衆議院

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第1号 平成29年3月16日(木曜日)

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本国会召集日(平成二十九年一月二十日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 上川 陽子君

   幹事 中谷  元君 幹事 根本  匠君

   幹事 平沢 勝栄君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 武正 公一君 幹事 辻元 清美君

   幹事 北側 一雄君

      赤枝 恒雄君    安藤  裕君

      池田 佳隆君    衛藤征士郎君

      大塚 高司君    鬼木  誠君

      後藤田正純君    佐々木 紀君

      佐藤ゆかり君    園田 博之君

      田畑 裕明君    高木 宏壽君

      辻  清人君    土屋 正忠君

      野田  毅君    福山  守君

      船田  元君    星野 剛士君

      宮崎 政久君    村井 英樹君

      保岡 興治君    山際大志郎君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      枝野 幸男君    奥野総一郎君

      岸本 周平君    北神 圭朗君

      中川 正春君    古本伸一郎君

      細野 豪志君    山尾志桜里君

      太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君

      遠山 清彦君    赤嶺 政賢君

      大平 喜信君    足立 康史君

      小沢 鋭仁君    照屋 寛徳君

平成二十九年三月十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 上川 陽子君

   幹事 中谷  元君 幹事 根本  匠君

   幹事 平沢 勝栄君 幹事 船田  元君

   幹事 古屋 圭司君 幹事 武正 公一君

   幹事 辻元 清美君 幹事 北側 一雄君

      赤枝 恒雄君    安藤  裕君

      池田 佳隆君    岩田 和親君

      衛藤征士郎君    大塚 高司君

      鬼木  誠君    後藤田正純君

      佐々木 紀君    佐藤ゆかり君

      園田 博之君    田畑 裕明君

      高木 宏壽君    辻  清人君

      土屋 正忠君    野田  毅君

      福山  守君    星野 剛士君

      宮崎 政久君    村井 英樹君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山田 賢司君    枝野 幸男君

      奥野総一郎君    岸本 周平君

      北神 圭朗君    中川 正春君

      古本伸一郎君    細野 豪志君

      山尾志桜里君    太田 昭宏君

      斉藤 鉄夫君    遠山 清彦君

      赤嶺 政賢君    大平 喜信君

      足立 康史君    小沢 鋭仁君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  山際大志郎君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     山際大志郎君

同日

 幹事伊藤達也君同日幹事辞任につき、その補欠として船田元君が幹事に当選した。

    ―――――――――――――

二月十四日

 日本国憲法を守り生かすことを求めることに関する請願(奥野総一郎君紹介)(第四〇号)

 同(真島省三君紹介)(第一〇二号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三九号)

 同(池内さおり君紹介)(第一四〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一四一号)

 同(大平喜信君紹介)(第一四二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一四五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四六号)

 同(清水忠史君紹介)(第一四七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四八号)

 同(島津幸広君紹介)(第一四九号)

 立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一二九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三一号)

 同(畠山和也君紹介)(第一三二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一三三号)

 同(堀内照文君紹介)(第一三四号)

 同(真島省三君紹介)(第一三五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三六号)

 同(宮本徹君紹介)(第一三七号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三八号)

同月二十四日

 日本国憲法を守り生かすことを求めることに関する請願(逢坂誠二君紹介)(第一五六号)

 同(真島省三君紹介)(第二一八号)

 立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(真島省三君紹介)(第一八四号)

 同(真島省三君紹介)(第一九〇号)

 日本国憲法を守り生かすことに関する請願(篠原孝君紹介)(第二二二号)

 同(真島省三君紹介)(第三〇五号)

三月八日

 憲法改悪に反対し、九条を守り、平和のために生かすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三四〇号)

 同(池内さおり君紹介)(第三四一号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三四二号)

 同(大平喜信君紹介)(第三四三号)

 同(笠井亮君紹介)(第三四四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三四五号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三四六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三四七号)

 同(清水忠史君紹介)(第三四八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三四九号)

 同(島津幸広君紹介)(第三五〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三五一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三五三号)

 同(畠山和也君紹介)(第三五四号)

 同(藤野保史君紹介)(第三五五号)

 同(堀内照文君紹介)(第三五六号)

 同(真島省三君紹介)(第三五七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三五八号)

 同(宮本徹君紹介)(第三五九号)

 同(本村伸子君紹介)(第三六〇号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 幹事の辞任及び補欠選任

 参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(参政権の保障をめぐる諸問題(「一票の格差、投票率の低下その他選挙制度の在り方」及び「緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等」))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 幹事辞任についてお諮りいたします。

 幹事伊藤達也君から、幹事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、幹事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの幹事辞任に伴い、現在幹事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。

 それでは、幹事に船田元君を指名いたします。

     ――――◇―――――

森会長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に参政権の保障をめぐる諸問題(緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等)について調査のため、来る二十三日木曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

森会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に参政権の保障をめぐる諸問題(「一票の格差、投票率の低下その他選挙制度の在り方」及び「緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等」)について調査を進めます。

 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。

 発言時間は十分以内といたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。

 発言の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子です。

 参政権の保障をめぐる諸問題をテーマに、党を代表して発言いたします。

 衆議院憲法審査会における昨年十一月の議論を拝聴しますと、制定以来七十年、日本国憲法は国民にも社会にも定着し、大きな役割を果たしてきたのであり、制定過程におけるGHQの関与による押しつけ憲法論からは卒業すべきであること、日本国憲法の三大原理、すなわち、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義は堅持すべきことなどについて、各会派が共通の認識を持っているという確信を持ちました。同時に、次の七十年、成文の憲法典だけでなく、憲法附属法規や一連の基本法などを含めた総体から構成される生きた憲法、リビングコンスティチューションのあり方を議論していくことの大切さを改めて認識いたしました。

 今後、憲法審査会が議論を進めていくに当たっては、現時点の議論の到達点を踏まえ、憲法制定以来我が国のあり方を規定してきた三大原理を縦軸に、制定後七十年を経て浮かび上がってきた個別の論点を横軸に据えて、論点の深掘りをしていくべきと考えます。

 さて、国民主権の観点から参政権の保障をめぐる諸問題を考えるとき、一票の格差の問題を避けて通ることはできません。

 最高裁の判例は、投票価値の平等が憲法の要求するところであると明言しつつ、国会議員が全国民の代表である以上、人口の格差が投票価値の不平等を正当化するものではないとしています。

 しかし、一票の格差の問題は、地方の過疎化、人口減少と切り離して語ることができません。

 現行憲法が制定された七十年前から現在まで、我が国の人口は約五千万人増加しましたが、そのうちの約半分が首都圏における人口増加であるなど、世界でもまれに見る首都圏への人口一極集中が進んでいます。

 さらに、国立社会保障・人口問題研究所によると、二〇一五年には約一・二億人であった我が国の人口は、二一〇〇年には約〇・五億人まで減少するという試算がなされています。その結果、地方は、過疎の問題を通り越して、地方消滅と言われるまでの深刻な人口減少に直面する結果、自治体による行政自体が成り立たなくなるといった指摘や、人々が地域で生きていくこと自体が困難になるといった指摘がされています。

 にもかかわらず、全国民の代表としての立場を過度に強調し、厳格な人口比例を国会議員の選出に反映させると、日本においては、都市部選出議員はどんどん多く、地方選出議員はどんどん少なくなるという傾向が続き、極端に言えば、都市部の一区画から選出された議員ばかりとなりかねません。その場合、地方在住の国民にとっては、政治にアクセスする機会が都市部在住者よりも圧倒的に少なくなることは、容易に想像することができます。

 日本国憲法制定以来七十年の間に社会が激変し、どんな努力をしても、地方消滅ともいうべき、トレンドとして避けられない深刻な人口減少を迎えつつある状況下においては、厳格な人口比例を前提としても自然に全国津々浦々から代表者が選出されていたという従来の前提自体が崩れつつあると言わざるを得ず、投票価値の平等が守られていれば国民主権の基礎が守られていた時代は過去のものになってしまったのではないでしょうか。

 以上を前提として、参政権についての憲法論議の方向性について申し述べます。

 国民主権という切り口から参政権を考えるに当たっては、公正かつ効率的な代表という視点とともに、有権者と政治の対話という視点も必要と考えます。

 参政権は、政治へアクセスする権利と位置づけられますが、有権者の政治へのアクセスは、投票をして議員を選び、議会が構成されることで終了するのではなく、議員は常に議会における議論の状況を有権者にフィードバックし、議員と有権者の意見交換を議会における討議と立法に反映させていくという循環的な対話を維持することが必要ではないでしょうか。その循環を維持するためには、一票の格差の是正という数値的な意味での政治へのアクセスの確保だけでなく、質的な意味でのアクセスの確保が必要と考えます。

 ここに言う質的な意味でのアクセスの確保とは、人口の少ない地域の住民も意見交換や議論を通じてみずからの地域の問題点を議員に伝えるという意味でのアクセスの確保を意味し、このようなアクセスが確保されていなければ、対話的な循環は成り立ちません。

 このような視点からすると、衆議院と参議院の選挙制度はいかにあるべきでしょうか。

 衆議院については、国民代表機関の世界的標準に照らして人口比例を厳格に適用すべきという見解もありますが、この点については、参政権の有権者と政治の対話という側面に着目した上で慎重な議論が必要と考えます。

 一方、地方の利益に目配りするという意味での補正の役割に着目するとき、特に参議院選挙における合区は早急に解消することが強く求められます。

 しかし、最高裁は、参議院について人口比例の要請と院の権限の相関関係のバランスが崩れているとの認識を持っていることがうかがわれ、このような点も踏まえた本質的な議論が求められます。

 参議院のあるべき姿については、参議院憲法審査会を初めとして参議院が長年にわたって取り組んでいるところであり、その成果を踏まえて衆議院においても議論を深めていくべきでしょう。その上で、国会における議論の進展次第では、法改正では足りず、憲法改正が必要になることも考えられます。

 いずれにせよ、衆議院と参議院の選挙制度の問題は、国と地方の権限分配の見直しや、地域自体の統治構造改革にも広がりを見せることが予想され、ひいては憲法第八章のあり方も議論の対象となるでしょう。その意味で、いずれ衆議院憲法審査会においてテーマとされるであろう地方自治の問題とも密接に関連してくると考えます。

 次に、緊急事態における国会議員の任期の特例について申し述べます。

 緊急事態については、既に衆議院憲法調査会における議論の蓄積があり、調査会報告書において、平常時の憲法秩序の例外規定を規定すべきとする意見が多く述べられたとされています。このような議論の蓄積を踏まえて、今後、深掘りをしていくべきです。

 本来このテーマを考えるに当たっては、そもそも緊急事態とは何か、どのような緊急事態を想定するのかを設定する作業が必要となるはずです。例えば、南海トラフ巨大地震が発生した際に想定される被害は非常に広域にわたることが予想され、最大で、死者は三十二万人、建物の全壊、焼失二百三十八万棟、資産等の被害百七十兆円と試算されています。このような自然災害を起因とする未曽有の国難を緊急事態と想定することが考えられるでしょうか。

 その上で、内閣総理大臣等への権限集中や人権制限などが必要なのか必要ではないのか、法律整備で足りるのか、それとも憲法改正まで必要になるのかという丁寧な仕分け作業も必要になります。何より、いかなる状況においても、憲法が統治原理の根幹に据える国民主権の観点から、民主的コントロールを貫徹するためにどのような制度を構築する必要があるのかが必須の視点となります。

 日本国憲法は、緊急事態条項の一種として参議院の緊急集会を用意していますが、これは、衆議院の解散中から特別会が召集されるまでの七十日間を想定した制度とされています。東日本大震災のときには、被災地では最大八カ月の間、地方選挙ではありますが、選挙を執行できませんでした。もし非常事態発生により被災地での選挙の執行が困難な事態に陥ったとき、選挙の延期や議員の任期の延長といった手当てを講じないと、被災地選出議員は不在になってしまいます。

 しかし、国会議員の場合、憲法上、衆議院議員と参議院議員の任期が明記されていることに鑑みると、この手当てのためには憲法改正が必須となります。国会議員が全国民の代表である以上、被災地選出議員がいなくても支障ないという形式的な議論は、非常事態においては特に成り立たないのではないでしょうか。少なくとも国会議員の任期延長等の手当てを憲法上行うことは、民主的コントロールを貫徹し、国民主権を機能させるために必須であることを強調して、私の発言を終わります。

森会長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 二十世紀の半ば以降、行政府による議会の解散権には強い制約をつけるという傾向が世界的に強まっています。

 ドイツでは、第二次世界大戦終結後、西ドイツの時代から解散権行使の要件を厳格に絞っており、内閣不信任の場合などしか解散が認められていません。議院内閣制の本家と言える英国でも、二〇一一年に議会期固定法を制定し、内閣による議会の解散は認められなくなりました。カナダでも、二〇〇七年の選挙法改正により、不徹底ながら、行政府の解散権を制約する動きがなされています。

 歴史的に見ると、王政時代に議会に対して解散権を有していたのは王権でした。議会は王権を制約するための機関としてつくられましたから、王権と議会は、対立、緊張関係にあるのが前提でした。こうした時代に、王権が議会に対抗して、これを抑制、牽制する手段として解散権が位置づけられていたのです。

 ところが、民主制下での議院内閣制ではこの前提が変わっています。内閣と議会との間には、王権と議会との間のような対立関係はありません。内閣は議会の多数派によって選出され、支えられており、行政府と議会の多数派が政治的に一体化した制度となっているからです。米国のような、議会と行政府の分離が徹底している二元代表制とは異なります。

