衆議院

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第3号 令和4年11月15日(火曜日)

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令和四年十一月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 下条 みつ君

   理事 大野敬太郎君 理事 小林 史明君

   理事 田所 嘉徳君 理事 平  将明君

   理事 白石 洋一君 理事 中谷 一馬君

   理事 伊東 信久君 理事 鰐淵 洋子君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石井  拓君    石橋林太郎君

      上田 英俊君    大岡 敏孝君

      川崎ひでと君    小泉 龍司君

      田畑 裕明君    土田  慎君

      中村 裕之君    中山 展宏君

      古川 直季君    牧島かれん君

      松島みどり君    松本 剛明君

      松本  尚君    青柳陽一郎君

      中島 克仁君    藤岡 隆雄君

      山岡 達丸君    阿部 弘樹君

      和田有一朗君    岡本 三成君

      日下 正喜君    福重 隆浩君

      鈴木 義弘君    宮本  徹君

    …………………………………

   国務大臣         後藤 茂之君

   国務大臣

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     高市 早苗君

   財務副大臣        井上 貴博君

   文部科学副大臣      井出 庸生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総合政策推進室室長)       笹川  武君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官)            奈須野 太君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        河西 康之君

   政府参考人

   (内閣府日本学術会議事務局長)          三上 明輝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           木村 直人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           林  孝浩君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           原  克彦君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官)          北山 浩士君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           藤本 武士君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木村 典央君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           但野  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十五日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     東  国幹君

  岡本 三成君     福重 隆浩君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     上田 英俊君

  福重 隆浩君     岡本 三成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

下条委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房総合政策推進室室長笹川武君、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官奈須野太君、内閣府宇宙開発戦略推進事務局長河西康之君、内閣府日本学術会議事務局長三上明輝君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、文部科学省大臣官房審議官西條正明君、文部科学省大臣官房審議官木村直人君、文部科学省大臣官房審議官林孝浩君、文部科学省大臣官房審議官原克彦君、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官北山浩士君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、経済産業省大臣官房審議官藤本武士君、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹君、国土交通省大臣官房審議官木村典央君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

下条委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

下条委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平将明君。

平委員 自由民主党の平将明です。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に入っていきたいと思います。

 まず、大学ファンドについて、高市大臣に質問させていただきます。

 大臣の所信表明におきましても、十兆円規模の大学ファンドの運用を進め、対象大学の選考を開始するという御発言がございました。この十兆円ファンド構想は、私が内閣府の科学技術・イノベーションの担当の副大臣のときに、このアイデアを拾い上げて実現をしたという経緯があります。

 人口減少が進む中で、我が国が再度経済大国として復活するには、科学技術・イノベーションによって我が国を立て直すしかありません。投入金額に対して、GDPを押し上げる効果が最も大きいのがイノベーションに対する投資と言われています。

 しかしながら、我が国の科学技術の源泉となるトップの研究大学でさえ、研究力では諸外国に大きく水を空けられている状況が続いております。そういう危機感がございました。このようなトップの研究大学の研究現場を立て直して、我が国からイノベーションが生まれる環境を構築することがまさに喫緊の課題であると確信をし、十兆円のファンドという施策の検討が開始をしたわけであります。

 このような当初の趣旨を踏まえれば、この十兆円ファンドの対象大学は、すなわち国際卓越研究大学になりますけれども、決して、何か運営費が足りないからとか、いわゆる私学助成の足らず前として配るようなことがあってはいけません。また、東大、京大といえども、ただぼけっと口を開けて待っていればここから金が入ると思ったら大間違いで、そういうこともあってはならない。

 対象大学の選考に当たっては、我が国のイノベーション創出を牽引していくという意欲とコミットがあるかどうかということ、そのためにガバナンスが適切に構築されているかということ、そして、この支援金を活用してどのようにイノベーションを創出していくか、強化していくかといった点をしっかり見極めていくことが必要であると思います。

 また、十兆円の運用と聞くと、額がすごい大きいので、そうすると、よく出てくるのが、うちもくれ、うちもくれという話になるんですが、制度の趣旨を踏まえれば、やはり、これは数校に絞り込んで支援していくことが重要です。

 また、このファンドの運用については、短期的に一喜一憂することなく、長期的な視点に立って、腰を据えて運用していくことが大事で、何で十兆円になったかというと、額を大きくした方が保守的に運用できるんですね。ですから、額を大きくしてしっかり運用して、その資金をイノベーションの起きるところに集中して投下をしていくということであります。

 既に、担当する国立研究開発法人の科学技術振興機構には専門的なチームが構築をされているというふうに聞いておりますので、しっかり運用を、腰を据えてやっていただきたいと思います。

 この十兆円ファンド、国際卓越研究大学の制度所管官庁は、一義的には文科省ですが、我が国の科学技術・イノベーション政策における本政策の重要性を鑑みれば、科学技術政策担当大臣がしっかりとこの施策の進捗状況を把握しながら、共に取り組んでいく必要があるかと思います。

 科学技術政策担当大臣としてどのように関与をし、当初の目的を達成していくつもりなのか、大臣にお伺いいたします。

高市国務大臣 十兆円ファンドは、我が国のトップ研究大学が自律的、継続的に知的価値を創出し、その知的価値を社会の成長につなげていく好循環サイクルを構築することで、大学の持続的成長や我が国全体のイノベーション創出につなげていくための施策です。そういった意味では、今、平委員がおっしゃった、対象大学の選定について必要な要件ですとか、数校に絞り込む、こういった考え方には大いに賛同いたしております。

 この施策の検討に当たっては、科学技術・イノベーション政策における重要性に鑑み、施策の基本的な設計はCSTIにおいて検討を行い、それに基づいて、大学行政を所管する文部科学省で具体化を図ったものでございます。ですから、国際卓越研究大学の認定ですとか当該大学の計画の認可を文部科学大臣が行う際には、あらかじめCSTIの意見を聞くこととされております。

 CSTIの議員でもあります科学技術政策担当大臣としても、大学ファンドが当初の目的を達成して、我が国のイノベーションの創出を先導できるように、しっかりと取り組んでまいります。

平委員 今、大臣から御発言あったとおりで、そもそもは、これはCSTIの会議から出てきたアイデアでありますので、是非お願いしたいと思いますし、ともすると、文部科学系の族議員の先生方から、うちもよこせ、うちもよこせと必ずなりますので、そんなことにならないように、しっかり見ていただきたいと思います。(発言する者あり)よろしくお願いします。

 続いて、学術会議についてお伺いをしたいと思います。

 イノベーションを起こしていくには、やはりアカデミアと行政とか我々ローメーカーとの連携というのが極めて重要だと思うんですが、私、正直申し上げて、科学技術・イノベーションの担当副大臣を三回やりましたけれども、日本学術会議が、私、日本のイノベーションを阻害していると思います、正直言って。その上で、大臣に、あっ、これは、済みません、高市大臣じゃないですよ、後藤大臣にお尋ねしたいと思います。

 まず、お手元の資料を見ていただきたいんですが、平成二十九年三月二十四日、軍事的安全保障研究に関する声明で、日本学術会議というのが声明を出しています。

 中身を見ると、下から二段目の段落ですが、軍事的安全保障研究とみなされる可能性のある研究については、その適切性を審査する制度を設けるべきだとか、ガイドライン等を設定することが求められるとかいうことが声明として出されているんですが、これはいわゆるデュアルユース問題になります。この声明は、私から見るとトゥーマッチで、実際、現場は一部萎縮をしていますし、必要な研究ができていないんじゃないかと思います。

 いわゆる、例えばインターネットとかGPSとか、これはやはり軍事からそもそも来ていますし、さらに、メッセンジャーRNAワクチンも、これは見方によれば、生物化学兵器の周辺の研究ですよね。あとは、サイバーセキュリティー、高市先生もやっていますが、サイバーセキュリティーなんかは、厳密にこの声明のとおりやったら何にもできないですね。今、ロシアがウクライナ侵略戦争をやっていて、いわゆるハイブリッド戦争になっていますから、もうサイバー分野は、このとおりやったら、何にも日本は手も足も出ない、研究が出ない。

 さらに、宇宙分野、衛星コンステレーションなんかを使って今ウクライナは通信を確保しているわけですが、これから戦争は、残念ながら、宇宙から始まると思います。宇宙から始まって、サイバー空間に行って、リアルの戦争に行きますので、この文脈を厳密に守ったら、宇宙の研究にも様々な制約がかかってくると思います。

 結果として、大学にあるシーズが生かせなくなります。諸外国に後れを取ります。結果、日本を取り巻く安全保障の環境はますます厳しくなります。結果として、戦争のリスクが高まるということだと思います。

 一枚めくっていただいて、実は、前職の小林鷹之内閣府特命担当大臣が日本学術会議とよくコミュニケーションを取っていただきました。三枚目を見ていただくと、これは梶田会長名でコメントが発表されていて、その中身を見ると、「従来のようにデュアルユースとそうでないものとに単純に二分することはもはや困難で、研究対象となる科学技術をその潜在的な転用可能性をもって峻別し、その扱いを一律に判断することは現実的ではないと考えます。」と、ここまで現実路線に修正をされてきているというふうに思います。

 その上で、一番最後の段落ですが、「日本学術会議では、」「大学等研究機関において、用途の多様性・両義性を有する先端科学技術・新興科学技術に係る研究が円滑に実施される方策について、研究現場や行政の担当者等と意見交換を行いながら、検討していきたいと考えています。」というコメントを発表されています。

 是非この方向でしっかりと学術会議改革を進めていただきたいというふうに思います。

 まず、学術会議から答弁を求めます。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から資料も配付いただいて御紹介いただきました、本年七月の梶田会長名の、当時小林大臣に対する回答の中で、今御紹介いただいたような内容を回答として考え方を明らかにしたところでございます。

 ポイントは、そこの第二段落にあります辺り、それから「したがって、」のところ、平委員から御紹介いただいたとおりでありますけれども、この考え方を、国公私立の各大学関係機関、あるいは研究機関の現場、行政の担当者等に説明をしつつ、現在、意見交換を行っておりまして、最終段落にありますとおり、引き続き関係者と意見交換を行いながら、用途の多義性、両義性を有する先端科学技術、新興技術に係る研究が大学等の研究機関で円滑に実施される方策について、引き続き関係者と意見交換を行いながら検討を進めまして、令和五年九月末までの今期中に学術会議として取りまとめることを目指してまいります。

 以上です。

後藤国務大臣 議員御指摘のとおり、従来、デュアルユース問題と言われてきたものを含めた先端科学技術、また新興科学技術の研究開発に際しまして、先ほど日本学術会議事務局から説明があったような姿勢でアカデミアとして臨んでいくことについて、大学等の理解を得ていくことは重要だと考えております。

 学術会議においては、用途の多様性、両義性を有する先端科学技術、新興科学技術に係る研究開発の円滑な実施方策について、研究現場や行政の担当者と意見交換等を行いながら検討し、できるだけ速やかに取りまとめられることを期待をしております。

 政府としても、現在、日本学術会議の在り方の見直しに向けて検討を進めているところでありまして、議員の御指摘を踏まえつつ、梶田会長ともコミュニケーションを取りながら、しっかりと改革に取り組んでまいりたいと考えます。

平委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 続きまして、スタートアップエコシステムやSBIRについて、大臣に質問をさせていただきます。

 イノベーションを起こすときには、スタートアップの役割は大変重要になってきます。SBIRというのはよく使われますけれども、ちょっと分かりにくいんですが、ここで若干説明をさせていただきますと、まず、政府が課題を設定する、そこで応募してきた数社に絞り込んで補助金を出す、その補助金を出した上で、いいものは調達をしたり、それをまた民生に転用したりするということで、アメリカなどは、GAFAMに並んで、いろいろなスタートアップがSBIRから出てきています。お掃除ロボットのアイロボットのルンバも、地雷除去用のロボットの研究から民生転用されたものであります。

 大臣に、日本版SBIRに取り組む意気込みをお聞かせいただきたいのと、あわせて、最近、インパクトスタートアップという言葉が出てきました。いわゆる社会課題を解決するためのスタートアップで、これはESG投資とかSDGsとかで、こういう潮流に非常にマッチをするということと、あと、社会課題を解決するという意味では、日本は課題先進国ですから、日本の課題を解決できた後はそういう成功事例を出せば世界に展開できるということで、インパクトスタートアップ、SBIRとも非常に相性がいいと思いますが、インパクトスタートアップというのもやはり頭に入れながらSBIRを組み立てていくべきと思いますけれども、高市大臣、いかがでしょうか。

高市国務大臣 今般策定されました総合経済対策におけるスタートアップ支援といたしまして、SBIR制度の抜本拡充が位置づけられました。先端技術分野の技術実証に必要となる二千六十億円の基金創設に係る予算を、令和四年度第二次補正予算政府案に計上したところでございます。

 今後、政府の予算案につきましては国会で御審議をいただくことではございますが、この制度の抜本拡充を通じて、まずスタートアップなどが有する先端技術の社会実装を強力に推進してまいりたいと思います。

 また、スタートアップエコシステムの形成に向けて、拠点都市を選定しております。インパクトスタートアップにつきましても、拠点都市における各地域の特色を生かした新技術また新サービスの創出支援を通じて、地域の社会課題の解決ですとか地域発のスタートアップのグローバル展開をしっかりと支援してまいります。

平委員 ありがとうございます。

 最後に、衛星コンステレーションについて質問をさせていただきたいと思います。

 大臣所信の中にも衛星コンステレーションに触れていただいているんですが、私、宇宙担当の副大臣も三回ぐらいやっていますけれども、衛星コンステレーションはすごい重要で、今回のロシアのウクライナ侵略の戦争においても、まず通信が途絶をしました、ロシアの攻撃によって。それで、イーロン・マスクさんのところのスターリンクを供与して、今、直接衛星コンステレーションとつながって、それで様々な対応をしているわけであります。

 日本も、それはロシアに全部占領されるということは余り想像できませんが、一方で、首都直下型地震とか南海トラフとかが想定されているわけで、そのときに、日本の通信が途絶をしたときに、本来は衛星コンステレーションの通信があれば非常に強靱性が増すんですね。

 一方で、日本の衛星コンステレーションというのは、これはもう大臣御承知のとおり、合成開口レーダー、だからレーダーですよね、レーダーのコンステレーションしか今想定されていないんです。それで、私は、通信のコンステレーションをやるべきだとずっと言ってきているんですけれども、ちょっと立ち遅れていると思います。

 一方で、首都直下型地震などの対応というのはもう待ったなしだと思いますので、通信のコンステレーションができないのであれば次善の策というのを考えなきゃいけなくて、例えば、大気圏を太陽光で三か月も六か月も飛んでいる基地局、HAPSといいますけれども、そういうような技術もありますし、若しくは海外のスターリンクなりアマゾンなりのところと連携をするのか、いずれにしても、そういうことを考えていかなければいけないと思います。

 宇宙担当でもありますが、日本の衛星コンステレーションはどうあるべきかについて、大臣から御所見をお伺いしたいと思います。

高市国務大臣 まず、合成開口レーダー、SAR衛星でございますけれども、これは二〇二五年までにベンチャーが三十基程度の小型衛星コンステレーションの完成を目指しています。防災面での活用も含めて、内閣府として実証事業をしております。

 それから、通信でございますけれども、政府は、通信衛星を活用して防災関係機関同士の通信を確保する中央防災無線網の運用を実施しています。民間でも、衛星経由で携帯基地局をつなぐということなど、災害に強い通信衛星の活用が始まっております。しかし、御指摘の点も含めまして、しっかりと検討をさせていただきたいと思っております。

 特に、小型衛星通信コンステレーションの活用について、総務省で、大容量通信を提供する衛星コンステレーションシステム、こういった新たな衛星通信システムの導入に向けた制度整備、つまり電波法の技術基準になるんですが、こういったことを進めていると承知しておりますので、しっかり取り組ませていただきます。

平委員 防災の方も、私も担当副大臣で、十五号、十九号の対応をさせていただきましたけれども、台風十五号のときは何が起きたかというと、まず停電します。停電すると基地局の非常電源が立ち上がるんだけれども、非常電源が大体半日ぐらいでバッテリーが切れて、電話がつながらなくなります、携帯が。

