衆議院

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第8号 令和4年4月7日(木曜日)

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令和四年四月七日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      石橋林太郎君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    尾崎 正直君

      尾身 朝子君    越智 隆雄君

      大串 正樹君    國場幸之助君

      下村 博文君    中西 健治君

      西村 康稔君    船田  元君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      新垣 邦男君    梅谷  守君

      近藤 昭一君    中川 正春君

      野田 佳彦君    太  栄志君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    足立 康史君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      河西 宏一君    國重  徹君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      玉木雄一郎君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     尾身 朝子君

  國場幸之助君     石橋林太郎君

  山田 賢司君     尾崎 正直君

  櫻井  周君     梅谷  守君

  中野 洋昌君     河西 宏一君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     國場幸之助君

  尾崎 正直君     山田 賢司君

  尾身 朝子君     稲田 朋美君

  梅谷  守君     櫻井  周君

  河西 宏一君     中野 洋昌君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(特に、緊急事態条項及び国民投票の論点について))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、緊急事態条項及び国民投票の論点について討議を行います。

 この討議につきましては、先日の討議で発言ができなかった委員もいることから、幹事会の協議に基づき、まず、各委員に自由に発言していただき、その後、各会派一名ずつ小会派順に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札は戻していただくようにお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 本審査会も、ほぼ毎週開催されまして、テーマを絞って集中的に審議ができるようになりました。まず、国会審議のオンライン化についても一定の方向性を示せた意義は大変大きいと存じます。また、選挙の繰延べ、議員任期の延長についての必要性もおおむね認識が共有できつつあるのではないかと存じます。

 そこで、本日は、緊急政令の必要性について所見を述べたいと存じます。

 緊急政令を設けるというと、私権制限、個人の権利を制限する統制的な意味合いで受け取られることがありますが、実は、私権制限自体は憲法の問題ではなく、法律の問題だと考えております。国民の権利を制限し、義務を課すのは法律であり、憲法はむしろ、その法律を制定し運用する国会や内閣など、国家の統治機構に権限を付与したり制限をする、そして、その立法や行政が正しく行われているか司法が判断するよりどころとなるのが憲法であると考えます。

 実際に、災害対策基本法や様々な法律で私権制限に関する規定が定められております。立入禁止や退去命令、土地や物資の収用、工作物や障害物の除去、従事命令や協力命令、物価統制や金銭債務の支払い猶予等々。

 では、緊急事態条項を憲法に設ける意義は何か。私は、緊急事態下における統治機構の機能の維持にあると考えております。平時においてできることが、大災害や感染症蔓延あるいは武力攻撃を受けるなど有事において、通常の手続では実施できない場合においてどのような手続を取るのか、これを憲法にあらかじめ定めておく必要があるのではないかと考えております。選挙の繰延べであったりオンラインによる審議であったりというものは、有事における立法機能の維持の一つだと考えております。

 緊急政令を設ける意義については、私権を制限するためということではなくて、国会を召集して、会議を開き議決をするといういとまがないときに、まさに緊急かつ迅速に法令を制定する必要がある場合にどうするのかということが本質だと考えております。

 緊急事態だから何でもやってよいということではなくて、緊急事態において迅速に対応するために、例えば、行政府にどこまでの権限を付与するのか、そして、立法府として事前、事後にどうチェックするのか、法律で定めるべきことは定めておくことができますが、憲法でなければ定められないことは何か、これを議論し、整理した上で、あらかじめ定めておく必要があると考えております。

 もう一つ、財産権の制限に伴う補償についても整理が必要だと考えております。

 財産権の制限も、公共の福祉に沿うようにということで法律で定めることはできますが、例えば、憲法二十九条三項、正当な補償の意義についても整理が必要だと思います。平時において経済的価値を算定して収用するなどの正当な補償と、有事において生命身体の自由を優先させる緊急の事態における経済的価値の補償、こういったものについても、緊急事態を想定して整理をしていく必要があると思います。

 こういったことについて、是非御議論をしていただければと思います。

 以上です。

中川(正)委員 今日は、ロシアのウクライナ侵攻から話を進めていきたいというふうに思います。

 ウクライナ情勢がどのような展開となっていくのか、予断を許さないということであります。人道的見地から、また、幾多の悲惨な戦争や国内紛争を繰り返してきた人類の歴史の教訓から見ても、ロシアのプーチン大統領という為政者の暴挙、そしてこれを許しているロシアの政治状況、これを世界は断じて見過ごすことはできません。

 日本国内でも、我が身に置き換えて、安全保障上の幾つかの課題が議論をされております。いわく、台湾有事を想定する必要があるのではないか、あるいは北朝鮮のミサイルと核の脅威にどう備えていくか等々であります。こうした議論に呼応するような形で、自衛隊の他国軍隊との共同演習が進展をし、敵基地攻撃能力の是非や核共有について、その言葉の定義を顧みずに軽々に議論される現状に私は危惧を覚えております。

 アメリカが一時代前のパクス・アメリカーナからその力が縮小し始めているという指摘がある中で、日本の安全保障戦略を見直していく議論は、私は必要だとは思います。しかし、軍備拡張論だけで近視眼的に結論を導く議論は、周辺国との関係から見ても、日本の立場を危ういものにするという指摘もあります。最小限度の必要な軍事力に加え、経済力、外交力のトータルな国力をベースに武力紛争を避ける国家の意思をつくっていくこと、これが大切なことは論をまちません。

 しかるに、それだけでは実は駄目なのです。国家リスクを最小化するためにも、もう一方の議論、これは、日本で為政者による権力の暴走が行われようとするとき、この我が日本でです、私たちはそれに立ち向かうことができるのか。仮に、武力によって他国の主権を侵すような為政者が選出されたとしても、憲法によってそれを阻止できる仕組みを国民の決意と総意でつくっておくということが必要だということであります。

 これが、今この局面で日本の国民世論に喚起されなければならないもう一方の課題だというふうに思うのです。この憲法審査会では、改めてこの観点からの議論を求めていきたいというふうに思います。

 この憲法審査会における最近の議論では、特に緊急事態条項に関わる発言が多くありました。緊急事態の四つの類型の中でも、戦争やテロ、騒乱を想定した対応として、誰もが描きやすい緊急有事への対応のイメージは権力の集中であります。他国の脅威に遭遇したときに、権力の集中をもってそれにあらがう枠組みをつくり、強いリーダーが国を引っ張るということであります。

 もし緊急事態条項の議論をこのようなことだけを前提に進めようということであれば、私たちは賛成することができません。今、日本にとって大事なことは、ここで立ち止まって、世界各地の紛争の現実をもう一度違った角度から確かめる必要があると考えるからであります。

 問題は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を招くこととなった要因、ロシアの為政者の権力の暴走なのであります。加えて、ウクライナへの軍事侵攻を正当防衛だと主張しているロシアのプーチン大統領も、現職の国会議員もまた、ロシア国民による民主的な選挙で選ばれておりまして、ソ連崩壊後のロシアは、新しいロシア憲法の下で形の上では民主的な運営がなされていたはずであったということは、今後、この緊急事態条項の議論を深めていく上で我々の重要な論点になるべきであります。

 日本も過去に、緊急時であることを理由に、憲法や法律が為政者の行動を正当化するために使われてしまったことがありました。だからこそ、平時において、歴史を教訓とした憲法論議が大事なことだというふうに思うのです。為政者の解釈によって無制限に権力が拡大された過去に学べば、緊急事態条項は、逆にその権力を縛り、暴走を防ぐために定める条項であることを再確認すべきであります。

 権力行使の限界と運用プロセスをあらかじめ定めて権力の暴走を防ぐ、この原則を、この審査会が緊急事態を議論するときの共通した基本理念として確認をしておく必要があると思います。その共通認識の上で緊急事態への対応を考えていけば、日本憲法下では、今、その大半が実は憲法でなく法律で既に規定され運用されているということも、これまでの議論で確認をされたことだと認識をしております。これも申し添えておきたいというふうに思います。

 最後にもう一言。国民投票法のコマーシャル規制やインターネット規制などの課題を早く解決しようではありませんか。附則として積み残され、やると約束したことは、棚上げをしてはいけません。ここで信頼が崩れると、審査会の運営そのものが混乱することになってまいります。大きな心で新藤筆頭には対応していただくことを期待申し上げたいというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。

吉田(宣)委員 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 公明党の吉田宣弘です。

 では、発言に入ります。

 これまで憲法審査会で行われた議論では、憲法五十六条一項の「出席」という文言の概念について議論が深まり、定足数を満たせないような緊急事態におけるオンライン国会が憲法改正によらず実施可能であるとの整理が行われました。そして、先週までの憲法審査会では、緊急事態における国会議員の任期延長等について多くの意見が示されたと承知しております。

