衆議院

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第3号 令和4年6月7日(火曜日)

会議録本文へ
令和四年六月七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 手塚 仁雄君

   理事 井上 貴博君 理事 尾身 朝子君

   理事 松本 剛明君 理事 和田 義明君

   理事 中島 克仁君 理事 中谷 一馬君

   理事 池下  卓君 理事 浮島 智子君

      畦元 将吾君    五十嵐 清君

      石井  拓君    石橋林太郎君

      上田 英俊君    加藤 竜祥君

      川崎ひでと君    国定 勇人君

      国光あやの君    小泉 龍司君

      田所 嘉徳君    土田  慎君

      古川 直季君    松本  尚君

      柳本  顕君    山田 賢司君

      山本 左近君    井坂 信彦君

      城井  崇君    神津たけし君

      末次 精一君    藤岡 隆雄君

      金村 龍那君    岬  麻紀君

      日下 正喜君    平林  晃君

      山崎 正恭君    鈴木 義弘君

      宮本  徹君

    …………………………………

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     小林 鷹之君

   国務大臣

   (知的財産戦略担当)   若宮 健嗣君

   内閣府副大臣       大野敬太郎君

   文部科学副大臣      田中 英之君

   文部科学大臣政務官    高橋はるみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          柳   淳君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  水野  敦君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        田中 茂明君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官)            米田 健三君

   政府参考人

   (内閣府健康・医療戦略推進事務局次長)      長野 裕子君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 山内 智生君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         柿田 恭良君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森田 正信君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           坂本 修一君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官)          寺門 成真君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           福永 哲郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         廣瀬 昌由君

   政府参考人

   (気象庁大気海洋部長)  森  隆志君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           但野  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月七日

 辞任         補欠選任

  松本  尚君     国定 勇人君

  城井  崇君     井坂 信彦君

  山崎 正恭君     平林  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     松本  尚君

  井坂 信彦君     城井  崇君

  平林  晃君     山崎 正恭君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

手塚委員長 これより会議を開きます。

 この際、大野内閣府副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大野副大臣。

大野副大臣 科学技術政策、宇宙政策を担当する内閣府副大臣の大野敬太郎でございます。

 小林大臣を支え、力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、手塚委員長を始め理事、委員各位の御指導、御鞭撻、御協力をよろしくお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

手塚委員長 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣情報調査室次長柳淳君、内閣府沖縄振興局長水野敦君、内閣府知的財産戦略推進事務局長田中茂明君、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官米田健三君、内閣府健康・医療戦略推進事務局次長長野裕子君、総務省大臣官房審議官山内智生君、文部科学省大臣官房総括審議官柿田恭良君、文部科学省大臣官房審議官森田正信君、文部科学省大臣官房審議官坂本修一君、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官寺門成真君、経済産業省大臣官房審議官福永哲郎君、国土交通省大臣官房技術審議官廣瀬昌由君、気象庁大気海洋部長森隆志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

手塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

手塚委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。尾身朝子君。

尾身委員 自由民主党の尾身朝子です。

 本日は、科学技術・イノベーション推進特別委員会で質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 岸田政権は、成長戦略と分配戦略とを組み合わせた新しい資本主義を具体化しようとしています。また、骨太方針及び新しい資本主義実行計画の中で科学技術・イノベーションが、まさに岸田政権が柱として掲げる成長戦略の最重要課題として位置づけられています。

 本委員会での議論が科学技術立国、ひいては政権の掲げる成長戦略の実現につながっていくことを期待しております。

 ここで、小林科学技術政策担当大臣に伺います。

 岸田内閣は、気候変動や少子高齢化などの社会課題への解決につながる成長分野に大胆に投資をしていくと伺っています。日本が科学技術の熾烈な国際競争にさらされている今、成長戦略の一丁目一番地に科学技術・イノベーション政策を位置づけました。その実現のために、科学技術予算を大幅に拡充していく覚悟を示すべきだと思います。大臣の御決意をお聞かせください。

小林国務大臣 様々な社会課題を克服して経済成長のエンジンへと転換していくためには、科学技術・イノベーションの進展が不可欠だと考えています。

 骨太の方針ですとか新しい資本主義の実行計画の中でも、この科学技術・イノベーションへの投資に重点を置いていく方向で調整が進んでいると承知をしておりまして、岸田政権として、科学技術立国の実現を成長戦略の柱として改めて明確に位置づけていくと認識しております。

 また、先生御案内のとおり、諸外国においては、米中を始めとして、科学技術・イノベーションへの投資が大きく伸びております。その中で熾烈な国家間の競争を勝ち抜いていくためには、研究開発への大胆な投資を行っていくことは当然重要だと考えております。

 第六期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、五年間の研究開発投資につきましては、政府全体で約三十兆円、官民合わせて約百二十兆円ということで、これまでの計画からすると、かなり増やす形でこの目標を定めているところです。ちなみに、令和四年度の当初予算までの額では、現時点で約十二・四兆円に達しておりまして、この政府目標の達成に向けて着実に進捗しております。熾烈な国際競争に勝ち抜くためにも、更なる予算の確保に向けて取り組んでいきたいと考えます。

 そして、先日、CSTIにおきまして、総理から、新たに閣議決定した統合イノベーション戦略二〇二二に基づいて、これまでの延長にとらわれない大胆な政策を迅速かつ確実に進めるよう指示がありました。

 私自身、国力の根幹に科学技術力があるというふうに考えておりますので、この担当大臣として、関係大臣とも協力しながら、科学技術立国の実現に取り組んでまいりたいと考えます。

尾身委員 国力の根幹に科学技術があるという大変力強い御答弁、ありがとうございました。

 次に、スタートアップについてお伺いいたします。

 岸田総理は、六月二日に行われた総合科学技術・イノベーション会議、CSTIに参加され、その後の会見の中で、スタートアップの総合支援策が決定された、スタートアップ企業は技術革新を通じて経済成長や社会課題解決の担い手であり、その成長のために必要な投資を促すための呼び水として、公的資金の活用を抜本的に強化すると発言されました。

 スタートアップは、骨太方針や新資本主義実行計画においても、科学技術・イノベーションとともに成長の柱に位置づけられています。スタートアップの重要性は言うまでもなく、スタートアップが世界中でその経済成長を支えています。遅れていると言われている我が国のスタートアップ政策を抜本的に見直すために、海外のベンチャーキャピタルからの積極的な資金獲得やSBIR制度の見直しなど、予算面から制度面並びに税制面まで、政府としてまさに一丸となり、その対策をスピード感を持って強力に推進していくことが何よりも重要です。

 そこで、小林大臣にお伺いします。

 スタートアップ政策について、大臣のお考えをお聞かせください。

小林国務大臣 今、各国の経済成長というのはスタートアップが引っ張っていく、そういうトレンドにあるというふうに思っております。このスタートアップ支援というのは岸田政権の重要課題であって、今委員が御指摘なさった、閣議決定された統合イノベーション戦略二〇二二でも、科学技術・イノベーション政策の三本の柱の一つとしてイノベーションエコシステムの形成を位置づけておりまして、スタートアップの徹底支援によるエコシステムの抜本強化を掲げたところです。

 この戦略の取りまとめに先立ちまして、CSTIの下に専門調査会を置いておりまして、ここで国内外の起業家やベンチャーキャピタルなどからヒアリングを行って、その具体策といたしまして、海外のベンチャーキャピタルの誘致を含めた国内外のベンチャーキャピタルへの公的機関による投資を拡大していくこと、また、優秀な人材確保の観点からストックオプション制度を改革していくこと、また、海外トップ大学との連携も含めたスタートアップキャンパス構想を推進していくこと、そして、今御指摘があったSBIR制度を強化し、政府調達によるスタートアップ支援を進めていくといった施策が提言されているところでございます。

 これらの施策というのは、政府の新しい資本主義実行計画、また骨太方針にほぼ盛り込まれる方向で今最終調整が進んでいると承知をしておりまして、これら施策の実行に向けまして、政府一丸となって力強く取り組んでいきたいと考えます。

尾身委員 是非、力強いお取組をよろしくお願いいたします。

 続いて、個別の政策について質問させていただきます。

 まず、研究力の強化についてお伺いします。

 今まで、我が国の研究力の相対的な低下について様々な場で議論されてきました。その議論を受けて、イノベーション創出の拠点となり、また、世界と伍する研究大学を実現するため、岸田政権の目玉政策として十兆円規模の大学ファンドが創設されました。

 この大学ファンドに関連して、国際卓越研究大学法が成立しました。国際卓越研究大学が自律し、持続的なイノベーション創出を担うためには、専門人材の経営への参画などのガバナンス体制を確立しなければなりません。そのために、規制改革なども早期に実現していくことも議論されました。

 また、大学ファンドの運用益については、横並びやばらまきではなく、将来性のある研究へ集中投資を行うことが肝要です。従来にない発想で、世界に比肩するレベルの研究開発や新領域の創出など、日本が世界を牽引していくとの明確な決意の下、大胆かつ重点的な投資をファンド対象大学が行うことが求められます。

 そこで、小林大臣に伺います。

 十兆円規模の大学ファンド本来の趣旨に沿った形で大胆な集中投資を行っていくための方策について、お考えをお聞かせください。

小林国務大臣 十兆円規模の大学ファンドは、従来の大学支援策とは一線を画して、異次元の大学支援策として、支援大学の研究開発基盤の抜本強化を図るものでございます。

 このファンドによる支援を通じまして、トップレベルの研究大学が自律的に、かつ継続的に知的価値を創出し続けるとともに、その生み出した知的価値を更に社会に還元していく、そのサイクルを構築することで、大学の持続的成長や我が国全体の研究力の向上につなげていきたいと考えます。また、長期的な視点から、基礎研究ですとか、あるいは新たな芽を生み出していく挑戦を行うことが必要であると考えておりまして、大学自身の判断でこれらの分野への投資も強化されることが期待されるところでございます。

 今後、この大学ファンドの制度設計の具体化の詳細は文科省を中心に進めていくことになりますけれども、内閣府としてもしっかりと連携、協力をしまして、大学ファンドの成功に向けて最大限の努力をしてまいりたいと考えます。

尾身委員 ありがとうございました。

 さて、先ほど述べさせていただきましたスタートアップの実践の場として大いに期待されるのが、沖縄科学技術大学院大学、OISTです。開学十一年を過ぎ、世界中から招聘した一流の研究者の下で、世界トップクラスの研究成果を上げ続けています。

 ここで、改めてOIST設立の趣旨を振り返ってみると、OISTは、理系大学の世界最高峰、カリフォルニア工科大学、カルテックを意識して創設されました。将来、カルテックと伍していくためには、現在の規模は単なる通過点にすぎず、当初の目標だった三百PIを目指して、体制の増強に引き続き努めていくことが不可欠です。

 また、カルテックを目指すとは、単に教育研究機関の世界最高峰を目指すだけではなく、OISTを核として、研究開発法人や企業、大学の研究機関が集まり、イノベーションが次々と生み出されるイノベーションエコシステムが形成され、環境に触発された多くのスタートアップが起業を目指すような地域をつくることです。

 沖縄だけではなく、日本の科学技術を牽引し、経済成長に資するようなイノベーションエコシステムの場をつくり出し、スペースXやGAFAのような企業を生み出す、夢物語を現実とする、そんな取組が始まろうとしています。

 現在、OISTは、世界トップレベルの研究力を基盤にして、スタートアップ等が集まるバイオコアインキュベーション施設を新設し、国内外の企業、スタートアップ、大学、研究機関、投資家、自治体が一体となった産学官金融合型のバイオコアセンターを目指しています。既存施設設備との一体的な運営、管理を促進するとともに、自治体、国内外の企業やベンチャーキャピタル等とのネットワーク基盤の抜本的強化を図るべく、準備を進めています。

 先日の沖縄本土復帰五十周年記念行事で沖縄を訪れた岸田総理は、忙しい日程の中でOISTを訪問され、グルース学長及び教職員と車座で意見交換を行い、その後の会見の中で、引き続きOISTを強力に支援していくと述べられました。意見交換では、OISTの研究環境のみならず、スタートアップ等の産学連携についても話題が及んだと聞いております。

 そこで、お伺いします。

 将来、カルテックと伍してイノベーションエコシステムの中核になろうとするOISTは、三百PIを目指して体制の増強に努めていくことが不可欠です。OISTが最終的に三百PIを目指していくということを改めて確認させてください。また、OISTが行うスタートアップの取組に対する政府の支援についてお聞かせください。

水野政府参考人 お答えいたします。

 OISTにつきましては、沖縄振興政策の重要な柱として、その運営等に必要な経費を確保してきたところでございます。

 OISTの規模に関しましては、平成十七年三月十七日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会におきまして、OISTの設立に多大なる尽力をされ、先日亡くなられました尾身幸次委員から、大学院大学の将来の計画として、教授陣三百人ほどの規模が最終的には必要ではないかとの趣旨の御質問があり、当時の小池沖縄担当大臣からは、それらの点は十分に留意していく必要があるとの答弁をさせていただいているところでございます。

 なお、足下の対応といたしまして、国としては、令和三年八月に公表した新たな沖縄振興策の検討の基本方向についてで示したとおり、まずは、今後五年間で教員数、百名を目指す、その後は、定期的にOISTにおける成果や外部資金獲得状況等を確認しながら、規模拡充を支援していく考えでございます。

 また、委員御指摘のとおり、先日、沖縄復帰五十周年記念式典におきまして、岸田総理から、沖縄の科学技術スタートアップの拠点構築や支援を推進、強化します、また、OISTにおける量子、バイオなど、幅広い分野に係る世界最高水準の教育研究を推進し、また、その成果が社会に還元されるよう強力に支援しますとの式辞がございました。

 さらに、先般、五月三十一日に公表した「強い沖縄経済」の実現に向けた西銘大臣ビジョンにおきましても、内閣府の当面の取組の一つといたしまして、OISTにおける産学連携等の取組に係る支援の拡充を掲げたところでございます。

 以上を踏まえまして、今後とも、OISTが設立の目的を達することができるよう、適切に支援してまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

尾身委員 ありがとうございます。是非とも、設立の目的である三百PIまでの拡充を目指して頑張っていただきたいと思います。

 OISTは、日本の既存の大学にない新たな大学の姿を求めて設立されました。キャンパスの設計やマネジメントなどの取組、またスタートアップ拠点の運営などは、他の大学や研究機関にも大いに参考になると思われます。科学技術全体を俯瞰する立場におられる小林大臣も是非OISTに足をお運びいただき、現場の研究者、学生たちの熱意をじかに感じ取っていただければと思います。

 次に、国際頭脳循環について質問します。

 今まで述べた研究力強化の一連の取組の中で、国内の議論だけにとらわれていては、世界における日本の科学技術力の向上にはつながりません。忘れてならないのは、国際頭脳循環という概念です。海外に研究拠点を求めて留学する博士課程の学生を増やすことがまず第一歩です。海外に身を置き、海外の優秀な研究室で研究生活を始め、信頼関係を築いてこそ、国際的な研究コミュニティーのメンバーとして参画でき、初めて国際的な研究成果を上げることができます。さらに、国際共同研究のメンバーとして論文の共著者になることにより、影響力あるトップ論文に占める日本のプレゼンス向上につながるというのが国際頭脳循環です。

 能力のある若者を海外の博士課程に送り込む、これが全てのスタートだと私は思います。いきなりの海外留学は、現代の若者にとってリスキーなものであり、敬遠されがちです。学生の不安を解消するための一つの解決策となるのがOISTです。OISTは、現在、国内外のインターンを年間約百二十名受け入れています。大学在学中にインターンとしてOISTで学ぶことにより、日本にいながら、あたかも海外の大学であるかのような環境と雰囲気の中で、世界で名をはせた研究者の指導を受けることができ、この体験を通じて自信を持って世界に飛び出すことができる。海外留学の中間地点としてOISTを利用する、これはすぐにでも実現できるアイデアです。

 また、国際頭脳循環の取組を抜本的に拡充することは、自民党の科学技術・イノベーション戦略調査会の決議にも盛り込まれており、岸田総理への申入れを行ったところです。

 ここで、文部科学省にお伺いします。

 国際頭脳循環及び国際共同研究を抜本的に推進するための取組についてお聞かせください。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の科学技術振興に当たりましては、諸外国との交流、協力を推進し、国際的な研究ネットワークを構築していくことが重要でございます。特に、近年、世界的に科学技術・イノベーションの戦略的価値が高まる中で、我が国がそのネットワークの中核に位置づける必要があると考えてございます。

 このため、文部科学省におきましては、科学技術・学術審議会国際戦略委員会におきまして、本年三月、科学技術の国際展開に関する戦略を取りまとめました。

 この戦略では、近年、米国で研究博士号を取得する日本人が減少していることも踏まえまして、海外機関に所属して博士号取得や研究活動を行う移籍型の新たな流動モードの促進や、外交的効果が高く、論文の質指標の向上を見込める科学の強い相手国との国際共同公募による国際共同研究への重点投資を進めることなど、我が国の科学技術力の強化に向けた国際頭脳循環、国際共同研究に関する具体策が提言されてございます。

 文部科学省といたしましては、この施策の実現を通じまして、更なる科学技術の戦略的な国際展開に努めてまいりたいと存じます。

尾身委員 ありがとうございます。

 国際頭脳循環と国際共同研究というのは、我が国の科学技術力を世界の中でしっかりと維持していくために大変重要な施策だと思いますので、文部科学省におかれましては、しっかりとこの施策の取組を行っていただくように強く要望したいというふうに思います。

 最後に、科学技術政策推進のための体制強化について質問させていただきます。

 多くの国には、首脳や大臣を科学技術の側面からサポートするために、科学技術顧問が置かれています。新しい資本主義実行計画にも、総理に対する情報提供、助言のため、総理官邸に科学技術顧問を設置するとの記述があります。また、政府や大臣などの意思決定への直接的なサポートのみではなく、米国においては、行政機関の各レベルに、科学技術に関する特別な知見を有し、博士号を取得した専門職を置いています。日本でも博士人材をもっと国家公務員に登用してはどうかという議論とも関連しています。各主要国がこぞって科学技術に対する投資を劇的に伸ばしている中、博士号を取得した人材が日本の科学技術政策の中核を担っていくことが不可欠なのです。

 また、キャリアパスが見えないという、博士課程に進学した場合の将来への不安が、進学をちゅうちょさせる大きな要因ともなっています。博士号取得者への研究人材、研究支援人材、起業家人材、そして科学技術政策人材といった多様なキャリアパスの確保が、学生の背中を押すことにつながるものと思います。彼ら、彼女らの能力を最大限に駆使し、科学技術における潮流を世界に先んじて正しく理解し、それを日本の科学技術政策に生かしていく、このような人材の確保、育成が必要です。科学技術の変化がますます激しくなる中、まさに萌芽の時点でいち早く気づくことが、日本の生き残るべき道ではないかと思います。

 そこで、小林科学技術政策大臣にお伺いいたします。

 科学技術政策推進のために、更なる機能強化が必要です。そのために、博士人材を積極的に登用し、日本の科学技術政策の中核を担っていくようにすべきと考えますが、大臣の御見解をお聞かせください。

