衆議院

メインへスキップ



第3号 令和5年3月16日(木曜日)

会議録本文へ
令和五年三月十六日(木曜日)

    午前十時十二分開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 山下 貴司君

   幹事 階   猛君 幹事 中川 正春君

   幹事 馬場 伸幸君 幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    神田 憲次君

      熊田 裕通君    小林 鷹之君

      國場幸之助君    塩崎 彰久君

      下村 博文君    田野瀬太道君

      辻  清人君    中川 郁子君

      中西 健治君    船田  元君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    務台 俊介君

      山本 有二君    渡辺 孝一君

      新垣 邦男君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      道下 大樹君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      中野 洋昌君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     塩崎 彰久君

  渡辺 孝一君     中川 郁子君

  本庄 知史君     道下 大樹君

  國重  徹君     中野 洋昌君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     越智 隆雄君

  中川 郁子君     渡辺 孝一君

  道下 大樹君     本庄 知史君

  中野 洋昌君     國重  徹君

    ―――――――――――――

三月十日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(志位和夫君紹介)(第二三一号)

同月十六日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四〇〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第四〇一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第四〇三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四〇四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四〇五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四〇六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四〇七号)

 同(宮本徹君紹介)(第四〇八号)

 同(本村伸子君紹介)(第四〇九号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自民党の新藤義孝でございます。

 今週の審査会では、これまで出ていた論点に加えて、国民投票法についても討議を行いたいと考えております。

 先週の審査会で私から提起をいたしました緊急事態条項に関わる論点につきましては、本日、各会派の委員なりの御意見がいただけるものと思っておりますが、それに先立ちまして、先週の各委員からの意見及びそれを踏まえて補充する点につきまして、コメントをまずさせていただきたいと思います。

 緊急事態の範囲のうち、その他これらに匹敵する事態として何を想定するか、あらかじめ議論しておくべき、こういう御意見もございました。

 その他これらに匹敵する事態は、大規模自然災害等の四つの事態では読み込めない想定外の事態にも対応できるようにするものであり、したがって、想定する事態をあらかじめ決めておくものではないと考えております。

 要件を曖昧にすることで恣意的な運用がなされるのではとの懸念に対しましては、これらに匹敵する事態、すなわち四つの事態と同程度の緊急性のある事態という表現により懸念は解消できる、このように考えているわけであります。

 次に、緊急事態認定の国会承認の議決要件の趣旨につきましては、憲法が定める二院制国会の原則を維持する過半数議決なのか、それとも、緊急事態下における議員任期延長の議決は二院制の例外として三分の二以上の特別多数議席とするかという、本質的な議論が必要だと考えております。

 この議決要件は、多数政党によるお手盛りを避けるというようなことではなく、選挙によって示された民意、すなわち議会制民主主義を尊重するという観点で判断すべきだと私は考えております。私が提起した過半数による議決というのは、三分の二議決に比べ軽い判断とは言えないと思います。三分の二の議決が必要ないと言っているわけでもありません。

 国会承認の議決は過半数なのか、それとも三分の二なのか、どちらの方式を選択することが妥当かという観点からの御意見を是非お伺いしたいと思っております。

 次に、裁判所の関与につきましても、お手盛り防止、濫用防止のために必要だとの意見がありましたが、この点も、議会制民主主義の趣旨を踏まえれば、緊急事態の認定や議員任期の延長という極めて高度な政治的判断は、主権者国民から選挙で選ばれた政治部門が責任を持って行うことが大原則ではないかと考えております。そして、政治が判断したことは、次の国政選挙において国民の審判を受け、民意によりその適否が示されることになります。民主主義の根幹に基づく責任を他に委ねることなく、重要な決定は政治が責任を持って行うべきだというふうに考えているわけであります。

 また、最高裁判所とは別に憲法裁判所を設置するべきとの意見もございます。

 最高裁をトップとする我が国の司法体制において、最高裁が行ってきた憲法判断機能を憲法裁に全て移すか否か、最高裁と憲法裁の役割分担がうまく機能するのかという根源的な問題がございます。今後、更に議論を深めていきたい、このように思います。

 次に、緊急事態における閉会中の即時召集を提言するのであれば、その前に、平時における憲法五十三条の臨時会召集要求に応えるべきとの意見がありました。

 憲法五十三条は、召集要求に対する臨時会の具体的な召集時期について明記しておらず、この規定は、内閣の合理的判断の尊重と少数会派の保護のバランスを取った条文と思います。従来からの政府の対応はこうした考え方に基づく合理的なものであり、召集期限を一律に定めることは憲法が規定するバランスを崩すおそれがないのかという懸念がございます。

 そもそも、立憲民主党、維新などの会派の皆さんは、既に臨時会召集期限明記の法案を衆議院に提出をされております。この問題は、付託委員会である議会運営委員会で議論されるべき立法政策のレベルに移っているのではないかというふうに考えるのも筋だと思います。

 次に、国民投票法については、立憲民主党からCM規制に関する国民投票法改正の考え方が提示されております。私たちも、国民投票におけるCMの取扱いについては、今後、議論を進め、方向性を出していかなければならないと考えています。

 一方で、昨年四月二十八日に趣旨説明を行ったままの国民投票法改正案、いわゆる三項目案については、早急に審議し、結論を出さなければなりません。これは、既に公選法で整備済みの外形的事項を国民投票に反映させ、投票環境の向上を図るものであり、その内容については倫理選挙特別委員会の審議で尽くされており、各会派からの異論も出なかったものであります。

 一部の方から、三項目案を成立してしまうと国民投票法に関する議論が行われなくなるのではないかとの声をいただくことがありますが、決してそうではなく、これまで何度も申し上げておりますとおり、国民投票法には、投票環境整備など外形的な事項と、CM規制など投票の質の向上に関する事項の二つの要素があり、いずれも、時代や社会の変化を踏まえ、議論しなければならない事項であります。現に、本日もこれから議論を行うわけでございます。

 一方で、付託された法案を議論するのは国会の当然の責務であり、提出以来、既に一年が経過する三項目案の審議をいたずらに延ばすことなく、粛々と処理すべきことを改めて申し上げたいと思います。

 次に、投票の質に関する国民投票法の論点について述べます。

 国民投票運動に関する基本的な思想は、二〇〇七年に国民投票法が制定された際に整理されています。その精神は、国民投票は国民主権最大の発露の場であり、国民投票運動はできるだけ自由にということであります。

 積極的にこの方針を主張されたのは、枝野議員を始めとする当時の民主党の皆さんであり、私どもも同じ考えで進めてまいりました。その結果、CM規制については、法的な規制は極力避け、自主的規制によって投票の公平公正を確保するとの整理がなされております。

 さらに、その後の討議によりまして、放送CMについては、民放連の参考人質疑を通じ、受け手である放送事業者の自主的規制は、量的な公平の視点も含めて準備が進んでいることが確認されています。

 あわせて、広告の出し手である私たち政党側の取組と、国民投票広報協議会による賛否平等の広報活動について、具体的な詰めを行っていきたいと考えています。

 一方で、情報化社会の進展に伴うネットCMは、既に放送CMをしのぐ市場規模となっており、CMに限らず、ネット上には膨大な情報があふれ、フェイクニュースや不正確情報の氾濫という問題も出ています。

 昨年の参考人質疑では、ネットCMの取扱い、ネットを通じた国民投票運動の在り方、ファクトチェックと言われるネット情報の正確性担保などについて指摘がなされ、更に議論が必要と考えています。

 こうした投票の質の向上に関する論点については、私なりの整理として四つの考え方を提示しております。すなわち、A、法律による規制、B、自主的な取組、C、自主的な取組を後押しするための何らかの法的措置、D、国民投票広報協議会の充実強化であり、この考え方に沿ってどのような対応ができるか、今後、更に論点を深掘りした整理を行ってみたいと考えています。

 今朝の幹事会におきましては、来週の定例日にも審査会を開催し、議論を継続することを提案いたしました。今後も、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い議論が行われるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いして、私の発言といたします。

森会長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 立憲民主党の近藤昭一でございます。

 私は、日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法と、改正法の附則四条について発言をしたいと思います。

 一昨年、二〇二一年、公職選挙法にそろえるべく、七項目について国民投票法が改正されました。その際、我が党の修正提案によって、施行後三年をめどに、有料広告制限、資金規制、インターネット規制などの検討と、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとするという附則四条が加えられたわけであります。附則四条が加えられた意味は非常に大きいものであるわけであります。

