衆議院

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第15号 令和4年6月2日(木曜日)

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令和四年六月二日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      伊藤 達也君    石井  拓君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    尾身 朝子君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      国定 勇人君    國場幸之助君

      下村 博文君    中西 健治君

      西村 康稔君    船田  元君

      古屋 圭司君    松本 剛明君

      山口  晋君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      新垣 邦男君    近藤 昭一君

      櫻井  周君    中川 正春君

      野田 佳彦君    太  栄志君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    足立 康史君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      國重  徹君    中野 洋昌君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   参考人

   (SIA専務理事)    吉田  奨君

   参考人

   (FIJ事務局長)

   (弁護士)        楊井 人文君

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     尾身 朝子君

  西村 康稔君     石井  拓君

  細野 豪志君     山口  晋君

  山田 賢司君     国定 勇人君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     西村 康稔君

  尾身 朝子君     稲田 朋美君

  国定 勇人君     山田 賢司君

  山口  晋君     細野 豪志君

    ―――――――――――――

六月一日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(小宮山泰子君紹介)(第一三九四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一五〇五号)

 同(新垣邦男君紹介)(第一五〇六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五〇九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五一〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一五一一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五一二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五一三号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五一四号)

 同(本村伸子君紹介)(第一五一五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一五四四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五四五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五四六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五四七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五四八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一五四九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五五〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一五五一号)

 同(宮本徹君紹介)(第一五五二号)

 同(本村伸子君紹介)(第一五五三号)

 憲法九条を変えず、憲法の平和、人権、民主主義を生かす政治の実現を求めることに関する請願(新垣邦男君紹介)(第一五〇四号)

 改憲発議に反対することに関する請願(新垣邦男君紹介)(第一五一六号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(国民投票とインターネットの関わり))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、国民投票とインターネットの関わりについて調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として一般社団法人セーファーインターネット協会専務理事吉田奨君及びNPO法人ファクトチェック・イニシアティブ事務局長、弁護士楊井人文君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森会長 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、吉田参考人、楊井参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。

 なお、発言をする際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、まず吉田参考人、お願いいたします。

吉田参考人 ただいま御紹介にあずかりました一般社団法人セーファーインターネット協会専務理事の吉田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、このような厳粛な場に参考人としてお招きいただきまして、誠に光栄に存じます。私の知見がお役に立つようであれば幸いでございます。

 最初にお断りしておくこととして、当協会は、インターネット広告に係る問題は取り扱っておらず、知見を有しておりません。そのため、今回の招致をお受けするに際し、広告に関する御質問を頂戴してもお答えできない旨、事務局を通してあらかじめお伝えしているとおりでございます。この点、御承知おきください。

 さて、スライド三枚目でございます。

 インターネットが出現した意味の重要なものの一つは、それまでマス、つまり広く一般大衆を対象としたメディアに限られていた言論公表の場を個人にもたらしたということであって、原則的には民主主義にとって非常によいことであると捉えております。ただ、表現の自由を大前提としつつも、この後御説明いたしますように、他の法益との調整を要する場合があり、インターネットの自由な言論空間を守るために、当協会はその悪用を抑える活動を広範囲に行っております。

 近年の具体的な活動ですが、海賊版サイト対策における著作権権利者と情報通信事業者との民間協力を推進する取組、こちらは通信の秘密に抵触するブロッキング以外の施策での解決を模索しております。また、誹謗中傷投稿に関する被害者ホットラインの運営及び任意開示の促進施策を手がけております。

 そして、ディスインフォメーション対策フォーラムを二年間にわたり開催し、この三月に報告書を公表いたしました。ここでの考察が憲法審査会の議論にも資すると考えましたので、これに即して御説明申し上げます。

 次のスライドに、ディスインフォメーション対策フォーラムの構成員を記載しております。

 御覧のとおり、プラットフォーマーを含むインターネット事業者だけではなく、憲法学者、社会学者、弁護士、行政府、ユーザーの皆様など様々な方々に御協力を賜り、オブザーバーとして、日本新聞協会様、日本放送協会様、日本民間放送連盟様にも御参加いただき、それぞれの立場から忌憚なき御意見を頂戴しながら、議論を深め、時には公開シンポジウムなども開催しながら、公明正大に、透明化を図りつつ報告書を取りまとめ、対策の方向性を確立したものです。

 スライド五枚目でございます。

 ディスインフォメーション対策フォーラムの報告書では、既にプラットフォーマーが自主的に取り組んでいる施策について触れています。ニュースポータル、SNS・交流サイト、インターネット検索においては、コロナワクチンについてのデマの横行を契機に、科学的に正しい情報をいかに国民に効果的に届けるか、各社が競い合うように工夫を凝らしました。例えば、インターネット検索においては、ワクチンに関する用語を用いて検索をした際に、通常の検索結果とは別に、その上部に、厚生労働省による情報や信頼できる医療専門家が提供するコンテンツを配置しています。

 インターネット上に情報があふれていても、人々が自由に使える時間が限られている中では、いかに目立つところに正確な情報を載せるかということ、いかに自然な動線の中に正確な情報に触れる機会を現出できるかが肝要となります。また、一口にインターネットといっても情報摂取のパターンは多様ですので、それぞれのサービスの特徴に即した方法を模索する必要があります。その意味で、これらはいまだ確立されたものではなく、試行過程にあるというふうに考えております。

 スライド六枚目でございます。

 フェイクニュースに対抗するための今後の展開についてでございます。

 一つ目は、情報空間の健全性向上施策です。適切なファクトチェックの実施、ファクトチェック記事の配信。二つ目は、国民のリテラシー向上施策。三つ目は、これら施策の担い手をどう育てるかについて言及しています。とりわけ、先ほどのスライドで、正確な情報を確実に届ける方法について御説明いたしましたが、ファクトチェックした結果の記事についても、その届け方を工夫する必要があります。ファクトチェックについては、この後、FIJ様から詳しく御説明があるものと承知しております。

 最後のスライドでございます。

 これまでの情報環境は、報道機関、マスメディアの皆様に担っていただいており、相対的には安定したものであったと思います。インターネットが出現して、玉石混交の状態になった中で、とりわけ近年、世界的には民主主義の脅威となるようなフェイクニュースの横行が報告される中で、日本も社会を構成する各機関が協力して、偽情報に強い社会の実現を図っていく必要に迫られていると考えます。

 フェイクニュース対策の主眼が、コロナ禍のワクチンデマなどからウクライナ情勢を契機とした安全保障論に移り、今また国民投票時の情報の在り方という視点が出てきたかと考えます。スライドの五枚目でお伝えしたような正確な情報を的確に届ける工夫は、一つの方策として機能するのではないかというふうに考えます。同様に、しかるべき時期が到来すれば、ファクトチェックの重点対象項目の一つとすることも考えられるのではないかと思います。

 国民投票や憲法改正に係る正確な情報についても、こういったスキームを活用することによって対策とすることができると思いますが、どういったサイトに誘導することが最も適切なのかについては、実際にこのような仕組みを実施するか否かも含めて、最終的に各民間事業者が自主的に判断することとなります。この点、我が国においても、プラットフォーマーによる施策の透明化の促進は潮流となりつつありますので、社会的なコンセンサスに従うよう、公明正大な議論と手続を経て実施に至るものと考えております。

 これらの活動に共通することとしては、何か一つの担い手や一つの策で、副作用なく問題だけを一〇〇%解決するという手法は存在しないということです。常にもどかしさを覚えながら、日本国憲法で保障された国民の表現の自由を確保しつつ、他の法益との調整を図っていかねばならないというふうに考えます。

 私からは以上でございます。

森会長 次に、楊井参考人、お願いいたします。

楊井参考人 今、御紹介にあずかりましたファクトチェック・イニシアティブ事務局長で弁護士の楊井と申します。

 本日は、このような意見陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 本日、私からは、日本におけるファクトチェックの現状及び国民投票を見据えた偽情報対策についてという話をさせていただきたいと思います。

 皆さん、こちらの憲法審査会においては、国民投票を見据えて様々な議論をされていると承知をしております。国民投票、まだ決まってはおりませんけれども、もしなされる場合は、事実に基づいた議論、そして、それに基づいて、冷静な国民の最終的な判断、そういうことをできる環境の整備というものが大変重要だということで、皆さん、御議論いただいているかと思います。

 その際に、事実に基づいた議論ができるのかどうかというところにおいて、このファクトチェックというのが一つ重要な役割を果たせるのではないか、そういう観点からお話をしたいと思います。

 まず、簡単にファクトチェックというものについて概略を御説明しますが、社会に広がっている様々な情報や言説が事実に基づいているかどうかということを検証して、そして、その結果を発表する営みをファクトチェックといいます。

 これは、実はアメリカを中心に、もう二十年以上前からそういった民間での動きがありまして、そして、最近、フェイクニュースという言葉が流行語になった二〇一〇年代半ばに急速に、世界各国でファクトチェックの団体、メディアが急拡大いたしました。

 最近、オシントという言葉も皆さんお聞きになったことがあるかと思います。オシント、オープンソースインテリジェンスですね。公開情報を駆使して、ウクライナ戦における様々な問題を民間レベルでデータを駆使して解明する。公開情報を駆使するという点ではオシントという営みとも類似をしておりますけれども、ファクトチェックは、それよりも更に厳格な固有の作法も持っております。

