衆議院

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第9号 令和4年4月14日(木曜日)

会議録本文へ
令和四年四月十四日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 奥野総一郎君 幹事 道下 大樹君

   幹事 馬場 伸幸君 幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    伊藤 達也君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      国定 勇人君    國場幸之助君

      下村 博文君    土田  慎君

      中西 健治君    西村 康稔君

      船田  元君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    松本 剛明君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      山本 有二君    新垣 邦男君

      近藤 昭一君    階   猛君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      太  栄志君    本庄 知史君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      足立 康史君    小野 泰輔君

      三木 圭恵君    國重  徹君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      玉木雄一郎君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     土田  慎君

  山田 賢司君     国定 勇人君

  櫻井  周君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  国定 勇人君     山田 賢司君

  土田  慎君     伊藤信太郎君

  階   猛君     櫻井  周君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(特に、国民投票法について))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、国民投票法について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 今国会の憲法審査会は、二月からほぼ毎週開催をし、憲法に関する議論を深めてまいりました。先週の緊急事態条項に関する議論においては、各会派から様々な意見が述べられ、中間的作業として論点の確認ができたことは非常に意義あることだったと考えています。各論点については、今後、更に深掘りをしていきたい、このように考えております。

 また、憲法本体の議論と併せまして、憲法改正の手続である国民投票法の議論を行っていくこと、これも憲法審査会に課せられた使命です。

 そこで、本日は、国民投票法に関し議論すべき点について申し上げたい、このように思います。

 国民投票法が整備すべきとされているのは、一つは、投票環境整備などの外形的事項、もう一つは、CM規制など国民投票運動に係る投票の質に関する事項であります。

 投開票に関わる外形的事項については、公職選挙法が規定する投票環境を反映させる必要があり、昨年六月に成立したいわゆる七項目案は、まさにこうした改正でした。この国民投票法改正案は、法案修正が行われ、附則第四条に検討条項が追加されています。

 この意味については、委員の中には、附則四条は、現行法のままでは投票の公平及び公正は確保されていないと判断し、国会に措置を求めているものであり、これらの法制上の措置等が講じられないうちは憲法改正の発議はできないと解されますとの意見を述べられる方がいらっしゃいますが、この附則第四条の意味については、法案審議の中でやり取りがあり、一定の整理がなされておりますので、改めて確認をいたします。

 この条文は、あくまで、検討を加えて、その結果、必要と判断されれば必要な措置を講ずるというものです。必要とされる措置の内容については、法制上の措置、すなわち法改正が必要と判断される場合もあれば、その他の運用上の措置や予算措置で対応すれば足りると判断される場合もあります。

 さらに、この検討条項には、憲法改正の発議に関する言及は一切ありません。したがって、検討の状況や結果が憲法改正の発議に法的な制約を与えることはありません。

 この点は、参議院の憲法審査会の質疑応答において、より明確になっております。当日の議事録には、与党の法案提出者が、法制的に憲法本体の論議も憲法改正の発議も可能であると答弁したのを受けて、当時の修正案の筆頭提出者である立憲民主党の山花郁夫議員より、この検討条項の下でも憲法本体の議論や憲法改正の発議が条文上可能であることについては、原案提出者である中谷先生や北側先生から御答弁がございました、共通の認識でございまして、異論はございませんとの答弁が記録されております。

 附則第四条では、検討項目として、第一号で、公選法並びとなる投票環境向上などの外形的事項が、第二号で、CM規制やネットの適正利用など投票の質に関する事項が掲げられております。

 本日は、このうちの第二号のCM規制等をめぐる問題について論点を確認しておきたいと思います。

 平成十九年制定時の国民投票法の基本的な理念は自由な国民投票運動であり、それを前提とした公平公正な国民投票が併せて打ち立てられました。この自由と公平公正のバランスをどのように取るかが、国民投票法を考える際のポイントだと思います。

 これは、国民投票法に関するCMについても当てはまります。国民一人一人が自由な国民投票運動を行えるようにするとともに、賛成CMと反対CMを全体としてバランスの取れたものにできるかどうかが重要になるわけです。

 このCM規制の問題につきましては、広告の受け手である民放連や民放各社と、出し手である私たち政党側という、二つの担い手の役割を整理しておく必要があります。

 まず、受け手である民放連、民放各社が行う取組として、いわゆる自主規制の問題があります。

 平成十八年六月の、国民投票法制定時、憲法調査特別委員会において、民放連の参考人は、量的な自主規制はできるのかとの質疑に対し、「自主規制はできます。やらなければいけないというふうに思っております。」と述べたことが記録されています。その場の委員たちは、民放連が量的な自主規制を行うと認識したと理解しています。

 しかし、その後、民放連は、平成三十年九月の会長会見において、量的自主規制はしないと発表されました。令和元年五月の憲法審査会における参考人質疑では、CM量に特化した自主規制は行わないし、そもそも広告の受け手として、実務上非常に難しいといった趣旨の答弁をされました。

 こうした一連の発言に対し、制定時の発言との整合性から、民放連は量的自主規制をしない方向に態度を変えたのかと心配する声が憲法審の中に出ていることを承知しております。これはとても重要な論点であり、であるからこそ、民放連発言の真意と自主規制の内容について確認する必要がある、このように考えています。

 そもそも、民放各社は、CMの受け手として、国民投票以外にも日常的に膨大な量のCMを取り扱っております。国民投票に関するCMは、通常のCMと同様に、憲法で保障される表現の自由の下、放送法三条の放送番組編集の自由、四条の放送番組編集に当たっての政治的公平性などが要求され、さらに、五条において、放送事業者は、独自の番組基準を定め、広告のガイドラインなどの自主規制を行うことが要請されています。これがCMの受け手である民放各社の基本的な枠組みです。

 したがって、民放連、民放各社には、法律に基づいて、受け手としてできる範囲内で、国民投票CMについても公平公正となるよう、自主規制が要請されています。そして、民放連からは既に、平成三十一年三月の国民投票運動CMなどの取り扱いに関する考査ガイドラインなどが発表されております。

 このような状況を踏まえ、出し手である私たち政党側のCMに対する具体的な取組も同様の議論が必要です。現行の国民投票法では、国会に設置される国民投票広報協議会が行う周知活動について、量的な賛否平等の取扱いが規定されています。この法的な枠組みと、受け手である民放各社の自主規制、そして出し手である政党側の取組をトータルで考え、国民投票運動の自由と投票の公平公正のバランスをいかに取るか、これを整理しなければならないと考えているわけであります。

 先ほどの幹事会において、私は、本日の議論を踏まえた上で、来週もこの審査会を定例日に開催をし、国民投票法の議論を更に深めることを提案いたしました。具体的な審査会の持ち方につきましては、引き続き筆頭間協議で詰めてまいりたいと思います。

 委員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げまして、私の発言といたします。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 冒頭、また新藤幹事が論点の確認ができたとおっしゃっておりますが、先週も、緊急事態条項について、中間的な取りまとめとして論点の確認をしたいと冒頭発言して、私はぎょっとしたんですが、よく聞くと、議事録を読むと、私なりに整理をしたとか、最後に、私なりに中間整理をし、論点の確認をさせていただいたと述べられているんですよ。要するに、これは個人的な意見を述べているんですね。そうはっきり自分でもおっしゃっているんですよ。

 論点確認といえば、ここに会長がいらっしゃるわけですから、会長を中心にきちんと確認しなきゃいけないんですね。それをあたかもこの会全体の確認事項、中間取りまとめのように発言する、そして世論に誤解を与えるようなことは断じて認めることはできませんし、第一、会長に失礼じゃないですか。意図的に誤解を招くような発言は厳に慎んでいただきたい。

 先ほど新藤筆頭も、私なりに整理した、個人的な意見だということを幹事会の場でもはっきり認めておられるわけですから、更にこういうことはやめていただきたい。強く抗議をして、皆さんにも誤解なきようということで申し上げておきます。

