衆議院

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第6号 令和4年3月24日(木曜日)

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令和四年三月二十四日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      伊藤信太郎君    伊藤 達也君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      國場幸之助君    下村 博文君

      中谷 真一君    中西 健治君

      西村 康稔君    船田  元君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    松本  尚君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      山本 左近君    山本 有二君

      阿部 知子君    新垣 邦男君

      神津たけし君    中川 正春君

      野田 佳彦君    太  栄志君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    足立 康史君

      小野 泰輔君    和田有一朗君

      國重  徹君    中野 洋昌君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     中谷 真一君

  西村 康稔君     松本  尚君

  山田 賢司君     山本 左近君

  近藤 昭一君     阿部 知子君

  櫻井  周君     米山 隆一君

  本庄 知史君     神津たけし君

  三木 圭恵君     和田有一朗君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     井野 俊郎君

  松本  尚君     西村 康稔君

  山本 左近君     山田 賢司君

  阿部 知子君     近藤 昭一君

  神津たけし君     本庄 知史君

  米山 隆一君     櫻井  周君

  和田有一朗君     三木 圭恵君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(特に、緊急事態条項を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、緊急事態条項を中心として集中討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 先週は、日本国憲法に規定がない緊急事態条項について考えられる論点を総括的に整理をいたしました。本日は、この問題について集中討議を行い、論点を深めたいと考えております。

 まず、整理すべきは、対象となる事態の範囲でございます。

 自民党の私どもの条文イメージ、たたき台素案では、大地震その他の異常かつ大規模な災害のみを提示させていただいております。

 しかし、先週の討議、これまでの討議を見まして、緊急事態を憲法に規定するべき、この御意見を表明した、私も含めて各委員が示していただいた対象範囲は、まずは大規模自然災害事態、そして感染症の大規模蔓延事態、さらにはテロ・内乱事態、また、現在まさに渦中にあって、昨日は立派な演説をいただいたわけでありますけれども、ウクライナへの侵略行為といった国家有事の際の安全保障事態、この四つの類型があるのではないか。これは、緊急事態の対象範囲としておおむね各皆さんが合意ができるのではないかな、このように整理をしたいと思います。

 その上で、これにも当てはまらないあらゆる事態への対応、こうしたものを考慮するならば、その他これらに匹敵する事態という包括的な規定を設けるか、若しくは、その他法律で定める緊急の事態というように法律委任の類型を用意しておくか、この点を今後是非議論させていただきたい、このように考えております。

 次に整理すべきは、緊急事態における国会機能の維持についてでございます。

 緊急事態が発生した際には、国民の生命、安全、財産を保護するために、政府に一定の権限を集中させ、そして迅速かつ適切な行動を取れるようにしておく必要があります。緊急事態であっても、国権の最高機関である国会の立法機能と行政監視機能、これを維持しておくことは法治国家として何より重要だと考えております。

 国会機能の維持という観点では、国会議員の任期延長、これが必須のことだ、このように考えます。さきに、憲法五十六条一項の出席概念につきましては、オンライン出席に関する議論の取りまとめを議長に報告いたしました。しかし、オンライン出席が定足数にカウントされるようになっても、そもそも、国会議員の任期満了前後に緊急事態が発生し、選挙の執行が困難となれば、国会議員は不在となり、国会は機能不全となってしまいます。

 公選法上の繰延べ投票による対応は、限定的な地域を対象とした選挙執行の困難事態に対処するための平時の制度であり、全国的に選挙の執行が困難となるような有事の事態においては、繰延べ投票で対応することには限界があり、また、妥当であるとも考えられません。

 なお、参議院の緊急集会制度によって対応すればよいとの御意見もありますが、この制度は、文言上、衆議院解散時にしか開くことができず、また、解散から特別国会召集までの二か月程度の期間の臨時的対応を想定しているにすぎないのではないか、このように考えます。

 緊急事態における議員任期延長の規定を憲法に設けることは必須であること、これは審査会として是非合意をしたい、このように考えております。その旨、私は提案をいたします。

 その上で、任期延長が必須な事態であることを誰が判断するか、ここについての論点を整理する必要がございます。

 私どものたたき台素案では、国会議員の三分の二の特別多数で議決する、こういう考え方もお示しをしております。しかし、大規模自然災害に加えて感染症大規模蔓延、テロや安全保障に関わる事態が発生した際、我が国の法制の概念を平時から有事にステージを切り替えて、必要かつ適切な対応を迅速かつ合理的に実施できる体制を構築しておく必要があるのではないか。とするならば、緊急事態の執行に当たる法制は、総括的、体系的なものとして構成すべきと私は考えます。

 その判断権者は、行政を運営する総理大臣又は内閣とするのが適切であり、もちろん、その判断の国会承認を速やかに行えるよう、事前事後承認の仕組みを設けておけばよい、このように思うわけであります。この点も是非、各党から御意見を頂戴したいと思います。

 また、国会議員の任期を延長することは、主権者国民の選挙機会が一部奪われることになるわけでございますから、延長期間の考え方や上限を定めておくことについての議論が必要でございます。

 ちなみに、緊急事態が布告されているウクライナの憲法では、戒厳、非常事態で構成される緊急事態の布告がなされると、当該布告が廃止された後の選挙によって構成される議会が招集されるまでの間、現在の議員任期が延長される、このような規定になっているわけでございます。

 本日の討議では、緊急事態条項の規定のうち、対象となる事態の範囲、そして議員任期の延長について、私なりの論点整理をさせていただきました。

 先週、公明党、北側先生からも御指摘をいただきましたが、ロシアの侵略を受けているウクライナ、このロシアの軍事作戦が開始される前日と当日に、緊急事態を布告するための国会、本会議が開催され、承認されています。

 国内で激しい攻撃がされている中、三月三日と十五日には議員が国会に集まって本会議を開催しています。三月三日には十四本の法律と一本の決議、十五日には二十一本の法律が採決されています。三月二十日には、国会に戒厳令下の刑事手続の改善に関する刑事訴訟法改正案を始めとする多くの法案が提出され、審議が始まっているわけであります。

 ウクライナの国会は、緊急事態の発生に対応し、あらかじめ準備された有事態勢に切り替えた上で動いているんです。仮に我が国に緊急事態が発生した場合、私たちは、有事という概念の下で、国民を守り、国家機能を維持するために必要な法制度、運営体制を準備しているのか、このことを私は強く危惧する次第でございます。

 憲法審が緊急事態の集中討議を実施していることについては極めて意義深いことでありますが、更に議論を深めるために、次の機会に、議員任期の延長に絡んだ、解散後に緊急事態が発生し、選挙が執行できなくなった場合の前議員となった者の身分の取扱い、さらに、緊急政令など権限集中の問題や人権制限の問題について論点を整理したい、このようにも思います。

 また、論点を整理し、審査会としてのおおむねの共通認識を形成するためにも、来週は、諸外国の緊急事態における憲法上の規定、また、関連するフェイクニュースなどを始めSNS対策などについて法制局より論点説明を受け、それに対する質疑を行いたい。その旨、本日の幹事会で提案をさせていただきました。

 今後、筆頭間協議で詰めてまいりますが、委員各位の賛同を是非よろしくお願い申し上げたいと思います。

 私の発言は以上であります。

森会長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。

 当初、自由討議ということを前提に話をするんだというふうに理解していたものですから、私たちの国民投票法を先行すべきだということも含めた議論というのを、今日、申し訳ないけれどもやらせていただきたいというふうに思います。

 前回の国民投票法というのは、選挙法の改正に伴う関連事項の整理を中心に国民投票法の改正がありました。その改正時点で課題となって、その後の議論に委ねた形になっているのが、コマーシャル規制とインターネットに関連する課題であります。

 当初の大方の意見は、言論の自由とバランスを考えれば、業界が自主規制で公平性をできる限り担保できるとするような、それが望ましいということでありました。当時は、憲法審査会に出席した民放連の代表からも、自主規制でやりたいという意思表示があったというふうに記憶をしております。

