衆議院

メインへスキップ



第4号 令和4年11月17日(木曜日)

会議録本文へ
令和四年十一月十七日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤信太郎君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 山下 貴司君 幹事 階   猛君

   幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    越智 隆雄君

      勝目  康君    神田 憲次君

      熊田 裕通君    小林 鷹之君

      下村 博文君    辻  清人君

      土田  慎君    中西 健治君

      西野 太亮君    船田  元君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    松本 剛明君

      務台 俊介君    山本 有二君

      渡辺 孝一君    新垣 邦男君

      大島  敦君    奥野総一郎君

      城井  崇君    近藤 昭一君

      篠原  孝君    本庄 知史君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      岩谷 良平君    前川 清成君

      三木 圭恵君    金城 泰邦君

      中野 洋昌君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十一日

 辞任         補欠選任

  齋藤  健君     熊田 裕通君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     勝目  康君

  國場幸之助君     西野 太亮君

  田野瀬太道君     土田  慎君

  國重  徹君     中野 洋昌君

  吉田 宣弘君     金城 泰邦君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     小林 鷹之君

  土田  慎君     田野瀬太道君

  西野 太亮君     國場幸之助君

  金城 泰邦君     吉田 宣弘君

  中野 洋昌君     國重  徹君

    ―――――――――――――

十一月十七日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八号)

 憲法を生かし、生命・暮らしを守ることに関する請願(牧義夫君紹介)(第二二号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝です。

 本日は、先週に引き続きまして、議員任期延長に関する論点、それに、緊急事態条項全般に関する個別論点について、私の考えを述べたいと思います。

 まず、議員任期を延長する規定の必要性につきまして、改めて提案をいたします。

 先週の審査会でも申し上げましたが、衆議院の解散中に緊急事態が発生した場合、現行憲法五十四条二項では、参議院の緊急集会で対応することとされています。しかし、日本国憲法が採用する二院制国会は、衆参両院がそろって活動することを原則としており、参議院の緊急集会はあくまでも衆議院の解散中の空白を埋める二院制の例外として位置づけられているもので、その適用範囲は限定されたものと考えるべきであります。

 したがって、発生した緊急事態が相当程度長期間継続することが予想されるような場合には、その間の法律の制定や行政監視機能を全て参議院の緊急集会に委ねておくことは想定を超えるものであり、あらゆる事態に備えるための議員任期延長の規定は早急に憲法に盛り込むべきと考えます。

 その際、更に検討が必要なこととして、解散後の前衆議院議員の身分の復活について論議を提起したいと思います。

 日本国憲法においては、衆議院が解散すると議員はその身分を失うこととされています。解散後に緊急事態が発生した場合、任期延長の対象となる議員が存在しないという問題に対処するためにも、解散により前職となった衆議院議員の身分をどのように取り扱うべきなのか。

 諸外国においては、選挙で新たな議員が選ばれるまで従前の議員の身分や職務執行を保障する形で議会機能を維持することとしている国も見受けられます。そのような制度を持たない我が国において、選挙ができない緊急事態にどのようにして議会機能を維持、継続させるか、早急な検討が必要と考えております。

 考えられる方策としては、議員身分の復活を規定する、あるいは、解散しても、諸外国のように、次の選挙で新たな議員が選ばれるまでの間は職務を継続する制度を設けることなどがあります。

 いずれにしても、民主主義の根幹である議員の身分の取扱いという極めて重要な論点であり、各会派から是非御意見をお聞かせいただきたいと思います。

 次に、議員任期延長による国会機能維持に関連する幾つかの措置について提案をいたします。

 まず、緊急事態においては、国会が閉会中の場合には直ちに召集し、開会中の場合には閉会を禁止することといたしまして、国会の開会状態を維持する規定を設けてはいかがかと考えております。さらに、緊急事態においては、内閣が衆議院を解散することを禁止するとともに、衆議院の内閣不信任決議案の議決を禁止することも必要になってくると思います。

 議員任期の延長と同様に、国会機能維持のための規定として整備が必要と思いますが、各党の御意見を是非お寄せいただきたいと思います。

 続きまして、議員任期延長以外の緊急事態条項全般にわたる事項について提案をいたします。

 一つ目は、緊急政令と緊急財政処分についてであります。

 議員任期を延長するなどとして最大限国会機能の維持を追求したとしても、どうしても国会を開けず、法律や予算の議決ができないような状態が起こることはあり得るわけです。

 そのような場合に備えて、内閣に、一時的、暫定的ではあるものの、緊急政令と緊急財政処分を行うことができる権限を付与する規定を設けてはと提案をいたします。いかなる事態においても国民の生命、自由及び財産を守るための機能を確保しておくことは、極めて重要であります。

 そもそも、昭和二十一年の日本国憲法制定時に、GHQに対し日本政府が緊急政令と緊急財政処分の規定を提案をいたしましたのは、明治憲法に同様の制度があり、関東大震災の際には実際に使われたからであります。この提案はGHQによって拒否され、代わりに参議院の緊急集会が規定されましたが、既に指摘いたしましたように、あくまで衆議院解散中の例外的な制度であり、そもそも、参議院の緊急集会も含め、緊急事態の発生により国会が機能できない事態に陥った際には、対処するすべがなくなってしまいます。

 こうした事態への対処は現行憲法では想定されておらず、全く規定がないのであります。また、法令の制定、執行とそれに伴う財政的裏づけは表裏一体であり、予算議決のいとまがない場合を想定すれば、緊急財政処分の必要性も、緊急政令の規定と同様だと思います。

 もちろん、緊急政令も緊急財政処分も一時的なものであり、国会が機能するようになれば直ちに国会の承認を必要とし、承認が得られないときは効力を失うこととして、その民主的統制を確保いたします。

 続きまして、緊急事態においても制約してはならない人権に関する規定を憲法上明記してはどうかと提案をいたします。

 ウクライナの憲法では、個人の尊重、拷問禁止、法の下の平等、裁判を受ける権利、国家賠償請求権など、十八項目の制約してはならない人権規定が定められています。

 基本的人権の保障は、民主国家の根幹であり、いかなる事態においても最大限確保されるべきであることは言うまでもありません。そして、仮に人権制限をせざるを得ない事態となっても、比例原則を守りつつ、必要最小限度のものでなければならないとする基本的な考えは、明確にしておくべきと考えます。

 最後に、緊急事態が発生した際の憲法改正の禁止規定、これを設けておくかという論点もあります。

 フランス憲法を始めとして多くの国の憲法に見られる規定ですが、あえて明文規定を設けておくかどうか、各会派の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

 以上、先週に続きまして、議員任期延長に関する論点並びに緊急事態条項全般に関する個別論点について、私の考えを提案させていただきました。

 本日の審査会におきましても、こうした論点について熱心な議論が展開され、一定の方向性を明確にできればと願っております。

 なお、先ほどの幹事会において、来週の定例日である十一月二十四日に憲法審査会を開催し、更に討議を進めることを提案をいたしました。

 幹事会メンバーを始め委員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げまして、私の発言といたします。

森会長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。

 今日は、私がこの審査会で優先的に議論を深めるべきだと思う四項目を提起をし、その論点を整理したいというふうに思います。

 まず第一は、国民投票法、そして新しい情報に関する権利の整理をしていくということです。

 私は、改めて、国民投票法の見直し議論をこの憲法審査会で加速させることを提案します。

 現状の法制では、公正な投票は保障されていません。資金力でキャンペーンの差が出てくる可能性もあります。また、議論の中身には関係なく、一定のイメージだけの刷り込みが行われたり、フェイクな情報で混乱させられたり、事実がかき消されるなど、本人が意識しない方向に人の心が誘導されたりすることがネット社会で加速をしています。AIにより識別されたターゲティング広告など、法制定当時のコマーシャルの枠を大きく超える影響が懸念されています。