 今、防災の方もDXをして、いろいろな情報をスマホで見て災害対応をしようという方向に振っているんですけれども、政府の方の中央防災無線というのは、あくまでこれは行政サイドの話で、じゃ、民間の僕ら一人一人が持っているスマホというのはどうかというと、そこまで配慮されてないんですね。これは、防災のDXを進めるときに、電気の強靱化と通信の強靱化をちゃんとやらないと絵に描いた餅で終わってしまうというのがあります。

 高市大臣、総務大臣もやられていましたので、是非検討していただきたいのは、衛星コンステレーションができない、間に合わないのであれば、じゃ、さっき言った成層圏をぐるぐる回るHAPSみたいなものを通信事業者に何基か持つように義務づけるとかしないと、多分、首都直下型地震が来たときに、ほぼほぼ対応できずというようなことが起きかねないと思います。

 いずれにしても、これは、衛星コンステレーションが、通信ができないのであれば次善の策を考える必要があると思いますので、是非その辺を御検討いただければと思います。

 終わります。ありがとうございました。

下条委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。

 当委員会においては初めての質問となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けての新たな交通体系、スマートモビリティーを中心に質問させていただきたいと思います。

 今、全国的にJRローカル線の存廃が議論され、クローズアップされています。輸送改善や観光誘発など利用促進策も続けてきたようですが、沿線人口の減少、少子高齢化、道路整備や道路を中心としたまちづくりの進展などによって年々減り続け、この三年に及ぶコロナ禍の影響もあるかと思いますが、例えば、JR西日本においても、赤字路線の目安とされる輸送密度千人未満の路線がほぼ全てとなっている現状があり、全区間赤字となっております。線区によっては輸送密度千人どころか一桁、二桁の線区も幾つか存在するなど厳しい利用状況になっており、三十年前と比較すると、全体として三分の一を切るところまで落ち込んでいるという状況でございます。大量輸送という鉄道の特性が十分に発揮できない、また、脱炭素に向けた鉄道の持つ優位性が発揮できていない状況ともなっております。

 また、路線バスなども大変厳しい状況であると聞いております。運転手が確保できず、路線を減らしたり、減便もせざるを得ない状況が続いているということです。

 鉄道やバスを例に現状を述べましたが、若者の自動車離れや、ふだん乗らず駐車場で眠っている車も相当数あります。これからは、自家用車など物を持つ時代から、いかにして効率的で快適な移動手段を持つかといったことに焦点を当てていく時代に入ったと実感しております。

 カーボンニュートラル実現を目指す二〇五〇年、二十八年後でございますが、を見据え、人の移動、物流、交通体系についてどのようなお考えをお持ちか、高市大臣の所感を伺えればと思います。

高市国務大臣 今、日下委員御指摘のとおり、社会情勢の変化を踏まえながら効率的で快適な移動をどのように確保していくかということについては重要な課題でございます。新たな技術の活用が必要だと思っております。

 内閣府では、SIPにおきまして、自動運転に関する研究開発や実証事業を本年度までの期間で推進しております。この自動運転は、交通渋滞ですとか交通事故の削減に加えまして、高齢者などの移動手段の確保、また物流の効率化に資するものですので、将来の交通をより安全で快適にすることには貢献すると考えております。ただし、サイバーセキュリティー対策、また位置情報に関するジャミング対策など、ここはしっかりと気をつけなきゃいけない点だと私は考えております。

 さらに、来年度以降につきましては、SIPの新規課題候補として、様々な移動手段や交通環境の要素をダイナミックに一体化して、安全で環境に優しく、継ぎ目のない人や物の移動を実現することを目指したスマートモビリティープラットフォーム、この構築につきまして実現可能性の調査を進めております。

 二〇五〇年頃の移動、物流、交通体系のあるべき姿も想定しながら、しっかり検討を進めてまいります。

日下委員 ありがとうございます。

 今、カーボンニュートラルに向けて世界が動きを加速する中で、新たな移動手段の可能性を模索することは非常に意義あるものと思います。地域住民の移動手段、交通網をどのように考え、整備していくか。ビッグデータやAI技術、IoTの活用、排気ガスを出さないゼロエミッション車、自動運転技術など科学技術の今後の進展もにらみながら、答えを出していかなければなりません。

 交通網というのは県をまたぎ全国に広がっているものですので、場合によっては様々な技術や設備など規格の統一も必要になると思います。まず政府がリーダーシップを持って国民にグランドデザイン、未来像を示していくことが大切であると思います。

 今、国土交通省として、こうした新たな交通システム、輸送システムの構築について、どのような準備をし、どのような計画を持っているのか、現状及びお聞かせいただける未来像があれば、お示しいただきたいと思います。

木村(典)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地域交通は大変厳しい状況にありますが、最先端の技術や投資も取り込んで、利便性、持続可能性、生産性が向上する形に再構築し、地域のモビリティーを確保することは大変重要であると考えております。

 国土交通省では、こうした考え方の下、MaaSや自動運転などの最新デジタル技術の活用や、地域における様々な先進的な取組の事例について支援してきたところでございます。例えばMaaSにつきましては、令和元年度よりこれまで、四十七地域七十三事業におきまして実証、実装に要する費用の補助を行ってまいりました。今後は、より利便性の高いサービスの実現に向けて、広域連携を目指す取組の支援や、分野をまたいだ連携基盤構築に必要な要件、機能などの整理を行っていきたいと考えております。

 また、バスサービスにおける自動運転導入のための実証実験、AI、オンディマンド交通の導入、EVバスや再エネ活用によるエネルギーマネジメントシステムの導入など、交通事業者のDX化、GX化の支援も進めているところでございます。

 国土交通省といたしましては、今後とも、最先端の技術を活用し、交通システム、輸送システムのDX化、GX化を進めることにより、持続可能性、利便性、生産性の高い交通ネットワークの構築を目指してまいりたいと考えているところでございます。

日下委員 各地で自治体、企業、大学等が連携して、鉄道に代わる大量輸送を可能とするBRT、連結バスでございますけれども、の研究、実証実験が行われています。例えば、東日本大震災の被災地である気仙沼線や大船渡線のBRTは専用道と一般道との組合せで運行されており、専用道は日本で一番長く確保され、高い定時性を保っているといいます。

 震災以前から、気仙沼線、大船渡線は、高校生たちの大切な足でございました。そこで、鉄道の復旧を待つよりはまずBRTということで、専用道ができた部分から仮復旧という形で供用が開始されて、約十年が経過しました。鉄道は全線工事が完了しなければ開通できませんが、BRTは専用道が一部区間できれば一般道と組み合わせて走らせることができます。新駅の設置や、状況に応じて経由地を変えることもできます。

 利用者からも好評で、十年たった今では、コスト面でも鉄道より低く抑えられており、仮復旧としてのBRTではなく、これを本復旧とするということを全自治体に受け入れてもらっているとのことです。あとはドライバー不足が課題で、自動運転システムの研究開発にも着手しているということでございます。

 こうした実証実験によってモデルケースを積み上げ、その地域に適した移動、輸送システムの構築を図るべきだと思います。また、同じような特性を持つ地域への横展開も可能になると思います。

 こうした事業に対する国からの支援、補助金等がどうなっているのか、執行状況などを含め、経産省から説明いただければと思います。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地域の公共交通が厳しい状況に直面している中、地域の暮らしを支える足を維持、確保していく上で鍵を握るのは、デジタル技術を活用した新たな移動手段であると考えております。その実現に向けまして、経済産業省としても、継続して様々な実証事業を進めているところであります。

 具体的には、BRTにおける自動運転の実現に向けて、例えば、茨城県日立市におきまして、車両の技術開発、自動運転を活用したサービスの可能性の検討、地域住民の理解醸成に向けた取組を進めております。

 また、AIやIoTを活用した新たなモビリティーサービスの実現に向けましては、デマンド交通の導入や異業種連携によるサービスの提供について、ニーズや事業性の検証を行っております。

 こうした実証事業で得られた成果や課題につきましては、ホームページで公開したり、シンポジウムで発信したりするなど、同様の移動課題を抱える他地域への横展開も図っております。

 今後も引き続き、関係省庁や自治体、産業界とも連携をしながら、新たなモビリティーサービスの実現に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

日下委員 また、大学や高専等が参画する場合には、内閣府の地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージなどを活用した支援も可能であると思いますが、特にこうした交通系の実証実験で支援している事例があれば御紹介いただきたいと思います。

奈須野政府参考人 お答えします。

 内閣府では、大学の研究成果を活用した産業競争力の強化や地域社会課題の解決の促進を目指して、政策課題ごとに関係府省の事業を整理したものを地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージとして取りまとめて決定しております。

 このパッケージの中では、政策課題の一つとして、スマートモビリティーのような交通系の取組に対する支援メニューも含んでいます。例えば、文部科学省の共創の場形成支援プログラム事業では、令和四年度より名古屋大学を中心としたモビリティーに関する取組に対する支援を開始しております。

 具体的には、大学が自治体や産業界と連携して、先進モビリティー技術を始めとする総合知の活用を通じて、マイカーを使わなくても快適に移動できる地域モビリティーシステムを実装することによって持続的な地域創生を目指す取組、こういったものを支援しております。

日下委員 ありがとうございます。

 本当に、地域と共存する大学、大変重要な英知だと思いますので、どうぞこれからも支援の方、よろしくお願いしたいと思います。

 また、地方創生という観点でも、住民が移動に困らない、移動を快適にすることは、デジタル化との相乗効果を発揮し、人の大都市への集中から地方への分散化をもたらす極めて重要な事業であると考えますが、高市大臣の御所見をお伺いできればと思います。

高市国務大臣 日下委員のおっしゃるとおりであると思っております。

 デジタル田園都市国家構想の目的であるデジタル実装を通じた地方活性化を交通分野でも進めていくということは重要でございます。先ほど申し上げました自動運転、それからまた、SIPの次期課題候補についても申し上げましたけれども、これらも地方での交通の課題解決に役立つものとしていきたいと考えます。

 それらの成果を活用して、将来、地方でも様々な新たな交通サービスが生まれて、誰もが安全、安心に移動できる社会が実現して、それが地方再生にもつながっていくということを期待いたしております。

日下委員 次に、ガソリンやディーゼルエンジンで駆動する内燃機関車の存続について質問いたします。

 昨年、EUが二〇三五年にハイブリッド車を含むガソリン車、ディーゼル車の新車の販売を禁止する政策を打ち出しました。欧州市場に進出している日本の自動車メーカーにも波紋が広がり、日本の自動車各社は電気自動車、EVの販売比率を段階的に引き上げる方向で、内燃機関車の全廃を表明しているメーカーもございます。また、国が行うエコカー減税もEV車等には手厚くなり、日本が国際市場でも優位性を持つ燃費性能が飛躍的に伸びている内燃機関車には手薄になる、減税がなくなるということになっております。

 一方、CO2を排出しない、逆にCO2を利用する合成燃料、Eフュエルの研究も進められております。経済産業省によると、脱炭素社会の実現に向けた多様な選択肢の一つとして、CO2などを用いた燃料製造の技術開発を進めるプロジェクト、すなわちCO2と水素から高効率、大規模に液体燃料を作り出すプロセスを開発し、二〇三〇年までにパイロットスケールで液体燃料収率八〇%を実現、二〇四〇年までに自立商用化を目指すとございます。

 この合成燃料の研究、技術開発について、現時点での進捗状況と見通しについて経済産業省にお伺いいたします。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 合成燃料、Eフュエルは、CO2と水素を合成して製造される燃料でございまして、御指摘のとおり、カーボンニュートラル実現への貢献のみならず、内燃機関や既存のインフラが活用できるなどのメリットを持っております。このため、二〇四〇年までの商用化の実現を目指し、現在、グリーンイノベーション基金などを通じて、高効率かつ大規模な製造プロセスを確立するための技術開発を集中的に進めております。

 例えば、今年度は、二酸化炭素から原料となる一酸化炭素を取り出す逆シフト反応という化学プロセスでありますとか、合成ガスから液体燃料に転換するFT合成といった要素技術の高効率化に向けて、小型試験装置を用いた温度特性や触媒などの性能評価を実施しているところでございます。

 今後、二〇二五年度にはベンチプラントでの試験などを経て、二〇二八年度には日量三百バレル、年間一・七万キロリットル相当でございますが、その規模のパイロットプラントによる、運転検証による一貫製造プロセスの確立を目指しているところでございます。

 合成燃料の商用化ができるだけ早期に実現できるよう、関係省庁、関係業界と連携しつつ、しっかり取り組んでまいりたいと考えてございます。

日下委員 ありがとうございます。かなり具体的に進んでいるなという印象を持ちました。

 そこでお伺いしたいことは、合成燃料が実用化されたときに、それが使える内燃機関車が残っているかということでございます。

 災害時など、電気が止まったとしても走れる車を残すことが大事です。また、大型車や船舶など、大きな駆動力が必要なものには電気や燃料電池は向かないとされております。今、内燃機関車を製造しているメーカーは、乗用車を製造するという面で、電気自動車、EV、PHV、FCVなどで生き残れるかもしれません。しかし、心臓部分であるエンジンを作るための部品や部材を提供する関連企業、中小企業の経営はどうなってしまうのか。自動車整備工場、整備士の皆さんにも大きな影響が出ると思います。

 ちなみに、日本の自動車関連就業人口は全体の約一割を占め、製造品出荷額は全製造業の約二割を占めており、大きな影響が考えられます。

 今、政府として、税制も含め、電気自動車に大きくかじを切ってきたように見えますが、今後の合成燃料による内燃機関車をうまく存続させていくことは、経済安全保障の観点からも自動車産業界の持続性を考えても重要だと思うのですが、経済産業省の御所見をお聞かせいただければと思います。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、自動車産業は雇用の約一割、輸出の約二割を占める基幹産業であり、日本経済の牽引役であると認識しております。世界的な脱炭素化という大きな環境変化の中でも、我が国の基幹産業である自動車産業が国際競争力を維持強化し、引き続き世界をリードしていくことが重要だと考えております。

 自動車のカーボンニュートラルの実現に向けましては、現状、完全な技術は存在しない状況と認識しております。そのため、ハイブリッド技術などのこれまで培った日本の強みも生かす形で、二〇三五年までに乗用車新車販売で電動車一〇〇%という目標を掲げ、電気自動車や燃料電池自動車、そして燃料の脱炭素化など、多様な選択肢を追求することとしております。

 合成燃料は、発電所や工場などから回収したCO2を利用するものでありまして、カーボンニュートラルに貢献するものと考えております。また、ハイブリッド車やガソリン車などの内燃機関を搭載する車でも、そのまま利用することができるというメリットを持ちます。二〇四〇年までに合成燃料の商用化の実現を目指し、グリーンイノベーション基金などを通じて、高効率かつ大規模な製造プロセスを確立するための技術開発を進めているところです。

 多様な選択肢の一つとして、合成燃料についても可能な限り早期の商用化が実現するよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

日下委員 ありがとうございました。

 日本は世界の最先端を走っていた半導体事業から撤退して、今急いで生産基盤を立て直している、つくり直しているという状況がございます。そういったことがないように、内燃機関の車についてもしっかり守っていただければというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

下条委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 立憲民主党の白石洋一です。

 まず、愛媛県などで行っている県立高校の再編問題についてお伺いしたいと思います。

 人口減少で高校生の数が少なくなっている、見込みも少なくなっている。一方、やはり財政のことはあると思います。人口が減ってきたらその分予算も減らされる。これはやはり文科省さんに考えてほしいんですけれども、固定費というのがありますから、そんなに急激に減らさないでほしいというのがまず一つあります。

 そして、各県においていろいろルールを作っているらしいんですけれども、愛媛県についてはこういうルールがあります。入学生が八十人以下の状況が三年続いたら、そしてその後も増える見込みがないならば募集停止を行う。つまり、一学年二クラスの状況が三年続くのであれば、もう募集停止しますよ、行く行くは廃校になりますよというのがあって、それを避けるために今再編するんだということでやっているんですね。でも、その再編の中身は、実質廃校も含まれているわけです。

 そこで、今愛媛県の中ではいろいろな議論があるんですけれども、例えばタウンミーティングとかで私なども発言しているんですけれども、この愛媛県のさっきのルール、これから、そこが発端点でやっているんですけれども、それは対面を前提にしているんですね。対面授業で一学年八十人ということなんですけれども、DXのことを考えたら、今ずっと議論になっています、今の技術のことを考えたら、遠隔教育も含めて八十人を確保するということを国としても推奨すべきじゃないかなと。

