衆議院

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第1号 令和4年2月10日(木曜日)

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本国会召集日(令和四年一月十七日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 西村 康稔君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    井上 貴博君

      伊藤信太郎君    伊藤 達也君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      國場幸之助君    下村 博文君

      中西 健治君    船田  元君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      新垣 邦男君    近藤 昭一君

      櫻井  周君    中川 正春君

      野田 佳彦君    太  栄志君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    足立 康史君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      國重  徹君    中野 洋昌君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

令和四年二月十日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    五十嵐 清君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      伊藤信太郎君    伊藤 達也君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      大串 正樹君    加藤 竜祥君

      国定 勇人君    國場幸之助君

      塩崎 彰久君    下村 博文君

      中西 健治君    船田  元君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      若林 健太君    新垣 邦男君

      近藤 昭一君    櫻井  周君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      太  栄志君    本庄 知史君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      小野 泰輔君    金村 龍那君

      三木 圭恵君    國重  徹君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      玉木雄一郎君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     五十嵐 清君

  越智 隆雄君     若林 健太君

  西村 康稔君     加藤 竜祥君

  山田 賢司君     国定 勇人君

  足立 康史君     金村 龍那君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     井野 俊郎君

  加藤 竜祥君     西村 康稔君

  国定 勇人君     山田 賢司君

  若林 健太君     塩崎 彰久君

  金村 龍那君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     越智 隆雄君

同日

 幹事西村康稔君同日幹事辞任につき、その補欠として井上貴博君が幹事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 幹事の辞任及び補欠選任

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 幹事辞任についてお諮りいたします。

 幹事西村康稔君から、幹事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、幹事の補欠選任についてお諮りいたします。

 ただいまの幹事辞任に伴い、現在幹事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。

 それでは、幹事に井上貴博君を指名いたします。

     ――――◇―――――

森会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 今国会最初の憲法審査会が円満に開会されたこと、これをうれしく思っております。審査会の開催に当たりましては、合意を得るために真剣な議論がございました。与野党の幹事会メンバーの御理解と御協力をいただきましたこと、敬意と感謝を申し上げたいと存じます。

 本日の討議では、早急に議論を深める必要がある事項と私が考える事柄につきまして問題提起をしたい、このように思っております。

 まずは、国民投票法におけるCM規制に関する議論についてであります。

 基本的な思想は、二〇〇七年に国民投票法が制定された際に整理をされています。その精神は、国民投票は国民主権最大の発露の場であり、できるだけ自由にということでございました。

 積極的にこの方針を主張されたのは、当時の民主党でございます。私どもも一緒の考えで進めてまいりました。できるだけ自由にを基本に、CM規制については、法的な規制は極力避け、自主規制によって公平公正な国民投票運動を実現すべき、こういう整理がなされたということになるわけであります。

 特に重要なのは、CMを流すことになる、いわば受け手であります放送事業者による自主規制ということになります。

 そもそも、放送法は、放送番組編集の自由を規定し、放送事業者に番組基準の策定を求めるなど、自主規制を基本としているわけであります。

 国民投票におけるCMの取扱いは、放送と同様に民放各社の自主規制に委ねることを基本とするのは、放送法との兼ね合いからも自然の流れだ、このように考えております。

 今回、私たちが議論しなければならないのは、国民投票運動の公正公平を確保するためには、CMの受け手である民放連の取扱いに加えて、CMの主要な出し手であります私たち政党側について、いかに公正公平なルールを決めるかという点でございます。

 私の配付資料にございますが、まずはA、政党について直接に法的規制を行う。B、自主規制に委ねる。そしてCは、自主的な取組を後押しするために何らかの法的措置を定める。そしてDは、理念を規定した上で、自主規制として国民広報協議会の活動を充実させるなどの様々な方法が考えられると思います。

 まず、受け手である民放連による自主規制の在り方について、これも正さなければいけない問題があると思っています。ここを整理すると同時に、私ども政党側、出し手側の国民投票有料CMの取扱いにつきまして、是非、今後、憲法審を安定的に開催をして具体的な議論を深めていきたい、このように考えております。

 これと併せまして、もう一つ大切なこと、憲法の本体論議を活発に行っていくということでございます。国民からの期待もますます高まっておりまして、憲法改正をめぐる議論は、私たち国会議員に課せられた重大な責務だ、このように考えております。

 私たち自民党は、自衛隊を明記する、緊急事態対応の設定、合区解消・地方公共団体、そして教育充実、こういう四項目のたたき台となる条文イメージを提示しておりますけれども、憲法改正に関わる本体論議、いよいよ、項目ごとに具体的かつ本格的に深めていく、そういう時期に来ているのではないかと思っております。是非とも、そのためにも、憲法審査会、開催をして協議してまいりたいと思いますが、各会派の皆さんの御理解をよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 また、これに加えまして、現在、我々は、新型コロナウイルス感染症の蔓延事態という、まさに有事の真っただ中にあります。このときこそ、国会は、国民の命と生活を守り、経済を維持していくために、最大限の機能を発揮しなければならないわけです。

 国会の会議が成立するためには、憲法五十六条一項において、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」と規定しています。

 オミクロン株が猛威を振るい、感染者が激増している中で、国会議員に多数の感染者が発生し、濃厚接触者が増えた場合、定足数を満たす議員が議場に集まれない事態が発生する、このことは十二分に想定される状況、これが切迫しているわけであります。国民のために議論をし、決定する国会機能が麻痺してしまう。このリスクは、まさに目の前にある現実の危機であり、こうした有事と言える状況に対して、現行憲法には規定がない緊急事態について、早急な議論が必要ではないかと私は考えております。

 また、いかなる場合にも国会機能を維持し続けるためには、憲法五十六条一項の出席という概念について、議場にいなければならないのか、あるいはオンラインシステムを構築してリモート参加できるのか、そうした様々な検討が必要だ、このように思っております。今目の前にある危機、これを放置しておいてよいわけがないわけです。

 そして、これは、私、この話は二〇二〇年の五月、もう少しで二年になりますが、そのときの幹事懇で申し上げました。感染症有事と国会機能の維持について憲法上の議論を行おうということ、これを提案してまいりましたが、不要ではないが不急だ、こういう一部野党の反対がございまして、これまで実現できなかったこと、これは誠に残念でありますが、ますます事態は切迫している。私どもは、国会の責任を果たすためにも、そして国会機能を維持させるためにも、この問題にはしっかりと取り組まなければいけない、このように思っております。

 そして、憲法五十六条一項の出席の概念につきましては、憲法学者の中でも、学界においても見解が分かれているわけであります。どのように対応すべきかを論点整理することは、まさに憲法審査会に求められている役割だ、このように思います。

 さらに、この感染症蔓延事態が極まった場合には、そして、そこに国会議員の任期が関係してきた場合、国会議員の選挙が実施できなくなる場合が想定されます。こうした場合に、国会議員の任期延長の問題、このことも、やはり早急に議論しなければならない国の根幹に関わる事柄だと思っております。

 こうした意見は各会派からも多数寄せられておりまして、私としては、この問題を議論するために、是非、来週の定例である二月の十七日にも審査会を開いて議論しようということを提案しております。筆頭間において今後協議を行ってまいりますけれども、各会派、そして委員の皆様方の御理解をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 今後も円満に、そして活発に審査会が開催できるように最大限努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。

 我々は、論憲の立場を取っております。改憲は改正ありき。論憲は、議論をして、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三大原則を守りながら、憲法に足らざるところがあればそれを補っていくという立場でございます。議論の結果、必要があれば、憲法改正も訴えていきます。

 要すれば、改正ありきではないということであり、いわゆる、先ほど新藤筆頭からございましたが、安倍改憲四項目ありきの議論には応じられません。憲法議論自体は積極的に行っていきたいと思っています。

 さて、毎週審査会を予算の時期にも開催すべきだと、この間、御指摘を受けていますが、このコロナ禍で、私は、まず予算委員会の審議を優先させ、コロナ対策に専念すべきだ、その主張は今も変わりません。

