衆議院

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第5号 令和5年3月30日(木曜日)

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令和五年三月三十日(木曜日)

    午前十時四分開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤信太郎君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 山下 貴司君 幹事 階   猛君

   幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    五十嵐 清君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      岩屋  毅君    上田 英俊君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      神田 憲次君    熊田 裕通君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      下村 博文君    田野瀬太道君

      辻  清人君    中西 健治君

      深澤 陽一君    古川 直季君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    務台 俊介君

      渡辺 孝一君    新垣 邦男君

      枝野 幸男君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      本庄 知史君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      國重  徹君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十日

 辞任         補欠選任

  船田  元君     五十嵐 清君

  山本 有二君     上田 英俊君

  渡辺 孝一君     深澤 陽一君

  谷田川 元君     米山 隆一君

  吉田はるみ君     枝野 幸男君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     古川 直季君

  上田 英俊君     山本 有二君

  深澤 陽一君     渡辺 孝一君

  枝野 幸男君     吉田はるみ君

  米山 隆一君     谷田川 元君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 直季君     船田  元君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 憲法改悪を許さないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五九〇号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 この際、一言申し上げます。

 去る三月十五日、本憲法審査会の前身たる衆議院憲法調査会及び憲法調査特別委員会の会長及び委員長を務められた中山太郎先生が御逝去されました。

 中山先生は、二〇〇〇年一月発足の衆議院憲法調査会の会長として、衆議院における憲法論議をリードされるとともに、二〇〇五年九月には引き続き憲法調査特別委員長に就任され、二〇〇七年五月の憲法改正国民投票法の制定に尽力されました。

 中山先生は、常に、憲法は国民のものをスローガンに、与野党共に政局を離れ、国民のための議論を深めるという信念の下、公正円満な運営を主導してこられました。

 ここに、委員一同を代表して、謹んで哀悼の意を表します。

     ――――◇―――――

森会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 ただいま森会長から御発言がございましたように、長らく憲法調査会長、憲法調査特別委員長を務められました中山太郎先生が御逝去されました。

 私は、国会に憲法調査会を設置しようとする議員連盟の立ち上げから御一緒させていただきました。中山先生の憲法改正に向けた取組を間近に拝見し、直接御指導いただいた者の一人として、改めて深い感謝と敬意を表し、御冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います。

 中山先生が掲げられました、政局を離れ、国民のための憲法論議を深めるとの理念を受け継ぎまして、更に憲法審査会が安定的かつ活発に開催できるように努めてまいりたいと思います。

 本日は、これまでの討議で残された具体的論点について、私にいただいた御指摘も含め、意見を申し上げます。

 まず、緊急事態における議員任期延長については、国会の議決要件を過半数とするか三分の二以上とするかについて、どのような観点から絞り込むべきか、問題提起をさせていただいております。

 私は、議決要件を過半数にすべきと決めているわけではなく、三分の二の特別多数議決とするかどうかも含め、何を基準として選択すべきか、議論の際には、日本国憲法の考える議決要件との整合性を確認する必要があると考えているわけであります。こうした考え方は、今後、他の改正項目について議論する際にも踏襲すべき基本的姿勢であるべきだと思います。

 国会の議決は、二院制国会の下、衆参それぞれが過半数で議決することが大原則となっています。過半数議決こそは民主主義の根本ルールであり、意思決定方法の原点と言えます。

 一方で、三分の二による特別多数議席は、二院制議決の例外として、除名など議員の身分喪失、秘密会の決定、衆参で議決が異なった場合の衆議院による法律案の再議決に関して規定がされているわけであります。これらは全て一院による議決行為です。それがゆえに、二院制による議決の例外として三分の二が求められています。

 過半数か三分の二の議決とするかは、その内容が重いか軽いか、特別に重要か一般的かといった観点ではなく、二院制国会の下で、衆参両院で議決するのか、一院のみで議決するのかという原則に照らした基準で判断されるとも考えられるわけであります。

 例えば、法律は衆参両院の過半数で可決、制定されますが、だからといって、法律の制定は軽いと判断されるのでしょうか。重大な案件だから三分の二の議決、軽い案件だから過半数議決というように、法案の内容で議決内容を分けていないことは言うまでもありません。

 一方で、議員任期の延長という、いわば任期の例外を決める重要な手続だから、三分の二の特別多数がふさわしいという意見が示されています。さらに、重要な議決を行う際に、多数派によるお手盛り議決や濫用を防ぐ観点から、特別多数議席を採用すべきとの意見もあります。

 それぞれ着目する観点によって判断が分かれるわけでありますが、国民を代表する国会議員の任期を変更するという重要な決定の判断に当たっては、その第一の理由を多数派による濫用や恣意的運用を防ぐ観点とするのではなく、二院制の原則という民主主義の根幹、ルールに沿っているか否かという観点を優先し、その上で、更にどのようにしたらよいか議論を深めたいと私は提起をしているわけであります。議論の末に、やはり三分の二の特別多数議席がふさわしいとの結論になる可能性も残されているとも言えますが、よくよくここは議論をすべきことだ、このように考えているわけであります。

 憲法上、両院での議決で三分の二の特別多数決とされているのは、言うまでもなく、憲法改正の発議のみです。これは、国家の基本法である憲法の安定性を重んじ、その改正の発議については、国家の根本規範である憲法の規定そのものを変更するものとして、過半数議決の例外規定を設けたものと考えられます。

 これに対して、選挙困難事態の認定議決は、憲法の規定を変更するものではなく、憲法の規定に基づいて両院が判断するものと位置づけられるのではないでしょうか。選挙困難事態の認定について、これが憲法改正そのものに匹敵する事態と判断できるかどうか、今後、各会派の委員なりの御意見をいただいた上で、更に議論を深めていきたいと思います。

 また、私たち自民党が示した緊急事態に関するたたき台素案では、議決を三分の二と示しているのではという御意見もいただきました。このたたき台素案そのものは変更しておりません。しかし、素案において規定しているのは大規模自然災害のみでした。しかし、これに加えて、審査会の議論において、感染症蔓延、テロ・内乱、国家有事・安全保障の四事態、プラスこれらに匹敵する事態を対象とすることが賛成会派の共通理解となっています。この審査会においての議論として進んでいるわけであります。

 さらに、私たちの素案で提起している事態認定は国会自身の議決のみとしておりますけれども、この点につきましても、審査会の議論においては、認定は内閣が行い、その議決は国会が行うという点で賛成会派の共通理解が進んでおります。

 憲法改正の議論は、各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、審査会で議論を積み重ねていくことが重要であり、審査会で深められた論点は、最終的には各会派に持ち帰り、フィードバックされることになると思います。しかし、まずは審査会において議論を積み重ね、各会派の共通理解を進められるよう取り組んでまいりたいと願っております。

 次に、裁判所の関与についてであります。

 先週までの議論において、内閣や国会の権限濫用を防ぐためにも司法による関与が必要という意見と、選挙困難事態の認定は、主権者国民から選挙で選ばれた政治部門が責任を持って行うべき極めて高度な判断であり、その適切性を司法がチェックするのは人的、組織的能力に照らして困難という意見が述べられています。

 さらに、司法の関与が必要とする立場からは、国会の議決要件を過半数にするのであれば、濫用防止の観点から、より一層司法チェックの仕組みを導入すべきとの意見も述べられました。

 過半数か三分の二以上かの問題は、二院制の本質から導かれる理論的な帰結であって、濫用防止の観点のみを理由とすることではないということは改めて申し添えたいと思います。

 そして、緊急事態の認定に誰が責任を負うべきかという観点からは、一義的にそれは政治が行うものであり、その判断に対する信任は、民主主義の根幹である国政選挙において示されることになります。

 一方で、政治が最終責任を持って判断するとしても、裁判所の関与を一切否定するものではありません。例えば、現行憲法においても認められているように、選挙困難事態の認定によって権利利益が侵害されたと主張する私人がいる場合には、それを理由に裁判所に訴訟を提起することは可能です。また、選挙困難事態の認定を、選挙訴訟や住民訴訟のようないわゆる客観訴訟の対象とすることについて検討できるのではないかとも考えられます。

 選挙困難事態に対する政治の判断については、新たに司法のチェック機能を憲法に付加するよりも、現行制度の下で必要な司法関与の在り方を検討した方が、より合理的かつ現実的な方策が取れるのではないかとも思っております。この点につきましても、今後、各会派の委員なりの御意見をいただき、更に議論を深めたいと考えております。

 今朝の幹事会におきまして、来週の定例日にも審査会を開催し、議論を継続することを提案いたしました。今後も、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い議論が行われるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いして、私の発言といたします。

