衆議院

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第2号 令和4年10月27日(木曜日)

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令和四年十月二十七日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 山下 貴司君

   幹事 階   猛君 幹事 中川 正春君

   幹事 馬場 伸幸君 幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    越智 隆雄君

      勝目  康君    神田 憲次君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      齋藤  健君    下村 博文君

      田野瀬太道君    辻  清人君

      冨樫 博之君    中西 健治君

      船田  元君    古川 禎久君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    三谷 英弘君

      務台 俊介君    山本 有二君

      大島  敦君    城井  崇君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      堤 かなめ君    本庄 知史君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    前川 清成君

      國重  徹君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     三谷 英弘君

  國場幸之助君     勝目  康君

  渡辺 孝一君     冨樫 博之君

  新垣 邦男君     米山 隆一君

  奥野総一郎君     堤 かなめ君

  三木 圭恵君     小野 泰輔君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     國場幸之助君

  冨樫 博之君     渡辺 孝一君

  三谷 英弘君     伊藤 達也君

  堤 かなめ君     奥野総一郎君

  米山 隆一君     新垣 邦男君

  小野 泰輔君     三木 圭恵君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 本日は、委員各位の御理解をいただきまして、憲法審査会を開会できましたことを誠に喜ばしく思っております。引き続き、与党筆頭幹事として、政局から離れ、国民のための憲法論議を深めていくという憲法審に求められている役割を果たせるよう、丁寧に取り組んでまいりたいと思います。

 議論の再開に当たりまして、まずは、これまで通常国会において十六回にわたりまして積み重ねてきた議論を総括して、今後深めていくべき論点について私なりの意見を申し上げたいと思います。

 通常国会では、まず、コロナ感染症の全国的な蔓延が続く事態を踏まえて、緊急事態における国会機能の維持の観点から、憲法五十六条一項、「出席」の概念について議論を行いました。

 その議論を通じて、緊急事態が発生した場合においてどうしても本会議の開催が必要と認められるときは、例外的にオンラインによる出席も認められるという意見の大勢を見たところでございます。

 この議論が呼び水となりまして、次に、緊急事態条項全般に関する議論が行われることになりました。

 緊急事態条項に関する議論につきましては、まず対象として、大規模自然災害事態、テロ・内乱事態、感染症蔓延事態、国家有事・安全保障事態、この四つを対象としてはどうかという意見や、議員任期の延長の問題については喫緊の課題であり、速やかに取り組むべきという意見が大勢を占めたと考えております。

 さらに、緊急事態の判断、宣言を行うのは内閣なのか国会なのかという主体の問題です。続けて、緊急事態宣言の時期をどの程度にするのかという期間の問題、様々な事情で国会機能を維持できない場合に備えた内閣の緊急政令や緊急財産処分、この規定につきましても、いわゆる効果ということでございますが、この論点についても指摘がございました。これらはいずれも早急に議論すべきであり、是非とも今後の審査会で皆様方の御意見をいただきながら論点を詰めていってはどうかな、このように考えております。

 次に、究極の緊急事態は安全保障の問題であるという観点から、九条に関する議論も行われました。

 私たち自民党は、現行九条一項と二項の解釈は変えずに、平和主義の精神を維持したまま、国防規定を置くとともに、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、実力組織としての自衛隊を明記する憲法改正のたたき台素案を提示しています。この点につきましても、今後の審査会でしっかりと議論を深めていきたいと思います。

 続いて、私から、我が国が直面している地方の過疎化の急激な進展、都市部の人口過密という状況を踏まえ、国会議員の選挙区を構成する、法の下の平等と地域の民意の反映の在り方、これを憲法上整理するべきではないかと問題提起をさせていただきました。

 衆参国会議員の選挙区をどう設定するかは民主主義の根幹に関わるものであり、こうした一票の格差や合区といった問題を整合的に解決するためには憲法改正が必要だ、このように私は考えておりますし、そうした観点から、我が党は、合区解消と地方公共団体に関する規定の改正についてもたたき台の素案を出させていただいております。

 また、現代の教育は、学び直しや生涯教育の普及、経済状況にかかわらず全ての国民がそれぞれに合った教育を受けられる環境整備の必要性、教育のデジタル化など、様々な課題に直面しています。

 教育を受ける権利と受けさせる義務、義務教育の無償のみを規定している現行憲法二十六条について、教育理念などを整備する改正についてもたたき台素案を出させていただいているところであります。

 一方で、憲法改正の手続法である国民投票法に関しましては、まず、投票環境の整備について、公選法で整備済みの三項目を国民投票法に反映させるための改正案を、自民、維新、公明、有志、四会派共同で提出し、趣旨説明を行いました。

 改正案の内容につきましては倫選特で既に議論が整理されており、速やかに審議を行うべきと考えております。

 次に、放送CMにつきましては、二度にわたる参考人質疑を通じ、議論が整理されました。受け手である民間放送事業者においては、自主規制のガイドラインが量的なものも含めて既に整備されていることが確認されました。

 今後は、広告の出し手である私たち政党側の自主的取組と、国民投票広報協議会による賛否平等の広報活動について、具体的に詰めていきたいと考えています。

 また、ネットCMその他のネット情報と国民投票の問題についても、ネット事業者などの意見を聞きながら議論をしていかなければならない、このように考えています。

 なお、これまでの議論の中で、自由討議は言いっ放しであり、議論が深まらないのではという意見を聞くことがございました。

 改めて確認をしておきますが、いわゆる自由討議は、委員による発言形式が自由という方式を示したものでございまして、テーマのない自由な討議という意味ではございません。常任委員会のように、あらかじめ質疑者と答弁者を指定した上で討議を行う方式とは違う、委員同士の自由な討議を行うという意味でありまして、この認識は是非皆さんと共有をしたい、このように考えています。

 本日の審査会も、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題をテーマとし、これに関わる議論を自由方式で行っております。

 憲法審査会においては、憲法改正をめぐるこれまで積み重ねてきたテーマ、例えば緊急事態の取扱いなど、既に提起されている論点について、今後もしっかりと議論を深めていきたいと願っております。

 朝の幹事会におきまして、私から、まず、これまで同様に定例日には安定的に審査会を開催していくこと、そして、次回の審査会では様々な詰めるべき論点が出されている緊急事態などについて更に議論を進めてはどうかと提案をさせていただいております。

 今後も、憲法審査会において充実かつ深い議論が行われるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いいたしまして、私の発言といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 今国会から野党の筆頭理事を務めます立憲民主党の中川正春です。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 新しい体制でスタートしたことでもあり、最初に審査会の運営について、改めて所見を申し上げたいと思います。

 まず、幹事会の持ち方であります。

 新藤筆頭の気配りの中で、現状、私と新藤筆頭との話だけで決着をしているような感じがいたしますが、これを本来の形に戻すことを提案します。

 まず、幹事懇談会の議論を先行させて、幹事の間で十分な意思疎通をする必要があると思います。その上で、決着をつけなければならないことがあれば、各党の国対レベルでの調整もある中で、筆頭間の話合いに任せてもらう、そのようなプロセスに戻していってはどうかというふうに思います。

 次に、ここで改めて、私たち立憲民主党の憲法議論に対する基本姿勢をお話をしたいと思います。

 これまで繰り返し説明してきたとおり、立憲民主党の憲法審査会に対する基本姿勢は、論憲であります。具体的な憲法改正案を審査会に持ち込んで、その案に対する賛否を問うということであってはならないというふうに思っているんです。憲法の議論を通じて、国の基本を国民とともに確認をしていく。それぞれの条文について、立憲主義に基づいた真摯な議論を重ねて、審査会としての結論を得ていく。そのためには、憲法審査会は、全会派の一致点というものを追求していくこと、これに努めなければならない、いわゆる合意形成の場でなければならないというふうに思っています。

 そのためには、まず、時代の変遷とともに新しく提起されている課題の抽出、これから始めていくべきだと思うんです。国際環境や社会環境の変化が、憲法に対しても新しい課題を提起しています。変革が求められている課題は何か、これを抽出して、審査会の議論の俎上にのせるための合意を形成することが、この審査会にとって入口議論となっていくべきであります。

 例えば、GAFAMなどの国際的な展開で、アルゴリズムなどに翻弄される個人の情報に関連する諸権利の侵害が指摘されています。また、地政学的な変化の中で、具体的な安全保障の在り方を前提にした憲法九条の平和主義の確認、緊急事態などと関連した国会と内閣の関係の見直し、違憲審査権に伴う司法の在り方、地方分権の課題など、諸課題が山積する中で、審査会として何を優先して議論していくべきか、これを整理して議論に入っていくということ、ここが大事だというふうに思います。

