衆議院

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第2号 令和3年12月16日(木曜日)

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令和三年十二月十六日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 西村 康稔君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    井上 貴博君

      伊藤信太郎君    伊藤 達也君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      國場幸之助君    塩崎 彰久君

      下村 博文君    中西 健治君

      船田  元君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    松本 剛明君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      山本 有二君    吉川  赳君

      新垣 邦男君    近藤 昭一君

      櫻井  周君    中川 正春君

      野田 佳彦君    太  栄志君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    足立 康史君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      日下 正喜君    國重  徹君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十六日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     吉川  赳君

  松本 剛明君     塩崎 彰久君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     松本 剛明君

  吉川  赳君     國場幸之助君

    ―――――――――――――

十二月十五日

 立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一九号)

 同(宮本徹君紹介)(第二〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第二一号)

 改憲発議に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三九号)

 同(笠井亮君紹介)(第四〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四一号)

 同(志位和夫君紹介)(第四二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四六号)

 同(宮本徹君紹介)(第四七号)

 同(本村伸子君紹介)(第四八号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自民党の新藤義孝でございます。

 十月三十一日の衆議院総選挙を経まして、去る十一月の特別国会では森会長を選出し、そして、この臨時会では、先週、幹事の補欠選任を行いまして、今週は、各党協議の上で、この自由討論を行うことを円満に合意することができました。

 本日の審査会を開催できましたことは、私ども大きな喜びでありまして、真摯に交渉に応じていただいた野党の筆頭幹事を始めとして、与野党の幹事懇メンバーの皆様には感謝を申し上げたいと思います。

 私は、引き続き与党筆頭幹事を担わせていただきますが、政局から離れ、与野党が国民のために憲法改正論議を深めていく、この憲法審査会のあるべき姿を引き続き追求し、審査会の円満かつ安定的な運営、そして活発な議論が進むように心がけてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 この改選後の新たな憲法審の議論を始めるに当たりまして、これまでの議論を踏まえた今後の方向性を私なりに整理をさせていただきたいと思います。

 これは、大きく二点ございます。

 まず一点は、CM規制や投票環境向上などの憲法改正の手続である国民投票法に関する議論でございます。もう一つは、憲法改正に関わる、いわゆる憲法本体論議と呼ばれるものであります。この二つは、憲法審査会の設置目的そのものでございます。本日も含めまして、これまでの自由討議、このテーマは、全てこの二つのテーマで掲げてまいりました。これらに順序があるわけではなくて、今後も自由にそれぞれの議論を深めていかなければならないと私は考えているわけであります。

 まず、国民投票法の議論についてでございますが、これには、投票環境の向上に関する議論、そしてCM規制などの投票の質に関する議論、この二つに分けられます。

 このうち、投票環境の向上に関しましては、さきの通常国会で七項目案が成立をし、既に施行されましたけれども、公選法において既に措置されました二つの改正項目がもう既にございます。天災時における安全、迅速な開票に向けた規定整備、それから投票立会人の選任要件の緩和、この二つはもう既に公選法では改正されております。

 また、倫理選挙特別委員会で議論されている事項でございますが、郵便投票の対象拡大、これについても、今後、公選法に整備される可能性がございます。だとすると、これらの公選法の改正項目を国民投票法に反映させる、国民の投票機会を整備するといった意味での議論が必要になってくる、私はそのように考えています。

 元々、投票環境の向上に関する議論は、これで終わりということではなくて、社会状況の変化に応じて常にアップデートしていかなければいけない。ですから、議論はずっと続いていく、このように考えております。

 もう一つのCM規制に関する議論、これはもう既に始まっております。

 私は、令和二年の五月二十八日、この審査会において既に論点整理メモを出させていただいておりますが、本日もお手元に配付しておりますので、是非御覧になっていただきたいと思います。

 まず、このメモの中に書かせていただきましたけれども、議論の方向性は三つございます。第一に、Aと書いてありますが、CM量の賛否平等取扱いに関して法的規制を行う方法です。次に、B、自主的取組によるCM量の賛否平等取扱いを実現する方法、これが二つ目です。三つ目は、その折衷的な方法として、Cの、各事業者の自主的取組を後押しするために何らかの法的措置を定める。こういう方法に整理できるのではないかなと考えているわけであります。

 その上で、これらの三つのいずれの方法とも組み合わせることが可能な仕組みとして、Dで、一番下に書かせていただきましたけれども、国民投票広報協議会の広報活動を充実強化する方法、こういったものが組合せとして考えられるのではないか。

 今後は、この四つのアプローチを念頭に置きまして、表現の自由と国民投票の公平公正のバランスをいかに図っていくか、こういった観点から建設的な議論をこの審査会で進めていきたい、このように考えておるわけであります。

 他方で、もう一つの大きな柱でございます憲法の本体論議、これにつきましては、私たち自由民主党は、我が国が直面する内外の諸情勢に鑑みて、自衛隊の明記、緊急事態条項、合区解消・地方公共団体、教育充実の四テーマを、既にこの憲法審査会において議論のたたき台として提示をさせていただいております。

 自衛隊の明記は、我が国が武力攻撃を受けたときに自衛の措置を担う自衛隊を憲法上明確に位置づけるというものでありまして、また、緊急事態条項につきましては、議員任期の延長のほか、新型コロナ禍におけるオンライン国会の是非の問題、国会機能の維持の観点から重要な論点を含むと思っております。

 また、新型コロナ禍という事態を経験して、大規模な自然災害に加えて感染症の蔓延などという、いわゆる有事というべき事態が発生した場合にどのように対応するのか。その枠組みについても、国としての枠組みについて議論していくことは、国民の関心も高く、極めて重要なことではないかと私は考えております。

 さらに、一票の格差の是正と地域の民意の反映をどうバランスさせるかという意味において、合区解消・地方公共団体というテーマを打ち出しております。

 また、教育の理念やデジタル化など、あらゆる方々に一生を通じて教育の機会を保障する。こうした教育充実というような理念もこの憲法の中に加えるべきではないか。こういう観点から御提案をさせていただいているわけであります。

 最後に、改めて、今後の与野党円満な議論のための基本的な憲法審査会の姿勢について確認をさせていただきたいと思います。

 憲法改正につきましては、国民の関心と期待がますます高まっているということを実感しております。国民投票に付す憲法改正案については、憲法審査会においてできるだけ多くの会派が議論に参加をし、幹事会等の枠組みを活用して、みんなで案を作っていけば、国民の皆さんに提示をする原案の作成の作業というものを我々は模索していかなくてはならないのではないかなと考えております。

 私どもが提案しております四項目は、今後の議論のためのアイデアを提示したものであり、まさにたたき台でございます。今後の議論の中で活用いただければ幸いだと考えております。

 いずれにいたしましても、憲法改正の手続であります国民投票に関する議論、そして憲法改正に関わる本体論議、それぞれは多岐にわたっております。この憲法審査会での自由討議を通じて、これらの多岐にわたる論点を整理して国民に分かりやすく提示していくことは、私は国会の責任ではないかと考えているわけであります。私たちの責任を果たすためにも、今後の国会において、定例日には審査会を安定的に開会し、国民のための憲法論議を一層深めていきたいと考えております。

 委員各位の御理解と、また、御主張させていただきたいことをお願い申し上げまして、私の冒頭の話とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党筆頭幹事を拝命いたしました奥野総一郎でございます。

 発言の機会をありがとうございます。

 まず、我々は、議論は、恐れず議論を行うということは、我が党の基本であります。恐れず憲法議論を行う論憲の立場を取ってまいります。憲法審査会で必要な議論はしっかりと行ってまいります。

 しかし、その議論の中では、特定の憲法改正案を前提とするものであってはなりませんし、また、改憲ありきであってはならないというふうに思います。あくまで真摯に、現行憲法の足らざるところをしっかりと調査をし、議論をし、白紙から一歩一歩議論を進めていくべきだと思います。

 また、国民投票法、これは、さきの国会で与野党一緒になって成立をさせました。見直しを国民投票法は求められていますから、これは法律上の義務として真っ先に取り組んでいかなければならないと思います。