 第一に、現行の国民投票法は、有料広告規制、すなわちテレビ広告やネット広告などについての量的規制がありません。外国からの資金も含め、資金力によって世論が誘導されかねないという根本的な欠陥を持っていると思っています。

 また、第二に、附則は、附帯決議と異なり、法的な拘束力があるわけであります。三年以内にCM規制などについて議論し、結論を得て、法的な措置を取ることは、努力すればいいというものでなく、法的な義務であります。

 第三に、附則四条は、憲法上の要請であります。憲法九十六条の趣旨は、国民主権原理に基づき、主権者たる国民の意思による承認を求めたものであります。国民投票法はその手続法であり、投票環境が整備され、公平及び公正な投票が確保されることは憲法上の要請であります。

 第四に、国民投票法の抜本的改正を必要とする立法事実が存在すると思います。国民投票法制定のときと異なり、民放連は、量的自主規制はしないと明言しています。また、制定後十年以上を経て、グローバル化、ネット化、社会環境などの大きな変化があり、外国政府の干渉などのおそれもあります。現行の国民投票法では、公平及び公正な国民投票が確保されるという憲法上の要請が満たされなくなっていると思います。

 以上、附則四条の趣旨からは、根本的欠陥が是正され、公平公正が確保されない限り、憲法改正発議はできないと考えます。

 次に、現行国民投票法の根本的欠陥について具体的に述べたいと思います。

 第一に、国民投票を確実に実施することに困難を伴う人がいらっしゃるということから、更なる投票環境の向上を図るべきだと考えます。

 いわゆる三項目案にとどまらず、まず、船員が遠洋航行している場合等の洋上投票制度は、改善されてきてはいますが、なかなか投票率は上がっていない。その原因を調査し、必要な措置を講ずるべきだと考えます。

 また、現行国民投票法では、郵便等による不在者投票は要介護五に限定されていますが、要介護二や三の人でも、投票所で投票することが著しく困難な人は多数おられるわけであります。これらの方々は、国民投票ができない可能性があります。郵便投票の対象拡大は検討されていますが、不正行為の防止を図りつつ、より投票しやすい仕組みをつくるべきと考えます。

 さらに、コロナ感染が拡大する中、自宅療養などで投票所に行けない方がいらっしゃいます。隔離施設でも投票は認められてはいますが、十分には利用されていないという問題があります。

 加えて、在外選挙人名簿の投票率が低いため、二〇一九年七月の参議院選挙では、外国におられる日本人の約二%しか在外投票をされておられません。

 最高裁判所は、外国に住んでいる日本人が最高裁判官の国民審査で投票できない状況について、憲法違反と判示しています。憲法改正の国民投票において在外邦人の投票機会を実質的に奪うことがないよう、投票率向上のために必要な措置を講ずるべきと考えます。

 第二に、テレビ広告に対する規制が不十分なことであります。

 国民投票においては、影響力の大きいテレビ広告等が活用されることが必須でありますが、テレビ広告には膨大な資金が必要であります。しかも、テレビ広告の時間帯枠は、大手広告代理店の寡占状態です。資金力によって著しい格差と不平等が生じることになります。投票日の十四日前からの国民投票運動のためのテレビ広告は禁止と定められていますが、それより以前は基本的に自由となっており、適切な規制が必要であります。

 第三に、インターネット広告は全く規制がないということであります。

 インターネット広告費は、既にテレビ広告費を大きく上回っており、ターゲティング広告という受け手の性格や関心に合わせた情報発信を行っていることから、その影響力はテレビより大きいと言っていいでありましょう。二〇二〇年では、インターネット広告費が二兆二千二百九十億円、テレビ広告費が一兆六千五百五十九億円でした。テレビ広告だけでなく、インターネット広告においても適切な規制を設ける必要があります。

 第四に、インターネット上での情報悪用の危険にまだ対応できていません。

 ケンブリッジ・アナリティカ事件では、同社が、イギリスのEU離脱の国民投票やアメリカ大統領の選挙において、個人情報を不正に利用してフェイクニュースなどを効果的に発信する選挙戦術に協力をし、結果に影響を与えたと言われています。

 加えて、プラットフォーム事業者のかなりの部分が、外国資本の下、海外拠点において活動している実績があり、外国の勢力によって国民投票の結果が左右されることになれば、国家の主権が揺らぎかねません。これらは、国民主権、国家の主権に関わる重大な問題であり、放置することは許されません。

 以上のとおりでありますから、憲法審査会は、憲法九十六条及び附則四条の趣旨にのっとり、現行国民投票法の重大な欠陥の是正に真摯に取り組まなくてはなりません。憲法改正手続の重大な欠陥を放置したまま改憲を発議することは絶対にあってはならないことを強く訴え、発言を終わります。

森会長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵です。

 本日は、先週三月九日の、新藤幹事よりお尋ねのあった緊急事態条項の論点の我が党の考え方について述べさせていただきます。

 まず一点目、選挙困難事態の想定に関して。

 どの程度広範な地域で、どの程度の期間を選挙実施が困難な場合と想定するのかということですが、基本的に、我が党の条文のたてつけは、緊急事態条項の下に緊急事態基本法を制定し、具体的な点を定めることとしています。ですので、選挙困難事態も、条文は「特別の事情があるとき」とし、特別の事情があるときというのは、「法律の定めるところにより、」としています。

 緊急事態基本法では、想定として、やはり、国政選挙の場合は選挙区のほかに比例区があること、一定の選挙が終了した後、一部の地域だけを後発で選挙をするとなると、選挙結果が投票行動に影響を与え得ること等を考えると、選挙の一体性を阻害されない広範囲な地域であり、また、期間については、長期間選挙が実施できない状況だと考えます。東日本大震災時の地方選挙の特例や、今後起こり得るであろう南海トラフや首都直下型地震が起こった場合を想定すると、およそ六か月ではないかと考えます。

 また、我が党では、憲法裁判所が、議員の任期延長についても、六か月を過ぎれば職権により妥当性を審査できるとしています。もちろん、六か月を待たずに緊急事態が解除された場合は、速やかに選挙を行うことは当然です。

 二点目、選挙実施困難事態の認定に関して。

 我が党案が議決が三分の二であることについて、新藤委員は、衆参両院が通常の機能を発揮する中で議決するとなればと仮定されて、なぜ過半数ではなく三分の二なのか、二院制の原則なのか例外なのか、議論を深めるべきだとの御意見でした。

 しかし、そもそも、究極の緊急事態に陥ったとき、その前提は成り立つのでしょうか。衆参の議員が全員この国会にたどり着くことができるのかどうか。最悪の場合はどうでしょうか。首都直下型地震が起きてインフラが壊滅した場合、武力攻撃されて電気系統が遮断されたとき等々、全員ではなく一部の議員しか登院できない可能性は否定できないと考えられ、その場合、与野党のバランスが大きく崩れる可能性は否定できないと思います。それが果たして通常の機能を発揮する状態であると言えるかどうか。そのような状況下で、より民主的統制を図ろうと思えば、私は過半数ではなく三分の二が妥当であると考えます。

 つけ加えますと、そこまで想定しなくとも、自らの選挙に関して定めることであるので、過半数ではなく、お手盛り防止のため、厳しく三分の二にするべきというのが多数の意見でありました。

 三点目、議員任期の延長に関する憲法裁判所の関与についてですが、新藤委員は、国民の審判は緊急事態が解除された後に行われる国政選挙の結果によって示されるとされました。

 私たちは、議員の任期延長が、内閣と立法府において、これはあってはならないことですが、不当に延長されることを避けるために司法の関与が必要としました。

 延々と選挙が行われず、民主主義が遠のいてしまうことは絶対に避けなければなりません。議員が自ら、自分たちで自分たちの選挙を思うがままに延長できる、例えば政権与党が三分の二以上を占めて、不当に選挙を行わないなどという場合が想定できますが、司法の介入がなければ、このような事態を脱することはできません。内閣と国会を客観的立場から判断する司法の関与は必須であると考えます。

 そして、抽象的違憲審査、具体的審査ができる憲法裁判所は必置であると我が党は考えております。

 四点目ですが、延長期間の上限については、定めることとはいたしておりません。

 武力攻撃によるものであれ、災害であれ、今回のような大規模感染症であれ、上限は場合によります。ですが、内閣及び国会で、民意からかけ離れて上限を引き延ばすことも想定し、そのために、憲法裁判所が六か月を過ぎれば職権で合憲か否かを審査できるとしています。

