。

 特に、核融合そして宇宙開発については、私自身の、なぜこの質問をするかという問題意識を最初に披露させていただきたいと思っていますけれども、核融合については、エネルギー安全保障という問題意識です。

 私ごとになりますけれども、私は、一九八〇年に社会人となりました。その前、四年間大学生活を送ったわけですけれども、一九七九年に第二次オイルショックがございました。ですから、私たちの就職のときというのは、物すごい採用数が限られている、そういう厳しい状況下でありました。

 もう一つは、一九七〇年代の半ばだったと思いますけれども、当時、ローマ・クラブという有識者の集まりがあって、彼らの報告で、その当時から数十年以内に化石燃料が枯渇するという衝撃的なショックがありまして、私なんかは、当時大学生で、仲間と勉強会をつくり、この資源小国というか、資源、特に化石燃料がない日本においてエネルギーをどう確保するんだ、そういう問題意識を持ち、勉強を重ね、また、それを第一線でやるために就職先は商社を選んだということであります。

 二つ目の、あと宇宙開発についてなぜ質問するかという問題意識は、今、国家的課題の最大のものは、人口減少、少子化、高齢化だというふうに思っています。そういう中にあって、日本を活力ある国であり続けさせるために大事なことというのは、当然ながら、子供たちへの教育、一に教育、二が教育、三、四も教育、五が教育だと思っていますけれども、同時に、その子供たちの頭脳によって日本が科学立国の道を歩むしかない、このように思っていまして、その中で、宇宙開発というのは科学技術の中でも日本を牽引する最たる分野であろう、こういう観点から宇宙開発についても取り上げさせてもらおうと思っています。

 まず、理論と実証ということについてお尋ねさせていただきます。

 まず、ことし四月十日ですけれども、物すごい、喜ばしいビッグニュースが入ってまいりました。それは、地球上の八つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクト、イベント・ホライズン・テレスコーププロジェクトというものによって、初めてブラックホールの画像が確認できた。

 今まで、巨大ブラックホールというものは理論上あるということは、もうある意味では定説となっていますけれども、それを現実に見ることができたという意味で、非常に大きな意義があるんだろうというふうに思っています。つまり、理論だったり仮説だったものが実証されたというふうに思っていますが、このイベント・ホライズン・テレスコープ国際協力プロジェクトの意義について、まずお聞きします。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 ブラックホールにつきましては、強い重力により近くの物質をのみ込み、光でさえ脱出できない暗黒の物体でございまして、アインシュタインの一般相対性理論からその存在が予言されてございましたが、これまで実際に、先生御指摘のとおり、画像を確認できておりませんでした。今回の成果は、撮影に史上初めて成功した画期的な研究成果と存じております。

 また、今回の観測は、御指摘のとおり、国際協力プロジェクトにより、世界六カ所、八つの望遠鏡を組み合わせて口径約一万キロに匹敵する仮想望遠鏡を構築した観測でございまして、日米欧が共同運用するALMA望遠鏡も参画をして観測精度の向上に貢献するとともに、国立天文台を始め多くの日本人研究者も観測や解析に参加し、重要な役割を果たしたところでございます。

 このように、国際協力で進める大型研究プロジェクトにつきましては、世界の最先端の技術や研究者の知識を結集し人類未踏の研究課題に挑むものでございまして、我が国の研究力向上や国際社会におけるプレゼンスの向上に大きな意義のあるものと考えておりまして、引き続き着実に推進してまいります。

吉良委員 詳細な説明、ありがとうございます。

 私自身も、仮想巨大望遠鏡をつくった、それは国際協力でしかなし得なかったという意義、それから、私自身が言いましたけれども、いろいろな意味で子供たちに夢を与える、日本人、大人にも夢を与えるという意味で、仮説だったり理論だったものが実際に確認できるという意義は非常に大きいというふうに思っています。

 ちょっと余談になりますけれども、今、ブラックホールについて、光すらゆがめる、飛び出せないというような発言がありました。科技特に集う委員の皆さんは、もしかしたらよく御存じなのかもしれませんけれども、私自身は、ブラックホールというのは、聞いてわかったようなわかっていないような、なかなか理解できていなかったんですけれども、ある文献を読んで、結構すとんとくる説明があったので、ちょっとだけ披露しておきます。

 日本もH2Aロケットとかを種子島から打ち上げますけれども、あれは、ロケットが上がるためには、地球の重力を振り切って上がっていく必要がある。そのときの速度、脱出速度といいますけれども、それは、地球の場合は秒速十一キロメートルないと脱出できない、それ以下だと重力に負けて落ちてしまう。太陽で実験するわけにいかないですけれども、太陽の場合は秒速六百十八キロメートルでなら脱出できる。

 これが、時々聞くと思いますけれども、太陽と同じ質量ながら、ぐっと、直径が二十キロメートルしかないような、中性子星と言われる、物すごく質量の重いその中性子星の場合は秒速十万キロメートル。それは、光速の約四〇%らしいんですけれども。そうやって、巨大な質量の星がどんどんどんどん小さくなると、それだけ重力が強くなっていく。

 今言ったように、太陽、中性子星、その極限がブラックホールになって、ブラックホールになると、光が秒速三十万キロメートル、その三十万キロメートル以上のものを引きつける力があるのがブラックホールで、結局、光ですら脱出できない。それだけの重力、引力を持つので、光すらゆがんでしまうということを聞いて、私も、ああ、その説明だったら何となくわかるなというふうに思った次第であります。

 ちょっと余談でありますけれども、面白いでしょう。(発言する者あり)失礼しました。余計な話でありました。

 ちなみに、太陽は、地球の質量の三十三万倍、体積でいうと百三十万倍ありますけれども、今回、さっき言った国際協力プロジェクトで確認された巨大ブラックホールというのは、地球から五千五百万光年離れているにもかかわらず、質量は太陽の六十五億倍だそうです。まさに天文学的数字で、もうぴんとこないぐらい巨大なブラックホールだったということであります。でも、五千五百万光年も離れたブラックホールを観測して、それを画像にできるという技術、すばらしいと思います。

 もう一点だけ、仮説、理論を実証することが可能なのか、それとも難しいのか、その辺についてお聞きしたいと思っています。

 今、太陽について言及しました。この後の核融合につながる話なんですけれども、太陽がなぜあれだけのエネルギーを発するかというのは、太陽の内部で核融合が行われている。太陽の場合は、水素原子四個がヘリウム原子一つになる。仮に水素原子一つの質量が二五とした場合に、それが四つ集まれば質量が一〇〇になるわけですけれども、それがヘリウム原子になるときに、実は、ヘリウム原子の質量は九九・三になる。つまり、〇・七質量は消失してしまう。けれども、それこそアインシュタインの質量とエネルギーの等価理論によって、その〇・七%分消滅した質量がエネルギーとなって、あの莫大なエネルギーを生じさせている。

 太陽が一秒間に発するエネルギーの量というのは、例えはよくないんですけれども、そういう文献で読んだものですから、広島型原爆の五兆個分、毎秒、それだけのエネルギーを出しているということであります。

 これも文献で読んだところでは、太陽は、今言ったように水素からヘリウムへの核融合だけれども、太陽の何倍も、また何十万倍も大きな質量の恒星になってくると、これがヘリウムから炭素へ、また今度、炭素から酸素へと、どんどんどんどん、より大きな物質、元素が生成されていって、最後は鉄が生成されて、核融合はそれ以上は起こらないというふうに聞きました。

 一つ、さっき言った、核融合の場合に、水素からヘリウムというのは、〇・七%の質量が消失することによってエネルギーが生じるということでありますけれども、これがさっき言った、ヘリウムから炭素へとか、炭素から酸素へというような核融合が起こった場合も、同じように〇・七%の質量が消失してエネルギーが生まれるのか、それとも違う質量の消失というのがあるのか。また、それが理論上そうなのか、それは何らかの形で実証されているのか。そこについてお聞きしたいと思います。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、太陽より大きな質量を持つ恒星で、炭素から鉄までの間の原子番号を持つ元素を発生する核融合が起こることは、恒星の観測、加速器を用いてごくわずかな原子核反応を発生させる実験及び理論により証明されていると承知しております。

 しかしながら、恒星の環境を地球上で再現できないことなどから、恒星内で起こります炭素から鉄までの元素が段階的に核融合により発生していくことを実験で確認することは不可能でございます。

 また、このような核融合につきましては、先生御指摘の、今、〇・七%というお話がございましたが、その質量変化の割合は元素ごとに異なるということでございまして、質量の変化に応じたエネルギーの発生又は吸収が起こることは理論的に証明されておりますが、〇・七%に当たる質量の変化は元素によって違うということだそうでございまして、そのうちで実験的に確認されている元素もあるというふうに聞いております。

吉良委員 ありがとうございます。

 一部、恒星そのものを再現することはできないけれども、ある意味では似たような環境をつくることによって実証されているということでありました。

 先ほどのブラックホールを仮説、理論から実証ということがあって、さっき言った、喝采を浴びたわけですけれども、国として、こういう、ある意味では理論なんだけれども、これを実証することによって更に科学が進んでいく、又は、ある意味では日本の産業等につながっていくというような形で、理論を実証へというような、特別な、国としての、こういう分野を理論から実証へというような方針があるのか、その辺について伺わせてください。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生お尋ねの点につきましては、例えば、先生がこれから御質問をいただけるという核融合については、まさに、もともと理論があって、こういうことでできるのではないかという理論がございまして、それを実際に工学的に、あるいは科学的にこれから実証していこうというような段階でございまして、そういったものも一つの例かと存じます。

吉良委員 ありがとうございます。

 この件で、それこそ、文科の多分技官の人たちだと思いますけれども、レクをしていたときに、いろいろな理論から実証へというのは、国からこうしろああしろではなくて、各研究者が自分なりの、自分なりというか自分の関心の深いところを執念でもって研究して、ボトムアップで成果につながっていくものだということがありました。

 おとといか、吉野先生の訪問ではないですけれども、より基礎研究が制約なく自由に行えるように、ぜひ予算面の増額と、それから若手研究者が自由に研究できる環境をぜひつくっていただきたいと思います。

竹本国務大臣 科学技術を発展させる基盤は、何といっても、若手研究者の待遇がどうなっているかにかかっていると思います。

 実は、この間、吉野先生と、安倍総理が一緒だったんですけれども、お会いしましたときに、吉野先生は「ロウソクの科学」という本を小学校時代に読んだと。安倍総理も読んだとおっしゃっていまして、実は私、読んでいないんですが、読みたいから探してきてくれと言ったんですが。

 幼いときに科学の心を植え付けておくことがやはり絶対に必要だ、科学的に物を考えるという思考方法、それを身につけることが絶対に必要だろうと思っております。

 そこで、「はやぶさ」あるいは「はやぶさ2」に代表される宇宙開発、宇宙探査というチャレンジは、国民、特に青少年に夢を与えるのは間違いありません。科学技術への関心を高めるものであると我々は考えておりまして、今申し上げました「ロウソクの科学」なんかも、そういった刺激を与えるという意味では必要かなと思います。

 政府においては、宇宙基本計画、これは平成二十八年四月閣議決定でございますけれども、十年間計画です。これにおいては、宇宙に関する国民的な関心を高め、次世代を担う人材の裾野拡大に幅広く貢献するため、小中学校等における体験型の教育機会の提供等、宇宙教育を始めとしたさまざまな取組を進めることとしております。

 今後とも、もちろん関係省庁と連携をした上で、必要な取組をしっかりしていきたいですけれども、やはり、三つ子の魂百までもと言いますけれども、本当に科学の心を幼少期に植え付けることが非常に基本的に必要だろうと思っています。

吉良委員 ありがとうございます。

 宇宙のところでそのようなやりとりも行わせていただきたいなと思っていますけれども、前もって宇宙についても答弁いただきました。

 続いて、核融合についてなんですけれども、先ほど言いました、やはり、資源小国というか、資源のない日本において、ある意味では地球に太陽をという夢の技術でありますけれども、核融合技術の現状と見通し、そして、その中の核融合発電の実用化についてのめどと課題ということについて答弁いただければなと思います。その際、核融合の安全性等についても少し触れていただければと思います。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 核融合エネルギーは、燃料となる水素が豊富に存在すること、また、固有の安全性、このことにつきましては後ほど触れさせていただきますが、また、高い環境安全性を有するといった特徴を有しておりまして、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する将来のエネルギー源ということで期待がされてございます。

 現状といたしましては、核融合に必要な炉心プラズマ性能に進展が見られるなど、核融合研究開発は着実に進展していると承知しております。

 一方で、実用化に向けた課題といたしましては、核融合反応に必要な高温のプラズマを長時間安定に制御する方法の開発ですとか、炉内で生じる中性子の照射に耐えて放射化しにくい材料の開発などの技術的課題が挙げられます。