 オンライン国会も国会議員の任期延長等も緊急事態における国会機能の維持という点で共通ですが、後者については、例えば衆議院議員の場合、憲法四十五条に任期が規定されていて、任期延長について規定がないため、衆議院議員の任期延長を実現するためには、憲法を改正するしかすべがありません。憲法が任期延長について規定を置かなかった趣旨も含めて、この課題における議論が整理されなければならないと存じます。

 さて、憲法を論じるためには、歴史的変遷を確認することも重要であると思います。憲法は国家統治の根本法でありますが、この統治形態の変遷を大ざっぱにですが歴史的にたどれば、専制君主制、立憲君主制、立憲民主制と変遷してきたと存じます。

 専制君主制は、国家君主に主権があり、人による支配の典型です。立憲君主制は、主権は国家君主にありますが、憲法の支配に従う統治形態で、法の支配が取り入れられていますが、民主主義ではありません。そして、近代革命を経て主権が国民に移ると、憲法が民主化し、立憲民主制が始まりました。日本も現行憲法でこの立憲民主制を採用していると承知しています。

 この立憲民主制は、国家権力は無制約に人権を制約してはいけないという立憲主義はもとより、民主主義による結論でも人権を無制約に制約することを許さない制度です。ここにこそ、立憲民主制、すなわち立憲民主主義の究極の目的が存在すると私は理解しています。

 人権保障、とりわけ少数者の人権擁護の点に立憲民主制を採用した現行憲法の究極の価値があるのであれば、憲法審査会で議論される各論点又は議論の順序を考える際にも、この点を意識して行うことができないだろうかと考える次第です。

 以上述べてきたように、民主制の過程を経た結論でも少数者の人権を無制約に制約できませんが、仮にそのような事態が起きたとしても、民主制の機能が維持されていれば、民主制の過程で修正は可能でありますし、もとより、事前に少数意見へ配慮するという謙抑性も期待できます。

 そして、国会機能の維持とは、まさに民主的統制の維持であり、憲法保障の観点からも重要になってきます。そして、これまで憲法審査会でテーマとなってきた国会機能の維持の観点から議論を継続することは合理的ではないでしょうか。

 これに対し、内閣等への権限の集中と人権の制限は、民主的統制や立憲主義と距離を置く課題のように一面的には見えます。もっとも、国家緊急権に内在するパラドックスを考えれば、一面的に捉えるだけでは全く不十分であることは承知しています。しかし、パラドキシカルな課題に対する考察と議論は困難を極めることが予想されます。

 後々、困難な課題についても議論に踏み込んでいかなければなりませんが、あくまで私の感覚的な意見ですが、議論が比較的整理しやすいと推察される国会議員の任期延長等の課題について議論を進めるべきであると考えます。

 さて、国会議員の任期延長等を考える場合、問題になるのは、なぜ現行憲法は国会議員の任期延長等について規定を置いていないのか。このテーマは、参議院の緊急集会との関連で整理されなければならないと存じます。憲法規定から緊急集会の射程が整理されなければなりません。

 次に、国会議員の任期延長等については、まず要件、これは、緊急事態発生時期、緊急事態の内容、そしてその程度を整理しながら議論が行われる必要があると存じます。

 次に、手続、この点は、国会議員は国民の選挙により選ばれる存在であることからして、国民の参政権と価値的に近い手続を取られなければならないと考えます。

 そして、その効果、これは、発議者である国会の構成員である議員のお手盛りとならないような合理的な任期で制限されなければならないと存じます。

 以上、雑駁でございますが、私からの意見表明とさせていただきます。

三木委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の三木圭恵です。

 本日も無事、憲法審査会が開催されました。筆頭幹事、各幹事の御努力に敬意を表します。

 しかしながら、毎回同じことをずっと議論をして進歩がないのはどうかなというふうに考えております。議員任期についても、各党各委員から様々な御意見が開示されております。その中で二つの御意見があるかのように思いますが、この際、憲法審査会として、議員の任期延長が必要なのか否なのか、そこら辺の方向性を示していただければと考えます。その方向性を示すために全会一致が無理なのであれば、多数決を行うことも視野に入れて会を進めていっていただきたいということを要望させていただきます。

 まずは、議員の任期延長について。

 参議院の緊急集会で事足りるという考えと、やはり衆議院と参議院との二院制の理念に基づき議員の任期を延長すべきという考えの、どちらの方向に行くのかを決めていただきたく存じます。

 我が党は、後ほど足立委員からもありますように、衆議院の任期満了時に緊急事態宣言が発せられた場合には議員の任期延長、また、衆議院が解散された後に宣言が発せられた場合、議員の身分回復、解散の禁止を憲法上規定する緊急事態条項を制定することに賛成でございます。また、つけ加えて、緊急事態宣言下での憲法改正の禁止を盛り込むべきと考えています。

 次に、現実的な各論に入らせていただきます。

 もし仮に、参議院の緊急集会で対応した場合、空白期間が最長でも七十日であり、選挙ができない期間が長期間にわたる場合に対処ができないと考えます。天災などにより一部の地域が実施不可能な場合に繰延べ投票した場合、衆議院議員は被災地にいない、比例区全体の当選者が確定しない、他地域の結果を知った後の投票は選挙の公平性を大きく損なう等々、問題が多いことも指摘されています。

 また、任期満了前に必ず解散して選挙を実施すればよいというのは、選挙の公平性を考えると、解散から一か月は必要であろうとの認識から、任期が残っているのに、わざわざ参議院の緊急集会を成立させるためだけに毎回衆議院を解散させ、任期満了前に選挙を実施するのだとなれば、これも本末転倒なやり方であると言わざるを得ません。

 先週の憲法審査会でも、奥野幹事に御質問させていただいたときに引用させていただきました。参議院のホームページの引用です。我が国は、二院制の理念に基づいて運営されています。二院制の利点としては、一、国民の様々な意見をできるだけ広く反映させることができる、二、一つの議院の決めたことをほかの議院が更に検討することによって審議を慎重に行える、三、他の議院の行き過ぎを抑えたり、抑制、足りないところを補ったり、補完できることなどがあります。

 もし仮に衆参同日選挙となった場合、その後、緊急事態が宣言された場合、緊急集会に対応できる参議院議員は通常の二分の一であり、時間軸で考えると、一番民意に遠い国会議員となります。衆議院が四百六十五名、参議院が二百四十五名、通常であれば七百十名の議員がいるのに、衆参同日選挙になった場合は、残っている参議院議員は百二十名程度と考えれば、いかに少ない議員数であるかは論をまたないと思います。

 緊急事態条項に反対される委員の御意見を聞いていると、多くが、権限の集中は危険とよく言われます。そうであれば、あらかじめ権限が通常の議員数の六分の一になる可能性があることは、一部の議員に権限が集中するということにはならないでしょうか。

 こういったことを考えれば、より多くの議員の意見を反映できる仕組みを今のうちにつくっておくことが、民主主義的統制を取るという態度につながると考えます。

 そして、議員の任期を延長される場合、衆議院の解散禁止を盛り込むとすれば、不信任決議の禁止はどうするのか。

 また、閉会中時の自動召集についてです。これもどうするのか考えていかなければならないと思います。国会の召集は天皇陛下の国事行為であることから、閉会時に召集する場合、内閣の助言、承認なしに、天皇陛下の国事行為のみで国会を召集するのか、それとも、内閣の助言、承認もなしで、天皇陛下の国事行為もなしとして、緊急時の自動集会とするのか等々、整理していかなければならない項目が多々あると思います。

 そういったことを含めると、一日も早く憲法審査会での議論を前に進め、実際に起こらないことを祈っておりますけれども、最近、地震も頻発しております。日本に緊急事態が起きたときには、万全の体制で、国会の機能を維持しながら事に当たっていかなければならないと考えます。

 また、今回、外国の緊急事態と議員任期の関係などを法制局の方に整理して報告をしてもらいましたが、緊急事態時の議員任期延長規定を設けている国が多く見受けられました。緊急事態の議員任期延長規定を設けていない国には、そもそも議員の任期の定め方において、新しい議員が活動できる前日まで前議員が職務を行うという規定になっているので、緊急事態条項には議員の任期を書き込む必要がないというケースもあると知りました。

 各国の憲法の調査研究も行いながら、緊急事態時に国会の機能をいかに維持し、少しでもよい状況をつくり出せるように努力をしていくことを我が党として申し上げまして、意見表明といたします。

 ありがとうございます。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようですが、予定の時間を経過いたしましたので、これにて委員各位による発言は終了といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は十分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね十分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 本日は、緊急事態条項の全体像について、我々の考え方をまとめてみました。