 一方で、私は、国民投票にまつわるコマーシャル規制やネット規制は、国民投票だけにとどまるものではないと考えております。

 前回の憲法審査会で階議員が皆さんに説明をしたように、立憲民主党の憲法調査会の議論では、情報化社会の現状と憲法上の課題について、三つの類型に整理をしました。一つは自己情報コントロール権、そして情報アクセス権、また、情報環境権ということであります。

 国民投票法の議論を入口にして、この際、憲法本体の保障する人権規定の中に、新しい重要な課題として、情報権の議論を取り上げる必要があると考えています。情報化時代に侵害される国民の情報権をどのように規定し保障するかという観点から、この審査会で幅広く議論すべき課題だと思うのです。

 改めて提案します。この審査会では、国民投票法の議論を先行させ、同時に、憲法本体の情報権への議論に進めていってはどうでしょうか。

 第二の項目は、政権運営と国会ということであります。

 憲法の求める民主的な政権運営とは何か、その理想とかけ離れた運営が度々問題になってきています。

 憲法五十三条の国会召集義務を無視して、国会議論を避けることが重なっています。また、国会のチェックが及ばない過剰な予備費の計上などを強引に進めるなど、権力の濫用ではないでしょうか。さらに、解散が政権与党の都合のいいタイミングで発動され、権力を維持することが解散の主目的となってしまっている、これは憲法違反です。憲法の意図する民主主義が機能していません。

 このように、憲法の求める民主主義が機能しているとは決して言えない中、与党が提案する緊急事態条項には疑念を抱かざるを得ません。権力の集中と国会議員の任期延長の議論は、まず、この国の民主主義が正しく機能する環境をつくることが先であります。緊急事態に特化した議論ではなく、国会召集義務、予算権、国会の解散権などの議論とともに、緊急事態と政府の限界、国会のチェック機能、これを幅広く議論することが求められているというふうに思います。

 第三の論点は、一票の格差であります。

 これまで何回も違憲判決が出ております。人口減や大都市への人口集中に対して、選挙区割りの調整が政治的に遅れています。一方で、人口減少が地方の過疎化を極端に加速させている中、国会議員の数の地域間格差は拡大し、地方選出の国会議員は更に減少していく可能性があります。結果、議員は都市部に集中し、その意向が政策に強く反映されることになります。

 全て国民は法の下に平等であるの意味するところ、その解釈も含め、憲法の視点から間接民主主義の基本を問い直す必要があります。一票の格差は、合区問題に端を発して、参議院の憲法審査会や各党間の協議が進んでいます。是非、我々衆議院の審査会でも議論の俎上にのせることを提案をいたします。

 さらに、第四に、安全保障環境の変化に対する対応であります。

 政府において、安全保障三文書の見直し作業が進んでいます。現状、政府は、従来どおりの、専守防衛、個別的自衛権の行使のみを前提とした必要最小限の軍事力という枠組みを変えないという前提で見直すと言っていると理解をしています。しかし、本当にそうなのか。政府は、この間、枠組みは変わらずと言いながら、解釈の変更で集団的自衛権の行使を一部容認をしてきました。これは権力の暴走と言えるものであります。

 内閣法制局の解釈のみに頼って、国の安全保障政策を方向づけてよいのか。立法府の責任として、この憲法審査会でも安全保障三文書と憲法について、第三者的な立場で改めて議論する必要があると思います。更に重要なことは、かつて憲法違反を問われた安全保障関連法制の決着もいまだに至っていません。安全保障も審査会で議題とすべき喫緊のテーマだと考えております。

 ほかにも、地方分権に関する諸問題や、憲法裁判所を含む違憲立法審査、地球規模の課題である環境権など、幾つかのテーマがあると思います。

 そのような中で、今日は、時代が変化する中、現時点で議論を深めることが特に急がれると考える課題を抽出して論点を整理しました。今国会で指摘してきた政治と宗教、国葬という問題に加えて、国民投票と新しい情報権、政権運営と国会、一票の格差と間接民主主義、そして、安全保障です。幹事懇談会での更なるこの論点についての議論を希望をしていきたいというふうに思います。

 最後に、先ほど、来週の審査会の開催についてコメントがありました。各党それぞれ、基本的な考え方、予算をやっている間は、この審査会だけじゃなくて各委員会はやめて、そして予算に集中していくという、これまでの慣例に基づいたところでやるべきだという考え方もあります。そんなことを前提にして、筆頭間で話合いをしながら決めていきたいというふうに思っております。

 以上です。

森会長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 先週の本審査会において、緊急事態条項、とりわけ議員任期延長については多くの党派がその必要性については一致しており、具体的に論点整理を行い、議論していくべきとの発言が複数の委員からありました。日本維新の会もその考えに同意いたします。

 そこで、議員任期延長に関する各論点について、順次我が党の考えを述べつつ、各党派に御質問をさせていただきます。

 まず前提として、参議院の緊急集会との関係についてですが、我が党と自民党、公明党、国民民主党は、緊急集会の規定があっても議員任期延長は必要とのお考えだと認識しております。有志の会は、衆議院議員の任期延長が必要とのお立場かと思います。

 次に要件についてですが、緊急事態の実体的要件としては、我が党は、一、武力攻撃、二、内乱等、三、大規模自然災害、四、感染症の大規模蔓延という四事態に加えて、これらに匹敵する緊急事態も加えています。さらに、議員任期の延長については、選挙の適正な実施が困難であると認める特別の事情があるときとの要件を付加しています。

 自民党、公明党、有志の会も、文言に多少の差異はあるものの、四事態に加えて、その他の事態も認め、さらに、選挙の実施が困難なときとの要件を付加する方向性で我が党と一致していると認識しています。

 この点、国民民主党は、四事態を明示的に限定列挙すべきとのお立場かと理解していますが、その他の事態は認めないということでよろしいでしょうか。また、選挙実施の困難性の要件を付加するお考えがあるのかないのかも併せてお聞かせ願えればと思います。

 続いて、手続的要件についてですが、我が党は、緊急事態の認定主体は内閣とし、国会の関与については、国会の事前承認が必要と考えています。その際の議決要件は、各議院の出席議員の三分の二以上の多数が必要と考えています。裁判所の関与については、憲法裁判所による事後統制を考えています。

 自民党、公明党、国民民主党、有志の会も、いずれも認定主体は内閣とし、国会の関与については事前承認という方向性で我が党と一致していると認識しています。国会の議決要件については、公明党、国民民主党、有志の会は我が党と同じ考えですが、自民党は、この国会の事前承認における議決要件についてはいかがお考えでしょうか。また、裁判所の関与については、国民民主党と有志の会は最高裁判所による事後統制が必要とのお立場ですが、この司法の関与についても、自民党そして公明党のお考えをお聞かせ願えればと思います。

 なお、前回の本審査会において、自民党の柴山幹事から、国の存立事態である究極の限界事例において、民主的基盤がない裁判所がどこまで関わることが正当とされるかということは、よくよく慎重に考えなければいけないと考えておりますし、また、憲法裁判所を設けることにつきましては、国権の最高機関は国会であると定めた憲法四十一条との関係でも慎重に議論をする必要があるとの御発言がございましたが、違憲審査制は現代立憲主義における標準装備とも言えるべきものであり、立憲主義の観点からは、内閣や国会から独立して法令の合憲性の判断を行う仕組みが必要であることは論をまちません。特に、緊急事態においては、特例的な国会機能の維持や行政府への権限集中が認められるからこそ、むしろ、その特例的な権限が立法府や行政府に濫用されることがないよう、司法による統制の必要性がより一層高いと言えます。

 なお、我が党が考える憲法裁判所については、最高裁に加えて衆議院、参議院も裁判官の任命権者としており、民主的正統性にも配慮しています。

 次に、緊急事態宣言の効果についてですが、議員任期延長について絞って申し上げますと、我が党は、任期延長期間が六月を経過したときは憲法裁判所の職権審査が可能としています。議員任期延長期間については、自民党、公明党、有志の会からは、一年以下とか、次の議会期開始までとか、様々な御発言がありました。この点、国民民主党は、一定の上限を定めることも有力な方法とのことですが、具体的な期間をお示しいただければと思います。