 担い手は、伝統メディアのジャーナリストだけではなく、専門家や市民など、様々なバックグラウンドを持った方々がファクトチェックに取り組んでおります。主に、非政府、非営利の第三者型のファクトチェック団体が主流になっております。

 お手元の資料に幾つかファクトチェックの事例を挙げておりますので、そちらの方は御覧いただければと思います。

 世界では、ファクトチェックの活動というのは非常に活発に行われておりまして、北米だけではなく、欧州、中南米、アフリカ、アジアにも拡大しております。そして、国際ファクトチェック・ネットワークという団体が二〇一五年に発足をしまして、ここで国際的なルール、原則が定められました。非党派性、公正性、透明性という、こういった重要な原則を定めて、詳細な基準も定められております。この基準を満たしているかどうかを審査する国際団体がIFCNです。

 そちらに加盟している、現在、世界各国の団体は、百二十四のメディア、団体が加盟しております。アジアからは、韓国、台湾、香港等、各国から加盟しておりますが、残念ながら、日本からはいまだゼロであります。これは、G20の中でも日本と中国、ロシアといった国しか、まだ加盟できていないという状況であります。

 それぐらい日本でのファクトチェックというのはまだまだ不十分なところもあるわけですけれども、そういったことを乗り越えていくために、私を中心として、日本におけるファクトチェックの普及に向けた団体、これを、ファクトチェック・イニシアティブ、二〇一七年にNPO法人、設立をいたしました。

 そして、この活動は、ファクトチェックそのものを行うわけではないんですが、ファクトチェックを普及させるための様々な取組をしてまいりました。

 まず、そもそもファクトチェックというのは何なのか、世界でどういうふうに行われているのか、それをメディアを始めとする関係者の皆さんに情報提供をし、セミナー等を開き、そして、選挙期間においてファクトチェック、これは国民投票もそうですけれども、重要な選挙、今度の参議院選挙でも、我々、参議院選挙のファクトチェックプロジェクトを行う予定でございます。五年前の衆議院選挙、そして参議院選挙も行いました。

 そういった選挙期間のファクトチェックプロジェクトを実施したり、あと、疑義言説と申し上げているんですが、真偽不明な情報を我々の市民や学生のスタッフがモニタリングをして、そして、これは怪しい、疑義のある情報や言説というものをファクトチェックを行うメディアに提供する、そういった取組をしております。

 お手元の資料の中にもファクトチェック・ナビというものを御紹介しておりますので、そこで、数はそれほど多くありませんが、日本で行われたファクトチェックの事例が一覧できるようになっておりますので、もしよろしければ御覧いただければと思います。

 こうした日本のファクトチェック活動も、我々の取組もありまして、コロナ禍を契機に拡大傾向にあります。ただ、まだ諸外国のように、専業でファクトチェックを行う、そういった方は日本にはおりません。ですので、量的にもまだまだ不十分というのが実情です。

 そういった中で、憲法改正国民投票に向けての課題と提言についてお話をしたいと思います。

 海外では、国民投票をめぐるファクトチェックも活発に行われております。お手元の資料に一つ、スイスは国民投票が非常に多い国だというふうに皆さんも御承知かと思いますが、そのスイスにおいても、国民投票の際に、公共放送を始めとするメディアがファクトチェックを投票前に実施をしているという事例を一つ、参考事例として添付をいたしました。

 こういった取組をしているわけですけれども、もう一つ重要な論点として、国境を越えた誤情報の流通リスクが高まっているということを、我々、活動を通じて気づいております。というのは、このコロナ禍、そして、その前の大統領選挙もありました、非常に海外の情報が日本語に翻訳されて日本の中で流通するようになってきています。もちろん、日本の情報が海外に行くということもあるんですけれども、そういった中で、海外のミスインフォメーション、ディスインフォメーションが言葉の壁を簡単に越えて日本で流通する、そういうことも出てきておりますので、ここも一つ気をつけなければいけないポイントだと思います。

 そういった中で、日本のファクトチェック活動を活性化させていかなければならないわけですが、まだまだ資金不足、そして人材不足というところがあります。十分な経験や体制を持った組織を準備していなければ、いざとなったときに迅速かつ有効な検証活動は行えません。来る国民投票までに、信頼できる経験値の高いファクトチェック専門メディア、団体が、一つではなく複数活動している状態が望ましいと思っています。また、情報流通を担うのはプラットフォーマー、プラットフォーム事業者ですので、そういった事業者の協力というものも不可欠だと思います。

 基本的に民間の自主的な取組に委ねられる分野ではあるんですけれども、こういった検証活動、非常に難しい、人手のかかることであり、そして、民間の取組というものも少しずつは進んでおりますが、検証活動の独立性というものを担保した上での、何らかの公的な支援の枠組みの検討も必要かもしれないというふうに思います。さもなければ、ちょっと間に合わないかもしれない。国民投票がいつなのかはもちろん分かりませんが、それまでに十分信頼のできるファクトチェックメディアが複数活動している状態になっているかどうかというのは、少し不安な状況にあります。

 ただ、憲法問題というのは、もちろん、意見、解釈をめぐる問題も多いと思います。あくまでファクトチェックというのは事実に基づいているかどうかということの検証というものにフォーカスを当てるものでして、それぞれの見解、どちらが正しいのか正しくないのか、軍配を上げることではありません。あくまでファクトについて検証するということですので、事実と意見をきちんと区別して、そして事実に関する問題について検証を行うということを旨としております。

 一方、意見の問題というものは、様々な自由な議論というのは行われると思いますが、異なる立場同士の公開討論会のような場というものをたくさん設けていただくことによって、それぞれの意見、見解の相違点をより明確化できるとともに、また、事実関係の誤りというものや、そういったファクトチェックというものも、公開討論会の場を通じて共有するということが効果的なのではないか。

 実際に、海外の、イギリスの国民投票でも、討論会においてファクトチェックの結果が共有されたりしたことがございます。そういった異なる立場同士の公開討論というものも、ファクトチェックというものを周知する重要な機会になるのではないかというふうに思っております。

 最後に、まとめに入っていきますけれども、ファクトチェック、これは、偽情報対策として万能というものではありません。ファクトチェックもあくまで神ならざる人間が行っているものですので、人間が行っているものである以上は、誤りもゼロではありませんし、そして、偏りが全くゼロかというと、そうでもないかもしれません。ですので、民間の努力で行うわけですけれども、できるだけ多くのファクトチェック団体が増えること、要するに、多様なバックグラウンドを持ったファクトチェック活動が行われることが望ましいかと思っています。

 そしてまた、課題は多いんですが、直接的にフェイクニュースの法規制といったようなことは決して望ましくないと思っています。それは非常に副作用が大きい。濫用の可能性もありますし、そういった法規制によらずに、効果は少し弱いかもしれないけれども、ファクトチェックという活動に、是非、活性化をするという方向に向かっていただきたいと思っています。そのことを通じて誤情報に対する人々の免疫力というものが強まっていく、そういう可能性は十分あるかと思っています。そういった施策ということを求めたいと思っています。

 そして、最後に、あと時間も僅かですので、一言だけ申し上げたいと思います。

 こういった偽情報の問題というのは、ネット社会だけの問題では当然ありません。メディアの問題でもあり得ますし、そして、政府も決してその偽情報の問題から無縁ということではないと思います。国会の場は、当然、事実に基づいた議論に基づいて、様々な法案の審議等がなされているかと思いますけれども、今回のコロナ禍において、果たして事実に基づいた議論が冷静に行われていたのだろうか。本当に、政府関係の部署から、あるいは自治体から、事実に基づいた情報がきちんと発信をされていたのかどうか。私は、ファクトチェックをしていた立場として、疑問に感ずることが多々ございました。

 一例、詳しくは述べませんけれども、昨年冬、緊急事態宣言が行われたことは御記憶にあると思いますけれども、その昨年冬の緊急事態宣言において、東京都において重症者の病床使用率が一〇〇%近いということを連日報道、発表されておりましたが、実際は三〇%台だったということが後で判明しました。

 これを明らかにしたのは私でございますけれども、そういった誤った情報に基づいて国民の自由や権利が制約されるということは、決してあってはならないというふうに思います。新型インフルエンザ特措法五条においても、国民の権利の制限というのは必要最小限に、新型インフルエンザの対策の実施のために必要最小限にとどめなければならないと書いてあります。

 果たして、法の支配に基づいてそれぞれの政策が行われているのかどうか、事実に基づいて、データに基づいて行われているのかどうか。これは決してネット社会だけの問題ではなくて、国会の皆様においても、重々そういったところを意識していただきたい。

 そしてまた、憲法審査会においては、将来的に、緊急事態条項も含めた日本の統治機構の在り方を議論されると思います。非常に立法府の、あるいは司法府、裁判所によるこういった行き過ぎがないかどうかのチェック・アンド・バランスですね、そして検証がきちんとなされているのかどうか、この仕組みが甚だ心もとないというふうに感じておりますので、そういった事実面の検証、そして政策の検証、これをきちんと行える仕組みづくり、これは今後の憲法審査会においても是非期待をしたい、これは一法律家として、一国民として一言最後に申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