 しかし、このコロナ禍において、感染拡大、国会でも多くの議員が感染されています。国会が定足数に満たなくなり、開会できない可能性も想定されるようになってきました。オミクロン2などもまだありますから。

 諸外国では、オンラインの国会審議が当たり前のように行われています。日本でも、憲法解釈により、すぐにもオンライン審議ができるようにすべきではないでしょうか。

 私は、以前から国会オンライン審議について提案をし、昨年秋の憲法審査会でも発言をしてまいりました。また、先日の予算委員会でも取り上げてまいりました。

 そこで、憲法審査会として、オンライン国会審議の憲法上の論点について整理をし、現行憲法上可能であることを明確にすべきだと思います。その議論を行うことは、今予算審議中であっても私は必要じゃないかと思っています。

 先ほど、新藤筆頭からは、緊急事態全般についてという発言もありました。不要ではないが不急だと言ったのは実は私でありまして、コロナ禍に憲法改正の話をしても到底間に合うものじゃありませんから、今どうするかという話ですよね。であれば、今できることというのは、解釈でオンライン審議を行っていくということであります。緊急政令とか、そういう問題をはらんでいるものについて、今拙速に議論すべきではありませんし、そもそも我々は、そこについては反対であります。

 現行憲法制定時には、オンライン審議は当然想定されておりませんでした。ですから、足らざるところを補っていくというのは、まさに論憲の立場からも必要であります。まずは、このオンライン審議については審議を優先させていくべきだと私は思います。

 もう少し踏み込みますが、条文を今、資料をお配りされていると思います。御覧いただきたいと思います。

 憲法五十六条の条文が上についています。五十六条、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」こう書いています。学説は分かれていますが、資料にあるように、近年ではオンライン審議を認める学説も有力です。

 衆議院規則百四十八条では、「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない。」と定めています。憲法審査会で五十六条の解釈を確定させ、これは議運での議論になると思いますが、例えば、ただし、感染症等のため議場にいることができない議員であってあらかじめ議院の許可を得た者は表決に加わることができるなどというような改正をすれば、オンライン審議はすぐにでも可能ではないでしょうか。これは喫緊の課題であると思います。優先して議論いただきたいと思います。

 そして、もう一つ大事なことは、国民投票法の改正検討です。

 経緯をおさらいさせていただきます。

 国民投票運動の規制は、より自由にの理念の下、必要最小限度のものとするよう様々な工夫がなされております。しかし、放送広告については、二〇一九年五月の憲法審査会において、民放連が広告量に特化した自主規制は行わない旨発言し、制定時の前提が崩れてしまっているんですね。先ほど自主規制という話もありましたが、少なくとも民放連の自主規制の前提は崩れてしまっています。また、制定以降、インターネット広告の飛躍的な増加、SNSの普及など、事情変更も生じています。

 そこで、我々立憲民主党は、昨年の国民投票法改正において、国民投票の公平公正を確保するために、国民投票運動等のための放送広告やインターネット有料広告の制限、資金規制、インターネット等の適正利用の確保を図るための方策その他必要な事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる旨の検討条項を設ける修正案を提案し、多くの会派の御賛成を得て成立をしています。

 その後、年末から今年にかけて、我々は、三年前に玉木代表の下、国民民主党として提出した法案、私も提出者でしたが、これとほぼ同じものを提出すべく、作業を続けてまいりました。表現の自由と国民投票の公平公正とのバランスが図れるように、精力的に検討を重ねて、法案を取りまとめました。

 ここに概要をお配りしていますが、簡単に御説明したいと思います。

 まず、国民投票運動等のための放送広告及びインターネット等の利用に係る規制について。

 具体的には、国民投票運動、すなわち憲法改正案に対する賛否の勧誘のための放送広告は、その主体を問わず、全期間にわたって禁止をしております。

 その上で、政党による放送広告については、賛否の勧誘だけではなく、賛否の意見表明、そしてインターネット有料広告についても禁止の対象としているところであります。

 なお、禁止の対象となる政党とは、国民投票広報協議会が行う放送において意見広告の枠を有する政党としており、意見表明の機会は保障されています。

 そのほか、インターネット有料広告に係る事業者等による掲載基準の策定等や、その適切かつ有効な実施に資するための国民投票協議会による指針の策定等々、措置を講じているところであります。

 そしてもう一つ、肝は、国民投票運動等の資金に係る規制であります。

 国民投票運動等に関する支出額が一千万円を超える団体に収支報告を義務づけるとともに、五億円の支出限度額を設けています。

 また、運動資金が特定の者や外国人に依存することを防ぐため、一人当たりの寄附の上限額の設定、外国人寄附の受領の禁止など、寄附規制を定めているところであります。憲法改正国民投票への外国政府等の関与を防ぐための措置として、是非ともこれは必要な措置であると思います。

 ほかにもありますけれども、以上が我々の法案の概要であります。

 国民投票の公平公正を確保できるまでは、憲法改正の発議はできないと解されます。この法案を近々国会に提出させていただきますので、我々の法案に基づき議論を求めてまいります。

 国会でのオンライン審議とこの国民投票法に関する議論を真っ先に行っていただきますよう、お願いをいたします。審査会に出席をして、こうした議論を急ぐものについては積極的に議論を進めてまいります。

 私からは以上です。

森会長 次に、馬場伸幸君。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 まず冒頭、本日、こうして憲法審査会が開催できましたことを歓迎するとともに、開催に尽力くださった関係者の皆様方に敬意を表したいと存じます。

 本日は衆議院予算委員会も開催されていますが、こうして、国会の運営状況にかかわらず、毎週木曜日の定例日に憲法審査会を粛々と開催することが大事であります。定例日に審査会を開催するかしないかがニュースとなり、与野党で駆け引きが繰り返されること自体が異常であり、国民の理解を得られるものではないと委員全員が知るべきです。

 本日に続いて来週木曜日に開催した後、再来週は審査会を開催しないことを画策している政党があるとも仄聞しています。そうした五五年体制をほうふつとさせる談合は、この憲法審査会には不似合いであり、日本維新の会としては絶対に認めることはできません。

 毎週木曜日の定例日には憲法審査会を粛々と開催し、憲法を国民の手に取り戻す、そんな当たり前の憲法審査会が実現するよう、私たち日本維新の会は、今後も力を尽くしてまいります。

 さて、本日は、国会へのオンライン出席について、我が党の意見を申し述べます。

 本日、我が党の審査会委員である足立康史衆議院議員が欠席をしており、皆様方もほっとされていることと思いますが、これは、内閣委員会の理事会で席を共にした立憲民主党の筆頭理事がコロナ陽性となったため、大事を取って出席を控えたものであります。本人は、自分が憲法審査会で発言できないのは国家的損失であると豪語するなど、至って元気ですが、確かに、オンライン出席が可能であれば、自室からオンラインで発言することは、技術的には容易であろうと推察されます。

 地方議会にあっては、既に多くの議会においてオンラインで委員会に出席することが可能になっており、一昨年の十二月に、大阪府議会で維新の府議が委員会にオンラインで出席したことを皮切りに、実際の運用が始まっています。

 ところが、国会での動きは遅々として進んでいません。

 まず、地方議会からは、委員会のみならず本会議のオンライン出席を可能とするよう求める要望が繰り返しなされ、今週七日の予算委員会でも、我が党の住吉寛紀衆議院議員が政府に解決を求めましたが、金子恭之総務大臣は、地方議会の本会議が当該団体の意思を最終的に確定させる場であることを理由に、国会における本会議と同様、議員の意思表明は疑義の生じる余地のない形で行われる必要があるとし、地方自治法第百十三条及び第百十六条第一項における出席の概念は現に議場にいることを前提としているとの立場を崩しませんでした。

 確かに、憲法五十六条一項に規定する衆参両議院における出席概念についても、日本語の出席とは物理的にそこにいることであって解釈の余地はないとする、いわゆる物理的出席説がこれまでの通説でした。