森会長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 本院において、初代憲法調査会長を務めて以来、長きにわたって憲法議論の中心を担われた中山太郎先生が御逝去されました。哀悼痛惜の念に堪えません。

 私は、中山調査会長、調査特別委員長の下で、会長代理、野党筆頭理事を務めました。熱心に海外調査が行われた時代で、毎年のように一週間を超える海外調査に御一緒するなど、院外も含め、党派を超えて温かい御指導をいただきました。

 中山先生が中心を担われていた時代は、意見の違いはあっても、建設的な議論が進められました。調査会の最終報告書は、全会一致にこそならなかったものの、その文言の一つ一つを、議決には反対した会派も含めて、全ての会派で丁寧に協議し、客観的で中立的な報告書として取りまとめることができました。だからこそ、その報告書に基づいて、難しいとされてきた特別委員会の設置と国民投票法制定に向けた議論をスムーズに進めることができたのです。

 私はあの当時、このままの議論を進めていけば、十年程度のうちに初めての憲法改正国民投票に至るのではないかと、ある意味で期待していました。残念ながら、二〇〇七年、国民投票法採決に至る経緯で、中山会長が十年近く積み重ねてこられた合意形成の努力が壊され、いわゆる強行採決となりました。中山委員長を先頭とした委員会の現場とは別のところで、当時の官邸を始めとする与野党の政治的駆け引きに巻き込まれてしまったものです。

 私は、一日も早く国民投票法採決の傷を癒やし、中山方式とも呼ばれた建設的な議論が回復することを望んできました。しかし、残念ながら、今日に至るまで、むしろ強引かつ独善的な議論と運営が拡大し、合意形成の機運がますます乏しくなっていると言わざるを得ません。

 中山方式とは、現状のように、ただ形式的に、あるいは国会対策的に野党を巻き込もうとしたものではありません。そのような考えでは、憲法について、よい方向に変わるなら変えるべきという立場の私はともかく、現行憲法は変えるべきではないという立場が明確な政党を含めて、全ての政党の担当者が中山会長を信頼し、立場を超えて建設的に議論するなどという状況はつくれるはずがありませんでした。

 中山先生には、憲法と立憲主義に対する謙虚で深い御認識がありました。憲法は与野党などの政治的立場を超えて権力を拘束するものであり、主要政党間の対立点にしてはならないということです。どの勢力が多数派となろうと従うべき規範が憲法である以上、違いを強調するのではなく、一致点を探して、その一致点から議論を進めるという認識が共有されていました。

 憲法制定権力である主権者国民に対する謙虚な姿勢でも一致していました。衆参両院で三分の二を構成できたとしても、そこに至る経緯で国民を巻き込んだ十分な合意形成がなされていなければ、国民投票で否決されるおそれがある。このことを中山先生は十分過ぎるくらい御理解されていました。そして、特に初めての国民投票で否決される事態となれば、憲法をめぐる議論が更に混乱し、我が国の民主主義に救い難い傷となることを恐れていました。

 このような中山先生の御認識と、困難な時期に外務大臣を経験されるなど、幅広い御経験に基づいた懐深いお人柄があったからこそ、建設的な議論が進んだのです。

 私にとっても、中山先生に御指導、御厚情を賜ったことで、党派、意見の違いを超えた得難い貴重なものを幾つも学ばせていただくことができました。御逝去の報に接し、この場をかりて改めて敬意を表しますとともに、心から御礼申し上げます。

 昨今の憲法審査会の状況を見るに、中山先生の時代には遠く及ばないにしても、あの当時とは似ても似つかぬ状況で、私個人としては、建設的な合意形成について、悲観的を超えて絶望しています。真摯に憲法を考えられるなら、中山先生の爪のあかでも煎じて飲まれたらよいのではないでしょうか。

 今後の議論に向けて、中山先生に学んで、具体的に一点だけ提起いたします。各党各会派がそれぞれに改憲案を提起し、主張をぶつけ合うというのは、真に国民を巻き込んだ幅広い合意形成をする上で超え難い障害になるということです。

 もちろん、民主政治の基本は、各党派間で主張をぶつけ合い、競い合うことにあります。しかし、選挙などで競い合うことが避け得ない中、合意形成が重要なはずの憲法において、そして憲法が重要であればあるほど、一つの政治勢力が自分たちの主張を強く示せば、他の政治勢力との妥協が困難になります。どの党の提案が出発点になり、どの党の主張で修正されたなどという国会対策的なプロセスが注目されれば、真の合意形成に向け、超え難い障害となります。

 ですから、どこかの党派の案をベースに議論するのではなく、議論の方向性を一致できそうなテーマは何なのかという点から全ての会派間で真摯に議論し、その合意に基づいて、会派間で段階的に方向性を確認しながら順次具体化していく。条文案などというものは、このようなプロセスで内容的な合意形成がなされた上で初めて審査会全体で作業をすべきもの。これが、憲法調査会から調査特別委員会に至る中で、中山会長を中心に考えられていた合意形成プロセスです。

 議論を進めることについて一致できそうなテーマは何か、そして方向性について合意できそうなテーマは何か、このことは既に示されています。それは中山調査会の調査報告書です。あらゆる論点について、思いつきのような議論ではなく、幅広い各国の状況や歴史的経緯なども含めて調査し、議論した上でまとめられました。充実した内容である上に、その時点における合意形成の見通しについても示されています。

 繰り返しますが、この報告書は、議決に賛成した会派にとどまらず、議決には反対した会派の代表も含めて文言を整理しており、その記載事項については全会派が事実上一致していたと言えます。

 報告書から二十年近くが経過して、本院を構成する党派にも変化があり、議員の構成も変わりました。憲法についての新たな議論もあります。そのままで全て通用すると言うつもりはありません。しかし、幅広い、真の合意形成に向けて建設的な議論を進めるのであれば、少なくとも、そのスタートラインはここにあることは間違いありません。

 この機会に、中山先生の最大の御業績の一つとも言える衆議院憲法調査会の報告書を全ての皆さんに再度、まさか、二度や三度は読んでおられると思いますが、再度御熟読いただき、ここをスタートラインに、合意形成可能な論点と方向性はどこにあるのか、もう一度考えていただくことを強く望んで、発言といたします。

森会長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵です。

 去る三月十五日に中山太郎先生が御逝去されました。心より哀悼の辞を述べさせていただきます。

 中山先生は、外務大臣として、湾岸戦争など世界の地殻変動の中で、激動の時代を東奔西走されました。また、二〇〇〇年一月に発足された衆議院の憲法調査会会長に就任され、今の憲法審査会の土台をつくられ、憲法改正に大変な熱意を持って取り組まれました。

 我が党の馬場代表は、中山太郎先生の秘書を務め、師匠と仰ぎ、その意思を継いで憲法改正に取り組み、日本維新の会の憲法議論を牽引してきました。我々も、しっかりと馬場代表と心を一つにして憲法改正の国民投票に取り組んでいくことを中山先生にお誓い申し上げ、御冥福をお祈りいたします。

 さて、本日は、先週に引き続き、緊急事態条項の各党の考え方の違いについて、我が党の意見を述べたいと思います。

 まず、議員任期延長の特例について、先週の憲法審査会で北側委員は、選挙期日の延長は、再延長、最長で、同一の事態で、最初の選挙困難事態の認定から通算して一年を超えることはできないとしてはどうかと考えておりますと発言をされました。

 しかしながら、震災などの自然災害であれば、ある程度の復興のめどなどが立つことから可能かもしれませんが、戦争の場合はいかがでしょうか。現に、ウクライナは、ロシア侵攻より既に一年と一か月を経過しています。

 また、選挙困難事態の認定は、被災状況、復旧状況等の事情を総合的に判断して、国政選挙を適正に実施できるのかという判断であること、また、緊急を要することからすると、司法の関与にはなかなかなじまないのではないかという御意見も述べられました。

 これは難しい判断であると考えますが、危惧されることは、誰の目から見ても国政選挙が実施可能であるのに、時に権力者が、いや、まだ選挙が実施できる状況ではないと言い張り、選挙実施をずるずると先延ばしにする危険性であります。議院内閣制を取る我が国だからこそ、自分のことを都合よく決める危険性が、内閣と国会だけで決めると発生する可能性が残ります。よって、司法の関与が必要であると考えますが、いかがでしょうか。

 それから、憲法裁判所についてであります。

 これも、我が党の岩谷委員の違憲判決が少ないとの意見に対して、國重委員より、我が国において違憲判決が少ないということにつきましては、立法段階で、閣法においては内閣法制局が、議員立法においては議院法制局が厳格な審査を行っていること、また精緻な法体系が組み立てられている法文化があることもあるという御意見がありました。