 その上で、まず申し上げておかなければならないのは、憲法五十三条の違反の問題であります。

 我々野党会派は、去る七月十六日に、新型コロナウイルス感染症及び各地で頻発する豪雨被害に対応するため、憲法五十三条に基づく臨時国会の召集を求めました。憲法五十三条については、政府も、内閣は必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないとし、これは憲法に規定されている義務であるとしています。

 問題は、この合理的な期間がどのくらいかということでありますが、日本国憲法制定時の議論では、万年議会制度を取らなかった埋め合わせとして、ちょっと古いんですが、要するに、通年国会を取らなかった、その埋め合わせとしてこのような制度を設けたというふうにあります。つまり、憲法五十三条では、五十三条の求めがあれば直ちに召集すると。何か月も召集を放置することは元々想定されていないわけであります。

 今回の求め、以前もありましたけれども、今回は臨時国会開会まで八十日もかかっていますし、この臨時国会は岸田新総理の指名のための国会であって、我々が求めたコロナ対策、豪雨対策というものではありませんでした。それが証拠に、予算委員会も開かれていないんですね。これは明確な憲法五十三条違反ではないでしょうか。

 新藤筆頭、いかがでしょうか。現行憲法を尊重しない与党が、私は憲法改正を語れる資格はないと思うんですね。まずここから考えていただきたいと思います。

 そして、憲法審査会の所掌は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、その上で、改正原案だったり発議を行う、そして、又は国民投票に関する法律案を審査することとなっているわけです。憲法改正だけをやる会ではないんですね。

 かつて中山太郎先生は、この審査会をつくる際に、議院運営委員会において、憲法論議のあるべき姿として、憲法論議は内閣ではなく国会の責務、権限であるべきこと、それは、政権を争う与野党の対峙の論戦とは一線を画して、全国民代表としての論議であるべきこと、そして、憲法論議は、自己の理想の憲法像の主張にとどまるのではなく、最終的に三分の二以上の多数派形成に向けた超党派的論議、いわば偉大なる妥協を目指した議論であるべきということでございますと述べて、みんなで考え、みんなで議論し、みんなでつくるという姿勢を言っておられました。

 つまりは、この場では、各党各会派、十分に調査、議論を深め、納得の上、改正原案発議に至るというプロセスを踏むことが求められているわけであります。国民の分断をいたずらに生まないための私は知恵だと思っています。

 したがって、先ほど新藤筆頭からもありましたけれども、いわゆる安倍四項目ありきの議論そのものに反対であります。これはまさに自己の理想の憲法像の主張、誰とは言いませんが、誰かの自己の理想の憲法像の主張という四項目を前提に議論を急ぐ姿勢は、憲法審査会の理念に反するとともに、国民の分断を生みます。(発言する者あり)静粛に。

 議論をするのであれば、真に改正が必要な部分はどこか、まずそこから調査をして、各党各会派の議論を深めながらコンセンサスを得るべきであります。(発言する者あり)

森会長 御静粛に願います。

奥野(総)委員 私見ですが、先ほども出ましたけれども、オンライン審議がそもそも憲法改正が必要かという問題であります。

 憲法五十六条では、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」、定足数の規定があるんですが、この出席を、オンライン出席を解釈で含めれば、すぐにも実現できるんですよ。憲法改正なんかやっていたら間に合わないですよね、これ。わざわざそんなことをしていたら間に合わないです。すぐにでもできる。こういう議論ならいいと思うんですよ。

 例えば、東京大学の宍戸教授は、憲法には三分の一以上の出席を定足数として定めているが、同じ議場に集まることまで憲法が要求するものではないと考えることもできる、議長のコントロールが及び、会議に参加しているのが公開されていれば、本会議場にいなくても出席とみなす、議院規則で定めてよいのではないか、こういうふうに述べておられるんですね。

 憲法改正せずとも、すぐにでもできるわけです。改正を前提として議論をするのは、私は強く反対をしています。

 このほか、地方自治や、私はこれまで憲法裁判所なんかにも触れてきましたけれども、そういったことも含めて議論を深め、白紙から議論をしていくべきではないでしょうか。

 そして、最後に、国民投票法改正について述べます。

 憲法第九十六条において、憲法改正は、国会の提案に対して国民投票による国民の承認を経なければならないものとしていますが、その趣旨は、国民主権原理に基づき、主権者たる国民の意思による承認を求めたものであり、その手続法としての国民投票法において投票環境が整備され、公平及び公正な投票が確保されることは、まさに憲法上の要請でもあります。

 現行の国民投票法は、テレビやラジオのCM規制について、先ほどもございましたけれども、その甚大な影響力に鑑みて、放送メディアによる量的な面を含めた自主規制を不可欠な要素としてそもそも立法されているんですが、民放連は、この場で、あれは一昨年でしたかね、量的規制はできないと言っているわけですね。だから、現行法の前提は崩れてしまいました。

 また、制定後十年がたって、グローバル化やネット化、社会環境など、大きな変化があります。現行制度では、外国政府などの干渉によって投票結果が左右されるおそれもあるわけですよ。これは放置しちゃいけないと思うんですね。

 これらのことから、我々は、現行の国民投票法が公平及び公正が確保されるという憲法上の要請を満たさなくなっていると判断して、さきの国会で附則四条を提案させていただいて、成立をさせることができました。

 附則四条、改めて見ますと、施行後三年を目途として、投票環境の向上のための措置だけではなく、先ほど新藤筆頭からも投票環境の向上、これは私もきちんと議論した上でやることはやぶさかでないと思っていますし、公平公正確保のためのCM規制、国民投票運動等の資金規制等について、必要な制度上の措置その他の措置を講ずることを求めています。

 最後に、この附則四条、以上の趣旨からは、何らかの法制上の措置その他の措置が講じられるまでは、憲法上、改正発議はできない、これは何回も答弁してきましたけれども、この措置が講じられるまでは発議ができないということであります。

 そして、最後に、憲法論議は妨げるものではありませんが、まず、この附則四条の議論を優先してお願いいたします。

 以上です。ちょっと長くなりましたけれどもね。

森会長 次に、馬場伸幸君。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 まず、冒頭、参議院予算委員会の開会中にもかかわらず、衆議院の憲法審査会がこうして開催されたことを高く評価するとともに、開催に御尽力くださった関係者に敬意を表したいと存じます。

 もちろん、定例日である木曜日に審査会が開催されるのは当然のことでありますが、これまで、与党と野党の駆け引きの中でどれだけの時間が無駄に浪費されてきたことか。それを思うとき、私たちは、改めて、日本国憲法を日本国民の手に取り戻すために粉骨砕身働いていかなければならない、そう決意する次第であります。

 そもそも、憲法審査会には、その前身である中山太郎憲法調査会長の時代からの伝統があります。その最たるものは、政局に左右されないということであります。これまで私が再三訴えてきたように、野党第一党の筆頭幹事は審査会の会長代理でもあり、本来、憲法審査会の開催に向けて労を取るべき立場にあります。仮に、会長代理が自らの政党の立場に拘泥し、その役割を十全に果たすことができないのであれば、そのときはちゅうちょなく、国会第三党、野党第二党である日本維新の会の私、馬場伸幸が衆議院憲法審査会の会長代理を引き受ける用意があることをここに宣言しておきたいと存じます。

 一昨日の衆議院予算委員会で、自民党総裁でもある岸田文雄総理は、我が党国会議員団の足立康史政調会長から、安倍元総理と比べて憲法改正への姿勢がトーンダウンしているのではないかと問われ、自民党の四点にわたるたたき台素案は引き継いでいる、憲法改正に対する思いは後れを取っていないと述べられました。

 そうであれば、安倍総理が二〇二〇年までの施行という期限を示して国民的な憲法論議を促したように、岸田総理・総裁も、例えば来年の参議院選挙に憲法改正国民投票を実施するといった具体的なスケジュールを明示し、この憲法審査会での精力的な審査をリードすべきと考えます。

 日本国憲法が公布されて七十六年。憲法が国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という基本的価値を定着させた点を正当に評価しつつ、未来に向けた課題解決型の憲法論議を深めていく必要があります。

 日本維新の会は、特定のイデオロギーを表現するためではなく、日本が抱える具体的な課題を解決するために憲法改正を行うべきと訴え、二〇一六年三月、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の三項目から成る憲法改正原案を取りまとめました。