 しかし、ICT活用の合理性やコロナ禍の必要性の高まり等を背景に、機能的出席説とも言える新しい有力説が宍戸常寿東大教授や大石真京大名誉教授などから提唱されるようになってきました。つまり、出席を要求する趣旨は、議員自らが議論し、その過程を通じて議案に対する賛否の意思を形成し、最終的に自らが表決に参加することであり、こうした出席の機能に注目すれば、必ずしも空間的、場所的な議場に現存しなくても、ICTを活用して一定のインタラクティブな環境を整備することによって出席と評価することは可能であるというのです。

 もちろん、こうした機能的出席説に立った場合でも、物理的に出席することを原則とし、オンライン出席は例外として認めることが必要かもしれません。議会の機能の維持及びそのより一層の保障という観点から、オンライン審議を例外的、限定的な制度と位置づけ、条件付で解禁するのです。

 オンライン出席の対象は、感染症の蔓延といった国会全体の事情から、妊娠や出産といった議員個人の事情まで、様々でしょう。また、昨年五月の参議院内閣委員会の参考人質疑において、我が党の高木かおり参議院議員に対し宍戸常寿教授が提案されたように、審議や採決にオンライン参加する議員に不当な圧力がかかる物理的な環境でないことを議院事務局が確認することや、議長の管理権が及ぶ議員会館からオンライン参加するといった工夫も検討の余地はあるでしょう。

 私たち日本維新の会は、こうしたオンライン出席を可能とする対象、手続、憲法上の公開要請の担保などについて検討し、具体的な制度設計をするオンライン国会小委員会を本憲法審査会の下に設置し、衆議院運営委員会が衆議院規則第五十一条や第百四十八条の見直しに取り組むに当たって、憲法解釈の観点からサポートすることを提案いたします。

 以上申し述べたオンライン出席を可能とする制度の在り方は、立憲民主党がこだわっているCM規制の在り方と同様、非常にテクニカルな側面が大きいテーマであり、抽象的な概念を弄んでも結論には近づきません。

 立憲民主党が本気で国民のために仕事をしたいのであれば、我が党が提案する小委員会方式に賛同いただきたいと思います。このことを奥野総一郎幹事に回答を求め、私からの意見表明といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 国会は、国権の最高機関、唯一の立法機関でございます。国会の危機と言える緊急事態にこそ、国会はその役割と責任を果たしていかねばなりません。

 しかし、こうした危機時に多くの議員が国会の議場に参集することが困難となる場合を想定しておく必要があります。例えば、感染症が爆発的に蔓延し、極めて深刻な状況となった場合、また、巨大地震の発生で甚大な被害が発生したときでも、国会は、必要な予算と法律を速やかに成立させ、政府に対し、適切、迅速な対策を求めていかねばなりません。

 以下、緊急事態における国会機能の維持という観点から、オンライン国会の是非について意見を述べます。

 憲法五十六条一項には、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」とあり、五十七条一項では、「両議院の会議は、公開とする。」とあります。したがって、多くの議員が国会の本会議場に参集することが著しく困難な状況となった場合には、本会議を開催することができないのでしょうか。五十六条一項の出席とは、議場での出席に限られるのでしょうか。憲法学者にも両論があるようですが、私は、一定の要件、条件の下で例外的にオンライン国会を開催することは憲法上も許容されると考えます。

 五十六条一項は、本会議が成立しているかどうかという定足数の要件として総議員の三分の一以上の出席を求めていますが、その趣旨は、国会の意思決定の民主的正統性を持つには、議員が少なくとも三分の一以上出席していないといけないと考えたからだと思われます。議場という公開された物理的空間にリアルに集合し、自由闊達な議論を経て賛否の投票をするのが基本との考え方は十分に理解できます。

 しかしながら、議員の多くが議場への参集が著しく困難な客観的状況と認められる場合には、例外的に一定の条件の下で、オンラインを活用し議事を開き議決することは憲法上も可能と考えるべきです。国会の意思決定の正統性が阻害されているわけでもなく、五十八条二項に定められた議院の自律権の合理的な範囲内と考えられるからです。

 ただし、オンライン国会を実施するには、幾つかの条件、課題があると思われます。

 まずは、議員の多くが議場への参集が著しく困難な客観的状況であるかどうかの認定です。これは、議長が議院運営委員会に諮って決定することになると思われますが、できる限り客観性を担保するため、両院の議院規則でオンライン国会実施の要件と手続を具体的に定めておく必要があります。また、五十七条一項の公開原則に反することがないよう、会議の公開性、可視性が確保される方策が検討されなければなりません。さらに、システムのセキュリティーや投票の真正性が確保されなければならないということは言うまでもありません。

 以上、緊急事態における国会機能の維持という観点から述べましたが、まずは、オンライン国会がそもそも憲法上許容されるのかどうか、本日も多くの委員の皆様から発言がございましたが、当憲法審査会で積極的に論議し、できるだけ速やかに会派間の、政党間の合意形成を図るべきと考えます。憲法上可能ということであるならば、オンライン国会の実施に向け、政党間又は議院運営委員会等でその詳細が検討されるべきと考えます。

 最後に、今まで述べました緊急事態における国会機能の維持という観点とは少し異なりまして、議員個人の表決権を確保するため、オンラインで議事、議決に参加することができないかどうかという別の課題があります。全国民を代表する選挙された議員にとって、表決権の行使は基本的な権能であり責務でもあるからです。出産等の理由でやむを得ず議場等での議事、議決に参加できない場合に議員の表決権行使を確保するため、例外的にオンラインでの参加を認めることも今後検討されてしかるべきと考えます。

 以上、私の意見表明といたします。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 まず、本日、憲法審査会が開催されて大変よかったと思います。憲法審査会には政府側の出席は不要であり、今後も、予算委員会が開催されていても、定例日には開催すべきだということを申し述べたいと思います。

 憲法は国民のものであって、国民民主党は、国民のための憲法議論をこれからも積極的に進めていきたいと思います。

 速やかに議論しなければならないのは、コロナ禍で明らかになった憲法上の課題、特に統治分野での課題です。特に、二つのテーマが重要だと考えます。

 まず、先ほどから話が出ている、いわゆるオンライン国会を可能とすること、そして、緊急事態発生時に国会議員の任期を特例で延長することを可能とすることであります。

 特に、オンライン国会を可能とすることは、今、オミクロン株の感染が急拡大し、議員本人、秘書、院の職員、政党職員などにも感染者や濃厚接触者が急増している中で、国会の機能を維持するために速やかに結論を得るべき課題であります。

 そこで、この場にいる憲法審査会の与野党の先生に呼びかけたい。本日、この場で、定足数等を定めた憲法五十六条に規定する出席が、必ずしも物理的出席を意味するものではなく、オンライン国会も含み得る概念だということについて、合意を形成しようではありませんか。

 その合意の上に立って、衆参の議院運営委員会において、速やかに衆議院規則、参議院規則の改正を行う。国民民主党は実施条件を定めた規則の改正案を既に用意しておりますので、是非、この場で結論を得てはどうかと提案したいと思います。

 国民民主党としては憲法改正は不要だと考えますが、憲法学者の中には、五十六条の出席は物理的な出席が必要だと主張している方も確かにおられます。しかし、院の運営の話は、院の構成員である国会議員が決めれば決まるものだと考えます。

 憲法の第四章は、四章の国会の規定については、国会自身が解釈権を持つ珍しい部分でもあって、解釈は国会議員が決めるべきことだと考えます。本日、この場で、五十六条の解釈について確定をするための議論を是非行いたいと思います。むしろ、出席は物理的な出席が必要であるという意見の方がこの場にいらっしゃれば、是非反論をいただきたいと思います。

 とにかく急ぎます。コロナ禍で明らかになった憲法上の課題に、憲法審査会のメンバーとして、立法府の一員として、責任ある解決策を速やかに示していこうではありませんか。森会長の取り計らいを是非お願いしたいと思います。

 次に、緊急事態発生時における衆参の国会議員の任期の特例延長を可能とする制度創設の必要性について述べたいと思います。

 昨年秋の衆議院選挙の際、たまたま新型コロナの感染が抑えられていましたが、仮に感染爆発の真っただ中で任期満了を迎えていた場合、現行憲法下では総選挙を実施せざるを得なかったと思います。緊急時における任期の特例延長と、選挙期日の特例を認める議論を速やかに行うべきだと思います。