 五点目です。前衆議院議員の身分復活ですが、衆議院解散や議員任期満了により議員が身分を失った時点から選挙までの間に緊急事態の宣言が行われた場合に、前衆議院議員の身分は復活するとしました。

 解散が行われた時点では、緊急事態が起きることを想定することは不可能なため、緊急事態が宣言され、選挙が執行できない状況に陥ったときには、解散を取り消して、前衆議院議員の身分を復活させて緊急事態に対処することは妥当であり、必要であると考えます。

 六点目は、我が党の成案では、緊急事態宣言が行われた場合の国会機能の維持として、国会の自動集会、会期継続、衆議院の解散の禁止、内閣不信任案又は信任の決議の禁止を定めています。また、国会機能の維持とは若干異なりますが、憲法改正の禁止も含めています。

 七点目のお尋ねは、緊急政令及び緊急財政処分についてです。

 我が党では、「緊急事態の宣言が発せられた場合において、国会による法律の制定又は予算の議決を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、あらかじめ法律の定めるところにより、内閣は、法律と同一の効力を有する緊急政令を制定し、又は財政上必要な処分を行うことができる。」としました。

 「あらかじめ法律の定めるところにより、」としたのは、単に法律の定めるところによりとすると、緊急政令は法律と同一の効力を有するため、緊急政令がその根拠となる法律自体をも改正してしまうおそれがあると考えます。これを防ぐために、前述しました緊急事態基本法を制定し、そこで詳細をあらかじめ定めることとし、緊急政令はこの定められた法律の範囲内に限り制定されることを担保しました。

 さらに、その要件充足性を判断させるために、憲法裁判所の事後審査の対象としています。

 最後のお尋ねです。参議院の緊急集会についてです。

 新藤委員が前回述べられていたとおり、緊急集会の招集される期間については、衆議院の解散から総選挙までの四十日間プラス総選挙から特別会までの三十日間、最長でも七十日間を想定したものであり、また、総選挙が行われることを大前提とされた、まさに平時の制度であると考えます。

 また、前々回、北神委員が、前回、浜地委員が御指摘されているように、現在の国会法では、内閣が案件を示して招集を求め、議員の権能も内閣が示した案件に限定されていますから、限定されている以上、限界があり、全ての機能が果たせるわけではないこととなります。

 ですので、参議院の緊急集会は、緊急事態のような選挙実施困難事態を想定しているものとは考え難いと思います。

 以上、新藤委員のお尋ねに対して、我が党の成案の内容を解説させていただきました。

 今後、我が党では、国民民主党、有志の会の皆様と緊急事態条項について実務者協議で議論を重ね、三月中に一定の成果を出したいと努力しているところでございます。

 憲法審査会でのより一層深い議論と一定の結論を出すことを強く要望いたしまして、私の意見表明とさせていただきます。

森会長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 先週行われた憲法審査会において、自民党新藤筆頭幹事から、緊急事態条項の論点整理と、残された論点に関する議論の方向性について意見表明がございました。国会議員の任期延長を含む緊急事態条項の論点につきましては、昨年から活発な議論が行われておりますが、この度、新藤筆頭から論点整理を行っていただいたことに感謝と敬意を表します。

 民主主義は、多様な民意の反映とともに、多数決による民意の集約機能を内在的に有しています。これまで、この憲法審査会において、緊急事態条項については、多様な意見について広く議論の対象とされてきましたので、残された論点について議論を集約する時期に入ってきているのではないかと感じています。

 そこで、私からは、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、有志の会でほぼ共通認識がある論点も含まれますが、新藤筆頭が言われた残る論点について、改めて意見表明を行わせていただきたく存じます。

 まず、選挙実施困難要件ともいうべき任期延長に関する要件の付加に関する論点についてです。

 新藤幹事から、地域と期間の要件化が必要ではないかとの指摘がございます。この点は、東日本大震災の事例が参考になると考えます。東日本大震災を、選挙の実施の観点から文言を抽象化すれば、我が党の北側幹事が繰り返し述べられた、広範な地域での国政選挙の適正な実施が長期間困難であることが客観的に明らかな場合と言えるのではないでしょうか。

 この点、広範な地域という文言の中身については、国政選挙の性質から、選挙の一体性、不可分性、平等性等を勘案し、判断されるべきではないかと考えます。この点、繰延べ投票が可とされる時間的許容性との関連で、北神委員が指摘された選挙の一体性を加味することは、極めて傾聴に値すると存じます。

 さらに、長期間とはどのぐらいの長期間かと考えれば、多くの会派から意見が出ているように、解散から四十日以内の選挙、選挙から三十日以内の特別国会の召集を規定した憲法の規定からして、優に七十日を超える長期間と考えるべきだと存じます。

 次に、決議要件について、新藤筆頭の先週の分析を改めて確認すれば、議決は、衆議院、参議院が維持された状態で議決するものであり、二院制の原則から結論を導けば、過半数で足りるとも考え得るし、四年、六年の規定の例外を生み出すものと考えれば、三分の二が必要とも考えられるとのことでございます。いずれも論理的に導けるものであると推察いたします。

 では、どのように判断されるべきかを考えれば、結局、価値判断ということになるのではないでしょうか。現行憲法が国会議員の任期を例外なく四年、六年と定めている趣旨、すなわち、国会議員の身分について、その任期を憲法上明記することによって国民による民主的統制の下に置こうとした憲法の趣旨に鑑み、憲法を改正しても、その例外を導くためには特別多数が必要であると考えます。

 次に、裁判所の関与についてです。共通項の多い五会派の中でも、要否の結論に差が見られる論点です。

 自民党の新藤筆頭のお考えは、任期延長に対する国民の審判は緊急事態が解除された後の国政選挙の結果で示されると考えるならば、これこそ最大の民主的統制であり、そのことを担保に、任期延長に対する判断は国会と内閣が責任を持って判断すべきであるとして、裁判所の判断は不要であるとの御主張であると理解をいたしました。

 また、我が党の北側幹事は、実体判断に必要な情報は内閣に存在し、迅速に判断されるべき事態認定を裁判所が迅速に行えるか疑問であるとし、決議要件に特別多数を必要とすることや、後ほど述べますが、任期延長の期間に上限を設けることで濫用防止は担保できると指摘されておられます。私は、新藤筆頭、北側幹事の認識と共通の認識を有しております。

 この点、日本維新の会の岩谷先生から、行政府、立法府による緊急事態条項の明らかな濫用と言える場合が考えられるから、やはり司法の判断が必要ではないかとの御主張がなされました。国家権力を監視する観点からの御主張には敬意を表するところでございますが、今申し述べましたとおり、制度的に担保していると考えますし、最終的には国民の判断が示されるところでございますので、手続面で司法が介在する必要はないと考えます。

 なお、日本維新の会、国民民主党、有志の会による条文案を策定するという積極的なお取組には、深く敬意を表するところでございます。

 この点、日本維新の会からは、憲法裁判所の設置が提唱されていると承知をしております。私の拙い理解からすれば、憲法裁判所の設置は、現行憲法の統治機構の在り方に少なからず影響を生じるところだと理解しています。違憲審査権の発動の方式や形式、裁判官の任命、特に違憲判決の効果について、現行の付随的違憲審査制とは異なる統治体系が予想されます。御党のお取組からはこれからも多くを学んでまいりたいと存じますので、どうか今後ともよろしくお願い申し上げます。

 その上で、現行の司法裁判所を前提とした国民民主党玉木代表と有志の会の北神委員、そして憲法裁判所の設置を求める日本維新の会、ここには馬場代表も御在席でございますけれども、三会派からどのような条文案が出されてくるのかについて強う関心を持っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 次に、任期延長期間の上限等についてでございます。

 この点、新藤筆頭が御指摘のとおり、各会派から、七十日程度、六か月、一年といった考え方が述べられています。この論点は、論理的には、選挙実施までどれくらいの時間を要するかという、現実に起きた緊急事態の状況に左右をされます。しかし、そのような事実状態を文言化することはできず、法的安定性を欠くわけでございまして、我が党の北側幹事の主張どおり、東日本大震災の地方選挙延期期間の実情を考慮して、六か月程度とすべきであろうと考えます。

 その際、最大八か月延長の実例があることから、念には念を入れて一年という御主張もあろうかと思いますが、例外規定にはそれなりの謙抑的な姿勢を示すことにより、国民の理解を得るべきと考えます。再延長の規定を設けておけば六か月を超える延長も可能となることから、六か月を妥当と考えます。