 第一の教育無償化については、与野党共に積極的に取り組むようになってきましたが、所得制限なしの教育無償化、高等教育の無償化などは実現できていません。

 第二の統治機構改革についても、東京一極集中を打破し、地域の自立を確保し、多様で豊かな多極分散型の国家を築いていくものであり、多くの会派に賛成いただけることを願ってやみません。

 第三は、憲法裁判所。安保法制等の憲法適合性といった違憲立法審査を公権的に行うことのできる憲法裁判所の必要性については、立憲主義を標榜する野党第一党の皆様にも御理解いただけるものと存じます。

 私たち日本維新の会がさきの通常国会最大の仕事の一つと位置づけてきたのが、憲法改正のための国民投票法改正でありました。私も改正法案の提出者の一人として成立に力を尽くしましたので、六月十一日に成立を見たことは大きな成果と考えています。

 しかしながら、立憲民主党の修正案を与党が丸のみし、立憲民主党に憲法改正原案の審査を拒否する口実を与えたことには唖然とし、言葉を失いました。

 立憲民主党の修正案は、現在の国会が将来の国会に対し、施行後三年という具体的な期限を設けて検討を求める内容になっており、その間は憲法改正に向けた国会の発議権が制限されているとの誤解を招きかねない。そうした観点から、私たち日本維新の会は、立憲民主党が提案した修正案に第二項を追加し、この修正案が日本国憲法の改正案の原案の審査を行うことを妨げるものと解してはならないとする修正案の修正を提案しましたが、実現を見ませんでした。

 もちろん、憲法改正に向けた国会の発議権が制約されているかのような立憲民主党の物言いは、憲法違反の虚妄であります。

 憲法学が専門で、関西学院大学の井上武史教授が、手続法である国民投票法が障害になって憲法改正が制約されることはあってはならない、改正が必要なのであれば、三年という期限にとらわれず、直ちに審議して、いつ国民投票が行われてもよいように準備しておくのが憲法改正を発議する国会の責務であると喝破されているとおりであります。立憲民主党には、憲法に規定されている国民の憲法制定権力をないがしろにすることのないよう、強くくぎを刺しておきたいと思います。

 最後に、新憲法の制定を綱領に明記している自民党のみならず、この憲法審査会に名前を連ねている政党会派におかれては、具体的な憲法改正項目を速やかに提案いただき、憲法審査会のテーブルにのせるべきである。憲法を国民の手に取り戻す、日本を前に進めていこうということを委員各位並びに国民の皆様に呼びかけ、意見表明といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 憲法に関わる論点は多岐にわたります。今後の憲法審査会では、各会派の代表者が集まる幹事会において憲法論議の優先順位を検討、集約し、議論を進めていくべきと考えます。

 憲法審査会で今後論議すべきテーマについて、次の三点を提案をしたいと思います。

 まず第一に、緊急事態において国会の機能をどう維持するかというテーマです。

 国会は、国権の最高機関、唯一の立法機関です。我が国に大災害が襲うなど国家の危機と言える事態に、国会機能を維持することは極めて重要です。緊急の立法措置や必要な予算を速やかに成立させることは、国会の最大の責務です。

 まず、オンラインによる国会審議、採決に参加できる制度の創設を速やかに検討すべきです。一定の要件の下でオンライン参加を認めることは、各議院の自律権に基づくもので、憲法五十六条一項の議事の定足数や五十七条一項の会議の公開の趣旨に反するとは言えないというふうに考えます。

 また、国家の危機と言える緊急事態時に国会議員の任期の延長を認めるべきかどうか、議論を進めるべきです。任期満了直前に大災害等が起こった場合に、国政選挙の実施が困難となるため、憲法上、一定期間の議員の任期の延長を認めようとする考え方ですが、参議院の緊急集会との関係をどう整理するか、また、任期延長ができる要件、手続をどう厳格かつ明確に定めるのか、議会制民主主義の基本に関わるところであり、論議を積み重ねるべきと考えます。

 さらには、国家の緊急時に国民の自由を制約する根拠、また内閣に緊急政令を発出できる根拠を憲法上明記すべきとの意見があります。現行憲法には、営業の自由や移動の自由、財産権の内容などに公共の福祉による制約があることが明記されています。国家の緊急時といっても様々な形態があり、それぞれの危機管理法制の中で、私権に対する一定の制約とその手続、必要な補償規定等を具体的に整備していくしかないと思われます。また、緊急政令についても、各危機管理法制の中で、法律事項として個別に政令に委任ができる範囲を規定すべきと考えます。

 第二に、デジタル社会における人権の保障と民主主義というテーマです。

 デジタル技術の急速な進展は、憲法上の人権保障、民主主義にも大きな影響を与えています。例えば、ネット上での個人に係る情報は、その個人の知らないところで不適切に利用される危険にさらされています。また、選挙や国民投票において、ネット上での一方的な情報操作により、民主主義のプロセスがゆがめられるおそれも指摘されています。

 デジタル社会において一人一人が自律的な個人として尊重される人権保障の在り方を具体的に検討すべきではないでしょうか。デジタル社会における個人情報の保護について、憲法上の位置づけを明確にするとともに、自分の情報に関する自己決定の確保など、個人情報の取扱いについて定める基本法を制定すべきと考えます。

 また、デジタルデバイドが大きな課題になっています。情報格差により、様々な利益を享受できる機会を失うことがあってはなりません。その解消に向けて、国や事業者の責務等が検討されるべきであります。

 さらには、選挙や国民投票の際、国民の自由な意思形成過程が保障され、有権者が多様な情報にアクセスできるよう、国や事業者の役割を検討すべきと考えます。

 第三に、地球環境保全の責務というテーマです。

 良好な地球環境を保全し、次の世代へ引き継いでいくことは現世代の責務です。例えば、脱炭素社会の構築は、国際社会が直面する待ったなしの課題です。憲法制定時には全く想定できなかった事態で、憲法上、国及び国民の地球環境保全の責務等を規定することについて議論すべきと考えます。

 最後にもう一点。憲法九条一項、二項を維持した上で、別の条項に自衛隊の存在を憲法上明記すべしとの意見があります。

 しかしながら、多くの国民は、現在の自衛隊の活動を理解し、支持しており、違憲の存在とは見ていません。各国の憲法例を見ても、自衛隊のような実力組織の存在を明記するだけの規定は、私の知る限り、見当たりません。憲法例としてあるのは、自衛隊のような国の最大の実力組織をどう民主的に統制するかという観点からの憲法規定であります。引き続き慎重に議論をしてまいりたいと思います。

 憲法改正案は、国民投票によってその是非が決せられます。したがって、国会での憲法論議の過程から国民の理解と関心が得られるようにしなければなりません。憲法審査会を中心に丁寧かつ積極的な論議を積み重ね、多くの政党の合意形成が図られるように努めてまいりたいと思います。そのためにも、国会会期中の週一回の定例日には憲法審査会を開催すべきと主張し、私の意見表明といたします。

 以上です。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 憲法審査会が毎週定例日に開催されるという当たり前がようやく軌道に乗ってよかったと思います。憲法は国民のものであり、国民民主党は国民のための議論を積極的に進めていきたいと思います。

 改めて、国民民主党としての憲法の基本的考え方をお話ししたいと思います。

 私たちは、昨年十二月の四日に、この四十九ページから成る憲法改正に向けた論点整理をまとめました。その基本は、現行憲法の三つの基本原則、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義はすばらしい、だからこそ、この原則を守り抜くために憲法のアップデートをすべきだという考えです。

 日本国憲法では、制度の詳細の多くが憲法ではなく法律に任されているので、まず、統治分野の規律密度を高めるとともに、デジタル時代に合わせて人権分野のメニューを補完することが必要だと考えています。

 まず、統治分野での憲法改正の必要のある項目として議論しなければならないのは、コロナ禍で明らかになった緊急事態における法の支配の空洞化、ここを是正するための議論、つまり、緊急事態条項の議論をすべきだと考えます。

 具体的には、緊急事態宣言には国会承認が必要とするなど手続の整備、そして、人権制約は必要最小限度でなければならず、制約に伴う補償も必要とするといった内容の整備。

 私は、日本政府によるコロナ対策が世界と比べて極めて劣っていたとは思いません。しかし、科学的エビデンスや補償の範囲、法の根拠をしっかり示すことなく緊急事態宣言が発出されたり、蔓延防止等重点措置に移行したり、収束したと思ったら再発出されたりというプロセスには極めて問題があったと思っています。