 夏には参議院選挙が迫っています。例えば、憲法に、緊急事態が発生した場合であって、任期満了による衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、各議院の出席議員の三分の二以上の多数でその任期の特例を定めることができるとの規定を置くことも一案です。

 なお、緊急事態においても立法機能、予算議決機能、行政統制機能といった国会の機能を確保し、行政に対する国会統制を適切に担保する観点から、任期の特例延長に加えて、緊急事態における解散権の制約についても検討してはどうかと考えます。

 なお、自民党の改憲四項目のうち、緊急事態条項は大規模な自然災害のみを緊急事態として想定していますが、コロナ禍を経た今、感染症の大規模な蔓延も緊急事態に含めるべきだと考えます。国民民主党としては、緊急事態のカテゴリーとして、外国からの武力攻撃、内乱・テロ、大規模災害、感染症の大規模蔓延の四つを基本に想定してはどうかと考えます。

 こうした緊急事態におけるルールは、憲法改正でなく法律で足りるのではないかという議論がありますが、しかし、緊急事態という危機において、国家の、国権の最高機関である国会の機能をどのように維持し、行政にどこまで権力行使を認めるのかという究極のルール作りは、国民投票を必要とする憲法改正がふさわしいと思います。なぜなら、憲法こそが、国民が国家に対し権力を与えると同時に、歯止めることのできる唯一の最高法規だからです。

 あえて申し上げれば、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で憲法上の権利が制約され得る状態が放置されることこそ危ないと考えます。

 こうした国家統治の基本的な在り方を、改憲イコール九条改正、イコール戦争へとまっしぐらといったステレオタイプやレッテル貼りを乗り越えて、静かな環境の下で議論を積み重ねていこうではありませんか。

 次に、データ基本権について述べたいと思います。

 人権分野に関しては、デジタル時代のデータ基本権の議論を速やかに進めるべきです。健全なデータ資本主義の発展のためには、価値を同じくする国々とデータ利活用の基準を共有していくことが不可欠であり、ヨーロッパのGDPRがそのスタンダードと目される中で、日本でもデータに関する基本原則を憲法にうたうことも検討すべきだと思います。

 特に、当たり前だとされていた憲法十九条の思想、良心の自由も、実は、データを活用して意図的に操作されやすい脆弱なものであることが浮き彫りになってきています。だからこそ、思想、良心並びにその形成の自由というプロセスの自由度まで広げて保障しなければならないと考えます。思想や信条の形成そのものが操作できるとなれば、民主主義の在り方そのものが問われているからであります。

 最後に、今後の審査会の開催形式について三点申し上げたいと思います。

 まず、定例日には必ず開催し、政局を離れた静かな環境の下で憲法改正の議論を深めていくべきだと考えます。その際、論点が複数ある中、論点を絞った議論も必要不可欠です。そのために、分科会方式を改めて提案したいと思います。

 また、国民投票法の議論については、CM規制、外国人の寄附規制、ネット広告規制など重要な宿題が残っていますが、この国民投票法の議論と憲法本体の議論は、同時並行で進めていくべきだと考えます。

 結びに、改めてオンライン国会の実現と、定足数等について定めた憲法五十六条の出席が必ずしも物理的出席を必要としないことについて、本日、議員間の合意を求めることを求めて、発言を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たちは、憲法審査会は動かすべきではないという立場です。自民党の改憲四項目などの九条を中心とする改憲草案作りを進める議論は、断じて許されません。今必要なのは、憲法に反する現実を正す議論です。コロナ禍で生存権が脅かされている現実こそ議論すべきです。

 今、感染者が増加する中で、医師、看護師、保健師、医療設備の不足が深刻化し、検査や診断すら受けられず、放置される事態となっています。効率化の名の下で医療と保健所の体制を削減し続けてきた結果であります。

 コロナの長期化で失業者が増加し、二〇二一年の平均完全失業者数は百九十三万人と二年連続で増えました。その多くが、契約社員やパート、アルバイトといった不安定な労働条件の下に置かれた非正規労働者です。

 ホームレスの人や家に居場所のない子供たちは生活の場所さえ失い、民間団体が行っている無料の食料配布会の利用者は増加し続けております。

 特に、若者や女性の貧困は深刻です。コロナ禍当初、仕事を失った女性の数は男性の二倍以上に上りました。母子世帯を中心に、一人親世帯の困窮も一層深刻化しています。ジェンダーギャップ指数が百五十六か国中百二十位という、日本の不平等社会が顕在化しています。

 政府の緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置に伴う経済活動の制限により、営業の自由が制約されています。しかし、それに対する十分な補償は行われず、不備ループと言われるずさんな審査により、逆に業者が追い詰められる事態となっています。

 コロナ禍で明らかとなったこれらの問題に一つ一つ応えることこそ、今、政治に求められています。それは、憲法二十五条の生存権を始め、憲法の原則を現実に生かすことにほかなりません。

 さらに、コロナ禍で重大なのは、米軍基地が感染対策の大穴になっていることです。昨年末以降、オミクロン株のコロナ感染が急拡大した大きな要因として指摘されているのが、米軍基地からの感染のしみ出しです。

 最初に感染が広がった沖縄県では、昨年十二月上旬、アメリカ本国からキャンプ・ハンセンに入国した部隊で大規模なクラスターが発生し、その後、市中に感染が拡大しました。山口県や広島県でも、米軍岩国基地でクラスターが発生し、県内の感染者が増加することになりました。

 日本政府は、アメリカからの入国を原則停止しています。しかし、日米地位協定の下で、米軍関係者はその例外とされ、今でも自由に入国し続けています。

 さらに、米軍は、昨年九月三日から、アメリカ本国から日本に向かう際の出国前の検査を免除し、入国直後の検査については、そもそも当初から実施していませんでした。その一方で、アメリカに戻る際には出国前検査を継続していました。極めて屈辱的です。

 日本政府は、米軍の検査免除を確認したのは十二月二十四日だと言っておりますが、米軍は、九月に通知していたと主張しています。国民の命と健康に関わる重大問題であり、そごがあったの一言で片づけられる問題ではありません。

 ところが、政府は、コロナ対策について協議した日米合同委員会の議事録の開示を拒否し、国民に対する説明責任に背を向けているのであります。

 検査の方法も、日本の検疫は抗原定量検査ですが、米軍はより精度の低い抗原定性検査が認められています。

 キャンプ・ハンセンでクラスターが起きた部隊のゲノム解析は、米軍が本国で行うと言って持ち帰ったまま、一か月以上たっても日本政府に結果の報告はありません。日本政府は日本側の整合的な措置をお願いするだけで、実施するかどうかは米軍任せになっているのが現状です。その下で、基地と隣り合わせに暮らしている住民は、常に感染の危険と不安にさらされているのであります。

 検疫法や入管法など、米軍に日本の国内法を適用することは、コロナ対策における喫緊の課題であります。

 亡くなられた翁長雄志前沖縄県知事は、在任中、日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会があると指摘をいたしました。

 全国知事会は、日米地位協定を抜本的に見直し、国内法令を米軍にも適用するよう求めています。

 改めて、日米地位協定の改定に党派を超えて取り組むことを強く呼びかけ、発言といたします。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 まず冒頭に、憲法審査会が定例日に開かれたことは当然のことでありながら、会長、両筆頭幹事、関係者の皆さんの御努力に敬意を表したいと思います。

 これまでのように、談論風発も誠に結構ですけれども、いつまでも意見交換ではなく、項目を絞って、憲法改正の成案に向けて具体的な議論に入るべきだというふうに思います。その際、有志の会も新参者ですので、俎上にのせるべき項目を幾つか御提案申し上げたいというふうに思います。

 まずは、憲法第九条です。

 具体的に、九条の第一項は、国際紛争を解決するための武力行使又は武力による威嚇を禁止するということで、一九二八年の不戦条約に起源を発し、国連憲章第二条とほぼ同じものであります。良識ある国家の間で確立された原則で、変える必要はないし、変えるべきではないというふうに思います。