 現在の議院内閣制では、内閣と議会の多数派で意見の違いがあっても、政治的に一体化している政府・与党内部で解決するのが基本です。このため、王政時代と異なり、解散権のような抑制、牽制の仕組みを制度的に設ける意義が原則としてはなくなっています。そして、行政府と議会の多数派が一致せずに対立し、それを政府・与党内で解決できない事態というのは、異例のこととして位置づけられます。この異例の事態が生じた場合に限って、対立を解消し、民意に基づいて国政を前進させるための手段として、解散が正当化されます。まさに内閣不信任の場合の解散です。

 しかし、それ以外の場合には、有利なときに選挙を行えるという多数派の都合以外に、解散を認める意義は乏しくなっています。内閣と政治的に一体となった議会の多数派が、もともと優位な立場にあるのに、これと緊張、対立関係にある議会の少数派に対して、さらに優位性を強める解散の仕組みは、必要ないどころか、有害である可能性すらあります。

 このように、ドイツやイギリスの動きは、王政から民主制へという時代の変化を踏まえた適切なものと言えます。我が国も、時代の変化に合わせた憲法をと言うのであれば、この問題こそ議論の中心となるべきです。

 特に日本では、衆議院だけでなく、参議院も国民による直接選挙です。地方選挙も、さまざまな経緯のもと、統一地方選挙が統一とは言えなくなっている状況です。いわば、年がら年じゅうどこかで選挙が行われているという状況。その都度多額の税金が使われ、政治の安定にも反します。選挙の機会が多ければ、それだけ参政権を具体的に行使する機会がふえて、望ましいようにも思えます。しかし、多過ぎれば、国民の関心も分散し、投票率低下の遠因の一つになっているとも考えられます。

 また、国民が時間をかけて慎重に考えた上で選挙権を行使するためには、選挙の時期があらかじめ予測できる方が便利です。政党や候補者は、時期が予定された選挙だからこそ、公約などを十分に練り上げて提示することが可能になり、有権者に十分な判断材料を提供することが容易になって、参政権の実質的保障に資することになります。そして、どの政党や候補者にも予測可能な時期に選挙が行われることで、公平性も高まります。

 解散について規定しているのは日本国憲法だけですから、この問題は、憲法審査会でなければ検討できません。憲法議論や憲法改正などを要することなく対応可能な問題よりも、憲法審査会として真摯に議論すべきテーマとして優先順位が高いことは言うまでもありません。

 なお、私がここで申し上げたのは、憲法を改定することの是非についての問題であり、現行憲法下でのいわゆる七条解散の憲法適合性についてではないことを念のため申し上げます。

 次に、緊急時の議員任期の延長について申し上げます。

 緊急事態における衆議院議員等の任期延長を議論すべきという意見は、検討に値すると思います。東日本大震災の際に被災地の地方選挙を延期しましたが、これは法律で対応可能でした。しかし、国政選挙の場合には、憲法上の根拠が必要になるのは確かです。

 もっとも、検討すべき事項は複雑かつ広範にあり、そう単純に結論を出せる問題ではありません。内閣が一方的に任期延長できるというのは論外としても、国会がみずから自分たちの任期を延長するというのはお手盛りとなりかねず、単純に過半数で認めればよいというわけにはいかないでしょう。

 また、極端な場合、衆議院が解散された後に緊急事態が生じた場合にどうするのでしょう。既に解散で一度失職した議員の資格が復活するのでは、権力の正統性に実質的な意味で著しい疑義が生じます。

 このような事態が生じる可能性を最小化するためにも、解散権行使は必要不可欠な場合に限定することが合理的ですが、それでも、内閣不信任がなされ、その後に解散するという、この場合は衆議院も内閣も権力の正統性を有しないという事態、こうした場合に、任期延長論あるいは権限が復活する論ということが果たしてあり得るのか、なかなか難しい問題ではないでしょうか。

 そもそも、緊急事態として選挙の実施が困難な場合については、曲がりなりにも参議院の緊急集会の規定があり、これを根拠に一定の対応が可能です。しかし、例えば、首都直下型地震で都心部が著しい被害を受け政府も議会も機能しない場合など、想定すべき事態は多々あります。その中には、法律やマニュアルなどによって対応できること、対応すべきことも少なくないでしょう。

 一例ですが、内閣総理大臣臨時代理は第五順位まで決められていますが、これだけで本当によいのか。東京とその周辺が大きな被害を受けた場合に、立川の防災基地が本当に機能するのか。これらをきちっと精査し、すぐできることにきちんと対応しておくことがまずは重要です。

 一票の格差についても申し上げます。

 全国民の代表である国会議員の選出について一票の価値を可能な限り対等にするべきであるのは、日本国憲法の規定をまつまでもなく、国民主権と間接民主制を採用する以上、必然的要請です。しかし、同時に、選挙区という制度を採用する限り、議員が選挙区ごとの代表という側面を実質的に有していることも否定できません。

 そして、大都市と過疎地域との間の人口偏在がさらに急速に進んでいる日本の現状を鑑みるとき、一票の価値の平等だけを徹底すれば、過疎地域を代表する議員がさらに減少し、大都市を選挙区とする代表のみがふえていくことになります。このことが、国民全体の納得感や実質的に幅広い民意の反映を図るという意味で、やむを得ないと言い切ることは難しいと考えます。

 この問題を参議院における合区問題を解消する手段としてのみ位置づける見方もあるようですが、そのように矮小化された議論を進めることは適当ではありません。仮に、参議院について人口比以外の要素を取り入れる場合には、一票の価値の平等という基本原則の例外を設けるわけですから、その明確かつ合理的な根拠が必要です。そして、一票の価値の平等に基づいて選出される衆議院と、それ以外の要素を考慮して選出される参議院との間で、どのように役割や権限を明確に区分するのかという二院制の本質に関する議論が必要になります。

 当然ながら、民主制の基本にかかわる問題として衆議院としても十分な検討、議論が必要ですが、まずは、合区問題とも関連して参議院の選挙制度が議論の入り口となっていることや、特に重要な課題となるのが参議院の役割や権限に関することであることなどを踏まえ、当事者である参議院において先行して議論を深めていただくのが適切です。民進党も、参議院を中心に議論を深めながら、党全体として認識の共有を図るという段取りで検討を進めています。衆議院の憲法審査会としても、参議院憲法審査会の議論を見ながら、それを踏まえて取り扱いを検討すべきと考えます。

 最後に、共謀罪について申し上げます。

 参政権は選挙権だけではありません。政治的意思を表明し、言論活動や集会、デモなどを行うことも、大切な参政権の行使という側面を有しています。共謀罪は、テロ対策と名づけられた、まさに印象操作がなされていますが、本当にテロ対策として効果があるのか疑問がある一方で、集会やデモなど、参政権行使を過度に抑制するという副作用のおそれが指摘されています。

 もし共謀罪法案を強行しようとするならば、まずは、この憲法審査会において、参政権や表現の自由など憲法との関連性について、具体的法案審査に先立ち慎重に議論する必要があることを指摘して、意見表明といたします。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 参政権の保障をめぐる諸問題について意見を述べます。

 まず、一票の格差と選挙制度のあり方について意見を述べたいと思います。

 憲法第四十三条一項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」としております。また、十四条一項に定める法のもとの平等は、選挙権に関しては政治的価値の平等を要請するものであり、また、衆参国会議員は全国民を代表する議員であるから、全国民にとって一票の価値は平等でなければならない、基本的には一票の格差が二倍未満であることが求められると言えます。

 まず、衆議院選挙制度について。

 二〇一六年五月二十日、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の改正が成立をいたしました。二〇二〇年の国勢調査以降十年ごとの大規模国勢調査の結果に基づき、いわゆるアダムズ方式を採用すること、また、二〇一五年の簡易国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式を準用し、定数を十削減することなどが定められました。

 現在、選挙区画定審議会において小選挙区の区割り画定作業が進められており、今国会中に、同審議会からの勧告を経て、政府は、衆議院小選挙区区割り画定法案を提出する運びとなっております。これにより、衆議院選挙制度については、選挙区間格差を二倍未満におさめる制度改正がなされているところでございます。

 次に、参議院選挙制度について述べます。

 参議院議員も全国民を代表する議員であり、参議院議員選挙においても、投票価値の平等は求められると思います。特に、憲法上、参議院には衆議院とほぼ同様の強い権限が認められており、参議院の権能は大きいと言わなければなりません。仮に参議院に地域代表的性格があるとしても、全国民の代表である以上、投票価値の平等が確保される範囲で考慮されるべき一要素にしかすぎないというふうに考えます。

 二〇一五年七月二十八日、四県二合区を含む十増十減の公職選挙法の改正が成立し、選挙区間格差は二・九七倍、選挙時は三・〇八倍となっておりますが、投票価値の平等という要請からは極めて不十分と言わざるを得ないと考えます。同公職選挙法の改正法の附則に規定されておりますように、二〇一九年の参議院選までに抜本的な見直しをしなければなりませんが、我が党はかねてより、全国十一ブロックの大選挙区制を提案しているところであります。

 もし、参議院を全国民の代表ではなく地域代表とするのであれば、憲法第四十三条一項の改正にとどまらず、憲法上の衆参の役割を大幅に見直さなければならないと思います。参議院側での今後の論議の行方を見守りたいと考えます。

 次に、内閣の解散権について述べます。

 日本国憲法には内閣の解散権を直接明示した規定はありませんが、内閣が衆議院の解散権を有することには異論がないと思われます。

 どのような場合に衆議院を解散するかについて、憲法第六十九条の「衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したとき」に限定されるべきとの考え方がありますが、賛成できません。

 総選挙で争点とならなかった重大な政治課題の是非について、内閣が新たに国民の信を問うため、憲法七条を根拠に衆議院を解散し、総選挙を実施することは、国民主権の理念からも認められるべきと考えます。内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散はもちろん妥当とは言えませんが、その判断は専ら有権者である国民に委ねられており、解散やこれに基づく総選挙が違憲と評価されるものではないと考えます。

 次に、緊急事態の創設について意見を述べます。

 憲法に緊急事態条項を設けて、内閣総理大臣への権限集中や国民の権利の制限の根拠を規定すべきとの意見があります。

 例えば大規模な自然災害のような緊急事態において、国会の議決する法律によらないで緊急政令の制定や地方公共団体の長に対する指示などが迅速にできるように、内閣総理大臣等への権限集中を認める根拠を規定すべきだとか、また、国民の権利を制限できる根拠を設けるべきとの考え方があります。

 しかしながら、こうした意見にも賛成できません。なぜなら、我が国の危機管理法制は相当程度整備されてきております。例えば、大規模災害時の災害対策基本法を初めとする災害対処法制、有事の際の武力攻撃事態等対処法制、国民保護法を初めとする有事法制、治安上の事態対処のための自衛隊法、警察法などであります。

 一定の場合には、生活必需物資の譲渡制限や価格統制などの緊急政令の制定権限を内閣に対して与える規定があり、また、医療、土木建築工事、また輸送関係者や近隣住民等の一般国民に対しての従事命令の規定もあります。必要があれば、法律改正で危機管理法制をさらに整備充実をしていけばよいと考えます。

 以上のように、現行憲法でも、緊急事態への対処のため、合理的に必要な範囲で、公共の福祉に基づく国民の権利の制約は可能であって、憲法にあえて根拠規定を置く必要はないと考えます。憲法に緊急事態条項を設けても、しょせん抽象的な規定としかなり得ず、かえって恣意的に発動され、国民の権利が不当に制約されるおそれがあると言わなければなりません。

 緊急事態における国会議員の任期の延長等を憲法に規定すべきではないかとの考え方があります。

 まず、憲法五十四条二項には、参議院の緊急集会の規定があります。すなわち、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」また、同条三項では、「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」とあります。

 したがって、まずは、緊急事態におけるこの参議院の緊急集会規定の意義、適用範囲について明らかにする必要があります。

 一九九五年一月十七日の阪神・淡路大震災、また、二〇一一年三月十一日の東日本大震災の際には、ちょうどその年は統一地方選挙の実施される年でございました。統一地方選挙の選挙期日、地方議員及び長の任期の延長に係る特例法を制定しております。

 しかしながら、国会議員については、憲法上、衆議院議員の任期は四年、参議院議員の任期は六年と定められ、また、衆議院解散から四十日以内に総選挙を行うことと定められているため、特例法の制定によって、国政選挙の選挙期日の延期、国会議員の任期の延長はできません。

 国会議員の任期満了直前や衆議院解散直後の大規模災害時などの場合には、少なくとも被災地では選挙が実施できないことも想定され、繰り延べ投票が行われる地域も多くなると思われます。国難とも言える大規模災害時などの場合に、参議院の緊急集会での臨時の措置で足りると言えるのかどうか、具体的な事例を通して、それを想定しながら、十分な検討が必要と考えます。

 一方で、両議院を組織する国会議員の任期は、まさしく議会制民主主義の根幹にかかわる事柄であり、当然のことながら、慎重な論議が必要と考えます。

 また、緊急事態条項については、そもそも緊急事態とはどういう事態か、誰の責任で判断するのか、緊急事態宣言はどのような手続で発せられるのかなど、極めて重要な論点があり、基本的人権の尊重や議会制民主主義の観点等から十分に論議をされる必要があると考えます。

 以上です。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たちは、憲法審査会は動かす必要はないという立場です。憲法審査会は、憲法改正原案、改正の発議を審査するための場です。ここでの議論は、改憲項目をすり合わせ、発議に向かうことにつながります。国民の多数は改憲を求めておらず、審査会を動かすべきではありません。

 今日の憲法上の最大の問題は、現実の政治が憲法の平和、民主主義の諸原則と著しく乖離していることです。その観点から、今回の参政権というテーマについて述べたいと思います。

 我が国の参政権は、民撰議院設立建白書を口火として、国民のたゆまぬ運動によって獲得されてきたものです。女性参政権は戦後にようやく実現し、昨年、十八歳選挙権が実現しました。

