衆議院

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第5号 令和4年3月17日(木曜日)

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令和四年三月十七日(木曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    越智 隆雄君

      大串 正樹君    國場幸之助君

      下村 博文君    中西 健治君

      西村 康稔君    船田  元君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 左近君

      山本 有二君    新垣 邦男君

      おおつき紅葉君    近藤 昭一君

      櫻井  周君    中川 正春君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      太  栄志君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    足立 康史君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      國重  徹君    中野 洋昌君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  山田 賢司君     山本 左近君

  本庄 知史君     馬場 雄基君

  吉田はるみ君     おおつき紅葉君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 左近君     山田 賢司君

  おおつき紅葉君    吉田はるみ君

  馬場 雄基君     本庄 知史君

    ―――――――――――――

三月十一日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(宮本徹君紹介)(第三四一号)

 同(笠井亮君紹介)(第三七九号)

 改憲発議に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三九四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三九五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三九六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三九七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三九八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三九九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四〇〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四〇一号)

 同(宮本徹君紹介)(第四〇二号)

 同(本村伸子君紹介)(第四〇三号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝であります。

 三月八日、憲法審査会は、緊急事態における憲法五十六条第一項の「出席」の概念について、その意見の大勢を議長に報告をいたしました。

 憲法の条文に関し具体的な議論を深め、報告も議決できたことは画期的であり、委員及び幹事会メンバーの御尽力に改めて敬意を表したいと思います。

 緊急事態における国会機能の維持の一環として行われた出席概念、この議論は、更に緊急事態全般に関する議論が必要であることを浮き彫りにした、私はそのように考えております。

 本日は、日本国憲法に規定がない緊急事態条項について、憲法上、どのように位置づけるべきか、考えられる論点について、私の意見を述べたいと思います。

 憲法上、緊急事態条項を規定する場合、まず問題となりますのは、対象とする事態の範囲です。

 自民党が提示した条文イメージ、たたき台素案では、この範囲を大地震その他の異常かつ大規模な災害と規定しています。首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など、これまでの被害を大幅に超える事態が現実の危機として想定される中、提案したものであります。

 しかし、これに加えて、緊急事態として想定されるのはほかにもあります。まずは、目の前で起きている新型コロナなど感染症の蔓延事態、世界で多発しているテロ事態、そして、今、私たちの隣の隣の国で起きている、ロシアによるウクライナ侵略のような国家有事、安全保障事態などについて、これらの議論が必要ではないかと私は考えております。

 また、どのような事態が発生するのか想定し切れないからこそ緊急事態だと考えるならば、その想定外にも対応できるよう、その他法律で定める事態についても規定しておく方法も考えられます。

 次に、緊急事態について憲法に規定する内容が問題になります。

 私たち自民党のたたき台素案では、緊急事態条項として、議員任期の延長、そして緊急政令、この二つを提案しております。

 特に、待ったなしの課題として議論すべきは、議員任期の延長の規定であります。

 東日本大震災など大規模な災害が発生した際には、地方議員の任期の延長については特例法を制定することができました。しかし、憲法に任期が明記されている国会議員については、憲法改正を行わない限り、任期延長はできません。

 昨年十月の総選挙は解散によるものでしたが、その投票日は、十月二十一日の任期満了を超えて設定されました。仮に、解散後あるいは選挙中に新型コロナ感染症の全国的な蔓延が深刻な事態となり、選挙の執行ができなくなる、そうした場合が起きたときには、衆議院議員が不在という事態が発生したかもしれないわけであります。

 昨年の選挙は様々な工夫をしながら何とか執行することができましたが、どんな事態が起きても国会機能を維持しておくことは国の根幹となるものであり、緊急事態における議員任期延長については最優先で具体的な議論を行うべき、このように考えております。

 あわせて、私たちがたたき台素案において提案しているのは、緊急政令を憲法の緊急事態条項の中に規定することであります。これは、国会が機能しなくなった際、内閣が暫定的に立法措置を行う制度です。国民の生命と財産を守り、必要な対策を執行できるよう、憲法に規定しておくことが必要ではないかと考えております。

 さらに加えて、この緊急政令を執行するための予算を支出できる仕組み、これも整備しておく必要があります。現行制度でも予備費や予算の流用で対応できる場合もありますが、新たに補正予算が必要な場合もあります。緊急政令を発布するのは国会が機能不全に陥っているという事態である以上、緊急財政支出を可能とする規定、これについても議論が必要ではないでしょうか。

 もう一点、これまでのコロナ感染症蔓延事態への対応を振り返りますと、緊急事態における国の権限強化と地方の実行体制の確保という、有事における国、地方の役割分担がより実効性を持てる規定について、これも議論が必要ではないかと考えております。

 最後に、緊急事態を宣言したり認定する場合には、内閣や総理大臣など、誰が、国会の事前また事後承認など、どのように決定するかという手続の議論も必要になります。

 憲法に緊急事態条項を規定することについては、私が申し上げたことも含めて、それ以外にも様々な論点があるのではないでしょうか。

 今朝の幹事会におきまして、私は、来週、審査会を開催して、緊急事態に関する集中討議を行ってはいかがかと提案をさせていただいております。本日の討議を通じ、また更に様々な論点が出されると思いますが、こうしたことについて具体的な議論を集中的に行えるように、大いに期待をしているわけでございます。憲法審査会において緊急事態に関する議論を具体的に深めることができるよう、委員各位の御賛同をどうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。

 まず、昨夜の地震で被災された皆さんに心よりお見舞いを申し上げます。改めて、いつ襲ってくるかもしれない災害の恐ろしさを認識をいたしました。また、隣国ロシアのウクライナへの侵略は、戦争がリアルに起こり得るものであることを我々に思い知らせました。

 大災害や侵略戦争などを想定して、その際に国家の運営をいかにすべきかということを平時から想定することは必要だと私も思います。しかし、だから直ちに憲法改正が必要であるということは、いささか乱暴ではないでしょうか。特定の、自民党案、四項目の案を基に改憲をおっしゃる新藤筆頭に強く抗議を申し上げておきたいと思います。

 災害時については、これまでの経験からも様々な立法措置がなされており、例えば、災害対策基本法の百九条、これは緊急事態の際の緊急措置等も規定されています。こうした条文があるので、これまでも災害については十分対応できています。

 また、大災害などで国政選挙ができなくなった場合にどのようにするのかという議論については、果たして全国的に選挙が行えないような場合があるのかどうかという問題もありますが、日本国憲法は緊急集会の活用を想定していると考えられます。解散により衆議院が存在しない場合には、憲法第五十四条は参議院の緊急集会を定めています。制定当時の経緯を見ると、この緊急集会というのは、いわゆる緊急事態が念頭に置かれているものであります。第二次大戦中の一九四二年、そして大戦後も、すぐに衆議院選挙が行われているわけであります。

 本日は集中討議の場ではないので詳しくは申し上げませんが、まずは参議院の緊急集会を活用しながら、選挙が行えるようになるのを待つというのが日本国憲法の考え方ではないでしょうか。必ずしも憲法改正は必要でないと思います。

 基本は、いついかなるときも国会を動かすことでありまして、きちんと民主的な統制を行うことです。そういう意味で、緊急政令も不要ですね。改憲ありきではなくて、こうした丁寧な議論を行って、いわゆる緊急事態について本当に現行憲法に足らざるところがあるのか、あるいは緊急集会の解釈で足りるのかというようなことを考える冷静な議論が私は必要だと思います。

 そして、国民投票法ですけれども、与党の皆さん、最近どこが与党かよく分からなくなっていますが、もし憲法改正を真剣に考えておられるなら、民意が正確に反映されるように、国民投票法制度をしっかり考えるべきじゃないでしょうか。

 憲法九十六条においては、憲法改正は、国会の提案に対して国民投票による国民の承認を経なければならないと定められていますが、その趣旨は、国民主権の原理に基づいて、主権者たる国民の意思による承認を求めたものであります。その手続としての国民投票において、投票環境が整備され、公平及び公正が確保されることは、憲法上の要請でもあります。きちんと民意が反映される仕組みとしなければならないのです。