 この先なんですが、それぞれの課題に基づいて論点を深化させていくこと、これが論憲だと思います。その過程では、現状の憲法違反が問われることもあります。また、憲法より法律によって目的を達成することが望ましい分野もある。また、最終的には、憲法に付加したり、あるいは修正したりすることが望ましい分野と結論づけられるものもあり得ます。

 具体的な論点を国民に見える形で整理することと同時に、この審査会の委員だけではなくて、専門家や関係者の審議会への参加を促して、そして国民的な議論に広く展開していくということが重要だと考えています。

 もう一つ、根本的な課題として考えていくことがあります。憲法と政党政治ということであります。

 今のように憲法議論を政党政治の枠の中で誘導すると、憲法改正は政治キャンペーンにのみ込まれてしまう可能性があります。その意図に疑心暗鬼が生まれて、国民の間に分断を生んでいくという結果になっていきます。これをどのように克服するかはとても難しい問題でありますが、先日、これに一つの答えを見出せる機会がありました。

 成熟した民主主義の中で憲法を議論してきたフィンランドの憲法委員会のメンバーと、私たちの審査会の幹事が意見交換をする機会がありました。幹事の皆さんはそこに参加され、フィンランドの憲法委員会会長からの次の発言を聞かれたというふうに思っております。

 憲法に関して多様な話をまとめるためには、通常の政党政治議論を前提にしては駄目です。私たちの憲法委員会では、各党会派の立場を離れ、議員個人として発言することに努めています。それでも並大抵な話ではなく、合意ができるまでとことん話し合うことがあって、事がなし得ていくのです。

 この発言は、私たちにとっても多くの示唆を与えてくれます。政党政治を超えた憲法議論を可能にしていきたい、国民レベルでの話に持ち上げていきたいということ、これを皆で共有することが大切だというふうに思っています。

 こうしたことを前提にして、これから先の審査会のテーマとして取り上げ、議論を深めたいと思っている項目を、まず具体的に提案をします。まず、目先で、優先してやっていきたいということであります。

 一つは、これまでも課題になってきました国民投票法に係るコマーシャル規制とネット規制であります。制度を十分に整えること、これは先決すべき事項でありまして、コマーシャル規制については、さっきお話があったように、民放連では自主ガイドラインを示しているということは理解をしていますけれども、私たちはそれで十分だとは認識していません。

 また、ネット規制については、法律制定当時はなかった観点であって、どこまでそれが可能なものかも含めて、専門家の話も聞きながら、現実的な結論をここで導いていく必要があるというふうに思っています。

 次に、前半で申し上げた憲法本体の課題の論点は多くあります。順番に、テーマを絞りながら議論の俎上にのせていくことだと思っていますが、一方で、今国会で多くの時間を割き、関連の法案も野党連合で提出されている旧統一教会の問題があります。

 遡れば、これは政治と宗教の関係をどのように整理することが正しいのかという根本問題に至っていきます。国葬問題と絡んで憲法の下で今これをしっかり議論することは、特に時宜を得たものだと考えて、この審査会のテーマとして取り上げていただくように提案をしました。残念なことに、自民党の新藤筆頭にはそのことを受け入れていただくことはできなかったんですが、今日のこの審査会はテーマなしの自由討議とすることとなりました。後ほど、自由討議という枠の中で、私たちの同僚が改めて政治と宗教そして国葬の問題を提起していくことになります。

 最後に、憲法を論じることは、国の形、基本を論じることであります。国民世論がこれで分断されては何のための憲法議論かということだと思います。改めて論憲が大切だということを強調して、私の発言といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、馬場伸幸君。

馬場(伸)委員 日本維新の会の馬場伸幸です。

 今国会も開会から三週間余りがたちましたが、本日、ようやく当審査会の実質討議の場が設けられました。

 さきの通常国会では、常会で過去最多、十六回の実質審議の場が持たれ、ここ数年固く閉じられていた当審査会の扉が開きました。私たち維新の会が粘り強く訴えてきた成果だと自負しておりますが、本院では、ほぼ毎週、定例日に各党がテーブルに着き、表面上は立法府のあるべき姿を取り戻しました。やろうと思えばできるのです。この流れは断ち切ってはなりません。もちろん会議を開くことが目的ではありません。実質的な議論を深化させ、結論を得ることです。その意味で、今国会は、憲法改正に向けた議論が軌道に乗るか否かの試金石となります。

 我が国は、ロシアによるウクライナ侵略、中国の力に任せた現状変更、北朝鮮のミサイル乱射というトリプル危機の最前線にあり、安全保障環境は急速に厳しさを増しています。事中国では、異例の三期目に入った習近平総書記による独裁体制が一層鮮明になり、近い将来の台湾有事、すなわち日本有事が限りなく現実味を帯び始めています。新型コロナウイルスのような感染症の蔓延や将来予測される南海トラフ地震始め大規模自然災害への対処、サイバー空間での対応など、喫緊の課題は尽きません。

 しかしながら、我が国の憲法は、人間の体に例えれば、二、三歳のときに着ていた服を七十五歳になった今も無理やり着続けているようなものです。時代の変化に合わせた最高法規の改定に正面から向き合うことは、立法府に課せられた重大な責務です。いつまでも悠長に意見の発表会をやっている場合ではありません。漫然と議論を続けるのではなく、改憲項目を絞った上で、国民投票をいつ実施するのかゴールを定め、意見集約を図っていくべきです。現状は羅針盤のない航海に出ているようなもので、最後は難破して終わるのが落ちです。

 日本維新の会は、平成二十八年に、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所設置の三項目から成る憲法改正原案をまとめました。さらに、今年の五月と六月には、九条に自衛隊を明記する改正条文案と、侵略や大規模自然災害などに対応するための緊急事態条項創設案をそれぞれ公表しました。

 各党の皆様にも、遅くとも来年の通常国会には、憲法改正項目を当審査会で示していただくよう求めます。出すべき改憲項目が皆無でも構いません。このオープンの場で堂々と議論を闘わせ、一般の法案同様、一定の審議時間を経たら、最後は民主的に結論を導き出すのが立法府の仕事です。皆さん、国民のために汗をかこうではありませんか。

 幸い、立憲民主党の泉代表は、去る二十一日の講演で、憲法をめぐる我が党とのスタンスの違いについて、実は差があってないようなもの、九条についても憲法審査会で議論すればいいなどと述べられました。

 立憲民主党は論憲を掲げていますが、泉代表が先頭に立って憲法審査会の開催を推進し、議論の活性化に努めていく決意を示されたものと受け止めています。立憲民主党の方々には、論じることでお茶を濁すのではなく、その先を見据え、前に踏み出していただきたいと存じます。

 一方、泉代表の姿勢に共産党の志位委員長はさぞ御不満のようです。ツイッターで、維新が憲法九条改憲の突撃隊となっていることは明らかであり、立憲代表が憲法をめぐって維新と協力の余地ありと考えているとしたら、とんでもない考え違いというほかない、野党ならば正面から対決すべきだと発信されました。我が党は九条改憲の突撃隊だそうです。

 突撃隊といえば、中国共産党の毛沢東主席が、昭和三十九年の第九回日本共産党大会に、日本共産党はマルクス・レーニン主義思想によって武装した突撃隊だと称賛する祝辞を贈ったことを、党の公開資料で誇らしげに紹介されています。

 今回、日本共産党のトップが毛沢東主席の突撃隊なる褒め言葉を使い我が党を表現したことには驚きましたが、この場をかりて、あえて志位委員長にこう申し上げます。共産党が現行憲法には誰の手も触れさせないという立場であることは承知していますが、いいかげん、SNSといった土俵外でああだこうだと物申すのはやめ、御自身がこの場にお越しになり、堂々と意見表明されたらいかがでしょうか。お待ちしています。赤嶺委員には、是非、志位委員長にお伝えいただきたいと思います。

 今国会に、我が党は、衆参いずれかの院で総議員の四分の一以上の要求があった場合、内閣に二十日以内の臨時国会召集を義務づける国会法改正案を立憲民主党と共同提出をいたしました。自民党からは憲法五十三条の改正が必要だという声が聞こえてきますが、ならば、憲法改正にもっと本気で取り組んでいただきたい。自民党は、野党時代の平成二十四年に発表した憲法改正草案に、憲法五十三条の改正を打ち出していたはずです。

