衆議院

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第12号 令和4年5月12日(木曜日)

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令和四年五月十二日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      國場幸之助君    島尻安伊子君

      下村 博文君    杉田 水脈君

      中西 健治君    西村 康稔君

      平沼正二郎君    船田  元君

      細野 豪志君    松本 剛明君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      山本 左近君    山本 有二君

      荒井  優君    新垣 邦男君

      近藤 昭一君    櫻井  周君

      野田 佳彦君    太  栄志君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    足立 康史君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      國重  徹君    中野 洋昌君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     島尻安伊子君

  稲田 朋美君     杉田 水脈君

  細野 豪志君     平沼正二郎君

  山田 賢司君     山本 左近君

  中川 正春君     荒井  優君

同日

 辞任         補欠選任

  島尻安伊子君     伊藤信太郎君

  杉田 水脈君     稲田 朋美君

  平沼正二郎君     細野 豪志君

  山本 左近君     山田 賢司君

  荒井  優君     中川 正春君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 これまでの討議では、日本国憲法に規定のない緊急事態条項について議論を重ねてまいりました。

 本日は、国を形成する最も根幹の事項でありながら憲法に規定がない、国防規定について私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 国の最大の責務は、国民の生命と財産、領土や主権を守り抜くことにあります。その最も根幹的な国防規定について議論をし、憲法に反映させることは、緊急事態条項の整備と併せ、最優先で取り組むべき課題と考えています。

 その大前提となるのは、日本国憲法の三大原理です。基本的人権の尊重、国民主権、平和主義の下、我が国は、戦後の荒廃を乗り越えて、今日の自由で安全な社会を築き、経済発展により豊かな国民生活を実現してきました。日本国憲法は既に国民に定着しており、この三大原理は将来とも受け継いでいかなくてはなりません。

 その上で議論しなければならないのは、平和を維持するための安全保障の問題であり、とりわけ、いかなるときも国民と国を守り抜くための国防の在り方だと思っています。

 日本国憲法にはなぜ国防規定が盛り込まれなかったのか。七十五年前の日本国憲法施行に至る経過を顧みれば、占領下という主権が著しく制限された状態で制定されており、武装解除がなされ、その能力を保持していない状態で、国防規定を定めようがなかったということなのでしょうか。

 憲法の制定時には占領軍が進駐しており、また、国際社会は、一九四五年に発足したばかりの国連による国際平和の維持に期待をしておりました。前文にある、「日本国民は、」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」というくだりは、まさにこの精神を反映したものと考えられます。

 しかし、国連発足直後から、国際社会は国益と国益がぶつかり合う場となり、東西冷戦構造の下、拒否権を行使できる五大国による国連安保理は機能不全に陥り、日本国憲法が理想とした国際平和秩序の維持は実現しませんでした。

 このことはウクライナの例を見ても明らかです。一九九四年、アメリカ、イギリス、ロシアとともに、ウクライナは、非核化と引換えに独立や領土の保全を約束するブダペスト覚書に署名をし、保有する核兵器を放棄しました。また、専守防衛を掲げ、国家的な財政難もあり、独立後、軍備を縮小させてきたことも事実です。あろうことか、安全を保障した当事国であるロシアが一方的にウクライナを侵略するという今回の国際約束違反が発生しても、この野蛮な行為をどの国も止めることができません。

 そして、このようなときにこそ国際平和維持を行うべき国連は、拒否権を持つ常任理事国であるロシアの侵略行為を全く止めることができない。国連は機能不全だというゼレンスキー大統領の主張は、国連の限界を露呈したものだと思います。

 国の防衛は国際平和秩序のみに頼るものではなく、自分の国は自分で守るという基本をないがしろにしてはいけません。この基本に立ち返るならば、我が国は、GHQが引き揚げ、主権を回復した昭和二十七年時点で、国防規定と緊急事態条項を追加整備した上で、国民投票を実施し、憲法改正を行うべきだったのではないか、私はそう考えているんです。

 日本国憲法において、安全保障に関する規定は九条のみです。その第一項は戦争の放棄、第二項は戦力の不保持と交戦権の否認を規定しています。専守防衛、徹底した平和主義を示すこの規定は、今後も大切にしていかなくてはなりません。

 この一項の戦争の放棄は、いわゆる侵略戦争の放棄を示すものであり、一九二八年のパリ不戦条約に始まり、一九四一年の大西洋憲章、一九四三年のカイロ宣言を経て、一九四五年の国連憲章に至る国際的な平和主義の概念であることは周知のとおりであります。そもそも、今や戦争は国際法で違法とされており、武力の行使ができるのは、個別又は集団的な自衛権を行使する場合、あるいは国連による集団安全保障措置による場合に限られております。九条一項は、世界平和の概念を反映させたものであると言えます。

 一方、九条の二項は、我が国独自の徹底した平和主義の精神を表したものであり、専守防衛とは、この精神の下で受動的な防衛戦略の姿勢を示したものであります。

 我が国は、このような憲法九条一項、二項の下で、どの国も保持していると認められる自衛権を行使するために、その実力組織として自衛隊を保持していることになります。独立国家としての国民を守る実力組織として、自衛隊は、一九五四年の創設以来、日々の国防、災害時の活動などにおける献身的な努力で、国民の強い信頼を得ています。

 一方、自衛隊が合憲であると言い切る憲法学者は二割程度しかいないとの指摘もあります。国会の中にも、自衛隊を違憲の存在だと主張する政党がまだあります。いざというときの備えとして現実に存在し、その役割が期待されていながら、国の基本法である憲法に位置づけられていない状態をいつまで放置しておくのでしょうか。

 ましてや、近年、中国の軍事力の増強、台湾や日本周辺での活動強化、北朝鮮による核やミサイル開発の進展、宇宙、サイバー空間など、新たな安全保障上の脅威が増大しています。さらに、ロシアによるウクライナ侵略は対岸の火事ではなく、国の防衛体制の充実は喫緊の課題になっています。

 このような安全保障環境の変化に対応するため、二〇一五年、我が国は、平和安全法制を整備し、存立危機事態における集団的自衛権の限定行使を可能としました。いかなるときも国民を守り抜くための防衛体制の整備は必須であり、必要かつ十分な準備を行うことに異を唱える方はいないはずです。しかし、国民がその必要性を認め、法律や予算でここまで整備を進めている自衛隊は、基本法である憲法に位置づけられておらず、併せて国防に関する規定も憲法に何らないことは、およそ不自然なことではないでしょうか。

 なお、憲法改正を行うことが具体的な防衛体制の拡充に直接影響を与えるとは考えておりません。それは、防衛三文書と言われる国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防などの政策と関連防衛予算によって整備されるものです。

 私たち自民党が提案している国防規定と自衛隊を明記する憲法改正は、我が国の法体系の整合性を確保し、七十五年前に占領下で制定された憲法を独立国家として完成させようとするものであります。この完成は、国民主権の最大の発露である憲法改正国民投票によって実現するものであり、これまで一度も行っていない日本国憲法の改正は何としても実現させなければならない、このように考えております。

 本日は、憲法九条改正の意義と必要性について、私の思うところを述べさせていただきました。この重要な論点については、是非とも各党の御見解も伺いたいと願っております。今後、更に議論を深めたいとも考えております。

 審査会に先立つ幹事会において、来週の定例日の開催を提案いたしました。具体的な討議内容については、筆頭間協議を行い、詰めてまいります。委員間の御理解と御協力をよろしくお願いいたします。

 以上です。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 いきなり、冒頭、九条の話が出てまいりました。

 御指摘のように、安全保障についてもう一度ここで立ち止まって考えることは私も必要だと思いますし、防衛力も必要に応じて整備していくことは必要だと思いますが、しかし、それが直ちに憲法改正に結びつくのかというところに、非常に違和感を覚えます。

 多くの国民の方に自衛隊を憲法に明記することについて聞くと、賛成という方が多いんですが、しかし、これは法律の意味が変わってくるんですね。自民党案のように、九条一項、二項を残した上で九条の二を更に設けることで、再び、自衛隊は何をする組織なのか、もうちょっと言うと、フルスペックの集団的自衛権も行使できるのかどうか、こういう議論が再燃をします。憲法十三条との関係で、フルスペックの集団的自衛権というのは認められない、問題があるというふうに私は思います。

 また、自衛隊を違憲だと言う人がいるとおっしゃいますが、そういうことを言う人はほとんどいません。国民の間にもう自衛隊は定着しているわけですから、そのことのために憲法を改正するというのもまた、私は違うと思うんです。

 世論調査をしても、憲法改正の優先順位は高くないんですね。今はやはり景気とか物価とか生活が多いんですよ。憲法改正に賛成ですかというと、漠然と賛成と、そういう方は多いんですが、それは最優先の課題かと聞くと、順位がぐっと下がってくるわけです。

 ですから、こんな国論を二分するような、国民を分断するような、まさにアメリカのトランプとバイデンのように二分するような話を、本当に今ここで大騒ぎしてやるんですかと思います。