 それができたら、遠隔通学ですね、やはり二校を一校にしたら、従来だったら近所だったものが遠くに通学しないといけないということになってしまいます。でも、それを遠隔教育で二つの高校をキープし、そして、授業をするときは一人の先生が二つの高校の二つのクラスを教えていたら、実質一学年八十人以上をキープできる、維持できるということ、つまり、廃校せずして適正規模を維持することができるんじゃないかと思うんですけれども、文科省さんの今の考え方はいかがでしょうか。

井出副大臣 ありがとうございます。

 まず、公立高等学校の配置につきましては、昭和三十六年にいわゆる高校標準化法という法律が制定をされまして、当時は、高校教育の普及ですとか、その増える人数に対して高校教育を提供していこう、その設置主体は原則都道府県であって、都道府県が適正配置の努力義務をその法律で定められております。

 近年は、先生御指摘のとおり、人口減少の中で、どうやって地域の高等学校教育を守っていくかという視点かと思います。その際には、生徒さんですとか保護者、また地域のニーズをきちっと酌み取った、ボトムアップからの意見をきちっと聞いて都道府県がその配置を決めていくということが前提になろうと思います。

 そうした中で、今先生お話ありました遠隔授業の活用というもの、これは、中山間地、離島等に関するところで、令和三年度から十三の道県で実証実験等をしておりますが、今本当に地方においては高校再編というものが非常に重要な問題になっている中で、その高校再編の在り方を考える上での遠隔授業というものが一つの選択肢、解決のための一つのツールになるのではないか、そういうところは我々としても問題意識を持っておりますので、引き続き、その検討というものを進めてまいりたいと思います。

白石委員 引き続き、実証実験をやっていらっしゃるということで、是非これも進めていただきたい。

 そして、愛媛県よりも先行して高校生の数が減っている例えば北海道であるとか高知県であるとかも遠隔授業をベースに高校の維持を進めているところもあります。しかし、そこは、配信センターがあって、そこで複数校に対して遠隔授業をやっているということなんです。

 私が提案したいのは、もう二校なり、もしかしたら三校なりのところで、複数の校舎、これはそれぞれ昔からの高校です、昔からの高校が三つぐらいあって、そこに、教師が二校なり三校なりに遠隔授業をする。遠隔授業をする場所は交代にしてもいいんです。そうすると、対面授業とそして遠隔授業とをミックスした形でできると思うんですね。配信センターのような半ば予備校みたいな形じゃなくて、一つの高校では対面、でも同時に遠隔授業も行っているからほかの校舎のところではちゃんと授業に参加できる。一つのクラスを、一体であるクラスのように運営できるというものをやってほしいんです。ここについて、副大臣、いかがでしょうか。

井出副大臣 先生もう既に御指摘ありましたように、遠隔授業については、今、例えば、七十四単位中三十六単位までに遠隔授業を収めてほしいとか、遠隔授業をやるに当たっても、少し、必ず対面を入れてほしいというようなことはお願いをしております。

 対面の重要性というものも我々は認識をしておりまして、その上で、そのセンター形式でやっているところもありますし、先生がおっしゃるように、学校間で連携している、やっているというようなところもございますが、先生も対面と遠隔とのバランスを取ってという御提案でございますので、今それぞれの地域で進めていただいている事例ですとか、少し、好事例なんかも今後はきちっと見ていく必要もあろうと思いますが、しっかりバランスを取りながらやっていくということは引き続き見てまいりたいと思っております。

白石委員 是非それを進めていただきたい。

 そして、キャンパス方式というのがあります。キャンパス方式で、教師がいるところに一度は全員集まって授業を受けるということもミックスしながら、いろいろなやり方はあると思うんですね。今進めている、少なくとも愛媛県で進めているのは対面授業でしかない、対面授業で八十人を維持するためにはこれしかない。一部は廃校的な位置づけになって集約するというようなことになっていますが、それだけが一つの道ではないと思いますので、それを文科省としても、実証実験なり、あるいは、自分たちで今の技術、大体、今高校に行ったら全ての人にタブレット、学生は持っていますし、教室には大きなスクリーンがあります。もう設備は整いつつあるので、これを使ってどうするかということを、好事例、あと、こういった形でやったらどうですかとか、あるいは、それに対して支援はこういうメニューがありますと授業をメニュー化したりする、そして大切なのは、教師がそういう遠隔授業に慣れていないということですね、教師のトレーニング。教師にちょっとためらいがあるんじゃないかなというのも私は感じるんです。慣れていないとか、ずっと記録に残るとか、そういったこともあるかもしれません。そういったところをちゃんと国の方で支援するということをやっていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

井出副大臣 今、実証実験の方を進めておりますので、御指摘のように、対面授業をやる際に、教職員の方がそれに慣れていく、例えば、何か棒読みとかでやっていると余り伝わらないよとか、いろいろな本当に課題もあろうと思いますので、その辺りはその実証実験の中で、そういう課題ですとか、またメリットというものを収集して課題は解消してまいりたいと思います。

 支援につきまして、ちょっと私、今、詳細の答弁がなくて申し訳ありませんが、それはまた追って確認をさせていただきたいと思います。

白石委員 支援はこれから作っていただきたいんです、大臣、これからですね。今は一つあると思うんですけれども、実証実験的なものだったと思いますが、これから全国で県立高校の再編が本格化するんじゃないかと思います。愛媛県は少し先行している方だと思います。これから起こり得ることに備えていただきたいということです。

 そして、都道府県で地元の人の話を聞きながら進めているということなんですけれども、やはり、県の教育委員会がこれでやると決めたら、もう相当これを変えるのは難しい感覚がしています。

 しかし、それではいけないと思うんですね。もっと話を聞いて、それは、地元の人、地元の人というのは、まずは高校生、それから、これから高校生になる中学生、その保護者が第一ですし、あと、やはり無視できないのは、そこで卒業したOB、OGの方、やはり自分の卒業した母校がなくなるのはメンタル的にも精神的にもショックだと思います。そして、そこに関わらなくても、その地域の人にとっては、高校、県立高校というのは一つの拠点だったわけですね。産業、市があったら、その高校の、農業高校だったりするところである。それがなくなってしまうということに対して抵抗がある。

 それで、そういったことをちゃんと踏まえた形で進めていくということは、これは県任せにするんじゃなくて、国としても、こんな形で進めたらどうですかという指針を出していただきたいんですけれども、副大臣、いかがでしょうか。

井出副大臣 私、長野なんですが、先生のお話と全く問題意識、重なる御指摘はございます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、地域の皆さんですとか生徒さん、OBの方もそうだと思いますが、いろいろな皆さんの御意見を聞いてボトムアップで合意形成をしていくということは非常に重要なことだろうと思います。

 県においても、高校再編をずっと進めてきて、例えば、何かこれまで県が、基本的な考え方として大事な、持ってきたことを変えるとなると、例えば、じゃ、前やった学校の再編はどうなるんだとか、いろいろな御議論があると思うんですよね。

 私なんかも本当に、町に町の名前のついた高校が残っているのと残っていないでは、その地域の元気といいますか、そういうものは全然違うと思いますし、長野県なんかは、地域校という扱いで、人数の少ないところをちょっと残すというようなこともやっておるんですが、本当にOBの方のつらいお気持ちというのも私は聞いたことがございますので、そこは都道府県にきちっと粘り強く合意形成を図っていただきたいと思いますし、国としては、その基準、こうあるべしみたいなものというのはなかなか難しいと思いますが、高校再編の中でこういう課題が浮き彫りになってきている、そういった課題の抽出というようなことは御協力は十分できると思います。

白石委員 昔からやってきたことを変えるのは難しい部分はあると思います、一貫性の問題で。でも、技術の進歩というのもあると思います。それを議論するのは、ここの委員会だと思います。

 それも踏まえた上で、文科省の中で、高等学校教育の在り方ワーキンググループというのが昨日立ち上がったらしいんですけれども、是非、この高等学校教育の在り方ワーキンググループ、県立高校の再編の、特に統合を含めた再編の課題の洗い上げと深掘りを、国としても議題としてここに入れていただきたいんです。いかがでしょうか。

井出副大臣 先生の御質問のとおり、昨日、中教審の中に高等学校教育の在り方ワーキンググループを設置をいたしまして、人口減少への対応ですとか、また、もう一つ、成人年齢が引き下がったことですとか、それから先生御質問のDXに関する対応等も背景に議論をしていこうということにしております。

 その中に、高等学校制度の望ましい在り方、全日制、定時制、通信制等、そうした高等学校の在り方についても一つ論点として議論する予定にはしております。

白石委員 それともう一つは、この再編というのは、廃校も含めた縮小の面だけじゃなくて、いろいろな学科をつくりますよという二つ目の面があるんですね。そこには、科学技術も踏まえた例えば情報マネジメントであったり生活科学であったり、中には、マリンビジネスとか島の農業とか、あとはスポーツとか、そういった、県立高校で今までなかったような新しい学科がたくさんできますよというふうになっているわけです。これで、特色ある県立高校、そこで学生が来やすいように、ほかの地域からも引っ越してくるような高校になってほしいという願いも込めて、時代に合った学科をつくろうとしているんですけれども。

 私も、親の立場で見ると、これだけ高校のときから分野を絞ってしまって大丈夫なのかなと。やはり、普通科というのが一つあって、そこが大きな部分を占めるというのに慣れているものですから。そして、進路というのは試行錯誤しながら二十代をかけて決めればいいというふうな考え方もあるんですけれども、高校のときからこれだけ絞るということについて、国としては、この県の試みをどういうふうに見ていらっしゃいますでしょうか。

井出副大臣 高校の再編を進める上で新しい学科を設けるというのは、各地でそういう取組があるんだと思います。先生がおっしゃるように、例えばそこの卒業生であれば、少し聞いたことのない学科の名前が出てきて、一体どんなことをやるんだろうとか、進路を絞り過ぎじゃないかというような御懸念もあろうかと思います。

 ただ、一方で、例えば私の地元の工業高校なんかは、工業高校なんだけれどもプログラミングというものを、それは生徒さんのニーズが多いんですけれども、をやってみたりとか、やはりニーズに応じて教育の内容を多様化していく、そういう面では新しい学科も必要なんだろうとは思います。

 今まだ、新しい学科ができて、卒業生がちょっとしか出ていないとか、これから卒業生が出るというところでの御不安が大きいかと思いますので、そこの御不安をしっかり解消できるような、そういう教育それからまた進路指導というものをやっていっていただきたいと考えております。

白石委員 ありがとうございます。

 文科省さんは、ここまでの質問ですので、もう退席されて結構です。

 次に、国際卓越研究大学についてお伺いします。

 これは、今採択に向けて進んでいると思うんですけれども、それに向けての前提であります基本方針の案ができたところだと思うんですね。

 そこで、従来からの懸念であります、大学の自治の観点から、政府の関与、これはない方がいいんです。ちゃんとない形になっているのかということと、もう一つの質問も併せます。経営組織が、つまり事業財務部門が教学組織を支配してしまうようなことになっていないか、そういうことにならないような担保がちゃんとあるのか、確認したいと思います。いかがでしょうか。

木村(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 国際卓越研究大学でございますけれども、こういった大学を実現するに当たりましては、経営の意思決定において、国内外の先端的な研究や大学経営の動向、さらに社会ニーズなどを踏まえること、これが重要でございまして、多様な専門的知見を生かせる合議体によるガバナンス、これが必要だということで、基本方針の方でも求めてございます。

 一方で、この合議体の構成員といった人選につきましては、こういった世界最高水準の研究大学の使命も踏まえつつ、あくまでも各大学法人において検討いただくということでございまして、大学の自治を侵害するということにはならないというふうに考えてございます。

 さらに、この基本方針において、その合議体でございますけれども、中長期の経営戦略などの重要事項の決定、それから執行部の業務執行の監督などに権限を有するということでございまして、いわゆる教学事項などに関するマイクロマネジメントについては行わないということを規定してございます。

 したがいまして、個々の研究内容あるいは講義のシラバスといった内容などの教学事項については介入すべきでないということにしてございまして、文部科学省としても、このような考え方に基づいて適切に制度を運用してまいりたいというふうに考えてございます。

 そして、この合議体の具体的な位置づけでございますけれども、国公私の設置形態による制度の違いを踏まえたものになるというふうに考えてございまして、例えば私立大学におきましては、既に私立学校法に基づきまして、合議体として、学校法人に理事会とか評議員会、こういったものを設置しなければいけないということになってございます。一方、国立大学につきましては、現在、合議体によるガバナンスを前提とした制度となっておりません。そういったことから、合議制の意思決定機関を置くことができるよう、現在、国立大学法人法の改正に向けた検討を進めているといった段階でございます。

 いずれにしても、基本方針の考え方に基づいて、文部科学省としては、適切にこの制度を運用してまいりたいというふうに考えてございます。

白石委員 次に、十兆円ファンドの現在の状況なんですけれども、これは次の藤岡委員が質問を用意していますので、そちらに委ねたいと思います。今、状況は悪いですけれども、どうするのかというのは大きな懸念点です。

 そして、卓越大学が何百億円もの助成を受けて科学技術を進める、これはいいことなんですけれども、一方、地方大学はどうなんだというのがあります。

 四十七都道府県、こういう卓越大学だけではないけれども、地方、地域にとって重要で、しかも、その地域の、地場の産業と連携しながら研究を進めているというところがあります。そこに対して手を抜いてはいけないと思うんですけれども、地方大学への資金助成というのはどういう状況でしょうか。これは高市大臣、お願いします。

高市国務大臣 トップの研究大学だけではなくて、特定分野に強い大学、また地域の拠点となる大学など、様々な機能を担う大学全てが我が国の知の基盤として重要だと考えております。

 ですから、大学ファンドによる限られた大学への支援だけではなくて、自身の強みを発揮して地域課題を解決するといったことなど、実力と意欲を持つ大学に対する支援策を地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージとして決定をいたしました。これで日本全体の研究力を上げていきたいということです。

 この総合振興パッケージで、各種予算事業による支援策というものに加えて、政策課題ごとに各関係府省の事業を整理した事業マップによるシームレスな地域課題解決の促進ですとか、構造改革特区制度を活用した制度改革など、政府全体の施策を総合的に取りまとめました。

 大学現場にとって実効性のあるパッケージとなるように着実に推進をしますし、また、委員始め先生方の御意見も伺いながら、更なる充実と強化に向けて取り組んでまいります。

白石委員 大学に対する助成制度というのは、文科省だけじゃなくて、経産省だったり、農水省だったり、環境省だったり、国交省だったり、たくさんありますので、是非そこは統括して、パッケージということですので、そこに行けばワンストップでどんなものがあるというのが分かるようにしていただきたい。

 今、補正予算が策定されているところだと思うんですけれども、それに、非常に大きな金額ではありますが、その一部は当然この地方大学に該当するものがあると思うんですけれども、状況を教えてください。

奈須野政府参考人 お答えします。

 令和四年度第二次補正予算でございますけれども、地方大学関係で主要な予算事業に対して約二千二百億円を文部科学省に計上しております。

 この中には、大学の強みや特色ある研究力を核とした経営戦略の下で、国際展開や社会実装の加速などの実現に必要な環境構築の取組を基金事業によって支援する、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業が含まれております。

 こうした支援で、大学における戦略性に基づきまして安定的、継続的な運営が可能になることで、大学ファンドの支援対象大学と地域中核・特色ある研究大学とが相乗的、相補的な連携で共に発展を遂げて、我が国全体の研究力向上につなげたいというふうに考えております。

白石委員 本予算に比べて補正予算の規模が大きいですから、ちゃんと地方大学に、こういう情報に疎いところもあるかもしれません。というのは、こういった補助金の申請というのは、教員自らやるところがありますので、ちゃんと地方大学に、教員に届くように周知しないといけないと思うんですね。じゃないと、そういったところにさといところはしっかり申請してがっちり取るけれども、そうじゃないところは、本当は発展性がある研究をしているのに資金が行かずに終わってしまうということになります。

 地方大学への周知について、高市大臣、お願いします。

高市国務大臣 一義的には、個々の事業の目的とか趣旨、活用方法につきましては、文部科学省や、また施策によっては経済産業省などが現場の関係者に対して丁寧に説明していただくことだと思いますが、内閣府としても、このパッケージを取りまとめているということでございますので、パッケージの目的ですとか意義に合わせて、主な事業内容につきましても、シンポジウムやデジタル広報を通じて、大学現場だけではなくて産業界や自治体など、多くの関係者に対して広く周知をできるように努めてまいります。

