衆議院

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第5号 平成29年5月18日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十九年五月十八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 上川 陽子君 幹事 中谷  元君

   幹事 根本  匠君 幹事 平沢 勝栄君

   幹事 船田  元君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 武正 公一君 幹事 辻元 清美君

   幹事 北側 一雄君

      赤枝 恒雄君    安藤  裕君

      伊藤 達也君    池田 佳隆君

      衛藤征士郎君    大塚 高司君

      鬼木  誠君    神山 佐市君

      後藤田正純君    佐々木 紀君

      佐藤ゆかり君    白須賀貴樹君

      園田 博之君    田畑 裕明君

      高木 宏壽君    辻  清人君

      土屋 正忠君    野田  毅君

      福山  守君    星野 剛士君

      宮崎 政久君    村井 英樹君

      八木 哲也君    保岡 興治君

      山際大志郎君    山下 貴司君

      山田 賢司君    若狭  勝君

      枝野 幸男君    奥野総一郎君

      岸本 周平君    北神 圭朗君

      中川 正春君    古本伸一郎君

      細野 豪志君    升田世喜男君

      太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君

      遠山 清彦君    赤嶺 政賢君

      大平 喜信君    足立 康史君

      小沢 鋭仁君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     若狭  勝君

  佐々木 紀君     白須賀貴樹君

  村井 英樹君     神山 佐市君

  山下 貴司君     八木 哲也君

  山尾志桜里君     升田世喜男君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     村井 英樹君

  白須賀貴樹君     佐々木 紀君

  八木 哲也君     山下 貴司君

  若狭  勝君     伊藤 達也君

  升田世喜男君     山尾志桜里君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(阿部知子君紹介)(第八六一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第九四八号)

同月二十八日

 日本国憲法を守り生かすことを求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第一〇三四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一〇三五号)

 同(畠山和也君紹介)(第一〇三六号)

 同(藤野保史君紹介)(第一〇三七号)

 同(堀内照文君紹介)(第一〇三八号)

 同(真島省三君紹介)(第一〇三九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇四〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第一〇四一号)

 同(本村伸子君紹介)(第一〇四二号)

 立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一一〇七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一一〇八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一一〇九号)

 同(畠山和也君紹介)(第一一一〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第一一一一号)

 同(堀内照文君紹介)(第一一一二号)

 同(真島省三君紹介)(第一一一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一一四号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一一五号)

 同(本村伸子君紹介)(第一一一六号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(国と地方の在り方(地方自治等))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 この際、一言申し上げます。

 本審査会は、国会法第百二条の六の規定により、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議または国民投票に関する法律案等を審査するため、衆参両院に設置されたものであります。

 平成十二年に設置された憲法調査会以降、各会派が、異なる意見にも耳を傾けながら、お互いの立場を超えて自由闊達に議論することができるよう、委員各位の御指導と御協力をいただきながら、公平かつ円満なる審査会運営に努めてまいりました。

 また、改めて言うまでもなく、憲法改正の発議権を有しているのはあくまでも国会であり、主権者国民の負託に応えるべく、私どもの責任において、主体性を持って与野党で丁寧な議論を積み重ねていかねばなりません。

 会長として、引き続き、これまで築き上げられてきた公正円満な運営に努めてまいる所存ですので、改めて御理解、御協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

森会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に国と地方の在り方(地方自治等)について調査を進めます。

 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。

 発言時間は十分以内とします。

 発言は自席から着席のままで結構です。

 発言の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子です。

 国と地方の在り方(地方自治等)をテーマに、党を代表して発言いたします。

 参政権の保障をめぐる諸問題をテーマにした三月十六日の自由討議においては、緊急事態における国会議員の任期延長について憲法審査会のテーマに取り上げて議論を深めていくことや、合区の解消についてさらに議論の必要があること等について、各会派の間で認識がある程度共有されたのではないかと考えます。

 同日の私の自由民主党を代表する発言で、参政権の保障をめぐる諸問題は、国と地方の権限分配や地方の権限行使のあり方、特に権限行使の主体となる地方自治体の統治のあり方にも広がりを見せ、ひいては憲法第八章のあり方自体も議論の対象とすべきことに言及いたしましたが、本日はこの点についてさらに議論を深めたいと思います。

 まず、日本国憲法において地方自治がどのように位置づけられているかを確認することから始めたいと思います。

 憲法上、地方自治がなぜ重要かといえば、民主主義を国のレベルだけではなく地方のレベルでも実現し、それによって、国民の自由と権利を保障することを目的としているからです。これこそが、地方自治が民主主義の学校と言われるゆえんです。地方自治や国と地方のあり方に関する憲法論議を行うに当たっては、常にこの基本に立ち戻って考えなければなりません。

 さて、三月十六日の自民党を代表する発言において、私は、国立社会保障・人口問題研究所によるシミュレーションを紹介しつつ、我が国が劇的な人口減少に直面すること、特に地方は、過疎の問題を通り越して、地方消滅と言われるまでの人口減に直面することが予想される旨指摘しました。このことは、前社人研所長である森田朗津田塾大教授が明確に指摘しているところです。

 人口の劇的な減少と東京への一極集中は、一票の格差を初めとするさまざまな格差をもたらし、国と地方の権限分配のあり方など、国と地方のあり方にも大きな影響を及ぼしています。ここでは、以下のことを指摘しておきたいと思います。

 まず、地方自治の両輪の片方である団体自治においては、人口減少の中、地方自治の足腰を支える基礎自治体の機能を維持するために、昭和、平成の大合併が行われ、市町村は約千七百にまで統合されました。これは行政サービスや住民のセーフティーネットのレベルを維持するための選択でしたが、大合併から漏れた地域もなお存在し、まだまだ不十分であるとの指摘もあるところです。

 その一方で、人口減少と東京一極集中により、住民が政治にアクセスしにくくなり、顔の見える民主主義を維持できなくなるという状態に陥りつつあります。この現象が国政レベルにおいて端的にあらわれたのが合区の問題です。身近なことは自分で決めるという地方自治の価値を再確認するとともに、国政レベルにおける顔の見える民主主義の復活のためにも合区の解消を図らなければなりません。

 その上で、明治の地方制度以来百二十年を経て、国民の間に完全に定着している広域自治体と基礎自治体については、二層制を維持し、二層の適切な役割分担を踏まえて、団体自治の一層の充実を図っていくことが肝要と考えます。

 他方、身近なことは自分で決めるという住民自治の理念を実現するためには、それを実現する場となる地域コミュニティーがしっかりと維持されていることが必要です。

 しかし、人口減少と東京一極集中によって、地方においては地域のコミュニティーを維持できなくなってきており、住民自治の基礎が揺らいでいます。

 さらに、急激な人口減少、東京一極集中は、自治体間の経済格差やそれに伴う行政サービスの格差をもたらし、その結果、貧困などの個人の格差が次世代に引き継がれて固定化されるという貧困の連鎖の問題を引き起こしかねません。この結果、若者が地方に残ることを選択しなくなり、ますます東京一極集中が加速することとなります。

 このような状況のもとで、日本の地方自治を再生していくために、地方創生などのさまざまな政策が実施されています。

 次に、国と地方のあり方を考えるに当たってのポイントについて申し述べます。

 日本国憲法は、明治憲法と異なり、第八章に地方自治を規定していますが、第八章には四カ条しかなく、条文が簡素で抽象度が高いという特徴が指摘されています。これについては賛否両論の議論がなされています。

 肯定的な考え方は、地方自治の具体的な制度設計は法律や政策レベルで行えばよいとするもので、その根底には、日本国憲法のように改正がしにくい憲法の場合、特定の時代の価値観を憲法に規定してしまうと、状況の変化に対応した改正が困難になり、結局、時代に憲法の条文が取り残されてしまうのではないか、だからこそ日本国憲法をあえて条文を簡潔に、抽象度が高くしてあるのだという発想があると考えられます。

 一方、憲法第八章の条文が簡素で抽象度が高いために、国会が余りにも自由に立法できてしまい、立憲主義の見地から問題であるとともに、このことが国が地方を過度にコントロールすることにつながっているというように否定的に捉える考え方もあります。

 つまり、条文が簡素で抽象度が高いことをどのように考えるのかが、憲法第八章の改正論議における一つのポイントになるように思われます。

 もう一つのポイントとして、憲法の規定のあり方や改正を検討するに当たっては、憲法規定だけではなく、附属する法規などを含めた総体としての法体系全体を検討しなければならないという点が挙げられます。

 日本国憲法と地方自治法は、いずれも同じ昭和二十二年五月三日に施行されています。このことから、地方自治に関する法体系は、憲法と法律が総体として制度設計されていることがわかります。憲法の条文改正に当たっても、単に当該条文だけを考えればよいのではなく、法体系全体の制度設計という観点から、憲法上でどこまで規定すべきか、法律レベルでどのような制度設計を行うのかを検討しなければなりません。

 同時に、憲法改正論議は、その問題が、憲法改正が必須な事項なのか、憲法改正が必須ではないが望ましい事項なのか、法律改正等で対応可能な事項なのかという三つの分類のどこに位置するのか、常に意識していく必要があります。これらのことは、前回、四月二十日の参考人質疑において、齋藤誠参考人などから指摘を受けた点であります。

 以上を前提に、憲法第八章に関する論点について、自民党としての考え方を申し述べます。

 まず第一に、地方自治の本旨については、その内容を明確にするため、地方自治が住民の意思に基づいて行われるべきという住民自治と、地方自治が国から独立した自治体に委ねられ、自治体みずからの意思と責任のもとで地方自治を担うという団体自治について、憲法上明記することを検討すべきと考えます。

 第二に、自主立法権としての条例制定権につきましては、法律の範囲内で条例を制定することができるとの現行の枠組みを維持しつつ、国と地方自治体の適切な役割分担を踏まえた立法がなされるよう、国会による立法のあり方などを改善するアプローチをとることを検討すべきと考えます。

 第三に、地方財政については、自主立法権と両輪をなす自主財産権の充実という観点から、自主的な財源や財政調整制度などについて憲法に明記することを検討すべきと考えます。ただ、その際には、絵に描いた餅にならないように、法律レベルにおいて地方の脆弱な財政基盤を考慮した具体的な財政調整制度の設計を検討するなど、憲法に附属する法規を含めた法体系の総体を設計する必要があります。

 最後に、改めて、地方自治の両輪である住民自治と団体自治を再生する必要があること、特に、住民自治の土台となる地域コミュニティーの維持、団体自治の足腰となる基礎自治体の機能の維持向上、広域自治体である都道府県について、顔の見える民主主義の維持のための合区解消が必要であることを再度強調し、私の発言を終わります。

 以上です。

森会長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民進党・無所属クラブの中川正春です。

 本題に入る前に、先ほどの会長の所感に続いて、私からも、今般の憲法に関する総理発言や新聞のインタビュー記事などについて発言をしたいと思います。

 私は、総理の憲法に関する一連の発言は、安倍晋三氏が、内閣総理大臣として、憲法審査会を中心とする我々国会とそして国民に対して具体的な改正案を提起され、改正の期日の指定までされたというふうに受け取りました。

 憲法の改正に関して発議権を有するのは国会であります。したがって、安倍総理の一連の発言は、憲法によって唯一の国民代表機関である我々立法府のみに付与された権限を著しく侵害すると同時に、議事の混乱を引き起こす行為にほかなりません。

 問題の根は深いと思います。憲法審査会としては、会長所感や自民党筆頭幹事の発言ということでなくて、私としては、審査会の総意に基づく意思表示が必要だというふうに思っております。

 安倍総理に対して、厳重なる抗議と一連の発言の撤回を求めるべく、この審査会での決議を求めます。

 また、この際、議長からも、二度とこのような総理の発言が、あるいは逸脱がなきよう注意を促していただくために、会長から議長に対して進言をいただくことをお願い申し上げたいというふうに思います。

 それでは、会派を代表して、地方自治に関する意見表明に入らせていただきます。

 日本国憲法は、連邦制ではなく中央集権的な色合いの濃い単一国家の形態をとっております。地方自治については、その規定は四条項にまとめられた抽象的で簡素なものであります。さらに、その運用については、明治憲法の面影を残した中で、中央集権的な要素を色濃く残しています。

 私は、明治憲法以前の戦国から江戸時代にかけては、日本はかなり分権的な統治の時代であったのではないかと思っております。当時、国と呼ばれたものが藩による統治単位であったということが、何よりの証左であります。日本の地方文化として現代に生きる祭りや儀式、風俗、習慣、食文化などの伝承の中に江戸時代を起源とするものが圧倒的に多いということが、このことを物語っているのではないかというふうに思っております。江戸時代というのは、鎖国という形で外部からの脅威を遮断したことで、ある意味、日本が成熟社会を謳歌した時代であったのかもしれません。

 しかし、この連邦国家的な幕藩体制も、明治維新を経て、天皇を中心とした立憲君主制へと移行しました。薩摩や長州を中心にした日本の指導者たちが選んだ国家統治の方向性は、新政府のもとに権力を集中させて、外部からの脅威に対峙し、列強に伍していく体制をつくること、富国強兵を可能にする中央集権制度であったと思うのです。

 戦後、新しい憲法になったにもかかわらず、当時の明治憲法の中央集権体制が、現代日本の地方自治の現実の中に色濃く残っているように思います。国による官製知事の任免だとか、地方自治体を国家行政の出先機関として利用する体制などは現代でも生きています。国民はいまだに、全体の六〇%を超える官僚出身知事を選んでおりますし、副知事、総務部長、警察本部長などのかなめになるポストに中央官僚出身者が出向し、機関委任事務が廃止されたといっても、実際の業務は、県の七〇%、市町村の四〇%以上が国によって義務化され、自治体には裁量権がないものだと言われております。

 財政の六割を国家が裁量し、地方に対する補助金行政で政策誘導をする傾向は、安倍政権のもとで強化をされています。条例で定める前に、各省庁の政省令や指導基準で運用することを国が法律の中で定めてしまって、地方議会を素通りしてしまうという結果にもなっております。金太郎あめと言われるゆえんであります。

 残念なことに、戦後の新しい憲法のもとでも地方主権は実現できなかった。戦後の荒廃の中から国民の精神を再び鼓舞して力強く復興に導く過程で、権力の中央集権体制を維持する必要があったからだとも言われております。