 もし、憲法にまともな緊急事態条項があり、国会の報告で終わりではなく、国会の承認が必要とされていたら、事態は違っていたはずです。現在のように、宣言発出の前日に突然数時間の議運がセットされ、報告を聞いて終わりとはならなかったでしょう。

 さらに、その緊急事態条項に人権制約の程度や補償についての基本的ルールが定められていたなら、今回のコロナ禍のように、飲食店のような特定の業種が十分な補償の見通しもないまま苦境に陥る事態は避けられたはずです。

 また、今回の総選挙の際、たまたま感染が抑えられていましたけれども、仮に感染爆発の真っただ中で任期満了を迎えていた場合、現行憲法下では総選挙を実施せざるを得ません。緊急時における任期の特例を定める議論は速やかに行う必要があると考えます。

 もちろん、こうした緊急事態におけるルールは法律で足りるとの議論、また憲法で定めるべきとの議論、これはあると思います。しかし、緊急事態という危機において国家にどこまで力を持たせるのか、こういう究極のルール作りは、国民投票を必要とする憲法がふさわしいのではないかと考えます。なぜなら、憲法こそが、国民が国家に対し権力を与えて、同時に、歯止めることのできる最高規範だからです。

 あえて申し上げれば、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないと考えます。

 こうした国家統治の基本的な在り方を、感染が抑えられている今だからこそ、静かな環境の下で議論していきたいと思います。

 この点、横大道聡先生など新しい世代の憲法学者の方々が、極めてニュートラルな立場からコロナ禍の憲法問題を論じ始めています。こうした先生方の意見も是非聞いてみたいと思います。

 次に、人権分野に関しては、やはりデジタル時代のデータ基本権の議論を深めるべきだと考えます。

 岸田政権が提唱する新しい資本主義の輪郭が見えませんが、少なくとも、世界の資本の重点が目に見えるものからデータや情報に移行しつつあることは確かです。

 権威主義を背景にデータを国家が集中、独占していくシステムとは別の形でデータ資本主義を健全に発展させるためには、価値を同じくする国々とデータの利活用の基準を共有していくことが必要です。ヨーロッパのGDPRがそのスタンダードと目されている中、日本もデータに関する基本原則を憲法にうたうことは十分検討に値するはずです。

 データの基本原則や規律が穴だらけのまま民間にビッグデータを委ねた結果、アメリカ大統領選挙やブレグジットにおける国民投票の投票行動の操作や誘導が起きました。

 私は、この審査会で、ケンブリッジ・アナリティカ事件についてこの場で紹介をし、捜査に関わったブリタニー・カイザー氏の招致を提案しました。フェイスブックはデータの不正流用の傷を治癒できないまま名前をメタに変えましたが、少なくともこの事件を契機に、自由な企業活動を重視するアメリカも、EU型の規制へとかじを切ることになりました。

 さらに、当たり前だとされてきた憲法十九条に規定する思想、良心の自由も、実は、データを利活用して意図的に操作されやすい脆弱なものであることが浮き彫りになってきています。だからこそ、思想、良心並びに、その形成の自由というプロセスの自由度にまで広げて保障しなければならないという問題意識を私たちは持っています。

 国民投票法については、CM規制、外国人寄附規制、ネット広告規制など、投票の質の向上に関する重要な宿題が残っています。旧国民民主党時代に私たちが提出した案をたたき台に、具体的な議論に入っていきたいと思います。そして、この国民投票法の議論と憲法本体の議論は、当然同時並行で進めていけると思いますし、進めていくべきだと考えます。

 最後に、今後の審査会の開催形式について申し上げたいと思います。

 今日のような自由討論も大変意義があると思います。しかし、議論すべき具体的な憲法上の論点が複数ある中で、論点を絞った議論も必要不可欠だと思います。議員の意見発表会で終わらせないためにも、例えば分科会方式などを検討すべきだと考えます。

 これまでの審査会でも、論点ごとの議論を充実させるために、幹事会で具体的にその方式を検討してほしいという発言が与野党問わず相当あったと記憶しています。是非、今日の審査会でも、この開催方式についても先生方の議論を伺いたいと思います。

 以上で意見表明を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 憲法審査会は、第一次安倍政権下の二〇〇七年につくられたものです。私の内閣として憲法改正を目指すという安倍首相の発言が始まりでした。

 二〇一二年に政権に復帰した安倍首相は、歴代内閣が憲法上認められないとしてきた集団的自衛権の行使を一片の閣議決定で容認し、憲法違反の安保法制を強行成立させました。

 一方、二〇一五年六月四日には、この憲法審査会で、三人の憲法学者がそろって安保法制は違憲だと述べ、これを機に、多くの国民が、憲法を守れと国会を包囲しました。この六月四日以降、自民党は、一年半の間、憲法審査会を動かそうとしませんでした。

 ところが、安倍首相は、二〇一六年の参議院選挙の結果、衆参でいわゆる改憲勢力が三分の二を占めたことを背景に、二〇一七年五月三日の憲法記念日に、改憲団体の集会へのビデオメッセージで、二〇二〇年と期限を区切って九条改憲を提起し、国会での議論をあおってきました。その下で、自民党は改憲四項目をまとめ、審査会に持ち込もうとしてきたのです。

 しかし、安倍首相が躍起になればなるほど、改憲を望まない国民の声は大きくなりました。退陣表明の際には、国民世論が盛り上がらなかったのは事実だと述べました。安倍改憲が破綻したことは明白です。

 にもかかわらず、岸田首相が、改憲四項目を中心に改憲議論を進めていきたいと述べ、いまだに安倍改憲に固執していることは極めて重大です。

 憲法審査会は憲法改正原案の発議と審査を任務としており、ここでの議論は改憲項目のすり合わせにつながります。今、多くの国民は、改憲を政治の優先課題とは考えていません。憲法審査会は動かすべきではありません。

 今求められているのは、憲法に反する現実をただし、憲法を政治に生かすための議論です。その点で強調したいのは、日米地位協定の下で、国民の命と暮らしが脅かされていることです。

 四年前の二〇一七年十二月、普天間飛行場所属の米軍ヘリが、保育園と小学校に相次いで部品を落下させました。子供たちの目と鼻の先で起こった命に関わる重大な事故でした。

 ところが、日本の警察が機体の捜査、検証を行うことはできず、普天間基地への立入りの際に行ったのは、米軍に部品を返却することでした。日米地位協定と航空特例法の下で、在日米軍には日本の航空法が原則として適用されず、米軍の財産に対する捜査、差押え、検証を行う権利も奪われているからです。

 保育園の保護者や保育士の皆さんは、せめて日米合意どおりに、保育園の上空を米軍機が飛ばないようにしてほしいと何度も国に要請してきました。ところが、米軍機は今も保育園上空を我が物顔で飛行し、十一月には、離陸直後のオスプレイからステンレス製の水筒を民家の表玄関に落下させる事故を引き起こしました。

 四年前に小学校で落下事故に遭遇した小学生が、地元紙の取材に答えて、ヘリが飛んできたら、注意して、音を聞いて、目で見て、危険を感じたら逃げるよう、行動できるように考えたいと。子供たちにこのような発言をさせる政治は、余りにも異常です。

 沖縄だけではありません。先日も、三沢飛行場のF16戦闘機が、燃料タンク二個を投棄しました。そのうちの一個が落下したのは、民家から二十メートルの場所でした。ところが、米軍は、事故原因の調査中にもかかわらず、日本政府の飛行停止の要請も無視して、二日後にはF16の飛行を再開したのです。これで主権国家と言えるでしょうか。

 度重なる事故に、国会内外の、地位協定の改正を求める声が広がっています。全国知事会は、航空法や環境法令を米軍にも適用するなど、地位協定の抜本改定を提言しています。日米地位協定を改定し、国民に基本的人権を保障することは、党派を超えて政治が最優先で取り組むべき課題なのではないでしょうか。

 岸田首相が、所信表明演説で、敵基地攻撃能力の保有、検討を明言しました。これも重大です。平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨とするところではないと説明してきたのは、政府自身です。憲法を守らない人たちに、憲法改正を提起する資格はありません。