 そして、否決されたら、これはどうなんですか。安倍さんは、自衛隊を、合憲ということをきちんと示すためにと言っていますが、これは否決されたら大問題になりますよね。それこそ違憲論が逆に出てきてしまいますから、これはやはり慎重に議論すべきだと思います。

 また、こうした議論の中で、専守防衛の見直しなどという話が新聞紙上に出てくるんですが、専守防衛の見直しというのは、ちょっと言葉の、あり得ないと思うんですね。専守防衛を見直すということは先制攻撃を容認するということにつながりますから、これはまさに国際法違反ですよね。先制攻撃をするということは先にこっちが手を出すということですから、国連違反、国際法違反になりますし、もちろん九条違反になりますから、こうした専守防衛の見直しというのは、安易に言葉が出てくること自体、これはまた問題だと思います。

 専守防衛については、世論調査を見ても、多数の国民、七割近く、七割以上の国民が守るべきと言っていますから、そうした議論は、また、この九条に絡めて出てくるというのも、到底容認はできません。きちんとした議論をするのはいいと思うんです。だから、こういった専守防衛を見直すべきだというような間違った議論を正すための議論をしっかりやっていきたいし、九条があるから日本が守れないわけじゃありません。九条を使って日本をしっかり守ることができるというふうに、しっかり我々も反論していきたいと思います。

 それから、ちょっと話をまた戻しますが、先週は、与党の方から、国民投票法のCM規制を含まない改正案が出されました。

 我々は再三申し上げていますが、投票環境整備、投票環境向上のための措置の一部だけじゃなくて、CM規制等、公平公正を確保するための措置をきちんと含むべきだ、手当てすべきだと申し上げていますし、この附則四条の趣旨からして、これを同時に手当てしなければ憲法改正発議はできないということも申し上げておきます。

 国民投票法については、議論すべき点が多く残っています。

 まず、ネット規制については、憲法が保障する表現の自由の観点から、国家による規制は望ましくないということを踏まえた上で、なお、我が国においても、EUなどを参考にしながら対策を検討すべきでありまして、この問題について、ブリタニー・カイザーさんを含めいろいろな方に来ていただいて、きちんと議論をするというのが大事だと思います。

 それから、ネット規制の実効性はなかなか難しいという議論がありますが、であるならば、資金規制をしっかりすべきではないでしょうか。資金の多寡で国民投票の結果が左右されたり、憲法改正に対する外国政府の干渉をみすみす認めるというのはあり得ません。

 我が方の改正案では、運動資金が特定の者や外国人に依存することを防ぐように、一人当たりの寄附の上限額の設定、外国人寄附の受領禁止などの規制を規定しています。運動資金規制についても集中討議を求めていきたいと思います。

 このほかにも、船田先生もおっしゃっていますが、国民投票と国政選挙を同時に行うかどうか、これは別々に行うべきだとおっしゃっていますが、これらについてもやはりしっかり議論をすべきだと思います。これは我々の法案の中にも入っています。ですから、引き続き、国民投票法、公平公正についての議論をしっかりやっていくことを会長に求めています。

 そして、これまでの議論で、いわゆる緊急事態についても一定のコンセンサスができてきている、というのは、まず、議会機能を維持して、平時と同様に法案や予算措置を講じていくことを優先すべきだということについては、一定のコンセンサスができてきているように思います。

 さらに、議論が必要だと思うのは、その維持をどうやってするかということですが、緊急集会ですね。現行法の憲法上、どの場合まで緊急集会で対応できるのか。任期満了の際に選挙ができないときにも使えるのか、あるいは、選挙が長期にできない場合、要するに、衆議院が存在しない事態が長期にわたる場合でも対応できるのか。これらの点について、やはり有識者から意見を聞き、議論を深める必要もあります。

 また、議員任期の延長についても、それを考える場合には、誰が判断をすべきか、お手盛りにならないようにという論点もあります。

 それから、五十三条の問題ですね。

 五十三条について、政府は、内閣は必要な合理的な期間を超えない期間内に臨時会の召集を行うことを決定しなければならないとして、これは憲法の義務だというふうな公式見解を取っています。この合理的な期間がどのくらいかということなんですが、憲法制定時では、要するに、通年国会を取らなかった埋め合わせとしてこの制度があると言っていますから、求められればすぐ応じなければいけないはずなんです。

 昨年七月十六日に、我々が、新型コロナウイルス感染症及び各地で頻発する豪雨被害に対応するため、臨時国会の召集を五十三条に基づき要求しました、この際は八十日。それから、二〇一七年の際には九十八日もかかっています。これは明確な憲法五十三条違反ではないでしょうか。

 自民党憲法改正草案、これはなかなか全て賛同するわけにはいかないんですが、一つだけ私がいいと思うのは、要求があった日から二十日以内に召集されなければならない、こう改正案を書いておられます。

 緊急事態を議論するなら、緊急時に臨時国会が召集されるように、併せてこの五十三条の議論も必要ですし、あと、解散権の制約についても、緊急時には衆議院は解散されないと自民党案にも書いてありますが、それのみならず、やはり恣意的な解散は常に問題ですから、恣意的な選挙を行うことを制限すべきだとして、我が方の谷田川委員が発言していますが、英国のような任期固定法を制定するのか、それが問題なら、衆議院の解散を制限する憲法改正を優先的に行うべきだと谷田川氏は主張していますけれども、こうした議論も必要でありましょう。

 そして最後に、新しい人権についても議論が要ります。

 例えば、自己情報コントロール権を確立することが必要じゃないでしょうか。ネットワーク利用者の情報の多くが、利用者個人の氏名じゃなくて、クッキーや広告IDなど、利用者のブラウザー、端末を識別する端末等識別子にひもづけられてやり取りをされています。このような情報は、日本の個人情報保護法では個人情報として保護されていません。このため、通信サービスを使うたびに、どこの誰とも分からない業者に自分の情報が無断で送信されています。利用者には防ぐすべがありません。現在審議されている電気通信事業法でもこの無断送信を禁止しようとしていますが、途中で、法案作成過程で骨抜きにされてしまいました。

 EUの憲法である基本権憲章では個人データの保護が基本的人権の一つとして規定され、これに基づき、厳格なデータ保護法として知られるGDPR、一般データ保護規則が制定されています。我が国でも、個人情報保護法制を自己情報コントロール権の実現を目的とする体系的な法制度として再構築を図るべきなのですが、極めて今、先ほど電気通信事業法の例も言いましたけれども、動きが鈍いんですね。玉木代表も、情報の自己決定権としてのデータ基本権の保障を憲法に明記と発言されています。EUのように、憲法に自己情報コントロール権や自己情報決定権を明記するかどうか、こういう議論も必要ではないでしょうか。

 いろいろ申し上げましたが、様々な論点が憲法にあります。今日的な課題が国民投票も含めてありますので、これらについてしっかりと議論をすべきであると思います。

 九条改憲ありきには断固として反対します。

 以上です。

森会長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔です。

 今週も憲法審査会が開かれることを素直にうれしく思っております。

 今通常国会において現在の我が国を取り巻く情勢に応じた憲法論議が行われていることは、まさに当審査会が国民の負託に応えて機能しているものと受け止めています。

 前回まで審議が行われた国民投票法改正案のCM規制についても、民放連から参考人をお招きし、国民投票運動等についての広告規制の在り方に関して率直な御意見を伺い、議論を深められたことは大変意義深いことだったと感じております。

 特に、昨年初当選し、憲法審査会のメンバーに加えていただいた私にとっては、永原参考人は、憲法審査会の議事録や衆議院法制局の過去の経緯の説明資料に度々登場するものの、生のお姿やお声に接したことのない、例えは変でありますが、いわば私にとっては伝説の人であり、前々回に現時点での御意見を直接お伺いできたことは、何か止まった時が再び刻まれたような感覚を覚えました。

 そして、前回の審査会の最後に、国民投票について投票環境を公職選挙法並みにするための改正案が提出され、憲法改正の投票手続の充実に向け、具体的な動きが見られました。

 CM規制のほか、今通常国会の序盤においては、新型コロナウイルス感染症が拡大している中、いかに国会機能を維持するのかという観点から、まず、喫緊の課題として、国会のオンライン開催が憲法第五十六条一項の「出席」の概念との関係から可能なのかについて審議がなされました。その結果、国会のオンライン出席は憲法上も例外的に認められるとの考えが大勢を占めました。

 国会のオンライン出席をめぐる議論をしているさなかの二月二十四日に、突如、ロシアがウクライナに侵攻しました。このような情勢の中、このオンライン出席の問題に引き続いて、感染症のほか、大規模災害、内乱・テロ、そしてウクライナが直面しているような他国による武力侵略等の緊急事態の際に、憲法上どのような条項を整備すべきなのかが議論されました。主に、国会機能を維持するため、国会議員の任期延長の問題について審議がなされ、それに関係する憲法改正の議論も行われました。

 大まかに今通常国会の経緯を振り返りましたが、冒頭に述べましたとおり、新型コロナウイルス感染症やウクライナ危機という現在の情勢を受けて、本審査会も適時適切に必要な憲法論議を行ってきたものと感じております。