 しかし、その後、時代が進展し、アメリカに追いつき追い越せと言っているうちに、日本は戦後復興から奇跡的な経済発展を遂げました。そして今、急速な高齢化社会という人口構造の変化に直面をしております。その結果、日本も、発展途上国型社会構造から、成熟型社会構造を目指していく時代となったのだと思っております。

 この社会の変化は、統治構造のあり方にも根本的な改革を求めています。オープンイノベーション、ダイバーシティー、ネットワーク等々、社会の方向性を示す言葉は、多極型で、多様な構成単位からみずから活性化していくことが全体の活力の源泉になるというようなメッセージにあふれております。当然、私たちの政治形態も、中央集権から地方分権に切りかえていくための大きな変革のきっかけをつくる必要に迫られています。

 以上の時代背景を踏まえると、私は、地方分権、もっと言えば地域主権の精神が、法律の形式だけでなく、運用精神にしみ渡るまで明示化するということを目指して、憲法第八章、地方自治の加筆、改正を視野に入れた議論をすべきだと思っております。

 これから、以下、項目ごとに改革の方向性を述べていきます。

 まず第一、地方自治体の政治の形態であります。

 地方自治体の政治形態は、みずからの意思で決めることのできる裁量権を明示すべきだと思います。その際、現状の二元代表制だけでなく、議院内閣制、執行委員会制、シティーマネジャー、いわゆる支配人制などの選択肢も可能とすることが必要です。また、道州制に向けた積極的な議論を期待します。特に、国の出先機関の整理や国と地方との協議の場に向けて、さらに有効な制度設計の議論が進められるべきです。

 二、財政です。

 地方自治体の課税自主権、財政自主権を明示すべきだと思います。

 地方交付税は、国民のナショナルミニマムを保障する機能と自治体財政の水平調整をする機能を分離して、それぞれ個別に運用することに向けた議論をすべきだと思います。ナショナルミニマムの保障は国家で、水平調整は地方自治体間の責任において配分基準を決めて実行することが望ましい。

 補助金は、農業、土木、教育など事業単位で統括をして、具体的な箇所づけについては地方自治体の裁量に任せることです。さらに、将来に向けては、補助金を必要最小限に抑えて、交付税化ないしは地方財源化を図るべきです。税源の地方自治体への移譲を実現することが何よりも求められています。

 三、条例です。

 補完性の原理に基づいて住民自治を中心に据えるとともに、国家の機能分野を明示して、それ以外の権限逸脱に制限を加える必要があります。例えば、外交、防衛、社会保障の基本的な仕組み、人権擁護基準、広域的な治安や危機対応など、国家でしかできない部分を明示することの検討が必要です。

 さらに、各法律の中身の運用基準について、条例の上乗せ、横出しを大幅に認めることで、自治体の自主性を引き出していくことが求められます。

 立法作業において、政省令や指導指針よりも各自治体による条例の方が望ましいと考えられるものについては、条例化すべきことを法律に直接書き込むことが必要だと思います。同時に、自治体組織による法令のスクリーニング委員会を構成して、既存の法令で条例化が可能な内容を取り出して、法律の改正を提起する制度の検討が必要だと思っております。

 四番目、司法です。

 トータルな司法制度改革の議論とともに、地方裁判所のあり方など、司法分野の分権の議論も進めることを望んでおります。

 五番目、住民自治です。

 コミュニティーでできないことは基礎自治体で、基礎自治体でできないことを広域自治体で、広域自治体でできないことを国で行うという補完性の原理を明示すべきです。

 私たちの目指す地域主権は、住民自治と言われる個人の自立心に根差しています。コミュニティーの範囲を自治会組織のような地縁で結びつく集団に限定してはならないと思うんです。ボランティアやNPO、宗教や民族など、特定の目的を持ってつくられる機能集団にも住民自治への参加を促す仕組みが求められます。コミュニティーの再構築は、地域主権国家を目指して住民自治を進める中で最重要施策の一丁目一番地です。また、在留外国人が二百三十万人を超え、さらに増加していく中で、彼らの住民としての権利を保障する総合的な手だてが必要です。

 六番目、直接民主主義です。

 憲法改正の賛否を問う国民投票ということだけでなく、間接民主主義を補完するという意味から、一般の政治課題についての国民投票、住民投票の制度を確立して、憲法に明示することを含め、法制化の議論が必要です。それぞれ事前に決められた数の住民ないしは議会の構成メンバーからの要請があれば、国民投票、住民投票の実施をしなければならない旨を明示する。法律の提出、イニシアチブか、法律に対する賛否、レファレンダムかによって判断する場合や、投票の結果に法的拘束力を持たせるかについては、問題になる政治課題の性質の考慮と相まって、事前の制度設計が必要だと考えます。

 最後に、危機対応であります。

 自然災害あるいは病原性の重大疾病、テロなどによる国内騒乱、武力紛争などの危機対応について、基本原則は私は次のように考えます。

 まず一番、国家緊急権を憲法に明示する必要はないと思います。

 事象が発生するあらゆる場合を想定して個別に対処基本法をつくり、国と地方自治体、国民の権限と役割分担について事前に定めるべきです。事象の広域性、甚大性、災害の対象や内容に応じて多様な対応を求められるだけに、歴史的な経験則に基づいた多種多様な想定のもとに、各ケースに応じた法律の体系を整備することが望まれます。

 二番目、特に自然災害時の危機対応については、事象の発生を起点に幾つかのフェーズが考えられます。それに応じた国と地方の望ましい関係を整理しておく必要があります。

 第一に、事前の防災、予防措置、次に、発災時の救命活動を中心とした緊急対処措置、その後の避難民に対する緊急支援措置、さらに、こうした混乱期を脱した時点で、復興、再建に向けた集中重点施策が始動します。この中で、特に発災時の救命活動を中心とした緊急対処とその後の避難民に対する緊急支援体制の構築で指摘されてきた問題は、具体的な対応の指揮権をでき得る限り現場に近い市町村や知事に集中させることが大切だということです。大規模災害にあっても市町村長や知事の指揮権の裁量をでき得る限り広く認め、その上で、国は現場のニーズに応じた広域調整や財政的な支援をサポートしていく体制を構築すべきだということだと思っております。

 済みません、時間がちょっと超過しましたが、以上であります。

森会長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 私は、公明党を代表いたしまして、国と地方のあり方について意見を述べさせていただきます。

 まず、我が党の地方自治に関する基本的考え方について申し述べます。

 地方自治の原則は、住民の暮らしにかかわる事柄は住民みずからが決定することを意味しており、日本の民主主義の発展の原動力と言っても過言ではありません。また、少子高齢化と人口減少に直面する今日の日本にあって、地方における地域社会の活性化は喫緊の課題であります。政府には地方創生担当大臣が置かれ、本院にも地方創生特別委員会が設置されていることがそれを象徴しております。その意味においても、憲法第八章に規定されている地方自治は極めて重要であり、公明党としても、今日までの加憲の議論の中で、地方自治の強化を一つの重要な視点として捉えてきております。

 これまでの党内議論の中では、地方自治に関する憲法規定が四カ条しかなく、他の規定項目に比して規律密度が低いことや、地方自治の本旨の定義がないこと、地方と国との役割分担や地方公共団体の財政的自立の実現について憲法に位置づける必要があるか否か等が検討されてきております。

 また、地方自治の議論における重要な視点の一つとして、東京一極集中の是正があります。

 東京は首都であり、そこに政治、経済、社会の中枢機能が集中することはやむを得ない面はありますが、弊害があることも国会において多くの指摘がなされてきております。

 例えば、地方から若者が東京に流入し続けることにより、地域社会がますます衰退する、地方に比べ出生率の低い東京に人口が集中することで、日本全体の人口減少に拍車がかかる、島嶼国家である日本の国境を形成する離島地域が無人化をし、安全保障上のリスクが増す等であります。

 これらの課題解決のためには、東京一極集中の是正へ向けた努力を強化すること、特に基礎自治体の足腰を強化する必要があることは、与野党を超えて認識が共有されているところであろうと思います。

 なお、このことに関連いたしまして、道州制の導入が唱えられておりますけれども、これにつきましては、特に憲法との関係におきまして、慎重に検討する必要があると考えております。

 次に、以下、地方自治と憲法の問題につきまして、四つの論点ごとに意見を述べさせていただきます。

 一つ目は、地方自治の本旨の明確化と、国と地方との役割分担の明記についてであります。

 憲法第九十二条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と規定しておりますが、この地方自治の本旨をより明確化する、すなわち、住民自治や団体自治を憲法に明記すべきではないかとの意見が党内にはあります。

 これにより、国が地方自治体と地域住民の意思を尊重することや、地方自治体が自立と責任の原則に立つことを憲法の中においてはっきりさせるということであります。他方、地方自治の本旨の具体的な内容につきましては、憲法の解釈や判例の中で相当程度明確化されてきており、改めてさらに規定する必要性があるならば、憲法ではなく、一般の法律で手当てすればよいとの意見もございます。

 第九十二条に関連し、国と地方との適切な役割分担を憲法に規定することを検討すべしとの指摘もありますが、地方自治法の第一条の二等において、国と地方の適切な役割分担や、地方公共団体の自主性及び自立性の重要性は既に規定されていることに留意する必要があると考えます。

 また、憲法に役割分担規定を挿入することが立法分野における国の地方に対する過剰な介入を抑止する効果をもたらすとの主張もございます。地方自治法第二条十一項は、「地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づき、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえたものでなければならない。」と規定しております。

 これに関し留意すべきは、地方に対する義務づけ、枠づけの抑制は閣議決定に基づいて行われておりますが、議員立法は対象となっていない点であります。しかし、議員立法にかかわる立法実務においては、地方への配慮は一定程度なされており、憲法改正を要するほどの過剰な介入があるのかどうかも含めてさらなる検討を要すると考えます。

 次に、地方自治権の司法的救済と事前協議による保障について意見を申し上げます。

 地方自治権の強化を図る視点から、地方自治権の侵害に対して裁判所を使って是正できることを憲法に規定するという考え方がございます。ヨーロッパ自治憲章には次のような規定があり、地方自治権の司法的救済が明記されております。ヨーロッパ自治憲章第十一条、地方自治体は、その権限の自由な行使及び憲法または国内法に定められた地方自治の尊重を確保するために、司法的救済に訴える権利を有するものとする。

 日本においては、国による関与については地方自治体が出訴できる道はあるものの、そのほかは司法的救済の道は狭いという指摘があります。加えて、今日までの国の関与についての訴訟において自治権侵害に当たらないと判断されてきた裁判実務を考慮すると、国と地方の事前協議を義務づける規定を憲法に同時に定める必要があるという意見もございます。

 しかし一方で、現在でも、国と地方の協議の場に関する法律や地方自治法二百六十三条の三に基づく地方六団体による意見書提出等、一定の事前手続の保障がなされております。司法的救済の確立や事前協議の保障によって地方自治権をさらに強化する必要があるとしても、そのための憲法改正の要否については党内の意見はまとまっておらず、この点についても引き続き議論を継続してまいりたいと思います。

 三つ目に、地方自治体の財政基盤の強化について申し上げます。

 地方自治体の自主的、自立的な行政運営は、その財政基盤の確立の程度によって大きく左右されます。地方自治体の財政的自立は、地方自治の不可欠の要素であります。そして、地方財政の分野でも東京一極集中の問題は切り離すことができません。人口が増加して財源が潤う地域がある一方で、人口も財源も減少する地域がございます。自治体間の財源の不均衡を調整し、どの地域であっても一定の行政サービスが提供されるよう、財政格差を縮小することが不可欠であります。このため、地方自治体の財政的自立の確立、すなわち、課税自主権や財政調整制度を、憲法上、より明確にすべきとの意見が党内にございます。

 その一方で、現行憲法下においても、地方自治体が条例に基づき法定外税や超過課税を実施するところはふえてきております。また、この問題を実質的に解決するためには、憲法のみならず、地方税、地方交付税制度のあり方を含めた地方税財政に関する法体系の全体を見通した議論が必要であり、この点も引き続き慎重に検討してまいります。

 最後に、道州制と憲法の関係について申し上げます。

 東京一極集中の是正の有力な手段として道州制の導入があることは既に触れました。しかし、仮に都道府県にかえて道州という、より広域性の強い自治行政団体を生じさせるとしても、憲法上の地方公共団体として捉え得る観点から、その導入のために憲法改正は必要がないという意見が党内では大勢でございます。

 道州制導入のメリット、デメリットにつきましては、国会の内外において幅広く議論されてきているところでありますが、道州の区割りのあり方、国と道州の機能と権限の調整、税財源のあり方、道州制下における基礎自治体の役割等々、検討すべき課題は多いと認識をしております。

 いずれにしても、道州制の導入は国の形を大きく変える政策であり、国会のみならず、地方を含めた国民的議論を喚起しつつ議論を前に進めていくべきであると考えております。

 以上でございます。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 安倍首相は五月三日、改憲派の集会へのビデオメッセージで、二〇二〇年を新しい憲法が施行される年にしたい、憲法九条に自衛隊を明文で書き込むなどと表明しました。まず指摘しておきたいのは、こうした安倍首相の発言自体の問題です。

 憲法九十六条は、改正の発議権は国権の最高機関である国会にあると明記しています。だから、安倍首相もこれまで、改憲の具体的な案については憲法審査会において議論すべきであるというのは私の不動の姿勢と発言してきました。

 しかし、今回、安倍首相は、勝手に期限を区切って改正の具体的な中身に言及し、憲法改正議論の方向を指示しました。憲法尊重擁護義務を負う政府の長が国会の権限に介入したものであり、三権分立に反するものであります。到底容認できません。

 しかも、首相は、九日の参議院予算委員会で、憲法審査会について、相当議論が煮詰まってきた、最終的にいよいよ案を出すところに来ているとまで発言しました。

 こうした首相の改憲発言が十一日の憲法審査会の幹事会で大問題となりました。自民党は党内に向けた発言だと言い張りましたが、一連の発言が首相として全国民に向けたものであることは明らかであり、結局、会長所感と自民党冒頭発言として、与野党で丁寧な議論を行い、首相発言に縛られるものではないと表明することになったのであります。