 確かに、我が国の内閣法制局や議院法制局は非常に優秀であることは私も承知をしておりますし、誇りであるとも考えています。しかしながら、現在の司法制度では抽象的違憲審査を行うことはできず、個別具体的な事件を契機としてしか訴えを起こすことができないことが違憲判決の数を少なくしているとは考えられないでしょうか。

 我々は、裁判の数だけで、よい悪いを論じているのではなく、抽象的合憲審査や機関争訟審査が可能なのであれば、多くの訴えが行われ、違憲判決が出るであろうと言いたいわけであります。

 例えば、憲法五十三条は、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定めていますが、野党が四分の一をもって要求しても、臨時会が召集されないことが多々あります。こういったことも、機関争訟をもってすれば、野党が違憲だとして訴えを起こすことは可能なのであります。

 現在でも訴えは起こされていますが、例えば、臨時会が召集されなかったことにより、質問の機会が奪われて精神的苦痛を負ったため百万円の損害賠償を求める等の訴えは、違憲の可能性は否定できないとされながらも、個人の権利が侵害されたとの訴えは棄却されています。

 憲法裁判所の機関争訟であれば、このように精神的苦痛を負ったとか質問の権利が侵害されたとか、ある意味本題から外れたところで訴えを起こさなくても、シンプルに憲法の条文に照らし合わせて、求めに応じず臨時会を召集しないのは違憲であると訴えを起こせます。このケースで、もしも仮に憲法裁判所が、臨時会を召集しないのは違憲であるという判決を下した場合、よって召集を命ずるとすることもできるわけです。そうあれば、もっと違憲判決は増えると思いませんか。國重委員に御回答を求めます。

 北側幹事、國重委員には次回以降でお考えを述べていただければと、お願いをいたします。

 我々は、憲法裁判所について、国民民主党、有志の会と条文作りを進めることを目標として協議を進めることで一致しています。立憲民主党さんも是非、党内で一度検討していただければと思います。

 ところで、昨日、立憲民主党の小西洋之参議院議員は、衆議院議員の憲法審査会について、毎週開催は猿がやることだと発言されたらしいですね。さらに、憲法を真面目に議論しようとしたら、毎週開催なんてできるわけがない、私は憲法学者だが、憲法学者でも毎週議論なんてできない、何も考えていない人たち、蛮族の行為、野蛮だ、また、衆議院の憲法審査会は誰かに書いてもらった原稿を読んでいるだけだと述べられたそうですが、私は自分で自分の原稿をちゃんと書いております。

 これは、衆議院憲法審査会に対する侮辱ではないですか。しかも、小西議員は参議院の憲法審査会の筆頭幹事です。衆議院憲法審査会として小西議員に謝罪を求めるべきだと考えますが、森会長に一任をさせていただきます。一任というか、森会長にお願いをいたします。済みません。

 衆議院憲法審査会として、立憲民主党は、この中で、これまで論憲とおっしゃってこられましたが、この小西議員の発言は論憲と相入れるものなのか、立憲民主党の中川筆頭幹事にお伺いいたします。私の時間を中川幹事に差し上げますので、どうか御発言、よろしくお願いいたします。

森会長 では、中川幹事。

中川(正)委員 私も報道ベースでそうした発言があったということを聞きまして、改めて本人に、どういう趣旨でそういう、私たちにとって、私自身も納得していないということなんですが、確認をした上で、また対処をさせていただきたいというふうに思います。

三木委員 ということは、謝罪をしていただけるというふうに考えてよろしいですか。

中川(正)委員 いや、だから、本人の、本人から直接、趣旨あるいはどういう背景の中であの発言があったか、あるいは、あったのかなかったのかということも含めて確認をした上で対処をしたいということです。

森会長 三木委員、この件については会長に御一任いただきたいと思います。よろしゅうございますか。

三木委員 はい、それで結構でございます。

 ただ、やはり、この憲法審査会、衆議院は毎週開いておりまして、私たち、真摯に議論を積み重ねてきております。それを猿だの蛮族だのと言われると、やはりこれはちょっと我慢ができないと。皆さんも同様の御意見だと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

森会長 はい、承りました。

 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘です。

 本日も意見表明の機会をいただきましたことに、会長始め皆様に感謝申し上げます。

 まず冒頭、中山太郎先生に、その御功績に対し感謝の思いを添えて、御冥福をお祈り申し上げます。

 さて、前回、私からは、新藤筆頭から示された、緊急事態条項における残された論点について意見表明をさせていただきました。

 時間の関係で取り上げることができなかった前議員の身分復活の論点及び緊急政令、緊急財政処分の論点につき意見表明をさせていただいた後に、憲法裁判所についても意見表明をさせていただきます。

 まず、前議員の身分復活について、自民党、日本維新の会、公明党、国民民主党、有志の会の五会派において肯定されているところです。私自身も賛成するところでございます。

 まず、適用場面を整理したいと存じます。

 議員の身分が継続されている状況において緊急事態が発生した場合には、議員任期の延長が問題になります。これに対し、前議員の身分復活が問題になるのは、議員の身分が失われていることが前提ですので、具体的には衆議院解散後か衆参議員の任期満了後ということになります。

 この点、任期満了解散は、衆参共に、公職選挙法の規定により任期満了前に実施するのが原則であり、原則に基づく限り、議員身分の空白は発生しないはずです。しかし、公選法では別に、任期満了後に選挙を行うことが想定されており、この任期満了後の場合に緊急事態が発生したときには選挙ができなくなる可能性があることから、前議員の身分復活が問題になります。

 私は、緊急事態における国会機能の維持という必要性の観点から、解散後、任期満了後にも前議員の身分を復活させなければならないと考えます。この点、衆参共に前議員の身分の復活が強く要請されることに違いはありません。しかし、解散の場合には、解散の効力との関係で理論構成が求められるところだと考えます。

 この点、解散は決断した内閣の判断である以上、緊急事態が生じるとしたら解散は行われなかったであろうという内閣の意思を合理的に推測し、解散の効力を失わせるという意味での解散の撤回と解せることができると考えます。

 次に、緊急政令、緊急財政処分の論点について意見表明させていただきます。

 この論点は、自民党、日本維新の会、国民民主党が必要であるとの立場であるのに対し、公明党は不要、有志の会は更に議論が必要との立場でございます。

 この点、必要とする三会派も、法律で定めるところにより、若しくは、あらかじめ法律で定めるところによりと、法律への委任を設けていることから、完全白紙委任的な緊急政令を想定しているのではないと理解します。とすれば、あくまで私の理解が間違っていないことを前提にすれば、法律の委任に基づく緊急政令について、制度的に裏打ちをした規定を憲法に設けることそのものに意義があると考えます。

 この意義について肯定的に捉えることもできると感ずるところではございますが、私は、大規模自然災害やテロ、内乱など、緊急事態の範囲が事前に示されていることとの関連では、危機管理法制の中で必要なものを補充していくことで足りるのではないかと考えております。

 次に、緊急財政処分についてです。

 私は、財政民主主義の観点からは、緊急財政処分は簡単に肯定することはできないと考えております。不測の事態に対しては予備費で対応するということが、現行憲法下でも認められているところでもあります。

 そこで、改めて論点の射程を定めれば、予備費でも補正予算でも対応できない場合を想定する必要があるのかという点になろうかと存じます。

 緊急財政処分は、明治憲法下では存在したところです。この点、明治憲法下の緊急財政処分も事後的に帝国議会の承認を必要としており、財政民主主義を事後的に保障しています。

 私は、財政民主主義はどのような形であれ貫かれなければならないと考えます。

 そこで、この論点については、財政処分という行政行為の民主的統制と国会の機能維持ということとの関わりから考え、国会議員の任期延長や前議員の身分復活により国会の機能を維持し財政民主主義を実現すれば、財政民主主義は貫かれるのであるから、憲法規定における緊急財政処分の制度はその必要性が少ないのではないかと考えます。

 次に、憲法裁判所について意見表明させていただきます。

 前回の憲法審査会において、日本維新の会の岩谷先生から憲法裁判所に関する意見をお聞きしました。立憲主義の強化及び議院内閣制に内在する多数者支配の暴走を抑制する観点などから、総じて裁判所機能の強化を求めるお考えであり、民主的正統性を強化された憲法裁判所が必要であるとの御主張であると理解いたしました。非常に参考になる御意見だったと感じております。

