衆議院

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第3号 令和4年11月10日(木曜日)

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令和四年十一月十日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤信太郎君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 山下 貴司君 幹事 階   猛君

   幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      石井  拓君    石破  茂君

      石橋林太郎君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    神田 憲次君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      齋藤  健君    塩崎 彰久君

      島尻安伊子君    下村 博文君

      辻  清人君    土田  慎君

      中西 健治君    西野 太亮君

      船田  元君    古川 禎久君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      松本 剛明君    務台 俊介君

      山本 有二君    渡辺 孝一君

      新垣 邦男君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    岩谷 良平君

      前川 清成君    三木 圭恵君

      國重  徹君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     石井  拓君

  岩屋  毅君     土田  慎君

  國場幸之助君     石橋林太郎君

  下村 博文君     塩崎 彰久君

  田野瀬太道君     西野 太亮君

  辻  清人君     島尻安伊子君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     青山 周平君

  石橋林太郎君     國場幸之助君

  塩崎 彰久君     下村 博文君

  島尻安伊子君     辻  清人君

  土田  慎君     岩屋  毅君

  西野 太亮君     田野瀬太道君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 本日は、緊急事態条項について、これまでの議論を踏まえつつ、特に議員任期の延長について議論を深めたいと思います。

 まずは、参議院の緊急集会の位置づけ、対象とする緊急事態の範囲、そして、緊急事態の認定主体、国会関与の在り方、延長期間の設定の考え方、以上五点について、私の考えを述べたいと思います。

 まず、参議院の緊急集会の位置づけについてでございますが、議員任期延長の問題は、いかなる緊急事態が発生した際であっても国会機能を維持するために整備が必要と考えており、これは民主国家としての原点です。この検討に当たっては、まず、現行憲法が定める参議院の緊急集会の位置づけをどのように考えるか、これが問題となります。

 参議院の緊急集会は、日本国憲法制定時に日本政府が提案した緊急事態条項、すなわち緊急政令と緊急財政処分がGHQによって拒否をされ、これに代わるものとして、国会機能の維持の観点から規定をされたものです。

 日本国憲法が採用する二院制国会は、衆参両院がそろって活動することを原則としており、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会は、衆議院の解散中の空白を埋める二院制の例外として位置づけられているものです。

 憲法五十四条一項は、衆議院は解散から四十日以内に総選挙を行うこととしており、その選挙から三十日以内に特別国会を召集する規定になっています。このことから、参議院の緊急集会の規定は、最大でも四十日から七十日という期間を想定した制度と言えるのではないでしょうか。

 さらに、五十四条三項では、「緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」とされており、この制度は暫定的なものであることを示しているとも言えます。

 そうである以上、緊急事態条項の整備を検討するに当たっては、いかなる事態にあっても国会機能を維持するという観点から、議員の任期延長は最優先で取り組むべき課題と考えます。

 次に、対象とする緊急事態の範囲については、これまでの議論により、大規模自然災害事態、テロ・内乱事態、感染症蔓延事態、そして国家有事・安全保障事態、この四つはおおむね集約されたと考えています。これに加えて、私としては、この四つの事態を超える想定外の事態に備える意味でも、例えば、その他これらに匹敵する事態という規定もつけ加えるべきではと提案をいたします。

 その上で、議員の任期延長は、これらの緊急事態が発生したことによって適正な選挙実施が困難な状態に陥った際に発動される規定としてはどうかと提案をしたいと思います。

 次に、議員任期の延長を必要とする緊急事態の認定主体を内閣とするか、それとも国会とするかについてでありますが、緊急事態の発生によって適正な選挙の実施が困難な状態を判断できる機関は何かと考えますと、そうした事態の総合的な情報を集約できる機能を持つ行政府、すなわち内閣が認定主体としてふさわしいと私は提案したいと思います。

 現在緊急事態に陥っているウクライナは、ロシアが侵略を始める前日、二〇二二年二月二十三日に非常事態を布告し、侵略当日の二十四日に、憲法に基づく戒厳を布告いたしました。布告の主体は大統領、すなわち政府であります。

 多くの国の憲法において、緊急事態の認定主体がおおむね政府となっていることは、さきの通常国会の議論においても報告がなされています。

 ウクライナについては、ロシアの非道で理不尽な蛮行が早期に終結し、ウクライナの人々に再び平和な日々が戻ることを心から願っております。

 あわせて、今回の件で、常に私の頭から離れないことが一つございます。もし、日本にウクライナのような最悪の事態が発生した際、私たちはどうするのでしょうか。今の日本国憲法には、宣言する緊急事態の規定そのものがありません。この厳しい現実を痛感するとともに、緊急事態条項の整備は喫緊の課題であることを改めて強く訴えたいと思います。

 次に、国会の関与について提案をいたします。

 緊急事態の認定を内閣が行うこととしても、これに対する民主的統制の観点から、国会の関与の規定を定めておく必要があると考えています。

 そのために、緊急事態下において議員の任期延長を行う際には事前の国会承認を必要とする規定を設けること、これを提案をいたします。これにより、内閣の認定行為の適切性も担保されることになると考えます。

 また、別の機会に提案をさせていただきたいと思いますが、議員の任期延長とは別の論点である緊急政令、これにつきましても、事後的な国会承認の規定を設け、民主的統制機能を担保するべきと考えております。

 最後に、議員任期の延長に当たっては、その期間をどのように設定するかという論点がございます。

 議員任期の延長は、主権者国民の選挙機会を奪うことであり、その延長期間はできる限り短期間とすることが望ましいということは言うまでもございませんが、延長期間の設定には大きく二つの考え方があります。一つは、上限期間を明記しておくこと。もう一つは、選挙が実施され、新たな議員が選出されるまでとすることであります。

 例えば、ウクライナ憲法では、日本の国会に当たる最高会議の議員の任期は、議会期、すなわち、選挙から選挙までの期間が五年と規定するとともに、選挙が行われ、新たな議員が選ばれた後、最初の国会が開かれるまでの間は、旧議員が国会議員としての地位を保有するという仕組みが併せて規定されております。私たち憲法審査会で、海外調査、ウクライナに出かけた際にも、このことを確認をさせていただきました。

 一方で、我が国におきましては、東日本大震災のときに行われた地方議員の選挙期日の延長が発災から最長八か月であったことを念頭にすれば、例えば最長で一年以下の延長期間とする上限を設ける、こうしたことも考えられると思います。

 妥当な任期の延長期間をどう設定するべきかにつきましては、様々な御意見を是非お聞かせいただきたいと思います。

 以上、緊急事態下における国会機能の維持の観点から、議員の任期延長に係る幾つかの規定について、私の考えを提案させていただきました。

 本日の審査会において、各会派の御意見をお聞かせいただくとともに、我が国憲法における喫緊の課題である緊急事態について、更に議論を積み重ね、一定の集約が図られればと願っております。

 なお、私から、先ほどの幹事会におきまして、来週の定例日である十七日にも憲法審査会を開催し、更に討議を進めることを提案をしております。

 幹事会メンバーを始め委員各位の御理解と御協力をどうぞよろしくお願いをいたしまして、私の発言といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 本日、私からは、国民投票法などについてお話しします。

 先回申し上げた旧統一教会の憲法問題、あるいは今新藤先生からお話があった緊急事態条項の問題は、同僚議員から時間の許す限りでお話しさせていただきたいと思います。

 さて、一昨日、憲法審査会の幹事懇談会が久々に行われました。その中で、ある幹事からは、自由討議を続けても同じことの繰り返しになってしまう、目標時期を定めて憲法改正の議論を進めるべきだとの御意見がありました。この御意見は、半分当たっていますが、半分外れていると思います。

 半分当たっているというのは、我が党がかねてから御提案している国民投票の公平公正の確保のための国民投票法改正案につき、私や同僚議員が繰り返しその意義を述べたにもかかわらず、いまだに審議が進んでいないからです。後ほど、その必要性、重要性を述べます。

 そして、半分外れていると申し上げたのは、当審査会の任務には、憲法やそれに密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査したり、国民投票法改正案を審議したりすることも含まれるからです。