 また、我が党は、解散や任期満了によって議員が身分を失っていたときはその身分が復活すると考えています。この点、公明党と有志の会は我が党と同じ考えですが、先ほど自民党さんも、検討が必要との御発言がありました。この点、国民民主党さんは、この議員の身分の復活についてのお考え、いかがでしょうか。

 最後に、立憲民主党は緊急事態条項は基本的に不要としながらも、奥野委員から、議員の任期延長については戦争等の究極の事態を念頭に検討の余地はある旨の御発言がありました。立憲民主党にお伺いしますが、議員任期延長について、どのような実体的要件、手続的要件で、どのような効果を認めるかなどについてお考えをお聞かせください。

 以上、まとめますと、自民党には、一、国会の事前承認における議決要件、二、司法の関与の二点について、公明党には司法の関与について、国民民主党には、一、議員任期延長の期間、二、議員の身分の復活、三、選挙実施困難性の要件の付加の三点について、立憲民主党には議員任期延長の要件と効果についてお伺いできればと思いますが、今、可能な範囲でお答えをいただきまして、残り時間も限られておりますので、難しければ、本日の二巡目の御発言や次回の審査会において御回答願えれば幸いです。

 以上で発言を終わります。ありがとうございました。

森会長 ただいま岩谷委員から各党に対して御質問がございましたけれども、非常に多岐にわたっておりますし、ちょっとここは質疑の場面というよりも、今後の討議の中で各党において適切に御答弁を願いたいと思います。よろしゅうございますね。

岩谷委員 結構です。

森会長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 私は、まず、国会におけるオンライン出席の実現、この更なる推進についてお願いを申し上げたいと思っております。

 東日本大震災を始め、コロナ感染の蔓延、北朝鮮の連日にわたるミサイル発射などを目の当たりにしました我々は、今後あり得るかもしれない不測の事態に備え、国会の任期延長や緊急政令の根拠となる緊急事態条項について、各会派から活発な意見が出されております。このような感染症蔓延、有事、大規模災害が発生した場合、国会議員が実際に議場に参集し、物理的に出席することが困難となることは容易に予想されます。

 したがって、国会のオンライン出席は、仮に任期延長や緊急政令を認めるとしても、まず実現しておくべき環境整備であることは言うまでもございません。

 本年三月三日に、当憲法審査会の大勢の意見として、憲法五十六条の「出席」にはオンライン出席も含まれるとの解釈を衆議院議長に報告をされ、議長からは、議院運営委員会で具体的に検討するよう指示がありました。

 私は前国会まで議運の理事でございましたが、実際、議運の場ではオンライン出席に向けた具体的な制度設計は進んでいないというのが現状です。五十七条の公開の規定とも相まって、オンライン出席を認めるための論点整理やシステム改修にかかる予算など、幾つかの案が出されました。しかし、制度設計には時間、費用がかかるため、まずは各委員会における参考人質疑をオンラインで試験的に開始すべきとの結論を得たのみで、その後の議論は停滞しております。

 そこで、改めて会長にお願いをしたいと思います。オンライン出席の実現に向けて、当審査会として更なる推進を図っていただきたいと思います。

 確かに、三月三日の報告書は全会派の一致した意見でないことは承知をしておりますが、ならば、賛成会派の幹事の皆様方でも、もう一度議長にこの実現の推進を促すような働きを行っていただきたいとお願いを申し上げたいと、まず冒頭申し上げたいと思います。

 次に、緊急事態条項について申し上げます。

 国会議員の任期延長については、国会の機能維持を図るという観点から、当審査会で論点整理を早急に開始し、検討すべき課題であるということは我が党も申し上げてまいりました。

 戦渦にあるウクライナでは厳然と国会機能は維持されており、議会中心主義を貫徹しようとする姿も紹介をしてまいりました。我が国においても、国会の機能維持という喫緊の課題に対応できるよう、検討を急ぐべきであります。

 他方、任期延長問題については、一部に、衆議院議員が長期不在となっても緊急集会で対応可能との意見もあります。しかし、緊急集会が規定をされております憲法五十四条の条文は衆議院の解散時の規定であり、その五十四条三項では衆議院の事後承認を求めていることから、これを素直に読めば、近いうちに衆議院総選挙が行われ、選挙で選ばれた新たな衆議院が誕生することを前提としている規定です。総選挙が長期間行われない場合は想定されていないと考えるべきです。緊急集会の在り方を始め、論点整理を行っていただきたいと思います。

 続いて、緊急政令を認める緊急事態条項について述べます。

 我が党の基本的立場は、現行憲法にも営業の自由、財産の内容などに対する公共の福祉による制約が規定をされており、国家の緊急事態といっても様々な事態があります。そこで、それぞれの危機管理法制の中で、私権に対する一定の制約とその手続、必要な補償規定を具体的に整備していくべきであるという立場です。

 また、不測の事態にも対応できるよう、あらかじめ法律の中に政令委任できる範囲を規定すべきというのが、我が党の基本的立場です。すなわち、四十一条の、国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるとの議会中心主義の大原則を追求すべきとの立場です。これは、日本国憲法の制定過程において、当初緊急政令を検討したにもかかわらず、結果これを認める条項を削除した経緯からも、我が国が議会中心主義を取ることを宣言したものと言えるからです。ただし、緊急集会が万能でないことは、先ほど申し上げましたとおりでございます。

 現在の危機管理法制は、災害対策基本法、国民生活安定緊急措置法、国民保護法、新型インフルエンザ特措法を始め、六本ございます。そして、その措置の内容は、一つに物資の配給、譲渡制限、二つ目に物価統制、三つ目に金銭債権等のモラトリアム、そして四つ目が海外からの支援受入れという四つの内容、メニューが用意をされておるわけでございます。これら危機管理法制は、大災害や新型インフルエンザの蔓延という過去の経験を基に想定され得る危機対応を網羅しており、ほぼ完成した形とも言われております。

 では、これら以外にも想定され得る危機はないのか。新設すべき類型としての危機管理法制の追加はないのか。既にある、既存の危機管理法制の内容、メニューについては、加えるべきものはないのか。不断の検証が必要と考えます。

 まず、大規模災害や有事、感染症蔓延以外に新たに新設すべき危機類型があるのか、私も考えてみましたが、なかなか思いつかないのが今私の現状でございます。

 一方、既存の危機管理法制の内容、メニューについては、検討すべき課題が豊富にあると思います。例えば、今般のコロナ感染対策では、外出制限とか又は営業時間の短縮は、要請にとどまりました。しかし、今後起こり得る感染症においては、これら制限を法律で規定する必要が想定をされます。既存の危機管理法制において、加えるべき内容、メニューを充実させることが急務と考えます。それでも既存の内容では対応できない規制の必要が生じる可能性は、私は否定をしません。各危機管理法制の中に政令に委任すべき範囲を明確にした条項を加えておくことは必要と考えます。

 ここからは私の私見となりますけれども、仮に憲法に緊急事態条項を加えるとすれば、各危機管理法制に政令委任できる旨の根拠規定を明記し、これを確認する意味で、その危機管理法制の法律に基づいて緊急政令を制定できるという旨を憲法上に明記するのであれば、議会主義に反することなく、私は許容されると考えます。

 以上でございます。

森会長 ただいま御提案のありましたオンライン出席の件につきましては、幹事会において協議をいたしたいと思います。

 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 今年の通常国会以降の議論の中で、緊急事態条項、とりわけ議員任期の特例延長の必要性については、スピード感を持って合意を得るべきテーマとして認識されたと思います。