 そして、今日は国民投票法制度の集中討議ということで、ようやく、一月から求めてきましたけれども、実現をいたしました。

 これまでのおさらいとして、附則四条について確認をさせていただきますが、憲法九十六条は、憲法改正は、国会の提案に対して、国民投票による国民の承認を経なければならないとしています。この趣旨は、国民主権原理に基づいて、主権者たる国民の意思による承認、確認を求めたものであります。

 ということは、国民投票制度の不備によって日本国民の意思がゆがめられ、投票結果に正確に反映されないということは、断じてあってはならないということであります。これが、後ほど言いますが、我々が国民投票の抜本的見直しをずっと求めてきた、しかも優先的に求めてきている理由であります。

 附則四条が求めている投票環境の整備、公平及び公正の確保については、まさに憲法上の要請であると言えます。

 まず、投票環境整備について申し上げれば、これは社会的情勢の変化に応じて随時行われるべきでありますし、公選法を参照することは一つ合理的な選択肢でもありますが、ただし、昨年のこの審査会でも話がありましたが、国民投票独自の性格もあることから、必ずしも公選法と同じでなければならないというものではありません。附則四条に例示として挙がっている二つのもの以外にも、例えば、選挙と異なって、選挙区を気にする必要はないわけですから、全国どこの投票所からでも、システムを組んで投票できるようにしてもよいはずなんですね。

 いずれにせよ、こうした投開票に関わる外形的な事項については、この附則四条一を、これは例示ですから、検討を加えて、その具体的な中身や議論の進め方については、それぞれのハウスで与野党がしっかり協議をして決定していくべきものと考えます。

 そして、今、新藤筆頭からもお話があったCM規制についてですが、これは立法当時から、テレビ、地上波、当時は地上波中心でしたけれども、その扇情的な、影響力が大きいですね、その影響力に鑑みて、放送メディアによる量的な面を含めた自主規制を不可欠な要素としてこの法案はできているということであります。

 しかし、民放連は、その自主規制ということを、できないと。約束をほごにした、強い言葉で言うとそういうことになりますが、この審査会、二〇一九年五月九日の審査会、私も質問しましたが、量的な規制はできないと言明をして、現行法の前提が大きく崩れているのが現状であります。

 これは、民放連に任せておいても、放送法四条は確かにかかっているんですが、ストップウォッチ的な公平な時間配分はできないと当時もたしか言っていましたし、営業が絡む話ですから、お金をぽんと積まれたときに、では本当に公平公正にきちんと配慮できるかというのは、なかなか難しいと思うんです。だからこそ、きちんとした制度をつくらなきゃいけないというのが我々の意見であります。

 先ほど新藤筆頭から民放連の招致についてお話がありましたが、我々も、あれからしばらく時間がたっていますから、もう一度この場に来ていただいて、きちんと真意を確認したいということは賛成であります。

 それからもう一つ、新藤筆頭は今触れませんでしたが、ネットCMというのもあるんですね。こっちは放送法の規制も全然かかりませんから、より自由にできるんです、政治的な中立性を求められていませんから。ネットCMというものも出てきています。国民投票法ができてから、随分状況が変わっているんですね。ネットフリックスなんかもそうなんですが。

 玉木代表は先週、参考人としてブリタニー・カイザー氏、これはケンブリッジ・アナリティカという、ネットフリックスの番組で、SNSを使ったブレグジットや大統領選挙の世論操作について語っていますが、こういうのを見ていただくと、いかにSNSが重要な影響を与える、ネットが世論に重要な影響を与えるかということは御理解いただけるはずであります。

 先ほど玉木代表の方から、ブリタニー・カイザー氏を参考人招致とおっしゃっていましたが、私も賛成です。せっかくオンラインでできるんだったら、この会で意見を聴取するというのは、私は賛成、私も提案したいと思います。

 また、先日この審査会でも議論したように、ウクライナの戦争でもSNSの情報戦が戦われている、こういう時代なんですよ。ですから、ここについても、ネットCM、それからSNSの在り方についても、やはりきちんと議論をする必要があると思います。

 これらのことから、現行の国民投票法が公平及び公正が確保されるという憲法上の要請を既に満たさなくなっていると判断して、昨年の国民投票法の改正で、先ほど新藤筆頭もおっしゃられた附則の四条というものを提案させていただき、皆さんの賛同を得ました。

 施行後三年を目途として、投票環境向上のための措置だけではなく、公平公正を確保するために、国民投票運動のための放送広告やインターネット有料広告の制限、それから、資金規制、インターネット等の適正利用の確保を図るための方策等について、必要な法制上の措置その他の措置を講ずることを求めた修正案が成立をしています。

 以上の経緯、附則四条が設けられた趣旨から見て、法制上のその他の措置が講じられるまでの間、こう書いてあるわけですからね、までの間は、発議をし、国民投票を実施することは許されない、この案は私が考えた案ですから、立法者として理解をしているところであります。

 新藤さんのおっしゃるように、この措置がなされなくても発議できるんだとおっしゃいますが、本当にそれでいいんでしょうか。例えば、外国政府等の干渉、これは世界中どこでも起きているんですよ。そういうことで投票結果、国民の意思がゆがめられるような事態をこれは容認するということにつながりますよ。だから、きちんと、憲法改正を真剣に考えられるんだったら、これは手当てしておく必要があるんですよ。だから、本当に重要な話なんですよね。

 ということで、当時、三年前ですね、玉木代表の下で我々も、今日は階さんも来ていますが、立法した対案というのがあります。これを更に発展させて、表現の自由と国民投票の公平公正のバランスが図られるように検討を重ねた法律案を取りまとめてありますので、その内容を、これはいずれ出しますけれども、簡単に御紹介させていただきます。

 まず、国民投票運動のための放送広告及びインターネット等の利用に係る規制については、具体的には、国民投票運動、すなわち憲法改正案に対する賛否の勧誘のための放送広告は、その主体を問わず、全期間にわたって禁止をしています。

 その上で、特に政党による放送広告については、賛否の勧誘だけじゃなくて、賛否の意見表明、そしてインターネット有料広告についても禁止の対象としているところであります。

 なお、政党には、国民投票広報協議会が行う放送において意見広告の枠を公平に配分されることになっているので、意見表明の機会は保障されていると思います。

 そしてもう一点、極めて大事なことが資金規制ですね。資金の多寡によって、お金を持っている人が国民投票の結果を左右する、ゆがめるということがあってはなりません。とりわけ心配なのが、外国政府のお金。これは現実のものとして今言われていますからね。そして、特定の外国政府や団体から資金提供を受けた団体が、大々的に国民投票運動、テレビCMやネットでがんがん流すということが考えられるわけですよ。ブリタニー・カイザー氏に話してもらえば分かると思いますが、お金があれば何だって今できてしまうんです。

 我々の案は、これ、玉木さんもあのとき関わっていましたけれども、国民投票運動等に関する支出金額が一千万円を超える団体には収支報告を義務づけるとともに、五億円の支出限度額を設けています。また、運動資金が特定の者や外国人に依存することを防ぐために、一人当たりの寄附の上限額の設定、外国人寄附の受領禁止など、寄附規制を定めています。これは絶対、マストですよね。CM、ネット規制、共にマストの措置として議論していきたいと思います。

 本当に憲法改正を動かしていこうとおっしゃるなら、新藤筆頭、民意が公平に公正に反映される仕組みを用意する必要があるんじゃないでしょうか。

 我々の提案を踏まえ、附則四条に基づいて、国民投票運動の必要な見直しを最優先の課題として行うことを求めて、私の発言といたします。

森会長 次に、馬場伸幸君。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 本日は国民投票法を中心にということですが、どうしても緊急に確認をさせていただきたいことがありますので、憲法九条について発言をいたします。

 著しく変化する日本の安全保障環境は、九条をめぐる論議を先送りする猶予を与えてくれません。ロシアのウクライナ侵略という国際秩序の根幹を大きく揺るがす事態に直面する中、立法府が固定観念にとらわれることなく、九条をめぐる論議に真剣に向き合い、意見集約を図っていくことが不可欠です。