 現行の国民投票法は、テレビやラジオのCM規制について、その扇情的な影響力に鑑みて、公平公正な投票を確保するため、放送メディアに量的な面を含めた自主規制を不可欠な要素としてでき上がっているんです。しかし、民放連は、その前提について、二〇一九年五月、憲法審査会において、広告量に特化した自主規制は置かない旨を発言して、制定時の自主規制という前提が崩れてしまいました。

 また、制定以降、インターネット広告の飛躍的な増加、グローバル化やSNSの普及などの事情変化も生じています。ロシア軍のウクライナに対する侵略戦争では、世論に影響を与えるよう、SNSの情報戦が戦われているのであります。十年以上前に制定された現行制度では現状にそぐわず、外国政府などの干渉により投票結果が左右されるおそれもあります。

 これらのことから、我々は、現行の国民投票制度は公平及び公正が確保されるという憲法上の要請を満たさなくなっていると判断しました。

 そこで、昨年、我々は、国民投票法改正案において附則を設けて、投票の公平公正を確保するために、放送広告やインターネット有料広告の制限、資金規制、インターネット等の適正利用の確保を図るための方策その他必要な事項について検討を加えて、必要な法制上の措置その他の措置を講ずる旨の検討条項を設ける修正案を提案し、多くの会派の御賛同を得て成立したところであります。

 つまり、憲法審査会は、これらについて検討を加えて、三年以内に法制上の措置を講ずる義務を負っているのであります。附則四条は、投票の公平及び公正は確保されていないと判断し、国会に措置を求めているものであり、これらの法制上の措置等が講じられないうちは憲法改正の発議はできないと解されます。

 こうした状況を解消するためにも、まずは国民投票について、附則四条が求める検討をこの審査会で行い、少なくとも、この国会中に論点整理までは進めておくべきです。こちらを優先すべきだと考えます。

 そして、我々は、この附則四条を受けて、三年前、当時の国民民主党として提案した法案を基礎に、表現の自由と国民投票の公平公正とのバランスが図られるように、新たな法律案を取りまとめています。この国会に提出する予定でもあり、憲法審査会でこれをたたき台にした議論を求めてまいります。

 まず、CM規制ですけれども、テレビCM規制については、いま一度、民放連の意思を確認しておく必要があると思います。時間がたっていますから、いま一度、民放連の意思を確認していく必要があると思います。この参考人招致もお願いしたいと思います。

 また、立法者意思として、船田先生や枝野前代表などから話を聞くことも必要だと思います。

 それから、インターネット等の利用規制については、フェイクニュース規制など、表現の自由との関係で検討が難しい面もありますが、過去のアメリカ大統領選挙やブレグジットの検証、また、今回のロシアのSNSを駆使した情報戦なども検証する必要があると思っています。

 それから、資金規制ですが、これは極めて重要であります。資金の多寡によって国民投票の結果がゆがめられることがあってはなりません。とりわけ心配なのが、外国政府の関与であります。特定の外国政府から資金の供与を受けた団体が国民投票運動を行って結果を左右してしまう、こういうことが想定されるわけであります。

 我が案は、国民投票運動等に関する支出金額が一千万円を超える団体については収支報告を義務づける、そして五億円の支出限度額を設けています。これが多いか少ないかはありますが、検討していただければと思います。

 また、運動資金が特定の者、外国人に依存することを防ぐため、一人当たりの寄附の上限額の設定、外国人寄附の受領禁止などの寄附規制を定めている案を作っています。憲法改正国民投票への外国政府等の関与を防ぐ措置として、絶対にこれは必要だと思います。

 このほか、国民投票無効訴訟における無効事由の拡大、多様な意見に接する機会についての配慮、投票日当日の国民投票運動の禁止、そして、船田先生もたしか同様のことをおっしゃったと思いますが、いわゆる選挙、国政選挙の運動期間と国民投票運動期間の重複を回避するための措置についても検討が必要であります。また、最低投票率制度を設けるべきとの声もありますので、こうした議論も必要でありましょう。

 重ねて申し上げますが、国民投票の公平公正を確保できるまでは、憲法改正の発議はできません。この法案を審査会に提出させていただきますので、我々の法案をたたき台として議論を進めてまいります。

 それから、もう一点、ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説をしたいとの求めがあったと報道されています。イギリス、カナダ、昨夜はアメリカで演説が行われましたけれども、我が国も是非実現をすべきであります。議院自律権の問題として、院として決断すればできるのであります。前回までオンライン審議の議論を行いましたが、こうした土壌で与野党共に受け入れやすくなっていると思います。

 論憲の立場から、必要な議論はしっかり行ってまいります。重ねて国民投票法のしっかりとした審議をお願い申し上げて、私の意見といたします。

 以上です。

森会長 次に、馬場伸幸君。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 私たちは今、世界は戦時下にあると考えています。二年以上続くコロナ禍を何とか乗り越えようと力を合わせ、国民の皆様にも大きな御負担を強いてきた、そのさなかにウクライナ危機が勃発し、原油や小麦といった輸入物価が高騰しています。国連安保理の常任理事国でもある核兵器国ロシアによる侵略は、欧州のみならず、東アジアの秩序、安全保障環境にも大きな影響を与えていくものと考えられます。

 こうした感染症そして戦争から国民の命と健康、生命と財産を守るためには、あらゆる有事イコール緊急事態を想定した憲法規定が不可欠であるにもかかわらず、日本維新の会以外の野党は長年、憲法審査会の開催自体に反対し、与党もそうした万年野党のわがままにおつき合いをしてきたというのが、これまでの憲法審査会の実態でした。

 昨年の総選挙を経て、そうした怠慢は恥ずかしいことなんだという真っ当な認識が広がり、国会の雰囲気も刷新され、この通常国会では、二月十日を皮切りに、四週連続で定例日に憲法審査会を開催することができました。普通なら、ここで関係者の努力に敬意を表すると発言すべきところかもしれませんが、私は定例日開催など当たり前だと思うのです。

 先週の定例日は、オンライン審議に関する成果が出て油断をしてしまったのか、よく分かりませんが、お休みとなってしまいました。国民の皆様に御苦労をおかけしている最中に私たち国会議員がお休みを取るなど、言語道断です。今後は、定例日をスキップすることなく、国民の負託に応えていくために、精力的に審議を重ね、時代に合った憲法を国民の皆様とともに作ってまいりたいと存じます。

 さて、本日は、緊急事態条項の創設について、我が党の意見を申し述べます。

 前回の憲法審査会において、次なる課題は緊急事態時の議員の任期延長について議論すべきだという話がありました。もちろん大切なテーマですが、緊急時に必要なことはそれだけではありません。真っ先に取り組むべきは、コロナ禍で浮き彫りになった、緊急事態における私権の制限と公共の福祉、自粛要請した際の補償問題を明確に憲法で整理することだと考えます。国民の皆さんの暮らしに直結するからです。

 このコロナ禍で繰り返し緊急事態宣言が発出されてきましたが、行政権力による営業等の自粛要請は、半ば強制力を持ちながら、損失の補償に関する議論はなおざりにされてきました。政府見解は、消極目的の規制、警察的な最小限の規制であるから補償は不要というものですが、食中毒を出していない店に、食中毒を出すかもしれないからと営業停止を命じるようなものです。

 憲法二十九条の財産権について、第三項では補償について規定されていますが、現在の解釈の下では、その射程は非常に狭いものとなっています。緊急事態時に公共の福祉の目的のために特別の義務が課される場合は、つまり、国や地方自治体の命令や要請に特別な業種の方のみ従う場合は、単なる協力金にとどまらず、これに対して特別な補償をすべき義務を課することを検討すべきではないでしょうか。

 人流を抑制した場合は基本的人権が最大限考慮されることと並び、財産権の二十九条三項を根拠として特定の業種のみに特別の損失があると認める場合には、単なる協力金ではなく、補償の義務を課することを明記することは、国民のための政治としてあるべき姿であると考えます。