 我が党は、自民党が一向に重い腰を上げないから国会法改正案を提出したのです。自民党には、憲法審査会での着地点を見据えた論議をしっかりリードしていただくよう、強く求めます。それでも進まないなら、日本維新の会が突撃隊となって改憲論議を引っ張っていく覚悟であると申し上げ、私の意見表明といたします。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄でございます。

 さきの通常国会では、憲法審査会での論議は実質十五回開催されました。立場の違いがある中でも憲法論議が積極的になされたことを評価したいと思います。議論を重ねると、一定のコンセンサスが生まれてくるというふうにも感じております。

 通常国会を振り返りますと、大きく三つのテーマが特に議論されたと思っております。緊急事態条項の創設、自衛隊と憲法、そして国民投票法改正の三つです。それぞれについて、改めて私の意見を述べたいと思います。

 まず、緊急事態条項についてです。

 我が国が大災害に襲われるなど、国家の危機と言える事態に国会の機能を維持することは、極めて重要です。緊急の立法措置や必要な予算を速やかに成立させ、政府を監督することは、国会の責務です。オンラインにより本会議の審議、採決に参加できる制度について、当憲法審査会で意見を取りまとめ、衆議院議長に提出したことは、大きな意義があったと考えております。国会議員の多くが本会議場に参集することが極めて困難な事態に、例外的にオンライン参加を認めることは、憲法五十六条一項、議事の定足数、また、五十七条一項、会議の公開の趣旨に反するとは言えず、各議院の自律権、五十八条二項の範囲内と考えられます。

 現在、衆参両議院で制度設計等が検討されていますが、できるだけ速やかに結論を得ていただきたいと思います。

 国会議員の任期については、衆議院議員は四年、参議院議員は六年と憲法で明確に規定されています。

 例えば、任期満了直前に東日本大震災のような大災害等が起こり、国政選挙の実施が長期間困難となる場合が想定されます。こうした場合に備えて、憲法を改正し、国会議員の任期延長を認めるべきではないかとの考え方があります。

 一方では、現行憲法には、衆議院の解散後、国に緊急の必要があるときは、内閣は参議院の緊急集会を求めることができ、議員任期の延長は必要がない、こうした意見もあります。

 しかしながら、国会は二院制です。衆議院と参議院とで構成され、予算案、法律案を始め、全ての案件は両議院の議決があって成立するのが大原則です。参議院の緊急集会は、憲法上、国会の二院制の例外となるものです。緊急事態の発生により総選挙の実施が長期間困難で、衆議院議員の不在が長期間にわたると認められる場合に、この間、参議院の緊急集会の議決のみで国会の議決とするのは二院制の趣旨にもとるのではないかと考えます。

 議会制民主主義の基本に関わることであり、また、緊急集会が参議院の基本的かつ重要な権能であることを踏まえながらも、任期延長ができる要件、手続をどう厳格かつ明確に定められるのか、更に具体的に論議を深めたいと考えております。

 また、国家の緊急時に国民の自由を制約し、また、内閣が緊急政令を発出できる根拠を憲法上明記すべきとの意見があります。

 現行憲法にも、営業の自由や移動の自由、財産権の内容などに公共の福祉による制約があることが規定されています。国家の緊急時といっても様々な事態があり、それぞれの危機管理法制の中で、私権に対する一定の制約とその手続、必要な補償規定等を具体的に整備していくしかないと思われます。また、不測の事態にも対応できるように、あらかじめ法律の中に政令委任ができる範囲を規定すべきと考えます。

 憲法九条一項、二項は、今後とも堅持しなければなりません。平和安全法制では、憲法九条の下での自衛の措置の限界について明確にしました。

 一部にある自衛隊の違憲論を解消するため、九条一項、二項を維持したまま、別の条項で自衛隊の存在を憲法上明記すべしとの意見があります。しかしながら、多くの国民は、現在の自衛隊の活動を理解し、支持をしております。

 一方、自衛隊は我が国最大の実力組織です。内閣や国会による自衛隊の民主的統制を確保することは国民主権の原理からも重要で、これを、自衛隊法等の法律だけではなくて、憲法が定める統治機構の中に位置づけることについて検討を進めていきたいというふうに考えております。

 先日、憲法審査会の会長、幹事等で、フィンランドの共和国国会の憲法委員会一行と懇談をいたしました。この同国の憲法でも、共和国大統領はフィンランド防衛軍の最高指揮官とする、また、共和国大統領は内閣の提案により防衛軍の動員について決定する、このように憲法にございます。私の知る限り、各国の憲法例も、民主的統制の観点から規定されているというふうに理解をしております。

 憲法審査会に提出されております公職選挙法並びの国民投票法改正法案三項目につきましては、投票環境整備のための法改正であり、速やかに成立を図るべきです。

 国民投票法と広告規制について、現行の広告規制は、投票期日直前の十四日間、国民投票運動のためのテレビ、ラジオによる広告放送を禁止しています。テレビ等の放送は扇情的な影響力を持ちやすく、また、資金量の多寡が広告の量に影響し、投票の公平公正を阻害するおそれがあると考えられたからです。

 国民投票運動は、憲法制定権者である国民の意思表明で、できる限り自由な運動を保障すべきです。国民投票運動のための広告放送について、法律で全面禁止するなど更に規制を強化すべきとの意見がありますが、表現の自由に対する過度な法規制には慎重でなければならないと考えます。これ以上の規制については、広告の出し手である政党側と受け手の放送事業者等のそれぞれの自主規制、自主ルールに委ねられるべきです。

 また、デジタル化が急速に進展する中で、ネット広告がテレビ広告を凌駕するようになっていますが、インターネット広告を利用した国民投票運動についても同様に、政党側の自主規制と事業者側の自主的な取組を併せて推進し、表現の自由と投票の公平公正のバランスを図っていくべきと考えます。

 以上です。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、今後の本審査会の進め方について申し上げたいと思います。

 毎週定例日に開催するという、ようやくできたこの慣例は是非守っていただきたいと思います。

 また、これまで、緊急事態条項、九条、国民投票法などについての議論を行ってきましたが、やはり、言いっ放しにならないように、一つのテーマについて一定の意見集約を行ってから次のテーマに進むことを求めたいと思います。そのために、分科会方式や小委員会方式も提案したいと思います。特に、緊急事態条項、とりわけ議員任期の特例延長の必要性については、本審査会である程度合意が得られていると考えられますので、具体的な改正案について議論すべきだと思います。

 国民民主党としても条文イメージ案を取りまとめておりますので、資料配付の上、改めて説明をさせていただきたいと思います。

 まずは、緊急事態の定義、我々、四つの類型を提案しております。外国からの攻撃、内乱・テロ、大規模災害、そして感染症の拡大、この四つについてコンセンサスを得ることをまず求めていきたいと思います。

 また、参考人招致についても改めて提案したいと思います。憲法改正の国民投票におけるネット広告規制について、インターネット事業者等から改めて意見を聞いてほしいと思います。さらに、SNSの個人情報を利用して、内心の自由を操作し、選挙に介入したケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏からのオンラインも含めた意見聴取も是非行っていただきたいと思います。

 また、ロシアによるウクライナ侵略でも、フェイクニュースなどによるサイバー空間における情報操作、いわゆるディスインフォメーションの影響が指摘をされています。情報の発信者やプラットフォーマーに対する規制、外国勢力の影響を排除するための規制、ファクトチェック機関の創設などの議論をより具体的に深めていきたいと思います。

 言いっ放しではなく、山積する憲法上の課題に一つ一つ結論を出していく運営をお願いしたいと思います。

 次に、憲法九条について一言申し上げたいと思います。

 国民民主党としては、自衛隊という組織を明記するかどうかの形式的な議論の前に、その自衛隊にいかなる自衛権の行使を憲法上認めるのか、そして、その自衛権の行使を行う実力組織を戦力あるいは軍隊として位置づけるのか、この本質的な議論が必要だと思います。なぜなら、この議論を避けている限り、仮に自衛隊という行政組織名が憲法に明記され、存在の違憲性が解消されても、その自衛隊による自衛権の行使という行為、行動の違憲性の疑義が残るからであります。

 ここで議論を深めるために、改めて、自民党そして日本維新の会に伺いたいと思います。

 両党の憲法改正案による改正後の自衛隊は戦力あるいは軍隊なのかどうか、改めてここを明確にお答えいただきたいと思います。

 また、前回、今回残念ながら議員が外れておりますけれども、足立康史議員が芦田修正を取り入れる旨の修正をしたと思いますけれども、日本維新の会としてこの芦田修正を採用する考えなのかどうか。そうであれば、依然として自衛権の範囲が解釈に依存することになり、条文と現実のギャップを解釈で埋める、解釈の迷宮から抜け出せないのではないかと心配します。党としての考え方をお伺いしたいと思います。