 このため、文部科学省といたしましては、世界七カ国の国際協力により、ITER計画を進めております。また、日欧でITER計画の補完、支援や、核融合原型炉のための技術基盤の確立を目的とします幅広いアプローチ活動等を進めております。

 今後、ITER計画により、科学的、技術的実現可能性を確認をいたしました上で、二〇三〇年代に原型炉への移行判断をいたしまして、今世紀中葉までに実用化の目途を得るべく、研究開発を進めてまいりたいと思っております。

 固有の安全性につきましては、燃料の供給や電源を停止をいたしますと、核融合反応が速やかに停止されるというようなことがございますし、高い環境安全性ということでは、発電の過程において、温暖化の原因となる二酸化炭素を発生しないとか、あるいは高レベル放射性廃棄物が出てこない、そういった点が挙げられると思います。

吉良委員 ありがとうございます。

 今答弁いただいたように、同じ核といっても、既存原子力発電というのは、核分裂ということで、特に日本の場合は、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、国民に非常に大きな不安、懸念があるという中で、そういった安全性について、やはりきちっと国民に説明、周知しながらこの計画を進めていっていただきたいというふうに思っています。

 同時に、吉野先生のところに訪ねて、吉野先生のリチウム電池というのは、この先普及していくだろうし、普及させていかなければいけない再生エネルギー。その際に、やはり、蓄電池が経済性を持つもの、つまり、大型化しても安くつくられなければなかなか実用に供せられない、経済性を持った実用にという意味ですけれども、供せられないと思っていますので、一方ではそういう蓄電池の経済性を高めていくということをやりながら、再生可能エネルギーを普及させていく。

 また、その延長で、電気自動車は電気で走るんだけれども、通常は、自宅でプラグをつないでおけばそこが事実上の蓄電池になるといったような、スマート社会、こういうものと組み合わせながら、脱化石燃料、昨日も、昨年のCO2排出量が最大になったというレポートがございましたけれども、環境対策としても再生可能エネルギーを進めていかなければいけない。それは蓄電池とセット。

 ただし、同時に、ある意味では、日本のこの生活水準を支えていくときに、やはり、お日様任せ、風任せというのではなくて、それと、すぐには化石燃料依存という体質はなくなりませんので、そういう意味では、日本のエネルギー安全保障という観点から、どうしても私は外に、海外に原料を依存しないエネルギー源をきっちりと日本で持っておくということが大事だと思っていますので、引き続いてこの核融合について研究を重ね、一刻も早く実用化していただきたいということをお願いいたします。

 続いて、宇宙開発についてであります。

 まず、「はやぶさ」プロジェクトの意義。「はやぶさ」プロジェクトというからには1と2と両方あわせていますけれども、この意義について伺います。

千原政府参考人 お答え申し上げます。

 小惑星探査機「はやぶさ」及び「はやぶさ2」プロジェクトは、我が国が世界に先駆けて、小惑星から試料を採取し、地球へ持ち帰るサンプルリターンを目的とするプロジェクトでございます。

 まず、二〇〇三年に打ち上げられました初代「はやぶさ」につきましては、岩石質の小惑星イトカワの探査を行いまして、世界で初めて月以外の天体からサンプルを地球へ持ち帰ることに成功し、小惑星の微粒子の分析による科学的成果の創出、あるいはサンプルリターン探査技術の実証にも貢献し、宇宙探査の可能性を大きく広げたと認識しております。

 また、二〇一四年に打ち上げられました「はやぶさ2」でございますが、これは、水や有機物を含む小惑星リュウグウの探査を目的といたしまして、初代「はやぶさ」で培われた技術、経験を生かしまして、機器や装置の改良により探査機の機能が向上した結果、世界で初めて小惑星に人工のクレーターを形成するとともに、複数地点でのサンプル採取にも成功したと見られているところでございます。

 二機の運用で、原始太陽系における鉱物、水、有機物の相互作用を解明して太陽系や生命起源の謎に迫るサンプル採取など科学的にも貴重な成果を上げるとともに、我が国の惑星探査技術の高さを内外に示し、さらには、多くの若者や、さらに子供を含めて、国民に夢や希望を与えることにつながったというふうに考えております。

 「はやぶさ2」は、先月、リュウグウを出発いたしまして、来年十二月ごろに地球へ帰還する予定でございますが、太陽系や生命起源の謎に迫る貴重なサンプルとともに無事に地球に帰還して、新たな知見が獲得されることを期待しております。

 以上でございます。

吉良委員 ありがとうございます。非常に的確な説明をいただきました。

 やはり「はやぶさ」1も2も、本当に国民が歓喜し、子供たちに夢を与えたと思います。1はある意味で満身創痍で、もうだめかと思われるところから本当に見事帰還してくれたということと、その失敗というか反省を生かして、「はやぶさ2」は、一回タッチダウンをおくらせたというのがありますけれども、あれ自体賢明な判断で、今度はもう成功に続く成功ということで、無事の帰還を祈っているところであります。

 一つお願いがありまして、今、私も言いましたけれども、国民に夢を与えるということと、日本の科学技術、宇宙開発、探査技術のすばらしさをやはり世界じゅうに知ってもらいたい、世界じゅうからすばらしい技術者を日本に呼び寄せたい、そういう思いもあって、ぜひ、「はやぶさ2」が帰還をするとき、全世界に、「はやぶさ1」の物語とともに、ある意味ではドキュメンタリーもつくって放映してほしい。

 特に山場は、大気への突入、そして最後、サンプルを落下させるところだと思いますけれども、一番絵になるのは大気圏突入のところでありますが、そこを全世界に発信する。それで、国民にもう一回、自分たちは頑張ればできるという思いを持たせると同時に、世界に日本の技術のすばらしさ、そして子供たちに夢を与える、ぜひそのことをやっていただきたいと思っています。

 最後になりますけれども、私自身は、この宇宙というもの、先ほど竹本大臣が言っていただいたように、子供たちがもう本当に小さいころから宇宙に関心を持つ、科学に関心を持つ、一番身近な分野ではないかなというふうに思っています。

 私の問題意識として、科学技術というのは、軍事、宇宙、原子力、そして生命科学、この頂が高ければ高いほど裾野が広くなって、国全体の科学技術の底上げができるというふうに思っています。

 ただ、日本の場合は、軍事というものは基本的にはタブーだし、そして原子力というのは、先ほど言いました事故の影響でなかなか国民の理解も得られなくなっているし、原子力人材というのも少なくなってしまっている。そういう中にあって、子供たちに科学への関心を持ってもらう、そのために、「はやぶさ」の物語、成功物語を含めて、やはり宇宙というものに関心を持ってもらうことで日本の子供たちの宇宙そして科学技術全般への関心を深めてもらう、そして科学技術立国へ向かう、これが大事だというふうに思っています。

 そこで提案なんですけれども、私、五年半アメリカに駐在していまして、子供が小学校に行っているときに、いろいろなおもしろい経験をさせてもらいました。その中の一つが宇宙週間、スペースウイークというのが二週間ぐらいあるんですね。そのスペースウイークがあるときというのは、子供たちに宇宙だとか宇宙人だとか、そういう絵を描かせて、その中で一人だけ選ばれた絵を、みんながそのTシャツを着て二週間過ごすんです。と同時に、初日には宇宙飛行士が来ます。二週間は宇宙漬けです、宇宙、宇宙、宇宙。

 こういうことからアメリカは科学技術に対しての子供たちの関心も高いし、NASAがあれだけの頂になる素地も、私はそこにあると思っているんです。

 ある意味、日本においてもスペースウイークみたいなものを設けて、同級生と話せば、小学校のとき、宇宙週間のときこうだった、ああだったよな、中学のときこうだったよなと、誰もが共通の経験として持つような、そういう期間を設けて、子供たちが宇宙、科学へ関心を持つように導いていただきたいと思っていますし、それが、先ほど冒頭で言いました人口減少、少子高齢化の中で、日本が科学技術立国として今の生活水準を維持する、また向上させる唯一の道だと思っています。

 最後に短く、このことについて、先ほどかなり答弁いただきましたけれども、簡潔に答弁いただければと思います。

竹本国務大臣 先生おっしゃるとおりでありまして、要は、幼少期に科学の心を教え込んでおくということ。考えてみますと、岸信介政権のときには徹底した理科教育をやりました。あれがあったから、要するに、理系をやらないと人でないとは言わないけれども、そんな雰囲気だったんですね、僕らが幼いときは。だけれども、それがもとにあったから、後の池田内閣で高度成長を果たしましたけれども、それを支える人たちがいたんだと思いますね。

 台湾も非常に今、工業国としてすごく元気ですけれども、やはり技術者を物すごく、工業専門学校のような生徒がたくさんいますね。それが社会を支えているんだと思います。

 そして、最後に、科学する心で何か発明、発見しようと思うと、それにはリスクが伴います。そのときに、それを補ってもらうというか、受け手がいないといけない。例えば、アメリカの場合はNASAというのがあって、そこで何かやろうとすると、失敗しても、またもう一回、あるいは別のことをやってもらうと。要するに、失敗しようが、自己責任をとらなくても、費用を負担しなくてもいいというような仕組みができているんですね。

 日本は、JAXAはありますけれども、まだそこまではいっていない。だから、挑戦する人を支えるような社会体制が必要だと思っています。

 いずれにしろ、心なくして発展はありませんから、教育が一番大事だと思っています。

吉良委員 かつては、末は博士か大臣かと言われましたけれども、竹本大臣には申しわけないですが、これからは、末は博士と博士と博士だというような国づくりが必要だということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

津村委員長 次に、早稲田夕季さん。

早稲田委員 おはようございます。立国社の早稲田夕季でございます。

 先般、当委員会におきまして、二十五日、旭化成株式会社本社を訪問させていただき、視察の後に、ノーベル賞を受賞されました吉野彰博士と意見交換をさせていただく大変貴重な機会をいただくことができましたことに改めて感謝を申し上げる次第でございます。

 吉野先生は、ノーベル賞受賞の理由について、リチウムイオン電池の開発がモバイルIT社会に大きく貢献をしたということと、それに加えて、持続可能なスマート社会への期待感であったということをおっしゃっておられました。そして、さらに、積極的に地球環境問題に取り組むことこそ、解決をしていくことこそ、日本の新しいビジネスチャンスと捉えるべきだという示唆に富んだ御提言もいただきました。

 こうしたことを踏まえまして、私も質問をさせていただきます。

 まず、科学技術イノベーション政策についてでございますが、竹本担当大臣もこちらは所信の中で述べておられます。そして、さきに、六月の方で閣議決定をされております統合イノベーション戦略二〇一九の中には、破壊的イノベーションによる格差と分断、将来に対する不安、プライバシーの侵害などの無秩序なデジタル化がもたらす不信感、AIや遺伝子操作などによる雇用や差別、人間の尊厳への深刻な影響などについてが書かれているわけでございますが、これについては所信の中では触れられていなかったと思いますが、竹本大臣として、この点について、負の側面においての配慮、それからまた対策、ルールづくりについてどのような御所見をお持ちか、お尋ねいたします。

竹本国務大臣 本年六月に閣議決定されました統合イノベーション戦略二〇一九にもありますとおり、科学技術イノベーションの急速な発展に伴い、今先生おっしゃったように、格差と分断、デジタルデバイドが必ず生じますし、デジタル化への不信感も一方にあります。また、科学技術全体への不安の増大、地球環境の持続可能性への懸念、こういった課題が顕在化、既にしております。こうした問題意識から、AIなどの新しい技術の研究開発に当たっては、新たな時代の社会や倫理のあり方に関する検討もあわせ行っているところでございます。

 このような検討の重要性はますます高まると認識しておりまして、今後、法学、社会学、哲学等の人文科学の知見を活用してより一層の取組を進めてまいりたいと考えているわけでございますが、いずれにいたしましても、便利な反面、効率化される反面、それに取り残される人たちが必ず生じてくるのは事実であります。ですから、それを、その格差をできるだけ生じさせないために、優しい対応が絶対必要だと思っておりまして、そういうことを含めて、総合的に社会全体が幸せに一歩でも近づくというような心構えでやっていくことが大事かなというふうに思っております。

 AIのすばらしさばかりが喧伝される時代ではありますけれども、それが全体に対してどのように対応できるか、慎重に見きわめながら対応していきたいと思っています。

早稲田委員 大臣から大変心強い御答弁を頂戴いたしました。

 まさに国民はそういうところに不信感なり不安を抱いているのだと思います。ですから、おっしゃったとおり、社会全体が幸せになるような、そういう方向でこの技術革命についても両輪で取り組んでいかれるということ、大変受けとめさせていただきました。