 もちろん、この審査会で様々な憲法問題を熟議した結果、特定の問題について憲法改正を必要とする具体的かつ合理的な事実が存在する確証が得られれば、憲法改正の議論に進むことは十分あり得ると思います。

 例えば、一票の格差の問題。これを二倍以内にするための十増十減法案が施行された後の議席と、我が国が右肩上がりだった約六十年前の議席とを比較してみました。総定数は四百六十七から四百六十五に二の減少ですが、三大都市圏はプラス七十の二百八十七、それ以外の地方圏はマイナス七十二の百七十八です。六十年前は地方圏の議席が三大都市圏を三十三上回っていましたが、今は百九も下回っているのです。

 法案審議の中で、この傾向は今後も続く旨、政府は答弁しました。憲法四十三条で国会議員は全国民の代表とされていますが、自分に縁のない地域よりも、自分の慣れ親しんだ地域の期待に応えるために仕事をしがちであることは否めません。

 また、法案審議の中で、人口が密である東京二区と過疎地である北海道十二区とで、面積の格差が七百五十五倍になるとの試算も示されました。東京二区と異なり、北海道十二区の有権者は、選挙区や議員会館の事務所を訪ねて地元の代議士に要望を伝えるのも容易ではありません。地方の議席が減るにつれ、地方の生の声は国政に反映されにくくなり、地方がますます衰退するという悪循環が起きてしまいます。

 大災害や感染症のリスクを軽減し、出生率や食料自給率、エネルギー自給率を高める意味でも、地方の存在は今後ますます重要になります。地方が衰退することは、都市部を含め、我が国全体が衰退することにつながります。こうした問題を解決するため、デンマークやノルウェーのように、人口だけでなく、面積を勘案して選挙区割りを決めるという法改正を行うことも考えられます。しかし、現行憲法の下では、最高裁は違憲判決を下す可能性が極めて高いのではないでしょうか。

 そこで、私としては、投票価値の平等という要請と地方圏の意見を国政に適切に反映するという要請を調和させるための憲法改正の是非につき、当審査会で調査を進めることは非常に重要であると考えています。

 次に、我が党の国民投票法改正案の立法事実と改正案の概要について改めて説明します。

 これに関して、今年四月の当審査会で私が述べた内容をポンチ絵にして配付しましたので、適宜御参照ください。

 そもそも、憲法改正の国民投票は、主権者たる国民にとって極めて重要な機会です。だからこそ、公平公正の確保が強く要求されます。このことは国民投票法が制定された十五年前にも意識されていたでしょうが、その後、今日までに大きく環境が変化しました。すなわち、情報の供給量を増やし、受け手の知る権利に応えることを重視していた時代から、視聴者の関心と時間を奪い合う競争の激化やフェイクニュースの増加など、情報供給の行き過ぎによる受け手への悪影響も考慮しなくてはならない時代へと変化したということです。

 我が党の国民投票法改正案には、多種多様で適切な情報を得た上で賛否の意思を形成できる仕組み、落ち着いた物理的、精神的環境の中で平穏かつ積極的に投票できる仕組み、この二つを盛り込みました。前者の具体策は三つ、後者の具体策は二つです。

 まず、前者のうち、放送CM規制については、当審査会において、民放連が法的規制にも自主規制にも消極的な見解を示しました。しかし、放送CMは刺激性と波及性が強く、視聴者は無意識のうちに憲法改正案の賛否の判断材料にする可能性が高いと言えます。業界の自主規制では不十分です。

 次に、ネットCM規制については、事業者が国内外、大中小含めて膨大な数に上り、実効性ある規制の仕組みをどのように構築するかが問題です。加えて、ネット使用歴等から個人情報を収集し、各個人の嗜好に合ったCMを閲覧させるマイクロターゲティングの問題があります。多種多様な情報に接する機会が奪われ、意思決定の自由が侵害され、民主主義の基盤が崩される危険があるのです。

 こうした問題意識については大方の委員が共有していると思います。我が党の案が最善の解決策だと言うつもりはありません。他の委員からも御提案がありましたが、ネット広告の分野の専門家を招いての参考人質疑を私からも提案します。森会長にお取り計らいをお願いいたします。

 三つ目の資金規制は時間の関係で省略します。

 後者の具体策にも触れます。

 一つ目は、ネット等の適正利用の確保です。フェイクニュースや誹謗中傷の蔓延により、落ち着いて憲法改正案を検討し、国民投票に積極的に参加する意欲が損なわれないようにする趣旨です。

 ただし、ネットCM規制と同じく、これが最善の案と言うつもりはないので、専門家や各委員の知見をおかりして、よりよいものに仕上げたいと思います。

 最後の一つは、投票に集中できる環境の整備ですが、これも時間の関係で省略させていただきます。

 以上、各項目は、国民投票法附則四条に掲げられている検討項目に合致しています。公職選挙法と平仄を合わせるための国民投票法でお茶を濁すのではなく、時代の変化に応じた抜本的な改正にも早急に取り組むべきです。

 これを行わないまま、万一、憲法改正の国民投票に突き進めば、英国のEU離脱の国民投票や前回の米国大統領選挙と同様に、国民の間に取り返しのつかない分断を招くおそれがあります。そのことを強く申し上げ、私の意見陳述を終わります。

森会長 御提案の件については、幹事会で協議をいたします。

 次に、三木圭恵君。

三木委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の三木圭恵でございます。

 今回の意見表明は、我が党の緊急事態条項の原案について御説明を差し上げたいと思います。

 まず、緊急事態の宣言の主体でございますが、これは内閣が行い、事後に国会の承認を受ける形にしております。

 事後の承認で国会が不承認とし、緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したときは、速やかにこれを解除するものとしております。また、緊急事態がやんだときその他当該宣言を継続する必要がないと認めるときも、速やかにこれを解除するものとしております。

 対象となる事態は、先ほど新藤委員の方からもございましたけれども、同じでございまして、他国による武力攻撃、内乱等、大規模自然災害、感染症の大規模蔓延その他これらに匹敵する事態の四類型で、特に必要があるときとしました。手続に関しては、先ほど述べましたとおり、内閣による宣言と国会の事後承認でございます。

 その効果として、一、国政選挙の実施が困難であることを国会が認定した場合、国会議員の任期が延長され、選挙の期日が特例により延長されることを始め、二、法律制定、予算議決を待ついとまがないと内閣が認定した場合、あらかじめ定められた法律により緊急政令と緊急財政処分が行えるとしました。

 また、緊急事態宣言が発布されますと、効果の三として、自動集会と会期継続、衆議院の解散禁止、不信任案等議決禁止を定めています。

 人権の制限について、効果の四として、事態に応じ合理的に必要と認められる範囲内で可能としております。

 そして、効果の五として、憲法改正の禁止を入れました。何人も、緊急事態が宣言されているような混乱した状況で憲法を改正することは許されないからです。

 さて、緊急事態が宣言された場合の五つの効果の加重要件や手続要件について、もう少し詳しく述べさせていただきたいと思います。

 まず、国会議員の任期の延長、選挙期日の特例についてです。

 緊急時においてこそ、国会機能を維持し、立法機能、行政統制機能等を果たすことが重要であり、国会議員が不在となる事態は避けなければいけませんが、さりとて、議員のお手盛りにならないように、要件は厳しくする必要があると考えました。

 そこで、選挙の適正な実施が困難であると認める特別の事情があるときという加重要件を設けるとともに、任期延長、選挙日特例を設けるためには各議院の出席議員の三分の二以上の多数を必要とすることとしました。また、衆議院解散や議員任期満了により議員が身分を失った時点から選挙までの間に緊急事態の宣言が行われた場合には、失効した議員身分の復活も規定しました。

 さらに、国会議員の身分について国会議員自らが判断するだけでは、緊急事態を脱しても議員任期が延々と延長され続けるおそれがあるため、その特例を客観的に判断する観点から、任期延長期間が六か月を経過した場合は憲法裁判所が職権によりその憲法適合性を審査できることとしました。