小林国務大臣 先ほど委員から御提案ありましたOISTへの訪問につきましては、私自身、機会を見つけて、是非どこかのタイミングで足を運ばせていただきたいと思いますし、今日、一連の委員の御質問を受けておりまして、私、元々、尾身幸次元財務大臣の下で働いていたことがあったんですけれども、尾身幸次先生が我が国の科学技術政策の進展のために献身的な御尽力をされてきたこと、これについては担当大臣として敬意を表したいと思います。

 その上でお答えさせていただきますが、博士号の取得者がアカデミアだけではなくて行政機関においても活躍するということは、我が国の未来を切り開いていく上で極めて重要だと考えております。

 例えば、CSTIの事務局におきましても、科学技術政策のフェロー制度というものがありまして、博士号取得者を中心として、大学や研究機関から専門的知見を有する人材を受け入れて、政策の立案に参画いただいております。

 引き続き、博士号取得者を含めて、優れた知見を有する人材を確保し、活用し、こうしたことに積極的に取り組んでいきたいと思いますし、そのことによって、博士人材に科学技術政策の中核を担っていただく体制を構築して、変化の激しい科学技術・イノベーション分野の政策立案、そしてその推進をより効果的に進めて、その結果として科学技術立国を実現していきたいと考えます。

尾身委員 大変力強い御答弁、ありがとうございました。

 私の父、尾身幸次は、科学技術立国こそ日本の生き残る道であると言い続けてまいりました。科学技術・イノベーションを更に推進し、真の科学技術立国を実現するため、私も全力で取り組むことをお約束申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

手塚委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。よろしくお願いいたします。

 最近、若い世代を中心に、映画やドラマ、ニュースなどを早送りしながら見る倍速視聴が広がっているとのこと。内容は深く理解できなくても、様々な話題やトレンドにアクセスし、網羅しておきたいとの、近年目立ってきた傾向のようです。また、メールやSNSのチェックなどにも時間が使われ、もはやスマホを手放せないという状況。私にも、多分に心当たりがございます。

 情報通信技術やデジタル技術の進展によって、リモートワーク、リモート会議など、画期的に便利な時代になったと実感します。さらに、これからは、リアルとバーチャルが融合するメタバースの時代とも言われています。高速化し、情報化する社会にあって、何が進化し、何が退化していくのだろうかと、一抹の不安すら感じます。

 今後、特に人の心と体に直接影響を与える分野については、例えば、視力や聴力への影響、自律神経、情緒の安定や発達段階の子供たちへの影響についても問題ないと言えるのか、どこまでが生体としての人にとっての許容範囲なのか、もう一歩深く捉え直していく必要があると感じるところです。

 善にも悪にも通じる科学技術をどのように利用するか、倫理観の問題でもございますが、利便性の追求や商業ベースでのみ物事が動いていくというのでは、いずれどこかで大きなしっぺ返しが来るのではないかと危惧するところでございます。

 一方、デジタルデバイドの解消、弱者に対する思いやりという視点も大切であると思います。先日、障害者情報アクセシビリティー、コミュニケーション施策推進法が成立いたしましたが、障害者や高齢者などもきちんと情報通信技術の恩恵が得られるよう、いま一度、誰一人取り残さない、人間を幸福にするための科学技術という視点を科学技術・イノベーション推進の共通の基盤に据えておく必要があると思いますが、小林大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

小林国務大臣 私、政策を考えているときに、常に国力のマトリックス、図というのを頭に置いていまして、それは、国家戦略の根幹はやはり経済と安全保障だと思っていて、その二つを下で支えているのがイノベーションだと思っています。そのイノベーションを根幹で支えているのが人づくり、教育だというふうに私は思っていて、なぜかといえば、イノベーションの成果を生み出すのも人ですし、その生み出されたイノベーションの成果を世の中のためにプラスに使うのか、マイナスに使うのか、それを決めるのも人なので、やはり全ての根幹に人づくりがあると思っているんです。

 そういう観点からしますと、委員が今御指摘された、科学技術が高齢者や障害者を含めてあらゆる人々に恩恵をもたらして人々の幸福に貢献するという視点は、私は重要だと思っています。

 この点、科学技術・イノベーション政策の長期的な方針である第六期の基本計画におきましては、我が国が目指すべき未来像であるソサエティー五・〇につきまして、経済的な豊かさの拡大だけではなくて、一人一人の多様な幸せ、いわゆるウェルビーイングを実現できる社会として掲げておりまして、まさに人々を幸福にするための科学技術という視点を土台に据えているものであります。

 この基本計画の二年目の実行計画として、先ほど触れさせていただいた統合イノベーション戦略二〇二二を閣議決定したところでございまして、この戦略も踏まえて、今後とも、ウェルビーイングなどの人々を幸福にする科学技術をしっかりと推進し、その結果として、ソサエティー五・〇の実現に向けて、政府一体となって進んでいきたいと考えます。

日下委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 次に、今月から始まった線状降水帯の予測、予報について質問いたします。

 広島市安佐南区、安佐北区では、平成二十六年八月二十日に発生した土砂災害で七十七名もの貴い命が犠牲となりました。

 災害の背景として、地質的には、土石流や斜面崩壊が起きやすい花崗岩質であったことに加え、比較的短時間、夜中の一時から四時の間に、累加雨量三百ミリに迫る非常に強い雨が、線状に延びた地域に集中して降ったというのが特徴です。線状降水帯は、この豪雨災害から注目されるようになり、その後も度々耳にすることになりました。

 線状降水帯は、海上の水蒸気量や陸上の地形、湿度などが複雑に関係するため予測は困難と言われてきましたが、民間船舶の協力も得て観測網を強化し、スーパーコンピューター「富岳」の分析を駆使し、予測され、発生の十二時間前から六時間前には予報できるようになったと報道されています。人命を守るという意味では、三十分、一時間といった予測時間の短縮は大きな意味を持ちます。また、地域の絞り込みも含め、精度の高い予測が今後の住民の避難行動を左右します。

 予測時間の短縮や精度の向上、避難情報を出す自治体との連携強化に向けた取組について、豪雨災害が発生しやすいシーズンに入り、国民の関心も高まっていると思います。分かりやすく説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、近年、線状降水帯による大雨災害が頻発しております。このため、気象庁では、船舶を活用した水蒸気観測の拡充を始めとして、線状降水帯の発生に結びつく大気の状態を正確に把握するための観測機器の整備等を進めております。加えて、大学や研究機関と連携し、スーパーコンピューター「富岳」も活用しながら、線状降水帯の予測技術の高度化に取り組んでいるところでございます。

 今般、六月一日から、線状降水帯による大雨の可能性を半日程度前から予測する、お伝えするとしたところであり、現状の予測精度を踏まえ、全国を十一のブロックに分けた地域の単位で情報を発表することとしております。

 今後、段階的に予測精度の向上を図りながら、令和十一年には市町村単位に絞り込んで情報を発表できるようにしていきたいというふうに考えております。

 また、各種防災気象情報を自治体において理解、活用いただくために、自治体との連携強化も大変重要であるというふうに考えているところでございます。気象庁では、日頃から、自治体の防災担当者や市町村長と顔の見える関係を構築し、災害時には、ホットラインや気象庁防災対応支援チーム、JETTと呼んでおりますけれども、の派遣により気象状況の解説を行うなど、自治体の防災対応を支援しています。加えて、地域の気象に精通した気象庁OB、OGや気象予報士に気象防災アドバイザーを委嘱し、自治体での防災対応に活用いただく取組を推進しているところです。

 頻発する線状降水帯による大雨災害から国民の皆様の命と暮らしを守るために、これら予測精度向上や自治体との連携強化等にしっかり取り組んでまいります。

日下委員 ありがとうございます。

 こうした自然現象の分析、予測は、日本はもとより、世界の国々が求めている技術であろうと思います。人命を守り、世界に貢献する取組として、全力を尽くしていただきたいと思います。

 次に、i―Constructionの可能性について質問いたします。

 建設業従事者の高齢化が進み、建設業界の人手不足は非常に深刻です。このままでは、インフラの整備や老朽化対策、災害復旧、住宅建設などに支障を来し、国家の衰退にまでつながることが危惧されています。

 そのため、人手不足を補い、生産性向上や経営、労働環境の改善を図るため、二〇一六年から、建設現場のあらゆるプロセス、例えば測量や設計、施工、検査、メンテナンスなどにICT技術を活用するプロジェクト、i―Constructionが進められてきました。ドローン等の活用により、砂防ダムなどを山中に建設するための測量や設計、点検など、既に様々なところで業務効率化や生産性向上で成果を上げております。

 今後、民間企業等が持つ先進技術をフルに活用することにより、建設現場のICT化を加速させ、ICT建機の導入、そして部材の規格の標準化等を進め、天候等に左右される施工時期の平準化を急ぐべきと考えます。それにより、労働環境も大きく改善されます。

 業界の方から話を伺うと、一連の工程全てを3Dデータ化し、建機、重機に直接用いて遠隔操作や自動運転が始まるまで、技術的にはもう少し時間がかかる、また、それを進める企業の資本規模の大小やデジタル人材の育成、確保などの課題もございます。

 ICT化を設計から施工、管理まで一気通貫で行えるシステムの完成、普及のためには、これまでの取組の強化とともに、特に中小企業に対する国としての支援が必要であると思います。激甚化、頻発化する自然災害への備えやインフラの老朽化対策、さらに建設人材不足にとっても喫緊の課題でございます。

 今後の取組、決意など、国土交通省に伺います。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省では、建設現場の生産性向上に向け、平成二十八年度から、調査、測量から設計、施工、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスにおいて、ICTの活用等に取り組むi―Constructionを推進しているところでございます。

 このうち、ICT施工につきましては、ICT施工を経験した企業の割合が、大手建設企業では直轄工事受注企業全体の九割に達しているのに対しまして、中小企業では約五割にとどまっており、委員御指摘のとおり、中小企業への普及が課題となっていると認識しております。

 そのため、国土交通省としては、中小企業への普及が非常に大事だと思っておりますので、その環境整備に努めているところでございまして、例えば、地方整備局等における中小建設企業を対象としたICTに関するアドバイザーによる支援、講習等の実施、中小建設企業が施工する比較的小規模な現場でも効果的にICT施工が可能な小型のマシンガイダンスバックホーの基準の整備、小規模な現場用に、汎用性が高く、容易に現場導入できるモバイル端末を用いた出来形管理の要領の整備などに取り組んでいるところでございます。

 引き続き、ICT施工の普及拡大等を通じた建設現場の生産性向上に向けて、i―Constructionを推進してまいります。

日下委員 ありがとうございます。

 こうした分野でも、科学技術立国日本の再興を図るべく、更なる取組をお願いしたいと思います。

 次に、自然災害の名称における西暦使用について質問したいと思います。

 例えば、二〇一四年の広島における豪雨災害は平成二十六年八月豪雨、二〇一八年の西日本豪雨は平成三十年西日本豪雨と和暦が使用されています。

 災害の記憶を防災に活用するためには、災害がいつ発生したか、そして、どのような周期で発生しているかが重要です。そのためには、専門家だけでなく、一般の国民にも西暦で記憶されるのが望ましいと思います。大災害が世界全体の経済に影響を及ぼす時代であり、日本の災害も世界の災害として捉える観点が必要となります。

 あの東日本大震災は、私もそうですが、多くの国民が二〇一一年三月十一日という西暦で記憶している事実には意味があると思います。ちなみに、関東大震災は一九二三年九月一日、来年九月でちょうど百年ということが容易に分かります。

 自然災害の名称については西暦を用いる、せめて和暦と西暦を併記する方向で検討できないか、気象庁の御見解を伺います。

森政府参考人 お答えいたします。

 気象庁では、防災関係機関等による応急復旧活動の円滑化や、災害の経験、教訓の後世への伝承を目的として、顕著な災害を起こした自然現象について、名称を定めることとしております。

 自然現象の名称のつけ方につきましては、有識者や報道関係者へのヒアリングを踏まえて平成三十年に気象庁で考え方を取りまとめており、原則的には和暦を使用することとなっておりますが、文書等での表記の上では西暦も併記できることとしております。

 この趣旨を関係者の皆様に十分に周知することにより、西暦を効果的に活用していただけるよう努めてまいります。

日下委員 ありがとうございます。

 いよいよ、科学技術・イノベーション、大学の改革も含め、国際化の時代に入っておりますので、しっかりこの辺も踏まえて、西暦の使用ということも積極的に考えていただきたいというふうに思います。

 次に、知の基盤と人材育成の強化、ここでは、女性研究者の育成、活躍について質問いたします。

 理工系分野への女性の進出を後押しする流れができてまいりましたが、大学における女性研究者の声を先日伺ってまいりました。大学内には、保育施設、学童保育、ベビーシッター利用割引券など、そういう制度ができまして、かなり充実してきたとのことでしたが、いざ子供が急な病気や自身の出張などがあった場合には大変に困ることがあると。

 ただでさえ、研究と教育の先端を走るのは、男女を問わず常に追われているような心境という状況の中で、女性にはいまだこうしたハードルがあります。女性研究者の育成、更なる活躍のためには、場合によってはリモート授業やリモート会議も活用するなど、よりきめ細かで、柔軟で、十分な支援が必要であると思います。

 このジェンダーギャップ解消に向けた今後の取組について、小林大臣の御決意を伺いたいと思います。

小林国務大臣 総合科学技術・イノベーション会議、いわゆるCSTIにおきまして、我が国の教育、また人材育成の在り方につきましてワーキンググループを設置いたしまして、去年の夏から検討を重ねて、政策パッケージを今月の二日に決定いたしました。

 このパッケージの中で、女性研究者の活躍促進に向けたジェンダーギャップの解消に向けまして、例えば、女性は理系に向いていないといった根拠のないバイアスを排除していくための社会的機運を醸成していくことですとか、また、理系分野で活躍する女性のロールモデルを発信していくこと、また、多様な専門家が教壇に立てる教育免許制度の改革、高校改革、入試改善、また、大学の学部や修士、博士課程の再編、拡大、こうした点に関係府省が連携協力して速やかに取り組むこととしております。

 今委員御指摘のように、研究者として就職した後のライフイベントに伴う研究中断ですとかキャリアパスそのものへの不安、こうしたことを解消していくことは重要な課題であると考えております。

 したがって、出産や育児といったライフイベントと研究を両立させていくための環境整備やサポート制度を充実させていく必要があると考えておりますし、また、研究を中断した後も円滑に研究現場に再び復帰して研究に専念していただくための支援、こうしたものを引き続き推進していく必要があると考えています。

 女性の研究者の方が安心して研究活動に従事できる環境を構築して、また女性研究者の裾野の拡大につながるように、関係省庁と連携して、今申し上げたパッケージの速やかな実施に取り組んでいきたいと考えます。

日下委員 ありがとうございます。

 女性研究者の可能性を最大限に引き出していくこと、大変重要だと思います。また、女性の働きやすい環境というのは、男性、女性問わず全体が働きやすい環境につながる、これからの人材育成にとっても大切な視点だと思いますので、しっかり取組の方、よろしくお願いしたいと思います。

 ともあれ、科学技術の振興こそが、日本が国際社会で生き残っていく道だというふうに思いますし、また世界をリードしていく、そういう道だと思いますので、しっかりこれからも科学技術、私もしっかり力を尽くしてまいりたいと思います、どうぞこれからもよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

手塚委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 神戸から参りました、立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、首都機能のクラウド化について伺います。

 昨年の三月、第六期の科学技術・イノベーション基本計画が策定をされました。これは、科学技術基本法から二十五年ぶりに、科学技術・イノベーション基本法となって初めての基本計画、イノベーションを新しい柱に位置づけたところが最大のポイントであります。

 どのような方向性のイノベーションか。

 配付資料、一枚めくって、資料2のページを御覧ください。

 中段にある、我が国が目指す社会、ソサエティー五・〇の二本柱の一つ、左側が、持続可能で強靱な社会であります。災害や感染症などの脅威に備えましょうと書いてある。そのために必要な政策は、左下、持続可能で強靱な社会への変革、(1)に政府のデジタル化、そして(5)にスマートシティーと、二つのことが別々に書かれてあります。

 このスマートシティーとはどういうものか。

 配付資料を一枚戻して、資料1を御覧ください。

 現在、政府は、二〇二五年に向けて、百の地域で都市OSを実装する目標を掲げています。都市OSというのは、スマホやパソコンのOSと同じく、都市サービスを実装するための共通の土台であります。つまり、単に各地でばらばらにデジタル技術を使って新しい都市サービスを開発するデジタル化ではなくて、まず共通の都市OSをしいて、その上に、どの都市でも使える、横展開可能な形で都市サービスを立ち上げましょうということであります。

 翻って、この我々の永田町、霞が関には、日本の首都機能の中枢が集まっています。私は今、議院運営委員会で国会のオンライン化などを議論しておりますが、単に国会の中をデジタル化あるいは霞が関省庁をデジタル化するだけでは、スマートシティーとはなりません。

 都市OSに載る形で霞が関と永田町の首都中枢機能をクラウド化、アプリ化すれば、感染症や自然災害あるいは安全保障上の問題で仮にこの地域が使えなくなったとしても、ほかの都市に一時的に首都中枢機能アプリを載せ換えることで首都機能が維持できます。科学技術・イノベーション基本計画の最初の柱である、持続可能で強靱な社会が実現できるわけであります。

 お伺いしますが、都市OSに載る形で霞が関と永田町の首都中枢機能をクラウド化、アプリ化すべきだと考えますが、政府の御所見を伺います。

米田政府参考人 お答え申し上げます。

 スマートシティーの都市OSは、先ほど委員から御紹介いただいたとおりでございまして、スマートシティーにおける機能やデータの連携を実現する際の基盤となるシステムでございまして、今のところ、まずは、主に住民向けに提供を目指すスマートシティーのサービスに応じまして、各地域で整備が進められているところでございます。このため、現状では、政府、首都機能をクラウド化、アプリ化する具体的な取組にはまだ至っていないものと考えてございます。

 一方で、各地域のスマートシティーの取組におきまして、スマートシティーの標準的な設計の考え方であるリファレンスアーキテクチャーを適用するなど、スマートシティーの分野間、都市間のデータの連携やサービスの相互運用を容易にする仕組みの検討、構築を始めているところでございます。

 今後、このような共通の枠組みの下、スマートシティーによる地域の公的サービスのデジタル化が進み、また行政機能のデジタル化が進み、これらの連携が図られることにより、将来的には議員御指摘の行政機能のクラウド化にもつながる可能性があると考えているところでございます。

 以上でございます。

井坂委員 ありがとうございます。

 デジタル化したのに、結局、この霞が関と永田町にいなければ仕事ができない、東京しか首都機能を担えないということでは、持続可能で強靱な社会にはならないということは確認をしておきたいと思います。