 ところが、翌日、首相はさらに改憲原案づくりを指示し、起草委員会を党内に設置、自民、公明、維新の三党だけで発議することまで報じられています。十六日には、内閣が憲法改正の原案を提出できるという答弁書を閣議決定しました。言語道断であります。

 こうしたもとで、自民党憲法改正推進本部長の保岡議員は、党総裁から方向性が示された、できるだけ早く具体案を考えると述べ、総理は慎重であるべきだと先週の幹事懇で発言した船田議員も、これまでを反省し、加速化に転じました。

 今や、自民党が憲法改正の加速化へと大きくかじを切り、審査会での議論はまさに憲法改正案の発議に向けたものになろうとしています。

 昨年十一月十七日、一年半ぶりの審査会の再開に当たり、森会長は、「憲法改正の必要性の有無とその内容について熟議を重ねる」と述べ、自民党を代表して発言した中谷議員は、改正ありきの改正項目の絞り込みではないと述べてきましたが、今、全く違う方向に行っているのではありませんか。

 我が党は、何度もこの場で主張してきたように、国民の多数は改憲を求めておらず、改憲案の発議に向かう審査会を動かすべきではないということを改めて指摘したいと思います。

 次に、総理の改憲案の中身の問題です。

 第一に、安倍首相は、今回、九条一項、二項を残しつつ自衛隊を明文に書き込む、これは国民的な議論に値するのだろうと提起しました。しかし、首相は、昨年二月の予算委員会で、稲田議員の質問に答えて、九条二項を改正し国防軍を明記する自民党の憲法改正草案を、自民党総裁として同じ考え方だと述べています。今回の発言は、結局、自民党草案が国民的な議論に値しないと認めたものであり、自民党結党以来掲げてきた九条改正は国民の理解を得られなかったということになるのであります。憲法九条の改正自体、諦めるべきであります。

 第二に、政府解釈の問題です。

 歴代政府は、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは九条で禁止されていないとして、自衛隊を合憲と解釈してきました。自衛隊を書き込む必要があるというのは、結局、これまでの政府見解は誤りであったということではありませんか。

 二年前の安保法制は、従来の政府解釈でも憲法を変えない限り認められないとしてきた集団的自衛権の行使を容認しました。憲法学者の九割が違憲だと言い、多くの国民が反対したように、安保法制も違憲の法律だということになります。

 第三に、九条に自衛隊を書き込むということは、単なる自衛隊の現状追認にとどまりません。こうした主張をする改憲論者は、自衛隊を明記した第三項を加えて二項を空文化させるべきであると公言しています。九条はそのままでというのは全くの欺瞞です。

 そもそも九条は、日本国憲法の核心であります。日本国憲法は、侵略戦争の反省のもと、軍国主義を全面的に排除し、国民主権と民主主義を掲げる平和国家として国際社会に復帰するための出発点であり、アジアと国際社会に対し、二度と戦争をしないということを約束したのが九条です。九条に手を加えることは日本国憲法を根底から覆すことにほかなりません。

 この七十年、戦力不保持を定めた憲法九条に反して、米国の再軍備要求で自衛隊が創設され、歴代自民党政権は、米国の求めに応じて解釈拡大を重ね、海外派兵へと道を開き、憲法と矛盾する自衛隊の現状をつくり上げてきました。それでも憲法九条は自衛隊の活動を制約し、政府を縛っているのであります。

 今、国民が求めているのは、憲法改正ではなく、立憲主義の回復であります。憲法の原点に立ち返り、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重といった諸原則に合わせて現実政治を変えていくことこそ求められており、それと逆行する改憲議論など断じて認められません。

 最後に、沖縄について述べます。

 沖縄は、今月十五日で、平和憲法のもとに帰ると復帰して四十五年たちました。しかし、今なお沖縄では憲法の上に安保が置かれています。政府は、米軍基地のために、法律の恣意的な運用を重ねて、地方のあらゆる権限をじゅうりんし、地方自治も民主主義も踏みにじっています。こうした沖縄の現状に対して、先日、参考人四人全員が、国策によって民意が一顧だにされない現状への批判を示したことは極めて重要であり、歴代自民党、安倍政権の責任が問われています。

 九条とともに、日本国憲法で初めて位置づけられた地方自治は、憲法の基本原則を地方政治においても貫くことを求めていることを指摘しておきたいと思います。

森会長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 本題に入る前に、本日の自由討議が三たび延期され、その開催が一カ月以上おくれたことに関し、憲法審査会の政局化を主導した民進党に改めて苦言を呈しておきたいと存じます。

 そもそも、憲法審査会が政局の影響を受けないというのは憲法調査会以来の伝統であります。民進党の武正筆頭、辻元幹事には、会長代理の重責をも担う野党第一党にふさわしい対応を強く求めます。

 我が党は、参院選に先立つ昨年三月、教育無償化、国と地方の統治機構改革、そして憲法裁判所の三本柱から成る憲法改正原案を公表し、自民党も五月三日に安倍総裁がメッセージを公表するなど、憲法改正の発議に向けた検討を本格化させています。民進党におかれましても、速やかに党の考え方を取りまとめ、国政政党としての責任、国会議員としての責任を果たしていただくよう要請し、本題に入りたいと思います。

 本日の議題に沿って、国と地方の統治機構改革について、我が党の考え方を御説明します。

 法律の制定や改正に立法事実が必要であるのと同様、憲法改正にもいわば憲法事実が必要であることは繰り返し申し述べてまいりました。私たちが憲法改正原案の柱の一つに国と地方の統治機構改革を位置づけた背景には、明治維新に伴う廃藩置県から現在に至る百四十年にわたり日本の繁栄を支えてきた府県制度が制度疲労を起こしていることがあります。

 移動手段の飛躍的発展や少子高齢化、人口減少等を背景に、東京一極集中と地方の衰退に歯どめがかかりません。東京一極集中は、富や人材の集中のみならず、待機児童を初め社会問題の東京一極集中をも招いています。

 こうした認識から、日本維新の会は、地方の自立した発展とともに、東京都民の生活を守るためにも、国と地方の統治機構改革、地方交付税の廃止と消費税の地方税化等を提案してまいりました。

 もちろん、戦後の自民党政治も手をこまねいていたわけではありません。しかしながら、国主導の地方振興政策がことごとく失敗し、第二次安倍政権が展開する地方創生も十分な成果を上げているとは言えません。二〇二〇年に地方と東京圏との転出入の均衡を図るという目標を掲げながら、東京圏への転入超過は毎年十二万人近くに及ぶなど、依然として高水準であります。

 我が国が今後とも五十年、百年と繁栄を続けていくためには、国と地方の権限と責任のあり方を根本的に変える憲法改正が不可欠であります。

 個別の政策を見ても、例えば待機児童問題は地域差が大きく、国で一律の対応をするのが難しい課題であります。大都市では待機児童の解消に向けて保育所増設などの対策を進めていますが、予測を超える入所希望者が出るイタチごっこが続いています。保育のニーズは地域ごとに時々刻々と変わります。各地域の需要に柔軟に対応できるようにするため、保育士の配置基準、保育所の面積基準等は条例で決められるようにすべきです。

 こうした取り組みを進めるためには、法律の改正も必要でありますが、旧来の国と地方の関係を改め、自治体が権限と責任を持って独自の立法を行えるようにするには、憲法で原則を定めるべきであると考えております。

 こうした課題に対応するため、我が党は、現行憲法の第八章につき、以下のような憲法改正原案を昨年三月に公表しております。

 まず、九十二条と九十三条で原則を定めています。自治体の二層制を定め、住民自治と団体自治、そして補完性の原則を具体的に定めております。また、九十四条と九十五条で自治体の組織、九十六条と九十七条で自治体の作用、具体的には条例制定と財政について定め、九十八条で自治体に関する紛争処理を定めています。

 現行憲法と比べて規律密度を大幅に高め、具体的規範として機能することを期待しています。

 第一の原則についてでありますが、九十二条では道州と基礎自治体の二層制について定めております。条文では、「自治体は、基礎自治体及びこれを包括する広域自治体としての道州とする。」と規定しています。

 現行憲法では、自治体の種類、つまり都道府県、市町村というものについては全く定められていません。これを改め、道州制を前提とすることを明記し、基礎自治体と道州を憲法上の存在として定め、その権限を大幅に強化することを意図しております。

 九十三条では、「自治体の組織及び運営については、地域における立法及び行政が住民の意思に基づいて行われるとの住民自治の原則及び国から独立した団体自らの意思と責任の下でなされるとの団体自治の原則を旨とする。」としています。

 現行憲法九十二条では「地方自治の本旨」とだけ書かれていたところ、既に確立した概念である住民自治と団体自治の二つに分けて明文化をしました。

 また、九十三条二項では、補完性の原則を定めるとともに、「国は、国家としての存立に関わる事務その他の国が本来果たすべき役割を担うものとし、それ以外の事務は自治体が担うことを基本とする。」と規定しています。

 これにより、自治体の役割に属する事項については、国の法令では自治体を事細かく縛ることは許されず、基本的な準則を定めるにとどまることになります。例えば、憲法事実のところで述べた保育所の設置基準等は、恐らくその大部分が、憲法上、国ではなく自治体が担うこととなります。

 第二の組織については、九十四条一項で、自治体の組織及び運営に係る事項はその自治体の条例で定めるとして、自治体の組織、運営は自治体自身が条例で定めるという原則を規定しました。

 ただし、二項では、基礎自治体の種類、区域等は道州条例で決めるとしています。基礎自治体の区域等は、当該基礎自治体に任せては決着しない場合も考えられるためであります。

 そして、大くくりの第三の作用については、条例による上書き権と財政自主権について規定しています。

 九十六条一項の条例制定権の条文は現行憲法とほぼ同じでありますが、二項で法律に優先する道州条例について定めています。すなわち、「道州は、第九十三条第二項の規定により国が担う役割に係る事項以外の事項として法律で定める事項〔道州所管事項〕については、法律に優位した条例を制定することができる。」としています。

 一定の事項について道州の立法権が国の立法権より上にあることを定める一方で、道州所管事項の範囲については法律で規定することとし、国と道州の権限のバランスを図っています。

 九十七条一項では、自治体は、その自治体の地方税の賦課徴収に関する権限を有するとして課税自主権を定め、二項では自治体間の財政調整制度を定めています。

 ここでは、国は介在せず、自治体同士で財政調整を行うこととしており、道州相互間の水平的財政調整も、道州内での水平的または垂直的財政調整も可能な条文としているところであります。

 最後に紛争処理でありますが、九十八条で、権限が強化された自治体同士あるいは国と自治体の争訟は憲法裁判所で処理することと定めています。

 以上が、国と地方のあり方に関する我が党の憲法改正原案の概略であります。

 憲法審査会での今後の議論に供していただければ光栄であります。

 なお、憲法審査会に先立つ憲法調査会の報告書が平成十七年四月にまとめられて、議長に提出をされております。

 その中でも、第八章、地方自治の章については、現在四条しかない地方自治の章、八章の現行規定を充実させるべきであるとする意見が、二十名以上の委員が発言し、その発言者の三分の二以上を占めるという形で、充実させるべきとの意見が多く述べられたと結論づけております。

 また、道州制についても、導入すべきであるとする意見が多く述べられた、すなわち、発言された中の三分の二以上の委員が道州制を導入すべきであるという意見を述べた、多く述べられたと。

 こういう総括を含めた報告書が議長に平成十七年四月に提出されていることを付言し、私からの発言を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

森会長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 冒頭、去る五月三日の改憲派集会に安倍総理がビデオメッセージを寄せ、憲法九条に自衛隊の存在を明記し、二〇二〇年に改正憲法の施行を目指すとの考えを示したことは、立憲主義と憲法の平和主義を破壊し、憲法九十九条の憲法尊重擁護義務違反の暴言であり、社民党として強く抗議いたします。

 安倍総理は、これは自民党総裁としての発言であったと弁解しております。だが、自民党総裁である総理は、行政府の長でもあり、具体的な改憲項目や改憲年限を国会や国民に示す権限はありません。御都合主義で立場を使い分け、ごまかすことは許されません。

 さらに、安倍総理は、五月八日、九日の衆参予算委員会で、自民党総裁としての考えは読売新聞を熟読せよと強弁しました。全く不誠実で、国会軽視です。同時に、メディアを選別した非民主的手法による改憲の自己目的化であると強く批判せざるを得ません。

 社民党は、一連の安倍総理の発言は、国会の憲法改正発議権を無視し、違憲の安保法制に基づく海外派兵の進展と戦争国家への暴走を加速させるものだと考えており、改めて、安倍改憲にあらがい、不戦と護憲を貫くことを表明いたします。

 本題に入ります。

 大日本帝国憲法には地方自治に関する規定が明定されていなかったことは周知のとおりであります。地方自治は保障されず、当時、都道府県、市町村という行政単位はあっても、独立した組織ではなく、その長も公選ではなく、中央の出先機関にすぎませんでした。かかる中央集権体制下で、国家権力は暴走し、国民の人権は侵害され、自由主義と民主主義は破壊されました。

 一方で、戦争放棄を宣言した日本国憲法は、第八章として地方自治の章を設け、地方自治を明確に位置づけ、保障するものとなりました。そこには、再び戦争をしないという国家的意思、国民合意と地方自治創設の狙いとがはっきり結びついていると考えます。

 そして、憲法第九十二条が、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と明定したことを受けて、地方自治法が一九四七年五月三日に、日本国憲法と同時に施行されたことの意味も大きいものがあります。

 ところで、憲法は地方自治の本旨、すなわち地方自治の基本原則の中身については明らかにしておりません。そこで、昨今、憲法の地方自治の本旨の明確化等を理由に、明文改憲を主張する動きがあります。

 多くの憲法学者、判例、通説は、地方自治の本旨として住民自治と団体自治の二つを挙げております。住民自治とは、地域住民の声を吸い上げて地域の政治を行うことを意味し、団体自治とは、中央から独立した組織としての地方自治体が地方政治を行う考えだと多くの憲法学者らが説示しております。

 社民党も、地方自治の本旨が、中央と地方で権力を分散し、地方は中央から独立、干渉を受けずに政治を行い、その一方で、地方自治体は中央政府に対して抑止力を働かせるとの考え方に基づくものであると考えます。

 地方自治の本旨は、住民や自治体の側からの分権自治の運動も積み重ねており、多様で豊かな自治の擁護と強化を求めている憲法上重要な概念であり、憲法第八章地方自治の明文改憲には反対です。