 次に、緊急政令、緊急財政処分についてです。

 こちらも、加重要件として、法律制定、予算議決を待ついとまがないと内閣が認定した場合を設けています。そして、「あらかじめ法律の定めるところにより、」と規定をしていますが、単に法律の定めるところによりとしてしまうと、緊急政令は法律と同一の効力を有するため、緊急政令がその根拠となる法律をも改定してしまうおそれがあります。そこで、「あらかじめ法律の定めるところにより、」と明記し、緊急政令は事前に定められた法律の範囲内に制定されることを担保します。

 我が党では、緊急財政処分を含め、具体的には、緊急事態基本法を制定し、そこで詳細を定めることを想定しています。

 また、緊急政令、緊急財政処分について、あくまでも臨時のものであることを明記した上で、事後に国会承認が得られない場合は失効し、民主的統制が及ぶようにすると同時に、国会議員の四分の一をもって憲法裁判所に提訴できることとなっています。

 ちなみに、事後に国会の承認が得られない場合は、将来に向かって効力を失うことを想定しているのであって、過去に遡って無効とすることは、安定性を著しく害するため、想定していません。

 次に、人権制限についてであります。

 事態に応じ合理的に必要と認められる範囲内で可能とした上で、絶対に制限してはならない人権として、判例、学説の多数見解等を踏まえ、個別の人権条項において、一、内心の自由への制限、二、内心における信仰の自由の制限、三、検閲、四、奴隷的拘束の絶対的禁止を挙げ、その各条において、個別の条文に、平時も含めた一般的な規定として、例えば、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という条文を、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。内心の自由の侵害は、絶対にこれを禁ずる。」というように、各条文に個別に、絶対にや、いかなる場合においてもという文をつけ加えることによって、絶対に制限してはならない人権を保障する工夫をしました。

 また、人権の本質的内容の制限絶対的禁止については、第十三条二項に、人権の総則的規定において、人権の本質的内容は絶対に制限してはならない旨を規定しました。

 また、我が党の案では、緊急事態においても国会は機能を果たせるように作られているので、人権侵害について国会の行政監視も行えます。また、憲法裁判所も、提訴があった場合は審査されるので、制限措置を統制できると考えます。

 以上が説明となりますが、日本維新の会の緊急事態条項の大きな特徴の一つは、憲法裁判所を加えているところです。我が党では憲法裁判所原案を平成二十八年に発表しておりますが、その内容と整合性が保たれる内容となっています。憲法裁判所により憲法に適合しないとされた法律、命令、条例、規則、措置又は処分は、当該判決により定められた日にその効力を失うこととなっております。国会議員の任期延長、選挙期日特例や緊急政令、緊急財政処分といった強力な措置が立法府、行政府によって濫用され、国民の権利が過度に制約されることのないよう、憲法裁判所の審査の対象とすることは、三権分立の基本であり、長年にわたり人類が築き上げてきた民主主義の知恵であります。

 いついかなる不測の事態にあっても国民を守るために国会の正常な機能を維持させること、それに当たり一極に権力が集中することを防ぐこと、歴史に学び、多くの工夫と努力を積み重ねることによって、様々な想定を行い、法律を作ること、そういった不断の研さんが、いざという国の危機を少しでも回避していくことになると信じて、この緊急事態条項を我が党では作り上げました。

 我が党では、緊急事態条項の条文をまとめるに当たり、何度も憲法改正調査会を開催し、議論を重ね、様々な意見を聴取し、衆議院法制局のお力もおかりしながら、多くの時間を費やしました。是非各党からの御意見もお伺いしたいところでございますので、今国会での憲法審査会での審議をお願いいたしまして、意見表明といたします。

森会長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘です。

 本日も憲法審査会が開催されましたことに、森会長始め各党各会派の幹事の皆様の御尽力に深く感謝を申し上げます。また、本日、意見表明の機会を与えていただきましたことに重ねて御礼を申し上げます。

 さて、本年活発に開催された憲法審査会においては、緊急事態条項の創設、自衛隊と憲法、国民投票法改正について熱心な議論が展開されてきたと承知しております。今後これらの論点を深めていく必要があると感じておりますが、併せて意識しておきたいことは、デジタル化と人権、グローバル化と憲法であると思い、本日、私は、グローバル化と憲法について意見表明させていただきたく存じます。

 言うまでもなく、憲法は国家の基本法です。芦部信喜先生の言葉をかりれば、憲法とは国家という統治団体の存在を基礎づける基本法であるが、その中で特に憲法学が対象とするのは、近代に至って一定の政治理念に基づいて制定された憲法であり、国家権力を制限して国民の権利、自由を守ることを目的とする憲法であるとお述べになられておられます。このように、憲法学は、国家、より正確に言えば近代主権国家を前提としているように思われます。

 しかし、約二十年前にアントニオ・ネグリ、マイケル・ハートにより書かれた大著「帝国」には、ソビエト連邦の障壁がついに崩壊を迎えたすぐ後、私たちが目の当たりにしてきたのは、経済的、文化的な交換の抗し難く不可逆的なグローバル化の動きだった、市場と生産回路のグローバル化に伴い、グローバルな秩序、支配の新たな理論と構造、一言で言えば新たな主権の形態が出現しているのだと記されており、著者は、これらグローバルな交換を有効に調整する政治主体のことであり、この世界を統治している主権的権力のことを帝国と名づけ、単独国家の主権を超越する現象として現れた新たな主権的権力を考察しています。

 また、主権以外にも、グローバル化の研究対象は多岐にわたります。すなわち、政治、経済、市場、社会、文化、教育、環境、安全保障などですが、これらの全てが憲法と関連する事項です。

 さきに述べたように、憲法学は近代主権国家を前提としてきたと思われます。しかし、グローバル化によってこの前提の自明性が失われつつあるのではないでしょうか。

 日本国憲法は人権を最大限保障するメカニズムを構築していますが、その究極の目的は、十三条の個人の尊厳の実現にあると存じます。この個人には外国人も含まれると考えます。

 現在、日本社会はグローバル化し、都会では日常において外国人を見かけないことはありません。実際、出入国管理庁によると、令和三年六月末時点で、二百八十二万三千五百六十五人の外国人が日本に在留しています。近年コロナの影響で減少していますが、十年前と比較しても三七%以上増加しています。

 加えて、外務省の統計によると、海外在留邦人数は令和三年の百四十三万四千九百人で、日本の総人口の約一%以上が外国で生活していることになります。こちらもコロナの影響で近年減少傾向ですが、十年前と比較しても七・六%以上増加しています。アフターコロナが到来すれば、両者の数字は再び増加傾向に転じるのではないでしょうか。

 このような傾向下にあって、外国に在留する日本人、日本に在留する外国人の市民権はいかなる方式が最も合理的かという議論が憲法学界で行われているとお聞きしました。そして、市民権の問題は、国籍制度と表裏の関係にあります。

 この点、日本国憲法には国籍に関する規定が二か条存在します。国籍法定主義を定めた十条と、国籍離脱の自由を定めた二十二条二項です。

 まず、国籍離脱の自由について、佐藤幸治先生の憲法の教科書によると、本条の自由には無国籍になる自由は含まれないと解されているとのことです。このような帰結は、無国籍者は、医療や教育、財産的権利へのアクセスだけでなく、移動の自由にも支障を来すものであるし、無国籍者の地位に関する一九五〇年条約及び無国籍者の削減に関する一九六一年条約からも、各国政府が無国籍の防止に尽力することには合理性があり、妥当だと考えます。

 次に、日本の国籍制度について見てみるに、国籍法十一条一項は国籍の自動喪失制度を規定しています。

 一般的に、憲法上の一定の意思ないし行為が○○の自由として保障されている場合には、論理必然的に○○しない自由も包含するものと解されています。そうであれば、国籍離脱の自由は国籍離脱しない自由も保障されていることになり、国籍法十一条一項は、文理上、憲法二十二条二項との関係性で問題が生じる余地があるように思います。