 これまでは、緊急事態に対応するために、我が国としては、参議院の緊急集会の規定により、国会の機能を維持し、緊急事態の宣言、そして権限集中などについては法律で対応してきたところであります。

 問題は、この対応で十分かどうかであります。

 まず、緊急集会につきましては、先ほども発言がありましたが、緊急事態において国会機能を維持する制度としては不十分だと考えます。衆議院の解散中、かつ二か月程度の極めて限定された場合にしか機能しない。また、憲法が、両議院をもって初めて国会が構成されることを規定しています。緊急事態が長引けば長引くほど、憲法の趣旨から遠ざかってしまいます。

 逆に、こうしたことから、緊急集会は、我々がここで議論をしている重大な国家緊急事態ではなく、やはり平時での対応を想定していると理解した方が適当だと思います。また、緊急事態条項を憲法上規定することは、これが濫用されるおそれがあるという批判もあります。

 しかしながら、国会議員の任期延長については、これは内閣の権限行使云々というよりは、国会の機能を確保することに主眼があります。すなわち、行政権の濫用につながるどころか、むしろ緊急時にもこれを監視できることを目指しているわけであります。

 もっと言えば、我々の案では、緊急事態が発生した際には、公職選挙法上の繰延べ投票、参議院の緊急集会という既存の制度を優先的に活用することを前提に、これでも対応できない場合のためにのみ任期延長に踏み切るべきだと提案しています。

 次に、緊急事態の範囲について、全国的な感染流行、大規模な自然災害、戦争、内乱などとすべきです。

 また、要件としては、国政選挙の実施が不可能な場合であって、国会の立法機能及び行政監視機能が長期にわたり維持できないおそれがあり、かつ、繰延べ投票、緊急集会で対応することが困難なときに限定する必要があると考えます。

 手続面では、緊急事態において、内閣の権力濫用を防止する観点を重視し、国会が決定する方が望ましいと考えます。

 この際、緊急事態の発生が、任期満了前の場合、任期満了後の場合、解散後の場合と、分けて論じる必要があります。なお、解散前という場合も想定できますが、よもや重大な緊急事態の際に解散をする総理はいないだろうと思われますので、解散の禁止については、こだわりませんが、基本的に不必要だと思います。

 具体的には、任期満了前に発生した場合には、厳格に、国会議員の三分の二の特別多数決による。任期満了後の場合は、参議院の三分の二の特別多数決とし、次の選挙により議員が選ばれるまでの間は職務執行を継続することとする。解散後の場合は、緊急集会を開き、その三分の二の特別多数決により決め、次の選挙により議員が選ばれるまでの間は職務執行を継続することとする。

 全ての事例について、任期延長の期間は、一年以内あるいは緊急事態が終了したと認める期間と、期限を切るべきです。

 また、議員の任期を議員自ら決めるというお手盛りの指摘もありますので、裁判所の一定の関与はあってもいいと考えます。

 他方、権限集中につきましては、主に立法府と行政府との間の権限配分の在り方を緊急時に限って改めるという議論です。

 具体的には、国会に与えられている法律制定の権限と予算の議決権について、緊急時には内閣が国会に代わって行使することにしてはどうかという提案がなされています。特に緊急政令については、現在は個別具体的な措置が個別法に定められているのみですが、より包括的、一般的な緊急政令規定を憲法に設けるべきとの議論もあります。人権制限、財政支出も、これを前提にした議論です。

 これまでのオンライン国会や国会議員の任期延長は国会機能の維持のためのものでしたが、これらの論点は、同じ緊急事態といっても、むしろ国会機能が維持できない事態を想定するものであり、おのずと議論の次元が異なってきます。こうしたことを踏まえると、権力濫用の指摘も、この論点については一定受け止める必要があり、やはり、権限集中、人権制限、財政支出については、もう少し検討を深める必要があるのではないかと考えます。

 その検討の仕方としましては、まずは、現行の緊急事態関連の法律を一通り洗い出すことを御提案申し上げます。その際、検討すべきは、本来想定されるべき緊急事態は現行の法律で網羅できているのかどうか。

 二つ目には、もし足りないということであれば、これを補うための手当ては法律でするのか、それとも憲法でするのか。

 私の問題意識は、そもそも、法律で対応する場合に求められるような個々の緊急事態の状況を、細部にわたって、前もってあらゆる緊急事態を本当に想定し得るのか。実際、我が国は、事が起きてから、その都度個別具体的な情勢に応じて法律で対応してきたからこそ、緊急政令も個別具体的なものに限定できたのであります。しかし、今後、必ずしもそのような法律の審議の余裕があるかどうか、保証の限りではありません。これは、法律論というよりは、むしろ危機管理の原則の問題であります。

 ということから、更に検討すべき事項として、三つ目には、既存の法律で想定されない事態が発生し、かつ国会が機能しない場合、内閣が事実上白紙委任を受ける状態を回避するためには、憲法上、包括的な権限と、これを制限する手続を規定すべきかどうか。

 四つ目には、あるいは、憲法に、包括的な権限ではなく、事態の緊急性に応じて段階的に相応の権限や手続を設けるべきかどうかが挙げられると考えます。

 いずれにせよ、私は決して議論を長引かせる意図はありませんが、ここはやはり、専門家の意見なども参考にした上で、丁寧に検討すべきだと考えます。

 根底にあるのは、この緊急事態条項というのは、ややもすれば相対立する二つの要請を均衡させる難しい作業だという認識です。

 一つは、危機管理の性質上、国民の生命、財産、権利を守るために、逆説的に権力を集中させなければならないという現実の要請。もう一つは、これまた逆説的でありますが、だからこそ、立憲主義の観点からこれを最大限制限しなければいけないという理念的な要請。この二つの要請、二つの逆説をてんびんにかけながら均衡点を探るのにはもう少し時間がかかると、これまでの議論を通して再認識するに至ったわけであります。

 したがって、今後の審議の順序としては、まずは、国会議員の任期延長並びにこれを発動する際の緊急事態の要件と手続について、憲法の専門家等の意見も聴取した上で、一応の結論を得るべきだと考えます。

 これをもって私の発言といたします。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 この間の緊急事態条項に関する議論ではっきりしたことは、その目的が、国会の権能を奪い、国民の基本的人権を制限することにあるということです。この間の審査会では、いついかなるときも国会の機能を維持することが重要だとの理由で、緊急事態条項が必要だという発言が各党から相次ぎました。

 ところが、今行われている議論は、緊急時において国会が壊滅したときや国会による法律の制定を待ついとまがないときなどと仮定をして、最終的には内閣の緊急政令や財政処分を認めるべきだというものであります。緊急時を理由に内閣への権限の集中を認めれば、それがアリの一穴になり、権力の濫用につながるおそれがあるというのが歴史の教訓です。

 さらに、前回、新藤幹事は、緊急時には平時と違う人権制限の規定が必要だと述べられました。極めて重大な発言であります。二〇一二年の自民党改憲草案は、緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、国その他公の機関の指示に従わなければならないとしています。結局、この改憲案を推し進めたいということではありませんか。内閣が国民の権利を大幅に制限し、停止することを可能にするなど、絶対に認められません。

 国会議員の任期延長についても、国民の参政権を脅かすと同時に、国民の支持を失った政府が政権の維持、延命のために利用するという本質的な危険を持つものです。そもそも、衆議院の解散後、長期間にわたって選挙ができない場合など、想定外の上に想定外のことを仮定して議論すること自体が問題であります。

 戦後七十七年間、災害などで長期間にわたり国政選挙ができなかったという事態は一度もありませんでした。参議院の緊急集会が招集されたのも、吉田内閣の下で、いわゆるばかやろう解散などの解散権の濫用により行われた、一九五二年と五三年の総選挙のときの二回だけです。緊急集会を用いるということ自体が極めて異例のことであります。

 想定外を理由に憲法に例外を設ければ必ず濫用の危険があるというのは、多くの専門家の意見であります。極端な事例を出して議論をすると間違う危険が強いという、高橋参考人の指摘を思い起こすべきです。

 さらに、今、緊急時には解散後に身分を失った衆議院議員の地位を回復すべきだという議論まで出ております。国民から選ばれておらず、国民の代表でない者が、一体どうして権力を行使できるというのでしょうか。諸外国でも、そのような規定を置いている憲法はほとんどありません。自らの保身のための議論でしかなく、論外であります。

 前回、前々回の議論で、世界の憲法の多くは緊急事態条項を持っており、日本国憲法は制定時から時が止まっているという発言がありました。

 法制局の説明でもあったように、各国の憲法は、それぞれの歴史的、社会的な背景に基づいて作られています。例えばフランス憲法は、フランス革命時における周辺国からの攻撃やナチス・ドイツによる侵略という経験を反映しています。ドイツの基本法は、ヒトラーによる独裁を生み出したことへの反省と、諸国家の連合体としてつくられた連邦国家だということが背景にあるということでした。