 以上、広範な国民と力を合わせ憲法九条を守り抜く決意を表明し、発言といたします。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私も、久しぶりに国会に戻ってきて、浦島太郎のようにすっかり風景も変わったなというふうに思いましたが、ここ憲法審査会では相変わらずの風景だなとつくづく思っております。玉手箱を開けたから、原案の、改正案の土台ぐらいはできているかなというふうに思っていたが、そうでもないということが分かりました。

 やはり、最高法規の憲法といえども、現実の情勢変化に応じて必要な改正を加えるのは当たり前の話であって、国会議員の当然の責務であるというふうに思っております。

 とりわけ、日本国憲法は、その草案が連合国軍総司令部によって作られたことは歴史的事実であります。もちろん、そうであっても国民に深く定着している部分も多々あることは否定しません。

 ただ、強調したいことは、憲法を国民自らの手で決定し改正するのは民主主義の基本であるということでございます。あたかも不磨の大典のように捉えて、およそ一切の改正に反対をするのは、反民主主義的な態度と言わざるを得ません。もちろん、改正のための改正も意味がありません。憲法の改正は、現実に照らして最も不具合なところから順番に一つずつ変えていくことが必要だというふうに思っております。

 まず、憲法第九条です。

 中国が軍事大国化する一方で、米国は、その能力そして意思が減退しつつあります。その結果、対中抑止力というものが弱まっております。人民解放軍海軍が我が物顔で、尖閣諸島、沖縄のみならず、津軽海峡、大隅海峡などへの忍び足侵略を繰り返しているのは、このあかしであります。

 また、中国のミサイル能力の増強と高度化により、我が国のミサイル防衛システムも対応できず、米国も対抗する中距離弾道ミサイルを持ち合わせていないという厳しい現状に追い込まれております。

 こうした中で、これまで日米同盟にあっては、日本が盾の専守防衛、米国が矛の攻撃能力の役割を担ってきましたが、今後は我が国も矛の役割を少しずつ担っていかなければいけないと思います。

 具体的には、総合的な敵基地攻撃能力までいかなくても、個別の反撃能力を充実するために、中距離弾道ミサイルを保持するなど、専守防衛すれすれの能力を持たなければいけないというふうに思います。

 また、中国が得意とするサイバー攻撃に対しては、攻撃が最大の防御であるどころか、攻撃が唯一の防御であります。この点についても、明らかに専守防衛の見直しを迫られる話であります。

 さらに、尖閣諸島やインド太平洋において、米国、オーストラリア、インドの海軍などと共同で海洋パトロールを実行することも検討していかなければいけません。その際、何かがあったときに、今の極めて限定されている集団的自衛権の解釈で、実戦上対応できるのでしょうか。

 こうしたことから、我が国の防衛のため、国民の生命財産、自由を守るため、ややもすると自らの手足を縛ってきた憲法九条の第二項も聖域とせず議論すべきであります。そうでなければ、自衛隊創設、集団的自衛権の前例と同じように、時の政権が曲芸師的な解釈変更を強いられるようになるでしょう。最高法規であり権力の恣意的な濫用を防ぐための規範たる憲法であるがゆえに、解釈に解釈を重ね、条文が通常の法律的な言語感覚で捉えられないようなあしき慣行は、この際改めるべきではないでしょうか。

 もう一つは、今回のコロナ禍で露呈したように、日本国憲法には緊急事態条項が欠落しています。新型コロナは国民に大変な犠牲と負担をもたらしましたが、専門家によると、今後到来するパンデミックは、もっと毒性の強いものが出てくる可能性も高い。また、大規模災害やテロ襲撃なども想定しておくことは、国家の危機管理としては当たり前の話であります。こうした事態が発生した際に、誰がどのような手続で営業の自由、移動の自由などを制限し、財産権を特例的に収用するなどを憲法に明文化することは、極めて重要です。これにより、いざというときに政府の対処が迅速かつ効率的になるのみならず、権力の濫用を防止することにもつながります。

 加えて、多数の国会議員が何らかの理由で国会に出席できず、本会議を開くための国会議員の定足数に及ばない場合など、緊急事態下において国会の立法及び行政監視能力を守ることも大いに議論すべきだというふうに思います。

 このほかにも、地方自治の規定や衆議院の解散権の問題等もありますが、いずれ現実に改正する際に、その手続を規定する第九十六条にある、衆参両院で三分の二以上の賛成が必要というのは、非常に現実的には大きな壁となっております。

 戦後、一党が両院で三分の二以上を占めたことは一度もありません。衆院では、一九九四年に小選挙区が導入されて以来、三度、政権与党が三分の二以上を占めたことがありますが、参議院の方は、選挙制度ゆえに一党が圧倒的な多数は取りにくいわけであります。

 安易に改正をされるんじゃないか、こういった懸念もあると思いますが、三分の二以上の条件を緩和したとしても、改正手続は、当然、国民投票の過半数をもって初めて完結するわけであります。これも相当に難しい話であります。戦後、六三年の衆議院選挙を最後に、国政選挙で一党が得票率で五〇%を超えたことは一度もありません。

 もちろん、九十六条だけを改正することは望ましくなく、改正手続を緩和してからどのような条文をどう変えるのか、その具体案を一体として国会や国民に示す必要はあるというふうに思います。

 最後に、憲法の前文について一言申し上げます。

 これは憲法の条文全体について言えることですが、やはり最高法規たるもの、翻訳言葉ではなく、自然で明快な母国語で書かれてしかるべきです。中身としては、現行憲法の三大基本原理に加えて、我が国の事実上の国是である御誓文の五か条を入れ込むべきだというふうに考えます。御誓文の趣旨は、何ら三大基本原理と抵触するものではありません。それどころか、我が国の長い歴史に確固たる民主主義、伝統が息づいているということを確認することにより、初めて憲法が国民の血肉となり、その精神をめぐって過去と現在に連続性が生じるのであります。

 以上、私からの意見表明といたします。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようにお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

新垣委員 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 この度の総選挙で、沖縄県第二区から初当選をいたしました。前任の照屋寛徳委員に引き続き、憲法審査会に所属させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 沖縄は、戦後長らくアメリカ軍政下に取り残され、他国による軍事優先の占領行政に耐えてきました。それゆえ、私たちウチナーンチュは、祖国復帰運動を通じ、沖縄県民として日本国憲法の下に入ることを熱望し続けました。

 来年五月に、沖縄は、日本復帰からちょうど五十年の節目を迎えます。しかし、復帰時に希求した基地のない平和な沖縄は実現されず、全国の米軍専用施設の約七割が今も沖縄に集中をしております。米軍に起因する事件、事故が頻発し、基地内からは、毒性が指摘されるPFOS混入汚染水が垂れ流され、周辺住民は日常的に騒音被害に苦しんでおります。

 沖縄は日本復帰こそ果たしましたが、今なお県民は日本国憲法の番外地に置かれております。安倍政権、菅政権と続く中で立憲主義は破壊され、憲法の実体が壊されてきました。集団的自衛権の行使に踏み込んだ憲法九条違反の二〇一五年の安保法制、戦争法、国民の知る権利を侵害し、国民主権原理を形骸化させた憲法二十一条違反の特定秘密保護法、思想、良心の自由や表現の自由、通信の秘密を侵害する、憲法十三条、十九条、二十一条違反の共謀罪法、基地周辺の住民を監視し、土地取引に政府が介入する、憲法二十二条、二十九条、三十一条違反の重要土地調査規制法などが次々と成立をし、学術会議の任命拒否など、余りにも憲法理念をないがしろにした政治が行われたと思います。

 今や、防衛予算は年間六兆円を突破、米国の武器を爆買いし、敵基地攻撃能力の保有まで検討をされております。とりわけ、沖縄の民意を全く無視した辺野古の新基地建設は、地方自治の本旨を正面から踏みにじるもので、断じて認めるわけにはいきません。

 コロナ禍で経済は傷み、多くの国民が苦しんでおります。普通に安心して生きていたい、そういう当たり前の願いがかなわなくなっています。憲法二十五条が保障する健康で文化的な最低限の生活が侵害され、憲法十三条が保障する個人の尊重や幸福追求権が侵害をされております。