 これまで議論してきた論点についても、オンライン国会のように方向性が定まり、議院運営委員会にその結論に沿った検討を依頼したものもあれば、いまだ各会派で意見が異なるものがあろうかと思いますが、それぞれの立場での各論点についての憲法改正に関する考え方は出そろっていると感じています。

 そのような中、今国会の残された会期において、当審査会でどのような議論をしていくべきなのかについて、私から御提案させていただきたいと存じます。

 ウクライナがロシアによる突然の侵攻を受け、力による一方的な現状変更がなされようとしている中、我が国周辺の情勢に目を向けたとき、非常に厳しい安全保障環境に置かれていることは疑いようがありません。中国の艦船や軍用機が毎日のように我が国領海、領空付近を航行、飛行し、緊張感が高まっているほか、ロシアは北方領土等で軍事訓練を行い、北朝鮮はこれまでにも増してミサイル実験の頻度を増やして、核武装のスピードを速めています。

 自由や民主主義、法の支配といった価値観を共有することが困難であり、恫喝や武力による現状変更を行おうとするこれら三か国に国境を接している我が国は、世界でも最も高い地政学的リスクを抱えた国の一つであることを認識しなければなりません。

 そこで、残された会期内において、当審査会で我が国の安全保障と憲法に関わる問題について審議することを、是非、森会長にお願いしたいと思います。政治家として、我が国の平和と安全をどう確保するのか、そして憲法についてどう考えるのか、国民の前で議論し、各会派がそれぞれの考え方を示すべきタイミングであると思っております。

 我が党の松井一郎代表は、かねてより、次期参議院選挙において憲法改正国民投票も同時に実施すべきだとの考えを述べてまいりました。現時点において、憲法改正の発議を行った上で国民投票運動の期間を確保することは事実上不可能となりましたので、残念ながら同時実施について今回は断念せざるを得ませんが、来る参院選において、目下の我が国を取り巻く安全保障環境をどう認識し、安保政策についてどう考えるか、それに伴い、憲法改正についてどのような具体案を出すのかについて、各政党が国民に明確に示すことが、政治の責任であると考えています。

 私ども日本維新の会は、平成二十八年三月二十四日に憲法改正原案を発表しております。そこでは、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所設置の三点を改正項目として提言しております。

 従来から、我が党は、安全保障について、憲法においては第九条の扱いをどうするかについては改正項目に含めてきませんでした。私も、昨年の総選挙までの活動で、有権者の皆様から、日本維新の会は憲法九条に関してはどういうスタンスなのかというお問合せを頻繁にお受けしておりました。ここには馬場共同代表がおりますが、我が党らしく何物にもはばからずに申し上げますが、憲法九条について触れられないことについては、私自身、候補者として大変苦慮しておりました。

 私も来る参院選のマニフェストの作成の一端を担わせていただいておりますが、安全保障環境が戦後において最も厳しくなっている状況において、憲法九条に関するスタンスに触れずにおくわけにはいかないと考えております。

 また、現代の最新の戦争は、戦車が走り、砲弾が飛び交うような分かりやすいものではなくなってきています。ハイブリッド戦という言葉も生まれてきているように、エネルギーや戦略的物資の確保等をめぐる経済安全保障や、システムを対象にしたサイバー攻撃など、従来とは異なる次元で戦争が行われる時代となっています。サイバー攻撃などへの防衛を行う際には、通信の自由の制限を行うことも視野に入れることもあり得ると思います。その際、現行憲法のままで制約することが許されるのか、そうでない場合には憲法をどう改めるべきなのかについて、党内でも議論を開始しています。

 このように、現時点において安全保障をどう確保するのかの議論は、憲法九条にとどまらず、二十一条なども大きく関わってくるものと認識しています。

 森会長、そして全ての幹事、オブザーバーには、以下のような認識を御共有いただき、是非、当審査会で安全保障に関わる憲法論議を次回以降実施していただきますようにお願い申し上げます。

 なお、憲法改正に反対されている会派に対しましては、改正を主張している会派が相当割合に上っていること、世論調査でも憲法改正に賛成している国民の比率が高まっていることに鑑み、以前行っておられたように議論を避けるのではなく、堂々と国会で議論を闘わせることが国民の理解を得るためにも必要なことではないかと僭越ながら付言いたします。

 以上でございます。

森会長 御提案のあった件につきましては、後刻、幹事会で協議をさせていただきます。

 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 本日も、憲法審査会が開催をされ、活発な議論が行われることに心から敬意を表する次第でございます。

 五月三日は憲法記念日でありましたが、ロシアのウクライナ侵略などを受け、日本の安全保障への関心が高まっております。昨今、我が国を取り巻く安全保障環境は、一段と厳しくなっております。憲法の三原理である国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義を堅持しながらも、日本の安全保障に万全を尽くしていく必要があります。

 これまでも、我々は、専守防衛を堅持しながら、グレーゾーン事態から有事まで隙間のない守りを行うために、平和安全法制を整備してまいりました。日本の防衛力を着実に整備するとともに、平和安全法制の下、日米同盟の信頼性を高め、日米同盟の抑止力を発揮していけるように取組を強化していくことが重要であると、改めて指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 本審査会では、緊急時への対応ということで、オンライン国会の実施について具体的な結論を得てまいりましたし、いわゆる緊急事態条項についても議論をしてまいりました。

 そして、前回までは、国民投票法をめぐる課題についての議論を行ってまいりました。その中で、多くの委員が指摘をされました、テレビやラジオだけではなくインターネット広告についても対応を考えるべきという点は、非常に重要であります。

 デジタル化の進展によって、変化の大きいネット広告の現状を考えると、我が党の北側委員からも御発言がありましたとおり、まずは、広告の出し手側である政党側の自主的な規制、そして事業者側の自主的な取組を進めていくことが妥当と考えます。

 そして、この問題は、単に国民投票法のCM規制だけの問題にとどまらず、そもそもインターネットやSNS、ネットを使った政治広告などが世論形成に与える影響をどう考えるかという、より幅広い視点から考える必要があると考えます。

 既に多くの委員の方が指摘をされたとおり、インターネットやSNSの世界は、いわゆるエコーチェンバーやフィルターバブルなどの技術的な特性によって、意図的に流されたフェイクニュースなどの偽情報についても拡散をされていく傾向にあり、アメリカや欧州では、既にこうしたフェイクニュースが拡散をするということが社会問題となっております。

 これに対する諸外国の対応は、それぞれ異なっております。

 アメリカについては、伝統的に表現の自由を手厚く保障する立場から、プラットフォーム事業者の自主的な取組を求めていく立場であります。二〇一九年には、下院のペロシ議長のAIを活用した高度な画像加工技術を用いた偽動画、ディープフェイク動画が拡散したことを受けまして、こうした問題についても対応を議論されておられます。

 他方、EUでは、ロシアによるフェイクニュースの拡散の問題を受け、健全な言論空間や情報環境を構築するため、欧州委員会が、人々が偽情報その他の有害な情報から守られるようなオンライン環境を創造することに責任を持たなければならないとされております。プラットフォーマーに対して偽情報に関する行動規範への署名を求めるとともに、一昨年の十二月には、全てのプラットフォーマーに対して違法コンテンツの流通に関する責任を規定したデジタル・サービス・アクトを取りまとめ、プラットフォーマーに対する規制を強めようとしています。

 こうした状況の中で、我が国はフェイクニュースに対していかなるスタンスを持って対応していくのかを考えていかなければなりません。

 現在、総務省では、プラットフォームサービスに関する研究会が開催をされ、報告書を取りまとめているところであります。その中では、偽情報に関する今後の取組の方向性として、十の方向性が示されております。

 例えば、我が国における偽情報への対応の在り方の基本的方向性として、まずは民間部門における事業者の自主的な取組を基本とした対策、例えば、プラットフォーム事業者による透明性やアカウンタビリティーの確保を進めるとともに、総務省においてモニタリングと検証、評価を行っていくこととされています。

 また、プラットフォームサービスに関しては、利用者の情報が大量に集められ、分析、利用されていることについて、通信の秘密やプライバシー権とサービスの利便性とのバランスをどう取っていくべきかについても論点になっております。

 今日は、時間の関係上、詳しくは述べませんが、諸外国では、本人が意図しない情報の取扱いや、本人の合理的な期待を超えた情報の取扱いをしようとする際には本人の同意を求めることなど、規制が強化されつつある状況も参考にしつつ、我が国においても利用者情報の取扱いについて議論をしていく必要があります。

 本審査会においても、こうした点についても更なる議論を進めていくことも期待をし、私の意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、今後の本審査会の進め方について一言申し上げたいと思います。

 これまで、緊急事態条項、国民投票法についての議論を行ってきましたけれども、一つ一つのテーマについて一定の意見集約を行ってから次のテーマに進むことを求めたいと思います。

 憲法審査会においてオンライン国会についての解釈の取りまとめができたことは画期的だと思いますけれども、コロナ禍で明らかになったほかの憲法上の課題についても優先的に議論し、速やかに一定の結論を得るべきだと考えます。