 時間の関係で、前議員の身分復活の論点と緊急政令、緊急財政処分の論点に触れることができませんでしたが、改めて意見表明の機会を賜ることができますれば、これらの論点についても意見表明をさせていただきたくお願いを申し上げ、私からの意見表明を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 言いっ放しを避けるために、これまで議論を積み重ねてきた緊急事態条項についてはテーマを絞って議論し、残された論点について意見集約をして、具体的な憲法改正の条文案作りに入ることを改めて提案したいと思います。

 同時に申し上げたいのは、この緊急事態条項については、是非、レッテル貼りではなくて、当審査会のこれまでの一年以上にわたる議論を踏まえた正確な情報発信を議員各位や有識者、メディアにもお願いしたいと思います。

 ちなみに、もう何度も申し上げていますが、私たち国民民主党の基本的な考え方は、緊急事態条項が危ないのではなくて、まともな緊急事態条項がない中で、緊急事態を理由に安易に権限の濫用などが発生し得る状況が放置されていることが危ないと考えます。つまり、私たちの目指す緊急事態条項は、権力の行使を容易化する条項ではなく、権力行使を統制する条項としての緊急事態条項であることを改めて強調しておきたいと思います。

 その上で、先週、新藤幹事から示された八つの論点について、前回かなりお答えさせていただいたと思いますけれども、本日は更に二つの論点、選挙困難事態の議決要件と緊急集会の位置づけについて述べたいと思います。

 まず、議決要件についてでありますが、新藤幹事からは議決要件として過半数を提起されたと思いますので、新藤幹事にまず伺いたいのは、自民党の憲法改正四項目の条文イメージ案、たたき台素案では、各議院の出席議員の三分の二となっています。そもそもこの自民党の条文イメージ案を見直すつもりなのかどうか、そのことを伺いたいと思います。

 その上で、我が党の意見を申し上げれば、選挙困難事案の国会承認は、確かに新藤幹事のおっしゃるとおり、衆参両院が正常の機能を発揮する中での議決となれば、大原則である過半数で足りるという考えも取り得ないわけではないと思いますが、ただ、憲法に規定された原則四年、六年の任期の特例を認める以上、これも新藤幹事のおっしゃる原則や現状を変更して特別な状態をつくり出すときに当たると思うので、やはり三分の二以上の議決を、当初の自民党案があるように、必要とするのが適切ではないかと考えます。

 ただ、確かに、あの後考えたんですが、三分の二を求めると任期延長が認められにくくなって、かえって国会機能の維持に支障を来す可能性も否定できないのかなというのはあり得るのかなと思います。であれば、仮に過半数でよしとするのであれば、その場合は、要件の適合性についての何らかの司法、裁判所の関与とセットで導入すべきではないかというふうに思います。

 次に、緊急集会の位置づけについて申し上げます。

 国民民主党は、仮に憲法五十四条二項の緊急集会が任期満了時にも開けると解釈するとしても、やはりそれは一時的、暫定的、限定的なものだと考えるべきだと思います。

 具体的には、最大七十日、約二か月を超えるような長期にわたる権限の行使は憲法上想定されていないと考えるべきだと思いますし、処理できる案件も内閣が示したものに限定され、権限行使にも一定の制限があるものと考えます。学説でも、緊急集会では憲法改正の発議や条約締結の承認はできないとされています。

 そこで、前回お答えできなかったので、尊敬する篠原委員に伺いたいんですけれども、篠原委員は前回、緊急事態ぐらいは参議院に花を持たせるというのが我々衆議院の情け心じゃないかと思うと発言されました。

 まず、緊急事態の話は、花を持たせるとか情け心といった情緒的な議論で判断すべきではないことを指摘をしておきたいと思います。というのは、緊急時という歴史的に見て正気を失いがちなときに情緒に流された判断を避けるためにこそ緊急事態条項が必要だというのが、私たち国民民主党の考えです。その意味で、憲法五十四条二項の緊急集会が、どのような期間、どのような案件について対応できるかを明確にした上で、足らざる部分を憲法改正によって補うべきだと考えます。情緒ではなく、法的な緻密な議論を求めたいと思います。

 そこで、篠原委員に伺いたいのは、前回も聞きましたけれども、予算案についての考えです。

 一九五三年三月十八日に二回目の緊急集会が開かれた際、年度末ですから、暫定予算の処理をした例があります。このとき、あえて本予算の処理はしておらず、二か月間の暫定予算の処理としています。このことから考えても、やはり本予算の処理は緊急集会の処理の対象としてはなじまないと考えます。

 加えて、土井真一先生の解説書によれば、内閣の経済政策をよりよく実現するために必要な補正予算を成立する必要性だけでは緊急の必要があるとは言えないともされています。こうした学説を踏まえると、やはり、緊急集会で予算案を処理できるにしても、それは二か月程度の暫定予算が限界だと考えます。

 立憲民主党の中間報告によれば、数年間は緊急集会で対応可能と思われるような記述がありますけれども、篠原委員は緊急集会で本予算の対応ができると考えるのか。しかも、複数年にわたって本予算の対応が緊急集会で可能と考えているのか。もし可能なら、その根拠と併せて伺いたいと思います。

 もう一点、前回、篠原委員が、任期延長というのは、特別法で工夫して、改正して、さっさとやって、そして、後でまとめて一緒に憲法改正をしていった方が私はいいんじゃないかと思っていますと述べておられますが、私には残念ながら全く理解ができませんでした。これは、憲法に違反する違憲立法を先にして、後で憲法改正をすればいいと主張されているのか。私の頭では到底理解できない考えですので、その真意を伺いたいと思います。

 憲法に違反するような特別法を場合によっては緊急集会だけで可決できるとすれば、まさにリベラルの方々が懸念する緊急政令以上の権力の濫用を招くのではないか。私は、立憲主義の観点から、心配で夜も眠れませんでした。任期延長を可能とするいかなる特別法が考え得るのか、篠原委員の考えを伺いたいと思います。

 最後に、国民投票法について申し述べます。

 前回も言いましたけれども、国民投票法に実効性あるネット広告規制を盛り込むための判断のためには、現場の意見をしっかり聞くことが必要ですので、二人の参考人招致を改めて森会長に提案したいと思います。一人目は、ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏。二人目は、間もなくアメリカ議会で証言を行う予定となっております、ティックトックの周CEOです。是非、森会長の取り計らいをお願いしたいと思います。

 以上です。

森会長 篠原委員に対して御質問がございましたけれども、玉木委員の質問時間を過ぎておりますので、またの機会にお願いをいたしたいと思います。

 また、私に対する御提言につきましては、幹事会において協議をいたしたいと思います。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 先ほど、立憲民主党の方から国民投票法の問題提起がありました。共通の問題意識は持っておりますが、同時に、私たちは改憲の立場ではなくて、現行憲法やあるいは放送の自由など、本当にこの社会状況の中で国民投票は実施していいのだろうかという問題意識から、大前提となる言論、表現の自由、これが根底から揺らいでいることについて意見を述べたいと思います。

 今、参議院予算委員会で、安倍政権下での放送法の解釈変更が問題になっています。安倍首相を始め政権の中枢が政権に批判的な放送番組に圧力をかけていたことは、極めて重大です。

 そもそも、放送法は、政府による放送内容への干渉を一切認めていません。それは、戦前に放送法が政府と一体化し、戦争へと進む要因となった深い反省によるものです。

 明治憲法は、言論活動や報道、出版を国家が幅広く制限することを認めていました。放送は、開始当初から、国策への批判を認めないなど広範な禁止事項が定められ、政府による検閲が行われました。日中戦争から太平洋戦争へと突き進む中で、政府は放送に対する統制を強め、厭戦や反戦につながる内容を排除し、戦争を進めるための番組を放送させました。放送は大本営発表を流すために利用され、戦争遂行体制がつくられたのです。

 この教訓から、日本国憲法二十一条は「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と定め、その下で、放送行政を憲法に即応させるために作られたのが放送法です。

 放送法第一条は、放送の不偏不党、真実、自律を国が放送局に保障して、放送による表現の自由を確保することを宣言し、放送が健全な民主主義の発達に資することを放送法の目的と定めています。第三条には、番組編集の自由を保障することを明記しています。これは取りも直さず、時の政権による干渉を排除し、権力からの自由と自律を保障するものです。この原則の下で、第四条に、放送事業者が自ら規律する準則として、政治的に公平であることなどを定めたものです。