 その後、自主規制の内容の開示も私たちも待ったんですが、三年たっても結論が出てこず、改めて憲法審査会の場で民放連の意向を確かめた。彼らの議論に結論が出ていないということを、そのとき確認をしました。

 この状況の中で、取りあえず、情報の公平性という課題や、その後の海外投票をいかに担保するかなどの問題は一時棚上げして、三年以内にこうした課題のめどをつけるということを条件に、当面の選挙法関連の修正項目のみを採決に付していったという経緯があったと認識をしております。

 したがって、国民投票の公平性と公正を担保する議論というのは最優先でまとめていくということ、また、そのためには、テレビコマーシャルの規制問題だけでなくて、インターネットなどの情報をいかに制御するか、非常に専門的に深掘りが必要な課題であるということであります。今からしっかりと時間を取って議論をしていく必要があると考えております。そういう意味で、これを最優先に議論をしていくべきだというふうに思うのです。

 私たちは、当該法案のたたき台を用意しております。旧の国民民主党で提出された法案に、私たち立憲民主党が課題として持っていたものを融合させた内容になっております。これだけではなくて、更に議論すべき要素も包摂していると思い、できれば幹事会で開陳して、議論のたたき台としていただければありがたいというふうに思っております。

 また、一旦法案として提出した上で議論の対象にする方がいいという会長の見解であれば、そのように提出の手続をさせていただく用意があります。

 いずれにしても、まず国民投票法に関する議論を優先する、これをまとめるということが肝要だと思っております。

 次に、憲法本体についての議論、これも、私たちはやってはいけないとは言っておりません。大いにやっていくべきだというふうに思っております。

 緊急事態条項がこの審査会で集中的に議論する課題として浮上していますが、私は少し違った思いを持っております。

 一つは、立法事実の捉え方の違いなんだというふうに思うんです。緊急事態条項を憲法改正を前提に議論するときに、総理大臣に権力を集中するということを目的に進めるということは必要ないし、間違っているというふうに思っています。緊急事態には通常を超えた指揮権が必要なことは、これは自明の理であります。だからこそ、憲法や法律では、それを無限に保障するのではなくて、逆に、その中でいかに基本的な人権を保障し、民主的なプロセスをはめ込んで、権力の暴走や濫用を防止するかということが主眼になっていくべきであります。

 もし、議論が、総理大臣の権限を縛るということでなくて、権限の強化と広がりを保障する方向でなされようとしているとすれば、それは権力の分立を基本理念とする立憲主義とは相入れないものだと思っておりまして、くみすることはできません。これが立法事実として皆に共有されなければならないというふうに思っております。

 日本の現状を見るときに、こうした整理は、憲法本体の条文としてではなくて、憲法の精神に基づいて、それぞれの分野の関係法令で整理されていると認識されています。災害時には災害対策基本法、コロナのようなパンデミックには感染症予防法や新型インフルエンザ等対策特別措置法、安全保障では武力攻撃事態等及び存立危機事態対処法だとか自衛隊法や国民保護法など、様々にそうした法体系が既に存在をしています。

 憲法の趣旨を踏まえてそれぞれの関連法制を整備する中で、緊急事態法制は既に整備されており、これを更にブラッシュアップをしていくという方向、これを共有して議論をしていくべきだというふうに思います。

 一方で、緊急時の国会対応ということについては、確かに問題が残るのだと思っております。

 先般から話題になっている緊急時の衆議院の任期延長、まさに、総理大臣の指揮権に国会が関与して、その裁量の限界を規定するために国会の機能を維持する、そういう議論だと理解できます。参議院の緊急集会で事足りるのか、それとも憲法改正の議論が必要なのか、論点を整理して議論を深める必要はあると思っております。

 参議院の緊急集会では駄目なのかというようなことも、緊急事態に特化するのではなくて、実は、国会の機能全般、統治機能という、この中で総合的に検証することが私は望ましいのではないかというふうに思うんです。

 議論の対象としてのまとめ方として、国会機能の一つ、それと併せて、議員の任期延長であるとかあるいは首相の解散権であるとか、あるいは一票の格差というようなものも含めて、国会の機能をどういうふうに見直していくか、議論をしていくかいうこと、この範疇の中でやはり議論はすべきだというふうに思っております。

 何度も申し上げているとおりに、まずは論憲であります。改正するにしてもしないにしても、落ち着いた議論が必要だというふうに思っています。議論の対象条項に関する立法事実、立憲事実がどこにあるのかを突き止めて、本当に問題があるのかどうかをはっきりさせた上で、問題があればそこに議論を集中させることが、この審査会の議論を実のあるものにしていくということになっていきます。

 立法事実を検証することなく、憲法は改正するものだということを前提に議論を進めることは、国民の思いを統合した憲法議論につながらずに、議論によって心を分断するということ、そんな懸念が出てまいります。

 以上、その部分を特に強調して指摘をしながら、私の発言を終わります。

 ありがとうございました。

森会長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 本日は、ロシアがウクライナに軍事侵攻してからちょうど一か月の節目となります。このタイミングで、昨夕、ゼレンスキー大統領の演説を衆参両院の国会議員が直接聞くことができた意味は限りなく大きいと感じています。

 日本の国会議員は身を開くべきであります。昨日の衆院内閣委員会では、いわゆる経済安保に係る政府案と日本維新の会の独自案とが同時に審議入りしましたが、立憲民主党は独自の対案を準備できなかっただけでなく、同党の最高幹部でもある委員の一人は、与えられた質問時間の全てを、既に処分を受け、辞職した担当室長の問題に充ててしまいました。

 国民民主党の玉木代表も五十歩百歩です。政府の原油価格高騰対策の補助金額は上限の二十五円に間もなく張りつこうとしているのに、いまだに二十五円のトリガー条項発動にこだわっている。燃料間の公平性を考えれば、補助が減税に置き換わるだけで、消費者にとって無意味であるのが分からないのでしょうか。意味がないだけでなく、ガソリンスタンド始め、現場は大混乱します。

 こうした明らかな愚策に与党の幹事長や税調幹部がおつき合いしている国会の現状を目の当たりにして、私は、いいかげん目を覚まそうと強く訴えたいと存じます。

 こうした憲法審査会と一見関係ない話を申し上げた理由は、一事が万事だからです。さきに取りまとめた出席概念についての考え方、これを受けて、オンライン国会を実現できるよう規定を整備すればいいのに、その見通しはいまだ立たない。文通費も使途を公開すればいいのに、しない。原発再稼働しなければならないのに、内閣と原子力規制委員会とがにらめっこして議論が進まない。

 ゼレンスキー大統領は、昨夕の演説で、対ロシア禁輸と日本企業のロシア市場からの撤退を求めました。日本はサハリン2から撤退し、原発の再稼働にかじを切るべきです。私たち日本維新の会は、先週十五日、高浜一号、二号、美浜三号の再稼働を萩生田経済産業大臣に提言しました。石油大手シェル始め英国の企業は、一か月前に撤退する方針を表明しています。日本の三井物産、三菱商事にも撤退を促し、内閣主導で原発を再稼働すべきです。

 ウクライナ危機という戦時にあって、ロシアへの経済制裁の徹底と原発の再稼働、こうした内閣の意思でできるはずのことに手をこまねいているその横で、私たちは内閣に緊急政令という更なる武器を与えようと議論している。誠に滑稽でありますが、国を一歩でも前に進めるために、恥を忍んで発言を続けたいと思います。

 緊急事態に係る論点のうち、議員任期の延長については、おおむね委員の認識は一致しているのですから、憲法審査会として直ちに結論を取りまとめて、もう一つの難しい論点、緊急政令の議論を深めていくべきであります。

 自民党は、緊急政令を含むたたき台素案を公表しているのですから、当然テーブルにのせることができる。日本維新の会も、先週御紹介申し上げたように、党憲法改正調査会の三木圭恵事務局長による試案が既にありますので、議論に応じる用意があります。