 そこで、一つの事例ではございますが、今、超党派議連が取り組んでおりますデジタル推進法案についてでありますが、高度情報通信ネットワーク社会の形成に当たり、新たな事業の創出や産業構造革命の推進がうたわれているわけでございます。一方で、ライドシェア事業のように、利用者の安全、ドライバーの雇用の問題が厳しく指摘もされているところでございます。この事業については、戦略二〇一九が懸念をする格差と分断を生むことがないように、政府としても慎重に御対応いただきたいと私は考えております。

 これは通告をしておりませんけれども、大臣の所感をお願いいたします。

竹本国務大臣 先生御指摘のとおりでございまして、今後、科学技術基本計画を検討する中で、いわゆる人文科学、いわゆる文科系ですね、そういった科学も取り入れた上で、総合的にどういう体制をとるかを考えていかなきゃいけない、そういう基本方針を心構えとして持っておりますので、これからそういう方向で進めてまいります。

 いずれにしろ、取り残される人ができるだけ生じないように対応するのが当然だと思っています。

早稲田委員 通告なしで申しわけございませんでしたが、御答弁をいただきました。

 まさに、取り残されない、それからまた、この件につきましては、議連の方でも先生も有力メンバーとしてかかわっていらっしゃると承っておりますので、事故のときの責任の所在が不明確だとか、いろいろ懸念がございますので、こちらについては大臣がリーダーシップをとっていただいて、いい形になるようにぜひ進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 次に、SDGsの実施方針の改定について外務省に伺いたいと思います。

 これは、SDGs達成のための科学技術イノベーションの推進を掲げているわけですけれども、この中に、イノベーションが世界で直面しているさまざま、先ほど大臣にも述べていただきましたような巨大なリスクが一方でございます。これを放置してイノベーションだけを発展させれば、それはやはり分断それから格差を生じてしまうということは、もう自明の理でありまして、それについてでありますけれども、現在改定中のSDGsの実施方針においては、ソサエティー五・〇の推進が、単に経済成長戦略という言葉で書かれておりますが、ここは私は非常に疑問を抱いております。

 経済成長戦略、つまり、経済発展と社会的課題の解決を両立するというのがソサエティー五・〇であるはずで、外務省としても、このSDGsの改定指針につきましては、そこをきちんと明記をしていただき、やはり本気度をあらわしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中谷大臣政務官 SDGs実施指針は、二〇一六年のSDGs推進本部にて決定をされたSDGsを推進するための中長期的な国家戦略であり、国内外の最新の動向を踏まえ、本年十二月、SDGs推進本部において改定をされる予定であります。

 ソサエティー五・〇は、従来からの日本のSDGsモデルの三本柱の一つとして位置づけております。また、先生御指摘の実施指針改定骨子には、「二〇三〇年までのSDGs達成に向けて、官民が共有する国家戦略であり、」というふうにも書かせていただいているところであります。

 二〇一六年一月に閣議決定された科学技術基本計画では、ソサエティー五・〇を仮想空間と現実空間の高度な融合により人々に豊かさをもたらす社会と定義し、これを世界に先駆けて実現することで経済発展と社会的課題の解決を目指しております。先生御指摘の点も踏まえます。

 また、パブリックコメントにおいて提出された御意見もまた更に踏まえ、市民社会を始めとするさまざまなステークホルダーからの御意見にも耳を傾けながら、十二月のSDGs推進本部に向けて実施指針の改定作業を進めてまいりたいというふうに考えているところであります。

早稲田委員 このことにつきましては、そういう気持ちだというお考えはわかりますけれども、こちらに明記をしていただかないと、大変これは、重要な両輪の一つが抜けてしまいますと、まさにそのソサエティー五・〇の基盤も揺らぐことになりかねません。

 ですから、こちらのところはきちんと明記をいただくように、これは閣内でも一致している意見でございましょうから、やっていただきたいと思います。

 そしてまた、更に言えば、これは要望でございますが、この中の、モデルの確立に向けた八つの優先課題の中に、貧困、格差の是正というものが入らなくなりました。これもおかしいのではないかと私は思っています。「あらゆる人々が活躍する社会の実現」という言葉は入っておりますが、これでは非常に、オブラートにくるんだような、政府の本気度が試される文言になっておりますから、もっとしっかりと明記をしていただきまして、しっかりとこの経済発展と社会的課題の解決ということを強く打ち出していただくことを要望いたします。

 次の質問に移ります。

 先ほど来出ております、大臣からも、基礎研究が大変重要なんだという御答弁が何度もございました。私は、このことについては、運営費交付金について伺ってまいりたいと思います。

 ここ数年は、何とか前年度レベルを維持しているわけですけれども、この十五年間で千四百億円が削減をされております。この中で、業務量としては、エビデンスの業務報告であるとか、そういうことに莫大な時間を割かれるという中で、事務補助員を雇うこともできない、また、研究者の労働環境も悪くなっている、そういうことが、日本の、科学立国を目指す中で非常にマイナスになっているのではないかと思っております。

 このことについて、予算につきましても、しっかりとこの基礎研究を推進をするという立場で、削減をしないで充実していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

竹本国務大臣 基礎的経費の主要な出し先であります国立大学法人運営交付金でございますけれども、国立大学関係者から拡充を求める意見があることについては十分承知いたしております。

 確かに、最近まで千四百億円減少されたというのは事実でございますが、最近は減っていない、自慢できないんですけれども、減っていない、こういう状況であります。

 一方で、運営交付金は、国立大学法人化以降、減少傾向に、今申し上げたように、あったんですけれども、何とか同程度の額は確保されておりますが、私の仕事の一つは、科学技術予算をできるだけ多く獲得するのも自分の仕事だと思っておりますので、これからの予算要望についてはきっちりと努めていきたいと思っております。

 科学技術基本計画における政府研究開発投資の目標の達成は常に努力が必要でございまして、運営費交付金以外の、科研費とかいろいろございますけれども、あらゆる項目の科学研究関係の予算をふやしていきたい、このように思っております。

 今後とも、したがいまして、科学技術基本計画に基づきまして、大学等における研究活動を安定的、継続的に支える基盤的経費と、それから、今申し上げました、すぐれた研究や目的を特定した研究等を支援する公募型資金のバランスに配慮しながら、大学における外部資金獲得等の経営基盤の強化や資金の効果的、効率的な活用を促すことにより、安定的な研究環境の確保に向けて取り組んでまいりたいと思います。

 以上です。

早稲田委員 今お答えいただきましたが、科研費も、もちろん競争的資金も、ある意味大事ではありますけれども、その基盤となる基礎研究につきましては、運営費交付金、しっかりと予算要求をしていくと大臣からも御答弁いただきましたので、お願いをしたいと思います。

 もう一点、ポスドク問題でございます。

 某大学の大学院進学者アンケートによりますと、進学理由は、研究を続けたい、就職に有利であるからというのがトップに挙がっておりますが、企業の多くが博士課程よりも修士課程卒業者を優先的に採用しているという事実もございます。そして、博士課程の方が、給与がなかなか見合わない、そして、給与の問題もありますし、そうしたことで、本当に博士課程に進むべきかということで大変悩まれる。そしてまた博士の方が、ドクターが非常に少なくなっているという現状がございます。

 その中で、政府としてもいろいろそれをバックアップしていただいている施策はありますけれども、企業のこうした姿勢、なるべく、博士、ドクターよりは修士の方の方が採用しやすいというような、そうした企業姿勢をやはり少し改善していただきたいと思うわけですけれども、大臣としては、このことについてどのようにお考えであり、また、取組を進めていかれようとされておりますでしょうか。

竹本国務大臣 研究力強化のため、創造性豊かな若手研究者の育成、確保、優秀な研究者が安心して研究に打ち込める環境の整備が、先生おっしゃるように必要でございます。

 要は、研究者であることが非常に魅力あることだというふうな状態に持っていくことが大事であります。

 このため、十一月十一日の総合科学技術・イノベーション会議でも述べたとおり、研究環境の抜本的強化、研究時間の確保、多様なキャリアパスを実現し、研究者の魅力を高めていくことが必要でございます。

 こうした目標を達成すべく、年内を目途に研究力強化・若手研究者支援総合パッケージを策定しておりますが、この中で、優秀な研究者のポストの確保や表彰、自由な発想による挑戦的研究を支援する仕組み等の具体的な施策を検討してまいる所存であります。

 要は、今先生おっしゃったとおり、ポスドクの方は、大学あるいは研究所においては期間が限定された雇用であるということ、五年とか十年とか非常に安定をしない、それから、待遇が必ずしもよくない、そして、官庁等への手続等で膨大な時間を食われている、研究時間は全作業時間のうちの半分にいかない、こういう状況であります。これではなかなか研究に打ち込めない状況、これも変えていかなきゃならない。

 それから、企業が修士の方を好むというのは、何でも使えるようにという漠とした期待があるからなんですが、世の中、これだけ高度に速く専門化してきますと、その分野のドクターというのは絶対必要なんですよね、企業にとっても。そういうメンタリティーの変革ということも大事かなというふうに思っております。

 いずれにしろ、外国ではやはりドクターを取っている人が社会で通じているわけですから、我々は世界と競争するわけですから、だから、ドクターを取ることが就職上不利になるというようなばかげたことはできるだけないようにしていく必要があろうかと思っております。

 いずれにしろ、資金面、あるいは研究費の面、あるいは将来のキャリアパスの可能性の面、こういった面において、研究者であることが、非常に、何というか、楽しいというか、社会からリスペクトを受けている、こういう状態に持っていく必要が絶対にあると思っております。それは国立の研究機関あるいは民間の企業に限らず、そういうことが必要だろうと思っております。

早稲田委員 ありがとうございます。

 研究者が尊敬される、そういう社会であるためには、やはりその方たちが、とにかく自分たちの研究をやるんだという強い意思で働ける、そういう職場環境をつくっていただくために、企業もそれから政府も協力をしてやっていかなければならないと思います。

 特に、基礎研究につきましては、先日も吉野彰博士もおっしゃっておりました。基礎研究というのは、百人で一人芽が出るか出ないかだ、そしてまた息の長い研究であるから、そこに効果を求めてはいけないし、また一方では、役に立つ、目標を持った研究をする人、これをしっかり分けていく、これが必要なのではないかというお話、これが今、大学でどのくらい、この二つを分けて、中途半端にならないようにしていくかということも課題ではないかというお話がございました。

 私たちも、基礎研究をぜひ進める、進めてほしいという立場で、競争的資金の獲得も一つはいいでしょうけれども、これに、獲得のために研究者が疲弊をしてしまうようなことがあってはならないと思います。ぜひ長い目で、この基礎研究を拡充できるような、こうした施策を更に進めていただくよう要望をいたします。

 次に、京大のiPS細胞研究所、CiRAへのiPS研究予算について伺います。

 これは報道でございますが、十一月十一日、日本記者クラブでの山中伸弥所長の報道がございました。報道によれば、拒絶反応が起きにくい再生医療を目指してiPS細胞を備蓄するストック事業への国の支援を減額する話が持ち上がっているということで、大変寝耳に水と。事業を手がけてきた京都大学の山中所長は理不尽だとして支援の継続それからまた明確な説明を求めていると書かれております。このことについては、内閣官房の当時の幹部が八月に山中所長を訪問し、突然、来年度からいきなりゼロにするという話があったと。大変激怒をされている状況が、この報道からもわかります。この事業の継続性という意味においても、研究の振興という意味についても、大変これは無謀であるのではないかと私も素人ながら思うわけです。

 そのときに、そもそもこの研究費は、二〇一三年一月十一日に、安倍総理みずから、十年間で千百億円の支援をするということをお決めになりました。であるならば、国は最後まで責任を持って、来年度も今年度と同様に二十七億円を支援すべきではないか、これが一点でございます。

 それからもう一つ、配付資料させていただきました。自民党案の配付資料でございますが、来年度から減額していき、二〇二三年度には支援をゼロにするような案も検討されているようでありますが、約束をしている、当初きちんと約束をされた二〇二二年度まではしっかりと支援をし、そして二三年度以降については透明性のある議論の中で検討をしていくべきと考えますが、文科省に伺います。

青山大臣政務官 お答えいたします。

 iPS細胞研究に対する支援は、二〇一二年の、先ほどお話がありました山中先生のノーベル賞受賞を契機として、総理の発言を受け、政府として十年間で一千百億円の支援を行うという方針を決め、これまで取り組んでおります。現在、二〇二〇年度概算要求についても、前年同額で概算要求をいたしております。