 他方、第二項については、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」というのは、古今東西、極めて珍しい条項です。主権国家として、戦力、すなわち軍隊を持たないのは、なかなか現実的に想定できません。事実、こうした第二項の下でも、我が国は、現在では、政府の才気あふれる解釈技術によって、自衛のための必要最小限度の軍事力を持つのは当然だということになっています。

 しかしながら、これで本当にいいのかということです。憲法第九十六条に規定される国民投票を経ずに、時の政権の解釈変更によって、警察予備隊がいつの間にか自衛隊になり、集団的自衛権が、行使せずから限定的に行使できると変更されています。

 立憲主義というのは、政治権力が単に憲法に基づいて統治されるということだけではなく、政治権力を憲法が実質的に制限するということだというふうに私は理解しています。今の状態で、果たして政治権力が実質的に制限されているのでしょうか。立憲主義に基づいた議論を深めていくべきだというふうに思います。

 二つ目、憲法に新たに加えるものとして検討すべきことは、デジタル基本権です。

 これは公明党さんや国民民主党さんも提案されておられますが、我々も、大方その問題意識を共有します。

 具体的には、一つは、サイバー空間における誹謗中傷などの行き過ぎた言論に対し、人権保障を確保すべきではないか。

 二つ目には、スマホなどにおける交際アプリとかウーバーのような配達アプリ、遺伝子検査のアプリなどを通じて、個人の極めて内密な情報が企業に吸い上げられております。これに対し、プライバシー権などを実質的に保障する必要があるのではないか。

 三つ目には、この問題は企業だけにとどまりません。英国の情報機関などによりますと、中国政府などは、こうしたアプリ関連の企業を通じて、一般人だけでなく、議員や自衛隊を含む政府の高官や情報員などの個人情報を恐らくは意図的に吸い上げて収集をしております。これを放置することは、我が国の主権を少しずつ侵食されることだというふうに思います。

 こうしたことから、表現の自由やビッグデータなどの技術革新に一定の配慮をしつつ、個人データの自己決定権を憲法上どのように位置づけるかということは、すぐれて今日的な課題だというふうに思います。

 三つ目は、緊急事態関連です。

 感染症の専門家によりますと、気候変動の下、人の国際的な移動が加速しており、各国に都市が急速に増えていることなどにより、感染流行に見舞われる頻度はより多くなるだろうと指摘されています。また、テロ、内乱、大規模災害などに備えることは、国家の危機管理として当たり前の話です。

 こうした緊急事態が発生した際に、これまでも度々御指摘があったとおり、国会議員が多数国会に出席できず、本会議を開くための定足数に及ばないことも十分考えられます。これは憲法第五十六条、五十七条に関わりますけれども、その場合、どのように国会の立法及び行政監視機能を守るか。これを憲法上保障することは、立法府として真剣に考えるべきではないでしょうか。

 その意味では、新藤筆頭幹事の、来週二月十七日の定例日はオンライン審議をテーマに討議しようという御提案はまさに時宜を得たものであり、有志の会としても賛成したいというふうに思います。

 四つ目、ほかにも、統治機構の在り方など、この際、議論を深めるべきだと考えます。

 様々な論点はございますけれども、例えば、地方自治について、地方自治の本旨を明確化するために、住民自治、団体自治について具体的な規定を設ける、こういうことも、少なくとも議論はすべきだというふうに思います。

 以上、こうしたことからも、立憲主義の視点からも、技術変化に対応して基本的人権を守るためにも、危機管理のためにも、地方自治のためにも、憲法改正の具体的な論点について、丁寧かつ早急に議論をまとめていく必要があるのではないかと思います。

 なお、国民投票法に係る広告規制等についても、当然結論を早急に得るべきだと思います。ネット広告が不当に国民の投票行動に影響する問題などは、まさしくデジタル基本権の範疇に入りますし、これは憲法本体の議論と同時並行的に行うのが有益だというふうに思います。

 以上、私の意見表明といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札は戻していただくようにお願いいたします。

 また、幹事会の協議により、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

柴山委員 会長、発言の機会をありがとうございます。

 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 まず、憲法審査会の今後の運営につきまして、私も意見を申し上げたいと思います。

 週一回の定例日には確実に議論をしていくということ、そして並びに、複数の論点をしっかりと論点整理をして開催するということ、そしてその際には、例えば各党が参加する幹事懇において論点整理についてしっかりと議論をしていくということ、これらの点については私は当然のことだというように考えております。

 さて、その上で、私も、審議の優先的な課題としてコロナ対策がまず来るということについて主張をしたいというふうに思います。

 既にこの審査会でも何度か議論をされている任期の特例については、国会の国権の最高機関であるという性質、そして、明文で明らかにこの任期の延長について定められていないということを考えても、改正の優先度は極めて高いと思いますし、また、憲法五十四条の二項において、参議院の緊急集会が衆議院が解散されたときにのみ開催をされると定められていることからも、これを緊急事態条項の一つとして議論をする必要性は極めて高いというように思います。

 先ほど玉木幹事から、この緊急事態の任期の延長の中に感染症を含めるべきだという御意見が出されましたけれども、これは極めて傾聴に値する意見だと思います。是非、しっかりと、この問題についても特出しで議論をしていくことを提案してまいりたいというように思います。

 そして、先ほど来議論が出ている出席の定義についてでありますけれども、これについても、私も、明文の改正なくオンラインで出席をするということができるという意見に賛成であります。

 ただ、その際に、出席という概念が実はほかにも複数使われている。例えば憲法五十七条では、両議院の会議が公開とされることに関連して、「出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。」ですとか、あるいは、より重要なのは、憲法六十三条で、内閣総理大臣その他の国務大臣が、議案について発言するために議院に出席することができる、あるいは、求められたときには出席しなければならないと書かれている部分があります。

 この国務大臣の出席については、例えば海外出張など正当な理由がある場合に、必ずしも大臣本人が出席する必要がないではないかという議論がありますけれども、まさしく、このような場合にこそオンラインを使った出席が可能ではないかという議論が当然あるべきだというように考えております。

 とすれば、出席にオンライン会議を含むことの理由として、コロナなどの緊急事態が必要なのか、それともそれ以外の正当な理由も含むのかという議論は、私は必要だと思いますし、また、先ほど議論が出たような本人性の確認、また、今紹介した会議の公開性との関係で、いかに発言者がその場にいるかということが、国民の代表として、ほかの方々に、一般に可視的であるかということ、そのようなことを議論することが私は必要だと思っておりますし、この場でまず、出席がオンライン会議を含むのかどうかということを先行して決議を得るというよりは、この出席ということに、やはり本人の、可視的な状況で議論に参加をする要請があるという、その文言の本来の趣旨を踏まえてしっかりと議論をした上で、限界づけも含めて私は結論を出すべきだというように考えております。

 以上でございます。

道下委員 立憲民主党の道下大樹です。

 まず、我々立憲民主党は、予算委員会において新年度予算案が審議されているさなかに憲法審査会が頻繁に開催されることについては、厳に慎むべきというふうに申し上げてきましたし、皆様に協力を求めてまいりましたが、今回、このように開催されてしまいました。

 これまでも特別な事情を考慮して開催された事例はありますが、憲法改正ありきでこの憲法審査会が開かれることがあってはならず、ましてや、コロナ禍で、国民の命、暮らし、経済に多大な影響が発生していることを考えますと、コロナ対策に取り組むことを重点的に含められている予算案審議に集中すべきだというふうに多くの国民が思い、求められていることは明白だと思います。

 さて、これまでの憲法審査会におきまして、憲法改正の必要性について、一部の委員から幾つか意見が述べられました。しかし、私は、どれも憲法改正の必要性は乏しいと言わざるを得ないと考えています。

 幾つか指摘をさせていただきたいと思います。

 まず、緊急事態条項についてであります。

 よく、今の日本国憲法では、このコロナ禍、感染急拡大して緊急事態となった場合、ロックダウン、強い行動規制はできない、憲法に緊急事態条項があればもっと適切な対応ができたという意見を述べられる方がおられます。でも、これは本当なのでしょうか。