 そこで、会長に改めてお願いです。法制局に論点整理を早急にやってもらって、論点ごとに合意点をピン留めしていきたいというふうに思います。

 そこで、今日は論点についてまず申し上げたいと思います。こういった点について事務局にまとめてほしい具体的な論点をまず幾つか述べたいと思います。

 まず、第一の、大前提の論点として、議員任期の延長規定の必要性の有無。そして、それに密接に関係するものとして、参議院の緊急集会の位置づけをどうするのか。この論点です。

 第二の論点が、要件について。

 そのうち、実体的要件については、今も議論になりましたが、対象とする緊急事態の範囲について、これまでに提示した四要件以外に、その他の事態を付加するかどうか。そして、議員任期の延長を行う場合には、さらに、選挙の実施が困難といった加重要件をどのように定めるのかという論点。

 次に、手続的要件として、緊急事態の認定主体は内閣でいいのかどうか。そして、国会の関与は、原則事前承認、例外として事後承認という形でいいのかどうか。また、国会の議決要件は、各議院の出席議員の三分の二以上の多数による特別決議ということでいいのか。さらに、司法による事後統制をどのように導入するのか、しないのか。この論点です。

 第三の論点が、効果についてであります。

 特に、議員任期の延長関係に絞って言えば、任期延長の上限期間をどのように考えるのか。また、解散によって身分を失った前議員の身分の復活についてどう考えるのか。

 そして、それ以外の国会機能の維持策として、国会開会時の閉会禁止、閉会時の即時召集の在り方。また、衆議院の解散禁止や、それに対するものとして、内閣不信任決議案の議決の禁止。さらには、今、浜地委員からもありました、オンライン出席というものを憲法上明記するかどうかの論点。加えて、我が党が提案しているミニ国会としての両院合同委員会の位置づけをどうするのかという論点。

 そのほかにも、憲法改正の禁止や、制約できない人権、いわゆる人権制約の限界の明記をどうするのか。そして、緊急政令及び緊急財政処分についての論点。

 こういった論点について、法制局に是非整理をお願いしたいし、それを会長にお取り計らいをいただきたいと思います。

 その上で、今申し上げた論点の幾つかについて、特に御質問いただいた件を中心にお答えをしていきたいと思います。

 まず、今、岩谷委員の質問にお答えしたいんですが、国民民主党としては、緊急事態の要件は、基本的には明示的に四つの要件、外国からの武力攻撃、内乱・テロ、大規模自然災害、感染症の大規模蔓延に限定列挙すべきだと思います。これは基本的には、権力の濫用を抑える意味では、基本、限定だと思います。ただ、書き切れないところがあるので、その他これに準じる事態として、これは劣後するということではなくて、同様の事態で、法律に定める緊急事態ということを加えることは一案だと思います。

 ただし、この四つプラス一の類型いずれであっても、内閣による濫用を防止する観点から、国会による法律の制定その他正常な統治機構の運用による事態収拾が著しく困難ということを、いずれにせよ加重要件として設けていきたいと考えます。

 次に、前回、自民党の柴山先生からいただいた、司法による統制については慎重に考えるべきだということについて、改めて我が党の考え方を申し述べておきたいと思います。

 国民民主党は、緊急事態宣言の要件が満たされているかどうかの要件充足性について、最高裁が勧告できるという仕組みを入れてはどうかと提案しています。ただ、この最高裁の判断は、宣言の解除という直接的な法的効果は有しないということにした一方で、国会及び内閣に対し解除すべき旨の勧告をすることで、権限を持つ内閣の宣言解除や国会の解除決議を促し、恣意的な宣言発令を抑制することを企図しています。

 次に、議員任期の延長の上限について述べたいと思います。

 国民民主党は、各議院の三分の二以上の多数で延長期間を定めるということを考えていますが、この延長できる期間については、具体的にまだ半年とか一年とか決めていませんが、一年や半年といった具体的な上限期間を定めた上で、全国一斉に適正な選挙が可能となるまでは再延長を可能とするといったことが、一つ、一案として考えられるのではないかと思っています。

 また、国会機能を維持するために任期を延長した以上、その延長期間を含め、その間はやはり内閣による解散は禁止するというのが整合的だと思いますし、また、三権分立の対抗手段としてある内閣不信任案の決議についても、緊急事態発令中はこれは制限する、禁止するべきだと考えます。

 次に、またこれも岩谷委員から質問いただきました、解散によって身分を失った衆議院議員の身分の回復についてでありますが、これは、内閣によって緊急事態宣言が発令されて選挙ができないという場合ですから、前議員の身分を復活させるということはあり得ると思います。というのは、できないと判断した、つまり、解散を決めた内閣と選挙がそれでもできないと判断する主体は同じ内閣ですから、自らが行った解散を取り消して前議員の身分を回復させるというのは論理的にはあり得ると思いますので、回復するということが一つの考えだと思います。

 そして、議員任期の延長についての最大の争点は、委員の先生からもありました、やはり参議院の緊急集会の位置づけをどうするかだと思います。

 憲法五十四条二項の参議院の緊急集会は、解散時だけでなく任期満了にも開催をできるのかという論点なんですが、国民民主党としては、何度も申し上げているように、条文を素直に読めば、また、緊急集会はあくまで解散時に開催するということになっているということ、そして、やはり両院制ということが我が国憲法の原則にあるということですから、緊急集会での対応はあくまで暫定的、一時的な対応であるのが憲法の要請だと思います。

 具体的には、憲法が解散から四十日以内の選挙、そして選挙から三十日以内の特別会の開催を要求していることを考えると、七十日を超えた長期間において緊急集会で対応することは憲法が予定しないと考える方が素直だと思います。

 したがって、仮に、一部の憲法学者の皆さんが主張するように、任期満了時においても選挙が実施できず、やむを得ず緊急集会で対応する場合であっても、その期間が七十日を超えることは憲法の趣旨からいって適切ではないと思いますので、例えば、七十日を超えた長期にわたって全国一斉の選挙を適正に実施することが困難だと認められる場合には、議員の任期の延長を認める憲法改正がやはり必要だというふうに思います。

 この論点については、是非参考人の意見を聞いていただきたいと思いますし、前回も申し上げましたけれども、平成二十三年の質問主意書に対する政府答弁でも、立法措置で国会議員の任期延長はできないとしていますので、内閣法制局からも是非ヒアリングをしていただくことを提案したいと思います。

 国民民主党としては、今述べたような緊急事態における統制の具体的内容について、党内で詰めの議論をしておりますし、いずれ条文の形でもお示しをしたいと考えております。

 いずれにせよ、せっかくここまで議論が積み重なってきておりますので、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めていきたいと思います。

 以上です。

森会長 御提案の件については、幹事会で協議をいたします。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 岸田政権は、年末に向けて、安保関連三文書を改定し、敵基地攻撃能力を具体化するとともに、軍事費を倍増する大軍拡の動きを加速し、大増税まで検討しています。憲法を破壊する極めて重大な動きであります。

 岸田政権が五年間の軍事費を四十八兆円に倍増しようとする下で、政府は、公共事業費や科学技術研究費、海上保安庁予算など各省庁の予算を軍事に資するものとしてまとめ、総合的防衛費などと称して計上することを検討しています。

 重大なのは、その中身です。そこでの議論は、単に予算を積み増すだけでなく、予算の編成から執行に至るまで、国の財政と施策の全てを軍事に従属させようというものにほかなりません。公共事業などインフラ整備では、地方自治体などが管理する空港や港湾について、自衛隊が必要とする機能や施設を満たすことを最優先に整備するとしています。

 さらに、自衛隊が優先して利用できるよう、空港法や港湾法などの基本方針や規定を見直すことまで検討されています。

 港湾法は、港湾の憲法と呼ばれ、地方自治の精神の下、港湾の管理権を戦前の国主体から地方自治体に移すことで、港湾政策の民主化と平和利用を図ってきました。

 ところが、岸田首相が設置した有識者会議では、自衛隊が空港や港を利用することに懸念を示す自治体を念頭に、地方自治体の意識改革が必要だなどと、地方自治を無視した主張が繰り返されているのであります。