 次に、その先にある首都機能移転について今日は議論したいと思います。

 東京一極集中の弊害は古くから言われ、その解決策として首都機能移転が議論されてきました。一九九九年に国会等移転審議会が移転先の候補として三つの地域を選定しましたが、その後、政府の方針転換もあり、三つの地域から移転先を絞り込めないという中間報告とともに、首都機能移転の議論が止まっています。

 しかし、首都中枢機能をクラウド化、アプリ化すれば、莫大な公共事業費をかける必要なく移転は可能であります。しかも、三つの地域で首都を取り合いするのではなくて、例えば十年ごと、二十年ごとに首都機能を順番に移転をしていくということすら可能であります。首都機能移転に合わせて各地方が長期的な百年単位の戦略を練り、また、首都を運営した経験のあるスマートシティーというのが複数できれば、日本の強靱性、持続可能性が飛躍的に高まります。現在、エジプトとインドネシアで首都移転の計画が進んでいます。

 大臣にお伺いしますが、科学技術・イノベーションによる、まずスマートシティー、そして、その先に首都機能移転をビジョンとして位置づけてはどうかと考えますが、いかがでしょうか。

小林国務大臣 先ほどの政府参考人の答弁のとおり、まず、現状のスマートシティーの取組というのは、まず防災、あるいは健康、あるいは地域交通、こうした住民向けのサービスを対象としたデジタル化の取組を中心に進められております。こうしたスマートシティーの取組では、オープンなシステムによって相互の連携が図られるように、共通の基本理念また原則の下で取組を進めているところであります。

 この基本理念や原則につきましては、国や地方の行政機能のデジタル化を目指していくデジタル社会の基本原則と共通の方向性を有していると考えておりまして、こうした共通の考えに沿って取組を進めていくということで、社会全体のスマート化、すなわち科学技術・イノベーション基本計画が目指すソサエティー五・〇に向けた基盤づくりにつながると考えております。

 こうした取組を行っていくことで、議員御指摘のような行政機能のクラウド化ですとか、ひいては社会全体のレジリエンシーの確保にも将来的につながっていく可能性があるんだろうというふうに考えています。

 その先に、首都機能の移転につきましては、当然、立法府、司法、様々な関係者がいるということもありますし、また、委員御指摘のように、レジリエンスな仕組みになるというプラスの面もあると思いますが、仮に、今、経済安全保障も担当しているので、国内の通信状況が全てダウンして途絶してしまった場合に何が起こるのかとか、国家機能をどういう状況であっても維持していくために様々な複数の視点から考えていく必要があると思っておりまして、そういったことを申し上げた上で、委員御指摘の点というのは極めて重要だというふうに考えておりますので、そうした視点も含めて、まずはこのスマートシティー、進めていきたいというふうに考えています。

井坂委員 ありがとうございます。

 是非、今掲げておられる基本計画、結果的にそうなる可能性はあるというところから、今大臣言ってくださったように、やはり首都機能が、いざとなれば移転ができるということは極めて大事だと思いますので、そこを目指してやっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、創造的人材、とりわけ、優秀な科学者の誘致について伺います。

 ちょっと時間がないので、三問目、一問飛ばしますが、これは、私、十年来の持論でして、予算委員会でも何度か議論させていただいております。創造的人材、一つは起業家、それから二つ目がアーティスト、デザイナー、そして三つ目が科学者、研究者、この三通りの、新しいものをつくり出す方々を、もちろん国内でいかに育てていくかと同時に、いかに海外のそういう優秀な創造的人材に日本に来ていただくか、居着いていただくかということが大事だ、こういう考え方であります。

 その中で、本日、資料の3を御覧いただきたいんですが、大変よい取組だというふうに思います、世界トップレベル研究拠点プログラム、WPI。日本の中で特に優れた研究室に三割の方、外国の研究者を入れるという形で、まさに世界トップクラスの科学者が集まる研究室を毎年少しずつ増やしている、こういう状況であります。

 一つだけ問題があるのは、まだまだ、このよいプロジェクトが、肝腎の来てほしい海外の研究者、あるいは海外の資金提供者に認知度が低いという課題がございますので、これは質問しようと思っていましたが、ちょっと飛ばさせていただきますが、指摘にとどめておきます。

 その上で、四問目、大臣に伺いますが、海外の優秀な研究者を誘致するために、まず第一に言われているのが、やはり十分な報酬であります。ここについては、今回も予算などで様々な新しい取組が出されております。

 そして第二に、トップレベル研究者がいる。やはり優秀な研究者は優秀な研究者と一緒に仕事がしたいということで、この第二の要素に当たるのが、先ほど御紹介をした世界トップレベル研究拠点プログラムだというふうに思います。

 そのほかにも、幾つかこの優秀な研究者を誘致するために足りない要素が日本にはあるのではないかと思いますが、大臣の御所見を伺います。

小林国務大臣 今、一問飛ばされたということですけれども、この認知度が低いということについては、しっかりと政府挙げてそこの指摘を真摯に受け止めていきたいと思います。

 それで、今、海外の優秀な科学者、研究者をどうやって誘致するかというところにつきましては、そもそも、今、人材の国際間の獲得競争というのは激化しておりますので、これは我が国として本当に力を入れてやらなきゃいけないと思っております。

 当然、外国から優秀な人材を我が国に引きつけていくためには、委員が今御指摘いただいた報酬、十分な研究費ですとか給与、待遇、研究者支援者などの、研究者本人に対するバックアップ、研究環境を充実させていくということは当然重要だと思っておりますけれども、やはりそれだけだと十分ではないというふうに思っていて、やはり家族を含めた生活支援を、こうした取組を進めていくことが重要だと考えておりまして、今委員が御紹介いただいたWPIにおきましても、海外から研究者を呼び込むための研究環境を醸成することに加えまして、子女教育手当といった家族を含めた生活支援ですとか、御家族の就職や教育もサポートしておりまして、こうした取組の横展開を更に図っていく必要があると考えています。

 第六期基本計画に基づきまして、こうした取組を進めていきたいと思いますし、海外の優秀な研究者を引きつけていくという意味では、新たに創設された大学ファンドも活用して、こうした優秀な人材の確保に向けて取組を進めていきたいと考えます。

井坂委員 ありがとうございます。

 今大臣が言ってくださった要素、おっしゃるとおりで、更に加えるならば、いろいろな研究結果を見ると、日本であと足りないのが、寛容性と言われるようなスコアがやや足りないというふうにも見ておりますので、先ほど議論のあったジェンダーギャップの問題等も含めて御検討いただきたいというふうに思います。

 最後に、オープンサイエンスについて伺います。

 科学技術・イノベーション基本計画、資料2、この二ページの右下、(2)のところを御覧いただきたいと思います。

 新たな研究システムの構築として、オープンサイエンスが政策の柱になっています。このオープンサイエンスというのは、研究成果である論文だけでなくて、その研究途中のデータあるいは研究方法なども公開をして科学者間で共有をするという新しい科学研究の方法であります。ある研究者の途中データを、全く別の研究者がそのデータを使って新しい方向に研究を発展されたり、あるいは、分野をまたがる新しいアイデアを得られることで科学技術の進歩が加速をする、こういう話であります。

 このオープンサイエンスのネックとなるのが、研究者が自分の膨大な途中データを公開、共有する作業が大変面倒なことであります。現在、政府は、どの研究者が自分の手元のパソコンにどんな途中データを持っているか、こういったことを目録、目次、各自に作ってもらうという第一歩から今始めておられます。しかし、この面倒な作業をして目録や途中データを研究者が公開をしても、それを使って別の研究者が成果を上げたときに、まさに、データ提供者が何の利益もない現状では、データの共有損、取られ損ということになりかねません。

 そこで、大臣に伺いますが、ある研究者が提供したデータがほかの研究者に使用されることによって、データ提供者もその研究成果が一部認められたり、あるいはデータ利用者が得た利益の一部がデータ提供者に還元されるなど、データを提供する側のインセンティブをどう設計するか、伺います。

小林国務大臣 これも、御指摘の点は非常に重要だと思っていまして、今後、データをいかに集めてそれを使い倒すかというのが国力を左右する時代に入っていると思っています。

 これは、研究データに限らず産業データも同じだと思っていて、よく、データのプラットフォームをつくるというのは、言うのは簡単ですけれども、当然、多分、データを使う側からすれば、自分のデータは出したくないけれども他人のデータは使いたいということになるので、いかにインセンティブをつくって提供してもらうかということが重要だと思っています。

 これは研究データについても御指摘のとおりだと思っていて、したがって、第六期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、今、政府としては、研究データの中核的なプラットフォームや検索体制の構築をして、産学官における幅広い利活用を進めています。

 加えて、研究データの管理、利活用の取組状況を、研究者あるいはプログラムあるいは機関などの評価体系に導入して、研究データを提供する人がプラスに評価されるようなインセンティブを高める、そうした取組を今足下では進めているんですけれども、今後、将来的には、やはり産学官による利活用を更に進めなければいけないですし、データの提供者にデータの利用者が得た利益というものを還元できる、そうしたことも視野に入れて取組を進めていかなければならないと私自身考えているところであります。

井坂委員 利益の還元というところまで言及をいただきまして、ありがとうございます。

 まさにそういう、利益を遡って還元をする、昔は難しかったんですが、現在、デジタルの世界では、ブロックチェーンを使った新しいインセンティブ設計の方法が広まっています。

 プロジェクトの主宰者がトークンと呼ばれる暗号通貨のようなものを発行して、協力者の間でトークンをやり取りしながら、仕事を頼んだり頼まれたりというようなことをしていく、あるいは、データを出してください、データを使わせてください、そういうことをトークンを介在してやっていく。プロジェクトが成功すると、まさにそのトークン自体の価値が上がって、プロジェクトに貢献した人ほど多くのトークンを持っておりますので、その分多くの利益分配が得られる、こういった形であったりとか、あるいは、プロジェクトに貢献して多くのトークンを持っている人ほど組織の中で発言権が増す、DAO、ダオと呼ばれている分散型自律組織という新しい組織形態もデジタルの世界では始まっています。

 ブロックチェーンの技術によって、ある研究成果に使われた途中データ、そのデータを導き出すのに使われたもう一つ前の研究データ、こういうふうにどんどん遡って、全ての使われたデータを記録するといったことも可能な時代に入っています。二十年前に自分がやった実験の途中データが、回り回って、巡り巡って、今年のノーベル賞研究に貢献をしていた、こういうことも追跡可能になっています。

 我が国で、今おっしゃったような、産業分野ごとに、素材とかゲノムとか一部の研究分野でオープンサイエンスのプラットフォームづくりが始まっています。是非、今いろいろなプラットフォームがある中で、ブロックチェーンを活用したソーシャルトークンやDAO、分散型自律組織などのインセンティブ設計をいろいろと試行すべきではないか、大臣の御見解を伺います。

小林国務大臣 今委員から、ソーシャルトークンですとかいわゆるDAOの、新しい技術の話を出していただきまして、様々な視点を提供いただいていることに感謝申し上げます。

 科学技術・イノベーション分野におきましても、先ほども申し上げた中核的なプラットフォームですとか、また、それに加えて、材料分野あるいはライフサイエンス、こうした研究分野ごとのプラットフォーム、この構築というものを通じて、研究データを保存し、共有し、また公開していくための取組というものを先行的に行ってきているところであります。

 こうしたプラットフォームの構築に当たりましては、最新の知見を活用して、より効果的に研究データの幅広い利活用を進めていくことが重要であるというふうに考えておりまして、ウェブ3、ウェブ3・0に代表されるようなブロックチェーンなどの新しい技術の活用も視野に置きながら、データ提供者にどうすればそのインセンティブを与えられるのか、こうしたことをしっかりと考えていきたいと思いますし、より信頼性の高い、強固なプラットフォームの形成にこれからもしっかりと取り組んでいきたいと考えます。

井坂委員 ありがとうございます。

 終わります。

手塚委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区、藤岡隆雄でございます。

 本日も、地元栃木県第四区の皆様に感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げまして、質疑の方に入らせていただきたいと思います。

 最初に、小林大臣、ちょっと前向きな話からさせていただきたいと思います、順番を変えまして。光電融合技術、この技術の後押しに関してちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 消費電力を大幅に下げる、また、光、強力なデバイスを作る。NTTさんも、いわゆるIOWNという構想を打ち立てられて、今非常にリードをされている。また、NTTや富士通さんも連携をしてこの技術の開発をするということも聞こえてまいります。

 非常に、この光電融合技術に関して、やはりゲームチェンジになる、日本は今世界をリードしているというふうなことも言われておりますが、まず、光電融合技術の開発における日本の今世界における位置づけ、さらにはこの技術の可能性につきまして、総務省の方からまず御答弁をお願いできればと思います。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御質問の光電融合技術でございますが、これは、電気による通信と光による通信の融合をいたしまして、ネットワークの超高速化、それから大幅な省電力化を同時に実現するものでございます。

 この技術は、二〇三〇年代の社会や産業のデジタルインフラを支える次の世代の通信であるビヨンド5G、この実現に資する極めて重要な技術でございます。我が国が技術力を有しておりまして、世界最先端のものであるというふうに認識をしております。

 このため、総務省といたしましても、我が国の国際競争力を強化する観点から、このビヨンド5Gの早期実現に向けて、令和三年度の補正予算、本年度の予算において合計三百億を今措置しております。この光電融合技術を含めて、グリーンな情報通信技術の研究開発を強力に進めていきたいというふうに考えてございます。

 この研究開発で得られました成果でございますが、関係省庁とも連携をして、これは二〇三〇年と先ほどビヨンド5Gを申し上げました、研究開発の成果が出ました二〇二五年以降、順次、社会実装を推進をいたしまして、我が国が先端技術で世界をリードできるように取り組んでいきたいというふうに思っております。

藤岡委員 ありがとうございます。

 今、総務省さんの方から世界最先端というふうにもおっしゃっていただきました。非常に、是非世界をリードしていただきたいということを思いまして、我が党の大島敦先輩議員も、従来から、本当に、国も後押しをという話もさせていただいているというふうに思います。

 今、世界最先端を走っているこの光電融合技術の開発、普及に関して、是非、小林大臣にも力強く後押しをしていただいて、世界の先頭を日本が歩めるようにしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

小林国務大臣 いわゆる光電融合技術につきましては、圧倒的な低消費電力また超高速大容量などの利点がありますので、今答弁があったとおり、ビヨンド5Gを含めて、次世代の通信インフラ、これを支えるキーテクノロジーだと私は考えています。

 政府としては、次世代の通信インフラを支える半導体などの技術について第六期の基本計画を通じて重点を置いてきたところですけれども、今申し上げた半導体について言えば、今はもう日本の半導体産業は凋落しているわけです。それを再生していかなきゃいけないと私は思っていますけれども、その第一歩として、先般、TSMCが熊本に投資を決めた先端ロジック半導体の製造拠点。それと同時に、先般の日米首脳会談でも、共同声明にありましたが、次世代の半導体、この共同タスクフォースを立ち上げていく。

 それも大変なことなんですけれども、更にその先を見ていくことが私は重要だと思っていて、その一つの有力な候補として、技術として挙げられるのは、この光電融合技術だと考えています。これは、経済安全保障でいういわゆる戦略的不可欠性というものに当たり得るものだと思っていますし、ただ一方で、今世界最先端という話がありましたけれども、各国が莫大な投資をする中で、官民、産学官一体となってやっている中で、これは手を抜いていたらいつ抜かれるか分からない、そういう危機感を持って、私自身、今の担当大臣という立場でしっかりと後押しをしていきたいと考えます。

藤岡委員 ありがとうございます。前向きな御答弁ありがとうございました。

 本当に、各国も莫大な投資をしてということで今お話がありました。日本も更に大胆な投資をして、間違っても今せっかく最先端を走っているものが抜かれることがないように、これは是非取組の方をお願いをしたいということを思います。

 総務省さん、大丈夫です、もうこれで。ありがとうございました。御退出いただいて結構でございます。

 続きまして、研究者のいわゆる雇い止めの問題ということをちょっと取り上げさせていただきたいと思います。

 小林大臣も各委員会で既にこの議論をよくお聞きになられていると思いますけれども、いわゆる理研の研究者の方、大学の研究者の方が令和五年三月末という期限の前に雇い止めになってしまうのではないかということの今懸念があり、先日来報道にも上がっていると思います。

 これは、改正労働契約法の中で、五年を超える場合にいわゆる無期の雇用に転換というふうな話が定められ、しかし、研究者に関しては、十年、これは五年ではなく十年ということの特例が定められた。この特例の十年の是非については、ちょっとここでは今議論は控えますけれども、私はちょっといろいろなことを思ってはいますけれども。

 十年ということで、ちょうど十年前にこの法律が改正されて、それで、令和五年の三月末にちょうどいわゆる十年の期間を迎えるというふうな研究者の方もいらっしゃるというところで、いわゆる三月末で十年となる研究者、そして、その中で十年以内の雇用期間となっている研究者の方の今の実態、事実関係につきまして、文部科学省さんの方からお答えをお願いしたいと思います。

田中副大臣 文部科学省において、所管の国立大学法人八十五法人及び大学共同利用機関法人四法人に対して確認したところ、本年二月時点で、有期雇用職員のうち、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律等による労働契約法の特例の対象については、令和五年三月三十一日で通算の雇用期間が十年となる者の数が三千九十九人、そのうち、各法人の労働契約で通算雇用期間を十年以内としている者の数が一千六百七十二人となっております。

藤岡委員 今、一千六百七十二人、十年以内という話もございました。

 こういういわゆる十年特例というふうな中での有期の雇用を定められた研究者に関しまして、この期間の間に既に無期雇用に転換された方が例えばどのぐらいいるのかとか、それから、既に大学なりで無期雇用にしようと、いわゆる産総研などでは無期雇用にというふうなことも出ていると思います。

 いずれにしましても、この十年、既に無期雇用に転換された方の実態、あるいはこれから例えば無期雇用にもうしようとしているんだというふうなところの実態ですね、転換した方はどのぐらいいらっしゃるかということで、文部科学省さんの方にちょっと教えていただきたいと思います。

田中副大臣 労働契約法の特例の適用者で今年度末において通算雇用期間が十年となる者の数は把握しておりますが、そのうち、無期転換した者の数については把握いたしておりません。

藤岡委員 今、把握をしておらないというふうな御答弁でございました。正直、ちょっとこれは大至急、私は把握をしていただいた方がいいと思いますし、さっき小林大臣も、まさに人づくりが根幹であるというふうな御答弁をされておりました。まさにそれが私も共感をするところでございますが。

 やはり、博士課程に進学をしないというふうな理由がいろいろな調査会の資料などでも出ておりますけれども、こういうまさに不安定な研究者の、博士課程に行った、研究者になった、ところが、何か雇い止めになってしまう、無期にされないんだ。いや、もちろん、いろいろな競争という視点も分かります。しかし今、これだけ、科学技術の再生、再興、さらに論文数の低下、いろいろなことが叫ばれている中、また博士課程に進学をする方が低迷をしているという今の現状、こういうことを考えたときに、このまさに雇い止めというふうな話を、姿を見たときに、やはり、修士課程に今いる方が、いや、博士の方にどうなんだ、博士課程の後期はどうなんだ、また研究者になるのはどうなんだと、非常にこれは大きな不安になってくると思うんです。