 京都大学iPS細胞研究所、CiRAへの支援のうち、iPS細胞ストック事業については、将来的な支援方策を含む今後のあり方に関して、内閣官房が中心となって、関係府省と相談しながら検討しているところでございます。

 iPS細胞は、我が国発のすばらしい技術です。二〇二三年度以降の支援については、この十年間の成果や研究分野の最新動向も踏まえ、検討予定でございます。

 文部科学省としては、引き続き着実な支援を行い、iPS細胞を活用した再生医療がいち早く国民に届くよう努めてまいります。

早稲田委員 今の御答弁を伺いますと、そもそもなぜこのようなことになっているのか大変疑問でございますが、御説明いただけますでしょうか。なぜこのような記事が出て、山中所長が怒っていらっしゃるのか。火のないところに煙は立たないわけですから、ぜひ教えていただきたいと思います。

青山大臣政務官 報道の件に関しましては、文科省としては承知をしていないところでございまして、内閣官房のことでございますので、お答えする立場にございません。差し控えさせていただきます。

早稲田委員 文科省としては承知をしていらっしゃらないと。では、報道は見られたわけですよね。それでびっくりされたということでしょうか。はい。じゃ、そのように、うなずいていらっしゃいますので、理解をいたしますとしても、では、内閣官房、どうなんでしょうか。このことについて、そもそもどうしてこういうことが出たのかということを教えていただきたいと思います。

渡邉(そ)政府参考人 お答えいたします。

 医療分野の研究開発を推進するということを、関係府省と協力して、内閣官房健康・医療戦略室の方で進めているところでございますが、このような研究開発を推進するに当たりましては、私ども、研究の現場の皆様の意見をよくお聞きしながら、最近の取組や直面している課題についてお伺いをしながら、これを進めているところでございます。

 そうした趣旨で検討を進めている段階のところでございまして、私どもとしても、御指摘のところに関しましては、まだ検討途上のことでございますので、記事の内容に関しましては承知をしていないというところでございます。

 いずれにしましても、関係省庁一致しまして推進をしていくという方針に違いはございません。

早稲田委員 ちょっとおかしいんじゃないでしょうか。文科省は御存じないとおっしゃっている、その中で関係省庁と話をしているというのは、非常に矛盾ではないですか。

 大臣、手を挙げておられたので、お答えいただけるのでしょうか。

竹本国務大臣 文科省の答えられたとおりでありまして、私の、内閣府の立場としては、それを含めて全体的に総合調整をしながら対応を図っているところであります。

 先生おっしゃったように、政府が一旦約束したことはきちっと守るというのが政府の姿勢であることは当然であります。

早稲田委員 文科省のことも含めてとおっしゃいましたけれども、文科省は承知をしていない、だけれども検討はいろいろしているということでは、なかなか説明が理解できません。そして、透明性な議論の中でそれをやっていただかないと。

 じゃ、何かこれを議題として議論された会議があったんでしょうか。

渡邉(そ)政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明いたしましたとおり、ふだんから関係の皆様と必要な予算を含めた議論を継続しているところでございまして、そういった内容、具体的なところにつきましては、現在調整中でございますので、詳細な御説明は控えさせていただきますが、いずれにしましても、iPSを活用した再生医療がいち早く国民に届くように進めていく姿勢に変わりはございません。

早稲田委員 ちょっとよくわかりません、理解ができません。関係省庁でと言いながら、知らないと言っている府省もあるわけですから、それはちょっとお答えにならないのではないかと思いますが。

 では、山中所長が勝手にこういう会見をされた、そういうことでしょうか。

渡邉(そ)政府参考人 記者会見の詳細については、私どもも詳細を承知しているところではございませんが、もともと、記者クラブの五十周年の講演会の記念の折に、iPS細胞のこれまでの取組について山中所長が御講演され、その中で、今後とも力強い支援が必要だということを訴えられたのだというふうに仄聞いたしております。

早稲田委員 それでは答えになりません。

 山中所長が講演をされたこと、これを承知していない、まあ、もう報道ではごらんになったんでしょうけれども、その中身を確認するわけでもなく、承知をしていないけれども府省で検討しているというのは、では、山中所長は蚊帳の外なんですか。そういうことになります。大変これは問題です。千百億円も総理の案件でつけていながら、なぜ、それが突然こういう形で、山中所長の怒りの会見になるんでしょうか。

 これは、事実確認を求めたいと思いますので、委員長にお取り計らいをお願いしたいと思います。

津村委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

津村委員長 速記を起こしてください。

 それでは、後刻理事会でといたしますけれども、山中先生の御名誉にもかかわる事実関係ですので、文科省さん、内閣官房さんに事実関係を後ほど理事会で御報告をいただきたいというふうに思います。

 大臣、それでよろしいでしょうか。

竹本国務大臣 それで結構です。

津村委員長 ありがとうございます。

 早稲田さん。

早稲田委員 では、最後に。

 大臣からも先ほど、きちんと政府が決めたことは守るというお言葉もございましたので、この答弁をしっかり受けとめさせていただきたいと思います。

 そして、これは、調整官庁たる内閣府の仕事として、いろいろ、公益法人化とかお話があるのは承知をした上で、やはり、事業化なら事業化、その予算についてもしっかりと詰めるべきお話であるのではないかと思っております。

 ぜひ、今後の透明性のある議論の中でこのことについては予算策定、予算の要求ですね、それもしていただきたいと思いますけれども、その透明性のある議論をしていただけるかどうかということを、大臣に最後お伺いいたします。

竹本国務大臣 承っております。わかっています。

早稲田委員 ありがとうございました。

津村委員長 次に、中島克仁さん。

中島委員 立国社の中島克仁です。

 時間をいただきましたので、質問をさせていただきます。私は、本委員会、所属は初めてでございます。どうかよろしくお願いいたします。

 今、ちょっと山中先生の話、もう委員長にお取り計らいしていただいておりますけれども、報道であれだけ、山中先生、怒りの会見というふうにおっしゃっていましたが、先ほどのは本当に腑に落ちないということですので、ぜひしっかり事実関係を明確にしていただきたいと思います。

 本委員会、平成二十三年に、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため新たに設置された特別委員会。諸外国において科学技術政策を国家戦略の根幹に位置づけ、積極的に展開を図っている一方、我が国の国際競争力が低下傾向にあること、科学技術の振興とイノベーション推進は死活問題な重要テーマであること、経済成長と雇用の拡大の原動力として活発な議論がやはり国会で行われることが重要という、大変重いテーマが課せられていると私自身は認識をしております。

 大臣にまずお尋ねいたしますが、諸外国の動向や社会背景も含め、我が国の科学技術分野の現状と課題、国家戦略としての科学技術分野の位置づけをどのようにお考えになっているのか、御見解をお尋ねいたします。

竹本国務大臣 AIに代表されるような急速な技術の進展は経済社会を大きく変化させるが、その中で、未来を切り開き、国内外の諸課題を解決するためには、科学技術イノベーションを強力に推進することがまず必要でございます。

 我が国の現状を見ますと、注目度の高い論文における日本の順位の低下、有期雇用の研究者の増加と若手研究者の無期雇用ポストの減少による研究者の不安定な労働環境、これらは主要国と比べて非常に劣っているところでございます。

 他方、今般の吉野先生のノーベル化学賞受賞が示すように、日本が有する研究力は潜在的に高く、大きなインパクトを持つイノベーションにつながる成果創出への貢献が期待されております。

 このような観点から、我が国の研究力を総合的、抜本的に強化すべく、人材、資金、環境の三位一体改革を進めるための総合パッケージを年内目途に策定し、科学技術イノベーションの推進に鋭意努力してまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、現在、出されている論文が、かつて世界一だったときもあったと思いますが、今は全然少なくなっております。非常に危機感を私も持っております。

 ですから、若い人たちが落ちついて研究して、そして論文を書き、そして世界にそのプレゼンスを発揮していく、こういうような環境をつくらないといけない。そのために、年内に取りまとめを考えておりますが、若手研究者の環境改善、これをしっかりとやっていきたいなと思っています。

中島委員 大臣から、論文の数も含め、危機感を持っておるということでございました。

 各国で科学技術を国家戦略として位置づけて、競争力を高めようとしておる。そういうことで、本委員会が設置された目的も、やはり国会で議論を喚起していく、そういったことが国民に向けて今の現状を知らしめる大事な役割を果たすということをより重く受けとめていただいて、リーダーシップを発揮していただきたいとお願いをしたいと思います。

 順番、ちょっと二番目を飛ばさせていただき、三番目に入りたいと思いますが、一昨日、ノーベル化学賞を受賞された吉野彰先生、私も委員の一人として参加をさせていただき、意見交換、大変勉強になりました。冒頭に委員長からもその内容についてお話があったわけですが、科学技術の今後について、川上戦略と川下戦略の総合戦略が大変重要であること、産学連携の重要性。特に、今回の受賞の礎になった福井謙一先生、白川英樹先生、基礎研究を尊重するその姿勢、大変、私自身は改めて、そんな中で、先ほど大臣からも答弁いただきましたが、産業界から化学賞を受賞されたという意味は非常に重いなと感じました。

 私、二週間前には、四年前にノーベル生理・医学賞を受賞されました、私、高校の、山梨県立韮崎高校というところですが、大村智博士、たびたびお会いさせていただいておるんですが、二時間ほどゆっくり、また高校の後輩ということもあって、ざっくばらんな話をさせていただきました。

 大村先生は、御承知のとおり、中南米、アフリカで蔓延している、今でも約三億人の方に提供されているイベルメクチンを開発され、多くの人命、また、命を救われた研究開発、それが評価をされてノーベル賞を受賞された。その大村先生が、科学技術の取組が効率的で実効性を持つものになるためには、大きなビジョンを持つことが前提であり、重要だとおっしゃっておりました。

 研究は課題解決につながるものでなければならない。私も医師でありますが、医学系の研究として大学院に行き、私、千葉の放医研で重粒子を研究させていただいたんですが、当時から、研究は、私の場合、医学研究ですから、臨床に直結しなきゃいけないということは上司から強く指導されておりました。

 現状の世界規模での課題というと地球温暖化ということにもなりますが、我が国においては、少子高齢化の進行、また、人生百年時代ということ、さまざまありますが、どのような社会的課題を科学技術によって優先的に解決していくのか。

 科学技術によって優先的に解決すべき社会的課題を大臣はどのように認識されておるのか、御見解をお尋ねしたいと思います。

竹本国務大臣 平成二十八年一月に閣議決定されました第五期科学技術基本計画では、仮想空間と現実空間の高度な融合により人々に豊かさをもたらす社会であるソサエティー五・〇を世界に先駆けて実現するという、まず大きなビジョンを提示いたしております。

 また、この計画におきましては、科学技術イノベーションを総動員し、戦略的に対応するべき経済、社会的課題として、まず一つ、持続的な成長と地域社会の自律的な発展、第二、国及び国民の安全、安心の確保と豊かで質の高い生活の実現、第三、地球規模課題への対応と世界の発展への貢献を掲げており、経済成長と社会的課題の解決の両立を目指しております。

 ソサエティー五・〇の実現や経済、社会的な課題の解決に貢献するため、引き続き関係省庁と一丸となって取り組んでまいりたいと思っております。

 要は、ビジョンがないと行動は起こせませんので、ビジョンが一番大事なんですけれども、それは、一つのことをなして、ほかのことがおろそかになるというようなことでは困る。やはり社会全体を以前よりはいい社会にしていかなきゃならない。そういう課題に、要望に応えるビジョンでないといけないと思っております。

 以上です。

中島委員 大臣から今お答えいただいた第五期の科学技術基本計画は、ソサエティー五・〇をビジョンに掲げ、SDGsと歩調を合わせて、AI、ビッグデータ時代に、経済だけでなく社会的、公共的価値の創出、人間重視を掲げる、私も野心的な試みと言えるとは思います。

 問題は、ソサエティー五・〇やSDGsのビジョンを研究現場の実行と動機づけにどう結びつけていくか。そして、大き過ぎるビジョンでも具体性がなかなか見出せなかったり、やはり現実、社会課題について、明確な優先課題を示して、その上で、衰えた産業をどう支えていくのか。また、基礎研究にどの程度投資を行っていくのか。限られた財源の中でより効果的に配分していくためにも、前提となるビジョンと、さらには、国民の合意と覚悟、これがなければ、なかなか決定に至らない。将来を担う若者も、夢と希望を持って科学技術に参画できない。

 こういう状況で必要となるのは、先ほども申し上げたんですが、やはり政策的なリーダーシップ、これは欠かせないのではないかということで、改めて大臣にリーダーシップをしっかりとっていただきたいということを御意見として申し上げさせていただきたいと思います。