 コロナ禍において、政府は、緊急事態条項を定めず、人流の抑制や特別の業種の休業や時間短縮などを要請と命令という形で行っていました。緊急事態条項の中に国民のために必要なことを書き込み、国民の基本的人権を最大限守ること、補償において国の責務を果たすことは、必要不可欠なことです。緊急事態であるからこそ、様々な制約や国の義務をその中に織り込み、国民と国家を守る憲法であるべきです。

 どのような事態に陥った場合、緊急事態が宣言されるのか、また、宣言の主体は内閣総理大臣なのか内閣なのか、また、国会議員の任期の延長や選挙期日の特例、七条解散の禁止、衆議院解散後に宣言があった場合の議員の地位の一時回復、さらには、宣言が発せられているときには憲法改正をすることができないよう定めるべきではないかなどなど、議論し、定めておかなければならないことは多々あります。

 ウクライナの危機は対岸の火事ではありません。憲法審査会が日々歩みを止めることなく議論を続けていくことが、必ず国を守り、国民に利益をもたらすことを確信しまして、私からの意見表明といたします。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄でございます。

 ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略の開始から三週間が経過をいたしました。ロシアの行動は明らかなウクライナの主権侵害であり、武力の行使を禁じる国際法の、明白かつ深刻な国際法違反です。ウクライナで犠牲になった方々、平穏な日常を奪われた人々に関する連日の報道に接するたびに、ロシア・プーチン政権に対する強い憤りを禁じることができません。政府においては、国際社会と緊密に連携し、経済制裁も含め厳格な対応をするとともに、ウクライナ国民に対する力強い人道支援をしていかねばなりません。

 二〇一九年九月、今から二年半前になりますが、当衆議院憲法審査会の代表団は、憲法及び国民投票制度に関する実情調査のため、ウクライナを訪問いたしました。今日もこの会場にいらっしゃいます森会長、新藤幹事、奥野幹事、私も参加をさせていただきましたが、当時のウクライナ首相、最高会議、我が国の国会に当たりますが、この最高会議の議長、そして議員、憲法裁判所の裁判官、国立戦略研究所の識者らと精力的に意見交換をいたしました。

 ウクライナでは、この二〇一九年の二月に憲法の改正がなされ、四月にはゼレンスキー氏が大統領選挙で勝利し、新大統領に就任しておりました。また、二〇一四年には、ロシアによる一方的なクリミア併合、東部ドンバス地方での紛争が起こっており、私どもが訪問した当時もロシアとの厳しい緊張関係が続いておりました。

 こうした背景がある中、特にウクライナ憲法の緊急事態条項については、私どもの関心事項の一つでございました。

 ウクライナ憲法には、緊急事態の態様として、戒厳の布告と非常事態の布告の二類型が規定をされております。

 戒厳については、ウクライナに対する攻撃のおそれがあり、国の独立に対する危機が生じたときは、法律の定めるところにより、軍隊の全部又は一部の出動及びウクライナの全部又は一部の地域における戒厳の布告を決定するとあります。

 非常事態については、必要があるときは、ウクライナの全部若しくは一部の地域における非常事態の布告を決定するとされております。

 共に布告の決定をするのは大統領で、戒厳若しくは非常事態の布告から二日以内に、最高会議、日本でいう国会による承認が必要となっています。

 そして、布告がなされた場合の効果として、人権の制限に関する規定が設けられております。

 ウクライナ憲法第六十四条では、第一項で、憲法上の人及び市民の権利及び自由は、この憲法で定める例外的な場合を除き、制約されないと規定した上で、第二項で、戒厳又は非常事態の布告が発せられている間は、期限を付して、権利及び自由に対する特別な制限をすることができる、ただし、このただしが私は大事だと思うんですけれども、法の下の平等など十八の人権保障規定についての権利及び自由は、制約してはならないというふうに規定がございます。緊急事態時でも制約してはならない人権規定を個別に憲法で明記していることに注目されます。

 また、戒厳若しくは非常事態の布告が発せられた場合に、議会機能の維持、まさしく今問題になっております国会機能の維持でございます、議会機能の維持と議員の任期延長に関する規定も設けられております。

 さらには、この間、憲法改正は禁止をされております。

 ロシアによるウクライナ侵略は、御承知のとおり二月二十四日に開始されましたが、ウクライナ議会は、非常事態の布告を承認するための本会議をこの前日の二月二十三日に、また、戒厳の布告を承認するための本会議を当日の二月二十四日に速やかに開催し、大統領令を承認しております。

 戒厳等の期間は、当初、一か月間の三月二十五日までとされていましたが、一昨日の三月十五日の本会議では、戒厳の三十日間延長の承認を行っております。

 ロシアによるウクライナ侵略後も、ウクライナ議会は随時開催されております。多くの必要な法律等も成立をさせ、厳然と議会機能、国会機能を維持しております。このような緊急事態であっても議会の役割を果たしていることに、深い敬意と感動を覚えます。

 また、戒厳期間中に限り本会議にオンライン審議を導入するための議事規則改正案が今、提出をされているようです。先日の当憲法審査会で取りまとめた報告書と軌を一にするものと考えます。

 私が今お話ししたウクライナ議会の動向は、同議会の公式ホームページから、日本語翻訳の機能を活用して得ることができる情報でございます。今、私、タブレットを持っておりますが、是非検索をしていただいて、日本語検索がついておりますので、毎日、日々情報が更新をされております。ちなみに、今日のホームページでは、ハーグの国際司法裁判所は、ロシアにウクライナへの侵略を直ちに停止するよう命じました、このようなトピックも上がっておりまして、是非、議員の皆様におかれましても、検索をしていただいて、御覧をいただければと思います。

 さて、各国の憲法には、緊急事態条項が設けられている立法例が多くございます。それぞれ歴史的な背景や経緯があり、その内容も異なります。一方、どの国であれ、平時とは異なる国難ともいうべき緊急事態に直面することは想定をしておかなければなりません。

 昨夜も東北地方で震度六強の地震があり、大きな被害が発生していますが、巨大地震の発生や感染症の爆発的な蔓延、また、ウクライナが今まさしく直面している違法な武力侵略など、緊急時における危機管理法制は、法治国家、民主主義国家にとって不可欠な制度です。

 我が国でも、災害対策基本法、感染症法、武力攻撃事態等対処法など、数多くの危機管理法制が整備されています。緊急事態の類型、特性に応じて、制度の詳細な内容は法律や政令等のレベルで整備していくしかありません。

 しかしながら、緊急事態であっても、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会の機能は維持されなければなりません。また、いかなる緊急事態であっても、憲法上保障された国民の自由、権利の中には絶対に制約してはならないものがあります。これらはまさしく国の憲法秩序の基本に関わることで、こうした観点から、緊急事態条項について憲法改正の必要性も含めて論議することは極めて重要と考えます。

 国会の機能維持という観点から、緊急事態における国会議員の任期の延長というテーマについては、その論点、課題について早急に詰めた論議を進めるべきと考えますが、まずは、各国の憲法に規定された緊急事態条項の内容や我が国の危機管理法制の全体像等も確認しながら議論を進めることを提案いたします。

 以上、本日の意見表明といたします。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、先週の定例日、特に開催しない理由がないのに憲法審査会が開催されなかったことは遺憾であります。せっかく定例日開催が定着してきたのに、極めて残念であります。定例日の開催を原則とすることを改めて求めたいと思います。

 憲法五十六条の「出席」の解釈について、当憲法審査会で議論して結論を得ることができたことは画期的だと思います。しかし、その後の動きが悪いと思います。せっかく森会長から衆議院議長、議運委員長に報告をし、オンライン審議を可能とする規則改正や本会議決議につなげることを提起をされましたけれども、まだ具体的な動きがございません。これは、各党に改めて具体的な規則改正等を推進していただくことをお願いしたいと思います。