 したがって、このやはり実態、無期雇用に転換する方針が今どのぐらいあるのか、あるいは無期雇用に転換した方はどのぐらいいるのか、これについてよく実態を把握して、雇い止めの不安が起こらないような、場合によっては、制度的な措置、予算の措置などしかるべき措置を取るべきだと思うんですけれども、これは小林大臣、まずお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

小林国務大臣 我が国の研究力を向上させていくためには、私は、研究者が腰を据えて研究に打ち込める環境を整えていくことが重要だと考えているんです。そうした観点からは、研究者の雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることは大変重要だと考えています。

 個別の法人の業務運営につきましては、各法人を所管する省庁において適切に対応いただくものではございますけれども、意欲と能力のある研究者の方がそれにふさわしい処遇を得て研究に取り組めるようにするということが、我が国全体の研究力の強化にとって重要だと考えます。

 政府、私の立場といたしましては、研究の魅力向上や研究環境の改善を図って、我が国の全体の研究力が向上するよう取組を進めていきたいと考えます。

藤岡委員 労働契約法の趣旨にのっとった運用、こういう周知は、もちろんこういうことは必要だと思います。しかし、やはり実態をまず今把握をしていただいて、それでしかるべき措置を取っていただかないと。

 今、各省庁で対応というふうな御答弁でございましたが、まさにいろいろな各省庁の研究機関などもあって、それを調整していただくのがやはり内閣府の役割だと思いますし、そこを、まさに小林大臣のリーダーシップで実態をよく把握して、そしてしかるべき措置を取る、そういうふうなことで、やはり研究者がまさに腰を落ち着けた研究の環境をつくっていただく、やはり絶対これは必要が私はあると思うんですけれども。

 小林大臣、是非、実態把握、これを各省庁にしっかり働きかけていただいて、各省庁での対応ということではなくて、これはしっかり、科学技術を担当する大臣として働きかけていただいて、把握して対応していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

小林国務大臣 繰り返しになりますけれども、私が今考えている基本スタンスは今申し上げたとおりですけれども、やはり、まず各機関において、そしてそれを所管する省庁においてしっかりと見ていただく、それが大切だと考えています。

藤岡委員 今の御答弁、非常に残念な御答弁でございます。やはりこれは、本当に腰を落ち着けてできる環境にする。この雇い止めのところはよく把握していただくという必要があると思うんですね。

 これは文部科学省さんにもお伺いしたいと思うんですけれども、文部科学省さん所管のところ、少なくとも大学などを含めまして、この実態をよく把握して対応をしていただきたいということを思うんですけれども、いかがでしょうか。

田中副大臣 研究者等に対する無期転換ルールの十年の特例については、研究者等は、複数の有期雇用契約を繰り返しながら、多様な教育研究経験を積むことによって能力の向上を図り、テニュアポストなどの安定的な職に就いていくという特性を踏まえて創設されたと承知いたしております。

 本特例の適用から十年を超えることになる令和五年四月以降に本特例に基づき無期転換する研究者等が生じることも踏まえれば、まずこうした法律の施行状況等の把握を努めていきたいと考えております。

 本特例を直ちに変更することは考えておりませんけれども、このルールについてどのように考えられるか、適切な対応の検討が必要であると考えております。

 いずれにせよ、我が国の研究力向上のためには、一定の人材の流動性を確保した上、研究者が安定的なポストの獲得を含めた将来の見通しを持ち、研究に専念できる環境を整備することが重要であると考えております。今後も、人材の流動性の確保と安定的な研究環境の確保の両立を図ることにより、我が国の研究力の強化をしてまいりたいと思います。

藤岡委員 将来を見据えたということでございましたが、結局、この実態を、じゃ、把握されないということなんでしょうか。するのか、ちょっとお答えください。

田中副大臣 先ほども答弁いたしましたとおり、繰り返しになりますけれども、今後必要な対応を検討するためには、法律の施行状況等を把握する必要があると考えております。

藤岡委員 施行状況の把握というのは、まさにこの無期雇用に転換した方がどのぐらいいるのか、あるいは転換する方針なのか、各大学についてそれを、その実態を把握するということなんでしょうか。それをお答えください。副大臣、お願いします。(発言する者あり)時計を止めてください、済みません。時計を止めて。これは大事な話でございますから、本当に。

田中副大臣 失礼しました。

 本特例の適用から十年を超えることになる令和五年四月以降に本特例に基づき無期転換する研究者等が生じることになるため、その前後の状況を踏まえつつ、実態把握をする必要があると考えております。

藤岡委員 今、実態把握をする必要があるというふうにおっしゃっていただきました。では、実態把握、やりましょうよ、これは是非。これは是非、今、副大臣、ここで、やるということで、必要がある、やるということを表明していただけませんか。

田中副大臣 今申し上げたとおりでございます。

藤岡委員 そこまでやる必要があるとおっしゃっていただいて、これは本当に重要な話でございますから、ちょっとしつこく恐縮ですけれども、ここはやると言いましょうよ、副大臣。是非お願いします。政治決断です、お願いします。政治家としてお願いします。やりましょうよ、これ。

田中副大臣 繰り返しになりますけれども、その前後の状況も含めつつ、実態把握する必要があると考えております。

藤岡委員 副大臣、今、必要があるということをおっしゃっていただきました。

 小林大臣に改めて関連でお聞きしたいんですけれども、今、必要があるということをおっしゃっていただきました。これは、各省において所管する研究機関もあると思います。小林大臣も、必要があるという認識で、こうして各省に対してもその必要があるということをお伝えいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

小林国務大臣 無期雇用の転換ルールにつきましては、ルール適用の実態などを踏まえて、労働契約法令を所管する関係省庁において今後検討がされることになると承知しています。

 検討の結果を踏まえて政府として適切に対処してまいりたいと思いますし、内閣府としても、文科省などと連携して、研究の魅力向上を図らなければいけないと考えています。いわゆる大学ファンドを含めた大学研究環境の強化、また博士課程学生の経済的支援、そのほかにもありますけれども、こうした施策を通じまして、研究者が良好な環境で研究に専念できる環境を私の立場で構築していきたいと考えます。

藤岡委員 今ちょっとはっきり御答弁いただけませんでしたけれども、是非、よく実態を把握して、腰を落ち着けて研究者が研究できる環境、そして将来博士課程に進む方に対して安心感を与えるように、是非お願いをしたいということを思います。

 時間も押してきました。最後の質問にさせていただきたいと思います。

 今、十兆円ファンドの話が出てきました。世界と伍する大学、これにお金をしっかり出していく、こういうこと自体は私はもちろん本当に賛同したいと思います。ただ、ファンドという形式でやることについて、私は正直、今もちょっと疑問を持っております。

 といいますのも、十兆円のファンド、一・一兆円の出資のようなもの、自己資本比率においては一一・一%ぐらい。しかし、これは六五%株で運用するという話でございますから、非常に、二割株価が下がったら、一遍に自己資本を毀損して債務超過というような状態にもなると思うんですね。

 これから本当に、いわゆる日銀の金融政策がどうなっていくんだとか、いろいろな問題もあります、日銀が保有しているETFはどうなんだとかいろいろな問題もあります。ここでまた政府がわあっと株を公的に投下をしていって、またその運用益だと。ただこれは、GPIFや年金と違うのは、年金の場合は、基本的に年金財源の九割が保険料やあるいは国庫負担やいろいろなもので賄われていて、一〇%がいわゆる積立金の運用なりそういう世界のところになっているというふうに私は理解をしております。

 そういう中で、大学ファンドに関しては、元の九割の例えば保険料や何かというのもない、いきなり株の運用での、そこで全て行われてしまう。財務省の有識者の方からも非常に警鐘が発せられている。私、ふだん、別に財務省の財政の方針についてそんなに賛同することも少ないんですけれども、ただ、この警鐘に関しては、私は非常に重要な指摘もおっしゃっていると思います。

 これは、本当に損失が出て、大学に対してお金を出せないということも起きてしまう。こうなったらすごく不安なことも起きてしまう。これは非常に慎重に考えていただきたいと思うし、時限的に考えていただきたいと思うんですが、小林大臣、最後に御答弁をお願いしたいと思います。

小林国務大臣 まず、大学ファンドは文部科学省が監督を行って、いわゆるJSTで既に運用を開始しております。

 私の、内閣府という立場で申し上げますと、これに先立って、文科省と連携して、CSTI、総合科学技術・イノベーション会議の下に金融や資産運用の専門家によるワーキンググループを設置して、海外の運用機関における先進的な運用事例も十分に踏まえて、昨年の八月に大学ファンドの資金運用の基本的な考え方というものを策定したところです。この基本的な考え方では、政府出資、また財投を運用財源とする大学ファンドは、長期的な資金のシミュレーションに基づく分析を踏まえまして、適切なリスク管理の枠組みの下で自己資本をまた時間をかけて強化しつつ、安定的な事業運営を行うことは可能と判断されたところであります。この考え方に基づいてJSTが安定的な事業運用を行って、その運用について所管省庁である文科省が監督していくことになっていると承知をしております。

 いずれにしても、短期で捉えるのではなくて、やはり中長期で物事をしっかりと捉えていくことが私は重要なんだろうと考えるところであります。

藤岡委員 中長期であろうと、非常に警鐘を改めて発して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

手塚委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 まず、本委員会、三月に理化学研計算センター、スパコン「富岳」のオンライン視察、そして四月には、CSTIの委員の皆さんと勉強会も開催をさせていただきました。

 そして今日、委員会質疑、会期末は迫ったとはいえ、タイトなスケジュールの中でこうして質疑が行われること、手塚委員長、また松本与党筆頭の御尽力に改めて感謝を申し上げ、その思いを持って質問をさせていただきたいと思います。

 科学技術・イノベーション推進特別委員会、これは平成二十三年に、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するために新たに設置をされた特別委員会ということでございます。

 まず、小林大臣に認識を確認をさせていただきたいのですが、諸外国の動向や社会背景も含め、本委員会が果たす役割、ミッションをどのように認識されておるのか、確認をさせていただきたいと思います。

小林国務大臣 この衆議院の科学技術・イノベーション推進特別委員会につきましては、科学技術政策、そしてイノベーション政策に焦点を当てて議論を行うための委員会として、今先生御指摘いただいたとおり、平成二十三年に、政策提言機能をしっかり発揮する役割を担うという問題意識を踏まえて、与野党の皆様の協議の結果、特別委員会として設置されたと承知しています。

 昨今、先端技術をめぐる国家間の覇権争いというものが激しくなってきております。それは厳然たる事実としてあると思いますし、また一方で、気候変動ですとか、あるいは感染症対策、あるいは災害対応、こうしたことが大きな社会課題となっております。

 こうした状況の中で、科学技術・イノベーションをまさに核として国民の皆様の安心、安全を確保していくこと、また経済成長を実現していくこと、これは極めて重要だと思っております。

 少し前に私自身の頭の中の図というものを説明させていただきましたが、少し繰り返しますと、経済と安全保障があって、それをイノベーションが支えていて、最後、人づくりの教育が支えているという、私はそういう構図を持っておりますので、やはり科学技術・イノベーションというものが国力の根幹を左右するファクターだと思っておりますので、そうしたことにつきましてこの立法府の場で活発に御議論いただく場が設置されているということは大変意義深いことだろうと考えるところであります。

中島委員 これは国力に資するという大臣の御発言がございましたが、各国が本当にしのぎを削る、国際競争力が高まっている状況の中で、科学技術の振興とイノベーションの推進、これは死活問題とも言える、経済成長と雇用の拡大の原動力、活発な議論が行われることが本委員会のやはり目的と私も思っております。

 一方で、科学技術を推進していくと、その一方で課題も出てくるというのも事実でございます。例えば医療分野では、生殖補助医療、さらにはゲノム医療、この生命倫理に関する大変重要なテーマというものが、法案対応をする常任委員会では、こういうテーマについて議論を深めることがなかなかできない。

 私は、科学技術・イノベーション、これを推進する一方で、出てくる課題についても、今ちょっと例示しましたが、生殖補助医療であれば、同性婚カップル、また出自を知る権利や、また、我が国は、医療先進国の中で、人生百年と世界に類を見ない高齢化社会の中で、例えば尊厳死、こういうテーマについて、こういったことも、科学技術を推進する一方で、総合的な対策として、本委員会でそういう生命倫理に関わる議論も深める、こういった目的もあるのではないかと思うんですが、大臣、その件についていかがでしょうか。

小林国務大臣 この委員会の運びの在り方につきましては、まさに立法府におきまして御議論いただくことだと考えておりますけれども、科学技術によって優先的に解決すべき社会的課題について私がどういうふうに考えているかと申し上げますと、まず、政府としては、長期的な方針である第六期の基本計画がございまして、そこに、目指すべき社会像としてソサエティー五・〇というものが明示されている。そこでは、持続可能性と強靱性をしっかりと備えていくことで国民の安心、安全を確保していくこと、それと同時に、先ほども少しお話に出ましたけれども、いわゆるウェルビーイング、一人一人の多様な幸せをどう実現していくのか、これが重要な政策課題として掲げられていると認識しています。

 そこにどうアプローチしていくかというところの手段として科学技術というものは非常に重要な切り口だと思っていて、そうした我々を取り巻く脅威あるいは新しい課題にどう科学技術の点から対応し、持続可能で強靱な社会を実現していくのか、これが重要だと考えています。

 具体的には、例えば持続可能性の確保という意味では、先ほど申し上げた気候変動の話もあるでしょうし、また、今委員から人生百年という話がありましたが、少子高齢化の話もあると考えます。また、別途、強靱性の観点からは、感染症対策や自然災害、サイバーテロみたいな話もありますけれども、こうした課題をこの委員会で活発に御議論いただくということは、政府の立場としても、重要なことだというふうに思っています。

 また、個別の話について一つ一つ申し上げることはいたしませんが、先般、統合イノベーション戦略二〇二二も閣議決定したところですので、政府としては、今委員が御指摘された、例えば生命倫理含めていろいろな課題が出てきているので、その社会課題をいかに科学技術によって克服していくのか、そしてそれを成長のエンジンとしてどう結びつけていくのか、こうした視点は重要だというふうに考えておりまして、冒頭申し上げたソサエティー五・〇の実現に向けてしっかりと取り組んでいきたいと考えます。

中島委員 様々課題が、推進するために改革をしていけば、どうしてもそこに、また規制のすげ替えをしなきゃいけないという作業も必要になってきますし、私は優先順位という質問通告をしていたんですけれども、今大臣おっしゃったように、様々あることは事実なんです。ただ、この優先順位、限られた予算の中で、じゃぶじゃぶつぎ込めば何でもできるというものではない。

 私は今、生命倫理に関わる話をいたしましたが、この科学技術・イノベーション推進によって優先されるべきは、やはり国民の命そして健康、これを最優先。例えば、このコロナで、ワクチンまた治療薬、残念ながら、我が国は世界から立ち遅れた。こういう現実を踏まえると、やはり、国民の命、健康、生活を守るというか、そういうものにつながっていくことが最優先されるのではないか。

 この国民の命という観点で、先ほどゲノム医療に触れましたので、ゲノム医療の推進と課題について、ちょっと続けて質問させていただきたいと思うんです。

 ゲノム医療は国民の健康の保持に大きく寄与するということで、二〇一九年六月、がんゲノムに公的な医療保険が適用されることとなり、日本のがん医療、これは世界でもそうでありますが、がん医療が大きな転換期を迎えた。そして、同年、政府は全ゲノムの解析の計画を採択したということで、これは、がんもそうです、今、二人に一人ががんになり、三人に一人ががんでお亡くなりになる。一方で、遺伝性の難病を抱える方々にとっては、このゲノム解析、ゲノム医療の推進というのは本当に希望の光だと思います。

 ここは、全ゲノム解析を活用してゲノム医療を推進する重要性、科学技術を推進する小林大臣としてどのように位置づけておられるか、お答えいただきたいと思います。

小林国務大臣 まず、お答えする前に、先ほどの優先順位という意味では、委員御指摘のとおり、国民の安全、安心を確保していくこと、これを優先的に位置づけるということは、私も全く異論はございません。そこは本当に重要なところだと思っています。

 また、ゲノム情報の活用についてですけれども、これは、予防ですとか診断あるいは治療に役立てるということで、このゲノム医療というのは、早期診断もありますし、また個人に合った個別化医療、あるいは委員御指摘の創薬、こうした観点から極めて重要、日本の医療の質を高めていくものだと考えています。

 こうしたゲノム医療を実現していくためには、科学技術政策の視点からは、疾患の発症そして重症化の予防、また診断、治療といった、こうした点に資する研究開発を進めていくとともに、ゲノムデータの基盤、これを整備していくことが大変重要だと思っています。

 そのため、いわゆる健康・医療戦略におきまして、第二期戦略から、統合プロジェクトが六つありますけれども、そのうちの一つとしてゲノム・データ基盤プロジェクトを位置づけておりますし、それと同時に、健康・医療戦略推進本部の下にゲノム医療協議会を設置しておりまして、そこで、ゲノム医療推進のために、基礎から実用化までの一貫した研究開発、それとゲノム医療推進の基盤整備の在り方について議論しているところであります。

 こうした枠組みを使いまして、これは府省の垣根を越えて、各府省が連携して取組を進めておりますけれども、ゲノム医療の推進というのは私は非常に重要だというふうに考えておりますので、しっかりと連携しつつ、前に進めていきたいと考えます。

中島委員 大臣から、ゲノム医療の推進は非常に重要だという明確な答弁をいただきました。私もそう思います。先ほど言ったように、難病やがんも含めて、これまで治療法が見つからなかった、ゲノム医療の推進によって光が見える、大事な。

 一方で、ゲノム医療は、個人の利益、さらには人間の尊厳の保持に関する問題に対処することも必要であって、これは資料の二枚目でございますが、今年の四月、日本医学会、医師会、そして当事者団体、がん患者団体の四団体が、遺伝情報、ゲノム情報に関する差別や社会的不利益の防止のための法規制を求める共同声明を出されました。

 資料の一枚目でございますが、我が国は、これは諸外国、米国、カナダ、英国、お隣の韓国もそうなんでありますが、企業の採用や保険に入る際に遺伝情報に基づいて差別また不利益な取扱いが行われないための法規制がそれぞれあるわけですが、日本には、今現在、全くその規制がない。

 こういう状況の中で、改めてですが、これはどこが所管というか、先ほど大臣お答えいただいたように、内閣府の健康戦略室、厚生労働省にもそういった部署はないという状況の中で、このゲノム医療を、先ほど大臣、推進すると明確におっしゃっていただきましたが、遺伝情報に基づく差別や不利益取扱いを禁止する法整備、我が国でも早急に整備する必要があると考えますし、科学技術を推進する、これは総合的にということであればやはり大臣が責任を持って対応するべきだと私は考えますが、大臣の御見解を伺います。