白石委員 よろしくお願いします。

 終わります。

下条委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党の藤岡隆雄でございます。

 今日も、質疑に入る前に、まず、地元栃木県第四区の皆様に心から感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げまして、質疑に入らせていただきたいと思います。

 今日は、井出副大臣、この後文部科学委員会が参議院の方であるということで、ちょっと順番を変えまして、先にちょっと質疑させていただきたいと思います。

 今日、いろいろ資料をお配りしております。日本の科学技術の非常に今危機であるというふうな指摘も言われております。その中で、研究者に安心して研究に専念できる環境ということもつくっていくことがやはり重要であるというふうに私は思っております。

 そういう意味で、本年三月末というのは、一つのある意味節目のときでもあると思います。それは、かつての法改正を踏まえまして、期間の定めのある、有期の雇用での研究者、これがちょうど十年を迎える、そして、その十年になると無期雇用への転換権が認められるということの中で、その前に、ある意味、雇い止めにされてしまうという可能性というのが出ているわけでございます。

 こういうものが、いろいろな、例えば、中国への頭脳流出だとか、注目度の高い論文数が韓国に抜かれてしまうとか、こういうことにもつながっているということも考えられるわけでございます。

 そういう意味で、私は、前国会のときに、田中当時副大臣に、この雇い止めの実態把握をやはりするべきじゃないかということを申し上げたところ、実態把握をする必要があるということの御答弁をいただいて、何回か申し上げたんですが、する必要があるということでしたが、質問主意書で申し上げたら、今度は、その実態把握の調査、項目を検討しているということであったんですけれども、雇い止めの実態把握、これはやはり私はするべきだと思うんですけれども、検討した結果、調査をしていただいたということでよろしいですか。

井出副大臣 この問題、大変関心の高い問題でございまして、今お話ございましたように、国会でも六月に質疑がございました。

 文科省の方では、九月に、約千二百の大学、研究機関に調査票を発出をして、その状況の調査を今現在行っているところでございます。また、あわせて、その大学の研究者で今年度末に通算雇用期間十年となる方を対象とした調査を今進めているところでございます。

藤岡委員 ありがとうございます。

 調査を開始してくださったということは、これは、本当にそういう意味で一歩前進だということで、大変僭越ですけれども、評価させていただきたいということを思います。

 問題はここからということでございますが、これは、井出副大臣、記者会見等でこのことを余り言及されているように私は見受けられなかったんですが、これは大臣の会見等ですね。これは、記者会見等で説明はされていないんでしょうか。

井出副大臣 私も確認をしましたところ、大臣の会見等での発言、また質疑に応じる形での説明というのはなかったかと思います。

 六月に国会で実態把握が必要だということを表明しまして、それからまた、十月ですかね、国会で私の方から調査を開始しているということは公表させていただいております。

藤岡委員 大臣等は、記者会見等でもしっかりこれを説明していただく必要があると思うんですね。

 私もこれはレクのときに少しお聞きしましたけれども、なかなか、十月、取りまとめ、まだまだ時間がかかりそうだとか、いろいろな話もお聞きしました。やはり、例えば、調査の内容で、本人の希望によって雇用契約がここで終わりますというふうな多分項目もあると思います。そういうところが、実際、それが本人の希望かどうかというところとかもやはり深掘りしていかないといけないと思うんですね。そういうときに、そういう調査をしていますよということをきちっと周知をしておかないと、なかなか、本当に苦しい立場に置かれている方が気づかないとか分からないとかということがあると思うんですよ。

 ですから、改めて大臣記者会見でこれを説明していただきたいと思うんですけれども、よろしいですか。

井出副大臣 これまでのところ、文科省と千二百の大学との連絡のやり取り、それからまた、個別の研究者の皆さんはその対象になる方に調査をお願いするということですので、そこの情報連絡をしっかりやるということでやってまいりました。

 非常に関心の高い問題であるから、世間にきちっとお伝えすべきではないかという御指摘だと思います。そこのところはきちっと受け止めたいと思います。

藤岡委員 是非、受け止めるというよりも、会見での御説明をお願いしたいと思うんです。

 高市大臣、是非、これは高市大臣からもしっかり発信していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

高市国務大臣 これは調査を行っておられる文部科学省において適切に判断されるべきことだと考えております。

藤岡委員 もちろん、確かに所管するのは文部科学省かもしれませんが、科学技術政策に大きな影響を及ぼすということでございますから、是非これは説明を私はしていただいた方が、きちっとそれが周知されて、回答をするということが、また更に広がっていくと思うんですね。

 是非、高市大臣、これはやはり高市大臣からも科学技術政策を所管する大臣として発信をしていただきたいなと思うんですけれども、もう一回、どうですか。

高市国務大臣 これは、文部科学大臣の担務しておられるところでございますので、私の方から先に申し上げるという筋合いのものではないと思っております。

藤岡委員 それでは、井出副大臣、もう一回お願いしたいと思いますけれども、是非、受け止めていただいて、大臣からの発信をお願いしたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

井出副大臣 調査の方は既に開始をしておりまして、もちろん、今、年度内で調査を完了させようと考えておりますが、調査結果はもちろん公表をするつもりでおりますし、関心の高さは分かっております。きちっと社会に対して説明をしろと、その思いはきちっと受け止めさせていただきます。

藤岡委員 是非、これは本当に社会全般に対して広く周知していただきたいということを思うんです。それは申し上げておきたいと思います。

 この調査結果、年度内にというお話がございましたが、現時点、中間結果でもいいんですけれども、今どのような状況でしょうか。

井出副大臣 今まだ調査の途上にありまして、昨日確認をした段階では、今直ちに何かこんな傾向がとか、そういうことをちょっとお話しできるような状況ではございません。

藤岡委員 当初、やはり十月下旬ぐらいまでにというふうな話も私はお聞きしました。それがなかなか、もうちょっと時間がかかっているというのはやはり先ほどの周知の話もあると思いますし、問題なのは、雇い止めが実態把握をされて、その後やはりどういう対応をするかということがもちろん一番重要なわけですよね。状況によっては、当然、予算措置をしなくてはいけないわけですよね。それを、例えば、本当は今回の補正予算で対応する、あるいは、どうしても間に合わなければ来年度の当初予算で対応する、こういうふうなことでやはりやっていかないと、調査をして、何か雇い止めはありました、それで終わりですということでは、これは本当に私は問題だと思うんです。

 したがって、このスケジュール感、やはりこれは少し急いでいただく必要があると思うんですね。そういうふうな予算措置まで含めたスケジュール感でやっていただきたいと思うんですけれども、井出副大臣、いかがでしょうか。

井出副大臣 来年の三月末、四月以降の状況で、その前後の変化をきちっと見る必要がありますので、そこから逆算して、きちっと調査をしていくということは大事だと思います。

 ただ、一方で、大学とか研究機関と研究者との間の雇用に係る、そういう問題でございますので、まず法令遵守をきちっとやっていただきたいということはこれまでもくどいほど申し上げてきておりますし、これからもくどいほどお伝えをしていこうと思っておりますが、文科省が、大学や研究機関の雇用のところにどこまで指導的な立場を取るべきか、取っていいのかというところは、ちょっと私、まだ逡巡しているところでございます。

藤岡委員 いや、井出副大臣らしくないですね。私も、非常に以前、御縁をいただいて、お世話になって、非常に困っている方に、私、寄り添える副大臣と思って、これは少し期待をしていたところがあるんですけれども、今の答弁は、正直、井出副大臣、いただけないですよ。来年四月の施行の状況の前後を見据えてやるというのでは間に合わないですよ、これは。だって、その前に雇い止めがあると把握したら、その前に対応しなくちゃいけないじゃないですか、これは。らしくないですよ、これは本当に。

 これは是非、財政措置の話も、今、答弁を読み上げたんだとしたら、それは駄目ですよ、その答弁。だって、そうですよね。雇用のところじゃないんですよ。大学側や研究機関がお金がないんだったらそれを応援する、それは必ずしも雇用に直接介入とかそういうことじゃなくて、財政支援をする、そういうところをやはりやって、だって、これは研究者の安心、研究できる、専念できる環境をつくらないと、日本は本当に復活できないじゃないですか。これはやりましょうよ、ちゃんと。

 是非、井出副大臣、これは四月の前後を見据えてではなくて、早急に予算措置を決めて、お願いしたいと思います。どうでしょうか。

井出副大臣 研究者の方の探求心というものに応える環境をつくっていくという思いは先生と全く同じですし、先ほど高市大臣から知の基盤というお言葉がありましたが、そういうものをきちっと守っていくのが文科省の役割だろうというふうに思っております。

 その予算措置につきましては、研究者に対する支援というもの、例えば、今二年、今度三年目に入りますが、創発研究に対する最長十年の支援ですとか、そういうところはやってきております。

 私が少し申し上げたいのは、今回の問題で、原則はやはりその法令遵守ということで、大学や研究機関等がきちっと解決していただくものだと思うんですね。そこに文科省が、大学や研究機関を指導する立場ではありますけれども、どこまでそこに入り込んでいいかというところは、少し、今、私の頭の中でちょっと検討が必要だなという状況です。

藤岡委員 法令遵守のところは、恐らくその趣旨を周知するという話だと思うんですけれども、それは無期雇用への転換をしないようにするような目的での雇い止め、そんなことを、建前上、そういうふうには作らないですよ、恐らく。違うような形で言うわけですから、その周知だけではこれは足りないんです、はっきり言って。具体的な対応をしなくちゃいけないんですよ。

 今、逡巡されているということでございましたけれども、是非、これはちょっともう一回詰めて、その雇い止め、これは放置をされるということになりますからね、今、実態把握をされて。放置されるということ。

 これは、高市大臣、大学の教員の御経験もあって、また、この科学技術で本当に日本を守らなくてはいけないということだと思うんですけれども、これは大臣のやはりリーダーシップ、科学技術を所掌する、この雇い止めの話、しっかりこれは、科学技術政策担当大臣は、予算を配分する、そのところの権限を出していくというところの所掌をされているとも思います。

 是非、高市大臣、雇い止めの状況把握をした上でのスケジュール感、財政措置を含めたところの対応をしていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

高市国務大臣 まずは研究者が腰を据えて研究に打ち込める環境が整えられるということは、我が国の研究力向上のために私は重要だと考えております。

 先ほど副大臣からもありましたけれども、研究者の雇用の安定を確保する、労働契約法の趣旨にのっとった運用がなされるということもまた大変重要だと考えております。

 例えば、テニュアトラック制度というものがございますけれども、これも一定の期間、任期付という競争的な環境を経て、それから公正で透明性の高い審査を行って、任期のない安定的な職を得ることができるようにするものでございますから、文部科学省におかれましては、こういったテニュアトラック制度それから若手ポストの確保、人事給与マネジメント改革状況それから若手研究者比率、こういったことを考慮した運営費交付金の配分の取組を進めておられることだと思いますけれども、更にこういったことにしっかりと御対応していただきたいと私は考えております。

 また、先般、永岡大臣にも、先般といっても随分前になりますが、仮にも、優秀な研究者が、真に優秀な研究者が今回雇い止めというようなことにならないように、できるだけのお力添えをお願いしたい旨、申し上げたところでございます。

藤岡委員 じゃ、井出副大臣、もう行かれないといけないので最後にさせていただきたいと思いますが、雇い止め、実態把握をされて、放置しないということだけここで是非申し上げていただきたいんですが、よろしくお願いします。

井出副大臣 先生御指摘のように、既に報道等でも、これは雇い止めだというような訴えも出ておりますので、大学や研究機関と研究者の合意形成というところが、先生御指摘のように、大変難しいんだろう、いろいろなケースがあるんだろうと思います。それを今回の調査でまずその基礎的な情報を得まして、そういう訴えにも、訴えがあるということはきちっと向き合ってまいりたいと思います。

 ただ、私が繰り返し申し上げているのは、大学や研究機関の雇用契約というところにどこまで文科省が権限を持って踏み込んで、それが許されるのかどうかというところは少し慎重に考えなければいけないと思いますが、もうずっと御質問を六月からもいただいておりますので、きちっと向き合ってまいりたいと思います。

藤岡委員 私が申し上げておきたいのは、雇用契約への介入ということじゃないんですよ、改めて、無期雇用、さらに、そこで雇い止めしないように財政的な安心感を与えていただきたいですね、そういうことでございますから、そのことだけ申し上げまして、これで御退席いただいて結構ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

下条委員長 井出副大臣、御退席いただいて結構です。

藤岡委員 井出副大臣、ありがとうございました。

 では、続きまして、大学ファンドの話に移りたいと思います。

 私も、大学自体に支援するということは、これは当然必要なことだろうし、やらなくてはいけないということだと思っております。

 しかし、問題であるのは、いわゆる財政投融資資金、借りたお金で、またそれを運用して、しかも、最初の芯金がなくて、ファンドの運用益だけでやっていくという枠組みの中でどう考えるかというところをやはり慎重に考えなければいけないと思っております。現在、運用収益率マイナス三・六七%、マイナス千八百八十一億円の、マイナスの収益ということになっておりますね。

 まず最初にちょっと大臣にお伺いしたいのは、十兆円ファンドによる国際卓越研究大学への支援の開始の時期、これは当初、末松大臣も令和六年度ということで、会見でもおっしゃっていたと思うんですけれども、これは令和六年の四月ですか、それとも令和六年度中なんですか、これはどちらですか。

高市国務大臣 令和六年度中の支援開始を目指すということになっております。

藤岡委員 そうしますと、恐らく令和六年三月末までの決算の状況を見るということになってくるのかなということで思うんですけれども、現在、先ほど申し上げた、運用収益率マイナス三・六七、マイナス千八百八十一億円、これについての受け止め、高市大臣と井上財務副大臣にお願いしたいと思います。

高市国務大臣 今委員おっしゃっていただいたとおり、令和六年三月の国立研究開発法人科学技術振興機構の決算の状況を踏まえて判断していくということになります。

 それで、今回の運用収益率を私も拝見をしております。大学ファンドの運用というのは、長期的な視点から安全かつ効率的に行うことが基本だということでございます。運用のリスク管理におきましては、市場の一時的な変動に過度にとらわれることは適切でないということから、JSTは資産評価額の変動リスクを適切に管理して運用していると伺っております。

 確かにマイナス三・六七%というのが四月から九月でございますが、これは日本だけではなくて、結構、各国苦労しているという状況で、スタンフォードなんかでもマイナス四・二、MITもマイナス五・三、コロンビア、マイナス七・六ということで、短期的に見ますとやはりそういったこともあるかと思いますが、あくまでも長期的な視点でしっかりと運用をするということが重要だと考えております。

井上副大臣 御質問にお答えいたします。

 今、高市大臣からお話がありましたとおりであります。

 財務省としても、大学ファンドの長期的な運用であることを踏まえまして、短期的な運用の損益にコメントすることはいたしませんが、大学ファンドの財務健全性を確保するということは重要だというふうに思っております。引き続き運用状況を注視していきたいというふうに思っております。

 また、長期にわたる運用が必要でありますので、所要の運用益が出るように期待しております。

藤岡委員 いずれにしても、長期の視点、それから、まさに海外でも苦戦しているという話があったと思うんですけれども、これは状況が違うんですよね。元々、例えば三年ぐらい、芯金があって、それを大学に応援していけるようなお金があればいいんですよ。ただ、最初から運用益ということでありますから、この枠組みですと、長期で見ればいいんですということが成り立たない可能性があるじゃないですか、これは。だって、最初、支援が遅れるわけですから。長期で見てもいい場合と短期でも見なくちゃいけない場合とを分けて考えなくてはいけない。今回、短期でも見ていかないと、支援開始時期が遅れるということになってしまいますよね、これは。

 その意味で、いろいろなこともありますけれども、財政投融資分科会、いろいろな警鐘が出ておりましたけれども、今回、まだ議事録が出ておりませんので、どういう意見が出ておりましたか。

井上副大臣 お答えいたします。

 十月の三十一日に財政制度等審議会が行われております。大学ファンドの運用状況の報告について、科学技術振興機構、JSTから報告を受けております。四点ございました。

 運用面では、運用が長期分散投資であることを踏まえまして、短期的な運用結果に一喜一憂する必要はないというコメントをいただいております。それと、国民への説明責任を果たす観点からは、適時適切な情報開示を行うべきだということが一点。そのほかでは、運用リスクを管理するために真に実効性のあるガバナンス体制を取るべきだという意見。先ほど高市大臣からお話がありました、令和六年度からの大学支援を開始することとなっておりますけれども、支援はファンドの運用益の範囲内で行われることであることを踏まえまして、大学関係者への丁寧な説明が必要だ、この四点を御指摘いただいたということであります。