 これに対し、我が党の國重委員から、我が国の法文化や歴史に立ち返った検討の必要性、また、裁判官の人材育成、裁判の政治化、政治の裁判化への懸念など、検討されるべき課題も示されたところでございます。

 この点、佐藤幸治先生の教科書によると、司法裁判所型と憲法裁判所型の現実の制度ないし機能の実態から見ると、両者の間に類似性ないし接近傾向がある、また、私権の保護ということから出発した司法裁判所型と、憲法保障自体を目的とする憲法裁判所型との違いは、軽視されてはならないが、理念のレベルにとどまって、その違いを絶対視してはならない、また、抽象的違憲審査制は、裁判所の広範な憲法判断を引き出す上で確かに有益的とは言えるが、しかし、そのことが直ちに基本的人権の保障の強化を帰結するという理論上及び実際上の保障はない、と同時に、付随的違憲審査制も、実際の調整措置を講ずることにより、抽象的違憲審査制にかなり近接した運用もあり得るとされております。

 憲法裁判所の採用は、現状の統治機構の在り方に大きな影響を与えるので、多くの、しかも大きな論点をクリアしなければならないと承知しております。論点を検討するに当たっては、佐藤幸治先生の御示唆を参考に、司法裁判所でなければ駄目だとか憲法裁判所でなければならないといった二律背反な議論ではなく、司法裁判所と憲法裁判所の議論が、国民の皆様にとってどのような裁判所の在り方がふさわしいかという観点から、今後も検討させていただくこと、検討について改めて意見表明の場を与えていただきたいことをお願いして、私の意見表明とさせていただきます。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 まず、私からも、中山太郎先生に心からのお悔やみを申し上げたいと思います。

 その上で、私からは、まず冒頭、昨日の立憲民主党の小西洋之議員の発言について申し上げます。

 憲法審の毎週開催は猿がやること、蛮族の行為とか、衆議院の憲法審査会では誰かに書いてもらった原稿を読んでいるだけだと発言をされておられます。私たちは猿でも蛮族でもないと思いますが、こういった発言は、我が党のみならず、与野党合意の中で真摯な議論を重ねてきた当衆議院憲法審査会に対する冒涜です。強く抗議するとともに、発言の撤回と謝罪を求めたいと思います。対応を森会長に一任したいと思いますので、お取り計らいをよろしくお願いしたいと思います。強い憤りと同時に、悲しみを禁じ得ません。

 さて、今日の午前中に、日本維新の会の皆さん、そして有志の会の皆さんと三つの会派で、緊急事態条項のうち議員任期延長についての条文案について合意を得ることができました。詳細は来週以降、それぞれ御説明があると思いますけれども、ただ、こうした一つ一つを積み上げていくことが非常に大事だと思いますし、先ほど枝野さんからもありましたが、合意の得やすいところから合意を得ていくということは、私も極めて重要だと思っています。

 一つ当時と一番大きく違うのは、我々はコロナを経験したということです。大規模な感染拡大ということに対して、憲法上あるいは我々の制度上どう応えていくのかという新しい課題であって、そのことに基づいてオンライン国会についての解釈を定めたり、いろいろなことが新しく行われてきました。

 その中で、余りイデオロギーを入れることなく、立法機能、三権分立の機能あるいは基本的人権をどう守っていくのかという観点から、この議員任期の延長については、やはり合意が得やすいし、これまで、法制局に論点をまとめていただきましたけれども、かなり一致点が多いということで、まずこの点についてしっかりと、これまでの議論をきちんと踏まえた上で合意形成を図っていくべきだということで、緊急事態条項、とりわけ議員任期の延長について、三会派で条文案について合意を得たところであります。

 この審査会にもお示しをしたいので、是非、たたき台として、更なる他の会派の皆さんの合意も得ていきたいし、協力をお願いしたいと思います。

 今日は、その条文案の中にも盛り込んでおりますけれども、大きく二つ、これまでの論点について、改めて我が党の考え方を申し上げたいと思います。それは、選挙実施困難の要件であります。

 これは、大体収れんされてきたと思いますが、大きく二つ、広範性と長期性ということだと思います。一つは、選挙の一体性が害されるほど広範な地域において選挙の実施が困難だということと、あと、何度も各会派から出ていますが、我が党も申し上げています、七十日を超えて困難であることが明らかなときは、この二つの要件を満たしたときは、やはり憲法で議員任期の特例延長を認めるべきではないかと思います。

 逆に言うと、七十日までの一時的、暫定的、限定的な場合は、現行憲法が用意している参議院の緊急集会をできるだけ活用するということだと思います。

 また、一部の憲法学者が主張している、解散時だけではなくて任期満了時にも認められるのではないかということを明確にするために、そのことを憲法に書き込むべきだと思います。

 そうすると、一時的、暫定的、限定的な対応は緊急集会、そして、七十日を超えて包括的に対応しなければいけないときには、新たに憲法を改正して議員任期の延長を認める、こういう整理だと思います。これは、参議院の緊急集会の権限を縮めたりするのではなくて、今解釈等で言われていること、そして今現在も認められていることを、縮めたり縮小したりするのではなくて、確定させること、明確化することを憲法上やるべきだと思います。

 二つ目は、前議員の身分の復活についてでありますけれども、これはやはり、任期が終了していないものとみなす規定を創設して、その身分を復活させた上で任期を延長するという規定を憲法上設けるべきだと思います。

 この点に関しては、前回、立憲民主党の篠原委員が、いらっしゃいませんね、残念です、の意見を大いに参考にさせていただきました。感謝申し上げたいと思います、いらっしゃいませんけれども。

 ただ、篠原委員の発言の中には同意しかねる部分も多くありまして、やはり立憲主義の観点から心配で、ますます眠れなくなったことは申し添えたいと思います。私が是非ぐっすり眠れるためにも篠原先生に一点確認したいのですが、いらっしゃらないので、次回、是非回答いただきたいのは、前回、篠原委員はこのようにおっしゃっています。

 解散後に選挙ができず議員が不在になる事態の対応として、選挙で選ばれた衆議院議員としてではなく、経験を積んだ前議員として特別な資格を与え、国政の重要事項に関与できるようにすればいい、緊急事態なので、もう一踏ん張りしていただく、憲法が想定せず規定していないことについて、憲法の精神に反せず、その枠内で工夫、立法措置でやってみて、数年ぐらいたってからまとめて明文化したらどうかと述べておられるわけですね。

 前議員に議員並みの国政の重要事項に関与できる権限を与えるアイデアは傾聴に値するので、まさにそのことを憲法に書くべきだと思います。だからこそ、私たち三会派の条文案の中にもそういった規定を設けることにしております。

 ただ、議員でない者に議員同様の国政の重要事項に関与できる権限を与えるような立法は、議員任期を定めた憲法四十五条及び四十六条、また国会が唯一の立法機関と定めた憲法四十一条、そして参議院の緊急集会による対応を定めた五十四条二項などに違反する立法になると考えます。違憲立法の可能性もあるアクロバティックな法案措置を考えるのではなく、まさに平時に落ち着いた環境の中で憲法を改正し議員任期延長を可能としておくことが、よほど立憲主義に合致していると私は考えます。

 そんな曲芸のような立法は本当に可能なのか、改めて篠原委員に考えを伺いたいと思いますが、いらっしゃらないので、次回、是非答えていただきたいと思います。

 あわせて、前回も質問しましたが、奥野委員にも質問したいのですが、奥野委員がかつて提案した繰延べ投票の活用については、野田内閣が平成二十三年十一月十一日に閣議決定した質問主意書への答弁書で、法律制定により国政選挙の選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長することはできないと閣議決定しており、やはり法改正では国会議員の任期延長はできず、憲法改正が必要だと考えますけれども、改めて奥野委員の考え方を伺いたいと思います。

 とにかく、我々国民民主党は、緊急事態だからこそ可能な限り国会機能を維持することで、行政監視機能や立法機能を維持し、行政権の肥大化や濫用を防止し、もって憲法が保障する基本的人権を守ろうと考えています。立憲主義を貫き、憲法の規範性をしっかりと担保するためにも、憲法で定められた議員任期の延長はやはり憲法改正によって規定すべきである、このことを改めて申し上げて、発言を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 岸田政権が安保三文書に基づき戦後の安全保障政策を大転換しようとしていることは、日本国憲法を真っ向からじゅうりんする極めて重大な問題です。衆参の予算委員会でも、憲法との深刻な矛盾が明らかとなりました。私は、岸田軍拡について、改めて三つの点を指摘しておきたいと思います。