 そして、グローバルな人の移動の増加に伴い、憲法学説も変化を見せつつあるようです。

 憲法審査会でも大変にお世話になっている長谷部恭男先生は、国籍法抵触条約はその前文で、人は一つの国籍を有すべきであり、かつ、一つの国籍のみを有すべきであるとするが、国籍唯一の原則、現在、世界各国のほぼ半数は二重国籍を許容していると論じ、芦部先生は、正確には高橋和之先生だと思われますが、最近の急激な国際化の動きは、国籍唯一の原則に基づく従来の厳格な重国籍防止の考え方に波紋を投げかけていると指摘しておられます。

 国際法上も、欧州国籍条約が重国籍を許容し、国際法の原則である国籍唯一の原則は大きく揺らいでいるとの指摘もあります。

 以上、述べてまいりましたが、公明党はもとより、弊職においても、日本も多重国籍を許容すべきと考えているわけではありません。グローバル化する国際社会の中で、グローバル化する日本の現状に日本国憲法がどう対応していけるのか、この憲法審査会において議論がなされる余地があるのではないかと思い、意見表明させていただきました。

 日本国憲法には、国際協調主義も掲げられています。混迷する国際情勢の中で、日本が国家として、国民、世界市民にその権利を、その資格をどのように整理していけるのか、グローバル化の観点から今後も議論させていただきたくお願いを申し上げ、私からの意見表明とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 冒頭、今後の審査会の運営について一言申し上げます。

 これまでの議論の中である程度コンセンサスが得られたと思われる項目の一つである緊急事態条項、そして、とりわけ議員任期の特例延長については、テーマを絞って議論することを提案したいと思います。やはり、言いっ放しではなくて、具体的な議論の成果を出せる審査会の運営が必要だと思います。

 その上で、三月三十一日に既にこの場で述べておりますけれども、改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的な考え方を述べたいと思います。

 私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、行政の簡易迅速な権力行使を可能とする権力行使の容易化条項としての緊急事態条項ではなく、むしろ、公共の福祉など漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する司法や立法による統制を明示する、権力行使の統制条項としての緊急事態条項が必要だと考えます。

 まず、国民民主党は、緊急事態の要件は明示的に限定列挙すべきと考えます。具体的には、外国からの武力攻撃、内乱・テロ、大規模自然災害、感染症の大規模蔓延、この四つのカテゴリーを原則とすべきと考えます。

 そして、国民民主党は、手続的統制の方策として、国会の機能を最大限維持することが重要だと考えます。かかる観点から、宣言を発令するのは内閣の権限とする一方で、緊急事態宣言について、原則国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を得ることを考えています。この点については、自民党の二〇一二年の憲法改正草案にも明記されており、建設的な合意がつくれるはずだと考えます。

 その上で、手続的統制の第二の方策として、司法による統制を機能させてはどうかと考えます。具体的には、緊急事態宣言の要件が満たされているかどうかの要件充足性について最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制することを検討しています。例えば、緊急事態宣言が発令された場合又は延長された場合において、いずれかの議院の総議員の四分の一以上による申立てがあったときは、最高裁判所は、その宣言が要件を満たしているかどうかを審査し、申立てから三十日以内に判決を行わなければならないとし、満たしていないとの判決を行ったときは国会及び内閣に対して解除の勧告を行うとする旨の規定を設けるのも一案だと考えます。

 そして、私たちは、国会議員の任期満了時に緊急事態が宣言された場合、議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定を憲法を改正して設けるべきとの立場に立ちますが、その際、いつまで任期を延長できるかについては、多数派の恣意的な決定を排除するため、各議院の三分の二以上の多数で延長期間を定めることを考えています。

 その際、東日本大震災のときに地方議会あるいは首長の選挙期日の臨時特例に関する法律に定めたように、一定の最長の上限を定めるということも有力な方法だと思います。そして、この延長できる期間の決定においても最高裁判所の関与を求める案も考えられますけれども、我が党としては、緊急事態宣言を発令するかどうかの最初の入口の判断に限定して、最高裁判所の関与を求める仕組みを検討しております。

 また、緊急事態にこそ国会を機能させることが必要だという観点から、国会が開会時の閉会制限と閉会時の召集義務を課し、また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定も盛り込んでいます。さらに、解釈で認められたオンライン出席について明文で規定することも検討しています。

 加えて、オンラインを活用してもなお定足数を満たさず、どうしても衆議院、参議院の本会議が開けない場合には、ドイツにおけるミニ国会のような、両院合同委員会による国会機能の代替についても検討しています。

 いずれにしても、国民民主党としては、緊急事態の定義と議員任期の特例延長については、急ぎ議論を具体化させるべきだと思います。

 なお、任期の特例を創設するに当たっては、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したいと思います。

 国民民主党としては、条文上、解散時に加えて任期満了時を読み込むことは困難であること、また、二院制を正しく機能させる必要があることから、憲法改正が必要であるとの立場です。

 ちなみに、平成二十三年の質問主意書に対する政府答弁書においても、大規模災害が国政選挙の直前に発生した場合に、選挙期日を延期するとともに、併せて国会議員の任期を延長できるようにするには憲法改正が必要とされており、政府答弁でも立法措置では国会議員の任期の延長はできないとされているので、政府あるいは内閣法制局からもヒアリングを行うことを提案したいと思いますので、森会長、よろしくお願いしたいと思います。

 国民民主党としては、今述べたような緊急事態における統制の具体的内容について党内で議論しており、いずれ条文の形でお示ししたいと思います。

 いずれにせよ、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めて、私の発言を終わります。

森会長 御要請のあった件については、幹事会で協議をいたします。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 前回、私は、民主主義の根幹を揺るがす重大な問題として、反社会的、反国民的組織である統一協会と自民党政権との癒着に言及しました。とりわけ、安倍元首相が主導してきた改憲をめぐる運動が、韓国に拠点を置く謀略団体と一緒になって進められてきたことは極めて重大であり、改憲議論の前提が大本から崩れていると言わざるを得ません。

 その点で、十一月七日の毎日新聞が、統一協会が自民党の安倍派を中心に国会議員と関係を持つことによって政界工作を画策していたと報じたことは重大です。記事によると、協会の創始者である文鮮明は、岸信介元首相を足がかりに日本の政治と関係を持ったと強調し、安倍派を中心に国会議員との関係を強化する、国会議員の秘書を輩出する、国会内に教会をつくる、そこで原理を教育することなどで全てのことが可能になるなどと指示したことが明らかになっています。外国の反国民的勢力が日本の政治に介入しようとしているもので、看過できません。

 さらに、八日の毎日新聞は、統一協会が安倍晋三元首相に接近することで政治への影響力を持とうとしていたことを報じました。安倍氏は、第一次政権を辞任した後から協会側と接点を持ち始めたこと、さらに、参議院選挙などでは協会の比例票を差配したと指摘されています。

 自民党が半世紀以上にもわたり統一協会と関係を持ち、岸氏を始め安倍家三代がその中心にいたのではないかという疑惑が高まっています。これは、まさに自民党政権全体の問題であり、個々の政治家の疑惑とは次元の異なる問題です。政府・自民党の責任で、統一協会と自民党政権との深刻な癒着について徹底的に調査すべきです。

 岸田首相は、統一協会と関係を絶つと言っていますが、その姿勢も問われています。この間も、岸田政権の政務三役と統一協会との関係が次々と発覚しています。選挙に当たって、確認推薦書に署名し、推薦書を受け取り、さらに、協会側がつくった後援会から選挙支援を受け、政務官室にまで招き入れていたことまで明らかとなっています。協会側による自民党議員の後援会は各地にあったと指摘されています。

 問題は、国会議員だけではありません。地方議員との癒着も深刻です。ジェンダー政策をめぐっては、自民党と統一協会側が一緒に勉強会を開き、協会側が自民党議員に働きかけ、請願や意見書を提出していたことが広く指摘されており、この解明が必要です。

 ところが、各地の地方議会で、自民党は、統一協会と政界との関係の徹底解明を求める意見書に反対し、否決しています。これで関係を絶つことなどできるはずがありません。岸田政権、自民党が統一協会との癒着の解明に背を向けたまま改憲議論を推し進めようとすることは許されないということを改めて強調しておきます。