 国民主権を確立した日本国憲法の前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と始まります。これは、議会制民主主義、代議制民主主義の原理をあらわすものであり、その根幹をなすのが選挙権だということを示すものです。したがって、選挙権は、国民の多様な民意を正確に議席に反映するものでなければなりません。

 ところが、一九九四年、政治改革と称して現行の小選挙区比例代表並立制が導入されたもとで、民意の反映が著しくゆがめられていきました。

 この二十年間、小選挙区制のもとで七回の総選挙が行われました。小選挙区において、第一党は四割台の得票率にもかかわらず、七から八割もの議席を獲得しています。一方で、少数政党は、得票率に見合った議席配分を得られず、獲得議席を大幅に切り縮められております。議席に反映しない死に票は、各小選挙区投票の半数に上っています。

 今の自民党安倍政権も、三百に迫る議席を占めていますが、絶対有権者比で見れば一七%の支持にすぎません。まさに、民意を反映しない小選挙区制の根本的欠陥を浮き彫りにしています。民意の反映をゆがめる虚構の多数で安保法制の強行など、平和、民主主義を破壊する強権政治が横行しています。

 小選挙区制度は廃止し、国民主権の趣旨に沿う、民意を公正に反映する選挙制度へと抜本的に改革する必要があります。

 次に、参政権と緊急事態条項についてです。

 大規模災害時など必要だとして緊急事態条項が議論されていますが、二〇一六年五月に行われた東日本大震災三県の自治体首長四十二人へのアンケートによれば、緊急事態条項がなかったことで人命救助の活動に支障があったと答えた人は一人もいません。多くの首長が既存の制度や法改正で対応可能だったと述べ、釜石市長は、災害対応は一刻を争う現場に権限移譲すべきと答えています。被災市の担当者なども、内閣に権限を集中することに疑問を呈しています。

 東日本大震災の教訓は、現場に権限、財源、人材を集中することが必要だということです。緊急事態条項など、全く真逆と言わなければなりません。災害に対する備えが必要だというなら、一度事故が起これば大惨事を引き起こしかねない原発に頼らない日本社会にしていくことこそ、国民の大多数が望んでいることです。

 緊急事態条項は外国の憲法でもほとんど盛り込まれているといいますが、そのほとんどは、戦時における緊急権、非常事態宣言として規定されたもので、災害を理由にしたものではありません。

 イギリスの国家緊急権は、戦時法規で、戦争中に国民を軍の統制下に置くものとしてつくられました。フランス憲法が想定するのも、戦争や武装反乱を目的としています。自民党改憲草案を見ても、外部からの武力攻撃と内乱等による社会秩序の混乱が真っ先に挙げられています。

 緊急事態条項は、戦争遂行や内乱鎮圧を目的とした国家権力の統制を強める規定にほかなりません。

 自民党改憲草案によれば、緊急事態は内閣が必要と判断すれば宣言できることになっています。宣言を行えば、人権は制限され、内閣の一存で法律と同一の効力を有する政令を制定できます。国会も司法も事実上停止され、内閣が強大な権力を行使できる、まさに政権独裁をつくり出すものです。米軍占領下の沖縄でも、高等弁務官による布告、布令が事実上法律になっていきましたが、それをほうふつとさせる規定です。

 しかも、宣言中は衆議院を解散せず、国会議員の任期を延長するとしています。これは緊急事態だと政府が宣言し続ける限り、時の政権を自由に延命することになるものです。選挙によって民意を問う機会を奪うことは、戦争などの事態を引き起こした政府をかえる機会を奪うものであり、まさに国民主権の侵害です。

 憲法制定時に金森担当大臣は、緊急事態条項を置かない理由を次のように説明しています。「民主政治ヲ徹底サセテ国民ノ権利ヲ十分擁護致シマス為ニハ、」「政府一存ニ於テ行ヒマスル処置ハ、極力之ヲ防止シナケレバナラヌノデアリマス、言葉ヲ非常ト云フコトニ藉リテ、其ノ大イナル途ヲ残シテ置キマスナラ、ドンナニ精緻ナル憲法ヲ定メマシテモ、口実ヲ其処ニ入レテ又破壊セラレル虞絶無トハ断言シ難イト思ヒマス、」金森氏は、非常という道を残せば、国民の権利を制限し破壊する口実を政府に与えてしまう危険があることを指摘しています。

 明治憲法下で、治安維持法の重罰化法案が議会で廃案になったにもかかわらず、緊急勅令によって改悪されました。こうした緊急勅令の濫用によって挙国一致体制が築かれ、戦争へ突き進んだのであります。日本国憲法は、そうした痛苦の歴史と決別することを明確にし、再び戦争をしないと定め、国民主権と民主主義を貫く日本社会の進むべき道を示したのであります。

 緊急事態条項は、憲法原則である権力分立と人権保障を停止し、政府の独裁と際限のない人権の制限をもたらすもので、まさに憲法停止条項と言わねばなりません。前文や九条によって戦力を持たず戦争を放棄した日本国憲法とは相入れないことは明らかです。

 以上で終わります。

森会長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁です。

 我々日本維新の会は、これまで、憲法改正に向けた具体的な提案をしてまいりました。

 我が党は、憲法改正は、特定のイデオロギーの表現のためではなく、政策的な課題の解決のために行うべきものと考えています。法律の制定や改正に立法事実が必要であるのと同様に、憲法改正についてもいわば憲法事実が必要だと考えるわけです。

 また、我々は、憲法改正の項目として国民が身近で切実に感じている問題を取り上げ、できるだけ多くの国民が賛成できる形で憲法改正を進めていくべきと考えております。

 以上のような考え方に基づき、昨年三月、我が党は、教育の無償化、国と地方の統治機構改革、憲法裁判所の設置の三点について、憲法改正原案をまとめて発表いたしました。昨年の参議院選挙もこの原案を掲げて戦い、選挙の結果、国民の一定の負託を得ていると考えております。

 我が党は、このたびの憲法審査会で、これまでの逐条的解釈論を離れて、我が国が直面する諸課題について立法事実、憲法事実の議論を行うべきという我が党の提案が実現し、議論が開始されることを大いに評価したいと思います。

 今回の議題である参政権に関する問題について、我が党の考え方を申し上げたいと思います。しかし、この問題については、我が党の議論はまだ収束しておりません。我が党の憲法改正原案以外の提案、主張であっても憲法審査会での議論は喜んで行いますが、全てのテーマについて結論が出ているわけではないことを冒頭申し上げておきたいと思います。

 まず、緊急事態における参政権のあり方です。

 緊急事態に関する規定については、幾つかの論点が考えられます。

 そもそも憲法に緊急事態に関する新たな条項は必要なのか、法律で対応すれば十分ではないかという意見があります。

 我が党は、憲法改正には具体的な立法事実、憲法事実が必要と考えていますので、緊急事態として何を想定するか、政府の対応はどうあるべきか、具体的に議論すべきと考えます。このような具体的な議論を詰めるほど、法律レベルでの対応に近づくとも考えられますが、この点での国会における議論を大いに進めていくべきだと考えます。

 仮に、憲法改正で緊急事態条項を設けるとした場合、緊急事態における何らかの決定を行う機関はどこか、例えば内閣か内閣総理大臣か、また、基本的人権の制限まで踏み込むのか、それには触れない範囲で行うのか等々の論点があり得ます。こうした点について、国会での議論を進めるべきと考えます。

 また、緊急事態条項がなければ、緊急時の必要に応じて内閣等が超法規的な措置をとらざるを得ず、それでは立憲主義に反するので、きちんと事前に権限を与えておくべきではないかという主張もあります。

 ただ、この議論では、事後的にどの機関が最終的な憲法適合性を判断するのかという視点が抜けています。こうした事後的な審査の必要性という視点から、我が党が提案する憲法裁判所の設置の正当性が認められると考えます。

 政府が緊急事態において何らかの超法規的対応を行った際、それが事後的に憲法違反であると判断されるおそれがあれば、政府は緊張感を持って慎重に行動することが期待されます。現行憲法の裁判所では、緊急事態における政府の行動につき、統治行為論によって判断を回避するおそれがあります。憲法裁判所であれば、政府の行為の合憲性につき、公権的な判断を下すことになります。

 以上のように、緊急事態については、どのような要件の緊急事態条項を憲法に新設するかという事前の問題だけではなく、緊急時の政府対応に関する事後的審査の問題も重視されるべきと考えます。我が党の憲法改正原案の立場からは、緊急時の政府対応の是非に関する判断というのは、憲法裁判所が重要な機能を果たし得る一つの例と言うことができます。

 次に、解散権のあり方、特に解散権の制限について、緊急事態も含めた一般的な議論については、党内での議論はまだ収束しておりません。

 解散権について、憲法改正で制限をするという議論の前に、まず、七条解散について憲法上の疑義があるならば、そうした疑義を徹底的に議論をしていくこと、徹底的に進めていくべきと考えます。

 次に、選挙制度のあり方について申し上げます。

 まず、一票の格差についてです。

 選挙制度に関連する問題としては、我が党は、旧党時代から一院制の導入について提起をしてまいりました。同時に、道州制導入を含めた統治機構改革を憲法改正で実現すべきことも選挙等で訴えてきました。

 一院制にせよ、道州制にせよ、今の選挙制度の一票の格差の問題を超えて考える必要があります。道州の範囲や一院制における選挙制度のあり方について、我が党としては細部まで具体的な案はまだ確定しておりませんが、現在の都道府県を前提とした制度とは大きく異なるものであることだけは御理解いただけることと思います。

 最後に、投票率の低下の問題について申し上げます。

 我々は、国民の意識、世論がどこにあるかを常に把握して政治が行われるべきと考えております。政治への関心をいかに高めていくか、政治全体の努力が必要であります。

 我が党は、政治改革に関しては、身を切る改革のほかに、選挙をより自由で公正な形で行えるようにするためのさまざまな提案を行い、法案も提出してきております。

 若い人たちに政治への門戸を開くことで政治への関心と責任感を持ってもらうため、衆参両院の被選挙権年齢の十八歳引き下げ法案も提出しております。また、スマホ投票、ネット投票の導入、ポスター掲示板のデジタル化等、技術革新に応じた法改正を行うことも必要です。さらに、戸別訪問、合同演説会、人気投票の解禁等、不合理な規制についての見直しも行うべきです。我が党は、こうした諸課題に対応するための法案も提出してきております。

 いずれにせよ、国民が政治に参加できるルートや契機をできるだけふやすことが極めて重要であります。政治は、常に時代の変化を捉えて、その時代に応じた政治参加のあり方をつくっていくべきであると考えます。

 以上です。

森会長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 最初に、本日のテーマの一つである緊急事態における国会議員の任期の特例について意見を述べます。

 憲法第四十五条は、衆議院議員の任期は四年とする、ただし、衆議院解散の場合には、その任期満了前に終了すると定め、憲法第五十四条に、解散・総選挙、特別会及び緊急集会の各規定があることは周知のとおりであります。

 昨今、衆議院選挙の最中に大規模災害や外敵からの攻撃があると、衆議院議員が不在となり、対応できないので、憲法第四十五条の例外として、衆議院議員の任期を延長できる規定を、憲法改正の上、盛り込むべきとの主張があります。また、憲法第五十四条第一項の要求する期間内に総選挙を施行できない場合に備えて、憲法改正をすべしとの意見もあります。

 社民党は、このような緊急事態における国会議員の任期の特例等に絞った改憲論議は、自民党日本国憲法改正草案第九十八条及び第九十九条の緊急事態条項新設への批判をかわし、マイナーな改憲条項に絞ることによって、可能なところから改憲を実現したいとの、いわゆるお試し改憲そのものであり、強く反対をいたします。

 自民党日本国憲法改正草案第九十九条第四項は、「緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。」と定めております。要するに、選挙を実施しないということです。

 確かに、大規模災害によって、選挙実施が困難な地域も発生します。かかる場合、公職選挙法第五十七条の繰り延べ投票制度によって解決すべきで、改憲は不要です。

 憲法第五十四条第二項ただし書きは、「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」と定めております。この参議院における緊急集会の規定は、GHQとの交渉の中で、不測の災害に対応する措置として、日本側の要求で盛り込まれたとも憲法学者が指摘をしております。

 したがって、自民党日本国憲法改正草案第九章緊急事態の創設は必要ありません。同時に、緊急事態下で内閣の解散権を制限するための憲法上の必要性もなく、そのための憲法改正の必要もありません。加えて、今や災害対策基本法に災害対応措置が定められていることを踏まえれば、今、いわゆるお試し改憲は論外であります。

 安倍総理は、衆議院本会議や予算委員会等において、緊急事態条項を新設するために憲法を改正すると明言しております。その上、憲法施行七十年の節目に当たり、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんかと、行政府の長が三権分立や立憲主義を無視して国権の最高機関たる国会に改憲への取り組みの強化をするよう求めております。全くもって言語道断であります。

 恐らく、緊急事態における国会議員の任期の特例を認め、解散権の制限を求める論議は、これら安倍総理の発言に起因するものと思われます。

 国家緊急権とは、戦争、内乱、恐慌ないし大規模な自然災害などで、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序である人権の保障と権力分立を一時停止して非常措置をとる権限だと憲法学者の芦部信喜氏は定義し、通説となっております。

 社民党は、我が国において国家緊急権としての非常事態条項を憲法に盛り込む必要性はなく、そのための改憲には断固反対であります。

 最近では、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催と関連し、テロ攻撃を理由に、改憲の上、国家緊急権新設を主張する向きがあります。しかしながら、テロは国家緊急権が発動される非常事態ではありません。テロはあくまで緊急対処事態であり、法律に基づき、犯罪として警察が対処すべきであります。