 特に緊急事態条項、とりわけ議員任期の特例延長の必要性については、本審査会でおおむね合意が得られていると考えますので、具体的な改正案について議論すべきと考えます。そのため、必要な有識者からの意見聴取、特に、憲法五十四条二項の緊急集会が、解散時だけではなく任期満了時にも認められるのか否かについての意見聴取は早急に行うべきであります。

 また、国民投票法についても、ネット広告規制について、インターネット事業者等からのヒアリング、そして、私がこれまで何度も提案している、ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏からの意見聴取も速やかに行っていただきたいと思います。

 とにかく、議論したテーマについて具体的な意見集約を行わずに次のテーマに行ってしまうと、また言いっ放しの憲法審査会に逆戻りしてしまうので、是非、議論のテーマを拡散させることなく、一つ一つ結論を出していく運営をお願いしたいと思います。そのためには、分科会方式や小委員会方式についても検討いただきたいと思います。

 なお、緊急事態条項については、これまで、審査会でも我が党の考え方も示してきましたけれども、我が党としては、条文案をほぼ取りまとめておりますので、是非、その全体イメージについて、資料を配付の上、改めて説明させていただきたいと思います。本日は、資料配付は幹事会で残念ながら認められませんでしたけれども、改めて会長の取り計らいをお願いしたいと思います。

 さて、新藤幹事から国防規定についてのお話がありましたので、国民民主党としての、九条を論ずるに当たっての基本的な考え方を述べておきたいと思います。

 これは、二〇二〇年十二月に取りまとめた国民民主党の憲法改正に向けた論点整理の中にまとめております。

 まず、現行憲法九条は、二項で戦力の不保持と交戦権の否認を認める一方、現実の防衛政策として、国際的には戦力と言える自衛隊を保持しています。この条文と現実との乖離を埋めるため、政府は、現実を追認する形で、戦力は保持できないが、自衛のための必要最小限度の実力、自衛隊は保持できる、また、交戦権は否認されるけれども、自衛のための必要最小限度の実力行使、自衛行動権は容認されるという、一般国民にも国際社会にも容易には理解し難い解釈を積み重ねてきました。その結果、憲法九条は、現実を規律、統制する規範力を事実上失っていると思います。

 さらに、二〇一五年、これまで一貫して堅持してきた集団的自衛権の行使は違憲という立場を解釈で一転させ、戦力不保持、交戦権否認をうたう憲法九条の下で、集団的自衛権の一部容認まで踏み込んだ安保法制を成立させたことで、憲法九条の規範力、統制力はいよいよ限界を突破し、九条二項の空文化に拍車をかけたと言えます。逆に言えば、現行憲法改正の必要性がこれによって著しく低下したとも言えます。

 そこで、国民民主党としては、日本国憲法の三大原理の一つである平和主義の理念を堅持しつつ、厳しさを増す安全保障環境の中で、現実的な対応を取る必要性を正面から認め、憲法九条に国家の最高法規としての規範力、統制力を復活させることが必要だと考えます。その上で、現在の解釈ではできないことは一体何か、改正によって追加的に得られる、あるいは得ようとする意義、必要性は何かを冷静に見極める必要があると思います。

 いずれにせよ、複雑怪奇な解釈がなされている憲法九条の規範性を復活させるためには、これにつきまとってきたイデオロギー対立から自覚的に一旦身を離した上で、次の三つの論点に分けて整理して冷静な議論を行うべきだと考えます。

 まず、論点の一つは、安全保障政策として、自衛権の行使の範囲について、憲法上どこまで認めるとするのかという論点です。二つ目に、その自衛権を担う実力組織としての自衛隊の保持及び統制に関するルールをどのように規定するかという論点。三つ目が、重要ですけれども、今申し上げた論点一、論点二の検討から導き出された自衛権行使の範囲と自衛隊の保持、統制に関するルール、この二つと、現行の九条二項の戦力の不保持、交戦権の否認との関係をどのように整理するのかという論点であります。

 国民民主党としては、自衛隊を明記するかどうかの形式的な議論の前に、その自衛隊にいかなる自衛権の行使を憲法上認めるのか、そして、その自衛権の行使を担う実力組織は戦力あるいは軍隊なのかという本質的な議論が必要だと考えます。なぜなら、この本質的な議論をしないと、仮に自衛隊という組織名が憲法に明記され、自衛隊の存在についての違憲性が解消されても、その自衛隊が行使する自衛権の行使という行為についての違憲性の疑義が残り続けるからであります。

 次回以降、必要に応じて、さきに述べた三つの論点に沿って、憲法九条に規範力、統制力を復活させるための国民民主党の条文イメージ案については述べたいと思いますが、議論の参考にするために、新藤幹事からありました、自民党の改憲四項目のうちの九条の二の条文イメージ、たたき台素案について、二つ質問をさせていただきたいと思います。

 自民党の条文イメージ、たたき台素案の九条の二第一項に規定された自衛隊は、依然として戦力や軍隊ではないのか、あるいは戦力や軍隊なのか、この点についてまず教えていただきたいと思います。

 そして、二つ目に、九条二項を残しながら、同項は、必要な自衛の措置を妨げずという書きぶりとなっていますが、その場合、これまで九条二項から導き出されてきた必要最小限という解釈は引き継がれるのか、それとも必要最小限の制約は外れるのか、この点について、石破先生は別の考えかもしれませんが、お聞かせをいただきたい。

 非常に重要です。なぜなら、聞いてください、自民党は、いわゆる敵基地攻撃能力の保持の必要性を提言されました。我が党も自衛のための反撃能力は必要だという立場ですから、一定の評価をしております。ただ、相手領域内の軍事施設等を狙って長射程のミサイルを撃った場合、これまでは想定されなかった誤爆の問題が起きてきます。その誤爆した自衛官は個人として処分されるのか、それとも上官が責任を負うのか、あるいは究極の上官たる国家が責任を負うのか、この考え方も併せて教えていただきたいと思います。

 ちなみに、業務上過失致死の国外犯規定は日本の刑法にはありません。加えて、そもそも、こうした軍事作戦にまつわる過失等を平時の法体系である刑法で問うこと自体が果たしていいのかという問題があります。その意味では、もはや自衛隊が戦力あるいは軍隊なのかという議論を曖昧にし続けることはできなくなっているということを指摘しておきたいと思います。

 その際には、何と呼ぶかは別にしまして、防衛裁判所あるいは軍事法廷のような特別の裁判体系も必要になることを指摘し、私の発言といたします。

森会長 玉木君の発言時間が終了いたしておりますので、簡潔に新藤筆頭から御答弁願います。

新藤委員 御質問ありがとうございます。まさにこういう議論を憲法審査会の中で行っていくことが私たちの役割であって、その意味では、とてもよい機会を与えていただいたんだというふうに思っています。

 ただ、今日はもう時間が、玉木委員の持ち時間は終了しておりますので、細かいことはまた次の機会に譲りたいと思いますが、私たち自民党が提案しておりますものは、これまでの安全保障の考え方、これを引き継いでいく、専守防衛、これは紛れもない、守っていかなければいけない大事なことである、その上で、憲法に自衛隊という実力組織を規定する、そして、それは国を守るためのものであるという国防規定を設けるんだ、このことを憲法に明文化させようというふうに思っているわけであります。

 したがって、これまでの解釈が変わることはないというふうに思いますし、また、必要最小限というのは、それも引き継ぐべきです。しかし、安全保障は相対的なものであって、我が国を取り巻く環境に対応できる必要最小限のものという議論をしていかなければいけない。それは憲法ではなくて、防衛の、様々な防衛大綱、それから、そうした関連の防衛政策の中で議論をし、実定的にはそちらで必要なものは整備していく、このように私たちは整理しているということでございます。

森会長 ただいまの御質問のほかに、玉木君から重ねて御要請のあった件につきましては、引き続き幹事会で協議をいたします。

玉木委員 はい、よろしくお願いします。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たちは、憲法の原則に反する現実を正す議論こそ必要だと指摘してまいりました。この点でいえば、現政権の運営に責任を持っている新藤筆頭を始め与党の皆さんから、憲法の原則に反する現実があたかもないかのように、私たちの問題提起に応えていないのは極めて残念であります。

 これまでも繰り返し述べてきたように、今、最も重大なのは、憲法がじゅうりんされている沖縄の実態です。この五月十五日で、沖縄が本土に復帰して五十年を迎えます。さきの大戦で熾烈な地上戦を経験し、米軍統治下で人権がじゅうりんされ、虫けらのように扱われた県民が五十年前に願ったことは、日本国憲法の下に帰ることでした。

 復帰に際し、沖縄県がまとめた復帰措置に関する建議書、いわゆる屋良建議書は、米軍統治下の軍事優先政策の下で、県民の政治的権利が著しく制限され、基本的人権が侵害されてきたとして、県民が復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法の下で基本的人権の保障を願望していたからにほかなりません、復帰に当たっては、やはり従来どおりの、基地のない平和な島としての復帰を強く望んでおります、このように述べております。