 もう一つ質問です。両党の案によると、法律と解釈によってはフルスペックの集団的自衛権まで自衛権の範囲を拡大することが憲法上可能な記述になっているのかどうか、この点については非常に関心もあるところですので、その点についても併せてお答えをいただきたいと思います。

 関連して、防衛費の増額についても申し上げたいと思います。

 国民民主党は、国を守るため必要な防衛費の増額については賛成です。一つ参考になるのが、NATOの国防費の基準、対GDP比二%です。これに関して、海上保安庁の予算など安全保障に関わる予算を足し合わせれば日本でも六兆円を超え、GDPの一・二四%になるという主張がありますけれども、これは私は誤解を招く議論だと思います。

 そもそも、NATO基準の国防費には明確な定義があり、それは、軍隊の要求を満たす経費であって、軍事戦術の訓練を受け、軍隊としての装備を保有し、展開オペレーションの際に直接軍の指揮下で行動でき、現実的に軍を支援するために国家の領域外に展開可能な部分についてのみ計上すると定義されています。

 一方、我が国の海上保安庁法二十五条は、この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認められるものと解釈してはならないと定めています。また、実態としても、有事を前提とした自衛隊と海保の連携訓練は一度も実施されていません。

 したがって、海上保安庁予算をNATO基準の国防費に含めたいのであれば、もう一つの憲法九条とも言える海上保安庁法二十五条の削除や見直しが不可欠だと思いますが、このことについては指摘をしておきたいと思います。

 重要なことは、都合によって軍隊かどうかということを使い分けるのではなく、ロシアによるウクライナ侵略が長期化し、北朝鮮が何十発ものミサイルを我が国周辺に着弾させ、台湾統一を悲願とする中国の習近平総書記が三期目に入った今こそ、我が国の主権と領土を守るために必要なアームドフォースとは一体何なのか、この本質的な議論こそ、この憲法審査会で行うべきだと思います。

 いずれにせよ、自衛隊が、対外的には軍隊だが国内的には実力組織であるといった、こういった日本でしか通用しないようなガラパゴス的議論に終止符を打つ必要があると思います。せっかく憲法を改正するのであれば、こうした中途半端で形式的な改正ではなく、本質的な問題に正面から応える改正になることを我々としては提案をし、質問と、我々国民民主党としての発言といたします。

森会長 先ほど玉木委員から、自民党と維新に対しまして質問がございました。持ち時間は十時三十八分までですので、原則としてはもう大体終わっちゃったんですが、特に許したいと思いますので、まず自民党からお願いします。

新藤委員 まず、玉木委員の御提言には大いに共感をしたいと思います。定例日には開催をしていく、そして、言いっ放しにならずに、様々な論点については、集約を見て、その上でまた次に移っていく、これを是非、私も提案させていただいておりますが、心がけて、また皆さんとそういった議論に資するようなものにしていきたい、このように考えております。

 それから、御質問いただきました自衛隊の取扱いにつきましては、我々のたたき台素案において、これは今の自衛隊の解釈を変えるものではない、平和安全法において整理をされたそのままの法解釈の下で、しかし、憲法上、国防規定がないという状態になっています。ここをきちんと整備しようじゃないかということで、私どもは提案をしております。ですから、いわゆる私たちの国、自衛をするための、必要な実力組織として自衛隊を置く、これに尽きるのではないかなと思いますが、これまでも御質問をいただきました。今後もしっかりと議論していきたい、このように考えます。

森会長 次に、維新、小野委員からお願いします。

小野委員 足立委員がおりませんので、どこまで前回の通常国会の玉木さんとの激論に応えられるかということはありますけれども。

 私どもは、基本的には今の政府の安全保障の憲法解釈というものに準拠した上での憲法改正というのを今出しているということでございまして、ただ、玉木委員の、確かに本質的な防衛力というものをちゃんと発揮できるような議論というのを、更にその先も行く必要があるだろうと思います。

 ただ、足立委員も当時言っておりましたけれども、今の時点で私どもが芦田修正を受け入れるというような立場には立っておりませんが、ただ、それを否定せずに、極限まで本当に国の防衛力を高めるための検討は将来行っていくべきだろうというふうには思っています。

 ですから、私ども、自民党と同じように、戦力というものではなくて、やはり、これは確かに御批判はあるかもしれませんけれども、実力組織としての自衛隊というものを今位置づけているという段階でございます。

 以上です。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私たち日本共産党は、憲法審査会は改憲原案の発議と審査を任務としており、国民の多くが改憲を重要課題と考えていない中、審査会を動かすべきではないという立場であります。

 私は、改憲のための議論ではなく、憲法の原則に反する政治を正す議論こそ必要だと主張してきました。

 今問われなければならないのは、統一協会と政治の癒着です。これは、民主主義の根底に関わる重大問題です。

 安倍元首相の銃撃事件以降、自民党と統一協会との根深い関係が改めてあらわとなるにつれ、国民の政治への不信が高まっています。

 統一協会は、正体を隠した伝道活動を行い、霊感商法や高額献金、当事者の意思を無視した集団結婚などで被害を広げ、そのいずれも裁判で有罪判決が出されている反社会的組織です。その根源にあるのは、エバ国である日本がアダム国である韓国に資金をささげなければならないという教義です。その下で違法な収奪を繰り返してきた反国民的な組織にほかなりません。反社会的カルト集団の広告塔となり、お墨つきを与えてきた自民党の責任は極めて重大です。

 ところが、岸田首相は、関係を絶つと言いながら、自民党と統一協会は組織的な関係はなかったと一方的に断定し、党や政府としての調査を行わず、個々の議員任せにしてきました。その上、統一協会と関わりのある山際氏を大臣に任命し、次々に疑惑が指摘されても職を続けさせ、世論の大きな批判を浴びたのであります。

 自民党が実施した調査票への回答でも、百八十人もの国会議員が協会や関連団体の会合での挨拶や講演、選挙支援などの接点があったことが明らかになりましたが、メディアやジャーナリストの調査では、そのほかにも隠された接点が多数指摘されています。

 さらに、自民党候補者が協会側との間で国政選挙に際して推薦確認書を交わしていた事実は極めて重大です。昨日、大串正樹デジタル担当副大臣が署名していたことを認めましたが、実質的な政策協定である推薦協定書を交わした議員の調査をすべきであります。また、参議院選で統一協会の比例票を差配していた安倍元首相についても、関係者への聞き取りなど、調査を行うべきであります。

 これまでの癒着の実態の全容を解明することなしに、関係を絶つことなどできるはずがありません。

 重大なことは、自民党と統一協会がお互いに利用する関係にあったのではないかということです。

 一つが、改憲運動についてです。

 統一協会の政治部門である国際勝共連合の渡辺芳雄副会長は、二〇一七年四月十七日に公開した動画で、自衛隊の明記や緊急事態条項などの改憲項目を提起しています。これが自民党の改憲項目に酷似していると指摘され、疑念が広がっています。

 そもそも、九条改憲を主導してきた安倍元首相が、統一協会と深いつながりを持っていました。統一協会との推薦確認書には、その第一項目が、憲法を改正し、安全保障体制を強化することと明記されています。自民党の改憲の動きを、事実上統一協会が下支えしてきたのではありませんか。

 自民党が政党として改憲を主張することは自由です。しかし、韓国に拠点を置く反国民的な謀略団体と一緒になって改憲を進めるなどということは、到底許されることではありません。憲法を議論する前提そのものが問われていると厳しく指摘しておきたいと思います。

 二つ目に、政策への影響についてです。

 統一協会は、同性婚やLGBTを異常なまでに敵視する主張を繰り返してきました。その下で、地方議会では、自民党議員と協会幹部が一緒に、同性カップルを公的に認めるパートナーシップ条例に反対する勉強会を開き、協会幹部を講師として招いていたことが広く公になっています。

 夫婦別姓や同性婚など、ジェンダー政策は、個人の尊厳と基本的人権に関わる問題です。これらの問題でも自民党の政策に統一協会の影響があったのではないか、ジェンダー平等に反するために統一協会を利用しているのではないかという国民の疑念が膨らんでいることは重大です。