森会長 ありがとうございました。

 以上で各参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

森会長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 参考人の方々には、急なお願いでございますにもかかわらず私たちの要請に御対応いただきましたことを、まず冒頭に御礼を申し上げたいと存じます。

 これまで、私たち衆議院の憲法審査会におきましては、憲法改正国民投票の公平公正を確保するために、テレビ、ラジオのCM規制の在り方について議論してまいりました。その過程で、こうした放送CMの取扱いに加えて、伸長著しいインターネットCMの取扱い、さらにはインターネット上の様々な表現活動全般について、国民投票を行う際に公平公正をどう確保するのかという問題が新たに論点となったわけであります。

 その意味で、本日お出ましをいただいたわけでありますけれども、両参考人に、インターネットの情報環境についての御意見を伺うこと、それから国民投票とインターネットの関わりについてのお考え、総括的なことになってしまうと思いますけれども、改めて、もう少し今の最初の御意見表明に加えて、そのことを教えていただければありがたい、このように思っております。

 インターネットの特徴は、有償、無償を問わず、SNSを通じて国民が自由に自ら情報発信を行えるという側面があります。しかし一方で、最近のAIを使ったプロファイリングですとかマイクロターゲティングによるフィルターバブル、フェイクニュース、こういった氾濫、こういった問題も出てきていると承知しています。

 憲法改正の国民投票実施の際に、投票者が的確な判断を行えるように、憲法改正原案に対する公平公正かつ多様な情報が提供され、自由に取得できる環境を整えることが何よりも大切だと考えています。憲法改正に関わる適切な情報の提供がなされているかということを確認するために、何らかの対処が必要だ、何らかのことを考えなければいけないと考えておるわけですけれども、その際には法的な規制を行うというやり方もなくはないんですが、その場合に、公的な機関が関わる場合には、発信の自由だとか表現の自由とどう整合性を取るかという問題も、これは当然整理しなきゃいけないというふうに考えます。

 そこで、まず総括的にお二人にお尋ねしたいと思いますが、ネットにおける国民投票の公平公正と表現に関して、どのようにこの問題を考えて、そしてバランスを取るかにつきまして、それぞれのお立場から御意見を頂戴したいと思います。

 もう既に楊井さんの方からは具体的なお話もいただきましたが、その意義と、やはりそれをきちんと社会に定着させていく、こういうことが必要だと思うんですが、そこも含めて御意見を頂戴したいと思います。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 広告規制に関しましては直接的にお答えする立場にはございませんけれども、状況としましては、やはりCMの規制は、自らの表現する場が限られていて、また費用が高価であるという前提に立って考えられていたものだというふうに思います。

 インターネットの世界では、いろいろな投稿サイトで安価に情報発信ができるという世界観で運用されておりますので、そういった、現行の法律の前提となる部分とつじつまが合わなくなっている状況にあるというふうに、委員御指摘のとおりだというふうに思います。

 ただ、発信した情報が実際に多くの人に見られるかということについては、様々な努力を要するのも事実でございますので、そのことに留意してCM規制の妥当性を判断していかなければいけないというふうに考えております。

 また、基本的には、一つ一つの問題投稿をどうしていくかという視点も大事ですけれども、正しい情報をいかに目につくところに置いて、なかなか、正しくない情報の方が伝播しやすいというような研究結果もございますけれども、正しい情報をどう伝えていくか、ファクトチェック記事の流通も含めて、そのことに重きを置いた施策というところが待たれるのではないかなというふうに思います。

 以上でございます。

楊井参考人 御質問ありがとうございます。

 憲法改正国民投票において、冷静な、事実に基づいた議論をするということが非常に重要であるということは、論をまたないかと思います。そうはいっても、やはり賛成派、反対派というのは当然出てくるのが国民投票という場ですので、そこは激しく議論も行われるということが想像されます。その中において相手側を批判をしたり攻撃をしたりということは、言論の中ですので、これが全くないかというと、それは当然出てくることが想定されるという前提で、そしてまた、事実に基づかない、あるいはミスリードな指摘をするということも、これは様々な議論の中では出てくるものだという前提で対応していかなければならないと思います。

 そういうものが初めからない、きれいな、冷静な議論ができますということは、まずあり得ない。必ず、白熱した、そして様々な情報も飛び交う。先ほど申し上げたように、場合によっては、海外から何らかの介入と言ったらいいのか分かりませんけれども、国民投票に影響を与えるような情報が海外から流れてくるということもあり得るということの想定に立って対策等を考えていかなければならないと思います。

 その際に、まず大事なのは、モニタリングといいますか、そういった誤った情報が流れていないかどうかをきちんと監視をする、その体制をつくるということです。我々ファクトチェック・イニシアティブでもその活動の一端を担っておりますけれども、ここはもっと充実をさせていかなければならないと思います。

 また、時間がかかります、ファクトチェックというのは。検証するというのは、どうしてもタイムラグが発生してしまうんですね。特に、公職選挙法の選挙なんかは二週間足らずの極めて短い選挙ですから、非常に我々ファクトチェックする側も時間に追われて大変なんですけれども、国民投票はもう少しゆとりがあるとはいえ、やはりタイムラグが生じます。その中において、できるだけ、人員も含めて充実したファクトチェックの組織づくり、これを民間レベルでもっともっとしていかなければならないということと、それに対する何らかの社会的な、あるいは公的なバックアップというものが必要ではないかなというふうに考えております。

 ファクトチェックといいますと、最後に一言だけですけれども、何が誤りなのかどうかということも、実はファクトチェッカーの間でも意見が分かれることがあります。そんな簡単なものではありません。ですので、多様なファクトチェックが行われて、また、これは事実なのか、あるいは意見の問題なのか、これは議論のある問題なのか、きちんと、立場を超えて、賛成派、反対派にかかわらず、これは確認できる、共有できる事実なのか、そこを何度も何度も、これは一回の議論ではなくて、繰り返し公開討論会を通じて理解を深めていくということを、時間をかける必要があると思っています。短期間では到底、こういった問題の理解が深まる、誤情報というものをきちんと皆さんが惑わされないように理解するには一定の時間が必要だということも御理解いただければと思います。

新藤委員 短い時間の中なので、本当にポイントだけになってしまうんですけれども、まず吉田参考人の方にお伺いしますけれども、仮に国民投票が実施される場合に、今、一般の選挙に関係して、公平公正性を担保するための取組、御活動をされていると思います。国民投票を実施される際にも何らかの対処が必要なのか、それはどんなイメージをお考えなのか、そこを端的にちょっと教えていただきたいと思います。

 それから、楊井参考人には、まさに、まず第一に、ファクトチェックという体制をどうやって社会的に確立させるか。特に、私、お尋ねしようと思っていたんですが、ファクトチェック自体を、そのファクトをどうチェックするのか。これはもう限りなく行ってしまう。それが民間の自主的取組だと。

 楊井さんは、そのための何らかの公的なバックアップも含めたことを今お話をされました。もしそういうことをするんだとすれば、公的バックアップをするための根拠が必要になってまいります。でも、一方で、法的なそうした枠組みというのは非常に慎重なお考えがあると思います。

 ですから、ファクトチェックだけではなくて、国民投票という国民全体が関係すること、それは一般選挙も同じです。こうしたものに対して、インターネットの社会というのが、幾つもの団体があり、民放連は、放送法に基づいて認可された事業者があって、そして自主的取組というのが法律で整理されています。この辺をどうやってインターネットについては整理していったらいいのか、お考えの一端をお聞かせいただきたいな、このように思います。

吉田参考人 国民投票での対策案ということで御質問いただいたかと思います。

 先ほども御説明をいたしましたけれども、プラットフォーマーに一義的に求められているものというのは二種類ございまして、一つは、問題投稿を簡単に言うと削除するかどうかというような部分かと思います。これは、非常に短期間で自ら判断してやっていくというのが難しいものでございますので、関係諸機関の枠組みの中で、プラットフォーマーだけで判断するのではなくて、基準等についても公明正大に決めたルールにのっとってやっていく、最後は細かいところでプラットフォーマーが踏み込まなければいけないところというのは出てくると思いますけれども、プラットフォーマーが全てを決めてしまうということではなくて、社会全体でコンセンサスが得られた基準で対処をしていくということが非常に大事だというふうに思っています。

 その意味で、どういう基準で措置をしているのかという点について、プラットフォーマーが自ら透明性を確保して社会に示していくという、これは既に潮流としてありますけれども、そういったことを併せて準備していかないといけないというふうに考えております。

 また、ファクトチェック結果という部分でございますけれども、そういった正しい情報をいかに伝えていくかというところの創意工夫というのを、また、これはワクチンデマとは違って、厚労省さんのホームページを紹介していればいいというわけにもいかないと思いますので、広報協議会とか、いろいろお考えだというふうに承知しておりますけれども、そういった、どういったところにリンクを飛ばすと申しますか、おつなぎして国民に届けていくかという、その届け方についてはプラットフォーマーもいろいろアイデアを出していきたいというふうに考えておりますけれども、ランディング先というか、どこに飛べばいいかという部分については、社会全体で考えていかないといけないというふうに考えております。