 大村博士は、以前からもそうなんですが、もともと学校の先生になるつもりでいたと。当時、地元、ふるさとの山梨で学校教員の枠があいていなかったので、東京都で夜間学校の、工業高校の授業を五年間やって、働きながら熱心に勉強する学生に感銘を受けて、その研究分野に入っていった。そういうこともあり、以前からですが、最近特に小学生とか中学生、精力的に講演を行っているそうです。

 私もお会いしたときも、地元の高校で大村先生が講演をされ、その後にお会いしたわけですが、子供たちには、一期一会、人との縁を大事にすること、また読書の必要性、科学実験の重要性、そして、失敗を恐れるな、失敗を恐れ、チャンスを逃すことが最大の失敗だ、そのような話を強調してお話をされているということです。

 これは、先ほども言ったように、全て御自身の経験からくることだと思いますが、言うまでもありませんけれども、すぐれた人材、若手のアカデミアの処遇の話もありますが、特に次世代、さらには次の世代、今の児童生徒、幼児から小学校などの教育、この環境が非常に重要になる、一方で、大きな期待がかかるところでもあると思います。

 科学技術の将来を担う次世代、きょうは文科省さんにも来ていただいておりますので、また更にその次の世代、児童生徒、育成方針をどのように考えているのか、お尋ねをしたいと思います。

梶原政府参考人 お答えします。

 将来にわたり日本が科学技術で世界をリードしていくためには、次代を担う才能豊かな子供たちを継続的、体系的に育成していくことが重要です。

 このために、文部科学省としては、高等学校段階から、生徒の主体的な取組である課題研究等の先進的な理数系教育を通じて科学的能力や科学的思考力等を育む取組を行う高等学校等への支援を行うスーパーサイエンスハイスクール支援事業、優秀な意欲、能力のある高校生等を対象とした高度で実践的な講義や研究を実施する大学への支援を行うグローバルサイエンスキャンパス、理数分野で特に意欲や突出した能力を有する全国の小中学生を対象とした高度な講義や研究支援などの特別な教育プログラムを提供する大学等への支援を行うジュニアドクター育成塾、理数系の意欲、能力が高い中高生が、科学技術にかかわる能力を競い、相互に研磨する場の構築を支援する科学技術コンテストの推進、全国の学生と切磋琢磨し、将来の本格的な研究等を推進するため、大学の学部生等による自然科学系分野の自主研究の成果の発表の場であるサイエンス・インカレの開催、女子中高生の理系分野への興味、関心を高め、適切な理系進路選択を可能とするためのプログラムを提供する大学、高専などを含めた連携機関等への支援を行う女子中高生理系進路選択支援プログラムなどの取組を推進しています。

 文部科学省としては、今後とも、これらの取組などを通じ、次代を担う科学技術イノベーション人材の育成を図ってまいります。

中島委員 文科省さんからお答えいただき、るる、さまざま取組をしていることも私も承知をさせていただき、あえてお話を聞かせていただいたんですが、まあ、大村博士も、御承知していながら今の子供たちの置かれた環境を心配しているということで、大村先生御自身も、農家に生まれて、そして地元の高校に行き、教育学部に行って、そんな中で、先ほど言った経緯から、更に熱心に分野を取り組んでいかれたという経緯の中で、当たり前のことを御指摘していたわけです、読書が大切だとか、科学実験が大事だとか。

 やはり、その裾野を広げていくという観点で、るる行われていることも承知しながら、一方で、そういう、家庭、子供たちを取り巻く環境が変化をしていったり、学校では、学校の先生のいわゆる働き方の問題であったり、一般の子供たちがそういう、将来に向けて科学技術に目を向けられるような、いわゆる裾野を広げていくということが、外形的にあるとしても、そういう環境が現実社会と一致しているかどうか、そういったことを大村先生は危惧されておるということでありますので、実際、実行できていなければ意味がないということになりますので、どうかそういった観点でもお取組を進めていただきたいと思います。

 先ほど、科学技術の優先課題について大臣にもお答えいただいたわけでありますが、私は、先ほども言ったように医師でありまして、やはり医療分野に関して、科学技術の発展を更に願っている立場であります。

 我が国のみならず、世界の医療の発展、目覚ましいものがあって、これは科学技術の進歩、貢献が大変大きいわけでありますが、そういった時代に、科学技術の発展によって、我が国は、人生百年時代、さらには二人に一人ががんになるという時代、そういう意味では、がんゲノム医療については、この不安を取り除くやはり光となっておる。

 私は消化器外科の医者で、がんの患者さんをたくさん診てこられましたが、重粒子線も、最初研究していたときから二十数年たって、今では手術よりもそういった治療がより効果的になってきている。そういう意味では、このがんゲノム医療、日本の医療のみならず、世界の医療の転換期と言える治療法だというふうに思います。

 これまで限定的な枠組みで進められてきたがんゲノム医療ですが、本年六月、ゲノム検査、パネル検査が公的な医療保険の適用となりました。がんゲノム医療とは、言うまでもなく、患者一人一人のがん細胞の遺伝情報、つまりゲノムを詳しく調べて、効果のある薬を効率よく見つけ出し、治療に結びつけようというもの。日本では本格的に始まるがんゲノム医療ですが、欧米などに比べるとおくれをとっているとも言われている。これも現実だというふうに思います。

 がんゲノム医療の現状と課題、どのように認識され、整理をされているのか、お尋ねをしたいと思います。

小島大臣政務官 お答えいたします。

 個々人の体質や病状に適した診断、治療、予防が可能となるがんゲノム医療への期待は、中島先生おっしゃるとおりでございまして、大変高まっておるところでございます。

 本年六月には、今話があったように、遺伝子パネル検査が保険適用され、国民皆保険のもとでの検査が実施されることとなっておりまして、これを受けまして、九月に三十四カ所のがんゲノム医療拠点病院の指定をするなど、順次、遺伝子パネル検査が実施できる医療機関を拡充し、全国でがんゲノム医療を受けられる医療供給体制を整備しているところでございます。

 一方で、がんゲノム医療の課題としましては、患者やその家族が遺伝子パネル検査の結果を正しく理解することが求められておりまして、患者、家族に説明を行う遺伝カウンセリングに関する専門性を持った人材の確保が重要であると考えております。

 厚生労働省といたしましては、平成三十年度より、がんゲノム医療中核拠点病院等において、遺伝カウンセリングの実施体制を整備することを求め、人材の適切な配置を推進しているところであります。

 引き続きまして、必要な方が安心してがんゲノム医療を受けられるよう取り組んでまいりたいと考えております。

中島委員 今、専門性を持ったカウンセリングの育成等々、課題についてもお話をいただきました。

 先ほども言ったように、二人に一人ががんになる時代、国民の期待は非常に高いと思うんですね。ただ、現状は、さまざまな要件があり、今三十四のがんゲノム拠点病院ということをおっしゃっていただきましたが、いわゆる手術適応を除外したり、また、いわゆる原発不明がんであったり、そういった限定をされ、さらには、現状のゲノム検査において一割から二割程度の方が対象ということで、大きな期待の一方で、まだまだ患者さん方、がんを抱えて、わらをもつかむような思いでいらっしゃる方の御期待に、現状ではまだ整えられていないということであるというふうに思います。

 一方で、先ほど言っていただきました中核拠点病院に指定された十一病院とその病院から支援を受ける百五十六の連携病院、また三十四のがんゲノム医療拠点病院で、体制が整った病院から順次患者の受入れが、もう既に始まっているということでありますが、全国の病院からのデータは、国立がんセンターで一元的に管理されると承知をしております。

 この情報は、いわゆる究極の個人情報と呼ばれる遺伝情報だけに、管理は万全でなければならない。この管理状況、システムについて、現状について確認をさせてください。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、本年六月からパネル検査が保険適用となっておりまして、同意が得られました患者様のゲノム情報に関しましては、がんゲノム情報管理センター、通称C―CATと申しますが、ここに集積が始まっているところでございます。

 この集積されましたゲノム情報につきましては、その適切な管理のために、各省が設けております医療情報の管理に関するガイドライン、いわゆるセキュリティーポリシーに準拠していることを確認していることと、あとは遺伝情報の閉鎖型のネットワークをつくっていること、それから二十四時間のセキュリティー監視、こういったさまざまな安全管理体制を講じているところでございます。

 今後も、集積されましたがんゲノム情報等が適切に取り扱われますように、安全管理措置の推進を図ってまいりたいと考えております。

中島委員 おっしゃるとおりだと思います。

 それも承知していて、あえて聞いておるんですが、今後、がんゲノム医療をより確実性を確保し推進していくためには、やはり症例も必要でしょうし、今後膨大な量になってくる。現行ではまだ少ない情報の中での管理システムだと思いますが、これが、先ほどの繰り返しになりますが、究極の個人情報です。万が一の状況になることは絶対に許されない。そういうことを、これから更に更に膨大になって蓄積されていく中で、取り違いも含め万が一のことがないように、より慎重に対応していただきたいということを御指摘をさせていただきます。

 先ほど、課題について副大臣からも御答弁いただきましたが、カウンセリングの育成、国民の理解というところも御答弁いただいたんですが、このゲノム検査によって遺伝異常が見つかった患者やその家族が差別など不当な扱いを受けないようにするための法規制について、現在どのような状況にあるのか、お答えいただきたいと思います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 ゲノム情報への期待が高まる一方で、御指摘のように、ゲノム検査によって遺伝子異常が見つかった患者様、その血縁者、こういった方々が不当な差別を受ける、こういったことがないようにすることは重要でございます。

 厚生労働省は平成二十八年度に研究事業の中で調査を行っておりまして、雇用や民間医療保険の加入等に際しまして、ゲノム情報に基づく差別、不利益な取扱いを受けたという回答が一定程度認められております。

 これを受けまして、厚生労働省といたしましては、例えば具体的に指摘がありました雇用に関しましては、採用選考の際に遺伝情報を取得したり利用したりすることがないようにとパンフレットを用いて事業主に周知啓発を行ってきております。

 これは厚生労働省だけにとどまる話ではございませんので、この調査の結果を関係省庁にも共有をいたしまして、金融庁、法務省、文部科学省等に対してもそれぞれ必要な対応を依頼をし、実態の把握などの取組がそれに基づいて行われているというふうに承知をしております。

 引き続き、関係省庁と連携をいたしまして、厚生労働省としては必要な施策を検討してまいりたいというふうに考えております。

中島委員 これは、報道では、民間保険協会などが自主的なガイドラインをということで、私、先日、民間の保険協会さんとも話をしました。

 ただ、患者団体、研究者、さまざまな意見がある中で、民間が自主的にガイドラインをつくるというのは大変難しいと。一方で、これはやはり倫理的な話でもありますので、役所が一生懸命やってもなかなか、これまた難しいところもあると。我々、超党派の議連で、いわゆるゲノム議連でありますが、これに関して議員立法も準備しております。ぜひ、大臣始め各委員の方にも御理解と御協力をいただきたい、そのことを申し述べさせていただきます。

 時間がありませんので、また飛ばします。

 先ほど言ったように、保険適用になったゲノム検査、資料の一枚目、遺伝子パネル検査はなっておるわけですが、今後、承知しておるのは全ゲノム解析検査にも更に更に進めていく方向性だということでございますが、資料の二枚目、これは、二〇一八年、中国の研究者が、ゲノム編集技術で受精卵を操作して、エイズウイルスに感染しにくい双子の女児を誕生させた内容のもの、これは上段ですね。そして下段の方が、本年七月、ロシアの研究者が、遺伝的聴覚障害を持った五人の両親から、ゲノム編集技術を用いて、聴覚障害を持たない子供を産みたいという要望に対して、臨床応用の許可申請をするという、ヒト受精胚の臨床への応用、この事案であります。

 ゲノム解析、全解析に進んでいくという一方で、ゲノム編集、これを臨床に応用している事例が外国で起きておるということ。

 端的に大臣にお尋ねいたしますが、科学技術の発展を強く推し進める一方で、この記事に関しての御見解をいただきたいと思います。

竹本国務大臣 ヒトの受精卵は、人の生命の萌芽でありまして、母体にあれば胎児となり、人として誕生し得る存在であるため、ゲノム編集技術の応用においても、倫理的観点から、先生おっしゃるとおり、慎重に検討すべき課題であると認識はしております。