 そこで、この憲法審査会での緊急事態条項に係る議論を促す観点から、立憲民主党、国民民主党、玉木さん、そして有志の会に質問をさせていただきたいと存じます。

 立憲民主党の奥野筆頭は、先週、党として緊急政令に反対とおっしゃいました。その理由を端的に御説明ください。

 国民民主党の玉木代表と有志の会の北神委員にも、恐縮ですが、緊急政令の議論に応じる用意があるかどうか伺えれば幸いです。

 また、先週の審査会で、我が党の馬場伸幸幹事から、緊急事態における補償の考え方を最優先で議論すべきと指摘しました。

 共産党の赤嶺委員には、コロナ禍にあって政府・与党が十分に措置しなかったいわゆる補償の問題について、これは憲法審査会で議論すべきテーマであると私たちは考えていますが、いかがお考えでしょうか。伺います。

 私の発言時間の範囲内でお願いします。

森会長 それでは、足立委員の発言時間の範囲内で、簡潔に御答弁願います。

奥野(総)委員 毎回御指名いただいて、ありがとうございます。

 一つは、予算も含め、政令でと。戦前の緊急勅令じゃありませんけれども、それだけの権力を一時的にしろ政府に与えるというのは、権力分立の観点から望ましくないということであります。立憲主義に反する仕組みです。

 では、どうするのかということは、もう答えは新藤筆頭も言っていますが、ウクライナですら議会は動いているわけです。どうやって議会を動かすのか、どうやって予算や法律を通すのかということをまず考えるべきだと思います。

 以上です。

玉木委員 御指名いただき、ありがとうございます。国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 私どもは、緊急政令及び緊急財産処分についての規定は設けるべきだと考えます。例えば、緊急事態の宣言が発せられた場合において、国会による法律の制定又は予算の議決を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、あらかじめ法律に定めるところにより、内閣は法律で定めるべき事項を定める政令を制定し、又は財産上の支出その他の処分を行うことができる、こういった規定を設けてはどうかと考えています。

 ただ、この際に、いかなる場合にあっても国会の機能がどこまで維持できるのかということとセットで考える必要があると思っています。つまり、有事においても、緊急事態においてもぎりぎり国会が開ける、例えばオンライン国会も含めて、五十六条の三分の一の定数、こういったものがかなりの確率で満たされるのであれば常に立法機能が維持されるので、特別な政令の求められる範囲が極めて限定されると思いますので、我々としては、政令の必要性は認めるものの、それは立法府の機能がどのような形で維持できるのかということとセットで考えるべきだと思いますので、いずれにしても議論を深めていきたいと思います。

北神委員 いつも存在が消えつつある我々に光を当てていただきまして、ありがとうございます。

 我々は、緊急事態の緊急政令、権力集中、これについては、いつでも議論する用意ができています。

 ただ、今回も前回も議員の任期延長に集中して議論しているのは、奥野委員がおっしゃったように、基本的には、やはり国会をできるだけ緊急事態においても運営をすべきだ、そういう立場で、ただ、それもかなわないことも恐らく危機管理上は想定をしなければいけない。そのときには、この前、高橋先生が参考人質疑でおっしゃったように、そのときは総理大臣が超法規的な行為をするのが常識だということをおっしゃいましたが、まさに立憲主義の観点からいえば、できるだけ、緊急政令とかに及ぶのであれば、あらかじめ手続というものをきちっと憲法に規定すべきだと、一貫した考えで臨みたいと思います。

赤嶺委員 コロナ禍の下で、営業補償や事業者の逼迫、そういうことについて、私たちは、例えば経済産業委員会で、当面、足下の被害をどうするかということで、早急に政府の政策を転換するよう強く求めてまいりました。経済産業委員会にとどまらず、各委員会でも求めております。

 何よりも、昨年、コロナ禍のときに、憲法五十三条に基づいて臨時国会を開いて、そして事業者への営業補償もきちんとやるべきだ、そういう議論をやるべきだということを強く申し上げてまいりました。

 以上です。

足立委員 ありがとうございました。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 初めに、緊急事態条項の創設をめぐる議論の前提として、二点指摘をしたいと思います。

 第一に、緊急事態への対応は、それぞれの危機管理法制の詳細な整備が不可欠だということであります。

 緊急事態といっても、その形態は様々です。東日本大震災のような大規模災害、また感染症の爆発的な蔓延、さらにはウクライナが今直面している外部からの武力攻撃など、多様です。こうした事態に、国民の生命、身体、財産を守るため取られるべき具体的な措置は一様ではなく、これを一くくりにして論ずることはできません。

 緊急事態の類型に応じて、それぞれにふさわしい危機管理法制を平時から整備しておくことが肝要です。災害であれば災害対策基本法などの災害対処法制、感染症であれば新型インフルエンザ等対策特措法などの感染症対応法制、また、外部からの武力攻撃等であれば武力攻撃事態等対処法などの有事法制です。

 第二に、緊急事態にこそ、国会の役割がより重要であり、国会の機能を維持していかねばならないということです。

 憲法第四十一条にあるとおり、国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関です。先週も申し上げましたが、ウクライナの国会は今も厳然と機能し、ウクライナ国民と国際社会にその活動を連日発信をしております。

 先般、私ども憲法審査会は、いわゆるオンライン国会についての意見を取りまとめ、衆議院議長に報告をいたしましたが、いかなる状況下であっても国会機能は維持するという意味で、大きな意義があったと考えます。

 一方、緊急事態に際し、内閣に緊急政令の制定や緊急の財政措置を取ることを憲法上認めるべきとの意見があります。しかし、緊急事態だからといって、憲法に白紙委任的な緊急政令制度を設けることは、国の唯一の立法機関としての国会の責任を放棄することにつながります。

 例えば、現行の災害対策基本法第百九条では、生活必需品の譲渡制限、価格統制、金銭債務の支払い延期等の具体的項目を明示して、内閣に緊急政令制定の権限を与えています。このように、法律事項として個別に政令委任ができる範囲を規定すべきと考えます。

 次に、緊急事態における国会議員の任期の延長について、その課題と基本的な考え方について私の意見を述べます。

 まず、憲法第五十四条二項、三項に定める参議院の緊急集会との関係をどう考えるかです。

 緊急の必要があるときは参議院の緊急集会が開催できるから、国会議員の任期の延長は必要ないとの意見があります。また、衆議院の解散時のほか、任期満了後にも緊急集会が可能かどうか、両論があるようです。

 しかし、私は、この点よりも、緊急集会を憲法上どう位置づけるかの方がより重要な論点だと考えます。

 憲法第四十二条では、国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成するとあります。予算も法律も、両議院の議決で成立をいたします。

 参議院の緊急集会は、この二院制の例外として、衆議院の解散後、衆議院が不在の間、緊急の措置を取る必要があるときに緊急集会を開催し、国会としての意思決定ができるということです。これは、解散から四十日以内の近い将来に総選挙が実施され、新しい衆議院が構成されることを前提としており、あくまで暫定的、一時的な緊急の措置と位置づけられます。

 総選挙の適正な実施が長期間困難となることが認められるような緊急事態の場合に、専ら緊急集会での議決で国会の意思決定とするのは、二院制の理念からするといかがなものでしょうか。参議院の緊急集会があるからという理由で国会議員の任期の延長は必要ないとの見解には、賛成できません。

 ちなみに、東日本大震災のときは、震災特例法の適用で、選挙期日と地方議員や首長の任期について、五十七の被災自治体で延期、延長しました。選挙期日が最も遅かった自治体は、二〇一一年十一月二十日で、八か月以上の選挙の延期、任期延長がされたことになります。

 また、例えば、大規模災害等が発生し、選挙の実施が困難な場合は、公職選挙法第五十七条の適用により、その被災地域に限って国政選挙の繰延べ投票を実施すればよく、国会議員の任期延長や選挙の延期は必要ないとの意見があります。