 今、政治がなすべきは改憲ではなく、憲法が保障している国民の権利実現ではないでしょうか。国民の命と暮らしを守らない政治、憲法の理念を実現できない政治こそ変えるべきではないでしょうか。

 沖縄で暮らしておりますと、とても憲法改正を議論する状況にないと考えております。

 確かに、憲法第九十六条には改正手続が定められております。私ども社民党も、決して、憲法を絶対に変えてはいけない、唯一無二のものと考えているわけではありません。国民生活に不都合がある場合や、国民の権利擁護を確かにするための憲法改正までは否定をしておりません。

 しかし、昨今の議論を見ておりますと、何のために憲法を変えるのか理解し難いものばかりです。とにかく憲法を変えてみたいという思いだけが先行しているようにしか見えません。お試し改憲を目的とする改正論議には一切応じるわけにはまいりません。

 私は、憲法改正に意欲を示す前に、まず日米地位協定を変えるべきではないかと思っております。地位協定の改定交渉を米国と始めるために、改憲論議に費やす時間とエネルギーを使っていただけないでしょうか。そのことは沖縄選出国会議員として切にお願いをし、提案し、発言を終わります。

 以上です。

國重委員 公明党の國重徹です。

 参議院の予算委員会が行われている中で、この憲法審査会が開催されたこと、会長、両筆頭を始め関係各位の皆様の御尽力に心より敬意を表したいと思います。

 その上で、今日はまず、野党筆頭である奥野委員にお伺いしたいと思います。

 コロナ禍を始め、国家の緊急事態において国会機能を維持することは、私は極めて重要だと思っております。

 この点で、先ほど奥野委員から、オンラインによる国会出席については憲法改正は不要である、すぐにでも法改正すればいいんだという旨の意見表明がありました。

 一方で、長谷部恭男早稲田大学教授は、オンラインでの国会出席は憲法に違反すると主張をされています。具体的には、憲法五十六条一項の出席の意義について、全国民を代表するという国会議員の職責と切り離せないものであって、見える形で物理的に存在する必要があるとされています。

 こういった主張もある以上、最終的な憲法改正の是非は別として、条文の解釈を整理する議論というのは、私は必要不可欠であると考えています。喉元過ぎればということではなくて、速やかにこういった議論を行うべきだと考えておりますが、この点、奥野委員はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

 次に、新藤先生、よろしいでしょうか。与党筆頭である新藤委員にお伺いいたします。

 今日、憲法審査会が定例日に開催されたことというのは、私は非常に大きな前進であると思います。また、自由討議によって新たな視点、また新たな論点、こういったことが見出されること、これも大事なことだと思います。

 その一方で、自由討議というのは、ともすれば議論が拡散して言いっ放しの放談会に終わってしまう懸念もあります。合理的な結論を出すためには、課題解決に向けたかみ合った議論が不可欠です。先ほど玉木委員の方からもお話がありましたけれども、議論の的を適切に絞っていくことも私は極めて重要であると考えております。

 これまでの憲法審査会でも述べてきましたけれども、やはり、この憲法審査会の、憲法審の所属委員は五十名ということで、詳細を詰めていく議論をするには、私は多いんじゃないかというふうに考えております。そこで、例えば、会長、幹事会の下に特別の検討委員会を設けて、論点の整理また深掘りを行って、時宜に応じて審査会にフィードバックをして議論をまとめていく、そういった仕組みづくりを検討することも重要であると考えております。

 議論の進め方や仕組みをいま一度しっかりと検討する、このことにも力を入れるべきと考えますが、この点についての新藤委員のお考えをお伺いしたいと思います。

奥野(総)委員 私が先ほど例示として挙げたのは、一つは、コロナ禍をてこにして改正をやっていこう、その姿勢はけしからぬということをまず言いたかったんですね。本当に答えを出すのであれば、いや、憲法改正をやっていては間に合わないわけですよ、このコロナ禍において。諸外国はみんなオンライン質疑をやっているわけですよね。だから、それを憲法改正ありきで進めるというのはおかしいと思います。ですから、そういう議論もありますから、白紙で、改正を前提としないで議論を深めていくことはある、こういうことを申し上げたかったんですね。

 憲法審査会の中で議論を深めて、オンライン審議をすぐ実現すれば、私はそれはそれですばらしいことだと思いますよ。

新藤委員 國重委員の持ち時間の範囲でお答えをしたいと思います。

 建設的な提案だと思います。私が先ほど述べましたのも、幹事会メンバーを中心にして今後テーマを絞り込むことができるならば、やはりそういう作業はあってしかるべきだと。これは公明党さんからも何度も御提案いただいていますし、国民さんからも御提案をいただきました。維新さんからもそういったお話をいただいています。実は、立憲の皆さんともそういったことを模索したこともございます。

 ですから、まずは自由討議を進めながら、そういう議論をきちんと、ある程度皆さんが自由に発言していく中で、やはり関心の高いもの、収れんされていくものが出てくる、それを含めてそういった次の段階を踏みたいと思いますし、是非ともこれは、私どもとすれば、皆さんで合意を得てしっかりとした枠組みをつくりたい、このように考えていますし、これからも努力してまいります。

國重委員 ありがとうございました。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。

 初めて出席をさせていただき、また、発言をいただきます。よろしくお願いいたします。

 自民党は今、先ほど新藤筆頭が話をされたところですが、四項目の憲法改正案を提示しております。いわゆる本体論議のうち、本日、私からは、今日も何人かの委員から御指摘ございました緊急事態対応について申し上げたいと思います。

 最近、各地で地震が発生しているところでありますけれども、今後三十年間で首都直下地震についても七〇%の確率で発生するとされております。まさに、現実に大地震が発生すれば、国家の中枢機能が不全に陥るという、そうした被害も考えられるところであります。

 このため、緊急事態において国民の生命財産を守るために必要な規定をあらかじめ憲法上整備しておくことは必要だというふうに考えております。特に、御指摘のありました国会の機能を、国権の最高機関である国会の機能を可能な限り維持できるように、選挙実施が困難な場合における国会議員の任期の特例を設ける、こうしたことなどの自民党改正案を提示をしているところであります。

 私は、この一年半の間、新型コロナ対策担当大臣として対応してまいりました。特に、四度の緊急事態宣言の発出を行ってまいりましたが、その中でも四度目の緊急事態の発出中におきましては、衆議院の任期が迫る中、もし緊急事態宣言の発出中に選挙を行う場合、どのように行えばいいのか、私なりに思考を巡らせていたところであります。まさに民主主義の根幹であります選挙、これは国民の大事な権利であります。安全、安心な環境の中で確実に行うことが必要であると思います。

 幸いにも、国民の皆様の御協力、特にワクチン接種が進んだこともあり、感染者数は減少し、九月末に緊急事態を解除することができ、無事に衆議院選挙を行うことができたわけであります。

 今後、更なる変異株による感染拡大や、新たな感染症が発生した場合など、適正な選挙の実施が困難な場合があり得るということは、今回の新型コロナの経験から明らかであるというふうに思います。

 こうした感染症の拡大ということが、自民党改正案の条文上、大地震その他の異常かつ大規模な災害と提示をしておりますけれども、この条文で読み込めるかどうかについては法制上の精査は必要であるというふうに考えておりますけれども、いずれにしましても、緊急事態時において国会議員の任期の特例を設けることは喫緊の課題であるというふうに思います。是非、議論を加速していくべきだというふうに考えております。

 その特措法の担当大臣として、緊急事態の発出、あるいは蔓延防止重点措置の適用、さらにはその解除のたびごとに、先ほど御指摘もありましたけれども、衆参の議院運営委員会で御報告申し上げてきたところでありますが、四月十六日に蔓延防止等重点措置について参議院議院運営委員会に報告した際に、立憲民主党を代表して田島麻衣子議員が質問に立たれました。そして、緊急事態宣言が発出されているときに衆議院選挙ができますかとの趣旨の質問をいただいたところであります。

 まさに、緊急事態を発出している際に選挙を行うことの困難さについて、さらには国会議員の任期の特例の必要性について、立憲民主党も共通の認識を有しているのではないかというふうに拝察をしているところであります。是非、この点、立憲民主党の奥野幹事に見解を求めたいというふうに思います。