藤岡委員 ありがとうございます。

 その中で、三番目のガバナンスのところで、私、レクのときにお伺いすると、市場リスクの委員会と運用リスク管理委員会の総括担当理事が何と同じ方になっているという話が出ておりました。

 これは、だって、市場の、運用の方とリスク管理が同じ人がやるということだと、まさに文部科学省さんなどからも発表されている、大学ファンドの運用に関して牽制すると書かれているんですけれども、これは牽制されないということになってしまいますよね。

 これは政府参考人の方で結構ですけれども、事実関係と、もしそうであれば見直しを早急にするべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

木村(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘ございましたように、大学ファンドの運用に係るガバナンス体制でございますけれども、ほかの運用機関も参考としながら、科学技術振興機構において、まず投資部門とリスク管理部門、これによって業務運営上の牽制関係を構築した上で、監査部門がこれを監査する、いわゆる三線防衛というものを機能させるということでスタートしたわけでございますけれども、先ほど御紹介がございましたような、財政投融資分科会でガバナンス対応の御指摘がございました。

 こういった御指摘も踏まえて、今後、より実効性のあるガバナンス機能の強化に向けて、科学技術振興機構の方で検討を進めるということになろうかというふうに承知してございます。(藤岡委員「同じですか、今、理事は。同じ方が兼ねているということでよろしいですか」と呼ぶ)はい。現在は同じでございますが、今後、それをより実効性のあるものに、御指摘を踏まえて……(藤岡委員「見直していく」と呼ぶ)はい。

藤岡委員 ちょっと例えを、あえて分かりやすくするために言いますけれども、融資の融資部長と審査部長が同じようになっていたら、当然、牽制機能は働きませんので、これで損失が出ていてどうなんだということになっていたときに、ちゃんとしたリスク管理体制を構築していただきたいと思いますので、これは本当に早急に見直しをお願いしたいということを思います。

 そして、高市大臣にお伺いしたいんですけれども、末松前文科大臣が御答弁の中で、運用益が積み上がらない場合は支援開始時期が遅れるということになってしまいますということを、前国会、参議院の文部科学委員会で答弁されておりますけれども、これは大臣も同じ認識ということでよろしいんでしょうか。

高市国務大臣 末松前文部科学大臣の御発言ですが、大学ファンドの創設に当たりまして昨年八月にCSTIが取りまとめた大学ファンドの資金運用の基本的な考え方を踏まえられたものだと思います。

 末松大臣がおっしゃったとおり、やはり、運用益が積み上がっていない場合には大学への支援開始時期は遅らせるものであると考えております。

藤岡委員 今のお話ですと、本当に、準備をする大学側も、何か、株がもうかったら応援してくれるよ、株がもうからなかったら応援してくれないよ、非常にこれじゃ不安な状況ではないでしょうかね。

 ちなみに、これは、国際卓越研究大学の認定をしてから多額の損失が出るという場合も当然あると思いますけれども、その場合は支援が止まるということなんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

高市国務大臣 大学への支援開始に向けましては、当該年度の運用益から支援額を確保できないといったケースに備えまして、二年分に当たる六千億円を上限に財源を確保していくこととしております。ですから、継続的かつ安定的な支援の実現を目指しています。

 いずれにしましても、大学ファンドの運用を担っているJSTが運用目的に基づいて適切に運用を行って、大学への支援を継続的に行うことができるよう、CSTIとしても文部科学省とも協力をしながら取り組んでいきたい、こういったことでございます。

藤岡委員 運用の含み損が、例えば一兆一千億を超える出資金の、更に言えば、バッファーをそうすると崩せないというふうに今なっていると思います。そういう意味で、運用益が上がらなかったらこれは支援が止まるということが今そこの御答弁になかったものですから、そういう場合、これは支援が止まるということなんでしょうか。そこをちょっとイエスかノーでお答えをお願いしたいと思います。非常に大学側は不安ですよ、これは。

高市国務大臣 やはりこれは、財投でお借りしているということになりますと、原資を切り崩して突っ込むというわけにはまいりません。だから運用益でやるというのが現在の基本的な方針でございますので、運用益がきっちりと確保できないということになると、やはり残念ながら、支援の開始が遅れる、若しくは、さっき言いましたとおり、六千億円のバッファーはきちっと設けるということでございますけれども、少なくとも開始が遅れる可能性はゼロではないということでございます。(藤岡委員「開始ではなくて、支援が止まるかというところです。運用で含み損が出てバッファーを崩せない場合があるので、止まるかというところです」と呼ぶ)バッファーも全く確保できないということになったらその可能性が出てまいりますが、そうならないように、しっかりと対応を文部科学省とともに検討もしてまいりたいと思っております。

藤岡委員 時間が迫っております。最後の質問にさせていただきたいと思いますが、大学側は、支援、認定を受けた後、止まるという事態が今あるというふうに私は受け止めましたけれども、非常にこれは、こういう状態でいいのでしょうかね。やはり改めて、何らか、多額の運用損失が出たときの対応というのを明確にしておくべきなんではないでしょうか。大臣、これは、最後、いかがでしょうか。

高市国務大臣 あくまでもしっかりと長期的に安定的な運用を求めてまいりたいと考えておりますけれども、ただ、何もかも大学ファンドに頼っていただくというたてつけではございません。この支援を受ける大学は諸外国の大学と遜色のない成長を果たすということが期待されておりますし、大学独自の努力によって、寄附金や、あと産学連携収入など、外部資金の獲得を増やして自己資金も充実させていただくということが重要です。やはり大学においてファンドレージングの専門家を確保するといったことも重要ですので、各大学がそうした体制構築を進めていけるような応援もしてまいりたいと思っております。

藤岡委員 本当に私、日本をよくしたいと思っております。したがって、まだまだ詰めるべきところがあると本当に私は今日感じました。これはしっかりまた、もっと詰めていただきたいということを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

下条委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 私、大阪第十九区という選挙区、関西空港のお膝元なんですけれども、そこに熊取町というところがございまして、そこに京都大学複合原子力科学研究所というのがあります。この研究所は、既に原子力の方の特別委員会で確認しましたけれども、二〇二六年に廃炉になりまして、二〇二九年までにアメリカが使用済みの核燃料を引き取ってくれるということなんです。

 さて、ここの研究所でヒアリングをいろいろさせていただいたんですけれども、ここの研究所で、原子炉ではない、いわゆる中性子の加速器というのが開発されまして、同時に、大阪府立大学、今、市立大学と経営母体が一緒になりまして大阪公立大学となっていますけれども、そこで静脈に取り込めるホウ素というのを開発しまして、このホウ素をがん患者さんが取り込むと、がんのところにだけそのホウ素が集積しまして、先ほど申し上げました中性子の加速器を使って中性子を発射して、それをぶつけることによって中で核反応が起こりまして、がんの内部だけで放射線が出るということで、正常組織を傷つけるリスクが少ないということで、これがホウ素中性子捕捉療法、ボロン・ニュートロン・キャプチャー・トリートメントで、頭文字を取ってBNCTというんですね。

 これがもう既に保険治療も一部認められているということなんですけれども、現在のBNCTの、まず、国の取組状況と今後の指針について教えていただければと思います。

鳥井政府参考人 お答え申し上げます。

 がんに対する治療法の開発につきましては、がん対策基本法に規定するがん対策推進基本計画に基づき、がん研究の総合的かつ計画的な推進に取り組むこととしておりまして、その中で革新的な新規医療技術開発に関する研究も進めておるところでございます。

 御指摘のホウ素中性子捕捉療法、いわゆるBNCTは、ホウ素と中性子との核反応を利用してがん細胞を破壊する、体への負担が少ない治療法の一つとして認識しておりまして、一部の頭頸部がんに関する治療につきましては、既に必要な医療機器、医薬品共に薬事承認をされ、保険適用となっております。

 加えて、現在、BNCTの適用拡大に関しましては、国立研究開発法人日本医療研究開発機構におきまして、BNCTに関する治験に対しまして支援を行っているところでございます。

 今後、臨床研究や治験等によりエビデンスが集積された場合には、薬機法上の承認申請がなされれば、有効性及び安全性を確認した上で承認を行いまして、保険適用の拡大を検討していく、そのような段階にあるものと承知いたしております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 がん治療に関して申し上げますと、本当に医療というのは飛躍的な進歩をしておりまして、この委員会というのはそういったところを審議する委員会であると承知しているんですけれども、ただ、日本における年間死亡者数の死因の一位は、やはり悪性新生物、がんでありまして、一九八〇年以来その地位を一度も譲ることなく、やはりがんは日本人の死因のナンバーワンとなっております。

 細かい要素はあるんですけれども、標準治療というのがありますね、手術療法、放射線療法、そして化学療法、抗がん剤とあるんですけれども、決して誤解のないように御理解いただきたいんですけれども、標準治療を否定するわけではないんですけれども、そういったところで、やはり助からない方もおられるので、やはり医療のイノベーションは更に必要ということで、今BNCTの話を例にお聞きしました。

 そもそも、この標準治療という定義、よくこの委員会とかでも話が出ていますし、臨床の現場でも標準治療とよく使われるんですけれども、この標準治療というのは何かしら定義があるのでしょうか。お答えできますか。一応、通告のときに一度聞いていますけれども。

鳥井政府参考人 お答え申し上げます。

 標準治療と申しますのは、国として法令上の定義があるというわけではございませんけれども、一般的には、関係学会等が診療ガイドラインを取りまとめ、標準的な治療として位置づけられていくものであると認識をいたしております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 加えて、標準治療というものの定義はないけれども、そのガイドラインに基づいて既存の治療がある。それに基づいて、医療の革新的な治療法というのは、比較して、そことの有効性、安全性を見る、つまりはコントロールの立場にも今あるんですね。

 そういった中で、標準治療は標準治療で、それで治ればそれにこしたことはありません。早期発見、早期治療、それももちろんのことです。しかしながら、広く国民の皆さんに益を得ようと思いますと、標準治療以外のところもやはり検討が必要ということで、それでは、昨今よく話にも出ているんですけれども、免疫治療に関してまずお聞きしたいんです。

 かなり、がんの免疫治療に関して検索すると、ネットの中でたくさん出てきます。中にはネガティブな意見もあります。一部週刊誌でネガティブな意見を書かれる方もおられれば、逆に、ネットとかだったらすぐ夢のような治療ということを書かれているんですけれども、この免疫治療に関して、現在国はどのように捉えているか、国の取組の状況及び今後の指針についてお聞きしたいと思います。

鳥井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御指摘のBNCT療法と同じでございますけれども、やはり、がんに対する治療法の開発につきましては、これまで、がん対策推進基本計画に基づきまして、総合的な、かつ計画的な推進に取り組んでおりまして、免疫治療につきましても、この一環として捉えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 つまり、免疫治療に関しても、標準治療と比較してその有効性、安全性を確かめていくものだと理解しています。

 免疫治療に対する新しい治療という、言い方はちょっとおかしいんですけれども、NK細胞、若しくはキラーTセル、キラーT細胞、T細胞とかという治療法をお聞きになった方、おられるかもしれないんですけれども、NK細胞とT細胞を合体したNKT細胞の治療法というのがありまして、今年の四月一日に日本NKT細胞標的治療研究会というのが発足しまして、一般社団法人として変わりまして、十一月十九日なので今週の土曜日ですね、東京において第一回の総会が行われます。

 これは、実は二〇〇〇年の初めぐらいから理化学研究所が開発して、もう臨床応用もされているんですけれども、このNKT細胞標的治療に対する、まずは、現在の国の取組状況について、加えて、今後の指針についてお聞きしたいと思います。

鳥井政府参考人 お答え申し上げます。

 ナチュラルキラーT細胞、NKT細胞を用いましたがん治療は免疫療法の一つでございまして、体内の免疫細胞を活性化いたしまして抗腫瘍効果を示すと考えられているというふうに認識をいたしております。

 これにつきまして、現在、日本医療研究開発機構におきまして、NKT細胞に関する研究ということで支援を行っております。

 今後、これも、臨床研究や治験等によりましてエビデンスが集積された場合には、薬機法上の承認申請がなされれば、有効性、安全性を確認した上で承認を行い、保険適用を検討していくものと承知をいたしております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 本当に、細かいことは学術学会ではないのではしょりますけれども、私の方の資料の一ページ目を見ていただきますと、なぜ免疫治療に対して否定的な意見もあるかというと、自然免疫というNK細胞というのがあるんですけれども、これに対してがんは耐性を持って、NK細胞を逆に排除してしまう力を持っているわけなんですね。逆に、T細胞は、獲得免疫というんですけれども、がんを探してそれを攻撃するんですけれども、がんが今度は隠れてしまうんですね。その隠れてしまわないようにしている薬が、あのノーベル賞の、本庶さんのオプジーボという薬なんです。NKT細胞は、両方の力を持っているだけじゃなくて、NKもTも活性化させるということなんですね。これが一ページ目なんです。

 だけれども、ネットとかを見ていると、適当に血を採って、外で増やして、一兆個、十兆個増やして入れました、すごく効きましたということで、本当にその数を数えているのかとか、それが本当にその免疫細胞なのか、本当にこの治療をしている数字は正しいのかと、やはり患者さんは、国民の皆さんは、本当にその辺の安全性を国としてしっかりと担保していただきたいと思っているわけです。

 資料の二枚目を見ていただくとお分かりのように、このNKT細胞標的治療というのは、NKT細胞を取り出して増やしたりしないんです。何でかというと、基礎実験で非常によく効いたんですね、理化学研究所の。ところが、基礎実験のときに実験動物を使っていて、そこにはたくさんあったけれども、人間の体にはちょっとしかないんです。だから、人間の体で増やすことは、理論上、不可能なんですね。けれども、ネットを見ていると、そういうことは書いていない。

 さて、そういった意味で、国民の皆さんに医療イノベーションを提供するためには、やはりエビデンスを積み重ねなければいけない。

 その中で、今、臨床でこのNKT細胞を使ってやって、先進医療が終わった後、保険治療になるべく、各現場でやっているところのデータというのがあるんです。このデータをデータベースとして集積して、それをいわゆる治験とかの代わりにならないか、代わりになるとは思わないけれども、こういったデータベースの活用、リアルワールドデータというんですけれども、このリアルワールドデータに関して国はどのように捉えていただいていますでしょうか。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 再生医療等安全確保法におきまして、再生医療等を提供しようとする医療機関の管理者は、提供する再生医療等の安全性、妥当性について、科学的な文献や実験結果を含めた提供計画を事前に策定、提出することが義務づけられてはおります。

 本年六月に、厚生科学審議会の中で、法施行五年後の見直しの検討会、これをやっておりまして、再生医療等に関する安全性のデータを集積をして、再生医療等の安全性確保だけではなくて、提供後の科学的妥当性、こういったものについての評価の構築を検討するべきではないかという御意見をいただいているところであります。

 先生よく御存じのとおり、研究の場合には提供計画にそういったデータが記載されておりますが、治療になった場合には特段の記載がないことから、厚生労働省といたしましては、再生医療等提供計画の様式や認定再生医療等委員会に対して行う定期報告の様式などを見直しまして、提供計画に科学的妥当性の評価方法を記載事項として設けるなどの検討を進めているところであります。

 引き続き、より科学的な根拠に基づいた再生医療の推進、こういったことで検討を進めてまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 このお話の一つのポイントとしまして、いわゆるイノベーションで基礎的なところから臨床応用されるまでは一生懸命やってくれるんですよね。そこからの検討、つまり、再生医療に関しては五年後検討がこれから始まるということなんですけれども、いわゆるイノベーションした治療法に対してのそれぞれの、各医療機関、各研究機関の治療法の妥当性を調べるために、その臨床データを、リアルワールドデータということで、ビッグデータを使ってやっていきましょうというのがまず一つなんです。

 もう一つ大事なことがありまして、治験も含めて、治療法として確立する前の研究も含めて、その後の研究を含めて、昨今、動物実験とかが、やはり動物愛護のこともありますし、そういったところで、後に戻ってすることもなかなか難しくなってきています。その中で、数理的な、データとデータのぶつけ合いでこういったところが解消できないかという取組がありまして、その中で、お待たせをいたしました、神戸大学の先輩でもございます高市大臣が、この間、所信表明のときにムーンショット目標の話をしていただいて、そのムーンショット目標の中にこれから私がお話ししたいことが入っているんです。