 最後に、岸田政権が進める憲法破壊の大軍拡についてです。

 政府は、年末に向けた国家安全保障戦略など安保関連三文書の改定を進めていますが、その中身は、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有を具体化しようというものです。これまで歴代政府が建前としてきた専守防衛さえ投げ捨て、相手国の領土への攻撃を可能にする防衛政策の大転換にほかなりません。

 さらに、政府は、五年間の軍事費を四十八兆円と現在の倍にまで増額し、そのために国民に対する増税や他の経費の削減、国債を発行することが議論されています。憲法を無視して大軍拡を推し進め、その負担を国民に押しつけようとしており、絶対に認められるものではありません。

 岸田首相などは、ロシアによるウクライナ侵略や台湾問題を口実に軍拡を正当化しようとしています。しかし、軍事に軍事で対抗することは、この東アジア地域に際限のない軍拡競争を招く最も危険な道です。台湾有事は日本有事などと言いますが、一たび戦争が起これば、犠牲になるのは沖縄県民であり、日本国民です。今必要なのは、争い事を絶対に戦争にしないことです。そのためにも、憲法九条を生かした徹底した外交努力こそ政治に求められていると繰り返し強調して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 本日は、緊急事態条項について、現時点で表明できる具体案、その他の論点についての考え方を申し述べたいと思います。

 これまでの議論を聞いている限り、衆議院議員の任期延長については、早急に条文案を取りまとめられるのではないかと思います。また、そうすべきです。対象を衆議院議員に限るのは、参議院議員は半数改選であるため、議院が機能不全に陥る想定をする必要がないため、対象外としています。

 まず、緊急事態の範囲については、おおむね皆さんと一緒でありまして、大規模な自然災害、感染症の大規模な蔓延、内乱等による社会秩序の混乱、その他これらに相当する事態を類型とすることに異論は少ないというふうに思います。

 任期延長の要件については、選挙の一体性が害されるほど総選挙の適正な実施が長期にわたり困難であることが明らかな場合とすべきです。

 任期延長を決定する手続としては、議員自らによるお手盛りの防止のため、先に内閣の発議を受けて、衆参の出席議員の三分の二以上の多数の議決で決めることが望ましいと考えます。

 延期の期間については、総選挙を適正に実施できると認めるまでの間としますが、一年間を一応の節目としつつ、同じ手続により再延長できるとするのが適当と考えます。

 また、緊急事態の収束にめどがついて総選挙が実施できると判断をされた場合には、国会の過半数の議決により延長された任期の終了日を定めることも規定すべきだと思います。

 ただ、仮に緊急事態が解散又は議員の任期満了の後に発生した場合は、延長といっても、延長する議員の任期がそもそもなくなっているという問題が生じます。これについては、今申し上げた議決が行われた限りにおいて、議員の任期は終了していないとみなすことにしてはどうかと提案します。

 なお、この場合、憲法第五十四条第一項、すなわち、選挙期日は解散の日から四十日以内は適用しないと併せて手当てしなければなりません。

 もう一つ、議員の任期延長の濫用を防止するために、先ほど玉木さんからもありましたが、最高裁判所に一定の役割を担わせることが望ましいと考えます。

 具体的には、衆参いずれかの議院における総議員の四分の一以上による申立てがあったときは、任期延長の議決が要件に適合するかしないかの決定をするというものです。適合しないと判断された場合には、最高裁判所は国会に対し任期を終了するよう勧告するということが、三権分立の中でのぎりぎりの線だと思います。

 以上、議員の任期延長について具体案を申し述べましたが、大前提として、公職選挙法上の繰延べ投票や参議院の緊急集会では対応できない場合に限って任期延長を活用することを想定しています。

 次に、緊急事態における行政への権限集中について意見を申し述べます。

 これは、主に立法府と行政府との間の権限配分の在り方を緊急時に限って変更するという議論です。

 具体的には、国会の法律制定、予算等の議決などの権限について、緊急時には内閣が国会の代わりに行使することにしてはどうかというものです。特に緊急政令については、現在は個別具体的な措置が個別法に定められているのみですが、より包括的、一般的な緊急政令規定を憲法に設けるべきとの意見が出されています。

 これまでのオンライン国会や議員の任期延長は国会機能の維持のためのものでしたが、権限集中については、同じ緊急事態条項といっても、むしろ国会機能が維持できない事態を想定するものです。危機管理上、こうした想定は必要かもしれませんが、おのずと議論の次元が異なってきます。

 以上のことを踏まえると、やはり、権限集中、そしてこれを前提とする人権制限、財政支出については、もう少し検討を深める必要があるのではないでしょうか。

 検討の手順としては、まずは現行の緊急事態関連の法律を一通り洗い出すことを御提案申し上げます。

 具体的には、一つは、本来想定されるべき緊急事態は現行の法律で網羅できているのかどうか。二つ目には、もし網羅できていないものがあるならば、これを補うための手当ては、まずは法律でできるのかどうか。この二点を、専門家の意見なども参考にした上で、丁寧に議論をすべきだと考えます。

 緊急事態条項というのは、ややもすれば、相対立する二つの要請を均衡させなければなりません。一つは、危機管理の性質上、国民の生命財産、権利を守るために、逆説的に権力を集中させなければいけないという現実の要請。もう一つは、これまた逆説的でありますが、だからこそ立憲主義の観点からこれを最大限制限しなければいけないという理念的な要請。この二つの要請、二つの逆説をてんびんにかけながら均衡点を探るのには、もう少し時間がかかると考えます。

 したがって、審議の優先順位としては、まずは国会議員の任期延長並びにこれを発動する際の緊急事態の要件と手続等について早く結論を得る、その上で、権限集中については、憲法の専門家等の意見も聴取した上で、もう少し検討を加えるべきかと思います。

 以上です。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 発言の機会をありがとうございます。

 本審査会が定例的に開催されていることを生かして、大半の会派がほぼ合意できた事項をまとめていくべきだと考えております。その中でも優先順位が高いのは、国民の関心が高く、かつ、諸外国から圧倒的に遅れている想定外の事態への備えであります。

 まず、議会の機能確保ということで、憲法で定められた国会議員の任期の特例については、大半の会派が、今の発表にもあるとおり、方向性としてはほぼ合意ができていると感じます。早急にまとめに入るべきです。その内容については新藤幹事あるいは玉木幹事、三木委員、北神委員などの発言に譲りたいと思いますが、私が一言ここで申し上げたいのは、司法の関与についてであります。

 国の存立事態である究極の限界事例において、民主的基盤がない裁判所がどこまで関わることが正当とされるのかということは、よくよく慎重に考えなければいけないと考えておりますし、また、憲法裁判所を設けることにつきましては、国権の最高機関は国会であると定めた憲法四十一条との関係でも慎重に議論をする必要があると私は考えております。

 なお、解散後の緊急事態の発生の場合についてどのようにするかということも、一つの論点になっていたかと思います。これにつきましては、解散そのものを失効させることによって議員任期が復活させられるという考えが妥当だと考えますが、北神委員もおっしゃっていたように、解散直後の、他国の例に倣って、次の議会期が来るまでは議員任期は継続するというようにしている事例に倣うということも想定されるのかなというように考えております。

 いずれにいたしましても、緊急事態条項については、世界で設けている憲法が実に九三・二%に上っております。第二次世界大戦への反省から、終戦直後はそのような国は六割弱でありましたけれども、濫用への歯止めについての知見も広がっていて、近年大きく伸びております。

 今年十月二十一日に、来日中のフィンランド憲法委員会一行が当憲法審査会幹事たちと意見交換をいたしました。その際、同国がこれまで四回憲法改正を行っており、三回目の二〇一一年には、緊急事態時における基本権の保障に関する規定の見直しを行って、立法権の政令への委任、対象事態の拡大などについて規定したということを学びました。ちなみに、意見交換の際、なぜ日本では憲法改正が行われないのかという素朴な質問がなされたことについても付言をさせていただきたいと思います。