 こうした緊急事態への対応について一刻も早く憲法改正を行うことについて、各党の御理解、そして議論の加速を求めたいと思います。

 なお、玉木委員からの御指摘がございましたので、一言申し上げたいと思います。

 緊急事態での対応につきましては、まさに、内閣法制局と憲法との関係も慎重に整理をしながら、二度にわたる特措法の改正を行い、野党の中にも賛成をいただいた党もある中で成立をし、この法律、そして附帯決議もいただきましたので、附帯決議に基づいて、議運において与野党協議を踏まえて適正に対応してきたものであります。

 また、その議運におきましては、私の方からは、人流、検査件数、あるいはスーパーコンピューター「富岳」に基づく分析データなどもお示しをしながら、そのデータに基づく対策について丁寧に説明をしてきたところでありますし、更に申し上げれば、時短や休業などの要請を行った飲食店に対しましても、パート、アルバイトの方含めて一人三十三万円まで国が休業手当を一〇〇%支援する雇用調整助成金に加え、事業規模に応じて月額最大六百万円までの協力金も支給をしてきたところであります。

 そうした対応をしてきたことについて申し添えたいと思います。

 以上です。

奥野(総)委員 緊急事態の改憲を共有しているかというと、それはしていません。例えば、緊急政令についてはワイマールの例がありますから非常にネガティブに捉えていますし、それから、議員任期の延長も制度次第ではお手盛りと取られますから、むしろ緊急集会の活用を解釈で考える方が私はいいと思っています。

 それから、先ほどのオンラインもそうですけれども、やはり解釈でできるところ、現行法制でできるところできちんとまずは手当てをすべきではないでしょうか。

 コロナを奇貨として改憲論議を進めるというのは、私は拙速だし、間違っていると思います。

 以上です。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 総選挙後最初の憲法審査会ということで、我が党の立場は先ほど馬場伸幸幹事から申し上げたとおりでありますが、その中で一点、やはり進め方が大変重要かと思います。

 一つは、私ども、松井代表も申し上げていますが、やはりスケジュールを決めて、出口を決めて審議を、審査を進めていく、これは本当に大事なことだと思います。日本には様々な組織、団体がありますが、出口、スケジュールを決めずにだらだらと会議を積み重ねている組織、団体は、この国会の中だけであります。

 この憲法審査会は国民の憲法制定権力に関わる発議の責任を負っているわけでありますから、先ほど馬場幹事からは、夏の、来年の参院選ということを一例として申し上げましたが、スケジュールを決めて審議を進めていく、これを是非お願いをしたいと思います。

 その際に、では、スケジュールを決めてどう進めていくかといえば、それは今委員の方々からもございましたが、やはり分科会方式を速やかに導入をすべきと考えます。

 自民党は四項目、我が党は三項目、考え方をもう提示をしておりますが、全ての政党会派が、政党としての、会派としての考え方をしっかりとまとめて、そして項目を出し合って、そして優先度の高い項目について分科会を直ちに設置をして審議に入っていく、そういうことを改めて提案を申し上げたいと思います。

 奥野幹事に質問が集中していて恐縮ですが、会長代理として、やはりこの分科会方式、是非今日この場で、やろうと合意をしていただきたい、こう思います。

 CM規制について御関心であるそうでありますので、CM規制だって分科会をつくったらいいんです。緊急事態条項だって分科会をつくったらいいんです。教育無償化もつくったらいいんです。是非、そういう形でお願いをしたい。奥野幹事には見解をお願いしたいと思います。

 我が党としては、これまで党の憲法調査会長は浅田均参議院議員でありましたが、この総選挙の後、私が憲法調査会長を引き継ぎました。ここにおります三木圭恵衆議院議員が事務局長の体制で、新たに党の憲法調査会も活動を活発化させてまいります。

 我が党は、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の三項目を二〇一六年に既に原案を公表いたしておりますが、その三つにとどまらず、このテーブルで各党から出ています様々なテーマについて、順次、党憲法調査会のテーブルにのせて、いつ、どういう形で分科会が開かれても対応できる、そんな体制を整えていくつもりでございます。

 特に、緊急事態条項については、感染症の問題もあって、日本が抱える具体的な課題、イデオロギーを超えた具体的な課題の最たるものとして、私どももテーブルにのせてまいります。

 九条についてはいろいろな意見が出ておりますが、我が党はまだ具体的な案を出しておりません。これは、やはり憲法九条というのは、単なる条文の問題、法的な整理、法的な、技術的な問題を超えた、大変奥行きの深いテーマだと考えています。

 例えば、先日、十一月の二十日に、自衛隊員の皆様の殉職者の方の追悼式典が行われました。これはいまだに防衛大臣の主催なんですね。自衛隊を憲法に明記するといいながら、その殉職者のみたま、昨年の時点で二千一柱、今年も更に十八柱が加わりました。

 そうしたみたまにしっかりと応えていく、そうした国の在り方そのものをしっかりと整えていくために、我が党としても力を尽くしていくことをお誓いし、是非、この分科会方式、実現に向けて御協力をお願いしたいと思います。

 奥野幹事には、是非御答弁をお願いします。

奥野(総)委員 先ほどから申し上げますように、やはり憲法議論は慎重にやらなきゃいけません。拙速はよくないと思うんです。

 ですから、分科会をやる段階で、一定の価値観が入りますよね、これを取り上げていこうと。そこも全然決まっていないわけですから、いきなり分科会という議論は、私は拙速だと思います。自由討議を中心に質疑していくべきですし、まずは国民投票法の改正案をきちんと詰めていくことではないでしょうか。

森会長 答弁も含めて五分でございますので、御配慮願います。

船田委員 会長、ありがとうございます。

 自由民主党の船田元でございます。

 今回の衆議院選挙を経まして新たな勢力が決まった次第でございますが、その中で、維新の会の皆さん、それから国民民主の皆様などが非常に憲法改正について積極的な御発言をされているということは、大変うれしい限りでございます。

 ただ、やはり、衆参それぞれ三分の二以上という発議要件でございますので、更にできる限り多くの政党の皆さん、会派の皆さんが賛同できる、そういう土壌づくりをやっていくということは極めて重要でございますので、是非そのことを忘れずにやっていかなければいけないと思っております。

 改正項目などにつきまして、今日も議論がございました。共通する部分もあれば、多少食い違っている部分もあるかと思いますけれども、やはりこの全体会議の中で、ある程度、共通項といいますか、最大公約数と言ってもいいと思いますが、そういう項目を幾つか選ぶということは可能であるというふうに思っております。

 そういう見通しができたところで、先ほど来話がありますような、いわゆる幹事会における更に精密な議論、場合によっては項目ごとの分科会、これは大変重要なことでございまして、実は、この組織の前身であります憲法調査会、このときにも、憲法調査の取りまとめをする段階で分科会を開いたという経緯がございました。ですから、前身でそういうことをやっておりますので、これは大変合理的であり、またリーズナブルな方法ではないかというふうに思っておりますので、是非進めてほしい、このように思います。

 国民投票運動の在り方について、特にCM規制につきましては、私も当初から関与してきましたが、特に、民放連の皆様が、当初、何らかのガイドラインを作りますと約束をしてくれたんですけれども、その約束がほごになってしまいまして、大変残念に感じております。民放連の皆様には、やはり報道の自由あるいは表現の自由というものとの関係でなかなか踏み込めないということも理解できないわけではないのですが、もう少し積極的な議論をしていただきたかったなというふうに思っております。

 私は、確かに、報道の自由あるいは表現の自由は大事でありますけれども、やはり、一定の規制というのか、あるいはルールというのは、当然CMにおいては必要である、このように思っておりますが、最初に新藤幹事からお示しいただきましたA、B、C、D、これになぞらえて申し上げれば、私としては、BとDの融合という形で、組合せでやっていくのがよろしいのではないかと思っております。

 法的に一方的に規制をするということは、やはり表現の自由に抵触をする危険性がございますので、一方では、放送事業者が、CM考査というのが民放では行われておりますので、そのCM考査を延長する形で、憲法改正におけるCMを規制、ある程度コントロールするということ、そして同時に、国民投票に至る前、発議をした段階で、衆議院、参議院もそうでございますが、国会に国民投票広報協議会というのが置かれますので、この広報協議会がまさにその監視をしていくということで、この合わせ技で適切なCMの在り方というのを私は模索していける、あるいは実現していける、このように確信をしておりますので、是非そういう方向で御検討いただければありがたいと思います。