 放送法立法時の国会審議で、政府は、放送による表現の自由を根本原則として掲げまして、政府は放送番組に対する検閲、監督等は一切行わない、放送番組の編集は放送事業者の自律に任されてあると明記しています。この一条と三条は、制定以来、一度も改正されていません。政府が放送番組を評価し介入することなど、到底認められません。

 ところが、歴代の自民党政権は、事あるごとに放送法の趣旨をねじ曲げ、政治的公平性などを口実に放送番組に干渉してきました。

 二〇一五年に安倍政権が、放送事業者の番組全体を見て判断するとしていた解釈を変えて、一つの番組のみでも政治的公平性が確保されているとは認められない場合があるとし、電波法に基づく電波停止もあり得るとする見解を明らかにしました。これは、憲法が保障する放送による表現の自由を侵害するものです。

 今回、総務省が行政文書と認めた資料には、安倍政権が批判的な意見を抑え込むために政治的圧力をかけた経緯が克明に記されています。安倍首相や礒崎元首相補佐官は、個別の事業者や番組、ニュースキャスターの名前まで挙げて、現在の番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき、けしからぬ番組は取り締まるなどと恫喝し、解釈の変更を迫っています。自らの意に沿わない番組を狙い撃ちにした、政権による言論封じそのものです。

 看過できないのは、安倍政権による放送法の解釈の変更が安保法制や改憲策動と軌を一にしていることです。

 安倍政権は、二〇一四年七月に、歴代政権の憲法解釈を百八十度変える集団的自衛権の行使容認を一片の閣議決定で行い、二〇一五年には安保法制を強行しました。二〇一六年には、首相自ら所信表明演説で、改憲は国会議員の責務だとあおり、改憲議論を主導してきました。こうした動きと並行して放送への介入が行われていたのです。

 同時期に行われた自民党の勉強会では、沖縄の二つの新聞社が政権に批判的だとして、沖縄の二つの新聞は潰さないといけないと講師が発言し、議員が相次ぎ同調する事態も起きました。安保法制や改憲、沖縄の基地問題など、国政の中心問題で政権に批判的な意見を抑え込もうという意図は明白です。

 更に重大なことは、岸田首相が、安倍政権下の政治的圧力によって変更した解釈をそのまま踏襲していることです。大軍拡や政権を批判する放送や報道を萎縮させながら、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有に踏み出そうとしています。新たな戦前ともいうべき極めて深刻な事態です。

 今、国民の代表である国会に求められているのは、放送の自由に対する侵害の真相を全面的に明らかにし、放送による表現の自由を取り戻すことです。これは憲法と民主主義の喫緊の課題であると強調して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 前回、新藤筆頭幹事から、緊急事態条項について我々に対しても質問がありましたので、まず、それにお答えをしたいというふうに思います。

 まず、任期の延長について。選挙困難の認定に関して、どの程度広範な地域で、どの程度の期間を選挙困難と想定するのかという問いについては、これはなかなか細かく具体的に定めることは難しいというふうに思いますので、本来の趣旨である総選挙の一体性、この一体性を害されるほどの広範な地域で長期にわたり選挙が困難という文言で、私どもは十分ではないかというふうに思っています。

 次に、選挙困難事態における国会承認の議決要件は過半数とするのか三分の二以上の特別多数とするのかということに対しては、我々は、国会の三分の二以上の多数としています。

 その理由は、お手盛りとかいうことではなくて、緊急時といえども、憲法で明確に定められている議員の任期の例外をつくり、国民の重大な権利である選挙を経ることなく議員任期の延長をすることは大変重たい案件なので、通常の議決案件である二分の一以上では緩過ぎるというふうに考えています。

 三つ目には、緊急事態認定とそれに伴う議員任期の延長は、その判断を裁判所に委ねるのではなく、内閣と国会が責任を持って判断すべきではないかという問いかけがありました。

 当然、内閣が緊急事態を認定し、議員任期の延長をするしないについても、私たちは、まずは内閣の発議がなされた上で、政治が責任を持って、国会の議決が必要だというふうに考えています。

 しかし一方で、議員任期の延長という緊急かつ例外措置が議員という当事者の御都合主義にならないように、内閣も議員で構成されるというのが基本でありますので、みんな当事者であるわけです。そこにやはり司法の一定の関与があった方が権力の均衡が図れるというふうに考えます。

 具体的には、我々の案では、司法は、国会から申立てがあった場合に限って、内閣、国会の判断が適当だったかどうかを事後的に判断し、不適当とされた場合にも、勧告をすることでとどめています。こうした抑制的な権限を司法に与えることにより、新藤筆頭幹事がおっしゃる議会制民主主義との矛盾はないというふうに考えています。

 四つ目の論点としては、任期延長期間の上限は一年とし、再延長も可能とするのが合理的ではないか、そして、選挙が可能になった際には、速やかに延長措置を解除するといった御意見を頂戴しました。

 これに対しては、我々も、一年間を上限にしつつ、国会議決により再延長も可能としています。余り短く設定することにより、小刻みに再延長することは避けた方が、特に緊急時でありますので、国会の円滑な運営を確保できるというふうに思っています。

 五つ目に、解散権を行使した内閣が選挙困難事態を認定し国会承認を求めている状態というのは、本来であれば解散してはならない状態に陥ったことを意味する、したがって、解散による衆議院議員の失職を一時的に留保して、解散前の状態に復帰させる必要が生じたと考えるべきではないかとの問題提起がありました。

 我々の案では、議員の任期が延長され、かつ、既にその任期が終了していた場合には、当該任期は終了していないものとみなすというふうにしています。これは、考え方や条文の表現方法は様々あるというふうに思いますけれども、いわゆる前議員の取扱いに関する法的効果は同じではないかというふうに考えています。

 以上が、議員任期の延長制度についてであります。

 その他の国会機能の維持策である国会の閉会禁止、閉会中の即時召集、解散の禁止、内閣不信任決議案の議決の禁止については、基本的に皆さんと一致しているというふうに理解しています。

 次に、どうしても国会機能を維持することが困難な場合を想定し、内閣が一時的に国会機能を代替する、緊急政令、緊急財政処分の制度を整備しておくことが必要ではないかという御意見がありました。

 問題意識はよく分かります。分かりますけれども、緊急政令については、既に災害対策基本法など多くの個別法に定められています。それでも穴があるのかどうか、まずは、こうした現行の法律において我々が想定すべき緊急事態が網羅できているのかどうか、そして、もし穴があるのであれば、これを埋める手当ては法律でできるのかどうか、順序としてこの二点をまず検証することが筋ではないでしょうか。

 なお、緊急集会については、既に前々回、詳細に論じてまいりました。また、前回、浜地委員からありました、緊急集会に関連する国会法の改正経緯をるる述べられた発言を拝聴し、確信を更に深めました。緊急集会は、選挙ができる状態を前提とする平時の制度であります。長期にわたり選挙が実施できないような緊急事態を想定していないものであることは明らかであります。議員任期の延長制度の代わりにはなり得ません。

 最後に、国民投票法について若干触れます。

 やはり、インターネットの広告規制について議論を深める必要があります。

 他の新聞などの言論空間に比べて、インターネットでは断然、玉石混交の情報が氾濫します。それだけでなく、今回のウクライナ戦争でも、ロシアはサイバー攻撃で偽情報を流すことにより世論操作を行っています。実際、親ロシア派を形成することにそれなりの効果を上げているのは周知の事実であります。

 憲法改正という重大な判断をするに当たって、国民の自律的な意思が阻害されないようにどう対応するのか。ファクトチェックを行う民間機関との連携ももちろん重要です。また、国民投票広報協議会も積極的に各政党の主張をインターネットに大量に流すことができるように機能を強化すべきだと思います。

 このように、現時点で私に考えられる対処法は、事実確認を徹底することと同時に、玉を圧倒的に流し込むことによって可能な限り石を埋没させることであります。今後も専門家を交えて議論を深めていくことを御提言申し上げまして、私の御意見といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之です。

 国家安全保障戦略には三つの国益が明記されています。そのうち最も中核的な国益は、「我が国の主権と独立を維持し、領域を保全し、国民の生命・身体・財産の安全を確保する。」ことだと考えます。この国を守るという国家として最も重要な点について国の最高法規に実効的な規定が存在しないのは、国のガバナンス上、大きな問題だと考えます。

 内閣政府広報室が昨年末に実施し今月公表した自衛隊・防衛問題に関する世論調査によれば、自衛隊に対して三二・三%の方がよい印象を持っている、五八・五%の方がどちらかといえばよい印象を持っていると、九割を超える方が肯定的に回答しています。なお、どちらかといえば悪い印象を持っているは四・四%、悪い印象を持っているは〇・六%です。