 ところで、自民党日本国憲法改正草案第九十二条一項は、住民自治と団体自治について、「住民に身近な行政を」と限定し、中央政府の政策に対する地方自治体の意見表明を封じております。日本国憲法第九十四条は、地方自治の権能として、財産管理、事務処理、行政執行の三つを定めておりますが、自民党日本国憲法改正草案第九十五条では事務処理権限のみになっています。

 また、自民党日本国憲法改正草案第九十三条三項は、国及び地方自治体は、法律の役割分担を踏まえ、協力しなければならないと定めております。この規定は、地方自治体は、国会が決める法律の定める役割分担に従って、事務処理のみをやればよいと言っているものです。

 このように、自民党日本国憲法改正草案の理念に基づく地方自治の明文改憲は、地方自治の本旨を否定し、地方自治体の権限を限定、縮小するばかりか、地方自治体の独立性、自主性、創造性をも否定するものです。地方分権の流れに逆行し、戦前の中央集権体制に回帰し、地方自治体の国の出先機関化をもくろむものであり、到底認められません。

 道州制の導入について、社民党は、地方自治の形骸化が一挙に進み、住民不在と格差拡大をもたらすことなどから、基本的に反対であり、慎重に対応すべきと考えます。

 広域的行政需要は都道府県の協力や広域連合で対応することが可能であり、現状の中央集権構造を残したまま道州制を導入しても、地方分権なき国主導の府県合併が進むだけということになりかねません。平成の大合併の二の舞となることは必定であり、まずは、平成の大合併が地域の切り捨てや疲弊の拡大につながった点をしっかり検証すべきです。

 仮に道州制を導入する場合でも、地方自治法改正で対応可能であり、明文改憲の上、条文をつけ加える必要がないことを申し述べ、意見表明を終わります。

森会長 これにて各会派を代表する委員の発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による自由討議に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、名札は戻していただくようにお願いいたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの発言時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過については、終了時間一分前及び終了時にブザーを鳴らしてお知らせします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

武正委員 民進党の武正公一です。

 きょうの審査会を迎えるに当たり、まず冒頭、会長所感にあるように、憲法審査会の目的は三つ、そして、発議権はあくまで国会にあること、また、当憲法審査会は与野党の丁寧な合意形成に努めることが確認をされました。特に、憲法審査会の目的三つは、憲法及び基本法制の調査、そして改正の発議、そして国民投票法制の審査と、当審査会の目的が三つであることを改めて確認したいと思います。

 また、当審査会を開く前の幹事会において、中谷自民党筆頭幹事は、五月三日の総理発言はあくまで自民党総裁としての考えを自民党に向けて示したもの、また、二〇二〇年施行について、衆議院憲法審査会の具体的スケジュール等は、本審査会自身が各党各会派の協議によって決定するものであり、これに縛られるものでないと冒頭発言がございました。

 五月十一日、幹事懇談会で、この会長所感と、懇談会から幹事会に変わりましたこの幹事会での冒頭発言をもって本日の審査会開催を決めた経緯があります。このことを改めて胸に、審査会に臨むことが必要であると考えます。

 また、何度となく、この場で、この審査会は政局に縛られないとの発言あるいは合意事項、指摘がございますが、憲法審査会幹事懇談会では、何度となく、それを理想としつつも、他の委員会同様、国会状況に左右されることを確認してまいりました。特に、三年前の内閣による憲法解釈変更、集団的自衛権容認閣議決定、また、二年前の安保法制強行採決、そして、その後、与党が国会状況を理由に一年五カ月間この審査会を開かなかったことも指摘をしなければなりません。

 さらに、民進党の案を出せとの指摘がありますが、憲法改正国民投票法の議論に至るまで、そして、一貫して、衆参三分の二以上の発議要件を考え、与野党できるだけ多くの政党が合意した案を発議する前提が、この審査会、そしてそれに至る特別委員会、調査会にあったことを指摘したいと思います。

 特に、その間の各与野党議員の発言から、野党第一党という文言が直接用いられているわけではないものの、憲法改正の発議は野党第一党である民主党、当時、を含めて行うという意識は、当時の憲法調査会及び憲法調査特別委員会のメンバーの間で明確に共有されていたものと解されるところでありまして、衆参の合同審査会で各党の案を、また衆参で協議をして、それを発議というようなこともこの間議論をしてきたということも指摘をしたい。その意味では、この憲法改正国民投票の合同審査会の規定等も作成しなければならないと思います。

 また、国民投票と国政選挙は、選挙の考え方、仕組みが異なることからも、それぞれ単独で行うことも、この審査会に至る議論、コンセンサスであったことも申し述べたいというふうに思います。

 国と地方のあり方については、民進党は、補完性の原理、基礎自治体を強化しつつ道州制への移行を目指します、その際、それぞれの地域の選択を尊重しますなどについて、昨年の参議院選挙の選挙公約でも触れております。

 特に、財政規律を憲法にという視点からは、二〇二〇年、プライマリーバランス、昨年の夏に比べ約三兆円悪化をした。その内訳を見ると、国が十三・二兆円のマイナス、地方がプラス四・九兆円ということを鑑みますと、国と地方の財政をあわせて財政規律を図る必要があるということから、道州制移行などの仕組みなどの見直しで打開を図ることも肝要かと思います。

中谷(元)委員 自由民主党の中谷であります。

 本日、先ほど各会派の御意見を伺いましたが、憲法改正で必要な事項として、地方分権、そして地方自治のあり方、これは公明党、維新、民進党から述べられましたけれども、この点におきましては自由民主党と共通の認識があります。

 戦後、地方における人口の減少と東京一極集中が進行し、市町村では、ふるさと離れ、過疎化、高齢化、これが一段と進んでおります。そこで、全国で地方創生の取り組みが進められておりますが、現行憲法には地方自治に関する規定や記述が少ないために、みんな霞が関を向いて行政をしており、我が国は依然として中央集権が強く、地方分権が進んでいないと感じております。

 フランスでは、憲法上の理念に地方分権があり、補完性の原理、地方財政に関する規定があります。ドイツでは、地方に関する財政規定が設けられ、税目ごとの割り当てまで細かく規定をされているほか、連邦裁判所を設け、自治権の侵害に対して司法的な救済を求めることができるという規定が置かれております。イタリアでは、地方の立法権の強化が図られ、地方分権の推進を重視した憲法となっている補完性の原理があり、アメリカには、地方自治にはホームルールという規定が認められております。

 いずれも地方分権を確立し、人口も経済もバランスある国となっておりますが、我が国も地方分権を推進していくための憲法改正を多角的で丁寧な議論を積み重ねて行っていく必要があるのじゃないでしょうか。

 このためには、まず、憲法前文に国と地方の役割を書くということが考えられます。

 地方自治の前提として、国の役割を必要最小限とし、地方自治体の役割を最大化する地方分権を確立すること、このことは、国及び地方自治体がそれぞれの責務を担いつつ互いに協力し、住民に身近な行政は地方自治体が優先して執行することを原則とするものであり、国家として、地方自治体が相互の自立と協力関係のもとに、自治体間の利害の対立を超え、ともに発展をするということを目指し、地方自治の担い手として地方自治の充実と発展に寄与していくという地方自治の趣旨を憲法の前文に明記すべきであります。

 その上で、住民自治、団体自治、地方財政について、自主的な財源確保や財政調整制度などについても憲法の条文で規定することを検討すべきだと考えます。

 また、緊急事態における地方自治体が機能できないとき、広域にわたるとき、迅速に国家が救援活動が実施できるように、国の緊急対処のあり方も憲法で規定することを検討すべきであります。

 次に、現行の地方自治制度においては、広域自治体は都道府県なので、都道府県単位の代表を出すということは大事なことであり、少なくとも一人の代表を選出することを担保すべきであります。要するに、合区制度、これの問題点であります。

 この三十年で高知県選出の衆議院議員は五名から二名になりました。また、参議院議員は徳島県と合区となり、その結果、住民が政治にアクセスしにくくなり、顔の見える民主主義が維持できなくなってきております。

 国からの地方交付税、補助金の配分、産業振興計画、警察、教育、医療、福祉、これは都道府県別の制度が設けられておりますが、都道府県議会も独自の権限を持っておりますが、このような独自性を無視して選挙だけは合区だとすると、県民の権益、権利、民意、これを的確に反映することができなくなります。人口の多い地域ほど国会議員が多くなれば、大都市などの人口の集中する地域ほど有利な政策が展開され続け、地方は不利な状況に置かれ、結果として、さらに大都市に人口が集中するという負のスパイラルに陥ることが懸念をされます。

 人口減少や少子高齢化といった我が国が抱える極めて構造的な問題に対処するためにも、東京一極集中を是正し、地方の活性化を図らなければならず、国全体のことを考えても、人口が流出する過疎県の切実な声が国政に最大限に反映されなければなりません。合区制度によって人口の少ない地域の代表が減るということで、この結果、投票率の減少、無効票の増加の弊害、これが明らかになってきております。

 アメリカの上院は州代表です。一票の格差は七十・七九倍、オーストラリアは十三・九四倍です。諸外国と比べても、都道府県から少なくとも一名の参議院議員が選出されるという制度は認められるのではないでしょうか。

 そのため、この対応として、例えば一人別枠方式で、各都道府県に最低でも一人の参議院議員がいるような制度を考えなければなりません。そのような制度を設けると、参議院が地方代表としての性格をあわせ持つことになります。参議院のあるべき姿については参議院が長年取り組んでおられるところでありますが、国会における議論の進展次第では、法改正では足りず、憲法改正が必要なことも考えられます。

 私は、地方分権や豊かな地方創生を実現するためにも、どのような手段をもってしても合区を解消すべきであると考えていることを最後に申し上げ、自由討議における私の発言といたします。

 ありがとうございました。

辻元委員 本日の審査会で、五月三日の安倍総理の憲法改正に具体的に踏み込む発言や期限を示されたということについて、複数の議員から意見が出ております。私も一言申し上げたいと思います。

 この審査会でも提起してまいりましたが、憲法改正には三つの原則があるのではないかと申し上げてまいりました。

 一つ目は、国民主権を実現する。国民の大多数がこの点を憲法を変えてほしいという点をしっかりと、あれば、この審査会で受けとめて、そして議論を進めていく。ですから、憲法を守らなければならない総理大臣がどこを変えたがっているかと顔色をうかがって改正を論じることはあってはならぬということを、一つ、まず申し上げたいと思います。

 そして、二つ目は、法律で対応できることは法律で対応する。

 そして、三つ目は、国論が二分されているような課題は憲法改正になじまない。これは、憲法調査会、憲法調査特別委員会、ヨーロッパの視察等でも、国民の統合ではなく、そのような憲法改正をすると、その結果、国民の分断を招きかねないということで、大多数の国民のコンセンサスを得られることを原則とすべきではないか。

 この三点を申し上げてまいりました。改めて提起をいたします。

 そして、安倍総理の発言ですが、これも私、何回も提起しておりますが、立憲主義というものをわきまえていられるのかどうか。

 今回の五月三日の発言でも、憲法は、国の未来、理想の姿を語るものですとおっしゃっています。しかし、憲法というのは、第一義的に、権力者の権力行使、これを縛るものであるというのが近代立憲主義の考え方ではないでしょうか。これに対して、国会等で安倍総理は、そういう考え方は、かつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考えだとも述べています。

 憲法改正を論じるに当たって、立憲主義の認識が違っているようでは、土台が違うということになりかねません。この点も、改めて本審査会では、憲法は権力者を縛るものであるという確認をしてまいりたいと考えております。

 そして、安倍総理は九条にも触れました。九条で、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が今なお存在している、自衛隊が違憲かもしれないなどの議論が生まれる余地をなくすべきである。と言うのであれば、安保法制のときに、九割近くの憲法学者が憲法違反だと言った、そのことは無視して強硬に採決をしておきながら、そして、自分の都合のいいときだけ立憲主義を持ち出す、これは御都合主義というのであって、私は、そういう姿勢で、憲法改正を論じる資格がないということも申し上げておきたいと思います。

 最後に、憲法改正の機は熟したという話。皆さん、そうお考えでしょうか。ここもよく考えていただきたいと思います。

 そして、さらに、国政選挙と憲法改正国民投票があたかも同時にできるような、これは菅官房長官が見解を示されましたが、これは、今までの十年以上にわたる憲法の議論の場での認識とは違います。

 第百六十三回国会で保岡委員が、今、自民党の憲法の責任者、当時の改正の国民投票法の提出者でした、こうおっしゃっています。「与野党が政権の維持、獲得を目指して相争う国政選挙と超党派で合意した憲法改正案に対する賛否を争点とする国民投票との性格の相違にかんがみれば、国民投票と国政選挙とは別個に行うことが適当である」「両者を同時に行うと、各政党は、国政選挙では対立しながらも、国民投票運動では連携しなければならないという場合が生ずるなど、運動をする側も国民の側も混乱してしまうおそれがあり、なお、ルールそのもの自体を決めることが非常に難しくなってくる」。

 次の第百六十四回国会では、今いらっしゃいます公明党の斉藤委員が、与野党が政権を争う国政選挙と、国会の三分の二以上の勢力が協調して国民合意を問う国民投票とは全く性格が異なるものであり、同時に行えば国民の混乱を招くとの観点から、両者の同時実施を念頭に置いた規定は設ける必要はない。これは立法者の発言でございます。

 そのほかにも、加藤勝信、今の一億総活躍担当大臣が、当時の提出者でしたけれども、憲法改正国民投票と国政選挙を同時に実施するということは想定しておりませんと、立法意思が示されております。

 このような議論の積み重ねを御認識なさっていないのか、官房長官がこの実施についての御発言もされている。これも、本審査会としては、しっかりと与党の筆頭には理解をさせていただきたいと思います。

 終わります。

船田委員 先ほどの赤嶺委員の御発言がございましたが、それに対しての私のコメントを申し上げたいと思います。

 赤嶺委員は、私が慎重派から積極派に心変わりしたのではないか、こういう御指摘をいただきましたが、私の心は変わっておりません。すなわち、憲法改正という問題は、主に、専ら国会議員が、お互いに議論し合って、成案を得て、国民に発議をするものである、そして、行政の長あるいは内閣に籍を置く者は、そういうことに対しては抑制的であるべきだというのが私の心でございまして、そこは微動だにしておりません。