 しかし、県民の願いに反し、復帰後も、沖縄は広大な米軍基地がほとんどそのまま温存されました。憲法の上に日米地位協定が置かれる下で、米軍機の墜落や部品落下、米軍関係者による殺人やひき逃げ、レイプや暴行、基地からの昼夜を分かたぬ爆音や異臭、有機フッ素化合物、PFASを始めとする有害物質の流出、コロナの感染拡大などにより、県民の人権は脅かされ続けています。

 さらに、政府は、幾多の選挙や県民投票で示された辺野古新基地建設反対の民意を無視し、地方自治も法律も踏みにじって、辺野古への新基地建設を強行しています。沖縄では、憲法の原理原則が踏みにじられております。

 復帰五十年に当たり、玉城デニー知事は、平和で豊かな沖縄県の実現に向けた新たな建議書をまとめ、政府に提出しました。そこでは、沖縄を平和の島とする目標は、五十年経過した現在においてもいまだ達成されていないとして、次のように要望しています。

 第一に、基地のない平和な島の実現に一層取り組むこと。第二に、在沖米軍基地の更なる整理縮小、日米地位協定の抜本的見直し、普天間飛行場の速やかな運用停止、辺野古新基地建設の断念等、沖縄の基地問題の早期解決を図ること。第三に、日本国憲法が保障する民主主義や地方自治については、正当な手続で示された民意を尊重すること。第四に、アジア太平洋地域において、平和的な外交、対話により緊張緩和と信頼醸成を図り、平和の構築に寄与すること。

 このように強調しています。この沖縄県の願いに正面から向き合い応えることこそ、私たち政治家に求められております。

 ところが、今、県民が復帰を望んだ平和憲法そのものが壊されようとしております。岸田政権は、抑止力の強化を理由に、沖縄を含む南西諸島での自衛隊の強化を進め、敵基地攻撃能力保有の検討を進めています。軍事に軍事で対抗するやり方は、際限のない軍拡競争を引き起こし、戦争の危険性を高めるものです。

 一たび武力衝突が起これば、真っ先に犠牲になるのは沖縄県民です。国会では、台湾有事を想定し、沖縄本島、先島諸島などの住民の退避計画を早急に整備すべきだという主張がされておりますが、百四十万人もの県民を避難させるなど、到底不可能です。

 沖縄県は、新たな建議書で、沖縄の軍事的機能を強化しようとする動きや核兵器の共有、敵基地攻撃能力保有等の考えは、悲惨な沖縄戦を体験した県民の平和を希求する思いと全く相入れるものではないと強調しています。

 さらに、軍事力の増強による抑止力の強化がかえって地域の緊張を高め、意図しない形で発生した武力衝突がエスカレートすることにより本格的な軍事紛争につながる事態となることを懸念しており、米軍基地が集中しているがゆえに沖縄が攻撃目標とされるような事態は決してあってはならないとして、政府に対し、平和、経済、交流などの武力によらない手法によって、アジア太平洋地域の現在及び将来にわたる安定した発展を図るため、国及び地域間の協調を基本とする外交に取り組んでいただきたいと求めております。

 これが、当事者である沖縄県民の強い思いです。

 今必要なのは、憲法を変えることではなく、憲法九条に基づく外交を粘り強く行うことだと強調して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 これまでの審査会は、それなりに順調に議論を進めてきたというふうに思います。しかし一方で、オンライン国会以外の課題については、まだ具体的な意見の取りまとめに至っていません。異なる意見がある中で、もちろん丁寧な議論は不可欠でありますが、決めるべきことは決めていかなければ、我々の責務を果たしたとは言えないというふうに思います。

 まず、これまでの積み残しがあります。これらのうち、可能なものから具体的な案に落とし込むべきだと思います。

 一つは、緊急事態条項について、参考人の意見聴取や事務局の説明も含め、相当議論を深めてまいりました。例えば、緊急事態の成立要件については、一部を除き、おおむね一致を見ていると思います。また、議員の任期延長についても、手続面などでまだ若干の開きはあるものの、議論を絞り込んでいけば合意を得られるのではないでしょうか。

 緊急事態条項は、一部の批判があるように、独断専行の行政権を認めることではありません。むしろ逆であります。専門的な知見あるいは過去の経験に基づいて、万が一の状況を想定した上で、国民の声がじかに届く国会の機能を維持することです。どさくさ紛れに憲法の隙を突いて行政が好き勝手なことをしないための民主的統制を確保することです。せっかくここまで議論を深めてまいりましたので、具体案を取りまとめる時期に来ていると考えます。

 もっと議論が必要なのは、国民投票法における広告規制等であります。インターネット広告の規制の在り方について、やはり、サイト事業者や海外事例などに詳しい専門家の意見を聞くべきだと思います。

 また、国民投票広報協議会について、その骨格は既に示されているものの、具体的にどのような役割を果たすべきかについて検討の余地があると思います。私としては、インターネット上、玉石混交の情報が氾濫する中で、この協議会から発信される意見等が積極的かつ大きな役割を担うべきではないかと考えています。

 ただ、サイバー攻撃などの問題を含めると、国民投票法のインターネット上の課題は、より広く、一般の国政、地方選挙の在り方やネット上の人権との整合性を図りながら検討する必要があるように思います。少なくとも、どのような手順でこうした論点を議論していくのか、一度この審査会で整理がなされるべきではないでしょうか。

 三つ目は、これに関連して、国民投票法を離れて、憲法そのものの課題としてのデジタル基本権があります。具体的には、サイバー空間における誹謗中傷などの行き過ぎた言論に対する人権保障の論点があります。また、スマホなどにおける遺伝子検査のアプリなどを通じて、個人情報が企業や外国政府に吸い上げられることに対するプライバシー権などの保障の論点もあります。これらについては、国民投票法との関連もあり、早急に議論を始めていくべきではないでしょうか。

 最後に、同じくまだ手をつけていない論点が憲法第九条であります。緊急事態条項が危機管理上差し迫った課題であるならば、国防も同じです。

 今回のウクライナ戦争で、我が国の安全保障環境は大きく変わりました。激しくなっただけではなくて、次元が変わったというふうに思います。二月四日のプーチン大統領と習近平との首脳会談で、中ロは史上最高の関係と宣言しています。我々の目の前で、我が国を含む西側諸国と中ロとの間で新次元の冷戦が顕在化する中で、我が国は、これまでのように中国だけでなく、新たにロシアからの攻勢にも備えるという二正面の防衛を余儀なく迫られています。

 また、ウクライナ戦争の教訓として明らかになった一つは、日欧米の第三者、外からの制裁やウクライナへの軍事物資支援という、第三者、外からの間接的な支援だけでは、プーチンの侵略を抑止できなかったことです。もう一つ明らかになったことは、核兵器を使うぞというプーチン大統領の威嚇により、欧米の軍事介入が逆に抑止されてしまったことです。

 我が国に置き換えて考えなければいけません。というのも、習近平も、ウクライナを毎日双眼鏡で眺めながら、台湾の武力統一の戦略を練り直していると思います。事が実行された際、台湾の近くにある尖閣諸島や米軍基地が中国の砲火から逃れられると、誰が自信を持って言えるのでしょうか。台湾有事は日本有事だというふうに覚悟をすべきだと思います。

 こうした中で、果たしてこれまでの防衛政策で国民を守れるのか。玉木委員がおっしゃったような法律上の整理も必要ですけれども、この新しい安全保障の環境に対応するための防衛政策、そして、その枠が憲法九条によって決まっておりますので、そういった関連でも議論すべきだというふうに思います。我が国が専守防衛にとどまり、米国が攻撃能力を担うという方針で、中国を本当に抑止し、平和を確保できるのか。

 先ほど奥野委員から、専守防衛を見直すことはあり得ないとおっしゃいましたが、別に、専守防衛を見直すことは何も先制攻撃だけの話ではなくて、国際法上、国連の規約でも、日本の専守防衛で規定されている個別的自衛権というのは、国際法上認められている個別的自衛権よりも大分範囲が狭いという理解でありますので、例えば、日本とアメリカが盾と矛の関係にあるというのも、アメリカが攻撃能力を担って、日本が本土を基本的に守る、こういうのも、そういう考えから出てきています。普通の世界の個別的自衛権だったら、攻撃的能力を担わないとか、攻撃性の高い武器を持たないとか、こういった議論は出ないはずでありますので、必ずしも専守防衛を見直すことはただ先制攻撃をしますということにはつながらない、論理的にはつながらないというふうに思います。

 加えて、中国は、核弾頭の数を、現在三百強から、あと八年後、二〇三〇年までには一千個に増やす予定というか、もう着々と計画を進めております。今回のロシアと同じように、台湾有事の際、中国が核の威嚇をした場合、米国が今回と同じように身動きが取れなくなるかもしれないと推測するのは、果たして私の被害妄想にすぎないのでしょうか。

 これらの問いに真面目に答えることは、論理必然的に憲法九条の議論に及ぶことを指摘して、私の意見表明といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