 しかしながら、国政選挙の場合は、衆参とも比例区選挙があります。東日本大震災のように広範な地域で選挙の実施が困難となった場合は、被災地の繰延べされた投票の結果が判明するまで比例区の当選者が確定しないということになります。また、同様に、多くの選挙区選挙での投票が繰延べされて、被災地選出の国会議員が長期間存在しないということにもなります。

 そもそも、広範な地域で繰延べ投票となると、これ以外の地域の選挙結果をあらかじめ知った上で投票することにもなり、公平公正な選挙の実施という観点からも大きな疑問があります。国政選挙については全国同時に実施するというのが原則と考えます。

 国会議員については、憲法上、衆議院議員の任期は原則四年、参議院議員の任期は六年と明記されています。そのため、特例法の制定によっては国会議員の任期の延長はできず、延長するためには憲法の改正が必要です。憲法を改正して、緊急事態の発生により国政選挙の適正な実施が長期間困難と認められる場合に国会議員の任期の延長ができるようにしようとしますと、誰がどのような要件と手続で決定するのか、明確に定めておかなければなりません。議会制民主主義の根幹に関わることですから、国会が決定するとしても、極めて厳格かつ公正な要件が求められます。

 選挙の適正な実施が長期間困難とはどの程度の期間を指すのか、また、任期延長の期間をどの程度にするのか、再延長を認めるのか、さらには、衆議院が解散された後に緊急事態が発生した場合に衆議院議員の地位回復を認めるのかなど、難しい課題もあります。また、任期延長がなされた場合には、その間は国会を閉会することはできず、さらには、衆議院の解散権行使は禁止されると考えられます。

 以上、緊急事態における国会議員の任期延長というテーマについて、その是非、幾つかの論点を述べました。今後、海外の憲法例の調査や有識者の意見聴取なども実施し、論議を深めてまいりたいと考えます。

 以上、本日の意見表明とさせていただきます。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 今週は定例日に憲法審査会が開催されたことをまず歓迎したいと思います。関係の皆さんの御尽力に心から敬意を表したいと思います。

 また、緊急事態条項を中心として、テーマを絞って議論することには大変意義があると考えます。これからも、言いっ放しではなくて、具体的な議論の成果を出せる運営を期待したいと思います。

 まず、改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べたいと思います。それは、緊急事態条項自体が危ないのではなくて、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で、行政府による恣意的な権力行使によって憲法上の権利が制限され得る状態が危ないと考えます。

 一般的に流布する緊急事態条項のイメージは、行政権の簡易迅速な権限行使を可能とする、権限行使の容易化条項としての緊急事態条項です。しかし、私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、むしろ、公共の福祉など漠たる規定を根拠として、行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する、権限行使の統制条項としての緊急事態条項であります。

 ここで、緊急事態条項に関する国際的な比較を一つお示しをしたいと思います。

 これは、ケネス・マッケルウェイン東大教授の研究で示されたものでありますけれども、一七八九年から二〇一三年までに制定された世界の約九百に上る憲法のデータを分析したものでありますけれども、まず、二〇一三年時点で、九三・二%の憲法において緊急事態条項が規定をされております。今や緊急事態条項は、憲法における最も共通した項目の一つになっています。ちなみに、表現の自由は九五・五%の憲法に明記をされております。それに匹敵する比率で緊急事態条項は明記をされています。

 他方で、緊急時における人権保護規定の停止や緩和規定が憲法に盛り込まれている割合はそれよりも低くて六三・七%で、過大な権力を委任することには、特に第二次世界大戦以降、慎重になっている傾向も見られます。

 また、緊急事態が宣言できる状態については、一番多いのは外国からの武力攻撃で、これが六四%、次に内乱で四五・六%、次が災害で三九・七%なんですが、一九九〇年以降盛り込まれたこの緊急事態が宣言できる状態について、最も急ペースで規定率が上がっているのが自然災害です。

 その一方、緊急事態を宣言できる状況を法律で定めるとしている憲法は一〇%に満たないというのが実態です。これは、緊急事態を法律で定めると、政府の重大な権限行使を議会の単純過半数で決定できるため、法律に委任することに慎重な態度を取っているものと考えられます。

 私たち国民民主党は、こうした背景も踏まえつつ、そして行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態は限定列挙すべきものだと考えます。具体的には、外国からの武力攻撃、内乱・テロ、大規模自然災害、感染症の大規模蔓延、この四つのカテゴリーを基本とすべきだと考えます。

 いずれにせよ、何を緊急事態とするのか、まずこの点について、憲法審査会で議論を深め、共通認識を形成したいと思います。

 次に、緊急事態が宣言されたときの効果についての国際比較についても、併せて紹介したいと思います。

 一番多いのは、二二・八%の憲法が規定している議会任期の延長と解散権の制限、これが一番多いです。次に規定率が高いのが、緊急事態宣言下の憲法改正発議を不可とする規定です。これが一二・五%。なお、法律と同等の効果を持つ政令について定めているのは七・四%にとどまっています。

 こうした点も踏まえて、我が党としては、前回も提案した議員任期の特例についての議論をまず急ぐべきだと考えます。任期満了時に正常な選挙ができないような事態に陥った場合に、任期の特例延長の規定を創設すべきだと思います。

 この点に関しては、先ほどから話の出ている憲法五十四条二項の参議院の緊急集会は、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、この解釈を本審査会でまず明らかにすべきことを提案したいと思います。

 次に、ヨーロッパにおける緊急事態と人権保障についても触れておきたいと思います。

 日本における緊急事態条項の議論については、どうしても日本特有の護憲、改憲論の磁場から離れて行うことが困難でありますけれども、一度、こうした構造から離れて議論してみることが必要だと思います。そのための素材として、欧州評議会に設けられたベニス委員会の見解を紹介したいと思います。

 ベニス委員会とは、欧州評議会の下に一九九〇年に置かれた憲法問題についての諮問機関です。加盟国に法的助言を行っており、日本もオブザーバー参加しています。

 このベニス委員会は、憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だと主張しています。特に、コロナ禍を経て二〇二〇年六月に策定された報告書の中で、緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が停止され、いかなる権利は逸脱から許されず、いかなる状態においても尊重されなければならないことを明確に示す規定を含むべきであるとしています。続く二〇二〇年十月の報告書でも、同様の趣旨が述べられています。

 私たち国民民主党は、ベニス委員会が指摘しているように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定を詳細かつ明確に憲法に規定すべきだと考えます。こここそ、憲法の規律性をしっかりと生かすべき分野だと思います。

 改めて申し上げたいのは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で、行政府による恣意的な権力行使によって憲法上の権利が制限され得る状態が放置されていることこそ危ないと考えます。

 だからこそ、憲法の規範性を生かすことが重要であり、国民民主党が考える権限統制条項としての緊急事態条項を検討する際には、権限統制のツールとして、大きく二つのカテゴリーの統制が必要だと考えます。原則国会の事前承認を求めるなどの手続的統制、そして二つ目に、絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの内容的な統制。この手続的統制、内容的統制の二つのカテゴリーで、中身をしっかりと議論していくことが必要だと思います。

 こうした緊急事態における統制の具体的内容については、現在、党内で議論しているところであり、まとまれば条文の形で是非お示ししたいと考えています。

 いずれにせよ、緊急事態条項については議論すべき点が多々ありますので、事の緊要性に鑑み、次回も緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたいと思います。そのためにも、改めて審査会の毎週開催を求め、私の発言を終えたいと思います。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 この間の審査会の議論で、コロナ禍や災害対応を理由に緊急事態条項を議論すべきだという発言が多くありました。そこでは、コロナに便乗し、あたかも緊急の事態に対応するために、憲法を変えることを最優先の課題にしなければならないという前提で議論が進められています。

 しかし、コロナ禍で、憲法を変えなければ対応できないという問題は起きていません。今政治に求められているのは、憲法に保障された国民の生存権や幸福追求権を実現することです。国会議員はそのために全力を尽くすべきであり、コロナに乗じて改憲の議論を進め、ましてや自民党の改憲四項目の議論に持っていこうとすることは反対であります。