 私たちは、九条に自衛隊の存在を明確に位置づけ、他国から侵攻を受けたときには武力で反撃するという意思を明示すべきだと考えます。一方で、いまだに自衛隊は違憲だと主張され、水戸黄門の印籠よろしく、現行の憲法九条をかざせば敵も斬りかかってこないと思い込んでいる方々がいらっしゃいます。理想論で国や国民を守ることはできません。それこそ日本に牙をむく周辺諸国の思うつぼです。

 折しも、九条の守護神たる日本共産党の志位委員長が発言された自衛隊活用論が物議を醸しています。後ほど赤嶺議員に幾つか質問いたしますので、しっかりお聞きください。

 志位委員長は七日の集会で、九条の完全実施に向け、国民多数の合意で自衛隊を段階的に解消していく党の方針を述べる一方、万が一、日本に対する急迫不正の侵略が起きた場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を用いて国民の命と日本の主権を守り抜くと表明しました。

 片腹痛いとはこのことです。日夜、国防という崇高な任務に就く自衛隊を党綱領で違憲だと虐げつつ、時に、党幹部が防衛費について人を殺す予算とのたまい、時に、奈良県で陸自は人殺しの訓練と記したビラをまいた共産党が、都合のいいときだけ自衛隊に頼るとは、あきれます。

 この身勝手な自衛隊活用論には批判が噴出しましたが、志位委員長は、的外れだと反論し、二〇〇〇年の党大会で公式に決定し、綱領に書き込んだことだと主張しました。赤旗も、急に言い出したことではないという志位氏の主張を掲載しました。

 そこで、赤嶺議員にお伺いします。

 一つ目。志位委員長の発言を受け、立憲民主党の泉健太代表が、自衛隊を合憲と理解をしてもいいのではないかと御党に呼びかけました。有事に個別的自衛権の範囲で自衛隊を活用するというなら、はっきりと合憲と認めたらいかがですか。

 二つ目。自衛隊活用論を提起した二〇〇〇年党大会で志位委員長は、急迫不正の主権侵害という事態が起きることは、現実にほとんどあり得ないと述べました。日本を取り巻く安全保障が激変する中、このあり得ない論は通用するとお考えですか。

 三つ目。急迫不正の主権侵害という事態が起きた場合に自衛隊を活用すると言いながら、党綱領で、軍縮の措置を取る、自衛隊を段階的に解消すると規定していることは、国を守るという本分に逆行します。中国、ロシア、北朝鮮という三正面で防衛体制を強化しなければならないのに、御党の立場だと、有事で出動する際に、装備やマンパワーが不足する懸念が拭えません。どう受け止めますか。

 四つ目。二〇〇〇年の党大会で志位委員長は、アジアの平和的安定の情勢が成熟する中で、今、安保維持論者たちが言い立てる脅威なるものが実は根拠を持たないものであることが、事実を通じて国民の共通となる過程が進むだろうとも述べられました。今も御党は、安保維持論者たちが言い立てる脅威なるものは根拠を持たないというスタンスなのでしょうか。

 五つ目。日本が急迫不正の主権侵害の事態に見舞われた際、自衛隊を含めてあらゆる手段を用いて国と国民を守り抜くとされていますが、自衛隊以外のあらゆる手段とは何を想定されているのですか。一般国民も火炎瓶や武器を手に戦えということですか。

 六つ目。自衛隊を解消し、日米安保条約を廃棄して、どのようにこの国を守っていくおつもりなのでしょうか。

 七つ目。一九九四年の党大会決議で、急迫不正の主権侵害に対しては、警察力や自主的自警組織など憲法九条と矛盾しない自衛措置を取ることが基本だとされました。自主的自警組織とは何でしょうか。自衛隊は違憲の存在としているのに、なぜ自主的自警組織は違憲ではないのですか。

 八つ目。御党は、九条を生かした平和外交を進めれば自衛隊は要らないと強調されています。ロシアによるウクライナ侵略を見れば、話せば分かるといった外交など幻想であることがはっきりしましたが、それでも国を守れると考えているのでしょうか。

 以上、明快なお答えを求めます。

森会長 それでは、赤嶺委員、馬場委員の質問時間の範囲内で、簡潔に御答弁願います。

赤嶺委員 維新らしく、かなり日本共産党の路線をゆがめて、歪曲した発言、これは、まず抗議したいと思います。

 それから、私たちは、憲法九条は、戦争を放棄し、戦力を保持しない、陸海空軍、これは持たないということを決めておりますが、憲法の制定時から、軍隊を持たないからといって、個別的自衛権を持っていないわけではないということをはっきり主張してまいりました。憲法制定時からであります。ですから、常備軍を持って国を守る、そういう軍隊は必要でないと今でも考えております。

 同時に、今、憲法違反の自衛隊が存在するということは、これは私たち日本共産党がつくり出した矛盾ではなくて、自民党がつくり出している矛盾であるわけですね、そういう整理が必要だと思います。

 そういう中で、急迫不正の侵略が起きたときに、個別的自衛権に基づいて、日本国民が持っている力を動員して国を守るために対応するというのは、これは私たちが憲法制定時から、そして二十二年前に綱領を発展させたときから持っている立場であります。

 私たちは、自衛隊活用論というのは、理論上の問題として、いや、憲法九条だけで守れるのか、侵略したらどうするのかという万一の事態を想定して質問が寄せられた場合に、そのときに自衛隊が存在するのであれば、自衛隊も含めて日本国民が侵略に対処するという理論上の問題を述べているわけであります。同時に、やはり日本の平和というものは、憲法九条に基づいて、平和外交で実現をしていくという立場であります。

 馬場委員は、かつて本会議場で、台湾有事は日本有事、だから、沖縄県民、宮古、石垣、これらの住民を、早く避難計画を作るべきだと本会議で主張しておられましたが、私はそれを聞きながら、また沖縄戦のように、沖縄県民を日本防衛の捨て石にして、戦場に沖縄県民を置き去りにするのかというようなことで、大変怒りを持ちました。この怒りも表明しておきたいと思います。

 以上です。

森会長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹です。

 まず、憲法改正国民投票のネット広告規制について簡潔に意見を述べます。

 現行の憲法改正国民投票法には、テレビやラジオのCM規制はありますが、ネット広告に対する規制は全くありません。もっとも、ネット広告費は、令和元年にテレビ広告費を上回り、令和三年には、マスコミ四媒体と言われるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の広告全体を上回る市場規模にまで至っています。ネット広告の影響力は、法制定時に比べ、格段に大きくなっています。

 このようなことなどから、ネット広告にも何らかの規制が必要ではないかとの意見があり、その問題意識は共有します。

 他方で、事業者に対して法的な規制をするとしても、広告主の広告がネット上の媒体に掲載されるまでの間に多数のレイヤーが介在し、その中には海外事業者やアウトサイダー事業者もいることから、その実効性には課題が残ります。

 また、インターネットは、テレビとは異なり、各個人がいつでも自由に発信できるという特性があるため、国民投票においてネット広告のみを規制しても、インターネット全体で見たときに、その効果は限定的ではないかとの疑問も生じます。

 このようなことも踏まえ、ネット広告に関する論点を整理し、集中して議論した上で、一定の結論を出す必要があると考えます。

 さらに、このような国民投票におけるネット広告規制等の問題は、デジタル社会において民主主義をいかに守るかという点で、国民投票に限定されない、大きな観点からの議論につながります。

 デジタル技術の進展に伴い、利用者の閲覧、購買履歴等のデータから、当該利用者の感情や認知傾向などをAIによって詳細に分析し、個々人に合わせたネット広告を配信したり、それぞれの利用者が見たいであろう情報を優先的に表示するような手法が取られています。

 このようなことにより、個人の自由な意思形成過程が実質的にゆがめられたり、多様な意見、情報に触れることができなくなる結果、選挙や国民投票の公正性が損なわれ、民主主義に悪影響を及ぼすのではないかといった懸念が指摘されています。