 以上でございます。

楊井参考人 御質問ありがとうございます。

 公的なバックアップと申し上げました。私の個人的な見解でありますし、まだこれは難しい問題ではあるので研究が必要だと思いますが、欧州などでは、このファクトチェックというものをEUとして、あるいは各国政府で支援をするという取組をされているというふうには伺っております。

 ただ、あくまでファクトチェックの内容自体は民間の独立性というものが非常に重要になってきますので、政府機関や行政機関が、もちろん、それぞれのお立場、省庁が正確な情報を発信するというのは前提だと思いますが、ファクトチェックそのものは独立性が非常に重要、その内容の独立性というものを前提に、ただ、この実施体制を何らかバックアップする仕組み、これを、欧州なども参考例にして研究が必要なのではないか。

 私も、ちょっと今ここで具体的にこうすればいいということをすぱっと申し上げられないのは申し訳ないんですが、そういうふうに考えております。

新藤委員 ありがとうございました。

 何よりも、ネットの情報量、これは物すごいものになっていて、既に広告の取扱いもテレビ、ラジオをとっくに超えている。ですから、ネットの中で扱われている情報、これが、しかも、広告と個人の情報発信は、極めてその境目が曖昧な状態になっています。ですから、この中で、国民投票で公平公正なきちんとした意見を国民に伝えるための、ここはやはりネットについても何らかの考え方を整理していかなきゃいけないだろう、このように思っております。

 是非今後ともいろいろと連絡させていただいて、また相談もさせていただかなきゃならないんじゃないかな、このように思います。

 今日は、貴重な機会に様々な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。

森会長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹です。

 今日は、お忙しいところ、吉田参考人、楊井参考人、お越しいただきまして、本当にありがとうございます。

 時間も限られておりますので、私から幾つか質問させていただきたいと思います。

 国民投票とインターネットという限定をせずに、インターネットの環境に関しては、例えばEUでは、一般データ保護規則や、最近ではデジタルサービス法などについて、インターネット上の利用者の権利の保障だとか、あと、健全なインターネット空間の環境整備だとか、そういったものに非常に先駆的に進んでいると思いますが、一方で、日本では、先日も私も総務委員会で電気通信事業法の改正案について審議したり、また、個人情報保護法もありますけれども、まだまだ追いついていないというふうに考えられます。

 そうした中で、この日本においては、個人データ、そして表現の自由、さらには、先ほども、両参考人の所属する団体において、ファクトチェックなど、様々な活動に取り組んでおられることには心から敬意を表したいというふうに思います。

 そこで、質問なんですけれども、先ほど来、吉田参考人や楊井参考人が、こうしたネット上の偽情報、そうしたものについて、法規制ではなくて、民間事業者の自主的な取組、判断、活動によってこうしたフェイクニュースというものをチェックしていくというようなお話がありましたが、そうした取組で、選挙でありますとか国民投票における国民の投票意思決定、ここで、ゆがめられた、間違った情報をなくして、そして正しい投票意思決定ができる状況にあるのかどうか。

 つまり、皆様の自主的な取組で、そういう国民の投票意思決定をゆがめずに投票できる環境に今あるのか、そして、ここしばらくの間、そういったものが保たれるのかどうか、その点についてどのようにお考えなのか、お二人に伺いたいと思います。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 現時点で国民投票に堪え得る体制にあるのかという御質問かと承知しております。

 この点に関しましては、私も今日御紹介しておりますとおり、これまで別の権利侵害対策の中で役立ってきた諸施策がそのまま生かせるという部分も多分にあるというふうに考えております。特に、このコロナワクチンの問題でかなり踏み込んだ対応を各プラットフォームが行ってきたというところはいい経験になっているかと思います。

 国民投票、選挙に関する部分としては、やはりスピードという部分で若干今まで扱ってきたものとは差異があるというふうに思いますので、このスピードを確保して正しい情報を届ける、あるいは、間違った情報のチェックをして、それが間違っているということを国民に届けるというところに関しては、社会全体で、そのスピードを上げていくための方策というのは一工夫要るんじゃないかなというふうに考えます。

 以上です。

楊井参考人 現在、選挙等において公正な判断ができる状況になっているのかどうか。これは評価、いろいろな見方はあると思いますが、一つ、ファクトチェックの観点から申し上げますと、日本では、メディアが、選挙期間に自主規制が非常に強いと思います。

 これは、もちろん、それぞれ平等に各政党の立場とかを報道する、そこを意識することは大事なんですけれども、選挙期間はファクトチェックをするとかえって不公平になるのではないかというふうな疑念を持たれて、自主規制してしまう、そういったメディアが多いんですね。特に放送局はそうです。

 これは全く海外とは逆の現象です。海外では、どの民主国家でも、選挙において誤った言説、情報を野放しにするというのはメディアとして役割を果たしたことにならないので、選挙期間だからこそ、最もファクトチェックに力を入れているんですね。それは、アメリカ大統領選しかり、お隣の韓国大統領選挙、台湾の選挙、それぞれ、最も力を入れているのが選挙なんですね。

 ですので、まず、選挙期間に自主規制をする必要はない、きちんと、事実に基づかない情報や発言があったものは、メディアがファクトチェックしてもそれは問題ではないということの意識がメディア側にも必要だと思いますし、皆さんもそれを御理解いただきたいと思うんですね。

 それと、もう一つは、ファクトチェック、スピードが大事ということなんですけれども、政党の皆さん、政治家の皆さんの協力も必要です。いろいろと事実関係を問い合わせる。でも、皆さん、物すごく選挙期間中忙しいですよね。なかなか対応できないというのも分かるんですけれども、ファクトチェックというものは、当然、取材とか事実関係の確認なくしてできませんので、そういったものに御協力をいただきたい。

 前回の選挙でも、FIJから各政党に、ファクトチェックについて協力をいただきたいという事前の申入れをしました。今回も改めてさせていただく予定ですけれども、迅速なファクトチェックができるように各政党にも是非御協力をいただきたい、こういうふうに思っております。

道下委員 ありがとうございます。

 今ではフェイクニュースを流した者勝ちになっているというような状況だというふうに思いますし、タイムラグをどのように解消していくかというお話でありました。ありがとうございます。

 総務省のプラットフォームサービスに関する研究会の中間とりまとめによりますと、やはり、表現の自由の確保の観点などから様々な政府の介入は極めて慎重であるべきだというような検討とともに、一方で、透明性やアカウンタビリティーの確保方策に関する行動規範の策定及び遵守の求めや法的枠組みの導入等の行政からの一定の関与について、具体的に検討を行うことが必要であるというような取りまとめも出されております。

 こうした意味で、自主規制を十分やっていただきたいと思いますが、ここの検討会においては、行政からの一定の関与も必要ではないかという考えがあるんですけれども、その点について、お二人から伺いたいと思います。

吉田参考人 先ほど来申し上げているとおり、やはり、プラットフォーマーが活動していく上で、一体どういう基準に基づいてどういう対処を取っているのかという点については、国民が自主規制に委ねるのか、あるいは法規制を望むのかということを判断するに際して、あるいは自分がそのサービスを利用し続けるかどうかということを判断するに際して、非常に重要な要素だ、根源的な前提情報だというふうに思います。

 多くの企業は、それを、国民あるいはユーザーからの要請だということを踏まえて、積極的に取り組むようになってきているというふうに考えております。ただ、一部の企業はまだそういったところに気づいていないというような実情も、アンケート結果等、報告からも読み取れるかと思いますけれども、そういったところに対して引き続き理解を求めていくとともに、透明化に資する部分について限定的な法的な規制という、可能性としては、考え方としては一つあるというふうに思います。私が、そこに是非そうしろということではないですけれども、考え方としてはあり得るかなというふうに思います。

楊井参考人 御質問ありがとうございます。

 行政側の関与についてどう思うかという御質問かと思いますけれども、これは原則的には、規制等によって、直接的な法規制でこの問題は解決できる問題ではない、それも望ましくないという大前提、こちらは多く既にもう共有されていると思いますが、民間の自主的努力に全て委ねて、一切行政が全く関与すべきでないということでもないかと思います。

 先ほど申し上げたように、環境整備、そういったファクトチェックなり、様々なそういった偽情報対策というものを民間がより活発にできるような枠組み、公的な環境整備というものは、行政の方も何らか検討できる部分もあるのではないか。先ほど申し上げましたが、欧州などでもそういった取組、ガイドラインを作ったり、そしてまたバックアップをするような体制づくりもあるようですので、そういったものも研究しつつ、民間の独立性というものを維持しつつ、行政が何らかのバックアップをする、そういった関係性で是非検討を、議論を進めていただければ幸いでございます。

道下委員 ありがとうございます。

 今、お二人の、自主的な取組ということで、自主規制ということを大前提としつつも、ある程度の行政の関与というものを検討する必要があるのではないかというようなお話でありました。我々もこの点についてはしっかりと議論、検討していかなければならないと思いますし、先日、私どもが勉強会でお招きした慶応義塾大学の山本龍彦教授のお話によりますと、ネット利用者の権利の保障のために、健全な言論空間、情報環境の再構築が必要であり、そのためには、フィルターバブルやエコーチェンバー対策として、プラットフォーム規制が必要との意見もいただきました。また、政治的なマイクロターゲティングは常時規制すべきという意見もいただきました。