 しかしながら、そろそろ憲法改正についての具体論をお互いに議論しようではないか、そういう時期が来たのであるという点については、これは総裁に言われるまでもなく、我々が自主的に判断をし、これから議論を前に進めよう、こういう点では私の考えは前に進んでいる、こういうことでございますので、まず御理解いただきたいと思っております。

 それでは、きょう、地方自治のテーマでございますが、私の考えを申し上げます。

 まず第一に、第八章、地方自治に関する記述は、明治憲法には規定がなかった、現行憲法で初めてそれが示されたということは、大変画期的な意義があったと思っております。

 しかし、残念でありますが、やはり、四カ条しか規定されていない、規律密度が低いということは否めないことであります。決して地方自治の自由度を奪ってはいけませんけれども、地方自治が一層進展するためには、記述の充実ということはぜひとも必要であると考えております。

 第二に、地方自治の本旨、これが曖昧な表現でありまして、やはり地方自治の基本理念ということをしっかり書き込む必要があると思っています。

 一つは、住民自治、これは地方自治をその性格から捉えた言葉である、それから、団体自治、これは地方自治をその仕組みから捉えたものである、この二つの言葉はやはり明記をすべきではないかということ。

 それから、二つ目には、公的部門が担うべき責務は、原則として、最も市民に身近な公共団体が優先的に執行するといういわゆる近接性の原則、それとあわせまして、市町村で対応できないことは都道府県、それでも対応できなければ国でといういわゆる補完性の原則、この二つの原則もやはり何らかの形で明記をすべきである、このように思っております。

 第三に、地方組織のあり方につきましても、基礎自治体プラス広域自治体ということの明記をすべきである。現在は、たまたま、基礎自治体は市町村、広域自治体は都道府県でありますけれども、将来、道州制が導入されたときにもこれは適用されることでありますので、やるべきであると思っております。

 第四に、地方自治をより充実、深化させるために、国と地方との関係性をやはり憲法の中でも整理しておく必要があるというふうに思っております。

 その一つは立法権限でありますが、地方は法律の範囲内で条例を制定する権利を持っているわけでありますが、それに加えまして、法律からの上乗せ、横出しなどを可能とする裁量権を地方に与えること。

 また、先般、参考人の御発言の中で、齋藤誠参考人が、地方自治体の司法救済制度、あるいは、大津浩参考人がおっしゃった対話型立法権分有という考え方も検討に値するものであって、こういったことを取り込むことによりまして、地方自治をより柔軟に、そして創造的で活性化させるということに資するものである、このように思っております。

 以上でございます。

細野委員 民進党の細野豪志です。

 会長、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 多くの方から御発言がありましたけれども、まずこの地方自治について我々が認識しなければならないのは、やはり憲法のわずか四条文という規律密度の低さだろうというふうに思います。

 国と地方は対等だといいますが、憲法上、国会について二十四条文、内閣は十一条文、財政は九条文、これだけの充実した記述があるのに対して、わずか四条文というのはいかにも内容が薄い。これをどう改正するかということを前向きに議論すべき時期が来ているというふうに考えます。

 多くの御発言はありましたけれども、私、条文に基づいて、私の思うところを述べさせていただきたいと思います。

 まず、九十二条ですが、地方公共団体のあり方について、「地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」というふうに書かれています。これは、憲法が最も重要な地方自治の原則について法律に丸投げをしている規定というふうにみなさなければならないというふうに思います。

 やはり補完性の原理、これは、既に地方分権一括法でこういう書き方がなされております。住民に身近な行政はできる限り身近な地方自治体に委ねる。これが憲法上も極めて的確な条文として該当し得るのではないかというふうに思いますので、補完性の原理について書き込むこと。さらには、住民自治、団体自治についても、やはり九十二条を改正して書き込むべきであるというふうに思います。

 次に、九十三条ですが、まず問題提起として私の方で申し上げたいのは、地方公共団体というこの言葉が極めて曖昧であるということであります。これは政府を指すのか、議会も含めるのか、もしくはエリアのことを指しているのか、極めて曖昧です。

 そこで、定義を明確にすべきだというふうに思います。地方自治体ということを述べた上で、地方自治体には立法機関及び地方政府を設置すると書くのが適切だと考えます。やはり地方にも政府があるのだということを明確にすることによって、条例や課税権の問題にも必然的に議論が波及するというふうに考えるからであります。

 次に、地方自治体の種類であります。

 ここに道州制を書くべきではないかという議論も先ほどありましたが、ここは地方の自由度をある程度許容すべきではないかというふうに思います。すなわち、地方自治体の種類については法律でこれを定めるとした上で、地方自治体の意思というものを尊重するという書き方をしておけば、道州制も許容し得るし、また、例えば政令市が特別自治市に移行するような場合についても、住民投票によって移行可能であるというふうに私は考えます。

 また、もう一点、重要な問題として我々が考えなければならないのは地方議会のあり方です。

 先日、高知県の大川村が町村総会を開く、地方議会を解散するという話が出てまいりました。これは地方自治法で認められておりますので可能ではありますが、憲法上はかなりぎりぎりの措置だと私は思います。

 また、大川村はわずか四百人ですから住民総会はできますが、例えば数千人の村であるとか、また一万人程度の町であるとか、そういったところで議会改革をする場合に、私は二元代表制はかなりもう無理があるのではないかというふうに思っておりまして、例えば議院内閣制のような制度を導入するということは憲法上認められていません。したがって、地方自治体のそれぞれの実情に合わせて議会を柔軟にやり得る書き方にすべきだというのが私の考えです。

 そもそも、考えてみれば、一千万人を超える東京都から数百名の村まで一律にやるのは、やはり無理があるということをあわせて申し上げたいと思います。

 時間がなくなりましたのであとは省かせていただきますが、課税権さらには条例制定権の拡充に加えて、住民投票についてもしっかりと位置づけるべきであるというふうに考えます。

 最後に一言申し上げたいのは、私も地方自治について具体的な提案をいたしましたが、残念ながら、余り反応はありませんでした。したがって、各党が、きょう前向きな発言がありましたので、しっかりと議論を進めていくことを期待したいというふうに思います。

 思い起こすべきは、自由民権運動の時代、明治憲法の時代に、五日市憲法であるとか植木枝盛であるとか、いわゆる私擬憲法が地方から出てきたことは特筆すべきだというふうに思います。

 先日、愛知県の大村知事が、地方自治こそ憲法改正の主題であるべきだという御発言をされましたが、地方がしっかりそういう声を上げ、国会は受けとめて各党で議論を進め、しっかりと八章についての改正が前に進むことを期待しておるということを最後に申し上げて、私の発言を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。

 先ほど来、五月三日、安倍総裁が新聞等のインタビュー記事等で憲法問題について述べられたことについて、いろいろと問題提起がありました。しかし、これはあくまで自民党総裁として国会外で自民党に向けて述べられたものでありまして、何が問題なのか、さっぱり、理解に苦しむところでございます。

 これについていろいろ述べたいんですけれども、きょうのテーマは国と地方のあり方についてでありますので、このテーマに即して緊急事態と地方自治について私見を述べさせていただきたいと思います。

 緊急時における国と地方のあり方については、当審査会の三月十六日の自由討議及び三月二十三日の参考人質疑において議論がありましたが、緊急事態においてこそ現場が極めて重要となってくるわけでありまして、したがって、国から基礎自治体に権限をおろすことについては当然のことであり、これについては異論がないと思います。

 東日本大震災の際には、想定外のことがいろいろと重なり、そうした中で、基礎自治体に権限がなかったがために、権限を有する上位の行政主体との連絡調整に膨大な労力が割かれ、現場における対応が滞ったケースが見られたところでございます。

 言うまでもなく、こうした基礎自治体に権限を付与するということは、首長が与えられた権限を的確に行使できるということが当然の前提となっています。しかし、この審査会の議論でも指摘されましたように、実際には、首長が、与えられた権限があっても自信を持って行使できない、あるいは、この権限の行使にちゅうちょしてしまうことがしばしば見られるところでございます。

 確かに、法律レベルでは、災害対策基本法を初めとした多くの法律に首長の権限が明記されています。そこで、こうした法律で緊急時における対応は可能と言う人がいます。しかし、緊急時には想定外のことが起こり得るわけであり、また、法律で以上に人権を制限することは、それこそ立憲主義に反すると言えるのではないかと思います。

 さらには、法律レベルで首長の権限が明記されていたとしても、実際に行政訴訟が起こされたときに被告となるのは現場を預かる市町村長や知事であり、そのような法律を制定した国会や当該法律の所管官庁である大臣や中央省庁ではありません。自治体が訴訟リスクを恐れて、たとえ法律で用意されている権限であっても、憲法上の明確な根拠がない場合には、その権限の発動にちゅうちょすることは容易に想像できることであり、実際、東日本大震災時の、既存の法律があったにもかかわらず必ずしも役立たなかったことを私たちは経験したところでございます。

 よく、法律において、防衛、治安、防災などの権限が整備されているのだから、その法律を使いこなせば、あらゆる事態に十分に対応可能で、憲法改正の必要はないという意見があります。あるいは、緊急時における人権制限も、公共の福祉による制約で説明できるとか、あるいは、自然権として、平常時の憲法の例外として必要な措置がとれるなどといった意見もあるところでございます。

 しかし、憲法に明確な根拠を持つことなく、法律のみに基づいて人権の制約などを行うことは、違憲訴訟が続発することを招きかねません。緊急時には平常時の想定を超える事態が発生することが考えられるところであり、緊急時に国や自治体が行える権限を憲法上明記しておくことこそが立憲主義にかなうと言えるのではないかと思います。

 これらの点などを規定する緊急事態条項の設置については、戦前のドイツがワイマール憲法下でヒトラー独裁になったのと同じように独裁国家になるなどといった反対の意見もあります。しかし、これは全くためにする意見としか言いようがなく、もしそうであるなら、こうした規定が現在世界各国にあるわけでございまして、そうした多くの国は全て独裁国家ということになってしまいます。

 緊急事態条項に反対する一部のマスコミや学者の中には、二十年以上も前に防犯カメラが街頭に設置され始めたときに、監視国家になる、あるいは、プライバシーの侵害で憲法違反になるなどといった反対の声を強く上げた人がいます。

 今、当時よりはるかに多くの防犯カメラが街頭に設置されていますが、当時反対した一部のマスコミや反対の学者たちが今防犯カメラに強く反対の声を上げているという話は、寡聞にして聞いたことがありません。防犯カメラが大変に効果的ということがわかってきたからだと思います。

 いずれにしろ、緊急事態条項は世界の憲法の常識で、日本も憲法上明記する必要が当然あると思います。

 しかし、その場合でも、平時においても首長がその有する権限を的確に行使できるよう、国と広域自治体、基礎自治体が連携して下支えをしておくことが重要で、そのような平時の緊密な連携があってこそ、緊急事態における的確な権限行使が可能になるということを指摘させていただきまして、私の発言を終わります。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 五月三日の改憲発言以来、安倍首相が改憲議論の加速化のために憲法審査会のあり方まで指示をしているのは、まさに三権分立を脅かすものです。

 首相の改憲発言は、日本国憲法の非軍事、平和主義という根幹に風穴をあけようというものであって、断じて認められません。

 私は、もう一つの安倍首相発言である教育の無償化についても意見を述べたいと思います。

 安倍首相は、三日の読売新聞のインタビューで、「七十年前、憲法が普通教育の無償化を定め、小中学校も九年間の義務教育制度が始まった。」「高等教育も全ての国民に真に開かれたものとしなければならない。」と述べ、高等教育の無償化のための憲法改正に言及しました。

 しかし、教育の無償化は、憲法に書き込めば実現する、あるいは、憲法に書き込まなければ実現しないというような問題ではありません。

 そもそも日本国憲法は、第二十六条一項で、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と明記しています。この権利の実現のための教育条件の整備こそ、政治に求められていることです。

 しかし、現実は、家計の経済的状況によって、つまり、お金がなければ教育を受けられない状況がつくり出されています。

 小学校や中学校の義務教育は無償とすると憲法二十六条二項は明記しています。

 しかし、実態としては、無償とはなっていません。

 小学校や中学校では、制服や学用品の購入費、修学旅行費、そして給食費やあるいは給食未実施によるお弁当の持参など、いまだに、修学のために多くの負担を家計に強いています。そのため、クラスで一人だけ修学旅行に行けない、お弁当を持ってこられないためにお昼の時間に教室にいられない、部活にも参加できないなど、子供たちの孤立化を招き、発達に悪影響を及ぼしているのであります。

 まさに、全ての国民のひとしく教育を受ける権利が侵害されている。憲法と乖離したこういう状況こそ、一刻も早く改善するべきです。

 その点で何よりも指摘しなければならないのは、この間の安倍自民党政権の教育に対する姿勢であります。

 多くの国民の運動、要求により高校授業料の無償化が実現しましたが、それを廃止し、所得制限を設けたのは、ほかならぬ安倍政権だったではありませんか。自民党の皆さんは、この判断が間違いであったとお認めになるのですか。

 さらに重大なのは、高等教育が全ての国民に真に開かれていない状況をつくり出してきたのは、低過ぎる高等教育予算と高学費という政策を推し進めてきた歴代自民党政権だということです。

 そのもとで、今や、国立大学の初年度納付金は八十一万円、私立大学は百三十万円にもなります。この高学費が進学を諦める大きな要因になっています。

 また、進学をしても、多くの学生がアルバイトに追われ学業に励めず、本来、生活補填が目的のはずの奨学金を学費の支払いに充てざるを得なくなっています。さらに、有利子奨学金の拡大と延滞金、サラ金まがいの取り立てが学生や若者たちを苦しめています。

 この政策を転換し、学費の引き下げ政策に踏み出すことこそ政治が果たす役割だと、この間、私たちは繰り返し指摘してきました。

 しかし、安倍首相も松野文科大臣も麻生財務大臣も、一言たりとも学費の引き下げには触れなかったではありませんか。にもかかわらず、憲法を変えるという目的のために高等教育の無償化を書き込むなど、余りにも御都合主義だと言わざるを得ません。