 また、地方議会の本会議でもオンライン審議を可能とする地方自治法の解釈を明らかにする通達を総務省から出していただきたいと思います。

 こうしたことも含め、引き続き、当憲法審査会としてフォローアップをしていくことを会長にも求めたいし、我々としてもしっかりやっていきたいと思います。

 なお、ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン国会演説についても、当初、前例がないことを理由に難色が示されたようでありますけれども、私たち国民民主党から衆議院の議院運営委員会で提起をさせていただいたこともあり、ようやく実現のめどが立ってきたと思います。前例踏襲ということは国会において重要な一つのやり方ではありますけれども、ただ、世の中も大きく変わっています。そろそろ、常時オンライン演説等ができるように国会改革を進めていくことも必要だということを付言しておきたいと思います。

 今後もこの憲法審査会において、せっかくこうして多くの議員が集まって議論を積み重ねているわけでありますから、具体的な成果を出せる運営を求めていきたいと思います。

 今回、問われたのは、いかなる事態の下においても国権の最高機関である国会の機能を止めてはならず、そのための方策を緊急事態の発生前に事前に講じておくべきことが重要だということであります。

 今回は解釈でオンライン出席が認められましたけれども、解釈でもなお認められない限界も明らかになりました。つまり、憲法改正が必要な外縁も明らかになったわけでありますから、必要な改正の議論も併せて進めていくことが必要だと思います。

 昨夜も大きな地震がありました。想定外のことが多発する時代になっています。前例踏襲ではなく、想定外に備えて準備する姿勢が必要であり、憲法審査会でも、あらゆることを想定した議論を積極的に進めていくべきだと考えます。

 その意味で、次に議論が急がれるのは、緊急事態条項についての議論だと思います。

 まず、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的な考え方を述べたいと思います。

 それは、一言で言うと、緊急事態条項が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中で、恣意的に権力が行使される余地が残されていることが危険だと考えます。緊急事態条項は危険との印象、またイメージもありますが、それは、憲法の規律性が乏しいことから生じる問題だと考えます。

 確かに、一般的な緊急事態条項のイメージは、行政府の簡易迅速な権限行使を可能とする、権限行使容易化条項としての緊急事態条項であります。しかし、私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、緊急事態においては、平時よりも強い措置が必要とされる場合もあることも認めつつも、むしろ、公共の福祉など漠たる規定を根拠として、行政府である内閣による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まってしまうこと、また、国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する、立法府である国会や司法府である裁判所による統制を明示する権限統制条項としての緊急事態条項が必要だと考えます。

 この権限統制としての、大きく二つのカテゴリーの統制が必要だと考えます。まず一つは、原則、国会の事前承認を求めるなどの手続的統制。二つ目に、絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの内容的規制。この二つのカテゴリーであります。

 こうした考え方を前提に、特に急ぐべき論点を二つ申し上げたいと思います。

 一つは、そもそも緊急事態とは何か、その定義についての議論を深め、共通の認識を持つことが必要だと思います。

 先ほど新藤幹事からもありましたけれども、国民民主党としては、権力の濫用を防止する観点から、ある程度、緊急事態を限定列挙すべきだと考えます。具体的には、まず外国からの武力攻撃、二番目に内乱・テロ、三番目に大規模自然災害、そして四番目に感染症の大規模蔓延であります。それ以外の例外規定を法律で定める必要があるという意見もありますけれども、権力の濫用を抑える観点から、できるだけ限定的に考えるべきだというのが我が党の考え方です。

 いずれにしても、何を緊急事態とするのか、ここをしっかりと定めない限り、同床異夢で議論しても仕方がないと思いますので、こうした、まず、緊急事態とは何か、この議論を早急に深めるべきだと考えます。

 二つ目は、前回も提案をいたしました、議員任期の特例延長についての議論は特に急ぐべきだと考えます。

 任期満了時に正常な選挙ができないような事態に陥った場合に、任期の特例延長の規定を創設しなければなりません。これは、憲法改正でしか任期の延長は認められないからです。この点については、夏に参議院選挙を控えており、早急に議論して結論を得るべき論点だと考えます。

 この点に関して、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会ということを提案される人もいらっしゃいますが、これは解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのかどうか、これについては議論が分かれています。まず、この解釈について、本審査会で明らかにしてはいかがでしょうか。

 私どもは、文言上、憲法五十四条の二項は、任期満了時には開催を求めることはできず、やはり解散時に限定されると考えるのが当然だと考えます。その意味では、憲法改正が必要との立場に立ちます。この五十四条二項の解釈を確定するための集中審議を求めたい、そのように思います。

 これ以外にも、先ほど申し上げた人権制限の限界をどうするのか、人権の本質的内容の絶対的制限禁止など様々な論点がありますので、事の緊要性に鑑み、緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたいと思います。そして、言いっ放しではなく、具体的な結論を得られる審査会の運営を改めてお願いしたいと思います。

 前回も最後に申し上げましたが、憲法は飾っておくものではなく、魂を入れて生かすことが必要です。その息吹を吹き込む役割を当憲法審査会が果たすべきであることを改めて申し上げて、私の発言を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たちは、憲法審査会は、憲法改正原案の発議と審査を任務としており、動かすべきではないという立場であります。

 前回の審査会で、憲法五十六条一項の「出席」について、例外的にオンラインでの出席も含まれると解釈することができるというのが意見の大勢だとする議長への報告を多数決で決めました。私は、五十六条一項は、少数者を保護し、権力の濫用を防止するための規定であり、厳格な解釈が必要だという参考人質疑で出された重要な意見を一顧だにせず、憲法の個々の条文の解釈を多数決で決めることは到底許されない、審査会が解釈権を持つかのように振る舞うことは越権行為だとして反対をいたしました。

 報告書は三月八日に議長と議院運営委員長に提出をされましたが、議運委員長は本当に憲法解釈上許されるのかと疑問を呈したことが報じられ、議運で一から勉強を行うことになったと聞き及んでいます。憲法審査会での議論は全く意味のないものだったということではありませんか。

 昨日、八十二名の憲法学者が連名で出した声明は、国の最高法規である憲法が軽く扱われていると厳しく批判をしています。この指摘こそ真摯に受け止めるべきです。

 ところが、今また、コロナ禍に乗じた緊急事態条項を取り上げ、あれこれと仮定して、憲法の条文の解釈をこの場に明らかにするべきだという発言が出ています。憲法審査会を悪用し、改憲項目のすり合わせにつなげようとするもので、認められません。このようなやり方はやめるべきです。

 憲法と国会の問題で今問われなければならないのは、コロナの蔓延で最も国会での議論が求められていたときに、憲法五十三条に基づく野党の臨時国会召集要求を無視し、国会を開かなかった政府と与党の姿勢です。

 憲法五十三条は、国会での少数者の発言権を保障すると同時に、国会による行政権力の監視統制を機能させ、多数者の横暴を許さないために定めたものであります。この規定に基づく要求を無視することは、少数者の意見を切り捨て、政府への監視機能を弱めることにほかなりません。野党の国会開会要求をことごとく無視しながら、緊急時に国会の機能を維持するために憲法を変える必要があるなどと、なぜ言えるのですか。余りにも無責任であります。

 今必要なのは、憲法を変える議論ではなく、憲法に反する現実を正す議論です。

 今年の五月十五日で、沖縄が本土に復帰して五十年を迎えます。戦後二十七年に及ぶ米軍統治下で、県民に憲法は適用されず、無権利状態に置かれました。米軍基地の建設のために、民有地、公有地を問わず強制的に接収され、度重なる米軍の事件、事故により、県民の人権はことごとくじゅうりんされました。

 復帰に当たり、当時の琉球政府が県民の要望をまとめた、復帰措置に関する建議書、いわゆる屋良建議書は、県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからにほかなりません、基地あるがゆえに起こる様々な被害公害や、取り返しのつかない多くの悲劇などを経験している県民は、復帰に当たっては、やはり従来どおり基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおりますと記しています。