 日本国憲法には、第十三条や第二十二条のように、自由権が規定されています。では、憲法で自由権が保障されているからといって、全く制限できないかといえば、そうではありません。例えば、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第三十三条では、都道府県知事に対して、交通の制限又は遮断をすることができるとしています。また、原子力災害対策特別措置法第二十七条の六では、市町村長は、警戒区域を設定し、立入りの制限や禁止、退去を命ずることができるとしています。

 私が申し上げたいのは、このように、憲法上の自由権を制限できる場合として、実質的な根拠として、一つ目、規制の目的が正しいかという規制目的の正当性、二つ目、規制が目的達成に役立っているかという目的、手段の関連性、三つ目、より制限的でないほかの選び得る手段がないという規制手段の必要性、四つ目、権利の重大性よりも得られる利益の方が大きいという規制の相当性、これらがある場合に制限できるとし、それを法律で定めております。

 あの悪名高い緊急事態条項として、ワイマール憲法第四十八条二項が挙げられます。この緊急事態条項の濫用は、制定されてかなり早い段階から始まりました。それ自体は正しいと思われる対応であっても、議会などの丁寧な手続を飛ばした緊急対応の前例を作ること自体が非常に危険であることは、歴史が証明しています。緊急事態対応は、個別問題を分析し、それに応じた法的根拠を整えるのが法治国家の基本であると私は考えます。

 各国のコロナ対応を見てみますと、立憲主義国では、感染症対策の法律や、それに基づく政省令、地方自治体や各州のルールに基づいて対応しています。憲法にある緊急事態条項を使って、議会を無視して政府の緊急政令で対応している国はほぼありません。そもそも、このコロナ禍にあっても、議会が開けないような状況にはなっていません。

 憲法を改正して緊急事態条項を規定するよりも、感染症法等を改正してコロナ対応に当たるのが真っ当ではないでしょうか。そう考えますと、今回、岸田政権が感染症法等の改正案を出すのを断念したということは非常に残念でございます。

 次に、教育の無償化についてであります。

 皆様御承知のとおり、憲法二十六条において義務教育の無償化が定められております。国際人権規約のA規約十三条2(b)及び(c)により、中等教育及び高等教育を漸進的に無償とすることが国家の責務とされています。日本政府は長くこの条項を留保していましたが、民主党政権下の二〇一二年九月十一日に、留保を撤回する旨を国連事務総長に通告しました。

 ちなみに、いわゆる高校無償化制度、正式名称は高等学校等就学支援金制度ですが、これは民主党政権下で二〇一〇年に開始した国の制度であり、先ほどの国際人権規約の留保を撤回する通告をする前に実施された制度でありますし、また、安倍政権下の二〇一九年から、三歳から五歳児の全ての子供と、ゼロ歳から二歳児は条件付で幼児教育を無償化する、いわゆる幼児教育、保育の無償化が始まったことを考えますと、憲法は改正しなくても、法律によって教育の無償化は実現することができます。

 なお、憲法九十八条二項は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することを必要としています。我が国においては、高等教育の漸進的無償化は、国際人権規約の留保を撤回しましたので、既に国内法上遵守すべき政府の法的義務となっていると考えられます。

 以上のことから、憲法を改正して教育環境の整備を国の責務とする必要はありませんし、憲法を改正の対象として議論する意義は見出し難いと考えます。

 以上です。

國重委員 公明党の國重徹です。

 前回の自由討議におきまして、私は、オンライン審議に関して、最終的な憲法改正の是非は別として、憲法五十六条一項の出席概念等の条文解釈を整理する議論、これは必要不可欠であって、速やかに進めるべきだということを述べさせていただきました。

 先ほども、与野党の両筆頭、また幹事の皆さん、委員の皆さんからも、多く、このオンライン審議を速やかに進めるべきだという旨の発言がありました。コロナの感染拡大も踏まえまして、オンライン審議を議論する必要性、問題意識というのは、委員の皆さんに多く共有されているものだと思います。そうであれば、喫緊の課題であって、しかも合意形成が図りやすいこのテーマについて、優先的に議論を進めるべきだと思います。

 一方で、先ほど、この場でオンライン審議が憲法上許容されていることの合意を図るべきだという旨の発言もありました。ただ、私は、それはいささか乱暴だというふうに思います。やはり、一定の議論、一定の手続を経るべきだと思います。

 そこで、与野党の両筆頭幹事にお伺いしたいと思います。

 今後のこのテーマについての議論の進め方でありますけれども、オンライン審議をテーマとした自由討論、また有識者を呼んでの参考人質疑、また幹事会におけるオンライン審議の論点整理、また小委員会、分科会の設置、いろいろなやり方が考えられると思います。両筆頭が今後の議論の進め方についてどのようなイメージを持たれているのか、お伺いしたいと思います。

新藤委員 建設的な御質問、ありがとうございます。

 私は、野党筆頭と御相談をしながら、また、幹事懇メンバーと是非協議をして進めたいと思いますが、基本的にこの憲法審査会は、一般の他の委員会と違いまして、自由討議というと何でもありのように聞こえますが、自由討議という名の憲法論議の場なんですよね、憲法改正に関わること及び国民投票に関わることを審議する場ですから。ですから、法案審議がかかっていない限りは自由討議という設定になりますけれども、その内容は憲法に関わる、国民投票に関わることをやるんだと。

 ですから、是非、この問題は、御関心が高く、皆さんが共有できるならば、緊急事態下における国会機能の維持、こういう観点から集中的な討議はできるのではないかなというふうに思います。

 ただ、やはり、テーマを設定すると、その設定に対してなかなか全員の合意が図られない場合もございます。ですから、そこの余地はある程度残しつつ、皆さんの意見が集約されれば、結果、テーマ的な討議になっていくということだと思います。

 それから、参考人をお呼びすることは極めて重要だと思います。これは、憲法の解釈、改憲が必要なのか、それとも解釈でいけるのか、そこはきちんとした議論をしなければなりません。ですから、議院自律がありますから私たちで決めるといっても、きちんとした専門家の御意見も聴取する必要があるだろうと。ですから、それぞれのお立場の、専門家の、学識の方には是非意見を聞いてみる必要があるのではないかということを、これまた野党筆頭には御相談したいと思います。

 そして、そうした憲法審の運営の進め方について議論する場が、まさに幹事懇談会です。ですから、幹事懇の機能をフルに生かして、そうした論点整理や運営の仕方を工夫して、そして安定的な開催ができるように努力していきたい、このように思います。

奥野(総)委員 やはり、両論ありますから、物理的出席説というのも名のある学者の方がおっしゃっていますから、両方の意見を聞きながら、民主的に決めていかなきゃいけないというふうに思います。

 今日決めろという話もありましたが、きちんと議論をして、論点を洗い出して、丁寧に議論をする、しかし迅速にということですから、議論が広がらないように、ある程度集中してオンライン審議について議論をする必要はあるというふうに思っています。

 具体については、筆頭間で進めていきたいと思います。

國重委員 ありがとうございました。

三木委員 委員長、ありがとうございます。

 コロナ禍において、国会においても様々な課題が浮き彫りにされた今、課題解決に向けて憲法審査会における議論は活発に行われるべきであること、日本維新の会では事あるごとに進言してまいりました。本日、紆余曲折はあったと聞いてはおりますけれども、憲法審査会が無事開催されましたことは大変意義のあることと考えます。

 さて、憲法審査会も、本日の議論の中身も、オンライン会議や緊急事態条項の意見表明が多く見受けられました。だんだんと各党のニュアンスの違いなどもはっきりとしてきたように感じています。幾ら開催されることに意義があるとはいっても、同じような内容ばかりをいつまでも意見表明し合っていても、これはまた国民の皆様からお叱りを受けるように思います。

 ですから、新藤筆頭幹事がおっしゃったように、オンライン会議のことをまずはこの憲法審査会で意見表明、集約をしていくということに、私は賛成でございます。そして、しっかりスケジュールを決めて、緊急事態条項はどうするのか、オンライン会議はどうするのかということを、先ほどお話がございましたけれども、小委員会を設置するのか、この場でするのかということを幹事懇の方でしっかりとお話をしていただき、御提示をいただきたいなと思っております。