 また、デジタル化の進展は、人権保障の点でも新たな懸念を生じさせております。

 例えば、憲法十三条の個人の尊重に関して、個人の意思形成過程への働きかけによって自律した個人が崩されるおそれ、十九条の思想及び良心の自由に関して、自由な意思形成過程が誘導されるおそれ、さらに、二十一条の表現の自由に関して、健全な言論空間を維持できなくなるおそれなど、憲法に規定された権利が真に保障されているのか、立ち止まって検討しなければなりません。

 この点、欧州では、デジタル社会における人権や民主主義を守るための様々な取組がなされています。例えば、EUの憲法と言われる欧州連合基本憲章には八条で個人データの保護を定め、GDPRでは、この個人データの保護を前文で引用した上で、プロファイリングに対して異議を唱え、中止させる権利など、明確に規定しています。

 また、アメリカは、表現の自由を手厚く保護してきた伝統から、言論に対し国家は極力介入すべきではないという考えの下、プラットフォーム事業者に対する規制にも消極的であると理解されてきました。しかし、近年はプラットフォーム規制が議論されるようになり、変化が見られます。

 このような世界の状況、潮流も踏まえ、日本においてどのような対応を取るべきなのか、憲法の観点からの議論を今まさに行うときであります。

 この点に関して、デジタル社会において個人の自律性を維持するためにも、人間中心のデジタル化の推進を確実にするためにも、情報自己決定権や自己情報コントロール権といった権利の憲法上の位置づけ等を明確にすべきと考えます。

 憲法十三条の規定の中に情報自己決定権のような権利を読み込むことができるという議論もあるでしょうし、現行憲法で読み込めるとしても、権利を明確にするために改めて規定すべきという考え方もあり得ます。この辺りは当審査会において、デジタルと憲法に詳しい有識者を参考人として招致するなど、議論を深めていく必要があります。

 その上で、情報自己決定権を憲法に規定する、しないにかかわらず、憲法上保障された権利、憲法的価値を法律レベルで具体化し、デジタルに関する法制を体系化することが、国民の権利の保護、ひいては民主主義を守ることにつながるのではないでしょうか。

 この点、例えば、個人情報保護法では個人の権利利益を保護することを目的とすることが定められていますが、この個人の権利利益の内容は不明確であると指摘されています。この個人の権利利益に情報自己決定権を読み込むように捉え直し、個人情報保護法をデジタル関係法制の憲法、基本法と位置づけて、デジタルに関する個別法全体の指導理念とすることも可能かもしれません。また、デジタル社会においても守られるべき国民の権利を明記する基本法を新たに制定し、情報自己決定権などを規定することも考えられます。

 このように、法律に規定することによって権利保障の実効性を高めていくことも併せて検討していきたいと考えております。

 データの利活用等によるデジタル社会の推進は、日本の諸課題の解決や国民の生活の質を向上させていく上で極めて重要です。他方で、デジタル化の進展に伴い、憲法に規定されている権利が損なわれている状況があるのであれば、その状況を正していくのも当然であります。データの利活用と権利保護とのバランス、この視点から、今後も真摯に検討を重ね、当審査会における議論を深めていくことを最後に申し添え、私の意見表明といたします。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、今週も定例日に憲法審査会がこうして開催されたことを歓迎したいと思います。また、一部にあった、憲法を議論することイコール戦争へまっしぐらといったようなステレオタイプの論調が冷静なものに変わりつつあることを、併せて歓迎したいと思います。

 ただ、むしろ、一部の政治家やメディアの中に、例えば緊急事態条項の議論がコロナの感染拡大やウクライナ危機への便乗であるとの世論をあおるような言説があることは遺憾であります。多少の意見の違いがあっても、本憲法審査会の議論は便乗と批判されるようなものではなく、社会や世界の変化に対応した極めて建設的で冷静な議論が行われていることは、当審査会の名誉のためにも付言しておきたいと思います。

 その意味でも、冒頭、何度も繰り返して恐縮でありますけれども、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたいと思います。

 それは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中で、曖昧なルールの下で行政による恣意的な権力行使が行われ、憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないということを改めて申し上げたいと思います。

 また、これも何度も申し上げて恐縮ですが、私たち国民民主党が考える緊急事態条項は、権力行使の容易化条項としての緊急事態条項ではなく、むしろ、緊急事態において国全体が正気を失いがちになり、行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する、権力行使の統制条項としての緊急事態条項であります。

 特に、任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定の創設については、やはりスピード感を持って結論を得る必要があると考えます。今後、議員任期の特例延長に絞った集中的な審議を改めて求めておきたいと思います。

 さて、本日は、前回も言及した国民投票法について述べたいと思います。

 まず、投票立会人の選任要件の緩和など、公選法改正に伴う投票環境の整備については、速やかに改正を行うべきと考えます。

 その上で、旧国民民主党時代の二〇一九年五月に提出をした国民投票法改正案に盛り込んだ以下の三つのポイントについても議論をして、早急に結論を得たいと考えます。

 まず一つに、国民投票運動に関するネット広告規制の必要性です。二つ目に、国民投票運動に対する外国人からの寄附規制。三つ目に、憲法改正の是非と政権の在り方についての選択との間に混乱が生じないよう、衆議院及び参議院選挙と国民投票との重複を避ける規定の創設についてであります。

 このうち、今日は、SNSの活用による投票行動への影響について、技術の進歩やビッグデータの利用が一層高度化しておることを考え、ネット広告規制について特に申し述べたいと思います。

 一昨年の五月二十八日の本審査会でも触れましたけれども、改めてケンブリッジ・アナリティカ事件について紹介しておきたいと思います。

 二〇一八年三月、ある報道が世界に衝撃を与えました。それは、フェイスブック上で収集された約八千七百万人分とも言われる個人情報が選挙コンサルタント会社であるケンブリッジ・アナリティカ社に不正に横流しされ、その情報が大統領候補であったトランプ陣営に渡って、大統領選挙の政治広告に利用されたと報道が行われました。

 その内容が衝撃的だったのは、フェイスブック上からユーザーの政治的な信条や心理的な傾向が五千もの属性に基づいて細かく類型化、いわゆるプロファイリングされ、その中から、まだ意思の固まっていない、意見を変えられそうな人を抽出し、その有権者の感情につけ込むお勧め記事を効果的に打ち込んだとされています。例えば、トランプ支持者で、ネットの情報に流されやすい性格の人などと分類された者に集中的にフェイクニュースが投下され、個人の投票行動が操作されたと言われています。

 SNS上の「いいね」や、どんな写真や動画あるいは記事を何分何十秒見たかという膨大なデータから、個人の性格などをかなりの精度で予測できるとされています。例えば、フェイスブックで、何に「いいね」を押したかを収集、分析しただけで、そのユーザーが白人であるか黒人であるかを九五%の確率で、男性か女性であるかを九三%の確率で、民主党支持者であるか共和党支持者であるかを八五%の確率で、キリスト教信者であるかイスラム教信者であるかを八二%の確率で、正しく分類できるそうです。これは、山本龍彦先生の著書「AIと憲法」の中でも紹介されています。

 そして、こうしたデータ分析により個別具体化されたマイクロターゲティング広告の提供によって、個人の投票行動が操作され得る状態に置かれています。

 このケンブリッジ・アナリティカ社は、アメリカの大統領選挙だけではなく、二〇一六年のいわゆるブレグジット、英国のEU離脱にも関与したと言われており、こうした事実は、大量の個人データとAIの活用が国家の命運を左右する投票イベントの結果に影響を与えることを示唆しています。だからこそ、憲法の要求する選挙の公正性を担保するための適切な規制が必要で、それは、最高法規である憲法の改正手続である国民投票法にこそ不可欠だと考えます。

 このような問題意識から、私たちは、二〇一九年に、インターネット広告の規制や、いわゆるフェイクニュースの流布を禁じる努力義務を利用者に課した国民投票法の改正案を提出したところであります。

 なお、私たち国民民主党は、情報の自己決定権としてのデータ基本権の保障を憲法上に明記し、デジタル時代に即した人権保障のアップデートを提案しておりますが、これは、先ほど申し上げたように、個人データの類型化により個別最適化された政治広告によって、思想、良心の形成過程自体に影響を与えることが現実に可能になっているからであります。