 最後に、一票の格差問題について、手短に意見を述べます。

 一票の格差問題の本質は、憲法が求める選挙人の投票価値の平等、すなわち一票の価値の平等をいかに実現するかという問題であります。

 現行小選挙区比例代表並立制の選挙では、得票率と議席占有率の乖離が顕著となり、死に票が大量に生み出され、民意が大きく切り捨てられております。

 したがって、一票の格差の是正、すなわち一票の価値の平等実現と同時に、民意を的確に議席数に反映させる選挙制度改革が必要で、この二点を両立させるため、比例代表選挙を重視した選挙制度の改革を検討すべき。社民党は、政党が獲得した票、すなわち政党名または候補者個人名に応じて議席を配分する比例制を中心とし、地域代表の性格も加味した小選挙区比例代表併用制を主張していることを申し述べ、意見表明を終わります。

森会長 これにて各会派を代表する委員の発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による自由討議に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、名札は戻していただくようにお願いいたします。

中谷(元)委員 まず、憲法の国会議員の任期、また解散に伴う総選挙の期日の規定に関しては、大規模な災害が起きた場合などを想定した特例を設けるべきであると考えます。

 六年前の三月十一日、東日本大震災の翌月には統一地方選挙が予定されておりまして、震災特例法で延期、さらに再延期され、最後の選挙が行われたのは、実に震災から八カ月以上もたった十一月二十日でした。同じ時期に国政選挙が予定されていたらどうなっていたでしょうか。

 これまで明らかになっている政府の見解によりますと、国会議員の任期や解散に伴う総選挙の期日は憲法に定められているため、立法措置で延期することはできません。もし解散後に震災が起きていたら、衆議院議員不在のままで何カ月も参議院の緊急集会で対応するのでしょうか。阪神・淡路大震災、東日本大震災の後は復旧復興のために数多くの立法がなされましたが、この重要な時期に参議院の緊急集会で臨時の措置としての立法を続けるしかないのでしょうか。また、参議院の通常選挙を考えれば、選挙が実施できずに参議院議員が半分しかいない状態で何カ月も国会が運営されるということでよいのでしょうか。

 選挙を予定どおり実施して、被災地では繰り延べ投票の仕組みも使ってみたとしても、繰り延べ投票となった選挙区を含む選挙区では当選人が確定をいたしません。比例代表を例にとれば、衆議院では比例ブロック全体で、参議院に至っては全国区で当選人が確定しないということとなってしまいます。一人の当選人、比例代表が確定しないということがわかっていながら選挙を強行して、被災地以外で比例も含めた投票だけ行い、その結果、比例部分の当選人が確定するというのは何カ月後になるわけでありまして、強い違和感を与えるわけでございます。

 このように、国民主権と民主主義を緊急事態において貫徹をするというためにはどうすればよいかということにつきましては、与野党それぞれの憲法観を超えて一致できる点ではないでしょうか。全ての会派に所属する皆さんの真摯な検討をお願い申し上げます。

 また、合区につきまして、私の地元の高知県では、さきの参議院選挙で徳島県と合区になりまして、高知県単独の地方区の参議院議員は出せなくなり、高知県には強い不満があります。さきの参議院での高知県の投票率が四五・五二%と全国最低であったこと、そして、わざわざ投票に行った中でも合区反対と書いた無効票も多々あったということで、まさにそのあらわれであろうし、全国知事会、全国都道府県議長会においても合区の解消が決議されていると承知をいたしております。

 一方で、合区が導入されて行われたさきの参議院選挙の一票の格差に関する高裁の判決は、合憲が六、違憲状態が十の結果となっております。

 このような状態を踏まえれば、地理的条件などの考慮を憲法上の要請として明記することを含めた抜本的な解決が求められておりまして、高知県選出議員としても合区解消の問題は重大な問題と認識しておりますので、最高裁の判断を注視してまいりますけれども、ぜひ憲法上の点におきましても御議論、御検討いただきたいと思います。

 また、衆議院におきましても、人口の減少社会を考えますと、憲法四十七条を改正して、行政区画、地勢等を総合的に勘案して、地方の意見も国政に反映される工夫も必要であります。

 以前は、都道府県にそれぞれ基礎票を入れて地方区の調整をしておりました。地方の判断もありましたが、憲法四十七条には、選挙区、投票の方法その他両院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定めるとあります。地方の状況はますます疲弊をしておりまして、まさに山間部の声は、政治の力、民権の声を求めております。それも民意であり、民権であります。国会は、国会として国民の声を踏まえまして、立法府としてどうして対応するのか。まさに、議員の定数配置の問題におきましても、憲法改正の中で御議論をいただきたいと思います。

 以上です。

武正委員 このたびの参政権の保障をめぐる諸問題ということは、昨年、臨時国会で一年五カ月ぶりに再開をいたしました折、おととし六月四日、憲法保障をめぐる諸問題の後にこうした参政権の保障をめぐる諸問題、これをやろうじゃないかというようなやりとりがあったところを受けて、今回、こうしたテーマが設定されたものと理解をしております。

 そういった意味では、一年五カ月のブランクを経て再開をした、そうしたことはやはり、さきおととしの憲法解釈変更、集団的自衛権行使容認の閣議決定、そしておととし強行採決された安保法といったことを受けての一年五カ月ぶりの再開ということを改めて肝に銘じ、丁寧な与野党の議論、これを進めていくことを通常国会最初のこの憲法審査会でまず申し上げたいというふうに思います。

 一票の価値につきましては、国民主権の観点から、投票価値の平等、これが基本でございます。

 そうした中、合区につきましては、民進党も、参議院での議論を中心に今進めておりまして、あわせて政治改革本部が連携をしながら具体的な案を議論し、早急に最善の案に集約することを目指すと一月末に常任幹事会で確認をしております。現行憲法下では、格差二倍以内を実現する制度改正を、特に三年後の参議院選挙に向け必ず行うことであるといたしたところでございます。

 投票率の低下につきましては、さきの衆議院選挙が過去最低の投票率、そして二年前の地方選挙も同様ということで、投票率の低下が続いております。

 昨年、参議院選挙の投票率が前回に比べアップをした、上昇したというのは、やはり、特に昨年は十八歳選挙権が初めて実現をする中で、こうした若年投票者の拡大、そして期日前投票所の設置など、そしてまた十八歳選挙権に伴う副読本の交付などがそうしたことを押し上げたというふうに思います。

 これを衆議院選挙、そして統一地方選挙にも続けていくためには、例えば、地方選挙については統一率を高める努力、期日前投票所の拡大、そして、今、投票所が減少しております国政、地方選挙、また投票開始時間の繰り下げあるいは投票終了時間の繰り上げなどがどんどんふえておりますので、こうした点については、やはり投票機会の拡大といったことで努めるべきというふうに思います。

 解散権について、改めて申し上げます。

 過去何度もこの場で私が申し上げたのは、特に前回衆議院選挙のことでございます。解散から公示までわずか十日間、これは期日前投票制度がスタートして最短となります。そのために、投票整理券の到着日時、これが週をまたいで、すなわち土日をまたいで月曜日以降になった団体が四十五団体、特に、大都市である横浜市、大阪市、さいたま市などは、公示から七日目、八日目といったことでありました。

 私も、衆議院選挙の際に、多くの有権者の方からまだ投票整理券が届かないといったことを言われたことがありまして、やはりこれは有権者の参政権、投票権を縛るものになってしまったのではないかと考えるところであります。

 緊急事態における衆議院の任期については十分な検討が必要だというふうに思います。ただ、有識者からは、憲法の規定に伴うこの四十日については、最高裁は、それを超えたとしても違憲判決を下すことはないであろうという意見もあります。こうした点も、次回の参考人質疑などでさらに深掘りをしていく必要があるのではないかと思っております。

 最後に、保利茂元衆議院議長が議長見解として発表しておきたかったということで、七条解散の濫用は許されるべきでないといったことが表明されております。こうした点をしっかりと踏まえて、この議論を深掘りしていくべきであろうというふうに考えます。

 また、今、両院議長のもとで皇室の継承についての議論が行われておりますが、本審査会でもこうした憲法第一章について議論を取り上げるべきということは、再三幹事懇談会でも提起をしておりますので、改めてこの場で表明をしておきたいと思います。

 以上です。

森会長 申しわけありません。先ほど言い忘れたかもしれませんが、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

船田委員 自由民主党の船田元でございます。

 平成二十六年、今から二年半ほど前になりますが、当時、この憲法審査会におきまして、各条項ごとのレビューがずっと行われ、そしてその取りまとめという議論がございました。各党の自由討議という形で行われましたけれども、各党から、その当時、改正の方向性や改正に対する考え方の基本が述べられておりましたが、その中で、非常に多くの政党が触れた改正の方向の項目、これがかなり示されていたことが記憶に新しいところであります。

 大きくは三つございまして、改正の必要性という点では、一つは、環境権など新しい人権の設定、それから、財政規律を書き込むこと、三つ目には、緊急事態条項を何らかの形で入れるべきではないか、この三つと記憶をいたしております。特に今回は、緊急事態における議会の機能をきちんと働かせる、これが一つのテーマとなっておりますが、今後の憲法改正における有力な候補として、今後さらに議論を深めるべきではないかという考え方を持っております。

 多くの方々から指摘がありましたように、二〇一一年、今から六年前の三月十一日、東日本大震災が発生をし、震災直後、第十七回統一地方選挙の前半戦が四月の十日に予定をされておりました。ほとんどの県ではそれが実施をされたわけでありますが、被災地三県におきましては、この統一地方選挙が実質上できないということで、特例法によりまして、それぞれ五カ月から七カ月、選挙を延期したという例がございました。

 岩手県におきましては九月の十一日に岩手県知事選挙とそれから県議会議員選挙、宮城県におきましては十一月十三日に県議会議員選挙、福島県におきましては十一月二十日に県議会議員選挙ということで、それぞれ任期の延長も伴って措置がとられたわけであります。

 もし国政選挙がこのような状況に追い込まれたときに、同様に、被災地において投票ができないということが十分想定をされます。特に国政選挙の場合には、当選者あるいは議員が最終的に確定をしないと国会として機能できない、こういうこともございますので、やはり国政選挙全体を延期しなければいけないという可能性が出てまいります。

 言うまでもなく、憲法四十五条、四十六条には、衆議院の任期は四年、参議院の任期は六年と憲法上定められております。そういうことでございますので、緊急事態の際には、この衆議院、参議院の任期延長の特例、あるいは解散をしてしまった衆議院議員の任期を延長する、立場を回復するという措置が必要かもしれません。

 あるいは、先ほど来議論があります六十九条解散、七条解散、いずれにしましても解散ができない、こういうことを緊急事態においては決めておく必要もある、このようなことを憲法につけ加えるべきだと考えております。

 確かに、憲法五十四条の第二項、参議院の緊急集会ということで、ある程度衆議院議員がいないという状況を補完することはできるわけであります。しかし、衆議院が解散をされ、そして参議院の任期が半分切れた場合、こういうことを想定ができますけれども、その場合には、衆参両院議員定数七百十七分の百二十一の議員、すなわち全議員の一七%で全てを決めていかなければいけない、こういう事態が生じるわけでありますので、この点につきましてはやはり緊急集会以外の対応をしなければいけないと考えております。

 また、緊急政令という話もございますけれども、緊急事態のときにも今申し上げたような議会がきちんと機能するということをきちんと保障しておけば、緊急政令などで対応する必要は相対的に低くなるものと考えております。

 なお、緊急事態に関する要件でありますけれども、これまでの議論の中では大震災のような大規模災害ということにやや限定をされているわけでありますが、外国からの急迫不正の侵略やあるいは大規模な内乱、そういったあらゆる事態を想定して、緊急事態を宣言するということも考えておく必要があるかと思っております。

 以上でございます。

山尾委員 民進党の山尾志桜里です。

 まず、女性参政権とクオータ制についてお話しします。

 女性が初めて国政選挙の被選挙権を得た一九四六年衆議院選挙、三十九名の女性衆議院議員が誕生し、その比率は八・四%でした。七十二年が経過した現在、この衆議院において女性議員の比率は九・五%、ほぼ横ばいです。世界を見れば、過去二十年間で平均一一・三%から二二・一%に増加、比率が一〇%に満たない議会は百九から三十八に減少しており、日本はその三十八カ国のうちの一つです。

 こういった事実を背景に、私たち民進党は、昨年、他の野党の方々とクオータ制を議員立法として提出し、その後、自公の皆さんもクオータ制への第一歩を踏み出すこととなったと聞いております。候補者を擁立する際には、各政党に対し男女の数の均等を求める努力義務が課されることとする議員立法です。

 公的には男女平等が保障されているはずの民主主義制度のもとで、なぜ今なお女性議員がこれほどまでに少ないのか。その原因を女性の能力や資質が足りないと考えるなら、クオータ制には消極になるかもしれません。しかし、その原因を女性が立候補する実質的な機会が足りないのだと考える立場に立つならば、憲法上の権利たる参政権を女性に実質的に保障する制度としてのこのクオータ制を積極的に支持していただきたいのです。

 具体的には、数の均等を同数、同じ数と解釈する私たち民進党の立場を尊重していただきたい。目指すゴールは明確であるべきで、クオータ制に消極的な立場の方々の恣意的な解釈の余地をできる限り狭くすることが今回の立法において大変に重要だと考えております。

 次に、一票の格差と地域代表制的性格について。

 一票の価値という基本原則の例外として、地域代表たる性格など人口比以外の要素を取り入れることについては、検討する価値があることだと私も思います。しかし、その検討の際に忘れてはならない視点を申し上げたいと思います。