 内閣府におきましては、ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方を検討しているところでございまして、令和元年六月、総合科学技術・イノベーション会議、CSTIにおきまして、ヒト受精胚でのゲノム編集に対して、臨床応用については、法的規制のあり方を含めた制度的枠組みが必要とするとともに、基礎的研究につきましては、個別の研究計画の審査等を前提に容認する範囲を示すこととの方針を取りまとめたところであります。この基本方針に基づき、現在、厚生労働省を中心に、臨床応用に関する制度的枠組みの具体的内容が検討されているところでございます。

 要は、ヒト受精胚は、外にいると人間でなくて単なる物だけれども、人体に入って、子宮に入って、そこから出てきたら人間であるということで、非常に倫理的な、倫理の問題が極めて重要でありまして、それとの整合性をきちっとやらないと大変なことになるのではないかと恐れておりますので、そこは慎重にきっちりとやっていきたいと思っています。

中島委員 今お答えいただいた内容だと思うんですが、これも時間になってしまいましたから。資料の三枚目ですね。

 日本では、今、お答えいただいた部分とかぶりますが、受精卵へのゲノム編集、余剰胚、新規作成胚とも、基礎的研究に限って認め、母体に戻すことは禁止しています。

 あくまでもこれはガイドラインで示しているということで、これは実は、諸外国、アメリカ、イギリス等々、ちゃんと法で規制しているんですね。

 一方で、中国、先ほど資料で示した上段の、ゲノム操作で双子を誕生させた、やはり今の我が国と同じ状況であります。

 そういう意味から、これは早急に規制を設けていくべきだということを御指摘をさせていただいて質問を終わりたいと思いますけれども、これもやはり、先ほどのがんゲノムと一緒のように、臓器移植法案と同じ、大変倫理的な悩ましい問題でもあります。

 今国会、委員会が果たす役割として、こういったテーマをより議論していく必要があるということを申し述べ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

津村委員長 次に、畑野君枝さん。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 冒頭、委員長報告にもありましたように、十一月二十五日の当委員会の視察で旭化成に伺い、ノーベル化学賞を受賞された吉野彰博士からお話を伺いました。大変貴重なお話でした。

 吉野博士の受賞はリチウムイオン電池の開発ということですけれども、その前に、福井謙一京都大学・京都工芸繊維大学名誉教授のフロンティア電子理論、そしてその後の白川英樹筑波大学名誉教授が発見した導電性ポリアセチレン、こうした研究、十九年ごとだというふうにおっしゃいましたけれども、それを受けての今回の受賞だということです。

 リチウム電池の研究開発で先行する二人のアメリカの研究者の到達点を知り、それを活用することによって乗り越えられなかった課題を乗り越えて、商業生産が可能なリチウムイオン電池を初めて開発されたということです。

 ノーベル賞受賞者が必ず聞かれる質問は、何歳からこの研究をスタートしましたかということで、博士は三十三歳と。ぜひ三十五歳前後への、若手研究者への支援をよろしくお願いしますというふうに訴えられました。基礎研究への支援も訴えられました。深い感銘を私覚えました。

 こうした受賞の経過を伺う中で、改めて、多様な分野の多様な研究が大きな成果の土台にあるということを痛感しました。

 吉野博士は、うまくいく研究は百人に一人かもしれないが、九十九人の研究を無駄な研究だと言って切り捨ててしまえば成功する一人の研究も生まれないとお話をされておられました。

 竹本直一担当大臣に伺いますが、若い、多彩な才能を持つ研究者が、それぞれの興味、関心に基づき、成功、失敗にかかわらず研究に専念できる環境が本当に重要だと思いますが、大臣の御所見を伺います。

竹本国務大臣 畑野先生のおっしゃるとおりだと思います。

 今回のノーベル賞受賞を受けまして、すぐれた若手研究者が失敗を恐れることなく新たな課題に積極的に挑戦することができる環境整備が非常に重要であります。

 十一月十一日の総合科学技術・イノベーション会議では、若手研究者が本当に自分のやりたいことにチャレンジしていくことのできる環境をつくっていくことの重要性について、吉野さんより我々も御講演をいただいております。

 内閣府では、研究環境の抜本的強化等によって研究者の魅力を高めていくことが重要であると考えておりまして、その実現に向けて、年内を目途に、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージの策定を予定しております。この中で、優秀な研究者のポストの確保や表彰、自由な発想による挑戦的研究を支援する仕組み等の具体的な施策を検討し、実施していくことが絶対に必要であります。

 実は、研究者の環境が非常によくないというのは再三出ておりますが、ちょっと数字を申し上げますと、修士課程から博士課程へ行く進学率が、平成十二年で一六・七%、現在で、平成三十年で九・三%、半分近くに減っている。それから、四十歳未満の国立大学教員のうち、任期つき割合が非常に増加しておりまして、平成十九年三八・八%だったのが、現在では六四・二%とふえています。また、博士課程修了者の就職率が実は停滞しております。かつては七一・六だったのが、七二・〇。それから、大学教員の研究教育活動の割合が非常に低下をしておる。こういうことで、落ちついて研究にのめり込めないということ。

 それから、吉野先生のように、企業の研究において成功された方も、あの方のお話を聞いておりますと、全部ハッピー、ハッピーであったわけではもちろんないわけで、極めて厳しい二年間があったというお話を聞きました。

 つまり、会社としては、もうけなきゃいけないですから商品を出さなきゃいけない、しかし、そういう基礎研究では金にならないから大変だ、こういう雰囲気もあったんだと思います。

 ですから、あらゆる障害をできるだけ軽くしてあげて、自由にやっていただくということが大事であろうというふうに思います。

畑野委員 竹本大臣から大変心強い御答弁をいただきました。

 十一月二十一日の所信的挨拶の中で、斬新かつ野心的な研究を行う若手の支援を含め、研究力を総合的に強化するための戦略の策定などに取り組むというふうに述べられ、今、本当に具体的にお話をしていただきました。

 研究者に対する支援のあり方については、将来の若手研究者となる、大臣もおっしゃられた大学院の修士、博士課程の方々への支援を始め、博士課程を修了した若手研究者、中堅研究者、シニア研究者など、それぞれの段階での支援が求められていると思います。

 その中で、きょうは、特に大学院の修士、博士課程の方々への支援のあり方について伺いたいと思います。

 文部科学省に伺いますが、今、研究の重要な担い手である博士課程入学者総数が減少傾向にあると伺っています。二〇〇三年のピーク時と二〇一八年の比較ではどうなっているでしょうか。また、減少の原因をどのように考えていますか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 博士の後期課程入学者数は、平成十五年、二〇〇三年の一万八千二百三十二人をピークとして減少傾向にございまして、平成三十年、二〇一八年には一万四千九百三人と、ピーク時から約一八%減少しております。

 平成二十一年度の科学技術政策研究所によります日本の理工系修士課程への進路決定に関する意識調査によりますと、博士後期課程への進学を考えるための重要な条件として、キャリアパスの拡大と並んで経済的支援が挙げられております。

 また、中教審の大学分科会においては、大学院のカリキュラムと社会の期待の間にギャップが生じているなど、大学院教育をめぐる課題が若手研究者ポストの確保の困難さという問題と相まって、課程修了者のキャリアパスに対する不安を招き、博士後期課程への進学をちゅうちょさせる原因の一つとなっていると指摘されております。

 これらを踏まえますと、修了後のキャリアパスに対する不安、在学中の経済面に対する不安が、博士後期課程入学者が減少している原因のうち大きなものであると考えております。

畑野委員 確認なんですけれども、博士課程入学者のうち、修士課程を修了して博士課程に進学するうちの一般学生の入学者数はピーク時と比べてどうでしょうかというふうに改めて伺いたいと思います。きょうの資料の一枚目に載せさせていただいております。その数字についてお答えいただけますか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 資料を先生もお配りいただいておりますけれども、平成十五年の一万一千六百三十七人から、平成三十年で六千二十二人ということでございます。

畑野委員 そういうことなんですね。つまり、半減しているということです。

 先ほど、最初に述べられたのは社会人の方なども含めてですが、一般学生といった場合には本当に少なくなっている。それは、若い人たちが減っているという深刻な事態だというふうに思います。

 キャリアパスの問題でいうと、博士課程修了後の出口の問題、これはこの間、私も通常国会で指摘しましたように、企業自身が研究機関を閉鎖するなど、自前の研究機能を後退させる中で、大学や大学院に研究を肩がわりさせている現状は問題だというふうに思います。竹本大臣からも企業の大変さというお話、触れていただきました。

 こうした傾向というのは、必然的に、博士課程修了者が研究職として企業に採用される門戸を閉ざすことにもつながるということも指摘しておきたいと思います。

 一方、今おっしゃっていただきましたように、文科省の資料によると、博士課程進学を検討する際に重要と考える条件で最も重要視されているのが、博士課程在籍者に対する経済的支援なわけです。資料の二枚目につけさせていただきました。

 今日の大学院生の実態がどうなっているかということで、全国大学院生協議会の皆さんは、毎年、大学院生の研究・生活実態に関するアンケート調査を行っておられます。先日、二〇一九年度の報告書をいただきました。これだけ厚い、労作だと思います。文部科学省にも届いていると思うんです。

 これを見ますと、大学院生は年間六十万円近い学費、私立ではそれ以上の学費を払っていると。きのう伺いましたら、ある私学では百六十万円払っていますという方がおられました。

 また、大学院生には給付型奨学金、返済不要の奨学金がないために、半数が貸与型奨学金を借り、そのうちの四人に一人が五百万円以上の奨学金という名の借金を抱えています。

 大学院生全体の八一・七%は何らかのアルバイトに従事しており、その五二・八%は週十時間以上のアルバイトに追われています。学外でアルバイトしている大学院生の約九割は、生活費を賄うためにアルバイトをせざるを得ない状況です。この報告書は、「フルタイムに相当する時間を生活への支障なく研究に費やすことのできる大学院生は限られており、多くの大学院生が研究とアルバイト等のダブルワークとでもいうべき状況に置かれている。」というふうに指摘をしております。資料の三枚目と四枚目にその調査が載っておりますので、ごらんいただきたいと思います。

 文部科学省に伺いますが、こういう現状で研究に専念できるのでしょうか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの調査、並びにまた、独立行政法人日本学生支援機構によります学生生活調査というものがございますけれども、そこの二十八年度の結果におきましては、全博士学生の五三・一%が、家庭からの給付のみでは修学不自由・困難及び給付なしを理由としてアルバイトに従事しているとの結果になっております。

 文科省といたしましては、多くの大学院生がアルバイトなどに過度の時間を費やすことにより、大学院における研究活動に十分に携わることができない状況を改善し、大学院生が研究にも十分な時間を充てることができる環境を構築することが重要であると考えております。

畑野委員 ティーチングアシスタントやリサーチアシスタントというのがあるんですが、希望する大学院生全てに枠があるわけではないんです。国立大学では、運営費交付金が減らされているせいで、限られている学生にしか枠がない、首都圏の大学に比べて地方大学ではその枠がごくわずかしかないという話も伺ってまいりました。

 そこで、文部科学省に伺いたいんですが、第五期科学技術基本計画では、特に博士課程後期学生に対する経済的支援を充実するとして、「「博士課程(後期)在籍者の二割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す」との第三期及び第四期基本計画が掲げた目標についての早期達成に努める。」と述べておられます。

 この目標に対して、到達はどのようになっているのでしょうか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年度に博士後期課程学生を対象といたしまして実施いたしました博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究によりますと、平成二十七年度時点で、生活費相当額とされる年間百八十万円以上の経済的支援の受給者は、博士後期課程在学者全体の一〇・四%という結果が出ております。

畑野委員 博士課程後期学生全体の一〇・四%ということなんですが、その半数以上が特別研究員受給者となっているんですね。

 その博士課程を対象とした特別研究員制度で支給されるのは年額二百四十万円、月二十万円ということで、先日、全国大学院生協議会の皆さんが文科省に要請に行かれたんです。これでは少ないから、特別研究員制度の金額の引上げをしてほしいと訴えられた。そのときに、担当者の回答は、大学院生の平均的な生活費は十八万円程度だから、月二十万円の特別研究員の支給額で十分だというふうにおっしゃったというんですね。

 これは、全く実態をわかっていない。二十万円は手取りではないんです。実際に受けている方からお話を伺いましたら、月二十万円の支給額は、給与でもないのに所得として扱われるので、所得税、住民税がかかる。年間約三十万円の負担になる、引かれるわけですね。それから、国民健康保険料で年額十五万円。所得ありと扱われることで、学費も全額免除はなくて、最大半額免除です。都内でひとり暮らしとなれば、家賃、水光熱費、定期代等を払えば、生活費は月五万円しか残らない。これでどうやって生活しろというんですかという話を伺ってきたんです。