 今、南西諸島の島々を中心に、大規模な日米共同軍事演習が行われています。そこでは、住民の反対や自治体の懸念を無視して、県が管理する空港や港を自衛隊が人員や兵器の輸送のために使用し、戦闘車を一般道路で走行させることまで強行しようとしています。まさに、岸田政権が狙う空港、港湾の軍事利用の先取りにほかなりません。有事だけでなく、平時から軍事を目的にしたインフラの整備、利用を進めようという狙いは明らかです。

 科学技術研究や開発の分野では、防衛省の目的に沿った重要技術課題を設定し、その軍事課題を実現するための研究開発に文科省や総務省などの科学技術予算を組み込もうとしています。予算の執行や事業の進捗についても防衛省が監督する仕組みとなっています。

 防衛省は、既に、競争的研究資金の導入によって研究者を軍事研究へと誘導し、さらに今後は、基礎研究にとどまらず、装備化に向けた研究への資金提供も検討しています。科学技術費の軍事予算化は、大学などへの研究予算を軍事技術や装備品の開発に振り向け、研究者をより一層軍事研究へと動員しようとするものです。

 さらに、政府は、戦闘機や戦車、ミサイルなど殺傷能力のある兵器の輸出を可能にするよう、防衛装備移転三原則を見直し、政府を挙げて武器輸出を推進し、軍事産業を成長産業へと押し上げることまで主張しています。平和国家という立場を跡形もなく投げ捨て、世界の軍縮にも逆行するものです。

 しかも、有識者会議や税調では、こうした軍拡を当然の前提として、国民への大増税が議論されています。極めて異様な事態です。

 こうした岸田政権の軍拡は、専守防衛の建前さえ投げ捨てる防衛政策の大転換にとどまらず、憲法九条を国の基本としてきた戦後の日本社会の在り方を完全に葬り去り、国政のあらゆる分野を軍事中心に進めていく、軍事国家に変えようというものです。これはまさに、戦前の日本と同じ轍を踏むものです。

 かつて政府は、国家総動員の方針の下、軍部の研究機関だけではなく、文部省や商工省などの研究予算や大学の研究者への科研費までも戦争遂行のための軍事研究へと動員し、悲惨な戦争へと突き進みました。港湾や船舶は、軍部による管理、統制が強められ、民間の使用は制限されました。港湾は戦場へと軍事物資を輸送するための拠点として利用され、その結果、米軍による爆撃の標的となり、多くの人々が犠牲となったのです。

 この反省から、戦後、日本国憲法は平和主義を掲げ、軍事を排除した社会を築いてきたのであります。

 日本国憲法の精神を土台として、戦後の社会を根底から覆し、軍事費倍増のための増税や社会保障費の削減で国民の暮らしを切り捨てるだけでなく、軍事優先の政治によって民生を押し潰すことなど、断じて許されません。

 幅広い国民と連帯して憲法違反の大軍拡を断固阻止することを強調して、発言といたします。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 本日は、議員の任期延長について、これまでの審査会の議論を踏まえて、一つは合意できそうなもの、二つ目は調整すれば合意できそうなもの、三つ目にまだ議論の足りないものに分けて検討をしてみたいというふうに思います。既に岩谷委員さんからされましたけれども、最後に発言する者の悲しい宿命ということで、お許しをいただきたいと思います。

 最初に、合意できそうな論点はかなり多いというふうに思います。

 まず、対象とする緊急事態の範囲については、若干文言の違いはあるものの、実質ほぼ一致していると思います。玉木委員の限定列挙に加えて、相当するとか、維新の案だったら、匹敵するとか、そんな感じでいいと思います。まあ、私が決めたらあれですけれども、いいと思われます。

 また、任期延長を総選挙の適正な実施が長期間困難と明らかに見込まれる場合に限定することについても、恐らく一致しているのではないかと思います。

 有志の会の案は、選挙の一体性が害されるほど総選挙の適正な実施が長期にわたり困難であることが明らかな場合としています。ここの選挙の一体性という言葉は、公明党案の広範な地域、そして恐らく、日本維新の会案の特別の事情に含まれるのではないかと推察します。この一体性と長期間という条件は、公職選挙法上の繰延べ投票や参議院の緊急集会で対応できない場合に限って任期延長を活用するという意味で、非常に意義のある部分だと思います。

 これらの要件の認定機関を内閣とすることについては、完全に一致しています。国会の関与についても、議決要件を国会の三分の二以上の多数とすることも含めて、事前承認としていることも、皆様一緒です。国民民主党さんの例外的に事後承認というのは、また御説明いただければと思います。

 任期満了後あるいは解散後に緊急事態が発生した場合、いわゆる前議員の取扱いについては、公明党、日本維新の会は身分の復活、我々はみなし規定としていますけれども、法的効果に違いはないと思いますので、十分歩み寄れるというふうに思います。自民党さんはこれから検討されるということだと思います。

 いずれにせよ、前回申し上げたように、憲法第五十四条第一項にある、選挙期日は解散の日から四十日以内にするという規定は適用しないという手当ても併せてすべきだということを、再度指摘しておきます。

 最後に、議員任期延長以外の国会機能維持策、すなわち、国会の閉会禁止、あるいは即時召集、衆議院の解散禁止、内閣不信任決議案の議決禁止については、これも各党、基本的に一致しているのではないかというふうに思います。

 有志の会の考え方としては、内閣が発令をし、国会が任期延長を決議するわけですから、解散禁止とかいうのは言わずもがなということなので、あえて明文化する必要はないと考えていましたが、逆に、必ずしも反対するものではありません。憲法改正禁止の話も同じように考えています。

 次に、方向性は一致していながら細かいところを調整しないといけない論点は、任期延長の期間をどうするのかの一点ではないかというふうに思います。

 任期延長の期間に何らかの制限を設けることは、みんな一致しています。ただ、その制限の在り方が異なります。有志の会としては、一年間を上限にしつつ、国会の議決により再延長も可能としています。自民党は、一年以下あたりにするか、あるいはそもそも次の議会期開始までとするか、検討されるという意向を示していますが、一方で日本維新の会は、六か月経過したときに、憲法裁判所により憲法適合性を審査できるとしています。公明党さんは、七十日間で、再延長を可能としています。国民民主党さんは、これから具体案を出されるということです。

 ここのところは少し隔たりがありますので、詰める必要があるというふうに思います。

 なお、いずれにせよ、緊急事態の収束にめどがついて総選挙が実施できると判断された場合には、国会議決により延長されたその任期の期日、終了日を定めることを併せて規定することも御提言申し上げます。

 三つ目に、もう少し時間をかけて議論しなければならない論点も残っています。

 まず、司法の関与です。日本維新の会は憲法裁判所を、国民民主党と有志の会は最高裁判所を想定しています。これについて、前回、柴山幹事から、民主的基盤がない裁判所がどこまで関わることが正当とされるのか、よくよく慎重に考えなければいけないという、ごもっともな御指摘があります。

 そもそも、司法の関与が必要という議論は、たしか奥野委員が最初に提起されたというふうに思うんですけれども、議員が国民の判断を仰がずに任期延長を自ら決めるということは、権力の濫用につながるおそれがあるという懸念から生じています。内閣も基本的に国会議員で形成されている以上、司法に役割を担ってもらうのが一つの案だという考えであります。

 その上で、三権分立を重視すべきということはそのとおりでありますので、我々の案は、いずれかの議院における総議員の四分の一以上の申立てがあったときに限定をして、仮に最高裁判所が任期延長の決議が憲法に適合しないと判断された場合にも、国会に対して任期延長を終了するように勧告するという抑制の利いた権限にとどめています。