 日本国憲法は、かつて我が国が侵略戦争に突き進み、二千万人以上のアジア諸国民と三百万人の日本国民を犠牲にしたことへの痛苦の反省から、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意する、これを出発点として制定されました。

 戦前、明治憲法下で、政府は、国会で廃案になった治安維持法の重罰化法案を緊急勅令を濫用して制定し、国民を弾圧しました。さらに、一九四一年には、緊迫した情勢下で国民を選挙に没頭させることは、不必要に議論を誘発し、挙国一致体制の整備に邁進しようとする決意に疑いを起こすという理由で、国会議員の任期を延長し、戦争翼賛体制がつくられたのであります。だからこそ、日本国憲法は緊急事態条項を廃し、憲法に国会議員の任期を明記したのです。この歴史は極めて重いものです。

 そもそも、日本国憲法の文字数が少ないことが権力統制機能が弱いと断定し、権力統制機能を回復させるために改憲が必要だという主張自体が暴論であります。その点でいえば、現行憲法にある権力統制の規定を守っていないのが今の政府と与党であります。そのことは、憲法五十三条に基づく臨時国会召集要求を無視してきたことに端的に表れています。

 五十三条は、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、臨時国会の召集を決定しなければならないと定めています。これは、少数者の発言権を保障し、行政監視機能を徹底させようという、まさに権力統制のための規定であります。これを無視してきたのが政府と与党です。自ら憲法を踏みにじっておきながら、その責任を憲法に押しつけ改憲を叫ぶなど、無責任極まりない姿勢であります。こうした議論は、改憲ありきで進めようというものにほかなりません。

 緊急事態条項や国会議員の任期の延長について審査会の意見をまとめるべきだ、さらには、憲法解釈を確定させるべきだという発言が相次いでいますが、容認できません。憲法五十六条の議論の際に申し上げたように、憲法審査会が個々の条文の解釈を、しかも多数決で確定しようというのは、越権行為も甚だしいと言わざるを得ません。結局、改憲項目のすり合わせにつなげようというものであり、反対であります。

 繰り返し述べてきたように、改憲原案の発議と審査を任務とする憲法審査会は動かすべきではないと指摘して、発言を終わります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 会長、ありがとうございます。

 国民民主党の玉木雄一郎です。

 今週も定例日にこうして憲法審査会が開催されたことを改めて歓迎したいと思いますし、幹事の皆さんの御尽力に心から敬意を表したいと思います。

 また、緊急事態条項を中心にテーマを絞った議論が進んでいることには大変意義があると思っております。引き続き、我々としても具体的な成果が出せる議論に貢献をしてまいりたいと思います。

 前回、既に国民民主党としての緊急事態条項に関する全体像についてはお示しをしておりますので、今日は、重複するところもありますが、少しその中で絞ってお話をしたいと思います。

 まず、緊急事態条項に関する中間整理として、また、緊急事態条項にまつわる誤解を解き、冷静な国民的議論を促すためにも、改めて、我が党国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的な考え方を述べておきたいと思います。それは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使で憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないということであります。

 これも繰り返しになりますけれども、私たち国民民主党が考える緊急事態条項は、行政府の簡易迅速な権力行使を可能とする権力行使の容易化条項としての緊急事態条項ではなく、むしろ、公共の福祉などの漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法府や司法における統制を明示する、権力行使の統制条項としての緊急事態条項を導入すべきとの考えです。

 また、本審査会で何度も紹介申し上げたベニス委員会では、憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だと主張しています。その中に、いかなる権利が制限され得るのかを定めた条項、いわゆるデロゲーション条項に加え、いかなる権利は制限が許されず、どんな状態にあっても尊重されなければならない権利、デロゲートできない権利、逸脱できない権利とも言われます、これを明確に示す条項を含めるべきであるとされています。

 そこで、私たち国民民主党は、政府による緊急権の濫用を防止するために、行使できる状況、効果、発動に関する規定の本質的部分は明確に憲法に規定すべきと考えます。これが基本的考えです。

 そして、前回も、国民民主党の考える、権力統制条項としての緊急事態条項の全体像についてお示しをした際に、その権力統制のツールとして、国会の事前承認を求めるなどの手続的な統制と、絶対的に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの内容的統制の、大きく二つのカテゴリーをお示しをしました。

 今日は、そのうち手続的統制に少し絞ってお話をしたいと思います。

 これも繰り返しになりますが、国民民主党としては、権力、とりわけ行政府による権力の濫用を防止する観点から、いついかなるときでも国会の行政監視機能や立法機能を維持するということが非常に大事だと考えます。かかる観点から、特に任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定の創設は極めて優先順位の高い検討項目だと考えており、本審査会でも速やかに議論し、結論を得るべきだと考えます。

 加えて、本日強調したいのは、手続統制の第二としての裁判所による統制です。

 具体的には、まず、緊急事態宣言の要件が満たされているかどうかの要件充足性について、最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制するようにしてはどうかと考えています。また、緊急事態宣言発令中に取られた法令、命令、条例及び規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断できる規定を設けて、いわゆる統治行為論で逃げないようにすることで、最高裁が事実上の憲法裁判所として機能を発揮できるようにしてはどうかと考えています。

 先ほど、議員任期の特例延長について議論を最優先で急ぐべきだと申し上げましたが、前回でしたか、他党からも御提案がありました、恣意的な任期の延長をどのように防ぐのかという論点は極めて重要だと思います。

 この点に関して考え方を述べたいと思います。

 他党からは、任期の特例延長を認めるに当たっては裁判所の関与を導入すべきとの意見もありました。先ほど北神委員からも同様の趣旨がありました。これは非常に一考に値すると考えます。

 そのときの関与の在り方ですけれども、私たちの案では、そもそも根っこの緊急事態宣言の要件が満たされているかどうかの要件充足性そのものについて、最高裁が勧告できるようにして、恣意的な宣言発令そのものを抑制しようと設計しています。

 その上で、我が党の案では、任期の特例延長を認める際には、各議院の出席議員の三分の二以上の多数でその任期の特例を定めることができるとしており、これは、多数を占める政権与党による濫用を防止するために、出席議員の三分の二以上の特別多数による議決を必要としたものであります。

 なお、選挙期日については、解散中に緊急事態宣言が発令された場合であって、総選挙の適正な実施が困難なときは、参議院の緊急集会は、出席議員の三分の二以上の多数で、解散の日から四十日以内とされている選挙期日の特例規定を置くことを検討しています。

 以上のような緊急事態における統制の具体的内容について、条文の形でお示しをしたいと思っております。少なくとも、前回そして今回申し上げたことを一枚ぐらいの紙でまとめた緊急事態条項の条文イメージ素案を、できれば審査会でお示しをしたいと思いますので、幹事会で御議論いただきたいと思います。

 いずれにしても、緊急事態条項については、スピード感を持って結論を得る必要がある議員任期の特例延長に絞った集中的な審議を次回以降も続けることを求めたいと思います。

 次に、国民投票法についても一言申し上げます。

 特に重要だと考える新たな論点を三つ提示したいと思います。これは、私たちが旧国民民主党時代に提出した法案の中に既に条文の形で盛り込んでおります。

 まず一つ目は、国民投票運動に関するネット広告規制の必要性であります。二つ目に、国民投票運動に対する外国人からの寄附規制であります。三つ目に、憲法改正の是非と政権の在り方についての選択との間に混乱が生じないよう、衆議院及び参議院の選挙と国民投票との重複を避けてはどうかという視点であります。

 これらについては早急に結論を得たいと考えております。特に、SNSを活用した投票行動への操作や影響については、技術の進歩やビッグデータの利用によってかなり高度化しており、現状を踏まえた、机上の空論にはならない具体的な議論が必要だと思います。

 その観点から、前回も提案をいたしました、二〇一六年のアメリカ大統領選挙において投票行動が操作されたとされる、いわゆるケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏を当憲法審査会に呼んで直接話を聞くことを提案したいと思いますので、会長、是非お取り計らいをお願いしたいと思います。

 最後に、SNSによるフェイクニュース等の影響に関して、国民民主党が重視するデジタル基本権について一言述べたいと思います。

 SNSが民主主義に与える影響は無視できなくなっており、その観点から、国民民主党は、情報の自己決定権としてのデータ基本権の保障を憲法に明記し、デジタル時代に即応した人権保障のアップデートを提案しています。二〇二〇年十二月の憲法改正の論点に既にその点はまとめております。