 そうしたことも含めて、質問ではありませんけれども、この点については、国民投票とインターネットについてはまだまだ議論が必要だと思いますし、今回、私ども、法案として今用意をしております点は、この国民投票とインターネットの関係、もう一つ、インターネット広告についてもこれは大きな問題だと思いますので、この点についてはもっともっと、また有識者、また団体等をお招きして議論を深めたいと思いますので、会長の方、よろしくお願いします。

 吉田参考人、楊井参考人、どうもありがとうございました。

森会長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 参考人の先生方、ありがとうございます。

 私からは、二点、ちょっと伺いたいことがございます。端的に御意見を賜りたい、こう思います。

 まず一点は、先ほど楊井参考人だったかな、吉田さんだったかもしれませんが、行政の役割ということで、環境整備というお話がありました。

 ただ、私たちは、憲法改正国民投票について環境整備をやるとかいうのはナンセンスで、そもそも、ネット政策、ネット政策というか、一般についてみんなやっているわけですね。総務省も一生懸命考えている、内閣府も経産省も一生懸命考えている、場合によってはいわゆるGAFA規制みたいなことも、政府の中で、あるいは国会でも議論をしています。それは別に憲法改正の国民投票に何か限った議論ではなくて、一般的な、世の中が、より健全というか、健全というのはおかしいな、よりいい形で進むための議論はしていったらいいけれども、それは、国民投票に限ってそこだけ先行させるとか、そういう類いのものではないと私は思いますが、いかがですかというのが一点。

 それから、先ほど楊井参考人が、ファクトチェックについてメディアが果たす役割について、世界と日本は真逆なんだという話がありました。大変面白い、面白いというか大事な御指摘だと思うんですね。

 日本のメディアあるいは政党はレベルが低くて、いや、これは本当に私たちは痛感しているんですけれども、大阪都構想の住民投票のときには、自民党と共産党が手をつないで、それで、大阪都構想についての偽情報を政党が拡散していたんですね。では、その情報をつくったのは誰かというと、大阪市役所の中の人たちが、後にその行政の担当者たちは謝罪をしています、うそをつきましたと言って謝罪をしています。要は、行政がうそをつく、それを自民党と共産党が一緒になって拡散をする、それを最初に報じたのは毎日新聞であるという……(発言する者あり)ちょっと、こっちはいいです。共産党は、不規則発言はちょっとほっておいていただいて。

 要は、毎日新聞というメディアと、自民党、共産党という公党と、そして大阪市役所という役所、行政が、後に大阪市役所が、それは、今ここにありますけれども、誤った考えで試算したものである、試算そのものがあり得ないものだったと、後にそれを認めるような内容が、住民投票中に拡散したわけです。

 だから、何を申し上げたいかというと、非常に日本のメディアの在り方というのは深刻であるというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。

 その二点、端的に、御見解があったら教えてください、両先生。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず一点目でございますけれども、国民投票に限ったことではないというのは、全く先生の御指摘のとおりかというふうに考えております。私どものこれまでの活動のところでも申し述べてきましたけれども、やはり、プラットフォーマーが力を持って何か社会の期待を受けるのであれば、それは、国民投票であろうが誹謗中傷であろうが何であろうが、しっかりと透明性を確保した上で行使していくというところが非常に大事だというふうに思っておりますので、そういう、通底するものというのはあるんじゃないかなというふうに考えます。

 二点目につきましては、私はお答えできる立場にないと思いますので、差し控えます。

楊井参考人 では、お答えします。

 一点目についても、今、吉田参考人がおっしゃったとおり、私も、別に国民投票に限った問題ではもちろんない、当然そのとおりだと思います。

 今言った情報社会、インターネットの環境、これをどういうふうに我々は整理していくのかということを議論していく時期に今来ているんだろうと思います。その中において、ただ、国民投票という我々の経験してきたことのない大きなイベントもいずれ来るだろうという、その際にきちんと対応できるように、もう今から、やはり、いろいろな対策、ファクトチェックを含めた環境整備が必要だろうというふうに、そういう趣旨で申し上げました。

 二番目についてですけれども、これも、私もなかなかちょっとコメントしづらいところではありますけれども、大事なことは、きちんと検証するということで、それぞれのメディアが検証するということです。

 そういった住民投票も、私どもも、ファクトチェック、いろいろやりました、今、足立先生のおっしゃった事案も扱ったこともございます。そういったことも含めて、きちんとそれぞれのメディアが臆することなく、何か遠慮したりすることなくファクトチェック、そして、それをきちんと一般の人たちに周知してもらうためには、先ほど申し上げた、例えば公開討論会の場できちんとお互いに議論してもらう、そして、どこが事実と違っているのかどうかということもその公開の場でやっていただくのが、最終的には国民の皆さんにも分かりやすいのではないか。そういう場がまだまだちょっと日本では少ないのではないかというところを申し上げたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 結局、私たちの結論は、まさに公開討論会とかは当然だし、ファクトチェック・イニシアティブさんのような、そういう民間の取組を、環境整備、いわばそういう取組を促していくというか、そういう取組を歓迎するというか、そういうことが本当に大事だということに尽きると思います。

 その中で、立憲民主党などが昨年の国民投票法改正の際に検討条項というのを設けて、あたかも、インターネット規制等が前に進まなければ、そもそも国民の憲法制定権力が三年間は停止されるのであるというような政治的発言を繰り返されることについては、強く抗議をしておきたいと思います。

 いずれにせよ、今日、両先生の御意見は、私たちにとってはもう我が意を得たりでありまして、全くそのとおりで、ほとんど質問したいことがもうありません。

 ついては、残る時間、玉木代表が私をネットで攻撃してくるものですから、ちょっと補足だけしておきたいと思います。

 私が芦田修正について言及したのは、玉木代表が最高裁の判示をどう考えているんだと言うから、最高裁の判示とは全く関係がない芦田修正について、一つの議論の事例として紹介をしたものだということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、芦田修正と言うと皆さんびっくりされるんですが、ネット上でも言及をいただいている東京外国語大学の篠田英朗先生が、「憲法学の病」という御本でこういうことをおっしゃっています。

 芦田は、憲法九条を国際法に沿った理解で解釈していた。その解釈を明確にするために芦田修正を行った。しかし、それは、芦田が、本来存在していない意味を、単なる冒頭の語句の追加だけで付与しようとしたという憲法学通説の糾弾が正しいことを意味しない。

 芦田修正は、本来の九条の意味を明確化するために取られた措置であり、存在していなかった意味を捏造するために取られた措置ではない。

 既に指摘したように、一九五〇年代末になって突然、芦田が芦田修正による自衛権の留保を唱え始めたという憲法学で流通している理解は間違いである。なぜなら、一九四六年の憲法制定時から、芦田は国際法に沿った九条の理解を示していたからである。

 芦田修正とは、憲法九条の意味を変えるためのものではなかった。芦田は、憲法九条の意味をより一層明確にするために、冒頭に、前文とのつながりが明瞭になり、国際法を遵守する憲法の意図がはっきりする語句を挿入した。芦田修正とは、当初から、九条が国際法規範に沿って制定されたこと、前文の国際主義の精神を受けて定められたことをより一層明瞭化するために行った措置だった。

 芦田が芦田修正によって憲法九条の意味が変わると国会で審議中に言わなかったのは、芦田修正が九条の意味を変えるものではなく、むしろその内容を明確化するためのものだと考えていたからだろうとおっしゃっています。

 私は全く同感でありまして、昨日、友人である上念司さんとちょっと話をしていましたら、彼は、芦田修正説という言い方は誤解を招くので……

森会長 足立君、質疑時間が過ぎました。

足立委員 はい、もう終わります。

 芦田修正説という言い方ではなくて芦田リマインド、芦田リマインドという形でこれからは紹介していったらどうかという提案がありましたことを御報告して、玉木代表への、いや、会長、玉木代表が議事録に残る形でしっかり言えとおっしゃったので、今日の時間をおかりしたということです。

 ありがとうございました。

森会長 次に、國重徹君。

國重委員 公明党の國重徹です。

 吉田参考人、楊井参考人には、本日は、御多用な中にもかかわりませず、当審査会にお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。

 吉田参考人が冒頭に、今、憲法審査会で非常に検討されているインターネット広告に関する質問については、今日はちょっと控えていただきたいということでありましたので、控えさせていただきます。それと、これまでも様々な質疑がされてきましたし、私の後にもまた質疑が続きますので、私からは、大きな観点から、ネット空間の世界観についてお伺いしたいと思います。

 まず、吉田参考人にお伺いいたします。

 吉田参考人には、二年前に、我が党のインターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策検討プロジェクトチームにお越しいただきまして、様々意見交換をさせていただきました。大変お世話になりました。ありがとうございます。

 一般に、ネット空間の世界観としては、自由放任、混沌と多様性、これこそがネットの本質であるというようなものがあるように思います。しかし、二年前、PTに御出席いただいた際に、吉田専務理事は、実現したい世界として、正当な批判が穏当な言葉遣いで活発にやり取りされる建設的な言論空間を目指しているとおっしゃられました。なぜこのような世界観を提示されたのか、改めてお伺いしたいと思います。