 他方、勧告といえども、最高裁判所にとっては、これまで予定していない権限、責任、そしてそれに伴う実務を課すことになります。現実の体制面でこうした対応が可能かどうか、最高裁判所の方や専門家にも意見を聴取する必要があるというふうに考えます。

 緊急政令等については、前回申し上げたとおり、緊急事態における国会機能の維持とは別次元の論点であり、また、不要あるいは消極的な考えもありますので、更に議論を重ねていかなければいけないというふうに考えます。先ほど浜地委員のおっしゃったことに我々有志の会も近い考え方で、前回もそういうことを提言させていただきました。

 以上、僭越ながら私なりに議論を整理させていただきましたが、各党に対する誤解があったらおわびを申し上げたいと思います。

 是非とも、だからこそ、本日の議論も踏まえて、より権威のある法制局さんに論点整理をしていただいて、本審査会の具体案作成に入るよう会長にお願い申し上げまして、私の意見とします。

 以上です。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

務台委員 自民党の務台俊介です。

 精力的な憲法審査会の議論の積み重ねの努力により、非常事態における国会の機能維持、そのための衆議院の任期延長については、現行憲法に明確な問題点があるという点で、最低限の憲法規定整備が必要であることのコンセンサスができ上がりつつあると理解しています。

 本日も、任期延長に関わる様々な論点について各党の立場が示されていますが、早期にこの憲法審査会の場で修正の必要性の認識と修正案文を固めていくことが大切だというふうに思います。欠陥が分かっているにもかかわらず、それを放置することは許されません。この点、昨年のコロナ蔓延の中の総選挙の際に多くの国会議員が感じた現実の懸念は、早期に解消されなければなりません。そのための具体的な作業工程を示し、論点を整理していくことが求められており、詰めの作業を急ぐ必要があると考えています。

 一方で、国会議員の任期延長規定の改正は、いわば制度の欠陥を是正するという内容であり、本質的には規定の整備の要素が強いように思われます。その意味では、こうした規定整備の詰めの作業を行った上で、現下の切迫した国際情勢をしっかりと踏まえ、求められる他の必要な改正項目についても、この憲法審査会の議論を注視している国民の皆様が納得できるような精力的な議論を行っていく必要があります。

 この点について、幾つかの局面について私の所見を申し上げさせていただきたいと思います。

 現在、新型コロナ感染症対応のマスク装着に関して、欧米を始めとした世界の対応と日本の対応が全く異なっている現状が際立っています。欧米は、コロナ感染の度合いに合わせてマスク装着を緩和し、全く装着をしない対応に切り替えている国がほとんどであるのに対して、我が国は、ほとんどの国民が戸外であってもマスクを装着しています。加藤厚生労働大臣が戸外ではマスクを外す対応を促しても、多くの国民は反応しません。一度決めたことはよほどの外部的変化がないと、あるいはそれがあったとしても、なかなか変えない。これが我が国の国民性なのかとすら思ってしまいます。

 憲法改正に関する国民の意識もひょっとしたら同じだったのかなというふうに感じられます。公布後七十六年を経過し、改正のない日本国憲法は、非改正では世界一長寿の憲法との学者の調査もあります。憲法の安定性という意味ではこれは誇るべきことかもしれませんが、手を加えるところがないほど完成度の高い憲法典を我々は持っているという見方もあったのかもしれません。しかし、それは、先ほどのマスク装着に関する彼我の対応に比較すると、そうしたこだわりは、ひょっとしたら我々の思い込みにすぎないのかもしれないと思えてきます。

 日本国憲法への評価は、国際的視点から見たら、いわば裸の王様状態のようにすら思われます。我々の思い込みに関して、国際的常識を有する外国人の方から、過日、意表をつくような指摘を受けたことがありました。

 この九月二十八日に、ドイツ空軍のトップのゲルハルツ将軍が、自ら率いるユーロファイター三機で自衛隊百里基地に飛来しました。世界の安全保障環境が急変する中で、ドイツとしてもアジア太平洋の安全保障に大きく関わっていくという姿勢が見て取れます。そのドイツ空軍の百里基地飛来の際に、将軍を迎えたドイツ政府関係者が、百里基地周辺の土手に立てられた自衛隊は憲法違反との立て看板を見て違和感を覚えたという話をドイツ大使館関係者から伺いました。立て看板を立てた活動家の人たちは憲法改正を訴えているのかという感想をその政府関係者は持ったということでした。

 現在の自衛隊は、周辺の安全保障環境の中で、その存在意義を疑う人は誰もいません。そうであれば、それが憲法に違反すると訴えることは、憲法を改正すべきだという訴えを行っているに等しいのではないかという論理です。まさに、誠にドイツ人らしい理路整然とした受け止めですが、日本の反戦活動家でその立て看板を立てた人がその解釈を聞いたら、驚くと思います。国際社会から見ると、日本国憲法の運用の実態が裸の王様のようになっているという事例だと受け止めました。

 私は、過日、ドイツ人で日独の憲法を学んでおられる方と日独の憲法の相違について議論する機会を持ちました。その際に、そのドイツ人の方は、ドイツ基本法の特徴として、一つ、ドイツは占領下で基本法を作らず、独立を果たした後に基本法を作ったこと、そして、現在に至るまで六十五回の基本法改正を行ったこと、一九五五年には防衛のための軍隊を持てるように基本法改正を行ったこと、基本法改正には国民投票は必要とされていないけれども、与党のみの改正でこれを行うのは極めて難しいこと、基本法の中でも民主主義規定、人権規定など変更できない条項が存在すること、民主主義政党以外の政党を認めない条項があること、政教分離の規定はあるけれども、例えば教会税等の分野で行政と教会が協力していることといった、日本国憲法と比較した場合のドイツ基本法の特徴を伺いました。

 そのドイツ人法律家の個人的意見として、数世代前の基本法が現代の国民を縛るということは、そもそも民主主義の視点から適当とは言えないのではないかという認識を語っておられました。そして、そのことが現代の日本国の活動に過度の制約を加え、我々の日常生活に窮屈感を与え、安全保障環境を損なっているとしたら、国民にとって大いに不幸なことでございます。

 こういう観点から、是非、審議を急いでいただきたい、毎週一回はしっかりやっていただきたい、閉会中もやっていただきたい、そんなことを申し上げたいと思います。

 以上です。

篠原(孝)委員 立憲民主党の篠原です。

 久方ぶりにこの会合に参加させていただきまして、御発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私はちょっと紙を配らせていただいております。四要件ありましたけれども、感染症、非常にいい事例がありますので、これを基に具体的に考えていただけたらと思います。いろいろ具体的な意見がありましたけれども、私もそれなりに考えてまいりました。

 その前に、齋藤法務大臣が前回の会合で、去年の秋の状態は、選挙できなくなるんじゃないかということで非常に心配したと言っておられました。私もその一人です。

 私は、そもそも自主的に選挙を延期したような感じで戦いました。どうしたかというと、一切会合は開きませんでした。それはなぜかというと、羽田雄一郎参議院議員が、PCR検査もできずに五十三歳で命を落としております。私の会合がクラスターになり、発生源になってはよくないということで、自主規制いたしました。街宣車、これも問題だと思いまして、運転手とウグイス嬢一人、それしか乗せませんでした。たまに私が乗っただけです。だから、篠原は真面目に選挙をやっていないという大批判を受けまして、それが元で小選挙区では当選できなかったんじゃないかと思っております。だから、これは事例としてよく考えていただきたいと思います。

 それで、あと、皆さんいろいろおっしゃったので、これを事例で考えていただきたいと思います。

 今日、地元の信濃毎日新聞は、長野県の感染者数が過去最大になったと報じております。北海道、山形、それから長野というのは、人口比で上位三県だそうでございます。それだけひどい状態で、これはこれから何回も起こることじゃないかと思っております。