 ところが、復帰後も、占領下で形成された広大な米軍基地はそのまま残されました。憲法の上に安保があり、その下で、米軍関係者による殺人やレイプ、ひき逃げ、米軍機の墜落や部品の落下が繰り返されています。基地から発せられる爆音や異臭、有害物質の漏出、さらにコロナ感染の拡大、住民は苦しめられています。

 今年二月二十八日に、第四次嘉手納爆音訴訟が提訴されました。原告数は、過去最多の三万五千六百六十六人となりました。元沖縄市長の新川秀清原告団団長は、人間が人間として当たり前に生活できるよう求めてきたが、復帰五十年たっても何も実現していないと指摘しています。まさに、基地あるがゆえの苦しみが今なお続いているのであります。

 その上、政府は、民意も地方自治も無視して、辺野古新基地建設を強行しています。基地のない平和な沖縄を求める県民の願いは、今も踏みにじられ続けているのです。

 憲法と根本から矛盾する沖縄の現実こそ正すべきだということを重ねて指摘して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私は、もう一足先に緊急事態についての全体の論点について前回申し述べましたので、本日、とりわけ議員の任期延長に関する意見を申し述べたいと思います。

 これまで発言にあったとおり、議員の任期満了や解散後に大災害などの緊急事態が発生する、あるいは既に発生していたことにより選挙ができなくなった場合、衆参あるいは両院において議員が一部不在になってしまうことです。

 確かに、公職選挙法の第五十七条一項に、天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、更に期日を定めて投票を行わせなければならない旨、規定しています。

 事実、この条文により、一定の緊急事態には対応可能です。一九六五年の参議院選挙において熊本県の一部、一九七四年の参議院選挙では三重県の一部では、こうしたいわゆる繰延べ投票が実施されました。基本的には、この制度を優先的に活用すべきだというふうに思います。

 しかし一方で、例えば、被災などした地域の混乱状態が相当長引く可能性の高い場合、その地域を代表する議員が不在となります。彼らこそが被災などした地元の実情に通じていることからすれば、長期間こうした地域代表が国会の審議に加われない状態は避けるべきだと考えます。

 また、選挙ができない地域が複数に及ぶこともあり得ます。その場合、繰延べ投票の時期が地域によってまちまちになってしまう可能性も十分考えられます。本来、一斉に国政選挙を実施することを予定している憲法の前提から逸脱してしまうおそれがあります。

 三つ目の問題としては、各政党に対する国民の支持を示す比例区の議員が確定しないことに対しても、繰延べ投票では対応できません。

 こうしたことから、長期にわたる広範な緊急事態の際、公職選挙法第五十七条一項だけでは、国民全体の代表機関である国会を十分に機能させるには著しく問題があり、新たに制度的担保が求められると考えます。

 もちろん、憲法第五十四条第二項に、内閣は、衆議院の解散中に、国に緊急の必要があるときは、参議院に対して緊急集会を求めることができるという規定があります。ここで言う緊急の必要という条文上の文言は、今議題の緊急事態を含むと解釈できます。しかし他方で、同じ条文にある衆議院の解散中という文言に即して見れば、衆議院議員の任期満了については適用されないと解釈するのが素直な読み方ではないでしょうか。

 また、長期にわたる広範な緊急事態の場合、衆参両院がそろった国会として対応することが、憲法第四十二条に規定される本来の国会の構成からして望ましいのではないでしょうか。

 以上を踏まえれば、緊急事態が発生した際には、公職選挙法の繰延べ投票、緊急集会という既存の憲法上、法律上の制度を優先的に考えながらも、やはり憲法改正により国会議員の任期延長の制度を創設すべきだと考えます。

 これは当然、緊急事態において国会の立法機能並びに行政監視機能を維持するための例外的なものになりますので、具体的に何をもって緊急事態とするのかという要件並びに手続についても厳格に規定すべきだと思います。

 これにつきましては、要件の方では、全国的な感染症の流行、大規模な自然災害、戦争、テロなどにより国政選挙の実施が不可能な場合、国会の立法並びに行政監視機能が長期にわたり維持できないおそれがあり、かつ、繰延べ投票や緊急集会で対処することが困難なときに限定する必要があるのではないかと思います。

 手続の方については、緊急事態の発生が任期満了前あるいは衆院の解散前の場合は、国会議員の三分の二の多数決で任期延長を決定するのが適当でしょうが、任期満了後あるいは衆院の解散後に何か起きた場合どうするかは、少し検討を要すると思います。

 というのも、これらの場合、議員の任期は一旦終了しますので、任期延長と同じ効果を確保するためには、前職の議員の地位を特例的に回復しなければならなくなります。ここは思慮深く検討すべき事項であり、今後、我が会派としても、皆さんとともに議論を深める必要があると考えます。

 また、当然、これら任期延長は例外措置となりますので、例えば一年以内、あるいは緊急事態が終了したと認められる期間と、期限を切るべきです。

 なお、権力の濫用を防止する観点から、裁判所が手続に関与することも検討する必要があるのではないかと問題提起をしたいと思います。

 いずれにせよ、今回の議員任期の延長の制度、これを憲法上創設することは、緊急時においてできるだけ国会の機能を維持し、安易に超法規的な措置に頼らず、立憲主義と行政に対する民主的統制をぎりぎり守るためにも不可欠であると考えます。

 以上です。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札は戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

古屋(圭)委員 自由民主党の古屋圭司です。御指名ありがとうございます。

 今日のテーマは緊急事態ですので、直接関係はございませんけれども、緊急性という意味では関連するものなので、一つ提案をさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、ウクライナのゼレンスキー大統領が国会での演説を要望しています。今、日本国の国会は、明文規定はありませんけれども、国賓、公賓、実務賓客に限って国会での演説が行われているという慣習、実績があります。

 ただ、平成三十年に、マレーシアの首相に就任をしたマハティール氏が来日をいたしました。その際に、当時の大島議長指導の下、議員会館の大会議室にて、衆参両院議長出席の下、外国要人国会演説に準じた形で、極めて短期間で準備をして演説が行われたという実績があります。

 先々週に当審議会にて、憲法五十六条の「出席」の解釈につき、オンラインでも可能との見解を採択して、議長に報告をされたことがございます。

 そこで、今、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会にてオンライン演説を希望している、こういう実態がございます。ただ、外国要人の国会演説は憲法上に規定する会議ではありませんけれども、今までオンラインで実施された前例がないということもあります。

 そこで、事の緊急性に鑑み、かつてのマハティール首相の例に倣い、議長指導の下、その実施について、すなわちオンラインでの演説の実施について、速やかな実施は私は可能というふうに考えます。

 そこで、森審査会長には、議長を始め関係者ともしっかり相談をいただいて、速やかな対応をしていただきたいということを改めて要望をさせていただきます。

 また、緊急事態関係で一言付言します。

 五十六条の出席要件は、先々週の審議会報告のとおり、オンラインでも可能との考えを表明しておりますが、一方では、このような解釈では対応できない項目、例えば、今日も複数の議員からも指摘がありました国会議員の任期の問題を始め、緊急事態の定義とか要件、そして期間など、海外の例をも参考に、多くあります、これらのテーマの具体的議論を進めていくことが私はこの審議会の重要な責務であるというふうに考えまして、是非そういった考え方に基づいて議論を進展していただきたいということを指摘して、意見表明とします。

 以上です。

森会長 ただいまの古屋委員からの御提案につきましては、後ほど幹事会で協議をいたしまして、その上で適切に対処したいと思います。

 ありがとうございました。

新垣委員 御指名ありがとうございます。立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 混迷を極めるウクライナ情勢の一刻も早い停戦合意と平和的な解決を望み、意見を申し上げます。

 国連によると、ロシア軍侵攻で、ウクライナ国外へ避難民が三百万人を超えました。ウクライナでは、今この瞬間も、多くの子供や女性、市民が犠牲になっています。

 国連憲章第二条第三項では、国際紛争を平和的手段によって解決することが求められ、同二条四項では、武力不行使の原則が定められています。ロシア軍の侵攻は、第二次世界大戦後の安全保障の根幹である国連憲章の否定にほかならず、いかなる理由を並べようとも、侵略戦争は許されるものではありません。武力不行使の原則は、国際法の重要な原則です。ロシアに国際法の遵守を要求していくことは、国会に集う全ての政党会派が賛同できるものと認識をしております。