 前回、新藤幹事は、国会の機能の維持を殊更に強調し、出席概念の議論は緊急事態全般に関する議論が必要であることを浮き彫りにしたとして、国会議員の任期延長、内閣の緊急政令、さらに、緊急財政処分にまで言及いたしました。極めて重大な発言であります。

 日本国憲法は、国会を唯一の立法機関として規定しています。これは、明治憲法下で濫用された緊急勅令や独立命令を廃し、立法権を国会に独占させ、権力の分立を徹底するためのものであります。内閣による緊急政令や財政処分は、国会の機能を奪い、権力濫用を防ぐ三権分立を停止させるものであり、容認できません。

 これらの議論は、改憲四項目にとどまらず、憲法を全面的に書き換えようとする二〇一二年の自民党改憲草案を推し進めようというものではありませんか。国会の機能を維持することが必要だと言いながら、その行き着く先は国会の機能の停止が狙いであることははっきりしています。こうした改憲議論は、権力の縛りを緩め、内閣に権限を集中させ、立憲主義を崩すものにほかなりません。

 衆議院が解散されているときや任期満了時に大規模災害で選挙ができなくなると言いますが、そもそも、想定外のことを仮定して議論すること自体が問題です。国会議員も閣僚も官僚もいなくなってしまった場合まで検討するというのでしょうか。

 その点では、二〇一七年三月二十三日の審査会での参考人の意見陳述を思い出すべきです。参考人として出席された永井幸寿弁護士は、想定外の事態のためにその先に制度を設けると、それは想定内になる、更にその先に想定外を考えて制度を設ける、そうすると、これも想定内になる、そうすると、更に設けなきゃいけないと述べ、際限なく想定外が広がると指摘しています。さらに、永井参考人は、想定外の事態とすると、権限がどんどん強くなってしまうことが危険だと強調しています。

 さきの憲法五十六条一項に関する参考人の意見陳述でも、高橋参考人は、極端な事例を出せば出すほど、権限をどこかに大幅に移譲する以外に解決の方法はなくなっていく、極端な事例を出して議論をすると間違う危険が強いと警鐘を鳴らしています。

 これらの専門家の意見が示しているのは、想定外を想定し、その想定外のために憲法を変えれば、権力を縛り、国民の権利と自由を守る憲法原理に例外を置くことになり、濫用を許す危険が高まるということであります。

 緊急の事態に関する議論として、しきりに国会機能の維持を繰り返していますが、そうであるならば、なぜ、憲法五十三条に基づく野党の臨時国会召集要求を政府と与党が無視してきたことを問題にしないのですか。

 三月十七日の福岡高裁判決は、憲法五十三条後段の規定は、少数派の国民の意見を国会に反映させるという趣旨に基づくものであり、極めて重要な憲法上の要請であることは論をまたないと強調しています。この明白な憲法違反を徹底的に議論すべきであります。

 国会機能の維持を言いながら、現実には国会の行政監視機能を軽視し、さらに、国会の機能を停止させ、権力による人権制限を強めるための議論へと持っていくことは、権力分立や基本的人権の保障を原理とする現行憲法を幾重にも否定しようというもので、絶対に認められないと指摘し、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 本日は、議員の任期延長について、前回の自分の問題提起に対して自分の答えを出していきたいと、自問自答をしてまいりたいというふうに思っています。

 繰り返しになりますけれども、議員任期の延長は、あくまで例外的な措置として捉えるべきです。緊急事態発生後、繰延べ投票や緊急集会で対応できない場合に限って、国会の立法並びに行政監視機能を維持するための制度となります。したがって、具体的に何をもって緊急事態とするのか、緊急事態宣言の要件並びに手続は厳格なものにする必要があると思います。

 まず、要件、これは緊急事態の範囲というふうにも言われますが、これについては、前回既に御提案申し上げました。ほかの会派の皆さんの御意見を拝聴していますと、一部を除き、おおむね一致を見ているというふうに思われます。四つの項目ですね。大規模災害、全国的感染症、テロ・内乱、そして戦争。

 つけ加えるとするならば、この緊急事態の範囲、要件は、議員の任期延長だけでなく、ほかに結論を得なければいけない論点、例えば、内閣への権限集中とか人権制限などにも包括的に係っていくべきものだというふうに考えます。

 憲法か法律かと新藤委員さんからも話がありましたが、法律で規定する場合は柔軟に、今回想定できないような、際限なく想定しては駄目だと思いますけれども、合理的な範囲内で想定できるようなものが新たにできた場合には柔軟に規定することができますが、先ほど申し上げたように、厳格な規定にするのであれば、憲法に規定をして、四つの項目、それに相当する事態みたいな感じで書けばいいのではないかというふうに思います。

 他方、手続の面では、緊急事態の発生が任期満了の場合、それから解散後の場合、任期満了後の場合と、三通りに分けて論じる必要があると思います。解散前という場合も想定できますが、よもや、甚大な緊急事態のときに総理大臣が解散するというようなことは多分ないだろうというふうに思いますので、割愛したいと思います。

 まず、任期満了前に発生した場合は、国会議員の三分の二の多数決を提案します。

 これに対して、内閣が決めるべきだという考え方もあり得るというふうに思います。確かに、憲法第五十四条二項において、「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」と規定されています。現行憲法が唯一用意している緊急事態発動の主体が明確に内閣になっているわけでありますが、我々としては、三権分立の中で内閣と国会との均衡を重視する観点から、また、国会の行政監視機能等を維持するという任期延長の趣旨からして、可能な限り国会で決めるのが望ましいというふうに考えます。

 新藤委員から、内閣の方が機動的に動けるというお話がありましたが、我が国は議院内閣制を採用していますので、総理大臣は内閣のトップであると同時に国会の方の最大会派のトップでもありますし、情報も常に行き交いしていますので、その点、国会で、少なくとも緊急事態宣言を決めること自体については、そんなに対応が遅くなるというふうに思いませんので、そのように考えております。

 次に、解散後に緊急事態が発生した場合、緊急集会を開くことが可能ですので、その緊急集会における三分の二の多数決により任期延長を決めることを提案します。

 任期満了後の場合については、参議院の三分の二の多数決により決めることを提案します。

 これらの事例においては、任期が切れている議員が対象になりますので、次の選挙により議員が選ばれるまでの間は、職務執行を継続する形を取るということが適当だというふうに思います。

 これは、議員の任期延長の目的をあらゆる場合において整合的に確保するためにはやむを得ないというふうに考えます。例えば、任期が切れる前に緊急事態が発生した場合は任期延長で対応するけれども、任期満了後の場合は緊急集会で十分だという、ややいびつな結論になってしまいます。

 また、前回指摘したように、第五十四条の規定では、緊急集会は、衆議院の解散中の時点から始まり、新たな国会開会後十日以内の間に効力を失うことを前提としています。長期にわたる緊急事態には対応できません。

 さらに、議員の任期延長は、例えば一年以内、あるいは緊急事態宣言が終了したと認められる期間と、期限を切るべきだというふうに考えます。というのも、この間は、やむを得ないといえども、主権者たる国民が自分たちの代表を選べないという異例な状態が続きますので、明文をもってこれに一定の制約を課すべきだというふうに思います。

 以上、あくまで我々有志の会の素案をお示ししましたが、今後については、本日の議論の行く末などを見極めながら、これまで表明された意見を選択肢として盛り込んだたたき台を事務局に作成していただき、これに基づいて審議した方が有益じゃないかと会長に御提案申し上げます。

 緊急条項の基本的な考え方は、危機管理の対応を円滑ならしめることだけでなく、この対応がぎりぎり立憲主義並びに民主的な統制にのっとってなされる義務を内閣に課すことです。議員の任期延長は、どのような事態になっても、できるだけ主権者である国民を代表する国会の立法並びに行政監視機能を維持するための制度として捉えるべきだと思います。