 以上です。

中川(正)委員 会長、ありがとうございます。

 参議院が予算委員会をやっているさなかに例外的にこうして開くことができた、僕は参議院に感謝をしたいというふうに思うんです。前例とならないという条件の下で今回開かれたということ、そこを確認しながら、私たちもこれから議論を進めていかなければならないというふうに思っています。

 その上で、解散・総選挙の後の初めての自由討議でもありますので、私は基本的に二つのことを中心に話をしたいというふうに思います。

 実は、私たちの党にも憲法調査会があるんですが、今回それをまとめていく役割を担うということになりました。改めてよろしくお願いをしたいというふうに思うんですが、そういう上でも、私たちの党としての基本といいますか、そこに返って、しっかりこの憲法審査会の場でも進めていきたいという、その思いを込めてお話をしたいというふうに思います。

 一つは、解散直前に、この調査会で国民投票法の議決とともに皆で確認したことがある。それは、さっきから出ておりますコマーシャル規制やネット規制、あるいは環境等々、国民投票を公正公平に行うために必要な手だてについて、更にこの審査会で具体的な議論の俎上にのせて、規制の中身を確定していくということだと思います。

 この課題について、私は森英介会長のリーダーシップに期待をしたいと思うんです。是非、具体的なそれこそ日程というのを、どういうプロセスでこれを議論していくかということ、幹事会で結論を得ながらリードをしていただければというふうに思います。もし、今、会長の中にそのスケジュールというのを思い描いておられるのであれば、ここでこんなふうにやっていきたいということをお話をしていただければというふうに思います。

 第二には、私たちがこの憲法審査会に臨む基本姿勢というものであります。一言で言えば、論憲です。憲法の三原則、国民主権、基本的人権の尊重、あるいは平和主義、これを更に深めていくために、立憲主義に基づいて議論を尽くそうということであります。

 それぞれの党が憲法に対してそれぞれの考え方を整理した方針案のようなもの、あるいは、中には憲法の改正試案のようなものまで公表されてきたということがありました。

 私が懸念するのは、こうしたものがこの憲法審査会に持ち込まれて、多数決で採決を前提にして発議しようというようなことがあるのではないか、その可能性であります。もし、この審査会がそのようなことを前提に運営をされていくとすれば、これは国民世論が分断してしまいます。本旨でないと思うんですよ、そういうやり方は。

 それで、私は、この国会の三分の二以上の賛成を前提にした日本国憲法の改正条項というのは、この審査会に対しても、国民世論の分断ではなくて、国民の統合と合意を促していく、そんな議論をここで重ねていくんだということを求めているんだというふうに思っているんです。

 更に言えば、私たちは、自らの主張だけでなくて、お互いの主張にも耳を傾けて、相違点というのを見出すよりも、合意点を見出していって、そこから具体的な結論を得ていく、そのプロセスをこの議論の中で、あるいはその仕組みの中でつくっていくという努力がもっと必要なんだというふうに思っています。

 議論の結果、現状は憲法に違反しているという結論を見出していくこともあります。また、憲法を修正せずとも、法律を作る方がより有効に機能するということもある。さらに、時代背景の変化の中で、憲法自体の見直しに進まなければならないということもあります。そういうようなことが、最初から改憲ありきの決めつけた議論というのをやっていたら、できないんです。

 だから、国民合意を得るためにも、最初から改憲ありきの決めつけた議論は避けなければならないということであります。大切なのは、論憲ということです。こうした姿勢の合意が各党間でできれば、私たちの中に疑心暗鬼を克服できて、信頼の土台の上で議論が進められるというふうに思っております。

 以上です。

森会長 ただいま中川君から会長たる私にお尋ねのあった件については、幹事会で協議をいたします。

山田(賢)委員 ありがとうございます。自由民主党の山田賢司でございます。

 まず、この審査会を開催していただきまして、本当にありがとうございます。

 審査会に参加させていただいて毎回思うんですけれども、様々お立場は違うんですが、大変有意義な御意見を聞かせていただいております。立憲民主党さんからも論憲という新しい言葉を御提示されました。是非、積極的な議論を続けていくためにも、定期的な開催をお願いしたいというふうに思っております。

 憲法を守る、これはどの党であっても重要なことでございます。ただ、この憲法を守るという意義について、憲法秩序を守るということなのか、憲法の条文の字面、これに一切指を触れてはいけない、そういう意味での護憲ではないと思っております。

 例えば、法律を守るというときは、法律に定められたルールを守るけれども、法律を改正することは法律違反だと言わないのと同じように、憲法を守るというときに、憲法に定められた秩序は守るんだけれども、現状に合わせて、様々な環境の変化に合わせて憲法を改正していくことは決して憲法に違反するということではないというふうに考えております。

 むしろ、解釈変更を続けていくことについて、恐らく野党の皆さん方は大変問題だとおっしゃっていたのではないでしょうか。憲法というものを勝手に時の政権が変えてはいけないということをさんざんおっしゃっていたような気がします。

 その中で、今日も、奥野委員からも、例えば国会の出席、五十六条の出席の解釈についても、これは憲法改正しなくても解釈変更でいいのではないか、あるいは、議員の任期についても、憲法改正をしなくても、これは解釈でいいのではないかというような御発言があったと思うんです。むしろ、これはしっかりと議論をして、憲法に定める。

 また、出席の解釈については、これはもちろん憲法の明文の規定にはありませんが、例えば衆議院規則百四十八条では、「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない。」という規定がございます。これも下位規則でございますから、規則を変えることは何ら問題はないと思うんですが、そういった定められた解釈がある以上、これまで出席イコール現場にいるということが求められていた、このことについて改めてしっかり議論をした上で、これは必ずしも現場にいなくてもいいんだということをこの立法府の中で議論をして、それを決めた上で規則を変えていく、このことは必要ではないかというふうに考えております。

 また、憲法というのは、国家権力を縛るとともに、人権を守るということが求められております。そして、憲法十三条は、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は国政の上で最大の尊重を求められております。この中で重要なことは、憲法の字面を守ることではなく、いかに国民の生命、身体、自由を守っていくかということでございます。現実に置かれている内外情勢を踏まえて国民の命を守っていくこと、これが重要だというふうに考えております。

 例えば、在外邦人の命を守るということ。アフガニスタンで邦人を退避させる、こういった必要があるときに、自衛隊機を派遣していいのかどうか、こういった議論がございました。古くは、自衛隊の海外派遣はとんでもない、違憲だという議論がありました。しかし、今では、それを反対する方はほぼいらっしゃらなくて、なぜ遅いんだ、なぜ自衛隊機を飛ばさないんだ、こういう議論になっているかと思っております。

 だからこそ、国民の命を守るということは最大限の尊重が必要なんだ、このことは確認をしたいと思っております。だからこそ、憲法違反の存在だと言われている自衛隊、これをしっかりと明記をすることが必要ではないかと考えております。

 また、北側委員からは、明記だけというものは、他国にはそういうような法令はない、重要なことは、いかにそれをコントロールしていくかということだと。

 我が党の提示させていただいております条文イメージも、自衛隊の明記という言葉で呼ばれておりますが、必ずしも自衛隊を明記することだけではなくて、いかにコントロールをしていくのか。最高指揮権者である内閣総理大臣、そして、それを国会の統制に置くといったことも含めて提示をさせていただいております。このことによって、国家権力に縛りをかけるという立憲主義、この目的にも達するのではないか。

 こういったことを幅広く御議論をいただいて進めていきたいと思っております。

 また、玉木委員からも御提案ありました、分科会にすべきではないか。私も大変賛成でございます。

 とりわけ、手続の話と中身の話というのは少なくとも分けていただいて、国民投票法のCM規制、これも重要な課題ですからしっかりと御議論いただくけれども、CM規制の話が片づかないと中身の議論ができない、こういうことであっては全く有意義な議論が進まないと思いますので、テーマを分けて御議論いただくことをお願いしたいと思います。

 以上でございます。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定の時間が参りました。

 この自由討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議しておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において協議をいたしたいと存じます。

 これにて本日の自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十一分散会


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