 ところが、今国会では、ロシア軍のウクライナ侵攻に便乗した核共有や敵基地攻撃能力の保有という議論がにわかに盛り上がっております。日本として、ロシアに国際法を守れと主張していくのであれば、国会や憲法審査会は、九条改正の議論ではなく、憲法の理念である武力の行使をやめるよう粘り強く求めていくことに力点を置くべきではないでしょうか。

 昨日、衆議院の憲法審査会の運営等について、憲法学者八十二名による声明が出されました。御承知の方も多いと思います。この声明では、憲法改正の議論をしないことが主権者国民の権利を侵害するとか、憲法制定権力の侵害に当たるといった主張が国会でなされているが、主権者である国民の多くが憲法改正を求めているわけではなく、法を改正しなければ権利、自由が保障されない状況が発生しているわけでもないので、憲法制定権力の侵害等の主張には全く根拠がないと指摘をしております。

 その上で、今の日本で求められているのは、コロナ禍での市民の生存権、憲法二十五条、個人の尊厳、幸福追求権、憲法十三条、教育を受ける権利、憲法二十六条、営業の自由、憲法二十二条、二十九条等の権利、自由の実現を可能にする政治である、政治家たちが全力を尽くすべきはそうしたコロナ対策であると述べられております。

 憲法審査会を開催しないと、あたかも国会や国会議員が仕事をしていないかのような発言がなされていますが、そうではないと思います。今、私たち政治家に求められているのは、憲法改正の議論ではなく、まさに市民の命と暮らしを守るための政治を行うことではないでしょうか。憲法改正の議論を積み上げ、実績づくりを急いでいるような気がしてなりません。

 今国会の憲法審査会では、緊急事態条項との関連で、国会議員の任期延長を主張する政党会派もございます。この問題については、兵庫県弁護士会の会長声明が二〇一八年九月二十八日に出されております。

 その声明には、参議院の通常選挙の実施が困難な場合は、非改選議員が在任しており、参議院の審議、議決に何ら影響を生じないこと、衆議院の解散後の総選挙が困難な場合や、衆議院の解散後の総選挙や参議院の通常選挙日程が重なった場合も、参議院の緊急集会制度、憲法五十四条二項ただし書により国会は対応できること、衆議院の任期満了による総選挙が実施困難となった場合でも、公職選挙法五十七条による繰延べ投票制度を利用すれば議員の選出は可能であるとあります。その上で、任期満了による総選挙の実施困難な事態を回避するのであれば、現在より早期に総選挙を実施することを可能とするために、憲法改正よりも公職選挙法三十一条の改正を検討すべきであると論じられております。

 したがって、大規模な災害があった場合も、現在の憲法や法律の下で十分に対応可能であり、国会議員の任期を特例によって延長する立法事実はないと考えます。

 社民党は、国会議員の任期の問題を考えるのであれば、憲法改正による任期延長ではなく、公職選挙法第三十一条に規定する衆議院任期満了における総選挙の持ち方についての議論を、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会において先決させるべきとの立場であります。そうした検討もなしにいきなり改憲論議に踏み込むことは、明確に反対をしたいと思います。

 緊急事態条項と絡めた国会議員の任期延長についても、憲法審査会での議論は不要不急だと強く申し上げ、意見発表を終わります。

國重委員 公明党の國重徹です。

 前回の憲法審におきまして、いわゆる緊急事態が発生した場合に、どうしても本会議の開催が必要と認められるときは、例外的にオンラインによる出席も憲法五十六条一項の「出席」に含まれると解釈できるという旨の取りまとめができたことは、非常に画期的だと思います。

 その上で、与党筆頭である新藤幹事にお伺いいたします。

 先ほど、内閣による緊急政令の制定を憲法の緊急事態条項に盛り込むべきではないかという旨の御意見がございました。他方で、私が先ほど言いましたとおり、前回の憲法審で、例外的にオンライン審議が憲法上許容されるというような取りまとめがされました。

 今後、制度設計というのは進めていかないといけないですけれども、このオンライン審議が実現した場合、これは緊急事態における国会機能を維持するためのオンライン審議でありますが、この緊急事態における国会機能を維持するオンライン審議が実現した暁には、内閣による緊急政令の制定というものの必要性というのが低くなるんじゃないかとも思われます。

 オンライン審議が実現した場合の緊急政令の制定の必要性、これに関して、まず新藤筆頭にお伺いしたいと思います。

 次に、野党筆頭である奥野幹事にお伺いしたいと思います。

 先ほど、緊急事態における議員任期の延長、これについては冷静に議論すべきだとおっしゃいました。私は、オンライン審議が実現されても、緊急事態における議員任期の延長の論点というのは残ると思っています。この必要性というのは決して低くならないと考えております。

 この点、私も、緊急事態における議員任期の延長を少し勉強しようと思いまして、過去の議事録も読ませていただきました。

 そうしますと、奥野幹事も、かつて、この議員任期の延長について、前向きに検討すべきだ、緊急集会の解釈、運用についてきちんと検討しておく必要がある、東日本大震災のように長期にわたって選挙ができない場合には、任期の特例的な延長というものについて検討する必要があるんじゃないか、こういったことをおっしゃっております。

 私も、憲法改正の是非は別として、緊急事態における議員任期の延長というのは、この議論の必要性は非常に高いと思っております。この議論の必要性について奥野幹事にお伺いしたいと思います。

 最後に、両筆頭にお願いでございまして、定例日に憲法審査会が開催されることは、私は大歓迎でございます。ただ、この開催の有無について、できるだけ早めに決めていただきたい。

 前日に決まる場合が多くて、一応、定例日にあるということを想定していますけれども、やはりそれぞれの仕事の優先順位等もありますので、できれば、予測可能性を確保するために、できるだけ前もって決めていただければありがたいと思います。これは要望です。よろしくお願いします。

新藤委員 御質問ありがとうございます。

 ただいま、これは重要なポイントだと思うんですが、御指摘のように、緊急政令は、国会が機能しなくなった際に、内閣が暫定的に立法措置を行う制度です。したがって、国会が維持できる範囲であれば緊急政令は必要なくなるという意味において、御指摘は傾聴に値するなと思うんですが、これは必要性が下がるか否かではなくて、実際にそれを実施する機会が、影響が出るか、増えるか減るか。

 そういう意味において、緊急政令を使わなくても国会が機能できるならばそれは必要ないという観点からいえば、それは、オンライン審議を充実させることによって、そういった最後の最後の手段を使わなくても済むという、その機会が少なくなるということはあるかもしれません。

 ただ、一方で、様々な観点で、オンライン審議も含めて国会が維持できなくなる場合がもしあるならば、それを規定しておかなくてよいかという問題は、この必要性は私は変わりないのではないかというふうに思います。是非そこを皆さんで詰めた議論をしていきたいな、このように思います。

 また、憲法審査会の開催が、奥野筆頭と本当に精力的に、また、奥野さんにも非常に努力をいただいているわけでございますが、なかなか速やかに決められずに御連絡できないことはおわびを申し上げたいと思います。

 今後、更にここは速やかに決定できるようにしたいと思いますし、各党の委員の皆さんから、もう定例日は開催することを前提にしていこうではないかという心強い御意見をたくさん頂戴しております。ですから、是非、前提にして御準備いただいた上で、最終的には、その内容や持ち方については筆頭間協議で決定させていただきたい、このように踏まえていただければありがたいなと思います。

奥野(総)委員 いつも決定が遅れていることはおわびを申し上げますが、ぎりぎりのところで、新藤筆頭からの我々にとっては厳しい御指摘を踏まえながらやっていますので、御容赦いただきたいと思います。

 先ほどから申し上げていますが、私はやはり、民主的な統制、議会をまず動かすべきだと。緊急政令的なものは要らないと。基本的に、法律であれ、予算であれ、議会を動かすべきだというところは変わりません。