 また、これは、当時の議題でありました誹謗中傷、人権侵害等の対策を念頭に置いた世界観だったと思いますけれども、憲法改正の国民投票の場面でも当てはまるとお考えでしょうか。当てはまるのであれば、国民投票の場面でこのような世界観を目指す理由と、このような世界観がどのようにしたら実現できるとお考えか、お伺いしたいと思います。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 誹謗中傷問題の方でも大変お世話になっております。

 私が提示した世界観と言うとすごく大げさな感じになりますけれども、議論というものは、相互に意見を闘わせることによってよりよい結論を見出していくという作業だというふうに考えています。

 ただ、私も含めて普通の人は、自分の意見が受け入れられない場合に、とかく感情的になって、それが行き過ぎると、論理への反論ではなくて人格攻撃などに移っていって、場が荒れるというか、健全な議論ができなくなるというふうに思います。そうなると、よりよい結論は見出しにくくなっていくというふうに思います。

 これまで、木村花様の自死を一つの契機として、誹謗中傷ホットラインを当協会では開設いたしまして、この間、削除措置に取り組みました。これは、今、目の前で困っている被害者を救うことをまず第一に着手して、その次に、発信者の責任を追及していくという、発信者情報の任意開示の推進に取り組んでいっております。

 最後に、ここが国民投票とも関係することだと思いますけれども、正当な批判、冷静な議論を闘わせるという部分について、国民に、そういった正当な批判の仕方というか、穏当な言葉できっちり論理的に詰めて闘っていくということをなかなか日本の教育の中では習ってこなかったというか、私も含めて、そういった教材や機会が非常に少ないというふうに思っておりますので、それぞれ誹謗中傷ホットラインの方ですとか任意開示の方も、百点ではございませんけれども、そちらがある程度回るようになってきた時点において、国民投票にも関係する、議論、正当な批判のやり方というところを、リテラシー教育という言い方もありますけれども、協会としても取り組んでいけたらなというふうに思っております。

 以上でございます。

國重委員 ありがとうございました。

 ファクトチェック・イニシアティブの楊井事務局長にも同様の質問をさせていただきたいと思います。

 ファクトチェック・イニシアティブでは、社会に誤った情報が広がるのを防ぐことを目的に挙げられていると承知をしております。このような目的を掲げられている団体として、国民投票の場面も含めて、先ほど参考人は、国民投票の場面とか、切り分けて考えるべきではないとおっしゃいましたけれども、それも含めて、ネット空間においてどのような世界を目指したい、実現したいとお考えなのか。また、その世界を目指す理由と、その世界はどのようにしたら実現できるのか、お考えをお伺いしたいと思います。

楊井参考人 御質問をいただきました。

 我々は、誤情報に、防ぐと表現されましたけれども、誤情報に惑わされにくい社会を目指すべきだと考えています。

 少しニュアンスが違うので、ちょっと御説明したいんですけれども、誤情報を完全に防ごうとすれば、それはある意味、表現の自由を規制すればいいわけです。情報発信をする人たちを例えば全て実名にしたり、ちょっとでも誤情報を流したら罰則を加えるというような、どこかの国で行われているような規制をかければ、もしかしたら誤情報は防げるのかもしれない。でも、それはやはり、我々、自由民主主義の社会において取り得ない選択だと思います。

 表現の自由というものが民主主義の基盤である以上は、そして、様々な言論が出てくるのは、その中に誤情報というものは必ず出てくるという前提で、我々は、それを撲滅するということではなくて、いかに誤情報とうまくつき合うかという観点が重要だと思っています。

 その観点からすると、ファクトチェックというのは、誤情報というものを可視化して、そして、何が誤情報なのかということをみんなで議論して、そうすると、本当の誤情報というのはだんだん社会の中で影響力を失っていくと思うんですね。そうやって自然に淘汰されていく、自然に脱力化されていくような、そういう方向性が望ましいと思っています。

 コロナのことを少しオーバーラップさせて言いますと、ウイルスもゼロは目指せないわけですね。ですので、ゼロを目指そうと思えば、強制的な、ロックダウンをしないといけないとかいう話になりますけれども、そうではなくて、人々の免疫を高める、それによって何とか共存していくということが穏当な在り方だと思うんです。誤情報問題についても同じような形で、それを完全に防ぎ切ろうというふうに前のめりになるのではなくて、様々な議論を通じて淘汰をしていくということが望ましい社会ではないかというふうに思っております。

國重委員 ありがとうございました。

 では、持ち時間それぞれ十分ということですので、時間をできるだけ守ろうと思いまして、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 セーファーインターネット協会の吉田専務理事にお伺いいたします。

 国民投票においても、これまで話がありましたとおり、インターネットを活用した投票運動というのが行われていくことになります。この国民投票において生じ得る問題点については、適切にこれに対応するためには、国内外のプラットフォーム事業者の協力が欠かせないと思います。このことについては、先ほど楊井事務局長の方からもお話がありました。

 ただ、法務省が、ネット上の誹謗中傷対策として、高度な専門性と慎重な検討に基づいて国内外の事業者に削除要請をしているんですが、その約三割は応じられていません。この点、外国事業者が日本の法制度等に対する理解の不十分さなどによって削除に応じない場合があるというような指摘もあります。また、総務省の求めに対して、日本国内における具体的な削除件数を公表しない外国事業者もあります。

 このような状況に鑑みますと、外国の事業者については、日本で国民投票が行われた際に生じ得る問題点について、十分な協力が得られないんじゃないかというような懸念、疑問も生じます。

 そこで、セーファーインターネット協会の吉田専務理事に、この点についてお考えをお伺いしたいと思います。

吉田参考人 私の考えといたしましては、基本的には、自主規制を推進して最後まで諦めないというところを大事にしたいというふうに考えております。決めるのはユーザーたる国民だというふうに思っています。

 これは先ほども少し述べさせていただきましたけれども、どういう考えでそういう総務省さんの求めに応じず数字を出さないのかというところは丁寧に追っていかなければいけないと思いますし、きちっとした反論がないのであれば、その透明性部分についてのみ特化した法制化というのは一つの考え方ではあるというふうに思います。国民の期待がどこにあるかというところをどういうふうに各会社が受け止めて自社の方針を決めていくかというところの差だというふうに考えておりますけれども。

 また、その透明化、総務省さんの調査等で分かった事実に関して、是非、マスメディアの皆様にも、なぜだということで各会社に追及していただいたりして、どういった会社がどういう振る舞いをしているのかというのをきちっと材料として、社会全体で透明化を図った上で、それでもやりませんかということを伝えた上で、最終的な、後の法制化も含めた判断をしていくのではないかなというふうに考えます。

 以上でございます。

國重委員 本日は、お二人の参考人から貴重な御意見を賜りまして、改めて、重ねて感謝を申し上げます。

 最後に、両筆頭にお願いがあります。

 今日は、インターネット全般、またフェイクニュースに関しての知見をいただきましたけれども、また今後、先ほど道下幹事の方からもありましたけれども、ネット広告に関して知見を有しておられる参考人の方もお呼びして、是非、御意見を伺う機会を設けていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 吉田参考人、楊井参考人、今日は本当に、お忙しいところ、ありがとうございます。

 広告について知見がないということだったので、一般論としてちょっと教えていただきたい、お二人に伺いたいと思います。

 国民投票の広告規制は、主に、出し手側の規制と、情報を受けてそれを流通させる側の規制と、この両方が考えられます。テレビ、ラジオだと非常に明確で、出し手は政党ですから、政党に対してどういう、自分たち自身がどういう規制をやるのかということがあるのと、それを受け取った放送事業者、例えばテレビ局ですね、ここはどこまで何をするのかということ。インターネットであると、それはデジタルプラットフォーマーがどうするのかというようなことになるかと思うんですけれども。

 まず、出し手側の規制を考えるときによく言われるのが、やはりお金をたくさん持っている団体とか政党がたくさん広告を打てる、だからテレビCM規制はある程度規制しなきゃいけないよねという話が出てきます。

 そこで、質問です。

 インターネットの世界においても、やはり広告でお金をかけた方がたくさん情報を発信できるのか。一方で、勝手にバズって拡散するのもあるので、出し手側の規制において、金銭的な差異があるので規制したらいい、そういう考え方がそのままネットにも当てはまるものなのかどうなのか。やはりお金をかけた方がたくさん広がるよねということが一般的に言えるのかどうか、この点についてまず御所見を伺いたいと思います。

吉田参考人 冒頭に申し上げておりますとおり、広告に関してはお答えがなかなかできないという中で、短くお答えさせていただきたいと思います。

 先ほども少し述べさせていただきましたが、委員御指摘のとおり、インターネットは、お金を出して広告という形で目立つという方法もありますけれども、いろいろな方法で、それにはたゆまぬ努力とか積み重ねみたいなものも必要で、よほどお金を出した方が早いというところもありますけれども、いろいろな方法でインフルエンサーの方々も目立とうとしているというところでございますので、そういった方法があることを前提に検討するということは理にかなったことかなというふうに思います。