 第一に、敵基地攻撃能力の保有は憲法違反だということです。

 歴代政府は、憲法九条の下で、自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力だから憲法に違反しないとし、専守防衛に徹すると説明してきました。その下で、敵基地攻撃は、法理的には可能だが、その能力を保有することは憲法に違反する、これが歴代政府の憲法解釈です。

 一九五九年三月十九日、伊能繁次郎防衛庁長官は、法理的には可能というのは、他に全然方法がないと認められる限りとして、仮定の事態を想定して、平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところでないと述べています。阪田雅裕元法制局長官は、この伊能長官の答弁は、日米安保条約がある状況では、憲法上、敵基地攻撃能力の保有も認められないという趣旨だと明確にしています。

 この歴代政府の解釈との矛盾について、岸田首相はまともに説明を一切していません。こうした姿勢にメディアからも批判の声が上がっています。

 更に重大なことは、集団的自衛権の行使としての敵基地攻撃さえ可能だとしていることです。日本が攻撃を受けてもいないのに相手国領土を直接攻撃することは、憲法上絶対に許されない海外での武力行使そのものです。

 第二に、今回の大軍拡がアメリカの戦略に追従するものだということです。

 長射程ミサイルの配備も軍事費のGDP二%への増額も、アメリカが同盟国に要求してきたものです。日本の敵基地攻撃能力は、アメリカの統合防空ミサイル防衛、IAMD計画の一翼を担うものであり、アメリカの情報と指揮統制の下で運用されることは明らかです。だから、日米首脳会談の共同声明は、敵基地攻撃能力の開発及び効果的な運用について協力を強化すると明記したのであります。政府は、そのために三千億円以上を投じて、米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークを四百発購入する計画です。軍事戦略から部隊運用、兵器購入に至るあらゆる面で対米従属を深化させるものです。

 第三に、国土の焦土化を招く極めて危険な計画だということです。

 政府は、日本が集団的自衛権を行使した結果、相手国から反撃を受け、大規模な被害が生じる可能性を認めました。防衛省が日本全土が戦場になることを想定して、全国約三百の自衛隊施設を核攻撃にも耐えられるよう強靱化する計画も明らかになりました。戦争遂行を至上命題とし、国民の犠牲など全く顧みなかったさきの大戦の過ちを繰り返し、国民の平和的に生きる権利を脅かすもので、絶対に認められません。

 今必要なのは、戦争のための準備ではなく、平和のための準備です。岸田首相は、ウクライナは明日のアジアかもしれないと繰り返し、大軍拡を正当化しようとしています。

 ウクライナ侵略の責任がロシアにあることは言うまでもありません。しかし、そこに至った背景には、欧州安保協力機構、OSCEというロシアも含めた包摂的な平和の枠組みをNATOの側もロシアの側も生かせず、力対力に陥った外交の失敗があります。軍事対軍事の悪循環に陥るのではなく、包摂的な平和の枠組みを発展させる、これがウクライナ戦争から酌み取るべき教訓です。

 沖縄では、対話によって戦争を回避する努力が始まっています。玉城デニー知事は、地域の緊張緩和に貢献する自治体外交に取り組もうとしています。先日、市民団体が開いたシンポジウムでは、パネリストとして出席した台湾の軍事専門家が、東アジアにはASEANのような組織がない、そういった組織ができたら紛争はなくなるのではないかと述べていたことも重要な発言でした。

 東アジアの平和のために必要なのは、軍事力を強化することではありません。全ての国を包摂する対話の枠組みをつくることです。そのために、憲法九条を持つ日本こそ積極的役割を果たすべきことだというのを強調し、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 私からも冒頭、中山太郎先生が天寿を全うされたというふうに思います。私も一年生のときに、憲法問題調査会だったと思いますが、私の発言の後に温かく激励をいただいたことを思い返しております。

 それから、次元はちょっと異なりますけれども、小西洋之参議院議員の発言に対しても、皆さんと同様、抗議を表したい。そして、小西洋之先生らしい発言だと思います。ただ、私が唯一驚いているのは、憲法学者だったというふうにおっしゃっているので、これも併せて会長に確認をいただければというふうに思います。

 こういう小西先生の発言の背景にも、やはり緊急事態条項、我々が議論している緊急事態条項について一部誤解があるというふうに思います。これは、我々が、要するに、内閣に白紙委任を与えて、何か好き勝手に命令が下されて、そして財政処分もできるようにたくらんでいるんじゃないか、こういう誤解、疑いを持たれているというふうに思います。しかし、私の知るところでは、そのような意見はこの審査会で聞いたことがありませんし、また、本質的には、この疑いは若干的が外れているんじゃないかというふうに思います。

 そもそも、緊急事態において内閣が危機を克服することと、近代憲法の中核にある人権の保障とは、現実に、ややもすると相反する課題となります。これは、法律や制度以前の赤裸々な事実、現実であります。

 くしくも昨年の参考人質疑で、解釈でオンライン国会を認めることにすら反対される高橋和之先生、これは本当の憲法学者でありますけれども、この人はこういうふうに発言しています。「本当に大変な事態になったときには、法律がないからどうのという問題じゃない、一人一人が、この現場でどういう態度を取るべきか、どういう行為を取るべきかということを考えて対応する以外にないんじゃないか。」また、もう一つの発言で、「万一そういう大災害が来たら、それはもう超法規的な問題として各自が対処する以外にないんじゃないか。無責任だと言われそうですけれども、実際そうじゃないか。」ともおっしゃっています。

 護憲派の象徴のような学者にしては一見乱暴かもしれませんが、これは危機管理の現実に光を当てています。状況によっては法の支配や民主的手続をも省略しなければいけない、あらがうことのできない現実を高橋先生は指摘しているわけです。

 当然、これは、一時的であれ、立憲的な憲法秩序を停止し、内閣への権力の集中と強化を認めざるを得ないことになります。つまり、幾ら我々が権力の集中をたくらんでいると疑われても、たくらもうとたくらむまいと、憲法に規定があろうとなかろうと、高橋先生の言葉をかりれば、法律がないからどうのという問題ではなく、内閣の超法規的な行動は起こり得るということです。厳しい現実も現実です。そして、現実は冷厳に直視する必要があります。

 我々の問題意識は、こうした現実をやむを得ないものとしながらも、危機管理が必要十分な範囲を超えて権力の濫用が起こり得る、ここを事前事後の統制によりどう防ぐのか、憲法、法律にあらかじめ必要な手続や条件などを書き込んでおいた方が立憲主義を守れるのではないかということです。

 実際、幾ら疑いの目を向けられようと、個別法では既にこうした考えに基づく規定が整備されています。個人の次元では、刑法第三十七条一項や民法第七百二十条二項に規定される緊急避難です。国家の次元では、警察法の緊急事態、災害対策基本法の災害緊急事態、自衛隊法の防衛出動や治安出動です。

 ましてや、議員任期延長は、内閣が緊急事態に直面したとき、選挙が実施できない場合でも国会が通常どおりの機能を果たせるようにするためのものです。憲法が予定しているとおり、衆参両院そろって、不慮の欠員により代表制にゆがみが生じない体制で、内閣が緊急事態を理由に権力を濫用しないように統制できるために提案しているんです。

 もちろん、国会も権力の一極を担っています。国民の審判を仰がずに勝手に任期延長できないようにするためにも、我々有志の会の案では、一つは、実体的要件を満たされる必要があり、二つには、内閣からの要請が前提となり、三つには、三分の二以上の厳格な議決が必要であり、四つ目には、任期延長の期間は一年をもって上限としています。五つ目に、再延長する場合でも三分の二以上の議決によってのみ可能としています。

 さらに、我々の案では、選挙ができない状況が短期であれば、参議院の緊急集会で対応することも想定しています。これをはっきりさせるために、条文上の明文化も必要だというふうに思っています。

 あわせて、玉木先生からも話がありましたが、緊急集会が、学説上通説となっているように、解散時のみならず任期満了時でも開けることを明確にするために、憲法上必要な手当てもすべきだというふうに思います。

 まだまだです。今後は、もっと国会や内閣を縛り上げるために、任期延長が条文の趣旨に合っているかどうかを確認し、担保するために、事後的に司法の関与というものも我々は提案をしています。

 私は、こうした制度を設けることによって、緊急事態にあっても国会の機能を維持して、内閣の暴走に歯止めをかける制度的担保が実現できると確信しています。

 最後に、国民投票法改正ももちろん大事な議論だと思います。前回も前々回も私は発言をさせていただきました。ただし、いわゆる附則四条の検討条項は、検討した結果、必要と判断されたら法制上の措置などを講ずるという趣旨だと理解しています。よって、この検討条項は、緊急事態条項を始め、憲法本体の議論や憲法改正の発議を妨げるものではないというふうに考えています。