 選挙権の平等における最高裁判例は、十四条、十五条という人権規定とともに、四十三条、四十四条という統治規定にも言及しています。なぜなら、選挙権の平等は、一票の価値という人権保障の要請であると同時に、主権者国民の意思を正しく国政に反映するという民主主義の統治構造に根差す価値を有するからです。

 つまり、選挙権の平等が確保されず、価値の格差が広がるほどに、主権者国民の多数派の意思と国会内の多数派の意思が離れていく、議会内における多数決が実質的に少数者の代表によって行われてしまうというねじれを強くする。現在の政治状況において、集団的自衛権などをめぐる安保法制の評価や原発を含むエネルギー政策の行方など国家の根幹にかかわる主題について、必ずしも国民多数と国会多数が同じ方向を志向しているとは言えないのではないかとも思われる状況は、この一票の格差の問題と切っても切り離せない問題であります。

 一票の価値の平等という目に見えない価値が、実は治者と被治者の自同性という民主主義の本質を支える価値であることをいま一度踏まえながら、今後の議論に臨むべきだと考えます。

 最後に、天皇制と憲法について一言申し上げます。

 民進党は、この課題について、今こそこの憲法審査会で議論されるべきだと主張してきましたが、なおかなっていないので、きょう、一点だけ意見をさせていただきます。

 天皇の生前退位の制度化における要件論の中で、我々民進党は、御本人である天皇陛下の意思に反しないことを担保するべきだと主張していますが、今なお、これを要件化することは、天皇は国政権能を有しないとする憲法四条に反するという指摘があります。

 しかし、まず一点目、そもそも国政権能を有しない行為の主体の変更がなぜ国政権能に触れるのでしょうか。

 二点目。また、天皇は、参政権も有さず、居住、移転の自由も、表現の自由も、結婚の自由も、さまざまな人権を制約された中で、国民国家のために務めを果たしてくださる存在です。その天皇の退位について、せめて判断の一要素として、その意思あるいはそのお気持ちに基づくこと、あるいはせめて反しないこと、これを担保することすら認めないのはなぜなのでしょうか。

 そして最後に、この場には保守を自任する先生方もたくさんいらっしゃいます。特定の時代を生きる特定の人々の時々の思考よりも、時代を超えて生命を得ている慣習や制度に英知を見出すことを保守の一つの立場とするならば、まさに天皇制は、日本国が時代を超えて生命を吹き込んできた制度であり、国家の根幹であります。この根幹をこれからも守りつないでいくためにも、意思ある存在という一面をやわらかく受けとめて、天皇の尊厳を守りつないでいく立場に立って、なおこの課題をともに真剣に考えていただきたいと心からお願いをして、私の発言とさせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 私は、緊急事態における国会議員の任期の特例に関して、選挙の一体性といいましょうか、また、現行制度では認められている繰り延べ投票ということに関して、私の個人的な考え方ですけれども、申し述べさせていただきます。

 緊急事態における選挙につきまして繰り延べ投票が認められるというのは、現行制度では当然だと思います。また、そのような国会の答弁もございます。現に、東日本大震災のときには、千葉県議会議員選挙で、千葉県議会という一つの議会に対してある特定の選挙区が対応できなくて、遅く投票したということもございました。これを国政選挙に当てはめたときにどうなんだろうか、このように思います。

 まず、国政選挙の議論をする前に、選挙というものについて、一つの議会の選挙が全選挙区同時に行われるべきだ、これが理想でございまして、繰り延べ選挙ということ自体、例えば、繰り延べられた選挙区については、ある意味では、議会の大勢が判明した後、その選挙民は投票するわけで、そういう意味では、選挙の公平性というところから少し疑念が残るのではないかということを感じます。

 そして、国政選挙ということになりますと、今、衆議院、参議院ともに比例代表制と選挙区選挙の二票制でございます。私は、この二票制は一体のものだ、このように思います。別々に分けて考えられる選挙ではない。衆議院の比例代表、今、並立制ですが、この選挙理念にもそのような趣旨のことが書かれております。そういうことを考えますと、国政選挙における繰り延べ投票というのは選挙の本来の趣旨に合っているのかどうか、個人的にはそのように思います。

 つまり、比例区だけ後で選挙結果が確定するということ、また、選挙区選挙におきましても、一部の選挙区だけ後で選挙をするということが、例えば、非常に選挙結果が厳しい、選挙結果が微妙な状況になったときに、残されたこの選挙区で、ある意味では、選挙全体の結果がひっくり返るかもしれないというような事態も理論的にはあり得るかもしれない。そのときに、そういう注目された選挙になるわけですが、選挙運動は当然、同時に行われた場合と違う選挙運動になるでしょうから、そういうことが選挙の公平性というような点から許されるのかどうかということを考えますと、やはり私は、選挙というのは、同一議会の選挙は一体的に行わなければならない、このように思います。

 そういうことを考えると、緊急時にはかなり長期間議会が不在になるのではないかということも含めて我々は議論をしなくてはいけないのではないかなというふうに個人的に考えます。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 国会議員の任期延長を憲法に明記すべきとの意見が出ておりますが、それは国民の選挙権を停止することにほかなりません。

 選挙権とは、国民主権の大原則を支え、実現するための極めて重要な権利であります。憲法前文の冒頭にも、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」「主権が国民に存すること」「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」と明記しております。そして、その権利行使の手段が選挙であります。したがって、選挙は、国民の民意が正確に議席に反映されるものでなければなりません。

 国会議員の任期は憲法に規定されております。衆議院議員の任期は四年、参議院議員の任期は六年とし、三年ごとに参議院選挙が、その間に衆議院選挙が行われ、定期的に民意を国政に反映させていくことが定められているのです。

 このように国会議員の任期を法律ではなく憲法上にはっきりと明記しているのは、戦前の反省からであります。

 明治憲法下の一九四一年、衆議院議員の任期が立法により一年間延期されたことがありました。そもそも明治憲法には衆議院議員の任期の定めはなく、同任期は衆議院議員選挙法により四年と定められていたので、その特例法として、第七十六回帝国議会で衆議院の任期延長に関する法律案が可決され、一年延期されたのです。

 その理由は次のようなものでした。

 今日のような緊迫した内外情勢下に、短期間でも国民を選挙に没頭させることは、国政について不必要にとかく議論を誘発し、不必要な摩擦、競争を生じせしめて、内治外交上甚だおもしろくない結果を招くおそれがあるのみならず、挙国一致、防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について疑いを起こさしめぬとも限らぬので、議会の議員の任期を延長して、今後ほぼ一年間は選挙を行わないこととした。

 こうして、多くの犠牲を生み出した戦争へと突き進むための挙国一致体制がつくり出されたのであります。

 この歴史の反省から、金森徳次郎憲法担当大臣は、憲法制定議会において、任期延長は甚だ不適当と明確に述べ、国会が国民の代表として存在することの重要性を強調しています。だからこそ、国民主権を確立した戦後の日本においては、いっときの権力者の思惑で簡単に任期を動かせぬよう、法律ではなく憲法に規定をしたのであります。

 いわゆる緊急事態を理由に選挙権を停止するといいますが、そうした事態とは何かということが重大です。そこには戦争や経済危機、内政の混乱が含まれているのであり、その事態を引き起こした政府を排除し、国民が新たな代表者を選ぶ権利を行使すべきであります。これこそが国民主権と民主主義ではありませんか。その権利を停止するなどというのはもってのほかであると言わなければなりません。

 なお、大規模災害に対しては、参議院の緊急集会の規定で十分に対応できると考えます。

 以上のように、日本国憲法は、戦前の教訓から、権力者による濫用を排除し、民主主義を徹底するために、あえて緊急事態条項を設けなかったのであります。今出ている緊急事態のために憲法改正が必要だとする議論は、結局は、九条を改正し、国防軍を持ち、戦争する体制をつくることが目的であるということを指摘して、私の発言を終わります。

根本(匠)委員 自民党の根本匠です。

 まず、一票の格差と参議院の合区について申し上げます。

 一票の格差をめぐっては、重要な判例が幾つかあります。

 昭和五十一年には、憲法十四条一項が投票価値の平等を要求しているものの、それが選挙制度の唯一絶対の基準ではないと示されました。昭和五十八年には、参議院選挙に都道府県代表的な要素を加味しても、全国民の代表であるという性格と矛盾抵触しないと判断されました。

 しかし、平成二十四年には、昭和五十八年の考え方を否定しないものの、都道府県を選挙区の単位にすべき憲法上の要請はないと指摘し、人口の都市部への集中による都道府県間の人口格差の拡大が続き、総定数をふやす方法をとることにも制約がある中で、最大五倍の格差を解消するため、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する方式を改めるなど、選挙制度の見直しを求めました。

 昨年の参議院選挙では、鳥取と島根、徳島と高知に合区が導入されました。しかし、鳥取と高知の投票率は過去最低であり、合区は地方在住者の国政への関心を低下させるおそれがあります。都道府県は、歴史的、政治的、経済的、社会的に独自の意義と実体を有する一つのまとまりであり、明治以来定着した制度です。その枠組みを無視し、合区にすることが適切なのか、議論すべきです。

 また、日本は、大都市圏のように人口が集積する都市と過疎な地方が共存する地理的特性を持ちます。人口減少が進む中で、今後も合区で一票の格差是正を図るとすれば、人口に大きな差がある都道府県が合区になる、離れた都道府県が合区になる、地方の声が反映されなくなるといった弊害も起こり得ます。

 合区は二院制の意義にもかかわる問題です。これらもあわせ議論し、参議院に都道府県代表という位置づけを導入することを検討すべきだと考えます。

 次に、緊急事態における国会議員の任期の特例について申し上げます。

 東日本大震災の直後に統一選挙が予定されていましたが、被災地では選挙の実施は不可能でした。そこで、特例法を制定し、首長や地方議会議員の任期延長、選挙の延期を行いました。これにより、首長や地方議会の体制が当面維持され、迅速に災害に対応できたという教訓があります。

 国政選挙の場合、解散による選挙、任期満了に伴う選挙は、いずれも公職選挙法で定められた繰り延べ投票の制度によって投票日を延期することが可能です。しかしながら、憲法で定められた国会議員の任期は延長することができず、投票を延期しても、衆議院議員が不在になる期間が長期化するという問題が生じます。

 衆議院議員が不在時の対応として憲法は参議院の緊急集会を定めていますが、解散による不在だけでなく任期満了による不在でも招集できるのか、緊急事態に衆議院が役割を果たせないことをどう考えるのか、憲法は緊急集会で長期間国政を運営することを想定しているのかなどの論点があります。これは緊急集会の位置づけにもかかわります。

 近い将来、日本には、南海トラフ地震や首都直下型地震といった災害が起こり得るとの予測もされています。それらに備えるため、投票の延期によって議員が長期間不在となる問題に現行憲法下でどのように対応できるのかに真剣に向き合い、憲法に任期延長に係る規定を追加することを検討すべきだと考えます。

 緊急事態条項というと、緊急時に政府に大きな権限を付与する方向での議論もありますが、この問題は、緊急時において国会を正常に機能させるための議論であり、党派を超えて合意を得られるものと考えます。

 以上で私の発言を終わります。

細野委員 私からも、緊急事態における国政選挙の延長について発言をさせていただきます。

 私は、あの東日本大震災のときに総理の補佐官をやっておりましたので、あの緊急事態においてどのようなことが起こったのかということについて相当知り得る立場にあります。その立場で申し上げるならば、そのときに仮に国政選挙ということがあったならば、それは繰り延べ投票という形ではとても対応し切れなかったであろうし、また、緊急集会のみで対応するということも非現実的であったであろうというふうに思います。

 したがって、何名かの方から問題提起がありましたけれども、いかなる事態においても民主的な政治制度を維持していくという意味では、国政選挙の延長についてはしっかりと議論をした上で結論を出すべきであるというのが私の意見であります。

 そういう経験もありますので、やや踏み込んで、具体的に少し提案をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、どのような事態に選挙について延長を可能にするのかということでありますが、これは私見でありますけれども、私は、それを緊急事態条項という特定の名称にして絞り込む必要は必ずしもないのではないかというふうに思います。緊急事態条項というふうに定義をした場合には、恐らくの場合、それを定義するのは政府ということになろうかと思います。また同時に、恐らく、私権制限や政府の権限拡大についての議論とも結びつくというふうにも思われます。

 きょうは、ここは本題ではありませんので長くは述べませんけれども、例えば憲法二十二条、これは職業選択の自由について書いた条文でありますが、ここには明確に、公共の福祉による制約というのを明記しております。したがって、例えば医療関係者や自衛隊関係者に対して、ここで、緊急事態において対応せよという業務命令は現行憲法下の法律で出すことができます。同時に、憲法二十九条、財産権についても、二十九条の中に公共の福祉についての記述がございます。したがって、緊急時におけるさまざまな土地の収用などの手続は現行憲法上許されておりまして、法律により対応可能であります。

 したがって、あえて緊急事態条項というのを新たに設けて政府に巨大な権限を付与する必要性は、少なくとも私の経験上ありません。仮にそういったことがあるのであれば、具体的に提示をしていただいて、どういった支障があるのかということについて説明をする責任は、提案をされる側にあるだろうというふうに思います。

 したがって、私が提案をしたいと思いますのは、選挙の延長についてはもう少し緩やかに書くのはいかがか。例えば、自然災害の発生その他の事情により選挙を適正に行うことが著しく困難である、こういう規定にしておいた上で、その判断を立法権そのものが判断をし、例えば百八十日を上限に選挙を延長できるというような形にしておけば、いかなる事態においても立法機関が機能し、必要な政策を決定することができる。さらには、政府がそれこそ国民が望まないことをやる場合については、議会がそれにしっかりとストップをかけるということも可能になるのではないかというふうに思います。