 こうした状況においても、合憲という憲法学者は少なく、中学校の大半の教科書が自衛隊違憲論に触れています。

 また、自衛隊を違憲としながらも、急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使し、国民の命と日本の主権を守り抜くと、立憲主義と相反するような主張をする政党もあります。

 防衛は国家権力の発動の最たるものだからこそ、私は、憲法上、明文の規定があるべきと考えます。

 自民党案は、自衛隊の役割を位置づけるとともに、内閣総理大臣を自衛隊の最高の指揮監督者とすることでシビリアンコントロールが利くようにしていますし、法律の定めるところにより、国会の承認等の統制に服するようにしています。

 憲法九条について、自民党が直ちにフルスペックの集団的自衛権の実現を目指して改正しようとしていると懸念する声もあるようですが、自民党が示している条文イメージ、たたき台素案は、憲法九条一項及び二項の解釈を変えることなく、徹底した平和主義を維持することが前提となっています。

 東日本大震災当時、統合幕僚長として自衛隊の指揮に当たった折木良一さんは、近年、自衛隊の憲法上の地位についてコメントしています。自衛隊の活動を根本で支えるものは二つある、一つは国民の理解と信頼、もう一つは国の支えである、真剣に議論して、最終的に国民の判断を仰ぐプロセスを私は絶対に進めるべきだと考える、このように指摘しています。

 論点が整理されてきた緊急事態条項に加えまして、憲法九条の在り方についても憲法審の場でしっかりと議論していくべきと考えますので、会長、幹事の皆様にはお取り計らいをよろしくお願いをいたします。

 次に、国民投票法に関してですけれども、これまでの議論におきまして、立憲民主党は法的規制による対応が必要であると主張されていて、先日、階幹事からも、立憲民主党案について資料が配付され御説明がありました。

 これに関し、階幹事に質問させていただきたいと思います。次回以降の審査会でお答えをいただければと思います。

 まず、立憲民主党案では、放送CMについて、勧誘CMを、主体を問わず、そして発議後の全期間にわたり禁止するとされていることが特徴の一つだと思います。ただ、このような主体を問わない全期間にわたる禁止は、表現の自由や国民投票運動の自由の過度な制約となるおそれはないか、慎重に検討する必要があるように思われます。

 また、立憲民主党案では、意見表明CMについて、政党のみ禁止するとされています。しかし、国会における審議、発議を経て、政党は憲法改正案の内容を最もよく知る立場にあります。その政党についてのみ規制をかけることは、国民に対する情報提供の観点から問題はないのか、議論が必要なように思われます。

 以上、述べましたように、私は、この問題を考えるに当たりましては、国民投票運動の自由と国民投票の公平公正とのバランスを取ることが大変重要であると考えています。この点、先ほど新藤幹事からもありましたが、国民投票運動は原則自由という理念は、元々は制定時に旧民主党が強く主張されていたことであるとも承知しています。

 そこで、階幹事に、国民投票運動の自由と国民投票の公平公正とのバランスについてどのようにお考えか、立憲民主党案でこのバランスは崩れていないのか、次回以降の審査会で構いませんので、御見解を伺えればと思います。

 以上、CM規制につきましては、さきに述べたバランスに留意しながら、引き続き丁寧な議論が必要であることを申し述べまして、私の発言を終わります。

道下委員 立憲民主党・無所属の道下大樹です。

 発言の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 私からも、国民投票法について意見を述べます。

 当審査会ではこれまで、資金力のある者が憲法改正の賛否に関する扇情的なCMを大量に発信し、国民が受け取る情報が偏り、国民投票の結果がゆがめられる危険があるのではないかという問題意識から、放送CMの内容ではなく方法、手段に関する規制の是非について議論がなされてきました。

 しかし、それだけではなく、放送番組の内容そのものについても、国民が受け取る情報が偏り、国民投票の結果がゆがめられる危険について議論しなければならない状況になっているのではないでしょうか。我が党の小西洋之参議が参議院予算委員会で取り上げた公文書により、安倍政権時代において、放送法の解釈変更の圧力が官邸側から総務省にあったことが明らかになったからです。

 そもそも放送法ができたのは、さきの太平洋戦争でメディアが大本営発表をそのまま垂れ流し、国民に真実を伝えなかった反省からです。その反省に立ち、一九五〇年に施行された放送法は、憲法二十一条の表現の自由を基に制定されました。憲法二十一条の表現の自由、また検閲の禁止は、放送事業者にも当然保障されるため、放送法第一条では、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」、放送法第三条では、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」と定められ、表現の自由や放送番組編集の自由が規定されています。

 しかし、その一方で、放送法第四条では、「放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。」とし、「政治的に公平であること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」などとしています。

 学説は、この条文について、倫理規定であり、行政罰の根拠にはならないというのが主流です。なぜなら、表現の自由をベースにする放送法が番組内容に関する厳しい規制を置くことは矛盾であり、仮にそうだとすれば、憲法違反の疑いがあるからです。しかし、政府、行政側は、法規範性があるとして、免許停止を含めた行政罰の根拠たり得るとの考えであり、この二つの考えが対立している状態であります。

 去る三月十四日に開催された衆議院総務委員会においても、総務大臣は、法規範性を有する、NHK会長は、法規範性を有するか否かに関しては見解が分かれていると、答弁が分かれました。

 そこで、当審査会において、総務大臣、NHK会長など放送事業者及び有識者を招致し、放送法第四条の規定の性質とその合憲性に関する参考人質疑を行うよう、会長にお取り計らいをお願い申し上げます。

 その上で、放送法第四条が合憲であったとしても、二〇一五年に高市総務大臣が示した、政治的公平に反しているかについて、放送事業者の番組全体ではなく一つの番組のみでも判断できるとの解釈が、時の政府による番組内容に対する圧力又は忖度の温床となり、憲法改正に関する国民投票の結果をゆがめる危険があることを認識すべきです。

 例えば、国民投票前に放送局が行う政治的な報道や討論番組などにおいて、憲法改正に賛成又は反対する意見の表明や公正な討論の機会を制限することにつながる場合もあります。また、放送局が、憲法改正案において政府と同じ立場の個人や団体を優遇し、違う立場の個人や団体の発言機会を制限することがあるかもしれません。

 さらに、憲法改正案において政府と同じ立場の特定の放送局の偏向報道には見て見ぬふり、おとがめなしとする一方で、ある一つの番組で、憲法改正案において政府と違う立場の個人や団体だけを出演させた場合に、政府がその放送局を、放送法における政治的公平性を理由に、電波法七十六条による電波停止をちらつかせて抑圧することで、放送局が萎縮し、放送内容が変更され、有権者が憲法改正案についての適切な情報を得ることができなくなる場合もあります。

 このように、国民投票と放送に関しても様々な課題や問題がありますが、インターネットに関しては更に課題が山積していると思います。

 改正国民投票法附則第四条では、国は、この法律の施行後三年をめどに、必要な法制上の措置等を講ずるものとし、国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限などを挙げています。

 昨年六月二日に開催された当審査会では有識者を参考人招致し、私も質問しましたが、民間側が主体としたネット利用者の権利の保障のための健全な言論空間の整備など、インターネット上の情報環境の整備、メディアも含めたファクトチェック、フェイクニュース対策、行政側からのガイドラインなどが必要であると考えますし、フィルターバブルやエコーチェンバー対策としてのプラットフォーム規制なども必要であると思います。

 憲法は国家の根本的法規であり、国民生活の全ての面にわたって影響を及ぼします。そのため、国会での憲法に関する慎重な上にも慎重な論議が必要ですし、国民の理解も深める必要があります。

 しかし、近年、改憲勢力は、安全保障や大規模災害への対応、教育無償化、議員任期の延長などを、法律によって対応可能かどうかの議論を経ずに、憲法を改正して進めようとしています。そうした憲法改正案には、国民の自由と権利を制限し、時の国家権力が暴走する可能性が十二分にあると国民は懸念し、危惧をしています。

 私は、憲法改正手続に関する法律をしっかりと構築した上で、厳格に守り、もし憲法改正の是非を問うことになった際には、そうした中で国民の意思を確認しなければならないと考えます。そのためにも、国民投票法におけるCM規制やインターネット広告規制など、法制上の十分な措置がないままの憲法改正発議は当然あり得ないと考えます。国民投票法改正に向けた速やかな討議を求めます。