 そして、やはり、必要性が高い項目といたしましては、一票の格差の問題であります。

 今年の参議院選挙についての高裁判決なんですけれども、憲法判断が割れています。昨日出された広島高裁を含め合憲判決が六件、違憲状態とするものが五件、違憲とするものが一件であります。最高裁の判断が近々に出ると予想されますけれども、その結論いかんにかかわらず、公職選挙法を改正して人口偏在の後追いをこれからも続けるのか、それとも、憲法において新しい考え方を示すのか。この件について参議院での検討が進んでおりますけれども、憲法改正は両院での発議が必要でありますから、本院でもいずれ俎上にのせることが極めて重要かつ喫緊の課題だというように考えております。

 最後に、国民投票法の改正について申し上げたいと思います。

 先ほど国民投票法の議論の重要性についてお話がありましたけれども、今国会でも新藤筆頭幹事から、今後の国民投票法の議論の方向性については、投票環境整備についてのいわゆる三項目案の速やかな審査を求めるとともに、放送CMについては、広告の出し手である政党側の自主的取組と、広報協議会による賛否平等の広報活動について具体的に詰めていく、また、ネットCMその他のネット情報と国民投票の問題についても、ネット事業者などの意見を聞きながら議論するとの具体的な発言があったところでございます。

 そもそも、憲法審査会は、国会法百二条の六によりまして、日本国憲法に関する調査、改正原案の審査と国民投票に関する法律案の審査の二つが大きな所掌と明記をされております。もちろん、いずれも重要なテーマでありまして、その議論の方法については幹事懇談会で整理するべきだと考えます。ただし、これまで述べてきた憲法本体の議論の成熟度や緊急性に鑑みれば、憲法本体の議論と国民投票法の議論の双方を同時並行的に進めていく必要があると表明して、私の意見とさせていただきます。

谷田川委員 立憲民主党の谷田川元でございます。

 まず、国葬について意見を述べます。

 昭和五十年に佐藤栄作元総理が逝去された際、当時の吉国内閣法制局長官が三木武夫総理に、国葬について、法制度がない、三権の了承が必要との見解を示しました。このような事例があったにもかかわらず、岸田総理は、立法、司法の承認を経ずに国葬を決めてしまいました。

 二週間前の当審査会で我が党の米山委員が指摘したように、国民に対して弔意の強制になり得る場合は、憲法十九条に定める思想、良心の自由との関係で問題になります。政府は、今般の国葬儀は国民に弔意を強制するものではないので憲法違反ではないとの見解でしょうが、憲法四十一条の国会は国権の最高機関であるとの規定を無視して内閣の独断で決定したことと併せ、国葬の権威を失墜させたと言わざるを得ません。

 岸田総理は、国葬にするかどうかは時の内閣が総合的に判断すればよいと繰り返していますが、これだと、時の政府が税金を使って国葬を政治的に利用する余地が生まれ、今回の国葬のように、国民の間に分断が生まれ、故人を追悼するための静かな環境が破壊されてしまいます。どうしても国葬を実施したいのであれば、多くの国民が納得する形で基準を作り、憲法上の課題を整理し、法的整備を行うべきです。

 私は、国葬は天皇の地位にあった方のみを対象とすべきと考えます。というのも、憲法第一条に、天皇は日本国民統合の象徴との規定があるからです。天皇の地位にあられた方であれば、国葬が国民統合を再確認する機会となり、国民の間の分断が生じることはありません。

 安倍元総理以前の総理大臣経験者は、内閣と政党の合同葬が慣例として続いてきました。それを更に格上げするとしたら、国民葬とすべきではないでしょうか。

 佐藤元総理が逝去されたとき、内閣、自民党、国民有志による葬儀、すなわち国民葬を提案したのは、当時の中曽根康弘自民党幹事長でした。

 国論を二分するような政治決断を時の総理はせざるを得ない以上、国民の誰もが支持できる政治家の出現はほとんど期待できません。そして、国葬に次ぐ格式として国民葬を設け、その対象は、総理大臣就任時から二度以上の衆議院選挙を経て、三度以上総理に就任した者とするのはいかがでしょうか。戦後、これに当てはまるのは、吉田茂、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三の六氏だけです。

 大相撲では、大関が二場所連続優勝すると横綱になります。我が国の憲政史上における番付を考えた場合、総理大臣になれば大関とみなし、二度続けて総選挙を勝利すれば、まさに横綱です。いわば横綱級の総理大臣経験者を国民葬の対象とすることを提案します。

 次に、旧統一教会問題について述べます。

 憲法二十条一項前段は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」と規定しています。この信教の自由の保障が、旧統一教会への解散命令請求の足かせになっています。しかし、憲法十二条には、基本的人権は「濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と規定し、また、十三条には「公共の福祉に反しない限り、」との条件が記されています。

 そして、オウム真理教に対する一九九六年の最高裁判決で、宗教法人を解散させることは信教の自由の直接的な侵害には当たらないとの判例も示されています。

 そのオウム真理教によって坂本堤弁護士一家が殺害されてから、十一月四日で三十三年がたちました。坂本弁護士も、当時、統一教会をめぐる問題に対応していた弁護団のメンバーだったそうです。その坂本弁護士が残したとても印象的な言葉があります。信教の自由はあっても、人を不幸にする自由は許されない。まさにこの言葉に尽きると思います。

 信教の自由と宗教法人としての特権が失われることは切り分けて議論し、霊感商法などの違法行為が反復継続して行われてきたことは明らかなのですから、旧統一教会への解散請求を政府として速やかに行うべきです。

 なお、前回の当審査会において、我が党の階委員が要請した二点、すなわち、霊感商法などの損害回復のために、家族等の第三者が被害の原因となった行為の取消権を行使することは、憲法二十九条一項が保障する被害者本人の財産権を侵害するのかという論点につき、当審査会の最優先の調査事項とすること、そして、与野党問わず、全議員について旧統一教会との政策協定への署名の調査を行うことを、改めて森会長に要請いたします。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 日本の憲法四十一条には、私たちの国会というのは、唯一の立法機関、国権の最高機関と位置づけをされております。議会制民主主義の一番の基本になる条項でございます。どのような緊急事態が生じようとも国会機能をきちんと維持をしていく、必要な立法また予算措置を国会がきちんと速やかに議決をしていくということは、国会の、議会の一番の大きな役割であり、責任だというふうに思います。

 ウクライナの戦争が始まりまして、もう八か月以上たつわけでございますけれども、ウクライナでは、この戦争が始まって以降も、今日に至るまで、ウクライナの議会、最高会議というのはきちんと存在し、機能しております。必要な予算を通し、必要な法律をきちんと作っていく、そういう役割をウクライナでは今も実行されております。

 先月、森会長がウクライナ議連の会長をされていらっしゃいますけれども、私も副会長として、議連のメンバーでウクライナの国会議員の代表団と懇談をさせていただきました。今のウクライナの実情、何を求めているのか、切々たるお声を頂戴したわけでございます。あのような戦争があっても議会はきちんと機能している、それが極めて私は重要であるというふうに思いました。

 その上で申し上げたいと思うんですけれども、さきの通常国会でもいろいろな議論がなされましたけれども、最もこの憲法審査会で議論が集中したのは緊急事態条項に関わる問題であったと思います。その中でも、そういう緊急時における国会議員の任期の延長の問題、これについて、相当各会派から前向きな議論がなされていた、また具体的な指摘がなされていたと思います。

 今日もこの審査会で各会派から意見表明がございましたが、新藤先生始め多くの皆様が、緊急事態条項、なかんずく任期延長問題について、行うべしという立場の下で、様々な論点について御指摘があったと思います。私もこの憲法審査会で、通常国会、四月七日の日に、緊急時における国会議員の任期の延長問題について、改正内容の基本的な考え方をかなり詳細に述べさせていただいたつもりでございます。今日も同様のお話がたくさん出ておりました。

 私は、緊急事態条項の中でも、特に議員任期延長問題については、多くの会派の皆様がほぼ共通の土俵に立って議論がなされているなというふうに今日も改めて痛感をしたところでございまして、さきの通常国会やそして今日の御議論も踏まえまして、緊急事態条項の中の国会議員の任期延長の問題について、是非、具体的に論点を整理をした方がいいというふうに思っています。かなり共通していますし、また違うところもございますし、是非、具体的に論点整理をお願いしたい。この整理をする中で、私は、だんだん改正原案のたたき台となる条項案についても出てくるのではないかというふうに思っております。