 政治に対する信頼が問われる疑惑の解明に背を向けることは許されません。民主主義の根底と憲法を議論する前提が問われる下で、改憲の議論を推し進めることは断じて許されないということを強く指摘して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 前通常国会での憲法審査会を振り返ってみたいと思います。

 私も久しぶりに一員として加わりましたが、過去の一時期と違いまして、オンライン会議から緊急事態条項、国民投票法、憲法第九条、地方自治など、多くの議論について議論を重ねることができたと評価したいと思います。

 憲法という言葉の政治学的な意味は、共同体が統治されるためによって立つ基本原則であります。民主主義において、行政、立法、司法という国家組織が国民に対してどのような強制力を持つのか、その行動範囲を決めるものです。

 この基本原則を時代の要請に沿って変えるべきかどうか、これを真摯に議論することは、決して政局的な思惑に左右されるべきものではありません。これを事実上国民に決定させない、あるいは、発議をする権限そして責任を持つ国会議員に議論すらさせないというのは、民主主義の根幹をないがしろにすることに等しいと考えます。

 そういう意味で、さきの通常国会で、憲法審査会の運営は一歩前進だというふうに思います。当時の新藤筆頭幹事、そして苦渋の表情に満ち満ちていた奥野両筆頭幹事に敬意を表したいというふうに思います。

 今後につきましては、意見の一致まで行かなくても、意見の接近が見られるものについて、具体案を取りまとめていくべきだと思います。

 まず、緊急事態条項について。緊急事態の成立要件についてはおおむね一致を見ています。そして、議員の任期延長についても、まだ若干の開きはあるものの、もう少し議論を詰めていけば合意は得られるのではないでしょうか。緊急事態条項は、一部批判があるように、独断専行の行政権を認めるものではありません。むしろ、逆であります。専門的な知見あるいは過去の経験に基づいて、万が一の状況を想定した上で、国民の声がじかに届く国会の機能を維持することであります。どさくさ紛れに憲法上の隙をついて行政が好き勝手なことをしないための民主的統制を確保することであります。最優先で具体案を取りまとめるべきであります。

 他方、もう少し議論が必要なのは、一つは国民投票法の広告規制等であります。最も大きな課題であるインターネット広告の規制の在り方について、事業者や専門家の意見を聞くべきだと思います。サイバー攻撃などの問題を含めますと、より広く、一般の国政、地方選挙の在り方やネット上の人権保障の考え方との整合性も併せて考える必要があります。また、国民投票広報協議会について、その骨格は既に示されているものの、具体的にどのような役割を果たすべきかについて検討の余地があると思います。

 二つに、これに関連して、国民投票法を離れて、憲法そのものの課題としてのデジタル基本権があります。具体的には、サイバー空間における誹謗中傷などの行き過ぎた言論に対する人権保障の論点があります。また、スマホなどにおける遺伝子検査のアプリなどを通じて、個人情報が企業や外国政府に吸い上げられることに対するプライバシーや安全保障の論点もあります。これらについては、国民投票法との関連で議論を始めていくべきではないでしょうか。

 三つ目には、地方自治についても、本来は各党会派、そんなに隔たりはないというふうに推測されますけれども、まだ各論については詳細な議論が及んでいませんので、これについてもやっていきたいというふうに思います。

 最後に、憲法第九条についても、これは極めて喫緊の課題でありますが、残念ながらもう少し議論を深めるべきだと思います。

 今月の十九日に、米海軍作戦部長であるマイケル・ギルディ海軍大将は、中国の台湾侵攻が今年中にも起こる可能性は排除できないと発言しています。今年でなくても、近い将来、十年以内ぐらいには台湾有事が発生する可能性は高いというのは、もう専門家の間では常識となっています。事が実行された際、台湾のほん近くにある尖閣諸島や米軍基地が中国の砲火から逃れられると、誰が自信を持って言えるのでしょうか。台湾有事は日本有事だと覚悟すべきです。

 今出ている自民党案や維新案は自衛隊を明記するとしていて、今日の維新さんの発言からもいいますと、これまでの第九条の基本的な解釈は変えないものだというふうに理解しています。

 私の問題意識は、その解釈の中核にある必要最小限度の防衛体制で、果たして今後の安全保障の課題に効果的に対処できるのかということです。例えば、軍事演習を装って我が国を攻撃しつつある中国の軍艦について、領海に入らなければ自衛権を発動できるのかできないのか。兵器について言えば、全く空白が生じている中距離弾道ミサイルについて、持つことができるのかできないのか。

 さらに、ロシアとの対立もあり、NATOとの連携を検討する議論も一部専門家で始まっています。その際、相互防衛義務についてはどう考えるのか。憲法第九条がこれらを許すのか。いや、解釈で許される場合、一体この第九条というものは何の歯止めになっているのか。さらに、一々解釈をしなければ身動きが取れないような防衛体制というのは何なのか。こうした議論を深めていく必要があります。

 最も危険な東アジアにおいて、手足を縛られていてよいのか、あるいは、建前だけの手足を縛っていることが防衛上賢明なのか、いや、立憲主義の観点から賢明なのか、こういったことを皆さんと一緒に議論してまいりたいというふうに思います。

 以上、有志の会として、これまでの議論の総括といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

山下委員 自由民主党の山下貴司です。

 私は、緊急事態条項について、国際的にも、また我が国の経験に照らしても、早急に具体的な議論を進めていくべきだと考えます。

 憲法上の緊急事態条項は、世界的には約九割の国が有しており、また、新型コロナ対応を憲法上の緊急事態条項によって対応した国もあるなど、諸外国にとっても当たり前の立憲的制度であります。

 そして、我が国も緊急事態条項により国難を切り抜けた経験を持っています。関東大震災です。

 首都直下型地震である関東大震災の際には、国会は閉会中でした。震災後、初めて国会が開けたのは発生後三か月以上たってからでした。そこで、政府は、当時の明治憲法八条で認められていた緊急勅令で国難を切り抜けました。発生後一か月の間に十三本もの緊急勅令を出し、震災後、国会が開かれるまでに合計十六本の緊急勅令を出して乗り切ったのです。その緊急勅令は、震災直後の支払い猶予など国民の生活に不可欠なものでしたが、本来、法律事項であり、その対応は、今の憲法であれば国会でなければできなかったでしょう。

 しかし、三か月も待たなければ国会が開けないような、関東大震災に匹敵する首都直下型地震が発生した場合、どうするのでしょうか。首都直下型地震は、三十年の間に七割の確率で発生するおそれがあると言われています。国会議事堂が崩壊せずとも、交通が途絶し、国会の定足数を満たさない場合には、国会は開けず、予算も法律も通せません。被災者の命がかかっているというのに、国会が機能停止のまま数か月待ってくれということはできないのではないかと考えます。

 さらに、関東大震災での緊急政令による対応で注目すべきは、衆議院議員の選挙手続の特例についての緊急政令を出していることです。衆議院議員の任期満了は、関東大震災の僅か八か月後の翌年五月に迫っていました。今後、首都直下型地震が任期満了の直前に起きる可能性は誰も否定できません。明治憲法では、衆議院議員の任期四年については、法律である衆議院議員選挙法が定めていました。しかし、日本国憲法下では、国会議員の任期は憲法が定めており、憲法を改正しないと任期延長ができないのです。この点も憲法で手当てする必要があります。

 緊急事態については、日本の災害対策関連法など、あらかじめ定めた法律によればよいという見解があります。しかし、それでは足りないということは、現行憲法下でも我々が経験しているところであります。東日本大震災と新型コロナウイルス対応です。

 東日本大震災では、発災後三か月以内に地方の首長や議員の任期延長法を始め十三本の法律の改正を行い、全部で七十本もの法改正をしました。また、私たちは、感染症法等の法律の改正で、新型コロナを新型インフルエンザ特措法の適用対象とするなど、法改正を行って、新型コロナ対応を乗り切りました。つまり、これらは既存の法律で対応はできず、新たに法改正をしなければ対応ができなかったことの証左であります。

 しかし、これらは国会が開けていたから改正できたんです。非常事態が国会閉会中に発生し、しかも、首都直下型大震災やパンデミックのため本会議が開けない、委員会も開けない状態であれば、法改正も予算措置も取れず、対応できない可能性はありました。

 こうしたことから、明日にも起こるかもしれない首都直下型地震が起きて、関東大震災のように三か月以上も国会が開けない場合に、国会が開けるようになるまで、被災者に座して死を待てと言うのでしょうか。あるいは、感染爆発が起きて定足数を満たしての国会開会ができない場合に、そのことを言うのでしょうか。