 都内の私立大学の大学院博士課程で研究している大学院生は、自宅から通っているので基本的に家賃や生活費の負担はないんですけれども、しかし、学費や、研究活動のために所属する学会の年会費、必要な書籍の購入費、資料のコピー代、移動のための交通費等の費用を捻出する。海外の研究にも行く。そのために、非常勤講師や大学の助手、出版社のアルバイトなどをせざるを得ないので、研究時間が確保できないと、きのう、おっしゃっていました。

 私はきのう、直接、そうした博士課程に在籍する皆さんからお話を伺ったんですが、そういう中で、これは深刻だなと思ったのは、修士課程から博士課程に進学した最初の年は何とかアルバイトで学費を捻出するんだけれども、研究時間が確保できない、二年、三年目は続かないといって、大学院をやめていく方が周りにたくさんいらっしゃるというんですね。結局、経済的に恵まれた環境の人しか研究を続けられないというふうに訴えておられました。

 こんな状況では、若い、多様な才能を持つ研究者は育ちようがないと思うんです。

 そこで、文科省に伺いますが、博士課程後期在籍者の二割程度が生活費相当程度を受給できることを目指すという目標を掲げたのは二〇〇六年なんです。もう十年以上、十三年たっているんです。そのときの第三期科学技術基本計画なんです。いまだ達成できていない。生活費相当の年間百八十万円という数字も実態に合わずに、低過ぎて問題なんですけれども、まず、この目標とした水準、直ちに達成すべきだと思うんです。加えて、特別研究員制度の支給額は増額するとともに、対象枠も拡大するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

梶原政府参考人 お答えします。

 特別研究員事業は、すぐれた若手研究者に対して、その研究者としての活動の初期において、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、その養成確保を図る制度です。

 文部科学省としましては、今後とも、社会情勢の変化や財政状況等を踏まえつつ、優秀な人材が研究に専念できるよう、支援の充実に努めてまいります。

 以上です。

畑野委員 いつまでやるんですか。

梶原政府参考人 支援については、先ほども申しましたとおり、今後も、社会情勢の変化や財政状況を踏まえつつ、引き続き継続的に支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

畑野委員 そういうことを言い募っているから進まないわけですよ。竹本大臣もおっしゃったじゃないですか。ちょっと担当が違うので、後で大臣には御決意を伺いますけれども。

 それで、大学院在籍者に対する経済的支援のあり方を考える上で、大学院生、特に博士課程在籍者を、学生の延長の存在と捉えるのか、それとも研究者として捉えるのか、そもそもの考え方をはっきりさせる必要があると思うんです。

 博士課程の大学院生は、大学院の研究活動の中でどのような役割を果たしていると文科省は認識しておられますか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 過去の調査によりますと、例えば、大学院生は我が国で生産される論文の二五%の筆頭著者に名を連ねております。また、高被引用と申しますが、高被引用度論文におきましても、約二割の論文の筆頭著者は大学院生となっております。論文数のシェアの大きいグループほど、研究者に占める博士課程学生の割合が大きいなどの結果が見られるところでございます。

 こうしたことから、博士課程の学生は、自立した研究者などとなるために学ぶ学生という側面がある一方で、教員やほかの研究者などと協働して主体的に大学の研究力の一翼を担う重要な存在であり、研究開発やイノベーション創出の原動力となっていると認識しております。

畑野委員 資料の九のところでつけさせていただきました。そのことをお答えいただいたわけです。二〇一八年七月三日の第六十八回学術分科会のものです。

 「研究者の年代別論文生産性4」という資料なんですが、ここでは、国立大学等の、約七割に学部、修士、博士学生、ポストドクターといったジュニア研究者が参画しており、ジュニア研究者は科学的研究には欠くことができない存在、ジュニア研究者が参画している論文の方が、Q値、注目度が高い論文の割合が高い傾向と指摘されているのが、その前の資料の八にもつけさせていただきました。

 そして、資料の九の方は、ことし一月に中教審大学分科会が取りまとめた、二〇四〇年を見据えた大学院教育のあるべき姿、審議まとめに附属する資料です。

 おっしゃっていただいたように、「博士課程学生の研究への貢献」で、大学院生は二五%の論文の筆頭者に名を連ねており、高被引用度論文においても約二割の論文の筆頭著者は大学院生であり、我が国における研究開発やイノベーション創出の原動力となっている、優秀な博士課程学生は学部生のように授業料を納めて教育を受けるだけの存在ではなく、教員や他の研究者などと協働し、主体的に大学の研究力強化の一翼を担う重要な研究者であるため、研究に専念できるようにすることが必要だと指摘しております。

 きのう伺いましたら、新しい科学技術、どんどん日進月歩なので、博士課程の方たちが教授に教えているというわけですよ。その専門の分野はその博士課程の学生でないとわからない、院生でないとわからない、こういう状況で、みんなで協力しながら取り組んでいるというわけです。

 ノーベル賞を受賞した本庶佑教授や山中伸弥教授の論文も、その執筆者に修士、博士課程の大学院生が含まれております。

 資料十なんですけれども、ノーベル賞を受賞された山中伸弥教授のiPS細胞に関する論文に関するものです。

 論文のタイトルの下に執筆者の名前があるんです、ローマ字ですけれども。左から二人目の田邊剛士さんは、当時、博士課程在学の大学院生です。その隣の大貫茉里さんは、当時修士課程。博士課程だけにとどまらず、修士課程在籍者も研究に大きな貢献をしております。

 そこで、文科省に伺います。

 大学院設置基準第四条で、大学院の博士課程の目的を定めています。博士課程は、専門分野について、研究者として自立して研究活動を行い、又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことを目的とするとあります。

 学費を払い、生活費を稼ぐために研究時間を犠牲にしてアルバイトに追われ、数百万円にも上る奨学金という名の借金を背負わされる。こんな実態で、高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養うことができるんでしょうか。支援が必要ではありませんか。

玉上政府参考人 お答えいたします。

 博士課程の学生が大学院設置基準第四条の博士課程の目的とする能力を十分養うためには、授業科目や研究指導をできる限り充実した形で受けることが必要となると考えられます。

 この観点からも、先ほどもお答えしたとおり、文科省といたしましては、院生がアルバイトなどに過度の時間を費やすことにより、大学院における活動に十分に携わることができない状況を改善し、大学院生が授業科目や研究指導を受けることに十分な時間を充てることができる環境を構築することが望ましいと考えております。

 このため、本年八月には、大学院の志願者が経済的な見通しを持って進学について判断できるよう、学費や経済的支援について、入学前から大学は必要な情報を提供することの努力義務化を定める省令改正を行ったところでございます。

 また、先ほどお答えした日本学術振興会の特別研究員事業のほかにも、各大学におきます授業料減免に係る予算要求を行っているところでございます。

 また、日本学生支援機構の奨学金事業における業績優秀者返還免除制度やRA、TAによる支援、企業から大学への寄附金などの外部資金の活用等も含めた多様な経済的支援策を促進することで、大学院教育の充実を図っていきたいと考えております。

畑野委員 大学院生の方に聞きましたら、ほとんどがゼミや講義を受け持って、教育者として学部生の教育を担っているんですね。あるいは、常に研究論文に目を通して最新の成果をゼミや学部生や教授に教えている。学費を払って教育を受ける大学生ではなく、研究者の役割、教育者の役割をしているんですよ。にもかかわらずこのような貧しい環境でいいのか、それでは優秀な人材も集まらない。博士課程在籍者は大学生の延長だ、学費を払うのが当然だなどという考えそのものが世界の流れから大きく立ちおくれたものだと言わなくてはなりません。

 最後に二点、竹本大臣に伺いたいと思うんです。

 二〇〇五年に欧州連合が研究者に関する欧州憲章、ザルツブルクの原則を策定しました。研究者の範囲に、早い段階の研究者、いわゆる博士課程の学生を含むとされて、新しい知識の創造に重要な貢献をする専門家として認められるべきであるとしているんです。雇用主や資金提供者は適切な労働環境を保障するために必要な財政措置に特に留意すること、全てのキャリア段階の研究者に対して、既存の国内法や、国、部門ごとの労働協約に従って適切な社会保障、傷病手当、養育手当、年金、失業給付を含むとともに、公正で魅力的な資金、給与条件を保障することが記述されています。

 ドイツ、フランス、ノルウェー、デンマーク、オランダ等では、労働契約の仕組みが導入されて研究労働者として扱われている。ドイツ、フランスは、年間数百ユーロの登録料はあるが、授業料はない。アメリカでは、理工系の博士課程の場合は、入学許可がおりると、大学院に在籍する標準的な期間における収支計画書が渡されて、授業料、生活費はどのように支給されるかなど、数年間にわたる収支予定が記載されて、生活に困らない計画が詳細に立てられる。スウェーデンでは、二〇一四年に法改正し、博士号取得候補者の大多数が、学生ではなく大学の従業員として扱われるようになった。こういう流れなんです。

 しかし、日本は、学費を払って大学院に籍を置かなくちゃならない。生活の保障もない。私は、博士課程在籍者の自立した研究者としての地位を確立できるようにすることを真剣に検討すべきじゃないかと思うんです。

 時間がありませんから、まとめて質問させていただきます。

 それで、一九九一年に大学審議会が「大学院の整備充実について」という答申を出しております。この中で、大学院生は、学生としての側面とともに若手研究者としての側面を持ち、大学院における研究の担い手としての役割も有していると。学生の側面と若手研究者としての側面について、それぞれ処遇の改善が検討されているんです。学生でいえば奨学金制度の拡充、それから、若手研究者の側面でいえば特別研究員制度の採用人数の充実や研究奨励金等の引上げ。

 しかし、二十八年たって、奨学金でいえば、当時あった、課程修了後一年以内に教育研究職について、一定年数以上継続して勤務した場合の返還免除制度はなくなってしまった。それから、特別研究員制度でいえば、当時よりも上がってはいるけれども、二〇〇四年以来、十五年間一円も上がっていないんですね。

 第六期科学技術基本計画を検討中だと聞いております。中教審のまとめもいろいろあります。こうした博士課程在籍者を自立した研究者と位置づけ、ふさわしい処遇の改善を図ることを次期基本計画や大学院教育振興施策要綱にしっかり反映すべきじゃないかと思いますが、大臣のお考えを伺います。

竹本国務大臣 ただいま先生から、欧米諸外国の実態について詳しく御説明いただきまして、ありがとうございました。

 要は、学生を、現在やっている状況の中で、学生として教育を学ぶ時間と、それから研究者として研究に打ち込み、担当教授を助ける立場、言ってみれば勤務労働者です、その両面がやはりあるんだと思います。だから、それは大学によっても違うでしょうし、地域によっても違うだろうと思いますが、その辺を子細によく見て、少なくとも、研究者が研究に打ち込める環境、それをつくってあげないと日本の基礎研究能力は上がってこない、このように私は思っております。

 吉野先生がノーベル賞をとられたときに、我が国は、日本の国は、上流は強いが下流は弱いとおっしゃった、この言葉は非常に私も心に響いております。できるだけ研究者が研究に打ち込める環境、これをつくるために、関係省庁ともちろん協議をしてやっていきますが、そういった方向でいろいろ検討を重ねたいと思います。

畑野委員 ありがとうございました。終わります。

津村委員長 次に、串田誠一さん。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 私も、吉野博士、ノーベル賞受賞の視察に行かせていただきまして、津村委員長を始め与野党の理事、また委員部の皆様には大変感謝をしております。

 その際、私が気になるところというものを一つ御報告させていただき、共有を委員会でもさせていただきたいと思いますので、最後に竹本大臣にも御意見をちょっとお伺いしたいことがあるんですが、吉野博士が一番最初に申し上げられたのは、アカデミアと産業という言葉でございました。

 今回、ノーベル化学賞の受賞をされたのは三人でございます。吉野博士、それとアメリカのテキサス大学のジョン・グッドイナフ教授とニューヨーク州立大学のスタンリー教授でございます。そして、この二人の教授というのはまさにアカデミアということになるわけですね。ですから、専門の雑誌に論文の発表がある。ところが、吉野博士の場合には、企業で特許をとられているわけです。特許をとられる前に論文を書くということは、到底、普通、想像できないわけですね。こういう研究をしているというようなことを発表してしまえば、ほかの企業がまねをするわけですから。ですから、産業界の研究者というのは、エビデンスというものが非常に乏しいという難しさがあるというのを吉野博士はおっしゃられていたわけです。

 ですから、特許を取得したときというのは、企業と国が協力し合って世界に発信するような仕組みというものが私は必要なんではないかなというのとともに、ずっと質疑を聞いていく中で、ブラックホールの話もありましたが、仮説というのが非常に大事なわけでございます。