 以上でございます。

楊井参考人 私の立場では、広告の問題はなかなかコメントしづらい、一般的な知識しか持ち合わせておりませんので。インターネットの広告もお金をかけた方が当然その効果は上がるだろうという一般的な知識しか持ち合わせておりませんので、その点、御了承いただければと思います。

玉木委員 ありがとうございます。

 次に、受け手側というか、インターネット、特にプラットフォーマーの役割なんですけれども、昔は、情報が少ない時代は、言論の自由市場とか思想の自由市場という中においてはできるだけたくさんの情報があればいいということなんですが、今、余りにも情報があふれているので、多様な情報にバランスよく接する機会をどう確保するのかという観点が、情報不足時代ではなくて情報過多時代には特に必要ではないかなと。

 しかも、フィルターバブルと言われているような、好きな情報だけがアルゴリズムの中で見せられ続ける。そうなると選択の自由が奪われてくるので、そこの規制。

 これは、先ほどあったように、国民投票法に限らないんですけれども、そういった一般的にバランスよく広範な情報に接する義務をプラットフォーマー等に課した方がいいのかどうか。ここは自主的なものに委ねるのがいいのか、国家的あるいは公的な関与があった方がいいのか。これは各国悩んでいますけれども、この点について両名の御所見をいただきたいと思います。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 これも、ひとえに国民からの期待がどこにあるのかというところに尽きるというふうに思います。フィルターバブル、エコーチェンバーなどが起きないために、きちんと、自分が好まないもの、ふだん余り興味がないものについても交ぜてやってくれというような期待が強ければ、おのずとプラットフォーマーの方でも対応していくという流れになるかと思います。

 一例として、大手ニュースポータルサイトなどは、全てのユーザーに同じニュースをトップページでは見せるという形で、芸能系のニュースは何個、政治系のニュースは何個という形で、ふだん余り見たくないであろうなというような、若者も見たくないであろうなというニュースもあえて載せるというような自主的な活動をしておられまして、ユーザーの支持もそこに一定あるということでそれを続けていらっしゃるんじゃないかなというふうに理解しております。

楊井参考人 今、玉木委員の御指摘された問題意識は、深く私も共有するところです。情報過多の中で、いかに一面的な情報ではなくバランスよく両側の情報を見ていくかということが大事である。

 その観点からすると、先ほどちらっと出た広告、広告というのは特定の立場から一方的に意見を表明するということですので、当然、反対側の意見は広告の側には載らないわけですよね、その広告においては。そういう意味では、広告というのは非常に特定の印象を与えやすい、イメージ操作を与えやすい。

 一方で、やはり公開討論とかそういった場の方が両方の意見をちゃんと聞けるというようなことで、私は、公開討論というのは、先ほどちょっと重要性を改めて申し上げました。

 インターネット事業者においては、私も知るところでは、それぞれなるべくバランスよく情報を発信しようとしている、そういった編成といいますか、そういったことを、アルゴリズムでもできるだけ偏らないようにするというような取組をしているニュースアプリの事業者等も知っていますし、そこは規制によらずに民間の取組を見守っていただいた方がよいのかなというふうに、今、個人的には考えております。

玉木委員 ありがとうございます。

 楊井参考人、最後に。フェイクニュースの対策で、複数の信頼できるフェイクニュースのチェック団体があった方がいい、そのとおりだと思います。

 ただ、ある種公的機関なので、誰が資金調達というかファンディングするのかというのが極めて難しくて、そこに公的な支援があった方がいいんですけれども、そこでまた何か、ある種バランスとかを、国がまた決めても駄目だと思うので、そういった団体が財政的にも独立し、複数出て、健全な、チェック機関の中での競争も正しく働いていくような、そういうことを実現するためにはどのような適正な公的な支援というのがあった方がいいのか、何か御希望もあれば、是非お聞かせいただければ。

楊井参考人 ここは非常に難しいところだと思いますが、ファクトチェック、それぞれのメディアでもありますので、独立性というのが何よりもそこは重要なのですけれども、そこを担保する形で、第三者的な有識者委員会とか、そういったところがきちんと、IFCNを始めとする国際的なルールにのっとって、公正、透明性を持って活動しているかどうかというところをきちんと第三者的に有識者がチェックしていただいた上で、こういうところなら公的な支援をしても大丈夫だろうというようなところを、そういう形でチェックしていくというのも一つの在り方かもしれません。

 ここの部分は、仕組みのところも含めて、海外の事例とかも研究しながら、どういう方法があり得るのか、でも、あくまでそれぞれのファクトチェックを行う団体の独立性というのは担保されるということは前提で、仕組みづくりというのを検討していただきたいなと。今言えるのは、その点でございます。

玉木委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 発言に移る前に、今朝の幹事懇でも申し上げましたけれども、新藤筆頭も毎週開くんだと意気込んで来られているわけですが、どうも与党の側の空席が目立ち始めております。意気込みと実態がかけ離れているなという感じがいたしますので、それは御意見を申し上げておきたいという具合に思います。

 今日は、参考人の皆さん、お忙しい中、大変ありがとうございます。ネットということに詳しくないものですから、先ほどからのお話を聞いて大変勉強になりました。

 ただ、今日お話のあった、いわゆるフェイクニュースの問題やインターネットを通じた誹謗中傷の問題は、私が住む沖縄でも深刻な問題となっています。

 二〇一七年でしたけれども、沖縄県宜野湾市にある緑ケ丘保育園に米軍ヘリの部品が落下した事案がありました。抗議の声を上げた保育士や保護者の方々に対して聞くに堪えない誹謗中傷が繰り返され、関係者は苦しめられました。保育園に部品が落下するという、人の命に関わる問題で声を上げた被害者に対し、事実に基づかない攻撃が加えられるという事態に、私もとても心を痛めました。

 被害者への誹謗中傷という問題は、全国でも後を絶ちません。こういう状況を改めていくために、対策を講じていく必要があると思います。先ほどお二人の参考人もるるその点について述べておられたと思いますが、両参考人の御意見を更にお聞かせいただきたいと思います。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 誹謗中傷問題に関しましては、各プロバイダーにおいて利用規約を整備して、被害者からの申告に迅速に備えられるように整備をしているとともに、当協会としましては、どこに相談したらいいかよく分からないですとか、そういった初手のお悩みを抱えていらっしゃる被害者の方もたくさんいらっしゃると思いますので、気軽にネット上から当該URLについて教えていただければ、こちらからプロバイダーに、自社の規約に従って判断できるんじゃないかということを、判断を促すという活動を行っておりまして、これを誹謗中傷ホットラインと呼んでおりますけれども、かなりの高い確率で最終的に削除に至るということで、被害者の御負担も少ない中で、少なくとも削除という部分については成り立つようにだんだんなってきているのかなというふうに考えております。

 ただ、一点課題があるとしますと、我々の知名度自体が、そういうサイトがある、そういう相談先があるということ自体がなかなか社会全体に伝わっていかないというところもありますので、法務省さんなんかと協力して、人権擁護局さんと一緒に広報していただくとか、総務省さんにも広報のときに交ぜていただくとか、あるいはインターネット事業者の方でも、検索すると一番上に載るとか、いろいろな形で被害者からアプローチしやすい方法を模索して、できるだけお役に立ちたいというふうに考えておりますので、また御紹介をさせていただければというふうに思います。

 以上でございます。

楊井参考人 ただいま御質問ありました、誹謗中傷の問題というのは深刻であるということは、私も認識しております。個人の権利侵害、人格権侵害、こういったものは法的にやはり対応をしなければならない分野でもありますし、削除等の対策というものも必要になってくるだろうと思います。

 一方で、ここは注意していただきたい部分でもあるんですが、ファクトチェックが対象とするようなミスインフォメーション、ディスインフォメーション、誤情報ですね、こういった誤情報というのは、必ず個人の権利侵害とか実害を伴うものとは限りません。そうでないものも多々ありまして、そういったものについては削除というような対策はむしろ不適切だと考えています。それはまさに、表現の自由の中において、ファクトチェックも含めて、きちんとそれぞれが、これは何が事実かどうかを判断するということが、そういう環境が必要なのであって、誹謗中傷の問題といわゆる誤情報の問題というのは似て非なる問題でもあるというふうに考えておりますので、いわゆる個人の、本当に傷つける、人権侵害を伴うようなものについては強力な対応をしていく、一方で、そうでないものについては緩やかにファクトチェックを含めた対応をしていくというような、そういった整理を是非していただければというふうに考えております。

 以上です。

赤嶺委員 ありがとうございます。

 あと一点、ファクトチェックをする上で、政府が出す統計やデータ、記録や文書などは重要な根拠資料になるのではないかと思います。国民が事実に基づく議論を行うためにも、政府が必要な情報をきちんと出すことが重要であります。

 この点に関わって、二点お伺いいたします。

 一つは、政府による行政文書などの改ざんについてです。

 森友問題では、政府が国有地の売却に関して文書を改ざん、隠蔽していたことが大問題となり、財務省の職員が命を絶つという事態にまでなりました。国交省では、基幹的な統計データが長期にわたって不正に算定されていたことが明らかになりました。政府による資料や文書の改ざんや不正は、民主主義の根幹を揺るがすものです。

 もう一点は、政府の情報公開の在り方についてであります。

 コロナ対策について、政府の情報公開の不十分さが指摘されてきましたが、例えば、政府はコロナ対策専門家会議の議事録を公開しておらず、政策の意思決定プロセスについて検証することが難しくなっています。