石破委員 自由民主党の石破茂であります。

 先般、国連のグテーレス事務総長がプーチン・ロシア大統領と会談をした。あれを読んでみると、プーチン大統領が何を言っているかというと、我々は国連憲章にのっとって行動しているというふうに言っておるのですね、特別軍事作戦という言葉は使っていない。だけれども、ずっと特別軍事作戦ということを言ってきた。そして、先般の戦勝記念日の演説でも、この言葉は用心深く使わなかったのだろうと私は思っているのです。

 今日の議論がありましたように、戦争は違法であります。しかし、例外はあって、武力の行使ができるのは個別的自衛権、集団的自衛権、安保理の決定に基づく国連の行動ということになっております。プーチン氏が国連憲章にのっとってということだと考えれば、これは集団的自衛権の行使と考えるほかはなかろう。実際、そういうことにもロシアは言及をいたしております。つまり、ドネツク、ルガンスクという独立させた国家から救援の要請がありました、それに応えて集団的自衛権を行使しておるのであります、形式論理としてはそういう話になるのでしょう。

 しかし、アメリカがベトナム戦争に介入したときに、あのときのベトナムの政権はかいらい政権だった。アメリカが打ち立てた、かいらい政権以外の何物でもなかった。かいらい政権からの要請に基づいて、集団的自衛権の行使でございますと言ったら、これは何でもできてしまうわけですね。そういうことがあるべきだと私は思っていないのであります。

 このウクライナ戦争というのは確かに法律論だけで議論すべきものではないが、法の支配というものを我々が希求する以上は、これを法律的にどう位置づけるべきなのか。ロシアの論理がいかに国際法の論理と整合しないものかということは、我々日本の議会として認識を一にすべきものだというふうに考えております。

 玉木委員から、自民党の憲法改正のイメージについての御発言、御質問がありました。まさしくそういう議論をすべきだというふうに思っております。

 私は、よく石破案、石破案と言われて、二項削除論、とんでもないやつみたいに言われることがあります。それも不徳の致すところかもしれませんが、陸海空軍その他の戦力ではございません、なぜならば必要最小限でございます、交戦権は使えません、なぜなら必要最小限でありますという、何かそんな便利な物差しがどこかにあるんだろうかということであります。

 北朝鮮に対して必要最小限度のものは、間違ってもロシアに対して必要最小限度だと私は思わない、中国に対してそうだと思わない。そういうような最小限という量的な概念を入れること自体、私はおかしなことだと思っております。それは確信を持っております。

 自民党が提示をしております九条の二という中には、最小限という言葉が落ちている。「必要な自衛の措置をとることを妨げず、」この書き方がいいかどうかは別として、そこからは最小限という言葉が落ちているんですね。玉木委員のおっしゃるように、そこは今までの説明とどう整合するのだというお話をきちんとしませんと、このお話は全く前には進みません。一部で言われているように、いやいや、自衛隊の存在を憲法に書くだけで何にも変わりませんよというようなことを我々は考えているわけではない。そのことはきちんとしなければいけないと思っています。

 かてて加えて、私どもが政権を奪還したときに、憲法九条も含めて、改正草案というのを作りました。奥野委員がおっしゃるように、臨時国会の召集、これも、いつになるか分かりませんみたいな話では駄目なので、やはりきちんと期限を決めなければいけない。これは自民党の改正草案に入っておるところでございます。九条だけに拘泥をしたわけではございません。

 そこにおいて、二項というものは削除をすべきだというのが自民党の考えでありました。それは何も好戦的とかそういうお話ではなくて、文民統制をきちんとしましょう、最強の実力集団であるがゆえに、司法、立法、行政による統制をきちんと書きましょうということ。そして、入ってくるのは我が国の独立を脅かそうとする外の集団ですから、彼らが日本の国内法を守るはずはないのであって、そこにおいて適用されるのはあくまで国際法であるべきだということです。

 そしてまた、世の中では、人を殺せば殺人罪、物を壊せば器物損壊、戦場のルールはそうではない。そこにおいて、検察官も弁護士も裁判官もみんな軍の経験がない、実力阻止の経験がないということになると、本当に安心して自衛官は行動ができるのか、そこにおいて自衛官の人権はどのように確保されるかということを私どもは真剣に考えていかなければ、自衛官こそ国の宝と口で何回言っても、それは担保されるものだと私は思っておりません。そういう議論こそがなされるべきだというふうに私は思うところでございます。

 最後に一言付言をすれば、世の中には面白い議論がいっぱいあって、昭和二十一年の制憲議会において、吉田茂総理と共産党の野坂参三議員の議論というものは、これは多くの国会の議論の中で相当に注目に値するべきものだと私は思っております。

 野坂参三議員、日本共産党が、せめて個別的自衛権の行使ぐらいは認めるべきだというふうにおっしゃった。吉田総理は、そのような考え方を認めること自体が有害であるというふうに答弁をしている。有害であると言ったのは、共産党じゃないですからね、吉田総理ですからね。個別的自衛権を認めるべきだと言ったのは、共産党の野坂議員ですからね。世の中、変われば変わるものだというふうに思うものであります。世の中は変わるし、時代は変わる。

 今、共産党さんはそのことについてどういう評価をなさっているのか、私は寡聞にして存じませんが、やはり、そういう議論の中で、我が国が国民に対して果たすべきことということが明らかになるのであって、この会において更に議論が進むことを心から期待をする次第であります。

 以上であります。

野田(佳)委員 御指名、感謝を申し上げます。

 皇室制度に関わる有識者会議の報告書の検討が国会に委ねられています。まさに国家千年の計に関わる重要なテーマだと思うんですが、全く今、国会の中での議論は進んでおりません。強い危機感を持っておりますので、憲法とも密接に関わる重要なテーマだと思います、したがって、当憲法審査会においても討議すべきであるという立場から発言をさせていただきたいと思います。

 皇室典範特例法に対する附帯決議の主たる要請であった安定的な皇位継承を確保するための諸課題の検討は、報告書では、機は熟していないとして、先送りをされています。国会を軽視しているとともに、次世代皇位継承者がたったお一人しかいないことに対する危機感が足りません。

 皇族数の確保を図る具体策は二つ提案されていますが、いずれも憲法と関連づけた深い洞察に欠けています。その欠落した憲法的な視点を補うためにも憲法審査会における議論が必要であり、立法府の総意をまとめるための地ならしになると思います。

 二つの案の具体的な問題点を指摘したいと思います。

 まず、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案は、配偶者と子は皇族という特別な身分を有せず、一般国民としての権利義務を保持し続けるとしています。これがもし実現すれば、一つの家族の中に皇族と一般国民が同居するという不自然な形になってしまいます。憲法第一章と第三章を家庭内で両立できるのでしょうか。

 女性皇族は、戸籍がなく、投票権もありません。言論や表現の自由は制限され、政治的発言やSNSの発信もできません。しかし、その夫と子は、言論や表現の自由、職業選択の自由などが認められ、SNSも活用していいし、政治的発言も自由です。夫は被選挙権もあるし、子はスカウトされてタレントになる可能性もあります。この不自然な家庭からはたくさんの不都合が噴き出すのではないかと懸念をしています。

 次に、七十五年前に皇籍離脱した旧宮家子孫の国民男性を養子縁組して皇族に復帰させるもう一つの案も、幾多の問題点がありますが、最大の問題は憲法違反の指摘があるということであります。

 国民の中にあまた存在する皇統に属する男系の男子の中から、旧宮家の子孫だけを養子縁組によって特権的に皇族の身分を与えるプランは、憲法第十四条が禁じた門地による差別に該当するという指摘であります。違憲の疑いのある制度では、到底、国民の理解を得ることはできません。

 以上のように、憲法を踏まえた深い洞察に欠ける報告書でありますので、立法府の総意を取りまとめるに当たり、憲法審査会における丁寧な議論の積み重ねが重要だと思います。

 小泉政権下の平成十七年十一月、皇室典範に関する有識者会議が報告書を取りまとめました。当時は、憲法調査会でも、平成十五年から十七年にかけて、小委員会も含めて計七回にわたり、天皇制に関する議論が行われました。

 そこで、まず、自民党の新藤幹事にお尋ねをしたいと思います。

 皇位の安定的な継承や皇族数の確保について、憲法との整合性という観点から憲法審査会で議論すべきだと私は思いますけれども、新藤幹事の御所見をお伺いしたいと思います。

新藤委員 御質問ありがとうございます。

 大変重要な課題であって、野田委員は、かつて総理であった頃にこれに熱心に取り組んでおられたこと、これは私もよく承知をしております。

 その上で、現状の私の見解でございますが、まず、この問題は、岸田総理から衆参議長へ政府報告書が提出をされて、そして、議長は各会派代表者とともに、内容を政府から説明を聴取しているわけであります。両院議長の指示の下で、現在、各党各会派においてそれぞれ検討しておる、こういう状況がございます。ですから、まず国会におけるそうした正式の要請に基づいた議論が行われていて、その内容をやはりきちっと、ゆっくりと、しっかりと議論しなきゃいけない大切な問題であります。