 具体的なことについて我が党はまだきちんと議論したわけではありませんけれども、国会議員の任期延長、これだけ熱心にこういう話が進んでいるというのは、私は夢にも思いませんでした。それだけ国会の機能を重視されているということは非常にいいことじゃないかと思っております。

 数点についてちょっと意見を言わせていただきますと、内閣が非常に決める決めると言っていますけれども、国会の開催要求をしてもなかなか応じてもらえなかったりするので、私は、自律的に我々が、僭越ですけれども、国会がまず先頭に立つべきじゃないかと思います。当然、布告だとか何か手続は内閣が関わりますけれども、決定は我々がすべきじゃないかという気がいたします。

 それから、非常に慎重にということで司法の手続と言っておられますけれども、それは、やったにこしたことはないんですが、そこまでやる必要はないのではないかと思います。

 例えば、このコロナの感染者の数等を見ていただくと分かると思います。去年の十月十九日は、陽性者が四百二十三名、死亡二十五名です。それで、十二月の上旬がほぼゼロだったんです。だから、私の場合は、予想できなかったから、そんなことをする必要はなかったのかもしれませんけれども、第七波のような状態になることを恐れてそういうことをしたわけです。予測できません。

 だから、なかなか難しいと思います、期間とか、いつまでというのは。御覧いただくと分かると思います。新藤委員は八か月ぐらいがあったから一年未満とかおっしゃいましたけれども、一年未満といったって、その間に、一年後にこれだけ、もっとひどくなっているわけですからね。なかなか問題だと思います。

 それで、一つ気がついたことがありまして、これだけ国会の機能、立法機能とか行政監視機能を重視されるんだったら、もうちょっと考えていただきたいという、私の、何というか、嫌みな提案になるかと思いますけれども。

 まず第一番目に、新藤委員は、我が国の国会は二院制を当然のこととしていると。それだったら、衆参ダブル選挙というのは絶対に避けなければならないことじゃないかと思います。それを平気で、政局で見てそういうことをしているというのは、これはやはりよくないことじゃないかというのが一点です。

 二番目に、国会議員がいなくなることだけ心配されていますけれども、これだけいるのにもかかわらず、そして国会を開催したいというのにもかかわらず、ほったらかしになって、いつまでたっても、臨時国会の要求ですね、開催されないというのはいかがなものかと思います。

 それから三つ目。務台委員が毎週開くべきだと。大賛成です。よく意見が合うんですね、党は違いますけれども。それで、我々は率先していますけれども、一般の委員会がどうかというと、法案が通ったら後はもう審議はしないというようなていたらくじゃないかと思います。

 私は、県会は、定例日を決めたらその日に必ず議論しています。もちろん法案の審議は優先すべきだと思いますけれども、法案が通ったからといって後は審議しないというような、そんな国会であってはならないと思います。ですから、我々憲法審査会が毎週一回こうやって、一時間ですけれども議論しているわけですから、ほかの委員会も一週間に一回はそのときの問題、幾らでもありますよ、山ほどあります、それを審議するというのを私は義務づけるべきだと思います。

 これだけ国会機能の重視ということを言っておられるんだったら、この三点、実行していただきたいと思います。もっとも、この要求は、ちょっと前までこの審査会を開くのを嫌だ嫌だと言っている政党の一員としては、余り大きな声では言えないという胸の痛みがあるわけですけれども、こうやってちゃんと出ているわけですから、是非やっていただきたいと思います。

 例えば、私は今、環境委員会の筆頭理事をやっておりますけれども、COP27、もう各国の首脳が行っています。ここを議論すべきです。我々は議論していくべきだと思っております。

 以上でございます。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 今日も、緊急事態における議員任期の延長問題につきまして、多くの会派の委員の方々が、その必要性について方向性がかなり共有されているなということを実感いたしております。さきの通常国会そしてこの臨時国会で、この緊急事態条項については相当議論もなされ、具体的な論点についてもほぼ出尽くしているというふうに思います。

 私自身も、通常国会で、三月の二十四日そして四月の七日にかなり詳しく意見を表明させていただきましたが、これまでのこの憲法審査会での各委員の意見を踏まえまして、改めて、衆議院法制局において論点整理を是非していただきたいということをお願いしたいと思います。

 ウクライナの最高議会、国会の話、もう何度もさせていただいているんですが、ロシアによるウクライナ侵略があったのは二月二十四日です。もう八か月以上たっているわけでございますが、ウクライナの国会は今も厳然と機能をしております。

 戦争勃発によりまして、ウクライナでは戒厳令、非常事態が宣告をされまして、平時においては保障されている様々な国民の権利や自由、これが、戦争という緊急事態によりまして、それに関する法令が適用できない、さらには修正を余儀なくされているということは想像に難くございません。そうした状況下でもウクライナの議会は、私も時たま見ているんですが、公式のホームページを見ますと、必要な予算、法律、決議、また外交団との折衝、そうしたことをしっかりやられておられまして、立法機関としての役割を果たしておられます。

 大事なことは、このような緊急時であっても、また緊急時であるからこそ、国会機能をしっかり維持をする、その役割をしっかり果たしていくということが私は大事なんだというふうに思います。

 先ほど維新の委員の方から、緊急事態条項について、特に議員任期の延長について、司法の関与についてどう考えるかという御質問がございました。

 緊急事態の認定なんですけれども、私は二つの要件が必要であると思っております。一つは、巨大地震などの大規模な自然災害等々緊急事態が発生したこと、この緊急事態が発生したことと、もう一つ大事な要件があって、それは、国政選挙の適正な実施が長期間明らかに困難だ、客観的にそれが認められる、この二つの要件が必要なんだと思います。

 緊急事態と言われるものが発生しても、適正な選挙の実施が可能であるならばこういう議員任期の延長の問題は必要ないわけですから、そういう意味では、この二つの要件、緊急事態の発生と、そして、それによって国政選挙の適正な実施が長期間困難というふうな事態、この二つの要件が必要だと思うんです。

 そうしますと、こうした事態認定をするに当たって、事実関係、全国の緊急事態という認定のための様々な事実関係、選挙の実施が困難という様々な事実関係、これの資料、材料を持っているのは誰かといったら、これはやはり内閣でございまして、内閣が各省庁から様々な情報を集めて集約をしてこのような事態認定をしていくことになるわけでございまして、判断権者は内閣。

 そして、司法の関与といっても、このような詳細な事実関係について材料がない限り、司法だって判断できないわけでございまして、司法の関与を求めるというのは、私はどうなのかなというふうに思っております。

 ただし、先ほど来出ておりますとおり、国会の関与は必要だと。国会の関与も、通常の過半数ではなくて、出席議員の三分の二以上の特別多数を要する、このような要件を添付することによって適正性というものを担保していくということなのかなというふうに理解をしております。

 最後に、今日、新藤委員からも御指摘があった、緊急政令、緊急財政処分。これは、これまでも私は述べておるんですけれども、やはり、憲法四十一条で、国会というのは、唯一の立法機関、国権の最高機関というふうに憲法上位置づけられております。その国会が、緊急事態だからといって、憲法に白紙委任的な緊急政令制度を設けることは、私は、国の唯一の立法機関としての国会の責任を放棄することにつながってくるのではないかというふうに思っているんです。

 もちろん、想定外の事態というのは当然起こり得ます。しかし、それは危機管理法制の中でしっかりと今も政令委任事項を設けられて、このような場合には政令に委任しますよ、この事項について政令に委任しますということを、様々な危機管理法制で書いてあるんですね。そこで不足があるならば、それを充実していくということではないか。憲法で白紙委任的な緊急政令制度を設けることについては慎重であるべきだと私は考えております。

 同様に、緊急財政処分。この緊急財政処分も、憲法の八十三条以下に財政民主主義について様々書いているんですね。国家の財政については国会が全て議決をしていくんだ、税金についても国会が法律で定めていくんだというふうにしているわけでございまして、この財政民主主義という観点から、やはり緊急時といっても、緊急財政処分を認めていくというのはなかなか問題があるのではないかというふうに思っております。そのためにまさしく予備費というのが憲法上も規定をされているわけでございまして、ここは予備費の活用で内閣が財政処分ができるようにしていくことなのかなというふうに理解をしておるところでございます。