 そこで、私たち国民民主党は、結果として形成された内心の思想、良心の自由のみならず、その形成プロセス自体の自由や自律性がゆがめられることのないよう、第十九条に、「思想及び良心並びにその形成の自由は、これを侵してはならない」と、「並びにその形成」を加える改正案を提案しています。

 いずれにしても、デジタル時代の到来、AI社会の進展によって、近代憲法が前提としてきた自律した個人の尊厳という近代立憲主義の中核価値自体が揺らぎ、有権者の主体的な判断や選挙の公正性といった民主主義のプロセスへの脅威が高まっているとの認識を持って議論を進めることが必要だと考えます。

 つまり、民意が操作され、民主主義そのものがハックされる可能性が出てきているということであります。しかも、ここに外国人による国民投票運動に対する寄附規制が入っていない場合には、こうした活動に対して外国勢力による影響を多大に受けてしまう、つまり、外国勢力によってある国の民主主義がハックされ得る可能性も出ていることに注視しなければなりません。

 そうした観点から、私たちの提案した国民投票法改正案には外国人寄附規制も導入しておりますので、併せて議論を深める必要があると考えます。

 最後に、改めて、二〇一六年のアメリカ大統領選挙において投票行動を操作したとされるケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏を当憲法審査会に呼んで話を聞くことを提案したいと思いますので、森会長の取り計らいをお願いしたいと思います。

 以上です。

森会長 玉木君の御提案につきましては、幹事会で協議をいたします。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 先ほどの質問で意を尽くしていない面がありましたので、若干時間をおかりしまして。

 私たちは、綱領で、憲法九条の完全実施に向けて、国民の多数の合意で自衛隊問題を段階的に解決していく方針を明確にしております。今改めるべきは、安保法制に基づく自衛隊の海外派兵体制を早急に直すこと、安保法制を廃止するところにある、このように考えております。

 もう一つ申し上げたいのは、私たち沖縄県民は、あの沖縄戦で地獄のような戦場を体験いたしました。この日本国民の戦場の体験を抜きにして憲法九条では平和は守れないとするのは歴史の歪曲であり、まさに憲法九条は、あのような戦争は二度と起こしてはいけないという日本国民の強い決意の下で作られた不戦の誓いであり、絶対に変えてはいけない世界に誇るべき宝だ、このように考えております。

 今日は、国民投票法についての議論のテーマが設定をされております。

 私たちは、国民が改憲を求めていない中、改憲の手続法である国民投票法を整備する必要はないという立場です。

 現行の国民投票法は、第一次安倍政権の二〇〇七年に、安倍首相が改憲への意欲を示す下で、与党の強行採決によって作られたものであります。安倍首相は、国会で法案を審議している最中に、国民投票法を憲法改正の契機にしたいとか、国民投票法の成立を強く期待するなどとあおり、国会の審議に介入をしました。この発言を契機に、自民党は、期限を区切って審議を推し進め、衆議院での強行採決に踏み切ったのです。そのため、現行法は、重大な問題が放置されたままの欠陥法となっています。

 私たちは、当初から、投票法が、国民の民意を酌み尽くし、正確に反映させるという根本において重大な問題があると指摘をしてきました。日弁連は、当時、最低投票率の問題や有料広告の問題など八つの問題点を挙げ、今も見直すべき重要な課題だと述べています。

 私は、三つの根本的な欠陥があると考えています。

 一つ目は、最低投票率の規定がないことです。

 現行法は、有効投票数の過半数の賛成により、改憲案について国民の承認があったものとすると規定をしております。投票率が四〇%や五〇%の場合、有権者の二割台の賛成しか得られなくても憲法改正ができることになります。これでは、国民の意思を十分に反映しているとは到底言えません。

 最低投票率については、制定時の審議でも、提出者から、低い賛成率で憲法が変えられるのはおかしいと思うという答弁もありました。この間の憲法審査会でも、与党の委員からも、真摯に考えた方がいいという指摘が出た問題です。

 次に、国民の自由な意見表明を不当に制限していることです。

 国民投票法では、何よりも、国民による自由で広範な意見表明と議論こそ重要です。ところが、現行法は、公務員や教員について、地位を利用した国民投票運動を禁止しており、その定義は極めて曖昧です。にもかかわらず、対象は、大学の教員から幼稚園の先生に至るまで、およそ教育に携わる者全てに及びます。このような不当な投票運動の制限は、公務員や教員だけにとどまらず、国民全体の意見表明や運動を萎縮させることにつながります。

 三つ目に、改憲案に対する広告や賛否の意見表明の仕組みが公平公正なものとなっていないことです。

 現行法の下では、資金力の多い方がテレビなどの有料広告の大部分を買い占めてしまうおそれが繰り返し指摘されています。しかし、それに対する実効性のある措置はなく、憲法が金で買われるという事態になりかねません。

 改憲案の広報を担う広報協議会も、委員は国会の各会派の所属議員数の比率で割り当てられることになっています。そのため、改憲賛成派が圧倒的多数を占め、広報や無料の広告など、都合よく運営されかねません。これらの根本問題は、法律制定当時、参議院の十八項目に及ぶ附帯決議でも指摘されたものです。

 昨年、公選法並びの七項目の改定案が賛成多数で可決をされました。この法律の附則四条には、有料広告の在り方などの問題について、三年をめどに検討を加える、必要な措置を講ずると規定をしています。

 私たちは、この規定をもって、欠陥を放置したままにすることは許されないとして反対をしました。参議院では、この附則四条の解釈が大きな議論となり、その中で、この規定について、「国会が、同項に規定する措置が講ぜられるまでの間において、日本国憲法の改正案の原案について審議し、日本国憲法の改正の発議をすることを妨げるものと解してはならない。」とする修正案が提出されました。しかし、与党も含めて、この修正案をわざわざ否決して、衆議院の法案を成立させたのです。

 国民投票法を問題にするのであれば、この附則四条に基づき、根本的な欠陥について徹底的に議論するというのが筋ではありませんか。ところが、新藤幹事から、投票環境を整備するためなどとして、新たな公選法並びの改定をまず通し、連休明けには安全保障の議論をしたいという意向も報道されてありますが、これは重大であります。

 根本的欠陥を放置したまま、形だけ整えて終わりにし、九条改憲の議論に進もうということなど断じて容認できないと申し上げて、私の発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 本日は、国民投票運動における広告放送について、基本的な考え方を申し述べたいと思います。

 結論から申し上げますと、これは、公平性の原則を踏まえますと、憲法改正項目に対する賛否両論が、報道機関において可能な限り同じ扱いを受ける必要があると考えます。

 とりわけインターネットの領域では、新聞やテレビよりも、二点について注意が必要です。一つは、SNSなどの媒体により政党の広告などが引用されて、個人や団体から様々な意見等が、根拠あるなしにかかわりなく広範に拡散していくことを想定しなければいけません。二つ目は、国内外からのサイバー攻撃にさらされる危険性が常にあるということです。

 本件については、国民投票法が制定された当時は、基本的に規制は最小限という方向性が示されています。しかしながら、その後、当時前提としていた民放連の自主規制について、民放連そのものから、CM量の自主規制は行わないといった趣旨の発言がありました。

 また、英国におけるEU離脱の国民投票があり、米国大統領選挙におけるロシアからのサイバー攻撃があり、我が国でも大阪都構想の住民投票が行われ、当初の議論から事情変更があったとの指摘もあります。

 問題の本質は、一方で報道の自由や表現の自由などの要請があり、他方では公平性の原則、公正性の原則の要請があり、これらの調整をいかに図るかといったところにあります。

 こうした中で、私は、基本的には、法的規制にはできるだけ頼らずに、報道機関などの自主的取組を重視すべきだと考えます。

 確かに、先ほど触れた民放連の発言がありますが、これはCMの量に関して自主規制を行わないということだと解釈をしています。メディアはあくまでCMの受入れ側であり、賛成、反対それぞれのCMの量、すなわち時間などを実務的に調整することは困難だと思います。むしろ、政党などが自主的に申し合わせて、上限を設定するなどで対応する方が現実的ではないでしょうか。もちろん、こうした自主的取組を後押しするための訓示規定など、法的に規定することは検討に値すると考えます。