 ですから、憲法審で議論する、そのことについてはどのように考えるべきか、これは、各党各会派の今行われている議論を見ながら、やはり慎重に検討していかなきゃならないのではないか、このように考えております。

野田(佳)委員 ありがとうございます。

 各党で議論を深めることは当然だと思うんですけれども、どうしても憲法との絡みが多いので、例えば、養子縁組案を違憲だとおっしゃっている先生としては、東大の宍戸常寿先生もいらっしゃるんですね。そういう憲法学者の方をお招きして参考人としての質疑を行うということも私は大事なプロセスではないかと思いますが、この点については、例えば北側幹事はどうお考えでしょう。御賛同いただけますか。

森会長 発言時間が終了しておりますので、ただいまの御提案につきましては、幹事会で協議をさせていただきます。

野田(佳)委員 賛同かどうかだけでいいんですよ。

 ありがとうございました。

北側委員 公明党の北側でございます。

 今日は、石破委員から憲法九条について、そして野田委員から第一章、天皇制についての御所見を賜りまして、非常に、ああ、そういうふうにお考えになられているんだなということが改めてよく分かりました。それぞれの御意見についての私の所感については、また改めて述べたいと思います。

 今、野田先生からの御質問というのは、宍戸先生等の参考人を呼んだらどうなのかということですよね。これは是非、大事な大事なテーマでございますから、当然、有識者の意見を聞いていくということは意味のあることだと私は理解をしております。

 今日は、冒頭、新藤幹事から安全保障についての御議論がございました。それで、ちょっと私も頭の中を整理してお話をしたいと思うんですけれども、今、我が国をめぐる安全保障環境が厳しさを増している、ますます厳しさを増している、こういう認識については、恐らく多くの皆さんが共通の理解をしていらっしゃるんだと思うんですね。この厳しさを増す安全保障環境の中で我が国がどう安全保障政策を取っていくのかというのは喫緊の課題であるということは、私も全くそのとおりだというふうに認識をしております。

 日本の安全保障政策というのは、これは言うまでもございませんけれども、憲法九条を基にした専守防衛の下、日米同盟による防衛協力体制が基軸でございます。私は、日米同盟、日米防衛協力体制、これをいかに信頼性を高めていくのか、その持つ抑止力というものをどれだけ強化していけるのか、ここが最大のポイントであるというふうに思っております。安全保障環境の変化に対応するには、今申し述べたとおり、日米同盟の信頼性向上による抑止力の強化が不可欠。

 では、これまでそのことについてどういう議論をしてきたかを振り返りますと、私は、やはり六年前に施行された平和安全法制、あの平和安全法制は六年前に施行されましたけれども、約三年かけて、国会で、また政府・与党の中で、本当に綿密な議論を私はさせていただいたと思っています。その一番のポイントは、日本が専守防衛を堅持しながら、要するに、九条の下でどこまでの自衛の措置を認めるのか、この点を限界まで突き詰めたのが私は平和安全法制であったというふうに理解をしております。

 先ほど玉木委員の方から、九条の規範力が限界に来たとおっしゃったけれども、私には理解できません。あのときの議論で、まさしく九条の下でどこまで自衛の措置ができるんだということを徹底して議論をさせていただいたわけでございまして、是非、そのときの議論をもう一度、玉木先生におかれましては認識をしていただきたい。

 特に、八年前の二〇一四年七月一日に閣議決定をしました。あの閣議決定に基づいて平和安全法制の整備を進めたんですね。あのときの七月一日の閣議決定を作るに至るまでは相当な議論を積み重ねて、憲法九条の下でどこまで自衛の措置が可能なのかということを突き詰めて議論した結果があそこに書いてあります。決して九条の規範力がなくなったわけじゃありません。九条の下でどこまで自衛の措置が可能なのかという議論をした結果があの平和安全法制であったと私は理解をしております。

 この憲法審査会でも、船田先生もいらっしゃいますけれども、あのとき、平和安全法制の論議の際に、憲法との関係について、この憲法審査会でも何度も議論がなされました。当然、両論あります。国論をある意味二分するような、そうした大激論があったわけでございますけれども、私は、振り返ってみますと、あのときの平和安全法制の意義というのは非常に大きな意義があった、かつ、今まさしく安全保障環境が厳しさを増している中で、その重要性というのはますます生じているというふうに理解をしているところでございます。

 平和安全法制を整備したことで、平時から日米間の連携が強化されました。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態から有事までの隙間のない対処が可能になりました。日本防衛のために活動する米軍が攻撃を受けた際も、一定の要件の下で、専守防衛の範囲内で自衛隊が米軍を守ることができるようになりました。それがあって初めて日米同盟の信頼性は向上したわけでございます。実際、あの法制ができて以来、日米間の共同訓練というのは頻繁に行われております。米軍からの情報提供も円滑になされるようになりました。情報共有も格段に進んでおります。現下の厳しさを増す安全保障環境を鑑みたときに、あの平和安全法制を整備しておいて本当によかったと私は改めて強調したいというふうに思います。

 政府は、この年末に向けまして、国家安全保障戦略ほか三文書の改定をしていくということでございます。私たちも、日本の防衛力の強化に向けてしっかりと議論を進めさせていただきたいということを今考えているところでございまして、党内でもしっかり今勉強を進めているところでございます。是非、そういうことも御理解の上で、この九条の問題についても御議論をお願いしたいと思います。

 以上です。

足立委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の足立康史でございます。

 今日は安全保障について種々意見が出ていますので、私からも、お三方に質問の形で我が党の問題意識を述べたいと思います。

 まず、玉木雄一郎オブザーバーにですが、先ほど北側委員がおっしゃったとおりでありまして、私も、憲法九条の規範力が何か崩壊したみたいなことは全く賛同できません。山尾志桜里さんの立憲的改憲論という本が出ていますが、山尾さんの考え方に少し毒されているのではないかな、こう思います。立憲的改憲論で彼女がおっしゃっていたのは、要すれば、まさに今、玉木さんがおっしゃったように、与党のせいで憲法九条の規範力がなくなってしまったので、したがって自衛権の範囲を憲法に書くべきだというふうに私は承知をしています。

 しかし、自衛権については、まさに日米同盟の中で存在しているもので、端的に言えば、米国のスタンスによって伸縮しかねない内容だと私たちは考えています。そうした意味で、憲法にいわゆる自衛権の範囲なるものを規定していく立憲的改憲論というのは大変危険なものであって、合理性の低いものだと思っています。

 むしろ、自衛隊の明記については、安倍政権から議論があるように、私たちは積極的に支持するというか、そういう立場、私たちの立場から、この国会中に、憲法九条に自衛隊をどう明記するのか、イメージ案を提示していきたい、そう思っています。

 そうした意味で、玉木委員には、規範力がなくなっているというのはちょっと撤回していただきたい、こう思います。

 それから、二つ目は赤嶺委員に。先般来、私が、破防法との関係で、共産党がおっしゃっていることはむちゃくちゃだということを申し上げてきました。先日、五月三日のBSフジのプライムニュースでも、井上哲士参議院議員が馬場伸幸共同代表からの質問を受けて、あらゆる手段とは何なんだということを馬場さんが聞かれたのに対して、自衛隊に加えて、警察とか海上保安庁だとおっしゃいました。そこにおられた新藤筆頭からは失笑を買っていましたが、やはりどう考えても、一般国民に火炎瓶や武器を手に取って戦えとおっしゃっているようにしか聞こえません。改めて、そういうことかどうか、お答えをいただきたいと思います。

 最後に、私の発言で時間を取りたくないので短くしたいと思いますが、奥野筆頭。奥野筆頭というのは、野党筆頭じゃなくて、立憲の筆頭の奥野さんにですね。これも三日の集会で、ロシアを断じて許すわけにはいきません、そしてそのロシアよりも許せないのが今の与党だと、べらべらべらとおっしゃって、さらに、憲法審査会について、今の憲法審査会は、各党がいかに改憲に熱意があるか、それを示すPRの場になっていますと、ひどい侮辱をされています。是非、最後、十秒だけ上げますので、謝罪をしてください。お願いします。

 以上です。

玉木委員 足立議員から質問をいただきましたが、規範力が落ちているということについては、私はやはり一定程度そうではないかというふうに思います。

 というのは、元々、陸海空その他の戦力はこれを保持しないと条文に明確に書いておきながら、一部、集団的自衛権を認めるに至るまで、解釈でこれをやってきたことについては、一般の人が普通に読んでそうは分からないような、専門家の解釈のまさにラビリンスのような積み上げをやってきたことについては、いろいろな戦後の制約があった中での工夫とはいえ、まさに安全保障環境の厳しい変化の中で、私は、これまでの、現実にいかに戦力不保持を規定した九条二項を合わせてくる先人の努力は多としながらも、憲法改正の議論をするのであれば、先ほど申し上げたような、解釈でどこまでやるのかと。

 北側先生は限界までやったということなんですが、今度は限界を超えてやるところが出てきているのではないかということも含めて、やはりきちんとした、条文に沿った議論をすべきではないかというのが我々の考えであります。