 また、附則第四条第一号に規定されている投票の外形的事項については、自民、維新、公明、有志の会の四会派が昨年四月に三項目案を提出し、更なる投票環境の向上を図ることを提案しておりますので、これについても速やかな処理を求めたいというふうに思います。

 以上です。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 私からも、新人の頃から御指導いただいた中山先生の御逝去に心からお悔やみ申し上げたいと思います。

 今、枝野委員からもお話がございましたとおり、与野党の合意を尊重する憲法審査会という面でいえば、緊急事態における国会議員の任期延長については、まさしくそうした与野党の合意が熟しつつある論点なのかなと考えております。その中で、選挙困難性の要件について裁判所が判断することについて、何人かの委員から意見がありましたので、私から見解を申し上げたいというように考えております。

 以前、この場で、裁判所あるいは裁判官がそうした選挙困難性を判断する民主的基盤があるのかということについて問題提起をさせていただきました。申し上げるまでもなく、厳格な三権分立制の下、裁判官の身分は高度に保障され、心身の故障がある場合を除いては、弾劾裁判を除いて裁判官を罷免するということはありませんし、最高裁の裁判官にしても、その就任前の資料による国民審査制度があるのみにすぎません。こういった方々が、果たして政治的な色彩の濃いそうした判断ができるのかということが一つの大きな論点になります。

 もう一つは、北側幹事もお述べになられていましたけれども、判断するための様々な資料収集に性質上の限界がある裁判所がそうした判断を的確に行うことができるのかという問題です。広範かつ選挙が困難かどうかということについて、本当に裁判所という機関がそれを判断することができるのか、私は極めて疑問であります。

 そして、例えば、強力なパンデミックを受けて、特定の緊急事態宣言に伴って国会議員の任期を延長するという判断を政治部門が行った際に、そのような判断を適時適切に行うことができるのは、やはり私は政治部門であるというように考えます。先ほど三木委員から、誰が見てもおかしい判断をした場合にそのチェックをすることが必要でないかという問題提起がなされましたけれども、それこそまさしく選挙を通じた政治部門でのチェックというものが私は想定されるのだろうというように考えております。

 そして、これと関連して、憲法裁判所なども含めた形での第三者チェックならばよいのではないかという議論がされることもあります。憲法裁判所を設けることについては、既に國重議員や吉田委員からも、裁判所の政治化、あるいは日本における裁判官に対する信頼や法文化、裁判官育成システムなどの問題点について指摘がされたところであります。

 司法消極主義が今の裁判所の大きな問題であるとすれば、それについて、例えば、笹田栄司教授が問題提起をしているように、最高裁判所そのものの制度改革を行うことによって、例えば最高裁を国と地方公共団体との間の紛争等に関する終審裁判所とし、上告事件の大部分を管轄する特別高等裁判所を新たに設けるべきだというのも、私は一考に値するというように考えております。

 また、先ほど新藤幹事がおっしゃったように、選挙訴訟あるいは住民訴訟などの客観訴訟を強化して、これに憲法判断を積極的に行うよう促していくということも、私は検討に値するというように考えております。

 いずれにいたしましても、この緊急事態条項や任期延長についての議論がこれほど充実したものになっている以上、是非、次回以降、しっかりとした形で成案を導くよう祈念申し上げまして、私からの発言とさせていただきます。

 以上でございます。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。

 憲法は、徹底した国会中心主義を採用し、いわゆる緊急事態条項を設けていません。つまり、いついかなる場合でも、立法機能、行政監視機能等、国会機能の維持を大前提としています。

 緊急時には、迅速な臨時会の召集、衆議院が解散中の場合は参議院緊急集会による対応を想定しています。また、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症、それぞれにつき基本法制があり、濫用のおそれなく緊急事態等の認定が行われる仕組みもできています。緊急事態条項の概念を憲法に持ち込む必要はありません。したがって、緊急政令、緊急財政処分を憲法に規定する必要もありません。先ほどの吉田公明党委員も、恐らく同趣旨の御発言だというふうに理解しております。

 先週、新藤筆頭幹事が、論点は絞られてきたと思うと発言されていますが、緊急政令、緊急財政処分について、あくまで五会派の合意が取れているというふうにおっしゃるのでしょうか。新藤与党筆頭幹事に伺いたいと思います。

 我々は、いわゆる緊急事態条項は不要と考えますが、これまで申し上げてきたとおり、選挙困難事態の対応については議論が必要だと考えています。例えば有事の際など、日本全土で選挙が長期間にわたって行えないような場合、選挙困難事態が起きた場合どう対処するかについては、必ずしも憲法に明示されてはいないからであります。

 選挙困難事態に関し、新藤幹事の論点整理メモ、以前出されたものですが、議員任期の延長等は、緊急集会で対応できない場合の措置とあります。つまり、緊急集会で対応できない場合とはどのような場合かについて定まらないと、議員任期の延長の議論に至らないということになります。

 そこで、まず、有識者、例えば長谷部恭男先生や大石真先生による参考人質疑を求めますので、森会長にお取り計らいをお願いしたいと思います。

 また、先日私が提案したように、緊急集会について参議院と合同での議論も必要であります。

 緊急集会についての論点は、任期満了時に招集可能かどうか、あるいは、あくまで暫定的、一時的な制度ではないか、これに関連し、臨時会などと同様、フルサイズの機能を有さないのではないか、また、玉木委員がおっしゃっていたように、本予算の審議が可能かどうかという意見が各会派から出ております。有識者の意見を踏まえた検討が必要であります。

 これらについて、解釈や国会法等の改正で対応できないということが明確になれば、我々も、議員任期の延長を議論すべきと考えます。

 先ほど玉木委員の方から、繰延べ投票で議員任期を延長できるかということでありましたが、それは明文上できないと私も思っていますから、議員任期の延長をするということになれば、憲法を改正しなきゃいけないということは自明だと思います。

 その上で、議員任期の延長を考える場合、要件として選挙困難事態を定義する必要がありますが、どのような場合が該当するか、これは慎重な議論が必要だと思います。客観的な要件を定めるとともに、その認定に際しては、憲法裁判所等、これは以前から申し上げてきていますが、司法の関与、客観的な関与が必要だと考えています。

 選挙困難事態の認定が議員任期延長の要件だとすると、これを全て内閣に例えば委ねると、濫用というふうに言われます。権力分立の観点からもふさわしくありません。国会に全て委ねると、議員のお手盛りというおそれがあるためであります。組み合わせて司法の認定も必要だというふうに思います。

 先週、今週も吉田委員もおっしゃっていましたが、憲法裁判所については、大きな憲法上の課題で、多くの論点があるとおっしゃられていますが、大きな憲法上の課題であるからこそ、この場でしっかり議論していくべきだと思います。

 憲法八十一条により最高裁判所に付与されている違憲審査権は付随的違憲審査制、これは定着した考え方です。具体的な事件に関係なく、例えば、安保法制は合憲かどうかという判断を裁判で求めることはできません。

 さらに、最高裁は憲法判断を控える傾向があり、違憲判決はこれまで僅か十一例しかありません。最高裁が憲法判断を行わない結果、事実上、政府の一部局である内閣法制局に違憲審査機能を委ねてしまっているのではないか、その結果、国民の権利が十分に保障されていないのではないかといった疑念を払拭し切れません。

 私は、より広く憲法判断ができる欧州型の憲法裁判所を創設することも、三権分立の観点から立憲主義にかなうというふうに考えております。憲法裁判所について、当憲法審査会での集中討議を求めたいと思います。

 最後に、国民投票法ですが、附則四条の趣旨は、これは私は発議者でありますが、例示で挙がっている一号、二号が求めている全てについて何らかの法制上の措置その他の措置が講じられるまでは憲法改正発議はできないという趣旨だと、私は発議者として審議の中で答弁をしているところであります。そもそも、この条文は、私が原案を作り提議した経緯がありますので、立法者の意思ということも言うことができると思います。

 そして、附則四条に関して議論すべき点がまだ残っています。先週、北神委員もおっしゃっていましたが、資金規制、資金の多寡で投票結果を左右させない、とりわけ、外国政府に干渉させないための運動資金規制についてはほとんど議論されていません。

 投票結果の公平公正を期すためにも、運動資金規制について集中討議を求め、私の発言としたいと思います。

 以上です。

森会長 答弁を求められた件については、次回以降お願いいたします。

 御提案のあった件につきましては、幹事会等で協議をいたします。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔でございます。

 私からも、冒頭に、中山太郎先生がお亡くなりになられたこと、心より御冥福を申し上げたいと思います。ここまで活発に議論を重ねていく憲法審査会を導いてこられたことに本当に感謝をいたしたいと思います。