 同時に、国民投票運動の資金面で適切な規制を設け、収支の透明性を図ることにより、放送広告における賛否両方の公平性に資すると考えます。資金力が大きい方がより多くの宣伝ができるような野方図な自由は、制限すべきだと考えます。

 具体的には、国民運動等に対する支出や寄附行為の金額については一定の上限を課すべきです。また、実際に行われる支出行為等を事後的に検証可能にするために、収支の透明化を図り、支出する者の登録並びに収支報告書の提出を義務化することも求められます。

 なお、外国人が国民投票に及ぼし得る影響については、当然、監視の目を光らせるべきです。したがって、外国人からの寄附や国籍等が不明となる匿名寄附は全面禁止すべきであります。

 他方、サイバー攻撃については、事の性質上、規制が事後的なものにならざるを得ないと思います。米国大統領選もそうですが、現在のウクライナ戦争でも、ロシアがサイバー攻撃により偽情報を流し、画像なども修整しています。素人考えですが、対策としては、まず攻撃があったことを早急に把握する能力が前提となります。その上で、権威ある機関が、あるいは信用ある機関が偽情報を公表し、これを説明しなければならないのでしょう。

 昨日、内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンターに本件について問い合わせたところ、我々は政府機関の対策をやっているだけだ、選挙のことなら総務省がやっているのじゃないかと言われ、今度は総務省のサイバーセキュリティ統括官に問い合わせたら、我々は情報関連産業の対策をやっているだけだ、むしろ内閣官房がやっているのではないかと、久しぶりに古典的なたらい回しに遭いました。体制を早急に構築すべきではないでしょうか。

 最後に、国民投票広報協議会の役割が大きいと思います。

 国民投票運動における自由な意見表明や討論は否定すべきではないですし、インターネット上では現実的に制御不能です。しかし、やはり憲法を国民の手で決定することは民主主義の基本中の基本であり、極めて重たい行為です。事実無根の議論や扇情的な表現、偽情報などが飛び交うことによって、国民の正常な意見形成が損なわれることは絶対に避けなければなりません。

 こうした意味で、責任ある政党によって構成される国民投票広報協議会が真実の最後のとりでとして機能すべきだと考えます。インターネットを監視する部署も新設すべきかもしれませんし、サイバー攻撃への対策も本協議会で実施すべきではないでしょうか。

 もっと言えば、言論の市場において悪貨が良貨を駆逐しないように、超党派的にインターネットや公共のメディアを通して国民に正確な事実をより多く、広く発信し、問題ある情報等については、反論、説明ができるような仕組みを考えるべきでしょう。

 以上、有志の会の広告放送の規制に関する意見といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札は戻していただくようにお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。

 本日は、国民投票法を中心とした議論ということで、CM規制などについて議論が行われているところであります。

 私からは、今後の進め方について是非提案をさせていただきたいと思います。それは、緊急事態の議論とこの国民投票法の議論を是非並行して議論を進めていただきたいということであります。

 緊急事態につきましては、もう既に数回の議論がなされ、かなり論点が出尽くした感があります。前回、新藤幹事より一定の整理が示されたところでありますけれども、まさに、大規模自然災害、テロ・内乱、感染症の蔓延、あるいは有事・安全保障、こうした四つを緊急事態の対象として規定をすること、さらには国会議員の任期延長について何らかの規定が必要であること、これについては多くの会派の共通の理解が得られたのではないかというふうに私自身も理解をしております。緊急事態についてのこれまでの議論、論点を更に幹事において整理をしていただいて、改めてこの議論を深めていくべきだというふうに思います。

 そして、国民投票法につきましても、これは以前から議論が進められているところでありまして、まさに今日、論点の指摘のあったCM規制であり、またSNSへの対応であり、さらには外国人への対応など、様々な論点、これまで積み重ねられてきたものがあるというふうに思います。

 そこで、この緊急事態についての議論と国民投票法についての議論を並行的に進めていくために、それぞれ小委員会を設けて、そこで議論、論点を深めていくべきだというふうに考えております。

 この憲法審査会がほぼ毎週開かれるようになって、活発に議論が行われることは大きな前進だと思いますけれども、まさに毎回、各党がそれぞれの主張を繰り返して、いわば言いっ放しのような形になる、これは本当にそれぞれの自己満足にしかなりません。我々としては、論点が拡散していくのではなく、それまでの議論の積み重ねを整理していくこと、そしてその上で議論を深めて結論を得るという、その取組が非常に重要だというふうに思います。その意味で、まずは緊急事態、国民投票法につきまして、小委員会を設けて議論を深めていくことが重要だというふうに思います。

 その上で、ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして、我々の憲法九条の議論についても議論をしていくことは極めて重要だというふうに思います。

 私が申し上げたいのは、これまでの二つの論点、緊急事態、国民投票法については、この審査会とは別に小委員会を設けて、そこで議論を深めて、その上でまたこの審査会本体に戻していただくということが大事で、進めていくべきではないか。それと併せて、この審査会本体では九条の議論を進めていくということを是非御提案をしたいというふうに思います。

 以上です。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 約二年ぶりにこの審査会で発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 国民投票法の改正について意見を述べます。

 そもそも、憲法改正に係る国民投票は、間接民主制を原則とする我が国の政治体制において、直接民主制を実現する数少ない例外の一つであります。仮に行われるとすれば、主権者たる国民にとって大変貴重な機会となります。しかも、国民投票の対象となるのは我が国の最高法規である憲法改正案への賛否であって、その結果が国家の在り方や国民の権利を左右する極めて重要な機会でもあります。

 こうした国民投票法の本質に鑑み、私は、同僚議員らとともに、かつて、投票権者たる国民にとって必要かつ有益な二つの仕組みを盛り込んだ改正案を作り、二年前にこの場で概略を説明させていただきました。残念ながら、この二年間、こうした改正案についての議論は進まなかったようですが、この間に立憲民主党内では議論を進めてまいりました。

 バージョンアップされた国民投票法改正案の二つの仕組みについて、御説明したいと思います。

 第一に、多種多様で正確な情報を得た上で賛否の意思を形成できる仕組みです。

 一昔前までは、情報の送り手の表現の自由を保護し、情報の流通量、供給量を増やし、情報の受け手の知る権利に応えることが重視されていました。しかし、インターネットが発展、普及し、SNSの利用が一般化したことによって、現在では供給される情報が過剰となっています。

 その中で、いかに情報の受け手の関心と時間を引きつけるかがCM業界にとって死活問題となる、いわゆるアテンションエコノミーという状況が生まれています。アテンションを奪い合う競争が激化する中で、CM事業者に自主規制を求めることは困難です。このままでは、受け手の関心を引きつける扇情的なCMや、CM事業者にとって経営的なメリットが大きい資金力のあるスポンサーのCMが増えて、国民が多種多様で正確な情報を得た上で憲法改正の賛否の意思を形成することが困難になると思われます。

 そこで、賛否の勧誘のための放送CMについては、主体を問わず、かつ、現行法の投票日前の二週間に限らず、国民投票運動の全期間にわたって禁止します。一方、賛否の意見表明のためのCMについては、政党等については同様に禁止します。それ以外の主体については、表現の自由の観点から認めます。

 他方、現行法に規定のないネットCMについては、政党等については放送CMと同様の規制を設けるとともに、ネットCMが適正に行われるよう、国民投票広報協議会でガイドラインを定めます。先ほど玉木委員や國重委員もおっしゃっていましたが、ユーザーの関心に合わせてアテンションを得やすいコンテンツを選択的に送るマイクロターゲティングという手法により、フィルターバブルと呼ばれる閉鎖的な情報空間が生まれやすいとの指摘があるためです。

 また、資金力の大小によってCM量に格差が生じることを防ぐため、政党等以外の団体については、国民投票運動等のための支出額が一千万円を超える場合に収支報告書の提出を課し、その公表について定めるとともに、支出金額の上限を五億円とします。当該団体への外国人等からの資金援助を禁止する規定も置きます。