 その中でも、思想、良心の形成過程の自由の保障がとりわけ重要だと考えます。

 現行憲法十九条の思想、良心の自由は、形成された思想、良心を保護する規定との理解が一般的でありましたが、しかし、プロファイリングに基づく個人の意思形成過程への働きかけによって、個人の内心の過程や認知傾向に過度な干渉が及ぶおそれがあることは、既に多くの有識者が指摘するようになっています。その結果、形成された結果としての思想、良心は当該個人のものかもしれませんが、そもそも、そのような思想、良心の形成過程自体が本人の自律的な選択や決定によるものとは言えないような事象が生じていることが大きな問題となりつつあります。

 そこで、国民民主党は、このような内心の思想、良心の形成プロセス自体の自由あるいは自律性がゆがめられることがないようにすることも憲法に明記し、その保障を十分たらしめることが必要だと考えます。例えば、第十九条を、思想及び良心並びにその形成の自由は、これを侵してはならないことと、単なる思想、良心の自由ではなく、その形成の自由も保障することを明記することを提案しています。

 いずれにしても、デジタル時代の到来、AI社会の進展によって、近代憲法が前提としていた自律した個人の尊厳という、近代立憲主義が目指した中核的価値それ自体が脅かされているとの認識を持って憲法論議を行う必要があると考えます。いわば、有権者の主体的な判断過程のゆがみや選挙時の不正に対する脅威といった、デモクラシーのプロセスへの懸念が高まっているとの認識が必要だと考えます。

 こうした意識を持って、国民投票法の議論を始めとした憲法審査会の議論自体も新しい変化に対応したものにアップデートしていくことが必要だと考えます。

 以上で表明を終わります。

森会長 御要請のあった件につきましては、幹事会で協議をいたします。

 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 いかなる緊急事態が発生しても、国会は唯一の立法機関、全国民を代表する国権の最高機関として、その役割を果たしていかねばなりません。

 衆議院憲法審査会は、この通常国会では、特に、緊急事態において国会機能の維持をどう確保するのかという観点から議論を積み重ねてまいりました。

 まず、憲法五十六条一項の「出席」の概念について論議を深め、例外的にオンラインによる出席も含まれるとの意見が大勢となり、その結果を三月八日、衆議院議長に報告できたことは大きな成果であったと考えます。

 これまでの議論を踏まえながら、特に緊急事態における国会議員の任期の延長問題を中心に、改めて私の見解を述べさせていただきます。

 憲法四十五条では、「衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。」とあります。さらに、四十六条では、「参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。」とされています。このように、国会議員の任期については憲法に明確に規定をされています。

 任期満了前若しくは衆議院解散後に緊急事態が発生し、国政選挙の適正な実施が長期間困難と認められるときに、国会の機能を維持するため、国会議員の任期の延長ができるようにする必要があるのかどうか、議論のあるところでございます。

 まず、参議院議員は半数改選で、衆議院議員が不在であっても、参議院の緊急集会があるから国会議員の任期の延長は必要がないとの意見があります。

 憲法五十四条二項では、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」とあります。一方、同条の一項では、「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。」とあります。さらに、同条の三項では、「緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」とあります。

 国会は、言うまでもございませんが、二院制です。衆議院及び参議院の両議院で構成されるとなっております。法律、予算、条約、内閣総理大臣の指名、さらには憲法改正の発議等も両議院の議決で行われます。

 参議院の緊急集会による国会としての意思決定は、この二院制の例外として、憲法上あくまで暫定的、一時的な緊急措置と位置づけられます。

 憲法上、衆議院解散から四十日以内に総選挙が実施され、選挙から三十日以内に国会を召集し、新しい衆議院、新しいハウスの構成がなされます。解散から新衆議院の構成がなされるまでの最大七十日の間を想定し、緊急の必要があるときは内閣は参議院の緊急集会の開催を求められるとしたと思われます。

 緊急事態の発生により総選挙の適正な実施が長期間明らかに困難と認められる場合に、二院制という統治原理からしますと、参議院の緊急集会があるから衆議院議員の任期の延長は必要がないとは言えないというふうに考えます。

 また、緊急事態が発生し、選挙の実施が困難な場合は、公職選挙法五十七条の適用により、その地域に限って選挙の繰延べ投票をすればよく、国会議員の任期の延長は必要がないとの意見があります。

 しかしながら、二〇一一年三月の東日本大震災のときは、公職選挙法の繰延べ投票の適用ではなくて、新たに震災特例法を制定しました。その結果、五十七もの被災自治体で選挙期日の延期と地方議員や首長の任期が延長されました。選挙期日が最も遅かった自治体は、その年、二〇一一年の十一月二十日で、予定された選挙期日から約七か月先に選挙が延期され、さらに、議員や長の任期もその選挙期日まで延長されました。

 被災地域では、選挙の適正な実施が長期間困難と認められ、また、その間、被災自治体の長や議会の議員が不在というわけにはいかない、このように考えて、このような特例法を制定したのでございます。一九九五年一月の阪神・淡路大震災のときも同様の特例法を制定しています。

 一方、国会議員の場合は、任期が憲法で明記されていますから、法律の制定で任期の延長をすることはできません。

 さらに、国政選挙の場合は、衆参とも比例区選挙があります。東日本大震災のように広範な地域で国政選挙の繰延べ投票を実施するとした場合には、被災地の繰延べされた投票の結果が判明するまで、比例区の当選者が長期間確定しないということになります。また、同様に、多くの被災地の選挙区選挙での投票が繰延べされて、被災地選出の国会議員が長期間存在しないということにもなります。

 そもそも、広範な地域での繰延べ投票の実施は、公平公正な選挙の確保という観点からも疑問があります。国政選挙については、全国同時に実施するというのが原則だと考えます。公職選挙法の繰延べ投票制度があるから国会議員の任期の延長は必要がないとは言えないというふうに考えます。

 以上、緊急事態の発生により国政選挙の適正な実施が長期間明らかに困難と認められる場合に、選挙期日を延期し、かつ、国会議員の任期の延長をするためには、憲法の改正が必要と言わざるを得ません。

 緊急事態にあっても国会の機能を維持するため、国会議員の任期を例外的に延長できるようにするとの改正趣旨でありましても、議員の任期は議会制民主主義の根幹に関わることですから、その要件と手続は厳格でなければなりません。

 改正内容の基本的な考え方について、私の考えを述べたいと思います。

 まず、事態認定の要件と手続です。

 少なくとも二つの要件が必要と考えます。

 第一に、巨大地震などの大規模な自然災害のほか、外部からの武力攻撃、大規模テロ、感染症の全国での爆発的な蔓延等の緊急事態が発生したこと。

 第二に、これにより我が国の広範な地域で国民の生命、身体、財産が侵害される重大な危機に直面し、そのため、国政選挙の適正な実施が長期間明らかに困難と客観的に認められること。

 ちなみに、国政選挙の適正な実施が困難と認められる長期間とは、どの程度の期間を指すのか。さきに述べましたように、憲法が参議院の緊急集会開催要請を想定しているのは衆議院議員の任期終了から新議会構成までの最大七十日間であると考えますと、この期間が一つの基準となると思われます。

 また、緊急事態の発生により選挙の実施が困難な事態認定は誰が行うのか。緊急事態に係る全体の情報を掌握できるのは、やはり行政権の属する内閣であり、内閣がこの事態認定をせざるを得ないと考えます。ただし、事態認定後、直ちに、両議院の出席議員の三分の二以上の特別多数の賛成で国会が事後承認するという手続が必要だと考えます。

 さらに、衆議院解散後、緊急事態が発生した場合をどう考えるか。

 衆議院の解散は、衆議院議員の任期を終了させること、そして衆議院解散から四十日以内に総選挙を実施すること、この二つの不可分な効果をもたらします。総選挙が実施できないと認められるときは、そもそも衆議院解散の意義が失われるのではないか。解散権を行使した内閣自らの緊急事態の事態認定により、解散は効力を失い、衆議院議員の身分は回復すると考えられないか。難しい課題ですが、そのようにも思えます。

 次に、緊急事態発生により選挙の実施が困難な事態と認定された効果です。

 第一に、国政選挙の選挙期日が延期され、国会議員の任期が延長されます。その期間は、参議院の緊急集会開催可能な想定期間である、任期終了から七十日が基準となると思われます。また、内閣の判断により選挙期日の再延期、議員任期の再延長は可能と考えられますが、同様に、その都度、両議院の出席議員の三分の二以上の特別多数の賛成で国会が事後に承認するということになるのではないでしょうか。