 そのムーンショット目標、若しくはインシリコという概念があるんですけれども、そういったところに、大臣のその思いを、ちょっとまずお伝えいただければと思います。

高市国務大臣 伊東委員は神戸大学医学部御出身ということで、インシリコスクリーニングに関する考え方でよろしゅうございますでしょうか。いわゆる数値シミュレーションでございますね。

 これは、創薬などの場面で、候補となる化合物ですとか受容体などの情報をデータベース化してコンピューター上でシミュレーションを行うということで、非常に有効な方法だと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 つまりは、いわゆるムーンショットというのは、元々、メタバースとかを使ったりとか、超高齢社会や地球温暖化など、いろいろな問題に対して、本当に、昔、人類が月に行ったときも、そういったところというのは不可能と言われていても、それを実現可能にした。それをいわゆるITやいろいろな技術を駆使してやっていくというのがあるんですね。

 私の資料三にその目標が九項目あります。その中で、目標二というのが医療に関してなんですけれども、四枚目のところのプロジェクトの五の方を見てほしいんですけれども、合原先生がやられているのは、いわゆる人間のデータをそのままコンピューターの中に入れまして、臓器と臓器の連携とかを調べまして、そこにいろいろな創薬とか治療法とかをぶつけていくというところで、いわゆるシミュレーションで研究とかエビデンスを重ねるというものです。

 こういったところをやると本当に、いわゆるドラッグラグとかいろいろなものが解消できるということなんですけれども、今回私が申し上げたいことは、やはりこういったイノベーションが進めば進むほど、こういった治療法が本当に安全性があるのか、そして何よりも有効性があるのかというところの検証を様々なところでやっていかなければいけないと。

 ただ、最後に質問したいのは、その弊害になっているのが、やはり逆の意味でのネット社会の乱立なんですね。つまり、今、すごく情報過多社会なので、患者さんはすぐ、国民の皆さんはすぐにアクセスできる、その手軽さはあります。だけれども、逆に、やはりそこに対しての規制がまだまだ私は甘い気がするので、医療等におけるウェブサイトの監視指導体制に関して、今どのように捉えられているか、お教えください。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 医療法におきましては、診療科名ですとか医療機関の名称などを除いて原則広告禁止をしております。

 ただ、平成二十九年の法改正におきまして、これまでウェブサイトは広告の対象外でありましたが、美容医療サービスに関する消費者トラブル、こういった相談件数が増加していることを踏まえて、ウェブサイトまで広げております。

 ただ、一方で、患者が知りたい情報が得られなくなるという弊害の御懸念もあったことから、一定の要件を求めて、検索によって入手できる情報であったりですとか、表示する情報の内容について容易に照会できるような問合せ先が書いてあるですとか、あとは費用、リスク、副作用について情報を提供することなど、要件を満たした場合に限っては、ウェブサイトにおいても、法令で禁止している事項以外広告可能というふうにしているところであります。こういった要件は、QアンドAやガイドラインなどでお示しをしておるところであります。

 また、一方で、医療機関のウェブサイトの監視を行うネットパトロール事業、これも行っておりまして、不適切な表示が見られるウェブサイトを把握した場合には、医療機関に対して規制を周知して見直しをお願いしたり、改善が認められない場合には、都道府県に情報提供を行って、報告徴収や立入検査、是正命令などを行っていただくなど、指導をしているところであります。

 厚生労働省といたしましても、医療広告規制に関する取締りを行う都道府県とも連携をして適正化に努めてまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 時間になったのでもう終わりますけれども、本当にしっかりと、ネットパトロールが機能していないというところは通告のときにお伝えしましたので、今後、そのところを検討していきたいと思います。

 本当に、神戸大学の先輩でありますし、僕が四十三年間やっていたラグビーのファンでもあります高市大臣にはもっと質問したいところがありましたけれども、この後、小中高の後輩であります和田有一朗議員が質問しますので、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

下条委員長 次に、和田有一朗君。

和田(有)委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。

 先ほど質問に立たれました伊東先生とは小学校、中学校、高等学校が一緒でございまして、ここで並んで質問しているというのも非常に不思議でございます。

 高市大臣に質問させていただくということで、先ほど大臣が退席されたので、どうしようかな、いなくなったらどうしたらいいんだろうと私は一瞬どぎまぎいたしましたが、気を取り直して、させていただきたいと思います。

 本日は、二つ、大きく分けて質問をさせていただこうと思っております。

 一つは原子力の開発について、そしてもう一つは宇宙開発についてということで、いずれも、安全保障上も大変重要でありますし、また、我々が次の時代に食べていくために非常に大切な産業の礎になる大切な分野でございます。

 そういう思いでお聞きしたいと思いますが、私、この委員会で質問するのは初めてでございますので、空気感もつかめておりませんし、なかなか、素人でございますので少し筋違いなことを聞いてしまうかも分かりませんが、御容赦をいただきたいと思います。

 まず一つ目は、原子力についてでございます。

 原子力については、かつての大きな災害から、どうも前向きに議論するということが、何というんでしょうね、しにくいというか、難しい感覚になるときもありますし、そういったこともあって、足踏みをしていた時期がございました。

 そういう中で、やはり今後、二酸化炭素の排出削減もしなければなりませんし、そして、まさに産業を進めるためには安定した電力供給というものも必要ですし、さらには、安全保障上、日本がこれからこの国を自ら守っていくために必要とする技術もある、私はこう思います。

 そんな中で、足踏みをしている中で、足踏みしていないぞ、こうおっしゃられるかも分かりませんが、素人目に、一般国民の感覚でいうと、どうもこの十年、日本は原子力に対して足踏みをしてきたように私は思います。

 そういう中で、世界はどんどん新しい技術を開発してきている。革新的な開発が進んでいる。例えばSMRという超小型炉であったり、あるいは新型革新炉であったり、高速炉であったり、いろいろなものが開発をされてきているんですね。でも、日本はなかなかそういうことに足を前に大きく踏み出すという雰囲気ではなかった。後で述べますけれども、技術者も減ってきている。大学に進学されて原子力を研究しようとされる方も伸び悩んでいる。

 そういう中で、やはり今、私たちはもう一度この原子力に対して前向きに、昔でいうと平和利用という言葉になりますけれども、こういうことを前向きにやっていかなければならないと思うんですが、せんだっての大臣の所信を見ていましたら、「「原子力利用に関する基本的考え方」に基づく原子力政策を推進してまいります。」と、一行しかないんですね。

 やはり、もっと思いを持って、前を向いて進んでいただきたいと思うんですが、いかがお考えであるか。現状認識と方向性について、そして決意について、お伺いしたいと思います。

高市国務大臣 特に次世代の革新炉の開発について申し上げたいのですが、GX実行会議におきましても、次世代革新炉の開発、建設の検討が今後の政治判断を必要とする項目として議論されております。

 私の所管でいいますと、内閣府の原子力委員会で、現在、今後の原子力政策について政府としての長期的方向性を示す「原子力利用に関する基本的考え方」の改定に向けた検討を進めております。

 この次世代革新炉の開発というのは、エネルギー安定供給、エネルギー安全保障ですね、それからカーボンニュートラルに資する原子力利用といった観点から、重点的に取り組むことが大切だと考えております。

 この次世代革新炉開発の基盤である人材につきましても、これは国が確固たる原子力政策を打ち出すことが必要だと思っておりますので、年内にと考えておりますこの「原子力利用に関する基本的考え方」の中でも、これらの重要性についてしっかりと打ち出していきたく存じます。

和田(有)委員 年内にもしっかりと打ち出していきたい、こういうことです。ですから、今、大変大事な時期にある。もちろん当局においては既にいろいろな積み上げはしているでしょうけれども、今が大変大事な時期だと思うんですね。

 そこで、少しお伺いしてみたいと思うんですけれども、特に、これはどこまでお答えできるかどうか分かりませんし、政治家個人という考え方と政府見解というのは、どこまで踏み込めるかというのはありますけれども、例えばの話、この超小型原子炉というのは非常に優れたものでして、地中に埋めて安全に使うこともできれば、ということは、船に積むこともできる、今走っている潜水艦のモーターの代わりに積むこともできる。これをすれば、日本は、原子力潜水艦を持たずして原子力潜水艦を持つことが可能であると私は聞いたことがございます。

 もちろん、このことをお聞きするわけではないんですけれども、ただ、非常にこういう優れたものが世界で開発されてきている。日本でも、メーカーでも、幾つかそういうことをもう既に手がけているメーカーがあるんですよね。

 何度も申しますけれども、日本の潜水艦、神戸の造船所で造って、私、神戸から出ておりますから、神戸の造船所でしか日本の潜水艦は造らない。川重と三菱が交互に造るんですけれども、そのモーターというのは非常にすばらしいものがある。しかし、所詮これは蓄電池で走らせるモーターですから、限界はあります。

 この超小型原子炉というのは、今までのアメリカなんかが使っているような原子力潜水艦の炉とは違って、沸騰させて水でスクリューを回すのではないんですね。直接この炉で電気を起こして、電気を起こしてか何か、私そこまで専門家じゃないので分からないんですけれども、そういうものを入れて、非常に静かで、今の日本が使っている潜水艦と同じレベルの静けさを恐らく保ちながら長時間走らすことができる、日本のEEZは全てカバーすることができると聞いたことがございます。

 そういったものにも活用できるようなところにやはりこの原子力政策というものは目を広げて考えていただきたいと思うんですが、いかがでありましょうか。

高市国務大臣 私の担務の範囲内で答えていいのかどうか、今、やや頭がぐるぐるいたしておりますけれども、原子力というものは、発電にも使えますし、それから船の推進力、これは原子力潜水艦がそうであります、こういったものにも使えますし、医療にも使えます。幅広い活用分野があると考えております。

 また、先ほど委員がおっしゃいました小型モジュール炉、SMRについてもお話がございました。今後、やはり新炉というのは、例えばニュースケール社がやっているものでしたら、IHIや日揮、日本の企業も参加していますし、そういった小型のものを地中に設置するというのも、安全性とかいろいろなことを考えますと、これも一つのすばらしいアイデアだと思います。また、三菱重工業も独自の技術を持って開発を進めておられますので、発電という分野でも大きな可能性がもうすぐそこに見えている。これをやはり国策としてしっかりと進めていくべきだと思いますし、推進力という意味でも大きな可能性があるものだと考えております。

和田(有)委員 ありがとうございます。なかなかお答えにくい中でお答えいただきまして、申し訳ございません。

 次に、今、先ほどもちらっと出ましたが、人材の問題についてお聞きしたいんです。

 福島の原発事故以来、原発の関係の技術を取り巻く状況というのは非常に厳しくなって、新しい原子炉をまず造っていないわけですよね、今。ですから、新しい原子炉を造った技術者というのが非常に減っている、こういうことなんですね。

 なおかつ、加えて、今、原子炉というと、何か後ろ向きになってしまって、学生さんも集まりにくい。ちらっと聞きましたら、何か、東海大学の原子力関係の研究の学科が募集を停止に至ったというふうにも伺いました。東海大学原子力工学科ですか、ここがもう、三千人以上、今まで技術者を輩出してきているのに、研究者を輩出してきているのに、とうとう、定員割れが続いていて、来年度から、募集を停止するということだそうです。

 これはやはり日本にとっては大変な問題だと思うんですね。もちろん、この委員会にお座りになっている先生方、皆さん共有している思いだと思いますけれども、技術者が減っていく、あるいはそのことによって技術が劣化をしていく、そういうことがあってはならないという思いでイノベーションということがついていると思うんですけれども、大変厳しい状況がある。これは、急ぎ技術者を養成し、養成するためには、やはりそのためのムードをつくっていかなければいけないと思うんですね、私は。

 そこら辺について、人材確保、人材養成についてどのようにお考えか、お伺いいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、次世代革新炉開発に向けて原子力分野の技術革新を実現していくためには、我が国においてこれまで培われた技術及び人材を適切に継承しつつ、研究開発を推進していくことが必要であり、こういう観点から、原子力分野の人材育成は非常に重要な課題だと我々認識をしております。

 一方で、先ほど先生も御指摘ありました、近年、原子力関係の学科、専攻数や大学の教員数は減少しております。また、稼働している試験研究炉も減少しているなど、こういった課題に直面をしておりますので、我々、こういった課題を踏まえながら、原子力分野の人材を最大限効果的に育成していく必要があると考えています。

 こうしたことから、文部科学省としては、大学や高等専門学校の有する限られたリソース、これを有効活用しつつ、産学官が連携した横断的な教育研究機能を有する人材育成のコンソーシアム、これの構築を推進するとともに、試験研究炉、これは教育等に使われるものですけれども、試験研究炉等の研究基盤の確保に取り組んでいるところでございます。

 さらに、文部科学省では、有識者の会議を十月から開催し、次世代革新炉の開発に必要な研究開発項目や人材育成、こうしたものの課題を整理すべく、今議論を進めているところです。

 こうした取組を通じて、次世代革新炉の開発に向けた人材確保、これをしっかりと進めてまいりたいと考えております。

和田(有)委員 ありがとうございます。しっかりと進めていただきたいと思います。

 ややもすると、どちらかというと、この原子力の話というと、今、廃炉に向けた技術をつくるような、バックエンド対策というんですかね、こういうことにどうも力点が行くような感じがしまして、もう少し、新しいものをつくる、新しいものをつくる技術者を養成するという概念も必要だと思いますので、質問させていただきました。

 次に、宇宙開発についてお聞きしたいと思うんです。

 せんだって、私、実は、イプシロンロケットの発射を見に行こうと思いまして、予定をしておったら、まず一回目、延期されまして、行けなくなりました。そうしたら、次に行こうと思ったら、私、外務委員会の理事をやっておるもので、外務委員会が急遽、安保と合同でやるということになって、東京を離れては困りますと言われて、結局行けなくなっちゃいました。

 ところが、せんだってのイプシロンロケット六号機が、発射はされたんですけれども、残念な結果になってしまいました。

 まず、現段階で、原因はどのようなことにあるのかというのを究明できているのかということをお伺いいたします。

原政府参考人 お答えいたします。

 今般のイプシロンロケット六号機の打ち上げに関しまして、文部科学省では、十月十二日の打ち上げ失敗直後、井出副大臣を本部長とする対策本部を設置いたしまして、宇宙航空研究開発機構、JAXAに対して早急な原因究明を指示したところでございます。

 また、翌十三日以降、科学技術・学術審議会宇宙開発利用部会調査・安全小委員会をこれまで四回開催してございまして、JAXAの原因究明等について専門的見地から確認を進めているところでございます。

 これまでのJAXAによる技術的調査によりまして、第二段の姿勢を制御する装置の不具合を原因箇所として特定するとともに、要因の絞り込みが進んできているところでございます。十一月十一日に開催したこの委員会では、当該要因に関するH3ロケット等ほかの機種への懸念を排除するための方策などを確認したところでございます。

 文部科学省としては、JAXAとともに、引き続き速やかな原因究明に最大限努めてまいりたいと考えてございます。

和田(有)委員 ありがとうございます。

 これは、原因究明は一〇〇%ではいけないわけで、一一〇%、一二〇%を目指して究明しなきゃいけませんから、頑張ってください。

 これまで、六号機までイプシロンを打ち上げたんですが、この成功率は海外と比べてどう比較されますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 我が国が運用中の基幹ロケット、これは、H2Aロケット、H2Bロケット、それから今回のイプシロンロケットがございますけれども、これを合わせた打ち上げ成功率は、今回のイプシロンロケット六号機の失敗を加味いたしましても、約九七%でございまして、海外のロケットと比較して、成功率としては遜色ないものと考えているところでございます。

和田(有)委員 九十何%と、これはもう大変なものでございまして、これもやはりいろいろな技術の蓄積があってでき上がっているということだと思うんです。

 最後に、この宇宙開発というのもそうですし、全ての先端技術というのは失敗の上に成り立つものだと私は思います。ですから、一回失敗したから、何回か失敗したからといって、やめてはいけない、ひるんではいけないんです。失敗の上にでき上がっていくんです、必ず。ですから、こんな無駄遣いを、宇宙の藻くずになってとか言う人が時たま、衛星の発射なんかでも言いますけれども、そんなことはない、全部ベースになっていくはずなんです。その上にかつての技術立国日本というのはあったはずなんです。