 そして、加えて、私からも、昨日の小西洋之参議院議員の発言に対して強く抗議したいと思います。同じ憲法審査会のメンバーとして、毎週開催できることというのは私は非常に重要なことだと思っておりましたが、しかし、そういったことが不要なんだというようなことをおっしゃることには非常に驚きと憤りを感じております。

 猿という比喩をどういう意図を持ってお使いになったのかということは分かりませんけれども、そもそも、我々衆議院憲法審査会のメンバー全員にとって容認し難い発言だということはもちろんですし、また、お猿さんに対しても失礼だと思うんですね。お猿さんは、我々人間のように堂々巡りの議論はしません。厳しい自然の中で、どのようにして自らとそして家族の食料や住まいを確保するのかということを考えてテリトリーを守る、そのために、家族社会の秩序をつくり、その維持のために日々努力をしているわけでございます。

 それに比べて、我々はどうでしょうか。激変する国際情勢や社会環境の中、憲法上問題となる諸課題の解決について、何十年も、残念ながら、言いっ放しの状態が続いてきたということでございます。引き続き積極的な議論を衆参の憲法審査会において続けていくということを、これは小西議員始め全員が共有をしていただきたいというふうに思っております。

 小西議員には、先ほど三木委員からもありましたが、謝罪、そして、昔は反省猿というものがいましたが、反省もしていただきたいというふうに思っております。

 これまで、当審査会の内外において、我が日本維新の会、国民民主党及び有志の会の二党一会派が緊急事態条項についての検討を行い、お互いの考えをぶつけながら、条文の形にまとめる作業を行ってまいりました。いよいよ、その具体的な形が明らかになるタイミングがやってまいりました。これまでの関係議員や衆議院憲法審査会事務局並びに衆議院法制局の皆様の、毎週どころか日々の身を粉にした御尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。

 これから先は、お示しする改正案を基に、他党の皆様とこれまで考えの相違が明らかになってきている論点に関して議論をし、当審査会の改正原案としてまとめていくことが必要だというふうに考えております。

 当然、参議院憲法審査会にもギアチェンジをしていただいて、積極的に御議論いただくことが不可欠だというふうに思いますので、是非、森会長からも働きかけをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 緊急事態条項に関しましては、議員任期延長の判断に対する司法の関与が最も大きな論点になるものと考えております。

 先ほど来から様々御発言があっておりますけれども、公明党の北側幹事も、先週は、議員任期の再延長の要件たる選挙困難事態の認定は、被災状況、復旧状況等の事情を総合的に判断して、国政選挙を適切に実施できるのかの判断であることなど、司法の関与にはなじまないという御意見がありました。吉田委員からも同じような御発言がありました。

 しかし、我々が問題にしているのは、選挙の実施を司法が判断できるかどうかということではありません。時の内閣や国会が、数を頼みに、緊急事態を名目として現状の議会を不当に継続するというような民主主義の正当性が疑われる状況に歯止めをかけるために、司法の関与は不可欠であると考えております。

 ここの主張の隔たりは結構私は大きいというふうに思っていまして、この点については、先ほど奥野委員もおっしゃいましたが、かなり時間をかけてやっていくべきものというふうにも思っています。参考人の招致も含めて、じっくりと議論をすることも大事かなというふうには思っています。

 フランス憲法においては、大統領が非常措置権を発動する際に、発動要件を満たしているかどうかについて憲法院に諮問され、さらに、一定期間後においても、申立て又は職権により、発動要件をなお満たしているかの審査を行って、意見表明を行うこととなっています。

 この規定は、一九六一年に起こったアルジェリア独立戦争のクーデター鎮静後も五か月にわたって非常措置権が継続されたことの反省から、二〇〇八年の憲法改正において加えられたものということでありまして、民主主義国家の普遍的な課題への対処という意味で、我が国もこのような歴史に学ぶべきだと考えます。

 憲法裁判所の導入そのものにも検討すべき課題は多くありますけれども、各党各会派が真摯に向き合って議論をすれば、緊急事態の認定に対する司法の関与について、今国会中に成案を国民にお示しすることは可能であるというふうに考えております。

 本日から更なる具体的な議論を進められるよう、我が党としても、お猿さんのようにひたむきに取り組んでいくことをお誓いを申し上げまして、私の発言といたします。

森会長 会長に御要請のあった件については、御一任いただきたいと思います。

石破委員 自由民主党の石破であります。

 何回か前の本会において、奥野委員からだったと思いますが、専守防衛と反撃能力、これはどういう関係に立つのか、ちょっと考えを述べてみよという、そういう御下問がありました。

 時間がなくてお答えもできないので、何かよもごもたって考えを申し述べることで恐縮ですが、御容赦をいただきたいと思っております。

 戦後安全保障政策の大転換ということであります。しかし、専守防衛は変わらないのだ、非核三原則も変わらないのだ、そうすると何が大転換なんだろうねということであります。

 それは、恐らく、敵基地攻撃能力という言葉ではなくて反撃能力という言葉を使うんですが、それと専守防衛はどういう関係に立つのという話であります。その議論が予算委員会の中でもっと徹底してなされることを期待したのでありますが、残念ながら、余り国民の皆様方も深く得心をされるには至らなかったのではないかなというふうに、私自身は、自分の能力が足りないことも含めて、残念に思っておるところであります。

 専守防衛というのは、世界軍事用語辞典、何を読んでも出てきません。それは軍事用語ではないのであって、政治用語であります。

 そして、専守防衛ということが軍事合理的にいかに正しいのかということは、一度も検証されたことがありません。それは、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢であると言われている。そして、その行使の態様は自衛のための必要最小限度にとどめ、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限ると、やたらめったら必要最小限度という言葉が使われるわけですね。

 このロジックは、自衛隊は戦力ではない、戦力ではないから陸海空軍ではない、必要最小限度だから交戦権ではない、このロジックとぴったり一致をするものであります。しかし、これを、英語の得意な方ならお分かりになると思いますが、英語に訳してみて誰か理解できるか。絶対に理解はできない。私も何度か試してみたが、誰も理解はできなかった。理屈として正しいのかといえば、それは正しくないと思っています。これが必要最小限度で、ここから先は必要最小限度ではありませんよというようなものを測る便利な物差しは、この世の中のどこにも存在はしていない。

 では、反撃能力とどういう関係に立つのだということですが、安全保障を考えるときに、何でも自分に都合のいいように考えてはいけません。北朝鮮が何で毎週のようにミサイルを撃っているかといえば、あれは花火を上げているわけでも何でもない。いつでも撃てますよ、どこからでも撃てますよ、どれだけでも撃てますよ、弾道ミサイルでも巡航ミサイルでも撃てますよということを常に常に確認をし、その能力を確実に向上させつつあるということであります。

 確かに、以前、では、いつなんだ、いつなら我々は自衛権を行使できるんだという議論があって、それは、被害が出てからでは遅過ぎる、しかし、おそれの段階では早過ぎる、では、いつなんだといえば、それは着手をしたときだよねと。

 では、着手って何ですかというと、まだ液体燃料が主流だった時代ですが、液体燃料を注入しますのは、車にガソリンをつぐのだって何分もかかるわけで、それをミサイルにつぎ込もうと思ったら何時間もかかる。それは周回衛星によって把握をすることも可能なんでしょう。そして、それが不可逆的、もう途中でやめることはできないんだという段階に入ったらこれは着手であり、そうすれば我々は自衛権を行使ができるというようなことは、それは異論のないところだろうと思っていますが、今や、液体燃料を何時間もかかって注入するなんぞということはやらない。移動式発射台によって、どこから撃つか分からない。そして、何十発同時に撃つかも分からないという状態です。

 我々はもちろんミサイル・ディフェンス・システムによってそれを迎撃しますが、我々が持っている弾以上のものが撃たれたときに、では一体どうするんですかと。どうやって我々は我が国の独立と平和、国民の生命、財産を守るんですかということを本当に真面目に考えないと、大変なことが起こると思っております。

 向こうは百発撃ってきて、こっちが迎撃ミサイルを五十発しか持っていなかったとしたら、では、あとの五十発は着弾します、やむを得ません、シェルターも間に合いませんでしたと。それが真面目な防衛の議論だとは私は全く思わない。そのときに、米軍に頼めばいいと言いますが、では、米軍は我が国のみに集中しているか。そんなことはあり得ない。同時に中東でそういうような事態が起こっていたらどうするんだということであります。極東以外で起こっていたらどうするんだということであります。我々のイージス艦が常に無傷でいられるんですかということであります。