 第二に、事態認定後は、衆議院の解散は禁止されます。一方、衆議院は内閣の不信任案提出をできないということにもなると思われます。

 第三に、国会は自動召集となって、閉会ができないということになります。

 第四に、憲法の改正は禁止をされます。

 以上、改正内容の基本的な考え方について私見を述べました。

 憲法審査会では引き続き更に深く検討されることをお願いをいたしまして、本日の意見表明といたします。

森会長 次に、足立康史君。

足立委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の足立康史です。

 まず冒頭、衆院の憲法審査会がこうして毎週定例日に欠かさず開催されるようになってきたことを歓迎するとともに、御尽力くださっている全ての関係者に感謝を申し上げます。

 もちろん、憲法審査会の伝統、その前身である憲法調査会の時代からの伝統は政局に左右されないということでありますから、改めて評価することでもないわけですが、長らく続いた立憲民主党のサボタージュの結果、審査会の開催自体がニュースになるという、転倒した事態が続いてきました。

 奥野総一郎幹事には、後ほど、私の発言時間のうち十秒だけ差し上げますので、本日の緊急事態条項に関する総括的な討議が行われた後も二度とサボらないと明言いただければ幸いです。

 来月五月三日、日本国憲法が施行されてから七十五年の佳節を迎えます。憲法が国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という基本的価値を定着させた点を正当に評価しつつ、未来に向けた課題解決型の憲法論議を深め、一つ一つの憲法改正原案を国民の皆様に、憲法制定権力を有する国民の皆様に積極的に提案をしていく、それが衆参国会議員の責任であると私たちは考えています。

 そうした観点から、日本維新の会は、二〇一二年の結党以来、特定のイデオロギーを表現するためではなく、日本が抱える具体的な課題を解決するために憲法改正を行うべきと訴えてきました。いわゆる脱イデオロギーの憲法改正であります。憲法改正が必要となる社会的事実、いわゆる憲法事実が明らかな項目について、憲法改正の発議に向けた審査を優先すべきと考えてきたわけです。

 そうした観点から、二〇一六年三月、教育無償化、統治機構改革、そして、後ほども言及します憲法裁判所の三項目から成る憲法改正原案を取りまとめ、公表してきたところですが、一昨年の年頭から続く新型コロナウイルス感染症の蔓延とパンデミックに加え、東アジアにおける中国の軍事、経済面での急拡大を背景とした覇権主義的な動向、北朝鮮による核開発の進展、ロシアのウクライナ侵略とそれに伴う国際経済秩序の混乱は、私たちに新しい憲法事実を突きつけています。今国会において、私たち憲法審査会が緊急事態条項の必要性に改めて焦点を当てているゆえんでもあります。

 改めて、過去三回にわたる、今日を入れて四回の緊急事態条項に関する集中的な討議を振り返ってみて、私なりに重要なポイントを総括的に整理すると、第一に、法律でできることは法律でやればいいということであります。

 先週の橘局長の説明にもありましたが、我が国は、度重なる自然災害のたびに、これに対応できるよう災害対策基本法を中心とした個別の法律を制定し、政府への権限集中や人権制限といった措置を定め、いわゆる緊急事態法制を構築してきました。災害対策法制のほか、武力攻撃に対処するための有事法制、内乱・テロなどの治安緊急事態法制、感染症対応法制などであります。

 現下の新型コロナウイルス感染症の蔓延を受けた新型インフル等特措法については、日本維新の会として、法律レベルでも、営業規制等に伴う補償の在り方についての規定が不十分であり、加えてそのエンフォースメントにも課題があると予算委員会等で指摘をしてきましたが、法律レベルでできることは法律レベルでしっかりと取り組む、法律でできることは全部やっておく、そうした姿勢を徹底して貫いていく中で、憲法改正への国民の支持も更に高まっていくものと確信をしています。

 第二に、その上で、法律ではこれは難しい、そうした憲法改正の必要性、憲法事実が明らかな問題については、ちゅうちょなく憲法改正の議論を前に進め、憲法を国民の手に取り戻す必要があると考えています。

 冒頭申し上げたように、緊急事態条項について、中でも議員任期の延長については、まさに憲法改正をもって対応しなければいかんともし難いテーマであるため、こうして集中討議の焦点となっているのであります。

 第三は、他方で、その際にも権力の濫用があってはならないとの観点から、民主的統制をどう図るか、これが最重要の論点として浮上してまいります。

 私たち日本維新の会は、緊急事態条項が対象とする事態の範囲については、先ほど御紹介した、関連する法律が整備されてきている、一、武力攻撃、二、内乱・テロ、三、自然災害、四、感染症という四つのカテゴリーを原則とすることに賛成であります。

 そして、緊急事態宣言が有するべき効果の中でも、国会機能の維持、つまり議員任期の延長については、現行の繰延べ投票や参議院の緊急集会では不十分であり、速やかに憲法改正をもって対応しなければならないという認識についても、大勢の本憲法審査会の委員各位と共有しており、これら二点については、是非、本日の総括的討議の成果として確認いただき、次のステップに進んでいければと願っております。

 ただし、最後に申し上げた民主的統制については、もう少し議論が必要であります。

 先週の憲法審査会で、奥野総一郎幹事は、議員任期の延長に関する憲法改正を条件付で容認する発言をされた際、議員任期の延長を考えるのであれば、憲法裁判所のような機関に判断させ、お手盛りは避けるべきだと指摘をされました。全く正しい指摘であります。

 日本は議院内閣制を取っているため、内閣総理大臣あるいは内閣を緊急事態宣言を行う主体と位置づけ、加えて国会の関与を明記したとしても、それで十分な手続と言えるのか、まさにお手盛り感が否めないからであります。同じような認識から、国民民主党の玉木代表も、裁判所による統制も必要と指摘されたのだと存じます。

 しかしながら、問題はそう簡単ではありません。今の最高裁に緊急事態宣言の合憲性を判断できる能力が備わっているのか、そうした権能を付与するにふさわしい人材がそろっているのか、そうした権能を付与するにふさわしい裁判官の構成となっているのか、そこに維新以外の野党委員の指摘と現実との深刻な乖離があると指摘をせざるを得ません。

 だからこそ、私たち日本維新の会は、六年前から憲法裁判所の必要性を説き、憲法改正原案を条文レベルで御提案し、この場での審査を求めてきたわけであります。

 玉木委員は、先週、そうした必要な議論をすっ飛ばして、最高裁が事実上の憲法裁判所として機能するようにしてはどうかとナイーブに提案をされていましたが、そういう問題ではありません。憲法裁判所と言わずに最高裁と言い換えたからといって、緊急事態宣言の合憲性を司法府に判断できるのかという深刻な問題は、一足飛びには解決しません。玉木委員の発言については、一事が万事、トリガー条項も同じでありますが、言葉はきれいですが、本当に必要な議論、必要な真摯な態度が欠落しているのであります。

 先週、橘局長が御紹介くださったマッケルウェイン先生の研究からも、日本国憲法は他国の現代憲法と比較して著しく分量が少ない、人権規定に比べて統治機構に関する規定が非常に少ないとの御指摘がありました。

 制定から八十年近くも憲法を国民の手から奪い、放置してきた結果、いざ、こうして緊急事態条項に係る民主的統制の在り方、議院内閣制下の民主的統制の在り方について議論し始めた途端に、はたと民主的統制に必要な憲法裁判所がなかったことの重大さに気づくのであります。

 自民党の緊急事態条項に関するイメージ素案が、司法府によるチェックを求めず、各議院の出席議員の三分の二以上の多数をもって民主的統制を補完しようとしているのは、まさにこうした司法府の実情を踏まえた現実的なアプローチではありますが、本当にそれで十分なのか、こうした点について、次回の審査会では委員各位のお考えを伺いたいと存じます。

 以上でございます。

奥野(総)委員 今の質問に対する答えですね、まずは。私の持ち時間の外ということです。では、十秒だけ。

 毎回失礼な御指摘をいただきますが、これまでもこれからも、サボったことはありませんし、サボるつもりもありません。きちんと出ている。

 これまでサボったというのは、そんなことはなくて、場外での不規則発言とか、そういうのがあったのでということです。サボってはいないんですよ。

森会長 それまでとしてください。

 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 それでは、私の持ち時間で発言させていただきます。

 平時から有事を想定してこうした問題を議論していくことは必要だと私も思います。しかし、議論の目的は、有事の際に国家の機能をいかにして止めないようにするかであって、憲法を変えることではありません。ウクライナ危機を奇貨として、どさくさ紛れで憲法改正を行うということでは、まともな議論にはなりません。強く抗議します。現行制度で何ができて何ができないか、まず事実関係を確認して、その上で議論を進めていく必要があると思います。

 こうした観点に立って、私はいわゆる緊急事態に対する自由討議というものを受けてきましたけれども、議論を行うにつれ、様々な論点が浮かび上がっています。有識者を呼んで確認したいこともたくさんあり、総括というにはほど遠い状況であります。