 それをもう一回やっていかなければいけないわけでありまして、特に、その決意のほどをお伺いし、それから、これから民間もロケット発射に参入してきます。そのすみ分けというものに関して、ロケットを発射するためには、いっぱい発射場も要るし、発射するための環境も設定しなきゃいけないわけですね。そういうことも含めて、ちゃんと上手にすみ分けをしてやっていくことができるのか、そこも含めて、決意をお伺いしたいと思います。

高市国務大臣 委員おっしゃるとおり、宇宙基本計画においても、技術開発の基本的なスタンスといたしまして、失敗を恐れずに挑戦することをうたっております。

 その上で、我が国のロケット打ち上げ能力の抜本的強化はもう絶対に必要でございます。

 今後、災害対応もありますけれども、小型衛星コンステレーションのために、人工衛星の増加が見込まれています。また、今、ロシアのロケットが利用できませんので、世界的にもロケットの打ち上げ能力が不足している状況にございます。

 今後、複数の小型衛星を同時に打ち上げることを可能にするH3やイプシロンSといった新型基幹ロケットの開発を進め、打ち上げの高頻度化に向けて、射場など、運用システムの改善、整備も進めてまいります。

 それから、民間とのすみ分けということですが、今申し上げたH3ですとかイプシロンですとか、こういった基幹ロケットと比べて小型で安価なロケットの開発に取り組んでいただいているベンチャー企業についても、今後、国内外で需要が高まる小型衛星の打ち上げを担っていただかなければなりませんので、事業化を促進してまいりたいと思います。

 JAXAにおいても、基幹ロケットの開発だけではなくて、民間のロケット開発を技術的に支援しておりますので、しっかり官民で協力しながら進めてまいりたいと思います。

和田(有)委員 時間がなくなりましたので、質問はいたしませんけれども、最後に一点つけ加えたいのは、技術開発は絶対にひるんではいけないということで、もう一点、私、この委員会とはちょっと違うかも分かりませんが、MRJ、スペースジェットのことも実は触れたいんです。本当はどこかで聞きたいと思っているんです。絶対にこれもやめちゃいけません。お金を投じてでもやり続けなきゃいけないと思います。

 日本が次の時代に飯を食っていくためには、航空宇宙産業というのは絶対大事です。これに国家が税金を投入して、やはりしっかりやるべきだと私は思います。

 そのことも触れて、終わります。

 以上です。

下条委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 順次、質問に入りたいと思います。

 高市大臣が、所信で、第六期科学技術・イノベーション基本計画に基づき、政府の研究開発投資を約三十兆、官民の総額を百二十兆を目指すとともに、ソサエティー五・〇の実現に取り組みますというふうに述べられているんです。

 ある学会の元会長が、大型研究費の審査は匿名方式でと、次のように提案しています。

 有名な中国の千人計画では、我が国からも分かっているだけで四十四名の著名な科学者が移動しており、実数はそれより多いと聞きます。これは大変な国益のロスではないだろうか。流出の背景には、こうした著名な年配の研究者の我が国の大型研究費の採択が極めて難しいことにその原因が潜んでいると思うとこの方はおっしゃっているんですね。若手の研究者への手厚い支援はもちろん大切ですが、その反面で、非常に優れた研究でも、年齢だけで申請を却下されることは受け入れ難いというものです。

 大臣の御所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 各府省庁や資金配分機関が配分する研究費制度の中には、特に若手研究者の育成を図るためのものがございます。こうしたものの中には、年齢制限があったり、例えば博士号取得後一定期間内とするなどの条件が定められています。

 でも、それ以外の一般的な研究費には、より発展的な基礎研究、また、基礎研究を踏まえて次のステップにつなげる応用研究、社会実装につなげるための研究などを支援するものがございます。こうしたものは、一般的には、年齢ではなく、研究内容や研究実績などに重点を置いた審査によって配分を決定すべきものでございます。

 ですから、若手から中堅、ベテランに至るまで、幅広い層の研究者が活躍できる環境が非常に重要だと考えております。

鈴木(義)委員 では、順次、御質問していきます。

 この方が幾つかの提案をされているんですね。私も同感する一人なので、今日、質問に取り入れさせてもらったんですけれども、大型研究費と一応うたっているんです。全部の研究費の助成をするのも、みんな同じじゃないんだよということですね。申請では、第一次審査と第二次審査に分けて、第一次審査では、申請者の名前、論文引用、肩書、年齢等は全て伏せて、匿名で審査を行うべきとするものなんです。

 要するに、何とか大学の何々先生というのが出てくれば、みんなそれを見て、結局、この人がやってきたことなんだからいいじゃないかというふうになったときに、実際にそのプロジェクトに対して審査をしているということにならないんじゃないかということなんですね。だから、余分な情報なしでプロジェクトのゲームチェンジ度を的確に判断できるのか、審査員の質が逆に問われるんです。この審査員を誰にさせるかということでも、科学技術をイノベーションに持ち込めるかどうかということにつながっていく。

 その一つとして、一次審査ですばらしい研究と判断されたプロジェクトを採択の一・五倍程度の数に絞り、面接の二次審査を行い、申請者にプロジェクトを口頭で説明いただく。そのときに、申請者の年齢、略歴また人柄などを面接で判断することにしてはどうかという御示唆をいただいているんですけれども、それについて、大臣の御答弁をいただけますか。

高市国務大臣 一次審査をマスキング審査として、二次審査で経歴などを見ていくということなんですが、マスキング審査については、地位や肩書、実績に影響されないという仕組みに見えますけれども、ただ、どのような手段を講じても、応募した研究分野ですとか、それから研究課題の関係などから、応募者の所属する研究機関など、特定の情報がかなりの部分で推測されてしまうということもあるかと思います。

 それから、一定規模以上の研究計画の内容の実現可能性というものを判断するという場合には、ある程度それまでの実績を考慮しなければならず、また、研究者の研究遂行能力がきちっとあるかということを見極めていかなければいけないという課題もございます。

 ですから、今御提案いただいたマスキング審査につきましては、研究費の性格にもよるんでしょうけれども、少なくとも、一律に導入を求める性格のものではないように感じます。

鈴木(義)委員 今みたいな御答弁をいただいて、三十年近く同じやり方をずっと続けてきたんだと思うんですね。

 今年はノーベル賞受賞者が日本人から出なかった。これは七、八年ぐらい前に言われていたんですけれども、当時、十年ぐらいは日本人からノーベル賞が出てくるけれども、その先は見込めないんじゃないかと。これは、なぜそういうふうに言われるかといったら、過去の論文の引用数がどんどんどんどん落ちちゃっている、それだけ社会に貢献しないような研究発表が多いんじゃないかということの裏返しなんだと思うんです。

 例えば、米国の例になるのですけれども、研究費の申請は、それまでの研究成果を説明する部分は全体の一割以下にするように言われていて、本当にその研究費で何をしたいかが重要であり、これまでの研究成果は判断の材料にならないといってやっているんです。

 今大臣がお答えになりましたけれども、過去の実績だとか、その人がやってきたこと、それを評価するから、みんな全部延長線上の話なんです。イノベーションは起きないんですよ、今のやり方だと。だから、そのぐらい大胆な、補助金の出し方、審査の仕方を変えない限り、同じように、量子、AI、ロボット、特定の分野を挙げて、そこに関わるものに関しては補助金を出すけれども、それ以外はオミットするようなやり方じゃイノベーションは私は起きないんじゃないかというふうに思います。

 もう一つ。次に、理工系の大学について。

 欧米の大学に比べて日本の大学が決定的に不利な点は、一つ目、大学院生に生活給付が与えられていない、第二、大学院博士課程を修了した若い研究者に、自分の研究発案、実行のチャンスがないというものだというんです。

 中央審議会委員の、当時、野依先生のときから、講座制を廃止し、助手、助教授という名前を廃止して、助教、准教授と名前を変えて、その独立を促したんですけれども、大学側は変わらなかったんです。約二十年前の話です。講座制はそのまま存続して、助教の若い研究者は、実際の上下関係はなくなったというふうに言いながら、教授の思いを忖度し、教授のプロジェクトを追求していくということが、イノベーションにつながっていかないということなんです。

 科学技術の司令塔と言われている高市大臣ですが、これまでの、イノベーションが起こるはずもないんです。だって、制度が変わっていないんだから。今までの延長線上で予算をつけて、大学の在り方も余り変えていない。実際は、形は変えたんですよ。でも、実際、中身は、官が言ったことだから民はやる必要ない、大学自治だとか何とかと、必ずそういう話が出てきます。私立の場合だったら、建学の精神、余り干渉しないでくれ。それが今の日本の大学のありようじゃないかと思うんです。

 予算分配をする場合でも、このような問題点を解消している大学に支援するべきだと思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 自由な発想によって挑戦的な研究に取り組めるように、基金を設けて、最長十年間支援する創発的研究支援事業を創設いたしました。そして、支援を行っております。

 若手研究者の方々につきましても、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージに基づいて、若手研究者の方々が自由な発想に基づく研究に挑戦し続けることができるように、ここはしっかりと支援をしてまいりたいと思います。

 予算配分上の課題として御指摘をいただいたので、以上のような御答弁になりますが。

鈴木(義)委員 日本人は余り変わりたくないというのが根底にあるんじゃないかとも言われているんですけれどもね。

 政策が逆に足を引っ張っている日本の科学技術力の中で、次のとおり問題点が指摘されています。

 一つ目、大学や独立行政法人が文科省に非常に気を遣っている。

 第二、過去に科学雑誌で、ネイチャーに、日本の科学技術が低迷していることについて特集が掲載されていた。国から国立大学への運営費交付金が削減されて人件費が減り、若手研究者が安定した職を得られにくくなったことなどを指摘しているというものなんです。

 第三、競争的資金の獲得は研究者の事務作業が増加。有力大学の助教に採用されても、書類書き、研究所が主導するプロジェクトの計画や書類作りに忙殺され、自分の研究時間がほとんどないというんです。

 時間がないので余りこれ以上羅列しませんけれども、以上のようなことが現場で起こっているのでは、そもそもイノベーションが起きないんじゃないかと思うんです。

 今大臣が御答弁されたんですけれども、結局、現場をもっとよく見て、そこを直していかない限り、若手の研究者にお金を渡したとしても、先ほども申し上げましたように、助教、准教授、教授といって、教授の指示に基づいて、私も理工系の大学にいた人間ですけれども、自分の上司になる人は大学院のドクターに行っている人です。その上に教授がいる。そこから、これをやってくれ、あれをやってくれということで研究をやってくる。それが今でもずっと続いていると思います。

 そこを何とか形を変えていかないと、若手の研究者でいい人がいるんだといっても、今言ったみたいに書類作りに忙殺されちゃって、特に文科省とかいろいろなところから補助金をもらうと、いろいろな書類を出せ、書類を出せということで研究をやる暇がなくて、それじゃやはり制度をもう一回見直さなくちゃいけないんじゃないかというふうに思うんですけれども、今御質問したことに関して、大臣の所見をお聞きしたいと思います。

高市国務大臣 私自身も大学の教員として働いておりましたので、よくよく分かります。

 例えば、事務的なフォローをしてくださる、研究以外の仕事のフォローをしてくださる職員の方が十分におられないということで、その研究に没頭することができない、それからまた、どうしても、その教室でついた教授が定めた研究テーマに基づいてやっていく中で、独自の研究時間が確保できない、そういったこともございました。

 ただ、やはりそれらは改めていかなきゃいけないところで、特に研究時間の確保については、しんどいのは競争的研究費ですね、これの申請などに非常に時間がかかるということで、申請のデジタル化、迅速化、またルールの簡素化ということを行っております。

 それから、やはり経営とか知的財産の観点から研究を支えてくださる専門家や技術職員などの専門職人材が一体となったチーム型の研究体制の構築の推進ということも重要だと思っております。

 先ほど来申し上げた研究力強化・若手研究者支援総合パッケージに基づいて、運営費交付金など、様々な財源を戦略的かつ効果的に活用するということで、特に、優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくということも研究現場に促しているところでございます。

鈴木(義)委員 過去、日本はバブルがはじけて難儀をした時代を乗り越えてきたんですけれども、そのときに、企業も行政も、選択と集中というのが一つのキーワードで、ずっとそれを現場で使ってきたと私は思います。

 研究開発というのは、誰もやらないことをやるのが研究開発なんです。誰もがやっているものは、層が厚過ぎちゃって、自分が研究した結果が世に出るかどうかというのは、競争率が高いんです。

 何人もの元大学の先生と話をしたり、過去に研究をやっている人の話を聞いても、みんなニッチのところを追いかけていこうとします。だから、ニッチなところというのは誰も評価できないということなんです。だって、評価できるんだったら、それをやっている人がいるから。そこからイノベーションが私は生まれるんじゃないかと思うんです。

 結局、何々先生の弟子で、ここの大学にいた、どこそこの企業にいるから、審査員はどういう人がなるの、著名な何々学会の何々をやっていた人、何々、そういう人を寄せてきて、ああ、これは俺の弟子だ、これは誰々だ、そういうやり方の予算の分配の仕方をしていたら、いつになっても私はイノベーションは起きないんじゃないかなというふうに、くどいようですけれども、申し上げさせていただきたいと思います。

 それともう一つ、我が国の若い研究者は自分のアイデアを出すことにちゅうちょしているというんです。そのちゅうちょが日本の大学の研究のスケールをどんどん小さくしていて、自分のアイデアにかけようという人が少ないというわけです。自分のアイデアで研究するんだという覚悟がほとんどないとこの方はおっしゃっているんです。

 欧米では、その覚悟があるからこそ、若者はそのプロジェクトを実施する上での様々な障害を考え、対策を立てている。対照的に、日本の若者の描くプロジェクトは実行性がなく幼い。日本の教育制度では、若者は白いキャンバスに自在に絵を描くことに慣れていない。そんな冒険はリスクの大きな恐ろしいことだと思っている若者もいるだろう。実は、この若者のちゅうちょこそが、欧米諸国に比べて我が国のイノベーション開発を著しく遅らせている大きな原因であるとこの方は述べているんです。

 予算を増額して分配するだけでは問題の解決につながらないと考えるんですが、今のお話を踏まえて、大臣の所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 まさにそのようなことの解決のために、先ほど申し上げた創発的研究支援事業を創設して支援を行っております。

 研究力強化・若手研究者支援総合パッケージというのは、やはりそういった問題意識の中から出てきた。もっともっと若い研究者が腰を据えて研究に取り組める、また、自由な発想でイノベーションを起こしていける、そういう環境をつくるためにこのパッケージが取りまとめられましたので、やはり若手研究者が自由な発想に基づく研究に挑戦し続けることができる、このことのために精いっぱいの支援をしてまいりたいと思います。

 そしてまた、このパッケージは今進んでおりますけれども、一つ一つの施策について、科学技術の進歩というのは物すごく速いですから、その中で、こういう問題が現場で起きている、これではなかなかイノベーションにつながらない、そういった点が見えたときには、しっかりと改めていくということが大切だと考えております。

鈴木(義)委員 では、最後に、時間が押してきましたので。

 日本は科学技術創造立国を目指して政策を展開してきたのに他国に後れを取ってしまった、失敗と言っていいだろうと、有力な研究者たちが、科学技術力の低下につながった政策の問題点を指摘し続けるんですが、先ほど冒頭、私が申し上げましたように、その政策は変わりそうもない。

 何を言っているかといったら、文部科学省や、総合科学技術・イノベーション会議の政策展開が逆に科学技術力向上の足かせになっているんじゃないかということです。研究はあくまでも自由な中で、先ほど申し上げたように、ニッチなところを狙って研究をしたい、それが研究者の考えです。積極的な政策をしない方が逆に研究現場は力を発揮できるのではないかと指摘しているんです。

 国があっち向け、こっち向けというふうに方向性を出すだけじゃなくて、本当は、逆に、それが違っていたんじゃないかというのを一度検証するというのが必要じゃないかという考え方です。

 もし大臣の御答弁がいただければ、よろしくお願いします。

高市国務大臣 今、熾烈な国際競争の中で日本が勝ち残っていくためには、国の強力な支援ということも、そして国の強い姿勢ということも重要だと思います。研究現場に全てお任せするということではかえって負担が大きいことだと思います。