 二点目に申し上げたいことは、今の関連にもございますが、やはりこの選挙の延長は立法権自身が、立法機関そのものが決めるという原則は、これは守るべきだというふうに思います。

 といいますのは、仮にこれが政府による決定ということになりますと、逆に、例えば武力攻撃事態、いわゆる戦争ですね、そういったことがあった場合に、国民は判断をする権利があるわけですから、その権利を政府が奪うことにもなりかねませんので、その意味では、政府がそれを決めるということについて、明確にしておくべきだろうというふうに思います。

 したがって、その観点からするならば、枝野委員の方からも発言がありましたけれども、仮に選挙の延長を決めた場合に、そのときに政府が解散をするということになると、この考え方に根本的に矛盾しますので、解散権の制約についても必然的に議論をしていかなければならないということをぜひ皆さんに御理解いただきたいと思います。

 最後に、定足数について申し上げます。

 さまざまな緊急事態、例えば首都直下地震、もしくは、私が個人的に懸念をしておりますのは、我々が生活している宿舎が大規模なテロに遭って大量に議員が死ぬ場合、そういったケースにおいて、例えば緊急事態で選挙の先延ばしが必要であるというようなことも考えられます。ただ、その場合に、仮に定足数の三分の一を満たさなかった場合、選挙の延長すら決められない、国会が一切の議決ができないということになる可能性があります。もちろん、極めてレアなケースでありますけれども、具体的に考えると、そのケースというのは全く考えられないわけではありません。

 そこで、定足数についても、議員の数が極めて限られていますので、どうやって決めるのかが非常に難しいんですが、しっかりと法律において法手続を定めた上で、議長もしくは議長にかわる人間が、集まれる人間は全員集めることが大前提ではありますけれども、定足数についても極めて例外的に緩和をして、常に議会が動いておく状況にしておくことも重要であるということを最後に指摘したいというふうに思います。

 もう一度私の思いを最後に申し上げて終わりたいと思うんですが、国会というのは国権の最高機関です。いかなる事態においても機能させることは極めて重要です。それをしっかりと議論して結論を出すのは私は国会の役割だというふうに思いますので、各党各会派でしっかり議論した上で、この憲法審査会での議論が進み、結論を得ることを心より私は望んでいるということを最後に申し上げて、発言を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。

 きょうは、憲法審査会が憲法並びに憲法改正の具体的な議論に一歩進んで入っていったことを心から歓迎したいと思います。

 与野党のそれぞれの先生の御意見を伺っていて、なるほどと同感、共感を覚えるもの、あるいは見解を異にするものもありますけれども、こういうお互いの率直な議論の展開は非常に重要だ。

 憲法が最高法規で、先ほど上川陽子議員が言われたように、とにかく、立法、行政、司法、国の国家行為は全て憲法に規制されるわけで、好むと好まざるとにかかわらず、憲法は、国の形、社会の姿を形づくっていく。そういった意味では、この憲法の七十年の歩みをよく見きわめながら、将来に向かっての憲法改正論議がいかに重要であるかということを意味していると思います。

 その上で、きょう議題になっております参政権、特に緊急事態における参政権について意見を申し上げたいと思います。

 これは、先ほど来御意見が出ているように、いかなる事態においても国民主権、国会の機能が万全に確保されているということは、我々国会の重大な責任だ。

 世界に津波の日を定めることを求め、そして、南海トラフや首都直下地震が向こう三十年の間に七割起こる確率がある。この巨大スーパー大自然災害というのは、国難というか、首都直下の場合などは国政の機能も大きく損ないかねない、あるいは企業の世界に展開するいろいろな経営にも大きな影響を与えかねない、世界の経済にも大きな影響を与えかねない。そういう事態を具体的に想定して国会の機能の確保を考えることは、我々国会議員の最も重要な職責の一つだ、そう思います。

 それから、やはり大規模自然災害が日本に非常に固有の顕著な災害だ。ヨーロッパのこの百年を比べると、ヨーロッパに比べて百倍、大自然災害が起こっている、あるいはアメリカの十五倍も起こっているという日本の特殊性を考えるということも大事だと思います。

 それからもう一つは、事実関係として、大規模自然災害で国政選挙ができない、国会議員がいなくなる、こういう問題に対しては、被災地で国難ともいうべきときに代表を失っている状況を私たちは是としていいのかという問題のほかに、例えば、一カ所でも選挙ができないと、衆議院においてはブロックの比例代表の集計ができない、参議院のごときは全国の四十八人の集計確定ができない。

 このことは、地域の代表という側面があるかという参政権の本質にかかわる議論もありますが、政党を選んでいる、そしてそれで政党政治を行っているという状況の中で、比例で当選している少数会派の方々が、自然災害によって政党間のバランスを失うことについてどう考えられるか、このことも非常に重要な問題ではないかということを指摘しておきたいと思います。

 いずれにしても、私たちは国会議員として、この緊急事態における対応については早急に考え方をまとめて、世界に、我が国のかかる事態における国会の機能の確保をしっかりやっている姿を見せる必要がある、このように思います。

 以上です。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 まず、緊急事態についてでありますが、先生方御指摘のとおり、この緊急事態条項に関する議論、これが重要であることはそのとおりであると思っています。緊急事態条項について事前に定めておかなければ、内閣が超法規的な措置をとらざるを得なくなる、それが立憲主義に反する、こうした指摘があることは私も承知をしております。

 ただ、留意すべきことがあると考えておりまして、三点ほど指摘を申し上げたいと思います。

 一つは、先ほど我が党の小沢鋭仁委員から申し上げたように、緊急事態条項を事前規制と考えれば、私たちが憲法改正草案で提起をさせていただいている憲法裁判所、これはいわゆる事後審査となります。制度の枠組みは何事もそうでありますが、事前規制と事後審査、これはバランスをとらねばなりません。事前規制を強めれば事後審査は緩くて構いませんが、事後審査を強化すれば事前規制は緩くて構わない、こういうバランスがあると思います。

 そうした観点で、私が指摘をしておきたいのは、憲法裁判所に関する議論がどうなるかということをまず議論すべきではないかということです。日本の憲法に憲法裁判所の規定を置くのか置かないのか、それによって、緊急事態に関する規制の枠組み、憲法の枠組みの規定ぶりもおのずと変わってくるのではないかという点でございます。

 それから二点目は、きょう、東日本大震災あるいは南海トラフ等を挙げて、具体的な議論について御紹介があったことも承知をしていますが、では、果たして私たち立法府の人間がそうした緊急事態におけるぎりぎりの判断をこれまでしてきたことがあるかということであります。

 やはり抽象的な議論になりがちである、こう思っていまして、まずは、今、各委員会で森友学園みたいな問題が焦点が当たっていますが、そうした議論をする時間があれば、むしろ、まさにこうした国難に備えた、一体法律でどこまでカバーができるのかといった、真摯な、真剣な議論を通常の常設の委員会、常任委員会等でできるのではないか、あるいはしなければならないのではないか、こういう点でございます。

 三点目は、バックアップ機能でございまして、先ほど委員の方から立川の紹介がございましたが、私たち日本維新の会は、大阪を副首都とすべきである、これはまさに首都機能のバックアップという点で提案をしていることを付言させていただきたいと思います。

 緊急事態については以上三点でございますが、最後に、一票の格差についてであります。

 冒頭、自民党の上川委員の方から、一票の格差の問題を考えるに当たっては、国と地方の関係、憲法第八章についてとの関連もしっかりと目くばせをしていく必要がある、こういう御指摘をいただきまして、私は、本当に御見識である、こう思います。私たちも、まさに憲法改正草案の三本柱の一つとして、国と地方の関係、統治機構のあり方について抜本的な見直しを提案させていただいております。

 きょう、先生方の御意見を拝聴していて一つ気になりましたのは、現在の四十七都道府県を前提にしているように聞こえた部分でございます。

 これから少子高齢化時代をしっかりと日本が乗り越えていくためには、四十七都道府県の形、今の形を所与とせず、国と地方の関係、統治機構のあり方そのものまでさかのぼってこれからの国のあり方をまさに議論をしていく、これが憲法審査会の役割である、このように考えております。

 以上でございます。

太田(昭)委員 緊急事態について、国会議員の任期の問題ではなくて、内閣総理大臣への権限集中や国民の権利の制限という部分について、特に災害、大災害ということについて意見を述べたいというふうに思います。

 防災とかそういうことで実は一番悩み苦しんで判断をするというのは、避難準備あるいは避難勧告、避難指示というものをどういう判断でどのタイミングで首長は出すのかという全責任を首長さんが担っている、ここのところが、実は、災害対応ということの、特に水害等については一番大事なことであります。そのことを痛感してきました。

 台風等では、それを補うためにタイムラインというのを設定をやっとしまして、五日前にはどういう対応を各自治体そして各企業、学校等々が行うということを、五日前にどうする、三日前にどうする、二十四時間前にどうする、そして三時間前にどうする、そういうタイムラインというものを出すということは、実は、それぞれの人がそれを受けとめて情報を得ていくと同時に、首長さんが避難準備ということを発する、そして、避難準備を出すということの中で、一昨年の例、そして昨年の例を踏まえて、避難準備・高齢者等避難開始という言葉にことしからしたわけですが、高齢者を早く準備して逃がさなくてはいけない、そういうことの、実は、権限を集中するとか、権限の重さというようなこと、あるいは、法律に、特に憲法に書くか書かないかということではなくて、責任の重さと判断の困難さというものをどうサポートするかということが、具体的には一番大事なことだと私は思っています。

 水位が何メートルになってきたか、そして、住民にどういう情報を与えて、どのような行動をとっていったらいいのか、これは当然、首都直下の地震とか、地震というものは突然来ますから、なかなかわからないんですが、心の準備として、日ごろからの対応ということも含めて、そういうことが極めて大事で、まさに危機管理の法制というものは、現在、相当程度整備されてきていて、それを拡充したりするということをもってやっていくというのが今一番大事なことだということを、三年間国交大臣をやりましたので、私は常に思っていたところです。

 そして、災害が起きます。災害が起きたときに、災害というのは、緊急事態というのは、予想外で、想定外で当然起きてくるわけで、首長さんに経験はありません。知事にもほとんど経験はありません。そこで、プロがそこに入っていってということで、国交省でリエゾンというのをすぐ、直ちに派遣して、首長さんの横にいたり、あるいはTEC―FORCEということを派遣したり、そして自衛隊や消防、総務省関係、当然、警察、そうした形が始動する。

 そういうことをもっともっと具体的に、首長さんに責任を負わせるということを軽くしながら、そして的確に情報を発するという決断ができるようにというシステムをよりよく今はやるということが、私は大事なことだというふうに思っています。

 ぜひとも、この論議の中で、緊急事態の全般の、内閣総理大臣への権限集中や国民の権利の制限というところに一足飛びに飛んでしまうのではなくて、今、そしてことし、来年、そういうことで、何が大事かということを国会議員は常に問題提起していただくことを強く求めたいと思います。

 以上です。

奥野(総)委員 民進党の奥野総一郎でございます。発言をお許しいただき、ありがとうございます。

 まず、緊急事態条項に関連して述べたいと思います。

 大規模災害時等の議員の任期の延長特例については、私は前向きに検討すべきだというふうに思います。

 ただ、その前提として、緊急事態条項はいかなるものなのか、恣意的な運用を避けるためにも、いかなる場合か、そしてどういう権限が国会や政府に付与されるのか、あるいは誰が判断するのか等について、きちんとした議論が必要だと思います。

 きょう、上川委員初め、いろいろ言及されていますが、自民党憲法草案の中を見ましても、緊急事態としての定義としては、外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、それから、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態、こう規定されています。これは、相当広い、その他という例示が入って、相当広がっているわけですね。これはまさに、しかも判断権者は政府でありますから、相当恣意的に決めることができるたてつけになっています。

 例えば、ワイマール共和国時代の例では、緊急事態条項はあったんですが、財政難などあらゆる事態が緊急事態として認定されて、乱発されて、社会が混乱して、ナチス独裁につながったというふうに言われています。

 そういう意味で、緊急事態というのはどういう場合か、きちんとした議論をしておく必要があると思います。

 それから、どのような権限が発生するかということでありますけれども、自民党の憲法草案九十九条では、いわゆる緊急政令、それから財政上必要な支出その他の処分を内閣総理大臣は行えるということで、これも、立法権あるいは予算措置等、相当広範な権限が政府に与えられるようになっています。

 例えば立法権について言えば、災害時は災害対策基本法の災害緊急事態等の措置がもう既に定められています。改めてこうした広範な緊急政令を設ける必要が本当にあるんでしょうかということを申し述べておきたいと思います。

 その上で、そうしたことを定めている自民党憲法草案九十八条、九十九条、先ほどこういった緊急政令などにも言及がありました。これを前提にこの議論が進められるのかどうかということを、自民党の皆さん、どなたでも結構ですが、ちょっと確認しておきたいと思います。

 私の立場としては、こうしたことなく、基本的にはあくまで国会が、立法措置にしても予算措置にしても国会が行うべきだと思います。その場合はもちろん、緊急事態においても国会が機能するような仕組みを制度的に担保しておかなきゃいけないということであります。この点については、参議院の緊急集会ということが憲法に規定されていますが、規定が、例えば衆議院が解散されたときというふうに限定されていますから、例えば任期満了のときにワークするのかとか、この緊急集会については、解釈、運用についてきちんと検討しておく必要があると思います。

 それから、大規模災害時でありますけれども、日本国憲法は、解散後七十日以内に国会を召集することとしておりまして、長期の衆議院の不在は予定されていないというふうに考えられます。そういうことも踏まえて、例えば東日本大震災のように長期にわたって選挙ができない場合には、任期の特例的な延長というものについて検討する必要があるんじゃないかというふうに私は思うわけであります。