 オンライン国会が出れば解決できる問題ではありません。オンライン国会は、震災の場合にオンライン機能が破壊されれば使えないのであります。

 この点に関して、例えば、我が国の憲法では参議院の緊急集会があるという向きもありますが、緊急集会は、明文上、衆議院議員の任期満了時に適用できるかに争いがあります。そして、定足数を満たさない場合には開けないことも同じであります。

 また、この緊急事態条項について、ワイマール憲法を例に出す向きがありますが、ワイマール体制の崩壊の原因は、緊急事態条項そのものよりも、憲法に優位する全権委任法を制定したことにあり、緊急事態にも憲法秩序を維持するための我々の考え方と異なります。そしてまた、ドイツにも緊急事態条項はあるのです。

 こうしたことを日本の経験、国際状況から照らせば、立憲主義を貫く、そして国民の生命を守るためにも、早急に緊急事態における憲法の在り方について議論し、特に国会議員の議員の任期の延長、そして緊急政令の要否について議論すべきことは明らかであることを指摘して、私の意見を終わります。

 以上です。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 国会法により、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うことは、この審査会の任務とされています。与党幹事もおっしゃったとおり、さきの通常国会では、コロナ禍のような緊急事態で、オンラインで国会審議を行うことは憲法改正を経ずにできるとの見解を当審査会でまとめました。こうした現行憲法の解釈、運用に関わる問題を真摯に調査し、見解をまとめる活動は、これからも積極的に行うべきと考えます。

 そこで、安倍元首相の銃撃事件の原因となり、国民の政治への信頼を揺るがせている旧統一教会の問題に関し、当審査会が早急に見解をまとめるべき憲法上の論点を二つ挙げます。

 一つ目は、霊感商法などの損害回復のために、家族等の第三者が被害の原因となった行為の取消権を行使することは、憲法二十九条一項で定める被害者本人の財産権を侵害するのかという点です。

 確かに、資本主義国である我が国において、財産権の行使は自由であり、取引の安全は保護されるのが原則です。しかし、相手方の反社会的行為により、本人の意思決定の自由が奪われた状態で多額の損失が生じる財産権の行使がなされ、相手方が不当な利益を得ている場合は、財産権の自由や取引の安全を考慮する前提を欠くと言うべきではないでしょうか。そして、このような解釈を取ることは、財産権の内容が公共の福祉によって制約されることを認める憲法二十九条二項とも整合的です。

 こうした見地から、我が党と日本維新の会は、第三者の取消権が濫用されないような配慮もした上で、被害者救済法案を国会に共同で提出しました。しかしながら、憲法が保障する財産権を侵害するとの反対意見があると仄聞しています。

 この憲法上の論点につき、当審査会で早急に一定の結論を出すことは極めて重要です。旧統一教会の被害救済のための与野党協議を進展させ、国民の期待に応えることになるからです。是非、当委員会の最優先の調査事項としていただきますよう、森会長に要請いたします。

 次に、もう一つの論点は、旧統一教会とその関連団体のような外国に本拠を有する勢力が、我が国の政治家と政策協定を結び、政策の実現を図ろうとすることは、憲法の大原則である国民主権に反しないかということです。

 憲法前文及び一条は主権が国民にあることを宣言し、憲法四十三条により、我々国会議員は全国民を代表する存在です。その帰結として、外国人の参政権は憲法上認められていません。さらに、政治資金規正法は、外国人や外国人が主たる構成員の団体から政治献金を受けることを禁止しています。その理由は、日本の政治や選挙が外国の勢力に影響を受けるためだとされています。

 外国の勢力との間で政策協定を締結することは、法律の明文で禁止されてはいません。しかし、政治家にとって極めて重要な選挙での応援という利益と政策実現への協力が対価関係になっているという点で、そのような対価関係のない政治献金以上に我が国の政治への影響力が強まる危険があります。

 予算委員会の審議で、岸田首相は、自民党議員につき、政策協定の署名の有無を調査しないとかたくなに答弁しています。その理由の中で、ポイントは選挙の支援につながったかどうかだと繰り返し述べていました。しかし、ポイントがずれています。そもそも国会議員が外国勢力と政策協定を取り交わすこと自体が憲法の国民主権に抵触するおそれがあるというのが、本当のポイントです。

 かつて自民党は、在日外国人から民主党政権の閣僚への政治献金につき厳しく追及しました。また、外国人の参政権については否定的な見解を取る議員が多いと認識しています。そうであればなおのこと、この問題は看過できないはずです。

 自民党総裁である岸田首相の認識が誤っている以上、当審査会の権限である憲法問題に関する調査の一環として、与野党問わず、全議員について旧統一教会との政策協定への署名の有無の調査を行うよう、森会長に要請します。

 以上二点につき、森会長の見解をお願いしたいと思います。

國重委員 公明党の國重徹です。

 緊急事態に関する議論につきまして、さきの通常国会において、立憲民主党などの委員から、参議院の緊急集会はいわゆる緊急事態を想定した規定であり、このような仕組みが存在する以上、新たに憲法に緊急事態に関する規定を設ける必要はないといった御意見がありました。そのような御意見に対する賛成、反対は別としても、私も、参議院の緊急集会に関する議論を詰めておく必要があることについて異論はありません。

 先ほど、我が党の北側幹事から、国会は二院制で、衆議院と参議院で構成され、予算案、法律案を始め、全ての案件は両議院の議決があって成立するのが大原則である、参議院の緊急集会は、憲法上、国会の二院制の例外となるものであるといった指摘がありました。

 衆参両院が同時に活動することを憲法が想定している以上、参議院の緊急集会は極めて限定的な場面の制度と捉えるべきということだろうと考えます。このことは、緊急集会で取られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合には、その効力を失う、憲法五十四条三項、とされていることにも表れています。

 このように、緊急集会の憲法上の位置づけを踏まえて緊急事態条項に関する議論を深めていくことは非常に重要と考えます。この観点から、緊急集会の招集が衆議院解散の場合に明文上限られていること、緊急集会が想定される期間が極めて短期間であることを踏まえて、衆議院が長期間にわたり不在の間に参議院の緊急集会で対応することとしてよいのかどうか、検討していく必要があります。

 ちなみに、緊急集会が想定される期間が極めて短期間であることにつきまして、解散後、選挙までの最大四十日と選挙から特別会までの三十日を合わせた七十日と言われることがあります。しかし、後半の三十日については、既に選挙が終わっており、フルサイズの国会を召集するのが筋であるということに照らしますと、その想定期間は四十日という極めて短期間と考えるべきではないかというふうに思います。

 また、国会機能の維持には、立法機能のみならず、行政監視機能の維持も必要です。この観点から、憲法、国会法の規定を踏まえると、特に行政監視機能の維持については、衆議院が長期間不在の場合、参議院の緊急集会の対応だけで足りるのかという疑問もあります。

 この点以外にも、参議院の緊急集会はこれまで二回しか開かれておりませんので、その在り方の詳細や性格について、委員間でも必ずしもイメージが共有されていないのではないかとも思われます。

 緊急事態条項について検討するに当たって、参議院の緊急集会についても議論を深めていくべきではないかということを申し述べ、私の意見とさせていただきます。

小野委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 先ほど、我が党の馬場代表から、今後の憲法審査会の進め方などについてお話をさせていただきましたが、私からは、今臨時国会初めての審査会開催に当たり、我が党の憲法改正原案五項目について、概要を御説明いたします。

 まず、教育無償化です。

 私どもの原案では、経済的理由によって教育を受ける機会を奪われない旨を明確に規定しています。学校教育は、全て公の性質を有するものとし、幼児期教育から高等教育に至るまでを無償としています。

 日本維新の会は、自治体レベルで教育の無償化の実現に向けて独自に努力してまいりました。しかし、教育は全ての国民がひとしく受けられるようにすべきであり、その無償化は、憲法上明確に位置づけるべきものと考えます。

 二点目は、統治機構改革です。

 現行憲法は、地方自治の本旨と言うにとどめ、ほとんどを法律に委ねておりますが、私どもの原案では、基礎自治体を包括する広域自治体として道州制を明記しています。

 また、地域主権を掲げたほか、地方自治の本旨の内容たる住民自治と団体自治も明記しています。

 さらに、補完性の原則も盛り込むことで、国の役割を国家の存立など本来果たすべき項目に絞り、それ以外は自治体の事務としています。

 地域主権の考えに基づき、道州内の基本事項は道州条例で定めるとともに、道州所管事項については、道州条例が国の法律に優位する旨、定めています。

 そして、地域主権を実質的に担保するため、課税自主権や財政調整制度についても憲法上明記をしております。

 このように、中央集権型の統治機構を抜本的に改め、地方がその実情に応じ創意工夫ができる制度に大胆に改革することが、停滞した我が国経済を活性化することにつながると考えます。