 まさに、産学官、力を合わせて、今、取り組んでいく、社会課題の解決に取り組んでいかなきゃ勝ち残れない、そしてまた、国民の皆様の生存が危うくなる、そういう事態も生じておりますので、ここは国としても、研究現場としっかりと協力をし、また意思疎通をし、現場の問題点を洗い出してそれを改善する、この取組は続けていきたいと思います。

 この第六期の基本計画、今やっておりますけれども、これまでの計画のレビューですとか、それから、国内外の情勢も踏まえながら策定をしてきております。また、進捗状況の把握や評価もCSTIの専門調査会において開始をしておりますので、常に改善をしていく、時代の流れを見ながら対応していく、そのような姿勢で進めてまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 もう時間が来ていますので。

 やはり若手の研究者に何が一番大事かといったら、感動なんです。これはすごいなとか、すごいことができちゃったよという気持ちをいつまでも持ち続けられるかどうか、そのための制度をつくるということが大事だと思います。

 終わります。

下条委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 研究者の雇い止め問題について質問いたします。

 無期転換ルールの十年特例が適用される二〇二三年三月を前に、千人単位の研究者が雇い止めになる可能性があります。

 まず、文科省にお伺いをしたいと思いますが、理研で、来年三月で通算雇用期間十年を迎える方で、研究代表者や研究分担者となっている方は何人か、そして、その方々の二〇二二年度の受託額は総額幾らでしょうか。

井出副大臣 理研の方に確認しましたところ、令和四年十一月十日時点において、理化学研究所の研究系任期制職員のうち、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律等の特例適用者であって、来年三月三十一日で通算雇用が十年となり、任期を満了する二百三名のうち、二〇二二年度、政府又はファンディングエージェンシーの公募型研究資金を受給している研究代表者、研究分担者は八十六名、その総額は十・六億となっております。

宮本(徹)委員 この額は、公募研究費ですので、主には、国や、NEDOやAMEDなど国関係の資金配分機関からのものであります。単純に頭割りしたら、一人当たり年間一千万円程度の予算を得ておられるわけですね。

 先日、この理研の雇い止めの問題で院内集会が開かれました。そこで、この受託研究の責任者である当事者が発言をされておりました。Aさんとしますけれども、少し長くなりますけれども、事態がよく分かりますので、そのAさんの発言を紹介したいと思いますので、お聞きいただきたいと思います。

 私が研究開発責任者をしているナショナルプロジェクトは、二〇二一年六月に採択が決まり、配賦元機関が理研と委託契約を締結して実施しています。実施期間は二〇二四年度までの四年間。配賦予算総額はおよそ二億五千万、そのうち理研へは一億五千万程度が配賦されます。

 先週、配賦元担当者からは、管轄省庁から配賦元へ予算計上が行われないなどの不測の事態が起こらない限り、二〇二四年度までプロジェクトは継続すると言われました。

 このナショナルプロジェクトでは、研究予算の直接経費から研究開発責任者である私自身の人件費を出してよいという制度があります。しかし、この予算から来年度の私の人件費を出すためには、委託契約先になっている理研に私が二〇二三年四月以降も継続されている必要があります。二〇二三年三月末で私が雇い止めになれば、二〇二三年四月以降は委託契約先である理研に所属できないため、この制度を用いて、来年度の私の人件費をこの予算から支出することができません。自身の人件費が支出できる予算を持っているのに、これをさせてもらえない。

 また、雇用継続されなければ、私が発想し、共同提案先企業との調整を行い、提案書を作成し、プレゼン審査を経て採択されたナショナルプロジェクトの研究開発責任者であるにもかかわらず、強制的に他の研究者に研究開発責任者を交代するしかなくなります。私がアカデミアで、かつ、この研究に関わってよいという職制のポジションに就けなければ、私自身がこのナショナルプロジェクトに関わることすら許されない状況になります。

 個人的な事情で転職せざるを得ないわけでもなく、自身が提案したナショナルプロジェクトが継続するにもかかわらず、組織からの雇い止めのせいでこのような状況に陥る人事制度は絶対に間違っていると思います。

 こういう発言だったわけですね。

 理研は、この方の三月末での雇い止めの姿勢というのを崩しておりません。ちなみに、この方は、このナショナルプロジェクトだけじゃないんですね、ほかに、科研費基盤研究Bの研究代表者、他の独法の研究者との共同研究の理研側の研究責任者を二件、チーム内の他の研究者が実施している研究プロジェクトの研究分担者を三件、合計七件、研究テーマ、関わっておられる。

 今日、私の前のやり取りの中で、優秀な研究者が雇い止めされるようなことがないように高市大臣も文科大臣におっしゃったというお話がございましたけれども、継続している国家プロジェクトの責任者でさえ雇い止めすれば、私は国家プロジェクトに大きな影響が出ることは明白だと思います。頓挫するかも分かりません。こういうことは許されないんじゃないんでしょうか。

 大臣、いかがでしょう。

高市国務大臣 国家的、社会的ニーズの極めて高い研究プロジェクトを機動的に進めていくということが我が国の科学技術力の強化には大変重要だと考えております。

 理化学研究所におかれましては、様々な公募型資金を活用し、重要な研究プロジェクトに取り組んでいただいております。

 現在進めている各プロジェクトが今後も継続されて、より発展させられるように、理化学研究所におかれて必要な支援、取組はしっかりと行っていただきたいと考えております。

宮本(徹)委員 しっかりと継続するためには、私は、当然、人的な継続性というのは、研究開発責任者ですから、それは極めて大事なことだと思うんですよね。ところが、それが雇い止めというふうになっちゃうわけですよ。

 ここは強く、高市大臣のイニシアチブを発揮して、理研に対して指導する必要があるんじゃないですか。

高市国務大臣 理研でもいろいろ考えていただいております。

 一つは、やはり、「理研には、国際的な人材流動を通じて優れた研究者・技術者を迎え入れ、育て、次のポストへ送り出す、世界の頭脳循環のポンプとしての使命があります。」これは理研の方がそのように発表されています。「より良いポストを獲得しキャリアを形成していく、そうした動きを促進する人事制度が必要です。」ともおっしゃっております。

 今回ですけれども、結局、有期雇用の期間を五年から十年にしたというのは、これはよかったと思っております。ただ、その十年がやってきてしまうということなんですが、これについても、理研では、経営陣が重く受け止めて、いろいろ議論されたようでございます。

 既に理研で活躍している有期雇用の研究者に対し、任期満了後、別の有期の研究プロジェクトに参画できる機会を提供するため、理研での通算契約期間の上限規制を撤廃しますということで、今年の九月二十一日の時点ですけれども、新しい研究職、技術職の公募が百七十五件公開されております。

 こういう有期雇用ポストを公募して、これまでの理研での通算契約、こういう期間によらず誰もが応募可能としている、それによって雇用の切れ目なく参画できる体制というのを開きますということでございますので、いろいろなことを考えながら工夫をしていかれるべきものだと思っております。

宮本(徹)委員 この理研の新たな提案というのは、大変穴だらけで救済策にはなっていないんですよね。

 そもそも雇用上限の撤廃というのは来年四月からの適用ということになっているわけで、来年三月で雇い止めされる人には、どうなるのかということでいえば、雇い止めというのは現に撤回はされておりません。その上で、新しい研究を公募して、そこに応じてもいいですよという話になっているわけですけれども、そもそも三百八十人雇い止めになるわけですよね。そのうち、新たなポストの数というのは、今大臣の話は百七十五ですか、二百という話も私聞いていますけれども、元々数は足りない。しかも、例えば、分子イメージングの研究をやっている、生物系の研究をやっている人が化学系や物理学系の公募を幾ら出されたって応じようがないわけですよね。全く救済策に私はなっていないと思います。

 ですから、ここはもっと踏み込んだ指導が必要だということを厳しく指摘をしておきたいと思います。

 加えて、同じように、理研以外も、国立大学も同じようなことが起きているわけですけれども、理研のひどいのは、当初の契約時に通算雇用期間の上限が設けられていない人に対して、後から就業規則を変更して雇用上限十年という期間を設定して、その起算日を二〇一三年に遡らせて今年度末に雇い止めしようとしている点であります。

 資料一ページ目を御覧いただきたいと思いますが、これは、今年、厚労省が、多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書として出したものでございます。

 「契約更新のタイミングで更新上限が設定された場合、多くの場合に労働者は同意を余儀なくされることから、司法判断においては、自由意思による同意の有無について厳格に認定される傾向がある。これを踏まえ、使用者が更新上限の有無及び内容の明示をしたことや労働者が更新上限条項に異議を唱えず契約更新に応じたことのみでは、更新上限について有効な合意が成立したとは認められず、更新の合理的期待は必ずしも消滅しない」と言っているわけですね。つまり、後から更新上限を設けても無効になる可能性は高いですよ、こういうことを厚労省の検討会の中でも言われているわけです。

 ちなみに、経産省傘下の産総研の方は、当初の契約時に雇用上限がなかった職員については、来年三月末で通算雇用期間十年となっても、本人の意向を聞いて、本人が希望すれば無期転換するというのを取りました。この産総研の対応というのは厚労省の検討会の報告書に沿っていると私は思います。ところが、理研はそうなっていないわけですよね。

 なぜ、厚労省や経産省と違って、文科省傘下の理研は同じ姿勢が取れないのか。後から更新上限を決めて更新上限の起算日を遡らせる運用について、文科省はこれは適法だと考えているんじゃないですか。だから理研はこんなことになっちゃっているんじゃないですか。

井出副大臣 資料で出していただいております検討報告書、今年の三月にまとまったものは、その報告書を受けて、現在、厚労省の方で議論をしていただいていると聞いております。

 また、先生の御指摘、この報告書もそうですが、一般論で言えば、後から遡及するようなことはよくないといったような答弁もあった、これまで答弁がされていると思います。

 理研につきましては、理研にかかわらず、まず、その法人がしっかり法令遵守をして、法令に基づいてやっていただくことが重要だと思っておりますが、御指摘の件につきましては、理研は基本的には単年度契約をずっとしてきている、その更新の見通しを平成二十八年に雇用上限という形で示したもので、新たな不利益を生じるというようなことではないというふうに聞いております。

宮本(徹)委員 いやいや、新たな不利益なんですよ。だって、一番初めに十年上限なんて示していなかったわけですから、後から十年までですよというのを決めるのは、これは国会で厚労大臣がこの間何回も答弁していますけれども、これは不利益変更ですよ。許されないですよ。後藤さん、この間まで厚労大臣だったから、うなずいていらっしゃいますけれども。

 これは、やはり文科省の側が理研を擁護するというのは本当によくないと思いますよ。産総研と同じように、せめて、当初、雇用上限がなかった方については、しっかりと、そうしたやり方というのは脱法行為だということで私は指導すべきだと思いますよ。本当に、日本の頭脳を担っているような研究者が雇い止めになって、いいことは何一つないですよ。そのことを厳しく申し上げておきたいと思います。

 別の角度で質問したいと思います。

 この間、私、研究者の雇い止め問題を何度も取り上げてまいりましたけれども、政府の側からは、研究者の流動性と安定性の両方が求められている、こういう答弁がよく出るわけですよね。

 欧米では、研究者はテニュア職に就くまで、大変競争は激しいですけれども、通常七、八年程度で結論を得て、テニュアを得る。テニュアを得た後は、場合によっては他の大学に動くということもありますけれども、元の大学のテニュアはそのままということが大変多いです。

 ところが、日本は、正規のポストが減っており、博士課程を修了してもアカデミックにおける安定した雇用を得ることが大変難しくなっております。

 資料二ページ目を御覧いただきたいと思いますが、これはNISTEPの博士人材追跡調査の今年出た四次調査ですね。任期付の職ということで見れば、三十五から三十九歳で五四・三%、四十歳代で三七・八%、五十歳以上でも三八・八%が任期付の職ということになっております。常に新しい職を探し続けなければならないという点でいえば、既に非常に流動性は高いというのが日本の状況だと思うんですよね。

 日本の若手研究者にこれ以上の流動性というのは必要ないと思いますが、いかがですか。

高市国務大臣 近年ではあらゆる研究活動がグローバルかつダイナミックに展開されております。そういう中で、最適な人材を集めて知見を結集するということが求められておりますので、私は人材の流動性を一定程度確保することは必要だと思います。そのため、各研究機関が、若手研究者などの人材の流動性を確保しながら、適切な人事の運用を行うということが重要だと考えております。

 また、優秀な研究者はふさわしい処遇を得て我が国で研究を続けたいと思うような研究環境を整備することも、他方、重要だと考えておりますので、第六期科学技術・イノベーション基本計画に基づいて、研究者が研究に専念できる環境を構築して、また研究の魅力向上も図ってまいる、こういう考え方でございます。

宮本(徹)委員 流動性が高過ぎるんですよね。ですから、若手研究者が研究に専念できるという環境にはおよそなっていないわけですね。

 資料の三ページ目、御覧いただきたいと思いますが、これは博士人材追跡調査の三次調査でございます。アカデミアでの雇用期間を調査しているわけですけれども、最も多いのは一年なんですよね、雇用期間、任期付の場合。コホートによっても違いますけれども、三割から四割が一年という雇用になっています。

 ですから、日本においては、非正規の研究者というのは、博士号を取得した後に任期なしポストを探しながら短い雇用期間を繰り返しているというのが政府の調査でも明らかだと思うんですよね。そして、これは三十代、四十代、五十代でもこの任期付が半数近くになっているということです。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、高度専門教育を受けた研究者が五十歳になっても四割近くが任期付ポストと、安定した雇用を得ていないというのは、私は大変異常な状況だと思いますけれども、高市大臣、いかがですか。

高市国務大臣 内閣府としましても、間接経費や競争的研究費の直接経費から研究者の人件費を支出することで捻出した運営費交付金など、多様な財源を戦略的かつ効果的に活用するということによりまして、任期なしポストを確保し、優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくということを促しております。

宮本(徹)委員 これは、本当に今の状況が異常だという認識を是非持っていただいて、どう正すのかというのを考えないと、日本の科学研究の未来というのは本当に、ますますなくなっていくと思いますよ。

 この調査には自由記述があります。幾つか読みます。

 博士課程を修了しても安定的な職業や収入を得られない現状では研究を続けたくても続けることはできない、将来に希望を持てるような政策を実行してほしい。五年の契約期間という若手研究者の採用モデルが一般化してしまい、当人にとっては将来への漠然とした不安しかない。あるいは、ポスドク期間中に経済的困窮から自殺してしまう人がいたりすると聞きます、このような調査がそうした人を少しでも減らせる役に立つことを願います。

 政府関係の研究機関がやった調査でこういう声がたくさん寄せられているわけですよ。これに本当に真剣に応えることを政治はやらなければならない。

 ところが、この上、今日議論しております労働契約法の無期転換ルールを避ける目的の十年目の雇い止めというのが行われれば、今以上にますます雇用は不安定になっていくということになります。このルールを本当に放置したら、今の進行中のナショナルプロジェクトだって足が引っ張られる、博士号を取得した人は、雇用不安がいよいよ増しますから、研究職にいよいよ進まなくなっていくというのが一層進んでいくということになります。

 ですから、本当に研究力の向上ということを考えたら、やはり無期転換ルールの問題、真剣に財源を確保して解決するということに政治が責任を果たさなきゃいけないと思いますよ。

 大学の側も、研究所の側も、無期転換のポストをつくる財源がありません。そこが最大のネックになっております。指導と同時に、政治の責任で財源を確保して、雇用の安定化は是非図っていただきたいと思います。大臣、いかがですか。

高市国務大臣 財源の確保につきましては、先ほど私は答弁を申し上げたと思います。

 大学によりましては、学長の強いリーダーシップによって、若手研究者のポストを短期間で急激に増やしたところもございます。また、精いっぱい努力をしながら寄附を集めたり、いろいろな形で財源を確保している、そういった大学もございます。

 個別の法人の業務運営については、各法人を所管する省庁において対応いただくものでございますけれども、意欲と能力のある研究者がふさわしい処遇を得て研究に取り組めるようにするということは、日本全体の研究力強化にとっても必要だと思いますから、そのために努めてまいりたいと存じます。

宮本(徹)委員 時間になりましたから終わりますけれども、意欲と能力がある研究者が研究を続けられない事態になっているというのが、この十年特例の運用をめぐる問題だ。

 井出副大臣はよくお分かりだと思いますけれども、高市大臣ともよく相談していただいて打開に当たっていただきたいということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。

下条委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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