 ということは、オンライン審議の解釈拡大が認められ、この制度が創設されることになれば、国難といえども、内閣が超法規的な行為に及ぶ可能性をかなり低くすることにつながります。その意味で、思想的にかなり左の方に位置づけられる私や野党の一部などは、権力側にある与党以上にこれを強く求めるのが自然だと愚考しますので、必ずや結論を得られると確信いたします。

 以上です。

森会長 北神君の御提案につきましては、幹事会で協議をいたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札は戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

柴山委員 会長、意見表明の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 昨日実施されましたゼレンスキー・ウクライナ大統領のオンライン審議には、通常の国会のオンライン審議には慎重な会派の議員の方々にも御参加をいただく中で、非常に有意義な機会であったというように評価をしたいと思います。

 その場でゼレンスキー大統領が話されたことからも、私どもといたしましては、先ほど、想定外のことを議論するのはおかしいという御発言もありましたけれども、いかに私たちの今の常識では考えられないような事態が発生したときにしっかりとした立憲主義を貫徹するかということをこの場で議論をすることが必要だということを、改めて認識をさせたと思っております。

 先ほど、緊急事態条項を設けることが権力の濫用を伸長させるのではなくて、内容の不十分な緊急事態条項を設けることこそが危険だという御発言がありましたけれども、私も全く同感であります。

 例えば、さきのワイマール憲法の四十八条一項、これは、緊急時に広範な基本権の停止を伴う大統領緊急令を発することを可能としておりました。しかしながら、ナチス・ドイツの悲劇に学んだ近代憲法の数々においては、先ほど御紹介があったとおり、ほぼ全ての憲法例において緊急事態条項が定められ、その下で、いかに緊急時にあって通常の憲法秩序を逸脱しないような形で対処をするかということが定められております。

 そこで、これについてのデータを挙げた玉木委員に是非お尋ねをしたいんですけれども、そのような中で内容とされているのが、議会任期の延長あるいは解散の制限が多いということだったんですけれども、それに先立つ委員の御発言の中では、緊急政令についての定めも容認するというような御発言があったかと思います。

 しかし、先ほどの御紹介をいただいたデータでは、緊急政令が定められている憲法例というのは一〇%を切るということで、必ずしも割合としては高くないというたしか御説明だったかと思います。

 私ども自民党の改憲四項目の中においては、非常に限られた事態において、しかも、今回、ウクライナではキエフはまだ占拠をされていないわけですから国会は機能しておりましたけれども、国会が恐らく開催を一時的に必要な期間できないというような事態であれば、一時的な政令、そして事後的な国会での承認ということも可能とするような提案をさせていただいているわけですけれども、玉木委員も同じ認識でこの緊急政令ということについて容認するという趣旨なのかということを、まず冒頭お伺いしたいというように考えております。よろしくお願いいたします。

玉木委員 私どもも、政令の規定を設けるか設けないかということは大きな議論の一つだと思ったんですが、国会がいついかなるときもきちんと機能するということが確保されるのであれば、政令は要らないと思います。

 ただ、オンラインも含めてできるだけ開催ができるように、いろいろなことを解釈の変更も含めてやったとしてもなお、速やかに国会を開くいとまがないようなケースは想定されますから、今、柴山先生おっしゃったように、想定外をやはり概念して、それに対する備えは用意しておく必要があるだろうということで、政令も用意する。その代わり、事後的な国会の承認であるとか、事前事後の立法の関与、三権分立のバランスを崩さないような最低限のチェック・アンド・バランスをきちんと残すということとセットで考えていくことが必要だと思っています。

柴山委員 ありがとうございました。

 次に、立憲民主党の中川議員にお尋ねをしたいんですけれども、立憲民主党は、国会議員の任期延長については必ずしも必要ではなく、公職選挙法等の例えば繰延べ投票の利活用によって対応が可能だというようなお話だったかと思います。昨日の参議院の憲法審査会でもそのような論争があったかと思います。

 先ほど北側幹事からもお話があったとおり、繰延べ投票というものは部分的かつ一時的な対応ということを想定しており、全国規模の選挙、かつ、比例代表も含めた形での選挙というものには全く不適当であるというように考えておりますので、それについての御意見を是非お願いいたします。

森会長 中川君、簡潔にお願いします。

中川(正)委員 結論を出しているわけじゃなくて、そういう論点をしっかり議論をしていく必要があるということ、ここを強調していきたいというふうに思います。

柴山委員 以上です。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野でございます。

 今日は我々の認識は自由討議ということでありますから、同僚もそうですけれども、国民投票の話もさせていただきます。

 毎度申し上げていますが、附則四条で、国民投票法、現行については公平公正性が確保できないと疑義が呈されているわけですから、その問題が解決するまでは当然、憲法改正の発議はできない、民意がちゃんと反映される仕組みでないとできないというふうに理解しています。

 ですから、まず、国民投票法について議論をしっかり、論点整理をすべきですが、今日は緊急事態の話もあるので、そこに少しひっかけますと、インターネット、ウクライナを見ても分かるように、ネットの情報戦が今戦われています。それぞれ世論にどうやって働きかけるかということを、ネットを使って、SNSを使って行われているわけであります。

 今の国民投票法は、そういった事態は想定されていません。仮に憲法改正が発議されたとして、外国政府の干渉とかそういうものがあった場合にどうするのかということは、現実のものとして考えておかなければならないと思います。

 ですから、まずこうしたことについてしっかり検討するということで、会長にお願いしたいんですが、SNSやあるいはメディアを使ったフェイクニュースとかあるいは世論への働きかけを、各国でどのように、規制をしているのかいないのか、あるいはまた我が国としてどうやるべきかということについて、有識者を呼んでこの場で議論していただきたいということで、会長に提案させていただきたいと思います。

 それからまた、CM規制について、これも前回提案していますが、再度、民放連の意向を聞きたいということで、民放連の招致を求めさせていただきます。

 そして、大災害や侵略戦争などを想定して、その際に国家の運営をいかにすべきかということを平時から議論しておくことは当然のことながら必要でありますが、しかし、先ほど赤嶺先生もおっしゃっていましたが、コロナが起きたとか、ウクライナの侵略が起きたから、直ちに、だから憲法改正だということにはならないと思うんですよ。こういうときこそ、しっかり、今の日本の憲法秩序を頭に置きながら冷静な議論をしていくことが必要だと思います。乱暴に議論を進めることには反対です。

 ということで、ではどうすべきかということですが、まず、現行法制はどうなっているか、危機の際、何ができて何ができないのかということをやはりきちんと押さえておく必要があると思うんですよ。皆さん、余りそこも分かっていないところがあると思うんですね。その上で、足らざるところがあれば、外国の制度なども勉強しながら憲法の議論に移っていくということではないでしょうか。

 ですから、まず、有識者から現在の災害や有事の際の法制はどうなっているのかということを確認する、それから、海外の制度はどうなっているのか、憲法上書かれているのかいないのかも含めて、緊急事態について聴取をしていくことが必要だと思います。ここも会長に、こうした有識者からの意見の聴取を提案させていただきます。

 そして、いわゆる緊急事態の際、まず議会を動かすべきだというのが我々の立場であります。先週、北側幹事もおっしゃっていました、今日、新藤筆頭からもございましたけれども、ウクライナの議会は動いているんですね。今日のホームページを見ると、三月二十二日付、おととい付の法案が出ていて、これは翻訳が正確かどうかというのはありますが、ウクライナに対するロシア連邦の武力侵略によって引き起こされた損害賠償の国家登録に関する法案というのが、AIの日本語訳を見ると出てきます。いついかなるときも議会を動かすということが、これが民主主義のやはり基本であります。

 それから、平時から立法措置を行っていくことも必要です。先ほど来これも議論になっていますが、災害時については災害対策基本法を始め様々な立法がなされており、これで十分に基本的には対応できると思います。それから、武力攻撃などについてはいわゆる有事法制がありますが、これはどこまで機能するのかということを押さえておかなきゃいけないと思います。