 ただ、その場合でも、解散期間中の場合には、任期特例といっても、国民が選挙で選ばずに議席を復活させることになるわけですから、解散権はおのずと制限されるということで、解散権の制限ともつながるということを言っておきたいと思います。

 緊急事態については以上であります。

 それから、最後に一点だけ、被選挙年齢の引き下げについて言っておきたいと思います。

 投票率は下がっていますが、若者の政治参加を促すために十八歳選挙が実施されましたけれども、被選挙権年齢についてもぜひ引き下げるべきだ。我々は、五歳ずつ成人年齢まで、衆議院については二十歳、一律五歳ずつ引き下げる議員立法を国会に提出させていただいていますので、これはぜひ皆さん御協力いただきたいと思います。

 以上でございます。

森会長 予定の時間もありますので、この自由討議における御発言は、現在名札を立てている方までとさせていただきたいと思いますが、ただ、若干バランスが悪いので、野党側につきましては、どうしてもという方はお一人、お二人認めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

古屋(圭)委員 簡潔に申し上げます。

 先ほど船田幹事の方からも指摘がありましたけれども、平成二十六年十一月、各政党が代表して意見陳述をしています。このときに、緊急事態の対処を憲法上規定する必要性に言及しております。これは共産党を除く全政党がやっています。これは実は、各委員によるフリートーキングではなくて、各政党を代表した公的な立場での発言でございますので、極めてこれは重く受け取るべきだというふうに思います。

 緊急事態にもいろいろございますが、きょう御指摘の中で、国会議員等の任期延長について繰り延べ投票で対処が可能だという言及がございましたけれども、これは一般法が憲法を超越してしまうということであるので、国政選挙に当てはまるということは私は憲法上不可能だというふうに考えます。

 また、細野委員からも御指摘があったように、国政選挙の延長について、どういう場合なのか。例えば自然災害やその他の事由により正当な選挙が実施できない場合、これもある意味で緊急事態の一つだというふうに思います。こういったときに立法府において判断をするんだというのは、私は一つの考え方として尊重したいというふうに考えております。

 また、もう一点、私も前回も指摘させていただいたんですが、現行の法律に規定する知事による緊急指令、例えば、医療従事者への従事命令であるとか物資の収用命令等々、知事による緊急指令は、現実として、これは三・一一のときに発令をされていません。しかし、やはりみんなボランタリーに、自主的に取り組みをしたということで、できたというのが現実でございます。

 なぜ発令されなかったかというのは、これは知事さん等々関係者にも聞きましたけれども、やはり、職業の自由とか居住権の自由、財産権の自由という憲法上の疑義があるということで発令をしなかったと。公共の福祉というものを今までは極めて極めて限定的に解釈をしていたという現実もあるわけでありまして、そういったところから、知事による発令がなかった。

 だからこそ、こういう既に現行法に規定をされている緊急事態に対する対応をしっかり憲法にも裏打ちをしていく、これによって、知事としてもしっかり憲法に規定されていることが発令をできるという考えがあります。先ほど太田委員からも指摘がありました。知事にはそういう大きな判断を強いられる時期、ことがございますので、憲法にもそういう裏打ちをしておくという必要はあると思います。

 そこで、もう一つ、選挙の場合にも、こういった緊急指令等々を憲法に書き込む場合にも非常に重要なことは、始期と終期をはっきり明言しておくということが、限定的な対応という意味でも極めて重要だというふうに思っております。

 以上です。

鬼木委員 自由民主党、鬼木誠でございます。

 緊急事態条項について、必要であるという立場から意見を述べさせていただきます。

 本日は、緊急事態条項不要という意見も拝聴いたしました。同じものを見ても、右から見るか左から見るかで見え方も違うし、結論も真逆になるということが世の中には多々あります。でも、それは一つの事象の捉え方でありまして、表と裏、光と影の関係で一体のものでありまして、私たち国会が目指すものは、国民の平和、安全を守るという意味では同じ価値観を共有するものだと信じますので、皆さん方の御懸念については大事な御指摘と受けとめながら、議論を深めていきたいと思います。

 まず、緊急事態とは何かということで、本日、芦部先生の定義も発表されました。平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態ということで、それは、自然災害、またテロに限らないと思います。

 非常事態という、その権限が最も要請される場面というのは、外国から武力攻撃を受けたときではないでしょうか。そうした究極的な非常事態、そんなことはないだろう、あり得ない、あったら困る、とんでもなく困るということで目をつぶっているわけにはいかないと思います。そうした事態がいつ起こるかというのはわからないわけでございまして、国として国民の平和と安全を守るためには、それに備えていく必要があると考えます。

 御懸念の政権独裁や人権抑制といった点もございまして、それに対して、国民主権、立憲主義に反しないかという問いがございます。そうした問いに対しまして、私は、緊急事態で権力の濫用が起きないように、権力統制の仕組みを事前に設計するのが現代の緊急事態条項だと考えます。国民主権、また立憲主義上、それをやっておかなくてはならないというふうに考えます。

 したがって、本質的には、こうした究極の事態に備えまして、任期延長だけではなく、緊急事態において国会にどのような役割を与えるのかということを定めておく必要がございます。

 本日は、細野委員からも定足数についての御提案がありました。本当にそのとおりだと思います。何が起こるかわからないときに最高法規である憲法に備えがないということ、これはあってはならないことでございまして、あらゆる場合を想定した議論が深められていくべきだと思います。

 緊急事態とは何か、また、恣意的な運用を防ぐには、緊急時の権限の範囲等、どれだけ限定するのか拡大するのかというところも、議論の余地があると思います。

 設計を詳細に詰めれば詰めるほど、想定を豊かに想像すればするほど議論は難しくなりますが、しかしながら、憲法上の不備として、緊急事態に備えた真剣な議論をしていく必要があると思います。今後とも、この議論はしっかりと深めていきたいというのが私の考えでございます。

 以上です。

中川(正)委員 民進党の中川正春です。

 まず、先ほどから緊急事態のことについて議論がそれぞれの立場で出ておりますが、私は一つ区別しなきゃいけないと思うのは、緊急事態というのは確かに起こる、これはもう確かなことでありますが、そのときに、総理大臣に権力を集中していくような形での条項が必要じゃないかという議論と、それから国会議員の任期や選挙をどういう形で行っていくかという議論、これは本質的に違うんだというふうに思うんです。

 まず、総理大臣に権力を集中していくということについては、これは憲法でそれを規定するのか、あるいは、今既にもう個別法でそれができる、あるいはそれをもう実行しているというか、そういう段階にあるというのは、先ほど公明党の北側先生であるとか、あるいは細野さんの議論等々で出てきておりますし、既に私自身も、そうしたことを担当する防災大臣として、防災の基本法を議論する中で改めて確認をしているところであります。

 それだけに、個別法で、さまざまな事象に対しての対応、これは戦争ということ、いわゆる武力を行使していくということから、災害、あるいはパンデミックフルーみたいな、海外から押し寄せてくる病魔といいますか、そういうものに対しての対応、さまざまあると思うんですが、これはいずれにしても、憲法でやるのか、個別法でするのかという二者択一の話ではないんだろうというふうに思うんです。

 既に個別法で展開されているというのは、憲法の今の解釈の中でそれができるという前提で、憲法の裏打ちがあってそれぞれ個別法があるということでありまして、いずれにしたって、憲法だけでやれるわけではなくて、個別法でそれぞれを想定して、その想定のもとに、どれほどの権限をそのときに総理大臣に権力集中していくかという議論、これが体系的にもう既に行われているということであります。

 それだけに、もし憲法の規定が要るということであるとすれば、そのほかに想定がされて、今ある状況以外に想定がされて、それがやはり憲法で規定をしないことには権力集中ができないんだという個別の問題が出てきたときに初めて、では憲法が必要じゃないか、そういう議論に至るということでありまして、今の状況の中で、憲法の裏打ちが必要だから、だから憲法で規定しなさいという話は当たらないというふうに思います。

 そんな議論の進め方というのが、もし憲法でということであるとすれば、ここで必要なんだろうということ、これを指摘しておきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、投票率なんですが、これは非常に深刻だと思うんです。政治教育を学校教育の中で入れていくということを工夫しましたが、それだけでは今の傾向というのは克服できていかないんじゃないかということを私自身は危機感を持っておりまして、ここについてはもっと深掘りして、何ができるか。

 この例示で出ていますけれども、オーストラリアやベルギーやあるいはルクセンブルクでは、義務的投票まで仕組みをつくっていって、九十何%という投票率が出ています。そんなオプションも含めて、さらにここについては議論を深めて、私たちの責任として、いかに投票率、いわゆる国民の参加というのを上げていくかという議論は必要だと思います。もっと必要だと思います。ここに特定してやっていくということも、やはりしなきゃならないんじゃないかというふうなことだと思います。

 そこを指摘させていただいて、私の議論にさせていただきます。

安藤委員 自民党の安藤裕でございます。

 私からは、まず、緊急事態について申し上げたいと思います。

 いろいろな意見がきょうも出ておりますけれども、いろいろな事態に対して、法律で対応できる部分も確かにあるんだろうと思いますし、既に対応されている部分も相当あるんだろうと思います。したがって、憲法で規定をしなくてはならない事項とそれから法律で対応できる事項とをしっかりと区分した上で、総理にもし権限を集中させる必要があるのであれば、これもしっかりと議論をしていく、その対象にする必要があるだろうと思います。

 その上で、どうしても必要と思いますのは、やはり国会議員の任期延長、また解散の制限ということであろうと思います。

 参議院の緊急集会というものも用意をされているとはいいながら、きょうも議論に出ておりましたけれども、参議院の半数の議員のみで国会の議決ということにしていいのかということについてはやはり大きな疑問がございますし、衆議院、参議院両院がしっかりとした人数できちんと議論をして物事を決めていくという民主主義の根本をやはり損なってはならないと思いますので、国会議員の任期の延長というものは必ず検討していかなくてはならないと思いますし、これは憲法改正に盛り込むべき事項であるというふうに考えます。

 それから、次に、一票の格差について申し上げたいと思います。

 参議院において合区が起きたように、今、一票の平等価値というものを一番の価値観に考えると、やはり議員は都会に、大都市に集中をしてしまうという現象が起きております。

 今、日本で一番考えなくてはならないのは東京一極集中の是正であり、それから、国会議員の立場は国を代表するということですから、やはり国土の均衡ある発展を図るためにはどのような議員の選び方をするべきかということも、これも憲法の中に書き込んでいいのではないかと思います。

 人口割りではなくて、国土のそれぞれの地域代表をいかに選んでいくかということを何らかの形で書き込んでいくことが、やはり国土の均衡ある発展につながっていくと思いますし、これも是正をしていくべき内容であるというふうに思います。

 それからもう一つは、衆議院と参議院の役割や権限について本質的な議論をするべきという意見もございました。これはまさにそのとおりであろうと思います。

 私は、民主主義というものは本当に大事な制度であり、しっかりと私たちは守っていかなくてはいけないことであると思いますけれども、しかし、二院制を置いているということは、民意というものが常に正しい選択をするわけではなくて、これを慎重に考えなくてはならない、そういった要請から二院制が置かれているんだろうと思います。

 この日本においてもほんの数年前には政権交代が起きましたけれども、恐らく今の日本人は、あの政権交代を選択したのは間違いであったと思っている人は本当に多いんだろうと思います。

 やはり一時期の報道や、またあるいはいろいろな世論の空気によって、必ず正しい選択が行われるわけではないという前提のもとに、私たちは衆議院と参議院の役割というものを考えていかなくてはいけないと思いますし、そういう意味では、選挙というものを気にしなくて、心配をしなくていい、そして、本当に日本の大局的な観点から将来を考えて発言ができるような立場の院というものも、一つは考えておくべきではないかと思います。

 かつて日本では、衆議院とそれから貴族院というものが置かれていたように、やはり一時的な感情に流されることのないような、大局的な観点での国論をしっかりと反映できるような、そういった両院のあり方というものを検討していくべきではないかというふうに思います。

 以上です。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 私は、緊急事態における国会議員の任期の延長等の規定を設けることについては賛成という立場で意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、この話は、平時において国家権力が恣意的に任期を延長しようという話ではなくて、あくまで緊急事態においてどうするかということをあらかじめ平時から議論しておこうという話でございます。

 以下、必要性と許容性について申し上げたいと思います。

 まず、必要性ですが、憲法五十四条の第一項では、衆議院解散の日から四十日以内に選挙を行わないといけない、こう規定されております。そうすると、解散してしまった直後に大震災その他の緊急事態が生じたとき、それでも四十日以内に選挙をしないといけないのかという問題が生じます。

 実際問題、私の地元であります、阪神大震災の被災地である兵庫県では、四月の地方統一選、これは地方議会でございますけれども、この選挙については、六月十一日まで任期そしてその選挙期日を延長いたしました。東日本大震災においても、皆様御承知のように、二カ月から六カ月の延長をいたしました。

 これは、地方議会については法律で対処できます。しかし、国会議員の場合は、皆さん御承知のように、憲法において規定されている。

 その中で、参議院の緊急集会があるではないかとおっしゃる方々もいるかもしれません。もちろん、最低限の議決等の機能は行うことができるでしょう。しかし、それが果たして全国民の民意を正当にあらわしているか。正当にという言い方は問題があるかもしれませんが、では、その参議院の、参議院も半数が改選になっている最中、残った半数の議席だけが国民の意見を正しくあらわしてくれるのか。自分たちの希望する法律を通してほしい、いろいろな政策を実現してほしい、こういった声はどうやって実現するのでしょうか。