 三点目は、憲法裁判所の設置です。

 現行憲法では、付随的違憲審査制が採用されており、法令そのものの違憲性を抽象的に判断することができません。しかしながら、平和安全法制の議論の際、それが合憲かどうかという議論が国会で延々となされました。

 現行憲法では、内閣が憲法解釈を変更し、立法府が過半数で法律を制定すれば、分野によっては司法は立ち入りません。しかし、立憲主義の観点からは、内閣や国会から独立して法令の合憲性の判断を行う仕組みが必要であり、そのための機関として憲法裁判所を設置すべきと考えております。

 憲法裁判所による合憲性審査を行うための手続ですが、内閣総理大臣又は衆参いずれかの総議員の四分の一以上の議員が確認の訴えを提起して行います。

 また、通常裁判所が係属している事件において法令の合憲性を判断する必要を認めたときは、憲法裁判所に移送することができる旨も定めております。

 そして、憲法裁判所が違憲と判断した法令は判決で定められた日に効力を失うこととしており、また、この判決は、全ての公権力を拘束する効果を持ちます。

 強力な権能を持つ憲法裁判所を誰が運営するかは、とても重要です。私どもは、十二人の裁判官を衆議院、参議院及び最高裁判所から各四名ずつ選ぶ構成としております。議院内閣制の我が国で内閣からも選任すれば、過度に与党に有利となるため、内閣は除外しています。

 四点目は、先ほども御質問もありました憲法九条改正です。

 私どもの改正原案では、現行の第九条を維持した上で、新たに九条の二を加え、そこに自衛隊を明記しております。

 ロシアによるウクライナ侵攻に鑑みても、我が国存立のため、自衛隊は必要不可欠です。憲法上明確に位置づけることで自衛隊は違憲との主張の論拠を解消することができ、その先の我が国安全保障の充実のための議論を進めることができます。

 最後の五点目は、緊急事態条項です。

 危機においても国会や内閣の機能を維持するとともに、恣意的な人権制限を防ぐため、憲法に明確に定めておく必要があります。

 私どもの改正原案では、どのような場合が緊急事態かという実体的要件と、どのように緊急事態を宣言するかという手続的要件を定めています。

 基本的には、緊急事態においても国会による民主的統制を利かせるため、自動集会、会期継続、解散禁止及び任期延長など、国会機能継続のための条項を盛り込んでおります。

 また、国会による法律や予算の成立を待ついとまがない場合の緊急政令の発出についても、あらかじめ法律の定めるところによりと明記し、その範囲を事前に定めておくとともに、国会の事後承認や憲法裁判所による事後審査を行うことにより、歯止めをかけています。

 そして、緊急事態下であっても絶対に制限してはならない人権を明記するとともに、人権の本質的内容の制限の絶対的禁止も規定しています。

 以上、足早に日本維新の会の憲法改正五項目について御説明いたしました。今国会におきましても、立場の違いはあれ、各会派が毎週憲法審査会のテーブルに着き、時代に適応した憲法の改正について積極的な議論を展開されるよう強く求め、私の発言とさせていただきます。

小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。

 今回、再度委員になりましたので、通常国会の会議録を拝読いたしました。

 十六回にわたる議論では、新型コロナ感染症の蔓延に伴い、憲法第五十六条一項の「出席」の概念について、オンラインによる出席も含まれると解釈できるとの意見が大勢であったとの報告がなされました。

 また、去年の常会では、国民投票法改正案についても、三年越しではありましたが成立いたしました。これらは大きな前進であったと考えます。

 こうした流れの中で、私たちは次なる議論に進むべきと考えます。

 特に、ロシアによるウクライナ侵略に加え、我が国を取り巻く安全保障環境が変化し、力による一方的な現状変更の試みを含め、我が国が直面する脅威が高まる中で、自民党として提案している憲法への自衛隊明記と緊急事態条項についての議論は喫緊の課題と考えます。

 今般のウクライナ情勢を見れば、国民の生命と財産を我が国自身の意思と能力で守り切る姿勢こそが重要であって、それがあって初めて同盟国や有志国が足らざる部分を補ってくれるものと考えます。

 そのためにも、私たち国民を最前線で守ってくれる自衛隊について、違憲であるとの見解が存在する余地を解消することは国家としての最低限の責務であると考えますので、是非、憲法審査会で、この点を含めて各党で議論すべきと考えます。

 また、会議録を拝見する限り、法制局報告の中で、憲法に緊急事態条項を定めている国は二〇一三年時点で九三%を超えているとされ、憲法審査会での議論においても、緊急事態に関する憲法上の措置について、憲法改正をして明確に定めるべきという意見が圧倒的に多かったように見受けられます。

 これに関する議論の中で、緊急事態の対象範囲については、大規模自然災害、テロ・内乱事態、国家有事・安全保障事態、そして感染症の蔓延事態の四類型全てを対象とすべきことについて、おおむね意見の一致が見られているようでありますし、また、緊急事態における国会機能を維持するために議員任期延長の規定を設けるべきという点についても、意見が収れんしつつあるように思われます。

 これらの論点に関しては、大枠は一致しているのでありますから、今後は、論点提示のステージから一歩進んで、具体的な文言の合意を目指して深掘りしていくべきではないでしょうか。

 その他、今後検討する論点として、四類型のほかに、これらに匹敵する事態という総括的な規定の要否、衆議院解散時の議員の身分の在り方、国会の立法機能を代替する緊急政令の制度、緊急事態における人権保障の在り方、緊急事態の認定手続や主体などが挙げられたと認識しています。

 我が国の憲法は、人権規定に比べて統治機構規定の分量が少ないとされ、その足らざる部分は法律に委ねて手当てをしてきました。憲法はそれぞれの国の形を表すものであって、必ずしも他国に倣う必要はありませんが、こうしたやり方が世界のスタンダードではないという趣旨の報告もありました。どんなに想像力を働かせ、必要な法律を整備したとしても、それでもなお対応し切れない事態が生じ得るのではないかとの視点に立って、憲法にその規定を設けておくことこそが、危機管理の要諦であり、責任ある国家運営と言えるのではないでしょうか。

 国の最大の責務の一つは、国民の生命、身体、財産の安全を確保することです。

 例えば、五月に成立した経済安全保障推進法は、まさに経済面から国民の生命財産を守るために、有事の際に起こり得るリスクを想定して、平時に対策を整えておく法律です。この法律は有事が発生した際の対応を規定するものではないので、緊急時の法体系の整備が必要であると私は考えています。そのためにも、緊急事態という根本概念を憲法に規定することが重要だとも考えます。

 大規模自然災害や我が国周辺での有事はいつ起こるか分かりませんが、いつ起こってもおかしくない状況にあるとも言えます。加えて、こうした事態が単発ではなくて同時に生じる複合事態をも想定する必要があります。いかなる状況においても国民の生命財産を守り抜くために、緊急事態条項の一つ一つの論点を深掘りしていくことを会長及び与野党の幹事の皆様に改めてお願いして、私の発言といたします。

米山委員 御指名ありがとうございます。立憲民主党の米山です。

 先ほど我が党の階議員が言ったとおり、この審査会で憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案について審査するということは、何も、何でもかんでも憲法改正に入れ込むということではなくて、現行憲法をよく調査し、憲法上の問題点があるものの立法で解決すべきものについては、この憲法審査会において、憲法上の論点をきちんと議論した上で立法的解決の方向性を提示して、そして、どうしても立法で解決できない、そういった立法事実が残った場合には、それを憲法改正案にするということだと思っております。

 その典型が、今般、立憲民主党と日本維新の会、日本共産党、有志の会、れいわ新選組、社会民主党の五党一会派共同で提案した国会法改正案であり、憲法五十三条において召集期限が定められていない問題については、改憲ではなく立法による対処が適切だと思います。

 一方、先ほどいろいろな委員からお話が出ております安全保障の問題や大規模災害、疫病又は教育等の問題に関しましては、これは立法事実としては共有のところも多いんですけれども、基本的には、それはむしろ法律で改正する、その方がむしろ時代に即して作り変えていけて適切なのではないかと思っております。七十五年前に作った服が窮屈になったからといって、もっと窮屈なよろいをまとって突撃していく、それは余りにもやり過ぎであるというふうに考えております。