 結局、安倍首相の真の目的は、教育の無償化をだしに九条を変えたいというものであることは明らかです。

 これに対し、やり方がひきょうだ、国民投票するお金があるなら奨学金へという批判が上がったのは当然であります。多くの世論調査でも、高等教育の無償化実現は憲法の問題ではないという意見が多数です。政策の転換によって早急に無償化にかじを切るというのが国民の願いです。

 無償化実現のために必要なことは、憲法を変えることではなく、今すぐでも教育予算を抜本的にふやし、学費の引き下げを行う政策判断をすることであると述べて、私の発言を終わります。

太田(昭)委員 第八章に四条しか地方自治がなく、抽象度が高い、そのために国がどうしても優先してしまうという憲法になっているということであるのは、指摘のとおりだと思います。

 本旨とは一体何であるかとか、あるいは条例制定権ということについても財源についても、また道州制や東京一極集中というものをどうするかということについて、きょうも論議がされていて、余り違和感は私はありません。

 ただ、今、緊急の課題というか、一番困っているというのは、東京一極集中とともに、全国の人口減少、過疎化の進行ということの中で、過疎の町はどう生きていくのか、地方というのがどうやって生き抜いていくのかということだと私は思います。

 人口減少、超高齢社会、そして災害が非常に多くて、地方自治体はそのことで本当に悩み、苦しみ、そしてそれに対応する人がいない、こういう状況にあろうというふうに思いますし、グローバリゼーションの進行の中で、世界の都市間競争が激しくなってくるということにどうするかということが一番大事なことだし、またICTの加速度的な進展ということも現在大きな課題であろうというふうに思います。

 その中で、距離は死に、位置が重要となる。ICTの進展を初めとして、今、世界の中での、グローバリゼーションの中での競争とともに、この日本という社会の中で距離が短くなり、距離は死に、位置が重要となるという言葉があります。私は全くそのとおりだと思います。

 ICTの振興ということもあります。それから、国が、安保や金融や外交ということもありますけれども、経済という点でも一体化する。マスコミということの中で、日本国民が意識としても一体化をし始めてきて、情報というものが境界を取り払ってきているということがあろうと思います。

 そこで、距離は死に、位置が重要ということの位置というのは、地方にとりましては個性ということだと思います。それぞれの地方の都市が個性をどう発揮するかということが実は大事で、そのことを背景にして、国交大臣のときに私は、二〇五〇年を目指しての、日本の「国土のグランドデザイン二〇五〇 対流促進型国土の形成」ということを言いました。

 そして、個性ある都市というものをそれぞれコンパクトシティーで目指しながら、お互いに個性が見つけられて発揮されるがゆえに、そこに物理学で言う対流現象というものが起きてくる、連携革命ということになってくるということをして、それぞれの地方創生がどういう形で展開されていくかということをビジョンを示したわけであります。

 その中で、経済の一体化とか意識の一体化の中で、私は、道州制ということについては、進めてきた、先頭に立ってきたうちの一人でありますけれども、その前段として、あるいは憲法上だけではなくて、制度としてそういうことを志向するということは大事であるけれども、それぞれの、道州なら州ということになった場合でも、そこに、経済というものを牽引する中核都市、あるいは都道府県における中核都市というものが牽引するに足るようなものになるかどうかというのが実は大事で、それがしっかり行われた上でしか、道州制というものは恐らく形だけに終わってしまうということは、私は大きな問題だ。

 だから、今大事なのは、それぞれの地方において、道州なら道州ということを想定した上で、あるいは都道府県という中で、経済的に、あるいは文化的に、観光という面でも牽引できる都市というものをどうつくるかというところに全力で集中していくということが、私は、その仕組みをつくる前に、緊急事態であろうというふうに思っています。

 そういうことでは、五十年前に新幹線が走ったときに、新幹線はなぜ速いかということをよく言ったわけでありますけれども、先頭の車両が引っ張るだけでなく、それぞれの車両にエンジンがあるからこそ新幹線が速い、こういうことを言ったわけであります。道州制とかさまざまなことを想定する前提として、牽引するエンジンとしての地方都市というものがなければ、それは絵に描いた餅にすぎない、今注力すべきはその一点にあるということを申し上げて、論述を終わります。

根本(匠)委員 自由民主党の根本匠です。

 本日のテーマは国と地方のあり方であります。自由討議とはいえ、議論が拡散しないように、私も、国と地方のあり方に絞って意見を申し上げたいと思います。

 現行憲法は規律密度が低く、国民が共有できる理念を書き加えるべきとの意見があります。特に地方自治の章は四条しかなく、自民党の憲法改正草案でも、地方自治の本旨の中身を記述しています。これまでの憲法調査会でも、国と地方公共団体の基本的なあり方や、国と地方政府が対等の立場にあること、地方公共団体の課税自主権などを憲法に追加すべきといった意見が出されています。

 他方、日本では、憲法と地方自治法や地方財政法などの実体法が一体となって地方自治を保障してきました。そのもとで、地方分権改革の実施などにより、国と地方公共団体は対等の立場でそれぞれの役割を適切に果たしています。

 一般的に、行政サービスは国が大枠を示し、自治体が住民のニーズを酌み取って自主的、主体的に実行しています。地方自治体だけでは対応が難しい大災害時などには、国が地方自治体を強力に支援しています。また、地方交付税などの財政調整の制度によって、全国どこでも一定の行政サービスが提供されます。

 規律密度が低い今の憲法下でも、憲法と実体法が一体となって体系を構成し、地方自治の本旨を実現してきました。むしろ、規律密度が低いがゆえに、実体法を改正することで、時々の課題に迅速かつ柔軟に対応できた面もあるのではないでしょうか。

 一方で、地方自治は、憲法の規律密度が低いにもかかわらず考慮すべきことが多いため、観念的な議論になりがちです。地方自治の目指す姿、憲法への書きぶりについても、党派ごとにその考え方が大きく異なるため、一致点を見つけるのは難しいと考えます。現行憲法では対処できない不都合を見つけ、それに対応するための議論をすることが建設的ではないでしょうか。

 では、どのような不都合があるか。

 私は、都道府県が憲法上位置づけられておらず、参議院選挙に合区が導入されていることだと考えます。昨年の参議院選挙から、徳島と高知、鳥取と島根で合区が始まりましたが、鳥取と高知の投票率が過去最低であったように、合区となった地域では政治への関心が薄れています。

 今後、都市と地方の人口格差が拡大すれば、さらに合区が広がって、地方の声は国へ十分届かなくなるおそれがあります。民主主義は危機とも言える状況になるでしょう。

 県は明治以来定着してきた広域自治体の制度で、日常生活から災害時まで大きな役割を果たしています。県民感情という言葉があるとおり、地域の一つのまとまりとしても確立しています。全国知事会が毎年国に提案をするなど、県が行政に物申す仕組みもできています。

 日本は連邦制国家ではありませんが、県は、国政、地方自治の両面で、連邦制国家の州に相当するような重要な位置を占めています。その枠組みを無視する合区制度は適切ではないと考えます。

 憲法の制定過程で、金森憲法担当大臣は、地方自治は国家の政治と相伴うものであり、共同して全般の国の政治が動いていくという認識を述べています。

 参議院選挙では、国民が投票権を行使する単位として、全国区とともに、住民に身近な広域自治体としての県を地方区として位置づけてきました。

 行政サービスについては、関西広域連合のように、サービスを効率的、効果的に提供するために複数の県がまとめる広域連合という仕組みがありますが、他方、合区を設置することは、投票のためだけに都道府県を合併するようなものであり、地方区の本質が変わってしまいます。

 合区は憲法が要請する一票の価値の平等を図るための制度です。つまり、合区を解消するには、都道府県を憲法上位置づけるとともに、国政選挙の区割りにおいて県代表という要素も考慮すべきであることを明記すべきと考えます。

 以上で私の発言を終わります。

古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。

 複数の委員から、五月三日、民間憲法臨調が開催をした、安倍自由民主党総裁メッセージについての言及がございます。

 ここで、私は、この発言のポイントだけを申し上げた上で、考え方を申し述べさせていただきたいと思います。

 まず、自民党総裁安倍晋三というキャプションでしております。

 そして、憲法を改正するか否かは国民投票によって主権者である国民が決めるものなんだ、発議は国会がする、だからこそ、私たち国会議員は大きな責任をかみしめるべきだということが一番重要な部分であります。

 そして、具体的な、例えば憲法九条の問題、教育の問題についても言及をされていますが、あくまでもこれは、国民的な議論に値するのであろう、このほかにも未来を見詰めて議論していく課題はたくさんあるでしょう、こういう趣旨の発言をしているにすぎません。

 また、二〇二〇年の問題についても、やはり我々は、立法府としての責任を果たすべく、国民的な議論が深まっていくことを切に願います、強く願っています、こういう趣旨でございまして、私は、この発言については何の問題もないというふうに思っております。

 そこで、きょう冒頭に中川正春議員の方から、会長所感が申し述べられましたが、それだけでは不十分であって、審査会の総意に基づく意思表示が必要だという趣旨の御指摘がありました。また、議長にも注意を促すべきだという話がございましたけれども、今のこの発言の趣旨からして全くそういう必要はなく、冒頭の会長発言で十分にその趣旨は理解されているものというふうに思います。

 その上で、きょうは地方と国との関係ということでございまして、先ほど細野委員からも御発言がございましたが、細野委員は、去る四月に月刊誌において憲法改正の考え方を発表されておられます。私は、非常に傾聴に値する中身だというふうに思っています。

 特にその中で、例えば地方議会は、御承知のように、法律の規定によって延期が三・一一のときできました。しかし、憲法上の規定に基づく国会はできません。そこで、百八十日を超えない範囲内で、各院の議決により延長をすべし、そして、三分の一条項がございますので、これは緊急事態ですので人が呼べないときがあるから、これも適用除外にすべきであるという趣旨の発言、私は、これは非常に尊重すべき提案だというふうに考えております。

 一方、きょう御発言のあった中川委員の方は、こういった危機状況の中でも現行の法律で対応は可能だという趣旨でございました。

 先ほど平沢委員からもありましたように、私もこの会で、この審査会で何度も指摘をされていますが、やはり、憲法上の居住権の自由、財産権の自由等々があって、知事自身が緊急指令を発令しなかったという経緯がございます。だからこそ、憲法の中にもしっかりそれを反映していく必要があるというふうに考えて、これはもう以前に発言しておりますので多くは申し上げません。

 改めて、やはりこうやって、例えば国会議員の任期の問題でも、民進党の中でも細野委員はそういう具体的な提案をされたというようなことは、非常に私はこの審査会を活性化していく意味ではいい提案だというふうに思いますので、ぜひ中川委員におかれましても、今、細野委員が御提案をされているこういった問題についてどういうお考えなのかを聞かせていただければありがたいなというふうに思います。

 以上です。

古本委員 民進党の古本伸一郎でございます。

 今も自民党から意見が出ているわけでありますけれども、恐らく主権者の皆様は、誰が発議するか、つまり、今の院の構成をしているメンバー、自公政権のもとで誰が発議するのか、同時に、何を提案してくるのかを見詰めておられると思います。

 その意味では、今、果たして九条のことについて機が熟しているかどうかというと、当審査会では少なくとも九条で議論したという記憶はございませんので、そうであるならば、そのことの議論を加速しなければ、問われたときに国民は面食らう、こういうことなんだろうと思います。

 さて、本日の国と地方のあり方についてでありますけれども、過般の参考人の皆様から大変有益なお話を伺いました。そこで改めて明らかになったことをおさらいしながら、意見を述べます。

 まずは、自民党代表者、公明党代表者から、上川先生、遠山先生、それぞれございましたけれども、立法権は国会に置きながら、国が地方に配慮をする仕組み、要するに、国と地方の協議の場、実は手前どもが与党のときに生み出した仕組みだと承知しておりますけれども、加えて、公明党からも、財政の自立という観点から遠山先生からもございました。課税自主権というお話も踏み込んでございました。これはまことに大賛成でございますし、中川先生からもあったとおりでございます。

 ところが、その際に壁になるのが八十四条の租税法定主義ではないかという問題提起をしたいというふうに思います。

 先般、例に引きましたゴルフ場利用税一つとってみても、やはりゴルフ場立地を誘致するために大変努力をした市区町村の皆様からしたら、何でなくなるんだとこれは思うわけです。あるいは、法定税率をどうやっていじるかという話。固定、実は法定税率でありますけれども、条例で可決すればいじれますが、自治の方からさまざま、財政調整、基準財政需要を計算する上でいじめられる実態があるわけでございます。などなど考えますと、やはり租税法定主義、八十四条をどう議論していくかということが、今後地方が自主財源を手にするという上で大変鍵を握るというふうに思います。

 実は、ある自治体では、法人住民税の税源移譲、国税化に伴い、市民平均で二万円から三万円、平成三十一年、予定どおり消費税が一〇%に引き上がった暁には、税源が、ちょっと言葉が乱雑ですけれども、召し上げられる予定の自治体もございます。では、その自治体の長なり自治体の議会の議長なりが衆参の両院で発言する機会があったかというと、残念ながらございません。

 そこから申し上げますと、二点目が明らかになったわけでありますけれども、四十三条の国会議員の資格だと思うんですね。

 私は改めて、中核市長や中核議会議長、あるいは知事さんでもいいです、こういった自治体政治の最前線に立つ方が、参議院の比例枠、あるいは衆議院の比例枠でもいいですけれども、シートを持つ、座席を持つということは一つの解答ではないかというふうに思います。その際、憲法四十三条が壁になるという参考人の意見もございましたので、ぜひ当審査会でも積極的な議論を求めたい、このように思うわけでございます。

 最後に、合区の話も上川先生からございました。

 徳島、高知をせっかく、ある意味県民の痛みが伴う合区をしても、愛知、東京でどんどんまた議席がふえるという、本当にわけのわからない事態が生じています。これはひとえに、一票価値の平等化をどう評価するかにすぐれて答えがあると思っておりまして、カリフォルニアでは三千万人で一議席、ワイオミングでは六十万人しかいないのに一議席であります。