 会長に是非お願いしたいのは、衆議院の法制局の皆さんに、大変御苦労いただきますけれども、かなり具体的な論点がもう出尽くしているというふうに私は思いますので、一度、緊急事態条項、そして国会議員の任期延長問題について、衆議院法制局の方で論点整理を是非していただいて、この審査会若しくは幹事会等で御報告をいただければ大変ありがたいというふうに思っているところでございます。このテーマに関しては、是非、具体的に条項案のたたき台ということも念頭に置いた議論を進めさせていただきたいと思います。

 以上です。

森会長 ただいまの件につきましては、幹事会で引き続き協議をいたします。

前川委員 日本維新の会、前川清成です。

 国会議員の任期に関しては、衆議院は第四十五条で四年、参議院は第四十六条で六年と明記されています。したがって、どなたであっても、またどのような事情があったとしても、選挙から衆議院議員は四年、参議院議員は六年が過ぎたなら一斉にその地位を失いますが、もしも大規模災害が発生して物理的にも選挙を実施できないとき、国会議員はいなくなります。

 二〇一一年三月十一日、東日本大震災が発災しました。このとき、統一地方選挙が間近に迫っていましたが、地方議員の任期は地方自治法第九十三条で定められていますので、地方自治法を改正することで対応することができました。

 しかし、国会議員の任期については憲法に定められています。それならば、非常事態が発生し選挙を実施できないとき、憲法を改正して国会議員の任期を延長することができるでしょうか。いいえ、選挙さえ実施できないにもかかわらず、憲法改正を行うことなど不可能です。

 このように、国会議員の任期満了時に非常事態が発生した場合について、現行憲法では対応できないことは明らかです。

 そこで、日本維新の会は、緊急事態条項に関しても改正原案をお示しをしています。

 緊急事態条項という名前はたけだけしくて、そのときの為政者が、非常事態を口実に国会や裁判所からその権限を奪い、権力を独占してしまうのではないかという緊張感を抱かざるを得ません。民主主義、そして国民の基本的人権という政治が守るべき最も大切な価値に照らせば、この緊張感は重要です。

 そこで、維新案では、内閣が緊急事態宣言を発出することができる場合を外部からの武力攻撃や大規模な自然災害など四類型に限定し、かつ、国会の事後承認を要することとしています。加えて、緊急事態宣言下では憲法改正の発議などができないこと、緊急事態宣言下でも基本的人権は最大限保障されなければならないことを定めています。

 さらに、冒頭に例として掲げた国会議員の任期については、ただ緊急事態宣言が発出されているだけでは延長することができず、選挙の適正な実施が困難であると認める特別な事情と衆参出席議員の三分の二以上の賛成を要件に加えています。

 また、事後チェックとして、維新は憲法裁判所の設置を提案していますが、国会議員の任期延長に関しても憲法裁判所の審査権が及ぶこととしています。

 このように、幾重にも慎重な手続を踏めば、大規模災害などを口実に独裁がスタートしてしまう危惧は解消します。

 ところで、私が初めて国会に参りましたのは、二〇〇四年七月の参議院選挙です。当時も、そして参議院にも憲法調査会があり、本日のように各党が意見を述べ合っておりました。その後、国民投票法の制定や政権交代、当時の安倍総理による憲法九十六条先行改正論など、憲法をめぐっても様々なことが起こりましたが、この憲法審査会では、十八年前と同じように各党が言い合うだけで、何も形になっていないのではないでしょうか。

 やがて八十歳を迎える現行憲法です。憲法制定当時と今とでは、国際環境も、私たちの社会や暮らしも大きく変わりました。したがって、今のままの憲法でいいのか、あるいは足りない点はあるのか、改めるべき点はないのか、緊急事態条項に関しても、そのほかの論点に関しても、一つずつ結論を出さなければ、百年河清を待っているかのようです。

 私たち国会議員が背負う憲法尊重擁護義務は、憲法の字句を一字一句変えないことではありません。憲法というルールに従って政治が営まれることを法の支配といい、そして、その法の支配を守り続けることが憲法尊重擁護義務であり、立憲主義です。しかし、先ほど国会議員の任期を例にして説明したとおり、大規模災害などが発災したとき、今のままの憲法では法の支配が蹉跌をします。

 つきましては、森会長と各党幹事各位にお願いがあります。是非、論点ごとに一つずつ結論を示す審査会運営を、後戻りしない審査会運営を切にお願い申し上げて、私からの意見陳述といたします。

森会長 はい、承りました。

齋藤(健)委員 発言の機会をありがとうございます。自由民主党の齋藤健です。

 私は、緊急事態における国会議員の任期の問題に絞って、急を要する問題として提起をしたいと思います。

 その前に、先ほど、緊急事態条項について論点整理をすべしという御意見が北側幹事からございました。私は、この北側幹事の意見に全面的に賛同をしたいと思います。

 私は、昨年十月、衆議院の任期満了が近づく中、本当に肝を冷やしました。任期満了時にコロナが感染深刻化して、全国津々浦々で選挙が行えなくなるという事態を誰もが否定できなかったからであります。

 御承知のとおり、憲法第四十五条では衆議院の任期は四年とだけ規定されており、もし任期満了時にコロナ感染で選挙ができなくなれば、国民の生命財産を脅かされているこの大事なときに、衆議院議員がいなくなります。

 では、どこまで総選挙をそういった場合延ばせるのかというと、現行の公職選挙法には、第三十一条に、衆議院議員の任期満了が国会開会中や国会閉会の日から二十三日以内にかかる場合は、総選挙は国会閉会の日から二十四日以後三十日以内に行うとの規定があります。この規定に従い、できるだけ総選挙を遅らせようとすれば、国会閉会の日に任期満了となるように段取ればいいわけであります。そうすれば、任期満了から二十四日以後三十日以内に総選挙となります。

 昨年のケースで考えてみますと、解散がない場合の任期満了日は令和三年十月二十一日でした。任期満了日に国会が閉会したとしたら、十一月二十日以前に総選挙ということになります。

 ところが、相手はウイルスです。この間に新規陽性者が急増し、全国津々浦々で選挙を行うことができない状態になった場合はどうするんでしょうか。仮にそのような状態になった場合は、恐らく、急ぎ公職選挙法改正など法的対応を行うことになるのでしょうが、既に衆議院議員は存在していません。

 したがって、参議院の緊急集会で行うということになりますが、実は、衆議院が解散した場合については、憲法第五十四条の規定により参議院の緊急集会ができることになっていますが、任期満了の場合について参議院の緊急集会ができるという規定は、現行憲法にはありません。

 任期満了の際にも解散した場合の規定を準用すればいいという意見もあろうかと思いますが、しかし、これほど重大な事項について、安易な解釈でやり過ごすことは許されないと思います。やはり、憲法上しっかりと規定しておくことは必要ではないでしょうか。

 さらに、仮に準用したとしても、憲法第五十四条では、「緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」とされています。衆参のねじれというものを現実に経験してきた今、国民の生命財産が脅かされている状態において行われた法的措置などが後にひっくり返される可能性があるというような、法的に不安定な状態を許して本当にいいのでしょうか。

 さらに、本年四月七日の本審査会において、北側幹事が、衆議院を解散した後に事態が悪化して、当面選挙ができなくなるような場合の対応について指摘をされました。このケースも、衆議院議員不在での対応が迫られることになります。北側幹事は、この場合、解散そのものが効力を失い、衆議院議員の身分が回復すると考えられないかという貴重な指摘をされておられますが、いずれにしても、私は憲法上の対応は必至だと思います。

 私が申し上げたいのは、こういった事態が現実に昨年の総選挙の際に起こり得たということであります。

 本日、新藤幹事から、緊急事態条項の必要性と、その内容のエッセンスについて重要な御発言がありました。少なくとも緊急事態条項については、早急にこの審査会において、新藤幹事の提案をたたき台の一つとして議論をして、次の衆議院の任期満了までに結論を出し、いざというときに、国会、いや、この憲法審査会は何をやっていたんだとならないようにしておくことが、この審査会のメンバー全員の国民に対する責務ではないかということを私は皆さんに強く訴えたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 御発言の機会をありがとうございます。