 オンライン会議については、例えば海外に目を向けますと、欧州諸国では、コロナ禍を奇貨として、立法府の機能を維持するための審議のオンライン化が進んでおります。イギリスでは、下院で、審議の一部にウェブ会議システムが導入されました。ドイツの下院でも、在宅でのオンライン出席や電子投票も一部で認められました。EU議会でも、電子投票が活用され始めています。

 このように、各国でもオンライン会議というものが進んでいますので、日本でもこういったシステムを整備していく必要が早急にあるのではないかと考えております。

 そしてまた、緊急事態条項についてでございます。

 国会議員の任期の延長等々、本日も様々な御意見が出されましたが、これは本当に喫緊の課題でございますので、分科会、小委員会を開いてこれを議論していくとともに、我が党の松井代表が、一例として、参議院選挙に際し、同時に国民投票を行うのはどうかというような発言もございました。こういったスピード感を持って進めていってはどうかと考えます。

 また、我が党としましては、先ほど御意見の方もございましたが、憲法改正において、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の三つの改正項目を、二〇一六年には原案をお示ししているところでございます。また、自民党におかれましては、四項目をお示しになっていらっしゃる。こういった改正項目を各党出し合って、建設的な意見交換を行っていかなければならないと考えます。

 つきましては、憲法改正項目を御検討中の党におかれましては、なるべく早い段階で憲法改正原案をお示しいただくことも、検討項目が全くないというのであれば、全くないと意思表示をしていただくことも大切かと存じます。

 憲法改正には、イデオロギー的要素があるとはいうものの、全くイデオロギーの要素を含まないものもございます。いつまでも改憲、護憲というイデオロギーに縛られ、国民の利益が最優先になっていないのが現状ではないでしょうか。イデオロギーを抜きにして活発な議論を行うことが可能な項目は多々あるかと思いますので、そこは真摯に議論をする姿勢をまず取るべきかと思います。

 緊急事態における国会機能の維持、人流抑制における基本的人権の尊重はいかにあるべきか、人権を制限する際の適切な補償を規定すること等、議論は、イデオロギーではなく、国民の利益を確保するものとして最優先でなされるべきです。

 世界の動きは、刻一刻と進んでいます。日本の改正議論のみが全く取り残されたような現状は打破していかなければならないと考えます。例えば、科学技術の発展によって、デジタルやサイバーといった新しい分野の領域が増えてきています。社会生活にとって恩恵はあるものの、デジタル社会の中での人権の保障をどうするのか、また、目に見えないサイバー攻撃に対してどのように防衛していくのか、敵基地攻撃においてサイバー攻撃を取り入れる場合、ミサイルを発射される前にサイバー攻撃で敵基地攻撃をできると仮定をするならば、専守防衛との関係を整理する必要性があるのではないかなど、様々な事例を基に積極的に議論していかなければならないことが多数あることは自明の理であります。

 折しも、内閣では、経済安全保障という新たな分野での立法を目指しており、その内容の中には、基幹インフラの設備の導入に際し、その重要な機能が停止する状況を回避するために、インフラ機能の維持等に関する安全性、信頼性を確保するための枠組みを整備することとなっており、つまり、水道や交通機関、こういった基幹インフラに実際にサイバー攻撃が仕掛けられることを前提として、未然に防ぐことが主眼となっている箇所もございます。国によるものか個人によるものか確定できないサイバー攻撃に、日本も、日本企業も、そして個人もさらされていると言っても過言ではない状況があります。いついかなる状況に陥っても国民の生命と財産を守るために法整備を整える、今までなかった分野の法整備を整えるために、上位法である憲法について議論することはとても大切なことと考えます。

 かように、国会における憲法の議論は待ったなしの状況であるにもかかわらず、改憲ありきの議論には応じられないなどという、国会議員の責務を放棄しているとも言える態度で、全く進展がないということでは、古いものが見たければ博物館か国会へ行けという冗談が現実になってしまいます。こういったことにならないためにも、積極的に議論を進め、国民に投票という行為で御判断いただくことが大切と考えております。

 以上です。

古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。

 簡潔に申し上げます。

 まず、両筆頭幹事並びに委員長、こういう形で、七年、八年ぶりですかね、予算委員会中にできた、敬意を表したいと思います。

 憲法を変えることができるのは、主権者である国民の皆さんです。しかし、その国民の皆さんが、今、憲法改正の賛否について主体的に参画する機会、すなわち、国民投票にしてその意思を自ら表示する機会を奪っている、これが今の国会の現状であります。ある意味、これは国会の不作為、怠慢と言われて批判を受けてもやむないことだというふうに思います。国民投票にて決定するのは憲法のみでございますので、しっかりその環境整備を進めていく、これは私たちの責務だというふうに考えています。

 その上で、それでは、プロセスを追って、私、提案させていただきたいと思います。

 例えば、今、リモートによる出席、オンライン出席、会議のことについて、複数の政党から議論がありました。これはまだ出席の定義がはっきりしていないということでありますから、もちろん最高裁の判決もありません。

 そこで、是非、両筆頭とそれから委員長に提案したいんですが、前回のこの審査会でも、分科会形式はどうだということが複数の政党から出ましたので、現行の憲法でこれはできますのでね。だから、例えば分科会の中に、リモート、オンラインについてどう思うか、そうしたら議論が拡散することはないです。しっかりそれに集中をして議論することができるので、これをまず提案を申し上げたいというふうに思います。

 その上で、今後の具体的項目についても、それぞれ分科会をつくって審議をして前に進めていくということが、確実にそのプロセスを進めていくことにつながるというふうに思います。

 もう一点は、国会における三分の一の出席の件でございます。

 これは、皆さん御承知のように、今、本会議は、採決のときは全員出席をしています。しかし、これは、憲法上は三分の一、現行憲法でも、出席できれば対応できることであります。

 今、コロナの中で、一般国民のコロナの感染者は三百五十万人程度です。約二・八%。しかし、国会議員は四・八%がコロナに罹患しております。倍近い。なぜだ。やはり、三密のチャンスがあるということだというふうに思います。そこで、三分の一出席をすれば、本会議も現行憲法上、できます。これは議長や議運委員長の判断でできることでありますから、長い間の慣習はありますけれども、百年に一遍ということでございますので、是非、両筆頭幹事あるいは審査会長から、議長あるいは議運の委員長に具体的な申入れをして、検討を進めていただきたいということをお願いしたいというふうに思います。

 それから、最後に、憲法四十一条、国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるということが規定されていますので、仮に、例えばリモートによる取組、それから国会の三分の一ということをしたとしても、やはり国会の判断、議長の判断というのは極めて重いということでありまして、十分に、いろいろな訴訟等々が起きた場合でも耐えられる。私は、こういうふうに、これは個人的な見解ですけれども、思っている。

 ここに今、具体的に二つ提案申し上げましたので、是非それについて対応していただくことを心からお願いして、発言に代えます。

 以上です。

近藤(昭)委員 立憲民主党の近藤昭一でございます。

 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私も、議論をすることは重要だと思っています。ただ、予算委員会の審議の最中に憲法審査会がこうして開かれることは、やはり違和感を覚えざるを得ません。

 それで、ちょっと両筆頭にお話を聞きたいんですが、私は、今申し上げたように、議論をすることは重要だと思っているということを申し上げました。それで、やはり、議論をしていくに当たって、CM規制のこと、今日も奥野幹事から案について話がありましたけれども、CM規制については、御承知のとおり、民放連が自主規制をする、こういうことを言っていた、それが前提であったはずであります。それは、与党の議員の方、委員の方もお認めになっていらっしゃるわけであります。そういう意味では、CM規制についてしっかりと法が成立していなければ、私は、とても国民投票には進めない、こういうふうに思っています。

 そして、また、国会法百二条の六項、あるいは審査会の規程にも書いてありますように、日本国憲法及び憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うというふうに、この審査会の役割が規定されておるわけであります。私は、やはり、ここにはいわゆる憲法違反について審査をするということが含まれていると思います。