 しかし、現時点では、いわゆる緊急事態に関して、憲法を改正しなければならないというような明確な憲法事実があるとは思えません。

 一点、ここで申し上げておきたいんですが、安倍元首相が山口等の講演の中で、いわゆる安倍改憲四項目について、多数決で押し切ってもいいと取られかねないような発言をしていると記事にありました。結論ありきの議論では、到底、我々は応じられません。この場の意味も、各会派の皆さん、ないと思うんですよ。

 新藤筆頭に申し上げておきますけれども、場外で元首相という方がそういう不規則発言をされるのはやめていただきたい。少なくともここでの議論の正統性に疑義が生じますから、とんでもない発言だと思います。後ほど意見を求めたいと思います。

 そういうことでありまして、憲法事実がないということと思えば、国民投票法の論点についてまずこれから議論をする必要があり、次回以降、国民投票法の課題について議論を集中的に行うことを提案したいと思います。

 それから、これまでの議論、緊急事態についての議論を確認しておきますが、先週も衆議院法制局から説明があったように、憲法を頂点とする現行法制では、いわゆる緊急事態に関する制度はもう既に組み込まれているということだと思います。

 まず国会を動かす、緊急事態でも国会を動かすことを基本とするということであれば、緊急政令、政令で予算や法令を定めることは不要、それから、人権の制約を新たに設けることも、私は日本国憲法の改正限界を超えると思いますので、できない、当然駄目だということだと思います。この点をまず最初に申し上げておきます。

 日本の法制について、緊急事態対応は既に織り込まれていると申し上げましたけれども、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症、それぞれ基本法制があって、緊急事態等の認定も行える仕組みができています。そのことも前回、法制局から説明がありました。

 憲法五十四条の参議院の緊急集会も、制定経緯から見て、いわゆる緊急事態を想定した規定であります。

 つまり、日本国憲法は、平時に包括的な立法を行っておき対応する、それから、緊急時には緊急集会の活用、もちろん衆議院があれば衆議院で平常の議会運営、国会機能を維持しながら予算や立法を措置する、こういう仕組みを取っているものであります。したがって、新たに日本国憲法に緊急事態に関する規定を設ける必要はありません。

 岸田総理は、今年の二月の予算委員会で、私に対して、自民党の四項目のたたき台素案、先ほど安倍総理が四項目を進めるとおっしゃっていましたと申し上げましたけれども、その四項目について、これに基づいて憲法を改正していくべきだとまで言っているんですね。

 では、その四項目というのはどういうものかというのは、もう少し詳しく見ると、緊急事態については、自民党憲法草案の方を見れば、政府が自ら緊急事態を認定し、緊急政令、法律によらず政令で国民の権利を制限し、義務を課すことができる、国会の議決なく予算も使えるようになるというふうに規定されています。

 また、緊急事態の範囲も、武力攻撃、内乱、地震と例を挙げていますが、その他の法律で定めるということで、法律の中身によっては幾らでも広がるという仕組みになっています。非常に広いんですね。

 ですから、ワイマール共和国、これを再三出しますが、ワイマール時代、緊急事態に財政難などありとあらゆる事項を含ませて、緊急事態として乱発していた。当時のヒトラー首相がこれを悪用して、選挙に介入をして政権を取り、圧倒的多数で全権委任法につながった。こういうことでありますから、こうした歴史を見ても、独裁的な権限を政府に付与する、こういう政令は認めるべきではありません。こうした強権的な緊急事態条項は、立憲主義に反するものであります。

 先週の衆議院法制局の説明によっても、ドイツ、アメリカを始めとして九割以上の国で、憲法上、緊急政令の規定は設けられておらず、ということは、緊急時においても議会機能を維持して立法措置、予算措置を行うということが世界的なスタンダードだということであります。こういうことから見ても、重ねて言いますが、緊急政令はおかしい、到底認められません。

 それから、先週、更に問題になったのは、基本的人権の制約です。

 先ほど山田委員からもありましたが、諸外国を見ても、緊急事態の際に広範に人権の制約を認めている国はありません。

 日本国憲法には公共の福祉に基づく制約があり、その範囲内で、先ほど述べたような個別法には一定の制約が盛り込まれています。これで十分でありまして、新たに人権を制約する規定を憲法上に設ける必要はありません。

 これもまた自民党の日本国憲法改正草案、先ほど赤嶺委員もおっしゃっていましたけれども、中には、基本的人権に関する規定について、最大限尊重するということが書かれているんです。逆を言えば、広範に制限を認めているということになりますね。国際的にも例のない、人権を軽んずる案なんですよ。こういうものに基づいて議論しようというのは、そもそも立憲主義に反する、とんでもない話だと思います。憲法の基本理念である基本的人権の尊重を逸脱しておると言えると思います。憲法の改正限界を超えるもので、こんなものを憲法の中に規定するわけにはいきません。

 それから、その上で、議会機能をどのように動かすかということです。日本国憲法が想定している緊急時の議会機能の動かし方でありますが、定足数、これは公明党さんもおっしゃっていますが、オンライン出席を活用すれば十分対応できるんじゃないでしょうか。そもそも、緊急時であっても、総議員の三分の二が出席できないような事態というのはなかなか想定され得ないと思いますし、万一の場合に備えてオンライン出席を活用すればいいと思います。

 それから、任期の関係ですが、解散により又は任期満了まで選挙ができずに衆議院が存在しなくなった場合、これも究極の事態なんですが、さらに、長期にわたり選挙ができないということになると思いますけれども、これも、日本全土が戦乱に巻き込まれたり、致死性の強いウイルスが全国に蔓延する場合、究極の事態ですけれども、この場合には、まずは参議院の緊急集会を活用する。そして、選挙は繰延べ投票制度で延期をすることが基本だと思います。

 しかし、緊急集会についてはいろいろな意見もあるんです。学説の有力説は、衆議院解散以外の場合でも招集できる。条文上は解散のときしかできないんですけれども、できると書かれています。任期満了の場合でも使えるという説が有力であります。ですから、この点については、有識者を呼んで、緊急集会の招集要件、権能についてしっかり確認しておくことは必要だというふうに思います。ですから、議論はまだまだ尽きていないということです。

 それから、議員任期の延長についてですが、更に申し上げれば、海外の事例を見ても、アメリカを始め、半数程度は規定を設けていません。先週の説明にもありました。つまり、緊急時においても選挙が行われることを前提としていると考えられます。我が国においても、一九四二年、戦時中ですね、それから戦後すぐの一九四六年四月でも衆議院選挙は行われています。諸外国の例を見ても、安易に議員任期の延長を認めるべきではないと思います。

 それから、三分の二で議会自らという話もありましたが、今、実際、三分の二を与党は持っているわけですよね。この状況だと何でもできてしまうということを考えれば、三分の二で議員の延長を認めるという要件は緩過ぎると思うんです。少なくとも、頭の体操として考えるにしても、第三者機関をかませて判定させなきゃいけないというふうに思います。

 基本は、いついかなるときも国会を動かすことであり、きちんと民主的な統制が行われることであります。とにかく、改憲ありきで行くと話がゆがんでしまうので、丁寧な議論を行って、現行憲法に足らざるところがあるかどうかをまず考えて、冷静な議論を行っていく必要があると思います。多数決で押し切ろうなんというのはとんでもない話です。

 最後に、国民投票法については、毎回申し上げていますけれども、制定以降十年以上たって、インターネット広告、グローバル化、SNSの普及など、事情変更も生じてきています。ウクライナの事例を見ても、世論に影響を与えるということを外国政府が画策することもできるということであります。ですから、まず、玉木さんもおっしゃっているようにブリタニー・カイザーさんを呼んでというのもいいでしょうし、こうしたSNSの有識者招致、それから、民放連、元に戻ればCM規制、民放連でのCM規制についての議論も求めます。

 あと、運動資金の問題です。外国人の運動資金規制、寄附を行えない、運動資金を外国人が出せないようにする。それから、資金の透明化についても、国民投票法について論点整理をすべきであります。集中討議を求めてまいります。

 このほか、衆参の選挙運動期間と国民運動期間の重複の回避でありますとか、投票日当日の国民投票運動の禁止などについても議論をする必要があり、これらについて、CM規制、SNSへの対応、資金の見える化、外国政府の運動資金寄附の禁止、それから今申し上げた等々について、我が党の法案、国民投票法の改正案というものがありますので、近日中に提出をします。これらをたたき台に、論点の整理をしっかりやっていくことを求めます。

 毎回申し上げていますが、国民投票法について、附則四条に基づくきちんとした検討、結論が出ない限りは憲法改正の発議はできない。要するに、国民投票法の公平公正が確保できていないということでありますから、発議はできないということであります。