 その上で、かつては議員任期の延長というのも申し上げたことはありますが、ここで木村草太さんにたしか来ていただいたことがあって、質問をさせていただいたんですね、その件について。木村草太さんは、やはりそこは、例えばお手盛りの議論があるでしょう、議員任期の延長を誰が決めるんですかと。当然、議員任期の延長を国会で決めると、お手盛りの議論が出ますよ、どうしますかと。例えば憲法裁判所をつくって、そういう議論、判定をしてもらったらどうですかみたいな話がありました。確かにそうなんです。

 であれば、まずは緊急集会を使い、それから先ほど来ある繰延べ投票を使って動かすのが筋じゃないか。長期にわたり、例えば一年も半年も選挙ができないようなことはなかなか想定できませんから、それでやるべきだと思います。

 ただし、緊急集会は、先ほど玉木さんがおっしゃったように、解散時というふうに明定されています。たしか長谷部先生なんかは任期満了時でも使えるということを言っておられますから、その辺をきちんと話を聞いて、緊急集会についての在り方を、議論を確定させる必要があるとは思いますが、まずは緊急集会、繰延べ投票で対応すべきだというのが今の私の考え方であります。

 もし議員任期の延長をやるなら、お手盛り論をどうやってクリアするかという問題が残っています。

森会長 発言時間が終了しております。

國重委員 はい。

 両筆頭、ありがとうございました。

 私が奥野幹事に御質問したのは、中身の詳細な論点というよりは、議論の必要性ですね、しっかりと議論を進めていく必要があるんじゃないかというようなことで申し上げましたので、またその点、御検討をよろしくお願いします。

足立委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の足立康史でございます。

 私、いただいた時間を使って、奥野総一郎筆頭幹事に何点か御質問したいと思います。

 まず、今、國重委員から御指摘があった、スケジュールです。ちょっと今、もごもごおっしゃいましたが、緊急事態条項に関する来週の集中討議、これを今日の幹事会で決められなかった理由をもう一回教えてください。

奥野(総)委員 先ほど申し上げたとおり、国民投票法を検討する義務がありますから、これはやはり真剣にやっていきたいと思っております。

足立委員 国民投票法を優先すべきだから、緊急事態条項については慎重だということですか。

奥野(総)委員 慎重というか、まずそっちをやるべきではないですかということですね、国民投票法。法律上の義務でありますし、これがないと発議はできないというわけですから。

 やらなくていいとおっしゃいますか。

足立委員 では、国民投票法について、先ほどCM規制の議論を発言されて、その議論がまとまるまでは発議ができないと明言をされました。

 これは、まず、個人の御意見ですか、党の意見ですか。

奥野(総)委員 あの条文は私が作りましたから、党の意見だということになりますね。

 それで、申し上げておきたいのは、やはり、憲法上、公平公正な投票結果を導く必要があると思うんですよ。それを附則の中できちんと書き込んでいるわけですから、対処しないと、きちんとした投票結果にならないと思いますので、まずこれを優先すべきじゃないですか。

足立委員 端的にお答えください。

 党の意見ということは分かりましたが、そうしたら、それは、今、手続法が原因となって、私はそういう意見じゃないんですよ、ただ、立憲民主党は、手続法が問題であって、発議ができないという、国民の憲法制定権力を制限している、大変異常事態が続いているというふうな御意見だと理解しましたが、期限を切って、いつまでにそれを、例えば、前回の修正で三年とおっしゃっていましたよね。立憲民主党は、これから三年間、国民の憲法制定権力を制限していいとお考えですか。端的にお答えください。

奥野(総)委員 まず、逆に伺いますが、今のままの国民投票法でよろしいと思いますか。

足立委員 この時間は私の質問の時間ですので、奥野さん、自分の時間に質問してください。

 それで、幾つかあと残りがありますが、先ほど新藤筆頭に何か抗議をされました、冒頭。私、これは懲罰物だと思いますよ。

 だって、聞いてください。新藤さんたちは、自民党は、具体的な文書で、憲法改正の具体的なイメージを出しているんでしょう。立憲民主党は、この憲法審査会の開催自体に反対とかで引き延ばしをしてきた政党です。先ほどもあった、本体議論はすべきじゃないと言っている。その何も党の見解を出さずに抵抗ばかりしている政党が、文書で憲法改正のイメージを出している自民党や、我々も出しています、維新の会も。そこに、この場で、このテーブルのこの場で抗議をするというのは、私は絶対におかしいと思うんですよ。おかしいと思いませんか。

奥野(総)委員 いや、発言の自由がありますから。それを言うのは発言の封殺ですから、民主的ではないんじゃないんですか。そうですよね。

足立委員 私がいろいろ立憲民主党について意見を申し上げたときに、懲罰動議を六回出してきたのは皆さんですから。だから、私は、今の発言は絶対に認めません。

 もう一つ、緊急政令、大変重要な議論です。私ども、二〇一四年の三月十九日に、ここにおります三木圭恵、憲法審査会の当時の委員が、試案として、緊急政令の試案を出させていただいています。自民党のたたき台、イメージ案にも、緊急政令、書いてあります。

 ところが、先ほど奥野さんは、緊急政令は不要と断言しました。これは個人の意見ですか、党の意見ですか。

奥野(総)委員 これも、私が憲法、党の事務局長をやっていますから、党の意見と思っていただいて結構です。

足立委員 大変重要な御意見を賜りました。

 もう時間が参りますので質問は終わりたいと思いますが、立憲民主党には、是非、今日あった、党の意見であれば、党としてしっかりと紙でその見解を明らかにすることを強く求め、私の時間を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

新藤委員 ただいま、まさに憲法審らしい討議があったのではないか、このように思うわけでありますが、一点、私の方から、これは確認をさせていただきます。

 国民投票法改正案における修正でございますが、これは、附則に検討条項として第四条を加えました。この問題について、附則の検討事項が終わらない限り発議ができないのか。これはまさに、そのまま審査会の法案審議の中で議論が行われました。そして、当時の野党の筆頭である山花筆頭も含めて、これは、法令上は、国民投票法改正が終わることと、それから憲法改正は拘束されないということは、結論になっております。憲法改正の発議を妨げるものではない、このことは明確に了解をし、また合意していることでございます。

 ただ、違う意見の方がいらっしゃる、奥野さんも含めて、違う意見があったことも事実ですが、でも、法令上のこの解釈は確定しておりますので、これは申し添えをいたします。現時点において、国民投票は実施可能でございます。

 それから、私に対する抗議につきましては、これは発言の自由ですから、何を言っていただいても結構だと思うのでございますが、私どもは、改正をしようではなくて、改正のための議論を更に深めていこうということを申し上げておりますので、そもそもの論点が少しずれているのではないかなということも申し添えておきます。

谷田川委員 立憲民主党の谷田川元です。どうぞよろしくお願いいたします。

 国会機能を維持するという観点から、オンライン国会の議論が進んだことはよかったと思います。しかし、一方で、時の内閣による恣意的判断で衆議院が解散され、国会機能が停止されてきたという事実には向き合わなくてはなりません。

 憲法の前文に、日本国民は正当に選挙された国会における代表を通じて行動しとありますが、過去三回の衆議院選挙は、正当に選挙されたとは必ずしも言えないのではないかと私は思っております。

 二〇一四年、二〇一七年の安倍総理による解散は、それぞれ、アベノミクス解散、危機突破解散と安倍総理自身が名づけましたが、どう見ても、野党の準備が整わないうちに選挙をしかけようとの下心があったと思われます。まさに、安倍総理による二回の解散は、今やれば勝てる解散であったと断じざるを得ません。