 そういうことを考えたときに、相手の策源地、そこに集中をして反撃をするということは当然必要なことではないのか。当たり前のことであります。それは、軍事合理性なんぞという難しい言葉を使わなくても、当然分かることであります。それが憲法の趣旨に反しますかということであります。座して死を待つことが憲法の予定するところではないと言われます。そのことについて、おおむね異論はなかろうと思っております。

 もちろん、委員の皆様方は「あたらしい憲法のはなし」という本をお読みになったことがあろうかと思います。これは、昭和二十二年、文部省から発行された中学一年生用の教科書です。軍艦も持たない、戦闘機も持たない、戦車も持たない、一切持たない、あらゆることを話合いで解決する。それは、正しいことほど強いものはないというふうな論理で貫かれております。当初は確かにそうだったのでしょう。しかし、そのような美しい理想が通用する世の中ではない。

 私は、軍事合理性というものがどれだけ法律論と整合するかということをきちんと議論しなければいけないと思っています。

 この分館においても、あるいは本館においても、制服自衛官の姿を見たことがない。それが文民統制だと思っている人もいるかもしれないけれども、それは大きな間違いだと私は思っています。軍事合理性というのは彼らでなければ分からない。私もオタクとかマニアとか言われる人間ですが、でも、実際に命を懸けてそのようなものを操ったことは一度もない。命を懸けてそれを操り、我が国の独立と平和を守り、抑止力を体現しているのは彼らなのであって、彼らに対して我々がきちんとした議論をしなくて、どこが文民統制だと私は思っている。彼らの意見を聞かないことが文民統制だと私は全く思っていなくて、彼らの意見を納税者の代表たる我々がきちんと聞き、そして議論をする、そのことが正しい文民統制だと私は思っております。

 専守防衛と反撃能力、これは私は整合するものだと思っていますが、その際に、必要最小限度という論理を本当にこれから先も使い続けていいのですかということが問われなければなりません。

 先ほど来、中山太郎先生についての哀悼の言葉が多く出ております。恐らく、ここにおいでの中で、一番長く先生から御指導をいただいたのは私だと思っております。もう三十数年のことに相なります。

 憲法審査会ではなくて調査会と言っていた時分のことですが、自由討議というのは非常に充実したものでありました。いろいろな憲法の先生方を呼んできて、本当に自由に議論をしました。私どもは宮沢俊義さんとか清宮四郎さんの時代ですが、長谷川正安さんという方と議論したときのことを私はよく覚えております。

 きちんと、ロジカルにきちんと詰めましょう。軍事合理性との整合性もちゃんと取りましょう。いつの日か、なるべく近々にそういう機会が与えられることを心から望んで、発言を終わります。

 以上です。

米山委員 発言の機会をありがとうございます。

 まずもって冒頭、私も、我が党からちょっと言葉が過ぎた発言があったということは非常に残念に思っていると申し上げさせていただきたいと思います。

 ただ、私は今、代打で来ておりますので、開催機会について何か言える立場ではないんですけれども、私は上品な言葉で議論をするのは非常に大好きでございますので、開催が一年に一回だろうが、一か月に一回だろうが、一週間に一回だろうが、一日に一回だろうが、お呼びをいただければいつでも議論をする、そういうつもり、護憲の立場から議論をさせていただくということを冒頭申し述べさせていただきたいと思います。

 それで、今ほど話題になっていた任期延長につきましては、私は、選挙困難事態ということは、それはあり得るんだと思います。ただ、今までの御議論の中で、割に自民党の方々、新藤委員や柴山委員などから、司法を関与させるのはよろしくないといいますか、ひたすら、それは選挙でやるべきだというようなお話があったんですが、それは私は違うと思います。

 そもそも、民主主義というのは、選挙だけで済むのであれば、それは共産主義国家だって民主主義なわけですよ。それは、ちゃんと三権分立というものがあって、選挙で選ばれていない裁判官がコントロールする部分があるからこそ、民主主義というのは成立し、継続するものなので、是非そこは司法をもっと信頼していいのではないかと思います。

 しかも、これは法律で選挙困難事態というのを決めてしまえば、別にそれは憲法判断でも何でもない、単なる普通の法律判断です。例えば宗教法人法などは、解散に対して、検察官が裁判を提起して、そして裁判所が命ずるということができるわけですから、特段、司法が関与することは何の問題もないと思います。

 次に、今ほど石破委員からもお話がありました敵基地攻撃能力についてお話をさせていただきたいと思います。我が党の本庄委員の前回の発言もございましたので、それも踏まえてお話しさせていただきたいと思います。

 昨年策定された防衛力整備計画でスタンドオフミサイルによる反撃能力の整備が打ち出されるとともに、国家防衛戦略において、相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有力な反撃を相手に加える能力、すなわち反撃能力を保有する必要があるとして、敵基地攻撃能力若しくは反撃能力が規定されて以来、これが自衛のための必要最小限度の実力若しくは武力の行使、まさに必要最小限と言えるか、武力の行使と言えるかが問題になってまいりました。

 私は、おっしゃられたように、軍事の現状として、軍事というのは恐縮ですが、現状として、長距離精密誘導弾が決定的に重要になっている現在の防衛においては、スタンドオフミサイルの保持は認められるべきであるし、現実問題、その認定は非常に困難だと思います、技術的に非常に困難だということは前提として、論理としては、我が国に対する武力攻撃事態に対して、我が党の枝野議員が衆議院予算委員会で述べたように、我が国の領土、領海等に着弾することが不可逆的になった場合に、つまり着弾する前にということですけれども、他国の攻撃拠点に対して必要最小限度の武力を行使することは、憲法九条の範囲で認め得ることだと思います。

 ただ、一方で、政府解釈をそのまま考えますと、いわゆる存立危機事態もそのまま同じになってしまう。しかし、これは違うのではないかということを述べさせていただきたいと思います。

 といいますのは、存立危機事態の中で、もちろん、我が国に対してというならロジックは同じだと思うんですけれども、これが他国に対してということでありますと、他国に対する攻撃もまだ実現していない、当然ながら我が国に対する攻撃は実現していない、その段階で反撃ということは、それは幾ら何でも最小限度でもない。幾ら何でも、それは、憲法第九条一項の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」、二項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」という、憲法九条が全く空文化してしまうと思います。

 我々が持っているのは自衛隊で、あくまで自衛のための必要最小限の実力ですので、武力行使というのは、やはり、こちらがそれを使うのは、相手からの武力の行使が、それもかなり確定的に、我が国に対するものが確定的になったときに限るべきだと思います。

 よくウクライナのことが例に出されますけれども、二〇二二年二月二十四日のロシアのウクライナ侵攻前にウクライナが反撃することはかなり難しいなりに、まだそれは論理的にあり得ると思うんですが、アメリカが例えば軍事同盟を結んでいたとして、アメリカがもし事前にこれをやっていたら、とてもそれは、その後の国際的な結束すら不可能となっていたと思います。

 もちろん、現実の場面で、武力攻撃の場面での判断は極めて困難だ、画一的判断や画一的規定を置くことは困難であるにしても、長距離精密誘導弾という技術の進歩によって、防衛のための武力と、他国に侵略的、攻撃的脅威を与える武力とを区別し難い現状においては、憲法九条に定められた日本の専守防衛を守り、同時に、他国への脅威をなくすというのが大事だ。先ほど、文民統制、軍事の現実は大事だと言いましたが、それを言葉でカバーするのが政治の役割だと思うんです。それを解釈という言葉で解釈するのが、私は政治家の仕事だと思うんです。

 ですので、憲法解釈において、これは、そのようなことはしないと。我々は他国への攻撃可能なスタンドオフミサイルは持つけれども、その武力を行使するのは、我が国の領土、領海等に着弾することが不可逆になった場合に限り、特に我が国に対する武力攻撃が存在しない、そういった他国に対する存立危機事態においては、これは行使しないと政府が明言するべきであると申し上げさせていただきたいと思います。

 ちょっと時間が来て恐縮ですけれども、なお、それに追加して、長距離精密誘導弾を持った状態で、どのような形であれ核弾頭を保有すれば、他国に大きな脅威となり、他国での核軍拡競争を惹起して、NPT体制が崩壊する事態になりかねません。アメリカとの関係でも、国際的な関係でも、およそ現実味のない核共有について言い募ることは、たとえそれが実現を期さない自己PRの目的であったとしても、言葉のやいばとなって、我が国の防衛に支障を来すことになりかねないことであり、厳に慎むべきだと申し添えさせていただきます。

 大変ありがとうございました。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十四分散会


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