 安保法制がありました。安保法制に関連して、この憲法審査会でも議論をされ、参考人の方が発言をされたところであります。当時、与党が参考人として招致された研究者、学者の方も、安保法制については違憲だ、こういうふうにおっしゃったわけであります。そういうことに対して、きちっとした検証が行われているのか。

 私は、検証、少なくともこの安保法制の問題、また、今申し上げましたように、そのほかに対する違憲の条項の問題、あるいは、憲法が本当に具現化されているのかどうか。改正、改正という声がありますけれども、では何が問題なのか、何が必要とされているのか、こうしたことをきちっとやる必要があると思っています。

 そして、本格論戦をというお話がありましたが、本格論戦を我々国会議員がやることの前に、我々は、憲法九十九条で、憲法遵守義務というのが課せられているわけであります。そうした憲法に縛られている国会の側から、確かに憲法上の手続は国会が発議をすることになっていますけれども、とにかく改憲だ、改憲だということを言っていくことには、私は違和感を非常に持つのであります。

 そういう意味では、この審査会でも議論されたことがあります。何を国民の皆さんが求めているのか、改憲をするとしたらどういうことを議論すべきだと思っているのかということについて、予備的国民投票制度ということについて言及をされたことがあるはずであります。私は、やはり、予備的な国民投票制度によって、国民の皆さんが何を求めているのか、このことをきちっと議論をする必要があると思います。

 以上です。

北側委員 端的に申し述べます。

 今日、オンライン国会の是非について、多くの皆様から御意見がございました。

 ただ、ちょっと、前提として踏まえておくべきことは、五十六条一項で言っているのは、あくまで定足数の問題なんですね。

 だから、定足数の確保も困難となるような事態にオンライン国会が許容されるのかという問題と、個々の議員が、例えば出産だとか病気とか、そうした事由で出席ができない、そういう場合に、個々の議員の表決権を確保するためにオンラインでの出席を認めるのかどうかという問題とは、一応立て分けて議論をしないといけないということを申し述べたいと思います。

 その上で、今日、様々な意見がございましたが、国会機能維持という観点から、オンライン国会について五十六条一項に違反するとおっしゃった方は、誰も、一人もいらっしゃらなかったんですね。恐らく、多くの皆様が五十六条一項でも憲法上十分可能じゃないかという御意見を持っておられるのかなと思うんです。

 そこで、会長に是非お願いしたいんですが、憲法審査会というのは、憲法上のある条項の解釈について、審査会としてはこのように考える、合意形成できるのならばですよ、考えるということを取りまとめて発信をしていく、これも私は審査会の大きな役割ではないのか、一つの役割ではないのかというふうに思うんです。その意味で、五十六条一項の出席の概念について、恐らく、私は、今日の意見を聞いている限りは、一定の合意がつくれるんじゃないかと思うんですね。

 是非、これは幹事会等で、幹事懇等で議論をさせていただいて、私は、できるだけ早く合意の形成をして、そして五十六条一項でも十分許容されるんだということについて、その理由も含めて対外的に発信をする、また、場合によっては、衆議院議長の方に審査会として意見表明をしていく、そうしたことも審査会の役割ではないかと思うんです。そういうことも是非御検討いただきたいと思います。

 以上です。

森会長 承りました。

石破委員 私は、二〇〇〇年、この審査会の前身である憲法調査会ができたときから、政府にいるとき以外はずっと籍を置いてきました。ここにおられる衛藤征士郎先生、船田元先生共々、一番長くここに籍を置いてきたと思っております。別に、長きがゆえに尊からずでありますけれども。

 私は、成功体験という言葉を軽々しく使いたくないんだけれども、やはり、国民が実際に憲法は改正できるんだという体験を持つことはすごく大事なことだと思っております。

 我が党の憲法改正草案、平成二十四年、ここには起草委員を務めた人もいっぱいまだいますが、その中で、多くの党に賛成していただけるだろうなと思うものの一つに、臨時国会は衆参いずれかの総議員の四分の一の要求があったときは開かなきゃならぬというふうに現行憲法に書いてある。だけれども、何日以内ということが書いていないので、近いうちにとか、そのうちにとか、そういう言葉を使って、召集したら即解散なんというようなことが今までなかったとは言わない。

 我々は、至らぬところがあって、三年三か月、野にあった。その間、徹底的に憲法の議論をした。起草委員長は中谷元さんだった。私は、九条部分の起草を担当させていただいた。だけれども、私どもは憲法九条だけ議論をしていたわけではない。

 民主主義というのは、できるだけ多くの人が参加をしなければ機能しない。そうしないと、特定のイデオロギーとかそういうものに左右されかねない。もう一つは、少数意見を尊重しないと民主主義というのは成り立たない。そして、健全な言論空間というのがなければ民主主義は機能しない。それは三つとも今どうなんだろうねということが問われているのではないかという危惧を、私自身は持っているのだけれども。

 自民党の憲法改正草案は、衆参いずれかの総議員の四分の一以上の要求があれば、二十日以内に召集、もちろん召集は陛下の権能であらせられるのだが、しなければならないというふうに書いてある。これに反対する党があるんだろうか。四分の一が少な過ぎるということもあるのかもしれないけれども、少数の意見を尊重するという考え方がそこにはあったはずだと私は思っている。

 できるものをきちんとやる、そして民主主義がきちんと機能するようにする、一つでも多くの党に賛成してもらえる、そういうようなものから優先すべきだという考え方は私はあってしかるべきものだと思っていて、二十数年この会に籍を置いているけれども、もちろん幾つかの前進を見たが、国民が本当に憲法改正に強い実感を持っているかといえば、私はそれは否だと言わざるを得ないと思っております。

 会長そして幹事の大変な御努力によって今日これは開かれているんだけれども、これを本当に討議と言うんだろうか。意見表明の場ではあるけれども、これを討議とは言わないと思っている。

 私は、赤嶺議員とも議論をしたいと思っている。地位協定の改定が必要だ、安全保障条約の改定が必要だ、私は個人的にはそう思っています。だからこそ憲法の改正が必要だというふうに思っているのだけれども、結論部分において違う。それはどういうふうにロジックが違っているのかという議論はきちんとしたいと思っている。

 日本国は本当に独立主権国家であるのか。独立主権国家というのは何だ。領土であり、国民であり、統治機構であり、この三つは絶対に外国に指一本触れさせないということが主権独立国家のはずなのだが、我が国は合衆国軍隊に対して基地の提供義務を負っているはずだ。それは、重光・ダレス会談で明らかになったように、日本国のどこにでも、どれだけでも、いつまででも合衆国軍隊が駐留する権利を確保するということが日米安全保障条約であって、それを提供する義務は日本国に負わされているのであって、それは本当に主権独立国家というのかという議論をきちんとしなければいけないと思っている。

 私は、米軍の駐留は必要だと思っている。日米安全保障条約も必要だと思っている。しかし、そこにおいて、それは義務として負うのではなくて、日本国民の選択の結果でなければいけないと考えている。

 ウクライナ情勢もそうです。敵基地攻撃能力、策源地攻撃能力、それは言葉は似ているけれども、全然本質と違う議論であって、このことも憲法の議論なくて成り立たない。ウクライナの問題も、NATOの問題も、それは、集団安全保障、集団的自衛権、これは相互補完するものだという考え方を私は持っているのだけれども、この議論を徹底していかなければ、日本の独立と平和も保てないと思っている。

 そういう議論を、今、我が党の古屋本部長が申し述べたように、頻繁に行うこと、分科会を開催すること、そして、できれば国民と直接向き合うことが必要なのであって、この場のみならず、日本国中、北海道から沖縄まであちらこちらで開催をして、国民と直接向き合うということが極めて重要だと思っている。憲法というのは、本当に国民と向き合うものでなければならない。だとすれば、この場限りの議論で完結していいと私は全く思わない。

 会長そして幹事の皆様方に、分科会を頻繁に開催すること、本当の意味での討議が行われること、そして国民と正面から向き合うこと、そのことを心からお願いして、発言を終わります。

 以上です。

森会長 予定された時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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