 第二に、落ち着いた物理的、精神的環境の中で平穏かつ積極的に投票できる仕組みについて述べます。

 まず、近年問題となっているネット上の匿名による誹謗中傷やヘイトスピーチ、フェイクニュースなどを防ぐため、国民投票運動等に関してネット上で情報発信する者について、ネットの適正利用に関する努力義務を課すとともに、国民投票運動等のための文書図画を頒布する際には、電子メールアドレス等の画面表示を義務づけます。また、国民が国民投票になるべく集中できる環境を整えるため、投票日における国民投票運動を禁止するとともに、国民投票運動の期間と国政選挙の選挙運動期間が重ならないようにします。

 以上のとおり、立憲民主党が提案する国民投票法改正案は、法制定時には想定されていなかった事態を直視し、その解決策を盛り込んだものであります。これは国民にとって今こそまさに必要であり有益なものであると確信しております。憲法改正案を国民に発議する前に、まずはこの法案を当審査会で議論し、成案を得るべきであるということを強く申し上げ、私の意見陳述を終わります。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 私も、今日は国民投票法の問題について若干意見を述べたいと思います。

 まず、公選法、公職選挙法並びの改正をしなければならない点が幾つかございます。令和元年に公選法で改正されました開票立会人の選任に関する規定、そしてもう一つは、投票立会人の選任要件の緩和に関する規定でございます。さらに、今年、令和四年の公職選挙法の改正で、FM放送でも政見放送ができるようにする、これが公選法の方では改正がなされました。

 この三つの項目とも、投票環境の向上を図るということで共通している法改正でございまして、公職選挙法の改正の方は、衆参とも倫選特の方では全会一致で改正がなされております。これについて、当然のことながら、同じ投票でございます、国民投票法の改正の方にも反映をしていかなければなりません。

 私は、一つ提案でございますけれども、これからも投票利便の向上のためにこうした公選法の改正というのは続いてまいります。もし、倫選特の方で全会一致で、それは必要だねということで理解が得られるような改正であるならば、国民投票法の改正については、特段の事情がない限り、会長提案で、ほかの委員会でいいますと委員長提案ですけれども、会長提案で速やかに国民投票法の改正をしていくという方法が適切ではないかというふうに思いますので、是非検討をしていただきたいというふうに思っております。

 もう一点、これはCM規制に関して述べたいと思います。

 現行のCM規制は、もう皆様御承知のとおり、国民投票法の百五条で、何人も、国民投票の期日前十四日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、放送事業者の放送設備を使用して、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることはできない、このように規定をされています。これだけなんですね。CM規制に対する現行法上の規定というのはこの規定だけでございます。

 詳しくは述べませんけれども、表現の自由の保障と投票の公平公正の確保とのバランスを取るという観点から、最終的に、言論の自由市場で淘汰する時間的余裕がない投票期日直前十四日間について、国民投票運動のための広告放送を禁止するというふうにしたわけでございます。

 しかしながら、今日も多くの皆様から御意見ございました、我が党の國重委員からも述べたとおりでございますけれども、今や、テレビ、ラジオを通した広告をはるかにネット広告が凌駕をしている、このような時代になっているわけでございます。

 そういう中で、特にネット広告に対する規制をどうしていくのかということについては、これはしっかりと議論をする必要があると私も思っております。ただ、この問題は、テレビ、ラジオ放送とネットという通信との質的な違いというのは非常に大きいと思います。同じような規制だけで済むとも思えないんです。

 今、デジタル社会というのが急速に進展をする中で、我々の経済の在り方、さらには、社会のありよう、生活のありよう、こうしたものも急速に変化をしてきている時代の中で、これはこれで非常に重要なことです、デジタル化というのはやはり進めていく必要があると思いますが、一方で、先ほど國重委員からお話をしましたとおり、我々の憲法の価値、自由、民主主義という憲法価値に対する大きな影響も出てきているということも否めない事実だというふうに思っております。

 また詳しくは意見を述べたいと思いますけれども、いずれにしても、単に広告というエリアだけの話に限らず、デジタル化の急速な進展とネットによる情報発信と民主主義との関係、また人権との関係、これをどう考えていくのか、私は、ここは一定のルールというものが広告に限らず必要な時代になっていると思うんですね。

 まさしく、今、EUではそのことは非常に議論が進んでいるわけでございまして、このことも参考にしながら、是非、ネットによる情報の発信、これはこれで非常に大事です。大事ですが、一方で、そのルールというものを憲法価値との関係でどう考えていくのかということをしっかり議論した上で、その上でこのCM規制の問題についても議論をしていく必要があるなというふうに考えております。今後更に議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上です。

足立委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の足立康史でございます。

 私も国民投票法についても申し上げたいのですが、その前に、先ほど馬場幹事から赤嶺委員に対して八つの御質問を申し上げましたが、一問も御回答いただけませんでした。ちょっと分けて、具体的にお聞きをしていきたいと思います。

 まず最初に、七日の集会で志位委員長が、急迫不正の侵略が起きた場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を用いて、国民の命と日本の主権を守り抜くと胸を張られました。問題は、このあらゆる手段についてです。先ほど、我が党の馬場幹事から、あらゆる手段とは何を想定されているのかと御質問しましたが、お答えがなかったです。

 一九九四年の日本共産党の党大会決議では、自主的自警組織など憲法九条と矛盾しない自衛措置を取るんだ、こうおっしゃいました。それで、自主的自警組織は何かと伺っても、それにお答えがありませんでした。

 結局、日本共産党は、一般国民に火炎瓶や武器を手に取って戦えとおっしゃっている以外に想定できないんですが、もしそうであれば、日本共産党が破防法の監視対象になっていることの理由も極めて合理的に理解できるんですが、赤嶺委員に、明確に、自衛隊以外のあらゆる手段とは何なのか、その一点で結構ですから、お答えください。

赤嶺委員 デマを言うにもほどがあるという感じの質問でありますが、私たちを破防法の対象にして何十年も調査をして、その証拠の一つさえ見当たらない、今の政府のやり方そのものを自由と民主主義の立場から批判していくべきだと思います。

 それから、申し上げましたように、私たちは九条に基づいて戦力は持たない、戦争は放棄する、この立場であります。したがって、平和外交が一番大事だ。特に、今、ASEANが、アメリカのベトナム侵略戦争の頃に東南アジアが二つに分かれていがみ合い、対立し、武力紛争が起きていた時代から始まって、東南アジアの平和の共同体をつくって東南アジアでの平和を維持しているということを大いに参考にしております。そういう立場を求めていく、どんな紛争も戦争に結びつけてはならないというのは、これはもう確固とした私たちの立場であります。

 それで、個別的自衛権を行使する事態というのは非常に具体的な事態ですから、これは、論者もおっしゃっているように、万が一に起きたらどうするかというような議論でありますから、まさに理論問題であり、万が一に起きることを今からあらかじめ想定しておくことは、今の段階ではできないのは当然ではないでしょうか。

 以上です。

足立委員 全くお答えになりませんでした。

 私は、こうしたことをしっかりと御説明できない政党から、維新の会が何かゆがめているとか、先ほどそういう非難をされましたが、全く逆でありまして、私たちは、こういう日本共産党のような政党と選挙協力をしている勢力とは一切政治を共にするつもりはありませんので、改めて宣言をしておきたいと思います。

 最後に、あともう十秒しかありませんが、民放連は既に考査ガイドラインを作られています。量的には規制できないが、規制すべきはもうされているんですね。だから、私たちは、あとやるべきは、公選法の積み残しの三項目、これをしっかりと、直ちに公選法並びの国民投票法改正をすれば、まさにいつでも十分な憲法改正の国民投票ができるという立場であります。

 九条、それから緊急事態条項、この二つについては党として早急にイメージをつくり上げていく、こう申し上げて、発言とさせていただきます。

船田委員 会長、ありがとうございます。

 自民党の船田元でございます。

 私は、平成十九年のこの国民投票法の成立に関わった一人でございまして、その立場からちょっとお話をさせていただきたいと思っています。

 確かに、テレビCMのことにつきましては、民放連の皆さんがちょっと前と言葉を変えてしまった、態度を変えてしまったということは、やや残念でございます。しかしながら、このテレビCMの扱いについては、余り民放連がどう言ったこう言ったということを云々するのはもうやめにした方がいいだろうというふうに思っております。