 基礎研究というのもやみくもに始めるわけではなくて、ある程度の仮説があって、それに対して研究を進めていく。当時の科学技術ではそれが証明できないけれども、何十年先になって、そのときの科学技術によってその仮説が証明されたときには、その証明されたものとともに仮説を唱えた人もノーベル賞というような形で功績が認められるわけでございます。

 ところが、産業界の研究者というのは仮説というのが発表できない。特許権を取得できるような結果が出ない限りは発表ができないので、功績は与えられない部分の難しさがあるわけです。しかし、その仮説が、その当時の企業においては証明できなかったとしても、数十年後にほかの国の人が証明して、そして、それを仮説として主張している人がいたら、日本のその研究者の仮説というのが埋もれてしまって、ほかの国の人の仮説というものが一番最初に訴えられたということで評価されていってしまう、そういう部分もあるのではないだろうかと。

 私が感じたのは、アカデミアと産業というのは、非常にはっきりと分かれているというのも一つ大事なことなんだろうなと。

 吉野博士のような、リチウムイオンの電池の場合には、絶縁体というのが旭化成の独自の技術で、後押しができたということなんですけれども、先ほど畑野委員からの質問もありましたが、研究者の費用が少なくなると、産業界と研究者とが合体していかざるを得なくなる部分があるわけです。自分の研究費用が足りなければ産業界に応援をしてもらいたいという。

 そうなると、産業界として見れば、先ほど大臣も、お金もうけをしなければならないということもありますから、仮説というような研究、仮説を論文で発表する機会というものがますます減っていってしまう。

 産業界と合体すれば、それは、その産業界の応援する企業が特許権を得るために研究者は研究をするわけですから、仮説というものの経過を論文として発表するという機会というものが非常にできにくくなってしまって、応用科学だとか、そういう目に見えたものに対する研究でしか取りかかりにくい。

 あるいは、仮説というものが大変取りかかりにくいという意味では、産業界と合体する研究者も必要だと思うんですけれども、アカデミアとして、そういうような、特許権とかという実益というものの前の、仮説という部分についても十分な論文を書くだけのやはり生活的な基盤というものが、我が国において、私は必要なんじゃないだろうかと。

 生活云々というのももちろんそうなんですけれども、今後の日本の、ノーベル賞を受賞するなり、これは、国家の国力、あるいは国民も大変喜ぶわけですから、ノーベル賞というのはやはり日本もたくさんとっていきたいという意味では、仮説とかそういう基礎研究というものが、今言ったような問題点でなかなか出てきにくくなっているんではないかという現状を私、感じているんですね。

 ですから、アカデミアと産業という、吉野博士が言われたこの大きな違いというものをはっきりと分けるためにも、アカデミアというものをしっかりと支える国の現状、そして、産業界における発明について、しっかりとそれを国がバックアップして、世界に発表できる、功績を発表できる仕組みというようなものが必要だと感じているんですが、大臣の御意見を伺いたいと思います。

竹本国務大臣 もちろん、先生のおっしゃるとおりだと思います。

 純粋アカデミアで論文の研究をし、そしてノーベル物理学賞をとるとか、こういう世界はありますよね、今までそういう方がたくさんおられますが。同時に、今回の吉野先生のように、純粋にビジネス界における研究で、特許をとる以外、論文を発表するなんということをしたらほかにとられますから、そういうことはなかなかできない、そういう制約下でやっておられるところ。今回は、その両方から、ノーベル賞の受賞者が同じテーマにおいて認められたというのは、非常に私は意味があると思っております。

 産学協同といって、大学が民間と協力する、そしてベンチャーをスタートアップさせる、これもあって結構だし、もちろん我々、それは進める方向でいろいろ指導をしているところはあるんですけれども、純粋にアカデミアの分野も当然あってしかるべきだと私は思います。

串田委員 ぜひその観点からも、国として研究者を支えていただきたいというふうに思っております。

 それでは、きょうの質問として入りたいと思うんですが、今回、ことしは非常に水害が多かったということで、水害対策に対する特殊車両というものの利用というか開発が必要になってくると思うんですが、これに関して概括的な説明をしていただきたいと思います。

小宮政府参考人 自然災害における消防の特殊車両による救援につきましては、水陸両用車、重機、大規模震災用高度救助車などによりまして、浸水地域での要救助者の救助、土砂災害現場での行方不明者の捜索や救助、また、建物倒壊現場における救出、被災地での人員や物資の輸送などが行われています。

串田委員 きょうは、特に水陸両用車についてお聞きをしたいんですが、水陸両用車といっても、陸上から水に入るに当たって、水の中に入れるけれども底辺にタイヤがつくタイプと浮力で移動できるタイプというのがあるんですが、今はどのような形で利用されているでしょうか。

小宮政府参考人 水陸両用車につきましては、消防庁としては現在三十一台配備しておりまして、加えて、今年度末までに十七台配備することといたしております。

 その内訳でございますけれども、小型の、小さなものが二十八台で、中型のものが二台で、大型のものが一台でございますが、今申し上げました中型のものが、スクリューがついていまして、水中の中でもスクリューを使って活動することができるということになっております。

串田委員 その中で、一両編成のものと二両編成というものが今進められているというような話も聞いているんですが、これについての利点、欠点というものを説明をお願いします。

小宮政府参考人 一両編成のものにつきましては、その利点は、主として狭隘な場所でも機動的な活動が可能であるということと、輸送が容易といった点もあると考えます。また、二両編成の利点は、人員や物資の搬送力にすぐれているということと、二両がジョイントで連結されておりますので、傾斜地での走行の柔軟性にすぐれているということが利点と考えられます。

串田委員 織りまぜて利用していただきたいんですが、一つ、移送手段に関して少し予算的に考えられることがあるんではないかというふうなことがあるんですけれども、水陸両用車を現地に移送するに当たっては、現在はどのような形、質問の趣旨というのは、移送する車両自体はどういうような形で用意されているのかというところなんです。その点、説明をいただきたいと思います。

小宮政府参考人 今申しました大型、中型、小型、全ての水陸両用車につきまして、活動場所までの移動につきましては専用の搬送車を用いておりまして、今申し上げました全ての水陸両用車の整備をする際には、専用の搬送車もあわせて予算で購入しているということでございます。

串田委員 それが各省庁によって違うというような指摘もあるんですが、要するに、移動する車両というのは、普通のトラクター等で移送ができる場合には、民間の日通とかそういったようなところからそれを借りて水陸両用車を載せ、そしてまた終わったらば返すというような形がとられている省庁もあるとお伺いしているんです。それを一体として購入すると、搬送車までも購入し、その搬送車までもしまっておかなきゃいけないというような話を聞いているんですが、その点、搬送車まで必要ないんじゃないかというふうにも思うんですけれども、いかがでしょうか。

小宮政府参考人 各消防本部で、現場で活動をして、実際の移送なども行っていただいておりますけれども、現時点におきまして、今委員がおっしゃられましたような搬送車の置き場所の問題があるとか管理に問題があるとか、そういったような課題について消防本部から私どもの方には声は届いておりません。

串田委員 障害になるというのは、声は届かないと思うんですけれども、予算として、搬送車は民間に、搬送するときだけ使うというような形にしていけばいいんじゃないかということで、これは防衛省が何かそういったようなやり方をしているようなこともお伺いしているので、検討する余地はあるんじゃないかなと。要するに、搬送車というのは普通のトラクターで、それに載せるのは特殊車両ではありますけれども、移動する手段は民間会社から借りるということも検討できるんではないかということなんです。ちょっとそこは課題として提案をしておきたいとは思うんですけれども。

 ちなみに、水陸両用車としての特殊車両というのは国が買うのか、地方自治体が買うのか。通常、災害時における装備というのは地方自治体が購入していると思うんですけれども、この特殊車両に関してはいかがでしょうか。

小宮政府参考人 水陸両用車といった特殊な車両につきましては、主として全国の消防の広域的な応援の部隊であります緊急消防援助隊として活動を行うためのものでございますので、国が購入した上で地方公共団体消防本部に配備をしております。

 なお、地方公共団体がそうした車両を独自に配備するといった場合もございますので、そうした場合には、それぞれの地方公共団体が独自に購入をしております。

串田委員 先ほどの特殊車両の台数を見ると、全国の都道府県に一台ずつ配備するということはできないわけでございます。国が購入したのを地方自治体に配置するに当たっては、どこの地方自治体に配置するのかというのは、そこの基準はあるんでしょうか。

小宮政府参考人 小型の水陸両用車につきましては、迅速性が求められる災害初期の消防活動に対応し、消防本部からの要望も多うございますので、各都道府県ごとに一台を配備というようなことで、今、計画的に整備を進めております。

 また、より大規模な災害での広域出動が想定されます中型と大型の車両につきましては、より多くの出動機会が見込まれます中型につきましては、全国六ブロックごとに一台を配備したいと考えておりまして、大型のものにつきましては、南海トラフ地震への対応を含め、全国への出動も可能と考えられます愛知県の岡崎市の消防本部に現在一台を実証的に配備をしております。

 また、重機もございますけれども、これにつきましては、近年多発します大規模な土砂、風水害に備えるために、各都道府県ごとに一台を配備することとしております。

串田委員 水陸両用車というのは民間会社がつくっているというふうにお聞きをしているんですけれども、それに関して、いろいろな特殊な性能を要するわけですから、研究開発も費用がかかるわけでございます。

 そういった場合に、みずから研究開発して製造できた車両が採用されない場合というのが十分あり得るわけでございますので、そうなると、製造意欲というか開発意欲というのもそがれる。しかし、最初から決まっていると、何らかと公私混同的な部分もあるのではないかなと思うんですけれども、ここら辺についての対応というのはどういうふうに考えているんでしょうか。

小宮政府参考人 水陸両用車につきましては、一般競争入札におきまして、私どもが提示いたします仕様書などに基づきまして、価格競争で決定をした落札業者が、契約締結後に設計、製造しておりまして、委員が御懸念されているような事態は現時点では生じていないものと認識をしております。

串田委員 天災箇所を瞬時に発見するときのために、無人機でそれをすぐにというようなことも開発されているかというふうにお聞きしますが、今どんなような状況でしょうか。

小宮政府参考人 無人の航空機、いわゆるドローンにつきまして、現在、消防防災分野では、建物火災の状況の確認、また山間部での要救助者の捜索、また大規模災害時の被害の状況の確認などで活用されております。

 ドローンの整備につきましては、まず、先ほど申し上げました緊急消防援助隊において活用するために、国が二十の政令指定都市全てに配備をしております。また、これに加えまして、消防団員の教育訓練用に、都道府県の消防学校に貸与もしております。

 また、地方公共団体が防災情報システムなどとあわせて高機能のドローンを整備する場合には、緊急防災・減災事業債により財政支援も行っております。

 さらに、運用に関する最新の知識やノウハウを有する消防吏員を育成するためのドローン運用アドバイザー研修につきまして、令和元年度から、計画的に実施をしております。

 このほか、消防庁の消防研究センターで、土砂災害現場におきます画像情報を活用した救助活動方法や、夜間時におけるレーザーセンサーなどを用いました三次元地図の作成などに関する研究開発を現在進めております。

 消防庁といたしましては、ドローンは有用な機材であると認識しておりますので、引き続きその配備を充実してまいります。

串田委員 次は、最後に質問させていただきたいと思うんですが、今回、天皇皇后両陛下の即位パレードにおいて、警備システムをずっとやっていたんですけれども、時間が足りなくなって、最後はもう関係なく入れたというような報道がなされておりまして、そういう意味では、来年もオリパラというのもありますので、十分な警備体制というのが必要だと思うんですが、警備に時間がかかり過ぎて、最後はもう関係なく入れてしまったというようなことを聞くと、大変、私、不安になるんですけれども、これについて、反省点と今後の改善点というものを最後にお聞きをしたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 大規模なイベント等の入場者に対しましては、イベント等の主催者による持ち物検査や金属探知機等を活用したセキュリティーチェックが行われることが一般的と思料されますが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会におきましても、組織委員会において、エックス線検査機やゲート型金属探知機等を活用した入場者に対するセキュリティーチェックを実施予定と承知しております。

 大会の安全を確保するためには、組織委員会、関係省庁、自治体、関係事業者等がそれぞれの立場で連携しながら取組を推進していくことが重要であるため、警察としても、引き続き、関係機関等と連携を密にし、大会の安全かつ円滑な運営に向けた準備に当たることとしております。

 御指摘のとおり、警備への科学技術の活用は重要と認識しておりまして、警備に有効な装備資機材の研究等にも引き続き努めてまいりたいと考えております。

串田委員 終わります。ありがとうございました。

津村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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