 だとするならば、思い切って一県一議席という比例枠の概念、これは衆参どちらでもいいと思いますけれども、それを導入した暁には、当然に衆参の役割の見直しという、一票価値の平等化に反しますので、その議論も踏み込む覚悟を持って議論することにより、実は、地方が自主財源をいかに確保するか、そして、そんなゴルフ場利用税を召し上げるぞみたいな話にみんな一同賛成みたいな無理やりな話よりも、そこの市長や知事などが直接議論に参加できる中で決めていく、そのための参加する仕組み、国会議員の選び方に踏み込んだパッケージでの議論をするという意味で、以上二条項の問題提起をいたしました。

 以上です。

細野委員 細野でございます。

 発言の機会を二回目いただきまして、ありがとうございます。

 古屋先生の方から、非常に私の出した提案を前向きに御評価いただきまして、過分なお言葉をいただいたというふうに思います。

 さまざまな緊急事態において国政選挙を行い得ない状況であるにもかかわらず、憲法上の規定によって行わなければならないということになるのは、これは国家としては避けなければならないというふうに思いますので、その議論がぜひ前に進むことについては期待をしたいというふうに思います。また、必要性についても極めて高いというふうに考えています。

 一方で、中川委員と私の発言の矛盾でございますけれども、中川委員の方からは、国家緊急権を憲法に明記する必要はないという発言でありまして、私の提案は、国家緊急権を提議したものではありません。自然災害など選挙が行い得ない事態においては先延ばしをできるということを書いたものですから、そこは整合性はあるというふうに思います。

 逆に、きょう御発言を必ずしもいただかなくてもいいんですが、自民党の皆さんに考えていただきたいのは、国家緊急時における私権制限というのは具体的にどのようなものかということなんですね。

 私も、東日本大震災を経験いたしましたので、私権制限は明確に必要だという立場です。

 例えば、憲法二十二条の職業選択の自由。あの緊急時において、自衛官や東電の社員が職業選択の自由を行使してどんどん現場からいなくなったら事故対応はできませんでしたので、これは制限をしなければならない。また、憲法二十九条の財産権。これも、私有財産を放棄して避難をしていただかなければならないようなケース、さらには、有事において、例えば自衛隊が行動するのに私有地を使うようなケース、これも制約が必要であるというふうに思います。

 ただ、注意すべきは、憲法二十二条、さらには二十九条には、条文の中に明確に、「公共の福祉に反しない限り、」「公共の福祉に適合するやうに、」という文言があるわけですね。つまり、この財産権と職業選択の自由については、憲法上認められておりますので、法律によって明確に制限が相当程度できるだろうというのが私の理解なんです。

 したがって、自民党の皆さんが、国家緊急時において私権制限が必要であり、私もそこまでは認めます、憲法改正が必要なというふうにおっしゃるのであれば、二十二条、二十九条以外の人権において制約が必要だということならば、御説明をいただきたい。

 さらには、二十二条、二十九条の公共の福祉による制約を超えて、何か特別に必要なという事情があるのであれば、そこの御説明をいただかないと、国家緊急権が必要であり、さらには私権制限をするのであるという根拠にならないということをぜひ御理解いただいて、そういった形の議論が前に進むことを期待したいというふうに思います。

 以上です。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 まず冒頭に、五月三日の総理発言が大変話題になっております。先ほど古屋先生から発言がありましたけれども、私からも申し述べたいと思います。

 私も、これが何が問題になっているのか全くわからなくて、憲法とは国民のものであり、国民主権のもと、主権者たる国民の皆さんに向けて、自民党総裁として国民的議論を喚起したいという意味でメッセージを発したこと、これは当然のことであり、また、自民党の総裁が自民党所属議員に対して検討を進めろということ、これを発したことは、これはある意味当たり前のことであって、もし憲法違反の指摘があるとするならば、総理大臣が国家の機関として、これを立法府に対して期限を切って審査しろという命令を出したということであれば、これはもう憲法違反の問題になるんですが、そうではなくて、国民的議論を喚起しましょう、そして、自民党の議員、もっと具体的に進めてくれというメッセージを発したこと、これ自体は別に憲法違反でも何でもないと思っていますし、ある意味当然のことです。

 実は、この話、総理に先に言われてしまったんですけれども、総理が言わなければ、私は、憲法審査会が四月に開かれるとき、これを皆さん方に自由意見の中で問題提起をしたかったと思っております。よく足立委員なんかは、具体的な案を各党出してくれとおっしゃっておられる。まさに私も、具体的な案を出して、これをみんなで審査する、こういう会でありたいなと思っております。

 もちろん、さまざまな調査をやって、問題点、こういった意見交換というのは重要でございますけれども、ずっと長い歴史の中でさまざまな議論が交わされてきたと思います。そういったものを踏まえて、そろそろ各党、我が党も含め、これは自民党はやっていないじゃないかと言われたら、私も党内でその話はさせていただいております。具体的な案を出して、それをこの審査会に出して、そして、少数会派の方々も含めて幅広い御議論、御意見をいただいた上で、この国会としての、立法府としての発議をしていきたい、このように思っております。

 およそ仕事というものにスケジュールを決めずにやるということは私はなかなか理解ができないんですけれども、これも、二〇二〇年と期限を何か明示したということが問題になっているんですが、私にしてみれば、これはそれでも遅いと思っているんですね。

 御承知のように、ここにおられる衆議院の皆様方の任期は二〇一八年でございます。では、二〇二〇年までに結論を出しちゃだめだということは、皆さん方は、次も再選されて、そのときに結論を出すということなのか。私は、二〇一八年までに我々が責任を持って発議をする、もしくは、発議しないんだったら発議しないという結論を出す、こう言うべきではないかと思っているんです。ぜひ、自民党も含めて具体的な案を出して、議論を加速させていただきたいと思っております。

 そして、本日の本題でございます地方自治の問題でございます。

 もう各委員の方々から出ていることは重複いたしますけれども、地方が固有の問題について地方独自のルールを定めること、これはぜひやっていくべきであるし、また、地方の自主財源を確保すること、このことも重要だと思っています。これは各委員の方々からも出ている意見です。

 そこで、出ていない意見として、権限移譲、財源移譲の話は出ているんですけれども、地域間格差の是正、これをどうするのか。国の財源を地方に移譲するとか国の権限を移譲するだけではなくて、力のある自治体というのは、人もいるし、知恵もあるし、ノウハウもあって、どんどん発展していくんですが、力のない、人がいない、そういった自治体が、どんどん権限移譲を進めていけば格差が広がっていくということであれば、この自治体間格差を是正するような仕組みが必要ではないかと思っております。

 そこで、これをどうやってやるのか。法律でやるのか。法律でやった場合には平等性の問題がある。この県だけ力を入れて、この県には入れないということでいいのか。これを憲法に明記して、均衡ある国土の発展を目指すための調整をできる、そういった地域を超えた調整ができる機能を憲法に明記することが必要ではないかということを指摘させていただいて、私の意見とさせていただきます。

 以上、ありがとうございます。

森会長 予定の時間もありますので、この自由討議における御発言は、現在名札を立てている方までとさせていただきます。それでもどうしてもという方は、別にそれまで妨げるものではありませんが。

中川(正)委員 二回目の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 さっきお話が出たものですから、改めて、国家緊急権の話と、もう一つは総理の発言についてお話をしたいと思います。

 国家緊急権については、さっき細野議員が整理をしたとおりでありまして、これからの議論の中でさまざまに、いろいろな選択肢、どういう形で国家権力というのを緊急時に使い、あるいは、どこで定義をし、どういう形でそれを運用したらいいのかというのは議論の余地はあるというふうに思います。しかし、決めつけて、憲法で国家緊急権ありきというふうな議論はやるべきではないという意味で、必要はないということを申し上げました。我々の中の整理というのは、さっき細野議員から提起をされたようなことでございます。

 次に、総理の発言なんですが、後づけで幾らあれは自民党の皆さんに対してのメッセージだと言っても、国民にとっては総理大臣としてのメッセージなんです、これは。

 特に、総理大臣ということだけでなくて、私たちのこの審査会に対してのメッセージであるのだというふうに思うわけです。だから、それを受けて、その後、恐らく会長初め理事の皆さんというのは総理の意思をそれこそそんたくして運営を進めてくるんだろうというふうに思います。

 その中で、私たちの懸念は何かというと、これまでこの審査会あるいは調査会、それぞれの歴史の中で、コンセンサスを重んじていこう、もっと具体的に言えば、憲法改正原案というのは、それぞれの党が持ち寄って対立の構図をつくるんじゃなくて、私たちの中からコンセンサスをつくりながら原案を統一したものにしていくんだ、そういう統合の姿勢があって初めて憲法改正というのは国民に受け入れられるということ、これが伝統であったはずでありますし、会長も就任当時そのように言われました。

 実は、今回の安倍総理の発言というのは、この調査会のこれまでの歴史とそれから前提というものを真っ向から否定して、与党は与党で原案を出してきたらいいじゃないか、その中で多数決でいこうよというふうな、そういう形に変わっていく可能性がある、あるいはそういうメッセージを発しているんじゃないかということを私たちは懸念をしております。

 そういう意味で、改正原案をどういうプロセスでつくっていくのかというのは、会長、もう一度改めて基本姿勢というのをはっきりさせた上で、そして進めるべきだというふうに思うんです。我々の議論の原点に返るといいますか、ということが必要だということだと思うんです。

 そういう形で、今回の安倍総理の発言というのはこの審査会にも混乱をもたらしたということであります。そのことを、会長、一つ提起をしたいと思いますので、ぜひ、整理をした上で、もう一回原点に返って、これからの議論の仕方というのを会長自身で語っていただきたいというふうに思います。

森会長 私に対する御意見もございましたので、私から一言申し上げますと、ぜひきょうの冒頭の私の発言を議事録で読み直していただきたいと思います。

 次に、中谷元君。手短にお願いします。

中谷(元)委員 先日の安倍総裁の発言について御指摘がありましたが、これは総裁自身も、自民党総裁の安倍晋三ですということを断って発言をしております。したがいまして、内閣総理大臣として述べたものではなくて、あくまでも自民党総裁としての考えを自民党に向けて示したものと理解しております。

 総理としては、たびたび国会で発言しているように、あくまでも憲法は憲法審査会において各党で議論をして積み上げるものであるともう何度も何度もこれに関して発言しておりますので、総理としてしっかりとこの憲法審査会で各党が提案をして議論を積み重ねてほしいということで一貫をしております。

 また、二〇二〇年の施行に言及をしておりますけれども、この実現は自民党だけではできません。国会で三分の二の議席を得るということで、まさに各党の皆様方の御理解をいただかなければなりませんし、また、国論を二分することがないようにということで、野党の皆様にも御賛同いただくということを目指してまいりますので、この審査会自身が各会派の協議によって決定する唯一の機関でございます。したがいまして、私は筆頭理事でありますが、これに縛られるものではなくて、各党で議論をして、そして積み上げてまいりたいというふうに考えております。

 もう一点、私権制限について、緊急権について。

 例えば東日本大震災のときに、実例として、自衛隊が派遣されました。自衛隊が緊急に道路をつくる場合も、車や瓦れきがたくさん散乱していまして、勝手にこれを移動することができません。地方が判断を下さないときは、権限がないと、それまで時間を待たなければならないということがありました。自治体としても、非常にこれの判断に迷うこともありますが、そういう際に、やはり緊急事態として行動できる権限が欲しいと。

 それから、家の中に入り込んで家を解体する必要がありますが、そこにたんすとか金庫があります。それを勝手に動かすと、またこれは財産権の問題で、後で問題になるということで、勝手に行動ができない場合もございますので、地方自治体も手いっぱいで能力を超えていく場合は、緊急事態として国が手続に従って対処する必要があるんじゃないでしょうかということを申し添えます。

足立委員 二度目の発言をさせていただきます。

 安倍総裁の発言について他党から申し上げる立場にはありませんが、きょうの会の冒頭、会長から所感をいただきました。労をとっていただいていることに、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。しかしながら、それを求めたというか、野党四党なのか民進党なのかわかりませんが、安倍総裁の発言に対してみずから言いがかりをつけて会長発言を求め、何かをとったように胸を張るというのはまさにマッチポンプでありまして、こういうお芝居はやめておいていただきたい、こう思います。

 それから、武正筆頭から、憲法審査会が政局の影響を受ける、受けないという議論がありました。私たちが、政局の影響は受けないのが伝統だ、こう申し上げているわけですが、それは理想だということをおっしゃいます。しかし、理想と現実をそういうところで持ち出されて論を張るというのはまさに共産党と一緒でありまして、ぜひそういう使い分けはやめていただいて、憲法調査会以来の伝統、これを守っていただきたいと思います。

 それから、中川委員の発言も大変問題があると思います。民進党はまるで党としては案を取りまとめてテーブルにのせないような御発言だと思います。もし本当に民進党がそういう立場でいらっしゃるのであれば、もう民進党を、少なくとも会長代理は引いていただいて、新しい会長代理を選んでいかなければ、到底発議までまとまらない、こう思います。

 それから、辻元委員が、法律で対応できることは法律でというのは、これは誰の意見か、辻元さん個人の意見ですか、党の意見ですか。(発言する者あり)個人ですね。それで、先ほど辻元幹事が言われた三つの原則というのは、これはどこの原則だったかなと思って今調べたんですが、これは辻元原則であるということであります。法律でできることは法律でやるというのは、今でも憲法には法律でできることを書いてあります。義務教育の無償化、これは書いてありますね。したがって、辻元委員の原則というのは現行憲法を否定していますので、反立憲主義である、こう申し上げておきたいと思います。

 最後に、細野委員が地方自治について提言を、三項目について提言を公表されています。その点については心から敬意を申し上げたいと思うし、この場で御発言いただいたことについても感謝を申し上げたいと思いますが、憲法審査会は、もちろん個々の委員が発言をしているとはいえ、それぞれみんな党を背負って、調整をしながらここに座っているわけでありまして、代表代行としての御発言であればなお価値があったと思いますが、ぜひ、今後、民進党の中での意見集約に御努力をいただきたいということを僣越ながら申し上げて、意見とさせていただきます。

奥野(総)委員 御発言許可をいただきまして、ありがとうございます。

 そもそも、我が党が全然対案を出さないと、この議論に加わっていないかのような足立委員の御指摘でありますが、そんなことはないわけですね。我々は、例えば緊急時の議員任期の延長については慎重に検討していこうと。いろいろな有識者の方から問題点を指摘されていますから、慎重な検討をクリアすれば、こう申し上げているわけでありますね。