小林国務大臣 ゲノム医療の実現のためには、研究開発の観点から、ゲノムについて基礎から実用化まで一貫した研究を推進してきています。

 一方で、御指摘の点につきましては、今年の四月に、日本医学会、日本医師会、また日本医学会連合から、遺伝情報、ゲノム情報を活用した医療や公衆衛生の実現に向けて、遺伝情報、ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止についての共同声明が出されておりますし、社会的にもその重要性が指摘されると承知をしております。

 別途、厚生労働委員会でも厚生労働大臣に御質問されているというふうに伺っておりますけれども、私としては、御指摘の、遺伝情報に基づく差別や社会的不利益の取扱いに関する対応の重要性は認識しています。厚生労働省を中心とする関係府省に協力をして、議員御指摘の点についてしっかりと検討していきたいと考えております。

 法整備をするかどうかという点については、恐らく厚生労働省が今中心になってこの点についてはいろいろ検討していると認識していますけれども、例えばゲノムのデータ基盤の整備とかでいえば、ゲノミクス・イングランドを始め世界が本当にどんどん進んでいく中で、我が国として日本人のゲノムデータをどう保護し活用していくのか、この点についての議論というものは、私はすごく重要なことだと思っておりまして、そういう観点から、今、全ゲノム解析等実行計画があって、いわゆるELSIの話とかもそこで進んでいると承知をしておりますけれども、政府全体として、やはり世界に遅れることがないように、あるいは世界にキャッチアップできるように、しっかりとこうした枠組み全体の話について検討を加速していくべきだと考えています。

中島委員 時間がないのであれなんですが、厚労省がなかなか。現在、科学技術・イノベーション、ゲノム医療に関しては、やはり内閣府。我々、超党派議連で、今、この差別、不利益取扱いが行われないための基本法のようなものを準備しているんですが、なかなか前に進まない。もしそれが、これからいろいろやりますけれども、所管になるのは内閣府、そして担当大臣は小林大臣になると思います。ですから、こういうことをちょっと御指摘をさせていただいたと御理解をいただきたいと思います。

 時間がないので次に進みますが、次に、さきの科学技術基本法改正によって、人文科学が、科学技術基本法、科学技術・イノベーション創出の活性化法に加えられました。人文科学とは、人間を研究の対象とする、また人間の本性を研究する学問であると言えます。

 これは質問通告してあるんですが、時間がないので、資料の三枚目なんですが、これは私の地元、山梨県の記事です。山梨県立盲学校での、盲聾児教育、デジタル化という見出し。

 そして、資料の四枚目なんですが、「ヘレン・ケラー自伝 実感の朗読」ということで、ちょっと白黒の写真なんですが、手前みそで申し訳ございません、私の母でございます。

 盲聾教育、これは、社会福祉活動家のヘレン・ケラー女史、多くの皆さんが御存じだと思いますけれども、ヘレン・ケラー女史は二歳のときに高熱を伴う髄膜炎に罹患して、聴力、視力、言葉を失った。映画「奇跡の人」が有名でありますけれども。しかしながら、サリバン先生の教育支援、そして御両親の経済支援を受けてその能力を発揮し、社会に影響を与える大活動家になった。

 ヘレン・ケラー女史と同じ全盲聾児に対する教育体制を整えて、昭和二十年代後半、日本で初めて盲聾教育を実践したのが山梨県立盲学校。当時、二人の盲聾児の生活、教育支援に携わったのが私の母ということで、寝食を共にして、気の遠くなるような地道なお互いの努力から信頼を生み、指文字を通してコミュニケーション、意思疎通ができるようになった。この一枚目は、当時の貴重な資料をデジタル化している、保存する意義についてという資料、二枚目は、当時の様子を私の母が語っているという内容でございます。

 改めてでございますが、科学技術基本法の対象に人文科学が加えられた意義。そして、五番目も一緒に質問いたしますが、人文科学に関わる世界的にも貴重なこの山梨県立盲学校の資料が、今、横須賀の独立行政法人特総研にございます。しかし、かなり劣化していて、デジタル化するには随分お金がかかる。是非、特総研にも、大臣、一回視察に行っていただいて、そしてその必要性を認識していただきたい。

 この二点について質問いたします。

小林国務大臣 まず、人文・社会科学のみに関する科学技術が法対象に追加されたというところにつきましては、現代の諸課題が複雑化していきますから、それに対峙するためには、新たな技術を社会で活用するに当たって生じる制度面ですとか倫理面ですとか、あるいは社会における受容性などの課題に対応していかなければなりませんので、人間や社会に対する深い洞察が当然必要になってくるということで、人文科学を含めた総合的なアプローチが必要になってくるということであります。

 もう今日は時間の関係もあると思いますので具体例は省きますけれども、そういう中で、しっかりと、第六期の基本計画におきましても、人文科学分野における研究を含めて具体的な取組を推進していくことになっていますので、そこは総合的にしっかりと進めていきたいと思います。

 今、委員からの、お母様のお話については関心を持って伺わせていただきました。ちょっと、詳細についてはまだこれから学ばせていただきたいと思いますけれども。今政府としては、人文科学の振興とともに、自然科学の知との連携あるいは協働した総合的なアプローチが必要だと思っておりまして、そこについて、広くそうした取組を社会に発信し、支援していきたいという思いはありますので、また、特総研、機会があれば、委員の御指摘も念頭に置いて行動したいと思います。どうもありがとうございます。

中島委員 質問を終わります。ありがとうございました。

手塚委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 日本維新の会、岬麻紀でございます。

 本日は、我が国の存在感を世界で出していくためには欠かすことができない科学技術の分野で質問ができること、大変貴重な機会でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、我が国の勝ち筋となる技術について、まず初めに、五月二十四日の大臣の所信について質問をさせていただきます。

 我が国の勝ち筋となる技術を育てるため、シンクタンク機能やAI、量子等の分野戦略を強化し、政府一体となって実行する。また、小寺内閣府大臣政務官からは、予算の説明において、我が国の勝ち筋となる技術を育てるためのAI、バイオ、量子技術、マテリアルといった重点分野における取組等の推進に必要な経費を関係府省において計上している。この勝ち筋という言葉、とても力強く響いてまいります。

 さて、少し調べてみますと、将棋や囲碁などにおいて、勝利に結びつく手というような意味があるようですが、勝ち筋となる技術とは、世界を牽引していけるような技術や国際的に優位に立てる技術のことを言うのでしょうか。

 そこで質問です。

 まず冒頭、AI、バイオ、量子技術という分野がどのような根拠をもって勝ち筋となる技術であると挙げられたのでしょうか。勝ち筋という表現は、なかなか聞かない表現でございますが、あえてこのお言葉を使われたと思っております。

 さて、この言葉を用いた理由、意義について、まずは大臣にお話をお願いいたします。

小林国務大臣 勝ち筋という言葉自体は、別にこれに特化したものではないというふうに理解しておりますけれども、私、別途、経済安全保障の担当大臣もやっておりますので、我が国の経済安全保障を進めるに当たっての大きな方向性、二つの概念を出させていただいて、一つは、脆弱性を解消していくという意味での自律性を獲得していくこと。もう一つは、日本の他国に対する、例えば技術の優位性というものを獲得し、それに磨きをかけて、国際社会にとって日本が不可欠となるような分野を戦略的に拡大していくこと、これを優位性、不可欠性というふうに言っています。

 この量子とかAIというのは後者の概念に当たり得るものでございまして、量子、AIと言っているんですけれども、量子、AIとざっくり言っても、量子の中にも、量子コンピューターがあるし、センシングがあるし、暗号通信の話も、いろいろあるわけで、更にそれが細分化されていく。そこで本当にどこにその勝ち筋を見定めるのかというのは極めて難しいです。言葉では一言で言うんですけれども、これはどこの国にとっても極めて難しい。

 なぜなら、今、日本がある分野で先端を走っていたとしても、先ほども出てきましたけれども、ちょっと気を抜いたら、例えば、五年後には抜かされているかもしれないし、世の中で陳腐化しているかもしれない。その時間軸もしっかりと踏まえながら、他国の情勢も踏まえながら、これはしっかりと見極めていく必要があるということなんです。柔軟に考えていく必要がある。

 なかなか難しい作業ではあるんですけれども、量子、AIあるいはバイオ、これは、日本の統合イノベーション戦略にも位置づけられているし、中国の例えば製造二〇二五、あるいはアメリカにも技術戦略があるんですけれども、それぞれ見ても、どの国も、ここの分野についてはもうやらざるを得ないということで、莫大な投資をしてやっているので、日本としては勝負せざるを得ない。

 じゃ、そのどこに張っていくかというところについては、これから、例えば、シンクタンク機能を強化していったりします。令和五年度にシンクタンクを立ち上げる予定ですけれども、それも最初、小さなところから始まるかもしれませんが、そういう勝ち筋を見定めるという極めて難しい作業と我が国は向き合わざるを得ない。

 そういう思いを持ってやっていきたいと思いますし、別途、体系立って、これが、こことここで勝負というのが見えればいいですけれども、技術というのはそんな簡単なものでもないので、例えば、これから、もう既に始まっている経済安全保障重要技術育成プログラムとか次期SIPとか、そういう個別のプロジェクトを選定する過程においても、そうした勝ち筋がどこになり得るのかという意識を持って見定めていくということが重要だと考えています。

岬委員 ありがとうございます。

 ここで、日本の、今申し上げました技術力、競争力の現状も見ていきたいと思います。

 文科省の科学技術・学術政策研究所の科学技術指標二〇二一では、昨年の九位から十位に順位を落としております。また、国連の専門機関の世界知的所有権機関、これも毎年公表されておりますが、世界技術革新力のランキング、こちらも、日本は総合順位は十三位、韓国は五位、中国は十二位となっております。さらに、国際経営開発研究所、こちらが作成しました世界競争力年鑑、こちらは、かつて一位を続けておりました世界競争ランキング、二〇二一年を見ますと、何と日本は三十一位に転落をしております。ちなみに、中国は十六位、韓国は二十三位、遠く及びません。

 そこで、過去十五年にわたりまして衰退の一途をたどっております、科学技術立国として大変な危機を迎えていると思いますが、なぜ遅れてしまっているのか、その要因はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

米田政府参考人 お答えいたします。

 様々な要因が、考えてございますけれども、やはり、熾烈な国家間競争が激しくなる中で、我が国がどうしても科学技術分野についての投資が立ち遅れているというふうに考えてございまして、そういったことを踏まえまして、第六期科学技術・イノベーション基本計画では、大幅な投資額の増強といったことを打ち出しているところでございます。そのようなことを進めながら、科学技術立国の復権に努めてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 幾つかある中から、今日は量子技術についてお話をお聞きしていきたいと思います。

 政府は、令和二年一月に策定しました量子技術イノベーション戦略、この中でも明確に位置づけをしております。日本の強みを生かし、重点的な研究開発や産業化、事業化を促進、量子コンピューターのソフトウェア開発や量子暗号などで世界トップを目指すと言われております。

 ここで質問です。

 未来社会ビジョンに向けました二〇三〇年に目指すべき状況、利用者を一千万人にとあります。この利用者について、量子技術と知らずに利用している者も含むと書かれております。このことはまさに、量子技術と知らないで利用している人を含めているということでございますが、量子技術というのはそもそも何なんでしょうか。また、量子技術で自分たちの生活は何がどのように変化して、どんな利便性があるのだろうかと、国民の皆様には分かりづらいことも多くございます。

 そこで、量子技術の活用をして、国民生活がどのように変わっていくのか、どのような影響があるのか、またメリットがどんなふうにもたらされるのか、その辺りも簡単に御説明いただけますでしょうか。

米田政府参考人 お答えいたします。

 量子技術の活用を通じて我が国の社会全体の変革を実現していくための戦略として、また、それを分かりやすく国民の皆様に分かっていただくために、去る四月に量子未来社会ビジョンを統合イノベーション戦略推進会議で決定したところでございます。

 本ビジョンでは、創薬・医療、金融、エネルギー、物流等の様々な分野において量子技術を活用し、生産性革命などの産業の成長機会の創出、あるいはカーボンニュートラル等の社会課題の解決を図ることを目指しております。

 例えば、量子コンピューターの桁違いの計算力によって、例えば交通分野におきましては、時々刻々と変化する交通状況に合わせて全車両の最適運行を実現して渋滞を解消して、社会全体の燃料節約、そういったことに寄与していくことも考えてございますし、また、創薬分野においては、開発期間が大幅に短縮されることなども期待されているところでございます。

 こうした活用事例の積み重ねを通じまして、経済成長と人と環境の調和、心豊かな暮らしを同時に実現された社会像を目指すということを考えているところでございます。

 このための二〇三〇年の未来社会の具体的な目標といたしまして、先ほど言及いただいたような、国内の量子技術の利用者を一千万人、また、量子技術による生産額を五十兆円規模、また、未来市場を切り開く量子ユニコーンベンチャー企業を創出することなども設定しているところでございます。

 本ビジョンの実現に向けまして、関係府省、産業界とも緊密に連携しつつ、量子技術の研究開発や産業化等の取組を強化してまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 令和二年一月に策定をされました量子技術イノベーション戦略というところにも書かれておりますけれども、基礎理論や知識、また基盤技術等で強みや優位性、競争力を有しているものの、技術の実用化、産業化、システム化等に向けた取組は諸外国に後塵を拝する分野、領域でもある、極めて深刻な状況であると言わざるを得ないということでございます。今おっしゃっていただいたような具体的なビジョンをしっかりと実現していただければと思っております。

 また一方、民間の動きもございます。昨年九月には、東芝、トヨタ自動車、富士通、NTTなど五十社以上が参加する、量子技術による新産業創出協議会が設立されております。

 また、諸外国との協力体制も、五月二十三日、二十四日に、それぞれ、日米首脳会談や日米豪印の首脳会合共同声明がございました。

 さて、このような状況の中で、我が国の国益に直結する科学技術の分野、この量子技術の世界的な熾烈な競争が、後れを取っております。これはもう紛れもない事実でございますが、諸外国との協力体制や産官学の連携をいかに図ってこれからその競争力を強化し、また実現に向けていくのか教えてください。

米田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の量子技術につきましては、量子効果を利用した量子センサーや量子暗号通信技術などは基礎研究を含めて比較的高い水準を維持しているものの、技術をビジネスにつなげる産業化では低調な傾向にあると認識してございます。

 例えば、量子コンピューターにつきましては、我が国が基礎研究では先行していたものの、実用化では後塵を拝してしまいまして、カナダのスタートアップ企業や米国のIBMなどが既に計算サービスを提供しているところでございます。

 海外では、野心的な目標を掲げて量子コンピューターの研究開発や事業化等の取組を加速する動きが見られておりますので、我が国としても、研究開発の更なる加速とともに、産業競争力強化に向けた取組を推進する必要があると考えてございます。

 政府といたしましては、先ほど言及いただきました民間の動き、そういったこととも連携いたしながら、また、有志国との様々な協力を通じながら、量子未来社会ビジョンに基づく取組を強力に推進しまして、我が国の量子技術の国際競争力強化に向けた取組を推進してまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 さて、この量子技術を活用しまして、では、サイバーセキュリティーについて伺います。

 令和三年九月に、サイバーセキュリティ戦略がございます。盗聴ですとか改ざんが極めて困難な量子暗号等を活用した量子情報ネットワーク技術、また、量子暗号通信、超小型衛星によりまして、技術の確立に向けた研究開発が促進されてまいります。

 さて、こうした技術、いち早く標準化をしていく必要があると思います。安全性が極めて高い通信が実現できるということですから、サイバーセキュリティーにおいても、安全性という面で大きく貢献できるものと考えます。この点の見解を教えてください。

米田政府参考人 お答え申し上げます。

 量子技術を活用するサイバーセキュリティーについては、確実に通信内容の秘匿性を担保する量子暗号通信技術につきまして、その実用化に向けた研究開発、社会実装の取組が進められておりまして、我が国における高度な水準のサイバーセキュリティーの確保に貢献することが期待されているところでございます。

 海外では、地上通信網、衛星通信網等を活用して、長距離の量子暗号通信の実証環境を整備し、実証試験をする動きが加速するなど、国際競争が激化しておりまして、我が国の経済安全保障の観点からも、量子暗号通信の高度な技術を確保し、社会実装を加速化していくことが必要であると考えてございます。

 これらを踏まえまして、量子未来社会ビジョンでは、量子セキュリティー、ネットワークに関する取組といたしまして、量子暗号通信テストベッドや利用実証の拡大、充実、耐量子計算機暗号も含め、量子技術と従来型技術が一体となった総合的なセキュリティーの実現、量子暗号通信技術の導入を後押しするための評価、認証制度などの支援、量子状態を維持した通信を可能とする量子インターネット研究開発の国家プロジェクトの立ち上げを行うこととしてございます。

 量子技術を活用した高度なサイバーセキュリティー実現に向けまして、関係省庁と緊密に連携いたしながら、量子セキュリティー、ネットワークに関する研究開発や産業化に向けた取組を推進してまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 次に、サイバーインテリジェンスについて伺います。

 先日、私どもの日本維新の会の勉強会においても、サイバー空間での脅威や脆弱性に対する国際連携に日本は参加できていない、我が国が、いまだ国家サイバーインテリジェンスシステムの可及的速やかな構築が急務である、そして、アメリカと対等のシステムを構築することで、ファイブアイズの枠組みに入ることができ、国家安全保障に関わる情報の国家間での情報共有が可能であるというような勉強会がございました。

 維新八策二〇二二でも、テロ、サイバー攻撃、宇宙空間に対する防御の体制を総合的に強化していく必要性などを話し合っております。また、五月二十九日、NHK討論において、我が党の青柳代議士も、宇宙、サイバー、電磁波をいかに抑止力としてつくっていけるかが重要であると発言をいたしました。

 ここで、サイバーインテリジェンスを含めた国の安全保障に関する情報の収集、分析については、他国との連携協力が重要であり、また不可欠でございます。その中で、例えば、今お話ししたようなファイブアイズのような国際連携に参加する、若しくは参加できるような環境をこれから整備していくことが、検討していく必要性があると思います。この点の見解、いかがでしょうか。

 このファイブアイズは、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、またイギリスが含まれております。さらには、エモテットというコンピューターウイルスが猛威を振るってきた、これは記憶に新しいところでございます。その際も、今申し上げた五つの国以外にも国が参加しまして、八か国で対策を進めてまいりました。いずれも、日本はこの中に入っておりません。

 にもかかわらず、関係性は不明であっても、トヨタ自動車がウイルスの脅威にさらされまして、取引先の部品メーカーが操業を一旦停止しなくてはいけないというところに追い込まれております。これも、サイバー攻撃、日本経済に大きなダメージを与えてきたかと思いますが、この辺りを含めまして、いかがお考えでしょうか。

柳政府参考人 お答えいたします。

 我が国を取り巻く国際情勢が一層厳しさを増す中で、政府全体の情報収集、分析能力の向上を図ることが不可欠でありますが、その際、我が国自身の能力向上はもとより、できる範囲内において関係国との連携強化を深めていくことも極めて重要だと考えております。