 また、政府は今、敵基地攻撃能力の保有についての検討を進めていますが、一切検討状況を明らかにしていません。従来は、安全保障政策についての議論を行う際は有識者会議を開いて、不十分ではあっても議事要旨や資料を公開してきましたが、ところが、今回は、そうした議事要旨や資料さえ公表せず、検討状況も国会で聞かれても明らかにせず、全てを参議院後に回そうとしております。とても事実に基づく議論を促すという姿勢ではありません。

 この二点について、いわゆる民主主義の根幹の問題だと思いますが、両参考人のお考えをお聞かせいただければと思います。

吉田参考人 私の研究範囲から少し外れますので、一言だけ申し上げておきますと、一般論として、正確なデータですとか事実が公表される方が望ましいというふうには考えます。

 以上です。

楊井参考人 私も、端的にお答えいたしたいと思います。

 ファクトチェックにおいては、公開された信頼できる情報というものをベースに成り立つものでございます。ですので、そこに信頼できない情報、あるいはそもそもデータが欠けているということがありますと、ファクトチェックをしようにもできなくなるということもございます。

 ですので、そういった政府の情報発信というのはしっかりしていただきたいと思うわけですが、現実には、先ほど私も少し申し上げたように、政府、厚生労働省、自治体が発信する情報にも多々問題があったということは判明しておりますので、そういったことのないように、今後きちんと国会等での検証もしていただきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神といいます。

 吉田参考人、楊井参考人、本日は非常に勉強になりました。ありがとうございます。また、皆さんのやっている取組はこれからも更に重要になってくると思いますので、心から敬意を表したいというふうに思います。

 やはり、日本の国は、日本語の非関税障壁もあるし、新聞、テレビを、読んでいる方がまだ四割ぐらいいて、アメリカだったら一%ぐらいしかいないのに、そういう遅れているところで助かっているところもあるというふうに思います。ただ、これがどんどん、スマホとかが普及、読むようになると、ますますそういう偽情報というものを整理する仕事が大事になってくると思います。

 その点で、この審査会でも、行政が規制をすることに対して非常に慎重で、自由を重んずるということなんでしょうけれども、私がちょっと勘ぐっているのは、自由に対する情熱よりも、偽情報の怖さが我が国はまだぴんときていないんじゃないかというふうに思っています。それで、例えばほかの欧米の国では、あるいは欧米に限らず、アフリカとかでも、民主主義の過程において、偽情報が結果に相当影響を及ぼしているとか、そういったことが散見されます。

 お二方に質問したいのは、プラットフォームに対する規制なんですけれども、これは余り言及がなかったと思うんですが、例えばフランスとかドイツとかEU、シンガポール、こういった国はそこそこ厳しい規制を課している。例えばフランスだったら、裁判所が、そういう偽情報を流しているところがあったら、プラットフォーマー自体に責任がなくても、送信の差止め、送信を防止しなさいというような命令を下すことができるとか、ドイツだったら、連邦選挙管理委員会が責任を持って、偽情報というものが選挙中に行われているかどうかを見る、それから、それが特定できたら、それこそファクトチェックのサイトでそれをきっちりと出すということをやっているんですが、こういう規制について皆さん抵抗感があるんですけれども、皆さんはどうお考えか、お聞きしたいと思います。

吉田参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、大前提の一般論としまして、法規制か否かという、ゼロサムのアプローチというところがやはりどっちとも言い難いところでございまして、結局、本当にハードローで規制した方がうまくいくのか、副作用が少なくうまくいくのかというところは、規制の仕方とかレベルによって違ってくるというふうに思いますし、取り扱う問題が、ころころ状態が変わっていくようなものについては、むしろソフトローの方で柔軟に対応する方が、被害者なりなんなりを救っていけるというふうなことに寄与できる部分もありますので、どういうふうに規制するのかというところが明らかになった上で議論をしないと、少し間違った方向に行く場合もあるかなというふうに思います。

 具体例として、今、EU等を挙げていただきましたけれども、私もEUを視察したのは十年ぐらい前なので、ちょっと今の状態が分かりませんが、社会の状況ですとか、自主規制のやり方、あるいは、本当に細かいところまで自主規制が行き届いているのかというような実効性の部分で、あちらも、コードとかで決めて、自主規制から入って、できなかったからレギュレーションを上げていくとか、そういうふうな段階は踏んでいるというふうに理解しておりますので、そういった自主規制でもやはり駄目でしたねというところで上げてきているんじゃなかろうかというふうには思います。

 これに対して、日本に関しましては、規制というのはプラットフォーマーの責任という言い方もできますけれども、私どもは期待というふうに置き換えて考えております。社会が我々のサービスを使い続けていただくに当たって、そういった対策をちゃんとしなさいという期待をこちらできちんと感じ取った上で、国会にお頼りするのではなくて、我々で素早く対応して、自主規制のやり方ですとか、そういったものも公開して透明性を確保して、またそこで御判断いただくというような形でやっていっているつもりですし、これからも自主規制を諦めないと申しますか、足りない部分は是非御指摘いただきながら努めてまいりたいというふうに考えております。

 以上です。

楊井参考人 私の立場は、先ほども申し上げましたように、直接的な法規制というのは副作用がありますので、ただ、個人の権利侵害とか、人格権を侵害するとか、そういったものについては救済というものの必要性が、回復不可能な損害を与えるようなもの、そういったものについては実効性のある法規制の仕組みというのは必要かと思いますけれども、そうでないものに関しましては、直接的な法規制ではなくて、できるだけ人々がそういった誤った情報に対する免疫力を強めるという方向です。幾ら誤った情報が流れていても、これは間違っているじゃんと思えば、その情報はほっておいても全く力を発揮しないと思うんですね。

 例えばですけれども、一例を挙げれば、今、ロシアが様々な情報を、ロシア側から流れてきていると思いますけれども、これはファクトチェックしたら事実と違うよねというふうに言えば、誰もそれを、流れていてもそれを信じない。それは事実と違うということを皆が共有できていれば、それは、何も削除もしなくても、力を発揮しなくなっちゃうわけですね。脱力化できるわけです。

 そういった、自然に淘汰されるというのが本来の表現の自由の中の在り方だと思いますので、そういった方向性は是非、希望的かもしれませんが、そういった方向性で、EUの取組とかも参考にしつつ、ソフトな対応が望ましいのではないかというふうに思っております。

北神委員 もう一つ、これは楊井参考人に再度。外国から偽情報が忍び込んできているという危機感をお持ちだったんですが、サイバー攻撃について、要するに、サイバー攻撃を通じて偽情報というのが、今回のロシアのやっていることもありますし、例えば憲法改正なんかは、九条なんかについて言えば、これに深く関心を持つ、かつサイバー攻撃をお得意とする国があるわけですね、外国に。

 こういったことについての認識とか、あるいは対策、問題意識とか、教えていただければと思います。

楊井参考人 御質問いただいた海外から偽情報が入ってくるリスクというのはどんどん高まってきているというふうに、我々ファクトチェックに携わっている実務の感覚としても感じております。

 ですので、それは一つは、今までは日本語の壁というのがあったんですけれども、それが、非常に翻訳、自動翻訳とかも物すごくどんどん発展してきております。ですので、全く日本語を知らない海外の人でも自然な日本語で情報発信できる時代というのは、恐らくもう近づいてきているんだろうと思うんですね。

 そういう意味では、そういったことを想定もして、ただ、だからといって海外からの情報を止めることももちろんできませんので、事前に規制することもできませんので、そういったものが入ってくるだろうと、入ってくることを想定した上で、入ってきた場合に、きちんとすぐにそういったものを、これは誤ったディスインフォメーションですよということを警告する。そして、プラットフォーム事業者においても、それが容易に拡散しないような何か歯止めをかけるとか、そういったことはひとつ検討していく必要があるのではないかというふうに思います。

北神委員 まだ時間はありますか。では、最後に。

 ファクトチェックの機関、日本はまだ足りないという話なんですけれども、行政の立場でファクトチェック、これも皆さんアレルギーがある方が多いんですが、アメリカもEUも、たくさんの国が、行政のファクトチェック機関があって、選挙のときに、もちろん民間のファクトチェック機関と一緒になって、いろいろ、さっきおっしゃったような多様性のあるファクトチェックの言論空間をつくっているわけですが、これについて、我が国、例えば憲法改正について言えば、政党からもやるとか、あるいは国民投票のときには協議会をつくることになっているんですが、そこからファクトチェックをやるとか、こういうことは考えられますでしょうか。

楊井参考人 簡単にお答えしますと、もちろん海外でも、政府機関がファクトチェックを行うところは全くないとは言いませんけれども、ほとんど主流は民間でやっております。

 ですので、やはり民間の様々な、多様なファクトチェックの団体を増やしていくという方向性が望ましい。もちろん、政府機関も、正確な情報、これは誤った情報ですよということをアナウンスすることは、それはしていただいて全然もちろんいいんですけれども、それだけでは到底よくないということだろうと思います。

北神委員 終わります。ありがとうございました。

森会長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。憲法審査会を代表して、心から御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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