 ということで、日本国憲法はいわゆる緊急事態を全く想定しなかったわけではないんですね。先週も申し上げましたけれども、憲法五十四条というのは参議院の緊急集会ですが、制定当時の経緯を見ると、いわゆる緊急事態を念頭に置いて日本側からそもそも提案されていたというふうに記録に残っています。

 以上のことから、現行法制は、改憲を前提としないで、緊急事態の法制を織り込んでいるというふうに理解できます。

 その上で、なお足らざるところはどこかということですが、定足数や議員任期の問題だと思います。

 定足数をどのように満たすかについては、先週、國重委員なんかもおっしゃっていましたが、オンライン審議を認めることで対応が可能でしょう。ネットがつながらないという議論もありますが、ウクライナはネットがつながっていますから、そういうシステムをつくっておくことが大事であります。

 議員任期については、選挙が行われることを前提とすべきですね、戦時中も行われていましたけれども。ただ、どうしても行えない場合は、緊急集会と繰延べ投票の組合せで考えるべきであります。

 ただ、論点としては、緊急集会は憲法の明文上、衆議院の解散時に限られていますから、これが任期満了時にも使えるかということは、先週、玉木委員もおっしゃっていましたけれども、有識者の意見を聞いておく必要がある、議論しておく必要があると思います。これも提案しておきます。

 それから、こうやって議会を動かせば、緊急政令は不要です。

 そして、最後に一点だけ。長期にわたり選挙ができない場合に議員任期を延長するということは、議員任期の延長について検討するということは、私は否定はしません。ただし、お手盛りと言われないように第三者がきちんと判定をする、例えば憲法裁判所とか最高裁判所とか、第三者をかませてきちんと議論する仕組みを考える必要があります。

 大事なことは、いついかなるときも国会を動かすことであり、きちんと民主的な統制が行われることであると思います。

 改正ありきではない、論憲の立場から申し上げます。

 以上です。

森会長 奥野君の御提案につきましては、幹事会で協議いたします。

國重委員 公明党の國重徹です。

 議論を深めるという観点で、野党筆頭の奥野幹事にお伺いしたいと思います。

 緊急事態における国会機能の維持について、参議院の緊急集会の制度が存在することを前提に議論すべきであるという、これまでの審査会における奥野筆頭の御主張、これについては私も異論はございません。

 その上で、国会機能の維持を考えるに当たっては、立法機能のみならず、行政監視機能を維持する観点も必要です。

 この点、参議院の緊急集会は、憲法五十四条二項で、内閣のみがこれを要求できるとし、国会法で、内閣は案件を示して緊急集会を求め、この案件が全て議決されたときには緊急集会は閉会する、そして、議員は内閣により示された案件に関連のあるものに限り議案を発議することができるとされています。

 このようなことを踏まえますと、特に行政監視機能の維持については、参議院の緊急集会だけで十分なのかどうか、また、先ほど奥野筆頭も少し触れられておりましたけれども、衆議院が長期間不在の場合、緊急集会の対応で足りるのか。私自身、今この問題についてまだ定見を持つに至っておりませんけれども、この点についての奥野筆頭の御見解をお伺いしたいと思います。

奥野(総)委員 解釈でどこまで認められるのか。先ほど解散時以外にもという話がありましたけれども、内閣の招集だけじゃなくて、議会側からの招集、国会議員からの招集ができるのかできないのかというのも、たしかそういう議論があったと思います。ですから、どこまで解釈で認めるのかということを、まずしっかり有識者も踏まえて議論をしておく必要があると思います。

 そこがきちんと議論された上で、議員任期の延長の話が初めて出てくるというふうに理解しています。

國重委員 立法機能のみならず、行政監視機能というのも極めて重要でありますので、この点についての議論も今後審査会で深めていくべきと考えます。

 以上です。

小野委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 まず、今週、これも余り事前に十分な時間で開催しますよというふうに告知されていたわけではなかったですが、今週も無事に憲法審査会が開かれたことを非常に私は喜ばしいことだと思っています。これはもう、毎週やりましょうというのを是非やっていただきたいというふうに思っております。

 そして、私は、皆様から先週今週、緊急事態条項についてのいろいろな御意見の表明があっておりますけれども、ただ、いろいろなところでもう何回も聞いているようなお話もお聞きしています。また、そうではなくて、先ほど玉木さんがおっしゃったように、世界中の憲法において一体緊急事態条項はどうなっているのかという、新たなデータの御披露なんかもあって、参考になった部分も当然あるんですけれども、私が一つ思うのは、今回はその中身についてお話しするんじゃなくて、この憲法審査会での議論のプロセスについて御提言をしていきたいというふうに思っております。

 私がこの憲法審査会、もちろん私も一年生議員なので初めてなんですけれども、そこで画期的だなと思ったのは、オンライン国会の是非についての議論において、しっかりと論点を設定して議論を行ったということでございます。

 しかし、オンライン国会の論点と比べて、緊急事態条項の論点というのは非常に多岐にわたっているというふうに思います。

 先ほど新藤幹事とそれから玉木委員との間でも、そもそも緊急事態宣言をどういうものとして捉えるのか、そしてそれを憲法上どのように規定するのかというところも、大きな違いがあると思います。そこには、奥野幹事がおっしゃったように、当然、想定外というものを含めるのか含めないのかという非常に難しい問題もあると思います。

 しかし、私は、今、ウクライナのように本当に厳しい事態が訪れていて、その中で政治、行政がどのように国家の存立を守るのか、あるいは国民の生命財産を守るというところについて、ぎりぎりの規定というのはやはり追求しなければいけないだろうというふうに思っています。

 私は、国会のオンライン出席のところで、実はいろいろと勉強していたところ、この間もちょっと申し上げたことなんですけれども、例えば日本の憲法の定足数についても、実はまだまだ我々はほかの国と比べても危機感が非常に乏しいんじゃないかということも思いました。

 例えば、イギリス系の憲法であれば、定足数というのは非常に少なくなっているんですね。例えば英国の場合には、分列表決という、並んでドアに入って表決をするような重要な法案を審議するときでも、定数が下院では六百五十あるところが、僅か定足数四十名ということになっていて、率にすれば六%台ということになっているんです。

 何でこういうことになっているのかなというと、やはり有事のことをちゃんと考えているというふうに私は思うんです。そういった有事のときでも、少ない人数でも、本当に、インフラが破壊されて、そして多くの議員が亡くなったというような事態があっても、イギリスの国を守るというような意思がある者が国会に集まって、そして国を守る、その制度をちゃんと憲法上用意しているということだと思います。

 そして、その反対に、ドイツやフランスなどの大陸法系の国については、これは過半数の定足数というものを用意していますが、しかし、その代わり、議院規則によって、総議員の絶対多数が議事堂内にいることの確認の要求がない限り定足数を充足するというような、みなし規定があるんですね。つまり、有事が起こった場合に、何とか、どういう厳しい状態であっても議会を開ける。

 そしてそれは、私は、オンライン国会の議論をしているときに、議論しながらすごく疑問に思っていたんですが、オンラインがあればその危機を乗り越えられるというのは、私は違うというふうに思います。

 それは、ネットワークというのは、今我々が日々打合せでZoomを使っていてもやはり音が飛んだり、そして、サイバー攻撃によってダウンした場合にはオンライン議会というのは通用しないということでございますので、やはりそういった面でしっかりと危機管理法制を、それぞれの論点、例えば先ほどの緊急事態の状態をどういうものと定義するのか、その認定プロセス、誰が、いつ、どのようにやるのかというプロセス、そして今度は緊急事態の中身、どういったことが許されるのか、そして国会がそれに対してどのようなチェックを果たしていくのかというように、非常に多岐にわたる、これはオンライン国会とは違って相当議論しなければいけないことがあります。

 私は、今回の国会の会期中で、どのような論点に対してどのようなスケジュールを組んで議論をしていくのか、そして、奥野幹事始め、この緊急事態宣言の議論の入口に対してももちろん疑義を持っていらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、ただ、それも含めてやはり緊急事態の議論の中でしっかりと位置づけていくべきだというふうに思っています。