 かかる認識の下、我が国は、米国、英国を始め関係国と平素から緊密に連携し、様々な情報交換を行っているところでありますが、事柄の性質上、それ以上のお答えは差し控えさせていただきます。

岬委員 なかなか明確に御答弁いただくのは難しい部分かとは思いますけれども、是非とも、危機感を持って引き続きお取組をお願いしたく存じます。

 それでは、まとめとなりますけれども、この開発競争というのは、数年で明らかになることではないです。十年、二十年と、中期又は長期のスパンで計画を進めていかなくてはいけないかと思います。その際には、継続的な研究資金、また、有能な人材をいかに育て、また獲得をしていくかが問われてまいります。

 さて、つい先日、六月五日にも、東京工業大学で量子コンピューティング研究拠点を設立しました。学内外での専門家、また、基礎理論を研究するほか、社会人向けの講座を開くなど、人材育成を目指すとございます。

 そこで、最後の質問でございます。

 量子技術の発展において、諸外国に大きな後れを取ってしまいました。将来の国の成長、発展や国民の安全、安心を、基盤を脅かされていると言っても過言ではございません。また、技術で勝って事業で負けるということが繰り返されてもいけません。長期戦となる開発競争や有能な人材及び予算の確保をどのように図っていくのか、是非、大臣から、最後、御見解をお聞かせください。

小林国務大臣 量子技術の国際競争力を強化していく観点からは、その研究開発の担い手である人材の育成、確保と、必要な予算の獲得、両方重要だと思っています。

 人材の確保につきましては、新たに策定した量子未来社会ビジョンを踏まえまして、例えば、民間事業者を活用した幅広い層へのリカレント教育の提供、あるいは、創薬・医療、あるいは材料、金融、様々ありますけれども、幅広い分野と融合した人材の育成、また、将来のブレークスルー技術を担う裾野の広い若手研究人材の育成、あるいは量子ネイティブの育成、また、社会実装という意味でのアイデアを提供する人間も必要になってくると思います。

 こうした取組を進めるとともに、予算については、令和三年度、令和四年度と、政府全体の予算、これは補正予算も含めればかなり増えてきているところでございまして、それに加えて、令和三年度の補正におきましては、量子やAI、先端的な重要技術を育成することを目的とした経済安全保障重要技術育成プログラムというものがあって、それで既に二千五百億円を措置させていただいたところでございます。

 こうした有能な人材の育成、獲得、また必要な予算の確保をしっかりとやっていきたいと考えます。

岬委員 大臣、ありがとうございます。

 予算は世界から見ても劣ることはございませんので、是非それを有効に御活用いただければと思っております。ありがとうございます。

 それでは、お時間が参りましたので、人材育成など、続いて、私ども日本維新の会の金村議員にバトンタッチしたいと思います。

 本日はありがとうございました。

手塚委員長 次に、金村龍那君。

金村委員 ありがとうございます。日本維新の会の金村です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

 岬委員ほどきれいな声ではありませんので、聞き取りにくいかもしれませんが、努力してまいりますので、よろしくお願いいたします。

 統合イノベーション戦略二〇二二、拝見をいたしました。非常にボリュームもあって、まだまだ細部にわたって私も理解はできておりませんが、これだけ投資をすると、やはり大なり小なりイノベーションが実現していくことはまず間違いないんじゃないかなと思います。

 その中で、ただ単にイノベーションを実現するだけではなくて、やはりどのように世界の中でルールに関わっていくのか、ここが肝腎だと私は考えています。そもそも、政治家を目指すに当たって、ルールに関わりたいと思うのは普通の感情だと思いますので、非常に重要だと思います。

 そして、この統合イノベーション戦略二〇二二を通して、特定の分野や又は領域において、どうやって日本が主導的な立場でルールに携わっていくのか、ここがこれから非常に重要になってくると思うんですが、先ほど大臣もおっしゃっていたとおり、経済力と安全保障、これによって国力を高めていく、それを支えるのがイノベーション、そしてイノベーションを実現するのが人、だから人へ投資をする。これは当然だと思うんですね。

 加えて、私は、ある意味、明確な国家目標をしっかりと定めていくタイミング、もっと言えば、分かりやすい国家目標をつくっていくのがいいんじゃないかなと。

 そういった意味では、ルールメイキングと加えて、いわゆるイノベーションの中で、統合イノベーション戦略二〇二二、非常に領域が広いですから、どの領域や分野でいわゆる世界一を目指していくのか、そこについての見識や認識をお伺いさせてください。

小林国務大臣 まず、ルール形成の点につきましては、経済安全保障の観点からも、先ほど申し上げた、弱みを克服して強みを獲得していくことによって、当然、我が国の国際社会における立ち位置は強化されますので、国益にかなう国際秩序や国際ルールの形成にこれまで以上に主体的に関わっていくこと、これが重要だと考えています。

 その意味で、今委員が紹介していただいた統合イノベーション戦略二〇二二におきましても、社会実装と国際競争力強化を更に推進していくために国際的なルールメイキングが重要だということで、国際標準戦略の強化を位置づけております。

 具体的に、じゃ、どこの分野でというところにつきましては、先ほどの岬委員への答えと重なるところはあるんですけれども、なかなか具体的にどこということを定めていくということは簡単な作業ではありません。

 しかしながら、そこは走りながら考えるということ、また、国内外の情勢にもしっかりとアンテナを張る、時間軸によって様々状況は変化してくるので、当然柔軟に対応しなきゃいけないんですけれども、そういう難しい作業と向き合わなければいけないということで、まず、量子やAI、量子技術のもたらすインパクトというのは、先ほど政府参考人からもお話がありましたけれども、とてつもないものがありますので、各国が、この分野はもうやらざるを得ないということで、しのぎを削っています。

 じゃ、そこのどこに張っていくのかというところについては、やはり、既にこの量子やAIについて分野別の戦略を明示しておりますし、まだまだこれは精度を上げていかなきゃいけないし、変えていかなきゃいけないとは思いますが、一応やっています。

 また、シンクタンク機能、まだ今、日本にそういう、どこの技術を張っていくかという、これを見極めるシンクタンクというのは余りなくて、例えばアメリカだとランド研究所とかいろいろあるんですけれども、まずはそういう、政府としっかりと連携しながら、我が国がどこで本当に勝負していくのか、しっかりと見極めていくための機能というものをこれからつくっていきたいというふうに思っておりますし、先般成立させていただいた、御党にも御賛同いただいた経済安全保障推進法の中にもそういう柱を一つ位置づけているところであります。

 その中で、例えば量子というところについては、非常に重要な分野であって、先般、量子未来社会ビジョンを策定しました。量子暗号通信ネットワークのオープンテストベッドを活用して、多くのユーザーに参加をしていただいて、実用化の技術の実証や高度化に取り組んでいただくことで、幅広い関係者を巻き込みながら、世界に先駆けて標準化を進めることとしております。

 そうした意識を持って、関係省庁、また、国だけで当然できることではないので、産学官連携しながら、こうしたルールメイキング、常に念頭に置いて進めていきたいと考えます。

金村委員 ありがとうございます。

 是非、量子というワードも出ましたので、その領域でしっかり世界一を目指して、共に頑張ってまいりたいと思います。

 続いて、今後の日本の成長戦略において、クリーンエネルギー、これは非常に重要なことは当然理解をしております。しかし一方で、この分野だけ捉えても、イノベーションが起きれば全てバラ色になるわけではないと認識しています。その一例として、私はいつも起点として考えるのが、自動車産業についてです。

 従来、欧米を中心にEVの、僕は大波と呼んでいるんですが、大波がやってきて、日本の脱炭素戦略にも非常に大きな影響を与えてきたと認識しています。

 その上で、今回のウクライナ危機によってロシアから安くエネルギーを供給することが難しくなった前提に立つと、ヨーロッパにおいて少しEVの波が小波になってきたというような声も実は、少なくとも私には少し聞こえてきました。

 そこでお伺いしたいんですが、イノベーションを通して経済成長を実現する、それが国家の繁栄や国力につながる。その中で、これまで日本の経済や産業をリードしてきた自動車産業において、いわゆる従来の内燃機関、この内燃機関も重要だと認識しているんですが、政府の見解はいかがでしょうか。

福永政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、二〇三五年までに乗用車新車販売で電動車一〇〇%という目標を掲げておりまして、電気自動車、EVに加えまして、ハイブリッド自動車や水素あるいは合成燃料の活用など、多様な選択肢を追求していくというのが基本的立場でやっております。

 具体的には、グリーンイノベーション基金も活用しつつ、例えば蓄電池については全固体電池等の次世代電池の実用化に向けた技術開発、希少金属の使用量低減につながる高性能材料やリサイクル技術の開発を進めていますし、それに加えまして、先ほど御紹介しました合成燃料について、これは内燃機関との関係もあるわけですが、二〇四〇年までの商用化を目指して、高効率な製造プロセスを確立するための技術開発、さらに、水素について、二〇三〇年までに供給コストを現在の最大六分の一程度に削減するため、液化水素運搬船を活用した海上輸送実証などを進めているところでございます。

 まさにこうした取組を推し進めながら、それぞれの技術のイノベーションに官民を挙げて取り組むということで、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていく、こういった趣旨を、今、政府として考えておりますクリーンエネルギー戦略という中でも、エネルギーを起点とするグリーントランスフォーメーションということで考えているところでございます。

金村委員 ありがとうございます。

 従来の産業も支援しつつ、大枠でしっかりとバックアップしていくと。先日、日産自動車が軽自動車でEVを発表しましたので、あれは、日本においては私はすごい実用化の可能性を感じておりますので、是非、日産自動車だけじゃありませんけれども、バックアップをお願いいたします。

 そして、今国会で成立いたしました大学ファンドについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 ファンドの規模としては十兆円、運用益が三%ということで、単純に三千億円になるわけですね。その一方で、国際卓越研究大学に指定をされた学校側も、ガバナンスをしっかりと強化する、それから運営面を改めることによって、成長率を三%維持していくということになっていると思います。

 法案も成立しておりますので、今更細かいことを問うても仕方がない側面もあるんですが、単純に、一つの指定の学校であれば、三千億を投資できるわけですね。なので、欲を言えば、三校程度に絞っていただくことが運用した先の大学側の成長にも資すると思いますので、私はそのように考えています。

 その上で、今、例えば、資料にもありましたが、ハーバード大学が、基金を一つの評価にすると四・五兆円、東京大学は百九十億円というような資料もございました。これは、今回、十兆円の大学ファンドをつくって、大学側に、国際卓越研究大学に資金提供していく。一体、どのぐらいの期間、支援していく想定なのか。

 つまり、やはり資金提供も、投資も、投資額が大きい方が成長率も高くなっていくと私は思っておりますので、余り小幅な金額だと、成長率も弱くて、実際、支援の期間が長引いていく。実は、蓋を開けてみたら、三十年、五十年と、気づいたら、大学ファンドの運用先が国際卓越研究大学になっているだけで、全く成長していないということも考えられるわけですから、どのぐらいの支援期間を想定されているのか、見解を教えてください。

高橋大臣政務官 お答えを申し上げます。

 世界における我が国の経済規模を踏まえますと、我が国において数校程度の大学が世界と伍する研究大学となることが期待されている、このように認識をするものでございます。

 この世界と伍する研究大学を実現していくためには、支援対象大学の研究基盤や若手研究者への長期的、安定的支援を行っていくことが重要でございますため、一校当たり年間数百億円規模の集中的な支援を行う必要がある、このように考えるところでございます。

 そして、御質問の具体的な支援の期間についてでありますが、今後、関係省庁とも協議の上、文科省として基本方針等で定める予定といたしているところではございますが、これまでも、例えば、世界トップレベル研究拠点プログラム、我々はWPIプロジェクトというふうに呼んでおりますが、この例のように、原則十年間、特に優れた成果を上げている拠点については延長も可能というような、そういった運用をしておりますことも踏まえますれば、少なくとも、これらの既存の事業よりも長い期間をかけて支援を行っていくことを我々としては想定をいたしているところでございます。

 大学自身の明確なビジョンに基づき、大学ファンドから集中的な支援を行うことにより、教育、研究、社会貢献にわたる大学の機能を大幅に拡張し、世界に伍する研究大学の実現につなげてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

金村委員 やはり肝は大学改革になると思いますので、是非御尽力いただければと思います。

 続いて、博士課程についてちょっとお伺いさせてください。

 私、今回、厚労委員会に所属して、薬機法の改正で、創薬ベンチャーについて幾つか質問させていただいた中で、社会人にいってから博士課程に入る支援、助成金はあると伺っています。本質的には、博士課程に進学をして、博士号を取得して、社会で活躍する、それがあるべき姿だと思うんです。例えば先日、二〇二一年の出生数が八十一万人と過去最低となりました。そういった意味では、今後の日本の労働力を考えても、女性の社会進出というのは非常に重要になってくると思います。

 その中で、例えば、博士課程に進学した中で、女性について特定の支援、特別な支援がありましたら、教えていただけませんでしょうか。

米田政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府のCSTIにおきましては、我が国の教育、人材育成の在り方についてのワーキンググループを設置いたしまして、昨夏から検討を重ね、政策パッケージを今月二日に決定したところでございます。

 本パッケージにおいては、理数系の学びに関するジェンダーギャップの解消というのを大きな柱の一つと掲げてございまして、女子は理系に向いていないといった根拠ないバイアス排除のための社会的機運の醸成、理数分野で活躍する女性のロールモデルの発信、多様な専門家が教壇に立てる教員免許制度改革、高校改革や入試改善、大学学部や修士、博士課程の再編、拡大などに関係府省が連携協力して速やかに取り組むこととしているところでございます。

 また、博士課程への進学率が低いこと、若手研究者の不安定な雇用、若手を始めとした研究者の置かれている環境の改善という男女共通の課題に対しても、十兆円規模の大学ファンドによる大学改革を含めた研究環境の強化等に取り組んでいるところでございます。

 女性研究者が安心して研究活動に従事できる環境を構築し、理数系に興味、関心を持つ女性の裾野を拡大し、博士課程に進学する女性の増加につながるよう、関係府省と連携の上、取り組んでまいりたいと考えてございます。

金村委員 是非ここは頑張っていただきたいと思います。

 その上で、この博士課程、博士号取得者で、実は構造的に僕は活躍してほしい領域がありまして、それがベンチャーキャピタルなんですね。先ほど申し上げた創薬ベンチャーの友人とお話ししたときに明らかになったんですけれども、実は、ベンチャーキャピタルの現場に専門家が少ないんですね。なので、どうしても、早くリターンが出る、そういった投資案件に投資をしてしまうんですね。そうだとすると、研究開発のように少し長いスパンで見なければならないものに対して手控えをしてしまう。だから、どうしても額が渋くなる。これではスタートアップ支援には実際には僕はつながらないと思っています。

 なので、いわゆるVC側に、博士号を取得して、実際に専門家として、金融知識を更に持って貸し手側、投資側になるような活用方法というのは、例えば政府の中で御検討いただいているのか、教えていただけませんでしょうか。

米田政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府におきましては、本年二月より、イノベーション・エコシステム専門調査会におきまして、国内外の起業家やベンチャーキャピタル等から多数のヒアリングを行いまして、我が国のスタートアップを取り巻く様々な問題点について幅広く議論し、明らかにしてきたところでございます。

 中でも、我が国のベンチャーキャピタルにつきましては、諸外国と比較すると、委員御指摘のとおり、まさにディープテックなどの分野の専門性が不足していること、また、レーターなど、スタートアップが大規模に成長する段階の投資への取組が不十分であること、そういった課題が指摘されてございまして、大規模に成長するスタートアップの創出に向けて、ベンチャーキャピタルからの投資の質と量の両面での向上が重要であると認識しているところでございます。

 御指摘の博士号取得者が、アカデミアのみならず、ベンチャーキャピタルを含む民間企業等、広く社会で十分にその力を発揮することも重要でございまして、政府といたしましては、ベンチャーキャピタルやベンチャーを含む企業との連携による長期のジョブ型インターンシップなどの取組を推進しているところでございます。

 今後とも、こうした、大学が優秀で志ある博士号取得者をしっかりと育成した上で、その力をベンチャーキャピタルを含む各界において存分に発揮してもらうための取組を、関係府省と連携しながらしっかり進めてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

金村委員 ありがとうございます。

 私も事業をしてきて、確かにお金に色はないんですけれども、実際、その技術力だったり経営の中をしっかりと理解いただいた上で投資や融資を受けることが、経営側にもやはりモチベーションにつながりますので、是非配置を強化していただきたいなと思います。

 その上で、最後に、子供たちにとって夢や希望という観点でいえば、やはりユニコーン企業を日本でも増やしていかなければならない。その上で、日本にある、ユニコーン企業が誕生しない構造的な問題について、最後、お伺いさせてください。

小林国務大臣 日本政府としても、過去十年間、国内のスタートアップの育成の施策というのはやってきているんですけれども、確かに国内ベンチャーキャピタルの投資額も増えてきていますし、いわゆるユニコーンの企業数も、これは僅かですけれども増えてはきている。ただ、委員御指摘のとおり、VCからの投資額ですとかユニコーンの数というのは、海外との比較、海外というか、我が国の経済規模との比較で見ると、やはりどうしても少ないと考えます。

 現状としては、今参考人からありましたとおり、VCからの投資が十分でない、あるいは海外とのつながりや投資を呼び込む力が弱い、起業家教育が不足している、そうした構造的な課題があると思っておりまして、それを克服していくために、CSTIの下に専門調査会を置いて議論を行いまして、海外VCの誘致を含めた国内外VCへの公的資本による投資の拡大ですとか、優秀な人材確保の観点からのストックオプション制度の見直し、また、SBIR制度の強化や政府調達によるスタートアップの支援、様々な対応策を提言する報告書を取りまとめまして、先日、CSTIとして決定したところでございます。

 委員御指摘の点というのは非常に重要だと思っておりますので、ユニコーン企業の育成を含めたスタートアップの支援につきまして、総理も本年をスタートアップ創出元年にするというふうに明言しておりますので、しっかりと取り組んでいきたいと考えます。

金村委員 是非その決意を形に、我々に見えるようにしていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

手塚委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 早速御質問に入りたいと思います。

 この委員会の表記も科学技術・イノベーション推進特別委員会ということなんですが、私は常々、科学技術って四文字じゃないと思っているんです。だから、科学技術を英語で言えば、サイエンス・アンド・テクノロジーなんですね。そこのところがずっと混同されて、科学技術・イノベーションが大事だということでこの特別委員会も設置されたと思うんですけれども、本来は、科学と技術というのは全く異なる、リンクしているところもあるんですけれども、概念じゃないかというふうに思うんです。