 私は、自由と平等、民主主義、人権と法治を尊重する国を目指し、論憲の立場で今後も取り組みます。

 以上です。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 緊急事態条項の各論点については、立憲民主党、共産党を除く各党派の立憲主義を守る観点からの積極的な議論により、一致点と相違点が明確になってきました。相違点について掘り下げた議論をしていくべきだと考えます。

 特に、議員任期延長について、大きな論点である国会の議決要件と裁判所の関与の二点について、先ほどの我が党の三木委員の発言に加えて私の考えを述べ、また、自民党及び公明党にこれらの点についてお伺いいたします。時間の関係もありますので、お答えは次回以降にいただければと思っております。

 まず、一点目の国会の議決要件について、自民党の新藤幹事にお伺いをいたします。

 新藤幹事は、先週の本審査会において、憲法上、三分の二以上の特別多数によるとされているのは、議員の除名など、原則や現状を変更して特別な状態をつくり出すときであることなどから、お手盛り的議決を防止するような視点ではなく、二院制の原則なのか例外なのか、議論を深掘りする必要があるという趣旨のことを述べておられます。

 この点、議員任期延長は、衆議院議員四年、参議院議員六年とされている原則を、衆議院でいえば四年半とか五年とか、参議院でいえば六年半とか七年とするものであり、仮に新藤幹事の区分によるとしても、まさに、緊急事態に対処すべく、原則を変更して特別な状態をつくり出すことに当たるのではないでしょうか。また、お手盛り的議決を防止するとの観点も必要であることは、先ほど我が党の三木議員が述べたとおりです。

 さらに、憲法五十八条二項に規定されている議員の除名は議員の身分を議決によって失わせる場合ですが、原則四年や六年とされている議員の身分を例外的にその任期前に失わせる議決について、慎重を期す必要性などから特別多数とされています。そうであるならば、同様に、原則四年や六年とされている議員の任期を延長する場合にも特別多数とすることが、除名の場合と比べて均衡が取れると考えます。

 以上、議決要件は三分の二以上の特別多数とすべきと考えますが、いかがでしょうか。

 次に、二点目の司法の関与について、新藤幹事にお伺いをいたします。

 新藤幹事は、先ほど、緊急事態認定と議員任期延長について、高度な政治的判断であることから政治が責任を負うべき、また、国民の審判は緊急事態が解除された後に行われる国政選挙の結果によって示されるため、それこそが最大の統制であり、裁判所の関与は不要ではないかという趣旨の御発言がありました。

 しかし、緊急政令や緊急財政処分などを認める場合はもちろん、仮に議員任期延長だけを認めるとしても、憲法上の原則に対する例外的措置であるため、要件が満たされていたか否か、選挙での審判を受けるのみならず、司法によるチェックも受けることが慎重を期す意味において必要だと考えます。また、裁判所において公開で審査が行われることは、国民が事後的に選挙で判断する際の材料を提供するという意味でも有益だと考えますが、いかがでしょうか。

 さらに、確かに、緊急事態の認定や議員任期の延長の可否について国会の議決を求めることで、国会が内閣の暴走に対する歯止めとなり得ます。それでは、その国会が暴走する可能性はないのでしょうか。特に、議院内閣制を取る我が国では、与党が圧倒的多数を取った場合、国会が内閣に対する歯止めになり得ない、あるいは内閣と一体となって暴走する可能性は十分にあり得ます。このような場合、民主主義、多数決の論理ではなく、法の論理によって司法が政治権力の暴走や濫用を止める仕組みが必要になると考えます。

 次に、これは自民党と公明党にお伺いをいたしますが、議員任期の再延長の際の裁判所の関与も不要とお考えでしょうか。また、再延長の際に国会議決などの要件も不要とお考えでしょうか。お伺いできればと思います。

 続いて、公明党北側幹事にお伺いをいたします。

 緊急事態について、裁判所は詳細な事実関係を把握しないので判断できないという趣旨の御発言がありましたが、通常の裁判でも、裁判所は原告、被告が提出する証拠あるいは職権に基づいて事実関係を把握し判断を下しており、緊急事態についても同様、裁判所が判断を下すことは可能だと考えますが、いかがでしょうか。

 なお、先ほど、公明党吉田委員が、国会の特別多数という統制があるじゃないかというようなこともおっしゃったかと思いますが、それだけで濫用を防止するには不十分であることは今述べたとおりです。

 なお、憲法裁判所については、先ほど新藤幹事や吉田委員から、付随的違憲審査制を取る現行憲法の体系と大きく異なるものであるといった御発言がありましたが、ドイツやアメリカ、フランスなどがこの数十年で下した違憲判決の数はいずれも四百件以上ある一方、日本ではこの七十五年間で僅か十一件しかありません。これで、今の最高裁がいわゆる憲法の番人と言えるでしょうか。

 また、このような状況で付随的違憲審査制を維持することが日本の立憲主義にとってよいことなのでしょうか。憲法を改正せずに現状の付随的違憲審査制を維持することは、私は、立憲主義の観点から大きな問題だと考えます。

 以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 今御質問があった点については、また次回にでもお答えをしたいと思います。

 国民投票法とCM規制の問題、これについて、基本的な考え方について改めて申し述べたいと思います。

 御承知のとおり、現代は、情報技術が著しく進展をしておりまして、情報を発信する方法、またその主体も極めて多様になっております。今の時代というのは、過剰な情報が氾濫をしている、こういう時代になっているわけですが、私は、こういう時代に、果たして、法律の規制で、情報の発信を法規制していくということがそもそも可能なのかというふうな疑問を持っております。

 確かに、誤った情報、デマ、フェイク情報等は当然あるし、それは社会の混乱を招くことになることも明らかでございますけれども、といって、情報の発信そのものを規制するというのはそもそもこれは容易じゃないんじゃないかというふうに思っておりますし、ここをあえて法規制をしていったときに、一方で、情報統制になってしまって、国民の知る権利や表現の自由を侵害してしまう、さらには、そういう過度な規制をすることによって、大事な、必要な情報まで排除されてしまう、そういう危険もあるのではないかと思うんですね。

 ですから、もちろん、誤情報、デマ情報、フェイク情報というのは、あるのは間違いありません。これをできるだけ小さく、排除していくためにどうしていけばいいのかというのが、まさしく今、論点になっていると思うんです。

 それはやはり、一つは、メディア側の、事業者団体があります、この事業者側のルール作り、自主的な規制、これをしっかりやっていただくということだと思うんですね。昨年も、民放連を始め事業者団体の方々から参考人で御意見をお伺いしましたが、そうしたルール作りをしっかりやっていこうというふうな流れに私はあると思います。それを更に醸成をしていただくということがとても重要なんだろうと思っておりますし、一方で、CMの場合は広告主がいるわけでございますから、その広告主側、例えば政党側の方で自主的な規制をしっかりやっていく。

 こういう、自主規制をしていく、ルール作りをしていく、そのルールに従わない情報については信用できない、このような形にしていくことがいいのではないかと私は思います。

 さらには、もう一点、国民投票の広報協議会という仕組みがあるわけですね。この国民投票広報協議会について、どういう役割を持たせるのかということを、私は、もう詰めた議論をしていかないといけないと思うんですね。これは是非、各会派間で、広報協議会で一体何をやってもらうのかということはしっかり議論させていただきたいし、一定の合意を形成して、これは最終的には、規程というのがあるんですけれども、その規程作りをしていかねばならないわけでございます。

 国民投票広報協議会の役割を充実させる。そこからの発信というものを、各メディアの、放送であれ新聞であれネットであれ、そうした事業者の方々も優先してそれを掲載していただくというふうな協力をしていただく、こういう仕組みづくりをすることが大事じゃないかな。例えば、ネット検索をしたら国民投票広報協議会の情報発信が一番上に出てくるというふうな協力をしていただくようなことが大事なわけであります。

 いずれにしましても、今のこの時代に、様々なメディアから発信されるこういう情報を法的規制をしていくというのは現実的にはなかなか容易じゃありませんし、また、それが過度にわたると本当に情報統制にもなってくることにもなりかねないわけでございます。ここはしっかりと議論をさせていただきたいと思います。

 選挙の公平公正と国民投票運動の自由をどうバランスを取っていくかという議論でございますけれども、これについての基本的な考え方はこうあるべきではないかということで意見表明をさせていただきます。

細野委員 自民党の細野豪志でございます。

 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 緊急事態条項について論点整理がなされ、この場で活発な議論が行われていることを歓迎したいと思います。