 是非、これはオンライン国会の、憲法五十六条の「出席」の概念と違って、もっと多岐にわたりますので、そのスケジュール感をしっかり組み立てて、そして、今週、できれば来週どうするのかということも含めてお知らせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

下村委員 発言の機会、感謝いたします。

 比較憲法学者の西修先生の調査によれば、一九九〇年以降、百四か国で新たに憲法が制定されましたが、百四か国全ての国で何らかの緊急事態条項が規定されているということが明らかになっています。

 しかし、日本の場合は、憲法に規定される緊急対応は参議院の緊急集会のみでありまして、大災害や感染症に対する観点ということから不十分であります。

 一般的に緊急事態条項には、戦争、内乱・テロ、大災害が想定されております。自民党がまとめたイメージ案では大災害に限定をしておりましたが、何人かの方々が御発言を既にされているように、ウクライナ問題等を考えると、外国からの武力攻撃を受けた場合の緊急対応や、あるいは、新型コロナウイルス感染症が蔓延した中で、このような感染症対策に対してどうするかということをしっかりと議論をしていかなければならないのではないかと思います。

 先ほど柴山議員も言及されましたが、一部反対意見として、ナチス・ドイツの全権委任法とよく混合、意図的に混合されているのかもしれませんが、意見がありますが、緊急時において、国会が機能していないときに、あらかじめ定めた法律に基づき一時的に政府に立法権の一部を委ねるというものであり、一般的に立法権を政府に与えるというような全権委任法とは全く違うわけでございます。

 さらに、このようなことを検討するに当たっては、今後、日本を取り巻く環境が更に厳しくなるかもしれないという状況があるからであります。今後三十年以内で、南海トラフ地震、首都直下型地震、あるいは千島海溝、日本海溝地震等、それぞれ発生確率が七〇%から八〇%と予想されており、東日本大震災以上の大きな地震、津波災害が起きる可能性があると専門家が発言をしております。

 東日本の例によっても、この大震災以降、国会では関連法が七十一件、政令は百五十九件成立をしております。このようなことを考えると、首都圏を震源とした大規模地震が発生することを仮定した議論をしていくことは当然必要なことであるというふうに思います。

 特に、今回、この憲法審において緊急時におけるオンライン審議が提案された、憲法五十六条の解釈において適切な判断であったというふうに思います。

 憲法に緊急事態条項がない、これを放置するということは、私は、政治の不作為ということになるのではないかと思います。緊急事態条項は、緊急時においても立憲主義を貫いていこうとするものであり、法の支配を緊急時にも機能させようとするものであります。憲法に緊急時を想定した規定を設けることで、想定外の範囲を可能な限り少なくすることができる。超法規的措置による緊急事態対応が、もしできていなければ行われてしまうということになったとしたら、法治国家としての立憲主義の原則が崩壊してしまうことになってしまいます。

 先ほど、新藤幹事から、今後の憲法審について、進め方についての提案がありました。また、ほかの委員からもありました。

 この週一回の平場の議論だけでは、それぞれいろいろな立場の人がおられるでしょうけれども、しかし、深掘り議論はやはりできない、いつまでも繰り返しの議論、意見表明だけで終わってしまうのではないかということを私自身も危惧をしております。

 この平場だけでなく、例えばテーマ別に行う、国民投票法等も含めてテーマ別に行う、あるいは幹事懇等を活用するという多様な形の中で、是非、今国会において深掘りな議論をしながら、そして、オンライン審議の提案とともに、憲法審としても、議論だけでなく具体的なそれぞれの提案ができるような今後の憲法審の在り方について、幹事会で議論をして、進めていただきたいと思います。

 以上です。

新垣委員 会長、ありがとうございます。

 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 大規模災害を理由とした緊急事態条項の創設や、議員任期の特例延長について意見を申し上げたいと思います。

 社民党は、現在の我が国の情勢において、緊急事態条項の創設に具体的な立法事実は存在しないと考えております。現行法では、災害対策基本法、災害援助法、大規模地震対策特措法、原子力災害特措法、警察法、自衛隊法等によって、既に自然災害を想定し、一定の要件で国への権力の集中と被災地の財産権等の制限などが認められており、災害関連の法制度は十分に整備されていると思います。

 二〇一五年に日弁連が岩手、宮城、福島各県内で実施した東日本大震災被災自治体首長からのヒアリングやアンケート結果では、原則として市町村に主導的な権限を与え、国は後方支援をしてほしいとの回答が九二%に達しており、被災市町村が国への権力集中を求めていないことが明らかになっております。また、憲法が災害対策の障害にならなかったという回答も九六%に達しており、被災市町村は災害を理由にした憲法改正の必要性を認めておりません。

 先週の本審査会で、関東大震災の際、当時の政府は明治憲法下で許された緊急勅令十数本を出して国難を乗り切ったとの御意見がございました。しかし、関東大震災では、大日本帝国憲法第八条に基づく緊急勅令に基づき、軍隊や権限を集中する戒厳令の一部が施行される中で、適用範囲が拡大され、多数の中国人や朝鮮人が虐殺された事実を忘れてはなりません。

 緊急事態条項がそもそも立憲主義を停止するものであって、濫用の危険性が極めて大きいことは、ドイツにおけるワイマール憲法の国家緊急権を活用したヒトラー独裁政権の樹立、フランスにおけるアルジェリア危機を名目とした緊急権発動に基づく人権侵害や出版規制による表現の自由の侵害を見れば明らかであります。

 それゆえ、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの四か国のうち、災害やテロを理由に憲法上の国家緊急権を定めているのはドイツだけで、他の三か国は法律で対処しています。コロナ対策でも、フランスやドイツは、憲法の緊急事態条項は危険だとして、法律で対応しております。

 次に、議員任期の特例延長に関する憲法改正論議について申し上げます。

 衆議院の任期満了後に大規模な自然災害などが発生した場合ですが、憲法学者の長谷部恭男東大名誉教授や土井真一京大教授は、憲法第五十四条二項を類推適用して、参議院の緊急集会は開催できると主張しております。その理由について、長谷部先生は、衆議院議員が存在しない場合で発生した緊急事態に対処するのが緊急集会の目的であるとし、土井先生は、衆議院が存在しない状況で緊急集会を認めなければ、内閣が緊急事態の法理に依拠するなどして単独で必要な措置を講じる事態を招きかねないなどと述べられております。

 また、飯島滋明名古屋学院大学教授は、憲法五十四条に定める衆議院の解散というのは限定的列挙ではなく例示的列挙であり、任期満了の場合でも参議院の緊急集会は開催できるとしております。飯島先生は、憲法に明記されたものしか認めないのであれば、衆議院の解散も憲法六十九条の場合にしか認められず、同七条三号は六十九条解散のための助言と承認にならざるを得ないとし、その上で、七条解散が認められるのであれば、参議院の緊急集会も限定的に解する必要はなく、合理的必要性があれば衆議院の解散の場合に限定されないはずであると主張しております。

 なお、参議院の緊急集会は開催できないという憲法学説もございますが、それは、衆議院の任期満了は期日が明らかであるため、当該期日までに必要な措置を講ずることが法律上可能だという主張です。公職選挙法第三十一条一項が衆議院の任期満了前の選挙を義務づけるものとなっている以上、憲法改正で四年任期の延長特例を可能にすることよりも、四年の任期内に確実に衆議院選挙が実施されるよう、公選法第三十一条を改正することを優先すべきだと考えます。

 そもそも、任期満了後の総選挙の事例も、戦後、一九七六年の三木内閣の一例しかありません。実際に起こっていない、また可能性が低い事例を想定して憲法改正という主張をするのではなく、今まさに国難な状況を生じているコロナへの対策や、頻発する大規模地震被害への対策にこそ政治は全力を注ぐべきであるということを主張して、意見とさせていただきます。

森会長 予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応を決定いたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十分散会


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