 まずその辺のところを改正していった方が私ははっきりするんじゃないかと思うんですけれども、大臣に考えをお聞かせいただきたいと思います。

小林国務大臣 法令用語としての科学技術というのは、科学に裏打ちされた技術との意味ではなくて、科学及び技術の総体を意味するものとされています。

 科学と技術は、かつては異質なものとされておりましたけれども、特に産業革命以降、科学と技術がそれぞれ急激に発展したことによりまして、科学が技術を開発するための情報として技術に浸透していくとともに、技術的な成果が科学研究を進めるためのリソースとして科学に取り入れられるようになって、両者が、ある意味、互いに密接にリンクするようになってきたんだろうと考えています。この結果として、科学と技術を一体として捉えて、科学技術ということが一般化してきていると認識しています。

 こうして、科学技術は、科学と技術の両方の概念、さらには、両者の密接な関係を一体的に表す用語であり、私は適切な表記と認識しております。確かに、英語にするとサイエンス・アンド・テクノロジーなんですけれども、例えば、今思いつくのは、リサーチ・アンド・ディベロップメント、RアンドD、これを日本語にすると研究開発ということで、一つに捉えていることもありますので、私自身の今の認識というのは、今申し上げたとおりでございます。

鈴木(義)委員 なぜ今みたいな質問を投げかけるかといったときに、過去にもこの科技特で質問に立ったことがあるんですけれども、一つ例示を挙げれば、ある高名な先生から教えていただいたんですけれども、物理をやっている先生方、研究開発をされている方は、仮説をまず立てるんだそうです。仮説を立てるんですけれども、その仮説に見合うデータを集めるというのが物理学者。逆に、化学をやっている化学者については、最大公約数のデータから仮説を立てると。もう元々、趣が違っちゃっているんですね。

 今までいろいろな議論をして、大学改革だとか、今回の十兆円ファンドだとかとやるんですけれども、もう少し大学の役割と、独法、理化学研究所も含めて、産総研だとか物質研、文科省が所管だったり経産省が所管だったりしている、研究開発しているところがあるんです。それ以外にもたくさんあると思うんです。そこと、結局、すみ分けが余りにも重なり過ぎちゃっているんじゃないか。

 例えば、よく、この科学技術のときに、数字を出さなければ納得感がないから数字を出すんですけれども、過去の論文の引用数が高いから評価が高いんだ、これは一部あると思います。でも、もう一つ、大学とか研究施設にもそうなんですが、特許を出したカウント数ですごい技術なんだと。誰も、中身を精査する人がほとんどいない。

 だから、そういう意味で、今大臣から答弁いただいたんですけれども、テクノロジーの中で理論が組み立っていなくても、物はできちゃって、それが商品として売られているんです。だから、一体的に、サイエンス・アンド・テクノロジーでやる分野もあるんですけれども、実際、世の中で出回っているものは、テクノロジーで生み出されたものが、理論は組み立っていないけれども、テクノロジーから逆にサイエンスにフィードバックするものもあるという考え方ですね。

 それを少し切り分けてやっていかないと、じゃ、基礎研究をやりなさい、アメリカはよく基礎研究を大事にしているとか、ドイツがこうだとかと、よくそういうのが議論されるんですけれども、メーカーさんだとか研究所で基礎研究はやりませんよ。じゃ、どこでやってもらうのかといったときに、大学にその役割を持っていただかなければ、誰も基礎研究をやらない。そういったところをもう一回整理して、役割を少しすみ分けしていった方がいいんじゃないかという考え方なんです。御答弁をいただければありがたいんですけれども。

小林国務大臣 これは、どういうもの、どちらから見るかということなんですけれども、切り分けた方がいいということも、そういう見方もあるかもしれませんが、お互い、やはり両者が歩み寄って融合していく分野というものも、それは増えていますので、一概に、その言葉の問題をもって、ここに終始をするというところについては、実態面では非常に重要だと思いますけれども、その用語について、私の考え方は先ほど申し上げたとおりなんです。

 先生がおっしゃるように、科学と技術の関係にもいろいろなものがあると思っていて、私が思うところは、どっちがどっちだというわけではないですけれども、基本的には、やはり、真理を探求して、それを知ることによって、それをベースとして技術というものが生まれてくる、それが主流だというふうに私は感じておりますけれども、先生がおっしゃるように、技術からまた科学の方にフィードバックしていくというケースも当然あるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 いずれにしても、先ほども先生が御指摘していた評価の点につきましては、例えば論文数とか特許の数とか、そういう、ある意味、短絡的な視点で物事を見るのではなくて、やはり複眼的な視点から物事を評価していくということは極めて重要だと思っているところであります。

鈴木(義)委員 例えば、隣の中国に論文数で負けているというふうによく紹介されるんですけれども、中身を全然精査していない。じゃ、その論文が、あるA、B、Cの研究開発なり論文を発表した人のやつを少しアレンジしただけで、自分のオリジナリティーだとして論文を出していても、結局カウントされちゃう。その辺を、誰がそれを担当するかというのは難しいんですけれども、それをやらないと、質の高い論文だとか質の高い特許というのは生まれてこないんじゃないかという考え方です。

 時間が限られているので、次に、知財と無形資産の投資、活用促進メカニズムの中に、企業の戦略が投資家や金融機関から適切に評価されというふうに、大臣の所信の中で述べられているんですね。ここについてまずお尋ねしたいんですが、企業の戦略が評価されるに当たって、評価対象となる戦略を企業に開示させることが本当にできるのかということです。

 大半の企業は、独自の技術は、特許も取得せず、秘匿化しているというふうに聞きます。基の基本特許についてはオープンにしない、応用特許だけは出す、そういう、オープンにするものとオープンにしないものと切り分けているというふうによく聞くんですが、じゃ、それに基づいて、投資家や金融機関が企業の技術を評価するに当たり、それを評価できる目利きが育っているのか。過去の経産委員会でも、ほかの委員会でも何回もお尋ねしたんですが、この目利きを育てるような仕組みが日本の中にあるようでないんですよね。

 例えば、過去に私は、自分の会社で持っている特許を、大手の都市銀行の営業の方に、この特許に対してどれだけの融資をしてくれるのかと問いかけたことがあります。返ってきた言葉が、総合評価でその企業を評価して融資をします、こういう答弁だったんです。十年ちょっと前ぐらいの話なんですけれども。

 大々的に、新聞の広告では、ベンチャーキャピタル、応援しますという、見開きを半分使った広告を出している金融機関だったんですけれども、じゃ、どうしたのかと聞いたら、金融機関の中にノウハウがないから外部委託するんだそうです。そこから戻ってきたものを評価として、じゃ、融資をしますという話になっていく。じゃ、自分のところで全然評価できないじゃないか。会社に融資を受けるんじゃなくて、この特許証に書いてあるこの特許をどう評価するかということなんです。それができていない。

 それで、どんなにお金を使って一生懸命あおろうとしても、実際、融資をするなり投資をする側にそういう目利きの人が育っていなければ、この技術は将来売り物になるとか、これは大変いい技術だというふうに評価できなければ、どんなに国があおったとしても、実際に物になっていくのは限られちゃうんじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺について改善点があれば、大臣が御答弁されるのか分かりませんけれども、お願いしたいと思います。

若宮国務大臣 今委員が御指摘になられたポイントというのは非常に重要なポイントだと思ってございます。

 政府でも知的財産戦略本部の会議を開かせていただきながら、今委員の御指摘、確かにおっしゃるとおり、金融機関の中で、知的財産、あるいは、その持った特許のものがどれだけの価値を持っているのかということ、委員が実際に会社経営をなされて、銀行の中で実際に評価をする方がなかなか目利きができていないというような御経験を踏まえた形のお話だと思っておりますので、非常に重要なポイントだというふうに思っております。

 企業の知財、無形資産の投資、活用戦略、これは、投資家や金融機関が適切に評価をして企業価値の向上や更なる資金獲得につながるメカニズムを構築するためには、やはり、御指摘のとおり、企業の知財、無形資産の投資、活用戦略の積極的な開示を促すことというのが必要だというふうに認識をいたしております。

 二〇二一年の六月に改定をされましたコーポレートガバナンス・コード、これに知財投資戦略の開示が盛り込まれたことを踏まえまして、本年の一月に、知財・無形資産ガバナンスガイドラインを公表したところでもございます。

 本ガイドラインにおきましては、企業の知財、無形資産の投資、活用戦略が投資家や金融機関に評価されるためには、企業がどのような形でこの戦略の構築、実行、開示に取り組むべきかをお示しをしているところでもございます。

 今後、このガイドラインの活用を促進しまして、更に効果的な開示と投資家や金融機関との間の積極的な対話が進むように取り組んでまいりたいと思っているところでもございます。

 それから、二点目の目利きができる人が本当に育っているのかという御指摘がございました。

 今委員もお話しになられたとおり、確かにコンサルティング会社あるいは証券アナリストの方々に分析を依頼するケースが今はまだまだ非常に多いというふうに、私どもも、実際のところ、認識をしているところでもございます。

 こういったことを踏まえまして、やはり、具体的に投資家や金融機関に目利きができるような人材、そしてまた、これをつくっていかなければいけませんので、こういった形の人材育成というのは非常に必要だと思っておりますし、何よりも、まだまだ、私ども、日本の全体の企業の中で、知的財産あるいは物に対する価値、あるいは、それが海外の中でどれだけのものを生み出すものになっていくのか、あるいは、海外の中で、本当はすごい価値があるのに、それを今特許としてきちっと、国際特許として取っておかなければ、後でそれを侵されることになってしまうんじゃないかという意識がちょっとまだ低いようにも思っておりますので、この辺り、総合的にしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 例えば、ここにあるアクリル板、透明で飛沫を防御するために作っているんですけれども、これがどういう構造でできているかというのは別に知らなくても、このアクリル板で飛沫が飛ばないようになって商品化されているわけです。だから、さっき言ったように、技術で作れているもので、実際はサイエンスまで深く踏み込めていないものでも商品化されているということなんですね。

 だから、もう一つは、大手企業さんはまた違うんでしょうけれども、国公立系の大学なんかは六十から六十五歳、今役所も少しずつ、段階的に六十五歳まで定年を延ばそうというふうにやっているんですが、それでも、六十五を過ぎれば、どうぞ、第二の人生なり第三の人生で行ってください。でも、その年代の先輩方が、本当は優秀な方なのかもしれませんけれども、日本社会は全部年齢で切っていっちゃう。そういう人方に協力してもらって、一つの組織なり機構なりつくっていって、目利きを逆に御教授いただくようなものをつくっていくのも、一つの日本の財産に私はなっていくんじゃないかと思うんです。是非御検討いただけたらなというふうに思います。

 三番目の質問なんですが、財務省の法人企業統計調査によると、ハイテク産業というのは、化学工業、生産、業務用機械器具製造業とか、情報通信機器製造販売業とか、自動車附属部品製造業などを挙げている中で、一方、ローテクというふうに言われている職種があるんですが、食品製造業とか繊維産業、鉄鋼業、非鉄製造業などが挙げられています。また、非製造業としては、農林水産業、建築業、電気業、ガス・熱供給・水道等に分類されているんです。

 この資料を見ますと、二〇〇九年から二〇二〇年の十二年間の統計を見ると、企業数では、ハイテクで四・一%から三・四%に減、ローテクでは一〇・一%から八・一%に減をしているんですね。逆に、非製造業が八五・八から八八・五と若干増えています。企業数と従業員数も同じような現象なんです。売上げとか付加価値の指数を見ると、ハイテク産業の売上げは、二〇〇九年の一四・五%から、二〇二〇年度は一五・二%と増加しているんです。付加価値の割合は、二〇〇九年度の一三・五%から、二〇二〇年度では一四・六%と増加しているという結果が出ているんです。

 このデータから見て、私は、ハイテク産業をより振興することで付加価値が上がり、その富をローテクだとか非製造業に拡大することで日本の経済発展につながると思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

大野副大臣 ありがとうございます。

 委員御指摘のように、製造業か非製造業かという観点とは別に、やはり収益性の高い分野に社会全体の投資が進んでいく、これによって、ある種、そうした民間の中で、人的な、労働分配率が上がったり、あるいは雇用を生んで、その果実が結局次の成長につながる、こういった好循環を生んでいくというのは非常に重要なポイントであるのだと思います。そういった観点で様々な取組を政府の中で行っているところであります。

 一方で、個々の会社の投資の中で、経営リソースをそういった収益性の高い分野に投じられないということがあるのだとすれば、それは社外の、例えば社会課題とか、外部の不経済によるものだということだとすれば、そういった外部の不経済自体もやはりマーケットと捉えて、そういった分野を解決すべく、個社が、ある種、共通価値の創造という文脈で社会課題は解決され、全体的に収益性の高い分野に投じられるような、そういった環境をつくっていかなくちゃいけないというのは、まさに我々も共有をしているところでございます。

 その上で、何よりも一番重要なのは人材という観点がございまして、我々が所掌している科学技術の観点からいえば、人材に対しては、拠点をつくるとか、あるいは、統合イノベーション戦略に沿って、知の基盤と人材育成の強化、あるいは先端科学技術の戦略的推進、あるいはスタートアップの徹底支援によるエコシステムの抜本強化という三本の柱を重点的に取り組んで、そして今、委員が御指摘いただいたような観点で好循環というのを実現してまいりたい、このように存じます。

鈴木(義)委員 じゃ、続けて、付加価値というのは、この資料の中に明示されていたんですけれども、人件費、役員給与、役員賞与、従業員給与、従業員賞与、福利厚生費プラス支払い利息、動産、不動産の賃貸料、租税公課、営業純益を指すと、指されているんですね。

 簡単に言えば、携わっている人の給料が上がれば、付加価値は上がっちゃうんですよね。なおかつ、GDPも上がります。だから、給料を上げる努力をして、例えば今、ITの技術者でインドの方を日本に招聘すると、一千四百万ぐらい出さないと来ないんだそうです。でも、日本のIT技術の方の平均年収が大体八百万。だから、どんなに頑張ったってインドの技術者は来られない。これが現実です。

 だから、これ、いきなり倍にしろというのは難しいんですけれども、やはり科学技術を大事にするということになれば、そこに従事している人の給料を少しずつでも上げていくことをこれからもずっと続けていかなければ、やはりいい技術者も育たないし、外国の方に来てもらってイノベーションを起こすということにつながらないんじゃないかと思うんですけれども、何か方策があったらお尋ねしたいと思うんです。

大野副大臣 ありがとうございます。

 まず、人材に関しての、諸外国の優秀な研究者を日本に誘致というか、来ていただいて研究をやっていただくということからすれば、科学技術の政策としては、まさに国がその拠点を先ほど申し上げたように整備をしていこうじゃないか、こういう取組をさせていただいております。

 あえてその上で申し上げれば、民間企業の中で人件費を上げる、すなわち労働分配率を上げていくというのは一つの大きな課題ではあると思いますが、一方で、それが経営の圧迫というのにつながってくる場合もあるわけでありまして、それはその会社会社それぞれによって状況が違うということでありまして、まさに投じられる研究対象というのがどのようなものなのかというのによっても変わるものだと思いますので、それは慎重に判断をしていきたいと思います。

鈴木(義)委員 逆に言えば、国が余り関与しないのがいいかもしれないですね。何かといえば国に助けてくれと言うから、国際競争力が落ちちゃっているというふうに言う識者もいるんです。困ったときに、すぐに国の方で補助金を出してくれとか。そうじゃなくて、戦えるステージを国がつくるということです。その中でやはり淘汰されるのは致し方ない。ただ、それもつくらずに、業界から言われたから補助金を出せばいい、そういう話では私はないんじゃないかというふうに思います。

 ちょっと飛ばさせてもらって、もう時間がないので。

 例えば、知的財産戦略の推進に関する体制の中で、スタートアップ、大学の知財エコシステムの強化をうたっているんですね、大臣の方で。

 私は、各大学というふうに一つのくくりになっちゃうと分かりづらい。研究室なりゼミなりで、大学の中、いろいろな科目があるし、研究室が中にあるんですけれども、そこの知力が今どうなっているかというのをまずきちっと精査することからスタートしなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 ある大学で、一人だけ光る先生がいるんだけれども、ある大学でというふうにくくっちゃうと、全然、パーセンテージからいけばずっと下の方になってしまう。ある大学で、中くらいの人なんだけれども何人かいれば、その大学は全体として評価される、こういうふうになっちゃう。だから、一番最初にお尋ねしたように、結局、数を見るんだけれども、数の中で、じゃ、中の質をどう見ていくかというところが大切なんだと私は思います。

 それと、あと、国公立はなおさら、私立も日本の場合は大概の大学が私学助成金をもらっているんですね。結局、今申し上げたように、大学の中の研究力、知力がどのぐらいのレベルであるのかというのをきちっとやはり捉えないと駄目だと思うんです。それを捉えないで、じゃ、こっちにファンドをつくったから、ここで決めた中でお金を出しますというだけじゃ、やはり納得しないんじゃないかと思うんですね。そこのところをどう考えているか。

 それともう一つ、時間がないので。

 中小企業の経営者から、商品開発をするときに学術的な裏づけが欲しいんだと尋ねられたことがあります。さっきのサイエンス・アンド・テクノロジーにつながるんです。物はできたんです。でも、それを商品として外に出すときに学術的な裏づけが欲しいんだけれども、どこの大学に問合せすればいいのかと言ったら、必ず、中小企業庁の何という出先、何々都道府県の何という振興センターがあるからそこで尋ねてくれ、それでどんどんどんどん時間がかかっていく。

 そうじゃなくて、どこの大学のホームページを見て、何を研究しているというのは出ていますけれども、その研究したことと自分が欲しているものとのマッチングができないんです。そこら辺のことをやはり国が、例えば大学の先生方の研究者のデータベースをつくってあげるとか、それはやはり国の役割じゃないかと思うんです。

 先ほどもお尋ねしたように、論文の数でいったら、インパクトファクターの高いところに投稿すればいいというだけだったら、それは百でも百二十でもあるけれども、実際、日本の国内の中で学会誌と言われているところは十もいかないんです。なぜそういうふうなことが起きるのかといったら、ほとんど、日本語で投稿したら誰も読まないということです。そこのところをイングリッシュできちっと出して、どこの国の人でも見てもらえるような形を取らない限り、論文数を出しました、引用数が幾つですといっても全然話にならない。そこのところのシステムを変えていかないと、科学技術・イノベーションにつながらないと思うんですけれども、お尋ねしたいと思います。

大野副大臣 大変重要な御指摘を賜ったんだと思います。

 まず、研究、あるいは知的財産の見える化についてのお尋ねをいただきましたけれども、これはまさに各大学において、最近、大学内の機関の各研究がどういうことになっているのか、どういう人材がいて、何の研究をやっているのかというのを、データベースを各大学が張っていただいていて、大方の大学がそれに取り組んで、もちろん、内容の濃い、薄いはあると思いますけれども、そういった視点も重要だということはかなり共有をされておりますので、しっかりとそういった取組を後押ししていきたいと思います。

 一方で、我々内閣府の中のCSTIにおきましては、今先生が御指摘いただいたように、一体、日本の中でどういう研究があって、どういう資金がそこに流れていて、どういうインパクトを社会に生じさせているのかというようなことを、ある程度エビデンスに基づいて政策立案するという目的においてデータベース化をしようじゃないかという取組を始めておりまして、これはまさにe―CSTIと呼ばれるものでありまして、二〇二〇年の夏頃に公開をしているものでありますけれども、こういった取組をどんどん進めていかなければならないと思っております。