 それから、今も、法律でできることは法律でと。これは当たり前のことであります。先ほど来、中谷幹事の方から……(発言する者あり)静粛に。

 中谷幹事の方から、瓦れきの撤去はできないんだ、だから緊急事態条項が必要だ、こういう話がありましたが、あのときは、今伺ったら、できたわけですよ。現行制度で、ちゃんと自治体に協力要請をして、瓦れきの撤去はできたわけですよね。

 ですから、そういう現状をきちんと踏まえていただいて、この前も議論があったんですが、例えば、緊急事態条項の立法事実は本当にあるのか、憲法を変えるだけの立法事実はあるのか、現行法制でできない事実があるのか、やはりきちんと検証すべきだと思います。やはり個人の私権の制限であったり、とりわけ基本的人権の制限であったり、こういったものについては相当慎重に考えなきゃいけないと思うんですね。

 ですから、我が党の一致した意見としては、一般的な緊急事態条項については反対です、今の現行法制ではきちんとできるということを申し上げているわけです。その上で、なお、例えば国会議員の任期の延長などについては、きちんと慎重な検討を経て、お手盛りにならないようなことがあれば議論していきたい、こういうスタンスだというふうに御理解いただきたいと思います。

 それから、きょう、まさに地方自治のお話でありますけれども、地方自治も、地方自治法施行七十年、憲法と歩みを一にして、もう七十年たったわけです。その中で、いろいろな課題とか問題点も浮かび上がってきていますね。ですから、こういったものについて、本当に憲法の改正が必要なものであれば、これはしっかり議論をしていくべきだと思います。

 いろいろな議論があるんですが、規律密度が、要するに細かく規定してしまうと自由な地方の制度設計ができないという問題もあります。ですから、余り細かく書くのは望ましくないとは思いますが、さりとて今の規定ぶりでは少し抽象的過ぎるということは私も思います。

 いろいろな提案がありますが、例えば九十三条が定める二元代表制については、これはきちっと全自治体二元代表制と書いてあるわけですが、これを、例えば自治体の選択制によりシティーマネジャー制あるいは議院内閣制型の仕組みができないか、これは憲法改正に恐らくなじむ話だと思います。

 それから、これまで出てきたかどうかわかりませんが、解釈により二層制、こう定められているわけでありますけれども、例えば特別市制度、こういったものを定めることは憲法改正によらなければなかなか難しいんじゃないかと思いますから、こういった特別市制度、大規模都市を特別市として例外的に一層制を認めるなんというのも憲法改正の中身としてはあるんじゃないかと思います。

 さらに、先ほど皆さんおっしゃっていますが、九十二条の地方自治の本旨については明確にすべきであります。地方自治法上、一条の二というところでかなり詳細に近接性の原則とか権限配分の考え方が書かれていますから、これを参考にして、これを憲法に入れるというのは一つあると思いますし、また、課税自主権や財政自主権の規定もきちんと定めておくべきだというふうに私は思います。

 さらに、分権をきちんとした上で、利害が衝突した場合の議論の場として国と地方の協議の場というのが今法律上定まっていますが、これを例えば憲法上規定する、これは地方六団体からの要望でもありますけれども、こういったことも検討に値するんじゃないかと思います。

 申し上げたいのは、いろいろな改正項目があると思いますが、地方自治については私は一番重要じゃないかと思います。身近なところを身近で決めていく、こういう仕組み、分権の仕組みを根づかせることで地域の発展、国の発展につながっていくということで、まず、私は、地方の話を、地方自治の改正のところを議論していただければと思います。この積み重ねがきちんと実を結ぶことを会長にお願いして、発言を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤嶺委員 二度目の発言ですが、私は、首相発言について、それぞれ、首相発言ではない、総裁発言であり党内に向けたものであるという自民党の方からの御主張もありましたが、あれは紛れもなく総理発言、首相発言で、やはり行政府の長が憲法審査会に不当な介入をしてきた、三権分立をじゅうりんするものだということを改めて申し上げたいと思います。

 国民的議論に値するということを先ほども申し上げましたが、これまで自民党は、憲法の改憲草案、九条二項を変えて国防軍にするというような主張がありながら、総理がああいう発言をしたらその方向になびいていくというのは、これは私は情けないなというのを本当に心から思います。

 それと、先ほど足立議員の方から、理想と現実が共産党的だという、ちょっとよく趣旨が理解できなくて、趣旨をはっきりさせろということは申し上げませんけれども、審査会の運営というのは、それぞれの党の、違う党の立場の人たちが出てきて合意に達するには時間がかかることであり、やはりそういう点では、民進党の筆頭を務めておられる方々の意見にも耳を傾け、開くべきでないという私たちの意見にも耳を傾け、そういう運営を会長はぜひやっていってほしい。

 理想と現実を憲法に照らしていえば、私たちは、理想である憲法があって、現実はそれと違うということを言っているのではなくて、憲法はあくまでも政府の側が、権力の側が守るべきもの、その守るべきものを守っていなくて、現実政治との乖離が生まれている、それを、もともと本来の目的である、憲法に沿った政治を行う、憲法を基準にして現実の政治を実行していくべきだということで、何か、理想と現実が違う、どういう趣旨で言ったかよくわかりませんが、それが共産党的だというのはさっぱり意味がわかりませんし、批判としても当たっていないなということを実感いたしましたので、意見を申し上げさせていただきました。

田畑(裕)委員 自由民主党の田畑裕明でございます。

 本日のテーマの国と地方のあり方について意見を述べさせていただきたいと思います。

 我が国は、人口減少問題、また少子高齢化社会への対応、東京一極集中是正への地方回帰を進めて、彩りある、魅力ある、住みよい地方をつくること、地方創生への取り組み、これを国、地方が一致協力してしっかり展開すべきだと考えるものであります。

 また、現行憲法制定時には今日の少子化ですとか長寿社会の到来というのは予見されていなかったというのは、誰もがそう感じるのではなかろうかと思います。

 その上で、先ほどからもお話がございましたが、現行の第八章、四カ条でのみ規定をされている地方自治の条文については、国と地方が対等で国家運営がなされたり、また国民がより理解を深めるためにも、やはり改正ということを前提に議論すべきだと考えるものであります。

 特に、地方自治の充実であったりですとか地方分権のさらなる推進のため、その理念をしっかり位置づけることが重要であると考えるわけであります。

 先ほどからお話がありましたが、地方自治の本旨の明確化、これについてもしっかり明文化をすべきだと思います。住民自治や団体自治をしっかり書き込み、地方自治というのは、やはり住民の参画をしっかり基本として、身近な行政を自主的、また自立的に実施すべきだということを明文化すべきだと思うわけであります。

 その中で、地方自治体の権限の具体化について何点か述べたいと思います。

 一つは、やはり課税の自主権をしっかり明確化することであろうかと思います。その上で、そうは申せ、人口減少ですとか過疎化の地方の流れを見通すときに、財政力の弱い地域、地方に対する財政的な配慮措置ということについてもしっかり定義づけをするべきだと考えるわけであります。

 また、地方自治体同士の相互協力。これもなかなか、地方自治体同士でいろいろなことで足を引っ張り合うような傾向もある部分があるのではないかと考えるものであります。そうした相互協力についてもしっかりと具体化すべきでなかろうかと思います。

 また、地方自治体の種類についてでありますが、基本的には、やはり基礎的自治体とそれを包括する広域の自治体ということを基本とし、地方の自主性に任せながら、それ以下は法律で定めるべきであるというふうに考えるわけであります。

 最後に、参議院の合区解消のことについても私からも触れたいと思います。

 みずからの県を代表する議員が選出されなくなるという新たな不平等が明らかになったと言っても過言ではない現状であろうかと思います。地方の多様な意見を国政にしっかり反映させるため、参議院の合区の解消について、地域代表制の明文化、また都道府県代表制の法制化といったことについても、当然議論をし、一定の結論を出すべきだというふうに考えるものでございます。

 以上でございます。

安藤委員 自由民主党の安藤裕でございます。

 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうもいろいろな意見が出ておりましたけれども、少し残念に思いますのは、他党他会派の批判の議論が少し一部で始まってしまいまして、本日の議題である地方自治についての話が少し拡散をしたように思います。他党他会派の批判も、これも必要な部分があるとは思いますけれども、ぜひきょうの議題に沿った話で議論を進めていただきたいと思いますし、国民の皆様方もこれを期待しているんだろうと私は思います。

 その上で、きょうの地方自治についてお話をさせていただきたいと思いますけれども、まず、道州制についてのお話がございました。

 これは一部でかなり議論が進んでおりますけれども、しかし一方で思いますのは、今の東京一極集中あるいは地方の人口減少が今の地方自治の制度が原因なのかということについては必ずしも明らかでないということでございます。これが必ずしも明らかでない中で、道州制がいいということにならないと思いますし、これは冷静に議論していく必要があるんだろうと思います。

 その上で申し上げたいのは、やはり財源の問題が出てくると思います。

 財源のあるところには集まり、財源のないところはやはり厳しい状況になる。そして、財政を運営していくためには課税の自主権というものも考えなくてはいけないのではないかということになってくると思いますが、行政コストを賄うためには、税源とそれから債券、借金ですね、国債ないし地方債というものを発行して財源を調達するということになってくると思いますけれども、中央銀行を持たない地方自治体において、これはなかなか、債券を発行するというのも限界があると思います。そしてまた、課税権を行使するにおいても、やはり地方の経済の実力の中で課税というものに相当制限があるだろうというふうに思います。そういう意味では、この財源の問題からしても、道州制を導入してこれが解決していくということにはなかなかならないのではないかというふうに思います。

 それから、条例の上書き権ということについてもお話がございました。

 条例を自主的に決められるということは、これは大事なことだと思いますけれども、しかし一方で、法律の上書きができる、それ以上のことができるということになると、やはり国の秩序というもの、秩序という面からいうと、これは相当疑問が出てくるだろうというふうに思っております。

 それから、一番危惧をするのは、今都市間競争ということがかなり言われております。もし仮に日本で道州制を導入すると、道州間の競争ということに走っていってしまうのではないか、そうすると、日本の国の一体感というものが損なわれていくのではないかということも危惧をしておりますし、やはりこの道州制という問題は少し慎重に考えていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 それから、合区制度のこともございました。

 やはり私たち国会議員は地域の代表として仕事をさせていただいております。先ほど来話が出ておりますとおり、人口の少ないところからは少ない人数でということになると、やはりなかなか地方の声が中央に届かない。これは参議院に限らず、衆議院も今度は区割りの変更の法案が出てきますけれども、衆議院も同様のことが起きてくるんだろうと思います。地方の再生のためには、やはり地域代表の国会議員がある程度の数が確保できるような、そういった体制は間違いなく必要であろうというふうに思います。

 それから最後に、住民投票等をもっと義務化したらどうか、活用したらどうかという意見がありました。

 住民投票というのは、これは先ほど辻元委員も少しおっしゃっておられましたけれども、投票というのは、やはり地域間の、その住民間の分断を招くおそれがあります。より重大な問題であればあるほど、住民投票にかけていいものかどうかというのは慎重に考えなくてはいけません。

 それから、キャンペーンのうまい方に投票が偏るという結論が出てくるということもあると思います。これは、本質的な議論ではなくて、キャンペーンのうまい方に投票が偏って、そっちが勝つということになって、これが本当にその地域のためになるのかということについては、これも慎重に考えなくてはならない。直接民主主義が、常に正しい、あるべき結果を招くとは、という答えになるとは限りませんので、そのことについてはやはり慎重に考える必要があると思います。

 そして最後に、外国人参政権。地方参政権については、外国人も例えば住民投票には参加ができるというふうな条例を決めているところもありますけれども、私自身は、やはり地方においても外国人には参政権を認めるべきではない、このことも憲法に入れるべきではないかという意見を持っております。

 以上でございます。

北側委員 時間が来ておりますので、簡潔に申し述べます。

 きょうの委員の皆さんの御意見の中に、参議院選挙制度に関連いたしまして、合区の解消の話が多くの皆さんから出ておりました。

 なぜこんな問題が起こっているかといいますと、一票の価値の平等の問題から出ているわけでございます。憲法四十三条では、両議院は全国民を代表する議員というふうに規定をされているわけです。ですから、全国民の代表だから、一票の価値はやはり二倍未満におさめていかないといけないという考えが出てくるわけですね。憲法十四条のもとで、一票の価値は平等でなければいけないと出てくる。だから合区の問題が出てきたわけでございます。

 したがって、参議院において各県から代表を出すんだというふうな選挙制度をとった場合には、恐らく四十三条の全国民の代表と規定されているところを改正しないといけないのではないか、こういう問題があるわけですね。

 それとともに、地域代表にするということですから、参議院を地域代表にするということは、単なる四十三条を変えればいいというだけではなくて、衆参の役割についても変えていかないと多分いけないんだろうと思うんですね。

 現行の憲法上は、衆議院と参議院の権能というのはほぼ一緒です。若干衆議院が優越されるところはありますけれども、ほぼ同じ権能を衆議院も参議院も持っている、こういう憲法上の規定になっているわけです。もし参議院側を地域代表の性格を強くしていくというならば、例えば、憲法の五十九条、ここは法律案、六十条は予算案、そして六十一条が条約、これはそれぞれ両議院の議決になっているんですが、恐らくここの見直しも避けて通れないんじゃないかというふうに思います。

 さらに申し上げますと、参議院の緊急集会規定、これも、地域代表の参議院で緊急集会ができるとも思えません。

 さらに言えば、内閣の問題。内閣で、総理大臣は国会議員から選ぶと書いてあるんですね。恐らく地域代表の中から内閣総理大臣を選ぶわけにはいきませんから、そうすると、憲法の六十七条の規定についても見直しが必要かもしれない。

 さらに言うと、六十八条では、国務大臣の過半数は国会議員じゃなきゃいけない、こういう規定があるんです。これもまた、本当に国会議員だけでいいのか、場合によっては衆参の役割の見直しが必要じゃないか、国務大臣というのは国を代表するわけですから。

 というふうに、合区制の解消の問題というのは、非常に難しい、二院制の意義、また両議院の役割の見直し、こういう問題に直結する問題だということもぜひ御理解いただいて今後議論を進めていく必要があると私は思っておりますので、申し上げさせていただきました。

 以上です。

森会長 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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