 しっかり、次回以降、国民投票法について集中的に議論をしていくことを求めまして、私の発言といたします。

 以上です。

森会長 次に、新藤義孝君。

新藤委員 まず、今、奥野委員から、冒頭に我が党の安倍元総理の発言についての見解がございましたので、これは奥野さんの持ち時間の範囲で、私、お答えしたいと思います。もう既に過ぎていますが。

 我が党を問わず、どなたであっても、国会議員がどこでどのような御発言をされても、それは自由だと思っています。そして、大切なことは、憲法審査会における議論は憲法審査会の中で行っている。ですから、憲法のこうした様々な議論は、審査会の中の討議、これが重要なのであって、いろいろな方々の発言が私ども審査会の運営に影響を与えることはない、このことは何度も申し上げておりますので、誤解のないように御理解いただきたいと思います。

 そして、私の時間を始めさせていただきますが、まず、本日は四回目でございます。緊急事態条項に関する議論、私なりに整理をし、そして、各会派から述べられた意見の大勢も含めて、中間的な取りまとめとして論点の確認をしたいと思います。

 今国会では、二月から二か月間にわたり、緊急事態をテーマとした議論を行ってまいりました。まずは、目の前の危機となっているコロナ感染症蔓延拡大事態への対応を踏まえつつ、感染症蔓延時にいかに国会機能を維持するか、この問題意識に基づきまして、緊急事態が発生した場合の憲法五十六条第一項の「出席」の概念について、この議論を行い、緊急事態時にリモート出席を可能とすることを意見の大勢として取りまとめた報告文を正副議長及び議運委員長に提出できたことは画期的であった、このように考えております。

 そして、この議論を通じまして、緊急事態条項全般に関する様々な論点が浮かび上がってきたわけでございます。

 対象とする事態の範囲、事態認定の手続、そしてその効果について、各委員より様々な意見が出されました。

 これまでの議論を通じ、おおむね共通の理解が得られたのではないかと思われますのは、一つは、憲法を改正し、大規模自然災害事態、テロ・内乱事態、感染症蔓延事態、有事、安全保障事態、この四つを緊急事態の対象として明記してはどうかということだと思います。もう一つは、どのようなときにあっても国会機能を最大限維持することができるよう、国会議員の任期延長の規定は必須であり、このための憲法改正を行う必要があるということだと思います。

 この二つにつきましては、更に議論すべき項目が残るものの、方向性としてはおおむね意見の大勢であったと私は考えております。

 これに加え、緊急事態条項全般について出された論点について、私なりの整理をしておきたいと思います。

 第一に、対象となる事態の範囲につきましては、四つの事態に加え、あらゆる事態への対応を考慮し、その他これらに匹敵する事態という総括的な規定又はその他法律で定める緊急の事態という法律委任の類型を用意しておくか、この点は今後の討議事項になると思います。

 第二に、議員任期延長の問題につきましては、一部の委員から、公選法上の繰延べ投票や憲法上の参議院の緊急集会で対応すればよく、憲法改正は不要ではないかとの意見もありました。

 しかし、繰延べ投票は、選挙が執行できない地域が広範に及ぶ場合は想定されておらず、肝腎の被災地域から選出される議員が不在となってしまい、繰延べ投票が終わらない限り比例区の当選者が確定しない、様々問題が残ってしまいます。また、参議院の緊急集会は、憲法の文言上、衆議院の解散の際の制度であること、解散から特別国会召集までの二か月間程度の期間を想定したものであり、そもそも国会は二院制の下で衆参両院の活動が原則となっていることなどを考えれば、緊急集会があるから議員任期の延長は不要という主張には無理があると考えざるを得ないわけであります。

 第三に、任期延長に関連し、衆議院の解散で議員資格が失われた状態の後、緊急事態が発生し、選挙が執行できなくなるという問題があります。この場合は、任期延長では対応することはできません。解散前の衆議院議員に議員としての身分を復活させるか、若しくは何らかの権限を与えるかといった論点について、更に議論をしていきたいと考えております。

 第四に、大きな論点となりますのが緊急政令でございます。

 オンライン審議や議員任期の延長など、国会機能の維持を図るための措置を用意したとしても、それでも対応できなくなるような緊急事態はあり得ます。例えば、通信環境の途絶、国土の壊滅的被害により物理的に議員が集まれない状態や、国会を開くいとまがない状態を想定しておく必要はないでしょうか。そのような場合に備えて、内閣が一時的に国会の立法機能を代替する緊急政令の制度と、それを財政的に裏打ちする緊急財政支出の制度について、丁寧な議論が必要だと私は考えます。

 そもそも、緊急政令につきましては、昭和二十一年の日本国憲法制定時に、時の日本政府から必要性が主張され、GHQによって拒否された経緯があります。その際、GHQは、緊急政令は濫用のおそれがあるから、緊急事態が発生したときは不文の法理である国家緊急権に基づいて対応すればよいと主張されたとされています。しかし、不文の法理であるからこそ、濫用されるおそれが出てくるとも考えられます。だからこそ、諸外国においても、その濫用を防止するために、憲法への取組、実定化する努力が続けられているのであります。

 先週の法制局の論点説明において、実に九三・二%の憲法が緊急事態条項を規定しているという紹介がありましたが、この数字は各国の緊急事態への真摯な取組の表れであります。

 日本国憲法に緊急事態条項を新設し、国会がどうしても開けないなどの限定した要件の下に、内閣に暫定的な立法権を与え、国会が事後にしっかりチェックする制度として、緊急政令を明文で憲法に規定することは、政府が超法規的に行動し、国民の権利侵害が発生するおそれのないよう措置していくことを意味するものであり、法治国家として当然のことではないでしょうか。今後、更なる議論を皆さんとしていきたいと考えます。

 第五に、緊急事態におきましては、平時と違う、個人の自由や財産など、人権の制限が必要となる場合もあります。また、今まさに緊急事態下にあるウクライナの憲法のように、人権に制限が加えられる場合であっても、市民権の保障、個人の尊厳の尊重、拷問の禁止、裁判を受ける権利など、制限されてはならない人権の規定についても議論を加えておくべきと考えます。こうした人権保障の在り方について憲法上の規定を置いておくことは、立憲主義の観点からも重要です。

 第六は、憲法上の緊急事態認定の手続について、その主体としては、内閣又は内閣総理大臣、あるいは国会が行うべきとの議論がありました。

 一方で、法律上の緊急事態の認定主体は、有事法制や災害対策法制などを見ると、基本的に内閣か内閣総理大臣となっています。

 諸外国の憲法では、政府の長が宣言し、議会が承認するという仕組みを取る国が五五%と、法制局から説明がありました。

 緊急事態の認定は、行政権行使の主体として国民の生命財産に責任を負う内閣とするのがよいのか、あるいは迅速性を考慮して内閣総理大臣とするのがよいのか、更なる議論を続けたいと思います。いずれの場合におきましても、国会の関与は当然であり、事前又は事後承認の規定について検討を加えていきたいと考えています。

 以上、本審査会における緊急事態条項のこれまでの議論について、私なりに中間整理し、論点の確認をさせていただきました。

 この際、なぜ日本国憲法に緊急事態条項を定めるべきなのか、私たちが考えている基本的な意義を申し上げたいと思います。

 国家の最大責務は、国民の生命と財産を守り、自由で幸せな社会生活を提供することです。国民意識の統合と領土の保全、主権の確立こそが国家成立の根本的要素であり、憲法は、立憲主義に基づき、権力の行使を統制するとともに、あるべき国の姿を示す国の基本法でもあります。

 憲法は、いついかなるときにおいても、国民を守る存在でなければなりません。にもかかわらず、日本国憲法には、七十五年前の施行以来、緊急事態という国の根本概念が規定されておらず、緊急時においても平時の延長線上での運用を行わざるを得ません。そのために、法律レベルにおいては、緊急事態が発生するたびに、後追いでパッチワークのような特例法が作られ、問題が発生した箇所をその都度に塞ぐような対応がなされておるわけであります。

 緊急事態が発生した際に、国はその責務と権限を明確にし、国民を守り抜くための最大機能を発揮させること、これこそが緊急事態条項を創設する基本的な意義と考えております。

 今後の憲法審においては、緊急事態条項について議論を深めたように、憲法本体に関するほかのテーマにつきましても議論が必要であり、併せて国民投票をめぐる投票環境の向上やCM規制などについても議論したいと願っております。

 私は、朝の幹事会で、来週の審査会を開催し、こうした問題についての討議を提案いたしました。この取扱いについては、筆頭間協議で詰めてまいります。

 委員各位には、憲法審査会の更なる活発な運営に向け、引き続きの御理解と御協力をお願い申し上げ、私の発言といたします。

 ありがとうございました。

森会長 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十六分散会


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