 また、まさに知的財産については、これは我々の所掌でございませんのでお答えは差し控えさせてはいただきたいとは思いますが、特許庁さんの方でホームページで特許の内容というのは公開されているのは当然委員も御承知のとおりだと思いますが、その内容につきましては、ある種、民間の企業が、そういった知財の価値自体を分析して、ビッグデータ分析をすることによって、マーケット価値みたいなものまで提示をし得るような、そういったシステムを構築している会社があると伺っておりますので、そういった会社とも大学は連携をして、あるいは民間企業が連携して、そして新しい価値を社会で創造していくという取組が必要なんだと思います。

 いずれにせよ、委員が御指摘いただいたような観点というのは非常に重要だと私自身も思っておりますので、これからも後押しをしていきたい、そのように存じます。

鈴木(義)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

手塚委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 質問します。

 この間、日本の研究力の低下が指摘をされております。国立大学の法人化以降、若い世代で正規のポストが大きく減りました。任期付が増えました。落ち着いて研究ができない、先が見えないので博士課程への進学者も大きく減っております。そして、今起きているのが、研究者の大量雇い止めの危機です。

 政府の調査では、科学技術・イノベーション活性化法等の特例適用者で二〇二三年三月末に十年となる者は、国立大学及び研究機関で四千五百人。

 お配りしている資料は、文科省から提出していただいた資料でございます。国立大学法人、国立研究開発法人等の研究職員の中で来年三月末で雇い止めの可能性がある方について、学位の取得状況を調べてもらいました。

 これは概略を紹介してもらえますか。

田中副大臣 お答えいたします。

 国立大学法人及び国立研究開発法人等を対象に、文部科学省といたしまして有期雇用職員の学位取得状況を網羅的に確認できてはおりませんが、議員から御指摘のあった国立大学法人十一法人に対して確認を行ったところ、本年五月三十日時点で、有期雇用職員のうち、科学技術・イノベーション創出活性化に関する法律等による労働契約法の特例の対象者のうち、令和五年三月三十一日時点で雇用期間が十年となる者、計二千百五十一人の学位取得状況については、博士号取得者が一千三百十六人であり、そのほか、博士号取得見込み者が四十五人、修士号取得者が二百二十四人、学士号取得者が四百九人となっております。

 また、各法人の労働契約において通算雇用期間の上限を十年以内としている者、計一千二百五人の学位取得状況については、博士取得者が六百八十四人であり、そのほか、博士取得見込み者が三人、修士取得者が百三十五人、学士取得者が二百六十六人となっております。

宮本(徹)委員 大学ごとは見ていただければと思いますけれども、どの大学でも、博士の学位取得をされている方が半数近く又は半数以上ということになっております。十年特例で十年を迎える方々は、十年研究してきている方々ですから、大きな研究実績もある方々でございます。

 次の資料、東京新聞の記事を見ていただきたいと思いますが、来年三月末で雇い止めにされようとしている東大のバイオ系の特任教授は、こう述べております。別の大学に移れるならいいが、昨年から十件以上、大学教員の公募に書類を出しているが全く通らない、同じような境遇の人が殺到しているのだろう、背に腹は代えられない、中国からオファーがあれば考える、こう述べておられます。

 小林大臣にお伺いいたします。

 優秀な研究者が雇い止めされていくことは、日本の研究力を一層低下させ、日本社会にとって大きな損失だと考えますが、そういう認識はございますか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 我が国の研究力の向上のためには、研究者が腰を据えて研究に打ち込める環境を整えていくこと、これが重要だと考えています。その観点からは、研究者の雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることは、私は大変重要だと考えております。

 個別の法人の業務運営につきましては、各法人を所管する省庁におきまして適切に対応いただくものではございますが、意欲と能力のある研究者がそれにふさわしい処遇を得て研究に取り組めるようにすることが、我が国全体の研究力の強化にとって重要だと考えます。

 政府としては、研究の魅力向上や研究環境の改善を図って、国際的に比較して我が国の研究力が向上するように、その取組を進めていきたいと考えます。

宮本(徹)委員 我が国の研究力にとっても大変ゆゆしき事態が今起きつつあるということなんですね。

 私、大臣、この東京新聞に出てくる教授に直接お話を伺いました。ここではA教授ということにしておきたいと思います。

 このA教授の寄附講座の資金を出している会社、B社としますけれども、B社は、資金をこれからも出すので、A教授に研究を更に続けてほしいとおっしゃっているわけですね。A教授も東大で研究を続けたいと考えている。ところが、大学の側は、十年を超えて雇用するとA教授に無期転換権が生じる、しかし、A教授を六十五歳まで雇用する財源がない、こういう理由で雇用は十年までだというふうに大学側は説明しているということなんですね。

 A教授は、じゃ、B社の寄附が続く間だけでも雇用を延長してほしい、こう求めても、大学側は、いや、法律上、無期転換権が生じるので、そうした約束をしても法律が優先するから駄目だ、こういう話になっているということでございます。A教授は学生の指導も行ってきております。

 無期転換させないために十年で雇い止めするということで得する人は、はっきり言って、私、誰もいないと思いますよ。A教授にとっても、東大にとっても、あるいはB社にとっても、日本の研究力にとっても、誰にとっても大きな損失というのがこのケースだと思います。

 A教授はこうおっしゃっていました。私のような研究者が職を失う、これを見て学生は大学の研究者になろうとは思わない、民間に就職をする、基礎研究を荒廃させていくことになるんじゃないか、こうも言われておられました。

 このA教授のケース、今ちょっと御紹介させていただきましたけれども、大臣、率直にどう思われますか。

小林国務大臣 私自身、一つ一つの個別の事例を詳細に存じ上げているわけではないので、ちょっと個別の案件についてコメントすることは控えますが、そもそも政府として、雇用の在り方については先ほど申し上げたとおりです。

 個々の具体的な人事の在り方につきましては、やはり、それぞれの大学、機関、あるいはそれを所管する省庁において、その具体的な在り方についてしっかり決めるものだというふうに私は認識をしているところであります。

宮本(徹)委員 問題なのは、個々で決めてもらうということでいくと、こうした、誰にとっても得にならない、日本の研究力にとっても、A教授にとっても、大学にとっても、そしてB社にとってもマイナスになることしか結論として出てきていないということなんですよね。これを放置していいのかということが問われていると思うんですよ。

 私は、今、個別の方の紹介をしましたけれども、同じ例が千の単位で、今、日本社会で起きているわけですよね。任期付で十年を迎える方々が研究を続けられるようにしようということを考えたら、私は、もっと大臣自身が、個別の大学任せではなくて、政府としてちゃんと対策を取っていく、個別の事例、一つ一つどう解決していくのかということも含めてやっていかなきゃいけないと思います。

 大臣には文部科学省に対しての勧告権限もあるわけでございますから、こうした勧告権限も使って研究者の大量雇い止めを回避すべきだと思いますが、いかがですか。

小林国務大臣 内閣府特命担当大臣の勧告権について今お尋ねがありましたが、委員御指摘の勧告権というのは、内閣府設置法の第十二条第二項で、特命担当大臣が、その掌理する事務の遂行のために特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し勧告することができる旨、確かに規定されています。ただし、これは、各省の大臣がそれぞれの権限や責任を果たす分担管理をあくまでも基本としつつ、内閣府の特命担当大臣に対して総合調整の観点から与えられた権限であると認識しています。

 御指摘の大学や研究機関における人事や雇用につきましては、今し方申し上げたとおり、それぞれの機関の特性や事情を踏まえた個別的かつ具体的な対応が求められますことから、各法人の経営判断で決定されるものであって、また、その業務運営について、所管省庁において適切に対応いただくものであると考えます。

 ただ、政府としては、研究の魅力向上を図りつつ、十兆円大学ファンドによる研究環境の強化、また、先ほど来議題に上っている博士課程学生への経済的な支援等々、意欲と能力のある研究者が、ふさわしい処遇を得て良好な環境で研究に専念できる環境をつくっていきたいとは考えております。

宮本(徹)委員 しかし、今はそのふさわしい処遇がないというのが問題なわけですよ。

 実績もある研究者の皆さんが、十年だ、ただそれをもってして雇い止めにされようとしている、こんなので本当に研究者にみんななろうと思いますかね。ならないんじゃないですか。幾ら若手の皆さんに支援をしますといったって、その先が見えないわけですから。ここを本気で変えるということが私は問われているというふうに思いますよ。それが私は小林大臣の大きな仕事だと思います。

 各省庁というお話がありましたので、文科省にもお伺いしたいと思います。

 先ほど、立憲民主党の藤岡議員とのやり取りで、実態把握を行うという答弁がございました。この中身についてちょっとお伺いしたいんですけれども、この実態把握なるものはいつ行うのか。そして、それは数字をつかむものなのか、私が紹介したような個別の問題についてつかもうと考えているのか、そして、個別の問題をつかんだ上で指導する、そういうことも考えて実態把握をしようとしているのか、お答えください。

田中副大臣 お答えいたします。

 先ほども答弁をさせていただきましたが、今後必要な対応を検討するためには、法律の施行状況等を把握する必要があると考えております。

 本特例の適用から十年を超えることとなる令和五年四月以降に、本特例に基づいて無期転換する研究者等が生じることになるため、その前後の状況も含めつつ実態把握をすることは、これは必要であると考えております。

宮本(徹)委員 前後というのは、今、前なんですよね。今、前なんですよ。数だけつかんでも、率直に言って意味がないと思うんですよね。今起きている事態をどう解決するのかということを、文科省はなされるつもりなんでしょうか。

寺門政府参考人 お答えいたします。

 今ほど副大臣から申し述べましたとおり、改正法の附則におきまして規定されているとおりでございますので、本特例に基づいて無期転換が生じる研究者等が生じることを踏まえますると、こうした法律の施行状況をまず把握しなければいけないと考えてございます。

 このことについて、その上でどのような対応を図るのかを考えておりまして、今後、その調査の方法、在り方については、事務的によく検討を詰めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 いや、ですから、無期転換の期限が来た後に無期転換したかどうかという、そういうのを悠長に調べていたら、全く今起きている事態に対しては何もしないということになっちゃうわけじゃないですか。今起きている事態を誰が責任を持って対処するんですかということをお伺いしているんですよ。

寺門政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のこの問題につきましては、各法人がそれぞれのミッションに基づいて各研究者とともに契約を行っているというところでございますので、労働契約の趣旨を踏まえまして適正に対応いただくよう、これまで文部科学省としても周知をしているところでございます。

 したがいまして、この件については、引き続き、法人において丁寧な対話を継続していただきまして、種々の問題というものの解決に努めていただきたいというふうに考えてございます。

 文部科学省としては、労働契約の趣旨を踏まえて、これまでも適正に対応いただくよう周知を図ってございまして、こういったルールの適切な運用について周知徹底を図ることを通じまして、適切な各労働契約の運用というものに努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 ですから、ルールを周知しているだけではこうした事態が止まっていないじゃないですかということを言っているわけですよ。

 具体的に、労働契約法の趣旨にもとる事態が今起きているわけですよ。小林大臣は、労働契約法の趣旨に基づいて雇用の安定化を図ってほしい、こういうことを言っているわけですよ。具体的にどうするんですか。

寺門政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮でございますけれども、委員御指摘の違法な事案というお話がございましたけれども、詳細について、一般論として申し上げれば、個別事案の違法性というものにつきましては、労働契約法十九条の雇い止めの法理に基づきまして、最終的には司法において判断されるというふうに承知をしているところでございます。

 その上で、労働契約の趣旨に基づいた対応ということを文科省としては各法人に再三再四にわたって周知しているところでございますので、丁寧な対話を、引き続き、各法人においては、現場を知悉すべき法人が、各労働契約の相手方と十分にお話をしていただきながら、その周知を図ることによって解決をお願いしたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 そういう法人任せでは、本当に駄目なんですよ。私は、これはもう本当に特別な体制を取って対応しなきゃいけないと思いますよ。

 あわせて、これは大学も困っている面があるんですよね。

 先ほど東大の例を紹介しましたけれども、無期転換しようと思ったときに財源がないんですよね、財源が、その方を定年まで雇っていく。私は、この財源を手当てすることも含めて考えなきゃいけないと思いますが、この点、小林大臣、どうお考えですか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 若手の研究者が研究に専念できる環境を構築していくことが重要でございますので、若手研究者が挑戦的な研究に取り組める創発的研究支援事業などの施策を実施してきておりますが、若手研究者への任期なしポストの充実も必要だと認識はしています。

 そのため、内閣府としては、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ、これは令和二年に決定したものでございますが、これを踏まえて、例えば間接経費、あるいは競争的研究資金の直接経費から研究者の人件費を支出することで捻出した運営費交付金など、多様な財源を戦略的かつ効果的に活用することで、特に優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくことを研究現場に促しているところであります。

 引き続き、こうした取組を各大学が行うことを政府として後押ししていくことで、一定の流動性の確保を図りつつも、大学における優秀な研究者の安定的なポストの確保を図って、それをもって研究力の強化に取り組んでいきたいと考えます。

宮本(徹)委員 日本でトップの実力を持つ東大であっても、財源に苦労しているんですよ、無期転換の財源に。

 今の大臣のお話だけでは、足りなくて困っているんですよね。これは本気で、どうやって解決するのかというのをよく実態をつかんで考えないと、本当に大損失ですよ。若い皆さん、博士課程に行こうなんて本当にどんどん思わなくなりますよ。任期付の研究者の皆さんの一割が、毎年こういうことが起きていくわけですよ、これから毎年毎年、このままでいけば。

 これは、ちゃんと更に考える必要があるんじゃないですか。大臣、いかがですか。

小林国務大臣 無期雇用転換ルールにつきましては、ルール適用の実態などを踏まえて、労働契約法令を所管する関係省庁において今後検討がされることになると承知をしています。検討の結果を踏まえて、政府として適切に対処していくということだと思います。

 委員が今御指摘の、博士、研究者を目指さなくなるんじゃないかという点につきましては、政府としては、研究の魅力向上を図りつつ、十兆円規模の大学ファンド、これも大学の研究環境の強化ということもありますし、これで博士課程の学生への支援というのも当然行っていきます。また、先ほども申し上げた創発的研究支援事業などを通じて、研究者が良好な環境で研究に専念できる環境をつくっていきたい、努めてまいりたいと考えます。

宮本(徹)委員 幾ら十兆円ファンドを用意しても、無期転換が図られていかなければ不安定なんですから、この問題の解決には全く当たらないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 本当は、今日は、東大の労務担当理事の方にも来ていただく予定で、本人には了解を得ていたんですけれども、与党の反対でなぜか呼べずに、この問題をちゃんと議論ができなくて大変残念だというふうに思っております。

 その上で、理研についてもお伺いしておきたいと思います。

 理研では、二〇二三年末で雇い止めをされる研究職が三百人弱おります。この中には、六十人以上の研究室の主宰者が含まれております。研究室主宰者が雇い止めになると、研究室も廃止となり、そこで働く職員の雇い止めにもなるわけでございます。

 お伺いしますけれども、理化学研究所で来年三月末で契約期限を迎える非常勤研究者のうち、学位の取得状況はどうなっているか、教えていただけますか。

坂本政府参考人 お答えいたします。

 理化学研究所に確認したところ、令和四年四月一日時点での集計によれば、令和五年三月末での十年の雇用上限となる常勤の任期付研究系職員は計二百一名、このうち、最終学歴が博士の学位取得者は百六十一名、修士の学位取得者は二十八名、学士の学位取得者は十二名ということでございます。

宮本(徹)委員 八割が博士号を持たれている方ということになるわけですね。理研で十年、二十年研究を支えてきた人たちがたくさんいらっしゃるわけです。

 この理研の雇い止めのひどいところは、労働契約法が改正された後の二〇一六年になってから、無期転換ルールを逃れるために、新たに有期雇用の通算契約期間について五年上限、十年上限というのを定めました。雇用の安定化を図るための無期転換ルールを定めた労働契約法の趣旨に真っ向から反するやり方でございます。

 事務職員の五年上限については国会でも大問題になり、労使の交渉で、二〇一六年四月以前から雇用があった者については無期転換を図るということになりました。

 同じ理屈で言えば、十年特例の対象者についても、二〇一六年以前から雇用されている者については、これは違法な不利益変更に当たる、希望者は無期転換すべきだというふうに思います。

 理研を指導して、法の趣旨にもとることはやめさせるべきではありませんか。

田中副大臣 理化学研究所では、平成二十八年の就業規程改正前から雇用されている任期制職員のうち、事務系職員については、平成三十年二月に、従事する業務が存続する範囲において、五年間の雇用上限の適用を除外することとしたと承知いたしております。

 これは、事務系職員の業務の特性に鑑み、採用当時において、業務の整理合理化が行われない限りは雇用が継続する可能性があったと考えられることから、このような取扱いを変更したものと確認しております。

 一方、就業規程改正前から雇用されている任期制職員のうち、研究者については、従事する研究プロジェクトの終了や見直し等により任期満了となることを前提として雇用されており、事務系職員と研究者とでは雇用の前提が異なると考えております。

 理化学研究所では、新しい研究領域を開拓し、国家的、社会的ニーズの高い研究を機動的に進めるため、プロジェクトの廃止も含めた見直しを適時適切に行っております。

 これにより、時宜にかなった最先端のプロジェクトを立ち上げ、そこに優れた若手研究者などの人材を結集し、研究所の国際競争力を維持向上させることとしております。

 文部科学省としては、理化学研究所において、労働関係法令に基づき適切な人事の運用を行っていただくとともに、労働者との丁寧な対話を継続していただきたいと考えております。

宮本(徹)委員 とんでもない答弁だと思いますね。十年の任期が来るからということで、プロジェクトを途中で廃止をしていっているわけですよ。それが、何かあたかも合理的な見直しみたいなことを文科省が擁護するなんて、もってのほかだと思いますよ。

 時間が来ましたから、これで質問を終わらなければなりませんが、正直、この問題をそのままにしておいたら、私は、取り返しのつかない事態を、若い皆さんへの影響も含めて、日本の研究に与えるというふうに思います。そのことを自覚を持って、小林大臣には打開策を考えていただきたいと思います。うなずいていただけますか。

小林国務大臣 委員の御指摘については、一連の質疑については伺わせていただきました。

 いずれにしても、研究力の底上げを図っていくためには若い研究者の方々の処遇の改善というものをしっかりやっていく必要があるということは、問題意識が共有できていると思います。

 ただ、個々の具体的な事例につきましては、あくまで冒頭申し上げたとおり、研究者の雇用の安定を確保する労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされることは大変重要であるというふうに考えておりまして、政府としては、当然、その法令にのっとって適切に対応していくということだと考えます。

宮本(徹)委員 その法の趣旨が貫徹されるような取組を求めまして、質問を終わります。

手塚委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十八分散会


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