 もう一つ、足立議員が言ったことで気になったのは、独立国家としての我が国が保持する自衛権が米軍によって伸びたり縮んだりするということ自体、私はあり得ないと思います。我が国が行使する自衛権については我が国が規定するものであって、もしそれが現行法上、実は平和安全法制の存立危機事態についてはそう読めるところもあるので、まさにそういったところを見直す議論が必要ではないかということ、やはりいざというときの自衛権の行使は最大の国家の作用ですから、そのことについて国家の意思としてどうするのかということを立法府として示す議論をきちんとやるべきだと思います。

森会長 もう既にかなり発言時間を過ぎておりますので、会長の判断で、赤嶺君、奥野君の答弁はまたの機会に譲らせていただきます。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 ウクライナへの侵略など安全保障環境の深刻化により、外国による侵略から国民の命や国土をいかに守るかという自衛権の在り方が、現実の問題として国民の間に広く共有されています。私は、このようなときこそ国会が自衛権の在り方を議論すべきだと思います。それは、九条については憲法学も指針を示せずにいるからでもあります。

 一例を挙げると、先日、本審査会にも参考人としておいでになった高橋和之東大名誉教授は、三年前に出された、憲法学の最高権威、芦部信喜「憲法」の最新第七版の端書きで、憲法九条について衝撃の告白をしておられます。芦部先生が最晩年に、九条を法的拘束力のある規範ではなく、むしろ政治的マニフェストと考える説を検討すべきかもしれないと述べたことを最近知ったというものです。

 具体的には、芦部先生が九五年の講演で、九条を法的に拘束する規範だと考えると、憲法を改正するか自衛隊を解消する方向で考えるかしない限り、憲法の規範との矛盾を解くことはできません、必要最小限の自衛力も当分の間暫定的に認めるという立場を取るためには、政治的マニフェストの意義を再検討しなければならないと述べたことです。

 マニフェストとは、御存じのように、従来の政党にも見られた必ずしも守られない公約であり、九条に法的拘束力がなければ、法的には違憲、合憲の問題は起きません。つまり、芦部教授は、自衛隊が解消できない以上、九条を法的拘束力のないものと解釈して、自衛隊の憲法適合性問題を棚上げしようとしたということであります。

 高橋名誉教授も、先ほどの「憲法」の端書きで、芦部先生の時代の憲法学は圧倒的多数が自衛隊違憲論を唱えていた、しかし、今では七割以上の国民が自衛隊の存在を支持すると答えるようになっている、こうした現実を前にして、憲法学は自衛隊の憲法適合性問題を棚上げした、立憲主義を守れという呼びかけは、憲法と現実の乖離を説明し指針を与える理論なくしては、うつろにしか響かない、九条の補訂について最後まで悩んだと、この本で告白されています。

 このように、憲法学の権威ですら九条について指針を示さない中、国会こそ責務を果たすべきであります。

 我々自民党は、自衛隊の解消を考えない以上、立憲主義の下で憲法九条の法的拘束力を肯定するには、芦部先生が示した第一の選択肢、つまり、九条を法的に拘束する規範だと考え、憲法を改正するという選択肢を取り、立憲主義の下で自衛権を考えたいのであります。

 これは、最高裁の判断にも沿うものです。最高裁砂川事件判決も、憲法九条は我が国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定していない、我が国が自国の平和と安全とを維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは、国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではないとしています。

 我が党の九条イメージ、たたき台素案は、この最高裁の判断に沿って、九条一項、二項を維持した上で、必要な自衛の措置とそのための実力組織として自衛隊の保持を憲法上明記し、あわせて、シビリアンコントロールのために、総理大臣の指揮監督権と国会の承認その他の統制を憲法上明記したものであります。

 このように、九条一項、二項を維持した上で、追加的に自衛のための実力組織を憲法に明記する案は、自民党が初めてではありません。「憲法九条私ならこう変える」との論考を二〇一三年十月の文芸春秋に公表したのは、先日まで立憲民主党代表であった枝野幸男議員です。その中で、現行憲法には手を加えず、これに続けて新たな規定を追加するのが形式としては最も適切だと考えますとして、詳細な九条の二、九条の三追加案を明示し、あくまで私見としながらも、従来の民主党の方針とそごはありませんと述べ、党内議論を始め、これから真に国益につながる憲法論議を深めていきたいと思いますと力強く結んでいます。

 確かに、奥野野党筆頭幹事も、二〇一二年の朝日新聞と東大のアンケートに、憲法を改正するか解釈変更して集団的自衛権を行使できるようにすべきだという意見に賛成と答えています。どのような見解か、次回以降、詳細を伺いたいところです。

 憲法学が指針を示せず、野党にも憲法九条について憲法論議を深めるべきとの意見が事実としてある中、この憲法審査会において、九条についての論議を深めることを強く求めて、私の発言といたします。

新垣委員 会長、ありがとうございます。

 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 前回、大型連休前の憲法審査会は、異例の本会議散会後の開催となりました。公選法並びの三項目の憲法改正国民投票法改正案を本審査会で審議入りさせるため本会議での趣旨説明を省略する、いわゆるつるしを下ろすための議院運営委員会をもっての審査会開会となりましたが、議運では、与野党合意を見ないまま採決が行われました。

 憲法審査会には、時の政局に左右されないという前提条件の下で与野党の合意を重んじて開催などを決める中山方式があります。採決ありきで進めるやり方は、自ら中山方式を覆し、政局化させんとするもので、断じて容認できません。憲法論議に関しては円満な議事運営に徹するべきであると、抗議の意思を示したいと思います。

 今年の五月三日は、日本国憲法施行から七十五年目の節目となる憲法記念日となり、全国各地で集会が開催されました。岸田総理も、民間団体主催の集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せ、自民党改憲四項目に関し、いずれも極めて現代的な課題だ、早期の実現が求められると述べるなど、改憲に意欲を示しております。特に、緊急事態条項については、ロシアのウクライナ侵攻やコロナ禍を挙げ、大地震などの緊急事態に国会機能をいかに維持するのか、国家や国民はどのような役割を果たしていくべきかと問いかけた上で、迅速な対応を確保するため、憲法にどのように位置づけるかは重要な課題だ、真剣に議論を深めなければならないと訴えております。

 私は、岸田総理が言及した国民の役割という言葉が何を意味するのか、緊急事態発生時の私権制限を念頭に置いた発言ではないかと大変危惧をしております。

 間もなく、沖縄の日本復帰から五十年となる五月十五日を迎えます。先ほどお話がありましたが、今年の憲法記念日に合わせて、玉城デニー知事は、辺野古新基地建設の断念や日米地位協定の抜本的改定を始めとする構造的、差別的な基地問題の早期解決、憲法が保障する民主主義や地方自治の理念追求、平和的な外交、対話による緊張緩和などを柱とする、平和で豊かな沖縄の実現に向けた建議書を岸田総理に手渡しました。

 新たな建議書を読み込むにつけ、五十年前に琉球政府の屋良朝苗主席が政府に提出した復帰措置に関する建議書の意義、沖縄側が求めた真意は、恒久平和を掲げる日本国憲法の実効性ある適用にあったのだとの思いを強くしております。

 去る四月十五日、復帰五十年の節目を目前にして、本審査会で長らく委員を務めてこられた前衆議院議員の照屋寛徳先生が逝去されました。謹んで御冥福をお祈りしたいと思います。

 生前、寛徳先生は、ウチナーとウチナーンチュは本土ではなく日本国憲法の下に復帰したんだと事あるごとに言い、第二次安倍政権以降、加速度を増した改憲論議に強い危機感を持たれておりました。

 憲法審査会の委員となった今、寛徳先生がどのような思いで、著書「憲法を求める沖縄捨てる日本」そして「「壊憲」に抗い不戦と護憲に生きる」を執筆されたのか、手に取るように理解をできます。

 社民党は、戦後七十五年にわたって日本がどこの国とも戦争せず、また他国の戦争に巻き込まれることがなかったのは、憲法九条が軍事力拡大の抑止力となり、専守防衛に徹する根拠であり続けてきたからだと認識をしております。だからこそ、ウクライナ戦争や台湾有事を口実に安易な改憲論議に走ってはいけないと思いますし、ましてや、敵基地攻撃の保有や核シェアリングを論じるべきではないと考えます。

 とりわけ、世界情勢が緊張の度合いを増す中では、憲法見直し議論そのものが、国際社会に九条破棄を想起させ、東アジア周辺諸国の亀裂を生み出す火種になるのではないかと危惧をしていることも強調しておきたいと思います。

 日本国憲法は、国際社会の規範となるべき、世界に誇れる平和憲法だと思っております。憲法施行七十五年、沖縄への憲法適用五十年の節目に、私たち国会議員は、憲法九十九条に定める憲法尊重擁護義務を全うし、現行憲法の理念実現に力を尽くすことを確認し合うべきだと申し上げ、私の意見表明といたします。

森会長 まだ御発言の希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしております。今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十五分散会


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