 私、立憲民主党に入ったばかりですから、泉代表の思うところは、推測によるしかありませんが、そんなに差がないというのは立法事実の認識についてであって、それに対してどう対処するかは、それぞれの党の在り方が違うというふうに考えております。

 このように、憲法上の問題があるものの立法で解決すべき問題というところで、直近で起こった問題が国葬問題であると思います。

 平成二十九年の内閣法制局の憲法関係答弁例集で、国葬とは、国の意思で国の事務として国の費用で行う葬儀とされていたところ、政府は、今般行うのは国葬ではなく国葬儀であり、単なる儀式であるから、国の意思を問う必要はなく、行政作用として内閣の意思、すなわち閣議決定で実行できる、その根拠は内閣府設置法第四条三項三十三号であるという極めて奇妙な理屈を述べて、政府の言うところの国葬儀を強行されました。

 国葬儀自体をつつがなく終えたのは何よりでしたが、政府の論理の余りの奇妙さに国民の理解は得られず、直近の世論調査で、六〇%の人がやらなければよかったとの結果になっております。この結果が示すとおり、この国葬儀は憲法上的観点で非常に問題があるものだったと思います。

 まず、法による行政、法治主義ですが、特に、今回の国葬儀では、内閣が単独で行使できる行政権はどこまでなのかが問われました。この点について、御承知のように、憲法それ自体に明文規定はありません。政府は侵害留保説を取りましたが、国民に対して事実上の弔意の強制になり得ることが、憲法十九条に定める思想、良心の自由との関係で問題になりますし、いかに総理経験者とはいえ、一個人を特別扱いして国葬に付すことは、憲法十四条の法の下の平等という国民の権利を害するとも考えられます。

 そもそも、判例は侵害留保説とはいえ、重要事項留保説や全部留保説という他の学説もあります。また、この問題とは別に、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と定める憲法四十一条との兼ね合いや、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と定める憲法八十三条の財政民主主義との問題もあります。

 国葬という国民の関心、若しくは国民の多くの人が同意しなければならない問題について、延々と憲法の解釈論が、実際起こったわけですけれども、この状態がそのまま放置されるのは適切とは言えません。この問題を放置すべきではないと考えます。

 では、どうするかということですが、自衛隊について憲法を改正してそれを書く、書かないという議論は、それはもちろん分かるんですけれども、さすがに、国葬について、憲法を改正して国葬を書き込もうという御意見は少ないのだろうと思います。今ほど述べたような憲法上の論点をこの憲法審査会で議論した上で、立法で解決すべきということになろうかと思います。

 そして、立法化に当たっては、憲法十九条に基づき弔意の強制がないことを法定し、十四条に基づいて法の下の平等に十分に配慮して、一個人を必要以上に特別扱いしない人選の仕組みを定め、憲法四十一条、憲法八十三条に基づいて国葬対象者、費用を事前に国会が承認する、現行憲法の趣旨を十全に生かした枠組みの設定が求められるということになろうかと思います。

 以上、今般の国葬に関する立法の在り方とともに、本憲法審査会が、憲法上の解釈が分かれている諸問題に対して、その論点を十分に論議し、その憲法の趣旨を生かした、立法を含めた最善の対処を提案すべきことを申し上げまして、私の発言とさせていただきます。

玉木委員 この間の議論を聞いていまして、やはり余り各党で意見が分かれない、イデオロギーに走らない問題として、緊急時における国会議員の任期の延長について、やはり最優先でやるべきだと思います。

 これは、ある種手続的な、どうするのか。そして、参議院の緊急集会については、これもいろいろな議論がありますが、二院制の問題であるとか、我々も東日本大震災のときに県会議員の任期を延ばす法律は通しましたけれども、やはり国会議員の任期は憲法に書いてあるので、その特例は憲法できちんと定めることが立憲主義又は規範性の保持の観点から必要だと思います。

 いついかなるときも三権分立、特に立法府の持つ立法機能、行政監視機能が正しく機能するということを担保することを、いざというときに備えて平時から議論をしておくことが最も必要だと思いますので、この議論を最優先ですることを改めて申し上げたいと思います。

 その上で、新藤幹事にもう一回ちょっとおつき合いいただきたいんですけれども、憲法九条なんですね。

 我々は、今、九条の改正のイメージは二つ持っています。端的に言うと、九条二項をいじる改正案と、そのまま残す改正案です。これは非常に悩みが深いんですね。今度改正するのであれば、まず規範性を取り戻すことと、あとは、もう解釈の迷宮から抜け出すこと、この二つが改正の意義だと思っています。今と同じことを単にきちんと書いただけということであれば、これから生じる膨大な政治的なコストを払いながらやることの意味が私は余りないと実は思っています。

 その上で、もう一度お伺いしたいのは、自民党の改正案にある、九条の二にある、一項、二項を残したまま、前項の規定、つまり九条二項ですね、必要な自衛の措置を妨げずというふうに書かれてあるんですが、その妨げられない自衛権の行使の中には、フルスペックの個別的自衛権、フルスペックの集団的自衛権も法律や解釈によってやはり入り得るのかどうか。つまり、元々制限された自衛権なのか、ある程度フルスペックで認められるものを別の法律や解釈で制限していくような改正の考え方になっているのかどうか。

 ここは大きく分かれると思います。維新案を見ると、一項、二項の範囲の中で自衛権を行使するというふうになっているので、維新案だと、多分、自民党案より狭いのかなと私は拝察するんですが。この自民党の書いている、必要な自衛権の行使を妨げないと。その妨げられない自衛権の範囲が、また解釈によって伸びたり縮んだり、ああだこうだと言われることになると、結局、違憲の批判から逃れられないと思うんですね。その点の整理は多分、随分党内でもやられたと思うんですけれども、そこがどうなっているのかなというのが、もし今お答えできる範囲であれば、改めて教えていただきたい。

 もう一回申し上げます。法律や解釈によっては、フルスペックの個別的自衛権、フルスペックの集団的自衛権が読み得る書き方になっているのかどうか、この点を教えていただきたいと思います。

新藤委員 是非、こういう議論をやるべきだと。

 それから、玉木委員が冒頭言っていただきましたが、何よりも、やはり緊急事態については、かなりのところが、皆さんで意見を出していただいて、絞り込むべき論点が明らかになっていますから、私は、再三申し上げますが、こうしたことについて、速やかな議論をして、煮詰められるところはきちっと整理をしていこう、結論が出るわけではないかもしれませんが、できる限りの議論は詰めながら次に進んでいきたい。このようなこと、是非次回以降にこれをお願いしたいということを改めて申し上げます。

 それから、今の話は、とても難しい話に聞こえますが、難しく考えるか、それともシンプルにいくかという問題だと思うんですね。

 そもそも、自衛権、個別自衛権とそして集団自衛権にスペックつきとフルスペックがあるかという、そこに至ってしまいます。私たちが思っているフルスペックというのは、自衛権の中で、我々は個別自衛権を持つ、そして、存立危機など必要なものについては限定的な集団的自衛の一部容認をするという平和安全法制の整理をいたしました。

 ですから、私たちの今の考えは、この整理を崩さずに、まずは国防、国を誰が守って、どういう手段で、そしてそれは誰が統制するのかということを規定しようということにさせていただいたわけであります。

 我が国の自衛権にどこまでの範囲を認めるべきか、これは極めて重要な議論で、しかし、それはもう、平和安全法制を始めとして、そちらの議論を並行してやっていかなければならないことだというふうに思っていますので、今のところにおいては、私たちは、この現行の妨げずというのは現行のままであるということで御理解をいただきたいと思いますし、そこのところでまた何かあれば、じっくり後でやりたいと思います。

玉木委員 じゃ、一瞬だけ。

 それは理解しています。ただ、今後、新たな法律や解釈によってはそこから更に広がる、つまり、個別的自衛権でも必要最小限とか、我が国はいろいろな制約がかかっているんですね。憲法上は少なくとも制約を、二項があるけれども、存置させたまま、妨げずと書いた以上は、二項とは全く関係なく裸の自衛権が一応認められると憲法上は書いた上で、ただ、我々の平和主義、前文の、いろいろなことを考えながら、法律や解釈で縛っていくし、それはいろいろ伸び縮みするという理解なのかどうか。また、そこは教えていただきたいと思います。

新藤委員 次回やりましょう。ありがとうございます。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議しておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと思います。

 また、先ほど階猛君から会長に御要請のあった件については、併せまして幹事会等において協議をいたします。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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