 私も緊急事態条項ですが、ずっとこの間やってまいりましたけれども、コンセンサスとしては、いかなる場合にも国会を機能させ、必要な予算や法律を成立させる、これは我々も含めて合意がなされていると思います。

 オンラインにより本会議の審議、採決に参加できる制度、この審査会で我々も一緒になって意見を取りまとめさせていただきましたが、これもこうした前提に基づいてのものであります。現在、議院運営委員会で検討されていますが、速やかな結論を求めます。

 そして、日本国憲法制定時を見ると、当時の金森国務大臣は、緊急時の対応として、臨時国会、衆議院が解散している場合は参議院の緊急集会で必要な措置を講ずる、また、平素から濫用のおそれがない形で法令を整備しておくんだ、こういうふうに述べています。日本国憲法はあえて緊急事態条項を設けなかった、今の形にしたということであります。

 現在、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症、それぞれ基本法制があって、濫用のおそれなく、緊急事態等の認定も行われる仕組みができているということであります。さらに、東日本大震災のときのようなことがあれば、国会を動かして予算、法案を成立させるということになります。

 一方、自民党の憲法改正草案では、政府が自ら緊急事態を認定すれば、法律によらず緊急政令で国民の権利を制限し、義務を課すことができ、また、国会の議決なく予算を使える、こういうふうになっていますが、政府が自らの判断で、法律によらず基本的人権までも制約できることになります。

 こうした独裁的と言っていい権限を政府に付与する改正は、憲法改正の限界を超えており、断じて認められないと思います。あくまで、現行憲法が想定しているように、国会を機能させて、法案、予算を民主的統制の下で成立させるべきであります。北側幹事も、先々週ですか、緊急政令については不要という趣旨の御発言をされているというふうに理解をしております。

 緊急事態について憲法議論をするのであれば、次の点も必要だと思うんです。

 我々は、臨時国会の召集要求から二十日以内に召集しなければならないと規定した国会法の改正案を衆議院に提出しています。現在、議運で議論が行われつつありますが、恣意的に国会を開催しないことを阻止するために、速やかに成立を求めていきます。

 さらに、政府にこれを遵守させるためには、憲法にも同様の規定をするということが考えられるのではないでしょうか。

 また、緊急事態の際に、国難突破解散というように党利党略の解散が行われないよう、解散権の制約を憲法に規定することも検討する必要があるのではないでしょうか。これは、議会を動かすという意味で私は必要だと思います。

 無用な解散をせず、閉会中であれば臨時国会を召集し、選挙期間中であれば緊急集会を招集する。さらに、オンライン出席を求める。これらにより、緊急時でも国会を機能させることができます。

 選挙については、繰延べ投票制度を活用しつつ、適切なタイミングで行っていく。さらに、オンライン投票やオンライン選挙運動を可能とすればベストでありますが、この点もしっかり求めていきたいと思います。

 以上により、憲法改正により緊急事態条項を設けることは基本的には必要ないと考えますが、なお議論を深めなければならない点はあります。

 先ほど来出ていますが、緊急集会については、任期満了の場合でも招集できるとする説が有力ではありますが、条文上は、憲法五十四条二項は解散時に限っています。任期満了時に可能かどうか、有識者の意見を伺うことも必要だと思います。

 また、あくまで緊急集会は暫定的、一時的な制度である、こういう指摘もありますが、これまで公式見解はありません、議論も行われていません。まず、しっかりこれを議論した上で判断する必要があると思っています。

 その上で、例えば、戦争等で数年にわたり選挙が行われない、長期間衆議院議員が不在となるような事態をどう考えるかという問題については、私も考えなければならないと思っています。私見ですが、そうした、いわば究極の事態を念頭に議員任期の延長を検討する余地はあると思っています。ドイツやイタリアでは、戦時に限り議員任期の延長を認めています。

 この議員任期の延長については、発動要件、期間を限定する必要がありますし、また、誰が判断するかという問題、これは前から申し上げていますが、あります。内閣では濫用のおそれがありますし、国会議員が自ら決めるということではお手盛りになります。以前、木村草太先生、数年前ですかね、ここに来ていただいてお話を伺ったときは、司法の関与が必要との見解を示されていました。

 そういう意味で、憲法裁判所等、司法の関与など、相当慎重な検討が必要であります。まだまだ論点はいっぱいあるんですね。集約するにはほど遠いと私は思います。

 最後に、附則四条について、毎回申し上げていますが、CM規制等、公平公正を確保するための措置を講じなければ、附則四条の性格上、憲法改正発議はできないということも申し上げまして、私の発言とさせていただきます。

 以上です。

玉木委員 改めて緊急事態条項、とりわけ議員任期の延長というものは、今日コンセンサスがまさに得られているのは、いついかなるときも立法府あるいは行政監視機能を国会がちゃんと果たすべきだということについては、これはもう全ての私は委員の合意だというふうに思います。

 そのことが崩れるときに、あるいは崩れるおそれがあるときにどうするかということをきちんとあらかじめ定めておくことは、私も齋藤委員と全く同感なんですが、去年の衆議院選挙そして今年の参議院選挙の満期を迎えた際に、大規模感染拡大あるいは有事が起こった際にどうするかということについては、ここにいらっしゃる先生方も肝を冷やした人が多いと思います。

 どういうときであっても我が国の立法機能そして行政監視機能をきちんと維持するためにどうするかということを、もはや考えなければならない時期に来ているし、ではそれを具体的にどうするかということを、まさにこの憲法審査会で、オープンの場でしっかり議論すればいいと思いますので、北側幹事がおっしゃったような論点整理をしっかりして、それを一つ一つやっていく。

 ただ、もう論点もある程度限られていて、先ほど奥野委員から発言があった、いわゆる繰延べ投票をどうするのか、できるのかどうかということ、そして、緊急集会についての、もう何度も議論している解釈の確定。こういったことをまさにここでやればいいと思います。それをやれば前に進めますから。

 国会の機能が失われることこそ、いざというときに行政の暴走を許してしまうということになるわけですから、それはまさに立憲主義を維持する観点から、具体的にもう議論を詰めていけばいいと思います。

 その上で、先ほど柴山先生から質問があったのでお答えしますと、司法の関与をどうするのかが大きなテーマだと思います。

 我々の案も、明確な、宣言を出したときの解除の権限までを最高裁に持たすことは考えておらず、あくまで勧告にとどめて、それをどうするかどうかは、最終的には国会なり発令した内閣の判断ということにしております。

 ただ、それを促す意味で、司法における一定の関与、それを勧告にとどめた形で行ってはどうかという提案をしておりますので、こういった司法の関与の在り方についても是非具体的に詰めてまいりたいというふうに思っておりますので、いずれにしても、是非この論点を整理した上で前向きな議論をこの場で行っていきたいというふうに思っております。

 最後に、奥野委員からありましたけれども、立憲民主党としては、例えば緊急集会の在り方については、これで対応できるのかどうか、つまり、条文で定めている解散時に加えて任期満了も含むということについては、党としてどのような考えなのかということについて、奥野さんは非常に慎重な立場ですけれども、ここは何か決まったものがあるのかないのか、明確に反対なのかどうか、もし分かれば教えていただきたいと思います。

奥野(総)委員 再三申し上げてきていますが、多くの学説も、解散時以外には緊急集会が開ける、招集できるというのが定説になっていますから、緊急集会の活用というのが基本的なところだと思いますし、ただ、内閣法制局等はそれを認めていないというので、我々としては一貫してそう主張しています。

玉木委員 定説にはなっていないと思いますし、私が紹介したように、平成二十三年の政府の答弁では、明確にそれは否定していますので。

 ですから、関係の学者の皆さんと、そして内閣法制局等にも来ていただいて、その論点をしっかり整理をしていただくことを求めたいと思いますので、会長、よろしくお願いいたします。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十分散会


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