 確かに、国民投票運動というのは、なるべく国民の皆さんに憲法改正について自由に、そして活発に議論をしていただこうということで、原則自由ということにいたしました。もちろん、組織的多数人買収であるとか、裁判官とか警察官などの特定公務員については運動はしては困る、それから、教員や公務員の地位利用も困る、そういった最低限の制限はつくりましたけれども、原則自由であるということです。

 ただ、テレビCMにおいて、やはり扇情的なCMを流す、そういったことがあった場合に、自由市場において淘汰されるというのは時間的に、時間がかかりますので、投票日前二週間というのはテレビCMを禁止したということで、これはある程度防げるというふうに思います。

 それから、賛否のバランスが崩れるという問題につきましては、最低限、テレビ局においてはいわゆるCM考査というのがありますので、そこで、バランスを完全に取ることはできないとしても、極端な状況は私は是正できるはずであるというふうに思っておりますし、更に言えば、広報協議会が衆参一緒にできるわけでございますので、この広報協議会がもっと力を持って、そしてバランスをできるだけ取るようにマスコミに勧告をする、あるいは是正の措置を求めるというような、新たな役割を持たせるということで私は十分であるというふうに思っています。

 ネットの取扱いについて、大変これも難しいことですが、これも先ほど申し上げましたように、ネット上においての広告や意見の表明においても、言論の自由市場で淘汰されるはずだと私は思っております。また、余りに極端な、賛否が分かれるような、賛否のバランスが崩れるような状況は、これはやはり国民の皆さんの常識とか良識によって批判にさらされることは当然でありますので、そういうことも私は期待をしております。

 ただ、ネット広告においては、テレビCMの二週間規制と同じように、投票日前二週間はそれを行わないというようなことは必要でありますし、これまた広報協議会におきまして監視をしていくということで私は十分である、このように思っております。

 ただ、広告とSNS上の個人の意見の表明、これが非常に最近曖昧になっております。例えばアフィリエイト広告であるとか、あるいはステルスマーケティングというようなことで、実は、個人の意見を述べているような状況なのに、どうもこれは広告になっている、こういったケースが非常に多いのでございますので、この辺りはやはり気をつけて、広報協議会等でしっかりと監視をする、そういったことは必要である、このように思っておる次第でございます。

 なお、国民投票と国政選挙を同時に行うかどうかということの議論もございました。

 私は、もちろんできないことはないと思っておりますけれども、やはり、人を選ぶあるいは政党を選ぶ、政権を選ぶ選挙と憲法をどうするかということを同時に議論するというのは非常に問題がある、こう思っております。

 それから、同時に、国民投票運動にかこつけて選挙運動を行ってしまう、こういったケースも出てくる可能性があります。現場は大混乱すると思いますので、私は、これは別々に行うべきであるということを付言しておきたいと思います。

 以上です。

赤嶺委員 今日は発言が多くなっておりますけれども、やむを得ず数多く発言する機会になりました。

 私たちは、今の、現下のウクライナ情勢の下で、例えば、核共有論とか、敵基地攻撃能力論とか、非核三原則の見直しとか、そういう議論こそが日本を戦火に巻き込む危険な道だと思っています。

 憲法九条を生かして、北東アジア、東アジアに平和をどうつくっていくのか。中国の台湾への軍事威嚇も許されません。北朝鮮のミサイル発射も許されません。しかし、軍事に軍事で対抗していくということは、一瞬にして戦火が起こった場合に引き返すことができなくなり、私たち国民が大きな犠牲に巻き込まれることになります。

 日本共産党は、前に維新の方からも紹介がありましたが、結党百年になります。戦争反対を貫いて、いかなる弾圧にも屈せず頑張ってきた党として、憲法九条を守り抜いて頑張りたい。火炎瓶だとか、我が党の方針でもなかったような、そういうことを持ち出して、国民に火炎瓶を持たすのかというものは全く当たらないし、デマ攻撃だということを申し上げておきたいと思います。

新垣委員 会長、ありがとうございます。

 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 本日のテーマであります国民投票法について、国民主権の視点から意見を申し上げます。

 国の在り方を最終的に決めるのは国民という国民主権からすれば、国民こそが国の在り方を決める最終的な権利を持ちます。その意味で、憲法改正国民投票でも、国民の意思が適切に反映されなければなりません。昨年六月に憲法改正国民投票法が改正されましたが、国民主権という視点から見れば、まだまだ多くの課題を抱えていると考えます。これらの解決なくして、憲法改正発議に踏み込むべきではないと考えております。

 まずは、外国資本の規制が必要だということを申し上げたいと思います。

 先日の憲法審査会でも、二〇一六年のブレグジットやアメリカ大統領に関して、先ほど玉木委員からいろいろありましたが、ケンブリッジ・アナリティカ社が投票に影響を与えた問題が指摘をされております。

 憲法改正国民投票に外国政府や外国資金が影響を与える状況への対応がなされていないのであれば、国の在り方を決めるのは、国民主権の観点から大問題であります。外国資本による自衛隊基地や在日米軍基地周辺の土地取得を問題視し、二〇二一年六月に土地規制法が制定されましたが、まさに主権の行使である憲法改正国民投票に際しても、外国政府や外国資本の影響を受けないよう、法的な規制が必要だと考えております。

 次に、在外投票における投票環境と利便性の向上について意見を述べます。

 昨年の衆議院選挙でも、外国で生活する日本人が投票できないという状況が更に明確になりました。

 例えば、イタリア在住の方が往復八時間かけて泊まりがけで投票所であるローマ大使館に行き、費用が二万六千円かかったという事例がNHKで紹介されています。このNHKの記事では、約百万人とされる海外在住の日本人の投票率は僅か二%程度しかないと報じられております。

 海外で生活する百万人近い有権者が投票権を行使できない状況が放置されているのは、極めて問題です。二〇〇五年九月に最高裁判所が、外国に住んでいる日本人が投票できない状況は憲法違反であると判示していることからも、外国にいる日本人の投票環境の改善は待ったなしであります。

 また、コロナ禍で行われた昨年の衆議院選挙では、在外公館投票の期間の短さや、航空便の減便で郵便投票が間に合わないなどといった問題も指摘され、外国にいる日本人からは多くの不満の声が上がっております。

 昨年六月、コロナ対策を名目に、郵便特例法が成立をしました。コロナ感染等で投票できない人がいることが問題だとして特例法を成立させたのであれば、国民投票法においても同様の法改正の必要性について議論されるべきだと考えます。

 昨年の国民投票法改正をめぐる本審査会の議事録を拝読しましたが、議論が生煮えで、審議不十分のまま採決されたとの印象を強く受けております。

 例えば、昨年の法改正で、天災などを理由として、繰延べ投票の告示期間が五日前から二日前に短縮されました。首長や議員の不在期間をなくすため当選人を早く確定させる必要性は理解できますが、憲法改正のための国民投票では、できる限り多くの主権者が意思表示できることに主眼を置くべきではないかと思っております。

 投票という概念において、公職選挙法といわゆる改憲手続法の仕組みをそろえることは、一見合理的に見えるかもしれません。しかし、人を選ぶ選挙と憲法改正の是非を問う国民投票法では、制度の目的、趣旨に根本的な違いがあるのは明らかであります。そうであれば、昨年の国民投票法の改正も、本当に投票環境や利便性の向上に資するのかどうか、再度検証する余地が残されていると思います。

 国民の手に憲法を取り戻すために憲法改正が必要だと主張するのであれば、国民の声を直接聞くために行う国民投票は、当然、公正公平な制度設計の下で実施されるべきであります。

 国民主権の実現である憲法改正国民投票制度についても、結論ありきの拙速な議論ではなく、十分な検討が必要であることを強調し、意見とさせていただきます。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いにつきましては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応を決めたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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