 いずれにしましても、緊急事態における議員任期の延長の問題については相当議論が出尽くしていると思いますので、是非集約をしていくように、その前提として、衆議院法制局に論点整理をできるだけ早くしていただきたいとお願いを申し上げて、私の意見とさせていただきます。

前川委員 日本維新の会の前川清成です。

 冒頭、岩谷委員の発言の中で読み間違いがありましたので、訂正させていただきます。

 日本維新の会は、緊急事態宣言は、事前ではなく、事後の国会承認を要するというふうに提案をいたしております。

 さて、憲法九条を変えたなら、日本は戦争に巻き込まれるのでしょうか。逆に言えば、憲法九条が今のままなら、日本は戦争に巻き込まれることはないのでしょうか。憲法九条と同じ条文がウクライナにあったなら、ロシアはウクライナを侵略しなかったのでしょうか。答えは明らかです。全て、いいえです。憲法は、戦争そのものを防いではくれません。日本が外国からの侵略を受けないために必要なことは、外交、防衛の努力です。

 平和のために憲法ができることがあります。それは、時の政権が、あるいは戦前のように軍部が勝手に戦争を起こさないよう、権力をルールで縛ることです。

 それでは、今の憲法九条は、時の政権の暴走を止めるルールとして機能しているのでしょうか。二〇一四年、安倍政権は、憲法九条の解釈を閣議決定で変更してしまいました。しかし、憲法によって縛られているその時の政権が自らの手でその縛りを緩めてしまったならば、法の支配は機能しません。あれほど大きな解釈変更を許してしまう現行憲法九条の文言は、法の支配という観点からは不十分です。時の政権による恣意的、便宜的な解釈変更を許さないよう、明確に規定する必要があるのではないでしょうか。

 分かりやすいように、安保法制の存立危機事態を例に挙げます。自衛隊法七十六条一項二号は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される事態において、内閣総理大臣は、自衛隊に出動を命じることができると定めています。しかし、この文言は不明確、不明瞭なので、地球の裏側にまで出かけて戦争するのかという批判がありましたし、当時の安倍総理は、存立危機事態の例としてペルシャ湾が封鎖された例を挙げました。

 この点、維新は、存立危機事態について、条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これにより、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態と対案を示しています。

 維新案であれば、どのような場合に自衛隊に出動を命じるか明確ですし、また、かかる場合の防衛出動であれば、国民も、そして世界も納得します。憲法九条に関しても、このように条文を明確、厳格化するのであれば、時の政権が、あるいは戦前のように軍部が暴走し、勝手に戦争を起こすことがあってはならないと考える全ての政党に御賛同いただけるかと思います。

 五五年体制下の憲法論争は、自主憲法制定と九条を変えるなのイデオロギー論争でした。しかし、憲法はイデオロギーではありません。スローガンでも心構えでもなく、政治権力を制限し、もって国民の自由や人権を守るための技術です。だから、この審査会の議論も政治的な論争ではなく、現行憲法が今のままでいいのか、あるいは現行憲法に足りない点や改めるべき点はないのか、一つずつ結論を求める科学的で技術的な、いわば研究会のようなものでなければ、いつまでたっても結論は得られません。

 最後に、投票価値の平等について申し上げます。

 前回、敬愛する階猛委員から、本日、中川幹事からも発言がありました。私も、東京への一極集中が続くことは極めて好ましくないと思っています。しかし、投票価値の平等は、人は皆、全て生まれながらにして自由で平等であるという個人の尊厳から導かれます。法の下の平等は、日本国憲法特有の概念ではなく、近代憲法共通の基本原理です。

 投票権は、この国の主権者である国民一人一人に与えられているのであって、土地に与えられているわけではありません。したがって、地方に議員定数を手厚く配分するために投票価値の平等を損ねたならば、それは法の下の平等を否定することにほかなりません。

 法の下の平等は、たとえ憲法改正手続においても改正することが許されない現行憲法の根本規範であり、よって、今回ばかりは階委員の発言に反対をいたします。

 以上です。

新垣委員 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 冒頭、本臨時国会における憲法審査会開催の必要性について意見を述べさせてもらいます。

 通常国会では、憲法改正の実現を目指す政党会派が主導する形で、毎週のごとく憲法審査会が開催されました。しかしながら、今年七月に行われた参議院選挙、この参議院選挙での争点や議論を見ていると、改憲に対する国民の関心は決して高いようには感じられませんでした。

 憲法九条への自衛隊明記、緊急事態条項の創設とそれに付随する国会議員の任期特例延長の問題はもとより、教育の無償化すら明確な争点にならず、合区問題の解消については、具体的な議論は何らなかったように思います。

 参議院選挙の主たる争点は、物価高や雇用対策、経済対策の在り方、具体的には消費税減税の是非でありました。国民の関心が目先の暮らし向きや景気の動向にある中、改憲論議のための論点整理や憲法改正発議に向けた手続論は不要不急だと思います。

 社民党は、改憲発議に向けた地ならしとしての憲法審査会開催には今国会でも明確に反対をいたします。しかし、憲法審査会のもう一つの設置目的である、憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的な調査を行うための憲法審査会であれば、反対するものではありません。

 参議院選挙以降、国会における議論は、旧統一教会の問題と国葬開催の問題に焦点が絞られています。国民の関心も高く、今、社会問題化しております。

 旧統一教会の問題をめぐっては、憲法十三条の自己決定権や憲法二十九条の財産権を根拠に、家族の取消権に否定的な見解があります。本人の信教の自由、自己決定権、財産権の行使は憲法的に認められているとはいえ、それらの権利行使は無制約ではありません。そして、家族の幸福追求権や財産権を侵害する事態をもたらす行為に対し、一定の制約を課す法制定が絶対に認められないわけではありません。

 十月二十七日、宗教団体の信者の親を持つ元信者たち三人が東京で記者会見を開き、宗教二世の救済を求める法整備を要望しています。また、十一月四日、全国霊感商法対策弁護士連絡会は、今臨時国会内で速やかに被害者救済の法整備を行うべきであるとしています。宗教二世の被害こそ、今まさに現在進行形であり、直ちに対応する必要があります。

 国会法第百二条の六は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うことを憲法審査会の権能の一つとして定めております。もし、宗教二世救済のための法制定に憲法上の問題があるというのであれば、それこそ国会法百二条の六を根拠に、本審査会において家族の取消権と憲法の関係について議論すべきではないでしょうか。弁護士などの法の専門家を参考人として招致し、意見を聞くことも必要だと考えております。

 少なくとも、被害者や弁護団が迅速なる法制定を要求しているにもかかわらず、国会で議論すらしないことは、宗教二世の救済、旧統一教会問題に背を向けていると言わざるを得ません。国会の機能の維持が重要だというのであれば、任期延長の憲法改正論議だけではなく、今まさに旧統一教会の問題を憲法審査会で審議すべきだと考えます。

 国葬の問題も同様です。

 総理大臣経験者とはいえ、一個人を特別扱いすることは憲法十四条の法の下の平等に反し、弔意の強制は憲法十九条の思想、良心の自由の侵害に当たると考えます。また、国葬開催に当たり、憲法四十一条で国権の最高機関として規定される国会に諮ることなく、閣議決定だけで実施や予算支出を決めてしまったことも大きな問題だと思います。国葬の在り方や持ち方についても、国会法百二条の六に基づく本審査会における議論の必要性を強く感じております。

 旧統一教会と国葬の憲法上の問題を素通りしたまま手続論を進め、具体的な改憲項目への議論に踏み込んだところで、国民の理解は得られないと思います。その点を強調し、私の発言を終わります。

森会長 予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議しておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.