 東日本大震災からちょうど十二年が経過をいたしました。あのとき政府の中にいた者として、仮に国政選挙のタイミングが来ていれば、任期が来ていれば、二つしか選択肢はありませんでした。一つの選択肢は、被災地の有権者が投票を実質的にできない状況にもかかわらず、憲法に基づいて選挙を強行するという方法、一方で、違憲の疑いが持たれる可能性を許容しながら、選挙を先延ばしをし、国政選挙を時間を置いて行うという、この二つの選択肢しかなかったわけであります。

 いずれも立憲主義の観点から認め難いというふうに思いますので、その意味で、憲法改正の必要性についてここでしっかり議論することを是非皆さんに求めたいと思います。

 今後、コロナを上回る強毒化をした感染症の可能性、また国家有事の可能性を考えると、この課題に応えることは、いつ何があるか分かりませんので、極めて緊急性の高い課題であるということを申し上げたいと思います。

 ただ、一方で、この課題が間違っても国会議員の身分の保身というふうに取られないようにする細心の注意が必要だと私は思います。そこで、任期の延長幅についての慎重な検討が必要であるという観点から意見を述べたいと思います。

 一つ我々が思い出すべきは、第二次大戦後の選挙がいつ行われたかです。選挙が行われたのは昭和二十一年四月の十日、敗戦が昭和二十年八月十五日でありますので、八か月を経ずに国政選挙が行われております。当然、東京を始めとした大規模な空襲を受け、そして広島、長崎は原爆を落とされていますので、まさに国家荒廃の状況の中で、我が国は八か月後に選挙をしたわけですね。

 実際、当時のことを調べてみますと、戦地から帰ってくる復員の兵士に対しても投票権を与えておりまして、当時電子化されていない状況の中でよくあそこまでやったなという、相当精緻な取組が行われております。

 考えてみますと、この第二次大戦を上回る選挙を行えない事態というのはどういうことなのか。それは、相当のことがあっても八か月後に選挙ができたんだということを我々は忘れてはならないと思います。

 もう一点指摘をしたいのは、戦争時、若しくは、例えば災害時というのは、国民が意思表示をしたいと考える、しなければならない状況でもあるということですね。つまり、このバランスをどう取るかという観点から、私は延長幅はできるだけ短い方がいい。皆さんから様々な議論が出ていますが、原則半年、再延長が認められるとしてもそれを一年程度にして、国民の意思を問うということを明確にすべきだと私は考えます。

 繰り返し申し上げますが、緊急事態における国会議員の任期の延長の問題が国会議員の保身だと取られた瞬間に、民意は極めて厳しいものになるというふうに思います。最後に判断するのは国民です。我々は発議権のみがあります。国民の理解が得られる形でこの延長幅についてしっかりと判断していくべきだということを申し上げたいと思います。

 最後にもう一点、個人的にではありますけれども、若干の懸念を申し上げたいと思います。

 実際に国民投票に諮る場合に、緊急事態のこの条項だけを、一点のみで国民投票に諮るかどうかは慎重な検討が必要だと思います。もちろん議会制民主主義を守るためにも極めて重要な論点ではありますが、国民の権利義務に直接関わるかというと、そこはやや技術的な問題もあるわけですね。

 そこで、国民が本当に憲法改正が必要だという意味では、本質的な議論、先ほど小林委員からもありましたけれども、憲法九条の議論もあると思います。ただ、これはなかなか合意が難しい。ならば、例えば参議院の合区に関わる問題、これも極めて深刻です。若しくは教育の充実に関わる論点、これも大変国民的な関心事だと思います。そこも含めて、単独の論点ではない形で、きちっとこの憲法審査会で議論をし、発議をし、最後は国民の審判を仰ぐというのも一つの考え方ではないかということを最後に申し上げたいと思います。

 以上です。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 先ほどは、小林先生から御質問をいただきました。次週お答えできればと思っております。

 最初に、筆頭間の協議により、国民投票法など憲法改正の手続に関する議論が本日と来週の二週にわたり行われることになりました。本日、これに沿って我が党としては意見を述べていることを、まずもって申し上げます。

 他方、残念ながら、他の発言者の中には、国民投票法について全く言及がないか、ほとんど言及がない方がいらっしゃいました。

 そこで、我が党の近藤委員が指摘した国民投票法の四つの欠陥、すなわち、三項目案ではカバーできない投票環境の不備、テレビ広告に対する不十分な規制、ネット広告に対する規制の欠如及びネット上での情報悪用の危険の放置、これにつき、次回の当審査会で各党各会派の御意見を伺いたいと思っております。

 あわせて、先ほど道下委員が提案した参考人質疑の開催についてもお願いしたいと思います。

 会長、是非お取り計らいをお願いいたします。会長、よろしいでしょうか。お取り計らいをお願いします。

森会長 幹事懇等で協議いたします。

階委員 はい。

 その上で、前回、務台委員から私に対し、予算委員会開会中は他の委員会の審議を行うべきではないという内向きのルールは大方の国民の納得を得られないとして、憲法審査会に大臣出席は求められない以上、予算委員会開会中に憲法審査会を行ってどのような不都合があると考えられるかとのお尋ねがありましたので、あえてこの点についてお答えします。

 まず、予算委員会中は他の委員会の審議を行うべきではないという衆議院の慣例は、国家の一年の活動を決める重要な予算案の審査に集中すべきという趣旨に基づくものと考えられます。その趣旨は、予算案の先議権を有し、参議院に優越する議決権を持つ衆議院においては特に当てはまります。したがって、この慣例の下では憲法審査会を開催することはできないというのが我々の立場です。

 逆に、この慣例について各党各会派が廃止することに合意すれば、憲法審査会を開催することに不都合はなくなるわけです。もっとも、その場合、当然のことながら、憲法審査会のみならず、大臣の出席が必要ない他の委員会も開催できることになります。例えば、我が党始め野党が国会に提出し、与党の協力が得られず審議されてこなかった数々の議員立法についても、大臣の出席は必要ありません。予算委員会開会中に所管の委員会で審議することができるようになります。

 今回は、私から務台委員にお尋ねします。

 衆議院の慣例が内向きで国民の納得が得られないというのであれば、この慣例を廃止すべきというお考えですか。仮にそうであれば、憲法審査会のみならず、大臣出席が不要な議員立法の審査を行ってよいというお考えですか。この二点について、次週で結構ですので、お答えください。

 次に、国民投票法の改正によって盛り込むべきインターネット関連の規制について申し上げます。

 昨年十二月の当審査会で、私は、慶応大学の山本参考人に対し、国民投票法を改正するに当たっては、当然、ネットによる国民投票運動であるとかネット広告への規制を盛り込む必要があると考えているとした上で、それについての御見解を山本教授に求めました。山本参考人は、プラットフォームを通じて国民投票広報というものを展開していく必要性はかなりある、その点は改正の必要性があるのではないかと答弁されました。

 この御意見を参考にして、我々は、国民投票広報協議会が憲法改正案に関する説明会を開催できるようにし、インターネット等を利用する方法による憲法改正案の広報をできるようにする改正案などをまとめました。

 三月二日の当審査会において、私は、この改正案を説明した上で、参考人の貴重な御意見を無視して、公職選挙法と横並びの三項目の国民投票法改正案を審議するだけでは、当審査会の存在意義が失われると申し上げました。しかし、その後に北側幹事から、階幹事から国民投票法の改正が必要と山本先生がおっしゃっているかのごときお話がございましたが、私はそういう理解をしていませんとの発言がありました。

 さきに述べたとおり、山本参考人は私の質問に対し、明確に、国民投票法の改正が必要と答弁しています。おっしゃっているかのごときという言い方は、おっしゃっていないことを前提とする表現です。私の発言の信用性を損なうものであり、看過できません。前回の当審査会で奥野委員からも北側幹事に発言の撤回を求めましたが、北側幹事は、その後に発言の機会があったにもかかわらず、この求めを無視しました。

 改めて、北側幹事にこの部分の撤回を求めます。

 最後に、今回の北側幹事の例からも分かるとおり、フェイクニュースは悪意ある特殊な人物のみが発するわけではありません。賢明で善良な人物であっても、意図せずに事実と異なる情報を発した場合、これがネットを通じて拡散するフェイクニュースとなってしまう危険性があることを我々は肝に銘ずるべきです。表現の自由市場で淘汰されるという考え方は余りに楽観的です。

 国民が正しい情報を基に国民投票に臨めるよう、我々が提案する国民投票法改正案などを踏まえ議論を進めることを提案して、発言を終わります。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いにつきましては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと思います。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.