 それも、緊急事態であるのだからほかの方々は我慢しなさい、国民みんながそれを許容しなさい、こういう考え方もあるでしょう。しかし、そうではなくて、別の方法もあるのではないか、こういったことをあらかじめ規定しておくことが必要ではないか、このように思っております。

 そして、どういう場合に任期を延ばすんだということも、いざとなったときに慌ててやるのではなくて、こういった平時においてしっかりと議論しておく。

 これも、何か、行政府ですとか国家権力が恣意的にやるのではなくて、これを憲法に明記するということは、我々、国民の負託を受けた、国民の代表である衆参両院の三分の二が賛成し、それをまた国民投票にかけて、過半数の合意によって変えるということですから、どういう場合にどういった制限あるいは延長をするという規定は、国民の合意をあらかじめ得た上で設けておくということでございます。

 そして、緊急事態とはいかなる事態かということで、災害のことばかり言っているけれども、実は戦争のこともあるんだろうという御指摘もあるかもしれません。もちろん、そのとおりです。戦争を含めた有事というものはあります。

 ただ、この戦争というものも、戦争をするために何か国会あるいは内閣が任期を延長して進めるのではないか、こういったことではなく、戦争という事態にも、自国が戦争をしかける場合と相手の国がしかけてくる場合があります。

 日本が戦争をしかけるということは、憲法その他の規定もあって、こういうことはもうやってはいけない、やらないことであります。しかし、日本が戦争をしないと言ったからといって、相手からしかけることはないと言い切れるんでしょうか。

 実際問題、この瞬間も、北朝鮮からはミサイルが何発も撃ち込まれております。核ミサイル、核弾頭が開発されたときに、首都に核ミサイルが落とされた場合、こういった場合においても、国会の機能、こういったものが、解散した後であるから選挙を行わないといけない、そんなことでいいのでしょうか。国民の意見としても、確かに選挙というのは規定どおりやった方がいいんですけれども、緊急事態においても選挙の実施が国民にとっての最優先の課題かというと、そうではないのではないか。

 こういったことを含めてあらかじめ憲法に明記して、議論を経た上で国民の合意を得て制限をかけておく、このことが立憲主義にかなうのではないか、このように思います。

 以上です。

宮崎(政)委員 私は、現行憲法のもとにおいても、投票価値の平等という憲法上の要請は、必ずしも、衆議院において議員一人当たりの人口が最高選挙区と最低選挙区の間で二対一未満、つまり二倍未満であること及び参議院において都道府県をまたいだ合区という制度をつくることまでは要請をしていないということを意見として申し上げて、現行憲法でもそれは速やかに行われるべきでありますが、必要であれば憲法の改正、もしくは立法措置がとられて、不適切な選挙の運用がなされないようにするべきであるという意見を申し述べるものであります。

 まず、その理由の第一としては、選挙権、また投票価値の平等というものが重要であるというふうに語られているのは、これは民主制の過程を支えるものであって、民主主義の成立の過程から重要であると語られているわけであります。

 そうしますと、民主制の過程として、有権者が現実社会の中で具体的に投票行動という場で政治過程にアクセスできることが絶対的に必要でありまして、こういった現実を無視した形での選挙制度、区割りをつくることはできないと考えております。

 二番目に、平等というものも価値的概念であるということを指摘したいと思います。平等もあわせて価値的概念であることから、判例も変遷をしてきたわけであります。

 そうしますと、しばしば言われております、憲法を私たちの暮らしの中に生かす、生活の中に生かしていくといった場合には、参政権を充実させるに当たっては、過疎対策という考え方ではなくて、今、私たちの国が置かれている少子高齢化社会への対応と東京一極集中を是正することによって、活力のある地域を今後もこの国としてつくっていく、この国の将来を切り開いていくという意味で、国民の生活の実態にも合わせて政治参加のあり方をつくっていくことが必須だと考えているからであります。

 次に、もう一点指摘をいたしますと、投票率の問題があると思います。

 既に指摘をされているとおり、都市部と地方の間では格差があることは、本日配付されている資料にも記載があります。投票率の低い都市部のみで大多数の議員が選出されるということになれば、政治の空洞化が起きるわけでありまして、憲法の三大原理である国民主権が形骸化することになるわけであります。もちろん政治の側の役割も重要であるわけでありますけれども、議員定数の配分という場面においてもこのことは考慮されるべきだと考えております。

 以上のような次第で、私は、憲法の第八章地方自治の現在の記載がどうであるか、今の記載の状況のままであったとしても、衆議院における二倍未満及び参議院で合区をしなければいけないということは、必ずしも投票価値の平等としては要請されていないと考えております。憲法を守って国滅ぶと言ったら言い過ぎかもしれません。国民の生活が置き去りになってしまうということはあってはならないと思っております。

 明治以来、歴史的にも形成されている都道府県制度、この国の国柄がどうやってつくられてきたのか、そしてまた、現実における、国民の暮らしにおける意識や生活の実態、こういったものを前提とした場合には、やはり都道府県制度というものの果たしている機能を生かした上で投票価値の平等を生み出さなければならないと思っております。

 なお、例えば選挙の区割りで道州制その他の制度を採用するというようなことを前提とした形のものであるとすれば、これは改めての立法措置が必須になってくると考えているところであります。

 以上です。

山下委員 自由民主党の山下貴司です。御指名ありがとうございます。

 私からは、一票の格差の問題について御指摘したいと思います。

 まず指摘しなければならないのは、根本委員御指摘のとおり、最高裁は、一票の格差の違憲判断基準を事実上変えてきているということでございます。すなわち、本日の資料五ページ以下で明らかなとおり、最高裁は一票の格差について、長らく、衆議院では三倍以内、参議院では五倍以内であれば合憲判断をしていましたが、平成二十三年以降、厳しくなり、衆議院については二・一三倍を違憲状態、参議院でも四・七七倍の格差について違憲状態と判断するようになりました。

 もちろん最高裁が判断を変更することはあり得ることでございます。しかし、法律家として指摘しなければならないのは、最高裁は、最近の事実上の判断の変更について、直前の合憲判断から変更した理由、さらには判断基準そのものについても憲法の投票価値の平等の要求を理由とするほかは明確に示しているとは言いがたいということでございます。個人的には、このことが一票の格差をめぐる混乱を招いている一因ではないかと思っております。

 これが国際的には当たり前かというと、そうではないわけであります。

 日本は、比例区制を採用しない、選挙区制を採用する国の中では、最も形式的な投票価値の平等を追求している国と言えます。

 まず、一票の格差について、国会図書館の調べによれば、下院においては、日本と同じアダムズ方式を採用したとされるフランスでは二・四倍、カナダでは五倍、ほかの、小選挙区制を採用するイギリスも、直近の選挙では五倍、オーストラリアは二・一九倍の格差、これが是認されております。

 投票価値の平等に厳しいアメリカが下院において一・九倍を実現しておりますが、州の代表選出機能を守るため、上院では格差六十六倍を許容し、下院についても憲法において各州から少なくとも一人は選出するという一人別枠方式を定めているわけでございます。

 さらに、上院でいえば、先ほど指摘したアメリカ以外でも、連邦制をとる国では少なくとも十倍以上、連邦制をとらないフランスにおいても四・三倍の格差、これが許容されているというわけでございます。

 このような選挙制度の現実を見ると、我が国は格差が国際的にも小さい。そして、加えて言えば、我が国は、選挙区制に加え、比例区制を併用することで導入することによって、選挙区制度の採用による格差を事実上緩和しているということも見逃せないと思います。

 次に、合区の問題について指摘させていただきます。

 各国の制度を見れば、選出単位として、我が国でいえば都道府県に当たるような、例えば、五十万以上の人口規模、あるいは一定の立法、行政機能を持つ州や地域圏などの広域自治体から少なくとも一人は議員を出すこととしております。日本のような、広域自治体の合区をとる国は見当たらないわけであります。これは、地方自治の担い手として、国と基礎自治体の間に州などの広域自治体を憲法法体系の中で位置づけ、国政に参画する議員の選出単位としていることというふうに言うことができます。

 我が国は、日本国憲法制定以来、さらに言えば明治以来、都道府県制を持っておりますし、日本国憲法制定以来は、民主的基盤を有する広域自治体として、都道府県が他の国の州などと同様の機能を果たしておりました。もちろん、道州制が採用されれば、道、州ということになるのかもしれませんが、それは別論ということでございます。

 今の現行の合区制は、広域自治体である都道府県の中に、参議院議員を選出できないものを生み出す制度であるとも言えます。というのは、理論上は、合区の結果、人口の多い広域自治体のみが代表を選出し続けることが可能であるということであるわけであります。

 以上、結論からいえば、どの国でも投票価値の平等が保障されておりますが、一票の格差が二倍を超えるということは、選挙区制をとる限り現実であり、我が国の都道府県に相当する人口規模、立法、行政機能を持つ広域自治体を合区した事例はないということで、これを最高裁が許さない、最も形式的に一票の格差を判断すべきだ、あるいは、広域自治体の国政に関する機能を世界で最も軽く見て、一極集中を加速する結果にせざるを得ないということであれば、我々は憲法規定の変更も考えざるを得ないと思っております。

 なお、最後に、国家緊急時の任期延長につきまして、現実にその危機に直面された細野委員の御意見、全く同じではありませんけれども、本当に重いものがあると思います。これは、党派を超えて重く受けとめて、議論すべきであります。

 国の最高規範について議論すべきは、憲法学者のみではありません。国権の最高機関に属する我々こそ、それに真剣に取り組まなければならない、逃げてはならないことを申し上げて、私の意見とさせていただきます。

 以上です。

辻元委員 民進党の辻元清美です。

 私は、緊急事態条項について意見を述べます。

 東日本大震災のときに、私は、被災者御支援の総理補佐官をしておりました。当時、災害担当大臣、そして副大臣、総務大臣、内閣官房副長官、そして総理補佐官の私と五名が担当し、各省庁と自衛隊の指揮に当たる者が、連日、毎日、定刻に会議を開いておりました。そして、その中で出た課題については二十四時間以内に対応し、翌日また報告をするという体制で臨んでおりました。

 しかし、そこで痛感したことは、中央政府の判断や決定には限界があるということを痛感いたしました。私は、この経験から、中央政府の権限を強めるというよりも、地方自治体、特に市町村のいざというときにできることの権限を強めなければ、被災者の支援は非常に困難になるということを痛感しました。

 そして、被災した市町村、全て回りました。それは、政府の情報を伝え、市町村の、現場の状況を把握し、また要請を受けるということだったんですが、それでもやはり現場の判断が一番だと痛感するんですね。政府に持って帰っていって何かしようと思っても、もう遅いわけです。刻々と状況が変わります。

 例えば、県と市町村もそうだったんです。盛岡と陸前高田では、情報がなかなか上がらない、県庁に来ない。また、福島市とそれから南相馬では、もう格段の差があったんですね。

 ですから、地域でどれだけさまざまなことが決定できるか。先ほど太田委員の方から、国交省、当時、くしの歯作戦ということで、物すごく頑張ったわけです。道をあけないと物が運べないということで頑張ったわけですが、これは東北の整備局に大きな権限を与えて、そこで物すごく頑張っていただいたということなんです。

 ですから、そういう経験から申し上げますと、憲法でどういう緊急事態条項を、総理大臣に権限を持たせるということの中身が一体何なのか。

 そういう発言をされた方がいらっしゃいましたが、例えば自民党の憲法草案を拝見いたしますと、行政府が立法府を経なくとも法令を制定したり予算をつける権限を持たせるというようなことがありますが、これをつくって一体どういう、自民党がそういう方向を目指しているとすれば、私は言語道断で反対なんですけれども、これはワイマール憲法下のナチスが出てきたのと同じとも言われています。悪用も考えられるわけです。それが一体、現場の災害など緊急事態にどうプラスになるのか。もしもそういうことを提案したい方がいれば、現場に即してぜひ説明をしていただきたいと思います。

 そして、原発事故もありました。これは、人類が今まで経験した災害の中で一番過酷な事故だったわけです。津波や地震を経験した他国もあります。しかし、一番過酷な原発事故を伴った複合災害だったんです。このとき、自衛隊の皆さんには非常に過酷な任務を担っていただいたんです。そして、津波の対応もそうだったですけれども、今までの、さきの戦争に次ぐ大きな任務だったと思います。しかし、その任務を経た後、自衛隊法の改正をすべき点があるか点検して、災害にまつわることなどでは改正点は今のところないわけですね。

 ですから、他の災害対策基本法などは地方に権限を持たせるということで改正がなされましたという現実をしっかり踏まえた上で、緊急事態条項の議論をしないとだめだと思うんです。

 有効だと言われた対策は、飛び地の自治体間同士の協力などは非常に有効だったわけです。例えば南相馬に対して、世田谷区が、自治体間同士での連携なんですよ。それは、中央政府を通さずにやっていたのが非常に迅速だったんですね。

 緊急事態への対応というのは、その災害等が発生してから行うものではなくて、日ごろのそういう積み重ねをいかに政府でやっておくかということが最大の緊急事態への対応である。

 最後に、選挙についてです。一言だけ申し上げたいと思います。

 これは、政党政治のあり方。当時、東日本大震災で、私たち、支援に苦しんでいた。三月に始まって、五月に、自民党を初め野党は不信任案を出したんですよ。解散に追い込まれかねない状況だったわけですよ。あのとき、不信任を可決して、解散しようとしていたんでしょうか。

 政党政治が当時そういうことをしておいて、そして、災害のときに選挙ができないからどうしようと。これは、政党政治のそれぞれの緊急事態における振る舞いも、私たち、心して緊急事態についての選挙やそれから政治のあり方を議論すべきだということを一言申し上げて、終わります。

森会長 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、来る二十三日木曜日午前八時五十分幹事会、午前九時審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十分散会


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