 二〇一四年の解散の際に、安倍総理は、消費税率引上げを一年半延ばすから国民に信を問うと述べましたが、民主党政権下、社会保障と税の一体改革がなされました。民主、自民、公明の三党合意で法案が成立しましたが、あのときの精神は、消費税の引上げは政争の具にしないということでした。少なくとも、衆議院の解散を決断する前に、当時の民主党の海江田代表あるいは野田前総理に、消費税引上げ延期について事前に相談するのが筋です。しかし、残念ながらそれはなかった。そのことを野田氏が四年ほど前の財務金融委員会で安倍総理に追及すると、選挙の争点にはしたが政争の具にはしていないと、支離滅裂な答弁をされました。

 また、二〇一七年九月の解散も、野党が憲法五十三条の規定に基づいて臨時国会を開催要求しても、三か月余り国会を召集せず、九月二十八日に召集したと思ったら、何ら審議することなくその日に解散。やっていることがむちゃくちゃです。この解散については、与党議員からも批判の声が上がっております。公明党の桝屋敬悟衆議院議員は、厚労委員会で、今度総理に会ったらもうこんな選挙はやめてと言おうと思う、党の姿勢や訴えを議論し、理解してもらう時間はなかった、選挙戦に向け一月、二月議論していくことは民主主義にとって大事だ、こう非常に真っ当な意見をおっしゃっておられます。

 さらに、昨年の衆議院選挙も、岸田総理に苦言を呈さざるを得ません。衆議院議員の任期満了日は十月二十一日でしたから、公職選挙法の規定に基づき、任期満了日までに選挙を行うべきでした。しかし、菅総理が総裁選不出馬を表明したにもかかわらず、総裁選日程は、九月十七日告示、九月二十九日投票日のまま実施されました。首班指名や組閣に時間を要するため、この時点で任期満了日までの衆議院選は困難となりました。そして、十月十四日に解散、十月三十一日投票日という日程が岸田総理の首班指名前に報道されました。当初、マスコミは、与党国対幹部の話として投票日は十一月七日若しくは十一月十四日となっていたので、日程の前倒しに大きな混乱がもたらされました。特に、地方選挙管理委員会は準備万端とは言えない状況で、投票入場券が告示日までに届かなかったり在外投票が間に合わなかったりと、多くの問題を残しました。これも、少しでも早い方が与党に有利に働くとの判断があったと言わざるを得ません。

 そこで、まず、恣意的な選挙を行うことを地方自治体においては既に制限していることを指摘したいと思います。

 昭和二十六年四月の第二回統一地方選挙から昭和三十年四月の第三回統一地方選挙までの間、実に十七人の知事が途中辞職し、その後の選挙に立候補しています。そのほとんどが、前倒しで選挙をやれば自分に有利との判断で辞職しています。

 これについて、現在の総務省の前身である自治庁が次のように述べています。知事という有利な立場を更に有利にするため、抜き打ち的な選挙を行えば、それは選挙の公正を害することとなり、ひいては住民の真の意思が選挙の結果に表れてこない、このように痛烈に批判しているんです。

 こうした状況を受けて、昭和三十一年の法改正で、途中辞職後の選挙の立候補は禁止となりました。これでは厳し過ぎるとの意見があり、昭和三十七年の法改正で、首長が自らの都合で辞職し、その出直し選挙に出た場合、当選しても当初の残りの任期しかできないという規定になりました。

 二〇〇〇年に地方分権一括法が施行され、それまでは国と地方の上下関係が存在しましたが、今や国と地方は対等なはずです。知事や市町村長に恣意的な選挙日程を設定させないようにしている一方で、そのお手本となるべき総理大臣が何らおとがめなしというのは、不公平と言わざるを得ません。

 英国のような任期固定法を制定するか、それが憲法上問題があるというなら、衆議院の解散を制限する憲法改正を優先的に行うべきと考えます。

 ありがとうございました。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 本日、定例日に開催されたこと、与野党幹事の御努力に心から敬意を表しますとともに、また、先般、オンライン審議に関して、憲法審査会として一つの意見、これを表することができたことについても、同僚の委員の皆様に心から敬意を表します。

 しかしながら、緊急事態対応は、オンライン審議を導入すれば解決するわけではございません。例えば、首都直下型大震災の発生等によりオンライン設備が使えなくなったとき、当然、オンライン国会はできないわけであります。三十年の間に七割の確率で発生するとされる首都直下型地震が発生するとすれば、多くの議員がオンライン設備が使えなくなる事態も予想されます。

 そしてまた、昨日も宮城・福島沖で大きな地震がありましたけれども、首都直下の場合には、交通途絶により議場に集まれない、したがって定足数三分の一を満たせない、そうした例が十分あり得るわけであり、その場合には、法律も予算も決まらない機能不全状態は発生するわけであります。

 先般、参考人として発言された高橋和之参考人は、阪神・淡路大震災と東日本大震災を例に挙げられて、国会が定足数を満たすことができないということはないという例を挙げられました。そして、万一そういう大災害、つまりそれを超えるような大災害が起きたら、それはもう超法規的な問題として各自が対処する以外にないんじゃないか、無責任だと言われそうだが、実際そうじゃないかとおっしゃいました。

 私は、憲法学者として無責任かどうかというコメントは控えますが、日本の政治家がこれを言ったら、無責任極まりありません。なぜなら、日本は関東大震災を経験しているからでございます。高橋参考人は、関東大震災については触れられませんでした。実際に、関東大震災のときには、当然、国会が開けません。当時の政府は、当時の明治憲法下で許されていた緊急勅令十数本を出して、国難を乗り切ったのであります。今の憲法では緊急政令が認められていないので、このようなことができず、関東大震災のような事態が起きたとき、国会は機能不全のままであり、予算も法律も通せないということになります。

 また、日本は、東日本大震災において、緊急事態の中、地方選挙を行うことができず、地方議員の任期延長を、法律を変えて延長いたしました。しかし、国会議員の任期については、憲法に定められているがゆえに、憲法を変えなければ任期延長ができず、任期満了に伴い議員は身分を失い、国会は機能不全となるということであります。

 先ほど公職選挙法三十一条でやればいいという御提案がありましたけれども、憲法の下位にある法律で憲法で明記されている任期を覆すというのは、下位の法律が憲法を覆す、そういった御意見であり、私としては到底受け入れることができない、憲法秩序の中で受け入れることができない御提案でございます。

 また、先ほど玉木委員などから御指摘がありましたように、憲法五十四条二項の緊急集会、これは、衆議院の解散のときにはということで明記されておりまして、任期満了のときということに適用されるかどうかは不明であります。高橋和之参考人は、ルールに関する条項については解釈の拡張を許すべきではないとおっしゃいました。もしそれがそうであるのであれば、任期満了のときにこの五十四条二項の緊急集会は使えないということになります。

 なお、緊急事態についてはワイマール憲法の例を述べられる委員もおりますが、私は、この日本の例、これをしっかり学ぶべきではないかと思っております。

 例えば、災害対策基本法などで対応できるという御意見がありましたが、残念ながら、東日本大震災の後、七十一か所、法律を変えているんです。つまり、法律を変えなければ対応できなかった部分が実はあるわけであります。予想を上回る大災害というのは不断にあるわけであります。それを既存の法律で乗り切るのだということは、余りにも楽観的であろうかと思います。

 そして、ワイマール憲法の歴史を見れば、これは、ワイマール憲法下で、選挙に極めて厳しい制限を置いて、その中で圧倒的多数を把握したナチスが全権委任法を制定して、それで憲法秩序を破壊したものであって、緊急事態条項があるから駄目なんだというのは、ちょっと私は中途半端なワイマール憲法の学び方であろうと思います。

 実際に、ヨーロッパの憲法問題の諮問機関であるベニス委員会は、緊急事態における権限に関する基本的な規定は、本来は憲法の中に書き込まれるべきであるというふうに述べております。実際に、諸外国の憲法に緊急事態条項は当たり前でありますし、例えば一九九〇年以降に憲法が定められた百か国以上の憲法に、全て緊急事態条項が含まれております。

 私たちは、日本の関東大震災のような、首都直下型地震におけるような歴史、あるいは諸外国の歴史をしっかりと見据えて、このオンライン審議にとどまることなく、緊急事態について検討すべきだと思います。

 以上です。

森会長 予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いにつきましては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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